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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その4

1名無しは星を見ていたい:2020/05/23(土) 19:46:51
短編、単発のミッションなどにお使いください。
長編やシリーズものの予定でしたら、自分のスレで行うことをお勧めします。

2『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/23(土) 20:49:17

   ――― ある日、15時ごろ ―――

星見町の、とあるファミレス。そこに客はほとんど居ない。

中央のテーブルには、
 茶髪ソフトモヒカン………『門倉良次』、

『門倉』のテーブルと通路を挟んだ隣のテーブルには、
  ブロンドの少女………『エヴァレット・ローレンス』。

やる気のなさそうに無駄話をしている
       学生店員たちを除けば、
       フロアに居るのはその二人のみだ。

 ………

 「―――ええ。ええ、分かります。
      『あの日』からもう、かなりの時間が経っていますもんね。
     そろそろ『理解』したいと思うのは当然の事です」

二人のうちの一人、『門倉』は『スマホ』を片手にペコペコと通話している。

 「―――ええ、もちろん。もちろんですよ。
      あれからずっと考えていますし、資料整理も抜かりなく!
      やってはいる、やってはいるんですが………
      なかなか難解でしてね。

                       お子さんの―――『スタンド能力』」

    少し大きめの『門倉』の声は、隣のテーブルまで届いている。

3エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/23(土) 21:00:09
>>2

「…………」

 通話しながら頭を下げる門倉を、しげしげと興味深そうに見つめている。

 ジャパニーズ・サラリマンは、たとえ相手の姿が見えなくても礼儀を欠かさない……
 そんな噂を聞いていたけれど、まさか本当だとは。

「…………」

 読み古した推理小説を持ってきたが、どうも頁を捲る気になれない。
 それよりも、彼の話に聞き耳を立てている方が、ずっと面白そうだ。

----------
【能力詳細(念のため)】

手に触れた『情報媒体』を一瞬で『灰』と化す、『焚書』のスタンド。

『ファーレンハイト451』

破壊力:E スピード:B 射程距離:E
持続力:E 精密動作性:A 成長性:A

ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453051228/151

4『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/23(土) 21:50:09
>>3(エヴァレット)

「―――ええ、『鈴元君』にも細かく状況はきいて、まとめてはみたんですが………

    ………え? 今ですか? 以前会ったファミレスですけども………

                 え、ええ。あのコンビニの近くの、ええ……

   ………え? 来る? 福助君と一緒に?

           ………はい ………はい

                          ……あと30分、ですか。


     ―――了解しました。それでは後程。


                          ………ええ、失礼します」


 興味深く、『門倉』の通話を聴く『エヴァレット』。
             ほどなくして話は終わったようだ。

                       「…………やれやれ」

通話を終えた『門倉』は軽い溜息と共に、眼前の『コーヒー』に口をつけた。

5エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/23(土) 22:11:25
>>4

「…………こんにちは」

 通話を終えたのを見計らって、声をかけてみる。

「……なんだか、大変そうですね。お仕事の電話ですか?」

 カフェは交流の場だ。(ここはファミレスだが。)
 見知らぬ仲だとしても、或いはだからこそ、世間話にも花が咲く。と、思う。

 もし、彼の話を聞きだすことが出来たなら。
 それは、何度も読み返した小説をぼーっと眺めているよりも、ずっと面白そうだ。

6『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/23(土) 23:27:50
>>5(エヴァレット)

「………ん? ああ」

 コーヒーカップを片手に『門倉』が『エヴァレット』の方を見やる。

「そうだね、『仕事』の話だ。そして、お察しのとおり上手くいってない。

 ―――いや、当初の『仕事』自体は上手くいったんだけど、
      ただ一つ、シミのように残った『謎』があってね。
      それに四苦八苦しているというわけだ」

 『門倉』はやや芝居かかった動作と共にそう返してくる。

「………だけど悪い事ばかりじゃあない。
     大変な仕事が、君に声をかけられる契機となったわけだからね」

7エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 00:02:15
>>6

「へえ」

 『謎』。

「……よろしければ、どんなお話だったのか」
「教えてもらえないかしら。ちょっと退屈していたところで」

 芝居かかった動きと友好的な返事に、微笑みを返す。

「……そちらの席に行っても?」

8『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/24(日) 00:14:34
>>7(エヴァレット)

「………あー、とりあえず二つ目のお願いには『YES』だ。
     ただ、待ち合わせをしているんでね。
      30分程度のお茶会になってしまうとは思うけど」

『門倉』は自らの荷物を整理し、『エヴァレット』の為に席を空ける。

「そして、だ。
 残念ながら最初のお願いには応じられない。

  もちろん『守秘義務』という事もあるんだけど………

    それ以前に、そもそも『信じてもらえない』と思うんだよね」

 席に呼び寄せておきながら『門倉』はそんな事を言う。

9エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 12:30:46
>>8

「……そう。『守秘義務』、なんてものが……」

 残念そうに目を伏せながら、門倉の空けてくれた席に移る。

「……本当に、大変なんですね。社会人って」

 職務を通じて知った秘密や、個人情報などをみだりに明かしてはならない。
 そんな、つまらないルールのせいで。

「……『鈴元君』、という方が、お仕事に携わったんですね」

「そして、仕事相手の方と、『福助君』が」
「ここに姿を現すんですね」

「『あと30分で』」

 そんな、つまらないルールのせいで、社会的信用を失ってしまうことがあるなんて。
 かわいそうな男性だ。どうにか内緒にしてあげたい。(この程度で漏洩となるかどうかは分からないが・・・)
 口止めに、全部洗いざらい吐いてくれればいいのに。

10『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/24(日) 15:45:07
>>9(エヴァレット)

 「………」

よどみなく『固有名詞』を挙げる『エヴァレット』。
それを聴いた『門倉』はわずかばかり目が泳いだが、数秒のちにニッコリと笑う。
.
「………色々言ってはみたが、
     君になら話してもいいとは思っていたんだ。
      本当さ、本当なんだよ。
                       ただ―――」

 『門倉』は少しだけ言葉を切った後、

「少年が視えない力で『顔を崩す』、

            その『条件』を探る仕事をしている―――

                      なんて言われても、困っちゃうだろう?」

                             『エヴァレット』にそんな事を告げた。

11エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 18:18:36
>>10

「……あら、本当に?」

 門倉の返答に、笑みがぱっと花やいだ。
 よかった、内緒にしてあげられそうで……。

「……私、『霊感』が強い方なんです」

 荒唐無稽な話を信じるか、それとも信じないか。
 そんな門倉の懸念に対して、エヴァレットはどこか胸を張るように返す。

「……そのせいで、昔から不思議な体験もしてきた。
 多少の奇怪な話なら、耐性もあるつもり、なんですけど……」

 とある『条件』で、『顔を崩す』、『視えない力』を操る少年。

 その言葉を聞くたびに。
 瞳の輝きが。
 どんどんと、増していって――――


      「素敵!」


「……あ、ごめんなさい。
 ええと……だから、『信じられない』ような話でも、馬鹿にしたりしません。
 ……どうしても『信じられない』って思ったら、そうね。
 小説や映画のような、『架空の物語』の設定、と思って、黙って聞いているわ」

「……もしかしたら、人に聞かせるように話すことで。
 頭の中で、情報を改めて整理することも、出来るかもしれないし」

「……そうだ。お話をしてくれるなら、その時間のコーヒー代は私が出す、というのはどうかしら」


「………………駄目?」

12『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/24(日) 21:33:45
>>11(エヴァレット)

 「そう……
        そう……
                そうか―――」

『門倉』は新雪を踏みしめるかのようにゆっくりと『エヴァレット』の言葉を?みしめる。

「そうだね、君がそういうのなら。そうだ、これはあくまで『仮定』の話。
  あるいは『物語』、『おとぎ話』の類だと思ってくれればいい。
            これから俺が話すストーリーについてはね。

 あと、コーヒー代については必要ないよ。
  君のような年齢の娘(としのこ)に、ご馳走になるほど落ちぶれちゃあいない。

  そして、こうしよう。この話には一つの『謎』が残っている。
   もし君がそれを解けたのなら、君の注文の支払いはこの俺、
            『門倉良次(かどくら りょうじ)』がしようじゃあないか」

13エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/24(日) 23:00:49
>>12

「……そう? 年齢は関係ないと思うけれど……」

 とはいえ、この国にはこの国のしきたりがあるし、彼にも彼の信条がある。
 無理に主張するのは、ちょっとはしたない。コーヒー代に関しては引っ込めた。

「……『物語』、の……『謎』ね」

 興味はあるけれど、「解いてみせる」と断言もできない。
 ただ頷いて、門倉の提案に応じる。

「……私は、『エヴァレット・ローレンス』。よろしくお願いします、門倉さん」
「早速、その『謎』にまつわるお話を、聞かせてもらえるかしら」

14『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/25(月) 20:49:33
>>13(エヴァレット)
「『エヴァレット・ローレンス』ちゃん………
 いや、ちゃんづけは良くないか?

     ともあれ、それでは話を始めようか―――」

『門倉』は残ったコーヒーを飲み干し、語る為に喉を潤す。

「せっかくだから、順序だてて話そう。

 『依頼』があったのは一月の事だった。
  とある『美容外科』の院長からの『依頼』。

人気のある『美容外科』だったんだが、
そこではときたま『顔が崩れる』という、奇妙な事件が起こっていたんだ。
『顔が崩れる』というのは文字通りの意味で―――
口や目や鼻などのパーツがくるくると無分別に踊り狂うという『怪奇現象』。
その騒動により、患者が激減しているという話だった。

依頼主である院長はこれを『呪い』だと考え、
そういうのに強い、この俺と、もう一人の相棒、
 ………『Sくん』とでもしておこう………
この二人で直接、『美容外科』に乗り込み、調査する事になったんだ」

少々、長くなりそうな話だ。疑問点や意見があれば気軽に述べてみてもいいだろうし、
逆に要点だけ話して欲しければそう促すのがいいかもしれない。

15エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/25(月) 22:19:43
>>14

「……『ちゃん』でも『さん』でも『呼び捨て』でも、
 貴方が呼びやすい方で構わないわ。『門倉さん』」

 居住まいを正して、話に耳を傾ける。

 美しさを求めるための施設、『美容外科』。
 それなのに『顔が崩れる』というのは、比喩表現であってもひどい話だ。

「……『呪い』、ね。霊媒師か何かのご職業?」

 今のところ、特に疑問はない。
 黙って聞いていよう。

 『30分』もあるのだし、じっくりと話を聞きたいものだが……
 そこは門倉のペースに任せたい。今は特に急かしたりはしない。

16『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/25(月) 23:49:42
>>15(エヴァレット)

「『霊媒師』―――
  まあ当たらずとも遠からずと言ったところかな。

               俺は実は『超能力者』なんだ」

 冗談めいた口調で『門倉』がそう告げる。

「だからこの現象、『呪い』も
 誰かの『超能力』なんじゃあないかという
     推測の元、俺達は調査にあたったというわけさ。

 『超能力』といっても『何でもあり』というわけじゃあない。
 その生物の『精神の発露』というべき一定の『法則』や『一貫性』があるのが普通なんだ。

 ………まあ全ての『超能力』に触れたわけじゃあないから、
      この論には『そうであってほしい』という願望も含まれているけどね。

 とにかく、俺達は『顔が崩れる』現象の『法則』を探そうと
        『院長』や『スタッフ』に聞き込みを行った」

 『門倉』の語りはなおも続く。

「『院長』や他のスタッフの話を総合すると『顔の崩れ』は
 大抵、患者が『話をする場所』で起きていたらしい。
 俺達はその際の『録音』を入手したり、実際に『話の場』に立ち会って
 『顔の崩れ』を目の当たりにする事で『顔の崩れる』現場のサンプルを増やしていった。

  『謎』は大きく分けて三つあった。
   『何を象徴する能力なのか』、『犯人の動機』、そして、『発動条件』だ―――

 『顔の崩れ』………顔のパーツがバラバラになるなんていうのは
 このクリニックで『医療ミス』で『顔を崩された』恨みか何かの結果、出来た能力なんじゃあないか?
 なんて事も考えてはみたんだ。
 結果として『美容外科』の客足は途絶え、クリニックにダメージを与えているわけだからね。
 それなら『動機』としても、納得行く。

 ただスタッフや院長と話した結果、そんな事故が起こった雰囲気はなかったし、
 そもそも『復讐』というなら『スタッフ』だけを狙うのが筋だろう。
 話を聴く限りこの『呪い』は『復讐』というには『無差別』すぎる印象を受けた」

 ここで『門倉』は少しだけ話を切る。
 説明が足りない部分があれば確認してもいいだろうし、
 意見があれば述べてもいいだろう。もちろん更なる話を促してもいい。

17エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/26(火) 00:14:31
>>16

 『呪い』の次は、『超能力』。
 そこに加えて『法則』、『一貫性』。そして『精神の発露』。

 突飛な話かもしれないが、顔色を変えずに話を聞く。

「……『象徴』、『動機』、『条件』」

 そして、自分なりに門倉の話を噛み砕いてみる。

「……つまり、その施設に向けられた、誰かからの『悪意』や『恨み』。
 そして、その感情を理由にした『嫌がらせ』や『復讐』。
 それがこの事件の『真相』なのでは、と、最初に考えたということですね」

 『象徴』は医療ミス。『動機』は逆恨み。

 ありそうな話だ。

 例えば、かの有名な『ABC殺人事件』等では……
 本命のターゲットの命を奪うために、無関係の人間も巻き込んで、
 あたかも愉快犯的な犯行に見せかけていた、という。
 『無差別』の線も捨てきれはしない、かもしれないが……

「……続きを、お願いします」

 興味深そうに、身を乗り出す。
 門倉が話疲れたとかではなければ、そのまま耳を傾けたい。

18『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/26(火) 19:41:10
>>17(エヴァレット)

「………じゃあ、話を続けよう。
 ここで依頼主である『美容外科』の『院長』について簡単に語らせてもらうよ。

 彼女は30前半の独身の『女医』。
 仕事熱心な女性で、すぐ通えるように彼女の家はクリニックのすぐ隣にあった。
 『院長』を悪く言う者はスタッフにはおらず、
  それどころか熱心な崇拝者みたいなスタッフも居たんだ。

 『恨み』を買うタイプではない……とも言い切れないが、
 ――― 向上心のある者は不毛な『嫉妬』を受ける事もあるからね ―――
 少なくとも身近にいるスタッフから反感を買っているようにはみえなかった。

 こうなると『動機』の面から推し量るのは少々困難なように思えてきた。
 となると他のアプローチが必要になってくる」

  『門倉』は訥々と語る。

 「他のアプローチ、たとえばそれは、
 『象徴』―――『この能力が一体何を表現しているのか?』という問題だ。
 ただ、これに関しては必ずしも『これ』というものがない場合もあるんだけどね。
 『顔が崩れる』のはそういう能力なのであってそこには『モチーフ』なんて
 ややこしいものは存在しない!という可能性だって当然ある。

 だが、『象徴』があるのであれば、『犯人』に大きく肉薄できるかもしれない。
 拘泥しすぎてもいけないが、考える価値は十分にある問題と思えたんだ」

 『門倉』の話は続く。

「『顔が崩れる』のは、大体一分ほど。
 目や鼻や口がグルグルとランダムに動き回り、
 そして一分経つとそのパーツは固定され、しばらくは元に戻らない。

 逆に言えばある程度の時間が経つと自然に『元に戻った』ので、
  一時的なパニック・ショックを引き起こすが
   本当に深刻な問題にはなっていなかったんだ。

 ………そして、今言ったのはあくまで一般の人が見た場合の『現象』だ。
     『超能力者』である俺、および『Sくん』には、現場を『視た』事で
     この『現象』が『小さな手』によって引き起こされる事が分かったんだ。

    『顔が崩れる』現象が始まると『小さな手』がふっと現れ、
                     顔のパーツを掴んで動かす………
             一分ほどでその『小さな手』は消えてしまう………

                            ―――そんなカラクリさ」

19エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/26(火) 20:49:04
>>18

「…………なるほど」

 相槌を打ちながら、頭の中で話を整理する。

 『院長』は仕事の出来る女性で、部下を惹きつけるカリスマがあった。
 『悪意』や『嫌がらせ』が目的なら、院内の人物の犯行とは思い難い、という。

「……例えば、包丁を使って殺人事件が起こったなら、
 その犯人は料理人かもしれない、みたいなことかしら?」

 例えば、『傷を治す』能力。
 それを、『医療』によって治すのか、機械のように『修理』するのか。
 犯人の『精神』の発露が、その手段の差を生む。
 『象徴』が判明すれば、それが大きな手掛かりとなる。

 とはいえ、

「……『ちいさな手』。それが、超能力の『象徴』?」

 今のところ、皆目見当がつかない。首を傾げながら、話の続きを待つ。

20『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/27(水) 10:54:28
>>19(エヴァレット)

「まあ、そういう事だね。現実では包丁は誰にでも使えるんだけど、
 『超能力』においては『包丁をモチーフに使った必然性がある』可能性が高い。
 おそらく人間の精神に『一貫性』を求める本能みたいなものがあるんだろう。

 たださっきも言ったけど、そうじゃあない場合もあるから断定は出来ないんだけどね。
 『悪夢』みたいにすべてがちぐはぐな能力もある」

  『門倉』が『エヴァレット』に応える。

「『小さな手』………そしてそれによって齎される『顔が崩れる』現象。
 幸いな事に、今回の場合、この一連の現象は確かに『象徴』、何かを『モチーフ』にしたものだった。
 そして、正直、俺には見当もつかなかったが、相棒の『Sくん』が見事に『答え』を導き出してくれたんだ。

 ―――どうだろう? 今までの話で君には、
      この『超能力』が何を『象徴』、『モチーフ』にしているか分かるだろうか?

  ………これに関しては当初言っていた残された『謎』じゃあないし、
      馴染みのない概念に関するいきなりの『問題』だ。
      分からなくて当然だろうし、気楽に考えてみてくれていいよ」

                    『門倉』がこんな問いかけをしてきた。

21エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/27(水) 21:37:48
>>20

「……優秀なんですね、その『相棒』の方」

 『ちいさな手』が現れて、顔のパーツを動かしてしまう。
 それが超能力の『象徴』だというが……自分には、まだ当てられる気がしない。

 しかし、『相棒』は見事に言い当てた。
 冴えていれば、これだけの情報でも十分に推理が可能、ということなのだろう。

「……『顔が崩れる』、というと、まるで自然に溶けてしまったみたいだけれど。
 これはきっと、その『ちいさな手』が見えない、超能力を持たない人々の表現なのね」

「……どちらかというと、『顔を弄られる』、といった感じかしら?
 現場が『美容外科』というのなら、『整形手術』とか『お化粧』とか……
 ……けれど、そうすると『ちいさな手』というイメージが、ちょっと合わないかも」

「……パーツを掴んで動かす、というのは『パズル遊び』みたい。
 でも、『パズル』って、むしろ『正しい位置』を探すゲームよね。
 もともと『正しい位置』にあったものを、どうして崩してしまうの……?」


「…………、分からないわ。降参」

 答えを待つ。

22『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/27(水) 22:41:12
>>21(エヴァレット)

「優秀―――そう、優秀なんだ、『Sくん』は。
 そして君も、これだけの情報でそこまでの推理が出来るのは素晴らしいと思うよ」

   『門倉』はその顔に軽い笑みを浮かべる。

「『パズル遊び』―――その発想はとても良いね。
 『顔が崩れる』様は確かに何か遊んでいるような動きをしていたんだ。
  そして、日本には『顔のパーツを動かして楽しむ伝統遊戯』があるだろう。

     ………

   ここまで言えばもう分かったと思うけど―――
                               ・ ・ ・
                   そう、この現象は『福笑い』を象徴していたんだ」

23エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/27(水) 23:29:54
>>22

「……『福笑い』。ええ、やったことがあるわ」

「……のっぺらぼうのような顔の上に、目や鼻、口を並べていくパズル。
 日本では、新年の伝統的な遊び……だったかしら。
 確かに、これならパーツが『正しい位置』からズレていても、それが完成図になる……」

 答えに納得して、頷く。

 『福笑い』というお遊びに興じる『ちいさな手』。
 愛らしい能力だ。……場所とタイミングが最悪だった、というだけで。

「……けれど、つまり。その超能力の使い手は、
 『美容外科』の人々の顔で『福笑い』をしていた……そういうこと?」

 しかし、そうなると、難しいのは『動機』じゃないだろうか。

「……『悪意』にしては、ちょっと微笑ましいわ。それとも、『遊び半分』みたいなことかしら」

24『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 00:03:42
>>23(エヴァレット)

「そうだね。『悪意』というには違和感がある能力。
 『遊び半分』………そちらの方がまだしっくり来る。
 となると『愉快犯』あたりか? とも思えるけど―――」

  『門倉』の話はもう少し続く。

「さて、最初に口を滑らせてしまったし、
 あまり勿体ぶっても冗長になるからズバリ言ってしまうと、
 この事件の『犯人』は『少年』だったんだ。

 つまり『少年』がこの『超能力』を行使し、
    『美容外科』で『顔のパーツを入れ替えて』いた―――

  そして、この『少年』は実は『院長』の子供だったんだ。

 『独身』である『院長』は、この『少年』の存在を隠していた。
 『未婚の母』という形になるし、仕事をする上で子供の存在が
 支障になってしまった事もあったようだからやむを得なかったのかもしれないが………。
 『子供』を実の祖母に任せきりで『院長』は仕事に没頭していたんだ。

  というところで………

 これも解決している『謎』ではあるんだが、折角だから訊いてみようか。
 この事件の『子供』の『動機』―――これは一体なんだったのか?

         この『謎』も本題ではないし、気楽に考えてくれればいいよ」

25エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/28(木) 19:58:37
>>24

「……『子どものいたずら』だった、ということ?」

 獅子身中の虫、というのは、確か「身内の犯行」を示す言葉だったか。
 それにしたって、院長にとっては予想外の内部犯だったに違いない。

「……祖母がお世話をしていた、ということは、たぶん相応の年齢でしょうね」

 超能力が『精神の発露』というのならば。
 『ちいさな手』や『福笑い』という『象徴』は、少年自身の未成熟な心をそのまま反映したものだろうか。

「……そうね。父親はその姿さえ知らず、母親はいつも仕事で忙しい。
 子どもの心は、大人が思うよりもずっと敏感だから……
 自分の存在が母親にとってどういうものなのか、なんとなく察していたのかも……」

「……寂しい。つまらない。構ってほしい。お母さんと一緒に遊びたい。
 だから、『福笑い』が『母親の職場』に現れた。……そんなところじゃないかしら」

 少年の境遇に同情する。
 誰が悪い、ということも、ないのだろうけれど。

26『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 20:55:47
>>25(エヴァレット)

「君の推測は、やはりなかなか冴えているね。
 彼、ふくす………『Fくん』は、5才くらいだったはず。

 彼の『能力発動』の根底には確かに君の言う通り、
 『母親と一緒に遊びたい』という思いがあったんだ。
 単純に『母親』が居ない『寂しさ』もあっただろうし、
 古めかしい遊具を用いた老婆との遊びは『退屈』だったのもあるだろう」

  『門倉』は『エヴァレット』の答えを受け、語る。

「だが、気を引きたいと思いからの『いたずら』だったわけじゃあないんだ。
 彼には彼なりの『論理』があり、『思いやり』があった。

               ・ ・ ・ ・
 つまり、彼は彼なりに『手伝って』いたんだ。母親の『顔のパーツを整える』という仕事をね。

 『Fくん』は自分が手伝えばその分仕事が早く終わり、
 『母親』が彼のもとに早く帰って来るようになると思った。
 そして、実際、『母親』は早く帰れるようになり、『Fくん』の思いは達成された。

  ただ、それは『患者』が来なくなるという
   『Fくん』の考えとは真逆の現象から引き起こされたものだった、というわけさ」

27エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/28(木) 21:23:24
>>26

「…………名前を隠しているの、もう意味がないと思うわ……」

 ビジネス=マンたるもの、体裁というのは大事なのだろうか。
 それ以上は、敢えてツッコまない。

「……なるほど。『顔のパーツを整える』、ね。
 『美容外科』のお仕事なんて、子どもには難しいもの。
 もしかしたら、母親や祖母からの仕事の説明が、その程度だったのかも」

「……お母さんの仕事を手伝いたい。健気なイイ子ですね」

 幼い子どもにとって、親というのは世界のすべてだ。
 父親のいない『Fくん』にとって、たった一人の肉親である母親の存在は、どれほど重要なものだったか。
 その役に立ちたい、と思うのは、心の成長のあらわれだろう。

「でも」

「……『手伝っていた』。それ、『Fくん』が自分で言ったのかしら」
「その子、何歳くらいだったんですか?」

 話の続きを待ちながら、その二つを尋ねる。

28『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 22:25:31
>>27(エヴァレット)

「今の話は、『Fくん』は聞いた話ではあるよ。
 そして彼は『5才』………うん、『5才』だったはずだ」

 『門倉』が応える。

「まあ表面上での話なのかもしれないけどね―――
 俺は『超能力者』ではあるけども、『読心術』を持っているわけじゃあない。
 心の本当の内の内までは分からないのさ。

                ………『でも』、と言ったけど、何かひっかかる事がある?」

『門倉』が『エヴァレット』の様子を窺う。

29エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/28(木) 22:47:01
>>28

「…………いいえ。話を遮って、ごめんなさい」

 『5才』。

 自身の幼少期に思いを馳せる。
 それほどに幼い時分、果たして母の手伝いなど申し出ただろうか。
 遊びたい盛りで、迷惑ばかりをかけていた気がする。

「……利口な子なのね。頭が下がる思いだわ」

 それだけに、裏目に出てしまったというのが不憫だ。

「……続きを、お願いします」

30『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/28(木) 23:35:50
>>29(エヴァレット)

「賢い子であると思うけど
   このケースでは裏目に出たという感じだね。

  そして、だ。そろそろ本題に入ろう。

   さっき言った三つの『謎』というのは覚えているかい?

    『何を象徴する能力なのか』、『犯人の動機』、『発動条件』―――

    このうちの前二つはすでに説明したね。
     この二つが分かった事で一応、
        『呪いの正体をつきとめ、これを止めさせる』という
                  任務は『達成』出来たわけなんだけど………」

  『門倉』が少しだけ眉をひそめる。

「『発動条件』―――
  これだけが結局分からずじまいだったんだよ。

 『超能力』の理解というのは本当に個々人で違ってね、
   すぐに完全に理解出来る者もいれば、ずっとよく分からない者もいる。
     『Fくん』に確認しても、『発動後』に『小さな手』を動かすというコントロールは出来るものの、
     いつ『発動』、つまり『小さな手』が使える状況になるのか、
              その条件は本人にも分からないんだというんだ。

 『超能力』の発動条件というのは様々でね、
  『常人には見えない像を作り、それで触る』とか
  『見たものに発動する』あたりがわりとメジャーな発動条件かな。
   ただ、今回、『Fくん』は少し離れた場所から
    相手を認識せずにいきなり能力を発動させていた。
    この場合、『何かしらの条件を満たした対象に能力を発動させる』、
     『条件発動』の可能性が高いと思われる。

  そして『顔が崩れる』のは崩れた本人が『話している時』だった。
  この事から『話している内容』の中に『発動条件』があるんじゃあないかと推測される―――

    されるんだが………そこからが問題でね。
     その『条件』が結局よく分からないまま現在に至るというわけだ。
      母親である『院長』には続けてその解明も『依頼』されているんだが、
              どうにも成果が上がっていない、とまあそういうわけなのさ」

31エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/29(金) 18:14:33
>>30

 『象徴』は『福笑い』。
 『動機』は『母の手伝い』。

 そして、残るは『条件』だが……

「『Fくん』の意思は関係なくて、特定の条件を満たした時に発動する、ということね」

 門倉の説明を、ある程度かみ砕いて理解する。
 それにしても、確かに厄介な事態だ。
 分からないまま放ってはおけないだろうし、母親の心配する様子が目に浮かぶ。

「……つまり、その『超能力』のトリガーになっているのが、
 何かを『見た』とか、何かに『触れた』のではなくて。
 誰かが何かを『言った』、もしくはそれを『Fくん』が『聞いた』んじゃないか、ということね」

「……その『美容外科』と『Fくん』のいた場所って、結構近くだったのかしら。
 それとも、『Fくんの聴力』とその『超能力』の効果の範囲って、分けて考えるべき?」

 『言った』のか、それとも『聞いた』のか。
 これは、結構大きな違いだ。……いや、そんな気がする、というだけだが。

 というのも、もし『聞いた』ことで発動するというのなら、対処が簡単だからだ。
 母親には、「『Fくん』が職場の会話が聞いてしまわないように工夫してください」、と言えばいい。
 万が一、謎が解けなかったとしても、一先ずの処方にはなる。

 ……まあ、その辺りは自分には関わりのあることではなく、門倉の領分となってしまうだろうか。
 男の人の仕事に、あまり口を挟みすぎてもはしたない。
 謎解きに意識を戻す。

 『超能力』とやらが、本人の『精神の発露』というならば。
 たとえ、その発動自体は、『Fくん』本人の意思に寄らないものであったとしても、
 そのトリガーは、彼の精神と深くかかわりのあるものかもしれない。

「……その、『話している内容』。いったい、どんなことを話している最中に『崩れた』のかしら」

 門倉の返答を待つ。

32『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/29(金) 21:37:43
>>31(エヴァレット)

「『Fくん』が聞いたというわけじゃあないな。
 『Fくん』は基本的にクリニックの隣の家に居た。
 といっても『超能力』によっては離れていても声を聴く事は可能なんだけどね。
 『Fくん』自身に確認したら、聞こえてはいなかったようだからこれは確かだ。

 だから、本人の認知に関わらず、
  『クリニックでの発言』が対象になっている可能性が高い」

  『門倉』はそう言いつつ、
   自身のビジネスバッグから、『スマホ』を取り出した。

「そして、『話している内容』についてだけど、
 録音したものだったり、改めて本人から確認したり、
 『Sくん』に覚えているのを教えてもらったりして
 時間をかけてなんとかほぼ『録音』を集める事が出来た。
 これを何回かリピートするから、ちょっと考えてみて欲しい」

 そう言うと『門倉』はスマホを操作し、いくつかの『音声』をそれぞれ何回か、再生した。

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1534589466/648n

(※上記URLの六つの例を再生※)

33エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/30(土) 04:04:36
>>32

「……なるほど。離れた場所の声を聴くことも、『超能力』の一部に含まれる、ということね」

 頷きつつ、スマホから流れてくる『音声』に耳を澄ませる。
 英国出身の淑女なので、他人の話を淑やかに聞いていることは得意だ……。


 ……………………。


  一件目、『戸葉 彩絵』。
  収入に関する自論と、ライバル視していた女性への嘲笑。

    => 「……自論は面白いけれど、フツーに軽蔑するわ。
           『Sくん』という方、よく黙って聞いていましたね。大人なのかしら」

  二件目、『板槻 羽音』。
  「自信をつけたい」という相談、睡眠不足に関する悩み。

    => 「…………どっちかというと、鬼塚さん。
           彼女の方に、カウンセリングを受けさせた方がいいんじゃない?」

  三件目、『上条 沙織』。
  姑と夫から受けている仕打ちと、離婚について。

    => 「……同情はするけど、ちょっと被害妄想が入ってそう。
           そんなに周りから責められて、自分に省みるところはないのかしら」

  四件目、『多摩川 糸子』。
  職場での待遇の不満。

    => 「……何故そんなひどい職場に、ずっと留まっているの?」

  五件目、『玉置』。
  自分を騙した元恋人についての思い出。

    => 「この人、絶対にまた引っかかるわ。『絶対』。」

  六件目、『斉出 進太』。
  女性への偏見と、モテることへの執着。

    => 「……『モテる』ためにやってるから、『モテない』のだと思うわ」


 ……………………。


「……『話題』には、共通点になりそうなものは見つからないですね」

 散々に好き放題ぶった切ったので、喉が渇いた。
 店員を呼び止めて、お冷水を頼みたい。

「……この話の最中に、『顔が崩れた』のですよね。
 他にも、これまでの『推理』のようなものってあるかしら?」

34『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/30(土) 13:15:03
>>33(エヴァレット)

『エヴァレット』が水を頼むと気だるげな店員が力なく頷く。
『エヴァレット』の『感想』には、いちいち『門倉』が大げさに頷いてくれた。

「そう―――『内容』についてはバラバラ。

 まあ、『愚痴』や『悩み』が多いといえばそうだが、
 この美容外科では『カウンセリング』と称して
 たくさんの患者の『悩み』を聴いている。
 その中で能力が発現したのは、ごくごく一部。
 また、ただの雑談時に能力が発現した事もあるらしい。

 そうなると単純に『悩み』や『相談内容』がトリガーだとは考えづらいと思うね。

 ………もちろん、見抜けていない『共通点』があるという
                     可能性は否定出来ないが………」

 『門倉』が持論を述べる。

「幼児の能力だし、そういう大人の話題や感情の機微を
 対象にしていると考えるより、もっとシンプルな話なんじゃあないかとも思うんだ。

 もっとこう幼児にふさわしいような………

  つまり抽象的な『話題』や『感情』に反応しているわけじゃあなく、
   もっと具体的な『単語』のようなもの。
    ただ、単純に一つの『単語』ならすぐ分かるだろうし、
      『複数』存在するようなもの………
        たとえば『果物の名前』とかそういうものなんじゃあないか?

    あとは、それは『意図せずに発した言葉』なんじゃあないか?
     という考えもある。皆が意識的にその単語を出しているのなら、
      わりとすぐに見つかりそうなものだからね。

   ………

       とまあ、色々意見を踏まえここまで考えてはいるんだが、

                          それ以上がなかなかね………」

 『発動条件』―――

    『門倉』の言う残された『謎』―――

                  その正体はいかに―――

35エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/30(土) 22:46:40
>>34

「……『悩み』や『相談内容』とは、関係ない『発動条件』」

 これまでの門倉の推論を、頭の中で反芻する。

 『特定の条件』で発動する超能力。
 そして、被害者になったのは『美容クリニック』にいた、『ごくごく一部』の人々。

 つまり、本来ならば、『美容クリニック』では通常は出にくい、関係ないような『条件』。
 彼らが、『たまたま』踏んでしまったというだけで……
 会話が長引いてしまった中で、『文字列』として入ってしまったのかもしれない。

 そして、超能力の主は、まだ5歳の『Fくん』。
 その『精神の発露』ということを考えると、彼にとって馴染み深いもの。

「……そして、能力の象徴は『福笑い』」


「…………、……」


     > 「…………『それだけで儲かる、大金が入る』」

       > 「……『ハハハ、寝つきの悪い日々が続いていた』」

         > 「……『時折ガミガミ言うだけなら可愛げがあった』

     > 「『ハケン黙ってろ』」

       > 「『更科ケン、騙せるような男じゃない』」

         > 「『確実に落とす語録集』」


「…………『遊び道具』?」

36『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/30(土) 23:21:21
>>35(エヴァレット)

「………『あそび』

        ……『どうぐ』……?
                    ・ ・ ・ ・
                  『遊び道具』だって!?」

 『門倉』は目を見開き、『エヴァレット』の言葉を反芻する。

「………確かに。
  ………確かに『Fくん』の部屋に初めに入った時に
        目についたのはたくさんの『遊具』だった。
      ただ、それは『当たり前』すぎる光景だったんで、
                特に気には留めていなかったが………

  そもそも能力の『福笑い』自体が『遊具』、『遊び』だ。
   そして、彼が、母親と『一緒に遊ぶ』事を求めていたというのであれば―――

 ………しかし、
          しかしだよ?

               『録音』に入っていたかい? そんな単語」

  『門倉』の半信半疑という表情。
   『遊び道具』の単語を彼は見つけられていないようだ。

37エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/30(土) 23:56:22
>>36

「……いいえ。そんな『単語』は入っていないわ」

「……入ってしまったのは、『文字列』。
 『意図せずに発した言葉』だと、門倉さんが言っていた通りよ。
 別々の単語を繋げたなかで、偶然にも……その『文字列』が出来上がってしまった」


「例えば、【門倉さん、スーツが似合いますね】という言葉の中に、『さんすう』が入っているように」


    「……『戸葉 彩絵』。 【それだけでもう『カル タ』いきんがはいる】」

    「……『板槻 羽音』。 【はは『ハ ネツキ』のわるいひびが】」

    「……『上条 沙織』。 【とき『オリ ガミ』ガミいうだけなら】


    「……『多摩川 糸子』。 【は『ケン ダマ』ってろ】」

    「……『玉置』。 【さらしな『ケン ダマ』せるようなおとこじゃない】」

    「……『斉出 進太』。 【かくじつにおと『ス ゴロク』しゅう】」


    「……いずれも、『福笑い』と同じ。日本における、伝統的な遊戯よね」


「……子どもの遊びだもの。
 『美容クリニック』では、なかなか触れる話題ではないでしょう。
 被害者の人々も、その『単語』を認識して言葉を発したわけではないから、気づかれにくい。
 ……そして、まだまだ幼いはずの『Fくん』が知っていても、まったく不自然ではない言葉たち」


「……『お手伝いがしたい』、だなんて。『5才』にしては、健気な建前よね」


「……本当は、『母親と遊びたい』、という気持ちの方が強かった。
 超能力が『精神の発露』だというのなら、この『発動条件』こそが、その『動機』を裏付ける証拠に見えるわ」

38『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/31(日) 00:24:06
>>37(エヴァレット)

 会話の中の『遊び道具』の文字列を次々に指摘する『エヴァレット』。
  その言葉にあわせ『門倉』が自身のスマホを操作し、
  録音を再生、『答え合わせ』を行う。

 ………
      ………

                   そして。

「―――本当だ。まったくもって君の言うとおり。
     『発動』時にはすべて『遊び道具』の名が入っている。

    そしてこれらはすべて、『Fくん』の部屋にあった………
                  『老婆』が用意した昔ながらの玩具………。

   『動機』の補強も筋が通っているし、
         そもそもこれだけ合致しているのに、
              間違いというのはまずありえないだろう」

        ふ ゥ ゥ  ゥ

 『門倉』がついた溜息は感嘆によるものだ。

「いや―――『凄い』。
 事件の大半を解いた『Sくん』も凄かったが『Eちゃん』も凄い。

  この町の若者は本当に素晴らしいよッ!」

すでに事件の関係者にされてしまったのか、
興奮して『Eちゃん呼ばわり』してくる『門倉』をよそに
やる気のない『店員』が『お冷』を『エヴァレット』に運んでくる。

………何はともあれ、『エヴァレット』が
     残った最後の『謎』とやらを解きあかしたのは間違いがないだろう。

39エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/31(日) 00:43:24
>>38

「……なら、よかった。
 現場を見ていない私には、当て推量しかできないから……
 より詳しく事件を知っている門倉さんが『正解だ』と思うのなら、きっと正解なんでしょうね」


 ……この事件の『探偵』は、きっとその『Sくん』だ。

 エヴァレットには、『福笑い』という象徴を見抜くことは出来なかっただろう。
 『院長』に子どもがいることだって想定外だし、そもそも院内で上手く立ち回ることだって、出来たかどうか。

 『岡目八目』――――『読者』という立場だったからこそ、最後の謎だけは俯瞰で解くことが出来た。
 ちょっとしたズルみたいなものだが……とはいえ、それは口には出さない。

「……まあ、名前なら好きに呼んでいい、とは言いましたけど」

 何故か? 今から、恩を着せるためだ。

「……ええ、でも、本当によかったです。『お役に立てて』」

 店員がやってきたのを見計らって、ファミレスの『メニュー』に手を伸ばす。

「……支払っていただける、んですよね? 謎が解けたなら…………『なんでも』 」


  ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ・ ・ ・

40『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/05/31(日) 00:57:13
>>39(エヴァレット)

「え………?
  ………まあ
         いや………
              それは………」

 『門倉』は不穏な空気を察知する。
  『エヴァレット』はもう食べ終わっていた、と思い込んでいたようだ。

「………
      も……もちろんさ。
        君のような『頭脳明晰』、
          『容姿端麗』な女の子におごれるなんて
                      おれはしあわせだなああ」

『門倉』も店員に『お冷』を頼む。
喉が渇いたというより落ち着く為に、といった様子だ。

―――そろそろ『30分』が経とうとしている。
     『依頼主』と『Fくん』はまもなく来るのだろうが、
     それはそれ。別に何を頼んだって問題ないだろう。

41エヴァレット・ローレンス『ファーレンハイト451』:2020/05/31(日) 22:59:36
>>40

「……それじゃあ、お言葉に甘えて」

 にっこりと笑う。ニッコリ。

 メニューを広げて、デザートの欄を見つけると……

「……『レアチーズケーキ』を2つ。『テイクアウト』で、支払いはこの人に」

 注文して、メニューを閉じた。
 ついでに、隣のテーブルにあった『紙片』を引っ手繰って、門倉に差し出す。

 『伝票』だ。


       『 アイスコーヒー (L) ×1  ¥230 』


「……『ごちそうさま』」

 この話は、きっと自分の知らないどこかで結末を迎えたのだろう。
 ならば、『部外者』の自分は顔を合わせず、早々に去るべきだ……とはいえ、名残惜しいが。

「……とても楽しかったわ、門倉さん。縁があれば、また」

 一礼をして、会計に向かう。
 テイクアウト注文を受け取り次第、店を出よう。

42『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/06/01(月) 00:11:44
>>41(エヴァレット)
『エヴァレット』は『レアチーズケーキ』を二つ頼み、『伝票』を『門倉』に渡す。
常識的なその値段に、『門倉』はほっと胸を撫で下ろす。

「………ああ、こちらこそ。楽しかったし、助かったよ。
     これから来る『依頼人』達に堂々と会う事が出来るし、
     『Fくん』もこれでもっと生きやすくなるだろう」

               『門倉』は本心から喜んでいるようだ。

 ほどなくして『レアチーズケーキ』は届き、
  そして、別れの時が来る。

                        立ち去る『エヴァレット』。
                        手をふる『門倉』。


  ………

           「―――ああ、やっと理解できたな」


去り際、『エヴァレット』を見送る『門倉』の独白が背後から聞こえる。
振り返り、『門倉』の顔をチラリと見た『エヴァレット』は、
自分の推理が本当に正しかった事を理解する。

         くるくると目まぐるしく動く『門倉』の顔のパーツ。

そして、『エヴァレット』と入れ違いになるように入ってきた女性と赤ら顔の男児。

          『福』を名前に有する『Fくん』の
          『笑い』顔はこれからの彼の輝かしい
           未来を祝福しているようにも思えた。


                             『せんせいのかくしごと』 〜その後〜 →『了』

43『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/06/01(月) 00:36:53
>>2-42
は、以下のミッションの『補足』として開催した。

『せんせいのかくしごと』
ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1534589466/401-698

参加して下さった『鈴元』氏、今回参加して下さった『エヴァレット』氏両名に改めて多大な感謝。
以下、小ネタ。

※登場人物は全て『遊び』が元ネタとなっている※
※更に能力発動した患者の名前は『発動トリガーの遊び』が元ネタ※

<院長一家>
☆阿多 佳久子(おた かくこ)……女医。依頼人。
 名前は『お高く』止まっている、『オタ(絵を)描く』『オタ隠す(これはミスリード)』あたりの意味が籠められている。
 上記意味付けがメインの為、遊びとしての元ネタは少々苦しいが、あえて言えば『オタ描く』=『お絵描き』。
☆阿多 福助(おた ふくすけ)……主犯。依頼人の子。おたふく=『福笑い』が元ネタ。
☆阿多 ヌキ(おた ぬき)……院長の祖母にして福助の面倒を見る老婆。
                   名前の元ネタはタヌキ―――ではなく、ババ抜き(ヌキという名のババァ)。

<常勤スタッフ>
☆角田 連(つのだ れん)……ナースマンA。名前は、『角(かく)連(れん)ぼ』が元ネタ。
☆武藤 拓馬(むとう たくま)………ナースマンB。『武(たけ)馬(うま)』が元ネタ。武藤暮の弟。
☆鬼塚 郷子(おにづか きょうこ)……ナースA。ミスリード要員。『鬼』『郷子(ごうこ)』で『おにごっこ』が元ネタ。
☆武藤 暮(むとう くれる)……ナースB。武藤拓馬の姉。
                    『たけとんぼ(名前が【たけとうぼ】と読める)』が元ネタ。
☆水野 樹理(みずの じゅり)………タレ目の天然受付。『水』と『樹里(きり)』で『水切り』が元ネタ。

<被害者>
☆戸葉 彩絵(とば あやえ)………『絵戸(えど)』や『彩葉(いろは)』が元ネタ。
☆板槻 波音(いたつき なみお)……『板』や『波音(はね)』で『羽付き』が元ネタ。
☆上条 沙織(かみじょう さおり)………『上(かみ)』や『織(おり)』で『折り紙』が元ネタ。
☆多摩川 糸子(たまがわ いとこ)………『多摩(たま)』と『糸』で『けん玉』が元ネタ。
☆玉置(たまおき)………『玉』と『置く』で『けん玉』が元ネタ。
☆更科 健(さらしな けん)………『更(さら)』『健(けん)』で『けん玉』が元ネタ。
☆斉出 進太(さいで しんた)………『斉(さい)』で『進(すすむ)』で『双六』が元ネタ。

44『せんせいのかくしごと』 〜その後〜:2020/06/01(月) 00:45:00
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  禍福は糾える縄の如し。呪いも祝いも笑うが勝ち

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

戦隊ヒーローのような『お面』のヴィジョン。
『能力発動』時のみヴィジョンが現れる。

指定した場所で、本体の知っている『遊びの名前』を
口にした者の顔を『福笑い』にするのが能力。
『福笑い』になった相手に対し、本体の手の動きにあわせ、
自由に『顔のパーツ』を入れ替える事が可能。

入れ替える際には対象の顔の前に、
一対の本体と同じサイズの『小さな手』が浮かび、
その手が本体の手の動きと連動し、『パーツ』を入れ替える。
この『手』はヴィジョンというより能力の『象徴』に近く、
他スタンドによるものを含む、あらゆる物理的干渉を『透過』する。

入れ替え時間はおよそ『10秒』で、その時間が終わった後、
『顔のパーツ』は入れ替わった位置で『固定』される。
この際、顔のパーツがその機能を失う事はない。
(目や鼻や口がどの位置にこようが、見たり嗅いだり喋ったり出来るという事)
『固定』は一時間ほどで解除される。

『ディッシュ(笑)』 Dishwalla
破壊力:なし スピード:なし 射程距離:E(能力はA)
持続力:D 精密動作性:なし 成長性:A

・スタンド名の読み方は『ディッシュワラ』(スタンド名検索時に引っ掛かるように記載)。
 好きな戦隊モノのキャラクターから、事件後に本体が名付けた。
・(笑)にネットスラング的な悪意を感じない世代。
・能力下に入った者の大よその位置のみ本体は把握出来るが、
 肝心な『対象の顔』を把握する事が出来ない。
・また自分が何らかの方法で『視認している者』に能力施行は不可能。
 本体と対象との『距離』こそが『福笑い』における『目隠し』の役割を果たしている。

45『伝播のG』:2020/06/09(火) 22:53:02

『バードウォッチング』……野鳥を観察して姿や鳴き声を楽しむ事。
『バードウォッチャー』……野鳥観察を行う人。

46『伝播のG』:2020/06/09(火) 22:55:04

その日、『猫柳柚子』と『空織清次』は、
同じ喫茶店の隣り合う席に座っていた。
クラシカルなダークブラウンで統一されたウッド調の内装には、
静かで落ち着いた雰囲気が漂っている。
店の名前は『Priceless』――『価値あるもの』という意味だ。

「お待たせ致しました――――」

        コトッ
              コトッ

「――――どうぞ、ごゆっくり……」

流暢な日本語を話す西洋人らしい老年の主人が、
二人に『注文の品(何を頼んだかは自由)』を運んで来た。
丁寧に一礼し、彼はカウンターに戻っていく。
それを確認してから、『目の前に座る女』は話を切り出した。

「猫柳さん、空織さん――
 本日はご足労頂き有り難うございます」

そう言って、女は軽く頭を下げた。
ワインレッドのパンツスーツを着た『ツリ目』の女だ。
年齢は二十台半ば程だろうか。
髪は短く整えられ、こざっぱりした印象を与える。
赤いフレームの『フォックス型』の眼鏡を掛けていた。

            クレナイ ハカナ
「私は『アリーナ』の『 紅 儚 』と申します。
 どうぞ、お見知りおき下さい」

『アリーナ』――その概要は、既に説明されていた。
この町の治安維持を主な目的とする、
『スタンド使いの機構』であるという話だ。
猫柳と空織は、『アリーナの募集』に応じる形で、
今日ここを訪れている。

47空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/09(火) 23:32:28
>>46 (GM)


       『金』!


  一も二もなく『金』が要るッ!

   この街にもう一度『わたしの店』を構えるには、
   なにより『それ』が必要だ。


「――こちらこそよろしく。
 わたしは『空織 清次(くおり きよつぐ)』だ」


 わたしに『アイスコーヒー』を運んでくれたウエイターに
 片手だけのお礼を返すと、
 この席に座る全員に向けて自分の名前を告げる。


「……にわかには信じがたかったが、
 本当に存在していたんだな。
 君たちみたいな『スタンド使い』独自のネットワークが」


 「正直言って、わたしは偶然その網に引っかかっただけの
  ただの浮き草って感じがしなくもないが……

  そんな奴に頼む『アリーナからの依頼』とは、
  具体的になんなんだ?」


   チラ

 そう言いながら、相席している全員の様子をそれとなく見やる。



【所持品】
 財布、ミントタブレット、ハンカチ、名刺入れ
 スマホ、腕時計、結婚指輪

【外見】
 自分が仕立てた銘入りのスーツ上下とベスト、ラウンド型の銀眼鏡、革靴。
 撫で付けた髪を左に流して散らしている。身長177cm、痩せ型。

【簡易プロフ】
 34歳バツイチ、娘を亡くしてアルコール依存症になった元『テーラー』。
 夢はもう一度、この街で『仕立て屋』を構えること。

【能力詳細】
 右手で触れた物体を『糸状』にして吸収し、
 左手からその『糸』を放つ人型スタンド。

   『エラッタ・スティグマ』

 破壊力:C スピード:C 射程距離:D(5m)
 持続力:B 精密動作性:A 成長性:B

ttp://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/146

48猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/09(火) 23:43:06
>>46

「あたしは『林檎』」「できれば、名前で呼んでくれると嬉しいわ」
「こんにちは、これからよろしくね?」「うふふ」

まずは、隣に座るお兄さんに挨拶を。これから協力してお仕事に当たるわけだから、仲良くしておいて損はない。
そして喫茶店の内観や客足をチラリと見ながら、軽く足を揺らしている。
ウチの店とは少し雰囲気が違うけれど。静かな時間を過ごしたい、そんな上品な人にはこういう場所がいいのかもしれない。
ただ、この店とは直接関係ないけれど、『priceless』という単語はあまり好きじゃない。
値段がつけられるものにだって、きっと価値はあるはずで───。


>「お待たせ致しました――――」

「あら、ありがとう」 ペコリ

自分に運ばれてきた『チョコレートパフェ』を受け取ると、早速スプーンで口に運ぶ。
うん、美味しい。雰囲気だけでなく、味もいい。思わずにこにことしてしまう。

「ええ、よろしく、儚さん」「それで、あたしたちはどこへ行って、何をすればいいのかしら?」

時々パフェに口をつけながら、話を聞く。
あまり実生活に影響が出るようなお仕事だと困るので、今回はこの格好だ。
一応、名前も『猫柳 林檎』ということにしておいた。




『所持品』バッグ(スマホ、お財布、化粧ポーチ、マッチ、名刺)

『外見』いわゆる『和ゴス』風の黒いドレスに、ゴツめの黒いブーツ。
    セミロングの藍色の髪(ウィッグ)を赤いリボンで縛り、今回はツインテールにしている。

『簡易プロフィール』中学三年生。母子家庭で育てられたが、つい先日母親が失踪。自分の生活を守るために
          母親と瓜二つの顔を活かして、夜の街で女装をして同じ職業の『ホステス』として働いている。

『能力詳細』本体が纏うドレスのヴィジョン。
実体化したスタンド物質であり、これを纏う間本体はスタンドに干渉できる。
本体が無生物に触れ、摘むような仕草をすることで生地を抜き取り、本体が念じることでその生地のドレスに着替える。

『カーマ・カメレオン』
破壊力:C スピード:C  射程距離:E
持続力:B 精密動作性:B 成長性:C


ttps://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/comic/7023/1453050315/131

49『伝播のG』:2020/06/10(水) 00:53:23

>>47(空織)

空織は『先立つもの』を必要としている。
それゆえに、彼は『仕事』を引き受ける事になった。
全ては『再び店を持つ』という目標のためだ。

「ええ、改めてよろしくお願い致します」

紅儚は、丁重な口調で挨拶を返す。
『生真面目』な性格らしい。
空織の言葉を聞いて、彼女は深く頷いた。

「お気持ちは分かります。私も『同じようなもの』ですから」

「偶然『網』に引っ掛かっただけ――そういう『縁』でした」

それだけ言って、儚は言葉を切った。
彼女も、元は『浮き草』の一本だったのかもしれない。
しかし、それについて特に語る気はないようだ。

>>48(林檎)

今ここにいるのは『猫柳柚子』ではない。
『彼女』の名は『猫柳林檎』だ。
実生活に支障を来たさないという意味では、
『この姿』を選んだ事は、あるいは正しい判断だったのだろう。

「失礼しました、『林檎さん』。よろしくお願い致します」

自分に向けられた言葉だとでも思ったのか、
儚は林檎に謝罪の言葉を述べる。
『チョコレートパフェ』の味は上々だった。
派手ではなく、何処となく落ち着いた味わいだ。

    チラ

そして、『仕事仲間』である空織を見やる。
随分と年は離れているようだ。
普段『店』に来る客と大差ないように思えるかもしれない。

>>(両者)

「一からお話します。まず、『依頼者』は我々ではありません。
 我々は、あくまでも『仲介者』の立場とお考え下さい」

「『ある方』が『スタンド使いの協力者』を求めています。
 その方が、『アリーナ』を通じて『協力者』を募ったというのが、
 今回の経緯です」

儚の語る所によると、
正確な『依頼者』は『アリーナ』ではないらしい。
その人物が、『アリーナ経由』で仕事を依頼しているとの事だ。
彼女の話は続く。

「『依頼者』についてですが、
 これから『顔合わせ』をして頂きたいと思います。
 仕事の詳しい内容は、
 その方から直接聞いて頂くという形になりますね。
 目的地までは、私の車でお送り致します」

「――――ここまでで、何かご質問などはおありでしょうか?」

話し終えた儚は、二人の方に顔を向けた。
もし質問があれば、彼女は答えてくれるだろう。
特になければ、『現場』に向かう流れになりそうだ。

50猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/10(水) 01:13:09
>>49

清次さんを見る。余裕があれば、お店の宣伝もしておきたいけれど。
まずは、儚さんに訊ねてみたいことがある。正面のこの人へと向き直って。

「あなたたちは、『スタンド使い』の警官のような方々とお聞きしているけれど」
「今回、あたしたちのような人たちにお願いするのは、何か事情がお有りになるのかしら?」

一応、確認させてもらおう。
『アリーナ』のお仕事がこの街の平和を守ることなら、当然その中には
『スタンド使い』もいるのだろうけど。内部の『スタンド使い』で解決せず、
清次さんの言う通りにまだ実力の分からないボクたちに頼むからには、何か理由があるのだろう。
多分、人手不足か、あまり内部の『スタンド』をバラしたくない、とかだとは思うけど。
どんな組織なのかよく知っておきたいので、こんな質問もしておく。
お金は欲しいけれど、この人たちを完全に信用したわけじゃない。
こっち側の話は、夜の世界に少し似ている気がするから。

「あぁ、でも安心してね。どんな事情があっても、その『依頼者』の方にお話は伺うわ」
「『チョコレートパフェ』、とってもおいしかったもの。うふふ、ごちそうさま」

パフェの底にあるシリアルを食べ終えると、袖を合わせて軽く頭を下げる。
ボクは、その現場へ移動することに賛成した。

51空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/10(水) 01:29:48
>>49 (GM)

「………なるほどな。
 アリーナは『スタンド使いの斡旋業』もやっているわけだ。

 『スタンド使い』も下請けの下請けで
 派遣社員をしなくちゃならんとは、世知辛い世の中だな」


 とくに顔色も変えず、口先だけの軽口を叩く。
 時折コーヒーを口に運びつつ、
 紅を名乗る女の話に耳を傾ける。


「質問? そうだな……
 君は『赤』が好きなのか?」


  赤いスーツと赤い眼鏡を身に着けて、
  『紅』と名乗る目の前の女性に真顔で訊ねる。
  (これで『トマトジュース』を注文していたら100点だ)


 「……冗談だ。今のところ、わたしからは特にない。
  『身の危険』がないこと、それさえ保障されていれば」


  そう言って、隣の『林檎』を横目に見る。
  大人として、かつて出来損ないながら親だった一人として、
  こんな『子ども』を万が一にも危険に巻き込むわけにはいかない。
  そんなことになれば、この子の『親御さん』に申し訳が立つまい……。


「質問が思いついたら車の中でしよう。
 案内してくれ」

 そういって、席を立つ準備をする。

52『伝播のG』:2020/06/10(水) 15:57:09

>>50(林檎)

「『警察のような』という表現が出ましたので、
 それを引用させて頂きます。
 多少の違いについては、ご容赦下さい」

「まず警察の活動は、『市民の協力』なしでは成り立ちません。
 そして、『全ての警官』を、
 『全ての場所』に配置出来るとも限りません」

「――それが『理由』であると、お考え下さい」

林檎の考えている通り、
『全部』を明かしている訳ではないのだろう。
それは林檎達を信用していないからというよりは、
『社外秘』のようなものだ。
初対面の相手に全てを語らないのは、むしろ『当然』と言える。
他ならぬ林檎自身も、
他人には漏らせない『秘密』を抱えて生きているのだから。
しかし、儚の態度からは、
特に隠し立てをしているような様子は見受けられない。
おそらく彼女は『正義感』の強い性格で、
『信義』に欠ける行動を嫌うタイプだ。
『夜の世界』に慣れている林檎は、それが何となく感じ取れた。

「それは何よりでした。
 お会計は私の方で済ませておきますので」

林檎が立ち上がると同時に、隣の空織も席を立った。
その時、彼の視線が一瞬こちらに向けられる。
年の離れた林檎を気遣うような色を帯びた目だった。

>>51(空織)

「ええ、我々は確かに『力』を持っています。
 ですが、『スタンド使い』とはいえ、
 『人』である事に変わりはありません。
 『人』として生き、
 『力』に溺れて『人としての道』を踏み外してはならないと、
 私は強く心に留めています」

空織が放った軽口に対して、
儚は妙に熱の篭った口調で返してくる。
『思い込み』が強いタイプのようだが、
それだけではない響きがあった。
しかし、次の言葉を聞いて真面目な表情が崩れ、
やや戸惑いの色が浮かぶ。

「『赤』……ですか?はい、『赤』は私の好きな色ですが……。
 よくお分かりになりますね」

どうやら『当たり』だったようだ。
分かりやすい筈だが、儚は感心したような顔をしている。
もっとも、彼女が注文していたのは『エスプレッソ』だったが。

    ソッ

『林檎』と名乗る『少女』――それが今回の『パートナー』だ。
隣に座る空織とは、
親子に近い程の年齢差があるように見える。
『大人』として彼女を支える事を誓いながら、
林檎と共に席を立つ。

>>(両者)

「ありがとうございました……」

    カランッ

主人に見送られ、店を出るために入口の扉を開ける。
その時、開いた扉の隙間から、
一匹の『猫』が店内に入っていった。
『毛のない猫』だ。
そういう『品種』なのだろう。
通る時、『猫』は二人に視線を向けた。
ただ、それだけだ。
他には特に何もなく、二人は儚と共に駐車場へ移動する。

「――――空織さん、林檎さん。どうぞ、こちらへ」

           ガチャッ

駐車場には、一台のクーペが停まっていた。
やはりというか色は『赤』だ。
ドアを開けた儚が運転席に乗り込む。
助手席に座ってもいいし、後ろに乗ってもいいだろう。
二人が乗り込めば、車は『目的地』に向かう事になる。

53空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/10(水) 18:23:27
>>52 (GM)

「む………」


 『紅 儚』――わたしは『偽名』を疑っていたし、
 その『赤』も若干の『演出』っぽさを感じて
 鼻白んでいた。

 だが彼女、こうして話を聴くに思ったよりずっと『真摯』な……
 というより、相当『キマジメ』な性格のようだ。
 嘘がつけなさそう、と言ってもいい。


 その人柄の奥に潜む熱をかいま見たことで、
 わたしが『アリーナ』にたいして抱いていた
 『不信感』のほとんどが揮発してしまった気がする。


  「……………」


    それに 何より……


   「実に『いい趣味』をしているな……」


 真紅のクーペの正面で思わず立ち尽くし、
 唸るようにつぶやく。


 どこまでマジなんだ? この女。
 『赤』の『クーペ』を駆る『真紅』の『女仲介者』だと?
 ちょっと待ちたまえ。『役満』だ。


  さっきから『好感』の持てる要素しかないじゃあないか……!


「助手席にはわたしが乗ろう」

 しかしそのような精神的動揺はなるべく顔に出さないようにして、
 淡々とドアを開けて車内へと滑り込む。


 店を出るとき視界の端を『猫』が通ったらしかったが、
 特に気にとめることもない。


    ソワソワ


 今は密かにクーペの内装に夢中だ。

54猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/10(水) 20:49:26
>>52

「ふぅん?」「分かったわ、儚さん。ありがとう」

この答えは、どちらかと言えば『人手不足』が近いだろうか。
それとも元から『アリーナ』はそういう風に運営する予定だったのかな。
どっちだとしても、『アリーナ』は警官と違ってある程度は柔軟に動けるということだ。
逆に言うと、同じ秩序を目指していても法律に縛られないということだけど。
ただ、儚さんはウソをついてない気がする。夜の街で時々見かける警官の中にも、たまに似たような人がいる。
少なくとも、こちらを騙してヒドい目に合わせよう、なんて事はなさそう。

「それじゃあ行きましょうか」

立ち上がると同時に、隣の清次さんの視線を感じた。
この人はお客さんの中に時々いる、あまりそういうお店に慣れていないタイプみたい。
『センパイ』とかは、喜んで清次さんみたいなタイプを狙っていくだろう。
あぁ、この人はマトモな大人なんだろうなぁと思いながら、とりあえず首を傾げて笑っておくことにした。

「うふっ」 ニコッ

二人とも、いい人なんだろう。いい大人でよかった。
と、外に出ようとしたところでネコちゃんがお店の中に入ってきた。

「あらあら、ひょっとしてこのお店の『看板猫』なのかしら?」
「ばいばい、また今度お会いしましょうね」

本当なら、触ったり見ていたりしたかったけど。流石にそんな空気じゃないことは分かる。
名残惜しいけど、小さく手を振って入れ違いになったネコちゃんを見送った。
後ろ側の席に座り、儚さんが運転してくれるのを待つ。

「ところで清次さんは、家族はいらっしゃるの?」

移動中ヒマだから、質問しておこう。まぁ隠し事も当然だから、あまり意味はないけれど。
ボクを見る目に、何となくそういうものを感じたから。

55『伝播のG』:2020/06/10(水) 21:54:01
>>53(空織)

『紅儚』――本人は特に語らなかったが、偽名ではなさそうだ。
やたらと『赤』を強調しているのも、
単なる『好み』以上の意味はないらしい。
『性格』の方も、空織の分析通りだと思っていいだろう。

「…………お褒め頂いて恐縮です」

儚は少々照れ臭そうに頭を下げた。
汚れ一つない車体は、陽光を浴びて光り輝いている。
洗車したばかりのようだ。

    ガチャ
         ――――バタンッ

そして、空織は助手席に乗り込んだ。
外観と同様に、車内も綺麗に片付けられている。
視線を上に向けると、
サンバイザーにチラシが挟んであるのが見えた。
『Pro-Wrestling Stargazer』――プロレス団体の宣伝ビラだ。
儚は『プロレスファン』らしい。

>>54(林檎)

『毛のない猫』は、どことなく『知的』な顔立ちをしていた。
さも当然のように入っていった所を見ると、
やはり『看板猫』かもしれない。
少なくとも、勝手に上がり込んできた『野良猫』ではないだろう。

           トスッ

後部座席に腰を下ろす。
助手席の空織は、車の内装に目を向けていた。
『興味』があるのだろうか。
とはいえ、心ここにあらずという状態ではない。
呼び掛ければ気付いてくれる筈だ。

>>(両者)

「では、『現場』に向かいます。
 途中で渋滞がなければ、
 三十分ほどで到着するかと思いますので」

儚がハンドルを握り、真紅のクーペが颯爽と走り出す。
幸い、道路は空いており、彼女も運転には慣れているらしい。
目的地まで軽快なドライブが続きそうだ。
そういえば、自己紹介は済ませたものの、
まだ互いの『能力』は把握していない。
時間がある今の内に伝えておいてもいいだろう。

56空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/10(水) 22:46:10
>>55 (GM)

  「(意外ッ! それは 『プ女子』!!

   いや意外というか『逆に納得』というか)」


 『役満』に『裏ドラ』が乗った気分だが、
 今は突っ込むのをやめておこう。

 前方を見て彼女が通るルートを覚えることに専念する。



>>54 (林檎・会話)

>「ところで清次さんは、家族はいらっしゃるの?」


 「…………」

 ルームミラーから目をわずかにそむけ、逡巡する。


  家族については、あまり他人に積極的に話したい内容じゃない。
  とくに『彼女』のような子どもには……
  聞かせたところで、反応に困るだけだろう。


 そう思うが、この沈黙自体が
 一種の『答え合わせ』でもある。


 「…………君はどうなんだ?
  大人の中に紛れて一人、こんな『仕事』を受けようとしている。

  君の家族には、このことをちゃんと伝えてあるのか?」


 ルームミラーに視線を戻し、
 話の矛先を強引に林檎へと仕向ける。
 汚いやり方だが他に選びようもない。

57『伝播のG』:2020/06/10(水) 22:53:55
>>(両者)

(※会話は自由です。会話が終了するまでGMレスはありません)

58猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/10(水) 23:06:31
>>55-56

「ごめんなさいね。答えたくないこと、訊いてしまったわ」

この反応、いないわけじゃあなさそう。何かしら、負い目があるのかな。
どちらにせよ、気軽に答えてはくれなさそう。
あまり突っ込んで仲が悪くなっても困るし、この位にしておこう。

「あたしの両親はもういないわ。今はおばあちゃんと暮らしてるの」
「だから、お金はいくらあっても困らないわ。でも心配かけると申し訳ないから、秘密にしているの」

君はどうなんだと聞かれて、そのままを笑顔で答える。
本当は母親は失踪して、父親は会ったことがないんだけど。実際いないと言っても、そう変わらない。

「そうそう。ちなみにあたしの能力、『カーマ・カメレオン』は触れたものの性質に変化する『ドレス』よ」
「とってもキレイで、お気に入りなのよ。服の上に着ると邪魔なのがちょっぴり残念なのだけれど」

59空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/10(水) 23:29:08
>>58 (林檎・会話)

 「…………………………」


      「そ、」


 「そうか……」


 「それは…………
  こちらも配慮が足りなかったな。すまない。

  そういうことなら、
  わたしも君と『似た事情』ってことになるかな」


 林檎のあっけらかんとした告白に、
 訊ねたこっちが戸惑って髪をポリポリと掻く。


  自分が庇護すべき『子ども』だと見なしていた相手が、
  自分よりもはるかに『タフ』だった。
  その驕りを恥じる思いもある。



 「『カーマ・カメレオン』……
  なんというか……素晴らしいスタンドだな、そいつは。
  使ってるところをぜひ見てみたい……あ、いや、」


 林檎のスタンドに対しては率直な感想を口にする。
 その声には、『テーラー』としての好奇心が
 いくつか色を付けていた。

 TPOを弁えない好奇心を戒めるよう咳払いをしてから、
 わたしも自分のスタンドについて林檎に語りはじめる。


 「わたしは『スタンド』を使わずに済む問題なら、
  何事も使わないに越したことはないと思っている……」


   自分の身体に重ねるように
   ヴィジョンの右手だけを薄く発現して林檎に見せる。
   手の甲に『糸車』を埋め込んだマネキンのような手。


 「名前は『エラッタ・スティグマ』。
  能力は触れた物を『糸』に分解して『紡ぎ直す』こと。

  今回の件でも、こいつの出番がこないことを祈る」

  
   スタンドを解除し、前を向く。

60猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/10(水) 23:47:44
>>59

「別に、気にしないでいいのよ。清次さん」

「だって、あたしは」

「気にしてないもの」

曇り一つない笑顔で、そう言う。そうじゃない事を言っても、何も変わらないから。
同情を欲してしまえば、すべてを失ってしまうから。だから、ボクは笑う。

「あら、お揃いなの?それは嬉しいわ」
「うふっ。清次さんもあたしの『カーマ・カメレオン』を気に入ってくれたみたい。
 是非とも楽しみにしていてね。もっとも、『スタンド』を使っている時に、よそ見はできないかもしれないけど」

清次さんのスタンドを見て、少し驚く。人型のスタンドを見たのは初めてだから。
もっとも、自分以外のスタンドを見たのはこれが二回目だけど。

「そうね、穏やかにすむならそれが一番。あたしもケガはしたくないもの」

頷いて、ボクも前を見る。

61『伝播のG』:2020/06/11(木) 00:51:21
>>(両者)

『テーラー』を思わせる人型スタンドと、
本体が身に纏う『ドレス』のスタンド。
それは、まさしく『奇妙な一致』と言える。
この場に居合わせたのは偶然だが、
何かしらの『縁』があるのかもしれない。
『スタンド使いは惹かれ合う』という。
これも、『その一例』と呼べるだろう。

    ブロロロォォォォォ…………
                   ――――キィッ

やがて、クーペが停車した。
着いた先は『ラジオ局』の駐車場だ。
エンジンを切った儚が、二人に『名刺』を手渡してきた。

          スッ

「これをお渡ししておきます。
 『仕事』が終わったら、ご連絡下さい。お迎えに上がります」

┌─────────────――
│    株式会社Belladonna
│―――――――――――――――
│       研究開発部        
│                       
│         調香師          
│                       
│         紅 儚          
│                       
│     KURENAI HAKANA     
└─────────────――

『Belladonna』というのは『化粧品メーカー』らしい。
電話番号やメールアドレスも記載されている。
しかし、『アリーナ』については書かれていない。

「どちらかというと、私の『本業』はこちらになります。
 今回は『仲介役』を承っておりますが、
 『アリーナ』では主に『選手』をやらせて頂いています」

           ガチャッ

車から降りた儚が『ラジオ局』に歩き出す。
エントランスに向かうらしい。
ひとまず彼女についていけば良さそうだ。

62猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/11(木) 01:03:01
>>61

「…儚さん。『調香師』だったのね」「ちょっぴり意外。でも、ステキなお仕事ね」

車は大きなタイプだったし、中に格闘技のチラシみたいなのもあったから、
キャリアウーマンみたいな、ばりばり表に出て働くお仕事かと思っていた。
『調香師』といえば、『オーデコロン』などの香水の香りを調合する、繊細なお仕事だ。
ボクも女装をする時は、素顔がバレないよう最低限の化粧品をするし、
お客さんからプレゼントとして香水をもらう事もあるから、少しは知ってる。
名刺をバッグの中にしまった。

「あら、ありがとう。じゃあ、あたしもこちらを差し上げるわ」
「うふふ、また名刺交換しちゃった。ね、大人の人たちに混ざるのって楽しいわね」

そう言って口元を隠して笑って、『Bar 黒猫堂』『林檎』と書かれた名刺を差し出す。
お仕事用の電話番号と、メールアドレスも書いてあるものだ。

「『選手』?」「『アリーナ』って、本当に戦ったりするのね」
「そして、それを見て楽しむ人も!あたしには、あまり理解できないわ」

そう言って、『ラジオ局』に向かう儚さんの後を一緒に着いていく。
でも、『ラジオ局』。まさか、あの人もいるのかな。

63空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/11(木) 01:20:22
>>61 (GM)

「なるほどな……

 つまり君は最低でも『三つの顔』を
 使い分けているというわけだ。

 『仲介者』、『選手』、
 そして『調香師』……」


 わたしは受けとった名刺を、
 太陽にかざすみたいに頭上に掲げて目を細める。


 「それにしても……
  『調香師』!

  君の表の顔が、まさか『調香師』とはな……
  今日はなんと素晴らしい出会いの多い日だ」


 「人が身にまとえる『芸術品』は、
  『衣服』と『香水』の二つだけ」


   「それがわたしの
    『仕立物師』としてのポリシーだ。
    君の職務には敬意を表するよ」


 そう呟くと、
 紅の『名刺』を懐へと丁重に収め、
 彼女のあとにつづいて車を降りる。


 「だが…………目的地がまさか
  『ラジオ局』だとは思わなかったな」


 眉根を寄せて訝しげにあたりを見回しながら、
 紅のあとを追う。

64『伝播のG』:2020/06/11(木) 18:33:04

>>62(林檎)

「有り難うございます。私も、この仕事が好きですから」

林檎の言葉を聞いて、儚が表情を綻ばせた。
『夜の仕事』に従事している林檎にとって、
香水を始めとした化粧品は身近なものだ。
そうした点が、林檎と儚の共通点と呼べるのかもしれない。

「林檎さんも『名刺』をお持ちなのですか?」

    ジッ

「こッ――――『これ』は…………」

意外そうな表情をしながらも、
儚は『林檎の名刺』を受け取った。
そこに書かれた文面を見て、彼女の顔に驚きの色が浮かぶ。
しかし、儚も車内で林檎と空織の会話を聞いていたため、
深く突っ込んでこようという気はないようだ。
無言で名刺を収め、再び林檎に向き直る。
ただ、動揺しているらしく、あからさまに視線が泳いでいた。

「…………ええ、いわば『闘技場』のようなものです。
 『選手』にとっては『力を発散する場』でもありますね」

         ザッ

「実を言いますと、私が『参加している理由』の一つでして……」

              ザッ

「……お恥ずかしい話ですが」

                  ザッ

歩きながら、儚は自身の『出場理由』を語る。
格闘を『見る』だけではなく、
『やる』のも好きなのかもしれない。
隣では、パートナーの空織が周囲を見渡していた。

>>63(空織)

「――光栄です。私も、空織さんのご職業を心から尊敬します」

『衣服』を専門とする空織と、『香水』を扱う儚。
それが、二人の共通する部分だ。
パートナーの林檎といい、
今日は『縁』の多い日なのかもしれない。

「もちろん全ての職業は必要とされているのであって……。
 その……貴賎の差などはないと言いますか……」

「……いえ、何でもありません」

やや歯切れが悪い口調で、儚は付け加えた。
林檎から『名刺』を受け取った時、何やら驚いた様子だった。
理由は分からないが、もしかすると『そのせい』だろうか。

        ザッ ザッ ザッ

歩きながら、周囲に目を配る。
敷地内は、さながら『キャンパス』のように緑が配されていた。
街の中ではあるが、自然と調和しているような佇まいだ。
おそらく、それは計算されたデザインなのだろう。
『ラジオ局』自体の形も、一般的なオフィスというよりは、
どことなく『モダン』で『文化的』な雰囲気が漂う。

>>(両者)

       ガァァァァァ――――――ッ

自動ドアを抜け、二人は『ラジオ局』――
『星見FM放送』のエントランスに足を踏み入れた。
二階建ての建物だ。
階段付近は吹き抜けで、一角がガラス張りになっているなど、
全体的に洒落た造りになっていた。
大手の放送局のような規模ではないが、
機能的に纏まっているという印象を受ける。
やがて、先を歩いていた儚が立ち止まり、受付に呼び掛けた。

「先日お電話した『紅』です。『例の件』で参りました」

「紅様――ですね。少々お待ち下さい……」

受付の女性が、何処かに電話を掛け始める。
『担当者』を呼んでいるようだ。
やり取りを終えた儚は振り返り、口を開いた。

「私の役目は『ここまで』になります。
 じきに『依頼者』がやって来るでしょう」
 
「――――『ご成功』をお祈りします」

       スッ

儚が身を引き、二人に向けて一礼する。
彼女の仕事は『ここまで』だが、二人の仕事は『これから』だ。
成功するかどうかは、空織と林檎の手腕に掛かっている。

65空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/11(木) 20:52:33
>>64 (GM)

「? あ、あぁ……」


         「?」 「??」


 小首を傾げて、
 妙に歯切れの悪くなった紅を見かえす。

 林檎君の渡した『名刺』の中身に、
 妙な心当たりでもあったのだろうか?

 (こんな子どもが『名刺』を常備している時点で、
  すでに妙な想像力がはたらいてしまってるが……)


  二人のやりとりをそれとなしに耳に入れつつも、
  つつがなく進む彼女の受付処理を後ろから眺める。


 「…………む。
  そうか、『ここまで』か。
  では仕事が済んだら連絡する」


 半身を向けて、一礼する紅に手を挙げて返す。


 さて、『初仕事』だ。


 ネクタイや服のシワをササッとかんたんに調えつつ、
 局員たちがわたしたちに向けてくる視線をそれとなく眺める。
 (その視線によって、この『依頼』の局内での浸透度が
  どのくらいなのか推測してみたりする)

 そうして『依頼者』が来るときを待つ。

66猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/11(木) 21:03:51
>>64

「…儚さん。あなたも、いい人なのね」
「でも、大丈夫なのよ。気にしなくていいの。あたしは、あたしが選べる中で、最善を選んだと思っているわ」
「あたしよりも大変な子は、『夜の街』にたくさんいるもの」

両手を後ろに回しながら、笑顔で首を傾げる。
予想してたよりも反応が大きくて、『名刺』を渡したのは可哀想だったかな、と思ってしまった。
儚さんが気にしてもどうにもならないし、そもそも気にすべきことでもない。
いや、本当はボクの仕事に興味があったとかなら、大歓迎だけど。

「儚さん、戦うのが好きなのね。あたし、あまりそういうの見たことないけれど、
 儚さんの戦いは見てみたいかも。どんな風に戦うのか、面白そうだもの」

実際、ボクも職場が職場なので、自分の身を守るために格闘技の本は読んだことがある。
よく分からなかったけど。儚さんの戦い方は参考になるかな。
とにかく、儚さんの後についていって、清次さんと一緒に『ラジオ局』に入った。

「あはっ、オシャレな建物ね。あたし好きよ、こういうところ」

辺りを見回して呟く。
綺麗なラジオ局だ。開放感や見通しの良さがいい。住むならこんな雰囲気の家がいいな。
もちろん、そんなの遠い未来の話だろうけど。

「色々とありがとう、儚さん。あなたの面目にかけても、きっと成功させてみせるわ」

スカート部の裾をつまみ、一礼。儚さんを見送ろう。

67『伝播のG』:2020/06/11(木) 22:12:40
>>65(空織)

    サッ
        サッ

簡単に身だしなみを整え、さりげない観察を行う。
周りを見てみると、
来客である空織達に視線を向けてくる人間は何人かいた。
その中には、事情を把握していそうな者も混じっているようだ。
しかし、全員ではない。
現時点で予想される浸透度は『半々』という感じだ。

「ええ、また後ほど」

「――それでは、失礼します」

            コッ コッ コッ…………

そう言い残し、儚は立ち去っていった。
次に顔を合わせるのは、『初仕事』を終えた後になるだろう。
林檎と共に、『依頼者』を待つ。

>>66(林檎)

「………………」

    コクッ

儚は黙ったまま、ただ頷いた。
林檎のような年頃の『少女』が、夜の街で働く。
それは、決して普通とは言えない世界だ。
しかし、儚が闘技場に参加しているのと同じように、
林檎にも確たる『理由』がある。
だからこそ儚も、
『林檎の生き方』を尊重しようとしているのだろう。

「いえ、これが私の仕事ですから」

            ニコ

「――では、またお会いしましょう」

            コッ コッ コッ…………

最後に気遣うような表情を残し、儚は立ち去った。
空織と共に、『依頼者』を待つ。
それは、どのような人間なのだろうか。

>>(両者)

    スタ スタ
            スタ スタ
                     スタ スタ

やがて、階段から一人の女が降りてくる。
紅儚とは対照的に、ラフな格好をしていた。
スタジャン、ジーンズ、キャップ、スニーカー。
いわゆる『アメリカンカジュアル』と呼ばれるスタイルだ。
空織は初対面だが、林檎は見覚えがあった。

「どうも、こんにちは。
 今日は来て下さって、ありがとうございます」

「私、『美作くるみ』って言います。どうぞ、よろしくお願いします」

まず、くるみは空織に向けて頭を下げた。
年齢は儚と同じくらいだろう。
派手にならない程度に化粧っ気があり、華やかな顔立ちだ。

「何ていうか……かなり『意外な所』で会ったって感じね。
 今、凄くビックリしてるわ」

「また会えたわね――――『林檎さん』」

続いて林檎の方を向き、くるみが言う。
空織には、二人が『顔見知り』らしい事が分かるだろう。
そこまで親しいという風でもないようだが、
少なくとも初対面ではないらしい。

68猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/11(木) 22:22:03
>>67

目の前に現れた女性を、変わらずにこにこと見つめる。
予想外、とは言わない。この中のどこかで働いているんだろうっていう予想はしてた。
それでも、『依頼者』そのものだったのは少し驚いたけど。
でも、むしろ安心した。この人が依頼者なら、信用できるから。

「こんにちは、くるみさん。またお会いできて、嬉しいわ」
「この前のラジオも、『スマホ』で聴かせてもらったの。今度お電話しようと思っていたら、まさか直接お話しすることになるとは思っていなかったけど」

儚さんにしたのと同じように、一礼。
相変わらず『アメカジファッション』がよく似合う人だ。

「それで、くるみさんはどんなお悩みを抱えているのかしら?」
「…うふふ、今日はあたしが相談に乗る立場ね」

不謹慎だとは思うけど、ちょっぴり楽しくなって、くすくすと笑ってしまう。
この人も、良い大人だから。助けになってあげられるなら、頑張りたい。

69空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/11(木) 22:39:23
>>67-68 (GM・林檎)

 「……………どうも」


 これは……この依頼者は予想してなかった。

 局内の情報の浸透具合からみて、
 そこそこ上の方の局員、
 大体ホワイトカラーが来るものとばかり。


 目をパチパチと数回瞬かせてから
 あわててわたしも頭を下げ、
 懐から名刺を取りだして彼女に差しだす。


 「……空織 清次 (くおり きよつぐ)だ。
  今回は『紅』氏の口添えでここに来た。
  特殊な『依頼』がある、ということ以外には
  わたしたちは何も聴いていないのだが……」


  「………」
 

 と、知己の仲らしい二人のやり取りが耳に入る。

 林檎とくるみの顔を交互に見比べて、
 気が抜けたように髪をポリポリ掻く。


 「…………なんだ?
  君たちは知り合いだったのか?」

70『伝播のG』:2020/06/11(木) 23:45:08
>>68(林檎)

「ありがとう。
 是非これからもご贔屓に――と言いたい所だけど、
 『宣伝』は、このくらいにしておかないとね」

『依頼者』は『美作くるみ』。
『一般人』が『アリーナ』と関わりを持つ機会は少ないだろう。
逆に言えば、『力を持つ者』なら有り得ない事ではない。

「『悩み』というか何と言うか……。
 今ちょっと『厄介な問題』を抱えていてね。
 相談に乗ってくれると、本当に助かるわ」

そう言って、くるみは苦笑いをして見せた。
以前の彼女は、至って明るい雰囲気だった。
気さくな様子は今も変わらないが、『困り事』があるせいか、
前に出会った時ほどの明るさはない。

>>69(空織)

目の前に立つ『美作くるみ』は、
どう見ても『上層部の人間』には見えなかった。
しかし、『アリーナ』と何らかの『コネ』があるのは確かだ。
彼女が『依頼者』なのは、その繋がりと無関係ではあるまい。

「これはこれは、ご丁寧に……」

「空織さん、改めてよろしくお願いします」

    スッ

空織の名刺を受け取り、
くるみが『自分の名刺』を差し出してきた。
『Electric Canary Garden:パーソナリティー美作くるみ』とある。
名刺の隅には、
『デフォルメされたカナリア』のイラストが添えられていた。

「この前、街中で『スクーター』が故障しちゃいまして。
 それを直してる時に、少しお話をさせて貰ったんですよ」

『そういう事』のようだ。
くるみの世間話は、そこで終わった。
砕けた表情だった彼女の顔に、真剣な色が混じる。

>>(両者)

「とりあえず、『事情』をお聞かせします。
 立ち話も何ですし…………『詳しい話』は向こうの方で」

くるみは奥の方を手で指し示す。
正面がガラス張りになっており、
椅子やテーブル、ソファーなどが置かれた応接スペースだ。
歩き出そうとした時、くるみが立ち止まった。

「お二人とも、これを首に掛けておいて貰えますか?」

手渡されたのは、ストラップ付の『カードホルダー』だ。
その中に『入館証』が収められている。
外部の人間が局内を動く時には、これが必要になるらしい。

71猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/11(木) 23:53:58
>>70

「くるみさんも、『スタンド使い』だったのね」
「今日は『スタンド使い』のお友達がいっぱい増えて、楽しいわ」

推測半分で、声に出してみる。
が、そこでくるみさんの様子が以前とは違うことに気がついた。
なんだか疲れているような感じ。本当に悩んで、困っているみたいだ。

「大丈夫よ。今日はあたしだけじゃないの、清次さんもいるんだから」
「この人も、きっと良い人よ。あたしたちで、くるみさんをきっと元気にさせてみせるから」

そう言って『入館証』を受け取って首にかける。
これも何だか、大人の仲間入りをしたみたいで嬉しい。それに、やる気が更に出てくる。
よーし、と拳を握って気合を入れて、椅子のあるスペースへと向かっていく。

72空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/12(金) 00:15:14
>>70-71 (GM・林檎)

「『ラジオパーソナリティ』……」


 くるみから名刺を受け取り、
 一通りの情報を頭に入れる。


「……なるほど、そういう事情か。
 不思議な縁があるものだな」


 おかげで初対面の肩肘張った感覚はすこし抜けた。
 だが彼女の真剣な表情と声色を見て、
 受けとる『入館証』の重みを感じる。


  このようなかたちで局外の人間を、
  それも『スタンド使い』を必要とする『事情』とは?


 眉根を寄せていると、
 先を行く林檎から柔らかなエールが耳に入る。


「……そうだな、
 依頼されたからにはベストを尽くすよ」


 肩の力を抜き、朗らかな林檎の声に同意する。
 わたしも入館証を首に下げ、くるみの案内に従う。

73『伝播のG』:2020/06/12(金) 01:09:24
>>71(林檎)

「ええ、『あなたも』ね」

それが、くるみの答えだった。
おそらく『推測』は正しい。
そして、彼女の『力』だけでは解決出来ない問題である事も、
また事実なのだろう。

「――――ありがとう」

    ニコッ

「『パーソナリティー』が、いつまでも暗い顔してちゃダメね」

やや明るさを取り戻した様子で、くるみが笑う。
林檎の励ましが効いたようだ。
共に歩く空織にも、それは届いている。

>>72(空織)

「ありがとうございます。
 私からも、出来るだけのお手伝いはさせて貰いますよ」

          ニコッ

くるみの表情も、最初よりは幾らか柔らかくなっているようだ。
林檎のエールもあるが、空織の落ち着きある言葉も、
場の空気を和らげる事に一役買っている。
そして、空織は考える。
『スタンド使い』を必要とする事情。
『一般人』では『スタンドの問題』には対処出来ない。
くるみの言う事情とは、おそらくは『スタンド絡みの問題』だ。
だからこそ、空織達は呼ばれたのだろう。

>>(両者)

「――――大きな声じゃ言えないんですが、
 数日前に『放送事故』が起きたんです。
 『私の番組』じゃあなかったんですけど。
 本番中に、放送が数秒間ストップしちゃったんですよ」

「幸い『それ自体』は、そこまで大事にはならなかったんです。
 ただ…………」

二人が座ると、くるみは話し始めた。
『放送事故』――それが事件の発端だったらしい。
彼女は、更に話を続ける。

「ただ、『その前』が問題で。
 事故が起きる一日前に、
 ウチの局に『メール』が送られて来たんです」

「……『明日の放送中に些細なトラブルが起きる』――
 そういう内容でした」

くるみは、一旦そこで話を区切った。
何も起きなければ、『タチの悪い悪戯』で済まされただろう。
しかし、『そうはならなかった』という事だ。

74空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/12(金) 07:24:33
>>73 (GM)

 ときおり相槌を打ちながら、彼女の話を静かに聴く。

 彼女の語り口は楽譜のように淀みなく、
 抑制的な説明であってさえ独特の『華』が垣間見えた。

 『ラジオパーソナリティ』という職務にもまた、
 絶えまぬ研鑽の歴史があるのだろう。


 くるみが一呼吸入れたところで、
 現状の認識を共有するために口を開く。


「……それだけではなんとも言えないな。
 たしかに薄霧のような『不気味さ』と『悪意』を感じる話だ。
 君が不安を覚えるのも無理はない。

 だが……こういったメディア業界においては、
 ある種『常識的』なトラブルと思えなくもない」


 「わたしにはそれが
  (自分で言ってて妙な表現だが)――
  常識の範囲内に収まる『異常』に思える。

  常識の範囲とはすなわち『警察の範囲』ということだが」


「その事件に『スタンド』が絡んでいるという何かしらの確証、
 あるいは予感めいたものが、君にはあるのか?」

 呼び水のような質問を投げかける。
 その先に続く話を知らねばなるまい。

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76猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/12(金) 20:28:14
>>73


机に肘をつき、両手を顎の下に置いて話を聞く。
時々頷きながら、くるみさんが話し合えるのを少し待った。
そして、口を開く。

「ね、ね。その『放送事故』の原因はどこまでわかっているの?」
「例えばどの機械の元気がなくなっちゃったとか。電気が流れてなかったとか、電波障害とか。
 後はそうね、その番組の『パーソナリティー』の人が、お声が出なくなっちゃったとか?」

その質問の後に、改めて『ラジオ局』の内部を見回して。

「それとね、この中には防犯用の『監視カメラ』はあるのかしら?」

77『伝播のG』:2020/06/12(金) 22:15:54
>>74(空織)

「ええ、確かに空織さんの言われる通りです。
 この業界、『そういうトラブル』とは、
 切っても切れない部分がありますし」

「さすがに『日常茶飯事』じゃないですけどね」

    クスッ

ちょっとしたジョークを交えて返しながら、くるみは軽く笑った。
話を円滑に進めるために、
場が固くなりすぎないようにしているらしい。
そこには、『パーソナリティー』としての矜持もあるのだろう。

「……『それだけ』なら、私も同じように考えたと思います」

空織の見解は至極もっともだった。
謎めいており不気味ではあるが、
言ってしまえば『それだけ』なのだから。
当然、『そこで終わり』ではないのだろう。
くるみは『アリーナ』に連絡している。
それが必要だと判断する『何か』があったという事だ。

>>76(林檎)

「私は現場にいた訳じゃないんだけど、
 急にマイクの音声が途切れちゃったそうね。
 その時は新しいマイクに取り替えて凌いだみたい。
 でも、後から調べたら、
 何処もおかしくなってなかったって聞いたわ」

「ちゃんと電気は流れてたし、電波の異常でもない。
 それから、人為的な手違いも考えにくいわね。
 もちろん、プロでもミスをする事はあるわ。
 ただ、この点もチェックはされてるから、
 今回は信用して貰って大丈夫だと思う」

「『声が出なくなった』っていう事もなかったみたいね。
 原因らしい原因が見当たらない。
 要するに『原因不明』っていうのが正直な所ね……」

林檎が上げた幾つかの条件は、全て当てはまらないようだ。
『原因不明』のトラブル。
くるみが言ったように、その言葉が最も的確だろう。

「『防犯カメラ』はあるわよ。
 設置してあるのは主に重要な場所だから、
 全ての場所じゃないんだけど」

「――『警備員』の人達も見回ってくれてるしね」

話しながら、彼女は受付の近くに視線を向けた。
そこには、制服を着た若い警備員が立っている。
気のせいか、くるみが警備員の方を向いた時、
彼は僅かに目を逸らしたように見えた。

>>(両者)

「トラブった直後に局内で見たんです――――『スタンド』を」

「その時、私は自分の仕事で離れられませんでしたし、
 遠くの方にチラッと見えただけでした。
 でも、それが『スタンド』だったのは間違いありません」

「もちろん『トラブル』と関係してる確証はないですけど……。
 でも、今まで見かけた事がないですからね。
 『このタイミング』で現れたっていうのは、
 偶然にしては上手すぎますし」

『放送事故』と同時期に『スタンド』が目撃された。
それが、『アリーナ』を通して二人に依頼した理由らしい。
くるみは小さく息を吐き出し、話を続ける。

「――そしたら『二通目』が来ました。
 『I Love Me』の放送枠を縮小して、
 『Electric Canary Garden』の放送枠を拡大しなければ、
 また『放送事故』が起こる。
 ……かいつまんで言うと、そういう内容です」

「『I Love Me』っていうのは、
 『Electric Canary Garden』の前にやってる番組ですね。
 『事故』が起きたのは『I Love Me』の放送中でした」

そこで、くるみは再び一区切り入れた。
一気に喋らないのは、二人の意見を聞くためだろう。
『職業上の習慣』もあるのかもしれない。

78空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/12(金) 23:03:59
>>77 (GM)

「そういうことか……」

  「君が個人的に『アリーナ』に
   依頼した理由がよーくわかった」

 「そして、今の君の『微妙な立場』も」 


 『犯行声明』で番組時間の拡充を要求されていた
 『Electric Canary Garden』とはつまり……
 彼女がパーソナリティをつとめる番組だ。


 どんなに想像力のない人間だろうと、
 このトラブルを彼女の『熱狂的ファン』の仕業だと
 早々に結びつけてしまうだろう。


 「君としては今、
  非常に『気まずい』立場にいるわけだ。
  だから君自身が率先して、
  問題解決のために動こうとしている。

  ……君には一切なんの責任もないというのに」


 「困ったヤツもいるものだな」


 譜めくりのような無音時間が一瞬だけ訪れる。
 いくつか聴きたいことは思い浮かぶが、
 個別の質問は彼女が全容を話してからにしよう。

 くるみへ頷き、話の続きを促す視線を送る。

79猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/12(金) 23:23:13
>>77

「うーん、もし『スタンド』が原因だとしたら、『マイク』を故障させるスタンドなのかしら」
「何にせよ、仮に『スタンド』だとしても一般人の方には、『原因不明』なのでしょうけど」

くるみさんの説明を受けて納得する。
少なくとも、目に見える形で何らかの証拠が残ってるわけではなさそう。

「その止まった時間の前に、怪しい人影とかはなかったのよね」
「代わりにいたのは、その『スタンド』だけってことかしら」
「ねぇ、その『スタンド』はどんな形をしていたの?」

まずは聞いてみる。
見た目から、ある程度能力が予想できることもあるらしいから。
それにしても、やはりくるみさんは人気なんだなぁ、と思った。
本人は気付いてないかもしれないけど。

「ねえ、くるみさん。あの『警備員』さん、お名前ご存知?」

若い警備員さんの名前を訊ねる。
その後のお話についての意見は、清次さんと同じ。
ファンの仕業か、それとも見せかけたアンチの可能性もあるかな。

80『伝播のG』:2020/06/13(土) 00:33:06
>>78(空織)

「ええ、何といいますか…………」

「まぁ…………『そういう事』です」

ここまで淀みのない口調だったが、くるみは初めて口ごもった。
言いずらそうな表情を浮かべて苦笑いする。
空織の推測が大方当たっている事を、
彼女の様子が物語っていた。

「まだ『その線』だって確定した訳じゃないんですけどね。
 『可能性の一つ』としては――――否定は出来ません」

「実は、『それ』について、
 もう一つお耳に入れておきたい事もありまして……」

彼女の説明は、もう少し続くようだ。
『過激なファンの仕業』――そう考えるのは、
ごく自然な流れだろう。
それが事実かどうかはともかく、
くるみの立場が『微妙なもの』である事は間違いない。

>>79(林檎)

「それが――詳しくは分からないの。
 私が見た直後に角を曲がっちゃったから」
 本当にチラッと見えただけだから『形』までは……」

「でも、『小さかった』わ。
 虫みたいなサイズって程じゃないけど、
 大体『小動物』くらいかしら……」

『小型のスタンド』。
それだけで『能力』を推測するのは難しい。
しかし、聞いておいた事は、決して無駄にはならないだろう。

「ええと――確か、『澤井さん』だったと思うわ。
 割と最近入ってきた人よ」

『ファン』か、それとも『アンチ』か。
現段階では、どちらとも言えない。
先程の警備員は、入口の周辺に気を配っているようだ。

>>(両者)

「それから、『メールの送信者』なんですが……。
 『バードウォッチャー』――そういう名前が書いてありました」

「それと……これは凄く言いにくいんですけど……。
 私の『リスナー』の中に、
 『バードウォッチャー』っていう『ラジオネーム』で、
 よく投稿して下さる方がいまして……」

「その方は、いつも楽しいメッセージを送って下さる方で……。
 今回の件とは――その……
 『関係ないとは思う』んですけど……」

「……一応、それも覚えておいて下さい」

『送信者と同じ名前のリスナー』がいる。
『関係ないとは思う』とは言うものの、くるみ自身も、
『全く関係がない』とは言い切れないでいるのだろう。
彼女の表情には、苦いものがあった。

81空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/13(土) 00:56:09
>>80 (GM)

「『バードウォッチャー』」

 くるみが口にした名前を、
 眉をひそめて復唱する。


「犯人は傲慢にも
 『カナリア』の動態観察者を気取ってるわけか」

 「そのリスナーとの関連は偶然か意図的か分からんが、
  君からしてみればいよいようんざりする話だな」

 こめかみを叩き、
 頭痛をこらえるようなジェスチャーをする。
 くるみの心労に同情を示すジェスチャーだ。

 
「――現時点で分かってる話はこれですべて、
 でいいのか?」

 「だとしたら、わたしとしては
  現場を見に行きたいところだが……
  その前にひとつ」

「次の『I Love Me』の放送時刻はいつなんだ?」

 くるみに訊ねつつ、
 腕時計を見て現在の時間を確認する。

82猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/13(土) 01:01:57
>>80

「ふぅん。となると、本体は近くにいない可能性もあり得るわね」
「小さい『スタンド』は、遠くまで離れても大丈夫そう」
「でも猫ちゃんの『スタンド』じゃあない方がいいわね。可哀想で、とても攻撃できないもの!」
「ちなみに、その『スタンド』はやっぱり外の方へ向かっていったの?」

こくりと頷く。もしそうなったら、なるべく本体を蹴り飛ばしてやりたい。

「あからさまね。熱烈なファンと言うより、罪を被せに来ている感じもするわ」
「だって、ラジオを聴いている人は、皆その名前を知っているものね」
「もしくは、本当に頭のおかしな人の可能性もあるけれど」

83『伝播のG』:2020/06/13(土) 05:49:58
>>81(空織)

「ええ、私からお話する事は以上です。
 また何かあったら、その時はお知らせしますよ」

「『I Love Me』の放送は『十五時』からですね。
 現場は『Bスタジオ』で、今日も同じです」

「ちょうど今は体が空いてますし、ご案内しますよ」

現在時刻は『午前十時』を少し回った所だ。
『I Love Me』の放送開始までは、残り『約五時間』。
『調査』に割ける時間に不足はないだろう。

「また『事故』が起こるとすれば、
 『同じ番組中』の可能性も高いですから」

『第一の放送事故』は、『I Love Me』の放送中に起きている。
そして、犯人は『I Love Me』の放送枠縮小を要求してきた。
それらを考慮すると、『第二の放送事故』も、
同番組中に起こる可能性が高い。
空織がそのように考えたと思ったらしく、
くるみが同意するように言った。
ともかく、まずは現場に向かう事になる。

>>82(林檎)

「そうね、私も林檎さんと同じ事を考えたわ。
 例えばだけど、私のスタンドは『120m』の射程距離があるの。
 もし同じくらいの射程を持った『スタンド』なら、
 遠くからでも細工が出来る可能性はあるでしょうね」

「――と言っても、『私の』は少し意味が違うんだけど……」

射程距離の長いスタンドなら、
必ずしも本体が近くにいる必要はない。
むしろ、そういったスタンドの本領は、
『遠隔操作』にあると言える。
林檎の考えた通り、考慮に入れておくべき要素だ。
そういえば、『喫茶店』を出る時に『毛のない猫』を見かけた。
もっとも、それは今回の件とは関係なさそうだが。

「どこへ向かったかは――ちょっと分からないわね……。
 もしかしたら空いている部屋に入ったのかもしれないし……」
 
「お役に立てなくて、ごめんね」

くるみは申し訳なさそうに言った。
『罪を被せるため』――十分に考えられる線だろう。
犯人が『アンチ』なら、それは有り得る。

>>(両者)

「あ、言い忘れてました。
 今回お二人は、
 『探偵事務所の所員』という事にさせて頂いてますので、
 なるべく、その体裁でお願いしますね」

「それと――――最後に『もう一つ』だけ。
 これは、『私のスマホ』なんですけど」

          ズキュンッ

スマホを持ったくるみの肩に、一羽の『小鳥』が現れた。
マイクとスピーカーを内臓した『機械仕掛けの小鳥』だ。
二人には、それが『スタンド』だと分かる。

「――――『あなたの電話番号は?』」

《ハイ 『×××‐××××‐××××』デス。
 ワタシ アナタノ『ファン』ナノデ ナンデモ オシエチャイマス》

『小鳥』のスピーカーから、『機械的な音声』が流れる。
喋っているのは、
今くるみが手にしているスマホの『電話番号』だろう。
簡単なデモンストレーションを終えると、
くるみはスタンドとスマホを収めた。

「『プラン9・チャンネル7』――
 他のスマホやパソコンにも『同じ事』が出来ます。
 あんまり『乱用』しちゃいけない能力ですけど、
 もし必要な時は言って下さい」

「それじゃ、ご案内しますよ。
 さっき言った『電話番号』は、
 くれぐれも『秘密』でお願いしますね」

    クスッ

軽いジョークを飛ばしつつ、くるみが階段に向かって歩き出す。
『Bスタジオ』は二階にあるようだ。
林檎から他の提案がなければ、このまま現場へ行く事になる。

84空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/13(土) 11:08:26
>>83 (GM)

 「お……?
  おおお……」

 一瞬身を引き、やがて顔を突き出して
 彼女のスタンドの実技演習を見終える。


「すごいスタンドだな……
 つまり君はその小鳥君を介して
 情報機器と意思疎通がとれるってことか」

「こと今回の調査について言えば、
 君のスタンドは相当強力な『武器』になりそうだな」


 行間で自分のスタンド能力も美作氏に簡単に伝える。
 かわりに彼女の大雑把な能力条件を把握しておきたい。


「それにしても『探偵』……
 わたしたちはこの局内では探偵か」

 「だとしたら林檎君の姿を見たヤツらは、
  相当な『凄腕』が来たと思うだろうな」

「そしたらわたしは林檎君の『助手』として
 振る舞うとするかな……」


 美作氏がジョークを言ったのを聴き、
 わたしも軽口で応じ返す。

 こんな状況にあっても彼女は率先して気丈に振る舞い、
 わたしたちを和ませようとしてくれている。
 元々優しい心根を持った人なのだろう……
 だからこそ現状に心を痛めている。


 なんとしてもこの問題を解決してやりたい。


 椅子から立ち上がり、
 美作氏の後に続いて階段へと向かう。

85猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/13(土) 20:56:15
>>83

「『120m』!スゴいわね、くるみさんの『スタンド』」
「いいえ、気にしないで。その時犯人がどこにいたのか、分かったら簡単だったけれど
 そんな楽なお仕事はないわよね。少なくとも、その『パーソナリティー』の人の自作自演はなさそう」

頭の中で、学校で『100m走』をした時の距離を思い出す。
それよりも更に長いというのはスゴい。ましてやボクのスタンドは、文字通り肌身離さずのスタンドなのだから。
そして、くるみさんが見たスタンドは多分、本体の所へ帰る途中だったんだろう。
それが外なのか、ラジオ局のどこかなのかは分からないけど。

「でも考えてみれば、『スタンド』は壁を通り抜けたりできないじゃない?」
「そんな能力でもない限り、ね」
「ねぇ、くるみさん。放送中は、やっぱり鍵はかけてあるのよね?」

でなければ、直接マイクに何かを仕掛けたりはできないはず。
直接触らなくても能力を使えるのかもしれないけど、それならそれで、何かの方法でマイクを認識する必要があるはず。
どうやって侵入したのか、それが分かればきっとヒントに繋がる。


>「あ、言い忘れてました。
> 今回お二人は、
> 『探偵事務所の所員』という事にさせて頂いてますので、
> なるべく、その体裁でお願いしますね」

「『探偵』さん!なんだかとってもカッコ良いわ!」
「うふふ、このお仕事がうまくできたら、そういう方向でアピールするのもいいかもしれないわね」

目をキラキラさせながら、両手を合わせて天井を見上げる。
渋いおじ様を助手として、さっそうと事件現場に現れた名探偵、林檎。えへへ、カッコいい。

「…と思ったら、くるみさんの『スタンド』が、一番探偵向きのスタンドじゃない」

ぶぅ、と唇を尖らせる。

「でもその『小鳥』、やっぱりカナリアなのかしら?あはっ、とてもくるみさんにお似合いね」
「いざというときは、頼りにさせてもらうわ」

椅子から立ち上がり、くるみさんの後を清次さんと一緒に歩く。
犯人がある程度予想できたら、スマホやパソコンから証拠を引き出すこともできるんだ。
これは心強いぞ。

86『伝播のG』:2020/06/13(土) 22:35:51
>>84(空織)

「ええ、そうです。
 ただ、『プライバシー』を侵害するような事は、
 なるべく避けたいですね。
 もちろん『そんな場合じゃない』っていうのは、
 分かってるつもりなんですけど」

「それに、人の秘密を知って胸にしまっておくっていうのも、
 結構しんどいですから……」

美作くるみは『放送関係者』だ。
だからこそ、
人一倍『情報のモラル』には気を遣っているのだろう。
空織の言葉通り、
くるみのスタンドは大きな『武器』に成り得る。
しかし、
『全ての情報機器を隈なく調べる』というような方法では、
それだけで相当な時間を取られてしまう。
彼女の能力を有効に使うためには、
ある程度の『的』を絞る必要があるように思えた。

「アハハ、いいですねえ。
 『美少女探偵林檎』――
 なかなかイケてるキャッチコピーだと思います」

    スタ スタ スタ

「空織さんも大人の風格があってカッコいいですよ。
 『小粋なベテラン私立探偵』って感じで」

                   スタ スタ スタ

空織の冗談に対し、くるみは更に冗談で返してくる。
その合間に自身の能力をくるみに伝え、
彼女の能力も把握しておく。
二階に着くと、前方から一人の男が近付いてくるのが見えた。

>>85(林檎)

「いえ、鍵は掛けてないわ。
 何かトラブルが起きた時に、すぐ対応出来るようにね」

「例えば、本番の五分前に、
 『スタジオの電源がクラッシュした』話も聞いた事あるし……。
 その時は、出演者とスタッフが全員、
 無事なスタジオに全力疾走して間に合わせたそうよ。
 そんな大事故は、さすがに『かなりレア』なケースなんだけど」

「そうでなくても、リクエストされた曲を、
 『CDライブラリー』に取りに行ったりする事は、よくあるから」

林檎の予想に反して、鍵は掛かっていないようだ。
無用心にも思えるが、不測の事態に備えて、
『即応性』を重視しているという事だろう。
しかし、『マイク』に対する林檎の推測は間違っていない。
触れる事も認識する事もなく、何かが出来るとは考えにくい。
『それらを満たしていたから出来た』と考えるのは、
自然な発想だ。

「あははは……。
 でも、私は『探偵』じゃなくて『パーソナリティー』だから。
 私も仕事があるから、ずっと一緒にはいられないんだけど、
 何かあったら遠慮なく言ってね」

    スタ スタ スタ

「『人の秘密を覗き見る』っていうのは、
 正直ちょっと気が重いんだけど……」

                   スタ スタ スタ

「状況が状況だから、ね」

『モラル』に反する行為に対して、
くるみは少々躊躇いがあるようだ。
職業上、『情報の取り扱い』には慎重なのだろう。
彼女の能力は、『証拠の確保』には大きな力を発揮する。
とはいえ、片っ端から調べて回るのは『非効率的』だ。
解決に至るためには『犯人の特定』が必要になってくる。
それを可能にするのは、林檎と空織の『探偵』としての腕前だ。
二階に着くと、前方から一人の男が近付いてくるのが見えた。

87『伝播のG』:2020/06/13(土) 22:36:21
>>(両者)

「くるみ、今いいか?ちょっと打ち合わせしたいんだが……」

「あ、『露木さん』」

くるみが立ち止まり、前方の男に声を掛けた。
年は空織と同じくらいだろうか。
ストライプシャツの上にスポーツジャケットを羽織り、
ネクタイを緩く締めている。

「こちら『Electric Canary Garden』ディレクターの『露木さん』」

「――どうも、『露木』です。そちらの方々は?」

ディレクターの露木が、空織と林檎に尋ねてくる。
くるみは、二人の方に視線を向けてきた。
『入館証』があるので、不審に思われる事はまずないだろう。

88猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/13(土) 22:58:31
>>86

「あぁ、そうなの。でも確かに、そもそも不審な人は中に入れないようになっているものね」

胸元の『入館証』をつまみながら、呟く。
鍵をかけて侵入を防ぐべき怪しい人間は、門前払いだから心配いらないということなのか。
そうなると、よほど『スタンド』の射程距離が長くない限りは、『内部犯』の仕業ということかもしれない。
名探偵林檎の推理が冴え渡ってきたぞ。

「…うふふ。くるみさんは優しいのね。そうね、誰にだって隠したい事の一つや二つ、あるもの」
「それに、秘密は女をより魅力的にする、とも言うものね?」

唇の前に人差し指を当て、首を傾げる。
もしボクがくるみさんの立場なら、怪しい人は片っ端から秘密を聴くけど。
ボクにそういう『スタンド』を与えなかったのは、『道具屋』さんの良心かもしれない。

と、そこでなんか新たな人が現れた。
にこりと笑みを浮かべて、両手でスカートをつまみカーテシー。

「はじめまして。あたし、『林檎』って言うの」
「あたしたち、今日はくるみさんの助けになるために来たのよ。よろしくね」

89空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/13(土) 23:23:07
>>86-87 (GM)

「どうもありがとう。
 でもわたしは『探偵』の器ではないだろうね」

 道すがらに繰り出された美作氏の冗談に、
 苦笑を返す。

「すくなくともわたしはこの短時間のやり取りだけで、
 林檎君が指摘した(>>85)ような、
 『パーソナリティの自作自演』の可能性まで
 たどり着けていなかった……」


「『名探偵』の座は林檎君に
 収めてもらったほうが良いだろう。
 わたしには『助手』の立場で十分だ」


 と、急に前方の美作氏が立ち止まり、
 『露木』を名乗る男が現れた。

 美作氏の紹介を確認してから、
 わたしも仮初の役職を名乗りはじめる。


「わたしと彼女が、依頼された『探偵』です。
 例の『放送事故』の件を調査しています」


 こういった窓口対応は『助手』がこなすもの……
 そうでなくとも大人が入り口に立ったほうが
 信頼度諸々の話は早かろう。


「事故当日の現場と、
 それからあなたが当時見聞きした状況などを
 詳しくおうかがいしても?」

90『伝播のG』:2020/06/14(日) 00:08:36
>>88(林檎)

「『林檎』さん、ですか……。それはどうも」

露木の反応には、少しだけ戸惑いの色が窺えた。
それは不審ではなく、
林檎の『格好』や『年齢』に対するものらしい。
だが、状況が状況だけに、すぐに気を取り直したようだ。

「今、くるみも色々と微妙な立場でして。
 力になってくれるのなら、本当に助かりますよ」

「こんな形で放送枠を拡大されても、
 くるみのためになりませんから。
 それに、こいつなら実力で達成出来ると思っています」

露木は真剣な表情で言った。
番組ディレクターとして、くるみの事を大切にしているらしい。
くるみの方も、悪い気はしていないようだ。

>>89(空織)

「ああ、『例』の……。
 くるみから聞きました。
 私からも是非お願いします。
 協力出来る事があれば、何なりと」

そう言って、露木は頭を下げた。
やはり、『大人』が間に立った方が、
話はスムーズに進みそうだ。
その点において、空織の考えは正しい。

「ただ、私からお話出来る事は少ないですね……。
 現場にいた訳ではないですし、
 後で『事故が起こった』事を聞かされたもので。
 もちろん『メールの件』は知っていましたが……」

露木から聞ける話は多くはなさそうだ。
おそらく、くるみから聞いた以上の内容は知らないのだろう。
突っ込んで聞けば何か出てくる可能性もあるが、確証はない。

「……お役に立てなくて申し訳ありません。
 局内は自由に回って頂いて構いませんので、
 是非くるみの力になってやって下さい」

露木は真剣な眼差しを向けてくる。
くるみの事を、本当に大事に思っているようだ。
彼女の方も、彼を信頼しているらしい雰囲気が漂っている。

91猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/14(日) 00:59:21
>>90

ふぅん、と思う。
本当はこの人にも疑いの目を向けていたけど、どうやらその可能性は少なさそう。
もちろん言葉をそのまま受け取ることはない。それが『夜の街』を生き抜く上で大事だから。
けれど、言葉の重みを無視することもできない。それも大事なこと。
後は経験しかない。そう、母は言っていた。

「そうよね。本当に、首の上に乗っているのがやかんでないのなら、
 くるみさんの事を知っているのなら、こんな事をするはずがないもの」

「ぜったいに、あたしたちで犯人を見つけてみせるわ。あたしもくるみさんのラジオ、楽しみにしてるもの」

特に何もなければ、このまま二人と一緒に現場(探偵っぽい)へ向かおう。

92<削除>:<削除>
<削除>

93空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/14(日) 01:25:17
>>92 (自レス・訂正)

>>90 (GM)

「そうでしたか」

「ご配慮に感謝します。
 この件については我々にお任せ下さい。
 速やかな『決着』と、
 できるかぎりの『対処』をさせて頂きます」

  ペコォ――


 表層演技で一礼する。
 彼に見えない角度で、眉を寄せて目を閉じる。


「美作さんにはこの後、事件の情報収集に際して
 できればいくつか協力をお願いしたいと
 思っているのですが」


 そう言って、顔を上げる――その半身にわたしのスタンド、
 『エラッタ・スティグマ』の像を重ねるように発現させながら。


「その『打ち合わせ』はもう少し後にして
 いただくことはできませんか?」


 こんな風にスタンドの力を用いるのは、
 いい気分がしないが……

 結局のところこれは『入国審査』みたいなものだ。
 『スタンドが見えない』という事実を得ることが、
 『信頼』の前提とするのにいちばん手っ取りばやい。

 これからわたしたちが調べるべき事柄は多い。
 信頼できる相手は『最短』で見極めたい。

 スタンドを通して露木氏の顔色と質問への返答を伺う。

94『伝播のG』:2020/06/14(日) 01:48:10
>>(両者)

    …………ズズッ

自身の精神の像――『エラッタ・スティグマ』を発現し、
空織は露木の反応を窺う。
『見える人間』であれば、
何らかの反応が得られるかもしれない。
もっとも、『慣れた人間』であれば、
隠す事は不可能ではないだろう。

「――――…………」

くるみにも、空織の『意図』は読み取れているようだ。
彼女にとっては気心の知れた相手であるため、
複雑な思いがあるらしい事は表情で分かる。
しかし、『今の状況』を考え、
くるみは空織の行動を黙認していた。

「――あぁ、そうですか……」

ほんの少しだけ困った表情で、露木が空織の方を向く。
彼の方も、『今回の件』で、
色々と対応しなければならない事があるのだろう。
『打ち合わせ』というのは、それも含んでいるのかもしれない。
そして、発現した『エラッタ・スティグマ』に対して、
『目立った反応』は見えなかった。
だが、『意図的に反応しなかった可能性』が、
ないとは言い切れない。

「分かりました。『調査』の方、よろしくお願いします」

僅かな逡巡の後、彼は二人に頭を下げた。
彼の様子から判断すると、多少の迷いはあったようだ。
ただ、『協力する』と言った手前、
無下に断る事は出来なかったらしい。

「すみません、後で私の方から行きますから。
 それまで待ってて下さい」

別れ際、くるみが露木に声を掛け、
林檎と空織は『Bスタジオ』に向かう。
その手前まで来た時、
ドアのガラス越に『副調整室』の様子が見えた。
中には二人の『男女』がいるようだ。
何やら『言い合っている』ように見える。
険悪とまではいかないが、
あまり和やかな雰囲気でもなさそうだった。

            ボソッ

「…………『I Love Me』のパーソナリティーの『雛形』さんと、
 ディレクターの『鍋島』さんですね」

声のトーンを落として、くるみが二人に言った。
女の方が『雛形』で、男の方が『鍋島』のようだ。
何を喋っているかまでは、部屋の外からは聞こえない。

95<削除>:<削除>
<削除>

96空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/14(日) 11:59:29
>>95 (自レス・訂正)

>>94 (GM)

「ご配慮に重ね重ね感謝します。
 なるべく速やかに事態を収束できるよう
 われわれも善処します」

  頭をペコっと下げて、露木氏を見送る。

  わたしのスタンドはその動きに一切追随することなく、
  棒立ちのままわたしの横に立ち尽くして虚空を見ている。
  次第に糸が解けるように、空気の中へと消えていった。


 (軽率な行動だったかもしれないな……)

 目を閉じて心中で美作氏に詫び、
 わたしは顔を上げた。


  露木氏の対応は『無反応』……
  それが『真実』の反応でも『演技』でも、すくなくとも
  『目覚めたばかりのスタンド使い』という線だけは
  なさそうに思えた。


 これをどう意味づけしたものか。
 黙考していると、気づけば目的地までたどり着いていた。

 ガラス越しに漂う不穏な空気に一瞬面食らい、
 美作氏に小声で訊ねる。


 「……
  ………
  その、なんだ……」  ヒソ


 「二人は以前からこういった言い争いを
  よくしていたのか? ……」  ヒソ


 「……美作さん、
  聞き込みはなるべく円滑に進めたい……

  よければ先に中に入って、
  二人にわたしたちを紹介していただけないだろうか?」  ヒソ


 そう言って、入り口を美作氏に譲る。
 わたしはその横に立ち、耳をそばだてて待機する。

 彼女がドアを開けた瞬間に、
 二人の諍いの内容のわずかな断片でも
 聞き取れないかと思いつつ。

97猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/14(日) 20:46:31
>>94

「面倒よね、『スタンド使い』って。知らないフリをしようと思えば、いくらでもできるもの」
「リトマス試験紙みたいに、『スタンド使い』が触ると色が変わる紙があったらいいのに」

清次さんは、まずは露木さんを疑っているみたい。
気持ちは分かる。ボクも可能性は低いと思ったけど、あり得ないとは言えないし。
試して損はないなら、試しておくのも大事なことだ。

「ねぇ、くるみさん。さすがに『放送中』に、ドアが開けば分かるわよね」
「あ、ちなみに『放送中』は、ドアは閉めているの?」

移動しながら、くるみさんに話を聞く。
多分、外の音を入れないように閉めていると思うけど、実際は分からない。
ボクはあまり世間的な常識とかには、力を発揮しないタイプだから。

「質問がいっぱいでごめんなさい、くるみさん」
「『ディレクター』さんは、放送中に外で様子を見ているの?」
「それと、この中の二人はどういうことで言い争っているの?」

後の質問の方は、清次さんのと一緒だけど。
同じ場所で働いているなら、この人たちの噂話とか聞いていてもおかしくないし。
もし言い争いの内容を知らないのなら、くるみさんの『スタンド』でこっそり中の話を聞いてもらうのもアリかも。

98『伝播のG』:2020/06/14(日) 21:31:00
>>96(空織)

空気の中に溶け込むように、
『エラッタ・スティグマ』が静かに解けて消えていく。
『入国審査』に対して、露木は全くの『ノーリアクション』だった。
『真実』か『演技』か。
それは定かではない。
ただ、空織の推測通り、
『目覚めたばかり』という可能性は薄いように思えた。

「いや……。そんな事は……ないと思いますけど……」

くるみの知る範囲では、
いつも口論しているような間柄ではないらしかった。
だが、いくら同じ職場とはいえ、
くるみも人間関係の全てを把握している訳ではない。
彼女の知らない『何か』があったとしても、
さほど不自然ではないだろう。

「――――…………分かりました」

    スッ

若干の躊躇いの後で、くるみは頷いた。
彼女の立場としては、
彼らと顔を合わせる事に『気まずさ』を感じているらしい。
気持ちを切り替えるように軽く息を吐き出すと、
入口に歩み寄った。

>>97(林檎)

「もちろん『放送中』は閉まってるわよ。
 それに、開けば分かるわ」

「でも、『放送前』は人の出入りが多いから……」

林檎の考えを読んだかのように、くるみが言った。
『放送中』に何かが侵入すれば、
それは『分かりやすい異常』と呼べる。
逆に、その前から仕込まれていたなら、
特定は難しくなってくるだろう。

「ほら、真ん中に『ガラスの仕切り』が見えるでしょ?
 あれの向こう側が『ブース』。
 『パーソナリティー』がお喋りする所ね」

「ガラスの『こっち側』が『副調整室』。
 私達は『サブ』って呼んでるけど。
 『ディレクター』も、放送中は『サブ』で進行を仕切ってるわ」

「本当なら、ゆっくり案内してあげたかったんだけどね」

スタジオに視線を向けつつ、くるみが説明する。
だが、次の質問には困った顔をした。

「それは……ちょっと分からないかな……。ごめんね」
 
「私が聞いた事ある噂話は、
 雛形さんが『オカルトは信じてない』って事くらい。
 ……どうでも良かったわね」

言い合いの内容を、くるみは知らないようだ。
同じ職場とはいえ、
人間関係を全て把握している訳ではないのだろう。
その辺りは、『昼の世界』も『夜の世界』と変わらない。
やがて、空織の提案を受けたくるみが前へ進み出た。
ドアを開けようとノブに手を伸ばす。

>>(両者)

    ――――――ガチャッ

くるみが動くより先に、ドアは向こうから開いた。
ソバカスが目立つマッシュルームボブカットの女が、
そこに立っている。
くつろいだ印象を与える『部屋着風』の格好をしており、
くるみより幾らか年上のようだ。

              ジッ

『雛形』という名前らしい女は、
くるみから空織と林檎に視線を移す。
訝しげな表情だったが、『入館証』に目を留めると、
彼女は顔を上げた。
そして、止める間もなく何処かへ歩き去ってしまった。

99猫柳 柚子『カーマ・カメレオン』:2020/06/14(日) 22:08:53
>>98

「ええ、確かにくるみさんのおっしゃる通りだわ」
「放送前に、その『スタンド』を内部に仕込ませておけば
 あとは『I Love Me』の放送が始まるのを待っていればいいもの」
「そうなると、このラジオ局に入る事のできる人間なら、誰でも可能というわけね」

くるみさんの説明を聞いて、ふんふんと頷く。
うっすらと、テレビで見たことある気がする。
ガラスの中でマイク担当の一人か二人が喋っていて、ガラスの外から見守る人たちがいるやつ。
警察署の取調室もこんな感じなのかなと思ったけど、口にはしない。
この状況では、あまり冗談にならなさそう。

「うーん。くるみさんもご存じないとなると、言い争いの原因は、やっぱり『この件』なのかしら?」
「実際、自分の番組に脅迫みたいなメールが届いたら、いい気分はしないわよね」

ある程度推測を立てておく。
まぁこの扉を開けた後、周囲に他の人間がいればその人たちに聞いてもいい。
ボクたちは部外者なので、くるみさんとかが聞き辛いことでもどんどん聞ける。
でも、こっちが開ける前に向こうからドアが開いたんだ。

「こんにちは」 ペコリ

とりあえず挨拶をしてみたけど、そのまますぐに立ち去ってしまった。
余裕がなかったのか、それとも普段からせっかちなのかな。
まぁでも中には入りやすくなったかな。くるみさんの横から、開いたドアの先を覗き込んでみよう。

100空織 清次『エラッタ・スティグマ』:2020/06/14(日) 22:16:38
>>98 (GM)

「あッ!
 打ち合わせ中に突然申し訳ありません」

「わたしたち、今回の『事故』のことで
 調査を依頼されておりまして」

「実際に現場でトラブルにあった方から
 直接おはなしをうかがいたいと……
 思っ…………
 ……」


「……………
 ……………」


「………………
 つむじ風のような人だったな……」


 もはや雛形氏の気配さえ残っていない
 空間に向けてぽつりとつぶやく。


「(美作氏からすれば、
 彼女たちは今回のトラブルで
 『いわれのない災難に巻きこんでしまっている』
 相手になるわけか……)」


 彼女の横顔に一瞬よぎった躊躇の理由を、
 わたしはそんな風に察した。


「美作さん、大丈夫か?
 ……顔をあわせにくいなら、わたしだけでも行くが」

 彼女の横顔に声をかけつつ、
 ドアノブに手をのばそうとする。


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