A. 何十万年前か知りませんが、いま「日本列島」と呼ばれているモノが海のなかから盛り上がって出来てきたとき、そこに人間は住んでいませんでした。南(揚子江あたり)から、西(朝鮮半島)から、北(シベリア)から、東(太平洋諸島)から、島伝いに、あるいは大海を渡ってこの列島にやってきた人々が、混血して、この国が出来たのです。「日本」という名前も、そのあとに出来たのです。どっち系の人種の割合が多いかとか、早く着いたのはどっち系かとか、学問的には研究する価値はおおいにあるでしょうが、「先にいたものだけがホンモノだ」という言い方は、妥当とはいえないと思われます。ましてや「日本」という呼称が出来るずっと以前の先着をもって「純粋な日本人」というのは論理的ではありません。この言い方はおそらく「二千年前に来たって十年まえに来たって、どうせ同じく大陸から移住してきたんだから、同じだよ」ということを言いたいがためにこう言っているのでしょうが、これは引き合いに出されたアイヌの人々に対して失礼ですし、迷惑です。
現実には、先に住んでいたものがあとのものを駆逐したり、先に来たものが既得権をもって後から来た者を見下したり差別したり、そういうことは、世界中のどの場所にもあるように、この国にもありましたし、現在もあります。その歴史を冷静に分析していくことは大事だと思いますが、「どっちが先か」を殊更に争うような言い方は、すでに歴史ではなく、イデオロギーの問題になってしまい、建設的ではありません。「どうせ先に来たか後から来たかの違いだけ、