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しあんいろ
322
:
彗斗
:2012/03/12(月) 18:52:43 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
コメントまたまた失礼します。
やっぱり何か共感できるな〜〜と感じました。実際に僕にも好きな人がいるので……
いつか僕の小説にこんな感じで書けたらなーって思っちゃいました。僕の小説よりも文章力が遥かに上です。
もっと頑張って書いて下さい!!
323
:
名無しさん
:2012/03/13(火) 15:02:56 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
どうも、まだまだ感想等々お待ちしてます。
第5話 「生きる」事のイミと「剣」の謎
「あ〜……とんでもない事しでかしたかも……」
ノゾミは今更ながら後悔した、町は龍の攻撃もあってボロボロだったのだが、
ノゾミの一撃で火に油を注ぐ結果になってしまったのだ……
「それはそれとして、コイツが龍に変身していたなんて誰も知らねーよな……まぁ少なくとも俺達だけは知ってるがな…」
その通り、レイの発言は的を射ている。今はノゾミの膝枕でスースー寝息を立てているがこの少年がやったとはとても思えない……
その時、
「……はっ!?」
その少年が目を覚ました、バッと飛び起きて、キョロキョロと辺りを見回す……
「いっ……一体寝てた間に何が起こってしまったと言うんだ……?」
「……今、アンタが見ている光景は自分が創った光景だ」
暫く様子を見ていたレイが静かにこう告げた……少年は信じられないと言いたそうな表情で首を横に振っていた……。
「………嘘だ……嘘だぁぁぁぁっ!!!」
少年はそんな事があってたまるかと言う意味を込めた言葉を口にした……
「絶対に俺はこんな事していない!! 仮に…どんなに……この町を恨んでも……」
「……? それはどういう事だ? この町を恨んでもって……」
それから少年はその「恨み」の訳をレイ達に話した……自分が『天才』、『天才』と呼ばれて仲間外れにされている事……
自分の親の事……自分の立場の事……そして最後に自分の名を「紅 颯」と言った……。
「もう俺の事なんてみんなどうでもいいように扱っていた……俺はそんな奴らが嫌いだった!! 憎かった!!……だがこんな事はしていない、俺とまともに話をしたのは、君達が初めてさ……」
その発言は何処か、「死んでしまいたい…」と言っている様だった……レイもノゾミもハヤテの言った事を否定できなかった……
(なんか…この人、昔の私と一緒だ……私も独りぼっちで皆からのけものにされてた……やっぱり周りのみんなが憎かったし嫌だった、もう誰とも話したくなかった……だけどある人との出会いで私は変わった!)
ノゾミは過去の自分の姿を見ている様な気持だった、と同時にハヤテの方に歩み寄りながらこう思った……
(私もその人の様にその人の考え方を変える人になりたいと思った……そう今がその時なんだ!!)
もう、ノゾミには過去の未練は無くなっていた……今度は自分が変わっていく番なんだとそう決意したように見えた、そしてハヤテにこう言った。
「あのさ、良かったら私と一緒に来ない? その事は私もよ〜〜く分る。同じ様な事を私もされていたから……勿論あなたと同じ気持ちだった、皆が憎かった、嫌いだった。私自身も寂しかった……」
まさかそのような事を言われるとは思ってなかったのか驚いた様な顔でハヤテはこちらを見ていた。
「だから……死んでしまいたいなんて思わないで……ね?」
ハヤテは差し出した手に嘘は無かった……嘘は無いと確信した。ハヤテの目から自然と涙が零れてきた……
「お……俺は…俺はぁぁぁっ!!」
そのままハヤテは泣き崩れてしまった……
まぁ二人でいい所すまないがここからレイに視点を移してみよう。
レイは二人の辛気臭い事は気にせずに剣に問いかけた。
「ところで、アンタはなんでこんな所に落ちていたんだ?」
そう、これが一番レイが気になっていた事だ、すると剣は、
「それは我の台詞だ、我もなぜあんな所に居たのか見当がつかん」
「いやだから……聞きたいのはこっちなんだよ……なぁ『ゴッド・セイバー(神の剣)』さんよ!」
〜〜作者より〜〜
いや〜〜すごく感動的でしたね〜〜もう自分が書いてない様で(笑) ノゾミって優しい人だなぁ。こんな人と出逢いたかったなぁ。
……はっ!!回想はさておき、次回は「ブレイブ」を出て新しい土地に出ようとするも……!?
324
:
彗斗
:2012/03/13(火) 15:06:41 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
小説書くところを間違えてしまいました。本当にすみませんでした(謝罪)
325
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/13(火) 20:47:57 HOST:e0109-49-132-10-232.uqwimax.jp
>彗斗さん
コメントありがとうございます!
あれですよね、人の恋愛話って聞きたくなりますよn((
いやいや、ねここのがかなりかなり下ですよー
がんばります!
あと、書くところ間違えたのは大丈夫ですよ!
ねここも結構間違えちゃいますw
それにしても文章力高くて羨ましいです……(´・ω・`)
326
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/14(水) 18:35:26 HOST:e0109-49-132-10-232.uqwimax.jp
Lovemusic.
音楽室からピアノの音が聴こえてきた。
美しく、何処か切なく暖かいようなメロディーは音楽室のドアを越し廊下一杯に響き渡る。
ねえ、どうしてかな……涙が止まらないの。
×
「レオ先輩、戸締り終わりましたー」
「ん、ごくろーさん。コンビニ寄ってこっか」
毎日部活のあと残って戸締りをして、音楽室の鍵を閉めて職員室に鍵を戻して―――先輩と一緒にコンビニに行くのが習慣。
早く帰りなさーい、なんて先輩面して鍵を閉めていくうちに楽しげな後輩たちの声は消えていって、最後の鍵を閉め終わる頃にはレオ先輩とわたし以外誰もいなくなってしまう。
コンビニに寄ると必ず部員の誰かはいるんだけどね。
「先輩、今日の朝新発売のチョコレートがあったんですよ。買ってくださいー」
「買うけど何のチョコ?それ、」
「たしか………桜キムチバナナ味だったような」
「おいしいのか?それ………」
「おいしいはずです、明らかにまずそうだなって顔しないでください」
こんな他愛の無い会話が大好きで、平和だなあとか幸せだなあとか、そんな感情になれるのが嬉しくてたまらなかった。
まったりとその会話を続けながら校舎を出てコンビニに向かう。桜キムチバナナ味のチョコ、おいしいのかな。
-
短いけどとりあえず投稿なうー!
なうの使い方どことなくちがう?かな?w
327
:
彗斗
:2012/03/15(木) 17:06:18 HOST:opt-183-176-190-251.client.pikara.ne.jp
ねここさん>>
まさかそんなコメントが頂けるなんて思っても見ませんでした。本当にすみません……
328
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/16(金) 19:32:23 HOST:e0109-49-132-10-232.uqwimax.jp
Lovemusic.
「お、今日は花と翔かー」
いつものコンビニに入るとすぐ、後輩の花と翔の姿があるのを見つけた。二人は幼馴染で、毎朝一緒に学校に来て二人っきりで下校までしてるの。
今日も二人仲良く下校していたようで、自然と微笑を浮かべてしまう。目の前でこんなに仲良くされちゃこっちまで赤くなっちゃうよ、と思いながらそっと俯いた。
「レオ先輩と未花先輩、今終わったんすか?」
「ん、今やっと終わったとこー」
新商品のチョコレートアイスクリームを手にきょとんと驚いたような表情をする翔にレオ先輩が頷き答えた。
花はぺこりと会釈をしてからお菓子の並ぶ棚を見始めたので、翔はレオ先輩に任せて花のところに駆け寄った。
「未花先輩お疲れ様ですー!今日何かおごってあげましょっか、新商品の桜キムチバナナチョコとか」
「え、いいの?!いや、でも先輩として後輩におごってもらうっていうのは……レオ先輩に怒られちゃうし」
レオ先輩におごってもらおうとしていた桜キムチバナナ味のチョコを花に買わせるのは流石にないか、と考え首を振り自分の欲を紛らわした。
その途端、ぷっと花が吹き出した。そして時間が経つにつれてその声は大きなものになってきて、部活終わりの夜遅めの時間帯のコンビニで突然大声を出す花に少し吃驚した。
「や、ちょっと先輩!本当に桜キムチバナナチョコ欲しかったの?!」
「う、うん……ていうか、レオ先輩に買ってもらう予定だったの」
「そ……そう、」
-
きる!
329
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/17(土) 14:16:46 HOST:e0109-49-132-10-232.uqwimax.jp
Lovemusic.
「え?な、なんかおかしかったかな」
突然しんと静まりお菓子の棚をじっと見つめ始めてしまった花にどうしたのだろうかと不安に感じ、首を傾げて尋ねる。
花はふるふると首を振ったけれど、あまりにも様子が急変しすぎている花に焦りもう一度尋ねた。
「あ、あの……わたし何かした?」
「い、いえ……あ、そうだ。何でもレオ先輩任せじゃ先輩が大変だし、チョコはあたしがおごります」
花は小さく動揺してからふっと微笑を浮かべて桜キムチバナナチョコを手に取った。
わたしはどうすることもできず花をそっと見つめていたけれど、店員さんに本当にこれ買ってくれるんですか?、と尋ねられている花を見て申し訳ないなと罪悪感が生まれた。
「先輩、どうぞ」
「あ、ありがとう……」
貰っていいものなのだろうか、相手は後輩なんだし、せめてお金は返すべきだろうか。
頭の中で考えてみた結果、チョコを花に返すという考えにまとまってしまい花にチョコを差し出した。
「気持ちは嬉しいけど、後輩から貰ったものは食べれないや。これは花が食べなよ」
「っ、先輩!あたし悪いけどそのチョコの味好みじゃないんですよ。だから寧ろ貰ってほしいです」
花の言葉にそっか、と簡単に引き下がり、手に持っているチョコを見つめへへっと微笑んだ。
そして翔とレオ先輩の元へ向かう花に走って駆け寄り、ぽんっと軽く肩を叩く。
「ありがとね、花!」
「いえいえ、日頃頑張ってくれてる先輩にお礼というか、そんな感じのものですから」
花はそう一言わたしに告げて、愛しそうな瞳で何処かを見つめていた。
その時わたしは花が翔のことを見つめてるんだと思ってしまい、ふふっと微笑を浮かべて見守ってしまったのだった。
-
330
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/18(日) 18:45:37 HOST:e0109-49-132-10-232.uqwimax.jp
Lovemusic.
「未花、チョコもう買っちゃった?」
「あ、いいえ。花が買ってくれたんですよー」
わたしの手元のチョコを見つめるレオ先輩にふふっと微笑を浮かべながらいいでしょ、とチョコを見せびらかす。
レオ先輩は花の方を見つめてからお菓子の棚に並ぶミルクチョコレートを取った。花が大好きで練習中にチョコ食べたいと言っていたものだ。
それを手にレジへ向かい購入している姿を見てはっと先輩の行動に気づく。
あわてて先輩に駆け寄ろうとしたときにはもう遅く、先輩は花にそのチョコを渡していた。
「え?これ………」
「未花のチョコ、買ってくれただろ」
「そ、それはただの感謝の気持ちというか」
「や、でも元々俺が買うつもりのものだったからさ、受け取って」
花とレオ先輩の遣り取りを見て、花の表情が少し赤くなっていることに気づいた。
まあ、何で赤いのかまではまったくもってわからなかったけれど。
「あ、ありがとうございますっ!」
そう言って微笑む花はとても可愛くみえた。
-
331
:
ピーチ
:2012/03/18(日) 19:52:15 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここさん>>
ひっさしぶりーー!!!
最近見てなかったけどやっぱりすごいよ!!
おもしろい!いい話!!
332
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/19(月) 19:50:17 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
>ピーチさん
久し振りですv
おもしろいと思っていただければとてもうれしいです!
333
:
ピーチ
:2012/03/19(月) 21:51:08 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねっこさん>>
あはは♪タメおkだよ〜ww
ってかタメにしてー((笑
334
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/20(火) 16:34:51 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
>ピーチさん
じゃあタメにするねーv
335
:
名無しさん
:2012/03/20(火) 22:02:39 HOST:wb92proxy04.ezweb.ne.jp
ツタンカーメンのような男たち
仮面はよくも悪くも日本人には合わない為、奇怪な行動をとるようになる。それも彼らが行き過ぎているか時間が有り余りすぎ(就職できない)なのだ。刺激を求める性質のようにも見える。彼らにはまたいくつかの壁があるのだろう。
336
:
神目まどか
:2012/03/20(火) 22:16:12 HOST:ntfkok190145.fkok.nt.ftth4.ppp.infoweb.ne.jp
>>335
うんこ漏らすなよwwwwwwww
337
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/21(水) 16:47:37 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
Lovemusic.
「………っ、」
レオ先輩と花が楽しそうに話し始めるのを見て、少し胸が痛くなった。あまり良い気持ちにはならなかったというか、その様子を見るのが辛くなったのかそっとコンビニから出る。
花に貰ったチョコレートを早速一口食べ、その瞬間チョコレートのまろやかな味わいとキムチの辛さ、桜の微かなしょっぱさにバナナの甘ったるさが一気に口の中で交わりげふげふと咳をしながら口を押えた。
「……っ、はあ……」
やっと落ち着いたところでふうと溜め息を吐くとちらりとコンビニの店内に目線を向けた。そこではまだ花とレオ先輩が楽しそうに話している。なんだろ、なんか悔しい。
そんなことよりこのチョコ食べれないなあ、と思いながらじっとチョコを見つめてみた。このまま捨てるのも可哀想だし、かといって全部食べるのもキツイ。そう考え始めた瞬間、いつの間にかわたしの手にはチョコじゃなく大好きなアメリカンドックが持たされていた。
「………え?あめりかんどっく……」
「俺買ったやつですけど、まだ食べてないんでどうぞ」
照れているのかそれとも恥ずかしいのか。少しぎこちない様子ではあったけれど、それでも優しく微笑んで翔は告げた。受け取れないよ!と言おうとした瞬間まるで誘うようにアメリカンドックの匂いがふわりと風にのってやってくる。
じとー、とアメリカンドックを見つめた。まるでにらめっこみたいな感じ。匂い消せ!なんて思いを送ってみたりもした。けれど誘惑に負けそうになり、せめて匂いだけでもと思ってしまったのが失敗だった。
くんくん、ぱくっ。
もぐもぐもぐ、ごっくん。
「あ……、」
わたし自身、食べるつもりなんてなかった。匂いだけって思ってたのに、勝手に体が動いちゃったようなそんなの。それでもわたしが食べたことには変わりなくて、ペコペコと翔にお辞儀をして謝る。
「ごめんなさいごめんなさいっ!食べるつもりはなかったの!匂いだけって思ったの!」
「や、別に元々あげるつもりで渡したんですし!謝ることないですよ、」
翔は優しい。花も、わたしのために買ってくれた。二人とも後輩だし青春真っ最中な子たちなのに、わたしよりしっかりしててでもおもしろくて……わたしみたいに肝心なところで失敗とかそういうのがない。
羨ましいなあ、と翔を見つめたあと、はっと気づいてしまった。これは元々花が買ってくれたものだから、もしかして翔は花が買ったのを食べたくてわたしに優しく……?!
「ねえ、翔!そんなに花に買ってもらいたいなら素直に言いなよ!」
「は?何のことですか、」
むー。翔が知らないふりをした瞬間、むっとわたしは口をとがらせた。
そしてそのまま説明を続ける。
「だーかーら!翔はわたしへの優しさなんかじゃなく、ただたんに花が買ったものを食べたかったからわたしのチョコとアメリカンドック交換しようとしたんでしょ!」
翔が固まったような気がした。そして呆れるような表情を浮かべられた。ふうと溜め息を吐かれて、そして突然ぎゅっと抱きしめられたような気がした。
「しょ、翔?!」
「………俺、好きな人がいるんです」
「え……?」
翔の顔をのぞくように見上げると、翔は嬉しそうな表情をしていた。
「二年生の先輩で、二つに髪を結んでて。吹奏楽部の次期部長候補で、補佐としていつも部長と一緒にいて。新発売のものはすぐ買って、でもそれがまずくて咳き込んじゃうような人」
それって、
「それってわた、」
それってわたし?、と直球に聞こうとしたら口がふさがれた。
手で?ちがう、もっと柔らかいの。
口、で……?
-
338
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/21(水) 19:21:44 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
Lovemusic.
ふにゃって柔らかくてちょっとだけ熱い感じのものがわたしの口を塞いだのは理解できた。反射的にぎゅっと目を閉じちゃったからそれが何かはよくわからなかったけど、その口を塞いでいたものが取れた瞬間目を開いてみてすぐわかった。
「……翔?」
「可愛かったよ、未花先輩」
いっつも冷静で大人しいわけではないけど面白くて信頼できる後輩なのに。頬を赤く染めながら微笑浮かべられたって格好良いとしか言いようがないじゃない!
わたしは自分でもわかるくらいにぼっと顔を赤くさせ、握りしめていたアメリカンドックの棒に更に力を入れて恥ずかしさを紛らわすことしかできなかった。
「おい花ー、俺もう帰ってるから」
「え、ちょっと!おいてかないでよ、こんな遅くにか弱い女の子を一人」
「か弱くねえし凶暴だから大丈夫だろ?」
「っ、翔のばあか!ばかばかばーかっ!」
何事もなかったかのようにコンビニ内にいた花を連れて帰っていく翔を真っ赤な顔で見つめたまま見送った。何でそんな平気でいられるんだろ。
そしてレオ先輩もコンビニから出てきて、ふふっとぎこちないような気もするけど微笑を浮かべてみた。ちゃんと笑えてるかな?
「……キス」
「ふぇっ?!」
レオ先輩がまるでさっきの翔との行動を見ていたかのようにキスという何とも恥ずかしく甘ったるいワードを出してきた。
わたしはその場でぴょんっと飛び上がり、変な声を出してしまう。もちろん先輩に笑われちゃって恥ずかしい思いしただけだったんだけど。
「……してたでしょ、翔と」
「……は、はい。でもあれは、なんというかその……」
何でだろう、わたし。何も聞かれてないのに、レオ先輩にとってわたしなんかどうでもいいはずなのに必死に言い訳考えてる。先生に怒られて反省文書いてるみたいな感じがして嫌だ。
「……チョコもな。交換してもらったんだろ?アメリカンドックと」
「え……先輩何処まで知ってるんですか。花といたくせに……」
吃驚した。全部見られてるなんて思わないし思いたくもなかったし。何より知られたことが恥ずかしい、よりによってレオ先輩に……。
自然と表情が歪んでいた。むっとした感じになっていたけれど、先輩はぷっと笑いながらまるでわたしを馬鹿にするように話す。
「ははっ、なんか心配だったから見てたんだ」
「……あの、」
「ん?」
「男の人のいう好きって、どんな感じなんですか?」
「は?」
突然ではあったけれど、翔のいう好きがどんな感じなのかを知りたくなって一番身近なレオ先輩にこそりと頬を赤らめつつも聞いてみた。
よく質問の意味を理解してないようなレオ先輩に誤魔化す必要なんてないのに誤魔化す感じであわてて言った。
「あ、あのっ!女の子とかは恋すると好きになった人が美化されちゃったり、もう好きで好きでたまらなくなるわけですよ」
「ふうん……」
「だ、だから……男の人はどうなのかなって思っただけです」
「……俺はあんまり恋愛経験ないけど、気になっている人はいるよ」
レオ先輩の言葉に正直吃驚した。だけどすぐにその気になってる人が誰なのかわかった。きっと花だ、チョコ買ってあげてたし、可愛いし。
「……花ですよね、がんばってください」
「え?」
まるで拗ねてしまったように、小さな声で言い放ってみた。なんだろ、わたしなんか今日おかしいなあ。
そんなことを考えていたら、突然ぎゅっと次はレオ先輩に抱きしめられてしまった。な、なんか今日すごい調子狂う……。
「……花じゃないよ。もっと身近な子……いつも、今もね」
今身近な女子といえばわたししかいないのですが。そう思いながらじっとレオ先輩を見た。
なんかもうよくわからない、うれしすぎる。でも翔も―――と、脳内でたくさんのことを考えすぎてしまったからだろうか。
ふらりと足元がぐらつき、意識が遠ざかった。
「未花っ………?!」
-
339
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/22(木) 16:09:31 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
Lovemusic.
「ん……」
気がつけば、其処は以前にほんの数回だけではあったが訪れたことのある場所だった。暖かくてふわふわしてて、あと安心するけどちょっとドキドキしちゃうような香り。
ぱちりと目を開いた瞬間凄く驚いた。まさかレオ先輩の部屋にいるなんて思わなくて、何があったんだろうとわたしの思考回路がもの凄い速さで回りだしたような気がした。
「ちょ、そんな考え込まなくていーから!……倒れたんだよ、未花」
何か考え込みだしたわたしの様子を察したのか、先輩が妙に動揺した口調で止めてきた。大人しく考えるのをやめると、倒れたと衝撃的な発言をされぼそりと小さな声で言う。
「ごめんなさい、迷惑かけて」
しゅんと俯きながら先輩に謝った。倒れたってことはコンビニでだろうし、コンビニから先輩の家までも結構遠めだし。家まで運んでくれた優しさに罪悪感が生まれたり、でもどこかきゅんときてるわたしがいる。
「謝んないでよ」
「え、あ……はい」
くしゃりと先輩がわたしの頭を撫でる。その行為を見て倒れる前の話しを思い出した。
先輩はわたしのことが好き、なのかな?翔はわたしのことが好きで、先輩もそれっぽくて、わたしは?
「わたし……わたしは、」
「先輩も翔も大好き……でも恋愛感情かはわからなくて」
ごめんなさい、ごめんなさい、と。
小さな声で呟くように謝りながら涙を流した。
-
340
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/22(木) 18:09:21 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
Lovemusic.
「……大丈夫、待ってるよ。未花の答えがはっきりするまで……でも、わからないだけで終わったりはしてほしくない」
レオ先輩の意思の強い瞳にどきんの胸が揺れた。好きだからかどうかわからないけど、これがもし好きっていう意味なら翔にも恋してることになっちゃうよ、わたし。
待ってるという言葉はとても心強く、そのままレオ先輩の胸に飛び込んでいきたいくらいだったけど、それでも。このまま付き合ったとしてもレオ先輩の邪魔をしちゃうし、だからといって振ったら気まずくなりそうで怖い。
「本当に」
「え?」
掠れたような小さな声でぼそりと先輩に尋ねようとする。涙が溢れ出す目を隠し、先輩の顔を見ないように、見られないようにしながら。
「本当にわたしのことが好きなんですか?」
じわりと制服の袖に涙が染み、腕が冷たく感じた。先輩のベッドの上で大泣きするわたしをきっと先輩は戸惑うように見てる。そう思ったときだった。
ふわりとわたしを柔らかく包むような感じがしてえ?、と不思議そうな声を漏らす。わたしの唇をレオ先輩の制服のボタンが撫でた。てことは抱きしめられたのか。
「本気で好きに決まってんじゃん……っ」
ぎゅうっと抱きしめられた腕に力が込められたような気がした。苦しくはないけどなんか、恥ずかしいような……。
とにかく自分の中で決断をし、先輩の顔を見上げるようにして告げる。
「……翔とも話しをしてから返事したいです」
「うん、待ってる」
-
341
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/23(金) 18:02:33 HOST:e0109-49-132-14-61.uqwimax.jp
Lovemusic.
結局あの後家の前までレオ先輩に送ってもらって家に帰った。わたしの心臓はずっとどきどきしたままで、今までそんなことなかったのにレオ先輩に触れられる所が全部じわじわ熱く感じてしまう。これが好きという気持ちなのかな、と思いながら自分の部屋のベッドにぼふんとダイヴした。
「ねたい……」
そう呟くけれどまだ夕飯も食べていないし、お風呂にも入っていない。今日は連載もののドラマがある日だし録画はするけどリアルタイムでも見たいと頭の中で今日やらなければいけないことを考えベッドから起き上がる。
ふあぁ、と眠たさそうに小さな欠伸をこぼし、うとうとしながらリビングへ向かった。
それからのことは寝ぼけていてよく覚えていない。
×
「おはようございますっ」
レオ先輩の後ろ姿を見つけ自然と表情が緩んだように思えた。駆け寄って挨拶をすると、先輩もいつも通りの笑顔を見せてくれる。
「はよー、眠いな今日も!」
「そうですねぇ……あ、翔と花だ」
「お、本当だ!おはよー」
わたしが後ろを向くと、そこにはふざけ合う翔と花がいてレオ先輩が微笑んで手を振る。
花は嬉しそうな表情をして先輩に近づいて、翔はふっと笑みを見せながらわたしの元へ来た。
「先輩っ、おはようございます!」
「おはよ、花!翔もおはー」
「おはようございます」
花がレオ先輩の隣を歩く。わたしは後ろをついていくみたいな感じでゆっくり歩いていたけれど、それに合わせて翔がわたしの隣を歩いた。
「おはようございます、未花先輩」
「お、おはよう……」
慣れない、なんか恥ずかしい。翔は楽しんでるみたいだけどさ。
そしてわたしが直球に翔に質問する。
「翔、は……わたしのこと好きなの?……ってなんか自意識過剰みたいな質問ごめんなさい」
「いや、自意識過剰なんかじゃないですよ。俺未花先輩のこと好きだし、恋愛感情で」
照れたように微笑む翔に戸惑った。でもレオ先輩もわたしのことを好きでいてくれて……
断れない、どっちも。レオ先輩はいつもお世話になってるし、大好きな先輩で。翔はいつも笑わせてくれて、大事で大好きな後輩で。
「……あの、もっと迷わせるようなこと言っちゃうし卑怯だとは思うんですけど……」
「え……?」
翔がこそこそと前にいるレオ先輩と花に聞こえないように耳元で言った。
「花、レオ先輩のこと好きなんですよ」
「えっ?!」
「様子見て気づかなかったんですか?」
「いや、全然……」
わたしはよく鈍感とか言われるけど、こういうことなのかな。
とにかく、花には幸せになってほしいしレオ先輩も花ならいいんじゃないかと思ってしまう。
「……俺は未花先輩に振られても未花先輩を好きでいるくらいの覚悟でいるんで。ていうかそれは当たり前か」
ははっと笑う翔にきゅんときた。どうしよう、迷うよ。
どっちも大事な存在なんだよ、わたしにとっては。
どっちも傷つけないで済むにはどうしたらいいんだろ。
-
342
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/24(土) 21:35:45 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
なんか今連載してるLovemusic.がタイトルと関係なくなってきたー
Loveletterの未花とレオのお話なんだよね。
triangle+1みたいなそういうタイトルをつければよかった!
343
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/26(月) 16:49:24 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
Lovemusic.
「わたし……どっちとも付き合えない」
皆それぞれの話しで盛り上がっていたというのに、わたしが戸惑いながら告げた言葉にぴたりと周りの騒がしい声も消えた。
でもこの答えは決してふざけているわけでも意地を張ったわけでもなく、ちゃんとわたしなりに考えてどっちも傷つけないことを最優先にしたものだった。
「あ、あのっ……ごめんなさい」
「謝っても許さない」
翔とレオ先輩に頭を下げると、レオ先輩が冷たい目で言い放った。びくんと肩を揺らし翔の方を見ると、ふうと呆れたような溜め息を吐かれる。
「それ、未花の気持ちじゃないじゃん」
「未花先輩はお人好しすぎるんですよ」
あ、翔とレオ先輩怒ってたわけじゃないんだ。と思いつつもごめんなさい、と頭を下げた。もう考えても何も出てきそうになかったし。
翔が不機嫌そうな態度を見せてきたからしゅんと落ち込んでしまったけれど、突然翔がふわりとわたしを抱きしめる。
「まあ、そういうところも全部好きなんですけど」
わたし、どっちを選べばいいんだろう。
-
344
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/27(火) 16:49:28 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
Love.
大切な人っていうのはお母さんとかお父さんとか友達だったりいろいろあるんだろうけど
わたしにとっての大切な人はもっともっとたくさんいて、でも肝心な言葉を言えずに皆消えて行ってしまうの。
お父さんとお母さんとわたしの三人で旅行に行ったとき両親はわたしを庇って事故死してしまった。
まだありがとうって言えてないのに、わたしを庇ってよかったなんて微笑んじゃって馬鹿みたい。
友達だって、その話しを聞いてわたしを慰めてくれたけどいつしか面倒な子って印象づけられてわたしの周りからいなくなった。
嫌われてしまってでも、今まで仲良くしてくれてありがとうって伝えたかったのに。楽しかったよって、笑いたかったのに。
彼氏だって、わたしを愛してくれたけどもう疲れたって、他の子を好きになったってわたしから離れていった。
それでもわたしが彼を好きだったことは変わりなくて、今までありがとうとかだいすきだよとか伝えたかった。
いつしかわたしは近寄りがたい存在になってしまって、それでもたまに話しかけてもらえるだけでありがとうって言いたくなる。
だけど結局その子までもが離れちゃって、言えずに終わってしまうの。
だからもしもう一度大切な人ができたらそのときは笑顔で伝えるんだ。
ありがとうとか、だいすきとか。
-
息抜き程度に書いたものですがそれなりにお気に入り。
内気で人見知りな女の子のお話なのかなー
一生懸命ありがとうとかだいすきって伝えたがってるけど思いは届かないんです。
ていうか届いてないって女の子が思い込んでるんです。
本当は届いてるんだよ
思いを込めればきっと絶対届くよ
そんな希望を持っていただけると嬉しいなと思ったのですが
肝心なその思いは届くと語るシーンをあとがきにいれてしまったorz
まあなんとかなるさ!
そんなことよりずっとレオ未花のお話とかだったから(Loveletterの方でも)
だから息抜きでした!
345
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/28(水) 21:33:54 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
さんきゅ (大切な貴方にありがとう)
初めて出会った貴方に「ありがとう」
貴方に出会えたことを奇跡に等しく思います。大きな世界の中でこれだけ小さなわたしたちが出会えたこと、これが最大の喜びです。
そんな貴方に「これからよろしくね」と微笑んだ。これからたくさんお喋りしよう、仲良くしよう、親しくなろう。奇跡の出会いを無駄にしないように。
通学路で出会った貴方に「ありがとう」
毎日ぼんやりと空を眺めて歩いていた灰色の通学路が貴方の手によって突然カラフルな世界に変わりました。
そんな貴方に「幸せだなあ」と微笑んだ。明日も一緒に登校したいな、これからずっと一緒に登校しよう、親しくなろう。少ない時間を大切にしたい。
学校の廊下で出会った貴方に「ありがとう」
同じ学年でもクラスは離れてるのに、バッタリ廊下で会っちゃうようなこの結ばれてる感、何だか凄く嬉しくて恥ずかしいです。
そんな貴方に「また会ったね」と微笑んだ。明日も此処で会おう、この時間は一緒にいよう、親しくなろう。ほんの僅かな時間でも一緒に過ごしたい。
お昼休みに屋上で出会った貴方に「ありがとう」
いつもぼんやりと友達と一緒にお弁当を食べているのに、貴方も此処で食べていたなんて思いもしなかった。
そんな貴方に「一緒に食べよう」と微笑んだ。明日も一緒に食べよう、これから一緒にお昼を過ごそう、親しくなろう。楽しくお喋りしながらお昼を食べたい。
帰り道で出会った貴方に「ありがとう」
今日も楽しい一日だったと学校でのことを振り返りながら歩いていたのに、貴方がこっちを見ながら走ってくるのを見つけました。
そんな貴方に「一緒に帰ろう」と微笑んだ。明日も一緒に帰ろう、これからずっと一緒に帰ろう、親しくなろう。最後まで一緒にいたい。
そして幸せな一日が過ぎて次の日になった。
いつもの通学路で待ってたら時間通りに来てくれた貴方に「ありがとう」
学校の廊下で待っててくれた貴方に「ありがとう」
お昼休みに一緒にお昼を食べてくれた貴方に「ありがとう」
一緒に下校しようと声を掛けてくれた貴方に「ありがとう」
わたしに出会ってくれて「ありがとう」
灰色の世界をカラフルにしてくれて「ありがとう」
幸せな気分にさせてくれて「ありがとう」
嬉しい気持ちにさせてくれて「ありがとう」
恥ずかしい気持ちを教えてくれて「ありがとう」
僅かな時間を一緒に過ごしてくれて「ありがとう」
ぼんやりていたわたしを楽しませてくれて「ありがとう」
一緒に過ごせる時間を増やしてくれて「ありがとう」
楽しくお喋りしてくれて「ありがとう」
わたしの傍に来てくれて「ありがとう」
最後まで一緒にいてくれて「ありがとう」
幸せな一日をくれて「ありがとう」
親しくなりたかった、貴方ともっと触れ合いたかった。
最初はただの好奇心だと思っていたのに。
ちょっと親しくなりすぎたようです。
貴方のことが好きになってしまった。
好きで好きでたまらなくなって、貴方を独占したくなってしまった。
それでも貴方は誰のものでもなくて、好きな女の子もいるらしくて。
「誰?」って聞いたけど一番の友達にすらなれてないわたしには教えてくれなくて。
寂しくて悲しくて、思わず言ってしまった。
「わたし、貴方のことが好き」って。
そしたら貴方は「俺もだよ」って微笑んで抱きしめてくれた。
わたしに好きな人を教えてくれなかったのは、好きな人がわたしだったから?
わたしは元々貴方の一番だったの?
嬉しくて涙をこぼした。
それでもわたしは一生懸命呟く。
好きになってくれて「ありがとう」
一番の存在にしてくれて「ありがとう」
産まれてきてくれて「ありがとう」
大切な貴方に、心の底から精一杯の「ありがとう」を。
-
大切な人との時間を大事にして、ありがとうって気持ちを忘れないでっていう気持ちを込めたものです。
いつもたくさんの人にありがとうの気持ちを伝えてね!
346
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/29(木) 15:37:18 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
ごめんね、好き。
告白して運良く結ばれたら……なんて妄想をしてしまったのがいけなかったのかな。
わたしはきみに迷惑をかけてしまった。ていうか、普段から迷惑しかかけてないのに更に最悪なことしちゃったよ。
「好きです」
「ごめん」
こういうとき、何ていえばいいんだろ。
「そっか」?「やだ、付き合って」?
そのとき、困ったきみの表情を見た瞬間思わず言葉が口に出ていた。
「ごめんなさい……」
ああ、そうだ。「ごめんなさい」だ。
時間ととってしまって、迷惑をかけてしまって、困らせてしまって「ごめんなさい」
「……でもやっぱり好き……もう少しだけ好きでいさせてください」
何時しかきみとわたしが結ばれることを夢見ながら、今日もわたしはきみを見つめています。
-
駄作!
スレ上げるために書いたといっても過言ではないw
347
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/30(金) 17:28:25 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
スキキライ、ダイスキ!
「あーした天気になーあれっ」
ぶんっと足を振るとすぽーん、とかかとを踏み潰した跡が残っている上靴が飛んでいった。
勢いよく飛んだその上靴はわたしの中で新記録を更新しそうで、わくわくと自然に顔がにやける――――まあ、それも一瞬だったけど。
薄汚れた上靴はちょうど其処を通りかかった人の足にぶつかり止まってしまった。
「ちょっと!」と、相手を反抗的な目線で見たけどけれど、その瞬間わたしの思考がストップする。
上靴をぶつけちゃった人はこの学校で一番人気の高い男子でてことは仮にも先輩だったわけで。
この人と目を合わせたら一瞬で恋に落ちるとかそういう噂を耳にしたこともあった。
「……これ、君の?」
「っ、そうです! 返してください!」
ぷらん、とわたしの上靴を掴み不思議そうな表情をした先輩を更に睨みつけるような目線で見つめ手を差し出す。
でも当てた相手が悪かったのか、先輩はそう簡単に返してはくれなさそうだ。
「あのさー、君がぶつけてきたんでしょ? しかも俺先輩だし」
「……すみません……でもっ、ぶつかってしまったのは偶然で!」
何でわたしが謝らなきゃいけないの? 心の中ではそう思いながら、それでも早くこの人の前から逃げたくて素直に謝った。
つもりが一言多いわたしの悪い癖のせいで言い訳を始めてしまう。
「うん、ていうか何で上靴投げてんの?」
「投げてないです、飛ばしただけです。足でびゅーんって」
相変わらず先輩はぷらんとわたしの上靴を掴んだままで、ぶつかってしまった訳を何から何まで話さなきゃ返してくれなさそうだった。
「ふうん……で、どうして飛ばしたの?」
「……明日晴れるかなーって思いまして」
それと新記録更新のために、と小さな声で呟くが先輩はそんなことに興味は無かったらしくずいっと顔を近づけながら尋ねられる。
「明日何かあんの?」
ドキッ!
わたしの胸が鳴ったような気がした。
「あ、明日は……好きな人と遊ぶ約束してて、その……」
て、ていうか何で見知らぬ先輩にこんなこと言わなきゃいけないのさ!
顔を真っ赤にするわたしを見て、ぷっと先輩が吹き出した。
「な、なんですか……!」
「一途だねー、紗里奈チャン」
こ、この先輩……何でわたしの名前を。わたしでさえ有名な先輩の名前知らないのに。
それえも先輩はお構いなしにわたしの手を取った。
「じゃあさ、恋愛の占いしてあげるよ。俺そういうの得意なんだ」
「本当っ? じゃあじゃあ……健くんとの相性占って!」
わたしって馬鹿だ、単純だ。そう思いながら、それでも何故かわくわくしていた。
占いとかは信じやすい方だから、なのかな。
「……あ、君たち相性悪いよー」
「え、そんな!」
至極残念そうな表情を浮かべると、突然先輩の顔が思いっ切り近づいてきた。
唇に柔らかいものが触れる。ていうかキスされてる、わたし……
「ちょ、先輩なにやって!」
先輩が離れた瞬間あわてて聞いた。
相変わらず顔は真っ赤だ。
「だって紗里奈チャン、俺のこと好きだもん」
は? わたしが、先輩を?
「すき……なんていうと思ったかばーか! 先輩なんかキライッ!」
顔を真っ赤にしてそう叫ぶわたしは、もう既に先輩のことが大好きになっていたのかもしれないのです。
-
348
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/03/31(土) 14:22:49 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
▼雑談(ry間違ったいろいろコーナー!←
最近パソコンについているメモ帳に小説書いてからコピペして投稿しているねここのような何かです、どうも。
掲示板で直接書くと重くて文字打ってんのに打ってないことになったり変換に凄く時間かかったりするんです、何でだろうね!
ということでメモ帳に書いたら驚くほどに軽くて吃驚!
財布をなくしたり財布をなくしたり財布をなくしたり人生いろんなことがあるね。
この掲示板も人気になってきたし長連載続ける方たちが一昨年より増えてきて嬉しい限りです。
一昨年は完結させるってこと自体がまずなくて、レスが10くらいまでいっただけでおおって感じだったので。
でも書く人もたくさんいて皆さん一生懸命更新してるからスレも下がりやすいなにか。
ねここはLoveletterとしあんいろ二つ書いているので更新大変です(´;ω;`)
まあこれからもがんばるよ!みたいなのを書いてみました。
いや本当は小説の内容が見つからずスレ上げのために書いただなんていえないry
349
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/01(日) 20:54:33 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
mail.
[向日葵さんが入室しました]
向日葵:こんばんは!誰かいる?
純恋:はじめまして、純恋です^^*
向日葵:名前なんて読むの?
純恋:すみれ、だよ!向日葵さんはひまわりで合ってるかな?
向日葵:うん、合ってるよ〜
純恋:よろしくね^^*
向日葵:よろしく〜^^
――――いつしかこうやってパソコンで顔の知らない人とチャットをすることがわたしの楽しみになっていた。
学校では内気で大人しいわたし「百花」がパソコンの世界に入ると「向日葵」となりたくさんの友達と触れ合える、最高の機会だったから。
「すみれとひまわり、かあ……」
そう呟きながらカタカタとパソコンのキーボードを打つ指を走らせる。
このチャットルームでわたしは常連で皆の中心的な存在で、現実の世界では楽しめないこの感覚がわたしを虜にした、といっても過言ではない。
向日葵:すみれとひまわりって名前、どっちも花の名前だよね!
純恋:そうだね、何か仲間って感じ!
向日葵:もう仲間だよ、このチャットに来た人は全員友達なんだから!
純恋:わあ、ありがと!嬉しいなあ(ノω\*)
向日葵:かおもじかわいいね^^
純恋:えへへ*わたし、このチャットに来る前掲示板にいたから顔文字とかけっこう使っちゃうんだー
向日葵:掲示板?どこの?わたしも行きたい!
純恋:ここだよ!★は抜いてね!URL→ht★tp://○○○.jp/
向日葵:ありがとー!じゃあ一回そっちの掲示板で会おうよ!
純恋:うん、そうしよっか!
[向日葵さんが退室しました]
[純恋さんが退室しました]
でもわたしがチャットルームにいなかったら皆心配しちゃうかも、なんてことをにやにや笑みを浮かべて考えてみた。
とにかく純恋のいう掲示板が気になってURLをコピーする。
まだ新品といってもいいくらい綺麗なパソコンの画面は早々とそのURLのページに飛んでいった。
そしてその掲示板の様子を見て驚いた。
「何よ、これ……」
スレッド数がいっぱいあるっていうのに、全部「★純恋と○○の部屋★」みたいなのばっかりだし。
スレッド主は純恋じゃないのに……じゃあこの掲示板では純恋が中心ってわけ?
とにかく興味本位でわたしもスレッドを立ててみた。
スレッド名は適当でいいかな。
―――――
スレッド名:純恋、向日葵だよ!
名前:向日葵
本文:すごいね、掲示板!純恋って文字だらけだー。
―――――
スレッドを立てて1、2分したらすぐコメントが来た。
よくよく見ればもうスレッドのコメント数は6までいってる。
「え……?」
そのコメントの内容を見て驚いた。
コメントした人は純恋じゃないのに、4つもコメントがついてる。
更にその内容が酷かった。
―――――
ゆかり◆ha34sj6wu6
トリップつけろよ
お前純恋の何なの?
ひな◆aa5679ja965
こういうスレ、迷惑です。
早く削除依頼出してください。
ゆみ◆a59eyeh546
新人?
純恋が人気なの妬んでんの?
ハナミ◆46y7w9406jw
消えろよksが。
純恋がお前のこと相手にするわけないだろ馬鹿。
―――――
どう、して……?
どうしてわたしがこんなに責められなきゃいけないの?
そう思ってわたしも書き込んだ。
―――――
向日葵
トリップってなに?純恋の友達だけど!別に妬んでないし意味わかんない!
―――――
また数分してから返事がくる。
ゆかりって人とハナミって人だ。
―――――
ゆかり◆ha34sj6wu6
は?トリップもわかんねえの?
馬鹿じゃねえのwwwww
初心者は此処にくんな
ハナミ◆46y7w9506jw
一行レスやめろ
そんな基本的なことわかんねえなら帰れ
―――――
もう言葉も出なかった。
わたしが悪いの?
トリップも一行レスも、悪いことなのかもしれないけどわたしわからないよ。
純恋、どうにかしてよ!
-
新連載っていうかなんというか書きたかった。
チャット系のお話ですね!
つづく!
350
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/01(日) 21:34:12 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
mail.
もういやって思いながらF5キーを押して最新のページに更新したら、またコメントがついていた。
怖いという気持ちが芽生えてきたけれど勇気を出して見てみたら、やっと純恋が来てくれたらしい。
―――――
純恋◆Lo.olulo22
ごめんね、向日葵ちゃん
来るの遅くなっちゃった(´;ω;`)
やっぱりチャットの方行こうか?
―――――
やっぱり純恋は優しい、と思いながらそれでも不機嫌そうな態度でわたしも書き込む。
―――――
向日葵
うん
―――――
そしてもうこの掲示板には訪れないと頭に叩きつけるように何回も繰り返しチャットへ戻った。
でも、少し気になったりはしたからお気に入りに登録しちゃったんだけどね。
[向日葵さんが入室しました]
[純恋さんが入室しました]
純恋:さっきはごめんね。ハナミたち、初心者さんに厳しくて(´・ω・`)
向日葵:別に。でもちょっとむかついた。トリップとか意味わかんないしどうでもいいじゃんねえ?!
純恋:あ……トリップっていうのは偽者防止のための大切なパスワードみたいなものなんだよ
向日葵:純恋までハナミとかいう人たちみたいにわたしを責めるの?
純恋:たしかにハナミたちの言い方はちょっとキツかったけど、わたしもハナミも責めたわけじゃないよ!
向日葵:責めたじゃん!結局純恋はハナミとかいう奴の仲間なんだね!
純恋:ちがうよ!
向日葵:名前も花の名前同士でなかまだって思ったけど、やっぱり純恋なんか仲間じゃない
純恋:待ってよ!
向日葵:ばいばい
[向日葵さんが退室しました]
あの掲示板の中心が純恋でもこのチャットではわたしが中心なんだから、と思ったけれどやっぱり少し悲しい気持ちが残った。
ROMでチャットルームを見てみると、純恋はまだ残ってたけどそれともう一人いる。
わたしが秘かに思いを寄せてるっていうか、気になってるカイトくんだ。
純恋:純恋(すみれ)です(`・ω・´)
カイト:カイトです、顔文字可愛いね^^
純恋:えへへ、ありがと* これからよろしくね!
カイト:よろしく!
純恋:ここのチャットって向日葵がいつも中心にいるの?
カイト:向日葵の友達なの?
純恋:うん、多分……
カイト:多分って(笑) でもまあ中心っぽい存在ではあるなー
純恋:そっかあ……
カイト:どうしたの?
純恋:さっきケンカっぽくなっちゃって……仲間じゃないっていわれちゃった
カイト:向日葵が?何でそんなこといったんだろ、あいつ
純恋:わかんない。でもわたしまだここにいたいよ
カイト:純恋がここにいたいならいればいいよ!
純恋:でも、追い出されないかな?向日葵ここで人気者っぽいし
カイト:大丈夫!何か言われたら俺が守るからさ^^
純恋:いいの?
カイト:うん!
純恋:ありがと、カイト(ノω\*)
……カイトと純恋、仲良くなっちゃった。
どうしよう?ケンカしたこともばれちゃった。どうしようどうしよう
カイトくんに嫌われちゃう
やだ!純恋だってカイトくんのことカイトって呼んだのに、やだ
そう思っているうちに、純恋は部屋を退室していた。
純恋:じゃあ、また今度ね!明日も来れるといいな♪
カイト:また話そうぜ^^
[純恋さんが退室しました]
もうわたし、入室するしかないよね。
[向日葵さんが入室しました]
カイト:お、ひまわりー
カイト:純恋とケンカしたんだって?
向日葵:ちがうの!純恋がわたしのこといじめてきたの
カイト:純恋が?
向日葵:うん、そうなの
カイト:純恋、追い出されるんじゃないかって心配してたよ
向日葵:ちがう!わたし追い出したりしないもん
カイト:そっか……
向日葵:ケンカしたんじゃなくてわたしが一方的にいわれただけなんだよ……
向日葵:さっきね、ちょっとだけROMで二人の会話見ちゃったんだけど……純恋、わたしと話すときと全然態度ちがった
カイト:それ本当?
向日葵:うん……
カイト:そっか……
まだまだこれからだよ、純恋
-
こわ←
351
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/01(日) 22:40:13 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
mail.
次の日、またつまらない日常を終えて家に帰ってきた。
いつも通りすぐにパソコンのスイッチをいれてチャットルームに行く。
[向日葵さんが入室しました]
向日葵:やほー^^だれかいる?
カイト:いるよ
向日葵:カイトくん!
今日はラッキーだと思った。いつもは顔を出すのが遅いカイトくんがこの時間帯にもういたからだ。
でもよくよく見るとチャットルームにいる人の数は3人と表示されている。
カイト:向日葵が嘘ついてたの?
向日葵:え?
カイト:純恋とのこと
向日葵:ちがうよ!
純恋:向日葵、嘘つかないで
向日葵:純恋こそ
カイト:本当はどっちなの?
向日葵:わたし嘘ついてないよ!
純恋:わたし、もうチャットやめようかな
カイト:何で?
純恋:だってカイトと向日葵の方が仲良いし、これ以上嘘ついてないって言っても言い合いになるだけだし
カイト:純恋は嘘ついてないんだろ?
純恋:そうだけど……
向日葵:ちがう!わたし嘘ついてない!
カイト:ごめん、向日葵。俺ROMで見てたからさ
向日葵:え?
純恋:そうなの?
カイト:うん
向日葵:ちがうよ
カイト:もう諦めろよ
純恋:……ごめんね、向日葵。嫌な思いさせて
向日葵:……わたしもごめん
純恋:これからも仲良くしてくれる?
向日葵:うん
カイト:よかったな!
別に仲直りなんかしたくなかった
そう思いながらそれでもカイトくんに嫌われたくなくていい子のわたしを演じとおしたのだった。
×
次の日になった。今日は土曜日だから朝からパソコンができる。
するともう既に二人きてて、ちょっとだけROMで様子を見てから入室しようと思った。
カイト:あのさ
純恋:うん
カイト:パソコン上で実際会ったことないからだめだってわかってるんだけど
純恋:うん
カイト:俺、純恋のこと好きになっちゃったみたいなんだよね
え?
カイトくんは純恋が好きなの?
正直凄く驚いた。そしてパソコンの画面の前で固まりながら二人の様子を見つめる。
純恋:実はね
カイト:うん
純恋:わたしも、カイトのこと気になってたんだ
カイト:本当?
純恋:うん!
カイト:純恋って高校生?
純恋:うん、高校一年だよ
カイト:俺高校二年なんだー
純恋:そうなの?近かったんだね、年!
カイト:あの、今度会えないかな?どこに住んでる?
純恋:東京だよ*わたしもカイトに会いたい
カイト:おお!俺も東京なんだー!○○って場所しってる?
純恋:うん、知ってる!じゃあ明日そこで会おうよ!
カイト:うん!朝10時にそこ待ち合わせな!
純恋:やったあ、嬉しいなあ
カイト:緊張する(笑)
純恋:わたしもだよー(笑)
やだ、やだやだやだ
許せない許せない許せない
いや
嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌あぁっ!
[向日葵さんが入室しました]
純恋:向日葵!
カイト:よー^^
向日葵:明日二人で会うの?
純恋:えと
カイト:全部見てたの?
向日葵:ううん^^でも明日東京の○○で会うことは見ちゃった^^
カイト:そっか
向日葵:わたしも行っちゃだめ?
-
きる!
352
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/02(月) 09:05:15 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
mail.
カイト:純恋どうする?
純恋:3人で出掛けようか?
カイト:ん、まあそれでもいんじゃね?
向日葵:本当?ありがとう!
カイト:どこいく?
純恋:わたし遊園地のチケット持ってるよ*
カイト:おお、じゃあそこ行こう!
向日葵:純恋ありがとー!カイトくんも!
カイト:いやいや、俺何もしてないし(笑)
向日葵:ううんーw
カイト:ていうか純恋?落ちちゃった?
向日葵:純恋ー
純恋:ごめんね!ちょっと落ちちゃってた(´・ω・`)
カイト:びっくりしたw
向日葵:明日楽しみだねー!
カイト:うん!
純恋:うん、そうだね^^*
「ふう……」
純恋とカイトくんが二人で会うのを何とか防げたあと、何だか冷や汗をかいているのがわかった。
思わず安心の溜め息を吐くが、まだまだこれからだ。純恋とカイトくんを二人っきりにさせるとまたわたしがいないところで会ってラブラブになっちゃうもん。
明日は純恋に負けない……いや、勝てるようにいっぱいお洒落してこなくちゃ!
いっつも制服だから私服何着ようか迷うなー、と思いながらクローゼットやロッカーを見て明日の服を選ぶ。
でも知らなかった。純恋がわたしと同い年だったなんて……カイトくんがわたしより一つ年上なのは知ってたけど。
×
「……此処、だよね」
わたしは待ち合わせ時間より数分早く待ち合わせ場所についていた。
遅れてくるのも好感度下がると思ったし。
いつものわたしと全然違う自分の姿に少し動揺してた。
「ねえ君、一人?」
「え……?」
突然誰だかわからない男の人に声をかけられる。
カイトくん?……じゃないみたいだし。
「一緒に遊びに行こうよ?」
「い、いやです……」
「なんだよー、待ち合わせ?」
「はい、まあ……」
何この人しつこい!
しかもさり気なく背中に触れてくる手が気持ち悪かった。
「彼氏と待ち合わせ?」
「ちがいますけど……」
違うと言った瞬間、ズキリと胸が痛んだ。
自爆してるじゃん、わたし。
「じゃあいいじゃん、行こうよー」
「や、やだっ……やめてください!」
抵抗してもベタベタ触ってくる手を振り払おうとした瞬間、突然その男の人の手が放れた。
え?、と思い男の人の方をみると、そこには高校生らしき人がその男の人の腕を掴んでいた。
「俺の彼女に触らないでください」
「……っ!」
高校生の人が男の人の腕を掴む手に力を入れ始めたのか、男の人は早々と去って行った。
でも、彼女って……?ちがう、よね?
「……向日葵、だよね?」
「うん……、何で彼女って」
「や、だってああ言わないとあの人放れなかったかなって思って」
かっこいい
優しくて面白くて、わたしが予想していたカイトくんとそっくりだった。
「ありがと、カイトくん」
「いえいえ」
ふざけて笑うカイトくんは更にかっこよく見えた。
せっかく二人で楽しいひと時を過ごしていたのに、タイミング悪く純恋がやってきてしまったけれど。
「遅れてごめんねっ」
「いや、何かあったの?」
「ううん、何も……」
「ふうん」
純恋、もっと可愛い女の子を予想してたけどそこまで可愛くないんじゃないかな?
まだわたしの方が上だと思う、と自意識過剰なことを考えつつもわたしたち三人で遊園地へと向かっていった。
-
353
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/02(月) 09:19:59 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
mail.
「すごーいっ! ねえ、ジェットコースター乗ろうよっ」
遊園地についた途端、ついテンションが上がってくいっとカイトくんの袖をつかんでジェットコースターを指さしてしまった。
でもカイトくんはそのテンションについてきてくれて、ジェットコースターまで一緒に走り出す。
「あ……」
純恋がそっと手を伸ばしたのがわかった。寂しげに漏れる声はカイトくんの耳には届かずわたしたち二人ではしゃいでる。
そりゃあ、いくらチャット内で可愛いイメージがあった子でも現実の世界で可愛くなければやっぱないって思っちゃうでしょ。
朝早くきたから遊園地は比較的すいていて、二列になる人気ジェットコースターも並ばずに乗れた。
順番的にわたしとカイトくんが隣同士で後ろに一人で純恋が乗るって形になっちゃったけど。
「きゃーっ!」
急激に落ちたと思えば一回転しちゃうジェットコースターに楽しさと怖さの悲鳴が止まらなかった。
カイトくんは隣でわたしの様子を見ながらも笑っている。
後ろからは特に何も聞こえなかったんだけどな。
ジェットコースターが終わったあと、初端からわたしは立ち上がれなくなってしまった。
いやこわかったんだよ、本当に。するとカイトくんが立ち上がるのを手伝ってくれたりもして嬉しかった。でも……
「ご、ごめんね……」
「いや本当ジェットコースター苦手なんだね」
「や、好きなんだけどね?ちょっと……」
立ち上がれたはいいものの歩けなかったわたし。
次の人もいるしどうしようと焦り始めた瞬間、突然カイトくんがわたしを抱き上げた。
所謂お姫様抱っこの状態なんだけど恥ずかしすぎるよこれ。
「かかかカイトくんっ?!」
「はいはい、静かにしてようねー」
「いやいやだってわたし重いし!」
「全然軽いよ、ちゃんと飯食ってんの?」
「食べてなーい」
「いやだめだろ」
笑いながら話すわたしたちの後ろをぽつんとついてくる純恋がなんだか可哀想に思えてきた。
でもまあ……今日くらいわたしが楽しんだっていいよね。
×
やっと歩けるようになったわたしたちで、次はお化け屋敷にいくことにした。
勿論すっごくこわかったけど。
「きゃー!」
お化けが出てくるたびにわたしは叫ぶけど、カイトくんはむしろ笑っていた。
驚くわたしが面白いのだかなんだかで。
そして次のお化けが出てきた瞬間、思わずカイトくんの腕に抱き着く。
「っ、あ……ごめんね!」
「いや、いいよ」
「え?」
「もうちょっとこのままでいーよ」
暗くてよくわからなかったけど、そう言うカイトくんの頬が少し赤く染まっているような気がした。
-
カイトくんと向日葵ラブラブですね!リア充め、爆発しろ★ry
爆発しろまで言い切ってみた!←
いやべつに爆発しなくていいんだけど。
354
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/02(月) 22:35:53 HOST:e0109-49-132-7-239.uqwimax.jp
▼報告
今連載しているmail.ですが
タイトルmail.から現実<二次元girl.に変更しますノ
355
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/03(火) 12:12:11 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
現実<二次元girl.
「純恋」
「……なあに?」
お化け屋敷を出てきてベンチに座り休憩しているとき、カイトくんが純恋の名前を呼んだ。
純恋はいたのかというくらい薄い空気で存在していたけれど、それでも小さな声で反応する。
「……チャット内で話しただけなのに好きとか変なこと言ってごめん」
「え? でもわたしは嬉しかったし」
「うん、それはありがたいんだけどさ……」
みるみるうちにカイトくんと純恋の表情が曇る。
表情を曇らせるカイトくんはやっぱりかっこいいままだったけど、元々少し地味ではある純恋は更に存在感を薄くし地味にさせた。
「やっぱり好きっていうの取り消してほしい」
可哀想と感じると同時に心の何処かで少しだけ喜んでしまった。
そして純恋がパニック状態になったのか固まりながら聞く。
「え? ……わたしのこときらい、なの?」
「いや、そういう意味じゃなくて……恋愛感情で好きっていうのはやっぱり違かったってこと、かな」
固まりつづけてしまった純恋にごめんともう一度謝ったあと、次はわたしの方を向く。
真剣にわたしを見つめる瞳にドキンと胸が揺れた。
「俺さ、向日葵のことが好きなんだって今日会った瞬間にわかった。俺と付き合ってくれませんか?」
「…………っ、わたしも! ずっと好きでした、付き合ってくださいっ……!」
涙が溢れてきた。
人との付き合いが苦手で好きなのはパソコンとチャットくらいしかないわたしに彼氏ができたから。
チャットで何度も話してるからカイトくんとは十分話しがはずむし、もうこれ以上の人はいないのに、とずっと心の中で思ってた。
嬉しいけど、純恋はどうなるんだろ。
「……え、わたしはカイトが好きで、え」
突然のことに純恋も動揺を隠せないのか小さな声で振られたという現実を否定している。
「……わたしっ、わたし……」
「ごめん、純恋……」
カイトくんがもう一度純恋に謝る。
「…………わたしじゃだめだった? どこがだめだったの? やっぱり見た目かな……それとも性格?」
「ちょ、純恋……」
自分を責めるように悪いと思うところを述べていく純恋の肩にカイトくんの手が触れた。
その次の瞬間、純恋がカイトくんに抱きつく。
「純恋?」
「ねえっ、わたしの悪い所言って! 全部直すから……だから別れたりしないでぇっ!」
抱きつかれてバランスを崩しそうになるカイトくんに少しあせった。
とりあえず人に見られるとアレだから純恋をつれたまま遊園地の人気のない場所へ行く。
「……純恋、放して?」
「いやあっ! ねえ、カイトはわたしのどこが嫌なのっ?!」
カイトくんがふらりと後ろによろめいた。
「ちょ、あぶない!」
-
356
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/03(火) 16:54:38 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
現実<二次元girl.
「カイトくん?!」
「……ってー」
純恋に体重をかけられてカイトくんも純恋もそのまま後ろに倒れてしまった。
でもカイトくんが下敷きになって純恋を支えてあげたようで、純恋に特に怪我はない。
「……カイト」
「あ、純恋怪我ない? 起き上がれる?」
なんでカイトくんはそんなに優しいの?
カイトくん怪我してるじゃん、起き上がるのも痛そうだったじゃん。
そんなことを思いながら、純恋に手を差し出すカイトくんをじっと見つめることしかできなかった。
「……わたし、絆創膏持ってるよ」
擦り剥けて血が出ているカイトくんの腕を見てそっとカイトくんの傍に駆け寄った。
一応学校で保健委員やってるから手当とかはできるんだけど、純恋は大丈夫かなあなんて思っちゃったりもする。
「……ごめ、なさっ……」
「純恋、もういいから……」
泣きながら謝りだす純恋を必死にカイトくんが慰める。
そしてカイトくんの腕を手当しおわったわたしが純恋に一言告げた。
「……純恋、せっかく遊園地来たんだから謝らないでもっと楽しも?」
「そうだよ純恋、もう謝らなくていいからさ」
そう言った瞬間、キッと純恋がわたしのことを睨んできた。
「向日葵が……向日葵がカイトのこと奪ったのよ!」
「え…………?」
もう言葉も出なかった。
-
357
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/03(火) 17:54:12 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
現実<二次元girl.
「もういい! ……カイトはわたしなんかどうでもいいんでしょ?」
「ちがう! 純恋っ」
それだけ言い残して、純恋は遊園地の更に奥へと進んでいってしまった。
「危険なので立ち入り禁止」と書かれてロープで通れないようにしてあるというのに、無視して無理矢理通る。
その看板の下に小さく「崖があるので絶対に入らないでください」と書いてあった。
「カイトくん、追わなきゃ! 純恋が危ない!」
「ん、」
わたしたちもロープの奥へと進んでいく。
もうそこは森の中のようで、周りには木しかなくていつ崖があってもおかしくない様子だった。
少しでも早く純恋が見つかるようにと走る。
「きゃっ?!」
突然足元が崩れた。
でもカイトくんがわたしの腕をつかむ。
どうやら崖に落ちかけたようで、此処は本当に危ないんだということがわかった。
「気をつけて……っていうか、危ないから俺の後ろ歩いて」
そう言われてそっとカイトくんの後ろにいった。
そしてしばらく歩いたあと、森から抜けたと思いきや大きな崖についた。
そこには純恋の姿があって、ほっと安堵の溜め息を漏らす。
「純恋、危ないからこっちに……」
「わたしのこときらいなくせに」
「好きだよ! その……恋愛感情ではないけど」
カイトくんと純恋の会話を聞きながら、少し嫌な展開を予想していた。
「……なら、ここまできて?」
「え? どうして、」
「……迎えにきてくれたんでしょ? わたし怖くてここから動けないな」
たしかに、純恋は崖が崩れ落ちそうでもうすぐ落ちてしまうんじゃないかってところにいる。
カイトくんはそっとそこに歩み寄ろうとした。けど、
「だめっ!」
「……向日葵?」
思わず叫んでしまった。
「危ないよカイトくん! 救助の人呼ぼう?」
「……大丈夫だよ、向日葵」
ふわりと優しげに微笑むカイトくんに大丈夫なんじゃないかっては思っちゃうけど、でも
行ってほしくなかった。
ねえ、危ないよカイトくん。
-
358
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/05(木) 19:49:49 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
▼おしらせ
あー、なんか短編スランプ気味で書けないよ!
ってことでこれから下がってることが多くなるかもしれない。
いつか復活するんでお楽しみに!←
359
:
ゆい
:2012/04/05(木) 19:59:51 HOST:180.106.190.103
ねここさんすごいです!
おもしろい!!!
360
:
ピーチ
:2012/04/06(金) 22:08:46 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここさん>>
久しぶり〜〜!
スランプかぁ・・・仕方ないよね、頑張って抜け出して!←何からだww
今のチャットの話読んでるけど・・・何か自分を映し出してる!みたいな所あるww
361
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/06(金) 22:32:13 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
>ゆいさん
すごくないですね!
でもありがとうございます、そういっていただけるとスランプも抜け出せるような気がした!←
>ピーチさん
ひさしぶりだねー!
抜け出す!www
ねここ本格的というか小説に出てくる感じのチャットやったことないんだよねー(´・ω・`)
だからもう勘でやってr((
362
:
ピーチ
:2012/04/07(土) 10:54:13 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここさん>>
マジ?だったらあたしが教えてあげよーかー??ww←大バカ!
でも、勘でやっててよくそこまでそっくりに書けるねー←尊敬の眼差しww
363
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/07(土) 11:12:47 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
>ピーチ
チャットのこと以外にも話しの結末まで全部教えてくれるとうれしいな☆(ry
尊敬の眼差しじゃなくて馬鹿にしたような眼差しの方がいいよ!←
364
:
ピーチ
:2012/04/07(土) 11:19:32 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここさん>>
え〜?馬鹿にした眼差しって・・・((汗
勘でここまで書けるってよっぽどだよ〜・・・←自分は文才ゼロww
あたしもファンタジー系書いてるけど・・・ここまで書ける自身ないなぁ・・・
365
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/07(土) 16:45:12 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
>ピーチさん
思い切り馬鹿にしてください(`・ω・´)←
文才ゼロなのに勘でここまで踏ん張ってみた奴が一名ここにいるのですが←
ねここファンタジーとか戦闘とか書けないんだ全力で!←
366
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/07(土) 17:06:54 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
香りフェチではないのです 女の子ver.
茶色いふわふわのフードつきパーカーをぎゅうって抱きしめたくて。
もふもふしてぎゅうってして頬をスリスリしたりして、すっごいふわふわで暖かくて気持ちいいの。
ああもう、勘違いしないでよね!
「君」が好きなわけじゃなくて「君のパーカー」が好きなんだってば!
もふもふしたときのあのふんわり感も。
ぎゅうってしたときのあの柔らかい暖かさも。
頬をスリスリしたときのあの言葉にできないくらいのふわふわさも。
君のパーカーの全部が好き。
もふもふぎゅうぎゅうすりすり!
もふもふしたときに、ぎゅうってしたときに、スリスリしたときにふわって香っちゃうような君だけの香りも好き。
もふもふぎゅうぎゅうすりすり、くんくんっ!
「お前俺のパーカーで何やってんの……?」
「え」
君に見られたってこのふわふわ感と香りは誰にも譲れないのです。
「変態かよ!」
「あぁあぁうあぁえうああぁあぁあっ、くんくんもふもふ」
「返せ!」
やだやだ、そんな性格悪い君にこんなに可愛いパーカーなんて勿体無いよ。
そう思いながら教室中を走り回ったその瞬間、思わず転倒してしまった。
「かーえーせっ」
わたしを支えようとして一緒に転倒しちゃう君。
何かわたしが押し倒されたみたいな感じになって恥ずかしいのに、君がわざと顔を近づけて悪戯っぽく言ったその言葉も好き。
そして君からふわって香るパーカーと同じ香りも全部大好き。
「くんかくんかっ」
「……お前香りフェチなの?」
香りフェチっていうかパーカーフェチっていうか。
「君フェチかなっ」
悪戯っぽく微笑んでそう告げたわたしの言葉に顔を真っ赤にしちゃうような君も好き。
立ち上がった瞬間思いっ切りわたしのこと抱きしめちゃうくらいわたし大好きな君も大好き。
「俺もお前フェチかも」
「じゃあパーカーちょうだい?」
「それとこれとは話しが別だっつの、お前返せ!」
「やだーっ」
教室中駆け回って。
バタバタ走り回って思わず教室を抜け出したりして。
どんな人混みの中でもわたしを見つけ出しちゃうくらいわたしフェチになってね!
-
かわいいいいぃいぃいいいっ!
フェチについて書いてみた!
息抜きです、連載ものちょっと飽きてきt(ry
▼ちなみにフェチの意味
特定の種類の物に異常な執着・偏愛を示す人。
まあつまり、香りフェチだったら香りにすっごい興味があるというか。
声フェチ(主にねここ)な人は声に癒されちゃったりまあある一定のものにものすごい興味を持ち出すみたいなね!
そう、ねここは声フェチだったのだ!
女の人のアニメ声とかそういうのは好きじゃないんだけど
男の人の低音ボイスに殺られる。
367
:
ピーチ
:2012/04/07(土) 18:15:19 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここさん>>
ピーチでいーよーwwタメもおkだしwww
文才100以上のねここさんのことを文才0のあたしが馬鹿にはできない・・・((落ち込み
あたしはねーPCフェチ・・・ってゆーかPC依存症ww
368
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/07(土) 22:49:34 HOST:e0109-49-132-29-5.uqwimax.jp
>ピーチ
早速ピーチで呼んだよ!←
ねここのことも呼び捨てでいいよ〜
ねここが文才100以上だったらピーチの文才は軽く10000は超えてるね、馬鹿にしようか!
依存www
でもパソコン依存しちゃうよねー!
369
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 12:25:33 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
じゃーねここー♪
え・・・あたしの10000以上って言ってくれる人、家族にいないよ〜>M<
ありがとー!後、LOVE何とかのスレも読んでるよ♪←ゴメン、題わかんない((汗
370
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/08(日) 14:08:11 HOST:w0109-49-135-21-29.uqwimax.jp
>ピーチ
そうなの?
ねここの家族はまずねここが小説書いてることから知らないと思うなw
カタカナで書くとラブレターだよー♪
371
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 17:15:12 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
ほぇぇ・・・!カタカナで「ラブレター」!?
あたしには永遠に縁のない単語だ!←極度の男嫌いww
まぁ、知り合いでも同級生じゃなきゃ大丈夫だけどーwww
ねここは男嫌いとかない?
372
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/08(日) 19:57:57 HOST:w0109-49-135-21-29.uqwimax.jp
>ピーチ
男嫌いとかはないかなー!
てゆかピーチが男嫌いなの始めて知ったw
373
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/08(日) 20:21:32 HOST:w0109-49-135-21-29.uqwimax.jp
「しあんいろ」一周年記念 / ○○フェチお題
もうすぐ(5/21)しあんいろはスレ立てから一年が経ちます!
ということで、みなさまへのお礼もかねて○○フェチお題ということで様々なフェチを持った子のお話を書いてみようと思いました。
何故まだ一ヶ月以上先のことなのに今からやるかというと
これから新学期で忙しくなるし帰る時間も遅くなるので書く暇がなくなると思うので(´・ω・`)
とりあえずねここが書くもの
0、君フェチ(
>>366
)
1、声フェチ
2、手フェチ
3、髪フェチ
4、ぬいぐるみフェチ
5、肌フェチ
100、すきだよ(ほんとに)
希望とかリクエストがあれば言ってください(ないと思うけど)。
書きますぜひ書かせていただきます!
最後の肌フェチとかちょっとおかしくねって思ったけど気にしないでね!
0はもう既に書いたきみフェチ、100はとりあえず一番最後ってことです。これから増えるかもしれないからね(`・ω・´)
ちなみにフェチの意味を簡単に。
まあ一つのものを溺愛するというか。
声フェチとかだと低音ボイスとか声にうおおってなっちゃう感じでs((
改めて今言いますが
しあんいろも無事一年達成できそうです!
ねここが連載系を完結させられるようになったのも
100レス以上普通に書けるようになったのも
しあんいろがキッカケだったので本当にしあんいろは思い出たっぷりな小説です。
しあんいろの題の由来もいろいろあるんだよ
個人情報に関わってくるから教えられないけど!
それでは!
今までありがとうございます。
そしてこれからもよろしくお願いします!ねここでしたー!
374
:
ピーチ
:2012/04/08(日) 22:58:08 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
マジマジ?男嫌いナシ??
うん!ねーちゃんと共に男嫌いだよー!←集団いじめと言う訳ありww
375
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/08(日) 23:24:31 HOST:w0109-49-135-21-29.uqwimax.jp
「しあんいろ」一周年記念 / 声フェチ 女の子ver.
耳元でそっと囁くそうに、低いとろけちゃいそうな甘い声で好きだよって。
ぞくってしちゃうような感覚も顔が真っ赤になっちゃうような瞬間も大好きだから。
×
ある日ある朝、ふいに耳元から全身にかけてぞくりと体が反応したことがあった。
そして顔が真っ赤になって動揺しまくりの態度で耳元で囁いてきた人物を見つめる。
「なにいまの……」
「ははっ、ゆい超感じちゃってんじゃん」
可愛い笑顔を浮かべちゃうような君も好きだけど、だけど。
「しょ、翔太の声なんかで感じるわけないんだからー!」
君の、翔太の笑顔に比べて全然可愛くないわたしは感じてしまったということを素直に認められなかった。
あの感覚が、ぞわりとして震えちゃうような快感を認めた瞬間わたしが負けだと思ってしまったから。
「そう、じゃあ他の男だと感じるの?」
「し、知らないよ……翔太が連れてきてくれたら試してやってもいいけどっ」
またあの感覚を味わいたいという本能からその言葉が出てきていたけれど、やっぱり自分が負けるのは嫌だった。
わたしが連れてきてくださいってお願いするはずなのに、まるで翔太が試したくて試させてあげるような形になってしまっていることにも気づかずに、わたしは反抗しつづける。
「ふうん、じゃあやってみようか?」
「う、うん……多分感じることはないと思うけどね!」
そしてわたしを試すといって集まってきたのは数人の男子たち(しかも格好良い)。
一人目の男子は校則違反なんじゃないかというくらいの金髪がぴょんぴょん跳ねている。
「かわいいな」
ぼそり、と。
不意打ちで囁かれた言葉にまたあの感覚が襲いかかってきた。
ぞわり、びくん。
「お、感じちゃった?」
「かっ、感じてなんかないもん……」
そして二人目の男子。
元気な茶髪が特徴的で寝癖みたいなのがくりってついてる。それも可愛い。
「え、ちょ……こんな可愛い子の耳元で囁いちゃっていいの?」
「どーぞどーぞ、囁いちゃって?」
ふざけて笑う翔太にむっと表情を歪めているとまた不意打ちで囁かれた。
「食べちゃいたい」
ぞくって、びくってしたけど。
言葉おかしくないですかと硬直しながら聞く。
「ねー、感じた?」
「……感じてないもん」
ふいっと顔を逸らした瞬間後ろから囁かれた。違う声ってことは三人目の子?
「うまそ」
ぞわっ、びく。
ぶんって振り向くと、黒髪でロン毛の男の子が怖いくらい綺麗な顔で微笑む。
「……食べれねえの?」
「わたし食べ物じゃありませんから」
そっと断った次の瞬間、後ろから今までにないくらい甘い低音ボイスで囁かれる。
「もう感じてんじゃん、ゆい」
すっごいぞわぞわした。
その瞬間思わず声をもらしてしまった。
「は、い……」
わたしはもう感じてますよ。
すごくすごく、もう抜け出せないくらいに囁かれることの快感を知った。
「……しょうたのが、いちばんいい」
「ん、よくできました」
くしゃりとわたしの頭を撫でる手をぎゅってしたかった。
もっと囁いてって言いたかった。
そう思いながら翔太を見つめると、またあとでなと大きな手でわたしの頭をもう一度撫でる。
そして最後に囁かれた言葉ととろけちゃうような甘い甘い低音ボイスに、わたしはもう声フェチというものになってしまっていたのでした。
「好きだよ」
-
一周年記念の声フェチです!
なんか文章は君フェチに比べて劣ってしまいましたが精一杯orz
自分が声フェチなぶんむしろ書きづらいんです。
ていうかねここはこういうタイプの声フェチじゃないんですよー。
歌っていうか
歌ってるときの声が好き
で、その声でしゃべられるとやられる!
ということで次は手フェチです!お楽しみにー
君フェチ(
>>366
)←old next→手フェチ
376
:
名無しさん
:2012/04/09(月) 16:46:32 HOST:ntiwte061076.iwte.nt.ftth.ppp.infoweb.ne.jp
声フェチとかw
377
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/10(火) 17:45:27 HOST:w0109-49-135-27-63.uqwimax.jp
>ピーチ
ねここではないけどねここの周りに男好きな女の子ならいるよ、たくさん←
ねここはきらいではないだけで好きでもないけどねー
訳ありなのか…(`・ω・´;)
ていうかお姉ちゃんいるんだー!
378
:
ピーチ
:2012/04/10(火) 18:42:46 HOST:i118-18-136-9.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
うん♪めっちゃ訳ありーww←軽くゆーなよ!
まー気にしない気にしない♪
379
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/10(火) 20:04:25 HOST:w0109-49-135-27-63.uqwimax.jp
「しあんいろ」一周年記念 / 手フェチ
頭を撫でるとき、細い指が髪に絡まってそれが心地よかったり。
大きな手に包み込まれてしまうような感覚が不思議なくらい安心したり。
×
「ばかゆいー」
「っ、ちょっと! 今日髪可愛くしてきたのに崩さないでよー」
翔太の大きめの手がわたしのツインテールを緩く崩した。
せっかく早起きしたのに、と思いながら翔太を見つめキツく叱ろうと思ったけど、楽しそうに微笑む翔太を見てぷうっと頬を膨らませることしかできなくなる。
「校則違反ですよー、つって」
そう言いながらもう一度わたしの頭を今度は優しく撫でる翔太にきゅん、と心が揺れてしまった。
ありえないありえない!、と心の中で全否定して次はちゃんと怒る。
「も、もー! 校則違反じゃないってば!」
「ばーか、冗談に決まってんだろ?」
そんなふうにわたしをからかって。
そんなふうにわたしを馬鹿にして。
やっぱりこんな男好きじゃない!
×
「なあゆいー」
「ちょ、ちょっと! 学校でベタベタしないでよー」
お昼の時間、お母さんにつくってもらったお弁当を友達と二人で食べているとまた髪がぐしゃりと乱暴に撫で回された。
またきゅんって心が揺れる。翔太なんて嫌いじゃないのか、わたし!
「学校では? 別に普段からお前にベタベタしてるつもりないし、したくもないしー」
「なっ……」
突然わたしの頭から離れた手にあ、と声を漏らした。
寂しいような物足りないような感覚にぶんぶんと頭を横に振る。
「そーいうの、自意識過剰っつうんだよ」
こんな男、絶対好きじゃないってば!
×
「ゆーいー」
「…………」
わたしはもうアンタなんかと話さないんですー、と心の中で呟きながらぐたあっともたれ掛かってくる大きな体をぐいっと反対側に押した。
好きじゃない好きじゃない好きじゃない近寄るなこの野郎!
「……なに? ゆい、昼のこと怒ってんの?」
「…………」
絶対話さないんだから、と思いちらりと翔太の方を見つめると、翔太はわたしなんかをよそに違う人のところに行って楽しそうに話していた。
もうだいっきらい、と俯いて少し早歩きになる。
「……ゆーいちゃんっ、妬いちゃった?」
「っ、妬いてなんか……あ、」
しゃべっちゃった。
そのことに今気づきにたぁっと嬉しそうに微笑む翔太をやられた!、という顔で見つめた。
その瞬間ふわりと翔太の手がわたしの頭を優しく撫でる。
「お前さ、俺の手好き?」
「……うん、そーかも」
「ふうん、変態なの?」
翔太の言葉に口をパクパクさせて叫んだ。
「あ、アンタのが変態だばあか!」
どうやらわたし、翔太自身じゃなく翔太の手が好きなようです。
-
手フェチ!
うん、イマイチかな?
まあいいとしよう。
声フェチ(
>>375
)←old next→髪フェチ
380
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/11(水) 18:37:10 HOST:w0109-49-135-27-146.uqwimax.jp
>ピーチ
大変ね!(ry
え、あ、はい。気にしません、はい!←
381
:
ピーチ
:2012/04/11(水) 19:44:42 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
え??全然大変じゃないぞょ??
もー慣れっこだからさーww
382
:
いちごみるく
◆0e9tec1EeM
:2012/04/12(木) 19:55:22 HOST:p205.net112139138.tokai.or.jp
久しぶりにみにきましたああああっ!!
本当に面白いです^^、
383
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/14(土) 14:17:58 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
>ピーチ
そっかあ!
てか慣れるってすごいなw
>いちごみるくさん
お久し振りです!
あわわ、ありがとうございます!
384
:
ピーチ
:2012/04/14(土) 16:47:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
ラブレターの方での返事もかねてこっちでまとめさせて頂きますww←てきとーでゴメン((汗
慣れなんだよねー・・・塾でも男子が二人いるんだけどさ、殆ど女子と話してるしww
「しあんいろ」、「ラブレター」共に更新頑張ってね〜!♪
385
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/16(月) 16:37:31 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
「しあんいろ」一周年記念 / 髪フェチ 男の子ver.
「好きだよ、ゆいのこと」
夕暮れに染まった教室が、俺たちを包み込むような暖かさになった。
ずっと心に秘めてきた思いを伝えるなら、今かなって思う。
「わたしも好きだよ、翔太!」
そう言って無邪気に微笑む君は。
そう言って楽しそうに俺を見つめる君は。
俺の思いなんか全然受け取ってくれなくて。
「……嘘吐き」
思わず呟いた一言に本当だよ、と冗談っぽく笑うゆいの笑顔が俺には眩しすぎた。
俺は恋愛感情でゆいが大好きで、幼馴染とか友達なんかじゃなくずっと女の子としてゆいを見てきたのに。
「ゆいが鈍感なのはわかるけど、やっぱりちょっとむかつく」
ゆいが冗談っぽく笑って俺の気持ちを冗談にして誤魔化そうとするなら。
俺は冗談だって思えないくらい最低なことでもしてやろうかな。
ぐいっと、二人っきりの教室の中でゆいを押し倒した。
驚いている様子を見せたゆいだけど、まだへらりと笑ってる。
「……むかつくんだよ」
ぐっと、ゆいの腕を押さえつける。
流石のゆいも不思議そうに首をかしげてきた。
「わ、わたし……翔太になんかやった? 嫌なことしてたら謝るよ、ごめんね」
そういう素直なところも。
素直を通り過ぎて鈍感すぎるところも。
全部全部、俺は愛してるのに。
「俺、恋愛感情でゆいが好きなんだよ」
大好きなゆいに怖い思いさせたくない。
嫌われたくないって気持ちが、俺の体を勝手に動かしたような気がした。
「わたしのどこがいいの?」
「ぜんぶ」
「ぐ、具体的に教えてよおっ!」
顔を真っ赤にして戸惑うところ、とか。
なんて冗談っぽく言ったところでゆいは怒るだけだから、真剣に答えた。
「可愛くて無邪気な笑顔も素直で優しいところも、ちょっと鈍感でドジなところも、嘘なんて吐けない真っ直ぐな目も」
俺がゆいの好きなところを述べていくあいだ、ずっとゆいが硬直していたような気がした。
動揺しているんだろうなって思いながら俺もいつものゆいに負けないくらいの笑顔を浮かべて言った。
「あと一番、茶色くてさらさらでふわふわした髪の毛が好き」
「…………ごちそうさまでした」
ゆいの言葉にふっとまた笑みをこぼす。
そして真っ赤な顔で俺に言ったゆいの言葉に思わず俺も顔を赤くさせた。
「わたしもずっと、翔太のこと好きだったよ! その、男の子として」
抱きしめてやりたくなった。
顔が真っ赤になるくらい思いっ切りぎゅってして、俺の大好きな髪の毛をくしゃりと撫でたりもしたかった。
でもそれは、今度のお楽しみ、かな。
-
なんかもう髪フェチじゃないね、ごめんね!←
いっつも女の子verだったけど今回は男の子の視点で書いてみたよー
手フェチ(
>>379
)←old next→ぬいぐるみフェチ
386
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/16(月) 16:39:06 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
>ピーチ
適当じゃないよ!大丈夫だよ(`・ω・´)!←
ていうかピーチ塾行ってるんだ!
いやなんか変なところ突っ込んじゃったね、ごめんね!w←
うん、がんばる!
387
:
ピーチ
:2012/04/16(月) 21:47:46 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
あははっ♪うん、塾行ってるよ〜ww←あくまでバカww
でもねここは塾とか行かなくても良さそーだよねーww
頭いーでしょ?ねここって←地味に失礼な物言い
あたしもせめて人並みにできればなぁ・・・
388
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/16(月) 22:14:41 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
>ピーチ
頭よさそうなイメージがあった!
そそそそんなことないよ(´・ω・`)!馬鹿なのに勉強してないだけだよ((
389
:
ピーチ
:2012/04/18(水) 21:46:25 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
・・・嘘!!?ね、ねここー!わざわざ嘘吐く必要ないんだよ?←何のためだ!
だって頭よくないとそこまでの小説書けないよー!!
390
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/20(金) 19:57:35 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
Empty heart
わたしの心は「 」気持ちでいっぱいだ。
――ぼんやりと、その言葉を眺めていた。
まだ新品の教科書には「」の中の言葉を埋めなさいなんて命令口調の黒字が書かれている。
相変わらずの命令口調に何も思うことはなかった。
友達はいい加減命令口調やめてほしい、飽きてきたと愚痴を吐いてきたけれどわたしにとってはどうでもいいことだし。
ていうか、高校生にもなってこんな問題を出すか?
そう半ば呆れながら、それでもその空欄にどんな言葉が入るのかと真面目に考え出した。
わかった人から手挙げて発表してー、なんて中学生や小学生っぽいことをやらせる国語の先生を溜め息混じりに見つめた。
こんなのわたしにはわからない、と心の中で諦めたけれど、周りをよくよく見てみるとほぼ全員手を挙げている。
その生徒たちの瞳はまるで先生に馬鹿にしてんじゃねえよ、と言っているようだった。
「じゃー……空」
まだクラスの人の名前をよく覚えられてない先生は席順ではない出席番号順の名簿を手に、ふいにわたしの名前を呼ぶ。
わたしはえ、あ、と何も言えなくなって戸惑ったあと、冷静にびしりと言い放った。
「わたし手挙げてませんけど」
「ああ、名簿席順じゃないからよくわからなくてねー」
ごめんごめん、と苦笑する先生に何とか逃れられただろうかと思う。
そんなことを思ったわたしが馬鹿だったのかな。
「でもこれは答えられるんじゃないの? 空、答えてね」
無理無理!、と両手を胸の前で振ったけれどもう逃れられそうにはなくて、溜め息を吐いたあと言った。
「わかりません」
「……マジで?」
少し間をあけたあと、まさかと言ったような目で先生がわたしを見つめた。
それに反抗して呆れた表情で見つめ返す。
「わからないし答えたくもありません、代わりに誰かどうぞ」
「ん、んー……納得しちゃいけないような気もするけど、まあいいや……じゃあ綾、答えてー」
綾はわたしがそう思っていいのかわからないけど友達で、代わりにさされて大丈夫かな、と思った。
「はい、わたしの心は幸せな気持ちでいっぱいだ、です」
綾も戸惑い恥ずかしさ紛れではあったけれどハッキリと自分の考えを述べていた。
これが正しいとわかっていながら、それでもわたしには無理だと諦める。
「はいはい、その心は?」
国語の先生はよくわからないけどその心を問い掛けていて、綾はにこりと可愛らしい笑みを浮かべてからわたしを見つめ言った。
「大好きな友達と学校生活を送れていることが幸せで、感謝しても感謝しきれないくらい幸せだーって気持ちでいっぱいなんです」
綾がわたしのことをこんな風に思ってくれてるなんて思わなかった。
でもわたしの心は幸せな気持ちでいっぱいになるっていうのは、ちょっと違うような気がする。
違うというか、わたしはそういう感情になったりはしない。
「……幸せってなんだろうね」
ペンケースについている綾と御揃いの兎のストラップを見つめながら、そう独り言を呟いた。
‐
つづきます!
一周年記念の息抜きと思いましたがこれも一周年記念です←
ていうかもうぜんぶ一周年きねn((
391
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/24(火) 18:10:17 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
Empty heart
「――ら、そら、そーらっ!」
綾の声が聞こえてきた。
確か国語の授業だったはずじゃ、と周りを見回すけれど、教室にはもうぽつりぽつりと数人の人しか残っていない。
「次、移動教室だよー?」
「え、あー……わたしいいや」
綾の言葉に驚きながら小さめの黒板に書かれた時間割を見た。
チョークで書かれた音楽の字は綾の綺麗ででも可愛い系の字だ。
でも今から移動したって遅れるだけだし、と思いながら諦めるように言う。
「いいやって空……音楽好きじゃなかったっけ?」
綾の問いに心の中で「昔はね」と答えた。
でもあまり思い出したくない過去だったから、ううんと首を横に振って誤魔化す。
「ほら綾、遅れちゃうよ?」
「……う、うん」
綾は戸惑いながら、それでも遅れないようにと走っていった。
わたしは走るの遅いけど、綾は体育得意で走るの凄い速いからきっと間に合うよ、と思いながらその背中を見つめる。
わたし、音楽すっごい大好きだったのになあ……
‐
意味深ですね!
つづけるかどうか迷ったけど、前のお話でつづきます宣言しちゃったからつづき。
意味深なまま終わるとあれなのでつづくかもですもっきゅきゅ!
392
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/04/26(木) 19:34:25 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
Empty heart
わたしは昔、歌うことが大好きだった。
――いや、歌うことじゃなくて、わたしが歌を歌って喜んでくれる幼馴染が好きだったのかな。
わたしには保育園のころからずっと一緒の幼馴染がいた。
男の子で、いつもわたしのことを考えてくれてた大切な幼馴染。
いつしか幼馴染から恋人って関係になれならな、と昔はよく思っていたものだ。
でもその幼馴染はわたしに振り向くことなくずっと片思いしてる女の子がいて、わたしはただ応援することしかできなくて。
「がんばってね」って言葉でさえ、言うのが辛かった。
心の狭い人間だなと思う。
好きな人のことなんだから素直に心から応援しなきゃって思う。
でも、そのときのわたしは幼馴染の彼を手放すのが怖くて仕方なかった。
――わたしはずっと圭のこと好きだったよ。
――俺は、俺には優がいるから。
――片思いのままでいいの?
――そりゃ嫌だよ。
――じゃあわたしにしちゃいなよ。
こんな会話をしたのを今でも覚えてる。
よく考えてみればわたしってかなり強引だったな。
そして最後に言われた言葉がまるで刻みつけられたように心に残った。
――俺さ、優と付き合ってるんだよね。
それから圭と話したことはなかった。
すれ違うたび、わたしの心がからっぽになっていくような気がして。
それでも話し掛けることはできなかった。
圭に振られたことで音楽が嫌いになったのかもしれない。
聴いてくれた人に喜んでもらう気持ちなんて、どうでもよくなってしまったのかもしれない。
あのとき好きって言わなければ、まだ圭の隣で微笑んでいられたのかな。
‐
393
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/05/01(火) 22:15:23 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
あいらぶゆう!
――アンタ、遊のこと好きなんでしょ?
つい先日友人に言われた言葉がふいに頭をよぎった。
そのときは吃驚して別に好きなんかじゃないよ、と誤魔化してみたけど実際どうなんだろう。嫌いではないしなあ。
遊はとっても明るくて元気でやんちゃで、でもさりげなく優しくて格好よくて。
何だかんだで好かれやすいしバレンタインデーのチョコレートの数なんて毎年数えきれないほどの量だし。
そんな遊を見てるのが楽しかったのに、急に好きなのかなんて聞かれてもわからないよ。
ていうかわたしに好きって言葉を持ちかけること自体どうかと思う。
だってわたしは初恋でさえまだだし、好きって気持ちをよく理解してないし第一わたしが恋愛なんてできるはずないって思ってるんだもん。
あ、何だか自分で考えといて悲しくなってきた。
でもわたしが思うことは。
遊は人気者なわけで、告白したってごめんとかありがとうで流されちゃうしバレンタインだって大量のチョコの中の一つになっちゃうから。
遊に告白したってどうせ無駄な努力で終わるんじゃないのってことだ。
わたしの心の中で思っていることを全部吐き出した瞬間あっさりと現実に戻された。
なぜだろう、おでこが痛い。
声にならない悲鳴をあげておでこを抑えるとパラパラと白い粉が舞った。
「〜〜〜〜っ」
「お前、アタシの授業で寝るなんて良い度胸してんな」
「寝てたのは反省してますけどチョーク投げるのはないですよ先生」
やってしまった。
スパルタと体罰とチョークで有名な有希先生の授業で寝てしまうとは。
「……先生、いっそ心臓に当てて殺してくれればよかったのに」
「一発で殺すよりじわじわと痛めつけながら焦らし殺す方がいいでしょ?」
ふふん、と何故か得意気な有希先生に何ですかそれ、と呆れた表情を浮かべた。
友人も言うけれどわたしと有希先生は何かと気が合うらしく、それなりに話しが弾む。
でもおでこが痛いのは変わらなくて、その後数時間チョークが命中したおでこが痛みつづけるのだった。
×
「あ、遊だ」
「おお、桜じゃん」
学校の帰り道、ぼーっとしながら見慣れた町を歩いているとバッタリ遊と遭遇した。
一人でいるのめずらしー、と適当なことを考えながらへらりと微笑む。
「なんか久し振りー」
「だなー! 前はあんなに二人で遊んでたのにどうしてだろうな?」
遊の率直な質問にわたしも率直な答えを返してあげた。
「それは遊が女たらしで女の子と遊びまくるからでしょ」
「ありゃ」
俺女たらしじゃねえもん、と微笑みながら言う遊にまったく、と呆れてみせたりした。
でもでも、どうして遊が此処にいるんだろう? 家も正反対のはずだし。
「……なんかあったの?」
「何でわかんの?」
「え、いや……なんか」
ぽつりとつぶやいてみたことがまさか図星だったなんて、と思いながらそれでも少し不安になった。
「頼りないかもだけど、わたしでよければ聞くよ?」
思わず言った言葉に遊が自信の無さそうな目でわたしを見つめてきた。
どきん、と。
遊の綺麗な目に胸が揺れる。
「……俺、好きな人できたんだよね」
「だ、だれ?」
「言うわけねーだろ」
「あ、そっか」
びっくりしたびっくりしたびっくりした。
好きな人できたって遊が言ったとき、わたしのことすっごい見つめてきたんだよ。
きっと自意識過剰なだけかもしれないけどドキドキしたのは事実だ。
応援してあげたいけどなぜか痛む胸に疑問を感じた。
「……相談、乗ってくれる?」
そんな上目遣いでわたしのこと見ないでよ。
そう思いながらそれでもわたしは頷くことしかできなかった。
「う、ん……」
わたしに恋愛の相談なんてきっと無理だよ、遊。
‐
タイトルのあいらぶゆう!には意味があります
とりあえず主人公、桜(さくら)と遊(ゆう)ね!
短連載の予定
394
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/05/04(金) 17:36:13 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
あいらぶゆう!
「その、遊の好きな人ってだれ?」
「うわあ、積極的だね」
思わず好きな人を聞いてみたけれど、遊は素直には答えてくれず呆れたような表情でわたしをからかった。
違う!、とあわてて否定してみたりもしたけどやっぱり遊は好きな人の名前は教えてくれなかった。
「ヒント! すっげえ鈍感な子だよ」
「ゆ、遊……鈍感な子が好きなの?」
わたしもさっきの恨みを晴らすように呆れたような目線で見つめてみたけどやっぱり遊には効かないようで、しかも笑ってるように思えた。
「も、もっとヒントないの?」
話しを逸らすようにわたしが聞くと、遊は案外あっさりと教えてくれた。
「お人好しで自分のことより相手のこと優先しちゃう奴で――多分俺のこと好きじゃないと思う」
だんだんと曇る遊の表情にわたしもどう反応していいか戸惑った。
だって自分の好きな子が自分のこと嫌いかもしれないんだよ?
でも、遊に限ってそれはないと思った。
「……多分それは遊の思い込みだよ! 遊嫌われるような人じゃないし、女たらしではあるけど」
「ほらあ、俺女たらしだと思われてんだよー!」
ますます自信を無くす遊を何とか元気づけられないかとわたしは思わず大きな声で言った。
「ほ、ほら! その子が遊のこと好きじゃなくてもわたしは遊のこと好きだからさ!」
「……そ、れって……恋愛で?」
遊の顔が真っ赤なのがわかった。
ああどうしよ、わたしの顔も真っ赤だ。
「……え、と……もうなんなの! よくわかんないよっ、遊のこと好きなのかもしれないっ」
こんな自分ヘンだよ、と思いながら遊に言った。
そして遊がわたしに告げる。
「俺の好きな子の名前、教えてあげる」
「え?」
「桜っていう子だよ! 可愛くて優しくてお人好しで鈍感で、俺がずっと大好きな子」
わたし、だったの?
ずっと羨ましいなあなんて思ってた遊の好きな子って、わたしのことなの?
「わたし、も……遊だいすき」
ねえ、遊
女たらしってね、本心じゃないんだよ。
きっと大勢の中の一人でもいいから遊の傍にいたくて言っちゃったんだと思う。
「あいらぶ遊!」
これからはずっとわたしの傍にいてね!
‐
タイトルもあいらぶゆう!っていうか、漢字にするとあいらぶ遊です!
遊って名前にしたのはあいらぶ遊って言わせるためだったんだけどあんまり強くでなかったねorz
本当はもっと長くするつもりだったんだー!
長くして長くして桜を嫉妬させるつもりだったんだー!
でもしあんいろの更新率下がるからさ、早めに終わらせたかったんだよーorz
ではではぐっばい!←
あれ?終わりがおかしいか、まあいいやぐっばい。
395
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/05/13(日) 20:11:35 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
たくさんの「すき」を詰め込んで。
うたうのが、すき。
透き通った歌声が部屋に響くのが心地よく感じられて、だいすき。
おんがくが、すき。
ヘッドフォンから大音量でながれる曲は何もかもわすれられるようで、だいすき。
まんがが、すき。
幸せな展開で終わる主人公を見るのが、だいすき。
ともだちが、すき。
いっしょにいたらつまらないことなんてなくておもしろくてたまらなくて、だいすき。
ぶんしょうが、すき。
小説を書いたりするのが、だいすき。
いじるのが、すき。
ちょっとした悪戯心で振り回したり意地悪したりするのが、すき。
きみが、すき。
友達と楽しそうに微笑むきみが、大好き。
いつか、幸せになれればなって思う。
――きっとそれは、不可能なことだと思うけど。
-
お久し振りです!
Loveletterのほうには存在していましたがさがりっぱなしのしあんいろも投稿してみました、どうも。
これは全部ねここの好きを詰め込んだものです。
最初ははずかしがりやな女の子の好きなことを詰め込む予定だったのですが、ちょっといろいろあってこうなった。どうなった。
それで本当に好きな人はいるんだけれども本当に不可能だからうわあorz
てな感じでじゃあまたいつか更新します(´・ω・)!
396
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/05/19(土) 21:05:41 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
友達以上恋人未満
「さつき、好きだよ」
「わたしも好きだよ、ゆーくん」
さつきは嘘つきだ。
そう思いながら、俺の告白を掻き消すように微笑むさつきを見つめた。
「なあ、そういう意味じゃなくて」
「他にどんな意味があるの? ゆーくん可笑しいね」
さつきの肩を強めの力で掴んでも、さつきはくすくす笑うだけだった。
きっとさつきは気づいている。
俺の気持ちに。
俺の好きの意味に。
――やっぱり俺、嫌われてんのかな。
「さつきは俺のこと嫌い?」
「へ? 嫌いじゃないよ?」
「じゃあなんでっ」
「……嫌いじゃないよ、安心して?」
じゃあ何でちゃんと返事してくれないの?
そう言おうと思ったけど、さつきは誤魔化すように優しく言った。
「……気づいてるだろ?」
「何に?」
「俺がさつきのこと好きなこと」
「……友達として、でしょ?」
ちがうよ。
俺がそういうことを言わないように、言えないように。
さつきは力強い真っ直ぐな瞳で俺を見つめてきた。
「……どうしてもだめなのかよ」
消えるようなかすれた声でそうつぶやくと、さつきが可愛らしい笑みを浮かべて言った。
俺の大好きな笑顔。
愛おしくて見惚れてしまうほどの笑顔。
とても綺麗で、残酷な。
「友達以上恋人未満――わたしたちはこれ以上にも以下にもならないよ」
さつきがちいさな声で繰り返すように「なれないよ」とつぶやく
以上にも以下にもならない、なれない――
「ならせめて今だけ幸せにさせて?」
そう言って、不意打ちでさつきにキスをする。
さつきは驚いたような表情をしていたけれど、そのとき一瞬でもさつきの顔が赤くなったのがわかって思わず笑みをこぼす。
「これからも友達以上恋人未満の存在でいてくれる?」
「……もう、ばか」
やっぱり俺たちには。
一番これが心地良いのかもしれない。
-
さつきはあのさつきだったりちがかったり。
以上未満シリーズを書きたかった。
気がむいたらまた書くかもね!
てかそろそろしあんいろ一周年な件。
一周年のときはパアっと盛り上がりたかったぜ!
397
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/05/20(日) 12:45:07 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
前レス友達以上恋人未満のつづき!
今回はさつき視点です(´・ω・)
友達以上恋人未満(ばーか) sideさつき
「なんなのほんとに……」
今でも思い浮かべてしまう。
ゆーくんの顔が近づいて、急に不意打ちでキスされたあの感覚。
キスされて吃驚してつい走って帰ってきてしまったけれど、ゆーくんを傷つけてしまってないだろうか。
ゆーくんとは幼稚園の頃から高校生の今までずっと一緒で家も隣同士で。
学校だってずっと一緒に行ってるし二人で遊んだりすることだって少なくない。
――そんなゆーくんと恋人みたいな関係なんて、今までの無邪気な楽しさがなくなりそうで嫌だよ。
わたしだってゆーくんを恋愛感情で好きなのかもしれない。
恋人同士になったらすっごく幸せで嬉しいのかもしれないけど、どうしても今の関係を崩したくないのに。
あんな風にキスされたら、崩したくなくても崩しちゃいそうになっちゃうよ。
「……ばか、ゆーくんのばか」
自室のベッドにぼふんとダイブしながらそう言った瞬間、突然自室のドアが開いた。
「だーれが馬鹿だって?」
「ゆ、ゆーくん!」
え? ちょ、なんでゆーくんが此処に?
あたふたと動揺しながら、それでもゆーくんの唇ばかり見つめてしまう。
「だってさつきチャイム鳴らしてんのに全然気づかねえんだもん、鍵かかってなかったから勝手に入っちゃった」
「か、勝手に入っちゃったってそれ犯罪じゃん! 不法しんにゅ、ん」
不法侵入だよ、と言いかけたところで突然口が塞がった。
驚いて目を見開くとまたゆーくんにキスされてて――
「〜っ、どうして」
「だってさつきが俺の唇ばっか見てっから、キスしてほしいのかなって」
どうしてそんなことするの?、と訊くまでもなく、ゆーくんが微笑んで言う。
悪戯っぽい笑顔を浮かべるゆーくんにちいさな声で訊いた。
「……本当に好きなの?」
「うん」
即答するゆーくんにふざけないでよ、と言おうとしたけれど、ゆーくんの目は真剣で真っ直ぐにこっちを向いていて思わず俯いてしまった。
「さっきゆーくんとは友達以上恋人未満って言ったけど」
そう言いかけてから、わたしから不意打ちでゆーくんにキスする。
さっきまで自分からキスしてにこにこしてたくせに、わたしからキスしたら顔が赤くなっちゃってるゆーくんに悪戯っぽく言ってみせた。
「こーいう関係もいいかもね」
遠回しに、ゆーくんの好きっていう言葉の返事をする。
その瞬間、ゆーくんが突然わたしを抱きしめてきた。
「大好きだよ、さつき」
「わたしもゆーくん大好き」
これからもずっと一緒だよ。
-
案外さっぱりと終わってしまった(´・ω・)
これはもうLoveletterのさつきじゃないかもです。
あ、でも転校前のさつきの設定でもいいかも!とか思ったんだけどね。
よくよく考えればさつきにはレオがいるじゃんみたいな←
でもレオは未花なんだよなあってことで
超ネタバレですがゆーくんLoveletterに登場するかもです。
いえーい!
398
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/05/23(水) 22:29:44 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp
▼「しあんいろ」一周年突破!
本当は5/21にもう一周年突破してた!
気づかなかったんです(´;ω;`)
でも無事一年迎えられたのでよかったです(`・ω・´)
なんだかぐだぐだと色々書いていますが、これからもよろしくお願いします!
後で(今度)、詳しく語ったりしようかなとか思ってますので!
そのときはぜひ付き合ってやってください←
-
399
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/05(火) 20:15:30 HOST:w0109-49-135-38-28.uqwimax.jp
enjoy!
「受験前なのに男女で街に行くって、どんだけ余裕なんだよって感じだよね」
「そ、そっかな?」
「そうだよもー、遥未(はるみ)はほんっと勉強嫌いだよね」
「うん、だいっきらーい!」
だって面倒臭いし、とつぶやきながら友人の花乃(はなの)と話していた。
今日の放課後わたしと花乃を含む男女六人で遊びに行くことになったからだ。
午前の授業でお腹が空いたからかあっというまにお弁当を食べ終わったわたしたちは、今日のことについて計画を立てていた。
「まずゲーセン行くでしょー? そしてー、ユーフォーキャッチャーでゆーまに何かとってもらってー」
「遥未、遊真(ゆうま)好きだねえ」
「そんなことないもんっ」
わたしがゆーまって呼んでる遊真っていうやつは、わたしの幼馴染。
二人でゲーセンに行くこともすくなくはないし、みんなの都合が合わないときも二人でよく遊んでいる。
受験勉強に向けて部活を引退してもう放課後フリーになった途端、わたしと遊真は勉強もろくにせずに遊び始めたのだ。
最近よく先生に呼び出されたりもするけど、楽しいし。
でも複雑なのは遊真は頭がいいってところで、勉強しないで困るのはわたしだけってことだ。
「……勉強なんてするだけムダだよね」
「遥未高校どこ受けんの?」
「花乃とか、遊真と同じとこ」
「えっ」
認めたくないけど花乃は頭がいい。
遊真には敵わないけど、遊真たちが行く学校のレベルは優に超えている。
今日遊ぶ他のメンバーの百合(ゆり)と海(かい)と迅(しゅん)も同じ高校だが、みんな普通に勉強ができるから余裕でその高校に入れるのだ。
――つまり、馬鹿はわたしだけってこと。
「どうしよおおおおお」
「どうしたの? 遥ちゃん」
おおお、この可愛い声でわたしのことを唯一はるちゃんと呼ぶ声は。
思わず勢い良く振り向くと、そこには可愛らしい百合の姿があった。噂をすればってやつかな。
「いやあああちょっとね! おべんきょしなきゃなって!」
「まず勉強のことをおべんきょって言ってること自体頭悪そうに見えるよ」
馬鹿花乃が突っ込んできた。
別にそんなことないもんっ、と顔をそらすけれど、正直言ってその通りだと思った。
「じゃあ、今日は遊ばないで百合の家で勉強会する?」
百合の可愛くて優しい提案に、それでもわたしは拒否した。
「ごめん、勉強ならわたし帰る……」
「大丈夫っ! 花ちゃんもいるし海くんも迅くんも遊くんもいるよっ」
「う、じゃあ……お願いします」
百合の可愛さに押されて、今日は勉強会に変更することになった。
×
「全くわからーんっ!」
百合が馬鹿なわたしのために用意してくれたプリントを見つめたあと数秒後、思いっきり叫んでみた。
隣にいた花乃と海から苦情がくる。
「もー、なんでわかんないかな」
「うっせーよ馬鹿遥!」
「馬鹿とはなんだ!」
抗議のしようがないのに抗議するわたしは本当に馬鹿だと思う。
ちらりと目線を外したときに目にうつったのは、百合とゆーまだった。
ゆーまが百合に優しく教えてるところ。
そうだよね、この二人付き合ってんだもんね。
去年あのゆーまから百合に告白して、両思いってことがわかったんだ。
優しい百合のことだから、わたしが百合にゆーまと付き合わないでほしいって事前に言っとけば振ってたんだろうなあ。
――って、だめだめ!
百合の優しさにつけこんじゃだめだよ。
それにわたしはゆーまのこと好きなんて思ってな……
思って、るかも。
「パンクしそう」
「何で?!」
勉強もむずかしいけど、恋ってもっともっとむずかしいね。
-
つーづく!
400
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/06(水) 20:53:18 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
400レスありがとうございます!
enjoy!
「複雑すぎる……」
「だから何が?! どの問題がわかんないんだよもー」
面倒臭そうにそれでもわたしに教えてくれようとしてる花乃。
ええい、もう優しさにつけこんでしまえ!
「花乃おぉぉおぉ……」
「なっ、何っ? やめてよね、変なことするの!」
無意識のうちに手が花乃の胸にいっていた、なぜだ。
まあ花乃に余裕でひかれたし、花乃のことが好きな海はわたしを睨んできた。
「おい馬鹿遥、花乃に何やってんだよ」
「うるせー馬鹿海、この片思い野郎」
「はあ?! 何だよ馬鹿って!」
「あ、片思いは否定しないんだー」
「……お前マジうざい!」
わたしと海が話し出すと止められる人は滅多にいなくて、でも今回は何とか花乃が止めた。
「二人ともうるさい! 勉強会なんだからケンカしないの!」
「はぁーい……」
「ご、ごめん……」
海もさ、花乃鈍感なの知ってんだから早く告白すればいいのに。
そんな風に思いながら、空回りばっかりしている海を哀れな目で見つめた。
そういうわたしも、哀れなんだけどさ。
「あの、遥ちゃんがいいのなら……勉強やめよっか?」
「え、マジで? いいの?」
「うんっ、勉強も結構したし」
百合は可愛い。
髪はサラサラだし、二つに結んでるのとか超似合うしすごく綺麗な栗色だし、目も綺麗で髪と同じ栗色で大きくて顔小さくて……えーとえーと、細くて華奢なのがまた可愛いし優しいし。
本当に女の子って感じの子だ。なのにノリ良くて性格良いとかずるいよね。
「……あそぶ」
「やったぁ」
百合が喜んでくれてなんかうれしかった。
でも喜ぶってことは本当は勉強したくないのに付き合ってくれたんだよね。
「ごめんねみんな……わたしが馬鹿なせいで勉強につき合せちゃって」
しゅんと落ち込んでいると、ゆーまがくしゃっとわたしの髪を乱暴に撫でた。
百合も微笑んで言う。
「らしくねーなー。俺たちどれだけ仲良いと思ってんの? 今更謝られても困るし」
「百合はすこしでも遥ちゃんが勉強できる機会があってよかったって思ってくれたなら、それだけでうれしいよ」
花乃と海と迅も、微笑みながらわたしに言った。
「こんなことで謝るくらいの仲じゃないでしょわたしたち!」
「遥未はうるさいけど、にぎやかで楽しいよ。できれば花乃と話すときは入ってこないでほしいけどさ」
「謝られると逆にビビるし!」
わたしはまだ中学生で、そろそろ高校生になるけどなったとしてもまだ高校生って感じで。
なのにもう、こんなに優しくて頼もしくて一部可愛い仲間がいるんだ。
やっぱり恋は難しくて複雑だけど、この関係は崩したくない。
「ありがとみんなー!」
なんか思わず目の前にいたゆーまに抱きついてみたけど、百合がいるからもう我慢しよう。
この気持ちはしまいこんでこのメンバーでずっといっしょにいたいな。
-
百合ちゃん美化設定←
百合可愛すぎて辛いおおおおう……(´・ω・)
遥未はお馬鹿キャラです。
あはって感じです。
それ以外みんな頭良いです。ずるいね。
401
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/06(水) 23:11:50 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
enjoy!
「か、か、か……」
爆発しそう。
つか萌え死にしそうだ。
「かわいいいいぃぃいいいいいぃいいっ!」
「そ、そんな可愛くないってばっ」
隣で赤面するメイド姿の百合。
超可愛い!
――わたしたちは今勉強そっちのけで街へ来ていて、コスプリ(コスプレプリ)撮ろうよってなって今こうして萌え死にしてるわけだ。
照れながら微笑む百合の姿を見た瞬間わたしは爆発しそうでした。てかしていい?
「ねえゆーまっ! 百合超可愛くない?!」
思わずゆーまに振ってしまった。
ゆーまが執事服(わたしと海と迅が無理矢理着せた)を着心地悪そうに着崩しながら振り向く。
その瞬間、ゆーまが驚いたのがわかった。あの悪戯好きで意地悪なゆーまが。
「……超可愛い」
「ほ、ほんと?」
「俺嘘つかないし」
百合がゆーまには否定することなく本当かどうか確認していた。
意地悪だけどゆーまは嘘つかないんだから、本当に決まってんじゃんっていう若干皮肉めいた気持ちになったわたしはバカップルをよそに花乃の元にいく。
「花乃様わたしを殺してください」
「ああ、わたしもちょうど殺そうと思ってたとこ――どうせなら百合に撲殺されたい?」
「えちょ、殴り殺すんですかていうかマジかよ!」
焦らしプレイの撲殺は嫌だ!
自分で言い出したことだけどマジかよとか言ってみた、フフン。
「アンタが遊真のこと好きなことくらいわたしも海も迅も知ってるわよ」
「ええええ? マジ?」
「ああうん、マジ」
「だって遥未わかりやすすぎだし」
思わず海と迅に確認してみたら二人とも迷いなく頷きやがった。こんちくしょうめ。
でも、と付け足すように海と迅が話し出す。
「百合の邪魔すんなよ、アイツ傷つきやすいんだから」
「遥未のことだから百合の優しさにつけこんでみたいな行動するんだろうけど奪おうとしてたら俺らは遥未の邪魔するからなー」
にっこにこのスマイルが憎たらしいねこんちくしょう☆
ていうかどんだけ信用ないのよわたし☆
「……ああ、うん……はい」
「まあ、落ち込むなよ」
大人しく頷くと花乃に適当臭く慰められた。
でもわたしはゆーまが好きって気持ちは引っ込めるって決めたんだし、ねえ?
「あの、えと……」
え、なんだろう可愛い声が聞こえてきたどうしよう。
「ゆゆゆ百合ちゃん? 聞いてたかな今までのはなし?」
「……ご、ごめんなさいっ」
「別にいいよぉ、わたしあの人のこと好きじゃないから!」
「で、でも……」
百合の優しさ、好きだよ。
でも、そんなに優しくして甘く見たりしないでよ。
「そんなに迷うなら、わたしゆーまもらっちゃうよ?! いいの?」
ああもう前言撤回だ!
わたし、ゆーまを諦めない!
「百合だって人間なんだから、嫌いなものは嫌いでいいんだよ! 苦手なものは苦手でいいし、譲りたくないものはあげなくていいの!」
「……遥ちゃん、百合ね」
百合が微笑みながら話し出した。
「遊くんのこと、遥ちゃんに譲れないくらい大好きなの――でもね」
百合の顔から、笑顔が消えた。
ていうか、必死に笑おうとしてるけど涙があふれだしちゃってる。
「遥、ちゃんがっ……もっともっとだいすきで……」
百合は可愛すぎる。
そういうところがずるいんだ。
「……あーもう、百合には敵わないなぁ」
「え……?」
「しゃーないから今日はここまでにしといてあげる! それまでに心の準備しておきなよー」
潔く撤退するわたしってかっこいいかも、優しいかも強いかも頼もしいかもー!
やーばいっ、ヒロインみたーい!
「……わたしが」
うん、もともとはね。
「わたしがゆーまを好きにならなければこんなに悩まなかったのに、ゆーまの馬鹿」
ゆーまが悪いんだよ。
-
402
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/09(土) 18:40:02 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
enjoy!
「馬鹿って、お前陰でコソコソ俺のこと馬鹿にしてんじゃねーよ」
「ああああれっ? ゆーま、何でここに……つうか聞かれた!」
聞きなれた声と偉そうな言葉に振り向くと、そこには今最も会いたくなかった人――ゆーまがいた。
なんでいんの?! 百合といっしょじゃなかったの? てかユーフォーキャッチャーしに行ったんじゃなかったの?!
たくさんの疑問が思い浮かぶ中、わたしはゆーまに恐る恐る訊いた。
「その、いろいろアレな話は聞いてないよね……?」
「アレってなんだよ。つーか俺馬鹿って言われたのしか聞いてねーし」
「よ、よかったああああああ!」
「なんだよそれ」
無愛想でぶっきらぼうなゆーま。
なんでコイツなんかのこと好きになったんだろ。
なんか自分で自分が意味わかんなくなってきた。わたしのこと理解できるのってわたし以外にいないんだろうけど。
「……つか、百合はいいの?」
「ああ、百合は花乃とプリ撮ってくるって」
「なにそれ! わたしも撮りたい!」
「お前誘われなかったんだから行くなよ」
「そ、そんなああああああ!」
酷いよ!
いくら好きな人が同じだからって百合、酷すぎる!
わたしの中でもわもわした何かが破裂して、思わず百合といっしょにいるであろう花乃に電話してみてしまった。
「あっ、もしもし花乃!」
『うざい』
プツッと残酷な音が聞こえたような気がする。
どうしてうざいの一言できるんだ!
ヤケクソで百合にも電話してみた。
「百合いいいいぃいいいい!」
『遥ちゃんっ。ごめんね、誘ったんだけど遥ちゃん固まっちゃってたから先行っちゃった……』
「わたしもいっしょにいたい!」
『じゃあ今からそっち行くね――って、え? 花ちゃん?』
「え、なになになに」
百合の可愛い声が聞こえなくなった。
なになに? 何が起こったの?
『おい遥未――ガールズトークしてるから来ないでねー』
「え? ちょ、花乃?!」
百合と花乃が代わったみたいだ。
ガラの悪いその声にげ、と声を漏らす。
『アンタは遊真と戯れてれば?』
え、なんだろ。
さっきうざいできられたときはプツッて音だったのに今回ブツッて音が聞こえたんだけど。
ツー、ツー、ツー……と虚しくわたしの耳に入る音。
数秒固まったあと、ずっと見守ってくれてたゆーまに情けなく愚痴る。
「ひどいよね……花乃」
「いや、正しい判断だと思うけど」
「そんなあっ、ゆーま酷い!」
「……酷いっつうんならコレあげなくていいよなー」
403
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/09(土) 18:40:56 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
enjoy!
ゆーまの目つきがかわった。
そうそう、この目つきのときが好き。
悪戯っぽくてかっこよくてかわいーの。
そんなゆーまの手には可愛いくまのぬいぐるみがあった。
ユーフォーキャッチャーでわたしが千円かけても取れなかったやつだ。コイツ軽々と取りやがって。
「べべべ別に酷いなんて言ってないよ?」
「ふうん……じゃあなんて言ったのかなあ?」
「す、素晴らしいゆーま様って言った」
「そんな長くなかったような気がするんだけどなぁ」
「そ、そんなことないよー」
「まあ、んなこと言わなくてもあげるけど」
ぽいっとぶっきらぼうに渡されたぬいぐるみ。
ぎゅうっと抱きしめてみた。
ゲーセンだからタバコの匂いがするのかと思ったけど、なぜかゆーまの良い香りがしてた。
もっとぎゅうぎゅうもふもふしてみる。
くんくんくんっ
「んな匂い堪能すんなよ!」
「ははははいっ」
楽しい。
これがもっとつづけばいいのに――と思ったところで、もう一つ薄いピンク色をした可愛いくまのぬいぐるみがあるのに気づいた。
「それは?」
「これは百合にあげようと思って」
うわ。
訊かなきゃよかった。
わたしのは茶色で百合はピンクか。
しかも百合のくまは赤いハートのクッションをもってて、そこに白の刺繍でLOVEってかいてあるし。
「……」
「なんだよ、訊いといて反応なしかよ」
「べっつにぃ」
「意味わかんねー」
そう言って頬を掻くゆーまはなんだか嬉しそうだった。
やっぱり百合が大好きなのかな。
なんだか妬ましいような皮肉めいた気持ちになったわたしは思いっきりゆーまの手を握ってみた。
「なんだよ」
「いいじゃんいいじゃん、わたしだって寂しいんだよー」
「彼氏いなくて?」
「うん、まあそんな感じ」
「俺で充電すんなよっ、俺には百合が――?!」
ゆーまが悪いんだからね。
多分わたし顔真っ赤だと思う。
だって思わずゆーまにキスしちゃったから。
「……なん、で」
ゆーまが動揺しているのを見て、なんだか嬉しくなった。
ドキッてしてくれたのかな。
顔が赤いゆーまの様子を見てみると、どうやらドキッとしてくれたようだ。
「なんでもなーいっ」
この流れで「好きだよ」とか「振り向いてよ」とか言えればいいんだけど、ヘタレで弱気なわたしはふいっと顔をそらして誤魔化してしまった。
まあ、一歩進展できたのかな。……いや、遠ざかったか?
-
404
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 17:15:23 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
Flower Meaning
言葉じゃ伝わらないくらい、君を愛しています。
わたしは臆病だから思うように言葉にすることができなかったっていうのもあるけど。
でも、伝えられなかったのは事実。
わたしの分も、たくさん幸せになってね。
×
「花(はな)!」
「ははははいっ」
教室に先生の怒鳴り声が響いた。
周りの生徒たちがくすくすとこっちを見て笑っているのがわかる。
「おいお前――俺の授業で寝るとは良い度胸してんなぁ?」
「おおおお褒めいただいて光栄です!」
「……授業が終わったあと外周十周! そのあと部活に来い!」
「えええええっ」
「えええじゃない! 寝てるお前が悪い」
ったく……、とため息をつきながら教卓へ戻る先生の後ろ姿を見つめながらポツリとつぶやいた。
「外周楽しみだなー」
だって、彼氏の宇宙(そら)に会えるから。
宇宙はバスケ部のエースで――とにかくかっこいい。
バスケ部の外周に混ざっちゃえばこっちのものだよね。
あ、外周したあと二人で抜け出すのもいいかも!
いろんな空想をめぐらせたわたしは、授業中当てられたのに気づけなくてまた怒られてしまった。
でもそんなの耳に入ってないのは言うまでもないだろう。
×
「しゅーんっ! いっしょ走ろー」
「あれ? 花も外周? 花吹奏楽部だよな」
「うん、そうなんだけどー……顧問の八木(やぎ)の授業で寝ちゃってー」
「あー、あれ眠いよな」
「地理だったもんでつい……ね」
二人でわいわいきゃっきゃしながら外に出た。
クラスは別々だけど今でもこんなに仲が良いんだ。
何せ小さい頃からずっといっしょの幼馴染でもあるし。
「わ、ここ久し振りに走る」
さすが、毎日外周してるだけあるなと思った。
あっというまに半周してるし。
――でも。
「つ、つかれた……」
このペースで行ったらわたしは途中で死んじゃいそうだ。
よろりとよろけながら走るけど、そんなわたしを迅が気遣ってくれてやる気がアップした。
「大丈夫か?」
「うんっ、へーき! つかがんばる」
「がんばれー! 辛くなったらおんぶしてあげるから、とか――」
「マジで?! おんぶして!」
――おんぶしてもらった。
迅はそのつもりで言ったんじゃないってわたしも気づいてるけど。
なんか無性に甘えたくなっちゃって。
「はふー、お疲れ迅!」
「楽しかったなー」
わたしをおんぶして五周以上走ったのに、なんでこんなに力有り余ってるんだろ。
なんだか急に迅が強くて頼もしく見えてきたわたしは思わず迅に抱きついてしまった。
「?! どうした花、具合悪いのか?」
「ううんー、なんか抱きつきたくなった」
えへ、と微笑んで見せる。
やっぱり迅が大好きだなー!って、改めて実感した。
×
405
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 17:17:00 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
上はミスです(^ω^;)
修正版投稿!
Flower Meaning
言葉じゃ伝わらないくらい、君を愛しています。
わたしは臆病だから思うように言葉にすることができなかったっていうのもあるけど。
でも、伝えられなかったのは事実。
わたしの分も、たくさん幸せになってね。
×
「花(はな)!」
「ははははいっ」
教室に先生の怒鳴り声が響いた。
周りの生徒たちがくすくすとこっちを見て笑っているのがわかる。
「おいお前――俺の授業で寝るとは良い度胸してんなぁ?」
「おおおお褒めいただいて光栄です!」
「……授業が終わったあと外周十周! そのあと部活に来い!」
「えええええっ」
「えええじゃない! 寝てるお前が悪い」
ったく……、とため息をつきながら教卓へ戻る先生の後ろ姿を見つめながらポツリとつぶやいた。
「外周楽しみだなー」
だって、彼氏の迅(しゅん)に会えるから。
迅はバスケ部のエースで――とにかくかっこいい。
バスケ部の外周に混ざっちゃえばこっちのものだよね。
あ、外周したあと二人で抜け出すのもいいかも!
いろんな空想をめぐらせたわたしは、授業中当てられたのに気づけなくてまた怒られてしまった。
でもそんなの耳に入ってないのは言うまでもないだろう。
×
「しゅーんっ! いっしょ走ろー」
「あれ? 花も外周? 花吹奏楽部だよな」
「うん、そうなんだけどー……顧問の八木(やぎ)の授業で寝ちゃってー」
「あー、あれ眠いよな」
「地理だったもんでつい……ね」
二人でわいわいきゃっきゃしながら外に出た。
クラスは別々だけど今でもこんなに仲が良いんだ。
何せ小さい頃からずっといっしょの幼馴染でもあるし。
「わ、ここ久し振りに走る」
さすが、毎日外周してるだけあるなと思った。
あっというまに半周してるし。
――でも。
「つ、つかれた……」
このペースで行ったらわたしは途中で死んじゃいそうだ。
よろりとよろけながら走るけど、そんなわたしを迅が気遣ってくれてやる気がアップした。
「大丈夫か?」
「うんっ、へーき! つかがんばる」
「がんばれー! 辛くなったらおんぶしてあげるから、とか――」
「マジで?! おんぶして!」
――おんぶしてもらった。
迅はそのつもりで言ったんじゃないってわたしも気づいてるけど。
なんか無性に甘えたくなっちゃって。
「はふー、お疲れ迅!」
「楽しかったなー」
わたしをおんぶして五周以上走ったのに、なんでこんなに力有り余ってるんだろ。
なんだか急に迅が強くて頼もしく見えてきたわたしは思わず迅に抱きついてしまった。
「?! どうした花、具合悪いのか?」
「ううんー、なんか抱きつきたくなった」
えへ、と微笑んで見せる。
やっぱり迅が大好きだなー!って、改めて実感した。
× きりまーす
406
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 17:18:09 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
上のつづきです!
それはある秋の終わりかけた時期のこと。
十月の始め、十月一日の出来事だ。
この日は大好きな迅の誕生日で――誕生花であるチョコレートコスモスをプレゼントした。
「迅は男の子だから花なんかいらないかなって思ったんだけど、何が欲しいかわからなくて」
「いや、花にもらえるなら何でもうれしいし! ――でもこれ、俺枯らせちゃいそうで不安だな」
「ふっふっふ」
「な、なに?」
よくぞ聞いてくれました! とでも言うかのようにわたしが目をキラキラさせて言った。
「これはねっ、花の愛が詰まってるから枯れないんだよー!」
「マジで?! やった」
「ふふーん」
迅といると楽しい。
それを改めて感じたわたしはふふっと微笑んで言った。
「お花、大事にしてね」
「うん、絶対大事にする」
ぎゅっとそのお花を抱きしめる迅。
なんだか自分が抱きしめられているような気分になった。
チョコレートコスモスの香りと同じように、すごく甘い一日を過ごしたのだった。
×
そしてそれから数日後。
なんだか最近――いや、あの花を渡してからかな。
急に迅が冷たくなった。
廊下ですれ違っても何にも言ってくれないし、部活のあともいっしょに帰ってくれない。
でも今日はめずらしく迅が家に呼んでくれて、わくわくした気分だった。
「……今日はさ、花に渡したいものがあるんだ」
「な、なあに?」
迅ににこりと微笑みながら渡されたのは黄色い薔薇の花。
迅の笑顔がいつもより寂しそうな笑顔だったなんてことは忘れて思いっきりはしゃいだ。
「く、くれるの? ほんとに?」
「うん、花にプレゼント」
「ありがとう! うれしい!」
なあんだ。
迅が冷たかったのは気のせいだったんじゃん。
帰りにいっしょに帰ってくれなかったのもこの花を買うためか。
すっかりもやもやの晴れたわたしはるんるん気分で家に帰っていった。
お部屋にその薔薇を飾ったのは言うまでもないだろう。
×
その次の日。
部活が終わったあと迅がいるであろう体育館に行ったら、予想通りバスケ部の部員たちがそこにいた。
ちょうど終わったみたいで、迅が驚いてわたしに駆け寄る。
「なんでいんの?!」
「ひどっ、いっしょに帰るからに決まってんじゃんもー……」
「え? もういっしょに帰れないって前言ったよね……?」
「……え、でも……薔薇、くれたじゃん」
「いや、それは……」
迅が気まずそうにポツリと言った。
「黄色い薔薇の花言葉、調べてみて」
× またきるー!
407
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/11(月) 17:19:28 HOST:w0109-49-135-24-13.uqwimax.jp
つーづきー
Flower Meaningは最終話です(´・ω・)
あのあと一人で家に帰ったわたしは迅に言われた通り黄色い薔薇の花言葉を検索していた。
あなたを恋します、友情、……
薄らぐ愛、恋に飽きた、嫉妬、誠意がない、不貞――
「別れよう」
たくさんの花言葉があったけど、迅が言いたいのはきっとコレだ。
別れようって意味……?
どうしてだろう。
でもわたしにも、思い浮かぶことが一つだけあった。
チョコレートコスモスの花言葉。
調べてみると、予想通りのような言葉が載っていた。
「恋の終わり――」
他にも恋の思い出とかがあったけど、迅が言ってるのはきっとコレのことか。
どうしよう、と思ったけど今更言い出せなかった。
でも、いやだ。
伝えたい――このままじゃだめだ。
いそいで家を飛び出して迅が歩く帰り道を走る。
「迅っ!」
「花っ?!」
言葉でなんか、伝えられない。
伝わらないくらい大好きなのに。
わたしは携帯につけていた迅からもらったチューリップの花のストラップを外して迅に渡す。
「……信じて」
それだけポツリと言い残した瞬間――
迅にぎゅっと抱きしめられた。
「疑ってごめんな」
「ううん、いいの――言葉じゃ伝わらないくらい愛してるから」
愛の告白、永遠の愛――
-
チョコレートコスモスの花言葉:恋の終わり、恋の思い出、移り変わらぬ気持ち
黄色いバラの花言葉:あなたを恋します、友情、薄らぐ愛、恋に飽きた、嫉妬、誠意がない、不貞、別れよう
チューリップの花言葉:愛の告白、永遠の愛
って感じです!
タイトルは花言葉って意味。
最初の趣旨とちがうってのは気にしないで←
久し振りに完結した作品でしたー
他のも書かなきゃなー(^ω^)
408
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/14(木) 11:45:28 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
enjoy!
「花ちゃん――」
「どうしたの? 百合」
「――百合実はね、遊くんと付き合ってなんかないの」
照れ隠しでゆーまの傍から離れ、ドッキリ的な感じで花乃と百合がプリ撮ってるところに忍び込もうと思っていたところ。
なぜか、百合が花乃にありえない話をしていた。
いや冗談だろと思ったけど、その声はどこかさみしそうで――不安そうな声。
「百合ね、遊くんに告白して振られたの――」
「え……?」
「ずっと隠してて、嘘ついててごめんなさいっ」
ハテナだらけなわたしの頭の中。
でもどこかで黒いわたしが微笑んでいるような気もして――
「どうしてそんな嘘」
「……遊くんが、遊くんが優しかったから。振られて泣いたわたしを見て、可哀想だと思って付き合ってるふりをしてくれてただけなの」
花乃の声を聞く限りめずらしく動揺しているようだ。
「遊くん本当は、遥ちゃんが好きだったんだよ」
そんな、こと。
そんなこと聞いて、わたしはどうすればいいんだろう。
あ、でも百合は実際わたしに言ってるんじゃなくて花乃に言ってたのか。
「何で今そんな話するの?」
「……遊くんに、もう恋人ごっこはやめようって――百合は強くなったからもう俺はいらないだろって、振られちゃった」
百合は泣いているようだった。
きっと、ごっこでもなんでもゆーまと付き合えてうれしかったんだろう。
……どうしても、ゆーまじゃなきゃダメだったんだろう。
わたしはもう二人の会話を、泣いている百合の声を聞いているのが辛くなって、その場を走り去ってしまった。
でもわたしだけ何も動かないっていうのは卑怯な気がして――ゆーまの元へ向かった。
-
409
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/14(木) 11:59:21 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
enjoy!
「ゆーまの馬鹿、何やってんだ」
「はぁ? 何の話だよ――つうかお前、さっきのなんだったんだよ」
あ、ちょっとタイムタイム。
今のわたしとゆーまの仲を考えてみたら、わたしゆーまにこんな堂々と百合のこと話せる立場じゃなくない?
わたしゆーまのこと好きだし、さっき思わずキスしちゃったわけだし、百合の話を聞けばゆーまもわたしのこと好きだったみたいだし。
その好きだったがもし現在進行系だったらわたし、好きな人と両思いなのにそんな相手に違う女のところ行けって言ってることになっちゃうよね。
――でも。
わたしはゆーまより、百合のほうが好きなのかもしれない。
恋愛より友情のほうが大事なのかな。
「……百合と、別れないであげて」
「なんで遥未がそのこと――」
「さっき花乃と百合が話してんの聞いたの!」
なんなのわたし。
ムキになっちゃって、馬鹿みたい。
「百合、泣いてた! 百合はどうしても、ぜったいにゆーまじゃなきゃダメだったの!」
「……俺の好きな人、誰か知ってる?」
「――――わた、し……だったけど、今は百合でしょ?」
百合であってほしい。
なのに、ゆーまは微笑みながら残酷なことを言い放った。
「今も前も、ずっと遥未だよ」
それは、とてもうれしくて泣きそうなほど舞い上がっちゃうようなこと。
それは、とても残酷で泣きそうなほど悲しいようなこと。
百合をとるか、わたしをとるか。
どうしたらいいんだろう。
「俺は遥未に振られたところで百合と付き合うなんてことはしないよ」
もう百合は、泣くしかないんだと思う。
それならわたしも、泣いて終わろうか――
「ごめ――」
「待って!」
-
410
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/06/17(日) 15:20:07 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
enjoy!
「ゆ、り……?」
走ってわたしを探してくれたのだろうか。
息は荒く、額に汗の玉が浮かんでいた。
「遥ちゃん、百合に教えてくれたじゃん!」
「え……?」
こんなに必死な百合初めて見た。
こんなに強気で、遠慮をしない百合を。
「譲りたくないものは譲らなくていいって、嫌いなものは嫌いでいいし苦手なものは苦手でいいって言ってたじゃんっ」
そうだ、わたし。
百合にそんなこと言える立場じゃなかったんじゃん。
この言葉は結局自分にそう言い聞かせたかっただけだったのだろうか。
――いや、これは。
百合にゆーまを諦めてほしくなくて。
ゆーまに幸せになってほしかったから言ったもので。
「……わたしは、ゆーまに幸せになってほしい」
「なら、百合じゃ無理だよ。遥ちゃんしか遊くんを幸せにはできないの!」
今度は百合が教えてあげるね、と前置きしてから百合が言った。
その笑顔はとても可愛くて綺麗で、わたしには眩しすぎるものだったけれど――
この眩しい笑顔より、わたしを選んだんだ。
それならわたしもこの笑顔以上に輝きつづけてゆーまを幸せにする役目があるんだから。
「ゆーま、好きだよ」
「俺も、ずっと好きだった」
やっと伝えられた。
ライバルだと思ってた百合にも助けられちゃったし。
「ありがと百合」
「言ったでしょ、百合。遊くんより遥ちゃんが大好きって」
わたしはきっと、色んな人に助けられてるんだろうな。
こうして人生を楽しめることに、突然すごく感謝したくなってきた。
「わたしもみんなだいすきだーっ」
ちょっと意地悪な花乃も、馬鹿迅もうざキャラな海も優しくて可愛い百合も、かっこよくて悪戯好きなゆーまも。
わたしにとってはみんなみんな宝物です。
-
enjoyはここから高校編に突入したいところなんです。
こんな長く連載するつもりなかったのでよくわかんないけど。
とりあえず中学生編は一旦おわり。
ここからつづくのかどうか、それはねここの気分次第です←
411
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/16(月) 20:51:43 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
君の隣の笑顔
――笑い方を忘れた。
お笑い番組を見ても友達に面白いギャグを言ってもらっても、何も感じない。
いつ頃からだろう。
多分、君が――レンが交通事故に遭ってからだと思う。
そのときはレンとデートしてて、アタシもレンの隣ですごく楽しそうに笑っていた記憶がある。
でも、あの時――信号無視したトラックにアタシが轢かれそうになったとき。
レンはアタシを庇って――
「いやあぁっ!」
思い出したくない。
あの日から、あれからレンが倒れて救急車で運ばれてから、涙しかながれない。
目が腫れてるのがわかる。
アタシ、レンが隣にいなきゃ笑うなんてことできないよ。
そのとき、コンコン、とアタシの部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ユリナ、レンくんのお見舞いに行くけど……」
「手術、は」
レンはたしか手術をしなきゃいけなくて、対面なんてまだ先のはずじゃ――
「それがね、手術は一昨日終わってて、すっかり体調も良くなったんだって」
レンに会いたい。
ポンッと浮かんだその思いに答えるように、アタシはすぐ部屋を飛び出て準備した。
早く行かなきゃ、きっとレンもアタシを待ってる。
×
「失礼、します……」
恐る恐る、レンがいるであろう病室に入るとそこにはレン独特の金色の髪の毛があった。
「レンッ!」
アタシのこと、待っててくれたかな。
なんだか不思議そうな表情をするレンの傍に駆け寄った瞬間――
「アンタ誰?」
レンの口から、ありえない言葉が出てきた。
アタシは必死にレンに説明する。
「アタシだよ、ユリナ」
「ユリ、ナ?」
「レンの彼女だよ」
アタシがそう言った瞬間、レンが一瞬固まるのがわかった。
辛そうに頭を押さえたあと、申し訳なさそうにポツリ。
「ごめん、覚えてない、みたい」
途切れ途切れに言ったレンの言葉は。
グサリと、深くアタシの胸に刺さったみたいだ。
「どう、して?」
「事故……までは覚えてる――そのとき、誰かといっしょにいた」
「だれ、と? 女の子だよ、ね?」
「ああ、多分……で、その子が、轢かれそうに、なって」
「う、ん……」
思い出して、もっと。
お願いだから、記憶を辿ってアタシにもう一回レンの笑顔を見せてよ。
笑い方、教えてよ。
「ッ!」
「レン?!」
やだ、レン。
ねえ、思い出せないの?
アタシたちで一生懸命つくった思い出、レンは全部忘れちゃったの?
「ごめ、ん……」
「事故の前の、楽しい思い出とか、ないの?」
「誰かといっしょにいて、すごい、楽しくて――俺、ずっと笑ってた」
「そう、だよぉ……」
なんで、アタシのこと。
アタシは思わず、泣き出してしまった。
「なんで?! アタシ、レンが大好きでっ……今、だって! レンの手術が終わってッ、うれしかったのにっ」
「ユリナ、だっけ」
「名前もッ! レン、アタシのことユリって、呼んで、くれたっ」
レンのばか。
また笑って、ユリって呼んでよ。
きります
412
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/16(月) 20:52:31 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
君の隣の笑顔
――笑い方を忘れた。
お笑い番組を見ても友達に面白いギャグを言ってもらっても、何も感じない。
いつ頃からだろう。
多分、君が――レンが交通事故に遭ってからだと思う。
そのときはレンとデートしてて、アタシもレンの隣ですごく楽しそうに笑っていた記憶がある。
でも、あの時――信号無視したトラックにアタシが轢かれそうになったとき。
レンはアタシを庇って――
「いやあぁっ!」
思い出したくない。
あの日から、あれからレンが倒れて救急車で運ばれてから、涙しかながれない。
目が腫れてるのがわかる。
アタシ、レンが隣にいなきゃ笑うなんてことできないよ。
そのとき、コンコン、とアタシの部屋のドアをノックする音が聞こえた。
「ユリナ、レンくんのお見舞いに行くけど……」
「手術、は」
レンはたしか手術をしなきゃいけなくて、対面なんてまだ先のはずじゃ――
「それがね、手術は一昨日終わってて、すっかり体調も良くなったんだって」
レンに会いたい。
ポンッと浮かんだその思いに答えるように、アタシはすぐ部屋を飛び出て準備した。
早く行かなきゃ、きっとレンもアタシを待ってる。
×
「失礼、します……」
恐る恐る、レンがいるであろう病室に入るとそこにはレン独特の金色の髪の毛があった。
「レンッ!」
アタシのこと、待っててくれたかな。
なんだか不思議そうな表情をするレンの傍に駆け寄った瞬間――
「アンタ誰?」
レンの口から、ありえない言葉が出てきた。
アタシは必死にレンに説明する。
「アタシだよ、ユリナ」
「ユリ、ナ?」
「レンの彼女だよ」
アタシがそう言った瞬間、レンが一瞬固まるのがわかった。
辛そうに頭を押さえたあと、申し訳なさそうにポツリ。
「ごめん、覚えてない、みたい」
途切れ途切れに言ったレンの言葉は。
グサリと、深くアタシの胸に刺さったみたいだ。
「どう、して?」
「事故……までは覚えてる――そのとき、誰かといっしょにいた」
「だれ、と? 女の子だよ、ね?」
「ああ、多分……で、その子が、轢かれそうに、なって」
「う、ん……」
思い出して、もっと。
お願いだから、記憶を辿ってアタシにもう一回レンの笑顔を見せてよ。
笑い方、教えてよ。
「ッ!」
「レン?!」
やだ、レン。
ねえ、思い出せないの?
アタシたちで一生懸命つくった思い出、レンは全部忘れちゃったの?
「ごめ、ん……」
「事故の前の、楽しい思い出とか、ないの?」
「誰かといっしょにいて、すごい、楽しくて――俺、ずっと笑ってた」
「そう、だよぉ……」
なんで、アタシのこと。
アタシは思わず、泣き出してしまった。
「なんで?! アタシ、レンが大好きでっ……今、だって! レンの手術が終わってッ、うれしかったのにっ」
「ユリナ、だっけ」
「名前もッ! レン、アタシのことユリって、呼んで、くれたっ」
レンのばか。
また笑って、ユリって呼んでよ。
きります
413
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/16(月) 20:53:14 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp
「ユリ!」
泣き叫ぶアタシの名前を、レンは一生懸命呼んだ。
アタシは突然名前を呼ばれて思わず黙り込む。
「俺、ユリのこと何も覚えてない……けど、事故の前、あの楽しい思い出のなかにいた子がユリだとしたら――俺はユリをまた好きになるよ」
レンはとっても一途で、アタシを大事にしてくれて。
オマケに他の人にも優しくて、でもアタシにはもっともっとすっごく優しくて。
大好きな人なのに。
「もっともっと、好きになっちゃうよぉ……」
これ以上好きになっても苦しいだけじゃん。
辛いし、アタシもう泣きたくないのに。
「もっと好きになっていいよ。俺も、それに負けないくらいユリのこと好きになるから」
うれしいはずなのに。
アタシの心には、なぜか迷いがあった。
もし、レンの記憶がなくなったとしたら――
他の女の子に恋をしていたかもしれない。
もっと違う人生を歩んでいて、アタシとは一切関わらなくて済むかもしれない。
実際レンはアタシのせいで事故に遭ったんだ。
だからもう、アタシなんかといちゃいけないよ。
「いいよレン……レンはレンの道を歩んで」
必死につくった、作り笑顔。
でも、どうしても笑えない――泣きそうになる。
そんなアタシを、レンはそっと抱きしめてくれた。
「笑え、ないの?」
「レンが、事故に遭ったときから――」
「じゃあさ、俺がまた笑わせてあげるよ」
ふっと笑みをうかべたレン。
アタシはうれしくて、笑顔になれた、ような気がする。
その瞬間、レンが苦しそうに俯き始めた。
「ッ!!!」
「レン?!」
ねえ、どうしたのレン?
またアタシの前から、いなくならないで――
「ユ、リ……?」
レンが、アタシを見つめて不思議そうに言った。
なんとなく、感覚的に、だけど……
「記憶が戻った……?」
どうして?
アタシが笑ったから?
「ユリ、怪我しなかった?!」
びくん。
急に肩を掴んでブンブン揺すぶられた。
「だ、だいじょうぶだよ……?」
よかった。
涙があふれだす。
「ユリ、泣かないでよ……」
「だって、うれしくてっ」
「嬉しい?」
「レン、アタシの記憶なくしてっ……」
でも、アタシ、笑い方わかったよ。
「アタシね、レンが傍にいなきゃ笑えないみたい」
「俺も、ユリが傍にいなきゃ楽しくないよ」
「「大好きだよ」」
‐
お久し振りです!
勝手ながらしあんいろの連載を終了させていただく予定だったのですが、急遽更新してしまいました。
いやなんか書きたくなって。
笑い方を忘れたっていう歌詞の曲が流れてきたので、ポンッと浮かんだ作品。
ユリナってのは元々決まってて、レンはなんか合ってたからつけました←
まあ、しあんいろ復帰小説的な感じでね!
またかなり下がったときに書きたくなると思うんで、そのときに書きます!
414
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/20(金) 19:30:07 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
enjoy!!
「佐藤遥未」
人混みのなかでクラスが書いてある表をじっと見つめながら、あたしはその文字を探した。
周りの人は「どう?見つかったー?」「まだ、つかあたし合格したっけ」「やった!今年もまた同じクラスだね!」「高校でも彼女と同じクラスになれるなんて……」と、それぞれが思い思いにしゃべっている。
今更合格したっけかという疑問を持ってもしょうがないのだけれど、あたしはなんとなく自分の名前がクラス表にないことに不安を感じていた。
たしかにあたしは、花乃やゆーまたちと同じ音羽高校に入学したはずなのだんなだけどな。
「百合いぃ!」
「ど、どーしたの遥ちゃん」
「あたしの、あたしの名前がないよおぉ!!!」
みんなの視線が一斉に集まるのがわかる。
さっきまで思い思いにしゃべっていた人も、まだしゃべりつづけながらもコチラをちらりと見ているようだ。
「うそ、あるはずだよ」
「うぅ……あ、百合たちは何組だったの?」
「わたしと遊くんは1−Aで海くんと迅くんと花ちゃんは1−Bだよ」
「ふええぇ、じゃああたしそこ調べればいるかも」
あたしはもう一度、人混みの中のクラス表に目を通す。
すると、どこからともなく「遥ちゃん、あったよ!」という声がきこえて、あたしはぐるんと振り向き声がきこえた方向へ向かった。
「どこどこ?!」
「Cクラスの11番」
「C……」
Cっていえば、あたしだけ仲間はずれじゃないか。
はあとため息をつきながら、あたしは苦笑して励ましてくれた百合に哀れそうにつぶやいた。
「合格しても馬鹿は仲間はずれのままなんだねー……」
「そんなことないよっ、元気出して?」
「うん、ありがと百合……」
あたしはあたしなりにがんばるしかない……のか。
‐
enjoy!の高校生verです(`・ω・´)
つづくかもとかほざいといて実はもうつづけるつもりなんてなかったのですが、最近しあんいろを読み返して文面はともかくenjoy!って結構いい話じゃねってことで続編いきました。
enjoyのビックリマークが二つになってます。
まさかの高校生になった瞬間遥未ぼっち計画が立てられかけてますがだいじょうぶです←
それでは、今時しあんいろを見てくれている人はいないと思いますが、ねここは書き続けます。
だれかの目に入ることを願って!!!←
415
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/21(土) 16:32:12 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
訂正ばん!
enjoy!!
「佐藤遥未」
人混みのなかでクラスが書いてある表をじっと見つめながら、あたしはその文字を探した。
周りの人は「どう?見つかったー?」「まだ、つかあたし合格したっけ」「やった!今年もまた同じクラスだね!」「高校でも彼女と同じクラスになれるなんて……」と、それぞれが思い思いにしゃべっている。
今更合格したっけかという疑問を持ってもしょうがないのだけれど、あたしはなんとなく自分の名前がクラス表にないことに不安を感じていた。
たしかにあたしは、花乃やゆーまたちと同じ音羽高校に入学したはずなんだけどな。
「百合いぃ!」
「ど、どーしたの遥ちゃん」
「あたしの、あたしの名前がないよおぉ!!!」
みんなの視線が一斉に集まるのがわかる。
さっきまで思い思いにしゃべっていた人も、まだしゃべりつづけながらもコチラをちらりと見ているようだ。
「うそ、あるはずだよ」
「うぅ……あ、百合たちは何組だったの?」
「わたしと遊くんは1−Aで海くんと迅くんと花ちゃんは1−Bだよ」
「ふええぇ、じゃああたしそこ調べればいるかも」
あたしはもう一度、人混みの中のクラス表に目を通す。
すると、どこからともなく「遥ちゃん、あったよ!」という声がきこえて、あたしはぐるんと振り向き声がきこえた方向へ向かった。
「どこどこ?!」
「Cクラスの11番」
「C……」
Cっていえば、あたしだけ仲間はずれじゃないか。
はあとため息をつきながら、あたしは苦笑して励ましてくれた百合に哀れそうにつぶやいた。
「合格しても馬鹿は仲間はずれのままなんだねー……」
「そんなことないよっ、元気出して?」
「うん、ありがと百合……」
あたしはあたしなりにがんばるしかない……のか。
‐
enjoy!の高校生verです(`・ω・´)
つづくかもとかほざいといて実はもうつづけるつもりなんてなかったのですが、最近しあんいろを読み返して文面はともかくenjoy!って結構いい話じゃねってことで続編いきました。
enjoyのビックリマークが二つになってます。
まさかの高校生になった瞬間遥未ぼっち計画が立てられかけてますがだいじょうぶです←
それでは、今時しあんいろを見てくれている人はいないと思いますが、ねここは書き続けます。
だれかの目に入ることを願って!!!←
416
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/21(土) 16:33:26 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
enjoy!!
「……あ、あのっ」
「なあに?」
後ろの席の、ちょっとふわっとした可愛い女の子。
その子に、あたしは思いきって話しかけてみた。
(だってひとりぼっちとか嫌だし、百合たちがいないんだから自力でどうにかするしかないんだもん!)
心の叫びを声に出さないようにしながら、その子のつまらなさそうな反応を見てちいさな声で言った。
「あたし、佐藤遥未っていって……友達全然いなくて、その」
「あっ、もしかしてあの遥未ちゃん?」
「あの? あのってなになに?」
意外にも名前に興味を持ったその子にあたしはん?と思った。
「あの遥未」って、あたし有名人なの?
「男子でね、早速可愛い子ランキングつくったんだって」
「ほへぇ、そりゃつまらんことを」
「それでね、一位が百合ちゃんで二位が花乃ちゃんで三位が遥未ちゃんだったのー!」
「え」
百合が一位なのはわかる。
花乃が二位、なのも……認めたくないけどわかるよ。
なのになんであたし三位?!
あたし可愛くないし!ブスだしキモイし!
「なんか可愛いなって思ったら、遥未ちゃんだったんだね」
「可愛くないよ!えと、その……名前」
「あ、わたし?わたしは桜(さくら)ってゆーの。よろしくねー」
「よろしく、桜!」
早速呼び捨てっていう。
とにかく、気の合いそうな友達ができてよかった!
×
「遥遥遥」
「なになになに」
「ねね、あの百合ちゃんって子の隣にいる男子イケメンじゃない?」
「あれって」
ゆーまじゃん!
あたしの彼氏だし。
ていうか百合とゆーまいっしょに購買行ってるんかい!
別になんとも思わないけどさあ。
「なんかお似合いー」
「ですよね……」
――やっぱり。
あたしとか花乃にはない可愛さというか魅力とかが百合にはあるというか。
そして海や迅にないかっこよさとか魅力をゆーまは持ち合わせていて。
そんなふたりがくっついたら、やっぱりお似合いなんだろうな。
「お、遥未じゃん」
「げっ、くんのかよ」
「なになに?知り合いっ?!」
何も知らずに近寄るゆーま。
手振ってきてくれる百合は可愛いけど、あたしは思わず本音を漏らしてしまった。
そしてそれに興味深そうに反応する桜。
「友達できてよかったなー」
「ちょっと!子供扱いしないでよもー」
「ああ、つか帰りさ、百合も海も迅も忙しいから先帰れだと」
「マジか」
「だからふたりでマックでも寄ってこーぜ」
「い、いいけど……」
こんな人混みのところでわざと大声で言ってるなゆーま!
あたしたちじろじろ見られてるような気がするんだけど、気のせいかな自意識過剰かなあ?!
「あ、あのっ」
「ん?ああ、遥未の友達?」
「はい、わたし桜っていーます」
「苗字は?」
「高梨(たかなし)です」
「――高梨ね」
うっわあああああぁあぁ……
ゆーますっごい態度悪い。
つか教えてもらってまで苗字呼びするか?ふつー。
「桜って呼んでくれないんですか?」
「ああ――桜がいいの?」
「う、うんっ」
ぶんぶんと、大きく頷く桜。
そんな桜に、ゆーまは悪戯っぽい笑顔をみせてから耳元で囁いた。
「桜」
どうやらゆーまは。
あたしの受験勉強でおあずけをくらっていた分、しっかりと仕返しを考えているようです。
‐
417
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/21(土) 20:48:08 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
透きとおった音
彼女が最期の力を振り絞って言った言葉が、
今でも鮮明に思い出せる。
×
「猫みたい」
「そうかな」
アタシたちの初めての会話。
ちょうど次が音楽の時間で、みんな早々と移動して教室にはアタシと彼女しかいなくなったときのことだ。
他の子みたいに女の子同士仲良くとか、彼氏がどうとか好きな人がどうとかお構いなしに己の道を歩んでる印象だった彼女に、アタシは思わず言ったのだ。「猫みたい」と。
彼女は不思議そうに、それでもとくに気にしていなさそうな表情でちょっと考えていたが、近くで見てみると本当に猫のようだ。
さらりとした茶色い毛並み――いや、髪の毛も、綺麗に透きとおった茶色い瞳も。
マイペースな動きや大人しそうに見える仕草一つ一つが綺麗で、触れたら壊れてしまいそうなほど儚い印象。
「君さ、女子の関係とか嫌いでしょ」
「嫌いっていうか、めんどくさい」
「アタシも面倒臭い女子の一部に入っちゃってる?」
「あなたは――わたしに話しかけてくる時点で変」
――酷いなあ。
アタシは心の中でポツリとつぶやいてみたが、正直彼女との会話が楽しかった、と思う。
このときの記憶はあまりなくて、ただ彼女のその綺麗さや独特の動きに見惚れていたような気がする。
「話してみたかったんだけど、ダメだった?」
「だめとか、そういうのめんどくさい」
「――じゃあ変えよう。話しかけられて面倒臭い?」
「別に。コミュニケーションとるの苦手なだけで、そっちがリードしてくれるなら問題ない」
見た目は可愛いのに、言葉だけは可愛気ないヤツ。
アタシは心でそう思いながら、手に持っていた音楽の教科書を抱きしめて彼女に微笑みかけた。
「あのさ、君のこと詩音(しおん)って呼んでいい?」
「いいよ」
「じゃあ――詩音はアタシのこと、百花(ももか)って呼んで!」
アタシが自分を指差しながら言った。
その瞬間、彼女の――詩音の頬が、ポッと桜色に染まるのがわかった。
「もも、か……」
はずかしそうにアタシの名前を呼んだ詩音の姿こそ、一番鮮明に思い出せる記憶かもしれない。
×
「しーおんしおん」
「なに、なんなの」
「もー、懐いてくんないんだから」
「わたし猫じゃないし、あんたに懐きたくないし」
あれから、あの日アタシたちが初めて会話してからしばらく経ち、アタシたちの仲はとても良くなっていったと思う。
それに詩音も、コミュニケーションを取るのが上手くなってきて最近は男子からも囲まれちゃうほどのモテモテで人気者だ。
「好きな子とかできたの?あんな毎日囲まれててさあ」
「好きってなに」
「んー、あったかくて抱きしめたくなるような感情とか、あとちゅーしたりぎゅってしたくなったりドキドキしちゃう気持ちのこと」
「よくわかんない」
詩音はそう無愛想につぶやくと、アタシの傍を離れてしまった。
アタシは何故か不安になって――
「しおん」
「なに」
「や、その……さ」
いつもアタシが言葉に詰まると早くしてよと文句を言ってくる詩音だが、今日は何も言わなかった。
そっと、さみしそうな愛おしそうな目でどこかを見つめながらアタシが話始めるのを待つ。
「何があっても、詩音はアタシの友達、だよね」
詩音は、
その言葉をきいた刹那、とても綺麗で残酷な微笑を見せて。
「そうだね」
儚く舞い散る桜のように、ふわりと駆け出してしまった。
‐
しりあす系。
とにかく詩音ちゃんが大好きです←
418
:
ピーチ
:2012/07/22(日) 10:45:41 HOST:i125-204-92-164.s11.a046.ap.plala.or.jp
ねここ>>
シリアス読んだよー!!
詩音ちゃん凄い!
あたしもそーゆータイプ書きたいけどなぁ…←文才がないというw
419
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/23(月) 08:52:01 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
>ピーチ
詩音はお気に入りなのだ←
てかシリアスじゃなくてGLモノになるかも←
ピーチ文才あるじゃないかw
420
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/23(月) 08:52:25 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
透きとおった音 ※レズ有りです、キスまでしますのでご注意ください(´・ω・)
そうだねと言って頷いた詩音の顔が頭から離れない。
そしてなぜか、詩音といつまでも友達という関係でいたくないと思っている自分がいた。
「……なんで」
詩音に、傍に居てほしい。
アタシはそんな思いから、詩音が向かった方向へ走り出した。
×
「詩音っ、しおん!」
がむしゃらに走りつづけてたどり着いたのは近くの海。
よく、アタシと詩音で来ていた場所だ。
詩音は海が嫌いだったけれど、浜辺で遊ぶのだけは好きだった。
だから必死に浜辺を見渡したのだけれど、詩音独特の茶色い髪の毛は見当たらない。
「しおーんっ!!!」
海に向かって、一叫び。
その瞬間、後ろから詩音の鈴のような声がきこえてきた。
「大声出したら迷惑だよ、馬鹿」
「ご、ごめん!でも詩音っ!」
「なんなの、わたしの気持ちもわからないくせに」
「ごめんってば!でもアタシ、どうすればいいのかわかんないの」
「馬鹿だからだよ」
詩音のさみしそうな顔。
それが、なんだか無性に愛くるしく感じて――
「もしかしてアタシ、詩音のこと好き、かも……」
思わず言ってしまったのだ。
でも、詩音といると妙に顔が熱くて、アタシには昔初恋で両思いだった男の子がいるのだけれどその子といっしょにいたとき以上にドキドキしてしまう。
詩音が、ゆるく二つに結んだ茶色い髪を風で靡(なび)かせながら、ちいさく口を動かした。
「あったかくて抱きしめたくなる感情が好きって気持ちなら」
詩音が、はずかしそうにうつむいた。
「わたしも、百花のこと好きかも」
あ、ちょっと無理。
限界を感じたアタシは思わず詩音に抱きついてしまった。
「百花」
「ごめん……好き」
「――わたしも」
アタシはこの恋愛が間違っていることだと知って。
詩音の唇を、アタシのそれと重ねた。
たった一瞬だけだったけれど、ふにゃっと唇に当たった柔らかい感覚。
「今の」
「キスっていうんだよ」
詩音は純粋なのか、不思議とキスやハグという言葉までもを知らなかった。
好きっていう感情さえも、なにもわからない子。
アタシはそんな詩音の魅力に惹かれていったんだろうけど。
「キス、はじめてじゃない」
詩音はポツリとつぶやいた。
‐
レズレズ!
421
:
ねここ
◆WuiwlRRul.
:2012/07/23(月) 12:31:02 HOST:w0109-49-135-27-123.uqwimax.jp
透きとおった音 ※レズの微エロ的な。
「だれと、いつ」
なんだろう。
すっごくもやもやする。
アタシは思わず詩音の肩を力強く掴んでしまっていた。
詩音の表情が、歪む。
「っ、別に百花に関係ない」
「男子でしょ?いつも詩音を囲んでる」
「関係ないってば」
「俊弥(しゅんや)でしょ!メアドも交換してたし」
俊弥は、アタシが好きだった人だ。
誰にでも優しくて面白くて、ノリの良い人。
ここ最近詩音といっつも話していたけど、人気者で誰からも好かれちゃうような俊弥から女子に近寄るなんて滅多にないもん。
「百花はいいじゃんっ」
「詩音は俊弥が好きなの?!」
「わかんない」
「アタシのこと好きって言ったじゃん!」
でも、アタシは気づいてた。
あったかくて抱きしめたくなる感情が、必ずしも好きってわけではないってことに。
「俊弥にドキドキすんの?!」
「……うん」
詩音はびくんと肩を揺らしながら、それでも頷いた。
頷いた詩音にもやもやが増えて、不意打ちでキスする。
さっきみたいな優しいキスじゃなくて、激しくて強引なキス。
息を求めて詩音が口を開いた瞬間に、アタシが舌をいれる。
詩音の口内をアタシの舌がめぐった。
舌と舌が触れ合う。
アタシは嫌がる詩音を押さえつけて、無理矢理舌を絡めた。
お互いの吐息を吸って、息をする。
「や、め……」
アタシは理性が戻って、やっと詩音を放した。
その頃にはもう詩音は怯えてしまっていて――
詩音は、息を荒くしながらアタシを不安そうな視線で見つめていた。
「ごめん、なさい……」
詩音がちいさな声で謝る。
謝らなきゃいけないのはアタシなのに。
よろけながらもアタシの目の前から走り去る詩音の華奢で細い背中。
アタシはそれを見つめながら、ただ立っていることしかできなかった。
‐
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