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リョナゲームブックを作ろう!

1名無しさん:2007/06/04(月) 03:16:46

物語の途中で選択肢を選択し、いろんな方向へ物語が分岐するゲームブック。
しかし、リョナ向けのものはあまりありません。
そこでみんなの力を合わせて、リョナゲームブックを作ってみませんか?

設定や、投下ルールに関する意見募集中。
まだまだ形になっていませんが、よろしくお願いします。

2名無しさん:2007/06/04(月) 03:18:25
<投下ルール>
・どの話から分岐したのかを必ず明記してください。

・名前は書いても書かなくてもかまいません。
 書いた場合はその名前を、書かなかった場合はレスの番号をまとめた時に書かせていただきます。

・一度に投下する量は自由です。
 一人で一気に最後まで投下しても、逆にすでにある部分の分岐を1話だけ書いても問題ありません。

・他に投下された話と矛盾のある展開になった場合、その矛盾が別ルートでの話なら気にせずに投下してください。
 ただ、その話にいくまでに通った話との矛盾は出来る限り解消してください。

・気に入らない展開になっても叩かない。愚痴らない。
 ゲームブックなので、その前の時点から好きなように分岐させてください。

・新キャラの追加は責め側のみ。
 女性キャラまで自由に追加できたら最初に決める意味が薄いですし、
 それぞれが自由に追加しすぎて話が収拾しなくなることを避けるための措置です。

・どういう状況か、だけの投下もOK
 リョナ要素の薄い部分で話が止まってしまった場合に話をとりあえず進めたり
 ここからこんなリョナシーンに分岐できないかな? という時にどうぞ。
 誰かがその部分のちゃんとした文章を投下した場合、まとめる時はそれに差し替えます。

3名無しさん:2007/06/04(月) 03:21:38
<基本的な設定>
剣と魔法のファンタジーな世界にて、とある村に冒険者達が着いたところから物語は始まります。
その町のギルドにて見つけた依頼、それに挑んだ冒険者達は…


<開始前に決めること>
世界名、村名 (別に決めなくても問題ありませんが、一応募集)
冒険の内容 (ダンジョン探索系や盗賊退治系等。ある程度作れる話の幅が広いもので。)
主人公達のパーティの人数 (人数が多すぎても大変なので、1〜4人程度でお願いします)
主人公達の設定  (職業と体、性格の簡単な特徴程度で。
             細かく決めすぎると後々書きにくいので、ある程度アバウトに。何人分書いてもかまいません。)

以上の設定が決まった後に私が序章を数話投下して、本格的に開始する予定となります。



また、まとめサイトの公開方法ですが
まとめサイトを作るかファイルバンクに定期的にまとめファイルをアップすることを考えています。

基本的にhtmlファイルはそこまで重くないため、ファイルバンクでもそこまでアップ/ダウンの手間はかからないと思います。
また、まとめサイトを作る場合、どこのサーバーがいいのかがちょっと把握できていないため、
おすすめのフリーサーバーがあれば教えてもらえればそこに作ることになると思います。



私にどこまでまとめることが出来るかわかりませんが、みなさんご協力をお願いします。

4名無しさん:2007/06/04(月) 19:39:20
とりあえずキャラは三人居ればおおよそ各種そろうと思う。

5名無しさん:2007/06/04(月) 20:42:31
それはようするに
ttp://www.geocities.co.jp/Playtown-King/8668/bmg.html
こんな感じ?

6名無しさん:2007/06/04(月) 21:31:08
まあキャラの種類としては

・熱血(主人公タイプ?)
・クール(素直クールも可)
・おとなしめ(M属性有り)
・元気系(天然成分含む)
・百合っ娘(美少女大好き!)

って所だろうか。

7名無しさん:2007/06/04(月) 21:32:06
3人ぐらいで良いんじゃないか?多いとあれだし

8名無しさん:2007/06/04(月) 23:03:52
まぁ最初3人で
実際上手く回り始めたら増やせばよくね?

9:2007/06/04(月) 23:56:45
まあこの中で3〜4人って所だな。
1人か2人に絞って話し濃くするのもいいかもしれん

10名無しさん:2007/06/05(火) 00:39:08
職業としては
◎戦士
○魔法使い
○僧侶
△武道家
△レンジャー
△盗賊
△バード

ってところか?
魔と僧はまとめてもいいかもしれないが。

11名無しさん:2007/06/05(火) 00:42:07
>>6
とりあえずさ3個に絞ろう。

といっても趣味が人によって分かれるから困るのだが
どうやって選ぼうか?

12名無しさん:2007/06/05(火) 00:44:11
>>10
バードとか微妙なのはいらないんじゃないか?
普通に魔と僧をまとめて

戦士
魔+僧=賢者?
武道家

で良いと思う。

職業きまると6もきまってくるしな

13名無しさん:2007/06/05(火) 01:08:51
俺個人としては、単体ではあまり強くない支援職を孤立させて…って展開も欲しいんだよな。
まぁ、バードは戦闘シーンとか書きにくいからやめた方がいいかもしれないが。

14名無しさん:2007/06/05(火) 01:47:06
あぁわかる

でもさゲームブックなんだし無限に可能性は広げられるんだから
MP0とかいうありがちな展開はだめかい?

15名無しさん:2007/06/05(火) 01:52:00
ここまでくると個人の趣味の話になっちゃうから、
組み合わせをいろいろ出した所で>>1氏に決めてもらうのがいいんじゃないかな?

1615:2007/06/05(火) 01:53:59
すまん言いだしっぺ自らネタ投下するの忘れてた・・・。
とりあえずお約束所で、

勇者(剣士)系・熱血主人公肌
武道家系・ドジっこ元気っこ
魔法使い系・おっとり系

17名無しさん:2007/06/05(火) 10:28:05
>>16
今流行の素直クール系も加えてくれ

18名無しさん:2007/06/05(火) 10:59:32
面白そうすっね! 武道家元気っ娘は一度は描いて見たかったんだ。協力するよ。

19名無しさん:2007/06/05(火) 16:35:37
>>16

賛成
おれもこの三つかな。
ほんとはクールもいれたいけど

最初から4人はきつい気がする。
そのうち増やすのはだめなのかなぁ?

20名無しさん:2007/06/05(火) 22:29:29
ダンジョンとか盗賊技能が必要そうな場所行くときだけ
素直クールな盗賊系キャラをスポット参戦させるといいんじゃね?

211:2007/06/06(水) 01:09:32
>>15
どうしても決まらない時以外は流れに任せたいと思っています。
それに、実は名無しの1個人としても議論にも参加していますし。


あと、投下ルールや開始前の設定に関してですが
これは私一人が暫定的に決めただけなのでこうしたほうがいいという意見はどんどんお願いします。

22名無しさん:2007/06/06(水) 20:56:21
なんか>>16の賛同が多いけど、あえて別パターンを作ってみる。

剣士系:熱血主人公系
魔法使い系(火・癒):おとなしめ
レンジャー系(弓・短剣):小柄・妹系

…俺の書きたいままに書いたらなんか2人目までかぶってるな。

23名無しさん:2007/06/06(水) 22:20:56
>>20
まぁそういうのもありだとは思うが
乱立して登場キャラ多すぎると何がなんだかわからなくなる
>>1氏なり誰かの許可無くキャラは増やさないほうがいいんじゃないかな?

>>21
そういうことなら最初は3人で軌道乗り次第たまに増やすという形を提案する。

そろそろキャラ決める流れにしようぜ

とりあえず初期3人ってことと
剣士系:熱血主人公
魔法使い系:おとなしめ・おっとり
まではおK??

24名無しさん:2007/06/06(水) 23:23:46
格闘娘はほしい、ミニスカチャイナでな。

25名無しさん:2007/06/07(木) 00:19:24
>>23
だね、俺も初期は三名固定を提案。

>>24
そして同じく格闘娘に一票。

26名無しさん:2007/06/07(木) 00:28:07
んじゃ、誰も書かなさそうな村の設定でもしてみる。


村名…王都リヨナ
その大陸の中では一番の大国。そのため町にあるギルドも最大規模であり、そこでは様々な依頼が寄せられる。
しかしその一方で治安はかなり悪く、さらに王族にもいろいろと黒い噂が耐えない。
交通の便はよく、交通機関を利用すれば海から雪山、砂漠から森まで様々なところへと行くことができる。


これぐらい伏線の塊の設定にしておけば後々使いたい時に後付けでいろいろ出来ると思うんだがどうだろうか。
村じゃないとか、名前があまりにも安直すぎるとか、そういうのは置いといて。

27名無しさん:2007/06/07(木) 00:45:51
>>26

いいんでないかい?これなら色々妄想できるぜ!!

格闘娘が人気だね
オレもドジっ子格闘娘に一票

28名無しさん:2007/06/07(木) 03:36:11
じゃあ依頼についてちょっと考えてみる。


ある魔物に悩まされている村から依頼が来る。
魔物は村人に生け贄を要求しており、生け贄を差し出さなければ村は滅ぼされてしまう。

主人公達は生け贄になる娘のふりをして魔物の住む洞窟に侵入し、隙をみて魔物をしとめる作戦を立てる。
だが、作戦を実行する直前に振る舞われた食事を食べた途端意識を失い、気づいた時には既に洞窟の中!
なんと土壇場で怖じ気づいた村人が食事に薬を盛って気を失った主人公達を洞窟に運びこんだのだ!


生け贄を装うつもりが本当に生け贄にされてしまい焦る主人公達。武器やアイテムは村に残されたまま、出口もわからない…その時、洞窟の奥から巨大な足音が…

まあ武器は残しといてもいいけど最初丸腰なら洞窟のアイテムがより有効に活用できる気がした

エンディングでは村人に逆襲でw

29名無しさん:2007/06/07(木) 19:25:39
>>2
投下ルールについて少しおもった。

どの話から分岐か書くということだが
そしたら話一つ一つを区別できるような何かをつけるってこと?
一つ一つごとにタイトルをつけるか?
それともページ番号でもつけるのか?

301:2007/06/07(木) 21:35:39
>>29
考えてはいたのですが、完全に書き忘れていました。
まとめる時に、それぞれの話に番号をつけさせていただく予定です。
また、投下された話の直後での分岐はそのレス番号を指定する形でお願いします。


キャラ設定ですが、剣士、魔法使い、格闘娘の組み合わせの人気が高いみたいですし
とりあえずこの組み合わせで仮決定ということにさせていただいて話を次に進めたいと思います。

3人の名前と、服や髪の色のイメージカラー、簡単な設定(冒険者としてのレベルや、お互いの簡単な関係、その他体の特徴等)
このあたりに関してお願いします。

また、村名と冒険の内容はもう少し募集します。

冒険の内容に関しては最初、短いので1回慣らしてから別の依頼を増やしていくか
最初から分岐しやすい大きい依頼でやっていくかが悩みどころですが…このあたりの意見もお願いします。


とりあえず、日曜日の夜あたりにはこのあたりも決めて、月曜日か火曜日には最初の文章を投下、本格的に開始を目標にしたいと思います。
ちょっとした意見でも参考になるので、意見はどんどんお願いします。

31名無しさん:2007/06/07(木) 22:02:52
格闘娘にチャイナ(ミニチャイナ)は欠かせないな。

32名無しさん:2007/06/08(金) 00:17:29
>>30
オーソドックスに

剣士→クール
武道家→熱血
魔術師→苦労人

を推す。対立しがちな剣士と武道家を魔術師がなんとかまとめる形で。

あと内容に関しては絶対に簡単でも良いから完成できそうなもの希望。
みんなで制作系は初っぱなから難易度をあげすぎての空中分解→挫折が死因No.1なんでorz

33名無しさん:2007/06/08(金) 02:41:35
なにやら面白そうなスレ発見。
個人的な理想に基づいた案を書いてみますか。

【依頼内容】
依頼者はと辺境地方の領主。
依頼された任務は、王都の学校に進学することになった令嬢(15歳)の馬車を、王都まで護衛し送り届けること。
何事もなく旅は進み、翌々日には王都に到着できるという辺りまで来たところで、一行は火吹き竜を従えた魔女(外見はエロいお姉さん)の襲撃を受ける。
必死に応戦するものの、圧倒的な魔力と火力の前に為す術なく蹴散らされ、令嬢はさらわれてしまう。
御者の話によると、魔女は「黒手袋のザゴーラ」と呼ばれており、この辺りに住む者なら誰でも知っている有名人なのだという。
近くの山にある古い地下迷宮に住んでおり、百年以上も変わらぬ姿で生きている大魔法使いらしい。
三人は令嬢を救出し、依頼を完遂すべく迷宮に向かうことになる。迷宮には様々な罠と怪物が待ち受けている。

知ってる人ならわかるかもしれないけど、元ネタは『火吹き山の魔法使い』。
魔女ザゴーラが令嬢をさらった理由やら令嬢の生死やらは不定。展開次第で適当に決めていこう。

・剣士
 三人のリーダー。17歳。気丈で真面目で責任感が強い。冷静で落ち着きもあるが、心の隅には常に自覚のない不安を宿している。
 人質に弱いタイプ。自身よりも他の二人が傷つく事を恐れている。
・魔法使い
 剣士の妹。14歳。内気な性格で怖がりだが、姉が側に居れば勇気を持てる。姉のことを慕う反面、劣等感も抱いている。
 醜悪な外見を持つ怪物が苦手。グロい敵との戦闘では力を上手く発揮できない事がある。
・格闘娘
 姉妹の幼馴染で親友。17歳。勇敢かつ強気で前向きな熱血少女。
 行動力はあるものの、思慮に欠ける傾向あり。その結果、失敗してしまうことも多い。

キャラに関しては名前とかいいのが思いつかないんで、とりあえず性格設定だけ。ピンチ展開をやり易いようにそれぞれに弱点も用意。
また、個人の弱点だけじゃなくチームとしての弱点にもなるようにしてみた。
剣士と格闘娘は、互いの欠点を補い合えるいいコンビだが、チームが分断されるような事があるとそれぞれの弱点が露呈。
魔法使いも姉とはぐれてしまうとかなり脆い。といった感じです。

こんなもんで参考になりますかね。

34名無しさん:2007/06/09(土) 00:17:11
んじゃ名前を決めておくか。とりあえずキャラごとに適当に思いついたの3つぐらいずつ出しておくからな。

戦士   …せんし1     ああああ  リョナ子
魔法使い…まほうつかい1 いいいい  リョナ美
武道家  …ぶどうか1    うううう    リョナ代

好きなのを選んでくれ。







真面目に。 でもやっぱり適当に頭に浮かんだ名前っぽいので。

戦士…エルキス ファリナ ルリカ
魔法使い…ルネス ミア タニア
武道家…ロゼッタ カリン チャオ

考えてみると名前って難しいな…特に武道家はそれっぽい名前が思いつかない。

35名無しさん:2007/06/09(土) 00:40:03
>>34
武道家だったらリンリンとかランランみたいな中華キャラ風にすればいいじゃないか。

・・・でもたしかに名前は難しい。

36名無しさん:2007/06/09(土) 00:48:37
ttp://www.willcode.co.jp/kirakira/ ここの「外国語で検索」が参考になるかも。

37名無しさん:2007/06/09(土) 07:04:41
戦士: ツルギコ
魔法使い: ギラコ
武道家: チチ

38名無しさん:2007/06/10(日) 03:08:14
>>33
確かに苦手な部分とか作るとピンチな状況も作りやすいし、キャラの設定は好きだな。
ただ、冒険の内容はちょっと長くなりそうな気がするし、もう少し短くてもいいかも?

39名無しさん:2007/06/10(日) 03:35:43
キャラクターの性格設定はできるかぎりシンプルにして
ルート分岐の選択肢で各種属性(Mだの百合だの)や
苦手なものが付加されていく形にするのはどうですかね?

4033:2007/06/10(日) 06:05:54
>>38
確かに迷宮探索だと長丁場になってしまうなぁ。内容(分岐の多様性)を濃くした1〜2回の戦闘で終われる構成の方が無難か。
別のパターンも考えてみる。

【依頼内容】
依頼主は、とある町を治める領主の娘。
依頼された仕事は、死霊の討伐に手を貸してほしいというというもの。
邪悪な死霊を倒すには、若く汚れのない心と体を持つ乙女だけに宿る聖なる守護が有効なのだという。



>>39
後付で「実はこの娘はMでした」てやるんじゃなく、敵の攻撃によるステータス異常として属性を付加させてみたらどうかな。
催眠術(もしくは精神に作用する魔法等)を使う敵に「お前は奴隷だ」ていう暗示をかけられたり、媚薬を塗った吹き矢で刺されたりとかすんの。

4133:2007/06/10(日) 06:36:06
間違ってリターン押しちまったよ畜生。
もうちょい詳しく書きますよ。

【死霊について】
生前は町の闘技場の王者だった男。依頼主の恋人は彼との戦いで死亡している。
彼が死ぬ少し前に手に入れた剣は呪われていたと噂されており、その剣の力が彼を怪物に変えたらしい。
死霊と化した後は闘技場に居座り、そこから動くことはないが、試合場に入ってきた者を無差別かつ問答無用に攻撃するようになった。
このような事情により闘技場は閉鎖中。闘技場はこの町の経済の中心であり、町は活気を失っている。
三人以前にも依頼を受けて彼に挑んだ者は数名いるが、皆返り討ちにあった。依頼主の恋人もその一人。
強大な力を持つ不死者には乙女の持つ聖なる力で対抗できることを、古い文献で突き止めた依頼主は偶然町を訪れた三人に白羽の矢を立てる。
彼の持つ魔剣(どっちかというとこっちが本体)は、下級の死霊を作り出して戦わせる能力を持つ。
作り出せる下級死霊は数種類あり、それぞれ固有の能力を発揮して三人を苦しめる。

とりあえず探索はせず、戦闘のみを行うシナリオで。女の子に依頼しなきゃいけない理由を考えるが面倒なんだぜ!

421:2007/06/10(日) 21:34:43
あと何時間かしたらある程度設定を確定させていく予定なので、意見がある方は今のうちにどうぞ。
○○の意見に賛成、とかだけでも決める時の参考になるので、よろしくお願いします。

431:2007/06/11(月) 02:04:13
それでは設定をまとめたいと思います。
もう少し待ったほうがよかったかもしれませんが、あまり間を空けすぎてもだれてしまいますし。
ただ。今回はあまり賛同系のレスがなかったため、ある程度私の独断で選ばせていただきました。

<世界名・村名>  >>26
王都リヨナ
その大陸の中では一番の大国。そのため町にあるギルドも最大規模であり、そこでは様々な依頼が寄せられる。
しかしその一方で治安はかなり悪く、さらに王族にもいろいろと黒い噂が耐えない。
交通の便はよく、交通機関を利用すれば海から雪山、砂漠から森まで様々なところへと行くことができる。

<依頼の内容>  >>40
依頼主は、とある町を治める領主の娘。
依頼された仕事は、死霊の討伐に手を貸してほしいというというもの。
邪悪な死霊を倒すには、若く汚れのない心と体を持つ乙女だけに宿る聖なる守護が有効なのだという。

<キャラの設定> >>33 >>34
エルキス:剣士
 三人のリーダー。気丈で真面目で責任感が強い。冷静で落ち着きもあるが…

ルネス:魔法使い
 剣士の妹。14歳。内気な性格で怖がりだが、姉が側に居れば勇気を持てる。

リーファン:武道家
 姉妹の幼馴染で親友。勇敢かつ強気で前向きな熱血少女。



世界名は投稿がありませんでしたし、使わなくてもとりあえず進行に問題はないと判断したのでとりあえずなし。
村名は投稿がこれしかなかったので自動的に。(…実は私自身が投稿したやつなのですが。)

依頼に関しては個人的なシチュとしては>>28のほうが好みだったのですが、こちらもまだ少しだけ長くなりそうな気がしたので。
ただ、最初の依頼がある程度うまくいきそうならこの設定でもやってみたいと考えています。
敵の設定も細かく書いていただきましたが、そこは展開次第で採用するかしないかは決めていただくということで、投稿者の判断に任させていただきます。

キャラの設定ですが、>>33の設定を元に、最低限の部分を残して削らせていただきました。
>>39-40の流れででていますが、ある程度は進みながら追加することもできますので。

また、名前に関してですが、剣士と魔法使いは>>34から、武道家はこちらで適当につけさせていただきました。



この設定を元に、月曜日中か、遅くても火曜日までには最初の数話を投下、そこから本格的に開始させたいと思います。
今までは前準備、これからが本番です。頼り無いまとめ役かもしれませんが、ご協力をお願いします。

ちなみに、私が書く部分ですが、戦闘開始直前あたりまで書く予定です。早めに書き始める方がいたら参考に。

44名無しさん:2007/06/11(月) 02:43:30
>>43
乙です。ワクテカですよ!
話を分岐させる際、シナリオのボスが枝ごとに違う人物だったりするのはアリですか?
例えばAルートでは領主に恨みのある魔術師を倒せばクリアだけど、Bルートでは依頼主が黒幕だった〜といった具合に。
選択とその結果ではなく、並行世界的なものになってしまいますが。

451:2007/06/11(月) 02:52:38
投下ルールの

・他に投下された話と矛盾のある展開になった場合、その矛盾が別ルートでの話なら気にせずに投下してください。
 ただ、その話にいくまでに通った話との矛盾は出来る限り解消してください。

の部分に含まれているため、問題ありません。


そうしないと、他の人との投下が重なってしまった場合等にどちらかが投下をあきらめる必要が出て来たりする可能性もありますので。

461:2007/06/11(月) 23:59:16
現在執筆中です。今夜中はちょっと厳しいかもしれません。

エルキス(剣士)の口調のイメージが2種類あってどっちに統一するか迷います…

「はぐれるなよ」
「まずいな…」
「ダメか…」

「はぐれないでね」
「まずいわね…」
「ダメみたいね…」


一応この部分だけなら修正するのにそこまで手間はかならないので
どちらかがいいといいう意見が多ければ投下前に修正したいと思います。
もしも今夜中に間に合えば意見を聞く時間があまりありませんが…。

47名無しさん:2007/06/12(火) 00:14:09
個人的には後者の方が好み

48名無しさん:2007/06/12(火) 00:21:59
>>46
同じく後者に一票かな。

49名無しさん:2007/06/12(火) 00:36:16
おれも後者に一票で

501:2007/06/12(火) 01:29:46
すみませんが、やはり今日中に終わらせるのは無理そうです。
明日中にはなんとか投下するつもりなので、引き続きお待ちください。

エルキスの口調はとりあえず後者の方で進めますね。

511:2007/06/12(火) 21:50:36
あと2割程度といったところなのでなんとか今日中には投下できそうです。
先に言っておきますが、この段階ではリョナ要素はないのでそういう面ではまだ期待しないでください。

ちなみに、私が書いている内容の終わりの部分ですが
町に到着、依頼主の話を聞いてその後すぐにモンスターと戦うか、情報収集をするか、の選択肢が出たところで終わることになりそうです。

52名無しさん:2007/06/12(火) 22:22:27
>>1
がんばってねー
ストーリーが進み始めたら支援するよ

531:2007/06/13(水) 01:30:42
ようやく完成しました。
早速ですが、投下したいと思います。

54名無しさん:2007/06/13(水) 01:31:43
 −1−

森を抜けると見えたのは活気あふれる城下町、そしてその中心にあるのは巨大な城。
王都リヨナ。この大陸に住んでいれば誰もが一度は耳にした事のある大陸の中心となる大都市
交通の要であり、物だけではなく人や情報も集まっている。
そんなリヨナの冒険者ギルドは冒険者にとって見逃すことの出来ない情報の宝庫となっていた。

そんな王都リヨナを目指し森を抜けてきたのは剣士エルキス、魔道士ルネス、武道家リーファンの3人。
今回はそんな彼女たちの運命を追っていきたいと思う。

しかし、その運命が冒険者として名を馳せる希望の道になるか、苦痛や屈辱に塗れた絶望の道となるかはまだ誰も知らない…

<物語を始める>

55名無しさん:2007/06/13(水) 01:35:43
 −2−

リヨナの町を歩く3人の少女。一見普通の少女に見えるが、その服装は軽装備なものの戦闘用、冒険者の物である。

剣士エルキス。3人のリーダーであり、ルネスの姉。武器はもちろん剣である。
性格は真面目で責任感も強く、基本的に冷静。

魔導師ルネス。エルキスの妹であり、魔導師。攻撃系、回復系、どちらも実戦で使える程度には習得している。
性格は内気で怖がり。姉を特に信頼しており、姉の近くならばいざという時も勇気を持って行動することができる。

武道家リーファン。エルキスやルネスとは幼馴染。武器はその拳と脚から繰り出される格闘技。
性格は勇敢かつ強気。基本的に何事も前向きな熱血少女。

彼女たち3人は冒険を続け、今回このリヨナへとやってきた。
昨日、リヨナ到着した日はすぐに宿屋で休憩をとり、今は3人とも気力体力ともにばっちりと回復している。
彼女たちが今回リヨナへ来た目的は…

561:2007/06/13(水) 01:36:49
「それにしても、冒険者ギルドはどこになるのかしら。」
エルキスがあちこちの看板を確認しながら言った。
「大きいらしいし、すぐに見つかると思うんだけどな。」
リーファンも同じように周辺を見ている。
「あ、こっちに案内板がありますよ。」
こちらもやっぱり周りを確認していたルネスが、ある方向を指差しながら言った。

案内板には現在位置、ギルドの位置もしっかり書いてあり、距離もそう遠くない。
しかしとにかく道が複雑だ。どういうルートで行くにしても10回近く道を曲がる必要がある。
「うぇー…私には覚えられそうにない。道案内は2人に任せた!」
リーファンは地図を見て3秒であきらめてしまった。
ルネスも一生懸命地図を見ているが、いまいち自信はなさそうだ。
(とはいっても…さすがにこの複雑さだと私も道を間違えない自信はないし…どうしようかな)

<案内板を頼りに探す>

57名無しさん:2007/06/13(水) 01:38:13
−3−

記憶力と案内板を頼りに探したところ、幸いなことに20分もかからないうちにギルドを発見することが出来た。
3人はさっそく入り口のドアを開けた。ドアの向こうから外とは違う独特の熱気が伝わってくる。

「うわー」
「なんというか…」
「すごいわね…」

3人は入り口で思わず立ち止まった。
建物の中には大きな鎧を着た屈強な男、ちょっときわどい鎧を着た女性、店の騒音にも負けない大声で歌う吟遊詩人。(しかし歌の内容はさっぱりだ)
さらによく見ると、人間だけではなくエルフやドワーフ、さらには名前も知らないような種族までいる。
3人は小さな村のギルドへならば何度も足を運んだことがあった。それにこういう雰囲気を知らないわけではない。
しかし今まで見たギルドとはまったく違っていた。いや、何も違わないのだろうが、規模があまりにも大きい。

今まで見たことのない光景に呆然と立っていると、突然後ろから肩をつかまれた。
後ろを振り返ると冒険者らしき男がこちらを睨んでいる。どうやら私たちが邪魔で中に入れないようだ。

「あ…すみません。ルネス、リーファン、とりあえず中へ入りましょう。すごい人が多いからお互いはぐれないように。」
慣れない空気に多少の恐怖を感じながらもエルキスは2人を連れ、中へと入っていった。

58名無しさん:2007/06/13(水) 01:40:24
通常、ギルドの壁一面には大量の依頼書が張られている。
その依頼書に必要事項を書き、役員に渡すことで依頼を正式に受託したことになる。
冒険者ギルドが成立したばかりの頃、冒険者同士による依頼の奪い合い。
そして酷いときには依頼料の横取りまでが多発したための措置なのだそうだ。
もちろん大規模であってもギルドである以上ここも例外ではなく、壁一面に大量の依頼が張られている。
その壁の大きさやその壁の枚数もやはり今までのイメージとは全然違っていたが、いつまでも圧倒されるわけにもいかない。
3人は手分けして依頼を探し始めることにした。

「saga闘技場での出場者募集…うーん、報酬はいいけど交通費を考えると辛いものがあるわね。」
「リステレイラ王国の王族捜索…依頼がでてからの期間が長いみたいですし、依頼を受けた冒険者の数も相当いるみたいです。
 それで解決してないとなると私たちのレベルじゃ無理かも…」
「リョナ団団員募集 みんなでリョナるフレンドリーな仕事場 …いや、何これ。」

内容や依頼をよく見る。これは冒険者の基本だ。
下手に難しい依頼を受けてしまったために取り返しのつかないことになった冒険者の話はよく聞く。
私たちは3人で相談しつつ、とある依頼を手に取った…


<依頼:領主の娘と邪悪な死霊>

59名無しさん:2007/06/13(水) 01:41:34
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
依頼者:リヨナ国アークス領 領主の娘 ロゼッタ・アークス
依頼区別:一般依頼・モンスター退治

町の闘技場にて死霊が居座り、闘技場が使用不可となっています。
町の経済にも影響が出始めているため早急な退治をお願いします。

(詳細略)

※乙女の持つ聖なる力にて死霊の力が弱まることを確認済み。

推定達成難度:B  報酬:5000リナ+交通費
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

60名無しさん:2007/06/13(水) 01:43:39
ギルド内のテーブルに座った3人は机の上に前述の依頼を広げていた。

「アークス領なら距離もそう遠くないし、Bランクなら私たちも過去に何度か達成してるよね。」
リーファンが依頼書を覗きこみがらつぶやいた。
「報酬も5000リナなら当面の生活には困らないと思います。」
「死霊…となるとアンデットね。私やリーファンの攻撃は通りにくそうだけどルネスの魔法があるし…悪くない依頼ね。
 それに、補足事項の条件にも当てはまっているし…今回はこの依頼、ということでいいかしら?」
エルキスが2人を見ながら聞いた。
「意義なーし」「私も2人がいいのなら…」
その言葉を聴いて、エルキスは
「よし、それじゃあ決定ね!」
と立ち上がりながら威勢よく言った。


こうして、私たちはこの依頼を受けることとなった。
以前私たちが受けたBランクの依頼はどれもギリギリであったし、アンデット系と戦うのは久々だ。不安がないわけではない。
しかし私たちも強くなった。それに今回の依頼は街中での戦闘だし、いざという時も危険はまだ少ないだろう。
私たちは早速手続を済ますと、出発の準備のためにギルドを後にした。

<出発する>

61名無しさん:2007/06/13(水) 01:44:20
 −5−

アークス領は王都から馬車で6時間ほどの距離にある、
伝統ある闘技場が町のメインとなっていて年1回行われる大会では王都リヨナからもかなりの人が観光に訪れる。
そのため闘技場の町と言われるほどにアークスは闘技場に経済を頼ってきていた。

だからこそ今のこの町の惨状はある意味当然なのかもしれない。
町の人々の活気はなく、店も休店が多い。天気も晴れているはずなのになんだか薄暗く感じてしまう。
死霊自体の力の可能性もあるが、それ以上に闘技場が利用できないために観光客が減ってしまっているのが原因だろう。

「前に聞いた噂とはずいぶん違うわね…」
道の広さや店の量を見ると、おそらくここがメインストリートなのだろう。しかし、人々に活気はない。
「それにしても、条件といい、町の知名度といい、私たちの前に誰かが解決していてもよさそうな依頼ですよね」
「町にしてみればこれだけの事件なのに領主じゃなくて領主の娘が依頼人ってのも気になるよね。」
「確かに…あ、館が見えてきたわ。」
駅馬車から降りて歩きで15分。3人は領主の館へと到着した。

62名無しさん:2007/06/13(水) 01:45:34
館に到着した3人は執事に依頼を受けた冒険者だと伝えると、すぐに応接間へと通された。
そこで待っていたのは女性だった。おそらく私と同い年か、少し年上といったところだろう。
私たちが椅子に座ると、女性が口を開いた。落ち着いた、はっきりとした声だった。
「私がこの町の領主の娘、ロゼッタです。 父は現在病に臥せているため私が代理で依頼を出させていただきました。」
「リーダーのエルキスです。こちらは――」
仲間の紹介をする前にロゼッタの声に遮られた。
「すみませんが、時間があまりありません。依頼の詳細を説明いたします。セバスチャン!」
ロゼッタが合図すると、執事らしき男が書類を数枚持ってきて私たちに手渡した。
「詳しい内容はそこに書いてあります。
 死霊は2ヶ月ほど前から闘技場に現れ、そこに居座っています。
 この町も闘技場の町、かなりの猛者も死霊へと挑んだのですが、力及ばず…。
 1ヶ月前に古文書の中に今回と似たケースがあり、若い女性に対する対抗が低いことがわかったのですが
 女性で戦える者もこの町にはいないため、今回ギルドの方へ依頼をしたわけです。」
「しかし、何故2ヶ月も?ギルドの書類では、ギルドの方へ依頼の申請をされたのはほんの4日前のようですが。」
エルキスの質問に、ロゼッタは少し暗い表情をしながら答えた。
「父が依頼をしようとしなかったのです。
 この闘技場は歴史も古く、男と男の真剣勝負の場としてのみ使われてきました。
 そのため、たとえモンスター退治だとしても闘技場で闘技場に骨を埋める覚悟がないものが
 さらに女性が戦うなど許さん、と…
 今回の依頼も父が病に伏せているからこそ私が出すことが出来たのです。
 今もまだ父には知られていません。そのため、話が長引くと父にバレる可能性がありますので…
 また、もしもバレた場合、父があなたたちを追い出してしまう可能性もあります。
 申し訳ありませんが、早めに退治して、早めに出て行ってもらえると…」

その後も死霊に対する最低限の情報をもらい、3人は館を後にした。
「それでエルキス、これからどうする?町の事情もなんか複雑みたいだけど…」
リーファンが私に聞いてきた。
まだ外もそこまで暗くないし、体力もほぼ満タンに近い。このまま戦ってもいけると思うけど…

<さっそく闘技場へ>
<先に情報収集を>

631:2007/06/13(水) 01:53:32
と、下手な文章ですが、ここまでを書かせていただきました。

投下ルールですが、しばらくは4までは分岐せず、5以降での分岐をメインに書いていただきたいと思っています
2から村人に道案内頼んだら路地裏に連れ込まれて…とか分岐させたいですが、それはそのうちということで。

その分岐からどのような展開にするかは書き手の皆さんに任せますし、選択肢自体を増やしていただいてもかまいません。

あと、まとめファイルですがおそらく当面はファイルバンクを利用することになるかと思います。
ある程度投稿が溜まってきたから作成する予定です。


それではみなさまの投稿をお待ちしています。

64名無しさん:2007/06/13(水) 02:05:01
>>1
うほっGJ

頑張って分岐を考えるぜ

65名無しさん:2007/06/13(水) 02:06:43
イメージ
ttp://www.uploda.org/uporg852670.jpg.html

ryona

66ジョジョ:2007/06/13(水) 16:05:06
さっそく分岐を考えてみた。

ニア≪さっそく闘技場へ≫
  ≪先に情報収集を≫
  
 道端で即席の作戦会議が始まる。

「中にいるのは死霊一匹だろ? 三人で乗り込んで、さっさとやっつけちまおうぜ」
 リーファンは既に闘技場に向かいたくてウズウズしているようだ。何事に対しても直進あるのみ、迷った時は前に出ろ、というのがリーファンのポリシーだ。
「で、でも……もうすぐ夜になるし……暗くなったら死霊の力は強くなるよ……」
 ルネスは躊躇しているようだ。この子はリーファンと対照的に、常に用心深く物事を考える。まあ、ただの怖がりなのかもしれないけど。
「だったら、暗くなる前にぶっ倒せばいいんでしょ? だーいじょうぶだって」
「えー……でもー……」
 正反対の性格だけに、二人の意見が対立するのは日常茶飯事だ。こうなった場合は、チームの方針を決めるのはリーダーである私の役目だ。
「いいわ。リーファンの言う通り、すぐに闘技場へ向かいましょう」
「よっしゃ! そうこなくっちゃな」
 リーファンが指の骨をパキポキと鳴らす。
「ええー!?」
 ルネスは早くも泣きそうな顔になっている。私はルネスに言葉をかける。
「ルネス、あなたもこの街の状態を見たでしょ。人々の顔からは生気が消え、街は沈んでいるわ。私はこの依頼を一分・一秒でも早く解決し、みんなに笑顔を取り戻してもらいたいの」
「お姉ちゃん……そうだよね。怖いけど、私も頑張る」
「うん、頑張りましょう。でも、リーファン?」
「ほいさ」
 私は既にウォーミングアップを始めているリーファンに話しかけた。
「ルネスの言う通り、夜になれば死霊が力を増大させる。戦闘が長引くようなら、すぐに退却しましょう」
「ええー……一度始めた戦闘を止められるか、自信ないなあ」
「だから戦闘が始まる前に言ったのよ。さあ、闘技場に向かいましょう」

67ジョジョ:2007/06/13(水) 16:05:38
 闘技場は街の中央にあった。初めてこの街を訪れた者でも、この円形の巨大建造物はすぐに見つけることが出来るだろう。それくらい巨大な建物だった。
 闘技場の入り口には二人の兵士が立っていた。ロゼッタに渡された資料によると、死霊の問題が解決するまで、観光客が誤って中に入らないように見張っているのだそうだ。私はそのうちの一人に話しかけた。
「ロゼッタさんの依頼を受けて、闘技場の中の死霊を討伐しに来ました。中に入れてもらえますか?」
「君たちが?」
 口元に髭を蓄えた兵士が訝しげな表情で私たちを睨みつける。
「ほら、今領主様が倒れちまっただろう? それで、ロゼッタ様がギルドに死霊討伐の依頼を出したんだよ」
 もう一人の兵士が相方に説明する。
「ああ、そういえばお嬢様がそんな事を言ってたなあ。しかし、それにしたってこんな娘っ子ばかりで大丈夫か? もし中でやられちまったら、俺たちも領主様の手であの世に送られちまうぜ」
「心配ないって、おじさん。こう見えてもあたしたち、結構強いんだよ?」
「既にロゼッタさんとの間に契約が成立しています。ここで通してもらわなければ、我々のみならず、ギルドそのものとの問題にも発展しかねませんが……」
「うへえ……わかったよ、ただし、やばくなったらすぐに戻ってきてくれよ? 今週だけでも傭兵や賞金稼ぎが十人以上やられちまってるんだから」
 脅かすつもりはなかったが、兵士たちは道を開けて私たちを通してくれた。こうして私たちのチームは闘技場の中へ入った。


 問題の死霊は闘技場の中央、巨大な石で造られた舞台の中心にいた。ゴースト系の魔物は外見である程度強さの判別ができるが、あの死霊は遠目で見る限りあまり強そうには見えない。
「なーんだ、もっと禍々しいのを想像してたけど、意外とのっぺりした奴だな」
「油断しないで、リーファン。外見通りの敵なら、今まで踏み込んできた戦士達が勝てなかった理由がわからない?」
「中身は別物って事? じゃあ、まず蓋を開けて確認してみなくちゃね!!」
 リーファンが飛び出す。
「ルネス!」
「うん! "ホーリーアーマー"!!」
 ルネスが呪文を唱えると、リーファンの体が薄っすらとした光に包まれる。"ホーリーアーマー"は本来、聖なる力で防御力を上げるための呪文だ。けれど、己の肉体を武器にする武道家にこの呪文をかければ、たちまちその拳や蹴りによる攻撃は聖属性を帯びたものに変化する。防御力に加えて攻撃力も上げられる、この『武道家』と『ホーリーアーマー』の組み合わせは、聖なる力に弱いアンデッド系やゴースト系の敵に対して非常に有効な戦い方だ。私たちの作戦は、まずリーファンの攻撃で相手の反応を窺い、勝算がありそうなら一気に攻めるというものだった。が―

「きゃあああああああ!」
「リーファン!?」
 死霊に向かってまっすぐ突っ込んでいったはずのリーファンが、死霊と私たちの中間付近で蹲っている。

68ジョジョ:2007/06/13(水) 16:07:39
「きゃああ、お姉ちゃん!!」
「ルネス!!」
 振り返ると、何者かがルネスに襲いかかろうとしている。私は剣を抜き、襲撃者を一刀で斬り倒す。
「これは……私たちの前に死霊討伐に参加した冒険者!?」
「お、お姉ちゃん、どうしよう……」
「ルネス、どうしたの、ルネス!」
「あいつ……ただの死霊じゃない……『死霊使い(ネクロマンサー)』だよ!!」

 ネクロマンサー。魔物すら従えるほどの強い魔力を持った人間が、死して変化する魔物。死霊でありながら、他の死者の魂を自在に操り、支配する事が出来る強敵だ。
「どうしようお姉ちゃん! ここには、今までやられた人の魂がたくさんある!!」
 私はその瞬間全てを理解した。屈強な冒険者達が、次々と倒された理由。ネクロマンサーはこの闘技場に眠る死者の魂を操って、冒険者達を襲っていたのだ。そして、ネクロマンサーに倒された冒険者の魂は、ネクロマンサーの新たな僕となる……
 私は辺りを見回した。既に闘技場のそこかしこから無数の死霊が次々と現れ始めている。このまま死霊の群れに囲まれたら、私たちを待つ運命は『死』しかない。私は恐怖に支配されそうな頭で必死に考えた。

・現在の状況
 エルキス―通常
 ルネス―混乱
 リーファン―転倒 ダメージ中
 敵―ネクロマンサー(BOSS) 無数の死霊(一匹一匹はさほど強くないが、倒しても倒しても再生する。ネクロマンサーを倒せば消える)

選択肢
≪このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる≫
≪ネクロマンサーさえ倒せれば、死霊の群れは消える!≫
≪もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない≫

69ジョジョ:2007/06/13(水) 16:09:12
つーことで死霊の罠展開を考えてみました。エルキス視点で進めたつもりですが一部第三者の視点になっちゃってるかもしれませんorz
また分岐(しかも三つ)を用意しちゃったので、どなたでも適当に続きを書いてくださって構いません。誰も続きを書かないようであれば一応自分の頭の中にも今後の展開が用意してあるので、自家発電します。しかし、俺が書くとなかなかリョナシーンまで到達しない・・・

ところで、今回はsageましたが投稿時はageたほうがいいのでしょうか?

70名無しさん:2007/06/13(水) 17:35:12
上げても下げてもあまり変わらないんじゃないですかね。
ニッチな人達が集まる過疎板で、スレッドの数もそんなに多いわけでもないので。

視点に関しては一人称・三人称にそれぞれの使い方と利点があるので、結構悩みますよね。
1さんもどっちでやればいいのか迷っておられるように見えますし。
『闘技場の死霊』編自体、練習のつもりで気軽かつ大胆に色々試してみるのが良いと思います。

とりあえず自分は三人称視点でなんか書いてみるつもり。

71ジョジョ:2007/06/13(水) 18:14:02
>>70
>>上げても下げてもあまり変わらないんじゃないですかね。
まあそれもそうかw

721:2007/06/14(木) 00:21:38
>>69
投下ありがとうございます。

文章の統一性はそこまで気にしなくても今はまだいいんじゃないかな、と考えています。
そこまで考えてしまうと、各自投下がかなりしにくくなってしまいますし。




あと、ルール設定の際に完全に書き忘れていたのですが、選択肢は文章を書いた側だけではなくて、続きを書く側も自由に追加OKです。
なので、たとえば>>61から<宿屋で休む>という選択肢を増やして続きを書いたり等。

もう少ししたら、正式なルールをもう一度まとめなおす必要がありそうですが、これはまとめと同時期に。
まだ必要なルールが何か把握しきってない部分もありますので。

7369:2007/06/14(木) 01:35:14
>>1
どうもー。文体についてはスレ全体の話というより、自分の書いた文章の中で
一人称と三人称が混ざったような書き方になってたら読みにくくてすみません
という意味合いでした。一応投稿前にチェックはしましたが自分だとわからん部分もあるので…

74名無しさん:2007/06/14(木) 08:08:43
とりあえず、情報収集ルートを執筆中であります。
完成はもう少しかかりそうですが……。

75名無しさん:2007/06/14(木) 10:19:50
 >>62より分岐。<先に情報収集を>を選択。
 

 どうやら、自分達は思った以上に手強い依頼を選んでしまったようだ。
だからといって尻尾を巻いて逃げ出すつもりなどはない。
ギルドも冒険者もこのような時の為にこそあるのだと、エルキスは思っていた。
 依頼主ロゼッタから渡された資料によると、闘技場に居座る死霊の数は一体のみ。
しかしこれまでに幾人もの猛者を屠り去ってきたという強敵である。まずは敵を知るべきだろう。
ギルドでなら詳しい話も聞けるかもしれない。
地図によると、目的地である闘技場は町の中心にあり、そこからそう遠くない位置にギルドの施設もある。
寄り道しても時間の余裕は十分にありそうだ。そう判断したエルキス達は、まずギルドへ向かうことにした。


 死霊騒動と闘技場の封鎖がもたらした淀みは、アークスの町全体を蝕んでいる。ギルドでさえも例外ではなかった。
依頼を探す冒険者の姿は一人もなく、受付では不機嫌そうな顔の係員が暇そうに頬杖をついている。
王都のギルドとの落差に、戸惑いや驚きを通り越したなにかがエルキスの心を浸した。
一瞬、ギルドではなく町外れの墓地にでも来てしまったようなイメージが浮かぶ。受付の係員は墓守だ。
「闘技場の死霊についてお話を伺いたいのですが、誰か詳しい方は居られますか?」
 ロゼッタの署名の入った書類を見せて受付でそう尋ねると、三人は奥へと案内された。ギルドの長と面会できるという。
「ようこそ。依頼を受けてくださって感謝します」
 アークス・ギルドを統括するギルド長は初老の男で、顔だけを見れば海賊の首領でもしていた方が似合いそうな人物だった。
鋭く力強い眼を持ち、顔には大きな傷跡がある。しかし口を開けば意外に穏やかな声の持ち主で、礼節も備えていた。
ルネスは最初、わずかに恐れを抱いたがそれもすぐに薄らいだ。
 ギルド長は、最初に死霊が現れた時に闘技場に居合わせた目撃者の一人であり、かつては闘技場の選手でもあったという。
領主一家とも親交があり、ロゼッタのことも彼女が幼いころからよく知っているのだと話してくれた。
今回の事件では、見届け人としてロゼッタの父と共に二度ほど死霊討伐にも立ち会っており、様々なことを教えてくれた。
彼の話によると、闘技場の死霊に関しては以下のことが推測されている。

・死霊は観客席まで上がってくる事はなく、試合場へと踏み入った者のみを襲う。
・結界のようなものが形成されているのか、一度試合場へ踏み込めば逃げ出すことはできない。
 恐怖にかられて逃げ出そうとした者も居たが、見えざる壁に阻まれて死んだ。
・負の魔力が闘技場全体を満たしており、死霊に襲われない観客席であってもそこに居る者は体と魂を蝕まれる。
 ロゼッタの父が病に臥したのもこれが原因ではないかと思われ、ギルド長自身も一時的に体調を崩した。
 ロゼッタも死霊出現後に観客席に入ったことはあるが、彼女には殆ど影響が見られなかった。
 この事から、古文書に記された「乙女の加護」は確かな力である可能性が高い。
・死霊がどのような攻撃を使ってくるのかはわからない。
 これまでに挑み敗れてきた者達を観察したところでは、結界外である観客席からは見えない「なにか」と戦っているようだった。
 幻惑の術を操る可能性もあるが、確証はない。

 貴重な情報を得たエルキス達はギルド長に礼を告げ、闘技場へ向けて出発することにした。

76名無しさん:2007/06/14(木) 10:20:24
「ちょいと、そこのお嬢さん方!」
 三人がギルドを出ようとした時、背中から声をかけられた。
振り向いた視線の先には、大きな荷物を背負った男の姿。行商人のようだ。
「あんたら、なにか足りない物はないかね?」
 エルキスとリーファンは、互いに顔を見合わせた。
死霊が力を増す日没まではまだ少し余裕がありそうだが、戦いが長期戦にならないとは限らない。
しかし、乙女の加護にどの程度頼れるかもわからない。
「エルキス、どうする?」
「……どうしようかしら」

  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
  <これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>

77名無しさん:2007/06/14(木) 10:35:37
一応、>>66-68に合わせた形にしてみました。
<先を急ぐ>を選択した場合、>>66に繋げることも可能にしたつもりです。
もちろん合流せずに新しい枝を書いてもらってもかまいません。
>>66-68がピンチ重視の流れだったので、こちらはシナリオクリアへの正解ルートを意識したものになっています。
リョナ的にはアレなんですけど、ゲームブック的にはやっぱないと寂しいので。

78名無しさん:2007/06/14(木) 20:31:04
>>77乙!

俺も正解ルートというか、グッドエンドルートもあっていいと思う
それにいよいよ倒せる! って時に…な展開とかも悪くはないし。
あと、いいルートと見せかけて商人から買った品物により不利になる、なんて展開とか。


ところで、文章で気になったのですが、
>しかし、乙女の加護にどの程度頼れるかもわからない。
これは「しかし」じゃなくて、「それに」もしくは「さらに」が正しいのではないでしょうか。

7975-77:2007/06/15(金) 06:11:17
>>78
たしかに「しかし」だと文章がおかしく見えますね。まとめ収録の際には「それに」でお願いします。
ハズレアイテムも勿論大歓迎ですよ! 最後の最後まで油断できないのがゲームブックですから。

80名無しさん:2007/06/16(土) 23:22:00
今から書いてみようかと思ってるんだが、今書いてる人ってどのルートのどのパターンで書いてる?
かぶっても選択肢増やせばOKみたいだが、一応確認取っておこうと思って。

81名無しさん:2007/06/16(土) 23:30:47
≪このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる≫を書いてるとこだけど、なかなか進まない。
二日かかって今13行目。いつになったら投下できるんだか。

82ジョジョ:2007/06/17(日) 00:47:35
>>80
うちの書いたルートならどれを選んでもオッケーですよ

83名無しさん:2007/06/17(日) 00:54:46
>>82
うち、って私ってこと?
こういうとこではあんまり方言は使わんでくれ…

84名無しさん:2007/06/17(日) 01:00:18
『うち』

近畿など特定の地方で女性に用いられる一人称。
現在では女子中高生が用いる事が多い(幼年でも家族などの影響で使う女子もいる)。


・・うちって自分の家って意味じゃないのか

85名無しさん:2007/06/17(日) 01:46:09
でもそうだよな〜製作してるところがかぶってたら、早いもの順になっちゃうよな。

86ジョジョ:2007/06/17(日) 02:12:11
>>82
あまりに自然に使ってるせいで方言と認識してなかった。申し訳ない。
うちの店で扱ってる…みたいな使い方は他の地方ではしないの?

しかしこんな所で出身地がバレるとか恐ろしいぜ。

87名無しさん:2007/06/17(日) 10:20:15
>>86
沖縄の人間だけどたまに一人称として(自分が)使うよ。
多分、テレビで見た影響だろうけれど。
むしろ、方言だった事に驚いた。

88名無しさん:2007/06/17(日) 11:14:45
自分たちのサークルって意味で
「うちのソフト」
とかいうけど、それは違うんだよね、どーでもいいけど。

89ジョジョ:2007/06/17(日) 14:17:29
>>88
ぶっちゃけそれと同じ感覚で使った

90名無しさん:2007/06/17(日) 17:05:52
>>88
>自分たちのサークルって意味で「うちのソフト」

それは自分「たち」の団体、って意味での「うち」になってるから、これは違和感ないなあ
だけど>>82の言い方はかなり違和感を感じる。(少なくとも私は)こんな言い方は普通しないから

まぁレス文中の一人称なんてそんなに気にしなくてもいいと思うけどね

91名無しさん:2007/06/17(日) 17:59:42
うち、そんなのしらへんわw
使うだろ。

92名無しさん:2007/06/17(日) 18:10:20
>>91
めちゃくちゃ関西弁だ
「しらへん」なんか言わねー

93名無しさん:2007/06/17(日) 18:20:39
そろそろスレ違いですよって。

94名無しさん:2007/06/17(日) 18:24:08
結論: 一人称には気をつけましょう。

             〜以上〜

95名無しさん:2007/06/17(日) 18:40:34
スレが伸びてたので新作投下が来たのかと思ってワクテカした俺の期待を返してください(´・ω・`) 。

96名無しさん:2007/06/17(日) 18:48:14
新作投下ばかりでなく議論も必要だとは思うけれど
一人称がどうとか方言だからあーだこーだとか、もういいよ。

97名無しさん:2007/06/17(日) 19:06:44
展開やシチュは思い浮かぶんだが、文章にするのは難しいな…

98名無しさん:2007/06/18(月) 22:07:38
だからこそライターという職業があるのです。

99名無しさん:2007/06/21(木) 01:48:36
どうやら自分で締め切りを作らないとかけないタイプな気がしたので。
金曜日に >>66≪ネクロマンサーさえ倒せれば、死霊の群れは消える!≫を書く!という宣言をしておきますね。

100名無しさん:2007/06/21(木) 05:03:03
お、新人さん?

101名無しさん:2007/06/23(土) 00:23:51
>>99にこっそり期待している

102名無しさん:2007/06/23(土) 00:53:55
締め切り宣言したのに間に合わずにヒーヒーいいながら書いているところですが何か。
1時間以内には…

103名無しさん:2007/06/23(土) 01:00:27
日付的にはもう土曜だが日が昇るまでは金曜の夜なんだよ。そーゆーことにしとけ。

104名無しさん:2007/06/23(土) 02:06:22
>>68≪ネクロマンサーさえ倒せれば、死霊の群れは消える!≫

状況はかなり悪い。このまま戦っていてはこちらがどんどん不利になるだけだ。
なにより死霊の数が多い。さらに体力もかなりタフだ。
となれば、敵のボス、ネクロマンサーを一気に倒すしかない。
「ルネス、魔法で援護を! リーファンは起き上がったらすぐにルネスを守って! 一気に決めるわよ!」
「う、うん。お姉ちゃん…"ホーリーアーマー"!」
「お、OK!」
リーファンはさっきの1撃が効いているのだろうか。普段から考えると弱弱しい声だ。
(この状態だと長引かせるわけにはやっぱり行かないわね…早く決めないと!)
エルキスは体が光に包まれたことを確認すると、剣を握り締め、ネクロマンサーの元へと駆け出していった。


しかしネクロマンサーもそう易々と接近させるわけではない。
ネクロマンサーが何かをつぶやくと、エルキスの前へさらに大量の死霊が立ちはだかる。

数は多いが、死霊の一人一人の力はそこまで強くない。
生前の力の100%というわけではないのだろう。
力・素早さ・魔力、どれを見てもたいしたことはない。体力だけは嫌になるほどあるが。

剣に力をこめ死霊2体を思いっきり弾き飛ばすと、それに巻き込まれさらに1体の死霊が倒れる。
魔導師のファイアボールも飛んできたが、ルネスのホーリーアーマーにより服に少し焦げ目がついただけでダメージはない。

105名無しさん:2007/06/23(土) 02:07:33

ネクロマンサーとの距離もあと15mほど。
他の死霊と同じようにメイスで殴りかかってきた死霊を剣で防ぎ、はじき返そうとした瞬間――

――ドスッ
「え…」
――ドカッ!

いきなりの衝撃だった。
何が何なのかわからない。
頭が痛い。足も痛い。地面が横にある。

何が、どうなっ――

―ドカッ!
「ぐ…」
今度は腹に衝撃が走った。
何とか首の向きを変えると、そこに見えたのは死霊が無表情にまたメイスを振り下ろすところだった。
「やめ――」

ドカッ!

またも腹に衝撃が走る。
「あ…あ…」
体中が痛い。動かすことができない。
だが、死霊はまたメイスを持ち上げようとしている。
逃げなければまたメイスを食らうだけだ。逃げなければ。
体を少し動かすだけでも激痛が走る…が、メイスをまた食らうよりはマシだ。

無事な左腕で思いっきり反動をつけると、メイス持ちの死霊がいる方向とは逆方向へと転がるように逃げた。
地面へあちこちぶつけたが、少しの間メイスによる打撃からは開放される。
とにかく少しでもダメージを減らさなければ。時間を稼がなければ。

106名無しさん:2007/06/23(土) 02:08:46

しかし、腹に何か当たったような衝撃とともに転がっていた体が止まった。

まず、最初に目に入ったのは足だった。ルネスやリーファンのものではない。死霊のものだ。
視線は徐々に上へと移動していく。
服装はおそらく戦士のものだ。手は…何かを頭の上に掲げて持っているようで、今はまだ見えない。
表情は他の死霊と同じく怖いぐらいに無表情だ。
そして、その手に持っているものは……

ウォーハンマーだ。
かなり大きい鉄製のハンマーに、トゲが複数ついている。
そのウォーハンマーはゆっくりと、重力とその死霊の力によりエルキスの頭目掛けて振り下ろされる。

「いや…やめ――」
ドグシャ!!!

エルキスの思考はそこで途切れた。



――BADEND――

107名無しさん:2007/06/23(土) 02:17:59
期待していただいた方に申し訳ないぐらいに微妙な出来ですが、何とか書き終わりました。
ルネスやリーファンがどうなったかはご想像にお任せします。

最後のウォーハンマー持ち死霊の前に、メイス持ち×複数にリンチシーンを入れようかと思ったのですが
どうしてもまとまりませんでした。

ちょっと淡白すぎた気もしますが、内容の批判等があればおねがいします。

108名無しさん:2007/06/23(土) 02:49:03
個人的に気になるのは、雑魚死霊の体力ですかね。
>>68では一刀で斬り倒されているので、体力も低い数だけが頼りの敵というイメージがあります。
自分が書いてるパートでは、そんな感じの解釈で書き進めてますし。

他二人の死亡パートを書き足してみるのも楽しそうですな。
まずは今書いてるのを完成させないといけませんが。

109ジョジョ:2007/06/23(土) 10:41:18
>>108
乙です。『ネクロマンサーさえ…』は自分の中ではバッドエンド用に用意していた選択肢だったのですが書いてもらった続きが本当にバッドエンドになるとはw
雑魚死霊の強さは各人で決めてもらえばいいと思います。そもそも霊魂だけなのか肉体があるゾンビみたいなものなのかもわかりませんしw
個人的には多数の雑魚の中にそこそこ強い奴もいるイメージでした

110名無しさん:2007/06/23(土) 12:35:55
>>104
とりあえず今までのをまとめてみた。

>>54
ゲームスタート
<物語を始める> >>55-56

>>55-56
冒険者ギルドはどこ?
<案内板を頼りに探す> >>57-58

>>57-58
どの依頼にする?
<依頼:領主の娘と邪悪な死霊> >>59-60

>>59-60
依頼を受けた!
<出発する> >>61-62

>>61-62
話を聞いた!
<さっそく闘技場へ> >>66-68
<先に情報収集を> >>75-76

>>66-68
さっそくピンチ!
≪このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる≫ >>81氏が執筆中?
≪ネクロマンサーさえ倒せれば、死霊の群れは消える!≫ >>104-106
≪もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない≫ >>

>>75-76
商人登場
<掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>

>>104-106
ドグシャ!!!
――BADEND――

111名無しさん:2007/07/01(日) 13:09:30
自分の中だけの締め切りだとやっぱりかけない…
水曜日に投下目標にまた書きますね!

11281:2007/07/01(日) 14:45:53
自分もそれぐらいまでには書き上げたいんだぜ。

1131:2007/07/02(月) 21:55:41
投下数も少しずつ増えてきていますし、週末あたりにまとめファイルをためしにアップしてみたいと思います。
場所は動画アップスレのファイルバンクの予定です。

114名無しさん:2007/07/04(水) 05:53:26
>>68より分岐】
 ≪このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる≫


 危機にあってこそ、冷静であれ。冒険者として生きる者の鉄則だ。
 しかし、最良の判断を下せるだけの時間がいつも与えられるとは限らない。例えば今のエルキスがそうであるように。
それでも選ばねばならない。冒険者に限らず人の運命とはそういうものだ。

 ネクロマンサーの魔力を受け、死霊がそこいら中から無数に湧き出す。
魂を汚される苦悶と、生者への憎悪は、邪気となって試合場を包み込んでいた。
 エルキスは瞬時に思考を走らせる。状況は悪い。既に最初の一歩を踏み外し、天秤は死と敗北の側へと大きく傾いた。
死霊達に支配されつつある戦いの流れをひっくり返せるだろうか? 自分達はこの戦いの勝者になりえるだろうか? 
(──やばくなったらすぐに戻ってきてくれよ?)
 入り口の兵士の言葉を思い出したエルキスは決断し、まだ立ち上がれずにいるリーファンの方へと向き直る。
あそこからリーファンを助け出すのだ。そしてここは一度退こう。
 試合場の中央、舞台上のネクロマンサーは静かに佇み、動く気配はない。
だが、ネクロマンサーの哀れな下僕と化した死者達はリーファンを取り囲もうとしている。その数、四体。
立ち止まって考える猶予はもう残されていなかった。
「ルネス! そこから援護してッ!」
 叫び、駆け出すエルキス。
「……え? あ、はい!」
 姉の声を受けたルネスは、縮み萎んでいた勇気を僅かに回復させた。慌てながらも、魔法を発動するべく構えをとる。
リーファンへと駆け寄る背中を見据えながら深く息を吸い込むと、前方へと突き出した両の腕に意識を集中させ始める。
制御を受けて両腕へと注ぎ集められた魔力は、渦巻きながら膨れ上がり、聖なる波動を帯びて白い輝きを放ちだした。
その光を受け、ルネスに近づこうとしていた死霊達が業火におののくように歩を止める。
 両腕に白い光を纏い、ルネスの心身は引き絞られた弓と化している。
この体勢で待機していれば、新たな死霊が現れても即座に聖光の矢を撃ち浴びせることができるだろう。
か細い勇気で己を支えながら、無言で見守る視線の先。エルキスは死霊達に刃が届く間合いまで辿り着いていた。
「ハァァァアアアッ!」
 薙ぎ払う刃が、二体並んだ死霊達を一撃で通り抜ける。腰から上下に分かたれた亡者の姿は、湯気のように薄れて消えた。
次なる死霊を、踏み込みつつ手首を返し振り上げた刃で両断。頭上へ昇った剣を諸手で握り直し、残る四体目へ渾身で打ち下ろす。
急降下する斬撃は、死霊がエルキスを見上げる間もなく、頭からその姿を断ち割った。
 リーファンに群がる死霊達を、危ういところで一掃したエルキスは呼吸を整える。
どうやら、雑兵たる死霊達は一撃で形を失う程に脆く、動きも鈍いようだ。
この場からの脱出は、容易ではないにせよ不可能でもなさそうだった。
「リーファン、立てる!?」
「……ん、どうにか、ね。」
 膝に力が入らずにふらつきながらも、身を起こすリーファン。
全力で戦える状態でないことは、エルキスのみならず数十歩を隔てたルネスからも見て取れた。
「ここは一度退きましょう」 
「……」
 撤退や迂回はリーファン好みの選択ではない。できればネクロマンサーに逆襲の拳を叩き込みたいところだ。今すぐに。
「勝てないって言うの?」
「ええ。準備不足だったわ」
 落ち着きを崩さぬ口調でエルキスが返す。
長期戦となりそうであれば撤退する。リーダーとして、エルキスが事前に決定していた方針である。
速攻撃破どころか、勝てるかどうかも怪しいこの状況。
分の悪い賭けは、依頼を受けた冒険者としてエルキスが抱く責任感に反する行いだった。
「……了、解」
 リーファンとて、理を解さぬ頑固者ではない。リーダーとして、友として、エルキスを信頼している。
不服の色を顔に滲ませつつも、リーファンはエルキスの判断を受け入れた。
 短いやりとりの合間にも、三人への包囲は狭まりつつある。
試合場と観客席を隔てる壁を背に、三方向から数十体の死霊達がゆっくりと群がり迫っていた。

115名無しさん:2007/07/04(水) 05:54:21
 まずは、ルネスが待機する試合場出入り口まで辿り着かねばならない。
リーファンに先に戻るよう指示すると、エルキスは殿(しんがり)を守るべく剣を構えた。
寄り集まる死霊達に注意を払いつつ、慎重に後ずさる。舞台上のネクロマンサーは、依然、黙したままだった。
ある程度近づかれるまでは、自ら手を下すつもりはないのだろうか? エルキスはそう推察した。
 一歩、もう一歩とエルキスが退きさがる。一歩、もう一歩と死霊達が距離を詰める。
リーファンがルネスの元まで到達したのを横目で確認し、エルキスは足を止めた。
「ルネス! スプレッドを撃ってッ!」
 叫び、その場に屈みこむ。
 号令から一瞬遅れてルネスは両腕を広げた。そして左右の腕に渦巻く魔力の流れに命じる。
聖光よ、飛び拡がって敵を討て、と。
「……"スプレッド"ッ!」
 開かれた指先から、細い光の筋が無数に飛び出し扇状に拡散していく。
放たれた光は、屈んだエルキスの頭上を越え、大軍勢が一斉に放つ矢の雨の如く死霊達を貫き、次々と消し去った。
 ルネスが唱えた"スプレッド"は、威力の強化ではなく攻撃範囲の拡大を目指した呪文である。
大量かつ広範囲に発射される光線は、回避が困難な反面、命中しても与えられるダメージは小さい。
的が小さく狙いにくい敵との戦いや、一対多数の状況での牽制等が主な使いどころとなる。
低威力の呪文でも、この死霊達には充分だろうとエルキスは考えたのだ。そしてそれはほぼ正解だった。
この一度の攻撃で、密集した死霊達が形成した包囲の壁は大きく崩れている。残る死霊は、僅か数体。
 しかし、"スプレッド"に耐えきった死霊はいずれも他の死霊達を凌ぐ力を備えているようだった。
雑魚どもとは違うとでも言わんばかりに色濃い邪気を発し纏っている。見るからに手強そうだ。
まともに相手をすれば、恐らくは苦戦を強いられるだろう。
 今が撤退の機だと感じとり、エルキスは素早く身を翻して二人のもとへと駆け戻った。
危ういところではあったが、収穫もあった。これである程度の対策も立てられるだろう。次は勝利することを胸の内で静かに誓う。
ネクロマンサーは相変わらず、こちらへなにかを仕掛けようという素振りを見せていなかった。
もしなんらかの魔法攻撃を放ってもこの距離では間に合わない筈。つまり、あとは逃げるだけだ。
「さ、逃げましょう」
「はい!」
「おう」
 そうして三人が一歩を踏み出した瞬間。死霊が蠢き邪気が満ちる試合場から逃げ出そうとした、その瞬間。
 突如、目の前で閃光が弾けたかと思うと同時に身体が宙へ跳ね飛ばされた。激痛が全身を貫くがそれも一瞬。
悲鳴を上げる間さえなく、地面に叩きつけられる前に三人の意識は闇に沈んでいた。

116名無しさん:2007/07/04(水) 05:55:20


 目覚めたエルキスが最初に見たものは、弱々しい灯りだった。
魔力で生成された発光体を、ガラスの器に封じ込めたものが地面に置かれている。
全身に燻る鈍い痛みに耐えながら上半身を起こして周囲を見回すと、石造りの壁が四方を閉ざしていた。
窓はない。鉄の扉が一枚。頭上は濃い闇に覆われ、天井がどうなっているのかはわからない。
立ち上がって灯りを持ち上げてみたが、天井がどうなっているのかは見えなかった。
この部屋の天井はかなり高いらしく、光がそこまで届かなかったのだ。
 ここが何処なのかはわからなかったが、とりあえず死後の世界ではなさそうだ。
己が血肉は確かにここにある。ルネスとリーファンも、まだ気を失ったままだが命に別状はなく見える。
 少しずつ現状が見えてきたところで、エルキスは自分の愛剣が見当たらないことに気づいた。
鉄扉に手をかけてみるが、予想通り開かない。監禁されているとしか呼びようのない状態だ。
ネクロマンサーの下僕となって魂を冒涜される運命は免れたものの、楽観的な気分にはなれそうもなかった。
室内の薄暗さも気持ちを沈ませる。
「…………」
 何故こうなってしまったのか。エルキスは石壁に背を預けながら、無言で回想を巡らし始めた。
まず、あのまま戦い続けるのを無謀と判断したこと自体は間違っていなかった筈だ。
とは言え、思慮不足ゆえに犯した過ちも認めざるを得ない。
試合場から逃げ出そうとした自分達を阻んだのは、踏み入った者を閉じ込める結界障壁だろう。
逃げ道は、最初から封じられていたのだ。ネクロマンサーが何故、積極的に動こうとしなかったのか、動く必要がなかったのか。
魔法に長けた怪物は、どうやって獲物を待ち受けるだろうか? もっとよく考えれば思い至った筈なのに……。
 いつの間にか自己嫌悪の網に囚われていることに気付き、エルキスは思考を中断した。
他にも考えることはいくつかある。まずはルネスとリーファンを起こして、三人で話し合ってみよう。
そう決めてエルキスが身を乗り出そうとした途端、その手間は省かれた。
見計ったように鉄扉が開かれ、甲高い軋みが断末魔の絶叫のように室内の空気を激しく振るわせたのだ。
エルキスは慌てて耳を塞いだが、ルネスとリーファンは聴覚的苦痛を伴う覚醒を強いられることになった。
「……お目覚めですか?」
 鉄扉の向こうから現れ、悠然と声を発したのは女性だった。エルキスと同い年か、少し年上といったところだろう。
鞘に収めた剣を手にしている。細やかな装飾が施された、値の張りそうな一振りだ。
 現れた女性の顔を見たルネスとリーファンは軽く混乱した。急に目覚めたばかりで事態を把握できていないのだ。
 エルキスも驚きはしたが、先に目覚めて考える時間があったぶん、納得もしていた。
試合場で倒れた自分達をわざわざここまで運んできたのが何者であるにせよ、今回の依頼にはなにか裏がある。
そこまでは推測できていたのだ。どんな事情や企みがあるのかまでは見当がつかないが。
 エルキスは問うてみることにした。はっきりさせたいことが幾つかある。
「もしかして……あなたが、あのネクロマンサーを?」
「ええ、そのとおりです」
 領主の娘にして依頼者である筈のロゼッタは、柔らかな口調で告白した。
「何故、私達をここへ?」
「別にあそこで死んで頂いても構わなかったのですが、まあ、それも少し勿体無いかと思いまして」
「…………」
 自分達は「救出」ではなく「回収」されたといったところだろうか。
ロゼッタの目的が何であれ、自分達をこのまま帰すつもりはないのだろうとエルキスは結論を出した。
「……よくわかんないんだけど、つまりあんたは黒幕で悪人だったってこと?」
 エルキスが沈黙したところに、リーファンの問いかけが割り込む。
「そういうことになりますね」
 ロゼッタは、余裕を漂わせる態度で改めて肯定する。
 その返答を受け、リーファンは即座に動き出していた。エルキスが止める間もない。
即決断・即行動という単純明快な信条はこの状況でも不変。
この身が万全の状態でないことなど関係ない。どうにか動けるならそれで充分。
目の前に立つロゼッタが黒幕だというのなら。迷わず、惑わず、この拳を打ち込めばいいだけだ。
それがリーファンという少女の流儀であり信念だった。

117名無しさん:2007/07/04(水) 05:56:01
 しかし、その一撃は届かなかった。
「……あぶないですよ」
 ロゼッタは面倒くさげに、迫りくるリーファンへ手を掲げた。
「……ンぐッ!?」
 突進は唐突に止まった。リーファンの首に、背後から縄が巻きついている。縄は頭上の闇から伸びていた。
念じて操れるように魔力を通した縄が、光届かぬ天井の暗がりに潜ませてあったのだ。
「か……は……!」
 リーファンは両手で縄を掴んで振りほどこうとするが、締め付ける力は衰えない。むしろ強まっていく。
「嫌あッ!」
 続いて、ルネスが悲鳴を上げた。リーファン同様に、天井から伸びたものに襲われている。
次なる凶手は縄ではなく、先端に鉤針のついた二本の鎖だった。
 恐怖と混乱がルネスを竦ませている。試合場の結界障壁に弾かれたダメージも、痺れとなってまだ手足に残っている。
他の二人に比べて身体の回復が遅く、回避も防御も満足にこなせない状態のルネスを、鎖は容易く捕らえた。
左右の手首に絡みつくと、蛇が牙を衝きたてるように手の平を貫き、その身体を吊り上げる。
「くッ……あぁ……!」
 両足が地面から離れる。鉤針が引き上げる力と全体重が、両手を傷口から上下に引き裂く激痛となってルネスを責めた。
すぐに、ぼろぼろと涙が零れ始める。臆病な性格のルネスは、三人の中で最も痛みに弱いのだ。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん……たすけて……!」
「……ふ……ぎッ!」
 泣き叫ぶルネスの声と、首の縄を外さんと足掻くリーファンの呻きが薄暗い室内を満たしていく。
魔力で操る縄と鉤針の仕掛けが上手く機能したのを見たロゼッタは、口元に手を当てながら満足げに眼を細めた。
その眼差しは、嗜虐の喜びに酔っている。
 一方、対峙するエルキスは怒りの視線でロゼッタを射抜く。状況は絶望的だった。
武器はない。圧し掛かる疲労感が全身を支配し、気を抜けば膝をつきそうになる。
思考上には、不確実で危険な選択しか浮かばない。
それでも選ばねばならなかった。冒険者の運命とはそういうものだ。


   <<掴みかかってロゼッタの剣を奪うことを試みる>>
   <<屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>>

118名無しさん:2007/07/04(水) 06:20:04
試合場で死霊に嬲り殺されるのは他ルートに任せることにして、黒幕登場な展開にしてみました。
ロゼッタの詳しい動機や目的は不明です。続きで説明してもしなくてもいいでしょう。
自分のイメージ的には、三人が依頼を成功させた場合、なにくわぬ顔して報酬払って最後まで猫被ってる人という感じです。
死霊が倒されるなら別にそれでかまわないと考えているわけですね。
ロゼッタさんは基本サディストです。続きでは三人を思う存分虐めてやってください。
なんかどっちを選んでもGAMEOVERになりそうな気がしますが、それはそれでゲームブックらしくていいんじゃないかと思います。

119名無しさん:2007/07/04(水) 20:55:48
お疲れ様です。そしてGJ
確かにどっちを選んでもBADな展開だけど、そこで救う…気がないのが俺たちですよね!

とりあえず今日中には自分も投下したい…が、全開よりさらに筆の進みが遅い。
書ききれるかなぁ…

120名無しさん:2007/07/05(木) 01:49:39
>>76<掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>

「それじゃあ、商品を見せてください」
今持っている薬草等のアイテムはある程度余裕があるが、もしかしたら掘り出し物があるかもしれない。
そう考えたエルキスは商品を見せてもらうことにした。

商人は地面にシートを広げると、その上に様々なアイテムを並べていく。
様々な種類の薬草に毒消し草、何に使うのかよくわからない草や聖水などの消耗品
エリクサーや小型爆弾、カギ爪ロープに魔道書
錆びてしまっている剣や、明らかにパーツが足りていない鎧。
普通の手鏡に、香水と思われるビン。その他幅広くそろっていた。

「うーん、手持ちのアイテムより強力なのはエリクサーだけど…」
エリクサーは一般的に手に入る薬の中では最高級のものだ。
しかし、最高級なだけあって相場は数千リナはする。購入したらそれだけで今回の報酬は吹っ飛んでしまうだろう。
いや、下手したら赤字になってしまうかもしれない。
…こんな商人がどうやって仕入れたのだろうか。

「聖水は買っておいてもいいんじゃないかな? 相手はアンデットだし…」
ルネスが聖水のビンを手に取りながら言った。
「まぁ、確かにこの商品だと現実的なのは聖水だね。」
リーファンもルネスと同意見なようだ。
しかし、そのビンの値札には350リナと書かれている。相場より少し…いや、かなり高い。
(買った方が保険という意味でもいいと思うけど…)

121名無しさん:2007/07/05(木) 01:54:19

エルキスが悩み始めたのを見たリーファンは、また商品に目を落とした。
意見ももう言ったし、最終的に決めるのはエルキスだ。

薬草10リナ 毒消し草15リナ アークス草30リナ…このあたりはほとんど相場だ…と思う。
小型爆弾600リナ カギ爪ロープ150リナ 魔道書1000リナ このあたりは…相場がわからない。妥当な金額なのだろうか?
エリクサー.....500リナ 
「おじさん、このエリクサー本当に500リナなの?」
リーファンが驚いた声で商人に聞いた。
「ああ、そのエリクサーなら500リナだよ。」
商人はすぐにピシャリと言い切った。

そのやり取りを聞いたエルキスは改めて値札を確認した。
確かにエリクサー.....500リナと書いてある。手も出せない程度に高いとばかり思っていて、さっきは値札まで観ていなかった。
エリクサーがこの値段なら安い。安すぎる。怪しいぐらいに安すぎる。
(ここまで安いと…、さすがに不安になるわね。)

そしてエルキスが出した結論は…

<何も買わない>
<エリクサーを買う>
<聖水を買う>

122名無しさん:2007/07/05(木) 01:56:07
リョナ要素0ですがつなぎとして書かせていただきました。
多分聖水が正解ルートっぽい展開になるんじゃないかと思いつつ。

2週間に1回程度の投下ペースを目標にこれからもちょくちょく投下したいと思います。

123名無しさん:2007/07/05(木) 07:44:05
<何も買わない>は、>>76の<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ> と合流しちゃってもいいですかね。
とりあえず、それぞれの値段が相場に合わない理由を考えるとこから始めますか。

124名無しさん:2007/07/05(木) 21:21:13
エリクサー.....500リナ
       ↑ここに何を書くかがポイントだな。

125名無しさん:2007/07/07(土) 16:06:30
ちょっと聖水ルートを書いてみようかと。
例によって遅筆なんで投下まで大分かかると思いますが。

126名無しさん:2007/07/09(月) 01:38:58
少し遅れましたが、リョナ動画アップスレの方のファイルバンクにまとめファイルをアップさせていただきました。
レイアウトに関しても、こうした方がいいなどの意見があったらお願いします。

127名無しさん:2007/07/09(月) 03:12:30
>>126
乙ですよ!
ttp://bebe.run.buttobi.net/up/src/be_1467.zip.html
自分の書いた部分(007.htmlと009.html)で少し気になる部分を修正したものを上げておきます。
中身はメモ帳のtxtファイルです。
<br>タグを少し削ったり足したりしたのと、日本語がおかしい部分を差し替えてあります。
ページ中央の1467.zipから落としてください。

1281:2007/07/09(月) 19:39:49
了解しました。次回まとめファイルをあげる時には反映させていただきます。

ところで、リョナゲームブックというタイトルだけだと何か寂しいので、何かタイトルをつけたいと思うのですが
いい案はないでしょうか。どんなのでもかまわないので。

129名無しさん:2007/07/09(月) 23:05:21
>>117
<<掴みかかってロゼッタの剣を奪うことを試みる>>

「二人を離しなさいッ!」
このままでは、二人が死んでしまう。
危険を承知の上で、剣を奪うべくロゼッタに掴みかかる。
すると、存外容易く奪い取ることができた。
「なかなか軽やかな身のこなしですね、驚きましたわ」
武器を奪われて尚、余裕の表情で領主の娘はつぶやく。
「もう一度言います、二人を離しなさい!でないと本当に斬るわよ!」
「ふふ…やれるものならやって御覧なさい。時間がないのでしょう?」
ロゼッタの手が妖しく光ると同時に、背後のリーファンの苦悶の声が激しさを増す。
「…がっ!…うぐ…ぁ…!」
つま先が宙を浮き、脚をばたばたばたつかせのた打ち回る。唇の端から泡がこぼれる。
「や、やめろおッ!」
仲間の危機を前に頭に血が昇り、ロゼッタを一刀の下に切り伏せる。
その瞬間、ロゼッタは布とも紙ともつかぬ物に姿を変え、煙となって消えた。

―――幻術!?

ハッと、周囲を見回すと、10を越える無数のロゼッタの姿があった。

130名無しさん:2007/07/09(月) 23:23:55
「さあ、どうしたの」
「ふふ…お友達を助けたいのでしょう?」
「早く私を殺さないと」

あらゆる角度から挑発の声が聞こえる。
「…くっ!このおっ!」
剣を持ち直し、一体ずつ切り倒していく。
幻影は無抵抗のまま斬られ、布となり煙と消える。
しかし、最後の一体は違った。

「ぎゃああああぁッッ!」
切っ先から血が迸り、悲鳴を上げる。
(―――やった!?)
ロゼッタの体を大量の煙が包み、やがて晴れていく。
そこにあった姿は―――

「お……おねえ……ちゃ……」
虚ろな瞳から涙をこぼし、口からは血が伝っている。
腹部は鋭利な刃物で切り裂かれ、どす黒く染まっていた。
エルキスが握る装飾剣からは、同じ色の血が床に滴っていた。
「……ル…ルネ…ス……?ど、どうして……?」

131名無しさん:2007/07/09(月) 23:43:30
「あらあら、自分の仲間を手にかけるなんて、気でも触れたかしら?」

部屋の中央に再びロゼッタが姿を現す。
しかし、動かなくなったルネスを前に呆然と立ち尽くすエルキスに、その挑発は届かない。

ふと、ロゼッタが視線を横に移すと、首にかかった縄1本で床から数メートル持ち上げられ、
白目を向いて痙攣するリーファンの姿があった。
「アレももう助かりそうに無いわね…。意外とあっけなかったけれど、
そろそろお終いにしましょう。ふふ…コレクションがまた増えたわ」

そう呟きながら、ロゼッタはエルキスの方へゆっくりと歩を進めていった……。




―――後日、アークス領の闘技場にはびこるネクロマンサーの僕の群れの中に、
まだ幼い、といっても過言ではない三人の少女のアンデッドが加わっていた…。


――BADEND――

132名無しさん:2007/07/10(火) 00:08:44
自分で黒幕にしといてなんだが、なんて外道なんだロゼッタお嬢様!
俺好みの展開で超嬉しいね! GJだ!

133名無しさん:2007/07/10(火) 01:26:30
乙!
仲間殺しってのは精神的には最高クラスに辛いよな…だからこそGJ!

134名無しさん:2007/07/10(火) 02:09:02
エリクサーから

ピンチになる

エリクサー

回復

逆襲

じつはまがいもので副作用がった!!(ここで分岐)

催淫作用があった。(エロルート)

を書こうと思っています
いまのところ猟奇BADENDはあるのにエロルートがないので。。
ここから猟奇に発展できるように上で分岐させるつもりですが・・・どうでしょう?

135名無しさん:2007/07/10(火) 02:22:55
いいんじゃないかエロルートも。
ゲームブックは多彩なバッドエンドがあってこそ面白いものだし。
少なくとも自分はエロルートも見てみたい。

136名無しさん:2007/07/10(火) 17:53:29
そういえば、3人の服装はどんなんなんだろう。

137名無しさん:2007/07/10(火) 18:37:34
読む人それぞれが自分の好きなように脳内調整できるよう、あえて詳しい描写・説明は避けています。
と、いうことにしておこう。

138名無しさん:2007/07/10(火) 19:26:40
でも元々リョナ絵版の人に挿絵を描いてもらうんじゃなかったっけか?あれ気のせい?

139名無しさん:2007/07/10(火) 21:44:50
いや、絵の投下等もガンガンOKというだけで、描いてもらう、というわけじゃなかった気がする。

140名無しさん:2007/07/10(火) 22:20:52
>>117
<<屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>>

「お願い、やめて!何故こんなことをするの!?」
膝を折り、必死の表情で懇願するエルキス。
愉悦の色を顔中に滲ませ、楽しくて仕方がないといった様子でそれを見下ろすロゼッタ。
その体は、どす黒く禍々しい魔力に覆われ、既に彼女が人間でないことを証明している。

「無様ねえ…どうしようかしら…助けてあげてもいいのですけれ―どッ!?」
油断しきったロゼッタが喋っている最中に、決死の体当たりを試み、
バランスを崩して倒れたロゼッタの腰から装飾剣を抜き取ることに成功した。
勢いそのままルネスとリーファンの方へ駆け寄り、各々を拘束する縄を切る。

「ここは一旦逃げよう!あいつは魔物よ!まず、武器を探さないと!」
負傷したルネスを抱え、咳き込むリーファンと出口の扉に駆け寄る。

141名無しさん:2007/07/10(火) 22:21:46
「貴様ら…逃がすか!」
体勢を整え直したロゼッタはそう叫ぶと、ブツブツと呪文を詠唱し始めた。
すると、床に魔方陣が浮かび上がり、その中央から一体の巨大な魔物が姿を現す。

半人半牛の魔獣ミノタウロス。
身の丈は3〜4メートル程あり、その体躯に見合った巨大な鋼鉄の大斧を手にしている。
万全の状態でも勝てるかどうかは怪しい。いや、全滅する可能性の方が高いだろう。
まして武器のないこの状況では、とても歯が立つ相手ではない。

「余興の時間ですわ、せいぜい楽しませて見せなさい。
ミノタウロスよ、その小娘共を逃がすな!捕まえて、殺せ!」

鼻息を荒げていきり立ち、斧を構えるミノタウロス。


―――どうする。このまま闇雲に逃げても、屋敷内の地理感覚もない自分たちは
いずれ追いつかれてしまうだろう。しかし、扉はすぐ後ろにある。

<<唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>>
<<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>>
<<武器が無くても戦えるリーファンが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>>
<<このまま戦う>>

142名無しさん:2007/07/10(火) 22:26:22
これもどれを選んでもBADENDな気がしますが、書いてみました。
自分で選択肢を作っといてなんですが、どれかの続きを書こうかと思ってます。
たぶんBADENDです。

143名無しさん:2007/07/10(火) 23:33:24
>>これもどれを選んでもBADENDな気がしますが
だがそこがいいw

144名無しさん:2007/07/11(水) 00:08:03
>>140
ちょっと指摘させてくれ。細かいことを気にしてしまう性格でね。
三人同時にリョナるか、それぞれ個別にリョナるかを選択させる狙いはとてもイイと思うんで、尚更気になるんだ。

>>117でルネスを拘束したのは縄ではなく「先端に鉤針のついた二本の鎖」。
 装飾剣が鎖を斬れるスゴイ剣でも別に展開的な無理はないので、ここは少し加筆すれば問題ないと思う。
>>116では「鞘に収めた剣を手にしている」となっているので腰に帯剣してるわけではない。これも少し直せば問題なし。
>>116-117ではロゼッタは場所に関する説明を一切していない。領主屋敷ではなく、闘技場地下やロゼッタの秘密のアジトかもしれない。
 「屋敷内の地理」を「全く知らない場所の地理」といった語にしないとおかしくなってしまう。
・「身の丈4mのミノタウロスが通れるほど、部屋の扉は大きいのか?」「三人で逃げてしまって問題ないのでは?」という疑問がある。
 部屋の具体的な広さは不明で天井も非常に高いとなっているので、デカい怪物が召喚されること自体に問題はない。
 ロゼッタが遠隔操作で扉を閉ざしてしまって逃げられないようにし、
 「一人がミノタウロスを引き付け、残り二人がロゼッタを狙う」×3
 「三人でミノタウロスと戦う」
 と、するのではダメだろうか?

どうも粗探しばかりになってすまないのだけど。

145名無しさん:2007/07/11(水) 00:30:05
<<武器が無くても戦えるリーファンが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>>

「ここはあたしが食い止めるから、二人は行って!」
魔獣と対峙し、エルキスたちに背を向けながらリーファンが言い放つ。
「リーファン!装備を見つけたら、すぐ戻るから!」
「何とか粘って見せるけど…なるべく速くお願いね…!」
さすがのリーファンも、相手が相手なだけにいつもの自信は姿を潜め
弱気な言葉を発する。

バタン!と背後で勢いよく扉が閉まる。

「さあ、あ、あたしが相手よ!かかってきなさい!」
正面から魔獣を見据えると、その圧倒的な巨大さに脚がすくむ。
「グオオオオオォォォッッ!」
猛る魔獣の轟く咆哮が戦闘開始の合図となった。

武道家の戦闘スタイルはいくつかある。
豪腕を活かし重い一撃で大ダメージを与え、鋼の肉体で敵の攻撃を受け流すタイプ。
速度を活かし手数で徐々にダメージを蓄積し、敵の攻撃は回避するタイプ。

リーファンは後者だ。ゆえに服装も身軽で軽装なものである。
鈍重なミノタウロスの攻撃はまず当たらない。
牽制しつつ隙があれば殴打、蹴撃を加える。
その繰り返しで二人が戻るまで時間を稼ぐ

はずだった。

146名無しさん:2007/07/11(水) 00:31:11

ミノタウロスの手に回し蹴りを叩き込んだとき、奴ははずみで斧を落とした。
ガアアアン! とけたたましい音を立てて床に鉄塊が転がる。

――今だ、チャンス!

もう一度渾身の回し蹴りを見舞おうとした、その瞬間。
――体が、動かない!?

忘れていた。ロゼッタの存在を。
冷酷な微笑を浮かべ、その周りを魔力が渦巻いている。
金縛りか何かの魔法を発動させているようだ。

――!!
気付くと、ミノタウロスが怒りに眼を真っ赤に充血させ、リーファンを睨み付けている。

「う、動けッ!動いて!」
軽装タイプのリーファンがミノタウロスの攻撃の直撃を受けたらひとたまりも無いだろう。嫌な想像に恐怖が込み上げ、必死に体を動かそうとするが、ビクともしない。
そうしているうちに、丸太の様な腕に、それよりも少し細いリーファンの、
蹴りを繰り出す途中の形で静止した剥き出しの太股が握り掴まれる。
「くッ!は、はなせえッ!」

叫びも空しく ドゴ! と鈍い音と共に床に叩き付けられる。
「あ…ぐあ…」
激痛で身動きできない彼女の腹部を目掛けて、第二撃が襲う。
ミノタウロスの全体重と、怒りが込められた渾身のパンチが――


グシャアッ!
リーファンは死んでしまった…


BADEND

ごめん。つづきを既に書いてしまったので、載せてしまいました。
内容の辻褄が合うよう、もっとちゃんと読むべきでしたね。
気をつけます!

147名無しさん:2007/07/11(水) 01:25:26
最後の描写はもう少し濃くてもいいと思う。ある意味一番メインにしないといけない部分だし。
その直前までの部分はシチュ的にも結構好みです。

1481:2007/07/16(月) 19:44:35
まとめファイル更新分をファイルバンクにアップしました。

ちなみに、私も近いうちにまた投下する予定です。名無しの状態でやると思いますが。
ただ、リョナシーンを含まないシーンを投下する予定なので期待はしないでくださいね。

149名無しさん:2007/07/17(火) 01:40:32
>>1
そのファイルバンクだけど閉鎖されちゃった模様…(リクスレ参照)

これからどうしたものかしらん

150名無しさん:2007/07/17(火) 19:32:40
このスレ用にファイルバンクアカウントを作ればいいのでは
無料で簡単に作れるし

151993 ◆flVCD8FXeU:2007/07/18(水) 06:30:09
>>148
一応今回は近日中に復活させる予定なので、
それまで待ってみてはどうだろうか?

1521:2007/07/19(木) 01:40:06
すみません、昨日はこの板を確認していませんでした。

保管場所ですが、近日中に復活、とのことなので今回は待つ方向にしたいと思います。

153名無しさん:2007/07/23(月) 02:15:29
>>76  <これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>

「すみませんが、時間もあまりないので…」

商人の品物に多少の興味はあったが、夜までの時間は大分短くなってしまっている。
それに、商人の風貌はいかにもどこにでもいそうな、といった感じで掘り出し物を持っているようには見えない。
そう判断した上での返答だった。

「そうかい? 残念だねぇ…」
そう言うと、商人の雰囲気が突然変わった。
残念そうな、そしてさびしそうな目でこちらを見つめてきている。

「ぅ…」
その目を見ていると、何も買わなかった自分が悪い気がしてくる…
が、本当に時間はないのだ。本当に申し訳がない気持ちになるが、ここはしっかりと断らなければならない。
本当に時間はあまりないのだ。

「すみませんが、本当に時間がないので――」

エルキスは目の前の変化に驚いた。
またもや商人の雰囲気が変わったのだ。それもさっきと同じ人とは思えない、恐ろしい表情に。

「ああ、そうかいそうかい。こんな店の商品は買いたくもないってか?
ああ、いいよいいよ。もう貴様らなんかに売る商品はない。さっさとどっかにいっちまいな!」

そう怒鳴り散らすと商人は町の奥へと消えて行き、後には呆然と立ち尽くす3人だけが残った。


<闘技場へ>

154名無しさん:2007/07/24(火) 01:46:54
<唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>

「リーファン、合図をしたらルネスと一緒に後ろの扉から出て。」
それは必然だった。
目の前に迫りくる恐怖。明らかに不利な状況。脳裏に浮かぶは「死」の一文字。
それでもわずかな「生」をつかむために誰かが恐怖に立ち向かわなければいけないのなら
それはリーダーである、エルキスの役目。
リーファンには反論の余地がなかった。彼女の背中を見ていたら、覚悟が伝わってきたから・・・
「お姉ちゃん!!・・・お姉ちゃん!!ダメだよ!ヤダよ!一緒に逃げよう!!」
妹の悲痛な叫びも、優しさも、恐怖も全てエルキスに伝わっていた。それでも彼女の決意は揺るがない。
「リーファン!いって!!」
二組の足が真逆に動く。
一組は自分も残ると泣き叫ぶ子を抱え扉から
一組は恐怖に立ち向かう。
去り際にリーファンは「ルネスを頼む」という声を聞いた気がした。

装飾の剣と鋼鉄の斧。どうみてもまともにやったら勝利は不可能。
怒号が部屋全体を揺らし、いよいよ斧がエルキスに振り下ろされる。
目と鼻の先に「死」が迫っているというのにエルキスは落ち着いていた。
何度も、何度も振り下ろされる鋼鉄を何度も、何度もかわし続けた――――反撃の糸口を探しながら。

もうこれが何回目の振り下ろしだろう。
もうこれが何回目の回避だろう。
反撃の糸口が見つからないまま、地面に跡が付いていくだけ。
それでも確かに反撃のチャンスはこちらに来ていた。
明らかに鈍るミノタウロス動き。何キログラムあるか分からない斧を
何回・何十回と振り降ろしたのだから疲労があって不思議じゃない。
そしてエルキスはこの期を逃さなかった。――いやこの瞬間を待っていた。

踏み込む右足。思い切り振られる右腕――その狙いはただ一つ。
通常だったら踏み潰されてしまいそうなミノタウロスの大きな足に近づき
エルキスはその足を斬った。

崩れ落ちるミノタウロス。エルキスの粘り勝ちだった。
恐怖にエルキスの勇気が勝ったのだ。

息は上がり、もはや疲労困憊。それでも勝利したのだから喜ぶべきなのかもしれない。
しかし喜べない。

「まぁ!!あのミノタウロスを一人で倒してしまうなんて!!」

本当の恐怖は、まだ無くなっていないのだから。

「素晴らしい!!非常に楽しませてもらいましたわ!!」
部下を倒されたというのに余裕の表情
ロゼッタには分かっていたのだ、もうエルキスに闘う力がないことが。
「次は・・・おまえだ!!」
ミノタウロスの血で染まった真紅の剣をロゼッタに向けてエルキスは立っていた。

<武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
<今は目の前のロゼッタを倒すしかない!!>

こんな感じで、なんかエルキスが無駄にカッコいいリョナゲームっぽくない展開になってしまいました。
ここからロゼッタでピンチにしてもいいしお姉ちゃんを失ったルネスたちを屋敷のトラップが襲うとかいうのもいいんじゃないでしょうか?

155名無しさん:2007/07/28(土) 03:47:40
とりあえずage

1561:2007/07/29(日) 03:40:26
リョナ動画相互補完スレのファイルバンクに最新のまとめをアップしておきました。
これからは毎週きっちりあげていきたいと思います。

157名無しさん:2007/08/04(土) 03:45:53
ちょっとペースが落ちてきたな。

158名無しさん:2007/08/06(月) 03:56:08
1週間投稿がなかったので更新はありませんが、あげなおしました。

159名無しさん:2007/08/11(土) 03:42:12
うーん、そろそろまた何か書くか。
まだこのスレ見たりしてるヤツどれくらいいる?

160名無しさん:2007/08/11(土) 11:47:17


161名無しさん:2007/08/11(土) 21:39:44


162名無しさん:2007/08/11(土) 22:11:24
みてるお

163名無しさん:2007/08/11(土) 23:05:11


164名無しさん:2007/08/12(日) 12:58:09

というか見てるだけだったらこの板のほとんどじゃない?
書き込むかは置いといて

165名無しさん:2007/08/13(月) 00:28:13


1661:2007/08/14(火) 23:39:12
ちょっと出先でPCが触れないため、まとめファイルの再UPが数日遅れそうです

167名無しさん:2007/08/16(木) 00:51:22
また書こうと思っています。
申し訳ないのですが、かぶるのがイヤなので
現在進行形で書いてらっしゃる方は
どこを書いているか教えていただけないでしょうか?

168名無しさん:2007/08/16(木) 01:00:14
リョナ要素のあまりないアイテム購入直後の2パターンを近いうちに書く予定。

1691:2007/08/28(火) 01:11:28
ちょっと間が空きましたが再うp。
んー、何か投下しやすくなる方法ないですかね…。

170名無しさん:2007/08/29(水) 01:31:36
HPスペースとってそこに置いたら?
元々htmlで作ってるみたいだから割と簡単じゃない?
管理面倒と言われるとそれまでだけどさ

1711:2007/08/30(木) 01:52:40
ホームページのスペース借りることも考えてはいるんですが、どこの鯖がいいのか、を調べてないんで…。
という理由で、ファイルバンクでやってたんですが、確かにホームページのが人集まりやすいですかね…。

172170:2007/08/30(木) 13:07:48
絵やゲームプログラムなんかを置くわけでもないし
(今のところ)単純に文章置くだけなんだから
広告が邪魔だと思わなきゃ何処でもいい気もする。

http://www.kooss.com/hp/space.html
この辺で調べるとか。
ただ、一応言いだしっぺなんで自分が使ってるトコを押しておく。

http://web.fc2.com/
三ヶ月無更新で削除、らしいけど半年位放置してて誰も見ない所が
未だに運営からも放置されてるのを見ると、あまり気にしなくてもいいかも。
広告は下に一行のみ、の筈。

173名無しさん:2007/09/05(水) 01:52:40
1週間経ったし、再UP…と思ったらファイルが残ってる間は同名だとできないんですね。
ファイルが消えてからアップしなおします。

サイトの方はじっくり調べようと思いつつ、期間が開いてます…。
近いうちに時間を見つけて何とか。

174名無しさん:2007/09/23(日) 17:21:56
>>121より分岐。<聖水を買う>を選択。


 聖水の瓶を手に、エルキスは考える。
聖水は、祝福の儀式によって水に聖なる魔力を封じ込めたものだ。
その魔力を込められる技術者さえ居れば、あとは水を用意するだけで作ることができる。
安価に生産できる品であり、貴重なものではない。冒険者の中には聖水を自前で用意して節約に努める者も居る程だ。
 とは言え、聖水と名の付く物が皆同様の品質を備えているわけではない。
水に宿る魔力の強さは、祝福を施す術者の力量によって少なからず上下し、ばらつきがあると聞いたことがある。
相場より高い聖水が、値段相応に大きな効果を発揮しても決して不思議はない筈だ。
「ルネスはどう思う? これ、調べられる?」
 エルキスがルネスに瓶を手渡す。ここはやはり魔導師に見てもらうべきだろう。
両手で瓶を受け取ったルネスは、静かに眼を閉じる。手中の瓶と無言の対話を交わすように数秒沈黙し、そして眼を開けた。
「……どう?」
「たぶん……強力な物だと思う」
「強い魔力を感じるってこと?」
「うん」
 エルキスは決断した。ここはルネスを信じ、幸運な出会いをしたと思うことにしよう。
死霊への対抗手段を、ルネスの魔法以外に確保しておくのも悪くはないだろう。
「じゃあ、この聖水を下さい。二つ、お願いします」
「あいよ。毎度あり!」
 取引成立宣言が威勢よく響いた。

175名無しさん:2007/09/23(日) 17:23:11


 エルキス達がギルドを出ると、 日没まではまだ幾らかの猶予があるが、既に日が高いとは言えない時間になっていた。
 死霊の出現以来、二ヶ月。闘技場とその周辺は町の中央に在りながら、アークスで最も寂れた場所となった。
円形の巨大建築は、巨人の骸が横たわっているかのように静かな威圧感を発し、町に影を広げている。
本来ならこの場所から生まれた活気が町全体に広がり巡っていくのだろう。今は違う。
町の住人達が皆ここに近づくことを避けているのか、闘技場の周囲に人の姿はない。
入り口で警備に立つ二人組の兵士が居なければ、ここは廃墟の町だと言われても納得してしまいそうだった。
 闘技場へ近付くにつれてルネスの表情が曇っていったのも、極めて当然のことだろう。
 ロゼッタの署名の入った書類を兵士達に見せて説明し、三人は闘技場の建物内に踏み入った。
暗く静かな通路を抜け、階段を昇り、まずは観客席に出る。
試合場に目をやると、石造りの舞台中央に件の死霊の姿が確認できた。霧か煙を思わせる白く濃い塊が、静かに蠢いている。
「あれが死霊?」
 リーファンの声には今ひとつ緊張感が足りていない。言外に「強そうには見えない」と告げているようだった。
「資料によれば一体だけの筈だから、そうなるわね」
 ロゼッタから貰った資料を見ながらエルキスが答える。こちらはリーファンほど敵を侮った様子はない。
(……もうちょっと、敵を恐れるべきよね。リーファンは。……ルネスみたいになるのも問題だけど)
 そんなことを思いながら、改めて視線を試合場の死霊に向ける。
そもそもあれはなんなのだろう。生者の領域たる町中に堂々と現れるアンデッドなど、聞いたことがない。
アンデッドでありながら、日の光の下で行動できるというのも異常だ。
強大な魔力を備えているが故か、ギルド長の話によると、試合場は結界に包まれているらしいというからその作用なのだろうか?
「で、どうする? どう戦うつもり?」
 待ちきれないとばかりに、リーファンがエルキスに声をかける。
「作戦に変更はないわ。さっき話した通りにいきましょう」
 ここに来るまでの間に、基本的な戦法に関する話し合いは済ませてあった。
まず、防御を固めて死霊の出方を窺う。
そして、死霊が一度に広範囲を攻撃する術を持つようなら三人で一丸となっての正面突撃。
逆に、広範囲を攻撃できないようであれば分散しての挟撃をかける。
いずれにせよ、一度攻勢に転じてからは短期決着を狙うことになるだろう。
 エルキスの手が、聖水の瓶の蓋を外し、愛剣を腰の鞘から抜き放つ。
瓶の口から、清く澄んだ空気が湧き出すような感覚がエルキスの意識を撫でた。聖水の魔力が空気を浄化しているのだろうか?
魔力を感じ、魔力を操る術を本格的に学んだことのない自分でも感じ取れるということは、それだけ強力なものなのだろう。
これならいける。そう思えた。
 抜き身の剣身に聖水を注ぎかける。濡れた刃が日の光を反射して煌いた。
「……よし。始めましょう」
「うん。やっちゃおう!」
 エルキスの剣と同じく、両拳を聖水で濡らしたリーファンが応じた。
 そして三人は駆け出す。

176名無しさん:2007/09/23(日) 17:24:23
 仕切りを越え、観客席から試合場へと降り立った途端、舞台上の死霊の蠢きが凍りついたように一瞬だけ止まる。
次いで、その姿が渦を巻いた。渦が速さを増すと共に、白い煙のようだったものが見る間に形を変えていく。
腕が、脚が、形づくられ、程なくして白い全身鎧と白いマントに身を包む騎士の如き姿を成した。
両刃の長剣が、その右腕に握られている。
 白い騎士の姿は、人と変わらぬ形を持ちながらもどこか、あるいは明らかに異質な気配を纏っていた。
あの周囲だけ、空気が僅かに歪み揺らいで見えるのは錯覚だろうか? エルキスにはそうは思えなかった。
 エルキス達が無言の視線を注ぐ中、死霊は右腕を高く掲げ、剣の切っ先が天を指した。
一呼吸の間を置いて、刃が黒い電光を帯びる。
 エルキスの直感が最大級の警鐘を鳴らした。
「──ルネス! "シールド"ッ!」
 エルキスの声が僅かでも遅れていれば、防御は間に合わず、決着は即座についていただろう。
振り下ろされた刃から放たれた黒雷は雷の槍と化し、空気を貫きながら三人目掛けて一直線に飛来する。
咄嗟の指示を受けてルネスの唱えた呪文は、黒雷の凶槍が到達するより一瞬早く完成し、淡い光の幕が出現。
"シールド"の呪文で展開された魔力防壁は迫り来る雷槍をどうにか受け止め、そして、粉々に砕け散った。
「きゃぁ!」
 槍と盾は、互いに貫く力と守る力を失い、弾ける光の粒が一面に広がって視界を塞いだ。
ルネスは思わず悲鳴を上げ、よろめいてしまう。
"シールド"の魔力防壁が一撃しか耐えられないなど、ルネスの冒険者としての経験上ではこれまでになかったことだ。
 数秒の後、見渡しを取り戻した三人は、接近戦で決着をつけるつもりなのか、静かに歩み迫る死霊の姿を見た。
(はやい……! それに、なんて威力……! ……どうしよう、こんな相手、本当に勝てるの?)
 雷槍は、三人に傷を負わせることはできずとも、ルネスの戦意には小さからぬ亀裂を生じさせていた。
だが、エルキスもリーファンもまだその綻びに気付いていない。
 飛び道具を防がれた死霊が、向こうから近付いてくるということから、エルキスは瞬時に二つのことを推測できた。
敵は、雷槍ではこちらを倒せないと判断したか、あるいはあれは連発できない技であるかだ。
ならばこちらも接近戦で迎え撃とう。聖水で濡らした剣を握る手に、一層の力が入る。
「ルネスはそこから援護! リーファンは左から!」
 事前の作戦通り、挟撃の決行を告げたエルキスは自らも駆け出し、向かって右の側から回り込む軌道で死霊を目指す。
「了解ッ!」
 号令を受けて走り出し、左の側から死霊に迫るリーファン。
 左右に分かれた二人に、死霊は一旦足を止めたがすぐにリーファンへ向き直った。エルキスには背を晒す状態になる。
偶々なのか、それとも剣を持った腕の方角を選んだのか。
長剣を両手で構え直し、少し速さを増した歩調で足音もなくリーファンとの距離を縮めていく。
(かかって来なよ死に損ないッ! 地獄に送り返してやるッ!)
 死霊と向き合ったリーファンは、ルネスとは対照的に闘志を昂ぶらせ、駆ける足を更に速めた。
 リーファンの間合いまで残り三歩。死霊が足を止め、突きを繰り出す体勢をとる。
 残り二歩。エルキスはまだ、到達まで数秒かかる位置に居る。
 一歩。突進の勢いを乗せた拳が、踏み込みと共に真っ直ぐに伸びた。
一瞬遅れて突き出された切っ先が拳とすれ違い、右眼球を狙う死の刃にリーファンは顔を僅かに傾ける。
死霊の突きは、必殺の一撃になり損ない、リーファンの右頬に赤い筋を残しながら後方へ通り抜けた。
 一方、リーファンの拳は見事に死霊の胸を捉えていた。
泥沼に打ち込むような手ごたえを得ながら貫き通った拳は、マントを突き破って死霊の背に現れる。
そしてリーファンが拳を引き抜くと、死せる白騎士の姿は胸の穴から溶けるように崩れ始めた。

177名無しさん:2007/09/23(日) 17:25:57
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 歪み崩れゆく死霊から噴き上がるそれは、「声」とは呼び難いものだった。少なくとも、生ける者の声ではない。
まるで嵐の夜に空を暴れまわる風のように、荒々しい叫び。
絶望と憎悪と憤怒に塗れた断末魔の絶叫が、幾千も同時に響くような禍々しい叫び。
魂の凍りつくような怖気が、三人をそれぞれに包む。ルネスは気を失いそうになる自分を感じた。
 やがてその叫びも止み、沈黙と静寂が試合場に満ちる。
 リーファンの足元の地面には白い泥のようになった死霊の姿が広がっている。
白い泥は地面に染み込むように、あるいは空気に溶けていくようにその量を少しずつ減らしているようだった。
「……終わった、かな?」
「まだ油断しないで」
 そう戒めたエルキスの剣が、まだ白い泥の残る地面へ突き立てられる。
刃の刺さった周囲から白い泥が消え、その下の地面が顕になっていく。
十数秒後、白い泥はエルキス達の目の前から完全に消え去った。
「…………」
 地面を睨み続けていたエルキスも剣を引き抜き、ようやく息をつく。
「任務完了だね!」
 湧き上がる達成感を確かめるように、リーファンが口を開いた。
「……そう、ね」
 そう答えつつも、エルキスの頭のどこかにはぬぐいきれないものが残っていた。
屈強な男達を数多く返り討ちにしてきたという敵にしては、随分と呆気ないのではないか?
乙女の加護と聖水の効果は、そこまでの力だったのだろうか?
確かに、どちらもアンデッドとの戦いに特化した力ではあるかもれないが……。
 と、そこまで考えたところで、エルキスは、ルネスが屈みこんで震えているのに気が付いた。
あの断末魔の叫びが効いたのだろう。恐怖と不安が冷たい鉄格子となって、ルネスを見えざる檻に閉じ込めていた。
その姿に、エルキスは警戒と疑惑の思考を動かす歯車を止めてしまう。
 それが、次なる窮地の導きとなった。

178名無しさん:2007/09/23(日) 17:27:20
 警戒を忘れ、ルネスのもとへ駆け寄ろうとしたエルキス。自らの油断それ自体に気付いていないリーファン。
それぞれに生じていた隙は、二人の足元で起こる異変への反応を遅らせるに充分なものだった。
「────ッ!?」
「…………!?」
 唐突に、地面から大きな熱が生まれたかと思うと、風の逆巻く音が耳を突いた。
次いで、その熱さに全身を焼かれながら二人の身体が勢いよく宙に舞い上がる。
 熱風に吹き飛ばされたエルキスは、周りの景色が急激に回転するのを見つつ背中から落ち、硬い地面に叩きつけられた。
「…………ッ!!」
 背中で弾けた痛みと衝撃は、内臓にも及んだ。息が止まりそうになり、呻き声すら出せない。
それでも、エルキスは身を転がすとどうにか立ち上がった。
迂闊に警戒を解いた己の不覚を呪うよりも先に、妹と親友の安否を確かめるべく慌てながら辺りを見回す。
 エルキスが見たものは四つ。
 まず、頭から血を流し、倒れて動かないリーファンの姿を見た。
 次に、熱風に吹き飛ばされた際に手放してしまった己の愛剣が、少し離れた場所に落ちているのを見た。
 そして、今にも泣き出しそうな顔で、目を見開き震え続けるルネスの姿を見た。
 最後に、ルネスの視線の先にあるものを見た。
 そこには、三つの頭を持つ白い獣が居た。あの死霊が姿を変え、再び現れたものに違いなかった。
やはり、まだ終わっていなかったのだ。
 人型から獣へと変じた死霊は、狼に似た姿だが体躯はそれより数段大きい。
閉じた牙の隙間からは、舌を覗かせるように黒い炎が小さく噴き出している。
顎(あぎと)が開けば先程の熱風のように灼熱の脅威が放たれ、地面に爪を食い込ませる四足も並々ならぬ膂力を発揮するだろう。
 死と恐怖を具現する三つ首の魔獣と化した死霊は、三対の眼光をルネスに浴びせつつ姿勢を低めた。
跳躍して襲い掛かる予備動作だ。
 恐怖の鎖に心身を縛られた今のルネスに、為す術はない。
このままでは、なんの反撃もできぬままにただ肉体と魂を貪られるだけだろう。
 しかし、絶望の断崖にかろうじて踏み止まっているエルキスには、ほんの僅かだが猶予と可能性が残されていた。


   <一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   <ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   <ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>

179名無しさん:2007/09/23(日) 17:28:47
 >>125で書くと言ってからエラい時間が経ってしまいました。すいません。
今回の選択肢は、ここで正解を選べば見事死霊を撃破してトゥルーエンド、というイメージで設定しました。
三番目がわりと正解っぽい感じですが、あえてそれを外してみるのも良いんじゃないかと思います。
また、文章のおかしい点、物語上での矛盾等があれば、指摘をお願いします。
以下補足。

・死霊の熱風攻撃により、剣を濡らした聖水は蒸発してしまった可能性がありますが、エルキスはそれに気付いていません。
・リーファンのダメージがどの程度かは不明です。案外すぐに意識を取り戻すかもしれません。
 あるいは打ち所が悪くてもう死んでるかもしれません。次を書いてくださる人におまかせですね。
・死霊が力を増す日没までの時間的な猶予は、次を書いてくださる人におまかせします。
 既に日没間近かもしれないし、まだ余裕があるかもしれません。
・しぶとく見える死霊ですが、実は結構追い詰められています。
 攻撃面での能力に衰えはありませんが、あと一発か二発の攻撃で倒せる状態です。

180名無しさん:2007/09/23(日) 18:23:35
一個書き忘れ。
死霊は変身能力を備えており、姿に応じて様々な能力を使うことができます。
ネクロマンサーもそれらの変身のうちのひとつとして解釈すれば、ルート間での整合性も持たせることができたりします。
ようするに、次の話でケルベロスから更に変身させてもらってもかまいません。ということです。

181名無しさん:2007/09/24(月) 02:22:17
乙!
なんか俺も急に書きたくなってきたし、続き書いてみることにするよ。

182名無しさん:2007/09/24(月) 11:39:19


1831:2007/09/27(木) 16:48:50
ちょっと予定より間が空いてしまいましたが、サイトの方作ってみました。
http://ryonabook.web.fc2.com/

あとファイルバンクの方にも追加しておきます。

184名無しさん:2007/09/28(金) 00:29:42
>>183
乙ですよGJですよ。
あと、手間をかけさせてしまって申し訳ないのですが、
「崩れ始めた。」と 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」の間を一行空けてくださるようお願いします。
>>177で頭に改行がないのは投下時のコピペミスなので……。

185名無しさん:2007/10/08(月) 05:28:08
流れぶった切って悪いけど
同人サークルのぱーせぷとろんさんが出してる
「elementaler」ってゲームブック風味のADVがあるんだが、結構いいと思うんだ。
エロ中心だけど、結構やられ要素も多い。オークに足折られて、肉奴隷にされちゃったりとか、
スライムに窒息死させられたりとか、文章だけだけど、大木にたたきつけられて気を失っちゃったりとか。
唯一つ私的なことを言わせてもらうと、一応ゲームマスター視点(神視点、第三者視点)なんだろうけど
主人公はその中の少女な分けで、そっちの方に感情移植してしまって、精神的にきつかった('A`)
ま、俺の精神が脆弱なだけですけどね。

186名無しさん:2007/10/09(火) 23:44:01
体験版やってみた。
死亡シーンは1つしか確認できなかったけど
他にはどんなのがあるんだろ。

スライムに窒息死ってのが見てみたい。

1871:2007/10/10(水) 01:51:25
遅れましたが修正しました。

188名無しさん:2007/10/11(木) 20:08:32
「ELEMENTALER」買ってみたよ
あえてCGがない即死パラグラフが結構いいねー
ゲームブックとしてもよくできていて(ソーサリー1巻2巻の雰囲気)
面白かった。
>>185に感謝!

グレイルクエストっぽいのがあったら個人的には神

189名無しさん:2007/10/20(土) 00:34:28
>>185
体験版でできるかどうかはわからないけど地下水道のところで振り向くか何かの選択肢で……

>>188
喜んでくれて良かった
が、俺は思い出すと本当に胃が痛くなるので記憶から抹消した( ´゚Д゚)

190名無しさん:2007/11/02(金) 19:50:19
age

191名無しさん:2007/11/03(土) 20:21:06
>>185
体験版をやってみましたが
マジで同人で2千円でこの出来に感動した
BADENDでCGがないのが全然気にならない
わざと危ない選択を選んでします
そのせいで魚に食われた。

192名無しさん:2008/01/09(水) 16:02:36
保全ageしてみる

ゲームブック自体はブログ使えば比較的簡単に作れそう
ちょっと挑戦してみようかな

193名無しさん:2008/01/12(土) 01:38:23
俺も久々に何か書いてみようかな…。
といいつつ、結局書かないパターンが多いが、がんばってみよう…。

194192:2008/01/19(土) 00:27:19
やはり死亡ルート多い方がいいんだろうか
ゲームとしてどうかという気もするが

195名無しさん:2008/02/02(土) 23:59:05
その辺のバランスが難しいな・・・
でも俺は死ぬのが目的でやってるな

196192:2008/02/09(土) 04:54:32
そういうものと割り切って
死亡させまくった方がいいのかな
うむ

197名無しさん:2008/02/25(月) 19:28:27
最近寂しいね。久しぶりに一つ投下。

>>154より
<今は目の前のロゼッタを倒すしかない!!>

自分に向けられた血の滴る剣の切っ先を見ながらロゼッタは考えた。
ミノタウロスすらも撃退する意外な実力を持つ眼前の敵をどう倒すか。

否、「敵をどう倒すか」では正確ではない。正しくは「娘をどう料理するか」。
今だ自分が助かるかもしれないと考えているこの娘を、いかに絶望させ、いかにむごたらしく殺すか。
そのときの断末魔と、その無惨な死体を目の当たりにしたときの、
先ほど逃げた二人の反応を想像するだけで、期待と歓喜と興奮が体の内から溢れんばかりに湧き上がる。

「私の可愛いペットを倒したご褒美に、ほんの少しばかり本気を出して差し上げますわ」
ロゼッタの手が光ると、先の戦いでミノタウロスに破壊され、飛散した床や壁の石の塊や破片がゆっくりと浮かび上がる。
指先をエルキスに向けると同時に、それらがもの凄い勢いで襲い掛かる。

「くっ!…ううッ!」
必死に剣で叩き落とすが、すでにかなり消耗しているエルキスに
あらゆる角度から無数に飛んでくる石片の全てを回避することはとてもできず
体中にいくつもの傷ができていく。やがて――ドゴッ!という鈍い音と共に
巨大な石畳の1つが腹部に直撃した。

「かは…あッ…」
呼吸ができない。目から涙が、口からは血が溢れる。
膝を折り、腹を押さえて痙攣し、苦痛に悶える。
しかし石は無慈悲にも、絶え間なく彼女に襲い掛かる。
もはや防御も回避もできないエルキスはまともに喰らうしかない。

「あ…あぐ…ぅ…」
瞬く間に自らの血溜まりの中に伏すエルキス。それを見下ろすロゼッタ。
身動き一つ取れないエルキスの瞳に先ほどの戦意は無く、あるのはただただ恐怖のみ。
エルキスのあごを掴み、自分の顔へ向けて、満面に笑みでロゼッタが問う。
「さあて、芋虫ちゃん。どういう風に死にたい?
失血死?窒息死?溺死?圧死?焼死?よりどりみどりよ。キャハはハはハハはハハハあはは!」
「い…いや…死に…死にたくない…お…お願い、殺さないで…もう許して…」
涙ながらに命乞いするエルキスを見て、ロゼッタは頭の中が真っ白になるほど
ぞくぞくするような快感が背中を走った。
命をお手玉することがこんなにも楽しいのは何故なんだろう。

エルキスの首に手をかけ、力を強める。
「ぐッ…ぁぁッ…」
短めのスカートから伸びる、引き締まった、しかし血みどろの白い脚がばたばた暴れる。
しかし、エルキスの瞳が虚ろになるにつれ、その動きはぱたぱたと弱まり、やがて全く動かなくなった。

エルキスの絶命の瞬間、ロゼッタもまた興奮が頂点に達し、昇天する。
真っ白なロゼッタの頭の中でかろうじて働いた思考は、この無惨な死体を逃げた二人といかにして再会させるか。
そのための舞台設定の整え方だった…。


<BAD END>

198名無しさん:2008/02/25(月) 19:59:26
>>197
いいですねーGJですよ〜

私も書きたいのですが・・・その前に1さんは見ていらっしゃるのだろうか?
あのかたが一応まとめを作っていたから・・・その辺どうなのかな・・・・

1991:2008/02/26(火) 17:17:29
しっかり見てます。見てるだけとも言いますが…。
私自身、もう少し自力で投下したいところなのですが、なかなか時間が取れなくてすみません…。

更新は土日までにはやっておきます。

200名無しさん:2008/02/26(火) 20:11:36
それでは書いてみようと思います。
結構新展開待ちのルートが多いので
新たに結構妄想全開で書いちゃってもいいですよ・・・ね?

201コア:2008/02/26(火) 22:50:06
<006.html もうだめだ、どう足掻いたって助かりっこない>より

それは誰が見ても最低の思考なのかもしれない。

それでもこの状況ではきっと誰もがそう思ってしまうのだろう。

エルキスは絶望した―――あきらめたのだ。

勇者としてはあるまじき行為、それでも人間として―――少女としては当たり前の行為。



からん…からん…・・・からん・・・・・・・・・・



エルキスの剣が音を立てて闘技場の上に転がった。それは敗北の象徴であった。

「いやあああああああぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁぁああ!!!!!」

闘技場に響き渡る悲鳴、それは絶望したエルキスの物でも、負傷し闘技場の隅で意識を失っているリーファンの物でもない。
目の前で信頼し尊敬する姉の絶望を見たルネスの声であった。

目には涙、体は震え、立つことすらままならない。だれかが指一本でも触れようものなら倒れてしまいそうなルネスを死霊が放っておくはずはなかった。
敗れていった冒険者の霊がルネスを羽交い絞めにする。

「えっ・・・?やだぁ!やだぁよぅ!!おねぇちゃん!!助けてよ!!」

ルネスを囲む死霊たちは勝利を確信し、今はただこの脅える娘をどう苦しめてやろうか、それだけを考えているようにすら思えた。
そんな妹の危機を知らせる悲鳴も絶望する姉、エルキスの耳には届かない。

「助けてよ・・・おねぇちゃん・・・・・・おねぇちゃんってばぁ!!」

否―――聞こえてはいる、理解もしている。それでも体が動かないのだ。絶望した彼女にはもう妹を助ける勇気も使命感も残っていないのであった。
それは死霊特有の負の魔力のせいなのかもしれない、あるいは、心が既に死んでしまっているのかもしれない。
とにかくエルキスは動こうとはしなかったのだ。

「おねぇちゃ…ん・・・・・・・ひぎぃ!!」

ルネスが姉に絶望したまさにその瞬間―――あるいはそれを待っていたのだろうか。
死霊の一人がルネスの右肩に喰らいつく。
飛び散る鮮血、致命傷にはなっていないようだが確かに死への一歩を踏み出す。
ルネスの心に広がる「絶望」の感情、ついに時がきたのだ。

「いやぁ・・・いやぁ・・・・・・おねぇ・・・ちゃん・・・・・・・・・ふぎぃ!!」

別の死霊が今度は左太ももに喰らいつく。
死霊の口からはダラダラと赤い液が飛び出す。
もはやルネスの心にも希望というものはなくなりつつあった。

それでも最後までルネスは呼び続けた。最愛の姉の名を。

「おねぇちゃん!!助けて!!おねぇちゃぁぁん!!」

それでも死霊は非情だった。
一回り大きな死霊が己の剣を取り出しルネスに近づく―――終わりにするつもりなのだ。

「い・・・いやぁ・・・・・・・・・・」

もう悲鳴をあげる声も弱々しくなっている。
誰もがダメだと思うだろう。誰もが絶望を感じるだろう。
それでもルネスは最後まで、命が尽きる最後まで叫ぶのだ―――姉の名を。

「助けてぇ!!おねぇちゃん!!」

(ごめんなさい長いので次へ・・・)

202コア:2008/02/26(火) 22:51:08





ザシュ!!ズバッ!!


鈍い斬撃音
それはルネスの生命を奪う剣が繰り出す音ではなかった。
ルネスが状況を理解できぬまま呆気に取られていると次の瞬間命を奪おうとしていた死霊が崩れ落ちた―――その後ろに姉の姿。

「ごめんルネス、私どうかしてた」

最後まで信じ続けた
最後まで願い続けた
最後まで想い続けた思いが今、絶望を打ち砕いた。
妹の純粋な希望を信じる思いは姉の心に再び希望を与える。
エルキスは確かにその右手に剣を握り締めルネスと死霊の間に立ちふさがる。

「私の可愛い妹に手をだすんじゃない!!」

気迫、そうそれは希望を持つものだけが出せる正義の気迫であった。
形成の逆転などはしていない。誰が見ても絶望的状況は変わらないのにエルキスは少しも動じない。
そんな彼女の姿に動揺しながらも、ただそこにいる敵を打ち倒そうと死霊達が一斉にエルネスに襲い掛かる。

「はぁッ!!」

掛け声とともに一歩踏み込み斬りつける、一体・・・また一体・・・と骸へなっていく死霊。
もちろん倒しきれないことは知っていた。それでも襲い掛かってくる死霊を打ち倒すしかなかった。






いつまでたっても状況は変わらない。
ルネスを守りながら立ち回るエルキス。
相変わらず負傷し倒れているリーファン。

この状況を打破するには死霊を操っている元凶、ネクロマンサーを倒すしかないことはエルキスには分かっていた。

エルキスはルネスに言った

<「ホーリーアーマーを私にかけて。私があいつを倒すから」>
<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
<「あなただけでも逃げなさい」>



少々長くなってしまいました。
それでもどうしてもネクロマンサーを生かすっというかその戦闘を継続させるルート
を残すためにはこれしかなくて・・・
これ以外のは一つは即刻BADエンドだし・・・もう一つはロゼッタネエさん登場でネクロマンサー涙目なルートだから・・・

何かありましたら言ってください修正かけますから。

203コア:2008/02/26(火) 22:57:47
それと・・・どれだけの人がここを見ているのかわかりませんが
できればどこどこの後こういうシチュ希望!!とか正直欲しいです。
結構どれも自由に広げられる段階だけに中々イメージしずらくって・・・
それでは連続すいませんでした。

204名無しさん:2008/02/27(水) 00:54:26
誰かをアンデッドにしてけしかけるとか?
絶望感は強いと思うんだ。

2051:2008/03/03(月) 08:53:56
土日、ちょっと更新できませんでしたが、今日の夜には。

2061:2008/03/04(火) 00:14:58
日付変わってしまいましたが、投下された分更新しておきました。

207名無しさん:2008/03/05(水) 00:43:31
シチュは何でもいいと思うけど、決められないというなら
1本の槍で姉妹串刺しとか見てみたいかも。

208名無しさん:2008/04/21(月) 01:12:19
また流れとまったなー。

209名無しさん:2008/07/16(水) 19:43:17
【虜舐家(りょなけ)】
あらすじ
悪魔に魅入られた旧家、リョナ家
その次期当主、栗鼠斗(りすと)
この時彼はまだ学生だった
リョナ家に住み込みで働きながら、学校に通うことになった彼より三つ年上の薄幸の少女、嬲 麗(なぶ れい)
彼の食指は刺激され、初の狩りが始まろうとしていた
ゲーム開始
麗が誤って鞄に入れた荷物で引っ掛け、高価な壼を割った現場に居合わせた
すがるような目で見つめる麗
これをネタに部屋に呼び付ける>>210
家族に言い付ける>>211
かばう>>212

210名無しさん:2008/07/16(水) 19:55:39
呼び付けどうり部屋に訪れ、落ち着かない様子であなたの出方をうかがう麗
欲望を満たすための交換条件を提案する>>213
そのまま強引に押し倒す>>214
思い直しかばう>>212

211名無しさん:2008/07/16(水) 20:02:45
あなたの父、虜舐 乱造(りょな らんぞう)に心配は要らないとやさしく慰められ、嬉しさのあまり抱きつき泣きだしてしまう麗
あなたは一生、彼女から軽蔑の眼差しで見られた


212名無しさん:2008/07/16(水) 20:06:11
あなたの優しさに麗は心を開き、本当の姉弟のように仲良く暮らした


213名無しさん:2008/07/16(水) 20:27:41
「あの壼は家一軒買える代物だ、だが使用人の落ち度は主人の落ち度
かばってやらないこともないが、しつけが必要だ
悪い子には昔からお尻叩きと決まっている
さあ、早く出せ!!」
はじめはあなたを睨み付けていた麗だが、観念してお尻をあなたにゆだねた
パンパン叩く>>215
我慢できん!!むしゃぶりつく>>214
たちの悪い冗談だと誤り、麗をかばう>>212

214名無しさん:2008/07/16(水) 20:33:45
彼女はあなたを払い除けると悲鳴をあげ飛び出して行き
わずかな荷物だけを持ってこの家には二度と戻らなかった
彼女の行方は誰も知らない


215名無しさん:2008/07/16(水) 20:51:46
麗は屈辱にほほを紅潮させあなたの仕打ちに堪えていた
彼女の苦痛に歪む顔があなたの欲情を掻き立てた
むしゃぶりつく>>214
どんな風に感じるか言わせる>>216
なんてことをしてしまったんだorz>>217

216名無しさん:2008/07/16(水) 21:04:39
彼女は目を見開き後ろを振り返ると
「あなたにはガッカリしてるのよ!!
どうして?お父様とよく似ているのに…
どうして正反対の性格なのよ!?」
と悔しそうに目に涙を溜めた
父親をネタに責めてみる>>218
もっと叩く>>215
なんてことを…orz>>217

217名無しさん:2008/07/16(水) 21:15:05
あなたは人生で初めてあやまった
泣きじゃくり嗚咽をあげる麗にどうしていいかわからなくなり、優しくキスをし体をかさね、慰め始めた
彼女はあなたにしがみつき湿った吐息と唇でキスをせがんだ
甘くて少し塩っぱい涙の味がした


218名無しさん:2008/07/16(水) 21:27:03
「なんていやらしい女なんだ!!
俺の親父に欲情するなんて!!
あの男は模範的な人間だ
お前に対する親切といたわりは、ただの同情だ
一生お前なんかに手を出さないだろうな!!」
と言い放つとあざけるように笑ったwww
俺がかわりに可愛がってやる>>219
なんてことを言っちまったんだorz>>217
もっと叩く>>215

219名無しさん:2008/07/16(水) 21:48:02
麗はあらがうことをやめ、あなたの餌食となった
彼女は少女のようにあなたの父、虜舐 乱造(りょな らんぞう)を慕い愛していた
しかしあなたに女としての性をこじ開けられた今は
女として乱造を慕い愛し始めた
その時、麗の少女時代は幕を下ろした
渇きを覚えた彼女の躰を潤いで満たしたのは、彼女の望んだ人物ではなく
彼の面差しのある同じ匂いのする不快な男だった
彼女は知らなかった
その男のしつけという名の調教が終わり、身も心もすべてを許し男を求めるようになった時
自分が雑誌のように読み捨てられてしまう運命にあることを


220名無しさん:2008/07/16(水) 21:55:31
スレッド アドベンチャー【虜舐家】
プレイする方は下記の数字をクリックして下さい
>>209
このゲームにバグがあった場合、お手数ですが他の方に
プレイしないよう書き込んでください

221名無しさん:2008/07/17(木) 00:52:48
これリョナか?
まぁ一部は確かにリョナだけどw
いずれにせよ乙

2221:2008/07/17(木) 19:13:06
確かに最近数ヶ月規模で停滞していたので、問題ないといえば問題ないのですが…
スレの流れ、ルールと違うものを投下する場合、周りの同意を求めてからにしてもらいたかったです。

223名無しさん:2008/07/17(木) 19:53:34
SSもあるし使ってないっポイからいいかと思った
>>1さん怒ってたらゴメン

241名無しさん:2008/07/18(金) 21:23:34
そんな事よりエルキスのエリクサールートの続き作ろうぜ

247名無しさん:2008/07/19(土) 02:45:34
なにこの大あぼーん祭り…

248名無しさん:2008/07/20(日) 03:55:36
俺のレスだけ残ってて吹いたw

249名無しさん:2008/08/30(土) 23:41:36
はじめまして。
ひとつBADENDまでのルートを作ってみたので投下させていただきます。
>>154氏の選択肢からのルートで、>>197氏のルートでの描写と関連を持たせてみました。
また、>>204氏の意見を取り入れさせていただきました。

自分でもちょっと凄惨になり過ぎてしまったように感じるので、グロ描写が苦手な方はご注意ください。

250名無しさん:2008/08/30(土) 23:42:39
>>154
<武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>



「おねえちゃん…お姉ちゃん…」
俯き、涙をこぼすルネスを引きずる様にしてリーファンは石造りの廊下を進む。
しばらくすると分かれ道に行き着いた。右、左、前の3つに道が分かれている。
リーファンが足を止めてどの道を進むか思案していると、突如ルネスが彼女の腕を振りほどいてそのまましゃがみ込んだ。

「お姉ちゃん…。ルネスどうしたらいいの!?逃げたいのに!お姉ちゃんが一緒なら逃げられるのに、何で残っちゃうの?
ルネス、お姉ちゃんを見殺しになんかしたくないけど恐いよ。逃げたいよ!」
恐怖、姉妹愛、身勝手、様々な感情が幼い心に渦巻き、耐え切れなくなったルネスが泣き叫ぶ。
(ルネス…。恐い思いをさせてゴメン。でもルネスと同じ恐怖に襲われながらもエルキスは必死に戦っている。そのエルキスを
救えるのはあたしとルネスしかいない今そんな我が儘は言ってられねえんだよ。…ゴメンな、ちょっと痛いけど目を覚ましてやるよ。)
そんなルネスに一瞬、同情を込めた慈愛の眼差しをむけたリーファンだったが、キッとした眼光に戻るとルネスの襟首を掴み
彼女の身体を引き起こして強引に立たせる。

「えっ!?」
パチンッ!
小気味よい音が廊下に響いた。
リーファンが掌でルネスの頬をはたいたのだ。
じわっと赤く染まっていく頬を掌で押さえながら呆然とした表情を浮かべるルネス。
そんな彼女を真正面から見つめるリーファンの目に涙が光る。
「ルネスの気持ちは痛いほどわかるよ。あたしだって恐いよ。あの女にはとても勝てる気がしない。でも3人で帰るためには
恐怖に打ち勝って、エルキスを助けに行かないといけないんだ!」
自らの心のうちを明かしたリーファンは、涙にぬらした頬をややはにかませながら言葉を続ける。
「あたしもルネスもエルキスに頼りっ放しだからな。たまには逆に助けてやろうぜ!」
「…う、うん、わたし頑張る。3人で帰るために精一杯頑張るよ。」
ルネスも呆けていた表情を緩ませ、リーファンに応じた。その笑顔は決意に満ちていた。
「おう!すげぇー武器を早く見つけてエルキスを助けに行こうぜ!ってどの方向に行くことにする?」
「わたしにはわからないし、迷っている暇は無いからリーファンが決めて。リーファンの勘、信じるよ。」
「よし、じゃあこっちに行くか」

リーファンが指し示した方向は


選択肢

<右の道へ>
<左の道へ>
<このまま真っ直ぐ>

251名無しさん:2008/08/30(土) 23:43:51
<このまま真っ直ぐ>


2人が真っ直ぐ道を進むと、やがて突き当たりにぶつかった。
目の前には木の扉がある。
この扉の向こうには何が待ち受けているかわからない。
ルネスはやや下がった位置で杖を手に魔法を放てる体勢をとり、リーファンは身構えながら扉のノブに手をかけた。
ガチッ
施錠はされておらず、拍子抜けするほど簡単に扉は開いた。
扉の向こうにも何らかの照明があるのか視界は明るい。
リーファンが扉を開け放つと、部屋の中の様子が隅々まで見て取れた。

「ここは……武器庫か!?」
リーファンが驚きの声を漏らす。
大きな屋敷の居間ほどの広さのその部屋には幾振りもの剣が立て並べられ、他に多くの盾や鎧が飾られるように
配置されており、まるで美術館のようだった。
「すごい…」
ルネスとリーファンは誘われるようにその部屋に足を踏み入れる。
間近で見ると武具はいずれも恐ろしく高価だと思われる精巧な物で、2人は目を奪われた。
だが、しばらくするとリーファンが何かに気づいて呟く。
「あたしやルネスが使える武具はなさそうだね。」
「うん、お姉ちゃんでしか使えなさそうなものばかりだね。」
そう、この部屋に飾られている武具は全て戦士用の物だった。
それも細身の剣や華麗に装飾された軽装鎧など女性にふさわしい物ばかりで、2人はエルキスがここにいないことを嘆いた。

「しかたない。エルキスのために簡単に持っていけそうな物を持っていくか。」
リーファンはそう言って、傍らの剣を持ち上げる。
(わたしにも持てそうなものってあるかな?お姉ちゃんのために剣や盾を持っていきたいけど重そうだし……)
ルネスは辺りを見渡し、軽くてしかも役立ちそうな武具を探すがなかなか見つからない。
しばらく探し物をしていた彼女だったが、ふと部屋の奥にある細長い箱が目に止まった
(あっ!?あの中に小物が入っているかな?ひょっとしたら、わたしやリーファンでも使える物があるかもしれない。)
「ルネス、どうした?あたしが長剣を一振り持ったから、ルネスは何も持たなくてもいいぞ。さあ、行こう。」
細長い箱に心惹かれるルネスに、エルキスのためにも先を急ごうとするリーファンが声をかける。

ルネスががとった行動は?


選択肢

<箱を開ける>
<開けずに部屋から立ち去る>

252名無しさん:2008/08/30(土) 23:45:10

<箱を開ける>


「リーファン、ちょっと待って!あの箱の中を見てみたいの!」
そうルネスは声を上げ、箱に近づく。
間近で見下ろしてみるとその細長い箱には様々な装飾が成されていた。
箱の縁には金や銀で見たことも無い魔獣の様なものの姿が幾つも彫られ、それを取り巻くように大輪の花の彫刻が見て取れた。
そして細長い箱のちょうど真ん中には実物大の剣のレリーフが目にも眩い宝石で模られている。
「おおっ!すごい箱だな!?」
ルネスと同じように箱に近づいたリーファンが、彼女の肩越しに感嘆の声を漏らす。
「でも、こんな彫刻がしてあると武具を入れる箱ってよりは王様や姫様が使うような物入れみたいだぜ?…もしくは、」
「うん、わたしもそうかなって思うんだけど一応中を見ておきたいの。」
疑問を呟くリーファンに同意を即座に返すルネス。そのせいで女武道家は続いて言おうとした言葉を飲み込んだままにした。

『棺桶みたいだな』

という言葉を。



「あらあら、人が大事な物を保管している部屋に盗みに入ったのですか?かわいいネズミさんたち。」
背後から聞こえた女の軽い声に即座に振り向く二人。
そこにはいつ現れたのかロゼッタの姿があった。
「ちくしょう……」
「あっ、ああぁ…………お、お姉ちゃんは?……えっ!?」
歯がみするリーファンと恐怖と驚愕が隠せないルネス、そしてルネスが何かに気づいた。
「そ、それ!?……お姉ちゃんの…剣…」
同時にリーファンも気づいて愕然とした表情を浮かべる。
ロゼッタの右手に握られている抜き身の剣、それは良く見慣れたエルキスの物だった。
エルキスが食い止めているはずのロゼッタが目の前に現れ、しかもその手には戦士の命とも言うべき剣が握られている。
その光景が意味するものはたった一つだった。
「そんな…嘘でしょ………お姉ちゃん…」
心に受けた衝撃で腰の力が抜け、ぺたんと座り込むルネス。

「くそおおおぉぉっ!」
自棄になったようにリーファンはもう届けるべき人がいなくなった長剣を投げ捨てると、雄叫びを上げロゼッタに殴りかかる。
剣を手にしているロゼッタだがそれを使うこともなく、繰り出されるリーファンの拳を最小限の動きでただ避けていく。
余裕に満ちた表情、時たま凍りついたように動けないルネスに余所見をしておかしそうな笑みをこぼすロゼッタと、
目を見開き顔を紅潮させながら拳や脚を繰り出すリーファン。
(実力が違いすぎる……あいつはただ遊んでいるだけなんだわ。)
その戦いの様子を見つめるルネスにも付くべき勝敗ははっきりわかった。ロゼッタが攻撃する気になったら一瞬でリーファンの
命は絶たれるだろう。そしてルネス自身も……。

間近に迫った死の恐怖に、彼女は箱にすがりつくようにしてその留め金を外す。
状況を打開する武器を求め、起死回生の一縷の望みを賭け、箱の蓋を押し開けたルネス。
「っ!?……いやああああぁぁァァァァァ!」

彼女の瞳に映ったもの、それは更なる絶望だった。

253名無しさん:2008/08/30(土) 23:46:22
ルネスのただならぬ叫び声で我に戻ったリーファン。
彼女はバックステップでロゼッタとの間合いを離すと、構えたまま僅かに瞳をルネスのほうに向ける。
「ルネス、どうしたっ!?何があった!?」
箱の中を覗き込んだまま、表情を凍りつかせ微塵も動かない魔導師に問いかける。
リーファンからは箱の中の様子は見て取ることが出来ない。

凍りついたようなルネスの瞳に映る箱の中身。
彼女より幾分背が高く、憧れだった長身。筋骨隆々ではなく、女らしい丸みを残したまま引き締まった美しさを見せる四肢。
それはルネスが良く見慣れたものだったがそうではない部分も目に入る。
鎧はいたるところが破損し、所々には肌を切り裂かれ血が滲んでおり戦いの激しさを物語っていた。
美貌を支える首筋にはくっきりと十指で握り締められた赤黒い痕が肌を汚している。
そしてその上の美貌は無残なものだった。
瞳は大きく見開かれ黒目とのコントラストを形作っていた白目の部分は真っ赤に充血し、威勢の良い声が発せられていた口唇も
苦悶を吐き出すように大きく開けられ歪んだ形だった。
凛々しい戦士の顔や、姉としての慈愛の笑顔をかつては見せていた顔形は恐怖、苦悶、哀願、絶望といった負の感情を貼りつかせ
既に青紫色の死相が浮かび上がっていた。

こうしてルネスはエルキスと最悪の形での再会を果たしたのだった。
だが彼女らにとっての悲劇、ロゼッタにとっての暇つぶしの喜劇はまだ終わらない。


「リ、リー、ファン……おね、お姉ちゃんがぁ。っがぁッ!」
振り向いてリーファンと視線を合わせたルネスが歯の根が合わずに口をパクパクさせながら、目にした絶望を伝えようとする。
だが百聞は一見にしかず、リーファンもルネスの追体験をすることになった。
ルネスが言葉を途切れさせ、息を詰まらせたのは背後から首根っこを掴まれたからだ。
最愛の姉、物言わぬ骸と化した筈のエルキスに。
「あがぁッ!リー、リーファンっ!た、助けっ、ぐぅッ!」
「ルネスっ!…ヒッ!?……エ、エルキス!?」
後ろから掴まれているため何とか声を出せるルネスが必死に助けを求める。
その声に応じようとしたリーファンが気づいた、立ち上がり棺桶から姿を現したエルキスの変わり果てた姿に。
エルキスは左腕一本でルネスを掴み、宙に持ち上げている。足をばたばたさせ、両手で姉の手を外そうとするルネスだが
非力な彼女ではどうしようもない。

254名無しさん:2008/08/30(土) 23:47:26
「ルネスっ!」
目の前の光景を必死に整理するリーファン、戦士としての心を持つ彼女は驚愕しながらもエルキスが既に骸と化している現実を
受け入れた。おそらくロゼッタの魔法で動かされているのであろうとも推測した。
なら苦楽を共にしてきた親友、エルキスの骸を打ち砕いてでもルネスを助け出して二人でこの場を脱すると決意を決め即座に
行動に映そうとした。
だがそんな彼女も動転していたのか、それとも先ほどの戦いで一切攻撃をかけてこなかったのでつい気を許してしまっていたの
だろうか、前門の虎たるエルキスの他に背後に後門の狼たるロゼッタに気を配ることは無かった。

「今助けてやるぞ!ルネ……えっ!?」
声をかけると共にルネスのほうに駆け寄ろうとしたリーファン、だがその声は途中で途切れた。
愛すべき魔法使い、親友の妹の名を口に出したときに『ザシュッ』という音が聞こえた。耳から入った謎の音に訝しげな色を
浮かべる彼女の瞳。
「えっ!?あっ、はッ……ああッ!?」
その瞳に映ったのは、形良い乳房の間、胸の谷間から貫き出た鮮やかな銀色の刃だった。
「戦いの最中、弱いネズミさんが余所見をしてはいけませんよ?」
「ああぁぁぁああああァァッ!」
頭のすぐ後ろ、耳元からロゼッタの囁き声が聞こえ、剣に貫かれた女武道家の傷口から血が溢れ出す。
真っ赤な鮮血がリーファンの果実のような胸の膨らみや、引き締まった腹筋を服越しに濡らしていく。
「えあっぁああ!あがっ!ごふゥッ!」
胸の真ん中から激しい痛みが全身を駆け巡り、血が流れ出るほど四肢から力が抜けるような感覚に襲われるリーファン。
さらに彼女の朱色の口唇を割って吐き出された鮮血が顔や首筋を汚す。

「うふふ、痛いでしょう?どう?自分の血で身体を染め上げられる感触は?」
楽しそうに問い掛けるロゼッタ、だがリーファンは聞こえていないのか無反応だ。彼女は剣の切っ先を見つめたまま、力が抜けた両腕を
必死に動かし胸から突き出た剣に沿わせる。
「御返事はどうしたの?…あらっ、抜きたいの?剣を抜きたいのかしら?……ならそうおっしゃってくださればいいのに。」
刃を両手で握るとともに乳房の間から湧き出る鮮血を何とか押さえようと掌を当てるリーファン。
そんな彼女の様子を目にしたロゼッタは、一気に剣を引き抜いた。

255名無しさん:2008/08/30(土) 23:48:29
「いぎゃぁぁああああァァッ、ブハガァッ、アガぁっ!」
「あははははっ!いい声!」
引き抜かれる刃の動きで、両掌を切り裂かれ絶叫するリーファン。口唇の間から悲鳴と共に鮮血が噴出す。
武道家として拳に厳しい鍛錬を加えていたにもかかわらず美しさを保っていた十指は、切り落とされたものこそ無かったが
皮一枚でしか繋がっていない指が幾本もあり、もはや力強い拳を放つことは出来そうになかった。
「あたしのォ!あたしのゆびぃがァァ!」
両掌を顔の前にあげ、信じたくない光景を目にして絶望の叫びを放つリーファン。
彼女は失血と共に下肢の力が抜け、また紛いなりに支えになっていた剣が引き抜かれたことで自らの身体を支えきれずに
後ろのロゼッタにもたれかかるような姿勢になってしまっていた。
「ふふ、可愛い。勇ましい娘が泣き叫ぶ姿は本当に可愛いわ、エルキスもそうだったのよ。」
もたれかかってきたリーファンを左腕で抱き留めるロゼッタ。
彼女は右腕に握っていた剣を手放し床に落とすと、そのまま一気に右腕を女武道家の傷口に貫き入れた。
「あぎぎぃぃぃイイッ!そ、そんなっ、腕がぁ!?」
「ああっ!命の温かさが感じられますわ。」
胸の傷から貫通したロゼッタの腕、痛みと信じられない光景に狂乱するリーファンにロゼッタは血塗られた右腕をグーパーさせながら
白々とした感想を吐く。

「えああああぁぁァァッ!痛いッ!痛いよおぉぉォッ!抜いてぇぇェッ!腕抜いてぇぇッ!」
今までの惨劇に言葉一つ出せずに呆然とした視線を向けるしかなかったルネス。
目の前のリーファンの身体は真っ赤に染まり、足元の床の石畳には血溜まりが形成されている。
今までの旅において、男勝りな中にも垣間見られる優しさを持つリーファンはルネスにとって第2の姉のような存在だった。
敵との肉弾戦をこなす武道家という職種の特性上、リーファンの滑らかな肌に傷が絶える事は無かったが、幼いルネスが思わず
顔を青ざめさせるような激しい傷を負ってもリーファンは泣き言一つ漏らすことは無かった。
そのリーファンが泣きじゃくりながら哀願の言葉を叫ぶ。
すでに姉は命を失い冷たい骸を操られて妹である自分の首に手をかけ、姉のような女武道家は闘争心を失い深手を負っている。
その光景にルネスの心は絶望に染められていく。

256名無しさん:2008/08/30(土) 23:49:38
「痛いいいぃぃィィッ!エルキスッ!ルネスッ!助けてええぇぇェェッ!」
とうとう、もはや死に敵に操られる存在となっているエルキスと、捕われているルネスに助けを求める声を上げるリーファン。
瞳からは光が失われつつあり、多くの血が流れたことで命の灯火が消えかけているようだった。
「あらっ!?だいぶ温かさが失われてきましたね?」
「あ、あぐッ!痛いのもやだよぉ。寒いのもやだよぉッ!許してくださぁぁあいっ。」
体温の低下に気づくロゼッタに、歯をガタガタ鳴らしながら哀願するリーファン。
その声は弱々しく、彼女の死が間近に迫っていることを示しているようだった。
「あらあら、冷たい血液って肌に付くと汚れが落ちにくいのよね。ということで今まで楽しかったわ、武道家さん。」
そう言うロゼッタの右腕がヌジュリという音と共にリーファンの背から引き抜かれる。

「あぎゅッ!」
支えを失ったリーファンの身体はそのまま前のめりに石畳に崩れ伏した。
全く受身を取ろうとせずに床に叩きつけた彼女の顔からかすかな声が漏れる。
「し、死にたく……ない。死に…たくない。し……死に、たく………ないよぉ……」
うつ伏せのまま血溜まりに身体を浸けた彼女は少しでも恐怖の対象であるロゼッタから、傷付いた身体を動かし必死にルネスの方へ
這って逃れようとしていた。
「ははっ!エルキスと同じように命乞いするのね!でーも、今のあなたの姿、ゴキブリみたいでちょっと可愛くないなぁ。
さて、ゴキブリは潰さないとね!」
瀕死の女武道家を見下ろしながらそう言い放ったロゼッタ。
彼女はつかつかとリーファンに歩み寄ると右脚を振り上げると一気にリーファンの身体に踏み下ろした。
……硬く尖った靴のヒールがちょうど女武道家の深い傷口に突き刺さるように。

「イギっ!」
ロゼッタの足に踏みつけられた瞬間、リーファンの身体が大きく跳ねる。
伏せられていた頭も跳ね上がり、ルネスはその表情を目にして驚愕した。
かつて溌剌とした輝きを見せていた瞳は、光が完全に失われて虚ろな視線をルネスのほうに向けていた。
形良かった鼻梁は石畳に叩きつけられたことでひしゃげ、血と流す肉塊と化していた。
口唇も折れた歯によって傷つけられ、傷を踏みつけられた悲鳴を上げた形のまま大きく開かれている。
恐怖と絶望を貼りつかせたその表情は、棺桶を開けた時に目をしたエルキスの死に顔にそっくりだった。
ルネスにとってはとても長い時間リーファンの顔は上げられたままに思えたが、やがて再び床に落ちた。

そしてリーファンの身体は身動き一つ、かすかな息遣いさえ漏らすことは無くなった。


もはやルネスを守る者はいない。彼女の命は彼女自身の選択にかかっている。


選択肢

<何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>
<恐怖で身体が凍りつき何も出来ない。>

257名無しさん:2008/08/30(土) 23:51:41

<恐怖で身体が凍りつき何も出来ない。>


呆然としているルネス。
突如、ルネスの首を掴んでいたエルキスの手が離される。
「あぐっ、ごほッ!ごほッ!」
ドサッと言う音と共に石畳に落ちたルネスは咳き込んで痛む後ろ首に手を当てる。
と、その手に何か冷たいものが触れた。
振り向くルネス。
彼女のすぐ後ろにはエルキスとロゼッタが立っていた。そしてロゼッタの手に握られているのはリーファンの身体を貫いたエルキス愛用の剣。
その切っ先がルネスの首筋に触れられていたのだ。
「あッ!あっ……あッ、あ……」
恐怖に身を凍らせるルネス。全身から冷たい汗が噴出す。
その汗と剣から滴るリーファンの血が首筋を混ざり合って流れる。
「あなた、勇ましい娘のようには見えないし、わたしの好みではないわ。だから一刀で終わらしてあげる。」
つまらなさそうに告げるロゼッタ。
そしてそのまま剣を振り上げる。

(お姉ちゃん……助けられなくてごめんね。今、側に行くから。)
ルネスが最後に目にした光景は虚ろな瞳で彼女を見下ろす姉の骸だった。
エルキスに謝罪の思いを胸にしたルネスの頬を一筋の涙が伝った瞬間、彼女の意識は永遠に絶たれた。

258名無しさん:2008/08/30(土) 23:53:04
お読みいただきありがとうございます。
リーファンを手ひどく虐めてみましたw その反動でルネスへのリョナ描写がほぼ無くてすいません。

『エルキス救出ルート』、『全滅別ルート』、『ルネス単独脱出ルート』などいろいろ分岐を作れるかなと思い、選択肢を3箇所も作ってしまいました。
もし続きを作成していただける方がいらっしゃいましたらどうぞお願いします。

259名無しさん:2008/08/31(日) 18:19:41
は、半年振りに新作が……ッ!
ロゼッタお嬢様大活躍でたまらんですな。
「勇ましい少女を痛めつけるのが好き」ていう自分の主義をもってるのもイイ!
選択肢次第では、ロゼッタを倒せたけどエルキスは犠牲に……なEDも後味悪くて良いかもね。

新作告知としてあげますよ。

260名無しさん:2008/08/31(日) 22:08:40
続きではないのですが、触発されて
197の後日談的なものを書いたので投下します。

後日談というよりもバックストーリーに近いかも。

ゲームブックという形式にはならなかったのですが、お許しを

261名無しさん:2008/08/31(日) 22:10:44

 ――――「死」に魅入られたのはいつからだったか。

エルキスの首を絞めながら、ロゼッタはふと、そんな無関係なことを考える。
眼前の哀れな娘の恐怖と懇願の表情が滲んだ瞳を見つめて、更に思考の展開は加速する。

 ――――あれは、まだ王立魔導院の高等部に通っていた頃・・・

クラスの落ちこぼれだったロゼッタはいじめられていた。
彼女の父は、街の権力者でありながら教育には厳格な人で、娘の境遇を知りつつも、
子供同士のいざこざに大人は介入せず、自分の力で解決させる、そんな考えの持ち主だった。
父の言いなりであった彼女の母の関しては言わずもがな。

毎日が地獄と形容しても過言ではない日常。

しかし、ふと父の書斎に足を踏み入れたとき、そんな日常は音を立てて崩れ去り
彼女を取り巻く環境は一変する。

彼女の父は骨董品の収集という趣味があった。
書斎でロゼッタの目を引いたのはその中の一つ、古ぼけた本。

「禁呪の本」

その目次には現代では封じられた様々な魔法が載っていた。

悪魔との契約(コントラクト)
屍術(ネクロマンシー)
誘惑術(テンプテーション)・・・

彼女は、自分の魔法の才能の乏しさに異常なコンプレックスを抱いていた。
魔導院とは、魔法の成績が全ての世界。才に乏しきものは自然に淘汰される。

(力が欲しい。他人に馬鹿にされないほど強大な力が。
 その為には、悪魔に魂を売ってでも・・・!)

かくして、彼女は自らの魂と引き換えに、悪魔の魔力を得る。
人智を超えた強大な魔力を。

262名無しさん:2008/08/31(日) 22:12:31

翌日、王立魔導院で彼女は初めて人を手にかける。

犠牲者は、街一番の貴族の娘エミリアとその取り巻き。
表向きはクラスの優等生。そして、彼女のいじめの中心人物であった。
その日もエミリアは日頃の憂さを晴らそうと、
取り巻き2人とロゼッタを人気の無い庭園の隅に呼び寄せたのだ。

「今日も魔法の実験道具になってくれる?グズッタ」

エミリアの言葉に、いつもなら怯えたような、媚びたような表情を浮かべるロゼッタが
今日は不適な笑みを浮かべている。目の色が赤いのは寝不足か。

「なに笑ってんのよ!生意気ね」

怒鳴りながらロゼッタに魔力を向けると、石つぶてが彼女に飛んでいく。
瞬く間にあちこちに青痣ができる。
しかしそんな状況下でもロゼッタは嗤っている。

「エミリア、こいつ、頭おかしくなったのかなバッ!?」

取り巻きAが言葉を発すると同時に、頭が弾け跳んだ。
首からぶしゅううと鮮血を迸らせ、頭を失った体が崩れ落ちる。

「――――え?」

一呼吸の後、絶叫がこだまする。

「いやああああああぁぁッッ!」「ひいいいいいぃぃぃッ!」

腰を抜かすエミリア。
走って逃げ出す取り巻きB。

ロゼッタがBを睨むとBは盛大な業火に包まれた。

「いやああああああああ!熱い!熱いいいぃ!ぎゃあああああああ!あああぁぁぁ・・・!」

瞬く間に骨まで残さず炭と化すB。

「次はアナタね、エミリア。フフ・・どうやって逝きたいかしら?選ばせてあげてよ?」

263名無しさん:2008/08/31(日) 22:13:49

「ひ・・あ・・や・・やだ・・やめろお・・やめて・・殺さないで・・お願い・・」

顔を涙でぐしゃぐしゃに濡らし、失禁しながら命乞いをするエミリア。

なんて無様な。これがいつも私を蹂躙してきたエミリアか。
高度な魔法の実験とかぬかして、おもちゃみたいな魔法をぶつけて喜んでたエミリア。
それが、いま、私の圧倒的な魔力を前に、見るも無残な醜態を晒している。
これが、力。これこそが、私の求めていたもの。

「お願いだからあ・・ゆるし・・え・・?あ・・はっ・・・?」
(い・・息が・・できない・・!?)

「真空の魔法よ。エミリアいつも言ってたよね?
ロゼッタと同じ空気を吸いたくないって。グズがうつるって。落ちこぼれるって。
言ってたよね?ね?ね?」

「・・言・・て・・な・・ごめ・・なさ・・おねが・・・やめ・・はッ・・あぁ・・」
窒息の苦しみからか、再び失禁して泡を吹くエミリア。
その後もぴくぴくと痙攣していたが、やがてそれも止まる。


エミリア、今ならあなたの気持ちも解るよ。
人を蹂躙するって、なんていう快感なんでしょう。



 ――――「死」に魅入られたのはいつからだったか。
     
     なんで今、そんな突拍子もないことを考えたのか、解った。
     似てるんだ。あの時の状況に。
     この娘の顔もどこかエミリアに似てるかも。
     ああ、この表情、そっくり。ああ、頭の中が真っ白に――――

ロゼッタの手の中でまた一人、少女が息絶えた。

2641:2008/09/06(土) 18:01:47
投稿ありがとうございます。
サイトの方、ここまで反映しました。

265名無しさん:2008/09/06(土) 22:31:15
お、1さんだ。一応まだ死んではいないんだなここも。

266名無しさん:2008/09/07(日) 00:42:15
まとまった投稿さえあればまた賑わい始めるかもね。

267名無しさん:2008/12/18(木) 20:39:47
現在、(募集中)になっている箇所を図にまとめてみた。BADENDまで書かれている分岐は省略。
★マークの付いているところが続き待ちの選択肢です。
まとめてる時に気付いたんだけどttp://ryonabook.web.fc2.com/data/021.htmlの<恐怖で身体が凍りつき何も出来ない。>は、
続きがあるのに(募集中)を削り忘れてますね。


①<さっそく闘技場へ>ルート
   |   ↓
   | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
   |   |
   |   ├→ ★<「ホーリーアーマーを私にかけて。私があいつを倒すから」>
   |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
   |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
   |
   └→ <このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
        ↓
      <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
        |
        ├→ ★<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
        ├→ ★<このまま戦う>
        ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           ├→ ★<右の道へ>
           ├→ ★<左の道へ>
           ↓
        <このまま真っ直ぐ>─→ ★<開けずに部屋から立ち去る>
           ↓
         <箱を開ける>─→ ★<何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>         


②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├→ ★<何も買わない>
   |    ├→ ★<エリクサーを買う>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→ <これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>─→ ★<闘技場へ>


<右の道へ><左の道へ>は、自由度が高そうなので新展開をしたい人にオススメかも。
モンスターにせよトラップにせよ出したいものが出せるでしょう。
死霊orロゼッタお嬢様と戦う選択肢は、全体的に死亡フラグが準備完了。
「とにかく惨殺シーンを書きたい!」という人なら割とよりどりみどり状態かと。
<エリクサーを買う>は、ちょっと難しそうですがそのぶんだけやりがいはあるでしょう。

2681:2008/12/19(金) 00:47:59
まとめてくださってありがとうございます。 本来なら自分がやらなければいけない内容なのでしょうが…
指摘された点は修正しました。

269名無しさん:2008/12/28(日) 18:10:45
ttp://katamerukyarameru.spaces.live.com/blog/cns!BE98BC331E0FF807!590.entry
ttp://d.hatena.ne.jp/doublecrown/20081220/1229779930
クイーンズブレイド出してるところが、
ファイティングファンタジー(火吹き山の魔法使いと同シリーズ)からなんかリメイク版を出してるようですね。

あ、あと「>>141から分岐。<<このまま戦う>>を選択。」を執筆中です。暫くお待ちください。

270名無しさん:2008/12/31(水) 23:40:45
>>141から分岐。<このまま戦う>を選択。

 「グゥゥゥウォォォオオオオッ!!」

 少女達を見下ろしながら、殺意に満ちたミノタウロスの咆哮が室内を震わせる。

 「ごめん、ふたりとも! 覚悟を決めてッ!」

 エルキスの下した判断は戦闘をこのまま継続することだった。強大なミノタウロスに加え、ロゼッタの実力も未知数。
万全には程遠い今の状態でまともに相手をするべき相手ではない。
 だが、それは逃げることを選んでも同じことだ。逃げ切れる目算など考えるまでもなく、またその時間もなかった。
 だから、戦う。エルキスにとって、それがこの状況下で最も生存に近いと思える道だった。

 「……あら、逃げないのですね」

 エルキス達の決意を見たロゼッタは数歩下がり、壁に背を預けた。余裕の見物を決め込むつもりなのだろう。
 ミノタウロスは、たまたま手近な位置に立っていたエルキスに狙いを定めると戦斧を構え直した。

 (……来るッ!)

 少女の身体など一撃で両断できるだろう横薙ぎの豪刃が唸り来る。
対するエルキスは冷静にそれを見切り、引き付け、屈んで避けてみせた。
戦斧が頭上を振り抜けると共に、空を切った刃の起こした風がエルキスの髪と衣服を煽り乱す。
ミノタウロスの攻撃は決して鈍重なものではなく、むしろ予想よりも鋭い程だったが、エルキスが回避に専念すればどうにかしのげ

る動きと速さだった。
 第二撃。突き出される戦斧はまたしてもエルキスを捉えられない。だが、いつまでも防戦一方ではいられないだろう。
体力も集中力も無限ではなく、ミノタウロスを倒せたとしてもその次には無傷のロゼッタが控えている。
 最小限の動作と最小限の消耗でミノタウロスと死のダンスを踊り続けるエルキスを見守りながら、残るふたりは隙を窺っていた。
振り回される戦斧が巻き起こす暴風で迂闊に近付けず、そうするほかはないのだ。
もしその刃を一度でも受ければ、少女達を表す言葉は「人間」から「肉塊」へと容易く変わってしまうだろう。
 リーファンはロゼッタを警戒しつつ、全身の力で踏み出せる一瞬を待っていた。
じっくり待つのを好む性分ではないが、エルキスが命がけで掴もうとしている機を逃すわけにはいかない。
 ルネスは両手に輝く魔力を集束させ、いつでも必殺の一矢を射ち出せるよう身構えている。
その両手に傷はない。ルネスの掌を貫き、身体を吊り上げたあの鈎針の痛みは幻影の魔法だったのだ。
エルキスの振るう装飾剣が鎖を切った途端、鎖が縄に変じたことからもそれがわかる。
恐怖とは、それ自体が幻影のようなものだ。己自身の「怖い」という思い込みが恐れる心をつくり出す。
今、姉の闘いを見守るルネスの心には勇気の炎が波立っていた。
 勝負は一撃で決めなければならない。
ミノタウロスの側からすれば、少女達が渾身の一撃を放った後に生じる程度の隙さえあれば充分なのだから。
死のダンスは無慈悲に続く。

 「ブゥォォォオオァァァアアアアッ!」

 怒りの咆哮。十数度目の空振り。ミノタウロスの巨体はぐらりと体勢を崩し、無防備な顔がルネスの射程内に晒された。

 ──今だッ! 瞬間、事前に示し合わせたわけでもないのに関わらず三人の意思が重なる。

 「そこ!」
 「せいッ!!」
 「ハアァッ!!!」

 最初にミノタウロスを怯ませたのは、その顔めがけてルネスの放った魔力の弾丸だった。
熱と光の塊は輝き弾けてその半面を焼き、右目を奪う。大きく体勢を崩して膝を折り、片手を地面につくミノタウロス。
そこにリーファンが迫る。狙いは戦斧を握るミノタウロスの拳。その親指。
指の関節目掛けて突き出された拳が見事それを砕くと、指が開かれ、大きな手から戦斧が滑り落ちる。
そして、とどめとなる一撃を決めるべくエルキスが走り込む。
ミノタウロスが体勢を崩したことで、その頭部はちょうどいい高さに下りてきていた。
残った左目を目指して装飾剣の切っ先が真っ直ぐに飛ぶ。ずぶり、とめり込んだ刃は勢いよく眼球を潰しその奥の脳まで貫いた。
 一瞬の間隙から、少女達が反撃に転じて僅か数秒。信頼と覚悟が紡いだ連携は鮮やかに魔獣を屠ったのだ。
エルキスが装飾剣を引き抜くと、断末魔の叫びを上げる間も無く絶命したミノタウロスの巨体は、ずん、と倒れ伏せる。
勇気ある少女達は、強大なるミノタウロスに勝ったのだ。

271名無しさん:2008/12/31(水) 23:42:10
 だが、その安堵を噛み締める暇などない。

 「お見事ですわ。皆さん」

 もたれかかっていた背を壁から離し、ロゼッタはゆっくりと両の手を打ち合わせた。白々しい拍手だった。

 「……次は、あなたよ」

 切っ先でロゼッタを指し示し、呼吸を整えながら言い放つエルキス。
だがこれも虚勢だ。もし、次に倒れればもう立ち上がれないだろう。ミノタウロス戦での疲労と消耗は、その域まで達していた。

 「そうですね。では、始めましょうか」

 ロゼッタが広げた掌をかざすと、その手から眩い光がほとばしる。
ここに至るまでに心身とも限界に達していた三人にそれを迎え撃てる余力はない。
ふらついて構えを崩さないようにするのがやっとのまま、ただ無抵抗に閃光を浴びるだけだ。

 「……ッ!」

 歯を食いしばり、耐えようとするエルキス。だが、そこには覚悟していたような痛みや熱さは訪れなかった。

 「……これ、回復魔法……!?」

 ルネスが驚きの声を漏らす。その言葉の通り、ロゼッタの手から広がる光は優しく、暖かいものだった。
汚れた衣服を脱ぎ捨てるように、身体にのしかかっていた形なき重さが剥がれ落ちていく。
湧き上がる活力が全身を満たし、小さな傷は見る間に消えていく。高度な癒しの術だった。
 やがて光は止んだ。

 「どうして……?」

 戸惑い、問いかけるルネス。

 「だって、全力で来てもらわないとつまらないんですもの」

 たとえ万全の状態の三対一であろうとも、決して自分を倒せはしない。所詮は遊び。少女たちは儚く千切られる運命。
それだけの自信がロゼッタにはあった。

 「さあ、仕切り直しです。おいでなさい」
 「……ふっざけるなぁぁぁぁああああッ!!」

 全身から激情を撒き散らしながらリーファンが突進する。ロゼッタは余裕の笑みを崩さず、身体を左にずらした。
リーファンの拳を華麗にかわすと、優雅さを崩さぬ動作でカウンターの拳を腹部に打ち込む。

 「ガはぁッ!!」

 ロゼッタの拳打は、その細腕に反した威力でリーファンに痛みを伝えた。重い。そして痺れるような感覚が腹から手足へと走る。

 「……ぐッ」

 よろめくリーファンが、がしりと掴まれる。
そのまま浮遊感に襲われたかと思うと、視界の中で壁と天井が踊り、気が付けば背中に叩きつけられる痛みを感じていた。
投げられた。そう理解するより早く、リーファンの腹にロゼッタの足が踏み落とされた。

 「──がぁッ!」

 だらしなく両腕と両脚を広げ、全身で大の字を形作りながら悶えるリーファン。
先程の拳打と同じく、ロゼッタの踏みつけは手足を振るわせる独特の痺れを伴った。
その痺れは、リーファンが反撃できる可能性をゼロにするに充分なものだった。

 (……手足が、動かない……、畜生……、ちく、しょう……ッ!!) 

 手足の麻痺は、すぐには治りそうにはなかった。見下ろすロゼッタの唇と眉が、愉悦の形に歪む。

 「リーファンッ!」

 動けないリーファンに更なる追撃を加えようとするロゼッタに、駆け寄ろうとするエルキス。
だが、背後からの悲鳴にそれは阻まれた。

 「きゃああッ! お姉ちゃん!」

 ルネスの悲鳴。エルキスが慌てて振り向くと、死んだはずのミノタウロスがルネスの両腕を掴み持ち上げていた。
その右半面は焼けただれ、潰れた左目からは血の涙が流れ落ちている。

 (生きていた!? 違う、あれは魔法で死体を動かしているんだわ!)

 迂闊だった。ロゼッタが強大な魔力を持ち死霊事件の黒幕であるのなら、この程度のことは造作もないに違いない。
 エルキスに選択が迫られる。ミノタウロスからルネスを助けるか、ロゼッタからリーファンを助けるか。
この危機にあっても冷静さを見失わなず、一瞬でエルキスは決断した。

  <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>
  <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>

272名無しさん:2008/12/31(水) 23:44:11
  <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>

 (ルネスッ! 今助けるからッ!)

 最愛の妹を、動く死体となったミノタウロスから取り戻さなくてはならない。
しかし距離を詰めて斬りつけようと駆け出した途端、エルキスは勢いよく転倒した。

 「……くっ」

 なにかがエルキスの足首に絡み付いている。ロゼッタの右手から、光る紐のようなものが伸びていた。

 「隙だらけですよ?」

 そう言うと同時に、左手の指をぱちん! と鳴らす。それを受け、短剣を模った形状の発光体が四本現れる。
光の刃は速やかに落ち、起き上がりかけでちょうど四つん這いの体勢となっていたエルキスの両手と両ふくらはぎを貫いた。

 「あぁぅッ!」

 エルキスの四肢は地面に縫い止められた。だが、光る短剣が貫通した四箇所はいずれも血を流していない。
ミノタウロスと戦う前にルネスを吊り上げて涙を流させたものと同系統の術である。
実体を持たない刃で、痛覚と「動けない」という錯覚だけを与える幻影だ。
だが、魔術の知識に乏しいエルキスにそこから逃れる術はない。

 「はい、お終いです」

 ロゼッタが宣言する。少女達の生殺与奪は、もう自分の手の上に乗ったのだと。
 エルキスの命はもうロゼッタのものだ。
 リーファンの自由はもうロゼッタのものだ。
 ルネスの未来はもうロゼッタのものだ。

 「……え? あっ、いやぁッ!」

 ルネスが悲鳴を上げる。今までただ身体を拘束しているだけだったミノタウロスの死体が、その両腕に力を込め始めたのだ。
人体の限界強度を遥かに超えた握力が、ルネスの両腕を握り潰そうとしている。ゆっくり、ゆっくりと。

 「あ、あぁ……! あ、あ、あ、あぁぁぁ……ッ!」
 「…………ッ!」

 這いつくばるエルキスにできることは、なかった。姉妹が揃って泣き叫べば、あのロゼッタはますます喜ぶだろう。
そう思って歯を食いしばることだけが抵抗だった。強がっていたかった。
強い姉でいたかった。妹の前で、弱く小さな姿など見せたくなかった。
そうすれば、きっと怖がりな妹にだって痛みに負けない勇気を与えられると思ったから。
 けれど、涙は止められなかった。
 ミノタウロスがルネスにかける力は少しずつ強くなっていき、やがてその瞬間は来たる。

 「あ、……いぃぎぃぃいっいあああああああああーッ!!」

 破ける皮膚。潰れる肉。砕け折れる白い骨。噴き出し溢れる真っ赤な血液。
 脆い。ルネスの両腕は、エルキスの目の前でボロ屑のようにねじられ、引き千切られた。
大量の出血とともに、両腕を失ったルネスの身体が地に落ちる。
意識も闇に沈みゆく中、どこを見ているのかもわからない眼から流れ落ちる涙が、うつろな顔を濡らしていた。
傷口から命が流れ出し、血溜まりが広がっていく。すぐにその灯火も吹き消されるだろう。

 「…………」
 「さて」

 依然、無言のままで手足を床に縛り付けられているエルキスにロゼッタが歩み寄る。
ロゼッタが引き寄せるように指を動かすと、エルキスの手の下にあった装飾剣が浮き上がり本来の主の元へと還った。
剣を鞘に戻すと、ロゼッタはルネスの方へと眼を向ける。見つめる先にあるのは引き千切られた両腕だ。
視線に魔力を乗せ、浴びせる。ふたつの腕は静かに浮き上がり、エルキス目指して飛んだ。

 「……く、はッ」

 近付いてきたロゼッタへ向けてなにか言おうとしたエルキスの首に、飛来したルネスの手指が食い込む。
無力な姉を、愚かなリーダーが招いたこの運命を責め苛むように指が絞まる。
ごめんね、という言葉を発する程度の自由すらエルキスにはもう残されていなかった。

 「あ、……が、は……!」

 すぐに妹の後を追うだろう。それまでの間、ロゼッタはその死をじっくり観察することにした。
残ったもうひとりにはどんな殺し方が相応しいだろうかと考えながら。

 一方、リーファンは……。

  <どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
  <手足の麻痺は強力で、すぐには回復しそうにない。ただ嬲り殺されるのを待つしかできない>

273名無しさん:2008/12/31(水) 23:47:14
  <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>

 「まあ、可愛い妹さんを見捨てるのですか?」

 装飾剣を構え直して向かってくるエルキスに、安い挑発を投げかけるロゼッタ。どこまでも余裕に溺れた態度だ。
ふたりの間合いはすぐに縮まり、剣の届く位置に到達すると同時に、エルキスは斬撃を放っていた。
ロゼッタは避けようとも防ごうともしない。それどころか、斬ってみろと言わんばかりに顔を傾け首を晒している。

 「──ッ!?」

 不可解なロゼッタの行動に戸惑いながらも剣を振り抜こうとするエルキスだったが、すぐにその理由を理解した。

 「ぐッ……!」

 剣が、動かない。見えざる豪腕に掴み止められたように、あるいは剣が自らの意思でロゼッタを斬ることを拒否するかのように。

 「私の剣で、私を斬ることはできませんよ?」

 エルキスは剣士だ。リーファンのような徒手格闘技術も、ルネスのような魔法の技もない。
だから、判断を誤った。空中に固定された剣から手を離し、ロゼッタから間合いをとるという選択肢を無意識に排除してしまった。

 「あぅッ!」

 鞭のようななにかが、装飾剣を引き戻そうとしていたエルキスの手を打った。思わず、握っていた手を離してしまう。
同時に、空中に静止していた剣ががらん、と音を立てて落ちた。
 エルキスの手を打った鞭の正体。それはロゼッタの髪だった。長く伸びた髪が毒蛇のように動いているのだ。

 「逃がしません」

 ロゼッタの髪が幾筋も伸び、エルキスの手足に、腰に、首に巻きつく。その身体を持ち上げ、そして締め上げる。
輪切りにしてしまわない程度に優しく、効率よく痛みを引き出せる程度に強く。

 「──ぐうぅぅああぁぁああッ! あ、はぁぁあああッ!!」

 エルキスを苛むのは、全身を締め付けられる痛みだけではなかった。
吸血鬼の牙を受けたかのように、ロゼッタの髪を通してエルキスの生命力が吸い上げられていく感覚があった。

 「この髪はね、死者の魂を髪に宿らせて動かしているんですよ。ほら、苦しいでしょう? ねえ、痛いでしょう?」

 わざわざ手の内を明かすのは、もはや奇跡の逆転など起こり得ないという余裕からではない。
そう教えてやることで、更なる恐怖と嫌悪感を与えてやるためだ。
ロゼッタの施しで回復したはずのエルキスの体力は、再び急速に削られていた。

 「お姉ちゃんッ! お姉ちゃぁんッ!! お願い、お願いッ! やめてぇッ! 」

 大好きな姉を目の前で痛めつけられ、自分がぼろぼろと涙を零していることにも気付かずに泣き叫ぶルネス。
ミノタウロスの拘束から逃れるべく先程からもがいてはいるのだが、少女は無力だった。
腕力ではかなわない。だが、どうにかしようと両手に集めた魔力も安定状態を成さずすぐに散ってしまう。
魔法を使うには一定の集中力が必要であり、今のルネスにそんな平常心は残っていなかった。

 「美味しかったですか? じゃあ、次は電流を流してあげますね」

 不意討ちの激痛をプレゼントするのもいいが、予告してやるのだって悪くない。
次に来る痛みをエルキス自身に想像させてやり、それに怯える表情をじっくりと観察したかった。

 「い、嫌ぁ……」

 エルキスの心が折れつつあることを確認できるか細い返事に、ロゼッタは満足の笑みを浮かべた。
髪を制御する魔力を調整し、電撃の波動を形成するよう命じる。出力は弱めだ。
既に弱っている相手にうっかりやり過ぎて、すぐ失神などさせてしまってはつまらない。

 「いきますよ? ……それ!」
 「あ、ああ、あ、あ、あぁぁぁぁあッ!」

 エルキスの全身を拘束する髪を少し緩めてから、魔力の電流が注ぎ込まれる。
体中を駆け抜ける、先程までとは違う種類の刺激に、エルキスの全身はがくがくと痙攣し始めた。

274名無しさん:2008/12/31(水) 23:48:20
 ああ、堪らない。あんなに立派なリーダーだったのに。あんなに凛々しく剣を振るっていたのに。
なんて、無様なダンスを踊っているんだろう。もっともっと、無様な姿にしてあげなくては!
 エルキスが嬲られる姿を直視できず、ルネスは両の眼を固く閉じ、顔を背けてしまっていた。
だが、耳を塞いで姉の悲鳴を拒否することはできないのだ。

 「……はぁ、……はぁ」

 電流を止めてやると、エルキスの弱々しい息づかいが聞こえてくる。……さて、次はどうしようか?
ロゼッタが次の虐め方を考えている僅かな時間だけがエルキスに許された休息だった。
 幾つかの案が思考の内を巡る中、ロゼッタはふと以前に読んだ本のことを思い出す。
一説では、時に恐怖よりも強く人の心を縛る感情がある。それは、羞恥だという。
……痛みのフルコースの最後に辱めのデザートを。なかなか素敵な選択肢に思えた。
どちらかといえばプライドも高そうなタイプに見えるし、きっと似つかわしいだろう。
 しばし考えたロゼッタは、その選択をエルキス自身に委ねてみようと思いついた。

 「今度は、あなたが次に受けるおしおきを自分で選んでもらいます。
  また痛みが欲しいなら右の足を、痛みではなく辱めを受けたいなら左の足をお上げなさい」
 「う……」

 選択しないことを選択できる立場にはない。痛みにぼやける思考で、エルキスは天秤を傾けた。


  <右足を上げ、痛みを求める>
  <左足を上げ、辱めを求める>

275名無しさん:2008/12/31(水) 23:49:20
  <右足を上げ、痛みを求める>

 エルキスは右足を上げ、更なる痛みに耐える道を選んだ。
痛みに負けたくなかった。圧倒的な力の差を前にしても、ロゼッタに屈したくなかった。
エルキスの心には、まだひとかけらの勇気があった。小さな勇気を握り締め、エルキスは誓う。決して諦めるものか!
圧倒的優位から弱者を虐げる喜びに浸るロゼッタは必ずどこかで隙を見せる。逆転の好機を信じ、今は耐える時だ。
エルキスを支える根拠は儚い。だが、それしかないのだ。

 「……あら、もっと痛いのが欲しいんですか?」

 エルキスが辱めよりも痛みを選択したことに、ロゼッタは表情を輝かせる。
エルキスの眼に、まだ完全に潰えていない抵抗の意志が見てとれたということもある。それもいいだろう。
今にも燃え尽きそうなか細い闘志。心に握られた剣を砕き折った時、その快感はロゼッタを至福の絶頂へ導くに違いない。

 「では」

 エルキスの全身を縛り上げている髪の内、腕と脚へ巻き付けている束に力を込める。先程よりも数段強くだ。

 「……ぐ、うぅぅ、ああぁぁぁ……ッ!」

 食い込む髪が、上腕部と大腿部を絞め潰していく。血が滲み、苦鳴とともに流れ出す。
腕と脚が鮮血の赤に覆われていく中、もうひとつの赤が彩りを灯した。

 「あああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 エルキスの四肢を輪切りにしようとしている髪が燃え始めたのだ。
簡単に殺さないように傷口を焼く止血と、更なる痛みを与えることを同時に行なうためである。
髪から電流を流したのと同じように、炎の魔力とて発揮できる。それがロゼッタの髪が持つ能力と特性であった。

 「いいいぃぃぃぎぎぃぃぃああっはあああああああぁぁぁぁッ!!」

 腕と脚が切断されつつある激痛に、焼け付く絶望が上乗せされて圧し掛かる。
手足の筋肉を切断し終えた髪は、そのまま大腿骨と上腕骨を圧迫し始めた。硬い骨に対し、更に強く絞まっていく。

 「ああぁぁがあぁぁぁぁッ、があああああぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

 エルキスの地獄は続く。エルキスの悲鳴は続く。ロゼッタは、恍惚に顔をとろけさせながらそれに耳を傾けた。
ミノタウロスの腕に囚われているルネスは、恐ろしくて先程からずっと眼を開けられずにいた。
固く固く眼を閉じ、悪夢の過ぎ去る時を待ち続けるしかできなかった。そんな未来が訪れないことがわかっていても。
リーファンは、床に転がされたまま震えていた。怒りと悔しさが全身に満ちても、強力に麻痺させられた手足は応えなかった。
 そして、硬いものが破砕される音。ほぼ同時に四つ重なって響いた。
 最後まで抵抗していた骨が断ち折られ、その四肢はエルキスの身体から永遠に失われたのだ。
ロゼッタが腰や首に巻きつけて支えている髪を解けば、もう自力では這うようにしか動けないだろう。
焼き塞がれたそれぞれの切断面が、白く細い煙を幾筋か立ちのぼらせていた。悲鳴はいつの間にか止んでいた。
 ロゼッタは四肢欠損体となったエルキスを密着させるように抱き寄せる。
不思議と、その姿が愛おしく思えたからだ。最後まで助けを乞うような見苦しさを見せなかったせいかもしれない。
 そうだ。この少女をペットにしよう。あの妹に世話をさせれば、きっと面倒をよく見るだろう。
ロゼッタはその素敵な思いつきに心を舞い上がらせると、エルキスの唇に自らのそれを重ね合わせる。
舌を挿し入れられても、エルキスはそれに抵抗しなかった。

  <ロゼッタのペットとして残りの生を過ごす>

276名無しさん:2008/12/31(水) 23:50:26
  <ロゼッタのペットとして残りの生を過ごす>

 ……数ヵ月後。


 「はい、お姉ちゃん」
 「……」

 少女趣味なドレスを着せられたエルキスの口元に、スプーンを運んでやる。エルキスはスープを静かに啜った。
メイド装束を纏ったルネスは、悲哀と慈愛の交じり合ったような表情でそれを見つめている。
 こうしてアークス家の屋敷で暮らすようになってから、今日で何日目だっただろうか?
あの後、反抗しようとしたリーファンは殺されてしまい、ルネスにはエルキスだけが残された。
……大好きな姉と一緒にいつも一緒に居られる。そう思えばこの生活も悪くはないのかもしれない。
浪漫と栄光を追い求める冒険者として旅をしていた頃が、今は随分と懐かしく思える。
 この数ヶ月の間に、幾つかのことがあった。
 自分達は依頼の達成に失敗し、リーファンの死とエルキスの四肢切断は死霊との戦いによるもの。
ルネスとエルキスはロゼッタの申し出により、冒険者を引退。客人及びメイドとしてこの屋敷に暮らすようになった。
……ということに表向きはなっている。その後、別の女性冒険者があの死霊を討伐することに成功した。
 前領主だったロゼッタの父は病に臥せったまま還らぬ人となり、新たに若きアークス領主となったロゼッタは毎日忙しそうだ。
町の人々からはなかなか慕われているらしい。悪魔が如きロゼッタの真なる顔を知る者はごく僅かだった。
気に入った冒険者の少女を惨殺する趣味は今も続けているようだが、詳しいことはよく知らない。
 そんな日常の中、ルネスは日々を過ごしている。
エルキスを車椅子に乗せて、屋敷の庭や町を散歩すること等も許されており、存外に平穏な暮らしを与えられていた。
分不相応な闘いに挑み敗れた冒険者を、寛大に救済した美談だと町の人々には思われているかもしれない。
勇ましい少女を、圧倒的な力で嬲り虐げることに悦びを見出すロゼッタ。
彼女にとって、もうルネスとエルキスは用済みであろうに、こうして生かされているのだから確かに寛大かもしれない。
あの時、命乞いなどをした覚えもないのだから尚更だ。たとえそれが気まぐれに過ぎないとしても。
 手足を失い、ロゼッタのペットとなって以来、姉の口数はずいぶんと少なくなった。
ルネスが話しかければ答えてくれるが、自分から口を開くことは滅多にしなくなっていた。
かつて憧れた、強く凛々しく美しくを体現していた姿はもう遠い追憶の中にしか居ない。
それでもルネスは姉を愛していた。食事も排泄も一人ではできない姉を世話することは、不思議と幸せを感じさせてくれたのだ。
変わってしまったのは、姉だけでなく自分もそうなのだろうとルネスは思う。
 夜、ロゼッタに奉仕することを求められることが時々ある。
痛覚増幅の術をかけられてから鞭で打たれたり、姉の目の前でロゼッタの召喚した怪物に犯されたりするのだ。
だが、最近はそれすらも悪くないと感じられるようになってきていた。痛みと快楽が矛盾しないものとなっていた。
もしかしたら、そう感じるように術でもかけられているのかもしれない。
だが、そんな真相などもうどうでもいいことだ。

 そう。
 今、ルネスは幸せだった。
 自由ではないが、それでも。


――HAPPYEND?――

277名無しさん:2008/12/31(水) 23:51:42
  <左足を上げ、辱めを求める>

 エルキスは左足を上げ、痛みよりも恥辱を浴びる道を選んだ。
体力も精神力も既に限界を超えつつあり、理性と無意識の両方が痛みから逃げたのだ。

 「……あら、もう痛いのはお嫌ですか?」

 その選択を受け、ロゼッタはエルキスの全身に巻きつけている髪を動かして大きく両脚を開かせた。屈辱的な体勢だ。
不安と恥じらいからかエルキスの表情が僅かに崩れ、ロゼッタの掌は開かれた脚の間へ向けてかざされる。

 「この術って、やろうと思えば相手の心臓を止めたりもできるんですけどね」

 人体には、不随意運動と呼ばれる働きがある。例えば、意識せずとも心臓が勝手に鼓動しているような機能がそれだ。
今、ロゼッタが使おうとしているのはその不随意機能を操作する術である。

 「ん……! くぅ……!」

 術をかけられたエルキスの身体がびくん、と震えた。もがくように腰を回し、尻を揺らす。

 「じゃあ、せっかくだからゲームをしましょう。ルールは簡単!
  あなたがこれからおもらしを我慢できたら、あそこにいる妹さんを助けてあげます。頑張ってくださいね」

 ロゼッタがエルキスにかけたのは、尿意という不随意機能を刺激する術だった。
エルキスの股間にまだ巻きつけていない髪を近づけ、乙女のなによりも大切な部分に先端を当てる。
痛みを与えることが目的ではないので、電流は弱めにしておくことにした。

 「……や、やめて……!」
 「やめてあげません」

 心底、楽しそうに返すロゼッタ。電流が、まだ開かれたことのない乙女の扉を蹂躙する。

 「あ、ああああああああああああああーッ!!」

 エルキスの全身が大きく仰け反った。
ほんの一瞬、耐えているかのように見えたが次の瞬間にはエルキスの股間に染みが現れ、広がり始める。
水が、溢れる。下着を汚し、太腿を汚し、尻を汚し、エルキスの尿が垂れ流されていく。
まだまだ吐き出し足りぬとばかりに、その勢いはなかなか衰えない。
液体が地面を叩く音とともに、温かい水溜りが出来上がりどんどんその面積を広げていく。

 「まあ、だらしない。こんなにたくさんおもらししてしまうなんて。もう少し頑張ってみせてもよろしいのではないですか?
  妹さん、あんなにあなたを慕っているのに……」

 長い失禁劇が終わった頃、エルキスには言い返してみせる気力も体力も残っていなかった。
ただ、苦痛と羞恥に顔を背け、小さく呻きながらひたすらに涙を零し続けているだけだった。
その顔は、ロゼッタの玩具にされた姉から眼を背けて泣いているルネスとそっくりだった。どちらも、惨めな敗北者の顔だった。
 エルキスに巻きつけている髪からは、もう抵抗の感触が伝わってこない。
先程までは弱っているなりにもがき、あがこうとする手足の動きがあったのだが。
どうやら、戦士としての矜持や戦意はもう洗い流されてしまったようだ。
もしかしたら、死霊を宿した髪での責めが精神にも影響を及ぼしたのかもしれない。

 「…………」

 ロゼッタは無言で髪をほどく。エルキスの身体は自身の尿が作った水溜りにびちゃりと力なく落ち、汚れた衣服を更に汚した。
尿が跳ねる。髪の拘束から開放されてもエルキスは人形のように動かない。
 そこにはもう、力を奪われきった身体と折れた心が転がっているだけだった。

 (……これ、どうしようかしら)

 魔力で伸ばしていた髪を元の長さまで戻し、ロゼッタは少女達を見回す。
 麻痺の魔力を込めた打撃により、行動不能となっているリーファン。
 無力な姉の姿と無力な自分自身に戦意喪失し、ミノタウロスから逃れようとすることもしなくなったルネス。
 死霊を宿した髪でたっぷりと痛めつけられ、大量失禁の恥辱でその闘志を砕き散らされたエルキス。
 ロゼッタが自ら動いたのは、少女達と死霊との闘いを見物しているうちに我慢できなくなったからだ。
この手で直接虐め抜きたくなり、試合場の結界に阻まれて脱出失敗したところを回収してここにつれて来た。
ロゼッタの欲望はひとまず満たされたが、まだまだ遊び足りないようにも、もう飽きてきたようにも思えた。
 惨めで哀れな敗北者たる少女達に、己が運命を選択する資格は既にない。

 ……やがて、ロゼッタは決断した。


BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>
BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>

278名無しさん:2008/12/31(水) 23:55:59
  <どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
  <手足の麻痺は強力で、すぐには回復しそうにない。ただ嬲り殺されるのを待つしかできない>

BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>
BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>

この五つが(募集中)になります。
物語上の矛盾や誤字脱字を発見されましたらご報告を。

279名無しさん:2009/01/01(木) 00:16:56
①<さっそく闘技場へ>ルート
  |   ↓
  | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
  |   |
  |   ├→ ★<「ホーリーアーマーを私にかけて。私があいつを倒すから」>
  |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
  |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
  |
  └→<このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
     ↓
  <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
     |
     ├→ ★<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
     |
     ├→<このまま戦う>
     |  | ↓
     |  | <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>  
     |  | |
     |  | ├→ ★<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
     |  | └→ ★<手足の麻痺は強力で、すぐには回復しそうにない。ただ嬲り殺されるのを待つしかできない>
     |  ↓  
     | <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>
     |  ↓
     | <左足を上げ、辱めを求める>
     |  |
     |  ├→ ★BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>
     |  ├→ ★BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
     |  └→ ★BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>
     |
     ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           ├→ ★<右の道へ>
           ├→ ★<左の道へ>
           ↓
        <このまま真っ直ぐ>─→ ★<開けずに部屋から立ち去る>
           ↓
         <箱を開ける>─→ ★<何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>         


②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├→ ★<何も買わない>
   |    ├→ ★<エリクサーを買う>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>─→ ★<闘技場へ>

2801:2009/01/02(金) 01:16:37
投下ありがとうございます。
今実家なんで、戻り次第更新しますね。

281名無しさん:2009/01/02(金) 04:05:32
>>270がコピペミスで、
「どうにかしのげ」と「る動きと速さだった」の部分で断裂されてるので、それも修正して収録をお願いします。

2821:2009/01/19(月) 01:56:54
大分遅れてすみません。
今回分、更新完了しました。

283名無しさん:2009/04/26(日) 18:37:33
久しぶりに投下。
ちょっとグロ寄りかも。

>>272 <手足の麻痺は強力で、すぐには回復しそうにない。ただ嬲り殺されるのを待つしかできない>

無様に床に這いつくばる3人の少女冒険者。

1人はゾンビと化したミノタウロスに四肢を千切られ、
既に物言わぬ骸と化している。
1人は仲間の千切れた両手に首を絞められ、
呼吸もままならぬまま、生と死の狭間を彷徨い悶えている。
そしてもう1人は麻痺の魔法にあてられ、仰向けに倒れている。

「さて…」

エルキスの悶える様を観察していたロゼッタは踵を返し、
再びリーファンの許へ歩み寄る。
ミノタウロスもルネスの死体を放り投げ、
リーファンを真上から見下ろす位置につく。

「見たところ、あなたが一番頑丈そうね。
 あちらの小柄な魔法使いのお嬢さんはすぐ死んでしまったけれど、
 あなたはどこまで耐えられるかしら?」

ルネスの凄惨な死に様を目の当たりにして、
次は自分の番だと解っていながら指先ひとつ動かせない恐怖。
一体、自分はどんな残酷な方法で殺されるのだろうか。

ミノタウロスがゆっくりとその巨大な足を持ち上げる。

全滅した冒険者の無残な末路は何度も耳にしたことがある。
冒険者になった瞬間から、その覚悟もできていたつもりだった。

しかし、よりによって、こんな性質の悪い相手に全滅してしまうとは…

「殺れ!ミノタウロス!」

ロゼッタが叫ぶとともに、リーファンの腹部めがけて
ミノタウロスの足が勢い良く降ろされた。

284名無しさん:2009/04/26(日) 18:38:58

ボギィッ!ミシッ…!パキ…!
ベキュッ!ボキ!

「ぎゃあああああああああぁぁッッ!ごぼっ!ごふっ!
 うええええっっ!」

信じられないほどの激痛。
ミノタウロスの何重トンもある体重が加速の力を乗せて、
リーファンのか細い腹部を蹂躙した。

体中の骨は砕け、内臓は潰され、大量の血液と吐瀉物が口から溢れ出る。

「まあ、なんて素敵な鳴き声…」

恍惚とした表情でロゼッタは呟く。それでもミノタウロスを操る魔力は休まず、
リーファンを攻撃するよう命令する。

一撃で気絶したリーファンに更なる攻撃を加えるべく、再びミノタウロスが
足を下ろす。

バキィッ…!ミチ…!ブチッ…!ぶしゃあっ!

2撃目はもはやリーファンが声を上げることも無く、
破れた腹と口から再び大量の血が零れ落ちただけだった。

「あら、もう死んでしまったの?
 あなたもあの魔法使いのお嬢さんと
 大してかわらなかったわね。」

ロゼッタはつまらなそうに動かないリーファンをつま先で小突いた後、
思い出したかの様にエルキスの方へ目を向ける。

285名無しさん:2009/04/26(日) 18:40:36

(い…息が…できない…目の前も暗く…
…ルネス…リーファン……)

ルネスの手で首を掴まれ、床から数センチ浮いた格好でエルキスは、
かろうじて生きていた。
僅かに鼻を通る空気から、むせび返るような、鉄分の混じった血の臭いがする。

(みんな…ころされちゃったの…?…私のせいで…
こんな無茶な依頼を受けたばかりに…)

「あら、まだ生きていましたの?
 良かった。もう少し楽しめそうね。」

首に食い込むルネスの指先に、
生前の彼女では考えられない程の力が込められる。

「ぐっ…!…ぁ…はっ…!」

人は死の間際、苦痛を和らげるため
脳内麻薬が大量に分泌することがあるという。
生を諦めた人間が、最期にせめてもの安らぎを得ようとする体内機能。
今のエルキスもまた、その例外にはならなかった。
自分のせいで妹と親友が死ぬという事態も背徳的な感情に
加速をかけ、彼女の興奮を増す原因となった。

「ふ…はぁッ…!んッ!んんッ!んーッ!」
ぷしゅうぅッッ!!

大量の脳内麻薬の分泌による快楽効果でエルキスは果てた。
痙攣する体。股間から液が噴出し、太ももを伝い、
浮かされた革靴のつま先から落ちて、床に小さな水溜りを作る。

「まあ、なんてはしたない…。見下げた小娘ね。
 お仲間は絶望と苦痛の中、死んだというのに…。」

「ひ…ぁはッ…!ふっ!んふうぅ…!」
ぷしゅっ!ぶしゅううっ!

快楽地獄の中、連続してエルキスは絶頂へ達した。

しかし、彼女の体力の限界はすぐにやって来た。

急速に脱力し、痙攣は弱まり、意識が遠のく。

(あ…私も…死ぬんだ…こんな所で…こんな格好で…
ルネス…リーファン…ごめんね…
向こうで会えたら…許してとは…言えないけど…
せめて…謝らせ………て…)


―― BAD END ――

2861:2009/04/29(水) 22:59:56
HPの方、更新しました。

288名無しさん:2009/05/04(月) 18:58:00
てす

289名無しさん:2009/05/08(金) 06:27:27
>>202から分岐。<「ホーリーアーマーを私にかけて。私があいつを倒すから」>を選択。


 右肩と左太ももを負傷したルネスは、この状況下でどの程度の戦力になり得るか?
おそらくルネス自身が死なないようにするので精一杯といったところだろう。
つまり、まともに戦えるのはもう自分しか残っていない。エルキスは瞬時にそう判断した。
そうして指示を受けたルネスは慌てつつもホーリーアーマーの呪文を紡ぎ、見えざる鎧の祝福をエルキスと自らに施す。

 「すぐに終わらせるから、それまでそこで持ち堪えて!」

 告げるとともに駆け出すエルキス。一直線にネクロマンサーを目指す姉の無事を、ルネスは全霊で祈った。

 「せぇえいッ!」

 エルキスの剣が、立ち塞がる死霊をすれ違いざまに斬り捨てる。

 「はぁアッ!」

 斬り進み、斬り開き、斬り抜ける。エルキスは確実にネクロマンサーへと迫っていた。
ホーリーアーマーの波動とエルキスの気迫に気圧されてか、死霊達も怯みすくんでいるかのようだった。
勝てるかもしれない。三人で生還できるかもしれない。姉の勇姿を見守るルネスの心に希望の明かりが灯る。
倒れたリーファンを越え、石造りの舞台に乗り上がる。さらに踏み進む。
 そして、残り数歩の距離を詰めれば、ネクロマンサーに刃が届こうという位置にまでエルキスは辿り着いた。
 
 「……」

 僅かな間、立ち止まる。呼吸を整え、剣を握りなおす。だがそれも一瞬。
無言不動に立つネクロマンサー目掛け、間合いを詰めたエルキスの剣が放たれる。
 しかし。

 (……えッ!?)

 気合に溢れた必殺の一刃が、空振った。剣撃に両断されようという直前、ネクロマンサーの姿が突如消滅したのだ。

 「お姉ちゃんッ! うしろッ!」

 悲愴を帯びたルネスの声が、エルキスの背中に飛ぶ。
エルキスが振り向くのと、邪悪な波動がエルキスに浴びせられたのはほぼ同時だった。
痛みはない。だが脱力感が全身を包んでいる。

 (これは……ッ!? ホーリーアーマーが……ッ)

 エルキスの背後へと瞬間移動したネクロマンサーが放ったのは、"スペルイレイザー"だった。
対象に付加されている魔法効果を打ち消してしまう呪文である。
 エルキスが反撃しようとするよりも早く、続けざまにネクロマンサーは次なる呪文を放つ。
先程とは違う形の魔力波動がエルキスを襲う。

 「ぐッ……」

 術を受けたエルキスは体勢を崩し、切っ先を下ろしてしまう。
手足が重くなり、思うように動かせないのだ。

 (あれは"スロウダウン"!? 呪文の完成が早すぎる……!)

 ネクロマンサーが術を操る速度は、ルネスから見て驚くべき高みにあった。
同じ呪文でも、ルネスの半分以下の時間で構築・発動できるだろう。
改めて、ルネスは自分達が分不相応な依頼を受けてしまったことを理解した。
だが諦めるわけにはいかない。まだ、生きているのだから。

290名無しさん:2009/05/08(金) 06:28:53
 亡者達の動作は緩慢だ。
しかし、スロウダウンの呪文によって俊敏さを奪われたエルキスは、それ以上に鈍く重たい動きしかできない。
エルキスの周囲に亡者達が湧き出すと、難なくその手足を掴まれ剣を奪い取られてしまった。
休息に身体から力が抜けていく。死霊の手から生命力を吸い取られているのだろう。

 (……ここまで、なの?)

 死霊に拘束されたエルキスを、再び絶望が包み込んだ。固く、両の目を閉じる。
 一方、ルネスは死の覚悟ではなく戦う決意を全身全霊に漲らせていた。
先程負傷した右肩と左脚は、不完全ながらも既に魔法で治癒させてある。
立ち、走り、戦うことはできる。

 「"スピード・ボディ"!」

 五感の反応を高め、四肢を軽くする速度強化の術を発動し、ルネスは走り出した。

 (お姉ちゃん……ッ!)

 駆けながら、両腕に魔力を集束させる。視線はネクロマンサーをぶれずに見据えている。
跳躍し、石の舞台へと飛び乗る。ネクロマンサーがルネスへと振り向いた。

 「……エナジィィ・カノンッ!」

 ルネスの両手が合わさり、光り輝く魔力の砲弾が真っ直ぐに飛び出す。
ルナスの使える術の中でも、上位の威力を持つこれが直撃すればネクロマンサーといえどもただではすまない筈だ。

 (ルネス!?)

 囚われ俯いていたエルキスが顔を上げる。そうだ。自分はひとりで戦っていたわけではないのだ。
信じ合い、助け合うべき仲間が居る。

 「…………」

 飛来する光の砲弾に、ネクロマンサーは静かに手をかざした。
対するルネスも身構えて魔力を手に流動させる。敵が棒立ちのままエナジー・カノンを喰らってくれる道理はない。
互いに相手の対応を読み、見据え、欺き合う魔法戦の只中にルネスは立っているのだ。
 光弾が、手をかざしたネクロマンサーに迫る。防御系統の術で防ぐつもりだろうか。

 (避けないつもり? それなら!)

 ルネスは再び両手を合わせ、突き出した。時間差で二発目のエナジー・カノンを撃ち、それを本命とする作戦だ。
この選択は、二射目を放つタイミングが勝敗と生死を分けるだろう。

 「……」

 集中し、機を窺う。まばたきせずに、ネクロマンサーの挙動を視る。
エナジー・カノンの魔力弾が爆裂することなく、敵の掌に吸い込まれるように消えたのを視認すると同時にルネスは動いた。
両手に維持していた魔力に「攻撃」の波形を持たせるよう念じる。

 「……せぇいッ!」

 勢いよく放たれた光弾は一射目よりも弾速が上がり、それだけ相手に与える猶予も小さい。
魔法による速度強化を得ているルネスは、エナジー・カノンを追って疾風のように駆け出す。
射撃からの連係で一気に決着をつけるつもりだ。普段の彼女からは考えられない戦い方。
追い詰められたことで、逆に秘めたる勇気が翼を広げていた。
 だが、その積極性が仇となる。

 (……!?)

 突撃するルネスの眼に、先に撃ち出した光弾が弾け散る様が映る。
光弾を散滅せしめたのは、ネクロマンサーの手から撃ち出されたもうひとつのエナジー・カノンだった。
ルネスのそれよりも一回り大きく、速い。
 ルネスの放った弾を増幅させ、反射させた凶弾だった。自ら当たりにいく形になる。
間に合わない。避けられない。咄嗟に腕を交差させて防御するのが精一杯だった。
 接触、炸裂。

 「あぁうぅッ!」

 痛みと熱と衝撃がルネスを焦がし苛み、吹き飛ばした。転がり、叩きつけられる。

 「……う、ぅ」

 致命傷には至らぬとも、「平気」などとは強がりでも言えないほどの負傷と激痛。
跳ね返されたエナジー・をカノン真正面から受け止めた両腕は焼け痺れ、指先が小刻みに痙攣している。
腕がまともに動かせないのみならず、脚にも力が入らない。立ち上がれない。
 それはつまり、この場において死を意味した。

 「……あ、あぁぁッ!」

 ルネスに死霊達が寄り集まり、傷ついた手足を乱暴に掴む。
恐怖と絶望の重りが上乗せされ、少女を抱擁する苦痛が抱きしめる力を一段と強めた。
 スピードボディとホーリーアーマーの同時使用は、強力に見えてひとつの欠点がある戦法だ。
それは時間。俊敏さを得る代わりに、他の付加系魔法の時間切れをも早めてしまうのだ。
ホーリーアーマーの加護はもう消えうせていた。

291名無しさん:2009/05/08(金) 06:29:58
 ルネスは短期決着での勝負に賭け、そして敗れた。勝利への鍵は手からこぼれ落ち、闇の水底に消えた。
 戦う者の時間は終わり、敗れた者の時間が訪れる。
 ネクロマンサーが楽団の指揮者のように手を振ると、死霊達が動き出した。
捕らえた少女達を引きずり、処刑を待つ罪人のように主の前に並べる。
 ネクロマンサーは足音もなく、滑るようにリーファンの前に移動した。
両手でその顔を挟むと、リーファンの喉から僅かな呻き声が漏れる。

 「…………!」

 指が、食い込む。

 「あ、ぁ、あ、あ、あああぁぁぁッ!」

 リーファンの眼が見開かれ、魂を吐き出すような絶叫が残るふたりの耳を突き刺した。
若々しかった少女の肌が見る間に生気を失い干からびていく。
美しく引き締まった筋肉を持つ四肢が急速に萎んでいく。
ネクロマンサーに、リーファンの全てが喰らい奪われていく。
 やがて、リーファンは骨と衣服だけを残して生の世界から消滅した。
白骨死体が乾いた音と共に地面に倒れ転がる。

 「い、嫌ァァァアアアあッ!!」

 ルネスの悲鳴は、先程のリーファンの断末魔にも劣らず、恐怖と絶望に満ちていた。
死ぬ。殺される。嫌だ。死にたくない。でも無理だ。不可能だ。死、死、死、死、死、死。
 泣き喚くルネスと、覚悟を決めたのか無言で眼を閉じたエルキス。
ネクロマンサーは両手をふたりに向け、魔力を放った。

 「……ッ!?」
 「きゃぁっ!!」

 見えざる巨大な腕が姉妹を掴み上げたように、その身体が宙に浮かび上がる。
念動力に持ち上げられた身体は、手足を動かそうとも空しく空気をかき混ぜるのみ。
エルキスが真下を見ると、一体の死霊が長い槍を天に掲げていた。
どうやって死ぬのか、どうやって殺されるのか、考えるまでもないだろう。
 そして、その瞬間は来たる。
 先に落とされたのはエルキスだった。槍を目掛け、顔面から真っ直ぐに勢いよく飛び落ちる。

 「……ぅゴぼ……ッ!!」

 槍の穂先が口内に突き込まれ、喉を破り抜け、内蔵を穿ち通し、股間から飛び出す。
逆さ串刺しとなって即死し、両脚を広げた少女の姿からは、もう凛々しさも勇ましさも美しさも消えうせていた。

 「ィイ嫌ァぁぁぁぁああああああアアアアアアアアアああッ!!」

 次はルネスの番。姉とは逆に足側からの落下。

 「あ、ああっガァァああああああああああッ!!」

 淫らに誘うように両脚を開かされた体勢で、姉を犯した槍を股間から受け入れる。
体内を昇りながら内蔵をひとつずつ裂き、貫いた槍は胸元から飛び出しつつ下顎に刺さって止まった。
溢れる血がルネスの死体を汚しつたい、下のエルキスをも濡らしていく。
 こうして一振りの槍に、姉妹を合わせ串刺しとした骸のオブジェが完成した。
互いに股間をこすり合わせるような体勢で貫かれ、固定された姿は酸鼻ながら淫猥でもあり、
見る者によっては退廃と猟奇に染まった美を見出せるかもしれない。

 今日も、アークスの町と闘技場を死霊の淀みから解放する勇者は現れなかった。


―― BAD END ――

292名無しさん:2009/05/08(金) 06:37:22
年末以来、久しぶりの投下です。
正直、自分が最後の書き手だと思ってました……。
>>207さんのアイデアを組み込んでみましたが、いかがでしたか?
他にもこういうのが見たいというネタがあったら積極的に書き込んでみてください。
ここはそうした方が上手く回るような気がします。
もちろん、必ずしも実現できるとは限りませんが。

2931:2009/05/10(日) 01:33:22
HP更新しました〜
また、少し活気づいてきましたね。

294名無しさん:2009/05/10(日) 03:36:14
更新乙でございます。
もっと早く書けるようになりたい……。

296名無しさん:2009/10/18(日) 08:57:54 ID:???
ログ修理下げ

297名無しさん:2009/10/27(火) 01:50:00 ID:???
<何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>


 「ぐ、……んぅぅ……!」

 最後のひとりとなったルネスは、動く屍となったエルキスから逃れるべく懸命に足掻いていた。
背後から首を掴み持ち上げられたこの体勢。脱出は極めて困難だった。
だがそれでもエルキスの手から逃れなければならない。ルネスはまだ、生きてこの地獄を脱出する意志を失くしていなかった。
亀裂の入った剣のように脆く、無我夢中の勇気であるにせよ、その心はまだ折れていないのだ。

 (お姉ちゃんの死体を操っているのが、あの人の魔力なら……!)

 絶望的な状況下ながら、ルネスは必死で最善の手段を手繰り寄せようと考える。
今の体勢では、発動に一定以上の集中力が必要な魔法は満足に使えない。
単純かつ効果的な一手で、突破口を穿つ必要がある。
 ルネスの両目が、固く閉じられる。
 そして、ルネスの掲げた手から眩い閃光が爆ぜ、室内に満ちた。

 「──! ぐッ……!」

 ロゼッタが小さな呻き声を漏らす。
 ルネスが使ったのは、暗闇に明かりを灯すだけの初歩的な魔法であり殺傷力などは皆無だ。
だが、魔力の微調整を一切せず、半ば暴走させるように光を炸裂させることで目潰しとして使うこともできる。
 思わぬ反撃に視力を奪われたロゼッタの精神は乱れ、その影響はエルキスにも及んだ。
意志なき死体を術者の意のままに動かすための魔力の流れ。それが淀み、ルネスを捕まえていた指の握力が緩んだのだ。
身体の自由を取り戻したルネスは、一目散に部屋の扉を目指す。ロゼッタと戦うという選択肢はなかった。
ルネスの性格ならそれが自然な選択であったし、エルキスとリーファンの死体から遠ざかりたいという心理も働いていた。

 「逃がすかァッ!」

 駆け去る足音にロゼッタが吼えた。弱者を相手に不覚をとった怒りに垣間見える、凶猛なる本性。
そして、一時的に視覚を失いつつもロゼッタは状況を完全に見失っていない。

 「閉じろッ!」

 全軍突撃を命じる将軍のように、ロゼッタが腕を振るう。
それと共に、ルネスが駆け込もうとしていた木の扉がひとりでに動き、乱暴な音を立てて勢いよく閉じた。

 「!」

 ルネスは思い出す。
エルキスを残してミノタウロスが召喚された部屋から逃げた時、背後から扉の閉じる音を聞いたことを。
自分達は律儀に扉など閉めてはいない。そんなことをする余裕も利点もなかったからだ。
つまりあの鉄扉を閉ざし、エルキスを閉じ込めたのもロゼッタの魔法に違いない。

 (どうしよう……?)

 扉を閉ざした呪文の解析と解除を試みるか? そんなことをしている間に殺されてしまう。
 木製の扉ならば攻撃系の呪文で破壊できるだろうか? 魔力を帯びた扉は見た目ほど簡単には壊せないかもしれない。
 残る選択肢はひとつしかなかった。覚悟を決め、勇気を振り絞ってロゼッタと戦うしかない。
ロゼッタが視力を取り戻す前に、ロゼッタを殺すのだ。ルネスは扉に背を向け、ロゼッタに向き直った。

298名無しさん:2009/10/27(火) 01:51:02 ID:???
 ロゼッタの魔力制御を一時的に断たれたエルキスの死体は、棒立ちのまま黙している。今しかない。
最後にして最大の好機が目の前にあるのだ。ルネスは両拳を握り、縦に重ね合わせた。
全身に循環する魔力を両の手へと集め、「刃の形を成せ」と命じる。
瞬時に、剣の形をした発光体がルネスの手に現れた。魔力の塊で剣を生成する魔法"スピリットエッジ"である。
普段の彼女であればまず使う機会のない魔法だったが、半ば無意識にルネスはこの魔法を選んだ。
剣士であった姉を弔う想いがそうさせたのかもしれない。

 (お姉ちゃん……! リーファン……!)

 ロゼッタはまだ視力を回復していないようで、手で顔を押さえている。今ならば確実にその命を奪えるだろう。
ルネスは突き出す形に光刃を構え、ロゼッタ目掛けて走り出した。明確な殺意が全身に漲り、突進する足音が室内に響く。

 「──ッ!」

 刃は、あっけなくロゼッタを刺し貫いた。胸部を貫通した刃にロゼッタの眼が見開かれる。
胸の傷口から溢れ出す鮮血が、刃を握ったルネスの手を汚していく。
大きく開いた口は最期の声を漏らすこともなく、ただ赤い血を吐き垂れ流す。ロゼッタの肉体が、死体へと変わっていく。
 立っていたエルキスの死体がぐらりと揺れ、倒れた。死体を奴隷とする魔力の枷が完全に解かれたのだろう。
 ルネスの手が"スピリットエッジ"を引き抜くと、血塗れのロゼッタは力なく仰向けに崩れ落ちる。

 「………………」

 悲しみ。後悔。憎悪。絶望。ロゼッタの死体を見下ろすルネスの心に、感情の波紋が幾つも広がる。
ふたりの仇を討つことはできた。だが、これからどうすればいいのだろう? ひとりで、どう生きていけばいいのだろう?

 「…………」

 エルキス。リーファン。そしてロゼッタ。
数多の武具で埋め尽くされた室内には、三体の死体が無惨かつ静かに転がっている。
吐き出した血で顎を濡らしたロゼッタの死に顔を見つめるルネス。
エルキスとリーファンを殺したのはこの死体だ。この死体を殺したのはルネスだ。
 冒険者たる者、悪辣な同業者や旅人を狙う盗賊の類と命を奪い合う機会は幾らでもある。
自分が死ぬことも、仲間と死に別れることも、起こり得る可能性として覚悟を決めていたつもりだった。
だが、それは所詮「つもり」に過ぎなかったのだ。
 冒険者の少女ルネスが寄りかかってきた旗が、今、折れようとしている。
 自身にも名のわからぬ感情がルネスの内で膨れ上がり、破裂しようとしている。

 「……」

 そして……。


  <生きる希望など、もはやない。それなら……>
  <かろうじて生きる意志を繋ぎ止めることができた。……今はとにかくこの部屋を出よう>
  <湧き上がる憎悪の衝動が抑えきれない。死んだロゼッタの顔に"スピリットエッジ"を突き立てる>

299名無しさん:2009/10/27(火) 01:52:32 ID:???
  <生きる希望など、もはやない。それなら……>


 ルネスの心は死んだ。
 膨れ上がる絶望が少女の心を押し潰し、溢れる悲しみが少女の魂を陵辱した。
 全てを失い、全てを諦めたのだ。

 「おねえちゃん……。リーファン……」

 静かに涙を零すその眼は死に魅入られ、濁り淀んでいる。生の光は、既にそこにはない。

 「わたしも……」

 その場にへたり込み、"スピリットエッジ"の切っ先を細い首筋に向ける。

 「……」

 刃が肌に食い込み、柔らかい肉と血管を切り裂く。流れ出す鮮血を止めるものはない。
ルネスの首から下はすぐに朱に染まり、その広がりに比例して顔色から生気が消え失せていく。
だらりと下ろされた手から、"スピリットエッジ"の光が消える。
 やがてルネスの時は止まり、その生は終わった。

 それぞれの死を迎えた少女達の顛末は、誰に語られることもなく闇に埋もれるだろう。
 輝かしい偉業を成し、英雄譚に名を残せる資格など、彼女達にはなかったのだから。


――BAD END――

300名無しさん:2009/10/27(火) 01:54:01 ID:???
  <かろうじて生きる意志を繋ぎ止めることができた。とりあえず、この部屋を出る>

 ルネスの足が、部屋の外へとゆっくりと歩を刻み始める。振り返ろうかとも思ったが、それはできなかった。
無惨な死体となったふたりの姿を改めて直視するだけの覚悟を、ルネスは持つことができなかったのだ。
 この時、振り向いていればもう少し運命は違ったかもしれない。

 一刺し。

 「……ぁ」

 激痛。背後から胸へと突き抜けた不意の一撃。
 なにが起きた? なにをされた? 無数の疑問符を意識の中で躍らせながらルネスは崩れ伏した。
胴を貫通した傷口から大量の血液が流れ出ていく。全身から急激に温もりが奪われていく。寒い。冷たい。
傷口だけが、燃えるように熱かった。

 「……まったく。……不覚、と言うべきか。見事、と言うべきか」

 「生者」と「死体」の中間とでも呼ぶべき状態にあるルネスを見下ろしながら、ロゼッタはつぶやいた。
"スピリットエッジ"が刻んだ筈の傷跡は綺麗に塞がっている。
血の汚れと衣服に空いた穴はそのままだったが、その肌には刃の痕跡など微塵も見当たらない。
その手には、先程ルネスが使ったものと全く同じ魔法、"スピリットエッジ"が光っていた。

 「少し、見直しましたわ。正直、三人の中では一番、戦士の資質に恵まれていないと思っていたのですけれど……。
  この身を一度は殺してしまうなんて、驚きです」

 致命傷が致命傷とならない。胸を貫いた程度では、短時間で再生を遂げてしまう。
ロゼッタの肉体は、これまでルネスが戦ったことのある全ての敵を超越する脅威的再生能力を有していたのだ。

 「……、……、……」
 「……あら、聴こえていませんか? そうですね。あなたは、ニンゲンですものねえ……。
  あっけなく、死んでしまう存在ですものえねえ」 

 ルネスは答えない。そんな力など残っていない。
か細い息をかすかに繰り返すだけで、それすらも緩やかに小さくなっていく。

 やがて、深い深い眠りがルネスを呑み込んだ。


──BAD END──

301名無しさん:2009/10/27(火) 01:55:12 ID:???
  <湧き上がる憎悪の衝動が抑えきれない。死んだロゼッタの顔に"スピリットエッジ"を突き立てる>

 「……ッ!」

 ロゼッタを刺し殺した魔力の刃を逆手に持ち替える。
倒れた死体の腹を踏みつけながら、ルネスは己の憤怒を突き下ろした。
血に汚れた顔目掛けて切っ先をめり込ませ、接触と同時に魔力を炸裂四散させる。
ロゼッタの頭部は果実のように砕け潰れた。血飛沫。肉片。脳。頭蓋骨の破片。眼球。粉々と爆ぜて散らばる。

 「…………」

 既に死した肉体を更に損壊させたところで、得られるものも取り戻せるものもない。
だが、思考がそれを理解していても感情はそれを受け止められなかった。
 ルネスは、己がいかに弱く、いかに小さく、いかに脆い存在であるかを突きつけられたのだ。

 「……」
 「あら、あら、あら」
 「っ!?」

 唐突に、ルネスの背後から声がした。女の声で、呑気な調子だった。
ルネスが振り向くと、そこには何時の間に現れたのかメイド装束に身を包んだ少女が立っていた。
ルネスよりも背は低く、顔立ちから判断しても童女と呼んで差し支えない年齢と見える。
艶やかな黒髪を長く伸ばし、大きく愛らしい眼は赤い色を湛えていた。
だが、その瞳をよく観察すれば彼女が人ならざるものであることがわかるだろう。
瞳孔が獣か蛇のように縦長の形状を持っているのだから。

 「この損傷度だと、まともな蘇生はちょっと無理ですねえ……」

 ルネスを無視するように黒髪の少女はつぶやく。変わらず、緊張感の欠けた声。

 「……」
 「ふむ」

 少女はロゼッタの死体に向けていた視線をルネスに据え直した。
ルネスの方は軽い混乱状態にあり、その顔には動揺と困惑の色が表れている。

 「はじめまして。わたくし、そこのロゼッタお嬢様と契約していた悪魔が一柱で、名はヤルダバオトと申します」

 そう名乗ると、少女は優雅に会釈した。

 「さて、単刀直入に申します。ルネスさん、わたくしと契約する気はありませんか?」
 「……ぇ?」
 「我々、悪魔というものは人間に代表される地上の知的生命体と契約しなければなりません。
  より正確に言えば、契約者の存在を介してのみ地獄、あるいは魔界と呼ばれる領域を離れ地上へと顕現できるのです。
  ロゼッタ様はあなたが殺してしまわれたので、今のわたくしには至急、新しい契約者が必要なのですよ。
  古き魔王が定めし掟により、新規の契約を結ばなければ私は地上から強制送還されてしまうのです。
  勿論、これはルネスさんにとっても悪いお話ではございません。
  あなたの姉君と御友人を蘇生してさしあげる程度の対価は保証いたします。
  おふたりとも、頭部といいますか脳には大きな損傷を負っておられませんので記憶の復元や修正も容易ですわ。
  全てを生前そのままに蘇らせてご覧に入れます。いかがですか?」

 名乗る時間も勿体無いとばかりにヤルダバオトはまくし立てた。

 「わたしは……なにを、支払えばいいの? 魂……?」

 ルネスがそう問い返したのは、悪魔の囁きに心が揺らいだからというよりもただ呆然となっていたからだった。
短い時間の中で、あまりにも多くのことが起き、大きなものを失ったのだから無理もない。
 ヤルダバオトが嬉しげに微笑む。

 「悪魔が契約者に求めるものはひとつだけでございます。それは生贄でも魂でもありません。あなたの欲望です。
  ただ己が欲し望むままに生きてくださればよろしいのです。ただそれだけでいいのです。
  契約で得た力をどう使おうが、全てはあなた次第。好きなようになさってください。
  人の世に悪徳と退廃をばらまこうが、弱く貧しい人々へ施しを与えようが、完全に自由ですわ。
  人間として、その心の思うがままに在り続けてくださればよろしいのです。
  人がなにかを願い、それを手に入れんとする想いこそが我々悪魔の求める唯一無二の報酬にございます」

 ヤルダバオトの言は真実なのだろうか? 悪魔の持ちかける取引は信ずるに足るのだろうか?
救済を求める弱さと、理性の司る疑念が、ルネスの内でせめぎ合っていた。

 「さあ、どうなさいますか?」


  <契約する>
  <契約しない>

302名無しさん:2009/10/27(火) 01:56:17 ID:???
  <契約する>

 「……いいよ。生き返らせて。お姉ちゃんと、リーファンを……」

 ルネスが力なく答える。ヤルダバオトは、お菓子を貰った子供のような笑顔でその回答を出迎えた。

 「ああ! あなたの賢明かつ迂闊な選択に感謝します、新しき主よ!
  今、ここに成された呪われし契約に古き魔王の祝福がありますように!」

 契約成立。大仰で芝居がかった反応を返しつつ、ヤルダバオトはそれを祝い、喜ぶ。

 「では、早速」

 ヤルダバオトが手招きするように掌を翻すと、エルキスとリーファンの死体がむくりと起き上がった。
無惨な死に顔はそのままに、喉の奥を見せびらかすように大口を開く。

 「一度、死を迎えた肉体の蘇生には新しい魂が必要になります。その代用となるのがこれですわ」

 ヤルダバオトの手が光り、その光の中からヒトの眼球ほどの大きさの赤い宝石が現れる。
次いで宝石は手を離れて浮き上がり、エルキスとリーファンの口中へと飛び込んだ。

 「人間の世界で言うところの"賢者の石"ですわ。あらゆる系統の魔術に応用可能な万能の物質です。
  すぐに肉体と同化して破損の修復と記憶の復元を行いますので、少しお待ちください。ご主人様」

 ルネスの質問を先回りするように解説するヤルダバオト。

 「おふたりの記憶はどこまで復元しますか? 此度の依頼と死の間際の記憶は消去することをオススメしますが」
 「……じゃあ、そうして」
 「はい。仰せのままに……」

 ……こうしてルネスは悪魔の力を手に入れた。
その後の彼女がどのような顛末を辿ったのか、ここにはあえて記さずにおこう。

 ひとつ、確かなことがある。人間は弱き存在であるということだ。
もし、ある日突然超越者となった時、その力を振りかざさずにいられるだろうか?
過ぎた力を与えられた愚者は、一時の栄光を掴むことができてもいずれは破滅を迎える可能性を常に宿している。
実際にロゼッタはそうして死んだ。

 ルネスは、どうだろうか?


──GLORIOUS END?──

303名無しさん:2009/10/27(火) 01:58:09 ID:???
  <契約しない>

 ルネスは静かに首を振り、拒絶の意を示した。
目の前に立つヤルダバオトと契約するということは、つまりあのロゼッタと同等の存在に堕するということに他ならない。
人間として生きる意志、そして冒険者としての最後の矜持がルネスにはまだ残されていた。

 「……そうですか。わたくしにとっては残念ですが、あなたにとっては正解かもしれませんね。
  契約の無理強いは禁じられておりますので、今後あなたにまた会うこともないでしょう。
  ……では、失礼いたします」

 ヤルダバオトはスカートの裾をつまみ、会釈を返す。ルネスは警戒を解くことなく、無言でそれを見つめていた。

 「……ああ、最後に忠告を。今、あなたの立場はアークス領主の娘を殺害した罪人であることをお忘れなく。
  まあ、それ以前にこの地下から生きて脱出できるかどうかすら怪しいですが、ね」 

 そう告げるとヤルダバオトの姿は空気と同化するかのように薄れて消えた。

 「……」

 惨劇の現場にひとり残されたルネスは、ヤルダバオトの言葉を吟味していた。
ヤルダバオトの言った通り、目前の危機を回避しただけで、ルネスは依然として窮地を脱してはいないのだ。
よく考えてみれば、ここがどこなのかさえルネスはまだ正確に知らない。ヤルダバオトは「この地下」としか言っていない。
ロゼッタが現れた時、恐らくここは領主屋敷の一室なのだろうと漠然と思い込んだだけで、その確証を得たわけではないのだ。
屋敷の地下ではなく、闘技場の地下なのかもしれないし、あるいはロゼッタの秘密の隠れ家かもしれない。
 なんにせよ、今は行動するしかなかった。ひとりとなっても脱出し、生き延びるのだ。

  <行動は早い方がいい。出口を探すべく部屋を出る>(募集中)
  <なにか役立つものが見つかるかもしれない。ロゼッタの死体を調べてみる>(募集中)

304名無しさん:2009/10/27(火) 02:00:05 ID:???
誤字脱字・日本語崩壊・物語上の矛盾点があったらご報告ください。

305名無しさん:2009/10/27(火) 02:06:37 ID:???
①<さっそく闘技場へ>ルート
  |   ↓
  | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
  |   |
  |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
  |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
  |
  └→<このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
     ↓
  <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
     |
     ├→ ★<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
     |
     ├→<このまま戦う>
     |  | ↓
     |  | <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>  
     |  | |
     |  | └→ ★<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
     |  |
     |  ↓  
     | <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>
     |  ↓
     | <左足を上げ、辱めを求める>
     |  |
     |  ├→ ★BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>
     |  ├→ ★BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
     |  └→ ★BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>
     |
     ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           ├→ ★<右の道へ>
           ├→ ★<左の道へ>
           ↓
        <このまま真っ直ぐ>─→ ★<開けずに部屋から立ち去る>
           ↓
         <箱を開ける>
           ↓
         <何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>
           ↓
       <湧き上がる憎悪の衝動が抑えきれない。死んだロゼッタの顔に"スピリットエッジ"を突き立てる>
           ↓
         <契約しない>
           |
           ├→ ★<行動は早い方がいい。出口を探すべく部屋を出る>
           └→ ★<なにか役立つものが見つかるかもしれない。ロゼッタの死体を調べてみる>

②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├→ ★<何も買わない>
   |    ├→ ★<エリクサーを買う>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>─→ ★<闘技場へ>

3061:2009/11/01(日) 14:24:22 ID:cDFpJ3do
投稿ありがとうございます。
少し遅れましたが、更新しました。
http://ryonabook.web.fc2.com/index.html

307名無しさん:2009/11/01(日) 15:59:33 ID:???
ソードワールドdsが気になる。
女魔法使いが無惨に殺されたりする
シーンがあったりするんだろうか
マイナーすぎるのかどこにも売ってないorz

308とおりすがり:2009/11/13(金) 21:08:17 ID:julgJyLs
一人でさみしい夜には、無料ゲームで遊んでみないか、
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309名無しさん:2010/03/20(土) 00:13:14 ID:???
オートフォー過疎

310名無しさん:2010/03/21(日) 22:09:47 ID:???
過疎ってるなー。
見てるだけの人はここに。

311名無しさん:2010/04/11(日) 22:15:04 ID:???
>>121から分岐。<エリクサーを買う>を選択。

 エリクサーは、飴玉のような外見をもつ霊薬だ。飲み込んでおくことで一度だけ致命傷を自動で治癒してくれる。
半不死の薬とも呼ばれ、これを必要としない冒険者はいないと言ってもいい品である。
まるで仕組まれているかのように、小さな瓶にはちょうど三粒が入っていた。
 それが500リナ。破格どころではない。

 「あの……」

 エリクサーを手にとったルネスが商人に向けて口を開いた。

 「安過ぎて怪しいってんだろ?」 
 「……はい」

 商人は客の反応が予想済み、あるいは経験済みだとばかりに答える。

 「こいつはな、自家製なんだ」

 商人が語り始める。曰く、彼の妻が材料の栽培から調合まですべてを行うことでこの価格を実現しているのだという。
また、様々な利権が絡むことで、エリクサーはその製造コストに対して妥当とはいえない高値で流通していると話した。
エリクサーが発明されたころは名実共に高級品だったが、
技術が進歩して安く製造できるようになってからもその値段は下がっていない。

 「下手に店を構えて安いエリクサーを売ろうもんなら、商業ギルドに目をつけられちまって色々と面倒なのさ。
  だから行商でしか売れないんだよ。だが一期一会の取引ならそれも見逃してもらえるってワケだ」

 商人の話しぶりを観察した限り、嘘はついていないとエルキスには感じられた。
また、以前どこかでそんな噂を聞いたこともあったように思う。

 「ルネス、リーファン、どうする?」
 「いいんじゃない?」
 「お姉ちゃんがいいなら……」

 賛成3。反対0。満場一致の合意だ。

 「じゃあ、このエリクサーをください。本当に500リナでいいんですね?」
 「おうよ。毎度あり!」

 できれば聖水も合わせて買いたかったが、エルキス達の所持資金にそこまでの余裕はなかった。


 <エリクサーを飲み、闘技場へ>

312名無しさん:2010/04/11(日) 22:17:12 ID:???
久しぶりに書こうと思ったが、これだけしか筆が進まなかった。すまん。

3131:2010/04/19(月) 00:12:46 ID:???
投稿ありがとうございます。
すみません、リアル都合で遅れましたが、更新しました。

314名無しさん:2010/04/23(金) 23:42:49 ID:???
>>153<闘技場へ>より。

 結局、なにも買わなかった。
僅かばかりの後悔に似たものがエルキスの内に浮かんだが、今更どうこうできることでもない。
過ぎたことに囚われて己の行き先を見失うのは、冒険者たる者の選ぶ道ではない。
 闘技場に行き、死霊と闘い、倒す。それだけだ。

 「急ぎましょう」

 簡潔に告げ、エルキスは歩き出した。ルネスとリーファンも少し遅れて歩き始める。
闘技場までの道中、誰も先程の出来事については話そうとしなかった。

               ◆

 エルキス達が闘技場に着くと、その入り口前では三人の人物が口論していた。
そのうち二人は見張りの兵士で、残る一人はエルキス達と同じぐらいの年頃であろう少女だ。
高級そうな軽装の鎧とマントで身を包み、曲刀を腰に帯びている。おそらくは冒険者だろう。

 「だから、許可が必要なんだよ。領主様とかギルド長の」
 「聞いていないわ、そんな話!」

 言い合いの内容を聞くに、少女を闘技場内に通せないということでもめ事になっているようだ。
なにかの手違いで正規の手順で死霊討伐依頼を受けずにここにきてしまった……といったところだろう。
 ……面倒事になりそうだ。そう思いながらもエルキスが声をかけようとした寸前。

 「!」

 マントの少女は突如、無駄のない動きで身を翻して振り向き、エルキス達を驚かせた。
まるであらかじめ知っていたかのように振り向く。これは偶然だろうか?

 「んー……」

 品定めするように、エルキス達を見まわす少女。

 「ねえ、もしかしてあなた達の目的ってここの死霊の退治?」
 「……ええ。そうですけど」
 「ギルドとかの許可は?」
 「領主家の方から、署名の入った書類を貰ってます」
 「そう。じゃあ、提案、というかお願いががあるんだけど、この仕事譲ってもらえない?
  もちろん、タダでとは言わないわ。成功報酬と同額のリナをお支払いさせてもらいます。どう?」

 唐突な提案だ。そうまでする理由が少女の側にはあるのだろうかとエルキスは考えた。
高級そうな鎧とマントを始めとした身なりを見る限り、少女は金銭面で苦労しているタイプの冒険者ではない。
成功報酬の額を確認せずに「払う」と言ったところからも、報酬のためにこの闘技場に来たのではないことは確かだろう。
また、一人で危険に溢れた世界を旅している冒険者はかなりの実力者であることが少なくない。
単なる無謀な自信家ではなくBランクの依頼を一人でこなせるだけの目算があるのかもしれない。
エルキスと同年代に見えるものの、経験豊富な一流の戦士……。あり得ない、とは言い切れなかった。
己の技を磨き、英雄としての名声を得るために死霊に挑む。
実力があり、金銭にも余裕のある冒険者ならば取り立てておかしな行いではない。
 この状況、損得だけで見れば少女の提案を呑むのが最も正しい選択だ。
だが、エルキス達は商人ではない。冒険者なのだ。相応の矜持というものがある。
リーファンがまず納得しないだろうし、エルキス自身もそんなつもりはなかった。

 「断わります」
 「そう」

 予想通り、といった口調。その表情はどこか嬉しげだった。

 「じゃあこれでどうかしら。
  死霊に挑む権利を賭けて、この場であなたに簡易の決闘を申し込みます。
  立会人は、そこの兵士さんのお二人。
  私があなたに勝てば、その依頼書を頂戴するわ。
  あなたが私に勝てば、引き下がった上で先ほど言った通りのリナを払う。いかが?」
 「わかりました。その勝負、お受けします。二人ともいいわね?」
 「ああ、もちろん」
 「……うん」

 即答するリーファンと、消極的ながらも承諾するルネス。

 「決闘成立、ね。じゃあ、早速だけど始めましょう。兵士さん、開始の合図をお願い」

 少女はエルキスを見据えながら真っ直ぐと立ち直し、腰の曲刀の柄に手を添えた。 
エルキスも己の愛剣を抜き、両手で構えた。

 「では……」

 緊張した口調で片方の兵士が口を開く。
決闘の立会人を務める機会など、そう頻繁にはないのだから当然かもしれなかった。
両者の合意の上に成る決闘において、相手を死に到らしめることは「罪」とはされない。
二人の少女は、互いに相手を殺してしまっても構わないのだ。

 「……始めェッ!」

 闘いが、始まった。エルキスのとった行動は……。

  <先手必勝で仕掛ける>(募集中)
  <相手の出方を窺う>(募集中)

315名無しさん:2010/04/23(金) 23:52:01 ID:???
マントの少女は居合いの使い手というイメージです。
また、剣術以外の技能(徒手格闘や魔法)も豊富に持っているかもしれません。
三人のうち誰か一人を選んで決闘という案もあったのですが、量の都合で没。
この過疎だと自分で続き書くのを前提にやらないといけないので……。

316名無しさん:2010/04/24(土) 00:01:47 ID:c12l1zX.
①<さっそく闘技場へ>ルート
  |   ↓
  | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
  |   |
  |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
  |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
  |
  └→<このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
     ↓
  <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
     |
     ├→ ★<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
     |
     ├→<このまま戦う>
     |  | ↓
     |  | <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>  
     |  | |
     |  | └→ ★<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
     |  |
     |  ↓  
     | <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>
     |  ↓
     | <左足を上げ、辱めを求める>
     |  |
     |  ├→ ★BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>
     |  ├→ ★BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
     |  └→ ★BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>
     |
     ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           ├→ ★<右の道へ>
           ├→ ★<左の道へ>
           ↓
        <このまま真っ直ぐ>─→ ★<開けずに部屋から立ち去る>
           ↓
         <箱を開ける>
           ↓
         <何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>
           ↓
       <湧き上がる憎悪の衝動が抑えきれない。死んだロゼッタの顔に"スピリットエッジ"を突き立てる>
           ↓
         <契約しない>
           |
           ├→ ★<行動は早い方がいい。出口を探すべく部屋を出る>
           └→ ★<なにか役立つものが見つかるかもしれない。ロゼッタの死体を調べてみる>

②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├→ ★<何も買わない>
   |    ├→<エリクサーを買う>→ ★<エリクサーを飲み、闘技場へ>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>
       ↓
     <闘技場へ>
       │
       ├→ ★<先手必勝で仕掛ける>
       └→ ★<相手の出方を窺う>

3171:2010/04/27(火) 01:43:07 ID:tCcryFJM
いつもありがとうございます。 サイトの方更新しました。
ちなみにマントの少女の名前とかは決定しているのですか?
リョナ側としても、リョナられ側としても今後の活躍に期待したいです。

318名無しさん:2010/04/28(水) 20:00:03 ID:???
>>251<開けずに部屋から立ち去る>より。

 既にかなりの時間を使ってしまっている。
未練がないというわけではなかったが、ルネスは細長い箱への興味を抑え込んでリーファンの背を追った。
今は急いで姉の元へと戻らなければならないのだ。
 だが、その再開が叶うことはない。
開けっ放しにされた木の扉をリーファンがくぐろうとした瞬間、扉は生きているかのようにひとりでに動いた。
荒々しい音を立てて出口が閉ざされる。

 「え?」

 呆気にとられて固まるリーファン。
一方、魔法の使い手であるルネスはすぐに事態を理解した。恐らくは対盗人用の罠だろう、と。
誰かが部屋の中にあるものを持ち出そうとした途端、それに反応して自動で扉が閉まる魔法の仕掛けだ。
扉をくぐろうとしたリーファン。彼女がその手に持った長剣に反応して「それ」が発動したに違いない。
 そして、次なる罠が目を覚ます。

 「あぐぅッ!?」

 突如、リーファンが痛みの声を漏らした。

 「どうしたの?」
 「て、手が! この剣……うわッ!」

 リーファンの手が剣を抜き放ち、その全身が洗練された動作で死の刃を構える。
剣術を学んだ経験のない者の動きではなかった。別人が乗り移っているか、操られでもしているかのように。

 「ルネス避けてッ!!」

 そう叫ぶと同時にリーファンがルネス目掛けて斬りかかる。既にリーファンの身体に自由という言葉はなかった。
 そして、一薙ぎ。
 速度・軌跡ともに最高と呼んでよい一撃は。

 「……ッ」

 断末魔の悲鳴すら上げさせず、あっけなくルネスの首を刎ねた。

 「……くっそおぉッ!!」

 これまで生きてきた中で最も激しい怒りの雄叫びを発し、手足の主導権を取り戻そうとあがくリーファン。
だが、剣の呪縛は強い。怒号はただ空しく響くのみ。
 リーファンの手の中で、曲芸剣舞のようにくるりと剣が回った。逆手に持ち替えた形だ。
次に何が起こるのか、剣が誰を殺めるつもりなのか。他ならぬリーファン自身が即座に理解した。

 「や、やめ……!」

 過不足なく鍛え上げられた美しい腹筋を、冷たい刃が貫き裂く。

 「……! ぐ、ぶ……あ」 

 血を吐くリーファン。
リーファンのものではなくなった腕は、消え行く命の儚さに反して力強く剣を引き抜いた。
傷口から勢いよく血が吹き出る。少女の肉体は力なく倒れ、もう動こうとはしなかった。
剣を握っていた拳が、ゆっくりと開く。役目を終えた剣からリーファンは解放されたのだ。
だが、リーファンには指一本を動かす力さえ残されていなかった。そう、もはや助かる見込みはない。
否、愚かにもこの部屋に踏み入った時点で運命は決していたのだ。

 こうして、エルキスの安否を知ることもなく二人は死を迎えた。


―― BAD END ――

3191:2010/04/28(水) 21:16:18 ID:???
リーファンが示した道は左の道。
石造りの廊下は数回曲がった後…。 行き止まりとなっていた。
ドアも何もない。 完全な行き止まり。

「あちゃ…」
リーファンが思わず声をあげる。 ここまで来たことはただの時間の浪費でしかなかった。
「すぐに…戻らないと。」
ルネスも落胆した様子ではあったが、先程のリーファンに励まされたからか、まだ心は折れていない。

そして、2人はすぐに来た道を引き返す。 …が。

「あれ…?」
「どうして…」
まず、疑問が浮かんだ。 …来た道が、角のところで…なくなっている。
あるはずの通路。 そこにあるのはただの石造りの壁
それがどういうことか。 それに気がつくまで少しの間、2人で少し間の抜けた表情を晒して。

「って、どうしてだよ!!」
リーファンが思いっきり壁を蹴る。
「ッ―――!!」

…が、壁はやはり壁。 …硬いそれはリーファンの足にしびれるような感覚を残す
「閉じ込められた…?」
ルネスは蒼白な表情で目の前の壁と…先程の行き止まりを見比べる。
が、いくら見ても、どの方向も…壁。 …通路も、出口も、何もない。
エルキスの武器を探すこともできないし、逃げることも…助けに行くことも、何もできない。

それでも何かできないかと探すが、この空間にはルネスとリーファン以外、何の動きも…。
「あ…」

それに気がつくと、ルネスの表情が驚愕と恐怖に染まる。
動きは…あった。 だが、希望ではない。 絶望の。
1辺の壁。 …それが、少しずつ…低い音を立てて、近づいてきている。

「な…!? …っ、この!!」
遅れて気がついたリーファンがその壁に手をつけ、力に対抗する。
最初は動いていた壁だったが…徐々に壁の動きはゆっくりになり、やがて…止まる。
「んっ、くぅううっ、う…ッ!!」
リーファンは体重をかけて、必死に壁を押し止める。 …が、このままでは、事態は解決しない。
ただ、潰されるのが少し伸びるだけ。
ならば、その伸びた時間で…

「ルネス!!」

<手伝ってくれ!>
<部屋を探索してくれ!>

3201:2010/04/28(水) 21:30:19 ID:???
>>250 <左の道へ>
…自分の投稿の先頭に入れ忘れてました。


身体が怖いのも怖いですが、身体が操られるというのはもっと怖いですよね。
それも、武器を持った状態なら… いいBADENDありがとうございました。


また、自分の投稿分も含めて、サイトの方更新しました。

321名無しさん:2010/04/29(木) 00:14:20 ID:???
サイトの収録ページ、リンクが<右の道へ>になってますよ(本文は<左の道へ>)。

3221:2010/04/30(金) 00:52:35 ID:???
うあ!? …修正しました。
それと、連絡ですがGW中の1日〜4日は更新できなさそうです。

323名無しさん:2010/05/05(水) 22:24:28 ID:???
被ってたらまずいので
>141からの分岐
<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
の予約させてください。週末ぐらいに投下できるといいなー…

324名無しさん:2010/05/09(日) 11:44:26 ID:???
>>319
 <部屋を探索してくれ!>

 非力なルネスに助力を頼んでも事態の好転は望めない。
直感的にそう判断したリーファンは、どこかにこの圧殺壁の仕掛けから逃れる方法が隠されている可能性に賭けた。
 ルネスは改めて四方を見回す。殺風景な石造りの壁にはやはりなにもない。
だが、先程は見落としていた方角がある。真上だ。

 「リーファン! 天井に穴があるわ!」

 そこには、人間が通り抜けるには充分な広さの穴が口を開けていた。
その向こうになにが潜んでいるのかはわからない。しかし、このまま何もせずに潰されるよりはマシだ。

 「よし! ルネスから登って!」

 リーファンは壁から離れ、しゃがみこんで肩車の体勢を作る。ルネスも素早くその上に乗った。
壁の進行は遅い。今なら一人ずつ登っても間に合う筈だ。

 「よっ、と」

 ルネスを担いだリーファンが立ち上がり、ルネスは天井の穴に手をかける。
次いでリーファンはルネスの足を支え持つと、勢いをつけて押し上げた。
ルネスの姿が上手く穴の上に消えたのを見届けると、リーファンは迷わず地を蹴った。
リーファンの身体能力なら、壁を蹴った反動で問題なく天井の穴に手が届く筈だ。
 しかし。

 「え?」
 「あっ!?」

 ひとまず窮地を脱したかと思った瞬間。突如、「がしゃん!」と金属が固いものにぶつかる音が鳴る。
 それぞれの位置から二人は見た。頑丈そうな格子が動き、穴を塞ぐのを。
そして理解した。脱出口は無情な仕掛けに閉ざされ、ルネスとリーファンが分断されたのだと。
 自身の習得している呪文で、この格子を破壊できる方法はあるだろうか?
ルネスは必死で考えを巡らせる。だがそれも無駄な行いだ。

 「あぅっ!」

 待ちうけていた手が乱暴にルネスの首を掴み、持ち上げる。

 「残念ながら、こちらの道は不正解ですよ。ま、正解の道なんて元からありませんけど」

 そう言い捨てると、ロゼッタはルネスの首を握る力を強めた。
如何にして先回りしたのか。などという問いは無意味だ。ここはロゼッタの庭なのだから。

 「さて。では、仲間を見捨てて逃げ出す臆病者に相応しい罰を。
  そして、少ない戦力を更に分散させる愚か者には教訓を」

 ロゼッタがここに居るということは、エルキスの安否が既に絶望的であることを意味する。
もし、三人が自分達とロゼッタとの間にある戦力差をもっと冷静に認識できていたならば。
誰が残って闘おうがそれが下策であること、選択肢に並べる価値もないことを気付けたかもしれない。
だが、そんな思考はもう無意味だ。

 「……、……ッ」

 ルネスの細い首を絞め潰す力は更に強まり、もはやうめき声を漏らすことすら叶わなくなっていた。
意識が遠のいていく。手にも足にも力が入らない。痛い。痛い。苦しい。
 そして。

 「……さよならです」

 急激に、かつ限界までロゼッタの手がその握力を強めた。
か細いルネスの首には、その圧倒的破壊力に抗する強度はない。

 「……〜ッ!」

 首が、絞め潰される。食い込む指が吹き出る血に濡れ、柔らかな肉の裂ける手触りがロゼッタの嗜虐心を撫でた。
すぐに指は首の骨の固い感触を捉え、それを粉々と握り砕く。
文字通り首の皮一枚で繋がった死体となり、最期の悲鳴を上げることすら許されず、ルネスは絶命した。
ロゼッタは何呼吸かの間それを満足げに見つめていたが、やがて興味を無くしたように放り捨てる。
処刑完了。残るは今も穴の下で圧殺壁を支えているリーファンの始末だが……。

 「……ヤルダバオト」

 ロゼッタの唇が奇妙な響きの名を呟く。
言い終わるか言い終わらないかの間にロゼッタの眼前の空気が揺らぎ、すぐに人の形を成した。
その外見はまだ子供。メイド装束に身を包み、長く伸ばした黒い髪と赤い眼を持つ愛らしい少女だ。

 「はい、お嬢様」
 「お茶とお菓子の時間にしましょう。準備なさい」
 「まだ一人、生きていますがよろしいのですか?」
 「ええ、いいのよ。どうやったって脱出などできないのだし」
 「力尽きて嘆きの壁に押しつぶされる様を思い浮かべながら、甘味を味わうひと時ですか……。
  とっても、素敵ですわ。流石、わたくしのお嬢様です」
 「じゃあ、行きましょう」
 「はい」

 会話を終えると、ヤルダバオトと呼ばれた少女とロゼッタは何処かに転移して消えた。


  ―― BAD END ――

325名無しさん:2010/05/09(日) 21:15:05 ID:???
>>141
<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>

「…お姉ちゃん、リーファン…先に行って。ここは私が食い止める」
「…ルネス!?」

細身剣を手に前に出ようとするエルキスを制し、ルネスがミノタウロスの前に進み出た。
先ほどまで恐怖に駆られていた妹の予想外の言葉に、エルキスとリーファンは耳を疑う。

「そんな…無茶よ!それにあなた、手が…」

そう。ロゼッタの操る巨大な鈎針に両の掌を貫かれ、痛々しく流血していたはずだが…
改めて見ると、エルキスの前にかざされたルネスの掌には傷一つ付いていない。

「…幻術、みたい。…あいつが本気で仕掛けてきたら…魔法が使えないと、破れないと思う。だから…」

そう。敵はミノタウロスだけではない。真に恐ろしいのは、そのミノタウロスを従える程の、底知れぬ魔力を持つ女領主の方なのだ。
…ここは、魔法を使える自分が何とかするしかない。それに…
(こんな時にまで、お姉ちゃんの足を引っ張るわけには行かない。心を強く持って…大丈夫、私にだってやれる…)
ルネスは気丈な決意を胸に秘めながら、巨大な敵と対峙する。

「わかった…無茶するなよ、ルネス…」
「ルネス…待ってて、すぐ戻るから……」
ルネスの決意が痛いほどに伝わるとエルキスとリーファンも折れ、ルネスに後を託し部屋を出て行った。
だが、ロゼッタは不気味なほどあっさりとエルキス達を逃がした後……その瞳に、怒りの炎を灯らせる。

「………気に入りませんわね」(…ジャラリ!)
「…っぐっ!?」

天井の暗闇から新たな鎖が高速で飛来し、先端についた鉄枷がルネスの細い首を捉えた。
鎖が引き戻され、ルネスの身体はそのままズルズルと…部屋の中央、ミノタウロスの眼前まで引きずり込まれる。

「う…げほっ…」
仰向けに倒れたまま、ルネスは咳き込んで動けない。

「…安心なさって。その鎖も幻覚ですわ。…さ、お立ちなさい…!」
(ズドッ!!ドスドスドス!!)
「うあぁぁぁっ!!!」

…次の瞬間、床から突き出した鋭い槍がルネスを背中から貫く。
ルネスはまるで野鳥に囚われた木の枝に刺された獲物のように、槍の穂先に吊り下げられて無理矢理身体を引き起こされた。

「…あ……っぐ……」
「…どうかなさいまして?…その槍も、血も、全てまやかしですわよ?…破れるものなら破って御覧なさいな」
「………っ………!…」
「さあ、次は…矢が飛んできますわ。鋭いカエシのついた、鉄の矢…」
(ドスッ……)「…っぐぅ…!!」
「…全身に突き刺さって、ハリネズミにおなりなさい」
(…ドスドスドスドスッ!!)「っあ!ぐぁ!んぎ…嫌ぁああああ!!」
「少しばかり魔術を齧った程度で、この私に対抗できるとでも思ったのかしら?…身の程を知りなさい」

ロゼッタが指を鳴らすと、鎖も、首枷も、身体を貫く槍も、矢も…跡形もなく消えうせる。
…来るとわかっていても、幻術と見破ることができなかった。
ロゼッタが術を解除するのがもう数秒遅ければ、幻による『致命傷』でショック死していたかも知れない。

(やっぱり…無理だったの?お姉ちゃんがいないと、私…)
『レベルの差』をまざまざと見せ付けられ、愕然としたルネスはその場にへたり込んでしまう。
絶望に飲まれかけたルネスの前に巨大なミノタウロスが歩み寄り、ゆっくりと斧を掲げる。
圧倒的な質量を持った死の刃が、今にもルネスの頭上へと振り下ろされようとしていた。

<もうどうしようもない…エルキスに助けを求める>
<まだ死ぬわけにはいかない…斧の一撃を魔法で防ぐ>

326名無しさん:2010/05/09(日) 21:16:09 ID:???
>>325
<もうどうしようもない…エルキスに助けを求める>
(※ややグロ注意)

(もう、ダメ……お姉ちゃん…お姉ちゃん…お姉ちゃん…!!)
心の中で何度も、最愛の姉に助けを求めるルネス。その瞳は恐怖に歪み、大粒の涙が浮かんでいる。
脚の間からは恐怖の証がちょろちょろと零れて下着とスカートを汚し、冷たい石床の上に薄黄色い水溜りが広がっていった。
「…助けて、お姉ちゃん…」
…だがその願いも届く事はなく、消え入るような呟きは、ただ徒に女領主の嗜虐心に火をつけるのみ。
(ブオンッ!!!)
…ミノタウロスの斧は振り下ろされ、ルネスの身体を両断するかと思われた、その直前。
(ガキィィィン!!)
金属同士が激しくぶつかり合う音が、ルネスの耳に飛び込む。
(な、なに……?)
死の恐怖に囚われ、硬く閉ざされていた目蓋を恐る恐る開く。瞳に映ったのは…

「…ルネス、遅くなってごめん。もう大丈夫だよ…!」
巨大な斧を剣で受け止め、ミノタウロスの前に敢然と立ち塞がるエルキスの姿だった。

「お姉ちゃん…よかった、私…」
「さ、立って。…まだ戦いは終わってないわ」
「うん、お姉ちゃん……!!」
絶望に沈んでいたルネスの瞳に、再び希望の灯が輝き始める。
さっきまで立つ事さえできなかったのが嘘のように、全身に力が漲ってくる。
立ち上がり、共に戦うため、姉の手を取ろうとするルネス。
だが、その時…

(ピシッ…)
ロゼッタの指が、再び鳴らされた。
「……え……?」
ルネスの前に現れた姉の姿は、幻のように掻き消え…
「クスクス…楽しんでいただけたかしら?」
ルネスが伸ばした手を取ったのは、ロゼッタだった。
(ミシッ……)ロゼッタはそのままルネスの手首を掴み、力を込めていき…
(メキッ!!)「…な……!?…い、やぁぁぁぁっ!!」
何が起こったのかさえわからないまま、ルネスの左手首は万力のような力で握り砕かれてしまう。
慌てて右手で振りほどこうとするが…ルネスはそこで、初めて気がついた。
右肩から先の感覚が、ない。
「………あ……」
ルネスの右肩から先…それどころか、右半身全てが、綺麗に消失していた。
ルネスを救った姉の姿はロゼッタが作り出した幻影で、
ミノタウロスの斧の一撃はルネスの身体を縦に両断していたのだ。
「……そ………ん、な………」

ルネスの瞳から光が急速に薄れ、絶望の色に沈んでいく。
身体を真っ二つにされたからか。目の前の敵に、勝てないと感じたからか。
…あるいは。信じていた姉が、もう自分を助けに現れてはくれないと悟ってしまったからかも知れない。

ロゼッタは、そんなルネスの表情を覗き込むと満足げな微笑を浮かべ…
(グシャァァッ!!)
両断されたルネスの断面に手を差し込み、心臓を握りつぶした────

<BAD END>

327名無しさん:2010/05/09(日) 22:45:14 ID:???
乙ですよ。
ロゼッタお嬢様の外道っぷりがたまらんね。

3281:2010/05/12(水) 00:50:36 ID:???
ありがとうございます。
…やはり、絶望されるには少しだけ希望を見せて、それを握り出すのがいいですよね!

ってわけで、HPの方も更新しました。
最近少しずつまた盛り返してきましたし、これが続くと嬉しいです。

329名無しさん:2010/05/13(木) 00:12:40 ID:???
真っ二つはいい、心が洗われる…
書き手さんもHPの中の人もマジでお疲れさまです

330名無しさん:2010/05/15(土) 10:19:45 ID:???
>>303
<行動は早い方がいい。出口を探すべく部屋を出る>

 これ以上、この部屋に居ても得るものはないだろう。
二人の亡骸を放置していくのは心残りだが、この場では埋葬することもできない。
ルネスは己一人の力で脱出しなければならないのだ。死者がそれを助けることはできない。

 (……さよなら)

 声なき別れを唱え、ルネスは木製の扉のノブを握る。
 それが、迂闊な行いであるとも知らずに。

 「……いッ」

 ノブを握った手に、鋭く突き指される痛みが走る。
手元に視線を落としたルネスは、いつの間にかノブから茨のような刺が生えているのを見た。
無警戒に部屋を出ようとした侵入者を狙って仕掛けられていたのだろう。
ヤルダバオトが警告した通り、ここは死の罠の地下迷宮なのだ。

 「くっ……」

 慌てて手を引っ込めるルネス。傷ついた手に癒しの呪文をかけなくては。
しかし、その行動は許されなかった。呪文を唱えようとする間もなく、更なる殺意がルネスを襲う。
 この扉は生きていた。
 扉の表面が蠢くと、薔薇の茎のように刺を備えた触手が幾本も飛び出し、ルネスの四肢と腰を瞬時に絡め捕える。
扉の姿に擬態した怪物は、入る者を拒まず出る者を逃さない。

 「あぁっ! ……ぁ、あぐっ……!」

 締め上げる茨は衣服を容易く破り裂き、その柔肌に刺を喰い込ませた。
無思慮にもがこうとすると刺の痛みが全身を襲う。ルネスの動きは完全に封じられた。

 (ま、魔力が……)

 傷口から血が流れ出していくと同時に、体内に循環する魔力もまた抜け出ていく感覚がある。
触手は捕えた獲物から魔力を吸う特性も備えているようだった。

 (だ、駄目……)

 もはや成す術はない。完全なる手詰まり。

 「ぅ、……うぅ、あ、あぁぁああああああッ!!」

 触手の、腰に巻きついている一本が急激に締め付ける力を強めた。
明確な殺意を持って、仕上げにかかろうとしているのだ。

 「がっ、はっ……」

 死の牙が肉に食い込み、茨の蛇が内臓を圧し潰し。
両手足を拘束した四本の触手は、それぞれが上下に伸び。
頑強さに欠ける、細身の少女の肉体はほんの数秒だけ耐え、そして。

 「…………〜ッ!」

 ルネスの身体は、上半身と下半身とに千切り裂かれた。
勢いよく飛び散る返り血が、触手とそれを生やした扉とに噴きかかる。
役目を終えた触手は、ルネスの手足を解放し、速やかに縮み戻った。何の変哲もない扉の姿に元通りだ。
扉の表面は血で汚れていたが、砂が水を吸うようにその血もすぐ消える。
残虐なる生ける扉は、満足げに渇きを満たし、部屋には四体の死体が残された。


  ―― BAD END ――

331名無しさん:2010/05/15(土) 10:22:33 ID:???
殺し方のネタがなくなってきたぜ……。
殺す以外のBAD ENDはいいのが思いつかないし……。
無計画に選択肢を増やしまくった過去の俺をリョナりてえ。

332名無しさん:2010/05/16(日) 23:51:53 ID:???
それらの選択肢は全部テレポーターにたどり着くようにして
一箇所にまとめてみてはどうだろうか

333名無しさん:2010/05/17(月) 14:37:43 ID:???
>>316
<先手必勝で仕掛ける>

 一歩ずつ、間合いを計りながら距離を詰める。
エルキスの視線は真っ直ぐにマントの少女を見据え、剣を握る両手は必殺の一撃に備える。

 「…………」
 「……」

 ルネス、リーファン。二人の兵士。皆が無言で見守っている。マントの少女は動かない。
先手必勝を選んだエルキスに対し、受けの体勢から「後の先」を狙うつもりであろうか。

 (あと一歩……!)

 踏み込みながらの斬撃が届く、直前の位置。エルキスは無意識に息を吸い込んだ。

 (……そこッ!)

 繰り出すは突き。狙うは相手の右肩。マントの少女が刃を抜き放つより前に、その腕を止めるのだ。

 「……」

 エルキスの突きに対し、マントの少女も動く。五指が曲刀の柄を握り、そして。
 ふたつの音が響いた。
 ひとつは澄んだ金属音。剣士の誇りたる刃の折れる音。
 ひとつは悲鳴。

 「──ぃぁああアアアああああッ!!」
 「……そ、そこまでェっ!」

 兵士が決着を宣言した。エルキスは折れた剣を捨て、両手で顔を抑え膝をつく。
マントの少女は優雅な動作で刀を鞘に納めた。いかなる妙技によるものか、その刃は血の一滴にも塗れていない。

 「お姉ちゃん!」 

 悲愴な声を上げてルネスが駆け寄る。

 「……ひっ」

 横薙ぎの斬撃を受けた姉の顔を見たルネスは、背筋を凍らせた。
溢れだす血に塗れた顔。その両眼がぱっくりと切り裂かれていたのだ。慌てて治癒の呪文を唱える。
だが、傷は深い。ルネスの魔法使いとしての技量ではこの傷を完全に治療することはできないだろう。
 エルキスの光は、そう簡単には……あるいは二度と戻るまい。

 「……あら。ごめんなさい。剣を折るだけのつもりだったのだけど。
  間合いを見誤ったわね」

 少女の口調に、同情や悔恨の色はない。決闘とはそういうものだ。
冒険者として生きるということは、こういうことなのだ。

 「じゃ、悪いんだけどこっちも手早く済ませたいの。さっき言ってた書類を──」
 「待ちなッ!!」

 言葉を遮り、リーファンが叫んだ。マントの少女に向けて、固く握った拳を突き出す。

 「あんたに、決闘を申し込むッ!!」

 良くも悪くも、リーファンは真っ直ぐな少女だ。
マントの少女の側に、一切の非はない。そう分かっていても、黙って依頼を譲ることはできなかった。
 マントの少女の表情が僅かに歪む。その形は、苛立ちと微笑が入り混じったような奇妙な顔だった。

 「……ふぅん。ま、いいけど。兵士さん、悪いけどもう一度、立会人をお願い」

 マントの少女は、幾らかやる気の無さげな口調で二戦目を承諾した。
鞘から刀を抜くと手の中でくるりと回し、逆手に持ち変える。次いで、それを地面に突き指した。
そしてそのまま刀から手を離すと、リーファンへと向き直り、両拳を構えた。

 「……っ?」

 一体、なんのつもりだろうか。刀を捨てて闘う気だというのか。

 「武器には武器。魔法には魔法。体術には体術を。
  正式な決闘では相手と同じ条件で闘うと決めているの」
 「ああ、そう……!」

 リーファンにとって、マントの少女の主義などどうでもよかった。今はただこの怒りをぶつけるだけだ。

 「……では、……始めェっ!」

 再び兵士が開戦の合図をかける。

334名無しさん:2010/05/17(月) 14:39:17 ID:???
 再び兵士が開戦の合図をかける。

 「──はぁッ!!」

 雄叫びと共にしなやかな踏み込みから身を屈め、下段を刈る足払いを繰り出すリーファン。
対するマントの少女は、あらかじめ知っていたかのようにふわりと跳躍してそれをかわした。
足払いを空ぶったリーファンは、立ち上がる力を加えた顎狙いの掌底を繰り出すが、
その技はまたしても目標を捉えられない。マントの少女は既に一歩、間合いから退いていた。
 回転力を乗せた顔狙いの裏拳。優雅な舞のようにしゃがまれ、空を切る。
 スネを狙った踏みつけるような蹴り。滑るような足運びでかわされる。
 その次の攻撃も、その次の次の攻撃も、リーファンの技はことごとく当たらない。

 (……くそッ! なんで! なんで当たらない!)

 リーファンの心には、焦りよりも怒りの方が強く渦巻いていた。
これまで磨き高めてきた己の「武」が、無意味で無価値なのだと嘲笑われているかのような屈辱。
苛烈な攻めで防戦一方に追い込んでいるのではない。
リーファンの側に隙ができてもあえて反撃してこないのだ。
 舐められている。

 「!」

 それでも攻め続け、何度目になるかもわからない攻撃がかわされた瞬間。
リーファンはついに好機を見出した。マントのはためきが、手を伸ばせば掴める眼前にあった。
偶然ながらも得た絶妙なタイミング。

 (貰ったッ!)

 リーファンの右手がマントを掴んだ。このまま引き倒せば少女は大きく体勢を崩す筈だ。
だが、その目論見は外れた。

 「ッ!?」

 動かない。
 渾身の力でマントを引っぱるが、少女は深く根を下す巨木と化したように不動のまま立っている。
「達人」と呼ばれる域まで登り詰めた格闘者の五体は、生身で鋼の鎧にも勝る「硬さ」と「重さ」を持つという。
今、それが正にここにあった。

 「ここまでね」

 マントを掴まれた少女が呟き。動く。
電光石火と呼ぶに相応しい鋭さでリーファンの足元を払う。

 「うぁっ」

 前のめりに倒れ込むリーファンを、掌底が襲う。避ける術はない。
顔面にめり込もうとする打撃に、咄嗟に歯を食いしばるのが精一杯だった。

 「……ッ」

 顔に痛みが弾ける。鼻血が、マントの少女の掌を汚した。
次いで、よろめき倒れ伏そうとするリーファンの側頭部に容赦なく裏拳が叩き込まれる。

 「がッ……」

 強烈な打撃に脳が揺れ、意識が飛びそうになる。
どうにか両の足で身体を支え、拳を構えようとするがそれもおぼつかない。
 ここで倒れず、踏みとどまったのがリーファンの不幸だった。
立会人の兵士に、「そこまで」をかけるタイミングを逃したのだから。
 相手がもはや闘える状態ではなくとも、マントの少女は容赦なく追撃をかける。
スネを狙った前蹴りから始まる連撃が、リーファンの心身を打ちのめし、叩き潰し、砕き折る。
突き。蹴り。手刀。恐るべき手際の良さで、リーファンの全身が物乞いの纏うボロ布のように無残かつ無様な姿にされていく。

 (……弱い。もう、いいかな)

 仕上げにしよう。マントの少女の手がリーファンの胸元を掴み、引き寄せた。
熟練者が素人にダンスを教えるように二人の五体が回り、リーファンは闘技場の壁目掛けて放り投げられる。

 「ぎぁうッ!」

 硬い石造りの壁面に背中から叩きつけられ、落ちる。リーファンはぴくりとも動かない。

 「……そこまでェっ!!」

 遅すぎる決着の宣言。
 マントの少女は掌についた返り血をぺろりと舐め、そしてそれを唾として吐いた。
弱きものの血など、すする価値もないとでも言いたげに。

 「…………」

 ルネスにできることは、無言で書類を差し出すことだけだった。
 

  <この依頼から手を引き、エルキスとリーファンの治療に専念する>

335名無しさん:2010/05/17(月) 14:40:40 ID:???
  <この依頼から手を引き、エルキスとリーファンの治療に専念する>

 その後、マントの少女は見事死霊を討ち倒した。そして何処かへ旅立っていった。
アークスの町と闘技場には活気が戻り、大通りには今日も人が溢れている。
依頼者ロゼッタの父である前領主は病に打ち勝つことなく息を引き取り、今はロゼッタが若き領主だ。
 ルネス達は冒険者を引退し、このアークスで小さな部屋を借りて暮らし始めた。
 失明したエルキスは、戦いなど論外で日常生活にすら苦労する身だ。
 酷く痛めつけられたリーファンは、身体に後遺症を残すことはなかったが精神には癒せぬ傷を刻まれていた。
欠かさず続けていた日々の鍛錬もしなくなり、今は町の食堂で給仕の仕事に就いている。
 ルネスは姉の世話をしながら日々を過ごしている。これからも静かな日々を生きていくだろう。


  ──LOSER END──

3361:2010/05/18(火) 02:00:53 ID:???
HPの方も更新しました。
さっくりと殺されるのと、戦えないぐらいの後遺症を残されて生かされるの、どっちが辛いんでしょうか…


BADENDで広がった選択肢を潰して行くのも必要ですけど、そろそろHAPPYENDも考えてやらないといけないかもですね。
現状だと、無事死霊撃破出来ましたルートと、ロゼッタ倒せましたルート。
ルネス単独生還ルートあたりが目指しやすいところでしょうか。

337名無しさん:2010/05/18(火) 04:27:03 ID:???
①<さっそく闘技場へ>ルート
  |   ↓
  | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
  |   |
  |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
  |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
  |
  └→<このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
     ↓
  <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
     |
     ├→<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
     |  |
     |  └→ ★<まだ死ぬわけにはいかない…斧の一撃を魔法で防ぐ>
     |
     ├→<このまま戦う>
     |  | ↓
     |  | <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>  
     |  | |
     |  | └→ ★<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
     |  ↓
     | <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>
     |  ↓
     | <左足を上げ、辱めを求める>
     |  |
     |  ├→ ★BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>
     |  ├→ ★BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
     |  └→ ★BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>
     |
     ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           ├──────→ ★<右の道へ>
           ├→<左の道へ>→ ★<手伝ってくれ!>
           ↓
        <このまま真っ直ぐ>
           ↓
         <箱を開ける>
           ↓
         <何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。>
           ↓
       <湧き上がる憎悪の衝動が抑えきれない。死んだロゼッタの顔に"スピリットエッジ"を突き立てる>
           ↓
         <契約しない>→ ★<なにか役立つものが見つかるかもしれない。ロゼッタの死体を調べてみる>

②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├──────────→ ★<何も買わない>
   |    ├→<エリクサーを買う>→ ★<エリクサーを飲み、闘技場へ>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>→<闘技場へ>→ ★<相手の出方を窺う>

 ……君の目の前には分岐図の最新版がある。
続き待ち状態で止まっている選択肢の数は「16」だ。
君は諦めてもいいし、完成を目指して書き続けてもよい。
望むのであれば冒険者の少女達を勝利と栄光へ導くことができる。
最も喜ばれるのは無暗に分岐を増やさず<END>まで書くことだが、
短い作品でも他の書き手の創作意欲を刺激する可能性はある。

 さあ、筆をとりたまえ。
このリョナゲームブックが<14>へ逝くか、<400>へ辿り着くかは君の手にかかっている!

 とりあえず俺は★BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>を書くことにするわ。

338名無しさん:2010/05/19(水) 05:23:52 ID:???
>>277
★BAD END1 <もう飽きた。このまま殺してしまう>

 殺そう。そう決めると、ロゼッタの行動は早かった。
指先を揃えて両手に魔力を集めると、楽団の指揮者のように大きく腕を広げ、それを放つ。
左右の手刀から魔力の刃が飛ぶ。それぞれが目指すは二人の少女の首元。
動く死体となったミノタウロスの剛腕に囚われたルネスと、麻痺の魔力にあてられ立ち上がれないリーファン。
死の矢は、あっけなく二人の首を刎ねた。
 己が首を落とされたことにも気づいていないといった顔で、ごろりと転がるふたつの頭。

 「ひ……!」

 後ろ手をついて、自身が作った尿の池から身を起こそうとしていたエルキスは、情けない声を漏らした。
勇敢で責任感の強いリーダーであった彼女とは、別人になってしまったかのように。
そうなるように痛めつけてやったのだから、これはこれで良いのだが。

 「……」

 無言のまま、ロゼッタがエルキスに向き直り、無表情に見下ろす。
 殺される。これから自分は殺される。エルキスに恐怖と絶望が満ちた。

 「……お、おねがい……」

 か細い言葉を垂れ流すエルキス。

 「ころさないで……」

 ロゼッタの心がわずかに波立った。
その揺らめきを起こしたのは無様に命乞いする弱者への嫌悪か、勇気という名の剣をへし折った快感か。

 「嫌です」

 だが既に充分だ。必要なだけ楽しんだ。飽きた玩具と交わす言葉など必要ない。
とは言え、せっかくだから少し趣向を凝らした殺し方をしてみよう。ロゼッタはそんな気分になった。
 懐に手を入れ、小さな瓶を取り出す。中には指先ほどの大きさの赤い石がひとつ。
瓶の蓋を開け、赤い石を尿の池に落とすと小さな飛沫と波紋が薄黄色い水面を乱した。

 「…………」

 呪文を唱えず、視線に乗せた魔力を石に注ぐ。変化はすぐに表れた。
エルキスが大量に垂れ流した尿の池が沸騰するかのように泡立つと、生き物のように蠢き始めたのだ。
否、「それ」は確かに生きていた。魔法で吹き込まれた魂と、処女の尿で構成されたおぞましい汚液の塊、スライムとして。
 尿スライムは見る間に大きく膨れ上がり、その悪臭も比例して強まった。
 そして、エルキスに襲いかかる。

 「ひ、……ひ……!」

 粘液の身体が大蛇のように伸び、闘う力と意志を失くした少女の肢体に覆いかぶさる。
これまでに受けた痛みと疲労で、逃げようとすることすらままならない。
尿スライムはすぐにエルキスの全身に絡みつき、その動きを封じた。

 「ぅ、お、おぇぇ……っ!」

 尿スライムの先端がエルキスの口を塞ぎ、さらに喉へと潜り込む。
呼吸が出来ない苦しさと、汚物を注ぎこまれて嗅覚と味覚を犯される嫌悪感。
しかもそれは自分自身の尿から作り出された怪物。これより屈辱的な死に方はそうそうあるまい。

 「……っ」

 ロゼッタは先程から手で口元を押さえながらエルキスの醜態を眺めている。
思い付きでやってみたことだが、この尿スライムの放つ強烈な悪臭は見物する側にも耐え難い。
 匂いが移りそうで最期まで見届けようという気も失せてきた。風呂に入り、服を着替えたい気分だ。
このまま窒息死するのに任せてもう放置しておくことにしよう。

 契約した使い魔に片づけをさせようと考えながら、ロゼッタはこの場を後にした。


  ──BAD END──



 ロゼッタお嬢様が懐から取り出した瓶の中身の赤い石は、たぶん>>302で登場した賢者の石と同じもの。
<なにか役立つものが見つかるかもしれない。ロゼッタの死体を調べてみる>を選ぶと見つかるかもしれません。

339名無しさん:2010/05/20(木) 23:11:39 ID:???
>>250
<右の道へ>

 硬く冷たい石造りの通路を二人は走る。焦り。不安。小さな希望。いくつもの感情を抱きながら。
やがて、幾度かの曲がり角を経て通路は終わった。そこには上へと続く階段がある。
 だが、ただで通れそうにはない。道を塞ぐ者が居る。

 「あら」

 少しだけ驚いたといった口調でそうこぼしたのは、メイド装束に身を包んだ童女だ。
階段に腰掛けながら、両の膝に肘を乗せて頬杖をついた姿は愛らしい。
幼さが強く残る顔立ちに、黒く艶やかな長髪とルビーを思わせる紅く美しい眼を持っている。

 「ここ、行き止まりですよ。ロゼッタお嬢様のご命令ですので」

 先行していたリーファンが拳を握り、構える。
眼前の童女は、あのロゼッタ同様に外見とはかけ離れた化け物だと直感したからだ。
 そしてそれは正解だった。紅い双眼が、竜の噴き出す炎が如く妖光を放つ。

 (ッ!?)
 (──あれは!)

 リーファンはその光を真っ向から見てしまった。
 ルネスは魔法使いゆえの知識と、臆病な性格から来る無意識とが合わさって咄嗟に目を閉じることに成功した。
 結果、リーファンの五体は石化の邪眼を受けて石像となり、ルネスはそれを免れた。

 「あら」

 二人とも石にできると思っていたのか、紅眼の童女は少しだけ意外そうに呟く。

 (ど、どうしよう……!)

 石化の術は、魔法としてはかなり高度なものに分類される。その解呪も同様だ。
つまり、ルネスの力ではリーファンを救うことはできない。
 絶望の爪が、なけなしの勇気を引き裂いた。

 「嫌あっ!!」

 ルネスは踵を返して逃げ出す。孤独に手を引かれ、恐怖に背を押されながら。

 「えっ!?」

 しかし、回り込まれてしまった! 

 「ひゃっ!」

 突如現れた巨大な手がルネスの視界を覆い、その全身を握りしめる。がっちりと掴まれ、身動きがとれない。
その巨腕の先を見上げると、あの童女が巨人と化してルネスを見下ろしていた。
先程までは狭く息苦しさを感じさせていた筈の通路は、どうしたことか異常に広くなっている。
壁は遠く、床は遥か下、天井は高い。

 「お人形さんが逃げたら駄目ですよー。つかまえるの面倒なんですから」

 そう言われてルネスは理解した。相手が巨大化しているのではない。自分が小さくされているのだ。
このまま握りつぶされるのだろうか? それとも地面に叩き付けられるのだろうか?
いずれにせよ、運命は既に決している。死、あるのみだ。

 「どうしましょうかねー」

 童女の姿をした怪物は呑気につぶやく。ルネスの生殺与奪は文字通りその手中に握られているのだ。

340名無しさん:2010/05/20(木) 23:13:06 ID:???
 童女の姿をした怪物は呑気につぶやく。ルネスの生殺与奪は文字通りその手中に握られているのだ。

 「ヤルダバオト?」

 童女の背後から声がした。既にエルキスを殺めてきたであろう、あの忌むべきロゼッタの声が。
 ヤルダバオトと名を呼ばれた童女は、声を発した主の側へと振り向く。

 「あ、お嬢様」
 「良かった。まだ殺していないのね」
 「はい。獲物がこの場所まで来たなら殺してもいい、とは仰っていましけれども、
  やっぱりお嬢様のことですから、ご自分でやりたがると思いましたので」
 「そう」

 リーファンを石像に、ルネスを小人に変えたこの状況。
己の欲望の忠実なる僕であるヤルダバオトの働きを見たロゼッタは、唇に指先をあてながら考え込む。
どうするのが面白いだろうか。数秒して閃くものがあったのか、口を開いた。

 「その子を地面に下ろしてあげなさい」
 「はい」

 何故そうするのか、などと聞き返すこともなくヤルダバオトはその命令を実行した。
ロゼッタは掌を広げて石像化したリーファンへ向け、魔力の波動を送り込む。
すると、石の身体が軋むような音を上げながら動き始めた。

 「さあ、その小さいのを捕まえて殺しなさい。踏み潰してもかまわないわ」
 「ストーンゴーレムですか。たしかにこれなら石人形に吹き込む魂を用意せずに済みますから、効率的ですわ」

 ロゼッタが下卑た笑みを浮かべ、ヤルダバオトは愛らしい笑顔を作る。
石像化してもリーファンは「死んだ」わけではない。
その魂は硬く冷たくなった身体の内に眠っており、石の手足を動かす原動力として使うことが可能なのだ。

 「ほら、お逃げなさいな魔法使いさん。
  さっきの部屋まで逃げ切れたら、生かして帰してあげてもよくてよ?」

 あらゆる意味で弱く小さな存在となったルネスを見下ろしながら、ロゼッタがゲームのルールを告げる。
 逃げ切れるわけがない。仮に逃げ切れたとして、あのロゼッタが約束を守るとは思えない。
そう分かっていても、ルネスは必死で走りだした。ささやかなる最期の抵抗か、あるいはただ命が惜しいがゆえか。
 ぎこちないが、同時にしっかりとした足取りで石のリーファンがその後を追う。
喜怒哀楽の入れ替わりが激しかった顔は、今や無感情かつ無慈悲なものとなっている。
顔貌は変わらずとも、それはもはやリーファンではなかった。

 「……ーっ! ……ーっ! ……ーっ!」

 息を乱しながらルネスは賭ける。小さく小さくなった五体で懸命に。
追う者の足は遅いが、追われる者の歩幅はそれ以上に小さく狭い。

 「……あっ!!」

 ルネス、転倒。

 「あっははははははッ!!」

 ロゼッタが下品に嘲笑する。ヤルダバオトはその横で静かに控え、微笑を浮かべていた。
主が心底からこの遊びを楽しみ、満足していることに満足していた。

 「……こ、来ないでっ! お願いっ! リーファンっ……!」

 今のリーファンに、五感という概念はない。光を見ず、音を聴かず、手触りを感じることもない。
ルネスの「魂」を感知してそれに向かっているに過ぎない。単純な命令しか理解・実行しない人形でしかないのだ。
命乞いの言葉などなんの意味があろうか。
 それがまた、ロゼッタにとっては可笑しくてしょうがなかった。

 「……いっ、ひっひひひひ、はははははははははははははッ!!」

 腹を抱えるロゼッタ。嘲笑は下品さを増し、世界の終末を告げる角笛のように通路内に響く。
ロゼッタが笑い狂っている間に、石のリーファンの手はルネスを捕えていた。もはや握りつぶされるのを待つのみだ。

 「……助けてッ! 助けてッ!! 助けてッ、お願いッ……タぁスケテエぇッ!!!」
 「ひィっはははははッ!! あ、あッ、あッははははっははははははははははははッ!!!」
 「…………」

 ルネスの絶叫が裏返り、ロゼッタはまた笑う。
主が笑い死にしないか、ヤルダバオトはほんの少しだけ心配になった。

 「ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」
 「はっはははははははははっ、ははっはあっはははははははははははははははぁッ!!
  あ、はははッ、はっはっはあはははははははははッ!!!」

 握り潰されながらの断末魔はロゼッタの笑い声にかき消され、誰に聴かれることもなく消えた。
ルネスを殺した石の握り拳。その指の隙間から血が流れ出し、滴り落ち、床を汚していく。

 哀れな石人形が次なる命令を待つ間も、ロゼッタは笑い続けていた。


  ──BAD END──

341名無しさん:2010/05/21(金) 06:38:02 ID:???
>>340
× とは仰っていましけれども、
○ とは仰っていましたけれども、

OTL

342名無しさん:2010/05/22(土) 00:47:49 ID:???
>>303
<なにか役立つものが見つかるかもしれない。ロゼッタの死体を調べてみる>

 追い剥ぎの真似事をするのは初めてだ。ルネスは冒険者であって、盗賊ではない。
とは言え、ただ一人で生き残った今のルネスにとってそんなことはあまり重要ではなかった。
ヤルダバオトが気まぐれで残したであろう警告に従うならば、利用できそうなものは最大限に活用すべきなのだから。

 「……」

 無言でロゼッタの持ち物を調べる。結果、見つかったものは三つ。
 まず小さな瓶。中には指先ほどの大きさの赤い石が入っている。
手に持ってみるとわかるが、かなり強い魔力を感じた。
具体的なことはわからないが、役に立つ予感がしたので懐にしまい込む。
 次は手帳。開いてみると内容はロゼッタの日記だった。
最初のページには、あのヤルダバオトと契約した日のことが記されていた。
悪魔に童女の姿をさせていたのは、幼い頃に妹が欲しいと思っていたことに由来するらしい。

 (……姉と妹、か……)

 続く記述によると、領主家の蔵書に悪魔との契約を手引きしてくれる禁書が紛れていたのがそもそもの始まりのようだ。
次のページからは、狂気に塗れた「趣味」の記録が憎しみに満ちた筆致で綴られている。
一番最初こそロゼッタ自身が恨みを持っていた同級生を惨殺した記録だったが、
悪魔の力を得て「死」に魅入られ、囚われ、その矛先が無関係な者へ向くのにそう時間はかかっていない。
中でも勇ましい冒険者の少女を惨殺した時は、格別に大きな快感を得られることを発見し、今回の計画を思いついたらしい。
死霊を使って闘技場を閉鎖させたのは、彼女の父と町を治める家系への復讐という意味も多分にあったようだ。
領主の娘という境遇に生まれたがゆえ、その生活は裕福ながらも窮屈なものであり、
そのことが彼女を歪ませる大きな要因となったことがわかる。日記には父を呪う記述が頻発していた。
幼少から劣等感を強く持つ気質だったようで、「力」と「自由」への執着をそこかしこから読みとることができる。
 まだ途中だが、ルネスはひとまず手帳を閉じた。
事件の背景にあったものが概ねわかった以上、更に読み進める気にはなれなかったのだ。

 (……あとは、これね)

 三番目。死体漁りの最後の収穫は、折りたたまれた数枚の紙だった。
開いてみると、どうやら何かの見取り図らしい。あちらこちらに日記と同じロゼッタの筆跡で書き込みがある。
少ししてルネスはその価値を理解した。これは地図だ。今、ルネスが居る地下迷宮の。
 日記を改めて開き、最近の記述にも目を通してみた。
アークスの町の地下には、古くから由来もわからない地下迷宮遺跡が広がっている。
立ち入り禁止とされているが、領主屋敷や闘技場、そして町はずれ等に地上と繋がる出入り口があるようだ。
この場所に「改装工事」を施し、罠と怪物で満たしてやる。
そこに拉致してきた女冒険者を放り込み、それを眺めて楽しもうという趣向だった。
 とは言え、ロゼッタがこれを思いついたのはつい最近であり、死の迷宮はまだまだ未完成であった。
既に設置済みの罠も、この地図があれば事前に対処できる。

 (これなら、生きて脱出できるかもしれない……!)

 生きよう。エルキスとリーファンの分まで。ルネスの心に炎が灯った。


  <この地下から脱出し、早急にアークスを立ち去る>

343名無しさん:2010/05/22(土) 00:50:41 ID:???
  <この地下から脱出し、早急にアークスを立ち去る>

 その後、ルネスは王都リヨナへと戻ることにした。
姿を消したロゼッタの捜索が行われれば、あの地下に残された死体がひとつ足りないことまではいずれ暴かれるだろう。
追及の手を逃れるには、偽名を使い市井に埋もれるのが最善の選択だと思えたからだ。
 王都に戻って最初にしたのは、ロゼッタの懐から見つけた小瓶に入っていた赤い石について調べることだった。
大陸一の蔵書量を誇る大図書館での数日に渡る調査の結果、赤い石はかなり貴重な品であることがわかった。
その正体は「賢者の石」と呼ばれる万能の物質で、あらゆる系統の魔術に応用可能だという。
 使い道には少し悩んだが結局はそれを売却し、得た金を王都にある魔法学院への入学資金に充てた。
一人でも生きていけるよう、より高度な魔術を学び、身につけようと決意したのだ。
入学後は誰からも一目置かれる熱意を発揮し、知識・実践ともに同期の生徒の間ではトップクラスに登り詰めた。
卒業を目前に控える頃には、生徒・教師を問わず学院内で彼女を知らぬ者は居ないまでになっていた。
 卒業後の彼女は冒険者に復帰し、数多くの偉業を成し遂げ、数多くの危機を切り抜ける。
十年後には「英雄」、二十年後には「当世随一の大魔法使い」と呼ばれるようになり、歴史にその名を刻んだ。

 そして更に時が過ぎ。

 冒険者を引退してからの彼女は、母校である魔法学院の学長に就任して後進の育成に尽力した。
その地位も今日、彼女の教え子の中で最も信頼できる者に譲ったので今の肩書きは「名誉学長」だ。
 やるべきことは全てやった。悔いなき旅路を生きてきたと胸を張って言える。
 だから、今日まで後回しにしてきた宿題をこれから片づけようと思う。
 時は深夜。場所は自室。窓の外には冷たい夜気が満ち、闇と雲が空を覆っている。
床に魔法円を描き、魔導書を開く。これから行おうとしているのは召喚術だ。
彼女の力量ならば、異界の住人の大半は面倒な手順を踏まずとも呼び出せる。
だが、これから呼び出す相手は特別なのだ。彼女にとっては。彼女にだけは。
 魔法円が光を放つ。地上と異界を繋ぐ扉が形成されようとしている。

 「さあ、来なさい……ッ!」

 魔法円の輝きが強さを増し、そして炸裂した。

 「……"ヤルダバオト"よッ!」

 光が収まると、そこには一糸まとわぬ童女の姿があった。
黒く艶やかな長髪に、獣のように縦長の瞳孔を持つ紅い眼。愛らしくも恐ろしい邪眼。

 「こんばんは。悪魔さん」
 「……あら。これはこれは、お久しぶりです」

 悪魔と呼ばれる存在が地上に顕現する時、その外見は召喚者の持つ願望や記憶によって決まる。
ヤルダバオトの姿はあの日と寸分も変わらぬものだった。

 「私を、覚えているの?」
 「悪魔というものは、自分との契約を蹴った相手を忘れないのですよ。ルネスさん」

 懐かしい。「ルネス」という、何十年も昔に捨てた本名で呼ばれるのはあの日以来だった。
ロゼッタ殺しの捜索から逃れるため、偽名を名乗るようになり今やすっかりそちらに馴染んでいる。

 「そう」
 「さて、ご用件は?」
 「そうね。まずはお喋りましょう。あなたは、私にとって最も古い知己だもの」

 そう言うと、ルネスは椅子に腰かけた。

344名無しさん:2010/05/22(土) 00:51:53 ID:???
 そう言うと、ルネスは椅子に腰かけた。

 「皮肉ならもう少し面白いことを言ってくださっても良いのでは?」
 「本気よ」
 「そうですか」
 「ええ。私のお姉ちゃんと幼馴染を殺したのは、あなたの力だけどあなたではないもの」
 「……」
 「そもそも"悪魔"という呼称自体が人間から見た尺度でつけられたもの。
  "力"に正邪はなく、それを使う意志によって人間がその善悪を語るだけ。
  多くの場合、あなた達が契約者に与える恩恵は人の世に害悪と混乱をもたらすけれど、
  それも人間の弱さと愚かさに起因するものであって、あなた達は悪魔でも天使でもない」

 揺らぎも淀みも無くルネスは語る。

 「……己を理解されるということは、良いものですね」
 「他者を理解することは、全ての基本よ。私の場合は教師だったから尚更」
 「てっきり、復讐の為に呼ばれたのかと思いましたわ。
  幾千幾万といる我が種族の中から、わたくしという特定の一個体を選んで召喚するんですもの」
 「最初はそのつもりだったんだけどね。学院で学んでた頃はそのことばっかり考えてた。
  いつか、この手であなたを殺すんだ。って……」
 「その憎しみを礎として今のあなたがあるのですね」
 「ええ。けれど色々なことを学んで、経験して、あなた達の種族を知るにつれて私の考え方も変ったわ。
  あなたとあのロゼッタは私から全てを奪った。同時に、あなたのおかげで今の私がある」

 今に到るルネスの道は、ヤルダバオトとの出会いから全てが始まっているのだ。

 「そうですか……」

 ヤルダバオトが微笑む。ルネスも、皺の刻まれた顔で眼鏡越しに微笑み返した。
二人の姿は、孫娘と祖母のようにも見えた。

 「そろそろ、本題に進んでいいかしら? 今日はあなたと契約したいんだけど」
 「あなた程の魔法使いなら、私より格上のものとも契約できると思いますが」
 「それでもあなたがいいのよ。あなたでなきゃ駄目なの」
 「それは勿体なきお言葉ですわ。ご主人様」

 既に契約は完了している。契約は口約束だけで成立するのだ。

 「で、最初の仕事はなにを?」
 「まず服を着なさい。なんでもいいから」
 「はい」

 ヤルダバオトは全裸である。

 「それから私の転生を手伝ってちょうだい。若い身体のホムンクルスを創ってあるから、魂の移動を、ね」
 「わかりました」

 ルネスは今の老いた肉体を捨て、また冒険者に復帰しようと計画していた。夜明け前には旅立つ予定だ。
 ヤルダバオトはすぐ指示された通りに行動を始めた。この上なく満ち足りた表情で。


  <END>

345名無しさん:2010/05/22(土) 01:46:59 ID:???
①<さっそく闘技場へ>ルート
  |   ↓
  | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
  |   |
  |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
  |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
  |
  └→<このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
     ↓
  <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
     |
     ├→<魔法が使えるルネスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
     |  |
     |  └→ ★<まだ死ぬわけにはいかない…斧の一撃を魔法で防ぐ>
     |
     ├→<このまま戦う>
     |  | ↓
     |  | <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>  
     |  | |
     |  | └→ ★<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
     |  ↓
     | <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>
     |  ↓
     | <左足を上げ、辱めを求める>
     |  |
     |  ├→ ★BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>
     |  └→ ★BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>
     ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           └→<左の道へ>→ ★<手伝ってくれ!>

②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├─────────→ ★<何も買わない>
   |    ├→<エリクサーを買う>→ ★<エリクサーを飲み、闘技場へ>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>→<闘技場へ>→ ★<相手の出方を窺う>

3461:2010/05/23(日) 22:07:37 ID:???
間が開いてしまいましたが、更新の方完了しました。
ロゼッタさんは相変わらず鬼畜です。
私も石化とかの状態異常系は好きですし、別の選択肢で私も書いてみようかな…

ちなみに、今回の投稿で投稿話数が50話を超えました。
皆様、いつも投稿ありがとうございます。

3471:2010/05/23(日) 22:13:27 ID:???
途中送信してしまった…

ルネスが立派に自立できるENDも無事に完結しましたね。
過去のENDでもルネスは無事に生き残る(ただし、姉の世話などをして暮らす)
ENDが多かったですが、その中でも幸せな方じゃないでしょうか。

ところで、気になったのですが、投稿者や観覧車の皆さんが一番好きなキャラが誰か気になります。
ロゼッタさんやヤルダバオトさん、あの剣士さんなんかも含めて。
是非みなさんの好きなキャラを聞かせていただきたいです。

348名無しさん:2010/05/24(月) 02:40:50 ID:???
>>347
 好きなキャラ、というより作者(登場させた書き手)のお気に入りとしてはヤルダバオトですね。
自分は女性×女性でのリョナが好きなんですけど、
個人的な趣味全開でやらないと書き手としての意欲が維持できないとので新キャラの追加は女性キャラばっかりになっていしまいます。
そんなわけでロゼッタお嬢様を黒幕にし、ヤルダバオトを出し、マントの少女を出し……となってしまうんですね。
一定のやる気さえあれば誰でも書き手になれる参加型企画ですから、自分の好みの展開を見たければ自分で書くしかない……と。
 余所でのリレー小説形式の企画では、自己リレーを「物語の私物化」として嫌う風潮も根強いようですが、
ここのような過疎地では、そのタイプの考え方はプラスには働きにくいと完全に割り切ることにしました。最近は。
そんなわけで、今のところ自分しか書いてないヤルダバオトはかなり愛着が湧いてきています。
彼女が活躍できそうな分岐はもう殆ど使ってしまったので、今後は他の分岐にも手をつけていかないといけませんけどね。
 時点でロゼッタお嬢様。ノリノリでリョナる展開は書いてて楽しいですし、
他の書き手さんのロゼッタお嬢様も楽しく読ませていただいております。

 とりあえず、現在は13箇所の続き待ちポイントが残っていますから、
過疎企画なりの計画を立てて風呂敷を畳んでいかないといけませんね。
過去ログを見る限り、微妙に需要がありそうなエロ展開ルートも書いてみたいとは思うのですが……。

350名無しさん:2010/06/13(日) 19:40:59 ID:???
俺はルネスが一番好きだな
いろいろといい反応でリョナられてる
なんだかんだと、一番優遇されてる気もするし


過疎スレだし、連投は気にしなくていいんじゃね?

エロ展開は確かに少ないし、あると俺が喜ぶ。

351名無しさん:2010/09/17(金) 19:11:34 ID:60eQ5gxI
>>278
BAD END2 <もう飽きたが、ただ殺すのもつまらない。奴隷として闇の市場に売却する>


 圧倒的な力の差を見せつけられて敗北した三人。
少女達の行き先は、大陸中から悪党と無法者が集まると言われる大規模な闇市場の競売だ。
首輪と手枷のみを身につけ、布切れ一枚すらまとうことも許されずに裸身を群衆の前に晒した。
純潔を証明するために大きく足を開かされ、恥辱に顔を背ける三人をまとめて落札したのは、富豪の老人であった。

 「お前達にはその体を以て私の妻に奉仕してもらう」

 屋敷に着くとそう告げられ、牢に入れられた。このまま死ぬまでこの屋敷で奴隷として過ごす運命なのだろうか?
牢の中、三人は励まし合う気にもなれず、長い時間黙り込んでいた。
いつしか眠りに落ちたが、良い夢を見ることはなかった。
 目を覚まして少し経つと牢の扉が開き、老人が現れた。

 「誰でもいい。一人、来い」

 その命令に進み出たのはエルキスだった。
戦士の誇りは失ったが、姉として、リーダーとして妹と友を守らなければならないという最後の決意。
 牢を出ると、意外にもエルキスは風呂に入れられた。
メイドの手によって丹念に全身を清められると、老人の妻に引き合わされた。

 「エリザ。新しい娘を連れてきたよ」

エリザという名の、老人の妻は若く、孫ほども年が離れているように見える。

 「可愛い娘……。こっちへいらっしゃい……」
 「…………」

 エルキスは言われるままに歩を進めた。手が届くほどの位置に来るとエリザはエルキスを抱きすくめる。
 そして。

 「いっ……!」

 エリザはエルキスの首筋に噛みついた。傷口から流れ出す血が、エリザの纏うドレスを汚していく。
エリザの喉はこくこくと動き、乙女の生き血をすする。
 エリザは吸血鬼であった。
 エルキスの視界がぼやけ、暗くなっていく。肌が青ざめ、命の色を失っていく。

 (……あぁ)

 自分は死ぬのだ。エルキスはそれを理解し、受け入れた。
噛まれた痛みはいつの間にか消え、安らぐような眠気が肉体と精神を包む。
冒険者としては敗北したが、恐怖や苦痛にまみれた死に方ではなかった。

 (ルネス……。リーファン……)

 あの二人もこの快感と共に死を迎えるのだろう。「死」がこんなにも心地よいならば、安心して旅立てる。

 エルキスは、早く二人にもこの快感を味わってほしいと思いながら死んだ。


  <BLOOD END>

3521:2010/09/28(火) 00:57:01 ID:AOxwKouc
すみません、遅れましたが
更新完了しました。

吸血鬼っていうのもいいですよね。
本編には絡めにくいですが、別のネタでも吸血シチュとかは書いてみたいです。

353名無しさん:2010/12/05(日) 11:53:13 ID:3hGKtWQk
tes

354名無しさん:2011/02/08(火) 21:38:20 ID:AidgXyNI
スレもゲームオーバー?

355名無しさん:2011/02/12(土) 02:05:49 ID:???
ご覧の通りです。

356名無しさん:2011/02/19(土) 19:10:23 ID:???
書き手として参加して思ったことだけど、三人パーティは欲張り過ぎたな。
ヒロインは一人に固定するべきだったと思うよ。
一人殺してもまだ二人残ってるってのは正直かなり負担だった。
リョナり方のネタを三倍の速さで消費させられるんじゃ無理が出る。俺の場合な。
まあ、やってみないとわからなかったことだから企画開始前の判断をどうこう言いたいわけじゃないけどね。

357test ◆.CzKQna1OU:2011/10/09(日) 19:47:35 ID:???
test

358名無しさん:2011/10/25(火) 22:57:22 ID:V4no9d0Q
再開の兆しかと思いきや

359名無しさん:2011/10/28(金) 05:46:52 ID:???
自分で書いてもいいのよ。俺はもう書かんが。

360名無しさん:2011/10/28(金) 17:25:57 ID:???
映画?

361名無しさん:2012/09/25(火) 02:27:15 ID:???
>>325より、<まだ死ぬわけにはいかない…斧の一撃を魔法で防ぐ>を選択。

 折れそうな己をかろうじて奮い立たせるルネス。

 「──"シールド"!」

 臆病な性格ゆえか、ルネスは防御系に属する魔法は得意であった。
手を掲げ、振り下ろされる斧を迎え撃つべく光輝く魔力防壁を一瞬で展開させる。
少女の全魔力を込めて形成されたそれは、迫り来る刃を見事に受け止め、同等の反発力を以て弾き返した。
ミノタウロスがぐらりと体勢を崩す。大きな隙。しかしルネスの次なる手は反撃となる攻撃系呪文ではなかった。

 「"インビジブル"!」

 呪文の完成と同時にルネスの全身が透け、空気に溶けたように消え失せる。透明化の呪文であった。

 (これでミノタウロスはこちらを捉えられない筈……!)

 透明化からの奇襲で一気にロゼッタを討つ算段である。日頃は臆病なルネスだが、同時に意外な大胆さを秘めてもいるのだ。
 しかし。

 「それで隠れたつもりかしら?」

 ロゼッタが腕を横薙ぎに振るうと、鋭い光の線が部屋全体を走り抜けた。
次の瞬間、透明化したルネスの身体は腰から上下に両断され、ミノタウロスは両脚を切断されていた。
ルネスの下半身が両膝をつき、上半身がドサリと落ちる。

 「……あ、……あ」

 何が起きたのか理解していないようなうつろな呟きがルネスの唇からこぼれる。
切断面からはどぼどぼと血が流れ始め、その面積を広げていた。

 「ひ……、ひ……!」

 やがてその声は。

 「いいぃいいぃやぁあああああああああああああッ!」

 痛みと絶望の叫びへと変わった。
 ルネスは、敗北したのだ。

 <BAD END>

362名無しさん:2012/09/25(火) 12:34:48 ID:???
まさかのw
いったいどうした!?

363名無しさん:2012/09/28(金) 12:53:45 ID:d0U3oGqg
グッドエンドがあるとバッドエンドの無情さが引き立って良いよね

364名無しさん:2012/09/29(土) 10:00:09 ID:???
マルチ展開の醍醐味だね

365名無しさん:2012/11/04(日) 18:07:45 ID:???
一月経っても1さんこないし色々ぶっちゃけるか。
どうにかしてやりたいと思いつつもモチベが上がらんのはどうしようもない。
自分の中では>>342-344を書いた時点で決着したというか、それ以上書けなくなってしまった。
その後に無理して書いた>>351>>361はどれだけ手抜きな文章を書けるかを試したもの。
1レスに収まるほど短いのはそのため。
>>324の、

 「さて。では、仲間を見捨てて逃げ出す臆病者に相応しい罰を。
  そして、少ない戦力を更に分散させる愚か者には教訓を」

 ロゼッタがここに居るということは、エルキスの安否が既に絶望的であることを意味する。
もし、三人が自分達とロゼッタとの間にある戦力差をもっと冷静に認識できていたならば。
誰が残って闘おうがそれが下策であること、選択肢に並べる価値もないことを気付けたかもしれない。

……というくだりは、無駄に選択肢増やした他書き手(>>141)への愚痴として書いた。
ま、一番無駄な選択肢を増やしたのは俺なんすけどね。>>178とか>>277とか。
これまでに得た教訓を生かしつつリセット&リスタートできないものか、とも思ったりしたけどまあ無理でしょうな。

366名無しさん:2015/04/28(火) 17:59:34 ID:???
盛り上がる

367名無しさん:2016/04/04(月) 18:27:15 ID:???
①<さっそく闘技場へ>ルート
  |   ↓
  | <もうだめだ……どう足掻いても助かりっこない>
  |   |
  |   ├→ ★<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>
  |   └→ ★<「あなただけでも逃げなさい」>
  |
  └→<このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる>
     ↓
  <屈服して二人の命乞いをする態度を装い、隙を窺う>
     |
     ├→<このまま戦う>
     |  | ↓
     |  | <背後に危険を残してはおけない。ミノタウロスからルネスを助けださなくては!>  
     |  | |
     |  | └→ ★<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>
     |  ↓
     | <ここは魔力の大元を叩くべきだ。ロゼッタを斬る!>
     |  ↓
     | <左足を上げ、辱めを求める>
     |  |
     |  └→ ★BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>
     ↓
  <唯一、剣を持つエルキスが敵を食い止め、残り二人が装備を探しに行く>
           ↓
   <武器を探しにいったルネス・リーファンはどうなっただろう?>
           |
           └→<左の道へ>→ ★<手伝ってくれ!>

②<先に情報収集を>ルート
   |    ↓
   |  <掘り出し物があるかもしれない。品物を見せてもらう>
   |    |
   |    ├─────────→ ★<何も買わない>
   |    ├→<エリクサーを買う>→ ★<エリクサーを飲み、闘技場へ>
   |    ↓
   |   <聖水を買う>
   |    |
   |    ├→ ★<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>
   |    ├→ ★<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>
   |    └→ ★<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>
   |
   └→<これ以上は時間が惜しい。先を急ぐ>→<闘技場へ>→ ★<相手の出方を窺う>

368名無しさん:2016/05/30(月) 22:43:06 ID:???
面白そうだけど書き直し効かないしかなり難しそうだなこれ

369名無しさん:2017/05/30(火) 12:49:33 ID:???
ゲームブックにするなら
基本ヒロインと敵のタイマンでどうやって倒すかor倒されるか、くらいのシンプルなモノで良かったろ
今更だが

370名無しさん:2020/04/16(木) 07:43:03 ID:fJTYAxMQ

>>202
<「なんとかリーファンのところまで一緒に行きましょう?」>

 このまま分散していても各個撃破のいい的だ。
エルキスはそう考え、とにかく一箇所に集まろうと妹に声をかけようとした。
 しかし。

「あ」

 鋭く風を切る音とほぼ同時に、間の抜けた断末魔がこぼれ、ルネスは倒れた。即死である。
その眼には一本の矢が突き刺さり、的確な狙いで脳の中枢部が破壊されていた。
ネクロマンサーに率いられる死者達の中に弓矢使いが居ることをエルキス達は見落としていた。

「ル、ルネっ」

 妹の名を呼ぼうとしたエルキスの後頭部に新たな矢が刺さる。
こちらも正確に脳中枢を貫き、その神業に感心する間もなくエルキスは死んだ。

<BAD END>

371名無しさん:2020/04/16(木) 08:01:38 ID:fJTYAxMQ

>>202
<「あなただけでも逃げなさい」>

「ルネス! 先に退路を確保して! わたしはリーファンを助けるわ!」

 最悪、妹だけでも生還してほしい。内心でそう考えつつエルキスは指示を出し、走り始めた。
幸いにして、リーファンとの距離はそこまで遠くない。やれる筈だ。

「リィィイイファァァァアアアアンッ!」

 親友に群がる死者達の気を引くように雄叫びを上げる。

「消えろおっ!」

 全力で駆け、気迫と共に放たれた斬撃は、しかし届かなかった。

「……っ!」

 腕が、軽い。しっかりと握っていた剣がすっぽ抜けたかのように。
だが、違う。視線を落としたエルキスが見たのは、肘から切断された己が右腕だった。
片腕を失くした痛みを感じるより先に、思考が凍る。どうすればいい?
次善の選択を見出すより早く、破滅は訪れた。
死者の一体が振るった剣がエルキスの首を刎ねたのだ。
 エルキスには、もはやルネスの安否を確認する時間すら残されていなかった。

<BAD END>

372名無しさん:2020/04/16(木) 08:12:06 ID:fJTYAxMQ


>>272
<どうにか立ち上がれそうだ。背中を向けているロゼッタに反撃し、エルキスを助けなくては……!>

 ふらつきながらも、リーファンは立ち上がった。
ロゼッタが無防備な背を晒している今は、最大の好機でもある。

(くらいなっ!)

 踏み込みから渾身の突きを繰り出す。
直撃すれば人間の背骨などたやすく粉砕する一撃だ。
当たれば、だが。

「……ぅぼっ」

 鋭い刃がリーファンの胸を貫いていた。その口から鮮血が勢いよく吐き流れ出す。
刃は背を向けたままのロゼッタの後頭部から伸びている。それは髪の毛であった。
魔力で具現化した、高強度かつ極細の鞭の束。それを頭髪と融合させて操る術だ。
それを知らずに突撃したリーファンこそ無防備であった。
回復魔法もエリクサーもない彼女に、もはや助かるすべはなかった。

<BAD END>

373名無しさん:2020/04/16(木) 08:30:35 ID:fJTYAxMQ
>>277
BAD END3 <もう少し遊ぼう。陵辱して乙女の加護を奪い去ってから、もう一度死霊と戦わせる>

 その後、ロゼッタの召喚した魔物達に三人は陵辱の限りを尽くされた。
再び闘技場に立たされるも、既に茫然自失となっていた少女達は抵抗らしい抵抗もないまま死を迎えた。
殺し方としては失敗だったと考えたロゼッタは、三人の死体を回収。復元・蘇生させて地下に保存している。
記憶を消してもう一度、遊ぶもよし。忠実な配下たる、生ける人形とするもよし。
良い使い道を決めるまで暫し、心の玩具箱に住まわせておくことにした。

<BAD END>

374名無しさん:2020/04/16(木) 08:43:41 ID:fJTYAxMQ
>>319
<手伝ってくれ!>

「手伝ってくれ!」

 リーファンの指示を受けたルネスは、自身も壁に両手を押し付けた。
強固な物質でも急速に劣化させる魔法を試してみるしか無い。
ルネスの魔法技量ではとても実戦で使えるものではないが、相手が攻撃してこないただの壁。
多少の時間はかかってもなんとかなるかもしれない。そう考え、魔力操作に意識を集中しようとした。

「あれ……?」

 なにかが、おかしい。ルネスの覚えた違和感は、すぐに焦燥に変わった。
壁が、ルネスの手から魔力を吸い取っているのだ。
気づいた時には既に遅い。強烈な脱力感と共にルネスは崩れ落ちた。

「おい、ルネス!」

 リーファンの叫びも、もはやぼんやりとしか聞こえないままルネスは意識を失った。
 万策は尽きた。あとはもう、壁に潰されるのを待つのみであった。

<BAD END>

375名無しさん:2020/04/16(木) 08:47:06 ID:fJTYAxMQ
>>121
<何も買わない>
>>153へ。

376名無しさん:2020/04/16(木) 10:27:48 ID:fJTYAxMQ

>>311
<エリクサーを飲み、闘技場へ>

 エリクサーは半不死の霊薬と呼ばれ、一度だけ致命傷を即時修復してくれる効果を持つ。
まるで魂がふたつに増えたかのような清々しさを、薬を飲んだ三人は得た。
 だが、薬には副作用があるものだ。今回のエリクサーも例外ではなかった。

「……んっ」

 突如、強烈な尿意が少女達を襲ったのは、闘技場へと向かう道の途中であった。

「あ、あああああああああーっ!!」

 抵抗と呼べるほどの事もできずに、乙女の堤防は陥落した。
びちゃびちゃと黄金の滴りが溢れ、こぼれ、香りが広がる。

「ぐへへ」

 間の悪いことに、そこはちょうどアークスの街でも治安が悪い部類に入る区画であった。
闘技場の死霊に挑む度胸はないが、見切りをつけて他地域に移るほどの潔さもない。
そんな、ゴロツキと呼ぶに相応しい闘士くずれが乙女の痴態を文字通り嗅ぎつけてきた。

「嫌ァっー!」

 予期せぬ失禁に冷静さを失っていた少女達は瞬く間に裏路地に連れ込まれ、陵辱された。
もはや乙女の加護を失った少女達に、闘技場の死霊に挑む資格は無かった。

<RAPE END>

377名無しさん:2020/04/16(木) 10:36:16 ID:fJTYAxMQ

>>178
<一手遅れることになるが、剣を拾いに走る>

 素手で挑むのはいくらなんでも無謀が過ぎる。
エルキスは瞬時にそう判断し、最速で剣を拾いに走った。
だが、それでも間に合わないものは間に合わない。
剣を手に死霊に向き直ったエルキスが見たものは、三つ首の魔犬と化した死霊がルネスを食いちぎる様であった。

「うぅうあああああああああああっ!!」

 遅かった。怒りの咆哮と共に斬りかかるも、吐き出された黒い炎がエルキスを包む。
地獄から溢れた炎に身を焼かれるのを感じる間もなく、エルキスの肉体と魂は消滅した。

<BAD END>

378名無しさん:2020/04/16(木) 10:40:37 ID:fJTYAxMQ

>>178
<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>

「ルネスっ! 闘って! 生きて!」

 必死に声をかけるが、ルネスは震えたまま動けない。
三つ首の魔犬と化した死霊がルネスに飛びかかり、食いちぎっていく。
呆然とそれを見つめるエルキスに、死霊が向き直る。
三つの顎が大きく開き、黒い炎が吹き出した。
 エルキスが最期に見たものは、視界一面を覆う闇の炎であった。

<BAD END>

379名無しさん:2020/04/16(木) 10:41:53 ID:fJTYAxMQ
間違えた。>>378は<ルネスの勇気を揺り起こせることを信じ、ルネスに呼びかける>です。

380名無しさん:2020/04/16(木) 10:47:58 ID:fJTYAxMQ

>>178
<ルネスと死霊の間に割り込み、ルネスを庇う>

 「考える」という段階を挟むことなく、エルキスの身体は動いた。
合理性も恐怖も関係ない。死霊の牙に身を投げ出した勇気は、鮮血で報われた。
最愛の姉が噛み潰されていくのを見たルネスは意識を失い、そのまま食い殺されるまで二度と目覚めることはなかった。

381名無しさん:2020/04/16(木) 11:03:29 ID:fJTYAxMQ
>>314
<相手の出方を窺う>

 一瞬の出来事であった。
マントの少女は、まるで初めからそこに居たかのように間合いを詰め、エルキスの至近に現れた。
抜き放たれた刃が、喉元で止まる。達人と呼ぶ以外にない、技の冴えである。

「そこまでえっ!」

 審判役の兵士の声が響く。

(……凄い。強いかもとは思っていたけど、想像を遥かに超えてる……!)

 あまりの技量の差に、エルキスには悔しいという感情すら湧かず、感動を覚えるほどだった。
 決闘は終わり、また今回の依頼も終わった。
書類を手渡しながら、エルキスの心にはある種の清々しさが満ちていた。
まるで、十年近くに渡って背を向けていた宿題を、強引ながらも終わらせたかのような気分だった。

<END>

382名無しさん:2020/04/16(木) 18:14:55 ID:???
このスレはチャレンジ精神と制作に対する意欲が高くて偉いと思う
上がってたから通りすがりで褒めていく

383ID:fJTYAxMQ:2020/05/06(水) 16:54:14 ID:???

 1も、当時の読者も、他の書き手参加者も、誰ももう見ていないだろうし後書き的な独り言を書き残しておきたい。
もしかしたら、当時に参加していた誰かが何かの拍子に「そういやあのゲームブックスレ、どうなったんだ?」と思って見に来るかもしれない。そんな時のためにだ。
 ご覧の通りソードマスターヤマトより酷い終わらせ方をしたが、ほぼ十年に渡って誰も何もしなかったのだから参加型企画として文句を言える奴も居ないだろう。
本編開始前に俺が意見を出したのは>>33>>40-41。三人娘と依頼内容の原案は両方、俺だ。当時からの参加者の少なさが伺い知れるね。
その後の本編では
>>75-76>>114-117>>174-178>>270->>277>>289-291>>297-303>>311>>314>>318>>324>>330>>333-335>>338>>339-340
>>342-344>>351>>361>>377-381
……を書いた。文字数だけならたぶん俺が最多だろう。はっきり言って1以上にこの企画に深く関わってしまったとすら思ってるよ。
そんなわけで、「ルネスの独り立ちとヤルダバオトとの和解」編を書いて燃え尽きてからもずーっと未練があった。
かといって最初から最新まで俺が一人で書いたわけじゃないものに対して、きっちりと終わらせてやろうという愛着と熱意も持てなかったのでこんな結果に。
他の書き手による展開や、読者の反応の全てが俺に続きを書く意欲をくれたわけでもないからな。
 楽しかった思い出だってもちろん、それなりにある。他の書き手によるロゼッタお嬢様(俺が黒幕にした)は、リレー小説の良さを教えてくれた。
後期に登場させたヤルダバオトが、誰にも書いてもらえなかったのは残念というか心残りというか、寂しさはあるが。
とにかく、野ざらしの死体だったこのリョナゲームブックを埋葬して墓標を立てたかったんだ。
重要なのはお前らがどう感じるかじゃない。俺自身の感情に決着をつけることだった。
もし頓挫しても、その責任所在が不明確なリレー小説という企画。少なからずそれに関わった自分自身に対して責任を果たしたかったんだよ。俺は。
結局、安易に分岐を増やしすぎた罪悪感を誤魔化したかっただけなのかもしれないがな。
 書き残しておきたかったのは、大体こんなところだ。俺の書いたリョナを読んでくれた君よ、ありがとう。俺の書いたリョナの前後を繋いだ君よ、すまない。

 じゃあな。

384名無しさん:2020/05/06(水) 18:30:56 ID:???
>>249->>258を書き込んだ者です。
その後は参加しておりませんでしたが、専ブラを入れており新着はすぐわかったため
383氏の後書きを拝見し、建てて頂いた墓標に花を手向けるような心持ちを書き込ませていただきます。

確か投稿数が少なくなりあぼーんもあって廃れていたところを、仕切り直しの助けになればと思い
>>249を書き込んだように覚えています。
その後383氏には自分が作った選択肢をいくつも繋いでいただいたようで御礼申し上げます。
特に <何としても逃げなくては。最後の勇気を振り絞る。> からTrueEndのひとつになる>>344まで繋いでいただきありがとうございました。

385名無しさん:2020/05/15(金) 18:49:24 ID:???
どっかのBADENDを書いた覚えはあるが、どれが自分のだったかを思い出せない
と思ってつらつら読んでみた(自分のは>>325-326

スレ自体はずっと残ってたので、ここ来るたびに気にはなってました
何かを続けるのは難しいが、それを終わらせることもまた難しい

>>383氏ほんとうに乙でした

387ID:fJTYAxMQ:2021/12/24(金) 00:20:26 ID:???
運営に過去ログ落ち申請してみた。通るかは知らん。


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