社会性進化の原因をミツバチの特殊な事情(=スズメバチ対策)に求めたのがそもそもの誤り
膜翅目全体では孤独性のものも多いのですが,
伊藤嘉昭の「動物の社会」(東海大出版会)によれば,
真社会性は膜翅目全体で少なくとも11回は独立に進化したと考えられていて,
社会性の初期段階と考えれれる種も,
オキナワツヤハナバチCeratina okinawanaやオーストラリアのAllodapula属,
スズメバチ科のハラホソバチ亜科などが報告されています
>Life Cycle of a Subtropical Xylocopine Bee, Ceratina okinawana, with Some Related Problems
>OKAZAKI Katsunori 1
ttp://ci.nii.ac.jp/naid/110003377444/
>Biological observations on the primitively social bees of the genus ヌAllodapulaネ
>in the Australian region (Hymenoptera, Xylocopinセ)
>Charles D. Michener
ttp://www.springerlink.com/content/p34746860611815h/
>越冬するオオハラホソバチ
ttp://www.esj.ne.jp/meeting/abst/55/P3-254.html
ここから「なぜ膜翅目でこれほど頻繁に社会性が進化したのか?」という疑問が生まれ,
「半倍数性という膜翅目の特殊な性決定様式が社会性進化を促進したのではないか?」
という仮説が提唱されたんですけどね
他にも細かい間違いを挙げれば切りがないのですが,
社会生物学や血縁淘汰に対する理解以前に,
南堂さんにはハチに対する愛がまったく感じられませんよ
Posted by shinok30 at 2008年02月03日 15:35
卵の大きさと卵数のトレードオフの関係はすでに議論されています
まずは,1970年にPiankaが唱えたrーk選択説がそうですね
さらに,伊藤嘉昭は「世代時間」という独立変数を組み込んでしまうrーk選択説の曖昧さを批判し,
"the procurablilyty of food by the young"(子にとってのエサの得やすさ)によって,
多産多死戦略と少産保護戦略のどちらかを選択すると考えました
ようするに,「子にとってエサの得やすい」環境では多産多死戦略が,
逆の場合は少産保護戦略が選択されやすいということです
>2007年05月02日 マルチレベル選択の攻防メモ
>
>(rbk + be) > c
>in which bk is the benefit to kin (b in the original equation) and be is the
>benefit accruing to the group as a whole. He then argues that, in the
>present state of the evidence in relation to social insects, it appears
>that be>>rbk, so that altruism needs to be explained in terms of selection
>at the colony level rather than at the kin level.
ここで、bkは血縁個体の利益(Hamilton式のb)、beは群全体の利益、cは利他行動のコスト
>である。そして、EO Wilsonは、社会的昆虫に関する現状の証拠から、be>>rbkだと
>論じる。そして、利他行動は血縁レベルではなく、コロニーレベルの選択として説明
>される必要があると論じた。
ttp://transact.seesaa.net/article/40480504.html
上記サイトを良く読むと,血縁淘汰理論とコロニー淘汰理論は対立するものではなく,
相補的な関係にあることが分かりますね