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( ^ω^)ヴィップワースのようです
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タイトル変更しました(過去ログ元:( ^ω^)達は冒険者のようです)
http://jbbs.livedoor.jp/sports/37256/storage/1297974150.html
無駄に壮大っぽくてよく分からない内に消えていきそうな作品だよ!
最新話の投下の目処は立ったけど、0話(2)〜(5)手直しがまだまだ。
すいこー的ななにがしかが終わり次第順次投下しやす
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ほぼイキかけ懐かしいなw
避難所で一番wktkな作品なんだぜ
ξ゚⊿゚)ξかわいいかわいい
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冒険物大好きな俺としてはこれとドラクエが2トップ
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嬉しい事言ってくれるぜ!ロスタイムがあるから、2:30には残りを投下しまふ
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寝かさねえ気かこいつ
読みたいが明日を考えると寝ざるを得ない だが読みたい・・・!
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4人共の内臓を握られたような感覚が、いつ終わるとも知れない永遠の時のように感じられる。
爪;'ー`)y-「おいおい……こんな所で、騎士団同士のドンパチが始まっちまったら……!」
(´・ω・`)「あぁ、間違いなく僕らも巻き込まれるだろうね」
ξ;゚⊿゚)ξ「や………やめ──────」
苛まれる緊張感に耐えかね、ツンが思わず大声を上げてしまいそうになった時だった。
外まで出掛かった彼女の言葉をせき止め、それより遥かに大きな声でかき消した、一言。
「───────引き上げだ」
このまま勃発するであろう戦闘に備えて身構えていた4人は、その言葉に呆気に取られた。
(=[::|::|::]=)「実に………苦々しい事ではあるがな」
退いたのは、意外にも御堂聖騎士の団長と思しき男の方だった。
(‘_L’)「賢明なご判断に、痛み入る所存です」
無秩序に力ばかりを行使するものとばかり思っていた一団だが、どうやら
騎士を名乗る以上、最低限度の線引きというものを守る頭ぐらいはあるらしい。
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(=[::T::]=)「……団長、何故です!この痴れ者共を前にして、何故退かねば───」
(=[::|::|::]=)「貴様ら小童に、意見する権限を与えたつもりはないわッ!!」
撤収の命を受けても尚、荒ぶる気持ちを抑え切れない様子の部下達を、一喝する。
不平不満を垂れる部下が鳴りを潜めたのを見計らって、御堂の団長は続けた。
(=[::|::|::]=)「よかろう……この場は引き下がってやる。だが、これより詰め所に戻った後、
そちらへ向けてショボン=ストレートバーボンの罪状について詳しい、使者を出す」
(‘_L’)「ええ。そちらの任を引き継ぐ以上……こちらも総力を挙げて彼を尋問致します」
円卓騎士団───彼らもまた、必ずしもこちらの味方という訳ではないのだ。
死霊術士の烙印が押されたショボンの罪状は、潔白を証明するだけの材料がなければ拭えない。
ξ;゚⊿゚)ξ(ショボン……さん)
その身を案じたツンの視線を、ショボンは振り払う。
(´・ω・`)(覚悟は、していた事さ)
(‘_L’)「ですが……その裁決は、あなた方の意図するものと必ずや合致するとは、限りません」
付け加えられたフィレンクトの言葉によって、多少は救われた思いであったが。
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どうやらこれにて───御堂聖騎士団の脅威は過ぎ去ろうとしている。
まだ自分達の状況がどう転ぶかはっきりしてないにも関わらず、ブーンとフォックスが安堵を浮かべる。
爪;'ー`)y-「心臓に良くないね……これだから、お上は嫌なんだ」
( ^ω^)「でも、なんだか穏便に済みそうな雰囲気だおね?」
来た道を次々と戻ってゆく御堂聖騎士団らの背中を見送りながら安堵を浮かべる
二人の冒険者の傍で、ショボン一人だけはいつまでも難しい顔をしていた。
それも、当然と言えば当然だろう。
彼にとってみれば、自身を尋問する相手が、御堂聖騎士団から円卓騎士団へと入れ替わっただけなのだ。
(´・ω・`)「だが……ここで円卓騎士団が出張って来てくれたのは、実に幸運だった」
( ^ω^)「本当、助かったお」
(´・ω・`)「まぁ、それは君達にとっての話だけどね───確信は持てなかったけど、
彼らが現れた時からこうなるような気は、していたよ」
ξ゚⊿゚)ξ「……どうして?」
(´・ω・`)「よそ者の彼らが”円卓”を敵に回すような事が起これば、陰惨な宗教戦争の引き金だ。
大多数を占める各地方の領主や貴族を敵に回してまで、彼らの一存だけで争いはしないさ」
爪'ー`)y-「下っ端はどうだかわからんね……けど、どうやら向こうの大将さんは理性があるってこった」
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(;^ω^)「でもその団長さん、めっちゃ殺気立ってるみたいだけどお……」
ブーンの言う通り、部下達が全員撤収した後も御堂の団長だけは最後にその場に残った。
確かにその巨躯の周囲に漂う殺気は、完全に息を潜めていた訳ではないようだ。
円卓騎士団と共に居合わすフィレンクト=エルメネジルド。
その彼に背を向けながら、やがて最後の部下が目の前からいなくなるのを待ってから、口を開いた。
(=[::|::|::]=)「────噂に名高い貴様とは、一度やりあってみたいものだったが」
腰元に結ばれた剣の柄を掴んでから向けられた言葉に対し、フィレンクトもまた
背中に背負う槍を掴みながら、御堂聖騎士団の団長に向けて返礼した。
(‘_L’)「………こちらにもその理由があるのならば。その時は、存分に」
(=[::|::|::]=)「………ククッ、食えぬ男よな」
背中越しにフィレンクトの顔を覗き見ると、再び振り返る事は無かった。
重い甲冑をかち鳴らせながら、巨大な甲冑は、遠くへ見えていく。
(───隠せてはおらんぞ?……羊の皮を被ったその下の、けだものの臭いまでは───)
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一人ごちるような呟きを最後に残し、そうして御堂聖騎士団ら全員が4人の前から去る。
代わりにその場に残るのは、円卓騎士団────ヴィップの地を守る、紛う事無き正規軍だ。
ひとまずは、脱する事が出来た窮地だが、問題はここからであろう。
過激な異端審問に定評のある旧ラウンジ聖教とは違い、聖ラウンジに拘束される事になるのだ。
彼らの裁定は誰に対しても平等なものだが、かといってそれが決して甘い物だという認識は、
決して持つべきではないだろう。
(‘_L’)「………さて」
背後から歩み出てこようとした部下達を手で制しながら、フィレンクトは4人の前に立つ。
その彼の前に一歩を踏み出したのは、今回の騒動の発端となった、ショボンだった。
(´・ω・`)「此度の騒動……貴方達”円卓騎士団”を駆り出すまでになってしまった事について、
まずは深くお詫びをさせて頂きます」
(‘_L’)「一応は罪人である貴方に詫びられる義理は、こちらにはありません」
そう言って、フィレンクトがツンの方へ顔を向けた。
その視線にはっとして、彼の顔を覗き上げられる位置にまでツンが走り寄る。
(‘_L’)「今回の目的は貴方と……もう一つ」
ξ*゚⊿゚)ξ「お久しぶりです!………色々、聞いて頂きたい事があります───フィレンクト様」
(;^ω^)「この人と………知り合いなのかお?」
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巨大交易都市ヴィップが聖ラウンジ教の力を借りて編成された、一国の騎士団長。
薄汚れた修道服を纏ったツンが、そんな権威のある人間と面識がある事に、ブーンは驚いた。
(‘_L’)「この私めがしばらくお会い出来なかった間に……随分とご成長されましたね、ツン様」
爪'ー`)y-「……さま?おいおい、何者なんだよ、この娘」
そのフォックスが叩いた軽口にキッと強めた睨みを利かすと、
こほんと一度咳払いしてから、厳しい口調で言い放った。
(‘_L’)「口を慎みなさい……この方は、今は亡き聖都ラウンジの司教。
アルト=デ=レイン様のご息女にあらせられるお方ですよ?」
(;^ω^)「なッ……なんかよくわからんけど……お」
爪'ー`)y-「要するに、まぁ俺達と違って、大層に育ちの良いご身分だってぇ事さ」
(´・ω・`)(………なるほど。僕を救った彼女の”奇蹟の力”にも、頷けるよ)
(‘_L’)「こんなに煤けた顔をされて……随分とご無理をしたのですね」
そっと白く長い指先をツンの頬へと伸ばすと、フィレンクトはそっと彼女の
顔を汚していた土埃を、優しい手つきで拭い去る。
なされるがままのツンはというと、それに甘んじて頬を紅潮させていた。
ξ* ⊿ )ξ「あっ……あの……まずはお話を」
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(# ^ω^)「ちょっ!何のつもりだお、あんた!」
(‘_L’)「………」
そのフィレンクトの手を横から振り払って身体を割って入れたブーン。
目の前でいちゃいちゃと下らない茶番を見せられた事に腹を立てた彼の目を、数秒見つめた後───
無造作に伸びたフィレンクトの手が、ブーンのほほを両側から押さえつけた。
( _L )「何の……つもり?」
(;#) °ω°(#)「むぉッ!?……むぐっ、むむむぅぅ」
(‘_L’)「それは……こちらの台詞です。それでは───逆に聞きましょう。
貴方達冒険者二人は、一体何故このような場所にいるのです?」
顎ごと口を押さえつけられ、物を喋る事も出来ない。
驚くべき事に、じたばたと暴れるブーンの足はそのまま地面を離れる。
片腕で、さほど身長も変わらぬブーンの身体を、ぎりぎりと吊り上げているのだ。
色白で、線の細い身体つき───ブーンは先ほどまでそう思っていたが、違った。
甲冑の端から覗く隆起した筋肉は、恐ろしく高密度に鍛え上げられた肉体。
恐らくその膂力は、ブーン自身のそれなど軽々と凌駕するだろうという程に。
爪;'ー`)y-(………こりゃ、もう下手な事言わない方がいいな)
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起きてて良かった公文式
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(‘_L’)「どうなのです?」
ξ;゚⊿゚)ξ「フィ、フィレンクト様!抑えて下さい」
(‘_L’)「………っ」
(;#) ω (#)「むぎゅっ」
ツンの呼びかけに、中空に吊り上げていたブーンから、フィレンクトはそのまま手を離す。
低い呻きを上げて、ブーンが尻餅をつきながら地面に落下した。
ξ;゚⊿゚)ξ「この方の言う通り、私は聖教都市ラウンジの司教の娘なの」
(;^ω^)「ごほっ、ごほっ……そいつ──その人とは、どういう関係なんだお?」
(‘_L’)「………」
ξ゚⊿゚)ξ「そうねぇ………”将来を誓い合った間柄”、かな?」
(; ω )(; _L )「ぶふぉッ!?」
ツンのその言葉に、騎士団長と冒険者は息を詰まらせ、同時に激しく咳き込んだ。
それと同時に、背後で控えていた団員らからは非難が集中した。
-
「なッ……団長、いつの間にそんな抜け駆けを!」
「そんな話、我々は聞いてませんよ団長ッ!?」
「いつもは明朗なフィレンクト様が……影では司教様の娘を毒牙に……そんな」
(;‘_L’)「……落ち着きなさい!ツン様も、話を飛躍させ過ぎです!」
先ほどまで御堂聖騎士団と相対していた時の彼とは、似つかわしくない様子。
ツンの言葉に翻弄されてか、初めて人間らしい表情を見せたフィレンクトだった。
ξ゚⊿゚)ξ「久しぶりにお会いしたから、ちょっと困らせて見たかっただけ。真面目に話すわ」
(;^ω^)「ちょ、最初からそうしてくれお」
(´・ω・`)(解りやすい男だね……彼も)
ξ゚⊿゚)ξ「私がラウンジに居た時、その頃はまだ自由も全然無くて───
祈る為に教会に押し込まれるような日々を送っていた時に、出会ったの」
(‘_L’)「えぇ……もう、かれこれ8年程前にもなりますか」
ξ゚⊿゚)ξ「旅の人や町の人の話を聞くのだけが楽しみだった私に、任務や巡礼で
聖都を訪れた時、フィレンクト様は必ず立ち寄って、楽しい話をしてくれたわ」
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(‘_L’)「2年前に団長へと抜擢されてからは、私も随分忙しくなってしまいましたが……」
ξ゚⊿゚)ξ「───で、その時に将来結婚してねって頼んだら、快く承諾してくれたって話」
(;‘_L’)「全く、いつの話をされているのですか……」
ξ*゚⊿゚)ξ「あれ、まだ有効だと思ってましたけど?」
(; _L )「ぶふぅッ!?」
「やっぱり……フィレンクト団長を見損なったよ」
「私達みんなの聖女だったツン様が……団長に汚されるだなんて……」
そんな野次がフィレンクトに集中したが、やはり統率は取れているらしい。
再び真面目な話をするために、静かな殺気を孕んだ視線を送ると、すぐに場は静まった。
─────
──────────
───────────────
-
(‘_L’)「真面目な話……ショボン=ストレートバーボン。あなたには、
”死霊術使役”の嫌疑がかけられているのです」
(´・ω・`)「ええ。私自身、痛いほどその歯痒さが骨身に染みています」
(‘_L’)「……それで、あなた自身は”潔白”だと言うのですね?」
ξ゚⊿゚)ξ「私も、そう信じています」
(‘_L’)「ふむ……とりあえずは、長い尋問になります。覚悟はしていて下さい」
(´・ω・`)「無論、承知しています」
ツンとショボンがフィレンクトの傍らに付き添い、ブーンらの元から離れた。
これから、聖ラウンジによるショボンへの尋問が始められるのだという。
先ほどの御堂聖騎士団に捕まっていれば、万が一にも証拠が出ない限りは、
死罪を免れなかった状況だという話を、その時になってブーン達は知った。
( ^ω^)「……ショボン、僕も信用してるお」
爪'ー`)y-「ま、ついでに俺もな」
だが、円卓騎士団に決して縁浅からぬ聖都司教の娘、ツンが良い方向に持っていってくれる。
そう信じて、冒険者達は対面した二人に向けて小さく手を振った。
-
(´・ω・`)「危ないところを助けられたよ、君達には」
ξ゚⊿゚)ξ「なんかちょっとだけ府に落ちないけど……ありがとうね。私も行くわ」
奇妙な縁で出会った。4人でヴィップの路地を走り回り、騎士団の小競り合いに挟まれたのは、
今にしてみればとてもとても短い時間だったが、そんな中でも互いの信頼は、芽生えつつあった。
「いつか────また」
そう心の中で言葉を投げかけて、二人の冒険者は”失われた楽園亭”に戻ろうと、踵を返す。
(‘_L’)「何処へ行こうと言うのです?」
─────が、突然二人はその襟首を掴まれる。
振り返れば、そこには無言の威圧感を漂わす、フィレンクト=エルメネジルド。
(;^ω^)「ま、まだ何かあるのかお……?」
爪;'ー`)y-「旦那……なんでまた、そんな怖い顔してんだい?」
(‘_L’)「………貴方達は冒険者宿で、御堂聖騎士団の数人に、体当たりをかましたそうですね?」
爪;'ー`)y-「あれは違うんだ、わざとじゃなくて……ただ……」
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(‘_L’)「”下手な偶然を装って、明らかな妨害を行った”と、すでに情報が入っているのです」
(; °ω°)「ゲェェェェェェ───ッ!」
(‘_L’)「……今回は丸く収まったものの、貴方達も本来ならば御堂からすれば死罪ものです」
(‘_L’)「当然、事情を聞かせてもらう事になりますので、三日の拘束は覚悟しておきなさい」
別れを交わしたばかりだというのに───フィレンクトに首の後ろを掴まれ、二人も連行される。
猫のような体勢で連れられてきたブーンとフォックスの情けないその姿に、
これから厳しい尋問が待ち受けているであろうショボンも、思わず口元に笑みを浮かべた。
(´・ω・`)「ぶっ……ふふ」
ξ゚⊿゚)ξ「感動の、再会ね?」
(;^ω^)「楽園亭のマスターの鳥腿肉炒め……食べたかったのにお」
爪;'ー`)「あ〜あ、こいつとパーティー組んだ俺が間違いだったのかな……」
賑やかな4人組を引き連れ、フィレンクト率いる円卓騎士団は、夜の路地を行進する─────
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──────
────────────
──────────────────
──────そこから、話は【冒頭】へまで遡る──────
/ ,' 3「大変貴重な時間を、すまぬな……」
( ・∀・)「いいえ、こんな私でも微力になれるのであれば、幸いですよ」
「それでは、失礼致します」
そう言い残して深く頭を下げながら、モララーはアークメイジの執務室を後にする。
ショボン逃走の件について、異端審問評議会の誰もが納得するであろう内容だった。
”ショボン=ストレートバーボン”という禁術破りを即刻処断すべきだと、思わせる程に。
彼の並べ立てた動機、証拠の数々は────あまりにも完璧だった。
( ▲)「……あのモララーという院生、天才と呼ばれながらも、実に礼儀正しいですね。
まさに”天は二物を与える”といった印象を受けました」
/ ,' 3「………おぬしには、そう見えたのか?」
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( ▲)「えぇ、それは勿論です」
/ ,' 3「ふっ………まぁ、そうじゃろうな」
顎から立派に生やした髭を撫でながら、”大魔術師”は一人───そう呟いた。
/ ,' 3「あやつの本性………見抜ける者は、そうはおるまいて……」
あの”モララー=マクベイン”という男は、確かに完璧だ。
だが、それゆえ”人”として完全とは、どうしても思えなかったのだ。
アークメイジ・アラマキは、本当に微かに───モララーから血と臓物の臭いがするのを感じた。
真っ直ぐにこちらを見つめていた瞳の奥に、良からぬ狂気が秘められている事にも、気づいた。
長時間の聞き取りで、まさか塔内に居たもう一人の不穏分子の存在が発覚してしまうとは───
/ ,' 3(───あやつ……本当に人間かの?)
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内心「やれやれ」とため息をつきながら、アラマキは手を叩き、従者ら数人を呼び寄せた。
そして、次にアラマキが彼らに言い放った一言は、こうだ────
/ ,' 3「モララー=マクベインに、暗部の監視数名を付けろ。交代で、一度もその足取りを見逃すでないぞ」
アークメイジの命を受けた従者らは、即座にそれを実行に移すべく、動き出す。
やがて執務室に残されたのは、どこか遠くの一点へ向けて窓の外を眺める、アラマキ一人だけだ。
/ ,' 3(あるいは……”人を超えようとしている”のかも知れんの……)
─────
──────────
─────その三日後─────
アークメイジ・アラマキの命を受けてモララーを監視していたはずの
魔術師ギルド暗部構成員三名の死体が、賢者の塔付近の森で発見される事となる。
監視対象であったはずのモララー=マクベインが賢者の塔内から忽然とその姿を消して
何処かへと行方を眩ませたのは、それとほぼ同時期だったという事だ─────
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( ^ω^)ヴィップワースのようです
第2話
「栄枯と盛衰」
─了─
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リアルタイムで追えたのは初めてだ、乙
続き期待してます
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皆様の支援の賜物で、思った以上に早く2話を投下出来ました。
おちゃらけた路線なんかも手探りで模索しつつ、3話もまた行き当たりばったりで考えて行きたいなと思っております。
さぁ、寝ないと寝坊してクビだ。
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ほぼ毎日さくさく投下してくれるので
楽しく読ませてもらってます
これからも王道路線よろしく
ところで、どちらでもいいことだけど
ショボンはアーリータイムス、ストレートバーボン?
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>>440
貴族としての本名がストレートバーボン
魔術師としての名がアーリータイムズ、というのが作者の脳内設定らしい
毎日さくさく投下は難しいと思うけど、読んでくれるのはありがたい事です、いい加減寝ます。
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クーがどんな形でパーティーに加入するか楽しみ
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連休だから3話書き進めようと思ったけど……2時間で5Kb……
こりゃあ……今日中の投下はきついかも知れん。
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無理しないで、自分のペースで良いもの書いてくれよ
アンタには期待してるぜ
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>>444
濡れた。半分まで投下します
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───【交易都市ヴィップ】───
─────男は、とある酒場の隅でひっそりと酒を煽っていた。
酒場内の周囲を見渡せば、皆が仲間内でわいわいと過去の思い出話や、武勇伝に花を咲かせている。
だが、そんな雰囲気とは一切交わらないと主張するように、彼自身がまとう空気は、他を寄せ付け難い。
上下揃いの濃紺を装っている彼だが、どこか影を落としている彼自身の心を映し出しているかのように、
彼には夜の闇に溶け込むのがよく似合う。黒に一度入り混じってしまえば、漆黒も濃紺も分からない。
('A`)「………」
普段酒を飲まない彼にとっては、今飲んでいる強めの蒸留酒は、強敵だった。
最初グラスの端に口を付けた時には、思わず鼻腔から押し寄せる甘美な刺激に、顔をしかめた。
だが、一杯を飲み干し、気が付けば3個目のグラスが空こうかという今になっては、
甘ったるい口当たりながらも身体の内から熱が上がってくるその感覚に、身を委ねている。
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どうやら今日は月も隠れた、静かな夜になりそうだ。
仕事をするにはうってつけだが、どうやら組織内でもいささか古株となりつつある自分には、
なかなか仕事が回ってこない。人目に付きやすく危険な仕事は、末端の構成員達に回される。
自分はというと、よほどの難易度を誇る単独任務ぐらいの時にしか動かしてもらえない。
ふんだんな見返りがある以上金には困らないが、正直身体を持て余していた。
だから、あんな冒険者の真似事などしてしまったのだろうか。
つい先日、リュメで───”侵入者排除の依頼”をこなしてきた。
依頼そのものは単独でも簡単なもので、途中に邪魔が入らなければ、割りのいい小金稼ぎだった。
結局はその侵入者の一人の交渉により、自分は楽をして金を得た。
「何をやってるニダ」などと依頼人には罵られたりして若干の殺意を覚えたが、
後始末の大変さを鑑みて、遺恨を極力残さぬように耐え凌いだ。
だが、そんな豪族気取りの言葉よりも響いているのは、あの時の侵入者の言葉────
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”「あんたみたいに、殺しが特技みたいな人間に理解してもらおうとも思わないけどな」”
───確かに自分は暗殺者だ。だが、好きでこんな道に身をやつしたと思うのか?───
「あぁ……尊いね。一生懸命に生きてる人間の命を奪う権利なんてもんは、誰にも無い」
───黙れ。お前ら一般人が玩具を手にしていた頃、俺はナイフを持たされていた───
心の中で反芻されたその声に対して、反発し続ける。
あの銀髪の男が自分に向けて言った一言が、未だに何度も思い返されるのだ。
それほどに、自分の胸へ響いてしまっていた。
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”「ツイてなかった……そう思うしかないと思うぜ?多分さ」”
───俺に過去殺されていった奴が、そんな言葉に納得すると思うのか───
”「も一度日向に戻ろうとしなかったのは、アンタがどっかで諦めてたからさ」”
───黙れ、偽善者が。安穏と日々を過ごしてきたお前達に、俺の何が分かる───
声に出して叫んでしまいたくなるほど、頭の中を過ぎるあの男の言葉に、拒否反応を起こす。
だが、沢山の人間を殺めてきた自分が、簡単にその言葉を受け止める事など出来ない。
自分自身───確かに心のどこかでは、男の言う事が正しいと思っている節がある。
だが同じように、今の自分の生き方が正しいと思っている自分もいるのだ。
いつの世も、人と人とは必ずしも分かち合えず、生まれの違いや信仰の違い───
そんな下らない理由で争いを続けるばかりの、愚かな存在。
そこらの虫けらでさえ、種の子孫を残すという大義名分の下に、全体で助け合いながら生きているというのに。
-
('A`)(こんなんじゃ……眠れねぇ)
どちらかが間違っており、どちらが正しいかなど、所詮は人一人の主観に過ぎない。
自らがやってきた事が果たして本当に正しいのか、そしてこれから自分はどう身を振るべきか────
────今夜、自己を苛むそのせめぎ合いに関して、結論を出そうとしていた。
( ^ω^)ヴィップワースのようです
第3話
「日陰者の下克上」
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───【交易都市ヴィップ 失われた楽園亭】───
夕刻の音を告げるカラス達の鳴き声は、次第に遠くへと聞こえている。
街を出歩く人々の姿もまばらとなり、沈んで行く夕日は、ヴィップの街を茜色に染め上げていった。
その風景をなんとはなく目にしつつ、冒険者達は、やがて今晩の寝床であるその宿の前までたどり着く。
いつもならこの場所は、普段から多数の客で溢れかえっている、人気の冒険者宿。
当然、古めかしい木扉を押し開けるより前から、沢山の談笑の声が漏れ出てくるはずだった。
しかし、その喧騒が今日に限っては驚くほど鳴りを潜めている事に、一人が心持ちゆっくりと木扉に手をかける。
───────────────
──────────
─────
川 ゚ -゚)「今、戻ったぞ」
ζ(゚ー゚*ζ「あ……お帰りなさいっ!」
-
”彼女”が受諾した依頼は、とある目的地での地質を調査するという依頼だった。
移動には長い日数を要したが、道中では幸いにして何事も無く済んだ。
往復四日の旅路にして、つい先ほどヴィップへと帰還したのだ。
途中で随分と道草を食ってしまったりもしたが、この店にはまず顔を出しておきたかった。
この後はとある酒場で依頼人と落ち合い、調査結果を報告する手筈になっている。
250spの仕事の依頼も───もはや殆どが終わってしまったようなものだった。
(’e’)「よう、無事戻ったみたいだな」
川 ゚ -゚)「ああ。しかし……これは一体、どういう事だ?」
いつもならば大忙しの筈のマスターだが、彼ら以外に誰一人居ない状況に、彼女は訝しむ。
暇を持て余したか、デレと二人して各々の卓上を拭き掃除していたようだ。
(’e’)「こないだウチで派手に暴れやがった馬鹿共が居てな。
お偉い騎士様が来て、”三日間商売するな”……だとよ」
川 ゚ -゚)「なんでまたそんな事に?」
(’e’)「……なぁに、そいつらも悪いんだが、俺も一枚噛んでた節があってな。
ま、この程度の被害で済んで何よりさ」
-
ζ(゚ー゚*ζ「損な利回りでやってるウチにとっては、大打撃だけど……」
川 ゚ -゚)「ま、そうだろうな。料理にしろ酒にしろ、もう少し取ってもいいんじゃないか?」
(’e’)「そいつぁ、俺のポリシーよ」
ζ(゚ー゚*ζ「懐具合が心もとない駆け出し冒険者に優しいって、評判なのよ。うちのお店」
川 ゚ -゚)「確かにな。そのお陰で商売繁盛、万々歳じゃないか」
ζ(゚ー゚*ζ「でも……依頼の仲介料も入らないのは三日とはいえ辛いかも」
(’e’)「なぁに。時間と身体を余してる今は、こうして大掃除にでも励めば気も晴れるってもんだ」
川 ゚ -゚)(仕事熱心な父親に毎度毎度付き合わされるお前も大変だな、デレ)
ζ(゚ー゚*;ζ(ちょっとだけ……ね)
店の看板娘と親しげに話す彼女は、”クー=ルクレール”
周囲へは常に”クー”としか名乗らないが、彼女はこの二人にだけは心を開いていた。
-
それというのも、旅先で一人残され、そのままもらい子のように施設へと身受けされた彼女は、
一般的にはかなりの早年にして冒険者を志すようになり、15の時でそれを実現させるにまで至った。
それゆえ早熟である彼女は物事の機微にも敏感で、実に行動力のある女性へと成長した。
傍目からには常に冷静で落ち着きのある人物に見えるが、好奇心旺盛な彼女は、それが仇となって
危険な物事に巻き込まれる事も決して少なくはないのが、玉に傷であろうか。
それでも、大陸各地を旅歩く彼女はどんなに長期の依頼であろうと、必ずこのヴィップへ、
最初期から世話になっていたマスター達の元へと、帰ってくるのだ。
彼女にとっては、もう一つの故郷であるのかも知れない。
川 ゚ -゚)「そういえば、その”バカ達”とやらは達はどうしたんだ?」
(’e’)「尋問に連れてかれたよ……余所もんとはいえ、任務中の騎士に体当たりぶちかまして逃走したんだ」
川 ゚ -゚)「……よっぽど後先を考えない馬鹿者だな、それは」
(’e’)「だが、ちっとばかしは見所がある奴らさ」
マスターの話に適当に相槌を打ち、適当な椅子の一つに腰掛ける。
旅の疲れはまだまだあるが、まずは依頼を終えてしまわなければならない。
依頼人の元へと向かうべく、お互いの近況報告だけに済ませる事にした。
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ζ(゚ー゚*ζ「もう行っちゃうの?クー一人ぐらいなら、宿は貸せるよ?」
川 ゚ -゚)「これから依頼人と会わなければならない。外に人も待たせてあってな……」
(’e’)「なら、とっとと済ませて戻ってくるんだな」
川 ゚ー゚)「あぁ、そうさせてもらうとするよ」
マスターとデレに軽く手を振り、またクーはすぐに宿を後にした。
───────────────
──────────
─────
二人と話込んでいる内にすっかりその存在を忘れていた、会話の最中に思いだしたのだ。
そういえば、今回の依頼の同行者を外で待たせてあったという事に。
一流を気取りたがる三流以下──そんな印象を受ける彼に、道中でもぞんざいな扱いをしてきたが、
どうやらそんな事でへこたれるようなタマではなかったらしい。
-
( ,,゚Д゚)「……ゴルァ、随分と遅かったじゃねぇか」
川 ゚ -゚)「すまん」
短く言い放ったクーの一言に一寸顔をしかめたが、既に歩き出していた彼女に気づき、
慌ててその後を小走りで追跡してゆく。
( ,,-Д-)「ったく、形式上とは言えパーティーを組んでるんだ、少しは仲間を敬う態度とかなぁ……」
川 ゚ -゚)「今回限りのパーティーだ。悪いがお前と次はあり得ない、ギコ」
傍らに並び立ち、クーに向けて小言を発するは異形の装飾が施された剣を背負う男。
今回の地質調査の依頼に飛びつき、500spの成功報酬を分かち合う予定の冒険者だ。
”ギコ=ブレーメン”
クーよりも若干歳は重ねている様子だが、聞く気にはならない。精神年齢は恐らくそれ以下だ。
一人旅での長旅というリスクを鑑みて、今回の依頼に同時に飛びついたこの男を、用心棒代わりとした。
彼と適当な会話を重ねながら旅歩いている間は、事あるごとに自分の名付けた剣を抜き出してクーに
見せびらかせたがり、彼女は四六時中を辟易させられてばかりだった。
-
ちなみにその剣、刀身の一部までが鱗のように加工された鉱物で覆われており、歪な形状をしている。
非常に珍しく、確かに幾ばくかの価値はありそうだが、肝心の腕前は恐らく伴わないだろう。
( ;゚Д゚)「そんな冷たい事言わなくたっていいじゃないか、あんなに夜を共にした仲間に!」
川#゚ -゚)「……その言い方は周囲の誤解を招くからやめてくれ」
( ;゚Д゚)「そうか……せっかく妖魔対策で同行させた俺が、活躍の場に恵まれなかった事に怒ってるんだな?」
川 ゚ -゚)「別に」
道中では貴重品を預ければ紛失してみたり、地図を渡せば途中で道を間違えていたりと。
一事が万事そんな調子で、終始和やかな旅をするはずだったクーの神経を逆撫でっぱなしだった。
( ,,-Д-)「いや、しかし実に残念だぜ。もし妖魔共が現れていればな……」
( ,,゚Д゚)「この俺の……"竜刀・邪尾"で蹴散らしてやっていたものを」
川 ゚ -゚)「街中で剣を抜き出して歩くな……衛兵の目に留まっても、私は知らんぞ」
( ;゚Д゚)「あ……いっけね」
言ってる傍から、少し離れた場所で立ち番をしている衛兵が、ギコの姿に一瞬眼を光らせた。
すぐさま背中へ剣を戻すと、へこへこと媚を売りながらクーにゆっくり付いていくしかなかった。
-
─────それから、程なくして。
川 ゚ -゚)「……ここだ、この酒場に依頼人が待っているはず」
( ,,゚Д゚)「いやぁ〜、案外長いようで短い旅路だったな?」
二人の足は、”悠久の時の流れ亭”という、一軒の酒場の前で止まった。
夜の帳も近づいており、加えて繁忙店である”楽園亭”が臨時休業を強いられている為、
活気が外にまで伝わってくる程、沢山の客がいるようだ。
川 ゚ -゚)「確かに長い行程だった……お前が途中、三回も分岐路を間違えなければな」
( ;゚Д゚)「だ、だから俺は最初から地図はクーが持っててくれって言ったんだ!」
川 ゚ -゚)「ま、私と同じく半額の250spも貰えるだけ、ありがたく思うんだな」
雑用も満足に出来ない男が、妖魔との戦闘でも役立つとはまず思えなかった。
これから別れる前に、最後の皮肉をギコへとぶつけてから、クーは酒場へと足を踏み入れる。
───────────────
──────────
─────
-
─────【悠久の時の流れ亭】─────
店の中へ入ると、予想通りの熱気であふれ返っている。
いくつかの卓をすり抜けて店の奥へと進む内、何人もの同業者に声をかけられた。
「……およ、クーじゃねぇか?」
「久しぶりだな、お酌してくれよ!」
「なんだぁ?その隣の、間抜け面ぁよぉ」
( ;゚Д゚)「あ……ども……」
川 ゚ -゚)「あぁ。私の依頼の同行者だ、同行者。酌させるなら、デレにでも頼むんだな」
周りの冒険者の何人もがクーへと言葉をかけ、その傍らにいる自分に対しては明らかに
敵意の篭った視線が送られている事に、ギコはここでも少し伏目がちに頭を垂れながら酒場内を歩いた。
まだ幼げだった当時からの彼女を知る冒険者からは、まるで娘のように思われている。
クーの後発として冒険者の道を踏み出した若者達からも、姉のような存在として信頼されていた。
周りの多くがクーを知っているという事からも分かるように、交易都市ヴィップというのは、彼女の庭なのだ。
各地を転々と旅歩いているという”ギコ=ブレーメン”にとっては、それが意外な光景だったようだ。
-
( ,,゚Д゚)「お前さん、ヴィップじゃ結構有名人なのか?」
川 ゚ -゚)「別に。生まれはロアリアだし、経歴も大した事はないさ」
( ,,゚Д゚)「ふぅん……経歴ねぇ」
川 ゚ -゚)「お前はそんな私よりも、ろくな経歴じゃなさそうだけどな」
( *,゚Д゚)「ふふふ……それがな、よくぞ聞いてくれました────俺は」
川 ゚ -゚)「あ……あれだ、依頼人」
ギコの口から放たれようとした言葉は、すぐにツンの言葉が上から被せられた。
彼女が指差す先には、酒場の角、少し他から離れた場所の卓に掛けて待つ、依頼人の姿があった。
( ・□・ )「おぉっ、無事戻られましたか!」
クーらの姿を確認するや、依頼人は席を立ち上がって二人を出迎える。
川 ゚ -゚)「えぇ、まずは結果を報告させて頂きたい」
その後─────三人は席に掛けて、半刻ばかりを依頼の話で過ごした。
-
その間のギコはというと依頼人持ちで軽めの夕食を取りながら、クー一人だけが
羊皮紙にも書き留めていた調査結果の留意事項を、つらつらと読み上げてゆく。
( ,,゚Д゚)「クー、これ旨いぞ。お前も早く食え!」
川 ゚ -゚)「………以上です」
( ・□・ )「いやはや、実に見事な仕事振りでした、お二方とも」
その充実の内容に依頼人も納得したようで、二人に対して依頼人からは、労いの言葉がかけられる。
ギコがクーにじろりと白い目で睨まれているが、特にその様子を気にかけるでもなく、
「最後になります」と、依頼人から2〜3の質問がクーに対して浴びせられた。
( ・□・ )「平坦な盆地という事ですが、気候に関しては如何です?」
川 ゚ -゚)「あの辺りにしては、比較的温暖でした。多くの植物の群生も見られます」
-
( ・□・ )「土地の所有権を行使する存在は、見受けられましたでしょうか?」
川 ゚ -゚)「いえ……ロアリアからはかなり離れた山岳との合間、人の手も入りづらいでしょう」
( ・□・ )「そうですか。なら、群生していた植物についての心当たりは?」
川 ゚ -゚)「あの辺は採取に非常に有意です。多くの薬草に混じってコカや、一年草のケシの実もありました」
( ・□・ )「………なるほど」
( ,,゚〜゚)「あむっ。……これ、もう一皿食っても大丈夫か?」
その瞬間、こらえ切れずクーはギコの頭に拳骨を振り下ろして引っぱたいた。
彼の前には、依頼人を前にして無礼極まりなく身勝手に振る舞うギコと、それを躾けるクーの姿。
だが依頼人はそれにも動じず、顎を触りながら深く考え込んだような表情をしていた。
様子を気にかけたクーが、そっと尋ねてみる。
川 ゚ -゚)「……先ほどの質問に、何か?」
意味はあるのか、と問いたいところを少しばかり堪える。
ヴィップから遠く離れた地にある、地質調査。
-
依頼の目的地だった場所は商売事を始めるにしても、殆ど人の流れは向かない僻地だった。
─────踏み入ってはいけないのかも知れない、が、真意を問いたい気持ちがクーの中に沸いた。
( ・□・ )「いや、十分。非常に素晴らしい成果を上げてくれた、お二人は」
だが、依頼の本当の理由を教えるつもりもないのだろうか。
腰で結んだ麻袋から、さらに二つの袋に小分けされた銀貨が、卓上に置かれる。
( ,,゚Д゚)「……おぉ、こんなにッ!」
麻袋の中身には、恐らく250sp以上の銀貨。
聞いていたよりも、10や20は上乗せされて報酬は渡されたようだ。
川 ゚ -゚)「これは……いいのですか?」
( ・□・ )「ええ。ですが一つだけ……ある条件を守って頂けますでしょうか」
大金をじゃらじゃらと手の中で数えるギコを尻目に、依頼人は声を抑えて言った。
( ・□・ )「今回の依頼の事、決して口外しないで頂きたい」
川 ゚ -゚)(……口止め料も兼ねている、という訳か)
子供のお使いのような依頼に、随分な額の報酬を手渡してきた依頼人。
彼のどこから500sp以上もの金がぽん、と出てくるのか。クーにとっては疑問でならなかった。
-
だが、世の中には知る事が必ずしも正しい訳ではない────知らない方が良い、という事もあるのだ。
( ・□・ )「それでは、私はこれで失礼します。………あぁ、この場のお代は私が
払っておきますので、お二人はごゆっくり食事でもなさっていって下さい」
( ,,゚Д゚)「あぁ、久々に栄養つけさせてもらうぜ!」
川 ゚ -゚)「………」
そう言って、依頼人は店の隅を通ってそそくさと酒場を出て行った。
依頼人の心証も悪くは無く、報酬も弾んでくれた。そういう事にしておくべきだろうか。
だから、依頼人と最初に出会った時訝しげな視線で自分を値踏まれた事については、忘れておく。
───────────────
──────────
─────
-
( ,,゚Д゚)「あぁ食った食った……もう満腹だ、動けねぇ」
川 ゚ -゚)「食うことしかないのか、お前は」
与えられた報酬に何の疑問も持たず、夢心地で席に踏ん反り返っているギコとは対照的に、
クーにはやはり、ずっと先ほどの依頼人が残した言葉が気にかかっていた。
( ,,゚Д゚)「何難しい顔してんだ?」
川 ゚ -゚)「お前は何の疑問も抱かないんだな、あの依頼に」
( ,,゚Д゚)「まぁ……貰うもんさえ貰えりゃ、後はどうだっていいさ」
そう言って肩をすくめるギコに対し、クーは率直に愚鈍な男だ、と思う。
物事の裏側に潜む真実というものに目を向ける事無く、ただ金が手に入ればそれでいいんだろう───
そんな思いがギコに向ける視線から伝わったのかどうか定かではないが、ギコは姿勢を直して言った。
( ,,゚Д゚)「ま───確かに今回の依頼はガキのお使いにしては、法外な報酬さ」
( ,,゚Д゚)「だけど、知らない方が良い事もある………だろ?」
意外にも、ギコの口から出てきた言葉は、自分でも反省しなければならないと思っていた、共感できる言葉。
川 ゚ -゚)「まぁ……それはそうだが」
-
( ,,゚Д゚)「お前さんが好奇心旺盛なのは構わないがな、さっきの男、恐らくは
地位の高い人間と、何かしらの関わりがあると俺は見たぜ」
川 ゚ -゚)「……その理由は?」
存外、表面上からは想像出来ないが、色々と考えている男なのかも知れない。
そう語って見せたその男の口にする次の言葉を、クーは待っていた。
( ,,゚Д゚)「簡単な事さ……」
────が、それを聞いた瞬間、認識を改めようと思っていたクーの彼に対する評価は、すぐに失墜する。
( ,,^Д^)「妙に言葉遣いがお上品だったろ?あいつ。ギハハ、俺って結構冴えてないか?」
川;゚ -゚)(いちいちこいつの言葉に反応するのが馬鹿らしくなってきた)
───────────────
──────────
─────
-
その後、店を出ようとしたクーだったが、「付き合えよ」とグラスをこちらに向けてきた
ギコの誘いに乗ってやり、一献だけ最後に酒を酌み交わしてやる事にした。
無下に断っても、次に再び会うときがまたあるかどうか、わからない稼業だ。
( ,,゚Д゚)「いやぁ、ヴィップって人も多いし綺麗だし……いい街だよなぁ」
川 ゚ -゚)「大陸一の都会と言われているからな」
( ,,゚Д゚)「全くだ。俺の父ちゃんにも……見せてやりたかったぜ」
そう言ったギコの言葉の端から、彼の父親はもう没したのだろうと、クーは推察する。
自分も父を亡くしているのだ。どこか遠い目で昔を懐かしむその表情から、見て取れたからだ。
川 ゚ -゚)「父親は、亡くなったのか?」
( ,,゚Д゚)「あぁ……俺がまだ小さい頃にな。父ちゃんが俺に残してくれたのは、これだけ」
川 ゚ -゚)「またその剣の話か……」
少し嫌そうな顔をしながら言ったが、それほどに思い入れのある剣なのか。
ギコが鞘に収めたままの剣を卓上に置く様子を、しげしげ眺めていた。
( ,,゚Д゚)「………”竜刀・邪尾”」
-
川 ゚ -゚)「悪趣味な装飾だ」
( ,,゚Д゚)「……俺の父ちゃんはな、若い頃に龍と戦ったのさ」
川 ゚ -゚)「は………?冗談は止せ、龍と戦って生きて帰ってこれる人間など、居る訳が無い」
( ,,-Д-)「それが……違うんだよなぁ」
川 ゚ -゚)「………?」
クーの言葉に肩をすくめて、卓上にある剣へと彼女の視線を促した。
ギコに促されるままに、クーはその剣の黒金に彫刻を施したような柄の部分を触ってみる。
非常に硬くごつごつとしているが、こんな形状を鉄を叩いて打ち出すのは困難だろう。
何かの生き物の鱗のようだが、自然界にこんな強度を誇る鱗など─────
そこで初めてその異形をたたえた剣のある特徴に気づき、驚いたように声を上げた。
川;゚ -゚)「!?……まさか、これは」
-
( ,,゚Д゚)「……あぁ、本当にちびっとだけどよ、これは龍の鱗から作られた剣だ」
川 ゚ -゚)「……もしこれに値をつけるとしたら、相当なものになるぞ」
( ,,^Д^)「まっ、父ちゃんの形見だし、売る気はないけどな」
自分も相対した事はないが、触らせてもらいながらギコの話を聞いて、納得した。
この竜刀とやらは、ドラゴンの鱗から作られた剣なのだ、ということが。
( ,,゚Д゚)「父ちゃんは昔、ある騎士団に傭兵として雇われてな。そっから龍討伐に赴いた」
川 ゚ -゚)「その時に、これを?」
( ,,-Д-)「あぁ、そん時の傷が元で、すぐに死んじまったけどな……現場は”地獄だった”らしい」
( ,,゚Д゚)「何しろ、50人の騎士団がものの半刻もしない内に壊滅したってんだ」
川 ゚ -゚)「……選ぶ相手を、間違えたな」
率直に所感を述べれば、それしか出てこない。
所詮、武器を持たねば野性の獣一匹とも渡り合えない人間が、”ドラゴン”という絵空事の中にのみ
生きるような存在を討つなどと、それこそ人間の驕り高ぶった考えというものだろう。
-
( ,,゚Д゚)「まぁな。だが、それでも傭兵だった親父は、逃げずにそいつの尻尾に全力をお見舞いした」
川 ゚ -゚)「蛮勇だが、大したもんだ」
( ,,゚Д゚)「一発で剣もへし折れたみたいだが、代わりに尻尾のごく一部……先端を切り取ってやったのさ」
何かと見せびらかされるのは迷惑な事この上なしだが、その話を聞いて、ようやく納得した。
ギコがこの剣に対して並々ならぬ思い入れがあるその理由に、クーは頷く。
川 ゚ -゚)「そしてその鱗から剣を作り、お前に託したという訳か」
( ,,゚Д゚)「そうそう。案外、俺に仇討ちでも望んでたのかねぇ……」
川 ゚ -゚)「お前じゃ無理」
( ;゚Д゚)「即答すんなよっ!」
ムキになって否定するギコを、涼しげな顔をしながら受け流すクー。
彼と共に旅をしてきた4日間の中で、酒を交わしている今が一番、互いの事を少し分かり合えた瞬間だった。
-
そうして────夜は更けてゆく。
そろそろ”楽園亭”のマスター達の元へ帰って、いつも取っている部屋で休もう。
眠気に欠伸を堪えながら席を立ったクーだったが、彼女は気づかなかった。
少し離れた席から、これまでずっと自分達に対して虎視眈々と目を光らせていた存在が居る事を────
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きてた 続きいいい
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乙!
みんなどっかで繋がってるから読んでて楽しいな
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これ元ネタの原作とかってある?
はやく5人全員集合してパーティー組んで欲しい
ギコの本当の実力も気になるね 強いのか弱いのか
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元ネタはPCフリーゲーム、カードワースです。
今後名作シナリオをパクりまくり、脳内設定で繋げていきます
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TESからも少しネタ使ってる?
グレイフォックスとかもろもろ
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>>476
まぁ……同じ盗賊ギルドつながりということで少々
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おもしろすぎて芸さんにまとめ依頼してきた
そしたらまとめも検討してるってさ、まだわからんけど
超期待してる
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いつの間にか再開してたのか
前ん時から読ませてもらってる乙
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ゲェェッ、本当に芸さんとこにまとめ依頼が……
俺の最終目標が叶ってしまったらどうしよう。
まとめられたら逆に逃亡するんじゃないか自分
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>>480
許さんぞ(´・ω・`)
まぁゆっくりでも肩肘張らず更新してほしい
最終目標は作品の完結だ、そうだろう?支援し続けるよ
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ちなみに芸さんのレス
199 名前:ブーン芸 ◆GEI3zaQxt2 投稿日: 2011/07/24(日) 21:57:48 ID:z8EQLJ6k0
自分でまとめてるのは大体注目してるって感じですかねぇ
だいたい「まとめる=気になる作品」ですから
特にって話になるとドラクエとか生きた本とかでしょうか……
まとめ依頼が来ていたヴィップワースはまとめようかなと思ってます
他所のまとめは最近あんまり利用してないので特にコレというのは思い浮かばないですね……
逆に何かオススメとかあったら読んでみたいです
まぁあんまり過度の期待は、芸さんにも迷惑がかかるし
なったらいいなくらいに考えておきなよ
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皆様方の支援のお陰でモチベーションが維持できております、感謝。
正直に言ってまとめてもらう程話も進んでませんし、見てくれた方がまとめ
依頼してくれたのはすんげー嬉しいですけど、まだ遠慮しときたいかなと思いますね。
今日明日が連休ですので、上手くいきゃ朝方投下できればいいな。
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まっとるよ
ところでこのスレってsage進行?
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>>484
途中までしか投下出来なかった時は、あんましageない事にしとります
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もう、とっくに夜の帳は下りていた。
店の片隅でグラスの底に僅かばかり残った薄い琥珀色をした酒に自分の顔を映しながら、
皆良い潰れて引き上げていった酒場の店内には彼一人だけが残され、うな垂れている。
('A`)(……飲みすぎたか)
表情こそしっかりと保ってはいるが、飲み始めてから6杯目の酒が底を尽くところだった。
「慣れない酒なんて、飲むもんじゃないな」と頬を紅に染めながら、一人ごちて───笑う。
彼の中で、ある決意がまとまりつつあった。
あの銀髪の男が投げかけた言葉を振り払い、多分自分は、自分のこれまでを正当化したかったのだ。
しかし、幼い日の自分の姿が頭に浮かんできては、その自分の邪魔ばかりしてくる。
おぼろげな記憶の中の自分は、どうやら今の自分と重なって、共に疑問の答えを導き出そうとしてくれている。
気がつけば、酒がもたらしているものではない”熱”が、心の奥底から湧き上がってきていた。
とても、黒い感情と共に。
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────【極東に浮かぶ大陸 ヒノモト】────
貧しく全時代的な暮らしを送っていた、ある小さな島国があった。
その存在を認知はされていたが、どんな民族が住んでいるかも解らない大陸諸国の
人間達からは、まだ交易船の発着なども敬遠されていた頃の話だ。
牧畜や、農業。
そんな自給自足にて生活するしかなかった彼らは、いつも陽光の下で額に汗して働いていた。
”カタナ”という武器を所持するこの国の実務者階級、”サムライ”
────言ってみれば、それは大陸で言う所の騎士のような存在だが。
その彼らと比べて身分の違いはあれど、わらぶき屋根の下で住み暮らすそんなヒノモトの人々の多くは、
自らが糧を得るための労働に、いつも満ち足りた生活を送っていた。
しかし、そんな彼らにある日を境に干渉していったのが、大陸民だ。
商工船の渡来により、彼らヒノモトの人々が知りえもしなかった多くの西洋文化が、押し寄せる。
-
力あるものは富を得て、古い気質の人間は、はるか昔の文化へと置き去られた。
そうして身分や貧富の差は拡大の一途をたどっていく。
そんな煽りをもらってか、とうとう口減らしの為に我が愛息子を人身密売船に乗せて、
大陸へ送り届けるという道しか残されてはいなかったのだ────彼女には。
J(;ー;)し「ごめんね……ごめんね、ドクオちゃん……ッ!」
(;A;)「カーチャン……!カーチャァンッ!」
正確には彼女は───そして彼自身も、知らなかったのだ。
”ある大陸貴族が、貧しい家庭から養子を受け入れている”
そんな報せを聞いて愛息子を乗せた船が、闇商人が奴隷として売買する為に子供を乗せている船だなどとは。
だんだん遠くなっていく母親は、いつまでも彼に手を振り続けていた。
真相は知らないまでも、お互いに「二度と会えないだろう」という事は、理解していた。
-
母との別れから三日三晩を泣きはらして────
それから彼はようやく立ち直ると、船倉内の他の子供達に目を向けるようになった。
('∀`)「ねぇ、ぼくたちこれから、”きぞく”っていうひとのとこにいくんだよ?」
(#゚;-゚)「………」
全身に痣の後や、古い切り傷をたたえた少女。
船倉の片隅で膝を抱えて、いつも俯いてばかりだったその少女を彼は気に掛け、話しかけていた。
興味の無さそうに虚空を眺めていた彼女は、恐らくこの船が奴隷を扱う船だという事を知った上で
乗せられたのだろう。そんな自分のこれからの身の上に興味もないのか、果たして人生というものに
絶望していたのかは解らないが、事あるごとに自分に話しかけてくるその少年に、少しずつ言葉を
返すようになっていった。
('∀`)「”でぃ”ちゃんっていうんだ?ぼくは………”どくお”だよ」
(#゚;-゚)「………ふぅん」
親元から離れ、航海の中で募ってゆくのは、子供ならば当然の感情だ。
そんな寂しさを埋めるようにして、彼ら子供達は次第に肩を寄せ合って眠るようになっていった。
-
('∀`)「でぃちゃんのおとうさんは、うみのむこうにいるんだね」
(#゚;-゚)「……お父さんに会いたいから」
少しずつ深まっていく新しい友人との絆に、この時のドクオは寂しさを忘れつつあった。
「ふねって、たのしいかも」
これから海の向こうに行けば、もっと楽しい事が待っているのかも知れないと、
小さな胸には少しずつ、期待が膨らんでいった。
だが、そんな子供の幻想は────ある日突然船を襲った大嵐により、打ち砕かれる事となる。
(;'∀`)「おなか……すいたね」
(# ;- )「………おにぎり、食べたい」
大陸への航路を目指した奴隷船がヒノモトを出て、7日目を過ぎた所だった。
波を避けるため、大幅な迂回を余儀なくされる船。航行に数日もの遅れを及ぼす事となり、
必然として全員の食料は、切り詰めなければならなかった。
だが、舵を取る船員達に”商品”としてしか見られていなかった彼らに、
自分達が生きるための貴重な食料を分け与えられる事など、なかったのだ。
-
「もうすぐつく」「もうすぐだよ」
そう言って、お互いを励ましあってきた彼らの体力も、もはや声も出せない程に枯れ果てていた。
泣きはらして無駄に体力を使った者から順に、周りの子供達も次々に餓死してゆく。
(A )「………カー……チャン」
(# ;- )「……おか、あ……」
そうして最後に残されたのは─────ついに、彼ら二人だけとなった。
──────
────────────
──────────────────
(A )「……んん」
船倉から担ぎ出され砂浜に身を投げ捨てられた時に、辛うじて意識を取り戻す。
「なんでぇ、たったの二人かよ」
-
「一人は傷もんだな……こりゃあ、今回は見送りさせてもらうぜ」
「そんな!必死の思いでここまで運んできたんですぜぇっ!?」
その頃の彼ら二人には、必死に懇願する奴隷商人と、それから買い上げる目的で
集まっていた者達の会話の内容までは理解出来なかっただろう。
だが、その中に一人だけ名乗りを上げた者がいた。
「これが嵐の航海の中で最後に残った、ガキ二人か」
<_プー゚)フ「……面白いじゃん。一人、買わせてもらうぜ」
('A )「………」
ヒノモトでは見かけたことのない、とても派手な髪型をした男が、二人を見下ろしていた。
今でも覚えている────もうすぐ朝日が顔を出す、早朝の砂浜。
<_プー゚)フ「どうせ、もうどっちも長くはもたねぇだろ」
そして、男は言った。
「なら、面白い賭けをしようぜ」
言って、倒れ付す二人の中心点目掛けて、彼はどこかから取り出したナイフを突き立てる。
-
<_プー゚)フ「どちらが先にナイフを拾って、相手を殺せるかだ」
<_プー゚)フ「なぁに、難しく考えるこたぁねぇ。そいつで刺せばいいだけの話よ……
その後はもう動けねぇってぐらい、腹いっぱい旨いもんを食わしてやるさ」
男が考えたものは、他者の誰もが顔をしかめる程の悪趣味なゲームだった。
どちらか一人が生き残る為には、どちらか一人が死ななければならない───
しかし、極限状態の二人には、その意図など理解できようはずもなかった。
十数人もの子供が死んでゆく中最後に生き残った二人、そのどちらかは、確実に大きな”運”を持っている。
それをはっきりさせる為に殺し合いをさせ、最終的に生き延びる一人の存在が、
自分の組織にとっていつか必ずや大きな福音をもたらす源となると────信じたのだ。
彼らにとっては、これはなんという事はない儀式の一つ。
自分の組織を強くする為に、村の集落を襲って子供を根こそぎ掻っ攫ってきては、
武器を持たせた彼らが最後の一人になるまで、殺し合いをさせる。
そうして生き残った者は、強く優秀な暗殺者に育つと───”彼らの間”では信じられていた。
そんな凄惨な事を常日頃行っていた彼らにとっては、幼い二人の殺し合いなど、児戯のようなものだった。
-
(# ;- )「……ドク、オ?」
その身にいくつも傷を残した少女は、もはや限界だった。
奇跡的に今を生きながらえているのは、皮肉にも、日々を強い苦痛に苛まれ続けながらも
それを耐え忍んできた彼女自身のこれまでと、ドクオとの励ましあいによるものに間違いなかった。
( A )「で………ぃ」
一方のドクオは、まだかすかに動ける力を残している。
砂浜を這いずりながら、でぃへと手を伸ばそうと────その途中で、手に何かが触れた。
硬い感触のそれは、ナイフの柄だ。
<_プー゚)フ「………拾え」
そこから男は途端に人が変わったように、威圧するような低い声でドクオに言った。
( A )「……こ、れ……」
その声が怖かったから、思わずつられるように手にとってしまった。
でぃの命を奪うためにそこに存在していた、ナイフを。
(# ;- )「わ……たし、もう……どうせ、だめだか……ら」
-
虚ろな表情で、上っていく朝日を遠くに見つめていたでぃ。
ナイフを手にしたまま、その傍へと這いずってゆく、ドクオ。
<_プー゚)フ「出来ないか?なら、俺がお前を殺すぞ」
( A ;)「な、なん……で?」
二人の様子を眺めていた男が焦れたか、困惑しているドクオにはっきりと言い放つ。
どうしてこんなことになってしまっているのか───事態の飲み込めないドクオは、
おろおろと交互に二人の顔を見比べるばかりだ。
やがてドクオは、すぐにでも死んでしまいそうな身体を起こして、
最後の力ででぃの前に立ち膝をつき、その顔を覗き込んで、呼びかけてみた。
(# ;- )「……ここに、それ、刺すん……だよ?」
死を悟った少女は、小さな自分の胸を指差す。
( A )「でも……そんな事したら……」
ナイフを持った少年は、その言葉にもまだ躊躇していた。
<_プー゚)フ「殺すか、死ぬかだぞ。坊主」
二人の前に佇む悪い幽霊が、呟いている。
(# ;- )「そしたら……どくお、いきのび……れる」
-
自らの死を懇願する少女の命が事切れるまでは、もう幾ばくの猶予も無かった。
(;A;)「なんでっ?そんなこと、したら……!」
少年は、最後まで躊躇した。これまで生を分かち合ってきた少女の命を、自らが奪う事を。
<_プー゚)フ「どうした、刺すんだよ………お前だって、死にたくないよなぁ?」
悪い幽霊は不敵に笑いながら、少年の耳元でひそひそとささやく。
人の心の中に潜む悪の部分を具現化すれば、こういう風になるのだろうか。
そして、彼は年端も行かぬ少年をそそのかすのだ────良心を踏みにじれ、と。
自分が生き延びる為には、他者の命を奪う事など決していとうな、と。
(#; -; )「いき、て?……どくお。わたしのぶん……まで」
(;A;)「なんで……なんでっ!?」
叫ぶ体力も残っていないはずのドクオだが、涙と共に、堰を切った感情が溢れ出していた。
<_プ∀゚)フ「────刺せぇッ!!生き延びたいならッ!殺してみせろよッ!」
(;A;)「ッ!?」
-
その男の孕んだ狂気に後押しされたか、はたまた、それは生存本能による自分の意思だったかは解らない。
だがその瞬間、反射的にドクオが手にしていたナイフは、確実に彼女へと突き立てられたのだ。
(# -; )(あ……お…おとう、さ───────)
───────────────
──────────
─────
<_プ∀゚)フ「……いいぜ。合格だ、坊主」
笑みをたたえた男の前には、手も顔も血まみれにして震えている、ドクオの姿。
最期には眠るように瞳を閉じたでぃは、もう二度とまばたき一つする事もないだろう。
(;A;)「あ……あッ……あぁ、う……ふぐっ」
先ほどまで言葉を交わしていたでぃは、手をだらりと左右へと投げ出して、死んでいる。
暗い船倉の底で不安も期待も分かち合ってきた、最後の船旅仲間の命は、自分によって奪われた。
<_プー゚)フ「約束通りお前は俺が買い上げて、今日から面倒を見てやるよ」
-
「あぁ……そうだな、俺の事は───」
幼い良心の呵責が許容の範囲を超えたのか、あるいは、体力の限界が訪れたのか。
( A )「─────で、ぃ………」
意識が遠のき、ゆっくりと砂浜に倒れこんでいった彼の耳には、その名前だけが最後に辛うじて届いた。
「────”エクスト”とでも呼んだらいい」
───────────────
──────────
─────
('A`)(エクスト………)
平和な島国に住み暮らしていた彼は、幼少の頃をのんびりと過ごしてきた。
それゆえ、誰かとぶつかりあうだけで、いつも簡単に泣いてしまうほどだった。
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皮肉な運命の巡り合わせは────その、”ドクオ”に、あまりにも過酷な道を示した。
時に名も知らない人間を殺めては、その人が歩んできたこれまでを”なかった事”にしてしまう。
もう自分は、二度と陽の当たる場所には戻れないんだと、あの後に思った。
─────だが、あの男の言葉を思い返すうちに。
爪'ー`)y-『も一度日向に戻ろうとしなかったのは、アンタがどっかで諦めてたからさ』
────『あきらめないで』─────
何の汚れも無い、純粋にして無垢だったあの頃の自分が、それに同調するのだ。
爪'ー`)y-『だから……結局、悔いようとも思わなかったんじゃない。悔いるのが、怖かったのさ』
────『こうかいするのは、けっしてわるいことばっかじゃないんだよ?』────
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('A`)「………」
どうやら、ようやく自分の中で一つの結論を導き出す事が出来たようだ。
”なかった事にしてはならない事”も────あるのだと。
「あのぅ、その……旦那ぁ。もうそろそろ、ウチは店じまいでして……」
しばし遠くを眺めながら物思いに耽っていたドクオを現実に戻したのは、
慎重に言葉を選びながら、ただ一人店の中に残ったドクオを帰そうとしていた、酒場の店主の言葉だ。
('A`)「あぁ………そんなに、飲んでたのか。俺」
「へ、へぇ……あぁ!お代は結構ですんで………また、ごひいきにしてくだせぇ」
自分が堅気の人間では無いという事に店主も感づいているからこそ、ここまで下手に出るのだろう。
その少し冷や汗交じりの表情をじっと覗き込んでから、ドクオは席を立った。
('A`)「飲み代、置いとくぞ」
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「あ、そんな!お代は結構でぇ……」
そう行って両手を小刻みに振る店主をの言葉を遮ると、飲み代分として100枚程が入った銀貨袋を、卓へと放る。
言葉を言いかけていた店主もその額にたまげて、去り行くドクオの背中を、目を見開いて見送っていた。
('A`)「あ、そうそう……」
外へ出ようと扉へ手をかけたドクオがはた、と何かを思い出したように店主の方へ振り向くと、尋ねた。
('A`)「俺の飲んでた酒、なんていう名前なんだ?」
「あ、アワモリっちゅう酒です……たまにしか買い付けられねぇですけど、遠い東の島国の酒で……」
('A`)「ふぅん……”アワモリ”ね……」
強い酒だが、どうやらそれが癖になってしまったようだ。
東の島国と言ったが、恐らくそれが故郷ヒノモトの酒なのだろうという事に思い当たると、一人頷く。
('A`)「美味い酒だったな……」
('∀`)「───また、来るぜ」
深く頭を下げていた店主に向け、背中越しにそういい残して。
───ドクオは、決意と共に酒場を後にした。
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寝落ち、意識的?いいところで切るねえ
続き早く書いて下さい
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申し訳!せめてキリのいいとこまでは投下しようと、一区切りにしてやす。
歯痛で睡眠不足で、なかなか集中力が持続しなんだ。
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────
あたりは、もう夜半も過ぎたという頃合だろうか。
先ほどまでの酒場での喧騒が嘘のように、月も隠れた夜は静かだ。
自分達の靴音と、身震いさせてしまう程に冷たい夜風の音だけが、耳の傍で響く。
川 ゚ -゚)(随分と遅くなってしまったな)
この時間では、さすがに出歩く人影など殆どない。
楽園亭のマスター達も、さすがにもう休んでしまっただろうか。
( ,,゚Д゚)「……さて、ここらでお別れだな」
楽園亭へと続く裏路地に立ったクーの前に、ギコは立ち止まって言った。
鼻を指で擦りながら、彼自身は少しだけ湿っぽい感じを出しているようだが、それはいともあっさりと
クーの一言によって切り伏せられる。
川 ゚ -゚)「うむ。せいせいするよ」
( ,;゚Д゚)「いやいやっ!もっと名残惜しむとかあるだろ!」
-
川 ゚ -゚)「別に……そういう間柄でもないしな。まぁ、縁があったらまた……ってぐらいか」
( ,;-Д-)「はぁ……気ぃ強いな、お前は」
川 ゚ -゚)「お前が弱いだけだろ」
( ,,゚Д゚)「……でも、ま。お前にはなんか、そんなのが似合ってる気がするぜ」
「大きなお世話だ」とでも返してやるべきだったか。
去り際、にやとクーの方へ笑みを浮かべて、ギコが立ち去ろうという所だ。
川 ゚ -゚)「─────?」
( ,,゚Д゚)「な、なんだよ……オイ」
さしもの鈍感なギコでも、自分達を取り巻く現状に気づいたようだ。
いつの間に自分達の周囲へと近づいていたのか、そこまではわからなかった。
ただ、音も無く闇夜の中に現れたのは、6人程度の集団だった。
それらが自分達の周りをぐるりと取り囲んでは、包囲しているのだ。
( ∵)「………」
( ,,゚Д゚)「なんだ……?あんたら」
-
全員ともが仮面をつけており、面が割れぬようにしてあるのだろうか。
目と口に穴を開けただけの、簡素でなんとも味気の無い仮面の男達。
その下の表情は、一切伺う事が出来ない。
川;゚ -゚)(こいつら……一体)
どうやら、穏やかでない雰囲気を醸し出しているという事だけは分かる。
自分達は知らず知らずの内に、何かしらの迷惑ごとに巻き込まれてしまっていたのだ、とも。
仮面の一人が、くぐもった声で口を開いた。
( ∵)「お前達が……東部に地質の調査に出向いた冒険者だな?」
( ,,゚Д゚)「それがどうした、ゴルァ」
川 ゚ -゚)「………」
仮面の奥から聞こえてきた声は、さっき終えたばかりの、あの依頼の事だった────
他言を禁じる以上、やはりあの依頼には何かがあったのだ。
その”何か”に考えを回しながらも、数の上で完全に不利な状況を鑑みて、ゆっくりと動いた。
仮面の男達に隙を見せないように注意しながら、背中をギコへと預け、クーは前方の二人を見据える。
-
( ∵)「なら、あの辺りに咲いていた草花も目にしたという訳だ……」
( #゚Д゚)「何の話だ?……全然わかんねぇぞ!」
川 ゚ -゚)(草花だと………?)
確かにあの辺には沢山の植物があった。薬草となる草花や、コカの葉や実に────他にも。
川 ゚ -゚)(コカに……ケシ───なるほどな)
そういえば、いずれも毒にも薬にもなる草花の一種だ。
成分を上手く抽出してやれば、怪我をした箇所の痛みを一時的に和らげたり、使いようによっては
人の気分を高揚させたりする事も可能になる───一言で表すならば、麻薬だ。
それらが一部ではバカに高価で取引され、中毒となっている人間もいるらしい。
川 ゚ -゚)「ヴィップや他の主要都市に暗躍し、人々を狂わす薬を流しているのはお前達……そういう訳か」
( ,,゚Д゚)「あぁん?」
( ∵)「………!」
-
川 ゚ -゚)「どうやら疑問が解けた。あの辺りはその為にコカやケシを栽培する為に使っていた───
それも恐らく、さも人の手が介入していないように見せ掛けていたのだろう?」
( ,,゚Д゚)「コカにケシといやぁ……麻薬の元にもなる、あれか!?」
クーの言葉に、遅まきながらどうやらギコも合点がいったようだった。
”地質調査”とは名ばかりに、恐らく自分達に仕事を依頼した男は、目の前のこの仮面達の
それら動きを押さえ込めようとする、何らかの治安維持的役割を担っている人間だったのだろう。
それが明るみにしてしまった今、彼らの狙いは自分達の命を置いて、他に無い。
( ∵)「……そこまで知られているなら、話は早いな」
6人の仮面達は、ほぼ同時に懐からゆっくりと短刀を取り出し、その柄を逆手で掴み構えた。
淀みの無い動作から、こういった事に手馴れた連中であるというのが分かる。
川;゚ -゚)(ギコ……殺しにくるぞ、こいつら)
( ,,゚Д゚)(わかってる)
腰に携える小剣を抜く機を、クーは見計らっていた。
全員が短刀を携えるとは言え、長物を帯刀する自分達にも、若干の利はある。
あとは、自分が背中を任せているこの男に───自分達の生死は託されていた。
-
川 ゚ -゚)(私は人を相手取った事はほぼないが、剣の扱いに多少は自信がある……あとはお前が頼りだ、ギコ)
( ,,゚Д゚)「………」
川 ゚ -゚)(先ほど経歴がどうとか言っていたが、一応、尋ねておくぞ。お前───実戦経験の程は)
( ,,゚Д゚)「ない」
クーはその言葉に一瞬、自分の耳を疑ってしまった。
川;゚ -゚)(お前……本当に)
( ,,゚Д゚)「全く、ない」
妖魔が現れれば切り伏せていただとか、この剣は龍の鱗から作られたのだとか───
そんな事を吹聴してのたまっていたこの男は、でかい剣を背負っているだけの、まるで素人。
川;゚ -゚)「………まずいな、これは」
少しばかり、眩暈がした。
だが、しっかりと地に足をつけて仮面達の動きに注視しなければ、死ぬだけだ。
-
( ,;゚Д゚)「出たとこ勝負だぜ……来るなら来てみろゴルァッ!」
( ∵)「…ッ!」
ギコのその叫び声を皮切りに、膠着を続けていたその現状は、目まぐるしく動き始めた。
( ∵)「シィッ!」
川;゚ -゚)「……はぁッ!」
前方の一人が駆け出て短刀を振るってくるのとほぼ同時に、クーは腰元の剣をすらりと抜き出して
その刃先へとぶつけると、力の向く方向を自分以外へと受け流した。
体勢の流れた所を浅めに斬りつけようと横に剣を薙ぐも、後方へと身体を反らされ空を切る。
( ,;゚Д゚)「うおぉッ!?」
( ∵)「チッ」
一方のギコは、4人が相手だ。その体格と、装備している剣などの外見から判断したのだろう。
クーよりも多くの人数があてがわれ、早めに潰してしまおうと、囲まれているのだ。
短刀を突き出してきた一人をすんでの所でかわすと、すぐにまた別の方向から突き出された
攻撃を避けようと、地面を転げまわるようにしながら辛うじてやりあっている。
こちらの二人を素早く撃破して素早くギコの手助けに回れば───まだ勝機はある。
-
川#゚ -゚)「はっ……とんだ見込み違いだ!」
( ∵)「な……ぐぅッ!?」
女と侮ったか、飛び込んで来た一人を側面へとかわしながら、その肩へ小剣を通らせた。
意外な相手に一刀を浴びせられた事に驚いた様子だったが、戦意を削ぐまでには至らない。
( #゚Д゚)「こな……くそッ!」
( ∵)「へぶッ」
でかい剣だけに、ギコはそれを抜く暇も与えてもらえないようだ。
だがそれでも4人の敵を前にして、拳を仮面へと打ちつけ、必死に抗っている。
川;゚ -゚)(私一人ならば、包囲を抜けるのはたやすいが)
殺す気で襲いかかってくる相手に、2対6はいかにもまずい。
警戒が手薄な自分はいくらでも逃げられる道は空いているが、そうなればギコの命が危うい。
得策ではないと思いつつも、いち早くギコに助太刀すべく、こいつらとやりあわなければならない。
が─────どうやらその考えは、ギコも同じだったようだ。
( #゚Д゚)「ゴルァァァァァァァッー!!」
-
( ∵)「ッ……!」
大声を上げながら体当たってくるギコに気圧され、二人ほどが怯み、飛びのいた。
空を切った体当たりだったが、勢いのままに、ギコはその方向へと包囲を突き抜ける。
川 ゚ -゚)「!」
( ,#゚Д゚)「おら、来いよ!てめぇら!」
相対する4人に向かって挑発する仕草を見せるギコの真意を、クーはすぐに見抜いた。
自分に一瞬だけちら、と視線を向けて、それを横手の路地へと逸らしたからだ。
「逃げろ」という合図だ。
川;゚ -゚)「ギコッ!」
( ,#゚Д゚)「そら、こっちだッ!」
恐らくは自分よりも剣の扱いが不得手であるギコは、半人前以下の分際で自分とこちら側を
分断し、危険を一手に引き受けて遠ざけようとしているのだ。
クーが引き止めるよりも早く、ギコは暗い路地へと走り去り、その背中は遠くなってゆく。
-
( ∵)「3人ずつだ……そこの女、3人で当たれ」
一瞬思案していた様子の仮面達だったが、すぐにそのギコの後を、3人が追う。
結果、こちらには残された一人が追加されて1対3となった訳だが───
それでも、ギコの命を案じながら余儀なくされる戦いよりかは、ぐっとマシになったと言える。
( ∵)「………フシィ」
川 ゚ -゚)(どうする……逃げるか?自分も)
ギコを追った3人の姿も完全に視界から消えた。
こんな連中に、まともに付き合ってやる事もない。
逃走経路を頭の中で描きつつ、自分の喉首を狙う短刀にクーが注意を払っていた、その時だ。
一人の影が、横手の路地からこちらへ向かってゆっくりと歩いてくるのが見えた。
遠巻きにこんな状況の目の当たりにして、のこのこと現れる一般人は居ないだろう。
川 ゚ -゚)「!」
仮面達が一様にその人影へ顔を向けると、一人が声を上げた。
( ∵)「ッ……あんたは」
川;゚ -゚)(新手か……)
-
陰鬱な空気を引き連れて、どこからかふっと沸いて出た、その男。
顔には覇気が感じられず、心なしか、仮面の男達の声に反応するのも面倒臭そうにしている。
('A`)
その場で立ち止まった男に、仮面の一人が声を掛ける。
口調からはお互いに面識があるのだと理解した。
( ∵)「なんでこんな所にいるんだ……あんた」
('A`)「………」
( ∵)「ま、丁度いい。手を、貸してくれるのか?」
厄介な事になった。これで今度は、自分が4人を相手にしなければならない────
そう思い、いよいよ逃走を行動に移そうとしたクーだったが、
その彼女を呆気に取る出来事は、彼女の目の前で唐突に起こった。
('A`)「………ふぅ」
( ∵)「え………?」
川 ゚ -゚)(な………!)
-
言葉をかけた仮面の男の首元に、腕を動かして何かをした。
そこまでは解った────そしてすれ違うように、ゆっくりと他の仮面の男達の方へ歩いてゆく。
( ∵)「なぶ、ごぼぼっ」
間を置いてから、男の後方では仮面の一人が声ともつかぬ奇怪な音を発する。
かと思えば、ぱっくりとその喉は割れていた。そこから鮮血が、まるで噴水のように噴き出したのだ。
川;゚ -゚)「─────ッ」
ばちゃりと音を立てて、その身体は一度よろめいてから、自らの血の海へと倒れこんだ。
たった一振りのナイフによる、目にも留まらぬ早業で。
男は────仮面の喉首を即死するほど深く掻っ捌いたのだ。
まばたきする程の間に、人間が一瞬で血を噴き出すだけの悪趣味なオブジェになってしまった光景。
そんなものを見せられたクーは、口元に手を当てて叫ぶのをどうにか堪えた。
出来る事ならば、大声で叫んでしまいたかった────だが、一瞬でこの場を恐怖で支配した
男が発する、息も出来ない程の威圧感が、そうはさせてくれなかった。
( ∵)「な……なんで……」
川;゚ -゚)(仲間では……ない、のか?)
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