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ふゆのアルバイト

1よんよん:2009/12/15(火) 22:15:38 ID:???
『こんにちは〜』
『い、稲沢さん!?』
突然の訪問者に僕は大慌てした。
同じ大学に在学し、ミスキャンパス候補といわれている稲沢さんが突然、僕の家に訪問してきたからだ。
『どうしたんですか、突然・・?』
『今日が何の日だか忘れたの?』
インターホン越しで猫のような甘い声で彼女は僕に話しかけてきた。顔が見えないとはいえ、彼女の綺麗な顔が僕の頭に鮮明に映し出されてくる。
『えっと・・・、それより何で僕の家を知っていたんですか?』
いくら周りに鈍感な性格の僕だって今日が何の日かくらいはわかっている。だがそれを声に出すのは憚られた。
『うん、トシ君に聞いたんだ』
『トシに?なんであいつが・・』
『いいじゃない、そんなこと・・それより上がらせてもらっていい?外、結構寒くって・・』
『あ、ごめん・・』
男友達ですら中々あがってこない我が家に、突然女性があがってくることに僕の心拍数はおそろしく急騰しているのが分かった。

2よんよん:2009/12/15(火) 22:16:08 ID:???
『クス、いい部屋ね』
『ハハ・・ごめん、掃除してなくて』
稲沢さんは僕のベッドに腰掛けて、ニコニコと微笑んでいた。真っ赤な衣服は今日という日にはぴったりで、また彼女がきるとそれは一層華やかに見えた。
『それで・・・その格好と僕の家に来たことは・・何かあるのかな?』
『格好?ああ、これね。どう?可愛いでしょ。』
赤い帽子に赤い服、ひざ上までのスカートはやはり女性版といったところだろうか。こんな格好をして外を歩いていたら当然寒いに決まっている。
『サンタクロースの格好ってことは・・何かのイベントか何かなの?』
『そんなところかな・・。クス』
女性版サンタの格好をした稲沢さんは微笑みを崩さないまま、何かを訴えるような眼差しで僕を見ていた。その眼差しに一瞬心が奪われそうになり、僕はすぐに立ち上がった。
『ご、ごめん!お茶いれてくるよ。あ、コーヒーとかのほうがいいかな』
『あらごめんなさい。あったかいお茶をもらえるかな〜』
『今すぐお持ちします!』
舞い上がっているのか、僕はありえないテンションのまま部屋の外に飛び出してしまった。彼女からすれば変に思われたかもしれないが、今の僕には落ち着いている自信がなかった。

3よんよん:2009/12/15(火) 22:16:43 ID:???
稲沢さんと自分の分のお茶をわざわざ盆に置き、僕は部屋にもどってきた。
『はい、お茶です・・』
『ありがと。ねえ、ところで鈴村君は家族とかいるの?』
『え、家族ですか?まぁ普通に父と母、あと妹がいます』
『あ、妹さんいるんだ』
『うんまぁ・・・あ、もうそろそろ帰ってくるかもしれないなぁ』
妹が帰ってきたら、稲沢さんのことをどう紹介すればいいんだか。もちろん友達というべきなのだが変に勘違いされて、父さんや母さんに告げ口されても厄介だ・・・僕はそんなことをふと考えていた。
『ふーん、もう少しで帰ってくるんだ。それじゃ早くしないといけないな』
『え?何か言った?』
『ううん。なんでもないよ。それよりお茶さめちゃうよ、鈴村くん?』
小声で稲沢さんが何か呟いたことが少し気になったものの、僕は勧められたお茶をゆっくりと口につけた。
『それでいったい今日は何のようなんですか?』
『この格好でわかんないかなぁ?ほら、今日はクリスマスイブでしょ?』
『うん・・』
毎年、僕にとって無意味な日だ。先ほど彼女が名前をあげたトシも同様でたいがいは二人で時間を潰しているのが恒例になっているくらいである。
『だ、か、ら・・ね?今日は鈴村君と一緒にクリスマスイブを過ごそうかなって思って♪』
『・・え?ええええ!?』
『あ、もう・・そんなに驚かないでよ。外まで声がもれちゃうよ?』
『ご、ごめんごめん・・えっと、でもそれってどういう意味・・?』
『そんなこと聞いちゃうの?』
稲沢さんはゆっくりとベッドから立ち上がり僕の手を握った。
『あ・・』
『あ、鈴村くんの手・・あったかい』
稲沢さんはそのまま僕の手を引っ張り、ベッドの隣に座るよう促した。もちろん僕はそれに従う・・しかなかった。
『ねぇ?』
『ハ、ハイ?!』
『お茶、おいしかった?』
『ハ、ハイ・・!』
自分で淹れたお茶においしいも何もあるわけじゃないが、僕は彼女の声に従うように声をあげた。彼女の言葉に頭が舞い上がっているのか、少しずつ正常に物事が考えれなくなっているような感覚になっていた。

4よんよん:2009/12/15(火) 22:17:21 ID:???
『よかったぁ。ねぇ、それじゃ・・鈴村君におもしろいものを見せちゃおうかな』
『おもしろい・・?』
『うん、鈴村君なら絶対に驚くと思うよ?』
彼女がこの家にきただけで驚きだというのに、まだ何かあるのか、僕は彼女の顔を呆然とした状態で見ていた。おそらく今の僕の顔を鏡に写したら、気持ち悪いほどにニヤついた顔になっていることだろう。
『クス、心の準備はいい?』
『大丈夫だよ〜・・』
自分の言葉とは裏腹に、僕は恐ろしいほどに酩酊していた。
今思えばなぜこのタイミングで気付かなかったんだろう。僕は自分のお茶に睡眠薬を盛られていたことに・・
『それじゃいくよ〜。ククク・・』
彼女にふさわしくない気持ち悪い声で稲沢さんは、突如として自分の鼻をつまみあげた。
『クク、よくみとけよ?』
つまんだ指を離さず、彼女の指はそのまま前のほうへと引っ張っていく。まるで鼻の伸びたピノキオのようにゆっくりとゆっくりと鼻を伸ばすような仕草をしてみせる。
いや、事実鼻は伸びていた。日本人である彼女はもちろん欧米人のような鼻の高さがあるわけでない。それがなぜかつままれた指に沿って鼻が長く伸びていたのだ。
だがここでようやく僕は気がついた。伸びているのは鼻じゃなくて、顔全体だったのだ。
まるで洗顔パックがゴムのように剥がれていく。そんな感覚である。しかし洗顔パックとは違うのは、それが顔面だけではなく頭全体であることであった。
『あ・・・?』
僕はだらしなく開いた口のまま、稲沢さんだった者を見ていた。
彼女の顔はもはや稲沢さんの顔の形ではなくなっていたのだ。頭が剥げ落ちてしまった彼女の顔だったものは首から下に垂れ下がっている。
そして洗顔パックの中から出てきたのは、宇宙人でもなく、僕の見知った顔だったのだ。
『よう!クク、今年も野郎が相手で残念だったな。』
ヤツはニカっとした顔で僕に笑いかけた。
『ト、トシ・・?!』
稲沢さんだと思っていた者の正体・・それは僕の男友達のトシであった。
『どうだ?びっくりしただろ。まぁ、稲沢だと思ったまま眠るるよりはこうサプライズがあったほうがいいと思ってな。正体明かしちまったが、まぁ悪く思うなよ』
トドメの一撃に、トシはサンタ衣装の中に隠し持っていた催眠スプレーを僕に焚きつけたのであった。

5よんよん:2009/12/16(水) 08:41:55 ID:???
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『よいしょっと・・稲沢の体に入っているのもしんどいものだな』
俺は稲沢の変装スーツを脱ぎ終え、一息だけため息をもらした。
『ま、次の体は男だしさっきよりはマシだと思うが』
眠っている鈴村の体を見ると、うっすらとだが塗り終えた特殊液が固まりだし、新しい変装スーツが出来上がってきているのが確認できた。
『ぐっすりと眠っているな。まぁ睡眠薬入りの茶を飲んだわけだし、催眠スプレーはいらなかったかもな。
 しかし睡眠薬も催眠スプレーも効果が早いとは聞いていたが、ここまでとは思わなかったぜ』
睡眠薬や催眠スプレー、それにこの変装スーツなどのものは実のところ、譲り受けたものであり、また使ったのも初めてであった。
『まぁ、ここまで上手くいったのもアイツのおかげだな。面白い体験もできたわけだし。
 しかし本当にすげぇな、この変装スーツってやつは。これがあれば何でもできるんじゃないのか?クク・・』
ニヤァと笑う表情の裏側で、俺はあることを考えていた。
『鈴村の妹は可愛いからな。こいつの妹ってだけで付き合うのは難しいが・・・、お前に変装すれば妹さんも油断するだろう。そうすれば鈴村、お前と同じように眠らせて変装スーツが作れるってわけだ』
目的は最初から鈴村の妹。だからわざわざ稲沢の格好をして、こいつの家に上がりこんだのだ。
『稲沢のような巨乳も悪くないが、俺は鈴村の妹のような童顔タイプがいいんだ。クク・・・。さて、こいつの話だと妹さんはもうすぐ帰ってくるらしいからな。早く作業にとりかかるか』
眠る鈴村の体に塗った変装用特殊液はすでに固まっている。あとはそれを特殊器具で切り取っていくだけであった。

6よんよん:2009/12/16(水) 08:42:25 ID:???
俺は鈴村の変装スーツを身に纏い、声をあげた。
『あーあー。声までこいつになったな。完璧じゃねぇか』
出来上がった変装の出来具合に満足し、俺は先ほど鈴村が着ていた衣服を身に着けた。
念のため鏡も確認するが、やはり鈴村本人そのもとしか見えない・・それほどこの変装スーツの出来は良かった。
『これなら家族が見ても怪しむ要素はないな。クク・・』
自然と笑みがこぼれる。早く妹の体を奪いたい・・そういう欲求があふれ出てきているのだろう。
『・・おっと、それよりこのご本人様を何とかしたほうがいいな』
考えてみれば俺が鈴村に変装したら、鈴村が二人いることになってしまう。いくらなんでもこの状況を妹さんに見られたら、場が混乱するだけだ。
『どうするかな。タンスかベッドの下で眠っていてもらおうか・・?でも勝手に目が覚められても困るな』
睡眠薬の効き目はどれくらいかかるかわからない。それに妹さんもそろそろ戻るといっても正確にいつ帰ってくるかわからない。この状態では下手なやり方は出来る限り避けたかった。
『ああ、そうだ。これを着ていてもらえばいいか。クク、鈴村、お前は巨乳好きだろ?だったら巨乳になった感触を味わってみろよ。結構肩が凝るぜ?』
俺は稲沢の変装スーツを摘み上げた。そう、この変装スーツを鈴村に着せるという選択に出たのだ。

7よんよん:2009/12/16(水) 08:42:56 ID:???
眠っている鈴村に稲沢の変装を重ねていく。男が女の変装をするといえば、普通に無理があるように感じるのだが、この変装スーツは常識を超えた代物であった。
腕や足は白く、また細く。腰は骨格が変わったとしか思えないほど窪み、逆に胸や尻はふっくらと丸みを帯びる。もちろん肩から指先まで何一つとっても女性の体型でしかない。
鈴村だった者は、稲沢の全身変装スーツに身を包まれただけでその存在を失ったのだ。
『ハハハ、似合ってるぜ、鈴村?これでクリスマスイブは女に不自由なしだ』
先ほど俺がきていた女性版サンタクロースの衣装も鈴村に着せれば、もはや先ほどとは完全に立場が逆となってしまった。
しかしそんな事も知らないのか稲沢となった鈴村はぐっすりと眠ったままである。体に変装スーツを纏わされたというのに起きないということはそれだけ深い眠りについているということだろう。
『ちょっと苦しそうだな。まぁ直に変装スーツが体と完全にシンクロするさ。そうなると体の感覚すら女のものになっちまうんだぜ?おかげで巨乳が苦しいというか重いっていうかな。稲沢が冷え性か知らないが、結構体も冷えるしな』
丈の短いスカートから伸びる素足は、外を歩けば寒いのは俺がまさに感じ取ったことだ。
それに加えてこの衣装が小さいサイズなのか、それとも稲沢の胸が予想以上に大きいからか、胸がかなり苦しいと感じるほどサイズが合っていないのだ。
『さて、鈴村・・いや稲沢はこれでOKとして、あとはこいつを念のため隠しておくか?』
これで鈴村が二人いる問題は解消されたが、あとは初期に考えたベッド下かタンス下に稲沢を隠すかを俺は思案した。
だがその思案はすぐに徒労へと変わった。鈴村の妹がすぐに帰ってきたからだった。

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9よんよん:2009/12/21(月) 00:09:35 ID:???
『よし、これでとりあえずはいいか。例え怪しまれたとしても俺がトシだとばれることもないしな』
俺は「稲沢」をベッドの上に寝かせた。仮に「稲沢」が起きたとしても、今は俺が鈴村なのだ。この家で有利不利でいえば俺が有利なほうだろう。
『あとは妹さんをどうやって寝かせるかだな。さっきと同じ手で睡眠薬を飲ませれればベストなんだが』
さっきは鈴村が稲沢に変装した俺に動揺していて、目が浮ついていた。だから睡眠薬を茶に仕込んだのはばれなかったのだが、今度はそう簡単にはいかないだろう。
だが夕食まで時間をかけてしまうと今度はこいつの両親が帰ってくる可能性がある。そうなれば余計にチャンスを失ってしまうからだ。
『・・まぁ、なんとかなるか』
楽観的な性格の俺はそれ以上深くは考えなかった。そして妹さんがこの部屋の前を通りがかろうとしたときに、俺は偶然を装うかのようにゆっくりと部屋から出た。

10よんよん:2009/12/21(月) 00:10:06 ID:???
『あ、帰ってきたんだ?』
『うん、今日くらいは早く帰ってこないといけないかなって。お兄・・ちゃん、今年も一人なんでしょ?』
妹さんは俺をみるやいきなりそう話しかけてきた。しかしいきなり一人かどうかを聞いてくるとは、どういう妹なんだ・・?
『いきなり何いってるんだ。いつもこの日はトシとつるんでるじゃないか。まぁ、女っ気はないけどさ』
『あれ、そうだったかな。えっと、それじゃ、どうしようかな・・』
妹は突然何かを思案するように目を泳がせていた。俺や鈴村が毎年クリスマスにつるんでいるのを知らないのだろうか。
いや、それよりも俺をみるや、俺の予定を確認しにきているのは何か考えがあってのことじゃないだろうか?・・俺はふとそんな風に感じた。
『ねえ、お兄ちゃん。今日もそのトシさんと一緒に出かける予定なの?』
『いや、その予定はないけど』
俺がトシなのだから、鈴村と俺が出かけるなんてことはないし、俺もそんなつもりはない。
だからこそ今、俺は鈴村に化け、こうやって妹さんの帰りを待っていたんだ。
『だったら、あの・・クリスマスケーキを一緒に食べない?帰りに買ってきたんだけど』
『ケーキ?』
『うん、あれ・・?ケーキ、嫌い?』
『いや大好きだよ、いいな。よし、それでいこうか』
妹さんの様子がおかしい・・そんな気もするが、鈴村と妹さんがいつもどんな会話をしているかなんて俺は知らない。だから俺は妹さんに深くは追求しなかった。
いや、それよりも妹さんを寝かせるチャンスがまさか、あちらから持ってきてくれるとは思ってもいなかったことに俺は歓喜した。
『ケーキは台所か?』
『うん・・』
『じゃあ、紅茶でもいれておくわ。お前もさっさと着替えて一緒に食べようぜ』
『え、一緒に?あ、うん・・わかったよ』
一瞬、妹さんの顔が紅潮したかのように見えた。だが俺はそんな様子に目も暮れず、そのまま台所へと突進した。

11よんよん:2009/12/21(月) 00:10:36 ID:???
『クク、ラッキーだぜ。まさかケーキを用意してくれるなんてな』
俺は笑みを浮かべつつ、紅茶を用意していた。もちろん妹さんが飲むであろう紅茶に睡眠薬をいれるためだ。
『上手くいって助かったな。もし上手く妹さんの変装スーツが作れたらあとで兄の鈴村のほうを脅かしてやろうか』
稲沢になった鈴村と妹さんになった俺・・交錯した状況だが、クリスマスイブのサプライズとしては十分おもしろいことだろう。
『あ、そういえば鈴村をベッドに眠らせたままだったけど・・妹さんに見つかってないかな?もし見つかったときの言い訳くらい考えておかないとな』
眠っている「稲沢」をもし妹さんが見つけたらどうするだろうか?俺はさっきの会話でそのことに触れてはいなかった。
女っ気がないといいつつ、女を家に連れ込んでいる・・そう思われた場合、どうすればいいのか
『まぁ、見つかったら見つかったでそのときは適当にごまかすか』
出来上がった紅茶に睡眠薬をやや多めにいれ、俺は妹さんが戻るのを待ち構えていた。

12よんよん:2009/12/21(月) 00:11:06 ID:???
それから7〜8分以上が経過していた。せっかくいれた熱めの紅茶も周りの気温に合わせやや温くなっている。
『ごめんなさい、お兄ちゃん』
着替え終え台所に入ってきた妹さんは、俺に詫びたあと椅子に座った。
『・・遅かったな。何かあったのか?』
俺は少し含みのある質問をした。そう、「稲沢」を見たかどうかの確認だ。
『ううん、ちょっと電話があって』
『電話?それだけか・・』
『それだけって・・何が?』
妹さんは呟く俺を見て、逆に質問を返してきた。
『いや、なんでもないよ。怪我でもしたのかと思って心配しただけさ』
『怪我?そんなの無いよ〜』
もちろん妹さんに怪我らしきものはない。むしろこれから変装スーツを作るうえで怪我をされていては不都合でしかないのだが。
『そうか。ま、この話はこれくらいにして、そろそろケーキを食べようか。せっかく淹れた紅茶が冷めてしまう』
早く睡眠薬を飲ませたいと考える俺は、妹さんに睡眠悪入り紅茶を勧めつつ、ケーキにがっついた。

13よんよん:2009/12/21(月) 00:11:36 ID:???
『それよりお兄ちゃん、今日の私・・変じゃないかな?』
突然妹さんはわけの分からないことを聞いてきた。
しかし俺は鈴村ではない。普段の妹さんのことをよくは知らなかった。なにせ下の名前すら知らないのだから。
『変かって言われてもね。・・そうだないつもより積極的な感じがするよ』
これはあくまで俺の主観であるが、妹にしては兄に対して少しべったりすぎる気がした。いわばブラコンにすら感じ取れる。
といっても今の俺も妹さんにべったりなのだからシスコンといえるかもしれない。
『ああ、やっぱり・・』
妹さんはそういうと言葉少なめにブツブツと呟いていた。

何かおかしい・・

妹さんはモジモジとするように顔を下に背けては、俺の顔を突然見たりしている。
『・・・』
俺はケーキと紅茶をむさぼりながら、妹さんのことを考えていた。
妹さんはこの家に帰ってきてからずっと俺の様子を伺っているようにみえる。
またケーキを買ってきたといっているが、両親が戻るのを待たず兄と二人で食べるなんて選択肢を普通取るだろうか
試してみるか? 俺はふと頭によぎった言葉を妹さんに言ってみたくなった。どうせ下手なことを言ったとしても困るのは鈴村本人であって俺ではない。
『なぁ、一つ聞いてもいいか?』
『・・な、なに?』
『今日のクリスマスイブだけど、一緒に過ごさないか?いや、トシもいないしさ、今日は一人なんだよ』
もし妹さんが兄のことを好きだとしたら・・・まさかそんなはずはないと思いつつ俺はそんな意地悪な質問を言葉を変えてしてみた。
『・・え、うそ・・・』
『嘘じゃないさ。俺もお前のことは好きだしな』
妹さんは愕然とした状態で言葉を詰まらしていた。
思った以上に俺の言葉にショックを受けたのだろうか。いや普通ならありえない。
普通の感覚でいうなら『冗談いわないでよ』とか『頭おかしいんじゃない?』くらい言われてもおかしくないくらいだ。
なのに妹さんは顔を赤らめたと思ったら、次第に紅潮から蒼ざめた様子へと顔を変貌させていた。
『い、いや・・・そ、そんな・・』
『は?ど、どうしたんだよ』
妹さんは兄に対して恋心を抱いている・・そんな可能性があるかと思っていたが、どうやら状況はもっと複雑であったらしかった。
しかし俺はその状況を理解することはなかった。
「本当に最低ね・・」
俺の背後から突然『妹さん』の声が聞こえたからであった。

ドンッ!

にぶい音が俺の頭が聞こえた。と同時に俺は椅子から転げ落ち意識を失った・・・
最後に見えたのは、テーブル対面で泣くそぶりをみせる妹さんと、背後で鈍器のようなものを持った妹さんの二人の顔であった。

14よんよん:2009/12/21(月) 23:35:20 ID:???
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「まったく・・こんなお兄ちゃんだとは思わなかったわ。まさか本当に私に興味を持っていたなんて」
小冬さんはそう言うとお兄さんの顔色を伺っていた。強く殴りすぎたのではないか、そう心配しているのだと思う。
『大丈夫なの?』
「こう見えても結構頑丈なほうだから、大丈夫だよ。それに気絶した一番の理由はケーキに薬をいれておいたからだしね」
『そ、そうなの?』
小冬さんはそう言ってニカッと笑いを見せた。私と違いこれだけ積極的に動く小冬さんは、いつだってすごく頼りに感じる。
「それにしても、さやちゃんってすごく演技うまいね。まるで私みたいだったよ」
『え?それは・・こんなすごい変装スーツを着たら誰だって気付かないと思うよ』
そう今、私は小冬さんの変装スーツを着ていた。
どうやって作ったかはわからないけど、小冬さんそっくりになれるこの変装スーツを着込んだ私を、実のお兄さんですらほとんど疑っていなかった。
だから今、台所には小冬さんが二人いるのも一人が偽者・・私こと彩夏が小冬さんそっくりに変装しているのであった。
そもそもなぜ私が小冬さんに変装していたかというと・・
それは小冬さんのお兄さん・・を私が好きだったからであった。しかし強気になれない私は直接面を向かって告白する自信がなかった。
だから小冬さんに変装して、このクリスマスイブだけでも一緒に過ごせたら・・そう考えていたのだ。

15よんよん:2009/12/21(月) 23:35:53 ID:???
「結局、お兄ちゃんはどういうつもりだったんだろ」
『お兄さん、小冬ちゃんのことが好きだったんだね・・実の兄妹なのに・・・』
「あまり信じたくないけどね」
ため息まじりに気絶したお兄さんを小冬さんはどかっと蹴りをいれた。
『でも・・どうしよう。お兄さんを気絶させちゃったけど』
「だから大丈夫だって。もともとケーキに睡眠薬をいれてただけで、私が殴ったのは眠るキッカケを与えただけだから。むしろこれは仕返しのチャンスよ」
『え、仕返し?』
「うん。これ、言おうかどうか悩んでいたんだけど・・・さやちゃん、さっき私の部屋で着替えしていたでしょ?あの時、私・・こっそりお兄ちゃんの部屋に入ったんだ」
『あ、そうだったの?』
「それで見ちゃったんだ。お兄ちゃんの部屋に女の人がベッドで寝ていたのを・・」
『え、ええ・・!?』
「まさか女に縁がない兄が部屋に女性を連れてきてるとは思ってはいなかったんだけどね」
『それってやっぱり彼女・・?しかもベッドで寝ていたって・・』
「その上、妹に対して好きだなんて言うなんて。まぁ、正直幻滅しちゃったけど」
小冬さんが言っていることが本当だとすれば、私がこの家に入ってきたときにはすでに彼女が家に上がりこんでいたってこと・・?
しかもそのうえで私に・・ううん、小冬さんに対してクリスマスイブを一緒に過ごそうって言ったの・・?
私はお兄さんの事が分からなくなってしまった。いったいどういうつもりでそんな事を言ったのか・・
『それで仕返しっていうのは・・?』
「ねぇ、さやちゃんは男の体に興味がない?」
『・・?』
「実はさ、今着ている私の変装なんだけど・・即席で作ることができるんだよね。ほら、今ならお兄ちゃん眠っているし、変装スーツの型が作れるかも」
『そ、そんなことしちゃダメなんじゃ』
「お兄ちゃんに変装できたらさ、いろいろ出来そうじゃない。大丈夫だって、ほら・・こんなにもぐっすり眠っているんだし」
ニカッっと笑う小冬さんであったが、なぜか目が笑っていなかった。

いやそれよりも・・私はその目に逆らうことができないような気がした。

16よんよん:2009/12/23(水) 20:30:48 ID:???
・・・それから小一時間ほど経った。

私はなぜか分からないけど、妹の小冬さんの言うことに逆らえなくなっていたのだ。
「ほら、どうお兄ちゃんに変装した気分は?」
『・・うん、なんだか気持ちが落ち着くよ』
小冬さんはあの後、気絶したお兄さんから変装の型を取り、あの見事な変装スーツを作ってしまったのだ。
そして出来上がった変装スーツを私は着てしまったのだけれど・・
「うんうん、お兄ちゃんっぽいよ」
『え、そ・・そんなぁ』
「ああ、もう。そこでナヨナヨしないでよ」
『あ、ごめんなさい・・。いや、そうじゃないよね。ごめんごめん』
私は小冬さんに言われるがままにお兄さんの変装スーツを着てしまった。
だが自分で言ったとおりではあるが、男に変装しても別段悪い気分になりはしなかった。いや、逆に気分が高揚としているくらいだ。
『でも不思議だよね。見た目だけじゃなく声まで男になるなんて・・』
変装と小冬さんは言っているけど、実のところこれは変装というレベルじゃなかった。
見た目や体格だけじゃない。声だって私はお兄さんそのものになっているのだ。
「まぁまぁ、変装のことはこの際どうだっていいじゃない。今はさ、仕返しするチャンスだって言ったじゃない?」
『う、うん・・そうだけど』
私は気絶したまま椅子に座らされた人物を見つめた。・・これがあのお兄さんだったというのだろうか・・

17よんよん:2009/12/23(水) 20:31:18 ID:???
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頭が痛い。まるで予想だにせず金属の塊でゴツンとぶつけたような痛みだ。
だが痛みは頭だけではなかった。
『・・うう?』
手が背の後ろで何かに縛られている感覚、足のあたりがスースーと涼しく感じるような感覚、最後に股間の辺りに何かを差し込まれたような痛みに似た感覚
いくつもの感覚が一度に俺に襲ってきたのだ。
「あ、起きたみたい。それじゃあとはよろしくね」
『う、うん』
俺が目を覚ますと同時に女と男の声が聞こえた。

『起きたみたいだな』
聞きなれた男の声が俺の耳に入ってきた。すぐさま俺は声の方を振り向く。
『す、鈴村・・?』
俺は声の主を見てそう呟いた。聞きなれた声というのはどうということがない。俺の友人である鈴村の声だ。
『おいおい、どうした?頭でも打ったのか?』
鈴村は呆れたような顔で俺の方を見ていた。最初はなんで鈴村がここにいるのかハッきりとは思い出せないでいた。
だが意識もゆっくりと戻るに従って俺は先ほどまでの出来事がようやく思い出してきたのだ。
『鈴村・・?お前いつのまに元に戻って・・・・・ん???』
そう俺は確か鈴村を眠らせ、そして「稲沢」に変装させたはずであった。
それがいつのまにか元の姿に戻っている。・・つまり自分で変装を解いた、ということだろうか?
俺はその推理と同時に、ようやく自分の状況に気がついたのであった。

椅子に縛られ身動きが取れない。これは最初に感じた腕を縛られた感覚がそれを意味していた。
次に俺は見慣れない格好・・女性のミニスカートを履いていた。これがおそらく足元が涼しく感じたことだろう。
だがそれと同時に俺は一番の違和感を理解した。
『な、お・・女になってる・・・?』
自分が先ほどまで稲沢に変装していたことを思い出す。しかしそれとは何か別の違和感があった。
同じ女でも稲沢の体型とは明らかに異なる。
『ふ、どうした小冬?さっきからキョロキョロとして』
『まさか・・俺は妹さんに・・なっているのか?』
俺は鈴村の妹さん・・小冬ちゃんの姿になっていた。
確かに俺は妹さんの変装スーツを手に入れるためにこの家にやってきたが、いったいどういうことなのだ?
俺は妹さんに睡眠薬入り紅茶を飲ますことなく誰かに殴られ気絶し、その計画は頓挫してしまったはず。
俺はもう一度鈴村を見つめた。俺が気絶している間にいったい何があったというのだろうか。

18よんよん:2009/12/23(水) 20:31:49 ID:???
『どうした、小冬。ほらさっきの続きだよ、僕は小冬のことが好きだって言っただろ』
『ちょ、ちょっと待て。鈴村、お前が俺にこんなのを着せたのか?お前の妹の体を奪おうとしたのは悪かった!な、許してくれよ』
俺はすぐに謝った。もはや俺は計画はばれていたと見ていいだろう。そうなれば謝る以外道はないだろう。
『何を言ってるんだ?お前は僕の妹だろ。意味のわからないことを言わないで』
『いや、だから・・』
『言い訳は聞かない。お前は俺の妹なんだからな。言うことをきいてもらうよ。ほら・・このお香をかぎなさい。これは催眠効果のあるお香だ』
鈴村はそういうと一見普通のお香を取り出した。ゆっくりとお香から出てくる煙からはいい匂いが感じられる
『な・・』
催眠効果のあるお香・・、なんてものを持っているんだ。俺は心の中で舌打ちをした。
『ほら、お前は俺の妹なんだよ。今日はバイトがあるだろ、それにいかないとバイト先の者に怒られるだろ?』
『バイト・・?何を言って・・う、その香りを近づけるな。お、おい・・やめろ・・・』
お香の香りを吸うまいとしても、いつまでも息をとめるわけにもいかない。俺はまた意識を失おうとしていた。
それにしてもこのお香は効き目がよいのだろう。お香を嗅がせようとしている鈴村自身もまた目の焦点があっていなかった。

19よんよん:2009/12/23(水) 20:32:19 ID:???
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「ま、これで小冬ちゃんのアルバイト問題は解決ね。無断欠勤だけは避けられてよかったね」
『ーーーんんーーー!』
「でもトシさんにウェイトレスのお仕事なんて勤まるかしら。こんなイブだとお客さんも多いだろうし」
『んんんーー!!』
「あとはさやちゃんとお兄ちゃんの問題解決だけね。まぁ、お膳立てはしておいてあげたから、大丈夫だとは思うけど」
『んん!!んんーーー!!』
「こういう日くらいは気持ちよく慈善活動をしなくちゃね。変装スーツをお届けするサンタクロースのアルバイト。クス、まぁあとで変装スーツは没収させてもらうけど」
『・・・んーー!んーー!んーー!』
「大丈夫大丈夫。ご両親が帰ってきたら、すぐに見つけてもらえるよ、ね、小冬ちゃん!」
私の格好をしたその人物はニカッと笑みを浮かべた。まるでドッペルゲンガーかコピー人間を見ているかのようだ。
そのコピー人間は私が押し込められているタンスの戸を閉めた。
恐らくコピー人間の言ったことは間違いないのだろう。
このタンスは両親の部屋にあるものだし、両親は家に帰ったらまずこのタンスを開けるからだ。
だが問題はそこじゃない。あのコピー人間は私に成りすましていったい何をしたのだろうか。
アルバイトは大丈夫だと言っていたけど、どういう意味なのか
いったいこのコピー人間が何をしたかは分からない。しかし今の私にはどうすることもできなかった。

20よんよん:2010/01/23(土) 13:41:13 ID:???
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「お兄ちゃん、いつまで寝てるのよ〜」
妹の声が聞こえた。まるで重い風邪の症状に似た頭痛に僕は頭を手で押さえながら、ゆっくりと目をあけた。
「あ、起きたね!」
『わわ!?』
目を開けた瞬間、僕はびっくりしてベッドの上で数センチ程、飛び上がってしまった。
なんと妹が眼前に今にもぶつかりそうな程まで近くにいたからだ。
「もういつまで寝てたのよ〜」
『な・・』
「あ、勝手にお兄ちゃんの部屋に上がらせてもらってるわよ」
妹は僕の声をさえぎり、先に状況を説明しだした。
「お兄ちゃん、いつまでも部屋から出てこないからどうしちゃったのかなって思って覗いたら、こんなところでグッスリ眠っていたんだよ?」
妹はゆっくりと僕の側を離れ、背を向けた。なんとなくその仕草から嬉しそうな様子が感じ取れるが、それに加え妹の様子に何か違和感を感じた。
見た目や仕草、喋り方は妹なのだが、独特な雰囲気が微妙に異なる。いつもに比べてやや気分が高揚しているようにも見えた。
『そういえば・・』
稲沢さんはどうしたんだ?僕はふとそんな疑問を感じた。思い出してみると僕は先ほどまで稲沢さんと話をしていたはずだ。
お茶をいれたり、家族の話をしたり・・・
「どうしたのおにいちゃん?」
妹はゆっくりと振り向いた。その顔は楽しいことでもあったのか「クス・・」と声が漏れていた。

21よんよん:2010/01/23(土) 13:41:45 ID:???
『稲沢さんは・・見なかった?』
「稲沢・・さん?ああ、あの巨乳の人?」
身体的特徴をあげると稲沢さんは美人でしかも胸が大きい・・妹が巨乳の人と言うのも別におかしくはない。
「その人ならこの部屋にいるじゃない」
僕はぎょっとした。いくらなんでもこの狭い部屋には僕と妹の二人しかいないはずだ。
もし稲沢さんが部屋にいるとしたら、どこかに隠れるかしなければいけない。
『何を言ってるんだよ』
「あれ、まだ気がついていないの?自分の格好に?・・お兄ちゃんって結構どんかんなのね」
『・・は・・?』
「ほら、自分の声や格好とかさ。体型も違えば髪の毛の長さだって違うのに。いくら寝起きだからってちょっとボーっとしすぎじゃない?」
妹はまるで早口言葉のようにぺらぺらとまくし立てた。
ナニを言っているのか・・一瞬僕には理解できなかった。
「ほら、そこに鏡もあるじゃない。せっかくベッドの上からでも見える位置においていたのに気がつかないかなぁ」
妹の指差す先には確かに鏡が置いてあった。
その鏡には・・・先ほど僕を話をしていたと同じ稲沢さんがベッドの上で呆然とした様子で写っていた。

22よんよん:2010/01/24(日) 16:29:58 ID:???
『い、稲沢さん・・?』
僕は慌てて鏡を覗きこんだ。するとどうだろう、鏡に写る稲沢さんも僕の動きに合わせて同じような動きをする。
ゆっくりと僕は右手を自分の頬にあてる。やはり鏡に写る稲沢さんも手を頬にあてた。
『まさかこれって・・!』
おそるおそる僕は視線を下へと向けた。
異様なほどに晴れ上がった二つの胸がすぐに見えた。赤いミニスカートから伸びる素足はどう見ても男性のものではない。
・・いや、僕のものではなかった。
『これは・・あ、声も違う!?』
自分の声なんてあまり聞きなれないものではあるが、今の自分の声が男のものではないことはわかった。
そう、つまりは・・僕は稲沢さんになってしまっている!?

「にぶちんだね、お兄ちゃんは。あ、今はお兄ちゃんって呼ぶのもおかしいかな。稲沢さん♪」
後ろで嬉しそうに妹が声をかけてきた。
『小冬・・?』
妹のその調子を見てわかった。妹が俺にこんなことをしたんだと。
いや、だがいったいどういうことなのだろうか。魔術?奇術?いったい妹はどうやって僕の姿をこんなふうに変えてしまったのか。
『・・・あっ』
僕はそこでようやくある事を思い出した。
『そうだ!あの時、トシがいたんだ!』
僕が眠る前に見た稲沢さん・・あれは偽者だった。トシは精巧なマスクを被り、僕を欺いていたんだ。
『まさか・・この稲沢さんの顔は、マスク!?』
「正解だよ、稲沢さん♪」
クス・・と笑うような仕草を見せる妹に、やはり僕は何かの違和感を感じていた。
『小冬・・?僕にこんなマスクを被せたのは・・お前なのか?それとも・・』
トシがやったのか?そんな事を考えていくうちに僕は目の前にいる妹が怖くなってきた。
目の前にいる妹は本当に僕の妹なのか?・・もしかして今目の前にいるのは、今の僕と同じように誰かが変装した誰かではないのか、ということだ。
『まさか・・お前、トシ・・なのか?』
「何を言ってるの、お兄ちゃん♪私がトシさんに見える?」
妹は、証拠でもあるの?と言わんばかりにクスクスと鼻で笑っていた。

23よんよん:2010/01/24(日) 16:30:33 ID:???
『とにかくこれを脱がないと・・どうやって脱ぐんだ?』
僕は試しに顔を引き伸ばしてみた。やはりゴムマスクのようなものを被せられているのだろう。マスクはゆっくりと伸びていく・・しかし、着ぐるみのように全身に着せられた変装はただ伸ばすだけでは脱ぐことはできなかった。
『お、おい・・小冬。どうやって脱ぐんだよ』
妹が本人かどうか分からないが、しっぽを見せない小冬に僕は尋ねてみた。
「あれ?せっかく着せたのにもう脱いじゃうの?」
『着せたって・・やはりお前が僕にこんなものを着せたのか』
「そうだよ、稲沢さんに慣れるようにねって。でもそれだけおっぱいが大きいからさ、服を着せるのが大変だったんだよ?」
妹が言うように稲沢さんの胸は大きく、服の中にぎゅうぎゅうに押し込まれているような感じであった。
もちろん変装なのだから僕に胸に詰め物がされているような感じしか分からないのだが。
『それで・・脱ぐのは?』
着せたのだから脱ぐ方法もあるはずだ。着ぐるみのようにチャックみたいなものはないが、切れ目かなにかがどこかに無いか手で探しながら妹をにらみつけた。
「本当に脱いじゃうの?・・・うーん、トシさんの場合は嬉しそうにきてたのになぁ」
『トシ・・?』
「あ、なんでもないよ♪ま、それじゃ後ろを向いて♪脱がしてあげるから」
この妹はトシじゃないのか・・?まさかトシに稲沢さんの変装をさせた主犯は今目の前にいる妹に化けた誰か・・ではないのか?
だがまずはこの変装を脱がしてもらうしかない。元の体に戻ったときに、ちゃんと問いただせばいいのだから・・
僕はゆっくりと妹に背を向けた。

24よんよん:2010/01/25(月) 22:07:05 ID:???
妹はゆっくりと僕の肩に手を置いた。
僕は先ほどから変装や着ぐるみという単語を使っていたが、それはあながち誤りではなさそうだ。
僕の素肌に稲沢さんの形をした何かを着せられているのか、妹の手の感覚は肩を通してあまり感じられず、何かを挟んでいるように感じられたからだ。
「それじゃ、服を脱がすね」
『え、服を・・?』
「当たり前じゃない。だってそれ・・あ、便宜上変装スーツと呼ぶけど、その変装スーツを脱がすには裸になってもらわなきゃいけないんだもん」
考えてみれば、僕の体はどこからどう見ても稲沢さんにしか見えなかった。
髪の毛から乳房、手の指先からつま先までどこからどう見ても女性のものだ。確認したわけじゃないがおそらく股間にもふくらみのようなものが感じられなかった。
『まさか・・俺にこれを着せたとき・・』
「あ、大丈夫だよ。稲沢さんの変装スーツの下にはちゃんと服を着せてるから。・・まぁ、おかげで神経がスーツに上手くリンクしてないわけだけど」
『神経?リンク・・?』
「あ、なんでもないよ。それじゃまずは服を脱がすね。って言っても、その今の格好って稲沢さんをモデルにしてあるんだけど」
『それくらいはわかるさ。・・どこからどう見ても僕の姿は稲沢さんだしね。いったいどうやってこんなものを作ったんだ。声だって稲沢さんそっくりだし』
「まぁ、それは秘密なんだけど。・・それで稲沢さんをモデルにしてるって言ったけど、これ、稲沢さん本人に手助けしてもらって作ったスーツだから寸分たりとも本人と異なる点がないってこと、分かっててね」
『ああ・・って、稲沢さん本人の手助けって・・?』
考えてみれば、ここまで稲沢さんそっくりの変装スーツを作ったってことは当然、稲沢さん本人の協力なくては絶対に不可能だろう。
しかし稲沢さんはこの変装スーツってやつがどういう使われ方をするのか知っていたのだろうか。
まさか僕やトシがそれを着てしまったことを知らない・・?
「クス・・服、脱がせるけど、いい?」
まるで僕の心を読むかのように、誘いかけるような甘い声で妹は僕に尋ねてきたのであった。

25よんよん:2010/01/26(火) 08:04:49 ID:???
妹は僕の着ている服に手をかけた。
トシが化けた稲沢さんが最初に着込んでいたサンタクロースの格好だ。さすがに帽子までは被ってはいないが鏡に写る稲沢さんはいつものように美しく綺麗だった。
『あ・・』
服を脱ぐというから目をそらそうと思っていたが、目の前の鏡に写る稲沢さんを見て僕は動揺した。
稲沢さんそっくりに作った変装スーツだということは、胸の大きさから体つきまで全て本人そのものなのかもしれない。
さすがに直に服を脱いだ姿を見るのは忍びなく、目の前に鏡があるとなれば、もはや目を瞑るほかない。
「・・クス」
僕が目を閉じたと同時に、妹は僕を鼻で笑っていた。

妹は僕の体のあちこちを触り始めた。
最初は服を脱がしているような感触があったものの、変装スーツを脱がしているのか、単に体を触っているのか・・変装スーツに覆われた僕にはそれがよく分からない。
『・・・あ・・』
「あ、ごめん。ちょっと変なところを触っちゃった」
『変なところって・・』
妹は僕の股間のあたり・・今では平べったく何も突起物のない元の姿であれば男性器のあった場所に手を触れた。
一瞬その触れられた感覚に僕は思わず声を上げてしまったのだ。
『本当にお前・・』
目を瞑っているから、妹を直接にらむことは無かったが、いつもの妹の雰囲気ではないことは明白だ。
やはり誰かが妹に変装しているのだろうか?
『(・・・ん?)』
そういえば、なんで股間のあたりは変装スーツごしなのに触られた感覚があったのだろうか?
肩や背中を触られても特に何も感じられないほど感覚が鈍感になっているのは、変装スーツが着ぐるみのように分厚いし、変装スーツの中に服を着ているからかと思ったのだが、なぜ股間部分だけ感覚が艶かしく感じられたのか
しかし、その疑問を考えている間に妹は止まっていた手をゆっくりと変装スーツを脱がすほうへと動いていた

26よんよん:2013/07/12(金) 23:28:08 ID:???
『はい、それじゃあとは頑張って一人で脱いでよ』
小冬はそう言って僕の背中をポンと叩いた。
あわてて背中の辺りに手を当てると、何か薄いものが背中から剥がれている。
『これは・・』
どうやらこれが変装スーツらしい。まるでセミが蛹から脱皮するかのように背中のあたりがぱっくりと割れている。
力いっぱい引っ張るとそれは鈍い音を立てながら、ゆっくりと裂けていった
『これなら抜け出せるかも』
まだ稲沢さんの声で一息、声をあげ、ゆっくりと慎重に皮をはいでいった。

『これでなんとか・・おい、小冬、手伝ってくれよ・・』
あまり変な体勢になっているため、腕がつりそうになったため、僕はあの怪しげな妹に声をかけた。
『小冬・・?』
ハッとなって僕は目をあけた。いつのまにか部屋には妹がいなくなっていたのだ。
『いない?どこに・・?』
物音も立てずに妹は忽然と消えた。まるで幽霊のようだ。
『クソ、もう少しだってのに・・』
腕が疲れるほど変装スーツはかたく、力いっぱい引っ張ってもなかなか裂け目が広がらない。
どうやらこのあたりが裂け目の限界なのだろう。
『これ以上引っ張るより、抜け出した方がいいか・・』
グギギギ・・・と背中の裂け目をうまく体勢をかえつつ、頭を出そうとする。
かなり小さな裂け目なのか、なかなか全体が出てこない。
それでも時間を十分にかけ、僕の頭はようやくその裂け目からぶわっと飛び出した。

『やった・・!』
まるで卵から飛び出したひよこのように僕は天井を見上げた。
勢いよく頭を飛び出したためか、長い髪の毛がブルブルっと左右に揺れ落ちた。
『え?髪の毛?』
ふと目の前の鏡が見えた。そこには稲沢さんのクシャクシャになった抜け殻の上に、妹の友人である三浦彩夏のきょとんとした表情が写っていた。

27よんよん:2013/07/12(金) 23:28:42 ID:???
=================================================

『ああ、私って何をしてるんだろ・・小冬さんに言われてこんなことをしちゃうなんて』
お兄さんにひどいことをしてしまった。
その罪悪感で私は床に伏していた。
気がつけばいつのまにか、それなりの時間がたっていた。
記憶も朦朧としているものの、今の自分の恰好を見てさらに落胆してしまう。
憧れでもあった小冬さんのお兄さんの姿が鏡にうつっている。考えるまでもなくこれは自分が変装している姿なのだ。
慌てても埒があかないので、私はこの変装を解くことにした。
『・・・あれ?そういえばこれ、どうやって脱ぐんだろう』
脱ぎ方がはっきりとわからない。さっき小冬さんが私やお兄さんに変装を施したのは見たはずなのだけど
どうも記憶が定まらない。あの香りを吸ってからの記憶がおかしくなっているみたいだ。

『・・・考えてみたら』
今私はお兄さんの恰好をしているわけだけど、その衣類はお兄さんのものだ。
それに加えて私の衣服は部屋にお兄さんの部屋に置いたままだ。
『とにかく小冬さんに謝って、戻してもらわないと』

28よんよん:2013/07/12(金) 23:29:13 ID:???
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『な、なんで僕は彩夏ちゃんに・・?』
稲沢さんの変装スーツをすべて脱ぎ去り、鏡の前に立ってみたが、やはりそこにいるのは妹の友人である彩夏であった。
衣類も彼女のものだろうか、先ほどのサンタ衣装のような窮屈なものではなく着心地のよいフリルのついたワンピース姿だった。
『・・これもあの妹の仕業なのか?』
あの妹はトシだったのか、それとも首謀者だったのか・・今になってもそれは分からない
『まったく・・これも脱げるんだろうな』
彩夏の声を男口調で話しても違和感しかないが、こうでもしないと本当に自分が女になってしまった気分になりそうだ。
さきほど妹がやったように背中のあたりに何かないか体をグッと爪でひっかいてみた
『いたっ!』
強くひっかいてしまったのか、僕は声をあげてしまった。
『慎重にしなきゃ・・』
今度は強くひっかかないように、背中の辺りをさわってみる
『うーん、どこだ?裂け目になりそうなものがあると思うだけど』
ワンピースとはいえ、冬のためやや厚着姿となっているため、思うように背中が触れない
となれば服を脱いで調べるほかないのだが、あまりにこの変装スーツが精巧にできているため、いくら作り物といえど、彩夏ちゃんの体をいじっているように見える。
『・・といってもなぁ』
いつまでもこうしてはいられない。僕は意を決してワンピースを脱ぐことにした

29よんよん:2013/07/12(金) 23:29:46 ID:???
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私はお兄さんの部屋の前に戻ってきた。
中からごそごそと物音が聞こえる。
『誰かいるのかな・・でもお兄さんは小冬さんに変装して出て行ったし・・』
となれば、小冬さんしかこの部屋にはいないだろう。
『・・・小冬さん、入るよ』
私は、ゆっくりと扉をあけ中へと入った。

その私の目の前にはまさに、ワンピースを脱ごうとした少女がいた。
いや少女というより、それは見たことのある・・どころか毎日見ていた自分の姿がそこにいた。
『わ、私・・!?』
ハッとなって私は少女を見つめた。すぐさま少女も声をあげる
『ぼ、僕がなんで・・!?』
あまりに訳のわからない事態に私は腰を抜かし、その場にぺたりと座り込んでしまった

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