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しあんいろ

411ねここ ◆WuiwlRRul.:2012/07/16(月) 20:51:43 HOST:w0109-49-135-30-21.uqwimax.jp


   君の隣の笑顔


 ――笑い方を忘れた。
 お笑い番組を見ても友達に面白いギャグを言ってもらっても、何も感じない。
 いつ頃からだろう。
 多分、君が――レンが交通事故に遭ってからだと思う。

 そのときはレンとデートしてて、アタシもレンの隣ですごく楽しそうに笑っていた記憶がある。
 でも、あの時――信号無視したトラックにアタシが轢かれそうになったとき。
 レンはアタシを庇って――


「いやあぁっ!」


 思い出したくない。
 あの日から、あれからレンが倒れて救急車で運ばれてから、涙しかながれない。
 目が腫れてるのがわかる。
 アタシ、レンが隣にいなきゃ笑うなんてことできないよ。


 そのとき、コンコン、とアタシの部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「ユリナ、レンくんのお見舞いに行くけど……」
「手術、は」


 レンはたしか手術をしなきゃいけなくて、対面なんてまだ先のはずじゃ――


「それがね、手術は一昨日終わってて、すっかり体調も良くなったんだって」


 レンに会いたい。
 ポンッと浮かんだその思いに答えるように、アタシはすぐ部屋を飛び出て準備した。
 早く行かなきゃ、きっとレンもアタシを待ってる。


     ×


「失礼、します……」


 恐る恐る、レンがいるであろう病室に入るとそこにはレン独特の金色の髪の毛があった。


「レンッ!」


 アタシのこと、待っててくれたかな。
 なんだか不思議そうな表情をするレンの傍に駆け寄った瞬間――


「アンタ誰?」


 レンの口から、ありえない言葉が出てきた。
 アタシは必死にレンに説明する。


「アタシだよ、ユリナ」
「ユリ、ナ?」
「レンの彼女だよ」


 アタシがそう言った瞬間、レンが一瞬固まるのがわかった。
 辛そうに頭を押さえたあと、申し訳なさそうにポツリ。


「ごめん、覚えてない、みたい」


 途切れ途切れに言ったレンの言葉は。
 グサリと、深くアタシの胸に刺さったみたいだ。


「どう、して?」
「事故……までは覚えてる――そのとき、誰かといっしょにいた」
「だれ、と? 女の子だよ、ね?」
「ああ、多分……で、その子が、轢かれそうに、なって」
「う、ん……」


 思い出して、もっと。
 お願いだから、記憶を辿ってアタシにもう一回レンの笑顔を見せてよ。
 笑い方、教えてよ。


「ッ!」
「レン?!」


 やだ、レン。
 ねえ、思い出せないの?
 アタシたちで一生懸命つくった思い出、レンは全部忘れちゃったの?


「ごめ、ん……」
「事故の前の、楽しい思い出とか、ないの?」
「誰かといっしょにいて、すごい、楽しくて――俺、ずっと笑ってた」
「そう、だよぉ……」


 なんで、アタシのこと。
 アタシは思わず、泣き出してしまった。


「なんで?! アタシ、レンが大好きでっ……今、だって! レンの手術が終わってッ、うれしかったのにっ」
「ユリナ、だっけ」
「名前もッ! レン、アタシのことユリって、呼んで、くれたっ」


 レンのばか。
 また笑って、ユリって呼んでよ。


   きります


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