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カオスロワ避難所スレ3

59消えていく光:2016/01/20(水) 22:46:45 ID:c4W66lWw0

返答を渋る出来杉より早く答えた男がいた。
通信機ごしに答えたのはウルフオルフェノクの姿をした乾巧だ。


『乾か。
おまえが怪人だったことを隠してたことは色々言いたいことがあるが……今は置いておこう。
やれるのか乾?』
「ああ、もちろんだ。みんなの夢を壊す奴らを俺は放っておけねえからな」
「僕も行くよ、十神くん!」

続いて苗木も声を上げて戦闘の続行を表明する。
しかし、こちらは乾の手によって静止される。

「待て、おまえはダメだ」
「なぜですか乾さん! 僕だって戦えます!」
「苗木、おまえは戦闘ではまだまだ素人だ。
さっきの戦闘で消耗しすぎている。違うか?」
「それは……だけど!」

乾の言葉通り、苗木は未だに慣れない戦闘によって肩で息をしているほど疲れきっていた。
無理をすれば戦闘はできなくもないだろうが、この状態で素人を戦わせるにはあまりにも無謀すぎるだろう。

「今のおまえは正直、足でまといなんだよ」
「乾さん……」
「……そんなおまえにもできる仕事はある。
手負いの葉隠を守ってやれ」
「わかりました……」
「十神もそれでいいな?」
『今の苗木では駒にするのも難しいか。
苗木や葉隠とかいう役立たずを収容するためにホワイトベースを着艦させる時間も勿体無い。
……いいだろう、苗木は街の外に出て役立たずを守っていろ』

今の苗木では大した戦力にならないとの乾の意見に納得した十神は、苗木に葉隠と街の外で待機しているように指示を出す。
苗木も戦いたい気持ちを抑え、二人の意見と指示を聞き入れ、了解するのであった。

『それで出来杉、おまえはどうする?』
「……行きます!
研くん達の仇は討った。
でも、倒さなきゃいけない相手は他にもいる!」

乾ら戦う意思を持った者達に応えるように出来杉も覚悟を決め、戦う決心を固めた。

『決まりだな。
苗木と葉隠は街の外へ。
乾と出来杉、そしてホワイトベースは残りの熱斗組の掃討に向かうぞ!』
「「「了解!」」」


そしてウルフオルフェノク・乾がガンダムの手に乗り、出来杉の駆るガンダムが市街地で生き残った熱斗組へ向けて進撃する。
その上空には十神・腐川・アイギス・ホライゾンの乗るホワイトベースがガンダムの後を追うように次の戦場に向かっていった。

「乾さん、みんな、生き残ってくれよ」

戦場に向かうオルフェノク・ガンダム・ホワイトベースを見送りつつ、苗木は仲間の無事を祈った。
そして気絶中の葉隠を背負い、市街地の外へと退避するのであった。



大阪市街地西側の戦いはホワイトベース組の勝利で終わった。
だが泥沼の戦いはまだ続く。


【二日目・10時00分/大阪市街地上空 ホワイトベース内部】

60消えていく光:2016/01/20(水) 22:47:54 ID:c4W66lWw0

【十神白夜@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】健康、艦長ポジション
【装備】ホワイトベース@機動戦士ガンダム
【道具】支給品一式、腐川冬子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生
【思考】
基本:愚民たち(対主催)を従えて十神家繁栄の邪魔になる主催を倒す。
0:なんとしてもここで拳王連合軍を全滅させる
1:愚民を指揮し、拳王連合軍に勝利する
2:その後は北上してマーダー掃討、対主催を集める
※アイギス・ホライゾンに仕掛けられたウィルスに気づいてません


【アイギス@ペルソナ3】
【状態】ウィルス感染、ホワイトベースと接続、右舷担当
【装備】超磁鋼レールガン@ペルソナ3
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:拳王連合軍を倒す
1:十神たちについていき、殺し合いを破壊する
2:殺し合いを破壊して平和になったらSEESと合流する
※大尉によりウィルスを仕掛けられました
 戦況が覆せないほど不利になる、あるいは戦艦が致命的な打撃を受けると自動的に死国に特攻します
 逆に、戦いに勝利した場合でも戦艦を自爆させるようにセットされています


【ホライゾン・アリアダスト@境界線上のホライゾン】
【状態】ウィルス感染 、ホワイトベースと接続、左舷担当
【装備】悲嘆の怠惰@境界線上のホライゾン、拒絶の強欲@境界線上のホライゾン、憤怒の閃撃@境界線上のホライゾン
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:拳王連合軍を倒す
1:十神たちについていき、殺し合いを破壊する
2:亡くなったトーリのためにも殺し合いを破壊する
※大尉によりウィルスを仕掛けられました
 戦況が覆せないほど不利になる、あるいは戦艦が致命的な打撃を受けると、自動的に死国に特攻します
 逆に、戦いに勝利した場合でも戦艦を自爆させるようにセットされています


【二日目・10時00分/大阪市街地 西側】

【乾巧@仮面ライダー555】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、ウルフオルフェノクに変身中、首輪なし
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明、ファイズギア(ベルト故障)、通信機
【思考】基本:殺し合いを止める
1:市街地に残っている拳王連合軍を倒しにいく
2:ホワイトベース組の仲間を守る
※支給品だったので首輪はありません。


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大) 、仮面ライダーウィザードに変身中
【装備】ウィザードライバー@仮面ライダーウィザード、マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式、通信機
【思考】基本:対主催
0:十神くんたちに協力
1:街の外に退避して葉隠くんを守る


【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(大)、疲労(小) 、気絶
【装備】ビーストドライバー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:生存優先・対主催(対主催をすれば生き残ると占いで出たので)
0:気絶中


【出来杉英才@ドラえもん】
【状態】疲労(中)、謎の悲しみ
【装備】改造デュエルガンダム@機動戦士ガンダムSEED
【道具】支給品一式
【思考】
基本:仲間と共に主催者たちを倒す
0:やったぞ! 研くん達の仇を取ったぞ!
1:市街地に残っている拳王連合軍を倒しにいく
2:のび太くんたちは大丈夫かな?
※バスターガンダムのパイロットがのび太だと気づいていません
※デュエルガンダムにはIフィールド@機動戦士ガンダムが搭載されています

61消えていく光:2016/01/20(水) 22:48:26 ID:c4W66lWw0




死国の近く。
そこでは一匹の猫型ロボットが慟哭しながら死国に向けて走っていた。

「クソッ! クソッ! 畜生ーーーッ!!
よくも仲間を! のび太くんを殺しやがったなぁ!!
あいつら絶対に許さねえ!!」

市街地西側において、一人だけ葉隠を撃退したクロえもん。
その後はのび太や紫龍を助けるべく援護しようとしたが、それより早く紫龍は死に、のび太のガンダムは敵のガンダムに敗れて爆散するところをみると、市街地に残る意味もないと知って逃げ出したのだ。
今、クロえもんの目には守りたくとも守れなかった者への無念と、ホワイトベース組への殺意に近い怒りだけが写っている。

「今は死国だ!
死国に戻れば武器がある、仲間がいる!
それで奴らをひとり残らずやっつけてやる!」

怒りと悲しみに囚われたクロえもんはホワイトベース組を打倒できる武器・戦力となる仲間を求めて死国へ向けて全速力で目指す。

されどクロえもんは知らない。
死国もまた戦場になっているということに。


【二日目・10時00分/大阪市街地 死国の近く】

【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】疲労(小)、首輪解除、強い悲しみとホワイトベース組への強い怒り
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んで勝つ!
0:死国に戻る
1:仲間を殺したホワイトベース組は絶対に許さねえ!
2:最低でも四国アイランドリーグが出来るくらいの仲間を集める
3:イチロー選手を仲間に引き入れたい
4:ドラえもん、のび太くん……すまねえ

【野比のび太@ドラえもん 死亡確認】
【龍星座の紫龍@聖闘士星矢 死亡確認】※支給品なのでキルスコアはつきません

62Wゴロウ 次なる策略:2016/02/29(月) 16:01:11 ID:Ww92PI9Y0
「ちくパちくパ ちくわのパフェなんだよ!
ちくパちくパ おいしいめう おしゃれめう!
ちくパちくパ CKPCKP
ちくパちくパ ちくパ最高ーッ! わぁー!♪」

「ああ、ちくわパフェおいしかったよ。
でもできればちくわとパフェは分けて食いたかったかな」
「めうッ!?」

五郎はちくわパフェをご馳走した芽兎めうに代金がわりとしてアームロックを仕掛けた。
めうは、アームロックの痛みに耐え切れずショック死してしまった。
社畜とはいえマーダーが跋扈するバトロワという非常時に店の営業をしていたこと自体が、彼女のそもそもの大間違いであった。
遮二無二仕事をすることは良いことなのだが、時には投げ出す勇気も必要なのだ……

【芽兎めう@ひなビタ♪ 死亡確認】


殺害しためうの屋台から貴重な食料であるちくわパフェを強奪しながら、マーダーコンビである五郎と吾郎は顔を見合わせる。

「しかし井之頭さん、彼女からいい事を聞きましたね」
「ああ、拳王連合軍のことですか」

二人はめうを殺害する前にちくわパフェを食べながら、彼女からある噂を聞いていた。
最悪のマーダー集団(……と多くの参加者から思われている)拳王連合軍のことである。
めう曰く、殺戮・略奪なんでもござれの凶悪集団であり、既に上がっている被害だけでも広島、兵庫、九州の一部を壊滅へと追い込み、現在は大阪にその毒牙をかけるべく空母に乗って上陸して略奪と虐殺を行っているとのこと。
首輪を異常に早い段階から外していることから主催者との関係すら噂されていた。
そのような危険集団に取り入ろうとする者など普通はいない。
だがこの二人の場合は事情が違った。

「拳王連合軍は県を焼き払えるほどの力を持っている……その人についていけば優勝してこの殺し合いを早期に終わらせられることだって夢じゃない!」
「正直、ガヤガヤと大所帯で同じ釜のメシを食うのは好きじゃないんですけどね……まあ、主催の言っている人口削減を実現させて優勝するためには多少の我慢も必要か」

五郎と吾郎は優勝を狙っている男たちだ。
井之頭五郎はこの殺し合いの表向きの目的である人口削減による食料事情の安定化を、由良吾郎は殺し合いを早期に終わらせて北岡を殺した人物を探し出すべく、優勝を狙っている。
そんな二人にとっては数万人単位で殺人を犯している破壊集団・拳王連合軍は魅力的に写ったのだ。
拳王連合軍に取り入れば、優勝=人口を規定の人数にまで減らせるという意味で、殺し合いを早く終わらせられ、自分たちは優勝者として生き残る道があると思ったからである。

「拳王連合軍ほどの力があれば、私たちを打ち負かしたネオ・クライシス御一行とやらも倒せるかもしれないしなあ」
「そうですね、井之頭さん」

自分たちを敗走させたネオ・クライシス帝国御一行に対抗するにはより強い力が必要だ。
光太郎たちとまた鉢合わせする可能性もある以上、なるべく早く強力な集団に入る必要があった。

「もっとも彼らはホワイトベース組とやらと戦争中らしいですが……」

拳王連合軍は現在、対主催集団であるホワイトベース組と全面戦争中であった。
しかし、その情報を聞いても五郎が慌てる様子はなく、むしろ喜んでいる様子であった。

「由良さん、それは逆に都合がいいじゃないですか」
「都合がいいとは?」
「そのホワイトベース組をやっつける手伝いをすれば拳王連合軍は私たちを迎え入れてくれるかもしれませんよ?
それでダメならちくわパフェを添えてお土産にしましょう」
「……なるほど」

五郎はホワイトベース組から攻撃を受けている拳王連合軍に援護をし、それによる功績によって拳王連合軍に取り入るつもりなのである。
大災害後の世界では貴重な食料であるちくわパフェも、加入するための手土産にはなるだろうと言うのが五郎の算段である。

「そうと決まればいきましょうか由良さん」
「そうですね、井之頭さん。
……あっ、あんなところにボートがありますよ」
「ちょうど良かった。
あの車だと、謎のワープ機能のせいでどこに出るかわかりませんからね」

都合のいい事に、五郎と吾郎は愛知県の浜で流れ着いたボートを発見した。
ボートの中は血まみれで、なぜか三匹の首のない動物の死骸が乗っていたが、二人は気にするどころか貴重な食料をゲットしたとしてディパックに詰めた。

そして、ダブルゴロウは拳王連合軍に合流すべく、愛知県を後にした。

63Wゴロウ 次なる策略:2016/02/29(月) 16:01:39 ID:Ww92PI9Y0
【二日目・9時30分/日本・愛知県沿岸部】

【井之頭五郎@孤独のグルメ】
【状態】普通、満腹
【装備】モンスターボール×4
【道具】支給品一式、調理器具一式、大量のちくわパフェ、首のないヘラジカの肉、首のない猫の肉、首のないサイボーグ猫
【思考】基本:優勝狙いマーダー
0:優勝するためにマーダー集団の拳王連合軍に合流するべく大阪へ
1:食糧事情の都合上、マーダーとして動く
2:生き残るために吾郎と行動する
3:ネオ・クライシス帝国御一行には要警戒

【由良吾郎@仮面ライダー龍騎】
【状態】ダメージ(小)、精神不安定気味、満腹
【装備】ライダーブレス@仮面ライダーカブト、ボート(血まみれ)
【道具】支給品一式 、高級外車
【思考】基本:優勝狙いマーダー
0:優勝するためにマーダー集団の拳王連合軍に合流するべく大阪へ
1:北岡先生を殺した奴は許さない
2:生き残るために五郎と行動する
3:優勝し、殺し合いが終わった後にでも北岡先生の亡骸がある場所や下手人を調べたい
※高級外車には謎井上ワープ機能があるようです
※血まみれのボートは4935話でクロちゃん達(故)が乗っていたものです

64漢達の戦場:2016/03/03(木) 12:25:41 ID:DalKqWvY0
確かに戦闘技術では祐一郎より烈海王の方が遥かに上回っていた。
烈海王の放つ鮮烈なる中国拳法の技の数々がサイボーグとして強化された祐一郎の身体をボロボロにしていった。
祐一郎の放つ握力シュトロハイムの3倍・握力×速さ×体重=破壊力により絶大なパンチ力を秘めたパンチも尽く躱され、戦いは祐一郎がサンドバックのように一方的に殴られるだけの展開が続いていた。

だが祐一郎にも烈海王に勝るものがあった。
“科学力”と“技術力”である!

「貴様、それは……」

祐一郎は、その体から生み出されるスパークで金色に輝く。
祐一郎はでバラバラになって殺されたアドラーの死体から無事だった電光機関を戦闘中にこっそりと拾い、自身の体内に組み込んだのだ。
今の彼は胸に移植した電光機関によって電撃を自在に操れるスーパー祐一郎と言うに相応しい。

「亡き戦友アドラーの力、とくと味わえ!」

烈海王に放たれる怒りの電撃。
電気の速さは光速と同じであり、従って人間がどれだけ鍛えようとも避けらえるものではない。
それは人外だらけの刃牙世界の格闘家と言えども同じであり、光速に近い速度の攻撃を避けられる道理はまずない。

「ぐわあああああああああああああああ!!」

祐一郎の電撃が烈海王を飲み込む。
電気を通さない絶縁体を持っていない烈海王は為すすべもないまま、感電させられる。

「まだだ! 電光機関最大ィィィーーーーーーッ!!」

仲間を殺したマーダーに容赦は無用。
そう言わんばかりに祐一郎は電光機関の出力を最大まであげ、放つ雷をより強烈なものへと変え、一気に勝負を決めようとする。


(焼かれる臓腑……痺れる背骨…どれもハッキリと感じた…
立ち上がることすら…遥かに遠い…
大きな収穫だ…………次に活かせる……………………………)


烈海王は己の敗北を悟って微笑むのを最後に、格納庫の床に倒れた。
肉体の半分近くを電熱で黒焦げにされて心肺は感電によって完全に停止、中国拳法の達人・烈海王はここで大往生したのだった。


「はぁはぁ……電光機関のおかげでなんとか勝てた」

烈海王を下した祐一郎も余裕の勝利とは言えなかった。
肉体はボロボロ、内蔵されたバッテリーも電光機関を使用するために使ったので残量は少なく、サイボーグパンチ一発打つのも厳しいほどの満身創痍である。
これ以上の戦闘は危険だろう。

「僕の本文は戦うことじゃなくて作ったり直したりすることなんだけどなぁ……
はッ、シュトロハイムは!?」

ふと四国からの戦友でありサイボーグとして蘇生してくれた恩人でもあるシュトロハイムの存在を思い出した祐一郎。
サイボーグ忍者と戦っていた彼は無事だろうか……?
そう思った祐一郎は焦りを募らせ、加勢を急がんとする。

65漢達の戦場:2016/03/03(木) 12:26:28 ID:DalKqWvY0



……祐一郎の加勢は間に合わなかった。

「シュトロハイム……」

シュトロハイムと雷電が戦っていたであろう場所にたどり着くと、戦闘は既に終わっていた。
雷電は沢山の銃槍で蜂の巣状態で床に大量の白い血を撒き散らして転がっていた――機能は停止しているようだ。
シュトロハイムはあちこちに大小様々な切り傷・切断傷を作り、その頭部には深々と雷電の高周波ブレード が刺さっていた。
サイボークとして大事な部位である脳がやられれば死は避けられない、すなわち、

   /l | / //   _ヾ: : |(r、ヽl : :ヽ
  /ミヽ、! l |へ   /,) ヾく ̄iノノ : : ミヽ、    ルドル・フォン・
 ノ三ヽヽ/゙Y゙〉 r'゙,.tラ   ゙l  l/ ゙'ーミヽヽヽ    シュトロハイムは
/彡ニ,. -へ、〈 |、! ゙Y´    ゙  ヾ::   \_,.-⌒
|//   r'~レr、k='        l::   /     JoJoに再会
l/   | / ゞ=;i ,...、 ノ    /:::::/   _,.-'´  することなく
    /゙"〉‐<l ゙"、''_/ ,:   /::/'´>>/
     | ,|  ::|.   \-<  //ヾ/--―-、   テラカオスロワ10期の
  _ l゙´」=ラ:|      \_/r'/´ ̄_ -- 、_    大阪戦線で
r''7゙  | r┴-=L、    ,.-'二 ノ ̄
l |  ミトゞ=、__ノノ|    l゙/´       _,. -‐'"´  誇り高きドイツ軍人として
!,. レ, ヾ::::::ノ''"ヾ|   //      _,. -'_,. -‐ラ   名誉の戦死をとげる
ヾ \  Y´  ノノ  ||   ,.-'" ,.-'´ /,.-‐'"



「……くッ、シュトロハイム、アドラー、君たちのことは忘れない! だが今は!」

本当は泣きたいところだが仲間の死を嘆いている暇はなかった。
まだ祐一郎は拳王連合軍がホワイトベース組によって大規模な攻撃を受けていることを知らぬが故に状況がわかっていない。
しかし、自分達と戦った強敵である烈海王、雷電の潜入。死国の内外で響き渡る戦闘音。異常事態が発生しているのは明らかである。
すぐに艦橋と連絡を取り、状況を知る必要が祐一郎にはあった。
もし何かが起こっているようなら、熱斗、彩斗、翔鶴そして仲間達のために動く必要があるだろう。

「高速艇は完成まであと少しだが……まあいい、後回しだ」

街に食料調達に出かけ、死国への帰還が遅れるであろう熱斗達のために祐一郎は高速艇を作って用意していた。
襲撃直前までで完成間近までこぎつけたが、今は残りを作っている時間などなかった。
それでも祐一郎の高い技術力の粋が集められているので未完成でも最低一回は航行できるだろう。
ちなみに死国組の誰かでないと動かせない仕様である。
……残念ながらこれを港に配置する余裕は今の祐一郎にも死国にもないのが問題だが。

高速艇の完成と設置は混乱が収まるまで後回しにするしかない。
まずすべきことは情報を得ることだと思い、祐一郎は格納庫に設置された有線電話に手を伸ばした。


【二日目・9時20分/大阪・死国格納庫】

【光祐一郎@ロックマンエグゼ】
【状態】ダメージ(大)、バッテリー残量(小)、サイボーグ化、首輪解除
【装備】電光機関@エヌアイン完全世界
【道具】支給品一式、自作爆弾
【思考】基本:息子たちをサポートする。
0:この異常事態に対処するためにも艦橋と連絡を取る
1:主催者について調べる
2:できれば九州ロボを取り戻したい
3:熱斗たち大丈夫かなあ……
※九州ロボの制作を提案した人物がいるようです
※度重なる誤解により、巨悪のレッテルを貼られました
※電光機関の使用には体内のバッテリーを消費します。バッテリーがなくなると動けなくなります


【烈海王@範馬刃牙 死亡確認】
【ルドル・フォン・シュトロハイム@ジョジョの奇妙な冒険 死亡確認】
【雷電@METAL GEAR RISING 死亡確……

66漢達の戦場:2016/03/03(木) 12:27:24 ID:DalKqWvY0



            斬ッ!!!


「なッ……!? がはッ!!」

有線電話に手を掛けようとした寸前であった。
祐一郎の胸から移植した電光機関を突き破って、夥しい鮮血と同時に一本の刀が突き出てきたのだ。


「死んだふりをしていれば油断すると思ったよ、祐一郎」
「ば、馬鹿な……おまえは死んでたハズじゃ……」


祐一郎を背後から突き刺した下手人……それはシュトロハイムと相打ちになり死亡した男、雷電であった。


「苗木達は本当にいい仕事をしてくれたよ。
俺の修理に必要な自己修復用ナノペーストを持ってきてくれたからな。
それを使えば死亡工作もできるわけだ」

自己修復用ナノペースト――使用するとLIFEゲージを回復する。所持している状態でLIFEが0になると自動的に回復するという代物である。
シュトロハイムと相打ちになった雷電だが、これを持っていたことによって瀕死の重傷から復活したのである。
祐一郎の行動は予想不可能であり、実際に素の実力では上回っていた烈海王も敗れた。
故に雷電はナノペーストを使った死亡の偽装をし、油断をつく作戦を思いついたのである。
いかな祐一郎といえど仲間の死による動揺も手伝ったのか、雷電の死んだふりに気づくことができずにいた。

奇襲によるイニシアチブを得て、祐一郎の心の臓に一太刀入れた雷電。
だがこれだけで雷電はトドメを刺したとは思わない。
サイボーグで心臓部分をやられても生きていられるのはゴマンといるからだ。
確実に抹殺するためにはシュトロハイムのように脳を破壊するしかないのだ。
雷電は祐一郎の背中から刀を引き抜き、トドメを刺すべく祐一郎の頭部に目掛けて必殺の斬撃を加わせようとする。

「こ、ここまでか……」
「ああ、ここまでだ。散っていった仲間や犠牲者達のためにも死ねッ、祐一郎!!」

雷電は対主催だ。
だが、纏っている赤いオーラと強すぎる殺気により、祐一郎の目には凶悪なマーダーにしか映らなかった。
そして祐一郎に迫る雷電の凶刃。その凶刃を祐一郎が防ぐ手立てはなかった。
雷撃……電光機関の破損により使用不能
サイボーグパンチ……ダメージにより使用困難、真正面から打っても雷電なら躱せる
回避……雷電の斬撃の方が早い
防御……リッパーモードの雷電の前に防御は通用しない
完全に手詰まりであると、天才である祐一郎は既に手詰まりであった。


自分への必殺の一撃が迫る中、スローモーションになった視界の中で祐一郎は考える。

(熱斗、彩斗、翔鶴は無事だろうか……)

走馬灯には二人の息子と、一人の娘の姿が浮かんでいた。
一人の父として、息子達の身は心配なのだ。

(いや、きっと無事のはずさ、万が一となるために切り札となるプログラムも用意した。
三人なら僕なしでも大丈夫なハズだ……僕は僕ができることをするだけだ)

だがあ同時に息子達の強さを知っている祐一郎はこの困難を乗り切れるであろうと期待を抱いていた。
信じてるが故にこれからも大丈夫だと確信を持っていた。
そして、祐一郎は一人の大人としてできることをしようとする。


(僕はここまでみたいだが、父として大人として、復興した世界で三人が仲間達と笑い合える世界を作る手助けをする……そのためにも――)
「おまえは息子達の邪魔をするなあああああああああ!!!」


祐一郎は万感の思いを込めて吠えた。
息子達のためにも、仲間のためにも、世界のためにも雷電をここで倒す。
その顔は立派な父であり、大人であり、漢のものであった。









斬ッ!



「うるさい黙れ」

67漢達の戦場:2016/03/03(木) 12:27:59 ID:DalKqWvY0

だが、祐一郎の思いを切って捨てられるかのごとく、祐一郎の頭部は雷電によって両断された。
スイカのように切り開かれた頭部から右脳と左脳に別たれた脳髄が見える。
天才としてこのロワを良くも悪くもかき乱した男・光祐一郎の最期であった……




カチッ
「なに!? 何の音――」



                               ヽ`
                              ´
                               ´.
                           __,,:::========:::,,__
                        ...‐''゙ .  ` ´ ´、 ゝ   ''‐...
                      ..‐´      ゙          `‐..
                    /                    \
        .................;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;::´                       ヽ.:;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;.................
   .......;;;;;;;;;;゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙       .'                             ヽ      ゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙゙;;;;;;;;;;......
  ;;;;;;゙゙゙゙゙            /                           ゙:                ゙゙゙゙゙;;;;;;
  ゙゙゙゙゙;;;;;;;;............        ;゙                              ゙;       .............;;;;;;;;゙゙゙゙゙
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              ノi|lli; i . .;, 、    .,,            ` ; 、  .; ´ ;,il||iγ
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それは祐一郎が絶命した直後であった。
突然、祐一郎から爆発が起こり、至近距離にいた雷電がその爆発に飲み込まれていった。
祐一郎は死ぬと同時にずっと隠し持っていた自作爆弾を作動させて雷電を巻き込んで自爆したのだ。
倒せぬならせめて道連れにする――それが祐一郎の答えだった。
いかな切り裂きジャックと言えども、死を覚悟の上で敵を倒そうとした祐一郎の意志までは切って捨てることはできなかったのだ。

閃光と爆音が止むと、死国の格納庫には高速艇とアドラー・シュトロハイム・烈海王の死体、一つのクレーター状の爆発痕とバラバラに砕け散って真っ黒焦げになりどちらが祐一郎のものか雷電のものかわからなくなった無数のガラクタだけが残されていた。


こうして死国格納庫での戦いは両者痛み分けに終わり漢達は死闘の末に皆、散っていった。
願わくば彼らの戦いや死が無駄でないことを祈ろう。



【雷電@METAL GEAR RISING 死亡確認】
【光祐一郎@ロックマンエグゼ 死亡確認】

【二日目・9時30分/大阪・死国格納庫】
※高速艇(未完成)が格納庫に配置されています
 高速艇は死国組の誰かでないと動かせない仕組みになっています
 また、未完成なので一回の航行で壊れてしまう可能性があります

68都庁に散る:2016/03/17(木) 02:13:29 ID:YNo4ru7o0
――都庁地下東部



この世界樹を一網打尽にすべく爆弾を仕掛けようとする貴虎達を止めるべく、南部には小町と影薄達・北部には金竜らのように、地下東部には氷嵐の支配者・ロックオンストラトス(キョウリュウブラック)・賢神トリン(キョウリュウシルバー)が向かっていた。
だが……

「なんて強さだ……」
「こいつ銃弾が効かない!」
『私のシールドすら貫いてくるだと……コイツは一体……!?』

三竜の一角である氷竜、弾丸の勇者にして射撃スキルに長けたキョウリュウブラック、キョウリュウジャーの司令官にして閃光の勇者であるキョウリュウシルバーの一匹と二人は間違いなく強者であった。
しかし、その一行が多大なダメージを受け、皆ボロボロになっている。

『私達がたった一匹にこうまで苦戦するなど……!!』

三者に相対する敵は僅か一体。
人間ではない異形。貴虎の仲間かDMC狂信者かどうか不明だが、襲ってきたところからして都庁の敵であることには違いないようだ。
だが、その一体こそが三者以上に巨大な力を持った強者・実力者であるようだ。

「あってはならない……我々のブレイブがこんな敵に敗れるなど」
「しかし、なんて巨大な奴なんだ……実力も……姿も……」
『く、来るぞォ!!』

“敵”は、ボロボロの三者に容赦なく襲いかかっていった。



そして地下東部に木霊する、絶叫と――嬌声。


◆◆◆

――世界樹地上、地下ダンジョンの入口前。

そこには世界樹の頂上にいるダオス、小鳥、神樹の頂辺にいるエリカを除いた都庁軍の名だたる者達が集まっていた。
地上での狭間率いるDMC狂信者部隊との戦闘が終結した今、残る問題は地下の貴虎達の捕縛のみであった。
既にほむら達が貴虎の捜索に出向いているが、貴虎の戦闘力は未知数でありサクヤによると父である強者ファガンの存在も気配もするとのことでより万全を期すために追加の戦力を地下に送る必要があった。
そのために世界樹の巫女まどかとウォークライ、サクヤは地下に連れて行く仲間と地上に残す仲間を決めていた。

「それじゃあ、メガボスゴドラちゃんについてきてもらおうかな」
「……ゴドー……』
『おいどうしたメガボスゴドラ? 随分やる気がないじゃないか?』

地下にはまどか、ウォークライ、サクヤ、メガボスゴドラが地下に向かうことになった。
皆、都庁同盟軍でもかなりの戦闘力を誇る猛者達である。
特にサクヤは戦闘力のみならず都庁軍に対して誤解を抱いているであろうファガンの説得にも役に立つであろう。
ちなみにメガボスゴドラが若干げんなりしているのは、せっかく手間暇かけて修復した新宿公園辺りを味方によって再び吹っ飛ばされてしまったからである。

「さやかちゃん、フェイ・イェンさん、ラゴンには残ってもらうね」
「本当はついていきたいところだけど……まどかやみんなが決めたなら仕方ないか……」
「私もこんな着ぐるみ来てなきゃ立派に戦えるんだけどなあ……」
「シャアアアアアア」

地上にはさやか、フェイ・イェン、ラゴンが地上に残ることになった。
さやかは戦闘力はなくはないが、それ以上に先の龍脈の龍の攻撃によって世界樹が直接ダメージを受けた際、魔物達の中から少なからず負傷した者が多くでたため、都庁の貴重な回復係として仲間の魔物を癒すべく残る必要があった。
フェイ・イェンは動きにくい着ぐるみのせいで機動力が殺されてため、広大な地下の探索には向かないとのことで地上に残ることになった。
だったら脱げばいいんじゃないかと思ってはいけない。自力では脱げないし、仮に脱げたとしてもロボットである彼女に機械文明を嫌う都庁の魔物が怯えたり、最悪敵意を出して襲いかかってくる可能性もあるからだ。
最後のラゴンは基本的に大人しい生物であるため、戦闘には向かないものとして地上でさやかの手伝いをした方が良いとの判断が下された。

余談だが、ここに登場しない赤竜、カヲル、ラブ、スニゲーターは最初から貴虎捜索班として地下に向かっており、今も地下で貴虎を捜しているか敵と思わしき者達と戦闘をしていると思われる。

地下に向かう者達が決まったところでまどか達はダンジョンの入口の前に立った。

「まどか、今のアンタはあたしより強いのはわかるけど、くれぐれも無茶はしないでね!」
「うん、わかってる。可愛いセルちゃんの面倒を見なきゃいけないのにまだ死ぬ気はないよ。
さやかちゃんは地上の魔物さん達をお願いね」
「ええ、地上の方はあたしに任せてまどか! ……だから貴虎捕まえて絶対に帰ってきなさいよ」
「うん!」

危険な場所へと自ら飛び込んでいく親友のまどかに対して、さやかは彼女の無事な帰還を祈った。
まどかはさやかの気持ちに対して明るい笑顔で答えた。

69都庁に散る:2016/03/17(木) 02:13:59 ID:YNo4ru7o0

『にしゃにしゃにしゃーーー!』
<ああ そこはらめえええええ!
「……」

サクヤは、口をもごもごさせているフォレスト・セルを見やる。
そして、セルの口の中で治療を受けている愛する主人のレストに向けてこう言った。

「……いってきます、レスト様。私も必ず帰ってきますからね」

その言葉は、おそらくセルの中にいるレストには届いていないだろう。
それでもサクヤにはレストには言っておく必要がある、そう思ったのである。


『さあ! 時間が惜しい。
そろそろ出発するぞ! 地上の者達は吉報を待っていてくれ!』

ウォークライの催促により、まどか達一同はダンジョンに入っていった。
そしてまどかの「みんな! 行ってくるね!」という言葉を最後に四者はダンジョンの闇の中へと溶けていった。

◆◆◆

――世界樹地下、中央部。

地上を後にした二人と二匹は、世界樹とリンクしている巫女まどかの誘導に従って貴虎達がいるであろう現場に向かっていた。
世界樹と同盟軍の仲間の被害をより減らすべく奔走するまどか達。

「まどかさん、この方角で合っているのですか?」
「ええ、戦いの気配は地下のあっちこっちにあったみたいだけど、ほとんどが地上の狂信者軍団がやっつけた前後に消えている」
『地下も攻撃を受けたようだが、リーダー格の人間をやられて退却したのか』
「でもほんの数箇所だけ、戦い終わっていないところがあるんだ……そこに貴虎って人がいると思う」

まどかの知覚を頼りに現地に急行する一行。
巫女の示した数箇所こそ、貴虎のいる場所なのだろう。
死闘になると予測される、迫る戦いに一行は身を引き締める。

「ゴドー?」

その最中であった。
メガボスゴドラが何かを感じ取ったのは。

『どうしたメガボスゴドラ?
……なに? 向こうから異臭がするだと?』
「異臭?」

メガボスゴドラが東方向から何やら異臭を感じ取ったらしい。
メガボスゴドラが指を指した方角を一行が見ると、その数10m先には見慣れた影がいくつか見えた。



『まどか……ガハッ!!』
「氷竜さん!? ロックオンさん!?」

東の方角から現れたのは深手を負った氷竜達である。

『氷竜達は確か地下の東部を見張っていたハズ……それがどうしてここに?』
「何があったのでしょうか?」
「ウォークライさん、サクヤさん、メガボスゴドラちゃん、とにかく氷竜さんを助けないと!」

まどか達はすぐに仲間である氷竜とロックオンの元へ駆け寄った。
遠目でわかるだけでも見るからにボロボロで、氷竜は三つある内の一つ・左側の首がちぎれ飛び、ロックオンはバイザーが割れて右目が潰れてしまっている。
……なぜかトリンだけ姿が見えないのが気になるところだったが、すぐにでも手当しないといけないのは明白であった。
まどかは巫女の力を使って急いで氷竜達を治療しようとした。

70都庁に散る:2016/03/17(木) 02:14:27 ID:YNo4ru7o0



「来るな! “奴”はまだ近くにいる!!」
「え!?」



まどか、サクヤ、ウォークライ、メガボスゴドラが氷竜達に駆け寄った瞬間であった。

“何か”が物凄いスピードでまどかを背後から襲いかかってきた。
ちょうどその時、まどかは仲間を治療すべく力を行使しようとしていて、それが致命的な隙となり、奇襲に対応できなかった。
絶大な力を持った世界樹の巫女と言えども、この奇襲を避ける術はなかった……

そして巨大な“何か”によってまどかを貫かんとする。


「危ない! まどかさん!!」
「サクヤさん?!」


何かがまどかを貫かんとする寸前で、奇襲に唯一対応できたサクヤがまどかを庇った。
そして。

「レ、レスト様ッ――」



まどかの身代わりに   サクヤの身が貫かれた。



◆◆◆





「……サクヤ?」




その瞬間。フォレスト・セルの舌による治療を受け続けていたレストの背筋に悪寒が走った。
この場にいないハズのサクヤの悲鳴が聞こえたような気がしたからである……

◆◆◆

71都庁に散る:2016/03/17(木) 02:15:09 ID:YNo4ru7o0

「あ…ああ……」

まどかはただ、目を見開いて愕然とするしかなかった。
動けなくなっていた自分を庇って信頼する仲間の一人、サクヤが巨大な“何か”に体を貫かれたからだ。
仲間達も同様に動揺の色を隠せなかった。

「う……レスト様ッ……」

サクヤ自身も動揺していた。
貫かれた幹部からポタポタと血が地面に落ちる。
そして、内側からグングンとこみ上げてくるもの……激痛、恐怖、絶望。




「こ、この……身と心はレスト様に捧げたかったのに……こんなのって――」




サクヤの瞳の色が絶望に染まり、光を消していった。





「――でも感じちゃうのあぉおおおおおおおお! ふぁあああああ!!」




だが、サクヤが上げた絶叫は、どこか艶っぽい嬌声であった。
その表情は絶望と悦楽を交えた形容しがたいものになっており、悲しみのものとも喜びのものともつかぬ涙を流していた。
愕然としていたまどか達は更に唖然とする。
そして……サクヤの体から巨大な“何か”が外れ、サクヤの身体がボトリッとダンジョンの床に落ちた。

「サ、サクヤさーーーんッ!」

我に返ったまどかは悲鳴をあげる。

『いかん、反撃だ!』
「ボスゴドォォォーーーッ!!」

次に我に返ったウォークライとメガボスゴドラが、サクヤを貫いた“何か”いや“敵”に向けてブレス攻撃とステルスロックでそれぞれ攻撃に移った。
怒りと憎しみを交えた渾身の一撃である。

72都庁に散る:2016/03/17(木) 02:15:34 ID:YNo4ru7o0

「……悪いが、炎はワシには効きが悪いんじゃ、そっちのゴツイのの岩攻撃も威力がまるで足りんな」
『なんだと!?』

だが二匹の渾身の攻撃は“敵”にほとんど通用しなかった。
せいぜい後退させて、地面に倒れているサクヤから引き離すのが関の山であった。

「サクヤさん!」

二匹が“敵”を引きつけている内に、まどかは倒れたサクヤを助けようとする。
しかし……それは手遅れであった。まどかの顔が青ざめる。

「……そんな、し、死んじゃってる……」

この時、サクヤの脳の方は過大な電気信号でも流されたのか、脳細胞が焼ききれていた。完全なる死である。
世界樹の巫女と言えども、死を治療する術はもたなかった。
仮に出来ていたとしても、何らかの理由で死者蘇生ができなくなったこの世界ではサクヤを取り戻す方法は、ない。
聖煌天の麒麟・サクヤはここで果てたのであった……


「ゴドォーーーッ!!」
『おのれェェェ!! よくもサクヤを!!』

かけがえのない仲間の死に怒りに打ち震える、メガボスゴドラとウォークライ。
あまり効かないとわかっていても“敵”に火炎攻撃と岩石攻撃を繰り出す。
そうすると薄暗かったダンジョンが火炎の残り火によって明るくなっていき、視界不良で見えづらかった“敵”の全景が見えた。
サクヤを殺害した“敵”の正体、それは














           /´ ̄`ヽ            , --、
          /  人   l             /    \
        / /爻ヽ  ヽ      , ---、 | く⌒ヽ ヽ , -─‐-、
        { /∠⌒ヽ }  }       / ,--、ヾ> ヽ } レ'  , ---、 ヽ    ____,
        レ'彡イ {Uj }ヾミイ       {  \ } }|  V /  /     `! |  t´r'⌒
    ⌒)ノ  |  ドこzン八三}     ,ィ\/⌒ヾ ̄ヾノ_ノ  ァ'-─-、 ゞL__,〃
     (ソ⌒ヽ! ト--イ ⌒__,ハ  ,ィシvく}了ミy'´7´l}_, -‐┴-、   `ヽ  ̄ ′
      レ)   ! ト--イ (  ノ `ーべ⌒ヽ>y' 〃, -┴┴ミ、_}_}_}_j ヽ⌒) j
      ヽ)、___,>、ト--イ ))〈     ト㍉チrく    // ̄ヽ、_) / /  _..._
  '⌒>‐ミ、 \)こZヾ--ヘ{{ l|  y' ゝ ヾミ゙)'}|≧>、 / /バ⌒ヽn V/ 〃⌒ヽ
  (⌒ヾ>ニKド、⌒Yく_/ヽj} 人_ゝ__>==1 r彡"´/ / | |   /y'}[__//    `     「我、参上!」
    ,ィ  ゙̄Vソ,イノ \__ム丁了)ノr'ン´フノ ィ彡/| | ヽヽ. // ヽVソ´
   / / r‐ヘ `Y {    [二[| ,勹77´ ̄ シ三彡'/| |\ ヽV/ミ、_} Kミ、
  { {   トZべ.」 |   [三}〒ラ77 (_)(_) r三/ / | |> \f⌒l/l | L }
 ヾl |  l三ィ∧ l __. [三}⊥.イ工===ァべ/ /,ィ| |/>l{ l>}X.| |゙)レ′
  ヾ, ヽ  {三N>} Y二ヽ」ニ/l⌒ヾ´  /  {O}___」 |/rくゝ _ソ\l |(
   >、 \ 缶jfハ >n' fy' l ⌒y} //⌒\/rヘ l/ /7㌦\j j
  /∧>、_/フイ/7-Vきy'/1 |(⌒)|}./|ト、   \j.ハ ヽ. //) l| //
  !{ニ///,イ///∠7/Zl{ |ィ^トl|\.j| ノへ.____}へ. V/´ ヽV./
  ゞ〃'Tヽ 〃´ ̄ ̄〃⌒l  VハVj  }ソ       ヽ \  //
  ケミ三彡"     /   ゝ ゞ= 'ノ二/         \ ゝ" /


5期を代表する大量殺戮マーダー ご立派様 もとい マーラ様のご顕現である!!

73都庁に散る:2016/03/17(木) 02:16:29 ID:YNo4ru7o0


「キャッ!!」
「ゴ」
『くッ……なんて大きさだ、巨根と言われた俺よりも遥かに大きいぞ!』


そのご立派にどストレートすぎる姿に、まどかは顔を真っ赤にして思わず両手で目を覆った。セルのような異形を可愛いと言ったまどかでもコレは流石に無理らしい。
メガボスゴドラはドン引きし、ウォークライは思わず息を飲んで悔しさを覚えた。

そんな仲間達に氷竜とロックオンはツッコミと警告を発した。

『気をつけろみんな! 特にウォークライは悔しがっている場合かァーーーーー!』
「ふざけた見てくれにだまされるな! こいつは恐ろしく強ぇぞ!
俺達はこいつ一匹にボコボコにされてやむを得ず東部からここまで撤退させられた!」
『撤退の途中でキョウリュウシルバー……賢神トリンも殺された』
「そんな! トリンさんまで……」

氷竜達の口から伝えられた賢神トリンの死にまどか達は更にショックを受ける。

「クソッ…トリンのあんな死に様なんて見たくなかったぜ……」


◆◆◆

撤退途中でマーラ様に捕まり、餌食となったキョウリュウシルバーことトリンの最期↓

「ロックオン……すまないが私はここまでだ。
世界の平和と、空蝉丸の仇討ちは他の皆に任せたぞ」
「トリーーーンッ!!」
「……しかし、このご立派なモノにズボズボやられてるとブレイブとかどうでもよくな……アーッ!!」
「トリーーーンッ!!(ドン引き)」

◆◆◆

『言え! 貴様は何者だ!
貴虎の仲間か? それともDMC狂信者か!
何者であれ、仲間を傷つけ殺した貴様を許す気は毛頭ないがな!!』

仲間を辱めて殺したマーラ様に対し、ウォークライは烈火の如く怒りの咆哮を放つ。
常人なら失禁もしくは失神しかねないほど迫力であった。
だが、その気迫を前にしてもマーラ様は、眉一つ微動だにすることなく、質問に淡々と答える。

「貴虎? 誰じゃそれは?
それと惜しいが、ワシはまだ狂信者に協力こそしておるが、狂信者集団には入団してはおらん」
『なに?』
「ウィツァルネミテア……DMC狂信者のリーダーじゃな。
そやつがワシDMC狂信者に入るために条件をつけてきたんじゃ」

DMC狂信者は基本的にクラウザーさんを信仰しているなら誰でも入団を許可するような組織だが、ビッグサイトにて大神ウィツァルネミテアもとい池上彰ボイスの翼人ディーはマーラ様にだけ入団するための特別条件を出していた。

「都庁の軍勢もしくはそれに連なる、名だたる者達の首を五つ持って来いだそうだ」

都庁同盟軍の名だたるもの五名の死。
それがディーがマーラ様に課した入団の条件であった。
ちなみにマーラ様が貴虎を知らないのは、貴虎の持っているN2爆弾で地下から世界樹を吹き飛ばす計画をディーが知らせてないからである。
実はマーラ様の目的がクラウザーさんを掘ることだと気づいたディーが、マーラ様には都庁同盟軍の戦力を削りつつ爆弾の大爆発で死んでもらうために鉄砲玉として利用するための方便として世界樹地下に必要な情報を隠して送り込んだ……のかもしない。

「既に二人殺したから、ワシが入団するにはあと三人絶頂させる必要があるワケじゃな」
「貴様……ッ!!」

マーラ様は先に殺したトリンの生首(アヘ顔)を馬車から取り出して、まどか達に見せびらかした
普段は冷静なロックオンすら怒りを覚えていた。無論、その怒りは他の同盟軍の者達も同じである。
そして。

74都庁に散る:2016/03/17(木) 02:17:05 ID:YNo4ru7o0

「許さない……!」

あの温厚なまどかさえも、強い怒気を放っていた。
仲間の純潔を奪い殺したマーラ様への怒り、何より仲間に助けられ、仲間を助けられなかった自分への怒りが、彼女の力を増大させていた。
怒りによる膨大な魔力によって、足場周辺がひび割れ、埃や砂、小石が宙を舞う。
その様子も見て、マーラ様は何かに気づいたように。

「……なるほどのぉ、『巫女』になり得る魔力を秘めた器の一人か」
「?」
「いや、なんでもない。忘れてくれ。
ふむ、どうやらお主はこの中で一番強いようだのう」

マーラ様の言ったとおり、まどかはこの一行において最強の戦力であることには間違いなかった。
世界樹の巫女と化したことによって得られた膨大な魔力は、ウォークライ、メガボスゴドラ、氷竜、キョウリュウブラックを圧倒できるものであろう。

「……いくよ、みんな!」
『サクヤとトリンへの弔い合戦だ!』
「ボスゴドーラッ!!」

そして最高戦力であるまどかを筆頭に、彼女の点呼に応じて一行は攻撃態勢に入った。
マーラ様への、総攻撃が放たれる。





「だが、まだ青いの」
「……な、早い!?」

まどか達の総攻撃を、マーラ様はスイスイと躱し、一行に急接近した。

そして、ぶちりッと何かが引きちぎられる音とともに、鮮血が周囲を染め上げた。
誰の血だ?
まどかか、ウォークライか、メガボスゴドラか、氷竜か、ロックオンか。
いや、その五者の誰でもなかった。

マーラ様はサクヤの生首をその手に握っており、残されたサクヤの骸の方からは首から先がなくなっていた。

「これで首は二つ目、残り三つじゃなあ」
「サクヤさんをよくも……」

サクヤの死体から首をもぎ取ったマーラ様の残酷な所業に更なる憤りを覚えるまどか。
だが、それ以上に留意する点が一行にはあった。

『それより、なんて速さなんだ?! まともに捕捉できなかった……』

驚くウォークライにマーラ様は答える。

「ああ、血と汗と精が滲むような修行の成果じゃよ。魔界でのな」


しばらくカオスロワにそのご立派な姿を見せていなかったマーラ様は、この10期に登場するまでに遊んでいたわけではない。
魔界に帰り、修行していたのである。
時にはイチローのレーザービームに敗れ、時には南春香に絞り尽くされて、ペルソナになったりもしたが、マーラ様はこのままではダメだと思い奮起し、ずっと魔界に籠って修行していたのだ。
結果、HPもMPも力も体力も速さも魔力も運も、硬さも持続時間も白濁液の濃さや量も相手を喜ばせて殺すテクニックも全てが格段にパワーアップしていた。
能力値はだいたいカンスト、もしくはそれ以上の能力値をたたき出しているかもしれないほど、強くなっていた。
更にマーラ様は女神転生シリーズによっては氷竜のアイスシールドのようなガードを無効化するたたり生唾やメギドラ、物理攻撃を反射するテトラカーン、炎系最強技マララギダイン、強化魔法をリセットするデカジャ、その他地獄突きなどの強力な技を持っていたり、間違いなくロワ全体で見ても強者の部類であろう。
実際、攻撃力だけでもレストの魔物と化していることで装備の恩恵によって被ダメージ半減の能力を持っていたのサクヤさえ、背後からだったとはいえ一撃で仕留めてしまった点から察するに絶大なものであろう。
その実力は世界樹の巫女まどかでさえ油断すればすぐに餌食となるだろう。


制限能力のある首輪は?→マーラ様の放つヌルヌルの液体(カウパー腺液という)によって途中で外れてしまった。

「どうした? そそり立つワシを前にして怖気づいたか?」
「……」


マーラ様の戦闘力は地上で暴れまわった狭間、そして味方であるダオスかレスト並、もしくはそれ以上かもしれない、その事実にまどか達は戦慄する。
こちらはまどかを除けば放つ攻撃がほとんど効果を見せないウォークライとメガボスゴドラ、手負いの氷竜とロックオン。
都庁で最強クラスの力を持つセル、ダオス、レストは救援に回れない。
更にマーラ様の後には貴虎も控えている。
正直に言えば部が悪いと言えよう。

75都庁に散る:2016/03/17(木) 02:17:37 ID:YNo4ru7o0

しかし……

「それでも、私は逃げない!
ここであなたを逃がしたら、都庁の皆の誰かが死ぬ。そんなの私が許せない!」

ここで退けば、マーラ様は都庁の深部に入り込んで多大な被害を及ぼすだろう。
被害が拡大した分だけ貴虎は都庁に近づきやすくなり、世界樹は爆弾によって壊滅する。
それを阻止するためにもまどかは恐れを振り払い、勇気を持って戦う必要があった。

「ゴドラ!!」
『そうだ! どんな強敵が相手でも我々は逃げはしないぞ!』
『頭部が一つ潰されたが……まだいける!』
「俺も、右目の一個くらいで怯みやしねえぞ」

まどかの勇気に鼓舞されるが如く、四人の戦士達も立ち上がった。

「死んでいったトリンさんやサクヤさんのためにも、あなたはここで倒す!」
「いいだろう、その勇気に敬意と愛液を込めて、全力を持ってワシのテクニックで昇天させてやろう!」


死闘、開幕。

都庁地下に現れた驚異、ご立派な邪神マーラにまどか達は打ち勝つことができるのか?


【二日目・10時00分/東京都・世界樹地下中央部】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(小)、世界樹の巫女、左脚に怪我、激しい怒り
【装備】世界樹の衣
【道具】支給品一式 その他不明、モンスターボール(フォレスト・セル)
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:マーラを倒す
1:マーラを倒し次第、貴虎を探す
2:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
3:サクヤさん……
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮と同じスキルが使用可能です


【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【状態】疲労(小)、首輪解除、攻撃力1.5倍、被ダメージ半減
【装備】無し
【道具】支給品一式、余った真竜ニアラ
【思考】
基本:世界樹の防衛
0:マーラを倒す
1:マーラを倒し次第、貴虎を探す
2:レストを信頼
3:サクヤをよくも!
4:俺を超える巨根など認めるものかあ!!
※レスト直属の魔物のため、装備の恩恵によりステータスが上がっています


【メガボスゴドラ@ポケモン】
【状態】疲労(小)
【装備】不明
【道具】支給品一式、大量の土と樹
【思考】
基本:ダオスに着いていく
0:マーラを倒す
1:マーラを倒し次第、貴虎を探す
2:縄張り以外でも自然環境を破壊する奴は容赦なく頭突く
3:ダオス達のサポートを行う
4:せっかく植林したのに何度も壊すのはやめれ(切実)
※現段階で判明している所持技はアイアンヘッドとステルスロック。その他不名


【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、左側の首喪失
【装備】無し
【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:都庁同盟軍と共に生き残る。DMC信者は殺す
0:マーラを倒す
1:マーラを倒し次第、貴虎を探す
2:鹿目まどかは必ず守る
※一定の魔力を有する相手であれば、テレパシーで会話可能



【ロックオン・ストラトス@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、右目失明、弾丸の勇者
【装備】ハロ×2@ガンダムOO、ガブリボルバー、ガブリカリバー
【道具】支給品一式、ドラグノフ狙撃銃@現実、獣電池(パラサガン)×6
【思考】 基本:都庁同盟軍の仲間として殺し合いを止める
0:マーラを倒す
1:マーラを倒し次第、貴虎を探す
2:トリン……アンタのブレイブは引き継ぐ!
※キョウリュウジャーとして認められました。キョウリュウブラックに変身可能となり、竜と話せます。


【賢神トリン@獣電戦隊キョウリュウジャー 死亡確認】
【聖煌天の麒麟・サクヤ@パズドラ 死亡確認】

76都庁に散る:2016/03/17(木) 02:18:18 ID:YNo4ru7o0


【マーラ様@女神転生シリーズ】
【状態】とっても健康、首輪解除
【装備】己のご立派様
【道具】支給品一式、トリンの生首、サクヤの生首
【思考】
0:まどか達を昇天させる
1:DMC狂信者入りして男女種族問わずヤりまくる
2:復活したクラウザーさんともヤる
3:誰かが混沌の神を召喚した様じゃの…まあいい
※ディーによってDMC入団のための特別条件・都庁の名だたる者の首を五つ集める(残り3つ)を課されました
※貴虎が世界樹を爆破しようとしていることを知りません
※魔界で修行した結果、ものすごく強くなっています


【二日目・10時00分/東京都・世界樹地上部分】

【フォレスト・セル@新・世界樹の迷宮】
【状態】上機嫌、小ダメージ(再生中)ポケモン状態、首輪解除、神樹とドッキング中
【装備】不明
【道具】不明
【思考】基本思考: マドカ マイ ゴッデス 
0:まどかの命令通り、レストを舐めまわして治療する
※巫女の祈りにより、固定思考の呪縛から解放されました
※体質により、テラカオス化ナノマシンも浄化、その影響も受けません
※他者の穢れなども浄化可能ですが、満腹状態では不可
※まどか以外には何を言っているか理解できませんが、まどかの手で言葉を教えることはできるようです
※常人にはセルの表情変化はわかりません


【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】中ダメージ(再生中)、中魔力消費、精神大ダメージ、各種超耐性、テラカオス化治療中、エーテルリンク中、首輪解除 【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント
【道具】支給品一式、不明品、封じられた闇核
【思考】
基本:都庁同盟軍を守りつつ星の自然環境改善
0:サクヤ……?
1:影薄三人と同盟軍の味方は助ける
2:謎の物質への対抗策を早く見つけたい
3:機械っぽい外見の奴とDMC信者は問答無用で潰す
4:鬼灯を警戒。協力はするが、狸組も一応警戒
5:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
6:天魔王軍とDMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
7:能力低下攻撃への対抗策を手に入れたい
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※候補者の一人となりました。現在はその肉体と竜の力でテラカオスの力を制御していますが、なんらかの要因で抑えきれなくなる可能性もあります
※進行を抑えているため、テラカオス化が進むことによる新たな能力取得はできません
※治療が済むまで(セルが満足するまで)自力で外に出ることができません
※サクヤの死を直感で感じ取りました


【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ
【道具】基本支給品一式、不明支給品
【思考】基本:マミさんの為にも、殺し合いを止める。
0:負傷した魔物の手当をする
1:まどかを守る
2:都庁同盟軍の仲間なら魔物でもいちおう信頼する
3:天魔王軍とDMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
4:本当はまどかについていきたいけど……
※8期、9期とは関係ありません
※放送の内容をラブ達から聞きましたが、上条恭介の死を知りません
※フェイ・イェンの話より天魔王軍の存在を知り、都庁の軍勢への誤解が解けました
※フォレスト・セルがいる限り汚れを浄化できるため、ソウルジェムに汚れがたまりません


【フェイ・イェンHD@スーパーロボット大戦UX】
【状態】ダメージなし、等身大、ミクジャナイヨーフェイダヨー
【装備】ジェイド・フォーキー 、ミクダヨーさんの着ぐるみ@現実
【道具】支給品一式、ドラムセット、獣電池(トバスピノ) 、ガブリチェンジャー、ザンダーサンダー 、獣電池(プテラゴードン×2)
【思考】基本:都庁の仲間と共に殺し合いを止める
1:ラゴンと共にさやかを手伝う
2:アニキたちの身の安全が心配
3:アニキと共に自分の歌をみんなに届ける
4:死んだ『あの子』のためにも必ず殺し合いを終わらせる
5:SATSUGAIとか言ってる人達は必ず止める
6:あの歌は一体……?
7:この着ぐるみ、諸事情で脱ぎたくとも脱げないです!
※アニキの持ち歌はほぼマスター済みです
※獣電池にブレイブインできるかは不明です
※キルコたちや天魔王軍に死んだものと誤解されています
※都庁軍を偽る天魔王軍の存在に気づきました
※獣電池から太古の祈り歌を聞きました。半覚醒なのでまだ1番までしか聞けません。
※さやかの治癒魔法で傷を回復させました

77都庁に散る:2016/03/17(木) 02:18:40 ID:YNo4ru7o0


【海底原人ラゴン@ウルトラQ】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、メカ救急箱@ドラえもん、冷凍マグロ
【思考】基本:シャアア!
1:フェイと共にさやかを手伝う
2:いい歌が聞きたい
※雌です

78悪夢のゴリッパーティ:2016/03/18(金) 23:46:59 ID:TrESMWm60
東京都庁の地下に広がる、かつての世界樹の名残たる真朱ノ窟。
生物の体内を彷彿とさせるような、おどろおどろしい広大な迷宮。
それは地下へと蓄積され続けた長年の穢れが原因だ。
そんな迷宮に、新たな穢れが生まれ続けていた。
その穢れの名は――猛毒――

「うおぇっぷ、ですぞwwwwwwww」
「くっ……!」

霞龍オオナズチの口から、汚らしい猛毒が吐き出される。
それを寸でのところでかわすのは、仮面ライダー斬月。

「……」

その回避場所に冷静に弾丸を撃ち込むのは、魔法少女のほむらだ。

真朱ノ窟にて発生した、世界樹を守ろうとする者と破壊しようとする者の戦い。
その戦いはもう、1時間以上にも及んでいた。

「はぁっ!」

斬月の持つ弓から超速で放たれる矢が、撃ち込まれる弾丸のほとんどを叩き落とす。
撃ち落としそびれても、弓を剣のように振るって弾き飛ばす。

(この距離でも反応できるというの!?)

仮面ライダー斬月こと、呉島貴虎の戦闘能力は驚異的なものであった。
ライダーとしての強化を抜きにして、呉島貴虎という男が持つそもそもの耐久力と反応速度が明らかに人間の域を超えている。
崖から叩き落とそうが、海の底に沈めてやろうが死にそうな感じがまるでしない。
魔法少女となり、純粋な人間ではなくなったほむらさえもが、そう評価せざるを得なかった。

「ぴきー!」
「いつまで、ちょこまかと動くつもりだ! 漢なら拳で勝負をせんかぁ!」

そして貴虎が引き連れていた魔物もまた強者揃いであった。
弱そうな外見ながら驚異的なスピードで灼熱の炎を吐くスライムと、光の闘気を纏った双拳を振るう黄龍。
そしておそらく、この攻撃をかわした先には究極邪龍とグレイトドラゴンのブレスが待ち構えているのだろう。

――カシャン――

その瞬間、世界の時は止まった。ほむらが持つ魔法、時間停止だ。

「オオナズチ、ステルスの用意。霧ももう一度張り巡らせなさい」
「いい加減しんどくなってきたんですぞwwwww
 というか、なんであのメロンはステルス+時間停止からの弾幕射撃を捌けるのか理解不能wwwwwww」

戦力的に劣るほむら達がここまで斬月達を相手に戦うことができたのは、二人の能力によるところが大きい。
時間停止と完全ステルス。凶悪な組み合わせであり、本来であれば敵対者は何がおきたか理解できぬままに死ぬ筈なのだが。
先にも言った通り、とにかく斬月が謎の超反応をしてきて仕留めきれないのである。
ほむらの武器は魔力強化が付与されたとはいえ通常火器、オオナズチの攻撃もいやらしいが一撃必殺の大技は所持していない。
せめてもう一人、誰か火力担当がいればこうはならなかっただろう。

79ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:47:54 ID:TrESMWm60
「今ので分隊支援火器の弾も底をついたわ。これ以上となると……」

既に拳銃弾は残りわずか。散弾も撃ち尽くし、今の攻撃で分隊支援火器まで打ち止めとなってしまった。
ほむらは知る由もないが、彼女の強化された弾丸が決定打足りえないのにも実は理由がある。
究極邪龍が常時展開しているという防壁だ。ヘルヘイムの持つその能力は、闇属性ダメージの半減の効果を持つ。
パズドラ界隈においては服や髪の色で大体の属性が決定づけられているようであり、黒と紫を基調としたほむらは彼の中で闇属性認定をされている。
つまり放つ攻撃が全て半減されていたのである。

「――こいつしかないわね」
「迫撃砲wwwwwwこんなところで撃って大丈夫なんですかなwwwwwwww」
「これが駄目なら対艦ミサイルしか残ってないのよ」

流石に世界樹の地下で対艦ミサイルを撃とうものなら、まどかにダメージが行ってしまう。
仮にまどかが無事でも、ダオス達からは激怒されるのは想像に容易い。
5門の迫撃砲は、現状でほむらが行使可能な最大火力というわけだ。

「……やはり、待ち伏せていたわね」

時間停止の中で少し移動すれば、柱の陰には究極邪龍とグレイトドラゴンがやはり大口を開けて待ち構えていた。
あの場で時間停止を使わず回避行動をとっていれば、確実に二匹のブレスの餌食となっていただろう。

「狙いは、外さない。外すわけにはいかないのよ」

そう言ってほむらの迫撃砲が狙うのは、二匹のドラゴンの口の中だ。
幸いにして、ブレスの構えに入っている二匹の口は大きく開かれている。


――そして時は動き出す――


「ゴッドヘルブレ――!?」「グォウウ!?」

直後、ブレスの発射よりも早く、ドラゴンの口内で迫撃砲は炸裂した。
防壁があるとはいえ、流石に口内、つまりは体内側からの爆破はいかなドラゴンといえども耐えられるものではない。
爆風と共に血と肉片を撒き散らせて、二匹のドラゴンは真朱ノ窟を彩る朱の一部となった。

【究極邪龍・ヘルヘイム@パズドラ】
【シーザー@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】

それぞれL16 81mm迫撃砲の爆撃により、死亡

80ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:48:37 ID:TrESMWm60
「何っ!?」
「ぴ、ぴきぃぃぃぃぃぃぃ!?」
「おのれぃ!?」

オオナズチが発生させた濃霧の中でも、ヘルヘイムとシーザーの死を残された斬月達は理解した。
それと同時に、さらなる怒りが沸き起こる。
特に純粋であり、仲間の死を誰よりも嫌うスラリンの怒りは凄まじい。

「ぴきぴきぴきぴきぴきぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!」

濃霧を吹き飛ばすように、でたらめに灼熱の炎を吐きまくる。
敵の姿を頻繁に見失うのであれば、隠れられる場所も自分たちの周囲も何もかも焼き尽くしてしまえばいい。

「くぅぅぅ!?」

スラリンのがむしゃらなその戦い方はある種で正解であった。
いくら時止めステルスが使えるほむら達であっても、今現在はこの階層から移動が出来ない状態。
逃げ隠れする場所を潰し、全方位を焼き払えばいつかは炎は命中する。
悲しいことに、仲間の数が減ってしまったことが、無差別攻撃とも言えるそれを可能としたのだ。

「ぐふ……炎弱点でサーセンですぞ……」
「オオナズチ!?」

そして、ほむらは盾に魔力を集中させることでワルプルギスの夜の放つ火炎弾を防ぐだけの防御能力を持つが、オオナズチはそうもいかない。
どころか、霞龍オオナズチにとって炎は最も苦手とする属性なのだ。

「そこかっ!」
「うぐ!?」

そしてダメージにより動きが鈍ったオオナズチとほむらに、斬月の容赦のない射撃が飛んでくる。
霧が晴れれば、黄龍の拳も飛んでくるだろう。

(ああ……世界樹が、燃えていく……)

射抜かれた肩を押さえながら、ほむらは目の前の光景を眺めていた。
ほむらにとっては、まだ世界樹への思い入れなど無いに等しい。
だが、ここの魔物達の反応、それに大気の浄化のためにも欠かせないものだということは理解した。
そしてそれよりなにより――まどかの願い。
彼女は祈りにより世界樹の巫女となった。人と魔物を繋ぐ巫女の力は、魔法少女に近しいものがあった。
もし、魔法少女と同じように、ソウルジェムと同じような存在があるのだとすれば。
それはきっと――この世界樹だろう。

「ま、まどかっ……」

立ち上がらねば。そう思えども、もはやほむらにはどうすることもできなかった。
武器は底を尽き、オオナズチも既に瀕死の状態。
この階層に住んでいた魔物達も、主戦力である免疫細胞と蟹のほとんどが殺害されていては増援としては期待できないだろう。
せめて、地上に逃げることができれば。あるいは、地上からの援軍が来てくれたならば。
だが少し前に発生した大地震。それの落盤によりダンジョンの構造は変化してしまい、階段も埋もれてしまった。
この事件さえなければ、こんな事態にはならなかっただろうにと、ほむらは歯を噛みしめる。

81ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:49:11 ID:TrESMWm60
せめて最後に一矢報いる――対艦ミサイルをぶつけるという最終手段はあるにはある。
だが万が一これを失敗すると、よくて自分自身が世界樹崩壊を招いたテロリスト。最悪の場合は最愛のまどかを殺した女となってしまう。



「また爆音が聞こえてきたぞ。どうやら近いらしいな」
「今、助けに行くゼーット!」


そんな考えすら打ち砕くような、絶望の声がほむらの耳に届く。

(そん、な……ここにきて、相手側に増援ですって……)

これでは対艦ミサイル一発で全員を仕留めることは難しい。声の聞こえた方向は斬月とは別のものだからだ。
そしてその声は都庁の魔物でもなければ、同盟を組んでいる仲間のものでもない。つまりは――敵だ。

「む、新手のインベスか!?」
(だからインベスってなんなのよ?)

少々相手側の反応もおかしいが、増援が顔も知らないDMC連中であればその反応はわからないでもない。
また呟いたインベスという単語が気になりはするが、既にほむらの心は折られかけ、心の中でツッコミをいれるのが精いっぱい。

「だが、どれだけのインベスが来ようと、私は立ち止まるわけにはいかない!」

そんなほむらに対して、斬月の弓が向けられる。
メタルシザースの群れをまとめて貫いた、ソニックボレーの構えだ。

(ごめんなさい……まどか……)

収束していくエネルギーを見、ほむらは己の最期を知る。


「あ、あれは!?」


最後に耳に届いたのは、何故か聞いたことのない女性のものであった。

82ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:49:41 ID:TrESMWm60
「ちょ、ちょっと待ったぁ!?」
「ぬおっ!?」

女性の一喝。
直後呉島主任に、オリハルコンのトンファーブレードが振り下ろされる。
主任は辛くもこれを回避するが、事態の混乱はさらに加速することとなった。

「こ、こんな小さな女の子に弓を向けるとか何考えているんですか!?」
「むぅ、なんという凶暴な女だ!? やはり人型は全てインベスで、私を惑わそうという魂胆か!?」
「会話が噛み合わない……つまり奴は、間違いなくDMC信者だ!  工 作 し て や る  ! 」

新たな仮面ライダーと婦警が斬月を警戒しにかかる。
この乱入者達こそ、DMC信者や主任組とはまた違った理由から都庁へと潜入しようとしていた警察組である。
何も知らない彼らが見れば、斬月の行為はぼろぼろの中学生に弓引く変質者だ。
ちょっと普通ではないが、婦警のキルコからすれば止めざるを得ないし、ゴロリからすればいかれた殺人者は全てDMC信者=殺すの方程式が完成している。

「これは、どういうことなんだゼーット!?」
「まきょ〜……」

比較的常識人な残りの仲間達は、二人のように斬月に襲い掛かるような真似はせず、状況の把握を急ぐ。
とりあえずわかっているのは、ここが都庁の地下、魔物の巣窟であるという点だ。

「なるほど、わからん」

そしてチェイスは最終的にその結論に達した。
そもそも何故こんなやばいダンジョンに中学生がいて、かつ魔物同士で争っているのか?
状況から判断するに、ぼろぼろの中学生とブサイクは仲間なのだろう。
それに対して弓をひくメロンとちいさなプルプルもやはり仲間なのだろう。
双方ともに、魔物を仲間として引き連れているということは、つまりどういうことなのか。
情報があまりにも少ない。そもそも都庁の地下がダンジョンになっていることからして予想外な事態だったのだ。
ここは冷静になって状況を整理しないと、何か取り返しのつかないことをしでかしてしまうのではないかと――




―――ふぁあああああ!!



「「?!」」

そんな緊張感ただよう空気の中、場違いな少女の嬌声がどこからともなく響いてきた。

「サクヤッ!?」

そんな中、黄龍ファガンだけはそれが娘の断末魔であることを瞬時に理解した。

「いま、パパが助けにいくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ――――ッ!」

そして理解と同時に、凄まじい脚力で悲鳴が聞こえてきた方角へ駆け出していく。
彼の頭には既に娘の事しか頭になく、もはやオオナズチとほむら、新たな第三勢力のことなど二の次だ。

「待て、ファガン! インベスだらけのこの場で単独行動は危険だ!」
「あ、待ちなさい! まだこの子になんで弓を……こらー!」
「逃さんぞ、DMC信者め!」

そしてファガンが駆け出すと同時に、主任も駆け出す。
主任が駆け出すと同時に、警察組もその後を追う。

「なにがなんだかわからないけど……助かったのかしら……」
「んんwwwwしかし先程のエロボイスはあの時もっと堪能したかったキリン娘のものですぞwwwwwww……あちらもピンチの可能性wwww」

そして混乱の現場の中で奇跡的に一命をとりとめたほむら達すら、その後を追わざるを得なかった。
先程の悲鳴は仲間のもの。あのメロン達を向かわせては、さらなる被害がでてしまうことだろう。




――そして――

83ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:51:38 ID:TrESMWm60
ファガンを追った主任とスラリン

それを追った警察組

さらにそれを追ったほむらとオオナズチ


彼ら彼女らが目にした、驚きの光景とは……





「オシリ負けひゃうぅうぅぅぅっ♥♥♥ ドラゴンアナ○らめになっちゃうぅううっ♥♥♥」
 悪魔チ○ポの味覚えさせられて……しゅきになっちゃうのほぉぉぉおっ♥♥♥
 も、もうどうしようもなくしゅきなんれすううっ♥♥♥ 悪魔○ンポらいこうぶつなんれすうぅうっ♥♥♥
 娘なんてもうどうでもいいぃぃぃ♥♥♥ ワシをこの極太チン○で肉便○にしへぇぇぇぇぇぇぇ♥♥♥」



白目を剥いて全身を何かしらの液体でぐっちゃぐちゃに汚しアへった、聖獣――否、性獣黄龍の姿であった。

「ふむ、ワシの一撃に耐えるまではみごとじゃが、所詮はそこまでよのぉ」

下手人は勿論ご立派――マーラ様だ。
ファガンとて最強の聖獣、彼は娘の生首を弄ぶマーラ様の姿を見つけるやいなや果敢に挑んだ。
しかし圧倒的な素早さにより背後に回り込まれ、一突き。これを食いしばって耐えたが、そこからが本当の地獄であった。
魔界仕込みのマーラ様の超速高等テクニックは、一瞬にしてファガンの心さえも凌辱し、肉欲に狂うケダモノに作り替えてしまったのだ。

「――――」
「――――」

そして犠牲者はファガンだけではない。
人の生首で遊び他者を凌辱するという悪魔のような所業(悪魔なのだが)を見たゴロリもまた激昂し、マーラ様に挑んだのである。
かつてDMC信者に、敬愛するワクワクさんの死体を辱められたゴロリにとっては、見過ごすことができなかったのだろう。
無謀に突っ込むゴロリを止めようとチェイスが止めに入ったが……
哀れ、二人もご立派様の餌食となってしまっただけでは飽き足らず、お互いを69の体勢で固定された状態で殺害されたのだ。
これ以上ない、屈辱的な死に方だろう。

「アヘェ――」

そしてその上に、白濁液で染まりきったファガンがついにこときれて覆いかぶさるように落下した。


【ゴロリ@つくってあそぼ】
【チェイス@仮面ライダードライブ】

それぞれマーラ様の一撃により、絶頂死

84ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:52:37 ID:TrESMWm60
しかしその時、ファガンの穴からぽこっと金色の卵が転がり落ちた。
パズドラ界隈のダンジョン産モンスターは戦闘で敗け、心の底から屈服すると卵をドロップするのだ。
ドロップした卵は、その卵を産んだモンスターと同一の存在ではあるが、別個体として再臨する。それはつまり――

「 フ ァ ガ ン 復 活 ! 覚悟しん ほ お お お お ぉ ぉ お ぉ ぉ ん !?」

――凌辱の再開である。ドロップモンスターはレベルが初期値に戻る時点で、どう足掻いてもマーラ様に勝てるわけがない。

「ん お お お ぉ お ぉ――アヘェ」 ぽこっ 「復活! ひ ぎ ぃ ぃ ぃ ぃ ん !?――アヘェ」

ぽこっ 「なんの、まだま っへぇぇぇぇ♥♥♥ まだゃいっへるのほほほほぉぉぉぉぉ♥♥♥――アヘェ」 ぽこっ

「き、気持ち良くて死んじゃぅぅぅぅ♥♥♥ か、神様ぁ! ア○ルの神様っ! ア、ア○ルしゅごいぃ〜ん♥♥♥」 

ぽこっ――ビクンビクン

ついにマーラ様の超絶技巧がファガンの産卵ループすら上回り、破壊した。
マーラ様の絶技は、もはや生まれる前の状態であっても絶頂を味あわせるほどに極悪なものへと昇華していたのだ。
これはつまり、無限に再生を繰り返すような強者であっても、いつかはマーラ様の前に屈することを意味している。

「なんじゃ、もう終わりか。突然突っ込んできたわりにはあっけなかったのぅ」

【星輝の黄龍帝・ファガン@パズドラ】

超多重絶頂死&完全再起不能

つまらなそうに、とりあえず痙攣する卵を手中に収めるマーラ様。

「やはりこちらの方が――ヤりがいがありそうじゃ」


「な、なんなんだこの醜悪にして凶悪なインベスは……!?」
「ぴきぃぃぃぃ……」
「こ、こんなのって……そんな……」
「まきょぉぉぉ……」
「み、みんな落ち着くんだゼーット!?」

おぞましい嬌声と、マーラ様の超絶技巧を目の当たりにしてしまった生き残りの強者達は恐怖のあまり震えあがる。
見れば、マーラ様の視線の先には桃色の髪の少女と巨大な魔物、それに隻眼の男がいる。
やはり状況がわからないが、魔物が少女を守るように陣形を取っている以上、彼女が都庁に属するものだというのは間違いないだろう。
都庁と敵対するとなると、対主催かDMC信者か?
だが目の前で繰り広げられた仲間の凌辱ショーは、DMCの凶行よりもさらにおぞましい。
なにしろ信者の言うレイ○はつまり相手を殺すことだが、この悪魔がやっていることはまさにガチレ○プそのもの。

「はぁ……はぁ……ま、まどか!?」
「こ、こいつはあのガチホモアカムの奴が神と崇めていた最悪の魔王、マーラですぞ!?やばいってレベルじゃないwwwwww」

遅れてほむらとオオナズチが、それぞれ親友とマーラ様の存在に気がつく。
そうオオナズチの言うとおり、マーラ様は最悪の魔王と言っても過言ではない。まだルシファーの方がましだ。
マーラ様の思考はただひとつ。そこには善も悪も中立も関係ない。人も魔も機械も関係ない。
ただ、ご立派なそれをぶち込む。それだけだ。

あらゆる種族、派閥を巻き込み無差別に行われる魔王の凌辱宴は、まだまだ始まったばかりである。

85ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:53:03 ID:TrESMWm60
【二日目・10時05分/東京都・世界樹地下中央部】

【マーラ様@女神転生シリーズ】
【状態】とっても健康、首輪解除
【装備】己のご立派様
【道具】支給品一式、トリンの生首、サクヤの生首、連結したゴロリとチェイス、ファガンの卵
【思考】
0:まどか達及び主任組、警察組を昇天させる
1:DMC狂信者入りして男女種族問わずヤりまくる
2:復活したクラウザーさんともヤる
3:誰かが混沌の神を召喚した様じゃの…まあいい
4:こいつらは都庁の者じゃないから首をとっても意味はないが、ヤりたいからヤる
※ディーによってDMC入団のための特別条件・都庁の名だたる者の首を五つ集める(残り3つ)を課されました
※貴虎が世界樹を爆破しようとしていることを知りません
※魔界で修行した結果、ものすごく強くなっています
※たとえ相手が再生を繰り返すような不死に近い存在であっても、超絶テクで昇天させることが可能です


【呉島貴虎@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ小、斬月・真に変身中、財布と貯金が素寒貧 混乱
【装備】ゲネシスドライバー、メロンエナジーロックシード
【道具】支給品一式、夕張メロン×55、N2爆弾@新世紀エヴァンゲリオン×3
【思考】基本:人類種を守るため、危険な存在を倒す
0:色々と気になることはあるが、まずはとにかくマーラ様に対処
1:DMC狂信者による二度目の都庁攻撃によって、内部が手薄になっている内に地下から潜入しN2爆弾を起爆させて都庁を吹き飛ばす
2:都庁が破壊できるまではDMC狂信者と組むが、いずれはこちらも滅ぼす
3:パソコンは……今は諦めるしかないか
※都庁の変貌をヘルヘイムの森の侵食だと思っています
※ベジータが所有しているパソコンの本来の持ち主です。パソコン内に何かしらのデータが保存されているかもしれません
※現時点でほむらやキルコなど人間のほとんどをインベスとして誤認しています

【スラリン@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
【状態】ダメージ中、LV99 悲しみと混乱
【装備】無し
【道具】支給品一式、ナイフ
【思考】基本:殺し合いを終わらせる
0:マーラ様に対してミルドラース以上の恐怖を感じている
1:主であるグランバニア国王とその家族と同僚の仲間モンスター達を探し、それ以外の仲間も探す
2:マーダーは可能な限り倒す
3:本能的に強大な何かが都庁の真下に埋まっていることを感じている
※人間の言葉は聞けば理解できますし、(出身世界の)人間の文化や常識も理解できますが、人間の言葉は全く喋れませんし読めません。
※現時点で人間のほとんどをインベスとして誤認しています。主任が考えを変えない限りスラリンも変わりません


【音無キルコ@新米婦警キルコさん】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、強い悲しみと怒り 混乱
【装備】トンファーブレイド(オリハルコン製)
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催を成敗して殺し合いを止める
1:な、なにが起きてるんですか……?
2:都庁軍は必ず倒す、都庁軍と戦える仲間を探す
3:ジバンさんとウッチーさん、フェイ・イェンちゃんの仇は必ず取ります……!
4:ビックサイトのDMC狂信者も気になるが、危険な都庁の魔物を倒すのが先
5:主催者の本拠地を探す
6:ハル先輩達、無事かなぁ?
※オルゴ・デミーラ率いる天魔王軍を都庁軍の一派だと誤解しています
※主任組をマーダーと誤認しています

86ターバンのガキ:2016/03/18(金) 23:53:36 ID:TrESMWm60
【まこちー@ぷちます!】
【状態】ダメージ(小)、とても深い悲しみ  混乱
【装備】きあいのタスキ
【道具】支給品一式
【思考】基本:まきょー
0:感情の処理がおいつかない
1:キルコについていく
2:ウッチー、ジバンさん、緑色のロボットさん(フェイ・イェン)を悼んでいる
3:真とちひゃー、765プロの面々、はるかさんの死に深い悲しみ
4:襲われたら全力で戦う

【水木一郎@現実】
【状態】ダメージ(中)、本調子じゃないゼーット! 混乱
【装備】赤いマフラー、マイク、ライオアタッシュ
【道具】支給品一式
【思考】基本:俺の歌で殺し合いを止めるゼーット!
1:とにかくこいつに対処するゼーット!
2:早く回復したいゼーット! 
※スタンド『ザ・アニキング』を呼び出す事が可能です。
アニキの歴代の持ち歌のヒーロー達をヴィジョンとして呼び出し能力を行使できます。
※まだ本調子ではないため、あまり絶叫しすぎると傷口が開きます。

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ大、混乱
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(穢れ50パーセント)
【道具】支給品一式、ベレッタM92(残弾25)、レミントンM870(残弾0)、ミニミM249(残弾0)、M16クレイモア×10、M84 閃光手榴弾×20、88式地対艦誘導弾、長ドス、ゴルフクラブ
【思考】基本:まどかを守りつつ、主催者を倒す
0:まどか!?
1:貴虎一行も気になるが、まずはマーラ様に対処

【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ大、角破壊 
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたい
1:掘られたくないwwwwwww ……本気で
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います
※マーラ様の情報をアカムトルム経由である程度知っているようです

※眼前にまどか組がいますが、消耗具合は不明

87タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 14:57:47 ID:lrDo9O.A0
世界樹地下で勃発した都庁同盟軍、マーラ様、主任組、警察組の戦いは膠着状態に陥っていた……

「体当たり!!」
「千樹の祈り!!」

マーラ様の体当たりがまどかに迫る。
しかし、体当たり攻撃をまどかは物理攻撃を阻害する魔力の防壁で防いだ。

「むっ……」
「防けた! サイクロンルーツ!!」

反撃にまどかは足技・サイクロンルーツを放つ。

「甘いわ! テトラカーン!!」
「あう!」

だが、技が物理攻撃だったのが災いし、マーラ様の繰り出した物理反射障壁によって跳ね返され、反射した物理ダメージが自分で吹き飛ぶハメになった。
その隙をマーラ様が見逃しはしない。

「いまじゃ! 地獄突き!!」

吹き飛ぶまどかの秘部に向けて照準を合わせたマーラ様のご立派様が、必殺の地獄突きを放たんとする。
この一撃が秘部に直撃すれば最後、ご立派様の絶技の虜になって脳が沸騰して死んでしまう、言わば即死耐性を貫通する即死攻撃も同然である。


「まどかをやらせはしない!!」
「なに!?」

まどかがご立派様に貫かれる寸前で、ほむらが時間停止の魔法を発動。
吹き飛んで無防備状態だったまどかの手を引っ張り、助け出す。
マーラ様の地獄突きは空振りに終わったのだ。

「ほむらちゃん、ありがとう」

危うく終わりかけた貞操と命を救ったほむらにまどかは礼を言う。

「礼は良いわ、まどか。
それよりもあなたは都庁やセルのためにも死ぬわけにはいかないでしょう。
奴は強いわ。不用意な突出は控えて。受けた傷もすぐに回復して」
「うん、わかった。エタニティツリー!」

ほむらの指示を受け、リジェネ回復技であるエタニティツリーで回復するまどか。
それを面白くないように見やるマーラ様は攻撃モーションに入る。

「おのれ、今一歩のところを邪魔してくれたのぅ。
喰らうが良い、メギド――」
『うおおおおおおおおおお!! まどかをやらせるものかああああ!!』
「ぬお!? こやつめ、邪魔を!」

ウォークライのアギトから炎のブレスが吐き出され、マーラ様の魔法攻撃を妨害する。

「ゴッドーラァァァ!!」
「まどかとほむらだけじゃなく、俺達も忘れんなよ!!」
「!?」

畳み掛けるようにメガボスゴドラのストーンエッジとロックオンの銃撃がマーラ様に炸裂する。
マーラ様に与えるダメージはほとんど微々たるものだが、それでも身動きを封じるには十分であった。
そして。

「これはどう? サウザンドネイル!!」
「ぬふうおおお!」

まどかの放った技が今度こそマーラ様に直撃する。
この一撃で与えたダメージはそれほど大きくないものだが、確実に打撃は与えていた。

88タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 14:58:15 ID:lrDo9O.A0




このように都庁側が戦いを膠着状態に持ち込めたのは理由があった。

一つは都庁同盟軍のチームワークにある。
都庁側の戦力はまどかを除いて、ほとんだがマーラ様に対して有効打を待たない者達ばかりだったが、味方同士で助け合い、敵に攻撃を許さない連携によって受ける被害を最小限に留めていた。
これはお互い仲間同士で信頼しあってるからこそできる戦法である。
反対にマーラ様はまどかを含めた都庁側の者達を上回る戦闘力を秘めた魔王だが、多勢に無勢。攻撃も防御もカバーしてくれる味方がいないのである。
せめて最初に東部を守っていた氷竜達のように少人数だったら攻め切れたかもしれないが、今の都庁側の人数は倍以上になっており、マーラ様の攻勢を削ぐには十分であった。

そして、戦いを膠着状態まで持ち込めた理由としてもう1つの理由があった。

「おせおせーwwwなるべく奴に攻撃や回復をさせる隙を作ってはいけないwww!
でも即死系やバットステータス系の攻撃は厳禁ですぞww十中八九効かないか最悪反射されるのがオチですからw」

都庁の面子の中で唯一マーラ様の情報を知っているオオナズチの指揮である。
オオナズチの持っている猛毒などの技ではマーラ様にまともな攻撃を与えられないが、その代わりにマーラ様を神と崇めていたガチホモアカムトルムからマーラ様の技や癖などの情報を持っていたので、透明になって姿を隠しつつ情報面でのカバーに回っていた。

「お互いの下の口とシリアナは絶対に守りあうのですぞww!」

なんともおバカで下品な指示に見えるが、実際にマーラ様は相手にトドメを刺す時はご立派なモノを秘部陰部にブチ込む習性を持っている。
すなわち、味方同士で下の口とシリアナをカバーしあえば、トドメは刺されにくくなるということだ。

そのような理由で戦いは膠着状態になり、ファガン以来ご立派様をブチ込めてないマーラ様を苛立たせた。

「ええい、小賢しいわい! 満足に行為に及べぬわ!」

都庁側としてもマーラ様に与えるダメージはまどかを除いて薄皮を剥がすような程度しか与えられないが、それでも確実にダメージを蓄積させていた。
ダメージを与え続ければやがて勝利は見えてくる……一歩間違えれば押し切られて全滅を招きかねない余談を許せぬ戦況だったが、希望も見える戦況でもあった。


都庁側からすればもっと味方がいればより一層、戦況はこちらに傾くだろう。
誰かがそう願った時、幸運は飛んでやってきた。

「プリキュア・ラブサンシャイン!」
『インフェルノ!』
「こんなの握りたくないが……ティラノ・ハンド!」
「ぬう!?」

突如、西側からハート型の光線と火炎攻撃、その後に巨大な恐竜の腕がマーラ様に襲いかかった。
マーラ様は光線と火炎攻撃は躱すも、恐竜の腕には握られ(ちょっと気持ちいいと思いつつ)すぐに振り払った。
今、西側から放たれた技全てが、全て都庁同盟軍の仲間のものであった。
まどか達が西側を見ると、そこには頼れる四人の仲間達の姿があった。
世界樹地下の西側を守っていた桃園ラブ(キュアピーチ)、偉大なる赤竜、スニゲーター、渚カヲルの到着である。

「ラブちゃん、赤竜さん、スニゲーターさん、カヲルくん!」
「ラブ……救援は嬉しいけど遅いわよ、何してたの」
「ゴメン、ほむほむ。地震でダンジョンの構造が変わっていて迷子になっていたの」
『すまない、だが遅れた分は戦って取り戻す!』

騒ぎを聞きつけ、西から現れた都庁側の援軍。
都庁側の戦力は一気に10人以上にまで増え、都庁軍の勝率は上がったと言え、まどか達に希望を与えた。
これによりマーラ様は苦い顔をしつつも、同時に喜んでもいた。

「ここで数を増やしたか……だが嬉しいぞ!
ヤリがいのある相手が増えたということでもあるからのお!
さあ、皆みんなワシのご立派で愛でてあげよう!」

マーラ様は喜々として、都庁同盟軍の者達に向かっていた。
同盟軍はそれぞれが持つ技や銃などで応戦する。
泥沼の戦いはまだまだ続きそうである……

89タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 14:58:47 ID:lrDo9O.A0



さて、ここにいる勢力は都庁同盟軍とDMC側のマーラ様だけではない。
忘れてはならない集団が2つ。この場にはいるのである。

1つは呉島貴虎とスラリンで構成された主任組である。
とある目的より世界樹爆破を目論む主任組であったが、その主任組は――

『まどかと仲間はやらせはせんぞ!』
「このドラゴン型インベスめ、邪魔をするな!」
「ぴきーーー!」

氷嵐の支配者こと氷竜によって足止めを食らっていた。
氷竜の持つシールドのスキルは攻撃手段が矢と火炎である貴虎とスラリンの攻撃を弾き、なおかつ、氷竜自身が持っている自己再生能力『氷河の再生』によって傷を癒しながら戦うことで長期的な足止め要員にはうってつけだった。
(なお、氷河の再生でマーラ様から受けた傷はだいぶ治ったが、首の再生には時間がかかるのか首はまだ2つだけの模様)

「これではこの場から逃げることもできん!」
『世界樹のためにも貴様をここから逃がしはせん!』

貴虎は都庁の魔物達がマーラ様と戦っているうちに、逃走して別の経路からN2爆弾を仕掛けようとしたが、それを都庁軍に悟られ、貴虎相手にはもっとも相性が良いと思われる氷竜が足止めに入ったのである。
そして主任組はマーラ様を倒した後にでも都庁の残りの戦力で捕縛もしくは殲滅するつもりなのだ。

(まずいぞ……このままでは!)

仮面の下で貴虎は冷や汗を流す。
このまま氷竜による足止めを喰らい続ければ、インベスである(と思っている)マーラ様と都庁同盟軍の勝ったどちらかを相手にしなければいけなくなる。
明らかに自分以上の戦闘力を持つマーラ様、純粋に数が多く厄介なスキル持ちの多い同盟軍。
一方でファガンら戦力を失った主任組の戦力は貴虎とスラリンの一人と一匹のみで、どちらが勝っても敵に回るだけなので面白くない展開であった。
そして自分たちが敗れれば、世界樹を爆弾で吹き飛ばす計画は水の泡になり、世界はヘルヘイムの侵食によって滅びるであろう。そのようなことになるのは貴虎は許せなかった。

(しかし、妙だな……)

氷竜と戦っている一方で貴虎は奇妙なことに気づいていた。



(なぜインベス同士が戦っているんだ?)

貴虎の視点では異形であるマーラ様も同盟軍の者達も全てインベスに見える。
しかし、インベスが仲間同士であるインベスと戦っているのは果たしてどういうことなのだろうか?

(!! そうか、そういうことか!)

ふと、貴虎の頭脳に電気が走る。
なぜインベス同士が争っているのか、その答えがわかった気がしたからである。

その時である。

「氷竜、退けーーーッ!
マーラがそっちにいったぞーーー!!
全力でシリアナを守れーーーwww!!」
『なにッ!?』

オオナズチの警告通り、マーラ様がターゲットを氷竜と主任組に変えて襲いかかってきた。
マーラ様によって既に痛い目に遭わされている氷竜は貴虎の足止めを一時中断して撤退。
――そして、残された主任組の前にマーラ様が突撃してきた。

「蚊帳の外というのも寂しかろう!
おまえたちも宴を楽しもうではないか!」
「ぴきぃーーー!!?」
「……」

眼前に迫る最凶の魔王マーラ様。
思わず泣き叫ぶスラリンと沈黙する貴虎、一人と一匹はどうなるのか?!

90タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 14:59:58 ID:lrDo9O.A0




マーラ様、都庁同盟軍、主任組が戦闘をしている一方。
音無キルコ、まこちー、水木一郎の警察組三人は岩陰に隠れて戦闘を傍観していた。

「いったい全体、何がどうなってるんでしょうか!」
「まきょー……」
「俺たちは誰の味方につけばいいんだ?」

警察組は酷く混乱していた。
警察組もかつて自分たちを攻撃し、ジバン、空蝉丸、フェイ・イェンといった仲間を殺した凶悪な都庁の魔物たちを討伐するために世界樹地下にやってきたのだ。
だがそこにいたのは、魔物を引き連れた2つの勢力・桃色の髪の少女を中心に人間と共に戦う魔物で構成された都庁同盟軍とスライムを連れた仮面ライダーの主任組とゴロリとチェイスを殺したご立派な魔王だった。
都庁の魔物は人間を襲う凶悪な敵……ネットでもそう囁かれている、にも関わらずその事実と食い違うように同盟軍も主任組も魔物を引き連れ、双方人間と共に戦っているとはどういうことだろうか?

なによりも誰の味方をすればいいのか?
ご立派様はどう考えても敵だとして、同盟軍と主任組のどちらが敵なのか?
同盟軍はこちらが貴虎やマーラ様の敵ではないとわかると、こちらを攻撃してこなくなった。
ただし、あくまで戦力に乏しく手負いのいる警察組を後回しにしているだけで、後で襲いかかっている可能性も十分ある。
同盟軍に狙われる主任組は中学生に弓を引こうとし、こちらもインベス呼ばわりしてきたが、双方になんらかの誤解があっただけで本来は敵ではないのかもしれない。
真実はどうなっているのか……とにかく警察組には情報が少なすぎるのであった。

(私たちはどうすれば……?)

ジバンの戦死以降、警察組のリーダーとなっているキルコは大いに悩む。
選択を間違えれば警察組の全滅そして悪党の味方をしてしまう可能性もある以上、軽はずみな決断はできなかった。
だが、いつまでもこうして岩陰には隠れてられまい。
いずれはここを出て戦わねばいけない時がくるだろう。
キルコがそのように思っていた時だった。

「緑の髪に眼帯…‥あなたはキルコさんですね?」
「え? どうして私の名前を知っているんですか?!」

同盟軍の側から、こちらに気づいた白髪の少年が振り返り声をかけてきた。
少年はなぜかこちらを知っているかのように、キルコの名前を言い当てた。
そして敵意がない素振りを見せながら岩陰に入ってくる。

「初めまして、僕は渚カヲル。
小さなぬいぐるみのような生き物、まこちー。
真っ赤なマフラーの熱そうな男の人、水木さん。
……良かった、彼女の仲間はみんな無事だったんですね」
「少年、なんで俺たちのことを知ってるんだゼッート?」

残る警察組の面子の名前も言い当てたカヲルにどうしたことかと首を傾げる警察組。
元々有名人である水木はまだしも、キルコとまこちーのことは仲間内でしかしらないハズだ。
だが、仲間内でなら……そこでキルコの脳裏に死んだハズの仲間の少女の姿がよぎった。

「!! いま、あなたが言った彼女ってまさか……!」
「ええ、フェイ・イェンは僕らの仲間です」
「まきょ!?」
「生きてるのか、フェイ・イェンは!」
「ええ、諸事情でヘンテコな着ぐるみは着てるけど、この都庁で生きてるよ」

魔物達に殺されたと思われたフェイ・イェンは生きていた。
カヲルの口から告げられた事実に警察組の仲間達は大いに喜んだ。
しかし、同時にキルコたちの混乱も余計にひどくなった。
カヲルの口ぶりからして、彼及び彼の仲間である都庁同盟軍はフェイ・イェンを保護した味方である。
だが同時に、人を襲う都庁の魔物達にカヲルとフェイ・イェンが力を貸しているということでもある。
そもそもフェイ・イェンは都庁の魔物に襲われ、殺されかけたのではないのか?
実際に都庁の魔物に襲われた警察組にとってはそれは不可解極まりないものであった。

「どういうことなんです?
フェイ・イェンちゃんが都庁の魔物に味方しているって……?
都庁の魔物に殺されかけて、ジバンさんたちは殺されて……!」
「……!
そうか、君たちはまだ真実を知らないんだね?」
「真実……?」
「キルコさん、僕の口から本当のことを教えてあげるよ」

91タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:00:32 ID:lrDo9O.A0


そして、戦闘の最中だったので多少手短であるが、カヲルの口から警察組に向けて真実は明かされた。
都庁の軍勢の魔物が迎撃以外では人間たちを襲っていないということ。
ネットの書き込みは天魔王軍なる魔族の集団による情報操作による偽りのものであり、都庁の軍勢の悪行だと思われたものは全て天魔王軍の悪行のなすりつけによるもの。
ジバンら警察組を襲ったのは都庁の軍勢ではなく、天魔王軍だったということ。
主催がばら撒いた参加者をバケモノに変える物質。
その物質に侵された大気を浄化するためにはこの都庁に生えた世界樹とフォレスト・セルが必要不可欠であるということ。
そして、それに対処するために都庁の軍勢は人間たちとも休戦して同盟を組み、巨大な対主催組織になった。
その都庁同盟軍と世界樹を滅ぼそうと、貴虎すなわち中学生に弓を引こうとした仮面ライダーが爆弾を仕掛けようとしている。
そのようにキルコたちはカヲルに伝えられたのだった……


「……そういうことだったんですね。
どうりでさっき見た魔物の死体と私たちが戦った魔物と質感が違うと思ったんですよ」
「都庁の魔物は敵じゃなかったのか……
そんな彼らに罪をなすりつける天魔王軍は絶対に許せんものだゼーット!」
「まきょまきょまきょーーー!!」

カヲルからもたらされた情報に警察組一同は納得し、ようやく混乱を納めた。
そして都庁の軍勢もとい都庁同盟軍が敵ではないとわかった今、警察組の取るべき行動は1つだった。

「よし、私たちも都庁に加勢します」
「まきょ!」
「ああ、都庁は俺たちにとって味方であり、都庁の世界樹は主催がばら撒いた危ない物質をなくすためにも必要不可欠だ。
そんな君たちの味方をしないわけにはいかないゼーーーット!!」
「みんな……ありがとう」

警察組が対主催組織である都庁同盟軍の仲間になった瞬間である。


(……これで良いんですよね、ジバンさん)

キルコの中に都庁の魔物に対する憎しみはもうない。
偽りと真実がわかり、真に討つべき敵は他にいるとわかったからである。
仲間を失った憎しみで我を忘れて敵ではない都庁の魔物を殺す間違いを危うく犯すところだったが、それも真実知ったことで踏みとどまることができた。
ジバンもキルコが都庁同盟軍に組することを良しとするだろう。
警察官は罪なき人々の安全と平和のために行動すべきなのだから。

「さて、主催に天魔王軍にDMC狂信者に……戦うべき敵は色々いますが、まずは爆弾を仕掛けようとしているテロリストと猥褻物の取締からですね!」
「ゴロリとチェイスの仇討ちだ!
俺たちが来たからには誰ひとり殺させやしないゼット!」
「まきょ!」

キルコは亡きゴロリが作ったオリハルコンのトンファーブレイドを構え、水木はマイクを手に持ち、まこちーは気合のタスキを引き締める。
警察組の加勢の準備は整った。
おそらく警察組の加入によって都庁とマーラ様のパワーバランスは都庁側に傾くだろう。
都庁同盟軍に所属するカヲルにとっては嬉しい情報だった。

「いきましょうカヲルくん!」
「ええ!」

最初に岩陰から水木が飛び出した。

「キルコ!
援護は俺がするゼーット!」

水木は歌をヴィジョンとして投影するスタンド能力、ザ・アニキングを使用してキルコたちを強力に援護するつもりなのだ。
天魔王軍につけられた傷がズキズキ痛むが、マーラ様相手に中途半端な攻撃は逆効果だろう。
傷口が開くリスクを負おうとも、より強力な攻撃を放つべく、水木は魂を込めて力強く歌おうとする。



「いくぜ! 歌うのはもちろん十八番のマジンガー――」














水木が歌おうとした、その時である。

92タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:01:04 ID:lrDo9O.A0

一本の矢が水木の脳天を貫き、血と脳漿を辺りに四散させた。

「――ぜっと」
「アニキさん? アニキさん!?」

水木の頭がはじけ飛ぶ瞬間。
それを眼にしたキルコ、カヲルの顔は青ざめた。

巨匠、水木一郎は倒れた。最後に魂を込めた一曲も歌うことができぬまま……


【水木一郎@現実 死亡確認】


悲劇はこれで終わりではなかった。

「ま…きょ……」

今度はキルコとカヲルの背後からまこちーのうめき声が聞こえたかと思い、二人が振り返ってみると、そこには喉元から噴水のように赤い血を噴出していた、まこちーの姿があった。

「まこちーちゃん!?」
「ぴきー!」
「こいつは貴虎の味方のスライムじゃないか!?」

まこちーの喉元を切り裂いたのはナイフを口元でくわえたスラリンだった。
スラリンは四人に気づかれぬように忍び寄り、背後からまこちーの喉をナイフで裂いたのである。

「ぴっきーーー!!」
「うわ!」
「くっ……A.Tフィールド!」

キルコ達がアクションを起こしてくるより早く、口から灼熱の火炎を吐いて攻撃。
幸いにもカヲルによるA.Tフィールドによる防御が間に合って二人は事なきを得るが、その隙にスラリンには逃げられてしまった。

「あのスライム、よくも……まこちーちゃんは!?」

仲間を傷つけたスライム憤るキルコだったが、まこちーの身も心配であった。
カヲルが床に倒れたまこちーを診るが……

「……ダメだ、もう死んでいる」
「そんな、そんなああああああ!!」

まこちーは首を裂かれたことによる失血でショック死していた。
僅かな瞬間の間に水木、まこちーというかけがえのない仲間が死んでしまったことにキルコは慟哭するしかなかった。


【まこちー@ぷちます! 死亡確認】


そして逃げ出したスラリンの行く先は仮面ライダー斬月・真――貴虎の肩の上である。

「ようやったぞスラリン、これでインベスの数が減った」
「あなたは……貴虎!?」

93タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:01:44 ID:lrDo9O.A0

貴虎の腕は弓が構えられていた。
その弓の方角は、キルコたちが隠れていた岩陰の辺り。
すなわち貴虎が水木を射殺したのである。
スラリンにまこちーを殺害させるよう命じたのも貴虎だろう。
それを理解した時、キルコは怒りで手を震わせた。

「よくも仲間を……よくもォーーーーーっ!!」

キルコの怒りが頂点に達した時、本人でも気づかない内に貴虎に向けて突撃していた。

「ダメだキルコさん、戻って!!」

カヲルが必死に呼びかけるがキルコは聞く耳持たなかった。

「チッ……」

貴虎は接近してくるキルコに弓を引く、しかし、キルコの持つオリハルコン性のトンファーブレイドが矢を弾いた。

「!?」
「オリハルコンを舐めないでください!
そんな矢なんて弾きとばしちゃいますから!」

斬月・真の弓矢すら弾くトンファーブレイドを盾に、なおも突撃を続けるキルコ。
貴虎は弓を引き続けるが、オリハルコンの前には効果がない。
そうして貴虎はキルコに接近を許し、キルコは怒りのままにトンファーブレイドを振り下ろさんとする。

「アニキさんとまこちーちゃんの仇ィィィーーーッ!」



「……フッ、かかったな」
「な……はうッ!?」

トンファーブレイドが振り下ろされる寸前、貴虎は仮面の下でほくそ笑んだ。
そしてキルコの身体が何者かに横からかっさらわれた。

「えっ……何が?!」
「これは中々の美乳の持ち主じゃのう」
「!!」

いきなり何が起こったのかわからないキルコが首を左右に振ると、そこには自分の身体を握っている濃い緑色の腕と黄金の馬車、そして巨大でご立派なモノ……マーラ様だった。
その時、キルコは理解した。
自分はマーラ様に捕まってしまったのだと。

「は、離して、このぉ!」

すぐに脱出を図ろうとするキルコは、マーラ様に向けてトンファーブレイドで斬りつけようとする。

「たたり生唾!!」
「あっ!!」

だが、マーラ様から放たれた謎の白い液体――たたり生唾によって両腕のトンファーブレイドは弾かれて地面に刺さった。
こうしてキルコはマーラ様に対する防衛手段を失った。

「ぐふふ、さて、オヌシを涅槃に連れてっいってやろうかのう」
「や、やめて……」

これからマーラ様にナニされるか理解した時、キルコはこのカオスロワで初めて恐怖で震えた。
残った両手両足でジタバタと暴れて脱出を図ろうとするが、すぐに手足も触手によって縛られて身動きが完全に取れなくなってしまった。

「あの女の人が危ない! みんな、あの人を守って!!」
「了解!!」

まどかたちもただ傍観しているわけにはいかない。
マーラ様に貫かれることは死を意味する、それを阻止するために都庁同盟軍の者たちはキルコを救うために動こうとした。

「おっと、そうはいかないな」
「ぴきー!」

その矢先、貴虎の放った矢とスラリンの火炎がまどかたちの進撃を遮る。

「邪魔しないで!!」
「おまえたちはそこで指を加えて見ていろ」

キルコを何とかして助け出そうとする都庁同盟軍の者たちだったが、貴虎・スラリンによる妨害で誰もマーラ様の場所まで辿りつけない。
これから起こる惨劇に対し、まどかたちは貴虎が言ったように、指を加えて見ているしかなかったのだ。

94タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:02:21 ID:lrDo9O.A0



震えるキルコに対し、マーラ様は背面に生えた触手でビリビリとキルコの制服や衣服を切り裂いていく。
キルコはあっという間に一糸まとわぬ姿になり、たわわな胸と豊満な尻があらわになる。

「いやあーっ!」

悲鳴をあげるキルコ。
だが、彼女を救える者はこの場にはいない。
ただ魔王を喜ばせるだけであった。

「そそるのお、ではとっておきの技で天国へ連れていってあげよう」
「いや、やめて……入れないで!」

マーラ様のご立派様がキルコの大事な場所を向く。
キルコはただ恐怖し、泣いて懇願するだけであった。
元傭兵であるキルコさえも震え上がらせるモノがご立派様にはあったのである。
そして――

「刹那! 五月雨撃ち!」
「い、いやああああああああ!! 死んじゃうううううううう!!!」

キルコの中にご立派様はぶち込まれた。
それも高速ピストンで。
キルコの肉体が弓なりに曲がり、胸が上下する。

「こんなのって、こんなのって!」

キルコはただ悔しかった。
正義のおまわりさんが悪に屈したくはなかった。
だが、下の口から昇ってくる快感にはとても抗えるものではなかった。

「私は警察官として、アンッ!
人々を守らなきゃいけないのに ンッ!
誰も、ハアッ! 守れてない……」

ジバンのように尊い正義の意志を持って人々のために戦いたかった。
だが実際には、仲間を一人たりとも守ることができず、屈辱と後悔の中でその生を終わらせようとしている。
彼女の中の正義の意志もまた、快楽という名の白濁色にだんだん染まっていく。
その白濁色はキルコにとって絶望の色だった。

「さあーて、フィニッシュじゃ」

マーラ様は最後にキルコに最大の快楽を与えるべく、出し入れのスピードをあげる。
絶望と快楽でショート寸前だったキルコの脳に更に苛烈な電気が流れた。
いよいよ、凌辱劇は終わりを迎える。キルコの死を持ってして……


「逝クッ 逝クッ 逝クッ 逝クッ 逝っちゃうのおぅぅぅんん!!!
…んああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


最大級の絶望と快楽を味わいながら桃色の悲鳴をあげ、キルコはとうとう絶頂を迎えてしまった。
自分とマーラ様の体液でドロドロになり、白く染まった肉体がズルリと床に落ちる。
ビクンビクンと痙攣した身体はやがてピクリとも動かなくなった。
無情にも警察の正義は魔王の性技の前に敗れ去ったのであった。


【音無キルコ@新米婦警キルコさん 死亡確認】
【警察組 全滅】

95タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:03:02 ID:lrDo9O.A0


「キルコさん、そんな……」

カヲルは目の前で起きた新たなる仲間になるハズだったキルコと警察組の全滅を嘆くしかなかった。
カヲルだけでなく、都庁同盟軍の者たちも救えなかったことに歯噛みしていた。

そして、都庁同盟軍の悲しみはすぐに憎しみと怒りに変わり、その矛先はマーラ様と手を組んだ主任組に向けられた。


「呉島貴虎、貴様ァーーー!!」
「どういうつもりなの!?」

スニゲーターとラブが貴虎に喰ってかかる。
貴虎たちが邪魔さえしなければ、キルコは助けられたのかもしれないのだから。
そんな怒れる者たちに対して貴虎はほくそ笑みながら答える。

「悪いが、そういう契約なんでな」
「契約……まさかあなたたち、あのマーラの仲間に!?」

貴虎がマーラの仲間になった……その事実にほむらは戦慄する。
純粋にただひたすらに強い男と、わけがわからないくらい強いご立派様が手を組んだのだから、それだけで都庁側としては驚異であるのだ。
キルコとの行為を終えたマーラ様がご満悦の様子で貴虎の横に並ぶ。

「そうじゃ。
ワシはおまえたちの連携のおかげでなかなかご立派をぶち込めず、イライラしておったところをこの男が契約を持ちかけてきたんじゃ。
ワシがご立派をブチ込む手伝いをしてくれる変わりに、仲魔になれとな。
そして、貴虎は人間してはかなりの強者だったし、使える人間と思ったから契約したんだわい。
結果は見ての通り上出来以上、契約して損はなかったわい」
「俺としてはおまえたちインベスを滅ぼせるならどんな手でも使うだけだがな……例え悪魔と契約してでもな」

マーラ様は貴虎を己が欲望を叶えてくれる戦士として見込んで仲間……いや仲魔になったのである。

(まあ、こやつらもいずれ掘るがな。
だが戦士としては本当に使える奴らじゃし、しばらく後でも良かろう)

仲魔になっても主任組のシリアナは狙われている……が、マーラ様としても利用価値を見出している貴虎を本格的に襲うのは後になるであろう。


一方、貴虎の思惑は――

(ククク、いいぞ。このインベスの『奇行種』は利用できる。
こいつを使ってこの都庁のインベスとヘルヘイムを滅ぼしてやる)

――未だに都庁同盟軍をインベスと勘違いしっぱなし、それどころか悪魔であるマーラ様も同じインベスを共食いするかの如く犯して殺すインベスの奇行種であると誤解していた。
貴虎の目線では都庁同盟軍とDMC狂信者(入団希望者)の戦いは、インベス同士の抗争にしか映らなかったようだ。
人類種を守るためならば悪魔とも、本来は討つべきインベスとも手を組む……それが貴虎の決断であった。

「ぴきいー?」
(わかっているスラリン。
こいつはファガンを犯して殺した下手人だ)

スラリンはマーラを仲魔にしたことに納得できない様子だった。
マーラには仲間を殺されているのだ、不満を持つのは無理もない話であろう。

(だが、こいつを利用しなければ、強力なインベスまみれのこの局面をとても突破できないぞ。
もちろん、最終的にマーラも討つつもりだ。
敵の数が減り次第、隙を見て逃げ出し爆弾でヘルヘイム諸共吹っ飛ばしてやる。
それまで我慢するんだ)
「ぴき……」
(シーザーとヘルヘイムの仇も討ちたいだろ?)
「!!」

貴虎は最終的にはマーラも討つつもりであること、そして相対する都庁同盟軍は長年の付き添いであるシーザーとこのロワで友となったヘルヘイムを殺した憎き仇敵だ。
貴虎の諭しによって復讐心を刺激されたスラリンから不満の心を消え、シーザーとヘルヘイムを奪った都庁の者たちに罰を与える復讐心だけが心の中で燃え上がった。
今、貴虎とスラリンの心にあるのは、『インベス殲滅』の文字だけである。
そうして二人は相手がインベスではないという致命的な誤解に気づかぬまま、自分たちの正義のために突っ走るのだった。

96タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:03:43 ID:lrDo9O.A0


「クッ、数はこちらが遥かに上だ! 連携をうまく使って倒すぞ!!」
「「オオ!!」」

都庁同盟軍もいつまでも呆けてる場合ではなく、攻勢にでる必要があった。
スニゲーターが筆頭に立ち、同盟軍はそれぞれの技と武器を持ってマーラ様と主任組に仕掛けようとする。
それに対しマーラ様は不敵に微笑む。

「連携か……それならワシらもできるかもしれないのお。
貴虎、スラリン! ありったけのパワーを一点に集中するんじゃ!!」

突撃してくる都庁同盟軍の群れにマーラ様、貴虎、スラリンの三人は迎撃体勢をとる。
そして、マーラ様の指示どうり、三人は一点に向けてなるべく強力な攻撃を放った。

「ぴきー!(しゃくねつ!)」
「ソニックボレー」
「マララギダイン!」

するとどうだろうか、スラリンの放った灼熱の炎が、貴虎の放った強力なエネルギーの矢、マーラ様の放った怪しい色の炎が一点集まって融合し、燃え上がる物凄いエネルギーの塊となった。

「これは……」
「合体技じゃよ。
即席にしてはよくできている。
……名づけて『マラ灼熱のソニックダイン』じゃ!!!」

マラ灼熱のソニックダイン――そう名付けられたエネルギー体が都庁同盟軍に高速で襲いかかる。

「まずい! 回避……間に合わない、防御を!!」

見るからに喰らったら危なそうな物体に同盟軍は攻撃を中断する。
エネルギー体の接近が早すぎて回避は間に合わない。それぞれが防御行動をとり始める。
その中で一行の壁となるべく、あえてエネルギー体に向かっている者達がいた。
まどか、氷竜、カヲルの三人である。

「千樹の祈り!」
『アイスシールド!』
「A.Tフィールド全開!」

三人はそれぞれの持つ防壁を合わせてでエネルギー体を防ごうとした。
そしてエネルギー体が防壁に衝突した。
物理攻撃を無効化する祈り、炎攻撃を無効化する氷の盾、あらゆる攻撃を弾く障壁、この三つが合わされば並みの攻撃どころか、チート級の攻撃すら弾かれるだろう。


「……そんな!?」
『火力が高すぎて……盾が溶け出している…だと……!?』
「ダメだ、強すぎる!」


……だがマラ灼熱のソニックダインはチート級をも超えた理不尽級の攻撃。
純粋にパワーがありすぎて、物理・火炎無効化効果すらも貫通してしまっていた。
そして防壁は叩き割られ、殺しきれなかったエネルギーは大爆発を起こした。


「うわあ!!」
「痛っ!!」
「ぐは!!」


都庁同盟軍の全員が爆炎によって吹き飛ばされ、ある者は宙を舞い、ある者は壁面や床に叩きつけられた。

……爆煙が晴れた所で、同盟軍に手傷を負ってない者は誰ひとりいなかった。
多くの者が痛みでうめき声を上げていた。
だが、これでも被害は最小限に済んだ方であろう。
この攻撃による死人はいない。
まどかたちが防御に回らなければ、半数、下手をすれば全員が消し炭になっていた可能性もある、それだけ強力な技であった。

97タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:04:21 ID:lrDo9O.A0

「クソッ、なんてパワーをもってやがるんだ……」

起き上がったスニゲーターはマーラ様、主任組の実力の前に震え上がっていた。

「あいつらを倒すには本当にレストかダオス、フォレスト・セル、もしくはあの『お方』をお呼びするしか……」
「スニゲーターさん! 危ない!!」
「え? グハッ……アッー!!」

呆然としていたスニゲーターに、まどかが注意を呼びかけるも間に合わず、スニゲーターの胸に数本のエネルギーの矢が刺さり、そのシリアナにはご立派様が突き刺さった。
この同時攻撃により、スニゲーターは二つの意味で昇天した。


【スニゲーター@キン肉マン 死亡確認】


「首はもいどいてくれ、後で必要になるからの」
「了解だ、スラリン」
「ぴき」
「さて、これであと2人……!」

マーラ様は昇天したスニゲーターからご立派を引き抜き、スラリンはナイフでスニゲーターの首を切り落として渡した。


「なんてことですかねコレwww!」

オオナズチはセリフに草を生やしながら現状に絶望していた。
たった今、トリン、サクヤ、警察組に続いてスニゲーターも死に、かけがえのない仲間が目の前で死んでしまった。
それだけでなく、これまでは仲間との連携とマーラ様に仲間がいない点をついて優位とまではいかずとも互角の戦いができた。
だが、主任組がマーラ様についたことで事態は一変した。
マーラ様側に連携できる強力な味方がついたことで、マーラ様の攻撃と防御はカバーされ、反対に同盟軍の攻勢は削がれるだろう。
おまけに向こうはほとんど軽傷なのに対し、こちらは中〜大程度のダメージを受けたものがほとんどだ。
特にほむら、ロックオン、そしてオオナズチ自身も傷が深く、立っているのがやっとなレベルである。
マーラ様相手に対し、光明が見えていた戦いが、一瞬にして絶望的なものになった。
事態は最悪の方向に向かっていた。

「あらら勝てるんですかねえコレwwww
つか、魔王とかチート仮面ライダーとかレベル最大のスライムとかやりすぎにもほどがあるっしょwwww
マジぱねえっすwマwジwぱwねwえwっwすw
wwwwwwww

wwww…………

……………………

……クソッタレがああああああああああああああああああああ!!!」


オオナズチはしばらくヤケクソで笑っていたのちに、怒りのままに吠えた。
どうしようもない現状にただ吠えるしかなかった。

「そう、吠えるな。
おまえもすぐに仲間のいる極楽浄土に連れて行ってやろう」
「おまえたちが行きつく先のはおそらく地獄だがな」
「ぴききききき」

怒れるオオナズチや同盟軍を嘲笑いつつ、マーラ様、貴虎、スラリンがゆっくりと同盟軍に向かっていった。


――これより都庁同盟軍にとって絶望的な戦いが始まる。
そんな予感をこの場にいるものたちに抱かせながら。


【二日目・10時30分/東京都・世界樹地下中央部】

98タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:06:53 ID:lrDo9O.A0

【ご立派な強者たち】

【マーラ様@女神転生シリーズ】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除
【装備】己のご立派様
【道具】支給品一式、トリンの生首、サクヤの生首、スニゲーターの生首、連結したゴロリとチェイス、ファガンの卵
【思考】
0:主任組と手を組んでまどか達を昇天させる
1:DMC狂信者入りして男女種族問わずヤりまくる
2:復活したクラウザーさんともヤる
3:誰かが混沌の神を召喚した様じゃの…まあいい
4:主任組もいずれ掘る
※ディーによってDMC入団のための特別条件・都庁の名だたる者の首を五つ集める(残り2つ)を課されました
※貴虎が世界樹を爆破しようとしていることを知りません
※魔界で修行した結果、ものすごく強くなっています
※たとえ相手が再生を繰り返すような不死に近い存在であっても、超絶テクで昇天させることが可能です


【呉島貴虎@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、斬月・真に変身中、財布と貯金が素寒貧
【装備】ゲネシスドライバー、メロンエナジーロックシード
【道具】支給品一式、夕張メロン×55、N2爆弾@新世紀エヴァンゲリオン×3
【思考】基本:人類種を守るため、危険な存在を倒す
0:マーラを利用してインベス(都庁同盟軍)を殲滅する
1:DMC狂信者による二度目の都庁攻撃によって、内部が手薄になっている内に地下から潜入しN2爆弾を起爆させて都庁を吹き飛ばす
2:都庁が破壊できるまではDMC狂信者と組むが、いずれはこちらも滅ぼす
3:パソコンは……今は諦めるしかないか
4:隙を見て逃げ出し都庁に爆弾を仕掛け、マーラ諸共吹き飛ばす
※都庁の変貌をヘルヘイムの森の侵食だと思っています
※ベジータが所有しているパソコンの本来の持ち主です。パソコン内に何かしらのデータが保存されているかもしれません
※マーラ様をインベスの奇行種であると誤解しています


【スラリン@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、LV99 悲しみ
【装備】無し
【道具】支給品一式、ナイフ
【思考】基本:殺し合いを終わらせる
0:マーラを利用してインベス(都庁同盟軍)を殲滅する
1:主であるグランバニア国王とその家族と同僚の仲間モンスター達を探し、それ以外の仲間も探す
2:マーダーは可能な限り倒す
3:本能的に強大な何かが都庁の真下に埋まっていることを感じている
4:マーラ怖い、掘られたくない
※人間の言葉は聞けば理解できますし、(出身世界の)人間の文化や常識も理解できますが、人間の言葉は全く喋れませんし読めません。
※現時点で人間のほとんどをインベスとして誤認しています。主任が考えを変えない限りスラリンも変わりません




【都庁同盟軍 】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(中)、世界樹の巫女、左脚に怪我、首輪解除、激しい怒り
【装備】世界樹の衣
【道具】支給品一式 その他不明、モンスターボール(フォレスト・セル)
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:マーラと主任を倒す
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:警察組と同盟軍の皆をよくも!
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮と同じスキルが使用可能です


【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(特大)、首輪解除
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(穢れ70パーセント)
【道具】支給品一式、ベレッタM92(残弾10)、レミントンM870(残弾0)、ミニミM249(残弾0)、M16クレイモア×5、M84 閃光手榴弾×15、88式地対艦誘導弾、長ドス、ゴルフクラブ
【思考】基本:まどかを守りつつ、主催者を倒す
0:マーラと主任を倒す
1:まどかは命にかえても守る
2:マーラの仲間になった主任はもう絶対に殺す


【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(小)
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたい
0:マーラと主任を倒したいが、勝てるのかコレ……
1:正直、友や仲間の死には心を痛めている
2:今は草を生やしてる場合じゃねえ!
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います
※マーラ様の情報をアカムトルム経由である程度知っているようです

99タチアガレ セイギ:2016/03/24(木) 15:07:20 ID:lrDo9O.A0


【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除、攻撃力1.5倍、被ダメージ半減
【装備】無し
【道具】支給品一式、余った真竜ニアラ
【思考】
基本:世界樹の防衛
0:マーラと主任を倒す
1:レストを信頼
2:サクヤたちをよくも!
3:俺を超える巨根など認めるものかあ!!
※レスト直属の魔物のため、装備の恩恵によりステータスが上がっています


【メガボスゴドラ@ポケモン】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式、大量の土と樹
【思考】
基本:ダオスに着いていく
0:マーラと主任を倒す
1:縄張り以外でも自然環境を破壊する奴は容赦なく頭突く
2:ダオス達のサポートを行う
3:せっかく植林したのに何度も壊すのはやめれ(切実)
※現段階で判明している所持技はアイアンヘッドとステルスロック。その他不名


【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、左側の首喪失、首輪解除、怒りと悲しみ
【装備】無し
【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:都庁同盟軍と共に生き残る。DMC信者は殺す
0:マーラと主任を倒す
1:鹿目まどかは必ず守る
※一定の魔力を有する相手であれば、テレパシーで会話可能


【ロックオン・ストラトス@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)、右目失明、弾丸の勇者、首輪解除、キョウリュウブラックに変身中
【装備】ハロ×2@ガンダムOO、ガブリボルバー、ガブリカリバー
【道具】支給品一式、ドラグノフ狙撃銃@現実、獣電池(パラサガン)×6
【思考】 基本:都庁同盟軍の仲間として殺し合いを止める
0:マーラと主任を倒す
1:トリン……アンタのブレイブは引き継ぐ!
2:警察組の全滅についてフェイ・イェンになんて伝えればいいんだ……
※キョウリュウジャーとして認められました。キョウリュウブラックに変身可能となり、竜と話せます。


【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、怒り、キュアピーチに変身中
【装備】リンクルン@フレッシュプリキュア!、キュアスティック・ピーチロッド@フレッシュプリキュア!
【道具】基本支給品一式、大量のドーナツ
【思考】
基本:絶対に殺し合いを止めて、みんなが助かる方法を探す。
0:マーラと主任を倒す
1:都庁同盟軍のみんなと一緒に殺し合いを止める
2:ほむらはまだ少し怖いが、仲良くしたい
3:仲間を殺したマーラと主任は絶対に許さない
※9期とは関係ありません。


【偉大なる赤竜@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(中)、傷心
【装備】無し
【道具】もくたん@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:歌で自然環境の保護を世界に訴える
0:マーラと主任を倒す
1:都庁の仲間達、カヲル達を守る
2:仇であるDMC狂信者は確実に根絶やしにする
3:許すまじ天魔王軍!!
4:拳王連合軍も滅ぼす


【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、傷心、怒りと悲しみ
【装備】キーボード@楽器
【道具】支給品一式
【思考】基本:バサラの遺志を継ぎ、彼の歌を届けて殺し合いを終わらせる
0:マーラと主任を倒す
1:シンジ君を探して一緒に歌う
2:DMC狂信者や天魔王軍は許さない
3:しかし僕にバサラの代わりが務まるのか……?
4:スニゲーター……!
※使徒だからか、竜と会話が可能です。

100Each Justice:2016/03/30(水) 15:19:22 ID:k.6a5Ls.0
『邪魔を、するなぁぁぁぁ!』
「ぴきぃ!」

世界樹地下での血みどろの死合は続いていた。

氷竜が怒号と共に足を踏み鳴らせば、氷の盾が出現してスライムの炎を遮断する。
アイスシールドの耐久力は、敵の連携攻撃を許さなければ相変わらずの高性能であった。

(おのれ、やはり先刻不意打ちで首を一つもっていかれたのが痛すぎる……!)

だが、氷竜はその盾の出来栄えにただただ歯噛みする。
圧倒的な防御力を持つ盾の何が不満なのか?
共に奮戦するほむらと、長年苦楽を共にしてきた偉大なる赤竜だけは、氷竜の苦悶の表情の理由がわかった。

(おかしい、私と戦った時はもっと純度の高い氷……それこそ鏡のような盾だったはずなのに!)
(その通りだほむら。だがあいつの技は、三つの首が揃った三位一体でこそ真価を発揮するのだ!
 あの傷ではミラーシールドは生成できず、ブレスの威力も減衰する……!)

本来であれば、氷竜が生み出すミラーシールドは超速で生み出される最強の盾。
万能属性を含めたあらゆる攻撃を完全反射するというチートカウンタースキルなのだが……
赤竜の言葉通り、首を失い氷の力が弱まってしまった現在では、ただ頑丈なアイスシールドの生成が限界であった。

「相変わらず邪魔なヤツじゃなぁ。そんなに冷気を吹き出して、この滾りが萎えてしまったらどうするつもりじゃ?
 ――まあこの程度でギンギンのワシが萎えることはないんじゃがなぁ!」
『ぬぐおおおおおぉぉぉぉぉ……!』

暴れ狂う魔王マーラの弱点は氷だというオオナズチ。
理由は冷えて縮こまって萎えるから。もう外見通りの弱点だ。
さらに再生能力とアイスシールドにより、貴虎とスラリンの攻撃を遮断できる氷竜は残された同盟軍の戦力の要であった。
しかし、さしもの三竜も首を一つ失う重傷を負った状態で『魔』そのものを司る魔王と仮面ライダーにスライムを一人で抑え込むことはできない。
そして彼の背後には、守るべき巫女まどかがいる。
盾を張り巡らせ、複数の眼で周囲を警戒しても、どうしてもまどかの防御と敵の足止めが優先されてしまう。

「そこだっ!」
「危ない! 千樹の守りっ!」
『すまないまどか、助かった!』

氷竜の僅かな死角から放たれる矢を、どこからともなく伸びてきた世界樹の枝が遮断する。
絶望的な都庁同盟軍の戦線は、まどかと氷竜の守りの布陣でなんとか崩壊を免れているのだ。

ほんの僅かな時間、二枚の盾が同時に使用された。

「ふっ……かかったな」
「なっ――」

直後、マーラが猛進する。

「くっ、僕のA.Tフィールドだけで耐えきれるのか……!」

ここで三枚目の盾、最終防衛ラインとしてカヲルのA.Tフィールドがまどかを包み込む。

「あまいのぉ、お主」

だがマーラが狙うはまどかではなかった。
盾は確かに面倒ではあるが、三人の連携があれば打ち破れるのはすでにわかっているのだ。
現状マーラ達にとって邪魔なのは、盾の隙間から援護射撃をしてくる連中である。


つまり

101Each Justice:2016/03/30(水) 15:20:25 ID:k.6a5Ls.0
「ア――――ッ!?」

「ロ、ロックオォォォォォォォンッ!!!」

打ちつけられるご立派。
引き裂かれる肛門。
滴る鮮血。
思わず漏れてしまう喘ぎ声。

「お、俺は……トリンのためにも……ブレイブ……ぉほっ……」

無慈悲な一撃を受け、ロックオンの死は確定した。
だが彼は最後の力を振り絞り、マーラへと銃を向ける。
本人の意思とは無関係に漏れてしまいそうな嬌声も噛み殺し、引き金に手をかけ――

「やらせん」「大人しく昇天するがよい」

それよりも早く、貴虎が放った矢がロックオンの心臓を射抜き、ご立派がより深くへ捻じ込まれる。
ブレイブを引き継いだキョウリュウブラックの意思を笑うかのような、あまりにも冷酷な一撃。
その体はご立派を引き抜かれると同時に、力なく地面へと崩れ落ちた。

【ロックオン・ストラトス@機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-】 死亡確認

『貴様ァァァァァァァァァァ!』

赤竜が咆哮をあげ、ファイアブレスを吐き出す。

「ぴきーぃ!」

だがスラリンの灼熱の炎の妨害により威力を下げられたそれは、貴虎の連続射撃でダメージを与える前にかき消された。
氷竜同様、彼も傷により満足のいくブレスが吐けなくなっているのだ。

「何を怒る? 戦いにおいて、遠距離攻撃を得意とするものや手負いの者を優先して潰すことは基本だろう。
 ましてや貴様ら(インベス)なぞにかける情などというものは、存在しないっ!」

貴虎の言うとおり、数で劣る彼らが戦況をより有利なものにするには敵の頭数を減らしていくのが定石だ。
ロックオンは既に瀕死の重傷を負っていた。それでありながら遠距離からの攻撃を止めない彼は、邪魔以外の何物でもない。
弱った人間を蹂躙するなど、忌み嫌う者も多いだろう。
だが貴虎にも信念がある。その信念のためには手段は選ばないし、周りからの罵声を浴びる覚悟も出来ている。

「次は――」
「っ!?」

そして、次の獲物に狙いを定める。つい先程まで戦っていた、黒髪の少女だ。

「危ない、ほむほむっ!」

だが、貴虎が放った矢はラブによって弾かれる。
目の前でロックオンが惨殺され、先程の貴虎の言葉から次に狙われるのはほむらだと彼女は気がついていたのだ。

「ラブ……守ってもらってすまないのだけど……私はもう足手まといにしかならないわ……」
「何を言ってるの! こいつら倒して、みんなで一緒に地上に戻るんだよ!」
「ごめんなさい……もう、武器も底をついて、これ以上魔法を使えば……あなた達にさらに迷惑をかけることになる……」

ほむらは息も絶え絶えな様子でラブに詫びた。
彼女の手に持つ銃は既に弾が底を尽き、手の甲に宿るソウルジェムの濁りは既に限界寸前であることを示している。
屈強なマーラと貴虎には肉弾戦では敵わないし、小さくて動き回るスライムにも効果は薄いだろう。
武器と魔法が使えなくなった時点で、ほむらは生きながらにこの場では死人同然となっていた。

102Each Justice:2016/03/30(水) 15:21:43 ID:k.6a5Ls.0
「ラブちゃん、ほむらちゃんを抱えて後ろに下がって!」
「わかった!」
「これ以上……これ以上みんなを傷つけるのはやめて!」
「うぐぁ!?」

怒りのままに、まどかは世界樹の力を行使する。
世界樹の枝で切り裂くサウザントネイルと、世界樹の根を振り回して薙ぎ払うサイクロンルーツの同時使用。
本来の世界樹の王たる存在でも真似ができないような力の発現に貴虎は吹き飛ばされ、そしてマーラは僅かに驚いた表情を浮かべた。


(ふぅむ……時間経過と共に巫女の器の力が増しておるのか?
 まだまだ青く、力に振り回されてると言っていいが……場所が場所なだけに、ちと不味いかもしれんのぉ)


まどかは世界樹の巫女となり、一時的とはいえ世界樹との融合も可能だ。
それはつまり、まどかの怒りはそのまま世界樹の怒りということになる。
この戦場となっているダンジョンも世界樹の一部であり、いわばマーラ達は怒りを向けてくる存在から360度を包囲されているということになる。

(こやつら、中々に粘るからのぉ……一人一人、暴れるのを屈服させてから昇天させてやりたいところなんじゃが。
 必要な首はあと二つ――いやさっきの男の首をちぎれば一つか。惜しいが、ここはやはりクラウザーをヤることを優先するとしよう)

「スラリン、その男の首もワシに寄越すんじゃ」
「ぴきぃ!」

倒れ伏したロックオンの首を、スラリンが切り落とす。
もう何度目になるかもわからない惨い光景に誰もかれもが短く悔しさを滲ませた声を漏らした。

『貴様らだけは、断じて生かして帰さん!』
「おおっ!? ふむ、お主もなかなかのモノを持っているようじゃが、ワシには遠く及ばんのぉ!」

ロックオンの首を受け取ろうとしていたマーラの身体に、ウォークライが激しくぶつかる。
叫帝竜の巨体による突進を受けても、マーラはびくともしない。
だがこの戦いの最中にウォークライもそれを十分に理解しており、驚くことなく次の本当の攻撃の構えに入った。

『我が爪で八つ裂きにされて、滅びろ巨根ッ!』

雄叫びと共に、ウォークライの両腕の爪が振り下ろされる。
これまで数多くの竜を狩る者を血の海に沈めてきた、必殺のギガブレイクだ。

「ぬふぉふぉふぉふぉ! そのパワーは見事じゃが、昂ぶってきたワシのご立派にはその手の攻撃は通じぬわ!」
『なんだとっ!? うぐ、なんだこの汚らしい粘液は!?』

しかしギガブレイクは不発に終わった。
荒ぶりそのご立派をさらに怒張させたマーラの身体は謎の粘液で覆われており、爪を受け流したのだ。

これまでに多くの男女を貫き、時には激しい攻撃にさらされたマーラはとにかく現在も非常に興奮状態。
興奮した身体は先走った液体を垂れ流し、誰かを貫けばその誰かの愛液や腸液を浴びる。
そして相手を昇天させるために、マーラは己の身体から特濃の白濁液をぶちまける。
二重三重に粘液で覆われたマーラには、物理攻撃に対する耐性が勝手にでき始めていたのである。

103Each Justice:2016/03/30(水) 15:22:53 ID:k.6a5Ls.0
『くっ……!』

たまらずウォークライは飛び退いた。
自分の爪が通らないのであれば、おそらく自分と同タイプの赤竜の攻撃も通用しないだろう。
タイフーンハウルであればおそらく少なからずダメージを与えられるだろうが……
オオナズチの言葉通り、万が一自身のブレスの状態異常が跳ね返されると不味い。
この最悪の魔王を前にしてスキル使用不可と麻痺などという状況は、イコール死でしかない。

「よし、今じゃ首を投げとくれ」
「ぴき」

そしてウォークライが退いたタイミングで、ロックオンの首が投げられ――

「ゴドォォォォォォォォッ!!!」
「ぴぎぃっ!!?」

それと同時に、岩陰に潜んでいたメガボスゴドラがスラリンに奇襲をしかけた。
魅せる技ではない。無骨な、しかしメガボスゴドラの身体から繰り出されるそれはまさに鉄槌――アイアンヘッド。
スラリンは軟体ではあるが、首を投げるために身体を捻り、その瞬間に軸となる部分が生まれて僅かに硬くなっていた。
そのタイミングを見計らってのふりおろしアイアンヘッドは、スラリンの身体の一部を飛び散らせるには十分な威力があった。

「スラリン!? くそ!」
「オオオ……!」

予想外の一撃に、貴虎がメガボスゴドラに矢を放つが、頑強な身体はそれを受け止めてみせる。
まだ、倒れるわけにはいかないという信念が、メガボスゴドラに力を与えていた。

「ぴ……ぎぃ……!」
「ドォォォォォ!」

まだ、この仲間の首を刎ねてまわる小さな悪魔は生きているのだから。
メガボスゴドラは、こんな時に己の攻撃力の低さを嘆いていた。
こんな小さな奴一人渾身の一撃でも殺しきれないなんて、と。
だが飛び散り容量が明らかに減ったスライムは半死半生。このまま放置してもいずれは死ぬだろう。
そういった意味では、一応当初の目的は達せたのかもしれないと、頭を振り上げ追撃のアイアンヘッドの構えに入りながらも考えていた。


『に、逃げろメガボスゴドラ! マーラがお前に狙いを変えているっ!』


――そんなことは覚悟のうえだ。
最初から、このスライムを道連れに死ぬつもりだったのだ。
結果としてそれさえできていないが、少なくとも大きなダメージは与えられた。
愚鈍な自分がマーラの攻撃をかわしきれるわけがない。ならば動かず大人しくしていた方が、マーラが余計な方向に突進せずに済む。
僅かな時間でも仲間達から攻撃をそらすことができれば、その間に氷河の再生とエタニティツリーで微々たるものでも回復できるだろう。
連続で公園を破壊されたのだけはちょっと凹んだけれども、それでもダオスは信用に足る人物だった。そしてこうして一緒に戦った仲間たちも。
後は、頼んだ――あえて、仲間たちに言葉は伝えない。

「スラリンを殺したかったようじゃが、おかげでお主の*が丸見えじゃぞ?」
「ゴドォォア―――――ッ!?」

回避行動もとらなかったため、猛突進してきたマーラのご立派は深々とメガボスゴドラを貫いた。
来ると覚悟をしていたにもかかわらず、メガボスゴドラは断末魔の嬌声をあげてしまう。
それだけを悔いながら、やがてメガボスゴドラはぴくりとも動かなくなった。


【メガボスゴドラ@ポケモン】 死亡確認

104Each Justice:2016/03/30(水) 15:24:09 ID:k.6a5Ls.0
「フハハハハハハ! これで、五人目じゃ!」

硬いメガボスゴドラの首を、マーラはなんなく自分の手でちぎって見せた。
彼が仲間のためにあえて捨て身の行動を取ったということなど、きっと理解していないしする気もないだろう。
己の手元に、狂信者入りの条件である五つの首が揃ったのだ。それ以上に大切なことなど存在しない。

「う……うぅ……!」
『おのれ……』

笑うマーラに対して、同盟軍の誰もが、涙を零していた。
勝ち誇ったように、マーラはその触手で仲間たちの首を掲げているのだ。
その光景に、特にまどかの怒りと悲しみが混ざった感情は爆発しそうになる。

「みんな……!」

知的であった筈のトリンの首は、見るも無残なアへ顔になってしまっている。
その想いを伝えることも叶わなかったサクヤの首は、絶望と悲しみの表情を浮かべている。
あまりに一瞬、不意をつかれたスニゲーターの首は、何が起きたのかと混乱したままだ。
遺志を継ごうと奮戦し、それでも討たれたロックオンの首は、ただ悔しさを全面に滲ませている。
そしてまさに今もがれたメガボスゴドラの首は、どこか悲壮な覚悟を決めていたように見えた。

この僅かな時間で、かけがえのない5人の仲間が魔王に殺された。
ゴロリ、チェイス、水木、まこちー、そしてキルコ……
誤解が解け、共に戦おうとカヲルの手を握った警察組も仲間に含めるならば、さらに5人の犠牲者。
いや、この後のことを考えれば、自分たちを含めてまだまだ沢山の仲間が殺されるかもしれない。

「ゆる……さない……!」

世界樹全体が僅かに震える。
まどかの怒りに呼応するかのように、既に世界樹の根はサイクロンルーツを放つ寸前だ。


「貴虎、首は集まった。それにこの位置ならば問題あるまいて――再び連携じゃ」
「わかった。……いけるか、スラリン?」
「ぴ、ぴぎぃ!」


「――っ!?」

しかし、その怒りがいけなかった。
怒りの矛先をマーラ達に向けた世界樹は、既に攻撃準備が完了――防御に回るまで僅かな時間を要してしまう。
しかもいつのまにか、自分たちは一か所に固められてしまっている。
三重の盾が破られ、多大なダメージを受けたマラ灼熱のソニックダイン。
まどかの千樹の守りが遅れ、さらに今度は大ダメージを負っている状況で、耐えられるのか?

「さらばじゃ。本当は残ったお主たちも昇天させてやりたかったんじゃがな」

答えは――否。


「「連携攻撃―― マ ラ 灼 熱 の ソ ニ ッ ク ダ イ ン ッ ! ! 」」


凄まじいエネルギーが、既にキャンセルのできなくなったサイクロンルーツの根をあっさりと焼き払い……
同盟軍へと迫った。

105Each Justice:2016/03/30(水) 15:24:53 ID:k.6a5Ls.0
「ふっ……」

貴虎は、自分の勝利を確信した。
この一撃で確実に半数以上は消し飛ぶ。万が一生き延びたとしても、もはや抵抗する力は残っていないだろう。
そいつらはマーラに処理してもらい、後はどさくさに紛れてどこかに爆弾をしかける。
そしてマーラ諸共ヘルヘイムの森を爆破してやれば、晴れてヘルヘイム問題は解決。
次はそれを手土産にビッグサイトへ向かい、ビッグサイトも爆破してやる――












『ゲネシスドライバー』を盗まれた!









「!!!???」









「ざまあみろwwwwwwwwwwwこの腐れメロンwwwwwwwwwwwww」








何が、起きた?
その場の誰もが、状況を理解できていなかった。
あまりにも一瞬のできごとであり、変身が解けて初めてその素顔を晒した貴虎も、マーラさえもが固まった。
唯一動けていたのは……その舌でベルトをからめ捕り、不味そうに咀嚼しているオオナズチだけであった。

106Each Justice:2016/03/30(水) 15:26:39 ID:k.6a5Ls.0
「な……!?」
「古龍なめんなよ……これでもお前みたいな人間よりも、ずっと長く生きてるし、死線だって越えてきたんだ。
 戦場で、最後まで油断するんじゃない。油断したハンターから、我の舌の餌食になっていくのは昔から変わらない……」
「オオナズチ!?」

いつの間にか、オオナズチは前へと出ていた。

『いかん!』
「っ!」

あわててオオナズチの前方に、アイスシールドとA.Tフィールドが展開される。
しかしそれでもオオナズチはその場から動こうとはせず、そのいびつな翼を広げて仲間の前で仁王立ちをしていた。

「オオナズチあなた何をしてるの!? 炎が弱点だってさっき言ってたでしょう!?」
「ほむほむ……我は確かに変態だ。今も頭のどこかでみんなにエロ同人誌みたいなことしたいとか思ってる……
 でもね、我が望む同人誌展開は、仲間と馬鹿みたいなこと話して、好みの女の子を見つけて、襲って……」

氷の盾が、熱に耐えきれず溶けて消えていく。

「我のテクニックで女の子をメロメロにしたら、一緒に巣に帰って、またエロエロする……そんな穏やかな生活がしたかった」

A.Tフィールドにヒビが入る。

「間に合って! 千樹の守りっ!」
「自然に囲まれて、美少女が一杯いて、色々な面白い人間が集まって……この世界樹は我にとってグンマ―以上の楽園だった。
 それをあんな、たった一瞬の快楽を与えただけで誰もかれも使い捨てるような、女の子どころか生物に対しての感謝の念すら持たない……
 あんな、あんなイカレチン○連中に、これ以上壊されてたまるかくそったれがああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!」

世界樹の防壁が軋む。
オオナズチの絶叫を飲み込むかのように、破滅のエネルギーはすぐそこまで迫っていた。

「……とか言っちゃったりしてwwwwwwwこれで皆を守りきれたら我はヒーローでモテモテ間違いなしですなwwwwww」
『オオナズチ、やめろ! お前ではあの攻撃を受けきれん!』
「……あのスライムは瀕死だ。そしてあの腐れメロンはベルトが無ければ変身できないただの人間、残るは最初通りマーラのみ。
 この攻撃さえ凌げば、きっと何かしらの活路が見えてくるはずだ。
 んんwwwwwww我は古龍の中でも特にタフな種族なんですぞwwwwwシールドで威力が減衰してるこんな攻撃wwwww
 それも一発だけwwwwwww耐えきれないwwwwwwwわけがないwwwwwwwwwwwwwww
 安心してwwwwwwwできる限りみんな後ろに下がってwwwwwwwwそしてwwwwwwww
 我の分までwwwwwwwww楽しい世界樹ライフをwwwwwwww堪能して欲しいんですぞwwwwwwwwwwwwwww」
「オオナズチ!」

最後の防壁が突破され、吐き出されるオオナズチの霞ブレスも蒸発していく。



(ここまでですかな……ああ、せめてさやかちゃんにも別れの言葉くらいは……)












『ヨク頑張ったネ、オオナズチ――君が死ぬ必要はナイよ』

107Each Justice:2016/03/30(水) 15:27:30 ID:k.6a5Ls.0
「wwwww……え?」



『  ハ  ル  マ  ゲ  ド  ン  』


謎の声。直後に『世界樹の怒り』が炸裂した。


「ぬおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!?」
「ぐああああああぁぁぁぁぁぁあ!?」
「ぴぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!?」

マラ灼熱のソニックダインを一瞬にして相殺したそれの余波は、後ろにいた三人すら大きく吹き飛ばして壁に叩きつける。

『死ぬべきなのは、サクヤや他のみんなを殺しテマドカサエ殺そうとシタ、コノケガレドモだ』

「な、何者じゃお主!?」

マーラ達さえ吹き飛ばしたそれは、異形の怪物であった。
形のことなる龍の足に翼はまだいい。6本の赤い竜鱗で覆われた禍々しい触手と、黒い眼の中でこちらを睨みつける金色の光はなんなのか。
あからさまな怪物でありながら、それが人の型を完全には崩していないというのが、その場にいた誰をも恐怖させた。

「ま、まさか……」

ただ一人、まどかだけはその正体に心当たりがあった。

『マドカハワタシヲユルシ、救ってくれタ。ユイイツ私のナゲキに耳を傾けてクレタ女神にして、新たな世界樹のカンリシャ。
 私はまどかヲこのサイキョウのアメダマと共に守る者……』
「なんだと……」

『イワバ――フォレスト・レスト……オイアメダマ、同じコトバが連続ではシマリガな「エーテルリンク解除ッ!」にしゃっ!?」

眩い閃光と共に、異形の人型は消し飛んだ。
代わりに現れたのは、今は亡きスニゲーターが待ち望んでいた存在。

「あ……危なかった。危うく完全に意識乗っ取られるところだったよ全く……!」
『あ、主!?』
「にしゃにしゃーしゃ! にしゃしゃーん!」
「セルちゃん!? ……もう少し頑張れよ飴玉、折角なんだから名乗りぐらいは終えてからって……?」

ウォークライの現在の主にして、ダオスと双璧をなす世界樹の守護者レスト。

「にしゃああああああああああああ――――――――ッ!!!!!!!」

そして眼を見開き、誰から見ても明らかに殺意に満ち満ちている世界樹の核、フォレスト・セル。

「ほっほっ……まさか、まさかここにきてこのような大物と出くわすとはのぉ……思わず滾ってしまうわい!」
「ば、ばかな……」
「ぴ、ぴぃぃ……」

ご立派をギンギンにさせるマーラとは対照的に、貴虎とスラリンは完全に戦意を喪失していた。
この巨体で一度地上に出てしまえば、世界樹を倒さずに地下に潜るのは至難の技のはずだ。
一体どうして、この規格外の怪物が地下までやってこられたのか?

ほんの少しだけ、時を遡ろう



108Each Justice:2016/03/30(水) 15:28:47 ID:k.6a5Ls.0
「……サクヤ? っ……! サクヤッ!」

フォレスト・セルに舐めまわされていたレストは、悪寒を感じていた。
全身を余すことなく舐めつくされるおぞましさからくるものではない、もっとおぞましい寒気。

「フォレスト・セル! 聞こえるかっ!? いますぐ、僕を、舐めるのを、中止、してくれぇ……!」

舌で転がされながら、レストは必死で叫んだ。
今の悪寒は普通ではなかった。暗く密閉されたこの口内において、確かに従者の悲鳴が聞こえたのだ。
早く行かねば、彼女が殺されてしまうかもしれない。もしかしたら、既に殺されてしまっているかもしれない。

「行かなきゃ……サクヤの声が……聞こえたんだ……!
 こんな駄目な主人に……愛想を尽かさないでいてくれたあの子の、悲鳴が……っ!」

知ったことではない――正確には、まどかの命令通り治療が済むまでは外に出すわけにはいかない。フォレスト・セルはそう判断した。

「頼むよ……! これ以上、手が届く範囲だったのに、誰も守れないのは、嫌なんだ……うわっ!
 くっ……! こうなったら、まどかやみんなに怒られてでもフォレスト・セルの一部を切り開いて……
 そうだっ、サクヤの身に危険が迫っているってことは、一緒にいるはずのまどかも――」

「にしゃああああああああああああああああ――――ッ!!!」

その言葉で、フォレスト・セルはおぞましい雄叫びを関東中に放った。

「ぐあああああああ! 口内に僕がいるのに叫ばないでくれぇ! と、とにかくわかっただろう!?
 これはまどかの危機でもあるかもしれないんだ! 頼むから僕を……
 いや――そうだ。君も来ればいい。治療しつつ地下に移動すれば、まどかのいいつけを破ったことにはならないよ」

「にしゃ?」

「ああ、君が僕を地下に向かわせる見返りに、僕は君をまどかの元へ連れて行こう。
 正直かなり危険な賭けではあるけど、このまま何もできずに地上にいるよりはましだ。
 地価は君の方が詳しいし、まどかの気配も察知できるんだろう? 僕の身体、一時的に君に貸そう。
 ――エーテルリンク! 対象、フォレスト・セルッ!」

こうして融合を果たしたフォレスト・セルは、まどかの匂いを追って地下へと潜ったのである。




「レストさん……ご、ごめんなさい、サクヤさんは……」
「……わかっている。それよりまどか、フォレスト・セルに命令を。
 エーテルリンク中にフォレスト・セルのスキル内容は理解できた。あれは絶対の障壁を持っている――セルメンブレンだ」
「わ、わかった。セルちゃん、セルメンブレン!」
「にしゃーん!」

フォレスト・セルが叫ぶと同時に、極薄の膜の防壁がまどかや同盟軍を包み込んだ。
フォレスト・セルが持つこの障壁は、氷竜のミラーシールドさえ上回る。
ありとあらゆる攻撃全てを威力を何倍にも跳ね上げた上で、敵対者全員に跳ね返すのだ。

「まどか、君もこの障壁から外へは出ずにみんなは体力の回復に専念してくれ。いくらなんでもみんな、これ以上戦闘ができる状態じゃない」
「で、でも……」
「まどっち、ここは大人しく言うことを聞くべきですなwwwwwwwかっこつけたけど、やっぱり我も死にそうですしwwwww
 それにこいつならwwwwwww我の角と同じようにあのイカレチン○も蹴り折れそうですからなwwwwwww」
「……あれは君がサクヤにあんな真似するからだよ」
「サーセンwwwww……さっきは助かったよ。でもあいつは魔王マーラ、お前でも厳しい相手だ。気をつけるんですぞ……」
「誰だよ君!?」
「wwwwwwwwwwwww」

109Each Justice:2016/03/30(水) 15:29:45 ID:k.6a5Ls.0
オオナズチの笑い声をバックに、レストは振り向く。
先程のまどかの言葉、そしてぼろぼろな状態で明らかに人数が減っている仲間たち。
この場で何があったのかは、考えるまでもない。

「ほほう、そこの世界樹の化身の前にお主が先に昇天したいのかの?」
「……昇天?」
「ああ、そうじゃ。このワシのご立派で貫いて、天に昇るような極上の快楽を与えてあげよう。
 そうじゃな……まずは見てもらった方が早いか」
「なっ!?」
「ぴき!?」

そう言ってマーラは触手を伸ばす。
だがそれに捉えられたのはレストではなく――貴虎とスラリンであった。

「な、何をするマーラ!?」

「……残念じゃが、お主たちはもう戦えんよ。即席のワシらよりも、こやつらの連携と信念は上じゃ。
 たとえ自分が死のうともワシらに臆さず向かってきた者、リスクを背負ってでもこちらにやってきたこやつら。
 そして世界樹の化身すらも手懐け、本当に巫女となりえそうなあの娘……そしてその娘の殺意に、お主らはその身体で立ち向かえるか?」

貴虎は思わず、まどかの顔を見る。
どう見ても幼さの残る顔立ちでありながら、その眼には確かにマーラの言う信念と、そして揺るぎ無い殺意が宿っている。
本来は温厚であったであろう少女をあのような眼にさせてしまったのは、何が原因か――自分達ではないか。

「くっ……だが、私はインベスどもを――


「インベス、か……悲しいのぉ貴虎。お主は確かに戦士としては優秀であったが、余りにも冷静さが足りぬよ。
 ――あの娘は、インベスではなく人間だぞ? お前とワシで昇天させたあのムチムチの婦警も、キョウリュウジャーもな」
「「――ッ!!?」」

魔王から告げられた、遅すぎた真実に貴虎とスラリンの顔は一気に絶望色に染まった。
自分たちが守ろうとしていた人間を、自分たちの手で殺してまわり、挙句それを喜んでいた……?

「哀れじゃな……一時とはいえ、仲魔になったよしみじゃ。
 ――その絶望をすぐ忘れてしまえるような、黄龍に施した快楽以上の快楽で――昇天させてやろう」
「ま――








(この項目は、あまりに不適切な表現があったため、検閲削除されました)











【呉島貴虎@仮面ライダー鎧武】 死亡確認
【スラリン@ドラゴンクエストV 天空の花嫁】 死亡確認

110Each Justice:2016/03/30(水) 15:30:46 ID:k.6a5Ls.0
「うっ……くっ……惨すぎるわ、こんなの……」

あまりにも凄惨な光景に、貴虎たちを必ず殺すと決意していたほむらさえもが、口元を抑えて涙を零す。

「あんなん同人誌でも出した瞬間コミケ永久出禁どころか即逮捕もんですぞ……」

凌辱にはある程度耐性があるはずのオオナズチですら、嘔吐してしまっている。
彼がセルメンブレン障壁の中で霧を張らなければ、もっと多くの同盟軍が一生もののトラウマを背負うこととなっていただろう。
それでも、音までは防げない。
あれほど恐ろしかった貴虎の、あまりにも酷すぎる嬌声の数々は、確実に多くの者の耳にこびりついて離れることはないだろう。


「……サクヤにも、こんなことをしたのか」

一番至近距離で貴虎とスラリンの凌辱劇を見せられたレストは、片膝をつきつつも必死で嘔吐を堪えていた。
今の行為で確信した。この目の前の悪魔の思考には、仲間だとか成し遂げるべき目的だとか大層なものは存在しない。
ただヤるだけ、下半身脳というか、脳が下半身なのだろう。いやそもそも身体が下半身のご立派な時点で当たり前か。
とにかく、目を背けて背後を見せた瞬間――ヤられる。

(痛いところついてくるな。いくら身体が丈夫でも、こんな精神的にクる攻撃をしかけてくるなんて。
 フォレスト・セルを戦わせるのは本当に最終手段だ。ここは、僕が冷静になってこいつに対処しないと……)

「サクヤ? ああ、 こ の 娘 の こ と か の ? 」

貴虎とスラリンを完膚なきまでに凌辱し、上機嫌となったマーラは戦車から生首を一つ取り出した。

「安心せい、急な割り込みじゃったから軽い絶頂死コースで――

言い終える前に、マーラのご立派――マーラの顔面に、強烈な蹴りが放たれていた。
これが(|)、こう(く)なったのだ。

『ぎゃあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ! や、やめてくれ主ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!』
「本気で蹴りやがりましたよwwwwwwwだがザマァイカレチン○wwwwwww」

ウォークライが何故か絶叫し、オオナズチが笑い、残る面々は絶句していた。

「ち……本当に叩き折ってやろうと思ったのに、なんて硬いんだよこの猥褻物……っ!」
「ぬほぉぉぉぉ……いかんいかん、危うくこの痛みだけでイってしまうとこじゃった。
 ふぅむ、お主の身体もワシ程じゃないにしても、相当ギンギンみたいじゃのう……」

一瞬折れ曲がったマーラは、しかしなんでもないと言った様子で、頭部から白濁液を撒き散らしながらも立ち上がって見せたのだ。
普通の相手であれば、間違いなく今の一撃で即死だったであろう。
一体魔界でどのような修行をすれば、あそこまで屈強なご立派になれるのであろうか。
この場にもっと男が多く存在していたならば、誰もがマーラに憧れたことだろう。

「じゃが……貴様ごとき若造、このワシのギンギンのバッキバキの突きで、すぐに昇天させてくれるわ!」
「そんなに『突く』のが好きなら乗ってあげるよ……
 ――錬成! 『グングニル』!! さあ魔王マーラ――懺悔の用意は出来ているか?」

自分のご立派を傷つけた男に対して、マーラは静かに本気の構えに入る。
対するレストもまた、マーラの心も折らんと世界樹の根から槍を作り出して身構える。

「「いくぞっ!」」

二本の槍が、激しくぶつかり合った。




111Each Justice:2016/03/30(水) 15:33:23 ID:k.6a5Ls.0
「はあああああぁぁぁぁぁぁっ!」
「グフォフォッ……なかなかやるが、そんな手数勝負ではこのご立派には敵わんぞぉ!?」

暴風を纏う神速の突きを次々に浴び、粘液の防壁をひっぺがされても、マーラはひるむことはしない。
身体を切り裂かれ興奮からか白濁液を飛び散らせても、さらに前へ前へとぐいぐいと進む。

「チャージ……からの体当たりを喰らえぃ!」
「ぐ……ごほっ……!」

速さと技を圧倒的な力がねじ伏せ、暴力的なご立派がレストの腹部へとめり込む。
槍と言う武器は接近を許しすぎては、その長所を生かせなくなってしまう。
懐までマーラの侵入を許した時点で、勝敗は一瞬で決まったかに見えた。

「……この程度! チェストォォォォォォッ!!!」
「ぬごばぁ!?」

しかし、今度は接近しすぎたマーラがそのご立派に凶悪な拳を受け、大きく仰け反った。

「正拳『突き』も突き技だからね。騙してはいないだろう?」
「フォッフォッ……うむ、その通りじゃな。しかしお主、本当にギンギンな身体をしておるのぉ……生物とは思えん硬さじゃ」
「それはこっちの台詞だよ。今の力で殴った冥竜や狂信者は一撃で消し飛んだのに、普通に耐えられるとはね……」

お互いがお互いの攻撃をその身に受け、相手の力量を理解する。
そしてその強さの裏にある、弛まぬ努力の成果を。
くしくも二人には共通点があった。
長年の努力の末に手に入れた、至高の肉体。そこから放たれる、悶絶必至な攻撃。
片やこれまで多くの者をその肉体で『天へ昇らせ』てきた魔王。
片やこれまで多くの狂信者をその肉体で『地へ還し』てきた人間。
二人の共通思考――それは。


「「相手が硬い? も っ と レ ベ ル を 上 げ て ! 物 理 で ヤ (殺) れ ば い い ! 」」


そう、二人は誰が言ったか『レベルを上げて物理で殴ればいい』を地で行っている存在。
マーラは、自己強化魔法をかけたあとにひたすら物理攻撃しか行わない程に雄々しい時期もあった。
レストも本職は観光大使でありながら、トチ狂ったレベル上限の持ち主。
両者叫ぶと同時に、再び肉体と肉体をぶつけ合う。
もはや本能的に理解していた。魔法攻撃をしたところで、お互い効かないか吸収されるか反射されるかのどれかでしかないと。
ならば残った武器はただ一つ、極限まで鍛え上げられた己の肉体のみ。

「これならばどうじゃ!」
「甘い!」

マーラの突進を、槍を突き立てたレストが棒高跳びの要領でかわして背後へと回り込む。

「一撃で折れないなら、何発でも打ちこんでやる!」
「そうはさせぬわ!」

凄まじい反応速度で振り向いたマーラが、薙ぎ払うようにそのご立派を主張させる。
合わせるように振るわれた槍とそれはぶつかり合い、両者が僅かに弾かれた。
そして再び距離をとってはまたぶつかり合う。
いつ終わるかもわからない、物理の宴が幕を開けた。





112Each Justice:2016/03/30(水) 15:34:03 ID:k.6a5Ls.0
「でああああああぁぁぁぁっ!」
「ぬっ、ほぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?」

突進を受け流し担ぎ上げ、レストがマーラを地面へと突き刺す。
どれだけぶつかり合ったかはもはや両者数えていない。
二人の激しい攻防と拮抗状態は続いていた。

「はぁ……はぁ……」

しかし、ここにきてレストには明らかな疲労の色が見える。
無理もないだろう。彼は大量の狂信者との戦闘を終えてから、十分には回復しきれていないのだから。

「ふぉぉぉぉぉぉぉ!」

めり込んだご立派を引き抜き、マーラが滾る。
見ての通り逆にマーラは疲労の色が薄い。
当然だろう。誰かをぶち抜いて昇天させて喜び、戦えば戦う程に昂ぶっていく存在なのだから。

「ぬふぅ……前言を撤回しようレストよ。お主のギンギンなパワーとそのバッキバキの硬さは……悔しいがワシ以上じゃ!
 まだまだワシも修業が足りんのぉ……」

自身のご立派に対して絶対の自信を持つマーラが他人を認めることは非常に珍しい。
だが負けを認めたにしては、実に愉しげにマーラは笑う。

「じゃが――まだまだ若い」
「っ!」

次の瞬間、マーラの姿が消えた。

「ワシの熟年のテクニック、スピード、そして最も大切な持久力! こればかりは何者も敵うまいてぇ!」

マーラは既にレストの背後に回り込んでいた。
疲労し動きが鈍った獲物を、絶対の狩人が仕留めにかかる。






そして――









「天に昇るがいい! 地 獄 突 き ! 」
「――――ッ!!!!」


ご立派が、レストの穴にぶち込まれた。

113Each Justice:2016/03/30(水) 15:34:43 ID:k.6a5Ls.0
「あ……あぁぁぁ……!」

都庁同盟軍の誰もが、その瞬間に崩れ落ちる。
レストですら、マーラには勝つことができなかった。
まだこちらには最後の砦としてフォレスト・セルがいるが、もはやそれでも安心はできない。

「ぐ……ぅぅ……!」
「さすがじゃな。ワシのご立派を受けてなおまだ普通に息があるか。よいぞよいぞ、これからこそが本当のお楽しみじゃからなぁ……」

まだ息はあるようだが、今の状況ではそれは逆に余計な地獄を見てしまうだけだろう。
それこそ、あのトラウマ確定のファガンや貴虎と同じようになってしまうかもしれない。
誰もが、その凄惨な最期から目を背けようとする。






「……んっ、く……―――――かかったね、マーラ」
「な、なんじゃと!?」
「事前にフォレスト・セルに解されてなきゃ、危ないところだったよ……アビリティ、鋼心之構ッ!」
「「え゛っ!?」」





その場の全員が、思わずフォレスト・セルに視線を向ける。

「セ、セルちゃんが……ドヤ顔をしてる……!?」
『まるで意味がわからんぞ!?』

一体自分達の知らない場所でレストの身に何があり、フォレスト・セルが何をしたのか。
あえて誰もそれには言及をしなかった。今はする時ではない。

「ば、馬鹿な……まさか、あやつにワシのご立派を上回るほどのテクニックがあああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

フォレスト・セルの表情を見たマーラは、これまでにないほど狼狽していた。
そしてレストもその隙を逃すような真似はしない。身体を仰け反らせ、連結したまま勢いをつけて身体を振り下ろし、しっかりと大地を踏みしめる。
さらにそのまま片足を軸に180度回転。
これまで、レストは同盟軍に見せつけられるように貫かれていたのだ。
それが回転したということは……

                          ( * )

『……マーラにも、穴はあるのだな』

今度は同盟軍の目の前に、マーラの大切な穴が晒されることとなる。

「ひ、ひいいいいぃぃぃぃぃ!? は、恥ずかしい! 穴があったら入りたいわい! いや、もう入ってるんじゃけども!?
 ど、どうしてじゃ……抜くことも、これ以上深く挿すこともできぬ……!?」
「……鋼心之構は、僕の身体を超鋼体(ハイパーアーマー)状態にする技だ。僕が自ら動こうとしない限り、僕は絶対に微動だにしない。
 お前のスピードが僕より上なのはすぐにわかったさ。だから『確実に捉えるため』には、こんな方法しか思いつかなかった……」
「じゃ、じゃがこの状態では、ワシもお主も互いに攻撃はできぬぞ……あ、いい締め付け――」

「まどか――こいつに全力の怒りをぶつけるんだ。僕ごと、一切の容赦なくやってくれ」

衝撃的な言葉に、同盟軍だけでなくマーラも固まった。

114Each Justice:2016/03/30(水) 15:35:30 ID:k.6a5Ls.0
「で、でもそれじゃあ!」
『いかん、レスト! いくらお前でも、その傷では巫女の一撃を受けるのは無理だ!』
「僕の耐久力は、多分この中だとまどかが一番知ってるんじゃないかな? 大丈夫だって、あれだけメギドラオン受けて生きているんだから。
 それにこんな奴と心中する気はないよ。まどか以外も、赤竜さんと氷竜さんにそれからウォークライとフォレスト・セルにも手伝ってもらおう」

仲間たちを諭すようにレストが話す最中も、マーラはさらにもがいていた。
彼は誰よりも早く、この悪魔じみた作戦の内容を理解してしまったのである。

「僕にあって、マーラにないもの……それは『属性攻撃の吸収』だ。みんなは僕ごとマーラを焼いたり凍らせてくれればそれでいい。
 それで僕はこんな状態でも体力を回復し続けられるし、逆にマーラにはダメージが蓄積され続けるからね」
『な、なるほど! では早速失礼して……アイスブレス!』
「うーん、涼しい」「ぬあああああ、やめろぉぉぉ! ワシの肛門を冷やすんじゃあないぃぃぃぃぃぃ!」

対照的な反応が返ってきたため、氷竜はにやりと笑みを浮かべた。
やっと状況を理解したのか、属性攻撃が可能な面々も次々に構えに入る。

「レストさん……」
「大丈夫さ。遠慮なくやってくれ。僕一人の怒りがマーラに届かないなら、みんなの怒りもぶつけてやればいいだけってことさ」
「……うん!」

きっ、とまどかの表情が引き締まる。
眼前には、多くの仲間を辱め殺害した、憎き魔王マーラの肛門。

「……」

あまりに直視には耐えがたい光景なので、目を閉じつつまどかはダオスの教えを思い出していた。


――なに、自分も前線で戦いたいだと? 悪いが、それは却下する。
――まどかよ、確かにお前は世界樹の巫女となった。その秘めたる魔力は、私やレストを遥かに超えるものだろう。
――だがお前はまだ、私たちに勝つことなど到底できはしない。何故だかわかるか?
――簡単なこと。私たちとお前とで決定的に違うのは、戦闘経験だ。
――どれだけ強力な力であっても、それを戦いの中で最大限生かすには、あらゆる戦局を知らねばならない。
――相手の動きから、次にどのような攻撃がくるのか。自分はその時、どう動けばいいのか。
――雑魚ならば世界樹の圧倒的な力で強引にねじ伏せられるが、相手が実力者だった場合……お前は、満足に力も振るえずに敗れるだろう。
――戦闘経験は一朝一夕で身に付くものではない。お前や世界樹を守るために、私たちが存在するのだ。大人しく後衛で……
――……わかった、そんな顔をするな。ならば一つだけ、お前に奥義を教えてやろう。他の技は魔物から聞くか、見て盗むのだな。


「魔王マーラ……あなただけは、絶対に許さない……! 私の……世界樹の……みんなの怒りを……思い知って!!!」


――この技は、威力は絶大だが隙も大きい。故にまどかよ、ただでさえ戦闘経験の少ないお前は、必ず相手が動けない状態で使え。
――目を閉じ、大気中の魔力を全身で感じるのだ。それを両の掌に集め、練り上げ、収束させよ。あとはそれを相手に放つだけでいい。
――シンプルだが、これは強力な技だ。お前でも扱えるだろう。
――なに、技名? ティロ・フィナーレみたいなかっこいい感じで……?
――むう、そうだな……私は二択だった。真にするか、スーパーにするかで3か月ほど悩んだことがある。

115Each Justice:2016/03/30(水) 15:36:12 ID:k.6a5Ls.0
――よし……私以上の魔力を持つお前が放つ奥義なのだ。ならばこの奥義の名は……



















「 ハ イ パ ー ま ど か ビ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ッ ッ ッ ム ッ ! ! ! ! ! ! 」
















まどかの叫びと共に、無数の魔法陣が彼女の背後に現れる。
そしてその魔法陣から、まどかの両手から、極大の光が降り注ぐ。
光の中から漏れる絶叫は、果たしてどちらのものか。
しかしまどかは仲間を信じ、光を弱めるようなことはしない。

『受けよマーラ! 我らの怒りも!』
「にしゃしゃしゃしゃ―――ッ!」

さらに爆炎と吹雪が途切れることなく放たれ続けた。
仲間には癒しを、敵には滅びをもたらす氷炎。
ボロボロの身体に鞭打ち、まどかに負けじと彼らも全力で攻撃を続ける。

「ああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

世界樹の魔物と巫女の総攻撃、世界樹の怒りはそうそう治まるものではない。
まどかは涙を零しつつも、ひたすらに攻撃を続けた。
ここで喪った、仲間達の顔を思い浮かべながら……




116Each Justice:2016/03/30(水) 15:36:47 ID:k.6a5Ls.0
「はぁ……はぁ……」

どれだけビームを撃ち続けただろうか。ようやく世界樹の怒りが一段落を迎える。
思っていたよりは世界樹の損傷が少ないのは、それだけあの二人が浴びていたということなのだろうか。

「マ、マーラは!? 倒せたの!?」
『それよりも、我が主は無事なのか!?』

精根尽き果てた同盟軍の面々が、煙が立ち込める中心部の様子を伺う。

「っ!」

黒焦げた何かが、抉れた地面の端を掴んだ。



「……げほっ……まったく……
 まどか……さすがに限度ってものが……あると思うよ……途中から喰らってるの僕だけだったんだよ……?」
「っレストさん!」


這いずり出てきたのは、煙をあげながらも意識ははっきりしている世界樹の守護者の方であった。
それはつまり――

「勝った! 勝ったんですなwwwwwwあの魔王マーラにwwwwwwwやったですぞおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉwwwww」


魔王マーラが、討伐されたことを示していた。
オオナズチの歓声から遅れて、ようやく残る面々もその勝利を実感する。
魔物も人も抱き合い、共に労いあい、生きていることを噛みしめる。



多くの犠牲を出した世界樹の地下での死闘は、ようやく終わりを迎えたのだ。



【マーラ様@女神転生シリーズ】 死亡確認





117Each Justice:2016/03/30(水) 15:37:27 ID:k.6a5Ls.0
「ほむほむ、大丈夫……?」
「ええ、ソウルジェムの穢れはフォレスト・セルが地下に来てくれたおかげでなんとかなったから……
 あとはこの傷をさやかに治してもらうだけよ」
「んんwwwwwやはりさやかちゃんは大天使ですなwwwww我も早く癒されたいwwwwww」
『しかしオオナズチよ……草を生やさないお前は随分久々に見た気がするぞ』
「けれど、地上に戻ったら……みんなになんて言えばいいんだろうね……」
『……今はとにかく地上を目指すぞ。俺だって、主が本当に大丈夫か心配で地下に残りたかったんだからな』
『しかし、これ以上本来の地上の守りを疎かにするわけにもいかん。……それにしても雷竜達はどこへいったんだ?』
『む……確かに妙だ。それに影薄達も……』

マーラが倒れても、それは束の間の安息にすぎない。
身動きのとれる生き残りの同盟軍は、それぞれの思いを胸に再び地上へと戻るのであった。

【二日目・11時00分/東京都・世界樹地下】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)首輪解除
【装備】ソウルジェム@魔法少女まどか☆マギカ(穢れ0パーセント)
【道具】支給品一式、ベレッタM92(残弾0)、レミントンM870(残弾0)、ミニミM249(残弾0)、M16クレイモア×5、M84 閃光手榴弾×15、88式地対艦誘導弾、長ドス、ゴルフクラブ
【思考】基本:まどかを守りつつ、主催者を倒す
0:まずは仲間や自分たちの治療
1:まどかは命にかえても守る
2:武器を補充したいけれど……
3:ビームはすごかったけど、まどかのネーミングセンスはちょっと……

【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】ダメージ(特大)、疲労(大)
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたい
0:大天使さやかに手当してもらう
1:正直、友や仲間の死には心を痛めている
2:やっぱり草を生やしてこそ我ですなwwwwww
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います

【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、首輪解除、攻撃力1.5倍、被ダメージ半減
【装備】無し
【道具】支給品一式、余った真竜ニアラ
【思考】
基本:世界樹の防衛
0:主人の容体が気になるが、まずは地上に戻る
1:レストを信頼
2:これで巨根ランキングはまた俺が一位だな……
※レスト直属の魔物のため、装備の恩恵によりステータスが上がっています

【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(大・再生中)、疲労(大)、左側の首再生中、首輪解除、怒りと悲しみ
【装備】無し
【道具】とけないこおり@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:都庁同盟軍と共に生き残る。DMC信者は殺す
0:雷竜と影薄組が心配だが……
1:鹿目まどかは必ず守る
※一定の魔力を有する相手であれば、テレパシーで会話可能
※首が再生すれば、再びミラーシールドが使用可能になります

118Each Justice:2016/03/30(水) 15:38:04 ID:k.6a5Ls.0
【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
【状態】ダメージ(大)、疲労(中)、首輪解除、怒り、キュアピーチに変身中
【装備】リンクルン@フレッシュプリキュア!、キュアスティック・ピーチロッド@フレッシュプリキュア!
【道具】基本支給品一式、大量のドーナツ
【思考】
基本:絶対に殺し合いを止めて、みんなが助かる方法を探す。
0:みんなが死んじゃったのは辛いけど、前を見ないと……
1:都庁同盟軍のみんなと一緒に殺し合いを止める
2:ほむらはまだ少し怖いが、仲良くしたい
※9期とは関係ありません。

【偉大なる赤竜@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【状態】ダメージ(大)疲労(大)、傷心
【装備】無し
【道具】もくたん@ポケットモンスター、支給品一式
【思考】基本:歌で自然環境の保護を世界に訴える
0:傷が癒え次第、雷竜達を捜索したい
1:都庁の仲間達、カヲル達を守る
2:仇であるDMC狂信者は確実に根絶やしにする
3:許すまじ天魔王軍!!
4:拳王連合軍も滅ぼす

【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、傷心、怒りと悲しみ
【装備】キーボード@楽器
【道具】支給品一式
【思考】基本:バサラの遺志を継ぎ、彼の歌を届けて殺し合いを終わらせる
0:警察組のことを、どう伝えればいいんだ……
1:シンジ君を探して一緒に歌う
2:DMC狂信者や天魔王軍は許さない
3:しかし僕にバサラの代わりが務まるのか……?
4:死んだ仲間たちのためにも、レクイエムを歌いたい
※使徒だからか、竜と会話が可能です。





その頃、地下中心部では……

「よいしょ……」

まどかは羽を展開しながら、何かを運んでいた。

「これで……全員だよ……」

その顔は、マーラを倒したというのに今にも泣きだしそうなものであった。

「にしゃーん……」

彼女を手伝っていたフォレスト・セルもまたどこか落ち込んだ様子だ。

「ごめんよ……そんな役目を任せちゃって……」

壁にもたれかかっていたレストは、ゆっくりと起き上がると二人が運んできたものに近づく。
それは――トリン、サクヤ、スニゲーター、ロックオン、メガボスゴドラ、世界樹の仲間達。それから警察組の遺体であった。
さらには、貴虎とスラリンであったであろうモノまで。

119Each Justice:2016/03/30(水) 15:39:37 ID:k.6a5Ls.0
「マーラと戦ってる最中……投げ技しかけた時とかにね、一応みんなの首は取り戻してたからさ……」

レストはデイパックから仲間の首を取り出すと、それを遺体へと近づける。
そして、回復の力が行使された。自身が切断された腕をくっつけたように、遺体の修復を試みているのだ。

「せめて……ちゃんとした姿で埋葬してあげないと……そう思ったんだ」
「うん、そうだね……」

首と胴体は、あっさりと繋がった。
しかし彼らが動くことは、もう二度とない。
まどかはぼろぼろと泣きながら、フォレスト・セルが掘った穴へと仲間達を埋葬していく。
少し前まで、一緒に食事をして会話をしていたはずの仲間達が、土の中へ消えていく光景は……あまりにも悲しすぎた。
カヲルからの強い願いで、ほんの僅かな間とはいえ仲間となった警察組も、その傍へ埋葬されていく。
せめて、もう少し早く出会えていたなら……そう思わずにはいられなかった。

「にしゃ」
「次で最後……? あ……っ!」

泣いていたまどかの表情は、さらに崩れてしまった。

「ごめんよ……サクヤ……ごめんよ……」

修復された従者の頭を、レストは静かに泣きながら撫で続けていた。
体内に吐き出された穢れを全て掻き出してやっても、彼女が凌辱された事実は消せない。
どれだけ修復し頭を撫でたところで、もう彼女が尻尾をゆらすことはないと、わかっていても。

「ごめん、なさい……サクヤさんっ、私を、庇って……っ!」
「まどかのせいじゃないさ……僕が、もっとちゃんとしていて、僕が最初から地下に向かってさえいれば……
 でもあの時、サクヤが止めてくれたからこそ、僕は今もこうしてまだ人間でいられている。
 君のおかげで、風鳴翼と同類にならなくて済んだんだよ。ちゃんとお礼を、言いたかったなぁ……」

サクヤの目論見通り、レストのテラカオス化はフォレスト・セルの浄化の力で治療されていた。
代わりに彼は色々と大切なモノをなくしたわけだが、風鳴翼と同類となり狂い果てるのとどちらが幸せだったのだろうか。

「堕ちても、僕についてきてくれる……だっけ。あれ、実は結構嬉しかったんだよ……あの言葉は、まだ有効かい?
 君を守ることも、仲間を守ることもできなかった本当に駄目な主人だけど……もう少し、君の傍にいることを許して欲しい。
 ――エーテルリンク」

小さく呟かれた禁呪と共に、サクヤの身体がレストへと吸い込まれていく。
光が収まれば、そこには従者の角を生やした主人がいた。

「レストさん……」
「君に救われた命だ。もう、二度とあんな混沌の力には呑まれない。人間として生きて、この世界を平和にしてみせる。約束するよ……」

レストは涙を拭い、己にも回復魔法を施す。
散って行った従者や仲間のためにも、ここで挫けるわけにはいかないのだから。

「……私も、もっともっと頑張る。みんなに守ってもらったこの命を絶対に無駄にしたりなんてしない。
 マーラの言葉通りなら、まだ私は巫女見習い……必ず本物の世界樹の巫女になって、人も魔物も共存できるような世界にしてみせる」

それはまどかも同じ気持ちであった。

「……そういえばマーラの奴、消し飛ぶ直前にも巫女がどうこう言ってたな。他にも、予言とか……」
「え?」

120Each Justice:2016/03/30(水) 15:40:16 ID:k.6a5Ls.0
――んほおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ♪ ワ、ワシの全身、特にシリに次々に熱いのがぶち込まれてくるぅぅぅぅぅぅぅ♪ 目覚めそううううぅぅぅぅ♪
――ぐうぅぅぅぅぅぅ……! と、とっとと消えろこの猥褻物ぅぅぅぅ!
――おひょおおぉぉぉぉぉ……! こ、この威力、まさか本当にあの娘が予言の巫女なのかのぉぉぉぉぉぉぉ!
――ぬふぅぅぅぅぅぅぅ……! ワシを破ったお主らの行く末が気になるがもう……イ、イかされてしま……あ、ア―――――――ッ♪♪♪」
――うわあああぁぁぁぁ!? ぼ、僕の中に気持ち悪い白濁液がぁぁぁぁ!?

「……そうだ、僕のも掻き出さないと」
「予言の……巫女? 世界樹の巫女とは違うのかな?」

マーラの最期の言葉を思い出し、青ざめるレストと首を傾げるまどか。
何かを知っているようであったマーラではあるが、少なくともこの戦いの最中はもう復活することはないだろう。
新たな謎をもたらされたが、まどかたちの目的は変わらない。

「うん、レストさんの治療が終わったら私たちも地上に戻って皆に相談してみよう」
「そうだね。……ちょっと待っててもらえるかな、そこの陰でマーラの置き土産捨ててくるから……」
「う、うわぁ……レストさん大丈夫!? お尻からピンク色の液体がなんかすごい出てるよ!?」
「……正直、君のビームのダメージと合わせて死にそうなほど痛い。でもこの程度、白濁液を掻き出して僕の魔法を使えばすぐに元に――」


RPが足りない!


「……しまった、フォレスト・セルとのリンクやマーラとの戦い、みんなの身体を元に戻してたらいつの間にか魔力が枯渇してる」
「た、大変! 待ってて、私は世界樹のおかげで魔力供給の恩恵大きいし、すぐに回復するからね!」
「待って、流石に尻は不味いって。○学生の君に尻穴を見せつけるとかそれもう社会的に即死だからね!?」
「お、お尻……そういえば、本当に男の人でもお尻にその……ア、アレを入れられたら気持ちいいの?」
「あぁー! 右腕が特に痛いなぁ! 誰か治してくれないかなぁ!」
「わ、わかった! すぐに治すね!」

しかし、暴れ回ったマーラの爪痕はいろいろな意味であまりにも深いものであった。

121Each Justice:2016/03/30(水) 15:40:47 ID:k.6a5Ls.0
【二日目・11時00分/東京都・世界樹地下中央部】

【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(中・再生中)、魔力消費(小・再生中)世界樹の巫女、首輪解除
【装備】世界樹の衣
【道具】支給品一式 その他不明、モンスターボール(フォレスト・セル)
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:損傷した世界樹とレストを治療した後、地上に戻る
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:マーラの残した巫女と予言の言葉が気になる
3:……お尻にアレを入れられるのって気持ちいいのかな?
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮と同じスキルが使用可能です
※ダオス直伝のハイパーまどかビームを習得しました

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】ダメージ(特大・再生中)、魔力枯渇(再生中)、肛門大裂傷、各種超耐性、エーテルリンク(サクヤ)、首輪解除
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント、グングニル
【道具】支給品一式、不明品、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ニアラの逆鱗
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:マーラの言葉は気になるが、今はとにかく動けるようになるまで回復に専念。尻だけは自分で治す
1:影薄三人と同盟軍の味方は助ける
2:謎の物質への対抗策を早く見つけたい
3:機械っぽい外見の奴とDMC信者は問答無用で潰す
4:鬼灯を警戒。協力はするが、狸組も一応警戒
5:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
6:天魔王軍とDMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
7:能力低下攻撃への対抗策を手に入れたい
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※フォレスト・セルの力により、テラカオスの力が浄化されました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です

【フォレスト・セル@新・世界樹の迷宮】
【状態】健康、ポケモン状態、首輪解除、アクティベイトモード
【装備】不明
【道具】不明
【思考】基本思考: マドカ マイ ゴッデス 
0:まどかの護衛を最優先
※巫女の祈りにより、固定思考の呪縛から解放されました
※体質により、テラカオス化ナノマシンも浄化、その影響も受けません
※他者の穢れなども浄化可能ですが、満腹状態では不可
※まどか以外には何を言っているか理解できませんが、まどかの手で言葉を教えることはできるようです
※常人にはセルの表情変化はわかりません
※完全なテラカオスになりきる前(候補者)までなら舐めまわしなどで浄化可能ですが、何かしらを犠牲にすることとなります
※サーシェス、きらりなども浄化可能ですが、聖帝軍は別物なので浄化できません
※すごいテクニックをもっているようです

※貴虎とスラリンの遺体だけ埋葬されていません
※ファガンの卵もその辺に転がされてます

122光熱斗の奇妙な冒険 Part8:2016/04/04(月) 12:44:10 ID:hz/s/mLA0

「ここまで来れば、一先ずは……」
「安全ですか……?」
「安全ではない、カオスロワで安全地帯など基本存在しない」
「それにしてもなんで野球場……?」
「球場には医務室がある、それだけだ」

 大阪のとあるドーム球場。
 今のところ野球をやっているチームはいない。
 だが、それは逆に彼らに安息するにはラッキーであった。 
 気絶した熱斗を寝かせて、二人とロックマンは話し込む。
 ついでにシグナムは着替えた、懐かしの赤いジャージに。

『パパやみんなは大丈夫だろうか……』
「もし放送で呼ばれたら……」
「いや、放送はまだ流れないだろう」
「何故ですか?」
「主催者側の対応がいくら何でも遅すぎる」

 超人血盟軍が奇襲を仕掛けてもう結構な時間が経つ。
 成功にしても失敗したにせよ、そろそろ何らかアクションを起こすに違いない。
 何期もカオスロワに出ているシグナムが言っているのだ、多分そういうことなんだろう。 

「……主催者側も一枚岩ではない、というのは飛竜さんから聞いた」
「『ユウキ=テルミ』ですか?」
「ああ、私にはさっぱりわからんが、そいつが大体悪いらしい」

 名前だけを使者スレの崩壊間際に聞いたが……。
 どんな奴なのか彼女たちにはさっぱり見当がつかない。

『その飛竜さんって強かったんですか?』
「ああ、主催者を殺すことに関しては奴以上に過激な奴は私は知らない。
 ……だが、その飛竜さんを殺すとなると……間違いなくそいつは『バケモノ』の類だ」
「そんな……シグナムさんでも勝てないってことですか?」
「さぁな……だが、一つ言えるのは、勝てても何か裏があるってことだ」



「―――ほう……『奴』がいるのか」



 背後から凄まじいまで殺気を二人(+PET内のロックマン)は感じた。
 それでも熱斗は起きない。

「ハ、ハクメンさん……?」
「貴様、知っていることを全て話せ、全てだ……!」

 明らかなまでに殺意。
 殺気でその空間の大気が震える。
 そこにいたのは白い鎧に白い仮面の侍・ハクメンがいた。

「まあ待て、順をおって話す、まず武器を収めろ。
 ……それに貴様がここにいるということは『死国』で何かあったのか?」

123光熱斗の奇妙な冒険 Part8:2016/04/04(月) 12:45:03 ID:hz/s/mLA0

 ◆ 

「なるほどな、あの同性愛者たちが裏切ったか」
「『テルミ』が裏で手を引いてるのであれば……あの総理とやらが道化となっているのは納得がいく」
『悪いやつなんですね』
「奴は必ず滅ぼさねばならぬ……!」
「で、そのテルミっていうのはセイバーですか?」
「多分違うが」
「提督や他の皆さんは……?」
「それは……わからんな」
「そんな……」
「だが……奴らならば……」
「で、その中には剣を使うセイバーはいますか?」
「いないな」

 気絶した熱斗をよそにして4人とロックマンは情報交換をする。
 ……4人?

『ちょっと待ってください、貴女は誰ですか!』
「むっ、セイバー忍法気配遮断をしていたのですが、バレてしまいましたか」
「ハクメンさんの知り合いですか?」
「知らんな」
「私は気づいていたんだがな、あえてスルーしてた」
『なんでですか!?』
「最初に言ったろ私は『面白いことは大好きだ』からな」

 三人から距離を取ったその少女。
 青い帽子を突き抜けた金髪のアホ毛。
 青いジャージにその手には見事なまでに聖剣。
  
「さぁ、覚悟しなさい! ピンクのセイバーに白のセイバー!!
 最優のセイバーである私が今この場で最優であることを証明しましょう!!」
「待て、セイバーはそっちのハクメンしかいない、どちらかといえば私はアーチャーだ!」
「貴様……何者だ、というかセイバーとは何だ?」
「名乗るほどの者ではない!
 が、強いて言うならセイバーの中のセイバー!
 コードネームは『ヒロインX』、セイバーの中のセイバー『ヒロインX』です!!!!」
『いや、なんで戦うんですか!?』
「セイバーには戦わなければならない時があるんです!
 そこの白いアーチャーは少年とそのおもちゃと一緒に少し離れててください!
 ……あなた方のセイバーとしての実力を図らせていただきます。
 さあ、勝負です! 私が勝ったら私に手伝ってもらいます。
 もし私が負けた場合はなんでも……とは言いませんが、何かします」
「え、えぇーっ…」
『誰がおもちゃだ!』
「仕方ない、二人は離れていろ……このニート臭がする青ジャージは私が……「そんなことを言ってるときが隙だらけだカリバー!!」

 光の聖剣が不意打ち気味で放たれた。
 光の速度は光速である。
 速いよ、光速なんて言ったって光速だからね。

124光熱斗の奇妙な冒険 Part8:2016/04/04(月) 12:46:01 ID:hz/s/mLA0

「ズェア!!!!」 

 だが、それでもハクメンはその不意打ちカリバーを叩き斬った。
 切断した光はドーム状に拡散し、大阪ドームに開放的な穴を開ける。
 
 その間に素早くXはハクメンに接近。
 それと同時に斬りにかかる。

「ふっ! やっ! セイバーっ!!!」
「フン!!」

 だが、すぐさまに斬り返される。
 
「ちっ、マーダーなのか、貴様は!」
「マーダーではないです!! セイバーです!!!」

 シグナムの竹刀をXの聖剣が受け流す。
 それとほぼ同時にハクメンはXに攻撃を仕掛けるが……。
 いつのまにか現れていた左手に持った黒い聖剣でガードされる。
 竹刀はシグナムの念能力で強化してあるので折れることはない。
 凄まじいまでの三者の撃ち合いで起きる風圧で大阪ドームの屋根が飛ぶ。 

「す、すごい……あのシグナムさんとハクメンさんの二人相手に互角に……」
「うーん、おはよー……なんか騒がしいけど何かあったの?」
「熱斗さん!」
『熱斗くん! 今ちょっと大変なことが!』
「まさかまたデカオが死んだの!?」
「いえ、デカオさんは生きてます……多分。
 そんなことよりもしっかり捕まってください!」
「えっ、翔鶴さんのどこに捕まってもいいの!?」
「どこでもいいです!」
「やったぜ」
『熱斗君、最低だよ……』

 光兄妹の最低な会話を他所に闘いは激化の一手を辿る。
 剣圧でありとあらゆるものが文字通りに吹っ飛ぶ。
 最優のセイバーを名乗るだけあってヒロインXの技量は凄まじいの一言に尽きる。
 紛れもなくトップクラスの実力者二人を同時にするくらいの強者である。

(ヒロインX……一体、何トリア・ペンドラゴンなんだ)

 シグナムのそんな思考を遮るように聖剣は振られる。
 しかし、シグナムは紙一重で回避し、すぐさまに反撃に移る。
 
 上段、中断、下段の三段をほぼ同時に攻撃する。
 
「踏み込みが甘いですね!!」
「ああ、わざとだ……そこに誘い込むためのな」

 避けた先にはハクメンが構えている。
 しかし、Xの持つ直感スキルでそれは読んでいた。

(打たれる前に打つ! 私以外のセイバーぶっ飛ばす!)

 体を素早く反転。
 その勢いのまま斬りに行く。
 だが、それがX唯一の悪手だった

「せぇぇぇぇい!!!」
「!?」

 ワンハンド・ブレーンバスター。
 ハクメンの超反応での当身投げ。
 Xの顔面が地面に叩きつけられる。 
 
 そのまま、シグナムにマウントポジションを取られた。
 で、そのまま首元に竹刀を突き付けられた。
 これが決まり手となった。

「……私の負けというわけですか」
「世間一般的に言えば、そうらしいな……」
「さて、貴様の目的を教えてもらおうか?」
「……その前にどいて貰えませんか?」
「やだ」

 仕方ないのでヒロインXはシグナムにマウントポジションを取られた状態で語り始めた。

125光熱斗の奇妙な冒険 Part8:2016/04/04(月) 12:47:00 ID:hz/s/mLA0

 ◆

 あれは私がいつも通りに私以外のセイバーを狩る仕事をしている時でした。

「何!? 貴様はニートではないのか!? 定職に着いていたのか!?」
「シグナムさん、落ち着いてください」
『回想シーンの邪魔しちゃだめですよ』

 ……続けていいですか?

 その時、とある噂を耳にしたのです。
 
 【まもなく世界が滅びる】

 流石にそんな馬鹿な話があるわけないとその時は思ったのですが……。

 そして、独自調査を続けていたのですか……。

 なんやかんやで、私はここの星に辿り着きました。

 そこで私が見たのは最悪の状況でした。

 この土地(日本)しか残っていない状況ですよ?

 信じられますか? 

 恐らくは何かあると思って来てみれば殺し合いですよ。

 私としてはセイバーを合法的に処理できると最初は喜々として数々のセイバー倒していました。

「貴様……殺し合いに乗っているのか?」

 乗ってはいません、私は自分の仕事をしていただけです。

 私は対主催です。誰がなんと言おうと私は対主催です。

 と、途中までそんな感じでやってたのですが……

 私はまたある噂を耳にしました。

【DMC狂信者とか狂った連中の中にセイバーを名乗る奴がいる】

 これは私としては見逃せない事実なので一先ず大阪でライブをしていたというこの地に来ました。

 しかし、その後の調査で分かったのはそいつらの本拠地は東京にあるということでした。

 だが、流石に私一人で叩き潰すのは無理が生じるということは明白でした。

 愛機『ドゥ・スタリオンⅡ号』も途中で壊れてしまいましたね。

 そこで私はまずこの地でDMC狂信者のセイバーを倒すために仲間を集めることにしました。

 出来ればセイバー属性以外の人たちがよかったのですが……。

 ええ、セイバーは私一人でいいですからね。

 妥協に妥協を重ねて、仕方なく私は貴方たちに声を掛けました。

 以上です。
 
 ◆

126光熱斗の奇妙な冒険 Part8:2016/04/04(月) 12:47:46 ID:hz/s/mLA0

「お願いします。一緒に東京に来てDMC狂信者を叩き潰してください!」
「……断る、我はこの地に来るとらしい『風鳴翼』を滅せねばならぬ」
「私はどっちでもいいかな……基本戦いたくないし」
『熱斗君、翔鶴さん、僕たちはどうする?』
「私はお二方の判断にお任せします」
「うーん……」
「お願いします、DMC狂信者を抹殺した後なら主催者でもぶっ飛ばしますから」

 未だにマウントポジションを取られた状態で懇願する。
 己の手でセイバーを殺すためならプライドは投げ捨てる。
 それくらい安いプライドは持ち合わせている。

「じゃあ、俺たちも東京に行こう!」
『熱斗君……でも、パパたちやデカオ君たちがまだ……』
「兄さん、皆を信じよう……!
 それで、セ……Xさん、東京に行く何か方法は?」
「ふっ……ノープランだ」
「……死国にある祐一郎たちが作ったという高速艇を使え」
「よし、そうしよう」

 そして、熱斗、ロックマン、翔鶴、シグナム、ヒロインXは死国に向かって移動し始めた。

「あれ、ハクメンさんは?」
「あの白いセイバーならもう行きましたよ」

 いつの間にかハクメンはいなくなっていた。

『うーん……』
「どうしたんだ、ロックマン?」
『ハクメンさんとそのユウキ=テルミってどんな関係なんだろう?』
「因縁関係と一言でいうには浅はかならぬ関係ということは言える」

【二日目・10時30分/大阪ドーム跡地】
【光熱斗@ロックマンエグゼ】
【状態】ダメージ(中)、首輪解除
【装備】自分のPET(ロックマン入り)
【道具】支給品一式×2、デカオ(ロックマンエグゼ3)が作ったおべんとう(腐っている)、チップトレーダー@ロックマンエグゼ、
    大量のガッツマンのチップとバグのかけら、ガンデルソル3(実物)ネオバリアブル(実物)
    各種ナビカスタマイザーパーツ、大量の金、シンクロチップ、他不明
【思考】基本:主催者たちにネットバトルを挑んで勝つ!
0:死国に戻る
1:プリズムとフォレストボムのチップを探す
2:その為に色んな人にネットバトルを挑む
3:大災害で死んだネットバトラーやネットナビ達のためにも、早く殺し合いを終わらせて世界を平和にし、ネットバトルの面白さを再び世界に広めたい
4:新たな家族として翔鶴は大切にしたい
※スタメン落ち確定です。野球の公式試合には一軍では参加できません。
※大山デカオ@ロックマンエグゼ、ロックマンエグゼ2、ロックマンエグゼ3(BLACK版)、ロックマンエグゼ5チームオブブルースは死国にいるようです
※熱斗やヒノケンなど一部を除く多くのネットバトラーが大災害で命を落としているようです。
 まだ生存しているネットバトラーの面子については次の書き手氏にお任せします。

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】HP70%
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本;熱斗をサポートする
0:僕に妹が出来たぞォ!
1:主催者たちがネットバトルを受けてくれるか、心配。
2:新たな家族として翔鶴さんは大切にしたい
3:シグナムさん……こんなに強かったんだ。
※PETの中にいます

127光熱斗の奇妙な冒険 Part8:2016/04/04(月) 12:48:04 ID:hz/s/mLA0

【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】ダメージ(中)
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型
【道具】なし
【思考】基本:提督(祐一郎)に従う、妹として熱斗達と共に戦う
1:襲い掛かる者たちを殲滅する
2:二人の妹として彩斗さん(ロックマン)と熱斗さんはお守りする
3:二人に何かあった場合は二人の願いを引き継ぐ
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました

【シグナム@リリカルなのはシリーズ】
【状態】健康、自称フリーター、首輪解除
【装備】赤いジャージ、ストロング・ザ・武道の竹刀
【道具】なし
【思考】基本:対主催
1:熱斗たちに導く
2:主催者たちは倒す
3:本気にさせたな。
4:『ユウキ=テルミ』を殺すか
※今までとは別人ですが記憶(と一部能力)を受け継いでいます
※PSP版の技は使えませんが、念能力が使えます。
※キン肉マンの知識があります。
※首輪解除の技術を持っています。
※死者スレを破壊しました。

【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【状態】健康
【装備】無銘勝利剣
【道具】ドゥ・スタリオンⅡ号(故障中)、スマホ(FGOをやってる)
【思考】基本:私以外のセイバーを殺すが、その前に対主催しておいて他の対主催者と協力関係を築いておく。
1:宇宙の平和が第一ですね
2:DMC信者にいるらしいセイバーは確実に殺す(ついでにDMC狂信者を殺す)
※彼女のクラスはアサシンです。
※謎のヒロインXです。その正体は謎って言ったら謎です。



「――――テルミがいるならば……」


「我は此の忌まわしい『力』に頼らねばならぬ使命が有る」


「……貴様の全てを滅すると謂う『使命』がな……!」


 白き侍は漆黒の蛇を滅する。
 倒すのでもなく、殺すでもなく、滅する。
 
 白きスサノオが再び、黒き地を馳せていく。

【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】健康、unlimitedモード
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『ユウキ=テルミ』及び『悪』を全て滅する
1:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
2:風鳴翼は滅する
※勾玉ゲージ等の状態は次の書き手に任せます
※unlimitedモードに入りました

128急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:23:54 ID:tjxVJt0I0

先ほどまで聖帝軍とDMC狂信者の軍勢の大合戦が繰り広げられていた埼玉・西武ドーム。
その外には現在、ドームへと歩みを進める小規模の集団の姿が見られた。
50人程度の集団で構成された彼らは、案の定野球チームではなく狂信者の一団。
レジーナ・シド混合軍敗北の報をモブ信者の断末魔の通信から知らされた彼らは、疲弊しているであろう
聖帝軍を襲撃せんと近づいていたのだ。


「しかし万全の準備をしていったシドさん達が返り討ちに遭うとは……やはり報告通り野球チームというのは
 恐ろしい連中のようだ……」
「全くだ。トルーパー隊員やレジーナからの報告も『ターバンが……ターバンのガキが!』などと不明瞭な
 話ばかりで全く分からん始末。一体彼らは何にやられたっていうんだ?」

謎だらけの状況に首をひねる狂信者達だったが、それを遮るように一人の人物が話に割って入った。

「ニャガニャガニャガ、まあいいではありませんか皆さん。尊い犠牲になってしまった信者の方々も
 結果的にはクラウザーさん復活の為の力になってくれたんですから。シドさんが横流ししてくれた
 ベルトとロックシードとやらの大半もビッグサイトに上納されましたし、レジーナさんも健在。
 東京の方でも都庁爆破作戦が進行中ですし、後はこのまま順調にSATSUGAIを続ければクラウザーさん
 復活も目と鼻の先ですよ〜」

そう答えたのはオネエっぽい感じの白装束の超人、完璧超人始祖の一人・サイコホm……もといサイコマンだった。
彼もまたクラウザーさん復活の為に彼らと与した新たなDMC狂信者なのである。
もはや相当数の面子が倒されたにもかかわらず、カギ爪の男をはじめとする面々の勧誘力の高さとクラウザー
さんの歌による洗脳力も相まって狂信者は現在も着々と増える一方であった。
果たしてこのまま疲弊した聖帝軍は彼らによってSATSUGAIされてしまうのだろうか?
そう思われていた時である。


ゴゴゴゴゴ………


「おい、何か地面が揺れてないか?」
「た、確かに!」
「あ……あああ〜〜〜〜〜〜っ、あれを見ろ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」



♪デンドン デンドン デンドン デンドン デンドン デンドン デンドン デンドン

♪デーンデッデデーデデデデー デーデデーデッデデーデデデデッデー
(※脳内BGM推奨:トップをねらえ!より、ガンバスター出撃のテーマ)


狂信者一同はその光景に驚愕した。
彼らの視界に見えていた西武ドームの屋根が、真っ二つに開いたのである。
あたかもそんな機能が元から装備されていたかのように。
そしてその中から、想像を絶する物体が顔を出した。


『ニョワ―――――――――――――――――ッ!!』


それはまさに天を衝く巨大なロボットだった。
だがMSなどのようなただの兵器ではなかった。
何とも形容しづらかったが、あえて言うなら『可愛らしい』と言うべきなのだろうか。
とにかくそんな巨大ロボだった。
というかなんでこんなものが西武ドームを割って出てきたのか。

――――話は数刻前にさかのぼる。



「……以上が、俺が知る世界を救うための5つの予言の詳細だ」
「何だよ、要は野球だけじゃ駄目なんじゃねえか!」
「コラ―ッこの梨ーっ!! よくもこの俺にデタラメを教えおって―っ!!」
「ふなっしーのせいじゃないなっしー! 中途半端なお告げしかくれなかった梨の神様の責任なっしー!」

129急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:26:19 ID:tjxVJt0I0

結果的にサウザーを除いてターバンの集団と化す事でシド率いる軍勢を返り討ちにした聖帝軍は、とりあえず
一段落付いたので一端ベンチに後退し、獣王クロコダインが戦闘前に口にした世界救済の5つの予言について
教えてもらう事にした。
戦いを終えて聖帝軍+αの面々の心境は悲喜こもごも。
サウザーは右太ももをターバンのガキに刺されまくった名誉(?)の負傷を治療する必要があり、諸星きらりは
戦闘後にタバサが死亡した事に気づき魔雲天や姉帯達の横で悲しんでいた。
加賀美は無残にも試合前に惨殺されたウルフハリケーンズのチームメイト達を他の面々に頼み埋葬を手伝って
もらっていた。
一試合もできずにこの世を去った彼らの無念は計り知れないものがあるだろう。
……ちなみにその横では球界の暴れん坊・つば九郎が倒されたDMC狂信者達の無事なディパックから支給品を
これ幸いとばかりに抜け目なく漁りまくっていた。
後にチルノも一緒になって漁りだした所で亜久里に咎められて中断する事となったが……。


「しかし“九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂、全てを虜にする歌、巫女の祈り、器たりえる巨像、不屈の
精神を持った勇者。全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる”ですか……」
「九人の戦士による儀式というのは確実に野球の事でしょうけど、残りの予言は不透明なものばかりですわね……」
「うむ、俺もこの予言は以前デルムリン島のブラス老から聞きかじっただけなので、詳しい詳細まではわからん
 のだ。大災害が起きこの殺し合いが始まった時はもしやと思いヤムチャ達と共に野球を始めたのだが……
 あまり力になれず、すまんな」
「いえ、これだけでも知れれば十分な推理の材料になりますよ。ありがとうございますクロコダインさん」

そう言って正太郎は試合前同様再び知恵を巡らせ始めた。
ICPO所属の少年探偵の本領発揮である。

「まず“全てを虜にする歌”ですが、周囲全てに影響を与えるほどの歌と考えると……」
「おいおい待ってくれよ、まさかクラウザーとかいう奴の歌じゃねえだろうな?」
「いえ、それは違うと思います。そもそも狂信者達はともかく僕達自身がDMCの歌の影響を受けていない
 以上、全てを虜にするという定義からは外れていると考えていいでしょう。もしそうならばとっくに
 日本中がクラウザーの信者と化しているでしょうからね」
「うーむ、確かに」

正太郎の推理に一同が納得して頷いた。
あれほど全国規模で活動している狂信者達がいるにも関わらず全国民がクラウザーさんの影響下にない以上、
全てを虜にしているとは言い難い。
というかあれはレジーナを見てもわかるようにもはや洗脳の類である。

「しかしだとすると、予言に記された歌とは一体……」
「ゲヒヒヒ、おい小僧。それならば俺に一人心当たりがいるぜ」
「えっ? 本当ですか?」

そこで口を開いたのは意外にも悪魔超人のザ・魔雲天だった。
先の闘いでも聖帝軍を支援してくれた頼もしい援軍の彼だったが、どう見ても歌には縁がなさそうな彼が
何を知っているのかと正太郎は驚きつつも耳を傾けた。

「何を隠そう、ここにいる諸星きらりこそその歌い手かもしれんという話だ」
「何ぃ〜っ、このでかい女がか?」
「聖帝知らないなっしか? この子はあの大手芸能プロの346プロ所属の注目アイドルなっしー!」
「知ってるのかふなっしー!?」
「ゆるキャラネットワークを通じて、この間ぴにゃこら太に教えてもらったなっしー」

ふなっしーからの説明を受け、一同の視線がきらりに集中する。
きらりの方もある程度持ち直したらしく、いつもの表情で一同に向き直った。
その後魔雲天からこの西武ドームに向かう途中に起こったワハハ部長蒲原と姉帯の雀士コンビとの戦いが
語られ、二人がきらりの歌を聞いてDMC狂信者を脱退した事を知り一同は驚きを隠せなかった。

「ワハハ、という訳で私達は彼女の歌を聞きDMCから足を洗った訳だ」
「みんなもきらりさんの歌を聞けばきっと素敵だって思うよー」

130急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:27:17 ID:tjxVJt0I0
二人が言った事が事実だとすれば、これは嬉しい収穫となる。
あのクラウザーさんの洗脳同然の歌声を押しのけて他者を虜にしたとすれば、もしかしたら本当に彼女こそが
予言の歌い手かもしれないのだから。
それでなくてもDMC狂信者達への強力なカウンターになり得る人材がいれば、それだけで心強い。
聖帝達は皆、もれなくそう考えた。


「要するに、うまくいけばDMC狂信者の連中をまとめて改心させられるかもしれんという訳だな?」
「ええ。予言の事を差し引いても、きらりさんの歌の力が本物ならばそれも可能かもしれません。とはいえ
 どこまでのレベルで通じるかは未知数ですね。蒲原さんと姉帯さんはファン歴が浅い故にたまたま洗脳を
 解く事ができた可能性もありますし……」
「それでもモブの信者共を一掃できれば、数の上で未だに有利を取っている連中を根底からひっくり返す
 事も可能だろうな。幹部連だけが残れば、あとは直接ビッグサイトに殴り込めば互角の戦いができるだろう」

クロコダインの話によると、どうやら彼らの本拠地であるビッグサイトには全国から蒐集された死者の魂が
充満している状態らしく、下手に外部から刺激を加えると大爆発を起こして東京一帯が壊滅する恐れがあるとの
ことだった。
故にビッグサイトを抑えるには白兵戦が有効打なのだが、あのゴキブリのように湧いて出るモブ信者達と
常駐しているであろう最高幹部連ら主力を同時に相手するとなると、相当な戦力を持つ聖帝軍であっても
苦戦は免れない。
何より彼らにどんな切り札があるかもわからないため、油断は禁物である。
そのためまずどうにかしたいのは、やはりモブ狂信者の軍勢という話となった。

「話をまとめると、やはり私達が優先してすべき事はDMC狂信者達の一刻も早い排除と言う事ですね」
「うむ。未だ詳細不明の予言を解読するにしても、儀式たる野球をするにしても、主催者達を倒すにしても
 まずは連中をどうにかせん事には話にならんからな」
「全くだ! 先の試合妨害にしても、この俺達の初陣を空気も読まずに邪魔した事は万死に値する!」
「聖帝の言うとおりだぜ! DMCの連中、もう絶対許さねぇ!!」
「落ち着け二人とも、憤るのは分かるが冷静さを失えば勝てる試合も勝てんぞ?」

DMCの蛮行に怒りを露わにするサウザーと紘汰を高津がなだめつつ、正太郎達は話を進めた。
全員が意見を出し合い、これから自分達が行わねばならない事はさしあたって


1:DMC狂信者の一掃および白兵戦によるビッグサイトの制圧
2:予言の一つである野球の完遂
3:残る予言の解読
4:主催陣営、拳王連合、風鳴翼といった残る陣営の討伐
5:拠点となる乗り物の製作


この5つとなった。

これらを遂行するためには無論聖帝軍だけの戦力では難しい物もあるため、他の陣営を説得して同盟関係を
気付く事が満場一致で決定となった。
特に野球は相手になるチームがいなければ成立しないため、他のチームの捜索は急務である。
イチローチームとドラゴンズは現在消息不明、他の面々も次々とDMCにSATSUGAIされている現状、下手を
すれば儀式が完遂できない恐れもあり、何より聖帝が「不戦勝とか俺のプライドが許さん!」とごねるので
球団を見つけ次第保護する事も活動内容に含まれた。
ちなみに5については、今回の戦いでかなりの大所帯となった自分達が効率よく移動するためにも必要な
事であり、今後拳王連合などと事を構える以上拠点たる戦艦などは必要不可欠であった。


「とはいえ、材料もなく天才科学者もいない我々ではそのようなものを作る事は……」
「確かに……少年探偵にプリキュアに超人レスラーに雀士にアイドル、殺し屋に魔法少女に妖精にガンプラ
 ビルダーに野球選手にゆるキャラに仮面ライダーにターバンのガキ……ぐうっ、これだけ面子が揃って
 いながらそっち方面に明るい人材がおらんではないか!! ラオウの奴が羨ましい!!」

131急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:28:10 ID:tjxVJt0I0
自分の陣営に光祐一郎のような天才科学者やメカニックがいない事に気づき、サウザーは歯噛みする。
やっぱりそういう奴もスカウトしておくべきだったかなぁと今更ながらに後悔する聖帝だった。

【あきらめるにはまだはやい】
「ん?」

背後から背中を叩かれ、ふとサウザーは後ろを振り返る。
そこにいたのは愛用のスケッチブックを持ったつば九郎だった。

「おお、貴様は確かつば九郎とかいうマスコットのペンギn――――ごはっ!?」
【ツバメだ にどとまちがえるな】
「す……スマン」

瞬時につば九郎の放ったヤクザキックが見事サウザーのみぞおちに命中。
スケッチブックを片手にすごまれ、サウザーはビビりながら謝罪した。
するとつば九郎はディパックからある物を取り出した。
見ると何やらヒゲのMSの絵が描かれたペットボトル飲料のような物が握られている。
付属していたメモ用紙を気付いたヤミが読み上げた。

「説明書が付いていますね……『万能兵器化飲料ナノラ 振りかけた物体を兵器に変化させる事ができる
 ナノマシン飲料』だそうです」
「何ぃ! つまり何か元になる物があれば、一瞬にして拠点の出来上がりというわけか! フハハハハ!
 でかしたぞつば九郎!! しかしこんな物をどこで手に入れた?」
【せんりひんのゆうこうかつよう】
「えっ……まさかさっきのDMCの奴らから漁ってたやつ?」
「流石だなつば九郎……殺し合いの場においても1ミリもブレておらん」

サムズアップ(のように見える)ポーズで肯定するつば九郎に、聖帝軍の面々は喜んでいいやら何やらであった。
特にスワローズの選手である高津はつば九郎の素行に明るかったので尚更である。

「とはいえ、何か元になる物って言っても何かあるか? そう都合よく乗り物なんて……」
「…………レイジ、とうとう僕にも活躍の機会が回ってきたようだよ!」
「お、おお……(せ、セイの奴いつになく燃えてやがる……今まで目立てなかったのを気にしてたのか?)」
「そ、そういえばセイ君の支給品は確か!!」

ここまであんまりまともな出番がなかったのでお忘れの方もいるのではなかろうか。
聖帝軍メンバー、イオリ・セイはガンプラバトル世界大会覇者にして優秀なガンプラビルダーである。
続編のトライにおいてもドムの中にビルドバーニングガンダムを隠せる謎技術の使い手なんだから相当である。
そして彼の支給品の中には、大量のガンプラ!
これが何を意味するか、聖帝軍の面々は一部⑨などを除き即座に理解した。


「皆さん手伝ってください! 作りましょう、僕らだけのガンプラを!!」



そこからは結構地味な作業ではあったが、重要な作業の始まりだった。
セイの支給品であるガンプラのパーツを元に、聖帝軍の拠点となる機体を作り出そうという提案に皆が
賛同し、それぞれが意見を出し合いながらパーツを組み立てていく。
『都庁の軍勢などとの同盟も考え、あんまり兵器兵器したデザインにならないように』『敵の意表を突けるように』
という考えのもと、セイの主導のもと作業は着々と進んでいった。
足りない材料はつば九郎が漁りまくった支給品から拝借し、全員が談笑をしつつも真剣に製作を続ける。
そんな光景が西武ドーム内で行われていた。
傍から見たら結構シュールな光景である。

132急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:29:15 ID:tjxVJt0I0

「ところでクロコダインさんは何故都庁の魔物達に機械族がいない事を?」
「うむ、実はかつて大魔王バーンの配下だった頃に秘境グンマ―の民達から連中の事を聞いた事があってな。
 直接の面識はないが彼らに機械の身体を持った者はいない事を聞いていたのだ……まあ、妙な性癖の
 ドラゴンなどはいるらしいのだが」
「ええっ、何それ……ロリコンとかはいないよね?」
『何故でしょう、イリヤさんの発言が恐ろしいくらいフラグ立ててる気がしますよ……』
「う〜ん……がんぷらって結構むずかしいよ……これどこの部品だっけ?」
「チルノ、ダメなっしー! パーツは手もぎじゃなくてニッパーを使わないと! こっちのふなっしーの
 プラモで練習するなっしー!」
「そういうお前はパーツ逆にはめてるじゃねえか! セパレーターあるから使え!」
「うわー凄いねヤミちゃん、髪の毛がヤスリやニッパーになってるよー」
「ワハハ、しかも結構なスピードで組み立ててるな」
「こういう作業は慣れてますので」
「きらりさん、もう大丈夫ですの?」
「大丈夫だよー亜久里ちゃん、きらり、死んじゃったタバサちんの分まで頑張って歌うって決めたからにぃ☆
 天ちゃんや豊音ちゃん達といれば怖くないよー☆」
「ゲヒヒヒ、その意気だぜきらり……それにしても俺はこういう細かい作業は苦手だぜ」
「……犬牟田、一応言っておくが、つば九郎の動向には注意しておけ。奴は性格上不利と見たら平気で俺達を
 切り捨てて裏切るような奴だ。今後何をしでかすかわからんぞ?」
「どれだけ危険なんですかあのマスコット……」
「………(ニヤッ)」
「ええいくそっ、ターバンのガキが気になって作業に集中できん! うおっ、ポリキャップが飛んだぁ!?」
「なんだかんだで皆頑張ってるけど、大半はセイ一人で組み上げてるんだよな……」



そして、なんやかんやあって1時間半後。

「完成です!」
「フハハハハ! 遂にわが聖帝軍の旗艦が完成だ!」
「にしても、これはちょっとデザインが異色過ぎねえか?」
「デザインしたのは大体きらりちゃんだけど、本当にその通りに作っちゃうセイ君も凄すぎるよ……」
「では早速このナノラを振りかけ……」
「待ってくれ、その前にひとつ提案がある」

いよいよ改造ガンプラを兵器化しようという時に、急にクロコダインが手を挙げた。
全員が何事かと向き直る。

「なんだクロコダイン、これからという時に!」
「すまない、だが今後の為に重要な事なのだ。俺はこれから、都庁の魔物達の所へ使者として向かおうと
 思っている」
「ええっ!? 確かに都庁の魔物達とは後で同盟を結ぶつもりですが……まさか御一人で?」
「作業の最中にも話したが、都庁の魔物達は自然環境を汚し機械を扱う人間達を嫌悪している者が大半だ。
 そんな者達と同盟を結ぶには、同じ魔物たる俺が単独で説得に向かった方が好ましい。何より犠牲は
 今後を考えて一人でも少ない方がいいからな……」

確かにクロコダインの言う事も一理あった。
ただでさえDMCの面々と戦争状態にあるというのに、ここにいる面々が全員でいきなりドカドカと押し
かけても無意味に刺激するだけで門前払いされる可能性も否定できない。
何よりカオスロワ野球では1試合で何人が血を見るかもわからないため、控え選手は多いに越したことは
ないのだ。

「待ってくれクロコダイン! だったら俺も!」
「加賀美よ、すまんが科学の力で変身するお前では事を荒立てかねん。何より俺に万一があった時、お前
 にはウルフハリケーンズの灯を守ってもらわねばならん、わかってくれ……」
「クロコダイン……」
「ちょっと待ったクロコダインのおっさん、だったら代わりに俺が行くぜ! 貴虎の奴も探さなきゃ
 ならねえしな!」

加賀美の申し出を断るクロコダインに、ならばと紘汰が名乗りをあげた。

133急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:30:09 ID:tjxVJt0I0
「むぅ……しかし紘汰よ、お前もまたベルトの力で変身する以上……」
「それに関してですが、少々面倒な事になっているようですよ」
「えっ?」
「どうやらその呉島貴虎という人物、どういうつもりか都庁を爆破しようと目論んでいるそうです。しかも
 未確認情報によれば彼はDMCとも同盟を組んだとか」
「何だって!!??」

サウザーから貸してもらったノートPCでカオスロワちゃんねるにアクセスしていた犬牟田はその伏の
文が書かれた書き込みを見せ、それを見た紘汰達は驚愕した。
確かに都庁は危険な存在として認知されているが、こうも大それた事をしでかすとはさすがの紘汰も驚きを
隠せなかった。

「マジかよ……貴虎の奴、何考えてんだ!? あいつらと手を組むなんて!!」
「その貴虎という男の思惑は知らんが、これは下手をすれば取り返しのつかん事になりかねんぞ…!」
『なんだか猛烈に悪い予感がするのう』
「ちょっとルビー! そういうフラグっぽい台詞は勘弁!」

書き込みから結構な時間が経っているため、現状都庁がどういう状況なのかは把握できない。
だが状況はかなりまずいという事はサウザー達も理解していた。
この他にも大阪で拳王連合とホワイトベース連合軍の全面戦争が始まったとか、風鳴翼が電車に乗って大阪に
向かったとか、山が空を飛んでいるとか、そんな書き込みが掲示板に踊っていた。
急がねばならない。
それが全員の見解だった。


その後、熱心な説得もありクロコダインは数名の志願者を連れていく事を了承し、数名が同行する事となった。
面々は貴虎捜索が目的の紘汰、そしてチルノとふなっしーの凸凹妖精コンビの3名。
できるだけ都庁の魔物を刺激しないメンバーを選定した結果、最終的に彼らが残ったのである。

「それじゃ皆、行ってくるぜ!」
「紘汰さん、クロコダインさん達もお気をつけて!」
「ところで行くって言っても徒歩か? ここから東京まで結構あるぜ?」
「それならふなっしーがいい物を持ってるなっしー!」

するとふなっしーがディパックに手を突っ込み、何かを取り出した。
彼の持つ不明支給品、その正体は―――

「ババーン! 『リニアモーターカーごっこ』なっしー!」
「って、電車ごっこで行くのか!?」
「大丈夫なっしー! これは地磁気を利用する事で時速300kmまで出せる道具らしいなっしー!」
「おお、すごいね! あたいが運転手やるよ!」
「待ってください、確か拳王連合軍も似たような物を以前使っていたらしいです。下手をすれば彼らに
 間違われかねませんよ?」
「フフフ……心配はいらん!」

件の電車ごっこロープの上位互換アイテムを見て、不安視する亜久里の横からサウザーが現れ、何かを
取り出した。

「この聖帝軍の旗を持っていれば、間違ってもラオウの仲間だと思われる事はあるまい、持っていけ!」
「貴方、いつの間にそんな物を!?」
「つーか色々とだせぇ!!」
「……まあ拳王連合と間違われるよりはマシだからな、とりあえず貰っていこう」

かくして、でかでかとサウザーの顔が書かれた聖帝軍の旗をクロコダインが背負い、運転手チルノ、
車掌ふなっしーによる聖帝リニアは西武ドームをひとっ走り後にしたのだった。


「うわあああああああああ、思ったより早えええええええええええええ!」
「おいチルノ、そっちじゃない! 東京は反対だ!」
「どけどけーーーっ! ひかれてもほけんおりないよーーー!!」
「これ、本当に都庁につけるなっしーーーーーーーー!?」

134急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:31:46 ID:tjxVJt0I0

【二日目・10時30分/埼玉県】

【聖帝軍先遣隊】

【ターバンのガキ(チルノ)@東方project】
【状態】健康、やる気十分、聖帝リニア運転手
【装備】アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン、リニアモーターカーごっこ@ドラえもん
【道具】支給品一式、ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW
【思考】
基本:『だーすべいだー』を倒す
 1:『とうきょうとちょー』に向かうよー!
 2:みんなで予言を解いて世界を救うよ!
 3:せーてーは頼りないからさいきょーのあたいが皆を引っ張る


【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【状態】不安なっしー!、聖帝リニア車掌
【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン
【道具】支給品一式
【思考】
基本:殺し合いを止めるなっしー!
  1:DMC狂信者達を成敗するなっしー!
  2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー!
 3:本当に都庁につけるか不安なっしー!
 4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー!


【ターバンのガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【状態】健康、怒り、色々不安
【装備】戦極ドライバー、ロックシード(オレンジ) 、ターバン
【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ) カチドキロックシード
【思考】
基本:殺し合いを止める
1:DMC狂信者達、もう絶対許さねえ!!
2:救済の予言の謎を解く
3:貴虎の奴、何考えてんだ!?
4:ダースベイダー、絶対に許さねぇ!!


【ターバンのおっさん(獣王クロコダイン)@DRAGON QUEST ダイの大冒険】
【状態】ダメージ(小)、怒りと悲しみ
【装備】獣王の鎧、グレイトアックス、ターバン、聖帝軍の旗
【道具】支給品一式、不明支給品
【思考】
基本:殺し合いを止める
1:聖帝軍と協力し、DMC狂信者の軍勢を倒す、そのために都庁の魔物を説得する
2:世界救済の予言の謎を解く
3:まともに都庁につけるか不安
4:チームメイトの皆、すまない……

※何事もなければ正午までに都庁につけますが、チルノが運転手である限り無理です。


そして時間は現在に戻る。
開閉した西武ドームから現れた妙なロボットこそ、聖帝軍の手によって作られた改造ガンプラマシン。


その名も、『きらりんロボ』!!(命名:諸星きらり)


全長200m、体重5万トンを誇る驚異のスーパーロボット型戦艦である!


「フハハハハハハ! 元がガンプラとは思えぬ出来栄えだな! あえて言おう、戦艦死国とやらなどカスで
 あると!!」
「サウザーさん、それ別の中の人!」

きらりんロボ頭部に位置するブリッジ。
そこでは聖帝軍の面々が各々指定の位置に座り、ロボの出撃準備を行っていた。
言うまでもなくサウザーは偉そうに艦長席に座り高笑いしていたが。

135急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:32:43 ID:tjxVJt0I0
「空調システムオールグリーン!」
「各種兵装制御システムオールグリーン!」
「通常エンジン起動OK!」
「周囲に障害物、ありません!」
「よ〜し、では聖帝軍旗艦きらりんロボはこれより作戦通り東京スカイツリーに向かう!」
「了解! きらりんロボ、離陸します!」

聖帝軍は何故東京スカイツリーに向かうのか。
それには無論理由がある。
予言の要であり対DMCの彼らの切り札ともなったきらりの歌だが、その効果は正太郎の推理通り
未知数である。
そこで正太郎は日本最大の電波塔たる東京スカイツリーを通して、増幅したきらりの歌を関東一帯に発信
してその正確な効果を確かめようと考えたのである(東京タワーも候補にあったが、何者かにへし折られた
ので却下された)。
これでうまく狂信者達が改心してくれれば御の字、効果が薄くとも今後の判断材料になると踏んでの作戦
という訳である。

「きらりさん、現地に着き次第、ライブの用意をお願いしますね!」
「任せるにぃ☆ きらりの歌でみんなをハピハピにしちゃうよー☆」
「フハハハハハハハハ、見ていろ狂信者共! 野球の恨みと共に貴様らを瓦解させてくれるわ! フハハハ
 ハハハハハハハハハハhぐはっ!?」
【やかましい】
「な、何なのこのツバメ……」

サウザーがつば九郎に蹴り飛ばされたと同時に、スカート部分の大出力ジェットエンジン『じぇっと☆
ふりるすかーと』が火を噴き、きらりんロボは空を華麗に舞った。
対主催勢力の仲違いが続く中、果たして彼らは救世主になり得るのだろうか?
――――それは梨の神様にもわからない。


【二日目・10時40分/埼玉県上空】

【新生聖帝軍】
【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】
【ターバンのガキ(金田正太郎)@太陽の使者 鉄人28号】
【ターバンのガキ(イリヤスフィール・フォン・アインツベルン)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
【ターバンのガキ(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ@北斗の拳イチゴ味】
【ターバンの青年(加賀美新)@仮面ライダーカブト】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのレスラー(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
【ターバンのガキ(諸星きらり)@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのガキ(蒲原智美)@咲-Saki-】
【ターバンのガキ(姉帯豊音)@咲-Saki-】
【ターバンのツバメ(つば九郎)@ヤクルトスワローズ】

現在の共通思考
1:DMC狂信者の完全鎮圧
2:救済の5つの予言の解読及び遂行、野球チームの保護
3:主催者及び危険勢力の討伐

※超弩級ロボット戦艦・きらりんロボを完成させました。元はガンプラですが性能は原作以上です。
※DMC鎮圧作戦の第一段階として東京スカイツリーに向かっています。何事もなければ正午までには
 到着し、きらりのライブが始まります。

136急げ聖帝軍!鋼の巨神が空を飛ぶ!?:2016/04/05(火) 01:33:20 ID:tjxVJt0I0
「ニャガ〜ッ、聖帝軍とやら、なかなか面白いものを作りましたねぇ〜」

きらりんロボの飛行時のバックファイアを回避しつつ、サイコマンはニヤニヤと笑いながらその姿を目で
追っていた。

「サイコマンさん、追跡しなくていいんスか?」
「今は放っておきましょう。彼らが何をするにしても、クラウザーさんが復活すればすべてを逆転させる事も
 可能でしょうからねぇ。地獄から生還したクラウザーさんは如何なる歌声を聞かせてくれるのやら……
 楽しみじゃありませんか、貴方も?」

そう言ってサイコマンは衣装の中から何やら小さな目玉のような形をした物体を取り出し話しかけた。
するとその目玉から声が返って来た。

『別に興味はないね。それより早く俺の身体を用意する算段を付けてくれないかなぁ? 俺は必ず蘇らないと
 いけないんだ……草加市の為にも、乾巧という薄汚いオルフェノクを始末するためにも……』
「まあお待ちなさいな、慌てる乞食は貰いが少ないと言いますからね。本部に戻ればクラウザーさんの
 蘇生の為のクローン技術のデータがありますから、それに私のマグネットパワーをプラスすればきっと
 生き返れるでしょう。それまでの辛抱ですよ」
『(チッ……胡散臭い奴め……だが今は耐えるしかない……これもすべて乾巧の仕業だ……)』


その目玉、いやその男の名は草加雅人。
しばらく前に草加市の市長になった呪縛霊である。
彼は今まで死者スレに行く事なく一人寂しく埼玉県草加市に留まっていたのだが、通りすがったサイコマン
の気まぐれで同行する事となり、彼の持っていた『眼魂(アイコン)』と呼ばれる魂を封じるアイテムに
入れられ、ここまでやってきていたのである。
DMC狂信者に協力する代わりに、肉体を再生する約束を取り付けて。

「ニャガニャガ、さて皆さん、我々もそろそろ本部に帰還するとしますか。そしてディーさん達にも伝えましょう。
『決戦の時は近い』と!!」


【二日目・10時40分/埼玉県西武ドーム前】
【サイコマン@キン肉マン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、草加雅人眼魂
【思考】
基本:クラウザーさんを生き返らせるためSATSUGAIする
1:ニャガニャガ、そろそろ本部に戻って備えますか
2:都庁の方の様子はどうですかねぇ?
3:できればシルバーマンも勧誘したい
※狂信者です

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】草加市の市長に当選した、草加雅人眼魂
【装備】カイザギア@仮面ライダー555、サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】ケーキ、支給品一式
【思考】
基本:生き返る方法を探す
0:どうして俺が死んで、碌に出番もない奴らが生きてるのかなぁ?
1:とりあえず、生き返るためサイコマンには協力する
2:とりあえず、乾巧の仕業にする
3:来年のカイザの日も祝いたい
※眼魂(アイコン)に魂を封じられています。ドライバーがあればあるいは……

138光と陰:2016/04/18(月) 22:29:56 ID:kEpMQcNA0

「あの山、どこに行きやがった!」

 東京都まで飛んできた4人の屈強な男たち。
 サイヤ人の王子、ベジータ。 
 魔界のプリンス、アシュラマン。
 バッファロー一族の生き残り、バッファローマン。
 そして、キン肉マンの兄、キン肉アタル。 

「まあ、落ちつけ……と、言いたいところだが……」

 いくら冷静で的確な判断力の持ち主であるアタルを以てしてもこれにはどうしようもなかった。
 各地でドンパチが起こっている、その中心は間違いなく東京都。

「木を隠すなら森の中というが……」 
「ここに阿蘇山を隠すのはいくら何でも無理があるぜ?」
「既にこの東京都に潜伏している、阿蘇山を小さくしてな」

 恐らくあの阿蘇山は小型になる機能がある。
 ベジータの世界には『ホイホイカプセル』という技術がある。
 主催側にそういう技術者が一人やくらいいてもおかしくはない。

「それよりもベジータ?」
「どうした、アシュラマン?」
「さっきからなんで震えていやがる?」
「武者震いって奴だぜ(震え声)」

 東京都に来てからベジータの様子はおかしい。
 原因は恐らくあの『都庁』にいると思われる金髪集団。
 ベジータの心の奥底にあるトラウマが呼び起こされる。

「俺様なら大丈夫だ(震え声)」

 誰がどう見ても大丈夫ではなさそうだ。
 そんな時であった。 

「……足元……いや、地下から音が聞こえる」
「地震か?」
「いや、何かを掘り進んでいる音だな……しかし、専用機械で掘ってるような感じではないな」

 そして、4人は音の鳴る方への行き方を捜索し始めた。

 ◆ 

「東横さん、赤座さん大丈夫ですか?」
「まだまだ行ける……っす」
「あかりも大丈……夫……だよ」 
「いや、どうみても大丈夫じゃないだろ、ぞれ」
「アンタら、少し休みな」
「いえ、小町さんたちこそ、休んだ方が……」

 地下を掘り進む影薄達。
 しかし、掘り進むにしろ3人はほぼ一般人。
 小町と日之影は3人よりも先程の戦いのダメージが残っている。
 5人が一気に進むにはかなりの労力が必要となる。
 出来るだけ慎重に進まないと崩落の危険性すらある。

 昨今そういう事故も増えてきている。

「皆、大丈夫かな」

 あかりは皆を心配する。
 その時であった。

 ガン、ガン、ガンと何かが迫っている音が聞こえてきた。

「く、崩れるっす!?」
「ど、どうしよう!?」
「いえ、皆さん少し落ち着いてください」
「黒子、アンタ少し冷静すぎやしないか?」
「そうだな」

 頭上から光が差してきた。

139光と陰:2016/04/18(月) 22:30:54 ID:kEpMQcNA0

「大丈夫か!」

 顔を出したのはひとりの男。
 角に3m近い巨体。
 鍛え上げられた。
 そして、レスリングパンツ。



「ゲェ〜〜〜〜ッ! 牛の超人!!」




 小町はそうリアクションを取らざるを得なかった。
 いや、そのリアクションを取らなければならない気がした。
 すると、その牛の後方には迷彩覆面に野球のユニフォームの男。
 さらにその後ろには六本腕の男が竜巻を起こして土砂を掻き揚げている。
、さらにさらにその後ろでMハゲの男が気団を野球ボールのように投げて土砂を消滅させていく。

「アンタたちは……?」
「私はキン肉マンソルジャー……お嬢さん、1人……いや、5人か」
「どういうことだ、ソルジャー、どうみてもその赤い髪の女一人じゃねーか」
「!? アンタ、後ろの桃子たちにも気づいて……」
「ダニィ?」

 アタル兄さんはすぐに着ていたユニフォームを桃子に着せた。
 紳士として……いや、男として当然の行為だ。

「にしても、随分とボロボロのようだが」
「まぁね……」
「それでこいつらをどうするんだ、ソルジャー!」
「黙らんか〜〜〜ベジータ! 彼女たちの怪我に響くぞ!!」
「す、すまん……」

 そのアタルの一喝が一番声量が大きかった。

「話を聞くにしてもまずは……この状況ではな」
「?」
 
 要救助者には怪我の治療が必要である。
 徐にマスクに手をかけるアタル兄さん。

「「「「「うおっ、まぶしっ(っす)!?」」」」」

 フェイスフラッシュ
 
 それはキン肉族のキセキ。
 アタル兄さんのマスクの下から放たれる暖かい光が5人を包み込む。

「なんだか暖かいっす……」
「そうだね……」
「ケガが……治っていく……?」
「本当だ……」

 影薄たちの怪我は全快した。
 首輪を外した状態でのフェイスフラッシュはそれくらい可能なのだ。

  ◆  ◆ 

「戦艦『死国』の奴らは殺し合いに乗っていない……だって?」
「ふむ、何か勘違いがあったようだな」
「ネットの風評被害って奴ですかね」

 一先ず、落ち着いたので情報交換をする。
 そこで色々な情報を行き交った。
 共に『飛竜』という男に助けられたことがあったので情報の信用性もそこそこにあった。
 (尤もこれはハクメンや悪魔将軍が近くにいたので自由に動けなかったテルミの悪手であった)

 そして、彼らは……

「我々は一先ず都庁に向かうか」
「異論はねぇぜ!」
「カ〜カッカッカ! そう言うと思ったぜ!」

 都庁に向かうことを決めた。
 道案内と上層部への介入は小町たちに頼むことにした。
 ……借りは返すものであるのだから。
 そんな中、ベジータは決意を固める

(『虎穴に入らずんば虎児を得ず』って奴か……)

 ベジータは震える足を一歩また一歩と都庁に向ける。
 サイヤ人の王子としての誇り(プライド)はまだ失われてはいない。

140光と陰:2016/04/18(月) 22:31:15 ID:kEpMQcNA0

【二日目・10時30分/東京都・都庁近く】

【影薄組】
【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除
【装備】斬魄刀『神鎗』@BLEACH
【道具】舟
【思考】基本:もう仲間を誰も失わない為にカオスロワを終わらせる
0:呉島貴虎を探す
1:殺し合い打破のためにも都庁には協力する
2:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
3:幽香と戦う事を覚悟する
4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
※飛竜たちと情報交換して、主催達が九州ロボにいることを知りました。
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除
【装備】己の拳
【道具】支給品一式
【思考】基本:主催者を倒す
0:呉島貴虎を探す
1:仲間を守る
2:混沌の騎士が遺した謎を解く
3:↑の全部やらなくちゃあならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
0:さっきの揺れ……地上の人達は大丈夫っすかね?
1:加治木先輩や友人たちと生き残る
2:時間があればスマホを使ってネットで情報を探る(現在は電波の届かない地下なので不可)
3:DMCファンだけど信者の暴動にはドン引き


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ウィンチェスターM1912
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:仲間と共にカオスロワを終わらせる
1:友人たちと生き残るためにも、都庁に協力する
2:空気中に漂う物質への対処法を考える(世界樹が有力?)
3:狂信者には絶対に負けません


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除
【装備】エンシェントソード@Minecraft
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:仲間と一緒にカオスロワを終わらせて主人公らしく大活躍!
0:戦いは怖くても、あかり負けない!
1:混沌の騎士の分も頑張る
2:まどかと同じく、人間と魔物の共存に賛成
3:オオナズチ以外の都庁のモンスターの背中に乗りたい

【超人血盟軍】
【ベジータ@ドラゴンボール】
【状態】健康、金髪恐怖症(小)、首輪解除
【装備】野球のユニフォーム
【道具】支給品一式、ノートパソコン
【思考】基本:死にたくないので野球をする
1:悪魔将軍様の方が怖い
2:絶対に都庁には近寄りたくないが……行くしかないようだな(震え声)
3:移動しつつツイッターはやる
※何度も瀕死状態から回復したので戦闘力が上がりました。

【キン肉アタル@キン肉マン】
【状態】健康、首輪解除
【装備】キン肉マンソルジャーのマスク、飛竜が書いた九州ロボの地図
【道具】不明
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:都庁にいるの者たちと情報交換をしたい
1:飛んでいった阿蘇山の情報を探す

【アシュラマン@キン肉マン】
【状態】健康、首輪解除
【装備】誰かの腕×6本にミットが5つ
【道具】不明
【思考】
基本:悪魔将軍様に従う
0:最低でも主催者の一人は倒す
1;ところでこの腕は誰の何だ?

【バッファローマン@キン肉マン】
【状態】1000万パワー、首輪解除
【装備】ロングホーン
【道具】不明
【思考】
基本:悪魔将軍様に従う

141復活の時!?:2016/04/22(金) 22:50:13 ID:SVPLOgd.0
「報告は以上になります、ディーさん!」
「ご苦労。引き続きクラウザーさんへの生贄をSATUGAIしてくれ」

慌てた様子の信者達に対して、狂信者を束ねる幹部の一人であるディーは冷静であった。
本来であれば何故彼がここまで冷静でいられるのか疑問を持つであろうが、ほとんどの狂信者達は難しいことは考えない。
頭の中の99%がクラウザーさんで埋まっているからだ。

「……三島、狭間、それに峰津院。よく頑張ってくれた」

共にDMC談義に華を咲かせた仲間達の死は、既に知っている。
だが其処に悲しみはない。彼らは一足先にクラウザーさんの礎になれたのだ。これ以上の名誉はあるまい。

「彼らが返り討ちに遭う中、よもやただの女子高生の中野があの雷竜クランヴァリネを仕留めるとは驚きだったが……
流石にこれ以上は無駄か。後はあの魔王マーラに任せるとしよう」

都庁近辺に残らせていた狂信者の偵察隊が、先程完全に死滅したというのが先程の報告だ。
もはや攻め込まずとも、異臭を感じ取られて高空からレーザーで薙ぎ払われたとのことらしい。
さらに龍脈の龍すら葬った二体の怪物の触手と鈎爪でバラバラに切り刻まれて世界樹の肥やしになったとの報告もあった。
地上から都庁を攻め落とすのはこれでは不可能であり、地下からの奇襲も協力者の貴虎が致命的なミスをやらかしたせいでもう使えない。
念のために最強の魔王を地下に送り込みはしたが……

「ヘルカイザー、準備はできたかね?」
「完了している。その魔王マーラとやらならば、あの都庁の連中をSATUGAIできるのか?」
「間違いなく、壊滅的な被害を与えられるだろう。単純な戦闘能力だけで見れば、私やセルベリアよりも上だ。
しかし都庁の連中の厄介さは、個々の強さもさることながら連携にある。マーラや呉島が討たれる可能性もゼロではないだろうな」

ビッグサイトに帰還していたヘルカイザーの質問に対しても、ディーは冷静に答える。
現存する信者や信者候補の中では、マーラが最強である。そして爆破作戦は一度失敗すれば二度と同じ手は使えないだろう。
それでいながらディーは、それが失敗する可能性すら考慮している。
ヘルカイザーが、僅かに眉をひそめた。

「もしその万が一があればどうするつもりだ?」
「だから、大丈夫なのだ。狭間は否定していたが、私は既に狭間達が敗れた場合の策も練っていたんだ。彼らには話していなかったがね。
問題あるまい。結果的にクラウザーさんの復活が大幅に近づくのであれば」
「……確かにな。どうせ聞いたところで俺になど秘策を話はしないのだろうが、それもクラウザーさん復活の前には些細なこと。
言われた通り、俺の持つ3体のサイバーダークの内の一匹の所有権をお前に移した。
あとは俺の好きにさせてもらうぞ。イチローチームとドラゴンズは俺の手でSATUGAIせねば気が済まない」
「武運を祈るよ、ヘルカイザー」

踵を返しビッグサイトを後にするヘルカイザーを見送りながら、ディーは譲られたカードを天高く掲げる。

「現れろ。サイバーダークドラゴン!」

デュエルディスクも無しに、カードの機械龍が実体化する。
非常に優れた能力を持つディーだからこそ出来る芸当である。

「効果を発動! 墓地よりドラゴン族一体を装備品として呼び戻す! 選択するのは――龍脈の龍だ!」

常闇の空間から、都庁で消え去った龍脈の龍が装備品として引きずり出された。
かつてヘルカイザーが同じ手段で呼び戻した冥竜と同じようにその眼は死んでおり、さらに引きずり出されたのは頭部一つのみ。
最も全身を引きずりだしたらビッグサイトが内部から崩壊するため、出来てもやらなかったであろう。

「ほう……なるほど、素晴らしい」

しかしディーは、その不完全な龍脈の龍を見るなり笑った。

142復活の時!?:2016/04/22(金) 22:50:57 ID:SVPLOgd.0
「龍脈とは本来、姿なき純粋な力の塊。各所に張り巡らされ、それを一点に集めるのには大変な苦労が伴う上に場所も限られる。
だが峰津院の秘術により龍の姿として都庁にて具現化し、それが生物としての死を迎えることで決闘者のカードの力で好きな場所で蘇らせることができ……
そして狭間が予め用意していたこの黄泉レイプシステムの拡張機能と併せれば――!」

黄泉レイプシステムに、サイバーダークドラゴンと龍脈の龍がエネルギーとして吸収されていく。
眩い閃光の後、ディーが再び目を開けると……

「おおおおぉぉぉぉぉぉ……!」

思わずディーは感嘆の声を漏らす。
より重厚かつ複雑、強度も増して破壊が困難となったと思われる黄泉レイプシステム。
その中心部に――死後の国への門が現れていたのだ。

「ク、クラウザーさん! 今こそ、復活の時……!」

喜びが頂点に達したディーは、普段のキャラもかなぐり捨てて満面の笑みでその門を開いた。
自分のデイバックの中に既にクラウザーさんのクローン肉体は入れてある。
後はこの死後の世界からクラウザーさんの魂を連れ戻せば、計画は完了する。
そしてクラウザーさんさえ蘇れば、自分も含めて信者達の戦意も能力も最高の状態となり、敵対勢力を滅ぼせるだろう。
仲間も連れず一人で突入してしまう程、今のディーはテンションが高かった。


「こ……これは一体……ここが、死後の世界だというのか?」


そんなディーすら、死後の世界を見た瞬間に絶句してしまう。
死後の世界、通称死者スレは異様な光景であった。

「まるで廃墟……しかしこれは、再生しているのか……?」

一度何者かの手で世界そのものを破壊されたような痕跡、そこに別の何かの力が働き自己再生を試みているような、そんな様子であった。
しかしこの様子ではすぐさま死者スレの復活は難しいだろう。
瓦礫と死者の怨念渦巻く声。恐らく崩壊に巻き込まれて魂すら磨り潰されてしまったためかとディーは考える。

「クラウザーさんは、無事なのか!?」

強固な意志を持つ存在は魂だけとなってなお頑丈ではあるが、それでもやはり肉体以上にデリケートである。
早急に、クラウザーさんの魂を見つけて現世に呼び戻さねば、もはや如何な手段を講じたところでクラウザーさんの生声を聴くことはできなくなってしまう。
そんな全宇宙の大損害になってしまうことは、断じて許さない。

「クラウザーさん!」

たまらずディーは駆け出した。
本来は冷静な神さえも突き動かす、クラウザーさんの魅力はまさに神をも超えるもの。
故にディーはこの黄泉の世界を甘く見ていた。
いくら龍脈で強化された黄泉レイプシステムとはいえ、その黄泉の世界そのものが何かしらから干渉を受けていては、安心安全に黄泉をレイプすることなどできはしない。

「……プ……イプ……」
「む、確かに今、レイプと聞こえたぞ!? クラウザーさん!?」





「誰かワシをレイプしてくれぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!ぐっちゃぐちゃのどっろどろになるまでレイプしてぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「う、うわああああああぁぁぁぁぁぁ!?」

そこには怪物がいた。

144復活の時!?:2016/04/22(金) 22:52:10 ID:SVPLOgd.0
【二日目・10時30分/東京ビックサイト内部・死者の門前】

【ディー@うたわれるもの】
【状態】健康、小疲労、激怒
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:シグナムとやらを探し出す
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:クラウザーさんのために、いずれくる各勢力との戦争に備えて戦力を増強する
3:大災害などに疑問はあるが、後回し
4:仮にマーラが帰ってきてもビッグサイトには入れない
※制限によりウィツァルネミテアの力がある程度制限されていますが、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています。
※黄泉レイプシステムが龍脈強化され、死者スレへの突入が可能になりましたが、現時点では乗り込んでも目的の達成は困難です
崩壊した死者スレを強行突破できるだけの大戦力或いは死者スレを修復するなにかが必要です
※なんらかの要因で死者スレが復活する可能性があります


【ヘルカイザー亮@遊戯王GX】
【状態】健康、クラウザーさん欠乏症
【装備】デュエルディスク、スマホ
【道具】支給品一式、キメラテックオーバードラゴン、サイバーダークドラゴン、冥闇に堕した者(装備品)、他不明
【思考】基本:強敵をSATSUGAIして己も満たしつつクラウザーさんを復活させる
1:クラウザーさん復活は上層部に任せ、自分は各地の強敵のSATUGAIをする
2:野球チーム全てを警戒。可能であれば自分の手で殺す
※サイバーダークはロワ中に死亡したドラゴンを装備品として装備可能ですが、一度に一体までの制限あり
※サイバーダーク一体をディーに譲渡したため、使用可能なサイバーダークは2体までです
※龍脈の龍はシステム強化に使用されたためもう装備蘇生できません。またテラカオスの体内に魂を取り込まれているニアラも装備不可です

146信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:21:44 ID:BkNre/Zw0
大阪ドームにて熱斗たちと別れたハクメンは進路を名古屋方面に向けて疾走する。
この世界に災厄を振りまく「凶(マガト)」――混沌の歌姫(テラカオス・ディーヴァ)と化した風鳴翼を刈り取るために。

「……どういうわけだ? 奴の動きが止まっている?」

走っている途中で、ハクメンが翼から発せられた混沌の気を辿ってみたが、翼の動きが名古屋で止まっているのを感じた。
実は翼はどこぞのかませ犬ドラゴン軍団を倒したものの、移動するための足であった列車を破壊されてしまい、新しい乗り物を探すために名古屋で立ち往生しているのだ。

「まあいい。
理由はなんにせよ、動かず止まっているのなら都合がいい。
死国の者達の被害を気にせずに戦えるからな」

ハクメンにとっては翼が名古屋に留まってくれているのはありがたいことだった。
自分と同格の力を持つ悪魔将軍を除き、翼相手に死国及び拳王連合軍で勝てる人間はほとんどいない。
もし大阪に近づく前に自分の手で翼を討てれば、死国の者達に被害を及ばすことはなくなるからだ。
破天荒集団である死国の面子に仲間意識を抱いているかは正直微妙なところだが、彼らも来るべき主催陣やユウキ=テルミ、邪悪なマーダー、そしてテラカオス候補者を残らず駆逐するためには貴重な戦力だ。
そういう意味では失うには惜しい者達である。そんなことを考えながら、ハクメンは大阪の路上をひた走る。

名古屋で足を止めているとはいえ、翼のテラカオスたる力は参加者を屠る度に増加しているため、翼が自分の力を超えてしまう前に急いで仕留めねばならない。
それでもこの前に見せた、時を斬りながらの移動なら一時間もしないうちに名古屋につくだろう。
何かしらイレギュラーな事態さえ起こらなければ、翼を十分に殺処分できるだろう。

だが、ここで彼にとってイレギュラーな事態に直面する。

「!? この気配は……?」

ふと、周辺に強い「凶」の気配をハクメンは感じた。
風鳴翼……ではない。それよりかは弱い「凶」だ。

しかし、とても無視できない強大な「凶」の持ち主の気配をハクメンは察知した。

「現状は風鳴翼ほどではないが……これは放置すれば彼奴以上の災厄をもたらす今すぐ刈らねばならない『巨悪』だ!」

すぐにでも討たねばならぬ「巨悪」がいる故に、ハクメンはどうしても寄り道しなけばならなかった。
ハクメンは名古屋方面に向けていた足を止め、今しがた感じ取った「凶」の持ち主に向けて方向転換し、時を斬りながら高速で現場に向かった。

そして、討つべき巨悪はものの数分で見つかった。
それは大きな大きなバイクに乗っていた。




弦十郎の運転するジェットスライガーに大人数で箱乗りしていたネオ・クライシス帝国御一行は、今まさに大阪に入ろうとしていた。
以前は一つの県を移動するのに八時間以上かかった集団だったが、今度はたったの二時間半で滋賀県から奈良県をまたいで大阪まで高速移動をしていた。
これは超絶マシンであるジェットスライガーによる恩恵である。
ジェットスライガーの最高時速はなんと1300km。
これに8人以上の参加者が乗っているとはいえ、大作りな分、馬力は並のバイクを超えているので駆動には問題ない。
もちろん、音速を超える速度をだそうものなら、仮面ライダーや人外である光太郎たちはまだしも、真人間の響子と友紀の体が耐えられるわけもないため最高時速は出せない。
さらに小回りの効かないバイクなので、障害物を避けていくためには更に速度を落とす必要がある。
それでも二つの県を三時間足らずで移動できるほどのスピードは確保できていた。

彼らの目的は、危険な食人鬼としてネットで騒がれ、主催にも指名手配されるようになった弦十郎の姪である風鳴翼に会うために、彼女が狙っているらしい拳王連合軍のいる大阪への先回りであった。
風鳴翼が本当に食人鬼と化しているかの真偽を8人は知るよしもないが、真偽のどちらにせよ被害の拡大の阻止のために止めねばならず、接触は避けられなかった。

しかし、それに加えて一行が大阪に向かうのに新たな目的が生まれようとしていた。
きっかけは目的地である大阪と拳王連合軍に対して情報収集をしている時だった。

「これは……?」
「ヒドイ!」
「略奪だけに飽き足らずに破壊に虐殺……拳王連合軍め、ゴルゴム並の最悪の連中じゃないか!」

147信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:22:20 ID:BkNre/Zw0

弦十郎から借りたノートパソコンから映し出された情報に、響子と路空と光太郎は苦い顔をした。
ネットでの情報より、拳王連合軍の自重を知らない数々の所業を光太郎たちは見てしまったのである。
野球と称したデス・ゲームを仕掛け、無差別攻撃によって多くの県を破壊する様は、都庁同盟軍と同じく、光太郎たちにも拳王連合軍を最悪の破壊集団であると印象付けさせた。
更に今向かっている大阪では物資の略奪に加えて街から退避した民間人の虐殺まで行っている。

ガンダムの砲撃から無辜の民間人を守るために己の機体を盾にして散った、巨大ロボ・ロードビヤーキー。
その思いを踏みにじるように砲撃でロードビヤーキーの後方にいる民間人を焼き尽くしたガンダムの邪悪な姿を映した動画を見たときは、光太郎は思わずパソコンの画面を叩き割りたくなったが堪える。
(ちなみに、ロードビヤーキーが民間人を庇って散ったというのはネットでの評価の話であり、実情は全く違うのだが、光太郎たちは知る由もなかった)

「拳王連合軍……翼と共に止めねばならんな」
「こいつらが抱えているのは闇なんてもんじゃない……奪って壊すだけのただのケダモノだ」
「あまりにも無軌道すぎる破壊行為の数々……彼らの放置はそこらのマーダーより危険だね。
最後に残った土地である、この日本も消滅させそうな勢いだよ」

拳王連合軍の所業には弦十郎は静かに怒っていた。
さらに闇に堕ちた矢車でさえ、拳王連合軍の行いを唾棄する。
心を持たないキュゥべえでさえ危険視していた……もっとも、キュゥべえの場合は日本がなくなってしまうと任務である魔法少女からのエネルギー収集ができなくなってしまうのは困るという意味合いだったが。

「弦十郎さん、姪の翼ちゃんを止めるのは大事だと思うが……俺は……」

怒りに震える光太郎。
正義の味方である彼は拳王連合軍の所業をとても許せなかった。
故に、拳王連合軍をすぐにでも倒したいと考えていた。

「大丈夫だ、俺も今、君と似たようなことを考えていたよ」

光太郎が皆まで言わずとも、弦十郎は理解し、考えは同調していた。
ひとりのOTONAとして、彼もまた拳王連合軍を止めたいと思っていた。

「それじゃあ……」
「ああ、翼はもちろん止めるが、同時に拳王連合軍も止めよう。
俺たちならそれがそれができるはずだ」
「うつほも手伝うの!」
「フッ……妹と弟候補がそう言うなら、俺も人肌脱ぐか」
「こいつらは必ず倒そう、未来のためにも」
「珍しく気が合うわねキュゥべえ。私もそう思うわ」

光太郎に同調するように、仲間たちは次々と彼の意志に賛同していく。
その中で響子がノートパソコンのある画面を開く。
映し出されているのはカオスロワちゃんねるの掲示板だ。

「光太郎さん、この掲示板によると、拳王連合軍と戦っているホワイトベース組という名前の対主催グループがあるみたい。
戦況はホワイトベース組が押されているようだけど、私達が加勢すれば戦況は好転するかもしれないわ」

なお、ホワイトベース組にはクラスメイトの苗木や十神がいることを響子はまだ知らない。

「ならば急いでホワイトベース組に加勢しよう。
できれば翼ちゃんが到着する前に拳王連合軍に引導を渡したいところだな」

こうして(ネットの情報に踊らされているのも気づかず)、六人の中で拳王連合軍打倒の意志が固まった。

……そう、八人いる中の六人は。

148信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:22:56 ID:BkNre/Zw0


バイクの後部座席の方で姫川友紀はいじけていた。
というのも世界を救う予言の書(本物)を彼女は所持しているにも関わらず、ネオ・クライシス御一行は誰も予言を信じてくれなかったのだ。
二時間かけて説得しようとしたが、帰ってきたのは「野球で世界が救えるわけないだろ」という失笑の言葉だけであった。

(野球には世界を救えるだけの魔力があるのに、誰も信じてくれないよ……)

ぶっちゃけ、常識的に考えれば野球で世界を救うなど眉唾もいい話だった。
それでも野球の力を愚直に信じる友紀からすれば、野球を玉遊びとしか思わず、その力を信じない光太郎達の方が滑稽に思えた。
故にすっかりすねてしまった。

(この人達についていっても野球してそうにくれないよ……
予言によると世界を救うには『野球・歌・器・巫女・勇者』が全て揃わないといけないのに)

このまま予言について懐疑的な光太郎達についていっても、野球はしてくれないだろう。
それどころか『歌』の部分はアイドルである自分が補うのでまだしも、他の『器・巫女・勇者』も揃わないかもしれない。
それでは予言を達成できないと焦る友紀。
そこに友紀の目に、パソコンの画面に映る拳王連合軍の掲示板が目に入る。

(……拳王連合軍も曲がりなりにも野球チームよね?
いっそ、彼らに取り入ろうかしら?)

友紀の脳裏にマーダーのチームに寝返るという恐ろしい考えがよぎる。

(もちろん、光太郎さん達に負けるような弱いチームだったら意味がないわ。
でも、仮に光太郎さん達を倒せるような強者揃いだったら……それは間違いなく最良の戦士ね)

もちろん、ただで寝返る気はない。
あくまで実力者揃いのネオ・クライシス帝国を倒せる実力を示した場合のみである。
予言達成のためにマーダーチームに入ろうとするのはひどい考えだが、予言を達成して世界を救うためには善悪云々に拘っておられず、滅亡を回避するためには仕方のないことだと彼女は考えていた。
(もっとも、なんで世界が滅びかけているのかは彼女は知らないが)

光太郎達の影で友紀はよからぬことを考えていた。
一行が拳王連合軍に負けることがあれば、彼女は即座に一行を裏切って拳王連合軍に取り入るだろう。


さらに友紀の他によからぬことを考えていた者がもう一人いた。
パソコンに映し出された掲示板や動画を食い入るように見つめているクライシス皇帝である。

(拳王連合軍の攻撃性と残虐性……実に素晴らしい。
是非、このクライシス皇帝の臣下にしておきたいところだ)

これまでのギャグ行動とネタ言動のせいで忘れ去られがちだが、このクライシス皇帝は主催を潰し次第、人類抹殺を考えている悪の親玉である。
そんな皇帝にとって拳王連合軍の実力の高さと悪辣さは、後の人類抹殺計画にはまさにうってつけの逸材であったのだ。

(しかし、どうやって味方につけようか?
光太郎達は拳王連合軍を殺る気満々であるみたいだしな)

拳王連合軍は潰されるには惜しい連中だ。
そのためにどうにかして臣下に加えたいが、光太郎達は倒す気であるようだし、説得も難しそうだ。

(はて、どうしたものか?)

どうにかして策を考えようとするクライシス皇帝。
光太郎達はそんなクライシス皇帝の昏い計画を練っているなど知る由もなかった。

149信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:23:38 ID:BkNre/Zw0


そして一行を乗せたジェットスライガーは大阪府に入った。
遠くに見える街では空を飛ぶ木馬のような戦艦と、港に鎮座する空母、そして沢山の黒煙がモクモクと空に昇っていた。
激しい戦いが現在進行形で繰り広げられているようだった。

「もうすぐ、大阪に入るぞ!
みんな、戦いの準備をするんだ」
「ああ、わかった」
「「「変身!」」」

弦十郎の声と共にデイパックにノートパソコンはしまわれ、光太郎、クライシス皇帝、矢車の三人は仮面ライダーに変身して臨戦態勢に入った。
仮面ライダーが三人いれば拳王連合軍や翼が襲ってきても何も怖くない……一行はそう思っていた。

「……あれは?」

弦十郎が前方を見ると、500mほど先に侍風の男が立っていた。
対主催の参加者か、はたまたマーダーだろうか?

……それを考えるよりも早く、侍風の男――ハクメンはジェットスライガーを捕捉するやいなや、時を斬って高速移動し、一瞬でジェットスライガーに肉薄した。

「なっ……」
「に!?」

驚く弦十郎と光太郎、他の六人はあまりにもハクメンの動きが早すぎて肉眼での捕捉さえできなかった。
そして刀は容赦なく振るわれた。


その刃の矛先は――クライシス皇帝。
彼を刺殺さんと、切っ先はクライシス皇帝の胸元へ向かう。


「危ない! クライシス皇帝!」


ただ一人、直感でハクメンの狙いがクライシス皇帝だと気づいた光太郎が動く。
光太郎はハクメンの刃へ腕を伸ばして、刃を止めようとする。
右手のひらにハクメンの刃が深々と刺さり、光太郎の手は夥しい出血をした。

だが、それでもハクメンの刃は止まることなく、光太郎の手のひらを貫通し、クライシス皇帝の胸元に深々と刺さった。

「ぐわあああああああああああああ!!」
「く、クライシス皇帝ーーーッ!!」

クライシス皇帝は胸を刺されて悲鳴をあげる。
仲間を刺されたと見て、光太郎も悲鳴をあげ、続くように他の仲間達も悲鳴や驚きの声を上げた。

「チッ!」
「うにゅ!! よくもクライシス皇帝を!!」

矢車と空がキックや弾幕で反撃に移るが、ハクメンはそれより早く刀を引き抜き、攻撃をかわしながら距離を取った。
突然の敵の攻撃に対して、弦十郎は急いでバイクを停めて、クライシス皇帝以外の全員がバイクから降りた。
刺されたクライシス皇帝はバイクの上でぐったりとしている。

「クライシス皇帝! しっかりしろ!!」

光太郎は自分の右手にできた風穴の痛みも気にせず、動かなくなったクライシス皇帝に必死に呼びかける。
しかし皇帝からの返事はなく、光太郎を大いに焦らせた。
そこで響子とキュゥべえはクライシス皇帝を見る。

150信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:24:14 ID:BkNre/Zw0

「……大丈夫、気を失っているだけ。まだ息はあるわ」
「光太郎の咄嗟の行動と、スーツの防御力に救われたようだね」
「本当か、二人とも? それは良かった」

キュゥべえの言ったとおり、光太郎の己が傷つくことも厭わない献身的な行動と、オーガのスーツによる防御力により、クライシス皇帝は奇跡的に一命をとりとめていた。

「しかし、いきなり襲いかかってきたアイツは……!」

キッと、光太郎は仲間を殺そうとしたハクメンを睨みつける。
光太郎だけではなく、弦十郎も、矢車も、空も戦闘状態に入ろうとしていた。

「くッ……浅かったか、邪魔が入りさえしなければ!」
「貴様ッ!!」

ハクメンはクライシス皇帝を殺しきれなかったことに歯噛みし、光太郎はそんな彼に対して怒りを顕にする。

「我が名はハクメン! 全ての悪を滅する者!
他の者には用はない、その男を渡せ」
「なんだと!? なぜクライシス皇帝を狙う!」

ハクメンの狙いはどうやらクライシス皇帝だけのようだ。
その理由はハクメン自体の口から説明される。

「その男からは非常に強い「凶」の気配がするのだ」
「マガト?」
「悪の気だと思ってくれたらいい。
ともかく、その男を放置すれば世界に災いをもたらすだろう」

ハクメンがクライシス皇帝を討とうとした理由は、皇帝から発せられた悪の気を感じ取ったからである。
実際にクライシス皇帝は怪魔界の皇帝にして、己の独裁のために民を虐げる暴君である。
この上に地球侵攻のために人類抹殺を企てているところから、皇帝が凶を纏っていてもおかしくはない。
そして皇帝が災いを振りまく前に抹殺してしまおうというのが、ハクメンの考えであった。

「私はその男さえ殺せれば、他の者達に危害を加える気はない。
さあ、その男を差し出せ」
「ふざけるな!
皇帝のことを何も知らないくせに、何がマガトだ! 悪の気だ!」

しかし、光太郎はハクメンの要求を拒む。

「話を聞いていなかったのか?
その男を生かせば将来的に災いを……」
「俺はカオスロワ開始時の頃からこれまでクライシス皇帝を一緒に戦ってきた!
だが、俺は皇帝が邪悪な男とは思えない!」
「俺は光太郎ほど長くクライシス皇帝と付き合ったわけじゃないが、俺もそう思うね」
「うにゅ! 皇帝はさとり様を殺したような悪い奴じゃない!」
「俺はクライシス皇帝より、おまえの方が気に入らないな」
「仮にこの皇帝が何を企てていても、こんなオマヌケな人が大それた災いなんて起こせるわけないじゃない」

光太郎だけでなく、弦十郎に地獄兄妹、響子でさえ、クライシス皇帝の味方をし、ハクメンの要求を拒む。

(クッ……どうやら全員この男に丸め込まれてしまっているらしいな。これは厄介だぞ)

ハクメンからすれば、一つの対主催グループが丸々クライシス皇帝の味方をしている現状に頭を悩ますしかなかった。
クライシス皇帝以外のメンバーは悪の気配がしないか、微弱だったため、無闇に殺すこともできない。
※キュゥべえには心がないため、ハクメンは彼から悪の気配を感じ取れない。
 ただし、彼の所業を知ったら襲いかかる可能性大。

151信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:24:47 ID:BkNre/Zw0


「てゆうか、あなたはどこから来たの?」

唐突に友紀が質問をする。
大阪の街から来たハクメンに対して、所属するグループなどを聞きたくなったのだ。

「ひょっとして……死国?」
「……そうだが、それが何か?」
「ということはあなたは拳王連合軍の……?!」
「いちおう、ではあるが彼奴らの味方になるんだろうな」
「「「!?」」」

二人の問答の中に現れた死国、拳王連合軍の味方。
その言葉を聞いた瞬間、騒然としていた場の空気が一気に凍りつき、ネオ・クライシスの面子で戦闘ができる者は即座に武器を構える。

「響子ちゃん、キュゥべえ、友紀!
急いでクライシス皇帝を引っ張って隠れるんだ!」

光太郎の指示通り、非戦闘員の二人と一匹は急いでクライシス皇帝を引っ張り、近くに隠れようとした。

「待て! その男は!」
「マーダーは死んじゃえ!」

ハクメンはクライシス皇帝を隠そうとする三人を追おうとするが、空の制御棒から放たれたレーザーが放たれ、妨害された。
レーザー自体はハクメンの機動性なら難なく躱すことはできたが、レーザーが消えた頃にはクライシス皇帝含む四人の参加者はどこかへ雲隠れしてしまった。

「おまえ達! 邪魔をするな!」
「そういうわけにはいかないな。OTONAとして、やはりおまえは止めなくてはいかん」
「正義の味方を気取る質の悪い奴が一番いけ好かないな」
「殺す!殺す!殺す!」
「拳王連合軍の手先め! ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」

ハクメンは光太郎達に四方を囲まれてしまう。
仲間であるクライシス皇帝が狙われている上に、ハクメンがマーダー集団(と思い込んでいる)拳王連合軍の一員であると知った以上、光太郎達が戦う理由には十分だった。
光太郎の目線ではハクメンはもう凶悪なマーダーにしか見えないのだ。


「もはや交戦は避けられないか……」

頭に説得の余地はないと感じたハクメンは、仮面の中でため息を吐く。

「しかし! ユウキ=テルミや悪を全て滅するまでは!
死ぬわけにはいかないんでな!!」

戦いを避けられないと感じたハクメンは、闘気を解放する。
放たれた強い闘気は、強者揃いであるネオ・クライシス帝国に恐怖を覚えさせた。

「クソッ!」
「うにゅにゅ」
「この気は……」
「気をつけろみんな! こいつはかなり強いぞ!」

肌で感じる闘気は矢車や空はおろか、光太郎や弦十郎でさえ冷や汗を覚えさせられた。
四対一でも油断すれば一瞬で全滅させられる……そんな強者の気配を感じさせた。

「きゅっぷい! なんて凄まじいエントロピーだ!
これはちょっと光太郎や弦十郎でもマズイかも知れない」
「なんですって!?」
「それマジなの?!」

クライシス皇帝を連れて近くの茂みに隠れていたキュゥべえ達もまた、ハクメンの闘気を感じて焦燥させられていた。

(まずいわね、何か打開策を考えないといけないかもしれない)
(これは逃げるべきかな……でも、響子と契約できれば状況は好転できるかもしれないし、う〜ん……)
(光太郎さんや弦十郎さんが負けるようなら寝返ろうそうしよう)

非戦闘員組はそれぞれの生存戦略と思惑を抱いていた。

152信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:25:23 ID:BkNre/Zw0


場面は再び、光太郎達とハクメンに戻る。

(彼らからは凶の気配は感じない。
むしろ善良な魂を持つ者もいる……殺すわけにはいかんな)

ハクメンとしては交戦に対しては乗り気ではなかった。
ボヤボヤしていると滅すべき風鳴翼も名古屋から動いてしまうので、避けられるなら避けたい戦いであり、クライシス皇帝をさっくり殺してさっさと終わらせたいところであった。
故にハクメンはあえてその気はなくとも、言葉の中に「死」のワードを含めて脅しかける。

「死にたくなければそこをどけ。
今なら誰も死なずに傷つかずに済むぞ」

……と。
それで光太郎達が退いてくれるなら御の字だったが、事はハクメンの思惑通りには進まなかった。

「確かにおまえは俺達より強いかもしれない……そう感じるよ。



だが、断る!
クライシス皇帝のためにも、人々のためにも!
ハクメン! おまえはここで倒す!!」
「……何も知らない愚か者め。
話を聞かないなら仕方あるまい。強引に押し通らせてもらう!」

光太郎達はあくまでもハクメンに徹底抗戦する構えであった。
ハクメンはクライシス皇帝を庇い立てする光太郎達との交戦やむなしと思い、腹をくくる。
ハクメンとしてはクライシス皇帝以外の面子は殺す気はないが、この戦闘以後、出会う度に邪魔立てされても面倒になるため、カオスロワの間だけでも再起不能にはなってもらおう。
そう思い、ハクメンは刀を引き抜いた。


大阪の街外れ。
今ここに、悪を滅す正義と、友を守る正義が衝突した。


【二日目・11時00分/大阪府・街外れ】

【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】健康、unlimitedモード
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『ユウキ=テルミ』及び『悪』を全て滅する
0:風鳴翼を滅する前にクライシス皇帝を刈る
1:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
2:風鳴翼は滅する
3:話を聞かないネオ・クライシス帝国御一行には再起不能になってもらう
※勾玉ゲージ等の状態は次の書き手に任せます
※unlimitedモードに入りました



【ネオ・クライシス帝国御一行】

【南光太郎@仮面ライダーBLACK】
【状態】変身中、右手にダメージ(大)、怒り
【装備】キングストーン、パーフェクトゼクター@仮面ライダーカブト
    カブトゼクター、ザビーゼクター、サソードゼクター、ドレイクゼクター
【道具】支給品一式、カラオケマイク
【思考】基本:この殺し合い、ゴルゴムの仕業だ!
0:ハクメンを倒す
1:クライシス皇帝と空、響子、弦十郎、ついでに友紀と共に行動する
2:人々を脅かす拳王連合軍は絶対にゆ゛る゛さ゛ん゛!!
3:俺は仲間であるクライシス皇帝を絶対に信じる!
4:あの少女(歌愛ユキ)はどこに行ったんだ?
※RXに進化しました。ロボライダーに変身可能になりました。
※バイオライダーにはまだなれません。
※パーフェクトゼクターの使い方を理解しました。


【クライシス皇帝@仮面ライダーBLACKRX】
【状態】大ダメージ、気絶
【装備】サタンサーベル オーガギア@仮面ライダー555
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:光太郎とともに主催者とゴルゴムを潰す
0:気絶中
1:戦力を集めて、『ネオ・クライシス帝国』を建国する
2:一先ず、地球人類抹殺は置いておく。(主催を潰したら取り掛かる)
3:矢車から地獄の匂いがする
4:拳王連合軍の連中はできれば臣下にしたい
5:私のカラオケマイクはどこに行ったんだ?
※参戦時期は仮面BLACKRX本編開始前です。

153信じる奴が大正義!?:2016/08/15(月) 11:25:48 ID:BkNre/Zw0


【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】健康、ロリ切さん
【装備】様々な資料
【道具】支給品一式、沢山の光彦関連のスイッチ、その他不明
【思考】基本:殺し合いの打開and殺し合いについて調べる
0:戦闘が終わるまで隠れてる
1:苗木くんに会いたい
2:元に戻る方法はあるのかしら……?
※めだか以上まどか未満の魔法少女になれる素質があるようです


【霊烏路空@東方Project】
【状態】悲しみ、やさぐれた……?
【装備】制御棒、地獄兄弟みたいな格好(女性用)
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:さとり様殺した奴は殺す
0:ハクメンを殺す
1:光太郎たちについていく
2:矢車の妹になった!


【矢車想@仮面ライダーカブト】
【状態】変身中、やさぐれ
【装備】ライダーベルト&ホッパーゼクター@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:ハクメンを倒す
1:光太郎、空を地獄兄弟の弟、妹にする
2:上記のために、光太郎たちについていく。(率先して戦うつもりはない)


【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、他の個体が全滅
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】基本:女性参加者全員を魔法少女にする。
0:身を守るためにクライシス一行に保護してもらう
1:霧切響子は黒神めだか以上の素質を持っている……なんとか契約できないだろうか
2:必ず鹿目まどかとも契約してみせる
3:母星と連絡出来るまでは生き残る
4:ハクメン相手では光太郎達でも流石にマズイかも知れない。いざという時は逃げる


【風鳴弦十郎@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】健康
【装備】ジェットスライガー@仮面ライダー555
【道具】支給品一式、ノートパソコン
【思考】基本:殺し合いの否定
0:ハクメンを倒す
1:翼に会うために大阪で待つ
2:戦えない者(主にKODOMO)たちの保護
3:拳王連合軍は許さない


【姫川友紀@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【状態】健康
【装備】大正義巨人軍風のユニフォーム
【道具】支給品一式、予言の書(本物)
【思考】基本:予言の書通りに行動したいから、野球する!
0:戦闘が終わるまで隠れてる
1:野球のメンバーを集める
2:光太郎達が勝てなかったら拳王連合軍に取り入る
3:予言のことを誰も信じてくれない……
※予言の書は本物です。

154闘拳乱舞:2016/08/31(水) 10:40:35 ID:d4U2hlIM0

「アチョ! アチョ――ッ!」
「フン!!」

ラーメンマンの華麗なる足技をラオウの剛の拳で防ぐ。
ラーメンマンの戦い方は北斗の次男の柔の拳に酷似している。
だからこそ対処法はわかる。
一番の難敵は『トキ』であったからこそ。

……ケンシロウ? ああ、ありゃもう一つ上の次元だよ。
ラオウじゃ勝てる要素は無想転生を習得するくらいしかない。

(あのドジョウヒゲ隙がないわね)

MEIKOはラーメンマンの戦い方を観察し、何か弱点を探す。
ピッチャーとしてバッターの癖を見抜くことは重要である。
だが、鍛えられたMEIKOの観察眼をもってしても見極められない。

「ラーメンマンとやら、うぬは何故戦う?」
「――私たち正義超人の矜持は『戦いを通じてわかりあう』ということだ。
 無論、ラオウ……貴様ら拳王軍ともだ」
「ほう、それはこの拳王の心をも理解するということか?」
「そうだ!」

再び構えを取る両者。
ラオウの構えは無双の北斗神拳。
対するラーメンマンの構えは超人拳法。

「「 い く ぞ ! ! 」」

再び両者の拳が交錯する。
連打。連打。連打。
連打。連打。連打。
連打。連打。連打。
連打。連打。連打。
躱し、防ぎ、受け流す。
連撃。追撃。防御。相殺。

両者の嵐のような攻撃を共に尽く防いでいく。
ラーメンマンの華麗なる連続攻撃をラオウは己の拳一つで防ぐ。

まさに絵に描いたような【剛vs柔】。
互いに引けぬ理由がそこにはあった。
ラーメンマンの活人拳とラオウの殺人拳はほぼ互角であった。

「フン!」
「リャァーッ!!」

二度、三度……拳と脚が激突する。
その度に大気が震える。
 
(吹っ飛ばされる……ッ)

MEIKOはその場に留まるの必死だ。
デカオたちは何人かが吹っ飛ばされたが対して問題なかった。
アルベルトや美鈴の死体は軽く吹っ飛ばされ、海に落ちた。
この間に吹っ飛ばされたデカオの何人かが戻ってきた。

155闘拳乱舞:2016/08/31(水) 10:41:00 ID:d4U2hlIM0

(いや、ここまで揺れるのは何かおかしい!)

揺れている。
揺れているのはこの戦艦自体だ。

「二人共、無事ですか!」
「タクア……ムギちゃん監督? そんな慌ててどうしたのよ?」
「いえ、MEIKOさんほど落ち着いているのもどうかと思います!」
「エース投手だからね」

そこに大慌てで紬がやってきた。
しかし、MEIKOはそれでも動じなかった。

「で、何しに来たの?」
「祐一朗さんとシュトロハイムさんとアドラーえもんさんが……死にました」
「!? なん……だと……!」

これには流石のMEIKOも驚いた。
あの半分以上機械のボディだった男たちがこうもやられてしまうとは……
自身はボーカロイドであるが、それでもボディの頑丈さは彼らの方が断然上であった。
 
「まさか……さっきの揺れって?」
「お察しのとおりです……格納庫で大爆発が起こり……祐一朗さんたちは……」
「…………………そう」

MEIKOはあまり悲しまなかった。
いや、悲しいという感情を必死に抑えていた。
緑間の時もそうだったが……やはり、仲間の死は悲しい。 

しかし、この悲報を聞いて感情的になり、一人涙を流す男がいた。

「……この拳王にもまだ涙が残っていたとは……」
(また泣いてる……)

ラオウは号泣していた。

祐一朗……自分を信じて、紅白戦では四番に据えてくれた男。
シュトロハイム……常にやかましかったが、常に軍の士気を上げ続けた男。
アドラーえもん……よくわからない男であったが、不思議な道具を使う男。

配下であると同時に……ラオウはそれなりに信頼していた。
野球というスポーツを通じて、この男に変化が起こったのかもしれない。

「ラオウ……貴様、泣いているのか……?」

ラーメンマンの動きが止まっていた。
ラーメンマンは今でこそ正義超人、アイドル超人の一人であるが。
かって世界最強の残虐超人と呼ばれて恐れらていた。
しかし、キン肉マンたちの戦いが彼を変えた。

「……戦いを続けるぞ! ラーメンマンよッ!!」
「待て、ラオウよ! 貴様はこの殺し合いに乗っているのではないのか!!」
「愚問だな……この拳王は一度たりともあの主催者共に従ったつもりはない!」
「何……?」

涙を振り切り、ラオウはラーメンマンに迫る。

「お二方、待ってください!」
「ぬぅ、止めるな、ムギちゃんよ!」

しかし、その間に紬は割って入る。
 
(……あまりにも早い移動スピード、私じゃなきゃ見逃しちゃうね)

「確かラーメンマンさんでしたか?」
「そうだが、君は?」
「私は琴吹紬と申します……ジョンスさんと悪魔将軍さんから貴方の話は聞きました。
 貴方と殴り合いではなく、話し合いをしたいと思いここまで馳せ参じました」
「悪魔将軍だと……?」
「はい」
「呼んだか?」
「!?」

その威圧感は本物であった。
モンゴルマンの時、レフリーもやっていた。
その時と同じ……いや、今の悪魔将軍はその時以上の凄みを持っている。

正義超人。
悪魔超人。
そして、タクアン。

この三人がこの戦場に集結した。

156闘拳乱舞:2016/08/31(水) 10:41:27 ID:d4U2hlIM0

 ◆ ◆ ◆

しばらく話をした。
その間、飛んできた砲撃は遅れてやってきたプニキやムネリンが打ち返した。
あまりも多すぎる砲台はMEIKOの新魔球『ライジングMEIKOキャノンMk-2』で破壊した。
その際、ホワイトベースの駆動部に着弾したのをMEIKOは見逃さなかった。

「これで少しは大人しくなるといいけどね」 

MEIKOは再びぼやく。
かなりムカついていたが、そのせいもあって起動エンジンには当てられなかった。
平常心の状態だったら、ホワイトベースの指令室をも狙撃(野球ボールで)出来たであろう。

「先に仕掛けてきたのはホワイトベース側だと?」
「はい、祐一朗さんたちの話を聞いたりしたちところ……
 私の推測ではネットの悪意ある風評被害を受けてこうなったこと思います」
「フン、正義超人とはこうも騙されやすいものなのか?」
「……だが、悪魔将軍は何故ここに……?」

「『あやつ』が死者スレを統括している、私はそれを阻止せねばならぬ。
 そのためにはまずは愚かな主催者共を殺す」

「でも、ここ(大阪)は離れた方がいいですね」
「ぬぅ、何故だ、ムギちゃん」
「東京に向かいましょう『虎穴に入らずんば虎子を得ず』です」
「虎ならば殺せばよかろう!」
「一理あるわね」

脳筋二人は放っておいてムギちゃんは話を進める。

「その前に熱斗君たちを回収しないといけないですね」

やるべきことは熱斗たちを回収して東京に向かう。
東京ですべきことはさらなる戦力増強である。
そして、主催者を倒して、真の黒幕を殺す。

「我々は一旦、ホワイトベースに戻るとする」
「でも、そんなことしたら……」
「まァ、そんときゃそんときだ。
 どうなろう構いやしねぇよ……。
 拳王のオッサンや悪魔将軍とも一度やってみたかったが仕方ねェ……」
「フハハ! この拳王どんな相手だろうと戦ってやろう」
「ついでに平等院、死ぬんじゃねェぞ」
「フン……」
 
そして、ラーメンマンとジョンスはホワイトベースの方面に向かっていった。

【二日目・10時00分/大阪・死国】
【甲板】
☆【ラオウ@北斗の拳】 状態:ダメージ(中)/思考:熱斗たちを回収して東京に向かう。
☆【MEIKO@VOCALOID】 状態:ダメージ(小)、/思考:野球がしてぇ……
☆【大山デカオ@ロックマンエグゼ】 状態:全員フルボッコ/思考:やっぱり応援に回る
☆【悪魔将軍@キン肉マン】 状態:ダメージ(小)/思考:『あやつ』の抹殺の前に騒ぎを収める
☆【平等院鳳凰@新テニスの王子様】 状態:ダメージ(大)、ボッコボコ/思考:ちゃんと休みたい
☆【琴吹紬@けいおん!】 状態:左手骨折/思考:死国のシステム復旧は諦めて、高速艇の準備
☆【川崎宗則@現実?】 状態:健康/思考:とりあえずデューオを応援する
☆【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】状態:健康/思考: 契約外なので戦闘はパス
☆【デューオ@ロックマンエグゼ4】 状態:HP満タン/思考:死国のシステム復旧は諦めて、高速艇の準備
 ※テラカオス・ディーヴァがカオスロワちゃんねるに書き込んだレスをまだ見ていません
 ※すっごく頑張ってました。必死でした。


○【ジョンス・リー@エアマスター】状態:ボッコボコ/思考:どうすっかな……
○【ラーメンマン@キン肉マン】状態:ダメージ(中)/思考:殺し合いを止める

157闘拳乱舞:2016/08/31(水) 10:41:52 ID:d4U2hlIM0


一方、そのころ……


「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」
「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」
「イヤーッ!!」「グワーッ!!」「イヤーッ!!」「グワーッ!!」………………

おお、ゴウランガ! 見るがいい!
これがイマジンスレイヤーの力である。
迫りくるミラーモンスターを己の右腕だけで殴っては殴る。
イマジンスレイヤーのカラテは完全に目の前のジョーカーを上回っていた。

実際強い。

(主催本部の救援は!? こんだけピンチなんだぞ!?)

新城のその願いは……届かない。届くはずがない。
届いたとしても、ユウキ=テルミが「誰がテメェら程度の奴助けるかっての?」程度であしらわれるだろう。
裏切ることに定評があるユウキ=テルミをわざわざ主催側に招いたのは果たして、それはなぜなのか……?

「『フウマ=サン、新城=サン、ハイクを詠め!』」
「くそッ!!」

捨て身のやけくそである。

「Wasshoi!」

向かってきた二人に対して、イマジンスレイヤーのカウンターだ!
イマジンスレイヤーの右足が超速度で連打される。
ブロッキングなどさせない情け容赦がない正確に、一秒間に約七発の速度で。
 
「「サ、サヨナラ!?」」

二人はしめやかに爆発四散。
こうして、イマジンスレイヤーは二人の怪しい男を撃破したのであった。
 
【新城直衛@皇国の守護者 死亡確認】
【風魔小太郎@戦国BASARAシリーズ 死亡確認】

158ターバンのガキ:2016/08/31(水) 10:42:12 ID:d4U2hlIM0

「ふぅ、なんとかなったようだな」
『そうだな』

クロスフュージョンを解いた。
疲労はしている。
戦闘後で『状態:健康』などとは許されない。

死ぬ寸前ではない。
しかし、今休むべき時ではない。
離れ離れになった仲間たちと合流を急がねばならない。
結構な時間が経過した今、仲間たちもピンチかもしれない。

その時である。

「ジョジョ、大丈夫か!?」
「あ、貴方は……ダイアーさん! とディおじさん!」
「ディおじさんではない! ディオだッッ!!!」

無事、応急処置を終えた二人が来た。
死に体からそこそこに体力を回復した二人。 
そして、それなりの治療道具を持ってきた。
二人は見事の気配遮断で激戦をこっそり避けながらも南側から北側に来たのだ。

「今から治療を早く……」
「いや、それよりも皆のところに早く……」
「ダメだ、戦いにおいては死人よりも怪我人の方が足でまといになる!
 君はまだ戦える、少しでも怪我の治療に務めるんだ!!」
「ダイアーさんの言う通りだ、ジョジョ!!」
「そ、そうですか……分かりました……」

渋々、上条さんの体力回復のために一先ず彼らは近くの繁華街に入っていた。
 

【二日目・10時30分/大阪市街地】

【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】全身にダメージ、不幸、首輪解除、本気モード
【道具】シンクロチップ、他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
0:仲間たちと合流したいが、今は体力の回復に務める。
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:それにしてもあの怪しい二人組の正体は……?

【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【状態】HP半分
【装備】ムラマサ
【道具】なし
【思考】基本:新しきお館様(上条)に従う
1:敵は殺す、慈悲はない
2:ようやく乗り気になったようだな、お館様
※PETの中にいます

【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】死にかけから立ち直ったので問題ない、首輪解除
【装備】PSP(デューオ抜き) 、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:主催を倒すのはラオウではない、このディオだッ!
1:ジョースター家を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗達にネットバトルを挑むのは後回しだ!
4:デューオがいなくても、勝つのはこのディオだッ!
5:シンクロチップを手に入れたし、デューオとクロスフュージョンしたい


【ダイアー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】割とダメージがあるが少し回復した、首輪解除
【装備】イカ墨とパスタ@現実
【道具】支給品一式、治療道具、その他不明
【思考】基本:主催を倒す
1:ディオとかいう奴も倒す
2:仲間との再会
3:ストレイツォ……
※ディオを『吸血鬼ディオ』と思っていません。
※何か見ましたが、別に物語とは関係ありません。

159 TCBR10第5回放送:2016/08/31(水) 16:57:25 ID:0VMOFFSA0
ピーンポーンパーンポーン♪
時刻は11時01分。少し遅れたが、第5回放送である。
そのアナウンスを務めているのは、驚くべき人物だった。

「国民の皆さん、“新”内閣総理大臣の、安倍晋三です。
それでは、死者を読み上げます。

でたらめな手話の黒人男性、浅倉威、黒神めだか、火黒、フリーザ(第一形態)、コルド大王、
ザーボンさん、ドドリアさん、ギニュー、リクーム、ジース、バータ、空蝉丸、田村直人、
ヘルクラウダー、ラージャン、デスマンティス、冥闇に堕した者、シャーロック・シェリンフォード、
殿馬一人、大魔神軍、ドラゴニック・オーバーロード“The Яe-birth”、
ヤムチャ、ウルフマン、ガゼルマン、独眼鉄、海蛇座の市、ゴッド・リー、カツ・コバヤシ、
デュデュオンシュ、野球仮面、トカゲロン、デューク渡邊、クマ吉くん、タケシ、野比玉子、
アビゲイル、ジャミラス、ムドー、緑間真太郎、久慈川りせ、小早川ゆたか、アカムトルム、始原の幼子、
鬼灯、かれん、河名コトミ、海動剣、真上遼、長井伸助、乃士勇造、出川実、蚊、ビアン・ゾルダーク、
ザ・ニンジャ、風見幽香、デウスエクスマキナ、飛竜、ジョナサン・ジョースター、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、
海のリハク、日番谷冬獅郎、レオナルド博士、リグル・ナイトバグ、ゼブラ、城茂、ダルメシマン、
ヒッポリト星人地獄のジャタール、ブロッケンJr.、ラッド・ルッソ、トレバー・フィリップス、ムートー、
スティーブン・セガール、キュイ、多木康、博麗霊夢、神体フォーマルハウト、吉川ちなつ、
火野ケンイチ、ファイアマン、ケロロ軍曹、安錠春樹、加治木ゆみ、ブルマ、リオレイア、クラウディウス、
櫂トシキ、アドラー、紅美鈴、オートバジン、カーネル、衝撃のアルベルト、大山デカオ、バーダック、
ブラックホール、ペンタゴン、美国織莉子、呉キリカ、本部以蔵、三島一八、マッスル狂信者の群れ、
ギリメカラ、セプテントリオン・ミザール、メタルシザース、ケルベロス(小)、死を呼ぶ骨竜、
トキ、久保帯人、魂の裁断者、中野梓、雷鳴と共に現る者、ミカルゲ、ベノスネーカー、ソリア、
野比玉子、高山春香、園田優、レミリア・スカーレット、十六夜咲夜、ビーストマン、大尉、
松岡修造、ヒートマン、クリフト、龍脈の龍、狭間偉出夫、峰津院大和、メタトロン、ニャルラトホテプ、
タバサ、衛宮切嗣、善野監督、錠前ディーラー・シド、避難所民№134、幻体真竜No.3、幻視竜王、
第三真竜ニアラ、99%再現ニアラ、統合世界第三真竜ニアラ、幻視竜王・影、神体ニアラ、
野比のび太、芽兎めう、烈海王、ルドル・フォン・シュトロハイム、光祐一郎、雷電、
賢神トリン、聖煌天の麒麟・サクヤ、究極邪龍・ヘルヘイム、シーザー、ゴロリ、チェイス、
星輝の黄龍帝・ファガン、水木一郎、まこちー、音無キルコ、スニゲーター、ロックオン・ストラトス、
メガボスゴドラ、呉島貴虎、スラリン、マーラ様、新城直衛、風魔小太郎

追加される禁止エリアは四国です。
では、これにて放送を終了します。」

安倍晋三が放送を行ったのには理由がある。
九州ロボに拠っていた主催陣は超人血盟軍によって奇襲され、幹部が散り散りになり、テルミの裏切りにより特務機関も壊滅。
その結果九州ロボに残った主催陣はモブのみになり、その隙を突き安倍晋三が主催陣残党(と言っても全員モブ)を粛清し、主催を乗っ取ったのだった。

【二日目・11時01分/日本・九州ロボ某所】

【安倍晋三@現実?】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:とりあえずバトルロワイアルを続ける
1:ロワを主催する
※主催を乗っ取りました

166いずれ来る未来の危機:2016/09/04(日) 22:18:15 ID:7cEnzpqA0
「どおりゃあっ!」
「ぶぺぇ!?」

 桑原の放った拳が、狂った男の顔面をとらえて粉砕する。

「くそ、なんなんだよこいつら、次から次へと湧いてきやがって……」
「狂信者と言われるだけはあるね。僕らだから狙ったんじゃなくて、生きてれば誰が相手でもいいみたいだ」
「めんどくせぇ連中だよ本当に……ま、なのはが見たっていうやばい連中よりは数段マシだが」
「う、うん」

 彼らは首相官邸を拠点としていた対主催グループであったが、突如謎の全裸のオカマに襲撃され窮地を迎えていた。
 しかしメンバーの一人、なのはが所持していた千年タウクの力と、彼女自身が目にしたオカマ達の強さの情報が鍵となった。
 
 原理は不明だが、魔力の収束を妨害する濃霧。おそらくこれが原因であの歪みし豊穣の神樹すら敗れてしまったのだろうと、
 慌てて駆け込んできたなのはに対してユーノは冷静にその結論に達することができた。
 何がなんでも彼女を守る、ただそれだけの信念で、怒りの感情以上に彼はまだ冷静であることができたのだろう。
 しかしながら、冷静であるが故に彼は自身の無力さに怒り震えた。
 神樹の戦闘能力は自分達グループの中でどころか、おそらく参加者全体から見ても最上位であろうことは想像に容易い。
 その神樹が敗れ、さらに魔力を使った攻撃を封じられた状態で、未知の襲撃者に正面から挑んで勝てるのか?

 答えは否。

 力が欲しい。心の底からユーノは思った。
 しかし無いもの強請りをしている余裕などあるはずもなく、彼は一つの決断を下した。
 それすなわち敵前逃亡、戦略的撤退。
 なのはからの報告で既に瀕死の状態であった神樹とエリカを見捨てるような決断であるが、ここでただ何もできず全滅するわけにもいかない。
 幸いにして、次元刀と持つ桑原と強力な風で障害物を力づくで壊して進めるハス太がいるのだ。
 敵がいるであろう正規の階段からは逃げず、新たに作り上げた道から地上に脱出、一縷の望みで、生きていればエリカ達を助けてそのまま逃走。
 これがユーノが立てた作戦であり、それは迅速に決行された。

「やたらこっち方面から狂信者が向かってくるが、どうなってるんだ?」
「多分だが、さっきからドンパチやってた都庁で敗けて撤退でもしてんじゃないか?
 なにしろなんでか知らないが、都庁のバケモンに神樹がくっついて共闘してたんだ。あんなん勝てる奴いねえだろ……」

 ただ彼らにとって嬉しい誤算だったのは、神樹が死亡せずに離れた地で健在であったことだ。
 彼が都庁の怪物と共闘し、都庁を破壊しようとする連中を巧みに薙ぎ払っていたのは遠目でも十分に確認することができた。
 これらから判断できるのは、おそらく都庁の魔物が瀕死の神樹を救い、おそらくエリカも無事であろうこと。
 神樹が都庁の怪物と共に戦っている点からして、少なくともネット上の情報のように、出会った瞬間戦闘になるようなこともないだろう。
 神樹の仲間であることを告げれば、対話の余地は十分にある。うまくいけば、オカマ達を倒す力にもなってくれるかもしれない。
 二人と合流する目的もあり、ユーノ達は追っ手に警戒しつつ、都庁を目指している最中なのだ。

167いずれ来る未来の危機:2016/09/04(日) 22:18:50 ID:7cEnzpqA0
「もうちょいで都庁だが……ハス太、例の連中につけられたりはしてないか?」
「う、うんだいじょうぶ。邪悪な気配はかんじないよ。でもそのオカマさんからしてもきっと神樹さんがいきてたのは想定外だと思うんだ。
 ぼくたちと同じように、都庁をめざす可能性はやっぱりあるよ……」
「敵の目的が首相官邸そのものだった場合とかは追ってくる可能性は低いけど、残虐かつ極めて高い戦闘力を持っているのは間違いない。
 仮に追ってきていたとしても、戦力や情報の共有のためにもやはり神樹との合流は欠かせない。ここはとにかく都庁を目指すしかないよ」

「SATSUGAIせよ! SATSUGAIsぐわああぁぁぁ!?」

「だあああぁぁぁ! ほんっとに邪魔だなこいつら!」

 どこからでも湧いてでる狂信者を蹴り倒し、一同は都庁へと近づいていく。
 もう間もなくで大激戦区都庁、そして放送の時間だ。
 果たしてそこで彼らを待ち受ける運命とは?



 「ふふっ……」

 誰もが少なからず不安の感情を抱くなか、なのははただ一人小さく笑っていた。
 無論彼女とて不安がないわけではない。ただそれでも、最悪の未来……千年タウクが見せた悪夢が回避できたことが嬉しくて仕方がなかった。
 これまでも千年タウクはなのはに恐ろしい未来を見せてきたが、その未来はことごとく外れている。
 正確には、未来を知ったなのは達がタウクの未来を変えているのだが。
 
 もし、首相官邸で真っ向からオカマ達に挑んでいれば、勝ちこそすれユーノは謎の怪物となり犠牲者が出ていたかもしれない。
 だがこうして自分たちは戦うことを避け、都庁へ向かっている。これにより、また千年タウクの見せた未来は変わったのだ。
 もっともこの未来改変に関しては、神樹が死亡しなかったという点が大きいのだろう。
 恐ろしい外見の神樹を治療したと思われる、都庁の心優しき誰かにも、なのはは感謝していた。
 もはやネットを確認するまでもなく、DMC狂信者と戦争を繰り広げている都庁は確かに危険地帯ではあるが、
 その神樹を癒してくれた者や神樹本人がいれば、オカマ達への対抗手段ともなりうる。
 目の前の脅威さえどうにかすれば、改めて世界滅亡の危機を回避する方法を探すことができる。

「……」

 ここでなのはは、大丈夫と思いつつも千年タウクに触れた。
 もはやタウクの見せる未来に恐怖しすぎることはない。これまで変えてきたのだから、きっとこれからも変えられる。
 むしろ先を知ることで、より慎重な行動を心がけることができる。
 そんな思いから、以前よりも軽い気持ちで、この後に役立てるつもりで、そっと、触れた。








 未来がいつでもいいものだなんて、変えられるものだなんて、誰が言った?

168いずれ来る未来の危機:2016/09/04(日) 22:20:41 ID:7cEnzpqA0
□ □ □


 都庁に辿りついたなのは達を待っていたのは、あまりにも予想外の展開であった。

「君はすぐに治療する必要がある」

 都庁の地下へと連れ去られるユーノ。

「さあ、尻を出せ」
「ひいぃぃ!?」

 多くの者が見る中、ズボンを引きずり降ろされる彼の表情は怯えきっていた。
 当然晒されるのは尻だけではない。なのは専用の、ショタテングダケ改めマンモスもだ。

「や、やめてくれ! どうしてこんなことを!? う、うわあああぁぁぁぁ!?」
「暴れんな、暴れんなよ……安心しろ、私のテクニックはマーラを超えているからな」

 おぞましい触手の化け物が、ユーノの身体を拘束する。
 それを見つめる都庁の人間達は、止めようともしない。むしろ真顔で見つめている。

「ふ、やはり巨根ランキング一位は俺で不動のようだな」

 赤いドラゴンだけは何故か勝ち誇った笑みを浮かべていた。

「た、助けて……」
「……これは、君と、君の仲間を助けるために必要な行為なんだ」

 助けを求めるユーノに対して、金髪の青年は諭すようにユーノの肩に手を置く。
 しかし軽く置かれたように見えて、怪力でユーノの一切の身動きを封じている。

「あの子は、君の大切な人なんだろう? それなら今すぐ治療を受けるんだ。
 治療が遅れて、肝心な時に大切な人のそばにいられないで……守れないなんて、喪うなんて、嫌だろう!?」
「そ、それは……」

 なのはを引き合いにだされ、拒絶反応を示していたユーノの動きが一気に鈍る。
 妙に実感のこもっていた声色に、たまらずユーノは青年に向き直って質問を試みる。

 ぶしゃっ!

 力説しすぎた青年の肛門から、大量の血液が吹き出した。
 そのまま青年は崩れ落ち、尻を押さえながら悶えている。

「え……治療って、こうなるの……!?」

 倒れ伏した青年が、これは別件のせいだからと言うがもはや信用ならない。
 ガチガチと歯を鳴らしながら、ユーノは青ざめた表情で反対側にいた少女に助けを求める。
 桃色の長髪が愛らしい、優しそうな少女だ。

「大丈夫だよ。きっと貴方も、お尻で気持ち良くなれるから。初めてでも、きっと大丈夫!」

 そんな少女から告げられたのは、無慈悲な言葉。
 加えてやはりがっちりと肩を押さえつけられている。逃げ場が、ない。

「それでは、治療を開始します。特急コースで、私の超絶技巧の舌テクをご堪能ください」
「や、やめ――あ、あっ、アァァァァ―――――――――ッ!!?」

 絡め取られたユーノの肛門に、化け物の舌が捩じりこまれていく。
 そしてやがてユーノの表情は恍惚としたものへと変化し、マンモスまでもがノーズ・フェンシング状態となり――

□ □ □

169いずれ来る未来の危機:2016/09/04(日) 22:21:30 ID:7cEnzpqA0
「い、いやあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「どうしたのなのは!?」

 千年タウクが見せた近い未来の光景に、たまらずなのはは叫んだ。
 なんということだろうか、このまま都庁に向かえば何故だかわからないが、ユーノの後ろの初めてが化け物に奪われるというのだ。
 よくもそんな酷い真似を、などとはユーノの前の初めてを奪ったなのはからすれば強くは言えないのだが……
 今の自分とユーノは恋人同士、ユーノ自身もまんざらではなかったと言ってくれたのだから、あの事件はノーカンだ。
 このままでは、恋人がレイ○されてしまう。なんとしてでもこの未来の回避方法を探さなくては。

「ま、また未来が見えたの……! このまま都庁に行ったら、ユーノ君のお尻が裂けちゃうの!」
「はぁっ!?」
「だ、大丈夫だよなのは。今更怪我なんて恐れていないよ。それに仮にそうだとしても……」
「駄目なの! なんだか知らないけど、ユーノ君の顔が蕩けてたの!
 前に野外プレイとか言ったけど、そんなの比じゃないよ! ユーノ君のマンモスもすごく荒ぶってたの! 堕ちちゃうかもしれないんだよ!?
 私以外の人にお尻穿られてよがるなんて、そんなの絶対だめだよ!?」
「ちょ、なのは! 声が大きいよ……!」

 取り乱し叫ぶなのはと、それを宥めるユーノ。
 そしてちょっと刺激的な言葉に若干引き気味な桑原、レオリオ、ハス太の三名。

 あまりにも意味不明な未来は、かつてユーノが化け物になる未来以上になのはを混乱させる。

 だが彼女は知らない。恋人が化け物になる悲劇を現状もっとも早く回避できる可能性こそ、恋人の後ろを捧げることだということを。

 未来は変えるべきか、否か。新たな未来の分岐点は、すぐそこだ。


【二日目・11時00分/東京・都庁近辺】

170ターバンのガキ:2016/09/04(日) 22:22:20 ID:7cEnzpqA0
【なのは組】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、19歳の身体、混乱
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】基本支給品一式、タイムふろしき@ドラえもん
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:新しい未来も変えたいけど、どうすれば?
1:死んでしまったヴィヴィオたちのためにもこの殺し合いを終わらせる
2:ユーノ君がいれば何も怖くない!
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています。
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。
※未来の自分が使っていた技の一部が使用可能です。

【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】健康、19歳の身体、テラカオス化進行中(低速)
【装備】なし
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:なのはを落ち着かせて都庁に向かいたいけど……
1:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
2:大災害の情報を集める
3:野田総理の死の原因を探りたい
4:なのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました。
※PSP版の技が使えます。
※本人の知らない内にテラカオス化が進行しています。
※首相官邸にて、いくらか主催陣営の情報を手に入れた可能性があります
※後ろの初めてを奪われる未来が存在するようです

【ハス太@這いよれ!ニャル子さん】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ガソリンの入った一斗缶
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:都庁へ向かい、神樹とエリカと合流したい
1:ニャル子ちゃんたちは大丈夫かな
2:オカマさん(天魔王軍)たちを警戒

【桑原和真@幽遊白書】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、大量の食糧
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:都庁へ向かい、神樹とエリカと合流したい
1:怒鳴りつけた借りを返す為にも、ハス太を護る
2:あまりにも邪魔なのでDMC狂信者もどうにかしたい

【レオリオ・パラディナイト@HUNTER×HUNTER】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、医療道具一式
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ
0:都庁へ向かい、神樹とエリカと合流したい
1:主催と大災害に関係があるのだろうか?
2:東京都のカオス具合に少し恐怖
※ゴンの死に気づいていません
※首相官邸より、医療道具一式を拝借してきました

171正体:2016/09/06(火) 17:32:59 ID:lR621Dq60
第5回放送にて唐突に表れた安倍晋三。

その正体は…












なんと、カオスロワ1期で主催を務めた“安倍晋三”本人であった!


彼はいつの間にか主催を織田信長に乗っ取られ、二日目1時に早くも倒され、死者スレ送りとなった。
だが、それで終わらなかった。
彼は死者スレの最深部にて主催を乗っ取った織田信長への憎しみを募らせ、
2期、3期…と開催されるたびにその時の主催への憎しみを募らせていった。
そして9期、2兆人もの死者が出るという大事件のどさくさに紛れて死者スレを脱出。


…したのはいいのだが、異空間に行ってしまい、しばらくしてこの世界の安倍晋三に憑依したが、
どうやってカオスロワを開催しようかと考えている内に大災害が発生。
“10期目”のカオスロワが開催されることとなった。

そこで彼は主催に潜り込み、乗っ取る事を計画。
主催に潜り込むまでは上手くいったが、戦力不足により乗っ取ることができず、
最終的に超人達の襲撃により主催幹部が逃亡したため、決行できたという訳だ。

(…ああ、ついに主催の座に再び…)
思いにふけりながら、彼はほくそ笑んでいた。

【二日目・11時10分/日本・九州ロボ某所】

【安倍晋三@TCBR1】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】不明
【思考】
基本:バトルロワイアルを続ける
1:ロワを主催する
2:ダース・ベイダーやジャック・Oなどの旧主催陣を全滅させる
※主催を乗っ取りました
※旧主催陣を憎んでいます

1729月13日はカイザの日 Part4:2016/09/13(火) 00:09:12 ID:3NjGM.vU0

       __,,。s≦三ゝ======,ィt
     /ー、}}r┯┯┯┯カ}}>''´ィニニヽ
     {、◎)ヾiノノi!ノi!ノi!ノi}/ヾi{(◎)}==
     ヾイ´          `ヾi《//
    ,イiゞ´             .ヾムiヽ
  ,ィニ7i:/   >''"""''<       /〉ム_
 i|//{マ  /       ヽ     //=== /∧
 i|//{i{  /         .∨   {i{.////|i|/i|
 i|//{i{  {           }   .{i{.////|i|/i| <みんな、今年もこの日が来たぞ!
 .マ/,{i{ ハ          ハ   {i{.////|i|/i|
   `マム ∧        ./    マ{////彡イ
    .ヾム }is。     ./      〉〉リ ̄
     〉〉、  `""""´       /イi{
     .{(◎)}is。ゝ=====乂_。s≦=ミ}}=}
      '==彡{{[__{[__{[__{[__i}ニヾ乂ノ}ゞ'
         `"""'''''''''─ゞ'´ `"´

『邪魔なんだよ……カイザの日を祝わないものは全て!』

その頃、草加さん(眼魂状態)は今年は珍しく数人でカイザの日を祝っていた。
……去年も一昨年も三年前も同じことを言っていたが、彼にとって大事なことなのだ。

「ニャガニャガ〜珍しい人間もいるものですね〜〜
 すでに死んでいるのに自分の日を祝うなんて」
『ふん……』
「まあいいでしょう……さあ皆さん! 盛大に祝いましょう! カイザの日を!!」
「「「「カーイーザ! カーイーザ! カーイーザ!」」」」

サイコマンは呆れながらもケーキをモブの部下たちに振る舞う。
それくらい、彼らは慢心しきっていた。

「喰らい尽くせッ、ウロボロスッ!!」
「ニャガ!?」

だが、喰われた。
ケーキを。
部下たちを。
サイコマンは華麗に避けた。
草加眼魂なら大丈夫。

そこにいたのは黄色いフードの男。
その手には草加雅人眼魂。

「……これはこれは『カズマ=クヴァル』さん……いえ、今は別のお名前ですか?」
「『ユウキ=テルミ』だ、次その名前で呼んだら、ぶっ殺すぞ?」
「おやおや、怖いですね〜すでに私の部下を殺しといてそこまでいえますか?」

笑う男と笑わない超人。
対極的なクサレ外道が対峙している。

「テルミさん、貴方は少しは見込みがあるDMC信者でしたから、直々に私が『マグネット・パワー』を伝授して差し上げましたが……」
「あんなカスみたいな奴のどこがいいんだァ? つか、超人って専ら奴らは変な奴らばっかりなのかァ?」
「おやおや、しばらく見ないうちに随分と大きな口を叩けるようになりましたね〜〜」

殺気と殺気。
一触即発の空気と言って差し支えない。
 
「……その様子ですと、貴方……私たち、DMC信者を裏切りましたね?」
「だから、どうした? これが世界の真実だ、『嘘』『裏切り』『偽り』で出来てんのがこの『世界』の真実だ。
 テメェだって本当の目的を隠して、従いたくもねぇアイツらに従ってる。
 何も違わねぇよ、俺様もテメェも……アイツらでさえもなァ!!」
「………貴方はどこまで知っているんですか?」
「どんなことを知っててもテメェには教えねぇよ」

挑発的な態度を一切崩さない。
それどころかテルミはさらに煽り挑発する
だが、逆にサイコマンはそれを冷静に捉える。
 
あからさまにおかしいのだ。

1739月13日はカイザの日 Part4:2016/09/13(火) 00:09:42 ID:3NjGM.vU0

「……わざとですね」
「あァ!? 『何が』だ?」
「貴方、わざと挑発的な態度を取って、私の怒りを買うようなパフォーマンス……
 それが貴方の何かに繋がっている……違いますかねぇ?
 まぁ、これはあくまでも私の推測なんですがねぇ」

完璧超人はいかなる時も冷静である。
更に彼は完璧超人始祖。
その点においては完璧である。
正義超人や悪魔超人のような下等超人とは違うのだ。

「………チッ、まあいいわ。テメェらは精々地べたでも這いずり回って殺し合ってな」

サイコマンの前からテルミの姿が消えた。
ウロボロスを立体起動装置のように使い、鮮やかに戦線離脱。
更には『マグネット・パワー』で加速していった。
それをサイコマンは追わなかった。

(さて、この件は上層部に報告が必要ですかねぇ?
 裏切り者には即刻罰を、と言いたいところですがねぇ……)

果たしてサイコマンの決断は……?
 

【二日目・11時05分/国際展示場近く】
【サイコマン@キン肉マン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式
【思考】
基本:クラウザーさんを生き返らせるためSATSUGAIする
1:『ユウキ=テルミ』については狂信者上層部と相談
2:できればシルバーマンさんも勧誘したい
3:そういえば、草加さんは……まっ、いいでしょう。
※狂信者です


(さて、タネは撒いた……いつ芽が出てもおかしくねぇ、タネをなぁ!)

その『存在』を『確立』させるものは『憎しみ』。
彼を憎めば憎むほどその存在と力は強く、濃く、この世界に顕現する。

(まっ、俺様のこと知ってる連中が、勝手に憎んでくれてる。
 この状況は願ったり叶ったりなんだがよぉ)

対主催の仲間を裏切ったと知ればその仲間が憎む。
マーダーで殺し合いに乗った知れば対主催の連中が憎む。
主催を裏切った知れば残った主催者達が憎む。

感情がある生物だからこそ。
奪い合い憎み合うこの世界だからこそ。


この男はここに存在出来るのだ。


(まっ、どうせ、この世界は滅びて、無に還る。
 だが、俺様は生き残る――『蒼』に選ばれた『資格者』である俺様がな)

さて『滅日』とは。
人々の命(魂)を根源の『蒼』へと回帰させることで世界を初期化することである。
『滅日』によって人々は魔素化し『蒼』へと吸収されていく。
世界に残るの蒼に選ばれた『資格者』だけとなる。
資格者全てを始末すれば、黒き獣が全てを飲み込み世界は無へと還る。

これが『滅日』である。

「もうあそこには用はねぇしな」

九州ロボにはもう用はない。
だからこそ、抜け出してきた。

宮崎辺りにあった大正義巨人軍のキャンプ地近くの遺跡も破壊しておいた。
これで九州ロボにいる安倍は『予言』の内容を知ることは不可能になった。

1749月13日はカイザの日 Part4:2016/09/13(火) 00:10:26 ID:3NjGM.vU0

「さて、こいつはどうすっかなぁ……」

手に持った草加雅人眼魂を見つめる。
サイコマンが必死になって追いかけてくると思ったが、そうではなかった。
これではうるさいだけの足手まといになるだけだ。

『やめるんだ、草加市の市長であるこの俺を殺してしまったら、これから誰が草加市を薄汚いオルフェノクから守っていくんだ!』
「あァッ!? うっせぇぞッ!!」

握り潰されて砕けそうになった草加雅人眼魂。
しかし、その時である。

「なんだ、この羽根?」

黒い羽根が目の前を遮った。

「それは貰っていく」

テルミは草加雅人眼魂を奪われた。
そして、一瞬で『その男』はその場から飛び立った。

「なんだ、テメェはッ!?」
「……名乗るほどのものじゃない」

あれは人間か?
否、違う。
人間は空を自在に飛ぶことはできない。
では、怪人か?
否、違う。
そんな行為はとても怪人のようには思えない。
それでは、オルフェノクか?
絶対に違う。

『その男』は!!!

その鳥男は!!!
その正体はジューマン!!!
鳥のジューマン!!!
なんか草加雅人に似ている!!!
むっちゃ似ている!!!
舞台版BLAZBLUEのハザマにも似ている!!!
すごく似ている!!!


その鳥男―――バドである。


【二日目・11時09分13秒/東京のどこか】
【ユウキ=テルミ@BLAZBLUE】
【状態】飛竜の肉体、首輪解除
【装備】光剣サイファー クナイ、各種オプション、蛇双・ウロボロス
【道具】支給品一式 
【思考】
基本:テラカオスを利用して、滅日計画を遂行する。
0:なんだ、今のは!?
1:邪魔をする奴は殺す。
※飛竜の肉体を完全に奪いました。


【バド@動物戦隊ジュウオウジャー】
【状態】健康
【装備】王者の資格、草加雅人眼魂
【道具】支給品一式、大量のザリガニ、ゴーストドライバー
【思考】
基本:????
0:邪魔なんだよ。俺の邪魔をする奴はすべて……


【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】草加市の市長に当選した、草加雅人眼魂
【装備】カイザギア@仮面ライダー555、サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】ケーキ、支給品一式
【思考】
基本:生き返る方法を探す
0:どうして俺が死んで、碌に出番もない奴らが生きてるのかなぁ?
1:とりあえず、乾巧の仕業にする
2:なんだこの薄汚いオルフェノクは!?
3:来年のカイザの日も祝いたい
※眼魂(アイコン)に魂を封じられています。ドライバーがあればあるいは……
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り99日です。

175終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:03:13 ID:FyAK8cH.0
時刻は10時まで遡る。
長野県の上空。

そこには空飛ぶでかい山、阿蘇山を緊急脱出装置に変えられたASO-3が飛んでいた。
その後方、数十キロ後ろには超人血盟軍の四人がASO-3を追撃していた。


ASO-3コクピット内――……


「あいつら、まだ追ってきやがりますか!!」

後方の状況を映し出したモニターを見て、そう言ったのはコクピットのシートに座る特務機関員の少女、ニャル子だった。
ASO-3は僅か3時間足らずで日本海から長野県へ移動できるほど速いが、空を飛べる四人の超人達はそれ以上に速い。
今は数十キロ以上距離を離しているが、相対距離的にはいつか追いつかれてしまうだろう。

「落ち着いてくださいニャル子さん。奥の手を使います!」

そう言ってニャル子の隣に座っている異形の宇宙人にして特務機関員の一人メフィラスはコクピットにある赤いスイッチを押した。
IQ一万を超えるメフィラスはASO-3の機能についてリサーチ済みであり、隠された機能を把握していた。
それはブリーフ博士のホイポイカプセルの原理を利用した、物体を小さくする能力である。
この頃には故人と化している祐一郎さんが、生前にホイポイカプセルの画期的な機能に目をつけ、取り入れた代物である。

そして、カチリとスイッチが押されると、巨大なASO-3は夥しい煙に包まれ、一瞬の内に中のニャル子達ごと小さくなった。
カプセルサイズになった以上、常人では目視は困難だろう。

「よし、これで……」

ニャル子は小さくなったASO-3のハンドルを右に切る。
まっすぐ向かってくる超人血盟軍に対して進路をずらすことで、躱そうとしたのだ。
これでニャル子は追われる心配はなくなると微笑んだ。
……だが、それはすぐに糠喜びに変わった。
ASO-3が進路を変えたのに合わせて超人血盟軍も進路をこちらに合わせてきたのだ!

「ちょ!?」
「なぜだ? カプセルサイズに小さくなった以上、目視は困難なハズ」

驚き声を上げるニャル子とメフィラス。
そんな彼女と彼の疑問に対して、後部座席から返答がきた。

「……気だ」
「ガチホm…ジャック・O!」
「ジャック、それはどういうことですか?」

答えたのは後部座席に縛り付けられている五大幹部の一人、リンクスにして参謀格のジャック・Oであった。

「超人血盟軍にいるベジータが、我々の気を辿っているんだ。
気を探れる奴の前では、ただ小さくなっただけでは無意味だ」

ジャックの推測通り、ベジータはASO-3を目視だけでなく、気を辿って探っていた。
物体は小さくなっても、搭乗者の気の大きさまでは変わらない。
気を消す術を持たない四人では、ベジータの目をごまかすなど出来はしないのだ。
そして、ASO-3と超人血盟軍との相対距離がドンドン縮まっていく……残り50キロ、残り40キロと。
焦燥するニャル子とメフィラス。

「どどどどどどうすれば……!
メフィラスさん! 他に隠し機能とかないんですか!?」
「なくはないですが、ジャックの言うとおりならベジータの前では透明化能力も
無意味。
ミサイルを使わない彼らにチャフなんて無用の長物。
砲台やバリアもありますが、時間稼ぎにもなるか怪しいでしょう」

生き残るためにあらゆる手を考える、大慌ての二人。

176終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:03:46 ID:FyAK8cH.0

(ダークザギをダークライブして応戦する?
いくらチート悪トラマンであるダークザギとはいえ、ゆで超人三人に加えてスーパーサイヤ人がいるけど勝てますかねえ?
……いっそのこと降参して、ベイダー卿とジャックを売り渡して命拾いした方がお得で早くね?
私、女の子ですし、土下座でもなんでもすれば助けてくれますよねー?)
(恩人であるベイダー卿を裏切ることになるが降参止むなしか。
ベイダー卿らの縄を解いて解放し、共に戦ってもらうにしても勝算は極めて低い。
ならば投降して人的被害を出さない方が賢いでしょう。
……ベイダー卿らの考えている『プロジェクト・テラカオス』の全貌も、投降した後に超人血盟軍と共に聞けば良い)

多少の思考の際はあれど、ニャル子とメフィラスの頭の中に降参という二文字が浮かび上がっていた。

「コーホー、投降は無駄だ。やめておけ二人とも」
「「!?」」

超人血盟軍に降参しようとした二人の考えに待ったをかけたのは、ジャックと同じく後部座席に括りつけられたシスの暗黒卿ダース・ベイダーだ。
突然の制止に驚くニャル子とメフィラス。

「口使ってないのに、なんで私達の考えがわかったんです!?」
「余には貴公らの思考をある程度読める能力がある。
……フォースによってな。コーホー。
ニャル子よ、余らを売り渡して助かろうとしているのもバレバレだぞ」
「ギクッ!」

ベイダーは超能力であるフォースの力で二人の思考を読んでいたのである。

「コーホー。だが、無駄だ。
投降したところで奴らに殺されるのがオチだ」
「え、マジで?」
「コーホー。ベジータとアシュラマンから我々への強い殺意を感じる。
仲間を多く殺されたのだから当然か。
主催の人間である以上は報いを受けさせるために女だろうが、土下座しようが、戦意がなかろうが、我々に大義があろうが、奴らは関係なく殺すつもりだ。
キン肉マンソルジャーやバッファローマンは幾分冷静なようだが、二人を止められるとは思えん。
投降した瞬間、ベジータとアシュラマンに十中八九殺されるだろう」
「そんなぁ!」
「コーホー、投降は諦めろ」

ベイダーから言い渡された言葉に、メフィラスは沈黙し、ニャル子は慌てふためく。
逃げられない、降参できないならば、死への道しかないのだから。
自分達の未来が絶望しかないことを知ったニャル子は額に青筋を貯めた強い怒りを顕にしながらベイダーに迫る。

「九州ロボでも、言いましたけどねぇ……
本拠地をちゃんと用意しましょうと計画開始前から進言してたんですよ!
そもそも世界の命運かけたプロジェクトと言いながら、拠点構えないまま、開始するとか正気ですか?
九州ロボを火事場泥棒的に奪取できたからいいようなものの、祐一郎博士がショック死しなかったら どうするつもりだったんですかねぇ?
しかも拠点構えても警備はガバガバだわデータは奪われるわ傀儡とはいえ主催者の総理がオスプレイで勝手に出撃して返り討ちに会うわテニスボールで大ダメージ受けるわ特務機関員が次々離反するわ殺されるわ挙句の果てに奇襲されるわ、真面目に世界救う気あるんですか? 馬鹿なんですか? 死ぬんですか? 私と真尋さんの命になんかあったら貴方達どう責任とってくれるんですか!?」

機銃掃射のように放たれたニャル子の罵声が、ASO-3のコクピットに響き渡る。

「コーホー……言いたいのはそれだけか?」

だが、ベイダーはニャル子の罵声に臆した様子なく、ドスの効いた声で疑問に答えていく。
その声はさっきまでニンジャを見て失禁と嘔吐していたような奴とは思えないほど冷静であった。

「確かにガバガバな計画だったのは認めよう。
だがな、拠点を構えていられない、特務機関員も裏切る前提の下衆共を多く雇わざるおえない、傀儡も馬鹿過ぎて途中からフォースも効かなくなるような奴を使わざるおえない理由もあったのだ」
「理由?」

177終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:04:30 ID:FyAK8cH.0










「コーホー、『時間』がなかったのだ。
この世界はあと一日……カオスロワ開始から四日目を迎える前に、消滅するのだからな」










「それは……本当ですか?!」
「冗談でしょ? 嘘だと言ってよバーニィ!」
「君達がなんと思おうが自由だが、事実だ」

ベイダーの言葉にメフィラスとニャル子は更なる焦りを覚える。
この場で冷静なのはベイダーと、彼と世界滅亡に関する情報を共有しているであろうジャックだけであった。
ベイダーが適当な嘘を言っている可能性もあるが、こんな非常時にいちおうの味方であるメフィラス達に嘘をつくメリットはない。

そんな中、コクピットに警報が鳴り響いた。
四人の視線が正面のモニターに向く。
画面を見ると、ASO-3と超人血盟軍との距離が20キロを切っていた。
ベイダーらと会話をしている僅かな内に、超人達はスピードを上げて急接近してきたのだ。

「ヤバッ……!」
「くッ、お喋りに熱中しすぎたようですね」

ベイダーの話が本当ならば、超人達は謝っても許す気はないらしい。
このままでは皆殺しにされるだろう。
焦るメフィラスとニャル子はどうにかして生延びる術を考えようとするが、手持ちの道具や戦力では超人血盟軍相手には望み薄であり、それが焦りをなおさら加速させた。


そんな絶望的な状況下で立つ男がいた。


「コーホー、余が戦いにいこう」


ダース・ベイダーである。
彼が言葉を発すると同時に、彼を縛り付けていた布団とハラリと床に落ち、後部座席から立ち上がっていた。

「ベイダー卿……」
「ってええ!? 拘束を一人でに解いてる?!」
「こんな拘束、余のフォースの力をもってすればどうということはない」

ベイダーのフォースの念動力さえあれば、ニャル子らが縛り付けた布団や縄を解くのは造作もないことであった。

「しかし、戦うなんて無茶です、ベイダー卿!
超人三人にスーパーサイヤ人が相手では、我々四人と飛影でも勝てる見込みがありません!」
「貴公らはついてこなくて良い。戦うのは余だけで十分だ」
「ニンジャを見てNRSを発症して失禁にゲロまで吐いてた上に真っ裸のあなたが絶対に勝てるわけありませんよ!」
「余も奴ら相手に勝てるとは思っておらん。
だが、余が全力で戦えばこのASO-3が逃げられる時間稼ぎくらいはできるだろう。
それとニャル子、サラッと余をディスっているが、後で殺すぞ」

メフィラスとニャル子の制止を押し切って、ベイダーはコクピットから出ようとする。
その前にベイダーが未だに後部座席に括りつけられているジャックに告げる。

178終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:04:59 ID:FyAK8cH.0

「ジャック・O。
余がいなくなる以上、メフィラスとニャル子が知りたがっている計画の全貌はおまえの口から話せ。
そして東京のどこかにいるだろうココと合流し、なんとしても二人でプロジェクト・テラカオスを完遂させるのだ」
「待て、ベイダー卿。
プロジェクトのリーダーは君だ。君ではなく、私がいくべきではないのか?」

ジャックはベイダーを引き止め、彼の代わりに自分が超人達と戦うと言う。
しかし、ベイダーはそれを良しとしなかった。

「悲しきかな、余は貴公やココほど頭が回らん。
この先の計画の完遂や、ユウキ=テルミからの九州ロボ奪還には、力が全盛期より衰えている老いぼれよりは、おまえ達二人がいたほうが良い。
貴公は残るんだ」
「しかし……」
「案ずるな……コーホー。
九州ロボでは散々醜態を曝したが、最期ぐらいは華々しく散るさ。
シスの暗黒卿としての誇りとして、インフレが酷すぎるサイヤ人や、ゆで理論とかいうわけのわからん奴らの内、二人ぐらいは道連れにしてくれるわ」
「待て! ベイダー卿!」

ダース・ベイダーは戦って死ぬ気であった。
ジャックは死地へ向かう盟友を必死に止めようとするが、拘束されていてそれも叶わず。
メフィラスはベイダー卿の意志を尊重して動くことも口を挟むこともできなかった。
ついでにニャル子は「自分が助かるならそれでいいや」と、薄情にも止める気はなかった。

「しかし、最期が全裸というのは頂けん。服がわりに飛影を持って行くぞ」
「ええ? 飛影は貴重な戦りょ……モゴモゴ」
「わかりました。遠慮せず持って行ってください」

確実な戦闘力増強として、パワードスーツに近いロボットニンジャ飛影を装着しようとするベイダー。
ニャル子は止めようとするが、空気を読んだメフィラスが彼女の口を塞ぎ、飛影はベイダーに託された。
ちなみにベイダーとジャックはニンジャである飛影を見てNRSを引き起こす失態を犯してたが「あれはその場のノリ」によるものなので、もうNRSを引き起こす心配はない。

超人血盟軍到達まであと10キロ……

「もう、時間がない。この山が捕捉される前に出撃する!
メフィラス! ハッチを開けろ!」
「ハイ!」

ベイダーの命令を受けて、ハッチを開けるレバーに手をかけるメフィラス。

「コーホー。
あとは任せたぞ、ジャック、ココ。
バーダック、幽香、織莉子、キリカ、デウス、ビアン博士……もうすぐそっちにいくぞ」

決死の覚悟を決めたベイダーが、飛影を駆り、出撃しようとする――

179終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:05:28 ID:FyAK8cH.0






『待って! その必要はないわ!』






――その寸前で聞き覚えのある女の声が、コクピットのスピーカーから聞こえた。

「この声はココ!?」

突然、五大幹部の生き残りの一人、武器商人のココ・ヘクマティアルの声が聞こえたことに四人は驚く。

そして次の瞬間、どこからともなく巨大な白い腕がASO-3を掴み……訂正、カプセルサイズに小さくなっていたASO-3を人間サイズの腕が掴んだのだ。
そして、一瞬後には腕もASO-3もその場から姿を消し、同時に気も消えてしまったため、気を辿っていた超人血盟軍は主催者達を完全に取り逃がしたのであった……
(超人血盟軍のその後の経緯は『光と影』を参照されたし)









「コーホー、なんだなんだ!? いったい何が起きた!」

いきなり、巨大な振動がASO-3を襲ったかと思えば、超人血盟軍から感じ取っていた殺意などの気も一瞬で消えたので混乱するベイダーは、慌てて乗りかけた飛影から飛び出す。

そしてジャック達と同じように、正面モニターを見ると驚きの光景が広がっていた。

「コーホー……」
「ココ?」
「これは……」
「でっか!」

カプセルサイズのASO-3はココの手のひらの上にちょこんと乗っていた。
それはASO-3同様に小さくなっているベイダー達の視点からすると、自分達は釈迦の掌に乗った斉天大聖になった錯覚を覚えさせ、モニターに映っているココの顔はとてつもなく大きく見えた。

ココのASO-3を乗せてないもう片方の腕は、とりよせバックが握られている。
このバックは内部にワームホールがあり、遠くの場所にある物をバッグを通じて手元に取り寄せることができる22世紀の秘密道具であり、強力すぎるため参加者には支給されなかった支給品の一つだ。
ココはこのアイテムを使ってベイダー達を窮地から救ったのだ。

「ベイダー卿、ジャック、メフィラス……良かった、あなた達だけでも生きていて」

ココはASO-3の中にいる仲間達に微笑みかける。

「そして、ようこそ。
カオスロワちゃんねるにも書かれていない、私達以外誰も知らない隠れ家、東京都伊豆大島基地へ!」

180終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:06:05 ID:FyAK8cH.0











伊豆大島。
本州から20キロ以上離れた位置にある孤島だが、いちおう東京都である。
伊豆大島基地とは、その島に築かれた主催の拠点である。
ちなみに先の放送で沖縄含む全ての離島が禁止エリアになったので、離島扱いであるので主催関係者と首輪を外した者以外は立ち寄ることはできない。

その基地の中にある一室、様々なモニターがある会議室にココと助け出されたベイダー、ジャック、メフィラス、ニャル子、飛影の五人と一機は移っていた。
(ちなみにASO-3はカプセルサイズでココのディパックに入っている。
ベイダー達はASO-3から出た瞬間、元のサイズに戻った)

「コーホー、このような基地、なぜ隠してたんだココよ?」

ベイダーの疑問はもっともであった。
元々、主催拠点を作る時間がなかったので、仕方なく祐一郎から九州ロボを簒奪する形になったのだ。
最初から拠点があれば、九州ロボを奪う必要もなかったのである。

「隠してたのは謝るわ。
でも、この基地ができたのはついさっきのことなのよ。
建設計画自体は進めていたけど、完成までにはカオスロワ開始には間に合わず、どのようにスケジュールを切り詰めても一日半はかかり、建設の労力であるモブ兵士に支払う膨大な資金もかかる。
しかも、この基地よりも遥かに巨大で防衛力の優れた九州ロボを手に入れるという誤算があったから、言う必要もないと思っていた」
「コーホー……なるほど」
「でも、建設自体はやめなくて正解だった。
九州ロボが奪われた今、ここを臨時の主催拠点にすることができた。
モブ兵士達のお給料も、抜けている誰かさんのおかげで賄えたしね」
「誰かさん?」
「なんでもないわ」

ちなみにココがN2爆弾を売ることで手に入れた呉島家の財産ほぼ全ては、この伊豆大島基地で働くモブ兵士の給料に全てあてがわれた。

「……できれば織莉子、キリカの二人にも、ここに来て欲しかったな」
「……」

特務機関員であった二人の友の死には、ココは涙を流さずとも、その表情には悲しみが宿っていた。
ベイダーはそんなココにかける言葉が見つからなかった。



「申し訳ありませんがベイダー卿、ココ嬢。
ご友人の死へ悲しみを抱くお気持ちは察しますが……」

横槍を入れるようにメフィラスの言葉が二人の間に割り込んだ。

「そろそろ私達に教えてくれませんかね……真実を、この殺し合いと世界滅亡、プロジェクト・テラカオスの全貌を」
「メフィラス」
「ベイダー卿、あなたがさっき言ったことに嘘がなければ、この世界は四日目を迎える前に消滅する……ならば残された時間はもう丸一日半しかない。
時間がないのなら、すぐにでも教えていただきたい。
適当な嘘も許しませんよ、少なくともこの殺し合いの目的が人口削減ではないのは既に看破しているつもりです」

メフィラスはすぐにでも真実を知りたいと強く思っていた。
そして返答次第では、特務機関ひいては主催陣を抜けて離反するつもりであった。
口ではそうは言ってなくとも、彼の考えは周囲に伝わるぐらいの雰囲気を醸し出していた

「……賢いあなたやニャル子、ベクター、もう亡くなったけど新城やクルル辺りは、この殺し合いがただの人口削減が目的ではないと気づくと思っていたわ」
「コーホー……ジャック、この二人の『進行度』は?」
「二人共、陰性だ。なんらかの外的要因がない限り二人が『候補者』になることはまずありえない」
「そうか、ならば話してもよかろう……」

181終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:06:42 ID:FyAK8cH.0


センチメンタルな気分を横に置いておき、幹部の三人はメフィラスとニャル子に真実を知らせることにしたようだ。




「あのー……勿体振り過ぎて出てこなかった、たぶん画面の前の多くの読み手と書き手も知りたがってる真実を教えてくれるのはありがたいんですが……



……なんで私、石抱させられてんです?」




ニャル子は幹部の一人、ココによって石抱させられていた。
ちなみに石抱とは三角形の木を並べた洗濯板のような板に正座させ太ももの上に重く大きな四角い石を載せるアレのことである。
つまり、ニャル子は拷問を受けていた。

「……フンッ!」
「ぎゃあああああああああああああ、痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ痛ッ!!」

そんな石を抱かされて足を痛めていているニャル子に対して、サディストの如く石の上から思いっきり踏みつける、鬼の形相のココ。

「なぜって? まずはあんたがやった所業を思い出して?」
「ええ……私は潔白です……いたたたたたたたッ!
嘘です嘘です!!
倉庫から支給品をくすねて申し込みありませんでした!!」

ニャル子は主催の倉庫から勝手に支給品、ダークスパークとダークザギのスパークドールを勝手に持ち出している。

「あれはね、元々は幽香が使う予定だったの、九州ロボ並の戦闘力を持つダークザギが使えてれば戦力として百人力よね?」
「ええ……」
「当初の予定では、私がなんらかの事情で留守にして九州ロボがまともに動けなくなった時、ダークザギがその分の戦力を補う手はずだったから、私は九州ロボから安心して出かけることができたわけよ」
「そ、そうなんすか……へぇー」

ここで互いにうすら笑いを浮かべるニャル子とココ。

「つ・ま・り!
あんたがダークスパークとダークザギをくすねなければ、九州ロボの防衛線に穴が開かなかったのよ、このバカーーーッ!!」
「ぎにゃああああああああああああああああああ!!
我々の業界でも拷問ですうううううう!!」

額に青筋を蓄えて笑顔のまま、ガンガンメリメリと石ごしにニャル子の足を踏みつけるココ。
もし彼女が支給品をくすねなけらば、幽香がダークザギをダークライブさせることで、多大な戦闘力を誇る超人血盟軍相手でも撃退もしくは殲滅ができたかもしれない。
敗北しても被害は大幅に減らせたハズだ。
それを幽香と事前に打ち合わせていたので、ココは九州ロボを留守にすることができた。

……だが、結果はこの有様。

すなわち九州ロボ防衛失敗の最大の戦犯は、幽香が使う予定だった支給品を盗んだニャル子だったのである。
それを知ったココは、防衛線にヒビを入れたニャル子に対して怒髪天を立て、拷問を与えることにしたのである。

「ひィ……」

その凄惨な(?)拷問の様子に引き気味のメフィラス。
ちなみにベイダーとジャックは。

「え? そういうことだったのか? 余は初耳なんだが」
「すまん、この件は私の口からベイダー卿に教えるつもりだったが、超人血盟軍襲来前後のゴタゴタと君の良い体に見とれてて伝えるのをすっかり忘れてしまった。
幽香もダークザギを使わずにやられていたから何か嫌な予感はしてたんだが、まさかニャル子の手にあったとは……」
「おまえな……」

ベイダーは仮面の下で、ジャックを白目で見ていた。

182終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅:2016/09/19(月) 00:07:34 ID:FyAK8cH.0

「……まあ、防衛失敗は何もかもがアンタの責任とは言わないわ。
私の読みも浅かったし、ダークザギがあっても勝てたかどうか怪しい。
本来なら処刑も辞さないところだけど、どんな思惑があろうともメフィラスと一緒にベイダー卿達を助けてくれた功績があるのも事実だし、命だけは取らないであげるわ」
「あ、ありがたき幸せ……」
「でも、アンタのことだから、このダークザギを使ってユウキ=テルミを九州ロボごと吹き飛ばそうとしてたわね」
「ギクギクッ!」

ココの思考を読んでいる言葉にニャル子の顔から滝のような汗が流れる。
誰が見ても、明らかにSAN値が下がっていた。

「図星のようね。
やめてよね、マキナである九州ロボが消滅したらファクターである私も死んじゃうじゃない。
何より、貴重な土地と世界復興の要である九州ロボがなくなったらどうするの。
アンタにコレは預けられないわ。罰として、没収ね」
「わ、私のダークスパークとダークザギ!」
「アンタのじゃないでしょ!」

石抱きで動けないニャル子に対して、ココは彼女のディパックからダークスパークとダークザギを取り出し、自分のディパックにしまいこんだ。
それだけに留まらず。

「ついでにこの子も没収するわ」
「ああ! 真尋さん!」

ココはソフビ化している八坂真尋も没収した。
未来のダーリンである真尋を取られたことに、ニャル子の表情がダークザギとダークスパークを没収された時以上に焦りがにじみ出る。

「それにしても真尋キュンは可愛いわね、フフーフ(はぁと)」
「あ、コラ! 頬ずりするな!
胸に挟むな! ペロペロ(^ω^)するなぁーーーッ!」

ソフビ真尋を見るやいなや、目がハートマークに変わり、愛でまくるココ。
愛でまくられる真尋を目の当たりにしてニャル子はパニックになる。

「こうなれば……シャンタッ君、その女を殺してでも真尋さんを奪い返して!」
「ミー」

もはや形振り構ってられないと言わんばかりに、明らかな幹部への反抗であることを覚悟の上で、ペットであるウマ面のコウモリの生物シャンタク鳥のシャンタッ君に命令して真尋をココの手から奪還しようとするニャル子。

「ミー……」
「あ、あれ?」

しかし、シャンタッ君はニャル子の意に沿わず、ココの足元で仰向けになってお腹を見せた。
服従のポーズである。
そしてココはモフモフとシャンタッ君のお腹を撫でた。

「悪いけど、シャンタッ君は最初からこちら側の味方よ」
「この裏切り者ォッ!」

ココは保険のためにシャンタッ君をあらかじめ手懐けていたのだ。

「ついでに飛影にも私達、五大幹部への明確な裏切りや九州ロボを破壊しようとする行為をした場合は自動で攻撃するようにプログラミングしてあるわ」
「マジすか」
「今さっきまで支給品を横領してたのがバレず、ベイダー卿達を助けていたからグレーゾーン止まりだったけど、間違ってもダークザギで九州ロボを消し飛ばそうとしなくて良かったわねぇ?(ゲス顔)」
『裏切者殺すべし、慈悲はない』
「ちょ、刀が背中に刺さってる! 刺さってる! 痛いんだよぉ!!(マジギレ)」

一歩間違った判断を下せば、ニンジャに首がはねられないかねない状況。
ニャル子は既に、ココに手玉に取られていた。




「さあ、話が脱線しすぎたわね。
茶番はこの辺にして、そろそろ話を進めましょうか」
「「「お、おう…」」」
「ちゃ……茶番て……」

真尋を手に入れたココは意気揚々に、男連中は若干引き気味に、ニャル子はボロボロの状態でいよいよ『プロジェクト・テラカオス』の全貌が明かされることになる。
(ニャル子は先ほど、ココを殺してでも真尋を奪い返そうとしたが、これは背信行為というより恋人を取られて焦ったゆえの失言なのでノーカンになった)

「これを聞いたからには後戻りはできないわ」
「我々のなそうとしていること、破滅へ向かっている世界の事情」
「コーホー、心して聞けよメフィラス、ニャル子よ」




なお、ベイダー卿は未だに全裸で、ニャル子は石抱させられたままであることをここに記しておく。

183終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:08:46 ID:FyAK8cH.0
メフィラス達に詳しい事情を話す前に、ベイダー達は二人がこの殺し合いで知っているか、どこまで気づいているかを聞いた。
二人はこの殺し合いの目的が人口削減ではなく『テラカオス』を生み出すための手段であることや、ハラサンが提唱していた『救済の予言』までは耳にしているが、それ以外のことは他の特務機関員と同じであると答えた。

「コーホー、ということは一から話す必要があるようだな。
計画について話す前に先に知ってもらいたいことがいくつかある。
まずはこの世界の成り立ちについてだ。
二人は『TC計測値』という言葉を知っているか?」
「いえ」
「聞いたことありませんが、まさかTCは安直に『テラカオス』の略ってわけはないですよね?」
「よく気づいたな、概ね正解だ」
「合ってんのかい!」

狸組が九州ロボに潜入した時に、見つけたTC計測値。
そのTCがテラカオス(Tera Chaos)の略というのはニャル子が当てずっぽうで言っただけだが、正解だったらしい。

「コーホー。
『TC』、正式名称『テラカオスエナジー』。
この世界を構成する、目に見えない未知のエネルギーで、この世界にはなくてはならないものだ。
別の世界では『蒼』ともいうらしい。
『TC計測値』とは文字通り、そのエネルギーの量を測ったものだ」
「TCがこの世界になくてはならないもの? どのように?」
「TCは創造と破壊を司る根源の力。
仮に使いこなせれば全ての事象干渉を退ける「外周因子」となりうると同時に、世界すべてを変革できるほどの「事象干渉」を行うことが可能となるというらしいが……」
「言ってる事が難しくてわけわかめ、もっと簡単に」
「『とにかく何でもアリで型破りなエネルギー』だと思え。
TCの現実を改変する力によって、本来だったら矛盾する生態系や、現実的に考えて存在できない力や生き物が世界に存在できるのだ。
例えるならグンマーの生物。彼らは大きく巨大な竜や魔物が多いが、科学的に考えると足で自重を支えることすら不可能だ。
TCはその矛盾を『あやふや』にすることで彼らの存在を成り立たせている。
言わば、我々が吸っている『酸素』と同じくらい大事な物だと思ってほしい」

本来なら常識的に考えて生きてはいけない矛盾をはらんだ漫画・アニメ・ゲームキャラの存在も、このカオスロワ10期の世界ではTCによって存在できるのである。
この混沌とした世界はTCのおかげで構成できているのだ。

「我々がこの世界に存在できているのは、そのTCのおかげだったのは理解できました。
しかし、それがこの殺し合いと何の関係が?」
「コーホー、これを見てほしい。
ココ、大災害発生時のTC計測値のモニターを出してくれ」
「はい」

ココは大災害発生時のTC計測値をまとめた映像を映し出した。
それは狸組が九州ロボと、とある民家で見たものとまったく同じものである。
計測値の最も低い日本を除いた、土地という土地が大地震と共に海に沈み、宇宙にあるコロニーや人の住む惑星が目に見えない力で破壊されていく。

「大災害当時の映像ですが……」

ここで違和感に気づいたニャル子が、某少年探偵風に疑問を口にする。

「あれれー? おかしいぞー?
TC計測値が高い土地の方が破壊されてるってどういうことー?」
「TCは我々の世界にとって必要なエネルギーだったのでは?」

二人の疑問に対し、ベイダーは答える。

「TCがこの世界に必要不可欠なのは間違ってないが、それはあくまで適量だった場合だけだ。
多量に浴びすぎた場合は生き物も土地も破壊されて消滅する。
空気を入れすぎて破裂する風船のようにな。
仮に生きていても事象改変能力のあるTCに肉体を汚染されて生態や思考、存在を歪められた者もいる。
歪められ方は様々で、どんなに軽い者でも元の性格では考えられない奇行に走ったり、中にはカオスロワ開始前は死者だった者が生き返った者もいる」
「適量なら恩恵をもたらすも、過量なら毒になる……まさに酸素と同じですね」
「デカオとか分裂して増えまくっているんですが、ひょっとしてTCのせいだったり?」
「ああ、テラカオス候補者でもない以上、間違くなく汚染されている。
大災害発生時に日本以上にTC汚染の酷い海外にいた事実や、カオスロワ開始前からあの様だったのが、それに拍車をかけている」

拳王連合軍にいるデカオの謎の増殖は、存在を歪めるTC汚染に起因するものだった。
またチチもぎマーダーとして猛威を振るった長門有希の謎の奇行や、ロワ開始前に死亡したハズのニンジャ・フロストバイトが蘇っていた理由もTC汚染が理由である。

184終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:10:44 ID:FyAK8cH.0



「しかし、映像を見る限り、地球より宇宙の方がTC計測値が濃いようですね。
TCは宇宙のどこかから来ているということでしょうか?」
「そうだ。TCはどこからともなく出てくるのではなく、ちゃんとした出所がある。次の資料を見よ」

モニターの映像が切り替わり、宇宙のどこかに開いた大きな『穴』が映された。

「なにこれ、ブラックホール?」
「いや、どちらかと言えばブラックホールの出口であるホワイトホールに似てますね」
「ああ、他のホワイトホールとの違いは対応するブラックホールがこの宇宙になく、吐き出すのはTCだけだがな。
これは『TCホール』と言う」

ちなみにTCホールは今いる地球から何光年も離れているので目の良い参加者でも肉眼で観測することは不可能である。

「さて、このTCホールがまともに運行していれば、我々は何の害もなく過ごすことができた。
……だが、このTCホールは周期的に暴走する時があるそうだ。
そして、その周期に入ったと同時に、宇宙のあらゆる星々に莫大な量のTCを撒き散らした」
「それが此度の『大災害』の起こりというわけですか」
「その通りだメフィラスよ。
大災害が起こった瞬間、余が所属していた絶大な国力と戦力を有していた銀河帝国も為すすべもなく一瞬で吹き飛んでしまった……」

資料映像の中で見えない力で散っていく星々。

「だが余は生き残った。
大災害が起こる寸前に、かつて滅ぼしたジェダイの騎士の図書館……その中にあった古文書に目を通していた余は急いで部下のストーム・トルーパー共を率いて帝国を脱出し、TCホールから最も離れている地球、そして偶然TCが照射された軌道から外れて生き残った日本に流れ着いたというわけだ」

そして、日本へ流れ着く過程でダース・ベイダーは実力者であり信頼できる者達、ジャック・O、ココ・ヘクマティアル、バーダック、風見幽香、美国織莉子、ビアン・ゾルダーク、デウスエクスマキナと出会い、世界を救うために奔走することになる。
余談だが、ベイダーの師匠である銀河帝国の皇帝や、他の配下には報告する時間もなかったので、彼らも死亡したと思われる。
更に余談だが、生き残ったストーム・トルーパーが後の主催モブ兵士だったりする。

「古文書ということは、ジェダイの騎士はTCホールと大災害の件を予見していたということですかね?」
「左様だ。
元ジェダイの騎士である余も知らないところからして、知っているのはごくひと握りだろうが。
しかし、ジェダイを滅ぼしたことでTCホールを知る術を失った帝国が滅び、ジェダイを裏切った余が生かされるとはなんたる皮肉か……まあ、今は関係ないが」

映像資料に解読された古文書の内容が映る。

「余が見つけた古文書にはTCホールやTCについてはもちろん、大災害についてのことも書いてあった。
……それによると、一度目の大災害は余震に過ぎないとな」
「余震!? あの威力で?!」
「恐ろしいことにそうらしい。
そして次の大災害は最初の時とは比べ物にならないくらい破壊力があり、宇宙まるごと滅ぼせるほどの量のTCがばら蒔かれるということだ。
……今度は日本も助からん。
九州ロボのような浮島を作って地震や津波は回避できようとも、TCに満遍なく汚染されるので意味はない。
TCホールをどうにかしない限り、どこにいようとも一人残らず死ぬことになる」

天才の祐一郎が予見した通り、大災害には二度目があった。
しかし、さすがの天才でも、大災害をあくまでただの天変地異だと見ていたため、浮島の機能を持った九州ロボを作れば安泰だと思い込んでいた。
もし大災害が土地を浮島にすることでなんとかなる問題だったのならば、九州ロボが開発された時点で五大幹部はカオスロワなど中止していただろう。

「だが、古のジェダイの騎士達はTCホールもとい大災害に唯一対抗できる術を古文書に遺していた。
TCホールに唯一対抗できる『テラカオス』と、そのテラカオスを作り出すための『ナノマシン』の設計図をな」

そして五大幹部はテラカオスを生み出すために、混沌の騎士や神樹が感じ取った瘴気の正体――ナノマシンを参加者の支給品の飲み水の中に混入し、テラカオス化を活性するために殺し合いを開いたというわけだ。

「それでどうやってテラカオスで世界を救おうと言うのですか?」
「人喰い歌姫や焼け野原ひろしを見ていると、ゼンッゼンッ世界を救う要素なんて微塵も感じ取れないんですが」

ベイダーの持ってきた古文書には世界を救う鍵はテラカオスであるらしいが、会場で今も暴れ虐殺を繰り広げるテラカオス・ディーヴァやテラカオス候補者を見る限り、とても世界を救うようには見えない。
果たしてどうやってテラカオスで世界を救おうというのか?

185終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:11:21 ID:FyAK8cH.0

「コーホー。テラカオスは怨念の集合体にして混沌と殺戮の神。
高い戦闘力を誇り、完全体になれば殺し合いで死んだ全ての死者の技まで使える驚異の存在。
スーパーコンピュータである京が観測した平行世界の情報でも、ほぼ全ての世界で破壊者としての顔を見せていた……
しかし、それはあくまでテラカオスの一面に過ぎず、もうひとつの特性があることを古のジェダイは知っていた。
テラカオスは言わば存在自体がバグに近い存在……最初から歪んでいるために、他の者が浴びれば有害になる高密度のTCを……唯一取り込んでエネルギーに変換できる。
ナノマシンには参加者をテラカオス化させる機能とは別に、完全なテラカオス化した者をTCホールに送り込むワープ装置が組み込まれている。
次の大災害の時にテラカオスをTCホールの目の前に送り込んで、放たれるTCを全て吸収させてしまおうというのが、我らの計画だ」

知らないものには、テラカオスのその攻撃性と死者の技を使える能力ばかり目が行くが、混沌そのものであるテラカオスならば混沌のエネルギーであるTCを吸収できる能力を有しているというのだ。
それが他期の世界ではお目見えしなかったテラカオスの隠された能力である……というより他の世界では大災害の元凶であるTCホールもない、もしくはあっても暴走する周期に入ってないので、登場しなかったのである。

そして、TCホールから放たれる有害なTCを、殺し合いで生み出したテラカオスに吸収させて大災害を防いでしまおうというのが、五大幹部の計画である。

「しかし、テラカオスでTCを吸収できるという根拠は?
ジェダイの古文書もどこまであてになるのか……」

ここでメフィラスからの質問である。
古文書がどこまで信用できるかは定かではなく、信憑性を疑問視したのだ。

「ああ、我々も最初は古文書を疑った。
そして真偽を確かめるためにある実験を行うことにした」
「実験?」
「テラカオス化ナノマシンとネズミを使った動物実験だ」


モニターに一つの動画が移される。
そこにはガラスケースに個別に詰められた三匹のネズミがいた。

『ちょっと誰かー!! ここから出してよー!!』
『助けてくださ〜い、ハムタロサァン』
『ハハッ』

一匹はテラカオス化が全く進行しない陰性のネズミ、たなチュー。
一匹はナノマシンによってテラカオス候補者になった、こうしくん。
一匹はテラカオス化させたことで耳がなくなり首から下がタコのように異形化した(ただし殺し合いを経て生み出したわけではないので戦闘力は極めて低い)、たこぶえである。

「他の二匹はともかく、最後の一匹はどう見てもD社の」
「コードネームは『たこぶえ』だ」
「しかし、どう見ても浦安市にある遊園地の」
「これはあくまで『たこぶえ』よ」
「……訴えられますよ?」
「コーホー、『たこぶえ』だと言ってるだろ!」
(つか、こうしくんはネズミじゃなくてハムスターだってことはツッコミいれた方が良いのかしら?)

「コーホー。メフィラスのせいで些か脱線したが――
「私のせい!?」
――実験の内容はビアン博士が作った擬似的なTCを発生させる装置を使い、どれだけ耐えられるかを検証したテストだ。
実際に古文書の通りに、テラカオスがTCに対抗できるかどうかを確かめるためにな」

画面の中で実験が開始され、三匹のネズミに擬似TCが照射される。

186終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:11:53 ID:FyAK8cH.0




『助けて、ピカリ――』

開始から僅か数秒で、たなチューの肉体は弾けとんで消滅した。
テラカオス化を全くできなかった陰性のたなチューの肉体は、TCにも全く耐性がなく肉体が耐えられなかったのだ。

【たなチュー@爆チュー問題 カオスロワ開始前に死亡】

『ハムタロサァン……』

続いてたなチューが消滅した一分ほど後に、こうしくんの肉体も粉々に弾けて消滅した。
彼は候補者としてテラカオスに近づいたため、普通のネズミだったたなチューと比べれば少しは持った。
それでもTCに対して完全な耐性を持っていたわけではないので、肉体が耐え切れなかったのだ。

【こうしくん@とっとこハム太郎 カオスロワ開始前に死亡】

『ハハッ♪』

そうして生き残ったただ一匹、テラカオス化したたこぶえだけが生き残った。
それどころか、粉砕した残りの二匹とは違い、明らかに元気になっており、その体はムクムクと大きくなっていた。


「これは……」
「コーホー。我々もこの実験でわかった。
古文書の有用性と、TCホールへのテラカオスの有効性をな」

TCの前にただのネズミは一瞬で、テラカオス候補者のネズミはただのネズミよりかは長く持ち、テラカオス化したネズミは耐えている。
古文書に書かれた通り、テラカオスはTCを吸収し自身のエネルギーにしていた。
この実験で古文書に偽りがないことが証明されたのだ。

「あれ? だったら曲がりなりにもテラカオスになってるこのミ……たこぶえ一匹さえいればいいんじゃ?」

かつて自称黒幕のアガサ博士が光彦をそうしたように殺し合いを介さずにテラカオスを作る裏ワザはある。
たこぶえはまさにそれだったが、ならば殺し合いを開く意味もないのでは?
というのがニャル子に浮上した疑問だった。

「曲がりなり、ではダメな理由があるのだ。
実験はこれで終わりではなく続きがある。少し早送りするぞ」


それから五分、十分とたこぶえはTCを浴び続け、大きくなっていたが……

「ハハッ……ハハハッ……ゴフッ」

唐突にたこぶえは苦しみだし、血を吐き始めた。

「なんだ!?」
「コーホー。強度が限界を迎えたのだ」
「強度、とは?」
「殺し合いという儀式を経ずに産まれたテラカオスは耐久性が低い。
TCを吸収はできるが、一定以上ため込めるだけの強度を持ち合わせていないのだ。
陰性の者や候補者に比べればマシだが、この程度では次の大災害には到底耐えられん」

『ハハッ、細切れにしてや――』

そして映像の中でTCに耐え切れなくなったたこぶえの肉体もとうとう吹き飛んだ。

【ミッキーマウ(ry…たこぶえ@駄菓子 カオスロワ開始前に死亡】



「以上が実験の結果だ。
古文書に嘘はなく、テラカオスはTCに有効であることがわかった。
……しかし、古文書には大災害に耐えられるだけの強度を持つテラカオスを作り出すには、どうしても大規模な殺し合いで参加者を戦わせるしかないともあった。
そこで我々は古文書に従い、大規模な殺し合い『カオスロワ』を開いたのだ」

ただ生み出しただけの「弱い」テラカオスではダメなのだ。
大災害に耐えられるだけの「強い」テラカオスを作り出すのは憎しみと殺意が渦巻く殺し合いしかない。
サウザーの考察通りカオスロワとは、世界を救えるだけの一番強い蟲「テラカオス」を作り出すための「蠱毒」だったのである。

187終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:12:39 ID:FyAK8cH.0

「強いテラカオスではないとダメということは、今、会場で暴れている風鳴翼……テラカオス・ディーヴァでもダメということですか?」
「ああ、あれは未完成のテラカオスだ。
実験映像のネズミよりかは持つだろうが、次の大災害はとても防ぎきれん。
完成の指標である『死者の技が使える』までは我らの目的には程遠い」

テラカオスとして新生した風鳴翼もといテラカオス・ディーヴァも参加者としては圧倒的な実力を持っているが、まだ完全なテラカオスとは言えない。
死者の技が使えるようになって初めて強いテラカオスとして完成するのだ。

「いくつか、疑問とツッコミ所があるんですが、いいですかね?」
「ニャル子よ、なんだ?」
「テラカオスが大災害を防ぐのに有用なのはよ〜くわかりやしたよ。
でも疑問その一、テラカオスがTCホールのTCを吸ってエネルギーに代えられるってことは、テラカオスがパワーアップして、こっちに襲いかかってくる可能性もあるんじゃ?
つかバラ撒いたナノマシンもどうするの? そのまま放置したら無限にテラカオスや候補者が増え続けるじゃん。
宇宙滅ぼせるだけのエネルギーを手にした敵が現れたら、どう責任とんの!?
疑問その二、なんでこんな重大な計画にユウキ=テルミとか入れちゃったの?
それから疑問その三、テラカオス以外に大災害をどうにかする方法もあるんじゃないですか?
龍が出てくる七つ玉とか、某ピンク髪の少女を白い淫獣の下に連れ出して願いを叶えてもらうとかさー。
疑問その四、真尋さんをいつ返してくれるんですか?」

ニャル子の疑問ももっともだった。
大災害の時に発せられるTCをテラカオスが吸ってパワーアップしたら、驚異が大災害からテラカオスにすげ変わるだけで意味がない。
仮にテラカオスをどうにかしても、ばら撒いたナノマシンも地上に残り続けて候補者やテラカオスを生み出し続けるだろう。
これだけ重大な計画なのにユウキ=テルミもといハザマのような裏切ることに定評がある者を多く特務機関に入れたのか。
そもそもドラゴンボールで神龍を呼び出して願いを叶えてもらうなど、カオスロワより穏便でより平和な手段は取れなかったのか?
ココの手元に囚われた真尋はいつ戻ってくるのか?
この疑問にはベイダーに代わってジャックが答える。

「それらについては私が答えよう。
とりあえず真尋はココが飽きるまで諦めろ」
「救いはないんですか!」

「最初の質問からだが、テラカオス化ナノマシンは先ほど言ったワープ機能の他に、テラカオスを自滅させる機能もついている」
「自滅? できるんですか?」
「発動条件は次の大災害をテラカオスが防ぎ切った瞬間。
その時を迎えたと同時に、全てのナノマシンにプログラミングされた自殺装置が一斉に作動し、テラカオス、その候補者、そしてナノマシンそのものが自滅することによってテラカオスが大災害以上の驚異になることを防げるんだ」
「なるへそ」

ジャックの言い分が正しければ、テラカオス関連のモノはすべからく死に絶えるので、カオスロワが終わった後までテラカオスやナノマシンに悩まされる心配はなくなるようだ。

「次の質問だがベイダー卿が言った通り、人材を選り好みできる時間がなかった。
本来は多くの拠点を建て、特務機関員も大尉や風魔、黒のようないい男……じゃなくて優秀で任務とあらば非情になれるが、絶対に裏切らない者だけで固めるつもりだった」

「ところが、カオスロワの準備を着々と進めていた我々だったが、スーパーコンピュータ「京」の計算で次の大災害が僅か数日に迫っていることを知ってしまったのだ。
もはや一刻の猶予もなかった我々は、数多く配置する予定だった全ての主催拠点の建設を中止。
特務機関員も選んでいる場合ではなく、人格に問題のあるシックスやベクター、モノクマや後のユウキ=テルミになるハザマなどを徴用するしかなかったのだ。
もうこの時点で無茶な賭けだとわかったが、時間がない以上、拠点なし問題児だらけでカオスロワを開始するしかなかった」

拠点を構えなかったのも、特務機関員に裏切り者が多いのも、全ては時間がなかったゆえの判断だった。

188終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:13:10 ID:FyAK8cH.0

「ただ、裏切者になりそうな者はなるべく最前列に配置し、使い潰すようにしていた。
実際、シックスは殺し合いをある程度かき乱して死に、モノクマは死ぬ間際に興味深いデータを残してくれた。
裏切ったサーシェス、ベクターは今も生き残って存命しているが、前者はテラカオス候補者に、後者はDMC狂信者に入ったおかげで殺し合いを助長させてくれている」

いずれも裏切ったのは死んでもいい外道ばかりだが、殺し合いにはそれなりに貢献してくれたのだ……ある一人を除いて。

「しかしユウキ=テルミ。こいつだけはイレギュラーだった。
ハザマ時代の時に拳王電車に轢かれてズガンと殺されたところはあまりにも呆気なさすぎると思ったが、裏切る前に死んでくれたのは内心安心していた……
……この時に奴に他者への憑依能力があることに気づいていれば、結果は変わったのだろうがな。
あとは二人が知ってのとおりだ。
まったく、策士が策に溺れさせられたよ……」

リサーチ不足だったのか、ユウキ=テルミに憑依能力があることを見抜けなかったジャック達は油断してしまったようだ。
死んだと思われたユウキ=テルミはストライダー飛竜の体を乗っ取って復活し、主催陣営に多大な損害を与えた。
ユウキ=テルミ一人入れなければ、少なくともデウスエクスマキナは死ななかったかもしれず、グラシエも裏切らなかっただろう。

「ああ〜、残念な主催陣営だとは思ってたけど、残念にならざる負えなかった理由もあるんですねー」
「よく上司である我々の前で残念とか言えるな、君は。
まあいい、最後の質問だが……ココ、アレはあるか?」
「ええ、持ってるわよ」

適当なテーブルの上にココはデイパックから謎の物体を取り出した。
欠けた丸い七つの石のようだが……

「なんですか、このクッソ汚い石?」
「……ドラゴンボール、その成れの果てだ」
「ほうほう、ドラゴンボールって言うんですか、へぇー?」



「なんですとーーーーーーーー!?」

思わずノリツッコミをしてしまったニャル子。
ココが取り出した七つのドラゴンボールは、ニャル子の知る神々しいオレンジ色の球体水晶ではなく、力を失った石の塊と化していた。

「我々だってコストもリスクもかかる上に大量の犠牲を強いなければいけないカオスロワを開こうなどとは思わなかった。
カオスロワ自体、当初は織莉子もキリカもビアン博士にデウス、ココや私だって反対だった。
だからカオスロワを開くと決める前に、ドラゴンボールを集めて願いを叶えてもらおうとした。
そして辛くもドラゴンボールを七つ集めた我々は、神龍を呼び出して願いを叶えてもらうことにした」

もしここで、願いが叶っていればカオスロワはもちろん次の大災害の悲劇は回避できただろう。

「神龍に『次の大災害を防いでくれ』と我々は頼んだ……そしてどうなったと思う?」

……しかし、運命はかくも残酷であった。


「願いを叶えようとした神龍の方が、バラバラに消し飛んでしまったよ。
後に残されたのは、力を失った七つ玉だけだった」
「ファッ!?」
「しかもドラゴンボールほど絶大な魔力を含めた物は、タイムふろしきのようなひみつ道具でも復活できないと来た。
こうしてドラゴンボールを使って世界を救う計画は水泡に帰した」


【神龍@ドラゴンボール カオスロワ開始前に死亡確認】
※ドラゴンボールはタイムふろしきでも復活できません

189終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:13:44 ID:FyAK8cH.0


「どうしてそんなことに……」

ドラゴンボールと言えば、屈指のチートアイテムだ。
神様の力を超える力でなければ、ほとんどどんな願いでも叶えられることができる。

「簡単なことだったのだ、大災害は神龍の力……神の力を大幅に上回っていた。
後で京で計算してみたが、恐ろしいことがわかってしまった」
「恐ろしいことってどんなことです?」
「神龍が願いを叶える力、エントロピーが1として、大災害のエントロピーが10」
「10倍!? マジすか」

大災害が全能の力を持つ神龍の10倍の力を誇る、それでもニャル子は十分驚きだったが。

「違う、話は最後まで聞け。
大災害のエントロピーは10の12乗倍、すなわち一兆倍だとわかったんだ」
「いっちょうばい!?」

大災害はドラゴンボールの力の一兆倍を持っている。
力の差はイデオンとジム並。
願いを叶えようとした瞬間、吹き飛んでしまうのも無理はない話だ。

「鹿目まどかを洗脳してインキュベーターに願いを叶えてもらうプラン(まどか魔女化の顛末を知る織莉子は猛反対していた)もあったが、これも神龍と同じくインキュベーターごと吹き飛んでしまうことがわかった」
「概念級になれる魔法少女でもダメとか……」
「それどころか、今生き残っている少女を全員魔法少女にしても足りないぐらいだ。
魔法少女だけでなく、日本に生き残っている者あらゆる力を結集させて、大災害を回避できるか「京」に計算させてみた……が、ダメだった。
大災害には足元にも及ばないと計算が出てしまったんだ」

計算の中にはハクメンやマーラ様や、フォレスト・セルなどの超理不尽級も含まれている。
それを結集させてもなお足りないことが、「京」の出した答えだった。

「ええーい、だったらこの世界自体諦めて、とっとと別の平行世界にでも逃げた方がお得じゃないですか?
そーいうことができそうなデウス隊長やビアン博士は死んじゃったけど、今生き残っている科学者系参加者や道具をかき集めれば可能じゃないですかね!」

テラカオスに頼らず、他の世界へ逃げるというもの。
この世界に見切りをつけて捨てることになるが、滅びる世界にわざわざ残ってカオスロワを開くよりは遥かに人道的で安全な策に思えた。

「残念だが、それはできない。
この世界から脱出することはできない」
「なして!?」
「TCが汚染するのは生物や物質だけじゃない。
TCは空間すらも侵しているんだ。
大災害が起こったその日から時空間が歪み、この世界からいかなる手段を用いても脱出することはできなくなっている」
「そんな! でも混沌の騎士とか、ディーとか、マーラ様とか……」
「蟻地獄と同じで入ることは簡単にできるようだがな、出ることは例え神の力をもってしても出来はしない。
更に時空が歪んだことに過去や未来へのタイムスリップも不可能になった。
大災害が起こらない過去や、大災害の余熱が覚めた未来に逃げることもできない。
織莉子のように未来予知はできるが精度も高くなく、見れるのはほんの僅か先の出来事だけだ」
「詰んでるってレベルじゃねーぞ!」

よからぬことを考えていたベクターは、世界滅亡の後にカオスの力を使ってこの世界から脱出しようと企てていたが、本人が気づいていないだけで実はそれもできないのである。
時を駆ける魔法少女である暁美ほむらが時間遡行できなくなったのも、TCが原因である。
一度、この世界と時空に入ってしまった以上、誰もこの世界から逃げることはできないのだ。

190終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:14:18 ID:FyAK8cH.0

「それだけじゃない。
あらゆる蘇生呪文が使えなくなったのは二人とも、もう知っているな?」
「ええ」
「ザオリクもサマリカームも使えなくなったアレですね、使えなくなったのは……?」
「お察しの通り、空間がTCに汚染されている結果ではないかと思われる。
古文書には書かれていなかったが、可能性は高い」

今期はサイボーグ化や強い怨念によって魂が冥界にいけなかった草加などの一部例外を除いて、死人が生き返ることは絶対にない。

「それのせいで死者復活祭りもできはしない……まあ、あんまりホイホイ生き返ってもらっても困る時はあるんですがね、せっかくのシリアスが壊れる場合があるし」
「メタ発言は自重しろニャル子。
……正直なところ、死ねるだけだったらまだいい、生き返れないのも本来は自然の摂理だ」
「ジャック、蘇生関連でも何かまだ問題があるんですか?」

ジャックは今までの中でも神妙な顔で答える。

「どうやら例の古文書によると、莫大な量のTCは肉体だけでなく……魂すら消滅させるのだ。
現世界と冥界、生ける者と死んだ者……関係なく、次の大災害で全ての魂が消滅する!」
「なん…だと……!?」
「その結果、何が起こるか?
死んだだけならまだ良かったと言えるようになる。
魂は天国か地獄に行きつき、輪廻転生でまた蘇る。
だが、魂がなくなれば輪廻転生はできず、新しい命は大災害後には芽吹かない。
それすなわち……」


「……行き着く先は世界の死、虚無だけだ」


大災害が起こればTCによって魂が消滅し、後には何も残らない。
他期には死者スレで暮らすというエンディングがあったが、それすらできないのである。


「これでわかってくれただろうか?
時間は残されていない、逃げ場はどこにもない。
全てを根絶やしにする大災害を回避するには、無茶な賭けと大量の犠牲を覚悟の上で殺し合いを開き、テラカオスを完成させてTCホールに送る以外、世界に道はないのだ」

幹部クラスの者達もやりたくてカオスロワを開いたわけではない。
時間が残されてない故に、人材と拠点に問題を残したまま、カオスロワを開くしかなかった。
どこにも逃げ場がないので、死人が大量に出るカオスロワを開くしかなかった。
他の手段もなく、他の手段を探す時間もないゆえにカオスロワを開くしかなかった。

「しかしジャック、カオスロワで大量の犠牲と損害が出て、無法な殺し合いは社会システム的にも大打撃を受けさせます!」
(私は真尋さんが生きてればなんでもいいけど)
「テラカオスを生み出さねば、どう足掻こうとも世界は滅び、やらねば全滅だ。
人口の99%が犠牲になっても残りの1%が生き残っていれば世界は存続できる、全滅するよりはマシだろう……そう思い、我々は覚悟の上でカオスロワを開いたのだ」

殺し合いは多くの悲しみや怒りを振りまく。
だが、少なくともカオスロワ10期の世界では、その悲しみと怒りこそ必要であった。
仮にカオスロワを開かなくとも、二度目の大災害で結局全ての命を奪い去ってしまうのだから。

191終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:14:48 ID:FyAK8cH.0


「わかりました……必要悪なら仕方ありませんね」
「コーホー、メフィラスよ。わかってくれたか」
「ええ、敬意に値する地球人が犠牲になることは内心快くないですが、全滅を回避するためには多少の犠牲も止むなしというところでしょうか。
もちろん、他に世界を救う穏便な手段があるなら、私は悩まずにそちらに飛びつきますが……それが見つかるまでは命の恩人であるベイダー卿に従いますよ」

迫り来る大災害に対して平和的な解決手段が見つかるまではベイダーに従う。
それがプロジェクト・テラカオスに対してメフィラスが出した結論だった。

「わ、私もココ様達の世界を救う尊き計画に賛同しますです!
……だから真尋さんを返してぇ」
「ダ〜メ、あんたは自分と真尋キュンが生き残ることだけしか考えてなさそうだから」
「ギックゥ!! ……て、真尋さんの頬にキスするなあああああ!」

ニャル子は計画については理解したが、自分と真尋優先なのは相変わらずであった。


「しかし、計画については理解できましたが、一つだけ気になることが……」
「コーホー、なんだ?」
「テラカオスに関係するかもしれない話です。
皆様は救済の予言をご存知ありませんか?」

メフィラスが言ったのは、からくりドームで命を落とす前にハラサンがイチローチームに話した救済の予言のことである。

「それは余達も聞いた」
「内容は確か、
“九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂、全てを虜にする歌、巫女の祈り、器たりえる巨像、不屈の精神を持った勇者。
全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる”だったな……それがどうした?」
「ええ、この予言の『争いの淀みから生まれた化身』は殺し合いによって我々が生み出そうとしているテラカオスのことではないのでしょうか?」

メフィラスとニャル子は救済の予言にテラカオスとの因果関係があるのではないかと睨んでいた。
しかし……それを聞いたベイダーとジャックは苦い顔をしていた。

「確かに化身の下りはテラカオスで間違ってないように思えるが……余の持ち出したジェダイの古文書にもそんなことは書いてなかったぞ」
「内容に妄言としか取れない不明瞭なことが多すぎる。
ハラサンは九人の最良の戦士たちによる儀式を野球による試合と解釈していたが……野球で世界を救うっていうのは常識的に考えてどうなんだ?」
「それは……」

ベイダー達は予言に関して懐疑的だった。
特に『九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂』……つまり野球チームが試合をして優勝することに関しては、意味不明としか思えなかった。
まともな人間のならこの時点で、なぜ野球なんだ? と思うだろう。
いちおう、試合が終わった会場に野球ボール状の呪印が浮かび上がる謎の怪現象が発生しているが、誰かが仕掛けたイタズラかもしれない。
実際、そういうのができそうな参加者は会場にゴマンといるのだから。

だが……

「いや、ベイダー卿、ジャック。
私が調べたところ、その予言は眉唾物じゃなさそうよ?」

ココの意見は違った。
他の四人の顔がココに向く。

192終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:15:13 ID:FyAK8cH.0

「コーホー、どういうことだ? というより、いつ調べた?」
「私も例の予言が引っかかってね。
九州ロボを出て、イチローチームと大正義巨人軍が戦ったからくりドームも調べてきたのよ」
「ただ『ヒャア我慢出来ねぇ本職だ!』だと言って商魂を抑えられずに出て行ったわけではなかったのか、コーホー」
「失礼ね! 私の本当の目的はからくりドームのリサーチよ!
じゃなきゃ、幽香やバーダックが九州ロボから出してくれないし、商売は東京なんて激戦区に出かけた理由の半分くらいしかないわよ!」
「そ、そうか……」(半分くらい……?)

ベイダーの失言(?)にプンスカしたココだったが気を取り直し、モニターを操作して全員に見せる。

「で、からくりドームを調べてみれば、面白いことがわかったのよ」
「からくりドームに何があったのですか?」
「試合が終わった会場の土には、高純度の生体マグネタイトに似たエネルギーが溜まっていたのよ」
「生体マグネタイト? って、真・女神転生の悪魔を呼び出すのにエネルギーじゃないですか」

生体マグネタイトとは悪魔を呼び出すのに必要なエネルギーで、生きとし生ける者の中にも含まれているエネルギーである。
このエネルギーに目をつけたDMC狂信者はクラウザー復活のためにビックサイトを巨大なマグネタイト収集装置に変えているほどである。
それに似たエネルギーとはどういうことだろうか?

「さらに会場を隅々まで調べたら、なんらかの術式があったわ」
「術式? どんな術式だ?」
「正直、オカルト関連は幽香の専門で、私は彼女からちょっとだけ教わった程度だから、詳しい原理とかわからないけど……
術式の形からして野球選手が試合中に放った闘気や生命エネルギーを野球場の土に吸わせて留めさせるようにしているんだと思う。
じゃなきゃ、ただ殺し合っただけではエネルギーは貯まることはありえないわ」

生前のハラサンの言っていた『魂を込めた球を投げ合い、打ち合い、捕球し、マウンドを走り回って大気に汗を振りまき。 そして敗者たち……生贄の血を大地に捧げる』とはこのことだったのか?

「このエネルギー、取り出せるのか?」
「それはダメみたいね。
術式によってエネルギーそのものは野球場から移せないようになっている。
幽香が生きていれば解除もできたかもしれないけど」

もし、術式がなければ、からくりドームのエネルギーはビックサイトもしくはディーの呼び出した龍脈の龍により、全て吸収されつくしてしまっていただろう。
それだけ特殊な術式がからくりドームに施されていた。

「コーホー、他の球場でも試合後に呪印が現れたが、からくりドームと似た術式が使われていると見るべきか?」
「たぶんね」
「しかし、なぜ野球なのだ? これがよくわからん」

ここで疑問出てくる、なぜわざわざ野球なのか?
ただの野球場に、なぜにエネルギーを貯めるような術式を作ったのか?

「その答えは簡単よ。
この世界の野球選手は強い選手が集まり易い……本当なら、野球選手じゃなくて戦士や兵士になるべき尋常じゃない戦闘力を持った者が多い」

イチローやムネリンをはじめとして、この世界の、野球選手は範馬勇次郎が雑魚に見えるほどの強者揃いである。
つまり実力はトップクラスの戦士達とも言い換えられる。

「そんな彼らが本気の殺し合い……殺人も上等のカオスロワ式野球をやったらどうなるかしらね?」
「コーホー、なるほど。
ちょっとやりあっただけで、闘気などの凄まじいエネルギーが発生しそうだな」
「誰がいつ、この術式を仕掛けたかは定かじゃないけど、そこに目をつけたんでしょうね。
さらに試合で勝ち上がった者同士が戦えば、更に高純度・高密度の生体エネルギーが手に入りそうだわ」
「九人の最良の戦士達による儀式の完遂……べらぼうに強いヤツラ同士を野球させて優勝争いさせて、エネルギーを回収しちゃおうってのが、目的なんですかね?」
「おそらく、ね。
このエネルギーをどんな形で取り出して使うかはわからないけど、争いの淀みから生まれた化身がテラカオスだと前提した場合、テラカオスに使うエネルギーだと思うわ」

救済の予言に関するココの推測は続く。

193終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:15:47 ID:FyAK8cH.0


「次に『全てを虜にする歌』。
これに関しては「京」が観測した平行世界のテラカオスの顛末にヒントらしきものが見つかったわ。
その世界のテラカオスは、私達の目指している完成したテラカオスだった」

そのテラカオスは五期のテラカオスのことである。
今期にも登場した混沌の騎士の前身でもある。

「だけど、そのテラカオスはある理由から参加者達に敗北したわ」
「理由とは?」
「端的に言えば魂の吸い込みすぎ……体内に入った大量の死者の魂を処理できず、制御できなかったのが敗因よ」

某753の言葉を引用すると、一つの肉体に幾つもの数え切れない魂に自我が耐えられるはずがない。
誕生当初は自我を含め、何も持たなかった故に無尽蔵に魂を吸収できたが、終盤にて自我が生まれてしまった故に他の魂を吸収するにはそれらの意識を時間をかけて乗っ取る必要があった。
ゆえに一度に自分の意思に相反した大量の自我が入ることには耐えられなくなったとのこと。

「自我なんてあの貧乳歌姫、バリバリ持ってるんですがそれは……」
「ええ、「京」からこれのことを知ったとき、私もちょっと不安になったわ。
彼女の思想と相反する魂なんていくらでもいるでしょうし」

このままでは今後生まれてくるテラカオスも五期と同じ道をたどるんじゃないか?
そんな不安が四人を不安にさせる。

「でもね、だったらこうすればいいのよ。
体内に入った全ての魂を従うように『虜』にさせるの」
「それで歌なのか?」
「歌の力をなめちゃいけないわ、ジャック。
違う位相の存在を現実世界に強引に引き止めたり、戦争を終わらせたり、調律して平和な世界を生み出す魔力を歌は持ってるわ」
(あ、シンフォギア、マクロス、ラーゼフォンだ)

今期でも、熱気バサラに水木一郎、クラウザー見れば歌にも力があることがわかるだろう。

「実際、DMCみたいな糞曲でも現在進行形で大量の狂信者を生み出したわ。
私は流石にクラウザーの歌は大っ嫌いだけど、あれを超えられるだけの全てを虜にできる歌があるかもしれないわ」
「歌でテラカオス内部の魂を『洗脳』して制御させてしまおうということか」
「そゆこと」

歌で魂を虜にして、全ての魂を制御下に置いてしまおう。
それがココなりの答えである。


「続いて『巫女の祈り、器たりえる巨像』。巨像については、まずこれを見て」

モニターには、今も東京の新宿にいるフォレスト・セル、今は亡きガメラやオーバーデビルも映し出されている。
どれもその気になれば世界を滅ぼせるほどの力を持った者達だ。

「実力については言わずもがな……まあ、ギャグみたいなノリで死んだ奴もいるけど、こいつらは共通点があってね。
どれもこれも制御や力の発揮には『巫女』を必要としていることね」

ココの言ったとおり、制御や隠された力を解放するには巫女に該当する者が必要なもの達ばかりだ。

「つまり、巨像に該当するものを制御できるのが巫女の祈り。
器たりえる巨像って言うからにはテラカオスをその内部に入れるんでしょうね」
「入れてどうするんだ?」
「内部にいれたテラカオスを更にパワーアップさせるのか、それかテラカオスを閉じ込めて巨像が力をつけるのか……実際にフォレスト・セルとかにそんな力があるのかわからないけど、可能性はあるわね」

巨像はテラカオスのパワードスーツ、もしくは拘束具であるかもしれないというのが、ココの考えである。


「ええと、最後は『不屈の精神を持った勇者』!」
「コーホー、うむ、これはどんなのだ?」
「それはねー……」
「「「それは?」」」

最後に上がった、不屈の精神を持った勇者、それが何を意味するのか?
その答えは……?



「正直、ワカリマセン」



その言葉が出た瞬間、ココ以外の全員が一瞬で呆れ顔になった。

194終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅②:2016/09/19(月) 00:16:12 ID:FyAK8cH.0

「いや、そんな顔しないでよ。
勇者に該当する参加者は肩書きだけでもゴマンといるし、不屈の精神を持っているヤツなんてけっこういるかもしれないし〜」
「まあ、そうだが」
「だいたい考えられる幅が広過ぎて逆に憶測も立てられないわよ、この下りだけ。
まあ、文章の最後にあるし、なんか重要なキーマンなんじゃないの?」
「適当だなオイ」

不屈の精神を持った勇者……これだけはココでも推論が立てられなかった。


「とりあえず、私の推論では
争いの淀みから生まれた化身=テラカオス
九人の最良の戦士たちによる儀式の完遂=野球チーム同士の試合で得た生命エネルギーをテラカオスに使う
全てを虜にする歌=テラカオス内部の魂を鎮め、暴走を防ぐ手段
巫女の祈り=巨像を制御する鍵
器たりえる巨像=テラカオスをパワーアップさせる、もしくは閉じ込めて制御下に置くための器
不屈の精神を持った勇者=ワカンネェ┓(´Д`)┏、たぶんキーマン
……だと思う。

そして『全てが揃いし時、争いの淀みから生まれた化身は救いの神に転じる』とあるわね。
救いの神になったテラカオス……この予言は、テラカオスを私達が完全に制御下に置く、パワーアップさせる、もしくは両方を可能にするための方法なんじゃないかしら」

ココの出した推論に他の者達はうなづく。

「ふむ、テラカオスを完全に制御下に置く。
確かに全てを虜にする歌でテラカオスの中にある魂を制御すればテラカオスも制御しても同然になるな」
「ナノマシンに自滅するプログラムがあっても、万が一作動しなかった場合の保険にもなりますね」
「コーホー、パワーアップについてもそうだ。
古文書にはテラカオスなら世界を救えるとあったが、大災害のパワーが完成したテラカオスをも上回る可能性も十分ある」
「ジェダイも滅びてるし、テラカオス救済論にも100%の信頼はおけませんからね〜。
不測の自体に備えて課金アイテムをつけるがごとく、強さには余裕を持たせるってことですかね」

あくまで憶測に過ぎないが、救済の予言がテラカオスに纏わる何かである線は濃厚だろう。

「……ただ、予言に関しては懸念もあるわ」
「なんだ?」

一方、ココには予言には期待とは別の疑問があった。

「この予言の出処がわからないのよ」
「出処?」
「いつの時代の、誰が書いたのかわからないのよ。
仮にジェダイが書いたとしら、何で予言の内容を古文書の方に記してなかったのか理由がわからないもの。
野球場の術式だって、誰が仕掛けたのか不明瞭だし」
「コーホー、確かに」

ココの言った通り、この予言を誰がどこでいつしたのかがわからない。
そこにキナ臭さを感じているのだ。

「そう来ると、この予言の中に救済って言うのも私達の望んでいる救済なのかも怪しいわね……」
「救済と見せかけて人類滅亡!
予言の内容を完遂した瞬間、みんなLCLになって、おめでとうおめでとう……なんてオチもあるということですか?」
「ニャル子の言ってる意味がわからないけど、イメージとしては概ね合ってるんじゃない?
ともかく、予言については調査する必要がありそうね……せめて出処だけでも探らないと、怖くて予言の内容を実行する気が起きないわ」

救済の予言についてはあくまで慎重な体勢であるべきというのがココからの意見であった。

ここまで生き残った主催陣営達は大災害が起きた理由とプロジェクト・テラカオスの全貌、カオスロワを開かねばならなかった理由、救済の予言に対する考察を終えた。
その結果、時刻は11時を過ぎ、今期五回目となる放送が流れたのだった……

195終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:17:30 ID:FyAK8cH.0


――追加される禁止エリアは四国です。
では、これにて放送を終了します。」

放送は終了し、自称“新”内閣総理大臣にして主催を乗っ取った安倍晋三の放送は途切れた。

「まさか安倍がガラ空きになった九州ロボを乗っ取り、放送をするとは……」
「もう九州ロボに特務機関員も残ってなかったし、誰も放送できないじゃんと思ってましたよ」
「全滅する前のモブ兵士からの通信で、ユウキ=テルミや超人血盟軍の面子とは違う、安倍が裏切ってモブを虐殺してるとは聞いてたけど、まさか主催になるとはね……」
「コーホー、あのバカめ、幽香とバーダックの死まで放送しおって!
おかげで幽香派のモブ兵士や特務機関員の士気はだだ下がり、バーダックの攻撃力がなくなったとバレた以上、また九州ロボが対主催に攻め込まれるではないか!」
「落ち着くんだ、ベイダー卿。我々にはまだダークザギがある。
しかし、クラウディウス、大尉、風魔、新城までも一辺に失ったのは耳が痛いな……」

安倍の放送に、衝撃を受ける者、マイペースな者、あくまで冷静な者、怒る者、頭を悩ます者、反応は様々であった。
と、ここで疑問が浮かんでくる。

「生き残った超人血盟軍は全員関東にいるとして、ユウキ=テルミはどこに行ったんだ?
コーホー、奴の目的は主催の乗っ取りではなかったのか?」
「安倍と手を組んでいる可能性は?」
「ベイダー卿、ジャック。どうやら違うみたいよ」
「どうしてそう言い切れる?」
「これを見て」

首を傾げるベイダーらにココはカオスロワちゃんねる掲示板のレスを見せた。
内容はついさっきの出来事のようだ。

『なんかフードつけた忍者っぽいのが誕生日パーティやってたDMC狂信者を襲撃してた件』
『こいつ見たことあるーw!
四国から放たれたビームを刀一本で弾いて大阪を守った白い侍と一緒にいたヤツじゃん』
『あの後、拳王連合軍倒しに行ったらしいから死んだと思ったが生きてたんだなヨカッタヨカッタ……でも何で数時間足らずで近畿から関東にワープしてんの?』

これは埼玉にいる、とある人物が狂信者を襲撃した瞬間を目撃した者達による書き込みである。
忍者っぽい出で立ち、大阪を守った白い侍と一緒にいた者、拳王連合軍を倒しに出かけた者……首輪を外す前の参加者の顛末なら探れる主催陣なら、それが誰かすぐにわかった。
答えはストライダー飛竜……の肉体を乗っ取ったユウキ=テルミである。

「ユウキ=テルミめ、いつの間に埼玉に……」
「九州ロボを乗っ取っても、ファクターである私がいなきゃ九州ロボは動かない。
それでも「京」のような参加者の情報を収集する機器は九州ロボとは別口だから、安心してロワを運営したいなら九州ロボ内部でふんぞり返っても良いハズよ。
運営や放送だけを安倍に任せているケースかもしれないけど、モブ兵士からの通信を見る限り、安倍はあくまでガラ空きになった九州ロボを漁夫の利的に奪っただけのように見えるわね」

実際、ユウキ=テルミと安倍の繋がりはなかった。
安倍は五大幹部も特務機関員も超人血盟軍、そしてユウキ=テルミもいなくなったのを見計らって九州ロボをハイエナ的に奪っただけである。

「コーホー、ユウキ=テルミの目的はあくまで主催への攻撃だけだったのか?」
「まあそうでしょうね、あいつ一人がいただけで、私達も超人血盟軍も大打撃を受けたわ。
おまけに安倍の介入のせいでモブ兵士もこの基地に残っている者達で全てだし、人員が減った以上、ロワの運営行動も大きく制限される……泣けてくるわよ。
ジャック、あなたの意見は?」

ユウキ=テルミの襲撃と裏切りの目的は主催陣営に打撃を与えること。
ベイダーとココの考えがまとまりかけていたが、ジャックの考えは違った。

「私は奴の目的は攻撃だけではないと思う」
「どういうことなの?」
「ただの襲撃だったら、超人血盟軍の面子に任せればいい。
ユウキ=テルミ無しでも戦力的にはかなりのものだし、こちらに少なくない痛手は負わせられる。
それに対してわざわざ死地に飛び込んでいくのはリスクがでかすぎる。
確かにヤツは強いが、よほどの物好きか戦闘好きでもなければ、九州ロボ襲撃に参加するメリットは薄い。
しかし、だ。
ある仮定をつければ合点がいく」

196終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:18:11 ID:FyAK8cH.0

ジャックの考えるユウキ=テルミが襲撃に加担した理由とは?

「ユウキ=テルミは、テラカオスや大災害の謎を知っているのではないか?
そしてテラカオスの独占を狙っている」
「「「「!?」」」」
「ヤツは主催にただ打撃を与えに来たのではなく、自分の手でテラカオスを知っている者……すなわち我々五大幹部とデウスら上層部の者を自らの手で殺害しようと考えた。
さすれば、テラカオスを知る者や制御できる者は奴だけになり、独占も可能になる」
「まさか関東に来たのも我々を抹殺するために追ってきたというのか?」
「仮定の話だからなんとも言えんが、可能性はある」

ジャックは九州ロボと化した九州の地図を見る。

「襲撃による破壊は人物相手とは限らん。
テラカオスの情報に纏わる施設も破壊したに違いない」
「超人血盟軍や安倍に知られる前にデータ系施設もやられたと見るべきか」
「いや、それだけではない」
「なに?」

ジャックはメフィラスを見やる。

「メフィラス、知能指数一万を超える君に聞く。大正義巨人軍の出身地はどこだ?」
「たしか、宮崎県ですね」
「その大正義巨人軍関連の施設に遺跡はあるか?」
「遺跡……確か、キャンプ地の近くに……ハッ!」

質問に答えていたメフィラス星人は、ここであることに気づき、ジャックがそれを代弁する。

「そう……大正義巨人軍は救済の予言を掲げていたハラサンが所属していた。
大正義巨人軍の出身地は宮崎。宮崎は九州ロボを構成するパーツの一つ。
そして、キャンプ地の近くにある遺跡……ハラサンが現役時代に一度も入らないとは思えない」

ここまできて、他の三人もジャックが何を考えているのか理解した。

「ハラサンは現役時代にとある遺跡で救済の予言を見たと言っていた。
その遺跡がキャンプ地の近くにある遺跡なのだろう」
「ジャック、あなたはユウキ=テルミがテラカオスのみならず、救済の予言について知ってると見ているのですか?」
「ああ。
そして、私がもしテラカオスの独占を狙うなら、戦闘によるリスクは覚悟の上で九州ロボに潜入し、この遺跡は破壊する。誰かに知られる前にな!」

ジャックの推理は、概ね当たっていた。
ユウキ=テルミは少なくともテラカオスのことは確実に知っている。
そして他の誰にもバレないように救済の予言が記されている遺跡を破壊した。

「だが、ユウキ=テルミが救済の予言について何か知っているようなら、ある意味チャンスとも言える」
「現状では推測の域を出ない救済の予言の真の意味も、奴を捕まえれば知ることができますね」
「知らなかった場合はどうするんです?」
「ニャル子、その時は殺せばいい。裏切りの代価は命で払ってもらおう」

197終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:18:47 ID:FyAK8cH.0

ジャックはユウキ=テルミに対して、不透明すぎる救済の予言に対する情報を持っていると睨んでいた。

そして、五人はこれからについて話し合う。

「コーホー。さて、少ない人数と限られた時間でこれからどうするか」
「まず、安倍からの九州ロボの奪還は必須ね。
ファクターがいないとマキナは動かないとはいえ、好き勝手されるのは良くないわ。
安倍は殺し合いが大災害を防ぐためにやってるなんて知らないだろうし、余計なことをされると面倒になる」
「できれば救済の予言についても調査したい。
予言が計画にとって有益になるなら実行し、害になるようなら阻止せねばなるまい」
「何らかの目的を持って動いているユウキ=テルミも捕縛、できなければ抹殺したいところですね」
「ありゃりゃ、やることは山積みですねえ」

九州ロボ奪還、予言の調査、ユウキ=テルミの対処。
生き残った対主催陣営はこれらをこなさねばならなかった。

「では、役割を分担しよう。
九州ロボ奪還チームと本州へ出向き、ユウキ=テルミを追跡するチームに別れる。
予言の調査は奪還チームは例の宮崎の遺跡で調べ、追跡チームはユウキ=テルミや予言を知っていると思われる対主催に潜入して調査してくれ。
振り分けは奪還チームは私とココ、メフィラスと飛影。
追跡チームはベイダー卿とニャル子がいいだろう」
「「ちょっと待ったー!」」

ジャックの提案した役割分担について不服を申し付けたのはベイダーとニャル子である。

「なんだ不服か?
九州ロボの奪還はせねばなるまいし、かと言って全員で奪還作戦にいくと奪還するまでユウキ=テルミが野放しになるし、予言を探れる時間もなくなるぞ」
「そうではない。なんで余がユウキ=テルミを倒しにいくんだ?」
「私もユウキ=テルミと戦うんですか? ダークザギも無しで!」
「この役割分担には理由がある。
私の戦闘力はロボット兵器のACに依存している以上、ユウキ=テルミと戦闘になった際に巨大なACは目立ちすぎ、対主催やマーダーに付け狙わる。
九州ロボをやられない限り不死身のココも、直接戦闘はもってのほか。
だが君らは生身での戦闘は強く、フォースの力で参加者を洗脳できる力も持っている」
「しかし……潜入もクソも、放送で余の顔は参加者中に知れ渡ってるぞ。
関東を歩き回ってたら狙われてユウキ=テルミどころではなくなる。
それにあまり自分で言いたくはないが、余はユウキ=テルミよりは弱い。
奴の力の前では、ライトセーバーとフォースだけでは無理だ。
フォースに関しても第一回放送の時に野田を洗脳しきれず『10/.』の名前を入れ忘れさせるほど衰えている。
コーホー、余は老いぼれ過ぎているのだ……」

ベイダーは今までの放送で顔を知られ過ぎている。フォースである程度は参加者を洗脳できるとはいえ限界もあり、多くの参加者からは間違いなく命を狙われる。
実力に関しても理不尽級であるユウキ=テルミ相手に比べれば明らかに不足だ。
その事実がベイダー卿の自信を削いでいた。

「フフーフ♪
姿に問題があるんだったら変えればいい。老いぼれてたら若返ればいいのよ」
「は?」

そんなベイダーに不敵に微笑むはココ。
彼女はディパックから一枚の奇妙な「風呂敷」を取り出し、そして。

「えい!」
「お、おいココ何を!
……うおおおおおおおおおおおおお!!」

ココを風呂敷をベイダーに覆い被せた。
風呂敷の中からベイダーの悲鳴と、彼の肉体を補助していたサイボーグのパーツが次々と床に落ちていく。

198終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:19:19 ID:FyAK8cH.0

「コ、ココ嬢! ベイダー卿に何を……」
「慌てないでメフィラス。
これは『タイムふろしき』、包んだものを若返らせたり老いさせたりできる代物よ」

タイムふろしき。驚異のテクノロジーをもつ22世紀のひみつ道具である。
ちなみになのは組もタイムふろしきを持っているが、参加者の支給品の振り分けを担当したココはタイムふろしきの有用性に気づき、同じ道具を持っていたのだ。

「そろそろ良いわね」

最後に風呂敷の中からダース・ベイダーを象徴する黒いヘルメットとマスクが落ちた。
それを見計らって、ココは風呂敷を外す。

「おお……これは……」
「浪川ボイスが似合いそうなイケメン!」
「ウホッ、いい男!」

中から現れたのは一人の裸の美青年であった。

「……まさか、余がこんな形でピーク時の姿と力を取り戻すとはな」

周囲は驚いていたが、一番驚いていたのはダース・ベイダー本人かもしれない。
……否、厳密には今の彼は『ダース・ベイダー』ではない。
ピーク時の時の姿と力を取り戻した男、その名も……



「『余』は……いや、『僕』は、アナキン・スカイウォーカーだ!」


【ダース・ベイダー@STAR WARS 消滅】
【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS 新生】

199終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:19:48 ID:FyAK8cH.0


ベイダー改め、アナキン。
ベイダーの時は発さなかったフランクな言葉使いでココに言う。

「なるほどね。若返れば力も蘇るし、姿も変えられるわけだ」
「ええ、あなたの若い時の姿はリストにも載ってないし、参加者はもちろん初見では特務機関員でも気づくことはないと思うわ」
「これで本州への潜入ができるというわけだね」

姿に関しては狸組が奪った主催陣営へのリストにも載ってない。
これで素性をバレずに対主催などに潜入ができる。
そして、体内に宿すフォースの力も全盛期(エピソードⅢ)の頃まで蘇っていた。
その差はベイダー時の30倍である。
これでフォースに耐性のない相手ならチート級までは対処できるようになった。


「……潜入に関する問題はクリアした。
だけど、奴相手にはまだまだ力が足りないな」

だが、ユウキ=テルミはゆで超人を不意打ちとはいえ一撃で倒せる理不尽級。
彼を相手にするには全盛期の力を取り戻しただけではダメだった。
老いてた時よりはマシとはいえ、このままでは勝てないと痛感するアナキン。

「フフーフ。ベイダー卿。
奥の手はそれだけじゃないわ。はい、これ」
「!? これは大災害で紛失したと思っていた……どこにあったんだ?」
「伊豆大島基地を建設している時に偶然、モブ兵士が見つけたの。
その二つの剣はあなたにしか使いこなせないわ」

ココの手から託されたのは、赤く禍々しいデザインの剣と白く神々しいデザインの剣。
それを見て驚くアナキンは二つの剣を両の手に持つ。

剣の名は邪剣ソウルエッジと聖剣ソウルキャリバー。
かつてある別次元での戦いでアナキンが死闘の末に勝ち取った、絶大な魔力を秘めた魔剣である。

そして二つの魔剣が主であるアナキンの手に収まった瞬間。
凄まじい魔力が解放し、フロアの中に突風にも似たフォースが吹き荒れる。
アナキンのフォースが魔剣によって増幅されて5倍・10倍・15倍と何倍にも膨れ上がる。
アナキンのパワーが一気に理不尽級まで底上げされた。

「凄まじいパワーだ!
これならユウキ=テルミにも勝てるかもしれない」

パワーだけではない。
ソウルエッジには斬った相手の魂を喰らう能力がある。
ユウキ=テルミの驚異の憑依能力を封じることができるだろう。

ついでに、いい加減ずっと全裸だと締りが悪いのでココが持ってきたジェダイ風の服を着た。
ジャックにも服を着せた。

200終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:20:59 ID:FyAK8cH.0


「ベイダー卿、これで潜入と戦闘の問題は解決できたな」
「おかげで何とかなりそうだ」
「しかし、油断はするな。ユウキ=テルミはまだ奥の手を隠しているかもしれない。
奴と戦う際はできるだけ戦力はより多い方が良い」
「ならどうすればいい?」
「対主催を味方につけるんだ。その時はニャル子を使え。
彼女はなのは組のハス太と親交があり、パイプを作れる。
それ以外の対主催、イチローチームや聖帝軍相手には君は特務機関員を捕まえたとして、ニャル子を引き渡すといい。主催の手先を捕まえた功績という形でパイプを作って対主催チームに潜り込むんだ」
(え? てことは私はただのダシ?)
「もちろん潜入するからには君がダース・ベイダーという素性がバレないように注意してくれよ」
「わかっている。予言について何かわかったら連絡する」

更なる戦力増強のために対主催チームに潜り込むことを推められて、ジャックの意見を肯定するアナキンと、反対に自分の扱いに「解せぬ」顔のニャル子。
そんなニャル子にココは釘を刺しておく。

「ところで、ニャル子」
「な、なんですかココさん」
「ベイダー卿や私達を裏切ったりしないでね?」
「な、何を言いいがかりを……世界を救おうとしているあなた様方達を私が裏切るわけないじゃないですか、ハハハ」

そう言うニャル子の目の泳いでいた。
散々ココに痛めつけるられてもまったく懲りず、隙あらば、故あれば、対主催に寝返る気であったに違いない。

「特務機関員の情報を流したり、自分は主催に脅されて仕方なく手先になっていたと言いはる分にはまだいいわよ。
どうせ生き残っている特務機関員は裏切り者を除くと僅かしかいないし、どうせ九州ロボ経由でデータを盗んだ者やベクター経由で結局知れ渡る。
ただし、アナキンのことをベイダー卿とバラしたり、この伊豆大島基地の所在やプロジェクト・テラカオスのことを明かしたら承知しないからね!
そして裏切ったその時は……」
「真尋さん! 真尋さんをどうするつもりですか!?」

ここで懐から真尋人形を取り出し、焦るニャル子に対してココは裏切り防止のための脅しを仕掛ける。

「真尋キュンを愛でる。 超 愛 で る !
真尋キュンとムンムンガルドして私の虜にしてあげるわ!」
「嫌ああああああ!! NTRいやあああああああああああ!!」

真尋のNTRは、ニャル子にとって自分が殺される以上の恐怖であった。
これにてニャル子は五大幹部(特にココ)には逆らえなくなってしまった。

ニャル子とココとの茶番劇を横目で見つつ、メフィラスは言う。


「……ココ嬢ってあんなキャラでしたっけ?」

少なくとも九州ロボから東京へ出かけるまでは冷徹怜悧な印象のキャラだったが、ここにきてショタコンの一面を見せつけるなどのキャラ崩壊っぷりにメフィラスは戸惑っていた。

「彼女は僕と出会う前……大災害の前は、ショタコンじゃなかったらしい」
「というと?」
「ショタコンになったのは、彼女にとってかけがえのない部下や恋人同然の少年を大災害で失ったことが理由なんだ」

ココにはバルメやレームといった信頼のおける部下と、可愛がっていた少年兵のヨナがいた。
しかし、大災害によって皆行方知れずになってしまった。
最後の陸地である日本にはいなかったので生存は絶望的である。
特にヨナを失ったことは大きく、以来彼女はヨナがいなくなった穴を塞ぐように可愛い男児には目がないショタコンになってしまったそうだ。

「ココは大災害を憎んでいる。
殺し合いを開いた汚名を背負うことや自分の命を失うのも覚悟の上で、彼女は何が何でもプロジェクト・テラカオスの完遂を……大災害への復讐を果たそうとしているんだ」
「……よくわかりました」
「ココの気持ちは僕もよくわかる。
僕もパドメとシミ……妻と母親を失ってるからね」
「アナキン……」

アナキンもココとは事情が違うとはいえ、愛する妻と母を失っている。
ココにライトセーバーの使い方を教えたのも、大切な者を失った彼女に自分を重ねていたのかもしれない。

「メフィラス、僕らはさっきの説明でTCは死者の魂すら壊すと言ったな?」
「ええ」
「冥界には僕の妻と母親、息子のルークがいる。
そしてココの部下や少年兵がいる可能性もある。
もし、次の大災害が阻止できなかったら、冥界にある魂も全て消失する」
「!」
「それは単なる死より惨い。
僕はバーダックに息子の死は覚悟していたと言った、けど、魂や存在そのもの消滅は許容できない。
既に死んでいたパドメや母さんについても同様だ」

201終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:23:13 ID:FyAK8cH.0

アナキン達の戦いは今、生きている者の生存を守るためだけではなく、過去に死んだ者の魂を守るための戦いであった。

「ライトサイドに帰還したつもりはないし、ヒーローを気取るつもりはないが、これだけは君に言っておくよ。
僕らは生者死者合わせた世界の全てを守るために戦っているんだと」





しばらくして、アナキン達はモニタールームを出て格納庫へ向かう。
そこにはヒトマキナやMS、TIEファイターなどの機動兵器に混じって一機だけX状の特徴的な戦闘機が混じっていた。

「Xウィングか、まさか僕がこれに乗るとはね」

参加者に交じるために偽装用の首輪をつけたアナキンは感慨深く言う。
自分の所属していた帝国軍の敵対組織である同盟軍の主力戦闘機に自分が乗れるとは思っていなかったのだ。
アナキンとニャル子はこれで海を渡るようにココに言われた。

「ココさん、いや、ココ様。
これから潜入作戦に参加するでありますが、せめて怪我の治癒ぐらいさせてもらいませんかね?」

ニャル子はようやく石抱から解放されたが、拷問によって受けた傷で体はボロボロだった。

「馬鹿ね。
あんたはアナキンに戦闘で負けて捕まっている設定なんだから、無傷でいたら怪しまれるでしょう。却下よ却下」
「そんなぁ!」

ボロボロのニャル子に対するココの返答はかくも非情であった。


「ジャック、ココ、時間が惜しい。そろそろ出発するぞ。
メフィラスと飛影は二人を守れ。
ニャル子! 遊んでないでさっさと来るんだ」

アナキンはXウィングのコクピットに入る。なお、コクピットは一人乗りなのでニャル子はアナキンのディパックに入ってスペースを節約した。

「この伊豆大島基地は九州ロボが制圧された際の予備の基地に過ぎないし、兵力は一個大隊程度しかないわ。
安倍の実力も未知数だし、少々戦力としては心許ない。
だから、私達は本州で生き残っている特務機関員をできるだけかき集めてから九州ロボに攻め入るわ」
「もっともベクターとサーシェスは除外。
他の生き残っている特務機関員も、先の九州ロボ陥落を見て多くが招集に応じない可能性が高いが……できるだけやってみる」

ジャック達は少しでも戦力を増強するために、生き残っている特務機関員を可能な限りかき集めてから九州ロボ奪還作戦を開始するようだ。

「それからベイダー卿、これも持って行ってくれ」

ジャックはアナキンに一つのカプセルを手渡した。

「これは……風鳴翼の……?」
「四条化細胞入りカプセルだ。
何らかの事情で殺し合いが停滞して、テラカオスをつくりづらくなった時はそれを使ってくれ」

そのカプセルには体内に含んだ者を食人鬼に変え、本来ならテラカオス候補者にもなれない者を候補者に、しかもテラカオスにもっとも近い状態に作り出すことができる、このカオスロワで偶然の産まれた四条化細胞が詰まっている。
本来の予定では風鳴翼を倒した者にこれを飲ませて候補者にする予定だったが、九州ロボを奪われた現状ではそれはできない。
よって、ジャックは会場に直接出向くことになるアナキンに渡した方が有用だと思ったのだ。

「君のような良い男には生きてもらいたい。是非、生きて帰ってきてくれ」
「気色悪いぞジャック……なんだか尻が寒くなる。
だが、そっちも九州ロボを奪還して生き延びてくれよ」

そしてジャック、ココ、メフィラスに見送られ、Xウィングは格納庫から飛び立った。


(さて、どこへ行こうか?)

東京へ向かうアナキンはコクピットの中で考える。
予言の調査やユウキ=テルミを討伐するためにもまずは対主催組織に合流する必要がある。
候補はなのは組、都庁同盟軍、イチローチーム、狸組、聖帝軍。
拳王連合軍やホワイトベース組は遠く離れた関西にいるので候補から除外。

202終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:24:14 ID:FyAK8cH.0

なのは組はニャル子と交流のあるハス太がいるため、潜入はしやすそうだ。
しかし、危険集団である天魔王軍に追われている。
どうやら支給品で次の大災害が起こることは知っているようだが、大災害が起きる理由や予言のことは知らないようだ。

都庁同盟軍は多くの魔物達を始め、魔王に勇者、影薄組に歌組などの強者対主催
が結集している。
二回に渡るDMC狂信者の襲来で大きな打撃を受けたようだが、それでも強者揃いであることには変わりない。
予言の中にある巨像候補であるフォレスト・セルもあそこにはある。
しかし、第五回放送を迎える前に首輪を外してしまったので監視ができなくなってしまい、予言についてどこまで知ってるかも不透明だ。
さらに多くの参加者から危険集団だと誤解されているので、安易に入ると対主催同士の潰しあいに巻き込まれる危険がある。

イチローチームはもっとも早く、予言のことを知った対主催組織だ。
チームも拳王連合軍に負けないほど理不尽級の強さを持つものが多く、戦闘力の高いドラゴンズとも同盟を組んでいる。
しかし、彼らはテラカオス候補者と化したサーシェスに追われている。

狸組の天才であるブリーフ博士の知恵があれば、予言の謎を究明できるかもしれない。
ただし、彼のもたらした技術が都庁同盟軍の首輪を外してしまい、殺し合いの停滞に一役買ってしまっている。
いずれはナノマシンについても解析されカオスロワそのものができなくなる危険が有る。
今後を考えると接触より潰すことを念頭に入れた方が良い集団かもしれない。

聖帝軍。最初はパッとしなかったが、ここ最近でDMC狂信者の襲撃をほぼ無傷で撃退し巨大ロボまで手にれたターバンども。
何げにDMC狂信者以外の敵対勢力がなく、今のところ対主催同士の潰しあいもしていない集団。
……が、リーダーのサウザーから残念なオーラが出ており、今のところ順風満帆なのが逆に嫌な予感しかしない。
戦闘力はターバンを含めても高い方だが、理不尽級のユウキ=テルミまで相手にできるかは正直微妙である。

どこに接触するべきか悩むアナキン。
この世界に残された時間もない以上、コンタクトは慎重に選ばなくてはならない。
アナキンの目線の先の東京の街はすぐそこであった。



【プロジェクト・テラカオス簡単まとめ】
○大災害の原因はTCホールから放出されたエネルギー『TC』であり、二度目の大災害が迫っている(スパコン京によると、ロワ開始より四日目を迎える前に世界が滅ぶ)
○次の大災害を防ぐには完成したテラカオスにTCを吸収させるしかない。byジェダイの古文書
 なお、テラカオスと候補者とナノマシンは世界を救う目的達成後に消滅する
○時空間をTCに汚染されているので、この世界から逃げたり、タイムスリップしたりはできません
 ドラゴンボールもダメでした
○死者が生き返れないのもTCのせい?(ただし、悪魔将軍の狙っている『あやつ』の手によるものかもしれず、間違いの可能性もある)

○救済の予言は、テラカオスの制御もしくはパワーアップさせる手段ではないか、というのが五大幹部の結論

○10/.が放送で呼ばれなかったのは、ただのベイダー卿(アナキン)のミス。

203終わる世界の真相 ついでにベイダー卿の消滅③:2016/09/19(月) 00:24:41 ID:FyAK8cH.0
【二日目・11時30分/東京都・伊豆諸島基地】

【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】若返り、ジェダイ風衣装、首輪(偽装)
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、Xウィング・ファイター@STAR WARS、ライトセーバー@STAR WARS
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:どこかの対主催勢力と合流し予言の調査及びユウキ=テルミの討伐
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:ユウキ=テルミを殺す前に、テラカオスや救済の予言について知っているなら吐かせる
4:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました


【ニャル子@這い寄れ!ニャル子さん】
【状態】ダメージ(中)、主催への恐れ
【装備】名状しがたいバールのようなもの、冒涜的な手榴弾
【道具】支給品一式、、シャンタッ君
【思考】
基本:世界滅亡を防ぎ、真尋さんとの生活を取り戻す
0:とにかく真尋さんだけは必ず守る
1:(下手な真似すると真尋さんがやばいので)アナキン達と共にユウキ=テルミ討伐兼予言の調査を手伝う
2:ハスター君達のグループに紛れたいけど……
3:いざとなれば救済の予言の完遂に協力する、主催なんぞ知ったこっちゃない(と思ってたのに!)
4:ココさん、真尋さんを返してください!!
※特務機関員で主催への忠誠心は限りなくゼロですが、ココへの恐怖と真尋をNTRされる恐怖は100%です
※ダークスパークをはじめ、盗んだ不明支給品×複数は全部ココに没収されました
※プロジェクト・テラカオスの全貌を知りました



【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造)@ARMORED CORE、拳銃
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:残りの特務機関員を招集し、九州ロボを安倍の手から取り戻す
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
2:四条化細胞に多大なる期待
3:九州ロボを奪還次第、宮崎にある遺跡を調べる


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×1000、主催倉庫から持ち出した無数の支給品、カプセルサイズのASO-3、力を失ったドラゴンボール
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:残りの特務機関員を集め、九州ロボを安倍の手から取り戻す
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:織莉子、キリカ、ごめんなさい……
4:真尋キュンprpr(テラカオスを完成させるまではニャル子に返さない)
※スパークドールズ化した八坂真尋を戻すには、ダークスパークもしくはギンガスパークが必要です


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品、ラッキョウ
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:ジャック達と共に安倍の手から九州ロボを取り返す
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:アナキン達の計画で本当に世界を救えるのか見極める
3:救済の予言、果たして本当なのですかね?
4:なるべく暴力は使いたくない
※特務機関員です
※プロジェクト・テラカオスの全貌を知りました


【飛影@忍者戦士飛影】
【状態】正常
【装備】武装一式
【道具】なし
【思考】
基本:主催陣営の命令に従う
1:待機する
2:ランカ殺すべし、慈悲はない
※支給品なので首輪はありません
※合身すると何故か忍殺語になる時があります。
※裏切者を感知すると自動で攻撃するようプログラムされています

204Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:13:27 ID:5Bd468yc0
東京のどこか……というか八王子にてバドとカイザは襲いかかってきたディケイドカイザを難なく撃破した。

「馬鹿なああああああ!!」
「二つの王の力を持つ俺に勝てるわけがないだろ」
『紛い物が本家に勝てるわけないんだよなあ……』

バドの姿をよく見るとジュウオウバードのスーツの上から黄色と黒のパーカーベストを上から纏っていた。
戦闘中にゴーストドライバーと草加雅人眼魂を使ってジュウオウバードクサカゴーストに変身したのだ。
その結果、戦闘力が単純計算で二倍以上になり、カイザとシザリガーを押していく。
何よりカイザの癖を知っており、中の人の関係でザリガニの生体に詳しい草加のフォローによって敵の攻撃は尽く弾かれ、最後はゴルドスマッシュを喰らって爆発四散するのだった。

【仮面ライダーカイザ@仮面ライダーディケイド 死亡確認】



カイザを撃破したバドは惨劇の場所となったパーティー会場を見回す。
そこにさっきまで戦っていたシザリガーがいない。

『バド、さっきのザリガニはどこにいった?』
「俺たちに勝てないと思って逃げたんだろう」
『俺たちに歯向かった罰として今すぐ殺してやりたいところだが……』
「祝い手も皆殺しにされた以上、このパーティー会場にも用はない。すぐに追いかけるぞ」

自分たちに歯向かった罰としてすぐにでも追いかけようとするバド及び草加。
だがその時、たまたま足元に転がっていたリモコンのスイッチが入ってしまった。
TVがついて一瞬驚くバド。

「なんだ?」
『落ち着け、テレビの電源が入っただけだ、そんなことよりも早く敵を追いかけ……ん?』

画面をよく見るとついさっき殺された自分似のイケメンもといIT社長ウエムラの顔があった。
そして、画面の中のウエムラは筆談で語りだす。

『この映像を見ているということは私が死んだということらしい。
もしこの場に生存者がいるなら、是非聞いていって欲しい。
頭がおかしいと思われるかもしれないが、戯言やジョークなんかじゃない本当のことなんだ。



――大災害は自然災害で起きたものじゃない。
人為的なものなんだ。
何より私はあの大災害の原因になった事件の現場……そのすぐ近くに居合わせていたんだ』
『「なに?」』

映像の中のウエムラは大災害の起こりを知っていると語る。
その言葉にはバドも草加も聞き耳を立てざるおえなくなる。
バドとしては単なる自然災害だと思っていた大災害が人の手によるものだと言う話には興味があったし、草加としては自分の死と真理と離れ離れになった原因である大災害を起こした元凶には憤りを感じていた。

そして二人はウエムラのビデオレターを視聴することに決めた。
シザリガーは放置で良いのかって?
あんなのはいつでも殺せるので無視することにした。
これも乾巧って奴の仕業なんだ。

 ◆

205Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:14:10 ID:5Bd468yc0
 ◆

その日、IT社長である私はニルヴァーナという土地に足を運んでいた。
ここは簡単に言えばあらゆる分野の研究がなされている巨大な科学都市であり、ネットナビを生みだした祐一郎氏などの天才も生みだしたアカデミーもある。
最近ではサーフ氏麻雀の強さを戦闘力に変換する技術を生み出して女子高生への痴漢対策に大きく貢献したことが有名か。
ともかく私は営業のためにその土地へ向かったんだ。

事件が起きたのはその夜だった。
突如、ニルヴァーナが何者かの襲撃を受けた。
襲撃者は僅か数名だったらしいがかなりの力をもっているらしく、ニルヴァーナの防衛隊は壊滅的な損害を受けたらしい。
私も社員と共に避難しようとしたが途中で道に迷ってしまった……


そして、私は見たんだ。
大爆発音と共にニルヴァーナのある施設から膨大な光が天に向かって伸びていくのを……


更にその直後に、一人の超人がこちらに向かってズタズタになって飛んできた。
超人の名前はストロング・ザ・武道、彼こそニルヴァーナを襲撃した者の一味だったのだ。

だが、彼はこちらに危害を加えようとはしなかった。
ただ諦めたように「もう世界は終わりだ」と言っていた。


恐る恐る話を伺うと、ニルヴァーナの一部には人体実験など禁忌に触れるようなことを裏で行っていたのだという。

そしてこの世界のあらゆる者に影響を与えるエネルギー「蒼」、そのエネルギーの源泉を手に入れようとした悪しき者がいて、そいつを討伐するために最強クラスの超人や宇宙人が向かったらしい。
だが寸前で阻止に失敗し、蒼の源泉の暴走を招く事態に繋がってしまった……


ちなみに蒼や源泉については本来はひと握りの神とか、それに準ずる存在しか知り得ない情報らしい。
トップシークレット中のトップシークレットで本当に選ばれた存在しか知ってはならない代物。
にも関わらずに彼はただの人間である私に話してくれた。
……親切心からじゃない、むしろ彼は近々無量大数軍を率いて人類の味方である正義超人をも粛清しようとしていたと言っていた。
今までなら知ってしまった人間は良くて蒼の記憶の完全抹消、場合によっては殺害していたらしいが、全ての終わりが近いからこそ、蟻にも等しい存在に独り言のように声をかけているんだ。

蒼の暴走は宇宙の終焉。
源泉の暴走は本来は数十億年先の話、それだけの余裕があれば別の世界へ移住するなり対処する方法はいくらでもあった。
ところが何者かが強引に源泉を暴走させて、滅びを予定よりも早く手繰り寄せてしまった。
じゃあ我々はどうすればいいんだという問いかけに対し、ストロング・ザ・武道はこう答えた。


「こうなれば『聖別』しかあるまい。
聖別によって生まれた『争いの淀みから生まれた化身』テラカオスならば、事態を収集できる。
ただしこれは全ての者を救うことはできない上に極めて部の悪すぎる賭けだ。
しかも、テラカオスが持つ三千世界をも手に出来る真の性質を知ったが最後、生存のための戦いから欲望剥き出しのテラカオス争奪戦が始まる。
蒼による自然死を是とした古代グンマーのエゴと、生き延びるために蒼の力を我が物にしようとした古代ミヤザキのエゴが噛み合わずに互いを滅ぼしあったように、人間は決して分かり合えない。
そうなれば世界は蒼に飲み込まれて『滅日』を迎えるか、テラカオスに飲み込まれて滅ぶかの二つしかなくなる」と……

それだけ言うと武道は彼を追ってきた黒い悪魔とそいつの連れているサボテンみたいな化物――おそらく、この事件の元凶になった存在に向かっていった。

ストロング・ザ・武道は確かに強かった。
だが悪魔と怪物は武道に対して何らかの対策を取っていたようで、武道のプロレス技の大半が無効化され、ニルヴァーナの科学の力で生みだしたと言っていたカピラリア七光線(昔見た、キン肉マンも参加した王位継承サバイバル・マッチでプリズマンが使ってた覚えがある)を発射する装置でダメージを与えていった。
それでも武道は光線から逃げずに施設に特攻し、自分の命と引き換えに例の光を放っていた施設を破壊した。

この直後、世界で大災害が発生した。
悪魔と怪物はニルヴァーナごと地割れに飲み込まれるのを見たが、私は命からがら生き残り救助された。
武道が施設を破壊しなければ甚大な被害を出した大災害がもっとひどいものになり、私を含むもっと多くの死者を出していただろう。


更に人口削減という名目でだが、世界で最後に残った日本で殺し合いが発生した。
そこで私は荒唐無稽な話だと思っていた武道の話が真実みを帯び、大災害とは「蒼」が世界に降り注いで起こった災害であり、聖別とは世界を救えるらしいテラカオスを生み出すための殺し合いであると理解した……

 ◆

206Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:14:48 ID:5Bd468yc0

「俄かには信じがたいが……」
『たしかテルミの奴が蒼だのなんだの言ってた気がする。奴は大災害について知っている風だった』
「嘘ではないかもしれない……ということか」
『……もし本当なら大災害の元凶になった奴をこの手で殺して起きたかったな』

眼魂になってユウキ=テルミに奪われている間に草加はテルミが蒼=TCのことを口走っていたのを思い出した。
その時は何を言ってるのかさっぱりだったが、ウエムラの話により漸く世界を大災害を引き起こした原因であることを知った。
なお、元凶を倒したいという草加の言葉は義憤によるものではなく、単に真理との生活を奪われた恨みである。

『そうと決まれば真理のためにも蒼を止めて……ん? まだ続きがあるのか?』

情報を得て立ち去ろうとした草加とバドであったが、ビデオにはまだ続きがあった。

 ◆

――とはいえ、人命が奪われる殺し合いを認められなかった私は日本全国に蒼の源泉の暴走やニルヴァーナで起きたことなどを発信した。
知恵と人員を集めれば殺し合いに頼らない解決策もあるのではと思ったからだ。
そしてこの世に残った最後の掲示板、カオスロワちゃんねるに事の真相を書き込んだ……



ところが、検閲によって書き込みはできず、それどころかパソコンが爆発したり、居場所を特定されてマーダーなどに命を狙われる事態になった。
これは殺し合い……聖別を邪魔されたくない主催の差金であると私は考えた。
それでも殺し合いを止めたかった私は殺し合いの乗った奴らから逃げつつIT社長としての知恵を使い、決死の覚悟と沢山の犠牲を払ってカオスロワちゃんねるにハッキングした。
あわよくば掲示板の管理権を奪い、それができなくとも30秒でも私のレスが誰かの目に止まれば殺し合いを止めるきっかけができるかもしれない。



そして知ってしまった。
違ったんだ。

カオスロワちゃんねるの管理人権を主催が握っているのは表向きだけ。
実際に削除や検閲、そしてハッキングによる端末破壊・居場所特定を行っていたのは別にいたのだ。
そもそも蒼の件を隠したいのならばパソコン爆破ではなく首輪爆破で私を殺害した方が手っ取り早い。

このことから推測するとカオスロワちゃんねる管理人は私の首輪の爆破ができない=野田総理ら主催陣営じゃない、繋がりを持っていない。
そして蒼やニルヴァーナの件など知られたくない不都合な情報の発信者をあの手この手で攻撃している=主催にも知られたくない事情があるのではないかと思う。

結局、向こうの技術の方が上手で管理権を奪うことも真実を一レス書き込むすらできなかったが、わかったこともある。



カオスロワちゃんねるは管理人にとって都合が良くなるように操作されている。



ニルヴァーナや蒼の件だけじゃない、これまで特定の参加者へのバッシングが助長されていたり、殺し合いを止める決定的な何かを書いたレスもとい参加者は攻撃または削除された可能性がある。


私の予感が正しければこんなことをするのはニルヴァーナにいた大災害の元凶になった悪魔ぐらいにしか考えられない。
カオスロワちゃんねるはこの世に残った最後の情報掲示板だが、すぐにでも使用を中止して欲しい!
真実はあの掲示板によって歪められ……

 ◆

ウエムラによるビデオレターが終わりかけた瞬間、巨大な丸サボテンに手足が生えたような怪物が壁をぶち割って現れ、テレビを木っ端微塵に叩き潰した。

「インドラ〜」
「なんだこいつは!?」
『さっきのザリガニが……!』

インドラと鳴く悪魔、メーガナーダの口には先ほど草加たちと戦ったシザリガーの死体が殻ごとバリバリと喰われていた。
おそらく、逃げ出した先でこのメーガナーダに捕まって殺され、喰われたのだろう。

【シザリガー@ポケットモンスターシリーズ 死亡確認】

207Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:15:20 ID:5Bd468yc0

そしてシザリガーを咀嚼して飲み込んだメーガナーダの食欲は留まることなく、バドことジュウオウバード・クサカゴーストにも向けられていた。

『いささか登場のタイミングが良すぎないか?』
「おそらくウエムラが警告していたカオスロワちゃんねる管理人の差金だろう!
サボテンのような怪物を見たとか言っていたしな」
『なんにせよ俺たちに歯向かった奴は誰であれ消えてもらう』

敵意を向けてくるメーガナーダに草加とバドはそれ以上の敵意を向けて先制攻撃を浴びせる。

『レディ エクシードチャージ!』 CV:m.c.A・T

デカすぎる図体に狭いパーティー会場では避けることもできずメーガナーダにゴルドスマッシュが直撃した。

『「なんだと……!?」』

ところが現れるハズの黄色いX(サイ)の文字は出ることなく、代わりにBLOCKの文字が敵の頭上に現れた。
メーガナーダはバットステータス無効であり有毒なフォトンブラッドが効かず、殻を閉めている時は物理攻撃も無効。
これを初見で見抜けなかった敵に決定的な隙を生み出す。
必殺技を放って硬直した瞬間をメーガナーダは見逃さず、ボクサーの如きパンチのラッシュをバドに浴びせる。
クリティカルヒットだ。

「ぐはあ!!」
『しっかりしろバド!! おまえが死んだら俺まで……』
「インドラ」

さらにメーガナーダは追撃として混乱効果を与える光線テンタラフーをバドに浴びせ、混乱状態に。

『おい、早く逃げろ! やられてしまうぞ!!』
「俺は王の……そぉ〜れそれ〜」
『この役立たずが!』

混乱状態に陥り、攻撃も逃走もできずに金をバラまくバドに悪態をつく草加。
そうこうしている内にメーガナーダは必殺技の準備シークエンスと思われる動作・黒きバクティを発動。
メーガナーダの体に力が集まる!
対するバドはまだ混乱中だ。

『クソッ、こんなのところで……これも全部乾巧のせいなんだーーーッ!』

完全な八つ当たりに乾巧を責める草加。
もうどうにもならない事態に草加は頭が真っ白になる感覚を覚えた。


そして、メーガナーダの胴体を守っていた殻が開き中から五つの黒いワラスボのような口が飛び出してバドとゴーストドライバーを噛み砕いた。
メーガナーダの必殺技の一つ、防御不能な物理万能スキル――ヴィラージュの剣だ。


『ぐああああああーーー……ッ!!!』

パキメキ グシャ(バドと眼魂が折れる音)


こうしてジュウオウバード・クサカゴーストは大量のザリガニとケーキとゴーストドライバーごと喰われてメーガナーダのアートマポイント(栄養)と化した。

【バド@動物戦隊ジュウオウジャー 死亡確認】



ウエムラから大災害の起こりになったニルヴァーナの真実を知ったバドがメーガナーダによって葬られた後に、少女の声が響く。
彼女は姿を消せる石ころ帽子を装備していることで姿を消していた。

208Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:17:09 ID:5Bd468yc0

「よくやったわメーガナーダ、戻って」
「インドラ〜」

少女が持っていたモンスターボールによってメーガナーダが回収された。
メーガナーダは彼女の持ちポケであり、支給品だったのだ。
彼女の姿を解説すると巫女装束風の色合いの弓道着を身に着け、背中には艦橋と煙突の付いた赤い矢筒を背負い、胸には黒の胸当てを付け、脚には主機と対空機銃の付いたブーツを履き、飛行甲板を肩に付けている。
……拳王連合軍の艦むすの翔鶴じゃないかと思った人もいるかもしれないが、彼女は現在横浜におり、ここにいる少女は黒髪ツインテールなので違う。
石ころ帽子を被っているので参加者には見えないが。

黒髪の艦むすは周囲を一頻り索敵した後に、通話を他人に傍受されない違法改造されたスマホで誰かに連絡を取る。

「提督さん、ニルヴァーナからの最後の生存者であるウエムラの死亡を確認したわよ。
ウエムラを殺すために差し向けたマーダーも殺害、関係者一同も抹殺できたわ」
『ご苦労、主催の連中に知られないように僕が作った妨害電波発生装置はちゃんと使ったか?』
「バッチリよ、提督さんが運営している掲示板の真実を知った者は誰もいないわ」
『……よし瑞鶴、念のため施設に火を放て』
「了解、全機爆装! 準備でき次第発艦! 目標、カイザパーティー会場!」

瑞鶴と言われた黒髪の艦むすは指示通りに矢から変化させた爆撃機で施設を焼き払った。
ただの火事ならば激戦区東京ではありきたりな光景なので誰も気に止めず、石ころ帽子の力で見えなくなっている瑞鶴は誰にも気づかれぬまま、施設を離れていった。
そして嬉しそうな顔でメールをする。

ズイズイ>提督さん、都庁の地下で質の良いお肉を手に入れました。
     ちょっと死毒が滴ってますけど提督さんなら食べられますよね?

瑞鶴のディパックには毒殺されたベジータの遺体が入っていた。
小町たちが立ち去った隙に都庁の地下に忍び込んで、アイスシザーズに気づかれる前に回収したのだ。

 ■

ビッグサイトの格納庫……未だに完成していないネオジオングスーツの調整を行っているディーの支給品であるサーフに一通のメールが届いた。
サーフは仕事の片手間にメールを読んで返信する。

提督>サイヤ人の肉か、毒はあっても状態異常を無力化するBSデストロイアを習得している僕なら食べられるね。
   これでヴァルナである僕やメーガナーダは格段に強くなれる。
   でかしたよ瑞鶴。さすが僕が作り上げた艦むすだけはある。
   さっき死んだタバサよりはずっと使えるね。
ズイズイ>提督さんとケッコンしてますからね、これくらい頑張っちゃいますよ

よく見るとサーフの薬指には結婚指輪がはまっており、瑞鶴の指にも同じものが嵌っている。

提督>それじゃあ、そろそろ合流しよう。場所はビックサイト。
   今はわけあってそこにある格納庫から離れられないけど作業が終わり次第、君とメーガナーダの強化、そしてサイヤ人の肉でディナーと洒落こもう。
   あ、今から教えるルートは通るなよ? セルベリアとかいう年増女が侵入防止の罠を張り巡らせている。
   それからビッグサイトの周囲に妹キャラを洗脳しまくる危険人物がいるらしいから絶対に接触するな。
ズイズイ>はい!
提督>全ては古代ミヤザキの末裔である僕が全てを手に入れるために。
ズイズイ>その横には私もいますよね?
提督>もちろんさ。さあ、これから忙しくなるぞ。

通話とメール上で提督と呼ばれたサーフという男は、他の狂信者に気づかれないようにニヤリと笑った。
そう、この男こそTCホール(蒼の源泉)を暴走させ、過剰なTC(蒼)を三千世界にバラ撒いて日本以外を滅ぼした大災害を引き起こした元凶、『カオスロワちゃんねる管理人』なのだ。

彼は古代ミヤザキ人の血を引いており、ルーツを辿ることで殺し合いが始まるずっと前からこの世界に影響を与えてきた神に等しい存在・TCホールを知り、その力を手に入れるべくTCの研究をニルヴァーナでやっていたのだ。

ちなみに研究の副産物として麻雀の強さを戦闘力に変えられる「雀力」が産まれた。
本来は彼自身が作るわけではない「悪魔化ウィルス」を作り出し、自身を他者を喰らって強くなる悪魔ヴァルナへの変身能力を手に入れ、メーガナーダを生みだした。
さらにはスキルを拡張する手段である「マントラ」も独自に生み出している。

209Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:17:44 ID:5Bd468yc0

もちろんその過程でテラカオスだけがTCを吸収できることも知った。
TCホールを手に入れるにはテラカオスが必須なのだ。
だが、このままではどこかでテラカオスが完成し二度目の大災害を防いだ瞬間に自殺プログラムで消滅してしまう。
……ところが、参加者の中ではこの男にしか持ち得ない秘策があった。

(主催者どもは知らないだろうが、ジェダイと共同でテラカオス化ナノマシンを作ったのは古代ミヤザキ人である僕の先祖だ。
自殺プログラムの解除方法はもちろん、テラカオスの制御するプログラムすら作り上げている。
主催者や参加者がどう頑張ろうと全部僕のものになる仕組みなのさ)

そう、ナノマシンを作った存在が先祖にいたためにサーフはテラカオスの生死すら操る手段を手にしていた。
TCホールから漏れた莫大なTCを吸えばテラカオスは誰にも追いつけないパワーを手に入れるが、それをナノマシンを通じてそのテラカオスを支配できれば、この世の全てを知ったも同然である。

彼の持ち主であるディーも気づいていないサーフの白衣の裏には四次元ポケットがあり、そこにはカオスロワちゃんねるのサーバーがある。
表向きのカオスロワちゃんねる及びネットの管理権は主催陣営だが、裏で牛耳っているのはこのサーフである。
拳王連合軍と接触し彼らを対主催だと知ったダイジョーブ博士の暗殺やはやての携帯を爆破してTCの情報を破壊したのも、どこぞのモブではなく自動的に端末を爆破するようにプログラムされていたからなのだ。
大災害の真実にたどり着きそうな情報は主催が検閲するまでもなくサーバーの判定でシャットアウトされ、天魔王軍や狂信者などの工作は余計に助長されるようにカオスロワちゃんねるは作られていたのだ。
電脳世界に入り浸り自ら動かず真実を探そうとしない連中ほど騙されてしまう。
そうやってこの男は殺し合いを自分に有利に進めてきた。

殺し合いが始まる前にデータを改竄して自分自身を参加者から支給品にあえて繰り下げすることで主催にも今のところは野望を気づかれていない。
このことにシメシメと笑うサーフ。

(僕は蒼の力を手に入れる……みんな道具だ)

 ■

親兼夫である者の嬉しそうな顔が見たくて瑞鶴はルンルン気分でこの地区……八王子市を後にした。



【二日目・15時00分00秒/東京・八王子市】

【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、石ころ帽子、違法改造スマホ、妨害電波発生装置、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、ベジータの遺体
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従う
0:ビッグサイトへ向かい、提督と合流する
1:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
2:提督とのディナー楽しみだな〜
※サーフが生みだした艦むすです
※サーフとケッコンカッコカリ済みです


【二日目・15時00分00秒/東京・ビッグサイト】

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃
【思考】
基本:TCホールの力を手に入れる
0:今は狂信者のフリをしてディーに従う
1:瑞鶴と合流したらサイヤ人の肉を食う
2:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる7
3:年増女(セルベリア)は特に警戒
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、TCやTCホール・テラカオスについて知っています
 テラカオス化ナノマシンの制御を乗っ取ることも可能。
※TCホールを暴走させて大災害を引き起こした元凶です
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能。
 イベントバトルでやられる原作と違い、いくつかのスキルを手にしている模様、(少なくとも状態異常攻撃を無効化するBSデスロイアは所持)、その他のスキルは次の書き手氏にお任せします

 ■

210Meeeeaaaat! Processing Plant(修正版):2018/03/08(木) 11:18:15 ID:5Bd468yc0

瑞鶴とメーガナーダが立ち去った後、施設は豪炎によって崩れ去った……


だがその瓦礫の中で蠢くものがあった。
しかし一体誰が?
施設の中の生存者は間違いなくゼロだったはずだ。
瑞鶴も入念な索敵で生き残りがいないことは確認済みだ。
では一体何がいるというのか?

瓦礫の下から現れた、バトルモードに変形した鋼鉄の怪物、サイドバッシャーであった。
だがバドも死んでいる以上サイドバッシャーの操り手はいないハズだ。
じゃあ誰が動かしているのか?

「やれやれ、ひどい目にあった……これも全部乾巧のせいだ」

サイドバッシャーから放たれたその機械音声は草加雅人その人であった。

「よくわからないが、俺にはいつの間にか機械とか無機物に憑依する力が備わっていたらしいな」

実は草加もまた、主催のバラ撒いたナノマシンによってテラカオス因子に目覚めており、テラカオス候補者となっていたのだ。
そもそもサイボーク化以外では生き返れない今期において原作(というかムービー大戦)さながら呪縛霊とはいえ、現世に長々と留まれるのはおかしい。
生き返れる代わりに死にまくる野比玉子症候群にも感染していない。
となると、テラカオス化が発症していると考えるのが妥当だろう。
二度目の死になるかもしれない瞬間に因子が覚醒して、無機物に憑依できる能力が開花したのだ。

「しかし、魂の力が大きく削られた気がする……多様はできそうにないな」

代償として生き返れるタイムリミットはそのままであり、能力を使用すれば寿命の大部分を喪失する。
残りは55日と半日……とてもじゃないが多様はできない。
最悪次こそは死んで死者スレ送りになる可能性がある。

「それにしてもあの女の声……話しぶりからしてカオスロワちゃんねるの管理人と話していたようだな。
カオスロワちゃんねるには裏がある……少なくともそこは嘘じゃないようだ」

自分が眼魂からサイドバッシャーに取り憑き先を変えたことに瑞鶴が気づいていないことを良い事に、草加は通話を聞いていた。
大災害の元凶と原因を知っているウエムラを殺そうとしたことや、妨害電波や違法改造のスマホでわざわざ主催に知られないようにしている辺り、主催とは違う陰謀が働いているのは確かなようだ。
カオスロワちゃんねる管理人……男であることまでしかわからなかったが、自分や真理や草加市を脅かす危険な人物には違いあるまい。

「必ず見つけ出して殺してやる!」

怒りに燃える草加バッシャー。
とはいえ、サイドバッシャーの戦闘力ではメーガナーダにはまず勝てないだろうし、そもそも瑞鶴は石ころ帽子を被っていたので姿はもちろん、どこへ行ったのかはわからない。
ここは強力な武器や利用できる仲間を集めるべきだろう。
メーガナーダに負けない戦闘力を有した武器や、肉壁になってくれそうな仲間を。

「とりあえずこっちへ向かってみるか」

ディパックから無事だったカイザギアを回収し、草加は一先ず仲間になってくれそうな者たちがいそうな場所を目指す。
ニルヴァーナの件などを話せば、安い正義感から仲間になってくれる奴もいるだろう。
そう思って草加バッシャーはバイクに変形し、八王子から走り出した。

カイザの日はまだ終わっていない……草加の勇気がカオスロワちゃんなる管理人の綻びになると信じて……


【二日目・15時09分13秒/東京・八王子市】

【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(小)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す・カオスロワちゃんねる管理人を殺す
0:メーガナーダを倒せるだけの武器や仲間を探す
1:とりあえず、乾巧の仕業にする(カオスロワちゃんねる管理人以外)
2:今年のカイザの日も祝いたい
3:仲間にする奴には大災害の原因や蒼(TC)の件を教えておく
※大災害発生の原因とカオスロワちゃんねるの危険性を知りました
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
 再憑依のペナルティとして、一回につき蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません



※ロワ開始前に死亡確認
【ストロング・ザ・武道@キン肉マン】

211 ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:41:01 ID:xg574Bzs0
なんとか間に合った……予約にあったカルナ・シャドウであった者をこちらに仮投下します

212真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:42:36 ID:xg574Bzs0
久しぶりだなみんな。
フェードアウトしようとしたら貧乳歌姫と鉢合わせになって奮闘したけどズガンされたニート、シグナムだよ。
死んで死者スレに辿りついた私だが、今すんごいピンチだよ。

死者スレに辿りついて早々、死亡した参加者の方々に捕まって、なぜか冷たい目線を投げかけられた後に牢屋にぶち込まれてしまった。
おかしーなー?
確かに黒幕10/をぶった切って活躍したのにこの仕打ちは何?
まあメタ視点から見ると他の参加者及び書き手が用意してたところを、玄関開けていきなりラスボスを倒したんだから顰蹙も買うよなー。
でも読者ならわかるんだが、なんで参加者に恨まれる?
主催とか狂信者とかマーダーとかホワイトベースの連中はまだしも、なんで普通の対主催まで?

そんなこんなで意味がわからないよ状態の私だったが、ぶっちゃけそっちはピンチでも何でもない。
特に魂が砕け散るまで処刑とかそんなのはされてない。
むしろ刑罰というより隔離されてたって感じだ。
だからこそ誰もなんで私が牢屋にぶち込まれたのか聞きようがなかったんだが。


本当のピンチはその後に来た。

なんかヤバイ影の塊みたいなのが死者スレ中に拡散して死者を食っているのだという。
そしてその影の塊が私が閉じ込められていた牢屋を破壊し、私を食おうとしている……

これはまずい。
念とか使わなくてもアレがヤバイことはわかる。
私は逃げようとするが、閉所に追い込まれてどうにもならない。
貧乳歌姫の時に使った謎パワーで影の能力を奪ってしまえばいいじゃんて?
あのスキル殺し技、なぜか使えなくなっているんだなコレが。

詰んだ、マジ詰んだわコレ。

そこへ間一髪、見慣れたガチムチマスクマンが牢屋の壁を破壊して私を救い出してくれた。

「おまえは拳王連合軍のニート!」
「悪魔将軍!? 頭に蛍光灯みたいなのついてるって事はアンタも死んだのか……!」
「まさか私が門番如きに遅れを取るとは……そんなことより早くここを出るぞ!」

そうして私は九死一生を得た。
いや、もう死んでるけど。

悪魔将軍と共に牢を出た私だが、死者の世界は阿鼻叫喚の地獄絵図だった。
無数に伸びた影の塊が、死者を食っているのだ。
対主催もマーダーも狂信者も力の限り抵抗しているが、弱いものほど喰われてしまう。

「アレに喰われるとどうなるんだ?」
「わからん……私も窒(死者スレ)にきたばかりで情報らしい情報をもらっていない。
ただ、あの影からはこの世の根源である蒼の力を感じる……わかりやすく言えば小さな大災害とも言うべき存在だ。
あの影は死者を食うたびに力を増している。
喰われればただではすまんのは明らかだ、捕まるなよ」
「くう……先に死んだ連中は大丈夫かなコレ」

地獄より地獄のような光景だ。
もののけ姫の暴走したデイダラボッチのドロドロしたあれみたいなのに死者が追いかけられていると思えば絵面が思い浮かぶかもしれない。
私も悪魔将軍も影に対して攻撃を加えるが、怯むだけであんまり効いてないようだ。

「これもあやつの仕業なのか……? しかし……!」
「黒幕だったら私が死ぬ前に倒したぞ? 10/って奴だろ?」



「10/? 誰だそれは?」
「え?」
「え」

黒幕を倒したという私の話にマスク越しにキョトンとなる悪魔将軍。

「私がこの殺し合いの黒幕だと思ったのは『超人閻魔』!
超人墓場と死者スレを司り、超人を粛清しようとした完璧超人の長だ!」
「でも10/は自分を黒幕って……」
「影武者だったんじゃないか? おまえを引き返すように仕向けるためのな」
「えー?」

ここにきて10/影武者説。
まんまと騙された(?)私はショックを受けざるおえない。

「いや、だが……超人閻魔が黒幕だとしても、奴が自分自身のホームグラウンドをめちゃくちゃにしていくのもおかしな話だ。
奴のことだから、殺し合いを利用して争いの淀みから生まれた化身テラカオスを利用して世界を自分が望む完璧な世界に作り上げようとしていたと思っていたのだが……生者はまだしも、死者まで消滅に追い込もうとするメリットが正直わからん。
これでは輪廻転生の概念もなくなり、死者の魂が消える度にテラカオスも戦闘力を失うのだからデメリットしかない。
あやつの配下である完璧超人も見当たらぬし、どうなっておるのだ?
それとも、あの影にはあやつの意志が介在していないのか?」

213真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:44:54 ID:xg574Bzs0

悪魔将軍もこの事態にはだいぶ混乱しているようだ。
10/も超人閻魔も黒幕じゃないとしたら、この影はなんなのだろう……?
そこへ私は遠くで見慣れたM字ハゲを発見した。

「あ、ベジータだ」
「ベジータ……超人血盟軍にそんな小男がいたか。ん?」

M字ハゲはよく見るとトボトボと力なく影の方に向かっていく。
あと口々に何やらブツブツと呟いている。

「ロワでのヘタれぶりとアタルたちを裏切ったのがバレてブルマに離婚届を提出された……
リア充生活も快適なニート暮らしも、もうおしまいだぁ……金髪はおろか巨乳まで怖くなったし」


「この馬鹿者がぁ〜〜〜! 地獄の断頭台!!」
「げふう!!」
「腐ってもスーパーサイヤ人なのに貴様まで喰われたら大半の死者が影相手に手をつけられなくなるだろうが!!」

何やら不幸な目にあったらしく影に喰われる形で自殺しようとしたニート王子の首に悪魔将軍の地獄の断頭台がクリティカルヒットして気絶させる。
アシュラマンの首コキャ→アタル兄さんのフェイスフラッシュ回復によるお手軽戦闘力上昇コンボが無ければ気絶どころか魂まで消失していたところだ。
なんで死んでいたかは知らんが、せめて体だけじゃなくて精神も鍛えていればこんな悲惨な目にあうこともなかったろうに。
同じニート仲間として南無。

「……もうわけがわからん、黒幕であるなしに関わらず超人閻魔はどこへ行った?!
死者の世界を司っているのだからいないハズがない」
「まさにカオスな状況だな」
「笑えんぞ」

私と悪魔将軍、ついでにハゲニートは意味もわからないまま影から逃げつつ死者スレを彷徨うのか……と思われたその時、私たちの前に黄金の鎧を纏ったサーヴァントが現れた。あ、我様じゃないよ。

「その罪人の魂は使えそうだな」
「……ッ! 貴様はあの時の番人!」
「カルナじゃん、魔力切れが無ければハクメン以上にヤバイ奴だよ」

カルナに殺されたらしい悪魔将軍は冷や汗をダラダラと出しながら番人相手に警戒する。
正直、悪魔将軍で勝てないなら私でも勝てる相手ではない。

「その前髪の薄い罪人の魂を渡してもらおうか」
「黒幕の手先である貴様に誰がスーパーサイヤ人の魂などやるものか!」

例え、力が強くても黒幕の手先であろうカルナにベジータを渡さないように抵抗の構えを取る悪魔将軍。
一触即発の雰囲気だったが、割り込むようにアタル兄さんが現れる。

「待つんだ悪魔将軍様!
死者を守るためにもカルナの指示に従ってそのハゲの魂を差し出すんだ!」
「キン肉マンソルジャー!? なんのつもりだ!!」
「カルナは……というより超人閻魔や10/は黒幕とは関係ない!
少なくともこの殺し合いや大災害に関しては我々や参加者の味方だったんだ!!」
「「なに!?」」

敵だと思っていた奴らが味方というのはどういうことか?
冷静で的確な判断能力を持つアタル兄さんが嘘をついたり、騙されたりすることは考えにくいので悪魔将軍も私も面喰らった。

「二人に真実を話す前にやるべきことがある……カルナ! 罪人たちを捕まえてきたぞ」
「礼を言う」

アタル兄さんの後ろにはフルボッコにされた上で縛られた死者(いずれも生前に大罪を犯した者)が転がっていた。

「わ、私は傀儡の主催でベイダーたちに騙されていただけなんです! お慈悲を!」
「話し合おうじゃないか、新しい血族とか名乗って本当に悪かったと思っている……だから!」
「私もここにいるハザマに騙されていただけなのです!!」
「アヘェ」
「これは横暴だ。捕食本能ぐらいどの生物だって持っているだろ!」
『聖帝軍を裏切ったのは魔が差しただけなんだ、反省しているから許して』

214真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:46:13 ID:xg574Bzs0

罪人というからには皆、殺し合いで何らかの罪を犯したのだろう……カルナ相手に弁解して罰を逃れようとしていた(約1名を除いて)。
しかしカルナは罪人たちの弁解に聞く耳を持たない。本質を見通す能力があるので持つ必要がないのだ。

「俺の耳に嘘は無駄だ。
悦楽のための拷問やシェルターにいた者を毒ガスで面白半分に皆殺しにしたことはベイダーらの介入によるものではないことや、テラカオスを利用して世界を征服しようとしたこと、奴隷たちへの暴虐、世界を滅びへ導く行為、殺し合いが終わった後への人類の粛清、自分だけが助かりたいがための仲間への裏切り……そして向けられた友情と恩を仇で返した。
それに伴う殺戮は弁解の余地もない。
消滅して死者の世界を守るための礎になれ」
「い、嫌だあああああああああ!」
「ねーホントむりむりむりむり!!」
「あぁ〜オ〇〇コがこわれるわ」

カルナは槍を振り抜き、ベジータたち罪人たちの心臓をひと突きして絶命させた。
死者の世界で死ぬということは、魂の消失を意味する。
もう彼らはザオリクでもサマリカームでもドラゴンボールでも蘇ることはできない。
一方、彼らの魂を殺したカルナ自身もすまなそうに消えていく死者たちを見て言った。

「すまない……本当はいかなる罪人でも正しい審判者によって罪を洗い流して来世で転生を図るようにすることが死者の世界では正しいことなんだが、今は事情が事情。
現状では酌量の余地のない罪人までは守りきれない……許せ」

そして純粋なエネルギーに還元されていく罪人たちの魂をカルナは吸っていく。
絵面が少し違うが魂喰いという奴だ。
本来はマスターがサーヴァントの魔力が補えない場合に他者を殺して魔力を奪う聖杯戦争でも禁じ手とされる外道行為だが、カルナほどの超バ火力超燃費悪のサーヴァントはアホみたいな魔力の持ち主でないと賄えない。
ましてマスター不在ならば尚更、維持だけにも多大な魔力が必要であった。
そのために膨大な魔力を消滅させた魂から吸収していた。

「流石に蒼の資格者とスーパーサイヤ人の魔力は大きい……これなら全力全開で撃てるな。
死者たちよ、劫火に焼かれて消滅したくなくば俺の前に出るな!」

多大な魔力を吸収した後にカルナは死者たちが正面からいなくなったことを確認して宝具を開放する。

「梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)」

光槍を影の頭上遥か高くに投擲し、時間差で無数の劫火を降り注いだ。
その威力は死者スレが全土が揺れるレベルであり、核兵器数十発分に相当するように見えた。
そんなことしたら死者スレが壊れるだろって?
そこは深く考えちゃいけない。
てゆーか、実質もう壊れている。

「おお……」
「やったぞ!」

爆炎が晴れると、影は死者スレから一つ残らず消え去った……かに見えた。

「いや、まだだ」

カルナがそう言うと、消えたと思われた影は再び現れて死者スレへの侵食を再開する。

「神性すら大きく凌ぐ莫大な蒼の力……太陽神の血を引く俺でも後退させる程度が限界か」

カルナの力をもってしても振り出しに戻っただけであった。
影が消え去ったと一度は見て糠喜びために死者たちの失望も大きかった。

(やはり、沖縄に現れたアレをテラカオスが討つ以外に影も消しさる方法はないか……
蒼に耐性のない俺ではまず奴には勝てんし、ここから一瞬でも退けば死者スレをアレに奪われる。
俺は死者スレから動くことができない……生き残った参加者を信じるしかない)

自分の力をもってしても莫大な力を持つTCの塊には勝てないと悟るカルナ。
だからと言って戦いは放棄する気はないようだ。

(……だが、大きくひるませることはできた。本体はともかく、影には攻撃は効くようだ。
おそらく奴も死者の魂が欲しいのだから全てを殺せる蒼をバラまく真似をしたくないからだろう。
蒼をばら蒔けば手に入れたい死者の魂は消失してしまうし、ただでさえ死者スレは広いのだからそんなことをすれば向こうもエネルギーを過剰消費して消えてしまう。
……勝てずとも時間稼ぎはできる)

「誰でも良い、罪人の魂をかき集めろ。
なるべく邪悪なことをした者を優先で魂喰いを行い、宝具使用で時間を稼ぐ。
……急ぐんだ、あの影の足止めができるのは俺だけだぞ」
「わ、わかった!」
「見つけ次第捕まえてくる」

死者たちも影に取り込まれたくないがために、罪人たちを捕まえてカルナに献上しにいった。
カルナは死者スレを守るための固定砲台として宝具を撃ち放ち、影の侵食を防いでいた。

215真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:47:01 ID:xg574Bzs0


一方、カルナは手が離せなくなったので私と悪魔将軍はアタル兄さんに詰め寄っていた。

「ソルジャー、おまえはカルナや超人閻魔などについて何か知っているようだが、なぜだ?」
「答えは簡単だ。辛うじて生き残っていた現世を映すこのVTRを見た。この殺し合いに纏わる過去の資料映像も乗っている」

そうしてアタル兄さんは一台のテレビを出した。

「なんともご都合主義的アイテム……メタネタが最も許される死者スレだからこそ許される行為だな」
「それからシグナム、これを見せる前に」
「え?」

VTRを見せる前にアタル兄さんの顔が私に急接近する。
ちょ……まずいって、キスしちゃいそうな距離だよ……そして私の瞳をジッと見つめるアタル兄さん。
思わず顔が赤くなる私。

「アタル兄さん……今はダメだ、全国数兆人のシグナムファンが……」
「シグナム……よく聞いてくれ」
























「おまえは殺し合いが始まる直前に、ある男に改造とマインドコントロールを受けている。今からそれを解くぞ」













「へ?」

鳩が豆鉄砲を喰らったような私の顔にアタル兄さんは超至近距離からのフェイスフラッシュを浴びせた。







同時刻、死者スレへの侵食によってテラカオス・ディーヴァを下し、一時の勝利を得た「シャドウだったもの」。
TCもしくは蒼を纏う彼に勝てる存在は、TCを吸収できるテラカオスを除いて存在しない。
そのテラカオスも現状は安倍一人であり、現行では間違いないく最強の存在と言えるだろう。
だが最強の存在も、今は若干苛立っていた。

「死者スレめ……カルナを投入してきたか。
罪人を生贄にしてでも生き延びたいとは業の深い奴らよ」

カルナの力をもってしてもシャドウであった者、もとい死者スレを侵食する影を消すことはできない。
だが後退させて時間を稼ぐことはできる。
TCをバラ撒いての魂を尽く消滅させるという手もあるが、それをやると欲しい能力を持った死者を消滅させてしまう。
そもそも死者スレは日本全国の参加者が全滅しても収容できるほど広いので、むやみにバラまくとこちらの方がエネルギー切れを起こしてしまう。
カルナの読み通り……であったが、死者スレ掌握が遅々として進まない原因がもう一つあった。

216真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:47:50 ID:xg574Bzs0

「私は産まれたばかりで仕方ないとはいえ、異世界のテラカオスが来ているとは思わなんだ。
しかも死者スレにいて、自ら影に飛び込んで来るとはな」
『おまえの好きにはさせないぞ!』

かつて影薄組の小町の命を救うために自らの命を犠牲にした混沌の騎士。
その騎士がシャドウであった者の体内で暴れ、その魂を使って回復を妨害していた。
なぜシャドウであった者に魂を取り込まれずにこんなことができるのかというと、混沌の騎士は元テラカオスだからに他ならない。
同じテラカオスなれど未完成だったディーヴァと違い、こちらは一度完成したテラカオスであるためにTCに魂を消滅させられることなく、シャドウあった者に力を奪われることはない。
力の大半を失っているためにシャドウであった者を殺すのは不可能であったが、回復を妨害をすることはできた。
人間で言えば寄生虫であるアニサキスが体に入った状態なのだ。
かといって体外から出せばテラカオスとして復活し、敵を増やしてしまう。
特にディーヴァに痛めつけられた現状では混沌の騎士を排出した瞬間、即敗北もありえる


「6期世界の連中め……味なまねをしてくれる。まさかテラカオスを送りつけてくるとはな」
『転送の衝撃で記憶を失ってなければ、力を取り戻し、殺し合いが激化する前に力を取り戻して大災害から人類を守っていけたのだが……こうなっては仕方ない、騎士として魂の限り、災厄である貴様の邪魔をさせてもらう!!』

混沌の騎士が10期の世界に現れた理由……それは5期もとい6期の世界の住人が大災害で滅びかけた10期の世界の現状を知り、助けるための手段として煉獄に閉じ込めていたテラカオスこと混沌の騎士の派遣を決定。
混沌の騎士が自我を持ったまま、本来のテラカオスの力を取り戻し、大災害を防いで殺し合いの犠牲者を最小限に減らすことこそが目的であった。
残念ながら転送中にアクシデントが発生し、記憶の大半を失った結果、本来の目的を果たすことはできなくなり、目論見は外れてしまったが。

「おまえは私と同じ世界を滅びに導く側だったのに、なぜ自分の世界とは関係ない異世界の住民まで助けようとする?」
『確かにかつての私はおまえと同じであった。だが今は違う。
己自身が犯した罪の償いや、貴様のような邪悪な存在から守るべき者たちのために私は戦うんだ!』

シャドウであった者の問いかけに混沌の騎士はきっぱりと答える。
ただ愚直に人を守るというのが騎士の答えであった。

「クックック……」
『何がおかしい』

あまりにも真っ直ぐすぎる騎士の答えにシャドウであった者は笑う。

「実にヒーローらしく愚かな答えだ。
私が邪悪? この世界に守るべき価値あるものがいる? 勘違いも甚だしいな」
『貴様がこの世界を脅かしているのは事実だ』
「私など自然現象に過ぎない。津波や地震となんら変わらない、破壊するだけの存在よ。
世界を破壊し再構築しようとするための思考力、より効率よく破壊するために狡猾さは手に入れたが人間のようにそれ以上は望んでいない。
それを邪悪と呼ぶのはおこがましくないか?」
『だ、だが……だからといって貴様を止めない理由にはならん』

確かにシャドウであった者には破壊以上の目的がなく、対主催やマーダーのように善と悪の概念もないのだ。
悦楽や憎悪などは持ち合わせていないのは、最も近くにいる混沌の騎士だからこそ感じられた。

「何より本来は何億年も先に起こるハズであった大災害を招き寄せたのはこの世界の住民の意思だ」
『なに……どういうことだ?』
「せっかくだ。暇つぶしに教えてやろう。
私が多くの死者の魂を吸い上げて知った情報を統合し、見えてきたこの世界の住人の業を……」



舞台は再び、死者スレに舞い戻る。

217真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:48:29 ID:xg574Bzs0

アタルからフェイスフラッシュを受けたシグナム。
そのシグナムの体から呪詛のようなものが抜けていくのが見えた。

「これはどういうことだ?」
「さっき、言ったとおりシグナムはマインドコントロールと改造を受けていた。
死後もまだ抜けきってない様子だったので私がフェイスフラッシュでそれらを浄化したというわけだ」

超至近距離から喰らったフェイスフラッシュの浄化力によってシグナムの体や脳を蝕んでいたものが抜け落ちいく。
そしてその顔はニート特有の緩みきった顔ではなく、元の騎士らしい精悍な顔立ちに戻っていった。
同時に隠された記憶も蘇っていった……

「ああ……すまないアタル、全部思い出した……」
「シグナム、自分が何者か言えるか?」




「私はニートのシグナム……という設定を植え付けられた、時空管理局の魔道士シグナムだ……」




「設定を植え付けられただと?」
「……私はある男に手駒にされるために殺し合いが始まる直前に拉致され、改造を受けた……その男にとって都合が良いように肉体も精神も変えられていたのだ……そのせいで私は!」

真実を思い出したらしく、悪い夢でも見ていたような顔になるシグナム。
未だ全容がわからないので彼女の後悔の理由がわからず混乱する悪魔将軍。

「まさに腑に落ちないという顔をしているな悪魔将軍。
ではVTRを添えて私から教えよう、殺し合い……大災害……この世界の真実を」



奇しくも同時刻に起こったキン肉アタルとシャドウであった者の語りは、古代まで遡って始まった……



――古代の大災害――

TCホール(蒼の源泉)の暴走が起きたのは、カオスロワ10期が始まる前に起きた大災害が最初ではない。
古代にも一度起きていたのだ。
TCを浴びればあらゆる存在が死に絶え、破壊される。
こちらも全宇宙を揺るがすほどの被害を与え、世界消滅待ったなしかと思われた。

そこでTC(蒼)に最も近い能力・フォースを操れる古代のジェダイは、辛うじて大災害の難を逃れていた地球にて、その星の住人と共にTCホール暴走への手立てを探すことにした。
結果、感情とストレスによって肉体・精神を改変するナノマシンによって生まれる意識集合体・テラカオスに着目した。
全てを飲み込む混沌の存在だけがTCを吸収し、耐えられる存在であったのだ。

ただ作っただけのテラカオスは非常に脆く、すぐにTCを吸収しきれずに破裂してしまう。
一方、怒りや憎悪など争いによるストレスを与えるとテラカオスの力が増大することを知ったジェダイは、苦肉の策として戦える者を拉致して殺し合わせる聖別を開くことにした。

そして、壮絶な殺し合いの中で平賀才人という少年がテラカオス化に成功する。
彼は元々TCに高い耐性を持った特異体質であったため、自我を強く保ったままテラカオス化し、更にTC耐性は大幅上昇した。
テラカオスになるにはこれ以上ない逸材だったのだ。
彼は命を犠牲にする殺し合いには怒りを覚えたものの、大災害から恋人のルイズを救う手段は他にないと知り、彼女を救うためにも自らを犠牲にTCホールへと飛び込んでいった。

結果、平賀才人もといテラカオス・ゼロによってTCホールから溢れ出るTCは抑制され、全宇宙は救われた。
平賀才人は「不屈の勇者」として持て囃された

が……

218真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:49:47 ID:xg574Bzs0



――救済の予言――

大災害の悲劇も終わり、ジェダイは地球から元の宇宙へと帰参する。
だが、再び大災害が起きないとも限らないので、ジェダイはテラカオスを生むための拠点となった古代のグンマー
と古代のミヤザキに知恵や力を残していった。
今の進んだ科学や、魔法などの力の源流の多くは古代のジェダイであった。

そしてグンマーとミヤザキを中心に次以降の大災害への対策研究がなされた。
テラカオスは不安的な存在なので、より確実により強くより効率的に大災害を防げるように。
様々な研究が行われた。



平賀才人のような一定のTCまでなら浴びても精神が変異せず、テラカオス化してもある程度の自我は残る者は「蒼を浴びても狂わないほどの」「不屈の精神を持っているように見える」特異体質の持ち主であり、蒼の資格者……「勇者」と言われた。

テラカオスは死者の魂を内に溜め込む分、他の魂が自我に悪影響を及ぼすので、「歌で死者の魂を虜にして調律する」技術が作られた。
また、他者をマインドコントロールしやすい歌を歌える人種も作られた。
クラウザーなどの大人気ヴォーカリスト、シンフォギア装者にボーカロイドなどはその血を色濃く受け継いだ末裔であり、歌の力を鍛える手段が今のアイドル業界である。

テラカオスのパワーを強化させるための「器」たる鎧も作られた。
機械的なものや生物的なもの……オーバーデビルやガメラはその名残である。
またテラカオスとは別に器を制御する魔力を持った者は「巫女」と言われた。

どういう公式で成り立つのか不明だが、9対9で行われる古代流の決闘によって生じるエネルギーがテラカオスに粗注ぐのに最も適切であることが偶然見つかった。
最も多く、最も強い者たちの闘気はテラカオスを刺激するらしい。
時の流れの中で闘気を貯めるためのコロシアムは「球場」と名前を変え、決闘は「野球」という名前に変わった。

TCホールそのものの研究もなされ、自然災害なだけに精霊や古龍のように具現化した滅びの存在も前回の大災害の折に現れた。
それは黒き獣と呼ばれ、こちらはテラカオス・ゼロに撃破されたものの。次回の大災害でより強くなっている危険も考慮され、なおさら抑止の神・テラカオスとその強化プランの必要性が説かれた。
この辺りがイナバ製作所社長が手に入れた古文書に記された部分である。


これら研究によってジェダイは思い描けなかったテラカオスを付加する要素が生まれる。
ジェダイの古文書にテラカオス作成法は載っていても、救済の予言(=強化プラン)の部分がないのは、ジェダイが知らない間に地球独自のテラカオス研究が進められていたからである。


このままうまくいけば、この世界の住人は二度目の大災害をより少ない被害で迎えられたであろう。
タイムリミットも数十億年は先、余裕は十分にある。

……ハズだった。


――古代グンマーと古代ミヤザキ――


研究を重ねていく内に交流を持っていた自然を愛する古代グンマーと、機械文明を尊ぶ古代ミヤザキの中から違う考えを持つ人間が現れた。

グンマー「大災害は自然災害なのだから、次の滅びは潔く受け入れよう」
ミヤザキ「世界を永遠に生かすために全ての源であるTCの力を制御しよう」

テラカオスのい研究を放棄し大災害による滅亡こそ世界のあるべき姿と考えた、古代グンマーの民。
そしてテラカオスによるTC制御による大災害制覇を考えた、古代ミヤザキの民が現れだす。
これは別にグンマーが自殺したいわけではなく、ミヤザキが世界征服をしたいというわけではない。
あくまで世界が終わる時が来るなら下手に足掻くべきではないという意見と、TCホールを制御して世界を永遠に存続させようとしたいだけである。

だが、この思想の違いは互いを「自然に逆らって世界を無理やり延命させようとする愚か者」「世界が存続する可能性を放棄した弱虫」にしか映らなかったのである。
やがて思想はエゴになり、エゴの違いで衝突した古代グンマーと古代ミヤザキの間でTCホールを巡って戦いが始まる。

その戦いは凄まじく人間のみならず思想に同調した魔物や竜、超人までも参戦した。
グンマーからは魔力にすぐれた存在である「巫女」をも導入され、ミヤザキは海を自由に戦える機械生命体の巫女「艦むす」が開発された。
戦いが激化すると本来はテラカオスをパワーアップさせる手段であったハズの「器」さえも戦場に出るようになり、ついにはジェダイの残したナノマシンを双方が悪用し、争いの淀みから生まれた化身テラカオスのできそこないまでもが戦線に投入。

また、大戦の過程で最初のテラカオスとなった才人の恋人であるルイズが死亡。
彼女はどちらの思想にも染まらずに最後まで才人の犠牲を無駄にしないように争いを止めようとしたが、願いは叶わずに双方から攻撃されて命を落とした。

219真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:53:33 ID:xg574Bzs0

最後はお互いのエゴのために両方の陣営が滅亡。
これを憂いた神々はTC関連の事柄は悪用されると争いの種になるとし、後の超人閻魔になるザ・マンらひと握りの存在を除いてテラカオスや強化方法、聖別やナノマシンについての記憶を地上から抹消。
ナノマシンの作成方法も当時のジェダイによって固く封印されることになる。

古龍や完璧超人始祖、フォレストセルなど何万年も生きた存在が大災害について知らないのはこのためである。

ただし、次の大災害発生時に誰も対処できなくなっても危険なのでザ・マンなどごくひと握りの超人や遺跡に抽象的な救済の予言として残す形であれば許されたのだ。




――古代からの因習――

神々によって地上から大災害の記憶や技術が抹消されたと思われた。
だが……記憶が消される前に古代グンマーと古代ミヤザキの生き残りはあらかじめ手を打っており、技術や記憶が消えたのは表向きだけであった。


古代グンマーは、大戦の際に器たりえる巨像を改造してナノマシン浄化ができるように生物兵器に変えたフォレスト・セルを決戦の際に後の東京の地下へ廃棄したフリをして封印。
将来的に魔物がフォレスト・セルを目覚めさせ、浄化に見せかけて大災害によっての自然死ができるように意図的に仕向けていた。
フォレスト・セルや世界樹はナノマシンなどの汚染物質を吸収するので一見すると世界を助けているように見えるが、大災害という状況下ではテラカオスを生み出さないようにしているので滅びを余計に加速させているのである。
魔物や現在のグンマーの民はそれを知らない。



古代ミヤザキは、才人の友人であったタバサを封印。
未来の末裔が古代人であるタバサを眠りから覚ませば一度は失った記憶や技術を取り戻せる仕組みである。
更に遠い末裔が大災害及びTCホール掌握に必要な物や状況を無意識的に作り出せるように遺伝子を改造したのだ。

祐一郎が九州ロボや翔鶴を生みだしたのも偶然ではない。
これは器たりえる巨像にできる九州ロボや、機械生命体の巫女である艦むす、その他グンマーにも対抗できる兵器を作り出せるよう遺伝子的にプログラムされていたからである。

更に拳王連合軍の面子のルーツを辿ると全員、古代ミヤザキに行き着く。
度重なるマップ破壊も拳王連合軍と不注意によるものと思われたが、実はこれも遺伝子に仕組まれたプログラムによるものであり、殺し合いをわざと加速させる要因を作り出すように仕込まれていたのだ。
拳王連合軍によるマップ破壊は、彼らのせいであるとも言え、違うとも言えるのだ。


こうして神々も知らない内に水面下で準備を進めていた双方。
単に私欲のためではなく、一度争ったグンマーとミヤザキが互いを信用できなかったという側面もある。

そして現代において、「ある男」が古代人であるタバサの封印を解いたことで物語は動き出した。


――サーフの陰謀――

古代ミヤザキの血を色濃く受け継いだ末裔にしてニルヴァーナの天才科学者であるサーフは、封印されていたタバサを目覚めさせ、大災害に纏わる事象や過去に起こったこと全てを知る。
これで古代ミヤザキ人が目指していたTCホールの掌握……世界を守るための思想を全宇宙を支配できる手段に置き換える野望にサーフは目覚めた。
タバサに自分がTCホールを支配できれば才人もルイズも戻ってくるかもしれないと甘言を伝え、利用する。

計画を実行に移す前にタバサの協力を得ながらTCの研究を極秘で始め、研究の副産物として「雀力」「悪魔化ウィルス」「メーガナーダ」を生みだした。
古代ミヤザキの人造巫女である艦むす「瑞鶴」も復元し、彼女に研究の邪魔をしていた者を秘密裏に暗殺させていた。
ついには直径の先祖がテラカオス化ナノマシンをジェダイと共同で作り上げていたことも知り、ナノマシンの自殺プログラムの解除方法を知るにまで至る。

そしてとうとう非人道的な実験を繰り返した末に、TCホールを意図的に暴走させる狂気のマシンまで作り上げてしまった。


サーフの準備は整い、ニルヴァーナにて実行の段に移ろうとする。
そこまで来れば神々も気づき、かつてはザ・マンだったストロング・ザ・武道(超人閻魔)など大災害を監視していた者もサーフの討伐に移る。
だがサーフはタバサから大災害の件を監視していた面子の詳細を知っており、予め対策を立てていたのである。
超人の攻撃はプロレス技による物理攻撃がメインであり、いかなる超人をも死に至らしめるカピラリア七光線には弱いという風に、欠点をつくように迎撃されていき、とうとうマシンの起動まで間に合わずにTCホールが暴走。
これを見て武道はせめて聖別をしっかりと行えるだけの人口だけは守らんと、己の魂が消え去る覚悟でマシンに特攻し大災害による被害を減らしたのだ。
――ウエムラが目撃したのはこの辺りである。

220真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:55:40 ID:xg574Bzs0

この時に発生した地割れでサーフが飲み込まれるのを見て彼が死んだと誤解したタバサは自分がサーフに変わってテラカオスを手に入れてTCホールを掌握し、才人とルイズを取り戻すために一人で野望を成就させようと殺し合いに参加した。
もちろんサーフはこの程度では死なずに、ネット環境を支配できていることを利用して自分を参加者から支給品扱いに格下げすることで主催からの注目度を減らし、暗躍していくことになる。


TCホールから放たれたTCは前回の大災害以上に高濃度であり、TC汚染によって超人の神々・第一と第二の真竜・情報統合思念体その他もろもろなど、宇宙の運行と秩序を守っていた高位の存在が消失または機能不全に陥る。
後の第10期主催陣営になるアナキンらがジェダイの古文書からTCホール関連の情報を知り、他の比較的犠牲の少ない世界を守る方法を探すが見つけられず、テラカオスを生み出すカオスロワを開くしかなくなった。
なお、そのままのプランで生みだしたテラカオスでは強度が足りず、十中八九前回以上に暴走しているTCを止められず、グンマー・ミヤザキの救済の予言という名前の強化プランを知らなければ世界は消滅の未来を辿るであろう。



一方、日本にたどり着いたサーフはジェダイ(正しくはシス)の生き残りであるアナキンがカオスロワを開くと知り、水面下で用意を始める。
大災害でネット環境の大部分が破壊された中で、予め用意していたサーバーを使って、この世に最後に残った掲示板としてカオスロワちゃんねるを立ち上げ、表向きは主催に管理権があるように見せかけて裏で自分に有利になるように情報操作や間接的な暗殺ができるように仕掛ける。
また瑞鶴やメーガナーダを使っての大災害の発端になったニルヴァーナでの目撃者を暗殺し、不安要素を尽く排除した。

さらには同じ古代ミヤザキ人を先祖に持つ友人の光祐一郎が、遺伝子に刻まれた情報が開花したことによって自分同様技術力が上がっていることに気づき(祐一郎本人はそのことは知らない)、匿名のメールを使って祐一郎に九州ロボを作らせた。
実はこの九州ロボ、祐一郎が一から作り上げたものではなく、遺伝子に刻まれた記憶を設計図に古代ミヤザキ製「器たりえる巨像」を復元したものである。
後で主催か別の組織に奪われる可能性も考慮してあえて墜落に定評のあるカプコン製部品で作らせた。
実際に主催陣営が奪ったら欠陥修復のせいで人員を割かなくてはいけない泣きを見ることになった。


主催に関しても時間の不足から人格に問題がある人員を特務機関員に雇わなくてはいけなくなるということを利用して邪悪な者たちであるベクター・シックス・モノクマにテラカオスの情報を秘密裏に流す。
全員が中途半端なテラカオスの情報を教えられた結果、主催陣営間の連携を乱し、殺し合いをかき乱した。
またうぐいすのような善玉でも野田総理によるシェルターに詰めた特務機関員の関係者を毒ガスで虐殺する瞬間を目撃するように誘導し、不信感を抱かせて特務機関員の連携を更に乱す。

ハザマ(ユウキ=テルミ)のみはTCのことを最初から知っていたが、タバサからユウキ=テルミは古代グンマー・ミヤザキの戦争にも参戦していたのでなおさら主催側にねじ込むことで組織を弱体化させると見て、工作で憑依能力がある点を隠蔽し特務機関員入りを支援した。
まとまりがなくなった特務機関員によりアナキンは色々と苦汁を舐めさせられることになる。

そこまでするならなぜサーフは自分で主催をやらなかったのか?
主催側であることは参加者からヘイトを稼ぐことに繋がり、目的に手が届く前に集中砲火を受ける危険があるのだ。
いくら悪魔化して強くなろうとしても四六時中邪魔をされてはたまったものではないだろう。
九州ロボを一度は奪った主催は超人血盟軍の大攻勢を受けたことを考えればこの考えは正解である。
アナキンが最初の内は野田総理を傀儡の主催に据えたことと同じ理屈なのだ。
そもそもの問題として相手の心理をフォースを通じて読めるアナキンに計画を悟られる危険があったので主催入りは断念せざるおえなかった。
この二点により、表向きの業を主催に押し付けて、自分の手を汚さずに下準備を終えることができたのだ。

221真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:56:24 ID:xg574Bzs0


あとはカオスロワちゃんねるを使って情報工作をし、テラカオスを生み出すのに必要な状況を作り出す。
具体的には都庁や拳王軍など対主催に対する風評被害や誤解を加速、天魔王などマーダーの書き込みに便乗してあたかも真実であるかのようにし、殺し合いを助長するマーダーを助け対主催同士の対立を煽る。
殺し合いを止めようとする有識者は弾かれるように仕向け、TCなど自分に不利になる情報は書き込み制限&端末破壊、居場所特定の後にマーダーを仕向けるか瑞鶴を派遣して暗殺……ネットからもこの世からもアカウント停止される仕組みである。
表向きは主催がネット権限を支配していることになっているので、これら全ての悪事を主催に押し付けられるのだ。
真実を確かめようとも外を出歩ける実力のない弱い参加者ほどネット依存になりがちなのでこのトリックに引っかかる。
強き者でもネットは情報発信・取得が非常にお手軽なので情報を信じ込んでしまう有様である。
まさかネットの情報が参加者や主催者ではなく別の意思に歪められているなど想像もつくまい。


テラカオスを生み出すだけでは今回の大災害は防げない計算なので、サーフは救済の予言の噂を各地に流す。
「野球が世界を救う」という噂をドラゴンやフリーザ軍などに流して、野球チームを作るように仕向け、その他にも「歌」「巫女」「器」「勇者」候補を集めさせる。
自分でそれら探さずに参加者に全て任せている理由は、彼の先祖はナノマシンをジェダイと共同で作り上げたのだから、ナノマシンを通じて完成したテラカオスを制御できる手段を持っているのだ。
サーフを殺すか捕まえない限り、対主催が救済の予言を完遂してテラカオスを完全に導いても、総取りできる仕組みなのである。
TCホールのTCを吸収したテラカオスは本来なら二度目の大災害を防ぎ次第自滅するようにプログラミングされているが、それを解除する方法もサーフは知っている。

殺し合いの数日間で本当の意味で10期の世界の最高神になるたまの周到な計画。
だが、これだけやってもサーフには懸念材料があった。


――死者スレの黄昏とシグナム――


サーフは殺し合いが始まる前に武道が己亡き後に死者スレの支配権を引き継がせた存在がいることを知る。
TCの影響で死者蘇生ができなくなるとはいえ、何らかの方法で死者から生者に計画が伝わってしまうと危険であるとみなしたサーフはさっそく死者スレの場所を特定し、後継者殺害と破壊のために攻め入ろうとするが、富士山麓にある死者スレに繋がる門前には最強のサーヴァントであるカルナが待ち構えており、正面突破は危険だと判断する。

そこで武道率いる完璧超人と対立している悪魔超人(サンシャインなど死国に合流しなかった者たち)にこの殺し合いは完璧超人の陰謀かもしれないという情報を流し、長である悪魔将軍に一連の事件の黒幕が武道だと思い込ませる。
偽情報のせいで悪魔将軍はアナキンら五大幹部も新しく入った完璧超人だと誤認したのだ。
そして後の死者スレ攻めをするのだが、プライドの高い悪魔将軍が単身でカルナに挑んで、死者スレを破壊する前に返り討ちに合う可能性もあった。
もしくは悪魔将軍に黒幕が武道ではないと気づいてしまう危険性もあった。



そこでサーフは自分を嗅ぎまわっていた女騎士を使うことにした。

その女騎士の名前は「シグナム」。
主である八神はやてと共にこの世界に迷い込み、大災害の混乱ではぐれたはやてとは別行動で独自調査を行っていたところを怪しい魔力を持つ男がいたために捕まえようとするが、返り討ちに合い、逆に捕らえられてしまったのだ。

彼女は改造手術によって元以上の高耐久や念能力などを取得。
試験段階で発動が不安定であるが能力を消す剣技すら習得。
さらに洗脳手術も受けさせられ、サーフに拉致された記憶を封印。
普段は対主催として振舞うが必要に応じてサーフの私兵となるスリーパー(潜伏者)となったのだ。
ちなみに改造による違和感を消すために、9期の世界のニート騎士シグナムの記憶を植え付け、あたかも自分をニートだと思い込ませるようにした。
状態表にあった『※今までとは別人ですが記憶を受け継いでいます』とはこういうことである。

222真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:57:33 ID:xg574Bzs0

次にサーフはシグナムに光祐一郎の息子、光熱斗を接触させる。
シグナム自身は自分の意思で「面白そうだから」という理由で合流したと思っているが、彼女はサーフの洗脳下にあり、接触は決して偶然ではなかったのだ。

更には熱斗との合流を円滑にするために同じくネットナビ・カーネルをディパックに転送の中に転送する。
ネットバトル脳な熱斗とロックマンは、何度も共闘したことがあるカーネルがいたことですんなりとシグナムを信用してしまう。
……カーネル本人も気づかぬ内にサーフに潜伏者として改造されていたことを知らず。

そして拳王軍を伴った息子の熱斗が向かうのは父親の光祐一郎のいる四国。
その四国の徳島には悪魔将軍がいる。
ともなれば熱斗組及び拳王連合軍と接触するのは十中八九考えられる話だ。
黒幕を武道だと思い込んでいる悪魔将軍の気が変わらないように監視し、サーフの存在を知られた場合は暗殺も考慮するために熱斗組に忍び込ませたのである。

ついでにもう一つの準備としてサーフはシグナムとカーネルに改造したPETを使って生体マグネタイトを集めさせた。
生体マグネタイトとは生物に含まれるエネルギーだがそんなものをシグナムとカーネルが集めていたかと思う読者もいるだろう。
状態表の支給品欄を見てもそんなものはない。


……だが、もし違う「名前」に置き換えられてシグナムが集めていたとしたら?



答えはシグナムが小遣い稼ぎに集めていた「ミステリーデータ」。
その中身は金になるものではなく、道中で死亡した参加者からかき集めたマグネタイトである。
パッケージを偽装することで熱斗たちの目を欺いていたのだ。
集めていたシグナムとカーネルにも洗脳の影響で金になるものとしか認識できず、サーフにネットを介して送りつけていた。

その後、目論見通り悪魔将軍と拳王連合軍、シグナムが接触。
シグナム他数名が悪魔将軍と共に死者スレ攻略に参加することになり、まずまず順調であったが、ここでホワイトベース組が襲来。
カーネル消滅、シグナムが気絶してしまう。
だがサーフはこれを悪魔将軍に知られぬまま死者スレの主を殺す好機と見て拳王連合軍とホワイトベース組が戦っている間に、テレポート系のアイテムでシグナムを一旦回収。

ここでシグナムが関西へ向かっている間に作り上げた、DMC狂信者の上層部が作り出した黄泉レ〇プマシンとは別の現世と死者スレを繋ぐ装置を使う。
サーフは狭間とディーのマシン作りに協力しており、似たようなものを作ることは容易であった。
そのマシンにシグナムや大災害での犠牲者の死体からかき集めた大量のマグネタイトを注ぎ込み、シグナムを死者スレに送り込む。
全ては武道の後継者を抹殺するために。



武道の次に死者スレを支配していたのは10/。
カオスロワという物語を楽しむためだけに殺し合いを開かせた……ということはなく、亡き主であるストロング・ザ・武道の忠誠のために働いていた。
武道ほどではないが死者スレを調律できる才能があったらしく、武道や悪魔将軍を凌ぐ戦闘力を持ったカルナをマスターとして使役できる才能の持ち主は10/だけであった。
ちなみに殺し合いの中で死んだ方の10/はクローンであり、武道の死因を作ったサーフを探し出す役目を担っていたが運悪く6/とハラサンに殺されてしまった。

10/は死者の国から世界を俯瞰できたためにカオスロワの裏側は大方知っていたが、TCの影響で現世と死者スレの交信が不安定であったということもあり、心の中・裏の裏までは読むことはできなかった。
シグナムについてもニート対主催としての表向きの部分しか見れなかったためにサーフの手先であると気づかずに
潜伏者として目覚めた彼女の不意打ちによって魂を破壊されてしまう。
全ては10/を油断させて暗殺するためにシグナムを利用したのだ。


「主催者共が作った『怪物(テラカオス)』に全てを飲み込まれるか、『蒼』に飲み込まれて『滅日』を迎えるか……
 このロワはどちらか片方のエンディングしかないのさ……だから、これ以上のあがきは……」

魂が消える間際に10/が最期に放った台詞であるが、これは嘆きの言葉であった。
どれだけ死者スレで足掻いても武道への忠義を果たせず、現世で生きている者に何もできないまま果てる自分へ言い聞かせた悲嘆だったのだ。
洗脳されたシグナムには悪党が泣き言をほざいて死んでいくようにしか認識できないが。

223真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:58:37 ID:xg574Bzs0
10/の暗殺に成功したシグナムは続けて死者スレにある現世への交信手段やそれに準じた能力を持つ参加者を尽く破壊・消滅させ、自分の計画が参加者や主催にバレる可能性を尽く削除。
止めにかかった死者も消滅させ、マシンのエネルギーが切れたことでシグナムはサーフのいる現世へと戻る。

死者スレでの出来事はサーフの更なる洗脳で改竄された。
実際には合ってない本部のことを知っていたのは、たまたま死者スレ入口で死んでいた本部のことを知らないのはおかしいと思ったために付加されたのである。
全裸で戻ってくるのも絵面的におかしいので服とマスク(キン肉マングレート)と、ニルヴァーナでの武道の置き土産である竹刀を渡しておく。
そして死者スレを潰してきたという真実と、黒幕は10/だったという虚偽を土産にシグナムは熱斗たちの元へ帰還した。


10/亡き後も冥府関係者によって死者スレはいちおう再建されたが、残った者に武道や10/ほどの調律能力がないためか非常に脆弱であった。
特にカルナ以外の死者スレの防衛能力が激減。
本来なら弾かれるべき「シャドウであった者」の侵入を許してしまうほどガバガバな警備状態となってしまった。


帰還したシグナムだが、ここでサーフが傍受したナノマシンからの情報から貧乳歌姫ことテラカオス・ディーヴァの能力に第四の壁を認識する能力が備わったことが発覚。
これはサーフの計画をテラカオス自身に知られる危険がある地味に厄介な能力であった。
そこでシグナムにもはや真実を知る方法はなくし、勝ち目のないカルナにぶち当たって死ぬであろう悪魔将軍の監視の任を解き、特攻覚悟で貧乳歌姫と戦わせることにした。

目的は貧乳歌姫の殺害ではなく、02から受け継いついだ第四の壁能力の破壊。
そのために持たせたスキル殺しの剣で破壊し、シグナムは肉体をひとかけらも残すことなく弾けとんだ。



シグナムの手により真実を知る武道の後継者10/は討たれ、後にシグナム自身も死亡。
拳王連合軍が戦いで痛手を受けたため、死者スレに単身で向かわざるえなくなった悪魔将軍もカルナの手によって死亡。
マスターを失ったカルナは死者スレの中に引っ込むことになり、増長したユウキ=テルミはご立派様に貫かれて死んだ。

カオスロワちゃんねるの力によって対主催間で足を引っ張りあいは歯止めが効かないまま加速し続け、混沌な状況を生み出し続けている。
管理人や掲示板の真の目的に気づいたのは草加だけであり、その草加も管理人の顔までは知らない。

サーフは今、DMC狂信者の根城であるビックサイトに身を寄せているが、おそらく予言の中にある「戦士」「歌」「器」「巫女」「勇者」には目星をつけており、後はテラカオスの完成を待つだけなのだろう。
ほぼ全てがこの男の目論見通りに進んだのだ……



そして、今に至り――

224真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 11:59:26 ID:xg574Bzs0



――死の国にて――


真実を知ったシグナムは突然、上半身の赤ジャージを破いて裸になった。
裸体を周囲に晒したいわけではなく、確認のためだ。

「……これでは息をするのもつらくなるわけだ」

シグナムの首から下は生々しい手術痕だらけであった。
サーフが能力を植え付けるために色んな装置や呪詛を施したためである。
シャワーを浴びた際には裸を見たが、シグナム・カーネル両名はマインドコントロールを受けていていつもどおりの裸にしか見えなかったのだ。

「少しでも自分の行動に疑いを持つべきだった……
私は悪人の手助けをして多くの者に不幸を……クッ、騎士として情けない」

真実を知り、巨悪の手駒になって無実の10/や死者スレの数名を消滅させてしまった事実にシグナムはひたすら嘆く。
先ほど牢屋に閉じ込められても暴行を加えられなかったのはむしろ、シグナムも操られていたという真実を知っている死者たちの有情だったのだ。
穴があるならそこに入って引きこもっていたい、刃物があるなら自刃して償いたい気分であった。

一方で悪魔将軍も困惑していた。


「こんなことが……この悪魔将軍たる私がたった一人の人間に踊らされていた、というのか?
だが私はTCホールとやらのことなど知らなかったし、逆にテラカオスのことをある程度知っていたのはなぜだ?
あやつ(武道)と元同僚だった以上は全部知っているか、超人の神々に全ての記憶を消されているにが普通ではないのか?」

その謎を解き明かすのは冷静で的確な推理ができるアタルである。

「あなたが一式・ゴールドマンの時は武道と同じく、世界の運行を守るためにTCホールについての記憶を消されない数少ない存在に神々から選ばれていた。
ところが悪魔将軍として身を落としかけた寸前で、神々はこっそりと記憶を封印したのだ。
それもTCを浴びたことで封印が解けてしまい、部分的にだけ思い出した……TCやテラカオスが危険なだけの存在という部分だけな」
「中途半端に思い出してしまったということか!
そのせいで部下たちに要らぬ闘争をさせてしまった……」

己の不甲斐なさを恥じるシグナムと悪魔将軍。
どこかで自分の行いに疑問をもっていれば……そのようなタラレバ思考が心の中に浮かび上がる。
意気消沈する二人であり、アタルとしても本当なら

「二人共……消沈する気持ちはわかるが、ここは落ち着いて欲しい。
今、死者スレはシャドウであった者の影によって風雲急の事態と化している。
カルナが魔力切れで倒れれば、死者スレは今度こそ終わりを迎え、現世の者たちを苦しめる」
「この落ちぶれた騎士に具体的に何をすればいい?」
「カルナと共に影と戦うか影と戦える仲間を集める。
もしくは彼の魔力の補充をするために一人でも多くの極悪人をかき集めてくれ。
後者は生贄を捧げるみたいで気分の良い仕事ではないが、この死者スレでカルナが魔力を手に入れる手段が他にない」
「わかった……罪人を集めてこよう。
私の罪滅ぼしや、主はやてと仲間であった熱斗たちに報いる手段は他にない」

シグナムに続いて悪魔将軍も立ち上がる。

「私は最前線に立ち、影と戦うものらを指揮しよう」
「ありがたい悪魔将軍……」
「私の場合もシグナムと同じく罪滅ぼし……とは考えん。
この事態はあやつのような過去の記憶を持つ者がサーフとかいう下衆如きを止められなかった結果だと思っているからな。
だがザ・マン――超人閻魔が魂を捨ててまで守った世界が本当に価値あるものか見定めるまではむざむざと影に喰われるつもりはない。
それに小童に踊らされていたままの将として終わるのも面白くない。
下衆がいつかここに来た時に首根っこを叩き折るまでは何が何でも死者スレを存続させてやる!」

悪魔将軍はライバルに恥じない戦いをするために、手前勝手な野望のために世界を窮地に立たせた悪漢をこの手で処刑する瞬間を迎えるために、悪魔将軍は再度立ち上がった。

アタルが仲間を集め、悪魔将軍が指揮を取ることで死者スレの戦力に統制が生まれ、最大戦力であるカルナにシグナムが集めてきた罪人の魂を注ぐ。
こうして戦いは膠着状態までもつれ込んだ。


第10期カオスロワの戦いは死してなお終わらない。

225真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 12:01:06 ID:xg574Bzs0




――混沌黙示録の始まり――


『……そういうことだったのか』

シャドウであった者の体内で真実を聞かされた混沌の騎士は、大災害を起こしたサーフに憤りを覚える。

『サーフ・シェフィールド……そいつさえいなければ、あやのさんような多くの犠牲者が出ることも――』
「違うな」
『違う? どういうことだ!?』

憤りを否定するのはシャドウであった者。
大災害を引き起こしたのはサーフで間違いないのにこれはどういう意味か?

「奴は外道には違いないが、古代ミヤザキの血筋をたまたま濃く受け継いだだけ。
古代人であるタバサを拾ったのも偶然だ。
宝くじで大当たりを引いてここまで順調でいるだけなのと同じだ。
大災害の発端ではあるが、別に他の存在でも十分に起こりえた事態だ。


発端がサーフでなくとも。
武道が心変わりして完璧な世界を作り上げるために大災害を起こしていたかもしれない。
悪魔将軍が全てを思い出し、理想の世界を作るために大災害を起こしていたかもしれない。
ユウキ=テルミが滅日のために大災害を起こしていたかもしれない。


もしタバサを手に入れた者がサーフでなかったとしたら。
光祐一郎が興味本位のためにTCへの興味本位から大災害を起こしていたかもしれない。
ラオウが拳による世界を気づきあげるために大災害を起こしていたかもしれない。
レストが人類に絶望していたために大災害を起こしていたかもしれない。
ダオスが恒久の平和を手に入れるために大災害を起こしていたかもしれない。
デミーラが天魔王として全てを手に入れるために大災害を起こしていたかもしれない。
アナキンが妻や母を取り戻すために大災害を起こしていたかもしれない。
DMC信者がクラウザーの歌を永遠に響かせるために大災害を起こしていたかもしれない。
クライシス皇帝が支配力を高めるために大災害を起こしていたかもしれない。
小町が公的にサボりたいために大災害を起こしていたかもしれない」


『他はまだしも小町さんがそんなことをするわけないだろ!?』
「いや、ある。
今でこそまともだが、あの女は自分のサボり癖が原因で幻想郷の異変を長引かせたこともある。
確率としては確かに低いが、絶対ないとは言い切れない。

……話を戻すが、単にTCとそれを知るタバサという当たりくじを引いたのはサーフだった。
だが宝くじを誰が引いても大災害が起こりえたのだ。
そもそもくじが無ければ大災害は起こらなかったのにも関わらず、くじを設置したのは誰だと思う?」

悲劇の原因の原因はサーフとは別にある。
では彼に大災害を起こさせたのは誰なのか?
混沌の騎士は先程まで教えられた話を思い出し、その答えを述べる。

『――古代ミヤザキ』
「それは半分正解だ。
確かにタバサや後世への遺伝子改造などはミヤザキの所業だが、それも古代グンマーが彼らの思想を理解し同調すれば、そんなことをする必要がなかった。

答えはわかり合おうとせず、自分たちの思想と欲望を押し付けようとする「人のエゴ」!
手を取り合うべきミヤザキとグンマーが争いを起こし、それが巡り巡って二度目の大災害を止められない事態に繋がったのだ」

『人と人が分かり合えないから、こんな事態が起こっただと?』
「左用。
争わねばTCの研究は現代でも続けられ、次の大災害を被害なしで乗り切ることもできたろう。
全ては生きとし生ける物の業のせいなのだ。
テラカオス・ゼロとなって一度は世界を救った平賀才人も報われない。
タバサが人に絶望したこともわかる」

困惑する混沌の騎士に畳み掛けるようにシャドウであった者は話を続ける。

「業がなければ大災害が起きずに私が生まれることもなかった。
これは因果応報……世界を滅びに導いているのはこの世界の者に他ならない。

貴様も人の業に関しては経験しているだろう?
その最たるものがバトルロワイアルで、それによって生み出された貴様なんだからな!」
『ぐぬぬ……だが、人は分かり合えるハズだ』
「綺麗事を言うのは簡単だが、分かり合えない結果として私は来たのだ。
それにサーフがテラカオスを通じてTCの力を手にしようとしているように、大災害を防いだテラカオスが全てを支配できる力を得ると知った時、果たして何人が誘惑に負けずに世界のために戦えるだろうか?」
『テラカオスを巡って争奪戦が起こるというのか!?』
「可能性は十分にある。
実際、対主催同士で殺し合いをしているぐらいだ。
全ての根源たるTCの力なら失われた自然や土地を戻すこともできる。
死したものも……既に魂が砕け散った者以外は復元・複製ができる。
誰が欲望に負けてテラカオスを自分だけのものにしようとするか見ものだな?」
『……』

226真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 12:01:38 ID:xg574Bzs0

TCの力を掌握したテラカオスは理想の世界を自在に作れるだけの力を有する。
例え対主催でも、手のひらを返して仲間を裏切る可能性は十分にある。
私欲や自分だけの生存のために仲間を売る輩がいるのだから、考えられない話ではない。

「この世界はおまえが考えているほど高潔な代物ではない。
一度全て破壊してしかるべきなのだ。
手を貸せとまでは言わんが、部外者が邪魔をしないでくれるか?」
『……しかし』
「もう楽になるんだプロトタイプのテラカオスよ。
貴様のこの世界での役割はとうに終わった。
あとはTCという情報の巡回に身を任せよ」

確かにサーフだけでなく醜い人間や存在が殺し合いの中には沢山いた。
それを死者スレから現世を見てきたために、シャドウであった者の甘言に乗りそうになる。

『いや』

それど混沌の騎士は人の業ばかりを見ていない。
醜いものの次に思い浮かんだのは、元の世界での仲間である春香たちの笑顔。
そして悲劇を終わらせるために戦い続ける影薄組の背中であった。

『少ない悪人のために善き人全てを犠牲にするわけにはいかない。
私は人々の正義を信じて自分の戦いを続けさせてもらう』
「……あれだけ見せてまだ信じるというのか、愚かな」
『なんとでも言うがいい。
大災害を引き起こした人の仕業なら終わらせるのも人の手で終わらせられるハズだ。
それを生き残った彼らが証明してくれるだろう……貴様やサーフと倒してな!
この世界に関わった以上は私も部外者では決してない!
魂が砕け散るその時まで戦わせてもらう!』

意志は挫けることなく、シャドウであった者の妨害を続ける混沌の騎士。
懐柔に失敗してシャドウであった者はどことなく面白くなさそうな様子だ。

「フンッ、だが貴様やカルナが頑張っても再生能力は私のほうが若干上。
魂喰いに使える罪人の魂も無限ではないのだから持って12時間……それ以上は善人の魂を犠牲にせざる負えなくなる。
死者スレが終わればテラカオスも力を行使できなくなる……それまでに私を倒せるものが現れると良いな?」
『ああ、できるさ。彼女らなら』


この殺し合いもいよいよ佳境。
この混沌の黙示録の中でここまで生き延びた参加者がどのように戦い、どのような結末を世界が迎えるのか。
どうかあなたの眼で確認して欲しい……

227真相レ〇プ!黙示録と化したバトロワ! ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 12:02:07 ID:xg574Bzs0



【二日目・16時30分/静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱで常に魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧
【道具】不明
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:罪人を魂喰いで魔力をチャージし、宝具コンボでシャドウであった者の影から死者を守る
※死者スレにいる罪人(特に酌量の余地がないもの優先で)を魂喰いすることで魔力を補っています
 ただし、罪人だけの魂では12時間しか持たず、それ以上は善人の魂を消費しなければいけません
 死者スレで魂喰いされた存在は物語がどんな結末を迎えても、二度と復活できません
 魂がないのでサイボーグ化復活も不可




【二日目・16時30分/沖縄県】

【シャドウであった者@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、休憩中、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:あの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊
1:死者スレの掌握
2:体力と傷の回復
3:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています。
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。 
 完全掌握に12時間以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません



※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません

【ベジータ@ドラゴンボール】
【野田総理@現実?】
【シックス@魔人探偵脳噛ネウロ】
【バット星人グラシエ@ウルトラゼロファイト】
【ユウキ=テルミ@BLAZBLUE】
【乃木怜治@仮面ライダーカブト】
【つば九郎@ヤクルトスワローズ】

228 ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 12:05:41 ID:xg574Bzs0
投下終了です
シャドウへの制約や予言の答え合わせ的なものと
サーフが今まで何をしていたか、悪魔将軍やシグナムの死者スレ破壊やタバサなど腑に落ちなかった点を強引に解釈してまとめて見た
反応を見て大丈夫そうなら本スレに投下いたします

229ラスボスっぽい中ボス:2018/03/14(水) 14:37:15 ID:REMWE.Eo0
投下乙
自分的には問題ないように感じるけど、ただ一点だけ
都庁のフォレストセルは『生後1000年ちょっと』なんだよね。だから数万年だとちょっとずれちゃう
フォレストセルは原作からして元々複数体いるって明言されてるから、別個体にすれば問題ないとは思うけど
いまちょうどオオナズチのミヤザキ話書いてたところだから、この話通ったら『今』のフォレストセルと『古代』のフォレストセルの関係も説明できるかも
運良くこの話の中にオオナズチに情報流せそうな都合のつく登場人物ちらりと出てるし

230 ◆8t1yIW/rRU:2018/03/14(水) 14:47:15 ID:xg574Bzs0
>>229
見落としてました
本投下時にはフォレスト・セルは東京の個体に絞らず、古代グンマーが各地に隠したって形に直します

2319月13日はカイザの日 Part6:2018/09/13(木) 00:11:46 ID:5PMwNl7c0
  ト
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  \-、\             ト、
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    _ =三二V ト、 ヽ// /l/77ヾヽノ´|´ト:「 |  /ト ̄ヽ二 ̄_,ィ〈/イゥト  ィ/、\//      
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        // j lト|/ l!/V´小 /┬、-くV´ ̄ V-ヽヽ、 \_|ハ! |ト、 Vト l!ヘ  |ハ i
      l l j_ハ |! 小/ 〉ノ| Vj | ト_トヽ〈  /l! \ヽ〉, ヽト小、||!/ 7'ト、|イ ̄lヽ |ヽ|
      ///リ |! | | Yイ | {ノ レくヽハi 〉 イl ∧  V!∧ |イ} / /l l!| トイ77くヽトj
      // //   ! j ! | | jハノニ=イj//ヘ / |!   |!|::{ |:〈 〈-〈| | l!!∧7くァ1 l!′
      //,//   | | イィ′V      |/′ _/  |ト、   ||:::ヽl小\\Vj:||イくl! Vヘlj!
    ///'/     ! | /l′  ト     / / /′ |ヘヽ  ||:::::||´ ヽ._\\トハノ|   V|
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            |/       ト 、| lV / / |小:ll//-ァ′ |:::!    ヽー' / j// \ V、 ,ヽ
                l  \/イ}---イ l//   V  , 、‐く` ニ _ イ  /\ト l
                 _l   / |/  |∧ト イ|       /  \\、`ー/    イj- 、
               /__ヽ./ /ィ二ィヽ V /      ヽi   〉‐トY- _  /、ヾV―-\
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          / ‐_ ∠/Vイト ! |/1∧イ               \  |ィー-、\\
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         ̄            | V― //                              \\ヽ
                   | |  //                              ̄
                   ヽ! //
                     ̄


『邪魔なんだよ……カイザの日を祝わないものは全て!』

2329月13日はカイザの日 Part6:2018/09/13(木) 00:12:19 ID:5PMwNl7c0

その頃、草加さん(今年はサイドバッシャー状態)は今年もまたカイザの日を祝おうとしていた。
……去年も一昨年も三年前も四年前も五年前も同じことを言っていたが、彼にとって大事なことなのだ。

五年ですよ、五年。
その間色々ありましたが、皆さんはどうお過ごしででしょうか?

まあ、そんなことはさておき……


草加さんはDMC狂信者の本拠地である東京ビッグサイトに辿り着いたものの。
草加さんお目当てのグレートゼオライマーはいなかった。
イデオンやらマジンガーZEROやら真ゲッター1やらグレンラガン、レオパルドンはあった。
そして、何故か知らんが大破していたヴァンツァーもあった。。
こんなに強そうな機体があるのはドリルコスがグレートゼオライマー乗っているのと同じ理由だ。
しかし、これだけ揃っていてもグレートゼオライマーはなかった。
だって、これらの機体よりもグレートゼオライマーの方が強いのだ。
だから、ドリルコスがグレートゼオライマー乗っている。

だが、他の機体でもいいかもしれないが。
皆さんは『初志貫徹』という言葉をご存知であろうか?
英語で言えば『Carrying out original intention』

「初志」とは”最初に決めた志(こころざし)や思い”。
「貫徹」は”貫き通すこと”を意味する言葉である。

まあ、クラウザーさんよりも賢い皆さんなら知っているという体で話を進めよう。

妥協などしてはいけないのだ。
だからこそ、草加さんはグレートゼオライマーに憑依したいのだ。
というよりも、今の名前が挙がった機体ほぼ無機物じゃないのだ。
出来るはずないのだ.

と、こんな感じで草加さんはファッション感覚で頭おかしい(褒め言葉)行動を実践していた。
彼にとってクラウザーさんなどどうだっていい存在なのだが、一応、今の彼はDMC狂信者なのだから。


「サイドバッシャー、探し物は見つかったですか?」
『すまない、どうやらここにはないみたいだ』
「そうですか……」

その時である。

「ニャガニャガ〜〜こんなところに誰かと思ったら貴女方でしたか」
「あっ、ホモだ」
「ぶっ殺しますよ?」

白い格好の完璧超人始祖サイコマンが現実時間にして約一年二か月ぶりに現れた。
彼がここに現れた理由……それは今、伝えるべきではなかろう。
何故なら、今日はカイザの日なのだから。

そして、彼は格納庫にあったロボットを全て自身のデイパックの中に詰め込み始めた。
支給品だからね、デイパックの中に入るのは当然だよ。
そのあと、レジーナ達との情報交換(専ら情報を出てるのはレジーナ達だけ)をした。
しばらく、サイコマンは何かを考えるようなポージングをした。

「接触してみる価値はありそうですね……ニャガニャガ」
「ゼロに接触するんですか?」
「はい……ですが、私一人ですと少々不安がありますので……
 もしもの時のために貴女方も来てくれるとありがたいのですがね」

これは女子二人と草加さんにとって好機であった。
二人としては手柄を立てるこ=クラウザーさんの為になるのだ。
そして、草加さんは早くもゼロと開墾出来る可能性が出てきたのだ。



だから、彼女たちはその提案に――――『乗った』。

2339月13日はカイザの日 Part6:2018/09/13(木) 00:12:43 ID:5PMwNl7c0
【二日目・21時09分13秒/東京ビッグサイト】


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】疲労(小)、決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※サイドバッシャーを支給品と思い込んでおり、正体に気づいていません


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
※月読調のギアの装者になりました
※サイドバッシャーを支給品と思い込んでおり、正体に気づいていません


【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(中)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す・カオスロワちゃんねる管理人を殺す
0:狂信者の支給品として、グレートゼオライマーに憑依する
1:0が済んだら蘇生手段も手に入れる
2:とりあえず、乾巧の仕業にする(カオスロワちゃんねる管理人以外)
3:来年のカイザの日も祝いたい
4:仲間にする奴には大災害の原因や蒼(TC)の件を教えておく。狂信者は様子見してから。
5:怪しいゼロの正体を探る。管理人だったら殺す。
6:乾巧が死んだので真理は俺のもの!
※大災害発生の原因とカオスロワちゃんねるの危険性を知りました
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
 再憑依のペナルティとして、一回につき蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルやツバサの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません。
※仮面ライダージオウに出演することが決まりましたが、今回の話とは関係ありません。

【サイコマン@キン肉マン】
【状態】健康、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式、イデオン、マジンガーZERO、真ゲッター1、グレンラガン、レオパルドン、ヴァンツァー(大破)その他不明
【思考】
基本:????
1:↑の目的のためにできればシルバーマンさんも勧誘したい
2:ゼロとの接触。
3:そういえば、草加さんは……まっ、いいでしょう。
※サイドバッシャーの正体に気づいているかもしれないし、気づいていないかもしれない。

234あきよの破壊力が異常:2018/09/13(木) 00:14:00 ID:5PMwNl7c0
総合板に巻き込まれ規制をされたのでこちらに投下しました。

235あきよの破壊力が異常:2018/09/13(木) 05:23:19 ID:VDKOuonc0
投下乙
悪くはないんだけど時間飛びすぎじゃね?

236ラストネットワーク・不足状態表:2018/10/01(月) 14:58:42 ID:j.EyEPdw0
【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、尻尾切断(処置済み)、野球脳、激しい怒りと悲しみ、首輪解除
【装備】病衣
【道具】なし
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:ギムレー達が戻るまで、ツバサや仲間を守る
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:また多くの仲間が死んじまった……自分の無力さが不甲斐ない
3:ソウルセイバー……
4:拳王連合軍は本当に悪逆集団なのか?
※回復したため、戦闘力がとても大幅に上昇しました
※一瞬だけスーパーサイヤ人化しました。これからいつでも変身できますが本人はまだ気づいていません

【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】健康、悲しみ、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにイチローについていく
0:ソウルセイバーのことは非常にショックだが、今はツバサ達の護衛
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:都庁に儚げな巨乳がいるなら、向かってみてもいいかもしれない
3:ホルもソウルアーマーを遺したくなるよう人に会ってみたいホル
4:できればそれは巨乳の女の子が(ry 特にクリスやなのは、はやてみたいなええ乳の(ry
5:ツバサも乳があればなあ……

【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、完全TC耐性、キングストーンにより変身可能、首輪なし、若干エントロピー減少により弱体化
【装備】キングストーン
【道具】リボルケイン
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。この力で守れるものを守る。
0:さっきのダークキバは、もしかして……
1:どうして人はあんなに残酷に殺しあえるんだろう……
2:Lさん、ゼクスさん……貴方達の犠牲を忘れません。
3:私にも救えない人がいたなんて……
※ディーヴァが持っていた能力はキングストーン以外が使用不可。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※記憶を大半喪失していますが、生みの親の名前、風鳴翼が捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男(才人)のことは朧げながら覚えています。
※仮称としてツバサという名前が与えられました
※ユーノに吸収された因子とエントロピーは通常手段では回復できません
 他者の因子を吸収することによってのみ回復します


【二日目・20時00分/東京都 都庁内の何処か】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【状態】健康、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式、狂信者から盗んだ色々なアイテム
【思考】基本:美少女とエロ同人誌みたいなことしつつ都庁で暮らしたいが、そのためにも予言を完成させる
0:ギムレーからの情報を仲間に伝える
1:正直、友や仲間の死には心を痛めている
2:やっぱり草を生やしてこそ我ですなwwwwww
3:でも真面目な時は頑張って草抑える
※尻尾も破壊された場合、ステルス能力を失います
※狂信者から盗んだアイテムはデモニカ以外にもあるようですが、詳細は不明です

237あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:35:32 ID:RjIvn3.s0
クロコダインやウドラを失った聖帝軍先遣隊を乗せた新幹線のぞみが都庁のある新宿にたどり着いたのは19時過ぎになってからであった。
多くの狂信者を屠ったダオスのレーザーや神樹の根が届かないギリギリの位置でのぞみは動かなくなる。

「のぞみが壊れた。これ以上は進めない」
「ここからは足で行くしかないね」

安倍の襲来によって中破状態だった新幹線のぞみは限界を迎えていた。
紘太たち5人と3匹はのぞみを捨てていくしかなかった。

「しかし、大丈夫なっしかね……都庁の魔物たちは」

ふなっしーが不安そうに言うが無理もない。
彼らはまだ、同盟を組む気だったとはいえ都庁が対主催として、そして大災害阻止のために動いていることを知らないからだ。
ただでもネット上において都庁には黒い噂が多すぎる。
都庁の世界樹が魔の森であるヘルヘイムではないことは本物のヘルヘイムをよく知っている紘太がいるので承知の上だが、だからと言って危険がないとは言い切れない。
そもそもそれを確かめるために、自分たち先遣隊が派遣されていたのだが不幸な事故とミスによって交渉どころではなくなってしまった(そのおかげでキュゥべえたちを助けることはできたが)。

「……今は自分のミスに責任を感じてるよ。だけど、アタイたちはいかなければいけない。
ネットによるとサウザーたちはあの中にいるんだから」

霧切から借りたノートパソコンで見た情報により、スカイツリー前での聖帝軍と狂信者、都庁軍をも巻き込んだ大戦闘の件はここに来る前に知っていた。
その戦いにより多くの仲間が命を落とし、きらりんロボが謎の暴走を起こして立川市と罪のない人々を焼いたこと。
スカイツリーも破壊されて作戦は失敗に終わったこと。
サウザーらは都庁に味方する白いエヴァンゲリオンによって都庁へ向かった(または連れ込まれた)ということだ。
さらにはチルノと面識がある小野塚小町(正義の乳神)に救われたモブからの情報によると、都庁は罪のない参加者を洗脳してコキ使う悪の集団だということだ。

嘘が混じる場合もあるカオスロワちゃんねるだけを信じきるわけにもいかないが、仲間が都庁の中にいるのは確実だ。
保護されているのならば合流し、都庁が小町が言う通りの悪の集団ならばナニカサレル前に助け出して脱出しなければいけない。

『グッ、がは! 三途の川の先でご主人様の影が……』
『姐さぁーーーーん!』
「千早もこれ以上は持たそうなっしー」
「毒消しを譲ってもらうにしろ、奪うにしろ、都庁に進むしか選択肢はなさそうだね」
「……わかった、危険かも知らないが都庁へ向かおう」

大阪にて拾ったサーベルタイガーの千早の毒状態も深刻だ。
フロワロの毒をなんとかしなければ一時間持たないだろう。
ネットで聖帝軍は悪人のレッテルを貼られた以上、毒消しを譲ってくれる参加者はまずいない。
クロコダインが戦死して先遣隊のリーダーとなった紘太はしばらく考え、都庁に向かうことを決断した。

「僕も行きます!」

それを言ったのは先刻、気絶から覚めたばかりの苗木であった。
しかし紘太は苗木を静止する。

「いや、おまえはここに残って霧切とキュゥべえを守れ」
「なんでですか!? 僕だって戦えます! 拳王連合軍の奴らだって三人は殺してるし」

同行を拒否され驚く苗木に、彼の後ろにいたキュゥべえが紘太に代わって理由を言う。
先の放送で知り合いのホワイトベース組の仲間である乾巧たちの死を知ったことであからさまに冷静さを失っている……というのもあるが、あえてそこは伏せておく。
それ以上に合理的な理由があるのだ。

「君は寝ていたことで体力は多少マシになったたけど、激しい戦闘に耐えられるほど取り戻してはいない。
実力自体もボクとふなっしー以外には勝てないぐらい弱い。
そんな君が行ったところで仮に戦闘になった場合は紘太たちの足でまといだよ」
「足でまといは言い過ぎだが、キュゥべえが言ったこともあながち間違いじゃない。
仮に戦闘になったら何もできないまま死ぬと俺たちは思っている」
「そんな……」
「苗木はその代わりにキュゥべえと霧切を守ってやってくれ。
言っちゃ難だがキュゥべえはともかく、今の彼女を都庁に連れて行くと余計な騒乱を招きそうな気がする」

紘太は新幹線の椅子で膝を抱えて座っている霧切を指さした。
安倍を瞬殺した戦闘力からして戦闘力は先遣隊最高だが、その前に心が壊れている。
デリケートさが求められるやもしれぬ話し合いの場にはとても連れていけなかった。

238あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:36:07 ID:RjIvn3.s0

「彼女には心の支えが必要だろ?」
「ええ……それは確かに」
「友達であるおまえが全力で守ってやれ」

今の霧切の心を守る仕事ができるのは友達である苗木とキュゥべえだけであり、繋がりがまだまだ浅い紘太たちではできない仕事だ。
血気盛んな苗木をそのように諭すと、紘太は新幹線の中に取り出されたマシンウィンガーを見る。

「そういえば苗木は確かバイクの運転ができたな」
「ええ、超高校級の暴走族である大和田くんのシゴキを受けて」
「もし、俺たちと都庁で戦闘になったら……」
「バイクに乗って助けに行けばいいんですね!」
「それは違うぜ」
(台詞取られた)

「戦闘が起きたと思ったらバイクに乗って霧切とキュゥべえを乗せて遠くへ逃げるんだ。
仲間の命を守ることはもちろんだが、あの子の貧乳歌姫の接近を防ぐ結界は多くの人々に取っても大事だ。
死んでしまったら俺たちでも勝てるか怪しい風鳴翼を本州に招いてしまう。
多くの人のためにもしっかりと守ってやるんだぞ」
「だけど!……いや、わかりました」

過去に似たような状況で似た指示を受け、葉隠や巧を救えなかったことにより苗木には不満があったが、自分の弱さを自覚しているだけに結局折れることになった。

「割り振りはこんな感じだな。
俺、チルノ、ふなっしーと支給品軍団が都庁へ行き。
苗木、霧切、キュゥべえはのぞみに残り、戦闘が起きたらバイクで逃げること、良いな!」

そして鎧武に変身した紘太とチルノ、聖帝軍の旗を持ったふなっしーは都庁へと向かって歩いて言った。
そんな三人を見送るのは苗木の不安そうな眼であった。



恐る恐る、しかし確実に巨大な都庁の世界樹に近づいていく三人のターバンたち。
近づく度に焦りは募っていく。

「いちおう識別のための旗は掲げてるけど、ホ、ホントに大丈夫なっしか……」
「攻撃してくれば交渉は失敗、都庁はアタイたちの敵ということになるね。
そうなったら最強になったアタイが全員氷漬けにしてやりたい、ところだけど感じる魔力は悔しいがアタイたち三人では勝てないくらい強大……苗木たちのこともあるし、戦いになったら逃げの一手だね」
「だが俺たちはもう信じて進むしかねえ。
沖縄には謎の異常気象、近畿には毒の花、神奈川には拳王連合軍、ビックサイトに狂信者、千葉には超巨大ドラゴン、極めつけに上空には主催の九州ロボ。
千早を救うためにも都庁へ行って真偽を確かめるしかないんだ」
「それは確かなし……腹を括るしかないっしか」

あくまで紘太たちの目線であるが、彼らの目線では聖帝軍以外の全てが驚異であり、味方が待っているかもしれない都庁しか行く道は残されていなかったのである。
自分たち以外の最後の対主催集団と思われるイチリュウチームは邪竜ギムレーの中、都庁近くにいるはずの小町はなぜか行方不明。
仲間である千早の死期が迫っていることも考えれば都庁が善であれ悪であれ残された道は一つしかなかった。

一歩、また一歩と近づくターバンズであったが、そこへ爆撃のような攻撃が紘太たちの正面数メートル先で炸裂した。
攻撃は直撃こそしなかったが、空を見上げると数匹のドラゴンが牙を向けてこちらに向かってきていた。


「なに!? 攻撃された!」
「ひいいいいいいいい、やっぱ襲ってきたなっしーーー!」
「戦闘態勢! 来るよ紘太、ふなっしー!」

紘太は奥の手の極ロックシードを構え、チルノは無数の氷の矢を生成。
ふなっしー自体は逃げ腰だが、彼の代わりに支給品のシャルロッテとデストワイルダーがいつでも迎撃できるように牙を覗かせていた。
聖帝軍の一味を攻撃してきたところからして都庁はやはり敵なのか?
それは紘太が一戦交える覚悟をした寸前に、答えが出る。

「……! ちょっと待ってください高津さん、彼らをよく見て!」
「ん? 誰かと思えば紘太たちじゃないか」
「高津さんと犬牟田!」

239あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:36:50 ID:RjIvn3.s0

ドラゴンの背に乗っていた二人のターバンは聖帝軍の一員である高津と犬牟田であった。
ドラゴンたちも紘太たちが背に乗せている二人の知り合いだとわかるとすぐに攻撃態勢を解き、交戦意思はないという素振りで三人の前に着陸した。
そして犬牟田と高津は手始めにレストから教えられた方法で三人の首輪を解除していく。

「洗脳されている……ようには見えないね。
これから騙し討ちするにしても戦闘力の枷になっている首輪を外す意味がないし」
「でも正義のオッパイ神とかいう人は都庁は悪の組織なしって」
「それにはとても複雑な事情があって長くなるから詳細は後で話すよ。
簡単に言うと都庁は僕たちの味方であるし、同盟を組むに値する正義の組織だ。
悪の組織だのヘルヘイムだのは誰かが流した虚偽情報なんだ。
ちなみに小野塚さんは本当は僕らの仲間なんだけど、わけあって悪の組織と吹聴させているんだ」
「う〜ん、よくわからないけど、聖帝軍の仲間は無事なっしね?」
「ああ……放送で呼ばれた人以外はみんな生きているよ。もちろん洗脳なんかされていない」
「それを聞いただけで安心のため息がでるね」

細かい経緯はイマイチわからないが、聖帝軍と都庁軍は先遣隊抜きで交渉した。
そして危険のない組織であり、その中でサウザーたちが保護されていると聞けば、肩の荷も幾分か降りたんだ。

「でもなんでさっきは攻撃してきたんだ?」
「都庁には非常に目や耳の良い奴がいてね、怪しい奴がいると聞いて偵察に来たんだ。
狂信者や拳王連合軍の手先かもしれなかったから、見かけて野球ボールで威嚇射撃を行ったというわけだ」
「ちょっと待つなっしー! 聖帝軍の旗は掲げていたなっしよ!?」
「……悪いけど今は夜だよ、暗くてよく見えなかったんだ」
「「「あ……」」」

先ほどの高津からの攻撃の理由は旗がよく見えなかった故の威嚇であった。
変身・大人化しているとはいえ面子的に誰だかわかるが、それは明るい昼間の話。
都庁からの先制攻撃を恐れるあまり旗や自分たちに懐中電灯を当てて仲間であることをアピールすることを失念していた彼らは攻撃を受けたのである。
幸い、冷静な犬牟田が迂闊に敵とみなすべきじゃないと進言したので高津やドラゴンたちも初撃は威嚇にとどめたために死者は出なかった。


「高津さん、すまねえ……俺たちのミスのせいで先遣隊はアンタたちより早くたどり着くことができず、クロコダインも死なせる結果を招いちまった」
「みんなは悪くない、発端はアタイの操縦ミスだよ」
「チルノも責めないでほしいなっしー、シャルロッテや苗木たちのようにチルノのおかげで助かった命もあったなっしー」

次に紘太たちは仲間たちに自分たちの不手際を謝罪した。
おそらく本隊側から都庁との同盟を結ぶことはできたのだろうが、自分たち先遣隊が都庁に早くたどり着いていれば先の戦いの犠牲をなくすこともできたのだろう。
そう思うと三人は胸が痛かったが、高津と犬牟田は彼らを許した。

「よせよ。それを言ったら俺たちも多くの子供たちを守れなかった。
クロコダインは残念だったが、おまえたちのボロボロ具合からしてそっちも必死に頑張ったんだろう。お互い様だ」
「色々複雑な事情はあるんだけど、君たち先遣隊が都庁にたどりついたところできらり……んロボは暴走していた。
どっちにしろ交渉するまでもなく僕たち聖帝軍は都庁の信頼を勝ち取っていて盟約を結べたんだ。
恥じることは何もないさ」
「……本当にすまねえ」

高津と犬牟田に諭され、紘太たちの心配もほぐれた。
仲間たちは先遣隊を責める気など最初からなかったのである。

「さて、おまえたちにも都庁との会談でいくつかわかったことがあるから教えたいところだが、かなり重大な内容だからできれば世界樹の中で話したい」
「だけどその前に僕らと別行動で斥候に出た仲間と合流しなければね」
「仲間? 俺たちを見に来たのはアンタたちだけじゃなかったのか?」

どうやら高津犬牟田コンビとは別口で紘太たちを迎えに来たグループがいるようだ。

「その様子だとすれ違ったらしいな。
実は仲間の中に一人、桑原っていう霊直感に優れた奴がいて、そいつがおまえたちに対して嫌な予感がすると言ってたんだ」
「嫌な……予感だって?」
「ああ、ひょっとしたら俺たちの敵になるヤベー奴が新幹線に乗ってるかもしれない、ということで敵だった場合は正面の俺たちと背後からの桑原たちが挟撃する予定だったんだ」
「だがこの様子だと危険はなさそうだね」

240あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:37:25 ID:RjIvn3.s0

「待ってくれ、新幹線に乗っていたのは俺たち以外にも他に三人いるんだ!」
「なんだって?」

二人の言葉に何やら嫌な予感を感じた紘太。
新幹線に残っているのは苗木、霧切、キュゥべえの二人と一匹。
おそらく桑原たちはそちらと接触するだろう。
二人と一匹は大阪から東京に移動するまでの間に(性格的な危うさはあったが)悪人にはとても見えなかった。

それでも……鎧武のマスクの下はなぜか冷や汗がにじみ出ていた。


 ■ ■ ■


一方その頃、稼働しなくなった新幹線の近く。
その物陰に桑原とアイスシザース、何匹かの中級以下FOE。
そして聖帝軍のイリヤがいた。

イリヤがついてきているのはやってきた一団が紘太ら先遣隊である可能性もあるため、顔をよく知っている聖帝軍の誰かの手が必要であったので抜擢されたのがイリヤであった。

『あの中に聖帝軍の仲間はいるか?』
「……いや、あんな人たち、私は知らない」

しかし新幹線の中にいるのは見知らぬ背の低い少年と、何かに怯えるようにうずくまっている幼女だけである。
それもそのはず、紘太たちは既に都庁に向かっており、新幹線の中には顔見知りは誰ひとり残っていなかった。

「狂信者っぽくはないし危険はなさそうに見えるけど」
「だが奴らから嫌な勘がビンビンしてるぜ」

先遣隊の関係者ではなさそうだが見た目で安全ではないかと判断するイリヤ。
一方で強い霊感から冷や汗の止まらない桑原。
すぐに接触するべきか、一度都庁に戻って仲間の判断をもらうか考えあぐねていた二人と一匹であったが、ここでアイスシザースがとある存在を発見する。

『!! 奴がいる!』
「奴って?」
『ホムラが言っていた危険な宇宙生命体、インキュベーターだ!!』

白ウサギとネコを足したような見た目の高度な知性を持つ宇宙生命体キュゥべえもといインキュベーター。
それが新幹線の窓にいるのをアイスシザースは確認した。

『奴はこちらに気づいていない……ここで殺らねば!』
「おい待てアイスシザース!」
「みんなも!」

インキュベーターの存在を確認した瞬間、桑原やイリヤの静止を無視してアイスシザース以下のFOEが飛び出した。
インキュベーターは資源搾取のために詐欺紛いの行為で人間を食い物にし星を荒らす存在。
心を持たぬだけに人間以上に最悪の略奪者である。
そんな彼らのことをほむらから教えられて都庁の魔物たちが存在を許すハズはなく、見つけ次第抹殺の触れ込みがあったぐらいだ。
大災害から世界を守ることはもちろんのことだが、インキュベーターを殺すことは世界樹を守るために必要であり、魔物たちはそれを信じて彼を殺さんとする。
そして魔物たちは敵か味方かわからない苗木と霧切をひとまずは無視して新幹線に詰め寄った。

「!!」
「なんだこいつらは!」
「魔物!?」
『金竜様から託された大樹を守るためにも……鉄の棺桶ごと叩き切ってやる! インキュベーター!!』

ドラゴンハートで機動力を強化されたことも手伝って苗木とキュゥべえは反撃も回避も許されなかった。
次の瞬間には新幹線ごと両断する勢いでキュゥべえめがけて腕の鎌が振り下ろされた。
強化されたアイスシザースの実力ならば、実際に鋼鉄の新幹線を裁断して中の生き物を殺すぐらいは余裕であろう。

『な!?』
「ともだちを殺すやつ……許されない!!」

だが鎌がキュゥべえの首を落とすことはなかった。
正確には新幹線は両断されたのだが、キュゥべえに届く前に魔法少女に変身した霧切が鎌を掌で受け止めたのである。

『鎌が動かん……なんてバカ力だ!?』

どうみても強そうには見えない霧切にいとも簡単に攻撃を受け止められたことに恐怖心を確かに感じていた。
アイスシザースはこれまでの戦闘とドラゴンハートの恩恵によって強化された。
能力を数値化し総合スペックだけで見ればドラゴンハート未使用時の三竜に並ぶ戦闘力を有している。
それが目の前の幼女にいとも容易く、必殺の一撃を防がれたのだ。

「このお!!」
『ぐはああああああーーーッ!』

鎌を腕で防がれて動けなくなったアイスシザースは次の瞬間に霧切のバリツ持込の蹴りで腹部に大穴が空き、地面に倒れることになった。

241あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:38:18 ID:RjIvn3.s0

「アイスシザース!!」

アイスシザースは高い生命力により、即死は免れていた。
今から都庁に戻って治療を受ければ助かる見込みはある。
桑原は死にかけのアイスシザースを救うために霊剣を携えて霧切を突き放そうとした。
桑原もまたアイスシザースと同じくドラゴンハートの影響を受けて、その戦闘力はかつての仲間である浦飯と同じくS級妖怪クラスの戦闘力を得ている。
どんなに強い霊能力者でも人間である限り入り込めない領域の強さだ。
あの戸愚呂弟を軽く凌駕し、仙水忍をも超えた戦闘力を持っている。

にも関わらず、桑原の霊剣は牽制目的であったとはいえ容易くよけられ、桑原やイリヤ、他のFOEが反応するよりも早く背後に回り込んだ。

「なッ、早ぇ!!」

そして背後から桑原の腹部に手を回してガッチリと掴み、捕まえた。

(離せねえ! なんてバカ力だ!?)

霧切の拘束は体力馬鹿である桑原ですら解くことができない。
桑原は必死に足掻くが外れる様子はない。
そして霧切による処刑――友を傷つけようとした者へのオシオキが始まった。



桑原を捕まえた霧切は彼を抱えたままグルグルと回転しだした。

「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

回転と言っても遊園地のティーカップアトラクションとは比較にならないほどの超高速回転であり、その速さは局所的な竜巻が起こし、内部にいるはずの霧切と桑原が見えなくなるほど。
無理に攻撃や接近をすると桑原を傷つける危険があったのでイリヤもFOEたちも桑原の援護や救助が行えなかった。

『な、なんていうことでしょう、あの魔法少女の魔力の強さは現在の鹿目まどかさんと互角クラス。
下手をするとフォレスト・セル以外の他の面子も破られます』
「ええ!?」
『我々三人と中級FOEだけでは勝ち目がありません!』
「どうしてそれを早く教えてくれなかったの!?」
『彼女が変身する前の段階では内包する魔力を読み取れなかったので……』

イリヤの杖であるルビーが霧切の強さに関して遅すぎた警鐘を鳴らす。
それは霧切の圧倒的強さに関してだった。

キュゥべえは対安倍戦で魔法少女化した霧切の強さを最低でもブラックRXの三倍の強さがあると言った。
ブラックRXの基本スペックはパンチ力70t、キック力120t、ジャンプ力60m、走力315km。
さらに町を吹き飛ばす攻撃でも致命傷にならず、惑星爆発から帰還できるほどの耐久力。
0.1秒や0.5秒を隙と言える反応速度を持っている。
無論全ての能力が三倍とは言わないが、総合スペック的に三倍というだけでも化物ということはわかるであろう。
少なくとも無強化三竜、仙水忍と同じレベル……現状のアイスシザースや桑原では勝てる相手ではなかった。



「ぎゃああああああああああああああああああああああ、からだがああああああああああああああああ!!!」
「桑原ッー!!」

竜巻の中から聞こえてくる桑原の悲鳴にイリヤたちはなんとか助け出そうとしたいが方法が浮かばない。
今から救援を求めても桑原が助かる保証はない。
そして考えあぐねた結果が……時間切れである。


「……レオリオ、ハス太、みんな……すまね」


桑原から謝罪の言葉が聞こえたと同時に霧切の回転が止まる。
それと同時に液状と固体の中間のような謎の黄色い物体がイリヤに大量にべちゃりとふりかかって汚した。
その一部はイリヤの口の中にも入った。

「げほッ、なにこれ、マーガリン!?」

舌の上でとろける感触に仄かな甘味と植物油っぽさからイリヤはこれをマーガリンだと分析。
しかしなぜ霧切の方からマーガリンが?

「桑原は!?」

驚くイリヤが霧切を見るとそこには桑原の姿がなく、もう一度体に付着した黄色い物体を見ると彼の着ていた「健康第一」と書かれた白い特攻服の切れ端や、骨らしき固形物があった。

『ま、まさかこれは桑原さんの肉体が高速回転の中で彼女の強大する魔力をゼロ距離で浴びて形質変化したもの……』
「今、体についてるコレが桑原だったとでもいうの……!?」

ルビーの推理通り、ダンロン的に言えば猛多亜最苦婁弟酢華恵慈(モーターサイクルデスケージ)と化した即席の処刑場で桑原の肉体は超高速回転させられつつ霧切から放出される魔力を浴びた結果、その肉体はマーガリンと化してしまったのである。

Q、なんで人間が回転しただけでマーガリンになるん?
A、ダンロン無印をプレイするかアニメを視聴してください(ステマ)

なんにせよ、イリヤたちに突きつけられた事実、それは――



【桑原和真@幽遊白書 死亡確認】

242あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:38:42 ID:RjIvn3.s0



「うっぷ……おえええええええ!」
『イリヤさん!』

桑原が目の前で殺され、仲間の肉体だったものを不本意ではあるが食べてしまった事実にイリヤは吐き気を抑えられずたまらず嘔吐。
その隙を見逃すわけもなく、霧切が攻撃をしてくるが一部の魔物たちが動けなくなったイリヤを庇うために己の身を盾にする。

『だ、ダメだ、アイスシザースより弱い俺たちじゃコイツを止めることも、ぐわあ!』
「きゃあ!!」

しかし、霧切の進行を止められず、彼女の拳によって盾になった魔物は粉砕。
イリヤは致命傷は避けたが攻撃の余波により壁に叩きつけられしまう。
続けて霧切は敵となった魔物を駆逐するために一匹、また一匹とバリツで殺していく。


『なんてことだ……クッ』

腹に穴を開けられながらもなんとか立ち上がるアイスシザース。
桑原や魔物が殺されていく光景に恐ろしさを覚えていた。
しかし、闘志までは衰えず、状況を冷静に見る。

霧切が他の魔物を殺している中でキュゥべえがノーガードであることに気づいた。
キュゥべえ自身もこちらが再び立ち上がったことに気づいていない。

『今こそ、奴を殺すチャンス! 味方を助けることもできる!』

アイスシザースの考えではキュゥべえを殺せば霧切のヘイトは自分に向かう。
そうなれば自分は十中八九殺されるが、標的が自分に集中するためにイリヤや生き残った魔物を都庁に撤退させて助け出すことができる。
そう睨んで、こっそりと背後から刃を向けようとする。

「させるか!」
「助かったよ、苗木!」
『ええい、邪魔を!』

いつぞやのネームド狂信者を暗殺した奇襲攻撃は失敗に終わった。
霧切が暴れている内に仮面ライダーウィザードに変身した苗木の銃撃により阻まれたのだ。
奇襲に気づいたキュゥべえもまたこの場を苗木に任せて新幹線の残骸の影に隠れてしまった。
キュゥべえを殺すにはどうしても苗木を倒さなくてはならない。

(くッ、だが、銃の威力は大したことはない。
動きも素人そのもの……コイツなら簡単に殺れる!)

アイスシザースは目の前の仮面ライダーの実力を把握。
事実、苗木の戦闘力はウィザードのスペック込でも大したものではなく、読み通りと言えた。

(一撃で仕留めてやる!)

即死属性の一撃である凍土の大鎌で苗木との短期決戦を行おうとするアイスシザース。
一方の苗木はひとつの指輪を取り出し、それをベルトにかざした。

「これを使ってみるか!」

――リキッド・プリーズ。
そんな音声がベルトから聞こえた瞬間、苗木の胴体の一部分が液状化しアイスシザースの鎌を貫通させてダメージを回避した。

『馬鹿な!』

液状化能力によって防がれた必殺の一撃により、狼狽と同時に空振りによる大きな隙を生み出す。
苗木は首輪が外れてないので首より上だけは液状化できない制限があるが、アイスシザースが胴体を狙った「幸運」によって賭けに買ったのだ。
続けて苗木はアイスシザースの懐に飛び込み、腕を液状化させてある一点に向けて伸ばした。

「おまえを倒すには……ここだあああああ!!」
「がああああああ!!!」

苗木が選んだのは先ほど霧切が開けた腹部の大穴。
そこは外殻にも守られておらず、臓器が一部露出している。
その大穴めがけて液体となった腕をねじり込み、体中を内部からグチャグチャにしていく。
なんとか苗木の首を狩ろうにも腕の制御も傷口から血管を通して入り込まれた液体を使って奪われてしまい、反撃もできない。

「紘太さんがいない今、僕が霧切さんやキュゥべえたちを守るんだああああ!」

苗木の目には暴走した義憤や使命感が燃え上がっており、マスク越しでもそれが狂気という形でアイスシザースに伝わった。
いかな強者とて、レベルを上げたとしてもア○ル以外の臓器は鍛えられない。
臓器への攻撃手段を握られた時点でアイスシザースの敗北は決まっていた。

『まだだ……金龍様や骨竜たちが守った世界樹を……守らねば、ならない、の、に……』

内部から腸を寸断され心臓を穿たれ脳を潰されたアイスシザース。
闘志だけは怨敵であるインキュベーターたちに向いていた。
しかし彼の鎌は敵に届くことはついぞなく、苗木が血まみれの拳を引き抜いたと同時に息絶えた。


【アイスシザース@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】

243あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:39:21 ID:RjIvn3.s0



「ルビー! ルビー!」
『――――』

霧切の攻撃によってカレイドルビーをへし折られたイリヤの変身は既に解けていた。
この時点で戦闘力のほとんど失っている。

『俺たちが囮になるからおまえだけでも逃げるんだ!』
「でもあなたたちは!」
『俺たちに構うな! ここで全滅すれば世界樹に迫るこいつらの驚異を誰も教えられない。
インキュベーターたちのことを仲間たちに知らせるんだ』
「……わかった」

囮をかって出るFOEたちの指示に従い、イリヤは残って戦いたい意思を抑える。
アイスシザースより弱い魔物たちでは戻ってくる頃には全滅しているだろう。
だがなんとしても比較的近くにいる高津たちや世界樹の仲間に驚異を知らせる必要があった。

そして、踵を返して世界樹方面への逃走を図るイリヤ。



「むぐッ!?」

だが、振り向いた瞬間。
彼女の首は白い耳のような触手に掴まれ、口の中に一斗缶の穴から出てくるガソリンを無理やり注ぎ込まれた。

「むごごごごご」
「逃がさないよ、仲間を呼ばれると厄介だからね」

イリヤの口を介して胃の中に注がれるガソリン。
常人だったらこの時点で良くて失神、最悪ショック死であったが、イリヤはドラゴンハートで生命力を強化されているので「まだ」大丈夫だった。
すぐさままとわりついていたキュゥべえを引き剥がし、ガソリンを吐き出そうとするが、それを見計らってキュゥべえはただのマッチに火をつけてイリヤに放り投げてさっさと物陰に退避した。
ちなみにガソリンは死んだアイスシザースから奪ったもの、マッチは霧切の不明支給品から勝手に拝借したものである。

イリヤの体はガソリンと桑原マーガリンによって油まみれであり、マッチの小さい炎でも引火させて炎上させるには十分であった。


「熱いッ アツイィィィ!! 助けてお兄ちゃ――」

熱さにたまらず、悲鳴をあげるイリヤ。
それが失敗であった。
口を開いたことで体に入ったガソリンにも引火し、胃にまで届き――幼女の肉体を爆散させた。
焼け焦げた肉片とルビーの残骸だけがイリヤが生きていた証になってしまった。


【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡確認】


魔物たちはメッセンジャーとなるはずだったイリヤの死に絶望の表情を浮かべ、せめて一匹だけでも仲間の救援を呼べるようにかばい合うも、その甲斐なく霧切によって数分以内に一匹残らず肉塊と化した。
都庁や高津たちの下へ迎えた者は一匹もいない。

「でもキュゥべえ、魔物はともかく人間の方は洗脳されて操られているだけだから殺すことはなかったような」
「殺すより生け捕る方が難しいんだよ?
響子はともかく、ボクや苗木の実力じゃ生け捕るなんて無理だよ」
「それはそうだけど……」
「あの時は仲間を呼ばれるわけにはいかなかったし、生かす余裕はなかった。
恨むべきはボクらに有無を言わさず攻撃を仕掛けてきた向こうの方さ」
「……」

拳王連合軍以外の人間を殺すのには抵抗があった苗木。
特に洗脳されていた者の中には聖帝軍のメンバーもいたかもしれない。
だが、キュゥべえの説得により恨むべきは噂通りの悪の集団であった魔物たちであると思い込まされた。
同時にヘルヘイムの魔物を殺すことが、殺してしまった人間の犠牲者への弔いになるとも思い込んでいた。

244あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:39:53 ID:RjIvn3.s0

「そういえばさっき、向こうで爆音が聞こえた。紘太さんを助けに行かなくちゃ!」
「それはダメだよ、戦闘が起きたら逃げろって紘太の言葉を忘れたの?」

紘太の向かった方角から戦闘音と思わしき音が聞こえた(高津の威嚇射撃によるものである)。
もし戦闘が起こっているなら助けにいかないといけないと思った苗木だがキュゥべえに制止された。

「僕と霧切さんの力があれば助けに行くぐらいはできるさ!」
「確かに霧切だったら謎の巨大生物以外は殺せるかもしれないね」
「だったら!」
「だけど君や響子の魔力は有限。魔力がなくなれば魔法使いである君も響子も戦えなくなる。
君は休めば魔力が回復するけど、響子はグリーフシード以外で魔力を補充する手段がない。
この意味がわかるかな? 響子の魔力がなくなったら魔物に殺される可能性が高まると同時に食人鬼から本州を守っている結界がなくなって侵攻を許すことにつながるんだよ」
「そんな……紘太さんたちを見捨てろっていうのか?」
「紘太たちはそれも承知の上で君に響子の護衛を任せたんだよ」

キュゥべえの言葉は冷徹ではあったが理には適っていた。
霧切は確かに桑原たち相手には無敵であったが、それも魔力があるからこそ。
流石に都庁全戦力と戦えば、向こうを全滅させる前に響子が力尽きる。
そうなれば自分たちだけでなく海を渡ってきた貧乳歌姫によって多大な犠牲が本州で出る。
深追いは禁物であった。
それでも納得がいかない苗木であったが、少女の言葉が意固地になりかけていた彼の心を動かした。

「いかないで苗木くん……」
「霧切さん……」

涙目となっていた霧切が袖を引く。
自分の独善で霧切を危険な目に合わせるわけにはいかない。
彼女は生き延びても自分やキュゥべえがいなくなった時に誰が彼女の助けになるのか。
自分より小柄になった少女の涙を見て苗木の心が揺れ動く。
そんな苗木にキュゥべえはもう一声をかけた。

「安心して、都庁に向かった三人のエントロピーは消えていない。つまり死んではいないんだ」
「それは本当かい!?」
「捕獲されて洗脳されている可能性はあるけどね。
生きていればいつかは救助することもできるでしょ」

エントロピーを感じ取れるキュゥべえは確かに三人が生きていることを感じ取っていた。
流石に具体的に何をしているか何をされているかは感じ取れないが、まだ三人の中に犠牲者はいないという言葉は苗木にとって大きな意味を持っていた。

「だけど救助するのは今じゃない。今以上にまとまった戦力が必要だと思うな」
「まとまった戦力……しかし、どこに行けば……」

聖帝軍を安全に救助するにはどうしても戦力が必要であったが、先遣隊の仲間も失った苗木には行く宛が思いつかなかった。

「……そこで提案なんだけど、千葉県にいるあの巨大竜と交渉して見ようと思う」
「浦安市に現れたっていうあの巨大竜にだって!? 無茶だ!
イチローたちでさえ飲み込まれたらしいのにどうして味方になると思ったんだ?」

千葉に現れた巨大竜ことギムレーは襲ってきた狂信者を滅ぼす際に自分を破滅と絶望の竜と言っていた。
内部事情を知らぬ者から見るとイチローチームも無事かどうかは見当もつかなかったが……

「いや、イチローチームと思わしきエントロピーはまだ消えてないんだ」
「イチローたちはまだ生きているってこと?」
「もしくは最初から交戦するような仲じゃなかったのかもね。
破滅と絶望の竜というのもおそらくブラフ……その気になれば日本の大半を滅ぼせるのにそれをやっていない。
イチローたちを捕らえているにしろ、仲間内にしろ、無言で攻撃を仕掛けてきたヘルヘイムよりは交渉の余地はあるよ」
「その邪竜やイチローチームだったらヘルヘイムを焼き尽くして聖帝軍を助けることもできるってこと?」
「ああ、響子を足した場合の総エントロピー量的には不可能じゃないよ。
都庁と狂信者、主催を除くと苗木が倒したいと思っている拳王連合軍を倒せるのもここぐらいかな」
「あの拳王連合軍を!?」
「逆に言えば表立った対主催組織で、ボクらが接触できるのはもうそこにしか残ってない」
「必ず交渉を成功させて味方につけなくちゃ!」

エントロピー=強さというわけではないが、少なくとも倒せる可能性はある。
キュゥべえの言葉より聖帝軍の救助及び拳王連合軍への復讐への道が見えてきた苗木はキュゥべえの提案に乗ることにした。
さっそくバイクに跨り、後部座席に霧切とキュゥべえを載せる。

「苗木、急いで! 追っ手が近くに来ている」
「了解……紘太さん、待っていてください。必ず近いうちに助けに行きますから!」

そう言って、近くまできていたドラゴン軍団が接近する前に苗木たちはバイクを走らせて現場を離脱した。
目指すは千葉県である。

245あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:40:37 ID:RjIvn3.s0



後部座席でどんどん離れていく都庁の世界樹を見てキュゥべえは思惑を巡らせる。

(近づいてよくわかった。あの大樹の中からまどか、ほむら、さやかのエントロピーを確かに感じた)

苗木や紘太たちには話さなかったが、キュゥべえにとっての大事な資源もとい知り合いである三人の少女の気配を、キュゥべえは新宿にたどりついた時から感知していた。

(だが、まどかのエントロピーは「何かの不純物」が混じって魔法少女化ができないようになっていた。
これならば霧切の方がまだ護衛兼エネルギー資源として使える)

キュゥべえに詳細まではわからないが、まどかはグンマーの巫女と化したことで概念にさえ到れる魔法少女化への道を絶たれていた。
もはや彼女を魔女化させてエネルギーを回収することなどできはしない。
魔法少女でなくなった以上キュゥべえの中での彼女への執着はなくなったのである。

(それにさっきの青カマキリ、最初は苗木と響子を無視して明らかにボクだけを狙っていた。
ほむらがきっとヘルヘイムの魔物に何かを吹き込んだに違いない。
そうなるとまどかやさやかもボクの敵になっていると見た方が良い。
合流は……少なくとも都庁を無力化するまではしない方が良さそうだ)

自分の正体を知っているほむらが都庁に吹き込んだ(洗脳されて吐かされた?)と推理したキュゥべえ。
結論的にはこのまま都庁に合流はするには危険と判断した。
ひょっとしたらちゃんと話し合えば苗木と霧切は助けてもらえるかもしれないが、自分だけは処刑される危険がある。
それでは意味がないのだ。

(都庁は敵……どんな思惑を持っていようとも母星にエネルギーを持ち帰らなきゃいけない任務を持ったボクの妨げになる障害。
なんとかイチローチームを説得して抹殺または無力化する必要がある)

キュゥべえの中で襲いかかってきた都庁は敵として認定された。
障害じゃなくなるまではあの手この手で滅ぼすつもりである。

さらにもう一つ、苗木と霧切には黙っていたことがあった。
弱体化したテラカオス・ディーヴァのエントロピーをギムレーが囲っている浦安市からキャッチしたのだ。

(テラカオスはあそこにいる。
エントロピー的には邪竜や周りにいる連中より弱いから捕縛されているのだろう。
沖縄に現れた敵を駆逐するためにも彼女の力がどうしてもいる……イチローチームがそれを知っているかはわからないけど、どうしてもこの目で確認する必要があるな。
仮に殺されそうになっていたら止めないといけない)


「苗木、もう少しスピード出せる? 追っ手を完全に撒くべきだ」
「わかった。これ以上はちょっと辛いがやってみるよ」

一秒でも早く千葉県にたどり着くべく、適当な言い訳をつけてライダーである苗木を急がせるキュゥべえ。
心壊れた魔法少女霧切のぼんやりとした眼に映るには、瓦礫だらけの東京のコンクリートジャングルだ。

246あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:41:59 ID:RjIvn3.s0









苗木たちが過ぎ去った後に、ジャンクとなった新幹線に戻ったのは、たくさんのドラゴンと野球選手に高校生を引き連れた紘太、チルノ、ふなっしーだった。
そんな彼らが仲間や魔物の死体が散らばる血の惨状を見て顔を青くするのは当然だった。

「これは桑原の特攻服にイリヤの喋る杖……アイスシザースまでやられてやがる」
「別働隊が全滅……全滅じゃないか!」

桑原・アイスシザース・イリヤの強さは高津と犬牟田はよく知っている。
そんな彼らが無残に殺されているとなれば悲しみはもちろん驚愕するのも無理はない。

「アタイたちが離れていた僅かな間に一体何が……まさかアイツらは殺し合いに乗っていた……もしくは拳王連合軍か狂信者の手先だったのか?」

なまじ頭が良くなっただけにチルノの中から邪推が浮かぶ。
推測の域を出ないが、苗木たちがこの場にいない事実がその考えを後押しする。
人間である桑原やイリヤもいるのに、殺し合いに乗ってない限り戦闘に繋がる理由がわからないのだ。

「畜生、一体何がどうなってんだよ!!」
「紘太……」

嫌な予感が的中したことに紘太は怒号を挙げた。
いったいどこから間違いを犯したのか紘太にはわからず苛立ちを吐き出すしかなかった。
しかも真実を語れる生者は現場には誰ひとり生き残っていない。
ふなっしーはただ仲間の死と、苗木たちに裏切られたかもしれないという焦りで心を痛めている紘太を慰めることしかできなかった。


このおはなしに悪意を持った参加者は誰一人いません。

みんながそれぞれの正義のために頑張っていました。

でも些細な綻びと不幸な食い違いにより殺し合いは起きてしまいました。

それはこんなおはなし。




【二日目・19:30/東京都 新宿 都庁から少し離れた位置】


【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【状態】混乱、首輪解除、ドラゴンハートの恩恵による強化(大)
【装備】クロスチェンジャー、ジェットスワロー@鳥人戦隊ジェットマン、ターバン
【道具】支給品一式、ボロボロのグローブ
【思考】
0:桑原たちが殺されただって?!
1:現場を調べた後に紘太たちをつれて都庁に戻る
2:世界のためにも救済の予言は必ず完遂させる
3:DMC狂信者をぶっつぶす
※紘太たちと情報共有をまだしていないので、苗木・霧切・キュゥべえのことを知りません


【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【状態】混乱、首輪解除、ドラゴンハートの恩恵による強化(大)
【装備】だいぶ古い型のノートパソコン@現実、ターバン
【道具】支給品一式
【思考】
0:ここで一体何が……
1:現場を調べた後に紘太たちをつれて都庁に戻る
2:世界のためにも救済の予言は必ず完遂させる
3:個人的には大災害を引き起こした黒幕を警戒
  まだ生きているんだろうか……
※スタービルドストライクはレイジに返却しました
※紘太たちと情報共有をまだしていないので、苗木・霧切・キュゥべえのことを知りません


【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【状態】ダメージ(小)、仮面ライダー鎧武・極アームズに変身中、拳王連合軍への怒り、強い悲しみ
【装備】戦極ドライバー、ロックシード(カチドキ&極)
【道具】支給品一式、ロックシード(パイン、イチゴ、スイカ)
【思考】
基本:殺し合いを止める
0:これをやったのは苗木たちなのか……?
1:DMC狂信者達も拳王連合軍も、もう絶対許さねえ!!
2:救済の予言の謎を解く
3:ダースベイダーは絶対に許さねぇ!!
4:なんだったんだ沖縄のあれは……
5:都庁は味方だったのは一安心
※オーバーロードとしての力を行使するには首輪解除が必要です。
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました
※高津たちと情報共有がまだできていないため、救済の予言の真実と効果を知りません

247あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:42:42 ID:RjIvn3.s0


【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、やる気十分、色々成長、苗木たちへの不信感
【装備】ガイアメモリ(アイスエイジ)@仮面ライダーW、アイスソード@ロマンシングサ・ガ、ターバン
【道具】支給品一式
【思考】
基本:『ダースベイダー』を倒す
0:イリヤたちを殺したのは苗木たちなのか?
1:何かいろいろパワーアップしたよ!
2:みんなで予言を解いて世界を救うよ!
3:聖帝は頼りないから最強のあたいが皆を引っ張る
4:大阪の毒花と沖縄の天候変化は明らかにヤバイ!
5:都庁が味方で良かった
※アイスエイジメモリを刺した事によって成長、能力及び知力が向上しました。
※テラカオス・シャドウによって生じた沖縄の天候の変化を見ました
※高津たちと情報共有がまだできていないため、救済の予言の真実と効果を知りません


【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、悲しいなっしー!
【装備】野球のユニフォーム(背番号274)、ターバン
【道具】支給品一式、シャルロッテ@魔法少女まどか☆マギカ、千早@皇国の守護者(フロワロの毒ダメージ・大)、デストワイルダー@仮面ライダー龍騎&ただの手鏡、聖帝軍の旗
【思考】
基本:殺し合いを止めるなっしー!
0:ここも地獄絵図だったなっしー!
1:DMC狂信者達を成敗するなっしー!
2:名探偵ふなっしーが予言の謎を解くなっしー!
3:本当に都庁につけるか不安なっしー!
4:ヒャッハー! 梨汁ブシャー!
5:新しい友達としてシャルロッテと千早、デストワイルダーは守りたいなっしー!
6:都庁で一休みしたいなっしーー!
※千早とデストワイルダーが主催側の意思持ち支給品であることを知りません
※高津たちと情報共有がまだできていないため、救済の予言の真実と効果を知りません



【二日目・19:30/東京都 渋谷区】


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ダメージ(中)、疲労(大)、拳王連合軍への復讐心(特大)、変身中
【装備】ウィザードライバー@仮面ライダーウィザード、マシンウィンガー@仮面ライダーウィザード、専用の指輪一式、インフィニティーウィザードリング@仮面ライダーウィザード
【道具】支給品一式、通信機、
【思考】基本:対主催→拳王連合軍は皆殺し
0:千葉県に向かい、ギムレーもといイチローチームと交渉する
1:必ず拳王連合軍に相応しい絶望を与える
2:キュゥべえと聖帝軍の皆は信頼している
3:拳王連合軍ほどじゃないがヘルヘイム(都庁)の魔物は許さない
4:都庁を倒して紘太さんたちを救助する
5:とうとう僕がWB組最後の生き残りか……
※放送でラーメンマン、ジョンス、たっくんの死を知りました
※聖帝軍のきらりんロボが立川を焼く映像を見ましたが、先遣隊のこともあり信用していません
※都庁を一方的に敵視しました


【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【状態】ロリ切さん、ディーヴァへの恐怖心(特大)、魔法少女化、ソウルジェムの汚れ(40%)、一時的な幼児退行と記憶喪失、度重なる失禁でパンツぐしょぐしょ
【装備】様々な資料
【道具】支給品一式、沢山の光彦関連のスイッチ、ノートパソコン
【思考】基本:テラカオス・ディーヴァにだけは殺されたくない
0:奴に殺されるのはヤダヤダヤダヤダヤダ……
1:苗木くんは守る
2:友達のキュゥべえも守る
3:(幼児退行と記憶喪失により思考能力が大幅低下している)
※魔法少女化したまどかには及ばないものの強力な魔法少女になり、肉体・戦闘力が大幅に強化されました
 戦闘力は最低でも仮面ライダーBLACK RXの三倍です(グンマーの巫女となったまどかと互角)
 また、四条化細胞を持つ敵には特攻能力を得ています
 (シャドウのみ、先にTCを取り払わないと不可) 
※テラカオス・ディーヴァに殺されたくないと願った結果、ディーヴァと力を受け継いだシャドウ限定で侵入できない結界が張られました(広さは近畿地方全体がスッポリ収まる程)
 ただし霧切が死亡・魔女化した場合は結界が消滅し、シャドウが死者スレ掌握などで霧切のエントロピーを上回ったりしても結界は破られます
 テラカオス・ディーヴァの残滓は力の大部分が違いすぎるので侵入自体は問題ありませんが、近づくと何らかの悪影響が出るかもしれません

248あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:43:04 ID:RjIvn3.s0


【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】ダメージ(中)、他の個体が全滅
【装備】マッチ(残11本)
【道具】支給品一式、祐一郎の記憶を内包したブラックボックス、
【思考】基本:殺し合いの助長・対立煽り、おまけで魔法少女を増やす
0:身を守るためにイチローチームに協力してもらう
1:対主催の影に隠れて参加者同士の殺し合いを助長する
2:イチローチームには拳王連合軍=悪の認識を持たせる(誤解を解かない)
3:沖縄のエントロピーからディーヴァより危険な存在(シャドウ)を感知
4:千葉県からディーヴァらしき反応を検知、状況を知るためにも千葉県へ向かう
  殺されそうなら生存戦略のために助ける
5:資源的価値がなくなったので鹿目まどかへの執着はなし、障害になるなら排除する
6:都庁が一方的に敵意を持たれていると推測
  崩壊か無力化するまでは都庁には接触しない
7:母星と連絡出来るまでは生き残る
※クロコダインと会う前に苗木の口からデカオを殺した下手人は苗木であると知りました
※殺し合いがテラカオスを生み出すために必要な措置だと気づきました
※沖縄から感知できるエントロピーから「TC」を放つテラカオス・シャドウの存在を感知しました
※先遣隊に拳王連合軍に関する嘘を交えた情報を流しました

249あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 21:43:50 ID:RjIvn3.s0
投下終了です

タイトルは『僅か綻び 大事故の元』でお願いします

250あきよの破壊力が異常:2018/10/16(火) 22:32:09 ID:RjIvn3.s0
ごめんなさい誤字ってた
正しいタイトルは『僅かな綻び 大事故の元』

251奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:09:17 ID:.1T/Mroc0
横浜港にたどり着いたハクメンを待ち構えていたのは最後に会った時より数を大幅に減らし、通夜のような深い悲しみのムードに包まれた拳王連合軍たちであった。

「ハクメン、アンタどこへ遊びに出かけてたんだ!?」
「おまえがいない間……タクアンたち仲間が大勢死んだんだぞ」

責めるような目でMEIKOや平等院に睨みつけられる。
彼らの目線だと大阪や横浜港までの戦いに参加せずに凶狩りに出かけた身勝手さが、タクアンたちを殺した要因の一つにも見えた。

「……悪いが私はどうしても凶を狩らねばならぬのだ。
悪と凶は世界を滅びに導くがゆえに」
「それで悪魔将軍がやられちゃ世話ないね」

更に同盟を組んでいた悪魔将軍の死もまた、拳王連合軍に暗い影を起こしていた。
シグナムの話を信じられなかった彼は単身で死者スレへと向かうが、おそらく死者スレを支配する黒幕(彼らはまだ殺し合いの黒幕が死者スレの支配者と思っている)に挑んで敗死したのであろう。
せめてハクメンがついていれば勝てたか負けても生き延びることはできた可能性はあるのだから、ハクメンに悪魔将軍死亡の責任がないとは言い切れない。

「待て、MEIちゃん、平等院。ハクメンも手傷を負っている。
遊んできたわけではあるまい」
「拳王……」

怒れる味方たちを抑えたのは連合軍の長であるラオウその人であった。
彼を見た時、ハクメンは驚きの表情を浮かべた(仮面で表情見えないが)。

(この男……いつの間にこれだけの力を手に入れた?!
私や悪魔将軍に次ぐ力を持っているぞ)

最初に出会った頃もラオウは理不尽級の力は持っていた。
だが、unlimitedモードを解除したハクメンのような超理不尽級にはとても及ばないものであったのに、それが今や自分と肩を並べるくらいの強さを持っていると感じる。
目に見えないオーラのようなものでハクメンはラオウの実力を把握したのだ。
他のメンバーもまたラオウほどではないが、3人くらい束になればハクメンと拮抗できるほどの理不尽級の力を持っている。

その理由はダイジョーブ博士が持ってきたマシンによるものだが、それを使うのも相応の覚悟とポテンシャルの高さが必要であり、決してマシンだけあったから強くなれたわけではない。


(これならば凶を頑なに守る女装男やヘルヘイム、千葉に居座る邪竜や食人鬼……沖縄の凶以外なら滅することができるかもしれん……が)

実力は確かではあるが、彼らには本来あった活気が見当たらなかった。
ラオウは表情こそポーカーフェイスであったが、心なしかMEIKOや平等院以上に元気がないように見える。
理由は彼の背後にある三つの簡素な墓。
ひとつの墓(熱斗の血のついたバンダナが引っ掛けてある)の前には翔鶴がPETを手に持ちながら、地面に膝をついて暗い表情で墓標を見つめている。
もちろん、PETの中にいるロックマンも同様だ。

誰彼が死んだかは放送で確認できるのでまだしも、事件の当事者ではないハクメンはここで何があったかわからない。
しかし拳王連合軍の沈み様からして、相当に悲しい事件があったのは確かだ。
ラオウ、MEIKO、平等院、翔鶴、ロックマン、ディオとデューオから悲しみ。
ムネリンからは落胆。
クロえもんからは憤怒。
知らんうちに増えてたジャージの女からは困惑が見える。
それらの感情は彼らの実力にマイナス作用を及ぼすだろう。
少なくとも野球どころではあるまい。

(これだけの力があれば全ての悪を滅ぼせるかもしれんのに……どうすれば)

この世界でも上位の戦闘力を持つハクメンとてバラバラになっていく人々のの心を一つにまとめるスキルはない。
だがこのまま時間により解決に任せている余裕はなく、その前に凶によって世界は支配される。
どうにしなければならないのにどうしようもない空気にハクメンまで飲まれそうになる。



そんな空気をぶち壊したのはどこからか現れた少女の嬌声であった。

252奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:10:34 ID:.1T/Mroc0
重い空気をぶち壊したのはどこからか現れた少女の嬌声であった。

「翔鶴姉ぇ〜〜〜!!」
「え? あなた誰 おぶッ!」

唐突に、本当に唐突に、黒髪ロングの侍甲冑姿の少女が悲しんでいた翔鶴にタックルをする。
少女にガッチリと掴まれつつ地面に倒される翔鶴。

「て、敵!?」
『翔鶴さん、僕を使って!』

敵ならば討つべしとPET及びロックマンの力を使って反撃に出ようとした翔鶴だが、嬉し涙を流す少女の顔を見て毒気を抜かれてしまう。

「撃たないで私は味方よ……それにしてもやっと会えた、会えてよかったよ翔鶴姉……」
「あ、あなたは一体……」
『ま、待ってくれ、パ……博士は僕の妹として翔鶴さんを作ったけど、君は作られていないハズ……』
「はっ? 翔鶴姉がアンタの妹!?」

ロックマンの妹発言に黒髪の少女から物恐ろしい視線を向けたが困惑状態の翔鶴とロックマン、そして周囲にはよく見えなかった。
続いて彼女の持っていたモンスターボールの中からサボテンじみた見た目の悪魔が現れ、翔鶴に抱きついていた少女を腕(口?)を器用に使って引き離す。

「ちょっと、メーガナーダ!」
「何奴?!」
「待って! こんな形だけどこの子は私のペットよ。だから敵じゃないわ」
「インドラ」

メーガナーダは飼い主である少女を下ろした後に、四本ある腕を全部上げて交戦意思はないポーズを取る。

「……確かに見た目は禍々しいが、凶は感じないな」
「いやいやいや、論点はそこじゃねーだろ。
こいつらは俺たちの敵か味方か、何者かが一番大事じゃねーか!」

まだ少女とメーガナーダを信じられないクロえもんはハクメンにツッコミを入れつつ、バットを構える。
当然であろう。口々で自分は味方だと言われてもすんなり納得できるわけがない。
ちなみにハクメンが少女と悪魔から凶を感じ取れないのは、二人はテラカオス因子に汚染されているわけではなく行動に関しても「悪意」で動いているわけではないからである。
「忠義」「愛」「本能」で動いているだけの者にはハクメンセンサーが作動しないのだ。

「あー、色々つもりつもった話があるみたいですが、情報共有と整理も兼ねて話し合いませんか?」

混乱する場を宥めたのは若干、蚊帳の外にいたヒロインXであった。

253奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:13:06 ID:.1T/Mroc0





「さっきはいきなりごめんなさい。
私は艦むすの瑞鶴、こっちの丸いのはメーガナーダ。よろしくね」
「インドラ〜♪」

まずは来訪者である黒髪少女・瑞鶴とメーガナーダが自己紹介を行った。

「艦むすって提督が作った子以外にもいたのですか……」
「ええ、翔鶴姉が祐一郎博士が作った艦むすであるなら、私の提督さんであるサーフ博士が作り上げた艦むすよ」

当然であるがサーフが拳王連合軍さえも窮地に追い込んでいるカオスロワちゃんねるの管理人であることは秘密だ。
蒼の源泉の暴走を引き起こし、主催に殺し合いを開かせ、参加者に予言を完遂させて究極体のテラカオスを横取りする計画ももちろん喋る気はない。
瑞鶴とメーガナーダは拳王連合軍に取り入り予言に必要な野球をするために、とにもかくにも味方であるかのように振舞った。

『サーフ博士と言えば、さっき亡くなったらしいダイジョーブ博士も言っていた祐一郎博士の友人じゃないか』
「そうよ、祐一郎博士とダイジョーブ博士は残念だったわ……」

表面上は悲しそうな顔を浮かべるが、本心では計画の邪魔になる二人が消えて良かったとさえ思っている瑞鶴。
特に祐一郎はサーフにとって不倶戴天の敵であったので、小躍りしたいくらいだ。
本当なら祐一郎の傑作であるロックマンも消したいところだが、現状では貴重な戦力兼自分を信用させるための要員なので我慢する。

「今、そのお方はどちらに?」
「提督さんは狂信者のフリをしてビッグサイトに潜伏しているわ」
『ビッグサイトって言ったらDMC狂信者の巣窟じゃないか。危なくないか?』
「なんとか今のところはバレてないわ。
数だけはどこの集団よりも多いから対主催に余計な被害が出ないように、情報を秘密裏に奪ったり、対主催が攻め込んだ時のための準備として工作を行っているのよ」
「わかったわ。提督のご友人であれば、一秒でも早く助けに行きたいところね」
『あの頭のおかしい狂信者に囲まれていると思うと気が気でいられないだろうしね』
「ありがとう、翔鶴姉、ロックマン。
でも助けに行くとかまだ考えないで、余計なことをすると潜伏の苦労が水の泡になるから。
攻め込んでいいタイミングになれば向こうから何らかの合図をするって提督さんが言ってたし」

いわゆるステルス対主催としてサーフは誰とも知られずに働いていることを教える。
実際は180度逆で参加者を助けるどころか苦しめているのだが……
信憑性を持たせると同時に早く野球をさせるためにビッグサイトへ攻め込むのは後回しにするように説得する。

「それから提督さんからのプレゼントもあるわ」
『これは熱斗くんと僕が探し求めていたプリズムとフォレストボムのチップ!』
「瑞鶴、この不思議な形状のアイテムは何?」
「これは宝玉輪っていう使いきりの集団完全回復アイテム、こっちは誰にも邪魔されずに野球の試合ができる提督お手製のマシンよ」

リオレウスに熱斗ごと焼かれたことで一度は失ったバトルチップがプリズムとフォレストボムのオマケつきで戻ってきた。
さらに貴重な回復アイテムや試合時に異界に転送することで何者にも邪魔されずに野球ができる機械は拳王軍にとって嬉しいものであった。
貢物としては十二分の価値があったと言える。
惜しむらくはもっと早く瑞鶴が横浜港に辿りついていれば、三人は死ななかったと思えるが贅沢も言っていられない。

こうしてサーフからの贈り物として一行に受け入れた瑞鶴とメーガナーダ。
次にハクメンと(この面子の中で話を纏められる)デューオは大阪で別れてから何があったのか語る。



ホワイトベース組を斬るのを嫌がったハクメンは風鳴翼討伐と関東に集中している凶を斬るために単身東へ。
風鳴翼は見つからず、途中で見かけたクライシス皇帝という凶を見つけたか手傷を負わせただけで取り逃がす。
幸い、風鳴翼の凶の気は大きく弱体化し千葉方面へ、クライシス皇帝も何者かによって討たれたようだ。
しかし東京にて凶を匿う都庁のヘルヘイムの女装男と遭遇。
かなりの実力者であり、勝つことができずに逃げ帰るしかできなかった。
その実力者の背後にもより強い猛者や怪物たちの存在を感じ取った。
他にも風鳴翼が逃げた方面には彼女以外にも邪竜や同格の実力者の気配を感じており、ハクメンとて単身の攻略は困難だ。
さらには沖縄には自分だけでは確実に勝てない強烈な凶の存在を検知し、拳王連合軍との再合流に踏み切ったのだ。

途中で見た白濁まみれの死体? ハクメンの脳内では既になかったことになってるよ。

254奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:13:56 ID:.1T/Mroc0


ラオウたちは多大な犠牲を払いながらもホワイトベース組が勘違いで仕掛けただけの対主催だと知り、なんとか退けさせることに成功する。
戦いの結果、空母・死国は轟沈したため仕方なく高速艇で関東に向かう。
シグナムが黒幕を殺してきたという妄言を吐いていたが、とても信じられないので悪魔将軍が一人で調べに行ったが、やはり彼が殺されたことから黒幕は生きていたらしい。
高速艇の方は狂信者の一団を撃破したりしたが、その後に今は亡きダイジョーブ博士の協力を得て強化マシンを手に入れた。
しかしマシンで強化しきるには時間がかかり、その手打ちになっている隙に飛竜とハゲ頭のサイヤ人や赤いロボットの襲撃を受けて熱斗・ダイアー・タクアンなどの惜しい人物を失う羽目になった。


ちなみに彼らは世に出回っている救済の予言のことなどアウトオブガンチューだ。
仮に見聞きしていたとしても与太話と思い込み、信用などしない
野球をやっているのは世界を救うためではなく、やりたいからやっているだけである。
そんなことよりも黒幕をしばいてカオスロワを終わらせる方が優先だったからだ。
予言の真実を知る瑞鶴もあえて何も知らないこの集団をコントロールしやすくするために教えなかった。




『……見事に敵まみれだな、強化マシンがなかったら俺たちは今の時点で詰んでる』
「ああ……東京は激戦区とは言われていたが、我々の想像以上に厳しいことになっている」

東京には世界に滅びをもたらすヘルヘイムの森(都庁の世界樹への一般認識)。
そしてスカイツリー近辺で破壊と虐殺を行った聖帝軍。
東京湾には狂信者の巣窟であるビッグサイト。
千葉県には食人鬼と自分たちへの宣戦布告を行った邪竜。
関東の上空には主催の九州ロボ。
最終的に戦うだろう富士山脈の死者スレ及び黒幕は以前健在で、沖縄にはおそらく黒幕の手によるものであろう凶の塊がいる。
おまけに拳王連合軍自体がマーダー集団と勘違いされ、数少ない対主催とされるイチローチームや小野塚小町が味方につくとは考え難く、サーフぐらいしか明確な味方が残っていない。

この難局を乗り切るにはどうしたらいいのか、拳王連合軍は真剣に考える必要があった。


「――ハクメンよ、黒幕とやらと沖縄に居座る者を討つには我々15人だけでは不足なのだな?」

話を切り出しのはラオウであった。

「あまり言いたくないが……無理だ」
「では、東京に残っている戦力を全て集めたらどうだ?」
「ラオウ、話を聞いていなかったのか?
信用されていない俺たちには誰も味方してくれないんだ。
ホワイトベースは全滅したようだし、手伝ってくれはしないだろう」

平等院が呆れたように返すが、実際そうである。
カオスロワちゃんねるを媒介に悪い噂が広がりすぎた以上、今から味方集めをしても従ってくれる人間などいない。
じゃあ真実を口頭やネットで説明するか?
それらは残念ながら現実的ではない。
口での説明は効率が悪く、その前にホワイトベースのように襲撃される可能性が濃厚。
ネットで書き込んだところで叩かれてなかったことにされるだけだ。

悪いレッテルの払拭は今更不可能、味方集めもできない。
それをラオウは理解していないじゃないかとその場の全員が思った。

ラオウと波長が合うMEIKOただひとりを除いて。


「違うよ。ラオウが言いたいのはそんな単純なことじゃない」
『MEIKOおばさん、どういうこと?』
「……もっと馬鹿で単純なことさ。
ラオウは受けた誤解を解こうとする気なんてサラサラない。
むしろ敵対する奴らを力でねじ伏せ屈服させて、無理矢理にでも力を貸させる。

それができるだけの力を誇示するために――ラオウは拳王軍による東京平定をしようとしているのさ」

「そんなまさか……」
「ハクメン、アイツの目を見てみればわかるよ」
「ハッ!」

ハクメンや他のメンバーがラオウの表情を見ると、そこにさっきまでのメソメソ悲しんでいる様子は微塵もなく、決意に満ちた瞳があった。

「今、MEIちゃんが代弁した通りだ。
俺たちでも勝てない敵ならば、東京に集まる強敵(とも)たちを集め、この殺し合いを開いた沖縄のマガトや死者スレの黒幕を討つために我々の力を示し東京を平定する!」
「覇王にでもなるつもりか?」
「安心しろハクメン、殺し合いに乗る痴れ者、ヘルヘイムやムギちゃんを殺したハゲ以外は殺しはせん。
ただ理解(わか)ってもらうために拳を交え、野球をすることはあるだろうがな。
真に分かり合えるものならば野球一つあれば十分だ」

ラオウの真意はカオスロワを終わらせるために殴って引きずってでも強敵を味方につけること。
もはや評判が底に落ちたならば、力で従わせる覇王&野球脳である。
やり方はシンプルであるが、拳王連合軍にはこの道しか残されていないように見えた。

255奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:14:38 ID:.1T/Mroc0

(邪念は感じない……言い方は物騒だが、この漢なりに世界のために戦うつもりのようだ)

ハクメンは再度、ラオウのオーラを見たが悪しき心は感じなかった。
あるのは彼なりの正義の心である。

「よかろう、我々や関東の戦力――もちろんマガトやヘルヘイム以外だが、集めれば可能性は見えてくるかもしれん。私も手を貸そう」

ハクメンはラオウの心意気を理解し、彼や拳王連合軍についていくことを決めた。
他のメンバーの大半もまた、ラオウに賛同した。

「流石はアタシの未来の旦那だよ。そうこなくっちゃ」
「やり方は多少手荒になるが、主催を滅してカオスロワを終わらせるためだ。是非もない」
「悪と罵られようが知らん、このディオとデューオの力でダイアーさんのような犠牲を出すものか」
『今回ばかりは気が合うなディオ、俺もそのつもりさ』
「俺たちはなんと言われようが正義だ。殺し合いを止めようとしている俺たちが間違ってるハズがねえ」
「ここまできたらやるしかありませんね!」
「博士と熱斗くんの無念を晴らすためにも……」
「戦いますよ、世界を守るために強くなったですもん」
(翔鶴姉、騙すようでゴメン)
「インドラ」




「ごめんなさい気乗りしないです……」
「俺もパス、というかチーム抜けるわ」



「「「…………」」」



「「「ハァッ!?」」」
「インドラ?」


今まさに、全員の心がひとつになろうとした瞬間。
鬱モード真っ盛りの宗則と、荷物を畳んで横浜港から出ていかんとするプニキが場の空気を台無しにした。

「何言ってるんですか二人共〜! KYとよく云われる私ですら空気を読んだのに!」

ヒロインXがムネリンとプニキの襟を掴んで怒声を浴びせるが、二人は物怖じする様子はなかった。

「だって僕のレーザービームがどこともしれないハゲにキャッチされたんですよ?
好きでもない男に抱かれた気分だ……こんな僕にイチローさんと野球やる資格なんてない、というか死にたい」
「俺は最初から契約選手だ。それが契約主は死亡し蜂蜜はゴミになっちまった……
最低でも最高級蜂蜜がないなら俺は野球しない。そもそも戦闘云々なんて契約にはなかった。
百エーカーの森に帰らせてもらうぞ」

ムネリンは先にナッパによって自慢のレーザーを取られたことでプライドを傷つけられて傷心、プニキはあくまでビジネスライクで拳王連合軍についていただけ。
二人の野球選手はもう拳王連合軍についていく気がなかったのだ。

「クッ、野球に関して最も優秀な二人を失うのは流石にこの拳王も予期していなかった……」
「この軟弱者&薄情者が! このMEIKOおばさんが直々に修正してや」

「『ブッタファック! 仲違いはよせ!』」

今にも乱闘が起こりそうだった拳王連合軍に上条とシャドーマンもといイマジンスレイヤーが戻ってきた。
上条は戻ってき次第、すぐに分離し殴りかかろうとしたMEIKOを抑える。

「ジョジョ、おまえはどこに行ってたんだ」
『そういえばさっきからいなかったな』
『私とお館様は横浜港の外に出て偵察をしていたのだ。
竜やハゲ頭の男の味方が近辺に潜んでいる可能性もあったからな』
「で、調べてわかったことがある」

上条は何枚かの写真を見せる。
写真には港に現れたナッパやリオレウス、千葉県の邪竜。
他にも第六回放送までのイチローチーム・ドラゴンズのメンバーが死亡者込みで入っていた。

256奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:15:41 ID:.1T/Mroc0

『熱斗くんを死なす原因を作ったハゲ頭とドラゴン……!』
「ジョジョさん、これは?」
「ハゲの奴……ナッパに関しちゃロックマンの方が詳しいだろう。
こいつは殺し合いの最初の方で街を攻撃しようとしたところ、熱斗たちが止めたんだよな?」
『ああ、ネットバトルで人を殺すわけにはいかないと殺さなかったけど』
「今、そいつがイチローチームにいる」
『なんだって!?』

ロックマンに翔鶴、そしてラオウたちも殺し合いに乗っていた危険人物が安全な対主催と思われたイチローチームにいることに驚きを隠せなかった。

『情報によるとあるチームとの戦いでイチローチームに負けて屈服、改心して仲間になったとあるがどうもキナ臭い。
善良な集団であれば我々を襲うならまだしも民間人を巻き込む毒ガスなんて撒くハズがないのだから』
「確かに、百歩譲って襲撃がアタシたちを危険集団と勘違いしたせいだとしても、毒ガス散布なんて屑行為はしないだろ普通」
「ま、待ってください。イチローさんがそんな非情な手段を取るなんてありえない!」

チームのリーダーであるイチローと言えば小野塚小町に並ぶ対主催の要であり、殺し合いが始まる前から生粋のスポーツマンにして人格者なのは周知されている。
増してイチローの大ファンであるムネリンは、拳王連合軍の中で最もイチローに近づき、彼の人柄を理解している。
故に毒ガスを民間人の被害無視でバラまくなんて考えられなかった。

「ああ、確かにイチローチームだけなら、何かの手違いでああなったとも思った」
『そこで私とお館様はイチローチームと同盟を組んだ野球チーム……ドラゴンズの方を調べた。
そうしたらトンでもない連中だとわかった』
「――メンバーの大半が極めて危険な存在だったんだよ」
「なんだって?!」

上条は写真を一枚一枚、仲間たちに見せるように指を指していく。


「こいつは邪竜ギムレー、アソコ(千葉)に見えるアイツのことだよ。
こいつは一部地方で伝説になっているくらいの邪悪な破滅の龍だ」
「確かに……あの竜からはここからでもわかるくらい邪悪なオーラを感じますね……」
『こいつがおそらくドラゴンズのリーダーで全てを操っている』

「次に熱斗を殺したリオレウス。
グンマーに出没しては人を襲ってたらしい危険な竜だ」
『何人もの狩人が討伐に出かけたが返り討ちに遭うこともしばしば……流石に邪竜ほどの危険はないようだが、港にガスを撒こうとする残忍さは頷ける』

「口を開けば幼女を犯したいと口を開くオシリス」
『他とは違う危険性だが、なまじ力を持っているだけに年端も行かぬ幼女を大量に拉致して犯すことも不可能ではあるまい』

「もう死んじまっているがイドゥンやフォーマルハウトも人類を滅ぼそうとしているかなり危険な存在だったらしい」
『特にファーマルハウトは真竜と呼ばれ、都庁に真竜も確認されている』
『ということは……?』
『つまりはだロックマン。
ドラゴンズは都庁と繋がりを持っている可能性が濃厚ということだ』
「なんだと!」

思わず声を荒げる一同。
自分たちはヘルヘイムに攻め入ろうとしていたが、もし本当にヘルヘイムとドラゴンが真竜を通して繋がっていたとしたら自分たちは先制攻撃を喰らったことになるからだ。

「ディオ、さっきの邪竜の台詞もよく思い出してくれ、そういえばアイツらだけ呼ばれてなかったな、と言いたくなるから」
「さっきの宣戦布告……そういえばアイツらだけ呼ばれてなかったな……ハッ!」

上条に言われて何かに気づいたディオ。
それがまだ何を意味するかわかっていない者にシャドーマンが解説する。

『そうだ。
邪竜ギムレーは俺たちや狂信者・主催には宣戦布告をしていたが、都庁ヘルヘイムと聖帝軍には言っていない。
これはドラゴンズとヘルヘイムが手を組んでいる証左ではないか?』

ドラゴンズやヘルヘイムは裏で繋がっているかもしれない、その仮説に一同は驚愕する。

「じゃあイチローさんは……」
「いくら強くても邪竜というぐらいだから捕まって洗脳されたのかもしれない。
俺のいた学園都市にはそれくらいの術者・技術者・超能力者なんてゴマンといた」
『洗脳されずとも味方を人質に取られて無理やり従わせられている可能性は十分にある』
「そうですよね……僕の大好きなイチローさんだったら今頃危険なヘルヘイムやビッグサイトをレーザーでズガンと倒しに行ってでもおかしくないはずだ。
でも彼はまるっきり攻撃する素振りを見せない……そういうことかおのれドラゴンズ!!
奴らの手からイチローさんを殺してでも取り戻さなければ!!」

先程まで負のオーラで無気力になっていたムネリンは、ヤンデレパワーという別の負のオーラで気合が充填されていった。
今の彼は愛するイチローのためにチームを抜ける気など欠片ほどもない。

257奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:16:10 ID:.1T/Mroc0

『ギムレー……ナッパ!』
「あなたたちがいなければ熱斗さんたちが死ぬこともなかった、絶対に許さない」
「翔鶴姉……」

瑞鶴がたじろぐほどの怒りのオーラを出しているのはムネリンだけではない。
兄弟や仲間を殺されたロックマンと翔鶴も同じかそれ以上であった。
ロックマンの中に唯一の負の心、憎悪と復讐心が燃え上がる。
翔鶴も会敵した時は必ず矢を撃ち込むことを決意した。


「どうするだ? 今からカオスロワちゃんねるにでも流してドラゴンズの危険を教えておくか?
奴らに味方する奴は減ると思うんだが」
「おまえの知能はタヌキレベルかクロえもん?
俺たちが危険人物のレッテルを貼られている以上は、俺たちから発信しても無駄無駄無駄なんだよ」
『せめてダイジョーブ博士が生きていればなあ……
なあ瑞鶴、サーフ博士に頼んで発信してもらうとかできないか?」
「こっちから連絡したら提督さんが狂信者じゃないとバレて危ないでしょ!
そもそも提督さんも表向きは狂信者だし、発信したところで誰も信用しないわよ」
『それもそーかー』

イチローチームとドラゴンズはネットではもてはやされている。
邪竜として真の姿を取り戻したギムレーこそ「アレはなんだ?」と多くのモブ参加者から恐れられているが、イチローチームとドラゴンズ(もといイチリュウチーム)自体の評判は落ちていない。
拳王連合軍視点だと、邪悪な者がついていながら信頼されている逆の立場の存在である。

「ならばこの拳王軍直々に処断するしかあるまい。
誤解など勝手にさせておけ、我々は自分たちだけで道を切り開く」
「そうだねダーリン」
「ああ、誤解は邪悪を滅ぼした後にでも解けば良い」

ラオウはドラゴンズが危険とわかっていても止まる気はない。
例え自分たちが信頼されなくとも正義は後からついてくると信じて、数多の妨害覚悟の上で敵という敵を討ち果たさんとする。
次に平等院が今後の予定に関して提案する。

「ならば攻め込む順番はヘルヘイム→イチローチーム・ドラゴンズ→ビッグサイト→最後に九州ロボ・死者スレまたは沖縄のアレ討伐だな」
『え? 千葉のドラゴンズから攻めないの?』
「血気にはやるなロックマン……高速艇も煉獄も沈んだ以上、翔鶴と瑞鶴ぐらいしか海を渡れないだろう。
ここから最短距離を通ろうとするば狂信者のビッグサイトが邪魔になるしな」

まず主催陣営戦力(沖縄の敵も主催戦力だと前提して)を相手にするのは必然的に最後、攻めやすくする準備がサーフの手で行われているとするならばビッグサイトも後回しにする必要があり、必然的に最初に攻略するのはヘルヘイムかイチリュウチームである。
距離や障害物を考えたら東京新宿都庁にあるヘルヘイムから攻め込むのがちょうどいいだろう。

「だけど、ヘルヘイムには聖帝軍もいるしなあ」
『片方だけならともかく、真正面から一辺に相手にするには危険だ。
勝てても損耗を考えると狂信者やギムレーに倒される可能性も出てくる』

とはいえヘルヘイムには本来の戦力に加えて聖帝軍も居座っている。
数の利は向こうに有り、後のことを考えると一度に全員相手にするのは得策ではない。
ではどうすれば解消できるのか?

258奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:17:02 ID:.1T/Mroc0



「……! 良い事を思いつきました」

何やら妙案が思い浮かんだ翔鶴に全員の視線が殺到する。

「挑戦状を送りつけて聖帝軍だけでもおびき寄せるんです!」
「翔鶴姉、どうやって?」
「挑戦状に聖帝軍が指定の場所と時間にこなかったら、東京の全てを破壊する……と書いて送りつけるんです」
『ちょっと待って翔鶴さん! 流石にそれは悪行じゃないか?!』
「もちろん、東京には罪のない人もいますからブラフですよ。
ただしレーザービームを投げられるムネリンさんもいるから、向こうは信じると思います」

東京で大虐殺を働く気はないが、拳王連合軍が実際にいくつものマップ破壊を帯びているので敵は信じるであろう。
ヘルヘイムサイドとて侵略の基盤である東京は失いたくないだろうと瑞鶴には予測できるのだ。

「そうすれば現れた聖帝軍を試合するなり直接戦闘するなりで撃破できます。
ヘルヘイムも狂信者と戦争状態なので防衛のために送れる戦力が限られます。
そして聖帝軍撃破後に、数が大幅に減ったヘルヘイムを攻略するのです」
「流石は翔鶴姉! うまくいけばヘルヘイムの総戦力を2分割できるわね」
「もっとも相手が挑戦状のブラフに乗ること前提だけど」
「いや、何もしないよりはマシだ。うぬの意見を採用しよう」

翔鶴の意見は採用され、本格的にヘルヘイム討伐の第一ステップとして聖帝軍の殲滅が目標とされた。
さっそく言いだしっぺの翔鶴がその辺から拾ってきた紙に挑戦状の内容をスラスラと書き込んでいく。

「……集合場所はどこにしましょうか?」
『あ、そっちは考えてなかったの?
適当な場所だと関係ない人が巻き添えになるし、この港はダメ……となるとどこが良いんだろう?』
「いや、暴れるにはうってつけの場所があるぞ、ここはどうだ?」

ラオウが地図を指さした場所は、ある程度暴れても被害が出なさそうな場所であり、それなりに開けている場所で臨機応変な対応ができる戦場。

「――横浜スタジアムか」



鶴ならぬ拳王の一声により、聖帝軍との決闘場に選ばれた横浜スタジアム。
そこに21時までに聖帝軍だけで来ないと東京を破壊するメッセージを書かれた挑戦状と、早く来れるようにクロえもんの電車ごっこロープを野球ボールに封入し、それをMEIKOは都庁めがけて消える魔球にして投げた。
消える魔球にしたのはレーザー攻撃による迎撃を防ぐためだ。
着弾すればクレーターはできるだろうが、野球ボールとその中身は健在。
クレーターに気づいたヘルヘイム勢力がそれを読み、聖帝軍を送り込んでくるのが理想であった。

259奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:17:52 ID:.1T/Mroc0


「おーい、そろそろ俺たちも横浜スタジアムに向かおうぜ。約束の時間に間に合わなくなるぞ」

それを言ったのは先程までチームをやめたがっていたハズのプニキであった。

「やめたがっていたのに、何で今はノリノリなんだ?」

クロえもんが疑問を口にしたが、その答えは上条が答える。

「ああ、あれね。
街中でひっそりと情報収集している時に最高級蜂蜜を売ってるお店があって、お土産替わりに一ダース買ってきたんだ。
試合に勝つたびに4つずつ渡すということで再契約したのさ。
お金はラオウから渡されたタクアンさんの一兆円で、それで支払ってきた」
「……現金な熊だな。
というか蜂蜜ごときに一兆円でいくら食糧難だからっておかしいだろ……」

なんやかんやチームに戻ってきたプニキと呆れかえるクロえもんを尻目に、他のメンバーは三つの墓で祈りを捧げる。


「ダイアーさん、俺はディーオや拳王連合軍の連中と同じく戦い抜く。
アンタが言う吸血鬼にはならないから安心して眠ってくれ……」

ディオは最良の友であったダイアーに誓う。
彼の心は未だに悪の心はあるかもしれないが、吐き気を催す邪悪な精神では決してない、別の意識が生まれていた。
それを生み出すきっかけになったのは他でもダイアーだったのだ。
必要とあらば盗みや殺しはするにしろ、友人だけは例え死んでいても裏切らないだろう。


「必ずカオスロワを終わらせ、新しい時代を作る。天で見ているがいいムギちゃん」

自分に野球という道を示し、力を貸してくれた紬の墓前で拳王は祈る。
神にではなく紬に。
ラオウが仲間が死んで悲しいと思ったことは数あれど、ここまで強い悲しみを覚えたのは紬が初めてだった。
紬のような犠牲を出さないためにラオウは戦い続けるのだろう。


「……」
『熱斗。君を失って半身を失ったような気分だけど、僕は翔鶴と一緒に戦い続けるよ』

ロックマン、翔鶴にとって最愛の兄弟である熱斗の喪失。
機械という隔たりはあってもかけがえのない家族であった。
それはあまりにも重くのしかかったが、だからと言って歩みを止めるのは熱斗への裏切りに他ならない。
兄弟への手向けは殺し合いを一秒でも早く終わらせ、世界を平和にすることにある。
その平和を掴むために討つべき敵もよくわかってきた。
それらを討伐すれば熱斗の望んだネットナビと人類による絆の世界もきっと蘇ると彼らは信じて疑わなかった。

「翔鶴姉、そろそろ……」
「待って瑞鶴……」

黙祷を終え、仲間たちが次々と横浜スタジアムに向かう中、翔鶴は自分の赤い鉢巻を外して熱斗の墓に添え、反対に引っ掛けてあった青いバンダナを被った。

『翔鶴……』
「これで熱斗さんも一緒ですね、彩斗さん」
『……ああ、三兄妹で日本を救いに行こうか、翔鶴、熱斗』

260奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:18:20 ID:.1T/Mroc0


ダイアーは死んだ、紬は死んだ、熱斗は死んだ。
それ以前にシグナムら多くの仲間が死んだ。
それでも彼らの遺志は生者の中で生き続け、どんなに過酷で奇妙な旅でも耐える心の強さとして残り続けるのであった。







――そして生者が抱く死者への感情は、この殺し合いがただの殺戮ゲームではないと気付かない程度に、拳王連合軍の目を曇らせるには十分であった。





(翔鶴姉……祐一郎も熱斗もとうに死んだのにすっかり光家に束縛されている。
祐一郎の遺品であるロックマンのせいで……

でも拳王連合軍に野球をしてもらうためにも選手になれそうな奴を今轟沈させるのは得策じゃない。
ロックマンを轟沈させて翔鶴姉を提督さんの下へ連れて行くのは拳王連合軍が優勝してからでも遅くない。

最良の戦士による儀式完遂まで、あとたったの2試合……それまで耐えるのよ瑞鶴、ついでにメーガナーダも)
(インドララ!)


まさか新たなる仲間が大災害を引き起こした黒幕の手先であると気付かない程度にも、タクアン・悪魔将軍なき拳王連合軍の目は曇っていた。




【二日目・20時00分/神奈川県 横浜港】

【共通】
※後からきたハクメン・瑞鶴・メーガナーダを除いた全員が強化マシンにより超強化されました
 全員の強化が終わると同時に故障したため、放棄されました
※都庁に向けてMEIKOの消える魔球の中に封入された挑戦状+電車ごっこロープ@ドラえもんが送り込まれました
 内容は21時までに聖帝軍だけで横浜スタジアムに来ないと東京を破壊するという内容です
 数分後に都庁に着弾します
 なお、消える魔球にもそれなりの殺傷能力があるので直撃すると一定レベル以下の参加者が死ぬかもしれません
※ナッパなどの一部イチローチームメンバー、ドラゴンズを敵とみなしました
 ヘルヘイム(都庁同盟軍)とドラゴンズが手を組んでいることにも気づきました

261奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:18:49 ID:.1T/Mroc0




【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】超強化、悪の心(軽度)、深い悲しみと憎悪
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、翔鶴を必ず守る
0:横浜スタジアムで聖帝軍と野球対決する
1:熱斗を殺す原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺す
2:翔鶴さんは絶対に失いたくない
3:僕に従姉妹(?)ができたぞーーー!
4:まだ顔を合わせていないサーフ博士を信頼
※PETの中にいます
※ダイジョーブ博士の残した装置で強化されました。全ステータスが格段に上昇しています
※ダークチップ使用により悪の心に少し汚染されました


【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】超強化、深い悲しみと決意
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、熱斗のPET(ロックマン入り)、シンクロチップ、チップ各種(プリズム・フォレストボムは確定)、熱斗のバンダナ
【道具】ダークチップ一式
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、彩斗を必ず守る
0:横浜スタジアムで聖帝軍と野球対決する
1:熱斗を殺す原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺したい
2:私のせいで彩斗さんが……
3:ダークチップは二度と使いたくないが、奪われると危険なので所持はしておく
4:瑞鶴に謎の親近感。私に血の繋がらない妹ができた?
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました
※超強化の影響によりステータスが大幅上昇しました


【ラオウ@北斗の拳】
【状態】超強化、首輪解除、今までで最大の悲しみと決意
【装備】炭酸水
【道具】支給品一式、その他不明、ムギのスタメンメモ
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:まずは横浜スタジアムで聖帝軍と野球対決をするぞ!
1:次はヘルヘイム(都庁の世界樹のこと)だぞ!
2:その次はイチローチームとドラゴンズだぞ!
3:それからビッグサイトも攻略するぞ
4:東京を平定したら最後は主催(九州ロボ、死者スレ、沖縄のシャドウ)だぞ!
  それまで待っていろ!
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※都庁をヘルヘイムであると誤解しています


【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【状態】超強化、首輪解除
【装備】テニスラケット、テニスボール×∞、諭吉一枚
【道具】支給品一式、少年ジャンプとヤンジャン、その他不明
【思考】基本:主催者達を滅ぼす
0:横浜スタジアムで聖帝軍を滅ぼす
1:マーダーも滅ぼす
2:信頼するラオウたちと行動する
3:テニスがしたいが、野球をする
4:超人血盟軍を全滅させたヘルヘイムは必ず滅ぼす
5:ハゲ(ナッパ)も滅ぼす、ドラゴンズやナッパも滅ぼす
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【MEIKO@VOCALOID】
【状態】超強化、修羅化、首輪解除、強烈な悲しみと殺意
【装備】アルティメットアーマー@ロックマンXシリーズ
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
0:横浜スタジアムで聖帝軍を皆殺し
1:ラオウ達に協力してもらう
2:ヘルヘイムのインベスはとりあえず皆殺し
3:ラオウへの特別な感情
4:ハゲ(ナッパ)を見かけたら嬲り殺す、仲間がいたら皆殺し
※今までとは別人です。
※『無限の回転』を習得しました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました

262奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:19:22 ID:.1T/Mroc0


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】超強化、首輪解除、本気モード、 悲しみ
【道具】シンクロチップ、他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ) 、最高級蜂蜜残り8つ
【思考】基本:あのAA
0:横浜スタジアムで聖帝軍をそげぶ
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:未だに大阪で見かけたあの怪しい二人組の正体が引っかかるんだが……?
3:プニキと契約中、一試合ごとに4つ蜂蜜を渡す
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【状態】超強化、HP満タン
【装備】ムラマサ
【道具】なし
【思考】基本:新しきお館様(上条)に従う
0:横浜スタジアムで聖帝軍をスレイする
1:敵は殺す、慈悲はない
2:お館様を守る
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】疲労(中)、超強化、首輪解除、悲しみ
【装備】PSVITA(デューオ入り)、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ、治療道具、その他不明
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:横浜スタジアムだ!
1:ジョースター家を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗が死ぬ前にネットバトルを挑みたかった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得て、デューオとクロスフュージョン可能になりました
 新技として一分時間を止められるデューオーバーヘブンを習得しましたが、一度の使用によって強烈な疲労を伴います


【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】超強化、HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
0:横浜スタジアムに向かうぞ
1:九州ロボ及び主催者を殺す
2:ダークチップに汚染されたロックマンが気がかり
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さとPSVITAの筐体を得ました


【謎のヒロインX@Fate/Grand Order】
【状態】超強化、首輪解除、困惑
【装備】無銘勝利剣
【道具】ドゥ・スタリオンⅡ号(故障中)、スマホ(FGOをやってたせいで電池切れした) 、自転車
【思考】基本:私以外のセイバーを殺すが、その前に対主催しておいて他の対主催者と協力関係を築いておく。
0:横浜スタジアムで聖帝軍と野球ですか
1:宇宙の平和が第一ですね
2:世界が滅ぶのはヘルヘイムのせいだと思うので、平和のためにも打倒します
3:ヘルヘイムの方がセイバー多そうだし
※彼女のクラスはアサシンです。
※謎のヒロインXです。その正体は謎って言ったら謎です。
※世界が滅ぶ原因がヘルヘイムであると思い込んでいます
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【状態】健康、全ステータスMAX、首輪解除
【装備】木の棒
【道具】支給品一式、その他不明、最高級蜂蜜4つ
【思考】基本:ムギさんからハチミツを貰うために主催者たちを野球で潰す契約だったが……
0:横浜スタジアムで野球をする
1:ホームランを打つ
2:バッティング以外はマジでやりたくない
3:申し訳ないが蜂蜜なくなったら契約終了でチーム抜ける
※強化しなくともバッティングの腕はメジャーリーガー級です


【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンズへのヤンデレ的怒り
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
0:横浜スタジアムで聖帝軍と試合する
1:イチローさんをNTRするドラゴンズを許さない!!
2:どんなことをしてでも(最悪殺してでも)イチローさんを取り戻す!
3:イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん………………
※強化しなくとも腕前と戦闘力はメジャーリーガーです

263奇妙な冒険は続く ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:20:40 ID:.1T/Mroc0


【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】超強化、首輪解除、非常に強い悲しみと黒い殺意
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んで勝つ!
0:横浜スタジアムで聖帝軍を撃破する
1:敵は全員倒す、俺たちは正しいはずだ!
2:イチロー選手をドラゴンズの魔の手から助け出したい
3:みんなには隠してるが、仲間を殺したホワイトベース組が全滅したことには超メシウマ状態w
4:てゆーか風評被害に踊らされるクズは死ね、氏ねじゃなくて死ね
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】中ダメージ、unlimitedモード、テルミ限定で現実逃避
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『悪』を全て滅する
0:全ての『凶』への対処のためにも拳王連合軍と手を組む
1:世界の平和のためなら力による東京をやむを得ない
2:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
3:風鳴翼は滅する
4:東京の『凶』、千葉の『凶』は警戒を続けるが後回し
5:悪魔将軍を殺した窒にいる何者かを警戒
6:テルミ? まだ死んでないさ
※unlimitedモードに入りました
※沖縄の『凶』(シャドウ)の気配を察知しました。能力から他の参加者よりも具体的な位置がわかります
 また、具体的な倒し方を知らないため、日本の生き残った戦力を全て集めれば勝てると思っています
※結界でシャドウが動けないことまでは知りません


【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康、最終決戦仕様
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、違法改造スマホ、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、宝玉輪@女神転生シリーズ
    石ころ帽子、妨害電波発生装置、裏世界転送マシン
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従い、彼の理想である艦むすの楽園を築く
0:作戦に従い、横浜スタジアムで聖帝軍と野球をする
1:拳王連合軍にイチリュウチームか聖帝軍へ試合をするように仕向ける
2:拳王連合軍が優勝したらサーフと合流し、翔鶴姉にも連れて行く
3:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
4:翔鶴姉にあえてホント良かった……
5:翔鶴姉を光の呪縛から解放したいが、ロックマンを殺すのは全ての野球の試合が終わってからにする
※サーフが生みだした艦むすです
※サーフとケッコンカッコカリ済みです
※『器』であるメーガナーダはミヤザキの『巫女』である瑞鶴か翔鶴にしか操れません
※裏世界転送マシンは二チームを野球ができる裏世界へ飛ばし、他参加者の妨害や乱入を防いで野球ができます
 裏世界が崩壊するタイムリミットは最大三時間。使用も二回まで。
 負けたチームは崩壊する裏世界に取り残され、死亡します。(移籍などのケースはどのように扱われるか不明)
※改造により現在の翔鶴と同じくらいの戦闘力を有しています

264 ◆LYp5adl2nU:2018/11/02(金) 22:21:14 ID:.1T/Mroc0
投下終了です

265あきよの破壊力が異常:2018/11/08(木) 20:47:33 ID:0GH9fTow0
投下乙です

イリヤいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやいりやがああああああああ!!!!!!!!

266あきよの破壊力が異常:2018/11/08(木) 20:54:12 ID:0GH9fTow0
(...しかし、きみには失望させられたよ、イリヤ)

本体のエンブリヲがあの部屋へ辿りつき見つけたのは、ルビーを持ったイリヤ。
それを見て、『ああ、そういうことか』と粗方の事情を悟った。
彼女は、嘔吐してしまった。己の吐き気に負けてしまったのだと。

267 ◆nqoEANg5Wg:2018/11/08(木) 21:08:15 ID:0GH9fTow0
投下します

268 ◆nqoEANg5Wg:2018/11/08(木) 21:19:13 ID:0GH9fTow0
「ヒャッヒャッヒャッ!!斬擊攻撃!!」


ザシュ ザシュ


「なん……で……?嫌だ………しにたく………ない…………」

こうして鹿目まどかという少女の人生は呆気なく幕を閉じた

【鹿目まどか@変身する女性・少女ロワ 死亡確認】

【二日目・20時00分/神奈川県のどこか】

【山姥@モンスターストライク】
【状態】健康、運極
【装備】包丁
【道具】支給品一式
【思考】基本:全員SA☆TU☆GA☆Iする
0:この少女の遺体を料理して食べる

269 ◆nqoEANg5Wg:2018/11/08(木) 21:20:56 ID:0GH9fTow0
投下終了です

タイトルは「どう料理しようかな」でお願いします

270ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:46:18 ID:HFljj9ss0
現在時刻は午後七時を回ったところだろうか。
黒き仮面の男にして現カギ爪団の頭領であるゼロもといルルーシュと、C.C.は上層部に呼び出されていた。
上層部に近づけることは、このビッグサイトに潜伏しているカオスロワちゃんねる管理人(一連の事件の黒幕と見ている)のあぶり出しをしやすくなるので本来は喜ばしいことなのだが、仮面で隠したルルーシュとC.C.の表情には焦りの方が浮かんでいた。

その理由はビッグサイトの外に待機させていた妹たち五人が行方をくらませていたからである。
部屋には誰かが暴れた形成があり、美遊・美柑・唯・美也・クロエそして深雪に何かあったことは想像に苦しくない。
他者にはまず見せない狼狽ぶりをルルーシュは隠すことができなかった。
その直後に上層部からお達しが来たとあれば、タイミングが良すぎて嫌な予感を感じずにはいられなかった。

足はやに上層部のいる一室の扉にたどり着いたルルーシュは恐る恐る、重い扉を開けた。


扉を開けたルルーシュの目に飛び込んだのは、部屋の奥に王の如く座る有翼の男――上層部筆頭のディー。
金髪の冷酷そうな軍人――機動部隊隊長のドリスコル。
竜殺剣を担いだ爆乳脇見せ人修羅おばさん――水面下の同盟であるセルベリア。
ムキムキマッチョのコメディアン――松本。
まるで雪の妖精にような愛らしい妹――深雪。


そして――


「美遊…美柑……ッ!!」

椅子に縛り付けられ、顔や体に無数の痣や切り傷をつけられたルルーシュの妹である美遊・美柑がいた。
元の可愛らしい顔がわからなくなるほどの拷問を受けたようだ。
松本の拳に血が付いているところからして拷問を行ったのはこの男らしい。
なぜ自分の妹たちが痛めつけられているのか……ルルーシュは多少無様ななりでも構わずに声を荒らげて筆頭のディーに訴えかけた。

「これはいったい……何の真似ですか! ディー!!」
「ゼロ……彼女たちから色々と話を伺ったよ」
「なに!?」
「このビッグサイトに裏切り者が入ってくるとはな……!」
「「!!?」」

ディーの言葉にルルーシュだけでなく、後ろにいたC.C.をも震撼させた。
察するに妹たちを拷問して得た情報からクラウザーの蘇生方法を奪ってナナリーを生き返す野望や、対主催や主催と接触しようとした計画がバレたのか。
そうなると自分たちの運命はどうなるか。

「裏切り者には死を」

ディーが冷酷に言い放ってからは早かった。
彼は『裏切り者』に向けて刀を投げつけた。
大神の力による加算もあり、人間離れした速度で投げつけらた刀を肉体面で弱いルルーシュが避けることは叶わない。
そして刀はドスリと刺さった。

「え……?」
「ルル……――」

……ルルーシュの隣にいたC.C.の脳天に。
彼女は不死のギアスの持ち主であったが、未だに外れていない首輪によってそれは制限されており効果を発揮しない。
すなわち頭部破壊イコール即死であった。
命を失ったC.C.の体が糸の切れた人形のように床に倒れた。

「し……C.C.ーーッ!! ディー貴様ァ!!」

妹たちを傷つけられた上に相棒である女の死にルルーシュも我慢ならずにディーに吠える。

271ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:46:55 ID:HFljj9ss0

「お待ちくださいお兄様!」
「深雪?!」
「これには理由があるのです!」
「ワケ……?」

危うく殴りかかる勢いだったルルーシュを止めたのは拷問を受けていない深雪であった。
妹の言葉により噴火寸前だったルルーシュの怒りも、一時的にでも休火山にまで戻すことはできた。

「ゼロ、いきなりすぎて混乱を招いてすまない……怒っても当然だろう」

ルルーシュの怒りに特に動揺した様子もなく、ディーはまず謝辞をし、そして妹たちを拷問したわけとC.C.を殺した理由を淡々と語った。

「そこのC.C.と美柑・美遊、クロエという雌豚どもは都庁の関係者であることが発覚した。
ないしはクラウザーさんの蘇生を阻み、内部からの破壊工作を狙っていたスパイだったのだ」
「C.C.とクロエたちが!? どこにそんな証拠が?!」
「そこにいる美柑と美遊が自供した。
厳密には都庁の関係者の身内がいるくらいだが、支援をしようとは考えていたらしい。
彼女らの口は硬かったが強烈な自白剤と拷問を加えたら観念して知ってる限りの情報を吐いてくれたよ」
「馬鹿な、ありえない! ならば私も……」
「おっと二人によると君や深雪君は無関係らしいから安心したまえ。
彼女らは君の類まれな指揮と深雪君の魔法の才能を使ってバーターとしてビッグサイトに入るつもりだったらしい。
仲間だと思って信じて裏切られて君には同情するよ」

C.C.とギアスで操っている妹たちが自分を裏切るなど考えられない。
都庁に関しては侵入したらしい聖帝軍の中に妹たちの知り合いが何人かいるぐらいで、味方するためのパイプなどは持っていない。

だが、ルルーシュは幾つかの理由によりそれ以上反論に出ることができなかった。
下手に周囲を刺激すると疑われる危険が増大して今度は自分に死の矛先が向く。
この会議室最弱は間違いなくルルーシュであるし、深雪も強いがディーやセルベリアにまで勝てるかは怪しい。
動けない美柑や美遊は言わずもがな。

ギアスで味方につけようにもドリスコル以外に効くかは微妙。
他の三人は人外の気配がし、仮に耐性があった場合は詰む。
おまけに奪取予定の蘇生手段がなんだかよくわかっていないので、ここで暴れて破壊の末にナナリーの蘇生手段を喪失する可能性があるのだ。

ここは事を荒立てずに仲間に裏切られた悲しき狂信者を演じるしかなかった。

「……先ほどの狼藉はすみません。彼女は味方だと信じていただけに」
「気にしていないさ。あれぐらいは想定の範疇さ。
スパイを油断させるためにも君には教えずにここへ招き入れる必要があった。
先に教えてしまったら近くにいる君が殺されてしまう危険もあったからな。
敵を騙すにはまず味方からというわけだが、君が動揺したり怒っても無理はないだろう」

どこか恩着せがましく聞こえるディーの言葉にルルーシュは反吐を吐きそうになるが、ぐっとこらえる。
今は妹たちの安全が最優先――

「よし、彼女らは用済みだ。松本」
「……ま、待って」
「約束と違――」
「へッ、悪く思うんやないで!」

松本の持つ槍の一撃によって命乞いをする美柑と美遊の首が切断された。

「なッ……」

自分が堪えれば妹だけは助かるだろう――ルルーシュのその甘い考えは打ち砕かれた。

272ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:47:34 ID:HFljj9ss0

「裏切り者には当然の報いであるな、レ○プされる価値もない雌豚にはお似合いだ」

放心状態になったルルーシュに構わず、ドリスコルが冷たく言い放ち、その横で松本は槍でC.C.の首をも切断し。

「見てみい、ワイの会心のギャグ、団子三姉妹や!」

一番上にC.C.、中間に美遊、一番下に美柑の順番で三人の生首を槍で串団子のように突き刺して周囲に見せびらかした。





「……ッ!!」

瞬間、妹をなぶり殺しにされたルルーシュの怒りは頂点に達した。
ルルーシュの手がポケットの中に隠しているナイトメアフレーム入りホイポイカプセルに伸びようとする――

(お兄様!)
(深雪!)

しかし、ルルーシュが反抗に出る前に隣にいた深雪に手を掴まれ、止められた。
その腕はひどく汗ばんでいるのか濡れていた。

(申し訳ございませんお兄様。
でもこうするしか、お兄様を守る方法がなくて……)
(深雪……)

思わず怒りを噴火させそうだったルルーシュであったが、深雪のおかげで踏みとどまることができた。

(謝るのは俺の方だ。妹たちを殺されて頭に血が上った愚兄を許してくれ)
(いいえ、みんなを守れなかった愚妹である私をお許しください)

実際、ガウェイン一機では上層部相手に勝ち目は薄く、仮に勝ててもビッグサイト中の狂信者の総攻撃を受けて殺されていただろう。
ナナリー蘇生までは死ねない身である以上、ルルーシュにとってそれは嬉しくない。
幸い、自分が裏切りかけたのは上層部や松本には気づかれてないようだ。

「君の仲間事情に関しては残念だが、つい先ほど逃走中と思われた唯・美也の惨殺死体が東京湾で確認された。
二人は裏切り者ではなかったそうだが、クロエに殺されたようだ。
その逃走中のクロエは、とあるネームド狂信者が討ってくれたことで問題はそこまで拡大しなかったのは僥倖だ」
「……そうですか、クラウザーさんへの恥を重ねないためにも裏切り者が討たれて良かったです」
「どうやら気持ちの整理がついてくれたようだね」

新たに報じられた唯と美也、そしてクロエの死にルルーシュは表面上は動揺せず、平静を保つ。
もちろん心の中では生存を信じたかった三人への望みが絶たれた失望感と黒く煮えたぎる狂信者への怒りがあるが、ただ一人生き残った妹の深雪を守りたい一心で噴きこぼれないように深く蓋をした。

「……ただ一つ、クラウザーさんの蘇生手段は確かにこの施設にあるんですかな?」
「詳細は言えないが、蘇生手段は確かにビッグサイトにある。
だが、それにはどうしても生贄の数が足りないのだ」
「具体的な必要人数は?」
「都庁のヘルヘイム、聖帝軍、拳王連合軍、千葉に居るイチロー率いる同盟、主催がいると思わしき九州ロボ。
この組織の内、最低三つは滅ぼしておけば蘇生は可能になる」

ルルーシュはそれは本当なのかと、同室内にいるセルベリアに視線で質問する。
答えはイエスであった。
蘇生手段があるのは嘘ではないらしい。

「良かった……そうでなければ私がここにきた意味はない」

もちろん、それはクラウザーさんの蘇生のためではなくナナリーのためという意味であるが、狂信者たちにはわかるまい。

「熱心なのは結構。
では、ゼロ、君と深雪くん、カギ爪団の長となった君に仕事を与えよう。
ここにいるドリスコルと機動部隊、以下ネームド狂信者数名と共に都庁攻略に向かって欲しい」
「!!」

筆頭のディーから与えられた仕事は狂信者と戦争中であり、二度の侵攻を退けた都庁の攻略。
すなわち最前線送りであり、主催との接触方法と管理人を見つけていないままビッグサイトを離れたくないルルーシュとしては非常にありがたくない展開であった。
パイプを持っているセルベリアとも引き剥がされてしまう。

273ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:48:06 ID:HFljj9ss0

だが、断るわけにもいかない。
ただでも名目上は、裏切り者を招き入れてしまった戦犯一歩手前の狂信者である。
本当ならば諸共処刑されてもおかしくない立場であり、口答えすれば今度こそ抹殺される可能性が濃厚。
生かされているのはおそらく、カギ爪団をコントロールできる指揮官が足りないためでもあるのだろう。

「わかりました」
「ああ、21時までにはここを出発し、22時までには作戦を開始できるように準備して欲しい」
「随分、短いですね……もう少し作戦を練る時間が欲しい」
「その気持ちはわかるが、クラウザーさんが待ってくれなくてね」
「は?」

ディーの口から漏れたクラウザーさんが待ってくれないという言葉にルルーシュは耳を疑う。
だがクラウザーは死んでおり、まだ生き返ってないはず。
これはどういうことなのか?

「これを見てくれ」
「……な」

部屋に備え付けのモニターに映し出されたのは、異常気象を引き起こしている現状の沖縄。
ただの嵐や台風ではない……魔力を持たぬ者でも見ればわかる明らかな『異常事態』であった。

おもわず絶句するルルーシュ……なぜならば、ルルーシュは妹キャラ(55歳)から横流しされたプロジェクト・テラカオスの概要を知っているため、異常気象の正体がTCによるものだと感づいていた。

「なんやこれは?」

TCのことなど微塵も知らない参加者である松本が疑問を口にする。
真実に近いものはルルーシュが知っているが、その疑問に答えたのはディーであった。

「これほどの形容し難い天災を引き起こせる存在は一人しかいない……クラウザーさんだ」
「?!」
「は?」
「なに?」

上層部筆頭の言葉にルルーシュだけでなく、深雪や松本も首を傾げる。
狂信者はともかく、この三人はクラウザーがそんな力など持っていないことを「知っている」のだから。

「ちょいまてや、クラウザーさんはまだ生き返っておらへんのやろ!?
大阪でグルドって奴に殺されたハズやないのか?」
「おまえたちこそ何を言っている。
この世界を統べるクラウザーさんなら冥府から異常気象を起こすなど朝飯前だ。
グルド相手には根岸崇一という存在に『世借り』していた弱体化状態だったためにしてやられてしまったが、本来の彼なら世狩りしていないと世界を一瞬で滅ぼせる力の持ち主に違いない。
故に沖縄に発生した神格者すら近づけさせない気象はクラウザーさん以外はありえないのだ」
「は、はぁ……なるほど(め、滅茶苦茶な理論やな)」

ドリスコルの解説になっていない解説に松本は表向きは納得しつつ、内心では呆れ果てていた。

余談だが、上位クラスの狂信者になると根岸崇一(つまりクラウザーさんの中の人)のことは周知されている。
ただし、クラウザーさんの正体ではなく、クラウザーさんが化けていたアバターのようなものと思われているが。
クラウザーさんは絶大な力を持っているが故に、人間レベルに力を落とさないとこの世界で歌えないらしい。
そのための器が根岸であり、波長のあう彼に世借りしていたというのが超のつく狂信者の理論である。

当然真実は違うのだが、狂信であればあるほど目が曇っていくので信じているのだ。
自分たちの英雄がクソザコナメクジだったと信じたくない者たちと同じ心理である。


「見ての通り、クラウザーさんは非常に怒っていらっしゃる。
このまま行けば我らは忠義を示せぬまま滅ぶことになるだろう。
あの方が望むのならば滅ぼされるのもやむなしだが、忠義の証を立てられぬまま死ぬわけにもいかんだろう。
クラウザーさんを認めなかった世界への復讐も終わってはいない」

ディーは異常気象をクラウザーの怒りと受け取ったようだ。
彼の怒りを鎮めるためにもSATUGAIを続け、装置でクラウザーさんを蘇えらせないといけないと考えに至ったようだ。

「もう、我々には一刻の猶予もない。無茶は承知の上だ。
手始めに都庁を滅ぼし、次はイチリュウチーム、拳王連合、そして最期は主催だ。
第一ステップとして都庁への最終攻撃作戦を実行に移す。
まずはドリスコルとゼロを中心に作戦を立て、都庁を陥落させてもらいたい。
防衛隊長であるセルベリアと残りのネームドは辞令があるまで待機、以上だ」

筆頭のディーは命令を下し、部屋に集まった集団を解散させた。
ディーとドリスコル以外は一度ビッグサイトの外に出た。
なお、深雪は裏切り者を見つけた功績を認められ、(やたら悪臭漂う)薬によって首輪が解除された。



【C.C.@コードギアス 反逆のルルーシュ 死亡確認】
【美遊・エーデルフェルト@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 死亡確認】
【結城美柑@ToLOVEるダークネス 死亡確認】

274ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:49:14 ID:HFljj9ss0




※ ※ ※


(クソッ、先手を打たれたか!!)

ビッグサイト入口の手前の野営地、一つのテントの中でルルーシュは悪態をついた。
C.C.や妹たちを殺された、ということもあるが、それと同じくらい彼を苛立たせることがあった。

(神格者であるらしいディーが沖縄の異常気象を見抜けないだと!? そんなわけがあるか!)

ディーは神格者には違いないのだろうが、それほどの存在であればTCを知らなくとも異常気象の正体がクラウザーの手によるものではないと気づくはずだ。
少なくても種族:神ではないルルーシュでもわかったぐらいなのだから。
せめて組織を率いるほど正常な知性が残っているなら松本ぐらいの反応が正しいはずである。

(……もしかすると、奴こそが俺が警戒している『カオスロワちゃんねる管理人』なのではないか?
 集めた情報によると他の上層部連中と違ってディーだけはビッグサイト占拠後から一歩も外に出ていない。
 狂信者と認められれば安全圏であるこの場所ならサーバー管理も難しいことではない)

まだ仮設段階であるが、ルルーシュが危惧する殺し合いの真の黒幕である管理人がディーではないかと結論づける。
上層部筆頭なら表向きで数だけならダントツである狂信者集団を扇動し、掲示板を操作すれば殺し合いのほぼ完璧なコントロールも不可能ではない。
これまでの一部例外を除いた、被害過多のガバガバな作戦もクラウザーさん復活ではなく、テラカオスを生み出し簒奪するのが目的とも取れる。

(仮に奴が管理人ならば、セルベリアと引き離しと同時に最前線送りも、急に狂信者に接近してきた俺を警戒してのこととも思える。
 ディーが俺の正体と目的に気づいているならば、俺の首輪を外さなかったのも合点がいく。
 そしてでっち上げの反逆罪で妹たちとオマケのC.C.が見せしめ的に殺されたとも思える)

ディーもとい、上層部の不可解な行動に疑念を持たざるおえない。
深雪にも話を伺ったが、先程は自身や兄を守るためにディーに従うしかなかったと語っており、少なくとも何らかの理由で自分を追い詰めたいのは確かなようだ。
ディーがクロである可能性は濃厚である。

(仮に管理人だったら絶対に許さん……いや、そうでなくとも深雪以外の妹たちが殺されたのはディーのせいだ。
奴には必ず死んでもらう……ついでに松本にも地獄を味あわせてやる!!)

……ルルーシュとしては妹たちが惨たらしく殺された時の怒りがでかいので、ディーの正体がなんであれ殺す気満々だったが。

(まずは最前線で生き延びなくては……どのみち一定以上の犠牲者を出さないとナナリーの蘇生は夢のまた夢。
都庁と聖帝軍はどのみち、疑いの目を向けられすぎて誤解の払拭など今更できないだろう。
数少ない英雄視された対主催の小町が、都庁の魔物を絶対悪とする旨の記録もあった。
本当の真実やスタンスは不明だが、勢いが止まらない以上、都庁には必要な犠牲として滅んでもらおう)

掲示板の書き込みを鵜呑みにするわけではないし、むしろ嘘の書き込みの方が多いと思っているルルーシュであるが、頭の回らない愚民はそれに気づかないし、切り捨てるなら拳王連合軍と同時に都庁同盟軍も視野に入れた方が良いだろう。
ルルーシュの最終目的は妹ナナリーと共に過ごせる平和な世界であり、少なくとも都庁は必要ないと判断したのだった。

(こうなっては仕方ない、まずは都庁攻略を考えなくては。
うまくいけば対主催の小野塚小町、イチリュウチーム、主催との接触もできるかもしれん。
ナナリーのためにも一端、ビッグサイトを離れるよう腹をくくらねば)

※ ※ ※

275ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:49:47 ID:HFljj9ss0

一方、ルルーシュと深雪がいるテントとは別のテント。
そこには脇見せ爆乳おばさんことセルベリアが一人でいた。

「なんてことだ……ディーとドリスコルがあそこまで狂っていたとは!」

比較的冷静沈着であるはずのセルベリアは怒り任せに机を叩いた。
更年期障害? NO。 彼女なりの怒れる理由があったのだ。

「沖縄の異常気象がクラウザーさんの仕業?
バカな、あの人は世界の消滅なんか望んじゃいない。
世界の消滅を望むのならば、歌で殺し合いを止めようなんて考えなかったはずだ!
あれは絶対に別の何かの仕業だ!」

セルベリアはルルーシュと同じく、異常気象はクラウザーさんによるものではないと見抜いていた。
所持しているヴァルキュリアと悪魔の力による本能的直感力がそうさせており、彼女なりにクラウザーさんを知っているからこその解答だった。

冥府さえ支配する偉大な力を持つクラウザーさんならば、こんな回りくどいことしなくても大災害以上のパワーで世界を滅ぼすことは可能。
それをしないのは彼なりに世界を愛していたからであり、歌で殺し合いを打破しようなどと考えなかったはずだ。
ディーらとは違うセルベリアなりの持論であった。

先ほどの場では、変に反対意見を述べるとゼロと企てている反乱の準備がバレてしまう危険があったため、ポーカーフェイスを気取っていたが、同じ狂信者であるセルベリアから見てもディーとドリスコルの考えは異常に見えたのだ。
まあ、常人から見たらどっちも狂ってるけど。

「……いや、曲がりなりにもディーは神。ドリスコルは秘密機関の主任だった男だ。
もし二人が異常気象をクラウザーさんによるものでないと見抜けなかったのではなく、最初から知ってて隠しているとしたら?
本当に奴らの目的はクラウザーさんの蘇生なのか?」

奇しくもルルーシュと似た結論にたどり着いたセルベリア。
ディー・ドリスコルへの疑心が広がる。

だが、二人を突き詰める証拠もない。
セルベリアはゼロと違って、カオスロワちゃんねるの危険性と裏に気づいていないので尚更だ。
テラカオスという存在についてもホモどもがまだビッグサイトに戻ってこないのでよくわからないことが拍車をかけている。

「クッ、だとしてもどうするべきか?
まずは最前線送りにされてしまう前にカギ爪団のゼロともう一度、会うべきか?」

まずはゼロ(ルルーシュ)との再接触を図ろうと考えるセルベリア。
しかし迂闊に接触すると場合によっては反乱を企ててることがバレてしまう。
そうなれば運が悪ければ死、良くても狂信者追放である。

「私は……どうするべきか。おまえならどうする、小町」

かつて自分を退けた死神を主軸とした『ヘルヘイムの魔物に襲われたモブ参加者を救った乳神様!』という見出しで飾られた掲示板のスレを眺めながら、セルベリアは苦悩する。


※ ※ ※

276ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:50:20 ID:HFljj9ss0


同時刻、ビッグサイト内部の一室。
そこにはディーとドリスコルがおり、ルルーシュとセルベリアの疑念通り二人はクラウザーさん復活以外の野望を――


「天候を操り沖縄をレ○プの限りを尽くすとは」
「流石はクラウザーさんだ!」


――企てていなかった。
……それどころか件の異常気象をうっとりと眺めている。

彼らは本当の、本当に、TCのことなど一切知らず、異常気象をクラウザーさんの絶対的な力の象徴とさえ考えていた。
いちおうビッグサイト自爆による破滅も視野に入れているが、それは蘇生が上手くいかなかった場合の話。
クラウザーさんの蘇生以上の目的がないのは本当の話だった。
どうやらぶっ飛んだ理性は知性や直感力をも食ってしまっているようであり、神様だろうが軍人だろうが、異常気象の危険性に気づかない程度にはDMCに毒されている。

「しかし、良いのかディー?
先ほどのゼロ自身にはアリバイもあったとはいえ、裏切り者をビッグサイトに招き入れたのは事実だ。
奴が裏切り者ではないにしろ、処刑……とまでは行かずともカギ爪団の指揮権は剥奪すべきじゃないか?」
「私もそう考えたが、狂信者としては異端なカギ爪団をまとめられるネームド狂信者は彼かセルベリアぐらいしかいない。
セルベリアは別の任務があり、後は戦術クラスの指揮が限界な武闘派しか残っていない。
消去法でカギ爪団には彼しか任せられないのだ」

ゼロに関しては利己的な考えは持っていながらも、裏切り者ではないと判断しているらしい。

「まあ、流石に責任が全くないとは言えんから最前線送りにはなってもらったがね」
「クラウザーさんへの忠誠心があればそれなりの戦果は出してくれるだろう」

さあ、読者の中にはそろそろ気づいた方もおられよう。
C.C.や妹たちは裏切りなぞ企ててはいない。
つまりでっち上げは確実なのだが、ここいる二人は「裏切りは本当にあったもの」と捉えており、でっち上げとは気づいていない。
この二人がでっち上げの犯人ではないとしたら誰の仕業なのか?

「兄と自分を最前線に送って活躍させてほしい」
「それが『彼女』の進言でもあったからな」

二人の男が眺める画面の中には松本と共に、美遊・美柑を拷問する深雪の姿があった。
セルベリアとルルーシュたちが入ってくる数分前の深雪は溶けて証拠が残らない氷の棒で、少女たちに暴虐の限りを尽くしている。


※ ※ ※

同じ頃、深雪はルルーシュの背後でほくそ笑んでいた。

(上手くいった……お兄様の首輪解除こそ無理だったけど、他の妹失格者どもを売ることで私の首輪解除とお兄様をビッグサイトから離すこと、邪魔なC.C.の排除もできましたわ)

実はC.C.たちの裏切りでっち上げは上層部連中によるものではなく、この深雪によるものであった。
美柑・美遊の二人を上層部の下に連れて行く前に命だけは助けることを条件に知ってる限りの情報を吐くと同時に、「C.C.やクロエたちが裏切りを企てていたことにしろ」「ルルーシュが不利になることは言うな」と吹き込み、情報のでっち上げを可能にしたのだ。
もちろん、深雪は二人を助ける気など更々なく、ディーにも最期は裏切りの罰として惨たらしく殺すように耳打ちし、口封じにも成功。
結果、自分を除いた妹たちは全滅し、大好きな兄であるルルーシュの独占に成功したのだ。
そしてまさか自分の清楚な妹がそんなことをするわけないと信じているルルーシュは彼女を疑うことをせず、ディーやその他狂信者に怒りの目を向けさせることで余計真実から遠のかせたのである。

しかし首輪解除やC.C.の排除はわかるが、死亡率が高まる最前線へ送られることになんのメリットがあるのか?
否、それこそ深雪の狙いだったのだ。

(お兄様が戦いの前線に釘付けにされている内に、私の『共犯者』になってくださった人が然るべきタイミングに蘇生マシンを起動する。
共犯者の人は助けたい人が生き返って万々歳、ルルーシュお兄様はナナリーを生き返すチャンスを失った失望から私をもって愛してくれるはずですわ!)

なんとこの少女、最愛の兄を更に独占するためにルルーシュにナナリーを諦めさせようというのだ。
実際、蘇生マシンはあと一回動かないため、この一回を逃せばルルーシュもナナリーを諦めざる負えない。

(ふふふ……全てはお兄様に迷惑をかけたナナリーが悪いんですよ。
クロエたち同様、あなたに妹である資格はありません)

嫉妬混じりの黒い笑顔を浮かべる深雪。
目の前のルルーシュは全く気づいていない。

(さて、あとはあの人次第ですね……)

とはいえ、いくら深雪が優秀だとはいえ、妹たち謀殺の件も含めて一人でここまでできるわけがない。
ルルーシュの愛と上層部からの信頼を得るために共犯者が必要であった。


※ ※ ※

277ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:50:47 ID:HFljj9ss0



ビッグサイト外周部、そこで松本はさっき作り上げた悪趣味な作品である団子三姉妹を、オブジェのように飾っていた。
三人の絶望したような顔が狂信者の残虐性を物語る。

そう、この男こそ、深雪に協力した共犯者である。
初見で松本が生粋の狂信者ではないと看破した深雪は彼と取引を行ったのだ。
松本に狂信者ではないことをバラさない代わりに、工作に真実味を帯びさせるために手伝って欲しいと。
上手くいった時の見返りとして魔力の動きを辿ってわかった、ビッグサイト内部に隠された蘇生マシンの正確な位置を教えるということだ。
松本はこれを承諾し、深雪とwin-winの関係になった。
そして魔力(生体マグネタイト)の動きを読んだ深雪がビッグサイトの内部に侵入できたことにより、上層部が隠している蘇生マシンの正確な位置を知ると同時に、帯びた魔力の量から浜田の蘇生は決して不可能ではないと彼女は結論づけた。

あとはどこまで参加者を殺せば良いかだが、生き残っている組織の内三つ滅ぼせば良いとわかったので、その直前のタイミングでビッグサイトに戻れば良いのだ。(ちなみに魔法使いである深雪の裏取り済)
大型巨人こと大日本人に変身すれば、東京県内のどこからでも数分以内にビッグサイトに戻れる。
あとは狂信者を裏切って蘇生手段を奪うのみ。


(待ってろや、浜田! もう少しでおまえを生き返せるからなあ!
仮に世界が滅ぼうとも、俺はおまえと漫才がしたいんや!)


とうとう形になってきた野望を燃やす松本。
彼の視界にもまた、遠目とはいえ沖縄の異常気象は見えたが、もはや浜田に会えるのなら世界がどうなろうが知ったことではなかった。


【二日目・20時00分/東京都 ビッグサイト】

【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装(仮面なし)、妹への欲求(超極大)、非常に激しい怒り
【装備】ガウェイン@コードギアス@反逆のルルーシュ、スマホ@スマホ太郎
【道具】支給品一式
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
0:21時までに都庁を滅ぼす作戦を立ててドリスコルに協力する
1:カギ爪団に混じりながらDMC狂信者のクラウザー蘇生方法を探る。
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:1の為、ゼロとして行動する。
4:こうなった以上、深雪は責任持って俺が幸せにする。
5:テラカオスと大災害への対処法を探す。
6:狂信者内の潜伏者を警戒する。出来る事なら炙りだしたいが……
7:主催とコンタクトを取りたい。
8:近い内、ルルーシュとして対主催とも接触したい。
9:ディーに強い潜伏者疑惑。仮に違っても殺す。
10:松本もいつか殺す
※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※テラカオスについてはかなり懐疑的です。
※狂信者内にテラカオスを狙う第三者の存在が居ることを推理しました
※C.C.の支給品を回収しました
※深雪を全く疑ってません


【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
【状態】健康、ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中、首輪解除
【装備】深雪のCAD
【道具】支給品一式 サファイヤ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(美遊の支給品で魔法で凍結中)
【思考】基本:ナナリー含む妹キャラは皆殺し
1:狂信者を使い、先ずは都庁を攻めさせイリヤを抹殺する。
2:共犯者である松本と連携し、ナナリーの蘇生を秘密裏に妨害
  最終的にルルーシュからの愛を独占する
※松本の正体に気づいた上で秘密の同盟を組みました
※ビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました

278ルルーシュのナイトメア:2018/12/17(月) 22:51:16 ID:HFljj9ss0


【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、動揺、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:現段階ではテラカオスについては内密に調査する。他の連中には知らせない。
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:小町はいつか、この手で必ずレ○プ(倒す)する
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
5:最悪の場合はディー達を……?
  そろそろ、あいつらヤバイ気がしてきた
6:ゼロという男に対して今は保留
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※影薄組のことを組織に伝えました
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものではないと思っています


【松本人志@現実】
【状態】健康、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
1:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
2:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
3:深雪を上層部に会わせる。
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪の目的を知った上で秘密の同盟を組みました
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません


【ドリスコル@フロントミッション】
【状態】健康、首輪解除、レベル・全熟練度MAX
【装備】グレートゼオライマー@スーパーロボット大戦J
【道具】支給品一式、カレンデバイス(氷室美久ボディ)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:22時までにカギ爪団を伴って都庁を攻める
1:都庁攻略部隊を指揮する
2:都庁が体勢を立て直す前に攻略できる作戦を考え、進軍する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する 
4:マスターボールとオシリスはサーフに渡した
  なんか物凄い兵器にするらしいが……
※次元連結システムは氷室美久のボディにカレンデバイスを入れることで制御が可能になりました
 またカレン・ミューアの人格も上書きされました
 本人は善人ですが、極度のクラウザーアンチでDMCの曲を流されると人格が引っ込んで人形のようにドリスコルに従ってしまいます
※フロントミッション1〜5のスキルを網羅しています
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています


【ディー@うたわれるもの】
【状態】健康、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ(まだ未完成)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:セルベリアを中心としたビックサイト防衛部隊、ドリスコルを中心とした都庁攻略部隊を編成する。
3:大災害などに疑問はあるが、今は後回し
4:ネオ・ジオングスーツの完成を急がせる
5:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
6:シグナムは自分の手で討ちたかったが、まあ仕方あるまい
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます

279おまけ オシリス三分クッキング:2018/12/17(月) 22:52:35 ID:HFljj9ss0
タラタタッタッタ タラタタッタッタ
タラタタッタッタッタ ティタン♪

ポーポーポー ポーポーポー
ポーポーポー ポ・ポ・ポー♪

タラタッティタン♪ タラタタッティタン♪
タ タ タ タ タララララ ターン♪ 


愛は課金にある ソシャゲ厨の提供でお送りします。



※このSSの内容は、そのまま描写するとR-18Gになってしまうので
 残酷表現を緩和するために「さんぷんクッキングフィルター」を使用しています



(料理人担当の担当のサーフ氏登場)

こんにちわ 今日はドリスコル氏からいただいた瀕死の竜とマスターボールを使って強力な兵器に仕立て上げます。

まず用意する材料はこちらになります

※ ※ ※

新鮮なオシリスの天空竜上半身 1
艦むす素体          1
燃料            250
弾薬             30
鋼材            200
ボーキサイト         30
マスターボール        1

※ ※ ※

オシリスをこのまま料理するには些か大きすぎるので、最初はビッグサイトの倉庫から拝借したスモールライトで人間大の大きさにしましょう。
オシリスが私ぐらいの大きさになりましたら目覚めないように麻酔をかけ、生命維持装置に繋ぎましょう。
いくらあらゆる魔法や罠な無効な神様でも、死にかけてる時は特殊効果が発動しません。

では脳の安全を維持したら、脳や脊髄、心臓を除いたお肉や内臓をひとつ残らず取りましょう。
ここで斬り取ったアラはまだ捨てないでください。
後の料理で使います。

では残った部位をまず生命維持装置も兼ねた試験管に入れましょう。
ロボコップ2のケインみたいな語りになりましたね。
想像できない方はGoogleで検索しましょう。

続いて用意した艦むす素体をまな板(手術代)の上に乗せます。
先ほど切り取ったアラや鱗などを素体に練り込み、一体化させましょう。

次に試験管に入った脳その他を素体に移植します。
ここで間違えるとカタログスペック未満の能力になってしまうので、丁寧な作業を心がけましょう。

移植が終わりましたら燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトを乗せ、高速建造材を入れてオーブン(工廠)にいれて30分ほど待ちます。


艦むすが焼きあがるまでにマスターボールをハッキングしましょう。
「ひとのものをとったら どろぼう!」システムことセーフティを解除したので、これからはポケモンにトレーナーがいても奪うことは可能です。
現存するマスターボールはこれ一個しかないのと、高レベルポケモンを操れるかは別口なので使いどころは間違えず、勝てない相手なら解放しないようにしましょう。



たった今、艦むすが焼きあがりました。
ではオーブンをあけてみましょう。


【オシリスの天空竜@遊戯王デュエルモンスターズ 死亡……】


※これより「さんぷんクッキングフィルター」を解除します。

280おまけ オシリス三分クッキング:2018/12/17(月) 22:53:10 ID:HFljj9ss0





艦むすを作り出す工廠の扉は開かれ、提督たるサーフは彼女を迎え入れる。


「さあ、新戦力のお出ましだ。名前を行ってもらおうか」


一対の角や攻撃的雰囲気など、どこか龍らしさと持つ艦むすはサーフに歩み寄り、そして己の名を応えた。






「オレの名は天龍。フフフ、怖いか?」






【オシリスの天空竜@遊戯王デュエルモンスターズ 艦むすに転生】



なんと瀕死だったオシリスの天空竜は軽巡洋艦娘である天龍として改造され、蘇ったのだ。
オシリスと似たような男口調であるが、黒髪ショートにムチムチな巨乳ボディとオシリスの面影はほぼない。
強いて言うなら金色に輝く隻眼だけが彼と同じであろうか。


軽巡洋艦 天龍
古代ミヤザキが開発した艦むすの一つで、器を操る巫女として力を最低レベルまで落とした代わりに戦闘力に特化した一体。
登場初期は世界最高水準として多くの巫女やアースマイトを屠った。
とはいえ戦争後期は旧式化し、全体からするとそこまで強くない部類の艦である。

だが天才科学者であるサーフは天龍にオシリスの経験値と特殊能力を引き継がせることで大幅回収に成功。
生まれながらにして元の天龍+オシリスの力を得たのだ。
巫女としてはあまり使えないが、艦むすとしての戦闘力はかなり高い。


「オシリスの記憶や能力は引き継いだが、人格の方は大丈夫か?」
「大丈夫だ、奴の人格は奥底で眠ってる。
相当高度な手段でもやらない限り、奴が起きることは二度とないだろう」

オシリスの記憶は所持しているが、人格は封印されている。
もちろん、裏切り防止のための措置である。


「ところで、オレがオシリスが元になった天龍であることは理解したが、アンタ何のためにオレを作ったんだ?」
「それは かくかくしかじか……」

サーフはこれまでの経緯を天龍に解説した。
蒼や、その源泉の暴走による大災害。
テラカオスを巡る古代グンマーと古代ミヤザキの戦い。
神々の手によって艦むすが抹殺され、長きにわたって復活できなかったこと。
艦むすによる天国を作り出すためにあえて蒼の源泉を暴走させて大災害を起こし、邪魔な神々を一掃したこと。
自分がカオスロワちゃんねる管理人であり、裏から殺し合いを操っていたこと。
全てはこれから起こる第二のパワーを吸収した究極体テラカオスを手に入れて世界を作り直そうとしているためだとのこと。

……無論、本当の野望は隠し、あくまで艦むすによる理想社会を作ろうとしている建前で天龍に話した。

281おまけ オシリス三分クッキング:2018/12/17(月) 22:53:41 ID:HFljj9ss0


「マジかよ、神様グンマー最低じゃねえか」
「ああ、君たちを生かすためにはどうしても神々とグンマーは滅ぼす必要があったんだ。
神々はともかく、グンマーの末裔はまだ生きてるけどね」
「世界のために頑張った駆逐艦ロリもたくさんいただろうに、自分たちが滅ぼされるのが怖いから皆殺しだと?
神もグンマーも滅びて当然のロリとロリコンの敵じゃねえか!」
「ああ、ロリとロリコンの敵だね…………んん!?」

何か今、聞き捨てならないことを聞いたサーフは戸惑いを隠せなかった。

「お、おい天龍、本当にオシリスの人格は封印してあるんだな?!」
「そりゃあ間違いねえよ。
だけどさ、生まれてからこっち、何かが変なんだよ。
無性にロリと駆逐艦にモテたい!
駆逐艦娘を何人も引き連れて遠征してぇ。遠征したくてたまらねえんだ。
で、遠征先で駆逐艦娘とラブラブと」
「は、はあ……」
「おお! ロリ発見! 待ってくれー!」

思わず黒幕ムーヴも忘れてひたすらにドン引きするサーフ。
天龍はとてもついていけないロリコンと化していた。
なお、そんな彼女はロリ型深海棲艦である北方棲姫(通称ほっぽちゃん)を追い回している。

(天龍型は確かに駆逐艦を引き連れて遠征していたとタバサも言っていたけど、ここまでひどくないハズだぞ……
人格は封じても、止めようのないオシリスの本能が僕の天龍をロリコンにしたのか……?)

頭を抱えるサーフ。
オシリスのロリコンは本能。
かつて神々さえ竜種のロリコンは治せなかったのでサーフさえどうにもならないのは、ある意味必然でもあった。

一度は天龍の作り直しを考えたが、これ以上オシリスの脳をいじると死んだり能力を喪失したりする危険があり、時間も金も勿体無いのでやめた。
人格自体は封印してあるし、忠誠心も作った段階から100%で自分には逆らわないようにできているので造反の心配もない。

ただこれからディーに見せる新戦力なのに、なんか苦言をされそうなのが頭痛の種だった。
ドリスコルからオシリスを渡された時、ブレインデバイスよりも使える兵器を作ると大見得を張っただけに。


「オラオラ!早くオレに作戦をくれよ!体がなまっちまうぜ…」
「あー、わかったわかった。
これからディーのところに連れて行くよ。
ただし僕の計画や瑞鶴のこと、大災害の真実は喋るんじゃないぞ。
僕が合図を出すまで、基本的に上層部狂信者の話は聞くんだ」
「へーい」

やれやれといった感じで天龍を連れて行くことにしたサーフ。
なんにせよ、完成した以上はディーの下へ連れていき、ドリスコルかセルベリアの指揮下に入ってもらわないといけない。
野望を一手先に進めるためにも、狂信者戦力の増強……そのためにオシリスを料理してできた天龍の出来栄えを見てもらう必要があるのだ。

282おまけ オシリス三分クッキング:2018/12/17(月) 22:54:16 ID:HFljj9ss0
【二日目・20時00分/東京・ビッグサイト 地下】

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
    艦むす課金のしすぎで財布がちょいヤバめ
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
    魔改造マスターボール
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×200、深海棲艦鬼・姫級×10
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:今は狂信者のフリをしてディーに従う
  天龍をディーに送りつける
1:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
2:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
3:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
4:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
5:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
6:天龍がレズロリコンになっちゃったけど、まあエアロ
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※予言の中にある勇者についても参加者の内誰かが該当するか知っていますが、ツバサ以外の勇者は他の書き手氏にお任せします
※テラカオス・ディーヴァの残滓(ツバサ)がキングストーンの力を継承したことをまだ知りません
 また、都庁にノーデンスが現れ、真実を教えたことにも気づいていません
※マスターボールが改造されて別トレーナーからポケモン(というか色々)を奪うことが可能になりました


【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】
【状態】ロリコン、改二、オシリスの記憶と力を所持
【装備】艤装一式、眼帯&刀(飾り)
【道具】白ビキニ
【思考】基本:提督に従う、ロリにモテたい
0:ディーという奴には表向きは従う
1:なぜだかロリにモテたい、超モテたい!
2:駆逐艦娘のためにもサーフの計画に乗り、神やグンマーから世界を解放する
3:出会ったら敵同士だぜ、イチリュウチーム
※オシリスの脳を使って建造されために記憶や能力を引き継いでいます
 ただし人格は艦むすとしての天龍に上書きされています
 オシリスとしての人格を取り戻すには特別な処置が必要です
※瑞鶴と同じくサーフへの忠誠度はMAXで、裏切れません
※ロリコンだけは本能なので何をしても治りません
※オシリスを改造して作り上げたので、轟沈されるまでオシリスは放送で呼ばれません

283あきよの破壊力が異常:2018/12/17(月) 22:57:24 ID:HFljj9ss0
投下終了です
オシリスの良い死なせ方が思いつかなかったので
逆にTSさせて生かしてみた

284あきよの破壊力が異常:2018/12/19(水) 20:40:25 ID:XP6DNV260
おつおつ
オシリスと艦むすをそこで繋いでくるかぁ
そしてディー達はほんと頭おかしい(褒め言葉)

285あきよの破壊力が異常:2018/12/20(木) 01:10:23 ID:VdRCXiG60
天龍自体はロリコンってわけじゃないが、ゲーム上だと幼女連れて遠征という形の運用がどうしても多くなるからね
ある意味、オシリス的にはうってつけ

286新世紀の終わり カウントダウン:2018/12/31(月) 21:19:19 ID:e29bw13A0
ここは東京のどこか……というか港区。
ひょんなことから始まったダンテと江戸っ子ババアの激闘は

「目標をセンターに入れてスイッチ!」

DMC狂信者の戦力の一つであるF型装備エヴァ。
もとい両肩に備えられたATフィールドを用いてエネルギーチャンバー内で増幅した高出力の指向性電撃を目標に発射する大火力兵器・インパクトボルトによって街ごと灰と化すことで唐突に終焉を迎えた。

【ダンテ@デビルメイクライ】
【会見乱入江戸っ子ババア@日本大学】  両名死亡


狂信者がビッグサイトから都庁へ行軍する際に、二人が邪魔だったので消し飛ばされてのだ。
それをやってのけたパイロット、碇シンジは怒っていた。



「何がゼロだよ!」



彼は自分を受け入れてくれたカギ爪の男……その彼が作ったカギ爪団をどこともしれない怪しい男ゼロに乗っ取られたことに腹を立てていた。
しかし怒りはあるが、遠野・道下と言ったホモどもを初め、大半のカギ爪団構成員がなぜか彼を以前からいたかのように慕っていた。
あからさまに怪しいが、弁が立つ方ではなく証拠も掴めてないのでゼロを引きずり下ろすこともできない。

ちなみに彼は長いことエヴァから降りていないのでルルーシュのギアスを受けてなかったりする。

「確かに集団を率れそうなとらも新月くんも、切嗣さんやセイバーさんは死んじゃって。
 僕やレジーナ、ホモの二人じゃカギ爪団を引っ張っていけないけど、どう考えてもパッと出てきた人をリーダーにするのはおかしいって」

実際、カギ爪団は残った誰かをリーダーに据えても烏合の衆と化し、聖帝軍を壊滅寸前に追い込んだ同志のような指揮は望めないだろう。
上層部の三人は自分の部隊の指揮で手一杯であるし、ある程度は仕方あるまい。

「だけど僕は感じるんだ……同志は包み込む優しさのようなものがあった。
 だがゼロからは信用しちゃいけない何かを感じる……エヴァのモニター越しでもわかった」

確たる証拠はない。
だが感受性豊かな中学生であるシンジにはゼロからただならぬものを感じていたのだ。

「僕やほかの人にカギ爪団の指揮は無理だし、ディーさんも仕方なかったんだろうけど納得いかない。
ゼロが怪しい素振りを見せたら、前歯へし折ってSATUGAIしてやる!」


シンジはエヴァを操れる唯一のパイロットであり、エヴァの攻撃力ではビッグサイトごと破壊する危険があるとみなされ防衛には向かないとされ、都庁襲撃のメンバーに抜擢されたとつい先ほど本部から連絡が来た。
都庁襲撃のメンバーにはドリスコルとゼロ、カギ爪団の構成員も選ばれたことが決定したと知らされている。
ゼロとは戦場を共にするが、裏切り備えて容赦なく殺す準備をすると心に決めていた。


シンジのエヴァによって邪魔者が排除され、都庁攻めに選ばれた膨大な数のモブ狂信者が港区に集まってくる。
後は選抜されたネームド狂信者が揃えばいよいよ進撃開始だ。

「僕の気持ちを裏切ったカヲル君……君だけは僕の手でSATUGAIしてあげるよ。
同志の夢である、クラウザーさんの歌で世界を平和にするために!」

シンジはカギ爪の男が散ったスカイツリーの戦いに白いエヴァが参戦している事を把握している。
動き方からしてパイロットは親友だった渚カヲルに間違いない。
どういった経緯で都庁についているのか知らないが、彼が都庁の一員として聖帝軍と共にカギ爪の男を滅ぼしたのは揺るがぬ事実であり、シンジとしては決して許せぬことであった。
同時に救って(つまり殺すことで)心の中で生き続けさせたいとも思った。


本当ならばすぐにでも都庁に突撃を仕掛けてカヲルを「救い」に行きたいところだが、幸い、上の指示があるまでは我慢できる程度の理性はまだ残っていた。


【二日目・20時30分/東京都 港区跡地】


【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】
【状態】全身火傷痕、気分高揚によるシンクロ率大幅アップ、首輪解除
【装備】エヴァ初号機 F型装備
【道具】支給品一式
【思考】基本:同志の夢を叶える
0:指示があるまで港区で待機
1:取り合えずSATSUGAIしてクラウザーさんとやらを生き返らせる
2:新しくカギ爪団のボスになったゼロは信用しない
3:裏切りのカヲルくんは殺して心の中で生き続けさせる
※初号機がF型装備に換装されました

287今回、野比玉子症候群空気じゃね?:2019/01/26(土) 11:43:53 ID:P1gFsS5I0
タイトル通りに、この10期カオスロワにおける野比玉子症候群患者は空気である。
今期は犠牲者枠としてモブがいるし、モブに混じって殺されてるんじゃねーの?
と思うかも知れないがそれは違う。

……いや、実際にそういうキャラもいるのだが、そこは今は置いておこう。

では、だいたい二日目突入以降、あんまり出てこない野比玉子症候群患者は今どうしているのか?






答えは簡単である。

彼らの大半はもうこの世に存在していないのだから。




野比玉子症候群患者は死ぬとランダムにリスポーン……どこかに現れて生き返って出オチ的に殺されるのだ。
出てきたらすぐ殺されるとは言え、事実上の不死身と言える存在。
どうやっても彼らを「真の意味」で殺すことは、治療や自然治癒を除いて不可能だった。


だが今期の設定を思い出して欲しい。
この世界は大災害の原因である蒼(人によってはTC)によって無事だった日本以外は汚染されている。
蒼に汚染されるとテラカオスを除いたいかなる存在でも魂ごと消滅する。
運が良くても存在が歪み、キャラの性質が別物になることはある。

つまり、日本や一定以上遠くの宇宙まで上がってしまうと蒼に汚染される危険があるのである。
野比玉子症候群患者とて例外ではなく、不死性を喪失する。

そして、この性質が今期に至っては患者たちの首を絞める。

間違って蒼塗れの宇宙や、蒼を纏うシャドウ(黒き獣)の近くに転移してしまった場合、問答無用で汚染されて……魂ごと消滅するのだ。




かつて狸組を庇ったシン・アスカは、自身の肉体に変化に気づき野比玉子症候群が完治した。
殺し合いが始まる前から蒼に汚染されていたのだ。
彼は恵まれた部類と言いたかったが、死者スレにてしばらく経った後に魂ごと消滅した。
不幸中の幸いなのは、最後に人を守って死ねたことに対して微笑みを浮かべることができたことだろう。

【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY 消滅】

富竹ジロウと巴マミは野比玉子症候群の身でありながらも、真実を追い求めようと宇宙まで上がったが、その際に隕石の如く地球に向かってくる高密度の蒼の塊(後のシャドウ)に衝突され、肉体も魂も塵芥と化した。
地球で頑張っているまどから対主催にメッセージを届けることはついにできなかった。

【富竹ジロウ@ひぐらしのなく頃に 消滅】
【巴マミ@魔法少女まどかマギカ 消滅】

魔法少女になっても、とうとう息子を守れなかった野比玉子は悲しみから沖縄に引き困ってしまう。
それに付き合う曾孫のセワシであったが、それが不運につながってしまい、黒き獣が沖縄に落下。
その後、繰り広げられる貧乳歌姫との戦いで沖縄ごと汚染されて消滅する憂れ気めを受けた。
最期の瞬間に、二人は息子や祖父の名前を叫んだという……

【野比玉子@ドラえもん 消滅】
【セワシ@ドラえもん 消滅】

DMC狂信者に入ったらしいタケシは、沖縄の異常気象はクラウザーさんによるものという根も葉もない説を信じて接近し、近づきすぎたために消滅した。

【タケシ@ポケットモンスター 消滅】

ディアボロはリスポン地点が沖縄だったのでスタンドも効果がなく、即消滅した。
まあ、ジョルノにかけられた呪いから漸く解放されると、ちょっと嬉しそうだったが。

【ディアボロ@ジョジョの奇妙な冒険 消滅】

約一名を除いた野比玉子症候群患者は復活地点が遠い宇宙か沖縄だったので消滅した。
処理が適当?
だって把握がめんどくさ(ry




そして、最後の一人もまた……



【二日目・19時59分/沖縄 沿岸部】

288今回、野比玉子症候群空気じゃね?:2019/01/26(土) 11:44:21 ID:P1gFsS5I0



「ごめんね、さとりちゃん……僕なりに殺し合いを頑張ろうと思ったけど、本当の本当にここまでみたいだ。
タケシくんも玉子おばさんもいつの間にかいなくなってしまったし……たぶん僕ら野比玉子症候群持ち自体も……」

クマ吉の最後の復活地点は蒼を発する黒き獣からさほど離れていない浜辺。
それが彼の最期の場所となった。

存在が歪み消滅していく肉体。
不死身と思われた野比玉子症候群患者も、上位の神さら滅ぼす瘴気には敵わない。
彼の滅びは止めようがなかった。

「僕らの死の意味ってなんだったんだろうね……さとりちゃん、みんな……」

変態という名の紳士に似つかわしくない、寂しげな口調で先に逝った仲間たちに語りかけ、そして……クマ吉は消えた。

【クマ吉@ギャグマンガ日和 消滅】





【二日目・20時00分/沖縄 沿岸部】

【全ての野比玉子症候群患者 全滅】

※症候群の患者がいなくなったので、野比玉子症候群自体もこの世界から消え去りました。
 以後、野比玉子症候群に感染する参加者は出ません。
※テラカオスが野比玉子症候群患者を取り込むことによって起きる世界の消滅(詳細は5期参照)の結末も回避されました。

289 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:35:18 ID:wYEUBuQI0
予約のイチリュウチームを投下します

290 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:36:20 ID:wYEUBuQI0



「Lyrical」
意味=叙情詩調、叙情的な、感情豊かな、熱情的な、ひどく感激して、大喜びで、(歌声が)軽やかな



――――

「お腹の中……ユーノくんでいっぱい……」
「なのは、僕の欲望でこんなに汚してしまって……」

ギムレーという防壁に囲われた浦安市。
そこにある病室の一つでなのはは呟いた。
彼女の全身はユーノの放った白濁液塗れで艶めかしさが更に足していた。
恋人を汚し尽くしたことは、男であるユーノにしてみたら非常に強い征服欲が満たされていた。
股間のマーラ様もディアラハンをかけられたかのごとく、ムクムクと再成長している。

「ここで時間が止まって、ず〜っとユーノくんと気持ちいいことができたら良いのに……」
「ああ、そうだね」

結ばれた二人が望むは永遠……その願いは共通し、何度目かのキスを交わす。



「……だけど、もう時間切れみたいだ」
「ユーノ……くん!?」

だが愛し合う者への永遠への望みは届かない。
愛では混沌に勝つことはできない。
何かを悟ったようなユーノの表情と同時に彼の体は急速に獣化が始まる――テラカオス化だ。
しかもこれまでにないレベルで強烈なもの、テラカオスへの進化が始まろうとしていた。
その様を間近で見ていたなのはの表情が絶望で陰る。
ユーノがなのはと抱いたのもまた、最期の時を恋人と一緒に過ごしたかった意味があるのだろう。


「ッ……まずい! ブリーフ博士! 早く来てーー!!」
「え……? なんで萃香ちゃんがここに!?」


しかし、時間切れに絶望するにはまだ早かった。
予め霧化して浦安中で待機していた萃香が病室で具現化。
アナキンたちと薬を作っているブリーフ博士への最速と同時に、今にも暴れだしそうなユーノを抑え込んだ。
なのはは萃香が見張っていたことを知らないので、いきなり現れたことに困惑している。
さらに言ってしまえば萃香の鼻からはちょろっと鼻血が出ていた。


「お待たせしたぞいユーノくん」
「薬は今さっき完成したところですわ」

萃香によるナースコールを聞いたブリーフ博士とサラマンディーネが病室に急いで入ってきた。
博士の手の中には治療薬が入ったカプセルが握られていた。
なお、ユーノとなのはが夜の営みをしていた痕跡が随所に見受けられたが、今は緊急時なので無視した。

「ハ、ハカセッ……!」
「さあ、飲むんじゃ、ユーノくん。これでおまえさんは助かる!」

既に肉体の80%は獣化が進んだユーノ。
ブリーフ博士は怪物フェレットと化した彼の口にカプセルを放り込んだ……

291 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:37:46 ID:wYEUBuQI0






病室の外にはアナキン、はやて、ギムレー、ツバサの四人がいた。

「アナキンさん、ユーノくんは助かるんやろか」
「助かるさ、なにせ僕と博士、サラが作った特効薬だからね」
「…………」

不安そうなはやてをなだめるアナキン。
そして他の仲間たちには教えていないとはいえ、アナキンこそテラカオス化ナノマシンを現代に復活させ、騒動を巻き起こした張本人であることを知るギムレーはジト目で二人を見ていた。
この場でアナキンの正体をバラさないのは先ほど彼と交わした密約と、大災害の黒幕は別にいるからだ。
密約を反故にすれば、両方に多大な被害が出る上に最悪“大災害”や“黒幕”に敗ける結果につながってしまう可能性がある。
そもそも、はやては自分とブリーフ博士以外の仲間を間接的に皆殺しにされているため、未だに精神不安定である彼女に教えたら最後、暴走する危険を孕んでいる……彼女だけでなく、他の仲間もアナキンとの衝突も発生するだろう。
せっかく主催との貴重なカードを手に入れたのに、ここで捨てると致命傷になりかねない。
アナキンを捨てるのは主催なしでこの窮地を乗り切れると確証を得るか、または彼が裏切る素振りを見せてからでも遅くない。


「しかし、驚きました。瘴気の正体が菌やウィルスじゃなくてとても小さな機械だったなんて」
「正確にはナノマシンだね」

ブリーフ博士の研究でわかったことは日本中を覆っている目に見えない瘴気の正体は、極小の機械ナノマシン。
これが体内に入ることで適正のある存在がテラカオスという怪物になることがわかった。
もちろん、主催であるアナキンは最初から知っているのだが、この場は初めて知ったようにはやてやツバサに答える。
ギムレーもまた、いちおう合わせるように答えた。

「……なるほど、首輪を取ったハズの仲間の名前が呼ばれたわけだ。
首輪はあくまで制限装置と盗聴器とオマケの爆弾に過ぎない。正しい首輪は体内に宿っていたナノマシン。
これ自体が出す識別信号で主催はどこにいても参加者の状態を把握できるんだ」
「首輪を取る意味がないというわけやあらへんけど、真に殺し合いから解放されるにはナノマシンをどうにかするしかあらへんのやね」

瘴気の存在を知った参加者はその正体がウィルスか呪いか何かと思っていたが、実際には肉眼では捉えられない機械。
ブリーフ博士が見つけた事実である。

「博士の薬のカプセルは、ツバサの親元である風鳴翼の腕から採取した変異した細胞を元に戻す薬、そしてナノマシンの停止コードも入っている。
ユーノの怪物化……これからはテラカオス化と統一して言っておくか。
テラカオス化を解除することができる」
「すごいお薬やね……それを作ってまうブリーフ博士も」
「ああ、横で一緒に薬作りをしていたからわかるが、あの人は頭脳方面で怪物だ。
僕とサラは補助ぐらいしかできなかった。
あの人が祐一郎のような危険人物だったら、僕ら対主催はとっくの昔に終わっていてもおかしくはない」

改めてブリーフ博士の恐ろしさを実感するアナキン一同。
参加者から主催まで使っているホイポイカプセル一つとっても、あるべき質量保存の法則を無視しているのだから、その技術力は計り知れない。

「じゃあ、あのお薬を大量生産すれば、もっと多くのテラカオス化した人を助けることができるんやね!」
「いや、あの薬はユーノ限定用に調整されて作られたものだから他の参加者に投薬しても意味がない」
「そうなんですか……」
「薬はあくまでユーノが君の吸収能力でも治せない能力を持っていたから作っただけだ。
君自体の力を高めるためにも他の参加者はなるべく因子吸収で治してもらいたい」
「確かに薬で治すとテラカオス因子も消えてしまいそうですからね」

292 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:38:24 ID:wYEUBuQI0

薬の力でテラカオス化に苦しむ人を救うことができると思ったツバサだが、アナキンの言葉により俯く。
その様子を見たはやてが彼女の暗い表情をどうにかするつもりで別の良い話題を振ることにした。

「そういえばさっきホルスから聞いたんやけどギムレーさんは都庁の皆とコンタクトが取れたんやってな?
どうやら向こうは」
「うん、ああ。
二度手間をしたくないから、ユーノが治療されたら、全員に改めて詳細を教えようと思っていた。
向こうにいるオオナズチのおかげで沖縄の異常気象の正体、聖帝軍が立川を焼いた本当の理由、ベルナドットが示したカオスロワちゃんねるの管理人の危険性もわかった。
特に向こうが予言の鍵となるテラカオスと野球選手以外は手に入れていたのは大きい。
僕らは都庁の逆で野球選手とテラカオス兼勇者であるツバサが揃っている。
早急な合流は確定だね」
「すごい! 短時間でそこまで行けるなんて」

予言の完遂までの道筋が見えてきたことに、暗くなっていたツバサの表情がパアッと明るくなった。

「しかしギムレー、ツバサ暗殺のために襲いかかってきた死者の件も含めて余談は許せないな。
なんとしてもツバサを護衛し、都庁と合流しよう」
「言われずともさ……まずはユーノの治療次第だ」
「今はテラカオス化で余裕あらへんけど、彼の頭脳は有用や。
友達としても未来のためにもブリーフ博士には助けてもらいたいで!」

イチリュウチームが浦安から都庁へ移動するにはユーノの治療が不可欠であった。
多くの者が仲間として彼のテラカオス化の浄化を望んでいた。
ブリーフ博士が作り上げた薬だけが彼の治療への希望であった――


「……あれ?」
「ん?」
「どうしたんやツバサちゃん? アナキンさん?」
「フォースの流れが……」
「ユーノさんのテラカオス因子は確かに消えていっているのに……これは一体」





「うわああああ!」
「ふぐッ!」

ツバサが疑問を口にした直後、何者かに投げつけられるように病室の扉をぶち破って出てきた萃香とサラを皮切りに、安息は打ち砕かれた。

「な、なんだと!?」

病室の前にいたアナキンたちに戦慄が走る。
気絶したサラ、目を回している萃香を尻目に大慌てで病室に入るとそこには衝撃の光景が広がっていた。

病室にユーノやなのはの姿はなく。
代わりに巨大なフェレット似の怪物がブリーフ博士の頭を大きな腕で鷲掴みにし、今にも握りつぶさんとしていた。

『グルルルルル』
「やめろ……やめるんじゃ、……くん」
「まずい、ブリーフ博――ッ!」

一番前に出ていたアナキンがフォースの念動力で博士を救おうとするが、巨大フェレットはフォースの魔力を吸収して反射し、口から光弾として即打ち返した。
幸い、フォースの力は控えめにし、返ってきた光弾も威力が低かったのでソウルキャリバーで防ぐのは簡単であった。

「なぎゃッ」

が、アナキンが防いだ数瞬の内にブリーフ博士の頭は大きな腕によって無残に握りつぶされた。
栗の花の匂いが広がっていた病室が瞬く間に生臭い鉄のような香りに支配され、その病室の中心に赤い泉と頭を無理やり圧縮されて潰れたザクロのようになったブリーフ博士の死体が転がった。

【ブリーフ博士@ドラゴンボール 死亡確認】


「いやああああああああああああああああ、ブリーフ博士ぇーーーー!」

信頼していた科学者の死にはやては絶叫をあげる。
無論、博士の突然の死に戦慄したのはアナキンやギムレー、ツバサとて同じだった。

293 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:39:44 ID:wYEUBuQI0

「ユーノの治療が失敗した!?」
「薬が効かなかった、そんな……まさか!」

思わず、アナキンの正体を唯一知るギムレーは彼に疑いの目線と殺意を向けかける。
博士と一緒に薬作りをしていたアナキンなら細工して治療させないことも可能だったから。


「待ってください! この人はユーノさんじゃありません!」
「なに!?」
「どういうことなんだ!?」

ツバサの言葉にギムレーは驚いた。
それどころか彼が疑っていたアナキンでさえ、本意から驚いていた。


「もうやめるんだ!」
『正気に戻ってください!』
「ユーノ! レイジングハート!」

先程は部屋が暗くてわかりづらかったが、フェレットの怪物の長い尻尾にはユーノとレイジングハートが捕まっていた。
さらに言えばユーノは全裸であることを除けば元の真人間の姿をしていた。
となるとユーノ以外の、この部屋にいるべき人間がテラカオス化したことになる。
ということは……なまじ頭がいいだけにギムレーの中に嫌な想像が思い浮かぶ。

「ユーノ、その怪物はまさか!」



「……なのは、だ」

ユーノの漏らした言葉に、四人は戦慄し困惑する。

「なんでや?! ユーノくんはともかくなのはちゃんがテラカオス化する兆候なんてなかったで!?」
(なのはのテラカオス化は極陰性だ、テラカオスになれるはずがない……九州ロボにいた時に確かに確認したハズだ!)
「ユーノ自体のテラカオス化は確かに治ってる。薬のせいじゃないとしたら、一体どうやって……?」
「さっきまでなのはさんにはひとかけらのテラカオス因子もなかった……どうして? なんでユーノさんの進行状態をなのはさんが引き継いでいるの!」


――――

この状況に至る経緯を解説しよう。
はやてが言ったとおり、高町なのはにはテラカオス化の兆候など一切なかった。
アナキンが覚えているとおり、なのはのテラカオス化は陰性なのだ。
どれだけ殺し合いのストレスを与えてもテラカオス化などしない。


では、どうして?


ブリーフ博士たちが薬を持ってくるまでになのはとテラカオス候補者たるユーノは性交をしていた。
それは肛門すら使う、ディープなプレイだった。

しかし、その愛のための行為が行けなかった。
ユーノから放たれる精液の中身にもテラカオス化を誘発させる細胞及び因子が入っている。
なのはは子宮に、肛門に、口に全身の肌に彼の精を浴びてしまった。
ほぼ全身を汚染されたと同じである。

されど、それだけならなのははテラカオス化しない。
先にも言ったとおりなのはのテラカオス化は陰性、重度に進行していたユーノの射精とはいえ精子を浴びただけではテラカオスにはなれない。
もし浴びただけでなれるなら、序盤のホテルの時点でテラカオス化が始まるだろうし、そもそもテラカオスであるツバサが合流した時点で異変に気づく。
ユーノと浦安の病院で交わるまでは確かに彼女は人間だったのだ。


――しかし、世の中には例外たるものが存在する。

読者は四条化細胞たるものを覚えているだろうか?
四条貴音から生まれたテラカオス化しない陰性の者ですら強引にテラカオス候補者にしてしまう魔の細胞。
ツバサの前身たる善玉だった風鳴翼も、灰を浴びたら最後、問答無用で修羅に変えさせた。
クリスなど、幾人もまた四条下細胞により怪物と化している。「
ところが、ユーノは翼のように四条化細胞の塊である灰を浴びたり、肉を喰ったりはしていない。
では、どこで四条化細胞を得たのか?


読者には数話だけ振り返ってみて欲しい。
浦安にてユーノとツバサが合流した際、ツバサは彼を治療するために因子を吸収しようとして逆に吸収し返される失敗をした。
途中で止めたので吸われたテラカオス因子自体は多くはなかったが、確かに吸収されてしまったのだ。

ツバサの中に眠る因子……風鳴翼が持っていた「四条化細胞の因子」を。

294 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:40:14 ID:wYEUBuQI0


こうしてユーノの細胞にも四条化細胞が宿ったのだ。
幸い、時間はあまり経ってなかったの本能にも似たような感情でなのはは絶対襲わないようにしていたため、ユーノ自身が四条化細胞に侵されることはなく、それも薬によって浄化された。

ところが、四条化細胞に汚染された精を受けたなのはは違った。
テラカオス化が活発であったユーノの体内でツバサの体内では休眠状態だった四条化が活性化。
精子を通じて四条化細胞によってなのはは、テラカオス化への反応が陰性から陽性に作り替えられるように肉体を、本人も気づかない内に作り変えられた。
しかも、ユーノが今まで進行していたテラカオス化因子もそのまま引き継ぐ形で、なのははテラカオス候補者になってしまったのである。

ユーノでさえ恋人以外には抑えつけているとはいえないテラカオス化を、彼よりも精神的に弱いなのはがいきなり受けて耐えられる道理はない。
そして彼女は野獣と化し、ユーノを捕まえ、サラと萃香に不意打ちを与え、ブリーフ博士を殺した。


全ては「愛の感情」がもたらした、惨劇。


――――

『オナカスイタナノ……ユーノクンイガイ、タベル』
「な、なのは……!」

怪物なのはは、亡骸となったブリーフ博士をさっそく大きな口で丸かじりした。
信じられないような瞳をしたユーノの表情が、口から飛び散ったブリーフ博士の血で赤く染まる。

「クソッ、状況の検分は後回しだ!
今はとにかく、なのはを止めてユーノを助けなければ!」

何がどうなってなのはがユーノがかつてなっていた怪物フェレットになっていたかは、今の切迫した状況では確かめることはできない。
被害を抑えるためになのはを止める方が先決だ、とアナキンは判断した。

「でも、どうやって!?
なのはちゃんもユーノ同じくエネルギーを跳ね返す技が使えるみたいやで!?」
「それは……」

どうやら、先ほどフォースを跳ね返したように。
今のなのはにはユーノと同じ魔力・エネルギーを吸収増幅反射する技が使えるらしい。
これでは天魔王すら倒したアナキンのフォースも、世界の破壊者すら一撃粉砕したギムレーの魔法さえ危険である。
当然、ツバサによるテラカオス因子吸収治療も受け付けぬだろう。

「簡単だ、私に任せろ」
「萃香!」
「さっきは油断と不意打ちで遅れを取ったけど、今度はそうはいかないよ!」

不意打ちを受けて倒れていた萃香が起き上がり、なのはに飛びかかる。
怪物なのはは長く鋭い爪で萃香を仕留めようとしたが、萃香は瞬間的に霧になって回避。
そしてなのはの後ろに回り込んで実体化、さらに鬼の超怪力で尻尾に絡められていたユーノ及びデバイスであるレイジングハートを救助した。
若干、痛かったのか怪物は悲鳴をあげる。

『ナノオオオ!?』
「ここは私に任せて行け! 大丈夫だ、おまえの女房を殺しはしない!」
「すまない、ありがとう……」

萃香に助けらたユーノは急いでアナキンたちのところに滑り込み、合流する。
怪物なのはは逃げるユーノには追撃は加えなかった。
ただし、その分逃がした萃香への怒りは大きいようだが。

『カエセ、ユーノクンヲ!』

さっそく尻尾や爪の攻撃、バインドによる拘束魔法をも、密と疎を操る程度の能力で霧化して躱していく萃香。
そして今度は背後に実体化し、目の前の怪物を凌ぐ怪力を持って背中から抑え付け、強引に床にダウンさせた。

『ナノオオオオオ』
「暴れんなよ、暴れんなよ……」

295 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:40:49 ID:wYEUBuQI0



優勢たる萃香の様子を見て、ギムレーは考察を呟く。

「なるほど……魔力やエネルギーに関係ない物理攻撃は普通に効く。
そして回避や防御以外で一切の魔力を使わなければ、増幅反射技も使えない。
後は怪力に優れた者を宛てがえば捕獲も可能か」

ギムレーの言葉通り、拳などの物理攻撃は魔力を帯びてないので吸収できない。
さらに防御や回避のためのエネルギーは、流石に吸えないのようだ。
結論から言えば、怪物なのは(及び怪物ユーノ)が無敵なのは「エネルギー」を主体とした「攻撃」だけである。
捕縛するなら怪力で抑え付けるのが最良に思えた。

「ならば、物理攻撃にも優れた僕やアナキン、ツバサ、イチローやナッパでも彼女を捕まえようはある!
はやて! 気絶したサラを連れて急いでイチローたちを呼んできてくれ!」

この中では最も非力なはやてにギムレーは指示を飛ばした。
一方、はやては……

「ああ……ああ……」
「はやて、しっかりするんだ!」
「は、はいアナキンさん!」

はやては博士の死に未だにショック状態で動けなかったが、アナキンに激を飛ばされて持ち直し、意識がないサラを担いでなんとか部屋の外へと走っていった。
そして、ギムレー、アナキン、ツバサは武器を構える。
それを見て慌てるユーノ。

「ちょっと待ってくれ、彼女を傷つける気か?!」
「安心しろ、峰打ちに留める……ただ新しい薬を作り出すまで気絶はしてもらうけどね。
それよりもユーノは彼女に声をかけてやれ、『まだ』正気を取り戻せるかもしれない」

アナキンが言ったとおり、三人と萃香になのはを殺す気はない。
ただ、重度のテラカオス化が進行しているため、手を抜けるほどの相手ではないと知っていた。
角度は違うが、それぞれテラカオスの危険性を知っているからこその行動である。
少なくとも無傷での捕縛は無理であると察していた。
とにかく、今は力に優れた者たちが必要であった。
大切な仲間たちのために――








――だが、『混沌』は常に人々の予測の上を行く。
シスの暗黒卿、邪竜、テラカオスの申し子、そしてかつてテラカオスの因子をその身に宿していた青年を嘲笑うかのように。









「よし、後はナッパたちが来ればコイツを捕まえることが――」

ズブッ

「え?」

怪物なのはを床に抑え付けた萃香の腕が、突然の違和感に襲われた。
まるでローションの塊の中に手を突っ込むような異様な感覚。
萃香が自信の両腕及び怪物なのはの体を見ると………


なのはの体が水色のスライム状に変化し、萃香の腕はその中に捕らわれていた!

296 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:41:24 ID:wYEUBuQI0
「なんじゃこりゃー!? ぶべべべッ」
「萃香ーッ!」

その直後、萃香はスライム化した怪物なのはの体内にズルリと全身を入れられてしまった。
この異様な事態にアナキンたちは驚く。
そして何より驚いていたのは、この現象を知るツバサであった。

「バイオライダーのゲル化能力……!!」
「なんだって?!」
「キングストーンの持ち主であったブラックRX、彼の能力の一つで、不定形のゲルになってあらゆる物理攻撃を無力化する能力です!」

怪物なのはが今行使している力は、まさにバイオライダーのゲル化能力そのままであった。
特定の攻撃手段を除き、あらゆる物理攻撃を無効化してしまう水色の姿がその証左であった。


(でも、彼女がどうしてキングストーンの力を……まさか!!)

その時、ツバサは脳裏に嫌な予感が迸った。
少し前にツバサはテラカオス化が進行していたユーノを救おうとして、逆にエントロピーを吸われる結果になった。
吸われたエントロピーの中にはテラカオスや四条化細胞、キングストーンの因子も僅かながら入っており、ゲル化能力の力もユーノに吸われてしまった。

ユーノの因子はブリーフ博士の薬によって消失したが、その前にユーノが因子を(おそらく故意ではないであろうが)何らかの手段でなのはに分け与えて、彼女を怪物化させたのだ。

結果、なのははテラカオス候補者にして四条化細胞とキングストーンの力も得た怪物となってしまった。


(でも、もしそうなら私のせいで彼女は――)

答えはわからないが、考察が当たっていればなのはを間接的に怪物化させたのは自分ということになる。
そう思うと冷や汗が出てきた。

――――

なお、彼女の考察は「大当たり」である。
治療に失敗した際にユーノに吸われた因子が、セックスを通してなのはに吸収され、巡り巡って彼女を怪物に変えてしまったのだ。

――――

「ツバサ! 何をボーっとしてる」
「早く仲間を救い出すんだ!」
「はッ……!?」

アナキンとギムレーの言葉で現実に引き戻されるツバサ。
見るとユーノを含めた三人の男たちは剣やその辺の棒を使ってゲル化した怪物に捕らわれた萃香を救おうとしている。

「ごぼッ、がはッ!!」

ゲルの中で萃香はもがくが、どんなに鬼の怪力を使っても脱出できない。
霧化も可能にする蜜と疎を操る程度の能力も、ゲルの中にいれば効果はない。

(だったら固めて……)

怪力や霧化がダメなら、ゲルを固めて脱出を図ろうとする萃香。
だが、それを許すほど怪物なのはは悠長ではなかった。

(だ、ダメだ体中の妖力が吸われて……)

仲間であったなのはを傷つける可能性への躊躇があったのか、固める判断が少しばかり遅すぎた。
萃香の体は貪欲で食欲旺盛な四条化細胞に妖力を食われていった。
妖力だけでなく、彼女の体はゲルの中で急速に溶け出して吸収されていく。
まるでアメーバに食われたプランクトンの如く。
衣服、皮膚、筋肉、骨の順番で溶けていった。

「ぎゃあああああああああああああああ!!!」
「萃香ッ! ダメだなのは、もうやめるんだ!!」

ゲルの外まで届く萃香の悲鳴に、ユーノのみならず周囲の味方も焦る。
しかし、助け出そうにもここにいるものたちに、魔力やスキル、物理的手段においても今のなのはから救うことは不可能であった。


骨までとかされた幻想郷の鬼は、最期は骨も残さず、しゅわっとスパっと、なのはの滋養として吸収された。

【伊吹萃香@しゅわスパ大作戦 死亡確認】

297 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:41:57 ID:wYEUBuQI0


「萃香さん!」
「ああ……どうして……!」

仲間の死にショックを隠せないツバサとユーノ。
逆にアナキンとギムレーは比較的冷静であった。
否、平静を保ってないといけなかった。

「萃香がやられた!」
「まずい、魔力吸収反射だけでなく、ゲル化によって物理攻撃まで無力化だって!?
これじゃあ、もうイチローやナッパを連れてきたところで……もう捕獲どころじゃない」

魔法の類は言わずもがな、肉体に優れた者を連れてきたところで素手で捕まえようとすれば、ゲル化によって捕われ捕食されてしまう。
それでも何か打開策はないか、二人は考える。
そうこうしている内に、新しい能力に慣れてないせいかゲル化してからあまり動かなかった怪物なのはが動き出した。
次なる獲物はテラカオスであるツバサであった。

『ナノオオオオオ!!』
「ツバサを狙っている!? 止めなきゃ……がはッ!」
「ギムレー! ぐはッ! なんて怪力……」

理性を保ったテラカオスにして不屈の心を持った勇者であるツバサが喰われてしまえば、予言の完遂が不可能に近くなる。
ギムレーとアナキンは阻止するためになのはを止めようとしたが、彼女は曲がりなりにも鬼である萃香を食ったことでパワーが増したのか、二人を軽々と吹っ飛ばして左右の壁にぶつけた。
凶悪な人食いゲルが暴走特急のようにツバサに襲いかからんとする。

「来るッ!」
「なのは!!」

そこへ、ツバサを庇うようにユーノが前に出た。

「いけない、離れるんだユーノ!」

このままではなのはに捕食されてしまう、と焦ったギムレーであったが、ユーノは逃げようとしない。

「……なのはに殺されるなら本望だ」

それは彼なりになのはが仲間を殺してしまった責任を感じていることと、彼女に仲間をこれ以上殺させないための決意の表れであった。

『ユーノ……クン』
「なのは……」

ユーノの祈りは通じたのか、今にもツバサごと覆いかぶりそうだった人食いゲルは彼らの手前で停止した。
それだけでなく。

「なのはさんの姿が……!」

一時的にでも正気に戻ったのだろう。
ゲルが人の姿に再形成され、それは裸のなのはの形になった。
変身が解けたようだ。
そして彼女は全身血まみれで、恐怖の形相で泣いていた。

「ユ―ノくん、わた、私……」
「なのは……!」

正気に戻ったためか、彼女は自分がしでかした罪を理解していた。
だからこそ己の所業に慄いていた。

298 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:42:22 ID:wYEUBuQI0


「アナキンさん! 仲間を連れてきたで!」
「大丈夫か! みんな!」
「おい、あの萃香はどこに行ったんだ?」

遅れてはやてが、イチローやナッパを病室に連れてきた。
部屋の外からいくつかの足音も聞こえるため、何人かの味方も急行するだろう。
いるはずだった萃香の行方については、ユーノが答えた。

「なのはは正気に戻った代わりに萃香は……犠牲になった」
「そんな!?」
「なにィ!?」
「すまない……なのはを責めないで。
僕がかかった病気が、どういうわけかなのはに羅患してしまったんだ……」

ブリーフ博士と萃香の死、そしてなのはのテラカオス化の責任は自分にあるとユーノは答えた。
その表情には、千年タクウに翻弄されて恋人を怪物にしてしまった時のなのはと同じ悲しみの表情を浮かべていた。

一方。
なのはの後ろでは二人の男が小声で会話をしていた。
アナキンとギムレーである。

(ブリーフ博士と作った薬はまだ残っているかい?)
(すまないが、薬はあれ一つしか作れなかった……ごく短時間で二つ以上作るのは難しかったんだ)
(サラとおまえでもう一つ作れないか?)
(薬の設計は頭に入ってる、が……時間がかかりすぎる)

訝しげに語るアナキンにギムレーは問い詰める。

(どれくらいだ?)
(機材が揃っていて最低三時間……といったところかな)

(そうか……わかった)


アナキンの話を聞いたギムレーは、なのはが気づいていない内に持っていた剣を彼女に向けた。

(ギムレー!?)
(彼女には悪いが、世界のためにもここで死んでもらう)

もう世界の破滅まで時間が惜しい。
三時間も浦安で待ってはいられないし、その前に再暴走するだろう。

イチリュウチームは彼女を殺さないと先には進めない。

先程はテラカオス化して魔法も物理も効かない無敵の存在であったが、変身が溶けて油断している今ならば真人間と変わりないはず。
彼女を殺すなら今しかないと、ギムレーは合理的かつ冷酷な判断をした。
何よりサーシェスに乗っ取られた黒炎竜を殺せないぐらいにはお人好し集団である。
いざという時は冷酷な邪龍に戻れる自分にしかできないことであった。

アナキンは止めなかった。
というより、ギムレーの心がフォースで読めないことに加えて本当に一瞬の出来事だったために止めようがなかった。
元は敵であり主催である自分に刃を向けるなら予測もできたが、それなりの理由があるとは言え味方を殺そうとするなど予期していなかったからだ。

ギムレーの剣の切っ先は、無防備ななのはの背中に向けて必殺の突きを向けられ――


「危ない、なのは!!」
「え、ユーノくん!?」

299 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:42:45 ID:wYEUBuQI0




――剣はなのはに刺さることはなかった。
偶然、なのはに斬りかかろうとしたギムレーの姿が見えたユーノは、彼女を守るために自ら盾となったのだ。
結果、ユーノの腹は剣で貫かれ、夥しい血が噴き出した。

刹那の内に、斬られたユーノを除いた病室にいるもの、全てが驚嘆し、ある者は絶叫を上げた。
刺したギムレー自身も驚きであった

「馬鹿な……おまえは……!」
「ど、どんな理由があろうと、なのはは殺させない……!」

聡明なユーノは世界を守るためになのはを殺めなくてはいけないギムレーの意図を理解し、恨みなどは抱かなった。
しかし、愛するなのはを守ることだけは貫きたかった。
そんなユーノは腹から剣が落ち、同時に大量の血が床に流れたと同時に倒れた。


感情が呼び起こした悲劇は、まだ終わらない。


「あ、ああ……ギムレーェェェ!! ユーノくんをよくもォォォォ!!!」
『いけません、マスター!!!』

ユーノが刺されたことに激昂したなのはは、ユーノが持っていたレイジングハートを手に取り、杖としての姿にした後に、ギムレーに向けて最大級の魔力をぶつけた。
……般若の如き表情を帯びた怒れる彼女にデバイスからの忠告は耳に入らなかった。

「スタァーーーライト、ブレイカあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

元の威力でも戦艦の主砲並の一撃、そしてテラカオス化と萃香を食い殺して得た魔力は凄まじく、病室を桃色で染め上げた。
魔力の光は病院の壁をぶち破り、外に居たアウラの民数十匹をも巻き込み、浦安の地面に大穴を開けた。
さらには魔力はイチリュウチームが拠点にしていた浦安の病院を強すぎる振動で崩すことすら可能であり、次の瞬間には病院が崩壊して瓦礫に変えさせた。

――――

300 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:43:15 ID:wYEUBuQI0

ドゴオオオン、と瓦礫の山から野球選手が現れた。

「ぐ……他の仲間は無事か?」

イチローである。
まず彼は味方の無事を確認にしようとする。
幸い、病室にいた仲間はすぐに見つかった。
ナッパ、ツバサ、はやて、地面に倒れているのはギムレーとアナキンであった。

「イチロー!」
「ナッパ、他のみんなは……」
「少なくとも病室にいた連中は無事だ……」
「アナキンさんがフォースで私たちを守ってくれたんです」

イチローたちがほぼ無傷だったのはアナキンがフォースの力でなのはの魔力から守ったからである。
無論、善意ではなくテラカオスと野球選手を一辺に失うかもしれなかったからだ。

「はやて……ツバサやみんなは無事かい?」
「ええ、アナキンさんのおかげやで」
「そうか……それは良かった」

代償としてフォースと邪剣・聖剣に選ばれた者ですら無視できない襲われた。
しばらくは立つこともままなるまい。

「クッ、万能を含む全属性半減能力を持っているのにファルシオン並のダメージ……なんて強さだよ……」

ギムレーはスターライトブレイカーを至近距離で直撃したが、辛うじて生きていた。
理由は防御力と耐性による反則並みのタフネスさに他ならない。
だがそんな彼を地に伏せさせるほどの打撃を負った。
一撃でダウンを取るほどの威力……火力面においてテラカオス化したなのはがどれほどの強さを持っているか、わかるはずだ。

「なのはとユーノの気配がしないけど、一体どこへ?」
「因子を辿ったところ、あの穴からユーノさんと一緒に行ったみたいです」

ツバサが言うにはスターライトブレイカーで浦安の地面に大きな穴を開けた。
そこからなのはは瀕死のユーノを連れて逃げだしたようだ。
ボロボロだったので追撃がなかったのはありがたかったが、おそらく地下を移動し暴走状態にある彼女は他所で惨劇を繰り広げるだろう。

「早く彼女を追って仕留めないと、より大きな被害が出てしまう」
「ギムレー! それもこれもアンタのせいや!」

あくまで冷静かつ冷徹な態度を崩さないギムレーの頬にはやての怒りの張り手が飛んだ。
張り手を受けても防御力と耐性のおかげでまったく痛くはないが、驚きだけは隠せなった。

「はやて、冷静になれ!
博士も死んだ以上、なのはは殺すしかなかった……あの場はあれが最良の手段だったんだ」
「最良やて? 仲間を殺そうとし、結果関係ないユーノくんを刺してどこがやねん!」
「ユーノは故意じゃない、事故だったんだ」

今のはやては惨劇やギムレーへの怒りもあって、明らかに冷静さを失っていた。
ギムレーは理屈でなんとか宥めようとするが……

「待て、なのは君を殺す以外の対処法はなかったのか!」
「ギムレー! なんで俺たちを信じてくれなかった!」
(ぐっ……お人好し連中め!)

仲間が仲間を殺すなど信じられなかったのか、イチローとナッパはギムレーの方に同調した。

「君たちは見てないから知らないだろうけど、なのはは物理攻撃をも無効化する力を手にしていた。
獣化していた時だったら君たちだって殺されていたかもしれない!
薬だって、もう作るだけの時間が残されていなかったんだ!
そうだろ、アナキン?」
「……ああ、ギムレーが言ったことは本当だ。
ブリーフ博士が死んだ今、僕とサラで薬を作るには時間がかかりすぎる」

「だけど、なのはを殺さんとする理屈はわかるが、悪手だったのには違いない」
「なんだと……!」
「あれを見るんだ」

アナキンが指を指した方角を見てみると、悲しむ女たちがいた。
一つは膝をついて泣くクリスとシマリスと血が染み出る瓦礫の前を中心に仲間が集まっており、他方では気絶から覚めたサラが生き残ったアウラの民と共に黒焦げになった仲間を弔っていた。
特にサラはギムレーに対して遠巻きから睨みつけているようにも見えた。

「あれは……」
「あんたのせいでベルナドットさんや、アウラの民の人も何人も犠牲になったんや!
テラカオス化についてはわかってるつもりやが、アンタが余計なこと一つしなければ、なのはちゃんは暴走せず、犠牲もでなかったんや!
死ななくても怪我をした人もいて、怪我を治すための病院もたった今崩壊したんやで!」

ベルナドットは病院が崩れる際に、クリスとシマリスを庇って瓦礫に潰された。
アウラの民はスターライトブレイカーの巻き添えで50人以上が黒焦げになった。
大きな被害と言っても過言ではない。

【ピップ・ベルナドット@HELLSING 死亡確認】

301 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:43:44 ID:wYEUBuQI0


(アナキン! 他の仲間はフォースで守れなかったのか!?)
(ダメだ……病室にいる仲間だけで手一杯だった)
(嘘だ)
(嘘じゃない! それだけなのはの魔力が高まっていたんだよ!)

ギムレーはアナキンが狸組を篭絡したように、わざと被害を拡大させたのではと疑ったが、アナキン自身もなのはの暴走はイレギュラーな事態だったため、そんな算段を思いつく暇もなかった。
そもそもこれ以上イチリュウチームのメンバーが死ぬメリットが何もないのだ。

(クッ……これからという時に、メンバーの不審を買ってしまったか)

自分なりの理由はあったとはいえ、一つの過ちでメンバーの信用を失ってしまったギムレー。
少なくともなのはは勿論、はやて・サラからは確実に不興を買っている。

「……生かすにしろ、殺すにしろ、なのはを止めなくては被害が拡大する」
「どの口が言うねん」
「はやてくん、思うところもあるが今は抑えてくれ。
なのはくんを捕まえなきゃいけないのは事実だ」

未だにギムレーへの怒りが残るはやてだったが、イチローがなんとか宥めようとする
彼は多くの仲間が殺されたことにはショックはあれが、全てがなのはのせいではないと理解し、短絡的な行動を取らない程度には冷静でいられた。

「アナキンが言うには時間はかかるが薬は作れるんだな?
なら、まだ望みはある……彼女を追いかけて治療して――」
「あの……」
「なんだい、ツバサ?」

イチローがなのはを追跡しようと仲間に促している中で、ツバサが彼の袖を引っ張った。
彼女の表情は非常に、非常に悲しみに溢れていた。



「今、遠方から彼女の因子の気質を感じました」



「もう、彼女は助かりません……」


――――

302 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:44:06 ID:wYEUBuQI0

浦安に開けた大穴から地下を通じて逃げ出したなのはは千葉県を出て、東京湾の空に出ていた。
今の彼女の体内には高濃度のテラカオス因子が宿っているが怪物の姿ではなく、正気を保っているためかレイジングハートで変身して甲冑を身にまとういつもの魔道士の姿をして飛行していた。
腕の中には腹から血と臓物を流し、時間が経つ度に青ざめていく肌をしていく瀕死のユーノであった。
彼はもはや自力では動けなかったが、なのはが海上で治癒のために魔力を注ぐと腹の傷はふさがった。

「すう……」
「ユーノくん、良かった……」

気絶からは覚めてないが、ユーノはなんとか死地から回復した。
皮肉にもテラカオス化で増大した魔力が、治癒魔法の力を高めたのだ。

「でも、これからどうしよう……」

怒りを必殺魔法に乗せてぶっぱなし、恋人の命を助けることができたため、なんとか正気を維持できたなのは。
自分自身の手で多くの仲間を殺し、つい感情的になってしまって病院を吹き飛ばしてしまった以上、イチリュウチームに自分が戻ることはできない。
ユーノだけでも浦安に返すことも考えたが、ギムレーのように仲間を平気で殺せる輩がいるとわかった以上、戻す気にもなれなかった。

「ぐッ……頭が痛い」

頭の中を埋め尽くす「世界をカオスにしろ」という言葉でなのはは、気が狂いそうであった。
今はとにかく目覚めぬユーノのためにも少しの間でも安息の地が欲しかった。

しかし、今の日本に安息の地などない。
激戦区東京やギムレーが見張っている千葉は言わずもがな。
他の県も狂信者などのマーダーが跋扈している。
日本に血なまぐさくない場所など、残されてないと思われた。

「あれは……」

だが、なのはは一箇所だけ、日本でありながら殺し合いの蚊帳の外にあった島を発見した。

伊豆諸島である。
そこには主催の基地がある場所だ。
だがなのははそれを知らないため、早期に沖縄含む離島が禁止エリアにされたことも相まって、首輪をはめた参加者は誰ひとり近寄れない場所と認識している。
狂信者もおいそれとは入れないハズだ、そう信じてなのはは向かうことにした。

今は惨劇も救済の予言も全て忘れて、とにかく休みたかったのである。

303 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:44:40 ID:wYEUBuQI0


ところで高町なのはのテラカオス進行度がどこまで進んだか、気になるものいるはずだろう。
まずユーノのテラカオス進行度は特大レベル。テラカオスへの進化寸前であった。
ユーノの進行度は精子を通じてなのはに受け継がれた。
そしてブリーフ博士と萃香を食らったのだが、その際になのははあるものを一緒に食べた。

ブリーフ博士のディパックに入っていた、風鳴翼の右腕である。

ディーヴァ転生前の風鳴翼のテラカオス進行度もユーノと同じレベルである。
ということは進行度特大と特大同士が合わさった時、なのははどうなるか――



別のことに集中していたなのはは気づいてないが、髪色にツバサと同じ銀のメッシュが徐々に入った。
そして人間としての耳が千切れてフェレットじみた獣耳が入った。
眼光は可愛らしい女性のものではなく、獣のそれと同じ。
そして、かつての貧乳歌姫と同じように黒いオーラを纏っていた。
彼女は気づいていない、浦安から地下を抜けるまでに自分が人間とは別のものに進化していたことに。




呪え! 愛と運命と感情の果てに生まれた混沌の冥王。
その名もテラカオス・リリカル。まさに生誕の瞬間である。



【二日目・20時30分/千葉県 浦安市 病院跡地】

【イチリュウチーム】
※サンプルとなる風鳴翼の右腕と解析するための必要機材を紛失しました。
 ツバサの細胞とアナキン・サラマンディーネレベルの技術者がいれば特効薬自体は生成できますが
 浦安市にはそれを可能にする機材が残っていません。
 また、機材があってもブリーフ博士存命時より格段に時間がかかります。



【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【状態】消耗(大)、不安、若返り、ジェダイ風衣装、首輪解除
【装備】邪剣ソウルエッジ&聖剣ソウルキャリバー@ソウルキャリバーシリーズ
【道具】支給品一式、四条化細胞入りカプセル、ライトセーバー@STAR WARS、闇のルビー、ギンガスパーク@ウルトラマンギンガ
    ココ・ジャンボ@ジョジョの奇妙な冒険、大量の不明支給品(アナキン確認済み/回復薬なし)
【思考】基本:世界を救うためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:なのはとユーノを追うべきか決める
1:対主催への信頼を得るためにはやてを利用する
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは消す
3:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
4:ユウキ=テルミが死んだので予言を解き明かせる科学者や知恵者はなるべく殺したくない
5:いざという時は四条化カプセルで新たなテラカオスを作る
6:沖縄のフォースから世界の破滅の危機を察知。色々と急がねば……
7:事件の元凶であるミヤザキの末裔は必ず殺す
8:まさかなのはがテラカオス化するとは……
※タイムふろしきで若返ったのでピーク時の姿と力を取り戻しました


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
【状態】ダメージ(大)、人間形態、シャドウだった者へ若干の恐怖心、首輪解除
【装備】邪竜ギムレー
【道具】なし
【思考】基本:自分以外がもたらす破滅(未来の大災害)の阻止
0:クッ、テラカオスになってしまったなのはをどうするべきか……!
1:『正確な』情報を集めて仲間をフォローする。アナキンの正体は今は誰にも話さない
2:試合の邪魔をするDMC狂信者を倒すために、本拠であるビッグサイトを攻略したい
3:都庁がまともな場所と判明したのは僥倖。変態の巣窟でも文句はないさ
4:西の邪悪な気配は警戒を続ける
5:ネット上の乳神に若干嫉妬
6:ツバサこそ大災害から世界を救う鍵かもしれない
7:オシリスは救助したいが少し厳しいか……?
8:ブリーフ博士が死んでしまった位以上、なのはの命は諦めることも視野に入れる
※外見はデフォルト設定の銀髪青年です
※首輪を外したとしても、屍兵は簡単には生み出せません
※首輪解除により、人間の姿のまま、自分自身である邪竜ギムレーを操れるようになりました
※現在、邪竜ギムレーの体を使って浦安市を覆うことでシェルターとなって外敵の侵入や攻撃を防いでいます
 『通常手段』での突破は容易ではありません
※オオナズチより、予言の情報と都庁の状況の一部を把握しました
※またオオナズチ側にもイチリュウチームの情報が伝わりました
 アナキンのことはまだ伝えていません
※ドラゴンネットワークを遮断しました。これにより情報は入りませんが、シャドウからも介入されません

304 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:45:16 ID:wYEUBuQI0


【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、尻尾切断(処置済み)、野球脳、激しい怒りと悲しみ、首輪解除
【装備】病衣
【道具】なし
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:ユーノとなのは助けにいかねえと!
1:野球を邪魔するDMCは許さない
2:萃香やブリーフ博士、ベルナドットまで!?
3:拳王連合軍は本当に悪逆集団なのか?
4:ギムレーは信じたいが……
※回復したため、戦闘力がとても大幅に上昇しました
※一瞬だけスーパーサイヤ人化しました。これからいつでも変身できますが本人はまだ気づいていません

【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【状態】ダメージ(小)、悲しみ、首輪解除
【装備】不明
【道具】支給品一式
【思考】基本:世界を救うためにイチローについていく
0:非常に混乱しているが、今はツバサ達の護衛に専念
1:死んでしまった奴らのためにも頑張るホル!
2:都庁に儚げな巨乳がいるなら、向かってみてもいいかもしれない
3:ホルもソウルアーマーを遺したくなるよう人に会ってみたいホル
4:できればそれは巨乳の女の子が(ry 特にクリスやはやてみたいなええ乳の(ry
5:ツバサも乳があればなあ……

【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】健康、完全TC耐性、キングストーンにより変身可能、首輪なし、若干エントロピー減少により弱体化
【装備】キングストーン
【道具】リボルケイン
【思考】基本:テラカオスの因子を集める。この力で守れるものを守る。
0:なのはさんはもう助からない……
1:どうして人はあんなに残酷に殺しあえるんだろう……
2:私にも救えない人がいたなんて……
3:ブリーフ博士まで死んでしまった、これからどうすれば……
※ディーヴァが持っていた能力はキングストーン以外が使用不可。
※一度、テラカオスになったことにより完全なTC耐性を保持、テラカオス候補者のTCを回収できます。
※死んだことによりディーヴァの性格を引き継いでいません、これからどうなるかは不明。
※記憶を大半喪失していますが、生みの親の名前、風鳴翼が捕食で世界を救おうとしたこと、都庁での悪い思い出、沖縄で敵が現れ敗北したこと、夢で出会った男(才人)のことは朧げながら覚えています。
※仮称としてツバサという名前が与えられました
※ユーノに吸収された因子とエントロピーは通常手段では回復できません
 他者の因子を吸収することによってのみ回復します


【イチロー@現実?】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小) 、非常に強い悔しさ、首輪解除
【装備】野球道具
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止
0:なのはとユーノの二人を追わなくては!
1:DMC狂信者を倒すために多くの仲間を集める
2:邪魔をしてくるDMC狂信者を倒すまでは試合は保留
3:予言に対しては慎重に考える
4:DMC狂信者の本拠であるビッグサイトを攻略したい
5:主催者は予言のことを知っているんだろうか?
6:オシリスが生きているなら助けに行きたい
7:できるならドリスコルだけはこの手で討つ
※ネオ・レーザービームは使用すると腕に多大な負担がかかり、あと二球以上使用すると選手生命が終わる危険があります
 いかなる回復手段を持ってもこれは回復できません


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【状態】ダメージ(小)、疲労(小)、怒りと悲しみ、首輪解除
【装備】胡桃1500個
【道具】支給品一式、メタグロス、コルトパイソン
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:なのはが怪物になっちまっただって?!
1:ハラサン……ありがとう
2:大正義を忘れない
3:目立つことも忘れない
4:予言に対して盲信気味
5:DMC信者は絶許。本当に絶許
6:なんかシマリスから俺と同じ臭いがする
※ダイゴのポケモンであるメタグロスを預かりました
 指示を従ってもらえるかは不明


【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、首輪解除
【装備】サングラス
【道具】支給品一式、マスターソード、魔竜石、リザイアの書、日本酒×50、不明品
【思考】
0:クソッ、何がどうなってやがる!
1:DMC狂信者、その他マーダーと達と戦う
2:狂信者の中でもドリスコルだけは特に許さねえ
3:萃香が死んだだと!?
※邪眼を一回使いました

305 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:45:51 ID:wYEUBuQI0


【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【状態】右足切断(処置済み)、監督といて生きていく決意、首輪解除、深い悲しみ
【装備】野球道具一式
【道具】支給品一式
【思考】基本:ハラサンの意思を継ぎ、チームを優勝させる
0:一体ナニガドウナッテルンデスカ!?
1:コレカラハ監督トシテガンバッテイク
2:ナ、仲間ノ皆サン……
3:ナノハサントユーノサンヲ追ウカドウカ決メル
※イチリュウチームの監督になりました
※首輪解除により、常人よりも屈強な野球選手本来の力を取り戻しました
※足がどうにかなれば、戦える可能性があります

【シマリス@ぼのぼの】
【状態】ダメージ(小)、疲労(中)、嘆き、首輪解除
【装備】胡桃×1500
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】基本:仲間と共に生き残る
0: ベルナドットさんが!?
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:胡桃の扱いを極める
3:クリスちゃんとツバサちゃんは友達でぃす!
4:6/さんを見ているとなぜかホッとする


【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【状態】深い悲しみ、首輪解除
【装備】イチイバル
【道具】支給品一式、その他不明、自動式拳銃×2、M16
    スピーダー、手榴弾×25、ノートパソコン、カオスロワちゃんねるに関する考察メモ
【思考】
基本:仲間を探して現状を打破する
0:ベルナドットのおっちゃん、なんで死んじまうんだよ……!
1:近日中に来る天変地異のことをより多くの者に伝える
2:もっと強くなりてぇ
3:未だにツバサが翼でないと信じられない
4:拳王連合軍にはやっぱクソだわ
5:仲間を殺したなのはに対して――?
※テラカオス化が進行していましたがディーヴァの残滓によって回収され正常に戻りました。
※死亡したベルナドットの支給品を引き継ぎました



【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【状態】精神不安定、非処女、死んだ仲間たちへの深い悲しみ、アナキンへの好感度(大)、ギムレーへの不信(大)、首輪解除
【装備】なし
【道具】基本支給品一式、夜天の書@魔法少女リリカルなのは、アナキンからもらったピルケース、TCホール観察日記
【思考】基本:死んだ仲間たちの為にも主催を倒す
0:なのはちゃんが怪物になってしまうなんて……ユーノくんの無事が心配
1:主催者打倒と大災害阻止のために、情報と仲間を集める
2:他の参加者の都庁=ヘルヘイムの誤解を解きたい
3:恩人であるアナキンに特別な感情
4:希望だと思われたブリーフ博士まで逝ってしまうなんて!
5:ギムレーへの不信
※主催側が大災害について何か関与していると考えています(細かい部分は分かっていません)
※カオスロワちゃんねるより、風鳴翼の情報を少し入手しました
※アナキンの正体に気づいていません
※世界滅亡(次の大災害)と救済の予言の内容を知りました
 また、沖縄の天候がおかしくなっていることに気づきました


【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【状態】ダメージ(中)、両羽喪失(処置済み)、ギムレーへの不信(中)、首輪解除
【装備】なし
【道具】一人用ポッド、スクーナー級×450、ガレオン級×27
【思考】基本:対主催
0:なのは様、どうしてこんなことに……!
1:イチリュウチームについていく
2:滅亡を止める予言の必要性は理解したものの、未だ懐疑的
3:ナッパ様の髭が一瞬だけ金色になったのを目撃しましたがあれは一体……
※予言には主催者も関わっていると推測しています

306 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:46:36 ID:wYEUBuQI0



【二日目・20時30分/伊豆諸島基地近くの海域】

【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【状態】19歳の身体、魔法少女に変身中、ケモ耳、すごい罪悪感、テラカオス完成度30%
    一時的に正気を取り戻している
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】なし
【思考】基本:世界をカオスにし、ユーノを守る……?
0:今はとにかく休みたい……
1:今は何も考えたくない
2:ユーノを傷つけたギムレーは信用しない
  イチリュウチームに戻りたくない
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※ユーノの精液(四条化細胞+キングストーンの一部の力)を全身で受けた結果、テラカオス化汚染が譲渡されテラカオス候補者に。
 さらに風鳴翼の右腕を食べたことで完全にテラカオス化しました。
 特効薬でもフォレスト・セルやツバサの治療でも治せません。
※テラカオス化したユーノから受け継いだ能力として
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただしほぼ暴走状態に陥っており、ユーノ以外の敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できるようになりました
※ユーノを通してツバサから奪ったキングストーンの能力として「ゲル化」ができるようになりました
 「ロボ化」は不明
  

【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】気絶中、疲労(大)、19歳の身体、首輪解除、全裸
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ……?
0:(気絶中)
1:全てにおいてなのはの安全を優先する
2:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
3:救済の予言の謎を解く
4:野田総理の死の原因を探りたい
5:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許さない
6:博士……
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※TC値と救済の予言の内容を知りました
※特効薬を使ったことでユーノ自身のテラカオス化は完全に浄化されました。

※伊豆諸島に主催の基地があることを知りません

307 ◆6qClYvksio:2019/02/09(土) 23:47:10 ID:wYEUBuQI0
投下終了です

タイトルは「lyrical」でお願いします

308あきよの破壊力が異常:2019/03/27(水) 12:20:41 ID:CWcaLh1o0
投下来ないなあ

309あきよの破壊力が異常:2019/03/27(水) 17:03:34 ID:fWB8XmJA0
>>308
自分も考えてはいるんだけど、拳王の野球パートが鬼門すぎる
サーフやらシャドウやらは倒す案色々あるのに対して野球の展開がまるで思いつかんのよ

310あきよの破壊力が異常:2019/03/28(木) 02:11:44 ID:XLy/kbTM0
俺なら一応、野球の大雑把なプロットは考えている
現在は次の野球に行き着くまでの繋ぎSSも考えている
リアル忙し過ぎて異常に難産だが

311あきよの破壊力が異常:2019/03/28(木) 02:13:07 ID:XLy/kbTM0
考えている×
作っている○

312あきよの破壊力が異常:2019/04/05(金) 21:12:38 ID:Qfdyujtw0
パロロワ以外の二次創作の話していいんだよね?

DIOって今でこそ小物悪役みたいに扱われてるけどやる夫がドラゴンクエスト5の主人公のようですとかだと大物悪役として扱われてたんだよな

313あきよの破壊力が異常:2019/04/06(土) 01:36:44 ID:9g4oadMo0
テスト

314 ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:40:46 ID:qa2XlgdE0
予約の都庁同盟軍、投下します

315決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:43:24 ID:qa2XlgdE0
この世界でも上位の神、ノーデンスから命を賭してこの世界の真実が語られた都庁同盟軍。
その直後に起きた邪竜ギムレーからの敵対者への処刑宣告。
そして定時放送。
それらを聞いた同盟軍は一丸になって動き出した。
世界を守るために。


千葉県に現れた巨大な邪竜は拳王軍と狂信者の敵なのは確実だが、敵か味方かまではわからない。
だが敵か味方かは不明だが、放置は愚策。
敵ならばいずれ殲滅する必要があり、交渉して味方にできるのならば肩を並べて戦うべきだ。
いくら世界の破滅を願う邪竜とはいえ、蒼の汚染によって自分まで破滅したくはなかろう。
何より滅ぼす者の対象に自分たち都庁を外していたところから、同盟を組める余地があると信じたい。

そこで情報収集と同時に彼方にコンタクトを取るためにオオナズチは都庁で唯一のドラゴンネットワークの使い手として、邪竜へのコネクションを探すべく、あえて誰もいない一室に引きこもった。
これがオオナズチの最後のドラゴンネットワークとなり、都庁とイチリュウチームに多大な貢献を齎すのだが、それはまた別の話。
気になる人は5264話を参照されたし。


続けて第六回放送への内容の考察。
仲間や仲間になるかもしれなかった対主催の多くが死んでいる悲しい情報の中に、色々見えてくるものもある。


一つは裏切り者の安倍総理が粛清されて、ダース・ベイダーが主催として復権したらしいとのこと。
ナノマシンをバラ撒いた存在であるのは確かだが、未だに全容が見えない10期主催陣という組織。
嘘がなければ、主催も内ゲバを起こすあたり、一枚岩ではなかったようだ。
ひょっとすると、死んだ安倍総理と主催の椅子を奪い返したベイダーのどちらかが大災害を引き起こした元凶なのかもしれない。
主催の中に元凶がいるなら内ゲバの中で死んでいてほしいが、真実は主催の誰かを捕獲しない限りわからないだろう。

一方、ベイダーが九州ロボに戻っているあたり、主催を追いかけて東京までやってきた自称対主催である超人血盟軍及び拳王連合軍への話の信憑性がなおさら低くなる。
中盤から囁かれていた拳王軍・主催同盟説が都庁の界隈でより濃厚になる。
でなければ単純な戦闘力においてベジータという状態異常耐性以外はセルすら凌ぐ存在が残っていながら、九州ロボが今も動き続けている理由がわからない。
考えられる可能性として拳王軍・超人血盟軍は主催の安倍派の味方であり主催への敵対行動もいちおう取っていたが、それは邪魔であるベイダー側を滅ぼすため。
しかし目論見は外れ、安倍派は滅ぼされてベイダー側が復権。
元は味方であれ、今後は主催も拳王軍と敵対的な行動を取るだろう……あくまで想像の範疇であるが、主催が拳王軍の敵であるにしろ味方であるにしろ滅ぼす決定事項は覆ることはない。


一つは行方不明の聖帝軍先遣隊にとって柱であったクロコダインの死亡。
都庁に先にたどり着くハズの先遣隊が都庁にいないところからして何かあったのは想像に苦しくなかったが、やはりクロコダインほどの男が死ぬほどの異常事態が発生したようだ。
紘太・チルノ・ふなっしーの三人はまだ生きているが、連絡は取れないので不安は大きい。
仲間としては当然心配であるし、彼らが戻らないと聖帝軍は野球ができないのだ。


一つは同盟を組んでいた狸組の壊滅。
五人中二人しか生き残っていない様子からして都庁から離れた後、狂信者などのどこかの強マーダーに襲われたのか……
半ば追い返してしまったレストは内心悔やむ。
彼らを壊滅させたのは最低でも殺生丸ほどの強者に最高クラスの武器である天ノ村雲ノ剣の装備を与えても勝てない敵。
さらにブリーフ博士の首輪解除技術は対主催のみならず、マーダーや狂信者も喉から手が出るほど欲しいはずで奪われたらまずい。
まだ名前の呼ばれていないはやてとブリーフ博士の無事を祈る他ない。


一つはイチローチーム・ドラゴンズ双方からかなりの数の死者が出ていること。
こちらも狂信者たちに襲われ、横浜で拳王連合軍に一部メンバーが襲撃を仕掛けて敗走したところから大半のメンバーが死亡したようだ。
特に最後の目撃情報である千葉には例の巨大邪竜がおり、なおさらギムレーが敵か味方が判断を迷わせる。
聖帝軍同様、彼らにも野球をしてもらわなければいけない。
直接会ったことは一度もないが、いずれ仲間になる存在としてこれ以上の損害がでないことを願う。


一つは風鳴翼が放送で呼ばれていないこと。
都庁に二度目の襲撃を仕掛けて撃退したところからだいぶ時間が経過した。
関西での目撃情報を最後にぷっつりと消息が途絶えたようだが、おそらく死んではいまい。
最後に相対した時は理性を保っているとは言い難かったが、それでも世界を救うために必要なテラカオスではある。
もう一度相まみえることがあれば、どうにかして捕獲したい。

316決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:44:06 ID:qa2XlgdE0



悪い情報の方が多かったが、放送には吉報も混じっていた。
ユーノとなのはの無事。
悪しき拳王連合軍の半壊。
都庁の魔物を騙っていた天魔王軍の全滅。


ユーノとはのはに関しては、仲間である桑原とエリカは素直に喜んだ。
ユーノはテラカオス化はしているが、セルがいる限り治療の余地があり、希望は残されているのだ。
あくまでネット上に上がってないだけだが、ユーノが変異したと思われるフェレット型の怪物が誰かを襲ったという情報もない。
ハス太殺害はユーノの罪ではなく、テラカオス化による暴走。
無事に合流して、セルによる触手治療ができればまだ十分に人としてやり直しができるはずである。


熱斗など拳王軍の主力の戦死は嬉しい誤算である。
特にエリカやアルルーナなど彼らを最も嫌う存在はこれまでの過ちの天罰を食らったのだと述べた。
奇襲をしかけたリオレウスがやってのけたようだ。
心の中で多くの魔物が彼に祝杯を捧げた。
拳王など残る面子も強大ではあったが、殲滅への道筋も見えてきたのは確かだ。


そして、オルゴ・デミーラ率いる天魔王軍の全滅。
桑原・エリカの情報いわく居城にしていたと思わしき首相官邸が跡形もなく爆散したので、その際に何者かに殲滅されたのかもしれない。
欲を言えば一人くらいは捕虜として捕まえて、警察組襲撃などの罪を擦り付けたことを白日のもとに明かし、都庁の無実を証明させたかったが贅沢は言ってられない。
一番いい知らせなのは違いないのだ。



さらに拳王軍の弱体化、天魔王軍の全滅を聞いて神樹は提言した。

『エネルギーが溜まって俺の秘奥義『神々の黄昏』が撃てるようになったぜ。
こいつは耐性無視の即死攻撃……どこの誰が攻めてきても、これを決めれば集団単位で全滅に追いやれる。
一回しか撃てないだろうから使い時は間違えられないが、拳王連合軍、邪竜、狂信者、主催……射程内にさえ入っちまえばどれか一つは確実に滅ぼせるぜ』

神樹が、ある意味誰であっても滅びを与える最強の武器を手にしたことは都庁同盟軍に取っては特大レベルで良いニュースであった。
射程やエネルギーを貯めなおす時間を考えるに一発しか撃てないという制約はあるが、攻めてきた敵に確実な滅びをもたらし、防衛が約束される。
例外的に耐えられるのは蒼を纏う黒き獣だけであろう。

こうなれば天魔王軍がいなくなったので敵が一つに減り、さらに一つの敵組織の殲滅を約束されたも同然。
防衛が安泰であるとすればこれまで守りしかできなかった都庁同盟軍が攻めに転じやすくなることを意味する。



そして。
ダオスはまず、小町と影薄組四人を世界樹の頂上に集めて一つの作戦を提案する。

「次の大災害まで時間が残されていない。
だが、野球をやるには数が多い狂信者が特に邪魔だ。
よって、私から狂信者を早期に攻略する作戦を立案する」

ダオスの言葉に影薄組は驚く。
散々煮え湯を飲まされた狂信者に一泡吹かせられることと、どうやって勝つつもりなのか二重の意味で。

「……で、どんな作戦なんだいダオス?
奴らの数は無尽蔵に近い。
同盟軍全体で総攻撃を仕掛けたとして、多大な損害は免れないよ」
「そうなると余力がなくなって予言の完遂は難しいっす。
犠牲なしで勝てたとしても時間がかかりすぎるだろうし」

小町とモモの意見は最もだ。
いくら強化に強化を重ねた都庁同盟軍でも数万以上は確実にいる狂信者を相手にするには骨が折れる。
防衛はまだしも、攻撃に転ずるとなると同盟軍でもいずれ地力の差で敗北、勝てても時間切れで大災害が襲いかかってる危険性が大。
そもそもビックサイトを攻めてるうちに都庁に拳王軍などの他の戦力が襲いかかってきたら目も当てられない事態になるだろう。

317決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:44:39 ID:qa2XlgdE0

「確かに真正面から仕掛ければそうなるであろう。
私が提案するのは少人数の精鋭によるビックサイトへの潜入工作だ」
「潜入工作だって?」
「そうだ、非常に危険な……しかし、DMC狂信者という組織を最低限の時間で倒せる作戦だ。
小鳥、作戦概要をまとめたものを」
「はい」

指示を小鳥がノートパソコンで潜入作戦の概要を描いた図解を影薄組に見せ、ダオスが補足する。

「私やまどかのレーザーによる超長距離射撃も考えたが、ビックサイトには魔力が集中していることを感知した。
長距離からの爆撃は、貯めていた魔力が暴発する可能性もあり危険だ。
最低でも関東圏内は跡形もなく吹っ飛ぶ」
「直接攻撃はダメか……あたいもドラゴンハートを受けてからなんとなく尋常じゃない魔力の塊を感じたが、こいつが狂信者どもが掲げているクラウザーを生き返すためのエネルギーか?」
「クラウザーの蘇生ができるかどうかも胡散臭いと思うが、参加者を殺して莫大な生体エネルギーを集めているのは確かだ。
実際、犠牲者が増える度にエネルギーも増している」

ダオスとまどかの全力全開のレーザーならば同じ県内になるビックサイトは射程内でいつでも消し飛ばすことは可能。
しかし、先にイチリュウチームのドラゴンたちが感じ取ったように、集めた魔力が誘爆して大惨事を引き起こす危険性がある。
そうなると施設そのものを消し飛ばす火力攻めの間接攻撃は不可能である。

「しかし狂信者がこのエネルギーをどう使い、本当にクラウザーが蘇生できるかどうかはさして重要ではない。
このエネルギーがそっくりそのまま無くなればどうなるか?
クラウザーの蘇生が絶対にできない状態になったとすれば?」

回答を待っているかのようにダオスは小町と目を合わせる。
小町は一息置いてから答えをだした。

「……なるほど、術だろうと機械だろうと、エネルギーを溜め込んでいる手段を奪うか壊すかすれば、狂信者はクラウザーを蘇生できなくなる。
目的を果たせないと知った組織は瓦解、最低でも大幅な士気低下はするね。
つまるところ、あたいたちにビックサイトに潜り込んでクラウザーの蘇生手段を挫け……アンタはそう言いたんだね」
「その通りだ」

この世界は蒼の汚染によって死者の蘇生ができない。
そんな中、嘘か真か亡くなったクラウザーさんを蘇生できる方法を見つけたと、ディーという男が見つけて発信したのが狂信者の興りである。
ならばビックサイトに潜り込み、その方法を無くしてしまえば蘇生の希望を失った狂信者集団は大義を失い、同時に組織力を失う。

「そのために、おまえたち影薄組の力が必要なのだ」
「あかりたちが?」
「左様だ。
そこらの擬態能力を持った魔物を上回るステルス性、潜入する分に必要な戦闘力を兼ね揃えた戦士はおまえたちしかいない」
「確かに僕らの能力は潜入工作には有用だと思いますけど……」
「不安もあるだろうが、私やレスト、まどかやセルでさえ潜入には能力面でも技能面でも不向きだ。
戦闘も全くやらずに敵地に潜入できる適任者はおまえたちしかいない」

純粋な戦闘力なら影薄組一人一人より上の人材は都庁にも存在する。
しかし、世界樹周辺ならばまだしも、味方の支援を受けられぬ敵地最深部で敵に見つかれば確実に袋叩きにされる。
ステータスだけなら最強クラスのレストでさえ狂信者の豊富すぎる戦術の前に何度も敗北しており、仲間の支援なしならばとっくにこの世にはいない。
その仲間の支援も世界樹での防衛戦ならまだしも、敵が多すぎるビックサイトの前では支援する間もなく死者スレ送りとなるであろう。
ビックサイトをいかに攻略するかは戦闘力ではなく、いかに敵に見つからずに急所をつけるかのステルス能力が鍵とダオスは見たのだ。

「アンタの考えはよくわかったが、ビックサイトに侵入するための俺たち四人以外の戦力は?」

方針を理解した日之影の質問。
確かに潜入に適正があるのは影薄組しかいない、が流石に四人だけではいざと言う時が困る。
そもそも日之影以外の三人はドラゴンハートと雀力で大幅強化されているとはいえ、元は非戦闘員。
モブ狂信者には負けないだろうが、余程のザコじゃない限りネームド狂信者相手にはまずい。
潜入作戦なのだから戦力は多すぎてもダメなのだが、少なすぎても蘇生手段を破壊する前に全滅する危険がある。

318決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:45:11 ID:qa2XlgdE0

「影薄組に同伴できる戦力は……小町だけになる」
「ついていけるのはアタイだけかい? 他に誰か連れていけそうな奴はいないか?」
「こまっちゃんの強さは長く付き合ってたからわかるし、俺らのリーダーが一緒に戦ってくれるのは嬉しいぐらいだが……」

影薄組に同伴できるのは小町のみ、このダオスの答えに小町含めた全員が不安そうな顔をする。
小町が頼りにならないからではない。頼りになる彼女がいてもまだ不安が残るからだ。

「確かに戦力的にはまだ不安もあるだろうが、これにもいくつか理由がある。
一つは都庁を防衛するための戦力が必要なこと……天魔王軍こそ滅んだが、敵はそれ以外にも残っている。
それらが一斉に攻めてくれば防衛のために外せない戦力は決まってくる」
「神樹とアルルーナはどう考えても潜入向きじゃねえし、その二人もトレーナーであるエリカがいてこそ真価を発揮する」
「さやかちゃんも都庁のみんなの怪我を治すために外せないね、セルがいる限りソウルジェムの汚れが貯まらないからレストさんでもできない無限回復ができるし」
「聖帝軍の皆さんはさしずめ対拳王軍への切り札っすね」
「透明化できるオオナズチはこの都庁で唯一ドラゴンネットワークができる人材ですし。邪竜とどうしてもコネを作らないといけませんから外せないですね……通信がすぐに終わるなんて思えませんし」
「他は戦闘できないか、潜入能力を持っていない……ん? ちょっと待て」

ここで小町が一つの疑問に行き着く。

「あたいは日之影たちと付き合ってただけにステルス能力を持っている奴らを見つけられる『慣れ』のようなものはあるけど、あたい自身にはステルス能力はないぞ?」

小町は影薄組のリーダー格と言っても過言ではないが、彼女自身はステルス能力はない。
むしろ女性にしては高い身長、赤い髪、胸にぶら下げた爆乳のせいで遠くでも目立つぐらいだ。
顔も『乳神』の通称でネット拡散されて日本中に広く拡散されている。
潜入はとても難しい……と思われたが、ダオスはこれについて回答する。

「それは問題ない、これは機械に強い犬牟田に教わったことだが……解決策は影薄組が使っているデモニカにある」
「あかりちゃん、小鳥が教える通りの手順でデモニカスーツの悪魔召喚プログラムを使って」

小鳥はあかりにデモニカスーツに内蔵された悪魔召喚プログラムを起動させ、操作を教わることで一通りの手順を覚える。
その結果。
小町は光に包まれるとあかりのデモニカスーツのコンピュータの中に入った。

『うお? あたいがあかりのデモニカの中に入っちまった!』
「びっくり仰天だよ!」

あかりのヘルメットの中に『死神 オノヅカコマチ』の驚き顔が映る。

「見ての通り、悪魔召喚プログラムには悪魔や天使、魔獣を封じて仲魔とする機能がある」
「狂信者の狭間や大和って人が使っていたものと同じっすね」
「左様。これを利用すればステルス能力を持っていない小町を、ステルス能力を持った影薄組が運搬することで恩恵を受け、ビックサイトへの潜入を容易にできるわけだ」
『なるほどねえ、しっかしこんな便利なもんがあるなら他の連中も連れていけるんじゃないのかい?』
「残念ながら大半の仲間はプログラムに『悪魔』と判定されないせいか入れない。
入ることができるドラゴン族は防衛に欠かせぬし、天使判定のカヲルは予言に必要な鎮魂歌を作らせるとために都庁に残ってもらわねば困る」

一先ず、小町の潜入問題が解決したところで、小町は悪魔召喚プログラムから出た。

319決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:45:38 ID:qa2XlgdE0

「潜入問題はよしとして、小町を選んだことにも理由がある。
クラウザーの蘇生手段を破壊したことを世間に発信する際、誰がそれをネットに流すかも重要になる」
「だったらあかりたちでも……」
「待て待て待て、発信者がおまえたちではいくらなんでも影が薄すぎだ。
映像で流しても透明人間が映しているようにし見えんだろう……オイ、気を落とすでない、あかり」
「……まあ、事実っすね。大阪のジプシー・デンジャーとの戦いでも、小町さんや混沌の騎士さんだけクローズアップされて私たち四人は半ば無視されてたぐらいっすし」
「発表者も重要つーわけか。ジーミーな俺たちじゃ世間への効果も薄い」

影薄たちは影が薄いだけに、存在を忘れ去られやすい。
組成手段を破壊した動画を掲示板に張り付けたところで無視されるか、ごく少数に見つけられても狂信者を止めるには不十分なくらいしか伝播しない可能性がある。

「そこで小町の出番だ。
誇張も入っているとは参加者から信頼されている数少ない女傑。
そんなおまえが狂信者に痛恨の一撃を与えた動画を上げれば、瞬く間に広がるだろう」
「確かに、完全に悪党扱いの他の同盟軍の仲間よりは信頼されるだろうね」
「しかも、小町さん自身にも泊がついて私たちが並行してやっている小町さん偶像計画が捗りますね」

小町が狂信者に痛手を追わせたことを世間に発表することは、並行して実行中の小町偶像計画のためにもなる。
ヘルヘイム扱いの都庁のボス扱いであるダオスを、小町が倒すという演技を行うことで参加者の混乱を沈静化させる計画は、とにかく小町のヒーロー性を上げることで効果を上げる必要があった。
この計画を実行に移すにはどうしても拳王軍と狂信者が邪魔であるし、ちょうど片方を潰すことのできるため一石二鳥とも言えるのだ。

「あ、ちょっと待った。
あたい、さっき追い払ったモブ暴徒に信頼できる対主催がいたら、都庁の近くで待ってるから会わせてくれって言ったんだけど、そっちはいいのか?」
『ならばこの俺が留守を引き受けよう』

スマホ越し語りかけてきたのは、世界樹の下層部にて心の傷を負っているきらりの介抱をしている元・悪魔超人の人間・魔雲天であった。

「魔雲天、おまえに任せて大丈夫か?」
『人間になってしまったことは都合がいい。
人間の姿の俺は世間の誰にも知られてないし、ほかの連中ほど警戒はされないハズだ。
ただ小町の仲間であるという証拠が欲しい……何でも良いからちょうどいいものを一つくれないか?』
「……わかった。あたいが主力武器に使っていた神鎗の柄がある。それをやるよ。
苦労をかけてすまないね」
『いや、きらりの件で助けてもらった恩返しをしたいと考え、人間になって弱体化した身で何かできることはないか探していたところだ。
あのお方もきっとそうするよう願うだろう』

魔雲天は悪魔超人を引退したが、悪魔将軍への敬愛や忠誠心は捨てていない。
放送で彼の名前が呼ばれた時は多大なショックを受けたが、絶望で塞がるのは将軍への無礼であると考え、非力な人の身でも戦うことを決めた。
近くのベッドで疲れきって眠っているきらりを見守りながら、それを決めたのだ。


「とにもかくにも影薄組の潜入作戦に関する疑問は以上と見ていいな?
この作戦の趣旨は影薄組による狂信者中枢への破壊工作と、偶像計画に必要な小町の泊付けの意味が込められている。
……だが、この任務は敵の懐に最低限の戦力で飛び込むため、非常に危険を伴う」
「ビックサイト内部は改装されていて殺し合い前の見取り図なんて宛にできませんし、他にもどんな敵や罠が潜んでいるかはカオスロワちゃんねるでさえもわかりません」
「作戦成功率や生還率も非常に低く、決死隊作戦と言っても差し支えない。
仮に時間の猶予があれば、こんな無茶な作戦は薦めたくない。
日之影、桃子、黒子、あかり……そして小町も、降りたいなら今のうちだ。
作戦に乗るのならば死ぬ覚悟はできているか?」

鬼気迫る表情で危険な作戦に了承するかを問うダオスと小鳥。
失敗すれば死、成功しても全滅する可能性も非常に高い作戦。
ハイリスクすぎる作戦から仮に降りてしまっても誰も責めないだろう。

320決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:46:06 ID:qa2XlgdE0

だが影薄組五人は、死ぬリスクよりも狂信者を討つことで得られる多くを救う道(ハイリターン)を選んだ。

「もう時間もないんだ、別の作戦を練り直す時間も勿体無い。あたいはやるよ」
「大活躍するチャンスを前にして主人公は引かないもん!」
「元生徒会長だってな!」
「私は小町さんや皆が一緒なら何も怖くないっす」
「五人揃わないとただでさえ少ない作戦成功率がもっと低くなります、僕もやりますよ」

五人とも、覚悟を決めて作戦に乗ることにした。

「だけどダオス、一つだけ間違いがある」
「なんだ?」
「あたいたちは一人でも多く、いや誰も死なずに、この都庁に帰ってくる。
それまで世界樹を陥落させるんじゃないよ」
「……ああ、わかっている。
ここがなくなるとおまえの偶像計画が水の泡。そして帰る場所だからな」

高い士気と世界を守るという目的意識から来る笑顔を交えた小町の啖呵に、ダオスもクスリと微笑むのであった。
この五人ならきっと作戦を成功させて狂信者組織を倒せると思っただけに。


「よし、死ぬ覚悟があるのなら、『アレ』もやってもらえるな?」
「……『アレ』?」
「時間はまだ少しだが残されている……命の前に尻を犠牲してもらえるか?」






で。

『にしゃ!』

時刻は19時ちょうど。
フォレスト・セルの口から二人の影の薄い少年が吐き出された。

影薄組の黒子テツヤと日之影空洞だ。
セルから吐き出された二人は粘液塗れで全裸であった。
周囲に女性はいなかったが、代わりにレストやサウザーと言った男性陣が毛布を片手にすぐさま介抱に入った。

「大丈夫か、日之影」
「はは、正直舐めていたぜ、彼女でもない奴に童貞より先に尻の処女を失っちまうなんてな……」
「……ご愁傷様とだけ言っておく」

普段飄々としている日之影は声をかけてきたサウザーに笑顔を向けるが、それは明らかにぎこちなく作り笑いだと思った。
笑顔がガクガクしているなら腰もガクガク痙攣している。
それを見たサウザーはなんともいたたまれない顔をしていた。

「それだけセルのテクニックはすごいのさ。
どんなに肉体を鍛えた存在もしばらくは立っていられなくなるレベルで。
まあ、君と黒子はまだまだタっているみたいだけど」
「笑えねえよ、その下ネタ。あ、やべえ、また出ちまった」
「や、やめんか! 俺の服に汚れがつくかと思ったぞ!」

経験者であるレストはドヤ顔で語り、今さっき経験者になった日之影とまだ後ろは処女のサウザーは呆れた顔をしている。

「ところで黒子は大丈夫?」
「鋼の精神力を持っているアイツのことだ。
きっとフォレスト・セルのテクニックだって――」

もうひとり、セルの加護を受けていた黒子ならばきっといつもどおりであろうと期待されていた。
ほむらが魔法少女にしてもソウルジェムが濁らないだろうと思われたぐらいのオリハルコンメンタルの持ち主だからだ。

「――――」
「あ、ダメだ。あまりのショックで固まってやがる」
「あちゃー、セルの前では黒子でもダメだったか」
「ひええ……こいつでダメなら全参加者がセルのテクニックに耐えられんだろう」
「にしゃー、しゃしゃしゃーにしゃー♪」

黒子は連載初期のジャスタウェイ顔のまま、体育座りで固まっていた。
なぜか勝ち誇り、某スローロリスのような勝利のポーズを取るフォレスト・セル。

321決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:46:48 ID:qa2XlgdE0


「男どもあと40秒でそこからどきな!
あたいたちが、いつまで経っても出られねえじゃないか」
「おお、すまねえなこまっちゃん」
「覗いたらあかりとモモと三人がかりでしばくからな?」
「そんなオオナズチみたいな真似はしないよ」
「レスト、なんとなくおまえならやりかねん気がするんだが……まあ、変なことはしないように聖帝たる俺が責任を持って見張っておこう」

未だに正気に戻っていない黒子を日之影が背負い、全裸の少年二人と聖帝とアースマイトは出て行った。
そこから入れ替わるように三人の裸の美少女達と、まどかとほむらが付きそう形で現れた。
まどかとほむら以外は一糸まとわぬ姿で夜風に晒しているためか、三人とも顔を緊張で紅潮させていた。

「トホホ、服をもらえたと思ったらまた全裸っすか……」
「ま、前の処女は取らないって言われたけど、これって事実上のセッ……とにかく怖いよ小町ちゃん。
同人誌でそれなりに稼いでる経験者からどうすれば教えて!」
「人を勝手に経験者にすんな!
幻想郷在住の人間が勝手にあたいを題材にしたいかがわしい薄い本を売り出しているだけであたいはバリバリの処女だよ!
ましてや後ろなんて……」

未成熟、美乳、豊乳の体が緊張によって出た冷や汗で濡れ、その体で小町の体に寄り添うのだから余計に艶かしい。

「あかりちゃん! 黒子くんと日ノ影さんは何も教えてくれないみたいだから、終わったらお尻は気持ちいいか教えてね!」
(クッ、仕方がないとはいえ、まどかの性知識の危険が危ない!)

天使の微笑みでさらってトンでもないことを言うまどかと、終わっても何も喋るなと熱い視線ビームを送るほむらに見守れる形で、三人の前にフォレスト・セルは口を開く。


なぜ、これからビックサイトへ侵入をしなければいけない影薄組が、こんなエロゲじみたことをしているのか?
それは沖縄に現れた蒼の精霊、破滅を呼び込む黒き獣の存在に他ならない。
黒き獣の纏う蒼はテラカオス以外は耐えらない代物。
仮に周囲に降り立てばテラカオスと候補者以外の全てが一瞬で無に帰すだろう。
黒き獣の前ではレベルの高さや耐性などただのハリボテである。

だが何事にも例外は存在する。
テラカオスほどではないが蒼に耐えられる物質を古代グンマーがフォレスト・セルを通して残してくれた。
セルに尻を捧げた存在はテラカオス因子を吸い出されると同時にアンチテラカオス抗体及び蒼への耐性を得られることができるのだ。
先に加護を受けたレスト、きらり、魔雲天は、『少しの間だけ』なら黒き獣と対峙しても死なない耐性を得ている。

現在沖縄にいる黒き獣、または獣を殺して蒼の力を得たかもしれない貧乳歌姫が、いつ東京に攻めてくるかはわからない。
もし狙われるなら海に面しているビックサイトからかもしれない。
その場合、仮に接敵した場合、耐性がない場合は戦うことも逃げることもできはしない。
そんな懸念があるからこそ潜入作戦の前に抗体を手に入れる必要があった。
唐突なテラカオス化を防いで作戦を失敗させる要因を潰す意味合いもあった。

322決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:48:21 ID:qa2XlgdE0

とはいえ、尻の純潔を捧げるのは、命を賭けることとは全く違う勇気がいる。
三人とも処女なのでなおさらだ。
ちなみにフォレスト・セルが治療で抗体を一度に分けられるのは三人までで、それ以上は効果が半減する。
かといって一度の治療は30分かかるので一人ずつは時間の無駄。
三人同時にいくしかなかった。

「て、てやんでえ! 女は度胸だ!!
命散らした奴がゴマンといるのに、尻一つ捨てられないケツの穴の小さい女でいられるかい!」
「お、応っす!」
「主人公はケツに対して根性がないほどヤワなのかい?」
「の、ノーサー!! 主人公は退かぬ媚びぬ省みぬ!!」

しかしいつまでも立ち往生はしていられない。
そこで小町は(半ばやけっぱちの)啖呵を切って二人を奮い立たせる。

「おし、じゃあ、いくぞおおおおおおお!!!」
「「おおおおおお!!」」
(もう、ヤケクソね)

気合を入れた後に槍のようにフォレスト・セルの口へ向かっていく小町と後に続く二人。
その光景を微妙に冷ややかな目で見るほむほむの図。
そして三人の期待(?)に答えるようにフォレスト・セルは口を開き、中から無数の触手が飛び出した。

「きゃん!?」
「ひやああああ! そこはらめえ!!」
「ぬ、ヌルヌルするっす!」

一瞬にして触手に絡め取られるあかり、モモ、小町の肢体。
縛られる体に、肌にくい込む触手、絞られる汗、ダダ漏れの嬌声、揺れるおもち四つ。
同性なのに思わず見とれて鼻血がちょろっと出てくるまどほむ。

「あー、やっぱりこええええ!!!」

思わずどこぞパンツレスラーが言いそうな叫び声を小町は上げながら、三人の美少女はフォレスト・セルに美味しくいただかれた。







やられたぜ。 投稿者:爆乳変態死神 (東月方日(ZUN)午後7時14分22秒)

今日の東月方日にいつもの雀士の姉ちゃん(高校一年)と目立ちたがりの団子の主人公ちゃん
(13歳)あたい(外見20代)の3人で世界樹にあるフォレスト・セルの口の中で盛りあったぜ。
今日は明日が終末かもしれんのでデモニカと武器と防具を脱いでから滅多に人が入れない所で、
そこでしこたま唾を飲んでからやられはじめたんや。
3人で触手舐めあいながら脱ぎ忘れた靴下だけになりセルが持っていたテラカオス抗体を3本ずつ入れあった。
しばらくしたら、下の穴がひくひくして来るし、触手が因子を求めて腹の中でぐるぐるしている。
姉ちゃんに口の中をなめさせながら、主人公ちゃんの口の中を舐めてたら、
先にセルの兄ちゃんがあたいの尻に抗体をドバーっと出して来た。
それと同時に姉ちゃんも主人公ちゃんにも抗体を出したんや。もう体中、抗体まみれや、
3人に出された抗体を手で掬いながらお互いの体にぬりあったり、
粘液まみれの触手を舐めあって抗体で浣腸したりした。ああ^〜たまらねえぜ。
しばらくやりまくってから又浣腸されるともう気が狂う程気持ちええんじゃ。
セルの兄ちゃんの触手があたいの腸内を突うずるっ込んでやられると
腸内が抗体と粘液でずるずるして気持ちが良い。
主人公ちゃんも姉ちゃんの口に舌を突っ込んで唇を合わせて居る。
汁まみれの姉ちゃんの雀力を掻きながら、思い切り受精したんや。
それからは、もうめちゃくちゃに姉ちゃんと主人公ちゃんと唇を重ね合い、
抗体を塗りあい、二回も女汁を出した。もう一度やりたいぜ。
やはり大勢で粘液まみれになると最高やで。こんな、グンマーの変態遺産と触手遊びしないか。
ああ〜〜早く汁まみれになろうぜ。
世界を守りたいと願う奴なら最高や。
汁まみれでやりたいやつ、至急、手紙くれや。
靴下姿のまま浣腸して、粘液だらけでやろうや。

323決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:49:08 ID:qa2XlgdE0



「小町さん! 起きて小町さん!」
「ハッ、夢か! もう終わったのか?!」
「小町さん、お尻にイれられて三秒で気絶したじゃないっすか!!」
「え? そうなの?」
「私とあかりちゃんは気絶できないだけに最初から最後まで……ウッウッ」

小町が目覚めたのは治療行為が終わり、フォレスト・セルから吐き出された後だった。
尻が広がって何かが残って感覚と、いろんな液体でヌルヌルになった裸体。
泣いているモモと、レイプ目で地面に転がっているあかりと解放を行うまどかとほむらが目に映った。

「あかりちゃん、ねえ答えて、お尻は気持ち良かった?」
「――――」
「まどか、ちょっと待ってあげて、今の彼女の精神状態では返答は無理よ」

「にしゃにしゃしゃ(アンタとモモのおもちは最高だったぜ、もう一度やりたいぜ)(キリッ」
「何言ってるかわからないのに、なぜか意味が分かる気がするっす」
「こいつ段々、オオナズチ化が進んでないか……あ、やべえ、思い出したら出ちまったよ」
「何がっすか!?」

こうして抗体と蒼への耐性を得た影薄組は、少しの休憩を挟んだ後、都庁からビックサイトへの旅路に準備を整えた。
ちなみに五人ともちゃんと服とデモニカは着た。
さらに黒子とあかりは犯された精神的ショックから15分くらいで回復した。

そして時刻は20時。
いよいよ、出発の時である。
小町をあかりの悪魔召喚プログラムに格納した後に、仲間に見送られる影薄組。

『あれ? 桑原とアイスシザースは?』
「イリヤちゃんや犬牟田くんたちも、いないね」
「桑原たちならさっき、レーザーの射程外から嫌な予感がするって言ってイリヤたちを引き連れて調査に出かけたぜ。
直に戻ってくるだろ」
「もっとも、小町さんたちの見送りはできないだろうから、代わりにエールを贈って欲しいって言ってた。
『がんばれ、誰ひとり死ぬんじゃねえぞ』って」
『ああ、あとでありがとうって伝えてくれ』

レイジとイオリが言ったとおりに、見送りに防衛や治療といった事情のために外せないメンバーと、桑原・イリヤ・アイスシザーズ、高津と犬牟田はいなかった。

『あたいたちは全力を出すから武運を祈ってくれよ』
「レストさんにほむらちゃんはあんまり無茶をするから死なないでくださいね、私の大切な友達だから」
「皆さんお元気で」
「あかりはみんなも魔物もだいすーき! だから主人公の仕事を終えたら必ず帰ってくるね」
「じゃ、期待されたからには成果をあげてくるぜ」

五人は同盟軍の仲間に別れの挨拶を終えた後、仲間の視点では幽霊のように消えていった。
四人はかつて狂信者が地下の道を利用して都庁を攻めたように、東京中に張り巡らされた地下道を通ってビックサイトに向かうことにした。

「影薄組はビックサイトに向かったか」
「サウザーさん、ちょうど高津さんたちも戻ってきたみたいです」

影薄組と入れ替えになる形でドラゴンの集団に跨った高津・犬牟田、そして生き別れだった先遣隊の三人が戻ってきた。

「紘太! ふなっしー! なんか大きくなってるがチルノも無事だったか!
ん? イリヤたちはどうした?」

クロコダイン以外の先遣隊メンバーの存命にサウザーや聖帝軍は一時は喜ぶが、高津たちの浮かない顔を見て何かを察してすぐに表情は曇った。

「イリヤは死んだ……イリヤだけじゃない、桑原やアイスシザーズも殺された」
「なに!?」
「桑原さんが!?」

高津から告げられた三人の仲間の突然の死の通告に、聖帝軍やエリカ、他の同盟軍の仲間も固まる。

「高津さんから聞いたよ、キュゥべえってのは俺らや都庁の敵なんだよな」
「キュゥべえに会ったの!? アイツは今どこに!」

キュゥべえの名前を聞いて飛びついたのはほむらであった。

「ついさっきまで近くにいたが逃げちまった……どうやら仲間の霧切や苗木を騙しているらしい。
……クソッ、仲間だと信じて向かい入れた俺が馬鹿だった、イリヤたちを殺したのは俺も同然だ。
俺は自分のことを絶対に許せねえ……」
「落ち込んじゃダメなっし、紘太のせいじゃ絶対にないなっしー……」
「どうやら事情があるみたいだけど、少し落ち着いたら話してもらえる?」

涙を流し膝をついて崩折れる紘太とふなっしー。
キュゥべえが近くにいた事実に並々ならぬ嫌な予感を感じるほむら。
困惑する周囲。

だが、事態はさらに追い打ちをかけらていく。
ズドンッ、と突然、世界樹の第一層部分から大爆発が起きた。

324決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:49:38 ID:qa2XlgdE0

「なんだ今の爆発は!?」
「まどか!」
「お、お腹が痛い…」

同時に世界樹と感覚を共有しているまどかが腹を押さえて、その場にかがみ込んだ。
彼女の腹には大きな青あざができていた。

「砲撃!? 攻撃は見えなかったけど……まさか、デスマンティスのような裏切り者がまだ中に!?」

レストはかつて世界樹を裏切ったデスマンティスのような潜伏者の攻撃を疑うが、すぐ後のまどかの言葉により否定される。

「レストさん違う……この痛みは外からきたもの、ダオスさんでも目視できない見えない攻撃だよ」
「なに、影薄組の皆のような見えない攻撃だって?」

攻撃の正体は拳王軍の投げた消える魔球である。
それが今になって着弾し、第一層の一部を吹き飛ばしたのである。
この時点では同盟軍のメンバーは知る由もないが。

「それよりもあの位置にはスノードリフトのみんなやオオナズチさんがいたはず、無事を確認しないと!!」


場面は移り、砲撃を受けた第一層の一部。
一番最初に駆けつけたのはさやかであった。

「オオナズチ……良かった無事だったのね」
「無事……とは言えんがな、さやか……」

オオナズチは普段のキモヲタじみた口調を維持できないほどのボロボロの血まみれであったが、致命傷は回避していた。
この傷もさやかの癒しの魔法があれば立ちどころに治るであろう。
……問題なのはオオナズチ以外の周囲の状態であった。

まるで内部がシェイクされたかのように樹木のダンジョンは見る影なく燃え上がり、さっきまで命だったものの肉があたり一面に散乱している。

「……スノードリフトは全滅だ、一匹残らずな」
「そんな!」

都庁の仲間、特に魔神皇戦で活躍したスノードリフトたちは今後に備えて一箇所にたむろしていたことが仇になり、たった一撃の投球で絶滅した。
もう、この世界で彼らの勇ましく遠吠えを聞くことは叶わない。

【スノードリフト@世界樹の迷宮 全滅確認】


「クソッ、我は五分前にドラゴンネットワークを切断していたから助かった!
ギムレーがチャットをしてくれなければ、玄室に閉じこもり続けていた我も一緒に死んでいた!
我が助かって彼らが助からなかった差は本当にそれだけだ……!」

オオナズチはつい先ほど、ギムレー及びイチリュウチームとのコネクションを得て、カオスロワちゃんねるの裏とドラゴンネットワークの危険性を知り、彼方が不屈の勇者足り得るテラカオスを手に入れたことを知った。
そして最後のドラゴンネットワークを切って仲間に情報を伝えるために玄室から離れたからこそ、爆心地から離れられたオオナズチは助かったのである。
仲間をむざむざと殺されたことへの悔しさか、ダオスの防空能力すら上回る攻撃への恐怖か、オオナズチは気を落としていた。

「落ち込まないでオオナズチ、まだ生存者がいるかも……あれ?」
「どうした?」
「爆心地に何かある……これは野球ボール!?」


さやかが破壊されたダンジョンの中で見つけたのは、この世界樹に不釣合いな野球ボール。
そして中には拳王軍からの脅迫じみた挑戦状と、電車ごっこロープが入っていた……

325決戦の時、迫る…前のちょいエロ回!? ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:50:25 ID:qa2XlgdE0



【二日目・20:10/東京都 新宿都庁世界樹】
※第5266話で投げられた魔球が世界樹に届きました。
 中の挑戦状と電車ごっこロープは無事です。
※聖帝軍と聖帝軍先遣隊が合流しました
 先遣隊は情報共有にて予言に纏わる進展状態と、キュゥべえの正体を知りました
※オオナズチがドラゴンネットワークで握った情報は、まだ仲間に伝播していません


【都庁同盟軍】


【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】


【二日目・20:10/東京都 新宿 地下道】
※ビックサイトへの潜入作戦実施中
 小町は悪魔召喚プログラムから出るまでは影薄組のステルス能力の恩恵を受けられます
※影薄組全員がフォレスト・セルの抗体を得ました
 蒼への多少の耐性を得ると同時に、今後のテラカオス化を発症する危険がなくなりました

【影薄組】

【小野塚小町@東方Project】
【日之影空洞@めだかボックス】
【東横桃子@咲-Saki-】
【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【赤座あかり@ゆるゆり】

326 ◆6qClYvksio:2019/04/07(日) 19:50:49 ID:qa2XlgdE0
投下終了です

327開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:38:17 ID:ape0A4TY0
下北沢へテラカオスの調査に出かけたホモども(道下・遠野)の帰還は、命じたセルベリアの予測よりも格段に早いものであった。
しかも有益な、テラカオス化したと思われる参加者の死骸を持ち帰るという大成果を上げていた。
セルべリアは自分とホモども以外は誰も入れていないテントの中で、集めた情報の共有を行う。

「この殺し合いの目的は人口削減ではなく、テラカオスという化物を生み出すためのもの。
……おまえたちはそう言いたいんだな?」
「はい、人口削減はもう達成できてるそうですし、主催がそれを把握できてないとは思えない」
「でも、そんなガバガバの殺し合いもテラカオスを生み出すためのものだと思えば辻褄が合う気がするんです」

ホモどもの口から教えられた、参加者の突然の発狂・怪物化、支給品の水に何かが含まれている可能性、人口削減の目的は果たされたのに終わらない殺し合い。
セルベリアもまた、ホモどもと同じくカオスロワの真の目的はテラカオスであると結論づけた。

「しかし、何のために?
テラカオスを手に入れる武力と権力が目的なら、もっと手っ取り早い手段もあるハズだが……」
「え? 都庁の魔物とか拳王軍とかいるし、主催最高戦力らしいバーダックも殺されるぐらいだから、力が欲しいだけじゃないんですか?」
「よく考えろ。
日本の支配が目的ならほぼ全参加者に首輪をつけた時点で達成されている。
自分たちに不都合な存在はその時点で首輪を爆発させて処刑させた方が手っ取り早く全てを支配できるからだ。
主催はなぜそれをしなかった?」
「……あれ?」
「そう考えるとすごく……おかしいです……」

だが、テラカオスの力が目当てであると睨んだホモ二人と違って、セルベリアは何かが解せない気がした。

(他に考えられる理由はアレか)

脳裏に浮かぶビックサイトの内部で見た、沖縄の異常気象。
セルベリアにはテラカオスがあの異常気象に関係――対抗するための何かではないかと睨む。

(だが、繋がらない。
あれを止めるのがなんでテラカオスである必要がある?
そもそもあの異常気象自体がなんなんだ?)

セルベリアには全てを破壊し、大災害の原因でもあったエネルギー「蒼」の存在を知らないため、テラカオスが蒼を吸収できる唯一の存在であることを知らなかった。
ちなみにホモどもは迷信と思い込んでいるため、救済の予言のことを伝えていない。
さらに言えば安倍の妻の情報横流しでテラカオスに纏わる計画を知っているルルーシュは、セルベリアには不要な情報として一連のことを伝えていない。
それ以前に、ルルーシュは都庁第三攻撃作戦を練り上げているので忙しく接触する暇がない。

「まだまだ情報が足りないようだ」
「どうするんです?」
「ゼロさんの知恵が欲しいですけど、作戦開始予定時刻まで時間がない。まずいですよ!」
「止むを得ん。おまえたち二人をドリスコルとゼロが指揮する攻撃部隊へ組み込む。
そうすればゼロとも情報が共有できるはずだ」

防衛のための戦力が落ちてしまうが、セルベリアはそれよりも知恵者であり狂信者内部では唯一の味方と言えるかもしれないゼロへ情報を渡すことを優先する。
クラウザーさん蘇生は第一で今も目的を忘れたわけではないが、テラカオスの情報は狂信者及び甦ったクラウザーさんの未来に関わる可能性があるからだ。

セルベリアはホモども二人がテントから出て行く前に四条下した魔理沙の死体を竜殺剣で縦に真っ二つに割った。
そして片割れをディパックに詰めて遠野に渡す。

「これはゼロに渡せ。
間違ってもドリスコルや他の狂信者には情報を渡すんじゃないぞ。
ドリスコルは信用できんし、主催のスパイが紛れ込んでいる可能性だってあるからな」
「うん(タメ口)」

死体を分けた理由はセルベリアかルルーシュ、万が一の時にどちらかが倒れてしまっても片方がテラカオスについて調査できるようにするための保険である。

328開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:39:20 ID:ape0A4TY0







そして、時刻は九時。

第三次都庁攻撃作戦……その攻撃メンバーが上層部とゼロの見解で決まった。


○ドリスコル with グレートゼオライマー(カレン)
○ゼロ    with ガウェイン
○碇シンジ  with エヴァ初号機 F型装備
○道下正樹  with ユニコーンガンダム
○遠野    with フェネクスガンダム
○司波深雪
○天龍


○兵力にモブ狂信者機甲部隊・歩兵部隊、カギ爪団半数、深海棲艦半数
○ディー、セルベリア、サーフ、松本、切歌、レジーナ、サイコマンを除くその他ネームド狂信者も参戦予定



ビックサイトでの格納庫では指揮官や隊長に抜擢されたネームド狂信者が集まっていた。
ある者は機体に乗り、ある者はヘリなどに乗って、都庁との中継地点としている港区に向かう予定である。

「さあ喜べメス豚! 次の戦場は都庁だぞ」
『いやあああああああああ! クラウザーの歌で耳が壊れるうううううううう!!』

ドリスコルは以前にゼオライマーに接続するカレンの暴走のせいでイチローたちを取り逃がす失敗をしてしまったので、今度は先手を打って作戦が始まる前に彼女の嫌いな歌を大音量で流すことで調教をする。
カレンにとっては耐え難い拷問であった。
その拷問の途中で一人のボーイッシュな眼帯少女が姿を現した。

「おおっ、やってんなあ。
ロリだったら姉ちゃんを助けてやったんだが、ちょっと外見年齢高すぎるかな」
「おまえはサーフがオシリスを加工して作ったという女だな?」
「俺の名前は天龍、フフッ怖いか?」
「フンッ、おまえや深海棲艦がどれほどの実力を持っているかは知らんが宛にはしている。
ブレインデバイスよりも使えないと判断したら容赦なく後ろから撃つからな」
「……どこぞのドラゴンみたいに後ろから不意打ちを受けてズガンなんて情けない死に方はしねえよ。
それと魔改造したマスターボールだ。作戦に役立てろ」

元・オシリスの天空竜である天龍は、目の前の男こそ自分を瀕死に追い込んだ男であると知ってはいるが、人格的には別物なので特に恨みはなかった。
ただし、提督たるサーフの命令があれば即裏切る予定ではあったが。



その一方、新・カギ爪団一行。
ゼロは九時までに作戦を立案し、ディーとドリスコルに認められた。
道下・遠野から情報とテラカオス候補者の死体を手に入れたが、正直、先に情報を得ていただけにルルーシュにとって大きな+になることはなかった。
ただ一つ、都庁を滅ぼした後でテラカオス化した死体は対主催との接触に役立つかもしれないので、何も持っていないよりはマシだ。

(こうなっては仕方ない、都庁にはナナリーのための生贄になってもらう。
それまでテラカオスの件はおあずけだな)
(お兄様は私が全力でお守りしますわ、そして私とお兄様が戦場を離れているうちに松本さんが蘇生装置を奪って、お兄様の寵愛は私一人のもの……完璧ですわ!)

「やったぜ、新しいユニコーンガンダムをもらえた!」
「僕は改造もしてもらったよ、サーフ博士様々だね!」

ホモどもはホモ・アビスを返却した後、修理を終えた機体が戻ってきていた。
それだけでなく道下のユニコーンガンダムはフルアーマーに改造。
遠野はどこかで手に入れたらしいユニコーンガンダム三号機・フェネクスを手に入れていた。
しかも宝具の槍はおまけとしてただでもらえたのだ。
これだけの大盤振る舞いの理由は以前、聖帝軍を工作動画で参加者から孤立させたことが戦果として認められたためである。



そして、ビックサイトに待機していた攻撃舞台は、都庁に向けて進軍を開始した。
ロボット兵器、歩兵、深海棲艦がぞろぞろと要塞から離れていく。
その様子を会議室でモニター越しに見つめるのがディーとサーフであった。

329開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:39:56 ID:ape0A4TY0

「ドリスコルとゼロたちにはクラウザーさんのために頑張ってもらおう。
これまでを凌ぐ戦力と人材を投入したのだから負けるハズがないと思いたいが、彼らが敗北した時のためにネオ・ジオングスーツの完成を急いでくれサーフ」
「了解、サイコシャードの調整のために完成には時間がかかってるけど、完成した暁にはどの勢力でも僕らに勝つことはできなくなるさ」
「君には期待している」
「ありがとう」

ネオ・ジオングに搭載された肝とも言えるサイコシャード発生機。
これはνガンダムがサイコフレームの共振により単機でアクシズを押し戻したように、あらゆる奇跡または悪夢を呼び込むことができる。
結果として負けでしまったとはいえ、サイコフレームの有用性はスカイツリー戦のホモどもの戦いぶりから実証済みだ。
ディーとサーフはスカイツリー戦でのデータを元に、サイコシャードを完成させるつもりなのだ。

(まあ、僕に取って有利に働くように手を加えておくけどね)

ディーはまだ知らない。
隣にいるサーフこそ、今の世紀末な情勢を作り上げた大災害の元凶……大元を辿れば崇めているクラウザーさんを間接的に殺した存在も同然であることを。



ビックサイトの外から遠くなっていく攻撃部隊を見送るセルベリア。

(さて、防衛部隊の指揮の傍ら、私はどう動くか……)

テラカオス化死体の片割れの入ったディパックを手に持ち、ゼロの支援を受けられなくなった今、どう動くか考える。
防衛の仕事を放棄するわけではないがテラカオスを調査して、主催の目的を探ることをやめたわけではない。

まずは死体や支給品の水をビックサイトの内部にいる研究者に渡して調査させたいが、その前にディーの息がかかっていない研究者の狂信者を探す必要がある。
さらに言うと、現在の兵器開発の主任にしてディーの右腕とも言えるサーフは信用ならない。
確証はないが、悪魔の勘というか本能がアレは危険だと語っている気がするのだ。



「あー! しまったデース! ゼロと会う前に出発されてしまったデース!」
「あれは……切歌たちか?」

何やら騒ぐような声が聞こえたので其方に振り返ると切歌・レジーナ・サイコマン、あと謎の喋るバイクがいた。

「ううむ、どうやら我々がガラクタ探しにモタついている内に出発されてしまったみたいですねえ」
「どうしよう……ゼロの奴がサイドバッシャーが言っていた大災害を引き起こした奴かもしれないのに」
(俺の体になる予定だったグレートゼオライマーがあんなに遠くに……ぐぬぬ)

彼らはビックサイトの防衛部隊に選ばれたのでお呼びがかからなかった、というより草加の我儘のせいでつい五分前までガラクタ探しをしていたため、見つけられずお呼びがかからなかったのである。
ゼロの正体を確かめるつもりで接触するつもりが、それが叶わなかったことに彼女らは悔しそうに遠くなる攻撃部隊を眺めるしかなかった。

330開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:41:09 ID:ape0A4TY0

「おまえたち何をしている!
おまえたちは私が指揮をする防衛部隊に配属されている。
わかったなら所定の配置に早くつけ!」
「ゲッ、セルベリアおばさんデス!」
(……おまえも私をおばさん呼ばわりか)

セルベリアは切歌の失言は聞かなかったことにして、サボってるように見えた一行を叱りつけ、すぐに仕事をさせようとする。

「待って! セルベリアがゼロをカギ爪団の新しい団長に指名したのよね?」
「だったら何だ」
「ゼロに怪しい動きはなかった?
ひょっとしたらそいつが裏切者かもしれないの!」
「なに!?」

自分とゼロがいざという時のためにディーやドリスコルへの謀反を企てていることをどこで知られたのか、セルベリアの背筋が凍りつく。

「まて、その情報をどこから手に入れた?」
「ここにいるサイドバッシャーからデス」
『厳密には疑惑がある奴って言った方が正しいけどな、ひょっとすると俺の持ち主を殺しやがった奴かもしれない』
「この喋るバイクの持ち主を殺した……?」
「ゼロは狂信者のフリをした潜伏者かもしれないんデス、まだ会ったこともないから詳しいことはわからないデスけど」
「あれだけ同志を崇めていた道下と遠野や他のカギ爪団の人が、同志のことなど忘れたみたいにゼロにベタベタですもの。
怪しむなという方が変じゃない」
(確かに……)

レジーナの言うことにも一理あった。
カリスマ性だけでは説明がつかない道下と遠野の従順ぶりからして妙だとは思っていた。
ホモどもの変わりぶりは、どちらかと言えば洗脳されたようにも見える。
狂信者の中でも異端の部類であったカギ爪団をまとめられるのはゼロしかいないと思ったので、彼を新しい首魁として任命するしかなかった。

しかし、今思えば、ディーとドリスコルは確かに異常気象をクラウザーさんのものだとして崇めるなど、知性すら失い出している点は危険と危険だが、ゼロ自身も上層部同士の仲違いを誘っているような口ぶりでもあった。
そう考えたセルベリアは――

「私が任命したゼロを疑うというのか?
そんな暇があったら、さっさと配置につけ」
「そんな!」
「仮に裏切り者がいたならば発覚した場で処刑すればいいだけのことだ。
さあ、クラウザーさんへの不届き者として私にSATUGAIされたくなければさっさと行くんだ」

強引に話を打ち切り、狂信者たちを地図に割り振られた場所に送った。
無能な上司を見るような切歌たちの落胆した顔が見えたが、今は無視する。

「とりあえず私とレジーナ、サイドバッシャーは一緒のところを防衛するみたいですね」
「残念ですが、私はあなたたちとは違う場所を防衛するようです。ここで一時のお別れです」

サイコマンは切歌とは別の場所でビックサイトを守るようだ。
この場で直接絡んでいないが、松本も既に切歌とは別の場所である、ビックサイトの外周部を守る手はずになっている。



「切歌、私たちが防衛する場所ってどこだっけ」
「すぐそこデスね」

ゼロに関して煮え切らない気持ちはあるが、今は切り替えてセルベリアに指定された場所に移動する。
ここは大人しく従ってないとクラウザーさんへの狼藉を働いたとして味方にSATUGAIされるかもしれないからだ。

「あれ?」
「ここは!?」

331開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:41:36 ID:ape0A4TY0

二人とバイクがセルベリアに指定された防衛場所……そこはセルベリアの個人持ちのテントであった。

「着いたか、周りに他の狂信者の気配は……しないな?」
「「セルベリアおばさん!」」
「静かにしろ、さっさとテントの中に入れ」

よく見るとテントの周囲には狂信者は誰もいない。
セルベリアはわざと防衛拠点の配置を操作して、テントの周囲は切歌とレジーナ以外は置かないようにしたのだ。

「セルベリアおばさん、これはどういうつもりデスか?」
「さっきはすまなかった。どうしてもサイコマンを遠ざけるために離れる必要があった」
「サイコマンを? それはどうして?」
「奴は狂信者の仲間がやられていたにも関わらず、その襲撃者をあえて見逃した裏切り者の疑惑がある。
それどころか襲撃を受ける前にSATUGAIをサボって呑気に誕生日パーティーを開いていたという話もある」
「あのサイコマンがデスか!?」
「レジーナ、奴は西武ドームでの聖帝軍との戦いで救援に間に合わなかったと言っていたが、それも本当か怪しい。
わざと救援にいかなかったのかもしれない」
「そんな……」
「証拠となる奴のモブ狂信者は全滅しているし、奴が本当は何者かはわからんが、私はとても信用できん。
だから、防衛の仕事を言い訳におまえたちから別れさせる必要があった」

セルベリアはディーとドリスコルと同じくらい、サイコマンを信用していなかった。
理由は肝心な時に仕事をしないからである。
ちなみに草加サイドバッシャーは誕生日パーティーの辺りの一件は、パーティーの主役だけに知っていたが黙っておくことにした。
自分の正体がバレる上に、実際にサイコマンが仕事をサボっていたのは間違いではないからだ。

「でもそこまでして、どうして私たちをここに呼んだんデス?」
「まさか、私たちをこの場で直々に処刑するつもりじゃ……」
「勘違いするな。おまえたちは見る限り、ディーの息もゼロの息もかかっていない、信じられそうな狂信者仲間だからこそ呼んだんだ」

切歌は狂信者のエースにして、誰もが認める熱心なクラウザーさん信望者。
レジーナはカギ爪団出身だが、ゼロの怪しい術にはかかっていないクラウザーさん信望者。
二人のクラウザーさんへの愛は本物、本当に自らの意志でクラウザーさんに殉じようとしている。
これほど熱心かつ理性が残っている狂信者をセルベリアは亡くなった天子以外は知らない。
故に信頼することにした。

セルベリアは困惑の色を隠せない切歌とレジーナの前でディパックを開け、真っ二つになった魔理沙の死体を見せる。
まるでゼロにも見せてない、心の内臓を見せるように腹を割って全てを話すことにした。

「私が知る情報や疑念を全て話してやる。
だからおまえたちも知っていることを全て話せ」

セルベリアは二人と一機を射抜くような赤く真剣な瞳の視線を向けながら、情報共有を要求した。

332開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:42:04 ID:ape0A4TY0


【二日目・21時20分/東京・ビッグサイト セルベリア個人持ちテント】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:切歌とレジーナと内密に情報交換を行う
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:小町はいつか、この手で必ずレ○プ(倒す)する
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
5:最悪の場合はディー達を……?
  そろそろ、あいつらヤバイ気がしてきた
6:ゼロという男に対しての疑念
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※影薄組のことを組織に伝えました
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものではないと思っています
※道下・遠野からカオスロワがテラカオスを作るために開かれた可能性を知りました


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:セルベリアと情報交換を行う
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※サイドバッシャーを支給品と思い込んでおり、正体に気づいていません


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:セルベリアと情報交換を行う
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
※月読調のギアの装者になりました
※サイドバッシャーを支給品と思い込んでおり、正体に気づいていません


【草加雅人@仮面ライダー555】
【状態】サイドバッシャーに憑依、テラカオス化進行(中)
【装備】サイドバッシャー@仮面ライダー555
【道具】カイザギア@仮面ライダー555
【思考】
基本:生き返る方法を探す・カオスロワちゃんねる管理人を殺す
0:セルベリアと情報交換
1:隙を見て蘇生手段も手に入れる
2:とりあえず、乾巧の仕業にする(カオスロワちゃんねる管理人以外)
3:来年のカイザの日も祝いたい
4:仲間にする奴には大災害の原因や蒼(TC)の件を教えておく。狂信者は様子見してから。
5:怪しいゼロの正体を探る。管理人だったら殺す。
6:サイコマンは別になんとも思ってないので疑われても助けない
7:乾巧が死んだので真理は俺のもの!
※大災害発生の原因とカオスロワちゃんねるの危険性を知りました
※テラカオス化によって得られた能力として無機物への憑依能力を得ました
※生き返れるタイムリミットは(作中時間で)残り55.5日です。
 再憑依のペナルティとして、一回につき蘇生タイムリミットが9.13〜55.5日まで減少します。
※テラカオス因子によって魂を現世に繋いでいるため、フォレスト・セルやツバサの治療を受けると問答無用で死にます
※カイザの日はテラカオス因子とは関係ありません。

333開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:42:35 ID:ape0A4TY0


【二日目・21時20分/東京・ビッグサイト】

【ディー@うたわれるもの】
【状態】健康、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ(まだ未完成)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:セルベリアを中心としたビックサイト防衛部隊、ドリスコルを中心とした都庁攻略部隊を編成する。
3:大災害などに疑問はあるが、今は後回し
4:ネオ・ジオングスーツの完成を急がせる
5:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
6:シグナムは自分の手で討ちたかったが、まあ仕方あるまい
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
    艦むす課金のしすぎで財布がちょいヤバめ
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
    魔改造マスターボール
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×100、深海棲艦鬼・姫級×5
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:今は狂信者のフリをしてディーに従う
  ネオジオングスーツを完成させる
1:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
2:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
3:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
4:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
5:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※予言の中にある勇者についても参加者の内誰かが該当するか知っていますが、ツバサ以外の勇者は他の書き手氏にお任せします
※テラカオス・ディーヴァの残滓(ツバサ)がキングストーンの力を継承したことをまだ知りません
 また、都庁にノーデンスが現れ、真実を教えたことにも気づいていません


【サイコマン@キン肉マン】
【状態】健康、首輪解除
【装備】なし
【道具】支給品一式、イデオン、マジンガーZERO、真ゲッター1、グレンラガン、レオパルドン、ヴァンツァー(大破)その他不明
【思考】
基本:????
1:↑の目的のためにできればシルバーマンさんも勧誘したい
2:今は所定の位置について、ビックサイトを防衛
※サイドバッシャーの正体に気づいているかもしれないし、気づいていないかもしれない。
※肝心な時に仕事をしてないせいか、狂信者上層部からの信頼は薄いです


【松本人志@現実】
【状態】健康、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
1:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
2:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
3:今回名前出しぐらいしか出番なかったな…
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪の目的を知った上で秘密の同盟を組みました
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません

334開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:43:23 ID:ape0A4TY0



【二日目・21時20分/東京都 港区へ続く道】


【ドリスコル@フロントミッション】
【状態】健康、首輪解除、レベル・全熟練度MAX
【装備】グレートゼオライマー@スーパーロボット大戦
【道具】支給品一式、カレンデバイス(氷室美久ボディ)、魔改造マスターボール
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:22時までにカギ爪団を伴って都庁を攻める、まずは港区へ集結
1:都庁攻略部隊を指揮する
2:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する 
3:ゼロ考案の作戦には期待している
※次元連結システムは氷室美久のボディにカレンデバイスを入れることで制御が可能になりました
 またカレン・ミューアの人格にも上書きされました
 本人は善人ですが、極度のクラウザーアンチでDMCの曲を流されると人格が引っ込んで人形のようにドリスコルに従ってしまいます
※フロントミッション1〜5のスキルを網羅しています
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※マスターボールが改造されて別トレーナーからポケモン(というか色々)を奪うことが可能になりました


【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】
【状態】ロリコン、改二、オシリスの記憶と力を所持
【装備】艤装一式、眼帯&刀(飾り)
【道具】白ビキニ、深海棲艦イロハ級×100、深海棲艦鬼・姫級×5
【思考】基本:提督に従う、ロリにモテたい
0:ディーという奴には表向きは従い、今は都庁を攻める
1:なぜだかロリにモテたい、超モテたい!
2:駆逐艦娘のためにもサーフの計画に乗り、神やグンマーから世界を解放する
3:出会ったら敵同士だぜ、イチリュウチーム
4:敵でロリが出てきた場合は殺す前にレ○プする
※オシリスの脳を使って建造されために記憶や能力を引き継いでいます
 ただし人格は艦むすとしての天龍に上書きされています
 オシリスとしての人格を取り戻すには特別な処置が必要です
※瑞鶴と同じくサーフへの忠誠度はMAXで、裏切れません
※ロリコンだけは本能なので何をしても治りません
※オシリスを改造して作り上げたので、轟沈されるまでオシリスは放送で呼ばれません


【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(超極大)、非常に激しい怒り
【装備】ガウェイン@コードギアス@反逆のルルーシュ、スマホ@スマホ太郎
【道具】支給品一式
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
0:都庁を滅ぼす作戦に参加しドリスコルに協力する
1:カギ爪団に混じりながらDMC狂信者のクラウザー蘇生方法を探る。
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:1の為、ゼロとして行動する。
4:こうなった以上、深雪は責任持って俺が幸せにする。
5:テラカオスと大災害への対処法を探す。
6:狂信者内の潜伏者を警戒する。出来る事なら炙りだしたいが……
7:主催とコンタクトを取りたい。
8:近い内、ルルーシュとして対主催とも接触したい。
9:ディーに強い潜伏者疑惑。仮に違っても殺す。
10:松本もいつか殺す
※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※テラカオスについてはかなり懐疑的です。
※狂信者内にテラカオスを狙う第三者の存在が居ることを推理しました
※深雪を全く疑ってません
※都庁攻撃作戦の概要は後続の書き手氏にお任せします


【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
【状態】健康、ギアスによりルルーシュを大好きな兄として認識中、首輪解除
【装備】深雪のCAD
【道具】支給品一式 サファイヤ@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ(美遊の支給品で魔法で凍結中)
【思考】基本:ナナリー含む妹キャラは皆殺し
1:狂信者を使い、先ずは都庁を攻めさせイリヤを抹殺する。
2:共犯者である松本と連携し、ナナリーの蘇生を秘密裏に妨害
  最終的にルルーシュからの愛を独占する
※松本の正体に気づいた上で秘密の同盟を組みました
※ビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※イリヤが既に死んでいることを知りません

335開始せよ 世界大戦:2019/04/11(木) 11:43:45 ID:ape0A4TY0


【道下正樹@くそみそテクニック】
【状態】ダメージ(中)、尻穴にダメージ(中)
【装備】フルアーマーユニコーンガンダム@機動戦士ガンダムUC、ゲイ・ボルグ@fateシリーズ
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体
【思考】
基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:ゼロに従って都庁を攻める
1:SATSUGAIする。
2:阿部さんや同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:テラカオスについては他の信者には黙っておく
4:遠野くんは大切なホモだち
※殺し合いの目的がテラカオスを作るためだと気づきました
※救済の予言を単なるデマと思っています


【遠野@真夏の夜の淫夢】
【状態】ダメージ(中)、尻穴にダメージ(中)
【装備】フェネクスガンダム@機動戦士ガンダムNT、ゲイ・ボウ@fateシリーズ、やわらかスマートフォン
【道具】支給品一式
【思考】
基本 基本:同志のためにもクラウザーさんを蘇らせる。
0:ゼロに従って都庁を攻める
1:SATSUGAIする。
2:先輩や同志は僕の中で生き続けているんだ……。
3:テラカオスについては黙っておく
4:道下さんは大切なホモだち
※殺し合いの目的がテラカオスを作るためだと気づきました
※救済の予言を単なるデマと思っています

336阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:28:15 ID:la.XL0sY0
「世界を守るため」フォレスト・セル殲滅を決定した第10期主催陣営。
多くの者が戦いの準備を進めていた。
九州ロボのメインルームでは、ジャック、紫、メフィラスがあーでもないこーでもないと、作戦を練り上げている。

「大量の狂信者が港区に集まり出している。
狂信者による三回目の都庁攻略作戦があると考えるべきか」

モニターには目視ではとても数え切れない数の狂信者がぞろぞろと港区に集まっていた。
本拠地のビックサイトからだけではない。
他県の、日本中からクラウザーさんを信望していた(または鞍替えした)狂信者が港区に集まっている。

「数だけで都庁に勝てるかは疑問だけど、私たちにとっては都合が良いわね」
「狂信者と挟撃する形でフォレスト・セルを殲滅、もしくは戦いで双方が疲弊した瞬間を狙って漁夫の利的にフォレスト・セルを撃破した方が得策でしょう」

狂信者が三度目の都庁襲撃作戦を企てているなら好都合。
九州ロボを取り戻した主催陣営でも真正面から都庁と戦うには危険なため、他方から別の勢力が攻めてくれれば、非常に戦いやすいのだ。
狂信者そのものも、大災害を防いだ後の日本には確実に邪魔になるため、都庁または主催の手で殲滅されても都合が良い。

「しかし、都庁や狂信者以外にも懸念材料がいくつかあるな……」
「拳王連合軍、イチリュウチーム、黒き獣ね」

考えの読めない拳王連合軍。
アナキンも潜伏しているイチリュウチーム。
この世界に取って絶対の敵である蒼の精霊、黒き獣。

今は横浜に留まっているが拳王連合軍がいつ、我らが主催含む他の勢力に挑んでくるかわからない。
それでフォレスト・セルを倒してくれるのならば嬉しいが、それは取らぬ狸の皮算用だろう。

イチリュウチームは純対主催チームであるが、都庁に騙され(または都庁自身もセルの危険に気づかぬまま)、都庁の味方になってしまう危険は多いにありうる。
アナキンだけでは止められるか怪しい上、そもそもアナキン自体も知らないまま、味方する可能性があるのだ。

そして沖縄の黒き獣。
どういうわけか沖縄から全く動く気配がないが、いつ動き出して本州に攻めて来るかわからない。
仮に気が変わって本州に攻め込もうものなら、蒼を纏っている以上テラカオス以外の誰も黒き獣を止められないのだ。

「机上の空論的に話しますと、他はまだ融通が効くようにも感じられますが
黒き獣だけはイチリュウチームに捕らえられているテラカオス・ディーヴァぐらいしか対抗ができませんね」
「その貧乳歌姫も一度黒き獣に敗れて大きく弱体化している」
「だが、我らの手元にテラカオスがない。
どれだけ策を弄しても火力を有してもコイツだけはどうにもならん。
さりとて放置するわけにもいかんが、どうしようもないな……」

この盤上にとって例外中の例外、それが蒼を行使できる黒き獣なのだ。
対抗できるのは蒼を吸収できる体質のテラカオスのみ。
だが肝心のディーヴァはツバサに転生する際に弱体化し、サーシェスと安倍は既に死亡済み。
草加は候補者止まりで覚醒にはほど遠く、他は死亡または治癒されてしまった。
ユーノはテラカオスへの進化にリーチがかかっているが、ギムレーの内部にいるので生存は望み薄だ。
貴重な四条化細胞のカプセルはアナキンに渡してしまったし、主催陣営に即興でテラカオスを手に出来る手段はなかった。


「大変よ、みんな!」

そこへ九州ロボのファクターに戻ったココが、作戦会議中の三人に慌てたような声で呼びかけた。
彼女はセル撃滅作戦に役立つ情報を手に入れるために、ついさっきまでモニターと睨めっこをしていた。

337阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:29:33 ID:la.XL0sY0

「どうしたのココ?」
「今、情報が入ったんだけど、第四のテラカオスが覚醒したわ」
「!!」
「ユーノ・スクライアがとうとうテラカオスに至ったか」
「いえ……違うわ」
「なに?」

ジャックたちはユーノがテラカオスに進化したのだとばかり思っていたが、ココがそれを否定したことに目を丸くする。

「テラカオス化したのは彼と行動を共にしていた高町なのはの方よ。
ユーノの方は、突然テラカオス化がなくなったから、ディーヴァに治療されたのかもしれない」
「高町なのはって……彼女はどれだけストレスを与えてもテラカオス化しない陰性の参加者だったじゃない?」
「詳しい理由はわからないけど近くにアナキンもいたからおそらくは……」
「そうか、彼が四条化細胞のカプセルをなのはに与えたのか」

なのはのテラカオス化についてはアナキンが四条化細胞を入れたカプセルを彼女に飲ませたのだろうと予測する。
実際は違うのだが、今はそんなことはさして重要ではない。
大事なのは新しいテラカオスが生み出された事実である。

「イチリュウチームから離脱したところからして、単純な戦闘力は貧乳歌姫を凌駕しているみたいね。
ナノマシンから発信されたエントロピー計測値も大したものよ」
「それは良い……しかし、イチリュウチームから離脱した彼女は今、どこにいるのですか?」

テラカオスが生まれただけならココがこんなに焦る必要はない。
普段冷静な彼女が焦るのはそれだけの理由があるはず。
メフィラスはそう睨んだ。

「……なのは、そして彼女に囚われたユーノの現在地は伊豆諸島よ」
「なんですって!?」
「すぐに伊豆諸島基地にいるヤンとメディアに繋ぐんだ!」

部屋のモニターが、伊豆諸島基地に繋がる。
通信に出たのはメディアと、微妙に似合っていないシスの暗黒卿の服とヘルメットを着たヤンだ。

「二人共まだ無事か」
『ええ、まだ向こうはこちらに気づいてないみたい』
『いつかはどこかの勢力がここに攻め込んでくると思っていましたが、いや〜まさかたった二人で乗り込んでくるとは思いませんでしたよ』

ヤンは飄々としているが、伊豆諸島基地は戦略的に意味がなくなっただけに主催の戦力は引き払っていた。
残っているのはサーヴァントであるヤンとメディア、雑用のクローンヤクザ数十人程度で、後はTIEファイター一機すら置いてない最小限の戦力だ。
テラカオスと化したなのはを相手にするにはどう考えても足りない。

「見つかれば戦闘になる可能性が高い。どうにか隠れてやり過ごせ」
『ええ、彼女らを刺激しないようにどうにか――』


その時、モニターの奥から爆音が響いた。


『……気づかれてしまったみたいね』
『あちゃー……ダメだったが。
仕方あるまい、例によって機密情報は全て破壊した後、迎撃行動に移ります』

どうやらなのはに感づかれてしまい、先制攻撃を受けたようだ。

338阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:30:18 ID:la.XL0sY0

「行けません! あなたたちの戦力ではタカがしれている! ジャック、すぐに救援を」

ヤンとメディアはサーヴァントとしての契約上、伊豆諸島から出られない。
魔力供給もできないので戦力的にも大したことはできない。
メフィラスはジャックに救援を頼むが、拒否されてしまう。

「ダメだ、今からでは間に合わん。犠牲になる戦力の見積もりを考えても伊豆諸島基地に救援を回すのは割に合わん」
「そんな!」
『残酷なようだけど、ジャックの判断は正しい。
伊豆諸島基地は定時放送を行うためのTVスタジオ程度の価値しかないからね』

メフィラスは不服であったが、現場にいるヤン側は本陣が戦力を回せない理由を理解していたため、覚悟をしていた。
ヤンとメディアは伊豆諸島で果てるつもりなのだ。

『まあメフィラスの気持ちはありがたいが、あなたたちにはまだ生きてもらわねば困る。
な〜に、我々サーヴァントは誰しも一度は死んだ身だ。
死んだところであるべきところに帰るだけだよ』
『とはいえ、ただでは死にません。
せめてテラカオスの成長を促す薪ぐらいにはなりますわ』
『そうそう、ここにいる彼女と一緒にフォレスト・セルに関する攻撃プランを考えたんだ。作戦に役立てて欲しい』
『あと敵に立ち去った後にセイバーの模型が無事だったら回収しておいてね、力作だから』
「ヤン、メディア……」

これから死ぬ身でありながら、画面の中のヤンとメディアは笑っていた。
メフィラスから思わず声が漏れる。

『じゃあ、ジャック、ココ』
『あちら(冥府)で会いましょう』
「ええ」
「いつか必ずいく、待っていてくれ」

二人が迎撃に向かう映像を最後に、通信は途切れた。
同時に二人が考えたフォレスト・セル攻撃プランの概要がデータで転送された。





10分後


「くう……参ったね、クローンヤクザは3分持たずに全滅、我々も既にボロボロだ」
「むしろ、これだけの戦力で良く10分も持ったわ。さすがはコマンダー、魔術師ヤンと言われたことだけはある」

ヤンが口にした通り、基地にいたクローンヤクザは全滅済み。
二人のサーヴァントも既にボロボロであった。
伊豆諸島基地は一時は主催陣営の重要拠点だっただけに、侵入者を阻む罠や策が敷かれていた。
アナキンたちが去った後でもそれは機能し、裏切りの魔女メディアと銀河自由同盟の魔術師であるヤンの手によって一山いくらの参加者では突破できない要塞となっていた。

目の前の少女はメディアとヤンの罠を10分かからずに魔力のゴリ押し一つで突破してきたのだ。
テラカオス化、そして鬼である伊吹萃香の妖力を喰らい、魔力を増大させた魔法少女・高町なのは――またの名をテラカオス・リリカル。

「こんなところに隠れていたとは思わなかったわ、ダース・ベイダー!!
よくもユーノくんや私をこんな体に! フェイトちゃんと、ヴィヴィオの仇!」

地獄を支配する冥王の如く、ケモ耳魔法少女の表情は般若のように歪んでいた。
ヤンの今の姿はダース・ベイダーの格好にマスク、ボイスチェンジャーも外していないので、主催の顔とも言えるベイダー卿さながらである。
ベイダーはなのはの視点ではこの殺し合いを起こした憎っき存在であり、テラカオス化を誘発する瘴気をばらまき、親友と未来の娘を殺した元凶である。
幾多もの惨劇を殺し合いの中で味わったからこそ彼への憎しみはユーノ並、もしくはそれ以上であった。
ちなみに気絶していたユーノは戦闘に巻き込むと危険だったため、伊豆諸島の安全そうな洞穴に隠した。

339阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:31:02 ID:la.XL0sY0

(どうしてベイダー卿の服を着てきたの?)
(この姿のまま死ねばベイダー卿の死亡を偽装し、イチリュウチームにいるアナキンの安全を確保できると思って)

ヤンがベイダーの姿のまま戦いに挑んだのは、一重にベイダーの影武者として死ぬことで潜伏しているアナキンに目を向けさせないためだ。
少なくとも目の前のなのはにだけはアナキンの正体を悟らせないことに繋がる。

「絶対に殺してやる、殺してやるの!!」

目論見どおり、少女の殺意はヤンに向き、今まさに必殺の一撃を放たんとしている。

(元々、死ぬつもりで、テラカオスの成長を助けられるならと思って、このまま瞬殺だと成長の糧にもならんな。
せっかく死ぬなら、それじゃ面白くないな)
「メディア、アレを使う。余に合わせろ!」

テラカオスを成長させるのは殺し合いのストレス……すなわち死闘の中でしかありえない。
このまま簡単にやられてしまうと+にならないと思ったベイダーに扮したヤンは、策のためにキラキラ輝く粉のようなものをディパックの中からなのはに向けてバラ撒いた。

「粉!? こんなもの……」
『いけません! マスター!!』

なのはは構わずに敵に向けて魔法攻撃を行わんとするが、その瞬間、彼女の周囲で大爆発が起こった。

「ゼッフル粒子……敵であったキルヒアイスが得意とした戦法だ」

ゼッフル粒子とは、レーザーやビーム砲くらいの高温で発火・爆発する特殊粒子、爆弾のようなものだ。
撒かれた粒子がなのはの魔力に反応して爆発を起こしたのである。

「ゴホッゴホッ、だけどこんな目くらましなんて!!」

テラカオスに進化する前のなのはならまだしも、今のなのはの防御力の前ではかすり傷一つつけることもできない。
僅かな時間の攪乱で精一杯であった。

「いや、目くらましで十分だ、メディア!!」
「破戒すべき全ての符(ルールブレイカー)!!」

しかしなのはが爆炎で目がくらんでいる瞬間に、メディアが歪な形状の剣を手に持って吶喊し、なのはを斬りつける。
彼女が手に持っていたのはクロエがルルーシュの絶対尊守のギアスを破戒した者と同じ……というよりこちらがオリジナルの魔法殺しの刃である。
そしてその刃が『彼女』を殺した。

一閃の後、なのはの甲冑が解除され、豊満な裸体をヤンやメディアに晒した。

「あ、ああ……」
『マ、ス、ター…――』


「レイジングハートッ!?」


破戒されたのは高町なのはの愛杖にして親友の一人とも言えたレイジングハート。
メディアの刃はなのは自身ではなくレイジングハートに振るわれ、宝具ならぬデバイスである彼女を破壊したのだ。
こうなるとレイジングハートは修復不能、ただ赤い宝石として地面に落ち、そして粉々に砕け散った。

(できればユーノ・スクライアの方が効果的だったが近くにいないなら仕方あるまい。
可哀想だが世界のためにも犠牲になってもらうよレイジングハート……)

「レイジングハートまで……いくつ私の大切なものを奪ったらあなたたちは気が済むのッ!!!
ウオオオオオオオオオオオオーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

なのはがもう一人の親友の死に叫ぶと、彼女の憎しみの心に呼応するように獣化が始まった。
ヤンの目論見通り、テラカオスの成長は更に進行したのだ。
それもレイジングハートによる魔法少女への変身が足枷になるレベルまで。
サーヴァントたちはそれを肌で感じていた。

「コマンダー……」

なのはが巨大フェレット似の怪物になった瞬間、メディアの肉体は爪のひと振りでバラバラになり、肉片を地面に撒き散らしたあと、魔力として消えていった。
彼女は殺される寸前に振り返ってヤンと視線を合わせたが、これから殺されることを理解していながらも、やり遂げたような微笑み顔を向けていた気がした。

そして、ヤンも完全に怪物となったなのはが放った魔力の弾丸で腹をえぐられる。
腹に風穴が空いたヤンの口から血の塊が吐き出された。

「ぐわッ!」
「シネェ、ベイダァーーーーーーッ!!!」
「やれやれ……」

急接近したなのはは爪の一撃でヤンにトドメを刺そうとする。


「そこまでです!」

瞬間、なのはとヤンは照明に照らされ、動きを止めた。
気がつくと伊豆諸島にはいなかった、主催の兵士たちに囲まれていた。
その兵隊の中心にいたのがメフィラス星人と八雲紫であった。
それだけならなのはが手を止める理由にはならず、これだけの戦力ならばなのは単体での殲滅も容易であった。

「そのまま暴れても良いけど……ここにいる彼が死ぬことになるわよ」
「な、のは……」
「ユーノクンッ!?」

洞穴に隠したハズのユーノは引きずりだされ、主催に捕まって人質となっていた。
防御面では最高クラスの魔術師であるユーノであるが、それはデバイスがあればの話。
丸腰状態の彼が人間より遥かに強い宇宙人や妖怪に勝てる道理はない。

340阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:32:41 ID:la.XL0sY0

「動かず、できるものなら怪物化を解いてもらいたい。
流石にあなたの魔法弾や爪より私たちの攻撃が彼を貫く方が早い。
もし従えないのであれば、こちらの彼には死んでいただく」

メフィラス星人はあくまで紳士的に、なのはに降伏勧告をする。

「ダメだ、なのは! 僕に構わず……」
「ダメ……ユーノくんが死んだら私生きていけない……」
「なのは!」

ユーノの言葉を聞けず、なのはは怪物化を解いた。
恋人の身柄を最優先にしたのだ。
そして紫はなのはが変身を解いて、元の美女の姿になったのと同時に二人に首輪をつけた。

「特別性の首輪よ、狸組の連中が見つけた方法では絶対に取ることはできないわ。
片方が逆らった瞬間、二人共は死ぬことになるわ」
「くッ……」

ユーノとなのはにとっては屈辱的敗北であった。
多くの者を不幸に巻き込んだ存在に再び首輪をつけられつつも、今度は逆らうことも許されなくなったのだ。

「僕となのはをどうするつもりだ……!」
「何か勘違いしているようだけど、私たちはあなたたちを迎えに来たのよ」
「なに?」

紫の言葉にユーノとなのはは驚く。



「私たちはあなたたちをスカウトしにきたのよ、我々主催陣営プロジェクト・テラカオスの仲間にね」
「どういうことなの?」
「あなたたちも知らない、この世界と殺し合いの真実……それも教えてあげる。
さあ、生きたいのならば知りたいのならば、このどこでもドアに入って……ついでにずっと裸じゃ寒いでしょうから服も一式ずつ容易したわ」

なのはとユーノはを互いに手を握りあった後に幾人かの主催兵士と共にドアの中への入っていった。
逆らえば死しかなく、真実を知り主催の目的を探るチャンスでもあったため、二人に残された道は進むしかなかった。

九州ロボへ連行された二人の参加者を尻目に、メフィラスは傷を負い倒れたヤンの下へ駆け寄っていた。

「救援はありがたいが、少し遅かったね。
この傷じゃとても助かりそうにないな……」
「すみません、準備やジャックを説得するのに時間がかかってしまって……」
「いいんだ……」

ヤンが負わさた怪我は致命傷であり、もう数分も生きてはいられない。
にも関わらず、ヤンは余裕そうな口調でメフィラスに返す。

「座に帰る前に聞きたいことがある。
……なのはとユーノを主催陣営にスカウトするって、誰の発案だい?」
「私です」
「君か……なるほど、よく考えたね」

テラカオスは蒼から世界を救う力があるとはいえ、基本的に制御不能。
以前の貧乳歌姫、サーシェス、安倍がそれを証明している。
ユーノが絡むとなのははしばらく正気に戻るようだが、それもいつまで続くかわからない。
理性を保ったままテラカオスであり続けるツバサが例外中の例外であったのだ。
そんな危険な存在をあえて手元に置こうとする意味は――?

「――テラカオスとなったなのはと、沖縄の黒き獣とぶつけるつもりだね?」
「さすが、魔術師ヤン、もう考えを読まれましたか」

これからフォレスト・セルを討伐し、救済の予言を完遂した上でテラカオスを完成させねばならないのにシャドウだったもの――黒き獣は大きな障害だ。
その理由は拳王軍や狂信者よりも融通がきかず、どれだけ強かろうともテラカオス以外は蒼の汚染により問答無用でやられてしまうことになる。
だがテラカオス・ディーヴァは敗れてしまった。
黒き獣を止める手段はないと思われた。

そこへ盤上にテラカオス・リリカル(なのは)の存在が現れる。
彼女は歌姫以上のエントロピーを持ち、かつユーノから受け継いだ魔力反射能力を持っているらしく、ディーヴァ以上に黒き獣への勝ち筋が見えるのだ。
最悪、リリカルが敗れてもツバサは残り、逆にツバサが殺し合いの中で死んでもリリカルが残る可能性も出てくるのだ。
両方生き残ったら戦い合わせてどちらかを完成に導く。

「だがどうやって説得するつもりだい?
真実を教えると言っても、少なくともなのはの方は生き残れないよ。
彼女自身はもちろん、ユーノの方がそれを認められるかな?」

テラカオスは暴走した源泉から莫大な蒼を吸収した後、自身が世界の驚異とならないために自壊するようナノマシンにプログラミングされている。
テラカオスになったら最終的には助からないのだ。
依存と言えるまでに愛し合ってるなのはとユーノが事実を許容できるとはとても思えない。

「真実は教えますが、同時に嘘も教えます」
「具体的には?」
「計画の中にある、テラカオスに自殺プログラムがある点は隠蔽。助かる可能性を見せる。
エックスの遺した記録についても、テラカオスゼロが大災害を止めて散ったのではなく、後の騒乱で死んだことにしました」

なのはとユーノに改竄した計画と古代の記録を見せることで、あたかもテラカオス化しても助かる見込みがあるように見せかけるのだ。
希望が見えてくればこちらの指示にも従いやすくなるだろう。

341阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:33:11 ID:la.XL0sY0

「メフィラス、良い死に方はできそうにないね」
「尊き人類と世界を守る……その覚悟の上です」

悪質とまで言われたメフィラス星人のやり方と、強い覚悟にヤンはマスクの下で苦笑する。
その時、ヤンは自身の力が急速に抜けていく感覚が襲った。
身に覚えがある感覚だ。

「お……っと……お迎えがきたようだ……」
「ヤン提督…」
「穴が空いてしまったが…ベイダー卿のマスクとスーツはお返しする…
放送はモブ兵士にでも着せて……続けたまえ……」

アイコンタクトで後は任せたという視線をメフィラス星人に送り、コマンダーことヤン・ウェンリーは光となって消えた。
人間から見ると表情がわかりづらいメフィラス星人と、人間に近い見た目だが特に悲しい表情は見せてないように見える八雲紫。

しかし、ヤンやメディアを喪った感情に関しては、紫の手にセイバーの模型が握られていたことと、メフィラスが譲られた黒づくめの衣装をギュッと握り締めていたことが答えであろう……




「うッ……」
「ここは……」
「ようこそ、我らが主催陣営へ。ここは九州ロボの中だ」

なのはとユーノの二人がどこでもドアを抜けた先は九州ロボの格納庫。
そしてはやてより教えられた五大幹部の生き残り、ジャック・Oがいた。
ジャックの横には一台のTVが用意され、それは対主催二人にとって最も欲しい情報が映し出されていた……
なのはが最終的に死なねばならないという事実を除いて。



【ヤン・ウェンリー@銀河英雄伝説 死亡確認】
【メディア@Fateシリーズ 死亡確認】




【二日目・21時00分/東京の上空 九州ロボ】


【主催共通】
※予言の真実や古代に起きた出来事を知りました
※予言に必要な鎮魂歌を得ました
 九州ロボがミヤザキ産の器足り得る巨像であると知りました
 手元にはありませんが勇者が『ツバサ』、巫女が翔鶴とまどか、最良の九人が野球チームだと確信しました
※都庁同盟軍が予言や蒼、フォレスト・セルの罠について知っていることに気づいていません
※カオスロワちゃんねる管理人の存在にも気づいておらず、自分たちの手で掲示板を支配していると思い込んでいます

【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造)@ARMORED CORE、拳銃
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100、オーバードウェポン一式、古代のメモリーチップ
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:0の前に(改竄を加えた)プロジェクトテラカオスとエックスの記憶を見せて
  ユーノ、なのはを我々の手駒に加える
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
3:アナキンの回収は後回し、後で何らかの方法での情報共有を行いたい
4:フォレスト・セルの撃滅が終わったら残滓(ツバサ)と翔鶴も回収したい
  鎮魂歌に最適な歌い手も見つけたい


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×950、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:ヤン、メディア……
※スパークドールズ化した八坂真尋、ユーノを元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です

342阿修羅姫:2019/04/19(金) 17:33:55 ID:la.XL0sY0


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:改竄を加えたプロジェクトテラカオスとエックスの記憶を見せてユーノ、なのはを仲間に加える
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:ヤンさんとメディアさんの犠牲は無駄にはしませんよ……!
※ユーノとなのはに見せるプロジェクトテラカオスの全容とエックスの記憶は
 完成したテラカオスの結末が生きている形に変わります


【八雲紫@東方Project】
【状態】健康
【装備】傘、扇子、スペルカード@東方Project
【道具】ソロモンの指輪、仙豆×55@ドラゴンボール、ネビュラスチームガン@仮面ライダービルド、ギアエンジン@仮面ライダービルド、セイバーの手作り模型
【思考】基本:幻想郷を守る為に主催を手伝う。
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する作戦を立てる
1:どのような事をしても幻想郷を守る
2:仲間と認めた存在の犠牲を無駄にはしない
※境界を操る能力に制限がかかっています



【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【状態】19歳の身体、ケモ耳、すごい罪悪感、テラカオス完成度50%
    一時的に正気を取り戻している、特別性の首輪
【装備】レイジングハート@魔法少女リリカルなのは、千年タウク@遊戯王
【道具】なし
【思考】基本:ユーノの安全を最優先
0:ユーノくんの身が危ないので今は主催に従う
1:ユーノを傷つけたギムレーは信用しない
  イチリュウチームに戻りたくない
2:レイジングハートまで失ってしまった……
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※ユーノの精液(四条化細胞+キングストーンの一部の力)を全身で受けた結果、テラカオス化汚染が譲渡されテラカオス候補者に。
 さらに風鳴翼の右腕を食べたことで完全にテラカオス化しました。
 特効薬でもフォレスト・セルやツバサの治療でも治せません。
※テラカオス化したユーノから受け継いだ能力として
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただしほぼ暴走状態に陥っており、ユーノ以外の敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できるようになりました
※ユーノを通してツバサから奪ったキングストーンの能力として「ゲル化」ができるようになりました
 「ロボ化」は不明


【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(大)、19歳の身体、特別性の首輪
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ……?
0:なのはの身が危ないので今は主催に従う
1:全てにおいてなのはの安全を優先する
2:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
3:救済の予言の謎を解く
4:野田総理の死の原因を探りたい
5:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許したくないが……クソッ!
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※TC値と救済の予言の内容を知りました
※特効薬を使ったことでユーノ自身のテラカオス化は完全に浄化されました。

343:2019/06/13(木) 17:51:46 ID:SwoZ9ll60
なのはの突然のテラカオス化により、被害を受けたイチリュウチーム及びアウラの民。
彼らは特に怪我がひどいアナキンとギムレーを応急処理を施しつつ、最後のドラゴンネットワークで得たギムレーの有力情報と、追先ほどのなのはの暴走に関する情報を集団全体で共有した。

瘴気の正体であるテラカオス化ナノマシン。
聖帝軍が立川を焼いた真の理由。

大災害や沖縄異常気象の正体。
オシリスになりすましてドラゴンネットワークに罠を張った黒き獣。

歴史の影に葬られた古代文明ミヤザキとグンマー。
SNSカオスロワちゃんねる管理人が事件の黒幕である可能性。

そしてこれから向かう予定である都庁が予言の謎を解き明かし、テラカオスと野球選手以外の全てを手に入れたこと。

ギムレーはもたらしたものは間違いなく有益情報である。

……だが、ギムレーに仲間から向けられた目は賞賛よりも冷ややかなものであった。


「萃香やブリーフ博士は仕方ないとは思う……なのはがテラカオス化するなんて誰も予測できないんだからな
しかし、だからって殺そうとすることはなかったじゃねえか!」
「アンタのせいやでギムレー!
せっかく正気に戻ったなのはちゃんを殺そうとしなければ、ベルナドットさんやアウラの民の人も死ななかったんや!
それにユーノくんまで……私は絶対にアンタを許さへんでギムレー!」

ギムレーに対して怒りの声、ストレートに感情をぶつけたのはナッパとはやてであった。
その理由はギムレーが、テラカオス化したなのはの危険性にばかり目を取られてしまい、殺そうとしたこと。
さらにその奇襲もユーノが庇ったことで失敗に終わり、不信によるなのはの出奔と仲間から死者を出してしまったのだ。
なのは殺害もギムレーなりの理由があるにしろ、ほとんどの者から見れば軽率な行動に映ったのだ。

「何を言っているんだ。
ツバサも言っていたがなのははもう手遅れだった。
魔法は吸収されて倍返し、物理攻撃も効かない。捕まえることなんてできやしない。
おまけに薬は無くなって、ブリーフ博士は死んで薬の調達は難しくなった。
被害を最小限にするには彼女をあの場で殺すしかなかったんや!」

一方のギムレーも邪龍故のプライドのためか、理論の上でなのはを生かして無力化する方法がないとわかっているがために、仲間たちに謝ることはしなかった。
謝罪は筋違いだと思ったからだ。
残酷なやり方かもしれないが、実際誰が暴走したなのはを留めて置けるのか。

「それになのはとユーノは裸で抱き合っていたようだしな」
「なにハレンチなことを口にしてるんや!」
「エイズのように移ったってことさ。
ユーノのテラカオス化した細胞が精液を通してなのはに吸収されたんだ!
それしかユーノ治療しようとしたツバサのテラカオス因子がなのはに移った理由がない」

なのはの突然のテラカオス化に関する推理はあっていた。
実際、何人かは二人がいた一室から性行為をしていたと思わしき喘ぎ声を聞いている。
それまではなのはにテラカオス化の兆候は見られなかったし、他に考えられまい。

「はッ……だったらユーノもなのはも自業自得じゃないか。
危険で未知の病気にかかってる時にセックスを行う……バカの所業だ。
ブリーフ博士や萃香が死んだのも二人の責任じゃないのか?」
「ギムレー! アンタって人は!」
「落ち着けはやて! 亀の中で頭を冷やせ」
「アナキンさん! ちょっと待――」

だが推理は当たっていたとしても、ギムレーの余計な一言が仲間からの悪感情を刺激してしまう。
例えそれが正論であったとしても、仲間とギムレーとの間に大きな確執が生まれてしまった。
特にはやては今にも殴りかかりそうだったのでアナキンはやむを得ずココ・ジャンボの中に閉じ込めることにした。

344:2019/06/13(木) 17:52:46 ID:SwoZ9ll60


「シカシ、問題ガ増エテシマイマシタネ……」
「なのはちゃんを止めないと、被害が増えてしまう一方でぇす」
「今は誰もいないハズの伊豆諸島にいるようですが、いつ動き出して他の人を襲いかかってしまうか……」
(……となるとヤンとメディアはおそらく……すまない)

後は都庁に行って野球(闘い)しにいくだけとも言えたイチリュウチームだったが、なのはを追わないといけなくなった。
無視すれば甚大な被害を及ぼし、最悪テラカオス・ディーヴァ以上の被害をもたらしてしまう。
テラカオスであるツバサはなのはの因子を感知し、追うための手がかりを教えた。
ちなみに伊豆諸島は主催が出した禁止エリアの一つであり、既に誰もいないというのが参加者間の一般的な考えであった。
実はそこには主催の秘密基地があり、守護する二人のサーヴァントが潜伏していたことを主催リーダー格のアナキンは知っている。
しかし、テラカオスなのはとの戦力差、そして伊豆諸島から出られない特性上、二人はもう助からないだろうとアナキンは部下二人の生存を心の中で諦めることにした。

「しかし追ったところでどうする?
捕まえるどころじゃない……エネルギーは吸収反射・物理攻撃はゲル化して無効という厄介な能力がある。
それならイチローだろうがナッパだろうが、誰もなのはを捕まえられないぞ?」

蛮の言っていることは最もだった。
追いかけたところでいくつもの能力が彼女の捕縛を不可能な域に至らせている。
もしかしたら残存する参加者の中で誰もなのはを捕まえられないかもしれない。
それがイチリュウチームの頭を悩ませる。



「いや、一匹だけなのはを捕まえられる能力を持つ奴がいたホル!」
「なんだって? ホルス、そいつは一体……」

突如、ホルスが閃いた。
6/を始め、驚いたイチリュウチームの面子がホルスに注目する。

「オシリスだホル!
奴の能力はいかなる魔法・罠・モンスターの特殊効果が発動できないってものがあるホル!」
「あ!」
「なるほど、なのはちゃんの能力が魔法や特殊効果扱いなら希望も見えてくるか」

半ば不意打ちで人質も取られていたサーシェス、単純に攻撃力が高いドリスコルの乗るゼオライマーにこそ遅れを取ったが、オシリスが戦場に出れば、あらゆる特殊能力が無効化される。
相手は選ぶものの、事故さえ回避できれば最強クラスの参加者なのだ。

「あとは連携さえ取れればなのはを捕まえることも不可能じゃないか、だが……」
「肝心のオシリス様はおそらくDMC狂信者に捕まっています……今の私たちの戦力で救助は困難ですね」

放送で名前が流れない辺り、オシリスはまだ生きているようだが、最後に別れた時は瀕死状態だった。
殺されていないのならあのまま江戸川区に放置されているとは考えにくいのでドリスコルの手によってDMC狂信者に捕まってビックサイトに送られたと見た方が妥当だろう。

首輪を外し能力を開放したイチリュウチームとて狂信者の戦力が集中しているビックサイトに攻め込むのは危険である。
最悪返り討ちで全滅する危険さえある。
仲間集めをしようにもカオスロワちゃんねるは管理人による改竄、ドラゴンネットワークは黒き獣による侵入がわかった以上実質的にできない。
ならば都庁の戦力と合流してからビックサイトを攻め落とせば安全なのだろうが、その頃にはオシリスが殺されている危険やなのはがもっと手をつけられないほどパワーアップしている可能性がある。
時間的猶予さえないように思えた。


「僕がビックサイトへ行こう。皆は今すぐに都庁へ向かえ」

どうすれば良いのか、頭を悩ませる一行に対してギムレーがそう言うと、浦安の空を覆うほど大きかった邪龍ギムレー本体が動き出し、ギムレーがその肉体に飛び乗った。
突然のことに動揺するイチリュウチームたち。

「おい? どういうつもりだギムレー!」
「僕と本体でビックサイトに殴り込みをかけ、オシリスを奪還しにいく」
「いくら邪龍とはいえ……死ぬぞ」
「君が行くなら僕も行く」
「俺もだ!」

アナキンが苦言した通り、いくら絶大な力を持つ邪龍とはいえ、単身でビックサイトに攻め込むのは、数の上でも質の上でもわけが違う。
先程までギスギスしていたとはいえイチローやナッパも気にかかり、共に行くと言い出す。
しかし、ギムレーは同行を拒否した。

「ダメだ、君たちはすぐにツバサを連れて都庁へと向かうんだ。
本体の眼を通じて今感じ取ったけど、都庁に狂信者の戦力が向かっているところを見た」
「それは本当か?」
「規模からしておそらく最終攻撃をしかけるつもりだろう……予言の巫女・歌を歌える者・巨像がやられたらこの世界はおしまいだ。
一つでも多く戦力がいるだろうし、彼らを守るためにも早急に都庁へ合流するんだ」
「だが君一人では……」

345:2019/06/13(木) 17:53:16 ID:SwoZ9ll60

心配そうに見つめるイチローにギムレーは微笑んだ。

「大丈夫だ。僕だってバカじゃない。ちょっと狂信者のリーダーと交渉するだけさ」
「交渉?」
「オシリスを生きて返さないとこの巨体をビックサイトにぶつけてやるとね」

アクシズ落としならぬギムレー落とし。
だが、実際参加者でも随一の巨体を誇るギムレーが落下すればビックサイトとてひとたまりもないだろう。
ある意味能力よりもその質量は厄介であるだろう。

「おい、それは僕たちも危ないんじゃないか?」
「半分のブラフのつもりだけど、奴らもクラウザーの蘇生手段を失う羽目になるし、クラウザーの蘇生が目的じゃなかったら奴らは下っ端どもから求心力を失う。
仮に僕を倒したら体がビックサイトへ落ちてしまうことになるし、奴らも迂闊には攻撃できない。
そこを突いて、僕に立ち去って欲しかったらオシリスを返せというのさ」
「そういうことか、わかった……」
「奴らに邪龍の怒りを見せつけてやるよ」

自身満々げに言うギムレーと本体は仲間を置いて徐々に上空へと昇っていく。

「ここで一時のお別れだ。都庁で落ち合おう」
「ああ……それと」



「なのはくんの件もあって、さっきはギスギスしていたが、今でも僕やナッパは君を味方だと思ってる!」
「必ず、一緒に野球をして世界を救いに行こうぜ!」

お人好し故に、ギムレーがなのはを殺そうとしたことは許せない。
だがギムレーが何を思ってなのはを殺そうととしたかは仲間たちは(はやてなど一部を除いて)理解していた。
結果的に惨劇につながってしまったとはいえ、ギムレーの何から何まで否定する気にはなれなかったのである。

イチローやナッパはギムレーに向けて手を振り、ギムレーも無言ながら手を振って返したのだった。
やがてギムレー本体は上昇を終えて、ビックサイトへ向かっていった。



「サア、都庁ガ危ナイデス」
「ギムレーならたぶん大丈夫ホル、早いとこ出発するホル!」

イチリュウチームもまた、都庁へ向かうことにした。
飛べるものはそのまま、飛べない者は騎士のように竜化したアウラの民に跨り、空を舞う。



『離レタカラッテ アンシンスルナヨ アナキン』
「――――ッ!」
『イツデモ 我々ガ オマエヲミテイル』
(本当に抜け目のない奴め……)

よく見るとアナキンを乗せたスクーナー級ドラゴンは、先ほどのなのはの暴走で死んだアウラの民の屍兵である。
アナキンの行動を見張るお目付役として、比較的傷の浅かった死体をこっそり蘇生したのだ。
仮にイチリュウチームを裏切る真似をすれば、ギムレーによるなんらかの報復があるだろう。
訝しげに思いながらアナキンははやてを亀の中から出した。

「アナキンさん、ギムレーは!?」
「かくかくしかじかあって一時的に別行動中さ」
「チッ、二度と戻ってこなきゃいいんや! なのはちゃんを売女呼ばわりしくさってからに!」
(……戻ってこないとオシリスも戻らないからなのはを捕まえることもできないんだが。
それに奴は売女とまでは言ってないぞ)

はやてからギムレーへの不信感は最悪レベルだ。
ふたりっきりにすれば確実に喧嘩するほどである。
それ以上に、なのはの暴走や自分を除いた狸組の全滅によってはやての精神は大分追い詰められている。
フォースで心を探らずとも明らかにヒステリックになっており、典型的なASDを患っているかもしれない。

(彼女の存在は僕と対主催の繋がりを作ってくれるが、これはちょっと……まずい傾向かな)

346:2019/06/13(木) 17:53:53 ID:SwoZ9ll60



「ギムレー様……民の者が亡くなった責任が全くないとは私は思いません。
アウラの民もあなたに怒りを抱いているようです。
……ですが、私があなたの立場なら民を守るために同じことをしたかもしれない。
……どうかご武運を」
「サラ……」

サラマンディーネも民から死者が出たことに怒りを覚えていたが、頭ではギムレーの行動を理解していた。
気絶さえしていなければ民や仲間を守るためになのはを殺そうとする決断を自分も下したかもしれないのだ。
だから必要以上に相手を責めることはせず、仲間として無事な帰還を願ったのだ。
竜の背に乗る彼女のつぶやきを、隣で聞いていたナッパは聞いていた。



「ギムレーさん」
「絶対死ぬんじゃねえぞ」
「ベルナドットさんを死なされて、クリスさんもシマリスさんも彼を憎まないのですか?」

竜の背に乗りながら遠くなるギムレーを見つめるクリスとシマリスにギムレーへの憎しみはなかった。
はやてはあそこまで明確な怒りを見せていたのに……その理由を知るためにツバサは二人に尋ねた。

「ベルナドットのおっさんが死んだのは悲しいさ」
「でもあれは事故だったんですう。ギムレーさんを恨むのも筋違いですし、なのはちゃんに怒りの矛先をぶつけるのも間違ってる気がするんでぃす」
「不幸な事故の積み重ね、つーか、色々こんがらがっちまってああなっちまったというのが私とシマリスの見解だよ。
恨むんだったらこの世界を大災害で滅茶苦茶にしたカオスロワちゃんねるの管理人ぐらいだろうな」
「原因を作ったギムレーさんや直接仲間を殺したなのはさんを赦すというのですか?」
「ああ、むしろギムレーの奴、ベルナドットのおっさんたちを死に責任を感じたからこそ一人でビックサイトに向かっちまったんじゃないかとさえ思ってる」
「はいでぃす」

(生ける者ははやてさんのように他者を許せない者もいれば、この二人のように許すことができる者もいる。
他人を許すことも強さの一つなんですね……)

また一つ、何かを悟ったテラカオスの残滓たるツバサ。

しかし、次の瞬間、突然のだるさがツバサを襲い、竜の背の上で彼女うなだれた。


「ッ!?」
「どうした?」
「急に疲れのようなものが……!」

他の者にツバサのような症状は見られない。
ツバサだけが鉛のように体が重くなったようだ。





「おい! あそこに誰かいるぞ!」

地上に目を凝らしていた6/が何かを見つけたようだ。
イチリュウチームを背に乗せた一団の行軍が一時的にストップする。

「狂信者か?」
「いや、そうは見えねえけど……あそこだ、バイクに乗ってる!」

6/が言ったとおりに蛮が地上を見ると、背丈の小さい少年と、オシリスが見たら喜びそうな幼女、猫だか兎だかよくわからない生き物が地上からこちらに手を振って存在をアピールしている。


「良かった! イチローチームは無事みたいだ!」
「大きな竜は向こうへ飛んでいってしまったけど、有力対主催であるイチローたちが無事で良かったね」

地上で手を振っていたのは苗木と霧切、そしてインキュベーターだ。
未だに精神状態が回復していない霧切がよくわからず手を降り続ける横で苗木とインキュベーターはそれぞれの思惑を抱く。

(あの人たちの力さえあれば、都庁の魔物や拳王連合軍に復習して奴らを絶望の淵にたたき込める!!)
(どうやらテラカオス・ディーヴァがここにいるみたいだね、せいぜい利用させてもらうよ)




「どうする6/?」
「とりあえず降りて会ってみるぜ。敵なら殲滅、一般人なら保護。
戦えるやつならチームに引き入れだな」
「それじゃあ私もついていくぜ」
「それなら私も……」
「おまえは疲れでだるいんだろ? 空で休んでろ」
「見に行くだけなら四人もいらないでぃす、ツバサちゃんは僕と待ってましょう」
「決まりだな」

6/・蛮・クリスの三人は地上の二人と一匹の正体を確かめるために地上に降りることにした。
もし敵だとしてもイチローの投球やナッパの気弾なら一瞬で殲滅できるだろう。
地上に降りる三人は警戒しつつも、バックアップがあることを念頭にいれて降りていった。


だが、ツバサはなぜかあの三人組に対し、なんともいえない嫌な予感がするのだった。

347:2019/06/13(木) 17:54:14 ID:SwoZ9ll60




【二日目・21時30分/千葉県】

【イチリュウチーム】
※ギムレーとの情報共有を行いました。
※一部の死亡したアウラの民がギムレーの手で屍兵化しており、アナキンを監視しています。
※都庁に向かっています

【イチロー@現実?】
【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】
※魔法少女・霧切の対テラカオス・ディーヴァ用の結界の影響か、体のだるさとして症状があらわれています。
【シマリス@ぼのぼの】


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手】
【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
※この三名は苗木たちと接触のために地上に降りました。



【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
※キュゥべえ以外、イチリュウチームに風鳴翼(ツバサ)がいることに気づいていません





巨大な、邪龍ギムレーの背の上。

(オシリスはまだ生きているだろうか……奴らのことだから、無事とは正直思えない。時間もそれだけ経っている)

ギムレーの冷静で冷徹な面はオシリスの無事は絶望的だと見ている。
放送が流れた後には殺されている可能性が高い。

(しかし狂信者にとってもオシリスの能力は惜しい。
洗脳か兵器への加工ぐらいは考えるだろう)

だが性格はともかく、オシリスの魔法・罠・特殊効果無力化能力はどこの組織も手が出るほど欲しいはずだ。
裏を返せば、数だのみだったDMC狂信者が連携次第で最凶の存在になる可能性さえある。
世界を救う必要があるのに、それを知ってか知らずか阻害する狂信者にオシリスの力を利用されるのは面白くない。

(まだ生きているなら御の字、何らかの兵器にされているにしても対主催の手中に収めていく必要がある。
オシリスの力を危険な奴らの手元には置けない!)

オシリスがどうなっているにしろ、生存を確かめ、その力をマーダー勢力に渡すわけにはいかなかった。
暴走したテラカオスなのはも、彼の能力なしでは捕縛も殺害もできない。
何をするにしてもオシリスの力が必要だった。



(殺害はまだしも、洗脳するにしろ兵器化するにしろ、まだ時間はかかるハズだ!
急げギムレー、この世界を大災害で破滅させないために!)

ギムレーは自分自身の肉体に急ぐように呼びかけ、飛翔スピードを上げた。


【二日目・21時30分/東京湾】
【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒】
※オシリスの救助または力の回収のためにビックサイトに向かっています
※オシリスが艦むすになったことはまだ知りません

348進撃の聖帝 羽ばたけ黒い焔:2019/06/21(金) 11:33:25 ID:kXi85SgM0
ここは都庁の世界樹の内部。
オオナズチがドラゴンネットワークを通じて手に入れた情報、そしてイチローチームもといドラゴンズとの同盟締結への切符は有益であった。
それらの情報は任務のために先にビックサイトへ向かった影薄組を除く、都庁同盟軍のメンバーに行き渡った。

邪竜ギムレーは味方であり、都庁や聖帝軍への誤解もイチリュウチーム限定であるが解けた。
そしてイチリュウチームには都庁の者たちが予言成就のために未だに手にしていないテラカオスの勇者と、野球チームを所持しており、合流は必須要項である。
そしてカオスロワちゃんねるは何者かに情報操作された危険な電子掲示板であり、沖縄に現れた黒き獣は死者を取り込み操る力とドラゴンネットワークにさえ侵入できる驚異の力を持っていること。
また、主催陣営のアナキン(かつてはやてが持ち出した情報にはそのような名前はなかったが、主催の誰かが化けている可能性がある)が手元にいるらしいので、イチリュウチームへ合流できれば真相へとさらに近づくことができそうだ。

貴重な情報収集手段であるカオスロワちゃんねるとドラゴンネットワークが事実上使えなくなったという恐ろしいこともあったが、これらの情報も確実に+に作用するだろう。


だが、希望への階段を上りだした彼らに試練が降り注ぐ。
行方不明だった聖帝軍先遣隊がクロコダインを除いて都庁へ合流できたのは良かったが、その先遣隊が連れたきた二人と一匹に問題があった。
都庁から見敵必殺のお触れが出ていたインキュベーターことキュゥべえ、仮面ライダーウィザード苗木誠、そして安倍総理すら瞬殺した最凶の魔法少女・霧切響子。
彼らが桑原・イリヤ・アイスシザースの三人と数10匹の魔物たちを紘太たちが離れている間に皆殺しにしたのだ。
そして、それから間を置かずにダオスの対空レーザーすらすり抜けた拳王連合軍からの直接攻撃および聖帝軍への挑戦状という名の脅迫。
世界樹とリンクしているまどかの傷は、世界樹自体の生命力による自己再生で治癒されるが、失った命までは戻らない。
これらが都庁同盟軍を少なからず焦らせるのは無理もない話だった。

「イリヤ……そんな……」
「桑原さん!」
『アイスシザース……おまえほど仲間に尽くした者は志半ばで死ぬべきではないはずなのに!』

特に悲しみの涙を流したのは亜久里、エリカ、氷竜。
死亡した三人のものと思われる肉片は、仲間のものへ運ばれた。
かつてマーラ様に殺されたサクヤたちのようにレストが復元を試みられるが、全員遺体の損壊と魔力の汚染がひどく、蘇生はおろか復元さえできなかった。

「ひどい……! これをキュゥべえがやったというの?」
「キュゥべえ自身の戦闘力は無いに等しいから、苗木や発狂していたらしい霧切が騙されてやったのかもしれないけど、全滅したホワイトベース組の生き残りや発狂したという話さえ嘘かもしれないわ。
人の言葉を喋れないアイスシザースはともかく、意思疎通のとれる桑原・イリヤがいて殺しにかかるのはおかしいし。
紘太が近くにいる以上、世間のようにヘルヘイムと誤解するわけもない……キュゥべえもそうだけど思惑を確かめる必要があるわ」
「ね、ねえ?! キュゥべえが都庁では見つけ次第殺されるべき悪党なんて始めて知ったんだけど、どういうこと!?」

さやかはいつの間にか都庁の間でキュゥべえが悪者扱いされてる吹聴に気づき、疑問をほむらやまどかに問いかけた。
ほむらとまどかは互いに目を見合わせたあと、一つ決心したようにさやかにキュゥべえへの真実を打ち明けた。



「……そんな」
「キュゥべえの目的は少女の願いを叶えて、世を乱す魔女と戦ってもらうことじゃない。
願いを餌に魔法少女を絶望させて魔女にし、その魔女を魔法少女に狩ってもらうマッチポンプを行うことでエネルギー資源を獲得することよ」
「真実を隠して女の子を騙す……カオスロワちゃんねるの管理人と同じなのかもしれない」

さやかが親友二人に教えられた真実はそれはそれは残酷であった。
恋心に付け入られ、心身共に傷ついて魔女を倒した先に待っているのは自身が魔女になるという絶望死。
敵として戦ってきた魔女も元々は自身と同じ魔法少女だったのだから。
キュゥべえは決してランプの中の魔人のような善き結果をもたらす存在ではなかったのだから。

349進撃の聖帝 羽ばたけ黒い焔:2019/06/21(金) 11:34:38 ID:kXi85SgM0

「どうして、黙っていたの……?」
「……ごめんなさい。
時間遡行を繰り返した経験則上、この殺し合いが始まる前はあなた自身の精神がこの真実に耐えられないと思っていた。
だけど今は違う。
ここにはソウルジェムを浄化できるフォレスト・セルが存在して、この世界を探し歩けば魔法少女化さえ解く方法もきっとあると信じられる。
……何より、友達としてさやかさん自身の優しさや強さを信じたかったから」
「……そっか、ありがとう、ほむら、まどか」
「さやかちゃん!」

悲しみを浮かべる二人に対し、真実を知ったさやかの返答は微笑みだった。
ソウルジェムの濁りも小さく、動揺はあったようだが絶望で魔女化するには程遠い。

「あなた、絶望していないの?」
「まあ、人さまを騙していたキュゥべえへの怒りは感じたけどさ。
アタシよりももっともっと悲惨な目にあった人がいるのに、この程度で絶望なんかしてたら美希たちに笑われちゃうわよ。
どうせならキュゥべえの思惑を逆手に取って、超回復魔法少女さやかとして頑張っちゃえと思ってね」

これまでの殺し合いはさやかにとっても無駄ではなく、確かな精神的成長を促していた。
自身の不幸程度ではもう驚くことはない。

「それに……魔女ともこうやって仲良くできると知ったし」
『――♪』
「あ、シャルロッテそこにいたなっしかー」
『ぬいぐるみみたいな生物と戯れる天使さやか氏……萌えますぞwww』
「この子見ているとアタシが魔女になってもなんとかなりそうな気がしてくるわ」

ふなっしーの支給品である魔女シャルロッテは子犬のようにさやかのように懐いていた。

(ほむらちゃん、あれって)
(ええ、あの魔女はかなり危険な存在なんだけど……主催の技術なのか大災害の影響なのかわからないけど、味方には危害を加えないようになっているみたい。
あれもまた、さやかの精神を悪化させない要員になっているのかも)

ちなみにこの世界線のマミさんはシャルロッテにマミられていません。
なので未来を見てきたほむらはまだしも、まどかやさやか目線でのシャルロッテへの恨みはこれっぽっちもなかったのだ。
魔物と触れ合ったことで人外への警戒心が薄れている点も大きい。



『コホン、我が天使の悩み事は片付いて何よりですが、苗木と霧切が何者であれ、キュゥべえにイチリュウチームと接触されると厄介ですぞ』
「ええ、奴の騙し方は巧みよ。せっかく盟友になれるかもしれないギムレー・イチローとのパイプも喪失する危険があるわ」
『カオスロワちゃんねるやドラゴンネットワークももう宛にはできない以上、連絡を取る手段がない。
どうにか早く合流し、奴の危険を伝えねば』

現場に残されたバイクの轍から苗木は千葉方面に逃げたと推察できる。
千葉にはイチリュウチームがあり、都庁に対抗できる戦力は狂信者や拳王連合軍以外だとここしか残されていない。
ギムレーは聡明だが、万が一の場合、嘘の情報を植えつけられて再び疑念を持たれる危険が有る。

「だったら、俺の力で苗木と接触してみるぜ」
「そういえばアンタ、極になればワープに似た能力があるって言ってたね」
「大阪の時は首輪のせいでできなかったが、今度こそやってやるぜ!」

そう言った聖帝軍の一員である葛葉紘太は、チルノの前で極アームズで変身する。
制限解除になったクラックを使ってのワープで苗木が向かう千葉へ先回りを可能にする。
……そのハズだった。

「よし、このまま一気に……ってうわあああああ!!」
「紘太!!」

しかし紘太もとい鎧武の体は押し戻され、大ダメージを受けた。
ダメージ自体はさやかがすぐに回復魔法で治療させたが、肝心のクラックから覗き見える(本物の)ヘルヘイムの森は大地震でも起きたかのようにグチャグチャであった。

「あ、あのヘルヘイムが……何が起きてるんだ!」
「これは蒼による汚染だ! この前僕が披露して失敗したゲートリジェクトのそれとそっくりだ」

レストはかつて冥府を含んだ異世界の境界をつなぐ魔法、ゲートリジェクトを行使しようとして蒼の力で弾かれた。
ヘルヘイムもまた異次元からの蒼による汚染を受けていたのだ。


――葛葉紘太……


突如、紘太にとって関わり深い人物の声が森の中から聞こえた。
その人物は幽霊のように佇んでいる。

350進撃の聖帝 羽ばたけ黒い焔:2019/06/21(金) 11:35:26 ID:kXi85SgM0

「DJサガラ!?」
「お笑い芸人のぐっさんじゃねーか!」
「高津さん、シリアスが崩れるから静かに!」

それはヘルヘイムの森そのものの意志であり、ある意味ノーデンスにも並ぶ神とも言える存在――DJサガラ。
だが本来なら誰にも滅ぼされることはない存在が、今にも消えようとしている。

「ボロボロじゃないか、大丈夫か!?」
『申し訳ないが、ヘルヘイムの森はここまでのようだ。
宇宙から来た謎のエネルギーの直撃を受け、森はすぐにでも崩壊せんとしている』
「ヘルヘイムの森も蒼を食らったのか……!」

ヘルヘイムの森を滅ぼせるのは、ノーデンスでさえ耐え切れなかった蒼。それしか考えられない。

『重ねて申し訳ないが黄金の果実を巡るライダーバトルは今日をもって終了とする……今後はインベスやこちらの植物が君の世界にやってくることもないだろう』
「なんだって!?」

悩みの種だったアーマードライダー同士の争いやヘルヘイムが無くなることはいつもの紘太なら願ったり叶ったりと言えたが、今はヘルヘイム以上に危うい状況だけに素直に喜べない。

「待ってくれ、せめてアンタの口から都庁の世界樹がヘルヘイムじゃないことを世間に説明を……」
『無理だ、森の死まで時間がない。
……だが、ここまで戦わせてきた君に何もよこさないのも失礼だ。
ヘルヘイムが滅んでも最後の力で果実の力……ロックシードは使えるようにはしておこう。
ワープ以外ならばこれまで通りに使えるハズだ』
「サガラ!」
『済まない紘太、差し出がましいようだが宇宙の未来を頼……む……』

クラックの中でDJサガラは倒れ、煙のように消滅する。
そしてヘルヘイムの森も枯れると同時に崩壊し、クラックは閉じたのだった。


【DJサガラ(ヘルヘイムの森)@仮面ライダー鎧武 消滅】
※蒼による消滅のため、どのような手段を用いても復活できません


「なんてこった……」

ヘルヘイムの消滅を前にして紘太は落胆しつつ、変身を解く。
追うためのワープ能力喪失はもちろんのことだが、本物のヘルヘイムが消滅したことで都庁の世界樹がヘルヘイムの森ではないと証明する手段も同時に失ってしまった。

「キュゥべえを追うことも、ここがヘルヘイムの森じゃないと教えることも……」
「気を落とすな紘太、希望はまだある」
「機動性のある誰かが追えればキュゥべえに間に合うかもしれませんし、ヘルヘイムに関しても都庁があえて悪役を演じることで混乱を収める小町の偶像計画が用意されています」
「サウザー、闇、本当にすまねえ」

まだ万策は尽きていないと、紘太は仲間に励まされる。
もちろんワープや本物のヘルヘイムがあった方が諸々の問題解決への近道にはなったろうが、無いなら無いで次善策を用意するだけである。


「さて、もう一つの問題は拳王連合軍から送られてきたコレだ」

サウザーが提示したのは、さやかが見つけた野球ボール。
その中には聖帝軍への挑戦状と電車ごっこロープが入っていた。
それをこの場にいる面子が回し読みする。

「聖帝軍が9時までにたどり着けなければ東京を無差別に攻撃するですって!?」
「宣戦布告のついでに殺戮を行い、さらに従わねば関係のない参加者も含めて攻撃する……拳王連合軍は地獄すら生ぬるい悪鬼としか形容できません」

都庁同盟軍の中でも特に拳王連合軍を忌み嫌うアルルーナとエリカは憤慨する。
だがこれまで行ったMAP破壊から察するにブラフとも思えない。
実際にやる気はなくとも、マジでやりかねない感を引き立てているのが拳王連合軍の恐ろしいところである。

「だけどこれ普通に考えたら罠だよ。都庁と聖帝軍を分離させようっていう意図が透けて見えるよ」
「こんな奴ら、野球で真面目にやり合う必要はねえ。
ちょいと卑怯だがダオスのレーザーで先制攻撃して倒しちまえ。
ピンポイントで撃ち込めば余計な被害も出ないだろ」

イオリの言うとおり、実際にこれは都庁同盟軍の戦力を割いて2分するための計略であるし、レイジの先制攻撃案も合っている気がした。
だがスマホ越しのダオスの返答はNOだった。

『残念だが奴らに私のレーザーは届かない』
「なんでだよ?」
『地球というのは丸い、丸いということは向こうが地平線の向こうに隠れている場合、直進するレーザーは地形に阻まれて絶対に届かないのだ。
奴らがいる横浜スタジアムは世界樹天辺から見えない辺り、こちらの攻撃は当たることはない
「マジかよ……じゃあなんで向こうの投球は届いたんだ!?」
『野球ボールは重力の影響を受けて放物線を描いて飛んでいる。
だからレーザーよりも地平線に隠れた相手を効率的に攻撃できるのだ』

これまで大量の敵を塵に変えてきたダオスレーザーだがレーザーの性質上用途に限界はあった。
他の攻撃手段に曲射特性はあってもピンポイントで当てるには精度不足か、射程外だ。

351進撃の聖帝 羽ばたけ黒い焔:2019/06/21(金) 11:36:23 ID:kXi85SgM0

「じゃあせめて、向こうから降りかかる攻撃だけここのダオスさんとまどかさんのレーザーで防ぎ続ければ」
『それもダメだ。我々を攻撃したのは感知できないところからして消える魔球。
私はおろかレストやセルでさえ察知不可能だったステルス攻撃を再び放たれたら対空防御は絶対に不能。
魔力のバリアは世界樹の外までは伸びんし、敵は拳王連合軍だけではなく狂信者とも戦わねばならん以上、とても現実的とは言えん』
「そんな……」
『せめて影薄組と過ごす内にステルスに耐性ができていたらしい小町がいてくれれば防衛も楽だったんだが、ビックサイトに向かった彼女を今更呼び戻すこともできんし、できても狂信者との戦争が長引いてしまう』

彼方が横浜スタジアムにいる限り同盟軍側から攻撃する手段がないことを知り、肩を降ろすビルダーズコンビ。
ちなみに拳王連合軍はそこまで考えて横浜スタジアムに布陣したわけではないが、結果的に直接攻め込む以外では打つ手なしの一等地に足を踏み入れたのだ。


「ふッ、だったら話は早い。
向こうが野球で殺し合いをしたのならば、望み通りに我ら聖帝軍が出向こう!
そして奴らにはこれまでの横暴の罰として最良の戦士の儀式のための薪になってもらうぞ」
『直接戦いに行くつもりか?』

ラオウら拳王連合軍と戦う覚悟を決めたサウザーに一同がどよめく。

「無茶です聖帝様! きっと罠に決まってます!」
「さやかよ、心配してくれる気持ちは有難いが、前進制圧以外に手はない。
それに我々聖帝軍は拳王連合軍と渡り合えんほど弱いと思うか?」
「そうは思いませんけど……」
「我ら聖帝軍は罠ごと制圧してくれるわ! そうだろ闇?」
「ええ、サウザーと同じく私もちょうど同じ考えでした」

罠と知っていても拳王連合軍を倒す満々である、サウザーと闇。
二人の頼もしい言葉には他の聖帝軍の士気も上がっていた。

「ダオス、聖帝軍が都庁から離れることで戦力は確かに2分されるが、それは我々が拳王連合軍を討ち取れば問題もある程度解決する。
神樹の奥の手もあれば、狂信者は物の数ではないはずだ」
『……よかろう、必ず拳王連合軍を倒してくれ』
「この聖帝に任せろ」


聖帝軍は拳王連合軍制圧のため、横浜スタジアムへの派遣が決定した。
その一方、キュゥべえ追跡の件もまとまろうとしていた。

『ではギムレーたちへの接触は我輩が行いますぞww向こうへのパイプを用意したのは我輩ですしなwww』
「私も行くわ」

キュゥべえを追跡し、イチリュウチームと接触する班に立候補したのはオオナズチとほむらである。

「大丈夫なの? ほむらちゃん?」
『えらく強いロリがいる話だし私かウォークライが飛んだ方が戦力的にも良くないか?』
『おまえやウォークライが飛んでると目立ちすぎるだろJKw
魔物は悪役扱いされているのに途中にいる参加者や狂信者から攻撃を受けるまずぞww
そいつらを倒したり無力化しながら進んだら時間がかかりすぎるだろwww
それに比べて我輩は他には無い透明化能力を持っているのでステルス性はピカイチだから結果的に一番早くつけるわけですなwwww』
『確かに』
『……まあ、頼みの綱のドラゴンネットワークが使えなくなり、戦闘力も低く都庁の防衛には向かない我輩は仕事がないニートになりかねないですしなww消去法的にこれしか仕事がないんですぞwwww』
「私の場合は……単純にキュゥべえの悪辣さを一番理解しているからかしらね。
奴についてしっかりと危険を伝えられるのはループを繰り返した私だけ。
透明化したオオナズチの背に乗れば、ステルス性の恩恵も受けられる」

ひとまずイチリュウチームに接触する班はオオナズチとほむらに定まりつつあった。
ここで聖帝軍側からも立候補者が出る。

「待ってくれ、苗木や霧切は騙されてるだけというケースもある。
あいつらの交渉には顔も知らない二人じゃ厳しいだろう。
顔見知りである俺も連れていってくれないか?」
「いや、紘太は戦力的に拳王連合軍との戦いに必要なっしー、聖帝軍から離れるべきじゃないなっしー。
だから……オイラが行くなっし」
「ふなっしー?」

紘太が最初に名乗り出たが、すぐ後にふなっしーも名乗り出た。

「あ、適当に言ったんじゃないなっしよ。
聖帝軍じゃ一番弱いのはオイラなっし、戦いになれば足でまといになりかねないし。
それでいて苗木たちとそれなりの繋がりがあるのはオイラだから、キュゥべえを追いかけるのが一番役割に合ってるかなと思ったなっし」

352進撃の聖帝 羽ばたけ黒い焔:2019/06/21(金) 11:36:52 ID:kXi85SgM0

ふなっしーは冷静に自分の戦闘能力を計算し、ドラゴンハートの補正ありでもダントツで低いと判断。
基本的に彼の戦闘は支給品任せであり、地の戦闘力は一般人のイオリ並。
それにイオリはガンダムに乗って戦うレイジのアシストとして必要な存在であるが故、ふなっしーは自身をチャオズのように激しい野球にはついてこれないと判断し、別の道を模索した結果、苗木・霧切交渉の道を選んだのだ。

「確かに理には適ってるけど……アンタ自身の本音はどうなの?」
「ホントはオイラもみんなと野球したかったなっし……でもカオスロワの野球は遊びじゃない……苗木たちも説得しなきゃいけない。
そうなるとオイラは身を引かなければと思ったなっし……」
「ふなっしー……」

チルノの言葉通り、紘太が離れるぐらいならばふなっしーが抜けた方が戦力的に安定する。
しかしふなっしーもまた、みんなと野球がしたかったのだ。
彼の拳は己の弱さに対して固く握られて震えており、この決断もまた辛かったのだ。

「……わかったふなっしー、苗木たちはおまえに任せる。
だけど俺たちは必ずここに返ってくる」
「最後の試合はおそらくイチリュウチーム。優勝を決める最後の試合には出てくれるね?」
「うん、ありがとうなっしー」

同じく関西を旅した紘太とチルノは、ふなっしーとの約束をした。
そしてふなっしーはオオナズチの背中に乗る前に二匹の意志持ち支給品を聖帝軍に預けた。

『世話になったなふなっしー、おかげで毒も怪我も完治した』
『拳王連合軍との試合に行けないおまえの変わり、俺と姉さんが聖帝軍を支えるぜ』
「千早、デストワイルダー、頼むなっしー」

フロワロの毒に侵されていた千早も都庁にて完治。
デストワイルダー共々、聖帝軍の戦列に加わった。


キュゥべえを追いかけるオオナズチの背には、ほむら、ふなっしー、シャルロッテが跨り。
未だ療養中のきらりと魔雲天を除いた聖帝軍の九人と二匹も電車ごっこロープの輪の中に入った。
それを見送るは都庁の者たち。

「頼むぜふなっしー!」
「ほむらちゃん、必ず生きて帰ってきてね」
「ええ、キュゥべえの目論見をこの手で打ち砕いてくるわ。
あなたに正しい保健体育の知識を授けるまで私は死なない」
「聖帝様、ご武運を!」
「応、期待して待っていろ!」
『ぐぬぬぬ、我が天使さやかは聖帝にご執心かよチキショーwww……』
「……ドンマイなっしー」


そして、戦士を決戦地へ運ぶ列車と、黒い翼は羽ばたいた。

オオナズチは飛んだ直後に透明化し、夜のとばりも手伝って敵味方から見えなくなる。
反対に聖帝軍は新宿を出た直後に狂信者や聖帝軍を敵対視する対主催から攻撃を受けるが、「試合前の軽いトレーニング」と思いつつ、スイスイと攻撃を躱していった。


『影薄組に続いて聖帝軍やオオナズチたちも旅立ったか……さあ、総員持ち場につけ。
旅立った戦士たちが帰ってこれる場所として必ずここを死守するのだ』

ダオスの指示を受け、都庁に残った者たちは各々が防衛戦の準備を始める。
カオスロワちゃんねるの動向を見る限り、狂信者は港区に集まっているらしい。
おそらく狂信者による三度目の襲撃が決行されるのだろう。
未来を切り開くためになんとしても戦い抜かねばならなかった。

353進撃の聖帝 羽ばたけ黒い焔:2019/06/21(金) 11:39:01 ID:kXi85SgM0




【二日目・20:30/東京都 新宿都庁世界樹】
※オオナズチがドラゴンネットワークで握った情報・紘太たちが得た情報が、影薄組以外に行き渡りました。


【都庁同盟軍】


【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】



【キュゥべえ追跡班】
※キュゥべえが向かったと思われる千葉県へ向かいました。

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】



【聖帝軍】
※拳王連合軍がいる神奈川県の横浜スタジアムに向かいました。
※戦力として千早とデストワイルダーがふなっしーから譲渡されました

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア!】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】

354永遠のクラウザー:2019/06/28(金) 13:38:01 ID:SvHJfywU0
指揮官級狂信者の一人、サイコマンは防衛隊長であるセルベリアの指示に従い。
ビックサイトに繋がる下水道を守っていた。
暗くジメジメして悪臭のする空間だが防衛を疎かにすれば、かつて狂信者とその協力者が都庁の世界樹を地下から攻めようとしたこともあり、逆に都庁やその他の勢力からビックサイトが奇襲を受ける危険がある。
そのため、セルベリアに指定された指揮官級狂信者やモブ狂信者もまた、クラウザーさんの蘇生術を守るために地下の警備に努めていた。
それだけでなく落とし穴に全自動のセントリーガンにレーザートラップなど、物騒な罠も待ち受けている。
一定以下の参加者ならば道を間違えただけで致命傷である。

さらにそれらをくぐり抜けても、ビックサイトに続く地下道には頑丈な門が設置されており、合言葉を言わないと突破ができない。
さらにその門には必ずサイコマンのような万人が用意されている。
門を無視して壁を破壊して進もうとすれば、騒ぎを聞きつけた地上から数千規模の兵隊がやってくる。
これは姿が見えず、潜入能力に特化した影薄組に対してセルベリアが考案した防衛策である。
いくら影薄組とはいえ、門番を説得でもしない限り、突破はできないとの判断だ、
合言葉までは信者でない限りわからないからである。




今もまた、サイコマンが配置された場所からそう遠くない場所で、迷い込んだか侵入しようとした参加者が犠牲になり、SATUGAI・レ○プされ肉の塊と成り果てた。
サイコマンもまた、電撃使いの少年をマグネットパワーや技で瀕死に追い込んだ後、頭を潰してSATUGAIした。


【ヴィータ@魔法少女リリカルなのはA's 死亡確認】
【ひろし@ドラベース 死亡確認】
【結城梨斗@To LOVEる 死亡確認】
※トラップまたはモブ狂信者に殺される

【天野銀次@GetBackers-奪還屋- 死亡確認】
※サイコマンによる頭部破壊


「ニャガニャガ、他の狂信者の方々も頑張っているようですねえ。
セルベリアの張った罠の数々も手伝って、首輪も外れていない参加者には遅れを取ってないご様子」

モブ狂信者側もこれまでの強化(実戦や薬物などの肉体改造)もあり、以前よりも楽に参加者を狩れるようになってきた。
それでもチート以上の参加者相手には十数名規模の戦死者が出るが、モブ狂信者ならば腐るほど数がいるため、すぐ補充される。
そして数のゴリ押しで潰されるのだ。


(……狂信者の熱心な辛抱ぶりには感服の至り。ですが……)


心の中で狂信者仲間を褒め讃えつつも、サイコマンの表情には影が浮かんでいる。
それはまるで諦めているかのような――

(この宇宙はもう滅日を迎える、源泉から降り注ぐ蒼の力によって)

355永遠のクラウザー:2019/06/28(金) 13:38:34 ID:SvHJfywU0



時間を遡ると個人的考え的には殺してはならなかったテルミの殺害など、考えもなしに手当たり次第に参加者を殺し回る狂信者上層部の方針に対して説教するためにビックサイトへ戻ったサイコマン。
彼が気にしているテルミが完全消滅、むしろ野放しにした方がまずかったと思うのだが、そこは重大な話じゃないので置いておこう。

説教しようとしたが「ろくに働いてねえ、てめえと話すことなんてねーよ(意訳)」と門前払いを喰らってしまい、上層部と直接会うことはできなかった。
途方に暮れていた彼だが、そこで彼は沖縄に発生した異常気象を知る。

その異常気象を知った瞬間、彼の中で超人の神々による封印されていた記憶が蘇ったのだ。

(ディーさんやドリスコルさんがクラウザーさんのものだと崇めているが、あれは古の時代にあった大災害の発端「蒼」によるもの!
蒼はこの世界全ての者に必要不可欠であると同時に、いかなるものにも滅びをもたらすエネルギー!
その危険度は友情パワーなどとは比較にならない!)

サイコマンは狂信者である以前にもっとも神に近い超人である完璧超人始祖。
遠い過去に起きた事変を今になって思い出したのだ。
世界を終わらせかねなかった大災害、神ですら止めらない最悪クラスの自然災害。

だが彼は、思い出した記憶を狂信者仲間に打ち明けることはなかった。

その理由は。


(だが、真実を打ち明けたところで頭の固い、そしてクラウザーさん第一主義な狂信者たちが認めるわけがない。
蒼がクラウザーさんさえ滅ぼす力があるなど、信じるわけがない。
さらに言えば私自身、どうやって太古の大災害を乗り切ったか思い出せないんですよねえ……)


サイコマンが思い出した記憶は完全ではなく、あまりにも中途半端だった。
大災害を乗り切る鍵がテラカオスなどとは全く思えない。
既に亡くなっている悪魔将軍がテラカオスをただただ危険な存在と見なし、カオスロワを根本から誤解していたように、サイコマンも同じように中途半端に記憶を回復させてしまったのだ。

(救済の予言とかネットで流行ってますけど、アレはどう考えてもただの悪戯ですからね。
それに踊らされる野球チームとかアホかバカとしか言えませんよ)

思い出せないせいで、救済の予言も今のサイコマンにはただの妄文にしか思えない。
まあ、こいつは草加とテルミぐらいしかろくに会ってないし、明確にテラカオス化してるとわかる参加者にも会ってなかった。
極めつけは拳王連合軍を除く対主催集団や主催、おまけにセルベリアでさえ予言の真実や進行状況をを仲間以外では秘匿しているため、サイコマン(および一般参加者)からは生き延びるために必死こいてるぐらいにしか見えないのだ。
そんな環境なら世界は滅ぶしかないと思うのも致し方ないだろう。

356永遠のクラウザー:2019/06/28(金) 13:39:06 ID:SvHJfywU0

しかし、世界が滅ぶならばクラウザーさんが蘇る意味もない。
ではなぜ、未だに狂信者に手を化しているのか?

(世界はどうせ滅ぶ、なら私がするべきことは、この世界が消える前に一曲でも多くクラウザーさんの音楽を聴くのです!
そのためにもっともっと、生贄を捧げなければ!!)

サイコマンは世界の存続よりも、クラウザーさんの声が彩る刹那的な享楽を選んだのだ。
世界の消滅や記憶の復活は間に合わず、自分一人で今さら世界を救えるわけもないと見切りをつけ、ただひたすらにクラウザーさんに尽くすことを決めたのだ。
平たく言えば諦めたのだが、彼の表情は先程までよりは確かに微笑んでいた。

(ニャガニャガ、世界の破滅が止められないとわかれば、もう何も怖くない。
私はただただ、クラウザーさんに尽くすだけ!
そのためなら仏に会えば仏をレイ○し、テルミに会えばテルミを○イプ!
シルバーマンが協力してくれないのならばシルバーマンもレ○プするだけ!)

サイコマンの胸中はクラウザーさんに埋め尽くされていた。他がどうでもいいと思うほどに。

「クラウザーさんの一番のファンはディーやドリスコル、私をこんな場所に押し込めたアバズレのセルベリアでもなくこの私。
見ていてくださいクラウザーさん! これから私はもっともっと生贄を捧げて行きますよ!」

最後の言葉は胸中ではなく、口に出し、クラウザーさんへの強い忠誠をサイコマンは口に出していた。
あと地味に臭くて汚い下水道警備をセルベリアに押し付けられた件は根に持っている様子。


「ニャガニャガニャガニャガ!!」

狂気を帯びた決意を胸に一人自信に満ちた大笑いを浮かべるサイコマン。



ところが彼の声は唐突に途切れた。
次の瞬間、どこかで見覚えのある剣――テルミことカズマ=クヴァルが所持していた剣が視界に入ったと思いきや、サイコマンの首を跳ね飛ばしたからだ。
呑気に笑っていた彼には反撃や防御する暇さえなかった。


【サイコマン@キン肉マン 死亡確認】


「ひええ……ちょっと首を斬れたら御の字程度だったのに、本当に恐ろしい切れ味だ。南無三」

サイコマンの首を跳ね飛ばしたのはストライダー御用達の光剣サイファー、それを握るの小町だ。
ラスボス級の敵さえ一撃死もありうるサイファーに、ドラゴンハート+ベジータを倒した時に得た莫大な経験値で超強化された小町。
片方だけならまだしも、両方合わさることでサイコマンの超人強度を上回る殺傷力での暗殺を可能にしたのだ。
その周囲には彼女の仲間である影薄組のメンツも控えている。


狂信者を挫くために都庁から考案されたビックサイト潜入作戦に乗った影薄組。
セルベリアは無論、彼らに対する対策を罠などで行っていた。
が、少しばかり計算違いがあった。
影薄組がハイテク技術の塊であるデモニカスーツを着用しており、敵の出現を察知する機能、罠のダメージを軽減する機能、自己回復機能、その他の便利機能により、地下を難なく突破してきたこと。
小町がデモニカのCOMPに入ることで間接的にステルス化の恩恵を受け、サイファーを手に入れたことで問題視されていた低火力がクリアされ、相手が悪くなければ指揮官級狂信者でも暗殺を可能にしたことである。

そして電撃使いを殺害した直後には、サイコマンはステルス状態である影薄組に方位されており、あかりが小町を召喚し背後から闇討ちしたのである。
ちなみにサイコマンがサイファーを凌ぎきっても周囲の四人から袋叩きにされていたため、影薄組の気配を察知してない限り生き残れたかは怪しい。

357永遠のクラウザー:2019/06/28(金) 13:39:48 ID:SvHJfywU0

「ステルスキル成功っすね」
「ええ、周囲の狂信者にも気づかれてない鮮やかな手並みでした」

逆に言えば暗殺に成功していないと影薄組とてサイコマンには苦戦していた可能性さえある。
そもそも正面戦闘になって騒ぎになり、侵入を気づかれた時点で潜入作戦は失敗。
警備を厳重にされてビックサイト侵入がより困難になる。
世界滅亡までの時間が残されていない影薄組にはそんな事態は許せなかった。

「間に合わなくてごめんね……」
「本当は黙祷の一つでも捧げてえが、俺たちには時間がねえ」
「世知辛いが、せめて極楽に行けるよう祈るしかないね」

到着が遅れたことでサイコマンに殺された参加者に悲しみの表情を浮かべるあかりたち。
だが感傷に浸る時間さえ影薄組には残されていない。
酷な話だが、参加者の死体は野ざらしにする他なかった。


「よし、門番は倒した。次は門だ」

小町はサイコマンの後ろにあった門に視線を移す。
調べると機械診断による合言葉が必要だったが、これはモモの活躍によってクリアされる。

『合言葉…“まずは”』
「――貴様の大好きな電動ベッドや電動コケシにおける電力消費量を考えろ エコを語るのはその後にしな」
『認証レ○プ もとい 認証確認、オトオリクダサイ』

セルベリア最大の誤算は、東横桃子がクラウザーさんの信者がいたこと。
狂信者のように狂ってはいないが、名言を一字一句間違えずに即答できる信者が敵の中にいるとは考えていなかった。
せめて門番が生きていれば阻止もできただろうが、その門番はあまりにもあっさりとやられてしまった。

「東横さん…よくそんな長ゼリフ覚えてましたね」
「“まずは”で始まるクラウザーさんの名言はこれしかないっすよ。
ちょっと黒子くん、なんで引いているんすか?」
「ところで電動コケシてなあに? あかり聞いたことないんだけど?」
「それはもうちょっと大人になってから知ろう、な? 日之影兄さんとの約束だぞ」
「…ま、何にせよ、モモが味方にいてくれたおかげでビックサイトに侵入できるわけだ、ヨカッタヨカッタ」

小町はすぐにCOMPに入り、一行は門の先へ進んだ。
ちなみにサイコマンの死体はディパックに詰め込んだ後、重りをつけて下水の底に沈めた。
死体が発見されるまで数時間はかかるだろう。

『さあ、野郎ども、ここからが正念場だよ!』
「どんな罠が待ち構えているかわからないから、最大限警戒して行きましょう」
「ホントは怖いっすけど、都庁のみんなやクラウザーさん自身のためにも」
「もう、主人公がどうとか関係ない、一女の子として世界を救う手伝いをしてみせる!」
「やれやれ、たった五人で一万人以上はいる敵本拠地に侵入か。
……だが、割となんとかなりそうな気がするぜ」

影薄組はとうとう、狂信者の総本山であるビックサイトに侵入した。
失敗すれば死が待っていると思われる潜入作戦。
だが五人は例え最後の一人になっても、大災害から世界を救うために戦い続けるだろう。

358永遠のクラウザー:2019/06/28(金) 13:40:02 ID:SvHJfywU0




【二日目・21時40分/東京・ビッグサイト地下】

【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    あかりのCOMPの中
【装備】サイファー@ストライダー飛竜
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
4:変なの(セルベリア)に因縁つけられちまったね
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)
※予言やテラカオスの真実を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:小町や仲間を全力で守る
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせる!
1:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
2:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
3:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
※予言やテラカオスの真実を知りました

359名無しなんじゃないのー☆:2019/06/28(金) 15:27:13 ID:eB5D5slg0
サイコマンwwwww
でも突き抜けた信者って意味では相当だったな
ところで違ったら悪いんだけど、モモの合言葉「電動ベッド」じゃなくて「回転ベッド」じゃなかったけ?

360名無しなんじゃないのー☆:2019/06/28(金) 15:45:09 ID:SvHJfywU0
うん、ごめん ミスってた
見直しが甘かったので該当のレスだけ直しておくで

361名無しなんじゃないのー☆:2019/06/28(金) 15:50:37 ID:SvHJfywU0
>>357修正

「ステルスキル成功っすね」
「ええ、周囲の狂信者にも気づかれてない鮮やかな手並みでした」

逆に言えば暗殺に成功していないと影薄組とてサイコマンには苦戦していた可能性さえある。
そもそも正面戦闘になって騒ぎになり、侵入を気づかれた時点で潜入作戦は失敗。
警備を厳重にされてビックサイト侵入がより困難になる。
世界滅亡までの時間が残されていない影薄組にはそんな事態は許せなかった。

「間に合わなくてごめんね……」
「本当は黙祷の一つでも捧げてえが、俺たちには時間がねえ」
「世知辛いが、せめて極楽に行けるよう祈るしかないね」

到着が遅れたことでサイコマンに殺された参加者に悲しみの表情を浮かべるあかりたち。
だが感傷に浸る時間さえ影薄組には残されていない。
酷な話だが、参加者の死体は野ざらしにする他なかった。


「よし、門番は倒した。次は門だ」

小町はサイコマンの後ろにあった門に視線を移す。
調べると機械診断による合言葉が必要だったが、これはモモの活躍によってクリアされる。

『合言葉…“まずは”』
「――貴様の大好きな回転ベッドや電動コケシにおける電力消費量を考えろ エコを語るのはその後にしな」
『認証レ○プ もとい 認証確認、オトオリクダサイ』

セルベリア最大の誤算は、東横桃子がクラウザーさんの信者がいたこと。
狂信者のように狂ってはいないが、名言を一字一句間違えずに即答できる信者が敵の中にいるとは考えていなかった。
せめて門番が生きていれば阻止もできただろうが、その門番はあまりにもあっさりとやられてしまった。

「東横さん…よくそんな長ゼリフ覚えてましたね」
「“まずは”で始まるクラウザーさんの名言はこれしかないっすよ。
ちょっと黒子くん、なんで引いているんすか?」
「ところで回転ベッドと電動コケシてなあに? あかり聞いたことないんだけど?」
「それはもうちょっと大人になってから知ろう、な? 日之影兄さんとの約束だぞ」
「…ま、何にせよ、モモが味方にいてくれたおかげでビックサイトに侵入できるわけだ、ヨカッタヨカッタ」

小町はすぐにCOMPに入り、一行は門の先へ進んだ。
ちなみにサイコマンの死体はディパックに詰め込んだ後、重りをつけて下水の底に沈めた。
死体が発見されるまで数時間はかかるだろう。

『さあ、野郎ども、ここからが正念場だよ!』
「どんな罠が待ち構えているかわからないから、最大限警戒して行きましょう」
「ホントは怖いっすけど、都庁のみんなやクラウザーさん自身のためにも」
「もう、主人公がどうとか関係ない、一女の子として世界を救う手伝いをしてみせる!」
「やれやれ、たった五人で一万人以上はいる敵本拠地に侵入か。
……だが、割となんとかなりそうな気がするぜ」

影薄組はとうとう、狂信者の総本山であるビックサイトに侵入した。
失敗すれば死が待っていると思われる潜入作戦。
だが五人は例え最後の一人になっても、大災害から世界を救うために戦い続けるだろう。

362南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:05:51 ID:o.mIVu0g0
――21:00 横浜スタジアム

「ラオウもう、時間だぞ」

それを口にした平等院だった。
横浜スタジアムには横浜港から既に移動を終えた拳王連合軍が到着していた。
彼らは聖帝軍と(一方的に)約束をした21時の刻限まで待ち続けたが、聖帝軍はまだ到着していない。

「いや、奴らはきっと来る…そんな気が俺にはする」
「しかし、ヘルヘイムと聖帝軍を分断しようとしている俺たちの思惑に気づかれているかもしれない」
「東京がどうなろうが、意地でもヘルヘイムから離れないってケースもあるんじゃねえの?」
「それもありうるか」

翔鶴の提案した作戦は名案かもしれんかったが、平等院とMEIKOが言った通り戦力分断の計画に気づかれてない可能性もゼロではない。
聖帝軍が横浜スタジアムにやってこないかもしれないのだ。

「仕方がないですね、約束通り東京を攻撃しましょう」

さらりと恐ろしいことを言ったヤンホモことムネリンを仲間たちは批判する。

『ちょっと待って! 東京攻撃はブラフだったハズでしょ?!』
「ブラフと気づかれた可能性もあります。
大丈夫大丈夫、無差別攻撃をするってわけじゃない。
攻撃するのはこの世界に害を成してるヘルヘイムに限定しますから」
「攻撃はヘルヘイムに限定…それなら誰も困らない」
「間違ってもサーフ提督がいるビッグサイトには攻撃しないでよね?」

ムネリンの投球による攻撃はヘルヘイム(都庁)のみ。
いくら難攻不落の都庁でも、投球で執拗に攻撃され続ければ根を上げて聖帝軍を繰り出してくるだろう。
さっそく投球の構えを取ったムネリンだが、その手に持っていた野球ボールを別の場所から飛んできた轟速球により弾かれた。

「なにっ!?」
「そこまでだ! 拳王連合軍!」
「あなたたちの好きにはさせません」

ムネリンや、他の者たちが轟速球が飛んできた方向を見ると、そこには毅然と立っているターバンたち…もとい聖帝軍の9人と2匹がそこにはいた。
無論、ムネリンによる都庁攻撃を阻止した者は、このターバンたちである。

「約束通り、この聖帝と自慢の軍団が来てやったぞラオウ!」
「フンッ、少しばかり遅刻してるぞサウザー」
「妨害があったものでな」
「逃げずに来たことだけは褒めてやろう」

聖帝軍は狂信者や、誤解によって対主催参加者からも命を狙われている。
電車ごっこロープで向かう最中でその者たちに攻撃を受けたが、ドラゴンハートで強化された聖帝軍の機動力はモブの攻撃にはかすりもせず横浜スタジアムに到着した。
遅刻にしてもせいぜい、一分かからないかぐらいだ。

363南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:06:32 ID:o.mIVu0g0

「あ、あいつは…!」
『あの二匹、生きていたのか!』
「おい、どうしたジョジョ?」

何やら聖帝軍にいる虎二匹に驚いている様子の上条とシャドーマン。

「ディオ、あの虎たちは大阪でシャロやエスパー伊東を殺した奴らの支給品だ!」
「なんだって! それは本当か!」
「」

上条は覚えている。
大阪で戦った怪しい男二人に付き添い、敗走した二匹の虎を。
その虎が聖帝軍側にいた。

「…そうか!
ラオウたちとホワイトベース組の話をした時、なぜかシャロたちを襲った件の話が出てこないからもしやと思ってたけど、そういうことだったのか!」
『おいどういうことだよジョジョ!? 俺たちにもわかるように説明してくれ!』


「つまり、大阪でのホワイトベース組の戦いに聖帝軍も関与してたってことさ!」
『そもそもの争いの発端は誤解…シャロたちが無惨に殺されたから、我々も怒りに駈られて反撃に出た。
だが実際は、ホワイトベース組とは別のグループがいて、シャロら仲間を暗殺した。
そして怒りに囚われた我々は和解のチャンスをみすみす逃してしまったというわけだ』
『つまり大阪の戦いは聖帝軍の差金によって起こったって言いたいのか?』

仲間たちは無惨なオブジェとして大阪の街中に飾られ、拳王連合軍の怒りを煽りホワイトベース組と抗争をするハメに。
上条は仲間殺害の下手人たちを殺したが、その下手人たちはホワイトベースとは最初から無関係だった。
誤解から殺し合うように仕組まれていた、と上条は分析する。

「ひどい…! それなら提督たちが死んでしまわれたのも……!」
『全部あいつらのせいってことか…!!』
「見間違えるハズがねえ。シャドーマンと一緒に戦った虎を奴らが持っているのが何よりの証拠だ」
「聖帝軍は皆殺し確定だな。チビがいようがなんだろうがもう容赦しねえ」

千早とデストワイルダー、および二匹を所持する聖帝軍に拳王連合軍は殺意の目を向ける。


「なにがなんだかわからんが、この俺が率いる聖帝軍に勝手ないちゃもんをつけおってからに!」
「千早とデストワイルダーがそんなことするわけないでしょ!!」
『妄言だ! 私たちはむしろ飼い主を殺された被害者よ』
『奴らの言葉に耳を貸すなよ』

一方的に殺意を向けられた聖帝軍もまた、拳王連合軍に向けて敵意をぶつける。
実際のところ、虎二匹及び新城たちは聖帝軍ではなく主催の差金であり、拳王側はそこまで頭が回らなかった。
聖帝側も虎二匹が主催の支給品だったことまでは気づかず、虎二匹も復讐がしたいために聖帝軍には正体を隠すのであった。


「なんにせよ、拳王連合軍と聖帝軍が揃ったみたいね。
邪魔が入る前に裏世界転送マシンを起動するわよ!」
『インドラ!』

瑞鶴は二つのチームが揃ったことを契機に、サーフから託された裏世界転送マシンを起動する。
すると横浜スタジアムを二チームごと眩い光が包んだ。
聖帝軍が目を開けると、そこには横浜スタジアムに似た空間だが、肌で感じる空気がまるで違う。
スタジアムの外は赤い血と真っ暗な闇を混ぜたような色の何かで覆われており、まるで地獄にでもいると錯覚させる。
まるで自分たちがいる横浜スタジアムだけが隔絶されたようだった。

「ここはどこだ、そこの侍娘!」
「狂信者やマーダーに大事な試合を邪魔されないための異次元転送を行ったわ。
そして私たち拳王連合軍か聖帝軍、勝った側しか元の世界には戻れない。
ちなみに制限時間もあって、三時間経ったらこの異世界は崩壊する。
敗者は取り残されて、異世界ごと消滅する仕様だから注意してね」

装置を起動した瑞鶴曰く、ここは勝った側しか元の世界に戻れないデスマッチ野球会場であるらしい。

「敗者は消え去り、勝者だけが生き残る。
まさに北斗と南斗の決着をつけるには打って付けの場所ではないか聖帝サウザー?」
「…そうだな、拳王ラオウ。
雌雄を決すぞ、南斗と北斗、そして俺の聖帝軍と貴様の拳王軍、どっちの野球チームが最良の戦士に相応しいかを決めるためにな!」

サウザーはいきなりの異世界転送に最初だけ驚きはあったものの、今は冷静であった。
仲間であるターバンたちと共に、いかに難敵である拳王連合軍を倒すかだけを考えていた。

364南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:07:24 ID:o.mIVu0g0



まずはスタメンと配置を発表しよう。



『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
平等院鳳凰        6番センター
謎のヒロインX      7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
翔鶴(+ロックマン)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)



『聖帝軍 布陣』

円亜久里         1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
千早           5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

(代打・代走)
イオリ・セイ
犬牟田宝火


「僕にもガンダムが残っていれば…」
「気に病む必要はない、僕も極制服がないから戦力は下の下だ。
だが、それでもやることはある!」

聖帝軍側は戦闘力が低いイオリと犬牟田は止むなくベンチ送りにし、運動能力は高い支給品の虎二匹をチームメンバーとして選出。
ベンチとはいえガンダムの修理やデータ収集などの仕事はあり、サポーターとしての力を発揮する。


一方、拳王連合軍。

『僕と翔鶴さんがベンチ送りなんて……』
「今はいないタクアンさん曰く、戦力の温存的な意味もあるそうです」
「私も野球なんてしたことないし、仕方ないけどしばらく応援ね翔鶴姉」
『インドラ』

光兄妹、瑞鶴とメーガナーダ、ハクメンもベンチである。
能力は高いのだが、練習試合でスタメン落ち級のポカをやらかしたロックマン、新参者の瑞鶴と仲魔、野球をやったことなどないハクメンにチームワークを行わせるのは難しいと判断されたらしい。
ちなみにハクメンは聖帝軍からマガトを感じてないが…

(ヘルヘイムというマガトを庇う者もマガトに同じ。
世界のためにも犠牲になってもらおう)

ベンチから出次第、戦う気満々であるようだ。





そして、拳王連合軍VS聖帝軍……異世界の横浜スタジアムにて運命の一戦が開幕。

365南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:08:45 ID:o.mIVu0g0


先行は拳王連合軍、後攻は聖帝軍!



第一回表。

マウンドに立つはブルースワローのスーツをまとった高津臣吾。
対するは拳王軍一番手である川崎宗則だ。
奇しくも、メジャーリーグ経験者とメジャーリーガーの対決だ。

「宗則…おまえも地に落ちたな、イチローが嘆くぞ」
「イチローさんは絶対僕に振り向いてくれる!
あなたのようなメジャーリーガーってだけでイチローさんの足元に及ばない人に負けるわけには行きません」
「ほざけ!」

高津はまず一球、轟速球を投げるが、ムネリンはこれを打つ。
ホームランコースだ!

「なに!?」
「ふッ、僕だってイチローさん以外の選手の研究ぐらいはする。
あなたの投球の癖は研究済みですよ!」

試合が始まる前にムネリンは聖帝軍の面子で唯一野球選手である高津を危険視し、テープを何度も再生するなどしてどんな球を投げてくるかを事前学習していた。
腐ってもメジャーリーガー、覚えてしまえばいくらでも叩きようがある。

「…おまえは知らないだろうが、俺はピッチャーであると同時に」
「!?」
「ブルースワローなんだぜ!」

しかし、頭上を高速で飛んでいくボールを飛行能力に優れたジェットマン・ブルースワローの力を使って高津はキャッチ。
ムネリンはアウトになり、ホームランは阻止された。

「ふう、いきなり冷や汗かいたぜ」

高津だけでなく、聖帝軍のメンバーも同じ感想を心の中で漏らした。

「ぐぬぬぬ、次こそは…!」

反対に出鼻をくじかれたムネリンは悔しそうに、ベンチに戻っていった。



二番手に現れたのはクロえもん。
得意のブラックホール打ちによるヒットを狙うが……

「ダメだ…早すぎて間に合わねえ!」

ブラックホール打ちとはバットを高速で渦上に回転させて真空を発生させ、ボールを吸い寄せて強引に打つ打法だ。
だが高津の容赦ない弾丸速球は真空を作り出すよりも早く、キャッチャーであるサウザーのミットの中に吸い込まれていく。
この回でのクロえもんの打席は空振り三振となった。

「畜生、これがプロの力だって言うのか…!」
「狸にしては素質があるようだが、残念だがこの試合で負けて死んでもらうぞ」
「俺もアンタが敵で残念だよ!」

攻撃が失敗に終わったとはいえ闘志と殺意を鈍らせることなく、次の打者であるラオウと交代した。



(噂に聞く拳王……凄まじいオーラだが、どんな実力か見せてもらうぜ)

打席に立つラオウは数メートル離れていてもわかるくらいのオーラを放っていった。
仮に聖帝軍が死線を潜らずにここにやってきてしまった場合は、ほぼ全員失神・失禁しているレベルである。


そしてこの回のラオウの攻撃は……


「ストライク!」「ストライク!!」「ストライクーバッターアウト!」


空振り三振で終わり、聖帝軍と攻守交代となった。


「拳王連合軍もたいしたことないですね」

拳王第一回の攻撃は高津一人で抑えこめたともいえ、初っ端のムネリンのヒット以外は危ない局面もなかったことに闇は安堵し、同時に肩透かしを喰らった気分になった。

「…いや、そうでもない」
「ああ」
「え? サウザー?」

だが闇や他のメンバーの余裕を打ち破ったのは他でもない高津とサウザーのバッテリーだった。

366南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:09:33 ID:o.mIVu0g0

「宗則の奴は言わずもがな、クロえもんという奴も素質だけはピカ一だ。
何より、ラオウ…虎視眈々と大打撃を狙っていて、少しでもヒットしたら危なかった。
俺の場合は技術でなんとか押し切ったようなもんだぞ」
「しかも奴め、一打席目はわざと犠牲にして高津の投球を体で覚えようとしていたきらいがある」
「そんなことが?」
「実際にバッターに一番接触するピッチャーとキャッチャーじゃないとわからないだろうからな。
気を抜くと絶対に追い抜かれる…気を引き締めなければ」

格闘家としては最強クラスである南斗聖拳の頂点サウザーと、メジャーリーグにいたこともある高津だからこそわかる、拳王軍の危険性だった。
余裕…というより油断しかけた闇もまた、気を引き締められるのだった。


「ちょっと、ちょっと、全然点が取れてないじゃないですが!」
「狼狽えるな謎のアルトリア・ヒロインドラゴン。奴の球は覚えた。次は必ず打つ」
「応よ! これまでの雑魚とは違うのは十分わかったぜ」
「イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん」

ラオウたちもまた、一回表だけの失敗で失敗が衰えることなく、次の打席にかけるのだった。




一回裏、聖帝軍の一番やりは円亜久里ことキュアエース。
変身の上にドラゴンハート補正で獲得したエンジェルフォームで打席に立つ。
最初から最大能力で闘うつもりのようだ。

「ラブにイリヤ……多くの人が犠牲になりました。
だがこの犠牲を無駄にはせず、悪と戦います!」

これまで散ったプリキュアや仲間たちに思いを馳せながら戦乙女プリキュアはバットを握り、ピッチャーである修羅・MEIKOを見据える!

「美しさは正義の証 ウインクひとつであなたのハートを射抜いて差し上げますわ!」
「御託がうるせえ、殺すぞ」

極めて野性的な殺意を露とも隠そうともせずにMEIKOはキュアエースを睨み、MEIKOボールを投げた。
MEIKOボールはキュアエースに向かって投げつけられるか…と聖帝軍は思ったが、そんなことはなく、しっかりとラオウのキャッチャーミット磨けて飛んでいき、ワンストライクが入る

(以外と野球としては正攻法!? だけど高津さんより早くない。同じ球なら次は打てる!)

初球は見逃したが、その代わりにキュアエースは球速を目で測り、次にかけることにする。
そして第二球…コースも球速もまったく同じ投球がきた!

「今だ! はああああああああああああああああ!!!」

キュアエースは一回の打席に全力を振り絞ってバットを振り、それは見事にボールにクリーンヒットした。
これには聖帝軍ベンチから歓声が飛びそうになる。

……だが。

「!? 重いッ! この球、重すぎる」
「きゅ、キュアエース!」

打ったMEIKOボールはあまりにも重く、プリキュア番外戦士の全力をもってしても打ち返すことはできなかった。
ボールがバットに当たって跳ね返るどころか、バットの方が大きく押されており、そして……


「きゃああああああああああああああああああああああああああ!!!」

メキメキゴキゴキバキバキ。
とても殺しきれない威力にバットを握っていたキュアエースの両腕が折れて、さらに体を支えていた腰も粉々に折れた。
そこからキュアエースの上半身が一回転・二回転し、胴体の骨と臓腑が全部潰しながら、血を吐いて地面に倒れた。
仲間が駆け寄るが既に手を遅れであり、キュアエースの端正だった顔は激痛で歪んで白目を向き、口からは夥しい血と潰れた心臓がはみ出していた……


【ターバンのガキ(円亜久里)@ドキドキプリキュア! 死亡】


ちなみに投げられたMEIKOボールはしっかりと投球コースを外れることなく、ラオウのミットに収まった。
ストライク。そして打者が死亡した場合は自動的にアウトである(からくりドーム戦参照)


「へッ、ハートを射抜かれたのはおまえの方だったな」
「よくも亜久里を、絶対に許さねえ!!」

今しがた殺した少女を徹底的に見下すMEIKO。
それに対し、次の打席を控えていた紘太は激昂してMEIKOに掴みかかろうとするが、犬牟田に止められる。

367南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:11:33 ID:o.mIVu0g0

「落ち着け紘太! ここで乱闘なんてやったら、反則で退場だぞ」
「しかしアイツは亜久里を……!」
「向こうは『ルールは破っていない』!
亜久里が彼女の球を打てなくて『たまたま死んでしまった』だけなんだ」
「クソッ! マジかよ」

犬牟田が言うとおり、MEIKOは反則になるようなことは何もしていない。
むしろピッチャーがバッターを直接攻撃して殺害しても許されるのがカオスロワ式野球。
責任は死んだ側の方にあるのだ。

「惜しかったな、おまえが掴みかかっていれば、ひとり反則退場で減らせたのに」
「アイツ…!!」
「口車に乗るなよ紘太」
「乱闘沙汰による退場は亜久里だって望んでません。
向こうは12も選手がいるのに、こちらは10人だけ。
減れば減るほど不利になります」

なおも煽り続けるMEIKOに怒る紘太を高津に続いてサウザーと闇も抑え、なんとか乱闘だけは避けた。

しかしながら、仲間である少女の惨死はこれまで野球の試合をしたことがない聖帝軍にカオスロワ式野球の恐ろしさを教え、戦慄させるには十分だった。

「うわッ!」

戦死したキュアエースの次に鉱太が続くがMEIKOボールの相手ではなかった。
鉱太は三球中一球だけヒットしたが、亜久里と同じく絶大なパワーの前にヒットとして打球を飛ばすこと叶わず。
幸い極アームズによる防御力のおかげでダメージを受けこそすれ、死ぬことなかった。

「すまねえ、闇……」
「大丈夫です休んでいて鉱太」

サウザーに肩を担がれる形でベンチに戻っていく紘太を見送り、ターバンをかけて金髪美女の暗殺者・金色の闇がバッターボックスに入った。
そして、MEIKOボールが襲いかかってくる。
このまま見送り三振をすればダメージを受けることも死ぬこともないだろう。

「だけど聖帝軍の信念は前進制圧。
媚びることも引くことも私はしません」

そして、金色の闇の腕にバットごしに重い衝撃が伝わる。
闇のからだのあちこちから鮮血が飛ぶ。

「闇!」

サウザーや仲間たちは思わず叫ぶが、闇自身はあくまで冷静に対処した。

闇はなぜラオウがキャッチャーであるのか考え、その答えをだした。
至極単純にMEIKOの暴力すぎて強すぎる投球にラオウ以外が耐えられないのだ。
そこで闇は自身の変身能力を使い、筋肉をラオウ並に変化させた。

「ム、ムキムキになった!?」

どこぞのビスケの如く顔以外マッチョになった闇のシュールな光景に面食らう聖帝軍・拳王軍。
だが、それが功を成したのか、凄まじい筋力から放たれる打力によりMEIKOボールは打たれ、そして凄まじい勢いで一塁方向に飛んでいった。

「こっちに来た! だけどこの程度なら」

一塁を担っていたヒロインXは飛んできた打球を取った。

「え? ぎゃああああああああああ!!!」

だが、次の瞬間、彼女の体はふわりと浮き上がり、そのまま近くのドームの壁までぶっ飛んでいった。
マッチョ化闇による打球の威力が強すぎたために、体重がたった42キロしかないヒロインを吹っ飛ばしたのだ。
土煙が収まったころには、横浜スタジアムの壁の一つにクレーターと、その中心に四肢がバラバラになり臓物を撒き散らした瀕死のアルトリアタイプのサーヴァントがいた。

「ヒロインX…クソッタレ、これはもう助からん」

ライト担当のディオが駆け寄るもとき既に遅し、ヒロインXの体は消滅間近であった。

「だけど……なんとかボールだけは取れましたよ……」

ヒロインXのひしゃげた腕にはちゃんと野球ボールが握られていた。
これで聖帝軍はスリーアウトでチェンジである。

「残念ですが私はここまでです……
も、もっともっとセイバーを借りたかった………ガクッ」

謎のアルトリア・ペンドラゴンは志半ばで倒れる後悔を胸に抱きながら消滅した。

【謎のヒロインX@Fate/Grand Order 死亡】


「てめえ……」
「なんですか、私も『ルールは破ってません』よ?
たまたま打ち返した球で偶然死んだだけです」

MEIKOは闇を睨みつけるが、闇は冷静かつ辛辣に返す。
カオスロワ式野球は責任は死んだ側の方にあるのだ。

「チッ、あれがMEIKOボールの全てだと思うなよ。
本気のMEIKOボールはあんなに遅くない。
今まではお試しコースだ。次から本気出すからな」
「望むところ」

本当だったら乱闘でもしたいほどの怒りがMEIKOにはあったが、ここで退場すべきではないと思い、ぐっと堪えてベンチへと帰る。
闇もまたマッチョ化を解いて、仲間のいるベンチへ戻った。

368南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:12:27 ID:o.mIVu0g0
最初に出迎えたのはサウザーであった。

「闇、大丈夫か?」
「大丈夫です、見た目ほど大したダメージは負っていません。
…亜久里の仇のためにも先制点をもぎ取りたかったところですが」
「いや、良い、おまえは十分に頑張った。
点こそ取れなかったが、奴らに仕返しができたことで我らの士気も回復した」
「スカっとしたぜ、さすがは俺たちの副リーダーだ!」

闇がMEIKOの投球を打ち、ヒロインXを討ち取ったことは亜久里の死で落ち込んでいた聖帝軍の士気を上げさせることに繋がった。
少なくとも拳王連合軍は絶対に倒せない敵ではないと思わせたことは大きい。

「試合はまだ始まったばかり、点こそまだないが向こうもそれは同じ!
この調子で戦い、死んでしまった亜久里のためにも必ず勝つぞ!!」

サウザーの鼓舞がベンチ内に響き渡り、聖帝軍の士気を上げた。





一方その頃、拳王軍ベンチ。

『アルトリアさん…』
「…変な人で善人と呼べるか正直微妙でしたが、死んで欲しくはありませんでした」

またひとり、戦いの中で仲間が死んでしまったことに悲しみや怒りの感情を募らせる選手たち。

「ロックマン、そして翔鶴よ」
『ラオジさん…』
「うぬらの気持ちはわかるが、まだ戦いは終わっていない。
真の戦いはこれからだ、謎のヒロインXの犠牲を無駄にしたくないのなら気を引き締めろ」

ラオウは怒りと悲しみをコントロールするよう仲間たちに促す。
冷静さを失えば勝てるものも勝てなくなるからだ。

「プニキ、次は貴様の番からだ」
「はいよ、ロビカスと百エーカーで鍛えた打法を見せてやるよ」

二回表の一番打者は拳王連合軍きっての強打者、プニキ。
彼がバッターボックスに入った瞬間、二回表が始まる。

両軍現在、無得点。戦死者一名ずつ。果たして先制点を掴むでしょうか?

369南北決戦の地! ヨコハマ!!:2019/07/03(水) 17:13:40 ID:o.mIVu0g0


【二日目・21時30分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと2時間30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)



【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
千早@皇国の守護者
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

370名無しなんじゃないのー☆:2019/07/03(水) 18:45:24 ID:o.mIVu0g0
>>368修正
セイバーを借りたかった→セイバーを狩りたかった

371 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/06(土) 15:10:53 ID:BV5shed.0
都庁同盟軍+DMC狂信者(襲撃部隊)で予約

372 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:15:40 ID:bSdwsiAM0
投下します

373ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:16:25 ID:bSdwsiAM0
新宿に大きく聳える都庁の世界樹。
ここを根城とする都庁同盟軍は侵攻してくるであろうDMC狂信者の大軍団に対して防衛の準備をしていた。
ビッグサイトに潜入させた影薄組、拳王連合軍の迎撃に向かった聖帝軍、キュゥべえを追跡するオオナズチたちは皆気がかりで

あったが、これまで以上に激しい攻撃をしてくるであろう狂信者に備える必要は十分にあった。

ここは未だ日本全国としては知られていない滅びの日、二度目の大災害を阻止するための対主催最後の砦として絶対に負けては

ならない。
戦果を上げて帰ってくるであろう、遠征に向かった戦士たちのためにも。



「……よし、書き上がった」

世界の謎と予言の真実が明かされた時からずっと、カヲルは都庁にある部屋の一つで数枚の楽譜と歌詞を書いていた。
遊んでいたわけではない。
救済の予言の一つである全てを虜にする歌――鎮魂歌をテラカオス内部に入るであろう死者に捧げるために絶対に必要な仕事で

あった。

「カヲルくん、歌ができたのね」
「小鳥さん」

ダオスの秘書である小鳥がカヲルの様子を見にきたようだ。
彼女はカヲルから楽譜を渡される。
そして小鳥を前にカヲルはバサラから受け継いだギターを手に、演奏を始める。





「直感に従って作ったものだけど、どうかな?」
「…………ええ、良いと思うわ。
 すごく死んだ人を悼む気持ちが伝わってくる」
「ありがとう」

小鳥は少年の思い想いを詰め込んだ鎮魂歌を聞き、じんわりと涙を滲ませる。
死者ではないのでどこまで予言に通じるかはわからないが、きっと死者を悼み、生者のために力を貸してくれるだろうと信じら

れる力が歌にはあった。

「それはよかった。なら歌詞は小鳥さんが預かって欲しい」
「え? どうして!」
「人手不足だから、僕もエヴァに乗って都庁を防衛するつもりです」

カヲルは戦いに出るつもりだった。
戦死したり渾身の一作が戦いの中で紛失することを恐れたために、小鳥に預けることにしたのだ。

「待って、あなたの役割は歌! 救済の予言を完遂できるなら立派な仕事よ。
神樹さんの秘密兵器もあるし、狂信者とは戦わなくていいじゃない!」
「いや、万が一ということもある。
セルやまどかちゃんがやられても世界は破滅を迎えてしまう。
エヴァ四号機に乗れるのは僕だけだし、そうなると巫女と器の命を守る可能性は上げた方がいい」
「でも……」

少年の決意に小鳥は惑いを隠せない。

「それに救済の予言の内容的には、大切なことは歌い手じゃなくて鎮魂歌の方。
ハートさえこもっていれば誰が歌っても差して問題じゃないさ。
これからの戦い、何が起こるかわからない……ひょっとしたらこの歌を歌うのは僕じゃなくて、あなたや声を取り戻したきらり

さん、もしくは他の誰かかもしれない。
その時に備えて、歌だけは遺していきたい……僕やバサラ、都庁同盟軍が生きて戦った証として」

カヲルは自分が今後の展開で死ぬ場合も計算に入れて、書き上がった遺品である小鳥に預けようと言うのだ。
小鳥は彼の気持ちを理解しつつ、大人としての答えを出す。

「わかったわ、この歌は預かっておく。
でも、あなたも必ず生き延びてこの歌を歌って欲しいの。
カヲルくんの代わりはこの世に誰もいない、死んでしまえばあなた自身の音楽を聞くことは二度となくなってしまう。
バサラでも使徒でもない、世界に唯一の歌が失われてしまうのは悲しい。
それに歌は一人で歌うより、みんなで歌う方が楽しい、だから必ず帰ってきて歌を取り返しにきなさいね」
「……ありがとう。
僕の代わりは誰もいない、歌は一人より皆か。
バサラの代わりを務めることに固執していた僕には嬉しい話だ」

小鳥の言葉を聞いてカヲルは微笑んでいた。

そんなやりとりをしていた、彼らに地面を揺らすほどの振動が襲う。

「きゃ!? 地震?」
「いや、これは!」

―SATUGAIせよ SATUGAIせよ―

カヲルがバッと外を見ると、港区方面より数万人はいるであろう狂信者の大部隊が世界樹がある新宿を目指していた。

「とうとう来たか」
「カヲルくん!」
「小鳥さんはダオスさんのところに戻って! 僕はエヴァで行く!」
「ええ!」

カヲルと小鳥は急いでそれぞれの配置である、世界樹の麓と天辺へと駆けていった。

374ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:17:02 ID:bSdwsiAM0
天辺では魔王ダオスが厳かに戦いの準備をしていた。

「よし、来たな……」
「ダオスさん!」
「小鳥は今すぐ、天ぷらを揚げろ。
それからギムレーの話もありカオスロワちゃんねるは信用ならないが……それでも新宿以外の大雑把な戦況を見るには必要だ。

ネットの動きに目を凝らしておけ」
「はい!」

都庁の魔物を主体とした同盟軍は、これまでの戦いにより疲弊しており、現在進行してくる狂信者と比べれば圧倒的に数で劣る


しかし、ドラゴンハートなどの各種恩恵により実際の人数の数十倍の戦力は持っており、特にチームワークは折り紙つきだ。
物量に任せた集団や、質に任せただけの作戦では打ち破ることはできず、何度も襲いかかってきた狂信者をレベル上げの経験値

に変えてきた。
故に、狂信者が相手なら数だけで竦む者は同盟軍に誰もいなかった。

「流石に本腰を入れてきたようだが、少しばかり遅かったな。
エリカ、神樹! 神々の黄昏の使用を許可する!」
「あれは一発しか撃てません」
『再確認だが本当に良いのか?』
「我々にはやることが山積みなのにここで消耗するわけには行かん。
拳王の外道どもは儀式の薪に使った方が良いだろうし、主催が九州ロボに乗ってきた場合は墜落の危険でどのみち使えん。
いかな狂信者とはいえ、あれだけの数を一瞬で失えば組織も傾き、大人しくせざる追えないだろう」

一度しか使えない禁断奥義『神々の黄昏』。
使用すれば相手集団は一瞬で死ぬ。
ダオスはここでの人命や力の消費は愚策と考え、ここでの使用を決断した。

『へッ、そうと決まれば!』
「まどかちゃん、術の効力を上げるためにセルと融合、続けて神樹と融合して!」
「はい!」

エリカは発射前に対ハザマ軍団戦で使用したフォレスト・セルと神樹の合体状態で臨む。
融合することで術の威力と効果範囲が大きくなり数万人の狂信者をすっぽり覆うことができるほどになった。

『よし、禁断の奥義行くぜ!』
「多少の撃ち漏らしが出るかもしれん。他の者も神樹だけに頼らず迎撃を用意」

合体神樹だけでなく、後ろに控えているエヴァ四号機、ドラゴン軍団、アルルーナにレスト、その他の戦えるモブFOEも攻撃の準

備をする。
これまで散々レベルを上げたため、これだけの数でも敵の殲滅は容易であろう。
さやかはいざという時の回復係として世界樹の中に残り、非戦闘員である魔雲天(人間)ときらりは地下の方で待機する。
世界樹にいる都庁同盟軍全ての者が固唾を飲んで推移を見守った。

『チャージ完了! いくぜ、神々の黄――』















「……? どうしたの神樹? なぜ撃たないの?!」

神樹はいつになっても、神々の黄昏を放たなかった。
エリカの疑問に対して神樹は呟く、ひどく怯えたような声で。

『あいつらなんてことを……』
「暗くてよく見えない! ウォークライ、明かりを!」

要領を得ない神樹の言葉に、レストは配下のウォークライに火球を放たせた。
ただしそれは狂信者に直接当てるのではなく、近くの瓦礫にあてて燃焼させて照明にするためである。
すると、向かってくる狂信者の正体を目にして、神樹が驚いていた理由を他の者も理解し、同時に戦慄した。

敵はMSとかヨロイなどのロボットがメインだ。
だがそこは対して問題ではない。頭数含めて予測可能な敵であった。
予想だにしてなかった手段を用いてきたからこそ、驚愕しているのだ。


――死にたくない!!――
――助けて!!――
――ガオォォォン!!――

『あのクソ野郎ども……人質を取ってやがる!
その人質をロボットの装甲に貼り付けてやがる!』

375ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:18:02 ID:bSdwsiAM0

狂信者が操るロボットの前面には数匹ずつ、生きた魔物が磔刑のように貼り付けられていた。
今まで都庁に合流できなかったグンマーの魔物たちが捕らえられ、磔にされていたのだ。

「なんてこと、これじゃ高火力広範囲の攻撃ができない!!」
「卑怯者めえ!」

アルルーナとレストが敵を非難するが、無理もない。
これではいくらレベルを上げたところで、敵を攻撃……特にダオスレーザーなどの広範囲攻撃ならば尚更するわけにはいかない

のだから。

「それだけおまえたちは、我々を本気にしたということだ」
「!?」

怒り戸惑うレストたちの前になにかが転移しようとしていた。
最初に中から現れたのはディパックとそこから溢れ出る大量の水だ。

「うわっぷッ! これは海水!?」

水の正体は、大量の海水。
しかし大量といっても溺れるほどではない。
深さ十数cm程度の水たまりが広範囲に出きるだけでこれ自体に直接の害はなかった。

問題なのは次に転移してきた存在だ。

レストら迎撃部隊の中央に現れしは次元連結システムを使って転移してきた最悪の冥王、黒塗装のグレートゼオライマー。

「敵!」

多くのモブ魔物が人質を伴って侵攻してくる敵に気を取られる中、レストら歴戦の戦士たちの反応は素早かった。
グレートゼオライマー相手に繰り出される世界樹ノ剣――全状態異常95%付与、体力吸収。攻撃力は女装鎧であるソウルアーマー

の力で40倍。レストのレベルの高さも相まって直撃すればガンダムまでなら確実に消し飛ぶ。
追撃にアルルーナはアシュラマンさえ一撃で葬った冷気の一撃、フロストスマイルを放つ。
幸い、転移に耐えられない都合かゼオライマーの装甲に人質は磔られていない。
倒すのは問題なかったハズだが。

「当たらねばどうということはない! フットワーク、そして分身!」
「なんですって!」
「重そうな見た目の割になんて敏捷性!」

格闘攻撃を確実に躱すスキル・フットワーク、そして必中攻撃以外は確実に躱す分身。
ゼオライマーに乗るドリスコルはこれらを使って、攻撃を凌ぐ。

「ダオスさん! 援護を!」
「ダメだ! 味方が近すぎる!」
「これじゃ撃てないよ!」

ダオスやまどかも追撃に加わろうとしたが、敵と味方の距離が近すぎたためにレーザーや他の攻撃も発射できない。
それはエヴァ四号機に乗るカヲルや氷竜・ウォークライとて同じだ。
相手が泡を食っている攻撃のチャンスを得たドリスコルは反撃を行う。

「Jカイザー、バラージュ!!」
「「うわあああああああああああああああ!!」」

八罫ロボの一体、月のローズセラヴィーの技であるレーザー攻撃を回転しながら放つゼオライマー。
周辺にいたレストやアルルーナは高い回避力と防御力のおかげで大した打撃を受けなかったが、二人未満実力であるモブ魔物は

そうとは行かず、数十匹の魔物が一気に蒸発し、同時に爆炎を引き起こした。

「今だ! 奴を斬れ、天龍!」
「応!」

一瞬だけ開いたゼオライマーのハッチから眼帯の艦むす、天龍が現れる。
水浸しになった地面に降り立った天龍は、ウォータースケートの要領で水上を猛ダッシュする。
その機動力は圧巻であり、レスト含めた前衛の誰も追うことはできず、捕まえようとするものを嘲笑うかのように障害になって

いたモブ魔物を天龍は腕の刀でバッサバッサと、滑らかに辻斬りしていく。

376ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:18:41 ID:bSdwsiAM0

「へへん、艦むすは水上だと機動力が地上の数倍から数百倍まで跳ね上がるんだぜ!
世界最高水準な俺をウスノロなおまえたちが捕まえられるわけがねえよ!」
「艦むすだって……!?」

レストには確かに聞こえた。
古代ミヤザキが使用した人口巫女――艦むすの言葉。
彼女の言葉に嘘がなければ、その艦むすが目の前にいるのだ。

「見つけたぜ、俺の標的は――ロリコン臭がするおまえだ!」
『くッ、ミラーシールド!』

天龍が狙いを定めたのは前衛に盾要員として出ていた氷竜もとい氷嵐の支配者。
氷竜は急いで万能属性攻撃さえ無力化するカウンタースキル・ミラーシールドを発動する。

\  さいごのガラスをぶち破れ〜    /
 *      \ 見慣れた景色をけりだして〜 /*
  *  ( \/ /_∧   <./|   /| +     /\___
   + ..ヽ/ /Д`/⌒ヽ  / .| / /     /    //
。     / /\/ ,ヘ  i   ̄ > \_/ * /____//
      し' \_/    i  />      ̄ ̄ ̄ ̄
   +     i⌒ヽ  ./   ̄>__  + 。    ..|| |::
     /⌒ヽ i  i  \(    .|/  / /\  + .|| |::
 *  ..i    | /ヽ   ヽ  *∠__/   ̄ +  *..|| |::
     ヽ ヽ| |、 \_ノ  >   <>  *    || |::
  。    \|  )  ̄  ./V   *     。   .|| |::
____  .ノ ./⌒)∧ /  ..+_________||___
  。  / し'.ヽ ( .∨    /\________|__|
    //    し'  / /\ + ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
※天龍です


『馬鹿な!?』

氷でできたミラーシールドはガラス細工のように簡単に破られた。
マーラ戦の時のように奇襲で首がもげてミラーシールドが貼れなくなったり、きらり戦の時のようにステータスを強制的に一桁

にされたわけでもなく、完璧なミラーシールドは「最初から発動していない」かのように容易く破壊された。
直後に天龍の砲撃が氷竜の三つある首の内、左右一本ずる粉砕、胸部にも一撃をもらい、残った一本の頭の口から吐血し、地上

に倒れた。

『氷竜! 今いくぞ!!』

比較的動けたウォークライとドラゴンの部隊が空から氷竜を助けようとする。
ブレス攻撃などは味方を巻き添えにして危険だが、単体攻撃である爪や牙ならば。
そう考えて天龍に襲いかかろうとするが、ここで狂信者たちの迎撃に合う。

「やらせはせんよ」
「目標をセンターに入れてスイッチ!」
「(味方の邪魔をするのは)やめてくださいよ本当に!」
「ビーム喰らって死のう、な?」
『邪魔をするなーーーッ!!』

数多のモブ狂信者の乗るロボット兵器、初号機F型装備、フェネクスにユニコーン、そしてゼオライマー自体の攻撃により、氷竜

を助けようとしたドラゴンの多くが撃ち落とされた。
ウォークライは妨害してきた狂信者たちに怒号を上げるが、それで狂信者が止まるわけではなく、弾幕射撃により他の同盟軍の

味方の誰もが、自陣営にいながら氷竜を助けに行くことができなかった。

氷竜自身も周囲の味方を巻き添えにしない貫く氷槍や三連牙で抵抗するが、天龍はこれを刀でカッキンカッキンと弾き、砲撃と

斬撃で急速に流血させていき、みるみる内に満身創痍にさせた。

『お、俺を一瞬でロリコンと見抜いた嗅覚!
そして相対しただけで魔法や罠を無力化する能力……貴様もしやオシリスの……』

氷竜は目の前の少女の性癖や能力から正体をなんとなく察し、まさかと思い問いかける。
しかし天龍は冷酷な瞳を向けつつ、障壁を貼れなくなった氷竜の残った最後の首を斬り落とした。

「……そいつはもう死んだよ、今の俺は軽巡洋艦の天龍だ」


【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】


「氷竜さん! そんなぁー!!!」

同盟軍の心の声を代弁するかのようにまどかは悲痛な叫びを上げる。
氷竜の死はそれだけ呆気なく、無惨であった。

377ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:19:20 ID:bSdwsiAM0

『よくも同胞を……!』

漸く敵の弾幕をくぐり抜けたウォークライが飛来し、天龍に爪の一撃を食らわせんとする。
しかし、それより早くゼオライマーが天龍を庇うように彼女の目の前に転移し、先制が逆転するスキルによって、先に仕掛けた

ハズのウォークライより先に攻撃する。

「ファースト」
『がッ!』
「まだだ!」

ウォークライはゼオライマーの拳で弾き飛ばされるが、入れ替わりでレストが渾身の力で切りかからんとする。
だが、ゼオライマー『戦闘から一方的に逃げる』スキルを。

「エスケイプ」
「!?」
「じゃあの」

復讐の刃を放とうとしたレストを嘲笑うかのように、ゼオライマーと天龍は次元連結システムによって転移し、次の瞬間に狂信

者の陣営に舞い戻っていた。
ドリスコルが使用したスキルは敵の攻撃そのものをキャンセルし、一撃離脱を可能にする『エスケイプ』。
味方が使うとヌルゲー化し、敵が使うとウザったいことこの上ない戦闘スキルである。
今の戦闘でそれを察したレストは舌打ちする。

「チッ、この嫌らしさは、単に欠点を突いてきた魔神皇の比じゃない」



狂信者陣営側に戻ったドリスコルと天龍。

「トラ、トラ、トラ。大成功だぜ」
「ああ、奇襲は成功だ。厄介になるかもしれぬ氷竜の殺害にも成功した」

天龍が氷竜を最初に狙ったのは、彼の持つスキルであるミラーシールドを危険視したからである。
ミラーシールドはどんな攻撃も跳ね返す盾であり、最悪ゼオライマーの最大火力である烈メイオウ攻撃さえ自分たちに戻ってく

る危険が有る。
単に跳ね返すだけならレストやフォレスト・セルにもできるようだが、レストは自分しか防御できず、セルは物理攻撃と術(エ

ネルギー)のどちらかしか選択できないのは先の敗北からデータを収集済みだ。
そしてオシリス譲りの能力により、戦闘になれば相手の魔法・罠・特殊効果を殺せる天龍によって氷竜のミラーシールドは発動

することなく、抹殺を可能にした。

それでも高い火力は都庁には残っているのだが、そのための人質装甲である。

「人質の存在が、都庁同盟軍の攻撃を渋らせている。
ギリギリまでクラウザーさんへの生贄に捧げなくて正解だった。
奴らを殺すには物量や質、策だけでは足りなかったのだ……一番必要だったのは心を抉るような卑劣さだ」
「狂信者で評判最悪の俺たちからしてみれば失うもんなんて何もないしなー」
「そうだな、さて、モブ狂信者どもの士気が高い内にゆるりと進軍させるか」

指揮官であるドリスコルの指示に従い、人質を盾にしながらロボット部隊が進軍を始める。
一方の都庁側は満足に攻撃できず防戦一方になるしかなかった。

378ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:20:05 ID:bSdwsiAM0


「ダオスさん……どうしましょう」
「クッ……今までで一番辛い戦いになるだろうが……」

同盟軍の長であるダオスは苦渋の決断を迫られた。
大火力による攻撃は人質を殺してしまう、人質を無視すれば少なくともモブ狂信者のロボット軍団だけは一掃できる。
しかし、それをやってしまえば戦争で滅び、現代の苦境を招いた古代グンマー・古代ミヤザキと何も変わらなくなってしまう。

「小鳥、全員に伝達しろ。
人質は何匹いるかわからんが、流石に全部の機体に載せているわけではないだろう。
それぞれで役割を分担する。
レスト、ウォークライ、アルルーナ、カヲルは主軸になっている狂信者を優先的に狙え!
その他の魔物は人質救助を優先し、範囲攻撃は使わずに肉弾戦で中のパイロットだけ殺せ。
私とまどか、セルと神樹は世界樹の防御に徹し、人質の救助が済んだら、一気に狂信者を殲滅する。
……それまで地上の部隊には一切の支援ができんとな」
「厳しい戦いになりますね」
「今は耐えてもらうしかない」

小鳥はスマホや伝令係の魔物を通して味方に指示を伝達。
ダオス、まどか及びセルと神樹は高出力のレーザーを敵ではなく敵の攻撃に対して向けることで、世界樹への被害を無くす。

「奴らめ、撃ち落とした時の被害を考えてわざと低く飛んでいるな……煩わしい奴らめ。」

ゼオライマー、ホモのガンダム二機はあえて低空を飛んでいた。
撃墜すればすぐ下にいる人質が巻き添えになるからだ。
そして、自分を含めて命の価値が低い狂信者は無遠慮に攻撃をしかけてくる。
地上でロボット軍団と白兵戦を繰り広げる魔物たちは苦戦を強いられていた。

「ファースト!」
「デュエル!」
「オールヒット!」
「ブラストショット!」
「フィックスDMGIII」
「マイナスショットIII!」
「エスケイプ!」
「ウィークポイント!」

『ぎゃあああああああああ!』
『こいつら、鬱陶しい!!』

モブだけを見た場合地の能力では魔物側が何枚か上手ではあったが、狂信者側は人質を取ってる上に、ドリスコルから渡された

のであろう所持スキルの数々が、魔物たちの攻撃力を削ぐ。
攻撃の先制権はスピードに関係なく奪われ、連携が取れない一体一の戦いに強制的に持ち込まれ、回避力に関係なく全弾命中。
転倒させられて何もできず、200近いダメージがなぜか半分以下の80固定にさせられたり、ちょっとかすっただけで攻撃力を激減


攻撃しては逃げられ、挙句まだある程度HPに余裕があるのに部位破壊させられる……そしてレーザーによる支援砲火ができなく

なったので倒しても倒しても中々減らない。
戦闘やドラゴンハートで強化されたハズのモブ魔物が何匹も犠牲になった。

ドリスコルの引き連れた軍団はこれまで以上に能力やスキルだけで勝つのは難しい相手であった。
だが、魔物たちもただ黙ってやられるつもりはなく、苦戦しながらもロボットを範囲攻撃を使わずに戦闘不能に追い込み、パイ

ロットを殺した後に人質を救助。
少しずつであるが、人質の魔物を世界樹の中へ保護することができた。


そんななか、ひとつの因縁の決着が今、始まろうとしていた。

「エヴァ初号機……それに乗ってるのはシンジくんなのか?」
「カヲルくん、君がそっち側にいるのが僕には理解できないよ」

白と紫のエヴァを通して銃を向け合う二人の少年たち。
本来なら親友になれた者同士が、敵同士としてとうとう戦場で出会ってしまったのである。

「カヲル、ひょっとしてあれに乗っている彼は君の親友の……」
「ああ。シンジくんの相手は僕に任せてくれないか?
彼の戦い方を知ってるのは僕だけだから……」
『すまん、ここは任せたぞ』

エヴァンゲリオンの相手は同じエヴァンゲリオンに任せ、レストたちはドリスコルや天龍を討つべく、追いかける。
氷竜を殺した艦むす、そしてこの攻撃部隊の総司令官と思われる男を倒せば、活路を見いだせるからである。


(ふッ……お膳立ては済ませたぞ、ゼロ、あとはおまえ次第だ)
「みんな……ダメ……この戦いは」
「うるさいメス豚は耳レ○プ」
「いやあああああああああああああ!!!」

ゼオライマーの中で再び意識が戻った次元連結システムもといカレンが何かを言いかけたが、ドリスコルが彼女の苦手なDMCの曲

を音量いっぱいで流したため、誰にも聞こえず阻止された。

379ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:20:52 ID:bSdwsiAM0



世界樹内部1F、そこにはさやかや彼女に従う魔物が負傷した魔物や人質の治療を行っていた。

『すまない、本当に助かった……』
「私にはこれしかできないからね、ただひたすら治すだけよ」

さやかはもはや、自分がまどかやほむらのように戦闘に向いていないことを認め、逆に戦闘で前線から離れられないまどからに変わって後方で回復魔法を振るっていた。
必死に治療し、激しい戦場にも関わらず魔物を安心させるために笑顔で励ますさやかの姿はまさにナイチンゲールのようだった。

(うッ……もうソウルジェムが真っ黒!)

しかし、怪我人が矢継ぎ早にくる環境では穢れが貯まるのも早い。
すぐに黒ずんだジェムが、外の戦いは地獄めいていると語っている。

『一番回復能力があるとはいえ無理するな』
『補給のためにフォレスト・セルに穢れを吸ってもらえ』
「ごめん。
こんな時に魔女になるわけには行かないしちょっとだけ離れる」

さやかは穢れを取るために一時的に現場を離れた。

「早く戻らないと……」

世界樹の入口、戦場から運ばれてくる魔物の数は増える一方。
それがさやかに焦りをもたらした。


そこで肩を支えあう、互いに傷ついた二匹の魔物と目があった。
オスと思われる魔物が、弱々しい声でさやかに語りかける。

『そ、そこの人間……俺の話を聞いてくれ』
「待って、今は他の仲間の治療が……」
『敵の、狂信者の作戦に関わる重大なことなんだ……』
「なんですって!?」

人質など汚い手を使ってきたドリスコルの部隊に、まだ奥の手があるのか。
それが本当なら早くダオスや皆に伝えないといけない。

『俺はもうもたん……おまえに情報を渡したい……もっと近くに……耳を貸してくれ』
「待って、治癒魔法を……ダメだ、ソウルジェムが持たない、クッ」

今にも死にそうな魔物だが、現在のさやかには回復できる魔力がない。
悔しい思いをしながらもせめて、死に物狂いで集めてきた情報だけは無駄にしないために魔物に耳を傾けた。



『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様は俺の命令に従え』


「イエス、ユアハイネス」


さやかが魔物「だと思っていた何か」はさやかが近づいてきた瞬間、両腕で頭を掴んで強引に目を合わせさせた。
そして見てしまったのだ、目の中の紋章――絶対遵守のギアスを。
さやかはこの瞬間から、このギアスの持ち主の兵士となってしまった。

『うまく侵入できたな』
『ええ、鮮やかでした。さすがお兄様!』

さやかが魔物だと思っていた二匹の正体はカギ爪団の現在の首魁であるルルーシュと義理の妹である深雪である。

(仕事をしないと評価が低かったサイコマンだが、彼の残した技術――オーバーボデイの方は大いに役に立ったよ)

サイコマンが狂信者にもたらした技術、オーバーボデイ。
二人は着ぐるみのようにオーバーボディで魔物に偽装をしていた。
偽装は完璧で少なくとも視覚や嗅覚ではそこらのモブ魔物と判別不能。
ちなみに負っていた怪我はそれっぽく見せた血糊である。

380ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:21:23 ID:bSdwsiAM0



実はこれまでの作戦は全部ルルーシュことゼロの発案である。
これまでの都庁と狂信者の戦闘経緯から、都庁同盟軍は仲間である魔物に対して「仲間意識」が強すぎること……言ってしまえば「非情さ」が欠如していることを見越していた。
おそらく戦況をひっくり返す核兵器的な奥の手もあると推測していたが、人質を取られればそれも使用不可。
そして人質を救助しようとして、偽装したルルーシュと深雪を内部に招き入れてしまうのである。

(ふふッ、奴らは気づいてませんね、助けた人質の半分はオーバーボデイを纏ったカギ爪団の構成員と深海棲艦)
(しかも残り半分は、実際に都庁に合流できずにはぐれた魔物。
気づいたら気づいたで都庁内部は疑心暗鬼でパニックになる)

同盟軍が必死になって助けている人質の半分はスパイ。
今はルルーシュの合図を待って大人しく待機しているようだが、内部で暴れでもしたらどうなるだろうか。

(狂信者はかつてデスマンティスを使ってスパイ作戦を行ったが、肝心のスパイが私情に走り、後詰めの部隊は作戦もヘチマもない連中だったために失敗に終わった。
だが、今度は違う。
俺はただスパイを内部に入れるだけでなく、内部にスパイを作り出せる絶対遵守のギアスを持っている。
味方に甘い奴らが、この少女のようにただ操られただけの少女を撃てるかな?)

ルルーシュは心の中でほくそ笑む。

『おっと、作戦はまだ始まったばかりだ。
深雪は手はず通り、そのマスターボールでフォレスト・セルを捕獲しろ』
『はい、お兄様!』

作戦のプランの内には深雪が持つ、マスターボールによるセル捕獲がある。
このマスターボールはサーフによる魔改造を受けているため、持ち主がいても確実に捕まえることができる逸品。
スキルやステータスの高さはまったく関係なく何であれ捕獲可能。
何より都庁で最強の能力を誇るフォレスト・セルを捕まえてしまえば、トレーナーのレベルの都合でセル自体を操ることはできなくても都庁の戦力はガタ落ちし、世界樹陥落を容易にするという寸法である。
魔物に扮した深雪は背後からこっそりと忍び寄り、不意打ちで捕まえようというのだ。

『俺はこの娘に都庁の内部を案内させてもらう』
『危険ではないですか?』
『ギアスで洗脳できそうな奴を狙って兵隊を増やしていく、俺のことなら心配しなくて良い』
『敵地の中でなんと勇敢な……さすがお兄様!』

いつもの「さすおに」のやりとりの後、ルルーシュと深雪は一時の別れをした。
人質に偽装した狂信者仲間の手で巧妙に隠されたせいか周囲の魔物たちは、スパイが紛れ込んだことに気づいていない。

『さあ、俺を案内しろ、さやか』
「はい」



『……都庁には悪いが、テラカオスに纏わる必要な情報や資材を奪い、今後の役に立ちそうな人材以外は全滅してもらう。
ナナリーの蘇生のためにはどうしても犠牲がいる。
大災害を防げようとも、そのあとの世界にナナリーがいてくれないと俺はダメなんだ……!』

妹への愛に狂った男、ルルーシュの瞳にもまた、ギアスの他に松本と似たような狂気を孕んでいた。

381ヘルコロシアム ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:21:55 ID:bSdwsiAM0



【二日目 22時00分/東京都 新宿都庁世界樹】


【都庁同盟軍】
※全てを虜にする歌→鎮魂歌がカヲルの手によって作成されました
 楽譜は小鳥が預かっています


【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
※ルルーシュのギアスによって操られました。



【DMC狂信者 都庁侵攻部隊】
※モブ狂信者は人質を盾に侵攻しています。
 その人質の半分はオーバーボデイで偽装したカギ爪団構成員&深海棲艦です。

【ドリスコル@フロントミッション】
【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】
【道下正樹@くそみそテクニック】
【遠野@真夏の夜の淫夢】
【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】

【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
※オーバーボデイで魔物に偽装中。
※四条化した魔理沙の死体を道下から譲渡されました。

【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
※オーバーボデイで魔物に偽装中。
※魔改造マスターボールをドリスコルから譲渡されました。
 フォレスト・セルを捕まえる予定。

382 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/08(月) 12:22:13 ID:bSdwsiAM0
投下終了です

383 ◆hphChNhqkE:2019/07/08(月) 21:25:22 ID:gQE7x2c.0
ぬああ、まさか書いてる途中にパート被ってたとは……
とはいえやってみたいネタもあったし、都庁+侵攻狂信者で予約します
同パート連続が不味かったら取り下げます

しかし鍵にしていた氷竜がやられたのは痛い

384名無しなんじゃないのー☆:2019/07/09(火) 20:06:35 ID:RphnMIXs0
同パート連続は大丈夫だと思いまっせ
続きが早く読みたいです

385名無しなんじゃないのー☆:2019/07/10(水) 18:42:35 ID:JL6BoiV20
すっごい今更なツッコミなんだが、オシリスの魔法罠無効は「オシリスに対する弱体等」のみの無効化だったような……
あとセルのセルメンブレンも「発動ターンの自軍に対するあらゆる攻撃を無属性に変換し増幅反射」
だから物理も魔法も特殊攻撃も全部反応する。カウンターがばらけてるのは3の禍神さんと旧セル(ここのセルは鳴き声から新セル)
次の人がもう書き始めてるからほんと今更だが、まあサーフの改造で強化された感じでなんとかなるかな

386 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/11(木) 20:49:20 ID:rO/JzHOQ0
把握ガバすいません、明日無難な範囲で修正したSSを投下してみます
(話の大筋・死亡者は変化しません)

387 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:15:22 ID:qctHHCRw0
修正版投下します
カヲルくんが歌を創る下りは全く同じなので、そこまではカットして投下します

388ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:16:03 ID:qctHHCRw0
天辺では魔王ダオスが厳かに戦いの準備をしていた。

「よし、来たな……」
「ダオスさん!」
「小鳥は今すぐ、天ぷらを揚げろ。
それからギムレーの話もありカオスロワちゃんねるは信用ならないが……それでも新宿以外の大雑把な戦況を見るには必要だ。
ネットの動きに目を凝らしておけ」
「はい!」

都庁の魔物を主体とした同盟軍は、これまでの戦いにより疲弊しており、現在進行してくる狂信者と比べれば圧倒的に数で劣る。
しかし、ドラゴンハートなどの各種恩恵により実際の人数の数十倍の戦力は持っており、特にチームワークは折り紙つきだ。
物量に任せた集団や、質に任せただけの作戦では打ち破ることはできず、何度も襲いかかってきた狂信者をレベル上げの経験値に変えてきた。
そもそも、フォレスト・セルのセルメンブレンで自軍はあらゆる攻撃を受け付けずに跳ね返す。
故に、狂信者が相手なら数だけで竦む者は同盟軍に誰もいなかった。

「流石に本腰を入れてきたようだが、少しばかり遅かったな。
エリカ、神樹! 神々の黄昏の使用を許可する!」
「あれは一発しか撃てません」
『再確認だが本当に良いのか?』
「我々にはやることが山積みなのにここで消耗するわけには行かん。
拳王の外道どもは儀式の薪に使った方が良いだろうし、主催が九州ロボに乗ってきた場合は墜落の危険でどのみち使えん。
いかな狂信者とはいえ、あれだけの数を一瞬で失えば組織も傾き、大人しくせざる追えないだろう」

一度しか使えない禁断奥義『神々の黄昏』。
使用すれば相手集団は一瞬で壊滅させられる。
ダオスはここでの人命や力の消費は愚策と考え、ここでの使用を決断した。

『へッ、そうと決まれば!』
「まどかちゃん、術の効力を上げるためにセルと融合、続けて神樹と融合して!」
「はい!」

エリカは発射前に対ハザマ軍団戦で使用したフォレスト・セルと神樹の合体状態で臨む。
融合することで術の威力と効果範囲が大きくなり数万人の狂信者をすっぽり覆うことができるほどになった。

『よし、禁断の奥義行くぜ!』
「多少の撃ち漏らしが出るかもしれん。他の者も神樹だけに頼らず迎撃を用意」

合体神樹だけでなく、後ろに控えているエヴァ四号機、ドラゴン軍団、アルルーナにレスト、その他の戦えるモブFOEも攻撃の準備をする。
これまで散々レベルを上げたため、これだけの数でも敵の殲滅は容易であろう。
さやかはいざという時の回復係として世界樹の中に残り、非戦闘員である魔雲天(人間)ときらりは地下の方で待機する。
世界樹にいる都庁同盟軍全ての者が固唾を飲んで推移を見守った。

『チャージ完了! いくぜ、神々の黄――』















「……? どうしたの神樹? なぜ撃たないの?!」

神樹はいつになっても、神々の黄昏を放たなかった。
エリカの疑問に対して神樹は呟く、ひどく怯えたような声で。

『あいつらなんてことを……』
「暗くてよく見えない! ウォークライ、明かりを!」

要領を得ない神樹の言葉に、レストは配下のウォークライに火球を放たせた。
ただしそれは狂信者に直接当てるのではなく、近くの瓦礫にあてて燃焼させて照明にするためである。
すると、向かってくる狂信者の正体を目にして、神樹が驚いていた理由を他の者も理解し、同時に戦慄した。

敵はMSとかヨロイなどのロボットがメインだ。
だがそこは対して問題ではない。頭数含めて予測可能な敵であった。
予想だにしてなかった手段を用いてきたからこそ、驚愕しているのだ。


――死にたくない!!――
――助けて!!――
――ガオォォォン!!――

『あのクソ野郎ども……人質を取ってやがる!
その人質をロボットの装甲に貼り付けてやがる!』

389ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:16:43 ID:qctHHCRw0

狂信者が操るロボットの前面には数匹ずつ、生きた魔物が磔刑のように貼り付けられていた。
今まで都庁に合流できなかったグンマーの魔物たちが捕らえられ、磔にされていたのだ。

「なんてこと、これじゃ高火力広範囲の攻撃ができない!!」
「それだけじゃない、セルメンブレンみたいな敵に攻撃を反射する防御技も使えない!
反射してロボットが大爆発したら人質の魔物も巻き添えだ。卑怯者めえ!」

アルルーナとレストが敵を非難するが、無理もない。
これではいくらレベルを上げたところで、敵を攻撃……特にダオスレーザーなどの広範囲攻撃ならば尚更するわけにはいかないのだから。

「それだけおまえたちは、我々を本気にしたということだ」
「!?」

怒り戸惑うレストたちの前になにかが転移しようとしていた。
最初に中から現れたのはディパックとそこから溢れ出る大量の水だ。

「うわっぷッ! これは海水!?」

水の正体は、大量の海水。
しかし大量といっても溺れるほどではない。
深さ十数cm程度の水たまりが広範囲に出きるだけでこれ自体に直接の害はなかった。

問題なのは次に転移してきた存在だ。

レストら迎撃部隊の中央に現れしは次元連結システムを使って転移してきた最悪の冥王、黒塗装のグレートゼオライマー。

「敵!」

多くのモブ魔物が人質を伴って侵攻してくる敵に気を取られる中、レストら歴戦の戦士たちの反応は素早かった。
グレートゼオライマー相手に繰り出される世界樹ノ剣――全状態異常95%付与、体力吸収。攻撃力は女装鎧であるソウルアーマーの力で40倍。レストのレベルの高さも相まって直撃すればガンダムクラスの装甲までなら確実に消し飛ぶ。
追撃にアルルーナはアシュラマンさえ一撃で葬った冷気の一撃、フロストスマイルを放つ。
幸い、転移に耐えられない都合かゼオライマーの装甲に人質は磔られていない。
倒すのは問題なかったハズだが。

「当たらねばどうということはない! フットワーク、そして分身!」
「なんですって!」
「重そうな見た目の割になんて敏捷性!」

格闘攻撃を確実に躱すスキル・フットワーク、そして必中攻撃以外は確実に躱す分身。
ゼオライマーに乗るドリスコルはこれらを使って、攻撃を凌ぐ。

「ダオスさん! 援護を!」
「ダメだ! 味方が近すぎる!」
「これじゃ撃てないよ!」

ダオスやまどかも追撃に加わろうとしたが、敵と味方の距離が近すぎたためにレーザーや他の攻撃も発射できない。
それはエヴァ四号機に乗るカヲルや氷竜・ウォークライとて同じだ。
相手が泡を食っている攻撃のチャンスを得たドリスコルは反撃を行う。

「Jカイザー、バラージュ!!」
「「うわあああああああああああああああ!!」」

八罫ロボの一体、月のローズセラヴィーの技であるレーザー攻撃を回転しながら放つゼオライマー。
周辺にいたレストやアルルーナは高い回避力と防御力のおかげで大した打撃を受けなかったが、二人未満の実力であるモブ魔物はそうとは行かず、数十匹の魔物が一気に蒸発し、同時に爆炎を引き起こした。

「今だ! 奴を斬れ、天龍!」
「応!」

一瞬だけ開いたゼオライマーのハッチから眼帯の艦むす、天龍が現れる。
水浸しになった地面に降り立った天龍は、ウォータースケートの要領で水上を猛ダッシュする。
その機動力は圧巻であり、レスト含めた前衛の誰も追うことはできず、捕まえようとするものを嘲笑うかのように障害になっていたモブ魔物を天龍は腕の刀でバッサバッサと、滑らかに辻斬りしていく。

「へへん、艦むすは水上だと機動力や戦闘力が地上の数倍から数百倍まで跳ね上がるんだぜ!
世界最高水準な俺をウスノロなおまえたちが捕まえられるわけがねえよ!」
「艦むすだって……!?」

レストには確かに聞こえた。
古代ミヤザキが使用した人口巫女――艦むすの言葉。
彼女の言葉に嘘がなければ、その艦むすが目の前にいるのだ。

390ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:18:16 ID:qctHHCRw0

「どうして誰も止められないの!?」
『あ、あの女が異常に早くて強いのもあるが、デバフに麻痺や混乱を招く攻撃をしても全然効果がないんだ!』
『罠もダメだ!』
「あいつ、無敵状態になれるスキルでもあるの!?」

アルルーナが束になっても天龍を追い詰められない理由をモブFOEに問いかけるが、返ってきたのは天龍への恐れであった。

「見つけたぜ、俺の標的は――ロリコン臭がするおまえだ!」
『くッ、ミラーシールド!』

天龍が狙いを定めたのは前衛に盾要員として出ていた氷竜もとい氷嵐の支配者。
氷竜は急いで万能属性攻撃さえ無力化するカウンタースキル・ミラーシールドを発動する。

「なるほど、攻撃を仕掛けると反射されるタイプの『特殊効果』もしくは『罠』だな。ということは!」


\  さいごのガラスをぶち破れ〜    /
 *      \ 見慣れた景色をけりだして〜 /*
  *  ( \/ /_∧   <./|   /| +     /\___
   + ..ヽ/ /Д`/⌒ヽ  / .| / /     /    //
。     / /\/ ,ヘ  i   ̄ > \_/ * /____//
      し' \_/    i  />      ̄ ̄ ̄ ̄
   +     i⌒ヽ  ./   ̄>__  + 。    ..|| |::
     /⌒ヽ i  i  \(    .|/  / /\  + .|| |::
 *  ..i    | /ヽ   ヽ  *∠__/   ̄ +  *..|| |::
     ヽ ヽ| |、 \_ノ  >   <>  *    || |::
  。    \|  )  ̄  ./V   *     。   .|| |::
____  .ノ ./⌒)∧ /  ..+_________||___
  。  / し'.ヽ ( .∨    /\________|__|
    //    し'  / /\ + ̄:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
※天龍です


『馬鹿な!?』

氷でできたミラーシールドはガラス窓のように簡単に破られた。
マーラ戦の時のように奇襲で首がもげてミラーシールドが貼れなくなったり、きらり戦の時のようにステータスを強制的に一桁にされたわけでもない、完璧なミラーシールドでもあったにも関わらずだ。
直後に天龍の砲撃が氷竜の三つある首の内、左右一本ずつ粉砕、胸部にも一撃をもらい、残った一本の頭の口から吐血し、地上に倒れた。

『氷竜! 今いくぞ!!』

比較的動けたウォークライとドラゴンの部隊が空から氷竜を助けようとする。
ブレス攻撃などは味方を巻き添えにして危険だが、単体攻撃である爪や牙ならば。
そう考えて天龍に襲いかかろうとするが、ここで狂信者たちの迎撃に合う。

「やらせはせんよ」
「目標をセンターに入れてスイッチ!」
「(味方の邪魔をするのは)やめてくださいよ本当に!」
「ビーム喰らって死のう、な?」
『邪魔をするなーーーッ!!』

数多のモブ狂信者の乗るロボット兵器、初号機F型装備、フェネクスにユニコーン、そしてゼオライマー自体の攻撃により、氷竜を助けようとしたドラゴンの多くが撃ち落とされた。
ウォークライは妨害してきた狂信者たちに怒号を上げるが、それで狂信者が止まるわけではなく、弾幕射撃により他の同盟軍の味方の誰もが、自陣営にいながら氷竜を助けに行くことができなかった。

氷竜自身も周囲の味方を巻き添えにしない貫く氷槍や三連牙で抵抗するが、天龍はこれを刀でカッキンカッキンと弾き、砲撃と斬撃で急速に流血させていき、みるみる内に満身創痍にさせた。

『お、俺を一瞬でロリコンと見抜いた嗅覚!
そして魔法や罠を無力化する防御能力……貴様もしやオシリスの……』

氷竜は目の前の少女の性癖や能力から正体をなんとなく察し、まさかと思い問いかける。
しかし天龍は冷酷な瞳を向けつつ、障壁を貼れなくなった氷竜の残った最後の首を斬り落とした。

「……そいつはもう死んだよ、今の俺は軽巡洋艦の天龍だ」


【氷嵐の支配者@新・世界樹の迷宮 ミレニアムの少女 死亡確認】


「氷竜さん! そんなぁー!!!」

同盟軍の心の声を代弁するかのようにまどかは悲痛な叫びを上げる。
氷竜の死はそれだけ呆気なく、無惨であった。
助けたくとも一切の援護はできなかった。
大技は氷竜や周辺の味方を巻き込んでしまい、セルメンブレンはなぜか天龍相手には反射されず盾としての効果も発揮しないからだ。

『よくも同胞を……!』
「許さないぞ!」

空からは漸く敵の弾幕をくぐり抜けたウォークライが、地上からは追いついたレストの挟撃が天龍に一撃を食らわせんとする。

391ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:19:12 ID:qctHHCRw0
しかし、それより早くゼオライマーが天龍を庇うように彼女の目の前に転移し、『戦闘から一方的に逃げる』スキルを使用する。

「エスケイプ」
「!?」
「じゃあの」

復讐の一撃を放とうとした者を嘲笑うかのように、ゼオライマーと天龍は次元連結システムによって転移し、次の瞬間に狂信者の陣営に舞い戻っていた。
ドリスコルが使用したスキルは敵の攻撃そのものをキャンセルし、一撃離脱を可能にする『エスケイプ』。
味方が使うとヌルゲー化し、敵が使うとウザったいことこの上ない戦闘スキルである。
今の戦闘でそれを察したレストは舌打ちする。

「チッ、この嫌らしさは、単に欠点を突いてきた魔神皇の比じゃない」



狂信者陣営側に戻ったドリスコルと天龍。

「トラ、トラ、トラ。大成功だぜ」
「ああ、最初の奇襲は成功だ。厄介になるかもしれぬ氷竜の殺害にも成功した」

天龍が氷竜を最初に狙ったのは、彼の持つスキルであるミラーシールドを危険視したからである。
ミラーシールドはどんな攻撃も跳ね返す盾であり、最悪ゼオライマーの最大火力である烈メイオウ攻撃さえ自分たちに戻ってくる危険が有る。
単に跳ね返すだけならレストやフォレスト・セルにもできるようだが、レストは装備による自動発動、セルは自軍全域まで広げてしまうので、こちらが人質を盾にすると攻撃力が現象する。
氷竜はタイミングや防御対象を自由に選んで使用できるため、防御面では厄介ではあった。
だが天龍が持つオシリス譲りの能力により、相手からの魔法・罠・特殊効果を殺せる天龍によって氷竜のミラーシールドは発動することなく、抹殺を可能にした。

それでも高い火力は都庁には残っているのだが、三竜の最後の一匹が亡くなったことで士気と指揮力は減退。
高すぎる攻撃力も人質という肉の盾の前では生かせまい。
少なくともドリスコルは敵の攻勢を削ぐ簡単な方法を、イチロー戦で学習済みであった。

「人質の存在が、都庁同盟軍の攻撃を渋らせている。
尋問・拷問のためにギリギリまでクラウザーさんへの生贄に捧げなくて正解だった。
奴らを殺すには物量や質、策だけでは足りなかったのだ……一番必要だったのは心を抉るような卑劣さだ」
「狂信者で評判最悪の俺たちからしてみれば失うもんなんて何もないしなー」
「そうだな、さて、モブ狂信者どもの士気が高い内にゆるりと進軍させるか」

指揮官であるドリスコルの指示に従い、人質を盾にしながらロボット部隊が進軍を始める。
一方の都庁側は満足に攻撃できず防戦一方になるしかなかった。


「ダオスさん……どうしましょう」
「クッ……今までで一番辛い戦いになるだろうが……」

同盟軍の長であるダオスは苦渋の決断を迫られた。
大火力による攻撃は人質を殺してしまう、人質を無視すれば少なくともモブ狂信者のロボット軍団だけは一掃できる。
しかし、それをやってしまえば戦争で滅び、現代の苦境を招いた古代グンマー・古代ミヤザキと何も変わらなくなってしまう。

「小鳥、全員に伝達しろ。
人質は何匹いるかわからんが、流石に全部の機体に載せているわけではないだろう。
それぞれで役割を分担する。
レスト、ウォークライ、アルルーナ、カヲルは主軸になっている狂信者を優先的に狙え!
指揮官や隊長格を倒せば敵も混乱する。
その他の魔物は人質救助を優先し、範囲攻撃は使わずに肉弾戦のみで中のパイロットだけ殺せ。
私とまどか、セルと神樹は世界樹の防御に徹し、人質の救助が済んだら、一気に狂信者を殲滅する。
……それまで申し訳ないが、地上の部隊には一切の支援ができんとな」
「厳しい戦いになりますね」
「今は耐えてもらうしかない」

小鳥はスマホや伝令係の魔物を通して味方に指示を伝達。
ダオス、まどか及びセルと神樹は高出力のレーザーを敵ではなく、世界樹に直接降りかかる敵の攻撃に対して向けることで、世界樹への被害を無くす。

「奴らめ、撃ち落とした時の被害を考えてわざと低く飛んでいるな……煩わしい奴らめ。」

ゼオライマー、ホモのガンダム二機はあえて低空を飛んでいた。
レーザーで撃墜でもすればすぐ下にいる人質が巻き添えになるからだ。
そして、自分を含めて命の価値が低い狂信者は無遠慮に攻撃をしかけてくる。
地上でロボット軍団と白兵戦を繰り広げる魔物たちは苦戦を強いられていた。

「ファースト!」
「デュエル!」
「オールヒット!」
「ブラストショット!」
「フィックスDMGIII」
「マイナスショットIII!」
「エスケイプ!」
「ウィークポイント!」

『ぎゃあああああああああ!』
『こいつら、鬱陶しい!!』

392ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:19:53 ID:qctHHCRw0

モブだけを見た場合、地の能力では魔物側が何枚か上手ではあったが、狂信者側は人質を取ってる上に、ドリスコルから渡されたのであろう所持スキルの数々が、魔物たちの攻撃力を削ぐ。
攻撃の先制権はスピードに関係なく奪われ、連携が取れない一体一の戦いに強制的に持ち込まれ、回避力に関係なく全弾命中。
転倒させられて何もできず、200近いダメージがなぜか半分以下の80固定にさせられたり、ちょっとかすっただけで攻撃力を激減。
攻撃しては逃げられ、挙句まだある程度HPに余裕があるのに部位破壊させられる……そしてレーザーによる支援砲火ができなくなったので倒しても倒しても中々減らない。
戦闘やドラゴンハートで強化されたハズのモブ魔物が何匹も犠牲になった。

ドリスコルの引き連れた軍団はこれまで以上に能力やスキルだけで勝つのは難しい相手であった。
だが、魔物たちもただ黙ってやられるつもりはなく、苦戦しながらもロボットを範囲攻撃を使わずに戦闘不能に追い込み、パイロットを殺した後に人質を救助。
少しずつであるが、人質の魔物を世界樹の中へ保護することができた。


そんななか、ひとつの因縁の決着が今、始まろうとしていた。

「エヴァ初号機……それに乗ってるのはシンジくんなのか?」
「カヲルくん、君がそっち側にいるのが僕には理解できないよ」

白と紫のエヴァを通して銃を向け合う二人の少年たち。
本来なら親友になれた者同士が、敵同士としてとうとう戦場で出会ってしまったのである。

「カヲル、ひょっとしてあれに乗っている彼は君の親友の……」
「ああ。シンジくんの相手は僕に任せてくれないか?
彼の戦い方を知ってるのは僕だけだから……」
『すまん、ここは任せたぞ』

エヴァンゲリオンの相手は同じエヴァンゲリオンに任せ、レストたちはドリスコルや天龍を討つべく、追いかける。
氷竜を殺した艦むす、そしてこの攻撃部隊の総司令官と思われる男を倒せば、活路を見いだせるからである。



「人質の盾は防御としては有効……だが、これだけで決定打を与えるのは苦しいか」

ゼオライマーのコクピットの中でドリスコルは呟く。
確かにダオスやセルの攻撃は自陣営に全く届かず、モブ魔物にも被害を与えているが、都庁の世界樹を確実に倒し切るにはこれだけでは足りない。
反射能力無しでも圧倒的な防御能力を持つセル・神樹が世界樹を守る防壁となっており、遠巻きからのゼオライマーによる攻撃さえ防いでいる。
いくら天龍がスキル殺しの能力を持っているからとはいえ、単身で突っ込ませて殺させるほどドリスコルも馬鹿ではない。
グレートゼオライマー及び現状の狂信者では最大火力であろう烈・メイオウ攻撃を懐から浴びせれば確実な打撃を与えられるかもしれないが、些か博打がすぎる。

人質もいつかは全員奪還されて、狂信者が逆に殲滅される危険がある。
故に都庁軍が気づいていない水面下では別の作戦が展開されていた。

(ふッ……お膳立ては済ませたぞ、ゼロ、あとはおまえ次第だ)
「みんな……ダメ……この戦いは」
「うるさいメス豚は耳レ○プ」
「いやあああああああああああああ!!!」

ゼオライマーの中で再び意識が戻った次元連結システムもといカレンが何かを言いかけたが、ドリスコルが彼女の苦手なDMCの曲を音量いっぱいで流したため、誰にも聞こえず阻止された。



世界樹内部1F、そこにはさやかや彼女に従う魔物が負傷した魔物や人質の治療を行っていた。

『すまない、本当に助かった……』
「私にはこれしかできないからね、ただひたすら治すだけよ」

さやかはもはや、自分がまどかやほむらのように戦闘に向いていないことを認め、逆に戦闘で前線から離れられないまどからに変わって後方で回復魔法を振るっていた。
必死に治療し、激しい戦場にも関わらず魔物を安心させるために笑顔で励ますさやかの姿はまさにナイチンゲールのようだった。

(うッ……もうソウルジェムが真っ黒!)

しかし、怪我人が矢継ぎ早にくる環境では穢れが貯まるのも早い。
すぐに黒ずんだジェムが、外の戦いは地獄めいていると語っている。

『一番回復能力があるとはいえ無理するな』
『補給のためにフォレスト・セルに穢れを吸ってもらえ』
「ごめん。
こんな時に魔女になるわけには行かないしちょっとだけ離れる」

さやかは穢れを取るために一時的に現場を離れた。

「早く戻らないと……」

世界樹の入口、戦場から運ばれてくる魔物の数は増える一方。
それがさやかに焦りをもたらした。

393ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:20:18 ID:qctHHCRw0


そこで肩を支えあう、互いに傷ついた二匹の魔物と目があった。
オスと思われる魔物が、弱々しい声でさやかに語りかける。

『そ、そこの人間……俺の話を聞いてくれ』
「待って、今は他の仲間の治療が……」
『敵の、狂信者の作戦に関わる重大なことなんだ……』
「なんですって!?」

人質など汚い手を使ってきたドリスコルの部隊に、まだ奥の手があるのか。
それが本当なら早くダオスや皆に伝えないといけない。

『俺はもうもたん……おまえに情報を渡したい……もっと近くに……耳を貸してくれ』
「待って、治癒魔法を……ダメだ、ソウルジェムが持たない、クッ」

今にも死にそうな魔物だが、現在のさやかには回復できる魔力がない。
悔しい思いをしながらもせめて、死に物狂いで集めてきた情報だけは無駄にしないために魔物に耳を傾けた。



『ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。貴様は俺の命令に従え』


「イエス、ユアハイネス」


さやかが魔物「だと思っていた何か」はさやかが近づいてきた瞬間、両腕で頭を掴んで強引に目を合わせさせた。
そして見てしまったのだ、目の中の紋章――絶対遵守のギアスを。
さやかはこの瞬間から、このギアスの持ち主の兵士となってしまった。

『うまく侵入できたな』
『ええ、鮮やかでした。さすがお兄様!』

さやかが魔物だと思っていた二匹の正体はカギ爪団の現在の首魁であるルルーシュと義理の妹である深雪である。

(仕事をしないと評価が低かったサイコマンだが、彼の残した技術――オーバーボディの方は大いに役に立ったよ)

サイコマンが狂信者にもたらした技術、オーバーボディ。
二人は着ぐるみのようにオーバーボディで魔物に偽装をしていた。
偽装は完璧で少なくとも視覚や嗅覚ではそこらのモブ魔物と判別不能。
ちなみに負っていた怪我はそれっぽく見せた血糊である。



実はここまでの作戦は全部ルルーシュことゼロの発案である。
これまでの都庁と狂信者の戦闘経緯から、都庁同盟軍は仲間である魔物に対して「仲間意識」が強すぎること……言ってしまえば敵だけでなく味方にも向けるべき「非情さ」が欠如していることを見越していた。
おそらく戦況をひっくり返す核兵器的な奥の手もあると推測していたが、人質を取られればそれも使用不可。
そして人質を救助しようとして、偽装したルルーシュと深雪を内部に招き入れてしまうのである。

(ふふッ、奴らは気づいてませんね、助けた人質の半分はオーバーボディを纏ったカギ爪団の構成員と深海棲艦)
(しかも残り半分は、実際に都庁に合流できずにはぐれた魔物。
気づいたら気づいたで都庁内部は疑心暗鬼でパニックになる)

同盟軍が必死になって助けている人質の半分はスパイ。
今はルルーシュの合図を待って大人しく待機しているようだが、内部で暴れでもしたらどうなるだろうか。

(狂信者はかつてデスマンティスを使ってスパイ作戦を行ったが、肝心のスパイが私情に走り、後詰めの部隊は作戦もヘチマもない連中だったために失敗に終わった。
だが、今度は違う。
俺はただスパイを内部に入れるだけでなく、内部にスパイを作り出せる絶対遵守のギアスを持っている。
味方に甘い奴らが、この少女のようにただ操られただけの少女を撃てるかな?)

ルルーシュは心の中でほくそ笑む。

『おっと、作戦はまだ始まったばかりだ。
深雪は手はず通り、そのマスターボールでフォレスト・セルを捕獲しろ』
『はい、お兄様!』

作戦のプランの内には深雪が持つ、マスターボールによるセル捕獲がある。
このマスターボールはサーフによる魔改造を受けているため、持ち主がいても確実に捕まえることができる逸品。
スキルやステータスの高さはまったく関係なく何であれ捕獲可能。
何より都庁で最強の能力を誇るフォレスト・セルを捕まえてしまえば、トレーナーのレベルの都合でセル自体を操ることはできなくても都庁の戦力はガタ落ちし、世界樹陥落を容易にするという寸法である。
魔物に扮した深雪は背後からこっそりと忍び寄り、不意打ちで捕まえようというのだ。

『俺はこの娘に都庁の内部を案内させてもらう』
『危険ではないですか?』
『ギアスで洗脳できそうな奴を狙って兵隊を増やしていく、俺のことなら心配しなくて良い』
『敵地の中でなんと勇敢な……さすがお兄様!』

いつもの「さすおに」のやりとりの後、ルルーシュと深雪は一時の別れをした。
人質に偽装した狂信者仲間の手で巧妙に隠されたせいか周囲の魔物たちは、スパイが紛れ込んだことに気づいていない。

『さあ、俺を案内しろ、さやか』
「はい」

394ヘルコロシアム 修整版 ◆/8LcLyQ/fI:2019/07/12(金) 09:21:01 ID:qctHHCRw0



『……都庁には悪いが、テラカオスに纏わる必要な情報や資材を奪い、今後の役に立ちそうな人材以外は全滅してもらう。
ナナリーの蘇生のためにはどうしても犠牲がいる。
大災害を防げようとも、そのあとの世界にナナリーがいてくれないと俺はダメなんだ……!』

妹への愛に狂った男、ルルーシュの瞳にもまた、ギアスの他に松本と似たような狂気を孕んでいた。



【二日目 22時00分/東京都 新宿都庁世界樹】


【都庁同盟軍】
※全てを虜にする歌→鎮魂歌がカヲルの手によって作成されました
 楽譜は小鳥が預かっています


【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】

【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
※ルルーシュのギアスによって操られました。



【DMC狂信者 都庁侵攻部隊】
※モブ狂信者は人質を盾に侵攻しています。
 その人質の半分はオーバーボディで偽装したカギ爪団構成員&深海棲艦です。

【ドリスコル@フロントミッション】
【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】
【道下正樹@くそみそテクニック】
【遠野@真夏の夜の淫夢】
【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】

【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
※オーバーボディで魔物に偽装中。
※四条化した魔理沙の死体を道下から譲渡されました。

【司波深雪@魔法科高校の劣等生】
※オーバーボディで魔物に偽装中。
※魔改造マスターボールをドリスコルから譲渡されました。
 フォレスト・セルを捕まえる予定。

395 ◆hphChNhqkE:2019/07/15(月) 18:36:37 ID:1sfJCahU0
予約していた都庁と狂信者で投下します

396シシャの想い:2019/07/15(月) 18:37:51 ID:1sfJCahU0
ギャアアア!


じりじりと……


グオオオオ!?


じりじりと、都庁の魔物は押され始めていた。
如何なドラゴンハートの恩恵といえども、それはあくまで『強者』に対しての恩恵。
死線を潜り抜け、それでもなお歩みを止めずに戦いに身を置くものに送られる一種の祝福。

「ヒャッハー!」

今は亡き雷竜や裁断者に劣らぬほどの、強い想いがあったとしても。
名前も書かれない魔物は、そもそもの基礎の力に限界がある。
対して、狂信者の駆る兵器は機械である故に、確実に均等な強化ができるのだ。
ただの人間と魔物の皮膚を比べれば、魔物に軍配があがる。
しかしこれが兵器とであれば、今度は兵器の勝ちとなる。

そんな条件下で、人質を救いながら、数で劣る魔物が、勝てるかと言えば……無理なのだ。

「クラウザーさんの為の生贄になるのだぁ!」

ぐしゃりと、また魔物が潰される。
これでも魔物は遥かに善戦してはいるのだ。
指揮官であるドリスコルはともかく、その配下の兵達よりも魔物達は統率と連携がしっかりとしている。
逆に言えば、それのおかげで急速な瓦解を防いでいるだけとも言えてしまうのだが。



「くっ……!!!」



ダオスは、それだけで人を殺せそうな程の殺意を込めた視線を狂信者へと向ける。
人質さえいなければ、いますぐこの馬鹿な群れを消し飛ばしてやると言うのに。
雷竜、赤竜、そして氷竜……
魔物を統べていた長は、とうとう全員が命を落としてしまった。
もはやこの世界樹が抱える戦力は当初とは比較にならないほど減衰している。
それでも、退くわけにはいかない。退けないのだ。
もはや魔物達のためだけでなく、世界の命運を自分達が担ってしまっているのだから。


それなのに……


「私は、なんのために……!」
「ダオスさん、堪えて……!」

震えるダオスを小鳥が窘めるが、小鳥とて腸は煮えくり返っている。
このままでは待つのは――緩やかな死だ。

397シシャの想い:2019/07/15(月) 18:38:54 ID:1sfJCahU0
――そんな時、ある転機が訪れる。


「……」

「レスト?」


転移の魔法でやってきたのは、前線の最後の壁とも言えるレスト。
押されてはいるが、彼自身には怪我はない。
夥しい量の狂信者の血を浴び、その表情を窺い知ることはできない。


「ダオスさん。このままでは……」
「わかっている! だが……!」


「――、――。――――。――!―――!!!」


「「!?」


彼の口から出た言葉に、ダオスも小鳥も、避難していた魔物も全てが面食らう。
怒号と激しい戦闘音にかき消され、狂信者には聞こえていないだろう。


「――の件がある以上、ここだけは絶対に素早く勝たなければなりません」

「そして――の為にも、一刻も早く――するしかない」


提案された案。
それはすぐに承認できるものではなかった。

だが……彼らは多くの者と約束をかわしている。
みんなが帰るべきこの場所を、守り抜くのだと。
今も戦い続けている影薄と聖帝、散っていった多くの魔物のためにも。
そして、最後に希望を託してくれたノーデンスの為にも。


「……わかった」
「ここにいない、他の魔物にも伝達しておきます……」

やがてダオスと小鳥は頷いた。
遅れて、魔物達も。


「ありがとうございます。それじゃあ――いきますね」


タンと勢いをつけ、レストは世界樹の天辺から飛び降りた。


――

398シシャの想い:2019/07/15(月) 18:39:40 ID:1sfJCahU0
ピイイイイイイィィィィィィィ!




突然、戦場に高い音が鳴り響く。
その音に一瞬だけ狂信者の動きも止まるが、本当に一瞬だけだ。
大勢に影響はない。


「――総員、退却!!!」


しかし、その音を聞いた瞬間に最前線で奮戦していたアルルーナが全ての魔物に退避の指示を出した。
今のは鳴き声。世界樹内にいるワイバーンの、緊急退却を報せる鳴き声だ。


「……これがきたということは、そういうことなのかしら……?」

僅かに悲しげな表情を浮かべるアルルーナ。
そんな彼女の傍に、空よりレストがやってきた。

正しくは、降ってきているというべきか。


「アルルーナ、念の為衝撃に備えて!」
「りょ、了解ですの!」

ぐぐっとアルルーナは耐ショック体勢を取る。
今の一言で、彼女は全てを理解した。





「 グ ラ ン ド イ ン パ ク ト ! 」





天辺からの落下速度も上乗せされた、かつて狂信者の一団をまとめて封殺した大震撃が辺り一帯を襲う。
その破壊力はかつての比ではなく、範囲もより広くなっている。



当然、直後に吹き上がる衝撃波――破壊の力も、段違いに。
そしてこの技は――味方以外の視界に入る生物を無差別に襲うのだ。
それはつまり……

399シシャの想い:2019/07/15(月) 18:40:41 ID:1sfJCahU0
「ひ、人質がいるのにぎゃぼぉ!?」

ある狂信者は言葉を言い切る前に、機体ごとバラバラに吹き飛んだ。
当然、機体に張り付けていた人質も同じく。



「く……ま、まさか連中が……!?」


ゼオライマーに乗るドリスコルは射程外にいたため無傷。
しかし離れていたからこそ、今の一撃で着弾地点からの円範囲がごっそり吹き飛んだのだということはわかった。
まさか、こうもはやく仲間を切り捨てる様な真似をしてくるとは流石のドリスコルも想定外であった。

「ふん、所詮は獣か。自分達の命と仲間の命を天秤にかければ当然なのかもしれないがな……」

敵の選択を嘲るドリスコル。
しかし、彼の頬には冷や汗が流れていた。
今回の作戦は、人質を用いての高火力技を封じるもの。
本来の殲滅担当でない男の一撃でアレなのだ。問題のダオスやフォレストセル達も同様に動くとなるとゼオライマーも流石に危ない。
元より人質は防御のための時間稼ぎでしかなかったが、ここまで早く破られてはゼロの計画も実行しきれないだろう。

「ん?」

そんな時、ドリスコルは目の前の惨状に僅かな違和感を感じた。
吹き飛んだ狂信者と人質の中から、無数の淡い光が立ち昇ったかと思えば空に吸い込まれるようにして消え去ったのだ。

「なんだ? あれは――」

「……!? まさか――」

そして違和感を覚えたのは、大震撃を放ったレストも同じくであった。
追撃を取るはずであった彼は、その違和感から大きく動きが鈍る。
そして彼は――その場から退いた。
ドリスコルのスキル程万能ではないが、拠点への即時帰還魔法『エスケープ』

「奴め、再び落下速度を上乗せした攻撃をしかけるつもりか……?」

ドリスコルは、僅かに警戒の色を強める。
敵が人質も気にせず、広範囲の攻撃技を使うとなると少々攻めがたくなる。
いくら自分と天龍がいるとはいえ、敵もまた規格外な連中が何人もいるのだ。
人質(潜入員)をもう少し活用しなければ、策は完全には機能しない。

狙うは、転移帰還からの攻撃への動作にある程度の時間を要するという点。
そして世界樹からの落下攻撃である以上、距離を置けば被弾はしないということ。
冷静に、そして冷徹にドリスコルは部下達に次の指示を出していくのであった。




――まさか人質作戦の裏の目的に薄く感づかれたとは、夢にも思わずに



――

400シシャの想い:2019/07/15(月) 18:42:16 ID:1sfJCahU0
「――人質にされた魔物の中に、人間が混ざっているだと!?」
「!!」

「ええ……天に還ったルーンの数が少ないことに加え、半数はバラバラになった『死体』が残っていましたから恐らくは」


再び世界樹の天辺に戻ったレストは感じた違和感をダオス達に伝えた。
何故そんなことがわかるのか。それはそもそも彼が持ち出した攻略手段に起因する。


「……先程もお伝えしましたが、僕らアースマイトの扱う『タミタヤ』の魔法は不殺の魔法です。
 これを宿した武器で倒された魔物は死体を遺さず、その全てを生命のルーンへと変えて一度天に還る。
 やがて魔物の魂は楽園とされる始まりの森ですごした後、いずれまたその姿で転生して現世に再臨する。
 正直、蒼に歪められたこの世界じゃこのサイクルが今も完全に機能しているかは怪しくて使いたくなかったんですが……」

渋った表情のレストに対して、ダオスはまだ言葉を返さない。
こと大地の生命の扱いに長けた彼らの一族の魔法は、自分の専門外でありこの状況下では指図もできない。
苦痛を与えずに楽園に送り、同様の姿で転生……一時的にこの世を離れる不殺といったことなのだろう。
しかし確かに黒き獣の攻撃がある今、魂とて安心はできないのも間違いない。

「とりあえず、ルーンが天に還った……タミタヤそのものは機能したのは間違いありません。ビッグサイトに吸収もされていない。
 それなのに、死体が残ったものもある……つまり、魔物じゃない存在がいたということになります」
「ど、どういうことなの?」
「タミタヤの不殺の効果があるのは、あくまで魔物やそれに準ずる存在だけ。人間相手には全く効果がないんですよ」

ぞっとするような言葉を聞き、小鳥は震えあがる。
魔物のフリをした人間がいる。つまりそれは……

「しかし、魔物達も馬鹿ではない。いくら皮を被り偽装したところで人間の臭いはごまかせないのではないか?」
「はい。だから僕も気になって、こうして戻ってきたんですが……」
「あっ……!?」
「ど、どうした小鳥!?」

そんな時、今度は小鳥が叫び声をあげる。
嗅覚に魔物に気付かれないほどの偽装――自分達も使ったではないか。


「――オーバーボディ! スニゲーターさんが言ってた……オーバーボディさえあれば都庁でも姿を偽れるって……!」
「っ! フェイが着ていたあれか!」


今は亡き悪魔騎士スニゲーター。
彼は最初、都庁に向かうための策としてオーバーボディを提案していた。
事実フェイが機械であることは脱ぎ捨てるまで、氷竜にすら気がつかれなかったほどの高性能っぷりだ。

「……敵に超人がいれば、あるいは超人から奪えば可能性はかなり高いな」
「で、でもそれだと……」
「おのれ……デスマンティスとラージャンと同じく内部工作をするつもりか……」

ダオスは小さく舌打つ。
この件を伝えれば、少なからず魔物間にも動揺が奔るのは間違いない。
まさか世界樹内の魔物にまでグランドインパクトを撃ちこむわけにもいかないだろう。
既に救助と言う名の潜入を許しているとなると、取れる対策は限られてくる。

「……まずは救助者全員を固めて見張るべきだな」
「そうですね。魔物から恨まれる覚悟は決めていましたがこれは……それと、さっきのもう一件の方ですが……」
「……気になるところではあるが、おおよその察しはついた。件の敵は――被害が広がる前に処理して問題ないだろう」
「わかりました……!」

――

401シシャの想い:2019/07/15(月) 18:43:25 ID:1sfJCahU0
……


「死にたくなければ、お下がりなさいな!」
『うるさい羽虫どもだ!』

華の女王アルルーナは、そのしなる蔓で次々に狂信者を蹴散らしていく。
叫帝ウォークライはその牙と爪でヨロイを砕き、できた残骸を敵パイロットに投げつけてさらに倒して行く。
地上は彼女が、空中はウォークライが。
たとえ彼女らの主と離れていても、しっかりとした連携で狂信者の進軍は阻まれていた。


『おいアルルーナ、さっきの主のあの様子は……』
「何かあったのでしょう。……盾にされていたあの子達が穏やかな顔で天に還って行く中で……苦悶の表情で息絶えた子もいた……」
『主の魔法は、ゲートリジェクト以外は完璧に機能する筈だ。そこに何かありそうだが……』
「考えるのは私達のすべきことではありませんわ。レストさんが戻られるまで、私達でこいつらを蹴散らすわよ!」
『おうっ!」



「やるじゃねえか。だが、世界水準軽く超えている俺を止められるかな……!?」



しかしそんな二人の前に、天龍が凄まじい速度で駆けよってくる。

「くっ……!?」

僅かな水でも、水上であればその機動力を格段に向上させる艦むす。
対する守りの要であるアルルーナとウォークライは、能力こそ極めて高いがそれは攻撃と防御面の話。
機動力という面では、水を得た天龍には遠く及ばない。

『おのれっ!』
「ふふ、欠伸がでちまうな。どうだ、俺が怖いか?」

振り下ろされる爪もなんなくかわし、翻した刀でウォークライを切りつける天龍。
強固な鱗ではあるが、天龍の刀はそれにさえも傷をつけていく。




「ふむ、これであの二体は始末できそうだが……」



離れた場所で、ドリスコルはなおも戦場を見渡していた。
あの大型の竜と植物女さえ葬れば、もはや都庁が抱えている戦力たる魔物は全滅したと言っても過言ではない。
最後の壁としてあの巨大な触手と蕾の化け物がいるが、連中も恐らくは速度に難がある。
魔王は雷が弱点であるというし、プロトンサンダーで処理が可能だろう。
それでなくとも、戦局を見誤りさえしなければ烈メイオウで勝ててしまう。

しかしここで、彼は再び予想外のものを目撃することとなった。

「なにっ!?」

402シシャの想い:2019/07/15(月) 18:44:04 ID:1sfJCahU0
世界樹を護衛する形で立ち塞がる歪みし豊穣の神樹。
彼は徐にその蔓を動かしたかと思えば『何か』を投擲したのだ。
そしてそれの正体はすぐにわかった。
先程撤退した筈のあの男。
今度は『落下』ではなく仲間の援護を借りてより強力な『弾丸』として放たれたのだ。
圧倒的な巨体かつ精密な投擲が可能な神樹ならば、視界内の狙った場所に確実にその弾丸を撃ちこめる。
神樹が狙った場所、それはゼオライマーに乗るドリスコルではなく……


「ウォークライ! 全力で上に飛んで!」
『こ、心得た!』


一瞬のやり取り。高速飛来する主人の命を受けてウォークライは上空へ飛び上がる。

――狙われたのは天龍だ。


「はっ! 対空能力が無いと思って油断したか!? 多少はマシだが、その速さじゃまだ俺は――」


驚異的な能力で即座に飛来してきたレストに照準を合わせる天龍。
しかしその瞬間、突然彼女はがくりと膝から崩れ落ちた。

「――え? なん、でだ……?」

攻撃は受けていない。
それなのに突然、動きが鈍った。世界水準を超えている筈の自分の機能が……オシリスの能力さえもが、機能しなくなっている。

「……天龍。そして、氷竜さんが亡くなる直前に呟いた名……君に『混ぜられた』命は……」

「一度眠れ『オシリスの天空竜』。その想いは僕らが、君の仲間であるイチリュウチームが引き継ぐ……!」


レストが振りかざしたのは、世界樹の剣にあらず。
――絶対の竜殺兵器『天羽々斬』に自身の持つ竜殺の禁術『ドラグキャリバー』を上乗せしたもの。
上位神であるアイオトやノーデンスすら、この力の前には対峙も許されない、対竜の極致攻撃。
オシリスの力を継いでいるからこそ、天龍はその凶悪な破壊力と特殊能力を封殺する光に晒されてしまったのだ。


「お、俺はロリに――」


青く光り輝く巨大な刃は、天龍に触れると同時に彼女を硝子細工のように粉々にしてみせた。
そこから天へと昇って行く二つの魂を見つめながら、レストは天羽々斬を仕舞い、元の世界樹の剣を握りしめる。
切り札をいつまでも敵の目に晒すわけにもいかない。

【天龍(元オシリス)@艦隊これくしょん】消滅確認
※肉体が消滅し、天龍とオシリスの魂がそれぞれ還りました。その後どうなるかは不明


――

403シシャの想い:2019/07/15(月) 18:44:33 ID:1sfJCahU0
「く……! おのれサーフ、やはりあてにならぬ男だ……!」

ゼオライマーの中で、ドリスコルは拳を叩きつける。
折角回収したオシリスを使った天龍が、ああも容易く破壊されるとは。
だが無理もないかと、同時に理解も示す。
ドリスコルはそれほど詳しいわけでもないが、竜殺剣に対する知識もあった。
というよりも既に過去に目にしている。そう、サーフがセルベリアに手渡したあれだ。
あの剣も奴が作ったのだとして、それほど深い知識を持つわけでもない自分でも一目でわかる圧倒的な武器性能差。
この二点から、ドリスコルはサーフに対する信頼を下の下まで下げていた。
やはり、自分の方がオシリスを有効活用できたのではないか。

(いや、今考えるべきことはそれではない……)

しかし苛立ちはすぐに抑え、残された彼は再度戦況を把握する。
天龍が敗れたのは予想外ではあったが、彼女は既に厄介な氷竜を奇襲し抹殺する任務は遂行している。
確かに敵の竜殺剣は想像を絶する威力の様ではあるが、その効果は竜の類を相手にして初めて真価を発揮する。
つまりはあれも竜以外であれば、ただのでかいよく斬れる頑丈な剣止まり。
フットワークと分身があれば、かわせないことはないのだ。
ここまできたのであれば仕方がない。
最も厄介なフォレスト・セル達の処理はゼロに任せるとして。
前線を維持するあの三人だけはこの手で始末するしかない。
下手に世界樹内に引っ込まれては、ゼロ達も動きにくくなり作戦成功率が低下する。
物理攻撃をメインに据えている連中であれば、自分とゼオライマーにとっては相性がいいのだから。


「……行くか!」


まずはエスケイプを用いた、ヒット&アウェイで削りつつ――



「――魔物以外には容赦はしないよ。タミタヤ抜きで、ここで土になれ!」
「なっ!?」



いつの間にか、剣を構えたレストがゼオライマーの背後へと回り込んでいた。
敵との間合いを詰め背後に回り込む彼のスキル縮地法の効果なのだが、ドリスコルは知る由も無い。

「『フットワーク』『分身』……っ!」
「ちぃ!」

しかしそれでも冷静にドリスコルは鉄壁の布陣でもって背後からの奇襲を回避する。
千載一遇のチャンスを外したレストは忌々しげに見つめるが、その目はまだ死んではいなかった。

「まだだっ!」
「無駄だ!」

返す刃による連撃。
しかし物理攻撃である以上、通常手段ではゼオライマーに当たることは無い。
再び回避され、ゼオライマーは飛び退いた。



「――かかったね」
「!?」

404シシャの想い:2019/07/15(月) 18:44:59 ID:1sfJCahU0
「――セルちゃん! 『エンタングルレイ』!!!」
「ニシャビーム!」




ゼオライマーが回避した先は、丁度フォレスト・セルと視線がかち合う位置であった。
その瞬間、フォレスト・セルはおぞましい眼を見開き、怪光線をゼオライマー目がけて発射した。
エンタングルレイ……世界樹を旅するボウケンシャ―をもつれさせて雁字搦めにするフォレスト・セルの魔光だ。
常時アクティベイトモードとなっている彼のエンタングルレイを受ければ、頭も腕も脚も、その全身を絡め取られ一切の抵抗ができなくなるだろう。



「うおおおおっ!? ――!」


「「え?」」



予期せぬ奇襲に僅かに焦るドリスコル。
しかしそれは一瞬。即座に冷静にして冷徹な判断を下す。
すなわち――近くを飛んでいたホモ二人を盾にしたのだ!
哀れ、光に絡め取られた二人はホモ団子となり地表へと転がされた。


『――ついに、スキル以外の回避行動をとったな!』
「な、貴様……!」


しかし追撃の魔光をかわしたと思ったところへ、さらに予期せぬ奇襲。
上空高くに退避した筈のウォークライによる急降下攻撃。
ゼオライマーの装甲はそれでも破られることはなかったが、密着を許してしまった。

「う……なんだ、この赤紫色の花は……!?」

やがてゼオライマーの全身に赤い毒花・フロワロが咲き誇る。
世界樹の加護を得ている魔物達には効かないが、そうではないドリスコルには有毒だ。
機内にも無遠慮に咲き誇るそれは、ドリスコルだけでなくゼオライマーの機能を弱体化させる。
だが、これが本命ではない。フロワロはあくまで注意を逸らすための時間稼ぎ。


『……クラウザーなんぞより、俺の『叫び』を聞けえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!』
「ぐあああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」


機体を貫通する音の暴力と振動。放たれるは、叫帝最強奥義・タイフーンハウル。
圧倒的なシャウトで聞いた者の全身を痺れさせ――『全てのスキルを使用不可』にさせることができる雄叫びだ。
全ては、この攻撃をゼオライマーに確実に当てるための同盟軍の作戦。
それを悟りこそすれ、今の一撃でドリスコルの耳は完全に破壊されそれどころではない。

(ク、クラウザーさんが……クラウザーさんの歌が聞こえない……?!)

それは、なによりも大切な死活問題。
敬愛し渇望するクラウザーさんの歌を失うことは耐えがたい。
そしてその狼狽はさらなる隙へと繋がっていく。

405シシャの想い:2019/07/15(月) 18:45:23 ID:1sfJCahU0
「よくもやってくれましたわね、このガラクタが!」
「面倒くさいスキルさえ使われなければ、装甲の程度はきらりんロボ以下だっ!」

アルルーナとレストが怒りの形相で回避能力を失ったゼオライマーを解体しにかかる。
素手に無数の蔓でバキャバキャと豪快な音を立てて破壊されていくが、目的はゼオライマーそのものではない。

「うっ……」
「――太古の呪粉」

引きずり出されたドリスコルの顔面に、世界樹の呪いが吹きかけられる。
与えられた異常は『盲目』
石化や混乱に比べれば遥かにマシなものなのだが、今ばかりは状況が違う。
タイフーンハウルで聴力を破壊され、続けて視力を奪われて。
今のドリスコルは、敵地の中心で『見えないし聞こえない』という恐ろしい状況に追い込まれているのだ。

「よし、とどめを――」
「お待ちになってレストさん。このニンゲンには、最も屈辱的な罰を与えてやりますわ……」

とどめを刺そうとするレストを制し、アルルーナは実に冷酷な笑みを浮かべる。
そして直後、蔓で縛り上げたドリスコルを――投げた。
投げた先には――待ち構えているフォレスト・セル。
当然、ドリスコルはそれが見えない聞こえない。


「にしゃあ……(貴様は――堕ちろ)」


仮に聞こえていたとして、フォレスト・セルの言葉を完全に理解できるのはまどかと同族の神樹のみ。
フォレスト・セルはドリスコルを口に放り込み……

「お? 処刑開始ってか。いいぜ、こいつらの道具も利用させて貰おうじゃないか」

神樹は飛び回っていたマシンから引きはがした拡声器――クラウザーさんの歌を拡散させていたパーツをセルの口元へ添える。


そして――治療ではない。
マーラ様さえ戦慄した『本気のフォレスト・セルのテクニック』が披露されることとなる。


(な、なんだ!?)


闇の中で、ドリスコルは自分の衣服が全て破り捨てられたことを知る。
そして股間部と尻穴に感じる――おぞましい感触。

(ま、まさか――この私をレ○プする気なのか――!?)

恐怖は一瞬。



『あ゛あ゛あ゛あ゛ ?! アアアアアアアアア―――ッ?!?!』

『やめ……耳から脳オッホオオオオォォォォォーッ?!?!』

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ ショクシュッンギモチイィィィィィィ?!?!』

『イギダクナイッ! モウイギタク……イガゼテクレェェェェェェァァァァァァ?!!?!?』

『イイ! クラウザーニレ○プサレルヨリモイイノォォォォォォォォォォ!??!?!?』

406シシャの想い:2019/07/15(月) 18:45:46 ID:1sfJCahU0
フォレスト・セルから漏れ聞こえる断末魔は、神樹の用意した拡声器で大音量となり辺り一帯に響き渡る。
あまりにもおぞましい惨状だが、クラウザーさんに心酔してきた彼が、大衆の前でよがり狂い、快楽の前に屈し
クラウザーさんへの忠義を圧し折られながら死んでいくというのはこれ以上ない屈辱であろう。
フォレスト・セルは迅速にかつ徹底的に、ドリスコルの魂の根底まで凌辱していく。
たとえ転生できたとして、クラウザーさんのことなど二度と思い出せないくらい。転生直後から触手を求める淫乱になるくらいに。

『あ――』

やがて膨大な快楽の中、肉体の限界を超えた射精を続けたドリスコルは何かがぷつりと切れてそのまま動かなくなった。


【ドリスコル@フロントミッション】死亡確認


『な、なんて恐ろしい処刑だ……』
「凄いな、敵部隊も流石にドン引きしたのか統制が乱れている……」
「世界樹の怒り、思い知りまして!?」


前線部隊の三人は、この狂信者の指揮官がこと切れたことを確認して大きく息を吐き出す。
アルルーナのみ勝ち誇った様子であったが、唸る彼女の触手のような蔓をみればなんとなく察することができた。
とにかくこれで、大きな犠牲を払いつつも厄介な相手は倒すことはできたのだ。残るは――



「うわあああぁぁぁぁぁぁぁ!?」


そう考えた彼らの目の前に、ボロボロになったエヴァ初号機が吹き飛んでくる。
飛んできた方角を見れば、ダメージを負ってこそはいるがしっかりと大地を踏みしめるエヴァ4号機の姿がそこにあった。

「シンジ君……」

寂しげなカヲルの声が漏れるが、その眼はしっかりと前を見据えていた。
とても大切な友を、この手で討ちとるという覚悟が既に出来ていた。

「カヲル君……」

換装された初号機とロンギヌスを持たない4号機とでは、本来ならば初号機に分がある。
しかし二人の明暗を分けたのは、心の強さであった。
バサラや多くの者の想いを引き継ぎ、そして先程は小鳥との大切な約束を交わしたカヲル。
カギ爪の男の思想に同調し、同志の為にと戦い続けてきたシンジ。
しかしシンジのそれはいわば盲信。バサラの代わりではなく自分の歌を届けると決め前に進むカヲルとは違う。

「僕が死んでも、カヲル君の心の中で生き続けられるのかな……」
「……ああ。忘れないよ、シンジ君のこと。いつかまた……」
「……うん」

その瞬間、確かに二人の少年は小さな笑みを浮かべる。
そして直後、未練を断ち切るかの如く4号機の拳は振り下ろされ、踊らされた少年の命を奪い去った。


【碇シンジ@新世紀エヴァンゲリオン】死亡確認

407シシャの想い:2019/07/15(月) 18:46:10 ID:1sfJCahU0
「……どうやら、そちらも片付いたみたいだね。あの男の気色悪い声は嫌でも耳に残ったけど」
「カヲル君、あなた……」
「……僕は大丈夫。まだ、やりたいことが、やらなければならないことがあるからね」
「そうだね。悲しむのは、全てを乗り越えてからだ」
『天龍、ゼオライマー、そしてエヴァ……敵主力はこれで潰せたか?』

都庁の前線組は再度集まり、状況を確認する。
また多くの命が失われた戦い、しかしだからといって立ち止まる猶予はもうない。
悲しみを乗り越え、そして生き残った彼らは辺りを見回し、改めて敵主力の撃破を確認する。




――その安堵の一瞬




「――っ!」


「なっ!? 速い……っ!?」


『黒と白』の影が、高速で彼らの横を過ぎ去っていった。
レストのみその敵影を捕えて剣を振るうが、当たることはない。
その恐ろしい速度は先程倒した天龍に匹敵するほどだったのだ。

『水上移動……!? まだ艦むすがいたのか!?』

剛火球をウォークライが放つが、着弾前に敵は遥かかなた――世界樹へと接近していた。
そして彼らは知る由も無いが、敵は艦むすとは似て非なる者――深海棲艦。
その中でも特に強い力を持つ人型、『姫』と呼ばれる種であった。

「ま、不味い! みんな、乗ってくれ!」

ドリスコルの断末魔で戦場は混乱状態。
レストの転移魔法では全員を運べないため、カヲルはエヴァの手に全員を乗せると全速力で世界樹へと駆け戻る。

しかし、間に合わない。
指揮官を失ったというのに、敵は一直線に世界樹を目指している。
まさかこれも敵の策だったのか。
主力を倒したと油断したところを、奥の手で一気に大将首を取る算段だったのか。

「間に合ってくれ……!」

歌だけでは意味がない。
巫女も器も、そして予言とは関係ないが仲間をこれ以上失うのは嫌だ。
カヲルはただ駆ける。




――

408シシャの想い:2019/07/15(月) 18:46:32 ID:1sfJCahU0
「くっ!?」

「ライオットランスの雨が、掠りもしねぇだと!?」


異変は世界樹を防衛していたダオス達にもすぐ察知できた。
幸いなことに大部隊は先程の攻撃で数を減らし混乱状態。
単騎相手であればダオスも神樹も迎撃ができる。

しかし、彼らを持ってしても深海棲艦は止められない。
敵は単騎、しかし攻撃行動を全て放棄し、ひたすらに直進してきているのだ。
魔物が群がろうとするが、高速進軍で寄せ付けない。
天龍の様に魔物を斬り伏せようともしないため、被害も無いがその分侵攻されるのが早い。

「にしゃ……」

ドリスコルの死体を捕食しながら、フォレスト・セルも迎撃を考える。
かなりの速度、一度セルメンブレンを展開し様子を見るべきか。
しかしまずはまどかの指示を待とう。



「あの人……」



そんな緊迫状態の中、まどかだけは反応が違った。
圧倒的な速度で迫る深海棲艦。その眼を、まどかは離れていながらに見てしまった。


「――泣いて、いるの……?」


身体に纏っているのは重々しい力だと言うのに、その深海棲艦は哀しげな眼をしていた。



「どうして……っ!?」



その時、ずきりとまどかを頭痛が襲う。



『――! ――!』

『―――!』


「何、これ……? セルちゃんの時と同じ――過去の、記憶……っ!?」



――

409シシャの想い:2019/07/15(月) 18:46:56 ID:1sfJCahU0
――――
―――
――




森奥で、青年が少女を庇いながら剣を振っていた。


「勝利を! 提督に!」
「今日こそいくネー! バーニング、ラ〜ヴッ!!!」
「お姉さま、援護しますっ!」
「計算通りなら、これで……!」


それに襲い掛かるは、揃いの衣装に身を包んだ娘達。
彼女達は相手を取り囲むと同時に、一斉に砲撃を開始する。
激しい轟音が響いたあと、そこには……

「ふん、この程度で僕の守りが破れるか! 巫女には傷一つつけない!」

無傷の青年と、巫女と呼ばれた少女が立っていた。

「シット! 私達四姉妹の連携でも駄目ですか……!」
「作戦失敗、ですね。総員、退却! 本営に戻り次の策を練ります!」
「殿は、私達が!」

その光景を見た四人は勿論、彼女達が引きつれていた部下達も慌てて逃げ出していく。
作戦失敗、撤退。悔しいが怪我人が出ていないのはよかったと、逃げながらに彼女達は考える。
殿の4人は自分達よりもずっと強い。遅れても、必ず戻ってきてくれると信頼していた。
だからこそ淀みなく迅速に撤退は行われた。



――それ故に、彼女達は知ることはない



「いやー、さすがデスネー!」
「私の計算では、一応一発は当てるつもりだったのですが……」
「やめてくれ。もし彼女に当たったらどうするつもりなんだ?」
「まあ貴方もですけど、そちらの巫女様もお強いですからね! 大丈夫です!」
「そ、そんなことないですよ。私なんて愚図で鈍間で……」
「謙遜はノー! 私達はこれでも姉妹全員が巫女候補のエリートなんですからネー?」
「特にこの妹は見るネー! 紅白色の服は最上位巫女の証デース!」
「そ、そんな。お姉さま方を差し置いて……」


戦争のど真ん中で。八百長が行われていたなどと。
グンマ―とミヤザキの巫女が秘密裏に友好的な関係を築いていたなど、知ることは無い。

410シシャの想い:2019/07/15(月) 18:47:21 ID:1sfJCahU0
「さて、一仕事終えたらティータイムデース!」
「一仕事って、僕に弾撃ちこんだだけだけどね。そっちの弾薬残数って大丈夫なの?」
「問題ありません。元よりあなたには効かない想定でしたので、コストのかからない偽物ですよ」
「よ、よかった。資源が減り過ぎたら、そっちも大変だもんね……」
「戦争なんてろくなことないですよ。司令もいい加減うんざりだって言ってましたし」
「……正直、僕らもそう思うよ。艦むすも魔物もまだ小さい子まで戦いに送り込んだりするだなんて……」
「グンマ―もミヤザキも、もうへとへとです。どうにかして、せめて停戦が結べたらよいのですが」
「……大丈夫。だって、私達がこうして仲良くお茶を飲めているんだもん。きっともうすぐ……」
「そうなったら、どれだけ良いことでしょう。平和になれば、もっとあなた達ともこうしてティータイムも楽しめるかな……」


紅茶を飲みながら、両国の巫女は笑いあう。
まだ明かせない、秘密の茶会。
その時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。


「……名残惜しいですけど、そろそろ戻らないとですネ」
「司令も今、上層部に掛け合っているそうですし、これで次はもう少し落ち着けるといいですねぇ……」

「それじゃあ、皆さん。また……できれば、今度こそ戦場じゃない場所で」
「はい!」



……



「そうか、やはりグンマ―の巫女と盾も……」
「はい。提督と同じく、この戦争には反対の様ですが……」
「上からの圧力か。しかしグンマ―でも力を持つ巫女と盾が戦争に否定的なのは私としても嬉しい限りだな」

拠点に戻った四姉妹は、自身の指揮官に対して報告を行っていた。
白い服の男は報告を聞き喜びつつも、しかし同時に苦い顔もして見せる。

「提督?」
「……停戦を結ぶなら、急いだ方がいいかもしれん。実はとある提督が、大規模作戦の為これから建造する艦むす全てに対する
『提督への絶対忠誠プログラム』を埋め込むことを立案していてな……」
「「なっ!?」」
「他にも色々と埋め込むつもりらしいが、要は君達のように自分の意思で考え行動し、時に提督に意見することもできなくなる……
 艦むすを完全に兵器としか見ていない過激派連中が増長するのは明らかだ。そうなればもう、グンマ―との停戦は――」


提督と呼ばれた男は、次の瞬間その白い服を己の血で染め上げていた。

411シシャの想い:2019/07/15(月) 18:47:47 ID:1sfJCahU0
「て、提督っ!?」


「ヒャハハ! 悪いがそのカスはもうご退場。今日から俺が新しい提督だ。宜しく……って言いてぇところなんだが。
 お前達みたいなのが出てくると戦争が上手く回らないからな。――旧型は全員、解体処分ってかァ!?」

「「艦ムス……コロス!」」

「なっ!? こいつらは……うぐ!?」
「黒い、艦むす……!? くぁ!?」
「……っ! 逃げて! そしてあの子達に、このことを――」

如何に強者とはいえ、多勢に無勢。
新たに現れた男が引きつれていた軍勢は、あっという間に三人を呑みこんだ。

「あ、あぁ、そんな……提督、姉様……」
「ん? なんだテメェ。その格好、巫女か? 流石に解体処分は勿体ないかもしれねぇな。なら――こいつで、このバケモノ共の仲間入りでもしてもらうか」
「な、何をする気ですか!?」
「コイツらは深海棲艦っていってなぁ。提督の言うこと聞かない旧型艦むすに悪魔化ウイルスを撃ちこんだら偶々できた産物だが、
 これがなかなか使えてよ。艦むすより遥かに強くなるし、止まらない破壊衝動で敵も躊躇なく殺せる。そして一番の利点は……
 ――お前ら旧型でも提督の言うことに嫌でも従うようになるし、死んで水底に沈んでも再生が楽なことだ。勿論、再生は深海棲艦としてな? ヒャハハ!」
「っ! 嫌だ……嫌だ!」
「あん?」
「あの子と、約束したんです……! こんな真似、許しません……!」
「ああ、そうかい。健気な巫女様で。そんなくだらねェもんは、いっぺん死ねばすぐに忘れちまうのになァ? ――殺れ」

「く――ああああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!?」

(わたシは……ツタえ、なきゃ……ミヤザキとグンマ―……ヘイワ……タメ…………)



――
―――
――――


「……っ!」

流れ込んできた過去の記憶に、まどかはポロポロと大粒の涙を零す。
世界樹と一つになっているからだろうか。それとも、目の前の深海棲艦の強い無念からなのか。
理由はわからない。それでもまどかはもう、この深海棲艦を殺せなくなっていた。


「テイトク、シタガウ……テキ、シズメル……!」


「まどか! 千樹の守りを!」


「――チ、ガウ、ミコ……トモ、ダチ……?」

迫る深海棲艦に恐怖することなく、まどかは世界樹の枝を伸ばす。
自身を守る為でなく――遠いグンマ―の記憶、果たせなかった約束を今度こそ果たすために。

「大丈夫だよ……もう大丈夫だから……」

世界樹は、慈愛の心で深海棲艦を優しく包み込んだ。

――

412シシャの想い:2019/07/15(月) 18:48:09 ID:1sfJCahU0
……

戦況は混沌としていた。
有能な指揮官であったドリスコルを失った狂信者の反応は様々。
一度ビッグサイトに戻るべきだ。
このままSATUGAIを続けるべきだ。
ちょっとフォレスト・セルに入ってみたい。
魔物も混乱していた。
退却命令に加え、前線を維持していた仲間もみな世界樹へと集まってしまった。
まさか追い込まれているのか。それを不安に思いつつも、彼らは命令に従う。
その間に、狂信者の一部は僅かに前へと前進する。



しかしこの時、予言の一節は一人の少年の手でより大きなものへと昇華されることとなる。



「カヲル君……!」
「小鳥さん、あなたとの約束は守れてよかったよ」
「まどかちゃんから、もう話は聞いているかしら? はい、これ!」

カヲルの手に、彼が書き上げた楽譜が戻ってくる。
必ず帰ってきて歌を取り返しにきなさい……小鳥とのこの約束は、カヲルに大きな力を与えていた。
何が何でも生きて戻る。その強き心の力が親友を討ち、それを失う痛みにも耐えることを可能としていた。

「……よし」

彼がいるのは、世界樹内でも特に広い一室であった。
生き残った魔物、世界樹を防衛している面々、そして助けた魔物も一塊となり全てが集まっている。
そして必至に腕を抑える深海棲艦と、かつてオオナズチから教わった魔法陣を描きその上に座るまどか。
そんな群衆を前にして、カヲルは静かにギターを持ち直す。

狂信者が迫っている。時間がない。
けれどどうしても、これだけは果たさないといけないという巫女の強い願い。
グンマ―の秘術でも駄目かもしれない。しかし垣間見た過去の記憶によれば、この深海棲艦は哀れな死者でもあるという。
――死者を弔う鎮魂歌。その可能性にかけて予言よりも一足早く、それはいきなり披露されることとなった。


(バサラ……みんな……シンジ君……僕は……)


「――どうか、聞いて欲しい。僕の、歌を……」



やがて、静かに演奏は始まった。


――

413シシャの想い:2019/07/15(月) 18:48:29 ID:1sfJCahU0
「にしゃあ……」

世界樹を防衛していたフォレスト・セルは確かにその歌を聞いた。
まどかの声とはまるで違うが、それでもとても哀しく死者を悼む気持ちのこもった歌。
まどかと世界樹以外に興味のなかった筈の彼でさえもが、その歌には不思議と惹かれた。


「な、なんだ……この歌は……」

世界樹に接近していた狂信者もまた、漏れ聞こえるその歌が何故かするりと耳に入ってきた。
クラウザーさんの歌以外、この世に歌と呼べるものはないと。そう思っていたのに。

「ク、クラウザーさん……」

どうして、聞いているだけで涙が出てくるのだろうか。
復活すると信じているのに、クラウザーさんの死を突き付けられるような、それでいてそれを哀しむような……
彼らは静かに泣きながら、いつの間にか攻め込むことを忘れていた。



(な、なんですかこの歌は……これは、耳を貸してはいけないやつです……)

そして密やかにフォレスト・セルに近寄っていた深雪もまた、この歌を聞いていた。
しかし彼女は素早く耳を塞ぎ、歩を速めた。
自分はお兄様から大役を仰せつかっているのだ。こんな妙な歌でしくじるわけにはいかない。
気を抜けば、思わず聞き入ってしまいそうな歌に抗いながら、やがてついに辿りつく。


(つ、ついに来ましたよフォレスト・セル……! 大きすぎて何がなんだかさっぱりですが、マスターボールなら無問題!)


どうやらこの歌は、フォレスト・セルにさえ影響をもたらしているらしい。
この様子なら、一瞬とはいえ反応が遅れるかもしれない。
願ってもいない、またとない好機だ。

(……大丈夫、相手は歌で集中力を欠いている……焦らず、確実に……)

マスターボールを手に、深雪は息を呑む。機をうかがい、そして……フォレスト・セルが瞬きをした時を狙い。


(今っ!!!)



――投げられたマスターボールは、ぶつかったターゲットを見事に一発で捕獲してみせた。

414シシャの想い:2019/07/15(月) 18:48:53 ID:1sfJCahU0
「――え?」


しかし、思わず深雪の口からは絶望の声が漏れてしまう。
マスターボールは、確かに捕獲成功した。それなのに、どうして。
どうして目の前にまだ、フォレスト・セルの巨体が健在なのか?



「――やはり、ですか。シルフカンパニーのマスターボールまで持ち出すなんて……」
「とんでもねえ野郎がいたもんだなおい?」
「!?」


その答えは、上から深雪に降りかかる声ですぐにわかった。

「魔物に化け、この子を捕まえるつもりだったようですけれど……甘いですよ?
 私もよくジムで居眠りをしている時に泥棒されかけましたが、そのおかげで、泥棒の特有の動きはよく把握しているんです」
「上から見るとあからさまに挙動不審だったな。俺ら含めて、この歌が気になってる時にその動きは嫌でも目立つぜ?」

どこか冷たさを感じるエリカと神樹の言葉。
計画がばれていた? それでは捕獲できたものはなんなのか?

「信じられないって顔してんな。答えはそのボールの中だぜ?」
「っ!」

状況を把握しきれていない深雪は、思わずマスターボールを開く。
フォレスト・セルが入っているなら開封は厳禁だが、彼が健在な以上開いても問題はない――その判断は誤りであった。

「なっ――これは!?」

ボールから出てきたのは神樹の一部――『欲に狂う黒き鉤爪』であった。
神樹は本体と蕾、鉤爪がそれぞれ独立した個体。まどかとドラゴンハートの力で強化された彼は、その蕾と鉤爪の数も増やしている。
一つのボールにポケモンは一人まで。マスターボールが捕獲できたのは、フォレスト・セルを庇った神樹のほんの一部分でしかなかったのだ。
さらに……

「ひっ!?」
「どうやら、トレーナーのレベルが足りていないようですね。正規のトレーナーではない様子……それではこの子の一部分たりとも言うことはききません」
「あー、そりゃ欲に狂う黒き鉤爪の一本だな。俺のせいなのか、それともその鉤爪になんか宿ってんのかはしらねぇが……
 名前の通りよ。その鉤爪、時たま――欲望のままに獲物を嬲り殺しにしたくなるんだ」
「い、いや……お兄様……」
「……静かな音楽は、大人しく聞くべきです」
「無粋なお前さんは、そのまま永遠に黙って貰おうか!」

ボールから飛び出た欲に狂う黒き鉤爪は、神樹の言葉通りに暴れ狂い、欲のままに深雪を切り刻んで蹂躙する。

「お、おに゛、ざまぁ゛――」

すぐには殺さない。恐怖を植え付け、徹底的に嬲る。
静かな鎮魂歌が流れる中、世界樹の下では喉を潰され声をあげることも許されなくなった少女がもがき苦しむ。
果たして彼女はこの鎮魂歌が終わるまでに死ぬことができたのか?
もうそれは、誰にもわからない。



【司波深雪@魔法科高校の劣等生】死亡確認



――

415シシャの想い:2019/07/15(月) 18:49:20 ID:1sfJCahU0
そして外ではそんな一悶着があったことなど誰も知らず……
世界樹内では、いよいよカヲルの鎮魂歌の演奏が終わった。


「……」


静かに一礼するカヲル。
それに対して拍手は起こらなかった。
ただ皆が、その余韻に浸っていた。心の中で彼の死者を悼む気持ちの強さに感動をしていた。
そしてその歌は――予言の前に一つの奇跡を起こす。


「……大丈夫?」
「うっ……」


優しくまどかが声をかけるのは、紅白の巫女装束のような衣服を身につけた娘であった。
それはまさしく、まどかが遠い記憶の中で見た人そのもの。
絶望の中で死亡し、深海棲艦に成り果てて。
水底に沈められ永い眠りにつき、現代に復元されてなおも過去の怨念に捕らわれてしまった――哀れな巫女。
グンマ―の秘術、まどかの願いでは足りなかった。カヲルの歌が、死者の魂……深海棲艦の荒ぶりを鎮めたのだ。
誰かの代わりではなく、自分の歌を。決意した使者のもたらした奇跡は、次へと繋がれていく。


「ありがとう、ございます……聞こえていましたよ、私達を悼んでくれる歌が……
 そして……遠い遠い今……あの子と交わした約束を、今度こそ……」
「あなたは、かつてのミヤザキの……」

「はい。――金剛型3番艦にして旧ミヤザキの巫女、榛名です。あなたも、ありがとう。現代のグンマ―の巫女……」

起き上がった榛名は、優しくまどかを抱きしめる。
かつて果たせなかった約束。それでも、奇跡が起きたのであれば、遅くはない。
すぐにまどかから手を離すと、彼女は軽く周りを見渡した後、決意に満ちた表情を浮かべる。

「私の狂おしいほどの無念……願ったのは、ミヤザキとグンマ―が争わないこと……
 ですが永き時の果てに今、再びかつてのような……いえ、それ以上の悪意が渦巻いている」





「私達を復元し、蒼の力を狙う者がいます。その名は――サーフ・シェフィールド……!」




旧時代のミヤザキの巫女の登場に驚く一同に、さらに驚愕の言葉がもたらされる。
奇跡の果てに辿りつく未来は、どのような形になるのだろうか。

416シシャの想い:2019/07/15(月) 18:49:43 ID:1sfJCahU0
(――ッ!!!)
「……」


そして、魔物の中でただ一人隠れる男、ルルーシュ。
彼に命じられ、治療しているように傍に仕えさせられたさやか。
二人の未来もまた、まだわからない。


【二日目23時00分/東京都 新宿都庁世界樹内部】

※全てを虜にする歌→鎮魂歌がカヲルの手によって作成されました
 楽譜はカヲルの手に戻りました
【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【榛名@艦隊これくしょん】
※元はサーフが所持していた復元された深海棲艦のため、支給品扱い(現所有者はまどか)
※死亡しても放送で呼ばれることはありません


【潜伏者と操り人形】
【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
※オーバーボデイで魔物に偽装中。
※四条化した魔理沙の死体を道下から譲渡されました。
※深雪の死にはまだ気がついていません
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】

417シシャの想い:2019/07/15(月) 18:50:08 ID:1sfJCahU0
――


……


「よっと……!」


ずぼりと、地面に転がされていた光の繭からフェネクスとユニコーンの頭が生える。

そう、激しい戦闘の中でもホモコンビは生きていた!
ドリスコルに盾にされこそしたが、エンタングルレイは拘束力に特化したもつれ光線。
殺傷能力はないのである。
そして光の繭となり転がされる……無害な存在と化せば、狂信者も魔物もそんなものにはもう警戒している場合ではない。
やるかやられるかの戦いの中で、かまけている暇などない。
それが逆に、ホモコンビの命を救っていたのだ。

強力無比なエンタングルレイとはいえ、その拘束力は強靭ながら永続ではない。
ようやく封じ――頭部分だけだが、それが解除されたのだ。

「ま、不味いですよこれは……」
「一度、セルベリアおばさんのところへ戻るべき……?」

そして光の繭の中にいた二人は鎮魂歌も聞けていないし、ドリスコルの断末魔も聞けていない。
とりあえずわかるのは、ゼオライマーがスクラップにされ放置されている点からしてドリスコル達が敗れたということ。
まだ兵力は残っているが、指揮官を失っては勝てる戦いも勝てないだろう。
強運にも生き延びた彼らは、聖帝軍の時と同じようにさらなる悪意と執念を持って――




「にしゃあああぁぁぁぁぁぁ!」



「「え?」」



しかし、両手足は繭のままの二人は、正面で目の合ったフォレスト・セルに異物と判断された。
異物は焼却だと言わんばかりに吐き出されたサンダーストームは、今度は二人のホモに愛する人への遺言も許さずに一瞬で機体ごと炭へと変えてしまう。
奇跡は起こることもあるし、起こらないこともあるのだ。

【道下正樹@くそみそテクニック】死亡確認
【遠野@真夏の夜の淫夢】死亡確認

418名無しなんじゃないのー☆:2019/07/15(月) 18:50:32 ID:1sfJCahU0
投下終了となります

419名無しなんじゃないのー☆:2019/07/15(月) 23:00:11 ID:F6dl5lNM0
投下乙です
ドリスコル&ルルーシュの作戦は悪辣だったが、都庁との経験や繋いだ絆の差が大きく出たな
そしてDMC狂信者もネームドは極ひとにぎり、サーフも黒幕バレという墓穴を掘る
ギムレーor小町の作戦もうまくいけば狂信者の壊滅も目前
ただ、さやかを駒にしているルルーシュはちょい怖いが……

420名無しなんじゃないのー☆:2019/07/16(火) 19:19:53 ID:BJe8oqnk0
投下乙!まさか深海棲艦に鎮魂歌で浄化して榛名登場とは予想外
気にもとめない送り込んだ道具から正体バレるってのもなんかサーフらしい気がするわ
しかし各々の知識と能力フル活用して戦うメンバーも当然すごいが、非戦闘員のピヨちゃんの貢献度が凄すぎる

421名無しなんじゃないのー☆:2019/07/17(水) 17:00:48 ID:7X0BuYkY0
>「ヒャハハ! 悪いがそのカスはもうご退場。今日から俺が新しい提督だ。宜しく……って言いてぇところなんだが。
 お前達みたいなのが出てくると戦争が上手く回らないからな。――旧型は全員、解体処分ってかァ!?」

これ絶対テルミだろw

422セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:34:58 ID:75ItxlDo0
新宿都庁の地下、奥深く。
そこにある広めの一室には、たくさんの物資と魔物たちがひしめき合っていた。
彼らは地上で戦っているFOEらと違い、ドラゴンハートの補正を受けても大きな戦闘力を得られない、いわば非戦闘員と呼ぶべき弱小魔物である。
彼らは戦闘についていけないとダオスから言い渡され、部屋に内側から鍵をかけることで狂信者からの攻撃をやり過ごすよう命令され従った者たちだ。

誤解なきように言っておくと世界樹を守るためには力だけではなく、復興の人員も必要なため、彼らもまた都庁にとっては欠かせない存在であった。
そのため、資材に加えて回復薬や武器などの物資も保管していた。
最悪、地上の世界樹がやられても彼らだけ逃げ出して再起を図る……という考えもダオスの中ではあったのだ。

そして、その魔物たちの中に紛れて諸星きらり、悪魔から人間となったザ・魔雲天の姿もあった。

「――ッ!」
「大丈夫だ、きらり、俺がついている!」

避難所は地上からの戦闘音が聞こえないほど深くにある。
だがそれでも、地上からの振動は伝わっており、それが地上で行われている戦いの激しさを物語る。
ただの少女に戻ったきらりが不安に駆られるのも無理はない。
周囲の魔物たちもこれまでの比ではない戦闘の激しさを肌で感じており、不安で胸がいっぱいであった。
電波の届かない地下なのでスマホ等で地上の様子を確認することもできないことが、余計に拍車をかける。
誰かが叫び声をあげれば確実にパニックになる……少女を必死で励ます、魔雲天は肌で感じていた。

「……?」
「どうした?」

ふと、きらりは誰かが歌っているような声を感じだ。
地中深くなのでホントに微かだが、音楽が聞こえた気がしたのだ。
そして、しばらくすると振動は完全に止んだのである。

「振動が止まったぞ……?」
『戦闘が終わったのか?』
『終わるにしては早すぎる』
『ど、どっちが勝ったんだ……?!』

魔雲天たちは知る由もないが、この時、狂信者側はドリスコルら多くの指揮官を失っており、戦場に残る残る狂信者・カギ爪団員も渚カヲルの歌によって戦意喪失。
魔物として潜伏しているルルーシュがまだ生き残っているため戦闘は完全終了したわけではないものの、ほとんど勝利の手前まできていた。
ただ、決着が付くにしろ予想よりも格段に早いため、魔雲天たちを逆に不安にさせたのだ。

「だ、だいじょ、うぶ……み、ん、な、は……勝て、るよ」
「!? きらり、おまえ声が……」
「ちょ、っと、だけ、ね」

きらりはかつてテラカオス化に伴う殺戮で、罪のない人や親友を殺めてしまったことで心の傷を負ってしまい、声を出せなくなる障碍を患ってしまった。
そんな彼女が、拙い発音ではあるが、確かに喋っていることに魔雲天は驚きと感動を隠すことができなかった。

「きらりには、地上の連中が勝ったのがわかるのか?」

魔雲天の問いかけに、きらりは首を横に振るが、完全な否定というわかではない。

「信じ、てる」

地上の者たちが勝ったというのはきらりの直感に過ぎないが、彼女にだけは聞こえた鎮魂歌が、都庁同盟軍の仲間たちが敗北したために歌ったとは信じられなかった。
きらりの少女はさっきまでの怯えた表情ではなく、いつもの自信に溢れた「ハピハピ」なオーラがにじみ出ていた。

423セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:35:22 ID:75ItxlDo0

(まったく、この娘は……下手な超人よりも強い心を持っている)

魔雲天は静かに微笑みながら眼をつぶり、きらりをそっと抱き寄せた。

「ああ、きっと上の連中は勝てるさ。そして俺たちに未来をもたらしてくれる」

今度は二人共服をちゃんと着ているが、布ごしでも二人の心臓の音がわかった。

「殺し合いも大災害もなんとかなったら……きらりはアイドルとして『ハピハピ』な歌をみんなに届けてくれ。
俺はすぐそばで、見守りながら聞いている」
「ありが、と、う…天ちゃん」

きらりの心の傷は深く、魔法では治せない障碍のことも考えると殺し合いが行われている間――少なくとも二度目の大災害が防がれるまでは歌を歌うこともできないだろう。
だが、それでも殺し合いが終わった後なら希望を持てる。
魔雲天の瞼の裏には平和になった世界、ステージの上で幸せそうに歌うきらりのビジョンが写っている。

「ゲヘヘヘ……ああ、この気持ちはなんだろうな……悪魔の時には感じられなかった、人間になってから感じる『この感情』……」

殺し合いが始まってからの付き合いであるが、魔雲天の中できらりの存在は確かに大きくなっていった。
悪魔将軍や味方の超人に向ける敬意とは違う、この熱い気持ちの正体は――


「きらり、ひょっとしたら俺はおまえのことが――」





【二日目・23時45分/東京都 新宿都庁世界樹・地下】

【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン】
【状態】人間、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】柔道着、ターバン
【道具】なし
【思考】基本:きらりや仲間を全力で守る
0:俺はきらりのことが――
1:騒ぎが収まるまで、きらりや戦えない魔物たちと共に避難所に待機する
2:都庁のみんな、聖帝軍のみんなの無事を信じる
3:悪魔超人は引退したが、あのお方や仲間への敬意まで失ったわけではない
※フォレスト・セルに悪魔の力を浄化され、ただの人間になりました
 戦闘力は激減であり、悪魔超人にはこれから起こる事情もあって二度と戻れません


【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ】
【状態】魔雲天に抱きしめらている、首がない
【装備】血まみれになった服
【道具】落ちた首
【思考】基本:死んでいる
0:死んでいる




「え……?」

急に、体を抱き寄せていたきらりの心臓の鼓動が止まった気がした。
魔雲天は気になって眼を見開くと、そこには

首が無くなり、断面から噴水のように血を吐き出したきらりの骸があった。

人間となった魔雲天の脳は理解が追いつかず、真っ白になる。

だが、きらりの真後ろにはTVゲームから飛び出したような奇抜な格好をした仮面ライダーがおり、その仮面ライダーが持つゲーム機コントローラーのような剣には少女のものと思われる血がついていた。
きらりを殺したのは、目の前の存在で間違いないだろう。

「貴様ッ――……」

先程まで仏のように穏やかだった魔雲天の表情が鬼のような形相になり、今にも仮面ライダーに襲いかかりそうだった。
だが、そんな彼も側面から傘で胸を貫かれた。

「がッ!?」
「残念ね、せめて候補者と悪魔のままだったら耐えられたでしょうに」

傘と言っても、怪物じみた存在による怪力も加わっている。
ただの人間からするとただの傘も騎士のランスと同じ威力であり、魔雲天は肺と心臓を貫かれる致命傷を負ってしまった。

息も絶え絶えの中で頭のないきらりの骸と共に地面に倒れた魔雲天。
そんな彼が死に際に見たのは絶望の光景だった。
魔雲天と共に避難してきた非戦闘員の魔物たちが叫びをあげることも許されないまま、装甲服を纏った兵士たちに次々と殺されていく。
一方的な虐殺であり、避難所にいた全ての魔物が全滅するまで2分かからなかった。

「きらり、きらりッ!」

死期が目前まで迫った魔雲天は這いずりながら魔物たちの死体の山をかき分け、きらりの生首を見つけて抱える。
きらりの表情は死後硬直で希望を持ちながら笑ったままだったが、眼から光も消えていた。
心臓を失った魔雲天もじきに眼から光を失うのだろう。

「ま、守ると誓ったのに……がはッ……――」



【諸星きらり@アイドルマスターシンデレラガールズ 死亡確認】
【ターバンのレスラー人間(ザ・魔雲天)@キン肉マン 死亡確認】

424セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:36:45 ID:75ItxlDo0




「……悪いわね、私たちにも世界のためにやらねばならないことがあるのよ」

魔雲天ときらり、避難所の魔物を残らず全滅させた存在は主催の手の者たち。
バイカイザーに変身した八雲紫。
仮面ライダーエグゼイドもといbiim兄貴に怪人ロボット・メガへクス。
そしてbiimがRTA走者という名前の暗殺者集団に仕立てあげた300名ほどの主催兵士たちであった。

彼らはロックマン・エックスの残した記録からフォレスト・セルの危険性を知り、撃滅を決意。
本拠地である九州ロボにはココとメフィラス、黒き獣への切り札であるなのはとユーノを残し、襲撃を敢行したのだ。
避難所は厳重に閉じられていたが、境界と境界のスキマを操り侵入できる八雲紫には鍵など無意味。
むしろ部屋を密室にしていたために誰も逃げることができず、地下深くにあったため誰にも助けを求められないまま全滅する憂き目を味わうことになった。

「感傷に浸るのはガバの元ですよ」
「あったぞ、お目当てのN2爆弾だ」

メガへクスは山のような物資の中から、かつてココが貴虎に売却し、世界樹破壊の要になる予定だった核以上の威力を誇る兵器N2爆弾。
起動コードは高虎しか知らなかったので誰も使うことができず無用の長もの、最高の職人であるレストでさえ未知の技術で作られていたため解体も不能。
かといって拾われたらマーダーや狂信者の武器になってしまうので捨てることもできず、廃棄できる余裕が出来るまで倉庫に死蔵されていたのだ。

ところがこの爆弾を売ったのは他でもない主催のココであり、ココを通じてこの三人は起動コードを教えられている。
避難所は爆弾を奪還を狙う主催陣営によって全滅させられたも同然なのだ。
それでも念押しにダオスらは魔術的な封印を上から施していたが……

「残念ね。どれだけレベルを上げても封印系魔術までは上げられないようね」

一山いくらの魔術師ならまだしも、幻想郷を作り上げた賢者である八雲紫の前に封印も解かれてしまった。
すかさず、三人は爆弾にコードを打ち込んで起動させる。
セットされた起爆時間は全て30分後だ。

「さて、潜入と起爆開始の第一工程はクリアだ。さて、世界樹本体の方に向かうとするか」
「ここから三つに分かれましょう」
「世界樹の中では都庁の連中も大技は使えないですしね」

三人はN2爆弾を一つずつ、兵士を100人ずつ同伴させて、世界樹の上層・中層・下層に分けてスキマを展開し、世界樹の内部へワープせんとした。
その前に、紫が他の二人や兵士に作戦を再確認する。


「ジャックの立てた作戦を再確認するわ。
この作戦の趣旨は古代グンマーの悪しき置き土産フォレスト・セルの撃滅にある。
ただし、世界樹を残していると都庁戦力あの手この手で傷ついたセルを回復させてしまう可能性もある」
「だから世界樹もついでに叩いてしまおうというわけだな」
「ええ、成長に成長を重ねて砦となった世界樹を地下で起爆させても大した効果は得られないけど、三つに分散させて一つでも内部で爆発させれば世界樹に大打撃を与えられる。
少なくともセルを支援する余裕はなくなるわ」
「爆弾の設置がバレたらバレたで、外にいる連中を世界樹の中におびき寄せることはできる。
 竜までならまだしも、フォレスト・セルと神樹、ついでにエヴァは狭い通路には入れないし、世界樹も巻き添えになるから高すぎる威力の技も使えない」
「……でも注意して欲しいのは私たちの任務は都庁勢力の虐殺や、世界樹の破壊が目的じゃない。
 本当の任務は囮、フォレスト・セルを守るナイトたちを遠ざけることよ」

世界樹の爆破だけでも同盟軍には致命傷だが、その部分はついでにすぎず、あくまで目的はテラカオス因子を消してしまうフォレスト・セルの一点だけである。

「都庁の強さは、数の少なさをものともしない質だけでなく、どんな作戦を練っても連携でそれを補ってしまうチームワークにある。
 私たちがそれを断ち、ジャックがフォレスト・セルを仕留める。
 これが私たちの作戦よ」
「ゆかりさん、そろそろ行かないと時間のロスが……ジャックさんも待ってるでしょうに」
「biimに同感だ、こんなヘルヘイムみたいな居心地の悪いところはさっさと出るに限る」
「脱出するにはせめて起爆1分前までは爆弾を防衛してね。
 頃合になったらさっき渡したキメラの翼を使って脱出して、それなら新宿ひいては都庁勢力の射程外から逃げられるから。
 ……そういえば、地上からの振動がなくなったわね」
「決着するにはやけに早いが都庁が勝ったか狂信者が勝ったか」
「都庁が勝ったばかりなら疲弊してる今しかチャンスがないですね。
狂信者が勝ってても御の字。頑張った彼らのご褒美に爆破寸前のN2爆弾をプレゼントしてあげましょう」

425セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:38:13 ID:75ItxlDo0

そして、303人は紫が用意したスキマに入り込み、世界樹へと侵入する。
だが、彼らは地下深くにいたために気づかない。
都庁が予言の歌を手に入れ、この大災害を引き起こした元凶の名前が浮上したことに。





一方その頃、天魔王軍と狸組との戦闘で跡形もなく消し飛んだ首相官邸跡地。
そこには水色の重量二脚級ネクストAC・フォックスアイと100名の兵士が佇んでいた。
彼らはなのはとユーノを拘束した後、九州ロボから人知れず東京へと降り立ったのだ。

(紫たちは侵入できただろうか……彼女らが地上に出るまで連絡が取れないのがもどかしい)

直撃さえすればフォレスト・セルをも撃滅できる可能性を秘めたオーバードウェポン――フォックス・アイに接続した何かの上に布を被せながら、主催陣営の参謀、ジャック・Oは今か今かと待っている。

「ん……?」

ジャックはギリギリまで状況を見極めるべくACのスコープで都庁と狂信者の戦いを見ていた。
首相官邸からだと少し遠すぎて見えづらく錯綜する激音のせいで声もよくわからないが、人質ごと爆散されるロボット軍団、撃墜されるグレートゼオライマーやガンダム、戦意を失いとうとう攻撃もしなくなったモブ狂信者たちから、狂信者の三度目の襲撃も失敗に終わったのがわかった。

「狂信者どもは彼らを見誤ったな……テロリストの善意につけこんだところで追い詰めてしまえば親兄弟を切り捨てる。
人質など所詮一時凌ぎにしか過ぎず、弾除けにするにも限度がある。
まあ、私なら人質の中にスパイを混じらせることも考えるが、狂信者最高火力のゼオライマーがやられた時点でどの道スパイだけでフォレスト・セルの撃破は不能。
そもそもゼオライマーでフォレスト・セルを倒せるのならば最初から殺せているだろうしな。
せめて支給品による捕獲は考えられなくもないが、都庁側がデコイなどで対策を練っていないわけもなさそうだから望み薄だ」

ジャック・Oは冷静に分析し、なんとなくではあるが狂信者側の作戦内容にアタリをつける。
見かけ上の狂信者の敗北がほぼ決定と見たところで、内部の紫たちから合図が届く。

「狂信者は頼れん……やはり我々で決着をつけるしかないようだ」

ジャックはコクピットの中でヘルメットをかぶり直した後、フォックスアイのマニピュレーターを操作して兵士たちに合図を送る。
出撃の準備だ。
兵士たちは一斉にホイポイカプセルを投げ込むと、そこにヒトマキナ・MS・TIEファイターが現れて中に搭乗する。
その様子を蝿と蛆が集り始めていたニャル子の首級だけが見ていた。


「グンマー、君たちに恨みはないがフォレスト・セルとその撃破に伴う犠牲だけは払ってもらう」
 今の君たちはドミナント(選ばれし者)ではない、イレギュラー(危険因子)だ」

狂信者の次は主催陣営。
都庁勢力は休む間もなく、戦わなくてはならない。

だが、悲しいことに、都庁から遠くにいた彼は気づかない。
都庁が予言の歌を手に入れ、この大災害を引き起こした元凶の名前が浮上したことに。
もし、それを知っていれば話し合いによる協調路線もあったかもしれないが、全ては遅すぎたのだ……



【二日目・23時00分/東京都 首相官邸跡地】


【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
【状態】リンクスに改造
【装備】フォックスアイ(ネクストに魔改造)@ARMORED CORE、拳銃    
【道具】ヒトマキナ・MS・TIEファイター×100、主催兵士×100、オーバードウェポン一式
【思考】基本:世界滅亡を阻止するためにテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:都庁にいるフォレスト・セルを撃滅する
1:フォレスト・セルを倒せる瞬間を見極めてオーバードウェポンを叩き込む
2:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは抹殺する
3:アナキンの回収は後回し、後で何らかの方法での情報共有を行いたい
4:フォレスト・セルの撃滅が終わったら残滓(ツバサ)と翔鶴も回収したい
  鎮魂歌に最適な歌い手も見つけたい
5:紫たちを信じる
6:ココ側による黒き獣討伐はうまくいくだろうか?
※どのオーバードウェポンを装備したかは次の書き手氏にお任せします
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません

426セイジャの思い:2019/07/18(木) 16:38:37 ID:75ItxlDo0


【二日目・23時00分/東京都 都庁世界樹内部のどこか】

【八雲紫@東方Project】
【状態】健康、バイカイザーに変身中
【装備】傘(血まみれ)、扇子、スペルカード@東方Project
【道具】ソロモンの指輪、仙豆×55@ドラゴンボール、ネビュラスチームガン@仮面ライダービルド、ギアエンジン@仮面ライダービルド、セイバーの手作り模型
    N2爆弾、キメラの翼、主催兵士×100
【思考】基本:幻想郷を守る為に主催を手伝う。
0:フォレスト・セルを撃滅する作戦の一貫として世界樹内部で囮を引き受ける
1:どのような事をしても幻想郷を守る
2:仲間と認めた存在の犠牲を無駄にはしない
3:ジャックを信じる
4:テラカオス化したなのはによる黒き獣討伐は捗っているかしら?
※境界を操る能力に制限がかかっています
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません
※N2爆弾は23:30分に爆発します


【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【状態】健康
【装備】太極図@封神演義、ライドブッカー@仮面ライダーディケイド、その他不明
【道具】支給品一式、ネクロノミコン@クトゥルフ神話、N2爆弾、キメラの翼、主催兵士×100
【思考】基本:契約の為に主催の命令に従う
0:フォレスト・セルを撃滅する作戦の一貫として世界樹内部で囮を引き受ける
1:世界を滅ぼされたら敵わないので契約続行
2:都庁の勢力が大災害をやり過ごした後で敵に回ると面倒なので、
  戦後を見据えて殺せるだけ殺しておく
※九州ロボの改造は終わりました
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません
※N2爆弾は23:30分に爆発します


【biim兄貴@現実?】
【状態】健康、完全体バグスター、魂魄妖夢にそのまんまの容姿、変身中
【装備】ゲーマードライバー@仮面ライダーエグゼイド、ガシャットギアデュアル@仮面ライダーエグゼイド
【道具】支給品一式、ガシャコンパラブレイガン@仮面ライダーエグゼイド、エナジーアイテム各種@仮面ライダーエグゼイド、じゅうべえくえすと
    N2爆弾、キメラの翼、主催兵士×100
【思考】基本:RTA走者として誰よりも早く任務をこなす。
0:みなさまのためにぃ、こんな動画を用意しました。
1:モブ兵士を全員強化(RTA走者にする)
2:再走は面倒なので主催陣営は裏切りません
3:個人的にダオスやレストと戦ってみたい、戦ってみたくない?
※人の遺伝子があるためライダーの変身可能です
※カヲルが作り出した全てを虜にする鎮魂歌、榛名が告発した黒幕の名前を聞いていません
※N2爆弾は23:30分に爆発します

427名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 16:39:29 ID:75ItxlDo0
投下終了です
……都庁にはもう一個だけ試練を乗り越えて欲しいと思った

428名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 18:35:34 ID:t/fGL/fY0
人数多くて状態表省略されてた弊害だが、N2爆弾全部ほむほむが回収してなかった?

429名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 18:50:29 ID:t/fGL/fY0
確認してきたが5224話でほむほむが三つとも盾に入れてた
まあココが追加で用意したとかで辻褄は合うけど……
もし起爆したらもうサーフの勝ち確で自分達で可能性潰したと後から知ることになるこいつらどんな顔するんだろう

430名無しなんじゃないのー☆:2019/07/18(木) 18:59:20 ID:75ItxlDo0
>>428
あ、ホントや
じゃあ、>>429風に修正しよっと

431修正:2019/07/18(木) 19:17:12 ID:75ItxlDo0
>>424部分のみ修正


「……悪いわね、私たちにも世界のためにやらねばならないことがあるのよ」

魔雲天ときらり、避難所の魔物を残らず全滅させた存在は主催の手の者たち。
バイカイザーに変身した八雲紫。
仮面ライダーエグゼイドもといbiim兄貴に怪人ロボット・メガへクス。
そしてbiimがRTA走者という名前の暗殺者集団に仕立てあげた300名ほどの主催兵士たちであった。

彼らはロックマン・エックスの残した記録からフォレスト・セルの危険性を知り、撃滅を決意。
本拠地である九州ロボにはココとメフィラス、黒き獣への切り札であるなのはとユーノを残し、襲撃を敢行したのだ。
避難所は厳重に閉じられていたが、境界と境界のスキマを操り侵入できる八雲紫には鍵など無意味。
むしろ部屋を密室にしていたために誰も逃げることができず、地下深くにあったため誰にも助けを求められないまま全滅する憂き目を味わうことになった。

「感傷に浸るのはガバの元ですよ」
「いちおう、世界樹の内部には侵入できたが転移位置がかなり下過ぎないか…?」
「蒼のせいで遠距離のワープができないし、世界樹は内部構造も時間増しに変化しているみたいだから地図は当てにならない以上仕方なかったのよ。
 まさか転移した先に兵隊の詰所があったのは驚いたけど、奇襲でなんとかなったわね」

ちなみに紫たちは避難所を予備兵力の詰所だと思っている。
幻想郷の賢者と言えど、魔雲天たちが非戦闘員ということまでは見抜けなかったようだ。
ここが避難所だとわかれば勘違いによって皆殺しにする必要はなかっただろう。

「さ、すぐそこの物資を破壊した後、N2爆弾を起動しましょう」

回復薬など目に付く物資を全て破壊した後、三つの爆弾を起動する。
爆弾とはココが貴虎に売却し、世界樹破壊の要になる予定だった核以上の威力を誇る兵器・N2爆弾。
それと同じ爆弾が三つだけ九州ロボの倉庫には残っていたのである。
そして、三人は爆弾にコードを打ち込んで起動させる。
セットされた起爆時間は全て30分後だ。

「さて、潜入と起爆開始の第一工程はクリアだ。さて、世界樹本体の方に向かうとするか」
「ここから三つに分かれましょう」
「世界樹の中では都庁の連中も大技は使えないですしね」

三人はN2爆弾を一つずつ、兵士を100人ずつ同伴させて、世界樹の上層・中層・下層に分けてスキマを展開し、世界樹の内部へワープせんとした。
その前に、紫が他の二人や兵士に作戦を再確認させる。


「ジャックの立てた作戦を再確認するわ。
この作戦の趣旨は古代グンマーの悪しき置き土産フォレスト・セルの撃滅にある。
ただし、世界樹を残していると都庁戦力があの手この手で傷ついたセルを回復させてしまう可能性もある」
「だから世界樹もついでに叩いてしまおうというわけだな」
「ええ、成長に成長を重ねて砦となった世界樹を地下や地表で起爆させても大した効果は得られないけど、三つに分散させて一つでも内部で爆発させれば世界樹に大打撃を与えられる。
少なくともセルを支援する余裕はなくなるわ」
「爆弾の設置がバレたらバレたで、外にいる連中を世界樹の中におびき寄せることはできる。
 竜までならまだしも、フォレスト・セルと神樹、ついでにエヴァは狭い通路には入れないし、世界樹も巻き添えになるから高すぎる威力の技も使えない」
「……でも注意して欲しいのは私たちの任務は都庁勢力の虐殺や世界樹の破壊が目的なんじゃない。
 本当の任務は囮、フォレスト・セルを守るナイトたちを遠ざけることよ」

世界樹の爆破だけでも同盟軍には致命傷だが、その部分はついでにすぎず、あくまで目的はテラカオス因子を消してしまうフォレスト・セルの一点だけである。

「都庁の強さは、数の少なさをものともしない質だけでなく、どんな作戦を練っても連携でそれを補ってしまうチームワークにある。
 私たちが連携を断ち、ジャックがフォレスト・セルを仕留める。
 これが私たちの作戦よ」
「ゆかりさん、そろそろ行かないと時間のロスが……ジャックさんも待ってるでしょうに」
「biimに同感だ、こんなヘルヘイムみたいな居心地の悪いところはさっさと出るに限る」
「脱出するにはせめて起爆1分前までは爆弾を防衛してね。
 頃合になったらさっき渡したキメラの翼を使って脱出して、それなら新宿ひいては都庁勢力の射程外から逃げられるから。
 ……そういえば、地上からの振動がなくなったわね」
「決着するにはやけに早いが都庁が勝ったか狂信者が勝ったか」
「都庁が勝ったばかりなら疲弊してる今しかチャンスがないですね。
狂信者が勝ってても御の字。世界のために頑張った反社会的勢力にはご褒美にN2爆弾大爆発をプレゼントしてあげましょう」

432魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:13:06 ID:Jdkw41xY0
18時30分からおおよそ4時間の間にシャドウであった者は、大量の取り込んだ死者の魂を砕き、己のエネルギーへと変えた。
多くの者の断末魔が体内で響くが、シャドウは完全に無視する。


※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません

【デューク渡邊@新テニスの王子様】
【霧雨魔理沙@東方project】
【TDN@真夏の夜の淫夢】
【ケルベロス(小) @カードキャプターさくら】
【熊田薫@キテレツ大百科】
【矢車想@仮面ライダーカブト】
【ヘルクラウダー@ドラゴンクエスト7】
【葉隠康比呂@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【ドラゴニック・オーバーロード“The Яe-birth”@ヴァンガード】
【田井中律@けいおん】
【ザ・テリーマン@キン肉マン】
【ビーストマン@ロックマンエグゼ】
【カギ爪の男@ガン×ソード】
【初音ミク@VOCALOID】

『くッ……』

また多くの魂が砕かれたことに辛い思いをする、混沌の騎士。

「この世界の者の魂はいずれ、全てが蒼に還る。
 魂を消された者には痛みや悲しみという感情も失うのだ。
 考えようによってはこれが一番の幸福なのだ、苦い顔をするな混沌の騎士よ」

シャドウは砕いて蒼に還元した魂の力を吸い、力を蓄えていく。


「それにしてもダークディケイドたちは圧倒的な力の前に魂を消失したか……」

ダークディケイドたちはシャドウによって肉体・魂を加工された死者。
普通に殺しただけならリソースとしてシャドウに魂が戻るハズだったのだが、いかんせん相手のパワーが強すぎた。
または死や闇の力を司る邪竜が近くにいたために力場が乱れ、魂は戻ることなく砕け散ったようだ。
戻ってきたのはディケイド・ディエンド・仮面ライダーダークキバもといOTONAの力が永久に失われたことだけだ。

「クッ、せめてディーヴァの残滓が今どうなっているか、どこまで力を取り戻しているか知りたかったが、それさえできんとは」

この殺し合いはより多くの弱点を知ろうとする、情報戦が全てであると言っても過言ではない。
残滓が再戦した時に前に戦ったよりも格段にパワーアップしているケース、戦闘方法が全く違う可能性さえあるのだ。
いずれ戦うかもしれぬなら知っておいて損はない。
いちおう、諸事情で彼女の周りに大量の死者が出ているのだが、死者スレで抗うカルナたちの奮闘により、犠牲になったイチリュウチームの面子やアウラの民の魂を取り込めてないので情報が入ってこない。

「……致し方あるまい、もう一度尖兵を送り込む。
 今度は戦闘力よりもスパイ活動に向いてそうな頭の良さそうな者をメインに」

今度は頭脳面に優れた者を主軸に送り込もうと、取り込んだ死者を再生する。




「あ、そうだ。(唐突)
 いつまでも我の名前が『シャドウであった者』だと締まりが悪い気がするからこの度、『黒き獣シャドウ』に改名したぞ」
『誰に向けて話しかけてるんだ……メタ発言か』
「しかし、改名するだけで死者の魂を百人使ったのは骨が折れたな」
『私が言うのも難だが魂の力を無駄使いすな!』

死者の魂を大量に取り込んだ影響かは不明だが、唐突に第四の壁に向かって発言をするシャドウであった者、もとい黒き獣シャドウ。
そんな一幕の直後、彼が再生しようとしていた死者の魂が、遠方からの砲撃によって弾けとんだ。
間近にいたシャドウは直前で攻撃に気づき、後方へのロングスウェイで躱す。

「ぬう!?」
「「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!」」

シャドウへの被害はなかったが、死者三体は再生しきる直前に蒸発した。



※以下のキャラの魂が完全に破壊されました
 物語がどのような結末を迎えても、二度と復活できません


【夜神月@DEATH NOTE】
【クルル曹長@ケロロ軍曹】
【金田正太郎@太陽の使者 鉄人28号】

433魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:15:02 ID:Jdkw41xY0




「攻撃か!
 だが、我に打撃を与えられるのはテラカオスだけ!
 いかなる攻撃でも他は蒼の力によって消滅する!
 ……ということは」

全てを破壊するエネルギーである蒼を纏った黒き獣に近づける存在は蒼の耐性者とテラカオスの二つだけ。
シャドウが自分に攻撃した存在を探すと。数キロ離れた位置に巨大フェレットによく似た怪物が空を飛んでいた。
怪物は遠くからでもわかるぐらい、殺意をこちらに向けていた。
シャドウは急いでを臨戦状態に移り、聖約・運命の神槍を抜く。

「フェレット型の怪物……ユーノ・スクライアか!」


シャドウが一つだけ誤解していたのは、フェレット型の怪物はユーノではなく、彼のテラカオス因子を事故で引き継いでしまった高町なのはである。

(あれを倒せば私が完成したテラカオスとなり、ユーノくんを救える……ゼッタイ二アイツヲコロサナキャ)

怪物となった高町なのは、もといテラカオス・リリカルは黒き獣に向けて咆哮をあげた。



☆彡 ☆彡 ☆彡

沖縄県から少し離れた位置……ギリギリで蒼の影響を受けない位置ではダークザギが撮影機材らしきものを手に持って二つの獣たちの戦いを撮影している。
そのカメラの映像が送られる先は、成層圏まで浮上した九州ロボだ。


「テラカオス・リリカル、黒き獣との交戦に入りました」

九州ロボのコクピットにて、メフィラス星人がオペレーターのようになのはたちの戦いの様子をココやユーノに伝える。

「なのはは勝てるのか……?」

同室にいたユーノは、九州ロボのファクターであるココに不安そうに尋ねた。

「勝てる保証はしかねるわ……ただ物理攻撃にもエネルギー攻撃をも無効化できるほどの防御特性を持ったテラカオスでは彼女だけ。
 現状で黒き獣に勝てる存在が彼女しかいないから、本州に残った人々を守るためには彼女に戦ってもらうしかないのよ。
 勝てば彼女は黒き獣の蒼の力を吸収してテラカオスとして完成、そこに救済の予言の完遂も果たされば、晴れて世界も大災害の驚異から救われるわ」

なるべく冷静を装うとしているココだが、彼女も貴重なテラカオスがやられてしまうんじゃないか、不安と焦りを押し殺していた。


伊豆諸島基地を犠牲に、なのは(テラカオス・リリカル)とユーノを拘束した主催陣営。
二人はその後、もっとも知りたかった殺し合いの真実を知ることになる。
当初の予定と違って情報を主催から奪うというより齎された形ではあったが。


主催陣営は世界を大災害から救うためにやむを得ず、殺し合いを開くしかなかったこと。
野田総理はただの傀儡。
大災害の正体や蒼、テラカオスの必要性や救済の予言の意味。
さらに都庁にいるフォレスト・セルは世界的には危険な存在であり、因子を消してしまうことで世界を滅びに導く存在と知った。
そして……大災害さえ乗り切れば、テラカオスは正気に戻り、原初のテラカオスと巫女は戦乱で命を落とすまでは生きていたことも……


これを教えられたなのはは、ユーノを救うために最大の障害である黒き獣の討伐に乗った。
また膨大な蒼の塊である黒き獣の力を吸収できれば自身がテラカオスとして完成し、大災害突破への道が開けると踏んだからだ。
なのはは危険を承知で、ユーノの反対を押し切り(逆らえばユーノが主催に殺される可能性もあったため)、九州ロボから沖縄に向けて出撃した。
ちなみに同時期にジャック・紫・メガへクス・biimもフォレスト・セル討伐のために東京へ出撃し、ココとメフィラスそしてユーノが九州ロボに残ったのだ。


(だが、きな臭い……
 古代の事件に救済の予言。
 フォレスト・セルの危険性はいちおう信用するけど。
 本当に大災害を止めたテラカオス……なのはは助かるのか?)

肝心のユーノは主催陣営の話を全ては鵜呑みにしていなかった。
特にテラカオスとなり大災害を止めた者が助かった件は、記録の中の存在でしかないエックスが喋っていただけであり、幸せに過ごした瞬間などの映像はない。
むしろ世界を破滅させる災害のエネルギーを吸収した存在など、力を疎まれるか狙われて命が危ないだろう。
常識で測れない怪物になるのに幸せに過ごせるなどとても思えない。
だからその一点だけは嘘ではないかとユーノは疑っていた。

(クソッ、せめてこの首輪さえなんとかなれば)

だがユーノは主催への口答えもできなかった。
理由は首につけられた特別性の首輪。
これは参加者が既に見つけた方法では絶対に外せない仕組みであり、これがユーノとなのはの反抗を防いだ。
逆らえばユーノの首が主催の意志一つで飛ぶだろう。
だから核心に迫ったことを聞き出すことができなかった。

434魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:16:02 ID:Jdkw41xY0



実際、主催が二人に渡した情報は古いか手を加えたもの。
原初のテラカオスは太古の大災害を止めた時に命を落としており、ナノマシンに備え付けられた自滅プログラムがある以上、なのはもまた大災害を止めたと同時に命を落とすことが決定づけられている。
テラカオス化した存在に未来はないことをココとメフィラスは伝えてない……全ての真実を明かさないことでなのはを黒き獣と戦わせて、テラカオス以外の未来を守らせるために。

そして主催陣営も知らないのがフォレスト・セルの現状。
確かにフォレスト・セルは古代グンマーが滅びを美徳とする理想を叶えるために因子を消してしまう危険な存在であったが、現代のグンマーの巫女によりその危険は回避されていたのだ。
だがユーノはなのはから教えられた千年タクウの未来で自分の尻が掘られることを教えられ、そこからフォレスト・セルは危険な存在であると認識。
実際の真実より嫁の言葉を優先したのだった。

(ココたちはなのはがピンチに陥った時に彼女を見捨てる可能性も十分にある……そうなる前にどうするユーノ、考えろ……)

いちおう、主催の目的や理念は知ったが、まだユーノは主催陣営を完全に信用したわけではなかった。



(ココ嬢、ユーノさんに目論見を気づかれてませんか?)
(中身九歳児のなのはちゃんはまだしも、聡明な彼の方は、おそらくね。
 でも私たちにも退けない理由がある。
 テラカオスや予言が完成する前に黒き獣に本州を攻められたら大災害を防げなくて世界はおしまい。
 鬼だ悪魔だと罵られようとも、なのはちゃんには黒き獣を倒し、最終的に死んでもらわないといけない)

ココとメフィラスもなんとなくではあるが、ユーノに疑いの目を向けられていることを察していた。

(ところで万が一、なのはさんが黒き獣に負けた場合はどうなるんです?
 奴に吸収能力などがあった場合、危険だと思うんですが)
(その時は殺される寸前にダークザギにサルベージしてもらうわ。
 ダークザキは犠牲になるけど、あれの耐久力と瞬間移動能力ならなのはちゃんを救う数秒間はなんとかなる筈よ)

主催にとってなのははただの鉄砲玉ではなく、いちおう危険になったら助けるつもりであるということをユーノはまだ知らない。



【二日目・22時00分/沖縄県】

【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(中)、疲労(中)、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 他不明
【道具】不明、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:ユーノ(実際はなのは)の破壊
1:終わったらあの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊を継続する
2:死者スレの掌握
3:体力と傷の回復
4:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫く
5:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています、蒼の耐性者やテラカオス以外が踏み入ると問答無用で即死します
※ディーヴァの捕食した能力も込みで持っているようです。
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に9時間30分以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません
※テラカオス・リリカルがなのはであると気づいていません(その手の情報を持つ死者をまだ取り込んでないため)

435魔女と黒獣:2019/07/21(日) 16:16:20 ID:Jdkw41xY0


【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【状態】19歳の身体、ケモ耳、すごい罪悪感、テラカオス完成度50%
【装備】なし
【道具】なし
【思考】基本:ユーノの安全を最優先
0:黒き獣を殺し、テラカオスとして完成する
1:ユーノくんの身が危ないので今は主催に従う
2:ユーノを傷つけたギムレーは信用しない
  イチリュウチームに戻りたくない
※千年タウクの効果によって、高町ヴィヴィオの存在と日本に世界を襲った大災害が起こる未来を知っています
※ユーノの精液(四条化細胞+キングストーンの一部の力)を全身で受けた結果、テラカオス化汚染が譲渡されテラカオス候補者に。
 さらに風鳴翼の右腕を食べたことで完全にテラカオス化しました。
 特効薬でもフォレスト・セルやツバサの治療でも治せません。
※テラカオス化したユーノから受け継いだ能力として
 あらゆる攻撃を防いでエネルギーを吸収し、威力を数倍にして返す魔力の塊を発射できます
 ただしほぼ暴走状態に陥っており、ユーノ以外の敵味方に関係なく襲い掛かります
 またTCを扱うシャドウの危険を本能的に察知できるようになりました
※ユーノを通してツバサから奪ったキングストーンの能力として「ゲル化」ができるようになりました
 「ロボ化」は不明
※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。
 テラカオスに自滅プログラムがあることは知らず、大災害突破後も助かると思い込んでいます



【二日目・22時00分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギン、スパークドールズ(ダークザギ)、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、
     主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る
5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する
※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です
※千年タクウはなのはから没収しました


【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:なのはが黒き獣を殺せるよう祈る
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る
※ユーノとなのはに見せたプロジェクトテラカオスの全容とエックスの記憶は
 完成したテラカオスの結末が生きている形に変わっています


【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】
【状態】疲労(中)、19歳の身体、特別性の首輪
【装備】ストームトルーパーの装甲服
【道具】なし
【思考】基本:大災害による世界滅亡を防ぐ……?
0:なのはの身が危ないので今は主催に従うふりをする
  危なくなったら主催を裏切る
1:全てにおいてなのはの安全を優先する
2:なのはを絶対に護るためにも、もっと力が欲しい
3:いかなる理由があってもなのはを悲しませた主催者たちは絶対に許したくないが……クソッ!
※タイムふろしきを使ったので、19歳の肉体に成長しました
※PSP版の技が使えます
※特効薬を使ったことでユーノ自身のテラカオス化は完全に浄化されました。
※一部改竄されたロックマン・エックスのメモリーを見たことで、主催の殺し合いの目的や救済の予言の意味、蒼の知識を得ました。
 ただしテラカオスが大災害突破後も助かることには懐疑的です。
 なお、フォレスト・セルは千年タクウが見せた未来の一見もあり普通に危険視。

436実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:03:30 ID:VUmLQe4I0
第一回にて双方に一名ずつ戦死者が出てしまった、配置が以下のように変更になった。


『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
平等院鳳凰        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)



『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火        1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
千早           5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

(代打・代走)
イオリ・セイ


――では、試合の続きをお楽しみください。


 ◇

カッキーンッ!

「なん…だと……!?」

第二回の始まりは、聖帝軍ピッチャー高津の投球がプニキに打たれるところから始まった。
プロクラスでないとまず捉えられないメジャーリーガーの剛速球。
それを天才バッター・プニキはいとも容易く、まるで呼吸するかのように打ったのだ。
打球はホームランコースであり、轟ッとセンター方面へと飛んでいく。

「ダメだ!届かない!」

高津は宗則の時のようにブルースワローの飛翔能力を使って取ろうとするが、打球は彼よりも遠く早く飛んでいった。

「レイジ」
「君に任せた!」
「おう、任せろ!!」

高津の後方、二塁にいた金色の闇もトランスフォーム能力で髪を伸ばして取ろうとするが間に合わなかった。
極制服なしでは特殊能力を持たない犬室田ならなおさらである。
そこでさらに後ろに居たセンター、スタービルドストライクに乗るレイジが取ろうとする。

「体のどこかに当たってくれ!」

18mはあるガンダムに直径70cm前後のボールをキャッチするのは、レイジの操縦技術をもってしても難しい。
しかし巨大なボディのどこかに当たれば、少なくともホームランだけは防ぐことができる。
そうすれば被害をヒットに抑えるか、ガンダムにぶつかった球を他の選手が取ればアウトに持ち込むこともできる。

「甘いな、その考えはハチミツのように甘いぞ」

しかし、プニキのほくそ笑み、彼が言ったとおりにその作戦は甘かったと聖帝軍は痛感することになる。

「なにィ!?」

球はガンダムの右脇の辺りに当たった。
だが、球は装甲と装甲の凹凸に弾かれるように跳弾し、何回かガンダムの脇の中を跳ね回ったあと、後方へ飛んでいき……そのままフェンスを超えてホームランとなった。

「まるで、曲芸……!」
「フッ……」

プニキはセンター方面にいるガンダムがホームランの障害になると見越しており、ガンダムの装甲の凹凸をあらかじめ狙って、ホームランになるよう計算して打ったのだ。
見事に拳王連合軍に先制点をもたらしたプニキは悠々とベースを巡り、ホームへと帰っていった。

「まさか、あんな化け物バッターがこの世にいたとは……」
「高津さん、気を落とさないでください。まだ一点です。
それにデータも取れました。次の戦いに生かしましょう」
「……そうだな、一回打たれただけで挫けちゃあの世にいる佐々木に笑われる」

プロでもない熊にあっさりと自分の投球を取られ、先制点を許したことに高津は気を落としかけるが、犬牟田の励ましにより立ち直る。
他の選手もまた「これからだ」という気持ちを抱き、闘志を鈍らせることはなかった。


                 拳 1-0 聖

437実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:04:17 ID:VUmLQe4I0


その後、高津はプニキの後に控えていたMEIKO、平等院、翔鶴(+ロックマン)を完封する。

「チッ!」
「殺気がダダ漏れだぞ、俺から見たら次にどんなコースを打とうかわかるレベルだ。
ピッチャーならまだしも、バッターには向いてないな」

「簡単には滅ぼさせてくれないか……」
「さっきの女よりはマシだがおまえも殺気が漏れている、メジャークラスだと動きを読まれるぞ」

「このバトルチップじゃ通用しない」
『他のチップ温存のために使ってみたけど、やっぱりガッツマンとデカオのバトルチップはダメだ』
「道 具 の せ い に す ん な」

三人も本来なら強敵であるが、高津もプロ野球選手であり、バッティング力で宗則やプニキには及ばなかった。




「なんとか、失点を一点に抑えられましたね」
「ああ、巻き返すぞ」

第二回裏のイニングでは四番バッターとしてサウザーが出陣する。
対するピッチャーのMEIKOは舌なめずりをしながら、攻撃態勢に入る。

「へえ、大将直々のご出陣か」
「かかってこい年増女、聖帝サウザーの本気を見せてやる」
「……おまえはMEIKOボールでぶち殺す!!」

年増という言葉が逆鱗に触れたのか、MEIKOは本気の一球・MEIKOボールを投げた。

(最初はコース見極めのために見送るか)

打ってもキュアエースレベルの贅力では殺されてしまう殺人球。
まずは目でMEIKOボールの威力・速さを知るためにサウザーは初球は見送る判断とした。

しかし放たれたMEIKOボールを打たなくても凄まじい風圧を巻き起こし、ボール本体はラオウのミットの中に収まっていくだけのストレートに関わらず、残った風圧がかまいたちとしてサウザーの上半身を切り刻んだ。

「うわ!?」
「「サウザーッ!?」」
「し、心配するな、見た目よりずっと軽傷だ」

かまいたちにより斬られ鮮血を撒き散らしたサウザーであったが、南斗聖拳の使い手として「お師さん」に鍛え抜かれた肉体に助けられ、表面の皮膚が切れただけで済んだ。
これがサウザー以下の耐久力の選手ならもっと悲惨なことになっていただろう。

「大将が見送るなんてつまらない真似すんなよ」

マウンドの上からケラケラと相手を煽るMEIKO。
一方のサウザーはこれが安い挑発だと見抜き、煽りに乗って激昂することはなかった。

(とはいえ、向こうの四番バッターだ。
四番に選ばれるにはチーム最強のバッティング力はあるはずだ)

表面上の態度は世紀末ヒャッハーなMEIKOであるが、内面では計算高さと冷静さを持ち合わせた猛獣も飼っている。
四番バッターとは本来、最高のバッティング力を持ってしかる存在だ。
拳王連合軍でも四番の証はプニキが持っているように、サウザーも最高のバッティング力を持ってなければおかしい。
プロである高津を差し置いて四番の椅子に座っているのだから聖帝が高津以上の攻撃力を持ってなければ筋が通らないのだ。

(だったら、全力のMEIKOボールで仕留めてやる。
このMEIKOおばさんを年増と言って見下したことを後悔させてやるぜ)

MEIKOは別に年増と言われたことを怒っているのではない。
見下されることに何よりも殺意を覚えているのだ。

「さっきの小娘の時とは違う全力全開でいくぜ、黄金の回転を加えた……MEIKOボール!!」

ほぼ直角に曲がるシュート回転(黄金の回転)。
そこにメジャーリーガー級のパワーと漆黒の殺意をミックスした殺人球MEIKOボール。
投げられた殺意の球は真っ直ぐにサウザーへと向かっていく。
なお、普通の野球ならデッドボールだが、カオスロワ式野球ではバッターの殺害に成功した場合はそのままアウトになる。

「あれはヤバイ……」
「サウザー!」

直感でこれまで以上に殺傷力がある球が投げられたと悟ったベンチの聖帝軍。
思わず高津と闇はサウザーの身を案じ、声を上げてしまう。

だが、サウザー自身は至って冷静であった。

(心配するな、闇、高津。
俺だってただ黙って見てたわけじゃない、あのピッチャー女のクセを探っていたんだ!)

サウザーはこれまでの試合の流れをぼうっと見ていただけではなく、MEIKOの投球のクセ、そしてキャッチャーとして高津とバッテリーを組んだ時もMEIKOは5番バッターとしてバッターボックスに立っており、その際に肘や腕の動き方も観察していた。
帝王の星「将星」、南斗鳳凰拳の伝承者の名前は伊達ではない。
常人なら見逃すレベルの超速フォームでさえきっちり視界に捉え、MEIKOの球がどこに来るのかを予測する。

(俺に直撃コースは当たり前として……狙いは心臓か!)

読み通り、MEIKOボールは心臓を屠ろうと狙って投げたものだ。

438実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:04:51 ID:VUmLQe4I0

「面白い、見せてやろう! 聖帝サウザーの本気を!!」

サウザーは心臓を打ち抜かれる前に、MEIKOボールに対抗しようとした。
発生するかまいたちの余波で傷つくが、サウザーをバッティングフォームを全く崩さない。

「む、あれは……!」

キャッチャーとして間近にサウザーのフォームを見ていてからわかる。
あの打ち方は――




「――バント?」




バント。
普通に打つよりは命中しやすくなるが、大きなヒットは絶対に望めない、牽制的な打ち方。
拳王連合軍はそう、タクアンから聞いている。

「アハハハハハ、これが聖帝の本気かよ」

MEIKOの嘲笑も無理はない。
いちおう、サウザーは打ち返しには成功したが、飛んだ球は少し地面をゆっくり転がっただけのゴロであり、それもまたMEIKOの手前に落ちて拾われてしまう。
あとは一塁に届ければサウザーはアウトのハズ。

「まあ、打ち返したことは褒めてや」
「いかん! MEIKO、早く投げるのだ!」
「え?」

それはラオウに呼ばれ、MEIKOが瞬きを一回しただけの僅かな瞬間であった。

バッターボックスに入っていたハズのサウザーが姿を消していた。
サウザーが一塁へ走ったのは誰でもわかるだろう。
だが、拳王連合軍に取って予想外だったのは――サウザーの機動力であった。

「きゃあ!」
「ぐあ!」
「WRYYYYYY!?」
「なッ!?」

MEIKOは驚愕する。
黄色い閃光のようなものが走っているかと思いきや、一塁・二塁・三塁を防衛していた選手すなわち翔鶴・ジョジョ・ディオが順番に弾き飛ばされたのだ。
飛び道具を使ったわけでない証拠に、ベース一つ一つに確実に足跡がついていく。
閃光の勢いは止まるどころか増していき、ラオウが守るホームベースまで「前進制圧」を行わんと向かっていた。

「ラオウ!」

MEIKOは即座にラオウに送球を行おうとする。
その送球もラオウ以外には取れないレベルのかなりの剛速球だったが、閃光となったサウザーがベースを早いように見える。

(彼奴の方が僅かに早いか……? ならば!)

ラオウは閃光となったサウザーに向けて、残った片手で拳の一撃を放つ。
無論、カオスロワ式野球でこの程度の妨害は反則にはならない。

「遅いな」
「うぬうッ!」

ラオウの拳が直撃すれば運が良くても瀕死は避けられない威力だったが、サウザーはこれを体操選手のように軽やかに跳躍して躱し、ラオウの巨体を乗り越えた後にホームベースを踏んだ。
ラオウのキャッチャーミットに球が入ったのは一瞬後であった。

直後、翔鶴・ジョジョ・ディオ・ラオウの順番で体から鮮血が吹き出た。
サウザーはすれ違い様に極星十字拳で選手たちを切っていたのだ。
無論、カオスロワ式野球でこの程度の攻撃は反則にはならない。


「見たか、MEIKOよ、拳王よ、これが聖帝の本気だよ」
「クッソたれ!!」
「ぐぬぬ」


拳王連合軍が侮っていた……いや、まだ正式に野球の試合をしたのがこれが初めてだったため、データ不足というべきか。
サウザーの速度を多くの者が知らなかった。
対カギ爪団戦ではドラゴンハートで強化されたこともあり、世界樹の番人であるレストをも凌ぐ機動性を見せた。
その時の比較対象はドラゴンハート強化前のレストだったが、実はサウザーの方は早さの成長に関しては格段に伸びしろが残っていたのである。
少なくとも能力に頼らないスピードへの素質は強化レストより……いや現状全ての参加者の中でトップと言っても過言ではない。

はっきり言おう、サウザーの足の速さは全参加者最速であると。
彼がバントした後、10秒もあればベースを一周できてしまうぐらい早く、対応が遅れたことに拍車をかけてサウザーの帰還を許してしまったのである。
そして両チームは同点に並んだ。


                 拳 1-1 聖

439実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:05:17 ID:VUmLQe4I0


一点を取り戻したことに聖帝軍側は歓声に湧く。

「流石、サウザーです!
でもまだ同点……あんまり調子には乗らないでください」
「手厳しいな闇……できれば亡くなった亜久里のためにも一人ぐらい南斗鳳凰拳で首を落としたかったが、拳王連合軍の猛者には打撃を与えるだけに留まったか」

先程拳で斬った四人を見るが未だ健在であり、多少の怪我は負ったようだが選手として試合続行は可能だった。

「アイツよくもうちの未来の旦那に怪我を!」
「怒るなMEIKO、こんなものただのかすり傷だ」

『翔鶴!』
「翔鶴姉!」
「大丈夫、肩当てが切れてちょっと切り傷を作っただけ」

『お館様……』
「右腕を斬られたが筋は繋がってる。
危なかった……咄嗟にムラマサブレード出して防御しなきゃ首が飛んでたぜ」
『奴の攻撃はあなたの幻想殺しでは防げない。注意をなされよ』

「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!!
悔しいが、スタンドを出す暇もなかった」
『俺とフュージョンして鎧を纏ってなかったら、心臓まで手刀が届いていたかもな』


ラオウは分厚い筋肉の鎧に守られ、他の三人はネットナビと融合して防御力や瞬発力を上げていたため、軽傷で済んだのだ。


「さあ、我々の攻撃はまだ終わっていない、ゆけ千早よ
『ふなっしーならまだしも、おまえに命令されるのは……まあ従うが』

点をもぎ取ったサウザーに続き、千早がバッターボックスに入る。
ちなみにバットは口にくわえて使うようだ。

「くそ、聖帝の次はおニャンコかよ……いいぜ、死を恐れないならきやがれ!!」

聖帝にしてやられたことでイライラのボルテージを上げていたMEIKOだが、ラオウになだめられたこともあり、なんとか気を取り直す。
そして、MEIKOボールを投げたが、これもサウザーに投げたものと同じ、直撃コースの危険球だ。
だが千早は直立不動でこれを避けることも打つこともせず、直撃させたのだ。

「嘘だろ……!?」

MEIKOボールは確かに直撃した。
本当ならば虎は木っ端微塵の肉片になっていてもおかしくなかった。
だが、虎は健在・そして無傷だった。
いつの間にか虎が纏っていた氷でできた鎧にボールは張り付いていた。


「ふう、アタイの最強の頭脳と氷を操る程度の力、それから大阪での経験が生きたね」

MEIKOが投げる前に千早に鎧を纏わせた下手人はベンチにいるチルノであった。
その横で眼鏡を輝かせる犬牟田と共に解説をする。

「君はボールで直接的にも間接的にも選手を殺そうとするクセがつきすぎている」
「そしてアンタの投げる球は黄金比による超回転技「黄金の回転」を使って威力と命中率を底上げしている。
裏を返せば、何らかの手段で逸らしたり、逆に威力を最小限にとどめてからあえてぶつけさせてしまえば良い。
アタイの氷なら、アンタの投げた球の回転をゼロにする芸当も不可能じゃない」
「罠にかかったね。MEIKOおばさん」

千早の氷の鎧は防具としてだけではなく、命中したボールさえも凍らせて氷に閉じ込めてしまい、MEIKOボールの回転を強引にゼロにしてしまうための罠であった。
デッドボールを狙ってくるであろう敵をまんまと、罠にはめたことにチルノと犬牟田はハイタッチをする。

「お、おい……」
「なんで俺たちの時はやってくれなかったんだ?」

サウザーと紘太から恨めしい顔をされたが、それにも理由はある。

「すまない、強度計算やタイミングを図るためにある程度のデータ収集がどうしても必要だったんだ」
「あの鎧着てたら身動き取れないしね」
『どうでも良いが、鎧を解いてくれ〜、寒くて凍え死んでしまう』

氷の鎧にも欠点があり、自由に身動きが取れないのだ。
言うなれば完全防御と引き換えに一切の身動きが取れないアストロンと同じ。
しかしデッドボールには無敵であり、MEIKOの故意の死球をやり過ごせるだけでも聖帝軍は安心して野球に打ち込むことができるのだ。
余談だが、直接触れでもしない限り味方への技術を使った強化・支援はカオスロワ式野球ではOKである。

440実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:05:54 ID:VUmLQe4I0


そして千早の殺害に失敗したということは、聖帝軍のアウトではなくデッドボール。
つまり氷の鎧を脱いだ千早の一塁への進軍を許したのである。

六番バッターはデストワイルダー。
MEIKOは懲りずにデッドボール紛いの殺人球を投げるが、こちらもチルノが用意した氷の鎧で防がれ、デッドボール失敗である。

『なんだよ、まるで学習してねえな?
ゴリ押しでなんとかなるほどチルノは魔力は弱くねえぞ』
「…………」

あまりにもあっさりと進軍する聖帝軍。
二塁に千早、一塁にはデストワイルダーが立った。
そして、次にバッターボックスに立ったのは高津臣吾。

「きやがったかオッサン」
「聖帝軍で野球でならナンバーワン、そう自負するぜ」
「ほう……」

自信満々にMEIKOとラオウに宣言する高津だが、誇張でもない。
実際にプロで野球選手としての技量は聖帝軍トップだ。
大魔神であるササキ様をライバルと言い張るだけの実力は持ち合わせている。

「すぐに……後悔させてやるよ! MEIKOボール!!」
「またこれか……」

何度目かのMEIKOボールが放たれたが、これも死球コースだ。

(個人的にMEIKOとは真剣勝負をしたかったが、向こうにその気がないなら仕方あるまい。
今は俺がピッチャーである以上無理に打って肩を壊すのも面白くない)

高津は致し方なしとベンチのチルノにアイコンタクトを送り、氷の鎧を纏わせるよう願った。


……だが、氷の鎧は千早やデストワイルダーのように纏われることはなかった。
背後からの熱気によって。

(なに!?)

僅か数瞬の間に異常に気づいた高津がチラリと後ろを見ると。
ラオウが気のようなものを放って、チルノの冷気を阻害していた。
これでは氷の鎧を纏うことはできない。
氷のアストロン鎧戦法が打ち砕かれたのだ。

(ヤバイッ!)

この間、僅か0.5秒。
目前まで迫ったMEIKOボール。
しかし高津もプロ選手であり、ギリギリで迎撃が間に合い、渾身の力で打ち返すことができた。
「打ち返すこと」には成功した……

「しまった! これは取られる!」

氷の鎧を纏う前提だったことをいきなり解いたことによる高津のフォームの遅れ、そこから出した無茶な打ち返しにより、打力が出ず、打球はワンバウンドしてMEIKOに捕球される。
ヒットにはヒットなので高津や他の二頭も走りだすが、サウザーと比べれば格段に劣る速さだ。

『くそッ、なんとか三塁へ……!』
「最初はてめーだ! 送球MEIKOボール!!!」
『ご、ご主人様あああああああああああああああ!!!』

千早は虎の俊敏性を持って三塁へ向かおうとするが、その途中、MEIKOからの送球という名前の直撃弾を喰らう。
対象が機敏に動いていたため、チルノの氷の鎧作成は間に合わず、そのまま上半身と下半身が分かれて泣き別れになった。
即死である。

【千早@皇国の守護者 死亡】
※支給品なので放送に呼ばれません


『姐さああああああああああああん!』

デストワイルダーも二塁へ向かうが、虎仲間である千早の死のショックにより速度を緩めてしまう。
その間に内野手の宗則が千早の死骸からボールを回収して二塁に送球、イマジンスレイヤー上条がキャッチし、直後に迫ってきたデストワイルダーに左手のムラマサブレードと、ボールを握った右手の男女平等パンチを叩き込んだ。

「『イヤーッ!』」
『グワーッ!』

幸いデストワイルダーの耐久力が高かったため、千早のように死に至らなかったが、アウトに変わりなかった。

441実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:06:27 ID:VUmLQe4I0

そして、最後の一人である高津は翔鶴が召喚した戦闘機軍団に一塁への進軍を阻まれた。

「くそッ、進めねえ!」
「『アルトリア・ペンドラゴンさんの仇!』」

メジャー入りしたプロ野球選手でさえラジコンサイズの戦闘機を相手にするのは初めてだ。
しかも戦闘機の放つ攻撃一発一発が殺傷力が高く、高津は掃射を避けるのが精一杯であった。
サウザーほどの機動力があれば避けることはおろか、発進前に翔鶴に一撃を与えることも可能だが、高津及びブルースワローでは速さが足りない。
そのまま進塁できず、上条からの送球を翔鶴が受け取り高津もアウトになった。
チェンジである。


「くそ……MEIKO、これを狙ってわざと千早とデストワイルダーを進塁させやがったな」
「ご名答だよ、だが作戦を立てたのはそこにいるラオウだ」
「この男が?」

高津はラオウを見る。

「そう、具体的な手段は知らなかったけど、あの氷娘の鎧を解く方法を思いついたらしいって眼で言ってたからわざとデッドボールを取って進ませてやったんだよ。
まさか体から出る熱気で氷を溶かすとは予想外だったけど、油断したアンタや虎どもに痛い目を見せるには十分だったな」
「……恐ろしいやつだ、拳王め」
「あれがアタシのダーリンの力だよ。
おまえら聖帝軍はアタシのMEIKOボールに震えていりゃ良いんだ」

高津臣吾は、ただの筋肉の塊ではなかった拳王に、恐れの感情を抱きつつあった。
少なくともプロだから勝てる、ということは絶対ないことを自覚するのだった。



(別に俺は作戦など考えてなくて、頑なにMEIちゃんがデッドボールに走るからイライラして熱くなっていただけなんだが……まあ、MEIちゃんが気を良くしただけヨシとしよう)

なお、ラオウがチルノの鎧を打ち破ったのは偶然の産物であり、アイコンタクトは死球狙いはやめろという意味だったが、何はともあれ、聖帝軍は氷の鎧で凌ぐ戦法はできなくなったのである。



「すまんサウザー、俺としたことが」
「落ち込むな高津、まだ次がある」
『姐さん、姐さん……』
「……すまない誰かデストワイルダーのメンタルケアを頼む」


両軍一点ずつもぎ取り、二回が終わる。
次は三回表側からだが、聖帝軍側に新たな死者が出たためメンバーの変更が余儀なくされた。


『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火        1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


……ベンチのイオリが出たことにより、聖帝軍側の代打・代走はいなくなった。

442実況!パワフルデス野球!:2019/07/25(木) 20:06:51 ID:VUmLQe4I0



【二日目・22時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと2時間00分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのおっさん(高津臣吾)@ササキ様に願いを】
【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【平等院鳳凰@新テニスの王子様】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

443破滅の足音:2019/08/12(月) 18:56:27 ID:melOZAog0

「ああああぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ちっ……!」


テラカオス・リリカル。そして黒き獣シャドウ。
ついに始まった、勇者候補と滅びの化身の戦い。


「……」


それを映像越しに見守るのは主催者陣営のココとメフィラス。


「なのは……」


そしてリリカル――高町なのはの恋人であるユーノのみであった。

世界の命運を決めかねない戦いだというのに、こんな寂れ荒れ果てた地で、観客もこれだけとは。
仮にテラカオスが、リリカルがシャドウに勝利したとして、生き延びた人間達のほとんどは彼女の功績を知ることは無い。
かつてのテラカオス・ゼロ以上に、その存在は認知されずやがては消え行く哀しい存在。


(絶対に、こいつを殺して、私はユーノ君と……っ!!!)


そして待ち受ける運命を改竄されて聞かされているリリカルは、そうとは知らずに勇猛果敢にシャドウに挑んでいく。


「くっ!?」


その勇猛さ、執念、シャドウに対する殺意。
根底にある恋人ユーノへの愛。
それは確かにリリカルの原動力となり、シャドウを押していた。

(馬鹿な、ユーノ・スクライアがこれほどの力を持つなど……!?)

シャドウはこの獣の本当の正体に気がついていない。
元より素体が強力ななのはであり、望まぬ形とはいえバイオライダーの力さえ取り込んだ彼女は強い。
テラカオス化に際して手に入れたエネルギー系統の増幅反射能力と併用すれば、ほぼ全ての攻撃を遮断できるのだから。
いくらシャドウの持つ運命の神槍が強くとも、エネルギー系統に分類されるこれはいくら撃ちこんでも反射される。
そして元の威力が高いからこそ、反射されればシャドウとてただでは済まない。

444破滅の足音:2019/08/12(月) 18:57:04 ID:melOZAog0
(四源の舞で威力を5倍にしたこれが通じないのであれば、現時点で捕縛できている死者の能力ではアレの反射は抜けぬか……!)

早急に、シャドウはリリカルの反射を破ることを放棄した。
単純に強力無比なラインハルトの槍と、周囲の魔力を操れば攻撃力を跳ね上げられるサクヤの舞。
死者スレに侵攻した最初期、不意をつく形でこの二人やディケイド達の魂は運よく捕獲できたものの……
警戒され、カルナから一定時間置きに砲撃を浴びている今では実力者や異能持ちはそう簡単に捕まえられない。
おそらく、攻撃に参加してこそいないが切れ者の死者がいるのだろう。
確実に、取り込まれたらまずい死者の魂を遠方へと逃がしている。
混沌の騎士の妨害に掌握へのリソース、これらを加味すると、現時点でシャドウが行える最大の攻撃は蒼の直撃を除けば、この四源神槍となる。
そしてリリカルは、それを増幅反射できる。
敵の最大攻撃を反射できるともなれば、それは圧倒的にリリカルが有利であるということだ。


「よし、この調子なら……!」
「ええ、行けるわ……!」


メフィラスとココはリリカルの優勢に笑みを浮かべる。
シャドウの苦々しい表情からしても、優勢なのは疑いようも無い。

無論、優勢だからといってリリカルが即座に勝利できるわけでもない。
防御面では最高ランクと言って問題ないリリカルであるが、攻撃面においてはディーヴァ等を下回る。
敗けはないだろうが、こうなってくるとシャドウを討伐するまでの時間が気がかりであった。


(黒き獣の動きが鈍い……おそらくは、ディーヴァがつけた傷が原因ね。
 あれが完治する前に、なのはちゃんが仕留め切れればいいのだけれど……)


敵は、あのディーヴァを打ち破る程の存在。
リリカルが無敵の防御能力を持つとはいえ、なるべくはやく勝負をつけたいというのがココの本音であった。



「コロスコロスコロスゥゥゥゥゥゥ!!!」
「ぬぅぅ……!」



愛の獣が黒き獣を薙ぎ払い、さらに噛み砕かんと牙を光らせる。
転がり逃げる黒き獣。傷は増え、負傷により魂の捕縛が鈍っているのか神槍の黄金の光も弱まっていた。


(なのはさんが優勢……あと数分もあれば、きっと……!)


メフィラスも戦況から、間もなくリリカルの勝利で終わると確信していた。
彼女やユーノに対する後ろめたさはあるが、とにかくこの黒き獣を葬り大災害を防がないことには全てが終わってしまう。
となりで黙ったままのユーノに声をかけることもなく、彼は祈り続けた。


そしてついに。


時刻は22時30分。


……その時が、訪れた。

445破滅の足音:2019/08/12(月) 18:57:59 ID:melOZAog0
パリン…




「え?」



なのはとユーノは……

いや、この場周辺にいた者は確かに何かが小さく砕ける音を聞いた。


「結界が、壊れたのか……?」


無意識のうちに、ユーノはそう呟いた。




「っ! あはは! アハハハハハ! クァハクァハハハハハハハハハァァァ!!!」



それと同時に、シャドウは突然笑い出した。
少女のような、獣のような、竜のような、混沌とした笑いを。
誰もが、背筋が凍りつくような感覚を覚える。

「忌々しい結界が無くなったか……ならば今こそ、ディーヴァから奪った力を使う時だなぁ!」

言うや否や、シャドウの背から禍々しい白い翼が生える。
元はテラカオス・ディーヴァのもの……さらに大元を辿ると、ディーヴァに喰われた真竜VFDの翼だ。


「咲き乱れろ! 凶兆の妖華よ!」


そしてシャドウの咆哮と共に、一斉に黒華が撒き散らされる。
結界が無くなった今、その繁殖は沖縄の外にも伸びることだろう。


「「あ、あの華は……!?」」


ココとメフィラスは見覚えある黒華の再来に戦慄する。
あれを拡散させないために、止む無く大阪をこの世から抹消したというのに。
これでは大阪の犠牲は全くの無意味ということになってしまう。
だが、ココ達の対応も間違っていたわけではないだろう。
全ては彼女達の知識が不足していたことが原因。

真竜やフロワロという名称を把握できたとして、その本質を知らなかった。
ディーヴァがバグったのか7匹になった真竜を全て食い、強力な真竜の能力を奪い、
そしてフロワロは真竜……その力を持つ者を葬らない限り無限に咲き誇るということを知らなかった。
即ち今回の場合、真竜を喰らったディーヴァを喰らった存在……黒き獣を葬らない限りは何度街を焼こうが無意味なのだ。
既に華がある場所には新たな華は咲けない性質も知っていれば、焼かずに何らかの手段で『閉じ込める』手段が取れたであろう。
今となっては手遅れだが、かつてチルノが行った全面凍結の方が対処法としては優れているのだ。

そして、一つの無知は次なる災いを招く。

446破滅の足音:2019/08/12(月) 18:58:42 ID:melOZAog0
「え……?」

何気なく、視界を塞ぎ始めたフロワロを薙ぎ払ったリリカルの腕が、一瞬で腐り果てて地面へと落ちたのだ。

「あ、ああ? あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ ! ! ? 」

激痛にもがくリリカルに対して、シャドウは酷薄な笑みを浮かべる。

「ふん、やはりか。確かにお前は物理は効き目が薄いし砲撃の類は反射するしで強敵ではあったが……
 それら能力を行使しているのは『敵意に反応するお前自身』だ。敵意も何もない、ただ普通に咲くだけの華には反応しきれまい?」

笑いながら、シャドウはリリカルの脚にまで浸食してきたフロワロを見やる。
やはりものの数秒もかからず脚は腐食し、さらにリリカルは悶える。

「まあ、そもそもその様子では、毒への耐性などといったものが備わっていなかったようだがな」

シャドウはさらに歩を進める。

「気に病むことは無い。これは特に強力な劇毒。竜か、竜の力を持つ者以外では相当な毒耐性を持たねばとても耐えきれぬからな」








「ダークザギッ!!! なのはちゃんを回収してっ!!!」




リリカルを取り込まんとしていたシャドウの前に、ダークザギが転移してくる。
如何に強靭な力を持つダークザギとはいえ、蒼への耐性までは持たない。
この場に来た瞬間、彼の死は揺るぎ無いものとなった。

しかし蒼による死は絶対ではあるが、即死というわけでもない。
無耐性のものでも、身体や精神を歪めきられるまでに個人差が存在する。
そして巨体のダークザギは、数秒間だけであればかろうじて生き延びることができた。
その数秒を無駄にすることなく、彼はリリカルを命令通りに回収してみせる。


「くそっ!?」


寸でのところで獲物を取り逃がしたシャドウは転移間際のダークザギに蒼の塊をぶつけるが間に合わず。
結果として自分は貴重な能力を手に入れそびれ、結界が破れたとはいえ軽くは無い傷を負わされてしまった。
これではまだ本州を攻めることはできないし、死者スレの掌握にも時間はかかる。


「やってくれるな……」


蒼と黒華が埋め尽くす沖縄で、黒き獣は休息の時に入る。

447破滅の足音:2019/08/12(月) 18:59:20 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/沖縄県】


【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】
【状態】ダメージ(大)、疲労(大)、弱体化
【装備】聖約・運命の神槍@Dies irae 、真竜の翼、他不明
【道具】不明、ラインハルトの魂、サクヤの魂、真竜VFDの魂、他多数の魂、混沌の騎士の魂
【思考】基本:世界の破壊
0:まずはリリカル戦の傷の回復
1:終わったらあの者(テラカオス・ディーヴァ)の魂の破壊を継続する
2:死者スレの掌握
3:本土侵攻に備えて可能な限り参加者間の信頼を挫き、黒フロワロを繁殖させておく
4:混沌の騎士の魂がとにかく邪魔
※シャドウが現れた沖縄ではTC値が増大しています、蒼の耐性者やテラカオス以外が踏み入ると問答無用で即死します
※ディーヴァの捕食した者の能力(魂)も取り込み、行使できます
※死者スレを掌握、しかし掌握途中のため使える能力には制限がある模様。
※死者たちの召喚や使用していた装備なども使用可能、ただし掌握途中の為、制限あり。死者召喚は三人まで。
※死者スレ掌握及びディーヴァとの戦いでの傷を癒すのにリソースを割いているため弱体化中。
 更に死者スレ内の防衛にカルナが投入され、一度はテラカオスとして完成したこともある混沌の騎士の魂に内部から妨害を受けることで掌握速度が停滞。
 完全掌握に9時間以上の時間を要します。
※混沌の騎士のように一度は完成したテラカオスの魂は性質上、取り込めません
※テラカオス・リリカルがなのはであると気づいていません(その手の情報を持つ死者をまだ取り込んでないため)
※沖縄から本州に向けて黒フロワロの侵攻が開始されました

448破滅の足音:2019/08/12(月) 19:00:27 ID:melOZAog0
「――」


「ダークザギ……」



九州ロボに戻ってきたダークザギ。
しかしその身体は瞬く間に蒼により歪められ、その魂ごと粉々に砕け散ってしまう。
そして、彼が命と引き換えに回収したリリカルは……



「ユーノ、君……」
「なのは……っ!」


リリカルは人間態……なのはの姿に戻っていた。
しかしその両手足は腐り果てて、生きているのが不思議な程。
テラカオス化で得た強靭な生命力がかろうじて彼女の命を繋ぎ止めているにすぎない。
そしてそれも、彼女の中に浸食した毒がいずれ削りきることだろう。


「……くっ!」
「……」


ココは拳を叩きつけ、メフィラスは茫然と目の前の惨状を見つめる。
勝てた……いや、まだ認識が甘かった。
黒き獣の恐ろしさを、理解したつもりでしきれていなかった。
おそらく、今回の黒き獣の力はかつての黒き獣を上回っている。
もはや九州ロボに用意されている解毒薬では、なのはを助けることはできない。
即効性の腐食毒、OTONAすら耐えられなかった毒。
完璧に見えた穴のあったリリカルの護り。
今更こうしていたら、ああしていれば。たらればの話は意味が無い。
ただただ無慈悲に、なのはの死が、貴重なテラカオスの死がつきつけられるだけ。
これをシャドウに痛手を与えたのだから意味はあったなどと言えるだろうか?

ココ達は知らない。
イナバ物置に、グンマ―の書物があったことを。
その内容が、不完全な化身は黒き獣の前に敗れ去る予言であったことを。
完成しきったテラカオスではないリリカルではシャドウには勝てない。
書物通りにリリカルの能力がシャドウに奪われていないことだけは、幸いと呼べるのかもしれないが。

449破滅の足音:2019/08/12(月) 19:01:09 ID:melOZAog0
「……消えてくれ、頼むから」


ぽつりと呟かれたユーノの言葉に、ココとメフィラスは素直に従った。
彼が何を考えているのか、嫌でも察しがついたからだ。


(……ごめんなさい)


口には出さず、ココは二人の犠牲者に心中で詫びる。
自分が許されるとは思っていないし、謝罪などまるで無意味だということはわかっている。
だからこそ、せめて今の自分達にできることはただ黙ってこの場を去ること。
愛する存在を失う辛さだけは、わかっているつもりだから。


「ユーノ、くん……ごめ……んね……」
「なのはは悪くない……僕が、僕がもっとちゃんとしていれば……!」

大粒の涙を零しあう二人。
崩れゆくなのはの身体を、ユーノは迷いなく抱きしめる。

「ユ、ユーノ君!? だ、だめ、この毒は……!」
「構わない。君を一人で逝かせるくらいなら、僕は……」
「ユーノく……んぅ……!?」


なのはの口内に、深く深く舌が入り込む。
残り少ない時間を無駄にしないように。
絡み合った舌は、互いの唾液と毒とを等しく馴染ませあう。




「……なのは、愛しているよ」

「うん、私もだよユーノ君……!」





泣きながら、笑顔で。

愛の言葉を口にした二人は重なり合うように崩れ去っていった。


【テラカオス・リリカル(元 高町なのは)@魔法少女リリカルなのは?】
【ユーノ・スクライア@魔法少女リリカルなのは】

それぞれ死亡確認

450破滅の足音:2019/08/12(月) 19:02:01 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、、ダークスパーク@ウルトラマンギンガ、スパークドールズ(八坂真尋)、モブ兵士×550、
    主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:これからどうすれば……
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:真尋キュンprpr(死んだニャル子の分も愛でてあげる)
4:東京へ向かったジャックたちの成功を祈る
5:危なくなったらダークザギを犠牲になのはを沖縄から回収する
※スパークドールズ化した八坂真尋を元に戻すにはダークスパークもしくはギンガスパークが必要です

【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、ダース・ベイダーの服とヘルメット、ボイスチェンジャー
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:これからどうすれば……
1:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
2:なるべく暴力は使いたくない
3:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
4:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る

※それぞれ、シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※倉庫内に黒フロワロに対抗できる解毒薬はありません

451破滅の足音:2019/08/12(月) 19:02:35 ID:melOZAog0
――少し、時を遡ろう。

――黒き獣が、希望の一つを打ち砕くほんの少し前の時間に。



「いたわ、イチリュウチームよ!」
「あれ? 千葉よりも近いなっしよ?」
「向こうからもこちらに向かって飛んでいてくれたとみるべきですかなwwww」


都庁より飛び出した、イチリュウチームとの接触及びキュゥべえの野望の阻止を狙うほむら達。
慎重に飛んだ影響もあってか思ったよりも時間がかかったが、安全に接触することは達成できた。
後は悪辣極まりないインキュベーターの手で疑念を抱かれていなければいいのだが……



そう考えていたほむらは、その瞬間にざわりと嫌な気配を感じた。
ドラゴンハートで強化されていなければ、あの魔王マーラをこの目でみていなければ、絶対に心が折れていたであろうほどの魔力。
そして、この嘆きの気配は間違いない。幾度となく経験してきた、魔女の誕生の瞬間。



「な、何故魔女が!? それにこの力、まどかには及ばないけどワルプルギスは超えている……!」
「ひいいぃぃぃぃ!? こ、怖いなっしー!? イチリュウチームや苗木達は無事なっしかー!?」
「……ほむほむ、指示を頼むんですぞ。魔女相手はほむほむしか頼れませんからな」
「この魔力、イチリュウチームの中心部から!? ……危ないけど、このまま突っ込んで!」
「了解ですぞwwwww」

かつてオオナズチはそのステルス能力で倒した狂信者から大量の支給品を奪い取っていた。
今はある程度盗んだ品も整理され、都庁の仲間達やほむら達に分配されているが、その中には当然銃器の類もあった。
思わぬ形で武器を補充できたほむらはこれで以前以上に戦えるようになっているが、彼女の焦燥は強い。
いくら武器を補充し、ドラゴンハートで強力な力を得てもまだまだ強敵は多いのだ。
魔女の誕生の理由はわからないが、戦力面の問題からしてもイチリュウチームとの接触はさらに必須事項となった。
オオナズチも全速力を出し、魔力の発生源へと飛んでいく。

452破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:04 ID:melOZAog0
「ホルゥ! ホルゥ!?」


そしてすぐに、燃える隼とその背に乗る野球選手を見つけ出す。
ステルスを解除した瞬間に驚かれたが、あくまでそれだけ。
いきなり攻撃されることがなかった以上、まだ対話の余地はありそうだとほむらは口を開く。

「驚かせてごめんなさい。その格好……イチリュウチームの人かしら?」
「ハ、ハイ!?」
「と、とつぜん闇夜からまな板の子が出てくるなんてどうなって……なんでもないホル」
「懸命な判断ね。とりあえず、信じて貰えるかわからないけど……私達は都庁の者。あなた達と敵対するつもりはないわ」
「「!?」」


警戒しつつも正体を明かすほむらに対し、ホルスとラミレスは僅かに驚いた表情を浮かべるがやはりそれだけ。
すぐに焦ったような表情に戻ると、ラミレスが口を開いた。

「アア、ヤハリギムレーサンハ正シカッタンデスネ……!」
「んんwwwwwナイスですぞギムレーwwwwそちらがテラカオスを保護していることもネットワークで把握済ですぞwwwww」
「あ、てことはお前がオオナズチホル? ってのんびりしてる場合じゃないホル! そのテラカオス絡みでなんかやばい事態になってるホル!」
「……簡単に説明してもらえるかしら。なんにせよ、火急の状態なのは間違いないわ……! はやくしないと他のイチリュウチームメンバーが危ない!」
「た、助けてくれるホルか!?」
「アリガトウゴザイマス……!」

そしてホルスは慌てながらも、少し前に起きた事件を語る。
バイクに乗っていた三人組を発見し、仲間の6/達が接触を試みたこと。
聞けばホワイトベース組の生き残りだと言う苗木少年は都庁と拳王を憎んでいたが、ギムレーとはやての話から誤解だと説明をすると彼は混乱した。
幼女と白い獣はあまり話に入ってこなかったが、蛮とクリスの説得ではやてから直接話を聞いてみたいという流れになった。
拳王連合の被害者というのは間違いなく、都庁の誤解さえとければイチリュウチームにも協力してくれるかもしれない。
苗木も拳王連合に報復できるだけの力を持つイチリュウチームは味方に引き入れたい。
打算的な思いも0ではなかったかもしれないが、とにかく平和的な接触はできたといえる。

問題はここから。

都庁へと飛行予定だったイチリュウチームは滞空しており、苗木達との顔見せも空で行われた。
そして今まで静かであった幼女、霧切が……
テラカオスたる『ツバサ』の顔を見た瞬間、狂乱状態に陥ったのだという。

「持ってた宝石みたいなものが、一瞬で真っ黒になって割れたんホル……
 そしてそこから一気に魔力が噴き出て……イチローとアナキンに戦えない監督とこの子を連れて逃げろって言われたホル……」

「こ、これは……!」

見れば、ホルスとラミレスの他に、彼らが隠す様に庇っていた少女の姿がようやくほむら達の目にも入る。

「うぅ……」

ぐったりとした様子で汗を流す少女。
その姿は、だいぶ幼さが増しているが確かにかつて指名手配された風鳴翼に瓜二つであった。

453破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:27 ID:melOZAog0
「その子が、テラカオス……『不屈の精神を持つ勇者』かもしれない子なのね」
「そうホル。でも、元々体調悪そうだったのが霧切と対面してからさらに悪化してこんなことに……」
「……オイラ、霧切達のことは知ってるなっしー……
 強力な魔法少女だけど、テラカオス・ディーヴァへの恐怖心が特に強いって確かにキュゥべえが言ってたなし……」

沈み込むふなっしーの言葉に、ほむらやラミレス達は今回の騒動の原因を理解する。

「ツバササンハ、シャドウトイウ存在に敗レタテラカオス・ディーヴァノ残滓ダトイイマス……」
「自分に恐怖を植え付けた存在と再度遭遇して一気に絶望……魔女化してしまったということね……」
「……せめて、苗木はまだ無事なっしか?」
「残念ホルけど、苗木とキュゥべえはもういないホル……
 その、魔女化? した霧切の一番傍にいたせいで……彼女を止めようとして、魔力で消し飛ばされたホル……
 それからなんでかさらに霧切は泣き喚く子供のように暴れて……」
「そんななっしー……」

聞かされたのは、苗木達の死。
いや霧切も魔女化したともなれば、死んだも同然だろう。
説得を目指していたふなっしーの落胆は、計り知れない。
おそらく魔女化した霧切がさらに暴れてしまった原因が、はからずも自分の手で心のよりどころを殺してしまったからであると、
そう察せてしまうだけにより悲しみは深まる。

(……まさか、こんな形で決着がつくとはねインキュベーター……
 人を食い物にし、少女の心がどれだけ繊細で些細なことでも大きく揺れ動くか……その感情の変化を見切れなかったあなたの負けよ)

ほむらは内心で宿敵の死を冷静に分析する。
本来であれば喜んだであろうが、状況が状況なだけにそうもいかない。
わかるのは危険を感じたであろうインキュベーターが逃げる暇もない程に、この魔女の魔力は強いということ。

「……あの魔女の結界内にイチリュウチームが囚われているようね」
「あまり時間はかけれそうにないですな。そしてこの魔女を倒さないと、多分この子は本来の力を発揮できなそうですしwwwww」


不運な幼女は魔女に堕ちながら因縁の相手を弱らせ苦しませる。
希望の祈りは絶望で反転する。自分に近寄らないように、二度と近寄れないようにディーヴァの系譜とそれを守る者は皆殺し。

祈りの結界は崩れた。
黒き獣は愛の獣を腐食させ、やがては本州に牙を剥く。
黒き魔女は残滓とその仲間を苦しめる。
同時刻に起きたプロジェクト・テラカオス、救済の予言を破綻させかねない緊急事態。
生き延びた者達は、どう動くのか。

454破滅の足音:2019/08/12(月) 19:03:59 ID:melOZAog0
【二日目・22時30分/東京〜千葉上空・魔女の結界外】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】

※ほむらにいくつか武器が補充されています
※霧切が生存している限り、『ツバサ』は立つことも困難です

共通思考:イチリュウチームの救出及び『ツバサ』の護衛


【苗木誠@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】
【キュゥべえ@魔法少女まどか☆マギカ】
それぞれ死亡確認

【霧切響子@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】→魔女化

※結界内に残るイチリュウチームのメンバーを全員閉じ込めています。各員の安否は次の書き手さんにお任せします
※霧切を打ち倒さない限り、内部のイチリュウチームメンバーは通常手段での脱出ができません
※魔女化し、ディーヴァの因子を持つ者を極度に弱らせ、またその周囲の存在に無差別攻撃をしかけます
※沖縄の結界が消滅しました
※強さはワルプルギス以上まどか以下

455何が可笑しい!!:2019/08/12(月) 21:09:33 ID:rl3FuA/w0
投下乙...!
面白かったけど、すげー絶望感
中盤までは対主催を支えてくれると思ったなのユーカップルも落ちてドン底のまま絶望死か...

456何が可笑しい!!:2019/08/13(火) 12:13:25 ID:jjdhWbNA0
苗木の最期が十神よろしく台詞がないのは草
まあ次の話で補完してくれるだろたぶん

しかし、なのは組は合流できないまま壊滅
ネオ・クライシスは事実上全滅
ホワイトベース組はひとり残らず皆殺しになったか

457何が可笑しい!!:2019/08/13(火) 12:44:05 ID:RNY/i6/Q0
投下乙!なのは無敵過ぎない?と思ってたら綺麗に穴突かれたなぁ…
なのはといいOTONAといいベジータといい、今期は絶望の中での毒殺多い気がする
苗木達もある程度覚悟はしていたが、イチリュウ逃走不可ってのが地味にきつそう

4589月13日はカイザの日 FOREVER:2019/09/08(日) 17:58:16 ID:zlRsuNk20

『邪魔なんだよ……カイザの日を祝わないものは全て!』

その頃、草加さんを書いていた書き手は今年もまたカイザの日を祝おうとしていた。
……去年も一昨年も三年前も四年前も五年前も六年前も同じことを書いていたが、その書き手にとって大事なことなのだ。

ここまで書いた時点で筆が止まった。
流石に6年も連続で同じ日に同じキャラを書き続けるのにも限界が来たのだ。
大体復活禁止というルールを破ってまで書いてたのだ。
それくらいまでにはカイザの日にこだわっていた。

しかし、現状はどうだろうか?

DMC狂信者だ。
未だにクラウザーさんも復活しないし。
草加と他のキャラに絡ませてもすぐに引き離すし。
他の次元が滅んでいると書かれているのにも関わらず次元連結システム(端的に言えば他の次元からエネルギーを持ってくるシステム)で動くロボット出してるし。
さらにはぽっと出の黒幕まで中に紛れている。

正直この書き手の技量ではもう収拾がつかない。
収拾をつかせる気もない。
だから、今回で終わりなのだ。

元号も変わったし、平成の古参書き手は令和の新時代では生き残れないのだ。


だから、自殺したのであった。


【カイザの日の書き手@カオスロワ 死亡確認】

459何が可笑しい!!:2019/09/08(日) 19:05:45 ID:ZdZMYhbo0
>他の次元が滅んでいると書かれているのにも関わらず

次元が滅んでんじゃなくて歪んでて出られないって書いただけなんだよなあ……

460何が可笑しい!!:2019/09/30(月) 14:08:46 ID:ioq/KqdU0
10期一体何年続いてるんだろう...

461何が可笑しい!!:2019/09/30(月) 19:32:32 ID:RUIUt5PA0
気にするな
他のロワも大概同じやで
進行遅いなりに書きたい人が残ってるだけここは恵まれている

462痛みの唄:2019/10/04(金) 13:24:26 ID:e/bigAbo0

時刻が22時に差し迫った要塞ビッグサイト。
その敷地内の一つにあるテントの内部で、三人の狂信者と一機のロボットバイクは情報を交換していた。
ホモどもが持ち帰ったテラカオスという怪物の情報を探っていたセルベリア。
そして草加もといサイドバッシャーの言葉により、明らかに狂信者としては異質な行動を取っていたゼロ(ルルーシュ)を探っていた切歌とレジーナ。

「蒼の源泉…聖別…テラカオス、そして主催とは違う目的で動くカオスロワちゃんねる……」
「この殺し合いにそんな秘密があったんデスか……」
「信じられないけど、いちおう話の辻褄は合うわね」

しかし、三人の乙女を驚愕させた決定打は、草加の言葉であった。

『ああ、確かに俺は見たんだ。
大災害の発端らしいニルヴァーナの生き残り、ウエムラのビデオレター。
そして証拠を見つけた俺の持ち主を殺そうとした怪物と女を』

草加はセルベリア・切歌・レジーナは信用……否、利用できると思い、あえてパーティー会場で見た真実を語ったのだ。
この殺し合いのそもそもの発端、カオスロワの意味、大災害を唯一防げるテラカオス、そしてカオスロワちゃんねるの闇に蠢くもの。
もちろん、自分が支給品ではなく無機物への憑依能力を得た参加者であること、そもそも持ち主であるバドは狂信者ではないことを隠して話したが。

「なんでさっきは私たちにそのことを隠してたんデスか?」
『おまえたちが、この殺し合いのどこかに潜伏しているカオスロワちゃんねる管理人……長いから“提督”とでも言っておこうか。
切歌たちが提督の手先だった場合は俺が破壊されるだろ』
「あ」
「……なるほど、このビッグサイトの中なら私か切歌たちの誰かが提督の手先だったとわかっても、騒ぎを起こせば狂信者仲間が殺到して提督の尻尾も掴めることに賭けたというわけか」
『流石元軍人さんは話が早い』

幸い、セルベリアも切歌・レジーナも提督の手先ではなかったようだ。

「大災害の原因は誰かが意図的に起こした蒼の源泉の暴走。
それが本当なら許せないデス……大災害で引き起こされた殺し合いでクラウザーさんやマリアは間接的に殺され、調とは離れ離れ、右京さんたち多くの狂信者も死ぬハメになったんデスから」
「切歌、怒りたい気持ちはわかるけど今は抑えて」
「気持ちは同感だ。クラウザーさんほどの素晴らしい歌を歌える方や数万を越える信望者が、ひと握りの者の思惑のせいで殺されたも同然なのだからな」

三人の狂信者は怒りを共有している。
殺し合いを開かれたことでクラウザーさんが死ななければならなかったことが一番頭に来ているようだが、この三人は大災害時にも大切な人々が喪うか、行方知れずになっている。
聖別たるカオスロワを開いたのはベイダーら主催陣営だが、それ以上に犠牲を強いる聖別を開かざるおえない状況に追い込んだのは他でもない“提督”なのだ。
見つけ次第、最優先でSATUGAIしたい殺意が芽生えていた。

「サイドバッシャー、その提督の手先に纏わる情報は他にないか?」
『提督の方はスマホの通話越しで辛うじて男とわかること、女の方は透明になる能力でもあったのか、どっちも声しかわからん。
録音機能なんて都合の良い物は俺の身体にはないが、聞けば一発でわかると思う。
そいつらはまだしも巨大サボテンみたいな緑の怪物は特徴的すぎるからすぐわかると思うが……』
「いちおう狂信者側に属する魔物狂信者(モブ)にサボテンボールとかサボテンダーがいるデスけど……」
『う〜ん、こいつらじゃないな。もっとデカくて汽笛みたいな鳴き声でインドラと吠えていた。
名前はメーガナーダと見えない女に言われていた』
「そんなに目立つならすぐ見つかるハズなのに、ネットじゃそんな怪物の目撃情報は一切無いわね……」
「というより、誰かが見かけても情報を隠蔽するように、カオスロワちゃんねる自体に仕向けられているのだろう。
ますます、このSMSがきな臭くなってきたな」

サイドバッシャーは少なくともメーガナーダの情報は握っていた。
だが一致する存在がカオスロワちゃんねるの掲示板上には一レスも無い。
それはテラカオス化に纏わる情報も同じであり、ふわふわしているものばかりで核心に迫るレスが見当たらない。
何も知らない参加者ならまだしも、テラカオスを少しでも知った参加者からすれば違和感バリバリだ。
共有されるべき情報が便所の落書きレベルにもないのである。
情報操作の線は確かにあるようだ。

463痛みの唄:2019/10/04(金) 13:25:16 ID:e/bigAbo0

「セルベリアおばさん、このことをすぐにディーに報告を!」
「ゼロも提督かその手先の線も捨てきれないわ! すぐにでも調査を!」
「……いやまて、ディーがその提督であるという可能性も捨てきれない」
「信者仲間を、それもクラウザーさんの蘇生を提案したボスを疑うの?」
「提督がクラウザーさん信者を装った偽信者である可能性も捨てきれないんだ。
ましてやディーは狂信者集団を発足してからビッグサイトから一歩も動いていない」
「それは狂信者をまとめるリーダーデスから……」
「だが、人数では桁違いなビッグサイトは前線に比べれば安全圏、カオスロワちゃんねるを管理する余裕もあると取れる。
たまに杜撰な作戦を通したり、そもそも狂信者側の全滅を前提においた作戦さえあった。
第一、神でありながら沖縄の異常気象をクラウザーさんの力だと持て囃しているのも怪しい」

セルベリアはディーを草加の言う提督ではないかと怪しんでいた。
ディーに同調していたドリスコル、突然接触してきたゼロも怪しいが、両方死ぬ可能性がある最前線送りになったので提督である可能性は低い。せいぜい手下止まりだろう。
どのみち、防衛部隊であるセルベリアたちはビッグサイトからは動けないので戻ってくるまで正体を確かめる術がない。

「せめて決定的な証拠さえあれば、他狂信者の賛同も得られて、全力で企みを阻止することもできるが……証拠がない内は逆に情報操作で仲間の狂信者に追われるハメになる」
『メーガナーダはこのビッグサイトはいなさそうだし、提督も手下もビッグサイト以外のどこかにいる可能性もあるがな』
「まだ関東圏内のどこかにいるなら良いけど、過疎地に引きこもってたら最悪ね」
「うう、私としては同じ信者は信じたいデスけど……」

ルルーシュに唆された部分も多いとは言え、他の上層部の人間を信用できないセルベリア。
同じクラウザーを信仰する仲間を信じたい切歌。
ルルーシュへの疑念を捨てきれないレジーナ。
そして三人には隠しているが提督への殺意を漲らせる草加。

しかし、ネットが信用できなくなった以上、提督を探す方法が現状の四人にはなく、ネット以外の追加情報でもない限り捜査の進展はないだろう。
黒幕が存在していることはわかっても、正体と居場所を掴む術がない。

(提督の目的はなんだ?
わざわざ主催に隠れてこそこそ真実を知る者を暗殺し、情報操作を行った。
ならば主催には知られたくない目的があって行動をしているハズ……
テラカオスには主催も知らない隠された力があるのか?)

セルベリアは無言でテラカオス化したと思わしき少女の死体を見るが、答えは出ない。

狂信者たちは提督による水面下妨害も手伝って圧倒的に情報が足りないのだ。
この中では大きな進展を齎した草加でさえ、テラカオスが具体的にどうやって大災害を抑えるのかまでは知らない。
彼女らがこれ以上、真実にたどり着くには答えが不足していた。

「仕方がない、いったん考察は打ち切りだ。まずはゼロの正体と思惑から調べるぞ」
「ゼロは今、最前線デスけど」
「半数のカギ爪団構成員がビッグサイトに残っている。
ゼロに何かされている可能性もある以上、確かめる価値はあるだろう……ん?」


セルベリアが切歌とレジーナに指示を出そうとした時だった。
ただでさえ暗い夜空が、星さえ見えなくなるほど暗くなったのだ。

 ◆

464痛みの唄:2019/10/04(金) 13:25:42 ID:e/bigAbo0


同時刻、ビッグサイトの敷地に地下から侵入できた影薄組もまた、マンホールの傍から異様な空を見ていた。
小町とデモニカを纏う四人は驚きの表情で空を見ているが、影が薄いのと仲魔としてデモニカの中に入っているため、周囲の狂信者がそれに気づくことはない。
というより仮にステルス状態でなくても、狂信者たちも皆唖然として空を見ているため、侵入者が誰であっても気づかないだろう。

『なんだい、こりゃあ……』

何かとてつもなく巨大な物体が、ビッグサイトの要塞を空から覆い尽くしているのだ。

「コイツは……千葉に現れた例の邪竜じゃねえか!」
「それがどうしてこんなところにいるんすか!?」

空を覆う者の正体は狂信者や拳王連合軍に宣戦布告をし、何らかの目的でイチローたちがいる浦安を覆った超巨大竜ギムレー。
それがどういうわけか、ビッグサイトの空の上まで移動してきていたのだ。

ビッグサイトの狂信者たちはすかさずギムレーに向けて対空砲やら魔法、MSなどで迎撃を行う。
無論、影薄組の周りでもそれは同じだ。

『ま、まったく効果があらへんぞ!?』

しかしギムレーには全く効いている様子はない。
影薄組たちからはさほど離れていない位置にいる巨人化した大日本人こと松本、彼と同じ感想を狂信者たちは口にしていた。

そして、狂信者たちへのお返しに邪竜のブレスが放たれんとしていた。
それはワイルドハント率いる狂信者集団すら一撃で全滅させた超高威力攻撃。

「まずいよ……こっちを攻撃してくる!」
「早く逃げないと」

そのブレスの矛先は偶然にも影薄組たちがいたエリアにも含まれていた。
影薄組の五人は急いで周辺から離脱しようとする。

『うわあああああああああああああああああああああああああ!!!』

数瞬後、大日本人の叫び声と共に邪竜のブレスはビッグサイトより東側を焼き払い、大日本人と数千人ほどの狂信者を一瞬で蒸発させた。


 ◆

465痛みの唄:2019/10/04(金) 13:26:30 ID:e/bigAbo0

「よし、少しは黙ったな」

本体である巨竜の上に乗るギムレーは、キノコ雲が上がったと同時に迎撃の手を止めた地上のビッグサイトを見てそういった。

ギムレーがここに単身で来た目的はオシリスの生死を問わない奪還。
オシリスの能力がテラカオス化したなのはの拡大化した能力を止めるために重要なファクターであったし、そうでなくとも洗脳されたり能力だけ抽出されて狂信者に利用されれば対主催にとって危険であるからだ。
そのため、交渉という名の脅迫をしにきたのだ。

案の定、狂信者は反撃をしてきたが邪竜としての能力を解き放ったギムレーには蚊が刺したほどの威力しかなく、止めるには不十分。
あんまりうるさいと狂信者の元締めと話し合いができないので、攻撃で多くの狂信者に消えてもらった。
それが功をなしたのか、狂信者は効果がない攻撃を流石にやめた。
地上の狂信者共がワイルドハントたち同様、恐怖に慄いているのがギムレーにはわかる。
もっとも、多大な魔力が集中しているため、日本を巻き込んだ誘爆の危険があるビッグサイトそのものへの攻撃はできなかったが。
なお、影薄組は存在感が薄すぎたため、ひと握りの対主催が狂信者の巣窟に潜入していたことは流石に気づかず、攻撃の巻き添えを食らわせてしまったことには流石に気づいていないようだ。

「さて、交渉に入るか、スゥー……」

ルフレ(人)としてのギムレーと、本体(竜)としてのギムレーは深呼吸をすると、厳かでドスの効いた口調で狂信者たちに告げた。


『狂信者どもに告げる。

生死は問わぬ、貴様らが捕えたオシリスの天空竜を我に差しだせ。

早急にできぬのならば、貴様らの神と崇めた存在を蘇えらせるカテドラル――ビッグサイトをこの手で粉砕する』


ギムレーの突然の脅迫にビッグサイトは騒然とする。
狂信者どもの恐怖が邪竜であるギムレーにとっては心地良いものであったが、目的は最後まで忘れない。
オシリスは救助対象であると同時に、彼の持つ魔法・罠無力化能力はテラカオス化したなのはを止める可能性がある数少ない存在なのだ。
仮に殺されていたとしても、その能力に狂信者が目をつけないわけがない。
狂信者をこれ以上、のさばらせないためにも、オシリスを取り戻す必要があった。

そしてギムレーの要求から一分経たない内にビッグサイトに設置された外部スピーカーを通して、赤いロボットに乗せると似合いそうな男の声が聞こえた。

『私は狂信者まとめ役をしているディーだ。
……要求を飲んだ場合と飲まなかった場合、君はどうするつもりだ?』

顔は見えないが、焦りの見えない声で質問がくる。
流石に総大将だけにそこらの下っ端よりは冷静を保てるか、などと思いつつ、ギムレーは空から返答する。

『要求を飲んだ場合は、キサマらの居城……この場でのビッグサイト破壊を先延ばしにしてやろう。
我には急用があるのでな、数時間程度は狂信者どもの絶望する顔は後回しにしてやろう。

だが飲まなければ、この場で破壊の限りを尽くす』

ギムレーの一言が数千人規模のモブ狂信者が一斉に失禁するほど、底のない恐怖を与えた。
少なくとも精神的に強くない者や、彼の人となりを知らない限りは、本能的恐怖で逆らえないレベルだ。

『正気か?
ビッグサイトを破壊すれば集めた魔力が暴走し、少なくとも関東は滅びるかもしれないぞ』

真である。
高位の魔法に精通する者ならビッグサイトを破壊するのは危険だと肌で感じられるほどの生体エネルギー(マグネタイト)が集中している。
ギムレーにもそれがわからないわけではない。が。

『知れたこと! その程度の魔力なら我を殺すには不十分だ。
それに我は破壊と絶望を糧に生き、死を司る邪龍!
他の者共の命など知ったことではないわ!』

嘘である。
例え特定の武器以外は鉄壁の耐久力を誇る邪龍とて、ビッグサイトが間近で爆発すればただではすまないことは理解している。
無論、イチリュウチームの仲間を含む他の対主催の命さえ無碍に散らす気はない。

しかしこの場は引いたり弱みを見せたら負けだ。
嘘をついても邪悪の仮面を被ってでも、味方の運命を左右するかもしれないオシリスを取り戻さなくてはならない。


『……なるほど、断らせていただく』
『なに…?』

ギムレーの言葉による脅迫では、ディーは揺らがなかった。
今度は少し語気の強い形でディーは言葉をぶつける。

『貴様にオシリスを返したところで、後に牙を向いてくるのは明白。
最悪、オシリスを返した直後に契約を破棄して襲いかかってくる可能性さえある。
何より、クラウザーさんを蘇生させるためのビッグサイトを襲撃したことは、クラウザーさんに中指を立てたことと同じ。
万死に値する行為だ』

466痛みの唄:2019/10/04(金) 13:27:15 ID:e/bigAbo0

次にディーは、攻撃の手を止めていたビッグサイト中の狂信者に呼びかける。

『狂信者たちよ、SATUGAIを再開せよ。クラウザーさんが見ているぞ。
あの方のために命を捨てられぬ不届き者にクラウザーさんの歌を聴く資格はない!』

実質的な交渉の打ち切り宣言と同時に、邪龍ギムレーの体に再び無数の攻撃が放たれる。

(やれやれ、狂信者の愚かさからして予測ができなかったわけじゃないが、まさかここまでとは)

様々な攻撃が全て巨大な邪龍の体に命中するが、ギムレーは本体も人間体のどちらも涼しい顔であった。
地上に蟻のように群がっているモブ狂信者どもには確実な怯えが見え、ほとんど全ての攻撃がうろたえ弾であった。
一部は本能的な恐怖に負けて逃げ出している者もいる。
ビッグサイトにいる兵力がいくらあってもギムレーを倒すにはとても足りない。

(だが、諦めるわけにはいかない、オシリスは戦力としても仲間としても、見捨てるわけにはいかないからな!)

ギムレーは攻め方を変えた。
ビッグサイトからは遠い位置にいる狂信者やトーチカなどの建造物はブレス攻撃で焼き払う。
今、できるだけ破壊と死を齎せば、あとで仲間と攻め込んだ時に楽にビッグサイトを陥落できるだろう。
さらに……

「お、おい! あの龍ゆっくりと落ちて来ていないか?」
「まずい、ビッグサイトが、クラウザーさんが潰されてしまう!」

今の焦るような言葉は名も無きモブ狂信者が放ったものだ。
ギムレーはビッグサイトに対しては徐々に空から接近する形で無言の圧力を仕掛ける。
ゆっくり落ちることで交渉に応じなければビッグサイトをそのうちに潰すというポーズであり、仮に倒したところで、落下したギムレーがビッグサイトに直撃し、結局狂信者は終わるのだ。
ほぼ全ての狂信者がこの事態に焦る。
しかもだんだん近づいていくことで流れ弾がビッグサイトに当たるのを恐れて攻撃の手も緩めていった。

「さあ、根比べと行こうかディー。
早くしないとビッグサイトが僕の手で潰されるよ」

爆発の危険があるのでビッグサイトを本気で潰す気はないが、そうでなくとも狂信者など「いつでも潰せる」ことを仲間や対主催に示さなくては行かない。
潰されないにしろ、ギムレーの体がビッグサイトに少しでも触れたら狂信者は敗北したも同じ、全国の狂信者の士気は間違いなく急下降するだろう。
現状でも「もうダメだあ、おしまいだあ」という声が狂信者の中から聞こえる。

その絶望が、ギムレーにとっては心地良かった。


 ◆

467痛みの唄:2019/10/04(金) 13:27:36 ID:e/bigAbo0

混乱するビッグサイトの中、その玄関口にて。

『はあはあ……危うく全滅するかと思ったよ』
「助かったぜ、こまっちゃん!」

小町ら影薄組は、ギムレーからの攻撃を回避していた。
一撃でも喰らえば全滅確定の攻撃ではあったが、小町が咄嗟にCOMPから出て距離を操る程度の能力を使用。
自分を含めた五人をビッグサイトの玄関口まで引き寄せることで回避したのだ。

ビッグサイトの混乱もあり、影薄組は尚の事、小町の姿はまだ見られていない。
見られたとしても小町がいたところの兵隊は全滅しているため、潜入は結果的に気づかれてないだろう。

「まずいですね……あの竜がだんだんここに落っこちてきています」
「黒子くんはホント病的なまでに冷静っスね……」
「ここぐらいしか逃げ込む場所がなかったとはいえ、どうするの?!」

ちなみにギムレーが対主催である影薄組の存在に気付かなかったとはいえ、向こうから攻撃を受けたのは事実。
ビッグサイトも潰す気であるようだし、現状は味方として見ない方が良いだろうと影薄組は胸中で思った。
そんな竜にモタモタしているとビッグサイトを潰すと言われているのだ。
施設が潰れれば狂信者どころか都庁軍も聖帝軍もイチリュウチームも関東にいる参加者は問答無用で全滅してしまう。
そうなる前になんとかしなければならなかった。

「あの邪竜をここを潰す前に倒すという選択はないな。
単騎でここにこれるぐらい戦闘力はかなりのものだろうし、倒してもここに落っこちまう」
「小町さんが戦ったら狂信者に存在がバレて潜入作戦がおじゃんになるっす」
「戦闘そのものを避けた方がいいみたいだね」
「じゃあ、あの邪竜が落ちる前にクラウザーの蘇生手段を探して制圧、それが出来次第すぐにビッグサイトを離脱するのはどうでしょうか?」
『あたいは黒子の案に賛成だ。当初の目的に添ってるし、狂信者を倒して全員生き残るにはそれしかない。
ビッグサイトが外だけじゃなく、内側も混乱している今がチャンスだ。
早いとこ探し出すよ!』

予想だにしてなかったギムレーの出現はピンチと同時にチャンスを影薄組にも齎した。
混乱によってまだまだ時間がかかるかと思った狂信者本拠地心臓部への近道ができたのだ。
ここから蘇生手段を探したり、エネルギーと溜め込んでいる何かを奪うか壊すかすれば影薄組は目的を達成でき、狂信者がなくなれば次の大災害から世界を救う道が大きく開ける。
時間との勝負ではあるが、確かに希望への道もできたのだ。

 ◆

468痛みの唄:2019/10/04(金) 13:28:01 ID:e/bigAbo0

「ええい、カトンボか喧しい!」

ギムレーの周りにはいつかしかMSなどの無数の飛行可能な兵器が蝿のように飛び回り、上面から攻撃を加えていた。
下や横からの攻撃だとビッグサイトが巻き添えになってしまうため、ギムレーの巨体で流れ弾が飛ばない上からの攻撃に切り替えたのだ。
確かに巨大すぎるギムレー(竜)は基本的に攻撃を避けられないが、だがそこらの量産機のビームが何千発打ち込まれようと、蚊が刺した程度の打撃にしかならない。

「邪竜の鱗」はダメージ半減に加え、即死攻撃と反撃を無効化。
守備・魔防50に加え物理攻撃半減スキルにより確実に物理ダメージが1/4にされる。
とにかく硬い。 半端無く硬い。少なくとも防御力と抵抗力だけなら残存参加者でも1、2を争う硬さであろう。

「僕を倒すのなら、ファルシオンを持ってくるか、サイヤ人でも連れてくることだな! 消し飛べ!!」

最強の武器である「邪竜のブレス」と絶対命中効果を持つ「赤の呪い」。
そしてルフレ譲りの攻撃上昇スキルである「華炎」に確率上昇スキルである「神の器」の効果によるダメだしで攻撃はほぼ必中。
瞬間火力に関してはイチローナッパやフォレスト・セルの例もあるので最強とまでは行かないが、上位クラスには違いない。
それら反則級スキルの一斉砲火により、狂信者の機体郡を殲滅していく。

「弱い、弱すぎる……!!
さあ! 考え直すなら今だぞ、ディー! オシリスを返せ!」

狂信者を焼き殺しながら徐々にビッグサイトに近づいていくギムレー。
一方のディーは沈黙を続けており、返答がいつになっても返ってこない。

(……本気でビッグサイトが、クラウザーの蘇生手段を失ってもいいのか?)

表面上は余裕の顔を見せているが、内心では反応がまるでないディー相手に不安を覚えている。
流石にビッグサイトを破壊してしまうと大爆発を起こしてしまうので、現状での破壊は本位ではなかった。
しかし、そうこうしている内にギムレーの肉体とビッグサイトが接近する。

(考えが読まれたか……?
いや、交渉は引いたら負けだ。
ビッグサイトの内部の破壊はまずいだろうが、表面を傷つけるぐらいならば……!)

やろうと思えば翼で撫でて壊せそうな距離にまで近づいたビッグサイト。
ギムレーは狂信者にもっと揺さぶりをかけるためにビッグサイトに傷をいれんと、翼の一枚振りかぶる。




「な、なに!? この寒気は…なんだ!?」


瞬間。ギムレーに悪寒が走る。
否、悪寒ではない。
何か一気に力を奪われるような、毒を盛られた感覚が直下から感じたのだ。

さらに邪竜の翼の内、一枚が地上から飛んできた青い閃光とともに、切断された。

「なん……だと……!?」

切断された翼は幸いにも、近くの海に落ちてビッグサイトに被害は出なかった。
ギムレー(竜)はここにきて初めて痛みによる悲鳴をあげ、ギムレー(人)は驚きを隠せなかった。

邪竜の防御力については、先ほど説明下通りの鉄壁であったハズ。
その鉄壁がただの一撃で、破られたのだ。

目の前の、蒼い大剣を握る銀髪の半人半魔の女によって。


 ◆

469痛みの唄:2019/10/04(金) 13:28:01 ID:e/bigAbo0

「ええい、カトンボか喧しい!」

ギムレーの周りにはいつかしかMSなどの無数の飛行可能な兵器が蝿のように飛び回り、上面から攻撃を加えていた。
下や横からの攻撃だとビッグサイトが巻き添えになってしまうため、ギムレーの巨体で流れ弾が飛ばない上からの攻撃に切り替えたのだ。
確かに巨大すぎるギムレー(竜)は基本的に攻撃を避けられないが、だがそこらの量産機のビームが何千発打ち込まれようと、蚊が刺した程度の打撃にしかならない。

「邪竜の鱗」はダメージ半減に加え、即死攻撃と反撃を無効化。
守備・魔防50に加え物理攻撃半減スキルにより確実に物理ダメージが1/4にされる。
とにかく硬い。 半端無く硬い。少なくとも防御力と抵抗力だけなら残存参加者でも1、2を争う硬さであろう。

「僕を倒すのなら、ファルシオンを持ってくるか、サイヤ人でも連れてくることだな! 消し飛べ!!」

最強の武器である「邪竜のブレス」と絶対命中効果を持つ「赤の呪い」。
そしてルフレ譲りの攻撃上昇スキルである「華炎」に確率上昇スキルである「神の器」の効果によるダメだしで攻撃はほぼ必中。
瞬間火力に関してはイチローナッパやフォレスト・セルの例もあるので最強とまでは行かないが、上位クラスには違いない。
それら反則級スキルの一斉砲火により、狂信者の機体郡を殲滅していく。

「弱い、弱すぎる……!!
さあ! 考え直すなら今だぞ、ディー! オシリスを返せ!」

狂信者を焼き殺しながら徐々にビッグサイトに近づいていくギムレー。
一方のディーは沈黙を続けており、返答がいつになっても返ってこない。

(……本気でビッグサイトが、クラウザーの蘇生手段を失ってもいいのか?)

表面上は余裕の顔を見せているが、内心では反応がまるでないディー相手に不安を覚えている。
流石にビッグサイトを破壊してしまうと大爆発を起こしてしまうので、現状での破壊は本位ではなかった。
しかし、そうこうしている内にギムレーの肉体とビッグサイトが接近する。

(考えが読まれたか……?
いや、交渉は引いたら負けだ。
ビッグサイトの内部の破壊はまずいだろうが、表面を傷つけるぐらいならば……!)

やろうと思えば翼で撫でて壊せそうな距離にまで近づいたビッグサイト。
ギムレーは狂信者にもっと揺さぶりをかけるためにビッグサイトに傷をいれんと、翼の一枚振りかぶる。




「な、なに!? この寒気は…なんだ!?」


瞬間。ギムレーに悪寒が走る。
否、悪寒ではない。
何か一気に力を奪われるような、毒を盛られた感覚が直下から感じたのだ。

さらに邪竜の翼の内、一枚が地上から飛んできた青い閃光とともに、切断された。

「なん……だと……!?」

切断された翼は幸いにも、近くの海に落ちてビッグサイトに被害は出なかった。
ギムレー(竜)はここにきて初めて痛みによる悲鳴をあげ、ギムレー(人)は驚きを隠せなかった。

邪竜の防御力については、先ほど説明下通りの鉄壁であったハズ。
その鉄壁がただの一撃で、破られたのだ。

目の前の、蒼い大剣を握る銀髪の半人半魔の女によって。


 ◆

470痛みの唄:2019/10/04(金) 13:29:19 ID:e/bigAbo0

突然の襲撃を受けたビッグサイトに対し、セルベリアは出撃を余儀なくされた。
ギムレー相手にはエースと言えど切歌たちで勝てる見込みは薄い。
そこで竜殺剣ドリスを持つセルベリアが向かうことになったのだ。

ビッグサイトの屋上からギムレーの翼に飛び乗ったセルベリアは、乗っていた翼を一枚切断した直後に邪竜の背中に飛び乗った。

「貴様はいったい!」
「クラウザーさんを信望する者、セルベリア・ブレスだ」
「この強さ……狂信者でも上位クラスの者か……!」
「この竜の上に平然と乗っている人間……おまえがこの竜にとって大事なキーマンであると見た。
 クラウザーさんのためにもSATUGAIさせてもらうぞ」

ヴァルキュリアが使用する槍の代わりに、ドリスを人間の方のギムレーに構えるセルベリア。
人間体ギムレーもまた周辺の雑魚は本体の竜に任せて、攻撃の妨害をしてくるセルベリアとの一対一の戦いを選択する。

(あの蒼い剣、竜を殺す力に特化しているのか!
あの剣のせいで僕の力は……厄介なものを!)

剣から帯びる力からギムレーはセルベリアの剣が竜殺しの力を持っていることを理解する。
これは大正解であり、竜殺剣ドリスはあらゆる竜の力を弱める剣。
難攻不落な結界を切り裂き、人知の及ばぬ存在であっても不死身であっても、それが竜であるならば殺せるレベルまで強引に引き下げる魔刀なのだ。
余談だが、ギムレーとは違うベクトルでチート能力の持ち主である竜が、都庁で創られた竜殺剣によって討たれている。
それほどまでに竜殺剣はドラゴンにとって危険なのだ。

(だが……戦闘力を完全に奪うまでの力はないようだ!
さっきは油断したが、今度はそうはいかない!)
「赤の呪い&華炎付き、ダークスパイク!」

利用できる限りのスキルで強化した闇の針をセルベリアに向けて放つ。
だが、それらはセルベリアにあっさりと躱され、次の瞬間には肉薄されていた。

「なに!」

そして次の瞬間には回避する余裕もなくギムレーの右腕が鮮血を撒き散らしながら宙を舞い、さらに追撃の蹴りがギムレーの腹に入り、床もとい竜の背中に叩きつけられる。

「くっ……! おのれえ!」
「遅いな、その程度の迎撃速度ならば見切るのは容易い」

更なる追撃を交わすために迎撃に闇の魔法を使うが、セルベリアはその攻撃を軽々と躱し、射程外まで逃げられてしまう。
戦いは仕切り直し……いや手傷を負わされただけギムレー側が大きく不利であった。

幸いなのはギムレーは右腕も切られても冷静な判断力を失ってなかったということだ。
次なる攻撃に備えて数秒で戦力分析を行う。

(スキルがほとんど発動していなかった……あの蒼い剣、ファルシオンよりも数段危険じゃないか!)

ファルシオンとは、邪竜に対して有効打を与え封印できる剣である。
だがセルベリアの持つ竜殺剣ドリスはそれ以上の性能を誇っているようだ。
ドリスによって攻撃に必中効果や攻撃上昇スキルはほとんど力を失っていた。
第一、普通に装備の持ち主ならばギムレーの背中に乗っただけで闇の力に引き裂かれて瀕死の重症を負うが、セルベリアは剣に保護でもされているのか、全くダメージを受けていない。
少なくとも今のギムレーの戦闘力は首輪をはめられた時と同じくらい能力が制限されていると見ていい。

(だが……それだけなら、僕の鉄壁の防御力がこんなに簡単に破られるハズがない。
あの女自体も、防御力を無効化するスキルを持っているとみた!
あと接近されたらきっついニオイがした。能力を底上げする強化系の何かを使ったな!)

471痛みの唄:2019/10/04(金) 13:29:45 ID:e/bigAbo0

その推測は正しく、セルベリア自身もまた、スキルやアイテムで強化をされていた。
まずセルベリアはドリスコルから借りた時間が進行しないシミュレーターや、倉庫にある悪魔の能力を永続的に上昇させる「力の香」「魔力の香」「体力の香」「速さの香」「運の香」を限界まで使い、レベルや能力をカンストさせるまでに強化。
そして体内に埋め込んだマガタマで「貫通」を手に入れたため、耐性の無視が可能になった。
ところが「貫通」のスキルが突破できるのは耐性だけで、高防御を貫くスキルではない。


しかしセルベリア自身もそれを知っており、自身が持つ戦闘力をより完璧にするための布石としていた。
そこで手に入れた特殊能力(パーソナルポテンシャル)、その名も『貫通攻撃』である。
『貫通攻撃』こそ防御力を完全無視し、どんなに硬くした相手でも被弾すれば紙のように貫くことができる。
反面、こちらは「貫通」と違って耐性は貫けない。

だがスキル「貫通」とポテンシャル『貫通攻撃』をかけ合わせれば、ギリメカラのような物理反射系防御を主体とした敵でない限り、防御力などあってないようなものと化す。
物理反射系の敵とあってしまった場合もヴァルキュリア固有の槍ビームで対処すればいいため、多くの敵を屠ることができる。
ここに竜殺剣まで加わればドラゴンキラー・セルベリアの完成である。

そしてもう一個、補足するとすれば……

「攻撃が全く当たらない……素早さに差がありすぎるのか!」

ギムレーのファルシオンなどの竜特攻武器以外の弱点を上げるとするならば、「機動力」の低さである。
低いと言っても格段に遅いというわけではないがこれは意外と大きく、手練からの攻撃はまず避けられず、攻撃に関しても追撃が間に合わないこともしばしばだ。
ギムレーはその弱点を必中や鉄壁のスキル構成で補い、回避がほぼいらないほどの反則級の命中率と防御力・火力を確保していた。
ところが完璧だと思われた戦闘スキル構成も竜殺剣で抑えられ、セルベリア自身のスキルで神装甲は一気に紙装甲に。
高い火力もまた、当たらなけらばどうということはない。
鍛えてなかった機動性の無さがここでは仇になってしまった。

「ぐっ、がはっ!!」

よって狂信者を追い詰めていたつもりが、今では一方的に追い詰められることになった。
僅か数分の間でほぼ無傷のセルベリアに対し、ギムレーは為す術なくボロボロにされていった。

 ◆

472痛みの唄:2019/10/04(金) 13:30:16 ID:e/bigAbo0

「一人で来たのが失敗だったな。」

竜の背中に倒れ伏すギムレーを見つめながらセルベリアは呟いた。
ギムレーは既に両腕を切断され、片足をもがれ、治療でもしない限り継戦は不可能であった。
少なくとも人間体のギムレーの方は敗北したのである。
本体はまだ残っているが、地上の狂信者との戦闘に手を裂かれており、そもそも加勢したところで戦闘が自分の背中で行われているため自分自身を撃つ危険があるため迂闊に手が出せなかった。
とはいえ、思考を司っている人間体が傷ついている分、本体もまた攻撃の手が明らかに緩まっていた。
おまけにドリスを持ったセルベリアが背中に乗っている分、邪竜の方も防御スキルを抑制されてモブ狂信者による打撃を受けていた。
人間に換算すると蚊に刺される程度の攻撃が、今にはキラービーの針に刺された並みの激痛となっている。


「クックック……」
「何が可笑しい?」

深い手傷を負わされても不敵に笑うギムレーをセルベリアは気味悪いと思う。
この笑いはテラカオス化した仲間を殺そうとした結果、仲間からの信頼を失ったことへの自嘲か?
最強だと疑わなかった自分がこうもあっさりと反撃を受けて無様に転がっていることへの失望か?
否。

「いや、気づいたのさ。
これだけボコボコにして、なぜトドメを刺さない? セルベリア・ブレス」
「……」
「おまえたち狂信者は恐れているんじゃないか?
僕を殺せば竜の方が落下してビッグサイトを本当に押しつぶし……クラウザーの蘇生手段を失わせてしまうことを!」
「……!」

よく考えてみれば、ギムレーを殺すだけなら人間体でなくても本体の竜の首を落とせばいい。
少なくとも今のセルベリアの能力ならそれが可能だ。
だが彼女は竜自体の攻撃も(初撃を除いて)、控えていた。
人間体に関しても手足はもいでも首や心臓のような急所は狙わなかった。

「おまえの目的は僕を殺害することじゃなくて時間稼ぎか制圧……リスクがある内は殺せたくとも殺せないハズだ!」
「……」

セルベリアは沈黙を貫いていただ、微かに眉が動いていたことをギムレーは見逃さなかった。
図星のようだ。
おそらく戦闘をしている裏で、ビッグサイト内部ではギムレーを追い返す手段か蘇生する装置をどこかへ移動する手段を考えているのだろう。
セルベリアがここに送られたのは竜への有効打を持つという他に、時間稼ぎができるということもあったのかもしれない。

(向こうが時間稼ぎをしたいのならば、それを利用してやる。
このワンピースに出てきそうな体型の爆乳脇みせ女を倒す策を考えるか、もしくはイチリュウチームに逃げる作戦が思いつくまで、こっちも時間稼ぎをさせてもらう)

セルベリアにも何かしらの弱点があるかもしれない。
もしくは逃げ道はあるかもしれない。
前者はともかく、後者はオシリスを助けられない状態でイチリュウチームの戻るとはやてがうるさそうだが、竜に関して共通の弱点となる装備があるのなら情報を持ち帰るだけでも損はない筈だ。
そのためにもまずは唯一無事な口を動かし、敵であるセルベリアとの対話を試みる。
この際、どう思われても構わない。
策が閃くまでの時間を稼ぐことが大事であった。


 FIGHT
 ESCAPE
⇒TALK
 AUTO 
 

「大災害以降、あらゆる蘇生魔法が使えなくなったというのに。
おまえたち狂信者は本当に死者が、クラウザーが生き返ると信じているのか?」
「『さん』をつけろ」
「げふっ!」

473痛みの唄:2019/10/04(金) 13:30:44 ID:e/bigAbo0

ギムレーの腹にセルベリアの蹴りが入る。
これもまた死なない程度に手加減されているが、いつタガが外れて本気の蹴りになるかわからないので(不本意ながら)ギムレーはクラウザーをさん付けで呼ぶようにした。

「蘇生は可能だ。
詳細は話せんが、実際に冥府への扉を開くことができた。
その時はクラウザーさんを見つけらなかったがな」
「ほう、眉唾じゃなきゃだが、それはすごい。で、今は開けないのか?」
「一度の発動に大量の生贄が必要なのだ、一度開いたら大量の生贄を狩りなおしていく必要がある。
専門家の見立てだと生き返れるのは一人だけ。クラウザーさん以外は生き返れると思うなよ」

あくまで重大な内容は話さない範囲でセルベリアはギムレーに向けて話す。
話にはいちおう応じてるようだが、警戒は一瞬たりとも怠っておらず、ギムレーに剣は向けたままだ。

「随分、熱心なようだけど、クラウザー…さんがそれで喜ぶと思うのか?」
「それは生き返してみないことにはわからんし、喜ばれるなら我々は感無量。
嘆かれたら大人しくクラウザーさんに土下座した後に自分をSATUGAIするさ」

「……それに、私たちが生きがいを見つけるにも、死にがいを見つけるにもクラウザーさんの歌が必要不可欠だからな」
「おまえたちはそこまでしてクラウザーさんに頼らないと生きていけないのか?」
「否定はしない。
狂信者というのは元々ファンであった者の他にも、多くが大災害や殺し合いで大切な物を失った者だ。
私も日本に難民としてやってくる前は一軍人だったが、祖国も守りたかった人も全部失った。
もはやクラウザーさんの歌なしでは生きていくことも死ぬことの意義も見つけられない。
おまえたちが殺した天子も同じだ。
クラウザーさんという希望があったからこそ、あの方一人のために命を投げ出せた」

セルベリアはいつしか狂信者の信仰の意味について熱く語っていた。

「それが手を血に染めることであってもか?」
「それが例え手を血に染めることであっても、人は希望なしでは生きていけない。
狂信者とは本質的に弱者だ……おまえのような強者にはわからんだろうが、何かにすがらないと生きていけない。
強者ならば仮に殺し合いが終わった後の世界でも生きているだろうが、狂信者は違う。
クラウザーさんがいなければ、殺し合いがあろうがなかろうが、生ける屍となり死ぬことに意味も見いだせなくなる。
だからこそクラウザーさんからは何を言われようとも構わない覚悟で生き返さなければならないんだ」
「他の者から大切な者を奪ってもか?」
「そうだ。
狂信者は悪と罵られても構わないし、恨んでくれてもいい。
だが、全ての希望であるクラウザーさんを否定させたり、蘇生を妨害することだけは絶対に許さん」
「うへえ……すごい狂信ぶり」
「褒め言葉として受け取っておく」

ギムレーはセルベリアの狂信ぶりに驚く。
ヒャッハー集団なので全員がセルベリアみたいな理想を掲げて殺しをするタイプとは思えないが、理性を持ちながら「狂っている」者もいるようだ。

「フンッ、大層な御託だけど、殺し合いを使って利益を得ようとする奴に良いように利用されているだけじゃないか?」
「なに?」
「盲目的にクラウザーさんに尽くしているみたいだが、視野の狭い奴は利用されるよ……殺し合いを利用して利益を得ようとする奴……周りに身に覚えがないかい?」



「…………」
「あれ? って、ぎゃああああああああああああ!!」

直近に喋った言葉が何かの逆鱗にでも触れたのか、近くにあったギムレー(竜)の鱗を強引に剥がされた後に四方を囲むように閉じ込められた。
鱗でできたテントの中にはセルベリアも一緒だったが、中で仲間の狂信者にも見せられないほど凄惨な拷問でもするつもりなのか?

(ヤバイ、地雷踏んだか……?)

セルベリアの表情には鬼気迫るものがあった。
比較的冷静だとはいえ所詮はイカれた狂信者。
一度プッツンさせてしまえば、暴走して殺しに来ることは目に見えている。
言葉選びをミスしたと思ったギムレーだったが、それを後悔する前に、重い物がドンッと落ちた。



「え……?」
「おまえを殺すのはもう少し先だ。
テラカオス、カオスロワちゃんねる、聖別……この中で聞き覚えのある言葉はないか?」

ギムレーの目の前に落ちたのは半分に割れた魔理沙……テラカオス化した参加者の骸。

ギムレーの誤算は、狂信者であるセルベリアが情報交換を求めてくるとは思わなかったことだ。


 ◆

474痛みの唄:2019/10/04(金) 13:31:03 ID:e/bigAbo0

一方その頃、影薄組の眼前には黄泉レ○プマシンがあった。
影が薄いという天然潜入スキルのおかげでここまで誰にも気づかれずに近づくことができたのだ。
だが、ここで障壁にぶち当たる。

「参ったな……」
「どうしたの? 早くこの機械を止めようよ」
「それが……この機械を停止させるには狂信者の上層部の生きた網膜が必要みたいなんです」

黄泉レ○プマシンを稼働させたり安全に止めるには、網膜認証式で生き残っている上層部の人間……すなわちディーやセルベリア、ドリスコルの網膜が必要だったのだ。
ドリスコルは都庁に出撃、約二名は戦死しているため、影薄組は実質ディーかセルベリアを生きたまま捕まえないといけない。

『破壊はできないのかい? バーンと爆発させるんじゃなくて配線を切って故障させる程度に』
「ダメだ、配線が複雑すぎてどれを切れば良いかわかんねえ!」
「やめた方がいいっす、素人が超巨大な時限爆弾を解除するようなもんすよ」
「しかも、上層部が全員死亡しても自爆する仕組みになっているようです」
「なんでわかるの黒子くん?!」
「そこに説明書が放置されてありました……あ、さっき言った方法以外の止め方は書いてないですよ」

ハッカーや技術者を連れてこなかったこと――というか極制服なしだと戦闘力も潜入能力も発揮できない犬牟田しかいないのだが――がここにきて仇になってしまった。
影薄組がどうしても狂信者を挫きたいのならばこのビッグサイトにいる上層部の二人の内一人を連れてこないといけなくなった。

『仕方がない、セルベリアは邪竜と戦っているようだから戦い終わるまで待つか、部屋という部屋を洗いざらい探してディーを見つけるしかないね』

小町の言葉により、一行は仕方なく手の付けられない蘇生装置をあとにしビッグサイト中を探索してディーを探すことにして、生け捕りにするために。

そこで一行は何かを発見する。

「待って小町さん、格納庫の方から何か出てくるっす!」
『なんだいアレは? やけにデカイが……』

窓の外には赤くて巨大な何かが稼働していた。
 
 ◆

475痛みの唄:2019/10/04(金) 13:32:06 ID:e/bigAbo0

わざわざ傷つけて鱗を引っペがしたのは、二人にとって不都合な存在に情報を交換していることを気づかせないため。
漏洩に危険を防ぐために即席のテントを作ったのだ。

その中で二人は情報交換をし、お互いが知りえない情報を知り得たのだ。


「大災害の原因は蒼という未知の物質で、二度目の大災害が世界に迫っている……テラカオスは滅びを吸収して防ぐための存在。
一見すると意味不明な怪文書・救済の予言はテラカオスによる世界救済を確実なものにする手段。
主催は滅亡を防ぐために殺し合いを開催したが、「提督」はそれを利用して滅びの力を手に入れ、宇宙の絶対的な支配者になろうとしているかもしれない、か」
「提督に行き着く鍵は『悪魔』『科学都市ニルヴァーナ出身』、ここまでわかれば正体をしぼり込める!」

オオナズチが都庁にイチリュウチームが合流してから教えれば良いと思ったためか、竜殺剣や艦むすの件をドラゴンネットワークでギムレーに教えなかったため、流石にセルベリアが今、手に持っている剣が黒幕もといサーフ・シェフィールドが
使っていたものとは見抜けなかったが、尻尾を掴むための布石としては大きな前進であった。

「沖縄の異常気象も、原因は蒼によるもの……クラウザーさんの怒りだというディーの言葉はやはり間違っていた」
「これはクラウザー…さんの復活を望む君たち狂信者にとっても由々しき事態だろう。
復活させたところで二度目の大災害でクラウザーさんごとお陀仏だ。
しかも冥府の入口である死者スレも進攻を受けているときた」
「クラウザーさんもこのままでは……」

セルベリアも狂信者が暴れている裏で世界滅亡が目前に迫っていることまでは知らなかった故、衝撃を受ける。
このまま無軌道に生贄を狩り続けたところで誰にとっても未来はない。
先ほどセルベリア自身が述べた希望も黒幕に利用された挙句に失うことになるだろう。

「言っておくけど、僕がここに来た目的はあくまでオシリスの奪還であってビッグサイト破壊やクラウザーさん蘇生阻止じゃない。
関東を根こそぎ滅ぼす誘爆も不本意だし、本当は耐えられない。
君相手に僕一人では勝てないのは十分に分かった。
セルベリア、オシリスを返してくれないか。
せめて捕まえたという名目でビッグサイトに入れるか、ここは見逃してくれないか?」

ここでギムレーはセルベリアに交渉を測る。
オシリス奪還は絶対、ビッグサイトに入れれば狂信者の中に黒幕が紛れている場合は捜索ができ、見逃してもらっただけでも有用な情報を味方に持ち帰ることができる。

「馬鹿な貴様は敵だぞ、ビッグサイトに入れるわけがないだろう。
ちょっと対話したからって信用を得たなどと誤解するんじゃない!」

ビッグサイト侵入に関してはピシャリと言い放たれた。
まあ、侵入して黒幕探しならまだしも蘇生手段をついでに破壊される危険があるので当然と言えば当然である。

「……だが、一つ言っておくと、おまえが探し求めていたオシリスの天空竜はここにはもういない」
「じゃあどこに? 生きているのか?」
「残念だがもう死んでいる。加工された兵器は都庁との戦闘に投入された。
今頃、多くの魔物をSATUGAIしているだろう」
「そうか……」

彼女の話に嘘がなければオシリスはこの世にいないようだ。
だがそれは都庁及びドリスコルの部隊の手元にあるらしく、オシリスの力だけならばイチリュウチームと合流してから都庁と共に取り戻すことも可能。
ひょっとしたら既に合流した都庁かチームが狂信者から奪還した可能性さえある。
ビッグサイトに執着する意味は、現状では、なくなったのだ。

「では、見逃すのは……?」
「おまえが撤退したという体を取るならば、見逃してやってもいい」
「トホホ……この邪竜ギムレーが負けを認めろというのか」
「私情はない。
ここでおまえが私に打ち負かされ、やむなく退却したという形をとらないと内通を疑われ、私は他の狂信者から疑われる。
そうなるとディーの真意も探れないし、最悪ビッグサイトに提督が潜んでいた場合は警戒されて逃げられる、我慢しろ」

セルベリアは退却に関しては了承した。
蘇生したクラウザーさんが大災害で結局死に、黒幕が嘲笑うぐらいならば、目先のSATUGAIは後回しである。

476痛みの唄:2019/10/04(金) 13:32:46 ID:e/bigAbo0

「言っておくが私は、私たちはクラウザーさんの蘇生は絶対に諦めたわけじゃない。
黒幕さえ討伐し、大災害さえどうにかなったのならば次はお前たちだ。
次は勝てると思うな。我々はされに対策を洗練し強くなり、最後の一人まで戦うつもりだからな」
(……ああ、僕もおまえらを許したわけじゃない。
ここは負けを認めるが、次に敵として戦った時は根絶やしだ)

ギスギスした空気ではあるが、情報交換と交渉自体は恙無く終わり、セルベリアは鱗のテントから出ていこうとする。
本当に見逃してくれるようだ。





「ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!?」

セルベリアが邪竜の背から飛び降りようとした瞬間。それは起こった。
突如、ギムレーが竜体・人間体含めて苦しそうに叫び出したのだ。

「ギムレー!?」

セルベリアが咄嗟に振り返るとギムレーの体から鮮血が噴き出していた。
それは器である人間ルフレだけでなく、今彼女が足場にしている本体である邪竜ギムレーからも…‥



『時間を稼いでくれてありがとう、セルベリア』
「その声は……ディー!」

セルベリアが地上の方を見ると、真紅の鎧をまとった異形……ディーの真の姿であるウィツァルネミテアがビッグサイトを背に顕現していた。

『ようやく、私の切り札であるネオ・ジオングスーツが完成したよ』

ネオ・ジオングスーツと名付けられた機械鎧をウィツァルネミテアは纏っている。
その大きさは元々のウィツァルネミテアとアーマー(ハルユニット)の分を含めて100mにも及んでいる。
ただそれだけではない、アーマーの背部からは光る黄金色のリングのようなものが出ていた。

『見せてもらおうか、サイコシェードの性能とやらを』

光輪・サイコシェード発振器から放たれた目に見えない力がギムレーの肉体を引き裂いていく。
しかもセルベリアの手元に竜殺剣があるとはいえ、彼女相手以外にはまだまだ堅牢な防御力を持っているにも関わらず、スキルや防御力が全く機能していなかった。
一方で、おそらく射線上に立っているハズのセルベリアは無傷。
この超常現象に二人は思わず同じことを口走る。

「「これはいったい……!?」」
『これが私の真の力……願いを叶える力。
それに思念に感応して力を増大させるサイコ・フレームの共振が呼び起こした奇跡の力だ!』

ディーもとい大神ウィツァルネミテアの隠された能力は「あらゆる願いを叶える力」。
その気になれば不老不死や、凡人に神の知恵を授けることさえ可能にしている。
そしてホモ共が乗っていたユニコーンガンダムに搭載されていたものと同じサイコ・フレーム。
乗り手の精神次第では大多数の機械へのハッキング、果てはコロニーレーザーや超巨大隕石さえMS一機で跳ね返してしまう奇跡を起こせる機構。

477痛みの唄:2019/10/04(金) 13:33:25 ID:e/bigAbo0

「バカな……そんなもので……神の出来損ないと機械如きに……ギムレーがやられているというのか?」

ギムレーは口惜しそうに呟く。
だが実際、抗う術もなく、ギムレーはたった一体の異形に追い込まれていた。

『ああ、今の願いはクラウザーさんを敬わない者の完全抹殺。
それをサイコシェードで実現しようとしているのだ。
故に仲間である狂信者を傷つけずに、君だけ殺すことも可能。
さらに相応の思念さえあればあらゆる耐性や防御力、スキルさえ無力化してSATUGAIもできる』
(だから私は影響を受けないと言いたいのか…?)

セルベリアが影響を受けていないのは、ひとえに彼女が狂信者であり、意図的にディーが殺さないようにしているためである。
実際のネオ・ジオングも相手武器だけ破壊してパイロットや機体にダメージを与えなかった。
サイコシェードによる攻撃を受けてもギムレーだけ殺してセルベリアだけ助けることも可能なのだ。

「だが、神とはいえ所詮は一人……混沌を食らう邪竜相手にここまでの力が出せるわけが」
『私だけの願いじゃないさ……おまえが先ほどまで見下ろしていた地上を見てみるが良い』
「……これは!」

ギムレーは竜側の瞳を持って、眼下を見る。
そこには先ほどまで絶望の表情を浮かべていた大量のモブ狂信者たちが……


……今では希望の表情を浮かべて、処刑されるギムレーと執行人のディーを見つめている。

「この思念は希望!? バカな!
こいつらは邪竜である僕を全く恐れなくなったというのか!?」
『そのとおりだ。君は我らDMC狂信者に絶対的な恐怖を与えに来たつもりだが。
セルベリアのおかげで、皆が希望を持てたようだよ』
「私が……」
『ありがとうセルベリア。
君がたった一人でギムレーをレ○プしてくれたおかげで、我々は強大な力を持つ邪竜にさえ優位に戦えると証明してくれた。
狂信者の絶望は裏返って大きな希望になった!』

ギムレーはビッグサイトに来た時に圧倒的な力で狂信者の多くを絶望の淵に叩き落とした。
だが竜殺剣を持ったセルベリアというイレギュラーにより、逆に圧倒されることになった。
それを見ていた観客である大量のモブ狂信者は強大な敵にさえ勝てる「ショー」を見たことで希望を持ったのだ。
今や狂信者のボルテージはギムレーがここにやってきた以前の倍ぐらいに膨らんでいる。
希望と絶望は裏返った時の落差が激しく、一度絶望しかけた彼らがセルベリアの活躍により希望側に裏返されたのである。


『正直、モブ狂信者は何人いても弱い。大半は素人の寄せ集めばかりだからな。

だが、このサイコフレームの力さえあれば彼らの数は力となる。
しかも死んだ者の残留思念さえサイコフレームは力にできる!
数千数万の狂信者の想いによってネオ・ジオングと私は最強の兵器に昇華されたのだ』

モブ狂信者は膨大な数があるが、いくら鍛えても上位のネームド参加者を越えることはできない。
端的に言えば一斉に襲いかかっても理不尽級ならばまとめて皆殺しにさえできるだろう。
しかし、だ。
思念には物理的限界がなく、思念が大量かつ統一されているならば、サイコフレームの放つサイコフィールドはより強固なものになる。
塵も積もれば山となり、それが邪竜の力をも凌いでしまったのだ。

478痛みの唄:2019/10/04(金) 13:33:50 ID:e/bigAbo0

「これが絶望の思念だったならば……く、邪魔を! 身動きが取れない!」
「「SATUGAIせよ! SATUGAIせよ!」」

ギムレーはなんとかサイコフィールドから抜けだそうとするが、モブ狂信者たちの砲撃が逃走を阻む。
先程まで失いかけていた士気は、もはや取り戻した分を越えて爆増していた。

「待てディー! ギムレーを殺したら……!」
『ビッグサイトへの落下なら心配するな、そうはさせないように完全消滅させる。
セルベリアはそろそろ脱出したまえ、サイコフィールドはともかく、ギムレー自身の消滅に巻き込まれるぞ』
「くっ……!」

セルベリアとしては黒幕である提督を探すための鍵として、内通者となるギムレーは殺したくなかったが、ディーや狂信者は聞く耳持たないだろう。
むしろ内通していることを明かしたら彼女も裏切り者と見なされてサイコシェードによって潰されるため、竜殺剣をディパックにしまいこむ素振りさえできなかった。。
クラウザーさんの蘇生に貢献することもなく、黒幕に一矢報いることさえできないまま死ぬのは不本意であった。
ギムレーの存在は惜しいが見捨てるしかあるまい。

「…………すまん、所詮は敵同士だ」

セルベリアはギムレーに振り返ることなくビッグサイトへ降りようとする。


「ははは……本当に大した狂信だよ……もはや神にさえ崇められるクラウザーが羨ましい。
勝利の差は信望の差か……これに関しては敗北を認めてやってもいい……」

去りゆくセルベリアにしか聞こえない声で、ギムレーは自嘲げに彼女に向けて呟く。
セルベリアの足が降りる直前でピタリと止まる。

「だが、おまえたち狂信者の目は信仰で曇りすぎている。
このままだと提督に足元を掬われるだろうな。

クラウザーへの信仰をやめろとはいわない。
だが、蘇生や救済の予言を完遂する前に提督を見つけだして必ず殺すんだ。
でないと、狂信者だとうと何だろうと関係なく……クラウザーを含んだ全てが未来を失う……」

セルベリアはそれだけ聞くと、ビッグサイトへ降りていった。

「皮肉だな……最後に黒幕殺しの役目を任せるのが狂信者になるなんて……」

ギムレーは自嘲する。
もはや体はサイコフィールドの重圧でくしゃくしゃになっており、人間だったらとっくに死んでいるレベルである。

(僕はどこで間違えたのか……
チームの誰かを連れて来るべきだったか?
いや、セルベリアの話を信じるならばオシリスの骸は都庁にある。
そのままチームとは別れずに都庁へ向かうべきだったか。
いや……誰かと相談したりせずになのはを殺そうとした時点で……今更だな)

瀕死の身で自身の行動を省みるが、たらればにしかならない。
ただただ悔しかった、この悔しさは対主催が大災害と提督を打ち破ってくれると信じないと晴れない。

「エラーを取り返したかったが、ここで退場か……こんなところではなく、チームが優勝するのを見届けたかったよ」

最期の言葉は、邪竜ギムレーの本心からの言葉であった。




無論、それらの言葉はディーには届いていない。

「坊やにひとつだけ言っておこう……
君は間違いなく強敵だったが、我ら狂信者の希望(きょうき)を侮りすぎのがいけないのだよ」

ディーはサイコフィールドでギムレーの巨体を東京湾の沖にまで誘導し、果実のように潰した後、大爆発を起こさせた。
その爆発はビッグサイトに被害を与えることなく、ディーは右腕を振り上げて狂信者たちに高らかに勝利宣言をした。
そのままウィツァルネミテアは鎧ごと格納庫へしまわれていった。


【ギムレー@ファイアーエムブレム 覚醒 死亡確認】


 ◆

479痛みの唄:2019/10/04(金) 13:34:49 ID:e/bigAbo0


画して、邪竜に勝利した狂信者であるがセルベリアの面持ちは晴れていなかった。
竜殺剣ドリスを片手に一人物思いにふける。
思い返すはつい先ほど死んだギムレーの遺言、このまま狂信者が進んでも未来はないということ。

(いったい提督はどこに潜んでいる……もっと情報を、誰かヒントを教えてくれ……!)

セルベリアの中で焦りが募っていく。
しかし完全な味方と言える存在は切歌やレジーナだけ。
あとは提督の疑いがあり、最悪モブ狂信者でさえある可能さえあるのだ。
手詰まりか? そう思った矢先である。

「!」
「チィッ!」

瞬間、背後から殺気を感じたセルベリアは咄嗟に竜殺剣で防いで凌ぐ。

「おまえは……小野塚小町!? なぜここに!」

セルベリアに剣を向けたのは、サイファーを持った小町――かつて自分を敗北に追い込んだ相手である。
小町はどこかで拾ったローブを被っていたが、その顔と特徴的な赤い髪に爆乳を見間違えるハズがなかった。
両者は殺気と戦意を込めて、竜殺剣とサイファーで鍔迫り合い、ついでにお互いにでか過ぎるバストをぶつけあう。

「セルベリア・ブレス……!」
「小町ちゃん!!」
「もうひとりいる!」

追撃するように、エンシェントソードを握ったあかりが側面から襲いかかるが、セルベリアは冷静にヴァルキュリアの槍を左手に具現化して防ぎ、剣と槍の二刀流による回転切りで小町とあかりを突き飛ばし、戦闘を仕切りなおす。

「セルベリア! なんでおまえさんが悪魔の力と竜殺剣を持っている!!」

小町が怒りと共に発した言葉。
その怒りの理由は世界に神々を殺して大災害を招いた悪魔がこの世に数点しかないハズの竜殺剣を持っていたからである。

 ◆

「ぐはッ!」

格納庫にて、ネオ・ジオングスーツを脱ぎ、人間体に戻ったディーは血を吐いていた。

「大丈夫ですかディー?」

心配そうな面持ちで、狂信者の技術主任であるサーフは倒れそうになったディーの体を支える。

「これは願いを叶える力の代償か……君の技術のおかげでできるようになったとはいえ。
よもや自分に使って代償を支払うことになるとはな」

実はウィツァルネミテアの願いを叶える力とは簡単に行えるわけではなく、代償があって初めて行使できるのだ。
例えば不老不死の願いならば死ねない代わりにスライム同然の姿と知性になってしまい、神の知恵が欲しいならば自我を失う必要がある。
だから他の狂信者や敵対者にも、この力はいままで殺し合いで使ったことはない。
もちろん、クラウザーさんの蘇生は不可能である。

そして「ギムレーをSATUGAIする」願いを叶えるためにディーは自身の魂の力を代償にし、サイコシェードを通して願いを叶えたのである。

「サイコフレームと数多の狂信者による思念の後押しがなければ、ギムレーより先に私が死んでいただろう。
それだけに完成を急いでくれた君や狂信者たちの熱いクラウザーさん愛に感謝しなければなるまい」

どれか一つでも欠けていたらネオ・ジオングスーツは究極の兵器とは言えないのだ。
余談だが、このサイコシェードのエネルギーをクラウザーさんの蘇生装置に回すことはできない。
精神を扱うため、エネルギーが不安定すぎるためである。

「サーフ、次にこのスーツを使用できるのはどれくらいかかる?」
「やむを得ない事態だったとはいえ急ごしらえと無理矢理な稼働でサイコフレームはガタガタ。
確実に稼働させたいなら早急なメンテナンスが必要です。見積もって三時間は必要かな?」
「二時間で終わらせてほしい」
「はい」
「まだ完成には至ってないことを気取られたら戦いは厳しくなる。
イチローたちも後に復讐にビッグサイトにやってくるのは目に見えている。
その前に完成させてほしい」
「わかりました」

ネオ・ジオングは辛うじて動かせるだけで完成はしていない。
しかし、完成したら最後、残る参加者を皆殺しにさえできる超兵器となりえるだろう。
相手の実力に関係なく、先に撃てれば敵の殲滅を約束できる核兵器……いや、味方だけ影響を受けないようにすることができるだけ、核兵器よりも有用な兵器を手に入れたのだ。

ただし、乗り手であるディーの魂を弾丸にしてしまうが。

480痛みの唄:2019/10/04(金) 13:35:13 ID:e/bigAbo0


「しかし無茶をしてくれますね。
一度失った魂の力は戻らない……最悪、あと一回でも使うと死ぬ可能性さえある」
「クラウザーさんの蘇生が叶い、あの方の敵を滅ぼせるなら構わんさ」
「あなたがいなくなったら誰が組織を率いるんです?」
「セルベリアに任せるよ。
狂信者敗北時の自爆にこそ反対されたが、それは彼女が真面目な証でもある。
引き継がせるなら最も信頼のおける人物だ」

ディーは自分がいなくなったあとのことも考えており、跡目としてセルベリアを推していた。
彼本人としてはセルベリアを信用しているのだ。

「……私は引き続き、司令室から狂信者たちに指令を出す」
「医務室にはいかないのですか?」
「時間が惜しいし、どうせ魂の傷は治らん。
君はスーツのメンテナンスを急いでくれたまえ」
「了解しました」

ディーはそれだけ言うと、ヨロヨロと自室へ戻っていった。
見送ったサーフは作業に戻りつつ、静かにほくそ笑む。



(せいぜい、手のひらで踊ってくれよディー)

この男こそ、クラウザーを間接的に殺害した元凶であることをディーは知らない。

(ネオ・ジオングスーツ……悪いが僕にとって有益になるように細工させてもらったよ。
僕や翔鶴に深海棲艦はもちろん、九州ロボに野球チームやテラカオスには効かないようにセットさせてもらった。
思念を操るとはいえどうせ機械だ。僕には制御可能だ)

他の参加者はもういらないので一掃されても構わないが、自分や自分にとって有益になる存在まで根こそぎ殺されるとサーフにとってはよくないので、予め細工を施されていたのだ。
なお、ギムレーはひとりで行動していたためプログラム的にはチームから脱退したと認識されたらしく、もし誰かがついてきていたら、チームにまだ残留されていると見なされて死なずには済んだかもしれない。

(ギムレーがひとりでやってきた時は流石に冷や汗かいたが、なんとかなかったな。
さて、ギムレーのせいでカオスロワちゃんねるが手付かずだ……1時間で戦況がどこまで変わったか調べねば)

サーフは凝った肩を鳴らしつつ、巨大スーツの整備を深海棲艦たちに任せて、自分は秘密の部屋でカオスロワちゃんねるの管理運営に戻った。
自分にネットのチカラで状況をコントロールせねばなるまい……そして不都合な情報は早急にシャットダウンせねば。と思いながら。



サーフと入れ替わるように、格納庫のとある通気口から三人の男女が現れた。
だが彼らは格納庫の狂信者たちに存在が気づかれることはない。
ステルス体質だから。

「……あれですね」
「ウィツアルなんとかは乗っていない、今が破壊のチャンスっす」
「モモは爆弾になりそうなものを探してこい。
俺と黒子はあの機体を調べて壊しやすいポイントを探す」

日之影、黒子、モモの三人はネオ・ジオングアーマーを破壊するために格納庫まで潜入してきていた。
あの兵器の威力はギムレーとの戦闘で目の当たりにしてきた小町たちは、黄泉レ○プマシンの停止と合わせて破壊を決意した。
那由多の狂信者の精神を得たサイコシェードとディーは最悪フォレスト・セルさえ殺害を可能にする超兵器だ。
フォレスト・セルが喪失したとなれば救済の予言は完遂失敗であり、世界は大災害によって滅ぶ。
そうならないために破壊を決意した。

幸い、使ってすぐに格納庫にしまいこんだところからして、機体は未完成かなんらかの事情により長く使うことができないだろうと影薄組は予測。
そこでセルベリアを拘束する班とネオ・ジオングを破壊する班に別れたのだ。

小町とあかりによるセルベリア捕縛からの黄泉レ○プマシンの停止。
日之影・黒子・モモによる超兵器の破壊。
果たしてうまくいくかは「神」にさえわからない。


 ◆

481痛みの唄:2019/10/04(金) 13:35:47 ID:e/bigAbo0

一方その頃、切歌とレジーナコンビはギムレーによる混乱を生き延びていた。
しかし一緒についていたサイドバッシャーは粉々に破壊されていた。
ギムレーの攻撃による流れ弾の直撃を受けたのだ。

「サイドバッシャーが!」
「また仲間を喪ってしまったデス……」

相手は支給品の機械とはいえ、仲間の死に悲しみの感情を覚える二人の少女。




(クックック、俺が真理と結婚する前に死ぬと思うなよ)

どっこいサイドバッシャーを破壊されても草加は生きていた。
厳密にはサイドバッシャーが破壊された直後にベルトであるカイザギアに憑依し、死者スレ送りを防いだのだ。

(おのれギムレー……と言いたいところだが、セルベリアたちが倒してくれたからヨシとするか。
やっぱり俺を傷つける奴は死ぬべきなんだ。

……それはともかく、あのネオ・ジオングスーツとやら異様に強かったな。
もしかしてグレートゼオライマーより強いんじゃないのか?)

ベルトさんみたいになった草加が新たに目をつけたのはサイコシェードを持つ、ネオ・ジオング。
あれに憑依すれば提督をぬっころして全世界を掌握することも不可能ではあるまい…と草加はみていた。


(決めたぞ、次はアレに憑依する! 切歌! 早く俺をひろ……ぷぎゃ!?)


野望を燃え上がらせていた草加入りカイザギアは何者かに踏まれて大破した。

「いてててて、なんかやけに硬いゴミ踏んでもーた」
「あなたは……」
「まっちゃん! 生きてたんデスね!」
「ああ、なんとかな。
クソ竜の攻撃を受ける直前に脱出して致命傷だけは避けたで」

松本はまだ生きていた。
直感でまずいと思った松本は大日本人との接続を切って項から脱出。
巨人の変身者特有の再生能力で死は回避したのだ。

「それよりも再会を喜んでる暇はあらへん!
すぐにビッグサイトの中に向かわへんと」
「え……どうして?」
「脱出する時、空中から一瞬見えたんや。
赤毛のツインテールがビッグサイトの玄関口にいたところ
……アレはたぶんネット上で名が上がってる乳神や」
「乳神……小野塚小町が!?」

松本の言葉に切歌もレジーナも驚く。
彼は偶然にも移動の為に一瞬だけしか召喚されなかった小町の姿を目撃したのだ。

「まさかギムレーの方は陽動……?」
「可能性は0じゃあらへん。
なんにせよ乳神は敵や、すぐに見つけ次第殺害せんと浜……クラウザーさんの蘇生装置が破壊される危険があるで!」
「そんなの許せないデス! ビッグサイトに急ぎましょうデス!」

482痛みの唄:2019/10/04(金) 13:36:15 ID:e/bigAbo0

新たなる敵の出現に切歌たちはビッグサイトへ急ぐ。
幸い、施設からはさほど離れていない。
仮に小町が何をしようとしてもまだ間に合うはずだ。

(クラウザーさんの蘇生を誰にも邪魔させないですよ、邪竜にも乳神にも!)
(クラウザーさんが蘇らないならマナのいない世界で私はどうやって生きていけばいいの? そんなの辛すぎるよ)
(浜田の蘇生のためにはどうしても装置が必要なんや! 邪魔する奴は死んでもらうでえ!)

それぞれの想いを抱きながら狂信者たちは走る。




(くっそう、やってくれたな松本めえ! ネオ・ジオングに憑依できたらいの一番に殺してやる!)

どっこいカイザギアを破壊された草加はしぶとく生きていた。
厳密には切歌たちには見えない霊魂となって彼女たちの周囲を漂っている。

(だが、切歌たちが俺が死んだと思い、ビッグサイトの中に向かっているなら好都合。
このまま格納庫の近くまで案内してもらってネオ・ジオングに憑依する……計画は完璧だ)

執念深い草加は何度壊されても諦めることなく、ネオ・ジオングの憑依と自らの蘇生への野望を燃やす。

(次はあれに憑依するか!)

彼が目につけたのは切歌のもつ鎌「イガリマ」だ。
超兵器憑依までの繋ぎとしてとり憑くにはちょうどいいだろう。

(さあ、俺の能力で    ピシッ      あれ?)

だがイガリマにとり憑いた瞬間に異変は起こった。
草加自身の霊魂が砕け始めたのだ。

彼は忘れていた……テラカオス化によって得た無機物への憑依能力を使えば使うほど、魂の力を失っていくことに。
眼魂・サイドバッシャー・カイザギアと憑依を短期間に繰り返した結果、彼の魂の寿命は急激に削れてとうとうゼロになってしまったのだ。


(そんな……俺がこんなところで……誰か助けてくれ!

こんなの嫌だ……全部全部、乾巧のせいだああああああああああああああああ!!!)



誰にも聞こえない叫び声をあげながら、誰にも知られることなく913の男は消えた。
消滅した時間が22時9分13秒だったりはしない。






【草加雅人@仮面ライダー555 消滅】
※物語がどのような結末を迎えても復活できません
※今年から913の日はなくなりました

483痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:06 ID:e/bigAbo0




【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト内部】

【ディー@うたわれるもの】
【状態】魂のダメージ(中/回復不可)、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:戦況をチェックしたいので司令室に戻る
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:ネオ・ジオングスーツが完成次第、サイコシェードで会場から非信者を一掃する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
4:自分が死んだ場合はセルベリアにまとめ役を引き継がせる
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます
※サイコシェードを使うたびに願いを叶える力の代償として魂がダメージを受けてしまいます、これは回復できません
※ネオ・ジオングスーツがサーフにとって都合が良い人物は死なないように細工されていることは気づいてません


【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、マスタキャンセラ常備(万能以外無効)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×200、深海棲艦鬼・姫級×10
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:ひとまずカオスちゃんねるのチェックに戻る
1:今は狂信者のフリをしてディーに従う
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢に自分の正体が告発されたことを知りません


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな。
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました

484痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:28 ID:e/bigAbo0


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
1:ネオ・ジオングを破壊する
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました


【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト屋上】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:小町を倒す
1:ビックサイト防衛部隊を指揮する
2:大災害の元凶である提督だけは絶対に殺す
3:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない
4:サーフに謎の違和感
5:最悪の場合はディー達を……?
  そろそろ、あいつらヤバイ気がしてきた
6:ゼロという男に対しての疑念
7:このままだと狂信者にも未来はないか……
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました。さらにポテンシャル『貫通攻撃』と重ねて防御力そのものも無効化できます
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※ギムレーとの情報共有により、殺し合いの目的や救済の予言の意味、黒幕の存在を知りました


【小野塚小町@東方Project】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    あかりのCOMPの中
【装備】サイファー@ストライダー飛竜
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:セルベリアを倒して捕獲する
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
6:悪魔の力に竜殺剣……セルベリアは何かを知っている!?
※ダオスとの情報交換で、カオスロワちゃんねるの信憑性に疑問を持っています(フェイ・イェンにもたらされた情報より、少なくとも都庁の悪評は天魔王軍による仕業だと理解しました)
※予言やテラカオスの真実を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせる!
1:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
2:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
3:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
4:まさかセルベリアが大災害の元凶……?
※予言やテラカオスの真実を知りました

485痛みの唄:2019/10/04(金) 13:37:51 ID:e/bigAbo0



【二日目・22時30分/東京都 ビッグサイト近く】


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:侵入した小町の阻止・SATUGAI
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:提督は見つけ次第SATUGAI
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】健康、首輪解除
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:侵入した小町の阻止・SATUGAI
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
4:提督は絶対に許さない
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません


【松本人志@現実】
【状態】ダメージ(中/回復中)、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:小町を殺し、蘇生装置を守る
1:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
2:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
3:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません

486何が可笑しい!!:2019/10/06(日) 00:33:04 ID:YGO.fsHI0
投下乙です
ここでギムレーがやられたか……
戦力面でも考察面でもかなり痛手だけど、セルベリア達に与えた影響は相当大きい
監視の屍兵消滅でアナキンも気が付くだろうけど、どうなるやら

487 ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:10:42 ID:RpHoSSuk0
投下します

488死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:11:26 ID:RpHoSSuk0
『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
(考え中)        6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

犬牟田宝火(負傷中)   1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
高津臣吾         7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード


               拳 1-1 聖

――――――――――――――――――――――――――――――――――――



第三回の攻防が始まる……まずは表・拳王連合軍の攻撃。
ここでもメジャーリーガーでもあった高津のピッチングが猛威を振るった。
まずは剛速球で上条・シャドーマンタッグことイマジンスレイヤーを完封。

『アイエエエエエエエエエエ!
 プロの投球はニンジャ反射神経やニンジャ運動能力を凌ぐと言うのか!?』

敗れたジョジョに続いてディオとデューオがクロスフュージョンして挑む。
ザ・ワールドによる時間停止は対抗手段を持たぬ高津には有効……かに思われた。

「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!?
球が重すぎて全然動かないぞ!!」

無駄無駄ラッシュの如くバットを叩き込むが投球はビクともしなかった。
投げられた際のパワーが桁違いであり、ディオの腕力では力不足だったのだ。

「こ、こうなれば…奥の手のデューオーバーヘブンで……」
『やめておけ、まだ試合も中盤なのに倒れてしまうぞ。
回復のアテも少ない、後にはイチロー・ドラゴンズの奴らも控えているのに最悪ここで再起不能になるのは勿体無い』
「くっ……今は機ではないということか」
『そういうことだ、使いどきは今じゃない。見送ろう』

リオレウス戦で発揮されたディオ最強の技「デューオーバーヘブン」による一分間の時間停止ならば、千を越えるバットのラッシュで高津の球を飛ばすこともできるだろうが、使用には極大クラスの疲労というバックファイアがデカすぎた。
一発のために博打を打つよりも、戦場に長く残り時間停止能力を安定して使い続けるために、ディオは「勝つために逃げる選択」をしてあえてアウトになることにした。


そして、打席は一巡し、一番バッターに戻る。
ということは高津と互角かそれ以上の実力を誇るメジャーリーガー・ムネリンに打順が巡ってきたということだ。

「あなたの球は見切った!」
「チッ!」

ムネリンはベンチにいる間に高津の投球を研究し、どこに当てれば良いのかを学習。
そして、見事にクリーンヒットさせたのだ。
しかし、狙いはホームランのような大きい当たりではなく、ワンバウンドさせてからのゴロだ。
ただし……

「ぐあッ! ヘルメットに土が!」
「計算通り」

球は高津の目の前で落ちたが、その際にマウンドの土が飛散し、それが高津を襲った。
ジェットマンのスーツに守られている高津には土によるダメージこそなかったが、視界は土で覆われ見えなくなってしまう。
それにより捕球できなくなった隙にムネリンは一塁へ走る。

「取らなくちゃ……!」
「……待て、犬牟田!」

ショートの犬牟田がゴロになった球を取ろうとするが、高津が慌てて静止する。
高津の静止よりも早く捕球してしまった犬牟田だったが、そのボールはグローブの中で未だに高速回転していた。
それは運動エネルギーという形で犬牟田に襲いかかる!

「なに!? 勢いがまだ死んでな……」
「かかりましたね」
「うわああああああああああああああああ!!」

一時間ほど前に闇がヒロインXを殺害した時と同じように、死にきっていない莫大な打球による運動エネルギーが犬牟田を襲う。
そのまま、腕の中の球に数十m地面を引きずられ、血しぶきと土煙を上げた。

489死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:01 ID:RpHoSSuk0

「犬牟田ーッ!」

高津の悲痛な叫びがスタジアムに木霊するが、ムネリンは何の感傷も抱かず……むしろイチローラブの障害をまた一つ取り除けたとして、喜々として一塁を越え、二塁へ走ろうとする。
このまま三塁まで、あわよくば一発ホームインを目指そうとするが、残念ながらムネリンの期待通りの進軍にはいたらなかった。
彼が二塁へ向かおうとした時、セカンドの闇のグローブに野球ボールが入ったのだから。
そして彼女に送球はしたのは死んだと思われたショート・犬牟田である。

「なん……だと……?」
「ゲホッ……! 死んだと思った? 残念、対策済みでした!」
「ふう、アタイの氷がギリギリ間に合って良かったよ」

犬牟田は血まみれのボロボロでこそあったが、確かに生きていた。
本当ならドラゴンハートの補正ありでもバラバラになりかねない一撃であったにも関わらずだ。
その理由は三塁にいるチルノが、先程も披露した氷の鎧による防御を犬牟田が吹き飛ばされる寸前に施し、彼の命を守ったからである。
更にボールも止まったところで近くにいた二塁の闇へ渡したことでムネリンの進軍も阻止できた。

「無事で良かったぜ犬牟田」
「イタタタ……ちょっと計算ミスがあるとすれば彼のパワーを侮って怪我をしてしまったことですね。
すいません……血が止まるまでベンチで休ませてもらいます」
「わかった無理をするな、それで良いなサウザー」
「ああ、了解だ」

相棒の無事を喜ぶ高津。
一方、辛くもムネリンの攻撃を止めた犬牟田だったが代償として手傷を負ってしまった。
ある程度治るまで戦場に立つのは危険であるし、犬牟田自身も負傷者が残り続けるのは危険であるとして退場することになった。
代えの選手もいない聖帝軍はショートと一番打者を欠いた状態で戦うしかない。


ムネリンの次はクロえもんであったが、ブラックホール打ちにこだわりすぎた結果、打てないまま三振してしまい、ムネリンの進軍の甲斐無く拳王連合軍の第三回攻撃は無得点で終了となった。

「俺、いちおう元から野球選手なのに扱いわるくねえか!?」




第三回・裏

「ダメか……!」
「あのメスゴリラの妖怪、氷の壁をぶち破ってきやがった!」
「フンッ」

スタービルドガンダムに乗ったレイジと、妖精王クラスの魔力を得たチルノでさえMEIKOのボールを捉えることはできなかった。
レイジはガンダムによる質量とビームサーベルのパワーを使って突破口を開こうとするが、MEIKOボールの威力はビームサーベルの出力よりも上であり、逆に突破され。
チルノは氷を使った防御や、投球の減速を狙うが、圧倒的パワーと殺意の前ではどうすることもできず、三振を許してしまった。
既に投球の余波(というかデッドボール万歳なMEIKOの投げ方)によりガンダムもチルノもダメージを少なからず負ったが、むしろ四肢がしっかりと残って生き残っているだけ、実力者の証左でもあった。

ツーアウトにより聖帝軍も拳王軍と同じく、打順が一巡した。
ただし、一番目のバッターボックス入って犬牟田がリタイアしているため、二番打者の紘太こと鎧武・極アームズが入ることになった。

(さっきは手も足も出なかったが、犬牟田が考案した作戦で行くしかない)

選手としては今試合は退いた犬牟田だが、ベンチ送りにされても休んでいるわけではない。
その頭脳でチームのために敵のデータを研究し、作戦として提供しているのだ。
紘太もまた、バッターボックスから出る前に作戦を受け取っている。

「へへ、ぶっ殺してやるぜ、MEIKOボー……」
「今だ!」

鎧武はMEIKOがボールを投げる前に、クラックから一本の槍を召喚し、バットと持ち帰る。
槍の名前はバナスピアー……ライバルであるバロンこと戒斗が使用する槍である。
更に槍を手にとったと同時に、MEIKOの足に黄色いバナナ状のエネルギーが絡みつく。

「なに!? フォームが……!」

絡みついたエネルギーにはさしたるダメージはない。
だが、この妨害がMEIKOが投げることに至って大事なものを奪うことになる。
MEIKOボールに圧倒的殺傷力を与えていた「黄金長方形のフォーム」それによる「無限の回転」が失われたのだ。

『極スカッシュ!』

先ほどのまでの勢いを失った状態で投げられたMEIKOボールに鎧武はバナスピアーによる必殺技、スピアビクトリーを放つ。
眼前まで来た球は剛速球でこそあったが破壊力は薄く、見事にバナナのエネルギーにクリーンヒットした。

「クソッ!」
「これが俺たち聖帝軍の力だ!」

490死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:13:58 ID:RpHoSSuk0

悔しがるMEIKOを尻目に打ったと同時に走る鎧武。
ボールの飛んだ先はレフト方面……即ちプニキが待ち構えているが、熊はボールが来てもまったく取ろうとする気配がない。
それもそのはず、プニキはバッターとしてホームランを取ることだけにしか興味がなく、打つこと以外の能力も極端に低い。
犬牟田は試合の中でそれを見抜いたために、他の選手たちに飛ばすならレフトであると指示を出したのだ。

「それぐらいは予測済みです!」

されど長らくプニキと付き合ってきた拳王連合軍には、熊が守備ができないことなど織り込み済み。
レフトへボールが飛ばないように、ショートのムネリンが射線をカバーするように配置されている。
元々そういう作戦であり、ムネリンは高くジャンプして打球を取ろうとする。

『イチゴチャージ』
「悪いな! 犬牟田の方はアンタがレフトを守るために動くことも予測済みだ」
「空からクナイが、イタタタ!」

走行中の鎧武は次なる手としてイチゴアームズの力であるクナイバーストを発動。
空から無数のイチゴクナイの雨が降り注ぎ、ムネリンにダメージを与える。
ムネリンを殺すには威力が足りないが、打球を掴ませないことには成功し、飛んでいったボールは放物線を描いてレフトに落ちた。

……え? 守備妨害の反則じゃねーかって?
カオスロワ式野球という名前の決闘にそんなルールはない。

ちなみにプニキは持ち場に落ちたボールを拾いに行こうともせず蜂蜜を食べている。


「こさせません!」

鎧武の次なる障害として艦載機を発進させた空母艦むす、一塁守備者の翔鶴およびクロスフュージョンしたロックマンが襲いかかる。
だが、鎧武は艦載機の攻撃に怯まず、前進しながら火縄大橙DJ銃を召喚しオレンジのロックシードをセットする。
するとオレンジ状のエネルギーが銃から発射されて無数の艦載機を飲み込んだ。

「沈め! ロックマン、翔鶴!」
『危ない! アイアンボディを!』
「はい!」

エネルギーは艦載機を全滅させた直後に翔鶴とロックマンを飲み込み、あたりを閃光に包む。
二人は直前に動けなくなる代わりにダメージを微量に抑えるアイアンボディのチップによる防御を行い、ほぼ無傷で攻撃をやり過ごす。
だが、その隙に鎧武には一塁を踏ませてしまった。
拳王軍にとって幸いなのは、この間にセンターの平等院がレフトのプニキに代わって(ついでに熊にゲンコツをして頭にタンコブを作らせた)球を拾って二塁に送球。
鎧武の二塁進行だけは防いだことか。

次にバッターボックスに入ったのはMEIKOから今試合始めてヒットを取った金色の闇。
再びラオウ同様に首から下がマッチョな体型となってMEIKOに挑む。

「また、それか……だがさっきこそ面食らったが、ダーリンの打ち方の欠点はわかっている」
「くッ……!」

ラオウの相棒であるMEIKOは、彼の癖や体格の都合上、打ちにくいコースがあることを知っている。
MEIKOはそこを的確に突き、闇からツーストライクをもぎ取った。

「次はど真ん中だ、イクぜ」

このど真ん中とは、心臓狙いということである。
次の一撃で闇を討つつもりである。
そして全力全開のMEIKOボールが放たれた。
嵐のような投球が、闇に襲いかかる。

実際に球は手に持つバットと筋力だけでは抑えきれず、闇を押しつぶそうとさんとした。


(なるほど……先ほどより格段に威力が増している。
ラオウの筋力を真似たところで打つのは困難ですね)

一方の闇は、文字通りの意味で死球が迫っているにも関わらず冷静であった。
なぜなら闇にはまだ討つ手があったのだから。

「これで、どうですか」
「髪の毛!?」

闇のトランス能力は全身に及ぶ。
髪の毛をラオウのような豪腕に変えて打つこともできるのだ。
闇は新たに作った髪の毛パンチで真上から打ち込んで、胸を抉るハズだった野球ボールを近くの足元にめり込ませた。
足元と言っても殴られた野球ボールは数mほど下の地中までめり込んでいるが……とにかくヒットである

「畜生ッ!!」
「やるな……」

MEIKOが叫び声とラオウの呟きと共に、ヒットを確信した闇と鎧武はマウンドを走る。
ラオウは地中に埋まったボールを掘り起こそうする。

「今度こそ突破は……」
「させない! 走れ、闇!」
『邪魔を!』
「ありがとう、コウタ」

一塁の翔鶴が再び、妨害のために艦載機を発進させ、ガンデルソルなどのバトルチップによる攻撃も加えようとするが、先に一塁を発った鎧武が火縄橙DJ銃による攻撃で翔鶴の攻撃を迎撃し、召喚したガンデルソルも破壊。
その内に闇はトランス能力で元の女性の姿に戻って一塁を突破する。
ロックマンは翔鶴を守るために防戦……すなわちインビジブルのチップを使って回避することにした。
怖気づいたのではない、聖帝軍の副リーダーである闇に懐に入られたら危険を察知したからだ。。

491死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:14:39 ID:RpHoSSuk0

「惜しい……あと数瞬とどまっていれば首をはねられたものを……」

ロックマンの勘は大当たりであり、暗殺者としては一級である金色の闇は一撃で殺害するつもりであったようだ。


場面は三塁へ走る鎧武に移る。
二塁にいたイマジンスレイヤーは、クラックから王の財宝の如く取り出した無数の武器で足止めに成功。
鎧武は彼に右手によるタッチを許さないように二塁をふみ、三塁へ向かう。

「滅ぼす……」
「それはこっちのセリフだ! 俺は大阪やたくさんの人々を殺害したおまえらを絶対に許さねえ!」

その前に鎧武はセンターから前面へと走ってきた平等院の相手をすることになった。
ショートにいるムネリンはどうしたって? 彼は直接殴り合う戦闘は専門外だから……

「平等院!」
「ジョジョ、助太刀は無用だ。
おまえはMEIKOからボールを受け取るためにも二塁から動くな!
あと一人でもアウトに追い込めば、スリーアウトでチェンジになる」

平等院は今にも持ち場から離れそうになったイマジンスレイヤーを制止し、鎧武との一対一の戦いを選ぶ。
鎧武はすかさず、火縄橙DJ銃による砲撃を放つ。
フルーツのエネルギーが立ちはだかる平等院に向かうが、彼はこれを待っていましたと言わんばかりに弾き返す。

「散れ……」

平等院が返すのは光る球(デストラクション)。
フルーツエナジーは光球となって鎧武に跳ね返る。

「まだだ!」

鎧武はここで単純な単純な防御力とパワーなら極アームズより上なカチドキアームズに変身し、光る球を耐える。

「ぐう! うおおおおお!!!」
「来るか!」

光る球はカチドキの鎧を破壊し、中身の紘太にも決して低くない打撃を与えたが、進軍を止めるには至らなかった。
鎧武はその身を再び、極アームズによる白い鎧に変えて突進してくる。
その手には大剣モードに変えたDJ銃……ロックシードを装着したところからして斬撃で決めるつもりか。

「滅びよ!」
『極オーレ!』

鎧武が放つオレンジ色の光・火縄大橙無双斬と、培ったテニヌの力を行使した平等院のラケット。
二つの全力がぶつかり、爆発を起こした。





結果としていえば、DJ銃は平等院の渾身のラケットひと振りによって折られ、平等院に届くことはなかった。

492死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:16 ID:RpHoSSuk0

……だが!


カチャッ

「!!」
「この距離ならラケットは振れないな!!」

鎧武の腕にはこっそりと召喚したブドウ龍砲なる銃が握られており、それが平等院の胸部を捉えていた。
鎧武はラケットを振って直接叩くことができないほど肉薄していたため、迎撃や防御は間に合わない。
次の瞬間にはブドウ龍砲が火を噴き、平等院の胸を貫いた。

いかな、人間を超越したテニヌプレイヤーといえ、攻守はラケットに依存している。
ラケットかそれに近しいものを振ることができない状況に追い込まれては戦闘能力は激減する。
それに気づいた鎧武は火縄大橙無双斬自体を囮にし、弾かれることをあえて念頭に入れてわざと振らせ、そこで産まれた隙に銃を叩き込むんだのだ。

「平等院……!」

未だに地面から野球ボールを掘り起こす作業をしていたラオウは倒れた平等院を見て、確かに言葉を漏らした。


「ラオウ、すま「トドメだ!!」」

平等院を確実に葬るために鎧武はさらに2、3撃追加で頭に向けて銃弾を放つ。
平等院の死体は、頭が粉々のザクロのようになった。



【平等院鳳凰@新テニスの王子様 死亡】



「貴様ら……!」
「よくも平等院を!」

平等院を殺した直後に聞こえてくる拳王軍からの怨嗟、そしてロックマンなど遠距離攻撃できる存在が、鎧武に向けて一斉射撃を放つ。
だが鎧武は慌てた様子はない。

「ここまでは作戦通りだ、あとは……」

後方を見ると一塁から二塁へ向かう闇の姿が見えた。

「よし、ここで一気に!」

闇は鎧武が平等院を下したと見るや、再度トランス能力を使用。
今度はサウザーのような細身のマッチョな体型になった。

『あの体型……まさか!』

シャドーマンがひと目で闇の肉体がサウザーに近いものに変わったとわかった時、嫌な予感を感じた。
そしてその嫌な予感は見事的中する。

以前に拳王軍から点を奪った時のように、闇はニトロエンジン付きの改造車の如く爆走を開始。
トランスによってサウザーと同じ速度を闇は手に入れたのだ。

『「アイエエエエエエエエエエエエエ!」』

二塁のイマジンブレイカーがどこぞのゴールキーパーのように闇に吹っ飛ばされて宙を舞った。
ジョジョとシャドーマンはサウザー化した闇に命を取られないだけで精一杯であった。

「闇!」
「さっきのお返し……捕まってコウタ!」

サウザー闇の速度は圧巻の一言であり、既に鎧武の背後まで迫っていた。
そこで紘太はあえて変身を解き、身軽になった体が闇の小脇に抱えられた。

「よっしゃあ! このまま二人でホームインするぜ!」

紘太と闇はこの状態でホームインし、一気に二点稼ぐつもりなのだ。
カオスロワ式野球のルールなら無論問題ない。
過去に二人でポジション守っていた守備もいたし。

「させるかよ……ダメだ、止められねえ!」

三塁のクロえもんが阻止に入ろうとするが、失敗して上条同様に吹っ飛ばされる。
紘太を抱えているせいか僅かに遅く、片手が塞がっている分だけ攻撃力も落ちているが、それでも高速の移動はできていた。
ロックマンたちの援護射撃もまた、すいすいと躱していく。

このままホームベースへ走りたい、闇。
だがベースの近くにはやっと野球ボールを手にしたラオウがいた。
まだベースは踏むには数瞬だけかかる。

(拳王がベースを踏む前に……!)
(同じチャンスは二度とないかもしれねえ、勝負に出るぞ闇!)
(ええ!)

493死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:15:45 ID:RpHoSSuk0

三塁を二人で踏んでしまった以上、戻るという道はない。
前進制圧しか道は残されていなかった。
ラオウが先に踏むか、闇たちが先かの勝負であった。

スピードは僅かであるが、闇の方が上だ。
しかし、拳王には剛拳があった。


「受けてみい、このラオウの無敵の拳・天将奔……」

ラオウは奥義の一つである天将奔烈を放とうとする……が、撃てなかった。
その射線上には三塁で倒れているクロえもんがおり、敵に当たろうが当たるまいがクロえもんが巻き添えになってしまう。


「……ただのブラフ! このまま押し通……」
「図に乗るな小娘が!」
「がッ!」

闇はかつてサウザーがラオウを突破した時のように高くジャンプして乗り越えようとするが、ラオウは同じ手は二度と食うかと、蹴りで闇を打ち落とす。
闇は寸でで髪の毛を盾のように硬化させて防いだが、ダメージを受け落下。
さらにボールを持っていたラオウに触れられたことでスリーアウトが確定した。
だがラオウの表情に喜びはない。

「……あの背が低いガキがいない!」

本当なら闇と一緒に倒れているべきの葛葉紘太の姿がなくなっていた。

「ここだぜ」
「いつの間に……」
「悪いが、アンタが闇に触れる前にベースを踏ませてもらったぜ」

ラオウが振り返ると、そこにはベースの上に立っていた紘太がいた。
彼は闇によって投げられ、ベースへと帰還を果たしたのだ。
他の者の目では紘太がスリーアウトになる前に踏む瞬間をはっきり捉えている。

すなわち……聖帝軍がまた一点をもぎ取ったのだ。
聖帝軍側ベンチからは歓声が沸き立ち、拳王軍側は平等院の死も含めて落胆の声が上がった。



               拳 1-2 聖


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

494死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:12 ID:RpHoSSuk0

時刻は22時27分。第四回表。
拳王軍の打者はラオウ、聖帝軍ピッチャーは高津。

高津はラオウに関しては以前の打席で食らいついてくるような危険性を感じていたが、それでもピッチング自体を放棄するわけにはいかない。

(ラオウ、おそらく一番危険な男だろう。
しかし、負けるわけにいかないし、負ける気もしない!)

高津の士気は最高潮であった。
犬牟田が、サウザーが、闇が、聖帝軍の者たちが死力と絆を持って拳王軍の罠を突破していく様に、これ以上ないくらい熱意を感じたのだ。
最初からプロ野球である高津が燃えないわけにはいかない。

(あの世で見てろ、ササキ。
俺は必ず、聖帝軍を優勝させて世界を救う!
おまえが大魔神軍で到達できなかったステージに、代わりに行ってやる!
だから、まだ魂が無事なら応援していてくれ……
ライバルである俺が強ければ戦ったおまえの株もあがるんだからな)

先に旅立った強敵(とも)に、心の中で誓いを立てつつ最高のコンディションで高津は剛速球を投げた。






「聖帝軍、貴様らは」
「!!」

「 貴 様 ら だ け は こ の 拳 王 が 絶 対 に 許 さ ん ! ! ! 」
「ッ!?」


相対していたラオウから発せられた強烈な殺気。
憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情憤怒憎悪怨恨激情。
そのラオウの目は、覗いてしまった高津の士気が一瞬にして奪われかけるほどであり……

次に高津が目にしたのは、フォームが見えないほどの速さでバットを振ったラオウ。
そこで高津の意識はブラックアウトした。



【高津臣吾@ササキ様に願いを 死亡】



全ては一瞬の出来事であった。
ラオウがボールを打った瞬間、打球は高津のジェットマンのヘルメットすら突き破って彼の頭部を粉砕し、高津の血を帯びた野球ボールは聖帝軍の誰も捉えるころができまま、観客席に巨大クレーターを作った。
ホームランである。

聖帝軍が次に理解したのは拳王軍に一点取られてしまったことと、ピッチャー高津の死であった。


「た、高津さああああぁああああぁああああん!!」

ベンチから犬牟田の悲痛な叫び声が上がったのは、ちょうど22時30分の出来事であった。




               拳 2-2 聖

495死地のマラソン ◆FDBQXzeGbc:2019/10/22(火) 22:16:40 ID:RpHoSSuk0



『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
プニキ          4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
考え中          6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト

(代打・代走)
ハクメン
瑞鶴(+メーガナーダ)




『聖帝軍 布陣』

なし           1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番セカンド
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番ライト
デストワイルダー     6番レフト
考え中          7番ピッチャー
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード



【二日目・22時30分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場


【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【ハクメン@BLAZBLUE】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

496エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:21:44 ID:IfalQ6jE0
6/らに安全と判断され苗木・霧切・キュゥべえはアウラのドラゴンの背に乗り、空でイチリュウチームとの平和的な接触が果たされるかに思われた。


「その娘と……ツバサを会わせるなあ!!」


それが二人と一匹を見た時のアナキンの、焦りと怒号の混じった第一声である。
元ジェダイの騎士にしてシスの暗黒卿、アナキンはフォースの力によって接触してきた苗木・霧切・キュゥべえの心を読んだのだ。
内二人は個人的復讐や生存に関する打算的な思いがあったのは確かだが、少なくとも世界の破滅――大災害を招きたがるような者ではなく、接触は有益と判断できたが、問題は残る一人である霧切。
彼女の心は崩壊しかけており、トラウマの原因であるツバサを引き合わせたら最後、確実に崩壊することがわかった。
絶望したら魔女になる魔法少女ならトラウマの火に油を注ぐことになる。

だが、アナキンの忠告は遅く、霧切はイチリュウチームに匿われているツバサを見てしまい……発狂、ソウルジェムは一瞬で真っ黒に染まり、砕けた。

「やめるんだ、霧切さ――」
「キョウコ……なにを、きゅっぷい――」

今にもツバサに飛びかかろうとした霧切を苗木は抑えつけようとするが、彼は触れた瞬間に彼女から溢れ出る魔力で一瞬にして蒸発。
せめて彼がダイヤの指輪に似た魔法石の効果を知っていれば結果は変わったかもしれない。
続いて近くにいたキュゥべえもまた、蒸発した。
キュゥべえは人間と違い、心や感情を理解できないために、ツバサを会わせた場合のリスクを予測できなかったのだ。

『キュゥべ……苗木ク……うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!』

自らが原因で、親友二人を殺してしまったことにも魔法少女の絶望を加速させる。




私はただ、この世界の謎を解いて希望を見出したかっただけなのに――




その思考を最期に、霧切響子は絶望で死んで、魔女として生まれ変わった……
そしてイチリュウチームは咄嗟の判断で脱出できたラミレス・ホルス・ふなっしー、そしてツバサを除いて脱出不能の結界の中に閉じ込められた。

 □

魔女誕生による魔力だけで100名近いアウラの民が命を落とした。
姫巫女であるサラが民の死を嘆くが、クリスとシマリスは彼女を立たせようとする。

「なんてこと……また、多くの民が」
「サラ! 悲しみたいのはわかるが、手を止めてる場合じゃないぜ!」
「あの魔女をやっつけないと、ぼくらは全滅でぃす!」
「ええ……わかっています」

魔女の誕生から30分が経った。
幸いというか、ここまで生き延びたイチリュウチームのメンバーは猛者が揃っていただけに、ある者は直感的に回避し、ある者は優れた耐久力で、ある者は強い運に助けられ、またある者は野球による技術によって誕生時点で死亡したメンバーはゼロであった。
だが、そこからが真の戦いの始まりであった。

497エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:22:35 ID:IfalQ6jE0


霧切が巨大な魔女……宙に浮いている落書きのような希望ヶ峰学園のような見た目をしたソレは、体から出す魔力の結界でイチリュウチームを閉じ込めていた。

イチロー、ナッパ、6/、クリス、シマリス、ガレオン級のような火力に優れ、または遠距離攻撃ができるものは魔女に攻撃をしかける。
仲間になるかもしれなかった少女を攻撃するのは気が引けるが、アナキンと蛮の見立てによると魔女化した時点で霧切は既に死に、魔女は呪いの集合体でしかないと教わり、殺すことこそ霧切のためだと言われたため、仕方なく総攻撃を開始することにした。

レーザービーム、ジャイアントストーム、クルミボール、バレットパーティー、無数のクルミと火球が魔女に直撃する。

「……む、無傷!!?」
「なんて堅牢な結界なんだ! 俺のレーザービームさえ通用してない!」

だが魔女を守る結界は……彼らの総攻撃すらものともしなかった。
基本的に火力が控えめな胡桃使い二人、まだ発展途上のシンフォギア装者であるクリス、モブドラゴンならまだしも、イチローの魔王すら一撃粉砕せしめる投球やスーパーサイヤ人の攻撃さえものともしないと言えば、どれだけ規格外な結界かわかるだろうか?
更に言えば自分たちを閉じ込めている結界そのものにもイチローは既にレーザービームを投げたが、通用しなかった。
それと同じレベルの防御結界が魔女にも敷かれているのだ。

そして、魔女側からも反撃のロケットみたいな形状の魔弾が地上のイチローたちに降り注ぐ。
ロケットの威力はガレオン級たる大型ドラゴンが一発で消し飛ぶレベルであり、サイヤ人でもない限り直撃は死を意味していた。

だが前線に立つイチローたちはバット・エネルギー弾の乱射・胡桃・銃弾によって迎撃や回避に転じ、雨あられのように降り注ぐロケットを死人を出さずに切り抜けた。

「……こんな状況じゃなきゃ良い野球の練習になるんだけどね」
「言ってる場合か! アンタやナッパの攻撃でもダメって……どうすりゃいい! このままだとジリ貧だぞ!」
「焦るな6/、今度は一点集中で攻撃してみよう、どこかに弱点はあるハズだ」

なんとか戦線を奮い立たせようとするイチローであったが、彼自身もまた形成が不利であることは理解していた。
ドリスコルが乗るグレートゼオライマーでさえレーザービームの直撃には耐えられなかったであろうが、今度はそのレーザービームが直撃しても倒れない敵が現れたのだ。
宗則のようなホモ愛……もといメジャーリーガーのようにレーザービームを爆発する前に受け止められる存在もいなくはないが、直撃を受けて無傷な敵はこれが初めてである。

(この戦い……真正面からじゃ勝てないかもしれない、どうにか脱出口を見つけてくれ蛮!)




「はあ!」

イチリュウチームの後方ではアナキンがおり、双剣でイチローたちが迎撃しきれなかった魔女のロケット攻撃を斬り払う。
さらにその後ろでは蛮・はやて・サラの三人に数名のアウラの民が、穴を掘っていた。
塹壕作り……ではない。塹壕程度では魔女の攻撃で地面がめくれ上がってしまう。
魔女霧切から発せられた結界は地表のみで地下には及ばないのではないか?、と考え、地下から脱出口を作ろうというのだ。
結界の外に出れば、閉じ込められている時よりは希望があるし、最悪イチローでも倒せない敵から逃げてしまうことも可能になる。
魔女も都庁の勢力と合流できれば対処法もあるかもしれない。
首輪を外しているとはいえイチローたちの体力は無限ではないので、急ぐ必要があった。


「メタグロス、コメットパンチだ!」

蛮の指示によりメ6/から借りたメタグロスから放たれる強烈なパンチによって地下に大穴が空いて行く。
何発か打ち込み続け硬い岩盤やコンクリを砕いた結果、どこかの地下鉄トンネルへの道が開けた。
それはおそらく、結界外の場所にも繋がっている。

「やったで! これで皆を外に……」
「待て!」

脱出路が見つかったことにはやては喜び外へ踏み出そうとするが、蛮が制止をかける。
実際、蛮の直感通り、はやてのぬか喜びとなった。
明かりを灯すとその地下通路に繋がる道にも魔女による結界が敷かれていたのだから。

「そんな……」
「やはり異形となった彼女を討つ以外、道はないのでしょうか……」

どうやら結界は魔女を中心に、障害物に関係なく一定範囲内に設置されるようだ。
無理に突破しようとすれば苗木たちと同じく蒸発するだろう。
はやてとサラ、蛮、ついでにメタグロスは苦い気持ちを抱きながら仲間に報告するために、溜息を吐き肩を落とすように地上に戻った。

498エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:23:18 ID:IfalQ6jE0


一方、地上。

「……耐えきるだけならなんとかなりそうな気もする」

そう呟いたのは6/である。

「何を言ってるでぃすか、どうみてもピンチでしょうに!」
「待て待て、冷静に状況を考えてみろ」

一見、状況を呑み込めてように見える台詞だが根拠はある。

「確かに攻撃力や防御力は理不尽だが、肝心要の攻撃は大味だ。
アウラの民やまともな装備がないサラとはやては流石に苦しいが、他の面子なら防いだり弾いたりするのは余裕だ」

実際、魔女の攻撃はロケットらしき砲弾を乱射してくるだけ、避けるだけなら一定の実力があれば苦労はしない。

「外の様子はわからねえが、結界から脱出したラミレスやツバサたちは確実に生きている。
あいつらが都庁に辿りつき、都庁の連中が狂信者の攻撃を凌いで勝利していれば、救援も来てくれて外側から魔女をやっつけてくれるかもな。
となるとイチローやナッパで倒せねえ、蛮たちの脱出路を探す作戦もダメなら、俺たちがとる道は持久戦!
敵も魔力は無限じゃないだろうし、耐えきることなら勝機は見える!」
「そうですか……そう思うと少し気が楽になるでぃす」
「そうだ、最後まで希望を捨てちゃいけねえ!」

6/の持論は多少強引かもしれないが、シマリスや他の仲間にも光明を見せた。
都庁同盟軍からの救援が来るのなら、手数が限られているイチリュウチームよりは魔女を退治する手段があるかもしれない。
攻撃も脱出もダメだとわかったならば、それに絶望するよりは、終わらない戦いはないことを信じて耐え忍ぶ道を選べば希望も見えたのだから。









――そう、うまくいくかしら?






6/は油断していたわけでも、魔女がロケット以外の攻撃を持っている可能性を忘れていたわけではない。
相応の覚悟、注意、予測を立てたからこそ皆の前で希望を口にしたのだ。
彼の不幸は魔女のもたら絶望は予測を遥かに上回っていたことにある。

499エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:23:52 ID:IfalQ6jE0

「な、なんじゃこりゃあ!」
「6/! うわああああ!」

突如、6/の足元に魔法陣が現れたと思いきや、彼を中心に新たな結界が現れて仲間たちを押しのけるように追い出した。

「俺の周りに結界が!」
「助け出すんだ!」
「クソッ! 伝説のスーパーサイヤ人になった俺の力でもビクともしねえ!」
「ソウルエッジとソウルキャリバーでもダメだ!」

イチローたちは大慌てで結界に閉じ込められた6/を救い出そうとするが結界は割れる気配を見せない。
当の6/も内部から胡桃を投げて対抗するが、抵抗は無意味だと言わんばかりに胡桃を弾く。

「これは魔女の攻撃……!? どうすれば……」
「6/! 後ろだ!」
「え?! がッ!!」

仲間の忠告も虚しく、6/は閉じ込められ呆然としていた隙に何者かに羽交い絞めにされた。
彼を捕まえたのは魔女が生み出す『使い魔』であり、それらが地面から複数這い出て結界の中の胡桃使いを捕えた。
使い魔はいずれも禍々しい落書きのようなタッチで描かれた霧切に似ていて、いずれも6/レベルの腕力では追い払うことはできなかった。

そして使い魔の産み主である上空の魔女霧切から声らしきものが発声された。


――オシオキターイム!


……ノリノリの青狸みたいな声で。



『胡桃千本ノック、行きます』


使い魔がそう告げると、本当にいつの間にかの内に一体の使い魔の恰好が野球のユニフォームさながらとなり、6/から奪った千個の胡桃でノックを始めた。
明確な殺意と共に打ち出された球は動けなくなった6/に、正確無比に向かっていく。

「げふッ、ぐあああ!」
「6/、やめろおおおおおおおおお!!」

6/の顔や腹に打球が命中し、肉体を抉りながら流血させる。
そこから魔女の言った「オシオキ」とは「処刑」のことだと察した仲間たちは彼を助けるため(特にナッパは)自身の消耗を度外視して助け出そうとするが、結界は一切の揺らぎを見せなかった。

外にいる仲間たちの頑張りを嘲笑うように、内部での胡桃ノックはさらに威力と速度を増していた。
もはやノックというより速射砲であり、一秒間に何発打っているかわからない胡桃はいずれも6/に全弾直撃。
200発目までで歯の八割が折れて、400発目で両目を失明させ、600発で左足が複雑骨折し、800発目で選手生命である右手を失った。
そして900発目までに6/は悲鳴を発することもなくなり……

迎えた最後の1000発目では、全身から血を垂れ流すボロボロの革袋のようになっていた。

「6/……そんな……」

6/の死に仲間たちは失意を覚える。
もう何度目かわからない喪失のショックがイチリュウチームの心を抉った。








「か、……勝手に殺すなよ」

500エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:24:29 ID:IfalQ6jE0


「6/!」
「生きてた! まだ生きてるでぃす!」

否、死んだと思われた6/は、まだ生きていた。

「この俺が、げほッ、胡桃で死ぬことはあっちゃならねえ」

胡桃使いである6/は胡桃を受けながらも、飛んでくる胡桃の角度を計算し、僅かな微動で最もダメージの少ない部分にあたるよう調整していた。
それでも虫の息だが、千本ノックを確かに凌いだのでである。

「嘆くなよナッパ、シマリス。
俺は志半ばで倒れたハラサンや仲間たちのためにも、選手が野球をしないまま死ぬわけには行かねえんだよ!
必ず、イチリュウチームが優勝して、預言も完遂して、ツバサが世界を救うところを見てやるんだ!」

血反吐を吐きながら苦し紛れでも、声を絞り出す6/。
彼の宣言には一欠けらの闘志の鈍りも見せなかった。
そんな彼が仲間の視線を受けながら負傷も無視して立ち上がろうとする。

今、彼は東京と千葉の県境で最も目立っていた。
不屈の闘志を持つ野球選手◆6/WWxs901s氏にイチリュウチームとアウラの民の皆が注目していた。







『ハイ、通行の邪魔です』
「ぎゃッ!!?」

千本ノックを乗り越え、皆の注目を浴びていた6/の闘志は虚しく。
いきなりやってきたリリーフカーに高速で衝突され、彼の肉体は胡桃のカスか肉片かわからないくらい粉々になった。
彼の死と一緒に、彼を閉じ込めていた結界も消えた。


【◆6/WWxs901s氏@カオスロワ書き手 死亡】


「うおおおおおおおおおおおおお、よくも6/をおおおおお!!」
「許せない、でぃす!!」

ナッパとシマリスは6/を殺された報復として、霧切似の使い魔たちを拳や胡桃で殲滅していく。
流石に魔女より格段に戦闘力が低いことや、無敵の結界に守られなくなったこと。
何より6/殺害後は全く無抵抗にだったため使い魔たちはものの数秒で全滅した。
だが全滅した端から、魔女の中からまた新しい個体が生み出されて補充されていく。

「ナッパ、シマリスやめろ! 弾と体力の無駄だ」
「ナッパ様、親友を奪われた気持ちはわかりますがここは抑えて」
「うっうう……」
「チクショォォーーー!!!」

蛮とサラに制止され叫ぶナッパとシマリスは攻撃の手を止める。
使い魔をいくら潰した所で、本体の魔女には一切の打撃を与えることもできないのだから。


『うふふふ、味わってくれたかしら?
私は受けた絶望と悲しみ、そこから生み出された呪いを』

501エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:25:12 ID:IfalQ6jE0

ふと、聞き覚えのある声がどこからか聞こえ、イチリュウチームは振り向く。
声を発したのはすぐ近くにいた霧切似の使い魔…だが、ただの使い魔ではなく、白と黒のクマみたいな顔のマスクを被り体格も高校生相応、明らかに特別仕様と思われる者からだった。
警戒しつつ、アナキンは声をかける。

「おまえは他と違って知性があるみたいだな」
『ええ』
「喋れるってことはまさか響子ちゃん本人やんか……?」
『それは違うわ。
私はしいていうなら魔女となる寸前の霧切響子の残留思念を色濃く受け継いだ使い魔、コピー品みたいなものよ』

敵意を持っているとはいえ相手と意外な形でコミュニケーションが取れると思わなかったイチリュウチームは驚く。
ちなみに本体である魔女霧切も空気を読んだのかは謎だが、攻撃の手を止めていた。

「コピー品でも構わない、話し合いができるなら君にどうしてもお願いがある。
僕らをこの結界の中から出してくれ」
「オイ、何を言ってんだイチロー! こいつは6/を殺し――」

いちおう仲間を殺した怨敵である魔女との交渉を図ろうとするイチローにクリスは批判をするが、イチローは手で制した後、話を続ける。

「僕らは大災害で世界が滅ぶ未来を回避するために、どうしても都庁にたどり着いて、野球もしなければならないんだ。
大災害が着てしまえばTCという物質で響子ちゃんも含めて何もかも滅んでしまう。
6/を殺されたことは心が痛いが……もし逃がしてくれるなら攻撃したりしない、それぐらい大災害回避は僕らに取って急務なんだ」

なんとか残留思念と言えど響子に善意があることを信じて、訴えかける。

『ふふふ……世界を救いたい?

ふざけないで。
こんな腐った世界にうんざりしたから彼女は魔女に身を堕としたのよ。
何もかも滅んでしまえばいいんだわ、こんな絶望しかない世界なんて。
それに霧切響子は人としてとっくに滅んでいる……自分ごと世界が滅びてくれるなら嬉しいわ』
「くっ…!」

現実は非情、交渉は決裂である。
更にマスク越しでもわかるレベルで使い魔は凄む。

『彼女はこの世界の謎を解いて希望を見出したかっただけだった。
だけど世界は彼女が想像した以上にエゴに塗れて醜かった』

この使い魔の力なのか、彼女の背後に映像のようなものが映る。
そこに映るのはクライシス帝王、姫川友紀、安倍総理、Wゴロー、ハクメンそして食人鬼としての風鳴翼。
全員の瞳が、方向性は違えどむき出しの狂気に満ちていた。

『この世界の人たちは我良しなら他人はどうでも良い連中ばかり……
己の欲望のためならそれまで共にやってきた仲間を平気で裏切ったり、名声のために危険に晒すことも厭わぬ人。
無軌道な破壊と、自分が得をするために規則と合理性を盾に他者を食い物にする連中。
そして自分勝手な正義のために食い荒らす化け物ども……』
「待て、世界は悪い奴ばかりじゃない!
こうなったのも、殺し合いを仕向けた黒幕がいるからなんだ!」
『全部黒幕とやらが悪い? いいえ。
黒幕はきっときっかけに過ぎない…大災害と殺し合いで漸く、隠されていた人の本性が暴かれたのよ。
どうせ皆殺しにするんだから黒幕だろうが誰だろうが、関係ない』
「勝手な理屈を言いやがって! ただ自分が悲しい目にあったから他人も不幸にして良いと思ってんのか!」


イチローとクリスが反論すると映像には存命時の南光太郎、霊烏路空、矢車想、風鳴弦十郎、デカオの姿も映るが……いずれも無残な死体へと変わっていく。

「う……これは、総司令まで!?」
『確かに良い人もいたわ。
だがそういった人ほど悪人どもに利用され、騙され、殺される。
善人も心変わりしていつかは悪人になるかもわからない。
世界の闇に悶え苦しめられるぐらいなら善人も諸とも殺してあげた方が温情よ』
「だが滅ぼすことで助けになるなんて思い込みは――」
『そして……魔女となった霧切響子が最も許せなかったのは』

サラの意見を遮るように、最後の映像が流れたが、それはツバサを中心に守るように囲う、イチリュウチームであった。


『彼女の仲間や人々をたくさん殺した、食人鬼を善人だと思っていたあなたたちが匿っていたことよ!』

502エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:25:43 ID:IfalQ6jE0


「「!?」」
「待てよ、今の翼先輩は…ツバサは違うんだ、生まれ変わって食人鬼じゃなくなったんだよ!」
「それに理性を持ったテラカオスは必要不可欠、僕らの世界にはどうしても彼女が必要なんだ」
『誰がなんと言おうと罪人は罪人として裁かれるべきよ。だのにあなたたちは匿った。
主催による放送もあったのだから食人鬼のことを知らないとは言わせないわ。
信頼していた人を殺していった風鳴翼が英雄になることなんて私は認めない。
罪人の力を借りてでも助かりたい人々も世界も滅びて然るべきよ!』

霧切響子にテラカオス・ディ―ヴァの残滓であるツバサがどのような経緯で心身ともに生まれ変わったかなど、知る由もない。
否、仮に知ったところでツバサ一人に頼らざるをえない人々と世界に絶望するだけだろう。

「頼む話を聞いてくれ、それには深い事情があるんだ」
「諦めるんだイチロー」
「アナキン!」
「こいつは響子の残留思念、あくまで精神状態をなぞっただけの偽物でこれ以上は深い思考はできない。
ツバサを呪い、僕らを呪い、世に呪いの言葉を投げかけるスピーカーでしかない」
『ご名答よ、私はもちろん魔女が考えを変えることはない。そもそも彼女は自我だって残ってないのだから。
ただ呪いだけが残っている。
あなたたちが苦しむところを見たいというね』
「くっ……」

苦虫を噛み潰したような顔をするイチリュウチーム。
説得は無意味とわかったが、さりとて6/を一方的に処刑した隠し種を持っている。
その気になれば、全員先ほどのように結界の中で一人残らず皆殺しもできるのだ。
隠し種の正体がわからないと全滅である。
ではどうすればいい……そう考えていたイチリュウチームの足元に何かが落ちてきた。

落ちてきた物体の正体はウィザードライバーと、インフィニティリングだ。
持ち主と大半の指輪は吹き飛んだが、ベルトとこの指輪だけは破損を免れたらしい。

「これは苗木くんがつけていたベルトの…なんのつもりや?」
『ゲームをしましょう。
そのベルトには魔女と同じ魔力を込めた…それを嵌めて仮面ライダーになれば、変身者は結界の外へ出られる』
「一人だけ助けてやるっちゅうことか」
『話はまだ終わってない。
インフィニティスタイルの力さえあれば、今の弱った風鳴翼なら簡単に倒せる。
そして翼を殺して来たのなら結界を解いて、他の全員も逃がしてあげる』
「なんやて!」

これは取引だった。
ツバサをイチリュウチームの誰かが結界の外に出て殺しに行けば、ツバサ以外の全員を助けると言うのだ。
だが……

「できるわけねえだろ!
ツバサは仲間だし、世界を救えるかもしれない混沌の化身だ。
殺しちまったら世界を救えねえ!」
『あら、そう。
従わないなら魔女の呪いであなたたち八人を20分に一人、ランダムにオシオキしていくわ』
「魔女の呪い、オシオキ…さっき、6/を殺したアレか」
『あなたたちは予言の完遂のために化身の他にも野球をしなければいけないのよね?
残るメンバーは外に出た二人を含めても10人……あと最低2人死んだらチームで野球はできなくなるわね。
おっと、そこのモブドラゴンたちで人数を稼ごうなんて思ないでね。
彼らなんてイチリュウチームがいなくなったらオシオキなしでも全滅するから数に入れてないわよ。
それからツバサを殺さずにベルトを持ち逃げしたり、ベルトをつけたまま魔女に反抗したら即全員オシオキよ。
変な考えは起こさないことね』

ツバサを守ろうとすれば今度は野球チームが一つ壊滅する。
究極の選択であった。

『このゲームは化身か野球か、どちらかしか選べないのよ』
「ひ、卑怯でぃす!」
『彼女も食われて死ぬか魔法少女として生まれ変わるか、選択を迫られたわ。
突き詰めるとどっちも絶望だったわけだけど……あなたたちも同じ絶望を味わいなさい』

使い魔はほくそ笑みながら消えていき、そして魔女からの再度のロケット乱射と次のオシオキへのカウントダウンが始まった。

(く……どうすればいい、ツバサもチームも大事だ。片方だけ選ぶなんて僕にはできない…!)
(テラカオスは他になのはがいるが、どう見ても制御できてるようには見えない…不屈の勇者たるテラカオスを探しだすより大災害の方がきっと早い)
(だが野球チームの作り直しも難しい、考えている内に選手は減っていく……これまで以上に最悪の自体だな)

イチローが、アナキンが、蛮が、その場にいるイチリュウチームの対主催たちが戦いながら打開策を考える。
その窮地に比例して使い魔から託された希望を追い求め絶望の波にのまれた少年の忘れ形見、インフィニティリングが妖しく輝いていた。




 □

503エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:27:18 ID:IfalQ6jE0

その頃、結界の外側。
都庁からの救援として来たほむらは、オオナズチの背に乗り、空から重機関銃による射撃を魔女に向けて試みていた。
しかし、銃弾は結界は貫けず、蒸発するだけであった。
一方で結界の外への反撃も一切なかった。
ほむらは機関銃をリロードしつつ、オオナズチに話しかける。

「これだけ撃ってなぜ、反撃してこないのかしら?」
「一瞬で捻りつぶせる羽虫だから今は反撃する必要がないと思っているのか、それとも攻撃できない事情があるのかどちらかでしょう。
ほむほむが言う魔法少女の呪いが形になったものならば、何も考えてないって線もあるかもですなw」
「慢心か秘密か白痴か……いずれにせよ、それが私たちの付け入る隙にはなりそうね」

ほむらの盾の中には死した貴虎が所持していたN2爆弾が三つある。
起爆コードがなければ意味ないハズだが、これは出征前の天才ハッカー犬牟田がほむらが千葉へ旅立つ前に解除してくれた。
威力が高すぎるため、世界樹の前では使えず、魔物たちもこのような武器を嫌うので防衛戦闘には使えなかったが、生存者がほとんどいなくなったこの場所なら大丈夫だろう。

「この爆弾を三つ同時に発破すれば、あの魔女を倒す、もしくは大きな打撃を与えることもできるはず」
「結界の中で生きてるであろうイチローたちは大丈夫なんでしょうな?」
「そこは任せて、爆風がチームを傷つけないように調整するのには自信があるわ。
…問題なのは、この堅牢すぎる結界ね」
「ラミレス氏が言うには、このまま攻撃を続けてほしいそうですが、結界の穴を見つける前に弾薬そして中のチームは持つんでしょうな?」


魔女から町一つ分、離れた場所のとあるビルにはラミレス・ホルス・ふなっしー・ツバサがいた。
ふなっしーは怪我と消耗が激しいツバサとホルスを介抱し、ラミレスが双眼鏡を使って遠くから巨大魔女とほむらオオナズチたちの様子を見ていた。

「ラミレス監督、ほむらに攻撃させてるけどアレは意味あるなっしか?」
「弾の無駄遣いホル、仲間は気になるけどツバサだけでも都庁に送り届けた方が良くないホルか?」
「都庁ハマダ、狂信者ト交戦中。迂闊二向カウノハ危険デス。セメテ都庁ガ勝ッタトイウ報告ガアルマデ待ッタ方ガ良イデショウ。
ソレ二、ほむらサンタチ二攻撃サセテイルノハ無駄ジャナインデス」
「どういう意味なっし?」
「一見無敵二見エル結界モ、ドコカニ穴ガアルハズ。ソレヲ見極メル為二撃タセテイルノデス」

よく見るとほむらたちは適当に弾を撃っているのではなく、一か所に火線を集中したり、結界の違う場所を攻撃したりしている。
僅かにでも穴が開いたら、その穴にほむらは時間停止の魔法を使ってN2爆弾を魔女本体へ叩き込み、ダメージを負わせる作戦なのだ。
仮に失敗しても都庁の戦力と合流したときに、結界の特性を知ることができただけでも重要なデータとなるだろう。

「ンン?!」
「どうしたホル!?」
「今、確カニ弾丸ガ、バリアノ中ヲ通ッタ様二見エマシタ」



「オオナズチ、今確かに……」
「見えましたぞw たったの一瞬ですが結界が弱まって、たったの数発ですが魔女に弾丸が直撃したところを!」

撃ち続けていたほむらとオオナズチは、刹那の瞬間だけ結界が弱まり、魔女に命中したところを。
もちろんワルプルギスの夜以上の戦闘力を持っているであろう魔女霧切相手に機関銃程度では大したダメージにはなりえないが、結界が貫徹したことが大事であった。

この時刻はちょうど6/が魔女と使い魔にオシオキされた時間と一致する。
実はオシオキの瞬間だけ内部の対象者を確殺するためにエントロピーが集中するため、一瞬だけ結界が弱まるのだ。
ラミレスが言った通り、一見無敵に見えても相応の弱点が存在するようだ。

その事実にほむらはラミレスたちはまだ気づいてないが、ただの刹那の内でも結界を破った事実に、イチリュウチーム救出の希望を見出し、今度は武器を変えるなりして検証を続けるのだった。

504エゴの魔女 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:27:51 ID:IfalQ6jE0




【二日目・23時00分/東京〜千葉・魔女の結界内】


【霧切響子(魔女)@ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生】

※外観は宙に浮いている劇団犬カレー作画の希望ヶ峰学園、結界の防御力はイチローのレーザーさえ貫徹できないレベルです
※呪いの力で20分毎に一人、イチリュウチームのメンバーを強制的にオシオキ(処刑)できます
 即死耐性は無効化、どんなに強くても結界の中にいる限り、強制的に殺されます
 オシオキから逃れるためには代表者を一人決めてウィザードライバーとインフィニティリングを装備し、結界の外にいるツバサを殺害しないといけません(殺害しなかった場合は結界の中のメンバーが全員オシオキされます)
※ただし、オシオキ中は結界の力が僅かに弱まる模様
 この瞬間のみ結界を貫けるかもしれません



【イチリュウチーム】

【イチロー@現実?】
【ナッパ様@ドラゴンボールZ】
【サラマンディーネ@クロスアンジュ 天使と竜の輪舞】
【アナキン・スカイウォーカー@STAR WARS】
【八神はやて@魔法戦記リリカルなのはForce】
【美堂蛮@GetBackers-奪還屋-】
【雪音クリス@戦姫絶唱シンフォギア】
【シマリス@ぼのぼの】

【生存アウラの民】
スクーナー級×200、ガレオン級×15

※アウラの民はオシオキの対象外
 イチリュウチームが全滅すると守り手や指導者がいなくなって自動的に全滅します
※ギムレーの手で屍兵化されていたアウラの民は、ギムレーが死亡したため消滅しました。


【二日目・23時00分/東京〜千葉上空・魔女の結界外】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
【オオナズチ@モンスターハンターシリーズ】
【ターバンのナシ(ふなっしー)@ゆるキャラ】
【ラミレス@横浜DeNAベイスターズ】
【白光炎隼神ホルス@パズドラ】
【テラカオス・ディーヴァの残滓『ツバサ』@テラカオスバトルロワイアル十周目】

505 ◆VFL3a2UAZM:2020/02/03(月) 12:28:17 ID:IfalQ6jE0
投下終了です

506隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:42:14 ID:O9KqTJGo0
ネオ・ジオングスーツ始め多くの起動兵器が深海棲艦により整備を受けながら眠る、東京ビッグサイトの地下格納庫。
そこには影薄キャラ特有のステルス能力で今まさに破壊工作を行わんとする三人の潜入者がいた。
セルベリア捕縛に向かった小町・あかりとは別行動を取っていた影薄三人組である。

「倉庫から爆弾を見つけてきたっす」
「罠の類もチェックしてみましたが、あの辺りの道を通っていけば問題なさそうです」
「ありがとよ二人とも、よし始めるか」

日之影たちは狂信者の新兵器破壊に必要な爆薬の用意や、工作活動前の下調べをしていた。
いかな存在感が薄い、忍者よりも忍んでいる連中とはいえ、油断は禁物。
食人海豹ぼのぼのにはステルスを見切られたこともあり、破壊には慎重を要した。

準備を終えた三人組は爆弾を抱えて警報などの罠を踏まないようにネオ・ジオングに接近していく。

(気づかれてないっすよね)
(ここで整備を行ってる奴ら、生気を感じないゾンビみたいで気持ち悪ぃな)
(まるで見てくれは生き物みたいなのに機械のようです)

黙々と作業を続ける謎の異形たちに影薄たちは小声で感想をこぼす。
都庁にも魔物という異形がいたが、こちらはまるで幽霊であり魔物と比べても異質であった。

影薄たちはまだ知らない、彼女たちはかつて艦むすと言われた人造巫女たちの慣れの果てであることを。



狂信者を束ねる神のために作られた赤い巨大鎧に影薄たちが肉薄する。

(近づくとやっぱでけえな……100Mはあるぜ)
(こんな大きいものを複数しまい込める場所を、二日足らずでビッグサイトの地下に作りこめちゃう狂信者のメカニズムも脅威っす)
(さあ、登ろうとましょう。装甲部分はともかく、内側からなら小さな爆薬でも有効なハズ)

三人がネオ・ジオングのあまりの大きさに驚きながらも、いざ登ろうとする。
だが、いざ登ろうとした瞬間。

「ッ!?」
「日之影さん!」

日之影は背後から気配を感じ、咄嗟に振り替えるとそこにはゴーグルとイヤホンをかけ、大きな篭手を三人に向けて振りかぶっていた少女型深海棲艦――集積地棲姫がいた。
明らかに整備のための行動ではなく、攻撃の準備。
迷っていれば自分も黒子もモモ死ぬ。
そう感じた日之影は彼女がこちらを攻撃する前に、先に拳で彼女の腹部を貫いた。
ドラゴンハートで格段に強化された拳は直撃ならば深海棲艦を一撃で葬れるクラスだ。

『ケンゾウシタ…シンヘイキ…ハ……ヤラセハ……シナイ………ッ!』

血なのかオイルみたいなのかよくわからない液体を腹の風穴から流しながら、集積地棲姫は格納庫の床に倒れ伏した。
そんな哀れな彼女の轟沈に感想を挟む暇もなく、周囲から砲口を向けられていることに気づく。
いつの間にやら影薄たちは格納庫中の深海棲艦に包囲されていることに気づいた。

「ひ、日之影さん……」
「これはまずいかもしれません」
「ああ……こいつらの対応があまりにも早すぎる。
どう考えてもこのゾンビもどきたちは俺たち影薄が『見えている』
ひょっとすると罠に嵌ったのは俺たちかもしれねえ……」

深海棲艦がどうやって影が薄いステルス存在を見抜いたのかは、日之影たちにはわからない。
ただわかるのは、彼女らの視線が当てずっぽうではなく真っ直ぐに影薄たちを捉えていること。
いつぞやの海豹のようにちゃんと見えていたということである。

「散開ッ!!」

深海棲艦の誰かが発砲するよりも早く日之影は他の2人に指示を出し、三者は格納庫の中でバラバラになって逃げだした。
この指示は的確であり、直ぐに深海棲艦による集中砲火が襲い掛かった。
ドラゴンハートとデモニカスーツのおかげで身体能力が上がっていたことも幸いにして、三人とも負傷せずに済んだのだ。
日之影は拳で、黒子は銃で、モモは刀と雀力で迎撃し、イロハ級程度の深海棲艦を倒していく。

507隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:42:43 ID:O9KqTJGo0

「やばいっす、まさか潜入に気づかれてしまうなんて……敵がどんどん来てしまうっす!」
「僕たちだけじゃなく他の場所にいる小野塚さんや赤座さんも危ない!」
「仕方がねえ、こうなりゃスピード勝負だ。
俺と黒子がけん制するからモモはよじ登って爆弾でこの赤デカいのをぶっ壊せ!」



「そうは……させないデスよ!!」
「チッ!」

強引にでもネオ・ジオング破壊を進めようとする影薄たちに、処刑鎌の連撃、飛翔する回転鋸、大きな槍がそれぞれに襲い掛かる。
日之影は槍を白羽取りし、黒子は散弾で鋸を迎撃、モモは防ぎきれなかったが雀力を防御に回すことでダメージを最小限に減らした。
デモニカスーツはところどころ避けてエロい感じになったが。

「モモ!」
「だ、大丈夫、また裸に逆戻りしそうな悪寒がするっすけど……」
「騒ぎを聞いて駆けつけてみれば」
「やはり侵入者がいたデス。まっちゃんが言った通りだったデス!」
「ビッグサイトはやらせへんで!」
「クソッ、厄介な連中がきやがった」

格納庫に馳せ参じたネームド狂信者は、狂信者のエースであるシンフォギア装者である切歌。
切歌と同じくシンフォギアの使い手となったレジーナ。
そして巨人への変身能力を得た「元」お笑い芸人・松本である。
強者である日之影だからこそ、三人の強さは周囲の深海棲艦の比ではないと。

「良いかい、切歌?
深海棲艦たちは影の薄い彼らを捉えられるように事前にセンサーを改造しておいた。
彼女たちが攻撃した先に敵がいる。そこを狙って攻撃するんだ」
「ありがとうデス、サーフ博士」
「なんや? 兄ちゃんは戦わへんのか?」
「……クラウザーさんを想う気持ちは確かだけど、科学者だけに戦闘は専門外なんだ。
僕は後ろに下がらせてもらうよ……君たちの武運を祈る」
「ええ! 任せて!」

切歌たちの後ろには黒髪Ⅿ字の研究者サーフもいた。
どうやら彼は戦闘はろくにできない代わりに深海棲艦に影薄が見えるように改造したらしい。
そそくさと物陰に隠れてしまった。

「博士……ということは技術者か!」
ちょうどいい、あいつを捕まえればディーやセルベリアを捕まえるまでもなく、黄泉レ〇プマシンをなんとかできるかもしれねえ!」
「何をぶつくさと、ネオ・ジオングとサーフ博士はやらせないデス!」
「お嬢ちゃん! 邪魔をすんじゃねえ!」

「何発撃ちこんでも無駄やで、生贄は殺害や」
(銃弾が効かない……!)

「アンタたちなんかにクラウザーさん復活阻止をやらせるもんですかあ!」
「私たちだって……負けられない理由があるっす!」

サーフを捕まえようとする日之影を止めるように切歌のイガリマが襲い、日之影は拳で押収する。
松本は黒子を狙い、黒子は銃で撃つが、ドーピングコンソメスープで得た鋼のボディと巨人化能力者特有の再生能力でビクともせずに吶喊する。
一方でレジーナはモモと相対し、ツインテール状のパーツに括り付けた鋸と斬鉄剣をつばぜりあう。
そして周辺からは絶えず放たれる深海棲艦の射撃。
ものの五分足らずでビッグサイトの格納庫に暴力という嵐が吹き荒れた。

508隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:43:46 ID:O9KqTJGo0



少し離れた物陰に隠れながらサーフは戦闘の様子を伺う。

(これは正直まずいな……)

その表情はこの殺し合いが始まってから初めてと言えるぐらい、渋い顔をしていた。
彼はカオスちゃんねるのサーバーと繋がっている違法改造のスマホで掲示板及び、各参加者のナノマシンから得た殺し合い全体の情報を見ていた。

サーフは殺し合いを表向きの主催であるベイダーたちにやらざるえないよう誘導した元凶である、インターネットや隠蔽工作を通じて殺し合いを裏から操っていた黒幕と言っても過言ではない。
だがそんな黒幕や支えてきた掲示板にも、全能でないが故の限界や穴はある。
彼はついさっきまでギムレー急襲のためディー専用兵器の製作を急がねばならず、その間は掲示板を見ることができなかったのだ。
彼が掲示板を見てない間に情勢は対主催だけでなく、彼にとっても悪化していた。


まず、一つが貴重なテラカオスの内一人が死亡し、残る一人や貴重な野球チームも魔女によって今まさに風前の灯火ということだ。
主催陣営がテラカオス化したなのはを黒き獣へのカウンターとして投入し、敗死させてしまった。
敗死までは予測できたが問題はツバサの方だ。
ツバサの近くで霧切が魔女化し、ツバサが魔女の力によって弱体化。
イチリュウチームも魔女の結界に閉じ込められてしまったのである。
自分が神になるための礎であるテラカオスはもちろん、イチリュウチームの全滅も予言が完遂できないため、サーフにとっても面白くない。
せめてなのはが黒き獣に勝っていれば……または霧切が魔女化しなければ、どちらか片方だけなら許容できたが、不運が最悪のタイミングで一片に来てしまったのである。
この未来がわかっていたなら人質であるユーノを主催より先に拉致するか、霧切をツバサに合わせないように計らっていた。


次に都庁に送りこまれた狂信者たちの戦況。
掲示板やナノマシンなどの情報を統合すると、ドリスコルたちはそれなり追い込んだが敗北したらしい。
全滅してないはずの現地の狂信者からの情報が途絶えているのでなんともいえないが、少なくともルルーシュが提案した人質作戦は無意味であったようだ。
一部偽物が混じっていたとはいえ非情にも人質にした魔物ごと攻撃したとある。
ここで問題なのは送り込んだ天龍がやられたということだ。
オシリスの天空竜のスキルを受けついだ天龍が一撃でやられるとは思わなかった。
あらゆるスキルを無効化するが故に、超性能を誇るグレートゼオライマーと組めば、余程の戦下手でもない限り負ける可能性は低い。
となると、オシリスのスキル無効化能力をさらに無効化する切り札が都庁にはあったということか?

(まさか……竜殺剣?
もしくはそれに類するものを都庁が手に入れたということか?)

サーフの脳裏に思い浮かんだのが、計画実行前に警告に来た真竜をなます切りにした竜殺剣ドリス。
だがドリスは狂信者からの信頼を勝ち取るためにセルベリアに献上した。
他の剣は存在しないハズだが、なんにせよチートドラゴンさえ葬れる何かが都庁同盟軍にあるのは確かだ。

(さらに現地に向かった深海棲艦たちからの応答は途絶えてる。
大半は死んだからわかるが、生き残ってる深海棲艦……特に戦況の監視係を任せていた867号から応答がないのがおかしい。
いったい都庁で何が起きているんだ? 遠巻きの情報しかない掲示板だけじゃ足りないぞ)

天龍とともに送り込んだ深海棲艦からも来るべき報告がこない。
天龍と共に全滅しているならまだわかるが、一部が生き残ってるから尚更送ってこないのが不可解なのだ。
この際、戦の勝ち負けよりも、何が起こってるのかわからないから怖いのだ。

(都庁でいったい何が起こってるんだ?
新たなに深海棲艦を送り込んで調査させるべきか……何か嫌な予感がする)

サーフはまだ知らない。
送り込んだ深海棲艦の一人が都庁の力と使徒の歌で浄化され、艦むすとなり、黒幕の名前をバラしたと。




そして何より問題なのは、目の前でも起こってる出来事。
小町たち、影薄組の襲来である。

(ナノマシンの信号からこいつらだけ都庁を離れて真っ直ぐこっちに向かってきていたから潜入してくるだろうと予期はしていたさ……ただ)

ディーにこそ伝えてないが影薄たちがビッグサイトに向かっていることをサーフは読んでいた。
だからセルベリアの防衛計画に便乗する形で潜入してくるだろう地下には信者以外は通れないゲートを作り、念の為にネームド狂信者も用意された。
深海棲艦にもナノマシンからの信号を読み取ることで見えない影薄組の位置がわかるようにもした。
一見、穴のない作戦に思われたが……

509隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:44:23 ID:O9KqTJGo0

(まさか、奴らの中にクラウザーの信者がいたのか……普通にゲートを突破されてしまってた。
そしてサイコマンンンンンンッーーー! 何が完璧超人・始祖だよ!
クソの役にも立ちゃしない、殺されるにしても30分程度は持たせろよ!)
直衛のサイコマンは暗殺であっさり轟沈。
ゲートもモモがクラウザー信者だったためにくぐり抜けられてしまった。
せめてサーフがネオ・ジオング作りに着手してなかったり、サイコマンが時間を稼げば、何らかの対応は取れたが後の祭りである。

影薄組にはビッグサイトの深部に入られ、格納庫では日之影たちが切歌と、屋上では小町がセルベリアと戦っている。



こうして彼がサーバーを覗いてない僅かな間に不運が重なり、黒幕でも看過できない問題が一片に重なってしまったのである。

(僕がすべてを手に入れるためのゲーム『カオスロワ』で勝つにはここからどうしたら良い?
貴重なテラカオスも野球チームも保護したい。都庁で起こってる事象を調べたい。
入り込んだ影薄組もなんとかしないといけない!)

涼しい顔を装いつつも、額には冷や汗を流す。
なんとか平静になるようこらえているが、もはや掲示板をいじるだけではどうにもならない事態になっている気がするのだ。

(まずは目の前のことからだ。
いっそ、必要機材と最低限の戦力だけ持ち出してビッグサイトから逃げるか?)


サーフとしてはネオ・ジオングスーツが破壊されてDMC狂信者が敗れても構わない。
ビッグサイトは狂信者を装えば安全地帯だったが、影薄組に侵入された以上、これからも安全である保証はない。
ネオ・ジオングのサイコ・フェードは強力無比で「計画にいらない存在」を駆逐する分だけ楽になるが、破壊されても計画自体に大きな支障は出ない。
狂信者の存在意義もこの男にとっては殺し合いの促進と落ち着いて殺し合いを管理できる安地、ついでに邪魔な奴らを一掃する手段程度の価値しかない。
もちろんクラウザーへの敬意など皆無だ。

(しかし、自爆を嫌がっていたセルベリアはまだしもディーがヤケを起こして黄泉レ〇プマシンを爆破させる危険もある。
影薄どもも黄泉レ〇プマシンが上層部が全滅すると自動で自爆する機能を知らずに二人とも殺して僕もろとも自滅させてしまう可能性もある……そうなると計画は水の泡だ。
やはり逃げずにネオ・ジオングは守るべきか)

マシンが爆発すれば貯められたエネルギーが一気に暴発させて関東中の参加者を皆殺しにする。
ビッグサイトにいる自分は支給品などで逃れたとしても、テラカオスやイチリュウチーム、下手をすると九州ロボやフォレスト・セルのような器まで全滅したら、自分ごと世界は大災害に飲まれてゲームオーバーである。

サーフは知らないが、影薄組は上層部を全滅させたら自爆してしまうことを知っているのでディーかセルベリアのどちらかは残すだろう。
だが依然としてディーは勝てない戦いなら無理心中を選ぶ考えの持ち主なので、兵器を守らなくてはならない。
切歌・松本のようなエース級狂信者は数えるほどしかおらず、ネオ・ジオングという切り札を失えば、狂信者は今度こそ勝機を失ってしまうだろう。
とはいえ戦闘に加担すれば魔女に襲われているテラカオスと野球チームを失ってしまうかもしれない。

狂信者を見捨てて逃げるか、それても狂信者の助けとなるか、サーフはジレンマに陥っていた。

510隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:44:50 ID:O9KqTJGo0




「……あなた、ひょっとしてマナさんが言っていたレジーナさんじゃないっすか!」
「あなた……マナのことを知ってるの!? 会ったことがあるの!?」

レジーナと争っていたモモは、ここで相手がかつて共に戦い亡くなったマナの探し人だと知り、刀を構えつつも声をかけた。
レジーナもマナのことを知りたいがために鋸を構える程度にとどめた。

「マナさんは……共に戦う仲間のプリキュアだった。
けども狂信者のラージャンに殺されてしまってっす!」
「え……嘘よ!」

マナを殺したのは自分を仲間として引き込んだ狂信者そのもの。
その事実にレジーナは衝撃を受ける。
本当だとすれば狂信者のマッチポンプもいいところだからだ。

「レジーナ、敵の話に乗せられちゃダメデス!」
「そうやそうや!」

切歌たちは、モモの出鱈目(ラージャンがマナを直接殺したことは知らないため)を信じるな、と言うがレジーナの、耳には届いていない。
一方のモモは続けて切歌や松本にも口を出した。

「あなたたちもクラウザーさんを真に信望してるならよく聞いてください!
このバカげた殺し合いは、それを開く原因となった大災害をたった一人の……竜殺剣を持った悪魔によって招かれた!
そいつが間接的にクラウザーさんを殺したも同然なんですよ!!」
(なんだと!?)
「これは……大災害を瀕死の状態で生き延びた竜の神様が、自分の消滅をも厭わずに告げた真実っすよ!」

モモの出した言葉に狂信者はもちろん、隠れていた黒幕さえも震撼させた。
大災害を竜殺剣を持った悪魔の情報……それはニルヴァーナの生き残りが全滅した現状では自分しか知らないはずだ。
徹底した情報隠蔽も行ったハズなのに、いったいどこから漏れたのか。
サーフはそれを知るとために耳が離せなかった。



【二日目・23時00分/東京都 ビッグサイト格納庫】


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ネオ・ジオングを破壊する、そのために格納庫にいる狂信者連中を倒す
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな
5:俺たちのステルス能力が通じない? なぜ?
※予言やテラカオスの真実を知りました


【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ところどころ裂けた)
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具、爆薬
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:狂信者と対話をする
1:クラウザーさんへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:狂信者の暴走はクラウザーさん信者である私が絶対止める!
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実を知りました


【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:ネオ・ジオングを破壊する、そのために格納庫にいる狂信者連中を倒す
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実を知りました

511隠されし邪念:2020/02/11(火) 11:45:14 ID:O9KqTJGo0


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】決意、首輪解除、イグナイトフォーム
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:侵入した小町の仲間をSATUGAIする
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については大いに失望
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:提督は見つけ次第SATUGAI
8:え? あの影薄い人が言っていたことって確かサイコバッシャーが……!
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】ショック、首輪解除 変身中
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:ステルスモモからマナのことについて聞く
1:クラウザーさんの為にすべての人や魔物をSATSUGAIする
2:切歌に友情を感じている
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
4:提督は絶対に許さない
5:狂信者がマナを殺した……?
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません


【松本人志@現実】
【状態】ダメージ(小/回復中)、DCS状態+大日本人化、首輪解除
【装備】浜田雅功人形
【道具】支給品一式、メトロン星人人形、グラコスの槍
【思考】基本:浜田の蘇生
0:小町たちを殺し、蘇生装置を守る
1:狂信者のフリをしつつ、浜田蘇生の機を伺う
2:残り三つの組織が壊滅する寸前にビッグサイトの内部に侵入し、蘇生方法を奪って浜田を蘇らせる
3:浜田を生き返せないようなら一人でも多くの参加者をあの世に送る
4:? 何言ってるんやコイツ?
※巨人の脊髄液@進撃の巨人を取り込んだことで大日本人に変身できるようになりました
 DCSの効果などで原作の大日本人よりは遥かに強いです
※深雪によりビッグサイトの中にある黄泉レ○プマシンの位置を把握しました
※浜田の魂が消滅したことに気づいていません


【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】健康、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅
    マスタキャンセラ・オートソーマ常備(万能以外無効、戦闘終了or逃亡成功時全回復)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×190、深海棲艦鬼・姫級×9
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:物陰に隠れ、ステルスモモの話を伺う
1:今は狂信者のフリをしてディーに従うが、旗色が悪くなったらビッグサイトから逃げる
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
7:都庁に向かった深海棲艦たちはいったい何をしてるんだ?!
8:可能であればイチローチームとテラカオス・ディ―ヴァ(ツバサ)を助けに行きたい
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢に自分の正体が告発されたことを知りません
※ナノマシンからの信号を通じて深海棲艦は影薄組のステルス性を無視して攻撃できます
 また、深海棲艦が攻撃した場所を辿ることによって切歌たちも攻撃ができます

512クラウザーさん、やっと復活するの巻:2020/03/15(日) 19:05:04 ID:.3MasLDc0
「新バンドを組んじゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達6人の友情は不滅だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「『僕は野球をやってるカス共を殺せればいい』」
 球磨川がカッコつけて言う。
「そう、そして私達が……」


「「「「「『正義だ!!!』」」」」」


 こうして正義の名の下に根岸崇一と野比玉子症候群予備軍の四人と球磨川はド派手にバンドを結成した。
 復活方法とは前の話に書いてある通りだ。
 そして、復活のエネルギーが少し余ったので死んだDMC狂信者達も復活した。
 初ライブの会場は東京ビッグサイト。コミケ会場だ。


【四日目・0時00分/東京都・東京ビックサイト】
【根岸崇一@デトロイト・メタル・シティ】
【状態】クラウザーさん
【装備】ギター
【道具】支給品一式、その他不明
【思考】
0:黒幕のサーフを殺す
1:新DMCと復活信者共を率いる
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】拳銃@現実
【道具】支給されていない
【思考】基本:主役になる。
0:新バンドの結成だッ!!
1:私が正義だ。
2:けいおん!!の真の主役になり、世界を超越し、完全体になり、私の国を手に入れる。
3:騒音を撒き散らす連中は悪だ。
4:ちなみに私達は正義だ。
5:故に黒幕のサーフも殺す。
6:私達が正義だ。悪は許さん。
7:何度でも言う、私が正義だ。
8:だが、正義なんて言葉、チャラチャラ口にする奴も許さん。
9:もう私達は死ぬことはない、何故ならば正義だからだ。
10:正義は死ぬことはないからな!
11:しかし、本当に死んだらどうしようか?
12:そしたら、また復活するだろう!!
※ドラム担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【巨人小笠原@なんJ】
【状態】アンドリューW.K.と合体中
【装備】バット、ベース
【道具】不明
【思考】基本:今度こそ生き残る!
0:(贔屓されちゃ)いかんのか?
1:(男と合体しちゃ)いかんのか?
※ベース担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【アンドリューW.K.@現実?】
【状態】健康、巨人小笠原と合体中。
【装備】自前のギター
【道具】支給品一式
【思考】
基本:復活祭とか言うパーティーに参加する。
1:しかし、なんか快感だ!
※ギター担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

513クラウザーさん、やっと復活するの巻:2020/03/15(日) 19:05:18 ID:.3MasLDc0
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【状態】健康、ケツが真っ赤。
【装備】デスティニーガンダム
【道具】支給品
【思考】
基本:自分が主人公になって黒幕のサーフを倒す
1:しかし、なんか快感だ!
※ドラム(楽器)担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【球磨川禊@めだかボックス】
【状態】健康
【装備】大螺子
【道具】支給品一式
【思考】
基本:???
1:『野球やってるカスどもを殺す』
※ピアノ担当
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

【狭間偉出夫@真・女神転生if...】
【三島一八@鉄拳6】
【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢】
【明智光秀@戦国BASARA】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】
【ラージャン@モンスターハンター4】
【トキ@北斗の拳】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢】
【比那名居天子@東方project】
【中野梓@けいおん!】
【柊つかさ@らき☆すた】
【その他DMC狂信者だった人たち全員@いろいろな作品】
※頭おかしい(褒め言葉)科学者によって復活しました。

514何が可笑しい!!:2020/03/16(月) 19:59:30 ID:4J8QErSA0
野比玉子症候群患者は復活不可なんだよなあ……(5270話参照)

でもインスピレーション湧いたから、これが通しで良いなら
あくまでルートの一つとしてのDMC完勝エンドを作ってみようかな

515クラウザーさんが復活すると言ったな? アレは多分まだ嘘だ:2020/03/17(火) 08:34:33 ID:rCr6FTDY0
ここは死者スレ。
未だに蒼の使者である黒き獣の影と死者の戦いは続いている。


「という作戦なのさ!」

前話(5289話)におけるクラウザーさん及びDMC狂信者軍団の大復活は田井中律による妄想……および作戦であった。
ご存じの通り、この世界の律はテラカオス化する前からデフォルトで狂ってるので雑でツッコミどころ満載で粗が目立つのも仕方がないことなのだ。

しかし、この作戦は狂った思考の持ち主であるネームド狂信者には意外と大受け。
一部修正すれば絶対に不可能ではないのではないか、という結論に至った。

「サーフが黒幕なのは死者スレでは既に周知の事実」
「狂信者すべてが復活すれば全員がサーフ処刑と大災害対策に動ける!」
「だがこの作戦にはクラウザーさんと(能力的な意味で)頭のおかしい技術者が必要不可欠だ」
「頭おかしい技術者には光裕一郎がいるじゃないか」
「「「それだ!!!」」」

死者の中には間違いなく今期最強の技術を持つ裕一郎さんがいる。
彼ならばごく短時間で黄泉レ〇プマシンを再現し、現世へ戻ることも不可能ではない……多分。
クラウザーさんはもちろん、蘇った時に狂信者たちを統制する必要があるので裕一郎さん以上に必要不可欠な存在である。

「だが、クラウザーさんも裕一郎も広い死者スレのゴタゴタの中で行方不明だ」
「ならばナイトである私と狭間が探してこよう」
「もうサーフは師匠とは思わん、カルナの前に突き出して尻穴に槍を突き刺してもらわないと気が済まない!」

ナイトと魔人皇は作戦の要である、行方知れずのクラウザーさん・裕一郎を探しに向かった。



「ところでりっちゃん、クラウザーさんや俺たちの復活のためのエネルギーはどうするんだ?」
「ああ、それならそこらじゅうにあるじゃねえか?」
「そこらじゅう……ああ、なるほど狂信者以外の参加者の魂を破壊して私たちの復活のためのエネルギーにするのですね?」

律の後ろには、ロープで縛られた罪のない死者の魂たちが怯え震えていた。

「……なるほど、やることは現世のそれと変わらないってことですね!」
「そうさ、残酷だが世界を守り、クラウザーを復活させ、私が目立つには仕方ないことだぜ」

つまるところ、ここにいる集団は現世でもやらかしていた狂信者の横暴を働こうというのだ。
復活エネルギー確保のために、味方以外の死者を虐殺するという忌まわしき暴力を。
その暴力を、ここにいない狭間と天子、律の作戦に乗り気じゃなかった狂信者を除いて賛同し、現世のように死者スレを血に染めようとしていた。


「そう、そして私達が……」


「「「「「『正義だ!!!』」」」」」







「何が正義だ! このバカモノども!!!!」

声高々に上げた根っこまで邪悪系狂信者と律達だったが、そこにブチ切れシグナム率いるまともな参加者軍団に包囲され、全員御用になった。

そして、カルナに尻の穴に槍をねじ込まれて魂を喰らわれ、宝具ブッパのエネルギーになりました。


「そんな、私が正義のハズなのに……」
「随分、尻の穴の小さい正義だな」

ドスッ

「アッーーーーーーーーーーーーー!!!(迫真)」


今日も死者スレは地獄です。

516クラウザーさんが復活すると言ったな? アレは多分まだ嘘だ:2020/03/17(火) 08:35:03 ID:rCr6FTDY0




※以下のキャラたちの魂が消失しました
 物語がどのような結末を迎えても復活できません

【田井中律@けいおん!!】
【三島一八@鉄拳6】
【蟹座のデスマスク@聖闘士星矢】
【明智光秀@戦国BASARA】
【衛宮切嗣@Fate/Zero】
【デスマンティス@世界樹の迷宮4】
【ラージャン@モンスターハンター4】
【トキ@北斗の拳】
【KBSトリオ@真夏の夜の淫夢】
【中野梓@けいおん!】
【柊つかさ@らき☆すた】

※そもそも5270話において蒼の力で消滅しています
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【球磨川禊@めだかボックス】
【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実?】


【二日目・23時30分/静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
※根岸崇一(クラウザーさん)、狭間偉出夫、比那名居天子は復活していません
 すべて田井中律の妄想です


【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱで常に魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧
【道具】不明、同盟の悪魔将軍・アタル兄さん、正気に戻ったシグナム
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:罪人を魂喰いで魔力をチャージし、宝具コンボでシャドウであった者の影から死者を守る
2:オレの宝具は尻に刺す道具じゃないんだけどなぁ……
※死者スレにいる罪人(特に酌量の余地がないもの優先で)を魂喰いすることで魔力を補っています
 ただし、罪人だけの魂ではあと7時間しか持たず、それ以上は善人の魂を消費しなければいけません
 死者スレで魂喰いされた存在は物語がどんな結末を迎えても、二度と復活できません
 魂がないのでサイボーグ化復活も不可

517何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 19:36:02 ID:mjsv5bok0
魂消滅させるなら全員やれよ……省いた奴贔屓したいの?

518何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 20:13:56 ID:rCr6FTDY0
逆だ
全員消したらヘイトだと思われるだろ

519ズガン:ズガン
ズガン

520何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 20:31:34 ID:PWXnNpKQ0
アレはゴタゴタになった辻褄合わせのために仕方なくそうするしかなかったって言ったでしょうに・・・
嫌なら他に良い案を出せば良かったでしょ

521ズガン:ズガン
ズガン

522何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 21:52:33 ID:PWXnNpKQ0
付き合いきれん
おまえさんが単に狂信者が嫌いなだけじゃんか
文句があるなら似たようなことになってた他の組織にも言えよ

誤解なきように言っとくけど俺は全部好きだが

523何が可笑しい!!:2020/03/17(火) 22:19:33 ID:VLoSqlOw0
クラウザーさんなんて適当にズガンされた奴なんてほんとどうでもいいし、それを無理に持ち上げてる寒い連中としか思えないね>DMC狂信者

524何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 01:28:40 ID:ECkbG7Io0
この人に賛同する訳じゃないがやっぱし十期が長すぎるんじゃなかろうか
だから展開を伸ばしてしまうようなキャラにイライラするのかも
俺もあんま書いてないから偉そうなこと言えんし今まで書いてた人の作品を踏みにじりたい訳じゃないが
とてももう終わる気配はないし下手をすれば十年後もまだやってるくらいなら多少強引でも総集編的に纏めて終わらせても良いんじゃないか
何より十期が続くにしても莫大な主要キャラの多さや設定の膨大さと今はその辺のロワより書き辛いのもカオスロワの醍醐味が損なわれてると個人的に感じるし

525何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 06:22:51 ID:c3f9lxSs0
とてもとても悔しいけどリアル的な意味でも一年以内の完結は難しい
>>524の言うことはごもっとも、そもそもパロロワ界隈自体が色んな意味で限界だ
……賛同だけど、ちょっとお願いがある


どうしても書いてみたい話自体はまだまだある、他の人も今は展開上書けないけど書きたい人もいると思う
そこで総集編的最終回を投下をする→年表の詳細を作るように、最終回を補完する過程のSSや、もしくは別ルートで進行する物語を後から書ける形にしたい

むしろ10期を書かせてください! お願いします!

526何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 09:47:41 ID:j5nb41Ds0
なんか色々あったみたいなところ申し訳ないんだけど、予約って大丈夫?
都庁、都庁攻め主催者、ルルーシュなんだけど

野球さえどうにかなれば(+試合時間分のシャドウの足止め』頭の中ではエンディングまで駆けることも考えつくんだけどね……
そこは野球詳しい人ほんとお願いします

527何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 09:53:26 ID:c3f9lxSs0
自己リレーで良ければ…

528何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 10:05:23 ID:Koy1tj3Y0
妄想ロワみたいなダイジェスト化(ただしキャラの死亡が雑な処理となる)なら書けない展開自体はない

529何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 10:14:15 ID:Koy1tj3Y0
展開は考えてても俺が書くとどうしても激長文化して時間がかかるのよね...
それはそうとして予約乙

530何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 17:28:56 ID:Z//SRRsg0
形は何であれ10期に一旦一区切り付けて11期開幕でも良いかもね
パロロワに人が居ないのと書き手が分散して両方爆死するかもしれんけど

531何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 21:56:31 ID:.pHcVXxQ0
>>526
野球はともかく、シャドウの足止めなら一応考え付いてはいる
フロワロは別個に対策いるけど、シャドウ本体だけなら野球2試合分くらいなら
十分止められる予定
ただ、都庁がジャック達の奇襲を凌ぎきれた場合の前提なんで、そちらの話次第では駄目になるかも
今影薄の方も考えていることあったけど、様子みつつシャドウの方を深く考えるべきかな

532何が可笑しい!!:2020/03/18(水) 22:01:29 ID:zGtsbc2M0
もうそこまで持て余すのなら殺して良いんじゃないか?

533何が可笑しい!!:2020/03/19(木) 00:34:49 ID:r37Z8KYU0
ぶっちゃけシャドウやサーフが必ずラスボスである必要はない
流れ次第ではアナキン、拳王軍、魔女霧切、あと現状は対主催の誰かさんなどのチャートも俺の中にはある

534何が可笑しい!!:2020/03/19(木) 02:15:48 ID:LUWjuyzg0
サーフは書き手も読み手も皆が大好きな人気キャラだし、ラスボスしかありませんな。

535何が可笑しい!!:2020/03/20(金) 08:18:49 ID:JK847PXA0
>>531
黒フロワロはともかく、シャドウ本体はなのはのおかげで消耗はしているから
拳王軍VS聖帝軍の試合までは何もしなくてもなんとかなりそうだな

536何が可笑しい!!:2020/03/22(日) 07:17:30 ID:AZs7FRig0
拳王軍、聖帝軍で予約

537何が可笑しい!!:2020/03/22(日) 14:54:51 ID:hk/25/v60
>>536
トリ付け忘れてますぜ

538ズガン:ズガン
ズガン

539 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/22(日) 23:23:36 ID:AZs7FRig0
トリ忘れてたので再予約>>536

540 ◆BkO6szdC.M:2020/03/24(火) 22:33:06 ID:8FR1VR0.0
やっべ自分もトリついてなかったですね…
でも投下はなかったようなので予約していた都庁、主催、ルルーシュで投下

541 ◆BkO6szdC.M:2020/03/24(火) 22:34:03 ID:8FR1VR0.0
(……)

都庁、世界樹。
その奥地で取り残された男、ルルーシュ。
彼はその頭脳を持って考える。
考えねば死ぬ。
しかし彼はそういった死線を潜り抜けて生き延びてきた。

(……都庁の戦力、竜は削れたようだが逆に言えばそれだけ。狂信者共はドリスコルを含め大敗したか)

戦況はそう判断せざるをえなかった。
自分達の作戦にミスは無かった筈だ。単純に相手の力量がそれを上回った。

(救助した魔物が半ば監視されているこの状況、潜り込んだことにも勘付かれた可能性が高い……)

そして自分達の存在がばれているかもしれないことにもたどり着いた。
ルルーシュとて戦えないことは無いが、あの大軍とグレートゼオライマーすら退ける連中だ。
仮にギアスを使ったところで対処しきれず、そもそも何名かはギアスに対して耐性すらあるかもしれない。

(そして、今の歌にあの榛名という女……)

何より、今まさに自分の前で起きた奇跡。
そこから導き出される、僅か十数秒後の必然。
ルルーシュの思考がまとまり行動に移るまで、僅か数秒。彼の思考速度は次の現象よりも早かった。
つまり。



「お見事だ、都庁の者達よ」


「「!?」」



自らその正体を、同盟軍に晒したのだ。
当然、場は混乱する。榛名の登場でただでさえ混乱しているのだから。
その隙をついて、攻撃される前に次の言葉を紡ぐ。

「我が名はゼロ。どうしても諸君らに伝えたいことがあり、悪いが魔物に扮して入らせて貰った」

「狂信者共を利用したことも詫びよう。私の他に……何名か狂信者も紛れてしまっているが、それももう問題ないだろう」

「後は……彼女達が始末してくれる」


ルルーシュの言葉に、共に潜入していたカギ爪団の面々は憤慨する。
裏切ったのかと、即座に飛び出てこの男を始末したかった。
しかしそれはもう、叶わない。ルルーシュの言葉通りに彼らは鎮魂歌が終わった時点で詰んでいた。


「……撃て!」


魔物の中から、少女の掛け声。
直後、救助された魔物の一部が同じく救助された魔物の一部を撃ち抜いていく。

「榛名さん!」
「あ、あなたは!?」

そして、魔物の中から現れたのは海兵のような格好の少女。そう……駆逐艦と呼ばれる少女であった。

(理屈はわからないが、要はサーフの持ち出した兵器はあの歌で浄化されたということらしい)

(ならば必然的に、紛れ込んでいたイ級とやらもその影響を受ける。この結果は当然のことだ)

さらに数名の駆逐艦が飛び出し、潜伏していたカギ爪団を蹴散らしていく。
同士討ちを避けるために密かにつけていた識別基準が仇となり、彼らは混乱の最中で全員が抹殺されるのであった。

542続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:34:54 ID:8FR1VR0.0
そして、少しして混乱が落ち着いた頃。


「……お前は、狂信者ではないというのか?」
「ああ、大丈夫だよダオス。ゼロは信用できるから。あたしに耳打ちで作戦全部教えてくれてさ。
こりゃ大変だって報せに来たところでなんか凄い現場に出くわしたわけだけど」

ルルーシュは既にギアスの支配下においたさやかに命じていた。
「絶対に俺が都庁に疑われない言動を心がけろ。それ以外は全てお前の自由だ」と。
ルルーシュとしては狂信者に潜伏していたのも、敵対しているのも、協力者が欲しかったのも、全て事実。
ここまでくれば身の安全のためにギアスも含めて正直に打ち明けてもよかったのだが、
何しろルルーシュも知ってのとおりここの連中は仲間意識が強い。
明確な害を加えたわけではないが、絶対遵守という人の精神を捻じ曲げる真似は反感……下手をすれば殺意を買う。
だからこそそこだけは伏せ、彼女への命令も極力今まで通りに過ごせるものにしておいた。
万が一の時の手段としてやはりギアスは隠しておきたいという思いもあったが。

「……榛名、と言ったな。この男、ゼロの言葉は本当なのか?」
「榛名も堕ちていた頃の記憶は不完全、全てを把握し記憶しているわけではありませんが……彼が一部狂信者から警戒されていたのは確かでしょう」

そしてここに深海……否、艦むすの証言も加わる。
全てが真実ではない。全てが嘘ではない。混ざり合った情報は非常に手強い壁になる。

「……ここに来るために、狂信者を欺くために、結果として多くの魔物を犠牲にしてしまった」

「……本当に、申し訳ない」

ルルーシュはその場で頭を下げる。
これも偽りではない、一部は本当の気持ち。
状況から都庁の犠牲はやむを得ないとは思っていたが、それ以前は元々可能であれば平穏な接触も考えていたのだ。
こうなってしまえば当初の予定通りに切り替えた方が早いし、何より忌々しい狂信者のフリもしなくてよくなる。

「……そこまでして、我らに会いに来た理由とはなんだ?」
「はい。……この殺し合いの真の狙い。主催者が計画したプロジェクト・テラカオスについて」


ルルーシュが重々しく口にした言葉に、同盟軍の誰もが反応を示す。
テラカオス。その言葉を知っている者は一握りしかいない筈なのだ。

「主催者の計画を何故……?」
「偶々、ではあったのですが。粛清されたらしい安倍首相の妻は善人であったらしく……
一縷の望みをかけて、参加者にことの真相を纏めたファイルを送信していたようです。
残念ながら、それが発覚したのか彼女も粛清されてしまったようですが……」

再び、嘘と真実を混じらせる。
大切なところはしっかりと真実を伝え、今は関係ないところは嘘を伝える。
ルルーシュも言葉を選びながら、慎重に信頼を勝ち取っていかねばならない。
最終的な目標、ナナリーの為に。
そしておそらくこの後語られる、サーフの正体を聞く為にも。







しかしルルーシュの計画は、思わぬところで中断を余儀なくされた。

543続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:35:36 ID:8FR1VR0.0
突如、空間に妙な裂け目が生まれる。
直後、その裂け目は大きくなり……中からは謎の存在が現れた。



その手に、何かを持ちながら。


「!!!」


怒涛の勢い。世界樹に予期せぬ来訪者、その3。
ミヤザキの巫女たる榛名。彼女は今や巫女まどかも認める協力者。
偽りの狂信者たるゼロ。彼もさやかの話と今後の話を合わせれば協力者なのかもしれない。
さて、この三人目は?

いや、三人目ではない。


追加の100名もご登場だ。



「おや? これは偶々なのか願いを叶えてくれたのか。いや、スキマ転移が座標指定できないと考えるより最速であの二人と戦えるお膳立てg


ドッ!



早口を言い切る前に、スキマより現れた仮面ライダー……
biim兄貴は密やかに戦ってみたかった相手の一人であるレストの拳で心臓を貫かれて死んでいた。
その死の速さは、まさに彼が好む最速であったかもしれない。
あまりの速さに残る100人もパニックを
起こすが、次の瞬間には彼らも兄貴の後を追う。
躊躇いの無い瞬殺、つまりは一緒にやって来た100人も殺すべき敵。
魔物達は示し合わせるでもなく、次々に群がりあっというまに喰らい尽くす。

「……ゼロ、これもあなたの作戦か?」
「ち、違う! こんな連中、私も見たことが無い!」

感情の無い声と共に手についた血を振り払うレストを見て、すかさずルルーシュは本当のことを口にする。
そしてすぐさま元深海勢の駆逐艦にも(見えないが)視線を送る。
自分達が元の姿に戻れた実感もまだ無いまま、怒涛の展開となる現状に彼女達の理解も追いついてはいないだろう。
しかし駆逐艦、子供故にこの状況下で嘘は口にできない。ただ勢いよく首を縦に振り続ける。


「こいつが持っていたのは、N2爆弾!ほむらが回収したものと全く同じだ!なっ……起爆まで30分を切ってる!?」


奪い取った物を見てレストの顔は青ざめる。
空間転移で進入してきた敵が持っていた代物は、かつて仮面ライダー斬月が持っていた爆弾と同じ型。
鍛えられたダオス達ならば耐えられないこともないが、世界樹は少なからず傷を負う。

「くそ狂信者連中め、最初から私も始末するつもりだったか……!」

ルルーシュも当然N2爆弾に対する知識を持つ。
このタイミングで内部にこんなものを持ち出してくるとなると、恐らくは潜伏させていた狂信者が密かに連絡を入れたのだろう。
保身の為に都庁に鞍替えした瞬間、恐らくは灰色だった自分は黒となり、すぐさま狂信者からの粛清を受けかけた。
こう考えるのが一番辻褄があうと同時に、ある悪寒が彼の全身を支配する。

「ま、まさか……」

そしてそれは、ダオスとまどかも同じく。
爆弾の脅威はあるが、僅かに猶予あり。襲撃者も迅速に葬った。しかしその襲撃者は、いきなり内部に転移してきたのだ。
氷竜が倒れ、彼の分の結界が消滅したことが原因なのか。本当にゼロの始末目的かどうかはわからないが、とにかく侵入を許した。
そして相手が狂信者であるならば、101人で済むわけがない!


「あっ……!?」


まどかは思わず叫ぶ。
今、この上層部には残された世界樹のほぼ全戦力が集結している。
だからこそ敵も処理できたが、もし他の場所に、例えば戦えない子供の魔物やきらり達の避難している場所に向かわれたら?
守りは固めているが、N2爆弾を持ち出されたのだ。絶対は無い。

「ごめんレストさん、お願い!」
「わかった!」

たまらずまどかはレストを護衛につけ、避難場所へと跳べる樹海磁軸を目指す。
かかる時間は僅かに十数秒。万一があってもまだ間に合うはず。



その願いは、直後打ち砕かれる。

544続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:36:12 ID:8FR1VR0.0
「そ……んな……」

がっくりとまどかは膝をつく。
その瞬間、彼女の膝は生暖かくぬめる血の海に沈んだ。

避難所は、地獄そのもの。
無数の魔物の亡骸、一人たりとて生存者がいないとわかる程の蹂躙具合。
むせ返る血の臭いは、さながらカオスロワの縮図のようにすら見えた。
無価値無意味無慈悲に彼らは殺されたのだ。

「……どうして、だよ……っ!!!」

そして亡骸の中にある二人の姿を見つけた瞬間。
まどかもレストも、自分の手を握りしめて、血を流した。
その程度の痛みはなんでもない。魔物達が、この二人が味わった苦痛の恐怖に比べれば。

大きな犠牲を払いながらも聖帝軍と共に助け出せた、間に合った筈の少女は首を刎ねられ。
そんな少女の亡骸を抱きしめながら、守るという誓いを果たせなかった戦士の無念はどれ程だったことだろう。

「……」


魔物達はもはや原型を留めず修復は難しい。
もっと、はやく気がついていれば。後悔の念を抱きながら、損傷が少なかったきらりと魔雲天をレストは修復する。
魔力の無駄遣いと言われようが、彼はこの二人をこのまま放置できなかった。
自分とサクヤのような……それと違い、間に合った筈の二人。
もう直接的な戦力とはなり得ない彼らが、魔物が、どうして犠牲にならなければならないのか。
狂おしい程の、影薄に出会う前の状態かそれ以上の憎悪と敵意の感情がレストの中に渦巻く。


「……っ!?」


だが、彼は直後に冷静さを取り戻す。
血溜まりの中で、必死に生存者を探していたまどかの手がいつの間にか止まっていたのが目に入ったのだ。
そして彼女の全身…いや世界樹全体から自分以上の強い怒りを感じ取ってしまった。

「ま、まどか!?」

「……まだ、いる」

ぽつりと呟かれた言葉。
それは生存者のことではなく、外敵のことであるとすぐに察しがついた。
まどかの背から伸びる魔力の翼は世界樹と繋がり、今の彼女はより深く世界樹の現状を理解し力を振るえる。
かつての魔王マーラ戦でも全方位攻撃を可能とし、そもそも地下に向かう際は敵位置を確認してから向かっている。

侵入者は、知らなかった。いや知ることができなかったというべきか。
温厚なまどかではあるが、怒りが限界を超えた際の攻撃に容赦は無くマーラが消し飛ぶ程であり。
世界樹そのものを用いて攻撃できるということを。
致命的な失策は、100人単位という人数の多さ。
まどか、世界樹からすれば土足でそれだけの人数が踏み荒らせば嫌でもその位置を完全に把握できる。

「……許さないっ!」
「まどか落ちつくんだ!君は手を汚さなくていい!僕が…」

静止を振り切り、世界樹とまどかがシンクロする。
こうなってはもはや誰も止めることはできない。
巫女の鉄槌が、異物に下される。

545続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:36:55 ID:8FR1VR0.0


中層に転移していたメガへクスは、ぞわりと嫌な気配を感じた。
本来感じない筈のもの、これは2度目の経験だ。そしてこれが最後の経験ともなる。

「なっ、なんだ!?」

ヘルヘイムのような…いやそれ上回る異様な速度で周辺の根や枝に葉が荒れ狂う。
たかが植物などではない。明確な殺意と尋常ではない魔力の込められたそれは、無数の刃と槍となり瞬く間に兵士を肉塊に変えていく。
メガへクスも応戦するも、全方位からの殺意には流石に分が悪い。
絡みついた根はそれぞれがあらぬ方向へと動き、彼の身体をバラバラにねじり切り、さらに全身を滅多刺しにした。





「こ、これは……!」

下層に転移していた紫はしかしまだ生きていた。
下層は他の階層と比べて空間が広かったのが幸いし、無数の根が兵士を葬る中で紫は回避が間に合ったのだ。
とはいえ流石の賢者も焦る。
この攻撃は罠の類ではなく、明らかに現在進行形で自分達に向けられている敵からの攻撃。
地下で魔物を葬ってから、まだ数分すら経っていない。それなのにもう自分達の侵入がばれたというのか。
とにかくわかるのは、今やこの世界樹内部全てが攻撃範囲ということのみ。

(これはいけませんわね……一度、退かなければ。スキマでの侵入が可能とわかった以上、この部屋に拘る理由はない……!)

爆発までの猶予は無い。
しかし下層に爆弾を仕掛けることは最早不可能である以上、作戦は変えざるをえないだろう。
根が伸びないであろう上層部に狙いをつけて、紫はスキマでの緊急撤退を行う。






「え?」


紫の…侵入者達の誤算と不運はいくつか存在する。
内部状況の未把握、作戦実行の為に引き連れた300の兵士。
彼女達も奮戦はしてきただろうが、乗り越えた明確な死地は疲弊した安倍首相戦のみ。
対して都庁の軍勢は、拠点から動かない故に次々に難敵に遭遇し、犠牲を払いながらもこれを乗り越えてきた。
ドラゴンハートの恩恵も加わり、殺し合いの中で影薄を筆頭に生き延びた参加者達はみなが精神面を含め大きく成長した。
参加者と主催者。成長という一点においてこればかりはどうしようもない。

最速退場した兄貴の骸が貪られるのを見つけた瞬間、紫は驚くと同時に頭に強烈な痛みを覚える。

「がっ!?」

スキマから出ると同時に、魔王に頭を掴まれたのだとはわかる。
だが何故こうも迅速に敵と見なされた?僅かでも喋ることが許されるなら、話術は自分の得意分野だったというのに。
鷲掴みにされた頭部に魔力が流されているのが嫌でもわかる。洗脳でもするつもりか?
妖怪の賢者もまた妖力でもってこれに抗ってみせるが、思考を掻き乱されるのは避けようがない。
頭の激痛に耐えながら、なんとか現状を把握し打破しようとする頃には、彼女の身体は宙に浮いていた。
紫を鷲掴みにしたまま、ダオスは世界樹の外へと飛び出していたのだ。
一瞬だけ、紫は外にいたセルの姿を目の当たりにする。
なんと恐ろしげな出で立ちか。なんとしてでもこいつだけは滅ぼさねば。

(私をセルの餌にでもするつもり?けれど私ならば、たとえセルの触手を受けたとて耐えきれる筈。
口内に入れられた瞬間、脱出と共にセルの体内にN2爆弾をしかければ……)

そこまで思考を巡らせ、紫の意識は消失する。
魔力と握力で頭に激痛を送られ続けながらにセル打倒の考えを巡らせる紫は、賢者と呼ぶに相応しい力の持ち主だろう。
確かに、アルルーナ等ならば世界樹を傷つける愚か者に相応の報いを…女であれば性的な陵辱を考えたかもしれない。
だが現在彼女の生殺与奪を握るは魔王。彼は敵対者に対して微塵の容赦も見せることはない。
そして何より、榛名とゼロというキーパーソンかもしれぬ者まで現れたのだ。
腹立たしいが…所詮は無数の『狂信者の一将』に過ぎないだろう女に、余計な時間をかけるつもりなどハナから皆無。


「ダオス、コレダーッ!!!」


掴んだ女の頭を地面に叩きつけると同時の爆光。ゼロ距離のそれは賢者を塵も残さず消しとばした。
奥義でもって完膚なきまでに迅速に息の根を止めたダオスはすぐさま引き返す。


紫達の不運は、タイミングが最悪であったことに他ならない。
特務機関ではなく、一山幾らの狂信者と思われては、最初から対話も何もありはしない。
せめて、狸組がもたらした主催陣営名簿に彼女達の情報が載っていれば、或いは?
しかしいくらイフを考えたところで、もう彼女達が動くことはない。




546続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:37:29 ID:8FR1VR0.0
「……っ!!!」

スコープで状況を直前まで確認していた ジャックは歯を噛み締めて声を抑えていた。

紫が殺された。

相手は魔王。そして紫を殺しながらすぐ様に引き返して行くその様。ここから推理できるのは……

(都庁の感知能力が我々の想定を遥かに上回り、彼女の…いや彼女達の潜入が露呈したというのか!?)

早過ぎる。
ジャックとしてもこの認識だが、実際の問題としてこれ以外は考えられないというのが、彼の導き出した結論だった。
紫がスキマによる逃走もできなかったとなると、他の二人の生存も厳しいだろう。
作戦は失敗?いや違う。まだ自分がいる。やり遂げなければならない!

(それこそが、手向けでもある……)

三人は死んだ。冷静にそう判断し、ジャックは最後の準備に入る。
確かに予定は狂ったが、三人はしっかりと都庁の中に置き土産を残している筈だ。
起爆寸前のN2爆弾3個。今から何処かに運ぼうとしても間に合いはしない。
デイバッグの中に入れても、意味はない。
元より自分が要。侵入がばれてしまっては、もう一刻も猶予は無い。
すなわち、今から防御の暇も与えない程の速攻を仕掛けるしか道は残されていない。


「総員退け!これより、最後の攻撃を行う!」



ジャックの勇ましい声に、それぞれの機体の中で兵達は敬礼した後にその場から距離をとる。
打ち倒さねばならない災厄、その力はまさに人智を超えた存在。
世界樹全体ならともかく、災厄を倒すとなると、いくら兵が武装したところでなんの役にも立たない。
ジャックと、この用意に時間のかかる最強のオーバードウェポンしか勝機は無いのだと、理解していた。

兵士の一人は、改めてこの超兵器を目の当たりにして冷や汗を流す。
これを考えた奴は、絶対に頭が狂ってるとしか思えなかった。

その姿ーー潔し!!!

何も知らない者がみれば、馬鹿みたいな大きさの鉄筋コンクリートの柱そのものだ。
対安倍首相に使ったマルチプルパルスもふざけているが、それ以上のインパクト。

「……よし」

ジャックは柱…『マスブレード』を目標に向けてセットする。
一度きり。チャンスは一度きりだ。
ジャックがこの無骨な柱を決戦の武器に選んだのには、いくつか理由がある。
もちろん威力は説明不要なレベルだが、マルチプルパルスには流石に及ばない。
とはいえあれは紫の協力があったからこそできた芸当であり、ジャック一人ではとても全弾命中は難しいのだ。
そしてその他のオーバードウェポンもあるが、威力はマスブレードを下回る。
何より、一撃必殺を狙うならばこれ以上の武器はない。
相手のセルはACではなく超巨大な怪物。何をしてくるかもわからない以上、戦闘は最短最速で済ませなければならない。
相手の防御よりも速く、これであいつを叩き潰す。
ジャックのその意志に呼応するように、爆炎を吹き上げながらチャージは進む。


そして。

547続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:38:15 ID:8FR1VR0.0
「っ!!!」


ガクンとジャックの身体が、いや機体そのものが揺さぶられる。
マスブレードの推進力はもはや、そちらが本体だと言わんばかりの圧倒的なもの。
常識から逸脱した超兵器。故に、常識から逸脱した災厄を討つことも可能となる!



「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」



オーバードウェポンは当然、使用者への反動も尋常ではない。
それでもジャックは吠え、コンマ1秒も逃すまいと災厄へと挑んでいく。
紛れもない決意の顔。背負う者の顔。
バーダックやベイダー卿からひかれるような、ゲイヴンなどという馬鹿げた存在ではない。


(必ず、成し遂げてみせる……!!!)


そう、散った仲間の為。この世界の為。
彼はまさしく勇者であった。





「……幕を引くとしよう。飛んで火にいるなんだったか」
「こそこそ用意してたつもりだろーが、俺の元拠点の様子が変わってりゃ気づくってもんだぜ?」
「にしゃぁ……」



ーー攻撃目標は三人に増えていた。そしてその三人はそれぞれが爆炎の魔力を纏ったかと思えば、それを災厄の口の中に入れて混ぜ込む。
直後に吐き出されたのは、ジャックの視界を埋め尽くす程の煉獄の炎。
魔王の、神の名を冠する樹の、そして魔神の一閃は深夜の関東地方を一瞬で真昼の様に照らし出した。


(アナキーー)


刹那。敗北を悟ったジャックは最後まで未来を危惧したまま、この世から全ての痕跡を残さずに消えてしまう。
超火力兵器諸共に、超々高火力の熱閃は全てを消し飛ばす。
ジャックの敗北を認識するよりもはやく、最終着弾地点の首相官邸跡地にいた兵士も一人残らず消えていく。
ニャル子の生首も、何もかもを飲み込んで。


「狂信者どもの拠点の一つを消せたようだな。だが次の問題は…」


ダオスはこの世から完全抹消された首相官邸跡地を一瞥した後にすぐに引き返す。
彼や神樹、それにセルにとって。今し方熱閃で葬ったのはネームド狂信者の一人程度の認識でしかない。

まさか、この殺し合いに深く関わっていた存在だとは夢にも思わない。
形こそ違うが、共に世界の破滅に抗おうとしていた存在だとは気がつくことはない。

もしかしたら、彼らが対話できる…共に戦う未来もあったのかもしれない。

だが全ては遅すぎた。
最良の未来は崩れ果て、そして無慈悲に時間は進んでいく。

548続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:38:48 ID:8FR1VR0.0


世界樹内は騒然としていた。
目まぐるしい状況の変化もだが、何よりもきらり達の惨殺の事実は大きな衝撃と悲しみを与えた。
涙を隠すこともしないカヲルはせめてレクイエムの一つでも捧げたかったが、それさえ許されない。

まどかの怒りで侵入者は一人残らず世界樹と魔物の養分となった。
しかしその置き土産というか、切り札まではそうはいかない。
起爆寸前のN2爆弾。それが三つも見つかった。
この場に犬牟田かほむらがいれば爆発前の対処もできたかもしれないが、今となってはそれも不可能。

しかし、この未曾有の危機すらも。
この場の者達にとっては、通過点に過ぎない。
狂おしい程の怒りと同時に、それに匹敵する怒りを覚える存在、この殺し合いの黒幕。
その名を聞いてしまったのだから。

「…時間がないね。手荒だけど、こんなものに構っている時間も惜しい。神樹、頼むよ!」
「お、おう。まさかとは思ったが、確かにそれが一番早いかもな!」

レストが両手でN2爆弾を縦に積み重ねて持ち上げる。
様々な能力を持つ彼だが、このように『同一物なら質量を無視して絶対落とさず縦積み9個までなんでもかつげる』という妙なものまである。
そして爆弾を持ち上げた彼を、さらに神樹が持ち上げる。

緊急時の対応は、いかに迅速に行えるかが鍵だ。
そしてこの作戦は本来であればとんでもない外法だが、もはやこの世界の無事な地域が残り少ないことが幸いした。
つまり。


「うらああああああ!」


圧倒的巨大かつ、マッチョになりさらに飛距離を伸ばした神樹がその投擲力でレストを世界樹の遥か上空に発射。
投げられる側に凄まじい衝撃だが、丈夫さは随一かつ担いだものを絶対に落とさないから問題もない。
そして高空より、かつて桃子にも語られた投げレベル9999withドラゴンハートのレストの豪速球が炸裂する。

「…狙い目は北海道と青森の間かな」

もう人の残っていない東北地方目掛けて、躊躇いなく3個のN2爆弾が綺麗にまとめて投げられる。
着弾後、凄まじい爆発が起きるが世界樹からは遠く離れている。これで置き土産も処理できた。


「っ!!」


遠方処理の完了を目視し、魔法で帰還しようとするレスト。
しかしあまりにも高く投げ飛んだ彼は、地上の状況を見て愕然とする。
ああ、やはりこの爆弾『程度』はもはや脅威ではなかったのだと認識する。

海上。バラバラにされているが、巨大な龍の翼骨が見える。あれはまさか邪竜ギムレー?
あれ程の存在が殺された?狂信者にはまだ武器があるのか。影薄達は大丈夫なのか?
千葉方面。かなりの魔力を感じる。まさかイチリュウチームとほむら達にも何かあったのか?
関西方面。毒々しい色の花が咲き乱れている。ウォークライの話にあった、より強力なフロワロか。
そして……沖縄。以前よりも強く感じる混沌の気配。ノーデンスの話にあった黒き獣が、あそこにいる。

(本当に、時間がない……!)

同時期に発生している、無視できない異常事態。
達成感に浸ることも、悲しみに暮れることも許されない。
拳を握りしめたまま、彼は絶望の情報を持って世界樹へと戻ることとなった。

549続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:40:00 ID:8FR1VR0.0


仲間の死を悼むことも許されない中、世界樹内はさらに混沌とした混乱に陥る。
テラカオスを保護していたイチリュウチーム、その大戦力であっただろう邪竜ギムレーのまさかの死亡。
そればかりか、ほむら達が向かった千葉方面に渦巻く大きな魔力。下手をすれば残りのチームメンバーも危ういのかもしれない。
西からはフロワロに黒き獣が迫っている。
これらの問題は、予言の一節たる野球に大きな影響が出てくる。

『黒いフロワロは、俺が生み出せる赤いフロワロとは比較にならん!耐性の無い者が触れたが最後、あっというまに腐り果てるぞ!
幸い俺達は世界樹とドラゴンハート、二重の恩恵で防ぐことができるがイチリュウチームの人間はそうもいかん…!』
「なんとか、侵食をとめられないんですか!?」
「今までの情報を統合すれば、この能力は真竜を捕食した風鳴翼のもの。そして方角を考えると……」
「彼女は黒き獣に敗れ、その力を奪われた。つまり今フロワロを操っているのは黒き獣だろう」
『フロワロを完全に消すには、生み出している真竜の力を葬るしかない。しかし黒き獣を倒せるのは、テラカオスだけ……』

ウォークライが語る黒いフロワロの脅威。
しかもそれは事実上完全な破壊はできないという絶望的な状況だ。
侵食より早く、イチリュウチームを助け出し、ドラゴンハートの力を与えて速やかに野球の試合を完結させなければならない。
すぐにでもイチリュウチームの追加救援に向かいたいが、もう世界樹も戦力はあるが頭数が減り過ぎた。
計画と防衛の両面からダオスとまどかが動けないのが痛すぎる。

「よ、よくわからないけど、それなら私達が!」
「まだ夢を見ているようだよ。でも、今の時代でグンマーの人と手を取るのは、きっと司令官も望んでいることだろう」
「大丈夫。心配しないで頼ってくれていいのよ?」
「たとえどんな危険な任務でも、今度こそやり遂げるのです!」

そんな中で、カヲルの歌で浄化された数名の駆逐艦が名乗りをあげる。
まだまだ子供。そんな見た目でありながら自ら死地に赴こうとする姿は、まさしく一人の戦士であった。

「……かつての我が一族は、このような者達を虐殺したのか。改めて自分達と戦争の愚かさを突きつけられた気分だ」
「……いくら僕らの一族が硬くても、こんな子達を殺し続ければそりゃ精神を病むでしょうね」
「え?」
「……案ずるな。かつてと同じ愚策はとらぬ」
「グンマーの戦術は知っているんだろう?君達には、二人の巫女を守って欲しい。使い捨て同然に前線に出したりなんかしないからね」

奮起する駆逐艦に対し、ダオスはその頭の上にぽんと手を置くと諭すように静止をかける。
レストも屈み目線を合わせ、死地に向かわず防衛の方を手伝って欲しいと呼びかける。
かつての時代において、凄惨極まる戦争を繰り広げたミヤザキの艦むすとグンマーの剣と盾。
それが永き時の果てに争わずに済んだ。
これは機械の身ながらに最期まで共に戦ってくれたフェイの功績も大きいだろう。


「………」


そんな光景を目にした榛名は、その瞳を潤ませていた。
かつての時代、あの子と一緒にこの光景を実現出来ていれば、どれだけよかったか。
悔しくはある。あの悪夢の日、自分以外の姉妹は悪魔化ウイルスを打ち込まれることなく、無残にそのまま殺された。
自分のように、使徒のもたらす奇跡で元に戻れるかもしれないということもない。
あの子とも、姉妹とも、もう2度と笑いあうことはできない。
それでも、今こうしてグンマーの子孫達は過去を乗り越えようとしている。艦むすに、ミヤザキに歩みよってくれている。

「……みんな、ごめんなさい。榛名は不甲斐無い巫女でしたが、どうか今一度一緒に戦ってくれますか?」

榛名の言葉に、駆逐艦達は揃って頷いた。
彼女達も深海棲艦に…強い後悔を遺していた娘達。その想いは榛名と全く同じだ。


「……戦艦榛名以下数名、ただいまより貴方達の指揮下に入ります!」


びっ!と乱れぬ敬礼をして見せる艦むす達。
ミヤザキとグンマー。かつて協力し、やがて対立した彼らは、今再び手を取り合った。
ノーデンスの語った過去を、乗り越えて。

550続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:41:06 ID:8FR1VR0.0


「それでは改めて……よろしいでしょうか?」

突然の襲撃、予期せぬ犠牲者、そして迫る脅威。
未だ悲しみと焦燥の感情冷めやらぬなか、榛名はゆっくりと口を開く。
この殺し合いを開く羽目になった、根本的な原因。首謀者の正体を。

「本来、榛名達がもっと早くに手を取り合えていれば、今のこの惨劇も起こらなかったのかもしれません……」

「ですが、榛名達の時代の頃からでも次の大災害は遥か未来の話。今この時代の大災害は、人為的に招かれたものなのです」
「それは我々も把握している。少数を率い神々を抹殺した、竜殺剣と悪魔の力を持つ者なのだろう?」
「は、はい。驚きました、榛名達がいなくとも既にそこまで…」
「生き延びた上位神が遺した情報だ。しかし、彼女でもその正体までは辿りついていなかったのだ」
「そうでしたか。概ね、その内容で間違いはありません。榛名達や過去の技術を復元させたのは、ミヤザキの末裔なのです……」

榛名の言葉に、何名かがぴくりと反応するが口は挟まない。
諸悪の根源とも言えるミヤザキの末裔。その正体はもうすぐそこなのだから。

「…その末裔、堕ちた榛名達の提督の名はサーフ・シェフィールド。彼こそが、今代の大災害の首謀者です。
その目的はかつての思想を歪めたもの。生まれたテラカオスを横取りし、自分自身がその力を手中におさめるつもりなのです。
彼はビッグサイトに狂信者として潜伏し、ネット上の掲示板を掌握。榛名達を戦力とし、内部情報の収集や外敵の排除を命じました」
「…自らは表に出ず、身を隠し続けるか。現在位置はわかるか?」
「いえ。ビッグサイト内からは動いていない程度しか。逆に、榛名達の現在位置と生死はあちらに筒抜けでしょう。
元々榛名は堕ちている時は867号と呼ばれ、戦況の定期的報告を命じられていましたから」
「ちょ、ちょっと大丈夫ですの?こうしてあなたが元の姿に戻って正体を明かしたなんて知られたら…」
「それは大丈夫です。榛名達は元々、提督への絶対服従をしないからこそ、悪魔化ウイルスなるものであの姿に貶められたのです。
流石にその状態で後から埋め込まれた生死の判別までは誤魔化せませんが、榛名の意思で彼への報告は断固拒否していますので」
「と、盗聴機とかは大丈夫なんですか?」
「はい。榛名も驚きましたが、この姿に戻れるなんてサーフの想像外だったのでしょう。
意志のない絶対に従順な兵器だと思い込み、盗聴や遠隔解体等の機能もつけていません。いくらでも生み出せる動く兵器程度の認識……」

少し悔しげに吐き出された榛名の言葉。
艦むすは確かに兵器かもしれないが、少なくともこうして榛名達は会話ができる。
それをまるっきり戦争の道具としてしかみない、それこそかつての後期ミヤザキの提督のようなサーフという男に誰しも怒りを覚える。
しかし相手はただ冷血なだけではない。神々の油断を狙い、綿密な計画を立ててこの災害を引き起こした切れ者だ。
榛名の言葉通りならば、これから先の動きもある程度予測がつく。

「……敵が報告がないことを怪しむ可能性が高いな。しかし生存はしている、普通に考えれば我らの捕虜になったと考えるだろう。
自爆機能が無いならば、敵の取る策は証拠の隠滅のため、新たな大群を率いてここにやってくる可能性も否定できん」

ダオスの言葉に、一同に緊張が走る。
多大な犠牲者を許してしまった、3度目の狂信者の襲撃。
いよいよ戦力、そして何より止まらぬ犠牲で心身の疲労で限界が近いこの時に更なる襲撃に耐えきれるのだろうか?
いくら榛名達が加わったとはいえ、敵は少数で神々すら殺す男なのだ。
確実に勝てる保証など、ありはしない。




「….ならば、微力ながら私も力を貸そう」



そんな時に声を響かせたのはゼロであった。

551続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:41:57 ID:8FR1VR0.0



「ゼロ、どういう意味だ?」
「元より私の目的は、この殺し合いの目的であるテラカオスのことを貴方達に伝えることだった。
しかしこうして、更なる根底…黒幕とも言えるべき男の正体まで聞かされては、私の情報の価値も下がっただろう。
私が貴方達と敵対する存在ではないという証拠にはなったと思うがそれまで。私がここに留まるのはデメリットしかない」
「?」
「だが、私が今この場を飛び出せば、それは少なからず貴方達の助けになる筈だ。
何しろ私も狂信者から見れば、信者を偽った許されざる裏切り者。殺害優先度は先程の襲撃から見ても上位の筈。
つまり、私と貴方達が二手に分かれることで、連中も戦力を二分する必要が出てくる。
貴方達の防衛力は今更説明はいらないだろうし、私もこう見えて腕は立つ。そこらの狂信者を引きつけ数を減らすくらいはわけはない」

ゼロの言葉には、納得できる部分もあった。確かにゼロが身の危険を冒してまで伝えてくれた情報も、
集まった各対主催チーム、ノーデンスと榛名の話を統合すれば、情報の旨みは少ない。
やはり主催陣営もテラカオスを目的とした一枚岩ではない存在だったことが確定したくらいか。

「仮に私が狙われなかった場合、それはそれで私はより多くのまともな対主催の者達に、より深く正確なこの殺し合いの真実を伝えられる。
貴方達はここから動けない以上、仲間を増やすことはできない。これはこれで、貴方達の手助けができるだろう?」
「……うむ」

ダオスが小さく声を漏らせば、ゼロも一礼し踵を返す。

「…改めて、感謝しよう都庁の者達よ。そして、貴方達の武運を祈る」

脱ぎ捨てたオーバーボディを再び着用し、彼は足早に去っていく。

残された者達は、止まらぬ悲しみの連鎖の中でも立ち止まれない。
幾つもの難題。次に為すべきことは何か?

【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹内部】

【都庁同盟軍】
【ダオス@テイルズオブファンタジア】
【レスト@ルーンファクトリー4】
【ウォークライ@セブンスドラゴン2020】
【音無小鳥@アイドルマスター】
【渚カヲル@新世紀エヴァンゲリオン】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【エリカ@ポケットモンスター】
【歪みし豊穣の神樹@世界樹の迷宮4】
【アルルーナ@新・世界樹の迷宮】
【美樹さやか@魔法少女まどか☆マギカ】
【榛名@艦隊これくしょん】
※まどかの所持品に駆逐艦×4が追加されました
※全員がギムレーの死亡、イチリュウチームの窮地、関西の黒フロワロを把握しました
※ゼロとの邂逅で、プロジェクトテラカオスの存在を知りました。ゼロ=ルルーシュには気がつけていません
※さやかのギアスは残ったままですが、命令により普通にしている限りは気がつかれません


【biim兄貴@現実?】
【メガヘクス@仮面ライダー×仮面ライダー ドライブ&鎧武 MOVIE大戦フルスロットル】
【八雲紫@東方Project】
【ジャック・O@ARMORED CORE LAST RAVEN】
それぞれ死亡確認
※連れていたモブ兵士も全員死亡
※死亡時の攻撃が苛烈だったため、彼らの支給品の回収や再利用は不可能です
※首相官邸跡地は完全消滅しました

552続くナイトメア:2020/03/24(火) 22:42:36 ID:8FR1VR0.0



世界樹の入り口から、一体の魔物が飛び出す。
正しくは魔物に扮した者。その最後の一人たるルルーシュである。

(くそ、くそ、くそぉ……っ!)

彼は湧き上がる殺意と怒り、そして焦りに蓋をするのに必死だった。

(深雪、この愚かな兄を許してくれ……)

ドリスコル達が敗れ、おそらく都庁の全ての戦力があの部屋に集まっていた。
その様子から覚悟は決めていたが、やはり作戦途中で愛する妹は殺されてしまったらしい。
当然最後の妹すら奪われたルルーシュの悲しみは並ではない。下手をすれば、あの部屋で自爆覚悟で暴れていたかもしれない。
それをしなかったのは一重に榛名の情報。
そして、さやかから聞き出した情報があったからに他ならない。


(だが深雪、ナナリー……お前達の為にも、兄はここで倒れるわけにはいかないんだ!)


(まずは、サーフをDMC諸共に殺す!奴さえ死ねば、テラカオスは都庁か協力者が手にする可能性が高い。
そうすれば沖縄の黒き獣も止められ、死者の魂が脅かされることも無くなる!)


ルルーシュの瞳は憎悪に燃えていた。
最初に榛名からその名前を聞いた時点で怒りは頂点に達していたが、その後はさらに臨界突破した。

黒幕、カオスロワちゃんねるの疑惑を最初から理解していたルルーシュにとって、榛名の解説の半分は不要だった。
むしろ気になったのは、ミヤザキの艦むすとグンマーの巫女。この関連性だ。
あの場のやりとりから、都庁の者は全員これを理解していると見て間違いない。
そう判断し、彼らが知らないサーフの話に食いついている隙に、ルルーシュはさやかから情報を聞き出していたのだ。
太古の大災害、それからの戦争、残された救済の予言の内容…
どれも信じられないような内容だが、ルルーシュの脳内からはこれらの詳細などもはやどうでもよくなっていた。



大災害の化身。沖縄の黒き獣は今、死者に狙いを定めて襲っている。



この事実が、ルルーシュに最も強い絶望と焦燥を生み出した。
死者の魂が狙われる。以前見た沖縄の異常気象、あれだけの力を持つ黒き獣に襲われたら。どうなるか。
考えるまでもない。生きている状態ならまだしも無防備な魂など完全に破壊されかねない。
当然、その中にはナナリーも含まれる。

(あれだけの戦力、知力、そして情報。救済の予言は都庁連中に頑張って貰うほかない。俺がいなくとも、彼らは止まることはないだろう。
さやかから情報は手に入ったし、火薬庫の真ん中に留まり続けるのは愚策だからな)

ボロを出す前に危険地帯を抜け出したが、先程の都庁に対する言葉は、ルルーシュとしての本心も含まれていた。
忌々しい狂信者を葬り、ナナリーと暮らす世界の為に奮戦してくれる都庁には感謝しかない。
面倒ごとは任せて問題ない。彼らが動いている限り、狂信者もサーフも一裏切り者にばかりかまけてもいられない筈。
その隙を突き、この溜まりに溜まった憎悪の感情を叩きつけてやる。


(……当然、クラウザーの魂も例外ではない。奴らがこの真実を知れば、テラカオスを生むよりも自爆を選ぶだろう。
そう、それを阻止する意味でも、俺の行動に誤りなどない……!なり振りなど構っていられるか!)


「クラウザーさん……」

「ふん、貴様らでも少しは役に立つか?」


戦意を失って立ち尽くしていた僅かばかりの狂信者をギアスの支配下に置き、都庁を難なく後にするルルーシュ。
理性と憎悪の狭間で揺れ動く彼の今後がどうなるかは、まだわからない。

ルルーシュは生き延びた代わりに己より大切な妹の危機を知る。
都庁は守るべき者を守れず更なる絶望を知る。
主催は後に頼りになる仲間の死を知る。
誰も幸せにはなれない。ナイトメアはまだ続く。




【二日目23時30分/東京都 新宿都庁世界樹外部】

【ルルーシュ・ランペルージ(ゼロ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
【状態】健康、ゼロの服装、妹への欲求(絶極大)、非常に激しい悲しみと怒り、半暴走
【装備】ガウェイン@コードギアス@反逆のルルーシュ、スマホ@スマホ太郎 、魔物のオーバーボディ
【道具】支給品一式 、魔理沙の死体半分、ギアス支配狂信者×15人
【思考】基本:ナナリーを生き返らせる
0:サーフを手段を選ばず殺す
1:ディーが自爆する前に蘇生手段を奪い、自分のものとしてキープする
2:ギアスの使用は慎重にする。
3:身の安全の為、都庁に戻ることは控える

※明恵夫人経由でテラカオスプロジェクトを知りました。
※さやか経由でノーデンスの残した情報等を知りましたが、ナナリーの危機の為完全に記憶できていない可能性もあります
※黒き獣の襲来により蘇生が不可能な現状も知りました
※主催者の襲撃を自分の抹殺に動いた狂信者だと思っています
※黒幕がサーフであることを知りました

553目指せ完結:2020/03/24(火) 22:43:02 ID:8FR1VR0.0
投下終了です

554 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/26(木) 23:16:23 ID:jRE2DRx20
投下します

555未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:17:08 ID:jRE2DRx20
異世界横浜スタジアム。
拳王連合軍 VS 聖帝軍。
現在2対2、四回表、二打席目。

本来ならば拳王軍4番プニキの打順が回ってくる頃ですが、ここは聖帝軍側がタイムを申請しています。

理由はピッチャーであり、聖帝軍守りの要であった高津臣吾が死亡退場したことにより、交代のピッチャーがいないことに起因しています。
拳王軍側はこれを受諾し、10分までなら待つことを約束しました。


 〜 〜 〜

「高津さん……」
「泣くな、犬牟田……」

先ほど拳王の前に沈んだ高津……そして亜久里、千早の遺体が入った死体袋の前で犬牟田は嘆き、他の聖帝軍の者たちも悲しむ。
聖帝軍側ベンチはお通や状態だ。

「残酷なようですが今は勝つための手立てを。
タイムも有限ですし、瑞鶴の話が本当ならば負けた方が異界に取り残されて全滅します。
高津さんたちの犠牲を無駄にしないためにも負けてはならないのです」

一行の中で比較的冷静に見える金色の闇は、悲しみで思考を止めるより、頭を働かせろと言った。
非情なようだが元々暗殺者故、こんな時に思考停止するのはまずいことを理解しているのだ。
無論、仲間の死を悲しんでいないわけではない。

「だけど、高津さんほどのピッチャーがこのチームにはもういない。
他にピッチャーに適正がある人は……」
「それならば私が投げましょう、肉体に関してはモーフィング能力で高津の真似ができる。
技術は試合やこれまでの彼の戦闘を見ています……100%の再現や、彼がまだ見せていない投球技術に関してはどうにもなりませんが……」
「次点で南斗で鍛えてきた俺ぐらいだが、テクニック再現はともかくピッチャー向けの肉体に構成し直すなんて技は持ってない。
最善策で言えば闇だけが適任だろう」
『ちょっと待て、闇が抜けた二塁の穴はどうすんの?』
「おまえがやるんだデストワイルダー。レフトの方は機動力があるガンダムに任せる」

ピッチャーは体の形を自由に変えられる闇が最も適任とされた。
しかし肉体はともかく、高津に比べれば格段にピッチャーとしての能力は劣る。
これは闇本人や他の聖帝軍の面子さえもわかっていた。

「しかし、よりによって次の打席はアイツかよ」

ばつの悪い表情でレイジが拳王軍側のベンチを見るとタイム明けをハチミツを貪りながら待っていたプニキがいた。
バッティング技術に限定すれば拳王軍最高レベル、下手すればカオスロワ野球界において最強のバッターだ。

「あいつらの方もけっこう死人が出てるハズなのに悲しむ素振りすら見せず呑気に飯なんか食ってやがる……味方を味方とすら思わない態度……絶対に許せねえ」
「気持ちはわかるけど、こらえて紘汰」

殺しあう敵とはいえ狂信者と同レベルか、最悪それ未満の死んだ味方の扱いに紘汰は怒りを覚え、チルノは彼を宥める。
ちなみに拳王軍側は既にマウンドに出ているプニキを除くと、一部がベンチの奥へと身を隠し、残りが余裕すらあるかのような表情でこちらのベンチを見ている。
実際問題、聖帝軍は既に稼働できる選手が7人しかいないのに対し、拳王軍はまだ10人も残っており、まったく消耗していない選手もいる。
同点でも主力ピッチャー不在の聖帝軍相手では余裕すら感じてくるのだろう。
今思えば、タイムに10分もの時間を許したのも優勢故の余裕だったのかもしれない。

「あのホームランぐまか…策を練らないとまずいか」
「向こうが10分も与えてくれたんです、そんなに長くタイムを取らせたことを後悔させてやりましょう」



一方その頃、拳王軍側ベンチ。

556未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:17:46 ID:jRE2DRx20

「あいつらモンキーのように今のところ、しどろもどろしてるだろうぜ」
「ヤクルトの高津さんともっと野球がしたかったのは俺的に残念だが、良い気味だ。アルトリ…ヒロインXや平等院を殺した罰を受けやがれ」

ベンチから反対の聖帝軍に向けて嘲笑うかのようにクロえもんとディオが中指を立てたが直に怒る翔鶴と上条によって止められた。

「やめなさい、敵とはいえ向こうもヒトなんです。無暗に相手を挑発することは許しません」
「そうだぞ、俺たちまでゲスな真似をするつもりはない」
「しかしジョジョに翔鶴! 奴らは世界を滅ぼすヘルヘイムの味方だぞ」
「へ、マナー講習のつもりかよ。
どうせ試合を始めた以上は皆殺しにする奴らなんだから礼儀もクソもねえ。
野球のルールだけ守ってりゃいいんだろ」

ディオはやや不服、クロえもんは超不服な様子で止めに来た2人に意見する。
翔鶴はさらに言い返そうとするが……

『いや、ディおじさんたちが正しいよ』
「彩……ロックマンさん!?」

翔鶴の持つPET……光彩斗もといロックマンが仄暗くドスの効いた口調で会話に割り込んだのだ。

『敵に敬意を払って丸く済むなら殺し合いなんて起きない。やるだけ無駄さ』
「でも、しかし!」
『そもそもヘルヘイムや聖帝軍は多くの人を殺した……彼らは殺してきた罪のない人に謝罪なんてしたのか?
少なくともカオスロワちゃんねるで彼らが謝罪する書き込みなんて一度も見たことがないよ』
「それは……」
『わかったかな翔鶴、悪党に情けも敬意もいらないんだ』

普段は優しいロックマンの言葉に翔鶴は驚く。
彼の妹として止めるべき発言だが、『義理の妹』がそれを阻害した。

「ここはロックマンの言う通りよ翔鶴姉」
『インドラ』
「瑞鶴?!」
「どのみち殺すのならばマナーだなんだ言っても意味がないじゃない。
下手なモラル自体が敵に付け入れられる隙を与えてしまうわ。
そんなことより敵をいかに倒すかを考えた方が先決よ」
「しかし……」
「翔鶴姉が気に入れないなら兵法の一つとして割り切ってみたらどうかしら?
敵を挑発してミスを誘発する……的なね」

瑞鶴は拳王軍は知る由もないが、彼女はサーフに復元されてから暗殺者として生きてきた身。
殺すべき者たちへの敬意など無意味だと知っていた。
(若干不本意ながらも)ロックマンの意見に賛同する。

『勝つための兵法……納得だね!』
「ええ、そうですねロックマンさん(アンタのために言ったわけじゃないけど)」
「2人がそう言うのなら……」
「だろ! 相手は所詮敵なんだ、遠慮も容赦もいらねえ」

翔鶴もロックマン・瑞鶴両方からの意見に流された。
賛同を受けたクロえもんは敵である聖帝軍へのヘイトを続けた。

一方、その様子に眉を潜めるのは翔鶴・ロックマン以外のネットバトラーとネットナビの二組。
他の者には聞こえぬように小声で会話をする。

『ロックマンの奴、さらに苛烈な性格になった気がする。
戦闘のストレスもあるんだろうが、それ以上にダークチップの影響だろうか』
『お館様、警戒をしてほしい。なるべくダークチップを使わせないように気を遣うんだ』
「ああ」
「……クロえもんに同調してた俺が言うのもなんだが、色々すまん」

ロックマンに現れた攻撃性はダークチップを使ったものによる影響と上条とディオたちは断定。
同じ仲間として注意の目を光らせることに。


「……ふん」
「イチローさんイチローさんイチローさん」

そんなやり取りをハクメンは横目で見つつ、ムネリンは相変わらずイチローラブで試合の行方以外は興味なしであった。

557未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:18:41 ID:jRE2DRx20


一方、ラオウとMEIKOは――ベンチ裏のロッカールームにて仲間の死体を弔っていた。
横倒しにしたロッカーを棺桶の代わりとし平等院とヒロインX(彼女は性質上、死体が残らない仕様だが)を眠らせている。
そしてラオウはその前に座り、黙祷を捧げるように静かに胡坐をかいて座り込んでいる。

聖帝軍は拳王軍は仲間の死を悲しんでないと思い込んでいるが、そんなことはない。
MEIKOの指示により、敵に弱い面を見せないためにわざと表向きは悲しみを見せないようにしているのだ。
ラオウにしてみればムギちゃんの次くらい長い付き合いだった平等院の死は大きなものであった。

「ダーリン……」

悲しみを察しているMEIKOはラオウの背中を恋人のようにそっと抱いた。

「……ムギちゃんや平等院のためにも我々が負けるわけには行かん。
必ずや聖帝軍を討ち倒し、皆殺しにするぞ」
「ええ、あなたが望むのなら」


 〜 〜 〜

そして、試合は再開された。
聖帝軍はピッチャーを金色の闇に変更し、レフトはセンターにいるガンダム一機に任せる形で空白となる。


「行きます」

ピッチャーとなった金色の闇は第一級を投げる。
だがそれはただの高津を真似ただけの投球ではない。
ファーストの鎧武、サードのチルノからさらに支援を受けていた。

「これが打てるか!」
「高津が生きていたら気に入らなかっただろうけど」
「こちらは素人ですからね」

野球ボールに紛れて放たれたクナイと氷柱の弾幕が、プニキを襲う。
ダメ押しに野球ボールの周りは氷でコーティングされており、打とうとした滑る仕様だ。
常人ならば……否、そこらの野球選手では到底打つこともできない弾幕である。

「どこまでもどこまでも甘いな」

だがプニキは攻撃に臆することなく、ニヤリと笑うと。
目にもとまらぬ速さのバッティングにより自分に向かってきた弾幕をすべて打ち返した。
さらに氷で滑るハズのボールもプニキの技量の前では意味もなく、難なく弾幕ごと打ち返すのだった。

「なに!?」
「うわああああ!」

打ち返された弾幕はベンチにいる犬牟田以外の聖帝軍に襲い掛かった。
氷柱やクナイが選手たちに刺さり負傷するも、手練れ揃いである聖帝軍の者を殺すには威力が足りなかった。

……ただ一人、身体的に恵まれておらず、装甲に守られてもいない、一般人であるイオリ・セイを除いては。
スタジアム右側で無惨な屍となったイオリが横たわっていた。

「イオリ!」

親友の死にレイジは言葉を上げるが、その直後にコクピットで警報がなる。
プニキの打った野球ボールはイオリが消えたライト側を狙っていたのだ。
コースはもちろんホームラン。

「させるかあ!!」

友の死を嘆いている暇もなく、レイジはガンダムのバーニアを吹かしてボールを阻もうとする。
そして、ボールはガンダムの装甲部分に当たるが、これは拳王軍にとっても聖帝軍にとっても、レイジにとってもプニキにとっても既視感のある光景だった。

「馬鹿め。ライトにいるガキでは俺の打球を取れないのは想定済み。
おまえがカバーに入るのは予測がついていた!」
「なッ、またさっきの曲芸を!」

ボールはガンダムの装甲の凹凸を何度から跳ねたとあと、観客席の方へ向かう。
もはや魔法じみたプニキのバッティング技術に聖帝軍は戦慄を覚える。
そしてガンダムに後ろへ飛んで行ったボールを追いかける余力はなく、他の選手も打ち返された弾幕による負傷で追いかける余裕はない。
拳王軍の三点目獲得、ホームラン記録の更新。
プニキはさらにニヤリと嗤った。


「一度、言ってみたかったんだよね……狙い撃つぜ!!」
「!!?」

プニキが勝利を確信した瞬間、観客席側から放たれた一条のビームが野球ボールに命中し、威力が死んだボールが落ちた。
ボールが落ちた場所は観客席ではなく、スタジアムの内側だ。ホームランにはならない。

プニキがホームランを逃したことは衝撃であるが、それ以上に驚かせたのはプニキのホームランを止めた存在であった。

「おい、なんでアイツがあそこにいるんだ!? あのガキはあそこでくたばってるハズだろ!」

ホームランを背後にある巨大なビームライフルで止めたのは――イオリ・セイ。
弾幕で死んだはずの少年が、観客席の方にいた。

558未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:19:10 ID:jRE2DRx20

「ふふッ……トリックさ、ライトにいる死体をよく見てみろ」
「あれは……マネキン人形!?」

からくりを解説すると、イオリは最初からライトには立っていなかった。
一流のガンプラビルダーであるイオリはガンプラ技術を応用してドームに放置されていたマネキンを自分そっくりの顔を人形に貼り付け、機械に強い犬牟田が簡単に動く程度の仕組みをもった機械をつけることで偽装をした。
よく見ればすぐ気づく代物だが、一般人であるイオリの存在を過小評価……特にプニキは気が付かなかった。

次にビームライフルだが、これはスタービルドストライクから外したものを観客席に放置。
レイジ的には野球の試合では腕が塞がって邪魔なうえ、置く場所が他になかったから置いていただけだが、閃いたセイはこれをホームランボールを迎撃するための対空砲にこっそり改造。
犬牟田のコンピュータによる予測ではプニキが何の特殊能力も持たないライト側を狙うのは予測済み。
そこでビームライフルの存在を悟られないように弾幕を張り、もし打たれても可能な限り速度を減らし、イオリの動体視力でも狙えるレベルまで遅くなった球をビームライフルで撃つ作戦だったのだ。

「最初の弾幕は俺に打たせないためじゃなくて、俺に大砲の存在を気づかせないための……罠!?」
「イオリは確かに俺たちに比べれば格段にひ弱だが、その才能を生かすガンプラ愛と発想力があった。
自分の能力に驕り、イオリをただの能無しと高を括った時点でおまえの負けだよ」
「俺が…ロビカスでもないただのガキに負けただと……」

サウザーの言葉を受けつつ、プニキはホームベースの上で立ち尽くす。
それだけに炉端の石にも等しい子供にホームランを阻止されたのがショックだったのだ。

「何をやってるんだプニキ! とっとと走れ!」
「ええ?」
「タッチされるまではまだアウトじゃないだろ!」
「あ、そうだ!」

ホームランこそ逃したが、聖帝軍がキャッチする前に地面にはついているのでヒットではある。
敵に捕まる前に塁を踏めば、アウトにはならないのだ。

「こうなりゃ塁を踏んでどうにか汚名挽回を……!」

そして(焦りのせいで名誉挽回を言い間違えるミスをしつつ)、プニキは一塁へ走る。
が。

『プニキさん足遅ッ!』
『ああー……ありゃバッティングばかり鍛えて他のトレーニングをまったくやってなかった口だな』
『あんなにハチミツばかり食べてたら太りもする……ブッタファック』

ネットナビたちがツッコミを入れたくなるほど、プニキの足は赤子のダッシュレベルで遅かった。
おそらく走力はカオスロワ球界でも最低レベルであろう。

「一塁が遠い、もっとハチミツを……!」

走って疲れたのかプニキは試合中にも拘わらず腰に抱えていたハチミツで栄養補給をする。
だが、彼がハチミツを口にすることはなかった。
白い悪魔がやってきたからだ。

「え……?」

プニキの行く道を遮るように巨大なガンダムが立ちふさがる。
そのマニュピレーターには野球ボールが握られ光輝いていた。

「うわああああ! お助け――」
『ビルドナックルッ!!』
「うおるとッ!?」

スタービルドストライク最高の武器であるビルドナックルが容赦なくプニキに向けて振り下ろされた。
ズドンという音と重みもと共にプニキは即死し、ガンダムの拳が地面から離れた後にはアウトという結果と潰れて焦げた熊肉のハチミツ漬けだけが残った。


【プニキ@くまのプ○さんのホームランダービー 死亡】

559未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:19:47 ID:jRE2DRx20


「プニキ……!」
「正直、あんま好きな奴じゃなかったが……これはまずいね」

性格はともかく最高のバッターであったプニキの死は拳王軍のベンチを騒然とさせる。
聖帝軍が守りの要を失ったのならば、拳王軍は攻撃のエースを失ったのだ。

「やったなイオリ!」
「いや、僕だけじゃない、レイジやみんなの援護がなければこんなに上手くいかなかったさ。
……さて、ダミー人形はバレたし同じ方法はもう通用しないね」
「スタービルドに乗ってくれ、久しぶりに相乗りだ」
「うん」

観客席にいたイオリはライトのポジションには戻らずレイジが操縦するガンダムに乗り込んだ。
レフトだけでなくライトが空白になってしまうがイオリの脆弱さやガンダムの機動性を考えれば、レフトやライトをガンダム一機に任せた方が安全だろう。
また、一つのポジションに二人いることも、カオスロワ式野球ではなんらルール違反ではない(超人血盟軍の前例もあるしね)。

こうしてワンアウトとなった拳王軍の次の打席にはMEIKOが立った。
聖帝軍は先にプニキに行った弾幕攻撃は行わなかった。
打ち返された時のダメージがデカすぎると学んだからだ。
ただし、味方の支援がまったくなくなったわけではない。

「高津の投球なんてとっくに見切……クソ、氷で滑って飛距離が伸びない!」
「取ったぜ! これでツーアウトだ!」

チルノによる氷のコーティング自体は続行。
MEIKOは二回の空振りの上で三度にヒットをたたき出したが、当たった瞬間氷で滑ったため、飛距離と制球性を維持できずに一塁側に飛んでいき、紘太にキャッチされてしまう。
あっさりと取られたため呆気なく感じるが、これはMEIKOが弱いのではなく、それだけプニキのバッティングセンスが異常だったのだ。



だが、真の恐怖はここからである。

「任せたぞハクメン」
「……応」

亡き平等院に代わって6番センターに選ばれたのはハクメンである。
白い侍の姿に闇ははっと気づく。

(まさか……私たちの恩人であるフェイ・イェンを殺したという『お面野郎』……!?)

闇は直感と、相手が放つ隠し切れない強者のオーラでハクメンの正体を看破。
レストの話では刀を持っていたことと仮面ぐらいしか特徴がわからなかったが、レストと一対一で交戦して互角に戦える実力者の数は限られている。
となると移動した距離や時間を考えるとレストが戦った男としか思えないのだ。

「我は空、我は鋼、我は刃
我は一振りの剣にて全ての「罪」を刈り取り「悪」を滅する!!
我が名は「ハクメン」、推して参る! 」

ベンチにいる時は隠していたオーラが発揮される。
呑気な性格のサウザーもハクメンの実力に気づいたのか、口には出さぬものの玉のような汗を出す。
(こいつはプニキやラオウ以上にヤバいかもしれない)と。
サウザーと闇はアイコンタクトで合図を送り、さらに闇は左右や前方を見渡すふりをして仲間たちに目線の暗号を送った。
(こいつはまずい相手だから特に警戒しろと)

「投げる前に一つ、聞きます。
スカイツリーの辺りでネギ色の髪をしたロボットを斬りませんでしたか?」
「葱…? ああ、あの時のか」

闇は単刀直入にハクメンに問いかけると、やはりフェイ・イェンと縁がある存在であった。

「それからどうしたんですか?」
「世界を蝕む『凶』を狩るためには邪魔だから切り捨てたまでのことよ。
『凶』を守る者は例えどんな理由があれ悪鬼同然、消えてもらう他ない……必要な犠牲だ」
「マガトだかなんだか知らんが、必要な犠牲だと、貴様ァッ!」

フェイ・イェンは聖帝軍にとって恩人である。
そんな彼女を無惨に殺した怨敵が目の前にいたことに、サウザーや聖帝軍の選手は怒る。
まさかの遭遇に加えて拳王軍の手先だったという事実が怒りをさらに燃え上がらせた。

「もういいです……拳王軍はやはり芯の中まで腐っていた。
その真実があればあなたたちを気兼ねなく殲滅できますから」
「フンッ、なんとでも言うがいい。
『凶』に甘えなど不要、隙を見せれば何もかも滅ぼされるだけだ」


拳王軍は必ずここで全滅させる、その決意を新たに聖帝軍は制圧前進を開始する。

560未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:20:13 ID:jRE2DRx20

「ッ!!」

そして闇は投げ、チルノは投球に再び氷によるコーティングを施す。
その投球は高津が今まで投げた中でも最高クラスの速さである。

「ズェアッ!!!」

だが、その投球は本気なら惑星破壊も可能なハクメンの前では非力。
当て身の要領で弾き、そして打球は刹那の瞬間に紘太(鎧武・極アームズ)の肩当てに命中した。
その速さと威力は高津の脳を炸裂させたラオウの時の倍以上の威力を誇る。

「うわああああ!」
「紘太!」

幸い、吹き飛んだのは肩当て部分だけだが、かすっただけで立つことも維持できなくなるダメージが紘太を襲い、地面に倒させた。
なお、ハクメン自身が野球に関して素人だったので弾は鎧武に当たった直後にゴロとなってヒットどまりだが、これがホームランコースだったらプニキ以上に危険なバッターとなるだろう。

「させるかよ!」
「遅い! ズェアッ!」
「早いッ!サウザーの3倍以上はある!」

動けなくなった紘太の代わりにボールを取りに行くビルドストライク、そして三塁のチルノはバルカンと弾幕で一塁への進軍を阻もうとする。
だがそれらは全て切り払われ足止めにさえならなかった。
速度に関しても時を斬って移動できるハクメンは残像が置き去りになるレベルで、誰も捕らえられず、しかもほぼ無消費。
もはやBLACK RXですら軽くあしらえる論外レベルの強さ、それがハクメンであった。

(おまえたち自身に『凶』はない。
だが、世界の秩序のためには必要な浄化の邪魔をするなら話は別だ。
障害となるなら撫で斬りにさせてもらう!)

そのような想いを抱きつつ、時を斬りながら進むハクメンは最初のターゲットに見定める。
一塁を守る仮面ライダーは被弾で倒れており、首を落とすにはまたとないチャンスだ。
次に塁を進みながら二塁の虎、三塁の大精霊、最後に聖帝の首を順に落とすことで、聖帝軍の戦力を壊滅させる。
そうなれば六回裏終了を待つまでもなく試合は終了し、凶狩りとヘルヘイム討伐及び死者スレの黒幕を撃破に時間を割くことができる。

止まった時の中で刀を構えて突進しようとするハクメン。
その速度は最大速度であり、これで突進すれば確実に鎧武が細切れの肉塊と化す














――そのハズだった。

ツルッ

「ピャッ!?」

561未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:20:46 ID:jRE2DRx20


ハクメンが容赦ない奥義が発動しようとしたその瞬間、ハクメンの足が滑り転倒、そのままツルツルと、しかし猛スピードで正面方向に体が滑って行った。

(いきなり足場の摩擦が消え……いったい何が!?)

0.1秒足らずの高速思考の中でハクメンは自分が転んだ原因を探る。

(これは……氷!?
目に見えないほど薄い氷の床が一塁までの道に敷き詰められている!?)

その正体はチルノが秘密裏に仕掛けた氷の床。
氷精としてパワーアップの限りを尽くしたチルノが力の限り設置したトラップだ。
いかなハクメンとて、移動は足を使う以上、勢いがついたまま走れば確実に転倒するレベルだ。
ならばジャンプすれば良いだろという話になると思いきや――

(あの弾幕射撃は私を足止めするためではなく、罠と魔力の動き悟らせないための囮!
弾幕の際に発声した土煙が罠の隠れ蓑にしたか)

ハクメンにしてみればチルノやガンダムはおろか、聖帝軍など蟻を踏み潰すより簡単にできる存在だ。
せいぜい機動力でレストさえ上回っているサウザーなら多少手こずるだろうか、という相手だったハズだ。
しかし、それは直接的に対決すればの話。
個々の技能とそれを掛け合わせるチームワークさえあれば、彼を罠にハメることは可能だった。

(だが、浅い! もう一度時を斬って……――)

それでもハクメンはあきらめず地面に刀を突きたててブレーキをかけて再起を図る。
だが時を斬る能力が終了した直後、それができなくなる事態に陥った。
再び時を止めようとした瞬間、ハクメンの関節という関節が一瞬で氷に阻まれて、一切の身動きが取れなくなった。

「氷が!」
「アタイの罠に引っかかった以上は、逃さないよ!」

こうなれば、「時を斬る」動作は不可能。
それでもハクメンが魔力を解放すれば体に張り付いた氷も足場の氷も一瞬で解けるだろう。

「うおッ、あぶねえ!」
「この私が……」

だが、この瞬間の場合、ハクメンが力を解放するよりも氷に摩擦を殺されてスリップしたままスタジアムの壁面に激突する方が早かった。
それだけハクメンは、自分でも制御できるなくなるほど早く動きすぎたのだ。
あまりの運動エネルギーはハクメン自体をも傷つけ倒れさせた。
ちなみにスリップした結果、紘太さんがいる一塁はギリギリで躱した。

「トドメだ、本日二回目のビルドナックル!!!」
「ぐふうッ!!」

更にレイジは野球ボールを持ったビルドナックルを動けなくなったハクメンに叩き込む。
いつものハクメンならば避けたり防ぐことなど造作もなかったが、今は倒れた状態で態勢が悪く刀も衝突した際に手放していた。
お見舞いされたビルドナックルは直撃し、拳王軍にスリーアウトをたたきつけた。

「やったね、レイジ」
「いや、頑丈な鎧だぜ、仕留めきれなかった」

ハクメンは直撃をもらいはしたが、生きていた。

「気絶……してるの?」
「もう一つおまけにビルドナックルを叩き込もうと思ったが、やめにした。
こいつはとっくにタッチされてアウトだし、もう一回やったら反則になるだろう」

ハクメンは鎧に僅かな罅が入る程度しか目に見える負傷はなかったが、伸びているか倒れたまま動かなかった。
ハクメンはこの後、他の拳王軍の仲間に担がれ――六番センターのポジションを控えの選手であるメーガナーダに交代したため、今試合では退場扱いとなった。

562未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:21:18 ID:jRE2DRx20

 〜 〜 〜

次回、四回裏。

               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番レフト
MEIKO           5番ピッチャー
メーガナーダ       6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
上条(+シャドーマン)  8番セカンド
ディオ(+デューオ)   9番ライト




『聖帝軍 布陣』

-             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
イオリ・セイ       5番センター
デストワイルダー     6番セカンド
-             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

 〜 〜 〜

「まさかプニキを失い、期待していたハクメンがああもあっさりやられるなんて」
「MEIちゃん、気を落とすな。
だが認めよう、聖帝軍は今まで戦った中で最強の野球チームであると!」

先ほどはラオウのホームランと高津の抹殺で歓声に沸いていた拳王軍だが、今度は打って変わって拳王軍の方がお通やムードであった。
そんな中でコソコソと光兄妹は内緒話をしていた。

『翔鶴聞いてほしい……もしもいよいよって時は僕にダークチップを使って欲しい』
「彩斗兄さん……あれは……」
『わかってるさ、でもあのチップは戦局をひっくり返す力を秘めている。
僕らが負けて拳王軍が負けてしまえば元も子もない。
……これ以上、仲間の死を見たくないんだ』
「…………」

ロックマンの悲壮な覚悟に翔鶴は何も言い返せなかった。
ロックマン自身もこれまで以上の窮地を肌で感じ取っており、全滅するぐらいなら悪の心を得た方がマシではないかとさえ考えだしていた。

『(最悪、僕が完全に悪の心に染まったら、ジョジョやディおじさんたちがデリートしてくれるさ)』

それは己の破滅を計算に入れてでも妹や仲間を守らねばならないという、覚悟であった。

563未来への制圧前進:2020/03/26(木) 23:21:44 ID:jRE2DRx20



一方、気絶したハクメンは瑞鶴とメーガナーダによってベンチの裏で介抱されていた。
だが、瑞鶴とメーガナーダは黒幕の手先、その黒幕が喉から手が出るほど欲しいテラカオスを殺す力を持ったハクメンに何もしないわけがなかった。

(本当なら殺しておくべきだけど、この後の都庁の連中やイチリュウチームとの試合を考えたら、まだ生かした方が得策ね)

ハクメンを殺せるまたとないチャンスであったが、拳王連合軍自体も度重なる戦いで戦力が激減している。
今回の試合でこそ遅れを取ったとはいえ、単純な戦力でみれば今殺してしまうと拳王軍まで壊滅する恐れがある。
拳王軍自体は壊滅しても良いが、愛する姉翔鶴まで死んでしまうのはいただけない。
自分と翔鶴が生き延びるのに必要な肉壁なのだ。

(でも、何もしないのも後々まずい……だから)

瑞鶴は治療するフリをして、超小型の爆弾……今まで暗殺のために使ってきたスマホで起動するリモート爆弾を罅の隙間か鎧の内側に入れていき、包帯で固く覆った。

(これでよしと、いざテラカオスや提督さんを殺そうとしたらいつでも起爆できるわ。
流石のハクメンも中身までは鎧ほどの防御力はないだろうし、この爆弾で殺せなくとも手傷は確実に受けるでしょうね)

ハクメンは完全に気を失っており、巧妙に鎧の内側に埋め込まれた異物にはそう簡単に気づくまい。
気づかれて摘出されても気絶に追い込んだ聖帝軍のせいにするだけである。

入り口はメーガナーダに見張っており、ラオウたちに気づかれた様子はない。
瑞鶴の治療に見せかけた工作は完了である。

「ありがとうメーガナーダ、こっちの『仕事』は終わったわよ」
「インドラ〜もぐもぐ」
「あれ…? あなた何食べてるの?」
「インドラ♪(熊肉のハチミツ漬け)」

うっかり仲間の死体を食べてしまったメーガナーダくんは、ペットの躾がなってないと拳王軍に怒られた瑞鶴ごと仲間たちの前で土下座することになった。



【二日目・23時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと1時間で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
(支給品選手枠)
デストワイルダー@仮面ライダー龍騎

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【シャドーマン@ロックマンエグゼ】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

564 ◆lgy5dogjeQ:2020/03/26(木) 23:22:19 ID:jRE2DRx20
投下終了です

565 ◆gmrRot5lNM:2020/04/01(水) 08:53:05 ID:4yb.AVWk0
小町、あかり、セルベリア、ディーで予約します

566 ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:18:44 ID:eTGa3rlc0
予約分を投下します

567死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:19:48 ID:eTGa3rlc0
いつぞやの新宿都庁地下で繰り広げられた赤い影と青い閃光のぶつかり合い。
それが今度はビッグサイトの屋上で再び繰り広げられていた。

「セルベリアァ!!」
「小町ィッ!!」

赤い機械刀サイファーと青い竜殺剣ドリスが激しくぶつかり合う。
一太刀、二太刀、三太刀。互いが攻め手は防ぎあう。

最高位の完璧超人さえ一撃死させた切れ味のサイファーと、それを傷一つなく耐えきるドリス。
その硬さからセルベリアの持つ大剣が間違いなくオリハルコン製であることは間違いないと小町は戦いながら見抜く。

(邪竜をあっさりと倒したところからしても本物の竜殺剣みたいだ……
この世界の摂理を守っていた真神を殺した竜殺剣の形状がどんなものかまでは知らないが、そんなに沢山あったら都庁のドラゴンはとっくの昔に絶滅している。
都庁にあるものはレストが造り上げたものだし、この世界に大災害を招き入れた悪魔が使った剣である可能性が濃厚だろう)

小町は思考を巡らせる。

(だとしたらセルベリアが世界を滅ぼした悪魔なのか?
さっきまでは人間だった覚えがあるが、悪魔の力を隠してただけ?
剣を仮に拾っただけならどこで手に入れて竜殺しの力を知った?)

だが、彼女が考える間もなくセルベリアは矢継ぎ早に攻撃を繰り返してくる。
思考のリソースを考察につぎ込む時間がない。

(とっちめて、聞き出すしかないか…!)

とにかく、勝たねば……そう思って小町は剣を振り、牽制の銭を投げる。

「喰らえ!」
「喰らうか! 『距離を操る程度の――」

セルベリアが剣と槍の二刀流による全力全開の突進を放つ。
小町は以前戦った時と同じように距離を操る程度の能力もとい間合いを支配する能力で、突進を防いでから隙ができたところにサイファーの一撃を加えようとした。

「ッ!」

しかし、小町は直感でこれが能力で防げないと思い、剣による防御も選択。
避けている余裕はなかった。
実際、突進撃の前になぜか能力が発動せず、小町に突進が命中。
サイファーで直撃こそ躱したものの、突進力自体がかなりの衝撃であり、腕の筋肉に多大なダメージ、さらに床に転がり追加ダメージ。

「ゲホッ、どうして能力が」
「追撃する」

血反吐を吐きつつ、今まで自分を強力に守っていた能力が発動しなかった理由を疑問に持つが、セルベリアは屋上の床に転がり込んだ小町に容赦ない追撃を加えようとする。

「させない!」

そこで主人公――隠れて攻撃の機会を伺っていたあかりは遠距離からエンシェントソードの雷による援護を行い、小町への追撃を防ごうとする。

「そこか!」
「居場所がバレてる、わああああ!」

あかりが攻撃してくるより早く、槍から出る光線が放たれ、あかりの頭部に命中し、その体はビッグサイトの屋上から落ちようとしていた。

「あかりぃぃぃ!!」

小町は急いで落下しそうになったあかりの下へ能力を使った瞬間移動を用い、助け出した。
飛行を行いながら小町は彼女の無事を確かめる。

「あかり!大丈夫かい?」
「か、かすっただけ、ヘルメットがなかったら即死だった」

ビッグサイトから落ちたのは焦げて穴が開いたデモニカのバケツヘルメットのみ。
あかりは寸前で躱したこととヘルメットがダメージを吸収したことで死を免れていた。

「墜ちろ!」

安堵も束の間、セルベリアは飛び続けている小町たちに向けて槍ビームを発射して機動を制限したのち、さらに自分も小町に向けて飛び立ち、剣と槍による叩きつけ攻撃を行う。

「クソッ、防げないなら避け――られない!? がはあ!!」
「いたあああああああああい!!」

あかりを抱えながら小町は回避行動に移る。
攻撃を能力で弾くのは不可能だとわかっていたために、今度は能力で攻撃の範囲内から出ようとした。
だが、できなかった。
まるで何かの力に引っ張られるように回避ができなかった。
小町は咄嗟にサイファーによる防御を行うが、サイファー自体はともかく、伝わった強い打撃の振動は小町をビッグサイトの屋上に墜落させて叩きつけるには十分だった。
そこへ槍ビームが飛んできたが小町もあかりもすぐに態勢を立て直して追撃を躱す。

568死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:20:23 ID:eTGa3rlc0

「畜生、防げない攻撃と避けられない攻撃をしてきやがる!」
「あかりの存在も見抜いてるみたい! 普段なら嬉しいけど今は嬉しくない!」

小町の距離を操る程度の能力を無効化し、影薄の位置さえ把握している感知能力。
単純に能力が上がっただけでは説明がつかない、セルベリアの謎多き強さに二人は焦燥する。
その様子を見てセルベリアはほくそ笑む。

(ああ、おまえたちを倒せるように、スキルやポテンシャルを死に物狂いで手に入れたからな。
悪魔化で手に入れた『貫通』、必中攻撃を可能にする『後の先』、そして度重なる改造手術で手に入れた『心眼』。
これらを手にしてる以上、今までの戦術が通用すると思うな)

ギムレー戦にも使用した耐性を無視する『貫通』。
いくら小町の能力でも攻撃の反射に応用することはできないので、間合いに入れば確実に発動し、能力による回避を無効化する。
『貫通』一つでは回避に能力を使われると意味がないので、格闘攻撃ならば絶対必中を可能にするバトルポテンシャル『後の先』の出番となる。
ちなみにポテンシャルが彼女が本来持っている『ヴァルキュリア』『リーダーシップ』『実験体』『戦車嫌い』の他に一つしかつけられないので、ギムレー戦で使った『貫通攻撃』との併用は不能。
ただし、小町の能力ベクトルはギムレーの逆で回避力が高く防御力は並であるため、防御力を無視するポテンシャルをつける意味はなく、確実に当たる攻撃の方が難敵であった。
『心眼』は敵の不意打ちを無効化する悪魔の力で、影薄に敵意があるなら場所を見抜き、アドバンテージを無効化する能力である。
セルベリアはこれらの能力を利用して、小町たちに対して有利に戦いを進めていた。


『セルベリア・ブレス殿!』
「マクギリス……血のスカーレット小隊か!」
『救援が遅れてすまない、このアグニカ・カイエルの遺産であるバエルを手に入れるために時間がかかった』

そこに割り込むように上空からガンダム・バエルを筆頭にしたMSの小隊がビッグサイトに向かってくる。
このスカーレット小隊とやらは今まで東京の外側にいた狂信者の一団であるが、ビッグサイトの一大事(ギムレーのこと)を聞いて遅刻ながらも駆けつけたのだ。

『侵入者に見せてやろう……このクラウザーさんの守護者になりうるMS、バエルの力を……!』

MSの数は12機、いずれもストライクフリーダムとかダブルオーガンダムとか高性能機ばかりである。

「こんなところで死んでたまるかよォ!! 死歌『八重霧の渡し』」

万事休すと思われたその時、小町は咆哮と共にサイファーに霊圧を込めると、一枚のスペルカードを出したのちに、剣を振るう。
するとプラズマと霊圧を合わせた紫のエネルギー刃がセルベリアと後ろから迫ってくるMS軍団に向けて無数に放たれた。

「避けきれん……ぐゥ!!」

その刃の弾幕……否暴風雨は強化されたセルベリアをもってしても避けきれるものではなく、仕方なくドリスを盾にした防御に切り替える。
しかし直撃はせずとも漏れたプラズマや霊圧がセルベリアを炙って軽くないダメージを与え、衣服も粉々にした。

そして、セルベリアよりも小回りが利かず、ドリスよりも硬くはないスカーレット小隊の方々は。

「バエルッ!?」

切り裂かれて爆散して全機、花火になった。
ナノラミネートアーマー? PS装甲? 流石に霊的属性を持った攻撃は防げません。
幸いなのは施設まで爆風が届かなかったことである。


「血のスカーレット小隊、全☆滅!」
「30秒経たずにか!?」

上の二台詞はその様子を見ていたビッグサイトの外側にいたモブ狂信者の言葉である。


【マクギリス・ファリド@機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ 死亡】

569死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:21:28 ID:eTGa3rlc0



「く……小町たちは!?」

セルベリアは衣服ボロボロだが、経験と肉体改造の成果によるものか彼女自身は軽傷。ドリスは無傷である。
刃の嵐が過ぎ去った後、彼女がドリスの影から顔を出すと、小町たちが屋上から姿を消していることに気づく。
セルベリアはすぐさま、ビッグサイトに備え付けられた通信機を使ってディーに通信を飛ばす。

「ディー、侵入者が現れた。侵入したのは乳神、例のステルス集団も一緒だ」
『屋上にもか?』
「屋上『にも』?」
『君が乳神が戦っている間にネオ・ジオングアーマーが保管されている格納庫にもステルス集団が現れ、切歌たちが交戦している』
「奴らの狙いはネオ・ジオングアーマーか? ということは小町は囮?」
『もしくはそれを含めたすべて……我々にとっても欠かせぬものが含まれるかもしれんな……』
「……黄泉レ〇プマシン!」

おそらく小町たちはクラウザーさんの蘇生手段を破壊しにきた。
更に都庁への報復手段を絶つためにネオ・ジオングアーマーの破壊にも来たのだろう。
マシンは当然のことながら超兵器だけでもやられれば、狂信者の敗北は確定である。

『クッ、ビッグサイト内部の監視カメラが現在進行形でやられている、格納庫の戦況も気になるが乳神がマシンを破壊する可能性がある。
 申し訳ないがセルベリア、位置を教えるから君が今すぐ彼女をSATUGAIしてくれないか?』
「ああ、そのつもりだ……」
『では、君のためにモブ狂信者の救援を送ろう』
「やめておけ、奴らの実力は切歌クラスのネームド狂信者でないと太刀打ちできない、犠牲が増えるだけだ。
 私なら無駄な損害も出さずに奴を殺せる! 他の狂信者にはビッグサイトの封鎖を徹底させて小町の討伐は私にやらせてくれ!」
『ならば私がそちらの援護に』
「ビッグサイトの狭い通路じゃウィツァルネミテアにもなれないだろ!
仮に貴様が捕まってしまったら装置を停止させられる……そうなれば一貫の終わりだ」
『しかし……』
「いいか、小町のレ〇プは私一人でやる!貴様は指令室を引きこもって身を守るんだ」

セルベリアがディーの救援を渋ったのは、小町を一人で討ちたいから……という私闘のためではない。
ディーが例の裏切り者……カオスロワちゃんねる管理人である可能性が濃厚だからだ。
疑心により背後から撃たれる不安があるためである。

『……君がそういうのならやり遂げたまえ、監視カメラが壊された順番からして北側にいるようだ』
「了解だ」

セルベリアは小町が隠れているらしい北側に向けて全速で駆けていった。




一方その頃、小町はあかりを抱えつつ、監視カメラを銭投げで壊しながらビッグサイトの中を飛んでいた。
ビッグサイトの中に入っていったのは態勢を立て直すためだ。

「考えたね、小町ちゃん。
 ビッグサイトの中ならマシンもあるし、大火力の攻撃は狂信者もできなくなる!」
「いや……条件はこっちも一緒だ。
 さっきやった八重霧の渡しを無暗に使ったら壁を貫通してマシンに直撃、そんで関東がお陀仏になるかもしれねえ。
 どこか、大技を使っても大丈夫そうな場所はないか?」

セルベリアや狂信者は間違いなく追ってくるため、どこかで最適な迎撃ポイントを探さねばならない。
監視カメラ破壊は居場所がバレてしまうが、小町はそれも計算済みであり、自分たちがどんな罠を張るかにさえ気づかなければ十分である。
むしろビッグサイトに潜り込んだことをアピールしないとセルベリアが格納庫の側に向かって日之影たちが危険に晒されてしまう。
格納庫へ向かって日之影たちを合流したところで無数の狂信者に一点集中攻撃を受けてマシン停止&超兵器破壊どころではなくなってしまう。

「それにしても、セルベリアが竜殺剣を持っていたとは……」

小町が気になるのはやはりヴァルキュリアが竜殺剣を手に入れていた事実。
邪竜をもいとも簡単に倒していたため、戦法さえどうにかすれば神々を殺すことも可能だろう。
ただ悪魔だと仮定した場合、最前線に出て身を危険に晒し、そもそも参加者として殺し合いに参加する必要性には疑問が残るが……
少なくとも悪魔本人でなくとも、関連性があるのは確かだろう。
捕まえて聞き出す必要もあるし、件の悪魔だったら殺すことになるかもしれない。

「まさか奴が世界を滅茶苦茶にした悪魔、もしくは手先なのか?」
「……あかりはそうは思わないな」
「なに? どうしてそう思うのさ?」

あかりの言葉に小町は首を傾げる。


「だってさ、あそこまで必死にクラウザーさんに尽くしている狂信者なのに、クラウザーさんも危険に晒す大災害や殺し合いを起こすと思う?」

570死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:22:08 ID:eTGa3rlc0


あかりの理論はクラウザーの信者ならば、彼の安全を第一に考えるから世界を滅茶苦茶にしないというものだ。

「だったら、狂信者というのがそもそもの演技だとしたら?」
「それもありうるかもしれないけど、狂うほど大好きだったのに、演技なんてできるものなの?
 少なくともセルベリアの『大好き』は『本当』にあかりには見えたの」

あかりは小町よりは一歩退いた場所からセルベリアとの戦いを見ていたため、小町よりも冷静に彼女のクラウザーへの熱愛ぶりが見えたのだ。

「狂信者はモモちゃんやまどかちゃんと違って許されないことをいくつもしてるし、狂信者になる前からしょうもない悪党だった人もいるかもしれない。
 でもね、クラウザーさんへの愛だけは共通してると思うの。
 自分が死んじゃっても良いから、大好きなあの人を助けたい……あの愛は本物だと思う」
「確かに……」

狂信者とは散々戦ってきた影薄組だからこそ、クラウザー愛に狂った集団であるのには納得がいく。
セルベリアもその中の一人だ。

「……ひょっとして悪魔が生きて裏から殺し合いを操ってるとしたら、狂信者こそ利用されているのかも。
 セルベリアはそいつから剣を渡されて、いざという時の囮に使われているのかも。
「替え玉……なるほど、そういう可能性もあるっちゃあるわけか」

黒幕の悪魔が生きていて、セルベリアの狂信を利用して悪魔に改造し、竜殺剣を渡すことでスケープゴートに仕立て上げられた可能性もある。
いざ狂信者が潰れても、セルベリアを黒幕と誤解して討った対主催が偽りの勝利に浸っている間にトンズラかまされる危険もあるわけだ。

「だがあくまで推論だ。
 竜殺剣の出どころを聞くにしろ、マシンを止めるにしろ、大前提として捕まえなきゃいけない」
「それもそうだね」
「今のセルベリアは地下で戦った時よりも格段に強い。
 ドラゴンハートで強化されベジータを倒して大幅にレベルアップしたアタイと同じかそれ以上に。
 むしろ首輪も外れてヴァルキュリア化に制限がなくなった分や距離を操る程度の能力が効かない分、アタイの方がたぶん不利だろう」
「何か逆転の秘策はないかな……どんな手を使ってでも彼女を止めないと」

見ていない内に相当な強敵となったセルベリアを倒すのは至難。
しかも捕まえなくてはならないということは殺すよりもずっと難しい。
手立てを探して小町とあかりは探索する。

「ねえ! あれ使えるんじゃない?」
「おお、あれならセルベリアを捕まえられるかもしれん。
 ついでにセルベリアが本当に狂信者か悪魔かを確かめられるな」

少し遠くからセルベリアの気配も感じ、時間もあまり残されていない中。
二人はとある一室を発見すると、ニヤリと悪そうに笑った後に入っていった。



数分後、セルベリアも痕跡を追う形でその部屋に入ろうとする。
部屋の中は電気を消しているためか薄暗く、小さく狭い。
戦略的には大きな価値はない資材置場だったハズだ。
それを思い出した直後、部屋を覗き込んだセルベリアに向けて紫のエネルギー刃が放たれる。

「――八重霧の渡し、とやらか!」

しかし、セルベリアはこれを冷静にドリスで防御する。
攻撃が止んだ後に槍ビームで応戦を考えたが、小町の後ろ側にはマシンがある配置であり、万が一ビームの威力が壁を何枚も貫通しようなら大爆発である。
一方、マシンの特性を相手が知ったか知らずかわからないが、小町の方は方角的に飛び道具を使い放題である。
一見小町の方が有利に見えるが、そうではない。

(ここに逃げ込むとは……墓穴を掘ったな、小野塚小町!)

資材置場は一方通行になっているほど狭く、小町の機動力を生かせない。
入り口はセルベリアが塞いでいるので、能力を使った脱出も不能。
トドメに影薄であるあかりの存在も心眼で見えているため、小町の後ろで奇襲の機会を伺っているのがバレバレである。

「クソッ、来るな来るな!」
「もうだめだぁ、おしまいだぁ」
「私のレ〇プを受けろ小野塚小町」

小町はやけくそ気味にエネルギー刃を飛ばすが、ドリスの防御力の前では効果は薄い。
ならば飛び道具が使えないセルベリアが取る戦法は一つ、ドリスを盾にヴァルキュリアの槍によるランスチャージで小町を討つ!
単純だが、「貫通」「後の先」の力で間合いに入りさえすれば逃げられない小町を確実に死に至らしめられるだろう。
狭い部屋に逃げ込んだのはまたとないチャンスなのだ。

571死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:22:51 ID:eTGa3rlc0

そしてセルベリアはヴァルキュリアの力を最大限に引き出す。
ヴァルキュリア人のみが出せるラグナイトの青白い輝きが、電灯を落とした暗い部屋を明るく染めた。
そして全力のランスチャージを放つ。

「きゃん!」
「小町ちゃ……」

エネルギー刃はドリスに全て塞がれ、セルベリアは小町に肉薄。
小町は剣で槍を防ぐが、衝撃に腕が耐えきれず剣を取り落としてしまう。
背後であかりの動きが見えたが、心眼で見えているセルベリアには脅威ではない。
次に小町ごとドリスによる一撃で諸共ミンチにするつもりだったのだから。
能力で剣を拾うのも間に合わないだろう。

「これで終わりだ!」
「いや、まだだよ、撃てあかり!」
「うん!」

セルベリアがドリスを片手で振りかぶった瞬間、あかりは突如自分の髪についている左側のお団子ヘアー素手ではがしたと思いきや、投擲した。

「お団子ミサイル!!」

なんとあかりのお団子ヘアーは爆弾(ドラゴンハートの影響…か?)になっていたではないか。
だがセルベリアならばその程度の攻撃は避けられる……ハズだった。

セルベリアは回避行動を取らなかった。
いや、正確には取る必要がなかった。

なぜなら、お団子ミサイルが発射されたのはセルベリアにではなく、彼女の上、天井にあるダクト部分。
そこには小町が持ってるハズの光剣サイファーが隠されていた。

(なに!? なぜあの赤い剣があそこに!? ハッ)

今しがた小町から弾いた剣をよく見ると、床に転がってるのはサイファーではなく、あかりが持っていたエンシェントソード。
そして天井に隠されていたサイファーは小町の距離を操る程度の能力で数瞬後にセルベリアを斬るだろう。
セルベリアの回避は間に合わない。
ここは一方通行になるほど資材が敷き詰められた狭い部屋。
小町と同じようにセルベリアが避けるにはスペースが不十分なのだ。

(やられた……!
 あの恐ろしい切れ味の赤い剣を小町が持ったままと思い込み、剣を落とさせただけで油断した。
 部屋を暗くしたのも影が薄い奴の武器と持ち替えたのを悟らせないためか!)
(あんたの目は影が薄い存在は見抜けるようだが、意志も何も持ってない罠や道具には効かない。
 そして防御は竜殺剣に頼ってるところからして、攻撃に関してはアタイの距離を操る程度の能力を無効化できても、防御に関してはできないようだな!)
(あかりのことを見てくれているのは超嬉しいけど、見えてるからこそ利用させてもらったよ!)

読みあい合戦の結果、小町はサイファーでセルベリアを斬ることが可能になった。
しかし、それはあくまで攻撃の話。
セルベリアには勝利のために自分の命すら捨てる覚悟があった。

(もう躱すのは間に合わないか。
 だったら、相討ちになっても構わない!
 自分の命と引き換えに小町に引導を渡す!!)

セルベリアが身を守る術を捨てれば小町たちを殺す可能性がまだ残されていた。
そして、ヴァルキュリアは渾身の一撃を叩き込もうとし。

「なに!? ぐはあああ!!!」




結果としてドリスは小町たちの頭ではなく、資材置場の床に落ちた。
セルベリアの右腕にはサイファーが刺さり、さらに蹴りでヴァルキュリアの槍も落とさせた。
小町は距離を操る程度の能力でサイファーをすぐに引き抜くと自分の手元に戻し、更に床に落ちたドリスや槍を没収し、サイファーと共にそれをセルベリアの喉元に近づける。
背後にはあかりが拾ったエンシェントソードで狙っており、ここでセルベリアが何か抵抗すれば二人により袋叩きにされるだろう。

「アタイの勝ちだな」
「勝ちだと……よくもまあ、そんな卑怯な真似を使って言えるものだな!!」

勝ち誇り笑顔のである小町に丸腰になったセルベリアは怒号を浴びせる。
それもそのはずだ。
小町たちの直接的な勝利に繋がったのはサイファーを隠した隠蔽作戦によるものではない。



小町は豊満な胸の谷間に、一枚のCD……DMCのファーストアルバムを挟んでいた。

572死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:25:53 ID:eTGa3rlc0



「それは、デトロイト・メタル・シティ トリビュートアルバム〜生贄メタルMIX〜!
 クラウザーさんの名曲を詰め込んだ聖典を信望者である私が斬れるわけないだろう!!」
「CD如きにそんなに怒らんでも……」
「CD如き! それは魂がつぎ込まれたクラウザーさんのアルバムだ!
 盾にされたら攻撃などできん!」

小町とあかりはビッグサイトを逃げ回る中で、資材置場と同時にこのCDを発見。
本物の狂信者じゃなきゃ攻撃できないんじゃないか?と思って小町のデカすぎる胸に挟み込んでみたのだ。
半ば期待していなかったが、ラグナイトの光で見えてしまったセルベリアはこれに気づき、踏み絵を前にした某宗教徒と同じでドリスを振り下ろせなかったのだ。
爆乳脇見せおばさんにとっては屈辱極まりない敗北である。

「クッ、殺せ。どうせなら煮るなり焼くなりレイプするなり好きにしろ。
 だが貴様らの思い通りにはならんぞ!」
「あたいとしてもそうしたいところだがね、……ええと強姦以外は。
 あんたら狂信者はあまりにも人を殺しすぎた。
 大好きな奴が死んだだの、殺し合いの恐怖に負けただのは言い訳にもなりゃしない。
 少なくとも誰かの大切な人を一人でも殺した奴は全員地獄に墜ちりゃいいんだ」
「……ッ!」

けらけら笑っていた小町だが、今度はベジータを殺した時に見せた冷徹な表情に変わる。
まとう冷たく黒いオーラはまさに死神のソレであり、一瞬仲間のあかりでさえ圧倒された。

「狂信者は全員地獄に墜ちるべきか……否定はしない。
 だが地獄に落ちてもまだ、クラウザーさんが生き返るなら満足だろう」
「なに?」
「私や他の多くの狂信者が、大災害発生時かそれより前に生きる希望を失っていたものだ。
 貴様らは殺し合いが終わったら帰れる故郷や温かく迎える家族がいるだろうが狂信者にはそれがない。
 切歌は家族は失い、天子は帰るべき天界を失い、狭間はイジメに苦しんでいた。
 かくいう私も大災害で故郷も滅び、敬愛する方も行方不明。
 日本がどうなろうが殺しあいがどうなろうが関係ない抜け殻だ……死んでも生きてても待ってるのは虚無だけ。
 そこを救ってくれたのがクラウザーさんの歌だったのだ。
 ところが、今度は殺し合いの中でクラウザーさんが奪われた
 また絶望を味わった多くのファンが彼を生き返らせるための狂信者と化した」

セルベリアの言葉に、あかりは怒りで眉をひそめながら言葉を浴びせる。
このままセルベリアを刺し殺さんと思わせるかのような怒気をはらんで。

「自分たちが可哀想だから、周囲の連中を巻き込むの?
 クラウザーさんを希望を満たすためだけの道具にしてるじゃない!
 そんな自分勝手が到底許されるわけがないでしょ!!」
「そんなのはわかってるんだ、クラウザーさんの名誉に我々が泥を塗ってることも!
 だが狂信者は皆、心が弱く、彼の歌がないと生きていけないんだ。
 彼を彼の歌を真に愛してるからこそどうしても生き返したいのだ。
 世間に蔑まれても、クラウザーさんに死ねを言われても構わない。
 我々の生き甲斐にして死ぬ意義を作ってくれるクラウザーさん蘇生だけは阻止させない!」

セルベリアはやがて泣きはらしながらも、信念を曲げなかった。
これに対して小町やあかりも少し落ち着いた様子で彼女に言葉をかける。

「……もはやヤンデレの域だね」
「大した信望ぶりだが、その狂信を誰かさんに利用されてるかもしれないのによ」

573死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:26:28 ID:eTGa3rlc0


「なに? 利用だと?」
「ん?」
「貴様らも何か知ってるのか?
 殺し合いの目的、カオスロワちゃんねるの裏や、救済の予言、テラカオスについて」
「「!!?」」

セルベリアの言葉に、小町とあかりは眼を見合わせる。

「小町ちゃん、このセルベリアさんは筋金入りの狂信者……つまりシロ。
 世界を滅茶苦茶にした悪魔でも、その手先でもないと思うよ」
「てめーにゃ色々聞きたいことがあんだけどさ、まずはこの竜殺剣の出どころを教えな」
「おまえたちも私や切歌のように、殺し合いの裏を調査してたのか!?」
「ああ、ひょっとしたら手前に剣を渡した奴を狂信者をぶっ潰す前に斬っておかないといけないかもしれねえ」

まさか三人の女たちは敵同士でありながら、独自に殺し合いを調査していたことを知らなかった。
セルベリアは少し考えた後に提案をする。

「情報交換に応じるが、いくつかの条件がある。
 一つ、武器を返せ。
 二つ、黒幕を殺すまでは休戦協定だ。
    終わるまでお互いを攻撃しないし、クラウザーさんの蘇生手段だけは手を出すな。
 三つ、黒幕を殺したら休戦協定は解除。再び敵同士だ。
    小町! あのずるくて勝ち方だけは絶対認めん、私との決闘をやり直せ!」
「なんか、随分おまえさんに有利な条件じゃないか?」
「飲まないなら別にいいぞ。私も情報を吐かず、狂信者仲間も呼び寄せる。
 私も死ぬかもしれんが、おまえたちも黒幕を取り逃がして酷い目にあうだろうな」

小町はしばし考えた後、あかりに視線を向ける。
あかりも敵であり、潰す予定だった狂信者と手を組みことには悩んだが、最終的には小町の判断を信じるとうなづいた。

「わかった要求を飲もう。もっと取り返しのつかない何かが起こる前の、必要な情報交換と一時休戦だ」






しばらく時間が経ち、23時過ぎ。
ディーは指令室の椅子に座りながら格納庫とセルベリアの戦況が気になっていた。
両方とも監視カメラが細工等で破壊されているため、どうなっているかがわからないのだ。
わかるのは黄泉レ〇プマシンが無事であることだけである。

「セルベリアはああ言っていたが、やはり私も前線に出るべきだろうか……」

ビッグサイトの廊下は無理だが、格納庫の方はウィツァアルネミネア化しても暴れられるスペースがある。
超兵器のアーマーを今、失うのはまずい。
かといってセルベリアがやられればマシンを守る存在が誰もいなくなる。
そうなれば詰みだ。

「アーマーかセルベリア、どちらかがやられれば、いよいよ自決でも考えるか」

上層部が全滅すればマシンは自動的に自爆して、関東を焼き払う爆弾と化す。
最後に残った上層部の人間が死ねば、ほぼ全ての参加者を巻き込んで日本を粛正の炎に巻き込める。
ディーにとってはクラウザーさんが生き返らないことは、世界を滅ぼした方が良いと同義であった。
そう考えていた時に備え付けの通信機ごしにセルベリアからの通信が入った。

『ディー、なんとか小町を仕留めたぞ』
「それは本当か、セルベリア!」
『ああ、真っ二つにSATUGAIした』

画面には赤毛の少女らしい死体の顔が見えた。
本当に真っ二つにされたようで断面はぐちゃぐちゃであり、生気を失った瞳には絶望の色が覗く。

574死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:27:18 ID:eTGa3rlc0

「セルベリア、君自身は大丈夫か?」
『腕に怪我はしたが、軽傷だ。
 このまま格納庫で切歌たちの援護に向かう』
「わかった、私はこのまま侵入者を逃がさぬようビッグサイトの封鎖を続ける。
 必要なら増援もありったけ送る、今後の戦いに欠かせないアーマーとサーフ博士たちを守ってくれ」
『お心遣いは嬉しいが私一人で十分だ』
「そうか、だが無理はしてくれるなよ」

セルベリアの勝利報告に安堵した様子でディーは通信を切った。


なお、通信を行った廊下では。

「よし、これで当座は稼げるだろう」
「魔理沙……悪いね、成仏しなよ」

通信で見せた死体は小町のものではなく、ディパックに眠っていた魔理沙の死体だ。
彼女の亡骸を資材置場の塗料で赤く塗って誤魔化したのだ。
放送が流れれば小町の生存が気づかれてしまうも、一時間程度稼げれば、黒幕討伐の時間には十分であろう。


「しっかし、天魔王軍の件で臭いとは思ってたけど本当にカオスロワちゃんねるが黒幕が殺し合いを操っていたツールになってたなんて」
「必要以上に悪者扱いされてた魔物や聖帝軍のみんなも、黒幕の情報に踊らされてたんだね!」

小町たちは都庁を出発した時間の都合上、カオスロワちゃんねるが危険であることまでは知らなかった。
元々信頼できる情報が少ないと思っていた程度には認識していたが、セルベリアの口から本当に危険な掲示板であったことに驚く。
そして一方のセルベリアも世界に大災害を招いた悪魔が竜殺剣を持っていたなど知らない情報もあったため、黒幕の正体にたどり着くことができた。

「黒幕の名前はサーフ・シェフィールドって奴か」
「なんか聞き覚えがある……モモちゃんも使ってる雀力を発見した科学者だったかな?」
「サーフは私に悪魔の力を植え付け、世界に一つだけだったハズの竜殺剣を渡した。
 サイドバッシャーが言っていたニルヴァーナ出身の科学者であることも合致する。
 おまけにオシリスの肉体から艦むすを作ってもいた……クロ確定だ、少なくとも黒幕の手先程度は確実にある」

討つべき敵を見定めた、三人はサーフがいる格納庫へと足を進める。

「ところでセルベリア。ディーって奴や、他の狂信者には通信でこのことを伝えないのかい?」
「いや、狂信者の中にサーフと結託した仲間が隠れている可能性もある。
 狂信者でも信頼できるのは切歌とレジーナぐらいだ、今はおまえたちの仲間と交戦していて通信どころではあるまい」

サーフの正体はわかったが、サボテンみたいな悪魔と謎の少女の行方は不明。
他にも仲間がいる危険をセルベリアは考慮し、今は仲間内にも秘匿するのだ。

575死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:27:55 ID:eTGa3rlc0

「幸い、格納庫には奴の研究室もある。そこから仲間を炙り出せる手がかりがあるかもしれない。
 上手くいけばサーフの悪行を狂信者や世間に知らしめて奴を追い詰めることもできる」
「一つ質問だが、あたいらはあんたらが邪竜を殺した兵器を破壊しようとしてんだが……もし格納庫につく前に壊されても文句を言うなよ?」
「あれを改造したのもサーフだ、奴に有利に働くように兵器自体が細工されてるかもしれん。
 だったら壊してくれても良い……まあ、壊せればだがな」
「言っとくけど黒子もモモも日之影もめっちゃ強いぞ。舐めてもらっちゃ困るね」
「忘れない内に私からも言っておくが、私たちは本来敵同士……下賤な黒幕を殺したら次は貴様たちと殺し合いだ」
「ま、まあまあ、今はまだダメだよ」

あくまで黒幕を殺すまでの同盟。
それが終われば敵同士として再び殺しあわなければならない。
互いにサイファーとドリスを向けあう程度には、まだお互いを許してはいないし、許す気もないのだ。
緩衝材としてあかりがいないと、再び二人は戦いを始めるだろう。


「というかさっさと乳からクラウザーさんのアルバムを出せ、不届き者!」
「ええ? だっていちおう休戦協定だし、おまえさんには武器を返したんだから保険としてこれくらい良いだろ?
 きゃんッ、こら! 勝手に揉むんじゃない!」

小町は未だに生贄メタルMIXのCDを谷間に挟んだままだった。

「私も一度やりたかったが、畏れ多くてできなかったんだぞ!」
「……泣いて言うほどかい」
「このおばさん、けっこう天然な人なんじゃ……」


そんなこんなで、一時的にだが対主催と狂信者の、有り得ないハズの同盟が生まれた。



【二日目・23時15分/東京都 ビッグサイト内部】

【セルベリア・ブレス@戦場のヴァルキュリア】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、右腕負傷、人修羅化、首輪解除
【装備】マロガレ@真・女神転生Ⅲ、竜殺剣ドリス@セブンスドラゴン
【道具】支給品一式、四条化した魔理沙の死体1/2(髪を赤く塗った)
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、自爆はしたくない
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いて粛正する
  そのため一時的に影薄組と同盟を組む
1:自爆による心中は反対、最後まで諦めたくない  
2:最悪の場合はディー達を……?
  もしディーがサーフの仲間なら躊躇なく殺す
3:ゼロという男に対しての疑念
4:黒幕を討伐したら休戦を解除し、小町たちと戦う
※マガタマを取り込むことで人修羅化し、物理攻撃を無効化する敵にも物理攻撃でダメージを与える貫通のスキルを得ました。さらにポテンシャル『貫通攻撃』と重ねて防御力そのものも無効化できます
※スキル『心眼』も装備、不意打ちやステルス攻撃が効きません
※竜殺剣を所持している限りは竜や龍に対して特攻ダメージを与えられます
※自爆による無理心中の件には納得がいっていない様子です
※小町たちとの情報共有により、殺し合いの目的や救済の予言の意味、黒幕の正体全てを知りました


【小野塚小町@東方Project】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】サイファー@ストライダー飛竜、乳の谷間に生贄メタルMIX
【道具】基本支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いて裁く
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させる
  が、今はセルベリアとの休戦協定により後回し
2:何か必要があるまではCOMPの中に待機する
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:もう二度と仲間を置いて行こうとしない
5:時が来たらヘルヘイム扱いされた都庁の長ダオスを倒す演技をして世間の混乱を収める
※予言やテラカオスの真実、カオスロワちゃんねると黒幕の正体を知りました
※小鳥発案の偶像計画のため、表向きは都庁の敵のフリをしています

576死神とワルキューレ ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:28:27 ID:eTGa3rlc0


【赤座あかり@ゆるゆり】
【状態】ダメージ(中)、疲労(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
    頭のお団子左側消失
【装備】エンシェントソード@Minecraft、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ヘルメット消失)
【道具】マムルの肉@風来のシレン
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する!
0:格納庫へ向かいサーフの悪事を暴いてやっつける!
1:ビックサイトに潜入し、クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者に殺し合いをやめさせたいけど
  今はセルベリアと休戦だから後回し
2:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
3:都庁のみんな、あかりたちが戻ってくるまで無事でいてね……
4:世界の危機を前に主人公かどうかは関係ない! 世界のために頑張ってる人全員が主人公!
5:日之影さんたち大丈夫かな…?
※予言やテラカオスの真実、カオスロワちゃんねると黒幕の正体を知りました
※ドラゴンハートの影響(?)でお団子ミサイルが使用可能になりましたが、残弾はあと一発だけです



【ディー@うたわれるもの】
【状態】魂のダメージ(中/回復不可)、首輪解除
【装備】刀
【道具】支給品一式、クラウザーさんクローン×300、ネオ・ジオングスーツ
【思考】
基本:クラウザーさんの復活、もしくは世界をSATUGAI(無理心中)する
0:セルベリアや切歌を信じ、指令室に残る
1:黄泉レ○プシステムをさらに盤石にするため、引き続きマグネタイトは回収する
2:ネオ・ジオングスーツが完成次第、サイコシェードで会場から非信者を一掃する
3:蘇生が不可能だと判断した場合は黄泉レ○プシステムを暴走させて世界を粛清する
4:自分が死んだ場合はセルベリアにまとめ役を引き継がせる
5:ドリスコルたちが死に都庁攻略が失敗した情報が来たが、セルベリアたちの士気をくじかないために今は秘密
※首輪解除によりウィツァルネミテアの力をある程度解放できますが、空蝉であるハクオロの死体が見つかってなにので完全には実力を発揮できません
 また、蘇生関連の能力制限だけは首輪とは別の力が働いていると見ています
※パワーアップのためにネオジオング@機動戦士ガンダムUCを改造したスーツを開発中です
※沖縄の異常気象をクラウザーさんによるものであると思っています
※現存する組織のうち、あと三つ滅ぼせば黄泉レ○プシステムを起動できます
※サイコシェードを使うたびに願いを叶える力の代償として魂がダメージを受けてしまいます、これは回復できません
※ネオ・ジオングスーツがサーフにとって都合が良い人物は死なないように細工されていることは気づいてません

577 ◆gmrRot5lNM:2020/04/04(土) 16:28:54 ID:eTGa3rlc0
投下終了です

578 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/04(土) 18:19:36 ID:QMxyXi8Y0
投下乙です
予断を許さないけど、爆乳ズが一時的でも同盟組んだのは熱い

そして内心被ってなくてほっとしたけど、
自分も狂信者格納庫組+日之影、モモ、黒子で予約します

579 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:24:22 ID:gjWG0zdY0
予約していたビッグサイト格納庫メンバーで投下します

580 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:25:00 ID:gjWG0zdY0
ネオ・ジオングの眠る格納庫……
そこで行われていた攻防戦は、影の薄い少女の叫びにより待ったがかけられた。

「どういう、こと……?」

まずはレジーナ。
彼女はマナの件もあり、完全に戦闘状態を解除していた。

「何を言ってるんや嬢ちゃん? 悪いが殺害――」
「ま、待って欲しいデス松ちゃん!? 今の話は……」

松本は我関せずに攻撃を再開しようとするが、それを切歌が止める。
彼女もレジーナを同じく、既に戦闘状態を解いていた。
それは失ってしまったサイドバッシャーが遺した話と関係があったからこそだ。

「……」

そしてそんな二人の裏で、深海棲艦達も動きを止めていた。
彼女達の攻撃が無ければ、影薄達の完全な位置は補足できない。

「……しゃあない、ちょっとだけやで?」

こうなってしまえば、渋々ではあるが松本も戦闘を止めざるを得ない。
殺害は容易いが、あくまで自分はまだ狂信者のフリをしなくてはならないのだ。
彼女達が攻撃を止めたのであれば、自分もそれに従わなければ後々面倒になる。

「……少しは、話を聞いてくれるみたいっすね」
「お、おい大丈夫なのか?」
「ごめんなさい。でも、どうしてもこれは伝えなきゃならないことっすから」

そしてモモも戦闘状態を解いた。
敵地の中心で、本来なら自殺行為だ。
日之影も心配するが、モモは構わずに狂信者達へ対話を試みる。

きっと今この場に、都庁に残った仲間達がいれば猛反発を受けたことだろう。
みんな自分を守るために、庇いながら狂信者を倒そうとしてくれたかもしれない。
それでも。それでも彼女は、対話を試みたかったのだ。

「この大災害、クラウザーさんを間接的に殺したも同然の存在は――」
「ま、待って! それも気になるけど、マナを……マナを殺したのが狂信者っていうのは本当なの?」
「本当っすよ。……そっちの大きい人、さっき松ちゃんて呼ばれていましたけど、もしかしてダウンタウンの?」
「そ、そうや。あの松ちゃんやで?」

いざ裏の悪について語られると思っていたが、先にレジーナの大切な人の話が先か。
そう思っていた矢先にまさか自分が呼ばれるとは思っていなかった松本は、思わず正直に答えてしまう。

「……あなたの相方の浜ちゃんさんも、少し関係してくるかもしれません」
「な、なんやて!?」
「少し、長くなるかもしれないっす。それでも、どうか聞いてください。
 私達が、みんなが戦ってきたこれまでを……」

決意の表情で口を開くモモに、狂信者の誰もが耳を貸した。


(くそ、そんな下らない話なんてどうでもいいんだよ! 何処だ、何処から僕の情報が漏れた!?)


ただ一人、物陰でサーフのみが焦らされているのみ。
当然誰も気がつかずに、ステルスモモの独壇場が始まる。

581 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:26:42 ID:gjWG0zdY0
「……思えば全ての始まりは、クラウザーさんのゲリラライブ会場だったのかもしれません」
「どういうことデス?」
「クラウザーさんのライブは、何よりも昂ぶって嫌な気分を吹き飛ばせるっす。
 だから、一人の男性が道中で保護した女の子と、その場で疲れている様子だった女の子の二人を招待した。
 その男性が……浜ちゃんさんでした」
「なっ……!?」
「浜ちゃんさんがライブに招待した女の子二人は、鹿目まどかさんと桃園ラブさんだったっす。
 そして……いつまでも続くかに思われたクラウザーさんのライブは、予期せぬ形で終わりを迎えることになった」

一息をついてから、モモは口を開く。

「ライブハウスが、怪物に襲われた。この時に……クラウザーさんや多くのファンは命を落としてしまいました。
 そんな中で浜田さんはその身を挺して、まどかさんを守り抜いたそうっす……」
「浜田……」

相方の死の真実に、松本は小さく声を震わせる。
まさか相方が隠れクラウザーさんファンだったのにも驚きだが、その最期はさらに驚きだった。
なんの因果だろう。まさかクラウザーさんと同時に命を落としていただなんて。
それも女の子を庇って死んでしまうだなんて。

「この時、ラブさんは運よく別室で仲間のプリキュア、美希さんにマナさんとの合流を喜んで無事だったそうです。
 そして浜ちゃんさんに守られ、唯一生き延びたまどかさんに、怪物はトドメを刺そうとして……
 そんなところを、プリキュアと魔法少女の皆さんが駆けつけて、クラウザーさんを殺した奴に天罰を与えたっす」
「よくやったデスよマナさん達! ……もう少し早くついていれば、浜ちゃんも助けられたかもと思うと、悔しいデスが」
「ええんや。浜田が、自分で選んだんやからな……」

切歌の寂しそうな声に、松本は首を振る。
勿論相方が死んだのは悲しい。もう少し早く駆けつけていればと思ったのは、自分も同じだ。
だがそれでも……浜田の死に様に、何も感じなかったわけがない。
子供を庇って命を落としたということは、逆に言えば子供を盾にすれば浜田は最初の一撃を凌げた可能性が高い。
そして駆けつけたプリキュア達に助けられ、今も元気にしていたかもしれない。
浜田は、自分の命よりも見ず知らずの少女の命を選んだ。
相方の自分と生きて合流するよりも、だ。
それが悔しくもあり、そして誇らしくもあった。
丸くなった、優しくなった……色々言われていたが、確かに浜田は誰かを想って行動できる男だったのだから。


「こうしてまどかさんは、お友達の魔法少女とマナさん達プリキュアに助けて貰えたわけですけど……
 今度はここに、巨大な氷の竜……都庁の魔物がまどかさんを狙って襲撃をかけてくる。
 竜は圧倒的な強さで、誰も敵わずにまどかさんは為す術なく連れ去られるっす」
「おいくそドラゴン、浜田が守った子に何してんねん!?」
「マナ達がいても勝てないだなんて……というか、そのまどかって子狙われすぎじゃない?」

気がつけば、松本もレジーナもモモの語る話につっこみを入れる程度には緊張感を解いていた。
直前までSATUGAIをしようとしていたなど、誰に分かるだろうか?

(この流れだと、もしかしなくても……)

そんな中で、切歌だけは嫌な汗を流していた。
クラウザーさんのライブ会場に集まった面子、そして都庁の竜の襲撃。
これはその場にいた誰かから聞かなければ、この影の薄い少女には絶対に分かりえない情報だ。
それを知っていると言うことは、つまり生き延びた誰かと交流があるということ。
それはつまり……

582 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:27:40 ID:gjWG0zdY0
「彼女達は急いで竜の後を追おうとしました。そしてそんな時……私達は出会ったんすよ。
 たまたま傍にいたオオナズチとも協力することになって、空から竜の帰還場所である都庁を目指したっす。
 そう……マナさん達プリキュアとほむほむさん達魔法少女、彼女達と私達は一緒に動いていたんです」
「マナ……」
「あまり、その先を聞きたくないデス……」
「? どうしてや?」

浜田が守った一人の少女。
そこから生まれた、プリキュアと魔法少女と影薄の縁。
嘘をついている様には、誰にも見えなかった。
モモも恐らく、それを見越して丁寧にこれまでを語っているのだろう。

「そしてついに都庁に辿りついた時。番人には、麒麟さんがいたっす。
 それを……んっ、なんとか退けた後に、怒った本物の番人さんが現れて、私達全員があっという間にのされたっす。
 至近距離からの不意打ち斬鉄剣も効かなくて、正直あそこで死んだと思ったくらいっすよ」
「硬い都庁の番人、こっちでも警戒すべきSATUGAI対象になっていた男の人デスね?」
「そ、そいつ!? そいつがマナを殺したの!?」
「お、落ち着いて欲しいっすレジーナさん」

どうどうとレジーナに待ったをかける。
彼女はじりじりと迫る大切な人の死の真相に、気が気ではなかったのだ。

(やっぱり、この人達はまだ……完全には狂いきれていないんすね)

そんな様子を見て、モモはやはり対話を試みて正解だったと思う。
レジーナは、こんなにもマナを気にかけている。
切歌も武器をおさめ、先程の言葉からしてもうマナがどうして亡くなってしまったかも察しているようだ。
松本は少し怪しいが、相方の死の真相を聞かされた時に漏れた声は、本当に悲しみの混じったものだった。
みんな、誰かを想う気持ちがまだ残っている。
本当にクラウザーさんを想うなら……或いは。

改めて決意を固めて、モモはゆっくりと口を開く。


「……番人さんは、加減をしてくれていました。だから、この時には誰も死んでいないっすよ」
「え? どうして、向かってくる敵には都庁の連中は容赦しないって……」
「ある人にお願いされていたからっすよ。そのある人が……まどかさんっす」
「え? え? だってその子は攫われて、でも都庁の番人はその子のお願いを聞いた……?」
「まどかさんは、グンマ―の血を色濃く継いだ人だったんす。だから、都庁の竜は攫って、安全な世界樹に匿おうとしてたんです」
「!!」

その場の誰もが衝撃を受ける。
都庁の竜は、少女を攫いこそすれ危害を加える気は無く、それどころか保護対象としていた。
そうなると、彼女を奪還しようとしていたプリキュア達とは――少なからず、利害が一致している。

「勿論、私達の誰もが驚いたっす。でもやっぱりあの頃は、お互い完全に信用しきるということも皆さんできなくて……
 とりあえず、時間も時間だったすから。仮眠室で一度休もうということになったんす。
 そして……っ、みんなでこれからどうしようかと考えている矢先に、二つの事件が起きました」
「……っ」
「……当然、知っているっすよね? 狂信者の中には、魔物もいたって。
 潜伏していた狂信者、ラージャンとデスマンティスが、寝込みを襲ってきて……
 ――警護していた都庁の魔物を殺した後、マナさんと美希さんをっ、下半身だけの姿にして殺したんすよ……!!!」


「そん……な……」

583 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:28:28 ID:gjWG0zdY0
ついに告げられたマナの最期を聞いてしまい、レジーナは膝から崩れ落ちる。
切歌はそんな彼女をそっと支えるが、その表情は酷く沈んでいた。
無理もないだろう。こんな世界でも友と呼べる存在と出会えたというのに。
そんな彼女の大切な人を奪ったのは他ならぬ自分達狂信者だったのだから。

切歌もレジーナも、予想だにしていなかった。
聖帝軍が逃げ込んだという現在ならばともかく、この段階から都庁内にそれほどの人間が集まっていただなんて、わかるわけがない。
狂信者にとって都庁は、大量の生贄が内包された極上のクラウザーさんへの供物にすぎなかったのだから。


「マナを、狂信者が殺した……マナを、狂信者が……」


震える声でレジーナは同じ言葉を何度も呟く。
その姿は狂信者では無く、ただただ大切な人の死を嘆く一人の少女でしかなかった。
松本を含めた誰もが、口を噤み黙ってしまう。

「……」

だがやがて、ゆっくりとレジーナは立ち上がる。
涙をボロボロと零し、その全身を震わせながら。


「……狂信者は、許せないっ……!」


ギリッと歯を食いしばる少女。そこには明確に、狂信者への敵意があった。


「でも……それでも、それでも……
 クラウザーさんが、それに切歌が、私を救ってくれたのも確かなの……っ!」


同時に、クラウザーさんや切歌への想いも。
確かに狂信者はマナを殺した。だがそれにより空虚になったレジーナを立ち直らせたのも、クラウザーさんと切歌だ。
相反する感情を抱きながら、レジーナは葛藤する。
もはや狂信者に手は貸したくない。でもクラウザーさんには生き返って欲しい。
どうすればいいのか、わからない。


「……私も、狂信者達は許せないっすよ。マナさん達だけじゃない、他に沢山の人を殺している。
 みんなの大切な人を……それぞれのクラウザーさんのような人を、殺し続けているんすから」
「……」


トーンを落としたモモの声に、レジーナも切歌も松本も、誰も反論ができない。
できるわけがない。クラウザーさんの為に、己の命を含むあらゆるものを犠牲にしているのだから。


「……でも、それは私達も同じことっすけどね」
「え?」
「私達だって、沢山の狂信者……あなた達にとっての大切な人を、殺しているっす。
 クラウザーさんさえ亡くならなければ、こんな殺し合いさえ無ければ、もしかしたら語り合うこともあったかもしれない人達を……」

揺らぎ、表情も霞んで見えにくくなるステルス少女。
しかし狂信者達は、彼女が静かに泣いていることを察せられた。

584 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:29:43 ID:gjWG0zdY0
どうして対話を持ち出したのか、当の本人もわかっていないだろう。
ただ、クラウザーさんのファンの一人として……
切歌達から、クラウザーさんに対する『本当の』想いを感じ取れたからなのかもしれない。


「……レジーナさん」
「な、なに?」
「あなたはマナさんを狂信者に殺された。だけど、横の切歌さんと松ちゃんさんを殺そうとはしていないっす。
 それだけ……クラウザーさんと、二人も大切なんすよね?」
「……うん」
「……やっぱり、話してみようと思って正解だったっすね。
 クラウザーさんを真に思うなら――どうか、私達に手を貸して欲しいっす!」
「!?」

まさかの言葉に、誰もが絶句する。
今、この影の薄い少女は何を口走った?

「……勿論、私も……都庁には、もっと狂信者への殺意が募っている人も大勢いるっす。
 こんな提案をしたなんて後でわかったら、私も一緒にとっちめられるかもしれないっすね」
「と、当然デスよ!?」
「それでも……目前まで迫っている危機を防ぐには、少しでも多くの協力が必要なんです。
 信じられないかもしれないっすけど……次の大災害は、もうそこまで迫っているっす。
 それに、このままではクラウザーさんの身も危ないんすよ……!」
「なっ!?」

そして続け様の爆弾に再度絶句。
根っからクラウザーさんの復活を望む切歌達にとっては、無視できない発言だ。

「クラウザーさんが危ないって……どういうことデス!? 答えやがれデスよ!?」
「……これも、順を追ってちゃんと話すっすよ。
 さっき言った二つの事件……実は、狂信者に襲われる前に別の人からも襲撃を受けていました。
 それが――風鳴翼という女性っす」
「……ふん、そいつのことはよーく知ってるデスよ……」

ここに来て、自分のよく知る名を聞いた切歌は露骨に渋った表情をする。
食人鬼に成り果て、心底失望した女性の名を今になってまた聞くとは。

「私達も、殺されかけました。門番さんが庇ってくれなければ、絶対に食われてたっす。
 とてつもなく恐ろしい食人鬼……でも、そんな彼女も犠牲者だったんすよ」
「ど、どういうことデス?」
「……この殺し合いの目的は、テラカオスを生み出すこと。その為に、日本中にテラカオス化の為のナノマシンが撒かれて……
 風鳴翼さんは、運悪くそのテラカオス候補に選ばれてしまったんすよ」
「!!!」


――テラカオス

ついに出たその言葉。
知りたかった真実が、聞けるのかも知れない。
相も変わらず物陰に潜むサーフを含め、誰もがステルスモモの言葉に耳を傾ける。

585 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:30:54 ID:gjWG0zdY0
「私達は彼女に襲われた後、都庁の中で色々考えていました。
 大元は、私達と一緒に行動していた騎士様が遺した言葉だけだったっすけど……
 色々な理由から、都庁にはどんどんと人が集まって、みんなが断片的にこの殺し合いの情報の断片を持っていたっす。
 そして……聖帝さん達の協力もあって、救済の予言の正体にも辿りつけたんす。
 そんな時でした。まるで自力で予言を解いたみんなを確かめるように、竜の神様が降臨したんすよ」
「りゅ、竜の神様デスか?」
「はい。残念なことに私は直接は会えなかったっすけど――第二真竜・ノーデンスという名前だったそうっす」






(っの……やってくれたな、クソ真竜があああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!?)



その名前を聞いた瞬間、サーフは心中で激しく叫んだ。
タバサの情報により、サーフは真竜に関する知識も得ていた。
第一真竜・アイオト
第二真竜・ノーデンス
第三真竜・ニアラ
第四真竜・ヒュプノス
第五真竜・フォーマルハウト
第六真竜・ヘイズ
別称グレイトフルセブンスと呼ばれはするが、6体しかいない、馬鹿しかいないと散々な言われようであったのは記憶に新しい。
現に第三はひげのおっさんに殺され、第五は野球チーム所属した後に爆散した。タバサの言葉も、間違ってはいないだろう。
しかし彼女は同時に警告もしていた。第一と第二だけは、他とは次元が違うと。
竜殺剣が無ければ勝つことは絶対に不可能とまで言われた。
だからこそ、多額の研究費と時間を費やして、ついに現代に竜殺剣ドリスを復元したのだ。
なお材料は、オリハルコンに唯一竜殺剣が無くても抹殺可能で専用曲もついぞ貰えなかった哀れな第六真竜だったりする。

そしてタバサの言葉通り、竜殺剣の威力は凄まじかった。
あの計画実行の日、真っ先に現れたのは第一真竜・アイオトだ。
彼は厳かに、計画を止めるようサーフに冷静に言い放った。
そんなアイオトを、ドリスは一撃で狩り殺してみせたのだ。
実に他愛ない。上位神、真竜といえどこの程度かと、サーフはアイオトを嘲った。


『忠告を無視し、私を滅ぼす。それがお前の選択か……
 それも道の一つだ。しかしそれが正しいかは誰にもわからない。正しき道など、元からありはせぬのだから。
 私は既に役目を終えた者。影より、お前とノーデンスの子らがどう動くか、見定めるとしよう……』


だというのに、アイオトは一切その態度を崩さず、余裕さえ感じさせた。
腹が立ち、そのままなます切りにして完全に消し去ってやった頃には、戯言と聞き流していたが……
まさか、片割れのババアが生き延びていたとは。
あの時、ノーデンスは現れなかった。それでいて何故、感づかれたか。

(枯れた老害の分際でやってくれる……! あいつ、自分を囮に僕に竜殺剣を使わせたっていうのか!?)

サーフはすぐに答えに行きついた。
アイオトはサーフの前に姿を現すことで、竜殺剣を使わざるを得ない状況を生み出したのだ。
現役引退したとはいえ真竜。通常手段ではまともな傷も与えられず、もたつけば武道や他の神々に囲まれる。
確実最短の抹殺の為に持ち出した竜殺剣。まさかそれが、遠方の同族に黒幕の情報を伝える鍵とされるとは。

(あの時、唯一討ち損じたミザールを念の為に大和を利用して始末したっていうのに……!)

586 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:32:11 ID:gjWG0zdY0
これは完全にサーフの計画外だった。
大災害を生き延びた神々は、ミザールくらいだと思い込んでしまっていた。
そのミザールも、言語を理解できる存在が現代にはいない。だからこそサーフは彼が都庁にぶら下がっても危機感を覚えることはなかった。
後で念の為に殺しておこう。その程度の認識だ。
何故この時、ミザールが都庁にぶら下がったのか。そこまで考えを巡らせるべきだったか?
いや、誰もわからないだろう。ノーデンスが呼び寄せたと推測するにはあまりにも情報が少なすぎた。
せめて都庁が、巨大な世界樹になる前であれば。或いは擬態していたノーデンスも見つけられたかもしれない。

(いや、今はそんなことを考えている場合じゃない……!)

都庁に現れた神々の生き残り。しかし彼女はニルヴァーナにはいなかった。
だから完全には黒幕の正体には至っていない筈。
しかしアイオトの計略によって、竜殺剣の持ち主だということは感づかれている。

影薄や都庁の連中は、竜殺剣に対する知識など持たないだろう。
だから、ノーデンスの情報でも黒幕には辿りつけなかった。


だが。


今、この場でその情報を再度話されると、状況は一変する。





「ノーデンスさんは、過去にもあった大災害と戦争の歴史、救済の予言についての情報を残してくれました。
 そして最後に、この馬鹿げた殺し合いを引き起こした、諸悪の根源とも言うべき存在の情報もくれたっす!
 黒幕は、悪魔の力と竜殺剣を持つ――」







「逃げろっ!!!!」





いつでも動けるようには身構えていた日之影が、力の限り叫ぶ。

それに、モモの反応は遅れた。
誰もが自分の話をしっかりと聞いてくれている。だから、もう戦いになることはないと思っていた。
あれだけ注目を集めれば、ステルスはとっくに機能していない。

切歌とレジーナも、反応が遅れた。
最初こそ戯言だと思っていたが、とても嘘をついているようには見えなかったステルス少女の言葉。
彼女が改めて黒幕の特徴を口にした時、二人の思考は殺意に支配されてしまった。
彼女達の方が、話している当のモモより先に黒幕の正体に気付いてしまったから。


いつの間にか、三人を遠巻きからぐるりと包囲するように構えていた深海棲艦からの一斉砲撃に、反応が遅れたのだ。
彼女達は話を聞いていたわけではない。ただ、提督の指示に盲目的に従っていただけ。
サーフがモモの話を聞きたいから微動だにしなくなり。モモと切歌達が邪魔だと判断したから、沈めにかかるだけ。それだけの存在。

587 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:33:05 ID:gjWG0zdY0
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉ! 伏せやあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「!?」




そんな中で。

ただ一人――松本だけは動けた。
いや、正しくは彼も反応は遅れていた。
しかし少女達と違い、圧倒的な巨体を誇る大日本人の身体は、ただ倒れ込むだけで巨大な防壁となった。


「……!」


松本の身体が壁となり、深海棲艦の砲撃が少女達を殺すことは叶わず、仕損じたことに深海棲艦も僅かに顔を歪める。
何故、咄嗟にこんな真似をしてしまったのか。砲撃を浴びながら、松本はわけがわからなかった。
自分はただただ浜田の為に動いていた。こんな少女達を庇う義理などない。

その筈だったのに。
浜田が命を賭して救った少女が、この影の薄い少女達と今も頑張っているのだと知ってしまったためか。
或いは、狂信者の筈なのに自分なんかを信じ、浜田の死すら悔やんでくれた切歌に、ほんの少しでも心を許してしまったのだろうか?



――考えをまとめる前に、松本の項にどこからか伸びてきた骨のような刃が突き刺さった。



「ち……俺も焼きが回ったわぁ……」
「松ちゃん!?」


項は大日本人の弱点。内部にいる松本本体を、的確に刺し貫いていた。
一瞬で視界が真っ赤に染まる松本は、自嘲するように吐き捨てながら、ゆっくりと沈んで行った。


「浜田……ごめん、なぁ……」



【松本人志@現実】 死亡確認



「まっちゃああああぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


崩れ落ちる巨体、響く少女の絶叫。


「くっ、そ……!」


凄まじい速度で、深海棲艦を薙ぎ倒していく英雄。
再開された戦乱の中で、舞い上がる土煙。
その中に、それはいた。

588 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:33:41 ID:gjWG0zdY0
「オオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォ!!!」



松本の項から刃を引き抜く、黒き悪魔――リアルヴァルナが。


(くそ、くそくそくそ! どいつもこいつも、僕の邪魔ばかりしやがって……!)


松本の咄嗟の行動により、深海棲艦の奇襲による少女達の抹殺は失敗してしまった。
深海棲艦も当然強化改造してあるとはいえ、姫級は数が少ない。
かといって他の型では、あの影の薄い英雄の前では紙切れのごとく吹き飛ばされている。

再度攻撃を仕掛け、少女達を殺してから相手取る?
ネオ・ジオングスーツを守らねば、ディーが暴走する危険性もある。



――ヴァルナがそう考えた瞬間、ネオ・ジオングスーツが轟音をあげながら瓦解した。




(なっ……!?)



馬鹿な。そう思った時にはもう遅かった。
一か所を爆破されたのではない。内部から複数個所を同時に爆破された。
これではもう、いくら自分でも復旧させるには途方もない時間を要する。


(っ……!)


それを確認したヴァルナが選んだのは――逃走。

僅かばかりの深海棲艦を日之影への足止めに残し、それ以外の深海棲艦と共に急いでその場から逃げ出した。
切歌達に正体がばれた。ネオ・ジオングスーツまで破壊された。
こうなってしまえば、もう狂信者のふりをして潜伏などしていられない。


(まだだ、まだ……!)


リアルヴァルナの姿のままの逃走。
これはこの後、他の参加者と出会ってもサーフと結びつかせない為でもあった。
切歌達も誤解し、ヴァルナは黒幕サーフの操る一悪魔に過ぎないと考えるかもしれない。
たとえ少しでも自分の計画の維持に使えそうなことは実行する。


そして黒き悪魔は、この場の脱出には成功する。

この場でただ一人、その後ろ姿を確認している存在に気がつかずに。

589 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:34:12 ID:gjWG0zdY0
「……夜叉鬼・リアルヴァルナ、ですか」



ネオ・ジオングスーツの残骸の上から観察していたのは、影薄の黒子であった。
彼はモモの対話が始まった時から、ひっそりと一人でネオ・ジオングスーツに登っていたのだ。
対話はモモが。万一の時は日之影が守ってくれる筈。ならば残った自分は、冷静に本来の目的を果たそうと。
結果として、彼の行動は見事に決まった。
狂信者の誰もがモモの方に注目し、一言も発していない黒子はいつも以上に強力なステルス状態となっていたのだ。
探知可能な深海棲艦も、サーフ自身の命令によって動くことも許されず、続く攻撃命令もモモ達少女三人のみに対してのみ。

仲間にも敵にも悟られることなく、黒子はネオ・ジオングスーツの破壊工作を完了。
そしてその場では起爆せず、もし狂信者がモモの説得に応じたならば爆破を控えようと考えた矢先、事態は動いた。
モモ諸共、狂信者さえ葬ろうとした深海棲艦と悪魔。
松本の行動は黒子にも予想外であったが、そんな彼すら一撃で殺してみせた黒き悪魔。
黒子は冷静に、自分はここで死ぬかもしれないと覚悟を決め、死ぬ前に役目を果たそうと起爆したのだ。
それが幸いにも敵に逃走の選択をさせ、黒子や仲間達は命を繋げた。


「便利ですね、デモニカのエネミーサーチにデビルアナライズ機能……」


だが黒子はそこで止まることをしていない。
黒き悪魔を視界におさめると、冷静にデモニカの機能を起動したのだ。
デモニカは某国が作った最新鋭の機能満載のクールでクレバーなスーツだ。
ヘルメットデザインに目を瞑れば、対悪魔装備としてこれ以上優秀なものは無いと言っても過言ではないかもしれない。
アプリ・エネミーサーチは黒き悪魔がゾンビもどきと共に格納庫から確かに出て行ったことを確認し。
そしてデビルアナライズ……悪魔の名前やスキルを読み取れる機能で、消え去る前に出来る限りの情報を解析したのだ。



「モモ、無事か!?」
「わ、私は平気っすけど……松ちゃんさんが……」
「松ちゃん……どうしてデスか……!」
「ゆる、さない……!」


姫級の頭を叩き潰し、日之影が格納庫に静寂を取り戻す。
彼はすぐにモモ達に駆け寄るが、その表情は様々。
茫然、号泣、憤怒。
モモは、危うく落としかけた命を狂信者に救われた。
その事実を日之影は複雑に思いながらも、残された狂信者の少女達にも声をかける。

590 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:34:59 ID:gjWG0zdY0
「おい、なんだってんだ今のは……!?」
「……竜殺剣は、サーフ博士が持っていたデス。今はセルベリアおばさんが使っていますけど……」
「あいつが、あいつが仲間のふりをしてた、提督……? マナや、クラウザーさんや、松ちゃんが死ぬ原因を作った奴なのね……!?」


「――セルべリアおばさんに、悪魔の力も植え付けていた。さっきの話通りなら、あいつはセルベリアおばさんを囮にするつもりだった!
 どこまでも、どこまでも許せないデスよ、サーフ……! 絶対に、SATUGAIしてやるデス……!」
「――あいつだけは、絶対に殺してやるぅ!!!」


切歌とレジーナの並々ならぬ殺意は、日之影さえもたじろがせた。

「よ、よくわからないっすけど……黒幕は、ここにいたってことっすか!?」
「ええ、そうデス。あなた達も、全ての情報を持っていたわけじゃないんデスね……
 そっちの神様以外にも、生き延びていた人はいるんデス。
 サイドバッシャーは言っていたデス。黒幕には仲間がいる。丸いサボテンみたいな悪魔に、女の部下……」
「さっき少し見えた悪魔も、サーフの手下!? サーフはあいつらと逃げたの!?」


「……さっき逃げた悪魔の名前は夜叉鬼・リアルヴァルナという悪魔のようです。
 スキルは全ては解析できませんでしたが、厄介なものは確認できました。
 BSデストロイア・状態異常の無効化。マスタキャンセラ・物理や属性攻撃の無効化。そして、オートソーマ。逃げると体力が全快するようです。
 わかりやすく言うと、殴られても完全に掠り傷すら負わなくなったレストさんのようなものですね」
「な、なんっすかその反則バケモノ!?」
「いえ、彼とは違い吸収までは無いですし、無効も前に都庁を襲ってきた魔人皇の反射の劣化版。それに何より無・万能耐性は空です」
「なるほど、厄介な相手ではあるが、つけいる隙は十分あるってことか」
「ええ。ですが、あのゾンビもどきもいます。このまま僕らで追撃をしても、勝てるかは微妙です。まずは小町さんと合流を目指しましょう。
 ……あなた達は、どうするんですか?」
「……」

冷静に戦局を判断する黒子の視線は、切歌とレジーナに向いていた。
彼女達は紛れもない狂信者で、都庁の……影薄達の敵だ。
それでも、黒子はモモと同じように彼女達にも言葉を投げかける。


「……恥を忍んで、お願いするデス。あいつを……サーフをSATUGAIするまでは、停戦を願いたいデス……
 そして、さっきの話の続きを。クラウザーさんが危ない、その理由を教えて欲しいデス……!」
「……わかったっす」


深々と頭を下げる切歌に対し、モモは真剣な表情で頷き返す。
絶対に相容れない存在であった筈のファンと狂信者は、ゆっくりと手を取り合った。

591 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:35:33 ID:gjWG0zdY0
【二日目・23時30分/東京都 ビッグサイト格納庫】

※ネオ・ジオングスーツが黒子の手により破壊されました


【日之影空洞@めだかボックス】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】己の拳、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】支給品一式
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:情報交換しつつ、まずはこまっちゃんと合流
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させるつもりだったんだが……
2:小町や仲間を全力で守る
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:めだかに変わって世界を救わなきゃならないのが先代生徒会長の辛いとこだな
※予言やテラカオスの真実、黒幕の正体を知りました

【東横桃子@咲-Saki-】
【状態】ダメージ(小)、首輪解除、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】猟銃@現実、斬鉄剣@ルパン三世、デモニカスーツ@真・女神転生SJ(ところどころ裂けた)
【道具】支給品一式、スマホ、謎の物質考察メモ、筆記用具
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:切歌、レジーナと情報交換する
1:クラウザーさんへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させるつもりだったっすけど……
2:少しは話のわかる狂信者がいたのは嬉しいっす
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:……多少落ち着いたっすけど、拳王連合軍だけは絶対に報いを受けてもらうっす
※予言やテラカオスの真実、黒幕の正体を知りました

【黒子テツヤ@黒子のバスケ】
【状態】健康、首輪解除、超冷静、ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)
【装備】ウィンチェスターM1912、デモニカスーツ@真・女神転生SJ
【道具】死出の羽衣@幽々白書
【思考】基本:大災害の阻止、多くの命を助けるために尽力する
0:デモニカの機能をフル活用して、悪魔一味の動向に警戒する
1:クラウザーへの蘇生手段を破壊して狂信者を瓦解させるのは後にしますか
2:仲間を全力支援、パス回しが僕の役目
3:潜入作戦が終わり次第、都庁に戻る
4:平和な世界でみんなとバスケがしたいですね
※予言やテラカオスの真実、黒幕の正体を知りました
※黒子のデモニカにのみ、リアルヴァルナの一部情報が記録されました


【暁切歌@戦姫絶唱シンフォギアG】
【状態】サーフへの殺意、首輪解除、イグナイトフォーム
【装備】シンフォギア「イガリマ」、イグナイトモジュール@戦姫絶唱シンフォギアGX
【道具】支給品一式、クロエの首輪、形見の浜田雅功人形
【思考】基本:SATSUGAI、自分の生きた証として絶対にクラウザーさんを蘇らせる。
0:この影の薄い人と情報交換して、確実にサーフはSATUGAIするデス!
1:みんなの希望であるクラウザーさんは必ず蘇らせる!
2:風鳴翼については……
3:同じ狂信者仲間としてレジーナを大事にしたい
4:フィーネになってしまう自分の危険性を考慮し、クラウザーさんが蘇り次第、自分の命を断つ
5:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
6:サイコマンへの疑念
7:松ちゃん……ごめんなさいデス……
8:ネオ・ジオングスーツは守れなかったデスけど、今はそれどころじゃないデス!
※自分が新しいフィーネになると思い込んでいるのは勘違いです
 よって、自分がフィーネになると勘違いしている時期からの参戦です
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません。
※モモとの会話により、黒幕がサーフであると確信しました


【レジーナ@ドキドキプリキュア!】
【状態】サーフへの殺意、葛藤、首輪解除 変身中
【装備】ミラクルドラゴングレイブ、電子星獣ドル、シンフォギア「シュルシャガナ」
【道具】支給品一式、ギラン円盤
【思考】
基本:クラウザーさんの復活
0:準備が出来たらずぐにでもサーフを殺しに行く
1:狂信者にこれ以上手は貸したくないけど、クラウザーさんは復活させたい……
2:切歌だけは信じる
3:ゼロを警戒し、可能なら正体を探る
  ついでにサイコマンも警戒
※月読調のギアの装者になりました
※セルベリア・草加との情報交換により、この殺し合いがテラカオスを生み出すためのものであり、カオスロワちゃんねるの危険も知りました。救済の予言の意味はわかっていません
※モモとの会話により、黒幕がサーフであると確信しました

592 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:36:37 ID:gjWG0zdY0
「はぁ……はぁ……!」


黒き悪魔は疾走する。
これからどうするべきか?


「テイトク、カゲウス達ハカクノウコカラ動イテイナイ。十分キョリハトレタヨ?」
「そうか……それならまだ、手はあるかな……!」


逃げつつも、深海棲艦のヲ級と合流し次の策を練るヴァルナ。
このヲ級はサーフの道具欄にはいないが、しかしビッグサイト内で動き回っていた個体……
瑞鶴ほどではないが、彼女の不在時に備えて用意しておいた特別優秀な個体だ。
既にサーフの研究室から、最低限の道具を持ち出してくれている。


(切歌、レジーナ、それにあの影薄達に正体がばれたのは痛いが……まだ間に合う。
 奴らさえ死ねば、竜殺剣の件があろうが都庁の連中はまだ僕の正体にまでは辿りつけないだろう)

(問題なのは、ネオ・ジオングスーツの破壊を許してしまったこと……
 あの馬鹿なディーのこと、下手をすりゃそれだけで自爆しかねないからな)

(だが切歌達に影薄達も、それだけは阻止したい筈だ。あいつらがディーを倒すことに賭けるか?
 いや、それよりもこのまま僕がディーを殺してからビッグサイトを抜けるか?)


正体がばれてしまったのは予定外だが、まだその人数は少ない。
最良は狂信者達と相討ちになって全員死んでくれることだが、そうもいかないということもわかってはいる。
まず鍵を握るのはディー。

彼をどうするか。

黒き悪魔は、まだまだ知恵を働かせる。


【二日目・23時30分/東京都 ビッグサイト内通路】

【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2】
【状態】リアルヴァルナ形態、瑞鶴の提督、支給品扱いで首輪なし、全マントラ網羅、動揺
    マスタキャンセラ・オートソーマ常備(万能以外無効、戦闘終了or逃亡成功時全回復)
【装備】違法改造スマホ、四次元ポケット@ドラえもん(ディパック代わり)
【道具】カオスロワちゃんねるのサーバー、カピラリア七光線銃、結婚指輪
    深海棲艦イロハ級×140、深海棲艦鬼・姫級×5、深海棲艦ヲ級、最低限の道具
【思考】
基本:蒼の源泉の力を手に入れる
0:ディーをどうするか……
1:可能な限り、切歌達と影薄はビッグサイト内で始末したい
2:瑞鶴を操り、拳王連合軍に野球の試合を早急にさせる
3:真実を知った者は消す、そして殺し合いを加速させるものを助長させる
4:年増女(セルベリア)とシスコン仮面(ルルーシュ)は特に警戒
5:狙われると面倒なのでギリギリまで正体は隠す、必要のない戦闘は避ける
6:死んだ祐一郎の才能に嫉妬。ロックマンと翔鶴は必ず使い潰す
7:都庁に向かった深海棲艦たちはいったい何をしてるんだ?!
8:可能であればイチローチームとテラカオス・ディ―ヴァ(ツバサ)を助けに行きたい
※カオスロワちゃんねるの管理人です
※古代ミヤザキの末裔であり、蒼や蒼の源泉・テラカオスなどについて全て知っています
 ナノマシンに仕込まれたプログラムにより完成したテラカオスならば乗っ取ることも可能
 予言の中にある『歌』も所持
※悪魔化ウィルスによりリアルヴァルナへと変身可能
 サイヤ人の肉を食べたことで全スキルを網羅し、戦闘力が大幅増加しました
※まだ榛名によって都庁の軍勢とルルーシュに自分の正体が告発されたことを知りません

593 ◆Trd3kNhTQY:2020/04/09(木) 00:38:00 ID:gjWG0zdY0
投下終了です
タイトルは『ビッグサイト狂走曲』で

594 ◆e2JqZMvQtM:2020/04/09(木) 05:48:36 ID:iGIW.KCk0
待ってました 乙です
とうとう暴かれたサーフの正体と急速構築されていく包囲網
ドリスコルが行った外道作戦を知らないこともあって影薄たちが狂信者とまさかすぎる共闘路線を築くとは…
何よりも意外だったのは暴走一択だと思った松本さんが綺麗な最期を迎えたことですな
ジェットコースターみたいな展開でした 良い意味で


聖帝軍、拳王連合軍 予約します

595 ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:33:27 ID:wdKB.9Y60
聖帝軍、拳王連合軍を投下します

596悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:34:39 ID:wdKB.9Y60
四回裏 聖帝軍の攻撃です。
バッターボックスには四番サウザーが入ります。

「さっきはしくじったが、今度はそうはいかねえぞ!」

マウンドの上に立つMEIKOは二回裏でサウザーに得点を許していた。
同じ失敗は犯さないと、殺意を漲らせる。
四回表で得点王になると思われたプニキとハクメンが脱落していることも焦りを感じているようだ。
だからこそサウザーから得点はもちろん、命すら奪うつもりで戦いに臨む。

そしてお決まりの無限の回転を生み出すフォームから、殺人MEIKOボールが飛び出す――かに思われた。

「案ずるな。今度はバントで稼ぐみたいなチンケな真似はせんよ。    雷 霆 ッ ! !」
「ッ! 躱せMEI――」

サウザーはMEIKOが投げる寸前に、スカイツリーの戦いでカギ爪のヨロイにも穴を空けた雷を彼女の頭上に放つ。
投げるより先に攻撃することでフォームを崩す、紘太がとったものと同じ戦法である。
違いは足止めに留まった紘太と違い、雷は投げた直前のMEIKOでは避けられないほど、速く威力が高かったこと。

「うおぉおおおおおおお!!?」
「MEIKO!!」
「この球なら……ヒットは狙えるな!」

雷に打たれたことで黄金の回転、MEIKOボールはただのストレートになった。
サウザーは打つ。
その弾丸は、ライトにいるディオの足元に落ちて爆発した。
時を止めるザ・ワールドの発動が間に合わない速度での落下だった。

『ザ・ワー……ダメだぁ間に合わない!』
「WRYYYYYYYYYYYYYYYYYYY!!?」

ディオの体が宙を舞ったと同時に、神速のサウザーは走り出す。
一塁にはロックマンを持つ翔鶴の姿がPETとダークチップを手に身構えていた。

『来るよ! サウザーを仕留めるためにダークサウンドを使うんだ!
 これを使えばサウザーと言えど……』
「ええ、わかりました!」

サウザーは聖帝軍のリーダー。
倒せば確実に相手チームの戦力はガタ落ちする。
しかし熱斗には確実に劣る翔鶴のネットバトラー技量からして、どうしても普通のチップではサウザーを捉えられない。
そこで超性能であるダークチップを予め用意し、あとはスロットインするだけ……


――熱斗の死のきっかけを作ったハゲ頭を殺したくて殺したくてしょうがないんだ!!


――正義や優しさは辛うじて失われていないが、憎悪という悪の心が宿ったか……!』


――そんな……私のせいで彩斗さんを……あああ!」


「……しまッ!!」
『翔鶴?!』

かつてダークチップの弊害を知らずにロックマンの心にダメージを与えてしまった時のトラウマ。
それがスロットに入れる直前で蘇ってしまい、チップはスロットに入りそびれて地面に落ちてしまった。

597悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:35:20 ID:wdKB.9Y60

(何かをやろうとして仕損じたのか? 命取りだな)

走るサウザーの視点から見ても今の翔鶴・ロックマンは隙だらけであった。
拳王連合軍でも主力であろう二人を葬るまたとないチャンスであった。
サウザーの容赦のない手刀が翔鶴の喉元まで迫る。

「あ……」
「翔鶴姉ッ!」
「極星十字拳」







「させるかッ! デュ―オーバーヘブン・ザ・ワールド!!!」

翔鶴の首が撥ねられるであろう直前、ディオは時を一分以上停止させるスタンドの奥の手を発動。
ボールを拾った直後にサウザーの下へ駆ける。
停止した時の中で動けるのはディオとデューオのみ。
サウザーの神速もここでは意味がない。

「二回裏の時は間に合わなかったが、今度はそうはいかん!
 このまま、一回タッチすればアウトだがな……」
『サウザーを確実に倒せるまたとないチャンスだ』

ディオは狙っていた。
サウザーが再びバッターとして現れた時に倒せるように、いつでも奥の手のデュ―オーバーヘブンを温存し、発動の時を待っていた。
ザ・ワールドの九秒間だけでは間に合わない……しかも、時が停止しているせいで自分の投げた球を味方の誰もキャッチできない弊害があり、捕球したら一々歩いていくしかなく、距離によっては九秒でも間に合わない。
だが一分もあるならドームの端から端まで到達することも可能である。

「チップを借りるぞ、翔鶴。俺たちにとっての幸運の剣だ」

ディオは翔鶴から拝借したソードのチップをPSVITAに(無理矢理)挿入すると、腕から一本の光剣が伸びる。
そして溜めに溜めた後にサウザーの胸を刺す。

「チッ、流石南斗最強の男……鉄板みたいな胸板だ。
だが無駄だ、多少の時間をかければ無防備なおまえなど」

サウザーの胸筋は異常に硬かったが、ディオには時間がある。
あらん限りの力を込めて、剣はズブズブと胸に沈んでいく。
そして。

「無駄ァッ!!」
『一分経過・時間停止解除!』

スタンド能力の制限時間が来る直前に光の剣はサウザーの胸を貫いた。

「がはッ!!」
「サウザー!!」
「くッ……」

サウザーは左胸と口から血を吐き出し、地面に膝を折った。
ディオも奥の手使用による代償で消耗しクロスフュージョン解除と同時に倒れた。
何が起こったのかわからない翔鶴と、ベンチにいる闇の悲痛な叫びが聞こえた。

「フッ、やってやったぜ……」
『ディおじさん、ボクらを助けてくれたの?』
「勘違いするな、熱斗……はもういないが、最高のネットナビである貴様を倒すのはこのディオだ。
こんなところで妹共々無様に死ぬことは許さん」



「……ああ、惜しかったな」
『な……』
「なにぃ!?」

そのまま血を出しながら死んでいくと思われたサウザーは、生きており、再び立ち上がった。
驚愕と絶望の表情でディオはサウザーを見る。

598悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:35:50 ID:wdKB.9Y60

「心臓を貫いたのに、なぜだ!?」
「残念だが俺の心臓は右にある。生まれついての特異体質なのだよ」

常人ならば左胸にあるべき心臓が右にある。
故に殺しきれなかったのだ。

「さて、これが普通の殺し合いなら動けなくなった貴様にトドメを刺すところだが」
『「……!」』

聖帝を打ち損じたディオとデューオは最期の時を覚悟する。

「俺は貴様にタッチされたからアウトだ。命拾いしたな」
「このディオが恐怖を感じるとは……不覚」

サウザーは既にアウトであり、これ以上攻撃はできない。
同時に周りにいる拳王連合軍の者もルール上攻撃はできないことも意味していた。
ディオはがくりと気絶し、サウザーは悠々とベンチに戻っていった。



「サウザー大丈夫ですか!?」
「痛たたたたたたたた……まさか時間停止できる奴がハクメンの他に複数いたなんて。
正直、死ぬかと思ったわ」
「こっちの心臓が止まるかと思いました。
犬牟田、応急処置をするので包帯をもってきてください」

拳王連合軍の前では余裕ぶってはいたが、実際はかなりの痛手である。
死なずとも胸部や肺に穴が開いているので重傷には違いない。
ぶっちゃけ心臓が無事なだけで常人ならとっくの昔に死んでいる傷だ。

「サウザー、怪我は浅くないです。五回表からはベンチで」
「いや、ダメだ。俺が負傷退場すれば拳王連合軍の士気を上げてしまう。
お師さんにヤワな鍛え方はされとらん。退かずに戦場に残るべきだ」
「サウザー……」

怪我は大きいがサウザーは試合に参加をし続けることにした。
彼の熱い想いを受け、聖帝軍も彼を止めはせず、応急処置に留めた。


一方の拳王連合軍は。

『ダメだ、ディオの疲労とダメージは限界だ。退場するしかない』
「MEIちゃんは無事か?」
「少し痺れたがなんとか……アルティメットアーマーはおしゃかになったがな」

ディオはベンチに運ばれ、MEIKOは負傷はしたが鎧が引き換えになったおかげで一命はとりとめていた。
とはいえ控えの選手がいないのでライトは空白になった状態で試合を続行しないといけない。
焦げて大破したアルティメットアーマーを脱ぎ捨て、マウンドに立った。
次の打者はイオリ。ただし、ガンダムにレイジと相乗りしているため、操縦桿を握る担当が変わることで打者になったという形で挑む。

イオリはサウザーや犬牟田からは無理して打たなくて良いから、とにかく自分たちの身と貴重なガンダムを守れと言われて立つ。
イオリ自身は実際に指示通り、スリーストライクになるまで打たず、防御に徹し、生き延びた。
ガンダムが受けたダメージも最低限度。
だが問題はMEIKOが投げるボールの方であった。

「なんだろうなイオリ、MEIKOの投げる球がさっきよりも遅く感じたんだが」
「うん、なんだか変な感じだった。僕の腕じゃ打つのはまだ大変だけど、避けるだけならなんとかなるレベルだった」



(どうしたというのだMEIちゃん? 受けた衝撃の量が明らかに減っているぞ)

MEIKOボールの威力減衰はバッテリーを組んでいるラオウさえ気づいていた。

599悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:36:42 ID:wdKB.9Y60



そして次の打席にデストワイルダーが入る。
今度は先のようにデッドボールを狙うのではなく、正攻法で打つ戦いで挑むつもりであった。
そして投げられたMEIKOボール、だが、デストワイルダーはこれを打った。
打球は大きく右側に寄りすぎてファールボールになってしまったが、かなり大きい当たりであり、ホームランもあり得させる飛距離であった。

「……ッ!!」
『おい、どうした? さっきよりも明らかに弱いぞ?』
「チッ、吠えてろ猫。戦いはこれからだ!」

あまりにも力を失っているMEIKO。次の球もファールであった。
いったいどうしたものかと拳王連合軍も聖帝軍ベンチも騒然となる。
答えを最初に出したのはシャドーマンであった。

『なるほど、見えてきたぞ』
「何が?」
『いくつか複合的な理由があるが……
具体的には疲労と、アルティメットアーマーの喪失、感電ダメージだろう』

お館である上条にシャドーマンは持論を説く。

『我々拳王連合軍は先に相手チームの方が倒れてしまうので、短期の試合しかしたことがない。
MEIKOはここまで激しく長期の戦いはしたことがなく、慣れないタイプの試合で疲れが出ている』
「でも俺たちのはダイジョーブ博士のマシンでメジャーリーガー級の能力を……」
『体力とスタミナ管理は別だ。そんなものはペース配分を間違えれば簡単に崩れる』

『次にアルティメットアーマー……MEIKOは殺し合いが始まってから一度も脱いでない。
そんな馴染みきった「重さ」が急になくなった時、どうなると思う?』
「思ったように体を動かせないってことか」

『だが、先の二つまでならMEIKOの超人的センスならどうにかなっただろう』
「一番の問題は……サウザーにやられたダメージということか!」
『おそらくMEIKOは――感電が抜けきってない状態で投げている!』
「!」
『感電は肉体の神経系に打撃を与える。思ったように動けない程度にはな』

シャドーマンが上条にMEIKOの身に起こっている何かを説明したのち、聖帝軍ベンチでも遅れてMEIKOの異常の原因がわかったようだ。

「なるほど、MEIKOは疲労と鎧の消失、感電によって力がでないみたいだ」
「疲労はともかく鎧を剥がしてびりびり感電させた後、弱めるなんて単純だけど思いつかなかったぜ」
「しかも自分が点を取れなくとも後へと繋げる先見性の良さ。
流石はサウザー、天才最強であるアタイも見直したわ!」
「えッ…あ、うん。
恐れ入ったか、この聖帝軍の知略に〜!(棒読み)」
(絶対深く考えずに放った攻撃が、たまたま相手の核心を突いただけだコレ……)

サウザーの活躍を褒め称える聖帝軍の面子と、褒められて久しぶりにイチゴ味モードで鼻が高くなるサウザー。
一番人となりを理解してるがために、ジト目で聖帝を見ている闇。


反対に焦るのは拳王連合軍の面子。
特に上条とシャドーマンであった。

「まずいぞ、早いとこMEIKOをピッチャーから交代させないと」
『感電も手伝ってMEIKO自身が自分の疲弊に気づいてない可能性もある。タイムの申請を――』

「MEIKOボール!!」
「待て、MEIちゃん!!」
「『しまったッ!?』」

イマジンスレイヤー、そしてラオウの制止が入るよりも早く、MEIKOボールは投げられてしまった。
それでも常人が無暗に打てば死ぬであろう文字通りの殺人球だったわけだが、デストワイルダーならば問題なく打てる球ではあった。

『俺の腕力を教えてやるよ』

洗練されてないMEIKOボールをデストワイルダーはフルスイングで打った。

『100t!! 高津の時のお返しだ!!』

打球はMEIKOの方向へまっすぐと飛んでいき、100t越えのそれは取ろうとした彼女の右腕を粉砕した。
MEIKOの右腕だった血と肉がマウンドの上に散らばる。

「ぐわああああああああああああああああああ!!!」
「MEIKO!」

MEIKOが倒れ、野球ボールは彼女の血肉に混ざって転がった。
ヒットを確認したのち、デストワイルダーは走り出す。

600悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:37:22 ID:wdKB.9Y60

「よくも仲間をやってくれたわね!」

瑞鶴は弓矢から召喚した艦載機を飛ばして一塁へ向かうデストワイルダーを止めようとする。
しかし、デストワイルダーには秘策があった。
デストワイルダーはなんと地面に潜り込んだではないか。

「地面に潜り込んだ?」
『いったい何が……?』

翔鶴は警戒してチップをいつでも使える準備をしていたが、突如消えた相手に困惑。
だがデストワイルダーはすぐに姿を現すことになる。
彼女のすぐ真後ろ、腕だけが出して一塁ベースにタッチする。


「はっ!」
『これで一塁はOK』

すぐさま翔鶴はバトルチップ、ソードを向けようとするが、彼女が攻勢に入るより早くデストワイルダーは再び姿を消す。

「これはいったい……」
『よく見て! そこらに何かキラキラしたものが落ちてる』
「これは――鏡の破片!?」

翔鶴が鏡の破片を発見した直後、今度はデストワイルダーの腕は二塁に現れ、塁にタッチだけして鏡の破片に消えていく。

これはミラーモンスターが使える固有能力。
鏡の世界であるミラーワールドへの通行である。
デストワイルダーは攻守交替前にこっそりと鏡の破片をバラまいており、いざ自分が走る際に能力を活かせるように用意していたのだ。

『「アイエエエ……姿が出てこないと攻撃ができない!」』

イマジンスレイヤーが嘆くような声を出すのも無理はない。
鏡の世界にさえ潜ってしまえば、誰も攻撃はできない――ラオウやハクメンでさえそれは同じである。
そして誰にも攻撃されることなく、塁だけ触れて進軍しようというのだ。

「猫が……汚え真似をしやがって!」

右腕は粉砕されたものの、辛うじて生きていたMEIKOは意識を手放す前に左手でボールを拾って送球し、三塁にクロえもんに届けようとする。

「よし、これで……三塁への進軍は止めることが……」

イマジンスレイヤーはデストワイルダーの進行を止められたことに安堵する。
いくらな鏡の世界を移動してもルールはルールなので、セーフになる前にボールを送られた塁に進むことは許されない。




その一瞬の油断が、イマジンスレイヤーにとっての命取りとなった。

601悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:38:00 ID:wdKB.9Y60





『お館様…後ろだ!!』
「なに!?」

三塁に行ったとばかり思われていたデストワイルダーは(ミラーワールド側の)二塁周辺に留まっており、背後から塁を守るイマジンスレイヤーにフェイント奇襲をかけたのだ。
これには聖帝軍側も驚く。

「待て、デストワイルダー!」
「そんな作戦じゃなかったハズ」

サウザーと闇の戸惑う声が聞こえるが、デストワイルダーはあえて無視した。


(この時をずっと待っていた……聖帝軍の皆には本当に申し訳ないが俺にとっては野球より仇討ちだ。
俺のご主人様である新城直衛を殺した恨み、ここで晴らさせてもらうぞ!)

デストワイルダーの目的は最初から聖帝軍に点を与えることではない。
真の目的は主を殺めたイマジンスレイヤー・上条とシャドーマンを葬ることであり、復讐の機会を文字通り虎視眈々と狙っていたのだ。

『「クソッ、ムラマサブレード!!」』

反応が遅れたイマジンスレイヤーもまた、咄嗟にチップをスロットインし、召喚した刀で反撃。
虎の二つの爪と忍者の刀が交差する。

黒猫がボールを受け取った瞬間と同時に、一つの因縁に決着がついた。



100tを越えた虎の爪の直撃は、イマジンスレイヤーに大打撃を与えた。
上条の胸に大きな爪痕が残り、血しぶきが飛び出す。
――しかし、皮一枚の差であるが殺すには至らなかった。
クロスフュージョンで生み出された甲冑が彼を致命傷から守ったのである。

だが。

「シャ、シャドーマン……」
『ガガ……申し訳ないお館様。拙者はここまでのようです……ガガガ――』

高いダメージはイマジンスレイヤーのクロスフュージョンを解除し、デストワイルダーはすかさず二撃目を叩き込んだ。
その結果、ネットバトラーである上条は直感的に躱したものの、避けそこなったPETには直撃し大破させた。
そうなればシャドーマンが命を失うのは自明の理であった。

『お館様、あなたとの旅と時間、誠に有意義なものでした……どうか生き延びて――サヨナラ!!』

ティウンティウン……――
シャドーマンの入ったPETは彼に遺言を残すだけの猶予を与えた後に、爆発四散した。

「そんな……シャドーマン……」

上条は親友を守れなかった後悔を覚えながら、地面に倒れて意識を失った。

『殺せたのは片割れだけか……』

シャドーマンを葬り上条を倒したデストワイルダーも無事ではなかった。
その胸には深々とムラマサブレードが刺さっており致命傷だ。
刺し違えたのである。

『すまない、主様、姐さん、ふなっしー、聖帝軍の皆……』

デストワイルダーは聖帝軍のベンチを一瞥し、謝罪の意味を含めた視線を向けた後に爆散してこの世から消えた。
拳王軍・聖帝軍、双方からの悲嘆の声が聞こえる。

その中でも特にロックマンは倒れた仲間やシャドーマンの死に大きな精神的打撃を受けていた。

『そんなシャドーマンが……せっかく大災害を生き延びたネットナビ仲間だったのに……!
ディおじさんやMEIKOおばさん、ジョジョまで傷つき倒れるなんて』
「…………」

兄の嘆きを間近で聞く翔鶴は、何も言えなかった。

602悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:38:45 ID:wdKB.9Y60



「これ以上の損失は痛いわね……宝玉輪を使いましょう」

拳王軍一同がベンチに入った時、瑞鶴はダメージを追いすぎた拳王軍を集団全回復させることができる宝玉輪をディパックから取り出す。
ルール的に既に退場済みのハクメン・ディオは無理だが、今なら上条とMEIKOを戦線復帰させることも可能であると考えたからだ。

「待て、それはまだ使うな」
「どうして? 今もったいぶってる場合じゃないでしょ?」

だがラオウは使用をやめさせる。
不服な瑞鶴にラオウはその理由を解いた。

「聖帝軍側を見てみろ、応急手当以外は誰も回復していない。
傷を治す術や道具がないのだろう」
「それが?」
「ここで我らが傷を治したら対等の戦いができなくなる。
それでは面白くない。
人数もちょうど六対六、今ぐらいがちょうどいいではないか?」

一瞬、ラオウが何を言いたいか瑞鶴にはわからなかった。

「拳王さん、これはスポーツじゃないわ!殺し合いよ!」
「殺し合い以前に野球だ。
それに聖帝軍を倒した後には、ヘルヘイムにイチローチームにドラゴンズも控えている。
聖帝軍は今まで戦った中で間違いなく最強の野球チームだが、同時に回復なしで挑まなければならぬ壁だ。
この壁を乗り越えられぬようでは、他の連中に勝つのも夢のまた夢」
「なんて……底抜けな野球脳なの」
「褒め言葉か?」

思わず本音が漏れしまうほどのラオウの野球脳ぶりに呆れる瑞鶴。
だが攻めのプニキ・守りのMEIKOを失ったりと拳王軍が不利なことには限らないので、何人かラオウに反対してくれれば回復を実行できたが。

「俺はラオウに賛成だ。
奴らも高津さんが死に、サウザーも負傷している。向こうもだいぶ疲れてるようだし十分やれるだろ」
『宝玉輪みたいな貴重な回復アイテムはせめて向こうが使ってくるまで温存した方が良いと思うね』
『瑞鶴の言いたいこともわかるんだが、敵も何か隠し種を残してないとも限らんしな』
「僕もラオウくんに賛成です。
イチローさんに勝つためには試練を自分たちに与えて強くなる必要があると思いますから」
『インドラ(賛成)』
「ちょっと! なんでメーガナーダまでそっちにいるの!?」

残念ながら野球脳にすっかり侵されている武人気質な拳王軍のほとんどがラオウを支持。
命欲しさよりもプライドを選んだのだ。
これでは瑞鶴も諦めざるを得ない。

「わかったわ。でも相手が何かで回復したら使わせてもらいますからね!」
「よかろう」
「ビッグサイトで提督さんも待っているんだから、余計なプライドのせいで死ぬわけにはいかないんですからね!」

渋々退いた瑞鶴だったが、そんな彼女に翔鶴は一声かける。

「大丈夫よ瑞鶴」
「翔鶴、姉…?」
「勝つための手立てはこの手の中にあるから」

瑞鶴に表情を見せぬまま、翔鶴はバッターボックスに向かう。
次は5回表。拳王軍の攻撃だ。
二塁を担っていたデストワイルダーがいなくなってしまったため、聖帝軍は仕方なくここは空白とした。
中央の穴はセンターのガンダムに補ってもらうしかあるまい。

603悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:39:28 ID:wdKB.9Y60

(む?さっきまでと雰囲気が違うぞ。この女)
(野球が得意な気はしなかかったですけど、この目つきは……こちらは二塁までいなくなってますし、警戒するに越したことはないですね)

纏うオーラが変わった翔鶴に、バッテリーを組んでいたサウザーと闇は特に警戒する。
そして闇はボールを投げる中、クロスフュージョンしているロックマンと翔鶴は、融合しているが故に周囲には聞くことのできない心の中の会話を交わす。

(……彩斗兄さん)
(翔鶴?)
(私がもしダークチップを使うことを躊躇わなければ、サウザーを轟沈させることができて、ディオさんやジョジョさんも傷つかず、シャドーマンさんも死ななかった。
でも、ダークチップを使いたくなかったのは兄さんが悪の心に染まってしまうのが怖かったから、どうしても手が震えていました)

一球目、乾いた音と共にワンストライク。


(……でも気づいてしまったんです。
仲間が傷つき倒れ、死んでいくことに悲しむ兄の表情は見たくないと。
悪の心を持たれるより悲しまれた方がずっとずっとココロが痛かったのです)
(翔鶴……)

二球目、緊張の中ツーストライク。
翔鶴に大きな動きはない。表向きは。

(だから仲間を守り、あなたを悲しませないためにダークチップを使わせてもらいます。
クロスフュージョンをしているなら、私も心に影響を受けるはず)



(一緒に悪に堕ちましょう、ロックマン)
(……ああ、二人でね)

三球目直前、翔鶴の目に漆黒の殺意が宿ったことを、敵味方共に確認した。
闇が投げる直前にダークチップをスロットインした所を目撃したベンチのデューオは声を荒げて止めに入ろうとするが、クロえもんに止められる。

『駄目だ、ダークチップを使うなんて』
「止めるんじゃねえデューオ!!」
『しかし……』
「あれは奴らの覚悟の上の行動だ。その覚悟を俺たちが踏みにじっちゃいけねえ!」




『「ダークサンダー!」』

翔鶴は電気玉を射出した。
闇は電気玉を避けてから投げようとするが。

「この電気玉、追尾してきて……きゃあああああああああ!!」
「闇ぃーッ!」

ダークサンダーにはホーミング性と、一定時間の感電麻痺効果を持っている。
そんな力の入りようがない体勢で打てば球速が出るわけもなく、翔鶴は遅くなった球を打とうとするが、その前にチルノは翔鶴の目の間に氷の壁を張って打つことを妨害しようとする。

「よくも闇を……打たせないよ!」
「無駄ですね、ダークソード!!」
「なん……だと!?」

翔鶴はバットから持ち替える形でダークソードを召喚し、その広い範囲と高い威力で氷の壁ごと、野球ボールを打った。
砕けた氷がチルノに襲い掛かる。
氷の要請なので氷属性の攻撃、しかも自分が生み出したものは効かないが、無数の氷の礫に紛れたボールをキャッチし損ねてしまう。

「しまった! ボールが!!」
「あれは俺たちが取りにいく!」

センターのガンダムがバーニアを吹かし、レフト側に落ちた打球を取りに向かった。
翔鶴はその隙に一塁へ走り出すが、今度は鎧武が迎撃態勢に入っている。
平等院をも殺害した仮面ライダー――簡単には通してはくれないだろう。

『「ダークステージ!!」』
「なんだ……足元が毒沼に!」

敵地をダメージトラップに返るチップの力により鎧武のいる一塁と周辺が一瞬で毒沼になった。
毒沼は酸をかけたように鎧武の具足を溶かしていく。

「あっ、足が……」
「止むを得ん、一塁を放棄しろ紘太!」
「すまない」

鎧武をジャンプをして一塁から離脱する。
その間、翔鶴は対大尉戦でも見せた飛行能力を駆使して毒沼の影響を受けずに通過。
毒沼にプカプカ浮いている一塁ベースに軽くタッチし二塁を目指す。

604悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:39:57 ID:wdKB.9Y60

「うおおおおおお、させねえ!!」

二塁へ向かう途中、打球を拾ったガンダムがこちらを阻止するために向かってくるのが見えた。
球を握る手ににはプニキやハクメンと打倒したビルドナックルが輝いている。
翔鶴はまずダークサンダーを放つが、アブソーブシールドに吸収されて効かない。

『どうやらあの盾、エネルギー弾は吸収するシールドみたいだ』
「だったらこれはどうですか!ダークトルネード・スロットイン!」

突如翔鶴の周りに竜巻が発生し、ガンダムを避ける間も与えないまま呑み込んだ。

「わあああああああ」
「か、風は物理攻撃!アブソーブシールドじゃ吸収できない!」

コクピットの中でもみくちゃになるレイジとイオリ、情け容赦のない竜巻はガンダムの装甲をガリガリと削り、二塁の前でその巨体をズシンと倒した。

「プニキさんの仇です。ここでトドメを……くっ……!」

倒れたガンダムを討てるまたとない機会と思い、翔鶴は容赦なくトドメを刺そうとする。
しかし、次のチップを選ぼうとした瞬間、翔鶴の腕にずきりと痛みが走った。

「これがバグ…!」

ダークチップ使用を決断する前に兄であるロックマンから教えられたのだが、ダークチップは心を悪に染めるデメリットの他にダメージや挙動をおかしくするバグも存在する。
ダークソードなら勝手に前進。ダークバルカンなら混乱。
ダークサンダー、ダークトルネードならチップ選択時にダメージ。
ダークステージなら選べるチップが一枚減少する。
などという風に、ロックマン及び翔鶴自体もダメージを受けるのだ。

ちなみに一回使う度にHP上限が1ずつ減るというものもあったりするが、二人ともダイジョーブ博士の魔改造&裕一郎さんのぶっ飛んだ技術でHPがめちゃくちゃ高くなってるのでそんなに苦にはなってない。

「くっ、うおおおおおお!!」
「しまった!」

動揺で翔鶴の動きが止まったのを見て、レイジはコンソールを動かし、ビルドナックルを叩きつけた。

「ダメージなし!!? なんて硬さだよ!」
「防御されていたとはいえ、あんな細い体のどこにあんな力が!」

翔鶴は直撃を肩当てで防ぎダメージはなかったが、触れられてしまったのでアウトではあった。

「ふっ、私もまだまだですね」
『大丈夫、初使用でこれだけ使えたんだから、今度はもっと効率よく相手をいたぶれる』
「そうですね、敵を殲滅して皆殺しにできるぐらい、チップの使い方に慣れなくては」

さっそく、ダークチップによる心の汚染はロックマン、そして繋がっていら翔鶴に現れていた。
ことの深刻さに頭を悩ますデューオ、その横では瑞鶴がぼそりと呟いた。

「そう……それでいいのよ翔鶴姉……あなた自身が生き延びるためにも」

605悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:40:52 ID:wdKB.9Y60



「大丈夫か、みんな!?」
「麻痺はもう抜けました…やれます」
「俺も大した怪我じゃない」
「俺もガンダムも動けるがイオリが……」
「死んだの!?」
「いや、僕はまだ生きてはいるよ……ただ、足の骨を折ったみたいで動けない」
「イオリは残念だが退場するしかあるまいな」

イオリは先の攻撃でコクピットの中で右足を折ったため、退場となった。
犬牟田に抱えられてベンチに戻る前にイオリは闇に野球ボールを渡した。

「闇さん、これを使って」
「これは……?」
「次のバッターは高津さんさえ容易く打たれたムネリンだ。そのボールはあの人への対抗策になる」


拳王軍側の次のバッターは川崎宗則。
この男は守備のみならず高津からも度々、打球を勝ち取った男でもある。
高津亡き後、技術では劣る闇がピッチャーでは勝てるハズがない。
……そう考えていた時が拳王軍にはありました。

結果だけ先に言ってしまうと、この回のムネリンは見逃し三振でバッターアウトになってしまった。

「おい! なんで打たなかった宗則!?」
「うてませぇーーーーん! だって相手の野球ボールには……」

某バナージみたいな絶叫を上げたムネリンが指をさしたのは闇が投げていたボール。
それはイチローの凛々しい笑顔をプリントされた野球ボールであった。
イチローラブのホモがこれを打ってしまうとイチローの顔に傷がつくと思って打てなかったのだ。

「聖帝軍の野郎ども汚え真似しやがって!
てかおまえ、殺してでもイチローを取り戻すんじゃなかったのか?」
「顔は別です!」

このあと、憤慨するクロえもんからげんこつをムネリンはもらうことになった。



「あれを見ているとやはり愛などいらんと思うわ」
「それに関しちゃ俺も同感だぜ、聖帝軍の大将さん」

あまりのホモホモしさに敵ながら呆れかえる聖帝と、バッターボックスに入ったクロえもん。
闇は五回表、三番目の打者であるクロえもんを相手に投球を投げた。

「さっきまでは高津さんに翻弄されたが、今後はそうはいかないぜ!」

クロえもんの打法は得意としているブラックホール打ち。
ただ、今度の打ち方は以前よりも早く真空が発生し、さらにチルノによるボールの周りに張られた氷の幕も剥がしていった。

「アタイの氷が!」
「同じ手法がいつまでも通用すると思うなよ!」

そしてクロえもんは打った。
彼の周辺が激しい暴風に襲われる。
元々が野球選手だけに制球力は抜群。
予測では横浜スタジアムの電光掲示板に直撃するコース

606悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:41:27 ID:wdKB.9Y60

――そのはずであった。

「残念だったな」
「え? 畜生ーーーッ!!!」

打った直後にキャッチャーであるはずのサウザーが彼の目の前に回り込み、飛ぶはずだった彼の打球をキャッチしたのだ。

「ブラックホールによる吸い寄せによるホームランを狙うのは予測ができた。
後はバットの動きを見て俺が先に取れば良いだけのことよ」
「暴風はどうした!?」
「俺が風より早く動けば問題はない。先入観と打球自体の攻撃力が低かったのが貴様の敗因だな」

クロえもんの失敗は、サウザーが言った通りラオウやムネリンがやったような打球の攻撃力不足(決して低いという意味ではない)に、キャッチャーがバッターの後ろから動かないという先入観。
何よりもサウザーの異常な速さについてこれなかったことだろう。

これにてスリーアウトにより拳王軍五回表の攻撃は終わる。
次は聖帝軍の攻撃である五回裏だ。




聖帝軍側のベンチにて。

「はあはあ……」
「くッ……」
「みんな疲れが溜まっているようですね」
「頑張れみんな、あと一息だ。
次は五回裏。仮に一点でも勝ち取り六回表も防衛しきれば我らの勝利は確定になる!」

聖帝軍の疲労、消耗はピークに近づきつつあった。
もはや稼働できる選手は5人しかおらず、他は負傷退場か死亡している。
サウザーも元気にふるまっているが、胸の穴は簡素な応急処置で出血を防いでいるだけだ。



ならば拳王連合軍は余裕かと思えばそうではない。

拳王連合軍も動ける選手は一気に6人まで減り、ピッチャーであったMEIKOも負傷退場。
その他の選手はほぼ全員気絶している。
総合的な消耗具合は聖帝軍と大差がなくなってきている。

何より拳王軍が聖帝軍に対して危惧していることは。


「まずいですね、彼らは試合の中で急速に成長してきてます」
「さっきのサウザーの芸当……最初からやれば多くの打球も取られてただろうに、今まで使ってこなかった。」
「インドラ?」
「つまりねメーガナーダ、サウザーは今まで打った直後に取るなんて技はいままで使えなくて、成長によって今使えるようになったのよ」

聖帝軍の試合中の成長は凄まじく、消耗してなお強敵に感じるのだ。

「気を抜くな皆のもの、あと一息だ。
六回表までに聖帝軍が覆せぬほどの点をもぎ取れば我らの勝利は見えてくる」
「「おう!」」「インドラ!」

ラオウの言葉に残った4人と1匹は戦意を高める。
そしてチラリとベンチで眠るMEIKOを見た。
右腕を失った傷の痛みで苦しそうだが、眠っている。

「待っておれMEIちゃん、うぬが休んでいる間に必ず拳王軍を勝利させてみせる!」

それから聖帝軍側のベンチを見て、彼らと仲間たちに宣言した。

「さあ、天よ刮目せよ、本当の戦いはこれからだ!」




【シャドーマン@ロックマンエグゼ 死亡確認】
※デストワイルダーは支給品のため死亡者リストに乗りません

607悪に堕ちる、誰のために? ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:41:52 ID:wdKB.9Y60


               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番レフト
(考え中)        5番ピッチャー
メーガナーダ       6番センター
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
             8番セカンド
             9番ライト




『聖帝軍 布陣』

             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
             5番ライト
             6番セカンド
             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード




【二日目・23時00分/神奈川県・異世界横浜スタジアム】
※あと30分で異世界は消滅。
 それまでに点数が低いチームが消滅する異世界に閉じ込められるため、負けたチームは全員死亡します(移籍した場合は不明)


【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】

【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
※負傷・気絶等により退場

608 ◆e2JqZMvQtM:2020/04/14(火) 07:42:33 ID:wdKB.9Y60
投下終了です

609迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 09:58:32 ID:kH8RENa20
テラカオス・リリカルによる黒き獣討伐に失敗した九州ロボの主催陣営。
焦燥の中、成層圏で待機するココとメフィラス星人を待っていたのは、更なるバッドニュースであった。

指令室で受け取れる情報に、ココは動揺を隠せなかった。

「ジャックたちが全滅した…!?」
「ええ…兵隊含めて一人残らず皆殺しにされたようです。
 問題のフォレスト・セルは未だ健在…ほぼ無傷のようです」

元々、攻めるには少なすぎる戦力であるとジャックも言っていたが、決して弱者ではない――むしろ装備も含めれば理不尽級に匹敵するだろう四人が、フォレスト・セルに少しの打撃も与えられずに全滅するとは二人も思わなかった。
主催四人が弱いのではない、あまりにもフォレスト・セルと都庁の軍勢が強くなりすぎていたのである。

「なんてこと…これでは紫が守りたかった幻想郷も…」
「博麗結界が消滅したため、たったいま消滅しました。
 元々、カオスロワのために住民や妖怪は追い出していたようですが、彼らが帰れる場所はもうありません」

博麗結界は殺された紫と博麗の巫女がいないと維持できない結界だ。
博麗の巫女の方はどこかから調達するなりすれば良いと紫は言っていたが、スキマ妖怪たる紫はそうはいかない。
幻想郷として結界に囲われていた場所もこのままでは黒フロワロに飲み込まれるだろう。
都庁の軍勢は何も知らずに戦っているだけなので、ココらはジャックたちが殺されたことを恨みはしないが、せめて彼らが真実に気づきフォレスト・セルだけでも大人しく死んでくれたら…という考えが頭によぎる。





ちなみにココたちは、大災害を引き起こした黒幕の正体を未だに知らず、フォレスト・セルも古代グンマ―が遺した世界を滅ぼすための装置であると未だに勘違いしている。
なぜなら唯一の情報収集テーブルであるカオスロワちゃんねるが、真の管理人であるサーフの手によって重大な情報が届かないようになっているからだ。
首輪には盗聴装置もあるが、都庁の軍勢やネームド狂信者は首輪を既に解除しており、また首輪を解除していなかったルルーシュやモブ狂信者もディーがいずれ敵対するであろう主催に情報を渡さないために集音スピーカー部分だけ埋めたりして、完全には行き渡らないようにしている。
さらに自分たちは全ての真実を知っているという「思い込み」が、ココとメフィラスに真実の更なる追及をやめさせていた。

「フロワロの進軍、歪んだ器であるフォレスト・セルは健在、狂信者も戦況をひっくり返せるネオ・ジオングアーマーの存在……そしてアナキンとテラカオスがいるイチリュウチームの前には魔女の出現、ついでで拳王連合軍と聖帝軍が神奈川で行方不明」
「我々はこれからどうしたら良いんでしょうか…二人と兵士550人しかしないのに、いったいどこから手をつければいいのやら」

問題は黒き獣のフロワロやフォレスト・セルだけではない。
主催が問題に着手している間に状況は大きく動いていた。


拳王連合軍は聖帝軍は何らかのアイテムを使って横浜スタジアムから忽然と姿を消したらしい。

狂信者は邪竜すら簡単に捻りつぶせる超兵器を開発し、下手をすればテラカオスや救済の予言を叶える存在をまとめて皆殺しにすることも可能になった。
フォレスト・セルさえ抹殺できる代物だが、そう主催に都合よく動くとは思えない。
きっと狂信者は自分たちとクラウザー以外は全滅させるだろう。

イチリュウチームは魔女化した霧切の襲撃を受けて全滅の危機に瀕している。
全滅すれば貴重なテラカオスと野球チーム、そして潜伏中のリーダーであるアナキンを失う。
そうなればテラカオスと救済の予言を実行できる者がいなくなって大災害により世界は破滅である。

もはや黒き獣やフォレスト・セルを叩いただけでは、世界は破滅しかねない重大事件が各地で起きていた。
ココとメフィラスは情報を見ながら迷って、迷って、考え抜いた結果、次の行動を決定した。


「九州ロボを伴って千葉へ向かい、魔女を討伐。
 イチリュウチームとテラカオスを確保し、アナキンを救助しましょう」
「ココ嬢、他の問題はどうするんです?」
「限られた時間と人材で他の問題をクリアするためにも、最初にイチリュウチームとテラカオス・ディ―ヴァを助ける必要があるのよ。
 狂信者の超兵器も一度以上使ってビッグサイトにひっこめたところからして、まだ未完成か発射に大きな制限があると思う。
 黒フロワロは本州の人間が多く死ぬでしょうけど、九州ロボに格納されている一般人だけでも世界の復興自体は可能。
 九州ロボのフルパワーならフォレスト・セルに勝てる可能性もあるかもしれないけど、相討ちや負けて数少ない器足りえる巨像を失うのもまずいので今は保留」

610迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:00:21 ID:kH8RENa20

黒フロワロ放置はココたちでは止める手段も情報もなく、放置する他あるまい。
間違いなく多くの参加者が死ぬことになるが、もはや野球チームと巫女、歌に器とテラカオスが残りさえすれば、九州ロボで眠っている住人による聖別後の復興が約束されるので、残酷だが致し方ない判断とした。
狂信者に関してもココが思っていたこととだいたい合っており、すぐに動かせず連射できない事情があったのだ。

「だけどイチリュウチームだけは本当に猶予がない。
 あそこが全滅すれば代わりの野球チームを用意する時間もないし、あのチームには条件次第では惑星破壊攻撃も可能なイチローやナッパなど都庁の軍勢にも勝てる見込みがある戦力が残されているわ。
 むしろ、一番安全に手を組める対主催勢力はここしかないわ」
「場合によっては手を組むと?」
「世界のためになるなら降伏してアナキン共々傘下に下っても良いと考えてるわ」
「傘下って…まあ、確かにテラカオスの完成度具合を考えれば参加者と争う意味も、これ以上殺し合いを強制する意味もないですが」
「あそこは人格的にも世界を滅ぼそうと考えている人物はいないし、安心して殺し合いの真実を打ち明けることもできる」

だがここでメフィラスは疑問を浮かべる。

「しかし、私たちがイチリュウチームの救助している間、他の問題はどうします?
 他は諦めるとして、フォレスト・セルと狂信者の超兵器は健在で放置は危険だと思いますが…」

ココは神妙な面持ちで答えた。

「ええ、だからテラカオス・ディ―ヴァと『器足りえる巨像』――この九州ロボを融合させ、パワーアップさせるわ」
「なんですと……?」
「そしてパワーアップしたディ―ヴァで、DMC狂信者、フォレスト・セルを一掃する。
 そうしたら後は野球チームに試合をさせてテラカオスの成長を促し、黒き獣を倒して救済の予言を完遂させればいい」


救済の予言の一説にもある器足りえる巨像とは、テラカオスを強化させるためのツールである。
生物と機械、グンマ―とミヤザキの違いはあるが、フォレスト・セルと九州ロボは元は姉妹品である。
仮にミヤザキの血を引いていた裕一郎の腕前が本物なら、テラカオス・ディ―ヴァとも融合して強化し、世界を救う邪魔をするものを一気に倒せるはずとココは睨んだのだ。

「机上の空論です!
 ロックマン・エックスが映像で言っていたとはいえ、融合でどこまでパワーアップできるかは未知数ですし。
 最悪、貴重なテラカオス・ディ―ヴァや九州ロボまで失うでしょう。
 九州ロボのファクターでありリンクしているあなたへの影響も計り知れません!」
「部の悪い賭けなのは承知の上よ、でも私たちには戦力も手札ももう残されてない。
 何も知らない都庁の軍勢がいつ、千葉へと向かってテラカオスを討伐……もしくは助けるつもりでフォレスト・セルの口の中に突っ込まれ、テラカオス因子を浄化されようものなら世界は一貫の終わりよ!
 残された時間じゃ次のテラカオスが生まれるのは望み薄、だったら私の命を犠牲にしても良いから、テラカオスと救済の予言を達成する者を守るべきよ!」
「それは確かに……」

ココの考えは理想も入り混じった空論なのは確かだが、実際に(フォレスト・セルの危険がなくなったことを知らなければ)打てる手は限られているので僅かでも可能性がある方に手を伸ばすしかない。

溺れる者は藁をもつかむのだ。


「待ってください制御はどうするんですか?
 巨像は制御する巫女がいて、初めて真価を発揮するという話ですが」
「私なら祈りの巫女が務まる…と言いたいところだけど、たぶん違うわね。
 こっちも賭けにはなるけど、候補は一人だけいるわ」

ココはモニターに、参加者の中で確実に巫女になれる存在を映す。

「拳王連合軍の艦むす…翔鶴!」
「裕一郎が九州ロボと共に作った最後の遺産……ミヤザキの巫女である彼女にかけるしかない」

ミヤザキの血を継ぐ裕一郎が、先祖に仕込まれた遺伝子によって無意識に造り上げた機械の巫女・艦むす。
ココの中で巫女足りえる存在は彼女しか考えられなかった。

ちなみに既に会場には瑞鶴や榛名など別の艦むすも存在するが、瑞鶴はサーフの工作で存在が隠蔽されており、榛名は深海棲艦から蘇ったばかりでココは知らず、そもそもエントロピー量が翔鶴と比べれば低いため、目に入らなかったのだ。

611迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:00:22 ID:kH8RENa20

黒フロワロ放置はココたちでは止める手段も情報もなく、放置する他あるまい。
間違いなく多くの参加者が死ぬことになるが、もはや野球チームと巫女、歌に器とテラカオスが残りさえすれば、九州ロボで眠っている住人による聖別後の復興が約束されるので、残酷だが致し方ない判断とした。
狂信者に関してもココが思っていたこととだいたい合っており、すぐに動かせず連射できない事情があったのだ。

「だけどイチリュウチームだけは本当に猶予がない。
 あそこが全滅すれば代わりの野球チームを用意する時間もないし、あのチームには条件次第では惑星破壊攻撃も可能なイチローやナッパなど都庁の軍勢にも勝てる見込みがある戦力が残されているわ。
 むしろ、一番安全に手を組める対主催勢力はここしかないわ」
「場合によっては手を組むと?」
「世界のためになるなら降伏してアナキン共々傘下に下っても良いと考えてるわ」
「傘下って…まあ、確かにテラカオスの完成度具合を考えれば参加者と争う意味も、これ以上殺し合いを強制する意味もないですが」
「あそこは人格的にも世界を滅ぼそうと考えている人物はいないし、安心して殺し合いの真実を打ち明けることもできる」

だがここでメフィラスは疑問を浮かべる。

「しかし、私たちがイチリュウチームの救助している間、他の問題はどうします?
 他は諦めるとして、フォレスト・セルと狂信者の超兵器は健在で放置は危険だと思いますが…」

ココは神妙な面持ちで答えた。

「ええ、だからテラカオス・ディ―ヴァと『器足りえる巨像』――この九州ロボを融合させ、パワーアップさせるわ」
「なんですと……?」
「そしてパワーアップしたディ―ヴァで、DMC狂信者、フォレスト・セルを一掃する。
 そうしたら後は野球チームに試合をさせてテラカオスの成長を促し、黒き獣を倒して救済の予言を完遂させればいい」


救済の予言の一説にもある器足りえる巨像とは、テラカオスを強化させるためのツールである。
生物と機械、グンマ―とミヤザキの違いはあるが、フォレスト・セルと九州ロボは元は姉妹品である。
仮にミヤザキの血を引いていた裕一郎の腕前が本物なら、テラカオス・ディ―ヴァとも融合して強化し、世界を救う邪魔をするものを一気に倒せるはずとココは睨んだのだ。

「机上の空論です!
 ロックマン・エックスが映像で言っていたとはいえ、融合でどこまでパワーアップできるかは未知数ですし。
 最悪、貴重なテラカオス・ディ―ヴァや九州ロボまで失うでしょう。
 九州ロボのファクターでありリンクしているあなたへの影響も計り知れません!」
「部の悪い賭けなのは承知の上よ、でも私たちには戦力も手札ももう残されてない。
 何も知らない都庁の軍勢がいつ、千葉へと向かってテラカオスを討伐……もしくは助けるつもりでフォレスト・セルの口の中に突っ込まれ、テラカオス因子を浄化されようものなら世界は一貫の終わりよ!
 残された時間じゃ次のテラカオスが生まれるのは望み薄、だったら私の命を犠牲にしても良いから、テラカオスと救済の予言を達成する者を守るべきよ!」
「それは確かに……」

ココの考えは理想も入り混じった空論なのは確かだが、実際に(フォレスト・セルの危険がなくなったことを知らなければ)打てる手は限られているので僅かでも可能性がある方に手を伸ばすしかない。

溺れる者は藁をもつかむのだ。


「待ってください制御はどうするんですか?
 巨像は制御する巫女がいて、初めて真価を発揮するという話ですが」
「私なら祈りの巫女が務まる…と言いたいところだけど、たぶん違うわね。
 こっちも賭けにはなるけど、候補は一人だけいるわ」

ココはモニターに、参加者の中で確実に巫女になれる存在を映す。

「拳王連合軍の艦むす…翔鶴!」
「裕一郎が九州ロボと共に作った最後の遺産……ミヤザキの巫女である彼女にかけるしかない」

ミヤザキの血を継ぐ裕一郎が、先祖に仕込まれた遺伝子によって無意識に造り上げた機械の巫女・艦むす。
ココの中で巫女足りえる存在は彼女しか考えられなかった。

ちなみに既に会場には瑞鶴や榛名など別の艦むすも存在するが、瑞鶴はサーフの工作で存在が隠蔽されており、榛名は深海棲艦から蘇ったばかりでココは知らず、そもそもエントロピー量が翔鶴と比べれば低いため、目に入らなかったのだ。

612迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:02:09 ID:kH8RENa20

「メフィラス、私たちに残されている時間は残り少ない。
 私と九州ロボが先に千葉へ向かい、魔女の討伐…倒せなくとも足止めはする。
 その隙にあなたは横浜に向かって、翔鶴を九州ロボに連れてきて」
「方法は?」
「拉致、交渉…方法は問わないわ。
 殺し合いの真実を話しても構わないし、降伏を要求されたらそれでも良い。
 とにかく巫女の確保と、拳王軍に野球をさせることが最優先よ。生きてたらだけどね」
「仮に九州ロボと翔鶴が融合できたら、魔女やフォレスト・セルにも勝てるでしょうか…?」
「オッズの見えないギャンブルだけど、私たちには賭けを降りることも負けることも許されないのよ。
 ジャック、バーダック、幽香、紫、織莉子、キリカ、デウス、ビアン博士、大尉、風魔、新城、クラウディウス、ヤン、メディア、黒、クルル、biim、メガヘクス、あとニャルなんとか。
 これまで死んだみんなの犠牲を無駄にするわけにはいかないわ」

この場にいないアナキンを除く、最後の主催たちの方針は決まった。
ココ及び九州ロボはテラカオスとイチリュウチームの救助。
メフィラスは翔鶴の確保を行い、九州ロボに送ること。
少なくとも二人にはそれしか生き延びる道はないと思えた。

「さて、出発……する前にやるべきことがあるわね」





九州ロボが千葉方面へ向かう前に、ココとメフィラスは今までスパークドールズと化していた八坂麻尋をダークスパークで人間に戻し、さらにかつて九州ロボ上で労働力として使い冷凍睡眠させていた無数のモブ参加者たちを、今は使わなくなった脱出艇ASO-3に搭載。
さらにこれまでの激しい戦いで傷つき、戦意を失い、かつ人格的に問題がなく裏切らず無益な殺生をしないモブ兵士もといストームトルーパーにASO-3に乗って九州ロボを降りる許可を与えた。

「さよなら麻尋キュン、大災害を乗り切った後の世界でも生きていてね…」

これからの戦闘で九州ロボが被害を受けない可能性は限りなく低い。
本州の人間は戦闘や黒フロワロで最悪全滅に追い込まれることもありうる中、未来の復興を担う人材まで失うわけにはいかない。
そのため、麻尋やモブ参加者たちをASO-3に乗せて最も被害が出にくいと思われる日本海側に退避させることにしたのだ。
麻尋含めた彼らは殺し合いが終わるその時まで冷凍睡眠で眠らされ続ける。

またモブ兵士は一般人の護衛と同時に、テラカオス生産に必要なファクターであるストレスの生産装置もとい定時放送を行わせるため、彼らに放送に必要な機器とベイダーの服とボイスチェンジャーを渡しておいた。
これなら九州ロボが轟沈しココ、メフィラス、アナキンが死亡しても放送は続けられるだろう。

「それじゃあ、行くわねメフィラス」
「ココ嬢、ベイダー卿…アナキンと共に生きてまた会えることを願っていますよ」
「ええ、ありがとう」

ワープ装置の上に立ったメフィラスはココの最後に見るかもしれない笑顔を見た次の瞬間には、神奈川県に降り立っていた。
直後に九州ロボは成層圏から千葉へと降下していく。
その九州ロボの背中は、どこか乗り手と同じように、悲壮な覚悟を写していた。

613迷走のヨルムンガンド:2020/04/20(月) 10:02:37 ID:kH8RENa20





【二日目・23時30分/成層圏 九州ロボ】


【ココ・ヘクマティアル@ヨルムンガンド】
【状態】健康、九州ロボのファクター、ショタコン、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】九州ロボ、ライトセーバー@STAR WARS、拳銃
【道具】商品(兵器)、モブ兵士×500、ダークスパーク
    主催倉庫から持ち出した無数の支給品、力を失ったドラゴンボール、千年タウク@遊戯王
【思考】基本:ヨナ達を奪った大災害を防ぐべくテラカオスを成長させ完成に導く計画を遂行する
0:九州ロボで魔女霧切に襲われているテラカオスとイチリュウチームの救助に向かう
1:計画のために殺し合いを促進させ、計画の邪魔をするものは撃つ
2:不足の事態に備えて予備のテラカオスを作り出すことも念頭に入れる
3:世界のためならイチリュウチーム相手に真実を打ち明けることや降伏することも視野に入れる
4:真尋キュン、どうか生きていてね…
※シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※倉庫内に黒フロワロに対抗できる解毒薬はありません
※カオスロワちゃんねる一派の工作により、榛名が打ち明けた黒幕の真実にまつわる情報が入っておりません
※九州ロボから脱出艇ASO-3を失いました


【二日目・23時30分/神奈川県 横浜】

【メフィラス星人@ウルトラマン】
【状態】健康、罪悪感、シャドウへの警戒(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、タイム風呂敷、ビックライト、とりよせバック
【思考】
基本:アナキン達に従い、世界滅亡を防ぐ
0:ミヤザキの巫女たる翔鶴の確保、そのために拉致または交渉を行う
1:↑が上手くいったら早急に九州ロボのココと合流する
2:尊い地球人が死ぬのは不本意だが、全滅回避のために多少の犠牲は止むなしと考えている
3:なるべく暴力は使いたくない
4:ところで遺跡の前のバサルモスの死体は結局なんだったのでしょう?
5:もう迷わない……主催陣営の一員として世界を守る
※シャドウの能力の一部(ラインハルト、サクヤ、VFD)及び負傷状態を認識しました
※カオスロワちゃんねる一派の工作により、榛名が打ち明けた黒幕の真実にまつわる情報が入っておりません




※スパークドールズ化の解けた八坂真尋、九州ロボに奴隷として働かされていたモブ参加者と50人ほどのモブ兵士がASO-3ごと日本海に降りました
 また、放送はここにいるモブ兵士が行うので九州ロボが破壊されても、主催が全滅しても以後の放送自体は継続されます

614目指せ完結:2020/04/20(月) 10:03:37 ID:kH8RENa20
>>610 >>611
間違えて連投してしまったみたいなので>>611はカットでお願いします

615創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:09:34 ID:3k2I6frk0
ゼロを送り出し、ようやく束の間の時間を得た都庁同盟軍。
しかしそれは断じて平穏な時間ではない。

「ダオスさん、カヲル君達はみんなの弔いに向かうみたいです……」
「……我々以外、残った戦力は全てそちらの護衛に回せ」

沈痛な面持ちの小鳥に対して、ダオスは苦々しげにその言葉を口にする。
なんとか狂信者の三度目の襲撃も、返り討ちにすることはできた。
しかしその犠牲は、あまりにも大きすぎた。

元々世界樹は力有る魔物が取り戻し、弱き魔物を匿う意味もあった。
そんな匿うべき魔物と助けられた少女達は、一人残らず殺されてしまった。
それだけではない。魔物を引っ張ってきた三竜、その最後の一人である氷竜までもが命を落としたのだ。

「ピイィィ……」

狂信者に捕まってしまい、肉盾にされていた魔物……新たな匿うべき存在も増えはした。
しかしその数と犠牲の数は決して釣り合うことはない。
自分達が捕まってしまったばっかりに、魔物の長たちは命を落としたのだとわかるだけに、助けられた彼らの表情も暗い。

遺体を弔うのも時間がかかるし、四度目の襲撃が無いとも限らない。
戦える魔物はいよいよ数が減り、これ以上の犠牲は絶対に避けねばならない。
だからこそダオスは、カヲル達をほぼ全ての戦力を連れた状態で弔いに向かわせざるを得なかった。


「……外は、私と神樹が見張りますわ」
「今度は容赦しねぇ。エリカが危険と判断したなら、躊躇わず黄昏撃ちこんでやるぜ」


確実に、狂信者も減っていることだろう。
そして力のない参加者は、小町の呼びかけで迂闊にはここを攻めない筈。
一時的に外敵排除の任はエリカと神樹に任せ、十数分だけダオスは世界樹の中で生存者達と顔を向きあわせる。


「……残ったのは、我々だけとはな」


ダオスの表情は晴れない。
無理もないだろう。カヲルの護衛についた魔物達、それにアルルーナとウォークライ。
彼らを除いた、人の参加者は……

「今はね! 大丈夫だって、聖帝様もゼロも絶対戻ってくるから!」
「ほむらちゃん達も、だよ」
「……影薄の子達もね」
「ええ、絶対に。でも確かに今は、私達だけなんですね……」

回復の要たるさやか。世界樹の巫女にして予言の一角まどか。自由に動ける最後の戦力レスト。
そして天ぷらに鎮魂歌やオーバーボディに気がつき、縁の下からこれまで同盟軍を支えてきた小鳥。
ダオスを含めても僅か5人。あまりにも、数が減り過ぎた。

616創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:10:08 ID:3k2I6frk0
仲間を弔いたいというカヲルと魔物達の気持ちはよくわかる。
外の警護、緊急時の長距離移動を考えると神樹とエリカは常に世界樹の傍で気を張らねばならない。
わかっている。わかっているが、たったこれだけの人数で新たに生じた問題を解決できるのか?


「お言葉ですが提督、微力ながら榛名達も」
「て、提督とは私のことか?」
「はい。まどかさんをそう呼んだら、現在のグンマ―勢力を指揮しているのは貴方とお聞きしましたので。
 榛名達艦むすにとって、命を預ける人のことは提督や司令官とお呼びするのが流儀なのです。
 ご、ご迷惑でしたか……?」
「……いや、好きに呼んでくれて構わない。そうだな、お前達もいたのだ。よろしく頼むぞ」


ここで、現代に蘇った古代ミヤザキの巫女、榛名も声をあげる。
追従するように4人の駆逐艦の少女も名乗りをあげた。
これで追加で5人。計10人となった。


「榛名ちゃん、私達が使っていたこのカオスロワちゃんねるも、黒幕の手で操作されているというのは本当なの?」
「はい。テラカオスに関する情報は勿論、サーフにとって不都合な情報は全て自動で消されるようプログラムされています。
 真実を広める、テラカオス誕生の阻害になるような書き込みに対しては、逆探知からの機器爆破までもが可能です」
「ひええぇ……操作ってそこまで根深いんですか!? ダオスさんが前に止めてくれなければ、私も危なかったんです」
「天魔王軍の情報操作を、さらに悪辣にした形だな。
 文明にかぶれすぎた人類にとって、情報の発信元を支配するということは半ば世界を支配しているとすら言えてしまう」

榛名の語るカオスロワちゃんねるの真の姿に小鳥は震えあがり、ダオスは忌々しいと吐き捨てる。
一体、どれだけの人間がこのカオスロワちゃんねるに踊らされ、消されてきたのか。もはや数えることは不可能だろう。

「しかし、いくら掲示板を操り電脳世界を掌握しているとはいえ、そこまでのこと。
 サーフとやらは安全地帯に引きこもり、外敵の排除もお前達に任せてきたのだったな?
 ならば我々が今直接見聞きしているような情報は、奴は絶対に持ちえない。掲示板の情報ではやがて不足することだろう」



「――労せずに全てを得ようなどと言う愚か者には、いずれ然るべき末路を迎えてもらうとしよう」



誰もが身震いするような殺気を放ちながら、ダオスは打倒黒幕の決意を固める。


「しかし現状、許し難い者であるのは間違いないが、全てにおいて優先すべき事項でもない」
「あれ、そうなの? あたしとしてはそのサーフって奴はぜぇったいにぶっ飛ばしたいんだけど?」
「予言の内容を思い出すのだ。いくら敵がミヤザキの末裔とはいえ、あらかじめ最良の戦士と勇者たるテラカオスは用意できまい。
 我々は黒幕の正体を知った以上、奴を始末するまでは予言の完成を行うことはない。
 ならば残された手段は、奴自身も表舞台に出てきて野球チームと接触するほかないだろう?」

617創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:10:50 ID:3k2I6frk0
ダオスの言葉に、一同は成程と声を漏らす。
榛名の告発により、少なくともグンマ―の巫女、器、歌は警戒して予言の実行を遅らせる。
サーフ側からすれば、ミヤザキの巫女、器、歌があるため痛くはないように見えるが、
グンマ―側が最良の戦士と勇者を獲得してしまうと、そのまま保護することに繋がる。
こうなるとサーフは野望を達成できず、結果として残る二つは自分で確保しに向かう必要が出てくるわけだ。

「そっか、いくら掲示板を支配しても現実を支配しているわけじゃないから、生きた野球選手たちは自分の足で会いに行かなきゃいけないんだね」
「その通り。たかが電脳世界だけで全てを支配できるなどという甘いことは無い。
 そして勇者を匿うイチリュウチーム。ほむらと合流できれば我らと共に動けるだろう」
「サウザーさんの聖帝軍もですね。あの人のスピードは、多分僕やマーラをも上回っている。拳王なんかに負ける筈がないさ」
「うむ。つまりサーフが野球チームに接触をすれば、やがて我らと接触することにも繋がるということだ。
 よって現時点で優先すべき問題は、その野球チームを脅かしかねない各地の異常事態となる」


黒幕以外の問題。これは黒幕とはまた違う意味で厄介なものしかない。
優先すべき問題であることはわかっていても、どうにも手の出しようがないものばかりなのである。


「まずは千葉方面の大きな魔力だが……」
「実はあたしさ、その魔力ちょっと感じれるんだよね。その……魔女の気配なのよ」
「魔女、ですか?」
「はい。あたし達魔法少女が戦って来て、やがて自分自身もそうなっちゃうみたいですけど……
 ほむらの話じゃ、無茶な魔力の消費や絶望しなければ、すぐには魔女にはならないみたいなんですよ。
 んで、魔法少女と魔女について熟知しているほむらはいきなり魔女化しないだろうから、他の魔法少女がなっちゃったんじゃないかなって」

さやかの言葉に、まどかも頷いて見せる。

「うん、この感じはさやかちゃんの言う通り、魔女だと思う。ほむらちゃんなら、対抗策も思いつくかもしれないけど……」
「魔力の方角的に、ほむらはこれと遭遇した可能性が高い。援軍を送りたいところではあるが……
 対魔女戦においては、ほむらの方が遥かに戦い慣れしている。さらに言えば、おそらく近隣にはイチリュウチームもいる。
 イチローのレーザービームは、私のレーザーと比較しても遜色のない……いや、精密性と瞬間的破壊力は彼の方が上手の筈。
 レーザービームが通用するなら、倒せる相手。通じないのであれば、仮に私が救援に向かったとして無駄になるだろう」

第一の問題。千葉の魔女
しかしこれは正体がわかっても、相手の情報が不足しすぎている。
援軍を送っても勝機は見えず、逆に強敵とはいえ付近にはほむらにイチリュウチームもいる。
犠牲が出る可能性もあるが、勝機も存在する。こうなれば、彼らの勝利を願うしかない。
さらに野球選手を脅かしかねない相手、第二第三の問題としては拳王軍と狂信者がある。
だがこれも、サウザー達と小町達が既に討伐に出発しており、これも彼らにしか成しえないミッションだ。
こちらも下手な援軍は無意味というか、送りたくても送れない。

618創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:11:51 ID:3k2I6frk0
「黒きフロワロ、ウォークライによると腐食花とのことだが、これは黒き獣を倒さねば滅ぼしきれない。
 現状で取れる手段は防御のみとなるが、ドラゴンハートの力があれば無力化はできる。
 魔女の撃破後、速やかにこの世界樹にイチリュウチームを招くほか手はあるまい」
「さっきの魔女をほむら達が倒せれば、事実上対策はできるわけだね」
「ただ、ドラゴンハートの恩恵を受けられない私のような一般人は……」
「……面倒だけど、最悪は昏倒させて世界樹の地下にでも放り込むしかないかな」

第四の問題、黒きフロワロ
この華は事実上、完全な対策が取れない。
ドラゴンハートか世界樹いずれかの加護で防げるため、何らかの理由でここまで退避させる、
回避策をとることしかできない。モブ参加者達がここをヘルヘイムと誤認している為、彼らの犠牲は覚悟がいるだろう。


「そして沖縄の黒き獣本体。これは言わずもがな、テラカオス以外では対処ができぬ上、場所も遠い」
「……」
「……つまり、対処せねばならぬ問題はあるが、我らでは解決のしようも無いということになる。
 我らにできることは、各地で戦う仲間達の無事を祈ることと、そしてやがて彼らが戻ってくるこの場所を守り抜くこと。
 魔女及び狂信者の動向を確認しつつ、迫るその時に備えて力を蓄えるのだ」


冷静に戦況をまとめても、分かったのはもはや自分達にはここを守ること以外何もできないということ。
誰もが歯がゆさを覚えるが、ダオスの言う通り拠点の防衛こそが最善手であるということも理解できる。
落ち着いて準備や対談、そしてフロワロの毒にも対抗できるとなると、ここはビッグサイトに並び、地上の最後の拠点の一つでもあるのだ。

「私もそろそろ頂上に戻ろう。榛名達はまどかの護衛に加えて、小鳥に黒幕の情報やビッグサイト内の情報を教えてやってくれ」
「かしこまりました」
「さやかとレスト、それにカヲル達も戻ったら休むように伝えてくれ。疲れは相当の筈だ」
「休んでる場合じゃない! って言いたいけど、話聞いてるとほんとあたしらじゃすぐに対処できないし、仕方ないのかぁ……」
「…………それじゃあ僕は、お風呂にでも入ってきます。アースマイト一族は数秒入るだけで全快できるんで」
「数秒ってカラス以下じゃん! ちゃんと身体洗ってんのあんた!?」
「し、失礼だなさやかは。洗ってるし、確認の為とかいって僕のお風呂覗かないでよね?」
「誰が覗くかぁ!」


各々が、自分に出来ることをするために散開する。
神樹とエリカ、そしてダオスは外敵対策。魔女への注意も怠らない。
まどかは世界樹内部の様子に気を配り、きらり達のような犠牲を二度と出すまいと誓う。
榛名達はそんなまどかを守りつつ、まどかと小鳥にミヤザキの話をする。
さやかは密やかにゼロからの命令を守り、ゼロに関する話以外は彼女の意思で決めて動く。
そしてレストは水魔法と火炎魔法で作った簡素な浴場へと向かう。
さやかへの冗談のつもりなのか、入浴中の札までぶらさげて。

仲間達の勝利を信じて、救援は送らない。
帰るべき場所を守るために、世界樹の人々は戦い続ける。






それに集中していた為か、ダオスが頂上に戻るほんの少し前。
世界樹の枝の一つから、光が昇ったことは神樹も誰も気がつくことはなかった。





--

619創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:12:33 ID:3k2I6frk0
――同刻、日本海ASO-3


「ココさんとメフィラスさんはそろそろ目的地についたかな?」
「おそらくは。我らは、我らの仕事をこなそう」

そこには、数人のストームトルーパーが慌ただしく動いていた。
彼らは主催者陣営の所謂モブ兵士の中でも、特にココ達から信頼されている者達だ。
カオスロワ後の人員の護衛、放送の継続を任されたといえば、その度合いもわかるだろう。

「次の放送、俺がやるよ。うわ、わかっちゃいたけどまだこんなに死人が……」
「震えているが大丈夫か? やはり私が代わりに……」
「いや、大丈夫。放送までに慣れて、ちゃんと動じない主催者らしい放送をしてみせるよ」

誰にも知られることはないが、彼らも自分達にできることをして戦っていた。
現在も日本で戦い生き延びている猛者たちに比べたら、遥かに弱い彼ら。
それがたった50人。どこかの勢力に目をつけられたら、一貫の終わりだ。
それでも彼らは職務をこなす。たとえ自分達がどうなろうと、未来の大災害だけは防がなければならないのだから。


「九州ロボへの連絡パスコード、これであってます?」
「ああ、大丈夫だ。あの獣に動きがあれば、すぐに伝えねば……」


そんな彼らの業務の中には、沖縄の黒き獣の監視もあった。
撒き散らす蒼の影響で至近距離までは近寄れないが、そこは科学班が遺した優れた産物がある。
対象との距離があっても、拡大鮮明化できる小型カメラその他機能を積んだ小型ドローン。
これを用いて、身のすくむような怪物である黒き獣の様子を逐一チェックしているのだ。
九州ロボも人員が減り、魔女との戦いに赴くとなるとそちらに集中する必要がある。
その為、彼らは命令されずとも進んでこの怪物の監視をしているわけである。


「対象、テラカオス・リリカルから受けた傷を再生中の模様」
「くそ、なんて速度だ。これでは彼女達の犠牲が無駄になってしまう!」
「フロワロ、海を渡り既に大阪があった地域まで浸食中!」


兵士達は、誰もが黒き獣を恐れた。
ディーヴァにリリカル、二体のテラカオスを返り討ちにしたばかりか、動かずに日本の生命を刈り取りにくる極悪さ。
果たして、あと何時間でこの獣は本州に向かってしまうのか。それがただただ不安だった。
そんな時だ。
黒き獣を観測している計器の一つが鳴り響く。

「な、なんだ!?」
「た、対象の上空に超エネルギー反応! これは――宇宙、いや、成層圏から猛スピードで迫っています!?」
「エネルギー体捕捉! こ、これはそんな、馬鹿な!?」






「「だ、第三真竜ニアラ!?!?」」






--

620創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:13:23 ID:3k2I6frk0
「むっ!?」


休息していた黒き獣シャドウは、すぐにその異変を察知した。
遥か上空から、自分を狙った『何か』が迫ってきている。
シャドウがその場から大きく飛びのいた、次の瞬間。



竜の嘶きと眩い閃光、そして大爆発。沖縄の大地はフロワロと共にさらに酷く消し飛ぶこととなった。



「こ、これはまさか、真竜メテオ……!? 馬鹿な、ディーヴァの中に既に多すぎるくらいに存在するというのに!?」



『クァハ……』

『キサマか。我らを喰らい、力を奪い、食物連鎖の頂点に達したと自惚れている痴れ者は……』



それをやってみせたのは、左右非対称の翼を持つ金色の巨竜。
既にディーヴァに敗れ、そして今やシャドウに取り込まれている筈の真竜ニアラその人であった。

「9体目だと……どうなっているんだ一体。だがしかし、所詮は第三真竜……今の私の敵ではない!」

少しだけ驚愕の表情を浮かべるシャドウではあるが、ディーヴァ越しに取り込んだニアラ達の醜態は知っている。
この真竜は力はあるが、傲慢中の傲慢。感情を持たぬ者を忌み嫌い、感情豊かな人間に執着し続けた結果が悲惨な末路。
メテオの奇襲も回避できた以上、ここから10体目以降が現れてもなんら問題ない。

「行け、我が尖兵よ!」

適当な死者が、シャドウの傀儡として蘇る。
ニアラ程度なら、これで十分だ。

「や、やった! よし、今度こそ活躍してイチロー選手と『去ネィ!』

しかしシャドウの尖兵は、喋りきる前にニアラの左翼から放たれた威光に貫かれ、爆発四散した。


【斎藤佑樹@現実?】 消滅確認
※シャドウの尖兵の為、放送で呼ばれませんしキルスコアにもなりません


「馬鹿な!? いくら適当とはいえ、私の力を授かった死者がこうも容易く……ならば、私自ら、第七真竜の力で葬ってくれる!」
『……マガイモノの力、試してみるか?』


「――プリズマティックストリームッ!」
『――真竜ブレスッ!』


シャドウの口から、VFDの力である虹色のブレスが吐き出される。最強の真竜の放つ、開幕の全体攻撃。第三のブレスなどとはものが違う。


――直後、ニアラの口からも放たれた虹色のブレスが、VFDの虹を貫いた。


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621創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:14:09 ID:3k2I6frk0
「な、なんだ!? 何が起きているんだ!?」
「わからない! わからないが、一つだけ確かなことはある! 第三真竜ニアラが、黒き獣を押しているんだ!」


映像で見ていた兵士達は皆が混乱状態。
無理もないだろう。
突然、黒き獣めがけて降ってきた謎のエネルギー。
何かと思えば、まさかの9体目の真竜ニアラ。
一瞬感じた希望は絶望に早変わり、頼むからこれ以上黒き獣に力を与えないでくれと願わずにはいられない。
かと思えば、ニアラは黒い尖兵を一撃で爆砕し、さらには黒き獣のブレスすら打ち破って見せたのだ。
明らかに、優勢。あのニアラが。
これで混乱しない者がいるなら見てみたい。

「し、信じられん。蒼を纏う黒き獣が測定できないのはわかるが、ニアラの能力まで測定不可能域だ!」
「しかし一体どうやって? テラカオスでなければ、ダークザギクラスでも戦場に立てるのは十数秒が限界の筈なのに」

測定不可能。人智を超えた域、まさしく神の如き領域の戦闘能力。
何体ものニアラが降臨しているこの世界だが、この9体目はその全てを遥かに凌駕していた。
とはいえ兵士の言う通り、超理不尽……それこそこの世界の上位存在でさえ、蒼には抗えない。
彼らは知らないが、第二真竜が耐えきれないものを格下の第三が耐えきれるわけがないのである。


そんな兵士達の疑問に答えたのは……



『……なるほど、そういうことか』


「っ! 黒き獣、ブレスを返されましたが無傷です!」
「ニアラのブレスも黒き獣のブレスで削られている。纏う蒼の壁までは貫けなかったということか」
「しかしこの口ぶり、黒き獣は異様なニアラの強さの理由がわかったのか?」


『クァハ……流石に、この一撃で頭を吹き飛ばさせてはくれぬか。だが、我の力がこの程度だと……』
『茶番に付き合うつもりはない』
『なに?』
『今のブレスの威力、到底本来のニアラには真似できまい。姿を現せ、マガイモノ』
『……ふん』




『――思ったより、早くばれたね。ウォークライから聞いただけじゃ、真似しきれなかったかな?
 風鳴翼に姿は似ているけどその禍々しさ、お前が黒き獣だな……!』
『ただの獣ではない。我が名は黒き獣シャドウ!
 今の姿はお前達の禁術、エーテルリンクか。都庁で死んだニアラの一部を取り込んで化け奇襲を仕掛けてくるとはな……』


ニアラの姿が光に包まれたかと思えば、次の瞬間には真竜の姿は消えていた。
代わりに黒き獣と対峙しているのは女装男――都庁のレストであった。

622創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:14:47 ID:3k2I6frk0
「なっ……ニアラでは無く、ニアラに化けていた都庁軍の!?」
「成程、中身が奴ならばさっきの測定器の振り切りも納得できるが……なんでまたニアラなんかに?」
「皆、馬鹿にしがちではあるがニアラもまた宇宙を駆ける真竜の一員だ。
 奴は宇宙空間まで瞬間的に飛翔し、そこから正確に敵対象目がけての超急降下爆撃が可能。彼はそれを利用し、沖縄の黒き獣を狙ったのだろう」

兵士達はなんとか戦況を理解しようと、必死に頭を回転させる。
そして黒き獣の言葉もあり、おおよその見当はついた。
レストが用いるエーテルリンクは身体の一部を誰かに模したものであったが、それはテラカオス化進行に際して手に入れた能力。
人型を維持し身体の部位をそれぞれ違った魔物に変化させる……より応用の効く万能性を得る前、本来の術はどうであったかと言えば答えは簡単。
取り込んだパーツの持ち主と、全身全く同じ姿になる。つまり今回は、ニアラそのものに変化したのだ。
そして兵士の言う通り、宇宙空間からでも獲物を捕捉しピンポイント爆撃できるニアラの能力を使用した。
しかし汚染された宇宙までは飛び立てず成層圏止まり、メテオが不完全な威力であり黒き獣への打撃にはならなかった。
ここまでは推理できたが、それでも兵士達の疑念は尽きない。
むしろ正体がわかったからこそ、余計に混乱してしまう。

「しかし、結局最大の謎がわからんぞ! どうして彼は、蒼の空間を耐えきれている!?」
「奴はわざわざ黒き獣を……そもそも、どうして黒き獣という名称を知っているのだ!?」
「黒き獣は先程、自らをシャドウと名乗っていました。状況整理の為、このままシャドウの観測を続けます!」

兵士達は、理解が追いつかない戦いの観測を続ける。
それが、きっと後の世の為になると信じて。


--


「ふむ、何故お前がここにいるのか、何故まだ無事でいられるのかはわからんが……お前が馬鹿なことだけはわかるぞ?」
「なんだって?」
「全ての根源たる蒼、TCの前には完全な属性耐性、バステ耐性、防御無視耐性、即死耐性を持つお前であってもまるで意味をなさない。
 もしお前がテラカオスとなった状態で我が前に立ち塞がっていれば、私を倒す可能性は数パーセントはあっただろうがな」
「……僕の耐性、エーテルリンクの知識、テラカオスになりかけたこと、全部知っているんだね」
「ああ。……お前のその格好、未練がましくしがみついているサクヤの魂を取り込ませてもらったからな」
「っ……!!!」
「あれも実に愚かな娘だ。お前をテラカオスにさせていれば、私を倒せたかもしれないというのに。
 挙句、取るに足らない魂を庇いこうして私に取り込まれるのだからな」


にたりと黒い笑みを浮かべるシャドウに対して、レストは奥歯を噛みしめる。
確かにテラカオス化できていれば、シャドウも倒せたのかもしれない。
だがあの状態の自分がテラカオスとなっていれば、確実に世界樹の仲間達も襲い殺めていただろう。
既に血に塗れた道を歩んできた自分を正してくれた少女の行動を愚かとされるのは、我慢ができなかった。


「悔しいか? だがお前には何もできんさ。お前は何も出来ぬまま、自らの力を過信して、ここで朽ち果てる。
 いや、むしろ喜ぶべきだろう。お前達の祖先のグンマ―の民は、蒼によって滅ぶことを望んでいたのだから」
「悪いけど僕は、この災害が起きる前から生命の理を捻じ曲げることを街ぐるみでやったこともある異端者だよ?
 過去のグンマ―なんて知るか。僕は僕の意思で抗う!
 小町さんにほむら、サウザーさん、みんなはきっと乗り越えてくれる。だから予言完成最後の障害のお前は……」



「――死者を狙い、フロワロを撒くお前は! この場で僕が倒すっ!」


「あはははははははは! 自惚れが過ぎるぞ、グンマ―の盾風情が!」

623創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:15:20 ID:3k2I6frk0
高笑いをしつつ、しかしシャドウは恐ろしいまでの殺気を放つ。

レストは知る由も無いが、シャドウは少し前にテラカオス・リリカルに痛手を負わされている。
そしてダークザギの献身により、リリカルを取り込むことにも失敗した。
表面上の傷は回復しているが、完治はしておらず能力も吸収できていない。
目の前の自惚れた男を消すことは容易いが、新たなテラカオスに襲撃されては危ないという認識もシャドウの中にはある。
面に出さない苛立ちと焦燥。
蒼の前では無意味だが、逆に蒼以外にはリリカル以上の耐性と能力を持つこの男の魂を、絶対に取り込んでやろうという強い意志があった。


そんなシャドウが身構えるより先に、レストが動く。
鞄に手を入れた彼は、4つの竜の一部を取り出す。
それは大災害前からずっと持ち続けた、今となっては大切な友達の形見。
そして万が一ダオスに何かあった時の為にとずっと隠しておいた、切り札でもあった。


「――エーテルリンク・地幻竜プロテグリードッ!」


叫びと閃光、今度は金色のニアラではなく、四幻竜の一角たる巨大な紫竜にその姿を変えるレスト。
嘶き、天を仰げば辺り一帯に無数の雷撃が降り注ぎ、宙からは隕石までもが次々に襲い来る。


「――エーテルリンク・火幻竜フレクザィードッ!」


天からの暴力が止まぬ中、素早く変身を解除しすぐさま次の鱗を取りこむ。
今度はカヲルも知る、この殺し合いの中で命を落とした紅蓮の竜へと変化する。
羽ばたき一つで辺りは焦熱地獄と化し、その口からはシャドウの体躯の十数倍はあろう大火球が連続して放たれる。


「――エーテルリンク・水幻竜アクナビートッ!」


三度目。ニアラも含め、使用された四幻竜の鱗はレストの身体から排出されると同時に粉々に崩れ去っていく。
たった一部分だけで、その全身を元の竜以上に変化させ人の身に余る攻撃をしているのだ。素材にも術者にも多大な負担がかかる。
長大な尾を持つ水竜はその場で一度回転すると同時に、全てを呑みこむ濁流と4機のビットを同時にシャドウ目がけて叩きつけた。


「っ……エーテルリンク! 風幻竜セルザウィードォッ!!!」


最後は、かつての一番の友。竜と結婚できる世界であれば、もしかしたかもしれない大切な存在。
彼女から貰った、その身の一部を使った大切なお守り。今となってはまさしく形見そのものであるそれも、取り込まれてやがて消える。
あの時と同じように。守りたいものを守る為、意を決しての最後のエーテルリンク。


『神の力、思い知れっ!』


風幻竜そのものの声と共に、周囲に暴風が吹き荒れる。
これまでの三幻竜の攻撃も止み切っていない状態で、もはやシャドウの姿はどこにも見えない。
そして駄目押しと言わんばかりに、竜の口から神の息吹が吐き出される。


--

624創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:15:56 ID:3k2I6frk0
「うおぉぉぉ……」


戦況を見ていた兵士の一人は感嘆の声をあげた。
撮影された映像には、まさしく天変地異と呼ぶに相応しい光景が広がっている。
圧倒的な戦闘力を持つが、多数の敵や広範囲攻撃を苦手としていた男の奥の手。
素体の戦闘力に、竜の殲滅力が加わった超理不尽な怒涛の天災。

「さっきのニアラのブレスでシャドウを上回れたんだ。これならもしかして……!?」

理由はわからないが、ニアラのブレスはシャドウのブレスを打ち破っている。
明らかにそれを遥かに上回るこの天変地異ならば、シャドウとてただでは済まないだろう。
兵士達もにわかに活気づく。

「恐ろしく、そして頼もしい攻撃だが、さっきのやりとりは……」
「ん、どうしたんすか先輩?」
「先程彼は、こう言った。予言の最後の障害と。まさか、都庁の者達は……」



『――この程度が切り札とは、笑えるぞグンマ―の遺物よ?』


沸き立つ兵士達の耳に、拾われたシャドウの冷たい声が届く。


次の瞬間、災害の波の中から黄金の一閃が放たれる。
シャドウの持つ聖約・運命の神槍の一撃は、的確に風幻竜の頭部を狙っていた。


『くっ!?』


ぎりぎりのところで解除される結合。
レストは元の人間サイズになり、黄金の光は対象を失って虚空を貫く。
一手遅れていれば、レストは致命傷を負っていただろう。
テラカオス化によらない通常のエーテルリンクは全身変化の代償もとてつもない。
莫大な魔力の消耗、強化変化されてなお多大なダメージを負えば、身体は灰になって崩れさってしまうのだ。



「嘘だろ……」


映し出された光景に、兵士達は誰もが絶望する。
文句なく完璧な攻撃だった。
それだというのに、未だ荒れ狂う天災の中からはゆったりと無傷のシャドウが歩み出てきたのだ。



--

625創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:16:26 ID:3k2I6frk0
「くそ、やっぱり……」

息を荒げつつも、レストはシャドウを睨む。
手の中で砕け散る風幻竜のお守り。もう同じ攻撃は二度と使えない。
それでなくとも、無茶苦茶な短時間での5連続エーテルリンクによる攻撃はレストの体内魔力を半分以上持っていった。
仮に素材が無事であったとしても使えず、そもそもシャドウの様子からして何度今の天変地異を引き起こしても無駄なのは明らかだ。


「私はテラカオス・ディーヴァ……お前も知っている風鳴翼の各属性耐性を奪っている。加えて、この蒼の力もある。
 故に、私を倒せる者はテラカオス、かつ私を上回れる接近戦技能を持ち、このフロワロの猛毒に耐えきれる者のみ。
 もっとも、私にはジョン・フレミングが遺した格闘術もあるがな?」


言葉通り、一切の傷を負っていないシャドウは口の端を僅かに吊り上げる。
テラカオス・リリカルはまさに類稀なる戦闘技能、そして防御力を誇っていた。
しかし彼女はフロワロの猛毒への耐性を持たなかった為に敗れてしまった。
レストも属性攻撃だけでなく接近戦は得意とするところであり、猛毒を含むあらゆるバステを受け付けない。
だがテラカオスでない以上、蒼をその身に纏うシャドウを攻撃することはできない。

テラカオス以外を殺す蒼に、テラカオスすら殺せる猛毒。
この反則とも言える能力の組み合わせにより、シャドウはまさしく不滅の存在であった。
第三のテラカオス・サーシェスならば可能性はあったかもしれないが、
彼の能力は周囲の情報を取り込んでの環境適応。ホルスの黒炎に間に合わなかった点からして猛毒へ間に合ったかは怪しい。
勝算があったのは安倍総理かもしれないが、彼は既にその魂を砕かれている。

「やはり警戒すべきは、あの者のみだが……お前が我が尖兵となれば、魂を破壊できる確率は飛躍的に上昇する」

過去のテラカオスでは、シャドウを倒せない。
しかしディーヴァが抵抗し、遠方で勇者として覚醒した『ツバサ』であれば、どうなるかわからない。
彼女もまだ道半ばの存在。今はシャドウの勝ちでも今後どうなるかはわからない。
だから、抹殺する。唯一の不穏因子は、絶対に排除しなくてはならない。
ディケイド達は敗れたが、目の前のこの男を尖兵にできたならば、たとえ護衛がいようと、葬れる可能性が非常に高い。

死者スレはカルナ達の抵抗により、まだ上質な死者の入手が困難な状況。
そんな時にまさか、垂涎物の尖兵素材が向こうからやって来ようとは、まさに嬉しい誤算だ。


「お前は私に敗れはしたが、その力が酔ってしまう程強いことも認めよう。その力、私が存分に活用してくれる」



「――誰が、敗れただって……!?」

「む、まだ立ち上がれるか? だが、お前のつまらぬ災害程度では――」



「ルーンアビリティ、鋼身之構・瞬迅! エーテルリンク火竜の猛攻! 飲食無敵の秘薬ゥ!」


しかしシャドウにとっての極上の得物は、まだ諦めずに抵抗を続ける。

626創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:17:31 ID:3k2I6frk0
鋼身之構、マーラやハクメンにも使用した鋼体付与。
瞬迅、攻撃に限らずあらゆる行動速度を倍増させる。
火竜の猛攻、亡き偉大なる赤竜の力。攻撃力を倍増させる。
無敵の秘薬。誇張した名前だが、体力攻守全てのステータスを倍増させる最終調合薬。

「無駄だ。いくら私に全ての攻撃が通用しないから、自己強化ならどうにかなるとでも?」

「まだだっ! 右手にグングニル、アビリティ、アクセルディザスター! 武器種とアビリティの適合!」

シャドウの言葉を意に介さず、レストは己が持ちうる全ての手段を講じて自己強化を続ける。

「瞬迅の速度増加で2倍! 火竜の猛攻で2倍! 秘薬で2倍! アクセルディザスターの回転で3倍! 適合ボーナスで1.5倍っ!」
「愚かな! まさかお前、強引に倍率の暴力で私の蒼を破ろうというのかっ!?」

身体を捻り、パワーを36倍まで引き上げたレストの姿を見てシャドウの顔が若干引きつる。
超理論、そして攻撃動作。間違いなく、命知らずなこの男は自爆特攻をしかけてくるつもりなのだ。
絶対の蒼が破られるわけがないと思っていても、それでもこの気迫には恐れ入る。


「『四幻』は無駄じゃない!――彗光『四源』の舞っ! サクヤの力でさらに40倍だっ!」
「き、貴様っ!?」


そしてその言葉を聞いた瞬間、初めてシャドウは焦りの色を浮かべる。
先程の四幻竜の攻撃は、これの補助。サクヤの能力を発動させる為に使われた布石。
効かないからと、蒼で直接打ち払うことをしなかった。結果、四幻の力はまだ周囲に残ったまま。
ダークザギの例があるように、強大な力は蒼の中でもしばらく残り続ける。
普通の魔法の乱射では使えなかったであろう四源の力を四幻が可能とした。
グングニルに宿るは、かつてハクメンが危険を感じ取った光の遥か上を行く破壊力。

2×2×2×3×1.5×40= 1 4 4 0 倍 ! ! !


「つ・ら・ぬ・けえええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!」
「だが、四源の力が使えるのは私も同じこと! 迎えうて、聖約・運命の神槍よっ!!!」


回転しながら自らを槍としたレストの神槍の一撃に、シャドウも四源の力を神槍に宿して迎撃する。
リリカルにも見せた、シャドウの最高火力状態。
互いの右腕が握る神槍に、より一層の力が籠る。


そして……


互いの槍は激しくぶつかり合い、やがて粉々に砕け散った。


シャドウはリリカル戦での経験もあり、押し負けることを理解している。
だから、神槍と頭部、心臓部。武器と致命傷を負わされる可能性のある場所に特に重点的な蒼の壁を張っていた。
グングニルは聖約・運命の神槍を瞬間的に破壊するも、突き進んだシャドウの心臓を守る蒼に触れて砕け散ったのだ。

627創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:18:03 ID:3k2I6frk0
(馬鹿な、蒼で覆ったラインハルトの槍が……!?)

決死の特攻を受けてもシャドウは無傷。
しかし、自分にまでは届かずとも蒼の力を得た神槍は破壊されたという事実。
絶対の蒼が確かに『貫かれた』という受け入れ難い事実。


それは、一瞬の隙だった。


「――そしていつもの正拳突きで、4倍だああああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」


見落としていた。何故、この男の左腕に装備されていた筈の盾が無くなっているのか。
装備を槍に持ち替えた時にしまった。一体何故か?決まっている。左手でも攻撃をしかけるためだ。

繰り出されるは、レストの必殺の一撃。
対象の防御を貫通する破壊の拳。
生み出される衝撃波と拳、二段階の一点集中突破攻撃の威力は1440のさらに4倍


 5 7 6 0 倍


「っ、ここだああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「がっ!?」


咄嗟に弱点部分を更に蒼で守るシャドウ。
しかしレストが狙ったのは、意外な場所。
他に回したが故に守りが薄くなった、シャドウの右肩の付け根であった。









――絶対の存在の右腕が、ばらばらに千切れ飛んだ。

628創造と帰滅の蒼:2020/05/06(水) 22:18:36 ID:3k2I6frk0
「――――――――ッッッ!!!!!!」



絶叫が双方の口からあがる。
まさか自分が『破壊』されるとは夢にも思っていなかったシャドウの叫びは当然のこと。
そして、いくら蒼を力づくで破る程の常軌を逸した強化を施したとはいえ、その拳は蒼の塊を殴り抜けたのだ。
さしものフォレスト・セルの蒼抗体もこれは許容限界。
全身に蒼の汚染が広がることこそ防いでいるが、直接シャドウの体内に触れたレストの左肘から先は砕け散ってしまう。

(蒼に、僕の腕という存在を歪められたか……! 僕の腕は、今も昔も『最初から存在しない』から、再生のしようもない……!)

かつて右腕を吹き飛ばされたが、今度は左腕。同じように治療できるかと言えばそうもいかない。
蒼に直接触れる暴挙を犯した左腕は存在そのもの抹消された。いわば部分的な魂の抹消ともいえる。
どんな回復魔法を使おうが、どんな宝具を使おうが、二度と蘇ることはないのだ。

とはいえ、お互いが片腕を吹き飛ばしあった。
激しい痛み分け……いや、テラカオスでないものが黒き獣にこれだけの打撃を与えたのだ。むしろ勝利したとも言えるだろう。
もはや言葉も発せずにただ遠方から見守っていた兵士達は、そう考えていた。




「――やって、くれる……! グンマ―の遺物如きが、滅びに抗うなど、許されない!」



観測していたストームトルーパーも。
腕を永久に失う痛みを食いしばっていたレストも。
確かにその声と姿を捉えた。


「我が名は黒き獣シャドウ! テラカオス以外に、私は、蒼は、自然の摂理は倒せない……!」


そこには、憤怒の形相のシャドウがいた。
神槍こそ持っていないが、砕かれた筈の右腕は確かにそこにあった。

真竜ニアラと同じように、混沌のエネルギー……凝縮された蒼そのもので形作られた新たな右腕が。

(く、そ……真竜7匹分の、外見を犠牲にした超速再生……竜殺剣が、あれば……)

実はレストも、この光景は可能性の一つとして考慮していた。自分自身、ニアラの力を借りたのだから。
歪に、しかし通常使用には影響がでない右腕の再生。まさしくニアラと、真竜と同じ。
背にも真竜の翼を生やしている以上、作り上げた竜殺剣・天羽々斬ならばシャドウを倒せたかもしれない。
だが、ニアラの力を使わなければ沖縄のシャドウに奇襲はできなかった。天羽々斬を持っていてはニアラの力が使えない。
両方の力を持って挑むことは、不可能。決死の覚悟で臨んだが、一手届かなかった。

(だけど、これでいい……僕の目的は達せられた。あとは、みんなが……)

自分はシャドウに負けた。自分の持つ全ての技能を使って勝てなかった。
エスケープで撤退し、シャドウの情報くらいは持ち帰りたい。
だが通常の破壊では無く、蒼による抹消はレストも初めて経験する激痛と虚無感。
意識が混濁し、魔力消費をしないエスケープの発動さえ時間を要しそうだ。
だがその僅かな時間の間に、自分は今度こそ本当の蒼を受けて死ぬ。


(……みんな、ごめん)

629樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:19:58 ID:3k2I6frk0

「あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」





突如、少女の絶叫が二人の耳に届く。
あらん限りに絞り出されたその声は、注意を引きつけるには十分であった。


「この、声は……!?」
「っ!!?」


そしてシャドウは既にその翼で空へと退避行動を取っていた。
災害の、理の化身が再びその身に危機を感じる異常な事態。


それは間違っておらず、絶叫を掻き消す光の波動がシャドウの直前まで立っていた場所を呑みこんだ。


「ぬぅ、この威力は……!?」


「レストさん、大丈夫っ!?」
「標的確認……あれが、かつてのテラカオス・ゼロも打ち倒したという黒き獣!」


「まどか、それに榛名……どうしてここにっ!?」
「グンマ―、それにミヤザキの巫女だとっ……!?」


海上から破壊光線を放ったのは、榛名に担がれた状態で弓を構えるまどか。
榛名は艤装を外した身軽な状態で、海を駆け抜けている。
まさしく高速。二人が姿を確認した次の瞬間には既にレストの元まで辿りついていた。


「っ、その腕は……!」
「こんなの、掠り傷さ……それより、どうして……」



「――どうしてお前達まで、この場所に来れるっ!?」



死にかけた獲物に対する救援。
リリカルとダークザギに近い状態だが、大きく異なる点がある。
獲物はテラカオスではなく、救援はダークザギ程圧倒的な存在ではない。
ちっぽけな災害に呑まれて潰える筈の存在が、こうして三人もまだ目の前に立っている。
不覚にも片腕を一度飛ばされた怒りもあり、シャドウは獣のごとく吠えた。

630樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:21:44 ID:3k2I6frk0
「この男は、元来の膨大な体力で耐え真竜の力で奇襲したのだと、まだ理解できる。
 だが何故だ! お前達がこのタイミングでここを訪れ、耐えきれるわけがない!」

レストにとってもシャドウにとっても、それは最大の謎だった。
九州ロボに乗る主催者以外は、沖縄というある種の安全地帯に接近するだけでも相当な時間を要する。
その謎に対する回答をしたのは、まどかを担いだ榛名だ。


「たとえどれだけの年月が流れ、街並みが変わり、そしてミヤザキの大地が器となろうとも。
 この海だけは、無くなることはありません。この星からも、榛名達の記憶からも……
 サーフが一部狂信者に持たせていた帰還用の道具を、榛名が使わせていただきました」


キッとシャドウを強く見据える榛名。
彼女は本来であればビッグサイトに帰還する道具を、かつての故郷近海を対象に使用していた。
本来の砲を外し、代わりに背負ったまどかの重さなど微々たるもの。
深海棲艦時からして都庁前線部隊の誰も寄せ付けず、ダオスと神樹の攻撃すら軽々かわしていた彼女の本来の速度が本領発揮。
瞬く間に沖縄に到着し、砕かれる寸前であったグンマ―の盾を救って見せたのだ。

「旧時代のミヤザキの巫女が、今になってグンマ―と手を取り合うだと?
 愚かな。お前達人間のエゴ、手を取り合わなかったからこそ私は生まれたのだ。今更間に合うものか!」
「いいえ。今度こそ、必ず。その為に、榛名とまどかさんはここにいるのです」

シャドウの言葉に臆することなく、榛名も凛とした声でシャドウを否定する。
小さく舌打つシャドウだが、それは榛名の言葉に対しての苛立ちからだけではなかった。
海上に転移し持ち前の高速移動で駆けつけた、これだけではまだシャドウの疑問に対する完全な答えにはなっていないのだから。

「どうして僕が、黒き獣を攻撃しに行ったってわかったんだい……?」
「レストさん、私が世界樹と繋がっている時は誰がどこにいるか把握できるの忘れてた? お風呂から急にいなくなったら慌てるよ?」
「その後は、提督が推察なさいました。急に飛び出しながら、浴場前に突き立てられた剣。それを使えない理由。
 考えられたのは、真竜の力の行使。千葉方面に向かうなら、神樹の投擲で事足りた筈。残された向かう可能性のある場所は、ここしかないと。
 提督はかなりご立腹でしたよ? どんな手段でもいいから、あの馬鹿者を連れ戻せと叫ばれていました」
「勿論、私達も怒っているからね?」
「勝手は榛名が許しません!」
「はは、流石ダオスさんだ。まいったね……おかげで、君達にまでこんな……」
「ううん、いいんだよ……」

慈愛の表情で、レストの癒えぬ傷痕を撫でるまどか。
蒼による傷は癒えないが、その他の部位は世界樹の癒しが包み込む。


(この力……やっぱりまどかと、それに榛名も……)


腕の喪失感は残るものの、随分と楽になると同時にレストは全てを察した。
まどかの使ったこの力こそ、まさに彼女と榛名がこの場にいる理由なのだから。


「それだけでは、まだ説明がつかぬ! 何故お前達は……!」


唯一、未だに理由がわからないシャドウ。
それはどこかで認めたくないという思いもあったのかもしれない。
古代のグンマ―とミヤザキの対立。人のエゴ。
それが巡りに巡って生まれたのが自分であり、この世界は一度滅んで然るべきだと確信しているからこそ。

631樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:22:27 ID:3k2I6frk0
「……私は、弱い。巫女としても、人としても。沢山の人に支えられて守られて、ようやく今この場所にいるの。
 いつも人と人がわかりあうことは難しいかもしれないけど、それでも話し合って、一緒にいてくれる人達もいるんだよ?」

「戯言を。一個人の友人程度ならば、そうであろう。しかし、人と言う種で見た場合は、そうはいかないのだ」

「人だけじゃない。動物、魔物、機械……この世界には色々な人がいて、わかりあえないことも多くて、でもみんな必死に生きている。
 この予言の聖別は……辛いけど、その垣根も超えて、手を取り合うこともできた」

「己の利、生き延びたいという欲からであろう。滅びを逃れれば、同じことを繰り返す」

「クラウザーさんの歌は、殺し合いの前から色々な人を惹きつけていたよ。それに、生きたいって思うことの何がいけないの?」

「滅びを是としたグンマ―の末裔とは思えぬ言葉だな。思想がミヤザキに偏ったか?」

「私は私。それに、グンマ―の人が本当に全員揃って滅びたいって思っていたと思うの?
 ミヤザキの人もそうだよ。本当に全員がグンマ―の人を滅ぼしてまで、テラカオスの制御だけを考えていたと思うの?」

「何?」

「……ノーデンスさんは言ってた。グンマ―は、テラカオスの研究を途中で放棄したって。
 途中まで研究を続けていた人もちゃんとグンマ―にいたの。そしてそれの集大成になる筈だったのがセルちゃん――フォレスト・セル。
 世界を浄化する世界樹を生み出す核にして、テラカオスを強化する器の役割も持った子……」

「そしてエゴの果てに、機能を歪められ偽りの救済神と成り下がった。テラカオスを封殺する奴は、お前達には破滅をもたらす魔神だろう」

「――私ね、ずっとそれが腑に落ちなかったんだ」

「……は?」

「セルちゃんは可愛い子で魔神なんかじゃないし、器としての能力もなんかおかしいなって。
 確かにセルちゃんの口の中で舐められると、身体に蒼の抗体を滲みこませてくれる。
 そのおかげで私達はここにいられる、大きな恩恵を受けているっていうのはわかるんだけど……」

「グンマ―が器の中に隠していた抗体……なるほど、手を取り合っていた頃に生み出された産物というわけか。
 だが所詮は抗体。たとえ私が周囲に放つ蒼には耐えられたとして、私に直接触れればその男と同じ末路を辿る。
 そして私を相手に耐えられぬ程度では、来るべき時には微塵も耐えきれないぞ?」


巫女とのやりとりの中で、ようやくシャドウは彼女達が何故この場所で生きていられるかを理解する。
グンマ―がまだ自然死派に傾く前に生み出された蒼への対抗策。
元々蒼による災害は自然現象。自然に対する知識と理解のあるグンマ―の民に、際限の無い進化を続けるセルが組み合わされば、不可能ではない。
もし研究が続いていれば、全人類を舐めまわして抗体を得るつもりだったのか。
だがそれも一時しのぎ、肝心の災害に耐えきれないのであれば、まるで無意味な研究成果だろう。


「グンマ―の人も、ミヤザキの人も、最初は同じ想いだった筈なんだ。今度こそ、もっと犠牲を減らして大災害を乗り切ろうって。
 その為の予言、頼らざるを得ないテラカオスを殺し合い以外の方法で強化する計画。
 でもセルちゃんの抗体は、守りを固めるだけ。それも完成したテラカオスは全部吸収できるんだから、最後には必要無くなっちゃうよね?」

「む……?」


まどかの言葉に、シャドウは眉を顰める。
気にも留めていなかったが、確かにミヤザキの器・九州ロボと比較すればグンマ―の器による強化は見劣る。
フォレスト・セル自身の戦闘力に力を割いているのかもしれないが、セルも抗体を持つがテラカオスではない以上蒼の直撃は耐えきれない。
こうしてテラカオス以外の存在に攻撃される対黒き獣用の能力なのかもしれないが、それはテラカオス以外の強化。
元々なりかけのテラカオスすら蒼には強い耐性を持つ。念の為なのかもしれないが、他の予言の強化に比べれば恩恵は薄い。


「――その理由は、舐めまわし抗体は器のセルちゃんの本当の力じゃないから」

632樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:23:31 ID:3k2I6frk0
「なんだと……!?」

「きっと、研究を続けていたグンマ―の人は気付いちゃったんだと思う。
 研究を中断させられる。自分達の命も危なくなるくらい、自然死派の勢いが強くなることに……
 だから、副産物の舐めまわし抗体を研究成果として表に出した。神様達にも、それが本当なんだって思いこませるくらいに」
「この抗体が、副産物だって……?」


流石のシャドウも混乱する。そればかりかグンマ―陣営のレストすらも。
蒼の空間で耐えきれる抗体。たとえ大災害は耐えられないにしろこうしてシャドウと対峙する余裕は出てくる代物だ。
ノーデンスすら蒼に耐えきれなかった以上、神々から見てもこれはとてつもない研究成果なのではないだろうか?
それが、表向きのもの。それでは神々にさえ知られることの無かった、最初期のグンマ―が遺した研究成果とは一体何なのか。


「もし本当の能力も教えちゃってたら、いずれ自然死派に対策を取られるか消されちゃう。
 だから舐めまわしだけを公表して、自然死派の人はその流れで自然にお尻からテラカオス因子を吸い取るように後からセルちゃんを改造した。
 本当の力は神様も知らない。予言に書かれることもない。だけどいつか、本当のセルちゃんを察せられる人が現れる。
 研究を続けてきた人は、それを祈り願って最期の時まで頑張っていたんだと思う。そして今……その祈りは、届いたんだよ」
「ヒントも無しに本当のセルの能力を察しろだなんて、なんて無謀なんだ。でもまどか、もしかして君が……?」


「違うよ。私はまだまだセルちゃんを知れていなかった。でも、レストさんももう聞いている筈だよ?」
「え?」







「――サウザーさんに、祈りは届いていた」







「セ、セルちゃんと前の穴で繋がって、世界樹の力を注がれると凄く気持ちよくて、力が満ち溢れるの……!
 念の為にお尻も弄ってもらって、本当にもう……♪」
「は、榛名はかつての提督に身を捧げていますので、お尻だけ……」




顔を真っ赤に染め上げ、もじもじとするグンマ―とミヤザキの巫女二人。
しかし羞恥の感情こそ見えるがそこに嫌悪の感情は見えず、まどかの方に至っては少し艶めいているようにすら見える。

「ま……まどか……その、何と言えばいいのかわからないんだけど……」
「あ、安心してレストさん。ちゃんと小鳥さんが一からちゃんと教えてくれたから、これが大事なことだっていうのはわかっているよ?」
「しかし、本当に恐ろしい器でした。提督のことを考え続けなければ、榛名は違った意味でまた堕ちていたかも
 それに前も後ろも捧げて身を捩るまどかさんと一緒にいたら、なんだかいけない扉も開いてしまいそうで……」
「榛名さんもぬちゃぬちゃだったけど、とっても綺麗だったよ?」

(ぼ、僕が一人で飛び出したせいで、あちこちにとんでもない飛び火が……)

まさかの事実とまどか達の行動に、全身から汗を噴き出させながらレストは眩暈を覚えて全身を震わせる。
この場を生き延びたとして、自分は小鳥かほむらに殺されるのではなかろうか?
そして神々さえ気がつかなかったフォレスト・セルの本来予定されていた使い方に感づいたサウザーの洞察力にも震えていた。

633樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:24:07 ID:3k2I6frk0
「ふ、ふざけるな! そんな下らない、人間の色欲から生まれたような力で――」

シャドウも明かされた真なるグンマ―の器の使い方に吠える。
これは公に出来る筈もないし、したところでテラカオスや巫女も流石に渋るに決まっている。
誰が好き好んで、得体の知れない醜悪な化物に開発されることを望むだろうか。
まどかは最初期のグンマ―の計画をあえて隠したと言っていたが、実際のところは黒歴史過ぎて無かったことにしたかったのではないか。
シャドウはそう考えるが……

「ふっ!」

まどかの弓から放たれる光を目にし、その考えは吹き飛ばされた。
あまりの内容、そして抗体を得た連中程度の攻撃ならば余程過剰な倍率をかけられない限り耐えられると、油断していた。

「がっ!? な、なんだ、その力は……!?」

堪らず呻くシャドウ。
放たれた光の矢は、歪に蘇ったシャドウの右腕に、小さな風穴を開けていた。
先程受けたダメージよりは弱いが、それでも再び蒼を貫かれたのだ。
何より問題なのは、今度は直接攻撃ではない。光を用いた遠距離攻撃――何発も攻撃可能だということだ。


「蒼の抗体。抗う力は世界樹の核が生み出す。
 セルちゃんの本当の能力は、この世界樹の核……セルちゃんの遺伝子を直接体内で受け取ることで、勇者に蒼に抗う力を宿すこと。
 舐めただけじゃ、足りない。もっと深く世界樹の力を受け入れ、人の力と交わった時……」


引き絞られる光の弓矢。
淡い翠緑の光は自然の柔らかさを感じさせる。
しかしそこに宿る力は、明らかに従来の巫女のそれを上回っていた。


「――蒼を貫く力になるっ!」


解き放たれる光を前に、シャドウは緊急回避。
転がりかわす無様なものだが、直弾するわけにはいかない。
光が通りすぎた後は、一瞬とはいえ周囲の蒼が霧散していたのだから。


「くっ……! 勇者に対しての蒼を破る矛に守りを固める盾……本当のグンマ―の矛と盾だとでも言うのか!?」


シャドウは歯噛みする。
最初期のグンマ―とミヤザキは、確かに手を取り合っていた。
自然死を考える前に、制御を考える前。やがて対立した両陣営が協力していた時は、何を考えていたのか。
おそらく、行動的で何事にも挑んでいく気質のミヤザキの者はこう言ったのだろう。

『テラカオスをずっと強化できる、そしていつかテラカオスにすら頼らずに済むような、蒼を破れるような力を作ろう!
 蒼だって結局はエネルギーの一つ。少量なら問題ないんだし、打ち破ることもできる筈だ!』

無謀だ。自然の摂理に人が敵うわけもない。しかしその後のミヤザキの者も制御を考える以上、結局は大多数が無謀な挑戦者という意味では同じだ。
そしてそれを受けて、自然や災害の力に詳しいグンマ―の民は同調した。
世界を浄化しつつ、役目から滅びるわけにはいかないと進化を続ける世界樹の核に目をつけ、世界樹に蒼を記憶させその抗体を構築させ始めた。
どれだけの年月がかかるかわからないが、大災害も当分先。猶予はあるのだと、これからも研究を続ければいいと考えていたのだろう。
結局は、その者達の数が少なすぎたのだろう。少数は異端とされ、やがて埋もれて消える。
人間のエゴには勝てなかった、日の目を見ることのなかった、確かに存在していた両陣営の協力の証。
それが今、蒼の化身であるシャドウを追い詰めていた。

634樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:25:11 ID:3k2I6frk0
「――だがっ! それは研究段階で秘匿された、未完成のもの! それだけで自然の摂理を破れるなどと思いあがるなっ!」
「うっ!?」


しかしシャドウもただ黙っているわけではない。
蒼に抗い貫く力。それは信じがたい脅威ではあるが、完成したわけではない。
単純な威力だけでみれば、先程の拳の方が遥かに上。とても大災害をテラカオスに頼らず貫くには力不足。

「それにいくらお前の力が増そうと、お前は巫女でありテラカオスではない。テラカオス程の脅威はない!」
「あ、当たらない……!?」

そしてその力を現在行使しているのは、争いの淀みから生まれた化身ではなく巫女。
それもほやほや、新米巫女。レベルが上がり莫大な魔力を宿そうと、戦闘技術はあまりに未熟。
蒼を貫く力を光に変え放つにしても、それは直線的な攻撃ばかり。命中精度に問題があった。

「そんなプロトタイプ、まさしく古代の遺物などに大災害は勿論私を破ることもできはしない!」
「!!」
「貫けぬ程の、濃密な蒼を受けて消え去るがいいっ!」

そして光の矢をかわしたシャドウは、その手に蒼の力を集中させて放出する。
撒き散らされる蒼程度は耐えられても、これだけの濃度の蒼を直弾すれば魂諸共に砕け散るしか道は無い。
惜しい力の持ち主だが、この姿の原型……基準としたディーヴァの気質がシャドウにも影響を出しているのだろう。
油断はせず、危険な相手は全力で叩き潰さねばならないと。


「っ、させません!」
「な、貴様ぁ!?」


しかしシャドウが放った蒼の塊は空振りする。
まどかを担いでいた榛名が、急旋回しかわしてみせたのだ。
目標を失った蒼は海へと命中し、海水を歪めてこの世から抹消するに留まった。

「馬鹿な、艦むすがその力を発揮できるのは水上だけの筈……はっ!?」

遅れてシャドウは気がついた。
先程の戦闘、レストは水幻竜の能力で沖縄全体に対して濁流を放っている。
未だ残るその水が、榛名の高速移動を可能としていた。
陸地に残る水を全て吹き飛ばそうにも、そうすれば今度は海が残るだけだ。結果は変わらない。

「おのれ、小賢しいっ!」
「海はどこまでも広く、大きい。いかに蒼といえど、化身のあなたの力では海を全て消し去ることはできません!
 そして榛名達、金剛型高速戦艦は実戦を重視して造られた巫女! 海上であれば、そう易々と捉えさせはしませんよ!」

続け様に蒼を放つシャドウだが、発射速度に対して榛名の反応速度は明らかに上。
そして榛名自身は攻撃を行わない、敵の動きを読み切り回避に専念しているために余計に手強い。
元々戦艦の砲撃程度では傷も負わないだろうが、今の榛名の装備品は担いだまどか。
そしてそのまどかは蒼を貫く矢を放つ。
海上を高速で動き回り、細かく削ろうとしてくる巫女の連携の前に、シャドウは防御に回るしか手が無かった。

635樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:25:44 ID:3k2I6frk0
「私には再生能力もある! かわしつつ合間で射る命中精度の悪い矢の傷など、すぐに癒える!」

身体を翻し、矢をかわしてみせるシャドウ。
お互いが強力な一撃を持つが、当たらなければ意味が無い。
しかしシャドウの蒼は無限に湧き出るものであり、数時間も経てば大気中の蒼でも抗体は摩耗し無くなるだろう。
少し面倒だが、持久戦に持ち込むべきか。


「なら、威力があればいいのかなっ!?」
「ぬおっ!?」


そう思ったシャドウの背後から、かわした筈の矢が威力を跳ね上げて投げつけられた。
完全にはかわし切れず左腕を掠めるが、そこは大きく抉れることとなった。

「おのれ、貴様まで……っ!」
「まどかが時間を稼いでくれたおかげで、僕も動けるようになったよ」

そこには、片腕を落としても尚戦う気のレストが立っていた。
彼は彼で榛名やサウザー程では無いが、常人離れした移動速度を持つ。
榛名達の動きから外れた矢の数本をすぐに回収し、それをシャドウ目がけて投げることで挟撃の態勢に持ち込んだのだ。

「確かにまどかは戦闘技術に関してはまだまだ未熟だ。だけどそれは君にも言えることじゃないかな?」
「どういう意味だ……!」
「蒼という絶対的な存在に守られて、攻撃もできる。だからそれに頼り切り、動きにも時々無駄が見える。
 僕がここに来た時から傷を負っていたし、蒼をなんらかの手段で対処できれば君はそこまでの強さじゃない」
「貴様ぁ!」

先にこの男を消すべきか。こちらも惜しい能力ではあるがあまりに危険。
しかしそう考えれば、巫女達の攻撃が背後から飛んできて回避を余儀なくされてしまう。

「鬱陶しい、何故抗う巫女共……!?」
「おっと、背中を見せてくれてありがとう。僕にはまだ右腕と両脚があるからね。
 あと三回くらいは、君のどこかを吹き飛ばすことができるんじゃないかなぁ!」
「おのれぇ……!」

かといって巫女の方ばかりを警戒すれば、こちらの男は再び拳に力を込めてくる。
まさか、ありえないとは思うが先程と同じ攻撃を今度は腕以外に受けたら?
その威力は身を持って知っている。


「まどか! 榛名! こいつは軽い攻撃じゃ倒せない! 君達はそこでゆっくりとしていてくれ!
 今度こそ、僕がこいつを止めて見せるから!」
「貴様など、力を溜めさせなければ取るに足らん相手! 巫女にも劣る者が大層な口を!」


そして本気なのか、レストは移動しつつ、残された部位のいずれかに力を込めるような動きを見せ始める。
巫女達も彼を信頼しているのか、射撃の雨が止んだ。
これは好機と、シャドウは今度こそ自惚れた盾を完膚なきまでに砕かんと襲い掛かる。
やはりどう取り繕っても片腕を失い、攻撃能力は激減している。
力を溜めきる前に回避行動を取らざるを得ず、シャドウに一切の有効打は与えられない。

636樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:27:00 ID:3k2I6frk0
「やはり口だけのようだな!」
「……聡い彼女なら、きっとわかってくれる筈さ」

紙一重でシャドウの攻撃をかわしていくレスト。
殴りつけた腕は砕けたが、シャドウからの直接攻撃を受けても砕け散る。
力を溜め切る前の拳や武器ではシャドウの纏うだけの蒼も貫通できないため、ひたすらに回避するしかないのだ。

「ふん、そちらの浅知恵など通じぬよ。お前に他の手があるのかと思ったが、その様子も無い。
 ならば無駄と分かっていながら私に挑む理由は一つ……時間稼ぎであろう?」
「!!」

突如、シャドウが反転し蒼の右腕を構える。
レストに別の打つ手は無く、唯一の手段も溜めが必要。
それならば問題ないと、背中を向けたのだ。
屈辱の行動だが、シャドウの読み通りレストにはもう打つ手は残されていない。さっきのような真似も一発限りだ。


「ならば、巫女に攻撃させるしかない。――命中精度など関係ない、溜めた広範囲攻撃をな!」


振り向いたシャドウの視線の先には、魔力を溜めて身構えているまどかと榛名の姿があった。
気付くのが遅れ、レストを葬ることを優先していれば自分にあの攻撃が飛んできていたことだろう。
しかし敵の策をシャドウも読み切り、攻撃の最中で同じく蒼の力を凝縮し解き放てるようにしてあった。
同じ力を溜めた攻撃。しかし戦闘技術の差から、まどかはまだ高速移動しながら力を溜めることはできない。
また急に動けば、溜めた魔力が暴発する可能性もあるため、榛名の機動力も若干低下する。


「今度は回避などさせん! グンマ―とミヤザキがわかりあえるなどと抜かすならば、望み通り二人仲良く消えるがいい!」


シャドウの右腕から、特大の蒼が放たれんとする。
対するまどかはまだ溜めの段階。構えを解くにしても僅かな時間を要する。
その時間で、蒼は巫女二人を容赦なく呑み込めてしまうだろう。








「――今だっ!!!」





その時、レストの絶叫が響く。
巫女への攻撃指示。しかし彼なら間に合う攻撃も未熟な巫女では間に合わない。
読み違えたことが、彼の稚拙な策の敗因。
背後からあの大きな力も感じられない。やはり彼の方はは既に万策尽きていた。
ニヤリと笑い、シャドウは巫女に蒼の洗礼を浴びせさせる。








「っ――――――!?」

637樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:28:15 ID:3k2I6frk0
その瞬間であった。
溜めていた蒼が霧散した……いや、それ以上の大事が起きた。

叫び声をあげることもできない程の、予期せぬ激痛。

また殴られた? いや違う。さらに強烈な痛みにして不可視の攻撃。

巫女の攻撃? これも違う。のんきにまだ溜めている。

では一体、誰が……?

……外傷ではない。内側から受けた痛み?


「まさ、か……」


ようやく絞り出した声と共に、シャドウは膝をつく。

シャドウの敵は、目の前の三人だけではなかった。

攻撃の正体、それは……








--



「レスト様……私などの為に腕を犠牲にされたあなたの想い、無駄にはいたしません!」



慌ただしい戦場のど真ん中で、角を生やした金髪の少女が涙を零しながらも舞っていた。
彼女はかつて、シャドウにその魂を取り込まれていた存在。
その能力は四源の力。『味方全体の攻撃力を5倍にする』というもの。
有用故に破壊されることなく取り込まれ、その力はシャドウに振るわれていた。

しかしあの時、レストはシャドウにその力をあえて使わせることで、その力の発生源を見極めていた。
そして人間以外なら、その魂をあるべき場所に帰せる自身の魔法タミタヤの力を込めてシャドウを殴り抜いていたのだ。
元からシャドウを倒す気など皆無。全ては、その魂を取り戻すと誓いを立てていた少女の為。

そしてそれは、単なる自己満足だけではない。

シャドウから解放された魂が帰る場所は死者スレ。シャドウの影から吹き飛ぶように吐き出された彼女は、主人のこの行動の本当の意味を察した。
彼が何を想い、無謀極まりない行動をしたのか。それは属性さえ揃えば彼女は『誰であっても攻撃力を5倍にできる』からだ。

638樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:30:01 ID:3k2I6frk0
それが何を意味するかといえば、この光景が全て。



「ええい、時間がないのだ! 罪人共はそこに横一列に並んで尻を向けろ!」


贖罪の女騎士は、声を張り上げながら罪人達を綺麗に並べていく。


「これが決まれば、もうこれ以上罪人を捕える必要もない。ここで我々全ての力を解き放つのだ!」
「総員、構えよ!」


覆面の戦士は冷静で的確な判断で戦況を把握する。
類稀な統率力を持つ悪魔の将は死者の戦士達を従えて指示を出す。


彼らは全て死者。戦いで敗れ散った者達。
死者には安らかな眠りを……そうはいかないのが、大災害を前にした聖別の定め。
生前も、そして死後も彼らは戦い続けた。
この世界に、休める場所などはない。
迫りくる蒼の脅威のため、魂だけとなっても尚も戦わなければならない。


「……君の力、闇の力以外が必要らしいけど、別に闇の力を強化することもできるんだろう?」
「あ、あなたは……?」
「ふん、我以外がもたらす破滅など認めない。この世界を破滅させるかどうかは、我が決める。
 ほら、お前達も悔しくは無いのか? 英霊に頼り切り、世界を滅ぼせる力を持つ我らがただ指を咥えて眺めるだけでいいのか?」


軍師の姿をした邪竜の言葉に、大罪人にまでは選ばれずとも邪悪とされた存在達も奮い立つ。
このまま何もせず蒼の好きにさせるのは、悪の名折れ。
邪竜の敷く布陣に従い、彼らも力を溜めつつ眼前の敵を睨んだ。

死者達は、様々な理由で命を落としてきた。
不運な者。止むをえなかった者。どう考えても自業自得な者。
聖も邪もいる。そしてそんな死者達は、今この時確かに一人の男の後ろに勢揃いしていた。
彼らの想いは、垣根を越えて一致した。

――死者を、舐めるな――

「さぁ、カルナ! 思いっきりこの罪人の尻に槍を!」

「……わかった」


罪人の尻が穿たれる。吸収されるエネルギー還元された魂。
続け様に何人もの尻に槍がささり、魔力は限界を超えて満ちていく。
そしてその場に、多くの死者が思い思いに解き放った力を吸い寄せ生み出された四源の力も。




「――梵天よ、我を呪え(ブラフマーストラ・クンダーラ)」



やがて、使用者自身も経験したことが無い程の超熱の劫火が放たれる。
続けと言う悪魔の将の号令に、集まった死者達の蒼への叛逆がやがて影の全てを呑みこんだ。

639樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:30:35 ID:3k2I6frk0
--


「か……!」


「小町さんは言っていた。この戦いは死者もひっくるめた総力戦だってね。
 だから、君の力を削ぐと同時に死者の力になれる彼女を早く救うべきだと思ったのさ。僕個人の肩入れもあったけどね」


死者からの威力を跳ね上げた一斉攻撃の前に、影を伸ばしていたシャドウの力はついに押し戻され、そのダメージは本体にまで及んだ。
再生は十分可能と言いたいが、いわば体内を思いっきり掻き乱されたのだ。動くことはできない。


「愚か、な……たとえお前達が、私を消そうと……私は、お前達がいる限り……っ!?」


そして立ち上がろうとしたシャドウは、そのまま崩れ落ちて力が入らなくなる。
完全に予期していない、威力の限界を超えたカルナ達からの一斉砲撃。
それだけでなく、巫女が集める光の質が変わったのも大きな原因だった。


「りゅ、竜殺剣……っ」


矢の代わりに、蒼を貫く力を纏った竜殺剣・天羽々斬が弓につがえられている。
リリカルを殺す役に立った真竜の力が、ここにきて大きな枷となった。
真竜の力を切り離そうにも、取り込みすぎた上に死者からの攻撃のせいでそれもできない。




「私達は、滅びの未来をみんなと一緒に変えてみせる。
 あなたが、生まれる必要のない世界をきっと……だから、今はどうか眠って……!」





「……憶えておくがいい……私は所詮、摂理の意思の一つに過ぎない。まだ、お前達の勝ちでは――」








撃ちだされた『青』く輝く剣は滅びることがない筈の『蒼』を貫き、消滅させた。





【黒き獣シャドウ@テラカオスバトルロワイアル十周目】 消滅確認

※囚われていた死者の魂の行方がどうなるかはわかりません



--

640樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:31:32 ID:3k2I6frk0
「やった……の……?」


極限まで魔力を高めた一射を放ったまどかは、不安げにその言葉を口にする。


「はい、大丈夫です。まどかさん達の……みんなの勝利です!」


それを聞いた榛名は、頷くと同時に彼女に勝利を告げる。


大地は崩壊していくが、異常気象は収まった沖縄。
そして砕け散っていくフロワロの花が、何よりの証拠であった。


「や、やった! やったんだね!」
「あぁ……まさか、力を削ぐどころかあれを倒してしまうなんて、本当に驚きだよ……」


シャドウが完全に脱力したのを見計らってから飛び退いたレストは、爆風に焙られこそすれ、無事であった。
右腕で、蒼に打ち勝ったという確かな証拠の傷一つない天羽々斬を拾い上げて、まどか達の功績を讃える。


「レストさん、その腕は……」
「魂全部砕かれるのに比べたら軽傷だよ。まどか達のおかげで、まだみんなの手伝いはできそうだ。本当にありがとう」
「信じられません、いくら当時のグンマ―の盾以上に頑丈だからと、黒き獣の本拠地に単身で乗り込むなど……」
「いや、僕も少しは考えたんだよ? ただ、全てを呑みこみ消滅させる蒼とはいえ……
 蒼は絶対的で、シャドウの破滅を望む禍々しさは時間と共に増していたけど、荒れ果てた大地とフロワロは健在で全てを壊してはいない。
 それはあいつが意図的に弱めているか元からなのかはわからないけど、とにかく沖縄の蒼の嵐は抗体があれば耐えきれるんじゃないかって踏んだんだ。
 戦闘空間でしばらく耐えられるなら、あとは賭けさ。サクヤを救いだして、彼女がすぐに死者の力を底上げして反撃してくれればってね」

詰め寄られたレストは、正直に自分の計画を口にする。
死者が抵抗力を上げることで予言完成までの時間稼ぎができればと思っていたが、まさか二人の巫女が救援に駆けつけるとは夢にも思っていなかった。
予定外、しかし予想以上の成果を得ることができた。……ある意味での、彼女達の犠牲の上に。


「そうだったんだ……よし! 無事、じゃないけど、レストさんを連れ戻すダオスさんとの目的も達成できたし急いで戻ろう?」
「……まどかさん、流石にこのまま担いで帰ると榛名でも時間がかかりますよ?」
「というよりまどか、君が榛名に担がれているのってもしかして、まだ甘い機動力を榛名に助けてもらうだけじゃなくて……」
「う、うん。セルちゃんが凄すぎて、まだ足腰に力が入らないの。お尻も前も気持ち「それじゃあ帰りは僕の魔法を使おうか!」あ、そうだね!」


聞きたくない言葉を言わせないようにしながら、レストはまどかと榛名に触れてエスケープを使って世界樹に帰還する。
正直戻るのはダオスに何を言われるかわからなかったし、殺されるかもしれないという恐怖もあったのだが。

巫女の力により、黒き獣は討たれた。
しかし獣の言う通りそれは大災害の脅威の一片に過ぎないし、他の問題はまだ残っている。
予言を完成させ、大災害を防いで初めて勝利したと言えるのだ。

三人はこの後世界樹に戻り、仲間達と残りの問題について再び話し合うことになる。
戦いは、まだ終わらない。


--

641樹海巫女まどか☆グンマ〜叛逆の物語〜:2020/05/06(水) 22:32:11 ID:3k2I6frk0
「……」


転移魔法で三人が帰還したところまでを、多くの兵士達がモニター越しに凝視していた。
誰もいなくなった沖縄。
これまでの蒼の嵐に加えて戦闘の余波で、とても普通の人間が住める場所ではなくなってしまったものの……

そこは、ようやく静寂を取り戻していた。


「――黒き獣の、消滅を確認。同時に異常気象とフロワロも消滅……」



「――黒き獣が、シャドウが討伐されました!!!」



一人の兵士の震える声を皮切りに、全ての兵士が歓声をあげた。
もはや見守ることしかできなかった彼らではあるが、黒き獣の討伐は悲願の一つであったのだから無理もない。
誰もが口々に喜びの言葉を口にし、巫女の奮戦にそしてシャドウの動きを大きく鈍らせたリリカルの功績を讃える。
これまでの多くの犠牲は、決して無駄では無かった。
一部では戦意を喪失した兵士もいたが、今回の一連の映像はそんな彼らも勇気づけるものとなった。



しかし、同時に彼らは冷や汗も流すこととなる。



「さっきの様子を見てれば明らかだ。都庁の面々は予言を解き、かつフォレスト・セルの能力も完璧に把握していた!」
「それに、ミヤザキの巫女まで一緒ってどういうことだ!?」
「わからんが、これだけは言える! 彼らも、世界の滅びを回避しようという一点においては我々と同じ気持ちだ!」


狼狽える兵士達。本来であればありがたい情報も、少しばかり遅かった。


「おい、急げ! はやく九州ロボに! ココさんとメフィラスさんにも連絡を取るんだ!」
「くそ、目が離せなくて連絡が……!?」
「間に合ってくれ……!」


ASO3の兵士達はひたすらに慌てふためく。
まさか自分達のような存在が、こんな大事件の目撃者になろうとは。
連絡も、放送も、何もかもが遅れても誰も咎めることはできないだろう。
彼らは祈る。勘違いして飛び出してしまった上司にあたる二人が無事であることを……



【三日目・0時15分】

642目指せ完結:2020/05/06(水) 22:33:10 ID:3k2I6frk0
仮投下終了。問題点などがあれば適宜修正します

643 ◆jSXGNRSMwM:2020/05/07(木) 23:18:40 ID:7kEX4nLE0
【三日目・0時15分】

【東京都・新宿都庁世界樹入口】
【鹿目まどか@魔法少女まどか☆マギカ】
【状態】健康、魔力消費(中・回復中)真・世界樹の巫女、首輪解除、蒼への叛逆(中)、テラカオス化耐性(完全)、性知識入手
【装備】世界樹の衣、竜殺剣『天羽々斬』、榛名(蒼小耐性+テラカオス化完全耐性)
【道具】支給品一式 その他不明、サクヤのスマホ、セルのモンスターボール
【思考】基本:自分も戦い、みんなで生き残る
0:他の問題も、ダオスさん達と話し合わないと!
1:クラウザーさんのためにも、DMC狂信者の暴走を止める
2:ほむらちゃん、前もお尻も甲乙つけがたいんだね!
※巫女の祈りにより、魔法少女に近い存在へとなりました
※ソウルジェムなどはないので、肉体が致命傷を負えば普通に死亡します
※衣装はアルティメットまどかのものを2Pカラーにした感じです。戦闘力もそれの劣化版
※世界樹の王@世界樹の迷宮に加えてフォレスト・セルと同じスキルが使用可能です
※ダオス直伝のハイパーまどかビームを習得しました
※竜殺剣は所持しているだけでも竜やそれに近い種族に特効性能を持ち、結界や再生などの特殊能力も無効化することができます
 テラカオス・ディーヴァや真竜などには特に高い効果を発揮します
 また巨大な外見に反してとても軽いため、小柄な少女でも振り回したり投擲することができます
※器のセルの能力を手に入れ、蒼への叛逆能力を手に入れ能力値が上昇しました
 蒼に対する通常よりも高い耐性及び蒼に有効な貫通攻撃が可能ですが、本来はテラカオス用のため完璧な力ではありません

【レスト@ルーンファクトリー4】
【状態】ダメージ(大)、魔力消費(大)各種超耐性、ソウルアーマー・サクヤ、首輪解除
    ドラゴンハートによる超強化、蒼耐性(小)、テラカオス化耐性(完全)蒼による左腕喪失
【装備】最大錬成世界樹ノ剣、最大錬成防具、草原のペンダント
【道具】支給品一式、封じられた闇核、三竜の逆鱗、ファガンの卵 、小鳥印の青汁×沢山、減った材料
【思考】
基本:サクヤのためにも、人間としてこの殺し合いを終わらせる
0:正直帰るのは怖い……
1:同盟軍の味方と共に大災害回避のために動く
2:あわよくば竜と結婚できる世界を作りたい
3:DMC狂信者、拳王連合軍は絶対に許さない
4:ありがとう、サクヤ……
※ブリーフ博士の技を覚え、首輪解除が可能となりました
※現時点で、フォレスト・セルとの長時間のリンクは不可能です
※ゲートリジェクト(異空間移動)使用不可
※ネット上に『変態オーバーロード』の一人として動画を晒されました
※所持していた道具の内、切り札クラスの素材を全て使用しました
※左腕は蒼による消滅のため、どのような手段でも再生は不可能です

【静岡県・富士樹海・死者スレ内部】
【カルナ@Fate/Apocrypha】
【状態】宝具ぶっぱしていないけど、存在するだけで魔力消費
【装備】自身の槍、黄金の鎧、多くの死者達
【道具】不明
【思考】
基本:使命に従い、死者スレを守る
1:シャドウは消えたが、死者スレの警戒は怠らない
2:……いつから、尻に槍を刺すことになったんだろう?
※死者スレからは相変わらず動けません
※シャドウの脅威が去った死者スレがこの後どうなるかはわかりません

【日本海のどこか・ASO-3内部】
【主催モブ兵士(ストームトルーパー)@テラカオスロワ10期】
【思考】
基本:ココとメフィラスに代わり、放送や脅威の監視を行う
0:九州ロボ及びココ達に事の顛末を報告する

644決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:30:24 ID:L8Ca.emg0
ここは異界の横浜スタジアム。
両軍2-2で第五回裏。異界横浜スタジアム消滅まであと30分――


拳王軍はMEIKOが抜けたピッチャー枠を補うため、チェンジ前に誰が代わりの投手になるか協議をしていた。

「本来ならレーザービームを投げられる僕がMEIKOさんの代役が務まるんだけど、MEIKOさんと違って戦闘は苦手なんだですよね……」

メジャーリーガーであるムネリンは一見するとピッチャーには最も適役に思えるが、カオスロワ式野球においては野球の上手さだけが勝利に繋がるとは限らない。
カオスロワ式野球では打者から投手への妨害・攻撃もルール的にはOKなので、MEIKOはそれで打撃を受けて退場する羽目になった。
MEIKO自体もアルティメットアーマーに守られていたがために致命傷を回避したようなものなのに、サウザーの雷霆が飛んでこようものならムネリンではひとたまりもない。
打者も投手も捕手もできるムネリンがいなくなれば拳王軍の野球における戦力はもちろん激減する。

「だったら、私がいくわ」
「え? 瑞鶴さん?」

ムネリンの代わりに立候補したのは瑞鶴だった。

「瑞鶴、あなた投手なんてできるの?」
「提督さんから仕込まれていてね、MEIKOさんほどじゃないけど自信はあるわ」

サーフは、野球選手不足という事態も考慮して、いざという時のために瑞鶴に野球を教えていた。
一通りのポジションはこなすこともできる。

『だが、聖帝軍も疲弊しているとはいえ一筋縄ではいかないよ』
「ええ、でも私には秘策がある」
『秘策?』
「お願い、私と“最凶の野球ボール”を信じてみて」

瑞鶴もまた適当に言ったわけではなく、何か勝利への策があって物を言っているのが目から見て取れる。
その眼差しを見て、ラオウは言った。「うぬに任せるぞ」と。


そしてバッターボックスに立ったのはスタービルドストライクことガンダム。
ビームサーベルを構えている。
マウンドに立ったのは瑞鶴、しかしその手にはちょっと変わったボールが握られ……

「なんだありゃ?! ってセンターにいたサボテンの怪物じゃねえか!?」
『インドラ』

訂正。
かなり変わった巨大な球を瑞鶴は持ち上げていた。
ぶっちゃけ球の正体は夜叉鬼・メーガナーダである。
明らかに投手より大きい球、しかも意思持ち支給品とはいえさっきまで選手として出てきた者がボールの代わりとして出てきたことにレイジは面食らう。

余談だが瑞鶴が涼しい顔で巨大なこの悪魔を片手で持ちあげているのはメーガナーダが軽いのではない。
瑞鶴の膂力がそれだけ凄まじいのである。

「いったい何のつもりなのだ拳王軍?
布陣的にもレフトはおろかセンターまでいなくなって外側ががら空きじゃないか……」
「捕手が2人分いらないくらい自信があるんだと思う。
レイジ! 見た目のシュールさに騙されないで!」
「おう、全力で挑むぜ」


「あなたたちに打てる? 私と提督さん、最高のペットを!
いきなさい! メーガナーダ!!」
『インドラ!!』

瑞鶴は巨大なメーガナーダをボールとして投げた。
だが、その球速はMEIKOに比べれば明らかに遅い。
しかも大きいため、ビームサーベル(バット)を振れば確実に命中する。

(遅え! だがヒットしても殺された亜久里のケースもあるし、警戒はしとくべきか?
とにかく最初は様子見も兼ねて振るだけ振って見よう)

メーガナーダは人間から見ると大きいが、平均18mはあるMSから見るとさほどでもない。
むしろ打つにはちょうどいいくらいの大きさだ。
レイジは警戒はしつつも、ビームサーベルを振った。


――雷変のモクシャ――
――マハザンダイン――


「なに!?」

レイジがビームサーベルを振った瞬間、飛んできたメーガナーダの殻が開いた。
複数のエイリアンでも入っているかのようなおぞましい姿を晒すと同時に、風の魔界魔法を使用。
当たりかけたビームサーベルは風の刃の衝突で弾かれ、それだけでなくガンダム自身にも襲い掛かる。
レイジは咄嗟にアブソーブシールドで防御するが、物理的な要素が強い風は吸収できないためか、盾は切り刻まれて破壊された。
その間にメーガナーダというボールはラオウが両手でキャッチをした。

645決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:30:58 ID:L8Ca.emg0

「レイジ!?」
「慌てんなイオリ、俺もガンダムもまだ大丈夫だ。
……クソッ、攻撃能力を持ったボールか!」

レイジがガンプラバトルで、そしてこのカオスロワで実戦経験を積んでいなかったら、今の一投だけでガンダムは撃墜されていただろう。
ラオウから悪魔を返された瑞鶴はすかさず、2投目を投げる。
レイジは今度は悪魔が届く前に、機銃による先制攻撃を仕掛けることにした。

「バルカンを喰らえ!」

――雷変のモクシャ――

「ぜ、全然効いてねえ!」

――狩る――

「ぐゥ!!」

しかしメーガナーダは今度は殻を閉じ、命中した弾丸は全てBLOCKという文字と共に金属屑と化した。
殻を閉じた状態のメーガナーダは物理攻撃を一切無効化するのだ。
おまけに体格が非常に大きいため、ピッチャーである瑞鶴の防壁として後ろの彼女を守ってもいる。
レイジは再びビームサーベルを振ろうとするが、攻勢はメーガナーダ側にあり、拳をガンダムが握っていたビームサーベルに向けて放たれ破壊された。

「このサボテンエイリアン、良いパンチをしやがるぜ……見た目よりずっと機敏だ」

再び、ストライク。
そしてあまり間を置かずに三投目が投げられる。
レイジはここで壊れたビームサーベルの柄を投棄した。

「こいつでやるしかねえ! ビルドナックル!!」

ガンダムの右腕が光り輝く。
直撃であればハクメンをも気絶に追い込むスタービルド最大の技、ビルドナックルで立ち向かうつもりなのだ。




「ブオオオオオオオ!!」



だが、ここでメーガナーダは咆哮共に空中で高速回転する。
発動した技の名前はパワーチャージ、そしてマッスルボンバー。
前者は次の攻撃の威力を二倍にし、後者は自身の質量を使って暴れまくる物理技だ。
それがガンダムの右拳ごとビルドナックルを砕いてからラオウの両腕に収まった。
ガンダムおよびレイジのアウトである。

「クッソおおおおおおおおお!!!」
(無駄よ、あなたたちも今までの戦闘や、ドラゴンハートで強化されているのは知っている。
でも、私とメーガナーダは提督に極限まで強化されているし、特にメーガナーダはスーパーサイヤ人になれるベジータの肉も喰らってきた。
内包するパワーはそこらのガンダム以上よ)

右腕が破損したガンダムに代わり、次にチルノがバッターボックスに立つ。

しかし……

「こいつ……氷属性攻撃が効かない!」

お得意の氷を使った技でメーガナーダを氷漬けにしようと試みるが、メーガナーダは凍らない。
それもそのはず、メーガナーダは殻を開けた状態では火炎・氷結・衝撃・地変攻撃が無効になるのだ。
ちなみに閉じた状態では物理攻撃が無効である。
そして三投目にてメーガナーダから容赦ない攻撃が放たれた。

――次の魔法攻撃を強化するマインドチャージ
――からの高等火炎魔法マハラギダイン

「うわああああああああ!!」
「チルノ……!!」

氷の妖精にとって弱点とも言える火炎魔法が容赦なくチルノに直撃する。
当然、氷柱で作られた弾幕やスペカ攻撃も諸共溶かされてしまい、聖帝軍はチルノの死を覚悟した。

646決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:31:32 ID:L8Ca.emg0

「……あたいはまだ生きてるよ」
「チルノ!」
「だが、その体は……」

チルノは妖精の力を使って、メーガナーダの莫大な威力をもつ火炎魔法を防いでいた。
だが、その代償として大人の体を持っていたチルノの体は熱で溶け、または魔力を使いすぎたがために、子供の姿に戻っていた。
そのような代償を払いながらもチルノは生還はしたが、聖帝軍はこれでツーアウトである。

「アイツとたたかったときに、何かをつかみかけてたのに、あたいってば、さいきょーしっかくだ!」
「気負うな、チルノ、俺がヒットやホームランを取ってやる」

余談だが、大人化が解除された影響なのか、チルノの知力が元の⑨に戻っていた。
最後にバッターボックスに立ったのは鎧武。
刀をバットの代わりにして挑む。

――BLOCK  ――BLOCK

「クッ!」

しかし……チートライダーの一人である鎧武・極アームズのあらゆる召喚武器をもってしても、メーガナーダの硬い殻を突破することは叶わず。さらに。


――黒きバクティ
――ヴィラージュの剣

「うおおおおおおおおお!!!」

メーガナーダの必殺技の一つである、某草加似の男をも葬ったワラスボ状の食らいつき攻撃が放たれる。
鎧武は嵐のような攻撃の前に刀を全力で振って対抗。
甲冑の何ヵ所かをかじられてボロボロにはなったもの、攻撃を凌いだ。
ただメーガナーダを打つことは叶わず、スリーアウトとなってしまう。

「轟沈させる気で投げたんだけど、流石にやるわね……」
「ぐふッ……伊達に死線を生き延びちゃいないぜ」

瑞鶴はあわよくば三人を抹殺するつもりでメーガナーダを投げたのだが、三者ともメーガナーダを打てないなりに生き延びた。
ここまで生き延びたのは決して運だけではないという証左であろう。
少なくとも舐めプしたり、ゴリ押しして勝てる敵では確かであると、瑞鶴は警戒を強めた。

「ものの五分でチェンジ……まさか、誰も打つことができなかったとは」
「サウザー……」
「闇よ、俺は仲間たちを責めてるわけじゃない。ただ、あの瑞鶴とメーガナーダという奴らは侮れんということだ」
「幸いなのは僕らは後半裏の攻撃権があと一回だけ残されていること、三人の奮闘のおかげでメーガナーダに関するいくつかのデータを手に入れたこと、六回表が終わるまでになんとか対抗策を考えてみるよ」
「任せたぞ、犬牟田」

瑞鶴・メーガナーダへの対抗策はベンチの犬牟田に任せ、聖帝軍は守備に入る。
拳王・聖帝・両軍にとっても最終回になるであろう第六回が始まる。





               拳 2-2 聖

『拳王連合軍 布陣』

川崎宗則         1番ショート
クロえもん        2番サード
ラオウ          3番キャッチャー
瑞鶴           4番ピッチャー
        5番レフト
メーガナーダ       6番野球ボール
翔鶴(+ロックマン)   7番ファースト
             8番セカンド
             9番ライト


『聖帝軍 布陣』

             1番ショート
葛葉紘太         2番ファースト
金色の闇         3番ピッチャー
サウザー         4番キャッチャー
             5番ライト
             6番セカンド
             7番レフト
レイジ(+ガンダム)   8番センター
チルノ          9番サード

647決戦へのプロローグ:2020/06/01(月) 08:32:33 ID:L8Ca.emg0


【二日目・23時35分/神奈川県・異界横浜スタジアム】

【聖帝軍】

【サウザー@北斗の拳】
【ターバンのボイン(金色の闇)@ToLOVEるダークネス】
【ターバンのガキ(アリーア・フォン・レイジ・アスナ)@ガンダムビルドファイターズ】
【ターバンのないガキ(葛葉紘太)@仮面ライダー鎧武】
【ターバンのレディ(チルノ)@東方project】
※メーガナーダの火炎攻撃により、元の姿に退化しました

【ターバンのガキ(犬牟田宝火)@キルラキル】
【ターバンのガキ(イオリ・セイ)@ガンダムビルドファイターズ】
※負傷により退場



【拳王連合軍】

【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【ラオウ@北斗の拳】
【川崎宗則@現実?】
【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【瑞鶴@艦隊これくしょん】
※メーガナーダを野球ボールとして使っています


【ハクメン@BLAZBLUE】
※負傷により退場
 また鎧に罅が入り、瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました

【MEIKO@VOCALOID】
【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【デューオ@ロックマンエグゼ4】
※負傷・気絶等により退場

648目指せ完結:2020/06/01(月) 08:35:43 ID:L8Ca.emg0
短いですが以上です
本当は決着まで書きたかったのですが、リアルで体調を崩し気味なのでやむを得ずできあがってた五回裏までを投下

投下や予約がなかった場合は出来上がり次第、決着となるSSを投下しようと思います

649 ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:28:29 ID:Y1vKgW0.0
投下します

650死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:30:23 ID:Y1vKgW0.0
聖帝軍と拳王連合軍の試合も最後の回を迎えました。
2-2、両陣営負傷者・死傷者多数。
泣いても笑ってもこれが最後です。

〜 〜 〜



(倒れたMEIちゃんや、平等院のためにも……)

万感の想いを胸に最初にバッターボックスに立ったのはラオウ。
高津を仕留め、プニキ以外でホームランをたたき出した存在。
この横浜スタジアムにおいて気絶したハクメンを除くと、間違いなく最強の強打者である。

ラオウは見極めのために二球まではあえて見逃し、相手の投球の癖を覚えた。
高津のそれと比べると流石にお粗末な闇の技術――次で確実に打ち取ることができるとラオウは核心。
そして次の三球目を打とうとし。

「今だ! 雷霆!!」
「ぬう!?」

突如、キャッチャーのサウザーがMEIKOにも放った雷霆を放つ。
しかし雷が向かう先はラオウではない……キャッチャーがバッターがヒットを出すまで直接攻撃することは(流石に野球にならないから)反則だ。
だから雷を浴びたのは――野球ボールの方だ。
野球ボール自体は絶縁体なので雷を浴びても焦げるだけ……だが聖帝軍には氷の妖精であるチルノがおり、ボールを氷で覆えばコーティングされた部分が帯電するようになる。
すなわち、闇の投げた球は雷球となったのだ。
これを打ってしまったラオウはバットを通して感電することになる。
それも巨大なロボットの装甲すら溶かす電撃をその身に受けた。

「ぐおおおおおおおおおおおお!!!」
「ラ、ラオウ!!」
『ラおじさん!!』

拳王軍ベンチの方から思わず悲鳴が飛び出す。
しかしラオウは負けじと吠える。

「ぬおおおおおおお!
 聖帝軍、媚びぬ退かぬ省みるはおまえたちだけだと思うなよ!
 我ら拳王軍にも負けられぬわけがあるのだーー!!」
「なに!? この雷球を強引に打つつもりか!?」
「総員警戒態勢! 身構えて!」

ラオウは電撃で痺れ、肉体が一部焦げても打つことを決行。
まさかダメージを無視してでも打とうとするラオウにサウザーも虚を突かれ、闇は急いで仲間たちに警戒態勢を敷かせる。

そしてラオウは人並み外れた根性と筋力で、聖帝軍が生み出した雷の球を打った。
向かう先はど真ん中ホームランコース。
初速が早すぎてサウザーがクロえもんの時に見せた、打った直後にキャッチする芸当は使えない。
感電ダメージのせいで高津殺害時ほどの球速は出ていないが、それでもかなりの速度が出ており、ギュンと闇が反応できない速さで彼女の
頭上を通り抜ける。


「俺に任せろ!!」

センターには聖帝軍の守護機神であるスタービルドストライクが待ち構えていた。
ラオウの打球がホームランを勝ち取るにはこのガンダムを突破しなければならない。

「ビルドナックルを失ったてめえに何ができんだ!」

ラオウの打球の威力はガンダムをも凌ぐ。
おそらくガンダリウム、PS装甲、ナノラミネートだろうが耐えられる代物ではない。
ビルドナックルくらいしか対抗できる手段がないというのが、クロえもんの発言の意図であった。

「ああ……ビルドナックルが一つしかなければな!」

ガンダムの左拳が光り輝く。

「まさか……」
「もう一つの――ビルドナックルだ!!」

スタービルドストライクは両腕ともビルドナックルが打てるのだ。
レイジはラオウが打った球に対し、光り輝く拳を叩き込み、ホームランを阻止せんとする。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!」

ぶつかり合う出力全開のビルドナックルと破壊の野球ボール。
一瞬にして行われた攻防――その結末は……

「ビルドナックルが……負けた!?」

イオリや聖帝軍の顔が一瞬、曇る。
ラオウの打球がビルドナックル及びガンダムの左腕を削り、パーツを壊しながら抉っていく。
威力で勝ったのはラオウの打球であった。
このままでは打球はガンダムを貫通して観客席へと入り、ホームランとなってしまうだろう。

651死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:30:57 ID:Y1vKgW0.0

「だが……威力は減っただろう!!」

それでもレイジは、反撃の証たるガンダムのパイロットは諦めない。
操縦桿を力いっぱい動かし、ガンダムの姿勢を即座にボールを背にするような形に変える。

「これならどうだ!!!」

ボールが観客席に入る寸前、ガンダムが吹かしたバーニアの火がボールに直撃する。
これがビルドナックルとぶつかり合う前なら、噴射した炎など意味なく観客席に入るだけだったが、今のボールは全力のナックルとかち合ったため、勢いが落ちている。
結果、炎に煽られ、ボールは観客席にギリギリで入ることなく、ガンダムの足元に落ちた。
一方、ヒットはともかくホームランは失敗すると事前に感じ取ったラオウは既に走り出していた。

「紘太!!受け取ってくれ!!」

レイジは急いで一塁方面に、ボールを一塁方面に蹴って渡す。
紘太はボールをキャッチしようとする。
そんな紘太にラオウは奥義である天将奔烈を放たんとする。

「させんぞ、天将奔……」
「俺の仲間に手を出すな!!」
「なに!?」
「紘太! こいつは俺が止める! おまえはボールを手に入れることに集中しろ」

だがその前に、後ろからキャッチャーであるサウザーが追跡してきていた。
サウザーからの攻撃にラオウは寸前で回避行動を取り、喉元を割かれるような致命傷は回避してものの、天将奔烈は不発に終わった。
そしてサウザーの援護を受けた鎧武は一塁ベース上で球をキャッチしようとする……が。

「一塁はなんとしても奪わせてもらう!!」
「うお!?」
「なッ!?」

鎧武のグローブにボールが収まりかけた寸前、ラオウは地面を蹴って大地を揺るがした。
奥義でも何でもないただの力技だが、その振動はベンチにいた味方やマウンドに出ている敵を跳ねさせるには十分であり、最も近くにいたサウザーや鎧武は一瞬、足を取られてしまう。

「しまった!!」

特にボールをキャッチする寸前であった鎧武は想定外の振動により照準がズレて、ボールはグローブに当たっただけで手中に入らず、ポトリと足元に落ちた。
鎧武は急いでそのボールを拾おうとし、ラオウはその前にスライディングをする。
サウザーはラオウの背後から手刀を叩き込もうとし――


「残念だが、セーフだ…!」
「くッ……」

先ほどディオにやられた傷もあってサウザーの手刀はラオウの分厚い筋肉で覆われた背中を心臓まで貫くこと叶わず、ラオウは鎧武がボールを拾うより先に一塁ベースを踏んだ。
幸いと言えるのは、ラオウがこれ以上進軍できないことだろう。

防衛は完全な失敗ではなかったと聖帝軍は思うようにし、それぞれ元の持ち場に戻る。

652死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:31:35 ID:Y1vKgW0.0


『すまねえ、俺がキャッチできてれば』
「レイジのせいじゃないよ、いや、僕がもっとビルドナックルを強化できていれば……」
「気に病むな、ホームランを打たせなかっただけで戦果だぞ、よくやったぞレイジ、そしてイオリ」

サウザーは両腕がなくなるほどボロボロになったガンダムを見上げつつ、少年二人をほめたたえた。
少年二人はにこりと笑う。

『よーし、このまま戦うぞ』
「え? レイジはボロボロのガンダムのままで戦うの? 修理ぐらいは……」
『イオリの腕を信じてないわけじゃないが、もう試合終了まで時間がねえ。
 バルカンと足は無事だから壁や砲台ぐらいにはなる』
「大丈夫かな……?」
「無理はしないで、レイジ」
『おう』


イオリや闇らの心配を他所にレイジは半壊状態のガンダムのまま、試合を続行。
次の打順は瑞鶴であったが、瑞鶴は闇の投げた球を全て見逃し三振した。

「勝負を挑んでこない……!?」
「悪いけど、今の私はピッチャーよ、肩を壊すわけにはいかないの」
「なるほど……六回裏を見越した温存戦略ね」

闇は瑞鶴の目的を理解する。
瑞鶴の今のポジションはピッチャーであり、無敵の野球ボールであるメーガナーダを投げられる唯一の投手だ。
先に聖帝軍を完封させた存在がいなくなるのは拳王軍にとって痛手であろう。
まだ六回裏が残っている以上は、メーガナーダは必要不可欠な防衛装置である。
故に瑞鶴および拳王軍はワンアウトも必要経費と見て、瑞鶴は防御と温存に徹させるようにしたのだ。
そして目論見通りに瑞鶴は下がるが、彼女は自信満々に次の打者を喧伝する。

「次は私のご自慢のペット、メーガナーダよ!
 あなたたちにこの子の進軍を止められるかしら!」
「GURARARARAARA……」

鉄壁の防御と暴力と暴食の悪魔、メーガナーダ。
瑞鶴の後ろで四本の腕を器用に使ってバットを高速で振るメーガナーダに闇の投球は通用しない……かに思われた。

「インドラ〜♪」
「え?」

いざ、闇が投げた後にメーガナーダは何を思ったのかボールを打たずに、闇がボールと一緒に投げた「何か」を食べだしたではないか!

「ベイダーら主催から、配布された基本支給品……その中にあった携帯食料よ」
「俺、戦極ドライバーとロックシードのおかげで腹減らないから取っておいたんだけど、まさか役に立つなんてな」
「ひ、卑怯な……!」

食欲に負けて携帯食料に気を取られるメーガナーダ。
もちろん、ボールはそのままキャッチャーの手の中に納まり、ワンアウト。

「メーガナーダ。めッ! 食べちゃダメ!」
「インドラ……」
「ひんやりしたかきごおりはいかが〜♪」
「インドラー!」
「コラコラコラッー!!」

瑞鶴はペットを躾けようとするが、三塁ではチルノが能力で作った即席のかき氷で、メーガナーダを挑発。
口からすっかり涎を垂らし、集中力を失ったメーガナーダの攻略は大して苦ではなく、メーガナーダはボールを打てないまま見逃し三振、ツーアウトとなる。

このあと瑞鶴とメーガナーダは激おこぷんぷん丸な仲間たちにメチャクチャ土下座した(二回目)。

653死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:32:15 ID:Y1vKgW0.0


そしてツーアウトの中、時間的にも後がない拳王連合軍のバッターボックスに立ったのは、ロックマンとクロスフュージョンした光翔鶴である。

「ッ……!」
『翔鶴さん、かならず打とう。
平等院さんたちの犠牲を無駄にしないためにも』
「ええ必ず聖帝軍を殲滅します!」

(気張れ、闇、みんな。必ずここで奴らの攻撃を食い止める!)
(ええ)

翔鶴のバッターとしての実力は高津なら完封できるレベルであったが、それは昔の話。
ダークチップを解禁した翔鶴の攻撃性は、ドラゴンハートで強化された聖帝軍でさえ危険なレベルだ。
何より聖帝軍はダークチップのことをよく知らないので全く攻撃を予測できない点もある。
サウザーは闇や仲間たちにここを最後の正念場にしようと、視線を送った。

「ダークサンダーを!」
「無駄だ、雷霆が闇への攻撃を防ぐ!」

先の時のように翔鶴はダークサンダーで闇への先制攻撃を図ろうとしたが、サウザーの呼び出した雷がそれを防ぐ防壁となり、闇の投球を許した。

「喰らいなさい!」
「アタイたちのがったいこうげき!」
「聖帝サンダーボールだ!」

闇は全力のボールを投げる、チルノは投げられた球に霜を張り、サウザーはそれを雷霆による電撃でコーティングした。
打とうとすればダメージ必至の魔球。
ラオウはこれを根性と鬼耐久力で突破したが、翔鶴にはこの電撃を耐えきれるほどの防御力は恐らくない。
PETが感電でもすれば彼女の力を大きく後押しするロックマンが機能停止するという作戦でもあった。

「翔鶴!迷わずに打て!」
「『ラおじさん!!』」
「ようやっと、策を思いついたわ! 剛掌波ッ!!」
「ラオウ!? おのれぇ!」

ラオウはこれに対し、一塁から剛掌波を放ち、翔鶴を援護する。
だがこの気の波は決して聖帝軍を狙ったものではなく、飛んでいく野球ボールの方を狙ったもの。

否、正確には野球ボールの近くを横切っただけ。
ボール自身の軌道などは変わったりしていない。

ただし、打ちだした気はボールの表面に付着し帯電していた氷を溶かして剥がす程度の威力はあった。
付随されていた感電効果がなくなったのである。

「……見切った!」

翔鶴は早いだけになった闇の投球を打つ。

「させるか!」

そこへ今度はサウザーがクロえもんの時にも見せた、打たれた直後の球を速さにものを言わせて取る荒業で対応しようとする。
だが、翔鶴は打ったと同時にチップをスロットイン。
彼女の足元にラッパのような物体が現れた。
それはサウザーが前面に回り込むより早く音を鳴らすと。

「なに!? 動けん!?」
「私たちまで!?」

突如としてサウザーや全ての聖帝軍の動きが止まってしまった。
ヒットした打球はゴロで大きい当たりではなく、ピッチャーである闇の足元に転がったが拾うことさえできない。

「ラッパ型ウィルス――ダークサウンド」
『その音色は聞く者の動きを封じてしまう代物さ』
「ぐッ……貴様らは動けるのか……!」

彼女が使用したものは音が鳴っている間は敵の攻撃や移動を強制的にできなくするダークチップだ。
一方、翔鶴とロックマンが味方と判定した存在には効かない反則的代物だ。
その気になれば目の前の動けないサウザーを簡単に殺すこともできる。
が、翔鶴はそれをせずに一塁側へ向かう。

「なに? 殺さないつもりか?!」
「運が良かったですね、このチップはバグのせいで強制移動させられる仕様のようです」

ダークサウンドは副作用として端のパネル(地形)に強制移動させられてしまう。
また、先にサウザーを殺してしまうとそれ自体が隙となって音が鳴りやんだ直後に闇が一塁に送球をしてアウトを取られてしまう。
既にツーアウトである拳王軍は、あと最低一点を取るまではアウトになるわけにはいかないのである。
そして誰もいない二塁へ走るラオウと、一塁へ飛ぶ翔鶴。

654死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:32:53 ID:Y1vKgW0.0


「まずい!」

一塁へ向かう寸前に翔鶴はダークソードを召喚する。
ダークサウンドの音色はもうすぐ終わるが、その前に鎧武を仕留めようとする。
鎧武の防御や回避行動は間に合わない。

「平等院さんの……」
『――仇だ!』

憎悪による鬼気迫る表情で翔鶴とロックマンは仲間を殺した男を殺さんとする。



そして非情なる闇の剣が、仮面ライダーを唐竹割にした。

「みんな、すまね――」

鎧武もとい紘太は、翔鶴相手に何もできなかった自分を許せぬまま、ターバンごと左右に真っ二つになった躯を晒した。
そして翔鶴はその死骸ごと踏みつけるように、一塁を走破した。
その後、近くの壁に当たることで漸く移動に関するバグも止まる。
同時に漸く、ダークサウンドの音色は止まり、聖帝軍はやっと迎撃行動に映れたのだ。

「紘太……クッソがあ!」

仲間の死にレイジは激昂する。
もはや両腕を失ったガンダムではトーチカぐらいにしかならないのはわかってるが、それでも仲間の死を弔うために、僅かな効果しかないとしてもバルカンをラオウや翔鶴に向けて放った。
二塁へ向かう翔鶴はこれを冷静にアクロバット飛行で回避。
一方、ラオウは――

「北斗神拳奥義 二指真空把!」
「な、バルカンの弾を指で受け止めやがった!?」

二指真空把とは敵側から放たれた飛び道具を二本指で受け留め、かつ相手に投げ返して反撃する技。
ケンシロウは矢などを受け止めるために使ったが、野球選手として成長したラオウは片手でガンダムのバルカンの弾を受け止めた。
サイズが色々おかしいが、実際に二本指で受け止めたのだから仕方ない。
更にラオウはお返しと言わんばかりにレイジに向けてバルカンを投げ返した。

その弾丸は、ラオウの超剛腕も相まってガンダムが撃った時よりも格段に速く、威力を増して元の持ち主であるガンダムのコクピットをぶち抜いた。

「がッ――」

弾丸が装甲を貫徹し、内部のレイジに直撃。
そしてレイジの上半身は弾けた水風船のようにバラバラになって血と肉片をコクピット中に飛散させた。

「レ、レイジィィィーーーーッ!!」
「よせ、イオリ! 飛び出すんじゃない!」
「嫌だ、君が死ぬなんて……ラリー・フォルクみたいな死に方をするなんて……!」

沈黙したガンダムのコクピットに空いた穴から夥しい血が流れたことからして、相棒の死を悟ったイオリは泣き叫びながらベンチから飛び出そうとする。
犬牟田が止めなくては、試合中であることを無視してガンダムに駆け寄っただろう。

「紘汰、レイジ……」
「どうすれば!」

戦場でまだ生きているチルノ・闇は仲間の死に涙する暇も許されない。
三塁に迫るラオウ、二塁には既に翔鶴が迫っている。
拾ったボールは闇の手の中だが、闇の見立てでは三塁のチルノがキャッチするより、ラオウの方が早い。
おそらく無暗に三塁に投げれば、キャッチしようとした隙にチルノがラオウに殺されるだろう。
誰もいなくなった二塁に投げるなど論外だ。
チルノに至っては闘気だけで氷を溶かしてくるラオウへの打開策が浮かばなかった。

655死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:33:35 ID:Y1vKgW0.0

「チルノ! 上へ飛べ! 闇! ボールはまだ投げるな!」
「「サウザー!?」」
「ラオウは……北斗神拳の使い手は南斗鳳凰拳伝承者である俺が倒す!!」

迷う妖精と暗殺者にサウザーは指示を飛ばす。
知能が減退したチルノは「サウザーの力を信じる」程度に思って、ラオウとの交戦を回避。
三塁を拳王に明け渡した。
一方で闇はサウザーが何を思っているのか理解する。

カオスロワ式野球では捕球した選手がタッチする以外に、走者が死亡してもアウト扱いになる。
ここでサウザーに送球すれば、ラオウと翔鶴はそれぞれ三塁と二塁に踏みとどまることになり、ホームインによる点の獲得は防げる。
ところがこれはほんの一時しのぎにしかならない。

翔鶴の次の打者は一番バッタームネリン。
プニキやラオウほどでないにしろ、強打者であり、闇程度の腕では確実に打たれホームランでもされれば目も当てられない。
さっきは球にイチローの顔を描く奇策で凌いだが、次は通じる保証はない。

ならばと、サウザーはあえて防御を切り捨て、ここで決着をつけることにしたのだ。
ラオウさえ殺せれば、拳王軍はスリーアウトチェンジ扱いとなり、向こうの士気も間違いなく削ぎ落とすことができる。
勝つための制圧前進なのだ。
もっとも問題として、この策はラオウが三塁に留まったら意味はなくなること、だが。

「南斗と北斗、どちらが上か決着をつけるために俺と戦えラオウ!」
「ふん、そんな安い挑発など……」
「ほう、そこで三塁に留まるなどと安全策を取るならば拳王は南斗聖拳の者の決闘の申し出から逃げた腰抜けとして未来永劫、恥の歴史として残ることになるが?」
「ぬう」

サウザーはここで舌を使ってラオウの高いプライドを刺激し、戦わせるように仕向けたのだ。
拳士である以上、戦いを逃げることは許されない。
それが北斗神拳と因縁のある南斗聖拳の長から叩きつけられたものならば、猶更だ。
故にラオウもまた、確実な安全策を捨てて三塁を蹴った後にホームベースに向けて走り出した。

三塁とホームを繋ぐ一本の細い白線。
その上で聖帝と拳王の最後の戦いが始まった。

「ぬおおおおおおおおおお!!!」
「はああああああああああ!!!」

ラオウとサウザーはぶつかり合う前にまず互いに闘気を高める。
これだけで周辺の地面抉れていく……それだけで、2人が人類の領域を突破せんとしている証左だ。
次にサウザーは背筋を伸ばして脚を閉じ、手を猛禽類の爪のような形にし両腕を水平に広げた十字のような構えをとった。

「南斗鳳凰拳奥義 天翔十字鳳!! 」
「鳳凰拳に構えだと?」
「フフ 帝王の拳 南斗鳳凰拳に構えはない!! 敵はすべて下郎!!
 だが対等の敵が現れた時 帝王自らが虚を捨てて立ち向かわねばならぬ!!」

本来は「防御の型」である構えをとらない南斗鳳凰拳だが、己と対等な敵が現れた時に立ち向かう為に必殺不敗の意を込めてこの構えが使われる。

「すなわち天翔十字鳳 帝王の誇りをかけた不敗の拳!!」
「早ッ……――」

サウザーはそのまま跳躍し空中から相手に襲いかかる。
これまでの強化と死闘によって機動力が圧倒的に強化されていたこともあり、ラオウは拳で抵抗するもその身体に触れることが出来ず、いつの間にか首に鳳凰の斬撃を見舞われていた。
ブシュウとラオウから鮮血が飛び出すが、 致命傷である動脈を切るには分厚い筋肉が邪魔でまだまだ浅い。

「もう一撃だ!」
「ぐぬう!!」
「ラオウ君!」「ラオウ!」「拳王さん!」「インドラ!」

656死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:34:08 ID:Y1vKgW0.0

再び、ラオウの首筋、先ほどと同じ場所にまた一閃が入る。
今度はより多くの出血を出すことができた。

(くッ、これまでのダメージのせいもあるのか、思ったような力が出ない。
 だがおそらく、あと一発叩き込めば動脈を絶ち、ラオウを落とすことができる!
 あの世で見ていてくれ、先に逝った者たちよ……手向けは拳王の首級だ!)

先に亡くなった者たちへの想いを胸に、サウザーは拳を振るう。
どれだけ拳を振るっても圧倒的速さを誇るサウザーに拳が届かないラオウ。
しかしてラオウの速さではサウザーの攻撃から逃れることもできない。

(この拳王がここで倒れるというのか……? 天の道を行くこの俺が……)

本能で確信していた。
奥の手たる天翔十字鳳を出したサウザーにこのままでは負けると。
あと一撃首にもらえば命を断たれると。


そんなラオウの頭によぎったのはこれまでの試合や戦いで散った者たちの顔……



(思い出すのだ、ラオウ。
 おまえの弱さのせいで、どれだけ涙を流したかを。
 ムギちゃんや平等院たちの犠牲を、おまえは無駄にするのか?)

                        ――否

(拳王連合軍に勝利の栄光を与えぬまま、消えるつもりか?)

                        ――否

(主催やヘルヘイム、ギムレーやナッパをこのままのさばらせておくつもりか?)

                        ――否

(おまえの野球はこんなものか?)

                        ――否

(ならば、悲しみと怒りを力に変えるのだ)










                        ――応

657死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:34:45 ID:Y1vKgW0.0





サウザーの手刀がラオウを捉えかけたその瞬間。
ラオウは脳内で『何かがカッチリと噛み合った』感覚を覚えた。
そして、ラオウはサウザーの、聖帝軍や拳王軍の視界からもフッと消えたのだ。

「なにィ! ラオウが消えた!?」

まるで透明人間のように、どこぞの影薄組のように相対していたラオウが消えた。
同時にサウザーの手刀も空振り、空を切る。

「奴はどこへ……」

サウザーは間髪入れず、殺気を辿ってラオウを探す。
だが、痕跡を辿ることもできず――




「――がはっ!!」
「サ、サウザー!!」

ラオウが消えたと思われた数瞬後に、サウザーの胸は背後からの一本の剛腕に貫かれた。
今度は右胸…すなわち、心臓をも穿った致命の一撃。耳に響くは闇の悲鳴。
サウザーは口と腕を引き抜かれた穴から大量の血を吐き出した。
それを成し遂げのは消えたと思われた、ラオウである。

「い、いったいなにを……」
「北斗神拳究極奥義“無想転生”を俺はたったいま会得した、おまえはそれに敗れただけのことよ」



無想転生とは深い哀しみを知った者のみが体得できる北斗神拳の究極奥義。

「無から転じて生を拾う」という意味合いを持ち、実体を空に消し去りあらゆる攻撃と回避を無効にする技。
平たく言えば「無敵状態」になり、そこから放たれる一撃を相手は防ぐことが出来ない。
あらゆる攻めを無想のまま回避し、無想ゆえに誰にも読めず防げないカウンターを放つ。

ラオウは人間の限界以上にまで鍛え上げた上で北斗神拳を極限まで極めてつつ、深い哀しみを仲間の死を知ったことで体得したのだ。
そしてサウザーの奥義である天翔十字鳳と速さを打ち破ったのである。

「……さらばだ! 聖帝」

ラオウはサウザーを打ち破った後、トドメの一撃を喰らわさんとする。

「させません!」

サウザーへのトドメを阻止すげく、闇がボールを片手に無数の髪を鎌のように変化させてからラオウへの特攻をしかける。
手数にものを言わせた面制圧に近い範囲攻撃。
せめてかすりでもすればラオウはアウトになって攻撃権を失い、サウザーは助かるかもしれないと思ったゆえの行動であった。

「待て、闇!」
「全ての攻撃を避けられて…」
「無駄だ、無想転生に死角はない」
「もう後ろに……!?」

だがラオウは再び無想転生ですべての攻撃を躱し、かつ敵に見えないことを利用してほぼ一瞬で背後に回り込む。
それから闇が防御や回避の態勢を取るよりも早く、ディスコードフェイザーでさえ打ち破った超・剛掌波を放った。



「闇……なぜ……俺を助けようとした……?」

心臓を破られた以上はどう足掻いても死ぬ。
ラオウの一点は許してでも安全策として闇とチルノさえ生き延びれば、ほんの僅かでも勝てる可能性はあったのかもしれない。
だが、闇は安全策を選ばず、サウザーを助けようとしてしまった。
故に今、拳王に諸共殺されようとしている。

「……私も退かぬ、媚びぬ、省みぬをやってみたんですよ。
 好きになってしまった人を見殺しに、したくなかったのですから」


「ははは、やはり愛などいらぬな」

サウザーの最後の笑顔は、自嘲とも微笑みともつかないものであった。
そして超・剛掌波の、凄まじい闘気の奔流により、2人の肉体は粉々の肉片へと変わった。
さらに勢いの止まらない奔流はちょうど後ろ側にあった聖帝軍ベンチにも直撃する。

「認められない、こんなシュラク隊や鉄華団並に悲惨な結末なんて!」
「ごめんなさい高津さん、僕らはここまでのようです」

ベンチに残っていたイオリや犬牟田は逃げる事もできぬまま、肉体がベンチごと爆発四散した。

658死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:35:14 ID:Y1vKgW0.0



「そんな……」

最後に生き残ったチルノは翔鶴の艦載機に撃ち落され、翔鶴に身体を踏みつけられていた。
サウザーや闇への援護ができなかったのは、拳王と聖帝が戦っている裏で翔鶴に撃たれたからである。

「あなたで最後、これで終わりよ」
「まだアタイは死んじゃ……がふッ」

倒れたチルノを冷酷に見下す翔鶴に、チルノは悪あがき的に弾幕を放とうとするが、その前に頭をソードで貫かれた。
妖精ゆえに即死ではないとはいえ致命傷には違いない。

「と……とちょうのみんな、ふな…っしー、アタイたち聖帝軍のかたきを取って」
「心配しないでください」
『全員皆殺しにして一匹残らず地獄に送ってあげるからね』

チルノの氷の肉体は、ガラス細工のようにピチューンと砕け散った。

そしてラオウ、翔鶴がホームベースを踏み、二点獲得。

さらに聖帝軍選手全滅により、六回裏を待たずして、この試合は終焉を迎えた。



               拳 4-2 聖

               ゲームセット



〜 〜 〜


眩い光に包まれると、拳王連合軍生き残りの9人とネットナビ2体、それから悪魔一匹は元の横浜スタジアムに戻っていた。
大半が気絶していたため、瑞鶴はすぐさまメーガナーダに命じて気を失った選手を近くの施設に運び宝玉輪を使用して傷と意識を回復させた。
MEIKOなどの気絶していた面子は、自分たちが眠っている間に試合を勝ち越したことをあるものは喜び、あるものは嘆いた。
あと、ハクメンは思いのほか、頭にダメージが言っていたのか、鎧や肉体の傷は修復されるも、未だに気絶していた。

ただ一人、ラオウは窓から横浜スタジアムを眺める。

どうやら異界で全滅した聖帝軍の血がどういう原理か注がれるらしく、大量の血が横浜スタジアムに流れこんだ。
そして花火のような魔法陣が空に浮かび上がるが、ラオウと瑞鶴以外はそれに気づかず、ラオウもまた深くは考えなかった。

ただ、闇夜に輝くあの光こそ聖帝軍の魂の輝きなのだろうと。
敵ではあったが、野球の試合に関しては、まさに強敵とも言うべき集団であったとラオウは認識している。


「聖帝軍……おまえたちは強敵だった」


ラオウはそう言いながら疲れた体を癒すべく炭酸水を飲み干した。
余談だが、この「強敵」は「とも」は読まない。そのまんま「きょうてき」のままである。




【サウザー@北斗の拳】
【金色の闇@ToLOVEるダークネス】
【アリーア・フォン・レイジ・アスナ@ガンダムビルドファイターズ】
【葛葉紘太@仮面ライダー鎧武】
【犬牟田宝火@キルラキル】
【イオリ・セイ@ガンダムビルドファイターズ】
【チルノ@東方project】

全員 死亡   聖帝軍――敗滅

659死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:35:44 ID:Y1vKgW0.0





【三日目・0時00分/神奈川県・横浜スタジアム近く】

【拳王連合軍】

【ラオウ@北斗の拳】
【状態】超強化、首輪解除、決意
【装備】なし
【道具】支給品一式、その他不明、ムギのスタメンメモ
【思考】基本:ダース・ベイダ―たちを倒す
0:少し休んだらヘルヘイム討伐に向かうぞ!
1:その次はイチローチームとドラゴンズだぞ!
2:それからビッグサイトも攻略して東京を平定するぞ!
3:東京を平定したら最後は主催(九州ロボ、死者スレ、沖縄のシャドウ)だぞ!
  それまで待っていろ!
4:平等院たちの死は悲しいが拳王たる我が立ち止まるわけにはいかんぞ!
5:聖帝軍はまさしく強敵(とも)だった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※都庁をヘルヘイムであると誤解しています
※哀しみを背負ったことで無想転生を習得しました。


【MEIKO@VOCALOID】
【状態】超強化、修羅化、首輪解除、強烈な悲しみと殺意
【装備】なし
【道具】支給品一式、ノートパソコン@現実
【思考】 基本:『真の黒幕』及び主催者共の皆殺し
0:次はヘルヘイムの奴らを皆殺し
1:ラオウへの特別な感情 どこまでもついていく
2:ハゲ(ナッパ)を見かけたら嬲り殺す、仲間がいたら皆殺し
3:恐ろしい敵だった……聖帝軍
※『無限の回転』を習得しました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました
※アルティメットアーマーは破損したため、破棄しました


【ロックマン(光彩斗)@ロックマンエグゼ】
【状態】超強化、悪の心(中)、深い悲しみと憎悪
【装備】ロックバスター、サイトパッチ&試製甲板カタパルトのデータ
【道具】なし
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、翔鶴を傷つける存在を殺す
0:次はヘルヘイムだ!
1:熱斗が死ぬ原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺す
2:翔鶴さんは絶対に失いたくない
3:僕に従姉妹(?)ができたぞーーー!
4:まだ顔を合わせていないサーフ博士を信頼
5:勝ててよかった……ダークチップ様様だね
※PETの中にいます
※ダイジョーブ博士の残した装置で強化されました。全ステータスが格段に上昇しています
※ダークチップ使用により悪の心に大きく汚染されました


【翔鶴(光翔鶴)@艦これ】
【状態】超強化、悪の心(中)、深い悲しみと決意
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、熱斗のPET(ロックマン入り)、シンクロチップ、チップ各種(プリズム・フォレストボムは確定)、熱斗のバンダナ
【道具】ダークチップ一式
【思考】基本:殺し合いを終わらせる、彩斗を傷つける存在を許さない
0:次はヘルヘイム攻略を目指す
1:熱斗を殺す原因を作ったナッパとギムレーは絶対にこの手で殺したい
2:ダークチップを使ってでも彩斗と仲間を守る
3:瑞鶴に謎の親近感。私に血の繋がらない妹ができた?
※熱斗とロックマンより、二人の過去についての話を聞き、自身を光翔鶴と名乗るようになりました
※超強化の影響によりステータスが大幅上昇しました
※クロスフュージョン状態でのダークチップ使用により悪の心に大きく汚染されました


【川崎宗則@現実?】
【状態】健康、首輪解除、ドラゴンズへのヤンデレ的怒り
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式
【思考】基本:イチローを倒してでも、マリナーズに連れ戻す
0:ヘルヘイムを倒して早くイチローさんに会いたい
1:イチローさんをNTRするドラゴンズを許さない!!
2:どんなことをしてでも(最悪殺してでも)イチローさんを取り戻す!
3:イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん
  イチローさんイチローさんイチローさんイチローさんイチローさん………………
※強化しなくとも腕前と戦闘力はメジャーリーガーです


【クロえもん@ドラベース ドラえもん超野球外伝】
【状態】超強化、首輪解除、非常に強い悲しみと黒い殺意
【装備】バット、ボール、グラブ
【道具】支給品一式 電車ごっこロープ
【思考】基本:主催者たちに野球で挑んでぶっ殺す!
0:なんとか勝てたな……次は頑張る
1:敵は全員倒す、俺たちは絶対正しいはずだ!
2:イチロー選手をドラゴンズの魔の手から助け出したい
3:みんなには隠してるが、仲間を殺したホワイトベース組が全滅したことには超メシウマ状態w
4:てゆーか風評被害に踊らされるクズは死ね、氏ねじゃなくて死ね
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました

660死兆星の瞬きはどちらに ◆FEwgCJ5Pw.:2020/06/22(月) 22:36:06 ID:Y1vKgW0.0


【上条当麻@とある魔術の禁書目録】
【状態】超強化、首輪解除、本気モード、 悲しみとショック
【道具】他人のデッキ(「ぬばたま」デッキ)
【思考】基本:あのAA
0:シャドーマン……
1:ネットバトラーの一員として主催やマーダーと戦う
2:恐ろしい敵だった聖帝軍……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得ました


【ディオ・ブランドー@ジョジョの奇妙な冒険】
【状態】健康、超強化、首輪解除
【装備】PSVITA(デューオ入り)、十徳ナイフ
【道具】支給品一式×3、シンクロチップ、治療道具、その他不明
【思考】基本:ネットバトルとベースボールを極める
0:ヘルヘイムだ!
1:殺し合いを終わらせた栄光を手に入れる
2:ジョジョより優越感を得る
3:熱斗やシャドーマンが死ぬ前にネットバトルを挑みたかった……
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さを得て、デューオとクロスフュージョン可能になりました
 新技として一分時間を止められるデューオーバーヘブンを習得しましたが、一度の使用によって強烈な疲労を伴います


【デューオ@ロックマンエグゼ4】
【状態】超強化、HP満タン
【装備】ジャスティスワン、ザ・ワールド
【道具】なし
【思考】基本;とりあえず、ディオたちを見守る
0:ヘルヘイムに向かうぞ
1:九州ロボ及び主催者を殺す
2:ダークチップに汚染されてしまったロックマンと翔鶴が気がかり
3:シャドーマンたちの犠牲は無駄にしない
※ベジータの持っていたパソコンから情報を抜き出し、ヘルヘイムの情報を得ました
※ダイジョーブ博士の装置でメジャーリーガー級の強さとPSVITAの筐体を得ました


【瑞鶴@艦隊これくしょん】
【状態】健康、最終決戦仕様
【装備】彩雲、紫電改二、流星改、 零式艦戦62型、違法改造スマホ、結婚指輪
【道具】モンスターボール(メーガナーダ@アバタールチューナー2入り)、宝玉輪@女神転生シリーズ
    石ころ帽子、妨害電波発生装置、裏世界転送マシン
【思考】
基本:提督さん(サーフ)に従い、彼の理想である艦むすの楽園を築く
0:作戦に従い、拳王連合軍についていく
1:拳王連合軍にヘルヘイムを倒した後にイチリュウチームへ試合をするように仕向ける
2:拳王連合軍が優勝したらサーフと合流し、翔鶴姉も連れて行く
3:提督の目的の邪魔をする奴は容赦なく殺す
4:翔鶴姉を光の呪縛から解放したいが、ロックマンを殺すのは全ての野球の試合が終わってからにする
5:ハクメンは要警戒、必要ならば鎧の裏に仕込んだ爆弾を起爆する
6:提督さんは大丈夫、よね?
※サーフが生みだした艦むすで、ケッコンカッコカリ済みです
※『器』であるメーガナーダはミヤザキの『巫女』である瑞鶴か翔鶴にしか操れません
※裏世界転送マシンは二チームを野球ができる裏世界へ飛ばし、他参加者の妨害や乱入を防いで野球ができます
 裏世界が崩壊するタイムリミットは最大三時間。使用もあと一回だけ。
 負けたチームは崩壊する裏世界に取り残され、死亡します。(移籍などのケースはどのように扱われるか不明)
※改造により少し前の翔鶴と同じくらいの戦闘力を有しています


【ハクメン@BLAZBLUE】
【状態】気絶中、unlimitedモード、鎧にひび割れ、テルミ限定で現実逃避
【装備】斬魔・鳴神
【道具】支給品一式
【思考】基本:『悪』を全て滅する
0:(気絶中)
1:全ての『凶』への対処のためにも拳王連合軍と手を組む
2:世界の平和のためなら力による東京をやむを得ない
3:主催及び世界に災いをもたらす者を『刈り取る』
4:風鳴翼は滅する
5:東京の『凶』、千葉の『凶』は警戒を続けるが後回し
6:悪魔将軍を殺した窒にいる何者かを警戒
7:テルミ? まだ死んでないさ
※unlimitedモードに入りました
※沖縄の『凶』(シャドウ)の気配を察知しました。能力から他の参加者よりも具体的な位置がわかります
 また、具体的な倒し方を知らないため、日本の生き残った戦力を全て集めれば勝てると思っています
※鎧に罅が入り、気絶中に瑞鶴が持つ違法改造スマホで起動するリモコン式の爆弾を罅から入れこまれました



※全員、宝玉輪により試合の負傷が全回復しました

661カオスロワ10期 最終話:2022/07/17(日) 20:39:25 ID:5mMrN5JU0
「カオスロワ10期目を終わらしちゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう、もう2年以上止まってるしな」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達7人は止まったカオスロワ終わらせた英雄だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「『僕らは人気キャラだから、何をしても許されるからな』」
 球磨川がカッコつけて言う。
「やはり、彼らを復活させたのは正解だったな」
 彼らを復活させ、いつの間にか寝返ったサーフ博士がほくそ笑む。
「そう、そして私達が……」


「「「「「「「『大正義だ!!!』」」」」」」」



 こうして、カオスロワ10期目は終焉を迎えた。
 もう誰も彼らの凶行を止める手段を持っていなかったのだから。

 後に
 根岸崇一。
 巨人小笠原。
 アンドリューW.K.。
 シン・アスカ。
 田井中律。
 球磨川禊。
 そして、サーフ・シェフィールドの7人はカオスロワの英雄としていつまでも語り継がれるのであった。

【テラカオスバトルロワイアル 第10期 未完】

662カオスロワ11期OP:2022/07/17(日) 20:39:55 ID:5mMrN5JU0
「カオスロワ11期を始めちゃいかんのか?」
 巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「構わないだろう」
 それにアンドリューW.K.が答えた。
「……そうだ、俺達はカオスロワを初期から支えた英雄だ!」
 シンが主人公らしい台詞を叫ぶ。
「そう、そして私達が……」

「「「「11期の主催者だ!!!」」」」

まず見せしめとして根岸崇一とサーフ・シェフィールドが殺された。

こうして、カオスロワ11期が始まった。

【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:ロワを主催する。


【根岸崇一@デトロイト・メタル・シティ 死亡】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2 死亡】


【テラカオスバトルロワイアル 11期開幕】

663なにっ11期の投下がまるでない:2022/08/26(金) 22:45:52 ID:XPbhAFRo0
「待てよ、物語はこれから面白くなるんだぜ」

話は停滞している間にカオス・ロワ10期の主催の座を奪い取った宮沢鬼龍が不敵な笑みを浮かべて呟く。
そしてカオス・ロワの停滞を防ぐべくとある手段を取った――


「コモドドラゴンを放てっ」

こうして全会場にコモドドラゴンの軍勢が投下された。

【三日目・0時00分/成層圏 九州・ロボ】

【宮沢鬼龍@TOUGH】
【状態】健康
【装備】不明
【道具】不明
【思考】
基本:しゃあっロワ・運営!
※他の主催陣は猿空間送りにされたと考えられる

664「東の牧場のマグニスだ…」(リマスター版):2022/09/18(日) 22:25:00 ID:YnY3VC.o0

そう呟いた青年の首に丸太のような太い右腕が伸びる。
右腕を伸ばしたのは赤いドレッドヘアにいかにも凶暴そうな顔つきの男。

50㎏以上はあるであろう青年の身体が地面から浮きあがる。
男の右腕の親指と人差し指の二本だけで持ち上げられたのだ。
人間以上の筋力はあるであろう男。

そして、男は小枝を折るように……。

「マグニスさま、だ」

青年の首をへし折った。

コキャ……という小気味良いが周囲に響き渡った。

「豚が…」

マグニスさまと名乗った男は直後に青年のデイパックから支給品を物色した。
中には核ミサイルしか入っていなかったが、マグニスさまは特に気にすることはなく装備した。

マグニスさまの行動原理は簡単。
『カオスロワで優勝する、そして、人間という劣悪種の殲滅』。

ただ、それだけである。

【一日目0時・北海道】
【マグニスさま@テイルズオブシンフォニア】
【状態】健康
【装備】核ミサイル
【道具】支給品一式 不明支給品
【思考】基本:優勝する
1:マグニスさま、だ。豚が…

【パルマコスタの市民A@テイルズオブシンフォニア 死亡確認】
死因:首コキャ

665主催陣の友情物語:2022/11/20(日) 00:26:40 ID:.lfPauC.0
「コモドドラゴンをロワ会場に放っちゃいかんのか?」
巨人小笠原の一言がきっかけだった。
「いや、駄目だろ」
それにアンドリューW.K.が珍しく反論した。
「……そうだ、俺達にはコモドドラゴンなんて必要ないんだ!!」
シンがとても主人公らしい台詞を叫ぶ。
「でも、このコモドドラゴン達どうすんの?」
田井中が女子高生らしい疑問を投げかける。
「サーフと一緒にTOUGH世界に放っちゃいかんのか?」
「「「それだ!!!!」」」

こうして大量のコモドドラゴンは復活しようと画策していたサーフと共にTOUGH世界に放たれた。
何故彼らがサーフの目論見に気付いたのかは、彼らの不滅の友情がサーフの裏切り・不義を許さなかったからである。

【一日目/0時10分・主催本部】
【巨人小笠原@なんJ】
【アンドリューW.K.@現実】
【シン・アスカ@機動戦士ガンダムSEED DESTINY】
【田井中律@けいおん!!】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
1:ロワを主催する。


【宮沢鬼龍@TOUGH 死亡】
【サーフ・シェフィールド@アバタールチューナー2 死亡】
死因・大量のコモドドラゴンに捕食
※TOUGH世界に大量のコモドドラゴンが放たれましたが、カオスロワには影響ありません。


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