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しあんいろ

390ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/04/20(金) 19:57:35 HOST:w0109-49-135-6-72.uqwimax.jp

   Empty heart



 わたしの心は「     」気持ちでいっぱいだ。


 ――ぼんやりと、その言葉を眺めていた。
 まだ新品の教科書には「」の中の言葉を埋めなさいなんて命令口調の黒字が書かれている。

 相変わらずの命令口調に何も思うことはなかった。
 友達はいい加減命令口調やめてほしい、飽きてきたと愚痴を吐いてきたけれどわたしにとってはどうでもいいことだし。


 ていうか、高校生にもなってこんな問題を出すか?
 そう半ば呆れながら、それでもその空欄にどんな言葉が入るのかと真面目に考え出した。

 わかった人から手挙げて発表してー、なんて中学生や小学生っぽいことをやらせる国語の先生を溜め息混じりに見つめた。

 こんなのわたしにはわからない、と心の中で諦めたけれど、周りをよくよく見てみるとほぼ全員手を挙げている。
 その生徒たちの瞳はまるで先生に馬鹿にしてんじゃねえよ、と言っているようだった。


「じゃー……空」


 まだクラスの人の名前をよく覚えられてない先生は席順ではない出席番号順の名簿を手に、ふいにわたしの名前を呼ぶ。
 わたしはえ、あ、と何も言えなくなって戸惑ったあと、冷静にびしりと言い放った。


「わたし手挙げてませんけど」
「ああ、名簿席順じゃないからよくわからなくてねー」


 ごめんごめん、と苦笑する先生に何とか逃れられただろうかと思う。
 そんなことを思ったわたしが馬鹿だったのかな。


「でもこれは答えられるんじゃないの? 空、答えてね」


 無理無理!、と両手を胸の前で振ったけれどもう逃れられそうにはなくて、溜め息を吐いたあと言った。


「わかりません」
「……マジで?」


 少し間をあけたあと、まさかと言ったような目で先生がわたしを見つめた。
 それに反抗して呆れた表情で見つめ返す。


「わからないし答えたくもありません、代わりに誰かどうぞ」
「ん、んー……納得しちゃいけないような気もするけど、まあいいや……じゃあ綾、答えてー」


 綾はわたしがそう思っていいのかわからないけど友達で、代わりにさされて大丈夫かな、と思った。


「はい、わたしの心は幸せな気持ちでいっぱいだ、です」


 綾も戸惑い恥ずかしさ紛れではあったけれどハッキリと自分の考えを述べていた。
 これが正しいとわかっていながら、それでもわたしには無理だと諦める。


「はいはい、その心は?」


 国語の先生はよくわからないけどその心を問い掛けていて、綾はにこりと可愛らしい笑みを浮かべてからわたしを見つめ言った。


「大好きな友達と学校生活を送れていることが幸せで、感謝しても感謝しきれないくらい幸せだーって気持ちでいっぱいなんです」


 綾がわたしのことをこんな風に思ってくれてるなんて思わなかった。
 でもわたしの心は幸せな気持ちでいっぱいになるっていうのは、ちょっと違うような気がする。

 違うというか、わたしはそういう感情になったりはしない。


「……幸せってなんだろうね」


 ペンケースについている綾と御揃いの兎のストラップを見つめながら、そう独り言を呟いた。


     ‐


 つづきます!
 一周年記念の息抜きと思いましたがこれも一周年記念です←
 ていうかもうぜんぶ一周年きねn((


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