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千鶴編、下書き

27名無しさん:2008/11/19(水) 21:03:59
「南南東に敵機!」
しばらくして掌帆長が叫んだ。
「心配するな、戦争は終わったんだ」
田辺艦長は、そう言いながらも嫌な予感がした。
「敵機爆雷投下!」
上空を通りぬけ様に、米軍の哨戒機は、バラバラと爆雷を伊500の周囲に
落とした。
「なんだってんだ!敵は、聞いてねえのか、玉音放送を!」
「判りにくい日本語の言い回しですからね。我々にも、すぐに理解出来なか
った程ですから」
「急速潜航!」
爆雷が炸裂し、艦体が揺れた。
「艦尾に被弾。浸水します!」
「エンジン損傷!停止しました」
電気系統がやられたのか、艦内の照明も消えた。
「くそ、ボロが!戦争が終わったってのに、こんな所で死んでたまるか。浮
上だ。エンジンが止まったのなら浮上するしかない」
「排水ポンプ、動きません」
伊500は、ゆっくりと沈み始めた。なおも爆雷が投下されてくる。
「ひょっとして、ここは日本海溝の上じゃないのか?」
「そうです」
「おい、それじゃ、どこまで沈むかわからん。水圧で、押しつぶされるぞ」
田辺艦長が、必死に助かる方法を模索した。
「魚雷だ!魚雷に鎖をつけて発射しろ。魚雷で艦を引っ張るんだ。海溝に沈む
のだけは避けなければならん」
「そんな、無理です」
「無理とか言うな。生きたければやるんだ!」
暗闇の中、ランプの明かりだけを頼りに作業が始まった。傾いた船内で魚雷に
鎖を巻きつけ、発射スイッチを押すと、全員、魚雷室から退避した。鎖のため、
エアロックが閉まらず浸水してくるからだ。
「成功です、やりました。艦体が、前進しています!」
「そうか、だが浮上出来んな・・・」
伊500は、文字通り鉄の棺桶と化した。やがて全員を襲った酸欠の中、田辺
艦長は、国に残した妻子を思い浮かべ、そして次に、何度かセックスをした千鶴
の事を思い出した。
(千鶴さん・・・今、どこで何をしているんだろうな・・・)
薄れ行く意識の中、田辺艦長は、伊500が、無事、水圧に押し潰されずに海底
に着床する衝撃を感じた。


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