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千鶴編、下書き

1作者:2008/08/26(火) 21:15:59
SM色が、少なくなってしまった千鶴編の下書きを同時進行でアップします。
この際、歴史モノのSFとして読んでください。

2作者:2008/08/26(火) 21:17:31
1944年7月。イギリス空軍のデヴィット・マーダー少佐(40歳)は、
愛機のスピットファイアMK10を駆ってドイツ本国領空へと侵入した。M
K10は、名機スピットファイアの最新バージョンである。すでに、西部戦
線では、パリ解放が目前に迫り、東部戦線においてもドイツ軍の総崩れが始
まっている。ドイツの敗色は濃厚となり、もはや戦局を逆転することは、誰
の目から見ても不可能に思われた。
(戦争が終わったら、退役して農薬散布の仕事でもするか)
デヴィットは、のんびりそんな事を考えながら、操縦桿を操り、迎撃してく
るドイツ空軍のメッサーシュミットを撃ち落としていく。エースパイロット
としてベテランの域に達したデヴィットは、居眠りしていても空中戦に負け
ることはない。右足の義足の調子も快調で、最近は、義足をつけている事す
ら、ついつい忘れてしまう程だった。
(最近のドイツ人パイロットの腕は、かなり落ちているな。熟練パイロット
は、あらかた戦死してしまったんだろうな)
十数機を撃ち落とし、基地に引き揚げようとした時、上空から奇妙な物体が
急降下してきた。普通のプロペラ機ではない。円盤状の機体が回転しながら
飛行している。迷彩塗装にハーケンクロイツのマークがペイントされている
所を見ると、ナチスの新兵器のようだった。
「なんだ、あれは!あれも、噂に聞く古代技術の産物ってやつか」
デヴィットは、スピットファイアを旋回させ、回避しようとした。しかし、
ナチスの円盤機は、物理法則を無視したような動きで、ぴたりとデヴィット
の愛機を補足してくる。円盤機から正確な機銃掃射が行われ、スピットファ
イアの翼を穴だらけにした。
「くそっ、またやられた。何回目だろう、撃墜されるのは」
デヴィットは、墜落するスピットファイアのコクピットを飛び出し、パラー
シュートを開いた。
(やれやれ、ここは、ドイツ領空だ。連合軍の占領地域まで歩かなきゃなら
ん)
デヴィットはうんざりした。

3作者:2008/08/26(火) 21:19:06
ベルリンの総統官邸に、久石千鶴は、呼び出しを受けた。ヒトラー総統が会
いたがっているという。
「ハイル・ヒトラー!お目にかかれて光栄です。ヒトラー閣下」
千鶴は、直立不動でナチス式の敬礼をした。この人物に会うと、いつも恐怖
を覚える。
「20年ぶり、かな?」
「ええ、1923年に一度、お会いしました」
それ以前の彼の前世でも、何度も会っているが、転生者である彼自身には、
その記憶はない。いずれも千鶴にとって愉快な記憶ではなかったが。
「フラウ・ヒサイシ。あなたの事は、私の友人のミッシェルから聞いている。
南極の秘密基地を案内してやってくれと頼まれた」
千鶴は、内心狂喜した。ミッシェルの話や、ベルリンに来てから集めた情報
によると、そこは、古代アトランティスの超科学の産物の宝庫で、宇宙人に
対抗出来る兵器が、山のように積まれている筈だった。
「総統閣下の特別の計らい、本当に有り難く存じます。ぜひ、よろしくお願
いします」
「ふむ、実は、私は、もうこの戦争は勝てないと思っておる。ユダヤ人との
闘争に敗れたのだ。戦後の世界はユダヤの闇の政府にゆだねられるであろう」
ヒトラーは、苦々しげに言った。千鶴は、どう答えていいか判らず、兼ねて
からの疑問を口に出した。
「ユダヤ人とは、一体何なのですか?」
「以前、ミッシェルが、私に教えてくれた。奴らは古代アトランティス時代
にあったバベルの塔の管理者の末裔だそうだ。ユダヤ人の先祖は、アトラン
ティス人の中でも最も知能の高い『天才階級』と呼ばれるグループに属する
人間達だった」
「・・・・」
「ユダヤ人は、Y染色体の中に知能を高める特殊なDNAを持っている。ネ
アンデルタール人がクロマニヨン人に滅ぼされたように、いずれ人類は、彼
らにとって代わられるだろう。私は、それが許せない。人類の次の時代を担
うのは、ドイツ人に代表される金髪碧眼のゲルマン民族でなくてはならない
と考えている」
千鶴は、ヒトラーの姿をまじまじと見つめた。どう見ても、ヒトラー自身、
金髪碧眼ではない。

4作者:2008/08/26(火) 21:20:10
「実はな・・・」
千鶴の視線に気づき、ヒトラーは自嘲気味に語った。
「以前、ドイツの支配地域に居住するユダヤ人の家系をしらみ潰しに洗い出
す調査を、ゲシュタポにやらせた。その時、なんと、私の父方の祖父がユダ
ヤ人だった事が判明したのだ。つまり、私自身、ユダヤ人のY染色体を持っ
ていたのだよ」
「総統が・・・・まさか・・・」
「私は、大いに悩んだ。ドイツ、アメリカ、ソ連、イギリス・・・この大戦
にかかわっている主要国全てが、結局、ユダヤのY染色体に踊らされていた
のだ」
「日本は?日本はアジア人の国です。ユダヤとは関係がありません」
千鶴の問いに、ヒトラーは苦笑いをした。
「ナチスの秘密機関の調査によれば・・・古事記に書かれている神武天皇と
いうのは、ユダヤ人だった事が実証された。紀元前8世紀にアッシリアによ
って連れ去られたイスラエルの失われた十部族は、中央アジアからシルクロ
ードを経て春秋戦国時代の秦国へと渡り、やがて秦の始皇帝が中国全土を統
一した時代に、仙人徐福に率いられて日本列島の南九州へと植民したのだ。
徐福という中国名は、おそらくヨセフが訛ったものだろう。そして九州の日
向から神武天皇の時代に東遷し、現在のミカドの始祖となった。渡来人秦氏
というのは、秦国から来たユダヤ人とういうわけだ」
千鶴は、1700年前の邪馬台国時代を思い出した。千鶴は、そこで女王卑
弥呼から、壮絶な拷問を受け、日向王朝と邪馬台国の抗争も目の当たりにし
た。
「日本の天皇家は、古来からのY染色体を継承することに非常に固執してい
るのだろう。それもユダヤ人の特性だ。なぜなら、そのY染色体は、古代ア
トランティス時代から受け継がれた『天才階級』の証なのだから」
そう語る、ヒトラーは絶望の淵に沈んでいるようだった。

5作者:2008/08/26(火) 21:21:21
「我々は、これより南極の秘密基地へと退却する。ナチスドイツの主要メン
バーも影武者と入れ替え、全員、Uボートで南極へ避難させることにした。
幸い、アトランティスの遺産にクローン技術というのがあって、人間の髪の
毛一本から、全くそっくり同じ人間を人工的に作り出すことが出来る。彼ら
に身代わりになって貰い、本物は生き延びるのだ」
千鶴は、学生だった頃、教科書で教わった歴史とは、あまりに違う展開に、
自分がパラレルワールドに迷い込んでしまったのかと、一瞬不安になった。
元いた未来に帰れなければ、宇宙人への復讐も意味が啼くなってしまう。
「我々は、南極の秘密基地で、ユダヤ人どもの目を逃れて、じっくりと古代
技術の解明と復活に時間をかけることにする。そして何十年後かには、再び
歴史の表舞台に登場することになるだろう。その時こそ、わがナチスのラス
トバタリオン、最後の部隊が世界を席巻するのだ」
(そして、そのラストバタリオンを、21世紀初頭に侵略してくる宇宙人に
ぶつけよう。それしか、方法はないわ。もし、それでも戦力が足りなければ
時間管理局を、ハメて・・・)
千鶴は、必死で頭脳を巡らせた。具体的にどうすれば、この二つの勢力を動
かすことが出来るのかは判らないし、また、仮に成功したとしても、宇宙人
に対抗出来るだけの戦力に足り得るのかどうかも判らない。

6作者:2008/08/26(火) 21:22:10
「ところで、フラウ・ヒサイシ。不思議な事に、私は、生まれる前にも、あ
なたに会った事が、あるような気がしてならないのだが」
ヒトラーは、唐突に言い出した。千鶴は正直に答える事にした。
「ミッシェルから聞いておられると思いますが、私は、1974年の日本で
生まれ、29歳の時に、宇宙人の人体実験で不老不死の肉体に改造された後、
西暦5年のローマ帝国に置き去りにされました。おそらく、場所はこのベル
リンの近くだったかもしれません。だから、正確には、私の年齢は1968
歳という事になります。」
「つまり、前世の私に会った事があると言うのかね?」
「はい」
「前世で、私は、どんな人物だった?」
「あなたは、常に帝国を率いる支配者で、周囲の国に侵略者として恐れられ
ていました。モンゴルのジンギスカン、中国の曹操、インカ帝国のアタワル
パ、日本の織田信長・・・私が直接会ったのは、この4人だけですが、他に
もあなたの前世に当たる歴史上の人物が、数多くいた筈です」
「ふむ・・・」
ヒトラーは、考え込んだ。いずれの人物も1代で、その帝国の版図を広げ、
多くの人民を虐殺した事で、行動パターンが一致している。その人物が登場
する前と後では世界の情勢が一変し、本人が非業の死を遂げた後も決して元
に戻ることはなく、歴史は次の段階へと移行していると言うのも共通だ。
「なぜだか、あなたの言っている事は真実だと、直感的に、私には、確信出
来る・・・」
神経質なヒトラーには珍しく、遠くを見るような目つきで呟いた。

7作者:2008/09/30(火) 19:50:58
前線を視察中に爆撃を受け、重傷を負ったエルヴィン・ロンメル元帥は、
軍の病院で目を覚ました。一般兵の病棟ではなく、国民的英雄である元帥
にふさわしい特別病棟だった。
「あ・・ここは・・・」
「ベルリンです。元帥閣下は一週間意識不明の状態でした」
主治医が説明した。
「俺は、助かったのか」
「はい、頭蓋骨骨折の重傷でしたが、素晴らしい生命力です。命に別条は
ありません」
ロンメルは、頭に手をあてた。包帯が巻かれている。
「実は、例の古代文明の医療技術を使いました。本当なら救いようのない状
態でしたが、ほとんど傷痕すら残らずに退院出来るでしょう」
主治医は、ニヤリと笑った。
「戦況は?」
「さあ、私には専門外ですから、なんとも。元帥が意識を取り戻された事を、
これから大本営に報告いたしますので、すぐに参謀本部の方が見えられるで
しょう」
ロンメルは、気が気ではなかった。彼がダウンした事で、西部戦線は崩壊し
たかもしれない。数時間後に、親衛隊長官ハインリッヒ・ヒムラーが面会に
訪れた。
「ロンメル元帥。相変わらず悪運の強い男だな」
「ああ・・・運がいいのか、悪いのか・・・戦況はどうだ?」
「最悪だよ。もはや第三帝国に勝ち目はないと、総統はおっしゃられている」
「講和に持ち込むのか?」
「いや、ドイツ第三帝国は、最後まで降伏はしない」
「無駄死にするだけだぞ。我々はともかく、一般の兵士や国民の犠牲者が哀
れだ」
「総統は、決断された。ナチスドイツの中枢部を南極の地下要塞へと脱出さ
せる。もちろん君もだ」
「南極・・・古代文明・・・・噂には聞いているが」
「地下要塞には、農業プラントや、人工太陽の設備もあり、自給自足で半永
久的に潜伏することが可能だ。収容人数は約50万人。すでに、純粋アーリ
ア人の遺伝子を持つ男女や、ヒトラーユーゲント、レーベンスボルン(生命
の泉)の出身者たちが、Uボートで密かに送り込まれている」
「我々が脱出した後、ドイツは降伏するのか?」
「そうだよ。身代わりは、クローンがやってくれる。遺伝子から複製した完
全なコピー人間だ。表向き、君は反逆罪で処刑される事になっている」
「フッ、この私が反逆罪・・・笑えるな」
「もうすぐ、総統へのクーデター計画が実行される。君はその首謀者という
わけだ」
「どうせ茶番なら、もっとリアリティのある筋書きの方が良くないか」
現実主義者のロンメルは文句を言った。
「贅沢を言うな。総統と私なんか、自殺する事になっているんだぞ」
「やれやれ、勝手にしてくれ」
ロンメルとヒムラーは肩をすくめて笑い合った。

8作者:2008/09/30(火) 19:52:26
新型のジェット戦闘機や、ナチス版UFO『ハウニヴ』を製作しているドイ
ツ南部の基地で、ヘルマン・ゲーリング空軍元帥は、副官から報告を受けた。
「イギリスの撃墜王、デヴィット・マーダー少佐を捕虜にしました」
「そうか、それは、良かった」
「ベルリン上空で撃墜され、徒歩で自軍の占領地域に戻ろうとしている所を
逮捕されたようです。ただ、彼の右足が・・・」
「うむ、右足?右足がどうかしたのか?」
「噂通り義足だったのですが、古代文明の技術が使われているかと・・・」
「何だって?イギリスも、古代技術を手に入れたということか!まずいぞ、
それは、非常にまずい。すぐに、マーダーをこの基地に連行し隔離しろ。奴
を逮捕したのは憲兵隊か?」
「はい」
「ヒムラーの管轄だな。私が掛け合う」
ゲーリング元帥は、慌てて電話の受話器を取った。大戦に敗れるばかりか、
ナチスの技術的優位も失われてしまう。

9作者:2008/09/30(火) 19:54:35
デヴィット・マーダーは、特別車両で厳重に警護されベルリンから、バイエ
ルン近郊の秘密基地へと護送された。彼の義足は外され、没収されたため、
逃げ出す事も出来ない。
「どこへ連れて行く気だ?噂に聞くアウシュビッツ収容所か?」
「もっといい所だよ。厳しい拷問が待っているだろうから、楽しみにしてな」
デヴィットを警護しているのは親衛隊の将校だった。
「階級と、認識番号以外は、しゃべらんぞ」
「強がるのも今のうちだな。ドイツで最も美しく残酷な拷問人がお前の到着
を待ちかねているらしい」
デヴィットを乗せた護送車は何時間も走り続け、その間、何度も連合軍の爆
撃のため停車しなくてはならなかった。
「ドイツはもう終わりだな」
デヴィットは嫌味をこめて言った。しかし、親衛隊将校は、ニヤリと笑った
だけだった。
「フフフ・・・果たしてそうかな」
護送車は、山奥にある鉄条網と塀で何重にも囲まれた飛行場のような場所に
到着した。手錠をはめられ、親衛隊将校に引き立てられたデヴィットは、片
足でピョンピョン跳びながらゲーリング空軍元帥の前に連れて行かれた。
「ようこそ、空の英雄マーダー少佐」
「俺に何の用だ?」
「君自身には興味がないよ。私が知りたいのは、君の義足についてだ。どこで
手に入れた?」
「義足・・・ああ、あれか。貰ったんだよ。気前のいい男にね」
「馬鹿を言え。あれは、古代アトランティスの技術の産物だ。そこらの男が
持っている代物じゃない。正直に言いたまえ。そうすれば、痛い目に合わずに
すむ。イギリスは、どこまで古代技術を解明したんだ?」
「古代技術?何の事かさっぱり判らん」
「グレーゼ少尉、この強情な男を可愛がってやりたまえ」
ゲーリングに呼ばれて進み出たのは、親衛隊士官の制服を着た若い女だった。
金色の髪と青い眼を持つ典型的なゲルマン民族の女で、女神のような美貌を
たたえていたが、その猛禽類を思わせる眼が、彼女が真性サディストである
事を物語っていた。イルマ・グレーゼ(21歳)は、手に持った鞭をしなら
せ、デヴィットの顔をいきなり打った。
「何しやがる!」
デヴィットの顔面の左頬からこめかみにかけて、赤い蚯蚓腫れがついた。
「たっぷりと、楽しませてあげるわ」
イルマは、デヴィットの顔面に唾を吐きかけた。

10作者:2008/09/30(火) 19:56:18
ドイツ南部バイエルンの山奥にある秘密工場に、山川桃次郎は潜入しようと
していた。伊賀忍者の子孫である桃次郎は、影のように移動し、監視の兵士
の視線に入らないように塀を乗り越える。幼い頃から訓練した驚異的な跳躍
力だった。
(古代文明の技術、ここに、それがあるのだろうか)
設計図の1、2枚でも盗み出し、日本に持って帰るのが、桃次郎の役目だっ
た。
(こんな所から、苦労して盗むより、千鶴さんに掛け合って貰って、あのミ
ッシェルとかいう男から頂いた方が、早いんじゃねえか?)
桃次郎が、毒付きながら換気口を這い進んでいると、ある研究室で、タイプ
ライターを打っている一人の女に目をとめた。
(おや、あの女、どこかで見た気が・・・)
白人ばかりの秘密工場で、なぜか、その女だけがアジア人だった。
(あっ、あいつは、東京にいたゾルゲの愛人だ!どうしてこんな処にいるん
だ?)
桃次郎は、換気口のフィルターの隙間からその女を観察した。女は切れ長の
目と黒い髪を持ち、エキゾチックな端正な顔立ちをしているが、無表情だっ
た。まるで感情がないようだ。
(時間管理局のエージェント・・・確か、あの女の写真を見せた時、千鶴さ
んがそう言っていた。人間じゃないのか?)
その時、突然タイプを打っていた女が振り返り、換気口の方を見た。何かを
走査しているような目つきだった。
(どうして判ったんだ!気配は完全に消していた筈・・・)
桃次郎は、背筋にぞっとするような冷たいものが走り、サイレンサー付きの
拳銃を、ガンベルトから引き抜くと、女を目掛けて撃った。
「データバンク検索・・オ前ハ、コノ時代デハ絶滅寸前ノ忍者カ」
女は、前回と同じく拳銃弾を浴びても平然としている。
(ヤバイ、殺られる!)
桃次郎は、換気口を伝って逃げ始めた。背後でフィルターが破られ、女が這
い上がってくる物音を聞いた。

11作者:2008/10/04(土) 08:14:55
デヴィット・マーダーは、全裸に剥かれ、長い拷問を受けていた。拷問人は
イルマ・グレーゼで、時折ゲーリング元帥が様子を見にやってくる。全身に
針を押し込まれ、吊られたまま警棒で殴られたデヴィットは、血だるまにな
っていた。
「お前のここを、使い物にならなくしてやるよ!」
イルマは警棒で、何度も何度もデヴィットの股間を殴りつけた。睾丸が倍く
らいに膨れ上がり、殴られる度に右足の無いデヴィットの体がブランコのよ
うに揺れる。
「ぐぎゃああああ!俺の、俺の右足を返してくれっ!」
「ダメよ。あれはもう、科学者達が研究のために分解してしまったわ」
「あれがないと、俺は、もう飛べないんだ・・・」
「知らないわよ、そんな事。それよりも、素直にしゃべらないと、片足だけ
じゃ済まないわよ」
イルマは、赤く熱した焼き鏝をデヴィットの腹に押し当てた。
「ぎゃああああああ!」
「肉の焦げるいい匂いね。この子達も涎を垂らしているわ」
イルマの愛犬であるジャーマンシェパードが唸り声を上げた。
「イギリスが、古代技術をどこまで実用化したのか話す気になった?」
「古代技術なんか政府も軍も知らない・・・あの義足は、俺が個人的にミッ
シェルという男から貰った物だ・・・」
「強情ね。眼を潰してやろうかしら」
イルマは、焼き鏝をデヴィットの顔に近づけた。この女には他人に対する同
情という感情は全くないらしい。デヴィットは、もがいた。
「やめてくれええ!俺は嘘なんか言ってない・・・」
「残念ね。光のある人生にサヨナラしなさい」
イルマが焼き鏝を押しつけようとした瞬間、換気口のフィルターが破れて、
男が一人落ちてきた。

12作者:2008/10/04(土) 08:16:07
「な、何なの!」
ジャーマンシェパードが落ちてきた男に飛びかかる。男は、サイレンサー付
きの拳銃で、犬を撃ち殺した。
「ちっ、スパイどころじゃなくなったぜ」
男・・・桃次郎の後から女が落ちてきた。事務職員の制服を着ていたが、時
間管理局員の米谷正子ことイエスイだった。
「オカシイ。オ前ハ、時間管理局ノデータファイルデ、歴史的重要度ガラン
クヅケサレテイナイ」
「うおおおお!」
桃次郎は手近にあった拷問用の鉄椅子を持ち上げ、イエスイに叩きつけた。
普通の人間なら、頭を強打し昏倒する筈なのだが、折れ曲がってヘコんだの
は椅子の方だった。
「ヘルプミー。誰だか知らんが俺を、降ろしてくれ」
吊られたままのデヴィットが、桃次郎に頼んだ。イエスイの目が、デヴィッ
トの裸体をスキャンする。
「オ前モダ。オ前モ、歴史的重要度ガランクヅケサレテイナイ。ツマリ、時
間旅行者カ、モシクハ異物」
次に、イルマ・グレーゼをスキャンした。
「オ前ハ、歴史的重要度Fランク。間違イナク、コノ時代ノ人間ダ」
「誰か来て!侵入者よっ」
イルマが叫んだ。桃次郎が拳銃で、デヴィットを吊っている革ベルトを撃ち
抜く。デヴィットは、片足で着地し、ピョンピョン飛び跳ねた。
「逃げよう。ラナウェイだ」
桃次郎がドアを蹴破って走り出した。全裸のデヴィットも跳ねながら続く。
イエスイは、警棒と鞭で攻撃してくるイルマに手間取って、追跡が遅れた。
「オ前ハ、殺セナイ」
イエスイは、イルマに対しては反撃しようとしない。元々この基地に潜入し
ていたのは、ナチスの円盤開発やジェット機の開発が、歴史通り進んでいる
のを監視するためだった。拷問室を出るのに手間取っていると、さらに行く
手をナチスの兵士にさえぎられた。
「シマッタ、コノ時代ノ人間ハ殺セナイ」
イエスイは、発見した異物の追跡を断念するしかなかった。

13作者:2008/10/04(土) 08:17:42
1945年正月。大日本帝国の帝都東京で陸海軍合同の参謀会議が開かれた。主催者は、陸軍航空隊参謀の久石隆政少将(62歳)である。
「米英に勝利するためには、人間兵器の実戦投入が不可欠である」
隆政は切り出した。彼の発案で『人間兵器考案委員会』が発足したのである。
「一番、誰でも思いつくのは、飛行機にパイロットを乗せたまま敵艦に体当
たりする、やり方だが、他に何かアイデアはないだろうか?」
「小舟に爆薬を積んで体当たりするというのはどうでしょう?」
海軍の参謀が進言した。
「魚雷に、操縦席を付けて小型潜水艦に改造するという方法もあるぞ」
「もっと手軽に、手榴弾を持ったまま敵戦車に体当たりするとか」
「おお、それは経費が、かからなくていい」
集まった参謀達の議論に、熱気が籠ってきた。夢中で口角から、唾を飛ばし
語り出す。
「軍人だけじゃなく、一般市民にもやらせてはどうか?『一億玉砕火の玉だ』
とか宣伝文句をつけて。どうせ竹槍じゃ、勝てんのだし」
「竹槍訓練は、あんたが言い出したんでしょうが!」
「わははは、そうだったかな」
開戦当時の知将、勇将達は、みな最前線で戦死してしまった。残っているの
は後方勤務のデスクワークしか知らない連中ばかりである。
「戦艦大和が残っています。あれを特攻させましょう。残しておいても使い
道が無いですし」
「連合艦隊は、旗艦以外全部沈められちまったからなあ。」
「大和の乗組員達は、開戦以来ろくに戦闘に参加もせず、旗艦であるのを良
い事に、いつも後方にいました。エリート気分の彼らに一億特攻の先駆けと
なって頂くのがよろしいかと」
「賛成!私は賛成だ。片道燃料だけ積んで特攻させてやれ。鬼畜米英に大和
魂を見せつけて有利な講和の条件を引き出すのだ。私達さえ生き残れば日本
は再建できる」
久石隆政は、戦争の早期決着のためには、どれほどの犠牲を払っても、仕方
の無いことだと思った。彼の不肖の息子、三男光隆もサイパンで戦死したと
聞いている。次男の重隆は、満州で白人だけを殺す細菌兵器の開発に取り組
んでいる。
(重隆よ・・・急がねば、お前の研究が完成する前に日本は滅びてしまうぞ)
隆政は、重隆の研究こそが、土壇場で日本を救うと考えていた。細菌兵器を
、伊500型潜水艦でアメリカ本土へばらまくのだ。ヨーロッパへ派遣中の
伊500には、すでに帰国命令を出してある。本来は原爆を搭載する筈だっ
たのだが、ドイツでも日本でも開発が遅れ、終戦までに間に合わない。アメ
リカが核実験に成功したという未確認情報も中野学校の上月大佐から入って
いた。
(戦争に負ければ、日本民族が、この地球上から消えて無くなってしまう。
男は去勢され、女は犯されるのだ。神国日本が、白人の手で.汚されることな
ど、あってはならん!)
東条内閣が総辞職した今、日本の指導部は、迷走していた。決戦派、講和派
が入り乱れ意思統一が図れなくなりつつある。
(私が、しっかりせねばならん)
隆政はそう思った。

14作者:2008/11/13(木) 21:38:19
1945年1月。Uボートの大船団が、ドイツ北部の軍港を出発した。20
数隻からなる大型潜水艦には、若い純粋ドイツ人の男女や、食糧、生活必需
品、開発途中の兵器類などが、積載能力の限界まで詰め込まれている。旗艦
には、第三帝国総統アドルフ・ヒトラーやロンメル元帥の姿もあった。
「あとは、我々のクローンがうまくやってくれるだろう」
艦内の執務室で、ワインを傾けながらヒトラーがロンメルに言った。
「表の世界の次期総統には、カール・デーニッツを指名しておくよ。彼も、
事が終わり次第クローンとすり替えて南極に引き揚げさせるがね」
「連合軍のやつら、いよいよドイツ領内に進攻してきます。私の力が足りな
いばかりに・・・」
ロンメルが悔しそうに言った。先月、バルジ作戦が実施され、ドイツにとっ
てはそれが最後の反攻作戦となった。ポーランドはすでにソ連の占領下にあ
り、アウシュビッツ収容所も解放されたと聞く。
「戦後の国際社会は、共産主義のソ連と、資本主義のアメリカの対立となる
だろうな。ユダヤ人のシナリオ通りの世界が実現するわけだ」
「シオン議定書ですか。ですが、彼らにも、計算出来ない要因があります。
我々の存在です」
ロンメルが拳を握り締めた。
「米ソは、いずれ第三次世界大戦を引き起こすだろう。どちらが勝利しても、
世界は、荒廃する。その時、戦力を温存していた我々が介入し、疲弊し切っ
た世界の支配者となるのだ。そしてユダヤの支配は終わりを告げる・・・」
「我々が生きているうちに実現するでしょうか?」
「それは、なんとも言えん。第二世代、第三世代に託さなければならないか
もしれん」
ロンメルは、これから訪れる南極の分厚い氷と、遠い未来の最終戦争を思い
描き、気が遠くなるような思いだった。

15作者:2008/11/13(木) 21:39:42
ヒトラーの旗艦には、久石千鶴も同乗していた。船団には日本へ帰る伊50
0型潜水艦も混じっている。桃次郎は、ある日突然ベルリンの下宿先から姿
を消したまま行方不明で、伊500には乗っていない。
(死んだのかしら。もし、生きていたとしても、もう多分会う事はないわ。
あたしは不死・・・永遠に生きなければならない・・・)
女性専用のキャビンで、千鶴は、スカートの中に小指のない左手を入れ、オ
ナニーをしながら考えた。クリトリスもないため、イキにくい。
(あたしに指を詰めさせた、あのヤクザの組長・・・そう、真藤とか言った
わね。あいつも、もうすぐ生まれてくるのね。許せない・・・宇宙人と同じ
位、許せないわ)
自分自身も、もうすぐ生まれてくる。21世紀初頭の世界で生きていた友達
や、公安調査庁の同僚達も、もうすぐ生まれて来るのだ。
(あたしが、過去に飛ばされたのは2004年の春。その後、世界に何が起
こったのか、あたしは知らない。反撃の狼煙をあげるなら、いつのタイミン
グがいいのだろう?2004年より前か、後か・・・ミッシェルには、悪い
けど、作戦によっては歴史を改変しなくちゃいけないかもしれないわ)
千鶴は、Gスポットを探り当て、指で刺激した。2000年間のオナニー経
験で自分の性感帯は知り尽くしている。最近、男日照りが続いており、元々
性欲旺盛な千鶴は欲求不満気味だった。
(ドイツ人は、有色人種を抱きたがらないし、桃次郎は、あたしの子孫だか
らヤル気になれないし・・・田辺艦長くらいしか、相手がいないのよね)
その田辺艦長も別の潜水艦に乗ってしまっている。ヒトラーの旗艦に乗って
いるのは、ロンメルや、イルマ・グレーゼ。ヒトラーの妻となったエヴァ・
ブラウンや、ヨーゼフ・メンゲレなどのドイツ人ばかりだ。彼らは一様に人
種的偏見を持っており、日本人である千鶴を見下している。千鶴の性欲は、
しばらくは自分の手で慰めるしかなさそうだった。千羽鶴教団の本部で、若
いイケメン信者を、とっかえひっかえ奉仕させていた頃が懐かしかった。U
ボートの船団は、連合軍に封鎖された大西洋を、細心の注意を払いながら南
下していった。南米の沿岸や無人島に建設された、ナチスの秘密の潜水艦基
地で補給を受ける。南米では既に戦後の活動を見越し、地下組織や犯罪ネッ
トワークが立ち上げられつつあり、その指揮系統はベルリンから南極の地下
要塞に移管されていた。ヴァルハラと名付けられた地下要塞では、先行して
いるヨーゼフ・ゲッペルスが、ヒトラーの移民船団の受け入れ準備を進めて
いる筈だ。船団は、何度も連合軍の哨戒機や駆逐艦に捕捉されそうになりな
がら南進し、伊500は赤道を越えたあたりで一隻だけ別れて日本へ帰って
行った。

16作者:2008/11/13(木) 21:41:04
(田辺艦長も、死ぬのかしら。伊500は、日本で、最後の特攻作戦に参加し
なくてはいけないって言ってたわ)
千鶴の知っている歴史では、5月にドイツが降伏し、8月に日本はアメリカ
による核攻撃を受ける筈だった。伊500は軍の機密事項らしく、後世に記
録が残っていないため、千鶴にも彼らの運命はわからない。
(歴史には、一般には知られていない闇の部分が数多くある・・・)
それは、実際に2000年を生き抜いた千鶴の実感だった。Uボート船団は、
無事に南極大陸に到達し、ロス氷棚の下にある海底トンネルをくぐり抜けて
地下要塞へと到着した。そこは、潜水艦が発明されていなければ絶対にたど
りつけない場所だった。地底の港は広大で、天井が発光物質によって青白く
光っていた。
「南極なのに寒くないのね」
接岸した潜水艦のタラップを降り、天井を見上げた千鶴は、イルマ・グレー
ゼに話しかけた。金髪碧眼のサディスト女は、いつも尊大な態度だった。
「そうね。アトランティスの古代技術が使われているって話だからね」
イルマは、有色人種の千鶴とは、口を訊くのも嫌そうだった。彼女のクロー
ンは、戦後のニュルンベルク裁判で処刑される筈だ。
(アトランティス・・・一体、どのくらいの技術水準だったのかしら。恒星
間飛行やタイムマシンを実用化していた事は、判っている。少なくとも21
世紀の地球よりは、遥かに進んでいるわ。それでも、グレイとの戦争に勝て
なかった。グレイ・・・銀河系の支配種族、3000万年前から全銀河を支
配している・・・)
3000万年という時間は、不死の千鶴にとっても気の遠くなる数字だった。不死と言っても、たかだか、2000年を生きたに過ぎない。数十年の寿命しか持たない普通の人間などには、想像も出来ない時間だろう。
(グレイ=神なの?アトランティス以前に、人類を遺伝子操作で進化させた
のもグレイだと言っていた・・・神には、自分達が造り出した人類を狩る権
利があるの?)
千鶴には、プライドの高いアトランティス人が、グレイとの戦争に至った気
持ちが容易に理解出来た。
(人間は、食糧じゃない。人間はハンティングの獲物じゃない。人間は生体
実験の材料じゃない)
それは、時代を超えた人類共通の心の叫びだ。千鶴が滞在する事になった地
下要塞は広大だった。いくつもの農業プラントや工業プラントがあり、ベル
リンの町を模した地底の街もあった。千鶴達を運んできた潜水艦隊は、燃料
の補給と整備を終えると再びドイツ目指して出港していった。終戦までに出
来る限りの純粋ドイツ人や補給物資をピストン輸送する計画らしい。地底の
町の一角にアパートを借りた千鶴は、イルマ・グレーゼと、ヴァルハラを見
学して回った。

17作者:2008/11/13(木) 21:42:09
「ハウニヴよ」
イルマが言った。地下格納庫では、様々なタイプの円盤機がズラリと並べら
れ、ナチス版UFOの研究開発が進められていた。
「現在の円盤機は、大気圏内しか飛行出来ません。しかし、元々の設計図で
は宇宙も飛べるように書かれています。将来的には、月や火星に飛行できる
機体を造る予定です」
ドイツ人技術者が二人に説明した。ドイツ人ではない千鶴にも情報を開示す
るようヒトラーから通達が回っている。
「古文書によると太陽系内の他の天体にも、アトランティスの遺跡があるよ
うなのです。火星や、月の裏側にね」
「他の恒星へは、飛べないの?」
千鶴は尋ねた。
「さあ。残念ながら、われわれの科学は、ようやくプロペラ機からジェット
機へ切り替えを始めた段階です。古文書を、もっと根気よく探せば設計図は
見つかると思うのですが」
他の研究施設では、原子力や人体改造技術の研究もおこなわれていた。実験
材料にするための非ドイツ人の若い男女も、少数だが運びこまれているよう
だった。
「ここには、あたしが拷問してもいいユダヤ人や連合軍の捕虜がいなくて退
屈だわ」
イルマが不平を洩らした。彼女は、捕虜が断末魔の悲鳴を上げるのを聞いて、
オルガスムスに達するタイプだ。ヴァルハラの事を良く知るにつれ、この地
下要塞にはドイツ人が、まだ手をつけていない区画が、たくさんある事に気
づいた。
「ここから先の区画へは進入出来ません。連絡口の様なものはあるのですが、
扉がどうしても開かないのです」
千鶴が、巡回している兵士に尋ねると、そういう答えが返ってきた。
「何があるのかしら?」
「それは、わかりません。爆薬を使って扉を破壊しようとしましたが、傷一
つ付けられませんでした」
千鶴は、諦めるしかなった。

18名無しさん:2008/11/18(火) 10:20:10
1945年7月。久石重隆大佐(40歳)は、奉天郊外の研究施設の収容所
を見回っていた。裸の白人捕虜や中国人捕虜が恐怖の眼差しで、見回りに来
る日本兵を見つめている。
「御苦労さまです!」
「うむ、御苦労」
596部隊特有のあいさつを終えると、重隆は、手渡されたレポートに目を
通した。
「一号棟の白人捕虜は、85パーセントが発症し、うち79パーセントが1
ヶ月以内に死亡しました。同じ棟に収容されている中国人捕虜の感染率は0
パーセントです」
「白人だけに作用するのは、間違いないな。だが、死亡率が100パーセン
トでないのは、気に食わん」
重隆は、神経質そうに顔をしかめた。彼の開発しようとしている白人殺傷ウ
イルスは、滅びようとしている大日本帝国、最後の切札だった。
「完成には、今しばらくかかりそうだ」
感染し、発症した白人捕虜はもがき苦しんでいた。性欲が異常に昂進し、オ
ルガスムスが止まらなくなり、いずれ衰弱するか、心臓麻痺で死にいたる。
同じ房に入れられている捕虜は、感染者に襲われレイプされる。感染者の欲
望に男女の区別はなく、レイプされた人間が白人であれば、ほぼ確実に感染
する。
「空気感染では時間がかかる場合でも、性交による接触感染では、ほぼ10
0パーセントの割合で発症しています」
「感染者自身が、病原菌を広めてくれると言うわけか」
重隆は、房内で乱交にふける捕虜達を見つめた。男女別々に収容されている
ため同性同士のセックスである。感染していない中国人捕虜は、色情狂と化
した白人に、ただケツを犯されるしかない。
「大本営の久石少将から、暗号電文が届いております」
別の兵士が、封筒に入った書類を持ってきた。
「親父か」
重隆は、解読された命令書に目を通した。それによると、ドイツから帰国す
る伊500を大連に寄港させ、それにウイルスを積み込むようにとの指示だ
った。
「まだ、完成していないってのに!もう、待ってられないんだろうな」
核実験に成功したアメリカは、それを日本に投下し、日本民族の絶滅を計画
しているらしい。最後の希望を託して、沖縄に特攻した戦艦大和も沈み、日
本にはもう、まともな兵器は残っていなかった。ソ連が、参戦してくるとい
う噂もある。5月にドイツは降伏し、総統ヒトラーは自殺したと聞く。
「仕方ない。一番新しい細菌を、大連に運べ」
重隆は、渋々命令した。

19名無しさん:2008/11/18(火) 10:21:16
伊500の田辺艦長は疲れ切っていた。2年ぶりに日本の土を踏めると思っ
ていたのに、九州沖を素通りし、満州国の大連に直行するように命令を受け
たのだ。乗組員達の士気も低かった。
(お国のためだ、仕方ない)
長い航海を終えた伊500も、そろそろ、潜水艦ドックに入り、本格的なオ
ーバーホールが必要な時期だった。大連の港で、出迎えた海軍の将官にその
事を告げると、激しい叱責を受けた。
「ぬるい事を言ってんじゃない!今の日本のどこを探しても、充分に整備さ
れた軍艦など一隻もないぞ。まだ、しばらくは動くんだろ?」
「はい、なんとか・・・ですが。このところエンジンの音が気になりまして」
「動くなら、いいじゃないか。内地は、今、連日の空襲で、どこもかしこも
焼け野原だ。下手に帰国すれば、爆撃で沈められるぞ」
田辺艦長は引き下がるしかなかった。ドイツから持ち帰った土産品や、新兵
器の設計図を陸揚げし、代わりに596部隊から運ばれてきたウイルス兵器
のアンプルが詰まったカバンを受け取った。
「なんですか、これは?」
「白人だけを殺す、細菌だ。これを君の潜水艦でアメリカ本土へ運び、バラ
撒けば我々の逆転勝利だ」
細菌と聞いて、田辺艦長はギクリとした。
「心配しなくていい。日本人には害はないそうだ」
田辺艦長は新たな命令書を受け取った。それによると、太平洋を東進し、ハ
ワイ、カリフォルニアの順で細菌をバラまき、南米を回って最後にニューヨ
ークとワシントンに到達するようにと書かれていた。
(やれやれ、家族にも会えず、また地球を半周するのか)
この命令を伝えた時の部下達の落胆ぶりが目に浮かんだ。

20名無しさん:2008/11/18(火) 10:22:23
1945年7月。アメリカ南部のニューメキシコ州に広大な陸軍の実験場が
開設された。同州ロスアラモス研究所で開発が進められてきた原爆を始めと
する数々の兵器を、テストするためである。ドイツの降伏で、多くの優秀な
科学者がこの地に連行され、ミサイルやジェット機、コンピューターなどの
次世代の科学技術の開発に携わっている。
「この実験が成功すれば、人類の歴史は、新たな一歩を踏み出すだろう」
ロスアラモス研究所所長、オッペンハイマーは、アメリカ陸軍のグローヴス
中将に語った。白い砂の砂漠の真ん中には、巨大な実験塔が建設されている。
その中に世界最初の原子爆弾『ガジェット』が設置されているのだ。
「完成した原子爆弾は、3つか」
「はい。ガジェット、リトルボーイ、ファットマンと命名されています」
「すでにドイツは降伏した。日本が降伏する前に完成させねば、核兵器を実
戦に投入する機会を永遠に失ってしまうぞ」
「敵国に使用すれば、都市が丸ごと灰になるでしょう。数十万人の民間人が
一瞬で焼き尽くされます」
「かまわん。有色人種の日本人などいくら死んでもかまわんのだ。そんな事
よりも、この実験で、近隣の町への影響は本当にないのだろうな?」
「大丈夫です。アラモゴード、ロズウェル、アラバカーキ、サンタフェ・・・
いずれも充分に離れています」
「そうか、ならば、ゴーサインを出そう」
カウントダウンが始まり、1945年7月16日。ホワイトサンズ実験場に
地球上で最初のキノコ雲が立ち上った。恐ろしい衝撃波と熱波が、オッペン
ハイマー達のいるベースキャンプを襲った。
「動いた・・・・我は死なり、世界の破壊者なり・・・・」
遮光ガラス越しに、閃光を感じながらオッペンハイマーは、ぼそぼそと呟い
た。

21名無しさん:2008/11/18(火) 10:23:36
銀河系オリオン渦状腕、第二十六管区を受け持つ、銀河警察のヤ・グ・オイ
は、パトロール船からの恒星間通信による報告を受けた。
「地球で、核爆発が確認されました」
「また密猟者の仕業か?全く、自然保護地区で核爆発を起こすとは、けしか
らん。多分、火の不始末だな」
「それが、グレイ製のものではないようです。もっと原始的な、プルトニウ
ムを使った爆発のようです」
「プルトニウム?どこの星の奴だ、そんな陳腐な道具を使ってる奴は?」
「今の所、不明です」
「調査してくれ。逮捕して厳重に注意しなくてはならん」
平均身長120センチ。3本の指と巨大なダークブルーの目を持つ宇宙人グ
レイは、銀河系の支配者である。高度な医療技術により、彼らの寿命は、数
千年に延び、男女の性別もなくなった。3000万年前に銀河系を征服した
時点で既に、生殖器官はなく、遺伝子の直接配合によるクローン技術で子孫
を残している。植物性の野菜は嫌いで肉食であり、好物は、地球人をはじめ
とする知的生命体の肉だ。現在の中枢惑星は、銀河系の中心部に位置する惑
星グ・レイ。過去に何度か、中枢惑星を変えているが、支配者の座に就く3
000万年前より以前の歴史は、彼ら自身にもよく判っていない。銀河の数
ある知的生命体の中でも、その生態系の頂点に立つ種族だ。
「一瞬また、ギ・アン・アンガスの仕業かと思った。あ・・・奴は、今、留
置場の中か」
地球は、人気のある狩猟スポットの一つである。ここで狩猟するためには、
高額な会費と、面倒くさい申請が必要なため、密猟者が後を絶たない。
(地球人は美味いからな。特に天然ものの地球人の味はたまらん。滅多に手
に入る代物ではないが・・・)
惑星ア・ムーなどの牧畜惑星では、数百億匹の地球人が養殖され、銀河中に
流通している。グレイの食卓には欠かせない食品だ。
(地球が、核で汚染されるとなると、美食家協会が、黙ってはおるまい。第
二十六管区の責任者としては、気をつけなきゃいかん)
ヤ・グ・オイは、尖った口をさらに尖らせ、ダークブルーの目を不気味に光
らせた。

22名無しさん:2008/11/18(火) 10:24:20
第68時空域の時間管理局支部でも、核爆発が確認されていた。
「北米大陸、ニューメキシコ州デ、核爆発ガ確認サレマシタ」
「史実通リダ。引キ続キ、監視ヲ続ケテクレ。広島、長崎ニモ無事、原爆ガ
投下サレルヨウ、注意ヲ怠ルナ。ドンナ時空連続体カラ、妨害者ガ現レルカ、
判ラン」
「了解」
「核爆発ハ、時空連続体ニ影響ヲ与エ、タイムマシンノ航行ニモ支障ガ出ル。
1945年7月16日カラ、1945年8月9日マデノ、時間ヲ航行スルタ
イムマシンニ注意喚起ヲセヨ」
「了解」
「B29『エノラゲイ』ト、重巡洋艦『インディアナポリス』、テニアン飛
行場ニモ、タイムマシンヲ貼リツカセロ」
「了解」

23名無しさん:2008/11/18(火) 10:25:16
「クロノス博士。もう少しです。あと少しで出発時点の現代に戻れます」
ネオガイア星人のオデュッセウス隊長が、時間航行機のパイロットシートに
身を沈め、計器盤を見ながら歓声を上げた。3年間の時空放浪の末ようやく。
現代に戻れるのだ。18世紀のラ・コスト城を出発してから一時間以上が過
ぎていた。
「今度こそ、戻れる。心配するな。私が造った時間航行機を信頼してくれ」
クロノス博士が、そう言った瞬間、機体が激しい震動に包まれた。
「な、なんだ!」
オデュッセウスは、悲鳴をあげカウンターを見た。地球の西暦換算の表示が
1945年8月6日午前8時15分となっていた。
「機、機体が実体化します!」
オペレーターが叫んでいる。
「どういうことですか、博士?」
「現実世界で、強力なエネルギーが発生したのだ。我々は、たまたまそのエ
ネルギーの渦に引っかかった。前回、過去に遡った時は、時空ナビゲーショ
ンがしっかりしていて、機体が安定していたから影響がなかったか、あるい
は、あっても気付かなかったのだろうな」
クロノス博士は、冷静にコメントした。岩波教授が、横からカウンターを覗
き、呟いた。
「この日付は・・・まさか・・・」
強制的に実体化した時間航行機のスクリーンには、巨大なキノコ雲が立ち上
っていた。
「きゃあああああ!」
「悪魔じゃ!悪魔じゃ!」
静の御前や、卑弥呼がパニックになり悲鳴を上げる。
「バリアを張れ、バリアを!それから、現在位置を割り出せ!」
「現在位置。極東、日本、広島上空・・・」
閃光と衝撃波にもまれ、時間航行機は墜落して行った。
「人が死んでおる・・・何万人もの人が、焼かれ、断末魔の叫びを上げてお
る・・・」
卑弥呼が、苦しんでいた。彼女は、超能力者の素質を持つシャーマンで、多
少の精神感応力は持ち合わせているのだ。
「怖いよう」
3歳の牛若丸と、テムジンが珍しく怯えていた。

24名無しさん:2008/11/18(火) 10:26:38
1945年8月9日、東京中野学校では、生き残った諜報部員達に非常招集
がかけられていた。
「昨日、ソ連が参戦した。満州国境を突破し、破竹の勢いで南下している」
上月大佐が、説明した。
「日ソ中立条約は、無視ですか?」
「ドイツ降伏時点で、米英との間で、3ヶ月後に、対日宣戦布告をするとい
う密約が交わされていたらしい」
諜報員達は、悔しがった。彼らの仲間は、アジアの占領地域をはじめ、世界
中に散らばっているため、東京に残っている人間は少ない。ゲリラ作戦で死
んだものも多い。
「関東軍は、かつての関東軍ではない。武器や精鋭は、大部分が南方戦線に
引き抜かれているから、張子の虎状態だ。碌な抵抗は出来んだろう。あと、
満洲に残っているのは開拓民と、行政官ばかりだ」
「彼らは、どうなるのです?」
「救うことは出来ない。占領されたドイツでは、ソ連兵は各地で徹底的に強
姦や略奪、破壊行為を行ったらしい。捕虜のドイツ兵は、シベリアに強制連
行されて重労働を強いられているそうだ」
諜報員達は沈黙した。昨日まで満洲は、B29による爆撃の続く内地よりも、
安全な場所とされていたのだ。わざわざ、疎開していった者までいる。
「それから、ついさっき入った情報だ。広島に続いて、長崎にも新型爆弾が
落とされた。米軍に潜り込んでいるスパイの情報によると、次の投下地点は、大阪だそうだ。日本が降伏するまで、一つずつ都市を消していく腹積もりらしい」
上月大佐の言葉は、衝撃的だった。降伏しなければ日本列島は、放射能にま
みれた土地になり、日本民族は滅びてしまうのだ。
「今、臨時の御前会議が行われている。おそらく数日内に、日本はポツダム
宣言を受諾し、降伏するだろう。日本は、占領され、国家機能は解体される。
天皇は戦争責任を追及され、戦犯として処刑されるだろう」

25名無しさん:2008/11/18(火) 10:27:58
「そんな・・・現人神である天皇が、白人の手で処刑・・・・」
それは、1945年当時の日本人にとって想像を絶する事だった。上月大佐
は、言葉を続けた。
「いいか、ここから先は、心して聞け。私からの最後の作戦指令だ。中野学
校は終戦と同時に表向きは解散する。しかし、本作戦は、国家解体後も無期
限に継続する。忍法で言う『よもがみの術』・・・かつて、織田信長に侵攻
された伊賀忍者が使った手段だ。各員は、一般人として日本各地に潜伏し、
占領軍の動向を見極めつつ、ゲリラ戦に備えよ。英語の得意な者は、通訳と
して占領軍に潜り込み情報を流せ。金塊と武器も確保して隠す。天皇家廃絶
に備え、皇位継承権のある人間を、各地にかくまうのだ」
諜報部員達は、普通の軍人とは違う。知能指数が高く、柔軟な理解力をもっ
た者ばかりが採用されている。忍者の流れをくむ者も多く、上月大佐自身、
猿飛佐助の子孫だ。その彼らでも、作戦内容を理解するのに、しばらくの時
間が必要だった。
「日本は、なくなるのですか?」
「ああ。だが、日本民族まで消滅させる訳にはいかない。国滅びて山河あり
・・・だ。例え、政府や軍隊が消滅しようとも、我々の手で国体だけは、守
らねばならん」
重苦しい沈黙に包まれた。
「君達の新しい戸籍だ。今なら、いくらでも用意する事が出来る。占領軍の
戦犯狩りを逃れて、表向きは、一般市民として生きてくれ」
上月大佐は、一人一人に別人の経歴と名前が書かれた書類を渡していった。
偽造ではなく、本物の政府機関が発行した戸籍である。占領軍に見破ること
は不可能だろう。
「もう一度言う、作戦期間は無期限。君達が老衰で死ぬまで効力は消えない。
自決も許さない。了解したか?」
「了解です」
「了解しました」
「では、解散!」
諜報部員達は、目に涙を浮かべ、新しい戸籍と、新生活を始めるための資金
を貰って散っていった。

26名無しさん:2008/11/19(水) 21:02:36
1945年8月15日、伊500は、硫黄島沖、北300キロの海域を東へ
と航行していた。この辺りは、米軍の哨戒機がひっきりなしに飛び交ってい
るため、海中に潜航しての前進である。田辺艦長は、乗組員全員を司令室へ
集め、天皇の玉音放送を聞かせていた。
『朕深く、世界の大勢と帝国の現状とにかんがみ、非常の措置をもって時局
を収拾せんと欲し、ここに忠良なる、なんじ臣民に告ぐ。朕は帝国政府をし
て、米英中ソ4国に対し、その共同宣言を受諾する旨、通告せしめたり・・
・』
以外に若い、天皇の肉声だった。誰もが現人神である天皇の肉声を聞くのは
初めてである。所々噛みそうになりながらの棒読みであったが、誰も気にす
る者はいない。言い回しが難し過ぎて、ほとんどの乗組員には、意味がわか
らない。
「何と言っているのですか?艦長」
「日本は、降伏した・・・」
茫然自失の表情で田辺艦長は呟いた。全員が驚愕する。
「ええっ!そんな馬鹿な!」
「日本が負けるなんて・・・最後の一人が玉砕するまで戦うのではなかった
のですか!」
「我々の・・・我々の作戦は・・・どうなるのです?」
乗組員達が口々に叫んだ。田辺艦長は、しばらく悩んだ末答えた。
「中止するしかないだろうな」
「くっ・・・ここまで来て・・・なんのために我々は・・・」
乗組員の中で泣き出すものもいた。
「泣くな。お前ら帝国海軍の軍人だろう。戦争は、終わった。日本へ帰るぞ、
全員持ち場に付け」
「ううっ・・・うう・・」
伊500は、艦首を北に向けた。母港である横須賀の海軍基地へと帰るのだ。
実に2年ぶりの帰国だ。伊500は浮上し最大航海速度で海上を走り始めた。

27名無しさん:2008/11/19(水) 21:03:59
「南南東に敵機!」
しばらくして掌帆長が叫んだ。
「心配するな、戦争は終わったんだ」
田辺艦長は、そう言いながらも嫌な予感がした。
「敵機爆雷投下!」
上空を通りぬけ様に、米軍の哨戒機は、バラバラと爆雷を伊500の周囲に
落とした。
「なんだってんだ!敵は、聞いてねえのか、玉音放送を!」
「判りにくい日本語の言い回しですからね。我々にも、すぐに理解出来なか
った程ですから」
「急速潜航!」
爆雷が炸裂し、艦体が揺れた。
「艦尾に被弾。浸水します!」
「エンジン損傷!停止しました」
電気系統がやられたのか、艦内の照明も消えた。
「くそ、ボロが!戦争が終わったってのに、こんな所で死んでたまるか。浮
上だ。エンジンが止まったのなら浮上するしかない」
「排水ポンプ、動きません」
伊500は、ゆっくりと沈み始めた。なおも爆雷が投下されてくる。
「ひょっとして、ここは日本海溝の上じゃないのか?」
「そうです」
「おい、それじゃ、どこまで沈むかわからん。水圧で、押しつぶされるぞ」
田辺艦長が、必死に助かる方法を模索した。
「魚雷だ!魚雷に鎖をつけて発射しろ。魚雷で艦を引っ張るんだ。海溝に沈む
のだけは避けなければならん」
「そんな、無理です」
「無理とか言うな。生きたければやるんだ!」
暗闇の中、ランプの明かりだけを頼りに作業が始まった。傾いた船内で魚雷に
鎖を巻きつけ、発射スイッチを押すと、全員、魚雷室から退避した。鎖のため、
エアロックが閉まらず浸水してくるからだ。
「成功です、やりました。艦体が、前進しています!」
「そうか、だが浮上出来んな・・・」
伊500は、文字通り鉄の棺桶と化した。やがて全員を襲った酸欠の中、田辺
艦長は、国に残した妻子を思い浮かべ、そして次に、何度かセックスをした千鶴
の事を思い出した。
(千鶴さん・・・今、どこで何をしているんだろうな・・・)
薄れ行く意識の中、田辺艦長は、伊500が、無事、水圧に押し潰されずに海底
に着床する衝撃を感じた。

28名無しさん:2009/02/12(木) 21:35:02
1947年6月、フロリダ州マイアミのビーチが突如パニックに包まれた。
十数体のアンドロイドと戦闘服に身を包んだ宇宙グレイ5体が現れ、殺戮を始
めたのだ。アンドロイドが、ビキニのブロンド女をアームで捕まえ、主人で
あるグレイに差し出す。グレイはレーザーナイフで絶叫するブロンド女の体
を切裂き、4本指の手で内臓を引き摺り出した。
「美味そうだ。湯気の立つ人間の内臓・・・たまらないねえ」
戦闘服のヘルメットを開け、その場でむしゃぶりつく。尖った口が赤い血に
まみれた。
「きゃああああ!」
「逃げろ。化け物だ!」
海水浴客達は、我先に逃げようとしたが、周囲に張り巡らされた、透明な壁
に阻まれて逃れる事は出来なかった。グレイは、ビーチで最も込み合ってい
る場所を選んで、エネルギーバリアを張っていた。
「30年ぶりだな、ハンティングを楽しむのは」
グレイのリーダーであるギ・アン・ガスは、狂乱する地球人達を眺めながら、
ダークブルーの目を光らせた。銀河警察の警戒が厳しく、しばらく自然保護
地区である地球に近づけなかったのだ。
「26管区の長官、ヤ・グ・オイとか言ったな。あいつが着任してから、取り
締まりが厳しくてなっていかん」
ギ・アン・ガスは、背中のランドセルからチューブを伸ばし、ダイナマイト
ボディのアメリカ娘のオマンコに突き入れた。
「いやあああ!ストップ!ドント、キル、ミー!」
アメリカ娘を助けようと駆け寄ってきたボーイフレンドらしき白人男を、レ
ーザー銃で撃ち殺す。チューブの先端は、アメリカ娘のオマンコから口へ突
き抜け、致命傷を与えた。
「オアアアアア!」
死を目前にし、アメリカ娘の肉体は、最後の痙攣を起こした。下等動物の生
命を奪う爽快感は何物にも代えがたい。他の4人の仲間もやりたい放題に地球
人を追い回し、遊び半分に殺しまくっていた。
「疲れたな。今日は、このくらいにするか」
ハンティングを存分に堪能したギ・アン・ガスは、引き上げの合図を出した。
死体は、放置し、まだ生きている地球人の内、若い男女だけを戦利品として
持ち帰るようアンドロイドに指示を出す。宇宙船の中でゆっくりと料理して
食べるのだ。通報を受けたマイアミ警察が現場に到着した時、すでに砂浜に
は、赤く血に染まった砂上に、無残な死体が折り重なるように倒れ、転がっ
ているだけだった。

29名無しさん:2009/02/12(木) 21:35:58
「隊長!銀河警察のパトロール船です」
パイロットのゴ・オイ・モイが叫んだ。生きたまま美女を食べていたギ・ア
ン・ガスが顔を上げる。
「馬鹿に早いな。俺達、今日、地球に来たばかりだぞ」
「偶然、通りかかっただけじゃないでしょうか?」
「パトロール船の位置は?」
「北緯32度。西径105度。地球人の原爆実験場の上空です」
ギ・アン・ガスは、口を止め、考えた。
「ははーん。そいつは只の調査船だ。銀河警察の奴ら、地球人の監視に来や
がったな」
「どうしますか?このまま隠れていますか?」
「いや、脅かしてやろう。いつもいつもパクられて、こっちも頭に来ている
からな」
ギ・アン・ガスは食事をやめ、コントロールシートに座った。他のグレイや
アンドロイドにも戦闘態勢に入るよう指示を出す。捕獲され、すすり泣いて
いた地球人達は檻に戻された。
「奇襲をかけて、そのまま宇宙へ飛び出し、ワープして、おさらばだ」
小型UFOは隠れていたカリブ海の海底を飛び出し、弾丸のように北米大陸
中央部を目指した。

30名無しさん:2009/02/12(木) 21:38:17
南極の氷の下にある要塞都市ヴァルハラ。数十万人のナチスの残党が連合軍
の目を逃れて生活している。久石千鶴もドイツから退却するヒトラーと共に、
この地下都市を訪れ、早くも2年が過ぎようとしていた。
「ねえ、千鶴、新しく移送されてきたフランス人の女を拷問するんだけど、
一緒に来ない?」
千鶴は、友達のイルマ・グレーゼに誘われた。外界から、この南極の地下に
連れて来られるのは、最高級の美女ばかりである。南米を中心に世界中に張
り巡らされたネオナチスの犯罪シンジケートが売買している女達だ。退屈な
ので拷問室へ付いて行くと、片足吊りにされ、体中に電極を付けられたフラ
ンス人の美女が、電流を流されて泣き叫んでいた。
「オー、スクール!シル、ブー、プレ!」
「もっと、電圧を上げてやるわ」
イルマ・グレーゼは、電圧を調整するダイヤルを遊び半分に上げたり下げた
りした。フランス女の体中から汗が吹き出し、ダイヤルを回す度に、エビの
ようにビクンビクンと反応する。
「あなたも、やって見なさいよ」
進められて千鶴もダイヤルに手をかけた。フランス人の女は、映画俳優と言
っても通用するくらいの洗練されたパリジェンヌである。プロフィールを聞
くと案の定、パリコレにも出演経験のあるファッションモデルだと言う事だっ
た。千鶴は、ダイヤルを無茶苦茶に回し、最後に電圧を最高レベルで放置す
ると、フランス女は、異様な声を上げ、失神した。
「気絶した人間を起こす時は、微弱電流を流せばいいのよ」
イルマ・グレーゼは、得意気に言うと、ダイヤルを一旦ゼロに戻し、再び最
小出力で
電流を流した。フランス女は苦しげな呻き声を上げ、目を覚ます。
「ほらね、今度は、吊り方を変えてみましょう」
イルマは、手慣れた手つきでフランス女の手足を縛っている縄をほどき、結
び直すと天井から、ぶら下がっている滑車に吊り替えた。今度は、逆海老吊
りにされ、ウエスト部分に縄でサッカーボール大の石の重りをつけられる。
「ぐげええ、背骨が・・・背骨が折れちゃう・・・」
女がフランス語で訴えた。以前フランスに住んだ事がある千鶴は理解出来た
が、ドイツ人であるイルマには意味が判らないようだった。
「乗馬、乗馬。よいしょっと」
イルマは、苦しんでいるフランス女の背中にブーツの片足を乗せ、よじ登っ
た、
「ああああああっ!」
フランス女の体が極限まで反り返り、腹が沈んで、重りの石が床に付きそう
になる。
「あらら。千鶴、もうちょっと滑車を上げてくれない?」
「ええ」
千鶴は、滑車のハンドルを回した。2000年生きて、性格が変わったとは
言え、千鶴も久石一族の人間である。基本的に他人の痛みには無関心だ。イ
ルマは、フランス女の背中に跨ると、さらに苦しみが増すように、ゆさゆさ
と揺さぶった。
「ハイヤー!ハイヤー!」
フランス女の顔が真っ赤になり、地獄のような形相になった。滑車に吊られ
ている手首足首が変色し、千切れそうである。
「ノンノンノンノンノン!息が出来ません・・・」
「あははははは!もっと苦しめ!ハイヤーハイヤー!」
イルマ・グレーゼは、まだ24歳である。彼女のクローンは2年前、ニュル
ンベルク裁判で有罪判決を受け処刑された。オリジナルは、南極の地下で、
この先何十年も生きながらえ、彼女の人生が終わるまでに、星の数ほどの美
女に、地獄の苦しみを味合わせるだろう。千鶴が、拷問に熱中するイルマを
置いて、途中で抜け、地底の町へ出ると、意外な男が声を掛けて来た。
「やあ、千鶴。元気かい」
「ミッシェル!」
まだ若い20代前半の白人青年だった。誰も、この男が1万歳だとは思わな
いだろう。
「あなた、どうやって、ここに来たの?」
ミッシェルは笑っているだけで答えず、逆に質問を返してきた。
「どう?南極の生活は楽しい?」
「まあね。ナチスの人達は、いろんな兵器を開発しているみたいだわ。でも、
実用化はかなり先になるみたい。2003年に間に合うのかしら」
「間に合えばいいね」
ミッシェルは他人事の様にはぐらかした。予知能力を持っている彼には、こ
の先起こる事、全てが判っている筈なのに。
「この地底には、ナチスの人間も、まだ知らない秘密があるみたいなの。誰
も入れない区画があるのよ」
「ははは、まさに、今日は、君をそこへ案内してあげるために来たのさ」
ミッシェルは、千鶴を伴って地底の町を歩き始めた。

31作者:2009/03/09(月) 18:35:53
要塞都市ヴァルハラの南端にその区画があった。未知の金属素材で作られた
その扉は、ナチスの掘削機を使っても破壊することは出来ない。
「この扉は、オリハルコン製でね。アトランティスで最もありふれた金属さ。
永久に錆びない、ダイヤモンド並みの硬度を持つステンレスだと考えて貰え
ばいい」
「どうやって、この扉を開けるの?」
「簡単さ。命令すればいい。私は時空マスターだ、扉を開けろ」
スーッとドアが開いた。音声認識になっていたらしい。扉の向こうは、ヴァ
ルハラの他の部分と同じような通路が続いていた。ミッシェルは、千鶴を案
内して歩き始める。背後で扉が閉まった。もう誰も入ってくる事は出来ない。
さらに進むと、多数の人間型アンドロイドに出会った。人種、性別、年齢も
様々だが、無表情な顔と、無駄のない直線的な動きで、千鶴には一目で彼ら
が本物の人間では無い事が判った。
「何なの、ここは?」
「ここは、この時代における時間管理局の支部。彼らは、時間管理局員達だ」
ミッシェルの言葉に千鶴は驚いた。時間管理局と言えば数百年間に渡って、千
鶴の命を狙い続けてきた宿敵である。その基地が、こんな身近にあったとは・
・・
「心配ない。僕と一緒にいる限り安全だよ。何しろ僕は、時間管理局の創設者
である時空マスターなんだから」
「あなたが、あたしを殺すように命令を出していた事になるわ」
「君を、異物として抹殺命令を出していたのは、1万2000年前の、この場
所にあるホストコンピューターと、その時代の僕さ」
「判らない。別人だって言うの?」
千鶴は、頭が混乱した。
「別人でもあり、同一人物でもある」
ミッシェルは、謎めいた言葉で答えた。
「それは、もうあと30年もすれば、君にも判るさ。いずれ君は、やがて生ま
れてくる自分自身と対面しなくてはならないのだから」
千鶴の誕生日は1974年6月25日だ。その時点から、この世界には、二人
の千鶴が存在する事になる。
「それは、さておき、今日は地球の歴史にとって重要な日なんだ。大洪水以後
の、文明を復活させた地球人が、初めて宇宙人の存在を認識する日さ。それ

君に見てもらおうと思ってね」
ミッシェルは、巨大なスクリーンのある部屋へ千鶴を案内した。そのスクリ
ーンでは、1万2000年前から衛星軌道を周回している、ステルス加工さ
れた人工衛星から送られてくる画像で、地球のどの場所での出来事も、リア
ルタイムで見る事が出来る。ミッシェルがダイヤルを調整するとカリブ海が
映され、さらにズームさせると、波やカモメまでもが、見えるようになった。
「もうすぐだ。あと十数分で海中からグレイの宇宙船が飛び出してくる」
ミッシェルは腕時計を見ながら言った。

32作者:2009/03/09(月) 20:46:56
ギ・アン・ガスら密猟者を乗せた小型UFOは、ニューメキシコ州上空で、
銀河警察の宇宙船に奇襲をかけた。大口径のエネルギー砲が放たれ、雲間に
隠れて調査していた宇宙船を直撃する。
「ざまあ見やがれ、銀河警察の犬め!」
ギ・アン・ガスが歓声を上げる。パイロット席のゴ・オイ・モイが、そのま
ま急上昇をかけて大気圏外へ離脱しようとした時、上空から一斉掃射を浴び
た。
「な、なんだ!」
「衛星軌道上に母艦がいます!」
密猟者の小型UFOは、大気圏外へ離脱するコースから跳ね飛ばされ落下を
始める。
「隊長!さっきの奴、壊れてませんぜ」
直撃させた筈の宇宙船も健在だった。直撃寸前にオートでバリアが作動した
らしい。上下から挟みうちにされる格好になった密猟者の小型UFOは、集
中砲火を浴び、火だるまになって眼下の牧草地帯へと落下していった。
「くそっ、やられるのは、また俺達か!」
ギ・アン・ガスは、4本の指でコントロールパネルを掻き毟って悔しがった。

33作者:2009/03/09(月) 20:47:51
千鶴とミッシェルは、その空中戦の様子を南極の地下にある時間管理局の一
室で、つぶさに目撃した。
「グレイの宇宙船が墜落したわ」
「そう、墜落した場所は、ロズウェル近郊のフォスター牧場だ。壊れたUF
Oの残骸と負傷したグレイ2体は、アメリカ軍に回収され、後にエリア51
と呼ばれる空軍基地に保管される事になる」
「1947年、ロズウェル事件!」
千鶴は叫んだ。この出来事は、公安調査庁で宇宙人の調査を始めた際、極秘
ファイルで読んだ。2003年の8月に、衛星軌道上に、最初のネオガイア
星人の宇宙船が探知された時、CIAと共同戦線を張る事になり、千鶴も、
研修と称してエリア51でグレイの遺体を見学した。
「あの時のグレイ・・・」
千鶴は、長い時間の放浪の果てに、巨大なループが繋がったのを感じた。つい
に元いた世界に帰って来たのだ。
「おやおや、嬉しそうだね」
ミッシェルが、からかうように言った。
「あたしが、2003年にネオガイア星人に捕まり、脳から情報を引き出さ
れた。そして、それを元にエリア51は攻撃を受け、壊滅した。同じ失敗を
繰り返してはならない・・・」
うわ言のように千鶴がつぶやくのを、ミッシェルは面白そうに眺めていた。
「歴史は、変えられないんだけどね」
「変えてみせるわ」
千鶴は、断固として言い放った。

34作者:2009/03/09(月) 20:48:58
壊れたUFOの残骸から、ギ・アン・ガスは這い出した。戦闘服がショック
を吸収し、致命傷には至らなかったが、全身血まみれだった。気絶している
ゴ・オイ・モイを揺り起こす。
「大丈夫か?」
「隊長・・・」
生きているようだった。5人の仲間のうち、動けるのは、ギ・アン・ガスと
ゴ・オイ・モイと、もう一人だけだった。
「こういう時のために、南の大陸の地上絵の近くに、予備の宇宙船が隠して
ある。そこまで、たどりつければ・・・」
「捕獲した地球人は、裸だったんで、全員墜落のショックで死んでいます」
「地球人なんか、また狩ればいい。とにかく、銀河警察に、見つからないう
ちに、早く、ここを離れよう。ムショ暮らしは、もう御免だ」
ギ・アン・ガスら3人のグレイは、戦闘服の飛翔装置を使って、墜落したU
FOの残骸を後にした。重傷を負って動けない2体のグレイが残されたが、
彼らを発見したのは、銀河警察ではなく、フォスター牧場の持ち主から通報
を受け、ロズウェル飛行場からやってきた地球の米軍だった。翌月の194
7年7月8日、空飛ぶ円盤が回収されたという正式発表が、米軍から出され
全世界が驚愕した。しかし、数時間後、すぐに、それは、気象観測速用の気
球だったと訂正された。事件はなかった事にされ、回収された宇宙人の遺体
と、UFOの残骸は、ネヴァダ砂漠の真ん中にある施設に、極秘裏に運び込
まれ、以後 56年間、保管される事になる。

35ケイトスペイド:2013/08/11(日) 04:01:00
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36バッグ,財布&小物専門店:2020/06/01(月) 08:45:27
結果、時刻はもっぱらiPhoneで 20時までの営業や無休の店舗もある一方、18時までや◯曜日定休など様々ですので、立ち寄る際には事前に店舗情報を確認しましょう。
大黒屋は店舗によって営業時間・定休日が異なります。
1994年の創業以来、ベル&ロスはブレることなく、こうしたメッセージを発信し続けてきた。
ベル&ロス 共同創業者、クリエイティブディレクター。
伝統やラグジュアリーに対する考え方も、フランス人同士、近いものがあります。
近隣の店舗の詳細はこちらや、 大黒屋 の公式サイトをご確認ください。
近隣の店舗の詳細はこちらや、 セカンドストリート の公式サイトをご確認ください。
リユース業界の最王手で、全国500店舗以上を展開している「セカンドストリート」。
時計やジュエリーの販売および買取を行い、特にロレックスを含む高級時計の取り扱いについては、都内トップクラスと呼ばれる店舗のひとつ『ジャックロード』。
投資銀行で働いていたカルロス氏を誘い、1994年ベル&ロスを設立し、デザイン部門を担当。
目立つ傷もなかったのに、4万とは正直予想していませんでした。
オレンジカラーが目印で、看板は遠くからもよく目立ちますね。
次にオークションなどの個人売買に関しては、マージンが少なく抑えられますので、販売価格に近い価格で売れる可能性があります。
また、販売においての低評価口コミは、以下のような投稿がありました。
次項の「ランキングの評価項目」が重要とした理由については、こちらの記事をご参照ください。
黒い時計という点も重要でした。
ブラックという色は、プロフェッショナルな計器に必要な要素であり、デザインにインパクトを与えることもできます。
当初からアビエーションウォッチを手がけてきたブランドの歴史を踏まえ、機能的でプロフェッショナルな時計を求め、紆余曲折の末、航空機のダッシュボードの計器を時計に導入するアイデアに辿り着きました。

バッグ,財布&小物専門店 https://www.watcher00.com/watch/product-14663.html


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