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千鶴編、下書き

26名無しさん:2008/11/19(水) 21:02:36
1945年8月15日、伊500は、硫黄島沖、北300キロの海域を東へ
と航行していた。この辺りは、米軍の哨戒機がひっきりなしに飛び交ってい
るため、海中に潜航しての前進である。田辺艦長は、乗組員全員を司令室へ
集め、天皇の玉音放送を聞かせていた。
『朕深く、世界の大勢と帝国の現状とにかんがみ、非常の措置をもって時局
を収拾せんと欲し、ここに忠良なる、なんじ臣民に告ぐ。朕は帝国政府をし
て、米英中ソ4国に対し、その共同宣言を受諾する旨、通告せしめたり・・
・』
以外に若い、天皇の肉声だった。誰もが現人神である天皇の肉声を聞くのは
初めてである。所々噛みそうになりながらの棒読みであったが、誰も気にす
る者はいない。言い回しが難し過ぎて、ほとんどの乗組員には、意味がわか
らない。
「何と言っているのですか?艦長」
「日本は、降伏した・・・」
茫然自失の表情で田辺艦長は呟いた。全員が驚愕する。
「ええっ!そんな馬鹿な!」
「日本が負けるなんて・・・最後の一人が玉砕するまで戦うのではなかった
のですか!」
「我々の・・・我々の作戦は・・・どうなるのです?」
乗組員達が口々に叫んだ。田辺艦長は、しばらく悩んだ末答えた。
「中止するしかないだろうな」
「くっ・・・ここまで来て・・・なんのために我々は・・・」
乗組員の中で泣き出すものもいた。
「泣くな。お前ら帝国海軍の軍人だろう。戦争は、終わった。日本へ帰るぞ、
全員持ち場に付け」
「ううっ・・・うう・・」
伊500は、艦首を北に向けた。母港である横須賀の海軍基地へと帰るのだ。
実に2年ぶりの帰国だ。伊500は浮上し最大航海速度で海上を走り始めた。


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