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【ミ】『フリー・ミッションスレッド』 その4

98『伝播のG』:2020/06/14(日) 21:31:00
>>96(空織)

空気の中に溶け込むように、
『エラッタ・スティグマ』が静かに解けて消えていく。
『入国審査』に対して、露木は全くの『ノーリアクション』だった。
『真実』か『演技』か。
それは定かではない。
ただ、空織の推測通り、
『目覚めたばかり』という可能性は薄いように思えた。

「いや……。そんな事は……ないと思いますけど……」

くるみの知る範囲では、
いつも口論しているような間柄ではないらしかった。
だが、いくら同じ職場とはいえ、
くるみも人間関係の全てを把握している訳ではない。
彼女の知らない『何か』があったとしても、
さほど不自然ではないだろう。

「――――…………分かりました」

    スッ

若干の躊躇いの後で、くるみは頷いた。
彼女の立場としては、
彼らと顔を合わせる事に『気まずさ』を感じているらしい。
気持ちを切り替えるように軽く息を吐き出すと、
入口に歩み寄った。

>>97(林檎)

「もちろん『放送中』は閉まってるわよ。
 それに、開けば分かるわ」

「でも、『放送前』は人の出入りが多いから……」

林檎の考えを読んだかのように、くるみが言った。
『放送中』に何かが侵入すれば、
それは『分かりやすい異常』と呼べる。
逆に、その前から仕込まれていたなら、
特定は難しくなってくるだろう。

「ほら、真ん中に『ガラスの仕切り』が見えるでしょ?
 あれの向こう側が『ブース』。
 『パーソナリティー』がお喋りする所ね」

「ガラスの『こっち側』が『副調整室』。
 私達は『サブ』って呼んでるけど。
 『ディレクター』も、放送中は『サブ』で進行を仕切ってるわ」

「本当なら、ゆっくり案内してあげたかったんだけどね」

スタジオに視線を向けつつ、くるみが説明する。
だが、次の質問には困った顔をした。

「それは……ちょっと分からないかな……。ごめんね」
 
「私が聞いた事ある噂話は、
 雛形さんが『オカルトは信じてない』って事くらい。
 ……どうでも良かったわね」

言い合いの内容を、くるみは知らないようだ。
同じ職場とはいえ、
人間関係を全て把握している訳ではないのだろう。
その辺りは、『昼の世界』も『夜の世界』と変わらない。
やがて、空織の提案を受けたくるみが前へ進み出た。
ドアを開けようとノブに手を伸ばす。

>>(両者)

    ――――――ガチャッ

くるみが動くより先に、ドアは向こうから開いた。
ソバカスが目立つマッシュルームボブカットの女が、
そこに立っている。
くつろいだ印象を与える『部屋着風』の格好をしており、
くるみより幾らか年上のようだ。

              ジッ

『雛形』という名前らしい女は、
くるみから空織と林檎に視線を移す。
訝しげな表情だったが、『入館証』に目を留めると、
彼女は顔を上げた。
そして、止める間もなく何処かへ歩き去ってしまった。


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