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あと3話で完結ロワスレ
442
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 22:51:00
「54時間かあ。二日と四半日」
「&strike(){案外長いなおい}やることはやったし、なにしよっか?」
「ゲームならいっぱいあるよー。前来た時あそこの棚に隠しといたからね私」
「さすがツッキー。でも、スマブラやマリオパーティで最期のひとときというのはどうなんでありましょう……」
それもそれでいいけどね、と付け加えたあと、五人は机を囲んでうんうん唸る。
ひとしきり粗潰し、しらみ潰しを終えたら。
普通(ノーマル)の少女である五人にはもう何も出来ることがない。
それでも、たとえば残り3時間しかないなら悩むことはない、仲良く駄弁って終わればいい。
ただ54時間もあるとさすがにずっと喋っていてもネタが尽きるし、
――多分、なんだか時間を無駄にした気になる。
何が出来る? 何をすればいい?
後悔せずにみんなで終わるために――あとなにか足りないピースはあるだろうか。
「足りない……足りない、か。
足りないって言えばさ、もしかしてここなら、あれがあるんじゃないかな」
「?」
「ちょっと待ってて。えっと……こっちかな……?」
何かを思いついたらしい喜々津嬉々が、生徒会室の試料棚を漁り始める。
がさごそ、がさごそ。ぼうっとそれを見つめながら、次葉が不意に呟いた。
「なんか、実感わかないなあ。これから私たち、死ぬんだ。
死ぬ。死ぬ……死んだら、どうなるんだろうなあ。
なんにもなくなって、私なんてなかったことになるのかなあ」
「そうではないでありましょう。ジロちゃんが生きていた証は、きっとどこかに残るでありますよ」
「あたしはそうとは思えねーかな。&strike(){うん、きっとそうだよ}」
「タカちゃん、本音と建前が逆になってるけど…?」
「&strike(){今さら本音も建前もねーだろ}……よいしょっと。えい」
(ぽい。っとセリフに手を突っ込んで打ち消し線を取り除く)
「よし。あーあー。……今さら本音も建前もねーだろ?」
「物理的に全部本音にしたー!?」
「今日は珍しくツッコミ冴えわたってんなジロちゃん。
でだ、話の続き。あたしたちが生きてた証が残るかどうかだけど……残るかなあ。ホントに」
「……?」
「黒神めだかとか、安心院さんとか。それこそ球磨川先輩とか。
ああいう、歴史に名を刻んじゃうタイプの特別な人間は、きっといつまでも証を残せるだろうけど。
あたし達って言ってみれば、安心院さんの駒1号〜5号とか、
そういうくくりでまとめられちゃう存在だろ? そんなあたし達の生きた証が、いつまでも残るか?
戦国時代に死んだ雑兵の名前が一人一人明確に残ってるわけじゃないのと同じ。
少しはどうにか残っても。いつかは、忘れられるだろ」
メガネと帽子を外して、胸に手を当てながら財部依真は淡々と言葉を連ねた。
死んだ人間は、周りの人の心の中で生き続ける。
なんて詭弁を人は言う。
本当にそうだとして、ではどうだろう、死んだそのAさんを覚えている人が全員死んだら、
Aさんは今度こそ本当に死んでしまうことになるじゃないか。――こう財部依真は言いたいのだ。
「そ、それはそうかもしれないでありますが。
少しでも残るのであれば、それで十分ではないでしょうか? 少なくとも私は……」
「そこで満足するって手もあるよ、確かに。現にあたしは、
死ぬ間際までワニちゃんやツッキー、ノゾミちゃんにジロちゃんと一緒にいられるってだけで、
けっこう満たされてるなーなんて思ってる側面もあるんだ。でもさ」
443
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 22:52:33
立ち上がり、窓の近くまで行って少女は外を見る。
広がる箱庭学園の風景――彼女たちが生きてきた場所を見て、思う。
「贅沢な考えだとは思うけど。どうせ死ぬならこう、あたしはここにいたぞ! って気持ちを、
どこかに、ずっとずっと、少しでも長く残しておきたいって思うのは、間違いじゃないと思うんだ。
特にあたし達は、この学園で――安心院さんの気まぐれ次第じゃ、
自分自身の気持ちなんて持てずに、駒みたいな生き方しかできなかったかもしれなかった。
でも今は、ルールなんてぶっちぎって、安心院さんに抗えてる。
そういうことが出来るようになった。せっかく出来るくらい、自分が出来て、育ったのにさ。
あたし達を誰にも伝えられずに死ぬなんて――嫌なんだよ。やなんだ。みんなだって、そうでしょ?」
最期のほうは少し熱っぽくなりながら。依真は他のメンバーに問いかけた。
打ち消し線を外して、メガネも帽子も外して、もはや彼女を彼女と定義づける記号は一つもない。
だけど瞳に遺志を帯びた顔をしている彼女は、誰がどう見ても財部依真以外のなにものでもなかった。
安心院なじみ。
自分以外を悪平等に大したことはない存在だと定義する全能少女。
フラスコ計画を潰した黒神めだかから主人公をはく奪するために、彼女が送り込んだ5人の「普通」。
「普通」であるがゆえに警戒されず、
「普通」であるがゆえに作戦の要を担った5人の候補生たちは、最初はただの記号の集まりでしかなかった。
でもいつのまにか、記号なんて無くても個人を個人だと判別できるくらいに、育った。
ただの記号に人間としての色がついて、自分として独立することができた。
それなのに。誰にもそれを伝えられないまま、彼女たちはもう死を選ぶしかない。
彼女たちが成長したことを知っている人々もみんな死んでしまっているから、
この状況でみんなで死ぬことを選んだという彼女たちの想いすら、このままだと知る人はいないまま。
「……機械的に言わせていただくと」
依真の言葉に最初に返したのは、希望が丘水晶だった。
「私はアンドロイドですから、死んでもこの体の中にメモリーは残ります。
ですから、もし後日に私の死体からこのメモリが解析されれば、
この場で私たちが選んだ決断、それ自体は知られることになるでしょう。ですが」
反語を呟くと、水晶は関節部を動かして自らの背中に手を回す。
そしてカチリと脊髄のあたりにあるバックカバーを開けて、中から小さなメモリを取り出す。
四角いチップ型のそれは希望が丘水晶の誕生からこれまでの記録を収めているメモリだ。
無表情のまま――希望が丘水晶は、それを自らの手で、
折った。
「え?」
「ノゾミちゃん!?」
「な……」
ぽきり。
とメモリが折られたことで、希望が丘水晶の外部保存領域は消滅した。
残る記憶領域は、せいぜい人間と同じ程度の重要事項しか残さず、
電源が落ちれば0になるローカル領域だけ……つまり、他の4人と同じくらいの記憶だけ。
「メモリはあくまで記録であって、その場での感情を記した思い出ではありません。
だからタカちゃんの想いを受け取るならば。思い出を残すためならば。
この記録はむしろ、ノイズであると判断しました。――間違いだったでしょうか?」
自らアンドロイドとしての利点を捨て、希望が丘水晶はそれでも笑顔を作った。
もうこれでいよいよ本当に、5人が死んでも何も残せなくなったのに。
36時間眠っていて話に関われなかったことさえ残せなく――――残「ら」なく、なったのに。
444
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 22:54:53
そう、これで。
彼女たちのこれまでの動きを証言する記録(メモリー)は消えたので。
「いや間違いもなにも、それじゃ、
ほかにどんな記録を残してもその正しさが証明できなくなるじゃねー……か?」
「あれ、ってことはそれって――」
水晶の行動に対して、財部依真と与次郎次葉が驚きながらも、何かを察し。
「あはは!
なるほどね。間違ってないよ、ノゾミちゃん。っていうか……同じこと考えてた?」
「おわ! ツッキー? な、何を持ってるでありますか!?」
話がひと段落したところを狙ったかのように、喜々津嬉々が戻ってきた。
手にはタウンページ大はありそうな大きく分厚い冊子を持っている。
彼女は軽快な言葉と共に、その冊子をうんしょと持ち上げて。
ばばん!
と大きな音を立ててその冊子を机の上に置いた。
「ツッキー。探し物は見つかりましたか?」
「ん。見つけたよ。――足りない穴を埋めるパズルのピース」
「ウィ。さすがです。やはり、ここにありましたね……」
その冊子とは、
箱庭学園全生徒および関係人物、および、黒神めだかが知り合った人物……。
有体に言えばこのバトルロワイアルの参加者全員を含む様々な人間のプロフィールをまとめた、
いかにも黒神めだかが持ってそうな「全生徒手帳」である。
試しに水晶が数枚、ぱらぱらとめくれば。
載っている、載っている。
阿蘇短冊から贄波錯誤まで。
きっとこれさえあれば全く知らない人物だってそれなりに語れてしまうだろうほどの情報が。
そう、どんな登場人物であろうと、それっぽく「書けて」しまうほどの資料が――!
「さーみんな。ここに。残り時間が『54時間』ある」
喜々津嬉々は時計を指差して。
「そしてここに、足りない情報を埋める、『把握のための資料』がある」
次に冊子を指差して。
「さらに球磨川先輩のおかげで、
『どんな展開になってもラスト3話でなかったことになる』のなら。」
悪戯っぽい笑みをうかべて、紙とペンを取り出しながら。
「……『そこまでの297話で、どんな嘘をついてもいい』ってことでしょ?」
白紙のそれを、真っ白なキャンバスを見せつけるようにして、
喜々津嬉々は4人にひとつの提案をする。
「ねぇ。遺書を書こうよ。未来にいつまでも残るような、
馬鹿らしくて阿呆らしい、何でもありのとびっきりフリーダムなやつをさ。
みんなでリレーのバトンを渡すようにして、一から十まで嘘で固めて、
でも誰もそれが嘘なんだって証明できないような、カンペキな悪ふざけ――」
445
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 22:56:21
それは、0になった物語に存在しないはずの虚数を加える行為。
ウソツキハッピーエンドへ向かうリレー遺書。
死んでも何も残らないと思うなら、自分から何かを残してしまえばいい。
しかもただ遺すだけじゃない。全力で自分たちをアピールできるものを遺せるのならそれをやるべきだ。
そう考えた喜々津嬉々の提案は――この箱庭でつづられた物語の、そのシナリオを。
「わたしたちで。このバトルロワイアルを、捏造しちゃおうぜ?」
二次創作、してしまうこと。
ぞわりと空気が震えて、得体の知れない雰囲気が部屋を満たした。
本気だった――喜々津嬉々のゴーグルの下の目が、本気だった。
まったくネタでなく、本当に彼女は世界に嘘をつくつもりなのだ。
もう誰も知らない36時間の空白を、言ったもん勝ちのシナリオで埋めるつもりなのだ。
異常でも過負荷でもない「普通」の少女たちである自分たちが、主役になり。
誰をも倒し、誰をも説き伏せ、誰もを思い通りにする――カミサマにでもなったみたいな。
そんなシナリオ。
ありえないことだ。
ありえないことすぎて可笑しくなる。
でも、54時間で出来ること。たった5人で出来ること。
そしてなにより、空っぽになってしまった箱庭で、少女たちが抱えていた。
提案された他の4人は――ごくりと唾を呑みこんで。
「ひ」
硬直した顔で、一文字喉から絞り出せば……あとは雪崩のようだった。
「――ひとつだけ、ルールを。――(中略)――でいいでありますね?」
「確認するまでもないよ、ワニちゃん。それは前提でやらなきゃ意味ないじゃん。
だって、これってわたしたちのエゴでもあるし……『それだけじゃない』んだからさ」
「ウィ。では私は、細かい矛盾点が発生しないよう各所の管理と、繋ぎを。
ワニちゃんはバトル、ジロちゃんは中二、タカちゃんは心理戦、ツッキーは頭脳戦でしょうか」
「おおさすがノゾミちゃん、いい役割分担。
でも最後の方とかは合作するのもいいかもな。闇鍋みたいに取り合いじゃなくてみんなで」
「いいね! なんたってこれは――みんなで背負う、罪だからね」
ある者は楽しそうに笑みを浮かべ、ある者は真剣に流れを考え始め。
全員が喜々津嬉々の発案に、いたずらにしては大きすぎる罪に、ノータイムで同意した。
そしてすぐ。
闇鍋にどんな具を入れるか話し合ったときのように、思い思いにリレー遺書の案を出し。
2時間かからずおおまかなあらすじを確定し。
2時間ちょっとかけて参加者のデータを把握して。
50時間を残したところで、少女たちは執筆の用意を完了させる。
それぞれ目の前に白紙を用意、おのおのが書きやすいペンを手にし、
中央には希望が丘水晶が管理する、
現在位置表や参加者の各種データを集めたPC画面を表示。
途中で休憩を挟むときのお供にどこからかスナックやジュースも持ってきた。
添い遂げる準備は――万全だ。
「じゃあ……オープニングを、始めるよ」
言い出しっぺの法則。喜々津嬉々がまず書き初めに着手した。
続いて平行作業で他4人がそれぞれの登場話に移る。
細かく分けられたプロットは合計にしておよそ300話。
一話が短い手記形式とはいえ、創作に携わることなどなかった少女たちには難しい量だ。
446
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 22:58:17
それでも、やり遂げると決めた。
自分たちの想いを遺すため――いいや、それだけじゃ、ない。
297話近く積み上げられた物語が、全て台無しにされたそのあと。
少し優しい顔で眠りにつかされた死体からは、なにもかもが奪われてしまっていた。
ある少年は良かれと思ってそうしたという。
人の死には付属する物語なんて、悲劇なんて喜劇なんて、英雄譚すら、邪魔なだけだと思ったという。
確かにそうなのかもしれない。
死はけして美談ではないのだから。
けれど――そうしてしまったら。物語を消してしまったら。
そこにあるのはただの「死」だ。
誰が死んでいても一様に同じ、代替の利く現象でしかない。
そんな死に、個性はない。
「だからあたしたちは、この物語を書く。死んだのが誰なのかを分からせるために」
「かけがえのない、たった一人の、わたしが、みんなが、一人一人が! 死んだんだって知らしめるために!」
「そのための、本当の物語が失われてしまったのなら――たとえ嘘であっても構いません」
「伝えたいのです。残したいのです」
「ただひたすらに――『みんなはちゃんとここにいた』って、伝えたいだけなんだ!」
もちろん少女たちは分かっている。それはそうあってほしいと言う願いでしかないということを。
嘘で作られた100人の登場人物の生き様は本当のものではけしてなく、
他人では100パーセント本人を再現することなんて、不可能だということを知っている。
だけれどそれがなんだというのだ?
不可能だからと言って筆を置くのか?
違う。
違うのだ。
例え願いでしかなくても――そう願おうとする気持ちは。
本物であってほしいと言う気持ちは、嘘をもうひとつの本物に、変えるのだ。
少女たちは書いて。
書いて。
書いて。
くだらない嘘を紡ぎ続けた。
20話が描かれて。
40話が描かれて。
第一放送が描かれて。
80話が描かれて、
100話が、200話が、
第三放送が、第五放送が……。
そして――50時間が経過して。
最後の禁止エリアが、指定される。
「「「「「……はは」」」」」
ぴぴぴぴと鳴り始めた首輪の警告音は、少しうるさいファンファーレだ。
「「「「「みんな、お疲れ様、そして・……」」」」」」
財部依真は。与次郎次葉は。鰐塚処理は。喜々津嬉々は。希望が丘水晶は。
クマだらけの目で力なく、それでもやりきったような笑みを浮かべ。
腱鞘炎になりかけの手でグーを作って、乾杯をするようにそれをぶつけ合って。
人生最後のガッツポーズを、した。
447
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 22:59:40
「「「「「――完結、おめでとう。」」」」」
少し離れて机の上。
たくさんあった白紙の紙が0枚になっていて。
急いで書かれた走り書きの手記が、散らばる紙にはびっしりと書かれていて。
空想は描かれた。0は虚数で埋め尽くされた。そこには確かに物語があった。
彼女たちの首が、跳んだ。
【財部依真 死亡】
【与次郎次葉 死亡】
【鰐塚処理 死亡】
【喜々津嬉々 死亡】
【希望が丘水晶 死亡】
【ロワイアルボックス――停止。生存者:なし】
◆◇◆◇
――後日談。
◇◆◇◆
201X年△月○日。
文化祭の日程と祝日の関係で、
この日までその学園は4連休となっていた。
その4連休が明けたばかりのこの日、久しぶりに学園に足を踏み入れたのは、
陸上部の朝練にいち早く来ようとしていた当学園の一年生の少女(仮名:A子)だった。
不可解なのは、連休前の夕方に用務員が学園を出てから4日半後のその瞬間まで、
学園には誰も出入りしなかった……定期掃除の業者さえ入ることを忘れていたことだが、
とにかく広い校門をくぐったその瞬間に、A子は糸が切れたような音を聞いた。
「? ――――!?」
その次の瞬間、A子の目の前に広がっていたのは――惨劇の、跡だった。
「箱庭学園集団拉致監禁殺人事件」という名が付けられたこの大事件は、
発覚するや否や様々なニュース、TV、新聞などに取り上げられて世界をにぎわせた。
確認できるだけで死者99名。そして行方不明者3名。
その人数規模だけでも腰を抜かすしかないのに、
死者の中にはかの黒神財閥の関係者など、日本の中枢に関わる人物の名前もあった。
「どうして4日も行方が分からなくなっていたことを放置していたのか?」と非難の声が出るほどだ。
448
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 23:01:24
さらに世間をにぎわせたのは、その事件の異常(アブノーマル)な中身だった。
100名に届くかという数の死者たちはその全員が、
なんらかの爆薬を仕込んだ首輪によって首を爆破された死体となっていた。
凄惨な首なし死体。
この、映画バトル・ロワイアルを彷彿とさせる殺害方法――これも異常なのだが、
それ以上に、
不可解かつ異常な点が一つ。
死者たちは全員、首輪の爆発による外傷以外には『傷ひとつない』という点が、おかしかった。
つまり――急性心停止とかでない限り。
「首輪の爆発以外に、彼らを殺す手立てがない、ということだったんだよね」
201X年◇月◎日。東京都庁資料室。
別件で招かれたとある青年探偵が、暇潰しに一年前の大事件の資料を覗いていた。
背丈普通、印象普通、されど頭と性格は少し普通ではない。
かといってそう大それたことができるわけでもない――彼は普通の探偵だった。
隣には女子高生じみた助手がいて、こちらは少し間の抜けたことを言う。
「じゃあ首輪の爆発で死んだんじゃないの?」
「普通に考えればそうなる。
でも、映画バトル・ロワイアルをリスペクトして人質に首輪をつけた犯人が、
映画のように殺し合いを開催しなかったわけがない。だからおかしいんだ。
まるで、殺し合いを始めますと言った瞬間に、全員の首輪が誤作動で爆発してしまったようなものだ」
「ほへぇ。それはひどくこめでぃだ」
「そうコメディだ。現実的に考えてありえない。
なにか整合性のとれる仮説が存在しうるはずだ――たとえば、
世の中には、異常(アブノーマル)な事象を起こせるスキルを持つ人間もいる。
さらに箱庭学園は、その手のスキルにずいぶんと研究熱心だという情報があった。
常識にとらわれずに色々な可能性を検討すれば、情報次第では真実に迫れるかもしれない。
……事件の最初の一報を聞いたぼくたち探偵はそう思って、思索に耽ろうとした。
その暇さえ与えられないとは思わなかったけどね。この事件が異常なのはさらにこの後。手記が見つかったことさ」
「手記?」
「そう、手記。それも同じ場所から、五編の手記が見つかった。
執筆者は中学生の“参加者”五名。その内容は、ぼくたちにはクリティカルなものだった」
探偵はぱらぱらと事件の資料をめくり、手記が発見された当時の新聞記事のページを開く。
少し目の悪い助手はそれに近寄って目を凝らし、大きな字で書いてある見出しを読む。
「へぇ、中学生が……って、
見出し……《大事件の死者が描いた不可解な手記》……どゆこと?」
「きみの目には細かい内容までは見えないだろうから、
ぼくから説明しよう。端的に言うとこの五編の手記には、こう書かれていたんだ。
“全知全能の神のような主催、安心院なじみは、
殺し合いを確かに開催した。しかし――殺し合いは『行われなかった』”」
「行われ……なかった?」
「そうなんだ。開始からたった4日で全員が死ぬシステムだったにも関わらず。
最期の一人にさえなれば生き残れるシステムだったにも関わらず。誰一人として、人を殺さなかった」
手記には5人の少女たち、それぞれの視点からゲームの様子が描かれていた。
バラバラの場所からスタートした5人は、
違うルートを通って箱庭学園内を巡回して、物語を紡いだ。
ある時は恐怖に怯えていた少女を助け。
ある時は殺し合いに乗りそうになっていた少年と戦い、説得し。
ある時は賭けを行い、交渉して。
個性的な箱庭学園の面々と、彼女たちなりに――語り合った。
そして、最終的に。
見せしめとして殺された理事長を除いた全員を、校庭に集めることに成功したのだという。
449
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 23:03:27
「ここで登場するのが、球磨川禊と赤青黄という登場人物だ。
球磨川禊はどんな事象でも『なかったこと』にする、マイナスのスキルを。
赤青黄はどんな病気でも治せるスキルを持っていた、と記録されている」
この二人が協力して――協力(二人の因縁を知る人からすればありえないことだが!)して。
それまでの手記で意思のぶつかり合いや事故、
あるいはetc.によって創られた参加者の傷を、『なかったこと』にしたと手記には書かれていた。
「『なかったこと』にするとか、便利だねぇ。
そんなスキルあったらさいっきょーじゃん。その中学生のでまかせじゃないの?」
「のちの調べで、球磨川禊がこの能力を持っていたことについてはウラが取れてるよ。
彼は箱庭に来る前、いくつもの学校でそのスキルで猛威を振るっていたし……。
まあ、とにかくだ。かくして全員が無傷の状態で校庭に集められた、最初の状態に戻ったわけだ」
「ふりだしに」
「そう振り出し。そこからは凡そ予定調和さ。
殺し合いする気が無くなった参加者、全員、バーサス主催者ふたり。どちらが勝つかは明白だよね。
ただ、安心院なじみはそれこそ本当に何でもできるほどに埒外の力を持っていたから、
参加者全員で、さらに球磨川禊が自分ごと『なかったこと』にすることでしか決着をつけられなかったらしい。
ともかく安心院なじみたち主催者側は敗北し、
消滅することとなった――ただし首輪と殺し合いのシステムだけ残して」
主催は消滅した……が。
「開始から4日経った時点で優勝者が決まっていない場合、全員の首輪が爆発する」というルールは。
すべて『なかったこと』になった殺し合いで、そのルールだけはどうしても無くならなかった。
まるで安心院なじみの呪いのようなそれを前に、参加者たちは頭を捻ったが……力及ばず。
「そして99人の首輪がいっせいに爆発し、全員が一気に死んじゃった、と……そいうわけ?」
「手記に従うならばそうなる。従うならばだけどね」
探偵は苦笑いをしながら頭を掻いた。
「でもね、魔法少女ワンダーツギハがどうとか、無駄にお涙ちょうだいだとか、
基本情報は押さえてるけど若干キャラが違う人がいるとか、色々都合がよすぎるとか、
手記に描かれたストーリー自体は正直言ってどの推測よりずっと荒唐無稽でありえない話なんだ。
なにより、100人も居て、
その中には好戦的な人物や死ねない信念を持った人物もいるのに、
誰一人として殺し合いを遂行することをしなかった(あるいはする前に止められた)なんてさ、
いくらなんでも信じれるはずがない。――嘘としか思えない異常なシナリオだ。きみなら、信じる?」
「うーん。……信じないねー。殺し合いが起きなかったってのは、いくらなんでもふしぜんじゃん。
でも手記ごとケーサツ側が捏造したにしちゃお粗末な筋書きだし、
手記自体、「本物」だって証明はできない代わりに、「嘘」だって証明もできないんでしょ〜……?」
「珍しく鋭いね。そう。
この手記はどうみても嘘としか思えないことが書かれているけれど、矛盾点はないんだ。
5つの手記の内容を比べても矛盾する描写はひとつもないし……。
見つかった死体の状態と、ウラが取れている参加者のスキルを照らし合わせれば、
そういうことがあったとしてもおかしくはないという結論になってしまう。
手記さえ見つからなければ、いろいろな可能性を想像(創造)することができたのに。
実際に参加していたキャラクター側からの『公式見解』がある以上、論より証拠になってしまう」
シニカルに呟く探偵の頭の中には、彼なりに考えた事件の真相が存在する。
殺し合いをなかったことにしようとした球磨川禊が、
手記の筆者を除くすべての参加者から傷を消した後、主催と相討ちになり消滅、
残された5名が4日ルール(あるいはこんなルールはなかったかもしれないが、
とにかく4日で全員死ぬようなルールだ)で死ぬまでの間に、でたらめな手記を捏造したというものだ。
「誰も誰を殺さないような話」という、彼女たちの間で決めたひとつのルールにのっとって。
450
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 23:06:10
だが探偵が考えたそのシナリオも一欠片の無茶がないシナリオとは言い難い。
候補生たちのスペックから考えれば、
5人の候補生と球磨川禊だけが都合よく生き残らなければならないし、
さらに球磨川が主催と相討ちになって消滅したあと、都合よく少女たちがメモを捏造しないといけない。
では他の探偵の考えた推測はどうかというとやはりどこかに綻びは存在し、他の推測も同様、その他も……。
――現実はえてして数奇なものであって、こんなことありえないということがやすやすと起こり得る。
結果として残っている「外傷がない99体の首なし爆殺死体」という無茶苦茶な謎を前に、
だから誰一人として完璧に無茶のない推測を立てることはできないし、
だから誰一人として、参加者が描いた手記という絶対的な証拠を超える信憑性を出せない。
「……結局きみも知ってのとおり、この事件は先日、大規模な捜査を打ち切られることになった。
他に証拠がない以上、この手記にのっとるしか、なかった。
そして手記通りに『バトルロワイアルなんてなかった』という『答え』が採用されて、
しかも主催が消滅した以上、死亡者の誰にも罪はなくなった。後は細かい事務処理だけさ」
「ああ、だから事件の名前もバトルロワイアルとかじゃなく、拉致監禁殺人になったわけですか?
確か最初のころは、現代に実際に開かれてしまった殺し合いゲームが〜とかニュースで言ってたけど、
最後のほうは死者の生前の功績とかしかぴっくあっぷされてなかったような」
「そういうこと。事実上は違うけど……真実に対しては、この事件は迷宮入りってわけさ」
結局は、そういうことだ。
沢山の好奇心によって0から作り出されるはずだった真実を探る手は、
大きな嘘で形作られた偽物の壁を突き破れない。
つまり皮肉なことに――いや、運命だったのか――結果的には、
とある少年がとある少女のために行おうとしたバトルロワイアルを『なかったことに』するという願いは、
ふたりが消えたあとに5人の少女たちによって、『完成』されたのだった。
「なんというか、アレですね。黒い真実を明かさせないための、学園規模の白い嘘、みたいな。
本人たちにそのつもりがあったのかは分かんないけど――きっとその子たち、優しかったんですねぇ」
「そうだね――うん、大分きみもいい意見を出せるようになったね。
普通の探偵たるぼくの助手にふさわしくなってきた。帰りにジュースをおごってあげよう」
「まじです? でも、褒めるくらいならいいかげん、
あなたの名字を教えてほしいんですが……あ。来ましたよ雪(そそぎ)さん。警部だ」
「おや、もうそんな時間かい。……珍しく感傷にひたりすぎてしまったかな?」
「悪いな雪! 遅れた! さて、では始めようか。で……今回の事件はなんだっけっか!?」
「わすれてるんかいー!?」
「おやおや、しっかりしてくださいよ警部。――ぼくはこの事件、『なかったこと』には、させませんよ……?」
資料室の扉が開いて、探偵に協力してくれる警部がいかめし面をして入ってきて。
探偵と助手の、無意味で無価値な雑談は終局を迎えた。
資料は棚へ戻される――。
しかし大事件の記憶は人々の記憶に長く長く残り続けるし、
その証人である少女たちの手記も、そこにつづられた箱庭学園への愛(i)も、
彼女たちの名前と共に末永く語り継がれて、向こう千年は消えることがないだろう。
だから彼らは、そこに居た。
例えすべてが『なかったこと』になっても――確かにそこに、在ったのだ。
第297話までは『なかったこと』になりました ‐完‐
451
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 23:07:41
&strike(){第297話までは『なかったこと』になりました ‐完‐}
452
:
300:ウソツキハッピーエンド
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 23:08:28
このバトルロワイアルは『なかったこと』になりました ‐完‐
.
453
:
◆YOtBuxuP4U
:2013/04/10(水) 23:12:16
以上で投下終了です。
読んでくれた方いらっしゃいましたらありがとうございます!
最終的に当初の着地点を2回りほどぶっとばして亜空間に着地しましたが、
うまいことこの企画じゃないと出来ない話になったように思います。
企画を開いてくれた
>>1
さんにも改めて感謝を!
454
:
FLASHの人
:2013/04/10(水) 23:44:03
>>453
完結おめでとうございます!すばらしい&西尾らしいデビルかっこいい結末でした
非リレーだとしてもこのエンディングに到達するのは非常に困難だと思います。
ここで書いてくれて本当によかった……感謝ッ!!
ところでまとめサイトで登場人物まとめてて気づいたんですが、死体列記の中に
杠かけがえだけ「これ絶対わざとだろ」って数出てきてたんですが、何があったんで……
あ、いや、「なかったことになった」ことを聞くのは無粋ですね
そこを妄想で補ってこその三話ロワでした。やめておきましょう。
なにはともあれ、完結おめでとうございます。そしてお疲れ様でした!
455
:
名無しロワイアル
:2013/04/11(木) 18:38:10
おお、おお、おお、おおおおお!
投下お疲れ様でしたあああ!
なかったことになった。文字通り、なかったことになった。バトルロワイアルまでなかったことになった
いや、なったじゃない。彼女たちが、なかったことにしたんだ
この五人だからこその結末。ずっと残り続ける物語。彼女たちの二次創作でリレー創作
この話はまさにこの企画じゃないと無理だよなあ。非リレーでもダメだ
ちゃんと書かれちゃったらそれまでの297話が俺らの中には残っちゃうもの
でも、後3話ロワにはそれがない。或いは本当はあったのかもしれないけれど、なかったことに文字通りなった
だから、やっぱり、俺たちも。彼女らが完結させたパロロワですらない手記をそのままそうだったんだろうと覚えておこう
456
:
FLASHの人
:2013/04/14(日) 02:22:26
剣士ロワのまとめ、できました
ttp://akerowa.web.fc2.com/kenshi/kenshitop.html
とにかく渋く、シンプルにあの熱い文章を読んでもらいたく、
こんな感じになりました。
地味に面倒なことしました。
457
:
名無しロワイアル
:2013/04/14(日) 02:30:04
剣をバックに…渋いなぁ
wiki形式だとこういうデザイン中々できないからな
458
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/14(日) 23:10:26
>>456
ありがとうございます! こうして拙作を纏めて頂けるとは、感無量です。
そして過去のページ、自分も提案しようか迷っていた「闇に呑まれて消えた」演出をやって頂けるとは!
貴重な時間を割いて手間暇かけて頂いて、本当にありがとうございます。
……『常闇の皇』に「とこやみのすめらぎ」と読み仮名を振ることを今の今までうっかり忘れていたことを、ここに懺悔します。
大神を知らない人へのフォローを怠ってしまいました、申し訳ございません。
459
:
FLASHの人
:2013/04/15(月) 07:51:15
>>458
あ、ああ、そうか未プレイの人は読めないのか……
(当たり前に世界中の人が読めると思ってたマン
460
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/15(月) 19:03:57
>>459
多分「すめらぎ」を「おう」と読む人が大半ですわ……
皇の鍵然り、応龍皇しかり。
大神は素晴らしい楽曲も多いのでマジお勧め。
絵本の中を走り回るような独特な爽快感は、他では味わえない。
虎燐魄登場辺りは「勇者オキクルミ」を聞きながら読むのもいいと思うよ!
というか聞きながら書いてたよ!
461
:
FLASHの人
:2013/04/15(月) 19:39:32
>>460
(完全に同意なのでそっと広告を変更する、結婚式にケーキ入刀で「大神降ろし」を流した管理人)
462
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/15(月) 20:00:52
>>461
あなたが――信仰伝道師、天道太子だったのですね。
463
:
FLASHの人
:2013/04/18(木) 00:59:11
拙作で恐縮ですが、第297話まではなかったことになりました
の支援絵らしきサムシングを置いておきます
できれば完結した作品にはサイト以外になにかしらこういうこともしたいです
まあ、多分全部は無理なんだけど
ttp://akerowa.web.fc2.com/rwbox/medakarowa.png
464
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/18(木) 19:02:38
>>463
ナイスなイラストじゃないか! 消し線と命は投げ捨てる者by世紀末病人
原作でもありそうなワンシーンですね。
ところで、誤字の訂正とかはここで申請すればよいでしょうか?
まとめサイトになって漸く誤変換に気付きまして……。
465
:
FLASHの人
:2013/04/18(木) 22:29:35
うす、誤字修正やらスペース調整やらなんでも受け付けます。
とりあえずこちらに書いていただくのが一番早いです
466
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:49:21
謎ロワ・300話を投下します
467
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:49:43
――――11:37:27
――――――――鉄塔:最上層
「……はっ、私は……!」
「うわぁっ!」
突然目を覚まし、唐突に起き上がるKさん。
……暫し呆然としていたが、はっと我にかえって時計を見る。
「ど、どうしたモナ?」
「ああ、ごめんなさい。……私は、どれくらい眠っていましたか」
「大体、30分は寝てたモナ」
「そうですか……少しですが、疲れが取れましたよ」
十分とは言えないが、ある程度回復しただけでも儲け物だ。
……そんなKさんに、話しかけてくる人がいた。
それは、先程まで階下で戦っていたはずの"いい男"!
「――――よう、Kさん。目は覚めたかい?」
「あ、阿部さん! 良かった、合流できたんですね」
「まあな。ちょっと手間取ったが……タバコを一本くれないか? 確かあっただろう」
――――阿部高和であった!
しかし、明るそうな声とは裏腹に、表情からは疲労の色が見て取れる。
それもそうだ、先程まで階下で死闘を繰り広げていたのだから……。
その上、ここまで歩いてきたおかげで、その分余計に体力を消費しているのである。
その疲れに勝つことは、さしもの阿部さんでも難しかったようだ。
ドカッとその場に座り込み、一服。
……ゆらゆらとゆらめく紫煙と、煙草の香り。
468
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:50:15
「やっと一息つけるぜ……まだ、時間は残ってるか?」
「ええ、まだ大丈夫です」
「そうか……」
……もう少しすれば、"最終決戦"が始まる。
なるべく、疲労は解消しておきたいと思うのが筋である。
◆
――――--:--:--
――――――――不明
それから数十分後。
5人は、最終決戦の場に、赴いていた。
469
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:50:39
「……ここか……」
世界が揺らめく。
空間が揺らめく。
全てが、この場にある全てが、揺らめく。
「……やはり、私たちが一番最初にいた場所……」
刹那。
揺らぎは止まり、空間に均衡が戻った。
それと同時に、溢れるように"邪気"が辺りに満ちる。
……全員の顔が、一気に険しくなる。
『――――ここまで来るとはな』
「私たちを軽く見たのが悪いんですよ」
『ほう。わざわざ、我が領分に招き入れてやったと言うに……』
この状況でも、全く動揺せずにほくそ笑む伊右衛門。
それは、果たして虚勢なのか、それとも何らかの策があるのか。
それを、5人は知るよしもない。
「……お喋りをしにきた訳じゃあないからな。とっととお前をあの世に送ってやるぜ」
そう言い終わったと同時に、下までツナギのチャックを下ろす阿部さん。
するとどうだろうか。
股の間に、見る見る内に力が溜まっていくではないか!
それを合図に、Kさんがこめかみに手を当てる。
『ほう……その貧弱な力で、我を消そうと? ……やはり家兎は家兎。浅ましき考えよ』
「確かに、俺だけじゃあお前は消せない。隕石すら、砕けないだろうな……。
だが……今は違う。皆がいる。皆の力で、お前を斃す!」
『……やってみよ!! 身の程知らずの愚か物めがッ!!!』
「言われなくても、やってやるさッ!! Kさん、位置は!?」
「――――分かりました! あそこですッ!!」
Kさんが、伊右衛門の一部を指差す。
それと同時に、3人……ジョニー、スペランカー先生、そしてモナーが、伊右衛門に襲い掛かる。
まず、スペランカー先生が、ありったけの銃弾を、伊右衛門にぶち込む!
霊体である以上、大した打撃にはならない。だが、狙いはそこではなかった。
470
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:50:53
『このような攻撃、痛くも痒くも――――うぐッ!?』
真に狙った標的は……霊体内に潜む、即身仏と化した伊右衛門本体。
こちらは霊体ではなく実体。既に朽ちた肉体が、銃弾を躱せるはずも無い。
なす術もなく、銃弾の雨に晒され、ボロボロと崩壊して行く。
『ぬうっ……!?』
銃弾の雨を逃れ、首のみとなった伊右衛門の肉体。
――――現世に残してはならぬ、禍々しき存在。
この場所、いやこの世界と共に、葬らねばならぬ。
「「イヤーッ!」」
落ちて来た首を、ジョニーとモナーの持つ剣がバラバラに引き裂く!
切り刻まれた首は、ぶしゅうと小さく音を立てて、塵と化した。
『ほう……わざわざ肉体を先に滅するとは……』
「将を射んとすればまず……ですよ。邪気の発生源である即身仏を先に滅するのは当然です。
……邪気が強く、場所を特定するのは至難の技でしたがね。もう少し遅れていれば失敗してましたよ」
『だが、まだワシは残っておるぞ? それで勝ったつもりとは……』
「だからこそ――――俺とKさんの出番なんだぜ?」
……阿部さんの股間からは、眩い程の光が溢れだしている!
それと同様に、Kさんの胸元にも光が……!
お互いにすさまじい力を放っており、2人を中心に半径2メートルほどの邪気が浄化されている。
もはや、直視することもできぬほどの、聖なる光。
『まさかそれは……』
「――――俺の"テクニック"、Kさんの、そしてTさんの"スゴい力"、トコトン味あわせてやるからな」
『させぬッ!!』
「もう遅いッ! 食らえ、俺と……」「私の……」
471
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:51:09
「破アッ――――――――――――!!!!」
「ア―――――――――メンッッ!!!」
迸る力。
辺りに満ちる、光。
全てが、白に、染まって行く……。
『ぐっ……ぬおおぉぉぉぉぉッ!!!』
その光の中で、何かが溶けて、消えた――――。
472
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:51:24
【岸猿伊右衛門@かまいたちの夜2 塵も残さず――――消滅】
サイレンが、鳴り響く。それと同時に、遠方から迫る赤い波。
473
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:51:41
次元を、世界を超え、襲い掛かる波。
これほどの波に飲まれれば、普通は死は免れられないだろう。
だが……この波では、そうはならない。
全てが終わった時――――5人が勝とうが負けようが、ここには、津波が来る。
生き残った者を、あるべき世界へ押し流す津波が……。
「これで、お前らともお別れか……寂しくなるな」
「……元の世界に帰っても、絶対、忘れないモナ」
「それは皆同じですよ。……それでは皆さん、お元気で」
――――5人を、赤い津波が覆った。
【謎ロワ――――完】
474
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:51:58
〜〜〜
475
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:52:13
【謎ロワ――――完?】
【謎ロワ――――】
砂嵐のみが映るモニター100個。
そして、その近くに横たわる、100人の人影。
476
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:52:33
『全ての招かれし者よ、目覚めよ』
その声に誘われるように、目を覚ます100人。
『"運命"を見終わった感想はどうかな? それらは全て、貴様らが辿るかもしれない道だ』
何も終わってない。
何も始まってない。
全ては、スタートラインで行われていただけの事。
『だがこれは、あくまで1つの可能性。必ずこうなる訳ではない』
無数ある可能性の1つ。
それが、この"5人が生き残り、伊右衛門を打ち倒し生還する道"。
『自身の恐ろしい結末や、無残な最期を見た感想はどうかね』
それに反応し、何人かが反応を示す。
――――彼、または彼女らは、ゲームに乗り、参加者を殺害した者達。
自身の凶暴性に怯える者や、血の気が引く者、逆に、顔色一つ変えぬ者もいた。
それとは別に、何人かが別の反応を示す。
――――彼、もしくは彼女らは、何も出来ずに無残に殺された者達。
自身の死の可能性に怯える者もあれば、紙の様に白い顔でガタガタ震える者もいた。
『"運命"には、並大抵の力では抗えぬぞ。犠牲を払い、運命を変える覚悟があるか?』
自身が死ぬ運命に抗い、生き残ろうと足掻くか。
殺戮者となる運命に従い、他人を殺すか。
運命を捻じ曲げ、生きるか。それとも、運命に従い、死ぬか。
"運命"を先に見た事によって……選ぶ権利が、100人全員に等しく与えられた。
『さあ、始めようぞ。全ては――――これからだ』
もう一度……いいや、これから全てが始まる。
――――本当の悪夢からは、まだまだ目覚められそうに無い。
【謎ロワ――――開始】
477
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/18(木) 23:52:48
これにて、投下終了でございます
478
:
◆rjzjCkbSOc
:2013/04/19(金) 01:54:35
申し訳ありません、タイトルを忘れていました。
タイトルは「300:OVER/START」です。
479
:
FLASHの人
:2013/04/20(土) 00:01:24
>>478
完結おめでとうございます&お疲れ様です!!
お前にはわかるまい!この俺の股間を通して出る力が!!
いやあ、面子にそぐわぬ(といっていいのか)熱い展開と、それをすべて無に帰す
無慈悲極まりないエンディング、そしてオープニング……
これまであった297話だけでなく、ここから始まる300話すら想起させるなんて
恐ろしいお話でした……間違いなく、ここから始まるロワにゃこの5人は残らないね……
まさか597話分を想像させる三話だなんて……これもまた新しい!
素晴らしいロワでした!
あらためて完結おめでとう!そしてお疲れ様!!
480
:
名無しロワイアル
:2013/04/20(土) 23:02:48
すげぇ。
最後の最後、全てをひっくり返す正しく衝撃のラストであり、劇的なスタート。
凄惨な運命を見せられた者達の反応から、開幕後の選択を想像したら……堪んねぇな。
ある意味、参加者全員がリピーターになるラストとプロローグとか発想が凄過ぎる。俺も想像力が足りなかったのか……!
完結お疲れ様でした。
481
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/21(日) 23:02:32
それでは、拙作剣士ロワの誤字脱字の報告をさせて頂きます。
うっかりでは済まない全編通した根本的な勘違い。
スプラウトの50年やら半世紀やら→正しくは30年。
設定資料集を確認せずにうろ覚えで書いた結果がこれだよ!
挙句最終話では20年ともなってたり。ファンなのにどうしようもねぇ。
第298話
×殺し合いを強制され続けたこの3日。たった3日とは思えないほどに
○殺し合いを強制され続けたこの4日。たった4日とは思えないほどに
×殺戮の舞台の主宰者達が待つ宮殿の中心部へと迫った。
○殺戮の舞台の主催者達が待つ宮殿の中心部へと迫った。
×未だ死んでいないはずのタクティモンが知らぬ内に会場から抜け出していた
○タクティモンが知らぬ内に会場から抜け出していた
×司馬懿「〜この予言を実現させることこそ、我らの使命」
○司馬懿「〜この預言を実現させることこそ、我らの使命」
×血塗られた赤き魔剣に浸けこまれてしまった。
○血塗られた赤き魔剣に付け入られてしまった。
×幻魔大帝の力は、既に一介の剣士の領域を遥かに超えている。
○幻魔皇帝の力は、既に一介の剣士の領域を遥かに超えている。
×司馬懿は肩越しに背後に
○司馬懿は肩越しに背後へ
第299話
死亡表記を【死亡確認】から【死亡】へ
×ゼロは同様から一気に切り崩されていたことだろう。
○ゼロは動揺から一気に切り崩されていたことだろう。
×ゼロ「〜あいつはいつも、長く続かない平和を、何度終わらせても繰り返し引き起こされる戦いを、いつも悩んでいる。〜」
○ゼロ「〜あいつはいつも、長く続かない平和を、何度終わらせても繰り返し引き起こされる戦いを、どうにかしようと悩んでいる。〜」
×爆界天衝
○爆界天昇(300話も同様)
×勢いを留めず司馬懿にまで迫る。
○勢いを止めず司馬懿にまで迫る。
×――友よ〜君と共に在り続ける。
○――友よ〜君と共に在り続ける――
ゼロ達の状態票の下の▽を2つから1つに
×2人は視線を交え、ほんの一瞬だけ穏やかな笑みを浮かべて、すぐに鬼神の表情へと戻り、剣を構える。
○2人は視線を交えると、鬼神と見紛う表情のまま笑みを深めた。
×崩れ落ちそうになった膝を踏ん張り、一瞬俯けた顔を即座に上げる。
○背後へたたらを踏み、そのまま崩れ落ちそうになった膝を踏ん張り、前のめりになって一瞬俯けた顔を即座に上げる。
第300話
×『代わり得る自分自身』
○『変わり得る自分自身』
×姿は見えないが、ゼロにはそれこそが、自分の倒すべき敵なのだと直感し、一心不乱にセイバーを振るった。
○姿は見えないが、ゼロは直感的にそれこそが自分の倒すべき敵なのだと思い、一心不乱にセイバーを振るった。
×しかしその声調はタクティモンらしくなく、戸惑っているような調子が混ざっていた。
この一文は削除してください。
×今向けられている10の砲門――いや、2つの大砲は、
○今向けられている10の砲門は、
×両腕の極大暗黒砲を発射した。
○極大暗黒砲を発射した。
星割の後の▽を2つから1つに
×手を温かい何かが触れた。
○手に温かい何かが触れた。
×壊す以外に脳の無いモノなど、一体、誰にも止められるというのだ。
○壊す以外に能の無いモノなど、一体、誰に求められるというのだ。
×3人の帰還を、誰よりも逞鍛が驚愕した。
○3人の帰還に、誰よりも逞鍛が驚愕した。
×回天の盟約
○廻天の盟約(複数ありました)
×狼と虎の姿を持った斬撃は、常闇の皇の神体は完全に噛み砕く。
○狼と虎の姿を持った斬撃が、常闇の皇の神体を完全に噛み砕く。
×常闇の皇の本体は人間とさして変わらない。
○ムーンミレニアモンの大きさは人間とさして変わらない。
×魂たちを還るべき世界へと還り
○魂たちを還るべき世界へと還し
×そして、彼の願いを叶えるべく、そして3人へのせめてものお礼として、
○彼の願いを叶えるべく、そして3人へのせめてものお礼として、
×そして3人は、帰るべき世界へと帰って来た。
○そうして3人は、帰るべき世界へと帰って来た。
482
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/21(日) 23:05:20
以上です。以上のはずです。以上であってくれ。
妄想妖怪ロワの名簿作成時の悪夢はもう嫌だ。
ご覧のあり様ですが、何卒よろしくお願い申し上げます。
483
:
FLASHの人
:2013/04/22(月) 01:34:32
>>481
修正完了しました
ご確認ください
484
:
名無しロワイアル
:2013/04/22(月) 22:18:45
>>483
確認しました。
私の不手際で御手間を取らせてしまい、申し訳ございませんでした。
迅速な対応、ありがとうございます。
485
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/04/22(月) 22:19:18
>>484
は私です。
486
:
FLASHの人
:2013/04/29(月) 16:11:45
ラジオ何日くらいがいいかしら……
GWの真ん中ってむしろ人はいないかなぁ
487
:
名無しロワイアル
:2013/04/29(月) 21:36:52
水曜日でも俺は一向に構わん!
488
:
FLASHの人
:2013/05/01(水) 00:47:46
んではとりあえず3話ロワにかけて3日の金曜夜にしましょうかね
時間は9時くらいから2時間程度で
489
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/05/01(水) 01:58:30
>>488
了解です
490
:
◆XksB4AwhxU
:2013/05/01(水) 03:31:18
桶。
491
:
◆c92qFeyVpE
:2013/05/01(水) 22:53:11
りょーかいっ
492
:
FLASHの人
:2013/05/02(木) 02:02:17
3話ロワ全体のまとめサイトができました
ここからこれまでまとめたロワには飛べます
それとFC2の上んとこに出てくるうざったいQRコードを出なくしたので
少しは見やすくなってるかなと思います
ttp://akerowa.web.fc2.com/3warowa/index.html
493
:
名無しロワイアル
:2013/05/02(木) 19:53:58
>>492
乙です!
次はどのロワが完結するかな。
494
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:00:38
まとめサイトの作成やリンクの整備、ラジオ企画などお疲れ様です。
完結はきっちりみてますが、リテイクやリアルの事情などで遅れてしまって申し訳ない……!
では、『Splendid Battle B.R.』の投下いきます。
今回は第二話・第二章。今回予告の漫画は下記のURLからどうぞ。
ttp://www.eonet.ne.jp/~ice9/3rowa/etc_comic03.html
495
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:01:28
289-b 素晴らしき小さな戦争(Ⅱ)われら死地に踏み入る者たち
Scene 06 ◆ 黒の鳥・世界の歯車が軋み始める
なんとも、安直な発想だね。
世界を静かに眠らせることを使命とする鳥は、穏やかな声でそう言った。
なにものにも染まらず、染まらぬものをも逃がさない、響きはほがらかに心を侵す。
だが、軽薄そうに謳う鳥――齢三十を超えたかどうかという見目をした男の、双眸はひどく冷酷に光っていた。
宵闇の輪郭をぼかす月の瞳には諧謔と超然が混淆して、見たものの裡にある空虚を暴き立てる。
彼がため息をついて腕を組めば、襟巻から墨色をした羽根がこぼれ、白手袋に包まれた指先を包み込んだ。
道化のごとく剽げた佇まいは世界を憎んでいるのか愛しているのか、あるいは許しているのかさえ余人に掴ませない。
この箱庭にある鳥よ。
貴方も『そう』だったのかな。
ただひとつ、囀る言葉の自嘲だけが周囲の闇を揺らしていく。
◆◆
足りないものがあるから足す。
安直だという感想を撤回はしないが、使い方によっては、それほど悪い考えではないとも思うんだ。
なにせ私は、時で滅ばぬ黒の鳥。箱庭の滅びを司る存在なんだ。自殺行為を破滅的だというだけで否定はしないさ。
白梟ともども、他の者の主観から復元された存在<タイム&アゲイン>だからこそ素直な言葉もほうりやすいよ。
それに、ここでこうしていると、失敗作を壊して行かれるあの方の気持ちを察することが出来る気もしてねぇ。
ま、私も『たったひとつ』のために世界すべてを裏切っていける者だ。
滅びを恐れ、喪失を嘆いて手を伸ばすこと自体にどうこう言うつもりはないよ。
ただ、伸ばした手を離すべき時に至ってなおもぐずぐずしていると、結局世界はこうなるというわけだ。ほんとうに、
愛とは害意に他ならないな。なぁムラクモ。箱庭の楔たる鳥、ヴァルキュリアを手にかけた現人神よ。
なんていうか、お前が掲げた天命と主の浮かべる理想は、わずかに色味が似ているんだ。悪い意味でというよりは、私が
好まない方向で合致している。だから、届かないと分かっていても意地悪を言いたくなってしまったんだなぁ。
――ひとがひとを殺し過ぎない世界を。
……まだ負ってもいない傷をさえ嘆いて、征く途を綺麗にしてみたところで、世界にはなにも実るまい。
それは花に満ちる庭とて同じだ。すべてが白い花の色に塗り潰された楽園は、なにも香らせ得ずに滅びるさ。
だって、綺麗だと思ったものだけを集めたというのなら、美しきを峻別するはずの五感は役に立たなくなるじゃないか。
世界に息づいているものの、一体なにが綺麗であるのか、なにがそれを綺麗に見せたのかも見えなくなった世界で生きろと
いうのなら、人は情愛を注ぐべきを選べなくなる。なにを見てもいとおしいと思えなくなるだろうね。
比喩表現が気に入らないなら、花を闘争にでも入れ替えたまえ。
なにを当てはめるにせよ、そんな世界ではだれもが神のように生きてしまう。だから世界も壊れるというわけだ。
それは推測でも、予測でもない。経験に基づいた確信で、私にとっての絶望ともいうべきものさ。
でも正直、顰め面如く行う講釈なんてどうでもいいんだ。
私はこの世界も気に入らないけれど、それ以上に、この世界に従うお前が嫌いだなぁと思うから。
泣き言と感傷しかない、おもちゃ箱をひっくり返して戻さない戦争。
あのちびっこのように、道を歩みきったはずの者が折れるまで紡がれる繰り言。
胸が悪くなるほどに密で甘い感傷すら――胸が悪くなること自体に飽きてしまったから、感傷に浸らせていたものを
死なせてなかったことにする。そんな世界の様相を前にすると、すべてが嫌になってこないか。
こんなふうに雪であるとか花だとか、美しいものたちをかき回しても、生み得るものなどありはしないよ。
指を伸ばす前に発想したことを正答としているものにとって、世界は我を肥やすエサにしかならないから。
496
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:03:07
ムラクモ。結局、お前もおのが力を自分自身にさえ使ってやれないんだ。おのが現状、そのありようの正しさを示すお前は、
相手方から「話にならない」と見放されることさえも「受容」とみなして、人の身で神に至らんとする自身を守り続けている。
そうして自身が餓えないために他者と闘って意味を喰らうけれど、自らの意味は喰らわせない。
魂が死んでいるなんて濡れ女は言ったようだが、何にも満たされ得ない自分に、お前はうんざりしていないのか。
もちろん、あの玄冬を息子として育て、世界を内側から見ることで変化したのは私個人の問題で感じ方だよ。
だけどそんなにもお前だけが正しくて、お前だけは変わらないのなら、ずっと自分だけを見ていれば十分じゃないか。
なのにお前はこの期に及んで終わりきれずに、他のものを殺そうとするんだな。
ゆっくりと息を吐き、ならばと黒の鳥は続ける。
言葉が空に散じてほどけ、そのたび無為に心を凍らせてなおも口を開く。
そうであるなら、そんなお前に『足りないもの』というのはいったいなんだ。
過去を殺して未来を潰して、切り捨てるものばかりしかない現在にあって満たされもしない現人神。真理に到達しても
腐るばかりの死体を満たし得るなにものかは、死よりほかに与えるものの無い手を伸ばした先にあるというのか。
いま、完全者が世界を無理矢理に抱き締めているけれど、それを儀式忍法に活かしてしまったのはお前だ。
その先でも傷つかず繋がり得ず、すべてを投げ出して死んでいけるなら、……そうだな。赦さないよ。
箱庭を滅ぼすものとされても世界や人々を憎まず、未来をも望み得たあの子<玄冬>。
自身の罪を知り、玄冬と救世主とで創られた世界のシステムに抗おうとしたちびっこ<花白>。
世界の平和をまえに萎れたちびっこを見つめて、籠の鳥と定義する己の心を揺らがせたあの人<白梟>。
ああ、それとまぁ……代わりは創らないと仰った主の言葉を無視して、『代わり』にされた私<黒鷹>もだろうな。
個人で完結など出来ない者どもの魂を、お前の裡の矮小なものを慰撫するために歪めたのなら、私はお前を赦さない。
◆◆
言いたい放題言ってみたけれど、ここまで言えば、貴方にも伝わったかな。
気分? よくはないね。私自身に心当たりがあることを札にしたんだから、すっきりなんてするわけがない。
それでも口を開かなければ、『思考され得たものは棄却されない』この場のルールを利用出来ないじゃないか。
……あの儀式忍法の力で死に終われるかもしれないのに、自身の主観で世界を弄ぶ気分はどうかな。
去ると決めたはずの世界に手を伸ばし、貴方を排斥したものにさえ手を伸ばすのは、どうしてなのかな。
手を伸ばして、結局は消えていくだけなのが解っているのだと、私は勝手に思っていたんだが。
ああ――だって、そうだろう。
救いを綴って優しい物語を受け取ろうにも、他の誰かのためにあるようで腰が引けるのが貴方だ。
息をひそめた背中は気持ちの悪い言葉に刺され続けているし、グリム・グリモワールの『魔法』だけに沿おうとしたって
迫る無意味が恐ろしいし、だけど足を止めることは一時しのぎにもならないと理解しているのも貴方だ。
それでもまだ朝は、変化は自身の胸中にすら訪れていないのだと目を閉じれば、そこに何もありはしないことへの
焦燥にさいなまれると知っているから、膝の上に世界があるように振る舞うことさえかなわない――。
逸脱しようにも、常軌を逸することさえ出来ないのが貴方や、あの男たちなんじゃないか。
だから暴力を蹂躙を殺戮を短絡を欲望する自分から目を背けても胸中の自身<他者>にさえ呆れられる有様で、
それでもまだ、かたりたいものがあるんだろう。
かたりたいものを語るか、それとも騙るのか。私はどちらでも構わない。
いずれにせよ、それは何かを信じるということか、こうあって欲しいと祈り願う思いなんだから。
貴方の目に対面の打ち手さえ見えなくても、そもそも打ち手がいないとしても、ゲームはまだ続いている。
たまらず汚した世界、詰みかかっている自分の手筋に殺されようとも、それでも好きだと貴方だけは言えるはずさ。
◆◆
.
497
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:05:13
Scene 07 ◆ 咲乱の間・透明な傘の内側より
白梅の鮮華こぼれるなか、藤林修羅ノ介は深く瞑目していた。
こころ澄ませばいくさ場に流れし雪の香を、自身の肌をなす忍術秘伝が吸い取ってゆく。
「は? ……ええー、なんだ、なんだよそれ。第三の選択肢にもほどがあんだろッ」
淡く、果敢ない匂いから盤面に刻まれた【情報】――『合咲の間』が二重に分割されたことと、花白の自殺という
結末を手にした少年は、雪白へ荒々しく語尾をぶつけた。
流された血の優しさに、抗うように目蓋を開けば、そこにはしかり、まなこがある。
「雪の香から情報を読み取る、忍法……やっぱ『匂追(におい)』だよなぁ。
天華ちゃんの術そのものじゃなくて、俺なりの変奏だけどさ。名前だけもらっとくよ」
化野天華(あだしの・てんか)という名前は、まだ、思い出すことがかなった。
私立御斎学園で迎えた何度目かの六道祭、萬川集海の断章を奪い合う魔戦が始まる日に転校してきた狐の少女。
血盟『化野生徒会』のリーダーとしてあった仲間の名を呼べば、失せて久しい胸も痛んだ。
鋼玉の赤をした瞳に沈んだ悲しみは、されどいくばくもせぬうちにほどける。
仮睡の余韻か、あるいは桜の香にも似て情の薄まる原因は、少年の精神でなく肉体にあった。
「しっかし、よろしくねぇなあ、なにもかも」
口を開いた傍から、肉の薄い頬がくずれる。
白く、きめの粗い肌が『紙のようだ』という形容は、露出した文字列と竹で出来た巻物の芯が超越した。
「もう四六時中くだらないことでも喋ってなきゃ、俺はコイツに全部持ってかれちまう。
萬川集海の力を使わなきゃまだマシだろうが、それじゃなんにも出来ないうちにタイムアップだ」
水は好きじゃないんだけどな。うそぶいた彼の唇に、ゆるんだ雪が染み込んでいく。
それほどまでに、伊賀の末裔は自身を萬川集海そのものであると信じている。
「面白いな。藤林の、修羅ノ介」胡座をかいて刀を見分するムラクモの声に、喜色はかけらもなかった。
「自我を保つために抗うべきものとの同調を敢えて深め、死に体となってなおも闘志を収めぬとは」
石床をすべった囁きの底にあるものは、いつしか主と従が逆転している。
憂いと紙一重の疲労。特段面白くもないものを面白いと断ずる苦しさが、少年を見下ろす赤に映っていた。
くるめきを覚えるほどに濡れた鋼の、赤い眼光が、雪とも花とも見えぬもので遮られたそのとき、修羅ノ介は風の流れに
触れて返す言葉の刃を喪う。いまも滅びにむけて時が進んでいるというのに、滅びゆく世界の今日という日が暮れたとて、
やって来る明日は雪に埋もれた昨日と見分けのつかぬ無明であったのに、それでも時の流れが嬉しい。
自他の間にあるものの、なにひとつとして変わることなく「脳裡」で泡の弾けるような幸福が。自他の間に、なにひとつも
生むこともなく、認識の空白に痛む「背骨」の熔ける安堵が、――とうに原型がない「四肢」から「五指」に沁みる。
死よりほかに思うこともない少年の、「爪」に覆われた「肉」がしびれていわれない多幸感がうたを運んだ。
◆◆
――――創って壊す〜、それが真理〜、しんらばんしょー。
◆◆
壊すことの痛みも創ることへの躊躇も知らないヒトビトの声を、「耳」にしたのはなにゆえか。
いま、まさに音楽的なまどろみに浸りかけていた修羅ノ介は、その声を聴きたかったからだと断じた。
「創って壊すー、壊して創るー。……イッゴー、イッゴー、リッサ―――イクル――」
かすれた「のど」で歌の続きを引き取れば、夢のなかでは美しくあった誤解が崩れ去る。
冴えた雪に韻律を載せれば、卑小で行き詰まるしかない思いも綺麗に。たとえば空から降る白い花の、風に舞い遊ぶが
ごとくに響くと思えたのに、自分の「耳」にさえ感傷と泣き言しか届かないとなれば笑ってやるほかなくなった。
たがの外れた笑いで「胸」を開けば、壊れた誤解の招いた感傷が感慨に変じる。
「ああ――なあ、……ムラクモさんよ」
忘我のもたらす深い息。そこに沈んだ名を、修羅ノ介は、ただ滑らかな音のつらなりとして捉えていた。
雪を見通した先にある天井の、石の継ぎ目を見つめるしかない「後頭部」がしびれ、「目」の焦点が現世のどこにもない
紫明に合わされて盤面からずれ落ちるばかりの存在が自身の「肉体」であったものを構成する
498
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:07:12
紙に、神に近づいていく。
孤独に対しておぼえる安らぎ。永遠に対する感覚の鈍麻。これらが招くであろう死をいっとき忘れさせ、今、このとき
だけでも主を生きながらえさせる「胸」の昂ぶりさえ修羅ノ介を大地に縫い止めて離さない。
忘却と停滞の肯定。それこそが生にしがみつくヒトガタ、「いのち」の性質さえ無為なものとしてしまう。
なんだこれと、洒落にならねえとこぼした声は、はたしてかたちをなしたろうか。
子供のむずがるようにもがいて、――紙のかたまりはぴくりともせぬまま、梅花のひとひらに口をふさがれた。
なんだこれ、ではない。これを自分は知っている。萬川集海の断章を取り込んだとき、力に酔いしれて『神モード』などと
うそぶいたものだが、違う。あの、スイッチを操作するようにおのれの任意で変えられる状態と、これとは違う。
銀色にひかって痛む、「眼」の前を青白く燃えて流れる星が塗りつぶした。
黒焔の、華散るがごとくに翻る幻想は、九尾の妖狐が中天へ舞った夜に見たものだ。
――俺にはいくらでも時間がある。俺が俺を見失わないうちはな!
六道ノ書と六識ノ書。萬川集海のうちの二巻をみずから散逸させたときに紡いだ言葉が「耳」に蘇る。
秘伝書に自身を侵蝕させたことは、しかし計算のうちにあったことだ。
この魔戦が盤面の、ひいては世界を形作る【情報】のひとつもなければ、自分は自分の定点を見失う。世界に関わらず、
そのありようを拒絶するという選択さえ、世界に抱かれていなければ選べないように。
“喰らうべき意味が裡になければ”外側から取り込むしかないのだと考えて、探った相手は花白だった。
この世界はどうすれば君に償えるんだろう。箱庭における唯一の被害者としてある玄冬の「顔」を見た救世主は世界と
折り合いをつけることすら出来ぬがゆえに正しく少年で、それだから死ぬことでしか存在しえないものだったのかと思えた、
その思いも逃散する。
逃げゆくいま<ヒト>との間にある距離を嘆いて伸ばした「手」が刻む文字で時をつかもうとあがく発想の
健全に自分はまだヒトだまだ大丈夫なのだと安堵して「心臓」をさすろうと溢れるものを止められない。
ならば自分こそが他者の定点、他者の情動を励起する、モノになる。
過去のように死のように、他者から意識を向けられねば現れ得ぬ機能と成り果てる。
もはや喪失への危惧もなく、そのくせ「膝」の裏の「腱」がひきつる痛みが恐れの役をはたしている。
茫洋とたゆとう、思考がそのとき煤竹色に。大外套の役を果たす上着の、腕に通していない片袖で引き裂かれ、
.
499
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:07:49
他者<自分自身>を認めた一秒で、藤林修羅ノ介は神の、死体からヒトへと戻っていた。
.
500
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:10:04
「うわあ」。
のどをすり抜けた響きは彼が纏っていたはずの果敢無さを裏切って太く、間が抜けている。
声からのぞけた生理的な――ああ、ああ。そうだ。もう自分にはこのヒトガタが自身の身体であるどころか、まるで、
これがヒトの、半端な温度に縛られた肉であるように感じられる――嫌悪感。いっそ「ひるんだ」と言ったほうが楽になる
思いの向かった先は『藤林修羅ノ介』が死して神となる過程かどこまでいこうと逸脱出来ない自分自身にか――。
それこそとりとめもなく浮かぶ思考の、一切を現実が黙らせた。
黒手袋に包まれていた男の爪が、修羅ノ介の視線に晒されている。節くれだった指と、肉の厚い手のひらが有する輪郭は
弛緩とかけ離れて、彼が自身の肉体を我が物にしていることがひと目で判別出来るものだった。
すんなりと修羅ノ介に向かって伸ばされた指は、彼の吐息が飛ばした花びらの、赤い萼を軽々と摘む。
自身の肉体を扱うことに慣れた男の所作は生理的な震えがくるほどに優しい。
そうして震えは修羅ノ介の意識に背中を、腋下を二の腕を脇腹を腿を膝をくるぶしを土踏まずを思い起こさせ、
書物が、肉体としての意識を模る。
それを意識したときには、くぐもって固まり、不恰好に軋んでさえいる鼓動の、――幻想を取り戻したことによる緊張が
すすり泣きのような呼気にまで及んでいた。不随意のうごきで息を吸い込めば、もはや不要となった空気になめし革の
蒸れた匂いが鼻孔をつく。『ああこんなヤツでも汗をかくのか』と思い遊ばせたそのときに傘の、透明な内側からすべてを
睥睨するしかなかった修羅ノ介の花よりおぼろな認識を突き抜け
半端な熱に触れた瞬間夢の淡いから世界が異物感を誇示して立ちのぼり、透き通ってあろうとするものの
底に沈む鈍い、濁りを鋭角なものとして少年がたましいに流れる、赤いものにと突き込んでくる。
だから、もう、藤林修羅ノ介は神に戻らなかった。
紙たる自身が神に変ずるという逃避、透き通って口当たりがいいだけのひとりよがりに醒めていた。
『神モード』とうそぶいてまで現実にしなかったものの影を見た目尻に伝うものがある。肌が水を弾くさまを感じる。
涙かと、あるはずがないものに鼻孔の奥を衝かれて――泣きたくなるほど、意識が自らの肉体を捉えている。
根拠ひとつない自分の、体温で雪を解かすほど確かな在り方へなぜなど問わず、修羅ノ介は視線を上げた。
淡く、果敢ない。恥ずかしげもなく白にまみれた世界にあって、鋼玉の瞳はそれ以外の色と、音と光をつかんで輝く。
色は、泥砂にくすんだ都市迷彩の青で、音は、歯列を抜けた嘲笑の原型で、光は、つやめく無彩の黒髪だった。
「ああ――ちくしょう。こういうのアンタに言うとか絶対変だし、死ぬほど不本意なんだけどなぁ」
眉間が深く落とした翳を、みずから払って強く光る武官の瞳を見た、少年の目は気安い口調と裏腹に緊張している。
平然と手袋をはめ直したこの男。父よりは少しく若いだろうムラクモよりほかに、修羅ノ介が視える世界にはいない。
そう思えるほどに閉塞し客観というべきものから遠ざかった状況で、ゆえにこそ客観を連れて来る他者が。どれほど抽象に
溺れようと世界に残る不純物が、自分に常軌を逸させはしなかったのだと今にして気づく。
動かない武官の表情に二の腕がひりつく感覚は、それこそ父を盗み見る時間でおぼえたものに近い。
「でもいまは、もういい。俺はお前で……じゃねぇな。お前がいいよ」
ムラクモ。
精神の血肉を取り戻した身体の紡ぐ名が空気をふるわせ、銀花をもたつかせた。
どうにもならないものを前にふてくされながら引き下がる、子供の言いようが口へと残る。
言葉を費やしたとて記号に出来ず、視線で射抜けども磔にされず、思惟の果てにさえ汲み尽くせぬ不可侵の、
「……お前は、私とあの女に勝つつもりではなかったのか?」
他者は、しかし鼻にかかった笑みで修羅ノ介に『応じた』。
深い響きを有する、現実認識をあざけって怒りを引き出す言葉には拍子抜けするほど傷つかない。
永遠の少年は、雪と花を割り裂く男から、自分が体感していたものと同質の空虚を視ているがゆえに。
ムラクモ。神に至ろうとするものに意識を向ければ――そこで、暴力と軽侮に対する怒りにとらわれさえしなければ、
赤く沈んだ光をのぞかせる瞳が想い出のように死体のように相対する者の胸を衝く。
呼気を詰める切なさこそは、過去を忘れ現在を手放し、未来を迷妄に押し込めた先刻から消えない思いであった。
501
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:12:11
「莫迦を言うなよ。お前は俺とか完全者サンに向かって行って勝つとか、そんなんないでしょ?」
仰向けになっているしかない修羅ノ介は、ゆえに愛惜ともいうべき情をもって武官に応える。
彼を直視し立ち向かおうとしなければ、彼は世界から消えていく。命の器による【封鎖結界】の罠を仕掛け、『影弥勒』を
使って『天魔伏滅の法』を展開し、『綾鼓ノ儀』で理想に夢さえ抱かせぬ強敵であっても関係はない。
「だって……ほら。ここで俺らがみんな死んじまって、世界の全部が壊れちまったら。
絶対、誰も気付けない。俺もお前も、この天井突き抜けた宇宙のどこからも忘れられて、いなくなっちまう」
あンの八咫烏だって、俺ら『化野生徒会』が墜としちまったし。
天才的にエロい――えげつなくろくでもなく、いやらしいにもほどがある札さえ、事無草はまなうらに追憶する。
こうして追憶しなければ生まれ得ないからこそ、自分は現世にない過去にありもしない熱を燃やしているのだと、
萬川集海による侵蝕と闘う際に覚えた絶望とて、こうして、喰らえずともしがみ続けて慣れていったのだろうと、
なにものかを呑めぬまましがみ続ける代わりに男へ刻まれたのが、額から頬骨に落ちる翳であるのかと、思った。
「濡れ女みたいには、言ってやれねえけど……でも『斬らないならお前、また負けるよ』。
その得物の、美の一閃で、物語<Winter Tales>なんざすぐに終わらせちまえる冬の圧制者だってのに」
あぁ、でも、――斬っても負けたんだっけ。
ささめいて冬の気配たる雪を水にほどけば、修羅ノ介の双眸には九重ルツボの魂が宿る。
これまで命を落とした忍びたちの名をもって過去を刻む忍術秘伝が外典・『天下忍名録』にかたどられた他者に触れても、
彼女の置き土産であろう哀れみにちかい愛惜に口を開かされても、情報を溶かし落とした心水は揺らがない。
「その、ヒトガタをすら作れぬ身体で、私に勝つつもりか」
「なんでよ? 俺の負けがお前の勝ちとか、その逆になるような場所じゃないっしょ、ここはさ」
けれども哀れみの行く先は、この、短い間で移り変わりかけていた。
意識せねば現し世に浮かび上がることのない、昨日の体現。それがムラクモなのだというのなら、昨日を愛し、あるいは
傷つけてみたところで、振り向かせることはかなうまい。日向影斗という『いま』を武器として、彼に立ち向かおうとした
九重ルツボと、いまの自分はきっと同じだ。『過去の、想い出から人間を取り出そうとする』自分をこそ哀れんで、
――――所詮、夢は夢。過去を追っても、何も得られぬ。
「……うるっせえんだよ『花狂い』!」
哀れむことがかなったからこそ、修羅ノ介は冬の気配に怒声をもって応じられた。
怒り。紙の身体が何より恐れる焔のごとき感情こそは、ムラクモという他者に声を放ったつもりでいて、そのじつ自分に
声が返ってくる感触を前にすれば、どうしても抱ききれなかった思いである。
「何も得られない。夢を見続けたくて目を閉じたって、夢を見られる自分にさえ冷めちまってる。
そんなのはもう知ってるよ。でも、それを分かっててしがみつくのはいつだって九尾の――狐じゃねえか」
けれども今、殴り返されることのないのだろう場所から響いた声に、少年は酷薄な笑みをもって応じた。
ヒトは完全な受動にあって、はじめて己の本性を露にする。藤林修羅ノ介。のらりくらりと立ち回り、ときに『悪魔忍者の
再来』とさえ言われよう策を弄して勝ちを奪う「戦術」の得手。怒りで自身を燃やす《火術》の達人。
過去の喪失を取り戻さんとする彼の本性は、ならば変化を拒む盲信であり拘泥であり、憎悪であった。
「だけど、それで俺を黙らせようってなら、当てが外れてんだよなぁ……。
本当は何も喪ってないなら、本当は傷ついてないなら、あのときつらかった自分は何だったのかって、思うよ。
でもあのとき、止まれなくなってた俺を止めた狐<天華ちゃん>だって、ここばっかりは止まらずに走るだろうさ」
けれどこのとき、修羅ノ介は決めた。
都合よく日常を謳歌し夢を思い出し、ひとりよがりに咲き散らかす自分をこそ赦さないと決めてしまった。
502
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:14:29
「俺はもう、黙らないし誤魔化さない。この『傷痕』に何度でも目を覚まして、それでもほっとく不義理を許す。
だって腐る傷のかさぶた剥がして、そんな安い快感で満足するかよこんな、世界に――――萬川集海・巻ノ七!」
怒りの激しさを裏切るように、紡がれた声はさえざえとしていた。
先ほどの絶対失敗<ファンブル>で、何も起こらなかったことも幸いしたのだろう。数多の巻物、忍法の秘奥綴られし
紙片が部屋の全域に鮮烈な嵐を起こす。それが骨となり肉をなして、藤林修羅ノ介のヒトガタが再び模られる。
骨組みの心もとない身体が纏うのは、しわや汚れのひとつとしてない、白の学ラン。
私立御斎学園の生徒会に所属する者だけが着用を許される、いささか時代錯誤な『勝負服』であった。
◆◆
Scene 08 ◆ 無限の始源・闇夜が食べるは影の色
「……忍法、『秘身宝鑑』」
凛然と響きわたったはずの、声はしおれた反響となってあるじの耳朶を叩いた。
秘伝書の紙は着衣の上から四肢を覆って垂れ下がり、事無草を木乃伊のごとくによどませている。
雪と花の白で満たされた世界に著しく透明度の低い自身を認めながら、修羅ノ介は背筋を伸ばす。
凍りついた世界のなかでヒトビトが――自分が、泡沫となって氷を濁らせる空気となっていようと構うことはない。
どんなに終わりかけた世界でも濁っていた双眸を開けば、血と泥にまみれた肉は、心臓は脈を打つのだと信じて、
「ああ、あ――ははッ。ホンっト、清々しいなあ……カラダを動かすってのは」
信じれば、空白への恐怖さえ覚悟の扉に。この先に通じるものへと変わって彼を動かしていく。
『かみ』より降ってきた御言に逆らうのではなく、言を受けて弾んだと言うに相応しい転回を遂げた修羅ノ介の、しかし
右腕は動かない。様々な陣形や忍法、特技の策を断簡として授けてきた萬川集海は巻物の数こそ揃っていても、そこに
刻まれた情報を伝える精神の血<インク>が圧倒的に不足している。
「なんだ、完全者サン刺されてたんだ。その深傷で《リザレクト》してんなら、しばらくは起き上がれねえか」
完全者に乗られている者の姿が、けれど、今ならよく見えた。
どうということもない短髪を、真理を得た『完全者』――電光機関の力を使ったムラクモらのように白く染めた青年を、
修羅ノ介は知らない。うつ伏せになったパーカーの、影からのぞくネクタイさえ彼を『ヒトビト』に埋もれさせる。
「一応聞いとくけど、あいつ、誰?」
忍びが声をかけるまで無個性の影に落ち込んでいたのは、ムラクモとて同じだった。
「高崎隼人(たかさき・はやと)……『ファルコンブレード』。UGNのエージェントだ」
「あ、そっちなら知ってるわ」どうということもない顔で、修羅ノ介は頷く。「ま、始末されてないんなら生還するだろ」
そうして彼は、その認識で射抜くべきただひとつ<Sロイス>を定めて一歩を踏み出す。
つねに自身を貫くなにかに耐えているような、この男。目を逸らしてしまった瞬間に世界から消えてしまう空虚に向かって
いくというのなら、脇目もふらずに進まねば――指で、腕で身体で、彼のあばらをこじ開けることさえかなわない。
東風吹かば萬川集海の紙片がまたたいて、ふたりの場所を満たしていく。
そのなかでいちど息を吸い、呼気と変えた修羅ノ介は、得心がいったとばかりに息を漏らした。
「俺の《ワーディング》にも反応しねぇってことは、やっぱ、そっちも『もう』オーヴァードか」
「そのとおりだ。藤林修羅ノ介――愚者の黄金<デミクリスタル>に適合した、新たなる『神の現実態』よ」
「ヤだ」取り繕うような言葉を、修羅ノ介は即座に断った。「俺は自分を人間だと信じきるコトにしたんで、そういうのは
もう要らねぇ。ていうか、もともと俺は『新神宮殿』とかどうでもいいって、言って――言ってたよね?」
「私やあの女と敵対する【使命】などないとは、その口でさえずっていたな」
「うん、そう。そんで、でも隼人がデッドマンになるまでにお前と戦うとかそういうのは……言ったっけなぁ……」
だが、正確無比な返答と温度のない視線を受けて、忘れたふりをする言葉尻は濁った。
生きていようとすることの濁りとは違い、まったくもって美しくはない光景の先で蒼い刃の鯉口が切られる。
503
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:16:11
「『神の死体』……お前の屍を、いま此処に創り出すか。あるいは、その手で私を倒してみるか」
「あー、ダメダメ。俺とお前に殺しあうのは無理だって、ちゃんと説明したでしょ?」
月下美人の銘が刻まれた刀、世界にあまぎる雪を呼ぶ遺産を恐れることなく、修羅ノ介は歩を進めた。
分かってないなら、もっかい言うよ。気負いのない言葉は、水が、波紋をつくるように彼らの世界を侵蝕する。
「俺はお前を選んだ。壊れかけた俺の全部を壊して、もっかい同じに創ろうとしたお前を心に刻んでるんだ。
まぁ……俺が勝手にお前『で』立ち直ったのかもしれねぇが、それならやっぱ、俺はとっくにお前を選んでるんで」
それは、白に雑ざった影とよどんだ修羅ノ介の身ごなしも同じであった。
『幽霊歩き』と呼ばれる、忍者の高速機動のなかでも最も遅い足取りは、けれどムラクモに捉えられない。
より正確には、修羅ノ介の纏う文字が『影』と変わるさまを、捉えようとさえしていなかった。
レネゲイドウィルス。第二次大戦前夜には『ヴリル』や『魔術』と呼ばれていた力でもって、身体能力や思考能力の
増大が果たされていようとも。いいや。レネゲイドウィルスによる力を有するからこそ、彼は足を止めている。
この空間における音波の伝達、匂いの拡散――。
藤林修羅ノ介が『いた』場所を中心とした地点から、それらすべてが遮断され、
(こいつ、が、オーヴァードのエフェクト。《イージー、フェイカー》……?)
「――ッ、ぅ――――!」
転瞬、ムラクモに肉薄していた少年は、声にならぬ声を喉奥に詰まらせた。
とうにヒトから離れた身体の、それでも文字が熔け堕ちてゆく異形化<イレギュライゼーション>。
文字が渦をなし、影となって場を支配するイメージが使い手をも貫いて、久方ぶりに『肉体的な痛み』をもたらしたのだ。
自身を構成する萬川集海に刻まれた【情報】をアヴァターとして操る幻想。これまでも忍法や奥義のかたちで現実にしてきた
都合のよさが、もはや都合よく切り離せないものになったのだと、交錯以前の接近で叩き込まれる。
「ちぃ……ホンモノ、触るまで怖さが分かんねえとかッ」
はっきりとした声が出て、はじめて《無音の空間》が壊れたことを知った。
その体たらくを笑ってやる前に、膝のほうが笑っている。そのふるえが情報までも揺さぶって、ああ、……思い出した。
この力。影と、他人様の発現したシンドロームをコピーして使う力は『ウロボロス』のシンドロームに属するものだ。
それは、忍術の秘伝書から力を引き出して使う者が目覚めるにはなんとも似つかわしい、
借り物を我が物顔で操る力。
物欲しげに喰らった他者の意味を自身の進化のためにしか使えない能力。
外部からの刺激を受けて進化するという力への絶望が、修羅ノ介の存在に叩きこまれた。
空を見れば星と消えてしまいそうな、モードにすらならない『神』になりかけたときに何度も、何度も響いた言葉。
カミからの御言が響く瞬間に世界からは色も音も、光さえも消え失せるのだと今さらのように知覚する。
きっと、この現象には誰も気付けない。神鏡による未来視を扱えるムラクモでさえ、気付いているかは分からない。
「そん、でも……知るか。腹が減っても選り好みする感傷なんざ、俺は、分かってたって知らねえッ!」
ゆえにこそ、感傷で腹など満ちなかった少年は、強く声を張ってみせた。
世界と折り合いをつけようと譲歩して、それでも残った意地と見栄が、声に折れることを赦さなかった。
至近で、その声を聞かされたからか。かたくななまでに動かないでいた武官の「顔」が、はっきりとしかめられる。
動かぬがゆえに相手の感情だけを励起してきたモノ――神としての表情が、大きく揺らいだ修羅ノ介の視界でさらに歪みを
増して植物の。あるいは無機物から生命の芽吹くように色と、音と光とをにじませた。
見開かれた双眸が詰まった呼気が熱を帯びる、そのさまは顔を伏せた少年の目に見えることがない。
「ほら。借り物ばっかでも、射抜くべきヤツには、届いた」
見えなくとも、爪先立ちになって相手方の首にかじりついた腕の、左で鼓動を感じ取っていた。
504
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:18:14
「な――――」
「こういうのはないって思ってた顔だろうな。でも残念。俺はセクハラを、男にだってするんだぜぇ……」
濡れ女とは違って、俺は、お前に優しくする義理もないわけだしさ。
ある意味においては絶望的な言葉を耳朶に這わせて、修羅ノ介はムラクモの、剣を振るう右肩に額を預ける。
斬らないならまた負けるよ。その言葉のとおりに、武官は負け続けている。人間に価値はないと言い放つわりに他者を
『面白い』と評し、人の身を保って神に至ろうとする彼は、価値はないとした人間にこそ意味を求めてやまない。
ただひとりでは闘争など成り立たぬことを知悉しているがゆえに、ヒトとの繋がりを鏡面のごとく構築する、――。
九重ルツボ<死者>の余韻を超え藤林修羅ノ介<生者>自身の認識が芽吹きひらいて枝をなす。
神。かの者の存在を意識したものの想いを照り返す機能を願うヒトの過去に沈んでなお悲しまぬさまに心が灼ける。
――ふたりでいれば、寒くないね。
自身の裡にあるなにものも返さぬ男<無為の咎人>に相応しい言葉が思考の端へ浮かんだが、即座に叩き潰す。
それを言ってしまうには、フラグも好感度もイベントも足りていない。理合いだけに満ちた相手の抱えているだろう、
過去と名のついたブラックボックスに比すれば、わずかな言葉と時間で作った手筋はあまりに脆いものだ。
(でも、ヒトの敵愾心を煽るコイツは【人類の敵】だろうが、ジャームになれるようなヤツじゃない。
自分ひとりで完結出来て、相手の言動にタイミングよく応えて衝動を満たすだけの存在なら……塞とかいうヤツに、
前後不覚になるまで怒る理由なんかない。絆を持てないっていう存在なら、過去にだって執着出来ねえよ)
だのに「小賢しい」との評には、瞬速の抜刀どころか、四本貫手も軍靴による鋭い蹴り上げも乗りはしない。
いつの間にか適合させられた『愚者の黄金』とやらが大事なのか、やり過ごせると判断したか。――せめて、後者を
潰さねば、過去に逃れるムラクモを意識して繋ぎ止める修羅ノ介の側が彼の孤独に取り込まれかねなかった。
そうなればきっと、『貴方はそこにいていいのか』と男に問い続けたルツボのように死ぬしかなくなってしまう。
けして返らぬ熱情を抱き続ける自分が可哀想になってしまうか、熱情を注いだものへの憎しみにとらわれてしまう。
(ええい。死。死ぬ。そりゃあもう、都合よく家族を蘇らせる『モード』なんか使わないって言ったけどさ!)
こんな体になっても、こんな力を手にしても、それだけはいやだった。
忘我の果てに命を落とすなど、無意味などあり得ない書物を核としていなくとも認められない。鼻がぶつかりそうな
ほど近くにいる、無意味に、執着をあっさりと捨てて死ねるがあまりに無意味に生きることすら出来そうな男は吐き気が
するほどおぞましい。だからこそ相手にすがって体温を奪い鼓動を盗み、心を、聴き取ろうとしている。
それもきっと、事無草ではない『藤林修羅ノ介』の。ヒトのかたちを崩していながら常軌を逸することのかなわない
小市民の性だった。あるいは、世界から拾いあげた意味を喰らい刺激を受けて進化するものであるものの業だった。
外界に在るなにものかを理解出来ぬ責が自身にあるとして、それをも呑み込めるように――。
愛せるように、少年は思考を続ける。同時に自分が理解出来ないものを繋ぎ止めて記号になるまでしがみ、相手を
標本にしてしまうような行いにさえ快感をおぼえる事実を認識して、
「お前の得意分野に付き合う気はなかったけど、こういうのも立派に暴力だろ。
でもまぁ、意外と肌が気持ちいいしなんだか眠たくなる匂いがするから、冗談で済むまでに本題に入ろうか」
だからそれがなんなのだと、開き直って視線を上げた。
「正直言ってさぁ、俺、このままならお前を躊躇なく傷つけてやれると思うんだよ」
紙でいたからか『影』を扱うシンドロームに目覚めたからか、ともすれば内閉に向かいかねない自分自身の心持ちに
こそうんざりする。絶望のなかにあっておぼえる、不思議に停滞した安堵。死にも近いあの感覚を、もう二度と味わいたく
ないというのなら目の前にいる他者の、鏡写しのように赤い双眸を見なければならない。
505
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:20:14
「俺の思ったコトを叶えるなら、たぶん出来ることはふたつ。
お前が、自分が無意味である事実を嫌になるくらいに愛していくか、アンタが自分のたましいを守りたくなるくらいに
傷つけてやるかだと思うんだけど、そっちのコトよく知らないから後者は選びやすいんだ。
ホント……戦争とかおぼろげに覚えてるコトはあるし、学園にいた頃とかの想い出もきっちり刻んでんだけど、魔戦の
全貌となるとハイライトみたいな記憶しかないんで、俺自身、再構成にゃ苦労したんだよねぇ」
「……まるで、最終決戦<クライマックスフェイズ>からセッションが始まったように、か?」
「は、――え、セッションッ?」
紙の身体を突き放して、同時に『砂時計週報日本語版』の縮刷版をほうってきたかみさま。
自分と同じ『人間のなりそこない』が、鏡像のように触れ得ども奪えぬ他者であるのだと認めて、
この世界に、不可侵の他者が。自身の餓えをしのぐためにあるのでない者がいることにこそ安堵を、覚えたい。
「『次のリプレイのセッションあり。至急連絡求む』――って、すげえ。
リプレイってラノベになるヤツでしょ? あンの猫耳、莫迦っぽく見えてガチの遊侠<テーブルパンク>なのな」
「兵棋演習か、それを基に作られたウォーゲームのようなものだろう。騎士ならばやっておいて損はない」
「えっ、なにこれ。お前がそういう遊びをしてりゃ楽だったなと思うけど、それがないコトに安心する……だと?」
そうして、ひどく殊勝なことを考えていたのに、言葉を交わせば思考は回転の速度を増した。
安堵でいいのかと問う声はカミでなく安堵に浸された胸から届いて、そのたびに自分が憎らしくなる。
火のつきかけた憎しみを怯懦や惰性に拠らずいなし、衝動に溺れることなく、この足で歩きたくなってしまう。
「さて。だったらやるべきコトも見えてきたよね。けっこう、俺のやりたいコトともかぶってるかも」
「フ……もう、手数というべきも残されてはいないというのにか?」
「まあ、そうだなあ。白子ちゃんとか【電撃作戦】得意だったけど、ソレももう使える局面じゃねえから」
挑発的な笑みへ応えないことに、ムラクモががっかりでもしてくれないだろうか。
忘れ水のごとくに沸いた思いを受けて、修羅ノ介は肩をすくめた。『天下忍名録』から取り出したというほかない
九重ルツボも瑣末な歯がゆさを重ね、それでも他者を解体する行いへの誘惑を殺し続けていたに違いない。
そのはずだが上っ面をなぞるようなやり取り、その手応えのなさへ、自分はすでに寂しさを感じ始めている。
いっそ戦ってみたほうが、お互い楽しくなれるのではないか。いいや。では、なぜこの男から戦わない――。
「だけど、戦う理由が……俺たちの知らない昨日に来て欲しいってのは、そっちだって同じだろ?」
回転する思考の転回を受けて言葉が口をつき、修羅ノ介は、この男に感じる親近感の源泉を視た。
想像出来ない、世界は創造出来ない。完全者――ミュカレらも、それは同じだ。この世界は嫌だと思っているくせに
常軌を逸した世界の土台から妄想することは出来ないまま、これまでに『旧世界』から受け取った意味を拾って言葉を。
最終解決策に最終戦争、新世界に現人神といった語を繋げて、幻想を、なんとか現実にしようとしているだけの、
少しく影に色がついたばかりのヒトビトが盤上へ唐突に放り込まれて理由のひとつもなく戦えるわけがない。
転瞬、修羅ノ介を動かしたのは自身に対する恐怖であった。
絡んだロープをほどく程度であった思考の回転が加速しすぎて、このままでは相手を構成する螺子や歯車さえバラバラに
分解してしまう。常軌を逸するのと他者を守らないのとは違う。
守られなくとも生きて死んでしまえるようなヤツであるからこそ、自分はこれを喰らいたくはない。
「なんだ、それは……?」
違う、違うと繰り返してどうにかヒトの側にとどまろうとしたくせに、指が甘えてムラクモの服を掴んだ。
「あー、えっと、その。手汗がひどいなーって錯覚がしたからつい」
「ならば、せめて外套にしておけ」
「え、なに、脇腹弱いの?」
「……………………死ね」
だのに、この反応さえシナリオに見えてしまうまでに掴んで良かったと心から思えた。
ああ、そこはお前は死ねでいいんだ。斬らないと負けるのに殺すとは言わないのか言えないのか、だったらアンタは
どれだけ優しく殺されてくれるのかみさま。これを胸中に留め置く藤林修羅ノ介もずいぶん優しくなったではないか。
506
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:23:11
「ま、嫌がるなら仕方ないな。お前の悔しがったりとかするところ、一回見てみたかったんだけどさ」
へらへらとしながら一歩後ろに下がった少年は、まだ動かせる左手を振って汗を払うふりをした。
文字。情報。影。種々のしがらみを纏ったままで、力に目覚めた事無草は同族喰らい<ウロボロス>の左手を伸ばす。
「さあ、綱引きを始め……始められない……?」
「なんだと……」
「だって俺、もうお前のこと選んじゃったじゃん。なんでこんなに『真面目じゃないけど変な話』に行くんだよ!」
「私の知ったことか! それを悔やむのならば、少しは考えてものを言え――」
開いた指の銀花に冷えてゆくその先で、ムラクモの眉がしかめられた。
許容とかけ離れた怒りと自制が前にでた顔つきへ、新たに加わった色は困惑。
眉間をひくつかせている彼の視界から左手が収められ、その先では藤林修羅ノ介が『腹を抱えて笑っている』。
「やったぜ。『真面目じゃないけど変な話』……茶番や楽屋落ちって死ぬほど大事なもんでさ。
楽屋なんざ必要なさげなアンタがそういうコト出来るように、雰囲気を壊して、まずは楽屋を創らせてもらったよ」
真の創造は、破壊なくしてはあり得ない。
日常を壊され家族を奪われ力の使い方さえ去勢され、それらすべてを手放してなお影に囚われた、
少年は外界から引いてきた言葉を諦観に拠らず受け容れて、なおも抗うようにひねた笑みを口角に刻み付ける。
「なぜなら、『破壊こそが創る事そのものだからさ』。
師匠……イゴさんのゴッドハンドにゃ及ばないが、これが俺の忍法『イゴイゴリサイクル』だ!」
――――口上を放った藤林の、修羅ノ介の出で立ちからは、冬の気配がゆるやかに拭われていた。
痛みを喪わず、なれど傷に固執せず。ヒトガタを成したときの言葉どおりに動く少年は、今こそ世界という激流に、
自分自身という濁流に、無自覚という清流に正しく抗うものとしてある。
「さあ、だから、今度はそっちが選べ。ロイスなんざ一方通行の片思いだけど、それでもここで選んでよ」
先ほどの言に沿うのならば、「壊してよ」と同義の言葉を、彼は優しい響きでさえずる。
世界も人も赦せないのに手放したり見放したりすることだって出来ない、お前、この世界がけっこう好きだろ。
好きだという言葉の白々しさを知っていながら、それを口にすることで生にすがる化け物が、
「それならもう、ここでかみさまを殺して全部終わらせて、誰も悲しまない世界にしよう」
世界へ色を、音を光をつけるように甘く、せつない声でうたう。
「……でもリリカルポップ・ダンジョンシアターは恥ずかしいんでちょっと今風に」
言い終わって、はじめて羞恥心の存在を思い出したとでも言いたげに、でたらめな言葉をつなぐのだ。
「『カミサマヤメマスカ』――ッて、え?」
ああ、ああ。……歌を覚えたばかりの声でわめくな。
何を無理をしているのか、何に堪えているのか何を望んでいるのか、
そのすべてを知らずともお前は。『お前たち』は自儘に、自力で救われて征くのだろうに。
失ってなお喪わぬものどもは、こうして、命を落としてなお落とし得ぬものさえ奪ってゆくのだ。
そうして、それが。このひととき、命を賭け金として遊戯に興じることが、なにゆえかひどく面白い――。
◆◆
▼ムラクモ用リバースハンドアウト
シナリオロイス:完全者 推奨感情 ポジティブ:懐旧/ネガティブ:侮蔑
キミは、過去に箱庭の楔となる『星の意志』の声を聞いたことがある。
魔戦の始まる前、旧世界に死をもたらす黒き鳥・ヴァルキュリアを打倒した一因もそこにあった。
だが、星の意志を取り込んだという九重ルツボは、キミに向けてこう言った。
「『いびつな戦役<バロック・キャンペーン>』を私戦<フェーデ>に変えられるときは、今より他にありませんよ」
すなわち終わるしかない世界で、ここからは一騎討ちをするしかないほど限定された状況に向かってしまうのだから、
自分の好きにしてよいのではないかと。
キミは、完全者の手で望んだ世界――無価値と断じた人間が減った世界を創られている。
だが、それでもキミはあの魔女に刃を向けた。
あのとき、キミは、掲げた使命以上のなにを望んだのだろうか。
◆◆
.
507
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:25:21
情報の塊である『萬川集海』を、おのが核としているがゆえにか――。
「……やはりな。そういうことかって、ツナセンなら言うだろうよ」
あるいは茶化すような言葉のとおりに、予想から外れていなかったであるからか。
「何を我慢してたのかなって思ってたけど、それこそこの盤をひっくり返して『壊すこと』だったわけだな」
藤林の、修羅ノ介は、問題の要諦を捉えて言った。
「それならお前はやれる……のかなあ? なんだかんだ、人減らしも完全者サンにやってもらったんじゃない」
「……では、やれた方が良かったのか?」
「んー、まあ、どっちもヤだね。だって俺、こんなザマでもまだ死にたくないし」
でもまあ、そうやって照れ隠し出来るアンタにほっとした。
さながら保護者であるかのように言う少年。神を辞めたという人間の、神のごとき安堵を前にして、
私は、どのような顔をすべきか解れぬままに息を吐く。
創って壊す。その言葉に自身が釣り合わぬなどと、この草は欠片たりとも考えまい。
――救世主の使命なんかより大事なものはあるよ。
神であるならその不遜をこそ受け容れよとばかりに私の前へ立つ、賢しさへ水と桜が混淆する。
「で、どうやってこれ壊すの?」
「影弥勒が忍法【合方】。終焉の石<デミクリスタル>を埋め込む際に、お前の『絆』を奪っている」
「はぁ? 絆、て――そいつは『魔獣の絆』ッ!?」
「そのとおりだ。この絆が綾なすは、妖かしどもが忍法【魔界転生】。これで一手は稼げようが」
「うん、俺それが本業だから知ってるよ! てぇか、俺もソイツは使いたいんだけどマジでここにあったの!?」
言いながら、藤林の若者は忍術秘伝の巻物を四肢より乱雑に引き出した。
そのうちの『どれが頑丈なつくりをしているのか』認識して、私は、壊すために瞑目する。
迎撃でなく反撃でもなく、純然たる進撃のために征く、耳朶にバリトンが染みた。
「あぁ、無い物はしゃーねえ。……ならもう、せめて『エゴ』じゃなく『愛』をもって、そいつを使いやがれ!」
世界の何もかもが許せねえ、俺が許すから。
化け物であろうとする人間をこれほどに許容する、この少年こそ神なのではないか。
追憶の入り口にあって、あれの忍法はいまだ力を発揮しているようであった。
◆◆
追憶の行われる、どこにも届かない一瞬で、藤林修羅ノ介は息を吐いた。
「ったく、さすがに軍人なだけあって、戦い方とか分かってやがる。
この戦争、結局は壊しあい……てか、空白<ブランク>になってる過去の創りあいなんだよねぇ」
結局、ちらとも視線を向けられなかった完全者と『ファルコンブレード』高崎隼人……忍法の布石であるとはいえ、
下手をすれば衆人環視の戦場ロマンスのような何かを演じかねなかった状況を思えば、そこにため息が続く。
そうしてついに、ため息は八つ当たりとなって絶対の他者にと向かった。
「微妙に乙女ちっくになった俺が気持ち悪いんだけど、せめてなんか言わせろよあの莫迦。
【魔界転生】の反動も『4点になっちまったヤツ<絶対防御>』で防げたけど、人目のあるとこで見せたくな――あ」
それは駄目だと思い直すと同時、思考も醒めた。
かなり緊張していた自分自身を見つけた少年は、これから纏うと決めた『影』に意識を向け直す。
真面目じゃないけど変な話。
その『変』で脳が動き、喰らった意味から新たな何かが生まれるのならば、それはべつに構わない。
だが、真面目じゃないうえに変なところさえない話は無為や益体もないといった形容を通り越して無意味に。
――単なる無意味ならばまだいいが、恥ずかしげもなく白くて淡い、透き通るものに堕してしまうと思えたのだ。
◆◆
.
508
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:27:14
【交錯迷宮・咲乱の間】
【ムラクモ@エヌアイン完全世界】
[状態]:【人類の敵】、侵蝕率120%、衝動:解放、青×黒カラー
[シンドローム]:ノイマン/エンジェルハィロゥ(クロスブリード。思考強化と屈折率の変更)
[エフェクト]:《コンバットシステム:白兵》、《エクスマキナ》、《陽炎の衣》、《神の眼》、《ゆらめき》、《朧の旋風》、他
[Dロイス]:反抗者、??? [ロイス]:完全者(Positive:懐旧/○Negative:侮蔑)
[忍法・奥義]:【達人:《刀術》】、【合方】、【秘剣『人間華』:クリティカルヒット《封術》】
[エクストラアーツ]:大乱れ雪月花【桜嵐】(月下美人装備時のみ/属性:神斬、氷撃+5、敵勢力全体を攻撃)
[装備・所持品]:六〇式電光被服@エヌアイン完全世界、神鏡@シノビガミ、銀朱の外套@花帰葬、
月下美人【天霧】(Mサイズ・刀/パライズ、AP+9、オーバーソウル種に特攻)@ラストレムナント、
魔獣の絆(流派を問わず【魔界転生】が使用可能になる)@シノビガミ、???
[思考]:【魔界転生】で過去時制のドラマシーンに移行。修羅ノ介にロイスを結ぶ……?
[備考]:儀式忍法『天魔伏滅の法』と、その変奏『綾鼓ノ儀』を発動させています。
この儀式忍法が発動している間、【生命力】がゼロになったキャラクターは必ず死亡します。
侵蝕率は120%固定。ロイスは取得可能ですがタイタスの昇華は出来ません。
Eロイス(エグゾーストロイス)をもたず、通常のロイスを取得しているため、ジャームではありません。
【藤林修羅ノ介@シノビガミ・リプレイ戦】
[状態]:【右腕使用不可】、【限界寸前 >> 終焉の継承者】、侵蝕率???%、衝動:憎悪、【生命力】残り2点
[シンドローム]:ウロボロス/???(ブリード:不明。影の使役・能力の模倣)
[ロイス・タイタス]:愚者の黄金(Dロイス)、ムラクモ(Sロイス・○Positive:親近感/Negative:憐憫)
[忍法]:【末裔:鏡地獄】、【内縛陣:《呪術》】、【御斎魂:《意気》】、【早乙女】、【達人:《火術》】、【鏡獅子:《火術》】
[奥義]:【傷無形代:絶対防御《呪術》】−同じシーンにいる者からひとり選び、【生命力】の減少を4点まで無効化する
[背景]:【他流派の血(常世:屍人使い)】、【末裔(伊賀者:鏡地獄)】、【政治的対立】、【目撃者】
[装備・所持品]:萬川集海@シノビガミ・リプレイ戦、御斎学園の生徒会専用白ラン@シノビガミ、
終焉の石(デミクリスタル相当/レムナント種に特攻、アニメート無効、ユニークアーツ+5)@ラストレムナント、
『砂時計週報』日本語版@シニカルポップ・ダンジョンシアター 迷宮キングダム
[思考]:過去から想い出<人間>を見出……そのプライズ俺が持ってたのォッ!?
[備考]:修羅ノ介の体を構成しているのは、萬川集海@シノビガミ・リプレイ戦です。
弱点【目撃者(超存在たる『忍神』と遭遇したことで現在を正しく生きることが出来ず、同時にふたりまでにしか
感情を抱けない)】を克服する条件を満たしました。
自身の心を確かめ、ショックを受けることでオーヴァード@ダブルクロス The 3rd Editionとして覚醒しました。
《リザレクト》、《ワーディング》、《イージーフェイカー:無音の空間》以外のエフェクト・ウロボロス以外の
シンドロームは不明。また、「制限:侵蝕率100%・120%以上」のエフェクトを使うことは、彼に大きな負担を強います。
【完全者@エヌアイン完全世界】
[状態]:【人類の敵】、転生中、???
[装備・所持品]:???
[思考]:???
[備考]:高崎隼人(たかさき・はやと)@ダブルクロス・リプレイ・オリジンに転生していました。
【高崎隼人@ダブルクロス・リプレイ・オリジン】
[状態]:侵蝕率100%未満、重度刺傷、《リザレクト》中、白い髪と赤い瞳、???
[シンドローム]:モルフェウス/ハヌマーン(クロスブリード。物質錬成と反射神経の強化)
[ロイス・タイタス]:生還者(Dロイス・侵蝕率を減少させる際にダイス数が増加)、???
[装備・所持品]:完全者@エヌアイン完全世界と共通
[思考]:???
[備考]:参戦時期は『ダブルクロス The 3rd Edition データ集 レネゲイズアージ』巻頭コミック以降。
《リザレクト》による自動回復の速度が低下しています。
509
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:29:40
【高崎隼人(たかさき・はやと)@ダブルクロス The 3rd Edition】
『ダブルクロス・リプレイ・オリジン』のPC1。
UGNチルドレンとして様々な街に赴き、レネゲイドと能力者から日常を守る少年。
普段は気怠げにしているが、任務はけして放棄せず、やる気になれば実力以上の力を発揮する。
かつては、絆を喪ってジャームと化したオーヴァードを人間に戻すために始められた「プロジェクト・アダムカドモン」の
実験体であり、暴走した計画において『ダインスレイフ』と呼ばれる戦闘用人格<Dロイス>を与えられていた。
現在のコードネームは『ファルコンブレード』。戦闘においては物質を錬成するモルフェウスの力で思い出の写真から
日本刀を作り出し、ハヌマーンの超スピードをもってそれを振るう。
【ウロボロス@ダブルクロス The 3rd Edition】
サプリメント『インフィニティコード』で追加された、オーヴァードの十三番目の能力。
別のシンドロームに目覚めた者が持つエフェクトを取り込み、自分の力とすることが出来る。また、世代によって
進化するウィルスの特性どおりに喰らった能力――外部刺激からの自己進化を繰り返す特性に秀でている。
純粋にウロボロス自身のものといえる能力としても、『影』と呼ばれるものを扱う力が挙げられる。
藤林修羅ノ介のプレイヤーである田中天は、『ダブルクロス The 3rd Edition リプレイ・ナイツ』で、公式リプレイ
初となるウロボロス・シンドロームのPC、炎の魔神ラハブを演じていた。
【Dロイス(ディスクリプトロイス)@DX3】
『上級ルールブック』で追加された、自分に対する特殊なロイス。
取得したキャラクター自身の過去や特徴、強い思いを、データ的な裏付けも含めて表現する。
▼反抗者(レジスタンス)
キャラクターが、とてつもなく強大な敵手と戦っていることを表すDロイス。
このDロイスを持つ者が有する不屈の精神は、ぎりぎりの死地においてかれに勝利をもたらす。
万物の理は闘争にあるとしたムラクモが反抗<闘争>をやめるのは、勝利か、死を迎えたときだけだ。
▼愚者の黄金(デミクリスタル)
レネゲイドウィルスの結晶・賢者の石の紛い物に適合したことを表すDロイス。
デミクリスタルに適合した者は、石の力を引き出すことで一度だけエフェクトのレベルを上げて
使用することが可能になるが、代償としてHPを失う。
また、このDロイスを持つ者が死亡すると身体は塵のように崩壊し、あとには力をほとんど使い果たした
デミクリスタルだけが残される。
藤林修羅ノ介が手にした石は、『神の現実態』たるエヌアインがその身に埋めたものだった。
▼生還者(リターナー)
このDロイスを持つキャラクターが、強い自我で衝動から生還する者であることを表す。
代わりに、このDロイスを持つ者は他のDロイスを取得することは出来ない。
隼人の記憶、けして手放せない日常に対する思いはリプレイ本編の彼を幾度も人間につなぎとめた。
【Eロイス(エグゾーストロイス)@DX3】
レネゲイドに侵蝕されて理性を喪ったジャームのみが取得出来るロイス。
超人を日常へと繋ぎ止める絆<ロイス>をすべて無くして燃え尽きた魂のなかに、わずかに残る人間性の残滓は、
歪んだ心が求める衝動を満たすためにかれらを動かす。ジャームとなったものはEロイスと、自身のもつ
力の特性を示すDロイス以外のロイスを新たに取得することは出来ない。
【リバースハンドアウト@DX3】
サプリメント『ユニバーサルガーディアン』で追加された要素。
他のキャラクターに対して非公開の背景を持ってセッションに参加する。
情報判定で内容が分かる【秘密】とは違い、内容を公開出来るのは持ち主のみである。
【合方@シノビガミ】
血盟の仲間と連携行動を行うことを示す、常駐タイプの「装備忍法」。
戦闘中、自分と同じプロット値に血盟の者がいる場合はあらゆる行為判定に+1の修正がかかり、また、対象にした
血盟の者との間で同意が得られれば攻撃を行う代わりに忍具<支給品>の受け渡しを行うことも出来る。
【魔界転生@シノビガミ】
妖怪や年を経た獣らがゆるやかに集う「隠忍の血統」の流派忍法。
戦闘中、自分が攻撃を行う代わりに【生命力】を消費して、自分をシーンプレイヤーとした過去の
ドラマシーンに移行する。一度の戦闘に回しか使えないが、戦闘しながら手数を増やすことが出来る。
510
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:31:46
Scene 09 ◆ 断簡・散り往く桜の語部
ああ、やっと起きたね。おはよう。
目覚めはど……え? 寒くはないのかって、なんで、僕の側がそんなこと訊かれるのさ。
そりゃ、こんな雪だけどさ。
「ここはどこだ」とか「なぜ助けた」とか「お前は誰だ」とか、まずはそういう質問をするんじゃないの?
え、あ……うん。そう。僕がきみを助けたんだ。この――雪がやまないから上着かけたり、焚き火とかしてみたりで。
きみは戦いだけが得意なのかと思ってたんだけど、そうやって、自然に聞き出すことも出来るんだね。
でも、やっぱり名前とかは忘れちゃってるか。
……ああ、ごめん、こっちの話。きみは知らなくても平気だからさ。
きみの名前は『アカツキ』。
日の出とか黎明とか、そんな意味合いの言葉だね。
ここ、底なしの迷宮だから太陽なんて見えないんだけど。きみの戦いぶりは、たしかに太陽みたいだったよ。
うん。あの森の向こう、見える? 大陸間弾道列車砲『グングニル』――えっと、なんか、ものすごい射程の鉄砲……?
あ、それ。大砲。そんな危ないモノが、あそこにあった要塞を見つけたヒトたちを一網打尽にしてさ。
それだけなら【発射台】の拠点を壊しちゃえばいいんだけど、この迷宮の核を支配したヤツ……ものすごい雷使いの、
黒須左京ってバカが魔物まで呼び出しちゃったんだよね。小鬼とかバンダースナッチとか、ザコならともかく火炎魔神みたいな
ヤツらまでいる砦なんて、下手に行ったら各個撃破されるのは目に見えてるでしょ?
だから、僕らはアイツらに戦争を仕掛けたんだ。小隊<ユニオン>を組んで魔物の群れと戦うのが普通だったっていう
侯爵様……ダヴィッドってヒト……ミトラっていう種族なんだっけ?
あー、うん、ゴメン。訊かれたって覚えてないよね。
ソイツと、ソイツの脇を固める四将軍……うーん。二刀を使う女の人の他には、四本腕の猫<ソバニ>とか、二本の足で
歩ける魚<ヤーマ>とかカエル<クシティ>とか、変だけど強くて、ムカつくくらい真っ直ぐなヤツらがいたんだ。
で、ソイツらのところに忍者とかオーヴァード、ランドメイカーみたいな強いヤツらがたくさん集まってきてたんだよ。
それでも、結果はこのとおりさ。
この平原って、もとは森だったところだし、一緒に戦ってたヤツらも、もう何人も生きちゃいない。
完全者を一回倒すまではいけたんだけど、本陣に【リセットスイッチ】ってのが仕掛けられてた。ほとんど、っていうか
全部そのせいだな。
なんていうか、ひどい名前の戦罠<トラップ>だよね。
そいつを誰も見つけられなかったのが悪かったんだけどさ、攻め込んでいった側は消耗したままなのに魔物や罠は全部
元に戻りました、なんて身も蓋もなさすぎると思わない?
で、そのままダヴィッドたちも初手を取られたから、最後は撤退戦にもならなかった。
攻めれば大抵の敵は蹴散らしてたし、護りにまわっても鉄壁だったのに、兵の士気って簡単に上下するんだね。
僕? 僕は後方にいたよ。剣なら少しは使えるけど、あのとき風邪をひきかけてたから。だからきみを拾えたんだ。
う……うるさい。子供だからなんて言うな。『始末屋』のアリサやエヌアインは、僕より年下だったんだぞ。
名前? そっか。僕の名前も、もう一回言わなきゃいけないんだ。
花白。僕は花白っていうんだ。きみの切り札の名前は、たしか『桜花』だったよね。
ん。春に咲いて、この雪みたいに空から降るしろいはな。――これは、桜と同じ名前だよ。
511
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:33:48
※イゴイゴリサイクル
『花帰葬』を制作したHaccaWorks*の二作目、『あかやあかしやあやかしの』の劇中に登場する幼児向け工作番組。
白手袋にステッキを持った紳士「イゴさん」が、相手役の子供「イゴンくん」と会話しながら、ゴッドハンドで様々なものを創造(破壊)していく。
「よく分からないがカッコいい」というのがヒトビトの評価であるらしく、テトリスが視た過去の風景においても、修羅ノ介らの世界に住まう
子供たちが番組のテーマ曲を口ずさんでいた。
"創って壊す〜それが真理〜しんらばんしょー♪"
※スプレンディッド・ビッグ・ウォー(Splendid Big War)
交錯迷宮の森林部・閃刃の間で「戦争の夏」を終わらせた大規模戦闘。
人類の敵と迷宮支配者が集う【要塞】を陥とすことに加え、そこに据えられた【発射台】――「大陸間弾道列車砲
『グングニル』@ダブルクロス・リプレイ・トワイライト」を破壊して、再度の砲撃を止めるのが寄せ手の目的であった。
集団戦闘の指揮に慣れた青年・アスラム侯ダヴィッド@ラストレムナントと、小隊の長<ユニオンリーダー>を
務める者の手によって束ねられた強者は、それぞれが持ち得た力を尽くして拠点を落とすことに成功する。
だが、拠点の本陣に仕掛けられ、発見されなかった【リセットスイッチ】の罠が発動したことで戦況は一変。
これまでに倒した魔物や死んだはずの完全者らが蘇った状況にあって、死力を尽くしたがゆえに消耗した
ダヴィッドたちは撤退戦以前の状況に立ち向かうことを強いられる。
大盤振る舞いの許された『素晴らしき大きな戦争』は、月下美人の力を引き出すユニークアーツ『大乱れ雪月花』
によって終わりを告げた。
512
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 17:34:52
以上で投下を終わります。
そして、藤林修羅ノ介(シノビガミver.)のキャラクターシートと登場人物一覧を「公開情報」に。
キャラクターシート:藤林修羅ノ介 ttp://www.eonet.ne.jp/~ice9/3rowa/etc_cs01.html
登場人物一覧 ttp://www.eonet.ne.jp/~ice9/3rowa/etc_chara.html
TRPGリプレイを読んだ後にキャラシートを眺める時間も好きなんで、そういうところが状態表とかにも出てます。
『ダブルクロス』くらいになるとエフェクトの量が多いのでアレなんですが、そっちもうまいこと見せられればいいな、と。
ページ名にしている『アイテム・コレクション』『キャラクター・コレクション』等にもお世話になりました。
513
:
名無しロワイアル
:2013/05/03(金) 21:23:04
うん?もうラジオ始まってる?
514
:
FLASHの人
:2013/05/03(金) 21:28:23
ラジオ一応開始です。
こちらからどうぞ
ttp://www.ustream.tv/broadcaster/new/3580224
515
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 22:20:10
あ、遅れましたが元ネタは『花帰葬PLUS+DISC』の「打鶏肉」です>289話
ゼロ羽>一羽>二羽>三羽(天・地)>四羽>五羽(陰・陽)と、
タイピングゲームのなかでも分岐があったんで。
つまりはそういうことです。はい。
516
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/03(金) 22:20:56
……スレ間違えッ……!(1ゾロ感)
517
:
◆uPLvM1/uq6
:2013/05/03(金) 22:43:17
皆忘れてると思うけど変態ロワ投下します。
518
:
158話 走る変態
◆uPLvM1/uq6
:2013/05/03(金) 22:45:32
安錠は涙を流しながら、城を走り回っていた。
走り回っていたというより、逃げ回っていたという表現のほうが正しいのだが。
(殺される殺される殺される殺される殺される殺される……)
彼のスタンスは殺し合いはせず、ただ隠れ続けること。
しかし、バトルロワイアルが中盤に差し掛かった頃に、謎の気持ち悪い生物に見つかった。
そして生死をかけた鬼ごっこが始まったのである。
そのため、立ち止まればその生物に食われて死ぬ、と安錠は思っている。
が、自分を追いかけていた生物が、既に死んでいることに安錠は気づいていない。
安錠を追いかけていた生物、レギオン・ムクロはキシンによって退治されていた。
クルクル回転しながらレギオンに突っ込んでいく様は、まごうことなき変態であった。
安錠にとって幸いだったのは、キシンが自分の存在に気づかなかったことである。
もしキシンが存在に気づいていたなら、既に安錠の命は無かったのだから。
そんなこんなで、安錠がもう謎の生物に追いかけられていないことに気づくのは、少し先の話である。
と同時に、最終決戦の場である最上階へ近づいていることに気づくのも、先の話。
【安錠春樹@新米婦警キルコさん】
[状態]:恐怖
[装備]:拳銃@現実 おなべのふた@ドラクエシリーズ
[道具]:基本支給品一式、エロ本
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破したい……俺は無理。
1:止まったら殺される……!
2:死にたくねえ!
[補足]
安錠春樹は追っ手がいないことに気づいていません。
また、最上階に向かって走っていることにも気づいていません。
□□□
さて、安錠の存在に気づくことなくレギオンを倒したキシン。
彼もまた、最上階に向けて変態的な速度で走っていた。
いつものような変態的な動きはできないが、それでも変態的な速度で走り続ける。
ちなみに、走っている方向は安錠とは全く違う方向だが、最上階へと向かうもう一つのルートでもある。
(ジュスト……もうすぐでお前の敵はとれる……!)
最上階にはジュスト殺した、髭をたくわえた老人。
恐らく奴もドラキュラであろう、なんとしてでも奴は殺さなくてはならない。
はじめは優勝するつもりだった。
だから他の参加者を躊躇無く殺した。
しかし、最上階に奴がいるとなれば話は早い。
敵を討つのだ。
奴を殺すのだ。
ドラキュラを、殲滅する。
邪魔をするものも殺す。
彼の頭の中には復讐という二文字しか、ない。
【マクシーム・キシン@悪魔城ドラキュラ】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:日本刀@現実 ヨーヨー@現実
[道具]:基本支給品一式
[思考・状況]
基本:主催を殺す。そのためなら他の参加者も容赦なく殺す。
1:最上階へ向かう。
2:邪魔をする者は殺す。
519
:
158話 走る変態
◆uPLvM1/uq6
:2013/05/03(金) 22:46:05
□□□
「ワシのことはいい! 早く最上階へ急ぐんじゃ!」
「で、でも! 亀仙人を置いていくことなんてできないよ!」
「早く行くんじゃ!」
一方、ふんどし仮面一行は危機的状況に陥っていた。
亀仙人がいまにも、落とし穴に落ちそうになっているのだ。
ギリギリ床を掴んでいるのだが、最早命は風前の灯火である。
亀仙人にはもう、右腕がない。
従って、左腕でしか掴むことはできない。
片手で自分の全体重を支えているのだ。
さらにここまで、最上階に向かって休まずに移動していたので、疲労も溜まっている。
限界は近かった。
「クッ……! 少しでも休んでいればこんなことには!」
「…………ひとついい?」
「なんだ! お前も見ている暇があったら手伝え!」
「…………普通は、あんなみえみえの罠には引っかからないよね?」
「…………そうだな」
ムッツリーニこと土屋康太が指差したのは、落とし穴の手前にある台。
そこにはエロ本が置かれている。
そう、亀仙人はあのエロ本を取ろうとして罠にかかってしまったのだった。
他の三人はあからさまに怪しいなと思い、取ろうとはしなかったが、亀仙人は違った。
普通に取りに行った。
結果、今の状況に至る。
ふんどし仮面とクマ吉はそのことを思い出し
「ああ、じゃあ別にいいか」
「亀仙人! 君の犠牲は忘れないぞっ!」
「ええっ!?」
「よし、最上階に急ぐぞ」
あっさりと亀仙人を見捨てることを決めたのだった。
今までのやりとりはなんだったのだろうか。
この数分後
わしは ふかい ふかーい やみの なかへと
てんらくした。
そして そこによこたわる ドクロたちの
なかまになるのを まつだけになってしまった。
ざんねん!!
わしの ばとるろわいあるは これで おわってしまった!!
亀仙人は死神を見たという。
「あんな罠に引っかかりにいくなんて、亀仙人はまさしく、しんのゆうしゃだよ!(笑)」
【亀仙人@ドラゴンボール 死亡】
【残り5人】
【ふんどし仮面@銀魂】
[状態]:限界寸前、疲労(中)
[装備]:盾@現実
[道具]:基本支給品 月刊チェヨンス@ギャグマンガ日和 上条の右手@とある魔術の禁書目録
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破する。
1:最上階へと向かう
2:亀仙人……お前のことは忘れない……
【クマ吉@ギャグマンガ日和】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(中)
[装備]:ジャスタウェイ@銀魂×10 西洋の鎧@ギャグマンガ日和
[道具]:基本支給品
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破する
1:最上階へと向かう
2:亀仙人……プークスクスwwwwwwww
【ムッツリーニ(土屋康太)@バカとテストと召喚獣】
[状態]:疲労(中)、フラッシュバックによる無効化の可能性
[装備]:クサリ@悪魔城ドラキュラ
[道具]:基本支給品 エロ本 輸血パック@バカとテストと召喚獣
[思考・状況]
基本:この殺し合いを打破する
1:最上階へと向かう
2:…………なんで、引っかかったんだろう
520
:
◆uPLvM1/uq6
:2013/05/03(金) 22:46:40
というわけで158話目終了です。
おもっくそ忘れてましたすんません……
521
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/08(水) 17:27:13
『Splendid Little B.R.』、ちょっとSSの内容を修正したので報告を。
黒須左京からアカツキに結んだロイスの感情、「憐憫/殺意」を、
ダイス振った結果に沿って「親近感/殺意」に変更します。
自分以外の誰かへ、ポジティブ・ネガティブで表裏一体になった思いを抱くのが
ロイスなんですが憐憫は間違ってもポジティブじゃねえよ!w
と、報告の義務はあまり無いんでしょうが、他のどなたかに見られてる・どなたかに
伝えているという観点は持っていたいのでこちらに。
次の投下は……またちょっと色々仕込む羽目になるんでゆっくりになりそうですが、
そのネガティブ感情に尖りまくった左京さんと、アカツキのお話になると思います。
雷使いどうしの対決とか見た目からしてカッコいいですね!
522
:
名無しロワイアル
:2013/05/08(水) 22:00:30
>>520
へ、変態だー!?
最強戦力と思われた亀仙人が割と初期の頃のノリで墓穴掘ってクソ吹いたww
クマ吉とふんどし仮面もあっさり見限りやがってw
次もどうなるのか楽しみにしてます。
>>521
あと3話詐欺(褒め言葉)がどう転ぶのか常に楽しみにしています。
TRPGが良く分からないのが残念な所。小学校の頃は友人に付き合ってやってたんですが。
折角だから雑談ネタも振ってみる。
皆さんこの3話ロワ企画で知って、読んでみたい・見てみたい・やってみたいと思った作品はありますか?
自分はワイルドアームズ3とトトリのアトリエです。
ええ、想い出ロワに影響されましたとも。
しかしバトライドウォーに買いそびれたマクロス30に迷っているDIVAf、
やりこみ中のUXにいつでもやりたい大神……最近は良作が多くて困る。
523
:
名無しロワイアル
:2013/05/08(水) 23:39:26
>>522
ゼクレアトルかな…>読んでみたい
524
:
名無しロワイアル
:2013/05/09(木) 23:15:51
>>522
読んでみたいと思ったのは想い出ロワの『レジンキャストミルク』、
やってみたいのは剣士ロワの『大神』だなあ……。
前者は殊子のキャラが、後者は神さびた色合いの世界観がよく伝わったのです。
で、もう持ってるしやってるけれど、作品に影響されて触り直したっていうのが
『クロノ・クロス』と『ワイルドアームズ3』でした。
書き手さんさえよければロボロワにイルランザーとかフェイトとか出てもいいんだよ……
と無責任に思っていた読み手だったので、9D氏の手によるクロノ・クロスは嬉しかったッ!w
TRPGは >522 氏とは逆に、小学生の頃に出来なかったけれどTwitterなどの
オンライン募集をとおして十年越しの夢がかなった! やった! ってヤツでしたねー。
『シノビガミ』『ダブルクロス』ともに、リプレイ読んでても面白いですし、後者はたしか
アニメ版『氷菓』でも遊んでるシーンが出てきたり、声優さんの参加もちょこちょこあるので
「あのゲームなんなの」とか「主人公が若林神だと……!?」とかから読んでみても面白い気がしますー。
525
:
名無しロワイアル
:2013/05/10(金) 00:33:19
>>522
大神やりたくなった
前から気にはなってたんだけど手を出せてなかったんだよな
526
:
◆nucQuP5m3Y
:2013/05/10(金) 17:31:34
>>522
割と把握率高いので改めてってそんなにないんですが、
やっぱレジンキャストミルクかなあ
あとはスパロボ効果もあるけどSD三国伝!
>>523
やったー!書いたかいがあったというもの!
まあ読む人を選ぶタイプなので手放しで推薦できない感はありますが
それでも読む人が増えたら嬉しいことこの上ない!!
527
:
名無しロワイアル
:2013/05/10(金) 19:34:46
は、花帰葬(小声)
花白の最期に震えたけど乙女ゲー?なんだよなぁ
528
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/05/10(金) 20:30:58
>>524
俺好みの発想だ……(下っ端風に)>ロボロワにフェイトでもイルランザーでも
というか、隙あらばグランドリオンを魔剣にしてスバルかエックスにプレゼントしようと画策していましたw
ちなみに、グランドリオンは剣士ロワではオキクルミと共に孫権の真の勇気によって救われ、最後はゼンガー(α外伝)と共に壮絶な最期を遂げました。
あとは本編中にダリオぐらいしかクロス要素を入れられなかったのが心残り。
俺とお前達でトリプルグレン団(要するにグレン2人と鬼リーダー)とか考えていた時期もありました……。
余談ですが、クロノ・クロスがお好きでしたらファントム・ブレイブがある意味オススメ。
人間と亜人種が存在=種族間の差別や軋轢がある、というクロスでも存在したお決まりパターンを完全無視。
最初から、あらゆる人種が一つの世界の住人としてごく普通に共存して暮らしております。
ファルガやイレーネス、ゼルベス、亜人の賢者に是非とも見せたい世界です。
>>大神、三国伝やってみたい・読みたい
書いた甲斐が、あったというもの!
大神で注意点は、オキクルミは終盤に登場する重要人物ということですね。
あと三国伝は漫画版(風雲豪傑編、英雄激突編、戦神決闘編、計8巻)がオススメ。
漫画だとSDガンダムシリーズのメインテーマ『光と闇の戦い』が描かれているのと、曹操の苛烈な一面が強調されているのもポイント。
アニメに比べて孫権が地味というか劉備と曹操に食われ気味という難点がありますが。
アニメもアニメでメイン主人公であるホンタイさんを蔑ろにし過ぎている点が非常に気に食わない。
プラモキットでは、轟大帝孫権、真・翔烈帝劉備、玄武装呂布、呂布+天玉鎧セット、紅蓮装曹操+猛虎装孫権セット、天熾鵬司馬懿サザビー
などが特にお勧め。
529
:
◆MobiusZmZg
:2013/05/11(土) 12:27:04
>>528
うおお、熱い……!>真の勇気
ラスト三話で十分伝わりましたが、『光と闇の戦い』には、それこそ
グランドリオンとイルランザーは大事な存在だったろうなあ。
>524ではうっかりトリ外して返答しちゃってなんでしたが、『クロノ・クロス』には
テキストにおける言葉つきから何から、色々影響されました。
大好きなゲームのひとつに、いまだ思い入れを持ってくれてる方が見つかったのも嬉しいところです。
そして異種族のちゃんぽんというと、自分の場合はサガシリーズですとか、
自分のロワなら『ラストレムナント』がミトラ(人間)・魚・猫・カエルの四種族がごた混ぜに
平然と生きてて、その世界にプレイヤーとして立つのがたまらなく好きですね。
調べるかぎりでは『ファントム・ブレイブ』は隙間時間でも遊びやすそうな感じなので、
機会があれば触ってみようかと思います。
最後に、『花帰葬』が気になるあなたは……PSP版、やりましょう(笑顔)。
RPGロワの「勇者と魔王」を掘り下げるために触ってみて、最初は女性のヒロインが欲しくて
仕方なかったんですけどw それでも「この世界はどうすれば君に償えるんだろう?」を
はじめとした台詞に力がありますし、雰囲気作りも巧い。志方あきこさんのBGMもいい。
(同人版が出た当時、志方さんご本人がシナリオを読んで必要だと思ったシーンにBGMをつけたのだとか)
なにより勇者(花白)と魔王(玄冬)のうち片方が死ぬエンディングが多いし、世界を滅ぼす雪の表現が
綺麗なのに、けして死を美化していない姿勢はロワというか、ひとの生き様を書くうえでも役立つかもしれないです。
530
:
名無しロワイアル
:2013/05/27(月) 00:58:30
続きのプロットは頭にあるんだけど、
なかなかそれを文章化できぬぇ
531
:
名無しロワイアル
:2013/05/27(月) 21:40:36
>>530
いっそソードマスター形式にしてみよう(暴論)
当初は最終回をソードマスターにしようと本気で考えていたのもいい思い出ですw
黒幕「俺は1回攻撃したら死ぬぞぉー! ウボァー!!」
一同「えぇー!?」
主催者「待て慌てるなこれは孔明の罠である」
532
:
名無しロワイアル
:2013/06/09(日) 19:09:17
パロロワ系列のbotなど見かけるので、ちょっと作ってみました。
ttps://twitter.com/3rowa_bot
登録したつぶやき数は、いまの時点では130程度。
さすがにこのスレではリクエストを受けられないですけど、想い出を楽しむ時間などが生まれれば幸い。
読み返す間にも琴線に触れる表現や切り口が多くて、作業の手がしばしば止まりましたよ!
533
:
◆XksB4AwhxU
:2013/06/09(日) 21:25:07
おお、すげえwこんなの作ってくれるとは!
534
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/06/09(日) 22:18:18
>>532
素晴らしい。覗いてみたら早速剣士ロワの一節が出ていてしんみりしました。
少しでも皆さんを楽しめたのなら、俺は満足だ……。
ところで、剣士ロワ死者スレラジオとかやってもいいでしょうか?
535
:
名無しロワイアル
:2013/06/10(月) 00:01:32
私は一向に構わんッッ
(ん?死者スレラジオ?
死者スレネタ投下でもなく、剣士ロワをネタにしたラジオでもない?
一体何が始まるんです?)
536
:
名無しロワイアル
:2013/06/10(月) 00:55:30
たしか漫画ロワとかの死者スレでやってた、登場人物のロワ内での行動とか
異名、ネタなんかを紹介するヤツ……かな?>死者スレラジオ
たいてい、パーソナリティが見せしめのひととかなんだよねw
予想が間違ってたらあれですが巻末漫画読んだり、ギャグ調のおまけシナリオを
見たりするのが好きな自分もばっちこーいですよー。
537
:
名無しロワイアル
:2013/06/11(火) 00:06:15
3話ロワbot、1日12ツイートで全130ワードか・・・
全部見終わるのは結構掛かりそうだな
538
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/06/13(木) 19:33:40
>>535-536
いいんですね!? やったー!
>>536
の方の説明の通りで、基本ギャグでネタ満載でカオスです。三国伝の公式ページぐらい。
漫画ロワの死者スレで停滞していた死者スレラジオを勝手に再開させて以降、ほぼ毎回投下していたのは私だし、
ロボロワに至っては死者スレネタの大半が私のネタでした。人気投票の集計と発表もやってたり。
そうか、死者スレラジオを知らないロワ住人の人もいるんですね……ジェネレーションギャップってやつか(多分違う)。
539
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/06/13(木) 19:34:16
司馬懿「剣士ロワ完結記念」
逞鍛(今更だなおい)
「「死者スレラジオ特別編、名前だけ出たあいつら」である」
司馬懿「さて、今回の死者スレラジオは表題にある通り、剣士ロワの最終3話で名前だけ出て来た者達を、たまに本人もゲストに呼びつつ、本編で解説役の位置にあった我らが直々に解説する」
逞鍛「孫権や衛有吾のように、本編で普通に出番があった奴もいるがな」
司馬懿「ちなみに、前回まで死者スレラジオのメインパーソナリティを務めていたのは右京さんとデスティニーガンダム。見事なボケとツッコミであった」
逞鍛「突っ込み不足で呼んでた参加者じゃないキャラが、何時の間にか居ついて死者スレラジオまでやってたとかどういうことだ」
司馬懿「所謂イボンコとウェンディの法則である。そしてフルカラーRPG編で剣士キャラだったから余裕のセーフ。では、早速始めるとしよう」
その1.幻魔皇帝アサルトバスター「刃鳴散し、華と散れ。類稀なる剣士達よ!」
逞鍛「そういえば、あと3話ロワで最初から死んでいた主催者はこいつだけだったな」
司馬懿「我らと同じ主催者でありながら哀れな奴。ちなみに死者スレでは曹操将軍によりアイマスファンとなり参加者達と和解した。
推しアイドルは天海春香と佐久間まゆ」
逞鍛「奴もまた、俺と同じく常闇の皇によって闇へと堕ちた頑駄無だ。その為、俺達の世界と大神の世界が同一世界であるかのような描写が散見されたが、全ては謎のまま」
司馬懿「闇の使命よりも、己が力を示すという享楽を優先する愚物であった。儀式に古今東西の剣士達のみを召喚することとなったのもこやつの仕業。
しかし、私と逞鍛が異を挟めぬ力を持つだけあり、なまじ強過ぎた。その強さ故の慢心と油断から隙が生じ、タクティモンによって深手を負わされる最大の敗因となった」
逞鍛「俺達からすれば、目障り極まりない目の上の瘤を消せた上、常闇の皇の復活の生贄にも使えた。あの状況は一石二鳥だったよ」
司馬懿「本人の名誉などどうでもいいが、付記しておくとすれば奴の力は絶大の一語に尽きる。もしも奴が生きていたなら、結末は変わっていたやもしれぬ」
アサルトバスター「ぶっちゃけ資料不足で把握きついってレベルじゃないからな」←カードダスだけでしかも絶版。
司馬懿「……そうでもあるな」←最終章3巻で大体把握できる。
逞鍛「そんなことを言っていいのか」←最終巻だけでほぼ完璧に把握できる。
その2.ゼンガー・ゾンボルト「償いようのない過ちを犯したのなら、戦うしかない。俺達は……“剣”なのだから」
逞鍛「実は最後の生き残りの対主催連中はなかなか1つに纏まらなかった」
司馬懿「そんな奴らを1つにまとめ上げた侠こそ、大地の守護神とも称された悪を断つ剣、ゼンガー・ゾンボルトなのである」
逞鍛「当初こそこっちはα外伝出典だから戦闘力に一抹の不安があるなど散々言われていたが、
最終的にグランドリオンを手に生身で星薙の太刀を放っていた」
司馬懿「もう1人のPXZ出典の方は割合あっさりと死んだというのに、どこで差が付いたのか……」
ゼンガー「俺の存在が、勝利へと繋がったと言うなら……何も悔いは無い」
逞鍛「アサルトバスターとは逆に、お前さえいなければ闇の勝利となっていただろうな」
540
:
◆9DPBcJuJ5Q
:2013/06/13(木) 19:39:22
その3.真の正義を持つ侠・劉備ガンダム「燃えよ龍帝剣! 宿せ正義!」
司馬懿「龍帝の魂を継ぎ、龍帝剣を継承した者。我ら闇の宿敵にして怨敵の代表格であった」
逞鍛「正直、この侠は最終局面まで生き残るものと思っていたが……ロイド・アーヴィングとの正義問答が響いたか」
司馬懿「正義を心得ずして正義を網羅したかのように語り謗る視野狭窄の愚者……ふふ、この2人を早期に遭遇するよう配置したのは正解だった」
逞鍛「しかし、その後に加わった青龍のロック……じゃなかった、楓と衛宮士郎の存在は誤算だった。2人の緩衝と橋渡しを見事にこなしていたからな」
司馬懿「なにより、青龍とは同じく龍神の力と宿命を受け継ぐ者同士……奴らは力を高め合っていた。故に危険視し妖魔王キュウビと黒き王アルトリアを向かわせたのである」
逞鍛「その策は見事に嵌り、劉備は仲間を、お前の言う愚者を庇って散った……滑稽なほどに策略通りに」
劉備「黙って聞いていれば好き勝手を! ロイドが愚者などと、どの口が言った!!」
司馬懿「正義を毛嫌いし、知ろうとも理解を深めようともせぬ輩が、正義とは暴力を正当化する暴論であるという持論をさも真理であるかのように語る。
これを愚者の物言いとせずしてなんとするか、龍帝剣よ」
劉備「それこそは、正義を信じたくとも信じられぬ世界に生まれ、正義の言葉を暴力として振りかざす悪虐の徒に蹂躙されて生きて来た、彼の心の悲痛な叫び声に他ならない!
ならばこそ、俺は……この魂を賭して我が正義を示したのだ!!」
司馬懿「……見事。それでこそ翔烈帝、真の正義の持ち主よ」
その4.真の理想を持つ男・曹操ガンダム「笑止。正義無くして理想無し!」
司馬懿「私の元主君である。尤も、我ら闇の使命を果たす為の依り代程度の関係であったがな」
逞鍛「それだけに、お前が最も敵視し、また危険視していた侠でもあったな」
司馬懿「然り。その太陽の如きカリスマ性で、見る間に一大対主催グループを作り上げて行った。
闇の王アルトリアや豪将ハイドラ、朱雀を始め、多くの闇の盟主達を刺し向けたが……」
逞鍛「最後に奴を討ったのは、我々が最早闇の盟主の器に非ずと見限っていた魔星だった」
司馬懿「うむ。流石は史上唯一の闇の大将軍。事前に弱っていたとはいえ、よくぞ曹操将軍を討ち取ってくれた」
曹操「父を想う子の心、そして……子を想う父の心。余が理解できなかった情の前に、敗れ去ることになるとはな」
逞鍛「情の力、か……」
曹操「だが、闇を討つべく配した余の布陣、その全ては見切れなかったようだな、司馬懿よ」
司馬懿「星凰剣と威天剣。雀瞬の力の象徴とも言うべき双剣を魁斬に預けたまま別れた時は何事かと思ったが……
よもや、七逆星として天命を授けられし魁斬が、天の刃の資質を秘めていようとはな……!」
曹操「自らに課せられた宿命に殉じながらも、その果てに運命を超えるという切なる祈りを胸に、己が魂を燃やし尽くしてでもそれを成そうとする心――
それ即ち、真の理想。それを見抜けなんだ貴様の不明よ!」
逞鍛「ところで、お前の一推しアイドルは誰だ?」
曹操「菊池真だ。しかしマコマコリーンは無い」
司馬懿「私はシスプリ派であるのでファンから搾取するゲームとか心底どうでもよい」
曹操「なに……?」
司馬懿「なにか?」
曹操「こやつめハハハ」
司馬懿「ははは」
逞鍛(殺気と剣を収めろよ……)
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◆9DPBcJuJ5Q
:2013/06/13(木) 19:45:02
その5.疾風剣豪精太「歯を食い縛れ! 貴様のような我が儘小僧は、修正してやる!!」
逞鍛「今思ったが、俺達の名前は武者頑駄無シリーズに馴染みが無いと難読漢字となってしまうな」
司馬懿「酷く今更な話であるが、実際、昔日のラジオでも貴公の名前でちょっと止まっていたな」
逞鍛「こいつはゼータ、そして俺はティターンだ。共に天宮の光の七人衆に名を連ねていた。
邪悪武者との第二次決戦に勝利した後、光の力の暴走が治まった本来の状態からの参戦だ」
司馬懿「曹操将軍の唱える理想を太陽と称し、最初に共感した戦友。この男がいなければ、もっと早くに手を打てたものを……」
逞鍛「とにかく騎馬の扱いに手慣れており、アルトリアのポンコツ道中記に騎馬戦での完敗を加えたのもこの男だ」
精太「なんだ、そのポンコツ道中記って。彼女の実力はとてもポンコツなんてものじゃなかったが……」
司馬懿「正確には、あの女を完全なる闇の王へと仕立てる為に張り巡らせた我が謀略である。悉く嵌って片腹痛すぎたが」
逞鍛「しかし、お前は結局……誰も守れなかったな。結果としてだが、曹操のグループはあの戦いで全滅した」
精太「その通りだ。それだけが、この戦場での俺の最大の悔いだ」
司馬懿「さて、こんな所であるか」
逞鍛「取り敢えず、298話分はこれで終わりだな」
頑駄無「待て! 俺達は!?」
孫権「俺たちだって298話で名前が出ていたはずだ!」
アルフォースブイドラモン「そうだよ! だから僕らも何時でも出られるように準備していたのに」
司馬懿「お前たちは普通に出番があった。故に、今回は無し」
逞鍛「まぁ、次があるかも分からんがな」
司馬懿「全くの余談であるが、剣士ロワの書き手は某所で殺伐ガンアクションのラスボスがほのぼの日常の水の惑星で過ごすという気の狂ったものを書いている」
逞鍛「大神とUXに現を抜かした上に剣士ロワを書き終えて燃え尽き気味で止まっているがな。暇に殺されそうになった時に気が向いたら探してみるといい」
司馬懿「では、次回があればその時に、再び相見えようぞ」
逞鍛「司会進行役が変わっていそうな気もするがな」
司馬懿「待て慌てるな落ち着けそうなったならそれは孔明の罠である」
逞鍛「お前が落ち着け」
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