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リョナゲームブックを作ろう!

114名無しさん:2007/07/04(水) 05:53:26
>>68より分岐】
 ≪このままでは全滅だ、必死で脱出を試みる≫


 危機にあってこそ、冷静であれ。冒険者として生きる者の鉄則だ。
 しかし、最良の判断を下せるだけの時間がいつも与えられるとは限らない。例えば今のエルキスがそうであるように。
それでも選ばねばならない。冒険者に限らず人の運命とはそういうものだ。

 ネクロマンサーの魔力を受け、死霊がそこいら中から無数に湧き出す。
魂を汚される苦悶と、生者への憎悪は、邪気となって試合場を包み込んでいた。
 エルキスは瞬時に思考を走らせる。状況は悪い。既に最初の一歩を踏み外し、天秤は死と敗北の側へと大きく傾いた。
死霊達に支配されつつある戦いの流れをひっくり返せるだろうか? 自分達はこの戦いの勝者になりえるだろうか? 
(──やばくなったらすぐに戻ってきてくれよ?)
 入り口の兵士の言葉を思い出したエルキスは決断し、まだ立ち上がれずにいるリーファンの方へと向き直る。
あそこからリーファンを助け出すのだ。そしてここは一度退こう。
 試合場の中央、舞台上のネクロマンサーは静かに佇み、動く気配はない。
だが、ネクロマンサーの哀れな下僕と化した死者達はリーファンを取り囲もうとしている。その数、四体。
立ち止まって考える猶予はもう残されていなかった。
「ルネス! そこから援護してッ!」
 叫び、駆け出すエルキス。
「……え? あ、はい!」
 姉の声を受けたルネスは、縮み萎んでいた勇気を僅かに回復させた。慌てながらも、魔法を発動するべく構えをとる。
リーファンへと駆け寄る背中を見据えながら深く息を吸い込むと、前方へと突き出した両の腕に意識を集中させ始める。
制御を受けて両腕へと注ぎ集められた魔力は、渦巻きながら膨れ上がり、聖なる波動を帯びて白い輝きを放ちだした。
その光を受け、ルネスに近づこうとしていた死霊達が業火におののくように歩を止める。
 両腕に白い光を纏い、ルネスの心身は引き絞られた弓と化している。
この体勢で待機していれば、新たな死霊が現れても即座に聖光の矢を撃ち浴びせることができるだろう。
か細い勇気で己を支えながら、無言で見守る視線の先。エルキスは死霊達に刃が届く間合いまで辿り着いていた。
「ハァァァアアアッ!」
 薙ぎ払う刃が、二体並んだ死霊達を一撃で通り抜ける。腰から上下に分かたれた亡者の姿は、湯気のように薄れて消えた。
次なる死霊を、踏み込みつつ手首を返し振り上げた刃で両断。頭上へ昇った剣を諸手で握り直し、残る四体目へ渾身で打ち下ろす。
急降下する斬撃は、死霊がエルキスを見上げる間もなく、頭からその姿を断ち割った。
 リーファンに群がる死霊達を、危ういところで一掃したエルキスは呼吸を整える。
どうやら、雑兵たる死霊達は一撃で形を失う程に脆く、動きも鈍いようだ。
この場からの脱出は、容易ではないにせよ不可能でもなさそうだった。
「リーファン、立てる!?」
「……ん、どうにか、ね。」
 膝に力が入らずにふらつきながらも、身を起こすリーファン。
全力で戦える状態でないことは、エルキスのみならず数十歩を隔てたルネスからも見て取れた。
「ここは一度退きましょう」 
「……」
 撤退や迂回はリーファン好みの選択ではない。できればネクロマンサーに逆襲の拳を叩き込みたいところだ。今すぐに。
「勝てないって言うの?」
「ええ。準備不足だったわ」
 落ち着きを崩さぬ口調でエルキスが返す。
長期戦となりそうであれば撤退する。リーダーとして、エルキスが事前に決定していた方針である。
速攻撃破どころか、勝てるかどうかも怪しいこの状況。
分の悪い賭けは、依頼を受けた冒険者としてエルキスが抱く責任感に反する行いだった。
「……了、解」
 リーファンとて、理を解さぬ頑固者ではない。リーダーとして、友として、エルキスを信頼している。
不服の色を顔に滲ませつつも、リーファンはエルキスの判断を受け入れた。
 短いやりとりの合間にも、三人への包囲は狭まりつつある。
試合場と観客席を隔てる壁を背に、三方向から数十体の死霊達がゆっくりと群がり迫っていた。


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