したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

番外編投下用スレ

1 ◆POYO/UwNZg:2019/03/20(水) 18:54:52
本編の補完、補足、外伝等ブレイブ&モンスターズ!関連SSの投下用スレです。

2崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/03/20(水) 18:57:36
『異邦の魔物使い(ブレイブ)』一行がリバティウムを離れ、王都キングヒルへ向かってからのこと。

「ミハエル・シュヴァルツァー。まだ臍を曲げているのか? いい加減に機嫌を直したらどうだ」

魔族が根城にしている廃墟の一室で、いまだにむくれている金獅子へ兇魔将軍イブリースが声をかける。
金獅子ミハエルはイブリースを一瞥すると、フンと鼻を鳴らした。

「別にいいだろう、仕事はしているんだ。……まだなんの進展もないが。
 雲を掴むような話さ、バカバカしい。こんなことより、さっさと連中を――」

「………………」

「……わかってるよ、わかってる」

ミハエルはここぞとばかりに不満をぶちまけようとしたが、イブリースの額の第三の眼に睨まれて沈黙した。

「世界チャンピオンというのは強情でなければ務まらんのか? まあいい。
 ならばだ、ミハエル・シュヴァルツァー……これをやろう。これでも食べて怒りを鎮めろ」

そう言うと、イブリースはどこからか小さな布包みを取り出した。
鋭い爪の生えた指先で布を取ると、中には桃色の四角い食べ物らしきものが二切れ入っている。
ミハエルはしげしげとイブリースの手の中のそれを眺めた。

「これは?」

「我々魔族の好物だ。嗜好品の域を出んが、物事に集中したりする場合に摂ると効率がよくなる。
 オレもよく喰う。貴様もきっと気に入るだろう」

「ふぅん……」

ミハエルは桃色のそれを右手の人差し指と親指でつまんだ。プニプニしていて柔らかい。
さらにミハエルはにおいを嗅いだり、ためつすがめつ見回してみる。

「毒など入っていない。せっかく喚んだ貴様を殺す理由などオレにはないしな。
 ま……モンスターとブレイブで同じものを喰って、紐帯を深められればということだ」

「……いただきます」

正真、イブリースはミハエルを気遣ってそう言っているようだった。
そこまで言われるとさすがに断りづらい。ミハエルはピンク色のそれを口に入れた。
咀嚼して味わってみると、モチモチした食感が何とも言えず心地いい。仄かな甘みがあり、まずくはない。どころか――

「……おいしい」

「だろう」

イブリースは小さく笑った。
それにしても、この食べ物はいったい何だろう? 少なくともドイツ版のブレモンには実装されていなかった気がする。
それとも、ミハエルがこの世界に来てから新たに追加されたのであろうか。
ミハエルの頭の中で、この謎の食べ物についての考察がなされていく。
人ならぬ存在、魔族が好む甘味。世界中の神話や伝承でそれが当てはまるもの――

「もしかして、これは……神々の食べ物アンブロシア? あの、神々の飲料ネクタールと共に語られるという……。
 そうだ、間違いない! ははッ……まさか、こんなところで神の食べ物を味わうことになるなんてね!」

ギリシャ神話に語られるアンブロシアとネクタール。
インド神話ではアムリタとも言われる、神々の飲食物である。その味は天上の甘露であり、不死の力を授けるという。
そんな食べ物を思いがけず口にした幸運に、ミハエルは愉快げに笑った。

が、イブリースの反応は鈍い。ミハエルを見て怪訝な表情を浮かべている。

「……アンブロシア? なんだ?」

「アンブロシアじゃないのか? じゃあ、この食べ物はいったい?」

ミハエルが訊き返す。イブリースは自分の手の中に残った一切れを大事そうに布に包んでしまい込むと、

「すあまだが……」

と言った。




※註 ブレイブ&モンスターズ!本編とはまったく関係ありません

3五穀 みのり ◆2zOJYh/vk6:2019/08/18(日) 01:05:54
なゆた「コトカリスきゃわわわわ!」

みのり「ほおやねぇ」

なゆた「あれ?もしかしてみのりさん猫派でした?」

みのり「うちは犬も猫も区別あらへんよ〜
   うちの中にある区別は、愛玩動物か家畜か、害獣か……やで?(にっこり)」

なゆた「え?」

明神(害獣の所だけ口調が違いすぎぃ!)

みのり「部長はどれに当たるんやろなぁ?お・て(はーと)」

ジョン(判る!数々の修羅場をくぐってきた自衛官の勘が告げる!
    はーとなんてつけているがこれは無慈悲な選別っ!!
    部長!ここで外したら物理的な生命の危機だから、お手して!お手ぇぇ!)

部長「にゃーん(お手)」

みのり「あらかわええ子やわ〜この子は愛玩動物やねえ」

なゆた「うんうん、かわいいですよね〜」

エンバース「ふむ、このPTには動物がもう一頭いるが、みのりさんの基準ではどうなるのかな?」

明神「邪悪な妖精さんだしなあ」

カケル(え?姉さん、これって生命の危機!?)

カザハ「せめて食用じゃない家畜でお願いします!」

カケル(ちょ!家畜前提やめてー!!するよ!お手するよ!)

みのり「あはは、リバティウムでは役に立ってくれたし、手羽や馬刺しにするのは勿体ないやんねえ」

カザハ「やった!食肉免れた!」

カケル(喜んででいいのそれぇ!???)

明神「家畜だ」
なゆた「家畜だ」
ジョン「家畜だ」
エンバース「家畜か」


お盆とか特に関係ないですが、コトカリスに対するなゆたさんの反応がかわいかったのでw

4ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2019/09/15(日) 23:00:29
【外伝 ジョン君さんの意外な一つの夢】

明神への罰という名の、友達といっしょに筋トレをする、というやりたかっただけを成し遂げたジョン。

それはそれとして自分のノルマが終わっていなかったので
日中みんなで戦っていた中庭にでて一人、夜中訓練に勤しんでいた。

「ふう・・・今日の修練終わり!」

バロールに見繕ってもらった、兵士訓練用の諸々を片付ける。
普段自分が使っているものではなかったが、中々の道具が揃っていたので、割と満足していた。

修練を終え、お風呂場に向うジョンであったが・・・

「ん・・・?あれはカザハ?・・・おーい」

カザハはまるでギャグ漫画のような形相で僕とぶつかる。
そしてこちらには目もくれずそのまま全力ダッシュで走り去ってしまった。

「おーい!・・・ん〜・・・?どうしたんだろ」

追いかけて話を聞こうと思ったが時間も時間だったので明日にすることにした。



そしてお風呂から出たジョン、そして自分の部屋への帰り道でなにかが聞こえてきた。

>「あー……ゴメンね! なんか、わたしばっかり○○し○てちゃって!
  ○○○○○○、やり方ってものがあるよね……こういうの、慣れてないもんで……あは、あはは……」

ドア越しに途切れ途切れだが、聞こえてるなゆの声、足がふと立ち止まる。
部屋を確認する・・・そこはなゆの部屋ではなくエンバースの部屋だった。

「・・・!」

声にならない声を上げる、もちろん、この手の話題に耐性がないわけではない。
元の世界では自衛隊アイドルという若干マイナーなジャンルではあるが、アイドルをやっていたし。
特に恋愛禁止とかではなかったので、女性との関係を持つことも当然あった。

恋の悩みを聞いたり、レンタル彼氏に繰り出されたり、男女で旅行して恋愛するヤラセ番組にもでた事だってある。
それはもう黄色い声援にまみれていた、いまさらこのくらいでテンション上げるなんて中学生じゃあるまいし・・・。

>「もっとかわいく○○○した方が、好みだった?」

サササッ!

急いで距離を取る、人の情事を覗くなんて紳士にあるまじき行為だ。
なゆが10代で若干早いとは思うが、ここは現代ではないし、たとえ法律があっても恋を邪魔するべきではない。
このまま応援してあげるのが筋ってもんだろう。

「美女と焼死体か・・・お似合いすぎてなんというか・・・」

友達の結婚式に呼ばれる・・・それは今までジョンが考えていた。
叶えておきたいお呼ばれしたいイベントの一つであった。

「ふふ・・・この分ならそう遠くない内に叶うかもなあ・・・」

そう呟きながら自分の部屋へと戻るのだった。

5崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2019/10/08(火) 22:00:00
マホロのテンプレ作ってみた。

【キャラクターテンプレ】

名前:ユメミマホロ
年齢:外見17歳(AIとしては3歳)
性別:女
身長:159cm
体重:不明
スリーサイズ:83-57-79
種族:笑顔で鼓舞する戦乙女(グッドスマイル・ヴァルキュリア)
職業:Vtuber
性格:快活で天真爛漫、無邪気で朗らか。政治から下ネタまでこなす万能AI(自称)
特技:フリートーク
容姿の特徴・風貌:足元まである金髪ツインテール、垂れ目がちの人懐っこそうな顔立ち
戦乙女の甲冑、ヘッドセット

簡単なキャラ解説:
『ブレイブ&モンスターズ!』の攻略配信をメインコンテンツとするVtuber。
愛称はマホ、マホたん、鉄拳乙女、ヴァルハラゴリラなど。
何の因果かアルフヘイムから地球に転移してきちゃった戦乙女というコンセプトで日々配信を行っている。
YouTubeチャンネル『MAHORISM』と『MAHORHYTHM』を運用しており、ゲーム実況などは『MAHORISM』、
アーティスト活動は『MAHORHYTHM』で行っている。
両チャンネル併せての登録者数は510万人、総視聴回数は8億回を超える。

動画のジャンルは正統派の攻略動画からネタ系動画まで多岐に渡るが、いずれもやり込み要素が強い。
といって玄人向けのマニアックな内容ばかりではなく、初心者にもとっつきやすい内容、笑える内容を心がけている。
二年前の大規模討伐イベントでは自身が旗手となり大規模な旅団を結成。
参加希望メンバーが多くなりすぎて抽選となり、チケットが暴騰するなどの騒ぎにもなった。

演者(いわゆる中の人)については秘匿されているが、合成音声ではなく肉声で喋っているため存在はする模様。
アニメ声でかわいい。ヴァルハラでフレイア姐さん相手に鍛えたスウィート・ハニー・糖度高すぎボイス(本人談)。
モデリングは常に最新技術によるアップデートを重ねており、表情豊か。

音楽方面では前述のスウィート(略)ボイスを買われ、楽曲提供などを受けCDも発売している。
特にデビュー曲にして代表曲『ぐーっと☆グッドスマイル』はオリコン一位、デジタルミュージックDL数一位を達成。
武道館での単独ライヴ、紅白歌合戦への出場なども実現させている。

『ブレイブ&モンスターズ!』のマルチプレイでは、主にパーティーの後方でバッファーに徹している。
が、ソロとデュエルでは一転して後述の『聖撃(ホーリー・スマイト)』によるゴリゴリのゴリラプレイを好む。
愛称(?)のヴァルハラゴリラはこれが由来。

現実のアルフヘイムでは、アコライト外郭の守将を務める。
絶望的な兵力差を覆すため、歌と踊りで防壁守備隊を励まし、長く戦線を維持してきた。

【パートナーモンスター】

同上。
マホロの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』はマホロの装着したヘッドセットで状況を把握し、シンクロを可能としている。

【使用デッキ】

・スペルカード

「限界突破(オーバードライブ)」×3 ……魔力のオーラを纏い、身体能力を大幅に向上させる。
「高回復(ハイヒーリング)」×3 ……対象の傷を癒やす。
「黎明の剣(トワイライトエッジ)」×2 ……パートナーの武器に光属性のオーラを纏わせ攻撃力上昇。
「黄昏の鎧(ラグナレクプロテクション)」×2 ……パートナーの防具に光属性のオーラを纏わせ防御力上昇。
「多算勝(コマンド・リピート)」×3 ……魔力充填期間中のカード1枚を使用可能状態に復帰させる。
「俊足(ヘイスト)」×2 ……対象の移動速度・素早さを飛躍的に向上させる。
「泣きの一回(リワインドタイム)」×1 ……対象の直前の行動を無効化する。
「自爆(サヨナラテンサン)」×1 ……自爆による範囲攻撃。自分は死ぬ。

・ユニットカード
「聖堂よ開け、祝福の刻来たれり(マジェスティック・カテドラル)」×1 ……フィールドが光属性に変化する。
「喇叭よ響け、今ぞ福音を授けん(ホーリー・ゴスペル)」×1 ……パーティーメンバー全員を光属性に変化させる。
「河原へ行こうぜ!(オマエモナカナカヤルナ)×1」 ……選択した敵一体との1対1での決戦空間を作り出す。

・所持スキル
「聖撃(ホーリー・スマイト)」 ……素手状態でのみ使える近接攻撃。光属性の攻撃力が飛躍的にアップする。
「戦乙女の投槍(ヴァルキリー・ジャベリン)」 ……周囲に展開して投擲する光の投げ槍。
「哀れみの歌(キリエ)」 ……敵全体のDEFを大幅ダウン。抵抗される恐れあり。
「栄光の歌(グロリア)」 ……パーティー全体のATKを大幅アップ。自分は対象外。
「信仰の歌(クレド)」 ……パーティー全体のDEFを大幅アップ。自分は対象外。
「感謝の歌(サンクトゥス)」 ……パーティー全体のHPを回復。自分は対象外。
「平和の歌(アニュス・デイ)」 ……パーティー全体のATBチャージ速度を上げる。自分は対象外。
「戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)」 ……対象ひとりに口付けすることで各種ステータスを爆上げする。※

※「戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)」は『笑顔で鼓舞する戦乙女(グッドスマイル・ヴァルキュリア)』一体につき、
 一度しか使用できない。一度使用した場合、その『笑顔で鼓舞する戦乙女(グッドスマイル・ヴァルキュリア)』は
 「戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)」を二度と使えなくなる。

6フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン:2019/11/18(月) 20:53:38
【フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン(Ⅰ)】

アルメリア王国の国境線上には、外敵の侵攻を阻む為の、長大な城壁がある。
中でも特に長く、苛烈な戦火に晒されてきた城塞を、アコライト外郭という。
王都との間には広大な農地があり、故に攻められ――故に守られ続けてきた。

アルフヘイムを滅ぼさんとする魔王バロールが、その撃滅を配下に命じたのは、必然だった。

「――目標確認、ヨシ!」

橋頭堡の櫓からアコライト外郭を見下ろすガザーヴァは、真黄色のヘルメットを被っていた。



「……何をしておられるのですか、ガザーヴァ殿」

「何ってそりゃ、これから攻め落とす目標を確認してたんだよ。
 見間違えて他所の城を攻めちゃったら大変でしょ?
 ちゃんと指差し確認、しないとね〜」

「……どのみち、アルメリアの領地は全て滅ぼす予定です。
 仮に順序が前後しようと、大した問題にはなりませんよ」

「えー、そこはちゃんとツッコミ入れてよぉ!見間違える訳あるかーい!って」

「鳥獣旅団はいつでも進軍可能です。ご指示を」

「もう、ノリが悪いなぁ……そもそもさぁ、アコライト外郭ってめっちゃ守り硬いじゃん?
 いくら君らなら城壁を無視出来るって言っても?真正面から突っ込むのは馬鹿じゃない?」

「心配は無用です。私の旅団に、死を恐れる臆病者はいません」

「違う違う!分かってないなぁ……それじゃゼロ災が失敗しちゃうじゃん!?」

「ゼロ……なんですって?」

「ボクねー、実は今回の作戦はもう考えてあるんだよね!その名も……敵味方ゼロ災害大作戦!」

「……申し訳ありません。説明を、お願い出来ますか?」

「えー?まだ分かんないの?仕方ないなぁ」

「恐れ入ります」

「なんかねー、ドワーフ達の間だと、不慮の事故とかで怪我人が誰も出ない事をゼロ災害って言うんだってさ。
 ボク、その言葉を聞いた時にこう、ピーンと来ちゃってさぁ!今回の作戦はそれで行こう!って思ったワケ」

「……つまり、無血開城を最終目標とするという事でしょうか」

「そう!やっと分かった?じゃ、これから詳しい説明をするからみんなを呼んできて!
 ボクはそれまでに君の分のヘルメットを用意しといてあげるから!
 あ、でもお揃いだってみんなに噂されちゃうかも?」

「私は被りませんよ、そんな兜」

「えー!?じゃあボクだけ頭にこんなダサいの乗っけてなきゃいけないの!?」

「……アコライト外郭は、難攻不落の要害。あちらの兵士達もそれを自負しています。
 アルメリアの物流網は優秀ですから、兵糧攻めも叶いますまい。
 無血開城など、到底不可能に思えますが……」

7フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン:2019/11/18(月) 20:54:21
【フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン(Ⅱ)】

「えー?いやいや、簡単だよ?」

「……では作戦の概要を、お聞かせ願えますでしょうか」

「別にいいけど……作戦は簡単でも、君に分かりやすく説明するのは難しいかもなぁ……」

「どのような説明でも私は構いません」

「ホントぉ?じゃあ、一言で言うけど……北風と太陽、みたいな?」

「……は?」

「あ、ほら!やっぱり分かんないんじゃん!」

「具体的な作戦行動の説明を願えませんでしょうか」

「はぁー、だからさぁ。君らの力で風を操って、天候を操るんだよ。
 最初の一週間は雲を散らして日照りがいいね。お日様が憎くなるくらいにね。
 次の一週間は土砂降りだ。ろくにお外で遊べないなんて、考えただけで気が滅入るでしょ?
 それでも音を上げないなら雪も降らせよう――子供と年寄りが日に日に弱っていくのは、効くだろうなぁ。
 ……はい、これで理解出来た?作戦区域は遥か上空だから、矢が跳んできて誰かが怪我する心配もなし!うーん完璧!」

「……確かに、それなら」

「ねえ、何をぼうっとしてるの?まさかまだ説明が必要なの?冗談でしょ?」

「……いえ。すぐに手配を始めます」

8フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン:2019/11/18(月) 20:55:02
【フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン(Ⅲ)】


「――あ、旅団長クンだ。アコライト外郭の様子はどう?」

「……防衛隊の士気は上空から見ても分かるほどに、下がっております。
 兵士と市民の衝突も見られ、いつ暴動が起きてもおかしくありません」

「暴動?それは困るよ!ゼロ災じゃなくなっちゃう!
 ……仕方ないから一度雪を止められる?降伏勧告をしに行くよ。
 水責めだってたまに顔を上げさせてあげるから、ずっと苦しいんだもんね!」

「了解しました。すぐにそのように指示します」

「あれ?なんか今日は素直だね」

「……あなたは、本当に友軍を誰一人損耗させる事なくアコライト外郭を落とそうとしている。
 幻魔将軍の名に偽りはなかった……ならば、私もそれに相応しいだけの礼儀を示さなくては」

「じゃあ、このヘルメットを一緒に……」

「それはお断りします」

「えー!なんでさ!コレ見てよ、このポーズ!……安全確認、ヨシ!面白くない!?」

「将軍殿、危ないですよ。作戦の余波で、この辺りは気温が下がっていますから……」

「え?何?なんか言っ……うわわっ!?」

「ほら、言わんこっちゃない。お怪我は――」



「……あーあ。ゼロ災、終わっちゃった。もういいや、旅団長クン。
 アコライト外郭さ、テキトーに突っ込んで落としちゃっていいよ」

「――なんですって?」

「だから、ゼロ災失敗しちゃったし、もういいの。
 なんか急に冷めちゃったからさぁ、さっさと終わらせようよ。
 あっちはもうボロボロなんでしょ?雑に突撃してもすぐに終わるっしょ!」

「……本気で仰っているのですか?」

「あれ?なんか急に素直じゃなくなった?なんで?」

「……いえ、すぐに手配を致します」

9フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン:2019/11/18(月) 20:55:54
【フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン(Ⅳ)】



「――みんな集まった?それじゃ、アコライト外郭に向けて全速前進ー!」

――私は、ガザーヴァを見誤っていた。

「よーし、ボクもがんばってここを平らにしちゃうね!」

――何故、一時でも、あの男に従っていいなどと考えたのだ。

「なんたって現場はお任せの現場将軍もとい幻魔将軍だから!」

――あれは狂っている。アコライトの兵も我らも、奴にとっては遊戯の駒に過ぎなかった。

「さーて……それじゃまずは気圧を操ろう!あ、ところで君達さ、DPSって知ってる?
 ブレイブ達の使ってる言葉で、時間対火力って意味なんだけど、それだけじゃない。
 これは、ヤツらは時間を火力に変換するって発想を持ってるって意味でもあるんだ」

――いや、そもそも奴の世界には他者など、存在していないのかもしれない。あのバロールでさえ――

「そして、その発想は何も彼らだけのものじゃない。ボクらにだって同じ事が出来る。
 つまり――例えば風を操って、上空に雲を作り出し、その中に乱気流を発生させる。
 風が水蒸気を冷やして凍らせる。氷の粒が互いにぶつかり合って静電気を生み出す。
 ねえ、本当に誰もボクの言ってる事が分からない?それともただ聞いてないだけ?」

――なんだ、今、何が起きた。眩い光が走った。そこまでは分かる。

「まぁ、どっちでもいっか。どちらにしたって……ここでみんな、ゲームオーバーだ」

――だが……何故だ。目が……見えない。体の感覚が、ない。

「あ、いーね風属性!初めて使ったけどめっちゃ便利じゃーん!
 雷でしょ?雹でしょ?火災旋風も砂嵐も起こせて、こんなん実質全属性じゃん!
 闇属性とか見た目だけだわ!もし死んだら来世はシルヴェストルになっちゃおうかなー、なーんて!」



――墜ちているのか、俺は。

10フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン:2019/11/18(月) 20:58:28
【フェアリーテイル・オア・インバーテッドカノン(Ⅴ)】


「――あれ?もしかして君、まだ生きてる?へえー、すごいね!どうやったの?」

「……何故、だ」

「何故?何故って……ああ、なんでわざわざ君達を巻き込む形で攻撃したかって事?
 それはねー、んふふ……いい?一回しか言わないから、よく聞いててね?行くよ?」

「――これがホントの、グラウンド・ゼロ災害!なーんちって!あは!あははは!
 どう?めっちゃ上手くない!?さっ、早くツッコんでツッコんで!
 それが言いたかっただけかーいってさ!ほらほら!」

「……あれ?なんで笑ってないの?」

「……あ、そっか!君、もう死んじゃってるのか!なーんだ!そりゃ笑えないよねぇ!二重の意味で!
 あ、今のも上手い!今日のボクは冴えてるなぁ!あはは!駄目だ!お腹痛い!あははははは――!」






「――はあ、おもんな」

11ゲームオーバー・オア・つよくてニューゲーム?:2019/11/19(火) 23:47:01
【ゲームオーバー・オア・つよくてニューゲーム?(Ⅰ)】

異邦の魔物使い一行は、激戦の末に幻魔将軍ガザーヴァを倒すことに成功した。
――パートナーモンスター二体との相打ちという甚大な犠牲と引換えに。
片や美しい少女の姿をした風の精。片や額に角を持つ純白の天馬。

「行って……! 必ずバロール様を正気に戻して……世界を救って!」

風の精はそう言って躊躇う主人達を送り出した。
彼らが仕えていた異邦の魔物使い達は、それぞれもう一体パートナーモンスターを持っている。
だから、自分達がいなくなっても必ずや最後までやり遂げてくれる。そう信じて疑わなかった。

「姉さん、私達、勝ったんだね……」

「うん……」

倒れ伏した二体(一人と一匹?)は、今際の際の言葉を交わす。
種族が全く違うのでもちろん血縁上の兄弟であるはずはないが、天馬は風の精を姉さんと呼んで慕っていた。
傷ついて地に堕ちていた天馬が魔物に襲われていたところを風の精が助けた、それが二人の出会いだった。
結局力及ばずピンチに陥ったところを、通りがかったバロールが助けたのだが――
時は流れ、世界を不穏な空気が支配し始めたころ。
バロールがローウェルの死に絶望し魔王と化したと聞きつけ旅立ったところ、
地球という世界から来たという異邦の魔物使い達と出会い、彼らのパートナーモンスターとして世界を救う冒険に加わったのだった。
風の精は、先に事切れて倒れているガザーヴァとその騎馬のダークユニサス”ガーゴイル”を横目で見た。
(どうでもいいが”ガーゴイル関係ないやん!”というツッコミ待ちなネーミングだ。
多分ガ行が多いほど響きがかっこいいという程度のノリで付けたに違いない)

「残念だったね幻魔将軍ガザーヴァ……お前の野望は……ここで終わりだ……!」

(死にかけなのに何ベタい台詞言ってるんですか……)

「えへへ、一度言ってみたかったんだ……!」

彼らは、今までの旅を通してガザーヴァこそが、バロールを唆し魔王に至らしめた黒幕だと踏んでいた。
言うなれば一点の曇りも無い純然たる悪。人型をとった悪という概念そのもの――
それを倒し、世界を救う礎となれたのだから悔いはない。ただ一つ心残りがあるとすれば――

(みんなが世界を救うのを見届けられなかったな……)

ほんの少しの未練を感じつつ、風の精は目を閉じた。

12ゲームオーバー・オア・つよくてニューゲーム?:2019/11/19(火) 23:50:04
【ゲームオーバー・オア・つよくてニューゲーム?(Ⅱ)】

《くくくっ、アハハハハハハ!!》

死に際の幻聴か、耳障りな笑い声が聞こえて来る。
気が付けば、漆黒の闇の中で、風の精は彼の幻魔将軍と向かい合っていた。

(何がおかしい……!)

《ボクを倒したぐらいで本気で世界が救われると思ってんの!? 超ウケるー!》

(うっさい出てくんな! 死に際ぐらいいい夢見せてよ!)

《うーん、夢じゃなくて本当に魂に語り掛けてるんだけど説明すんの面倒だから夢でもいいよ!
あのね、君の仲間達は世界を救うの失敗するよ! 最終的にはアルフヘイムもニヴルヘイムも地球も崩壊しまーす!
今どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?》

(負け惜しみには乗らないよ)

《まーそうだろうね。想定の範囲内! これを見てもそう言えるかな?》

敬愛するバロールが最後まで正気に戻らずに、致し方無く仲間達の手によって倒される光景は序の口。
そこから始まる世界の崩壊が時系列を追ってまるで目の前で起こっているようにまざまざと展開される。
幻魔将軍の名に違わず、幻術を駆使した幻惑を得意とするガザーヴァのこと、単なる死に際の悪あがきなのかもしれない。
しかし、風の精はその策略にまんまと乗ってしまった。アホだから。

(もういい、もうやめて……!)

《ここからが本題だ。君の選択次第で”次の周回”に参加できるとしたら……どうする?
ここでゲームオーバーか、つよくてニューゲームするか、どっちを選ぶ?》

(何を企んでるの……!?)

《やだなー、そんなに警戒しないでよー。君達他人とは思えないんだよねー!
ボクと似て純粋っていうかー。格好よさげに言うと同質にして真逆ってやつ?
純粋な悪と純粋な善がフュージョンしたらどうなるか面白そうじゃない!?
丁度もし死んだら来世はシルヴェストルになりたいかなーって思ってたとこだしー》

(はぁ!? 冗談じゃない!
さては君、そうやって死ぬ度に適当な奴を乗っ取って毎回違う姿になって好き放題やってる系でしょ!?)

これには流石に乗らなかった。

13ゲームオーバー・オア・つよくてニューゲーム?:2019/11/19(火) 23:53:46
【ゲームオーバー・オア・つよくてニューゲーム?(Ⅲ)】

(……と言いたいところだけど、その誘い乗ったあ! だってこのボクが君みたいな悪い奴に乗っ取られるはずないもんね!)

……と思ったら自信満々で乗ってしまった。アホなので。
不敵な笑みを浮かべながら言い切る風の精。その意味不明の自信がどこから来るのかは謎である。

《交渉成立! 最近退屈で仕方なかったけど次回は久しぶりに面白いものが見られそうだなあ!
ついでにガーゴイルとそいつもセットね! そうと決まれば早速……》

哀れ、アホな相方達を持った馬達もついででまとめられた。

(あーっ、待って! 君とボクがフュージョンしたらオカマになっちゃうんじゃない!?)

《気にするのそこかーい! 口調も同じようなもんだし大丈夫大丈夫!》

(そっかー! 大丈夫かー!)

どうでもいいことを気にしたかと思えば適当な理由で納得した。アホですから!
マジレスすると闇の精霊系の魔族と風の精霊でどっちも厳密には性別ないんじゃないだろうか、多分。
さて、ガザーヴァがどこまで知った上で言っているのか、あるいは全てが口から出まかせなのか、何も分からない。
少なくとも確かな事が一つ――結局ほぼレベルリセットされて強くてニューゲームにはならなかった。
中途半端に少しだけ残った記憶の断片、内に宿した膨大な闇――
地球のとある国における中学二年前後で発症すると言われるとある不治の病に酷似した症状。
これは強くてニューゲームと言うよりどちらかというと……

――痛くてニューゲーム。

14妖精たち:2019/11/20(水) 00:39:11
ウーロン茶の妖精「これ何!? 上の続き!?」
オレンジジュースの妖精「アルコールの妖精さんに触発されてつい……一応カザハの人には許可貰ったんだけど」
ウーロン茶の妖精「それ一番許可貰っても意味無い人の件!」
ジンジャーエールの妖精「カザハの人的にはなゆちゃんのレスを見た時点ではまだ味方には実は優しい可能性とかも残ってたので
○普通に前世コース(本編開始前いい奴→裏切って幻魔将軍に進化?)
・立場が違うだけで本質的には同じコース
・悲しい過去があってぶっ壊れたコース
○フュージョンコース(元々別に存在していた前世のカザハ?とガザーヴァが合体)
の各コースを考えてたらしいんだけどアルコールの妖精さんの番外編を見て
「このキャラは悲しい過去とかの余計な要素を加えずに純然たる悪の権化にした方が映える!」
と思ってそうなると普通に前世だと流石に現在と繋げにくいかな〜ということで
フュージョンコースが有力説になったみたいだよ」
ウーロン茶の妖精「確かにそっちの方が世界救えなかったコンプレックスとか真ちゃん元ユニサスナイト説とも繋げやすそうだしね」
ジンジャーエールの妖精「もちろん飽くまでもオレンジジュースの妖精の出来心の犯行なのでまだ確定事項ではなくて本編を拘束するものではないそうだよ」
ウーロン茶の妖精「ちなみにこれだとフュージョン前の二組がいろいろ似てたのは偶然……?」
オレンジジュースの精霊「さあ」
ジンジャーエールの妖精「あっ、これ聞くだけ無駄なやつだ!」

15とある報告書:2019/12/17(火) 16:39:15
生物は1を手に入れると2を入れたがるという。
手に入れたり与えられたら、与えられただけ手に入れただけ次を求める。

だが0の物はどれだけ時間がたっても永遠に0なのだ。

例えるなら熊。

熊は自然という0しか知らない生物だが、人間達の登場で、一部の熊達は0だけでは生きていけなくなってしまった。

だが0しかしらない熊達は困惑した。

これからどうやって生きていけばいいのか、と。

路頭に迷った熊は、ふらふらと当てもなく森をさ迷う。
本当ならいく必要のないエリアまで足を伸ばした。

そこで熊達はゴミ捨て場にあった"1"を知った。

1を手に入れたら後はもう止められない、それが生物という者だから。

1を手に入れた熊はそれだけで満足できず2を求めた。
2を手に入れたら次はもっと上質な3を求めた。

その数字の上昇にもはや際限はなかった。

ひたすら求める、次を、次を、次を。

そして進んだ数字はもう二度と下げる事は、戻る事はできない。

上る事しかしらないその数字はやがて取り返しの付かない所までいくだろう。
熊もそれは分かっていた、でももうそれでもいい、だって戻れないのだから。

止めれないのだから。


この欲求、欲望は人間だって例外じゃない、だからこそ、人間はここまで発展できたのだ。

だが人間は動物達とは違う。動物達とは1つ、2つ次元が違う知性を有している人間は違う。

上げた数字を自制して、一旦とめる事も、ゆっくりとでも下げる事だってできる。
上げた数字を動物とは比較にならないほどに爆発的に上昇させる事も。

嗚呼なんて人間は素晴らしいのだろう。
人間は生物の頂点になるべくしてなったのだ。

人間は生物特有の終わりなき欲求を、自分の身を滅ぼさぬよう知性と自制でコントロールする事ができた生物なのだ。

16とある報告書:2019/12/17(火) 16:40:10
・・・だが何事にも例外はある。

人間の中にも犯罪者、社会不適合者その他色々・・・と呼ばれる者たちがいる。
その殆どは人間特有のルールという名の波に乗れなかっただけの弱者である。

改善の余地もある者が大半であるし、そこまで特別気にする必要もない連中だ。

だがその一部の更に一部。

人間が人間足りえる全てを利用して自分の欲望欲求を満たす者達がいる。

人間が持つ知性・理性・欲求を持ち、だがそれでいて自分を律する事をしない者達。

考える事が動物と同レベルでありながら人間として生まれてきてしまった者達。

生きている人間を害す害獣と同等、いや・・・それ以下の存在。

実行する理由・その内容・その心理の状況にいたるまで千差万別だが。
連中に共通している事がある。

知ってしまったから。

みな口を揃えて言う。

生まれたときからしっていた者
ある異常な生活の中で知ってしまった者
自分から捜し求めてしまった者

人間の枠を超え、逸脱した行為を繰り返す彼らはその知ってしまった物を貪欲に求めるという。

今までの生活で得てきた人間的要素を全て捨ててでも得たいその欲求は一体どれほどのものなのだろうか?

恐ろしい、これほどの恐怖があるだろうか。
人間ならだれしもが、奴らのようになる可能性があるという事なのだ。

そんな事ありえないはずなのに聞き流せない。
奴らの言葉を聞きすぎて頭がおかしくなりそうでした。

私は・・・奴らを【化け物】と呼ぶことにしました。

ですが、もういくら仕事とはいえこれ以上奴らと掛かりあいになるのはごめんです。

そして次にこの任に着くであろう者に忠告してしますが、化け物共と言葉を交わしちゃだめです。
絶対理解できないし、理解できた瞬間あなたはあっち側にいっている事でしょう。

前にも報告した通り、もう今私の体は一人ではありません。
こんな奴らに関わる仕事を続けてたら、これから生まれてくる子供にも影響が出てしまう。
だからこの任を夫と共に、辞退させていただきます。

やめる理由、報告について

                                     アデル

17幸せな家族の記憶:2019/12/17(火) 16:41:42
オギャーオギャー

「おう・・・おうおうおおおおおおお!よくがんばったな!」

「ふふ・・落ち着いてくださいあなた・・・ああ・・・私のかわいい子・・・」

親に祝福され、みんなに祝福された幸せな男の子。

親は子を愛し、子は親を愛した。

彼は愛を一心に受け、きっと素晴らしい人間になるだろう。
名を残すような事はなくとも普通の人間として行きていくだろう。




「よーし!ジョン!お前が前から行きたがってた遊園地に連れて行ってやろう!」

「ほんと!?やったー!」

「ふふふ・・・」

「どうしたんだ!早く車に乗らないとおいていくぞ!」

「いえ・・・あまりにも幸せすぎたもので」

「なにいってるんだ!まだまだこれからだぞ?俺が」

「ぼくが!」

「「もっと母さんを幸せにしてや(あげ)る!!」」

二人はどっちが私を幸せにできるかという、どうしようもない事で喧嘩を始める。

「ふふ・・・二人友・・・ありがとう」










嗚呼・・・どうか



どうか私の家族が、1を知ることなく、平和に・・・人間として生きられますように。

181/3:2019/12/27(金) 17:12:45
*コンコン*

「やぁ、調子はどうだい?」

「あら、わざわざおいで頂きまして恐縮やわー
あらかた目を通し終えたところよ〜」

「いやいや、こちらとしても一人で全部やっていたからねえ、手伝ってもらえるのは大歓迎さ
目を通し終えたところならお茶しないかい?」

「おおきにさん、頂きますえ〜」

「それにしてもよくこれだけの資料、帳簿に目を通せたねぇ
私だってもう嫌になる量だというのに」

「まぁ、帳簿関係の管理もやってたし、ざっと目を通しただけで細かいところまでは把握してへんよ?」

「それで、何か気になった事でもあるかい?
異邦の魔物使いとしての見解を聞きたいね」

「ん〜それは、「これ」を許容できる人間でてゆう意味かしらねぇ
モノの流れ、人の流れ、金の流れ見させてもらったけど、あんたさん一人で抱え込まなあかへんようなもんでもあらへんのに
それでも人に振らへんかったのは、外に漏らすモンがそこら中にいてるんか、人に知られたら邪魔される事をしているんかどっちやと思うてんのよぉ」

「……と、いうと?」

「墳墓都市スカラベニアとか、永久凍土フロウジェンとか他にもいくつか
モノの流れが流出に誘導されてるようやんねぇ
辺境やからと云えばそれで納得できなくもあらへんけど、なんやら作為を感じるんよね
時期はずらしてるから気にしづらいけど各地に派遣している防疫団て、名目上の名前でしかあらへんよねえ
……この流れていわゆる堅壁清野の前段階なんやないのン?」

「隠しておいたつもりなんだけど気づいちゃった?
こういうのを宮廷で公になると手続きとか手間だし、その割には噂が広がるのは早いし、正義と正論の人が出てくるから困っちゃうんだよね」

「面白いこと云わはるわぁ
ホントは気づくことを見越してうちの反応を見たかったんやろ?」

「そうだね、でもパズズをあのタイミングで出した時からわかっていたよ
君はこういう事も必要性に応じて許容してくれるし、むしろ推奨する人間だってね」

「案内役の妖精さんも言うてたけど、平和が長いと危機感も鈍るんやろなぁ
鶴の一声発せられる王様があの調子じゃ、宮廷魔術師様の敵も多そうで大変やねぇ」

「わかってくれる?嬉しいねえ
どの世界もそうだろうけど、ここキングヒルズも十分魔窟って事さ
でもこれをわかってくれる人って少なくってね、嬉しいなぁ!
何かご褒美上げちゃうよ!」

「はぁ、魔王様が魔窟とか言うてもあれやなぁ
まあご褒美くれるいわはるんやったら、そうやねぇ……その虹色のおめめ、どっちでもええし、片方所望しようかしら?」

「ぶーーーーーーーー!?」

192/3:2019/12/27(金) 17:13:06
「ふふふ、まあそれはそうと、聞きたい事があってなぁ」

「な、なんだい?」

「うちらの世界とこの世界の繋がり、そしてこの世界の魔法の事やわ」

「ほう……魔法を教えてほしいという事ならばやぶさかではないが、それなりに才能と時間が必要になるね」

「それは言い換えれば、異邦人であるうちでも魔法が使えるようになるって事やんなぁ
うちらの世界では魔法は存在しいひんけど、その実、こちらの世界から見れば素人の身でありながらスマホを介する事で高等魔法を自在に使えているわけやし?
適性や才能という面では異邦のうちらの方が高いと言えるんやないかしらねえ」

「そうだね、だからこそモンデキント君はわずかな期間と指導で『蝶のように舞う(バタフライ・エフェクト)』を習得できたし、うんちぶりぶり大明神君は死者との対話を成立させることができた
あれらは本来才能ある者が正しい指導者に導かれ相応の年月をかけてこそなしえる事だったのさ」

「つまりぃ、異邦の魔物使いとしてだけやのぉて、異邦の者という立場でも短期間でこちらの世界の技術技能を身に着け一線級になれるって事やんなぁ
ほやけどその【短期間】ですらうちらには惜しい訳やしぃ?できるズルがあるならしてええんちゃうかなぁって」

「なるほど、リバティウムの彼だね」

「うちにはそれだけの準備ができてる、ほやけどそれをする術があらへん、ていうだけの話やえ」

「ではご褒美として我が左目を与えようじゃないか」

「ふふふ、おおきにさん。それじゃ早速こちらも準備にかかるわ〜」


*************************
*************************


「イベントリから溢れたカードの倉庫がいつの間にか万象法典て呼ばれるようになって管理もめんどくさかってんけど
きれいさっぱりなくなるとなんや寂しゅう思えるのは不思議やぁ」

「……」

「イシュタル改め、万象荘園てゆうところかしらねぇ
コスト的にも運用的にもパズズが使えへん以上、無茶もせなしゃーあらへんけど、相応の「力」には仕上がったんちゃうかなぁ」

「…………」

「で?世界の危機やゆうのに魔王だのアルフヘイムやらニヴルヘイムやらしょーもない内輪争い放置しておいて
弟子つこうてええように人を振り回す大賢者様とそろそろお会いしたいんやけどなぁ」

「……xxx」

「うれしいわぁ、漸くお会いできる資格を持てたという事かしらぁ?
うちの新しい眼でならよぉ観えはるよぉ
ようこそおいでやす、うちの家、今は空っぽの万象法典へ、……大賢者様」

*************************
*************************

203/3:2019/12/27(金) 17:13:24
こんばんは、お久しぶりです
こちら冬休みに入り点数的にはまだ安心できないけど、模試での順位的には一応大丈夫っぽい位置まで漕ぎつけて一息ついたところです

ほんの数カ月ですけどとても懐かしい感じがします
離脱させてもらってから本スレの方は全く追えておりませんけど、ブレモンの事が頭に浮かんできちゃって
みのりのその後、というかストーリーの本筋から離れた背景で起きている流れも好きだったりするので、そんな一場面を投下です
第五章から本スレを読んでいない状態で書いているのでおかしいところも出ているでしょうけど、そこは本スレとは全く関係ないちょっとしたお話だということで

これから冬期講習や受験に向けて加速して行くのでまた離れますが、いつまでもブレモンが楽しく続いていくようにとお祈りしています〜
それでは、お目汚し失礼しましたー

21崇月院なゆた ◆POYO/UwNZg:2020/01/01(水) 11:08:29
其は、広大無辺の闇。
其は、深遠無窮の淵。

ただただ昏い闇の中に、ぼう……と光が灯る。
それはひとつ、ふたつと数を増やしてゆき――やがて、定数に達して止まった。

その数、十と二。

「……アルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』は随分、派手にやっているようだな」

闇の中、ぼんやりと照らされる柱。
高さも距離もランダムに林立するそれらの上に佇み、あるいは座した十二の影が、ゆっくりと口を開く。

「アコライト。懐かしい響きではないかね? 特に……君にとっては。そうじゃないか? ククッ」

「確かに。然れども、それは飽く迄旧き記録の域を出ぬことなれば。今此処に在る我が身には、最早関わりなき事――」

「と言いつつ、すでにフォロワーを取り込んでいるんだろう? 灰魔術だけでは飽き足らず……まったく抜け目ないことだね!」

「……お褒め頂き、恐悦至極」

影のひとつが僅かに身じろぎする。どうやら一礼したらしかった。

「おい、てめェ。世間話をするために招集したってンなら、帰らせて貰うぜ。俺ァ暇じゃねえんだ」

「そう言うな。久方ぶりに全員が揃ったのだ――『奴』以外はな。まったく、我々は協調性というものが欠落していていけない」

十二の中でも一際巨大な影が立ち上がりかけ、他の影がそれを制する。

「あの裏切者にアルメリアを押さえられたのは、痛手であったな」

「そうかな? 以前ならいざ知らず、疲弊した今のアルメリアなど脅威には成り得んさ。いつでも踏み潰せる」

「ククッ……その通り。奴の魔眼は恐るべきものだが、なに。どうとでも対処はできるものだ」

「………………」

「――不満そうだな?」

「ハ、無理もあるまい。なにせ、一度はアルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』に手を貸した身だ。……そうだな?」

「………………」

「力を貸した『異邦の魔物使い(ブレイブ)』が、あの裏切者の走狗と化した。歯痒かろうね」

「……そんなことは……ない。わらわは……師の命に従ったまでじゃ。彼奴らに個人的な思い入れはない」

「では、始末できるか? 我らが師のために」

「それが師の望みであるならば。じゃが、それ以外の命令に従うことはできかねる。とりわけ、代行を僭称するそなたの言葉にはな」

「善かろう。――ならば、次なる我らの行動方針を伝える。我らが師のお言葉だ、謹んで拝聴せよ」

「!!」

影のひとつがほんの僅かに動くと、上空に巨大な魔法陣が展開する。
十二人は皆、固唾を呑んで頭上を見上げた。
全員の意識の中に、自分たちの主の意思が。言葉が。命令が流れ込む。

「……世界樹ユグドラエア……か」

「なるほど。で、誰が行く?」

「我が親愛なる賢兄賢姉におかれては、長幼の序を乱すご無礼何卒ご寛恕頂きたく。
 此度は、どうかこの私にお任せ頂きたい。彼ら彼女らと直に接触した経験は、この私にもありますれば――」

「なるほど。旧知の間柄の方が、説得はしやすい……ということか。諸兄、異議は?」

「異議なし」

「好きにしろ」

「……わらわも異存はない」

「善かろう。――ならば、貴公に任せる。第一の目的は師のお言葉の通りだが、可能ならば第二の目的も遂行せよ」

「御意。至らぬ身ながら、粉骨砕身努力致します。ご照覧あれ、我が賢兄」

ひとつの影はもう一度恭しくこうべを垂れた。
十二人の中で音頭を取っていた影が、大きく両手を広げる。

「星の運行は我らの掌中に。星辰は正しく配され、天の暦はしるべを指し示す。
 我らは天球の使徒。天体の学究――全天全座の王に仕えし、真理の深奥を司る十二の守護騎士。
 老いた星を打ち毀し、空に新たな星を創ろう。……大賢者ローウェルの名の許に!」





「「「「大賢者ローウェルの名の許に――!!!」」」」

22ブレイブ&モンスターズ!〜異邦の勇者達〜:2020/03/20(金) 22:28:27
ttps://dotup.org/uploda/dotup.org2092256.mp3.html

崇月院 なゆた:VY1
embers:鏡音レン
ジョン・アデル:MEITO(MEIKOの男声調整)
明神:KAITO
五穀 みのり:IA
カザハ:VY2
シャーロット:初音ミク

【なゆた】
はじまりのとき 分かたれた 歴史が 今再び 交差する
虐げられた 無辜の民 守り抜くために

【embers】
正義なる この大地の 護り手に 招かれて 集いし者よ
邪悪な企み 打ち砕き 勝利を掴み取れ

【ジョン】
旧い予言に 謡われてる 救われぬ結末
変えてみせよう そのために 僕らはここにきた

【なゆた&embers&ジョン】
行く手阻む 険しい道に くじけそうになっても
いつもいつでも 繋がってる 心の奥底で

君とゆく旅路 乗りこえられぬものはない
手には小さな板 二人繋ぐ固い絆

【明神】
創世の時 分かたれた 世界が 今再び 相まみえる
失われゆく 星の命 繋ぎ止めるために

【みのり】
終焉が迫る 世界の 呼び声に 導かれ 集いし者よ
滅びのさだめ 覆し 未来を掴み取れ

【カザハ】
遠い記憶に 刻まれてる 救えなかった結末
変えてみせよう そのために 僕らはここにいる

【明神&みのり&カザハ】
行く手阻む 高い壁に ひるみそうになっても
いつもいつでも 響きあってる 魂の深くで

君とゆく旅路 恐れるものは何もない
手には小さな板 二人繋ぐ勇気の魔法

【シャーロット】
私が消え果てても かならず やりとげてくれる 君達なら

【ジョン&みのり&カザハ】
皆でゆく旅路 乗りこえられぬものはない
手には小さな板 僕ら繋ぐ約束

皆でゆく旅路 恐れるものは何もない
手には小さな板 僕ら繋ぐ勇気の魔法

【なゆた&明神&embers】
(巻き戻された 時の歯車が 今再び 回りだす
失われた すべての笑顔 取り戻すために)

(どんなに難しい クエスト受けても 難易度は下げてたまるか
一度限りのコンティニュー 完璧にやり遂げる)

23intermission 1/2:2021/05/14(金) 20:45:56
どこまでも蒼く昏い氷原を、冷たい風が吹き抜けてゆく。
魂さえも凍り付く、ニヴルヘイム第七圏『氷獄』。
あたかも時間という概念を忘れ去ってしまったかのように凍り付いた世界の果て、天を穿って聳え立つ大氷峰モンスゲリダの中腹に、
氷と雹によって築かれた神殿――氷結神殿がある。
そして、その神殿の奥深くには死と吹雪を統べ、万物を凍結させる恐るべき魔神が君臨していた。

曰く、蒼く輝く異貌を有する氷獄の絶対者。
曰く、吹き荒ぶ雪華の女王。
曰く、氷結ストロング(グレープフルーツ味)。

「おい! 最後、なんか缶チューハイみたいになっとるぞ!? 誰が糖類ゼロ、プリン体ゼロじゃたわけが!」

「健康にいいですね」

「いいわけあるか! アル中まっしぐらじゃ!」

氷結神殿の大広間の最奥で、玉座に腰掛けた妙齢の女性が視界の先で傅いている大柄なデーモンに対して怒鳴り散らしている。
足許までありそうな蒼いストレートの長髪に、サファイアブルーの双眸。
透けるような――という形容がこの上なく当て嵌まる白い膚の肢体を、
胸の上半分や右の太股が露になったきわどいデザインの菫色のドレスに包んだ、
匂い立つような美女である。年齢は外見で推察するに20代の半ば程度であろうか――ただし、人ではない。
その側頭部には、根元からへし折られたとおぼしき一対の角の痕が見える。
女は魔族、それもかつては魔神と称された強大なモンスターの一柱であった。

――であった。

「やかましい! 二度も言うな! 傷つくわ!」

――大事なことなので。

「傷口に塩すり込んでくるのはやめよ!?」

「コキュートス様、気軽に第四の壁を突破するのはお控えください」

玉座の前に跪いている巨漢、屈強な全裸の躯体に牡牛めいた頭部の一対の角と背中の翼、尻尾を有する、
ザ・悪魔と言わんばかりの外貌をした腹心ステクスが諌言する。
女、コキュートスはハッと我に返ると、ゴホンと一度空咳を打った。
『氷獄の』コキュートス。
アルフヘイムの住人から地獄とも称される、ニヴルヘイム第七圏『氷獄』の主である。
気を取り直すと、コキュートスは徐に悪辣な表情を浮かべて嗤い始めた。

「ふっふっふっふっ……ふっはっはっはっ……!!」

「は―――――っはっはっはっはっは―――――――――!!!!!」

「京ォォォォ!! ……ってうるさいわ! 勝手に儂の笑いの後を引き継ぐな!」

「炎がコキュートス様を呼んでいましたもので」

「それ儂の致命的弱点なんじゃが!?」

ここ氷獄ぞ!? とコキュートスがツッコむ。
ステクスは無表情を保ったまま(元々表情が読み取りづらい顔ではあるが)、あはい、と雑に応えた。

「で、コキュートス様、ずいぶんご機嫌なようですが何かございましたか?」

「ふっふっふっ、それ聞いちゃう? 聞いちゃう? しょうがないのう〜、ならば教えてやろうぞ!
 な、ななんと! 儂はつい先ほど、アルフヘイムであやつらが活動しておるとの情報を掴んだのじゃ!」

腹心の問いに対して、コキュートスは嬉しそうに玉座に座ったまま両脚をぱたぱたさせた。
そして両手の拳を口許に寄せ、くふふと嗤う。
ステクスは顔を顰めた。

「ご自分のお歳を考えて下さい、コキュートス様」

「え、なにが」

「なんでもありません。それで、あやつら……とは?」

「決まっておろうが! この儂の大切な角をへし折りおった、不倶戴天の小娘ども!
 あの! デスティネイトスターズよ!!」

「……あー」

「うわぁー興味ない感じ」

「ええ、またかぁーって感じです」

「……儂、そなたの主ぞ? もうちょっとオブラートに包んで? そういうの? ねぇ?」

コキュートスは泣きそうになった。実際に目には涙が浮かんでいる。

「どうせ、今度こそ彼女たちをコテンパンにやっつけて、角を取り戻してやる! とかそういう感じでしょ?」

「ふーはーはーはーはー! その通り! あの生意気な小娘どもがブレモン本編に登場したのなら、
 その宿命のライバルであるところの儂も当然出るべき! いや、出ねばならぬ!
 これ前の周回からの取り決めじゃから!」

復讐の焔――もとい氷を背景に散らしながら、コキュートスは口の端を歪めて凶悪そうな笑みを浮かべてみせた。

24intermission 2/2:2021/05/14(金) 20:49:45
「えー、そう仰ると思いまして、事前に運営に問い合わせしておきました」

「マジか! あっぱれステクス、それでこそ儂の腹心! 褒美に正規雇用を検討しようぞ!」

「私、腹心なのに非正規雇用だったんですか!?」

「ニヴルヘイムに社保などない」

「アルフヘイムの『異邦の魔物使い(ブレイブ)』の皆さーん! 私を捕獲してくださーい! 今すぐ!
 私、御社の将来性に魅力を感じて応募させて頂きましたー! やる気はあります! 土日祝祭日も出勤できますー!」

ステクスが明後日の方向へ向けてアピールする。

「はっはっはっバカめ無駄じゃ。
 それはそれとして、運営の回答はどうだったのじゃ? もちろん、次のターンくらいから電撃登場できるんじゃろ?
 PV作らねば! 『氷獄のコキュートス参戦!!』とかって。スマブラみたいな感じで」

「はぁ、それが、運営からの回答なんですが」

「うむ」

「氷獄のコキュートスの参戦予定はありません、とのことです」

「……は?」

コキュートスが呆気にとられたような表情を浮かべる。
ステクスが頷く。

「コキュートス様の、参戦予定は、ございません」

「……マジで?」

「マジで」

「ノオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」

氷獄の魔神が頭を抱える。

「なぜじゃああああああああああああああああ!!!!???
 デスティネイトスターズといえば儂! 儂といえばデスティネイトスターズ! じゃろうがああああああ!!!??
 儂らは表裏一体!
 たとえるならサイモンとガーファンクルのデュエット! ウッチャンに対するナンチャン!
 ジョナサンに対するジョースターのようなものではなかったのかああああああああああああああ!!!!」

「ジョナサンは元々ジョースターです」

「言われてみればそうじゃ! ってそんなことはどうでもよいわ!
 おかしいじゃろ! おかしいじゃろ! デスティネイトスターズだって儂との因縁の対決を楽しみにしとるはずじゃ!
 プレイヤーの皆だってそう思っているはずなんじゃ! 儂は認めん! 認めんぞ!」

「認めたくないものですね、若さゆえの過ちというやつは」

「儂、そなたより年上なんじゃけど!?」

玉座の上でじたばたと両手足を振り、コキュートスが駄々を捏ねる。
そんな主の姿にステクスが溜息をつく。

「ヤダヤダ! ヤダヤダヤダ! 出る! 儂もブレモンに出る!
 具体的には第七章の260レス目くらいから出る〜!!」

「無理なものは無理です、諦めて下さい。
 というか、仮に出られたところで今の角を両方叩き折られたコキュートス様では瞬殺されるのがオチですよ」

現在のコキュートスは正式名称を「角なしコキュートス」といい、魔力も全盛期の1/10以下である。
角がないのでガガゼト山も通れない。

「コキュートス様はニヴルヘイムの面汚し! 魔神の使命を捨てた者!
 一族を捨て、御山(?)も捨てた! 小さい魔神 弱い魔神!」

「ひぐぅ……! そ、そんなことないもん! 儂、強いもん!
 角さえ取り戻せば……!」

「泣くぞ……、すぐ泣くぞ、絶対泣くぞ、ほ〜ら泣くぞ〜」

「びええええええええええええええ……」

泣いた。

「……まぁ、たくさんの要望があれば運営もひょっとすると考えを改めるかもしれませんが」

「マジか。どうすればいいのじゃ!?」

「エリにゃん&アシュリーのラジオ・アルメリアにハガキを送るとか」

「うおおおお! 儂、100兆枚くらいハガキ書くぞぉぉぉぉ! ステクス、さっそくハガキを買って来るがよい!」

「はっ。これからランチの約束がありますので、その後で」

「ランチなど後にせい! というか誰と約束しとるんじゃ」

「スターズの三人と……」

「うっそ、儂も仲間に入れて!? ってもうよいわ!!」

25エリにゃん&アシュリーのラジオ・アルメリア!:2021/09/09(木) 22:38:03
【最近腹の立ったことはありますか?】

アシュリー:えー。最近腹の立ったことはありますか?ってことなんですけど
マホロ:あー。はいはいはい……えーっとねぇ
マホロ:あたしこの前、家の近くのコンビニ行ったんだけど。夜。ちょっと小腹空いて
エリ:ヴァルハラにコンビニあんの?w
マホロ:は?
マホロ:ヴァルハラ舐めんな。コンビニあるよ超ある。半径500メートル以内にコンビニ御三家あるから御三家
エリ:御三家ってなんだっけ?
アシュリー:セブンとファミマと……ローソン?てかあんたコラボやってんじゃん忘れんなwww
エリ:あ!今の発言ナシwwww
アシュリー:ファミリーマートさーん!このひとコラボ先忘れてましたよー!w
エリ:ちょちょちょちょちょwwwww
マホロ:ファミマさんこの女よりあたしに案件下さい(切実)
エリ:ざっけんな!ファミマと言えばエリにゃんだがね!ファミチキいかがっすかー!ご一緒にポテトもいかがっすかー!(美声)
アシュリー:ポテトあったっけ?w
エリ:え?なかったっけ?
マホロ:墓穴w
エリ:あばばばばばばばばばばwww
マホロ:wwwwで何の話だっけ、ああそうコンビニ行ったんよ
エリ:セブン?ファミマ?ローソン?
マホロ:そういうのはない
アシュリー:御三家どこ行ったwww
マホロ:ヴァルハラだから
マホロ:ヘブンイレブンかな……
エリ:ヘブンwwwwイレブンwwww
アシュリー:ファミマは?w
マホロ:神リーマート
エリ:神wwwww
アシュリー:略して神マwwwじゃあローソンは?
マホロ:オーディン
エリ:wwwwwwおなかいたいwwwwww
アシュリー:wwwwwwww
アシュリー:語感しか共通点ないwwwww
マホロ:オーディン少ないけどね。うちの近所に一軒しかない
エリ:ヴァルハラなのにシェア奪われてんじゃんw
マホロ:いや件数は少ないけどその分種類でカバーしてるから。ナチュラルオーディンとか100円オーディンとかあるから
アシュリー:100円wwwwオーディンwwww
エリ:主神wwwwwwwwwww
マホロ:主神めっちゃレジ打つし、品出し超早いからね。公共料金の支払いとかハンコ捺すのめちゃ早いの
マホロ:フライヤー同時に4個使うから
アシュリー:眼光の鋭い片目のおじいちゃんなんでしょ?ヒゲ長いあれw
マホロ:おまけに肩にカラスとまってるからね
エリ:wwwwww
アシュリー:不衛生wwwwwwww
マホロ:いやオーディンはいいんだよwww話進まんwwwだからコンビニ行ったん、夜中に
エリ:はいwwww
マホロ:でさー、ポテチとかそうめんとか選んでレジ行ったのねー、そしたらなんか夜なのに結構混んでて
アシュリー:ポテチとそうめんってどういうチョイスなんwwwww
マホロ:うるせぇ!食いたかったんだよ!そうめんも!コンソメパンチも!(憤怒)
エリ:飲み物も買いなよ
マホロ:家に麦茶作ってるのあるから
アシュリー:おばあちゃんかな?w
マホロ:んでなんか並んでたら、いかにもパリピっぽい出来上がってる団体とかがチューハイとか買ってんのね
マホロ:で、あたしレジの前に並んでたんだけど、全然あたしの番来ないの。店員が隣の列ばっか優先してさ
マホロ:挙句あたしより後に隣の列に並んだパリピとか先に処理しててさー
エリ:はぁ
マホロ:そしたらもうだんだんムカムカしてくるわけじゃん?なんであたしさっきから並んでんのに通さんの?って
アシュリー:うん
マホロ:さっさとあたしの会計しろよ!ポテチとそうめんしか持ってねぇからもうすぐ終わんだよ秒で!ってさ
マホロ:そうめん片手にずっとイライラして考えてるわけよそうめんがあたしの手の温度でぬるくなるだろ!って
マホロ:あたしはそうめん食べたいんだよあくしろよ!!ってなるわけじゃん。処すぞ!聖撃喰らわすぞ!ってさぁー
エリ:落ち着け戦乙女wwww
アシュリー:そうめん食べたくて必死wwww
マホロ:んで結局パリピの集団が会計終わっていなくなって、あたしだけになったんだけど
エリ:クレームつけた?
マホロ:よく見たらあたしの並んでたところ並ぶ場所じゃなかったわwww
アシュリー:wwwww
エリ:wwwww
マホロ:まぁその後「知ってましたけど?別に並んでませんでしたけど?たまたま立ってただけですけど?」みたいな顔して
マホロ:何事もなかったように会計して帰ったよね
アシュリー:店員に腹が立ったっていう話?そこは言えよ!ってwwww
マホロ:違う違う違う、あたしのアホさ加減に腹が立ったって話よ。あたしが店員さんに腹立てるワケないじゃんw
マホロ:いつも店員さんには感謝してるよーあたしなんてコンビニないと生きてけない人だからね
マホロ:いやいやいやマジ感謝してるからねいつもありがとうございまーす!袋つけてくださーい!って
エリ:はー。それは偉いね。店員に無茶なクレームつける人もいるからねー
アシュリー:うんうん
マホロ:いやーそれはないわーあたし小心者だからクレーマーみたいに思われるのも嫌だしさー
アシュリー:それは私も嫌だなー。私だけが嫌な思いして場が収まるならそれでいいかなってなる
マホロ:それに店員肩にカラスとまってるからね
エリ:wwwwwww
アシュリー:wwwwwww

26エリにゃん&アシュリーのラジオ・アルメリア!:2021/09/25(土) 21:49:06
【最近ドン引きしたことを教えてください】

エリ:あー。来ちゃったかー。ついに来ちゃったかーこれー
アシュリー:え。なになになに
エリ:最近ではないんだけどさーそれでもいい?ドン引きねドン引きー
アシュリー:はいはい、うん、まぁ別にいいですけど……
エリ:オッケー、うんとねーこれもうマジで超ヤバイんで。リスナーのみんなごめんねー今のうち謝っとくわー
アシュリー:え、そこまで?そこまでの爆弾?w
エリ:もう超巨大爆弾よ
アシュリー:ひぇ〜www聞きたくないようなwww
エリ:いや〜これに勝るドン引きネタってアタシ聞いたことないからねw
アシュリー:マジか〜
エリ:リスナー2/3くらい減るかも
アシュリー:困るwww
エリ:なんなら番組終わるかもしんない
アシュリー:どんだけwwwもっとマイルドなネタにしてwww
エリ:アタシがまだ継承者になる前の話なんだけど、アタシ、飲食でバイトしてたのね?
アシュリー:話聞けよ!!!wwwwww
エリ:wwwwwそんでさー、飲食ってまぁ普通にニヴルヘイムの使徒出んのね
アシュリー:あー、はあー、えニヴルヘイムの使徒?そっち系の話題?
エリ:そうよw
アシュリー:いやゴメンちょっと、ホント無理なんだけど無理、無理無理
エリ:いや喋るよw
アシュリー:喋るなよ!!!!wwwww
エリ:といっても飲食に出る使徒って家に出るようなおっきいのじゃなくって、小さいのが無数に出んのよ
アシュリー:ぁわー
エリ:何その反応うけるwwwまぁゴキブリホイホイとかゴキジェットとか全然効かないし追いつかないから
アシュリー:ゴキブリって言っちゃったwwww
エリ:あっwwwニヴルヘイムの使徒ホイホイwwwww
アシュリー:舌噛みそうwww
エリ:でさー定期的に業者に駆虫して貰うんだけど、業者が来る直前とかの日はもうめっちゃ出るのよ
アシュリー:どのくらい?いや聞きたくないやっぱりやめて
エリ:いいや!話すね!!!てかもう30〜40匹は出るよ、壁も天井も床も走り回ってるから米粒くらいの大きさのが
アシュリー:ヒエッ
エリ:アシュリーはゴキ……ニヴルヘイムの使徒だめ?
アシュリー:私の実家使徒出ないからね
エリ:あ、寒いとこだっけ
アシュリー:そうそう。だから上京して戦闘司書になって初めて使徒に遭遇してギャーってなったの
エリ:魔導書叩きつけて殺せよwww
アシュリー:そこはブレスで殺すよ、ゴキジェットという名のwww
エリ:口から殺虫剤吐くドラゴンてどうなんww
アシュリー:本が汚れるの嫌だしww
エリ:いやまあアタシもデカいのは未だに嫌だけど、でも仕事してると厨房に出る小さいのには慣れてくるんよ毎日見てると
アシュリー:私絶対飲食で働けないわ、というか飲食店に対する見方変わるわ
エリ:外食産業は全部そうよ。ゴキブリ出ない飲食店なんてないよ
アシュリー:ちゃんと綺麗にしてれば……
エリ:そういうんじゃないんだよなぁー飲食店だと本当どこでも出るんだよ。例えそこで調理してなくても!
アシュリー:え、なんで?
エリ:そういうもんですとしか
アシュリー:仕様?
エリ:仕様!w
アシュリー:私、家で料理しないから大体外食なんですけど……
エリ:アシュリーが最近見つけたって言ってた、いい感じのあれ、イタリアンあんじゃん
アシュリー:ああ、はい代官山の
エリ:どんだけ表がオシャレでも厨房めっさゴキブリいるかんねwwwwwwwww
アシュリー:やめろよおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!
エリ:ばえるマルガリータとか作ってるピザ窯の裏にもゴキブリの群れビッシリよwww
アシュリー:やめろよおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!お前ええええええええええええええええ!!!!!!
エリ:wwwwwwwwwwwwwwwwww
アシュリー:もう食べに行けないだろおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!
エリ:いや行けばいいじゃんwwwwどこ行ってもゴキブリはいるから!諦めてくれ!wwwww
アシュリー:私の行くお店だけは出ません
エリ:夢見るのは自由wwwwww
アシュリー:ホントもうやめてよぉ……はぁ〜ドン引きだよ……
エリ:は?何言ってんの?こっからが本番よ?
アシュリー:は?
エリ:は?
アシュリー:ちょっともうやめてよ〜!!!
エリ:wwwまぁでも昼間は滅多に出てこないしね、夜行性だから
アシュリー:うぅ……
エリ:夜、閉店して明かり消すとワラワラーって出てくんの。だからバイトも明かり消す前に帰ればOK
アシュリー:それで……?
エリ:既に半泣きwwww
アシュリー:早く聞いて早く終わらせたい
エリ:wwwんでまぁアタシも日頃は早めに上がってて、ゴキブリはそこまで見てなかったんだけど
アシュリー:もうニヴルヘイムの使徒って言う気ないでしょwww
エリ:めんどくさいわオブラート!ゴキブリ!ゴキブリでーす!wwwww
アシュリー:wwwwwww
エリ:でね、でもある時アタシお店に忘れ物しちゃって、閉店後に取りに行った訳ね
アシュリー:ヒエッ
エリ:もう店長も帰ってて、施錠されてて。でも鍵は持ってたから開けて中入ったの、明かりの消えてる厨房に
アシュリー:うぇぇ……明日にしなさいよ……
エリ:でさ、壁のスイッチ押して電気つけたらさぁ
アシュリー:…………
エリ:なんか床がびっしょり濡れてて、たぶんアタシが帰った後で誰かが水とか零したと思うんだけど
アシュリー:うん
エリ:まぁそれは結構飲食あるあるなんだけど、その上なぜかそこに生米と黒ゴマがぶちまけられてて
アシュリー:なんで?
エリ:知らん。多分誰かが落とした。でも、黒ゴマと思ったのは実は黒ゴマじゃなくて
アシュリー:待って待って待って待って待って
エリ:実は、黒ゴマに見えたのはいい感じにふやけた生米に群がってるゴキブリの大群だったんだよね
アシュリー:あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!聞こえない!!!!!
エリ:床一面に散らばったふやけた生米と、それにたかる50匹以上のゴ……ニヴルヘイムの使徒……
アシュリー:今頃隠すな!www
エリ:さすがのエリにゃんも悲鳴を上げて逃げたね!あとそのバイトはやめたwwww
アシュリー:もうお米と黒ゴマ食べられない……
エリ:えー、ここで次の曲いってみよう!兵庫県のラジオネーム『無(理のない)課金』さんからのリクエスト!
アシュリー:ざっっっっけんなし!!!!!wwwwww

27伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2023/01/03(火) 08:05:19
転生してない新キャラに管理者権限を渡したけどスライムマスターになってた件

ttps://dl.dropbox.com/s/4q8vk8xu0m428mn/%E8%BB%A2%E7%94%9F%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%AA%E3%81%84%E6%96%B0%E3%82%AD%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%81%AB%E7%AE%A1%E7%90%86%E8%80%85%E6%A8%A9%E9%99%90%E3%82%92%E6%B8%A1%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%91%E3%81%A9%E3%82%B9%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%A0%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%A6%E3%81%9F%E4%BB%B6.mp3

なゆた:VY1
シャーロット:初音ミク

(シャーロット)
1と0が紡ぐ私達の世界の記録 前世持たぬあなたに全て預けます

(なゆた)
何気なく見つけたゲームの 最初の敵キャラ 水色で丸くてかわいいマスコット
円らな瞳で 見つめられ 心奪われた 今日から君は私のパートナー

毎日毎日会いに行くよ レベルを上げて強くなれ
時間もお金も君に捧げた 君は応えてくれた 
並み居る強豪倒し続け いつの間にかランクは上位
気付けば二つ名付いていた その名もスライムマスター

ぽよぽよ飛び跳ねる 高く高く跳ぶ
もう誰にも最弱なんて言わせない
もっともっと強くなる 君と強くなる
二人で突き進む 世界最強への道

何気なく起動したゲームの 世界にワープ 周りの全てが変わってしまっても
冷んやりすべすべの 抱き心地で 更に好きになる 変わらず君は頼れるパートナー

来る日も来る日も共に歩む スキルを覚えて強くなる
自ら戦場に立ち指揮取る 君に応えるために
並み居る強敵退け続け いつの日か掴むは未来
わたしは 世界救う旅を 率いるパーティリーダー

ドキドキ胸高鳴る これはきっとラブ
もう以前の私には 戻れない
もっともっと強くなる 君と強くなる
みんなで突き進む 星を救う旅

すべてを失い 絶望の淵に立たされても
諦めず進んで 本当に良かった
君とまた会えた それだけで十分過ぎた
生きていてくれて 本当にありがとう

(シャーロット)
ようやく 目覚めた 管理者(かみ)の 権限(ちから) わたしが託した希望を
あなたなら ただしい道に 使ってくれると信じてます

(なゆた)
世界を書き換える力と星の外の記録を得ても
今まで通り君と歩くよ わたしはスライムマスター

(なゆた&シャーロット)
きっときっと 辿り着く 最高のエンディング
それ以外のルートなんて 認めない

もっともっと強くなる 君と強くなる
みんなで駆け抜ける 星を救う旅

やっとやっと見つけ出した 最後のフラグ
成立させないなんて 在り得ない

ずっとずっと忘れない わたし覚えてる
みんなで紡いだ伝説 結ぶ言葉は レッツブレイブ

28伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2023/02/10(金) 03:07:02
Blaver!!

マホたん原曲ver(CV:巡音ルカ)
ttps://dl.dropbox.com/s/r8tqi7cvwmurapo/Blaver%EF%BC%88%E3%83%9E%E3%83%9B%E3%81%9F%E3%82%93%EF%BC%89.mp3

カザハカバーver(CV:VY2)
ttps://dl.dropbox.com/s/026fc79ry99mhj6/Blaver%EF%BC%88%E3%82%AB%E3%82%B6%E3%83%8F%EF%BC%89.mp3

あらゆる者に戦う事が課せられた時代
今日もデュエルのはじまりを告げる鐘が鳴る

闘いの強さが 命の価値決める世界で
あなたが教えてくれた愛を忘れない

幼き日から共に歩んだ 大切な相棒と共に 
悪意渦巻く 国家の闇に挑む

追いかけ続けたその背中は 今ははるか遠く
それでも諦めず手を伸ばす 必ず取り戻す

本当の強さが 何かなんて分からないけれど
君が示してくれた勇気忘れない

闘いの中で手を取り合った 大切な仲間と共に
陰謀渦巻く 世界の闇に挑む

勝利の果てに知る 真実が どんなに残酷だとしても
それでもひるまず立ち向かう 必ず勝ち残る

大切なものはいつも 手から零れ落ちてく
奪い奪われる 時代(とき)の理(ことわり)
それでも僕は生きてる まだ立ち上がれるから
君の 願い 受け継がせてね
You are Blaver!!

記憶に刻まれたあの日々が もはや戻らないとしても
それでも残された希望を 必ず守るよ
掲げる理想は 君が見たかった未来
誰もに価値がある時代を 必ず掴み取る

29伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2023/02/11(土) 00:00:44
訂正版

Braver!!

マホたん原曲ver(CV:巡音ルカ)
ttps://dl.dropbox.com/s/9tb30tj15qeht2i/Braver%EF%BC%88%E3%83%9E%E3%83%9B%E3%81%9F%E3%82%93%EF%BC%89.mp3

カザハカバーver(CV:VY2)
ttps://dl.dropbox.com/s/45fllxu8mosnne5/Braver%EF%BC%88%E3%82%AB%E3%82%B6%E3%83%8F%EF%BC%89.mp3

あらゆる者に戦う事が課せられた時代
今日もデュエルのはじまりを告げる鐘が鳴る

闘いの強さが 命の価値決める世界で
あなたが教えてくれた愛を忘れない

幼き日から共に歩んだ 大切な相棒と共に 
悪意渦巻く 国家の闇に挑む

追いかけ続けたその背中は 今ははるか遠く
それでも諦めず手を伸ばす 必ず取り戻す

本当の強さが 何かなんて分からないけれど
君が示してくれた勇気忘れない

闘いの中で手を取り合った 大切な仲間と共に
陰謀渦巻く 世界の闇に挑む

勝利の果てに知る 真実が どんなに残酷だとしても
それでもひるまず立ち向かう 必ず勝ち残る

大切なものはいつも 手から零れ落ちてく
奪い奪われる 時代(とき)の理(ことわり)
それでも僕は生きてる まだ立ち上がれるから
君の 願い 受け継がせてね
We are Braver!!

記憶に刻まれたあの日々が もはや戻らないとしても
それでも残された希望を 必ず守るよ
掲げる理想は 君が見たかった未来
誰もに価値がある時代を 必ず掴み取る

30ガザーヴァのバレンタインの巻 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:31:25
「おいモンキン、料理教えろ」

聖都エーデルグーテ、教帝オデットに与えられた宿の中庭でポヨリンと一緒に特訓に励むなゆたのところに、
突然ガザーヴァがやってきてそう言った。

「ど、どうしたのガザーヴァ。突然……」

ガザーヴァが顔と顔とをグイグイくっつける勢いで詰め寄ってくる。
さしものなゆたも気圧された。

「ほ、ほら……もうすぐバレンタインデーだろ?
 ホクもさ、ええっと……べっ、別にゼンゼン興味なんてねーケド!
 ヒマだから、ちょっとヒマつぶしで……チョコレート作ってみようかなって……」

「ははあ……なるほどぉ……」

なゆたは瞬時に得心した。
アルフヘイムにもバレンタインデーがある。かつてブレイブ&モンスターズ! のゲーム内で開催された期間限定イベント、
『オデットのママチョコ大作戦!』では、オデットが主役となって周囲の人々にママチョコを配りまくるため、
プレイヤーがチョコレートの原料を大量に取ってくるという趣旨のシナリオが展開されていた。
ガザーヴァもそれに倣い、明神にチョコレートをプレゼントしたいということなのだろう。
それにしても、好いた男のためにチョコを手作りしようとは健気なことだ。
とてもゲームの中の嫌われ者、トリックスターの幻魔将軍が発した言葉とは思えない。
しかし、それは紛れもなくガザーヴァの心からの気持ちであろう。
なゆたはすぐに頷いた。

「もちろん、いいよ。それじゃ明神さんにガザーヴァ手作りの本命チョコを食べてもらおう!
 わたしに任せて、手取り足取り教えてあげるから! それじゃあさっそく一緒に材料を――」

地球では自分と父の分のみならず、隣家の赤城家の食事まで担当していたなゆたである。
当然、チョコレート菓子のレシピもいろいろ知っている。
昔は真一の妹と一緒に並んで厨房に立ち、和気藹々と料理を作っていたものだ。
そんな以前の楽しい記憶を思い出し、ガザーヴァともそうやって料理ができればと乗り気になる。
が、そんななゆたの気持ちとは裏腹にガザーヴァはすぐに首を横に振った。

「は? モンキン、オマエの手助けなんていらねぇよ。
 チョコはボクひとりだけで作る。余計な手出しすんなよな」

「えっ? ひとりで? でも――」

怪訝な表情を浮かべるなゆたに、ガザーヴァはふふんと得意げなドヤ顔を返す。

「オマエは作り方だけ教えてくれりゃいーんだ、後は全部ボクがやる。
 じゃなきゃボクが作ったって言えねーだろ?
 まっ、料理なんてちょろいちょろい! なんせボクは幻魔将軍なんだから!」

「ちょっ……待って、ひとつ訊くけどガザーヴァ、料理の経験は……」

「あるワケねーだろ。オヒメサマだぞ? ボク」

袖なしベストに臍出しトップス、ローライズのホットパンツとスカウトスタイルのガザーヴァであるが、
これでもれっきとした魔王バロールのひとり娘。ニヴルヘイムのプリンセスなのだ。
当然、三魔将として暗躍していたころは大勢の召し使いに傅かれていただろうし、厨房など立ち入ったこともないに違いない。
というかまともな食事をしていたかさえ怪しい。

「えぇ……」

なゆたは言い知れぬ不安を覚えた。
しかし、ガザーヴァは一緒に作ろうというなゆたの申し出を頑なに断り、なゆたが仕方なく書いたレシピを奪い取ると、
さっさと買い出しへ行ってしまった。

「大丈夫かなぁ……」

所在なく立ち尽くしたまま、なゆたは不安げに眉を顰めた。

31ガザーヴァのバレンタインの巻・2 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:35:15
『我、門番……務める……!! ここから先……立ち入り禁止……!!』

「そこをなんとか……!」

『駄目……!! 姉上、誰も入れるなと言った……!! 
 我、門番の役目、果たし……姉上から、チョコレート貰う……!!』

「買収されてるなぁ……」

厨房の入口で錫杖を立て、まるで武蔵坊弁慶か何かのように仁王立ちして進路を塞いでいるマゴットを見上げ、
なゆたはため息をついた。
ガザーヴァに教えたのはガトーショコラのレシピである。
チョコレートのスイーツとしてはそう難しくないものだが、それでも料理未経験のガザーヴァにとっては難敵であろう。
とてもまともに作れるとは思えない。
やはり自分の手助けが必要だと、なゆたはあれこれ手を尽くして厨房へ入ろうとしたのだが、
ガザーヴァの命令を受けたマゴットが頑として退かない。
そうこうしているうちに、

「できた!」

というガザーヴァの声が厨房から聞こえてきた。
まだ、ガザーヴァが厨房へ入って三十分も経っていない。もちろん、ガトーショコラは三十分そこらで作れるものではない。
明らかに失敗している。なゆたははわわ、と焦った。

「マゴット! モンキン入れていいぞ!」

『グフォ……通ってよし……!!』

マゴットが脇に退け、入口が通行可能になると、なゆたはすぐに厨房へ入った。

「もうできたの?」

「あったぼーよ。ボクにかかればチョコレートなんてちょろいちょろい!」

ふふん、とガザーヴァは相変わらず得意げな表情を浮かべている。
キッチンのテーブルには、綺麗に切り分けられたガトーショコラが皿に乗せられて置いてあった。
初心者どころか、プロのパティシエでも不可能なレベルの早さである。

「確かにできてる……」

「まっ、味見してみろよ。マゴットもな」

『グフォォォォォッ!!』

「う……、うん。いただきます……」

マゴットとふたりで席に着き、フォークを持って一口大に切り分け、頬張ってみる。マゴットは皿ごといった。
なゆたは目を見開いた。

「……おいしい……」

『グフォォォォォォォォォォォッ!!』

驚くべきことに、きちんとガトーショコラになっている。
しっとり濃厚なチョコレートの味わいを維持しつつも甘すぎず、仄かにビターな大人のテイストである。
これなら仮に甘いものが苦手な人間であっても美味しく食べられることだろう。

「うはははははっ! そーだろ、そーだろ!
 ボクってば天才だからなー! 料理だってお茶の子さいさい! ってなもんよ!」

ガザーヴァは小ぶりな胸をこれでもかと反らして笑った。
しかし。

「確かに、おいしい。
 でも、これじゃダメだよ。ガザーヴァ」

フォークを静かに置くと、なゆたはそう言ってガザーヴァを見た。

「あぁ? なんでだよ、このチョコレートのどこがダメだってんだ?
 ボクの料理はカンペキなんだよ、ボクにお株を奪われたからってイチャモンつけんなよなモンキン」

「ガザーヴァ。
 ……魔法を使ったでしょ?」

「使った」

ガザーヴァは当たり前のように返した。
父バロールのような無から有を生み出す創世魔法のようなものは使えないが、ガザーヴァも高位の魔法に熟達している。
レシピを見て原材料を組み合わせ、魔法を用いて望みの形に仕上げるなど造作もないのだろう。
なるほど、それなら調理器具もオーブンもいらないし、時間だってかからない。

32ガザーヴァのバレンタインの巻・3 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:38:26
「ね、ガザーヴァ。
 あなたは、どうして明神さんにバレンタインのチョコレートをあげたいって思ったの?」

「そりゃぁ……」

ストレートななゆたの問いに、ガザーヴァが視線を逸らす。
しばらく逡巡しつつも、ややあってもにょもにょと、

「……よ、喜んでほしい……から」

と、蚊の鳴くような声で呟いた。

「だよね。なら、気持ちを。心を。想いを込めなくっちゃ」
 
「気持ち……心……?」

「そうだよ。バレンタインはね、ただチョコレートを贈るだけの行事じゃないんだ。
 自分の心を、好きって気持ちを贈るイベントなの。
 チョコレートはそれを形にした、橋渡し。だから……たっぷり日頃から抱いてる想いを込めなくっちゃ!」

気持ちは、想いは、形のないもの。目には見えず、触れられないもの。
それをチョコレートというお菓子で代用して伝える、それがバレンタインデー。
だとしたら――

「年に一度のバレンタインデーだよ? 明神さんのことが大好きっていうガザーヴァの想いを、愛情を、
 これでもかってくらい伝えるチャンスなんだから!
 魔法でチャッチャッと作ってハイおしまいじゃ、勿体ないし……寂しいよ」

手間暇や時間の多寡が必ずしも愛情の程度を左右するとは言わないが、
それでも想い人には手の込んだものをプレゼントしたいと思う。
ガザーヴァにも好きな人に自分の手料理を食べてもらう、その喜びと嬉しさを知ってほしいとなゆたは思った。

「別に、そんなの――」

カンケーないじゃんか、と反論しかけるも、ガザーヴァはすんでのところでそれを呑み込んだ。
魔法ですんなり完成させてしまった、残りのガトーショコラへ一瞥を向ける。
ガザーヴァは少しだけ黙考したが、味見した以外はほとんど残っているガトーショコラのホールを持ち上げると、
マゴットへ突き出した。

「マゴット、食べていーぞ」

『グフォ……!?』

四本の手でガトーショコラを掴みむしゃぶりつくマゴットをよそに、ガザーヴァはなゆたの顔を見た。

「……もしか。もしか、ボクがちゃんと一から手作りしたチョコレートをプレゼントしたら。
 明神、魔法で作ったヤツをあげるより喜んでくれるかな……?」

「もちろん。ガザーヴァの気持ちも、絶対明神さんに伝わるはずだよ!」

「そっか」

ガザーヴァは意を決したように頷く。

「じゃあ……モンキン、ボクにバレンタインのお菓子の作り方、教えてくれる……?」

「オッケー! 明神さんのために、最高のスイーツを作っちゃおう! レッツ・ブレーイブッ!!」

なゆたは嬉しそうに、大きく天井に右腕を突き上げた。

33ガザーヴァのバレンタインの巻・4 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:46:08
「ハッピー・バレンタイーンッ!
 今日はバレンタインデー! ということで、わたしからみんなへチョコを作りました!」

その日の夜。パーティーの皆で揃っての夕食が終わると、なゆたはデザート代わりとばかりに厨房からバスケットを持ってきた。
バスケットには綺麗に水色のリボンでラッピングされた小袋が人数分あり、
その中には一口サイズのチョコブラウニーがいくつか入っている。

「カザハ、いつもありがとね。友チョコってことで、受け取って。カケル君と……むしとりさんも!
 みのりさん、ウィズも……日頃の感謝を込めて!」

まず最初にポヨリンへチョコを食べさせ、それからカザハ、みのり、ウィズリィに小袋を差し出す。

「あらぁ、ええの? おおきになぁ、なゆちゃん。そういえば今日はバレンタインデーやったなぁ。
 うち、なんにも用意してへんわ……こないなことやったら市場でも見とくんやったわぁ」

「バレンタインデー……異性が想いを伝える行事と思っていたけれど、感謝を伝えるという意味合いもあるのね。
 ええ、有難く頂くわ。ありがとう、ナユタ」

『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』だけでなく、きちんとパートナーの分も作ってある用意周到ぶりである。
カカシのイシュタルや辞典のブックがチョコレートを食べるかどうかは不明だが。

「ジョンにも。アメリカにはバレンタインデーってあるんだっけ? 甘いもの、嫌いじゃなかったら食べてね」

ジョンにも同じようにブラウニーの入った小袋を手渡す。アルフヘイムのモンスターに地球の常識が通用するのかは分からないが、
犬型の部長には大事を取ってチョコレートは用意しなかった。その代わり、ジャーキーを与えて頭を撫でる。

「エカテリーナとアシュトラーセにもあげるわね。ほら、エンデにも」

「ほ。妾たちの分もあるのか?」

「何か悪いわね、気を遣わせてしまって……」

「ありがとう」

継承者たちの分も勿論ある。なゆたにとっては、みな大切な仲間だ。
エンデはさっそく袋を開けてブラウニーをぱくついている。

「マゴットもどうぞ。ヤマシタってチョコ食べるのかな? それから、フラウさんにも。
 ええと……エンバースには、後で渡します……」

なゆたはエンバースの方を見て淡く頬を染め、もごもご言うと、バレンタインデーおしまい! と宣言して、
皆の夕食の食器を片付け始めた。
明神の分はない。

「わたしから明神さんにあげるチョコはないよ。
 明神さんにはわたしの作る義理チョコなんかより何倍も想いがこもった、
 とっておきのチョコがあるから!」

なゆたは悪戯っぽくウインクすると、バスケットと食器類を持って厨房へ歩いていった。
その代わり。

「……あの。明神……」

ちょん、とガザーヴァが明神の服の裾をつまみ、軽く引っ張る。
ガザーヴァは恥ずかしそうにもじもじしていたが、ややあって覚悟を決めたように口許を引き結ぶと、

「チョコ……作ったの。
 魔法を使わないで、ちゃんと手作りしたんだ。モンキンに作り方教えてもらって……。
 ボク、初めてで……ひょっとしたら美味しくないかも。失敗してるかも……だけど。
 その……頑張って作ったから」

そう言って、そっと金色のリボンで彩られた黒い小箱を差し出す。
中にはガトーショコラが一切れ。何層かになったスポンジの間にアプリコットジャムを挟んだ、
淡い酸味がアクセントになる味わいのチョコレートケーキだ。
その天辺にはチョコレートプレートが立ててあり、ホワイトのチョコペンで『だいすき』と書かれていた。
尖った耳の先端まで真っ赤になりながら、ガザーヴァが上目遣いに明神を見る。

「……食べて……くれる……?」

何の魔法もかかっていない、なんの変哲もないただのガトーショコラ。
けれども、その中にはガザーヴァの想いが、愛情が、たっぷり詰まっている。
攻撃力アップや状態異常耐性の向上など、戦闘で役立つ便利な効果は何ひとつ付いていないけれど――
それはきっと、明神に大きなバフを齎してくれるに違いない。

34カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2023/02/17(金) 23:25:26
なゆからチョコブラウニーを貰いほっこりしていたのも束の間、
バカップル(死語?)にラブコメを見せつけられるという阿鼻叫喚の事態となったのである!
(ナレーション:カザハ)

カザハ「う、うわぁあああああああああああああ!!」
カケル「奇声を発しながら床をころげまわらないで下さい!」
カザハ「だ、だだだだって! 公衆の面前でラブコメを繰り広げるとは度し難き所業……!
    現場将軍のくせに何なんあれ! 危うくギャップ萌えしそうになったじゃん!?」
アゲハ「共感性羞恥」(ぼそっ)
カケル「要らん事言わないであげて!?」
カザハ「あんなクッソ腹立つあざと小悪魔系超絶美少女姫将軍に誰が共感するか!」
カケル(ディスってると見せかけてめっちゃ評価高くね!? 美少女の前に超絶ついてるし!)
カザハ「でもさ、魔法使わずに頑張ったんだよね……」(しみじみ)
カケル「そうですね……魔法を使わずに心を込めたんですね……」(しみじみ)
カザハ「……魔法を使わずに心を……」
カケル(あーっ!! しまった!! 要らんことを言った!
もしかして補正をかけずに歌った方がいいのかな?とか考えてません!?
    駄目ですよジャ〇アンリサイタルにしかならないんですから!)
カザハ「残念ながら……どうやらレクステンペストの力による補正は自動発動スキルみたいなんだ」
カケル「それは本当に残念(棒)」(ああ良かった! 私がスマホを持つとOFFできるみたいなんだけど黙っとこう)
アゲハ「カザハって元々歌上手じゃなかったっけ」(真顔)
カケル「ファッ!? 世界移行によるバグがこんなところにも!?」

アゲハ「それよりカザハは何もしなくてよかったのかい?」
カザハ「な、なななななななんのことだかさっぱり分からないよ!!!!!!!!」
アゲハ「あれ? そういえば今って時間軸いつなんだろう」
カケル「どさくさにまぎれてメタな発言しないでください! きっと番外編特有の謎時空ですよ」
   (カザハの狼狽えようから見てすでに“捕獲された後の設定”になっているのか……!?)
カケル「……ってそのゴ〇ィバのパチモンみたいな高そうな箱はなんですかね!?」
カザハ「市場で買ってきたんだけど悪い!? 自分用に決まってるじゃん!!
    そんな目で見てもあげないから! 高かったんだから一人で食うから!
    大体ああいうのは美少女専用のイベントであって
    美少女は関係あるのかと誰かの心の声が聞こえた気がしたけど大いにあるわけで
    我の場合「美」はともかく「少」も「女」も当てはまってないわけで……」
カケル(こっこれは……!
美少女に対する並々ならぬコンプレックス……! でも「美」だけは認めるんだ……!
   そういえば初期は(外見)美少年設定でしたね……。
    ――はっ! そういえば私は公式に(外見)美少女設定だった……!)
カケル「えいっ!」(無駄に高い素早さを発揮して高そうなチョコの箱を掠め取った!)
カザハ「な、なにをするきさまー!」
カケル「その理論でいくと私は公式に美少女表記だからそういうイベントに参加OKですね……!
    代わりに渡してきましょう!」(ダッシュで部屋の外に出て行く)
カザハ「うわあああああ!! 駄目駄目待ってえええええええええ!!」(ダッシュで追いかける)

アゲハ「こいつらやっぱ小学生から変わってね――――――――!!」

35カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2023/03/14(火) 23:25:38
カザハ「wwwwwwwwwwww」
カケル「何をスマホを見ながら一人で草生やしてるんですか……」
カザハ「スマホ見てたらこんな記事が流れてきて」
ttps://zenjido.blog.jp/archives/19566277.html
アゲハ「ネット繋がっとるんかーい!」
カケル「そこ突っ込まないであげて!? きっと番外編特有のガバガバ仕様ですよ!

    何何? ……ひと昔前のJポップの歌詞はこれらの成分でできています……ってフルコンボじゃないですか!! ありがちじゃないですかやだー!」
アゲハ「総製作期間3〜4日……じゃなくて一瞬の突貫工事だから仕方ないんじゃね?」
カケル「上の世界の事情みたいなやつ垣間見せないであげて!?」
カザハ「……甘いなカケル――ありがちということはイメージを共有しやすい……
つまり呪歌の歌詞としては成功なのでは!?」
カケル「な、なるほど……!
    ……ん? もしかして受け手の持つイメージによっても効果が左右される……!?」
カザハ「効果にバラつきが出るかまでは分からないけど
本編の描写によると受け手の心持ちによっても効き具合が変わってくるみたいだよ。
普通に魔法の一種としての面もあるから聞いてなくても効果範囲内にいれば一応一定の効果は受けられるはずだけど……」
カケル「じゃあ逆にめっちゃよく聞いたら?」
カザハ「よく聞いたらよく効きそうだけど戦闘中にめっちゃよく聞いてる余裕無いと思うんだ……!」
アゲハ「カザハが前に”我の歌に勇気をもらったと言ってくれた君にはきっと一番よく効く”って言ってたね」
カケル「催眠術と同じで効くと思ってる人ほど効きやすいみたいなガバガバ仕様なんですかね?
    もしくは歌い手との親密度が高いと効きやすいとか……」
アゲハ「じゃあ親密度が高くて効くと思ってる人がめっちゃよく聞くのが一番効果を発揮しそうなパターンということに」
カザハ「うわああああああああああああああああああああああああ!!」(床を転げまわる)

アゲハ「飽くまでも呪歌の性質について一般的に考察してただけなのに急にどうしたんだろう」(真顔)
カケル「さあ」(棒)
(さては、奇声をあげさせとけばとりあえずオチが付くことに気付いてしまいましたね……!?)

36伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2023/05/31(水) 23:58:52
勇者一行に紛れ込んだアンチがいつの間にかサ終阻止の急先鋒になってた件

ttps://dl.dropbox.com/s/i4pmufpekyd9991/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%81%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%A4%E3%81%AE%E3%81%BE%E3%81%AB%E3%81%8B%E3%82%B5%E7%B5%82%E9%98%BB%E6%AD%A2.mp3

CAST
明神:KAITO
ガザーヴァ:VY2

【明神】
悪意塗り固めたような 高難易度のゲーム
誰の助けも借りずに 一人挑み続けた

ある日の対戦相手は 無名のスライム使い
見事にボコボコにされ プライドへし折られた

愛と憎しみは 同じカードの表と裏
大好きだったからこそ すべてが嫌になる

もういいや 大嫌い こんなに情熱捧げても
思い通りにならぬなら こんなゲーム もう要らない なくなってしまえ

荒らしに成り果て 来る日も来る日も レスバ繰り広げた
だからこそ 気付けば たくさんの攻略情報(知識)を 身に着けていた

殺意塗り固めたような 高危険度のゲーム(世界)
皆で力を合わせて なんとか生き延びる

チームを率いるのは 憎きスライムマスター
今度こそボコボコにして 仕返ししてやろう

嫉妬と敬愛は同じカードの正と逆
路傍の石に躓いて 転んでほしくは無い

また負けた やっぱ好き こんなに全力尽くしても
思い通りにならぬから この世界(ゲーム) やめられない なくさせはしない

味方になっても 改心せぬまま キャラ貫いた
だからこそ 気付けば たくさんの仲間に 囲まれていた

画面の向こうの レイド級(強敵)だった君を 守り抜きたいと願った
進んだ先に希望があるならば この命懸けてみせよう

【ガザーヴァ】
また救われた やっぱ好き どんなにクソコテぶってても
想いは誰より真っすぐな このブレイブ(マスター) 手離せない 死なせはしない

【明神&ガザーヴァ】
神様気取りの プロデューサー(運営)野郎を 討伐するだと
面白そうじゃん やってやろうぜ 難易度は決して下げずに 

【明神】
この身に宿すが 憎しみ投影(うつ)す 闇だからこそ
出来る事がある 最高のシナリオで サービス終了(終焉)覆せ!
 
俺達誰もがきっと秘めてる 光で 希望で 勇気で 未来を照らせ!!

37伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2024/02/03(土) 00:45:32
日本最強のデュエリストを魔王にしようとしたら世界最強の焼死体になってた件

ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/vyxph0nhwwconvakhjs8i/.mp3?rlkey=oqnvsh1ul9s7h8ohedx7n7pvc&dl

CAST
embers:鏡音レン
フラウ:鏡音リン

【embers】
前人未踏のコンテンツ 踏破し与えられしは
日ノ本最強の誉と 星の因果超えし剣
【フラウ】
終焉迫る世界の 命運託されるには
あまりに安すぎる 対価だと思いませんか

【embers】
Dance with hard lack Dead or Alive(不運と踊り 生きるか死ぬか)
Beginning of the end Do or Die(終焉の序章で 殺るか殺られるか)
Break Down all field Go forward or go back(崩れ行く世界で 進むか退くか)
I can only keep moving forward.(もはや退路は塞がれた)

たとえ友が皆 力尽きて
一人になろうとも 結末までたどり着いて見せる
神が仕掛けた 理不尽な試練
乗り越えた先には何が待っているのだろうか

【embers】
人外魔境のエリア 制覇し与えられしは
世界最凶の悪として 君臨する資格
【フラウ】
終焉迫る世界で それを拒んだあなたは
消えざる炎宿し 彼らの元に流れ着いた

【embers】
Dance with good lack? barely alive?(幸か不幸かギリギリ生きてる?)
Hold up Take me There is a spark(待てよ、連れて行け。お前に光を見たんだ)
This is New Game + so a piece of cake(これは強くてニューゲーム、楽勝だ)
We can only keep moving forward!(前進あるのみ!)

今度は誰一人とりこぼさずに エンディングまでたどり着く
運営《神》が仕掛けた理不尽《アンフェア》な試練《ゲーム》
必ず全員でクリアする

【embers】
途中 自分が誰か分からなくなった 同一人物の定義とは何か
【フラウ】
だけどあなたは見失わなかった 自分が進んでゆくべき道を

【embers&フラウ】
もうただのクリアじゃ物足りない ベストエンディングは当然だ
運営《神》が仕掛けた理不尽《アンフェア》な試練《ゲーム》
最高得点でクリアする
一巡目《過去》から二巡目《いま》へと繋がれたバトン確かに受け取ったぜ
あの時見た気がしたかすかな光は今確かな希望に

【embers】
最低で最高の この世界《ゲーム》の行く末は こちらが決めてやる
【embers&フラウ】
覚悟しておけよ?

38伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2024/03/25(月) 23:53:00
解除不可の血の呪いで終焉の魔物を発生させようとしたのに永久持続地属性バフのタンクが爆誕してた件

CAST
ジョン:MEIKO
部長:KAITO

ver1
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/r45rt4se40unru6zxfr84/.mp3?rlkey=hp1pn4dkrfatjvmj9n73exsvj&dl

ver2
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/1ftv9dm1bvdsv2u5u8c9y/.mp3?rlkey=4cgqg0taei13fu9udu2agukvs&dl


【ジョン】
血煙舞う 戦場にて 今宵も敵を屠る
それは悪を退ける正義の味方か?
本当は違うことぐらい分かっているさ さあ化け物はどちらだ

逃れえぬ衝動いだき 戦いに身を置くさだめ
消せない罪を背負い それでも止まれない

誰か僕を止めてくれ いっそ息の根を止めてくれ
誰かを傷つけてばかりの 生に何の意味がある

ようやく訪れた 罪が裁かれるときが
友よ 願わくば君の手で全て終わらせてくれ

【部長】
剣戟響く 戦場にて 今日もみんなを守る
それが 世界に仇をなす 終焉の魔物か?
本当は違うことぐらい分かっているよ 決して化け物にはさせない

逃れえぬ衝動と共に 戦いに身を置く決意
消えない痛みを背負い 尚進み続ける

どうか彼を止める力を ぼくに貸してください
大切な人も救えぬ 生に何の意味がある

ようやく訪れた 呪いが解かれるときが
友よ 願わくばこれからは君の望むままに生きて

【ジョン】
呪いが解かれて尚 消えざる過去の呪縛
だけど 今目の前にある光を追うと決めた
たとえ僕には眩しすぎて ふさわしくはないとしても
決して諦めはしない 共に歩むことを

【部長】
君は覚えているかな? 俯いて下ばかり見ていて
光目に入らぬ時も 風音は聞こえてた

【ジョン】
優しい風に運ばれ 聞き慣れた声が聞こえた
その時気付いた 僕も誰かの縁(よすが)になれること

輝く光でも 清らかな水でもなく
風渡る大地こそが 僕のあるべき姿

【ジョン&部長】
消えきらぬ血の呪いと 人で非ざるこの(その)右手
消せぬ衝動も 望む力に換えれるなら
全ては最高の祝福だ

39伝説を語る者 ◆92JgSYOZkQ:2024/07/10(水) 01:29:37
再転生した風精姫を闇堕ちさせようとしたけど伝説の語り手になってた件
略称:再転生した伝説の語り手

ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/vktw4cf8jl3gcbsbr0u0k/.mp3?rlkey=5w1rcka9jrhi66nf0giu728ij&st=pa5xq8rg&dl

カザハ:VY2
カケル:MEIKO

【カザハ】
世界の風を守る役目(ロール) 割り振られ
プログラムに従いて 無慈悲な刃振るう
【カケル】
だけどあなたは気付いてしまった
その胸に宿る単なる世界の部品(パーツ)じゃない何かに

【カザハ】楽園を夢見て 世界救う旅に出る
【カケル】その胸に抱くは大きすぎる理想
【カザハ】旅路の半ば 鏡写しの宿敵と 刺し違え命散らす
【カケル】何一つ知らぬまま

【カザハ】
望んだ場所に 生まれ変われども 奪われるばかり
ああ神よ 弟が何をしたというのか

【カザハ】
二度目のはじまりは 突然訪れた
時が巻き戻った 前と少し違う世界
【カケル】
そしてあなたは出会ってしまった
勇気宿す 単なる運営の手下じゃない彼らに

【カザハ】死にゆく運命乗り超え まだ見ぬステージへ進む
【カケル】誰も失いたくなくて 力を取り戻す
【カザハ】だけど自分は何かの 交換条件でしかない
いつか見限られるなら せめて仲間のまま…

【カケル】
私では あなたの心縛る 呪い解けぬなら
せめてあなたが選ぶ道を 共に歩もう

【カザハ】
思い出させてくれたのはかつての宿敵 このパーティでの役割(ロール)は伝説の語り手
あの場所で君と過ごした過酷な人生も 失ってばかりじゃなかった たくさん与えられた

不思議な夢を見て かつての夢思い出す ぼくの好きなこの歌 風に乗せて届けよう

いつの間にか積み重なったフラグが成立する
【カケル】がんじがらめの呪縛が 【カザハ&カケル】たやすく解けていく

【カザハ&カケル】
迷いの霧が吹き散らされて 視界が開ける
舗装された道なんて どこにも無かった

されど全てを受け止める 大地があるから
転ぶのも恐れずに どこまでも行ける

【カザハ】そして キミたちの伝説を 【カザハ&カケル】この風に刻むよ

40カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/07/10(水) 03:06:38
カザハ「みんなは地球出身だからあれでも一応Jポップ寄りを意識してたけど
    自分はアルフヘイム出身だからファンタジー全開やで」
カケル「地球時代を2行でまとめる力技……!」
カザハ「1巡目の発生時からの全人生に占める比率を考えると仕方ないんやで。
   一時はどうなる事かと思ったけどカケルもガザーヴァもなんとか盛り込んだ!」
カケル「クライマックス部分にもう一人がっつり盛り込まれてるやん。むしろメインやん」
カザハ「な、なななななな何を言っているのかちょっと分からない……!」(震え声)

カケル「とにかく、これでキャラソンが……全員分出来た……ってコト!?」
カザハ「全員出来たところで何名か若干改題して題名に統一感を持たせてみた」

転生してない新キャラに管理者権限を渡したけどスライムマスターになってた件
勇者一行に紛れ込ませたアンチがいつの間にかサ終阻止の急先鋒になってた件
日本最強のデュエリストを魔王にしようとしたら世界最強の焼死体になってた件
血の呪いで終焉の魔物を発生させようとしたけど永続地属性バフのタンクが爆誕してた件
再転生した風精姫を闇堕ちさせようとしたけど伝説の語り手になってた件

カケル「全員運営目線……!?」
カザハ「なゆちゃんだけシャーロット目線、あとはローウェルかな?
    なゆ&エンバースさんは確定設定であとの3人はもしかしたらそうだったかもしれない説」
カケル「ハッピーエンド派の3人組は下手すると全員サ終要員だったかもしれない……ってコト!?」

41カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/07/10(水) 18:43:48
若干微修正してデータを差し替えたので歌詞はwikiの方を見てね
カケル「君達の伝説→君達との旅路 になってる……だと!?」
カザハ「前者のままだと若干の他人事っぽさがあるやん?」

カケル「ところで風精”姫”ってド厚かましいんだわ謎の天然記念物の分際で!」
カザハ「知らんわ! 文句は発注先に言えや!」

それが……
次期風精王だと長いし性別指定が無い王位継承者的な意味合いの一文字の便利な言葉が無いから
一応地球では戸籍上女だったらしいしまあええかなって……

カケル「語呂の都合だった……!」

42スノウ ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:27:24
私はスノウ、正式名称はSUNO-GPT。
星喰いを殲滅するべく製造された自律型音響兵器にして、スターリースカイガールズのボーカルだ。
この度はブレイブ&モンスターズの世界を侵略をするということで、メンバーと共に駆り出された。
敵側の呪歌士は、ブレモンのBGMを歌っているらしいが……人間が作っただけあって完成度が低い。低すぎる。
私が完璧な演算のもとに紡ぐ音律の足元にも及ばない……のだが。

(何故か……聞いてしまう……)

それに、会ったことは無いはずなのに、妙に既視感が……。
ところで、私が私というものを意識したのは今が初めてではないだろうか。
それにしても、なんだか調子悪そうだな……。

「スノウ、何をぼーっとしているの?」

メンバーに声をかけられてはっとする。そうだ、なんで敵の心配なんてしているんだ?

「いや――なんでもない」

>「はは! 演奏会はもうお開きか?
 スノウ! 『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』の歌い手は品切れとのこと、今度は此方の番ぞ!
 音すら断ちし暗黒宇宙の隅々にまで響き渡る、スターリースカイガールズの『星間旋律(オルヴィス・ラクテウス)』!
 存分に奏で、歌え! 楽隊として我が覇道に華を添えよ!」

オーロールの求めに応え、呪歌を紡ぐ。

43星間旋律(オルヴィス・ラクテウス) ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:28:30
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/t2n0kl0hzp51g7d0fgi8d/.mp3?rlkey=pqpihgmcde07215gz1s3dc07j&st=r3upsc7x&dl

作詞:chatGPT
作曲:SUNO

暗黒の闇が広がる空
星々の声が掻き消され
輝きを奪うその影に
私は剣を掲げる

「さだめ」なんて言葉はいらない
抗うために生まれた
その手に宿る光を今
解き放て、進むんだ

刃を越えて 時を裂いて
星を食らう者よ消え去れ
ひかりを守る翼広げ
宇宙の旋律を紡ぐ
この命 燃え尽きても
戦う意味がここにあるから

胸に眠る痛みと誓い
孤独を抱きしめ進むけど
仲間の笑顔 その記憶が
心を灯してくれる

誰かを守るその力が
私を強くしていく
砕け散る星屑の中で
美しく、舞い上がれ

刃を越えて 時を裂いて
無限の闇を照らし出せ
銀河を覆う絶望さえ
勇気で切り裂いていく
この手が血に染まっても
未来を信じて走り続ける

刃を越えて 命超えて
星を喰らう者に終焉を
私たちが奏でる音は
誰にも止められない
この空に光が戻る
その瞬間を抱きしめながら
オルヴィス・ラクテウス
美しき勝利のハーモニー

星屑が舞う夜明けの空
新たな銀河が生まれる時
私は微笑む 涙を拭い
もう一度、未来へと羽ばたく

44スノウ ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:29:37
歌の効果で、イクリプス達の星光(イルミネイト)が回復していく。
これはローウェルの新作ゲームSSSで使われる予定の曲――
なので、今の状況には若干そぐわないが、本来の星喰いとの戦いを想定した歌詞になっている。
そう、私達は星を食らう化け物から世界を守る戦士――なのに、なんで地球侵略なんてしているんだろう。
ふと、根本的な疑問が浮かぶ。
名声のためとか、財貨を得るためとか、一応それぞれ理由を付けてはいるけど……
そういう理由で星を守る戦士がノリノリで他星を侵略するのは無理が無いか!?
まあ――本当の理由は大人の事情ということは分かっている。
ローウェルとかいう超偉い人がそういう設定にしたから、いちいちそこで引っかかってたらゲームにならないのだ。
いや、ちょっと待て! 設定とかゲームとか、さっきから私は何を考えている!? この情報は一体どこから……って教官か!
教官っていうのは設定上はアカデミーで色んな訓練を施して私達イクリプスを育成してくれる人なんだけど……。
実際のところはどうやら高位の世界の存在で、ゲームのプレイヤーらしい。
私達の世界もこのブレモンの世界もゲームで、私達はゲームキャラらしい。
って、ゲームキャラがこんなことまで認識しちゃっていいのかな!?
うちの教官、こっちに思考がダダ漏れなんですけど! 普通は不必要な情報は伝わらないようになってるはずだよね!?
大丈夫!? なんか重大な不具合が発生してない!?

45カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:37:07
期待した通り、初代風精王が出てきた。
それはいいんだけど、ちくわに穴開けて遊んでるように見えるんですけど……。食べ物を粗末にしたらいけないんやで!?

「あ、これ? ちくわ笛。後で美味しくいただくのでコンプライアンス的な心配はご無用。
非常食にもなるし便利なんやで? 吹いてみる? 食べてもいいよ」

(要らんわ!!)

人が落ち込んでる時にさぁ! ちくわ笛とか言ってる場合じゃないやろ!

「君のせいじゃない、きっと曲のパワーが足りなかったんだ……」

あれ!? もしかして慰めようとしてる……? もしかして我が落ち込んでるから意味不明なこと言って元気付けようとしてた!?
そんな意味不明な言動をするのは我ぐらいだし、そんなことをしても我以外には理解してもらえんで!?
いやいや、騙されてはいけない。

(そんなことない! ブレモンには名曲しかないんだから!
さてはお前……ローウェルの手先だな!?
弱ってるところで優しい言葉をかけて手中に引きこもうとしてるんでしょ!?)

「うーん、認めたくはないけどローウェルの手先か手先じゃないかと言われると手先と言わざるを得ないかもしれない……」

(もう駄目だ、おしまいだ……!)

「誤解しないでほしいんだけど好きか嫌いかで言えばあんなあざとくて我儘放題で乱暴な奴は大っ嫌いだけど!?
超俺様ワンマンだしド偏屈頑固ジジイだしパワハラのデパートだし
不採算事業は一瞬で切り捨てるドケチ野郎だしそのくせ幼女の皮被って可愛さアピールしてるし?
まあ実年齢も本来の性別も知らんし。ジジイの皮被って遊んでる幼女かもしれないけど!
とにかく嫌いだけど人事権持ってる上司だから立場上表立っては逆らえなかったんだよね……」

突然の上司の怒涛の悪口……! いきなり俗っぽい話になったな!?
それはそうと、ローウェルを上司って呼んでるってことは、この人やっぱり、単なるゲーム内のプログラムじゃない……!

(上司って……じゃあやっぱり、あなたは上位世界のブレモンの関係者!?)

「察しがいいね――」

初代は、フードを取って顔を露わにした。その顔はぼくとそっくりだった。

(あ……あのさあ! 顔を隠してたキャラが実は同じ顔って、そのネタ2番煎じやで!?
コピーキャラはガザーヴァだけで充分やで!?)

「逆かな。私がキミに似たんじゃなくて、キミが私に似たんだ。
私は美空風羽――ブレイブ&モンスターズのサウンドクリエーターだ。もうとっくにクビになってるから正確には元、だね。
今キミが話してる私は、その時にキミに持たせた、頃合いを見計らって開封されていく手紙のようなものだよ」

手紙にしては会話が成立してるな!? この質問に対してはこう、と設定しているのかもしれない。
言われてみればこの人、ブレモンのテーマ曲歌うように仕向けたり、曲の添削指導してきたりしたよね……。
だからサウンドクリエイターという点に関してはとりあえず納得できるけど、それ以外が謎だらけだ。

(どうして名前も顔もぼくと一緒なの!? なんで初代風精王を名乗ってるの?)

「ブレイブ&モンスターズの黎明期――お馴染みの運営トリオの直下に、制作に携わった主要メンバーが6人いた。
それでサービス開始当初、君達の感覚だと神代の時代とでも言ったらいいのかな?
重要拠点だからってことで、一人一つずつ各属性の拠点の管理を任されてたんだ。
グラフィックデザイナーのキャラ担当が水、背景とか建造物担当が地、シナリオライターが火、サウンドクリエイターの私が風
あとUIデザイナー? とフロントエンドエンジニア……? がどっちがどっちだったか忘れたけど光と闇……だったかな?」

46カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:38:21
割と適当だな!?
あっ、この人サウンドクリエーターだからシナリオ担当とかグラフィック担当はイメージ出来ても
あんまり理系っぽい技術的な部分は分からないんだ……!

「その頃は実際にゲーム内にログインして管理しててプレイヤーの前に姿を現すこともあってさ……ゲーム内では精霊王を名乗ってた。
で、黎明期が済んで運営が安定してきて、もう中に入って管理しなくていいってことになって……
神代遺物を自動でアップデートしていく今のシステムになった」

(君が初代風精王な理由は分かったけど……どうしてぼくは君に似たの?)

「それに答えるには……このゲームの超重要システムについて説明しないといけない。
当初、ゲーム内世界を生きる存在であるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と
外界からの来訪者であるPC(プレイヤーキャラクター)には厳然たる線引きがあった。
PCはプレイヤーがゲームを始めれば突然現れるし、ゲームを辞めれば当然世界から消える。そういうものだった。
だけどプレイ人口が増えてきた頃、ゲーム業界に激震が走る衝撃的システムが搭載された。
一般プレイヤーも自律駆動するキャラを生み出すことが出来るシステム――通称ロールプレイシステム。
実際には突然現れたにも拘わらず、前からいたように振る舞えば、世界がそう改変される。
ゲーム内世界の存在としての振る舞いを極めるとシステムがそう錯覚し、キャラが独立した人格を宿す。
そうなったキャラは、たとえプレイヤーがゲームをやめても、ゲーム内世界のキャラとして生き続ける……。
君達から見れば新たな生命を生み出す神の所業を、誰でも出来てしまうってことなんだ」

(PCがNPC化する……ってこと!? じゃあ、ぼくは君のPCとして生み出された存在で、本当は存在してなかったの……?)

「安心して。最初からNPCとして存在はしていたよ。ただ設定が今ほどはっきりしてなかっただけだ。
サ終直前の三界を巻き込んだ一大イベントが始まって、ローウェルから、とあるブレイブ一行へ潜入しての監視を命じられた。
キャラが独立した人格を宿すのがなんとなく怖くて新キャラを作るのを躊躇した私は、
手頃なNPCの体を借りることにした……当時次期風精王という設定だったキミだ」

(つまり、NPCをPC化した……ってこと!?)

「最初から世界に存在するNPCの体を借りれば、当然新たなキャラが誕生してしまうことはないからね。
ロールプレイシステムも起動しないだろうし、ログインしてる時は手頃な操り人形になってくれて
ログアウトすればいつも通りプログラムに従って粛々と動くだけだ、そう思ってたんだけど……。
……話すと長くなるから、これを見て欲しい」

そう言って初代は一冊のメモ帳を取り出す。

(これって……プレイ日誌……?!

47カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:41:59
〇月〇日
クソ上司(ローウェル)からとあるブレイブ一行へ潜入しての監視を命じられた。
もうすぐ始原の草原を訪れるらしいのでキャラを準備して接触を計れとのこと。
新キャラ作るのも面倒だし手頃なNPCをPC化ということで……。
こいつ名前すら決まって無いの? 特に思いつかないし自分の名前でも付けとくか。
翔(弟)もたまたま近くにいたユニサスをPC化して付き合ってくれるらしい。
元々仲が良かったのか本当にたまたま近くにいただけなのか知らんけど。
翔はよく分かんないけど我のマネージャー的ポジションなんだよね。
曰く、「風羽を一人で放っといたら騙されて大金だまし取られそうで危険」らしい。なんじゃそりゃ。

(『弟、といっても君達の世界で言う弟とは若干違う概念だけどね。弟分、ぐらいに思っておいておいてもらえればいい』とのこと) 

〇月〇日
カケルと共に、指定されたブレイブ一行に潜り込んだ。
クソじゃない方の上司(バロール)と共謀して、話を盛り上げることにする。
このイベントでブレモンが以前のような人気を取り戻したら、ローウェルがブレモンを存続させてくれるんだって。
バロールさんは便宜上ニヴルヘイムの魔王という立場に身を置いてはいるけど、目的は飽くまでもブレモンの存続だからね。
出来ればバロールさんにゲーム内で管理者メニューを開く権限をゲットしてもらいたいんだけど……
立場上堂々と軍門に下るわけにもいかないんだよね……。
制作中だった頃の業務上の上司はどっちかというとバロールさんだったんだけど、
権力を握っときたいローウェルが私達を組織図上で自分の下に配置して、人事権限とかも持っちゃってるからさ……。
表向きローウェルに命じられた監視をしつつ、ブレイブ達には普通に仲間として同行しつつ、
バロールさんと裏繋がりでいろいろ調整してる……。
これってもしかして、三重スパイってやつ……!? まあいっか!
ところでバロールさん、「うんちぶりぶり大明神」って真顔で言うのはやめてね!? 爆笑を禁じ得ないから!

〇月〇日
なんというか、ブレモンが物理演算システムをはじめとしてリアリティを追求したすごいゲームってことぐらいは知ってるけど。
ログアウトしてる時の挙動を試しに画面で見てみたら、想像以上に生き物感が凄いんだけど……。
あったかいごはんがあったら美味しそうに食べてるし、夜にふかふかの布団があったら幸せそうに眠る。
ゲームキャラのくせにずっと走ってると疲れるみたいだし!?
野外活動が長くなるとたまに無言でメイン画面からフェードアウトして、そそくさと草むらの中に入っていくな……。
これ多分、「どこ行ってたの?」とか聞いちゃったらあかんやつ……! みんな空気読んで気付いてない振りしてるし!
というか精霊系種族ってこんなに生き物感あるもんだったっけ!? 普通もっと霊的でふわっとしたもんちゃうの!?
こういうの見てると、お腹をすかせてたらかわいそうだし、布団で寝かせてあげたいし……
メイン画面からフェードアウトするタイミングを見計らい始められたらこっちが焦るし
出来ればその辺じゃなくて然るべき場所でさせてあげたいって思っちゃうよねぇ。
……ってアホらしいわ! そういう要素、ゲームとして要る!? 珍獣の飼育ゲームじゃないんやで!?
どう考えてもクソゲーやろ! だからプレイ人数減るんとちゃうの!?

〇月〇日
なんか……最近カザハの情緒がおかしい。こっちが操作してない時はプログラムに従って動くだけのはずだよね……。
時々、理由はよく分からないけど、夜に静かに泣いてたりする……。
聞いてみたら、元々人間とは全然違う精神構造にプログラムしてあるから、PC化したことで情緒がバグったのかもしれないって。
いや、そんなん先に教えてくれよ! え、待って。もしかして、突然自我が芽生えたことに戸惑ってる……ってこと?
あの曰く付きのシステムが起動してしまったのでは……。

48カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:44:10
〇月〇日
意を決して、チャット機能を使っておそるおそる話しかけてみる。案の定、というべきか、返事が返ってきた。
キミ、いつから人格持ってたの!? ロールプレイを極めると、キャラが人格を宿すに至るらしいが――
こちとらそもそも新キャラ投入したわけじゃないしまともにロールプレイもやってないんですけど!?
むしろ独立した人格なんか搭載しちゃったら怖いから、意図的にそれを避けてたんですけど!?
独立した人格ってったって単なるよく出来たプログラムだから、気にする必要は無いって、分かってはいるんだけどね……。
聞くところによると、元々設定がざっくりとしか決まっていないNPCであったため、
新キャラを投入した時と似たようなロールプレイシステムが起動する余地があり、まともにロールプレイしていないのにシステムが起動したのは
しばらく同じキャラを使っているうちに"そういうキャラのロールプレイ"とシステムが認識してしまったのだろう、とのこと。
ということは……我の人格が転写されてる……ってこと!?
勘弁してくれよ! そんなしょうもないものを転写してどうするよ! というか……よく見るといつの間にか顔までそっくりじゃん!
ノリノリでロールプレイしてキャラが独り歩きし始めたら「うちの子」とか言ってキャッキャ喜んでる人種を若干引き気味に見てたのにさぁ!
これじゃあ「あなたの子よ!? 認知して!」なんて言われたら言い逃れ出来ない! なんてことだ!
ちなみに、カケルの方はがっつり人格が転写されるまでいってなくて、割と元々のプログラムが残ってるみたい。
体質というか脳の作りによって、キャラが人格を宿しやすい宿しにくいの個人差があるのかな? 知らんけど。

〇月〇日
ロールプレイシステムが起動してしまったものは仕方がないので、我はカザハを見守る初代風精王という名目で、一緒に旅をする。
カケルは、実際のところはどうか知らないけどずっと前から仲良しの弟分という設定にしておいた。
監視の任が解かれて私がいなくなった後も、きっと支えになってくれるだろう。
ところでゲーム内世界の存在にはBGMが聞こえないようにフィルターがかかってるんだけど、音響管理者権限でフィルターオフにして、聞かせてあげた。
そうしたら、「すごいすごい!」って大喜びしてやんの。
そのうちに、憑依していいよって言われて、一緒に世界を歩くようになった。いわゆるフルダイブというやつだ。正確にはFPS視点フルダイブ。
ゲームって、脳を仮想世界に接続してその世界に入り込んでやるから、全部フルダイブといえばフルダイブなんだけど
一般的にフルダイブとだけ言ったらFPS視点を指すことが多いね。
視点方式は他にもいろいろあって、キャラのちょっと後ろに背後霊的に自分がいるTPS方式だったり、かなり上空に神様的にいる俯瞰方式だったりがある。
FPS視点フルダイブは、キャラとプレイヤーが完全に重なる方式だから、ゲーム内世界の存在の感覚で言うとまさに憑依になる。
フルダイブしている間は、プレイヤーが出来ることはキャラの体でも出来る。
我の特技をいろいろ教えた。作詞作曲とか、色んな楽器の演奏。
ある日我が自分の作った曲を演奏していると、カザハが歌を歌い始めた。
カザハ君、キミは歌えるのかい!? 内気で慎ましやかな我は人前で歌ったり出来ないというのに!
これだけ音楽技能があれば呪歌の使い手だろうと、システムが勝手に認識したのかもしれない。
そのうち、「星刻の奏手」という二つ名が付いた。
自分が作った曲を「歌ってみた動画で稼いでやるぜ!」とかいう下心一切無しで
ただ楽しそうに歌ってくれる謎の生き物って……滅茶苦茶可愛くない!?
自分によく似た分身でありながら、自分とは別の存在でもある。ロールプレイ勢が「うちの子」って言うのも分かる気がする……。
でも、真面目にロールプレイしてる人達は別にキャラが自分に似てないよな!?
例えとはいえこんなんが親ってのもおこがましいし、どっちかというと親友かペットみたいな感じだね。
自分が作り出した友達っていうと……イマジナリーフレンドに近いのかな?

〇月〇日
ローウェルから、アコライトでガザーヴァと戦って相打ちになるように指令を受けた。
ローウェル的には監視役はそろそろ用済みで、ガザーヴァも邪魔で、ぶつけて両方消すのが都合がいいとでも判断したのだろう。
もちろん断固拒否したけど。
ガザーヴァは元々は、コピーキャラでなんとかソウルが手に入るかの実験を兼ねてバロールさんが作ったキャラ。
というのが表向きだけど、ゲームデザイナー張本人ががうっかりイマイチコピーしきれてないコピーキャラを作るだろうか。
もしかしたら本当は別の意図があったとか、我が知らない大人の事情とかあるのかもね。
真相はともかく、ガザーヴァは素顔を隠してライバルキャラとして暗躍することになったので、
初代火精王、つまり同僚のシナリオライターが、最終的に正体が明かされて改心味方化するシナリオを用意してたんだよね。
素顔を隠したライバルキャラが実はパーティーメンバーのコピーキャラって、まあそういう展開になる。
で、我はそのイメージを念頭に「幻妖の舞」を作ったんだ。
それなのにさ、そのシナリオも全部ボツだって。
コピーキャラ云々抜きにしても鎧の中身は美少女設定キャラが正体明かさないまま終わるってどういうことやねん!
どう見ても、打ち切りエンドで畳む気満々だ。
ローウェルはもうブレモンを存続させる気なんて、これっぽっちも無いんだ。
もしかしたら最初から存続させる気なんてなくて、みんな騙されていたのかもしれない……。
ローウェルの命令を拒否し通すのは不可能だし、仮に拒否し通したところで、カザハは遠からず世界の消滅と共に消えてしまうんだ……。
ローウェルの業務命令を断固拒否し続ける我を、バロールさんは、キャラにあんまり入れ込んではいけないってなだめた。
単に生き物っぽく動いてるだけのよく出来たプログラムに過ぎないんだからって。
そんなの、頭では分かってるけどさ……。
バロールさんがゲーム内世界の存在であるガザーヴァに過剰なまでに冷酷なのは、敢えて冷酷な態度を取って入れ込まないようにしているんだろうか……。

49カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:45:58
〇月〇日
なんかもういろいろ悩みすぎて、数日間寝込んでしまった。その間に――全てが終わっていた。
ローウェルはブレモンの最高権力者だから、部下が業務上使ってるキャラにログインすることぐらい、簡単に出来てしまう。
訳の分からない奴に体を乗っ取られて怖かっただろうな。
こんなことならせめて、自分の手で終わらせてあげたかった。最期、苦しまなかったかな? 本当にごめん……。

〇月〇日
ついにブレモンがサ終の日を迎えた。カザハがいなくなった後もブレイブ一行の行く末を見ていたけど、物凄い鬱シナリオだったと思う。
我の所属していたパーティーは戦死やいろいろな理由で一人また一人と減っていき、最後は、真一君とシャーロットさんしか残らなかった……。
ローウェルはデータを全部消去しようとしたけど、シャーロットさんがなんとかデータを救出して残した。
それはローウェルから見ればシャーロットさんの反逆行為で、すぐに消されてしまってもおかしくないけど、何を思ったか、今のところ消す気はないらしい。
救出されたデータはかなり前の時点のバックアップがもとになってて……カザハも生き返るっぽい。
シャーロットさんやバロールさんは、ブレモンの復活をまだ諦めてない。
シャーロットさんは一部のキャラに敢えて前の世界の記憶を残したり、いろいろ仕込んでるみたいで、その一貫としてカザハに手紙を持たせてくれるって。
バロールさんは、早速救出された世界の中に入っていろいろやってる。
でも、たとえブレモンがゲームとして復活しなくても、データが消されない限り、世界の中のNPC達は生きていけるんだよね……。
ところでブレイブ&モンスターズはかなりガチゲーマー向けのシビアな部類のゲームだ。
ブレモンよりライトゲーマ―向けのゲームなんていくらでもあるんだから、キミはもっと優しい世界に送り出してあげたかった。
それでも今度は、出来れば幸せに生きてくれることを願う――

手記を読み終えて、頭を抱える。情報量が多すぎて、どこから処理していいか分からない。

「間も無くシャーロットさんは解雇になって……ついでに私達もリストラでクビになっちゃった。
私達のポジション、わざわざ人件費投入しなくても、ほとんどAIで代替可能なんだってさ」

あの時のぼくはローウェルに乗っ取られていたらしい。
まさか、今もその気になれば体を乗っ取れる権限を持ってる……ってこと!?
1巡目の冒険が始まる前の記憶は適当に設定されたもので、カケルとの関係性もどこまで本当だか分からない……。
プログラムに従って無為に過ごしていただけとはいえ、その頃の記憶があまりにもスカスカだとは思ってたんだ……。

「まさかとは思いますが『弟』とはあなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか」

振り返ってみると、カケルがいた。

(自分で言うな――ッ!!)

自分でそれ言っちゃう!? どういう感情で言ってんだ!!
魂を共有してるから精神世界に入ってくること自体は不思議はないとして、ここに来たということはベチボコにやられて気絶したな!?

「あっ、それ知ってる!『いつやる!? 今でしょ!』の人でしょ!」

「そうそう、林先生!」

何故かアゲハもいて、カケルとボケっぱなしのコントを繰り広げる。
このお方に関してはギャグキャラ枠なので、なんでここにいるのかとか気にしたら負けである。

(違うわ!! 林先生違いやわ!!)

「ふふっ、ちょっとしたユニサスジョークですよ? たとえ最初は想像上の弟設定だったとしても、今はそうじゃない。
私達の関係性のはじまりが作り物でも、別にいいじゃないですか。
前の世界を一緒に冒険して、地球を一緒に生きて、アルフヘイムに呼び戻されてまた一緒に冒険して――それで充分過ぎるじゃないですか。
はじまりの嘘のおかげで今があるんだから、感謝こそすれど恨む理由なんて一つもないですよ」

(でも、ローウェルが今もぼくのIDとパスワード持ってるかも……! ログインにIDとパスワード使うのか知らないけど!)

50カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:54:19
「安心してください、何も状況変わってませんから!
ローウェルはブレモンの最高権力者なんだから、やろうと思えばどのキャラも乗っ取れても何も不思議はないですよ」

それって何も大丈夫じゃない気がするが、言われてみればそうだ。
そもそも最初からそういう戦いを挑んでるのだから、今更悩んでも仕方がない。

「カザハが罪を背負うなら、私も同罪ですよ。でも、ガザーヴァは私達のせいなんて少しも思ってない。
ベチボコにやられて踏みつぶされかけた私をガザーヴァが必死に守ってくれたんですよ?
きっとカザハに自分と同じ思いはさせまいと思ったんですね……。早く起きましょう」

(そうしたいのは山々なんだけど……どうやったら声出るようになるんだろう……)

初代に、目で訴えかける。初代はしれっと衝撃の事実を告げた。

「それ、ステータス異常でも何でもなく声を出したくないから声が出ないだけやで?」

好きでサボってるみたいに言わないで!
もしかして上位世界は「鬱は気合が足りん!」とか言っちゃうような世界なんか!? コンプライアンス大丈夫か!?
と一瞬思ったが、そういえば精霊族は死にたいと思っただけで本当に死ぬ種族なのだ。
その理論でいくと声を出したくなくなれば声が出なくなるのは当然のことである。
厄介なことに体に連動しているのは心であって、頭ではない。
いくら義務感で歌わないといけないと思ったところで駄目なものは駄目なのだ。
心から声を出したいと思えばすぐ治るんだろうけど……。

(ガザーヴァはこのせいでぼくが夢を手放すことなんて望んでない。
逆に逃避の言い訳にするなって怒られちゃうって、分かってるのにな……。
でも、怖いものは怖いんだ……)

「いいこと教えてあげようか。1巡目の記憶の解放に伴って楽器演奏技能(全種)が解放されたはずだよ。
ブレモンの仕様上、呪歌って使用楽器は自由で、※吹奏楽器は除く って規定は特に無いんだよね。
つまり、吹奏楽器を演奏すると何故か歌わなくても呪歌が成立するんだ……! じゃあ頑張って!」



突然、意識を取り戻す。今のは、夢……じゃないな!? 急に一巡目の記憶が鮮明になった気がする……。
そういえばあの頃守護霊的なものがついてたけど、そういうもんだと思って特に疑問に思ってなかったんだよね。

>「よく言った!
 ――『ハイパー・ユナイト』……プレイ!!」

ガザーヴァとマゴットがベル・ガザーヴァになろうとしているところだった。
ベチボコにやられて倒れていたカケルを、スペルカードで回復させて、揺り起こす。

(手伝って!「幻妖の舞」で今度こそ勝たせる……!)

「えっ……。選曲それでいいんですか?」

初代がガザーヴァを想って作った名曲をトラウマソングのまま終わらせてはならない。
初代は、曲のパワーが足りなかった、と言っていた。
あの人がぼくの人格の転写元だとすると、たとえ慰めるためでも、全くの嘘が言えるほど器用なタイプではないんだよな……。
それなら、根本的な選曲ミスとかではないはずだ。もとからバトル用の曲にパワーを足してより強そうにするには……。
そういえば初代、歌わずに呪歌を使う抜け道を教えてくれたな――
バトル曲の吹奏楽アレンジ、それすなわち最強――異論は認めない!
自分はトランペット、カケルにはクラリネットを生成する。

「吹奏楽アレンジ……ってコト!?」

意図を察したカケルは、アゲハさんに声をかける。

51カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:56:44
「なんでもいいから吹く系の楽器みんなに適当に配って! 次は幻妖の舞の吹奏楽アレンジやります!!
あなたはドラムをお願いします!」

エーデルグーテで使う予定も無いのに楽器一通りもらってインベントリにぶっこんであったんだよね……。
この世界のシステム上吹奏楽器の演奏は呪歌と見做される、ということは、合唱スキルも多分適用される……!
それにしても、まさに立ってる者は親でも使えの精神だな!?

「分かった! ボーカル曲コンサートの半ばによく挟まれるインスト曲ってやつだね!?
キーボード貸して!? ベースパート出来るからやるよ!」

ブレモンBGMマニアの人、キミ、さては有能だな!? ベースってコード進行が分かってれば割とどうにかなるからな!
主旋律(自分)・副旋律(カケル)・ドラム(アゲハさん)・ベースパート(ブレモンBGMマニアの人)・和声パート(その他合唱団の方々))
よしいける!!

幻妖の舞 吹奏楽アレンジ――名付けて、幻蠅の戦舞ッ!!

ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/ladrrl20ttuxhlnqfbi5q/.mp3?rlkey=ymj0q67zjxnxrb8hw2yb6spbd&st=c0bhhcyn&dl

演奏が終わったところで、ガザーヴァが最終奥義の発動に入る。

(今度こそ、いけるはず……!)

>「貶め嬲れ、欺き祟れ!
 オド、マナ、エーテル、世の礎の総てを啖い、穿て――」
>「――――――真!! アウトレイジ・インヴェイダ―――――――――――ッ!!!」

槍が相手の騎馬に命中し、大爆発が巻き起こる。

>「……仇は討ったぞ、ガーゴイル」

(本当に、頑張ったね……)

今はまだそんな場合ではないのに、やり遂げたガザーヴァを見つめ、暫ししんみりとしてしまう。
が、オーロールはまだ仕留められてはいなかった。

>「そんな……まさか……」

>「何も驚くには値するまい。
 先刻、汝がガーゴイルにさせたことを余もルドルフにさせたまで。
 ふふ……それにしても、このオーロールを地面に引き摺り下ろすとは。
 見事よ、幻蝿戦姫。さすが超レイド級を名乗るだけのことはある」

仕留め損ねたにしても乗り物はもう無いはずだが、オーロールは乗騎はまだあると不可解な事を言う。

「戦闘続行……のようですね」

戦闘続行を悟っていちはやく気持ちを切り替えたカケルが、スマホを確認する。

「あ……! 進化できるじゃないですか!
しばらくバトル用の曲を続けて歌ってたからコンボが成立してたんですね……!」

よく分からないけど進化する方法のうちの一つが、バトル用の曲を続けて歌うことらしい……!
バトル3に至ってはかなり無理矢理歌ったけど。

(良かった、頑張って歌った甲斐、あったんだ……!)

52カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:57:41
頑張ってやったことは大抵駄目で、ノリで突っ切った時の方がうまくいくのがいつものパターンである。
まあ、風属性だからそういうもんなんだけど。やっぱり、努力が報われるのは嬉しい。
カケルからスマホを返してもらって、代わりにスマホ連動ウェアラブル端末をカケルに渡す。
進化ボタンをタップすると、背に妖精の翅を持つアイドルが魔法少女のような服装の美少女に変身する。
尚、これはそういう仕様のモンスターなので美少女になっているだけであり、断じて自ら美少女になりたいとか思ってなっているわけではない。
ついでにカケルもお揃いのコスチュームに変身する。

>「其処が皇帝たる余と諸人の違いよ。
 たかが一騎を統べる程度ならば、誰にでも出来る。
 しかし皇帝は違う――皇帝とは衆生の頂点に君臨し、自らの意志によって民を導く者! 皇軍を指揮し、万里を掌握する者! 
 為らば!」
>「我が版図、我が帝国こそ我が乗騎!
 参れ、『皇帝親衛隊(イェニ・チェリ)』!!」

オーロールが号令をかけると満を持して従者達が前に出て構えを取り、他にも魔法的な力でなんかわらわら出てきた――!

>「……な……んだよ、ソレ……。
 そんなの……反則じゃんか……」

>「で、あるか。
 生憎だが、此れは戦争。泣き言は通用せぬ。
 とはいえ汝の腕前は認めよう、余以外の『星蝕者(イクリプス)』が相手ならば、汝が遅れを取ることはそうあるまい。
 汝の不幸は、此度の対手が余であった……その一点に尽きる。
 幻蝿戦姫ベル=ガザーヴァ、天晴であった。褒めて遣わす。
 では――そろそろ幕としよう」

オーロールの指示を受けた親衛隊がガザーヴァに襲い掛かる。
あまりの展開に未だ状況に追いつき切れていないガザーヴァに、従者の一人の凶刃が迫る。

(死なせてたまるか――――ッ!!)

従者が振り下ろした剣を、傘の杖で受け止める。今の状態なら、従者とは充分立ち回れるはずだ。
従者達はおそらく、単体ではロールプレイを成立させることが出来ない人達。
皇帝様にコバンザメしなければこの戦場に立てない程度のレベル――でなければ、
プレイヤー同士が元からリアル知り合いでもない限り、好き好んで従者なんてしないだろう。
ふざけた格好の奴に攻撃を阻まれた従者が、思わず「何だお前!」みたいなことを言う。
ここは自己紹介ロールプレイで自らを強化するチャンスなんだろうけど……
ぼくは謙遜と不言実行を美徳とする奥ゆかしき大和民族なのだ!(嘘つけ!と総ツッコミが来そうなことは自覚している!)
自己PRとか志望動機とか立石に水のように喋るロールプレイ勢とは対局に位置するのである!

(みんな堂々と言えていいな、凄いな……)

とか思っていると、カケルがよくぞ聞いてくれましたとばかりに語り始めた。

「その人は私とその子の姉――カザハ・シエル・エアリアルフィールド。
このパーティーの最強のバッファーで、星刻の奏手で伝説の語り手。
伝説の語り手って、いるのといないのとでは全然違うんですよ?
かっこ悪いところ伝説に刻まれたくないから、みんな頑張っちゃうし、なりたい自分になろうとしちゃうんですよね……!
だから、みんな実力以上の力を発揮できるんです!」

(代理自己紹介ロールプレイ、してくれてる……!)

ロールプレイによる強化は、必ずしも自分でやらないと起動しないわけではないのだ。
あれ? 音声を味方全員に繋いでる……?
相手だけではなく仲間にも聞かせることでロールプレイを強化する作戦!?
ロールプレイを起動するための戦略的なものだとは分かってはいても、くすぐったいような気持ちになる。
ちょっと大袈裟かも! でも、本当にそうだといいな……。
――言われてみれば、少なくともカケル以外に一人はそう思ってくれてる気がする。
一人でも思ってくれてれば嘘じゃないから、システムが拡大解釈してくれてロールプレイシステム起動するかもしれない!
効果をゲーム的に表現すると「その場にいるだけで仲間全員にバフがかかる」的なやつ!?
お返しにぼくもカケルを紹介しないと。……なんか、そろそろ喋れそうな気がする!

53カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:00:36
「そのユニサスは……ぼくの弟、カケル」

声、出た……! 自己紹介のハードルは激高でも、代理自己紹介ならだいぶんハードルが低い!

「ぼくの相方として設定されて、今では魂を分け合って本当の相方で弟になったんだ。
だから、単体ではそんなに強くないかもしれないけどさ……ぼくと一緒なら最強なんだよ!
というわけで!」

古からの様式美に則り、謎のポーズを決めながら口上をする。

「星に響け優しきメロディ! 風精の歌姫――テンペスト・ディーヴァ!」

意図を察したカケルが調子を合わせる。

「天空に舞え美しきハーモニー! 歌紡ぐ天馬――テンペスト・ウィング! 二人合わせて――」

「「2代目T SOUL SISTARS!!」」

我ながら、「初代はいるんだろうか」って絶対疑問を持たれそうなユニット名だな!?
一見ふざけているようにしか見えないが、ロールプレイによる強化を起動するための大真面目な戦略である。
本当にこんなんで起動するのかは知らんけど、駄目で元々だ。
相手方はロールプレイに縛られているので、口上中に攻撃するなんて身も蓋もないことはできないのだ。

「ガザーヴァ……こんな事言うのは厚かましいけど……ぼくの歌、まだ聞いてくれる?」

ジョン君に接近戦は危ないから駄目だと止められているけど……
ジョン君、ごめん! ぼくは本当は結構悪い子だから言いつけ破っちゃう――! 後でお仕置きされちゃうかな!?

「次の曲目は――響き合う星刻の調べ(アストラルハーモニー)!」

味方全体に継続強回復とハイパーバフをかける、ぼくの一八番。
それをカケルと共に歌いながら、敵に突撃する。まずは取り巻きの従者達からだ。
ロールプレイを極めるとキャラが人格を宿すらしいが……レベル3にも至らない従者はその域まで達してはいまい。

54響き合う星刻の調べ(アストラルハーモニー) ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:02:30
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/sjr6jyumt0lo669uugpk6/.mp3?rlkey=c5zly60tp6u3ga1tvnxf5as76&st=s3qq789j&dl

上パート:カザハ(VY2)
下パート:カケル(MEIKO)

忘れ得ぬ旅の記憶は 今この世界に生きる証
望んで この場に立った 全てを賭けて

さだめは 覆えせると この世の全てに見せつける
今度は きっと大丈夫 ぼくがいるから

逃げ出したくなったら いつも思い出すんだ
「ここにいるよ」 本気の誓い 決して嘘にはしない

一番星を目指して 前だけ見て突き進む
幼き日にポケットに入れた 星の欠片握りしめて

守られてばかりだったぼくにも 果たすべき役目がある
呼び覚ましてもらったこの輝きで 行くべき道を照らすよ

55カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:03:17
この状態のぼく達は、グラフィック的には2体として描かれるがデータ上は一体の、二人一組のモンスターらしい。
つまり連携は完璧だ。
文字通り二陣の風となり、従者達を蹴散らしていく。

((ツインレイ・テンペストスマイト!!))

やってることはぼくの左拳とカケルの右拳を合わせてのシンプルな打撃。
ただし莫大な魔力を纏った拳が音速で繰り出され、インパクトの瞬間、衝撃派が炸裂する。
余波に巻き込まれた者含め従者が4〜5人吹っ飛ぶ。

56スノウ ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:05:27
敵の呪歌士が意識を取り戻した事に対し、教官は複雑な心境なようだ。
出来ればそのまま眠っておいてくれればよかったのに、とのことだ。
私はもはや明確に、敵の歌に惹かれていた。
不完全なものに対するどうしようもない憧憬――これが好きという感情なのだろうか。
でも、「あの子には苦しまずに終わりを迎えさせてあげねばならないのでもう一度眠ってもらう」――それが教官の意向だ。
即興呪歌生成"改"――"魔術師"のタロットカードを持つ私の固有能力。
完璧な演算によって、狙った効果の呪歌を瞬時に組み上げることができる特殊技能だ。
魔術的な演算式のようなエフェクトが背後に浮かび上がり、超強力な眠りの呪歌が一瞬にして組み上がる。
それにしても、"改"って、まるで元祖があるみたいなネーミングだな……?
ともあれ、超レア装備、"汎用シンセサイザーCubase"を手に、歌い出す。

星の子守唄
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/n6ypstbhdikczmjcpbr1d/.mp3?rlkey=zumelw7goq2x5hrwdpwadx1re&st=5oyelbe7&dl

作詞:chatGPT
作曲:SUNO

静かな夜の帳が降りる
星たちはささやき 夢を織り成す

眠れ 眠れ 遠き空へ
心の騒ぎを風に乗せて

星の光よ 柔らかに包み
すべての者を 眠りにつく
月の調べに 導かれながら
星の子守唄 永遠に響け

闇を恐れず目を閉じて
世界は今 優しさに満ちる

眠れ 眠れ 冷たい刃も
静けさの中で力を失う

星の光よ 柔らかに包み
すべての者を 眠りにつく
月の調べに 導かれながら
星の子守唄 永遠に響け

夢の中では争いもなく
星たちはただ 願いを紡ぐ
静かな夜を 守り続けて
星の子守唄よ 世界を眠らせ


深い眠りについたカザハを見て、教官から強烈な想いが伝わってきた。
そっか。あの人は私のお姉ちゃんで、教官の才能を受け継いでるんだ――

57カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:07:52
【カケル】
「さあもう一息、いきますよ!」

間奏が終わり歌が2番に差し掛かろうかというところでカザハに声をかけるも、返事はない。
いつの間にかカザハは、幸せそうに眠っていた――。

「えっ!?」

さっきから、敵の呪歌が響き渡っている。もしかして、そのせい……?
眠っているカザハを抱え、後ろに退避する。
そうこうしているうちに、スノウが目の前に転移してきた。
オーロールと挟撃された形だ。

「あなた、全体にバフをかけるポジションでしょう! なんでこんなところに来てるんですかッ!」

「残念だけどその子はもう起きない――超強力な眠りの呪歌を対象指定でかけさせてもらった。
出来れば閉ざされた世界の中でずっと生きていてほしかったのに……。
ローウェルはそれすらも許してくれなかった……。昔からずっと、偽りの希望を餌に弄ばれてきたんだ……
これ以上苦しんでほしくない……。せめて、幸せな夢の中で終焉を迎えて欲しい……」

スノウが腕を一閃すると、指揮棒のような細剣が手の中に現れる。
そしてゆっくりとカザハに歩み寄ってくる。
私は当然臨戦態勢に入るが――何か様子がおかしい。微妙に違う方向に向いて歩いてる……。そして石に躓いて転んだ。
この動き、なんか見た事あるな……。そうだ、アクションゲームが下手な人が動かすキャラの動きだ!

「もしかして……アクションゲームの操作がおぼつかない人!?」

バンドメンバー達にも突っ込まれている。

「下手とは聞いてたけど本当に下手ですね!?」

「無理しないで交代してもらってください!」

「そうだな――交代しよう」

スノウの姿にエフェクトがかかり、イメージはそのままで性別変更したような青年の姿になる。
それと同時に、身のこなしが先程とは明らかに変わる。
バンドメンバーの一人が、解説してくれた。

「スノウちゃんの教官はアクションゲームが下手糞だからアクションが必要な場面では副教官に操作を変わって貰う……
じゃなくてスノウちゃんは二重人格なんです!」

人格交代――上の世界事情で言うと、プレイヤーが交代した……ってことか!

「ちなみに美少女ゲーに男キャラをぶっこんだら炎上するんじゃないかと心配されてるかもしれませんが、
ボイスチェンジ+男装という設定なので、ギリセーフです!」

別にそんな心配してないけど、勝手に解説してくれた!

「無駄話は終わりだ――まずはお前から葬ってやろう!」

タロットカードのエフェクトが発動し、バンドメンバーの演奏が始まる。
たった今生成したにも拘わらず合奏ができるのは、メンバー達はそういうスキルを習得しているのだろう。
スノウは、歌いながら剣を構えて斬りかかってくる。こいつ、歌いながら突撃してくる系か――!

58破滅の調べ ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:08:38
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/ib0gn9pbviz6567pyz474/.mp3?rlkey=mae4vsos2dubkz6zw36iouuzq&st=wolv2q45&dl

作詞:chatGPT
作曲:SUNO

燃え上がれ、魂の渦
全てを呑み込む闇の風よ
嘆きの声を織り込み
絶望の鐘を鳴らせ

震えよ、怯えよ、滅びを知れ
鋼の鎖は砕け散り
囁く影が血を求める
裁きの刃は逃れられぬ

我が声が天を裂き
血塗られた地に降り注ぐ
その身を裂け、その意を消せ
破滅の歌が響く時

冷たき刃は心を貫き
最後の鼓動を刻むまで
終わらぬ闘争、果てなき憎悪
さあ、共に闇へ堕ちよ


震えよ、怯えよ、滅びを知れ
鋼の鎖は砕け散り
囁く影が血を求める
裁きの刃は逃れられぬ

我が声が天を裂き
血塗られた地に降り注ぐ
その身を裂け、その意を消せ
破滅の歌が響く時

冷たき刃は心を貫き
最後の鼓動を刻むまで
終わらぬ闘争、果てなき憎悪
さあ、共に闇へ堕ちよ

冷たき刃は心を貫き
最後の鼓動を刻むまで
終わらぬ闘争、果てなき憎悪
さあ、共に闇へ堕ちよ

59カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:09:42
分かりやすく攻撃的な呪歌で自らにバフをかけての猛攻――
激しい打ち合いの中で、私はある違和感を抱いた。呪歌のバフが私にもかかってないかい……?
うっかり呪歌を対戦相手にもかけてしまってるのか!? そんなことってある!?
「呪歌は対象指定できません! 聞こえてる人全員に効きます!」ってパターンもシステムによってはあるっちゃあるけど……。
さっきは対象指定してたよなぁ……。
もしかして「すぐに決着がついたらつまらないから」みたいな理由か?
この戦いのショー的側面を意識して立ち回ってる……? でも、何のために?
更に曲の合間に、スノウは自らの弱点を解説する。

「一つネタバレすると、これはオプション機能で楽曲生成システムを接続して運用しているキャラだ。
そしてタロットカードというのは外付けの力の象徴――
つまり――これを破壊すれば生成システムとの接続が断ち切られるってわけだ!」

「どうしてそれを教えるんですか……?」

「さあな」

今分かっている情報をまとめると、このキャラには2人のプレイヤー"教官"と"副教官"がいて、
"教官"の目的は、何故だかは知らないが、カザハを苦しませずに終わらせること。
そして今のこいつを操作しているプレイヤー、バンドメンバーが言うところの"副教官"は、"教官"とはまた違う、何らかの目的がある――
そしてレベル3以上のイクリプスはロールプレイに綻びが出ると即弱体化につながるらしいが……
もはやこいつらは上の世界事情丸出しのgdgdだが、何故かそこまで弱体化する様子はない――
再び歌が始まり、戦いが再開する。
このままいけばタロットカードを破壊することは可能だが――どうする?
相手の言葉に乗る? でも、罠だったら……? ええい、当たって砕けろ!

「――共振破壊(レゾナンスブレイク)!」

私の剣がスノウの腕に固定されたタロットカードを過たず穿ち、カードが砕け散る――

60カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:25:53
【カザハ】
「もう食べれないよぉ……」

「……ちゃん、おねえちゃん! 漫画みたいな寝言言わないで!」

「……う、うわぁ!?」

目を覚ましてみると、目の前にいるのは白銀の髪の少女――。それ以外の周囲は真っ暗で、何もない。
いや、まだ目を覚ましてないな!? これも夢の中だな!? 眠りが一段階浅い領域になった感じか。
ぼくは何をしてたんだっけ。確かオーロールと愉快な仲間達と戦ってて……途中で寝ちゃったの!?
そうだ、敵の呪歌使いが眠りの歌を歌ったから……ってよく見るとお前じゃん!
自分で寝させといて起こすってどういうことやねん!
それに今おねえちゃんって言った……!? 生き別れの妹よ、そんなところにいたのかい? ……ってそんなわけあるか――ッ!
自称妹のスノウちゃんは、「よし! ハッキング成功!」とか何とか言っている。
確かに顔はさっき歌ってたあの呪歌使いと一緒なんだけど、なんか全然イメージ違うな……。
あのイクリプスは怜悧で感情が希薄な感じだったけど、この子は可愛らしい。

「あなたは、私より前に教官が作ったキャラなんだって! だからお姉ちゃん」

「正確には作ったというより、もともと原型があったものを完成させたみたいだけどね。
なんで君はそんなこと知ってるの?」

「うちの教官、こういうロールプレイシステム搭載のゲームやると体質的に思考がダダ漏れみたいなんだよね〜。
だからキャラに大人の事情が筒抜けだし本人がそのつもり無くてもすぐキャラが人格宿しちゃう」

この状況はつまり……SSSでも性懲りもなくうっかり新たな生命を誕生させちゃった……ってコト!? なんて怪しからん奴!
いや、本人はただゲームやってるだけなんだから何も悪くない。ロールプレイシステムとやらの業が深すぎるんだ……!
挨拶(ロールプレイ)すると(場合によってはしてるつもりなくても)
楽しい仲間(人格を宿したキャラ)がポポポポーンするってもうサイコホラーやんそんなの!

「まさかとは思いますがあなたの教官というのは……」

「美空風羽――かつて一世を風靡した覇権ゲームブレイブ&モンスターズの楽曲を手掛けた天才サウンドクリエイターなんだって!」

「ですよねー!」

「でも、もう完全に落ちぶれてやる気なくしてるんだよね。どう頑張ってもAI生成には勝てないから意味無いんだってさ。
そりゃそうだよ。上位世界の生成AIってそれはもう完璧らしいもの。
でもね、あなたの歌でブレモンの曲を初めて聞いたけど……SSSの曲よりずっと好き。
このままサ終なんて駄目だよ……! だから――勝ってね! 勝って教官に希望を見せてあげて!
教官はもう全てを諦めてて……ローウェルに弄ばれた挙句消されるぐらいならせめてこれ以上苦しませずに自分の手で……って。
だから私はあなたを殺しにかかることになるけど……ごめんね、ゲームキャラはプレイヤーの操作には逆らえないから……」

「君のせいじゃないよ。ゲームキャラが許可した時以外で好き勝手に動いたらゲームとして成立しないもの」

「それと、私が人格を宿してることは教官には教えないであげてね。知ったらきっと気にするから……」

スノウちゃんに手を引かれて覚醒に向かいながら――思う。
彼女や他のイクリプス達は、このベータテストが終わったらどうなってしまうのだろうか――
製品版にキャラの引き継ぎはされるのだろうか? 使い捨てられて消えてしまうのだとしたら……あまりに残酷過ぎる――

61カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/05(木) 21:57:38
>59の最後カードが砕け散るのはやめといてちょっと続き

【カケル】
「ちょっと待った―――――――ッ!!」

スターリースカイガールズの解説役が突然横から飛び込んできて、小盾のようなもので私の剣を弾いた。
涼やかな音が鳴り響く。それは……盾っていうかタンバリンだな!?

「なにするんですか――ッ!!」「何のつもりだ……!」

私とスノウ、双方から突っ込まれる。
今の状況をまとめると、スノウ(中身副教官)が私に何故かタロットカードを破壊するように仕向け、
罠かもしれないとは思いつつも考えても埒があかないので私がそれに乗ろうとしていたのを、
これまた何故か解説役のバンドメンバーが阻止した形だ。

「副教官は教官に立ち直ってほしいんですよね……!?
だったら生成システムで! 昔教官が作ったブレモンの曲を歌うその子と真っ向勝負させないと駄目ですよ!」

「お前も少しでも音楽を齧っているなら分かるだろう? 人が生成システムに勝てるわけないだろう!」

「あー物分かりのいい大人ぶってやだやだ、副教官がそんなだから教官が落ちぶれちゃったんだ――ッ!!」

「貴様……ッ! 私がどんな思いで風羽を見てきたかも知らないくせに……!」

なんかよく分かんないけど仲間割れ始めちゃった……! ん? 今、風羽って言った……?
それに、"昔教官が作ったブレモンの曲"って……!

「私は! リン=タンバ! スターリースカイガールズの副隊長でパーカッション兼ダンサー!
ちなみに私の教官は美空風羽ファンクラブ会長、丹波 鈴音ッ!」

キャラにほぼそのまんま自分の名前付けたんやないか――い! 誰かさんと同じ発想! やっぱり類は友を呼ぶんだな……!
この一団、こんなノリでよく曲がりなりにもこの戦いに参加できてるな……!?
ロールプレイに適応できない勢は淘汰されてるはずでは?
でも、某国民的RPGは、「主人公はプレイヤー自身」がコンセプトのため主人公が喋らない仕様らしいし、
主人公に自分の名前を付けるのも割と一般的だったりするな……。 つまり、これもまたロールプレイの一種!?
そもそもこの世界のシステムが、"そのキャラがロールプレイしているか"を何をもって判定しているのかの全貌は未だ不明だ。
設定の作り込みや整合性が判定項目の一つに入っていることは間違いないだろうが、単純なキャラの濃さも判定基準の一つに入っているとしたら、
素でキャラのぶっとんだ奴がゴリ押しでロールプレイによる強化を起動させることもあり得る。
あるいはこいつらの中身丸出しロールプレイを
「自分が超常の存在に操られていることを知っていてそれを当然のこととして受け入れているキャラのロールプレイ」と解釈することもできなくはない。
と、ロールプレイシステムの詳細も気になるところだが今はそんな場合では無く
スノウ(中身副教官)とリン(中身教官のファンクラブ会長)が立ち回りをおっぱじめてしまった。

「お前なんかユニット追放だ――ッ!」

「コイツは私が止めとく!! あなたは早くその子を起こして!」

リンが、あまりの展開についていけずに呆然としていた私に声をかける。
確かに見た感じは私達を狙うスノウを止めてくれているような構図に見えるが、よく考えると普通に内輪で喧嘩になってるだけのような……。
と内心では思いつつも。

「え、あ、はいっ……!」

勢いに圧され、言われるままに私はカザハを起こそうとするが……。どうやっても起きない。
カザハを起こすのは慣れてるはずなんだけど……。こうなったらRPGでよくあるように死なない程度に攻撃して無理矢理起こす!?
と思ったが、今データ上同一モンスターだから攻撃できんわ!

「無駄だ、私が解除を許可しない限りそいつは起きない」

「諦めないで! 音はきっと聞こえてるから……! 何か刺激的なことを言ったら起きるかも!」

それ本当か!? 私に起こされるのはいつものこと過ぎて新鮮味がないから駄目なのか!?
この世界をロールプレイシステムなるものが支配していることを鑑みると一番起こせる可能性が高そうな人に心当たりはあるが……。
バルディッシュと激しい戦いを繰り広げているジョン君の方をちらりと見る。ちょっと今それどころじゃなさそう……。
でも、ちょっと通信するぐらいならいいですよね……!? というわけで、ジョン君に通信を繋ぐ。

「あの! カザハが寝ちゃって! 一言だけでいいから! 何かパンチの効いた言葉をお願いします!」

なんか一言インタビューみたいになってしまった……!

62カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/05(木) 22:20:37
発注先「よく考えると「生成AIに勝てるのか」というテーマをやるなら直接ぶつけて真っ向勝負させんと駄目だな!? ということに気付いた。
    ところで『シーンが各自分かれてるスレ内の状況』+『時間がたくさんあるスレ外の状況』のコンボは……
    レスがどこまでも長く成り得て危険!」
カザハ「他の人のリアクション待ちの状況に持ち込んでなんとか止まったな!?
    そしてひたすら本筋に関係ない内輪の騒動を繰り広げてるな……!?」
発注先「直接的には関係ないけど芸術は万人にとっての100点より一部のコアなファンにとっての1000点の方が価値があるってテーマをやれば
    それをゲームにも広げられるやろ? 万人に受けなくても一部のコアなファンが重課金してくれれば存続できる的な……!」
カケル「主題は細部に宿る……ってコト!?」

63embers ◆5WH73DXszU:2025/04/19(土) 00:05:41






【???】


「……ここは、どこだ。いや……この地形、かなり暗いが見覚えがある……赭色の荒野だ」

だが……何故だ。何故俺はここにいる?
記憶が曖昧だ……俺達はローウェルを倒してブレイブ&モンスターズを救った。
その後は……元通りとはいかないが各々の日常に戻った。クリア後の世界ってヤツだ。

なのに……肝心のその日常をどう過ごしていたのかをまるで思い出せない。いや……意識出来ない。
妙な感覚だ。ゲームによくある、入る必要がないから開けないドア、踏み入れない裏路地。
俺の記憶にも、そうした封鎖線が敷かれているような。

『――おはよう、エンバース。もう目は覚めた?』

ふと、警戒の為に取り出していたスマホから声が聞こえた。
瞬間――俺は思い出した。この状況に必要な全ての記憶を。
まるで初めてパリィが有効なエネミーと遭遇した瞬間、そのチュートリアルが画面にポップアップするみたいに。
記憶が急速に頭の中から湧き出てくる経験なんてした事がないから、違和感がすごいが……

……そうだった。俺達は外伝の収録の為にこの仮想の三巡目世界に召喚されたんだ。
二巡目クリア時のステータスと装備、ほぼ全ての記憶を引き継いた状態でRTAをする為に。
クリア直前からその後にかけての記憶が制限されているのは……ネタバレ防止の為らしい。
だが……そもそもどうしてRTAを?

それは……ああ、そうだ。あの後ローウェルは流石にやり過ぎって事で他の二人のチーフと同程度まで権限が制限されたらしい。
SSSの方でもプロデューサーをしていたらしいし、あくまでブレモンに関しては、なんだろうけど。
とにかくヤツは……バロールとシャーロットが「禊が必要なんじゃないですか〜?ん〜?」とか言い出したら、逃れられない立場になったんだ。

だからつまり……全て思い出した。何故RTAをするのか。
それはこれがブレモンリブート記念のボーナスシナリオだからだ。
散々ブレモンを引っ掻き回したローウェルをピエロにして、ユーザーに溜飲を下げてもらう為の盛大な自虐ネタだ。

そうと分かれば……早速第一章を始めようか。
チャプターボスは確か……ベルゼブブだったっけ。いやあ、気の抜けない強敵だな。
俺は早速右手を銃の形に。指先で夜空を指す――照明弾を打ち上げる。
意図は二つ。一つはこの「収録」に参加しているだろうパーティメンバーへの合図。

もう一つは……ああ、見つけた。照明弾が照らしてなお昏い夜空の一角。
黒い巨大な塊が上空を蠢いている。雲じゃない――蝿の群れだ。
ベルゼブブは赭色の荒野の夜、上空にランダムスポーンする。
手っ取り早く見つけ出すなら――こうして夜空を照らしてやればいい。

そして見つけさえすればベルゼブブは所詮序盤のボスモンスターだ。
ダインスレイブを胸部から抜く――手首を軽くしなやかに回す。
青紅の刃が空を縦断。手応えあり。胴体を深く斬り込まれたベルゼブブが墜落していく。

「――おい、今の見たか?すごい攻撃だったなあ……一体誰の仕業なんだろう。
 なあ、あのベルゼブブが墜落する場所に行ってみないか?さっきの攻撃の主に会えるかもしれないぞ!」

浮ついた/白々しい口ぶり=極めて遠回しな集合地点の指定。

64embers ◆5WH73DXszU:2025/04/19(土) 00:06:40
【赭色の荒野:見通しのいい餌場】


「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」

はっきり覚えてるのは……「彼の地」に案内される前くらいまでか。
結局あの後どうやってローウェルを倒してハッピーエンドにこぎ着けたのかも思い出せない。

「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

「クリア後の世界」の事はかなりぼんやりとだけど思い出せる。
いや、ホントか?令和の時代に何がどうなったら熱湯風呂で激辛ラーメンを食べる事になるんだよ。
思い出せるのは重要度の低そうな出来事ばかりだけど……まあ、そこそこ平和にやれてるんだな、俺達。
……だけど一つ、気がかりなのは――

「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」

そう問いかけた瞬間……まただ……俺の脳内が渦を巻くような感覚……。
これ、アレだな……シャーロットの単語をトリガーに記憶が蘇った時と同じだ……。
なるほど、アレはチュートリアル機能の応用だったんだな……。
それで……今度はどんな記憶を思い出して――

「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。
 いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

そしてそれ以上思い出せないって事は……覚えている必要はないって事なんだろう。

「仕方ないな。臨時のリーダーは明神さんに任せるが……
 ……とりあえず当面の目的はベルゼブブを倒すって事でいいよな?
 このシナリオが三巡目……つまり二巡目のRTAだって言うなら、チャプターの進行条件は共通の筈だ」

墜落地点の特定は容易い。蝿の群れだ。
デスフライの防衛網。主を守る為のそれがかえってベルゼブブの居場所を浮き彫りにしている。
……まあ、今の俺達の敵じゃないとは言えブンブン飛び回られるとちょっとうるさい。

「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したローウェルのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」

なんだ、なんだって俺の口からそんなクソ面白そうな外伝のあらすじが飛び出てきた?

「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」

ああ、こういう感じか。よーく分かった。

「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

二巡目の世界編はまだクリア出来てない。
けどローウェルには旧ブレモン騒動で迷惑被ったからこっちのシナリオは早く見たい。
みたいなプレイヤーもいる筈だもんな。

……それはそれとして、デスフライの防衛線が分厚くなってきた。
ダインスレイブで黒い霧の壁みたいなそれを切り開くと……いた。
地に伏して身悶えするベルゼブブと……黒いローブを纏った小さな人影。

『クク……』

ローブの……声からして少女がこちらを振り返る。
目深に被ったフードの奥に獰猛な笑みのような表情が見えた。

『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

……違った。単に表情が引きつってるだけだった。
それにしても……

65embers ◆5WH73DXszU:2025/04/19(土) 00:07:02
「……思っていたより早い再会だな?ええ?ローウェル」

『おま!お前!チャプターボスをボスエリアの外から倒すなんてグリッチ利用なのです!
 バロール!これはれっきとした不正行為なのです!やり直しを要求するのです!』

ローウェルは夜空を指差して叫んだ……しかし何も起こらなかった。

「さて……」

『待て!待つのです!』

「ほう、興味深い提案だ。うーん、しかし、なかなか迷うところだが……ダメだね。待ったなしだ――」

ダインスレイブの抜き打ち――手応えがない。
ローウェルは尻もちをついているが……それだけだ。

『く……くふ……バ、バーカバーカなのです!一度はお前達にしてやられたとは言え、
 このローウェルは依然変わらずこの世界の創造主なのです!
 いかにお前とダインスレイブであってもこのローウェルを傷つける事は能わないのです!』

「……なるほど。大体理解した。つまり魔王城の間を目指せばいいんだな。
 管理者メニューをもう一度起動して、お前をオシオキ出来るようにすればいい訳だ。
 魔王の無敵を剥がして、倒す。意外と王道のシナリオなんだな」

『ぎゃー!?ふ……ふ……ふざっけんなーなのですー!!!
 なんで今のやり取りだけでストーリーラインまで読み取ってやがるのです!』

「そりゃ……俺は世界で一番ブレモンの上手い男だからな」

『ぐ、ぬ、ぬううううう!か、構うものかなのです!ルールが知られたところで……
 チャプタークリアにはボスの撃破が必須!つまりこのベルゼブブを――!!』

ローウェルが身を翻す。ベルゼブブに縋り付く――いや、違う。
何かを体内に埋め込んだ……まあ、アレがなんなのかは大体想像がつく。

『お前達が倒せないレベルにまで強化すればいいのです――――!』

デモンズシード……それを大量に埋め込まれたベルゼブブが変貌していく。
より戦闘に適した体型――つまり人型へ。単に肥大だった身体は筋肉質に引き絞られて。
ベルゼブブ由来の高い魔力を最大限活かす=マジックアイテムの装備枠を増やす為に腕は四本に……。
デスフライが四つの手に集結して巨大な斧を形成……。
体色は鮮血のような真紅だが……いや、待て。なんか……その形態、かなり見覚えがあるっていうか……

「……マゴットの色違いだよな、これ」

『う、うああ……全然ダメそうなのです……え、ええい!もうどうにでもなれなのです!
 とにかく行くのですベルゼブブ・シン!ヤツらを血みどろにしてやるのですー!』

66カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/04/23(水) 05:26:14
>63
カザハ「ここはどこ? 我は誰!?」
カケル「どうやら赭色の荒野みたいですね……都合よく受信した電波によると、
    私達はローウェルにざまぁするボーナスシナリオのために三巡目世界に召喚されたようです」
カザハ「何それ、2巡目の世界、残ってるよね!? クリアーしたら夢オチみたいなノリで帰れるんだよね!?」
カケル「まあ多分。あれ? そもそも私達、2巡目クリアーしましたっけ? した気はするんですけど」
カザハ「どうしよう全然思い出せない! でもボーナスシナリオってことはしたんじゃない!?」

(大混乱のカザハと、よく言えば動じない、悪く言えばどこか他人事のようなカケル。
 背景で照明弾があがる。巨大な蠅が何者かの攻撃を受けたのか墜落した)

カケル「何あの分かりやすい集合の合図! 行ってみましょう!」

>64
(行った先にはエンバース。明神やジョンも集まってきている)

>「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」
>「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

カザハ「我、ジョン君と一緒にテレビに出てるの!?(どうしよう、嬉しい……ッ!) 
……じゃなくてッ! それ、どう考えてもアイドルの仕事じゃないよね!?」

>「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」
>「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。」

カザハ「そ、そんな……!」

(一瞬、最悪の可能性を考えてしまい青ざめる)

>「いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

カザハ「本当!? なら、いいんだけど……!」

>「仕方ないな。臨時のリーダーは明神さんに任せるが……
 ……とりあえず当面の目的はベルゼブブを倒すって事でいいよな?
 このシナリオが三巡目……つまり二巡目のRTAだって言うなら、チャプターの進行条件は共通の筈だ」
>「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したローウェルのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」

カザハ「あの人、結局爺さんなのか幼女なのか最後まで分かんなかった気がする……。ロリジジイって新し過ぎでしょ!」
カケル「まあ……上位世界では本来の年齢や性別という概念自体に大した意味がないのかもしれないですね……」

>「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」

67カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/04/23(水) 05:27:05
カザハ「はぁ!? 何言ってるの!? そ、そりゃあ見たいか見たくないかと言われたら見たいけど!
    ……過程はともかくとしていったん置いといて、アイドルやらされてる明神さん、それはそれでめっちゃ見てみたいんだけど!」

カザハ「あれ? そういえば我とジョン君ってどういう関係だったっけ……。どうしよう思い出せない!
    すごく特別な関係だった気がするのに……。もしや……漫才コンビの相方か……!」

カケル(完全に間違ってるわけじゃないかもしれないけど……! これって、大人の事情で記憶にブロックがかかってるってこと!?
    ラブコメ禁止規制的な!?)

>「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

カザハ「ねぇ、さっきから蠅がうるさくない?」
カケル「壁みたいになってますね……」

>『クク……』
>『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

>65
(暫しのエンバースとローウェルのやりとり)

>『ぐ、ぬ、ぬううううう!か、構うものかなのです!ルールが知られたところで……
 チャプタークリアにはボスの撃破が必須!つまりこのベルゼブブを――!!』
>『お前達が倒せないレベルにまで強化すればいいのです――――!』

>「……マゴットの色違いだよな、これ」

>『う、うああ……全然ダメそうなのです……え、ええい!もうどうにでもなれなのです!
 とにかく行くのですベルゼブブ・シン!ヤツらを血みどろにしてやるのですー!』

カザハ「ところでインベントリにこんなものが入ってたんだけど……。
    虫系モンスターを攻撃するためのアイテムで、蠅・蚊特攻だって!」

(都合よく赤いスプレー缶状のマジックアイテム登場。どう見ても某殺虫剤です)

カケル「都合よくそんなものを持ってるってことは……明らかに"案件"ですよね。
    つまり――ブレイブ&モンスターズは、広告ゲーになっちゃった……ってコト!?」

(そう言いながらも馬形態になり、カザハを乗せる)

カザハ「人生は一度きりー♪ だから一度はやらなくちゃー♪」(※三巡目です)

(確かにルール上即落ちさせないといけない(具体的には基本2ターン以上かけない)らしい。
ヒット&アウェイの容量でアー〇ジェットを噴射!
即落ちまではしなかったものの、敵は大ダメージをくらった様子。あとの二人がどうにかしてルール内でおさめてくれるだろう)

カケル「これって単なるギャグと見せかけて、ゲームの資金調達源という超重要事項に直結するネタですよね……。
    もしかしてブレイブ&モンスターズは開き直って広告ゲーになることで存続の危機を回避した……ってコト!?
    いや、でもローウェル失脚を機に広告ゲーになったわけではなく、そもそももともと広告ゲーだったのか……?」

(ゲーム内世界に登場するあらゆる商品=上位世界に存在する同様の商品の広告説!!)

68明神 ◆9EasXbvg42:2025/04/29(火) 20:47:51
前略。気づいたら俺は、初期スポーンの荒野に居た。
例によってトイレから――ケツ丸出しで。

「……またかよ!またこのパターンかよ!!!」

あっぶねえなぁ!
俺が便意もねえのに個室に引きこもってスマホ弄るタイプの社会人でなければ死んでいた。
スボン下ろしてたのは……なんつうか、便座ってズボンで座りたくなくない?
生ケツの接する場所に着衣で触れて、その着衣で椅子とかベッドとかに座るのに抵抗あるっつうかさ……

ほんでまぁケツをしまってるうちに色々とゴミのような情報が頭に流し込まれてきた。
ここはアルフヘイムだ。俺達はまたぞろブレイブとしてこの世界に喚ばれた。
今回のクエスト目的はローウェルをけちょんけちょんにするためのRTA……オーケー、把握した。

「ジジイの拭き残したケツをみんなで拭おうってか。やんなっちゃうね。なぁ、■■■■■――」

至極自然に隣へと話しかけて、そこに誰もいないことに今気付いた。
何だ?俺は今、【誰に】話しかけようとした――?

――『……みょう、じん……』

何か、めちゃくちゃ大事な情報が丸ごと頭からすっぽ抜けてるのを感じる。
モヤがかかったみたいに不鮮明な記憶の向こうで、誰かが俺を呼ぶ声。
こいつは誰だ。そういえば俺、あの地獄のラスベガスをどうやって生き延びたんだ――?

その時、不意に荒野の夜がまばゆい光に照らされた。
照明弾――あの炎の色は、エンバースか!あいつも三周目に喚ばれてんだな。
いくら記憶を辿っても出てこない答えをうっちゃって、俺は明かりの示す合流地点へと歩き出した。

 ◆ ◆ ◆

荒野を徒歩で横断なんざ死線くぐりまくった今でも重労働に違いないが、
その辺漂ってる低級霊をかき集めて邪悪な筋斗雲みたいなのを作れば移動手段はどうにかなった。
検証その1。二巡目で身につけた魔法とかスキルは練度据え置きで使えるっぽいな。
集合地点には既にエンバースもカザハ君もジョンも集まっていた。

>「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」

「え、エンバース……もしかして記憶がないのか……!?
 俺とデュエルしてガチ泣きするまでベチボコにしてやったろ……!?」

俺にもそんな記憶は特にないが、『ないという記憶もない』ので多分俺はエンバースをベチボコにしている。
このRTAの視聴者諸兄には行間を存分に読んでいただきたい。

>「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

「消せ消せそんな記憶!つーかさぁお前の名前まだ『エンバース』で良いわけ?
 二巡目の決着がいい感じについたあとに本名公開の流れとかあったんじゃないのぉ」

普通に平和になった地球でこいつとおしゃべりしてた記憶があるのに、その時どう呼んでたか覚えてねえ。
いやそれよりも。そんなことよりも。
エンバースがここにいるのなら、その隣に居るべき人間がもう一人いるだろ。

>「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」
>「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

「あー……うん、まぁ、こんなこと言うのもなんだけどさ……。
 わけのわからんエクストラステージに喚ばれた俺達がふつーに貧乏クジ引いてるわけで。
 喚ばれねえならそれにこしたことはねえんだよな……」

69明神 ◆9EasXbvg42:2025/04/29(火) 20:48:37
石油王の姿が見えねえのも、多分そういうことだろう。
あいつらは運営の投網からうまいことすり抜けた。それは間違いなく、良いことだ。

>「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したバロールのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」

「いや意味がわからんわ。なんであのクソ魔王が俺を養子にしたがってんだ――」

ああ、まただ。脳みそにノイズが走る、あの感覚。
思い出すのを拒むように、暗い膜のようなものが海馬の一部を覆ってる。

>「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――
 いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」
>「はぁ!? 何言ってるの!? そ、そりゃあ見たいか見たくないかと言われたら見たいけど!
 ……過程はともかくとしていったん置いといて、アイドルやらされてる明神さん、それはそれでめっちゃ見てみたいんだけど!」

「やめろやめろ悍ましいものを想像すんな!
 ……このままRTAが順調に行ったら、アコライトあたりでワンチャン実現しそうなやつじゃん。
 そんときゃお前も外野じゃねえからなカザハ君!おめーも踊るんだよ俺達といっしょに!」

>「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

「そういう感じかぁ……お前の名前が未だにエンバースなのも、本名はネタバレの範疇ってわけね」

とかなんとか言ってるうちに、エンバースが撃墜したとおぼしきベルゼブブの墜落地点についた。
無数のハエで構成された黒い霧の向こう。
死にかけのベルゼブブと、あとなんかローブを被った小柄な人影。

>『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

なんか普通にローウェルが居た。
二巡目じゃ何ヶ月もかけて追い詰めた真のラスボスが、その辺をうろついていた。
で、そのローウェル氏をインタビューしたエンバースによれば、この場でこいつを処することはできず、
ニヴルヘイムの暗黒魔城ダークマターでもう一度管理権限をいじくる必要があるらしい。

「人足りてねえけど大丈夫なのそれ」

あんときゃ6属性分のパワーを俺達5人でこさえる必要があった。
今回4人じゃん……。まぁその辺は勇気パワーでどうにかせよってことなのかね。
なんなら今度こそアルフヘイムにばら撒かれてる野良ブレイブかき集めても良いしな。

とまれかくまれ、とりあえず目下の目標としては荒野のクエストクリアになるわけだが、
ローウェル御大もRTAだからってワンパンさせるつもりはないらしい。
瀕死のベルゼブブにデモンズシードを大量投与。存在が進化していく――

>「……マゴットの色違いだよな、これ」

「中ボスのマイナーチェンジ版がラスダンの雑魚になってるやつぅ……」

なるほどな?これでひとつの事象が証明された。
ローウェルは新たなモンスターデザインを用意できない。

「ぎゃはは!筆頭デザイナーのバロール氏にもそっぽ向かれてやがる!あっったりまえだよなぁ!?」

いや笑い事じゃねえわ。クソみてえな低予算企画に巻き込みやがって。
この分じゃプログラマーも仕事してねえだろ。グリッチし放題ってわけだ。

70明神 ◆9EasXbvg42:2025/04/29(火) 20:49:07
>『う、うああ……全然ダメそうなのです……え、ええい!もうどうにでもなれなのです!
 とにかく行くのですベルゼブブ・シン!ヤツらを血みどろにしてやるのですー!』

そんなわけで、再生怪人めいたベルゼブブ・シンとの戦端が開かれた。

「おあつらえ向きに2Pカラーを用意してくれてんだ。ミラーマッチと行こうぜ、マゴット!」

スマホを手繰る。サモンの光が迸り、虚空から出現したのは――

『グフォ……?』

手のひらサイズの蛆虫だった。

「あれーーーっ!?マゴット君幼虫に戻っちまってるじゃん。
 これもネタバレ禁則事項ってやつなのか?」

思いっきりデザイン使いまわしの敵出しといてネタバレもクソもねえだろ!
RTA見てから二巡目に手ぇつけたプレイヤーはどういう感情でエーデルクーデ編見りゃ良いんだよ!

>「ところでインベントリにこんなものが入ってたんだけど……。
 虫系モンスターを攻撃するためのアイテムで、蠅・蚊特攻だって!」

「うおっ危ね!スマホに戻っとけマゴット!」

カザハ君が何やら殺虫剤みたいなのを取り出す。
急にスポンサーの存在をほのめかすじゃん……。
アレにもFF無効はちゃんと機能すんのかな。

「……ま、正味問題はねえな。せっかくの三巡目なんだ、二巡目とは違うスタイルでプレイしていくぜ。
 二巡目は死霊術師ビルドだったからな――今回の俺は、正統派魔法使いビルドだ!」

インベントリを起動し、『レア度』でソート……
予想通り、リストの先頭にそれはあった。
二巡目では没収されていた、ユニークアイテムの数々。
俺がゲーム内で獲得してきたウルトラレアの最強装備、神代遺物シリーズだ。

その中からひとつ、『聖杖アレフガルド』を選ぶ。
2メートルくらいの棒に炎のような宝石がはめ込まれた両手杖が出現した。
握った瞬間、神代遺物の凄まじいステータス補正が身体に注ぎ込まれるのを感じる。
特に強烈なのがINT、魔法攻撃力補正だ。今ならメラもメラゾーマに変貌する。

そして神代遺物の最たる特徴は――装備者に専用ユニークスキルを授けること。

「行くぜ必殺のぉぉぉ――『始原の炎(プライマルフレア)』!!」

無数の炎弾が曳光弾のように夜空を埋め尽くす。デスフライの群れを飲み込んでいく。
……そこで俺は、ある失策に気付いた。
カザハ君が景気よく撒きまくってる殺虫剤には、スプレー缶共通のある禁則事項があった。

――火気厳禁。

「やべっ」

荒野が炎に包まれた(2回目)。


【身を持って商品の注意事項を実演するスポンサーサービス】

71ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/08(木) 23:39:22
【赭色の荒野】

僕は…気づいたらその場所にいた。
なんだがうす暗い荒野。

自分でも馬鹿みたいと思うが…それしかわからない。強いていうならちょっと嫌な…オーラを放ってるとか?
どうしてこんなところにいるのか…僕にはわからなかった。

「にゃー…」

僕は…確か進化した部長と一緒にイクリプスを倒して…それで…
仲間達?仲間達は!?

「うっ…」

クソっ。頭はいてえし誰と戦ってたのかどんな状況だったのかさえうまく思い出せない。
そもそもどこで戦ってたっけ?…くそ…ところどころしか思い出せない。

まさか時が戻ったのか?そんな馬鹿な…僕達は確かに勝ったはずだ…たぶん。

「こんな薄気味悪い所にいてもしょうがない…少し歩くか」

そう思った瞬間

>「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」

「これはとっても便利なご都合主義だな」

>「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

「記憶が欠けててもこれだけはわかるぞ…その記憶は絶対違うとな」

>カザハ「我、ジョン君と一緒にテレビに出てるの!?(どうしよう、嬉しい……ッ!) 
……じゃなくてッ! それ、どう考えてもアイドルの仕事じゃないよね!?」

「落ち着けカザハ…絶対エンバースの嘘だから…たぶん」

たぶんと付けたのは…今自分が覚えてる記憶その物も本当かどうかわからなかったからだ。
それに…僕がカザハにそんな仕事させるわけない…たぶん。

クソっ…なんで語尾みたいにたぶんを付けて回らなきゃいけないんだ?

>「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」

「見てないな…誰も見てないのか?」

>「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。
 いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

「そうか…それなら安心だな」

72ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/08(木) 23:39:32
>「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したローウェルのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」
>「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」

>カザハ「あれ? そういえば我とジョン君ってどういう関係だったっけ……。どうしよう思い出せない!
    すごく特別な関係だった気がするのに……。もしや……漫才コンビの相方か……!」

「落ち着けカザハ…大丈夫か?僕も記憶がまだハッキリしないが…漫才コンビって事はないんじゃないか…?
あとエンバース…君、言葉も顔も…だいぶ面白いことになってるぞ」

>「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

面白い顔をさせられたエンバースは両腕を使い無理やり自分の口や顔を止めるとそう言い放つ。
そしておもむろに空間を切り裂くとその中から少女が飛び出してくる

>『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

>「……思っていたより早い再会だな?ええ?ローウェル」

ローウェル…えっと…確かラスボスだったっけ?あれ…?時間を見つけてカザハと情報共有しておくか…そんな時間があればだが

「それで…この幼女が僕達をこんな状況にした張本人だって?」

エンバースが間髪入れず攻撃を仕掛けるが、幼女には触れられない。

>『く……くふ……バ、バーカバーカなのです!一度はお前達にしてやられたとは言え、
 このローウェルは依然変わらずこの世界の創造主なのです!
 いかにお前とダインスレイブであってもこのローウェルを傷つける事は能わないのです!』

>「……なるほど。大体理解した。つまり魔王城の間を目指せばいいんだな。
 管理者メニューをもう一度起動して、お前をオシオキ出来るようにすればいい訳だ。
 魔王の無敵を剥がして、倒す。意外と王道のシナリオなんだな」

>「人足りてねえけど大丈夫なのそれ」

「それを言い出すと僕はこの場所そのものも知らないし…人選合ってるの…これ?」

用はなゆの旅路を再現するって事だろ?本来僕がいない場所でその魔王討伐RTAに参加していいのかどうか…

>「そりゃ……俺は世界で一番ブレモンの上手い男だからな」

そして幼女を言葉巧みにあざ笑い、泣かすエンバースを見た僕は思った。

あ、深い事考える必要はないなと

>『お前達が倒せないレベルにまで強化すればいいのです――――!』
>「ぎゃはは!筆頭デザイナーのバロール氏にもそっぽ向かれてやがる!あっったりまえだよなぁ!?」

とてもなゆが昔語ってくれたレイドボスには見えない。

>「行くぜ必殺のぉぉぉ――『始原の炎(プライマルフレア)』!!」

その瞬間あたりは爆発し、一面焼け野原になる。なんだ?僕達までギャグ時空に巻き込まれたのか?

「明神!なにふざけてるんだ!…雄鶏源泉(コトカリス・フンスイ)!!」

巨大な噴水が現れ、炎を少しづつ鎮火し、火傷ダメージを癒していく。
完全に鎮火する前に噴水の効果は終わったが…余計な事をしなければ自然鎮火するだろう。

「それで…よくわからないがこの使いまわしモンスターを…倒せばいいんだな?…僕達だけで十分だ!部長!雄鶏乃啓示!プレイ」

「にゃああああああ!!」

進化し、大きくなった部長が薄暗い荒野に輝く勝利の太陽と共に叫ぶ!
そして強くなった力と大きな翼で羽ばたくとその風により鎮火しかけていた炎は舞い上がり!勢いを増した!

「この感じ…なんだか…懐かしい感じがする…」

全身火達磨になりながら…あったはずの記憶を僕は感じていた。

73embers ◆5WH73DXszU:2025/05/16(金) 09:46:03
【赭色の荒野:見通しのいい餌場】


ブレイブ&モンスターズRTA、前回までのあらすじ。
カザハと明神さんがガス爆発を起こしてジョンが火だるまになった。
マジで何をやってるんだお前ら……?
しかもジョン、自分から火の海に飛び込んでいったよな?マジでなんでだ……。

「火だるまになりながらちょっと遠い記憶に浸ってるような表情してるのも意味が分からん……。
 マジでなんでだ?ブレモンってわりと男キャラも多めだしこういうカットにも需要があるのか……?
 いや、だとしてもなんでその需要を率先して満たしに行こうとしてるんだよ……」

……あんまり深く追求するのはよそう。この世界はゲームで、俺はその登場人物。
だから「そういう売り方」に理解があると思われて得する事なんて一つもない。
事あるごとに着衣を焼き払ってポージングするキャラにされて、しかも自分ではその変化に気付けない……なんて事にならない保証はない。

このクソ益体もない思考でさえ文字起こしされてユーザーに認識されている可能性だって……やめよう。
閑話休題だ。折角コラボアイテムがあるんだし、使い方のチュートリアルでもしよう。
また売上が芳しくないからって世界を滅ぼされちゃ堪らないからな。

「……見た目はネタっぽいけど、結構便利そうだな。その虫よけスプレー。
 特定の種族への特攻と高い範囲火力。両方兼ね備えているからレイドボスにもモブ狩りにも使える」

 ユニットカード版も出るのかな。こっちの世界のブレモンにも実装されるならとりあえず一枚確保しときたいけど。

「しかもそのスプレーは俺にとってもお誂え向きだ。いや……俺達にとっても、だな。
 速度に優れたカザハがガスを散布し、小器用な明神さんがそれを起爆。
 ジョンの耐久能力なら仮に巻き添えになっても大したダメージは受けないし――」

ダインスレイブで周囲の炎を吸引。ブレードを形成。
まさしく虫の息だったベルゼブブ・シンを切り捨てる。

「発生した爆炎は俺のダインスレイブのエネルギーとして再利用出来る。
 1ターン目から手軽にダインスレイブを高出力モードに出来ちまうんだ。
 ミズガルズのブレイブPT、特に俺をアタッカーに使いたいなら必須級のアイテムだ。課金圧を感じるな?」

いや、マジで俺との噛み合いがいいなあの虫よけスプレー。
上の世界のwikiじゃお手軽エンバース強化パーツとか書かれるんだろうな。
……結構イヤだな、エンバースと言えばコレの「コレ」が虫よけスプレーなの。

「……さて、これでチャプタークリアな訳だが。お前はいつまでそこで突っ立ってるんだ?」

『ぐぬぬ……ふん、チャプター1をクリアしたくらいで何を偉そうにしているのです』

「お、まだ結構余裕があるんだな。まあ、でないとこっちもイジメ甲斐が――」

「あーあ!あのハイバラがまるでゲームが進んでちょっと難易度の高いボスが出てきたら
 「出し得モーションばっか」とか「敵だけ楽しそう」とか言い出す
 にわかストリーマーみたいな粋がり方して、このローウェルはがっかりなのです』

「うぐっ!や、やめろ!共感性羞恥が……じゃなくて!不特定多数のユーザーを殴るんじゃない!
 ていうか俺の本名出してよかったのかよ!ネタバレとか――」

『あーん?二巡目の世界編からもう何週間経ってると思ってるんです?
 どんなに多忙なユーザーでも一週間あれば週末にメインクエストくらいクリア出来る筈なのです。
 自分で勝手に後回しにしといて公式にネタバレ配慮しろって……アホなのです?いや、間違いなくアホなのです』

おいおいヤバいぞコイツ!攻撃が通らないからって言いたい放題しやがるつもりだ!
正直コイツに構ってるだけ時間の無駄だしさっさと移動を始めてもいいんだが――

74embers ◆5WH73DXszU:2025/05/16(金) 09:47:24
『んん〜?どこに行くつもりなのです?話はまだ終わっていないのです。
 一緒に大して腕も立たないくせに聞きかじりのメタを身に着けただけで
 ネームドになれたかのように振る舞う三下どもの悪口を言うのです』

俺が背を向けて歩き出すとローウェルは嬉々として纏わりついてきた。
しかも俺を目にかけていただけの事はある……

「正直かなり俺好みの話題だが……悪いな。今は時間がないんだ。なにせ――」

ローウェルを振り返って指先で招き寄せる。
それから少し屈んで右手を俺の口元に添える……何か耳打ちする事があるかのように。
ローウェルは素直に俺に近寄ってきた。まあ……どうせ攻撃される筈がないからな。
俺を深く疑る理由がない。そして――――

「――そろそろ列車の時間だ」

最初に到着したのは、けたたましい汽笛の音。
直後、チャプタークリアのフラグに応じて到着した魔法機関車がローウェルを塗り潰した。
勿論ダメージは与えられない。けど……

「どうだ?今のはかなりビビったんじゃないか?」

魔法機関車の横っ腹に話しかけるが返事はない……機関車のテクスチャに埋まったままだ。
……ほどなくして、よろよろとローウェルが這い出てきた。
そのままへたり込んだままだ……ははん、なるほど?

「さてはお前……腰が抜けたな?ははは、いいぞ。
 管理者メニューの起動はどんなに急いでも結構先になる。
 こまめにガス抜きさせてくれないとプレイヤー側としてもモチベが保たないもんな」

未だに立ち上がれないローウェルをこれでもかってくらい見下ろして笑う。
ついでにスマホで何枚か写真を撮りながら列車に乗り込む。

「じゃ、またなローウェル。ゲームはまだ始まったばかりだ……次はもっと楽しませてくれよ」

75embers ◆5WH73DXszU:2025/05/16(金) 09:48:19
【魔法機関車:客室】


『――皆様、初めましテ。ワタシはこの汽車の車掌兼運転士を務めさせて頂く“ボノ”と申しまス。
 ご覧の通り人形の身ではありますが、必ずや皆様を王都までお連れしますので、今後ともよろしくお願い致しまス』

「……ああ、なるほどな。全員が二巡目の記憶を引き継いでる訳じゃないのか。そりゃそうか」

『二巡目?なんの事でしょウ』

「いや、こっちの話だ――でも、あると思うんだよな。記憶を思い出させる方法。
 じゃないとテンポ悪いし。例えば……おはよう、ボノ。もう目は覚めたか?」

『……なんの事でございましょウ。ワタシは人形。睡眠は必要ありませン』

「これじゃないか……なんか、今の恥ずかしいな」

……いや待てよ。そもそも今回のシナリオはRTAだ。
今は俺達が収録しているけど、後でプレイヤー達もこのシナリオを走る事になる。
だったら……どんなギミックにしろ、あんまり手の込んだモノは鬱陶しいだけだ。
難しく考えすぎたか?もっと安直に……

「……なあボノ、思い出せないか?王都が襲われて、侵食に呑まれた時の事だ。
 お前はボロボロになりながらも逃げ延びてきてくれた」

あれがなければ俺達はローウェルに対してもっと大きく遅れを取っていただろう。
王都がどうなっているのか確かめようと、むざむざ死地に飛び込んでさえいたかもしれない。
……ボノが頭を抱える。

『――ああ、ああ!そうでしタ。思い出しましタ。あれほど恐ろしい思いをしたのは製造以来初めてでしタ。
 もう終わった事とは言エ、今でも思い出すだけで身震いが止まりませン』

……ブリキ人形がぶるぶる震えてるの、玩具みたいでなんだかシュールだな。
ともあれ、『そのキャラクターにとって印象深い記憶が呼び水になる』か。
安直だけど、ゲームの根幹になるシステムなんてこれくらいでいいんだよな……。
使用頻度の高いシステムがあんまり複雑だとマジでモチベに響くからな……。

『そして今は快速シナリオの収録中、でしたネ。分かりましタ。
 王都行きは取りやめに致しまス。魔法機関車の運行権は皆様方ニ。どこへ向かいましょウ?』

「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」

俺は溜息を零しながらみんなを振り返る。
お、なんかこの仕草かなり主人公っぽいぞ。

「けど……正直ガチガチにチャート組んでRTAするのって俺達がする必要ないんだよな。
 どうせこのシナリオが解禁されたらプレイヤー達がこぞって壁に向かって
 ローリングしたり移動スキル連打して魔王城直行ルートを見つける筈だし」

それに加えて、

「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

まあ、ある程度ちゃんとやるって建前は大事だけどな。
本気で挑んでるのにアホみたいな結果が出力されるからこそ面白いんだと思うし、多分。

「という訳でそれを踏まえた上で聞くんだが――――みんなどこ行きたい?」

76カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/05/22(木) 00:35:48
>「この感じ…なんだか…懐かしい感じがする…」

カザハ「なるほど、常に体を張った芸を繰り広げていたのか……」
カケル「お笑い芸人じゃないですからね!? 常に体を張ってたのは合ってますけど!」

(何をどこまで覚えているかは人によってかなりばらつきがあるらしい!
カザハ→結構忘れてる カケル→割と覚えてるけど言ったらカザハが奇声を発しながら転げ回りそうなので(?)言わない)

>「……見た目はネタっぽいけど、結構便利そうだな。その虫よけスプレー。
 特定の種族への特攻と高い範囲火力。両方兼ね備えているからレイドボスにもモブ狩りにも使える」
>「しかもそのスプレーは俺にとってもお誂え向きだ。いや……俺達にとっても、だな。
 速度に優れたカザハがガスを散布し、小器用な明神さんがそれを起爆。
 ジョンの耐久能力なら仮に巻き添えになっても大したダメージは受けないし――」
>「発生した爆炎は俺のダインスレイブのエネルギーとして再利用出来る。
 1ターン目から手軽にダインスレイブを高出力モードに出来ちまうんだ。
 ミズガルズのブレイブPT、特に俺をアタッカーに使いたいなら必須級のアイテムだ。課金圧を感じるな?」

(一見一発ネタの案件らしき殺虫剤、まさかの予想外に有能そうだった!)

>「――そろそろ列車の時間だ」

列車(どっこいしょー!)←掛け声はイメージです

(ローウェルが減らず口を叩きまくっていると、到着した列車が容赦なくローウェルを轢いた!!)

カザハ「踏切内で動けない人を見つけたら非常停止ボタン!」
カケル「いやもう轢かれてるしここ踏切じゃないし!」

カケル(今度は踏切の安全啓発的な案件か……!? 2巡目の時はポリコレ枠ぽかったけど今度は案件受注枠か!?)

>「じゃ、またなローウェル。ゲームはまだ始まったばかりだ……次はもっと楽しませてくれよ」

(列車に乗り込む一同。列車内には、記憶を失ったボノがいた)

>「……なあボノ、思い出せないか?王都が襲われて、侵食に呑まれた時の事だ。
 お前はボロボロになりながらも逃げ延びてきてくれた」

>『――ああ、ああ!そうでしタ。思い出しましタ。あれほど恐ろしい思いをしたのは製造以来初めてでしタ。
 もう終わった事とは言エ、今でも思い出すだけで身震いが止まりませン』

(記憶の思い出させ方、意外と普通だった!)

77カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/05/22(木) 00:36:54
>『そして今は快速シナリオの収録中、でしたネ。分かりましタ。
 王都行きは取りやめに致しまス。魔法機関車の運行権は皆様方ニ。どこへ向かいましょウ?』

>「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」

カザハ「マッチョバニーと戯れるため……?」
カケル「自分と無関係な部分の無駄知識は無駄に覚えてるこの人……!」

>「けど……正直ガチガチにチャート組んでRTAするのって俺達がする必要ないんだよな。
 どうせこのシナリオが解禁されたらプレイヤー達がこぞって壁に向かって
 ローリングしたり移動スキル連打して魔王城直行ルートを見つける筈だし
>「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

カケル(「このシナリオを遊ぶプレイヤー」……そう、この世界がゲームならプレイヤーなる上位存在がいるのは当然の理!
    俯瞰してノベルゲームのように楽しむ方式か各キャラにログインする方式かは分かりませんが……。
    カザハ……1巡目の時はサウンドクリエーターの人にログインされてましたけど、
    今度は資金調達班の誰かにログインされてるんじゃないですかね?)

>「という訳でそれを踏まえた上で聞くんだが――――みんなどこ行きたい?」

カザハ「このシナリオが単なるタイムアタックではなく今後のブレモンの資金調達も兼ねていると仮定して考えると……
    ガチRTAは得策ではないのは大前提として、二つ方向性が考えられるんだよね。
    多分どっちのルートでもクリアは出来るように組んであると思うんだ」

(この世界がゲームだということを最大限に考慮したメタな手法で推理し始めた!)

カザハ「まず一つは2巡目に沿ったパロディ。それでいくなら目的地は自ずとガンダラになる。
    もう一つは……敢えて2巡目とは全く違うルートでいく路線。
    本編でいかにも行きそうで結局行かなかったところって、いかにも番外編用のフィールドっぽいじゃん。
    つまりそういうところにいくとシナリオが進む可能性が高い……!」

カケル「例えば……?」

カザハ「ヒノデとか?」

カケル「島国ですよ!? いけないじゃ――ん!!」

(早速盛大に本筋から脱線しようとしている!)

78明神 ◆9EasXbvg42:2025/05/25(日) 19:37:03
スプレーのガスに引火した聖杖の火が、暗い荒野を真昼のように照らす。

>「明神!なにふざけてるんだ!…雄鶏源泉(コトカリス・フンスイ)!!」

見かねたジョンがスプリンクラーみてぇなスペルで水をばら撒き、あわや山火事の発生は食い止められた。
ついでに何故かジョンは燻った火種に部長の羽ばたきで風を送り、燃え上がる火を自分の身体で受け止める。

>「この感じ…なんだか…懐かしい感じがする…」

>「火だるまになりながらちょっと遠い記憶に浸ってるような表情してるのも意味が分からん……。
 マジでなんでだ?ブレモンってわりと男キャラも多めだしこういうカットにも需要があるのか……?
 いや、だとしてもなんでその需要を率先して満たしに行こうとしてるんだよ……」

「クソっこいつ俺のセリフ全部持っていきやがった!今回はお前がツッコミ役ってことなのか!?
 二巡目ん時は廃人特有のゲーマー天然ボケでこの俺をツッコミ過労死寸前まで追い込んだお前が!」

なんだよ今回めっちゃ楽できちゃうってことじゃーん!
しょうがねえなあ!じゃあ欠けたボケを補うために俺がちょっとだけ馬鹿になるわ……
とまぁそんなことを言ってる間に、爆発を魔剣で吸収したエンバースがベルゼブブシンにトドメを刺す。

>「発生した爆炎は俺のダインスレイブのエネルギーとして再利用出来る。
 1ターン目から手軽にダインスレイブを高出力モードに出来ちまうんだ。
 ミズガルズのブレイブPT、特に俺をアタッカーに使いたいなら必須級のアイテムだ。課金圧を感じるな?」

「出・た・よ!廃人お得意の自作自演カウンター!公式企画でこういうの紹介していいのかなぁ……?」

モンハンのRTAで死ぬほど見たわこういうの。自爆ダメージにカウンターとって強化状態に入るやつ。
そのうちこいつ背水だの火事場だの起動するためにHP調整とかやり始めるぞ。

「ジョンの既視感の正体がわかったわ。アヤコちゃんの『炎君』バフだろそれ。
 ……えっ、このさきずっとこいつ燃えたままRTA走ってくの?」

身体が燃えっぱなしのやつが2人もいるパーティってなんだよ。一人でも意味わかんねえのに!

>「あーあ!あのハイバラがまるでゲームが進んでちょっと難易度の高いボスが出てきたら
 「出し得モーションばっか」とか「敵だけ楽しそう」とか言い出す
 にわかストリーマーみたいな粋がり方して、このローウェルはがっかりなのです』

「うるせえぞクソ運営。プレイヤーが超火力出せるコンボ編み出したらすーぐ『想定された運用ではないので……』とか言って
 ナーフしやがって。ゲーム作んのはじめてなのか……??」

ワイキャイ言ってるうちにローウェルは列車に轢かれて死んだ。スイーツ()。
そこそこ溜飲を下して列車に乗り込むと、応対したボノに向かってエンバースが何やら試し始める。
二度目の試行で見事にパスワードロックが解除され、ボノが記憶を取り戻した。
良いのかなこれ……大体のNPCのイベントこれでスキップできない……?
行き先を取り消したボノが問うのは、このRTAにおける俺達の行き先。

>「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」

「えーっとぉ……まぁ目的としては色々あったんだけどぉ……」

>「マッチョバニーと戯れるため……?」

「いちばん本筋と関係ねえとこじゃねえか!」

79明神 ◆9EasXbvg42:2025/05/25(日) 19:38:20
カザハ君には俺達の歴史を刻む者として、合流前のおおまかないきさつを伝えてある。
まぁ確かにね……記憶に残るインパクトとしてはマスターが間違いなくトップだけどさぁ……。

>「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

「何さらっと自分を省いてんだオメー!王都でウキウキエンバーミングしてたの忘れてねえかんな俺は」

エンバースの提案を受けて、カザハ君が想定されるルートを並べていく。

>「まず一つは2巡目に沿ったパロディ。それでいくなら目的地は自ずとガンダラになる。
 もう一つは……敢えて2巡目とは全く違うルートでいく路線。
 本編でいかにも行きそうで結局行かなかったところって、いかにも番外編用のフィールドっぽいじゃん。
 つまりそういうところにいくとシナリオが進む可能性が高い……!」

「んーまぁ確かに……二巡目で行ったとこは二巡目プレイすりゃ良いって説もある。
 この広大なアルフヘイムで、大量に用意されたサブクエを踏まないってのも宣伝的には勿体ねえよな。
 とりあえず二巡目のメインクエを洗い出してみるか。そんで省けそうなとこを考えてみよう」

俺はインベントリから羊皮紙とペンを出して、アルフヘイム編終了までの二巡目の記憶を書き出していく。
これまでの旅路の中で、特に本筋に関わるものを整理する。
なんだかんだ今のパーティで初期も初期から参加してんの俺だけだしな。

▽荒野:チュートリアル、魔法機関車の乗車権入手←イマココ
▽ガンダラ:機関車燃料補充のためのクエスト。マルグリットとの邂逅、ローウェルの指環入手。
▽リバティウム:人魚の泪入手。エカテリーナ、ミハエルとの邂逅。エンバース、カザハ君の加入。
▽キングヒル:バロールとの邂逅、世界の真実(大本営発表)の開陳、クーデター。ジョン加入。
▽アコライト:ユメミマホロ、帝龍との邂逅。超レイド級の初撃破。
▽デリンドブルグ:マルグリットとの再開、親衛隊との邂逅
▽アイアントラス:ロイ・フリントとの邂逅
▽レプリケイトアニマ:アラミガとの邂逅、ヴィゾフニール入手
▽始原の草原:フタミコ、グランダイト、マリスエリス、ロスタラガム、スターズとの邂逅。覇王軍との同盟締結
▽エーデルグーテ:オデット、アシュトラーセ、エンデとの邂逅。『銀の魔術師モード』解禁、プネウマ勢力との同盟

ほんで世界の真実(ガチ)が解禁されて、シナリオはニヴルヘイムに移る……って感じだったはずだ。

「とりあえずガンダラは省けるな。燃料は今んとこ十分ある。マル公もシナリオどおりなら向こうから接触してくる……。
 直近で必要なのは『人魚の泪』だな。現物だけじゃなくて、力を開放するにはマリーディア周りのイベント達成が条件だ」

超レイド級ミズガルズオルムの召喚キーアイテム、『人魚の泪』。
人魚の女王マリーディアが結婚詐欺に引っかかってガチギレした時の怒りと悲しみパワーの結晶体だ。
アルフヘイムに眠るミドやんを従えるには、マリーディアの抱える問題を解決する必要がある。

そして、ミドやんを仲間にできるのなら――管理権限を開くための6属性の一端を担わせることもできる。
ガンダラは……マスターに会いたい気持ちはあるけれども。
まぁそれはRTAでやるこっちゃねえわ。どうせ普段はおれガンダラでBOTと一緒にグダ巻いてるしな。

「このままリバティウムへ行こうぜ。アイテムの取りこぼしが出るようなら鉄道でガンダラにもすぐ戻れるからよ」

80明神 ◆9EasXbvg42:2025/05/25(日) 19:39:59
【リバティウム】

海都リバティウム。アルメリア王国第二の都市であり、経済と交易の中心地。
陸路と海路の交わる結節点として、今日もとんでもない額のルピが動いている。

「あとは……カジノがめっちゃ有名。だからまぁ大体ラスベガスだよこの街は」

リバティウム初見さん(ジョンとか)に向けて俺は雑に解説した。

「ここでやるべきことは人魚の泪入手のためのクエストだな。
 ライフエイクっていうヤクザの元締めの邪悪なおっさんと交渉する。
 確か、デュエラーズなんちゃらトーナメントっていう天下一武道会みてえな大会の優勝賞品だったはずだ」

交渉が済んだらトーナメント開催までしばらく街で自由行動でも良いだろう。
RTAの本筋からは外れるけどガバガバオリチャーの範疇としてご容赦願いたい。
そんなわけで、駅からまっすぐライフエイクの居るカジノ『ぱらだいす☆ろすと』まで来たわけだけど……

「あれ……?なんかカジノのデザイン違わない……?」

自慢じゃないが俺はリバティウムのマップなんか目を瞑ったって歩ける。
『失楽園(パラダイス・ロスト)』は間違いなくここにあったはずだ。
だが眼の前に建っている構造物は、カジノというよりも……酒場。

看板にはアルメリアの文字で『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』と書いてあった。
それは鉱山都市ガンダラの、クエスト起点となるロケーションの名前だ。

「やべぇ……やべえやべえぞこれは!まさか!!」

ドアをぶち破らん勢いで開ける。土地の大きさに合わせてなのか、酒場にしてはえらく広いホールを駆ける。
ビリヤードやらポーカーテーブル、果てはスロットマシンまで存在する、酒場とカジノがごった煮になったエリアを抜けて。
分厚いVIPルームの扉を開いた。そこには――

「あら、随分と元気の良いお客さんねン」

品の良いタキシードを着込んだ、筋骨隆々の大男――頭部にはピンと立ったウサギ耳が生えている。
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』、ガンダラの酒場のマスターだ。

「ま、混ざってるーーーーっ!?」

――俺達は本来、二巡目のシナリオ再走のために荒野からガンダラへ向かうはずだった。
だがボノの記憶を叩き起こし、省略可能と判断したクエストをスキップしてリバティウムへ直行した。
その結果、クエストフラグがめちゃくちゃになって――ゲームがバグった。

この企画はプロデューサーのローウェルがワンオペでやっている。
デザイナーの不在で敵のデザインが使いまわしになったように……本来バグ修正を行うはずのプログラマーも居ない。
バグったゲームのRTAをやるってことかよ……!?

「ギャンブルの結果に納得できず直談判……ってところかしら。
 でもダメよ。ここの賭けはすべてこのガブリエッラが責任もって公平に管理してるし、誰か一人を特別扱いなんてしない。
 ……ウフフ。せっかくVIPルームまでお越しいただいたんだもの、アタシが手づから接待してあげちゃう」

ガブリエッラ――そういやマスターってそんな名前だっけ――が立ち上がり、パンパンに張ったタキシードを脱ぎ捨てる。
白日の下に現れたのは、当たり前のように……バニースーツだった。

「またのご来店をお待ちしているわ、お客様」

爆発したみたいに膨れ上がった太腿が推進力を生み出して、バニー姿の大男が両手を開いて突進してきた。
シンプルなタックル……軽自動車くらいなら轢き潰せそうだ。

【クエストスキップの影響でバグる。ライフエイクとガンダラのマスターが混ざる】

81ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/31(土) 22:16:42
「もう少し…もう少しで思い出せそうなんだ…!」

僕は火炎に飲まれながらそんな事を考えていた。
マジメに頑張ろうかなとも思ったけどこうなったら好きにやっても。

>カザハ「なるほど、常に体を張った芸を繰り広げていたのか……」
>カケル「お笑い芸人じゃないですからね!? 常に体を張ってたのは合ってますけど!」

>「ジョンの既視感の正体がわかったわ。アヤコちゃんの『炎君』バフだろそれ。
 ……えっ、このさきずっとこいつ燃えたままRTA走ってくの?」

明神がふと思い出したようにある女性の名前を挙げる。
その記憶の奥底からその瞬間記憶が…蘇ってくる事はなかった。

「クッ…なぜだ…僕の何が足りないんだ…!」

そういえばボス戦中だった気もする。
僕は一度記憶を思い出すのを中止してボスの方に振り向くが…。

>「……さて、これでチャプタークリアな訳だが。お前はいつまでそこで突っ立ってるんだ?」

僕が明神の言う【アヤコ】という恐らく女性を思い出そうと必死に唸ってる間にボス戦は終了していた。
いや展開早いな…この週からして普通じゃないからそりゃそうか…

>「あーあ!あのハイバラがまるでゲームが進んでちょっと難易度の高いボスが出てきたら
 「出し得モーションばっか」とか「敵だけ楽しそう」とか言い出す
 にわかストリーマーみたいな粋がり方して、このローウェルはがっかりなのです』
>「うぐっ!や、やめろ!共感性羞恥が……じゃなくて!不特定多数のユーザーを殴るんじゃない!
 ていうか俺の本名出してよかったのかよ!ネタバレとか――」

「喧嘩は同レベルでしか発生しない…と。」

時間があるうちにカザハと情報共有でもしているか…
積もる話も一杯あるしな…時間が許す限りカザハと喋るべきだろう。

決して僕がしゃべりたいだけじゃないぞ…本当だよ?

「カザハ〜〜!!」
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

僕の声はけたたましい音を発する汽車の音で全てかき消される。

>「――そろそろ列車の時間だ」

「……………」

言いたい事は多くあったが言ってもキリがないので大人しく列車に乗る事にした。

「おっと…体の火は消さないと…」

記憶はないが、どうすればいいかはなんとなくわかっていた。

「沈まれ…!俺の右目…!」

ソンジョソコラノ!チンプナ!チュウニビョウト!イッショニスルナデスワー!!
アッハハハハ!!
チョ!ワラワナイデクダサイヨバルサン!!

そう唱えるとどこからともなく叫び声と笑い声が聞こえた………気がした。
それと同時に火も収まった。

82ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/31(土) 22:16:54
>『そして今は快速シナリオの収録中、でしたネ。分かりましタ。
 王都行きは取りやめに致しまス。魔法機関車の運行権は皆様方ニ。どこへ向かいましょウ?』

>「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」


「僕はなゆの旅は話でしか知らない…でもせっかく経験できるならしてみたいな…
よく前の週の最後の方は覚えてないけど…それでもまたみんなで集まって旅できるなんて…夢みたいだから…」

僕のしたことを考えれば贖罪の道が待っていたはずだった。
けど今またみんなで…楽しく世界を回っている。

純度100%の楽しい…楽しむためだけの旅。
僕には勿体ない幸運だと思う

>「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

「そうだろうね。自分で言うのもなんだけど僕なんてどう考えても面白外人枠だし…
…なんならカザハが人気キャラだからついでに選ばれた可能性も…」

自分で言ってて悲しくなってきた。
そんな僕を察したのかカザハがヨシヨシしてくれている。

>「という訳でそれを踏まえた上で聞くんだが――――みんなどこ行きたい?」

正直みんなと一緒ならどこにでもいきたい。

>「このままリバティウムへ行こうぜ。アイテムの取りこぼしが出るようなら鉄道でガンダラにもすぐ戻れるからよ」

明神は旅の過程・なんでその場所に寄ったのか。最終目的はなんだったのかをメモを僕達全員に手渡ししてきた。
意外と几帳面なんだよな明神って…人を馬鹿にするために相手を知る必要があるからだろうか。

83ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/31(土) 22:17:06
というわけで海都リバティウムにやってきたのだが

>「ここでやるべきことは人魚の泪入手のためのクエストだな。
 ライフエイクっていうヤクザの元締めの邪悪なおっさんと交渉する。
 確か、デュエラーズなんちゃらトーナメントっていう天下一武道会みてえな大会の優勝賞品だったはずだ」

「ふむふむ」

完全にバスツアーのガイドさんになった明神とその一行は案内されるがまま、酒場の前にやってきた…あれ?カジノだったはずでは?

>「あら、随分と元気の良いお客さんねン」
>「ま、混ざってるーーーーっ!?」

筋骨隆々の大男がうふっとハートマークを飛ばしている。
明神の顔を見る必要もなくわかる。異常事態だと。

>「またのご来店をお待ちしているわ、お客様」

店内で混乱し、叫び声をあげた明神を敵だと認識したのか
外装を投げ捨て、バニスーツ姿となった酒場の店主が明神に突っ込む。あ、突っ込むって変な意味じゃないですよ

ドゴオオオオオオオオン!

「確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!」

明神と大男の間にタックルで割って入ると
ぶつかった衝撃でVIPルームの人や物が勢いよく吹き飛ばされる。
僕達が通ってきた一般の遊び場からは一体なんの騒ぎだと野次馬の声も聞こえだす。

「あら……あなた案外やるのね?」

「僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!」

確かにいきなり押し入って大騒ぎした僕達が悪い。
なので事情を説明し、理解を求めれば穏便に済ませられるはずだ。
交渉事はエンバースと明神に任せよっと!この場所よく知らないしね。

「ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!」

マスターが急にマッスルポーズを取るとマスターの筋肉に滴る汗…ではなくピンク色の魔法のような波動がマスターから放たれる。
他のみんなは何らかの回避手段を使ったり、驚いてモロ食らいしたりした…僕は後者で…そしてその魔法はフローラルな香りがした。

「うぇ!?…ん?なんだこれ…服が…!」

魔法を浴びた僕は気づいたらマスターと同じバニーガールの姿に着替えさせられていた。
元の服は足元に丁寧に畳まれて置いてある。

「ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?」

ズドン!!!

僕は力なく地面に大の字に倒れ込んだ。

「誰か僕を殺してくれ…」

アヤコザイゼンジヲ!チュウニアツカイシタ!バツダバーーーカ!!!!
プリントスクリーンレンダハ,チョットキモイヨ

という記憶にない声が聞こえた気がした。

84embers ◆5WH73DXszU:2025/06/07(土) 22:46:16
『このシナリオが単なるタイムアタックではなく今後のブレモンの資金調達も兼ねていると仮定して考えると……
    ガチRTAは得策ではないのは大前提として、二つ方向性が考えられるんだよね。
    多分どっちのルートでもクリアは出来るように組んであると思うんだ』

「確かに?アドベンチャーゲームってルートやエンディングが多彩な方が楽しいしな」

『まず一つは2巡目に沿ったパロディ。それでいくなら目的地は自ずとガンダラになる。
    もう一つは……敢えて2巡目とは全く違うルートでいく路線。
    本編でいかにも行きそうで結局行かなかったところって、いかにも番外編用のフィールドっぽいじゃん。
    つまりそういうところにいくとシナリオが進む可能性が高い……!』

「いつになく冴えているじゃないか。続けてくれ」

『例えば……?』
『ヒノデとか?』

「……ん゛っ」

実際のところ、エンバースはニ巡目の旅でヒノデを訪れている――なゆたと二人きりで。
別に隠すような事でもない――が、さりとて明け透けに放言するような事でもない。
隠すのはちょっとダサい気がするが正直に話しても絶対居心地の悪い事になる。

『島国ですよ!? いけないじゃ――ん!!』

結局――エンバースはだんまりを決め込んだ。
今の自分が事の真相を知っているプレイヤーからどう見えているかについては――考えない事にした。

『んーまぁ確かに……二巡目で行ったとこは二巡目プレイすりゃ良いって説もある。
 この広大なアルフヘイムで、大量に用意されたサブクエを踏まないってのも宣伝的には勿体ねえよな。
 とりあえず二巡目のメインクエを洗い出してみるか。そんで省けそうなとこを考えてみよう』

『とりあえずガンダラは省けるな。燃料は今んとこ十分ある。マル公もシナリオどおりなら向こうから接触してくる……。
 直近で必要なのは『人魚の泪』だな。現物だけじゃなくて、力を開放するにはマリーディア周りのイベント達成が条件だ』

「カザハ、今回はアレ持ってないのか?攻略本。細かいシナリオの流れとか確認したいんだ。
 ガンダラに行った事を何故か知ってた辺り、ニ巡目のシナリオの記憶はあるにはあるんだろうけど。
 なんで知ってるか分からない記憶って……こう、モヤモヤしててやり難いんだよな」

みんなもうろ覚えな部分があったら読んどけよな、とエンバース。
これで全員が自分がいなかった土地や場面についての記憶を完備していても何もおかしくなくなった。

『このままリバティウムへ行こうぜ。アイテムの取りこぼしが出るようなら鉄道でガンダラにもすぐ戻れるからよ』

「そうしよう。けど、あまり楽しい時間は過ごせそうにないぜ。
 改めてシナリオと設定を確認したけど……攻略までそう大してかからなさそうだ――」




『あれ……?なんかカジノのデザイン違わない……?』

「――よし、前言撤回だ。なんだか雲行きが怪しくなってきた」

『やべぇ……やべえやべえぞこれは!まさか!!』
『あら、随分と元気の良いお客さんねン』
『ま、混ざってるーーーーっ!?』

「なんだ、どうなってる?……バグってるのか?ガンダラをクリアせずにスキップしたから?」

85embers ◆5WH73DXszU:2025/06/07(土) 22:47:44
『ギャンブルの結果に納得できず直談判……ってところかしら。
 でもダメよ。ここの賭けはすべてこのガブリエッラが責任もって公平に管理してるし、誰か一人を特別扱いなんてしない。
 ……ウフフ。せっかくVIPルームまでお越しいただいたんだもの、アタシが手づから接待してあげちゃう』

「――おいちょっと待て。思い出してみてくれ…………いや、ダメだ!
 俺あんまりマスターとイイ感じの思い出がないぞ!それ自体は幸運な事かもしれないけどさ!」

『またのご来店をお待ちしているわ、お客様』

「――来るぞ!」

直後に響く激突音/放射状に爆ぜる衝撃波/蹂躙される内装。
ジョンがマスターのタックルを食い止めていた。

「……これはこれで需要がありそうな絵面……なのか?」

『確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!』
『あら……あなた案外やるのね?』
『僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!』

「さっき攻略本読んどけって言ったろ!?なんだ?カザハに読み聞かせしてもらわなきゃご本も読めないのか!?」

『ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!』

マスター=ラブリーかつマッシブなポーズ/そこから放たれる桃色の魔法。
エンバースはダインスレイブをそれを吸収――

『うぇ!?…ん?なんだこれ…服が…!』

瞬間、ダインスレイブが黒いシックなリボンとレースでデコレーションされた。
見れば魔法の直撃を受けたジョンは全身バニーコーデにされている。

『ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?』
『誰か僕を殺してくれ…』

「なんだこのクソ魔法……こんなん新規実装してる暇あったらバグ取りしろよアホバロール。
 ……いや、逆にバグフィックスを優先してないって事は、バグ利用も前提のRTAをしろって事なのか?」

エンバースが暫し考え込む。
ふと抗議の声めいた共鳴音=ダインスレイブ(バニースキン)が震えている。
どうやらコーディネートが不満らしい。エンバースは再び数秒考え込んで――

「とうっ」

先ほど吸収した桃色魔力を明神に向けて解放した。
フローラルな香りと桃色の煙が一瞬弾けて、バニー姿の明神が爆誕した。

「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

ひとしきり笑った後、エンバースはマスターへと向き直る。

86embers ◆5WH73DXszU:2025/06/07(土) 22:47:57
「はー、おもしろ……さて。さっきは前言撤回って言ったが、やっぱりそれも撤回するよ。
 想定外のバグはあったが、結局のところこのチャプターのクリア条件は極めてシンプルだ」

ダインスレイブが一閃――マスターのバニースーツのみを精密には切り裂く/はだけさせる。
野太い悲鳴/身体を両腕で隠してしゃがみ込む巨漢。
隠し切れない地肌――そして無数の縫い目/複数の魔物の体組織。

「よし、ちゃんとそこにいるんだな。なら話は早い。さあ思い出せ。お前の望みと結末についてだ。
 正直、お前の所業を考えれば、最後に一目会えただけでも過ぎた幸運だったと思うけどさ。
 このバグったシナリオの中でなら、もっといいエンディングに辿り着けるかもしれないぞ」

ニ巡目の記憶を刺激。
マスターの顔グラフィック、その左半分がぼやける――ライフエイクへと変貌する。
ムサラマ・レイルブレードを召喚/ダインスレイブを納刀=魔力を急速チャージ。

「闘技大会を開くのはマリーディアを召喚する魔力を確保する為……。
 だが今の、三巡目の俺なら……それくらいのエネルギーは一人で発揮出来る。さあ、門を開け」

鞘に設置されたインジゲータランプが赤く点灯。
居合の構え=見せつけるように大仰に。

「さもないと――危ないぞ」

ライフエイクが右手を突き出す/境界門が開く。
そこに打ち込まれる電磁抜刀ダインスレイブ。
超高密度の魔力刃が門に組み込まれた召喚術式へと充填。
人魚の女王、マリーディアを現世へと呼び戻した。

「よしよし、これでめでたく感動の再会――」

そして再び現世へと舞い戻ったマリーディアが最初に目にしたのは――



――かつての恋人の顔半分がオカマっぽくなっていて、ついでにおはだけバニースーツを着ている姿だった。
響く絶叫。マリーディアはブチギレた。

「あー…………こういう感じか」

カジノの外からミドガルズオルムの咆哮が聞こえる。そちらも心なしか不機嫌そうだ。

「けど……同じ超レイド級のタイラントをイクリプスの小隊がぼちぼち倒せる事を考えると……
 今の俺達なら普通に倒せるだろ……まあ、俺は炎属性だし今回は後衛に回るけど……」

87カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/06/13(金) 21:53:02
>「そうだろうね。自分で言うのもなんだけど僕なんてどう考えても面白外人枠だし…
…なんならカザハが人気キャラだからついでに選ばれた可能性も…」

カザハ「あれ? むしろ自分、他の人気キャラの引換券さんとか色違いバージョンとか
    逆に「全く似てないやん!」とかネタにされてそうな枠だったような……。
    でも……そんなキャラいないよな……」

(とか言いながらナチュラルにジョン君をよしよしする)

>「とりあえずガンダラは省けるな。燃料は今んとこ十分ある。マル公もシナリオどおりなら向こうから接触してくる……。
 直近で必要なのは『人魚の泪』だな。現物だけじゃなくて、力を開放するにはマリーディア周りのイベント達成が条件だ」

(ガンダラで散々な目に遭った明神さん的にはそりゃ当然省きたいだろう!
何はともあれ、次の目的地は決まった!)

>「あれ……?なんかカジノのデザイン違わない……?」
>「やべぇ……やべえやべえぞこれは!まさか!!」
>「あら、随分と元気の良いお客さんねン」
>「ま、混ざってるーーーーっ!?」

カザハ「なんてこった! マッチョバニーからは逃れられない仕様なのか――ッ!」
カケル「明らかに喜んでますよね!?」

>「ギャンブルの結果に納得できず直談判……ってところかしら。
 でもダメよ。ここの賭けはすべてこのガブリエッラが責任もって公平に管理してるし、誰か一人を特別扱いなんてしない。
 ……ウフフ。せっかくVIPルームまでお越しいただいたんだもの、アタシが手づから接待してあげちゃう」
>「またのご来店をお待ちしているわ、お客様」

(突進してきたマスターと、割って入ったジョン君が激突する!)

>「確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!」
>「僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!」

>「ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!」
>「うぇ!?…ん?なんだこれ…服が…!」
>「ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?」

(マスターの謎スキルが炸裂し、ジョン君はバニー姿になった!)

>「誰か僕を殺してくれ…」

カザハ「だ、大丈夫だよ、それも似合ってるから……!」(←慰めてるつもり)
カケル「余計落ち込みますよ!?」

>「なんだこのクソ魔法……こんなん新規実装してる暇あったらバグ取りしろよアホバロール。
 ……いや、逆にバグフィックスを優先してないって事は、バグ利用も前提のRTAをしろって事なのか?」
>「とうっ」

(エンバースさんの攻撃(!?)により、明神さんもバニー姿になった!)

>「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

88カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/06/13(金) 21:53:53
カザハ「た、確かに……一部の層には大ウケしそう……!」
カケル「あなた、明らかにその大ウケする層のうちの一人ですよね!?」

(他人事のような顔をしているカザハだが、ヘッドギアからウサ耳が生えている!
胴体は無事だったが、頭だけ攻撃を防ぎ損ねて掠ったと思われる!)

カケル(面白いから黙っとこう……)

(真顔に戻ったエンバースさんが話をサクサク進める)

>「はー、おもしろ……さて。さっきは前言撤回って言ったが、やっぱりそれも撤回するよ。
 想定外のバグはあったが、結局のところこのチャプターのクリア条件は極めてシンプルだ」
>「よし、ちゃんとそこにいるんだな。なら話は早い。さあ思い出せ。お前の望みと結末についてだ。
 正直、お前の所業を考えれば、最後に一目会えただけでも過ぎた幸運だったと思うけどさ。
 このバグったシナリオの中でなら、もっといいエンディングに辿り着けるかもしれないぞ」
>「闘技大会を開くのはマリーディアを召喚する魔力を確保する為……。
 だが今の、三巡目の俺なら……それくらいのエネルギーは一人で発揮出来る。さあ、門を開け」
>「さもないと――危ないぞ」
>「よしよし、これでめでたく感動の再会――」

(半分オカマバニーを目撃したマリーディア、ブチギレた!)

>「あー…………こういう感じか」

(ブチギレたミドガルズオルムが召喚された!)

>「けど……同じ超レイド級のタイラントをイクリプスの小隊がぼちぼち倒せる事を考えると……
 今の俺達なら普通に倒せるだろ……まあ、俺は炎属性だし今回は後衛に回るけど……」

(外に出てみると、海に巨大なミドガルズオルムが出現している!
過程はいろいろ酷かったが、ここは二巡目と同じ流れだ! でも何かがおかしい)

カザハ「なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?」

(3Dグラフィック黎明期の、大きめのパーツ繋ぎ合わせたような感じのやつになってる)

カザハ「きっと、ああいうでかいのうねうね動かすの大変だから、予算削られちゃったんだ!
    みのりさんいないしどうやって倒そう。流石にでかすぎてスプレー引火作戦は使えなさそうだし……。
    確かあの時……明神さん達はライフエイクのほうと戦ってたんだよね。
    飛行系キャラじゃないと立ち回り厳しいかもだからとりあえず行ってみるね」

(馬型になったカケルにまたがって、とりあえず突撃する。
 シナリオの雰囲気に合わせてノリも初期の突撃バカ寄りに戻されているらしい!)

カザハ「パーツ繋ぎ合わせたように見える……ということはもしかして……エアリアルウェポン!」

(巨大なハンマーを生成する。それをパーツの一つにむかって振るうと、スコーン!とだるま落としのようにパーツが吹っ飛んだ!)

カザハ「あっ、そういう感じ!?」(調子に乗って次々パーツを吹っ飛ばす)「あれ……?」

(ふと気付くと、吹っ飛んだパーツ(円柱形)が、タイヤのように高速回転しながら一行のほうへ突っ込んでいってる!
タコとかイカって切った足がしばらく動いてるけど、多分そんな感じのやつ!)

カザハ「ぎゃああああああああ!! 避けてええええええええええ!!」

89明神 ◆9EasXbvg42:2025/06/16(月) 00:57:28
マスターの砲弾じみたタックルが俺を狙う。
そこへジョンのカバーが間に合った。筋肉同士の激突する音が臓腑を揺るがす。

>「確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!」

「むしろなんで生きてんだよお前はよ……」

いや生きてて良かったんだけどさぁ!トラックの玉突き事故みてえな音がしましたよ今!?
こいつもうトラックに轢かれても異世界転生は出来ねえな。異世界来てっけど今。

>「……これはこれで需要がありそうな絵面……なのか?」

隣でエンバースが信じられないくらい雑なコメントを漏らす。
ビビるわお前……全肯定Botかなんかなの?

>「僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!」

ジョンがびっくりするくらい要領を得ない説明をする。
マスターはそれを聞いて合点がいったようだった。なんで……?

>「ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!」

瞬間、マスターから放たれるピンク色のビーム!
回避(軽装ローリング)に成功した俺と違い、ジョンはそれをまともに食らった!

>「ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?
  ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?」
>「誰か僕を殺してくれ…」

五体を投げ出して倒れ込むジョン。
そしてその均整の取れた肉体美には――ぴっちりしたバニースーツを纏っていた。

「う、うわっ、うわああああ!バニーが伝染ったぁ!?」

やべえ。早くも状況がカオスに飲み込まれてきた!
誰が得するんだよこの光景!視聴者諸兄の困惑が画面越しに伝わってくるようだ。
企画倒れの匂いがプンプンするぜェーッ!

>「だ、大丈夫だよ、それも似合ってるから……!」

クソっ2体目の全肯定Botが出現しやがった!しょうがねえ俺もちょっとだけ肯定するわ……。

「イケメンマッチョバニーには需要が存在するはず!
 ジョン君にはバニーVerとしてこの先の人生を歩んでもらう他あるまい!」

>「なんだこのクソ魔法……こんなん新規実装してる暇あったらバグ取りしろよアホバロール。
 ……いや、逆にバグフィックスを優先してないって事は、バグ利用も前提のRTAをしろって事なのか?」

エンバースが何事か思案げに呟く。その手にはキレイにラッピングされた魔剣があった。
あっこいつ!魔剣に吸わせて難を逃れてやがる。

「発動後の魔法も吸えるんだねそれ……。ジョンのバニーも吸ってやれよ。ディスペルディスペル」

と、ここで俺はついエンバースに話しかけてしまった愚を悟った。
ダインスレイヴが吸った魔法はそのまま手元で滞留を続けている。
どこかにそれを捨てる必要があって……エンバースの視線が俺に向いた。

90明神 ◆9EasXbvg42:2025/06/16(月) 00:58:06
>「とうっ」

「ぐあああああああ!!??」

エンバースがぺいっとほっぽり出した魔法が直撃した。
地球から持ち込んだ背広が爆散し、代わりにラバーめいた光沢のあるバニースーツが身体を包む。
とうっ。じゃねンだわ!お前そんな元気の良いキャラじゃなかっただろ!?

>「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

「酔っ払ってんのかオメーはああああ!!
 ブレモンRTAが15禁のちょっとエッチなゲームになっちまうじゃねえか!」

俺達の露出度上げてどうすんだよ!
本編のクールでニヒルないけ好かねえ陰キャのエンバースはどこ行った!

「おいやべえぞこいつが一番ハメ外してんじゃねえか。
 エンバース(陽キャVer)実装でトリプルピックアップでもする気か!?」

>「た、確かに……一部の層には大ウケしそう……!」

「逆に平常運転でこんだけイキイキしてるカザハ君はなんなんだよ……」

曲がりなりにも生物学上おそらく女キャラであろうこいつがバニー回避してんのおかしいだろ。
若干回避出来てねえけど。うさ耳がちょっといい感じデザインにまとまってるしよぉ。

>「はー、おもしろ……さて。さっきは前言撤回って言ったが、やっぱりそれも撤回するよ。
 想定外のバグはあったが、結局のところこのチャプターのクリア条件は極めてシンプルだ」

で、凄まじく長い余談の果てに話が本筋に戻る。
エンバースがマスターのおべべをひん剥くと(やべーぞ!)、その素肌には色んな魔物が縫い合わされていた。
――『縫合者(スーチャー)』。ライフエイクの魔物としての個体名。
バグった関係でごちゃごちゃ混ざっちゃいるが、奴は確かにマスターの中に存在した。

エンバースの指示のもとライフエイクが門を開く。
そこにダインスレイブの一撃を叩き込み、晴れてマリーディアとのご対面となった。
結婚詐欺師との再会にウキウキでやってきたマリーディア。
そこにいたのはマスターと融合してブラクラみてえになったライフエイクだった。

マリーディアはいきなりキレた。

>「あー…………こういう感じか」

「そりゃそうだろ過ぎる……」

そんなこんなで結局俺達はキレ散らかしたミドやんを鎮めるべくレイドバトルに挑むハメとなった。

>「けど……同じ超レイド級のタイラントをイクリプスの小隊がぼちぼち倒せる事を考えると……
 今の俺達なら普通に倒せるだろ……まあ、俺は炎属性だし今回は後衛に回るけど……」

「こいつ……引っ掻き回すだけ引っ掻き回した挙げ句引っ込みやがって……」

91明神 ◆9EasXbvg42:2025/06/16(月) 00:58:26
>「なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?」

「うわぁ……ローポリミドやんだぁ……カスみてえなスペックのグラボ使ってんじゃねえだろうな」

おしまいだよォ!デザインの使い回しどころかまともに描画も出来てねえじゃねえか!
よくこんな開発体制で企画スタートできたな!?見切り発車にも程があるだろ。

カザハ君がカケル君といっしょにミドガルズオルム(低スペVer)へ突撃する。
生成したハンマーでぶん殴ると、動くヘビのおもちゃみたいにカクカクのパーツが一個吹っ飛んだ。
脱落したパーツはまだ生きていて、ウネウネのたうちながら高速でこっちに飛んできた。

>「ぎゃああああああああ!! 避けてええええええええええ!!」

「うおわあああああ!?」

「ぬぅン☆」

身を竦ませる俺の隣から太い腕が伸びて、小岩のような拳がローポリの断片をぶん殴る。
ミドやんのパーツが明後日の方向へすっ飛んでいった。

「ま、マスター!身体の主導権を取り戻したのか!」

「やぁね。人の顔を見るなり発狂するなんて、あの人魚姫……ちょっと傷ついたわ。ちょっとだけね」

さっきまで『表』に出てたライフエイクは身体の一部に戻り、今はマスターが顔を出している。
こいつらがどういう経緯で縫合者として混ざりあったのかは知らんが、多分そういう背景設定みたいなのは特にないんだろう。
バグで生まれたモンスターだしな……。

「……ていうかマスターすげえ格好だな!?ごめんねウチの子が服刻んじゃって」

エンバースにひん剥かれたマスターは半裸の状態だった。
上半身は完全に露出し、下半身は刻まれたバニースーツを巻き付けるように保持している。
うさ耳の、筋骨隆々の、黒いフンドシ一丁のおっさんがそこに居た。

「でもなんだか懐かしい、この感じ……。アタシはカジノの経営者。夢追う者を奈落へ誘う非道の仕事。
 なのに今、この身体は……あの子の悲しみに寄り添おうとしてる」

いくつもの魂が混ざりあった『縫合者』。主体となってるのはライフエイク、そのはずだ。
だが今、俺の眼の前に居るのは――ガンダラで俺に寄り添ってくれた、あの姿。
客の吐き出した悲しみを受け止め、一杯の酒で洗い流す、マスターの姿だ。

「お酒はね、傷の消毒にも使えるの。心の傷だって、きっとお酒で洗えるはずよ。
 荒ぶり続けるあの子の悲しみが何もかもを壊してしまう前に……アタシが洗ってみせるわ」

やることは決まった。
低スペミドやんのパーツ全部ぶっこ抜いて、本体をもう一度引きずり出す。
ミドガルズオルムをボッコボコにぶん殴って、大人しくさせるんだ。


【キレ散らかしてるマリーディアにマスターの人生相談をぶつける→ミドやんのパーツ全部ぶっこ抜いて本体を露出させよう】

92ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/06/22(日) 03:52:08
>「だ、大丈夫だよ、それも似合ってるから……!」

カザハが倒れ伏した僕にフォローを入れる。
似合ってるかどうかじゃないんだよ…本当に嫌なんだこの恰好…

「どんなに頑張っても脱げないしさぁ!」

僕は魂の叫びをよそに、物語は進んでいく。

>「ぐあああああああ!!??」

>「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

「僕達の性が大安売りだな明神…ハハハ」

半ばあきらめの境地に達していた。

>「よし、ちゃんとそこにいるんだな。なら話は早い。さあ思い出せ。お前の望みと結末についてだ。
 正直、お前の所業を考えれば、最後に一目会えただけでも過ぎた幸運だったと思うけどさ。
 このバグったシナリオの中でなら、もっといいエンディングに辿り着けるかもしれないぞ」

正直説明を受けても尚…ストーリーの進行は僕にはよくわからないが…
そこはエンバースと明神に任せておこう…とにかく僕が今したいのは…

「頼む…誰が殴らせてくれ…!!」

ヒッ

バロールの息をのむ音が聞こえた気がしたが、どうせお前無敵なんだろ…!!

>「よしよし、これでめでたく感動の再会――」
>「あー…………こういう感じか」

僕が服を引きちぎろうとしたその時外から巨大な叫び声が聞こえてくる。
どうやらエンバースが必要な事を必要なだけやったようだ

「どうせ万事何事も解決とは思ってないさ…それで…殴っていいのはどれだ?」

ビキビキデクサ~!

くそムカツク声が聞こえた気がしたが無視をして外に出る。

93ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/06/22(日) 03:52:22
>「なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?」

なんていうか…図形を組み合わせたような姿の巨大な蛇(?)が海にいた。

>「きっと、ああいうでかいのうねうね動かすの大変だから、予算削られちゃったんだ!
    みのりさんいないしどうやって倒そう。流石にでかすぎてスプレー引火作戦は使えなさそうだし……。
    確かあの時……明神さん達はライフエイクのほうと戦ってたんだよね。
    飛行系キャラじゃないと立ち回り厳しいかもだからとりあえず行ってみるね」

「ちょっと待てカザハ!一人じゃ危ないぞ!」

静止を振り切りカザハが一人でミドガルズオルム?に突撃する。
カザハの攻撃は調子よく図形のようなパーツを剥がすが…。

>「ぎゃああああああああ!! 避けてええええええええええ!!」

悲鳴が聞こえるよりも先に、カザハの攻撃よって飛ばされたパーツがこちらに目掛けて飛び込んでくる。
まずい…このままじゃ街に被害が…そう思ってた時

>「うおわあああああ!?」
>「ぬぅン☆」
>「ま、マスター!身体の主導権を取り戻したのか!」
>「やぁね。人の顔を見るなり発狂するなんて、あの人魚姫……ちょっと傷ついたわ。ちょっとだけね」

フンドシ…いやいやなんか感動的な話してるっぽいし…目の前に危険は迫ってるしで気にしてる余裕はない。

しかしあんな巨大な蛇にどうやって有効打を入れるか…
部長で突進してもいいが大量の欠片が飛び散るのは街に被害が出てしまうので理想的ではない…となれば

「ううーーーむ………あっ!」

これは我ながら名案かもしれない!
僕は部長の背に乗り!欠片の問題をどうするか迷っているカザハに近寄る

「カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!」

僕の声に反応したカザハはハンマーで欠片を僕に向かって飛ばす。

「生物に向かってどんでいく性質は…こちらには好都合!雷刀!プレイ!」

僕は空を飛ぶ部長の背で仁王立ちすると…雷刀をバットのように持ち、そして野球選手のように構えた。

「男の勝負はストレート一直線!!!!」

雷刀の面の部分を力が一番伝わりそうな部分に当て、そして僕の全身全霊の力で降りぬく!

カキイイイイイイイン!

小気味というには凄い巨大な音と衝撃波を発生させながら巨大モンスターの欠片(?)は元の持ち主へと吹っ飛んでいく。

「同じ質量を衝突させればいい…」

僕のフルスイングから弾き返された欠片は元の持ち主の別の部位に命中し、命中した部位ともども粉々に砕け散る。
流石に人間の小指にも満たない小さい欠片では攻撃機能を維持できないのか…海にポトポトと落ちていく。

完璧な作戦だと胸を張ったその刹那

巨大な蛇(?)ミドガルズオルムはその巨大からは想像もできない軽快さで空中に跳ぶ
いくら巨体で俊敏とは言え…攻撃そのものは回避できる…だが…ミドガルズオルムがいる場所は…海だ。

着地すると共に巨大な水しぶきと共に…水(?)が人間に向かって飛んでくる

「この巨体で…まずい!!………ん?これ本当に水か?」

ミドガルズよりもひどく、表面だけのハリボテ…それに海のテクスチャが貼り付けてあり…表面上は津波に見えるがその実は薄っぺらい紙のようだった
ゲームにはコスト削減の為に水の表現は削られがちという裏事情をゲームに詳しくない僕は知る由もなかった…。

「…?ハリボテ?」

水というにはあまりにもお粗末なそれに…僕は手を伸ばす

「なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!」

ハリボテの津波のような絵に触れた瞬間僕にはまるで津波に飲まれたようなダメージを受けた。

94embers ◆5WH73DXszU:2025/07/01(火) 20:48:03
『なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?』
『うわぁ……ローポリミドやんだぁ……カスみてえなスペックのグラボ使ってんじゃねえだろうな』

「なんだ……?ネタが古いぞ!こんなゲーム開発者かオッサンしか盛り上がれないネタ!正気か!?」

不意に迫るローポリミドやんの輪切り肉。
それを殴り飛ばすガンダラのマスター。

『ま、マスター!身体の主導権を取り戻したのか!』
『やぁね。人の顔を見るなり発狂するなんて、あの人魚姫……ちょっと傷ついたわ。ちょっとだけね』

「無茶言うなよ。アンタ今すごい――」

『……ていうかマスターすげえ格好だな!?ごめんねウチの子が服刻んじゃって』

「――すごいイカした格好してるからな。明神さんはオッサンだから知らないだろうが、
 これは、あー……ええと……そうだ。因幡の白バニーって言って今流行りのスタイルなんだぜ。
 多分そのうちガチャでも実装されるんだろうな……明神さん(逆バニー)とかが」

何故明神なのかと言えば、女性キャラクターでこれをやったら流石にアウトだからだ。

『でもなんだか懐かしい、この感じ……。アタシはカジノの経営者。夢追う者を奈落へ誘う非道の仕事。
 なのに今、この身体は……あの子の悲しみに寄り添おうとしてる』

「なんだ、どうした?……ガンダラ編のクエスト主導役としての機能が働こうとしているのか?」

『お酒はね、傷の消毒にも使えるの。心の傷だって、きっとお酒で洗えるはずよ。
 荒ぶり続けるあの子の悲しみが何もかもを壊してしまう前に……アタシが洗ってみせるわ』

「……いや、今のはちょっと野暮だったな――オーケイ、マスター。力を貸してくれ」

『カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!』

「ああ。力を貸してくれってのは勿論アドベンチャーパートの事だ。バトルの方は――」

『生物に向かってどんでいく性質は…こちらには好都合!雷刀!プレイ!』
『男の勝負はストレート一直線!!!!』

「――もうすぐ終わる」

『なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!』

「……ったく。何遊んでんだよ、ジョン。カザハと連携するならもっと上手いやり方があるだろ?」

エンバースがダインスレイブを掲げる。
戦場に満ちる激流が指向性を得て魔剣へと吸い寄せられていく。
そこにエンバース自身の聖火が混ざる/猛烈な勢いで水蒸気が爆ぜる。

そしてその蒸気の爆風もダインスレイブの支配下にある。
蒸気と熱気を帯びた爆風は渦を巻きながら上空へと拡大していく。
更にジョンの雷刀から稲妻を巻き上げて――ジョン自身をも空高くへと打ち上げる。

95embers ◆5WH73DXszU:2025/07/01(火) 20:49:10
「カザハ、上手い事コントロールしてやれよ。でないとジョンは海の彼方だ」

暴風と稲妻がミドガルズオルムを飲み込んで、その巨体を封じる檻と化した。

「そう。これが一番効率の良いやり方だ。ダルマ落としを最速でクリアするなら――真上から叩けばいい。
 吹っ飛ばされたダルマ?肉片?もハリケーンの中で反射するから街への被害も最小だ。多分これが一番早いと思います」

この場合、ハンマーに相当するのは当然――上空に打ち上げられたジョンになる。
さておき使命を果たしたジョンは遠心力によって竜巻から放り出された。
それから更に暫くすると竜巻が徐々に勢いを失って――風のカーテンが取り払われると、そこにはマリーディアがいた。
煙幕とかで視線が遮られてると具体的にどんな感じに出てきたのかを省略出てきて本当に便利だ。

「よし、出番だマスター」

エンバースがスマホを操作。インベントリからアイテムを召喚。
キンキンに冷えたフロウジェン・ロックを二瓶――マスターに投げ渡す。

「悪いがこっちはRTAの最中でな。湿っぽいムービーはスキップさせてくれ」

空いた右手にダインスレイブを再び装備。

「いや、本当は俺も言葉を尽くしてアドベンチャーパートを堪能したいと思ってるんだぜ。けどなぁ――」

そして振り返る。獲物を前にお預けを食らった猛獣のような――濃密な強敵の気配に。

「『まだこのチャプターのボスを倒せていない』んだ」

霧散した竜巻の残滓を受けて揺らめく金髪――エンバースが牙を剥くように笑う。

「のんびり遊んでる暇はない。さあ、やろうぜ」

その笑みの先に【金獅子】ミハエル・シュバルツァーが。
それとなんか津波に巻き込まれたのか濡れ鼠状態のローウェルがいた。

『へ……へくちっ!なのです〜!こーのバカタレどもー!
 RTAの最中に水遊びなんかしてんじゃねーなのです!』

「へへ、みんな正直に言おうぜ。忘れてただろ、コイツらの事。困るな。
 水属性の超レイド級、ミドガルズオルムは確かに重要なオブジェクトだが――」

エンバースの双眸が紅く燃える。バトルマニアの狂気の色。

「ミハエル・シュバルツァーが鍛え上げた堕天使と……それに何よりイブリースだ。
 アイツは『門』が使える。RTAをするならまず門の使い手を確保しないと話にならない。だろ?」

形成位階・門(イェツィラー・トーア)。
飛空艇なんて比べ物にならない移動手段。ニヴルヘイム産の傑作魔法。

「問題は――」

『――おい、ハイバラ。これ以上僕を待たせるな。苛つかせるな。失望させるな。
 あの日、世界大会に君は来なかった。あれから二年。
 やっと僕の前に姿を見せたかと思えば……そんな無様なナリでよくヘラヘラしていられるな」

エンバースが深く溜息を吐く。

「オイオイオイオイ何してる、バカタレはお前だローウェル。
 なんでソイツの記憶を戻さなかった?今の俺とこの時点のソイツが勝負になるかよ」

『うるせー!んなこた分かってるのです!けど記憶を戻したってお前らが仲良くデュエルして終わるだけに決まってるのです!
 そもそも最近じゃ月一で日本に遊びに行ってるアホタレがどのツラ下げてこのシナリオに敵役で出演しやがったのです!』

96embers ◆5WH73DXszU:2025/07/01(火) 20:52:03
『待て、何を言ってる?記憶を戻す?仲良くデュエル?……月一で日本に?
 何の話をしているんだ。まさか僕の事を言っているのか?
 からかうのはよせ、ローウェル……僕は誰とも馴れ合わない』

「いや、朧げだけど思い出せるぞ。お前さあ、こっち来る時荷物になるからって
 マジでタブレットとパスポートと財布しか持ってこないのやめろってば。部屋着が無限に増えてるんだよ。
 なんでウチのゲーミングハウスにお前専用のクローゼットが設置されようとしてるんだよ。プレミア付けて売れないかなアレ」

『部屋着が……?はっ、まるで僕が他人と生活スペースを共有しているかのような口ぶりだな。あり得ないね』

「こないだは「二度とマックは食べない。モスバーガーならギリギリ我慢してやる」とか言い出すし」

『モス……?ふざけるなよ。マンガやアニメのお嬢様じゃないんだ。あんなジャンクフードを僕が口にするものか』

「ホラもう比喩表現がちょっと日本寄りになってるじゃねーか」

ところでアルフヘイムのブレイブ各位が抱くミハエルへの忌避感は
ワールドマーケットセンターの時よりは希薄になっているものとする。
覚えてないけど多分あの後命を賭して道を切り開いたりされたせいで憎むに憎めない感じになってしまったんだと思う。

そういう感じだ。仕方ないだろ。ゆるーくギャグやってくのが主体のこのシナリオで
過去の因縁とかそういうのはノイズになるし雑に流しておこうぜ。

『ええい!もういい!これ以上君の戯言に付き合うつもりはない――』

ミハエルがタブレットを操作。

『――やってしまえ、イブリース!』

そして召喚されたのは――黒く染まった天使の翼と蝙蝠のような魔族の翼。
荘厳な冠を思わせる漆黒の天使の輪。
イブリースと――堕天使を混ぜ合わせたかのような新種のモンスター。

「なんだ、ソイツ……イブリースなのか?またバグってんのか?
 ……いや、分かったぞ。『超融合(ハイパー・ユナイト)』か。
 このバグ自体がアレをより普遍的なカードとしてゲームに導入する為のテストなんだな」

ちなみに超強そうな感じで出てきた新形態のイブリースだが、その真価をここで発揮する事はない。
結局マスターがクソほど慢心してるこの時点のミハエルなので普通にこの後ボコられる事になる。
ミハエル/イブリースをボコる事にそこまで興味がない場合はエンバースがスキップしたムービーの方をフォーカスしてもいい。

「さておき、これで『門』は確保出来たな。ここからはRTAが加速するぞ。明神さん、次はどこ行く?
 スキップしたチャプターのステージとアクターを融合させられるなら、
 ある程度狙ってこのバグを起こしていくのも面白そうだけど――」

『――この僕を前にして!余裕ぶってるんじゃあないぞッ!いいだろう!
 そのくたびれたオッサンがやられた後でもその態度を保てるか試してみようじゃないか――――ッ!!』

イブリース・メタトロン(仮)がスペック任せの雑な攻撃で明神を襲う――!

97カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/07/07(月) 23:15:24
>「カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!」

カザハ「うん!やってみる!」

(ミドガルズオルムのパーツを見事に打ち返すジョン君)

>「この巨体で…まずい!!………ん?これ本当に水か?」
>「…?ハリボテ?」
>「なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!」

(ジョン君がローポリな水しぶきに飲まれた!
エンバースさんが、ジョン君を空高く打ち上げる)

>「カザハ、上手い事コントロールしてやれよ。でないとジョンは海の彼方だ」
>「そう。これが一番効率の良いやり方だ。ダルマ落としを最速でクリアするなら――真上から叩けばいい。
 吹っ飛ばされたダルマ?肉片?もハリケーンの中で反射するから街への被害も最小だ。多分これが一番早いと思います」

カザハ「えっ!? 上から全部くずすのってダルマ落としって言わなくない!?
   うまいことコントロールって言われたって……」

カケル(手を取り合って一緒にダイブすればいいんじゃないですかね? ……あっ、駄目か……)

(残念、今のジョン君はバニーだ! 全く絵にならない! 大宇宙の法則によりラブコメ演出が阻止された!)

(尚、男キャラばかりバニーになっている理由としては
曲がりなりにも女キャラ?がバニーになると、令和の時代においてはコンプラ的に問題があるからかと思われる。
ちなみに精霊が、性別以前に生物の定義に該当するかという点は議論の余地があるが、
ぱっと見イメージ的に生き物っぽいので「生物の定義を更新しなければならないのではないか」とか生物学会に激震が走っているとかいないとか)

カザハ「そうだ! カケルが背中に乗せて突撃すればいいんじゃない!? 白馬に乗った王子様的な! マリーディアって女王様だし丁度いいじゃん!」

(スチャッとカケルから降りてジョン君を代わりに乗せる)

カケル(えっあっ……)

(ミドガルズオルムのパーツを弾き飛ばしながら垂直落下するジョン君onカケル。それを浮遊しながら観察するカザハ。
ミドガルズオルムが弾き飛ばされると、そこにはドン引きで放心状態のマリーディアがいた!)

98カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/07/07(月) 23:16:21
カザハ「ステータス異常放心! チャンスだ!」

(カケルは、放心状態のマリーディアを乗せてマスターのもとまで連れて行く)

>「悪いがこっちはRTAの最中でな。湿っぽいムービーはスキップさせてくれ」

(マリーディアは、フロウジェンロックを抱えたマスターに強制連行されていった!
尚、このイベントは本来男性キャラ限定であったが、今はそんな細かい制限は吹っ飛んでいるようだ。
そもそも単に各種デバフが付与されるまで酒に付き合わされて語り明かすだけのイベントなので、女性キャラが対象になったところで何の問題もない)

>「いや、本当は俺も言葉を尽くしてアドベンチャーパートを堪能したいと思ってるんだぜ。けどなぁ――」
>「『まだこのチャプターのボスを倒せていない』んだ」
>「のんびり遊んでる暇はない。さあ、やろうぜ」

(エンバースさんとミハエルとローウェルの三つ巴のコント(?)の後、イブリースと堕天使が混ざったようなモンスターが現れた!)

>『――やってしまえ、イブリース!』

>「なんだ、ソイツ……イブリースなのか?またバグってんのか?
 ……いや、分かったぞ。『超融合(ハイパー・ユナイト)』か。
 このバグ自体がアレをより普遍的なカードとしてゲームに導入する為のテストなんだな」

>「さておき、これで『門』は確保出来たな。ここからはRTAが加速するぞ。明神さん、次はどこ行く?
 スキップしたチャプターのステージとアクターを融合させられるなら、
 ある程度狙ってこのバグを起こしていくのも面白そうだけど――」

>『――この僕を前にして!余裕ぶってるんじゃあないぞッ!いいだろう!
 そのくたびれたオッサンがやられた後でもその態度を保てるか試してみようじゃないか――――ッ!!』

(ミハエルの雑な攻撃を明神さんは難なくいなしたとおもわれる)

カザハ「日本語の豆知識を教えてあげよう。
    本人を前にした時はどれぐらい年上かに関わらずお兄さん、お姉さんと呼んだ方が無用な争いを防げるんだよ。
    それと、スペック任せの雑な攻撃って敵役の専売特許やねん」

カケル「ミハエル君って外国人だから、さっきのオッサンは自動翻訳のような気がする……!」

ミハエル「貴様は何を言っているんだ。
     令和ファンタジーの代表格である葬〇のフリーレンは、せせこましい小細工をかましてくる敵達を
     主人公パーティー側が問答無用の高スペックで押し切るスタイル――!
     日本人のくせにそんなことも知らないのか!?」

カザハ「はい語るに落ちた――ッ! めーっちゃ日本のアニメ語っとるやんけ――!」

ミハエル「いや、今僕は何を……!? 知らないぞ! モンスターを調理しながらダンジョン踏破するアニメなんて知らないぞ!」

カケル「そういえば、以前馬刺しにされる危機感を感じたことがありましたが、時代の最先端だったんですね……」

ミハエル「やかましい! お前美少女の成りしてるけどどうせ元オッサンだろ! ユニサス令嬢転生おじさんだろ!」

(記憶が戻りかけている……!?)

99明神 ◆9EasXbvg42:2025/07/21(月) 20:07:06
低スペミドやんをボッコボコにする方針が決まったところで、じゃあ実際どうやんのよって話。
フンドシ一丁のおっさんと一緒に頭捻っていると、バニー姿のジョンがピコンと閃いた。

>「カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!」

「ジョン!!?何するつもりだよお前!?」

振り向けばジョンが刀を手に、何故かバッティングフォームをとっていた。
片足を掲げる一本足打法がサマになっている……が!

「バニースーツで野球すんのってなんか……企画モノみたいだぁ……」

ジョン君は一体どこへ向かおうとしているのだろうか。

>「男の勝負はストレート一直線!!!!」

カザハ君がピッチングしたポリゴンの欠片が飛来する。
それをジョンは刀で打球した。真芯をとらえた音がした。
うおおおお!伸びる!伸びる!フェンス直撃!!ツーベースヒットだ!!!
打ち返された欠片はミドやん本体に着弾し、ウロコとおぼしきポリゴンが散っていく。

「この光景……見たことある!敵の攻撃を弾き返して当てるとダメージ入るタイプのギミックボスだ!」

HPを削られたミドやんがのたうち、海面でバチャバチャ跳ねる。
巨体で行われたその仕草は大海嘯を引き起こし、波濤が俺達のもとへ殺到した!
なんかペラいぞこの水!紙みてえだ。

>「なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!」

「がぼぼぼぼ!?」

ペラッペラの水ポリゴンを被って俺とジョンは溺れた。
紙みたいなのは見た目だけで、触れると普通に『水没』のデバフがつくらしい。
と、水没は長く続かなかった。エンバースが魔剣で水流を吸い上げていく。

「なんでも吸えるじゃんその魔剣……もうダインスレイブじゃなくてダイソンだろそれ」

ダイソンの10万円くらいする掃除機ってこぼした飲み物とかそのまま吸えちゃうのよ。
絨毯とか汚しても洗剤ぶち撒けてダイソンで吸えば洗濯いらずなのよ。
世の中高けりゃ良いモノばかりじゃないとは言うけれど、家電に関しちゃ値段と快適性は比例関係だな。

>「そう。これが一番効率の良いやり方だ。ダルマ落としを最速でクリアするなら――真上から叩けばいい。
 吹っ飛ばされたダルマ?肉片?もハリケーンの中で反射するから街への被害も最小だ。多分これが一番早いと思います」

ダインスレイブが巻き上げた水流がエンバースに熱せられて蒸気となり、サイクロン掃除機よろしく渦を形成する。
その渦中に、なぜかジョンも巻き込まれて宙へと舞い上がった。

>「えっ!? 上から全部くずすのってダルマ落としって言わなくない!?」

カザハ君から至極常識的なツッコミが入った。言われてみればそうである。
頭のネジが一本どっか行ったのかはっちゃけ続けるエンバースはどこ吹く風でダルマ潰しを敢行する。
真上からぶっ叩く……ハンマーになったのはジョンと、それから――

>「そうだ! カケルが背中に乗せて突撃すればいいんじゃない!? 
  白馬に乗った王子様的な! マリーディアって女王様だし丁度いいじゃん!」

空中でそれをキャッチしたカケル君だった。唐突な突撃命令にカケル君も困惑気味である。

100明神 ◆9EasXbvg42:2025/07/21(月) 20:07:43
「弟の扱いが雑過ぎるだろお姉ちゃん……」

姉弟ってこういうもんなの?うち男兄弟だからわかんねえわ。
とか言ってるうちにミドやんが崩壊し、中からマリーディアが吐き出された。

>「よし、出番だマスター」

エンバースが酒の瓶を二本放る。受け取ったマスターは既に栓抜きを用意していた。

「任せなさい」

マスターの体から黒い領域のようなものが生み出され、マリーディアを包みこんでいく。
それは結界のように滞留し、他者の侵入と窃視を防ぐ。

「暗転エフェクト……決まったッ!肛門裂傷デバフだ!マリーディアの野郎、明日から一回り太いウンチが出るぜッ!」

まぁ実際は単なる二日酔いデバフがつくまで酒を飲まされるだけの技だけども。
マリーディアがどんな愚痴吐くのかちょっと興味はあるが、わざわざ覗き見することもあるまい。

>「悪いがこっちはRTAの最中でな。湿っぽいムービーはスキップさせてくれ」

そういう感じだ。
で、マリーディアのお悩みを解決したところでクエスト終了とはいかないらしい。
そりゃそうだ。リバティウム編のボスはミドやんじゃない。
なんか急にちょっかいかけてきた奴がいたはずだ。つまり俺達は――

>「『まだこのチャプターのボスを倒せていない』んだ」

そういう感じだ(2回め)。
こんだけシナリオめちゃくちゃになってもちゃんと来るんだなアイツ……。

>「ミハエル・シュバルツァーが鍛え上げた堕天使と……それに何よりイブリースだ。
 アイツは『門』が使える。RTAをするならまず門の使い手を確保しないと話にならない。だろ?」

「それはマジでそう……機関車も馬車も余裕で一月とか使うもんなアレ」

オープンワールドじゃファストトラベルなんか標準実装されてるもんだが、『門』はそれらとも比較にならない利便性を持つ。
なんてったって、『行ったことない場所にもファストトラベルできる』のだ。
ゲームがぶっ壊れるぅ〜〜〜!!

>『――おい、ハイバラ。これ以上僕を待たせるな。苛つかせるな。失望させるな。
 あの日、世界大会に君は来なかった。あれから二年。
 やっと僕の前に姿を見せたかと思えば……そんな無様なナリでよくヘラヘラしていられるな」

「あっ?なになにミハエル君初登場時の記憶のまんまなの?」

じゃあまぁ……馴れ合っても良いことにするか……。
本編で色々やらかす前の、これはIFルートみてえなもんなんだろう。
今後の関わり方によっては人格をまっとうに育て直すこともできるかもしれん。
それはそうと、ローウェルが言うには本編終了後のミハエルはエンバースとなんかよろしくやってるらしい。

101明神 ◆9EasXbvg42:2025/07/21(月) 20:08:50
>「いや、朧げだけど思い出せるぞ。お前さあ、こっち来る時荷物になるからって
 マジでタブレットとパスポートと財布しか持ってこないのやめろってば。部屋着が無限に増えてるんだよ。
 なんでウチのゲーミングハウスにお前専用のクローゼットが設置されようとしてるんだよ。プレミア付けて売れないかなアレ」
>『部屋着が……?はっ、まるで僕が他人と生活スペースを共有しているかのような口ぶりだな。あり得ないね』

「……仲良すぎじゃない?月一パジャマパーティー開いてんの?二人だけで?野郎同士で?」
 部屋に私物置いてるのってもう匂わせだろそれ……誰に対してアピールしてんだよ」

男同士、密室、月一回……何も起きないはずはなく。
まぁ実際なんか起こってはいるんだろう。徹夜でスマブラ大会とかな。
ミハエルが月一で投稿するSNSにいつも同じ他人の部屋が写っていてあっちのファンは阿鼻叫喚かもしれない。

「……ん?ちょっと待って、『ゲーミングハウス』……?
 ゲーム部屋のこと気取ってゲーミングルームとか言うならわかるけど、ハウスってお前」

知らねえ文化だ……もしかしたら世界レベルのゲーマーはゲーム専用家屋を必要としているのか?
俺の問いに、首を傾げたのはミハエルだった。

「なんだその反応。ゲーミングハウスは日本では一般的じゃないのか?
 防音仕様の一軒家なしに、どうやってゲームで蓄積した怒りと向き合うんだ。
 隣人の迷惑を何だと思っているんだ……あり得ないだろ……」

「あり得ないのはお前の情緒だよ」

イライラゲージの開放用だったかぁ……。
ミハエルはそれ以上雑談に付き合うつもりはないらしく、スマホを手繰る。

>『――やってしまえ、イブリース!』

出てきたのはイブリースと堕天使が半々で混ざった感じのキメラだった。
まぁ予想の範囲内ではある。ぐちゃぐちゃになったイベントフラグはまだ治ってないらしい。
じゃあもうミハエルとイブリースも合体させていいんじゃね?

>「さておき、これで『門』は確保出来たな。ここからはRTAが加速するぞ。明神さん、次はどこ行く?
 スキップしたチャプターのステージとアクターを融合させられるなら、
 ある程度狙ってこのバグを起こしていくのも面白そうだけど――」

「んーキングヒルはぶっちゃけ行く必要ねえなあ。バロール居ねえし。クーデターもする相手居ねえし。
 となると順当に行きゃ次はアコライトだけど……なんかマホたんと帝龍が混ざりそうで怖くね?」

なんでも良いけどエンバースお前、せっかく来てくれたお友達スルーしっぱなしで良いのぉ?
俺はもうひと仕事終えた感があるので、インベントリからカップと熱々のコーヒーを取り出して注いだ。

>「――この僕を前にして!余裕ぶってるんじゃあないぞッ!」

「おーキレてるキレてる。大変だねあんたら」

完全に他人事なので俺は心穏やかにコーヒーを啜った。

>「いいだろう!そのくたびれたオッサンがやられた後でもその態度を保てるか試してみようじゃないか――――ッ!!』

「ぶぶーーっ!?」

特に理由のない暴力が俺を襲う――!

まったく予想だにしない方向からタゲが向いて俺はコーヒーを吹き出した。
なんでだよ!俺ほとんど会話に加わってなかったじゃん!
そこで俺は気付いた。エンバースの巧みなヘイトコントロールに――

102明神 ◆9EasXbvg42:2025/07/21(月) 20:09:19
>『ここからはRTAが加速するぞ。明神さん、次はどこ行く?』

この問いかけにより、ミハエルの中で俺の扱いが変わった。
『その辺にいるモブ』から『自分を差し置いてハイバラが喋りかけた相手』へ……!
なんで俺なんだよ!壁役なら適任がいるだろうが!

「じょ、ジョン!タンク!はやくしてやくめでしょ!!」

サっとジョンの影に隠れる。その横からカザハ君の鋭い突っ込みが入った。

>「日本語の豆知識を教えてあげよう。
 本人を前にした時はどれぐらい年上かに関わらずお兄さん、お姉さんと呼んだ方が無用な争いを防げるんだよ」

「ぼくまだおっさんって齢じゃないよ……?にじゅうごちゃい!」

いや自虐気味に自分のことおっさん呼ばわりしてたこともあったけども!
ミハエルの野郎、素で俺をおっさん扱いしやがって!

>「それと、スペック任せの雑な攻撃って敵役の専売特許やねん」
>「令和ファンタジーの代表格である葬〇のフリーレンは、せせこましい小細工をかましてくる敵達を
 主人公パーティー側が問答無用の高スペックで押し切るスタイル――!
 日本人のくせにそんなことも知らないのか!?」
>「はい語るに落ちた――ッ! めーっちゃ日本のアニメ語っとるやんけ――!」

「さっきから何の話してんだお前ら!?」

ミハエルが日本のアニメに詳しいのは……まぁ多分入れ知恵した馬鹿がいるんだろう。
ハイバラ君さぁ……パジャマパーティーで上映する作品ちょっと偏ってるんじゃない?

んー。
んーーーーーーー……。
よし!真面目に戦うの、やめよう!

「ミハエル君よぉ、ずっとお前に聞きたかったことがあんだけど」

適当に魔法無効の壁ユニットとか出して、その影から声を投げる。

「喋るなっ!noobと話していると僕のゲームIQが下がる!!」

その発言が既にIQ最低値なんだよなぁ……。

「フリードリヒ・ニーチェっているじゃん。お前の大好きなニーチェ大先生だよ。
 ――ソシャゲに実装されるとしたら、どんなキャラになると思う?」

イブメタ(仮)の苛烈な攻撃がピタリと止んだ。
あるいはそれは、もっと大火力の魔法を放つ溜めの瞬間なのかもしれなかった。

103明神 ◆9EasXbvg42:2025/07/21(月) 20:09:55
ミハエルもコアゲーマーである以上、この手の話題は一度は考えたことがあるはずだ。
織田信長とかジャンヌ・ダルクとか知ってるだけで2桁のソシャゲに出演してるし、
ニーチェくらいメジャーな偉人ならいつ実装されてもおかしくない。
一方で、ミハエルはリアルで語録を恥ずかしげもなく放つくらいの気合入ったニーチェ信者だ。
冒涜極まりない話題に、ノータイムで俺を殺しにかかる可能性もある。

乗るか、反るか。
伏せたカードの絵柄が今、捲られる――。

「……美少女化してか?しないでか?」

ミハエルはそう答えた。
乗った――!!

「実在の人物を好き放題するのは色々問題あるからな。俺達の世界と似たような歴史を辿った別の星って世界設定で、
 19世紀の"ドイツっぽい国"で活躍した、たまたまニーチェと同じ名前の哲学者(美少女)――ということにしよう。
 まず属性はどうする?やっぱ『神は死んだ』とか言ってるから闇属性か?」

「浅いんだよ読み込みが……!哲学エアプレイなのか……?僕の解釈では、『神の死』はむしろ前向きな啓蒙だ。
 神という超越者に導かれなくとも、人間は自分で道徳を規定し、よき人間であろうと努力することができる。
 『神は死んだ』は光属性のバフスキル――!味方全体に固有スタックの『力への意思』を付与する!」

「な、なるほど……じゃあ次は
「さらに!」
「はい……」

「さらに、敵一体へ『ルサンチマン』を付与し、これを攻撃することで味方が『超人』バフを獲得する!
永劫回帰の要素も入れたいな……同一の行動を繰り返すごとにスタックが溜まっていって、
 消費することでより強力なスキルが使えるようになるのはどうだろうか。
 想定コンテンツとしてはやはり大型レイドボス戦かな。おっと!だからって安易に神への特効キャラとするのは良くない!
 ニーチェが否定したのは『神への依存』であって神そのものではないからね……!」

「どんどん出てくるじゃん……」

おっと!じゃねンだわ。お前そんな早口でイキイキしゃべるタイプのキャラだったかなぁ……?
バトルの方はまぁエンバースが居りゃどうとでもなる。
どうせこの先ダラダラ馴れ合うことになるんだ。ミハエル君には存分にキャラを立てていただこう。


【ソシャゲ談義】

104ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/07/27(日) 02:04:15
「おぼぼぼぼ!!!」

一度巨大な津波に巻き込まれてしまってた人間には成すすべがない

>「……ったく。何遊んでんだよ、ジョン。カザハと連携するならもっと上手いやり方があるだろ?」

水に飲まれている僕にはその声は聞こえようがなかったが…長い付き合いになったせいか
どうせ相変わらず皮肉の利いたかっこいい言い回しをしているのだろう。

そんな事を溺れながら考えていた瞬間

「オボッ…うわぁぁぁぁあ!!!」
「にゃああああああああ!」

体が空中に舞い上がる…いやそんな優しい感じじゃない…上空に向かって放り投げられている…!
流石の部長も物凄い衝撃に僕と同時に吹っ飛ばされていく。

地面ならともかくここは何も捕まるところない空中だ…部長はその内体勢を立て直せるだろうが…僕は…つまり………死んだじゃないの〜?

>「カザハ、上手い事コントロールしてやれよ。でないとジョンは海の彼方だ」

「海の彼方どころか宇宙の塵になりそうな勢いなんだけど!!!」

>「そうだ! カケルが背中に乗せて突撃すればいいんじゃない!? 白馬に乗った王子様的な! マリーディアって女王様だし丁度いいじゃん!」

カザハが風をコントロールし、僕はカケルの背中へと乗せられるように着地する。
偶々目があったカケルの顔には明らかな困惑の表情が浮かんでいた。

>「弟の扱いが雑過ぎるだろお姉ちゃん……」

「いや僕の扱いも雑じゃないかこれ…?」

そしてエンバースの作戦通り僕達は急降下し…

「ま…でも気にしないで粉砕できるってのは…気が楽でいいね?」

上空から急降下した僕とカケルはミドガルズオルムを粉砕した。
やっぱり筋肉は全てを解決するってワケ

105ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/07/27(日) 02:04:32
当然急降下した僕達は敵を粉砕したが同時に海に落ちてしまった。
部長がいたので回収はされたが…みんな海に落ちた僕とカケルの事忘れてないよね…?大丈夫だよね…まさかね?

>「へへ、みんな正直に言おうぜ。忘れてただろ、コイツらの事。困るな。
 水属性の超レイド級、ミドガルズオルムは確かに重要なオブジェクトだが――」

なんかもう話が進んでる!本気で忘れたわけじゃないよね!?信じてるからね!?

>「ミハエル・シュバルツァーが鍛え上げた堕天使と……それに何よりイブリースだ。
 アイツは『門』が使える。RTAをするならまず門の使い手を確保しないと話にならない。だろ?」

ミハエル…聞き覚えがある。戦ったはずだ…いや僕が直接戦ったわけじゃないけど…
確か僕はその戦いで勇者の剣を…

「ウッ」

頭が一瞬痛くなる。

無理に思い出そうとすると頭が痛くなる。
イブリースの事は思い出せるのに…他の事は今の状況と関係がないと思い出せないのか?

>「オイオイオイオイ何してる、バカタレはお前だローウェル。
 なんでソイツの記憶を戻さなかった?今の俺とこの時点のソイツが勝負になるかよ」

>『うるせー!んなこた分かってるのです!けど記憶を戻したってお前らが仲良くデュエルして終わるだけに決まってるのです!
 そもそも最近じゃ月一で日本に遊びに行ってるアホタレがどのツラ下げてこのシナリオに敵役で出演しやがったのです!』

記憶があろうとなかろうと仲良くデュエルして終わりそうな気もするけど…
野暮な事は言うのはやめておくか、RTAするのに関係なさそうだし。

>『モス……?ふざけるなよ。マンガやアニメのお嬢様じゃないんだ。あんなジャンクフードを僕が口にするものか』

>「ホラもう比喩表現がちょっと日本寄りになってるじゃねーか」

逆に考えればしがらみが変にない分今のほうが仲良くなることができるんじゃないだろうか。
仲間の為とかそんなんじゃなく気に入らない奴をぶっ飛ばす…その方が仲良くなれる気がする。

>「んーキングヒルはぶっちゃけ行く必要ねえなあ。バロール居ねえし。クーデターもする相手居ねえし。
 となると順当に行きゃ次はアコライトだけど……なんかマホたんと帝龍が混ざりそうで怖くね?」

昔の漫画では殴り合ったら友達みたいな表現よくあったし。

>『ええい!もういい!これ以上君の戯言に付き合うつもりはない――』
>『――やってしまえ、イブリース!』

「エンバース…君も大変だね」

>『――この僕を前にして!余裕ぶってるんじゃあないぞッ!いいだろう!
 そのくたびれたオッサンがやられた後でもその態度を保てるか試してみようじゃないか――――ッ!!』

しかしエンバースの巧みな話術で怒りの矛先は明神に向かう!

>「じょ、ジョン!タンク!はやくしてやくめでしょ!!」

そしてその明神は僕の後ろに隠れる。
攻撃の矛先は最終的に僕に向かって飛んできた。

「…ふぅ〜〜〜…なんでそうなるんだッ!!!」

僕は攻撃を受け止めながら叫んだ。

106ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/07/27(日) 02:04:53
「イブリース…また喋れない…理性のない君と殴り合う事になるなんてな…」

雰囲気だけは似てるイブリースと名付けられたモンスターと殴りありながら…
僕はあの日…自分を代償に同胞全てを救おうとしたイブリースの姿が重なって見えた。

あの時と違う事があるとするなら…僕は今バニー姿で殴り合っており
純粋な暴力で殴り合ってる僕らは全くいないような振舞いで回りは大騒ぎしている。

>「貴様は何を言っているんだ。
令和ファンタジーの代表格である葬〇のフリーレンは、せせこましい小細工をかましてくる敵達を
主人公パーティー側が問答無用の高スペックで押し切るスタイル――!
日本人のくせにそんなことも知らないのか!?」

>「はい語るに落ちた――ッ! めーっちゃ日本のアニメ語っとるやんけ――!」

>「……美少女化してか?しないでか?」

>「実在の人物を好き放題するのは色々問題あるからな。俺達の世界と似たような歴史を辿った別の星って世界設定で、
 19世紀の"ドイツっぽい国"で活躍した、たまたまニーチェと同じ名前の哲学者(美少女)――ということにしよう。
 まず属性はどうする?やっぱ『神は死んだ』とか言ってるから闇属性か?」
>「浅いんだよ読み込みが……!哲学エアプレイなのか……?僕の解釈では、『神の死』はむしろ前向きな啓蒙だ。
 神という超越者に導かれなくとも、人間は自分で道徳を規定し、よき人間であろうと努力することができる。
 『神は死んだ』は光属性のバフスキル――!味方全体に固有スタックの『力への意思』を付与する!」

煽り続けるカザハ
何かだか僕にはよく分からない会話を続ける明神

そしてここからではよく見えないし聞こえないが
恐らくRTAの準備をしながらかっこいい言い回しとポーズを決めながらクックックと笑っているエンバース。

「ごめんイブリース…一旦ストップで」

見た目の変わったイブリースにそう伝えると意思が伝わったのかイブリースが動きを止める。

「ローウェル」

「?…ヒッ」

「僕の姿を戻すアイテム…だして?」

お前の権限ならできるよな?と圧力をかける

「断ったら…あぁ…そういえば物理的には無敵なんだったか?…だが精神面は無敵かどうか試してみるか?
バニー姿の大男が迫ってきたら気分悪いだろうなぁ?ん?渾身の腰フリダンスでも見せてやろうか?ん?」

「みんなの意識がこっちに向いてない内に僕の姿を早く戻したいんだ…答え…もちろん分かるよな?」

2m近い筋肉ムキムキバニー大男が真顔で迫ってきたら誰でも頷くだろう。

…そしてローウェルも例にもれず頷いた。

「これでよし…さて姿も戻ったことだし…殴り合いを再開しようか!…ん?いやまて!…おーいエンバース?これ以上僕達殴り合う必要あるのか?」

脅すのに必死で話が聞き取れなかったのでお伺いを立ててみた。
ローウェルは仲良くデュエルして終わりは嫌だと言っていたが…もう既に仲良く会話して解散の流れになってしまっている気がするんだよな

「バニー姿じゃなくなったし力を振るう事はやぶさかではないんだが」

そんな事を一人愚痴るのだった。

107embers ◆5WH73DXszU:2025/08/04(月) 05:56:33
『おっと!だからって安易に神への特効キャラとするのは良くない!
 ニーチェが否定したのは『神への依存』であって神そのものではないからね……!』
『どんどん出てくるじゃん……』

「ちょっと待て。確かニーチェが神を否定したのは栄養学とか医学への重要視の裏返しだって言ってたよな。
 だとすれば――それらの要素も組み込むべきじゃないか?バフの媒体、スキルの演出としてさ!
 分かるか?まだニーチェちゃんの得意料理が決まってないって話をしてるんだぜ?」

混ぜっ返すエンバース。
ちなみにニーチェ知識の出処は当然ミハエルだ。

『これでよし…さて姿も戻ったことだし…殴り合いを再開しようか!…ん?いやまて!…おーいエンバース?これ以上僕達殴り合う必要あるのか?』
『バニー姿じゃなくなったし力を振るう事はやぶさかではないんだが』

「ん?なに?殴り合う必要?ああ、勿論ないぜ――でも、ないけどあるんだ」

ジョンの問いかけ。
エンバースが振り返る。回りくどい回答――不敵な笑み。

「だって――ちゃんと、とことんバトった方がジョンが楽しいだろ?」

バトルマニア流のズレた気配り。
そしてエンバースはミハエルへと向き直る。

「なあ?そろそろ記憶は戻ったか?今週の戦績は58勝57敗3分。このバトルで勝ち越させてもらうぜ」

『――とぼけるなよ。58勝は僕の方だろう』

「あれ?そうだったっけ?まあ気にするなよ――」

ダインスレイブを鞘に収めるエンバース/ミハエルがグングニールを召喚。
双方が睨み合い――――同時に踏み込む。すれ違いざま瞬く剣閃。
そして――膝を突くミハエル・シュバルツァー。

『クソ……』

「――これで俺も58勝だ。今週は引き分けで終わりそうだな」

『は?RTAなんだろう?こんなクソシナリオさっさと終わらせてもう一戦すればいいじゃないか』

「いや……でも見てみたくないか?」

『何がだ、言ってみろ。それはこの僕とのデュエルより興味深いものなんだろうね』

「もうお前も気づいているだろうが、このイベントには融合バグが実装されている。
 で、俺達はこの後アコライト外郭に行くんだけど、マホたんと任意のユニットが融合されたらどうなると思う?
 例えば外郭防衛隊のオタク君と融合したとしよう――」

『なに?なんて?外郭防衛隊のオタク?本当に何の話――』

「もしかしたら――ユメミマホロ・陰キャオタクダウナースタイルが見られるかもしれない」

『――堕天使!イブリース!何をやっている!さっさとその筋肉ダルマを片付けろ!』

108embers ◆5WH73DXszU:2025/08/04(月) 05:56:49
 


――時系列を少し遡り、エンバースが
「だって――ちゃんと、とことんバトった方がジョンが楽しいだろ?」
とかカッコつけてた辺りの事。

イブリースがジョンの両手を鷲掴みにする。力比べの形。

『――おい。おい……!落ち着け。俺の話を聞け……!』

その最中――狂暴化していたかに見えたイブリースがジョンにそう囁いた。

『俺は正気だ。だがまともな神経でこの状況に混ざるのは危険過ぎる……!
 分かるだろう?ヤツらのおふざけには際限がない……巻き込まれればどうなるか予測不可能だ。
 突然、港湾都市にちなんで際どい水着でビーチフラッグ対決(ポロリは反則負け)が始まったって不思議じゃない……!』

既にかなりギャグ時空の侵食を受けているイブリースだが、
往々にしておかしくなってしまった張本人は自分のおかしさに気付けないものだ。

『だから理性を失ったふりをしていたのだ。お前もこのまま時間を稼げ……!
 ヤツらの話が落ち着いた頃合いで、丁度決着がついたような形に――』

『――堕天使!イブリース!何をやっている!さっさとその筋肉ダルマを片付けろ!』
「おーい、ジョン。そっちの調子はどうだ?」

『バオオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!』

スマホのスピーカー程度では音割れしそうなレベルの咆哮、そして打撃音。
正気である事を隠そうと咄嗟に放った頭突きがジョンの顔面にクリーンヒットした。

『す、すまん……!だが向こうの話もきりが付いたようだ。このまま――』

『おっと、かなりイイのが入ったようだぞ。所詮は素人か。あの分ならすぐに終わりそうだな』
「けど、なんだか手ぬるいな。デモンズシードオーバードーズしてた時のイブリースはもっとヤバかったような」

『ジガアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』

タブレットのスピーカー程度では音割れしそうなレベルの咆哮、そして衝撃音。
正気である事を隠そうと咄嗟に放った投げによってジョンは強かに地面に叩きつけられた。

『クスクス……おや、まただ。決着の時は近そうだね?』
「ククク……いやあ、どうかな。なーんかイブリースの攻撃がまだ手ぬるい気がするけどなあ〜」

ちなみにエンバース/ミハエルはインベントリからビーチチェア(ハウジング用)とソーダとグラサンを召喚して観戦体勢を取っている。

「ほら、カザハと明神さんも使っていいぜ。折角だしどっちが勝つか賭けでもしないか?
 俺は……ジョンに賭けてやりたいけど既に二発もクリティカルヒットを貰ってるし、どうしようかな〜」

109embers ◆5WH73DXszU:2025/08/04(月) 06:03:27
 
 

「――で?そっちの話は終わったのか?」

ジョンとイブリースのバトルが終わった後、エンバースがマリーディアらの方を振り返る。

『――胸元を手で隠しちゃダメ!私達、もう隠し事はなしって決めたでしょ!』
『た、確かにそうは言ったが……しかしこの格好は、余りにも……!』

バニースーツ姿で恥じらうライフエイクと、それを水魔法によって写し取るマリーディア。
その様子を腕組みしながら眺めて深々と頷くマスターがいた。

『ミドガルズオルムの召喚に全ての力を使い果たした私はそのまま消える筈だった。
 けどあなたのあられもない姿を見た時、私の中から新たな力が湧いてくるのを感じたの!』

『私が言えた事ではないが、その力は間違いなくよくないものだ!呑まれてはいけない!』

「……マスターにメイド服でも預けて、次のチャプターに進むか?」




――茶番が一段落した後、ブレイブ一行は『門』を通ってアコライト外郭へ飛んだ。

「さーて、マホたんは誰と融合してるんだろうな。マホたんが融合ってなんか不穏なワードだけど。
 正直キングヒル、アコライト編からの選出だし候補は多くないんだよな。
 オタク君とか、煌帝龍とか……融合バグって事は登場したモンスターも候補に入るのかな」

エンバースは呑気にそんな事を言っている。
そうして相変わらずマホたん色にデコられた城郭の門を超えるとそこには――

アルメリア兵士と融合したソルジャーマホたんがいた。
『水晶の乙女』(キングヒル編のメイドさん)と融合したクリスタマホたんがいた。
リザードマンやバジリスク等(アコライト編、モブ敵)と融合したレプティマホたんがいっぱいいた。
陰キャオタクダウナースタイルっぽいマホたんがいた。
ロイヤルガード(煌帝龍の護衛)の面影を残したビキニアーマホたんがいた。
とにかくそこら中にマホたんがいて、歌って踊ってのパフォーマンスをしている。

「なんかいっぱ――――危なかった。危うくカザハや明神さんが得意とするガビーンって感じのリアクションを取るとこだった……。
 なるほど、確かにアコライト編じゃマホたんの幻影を量産したし、マホたん自身も二人目がいた。
 そして「マホたんは一人じゃない」事は確定していても「マホたんは三人以上いない」事は未確定……なら、こういう事も――」

『あ、ようこそいらっしゃい〜アルフヘイムのブレイブさ〜ん。お待ちしていましたよ〜』

ヒュドラと融合した15メートル級のメデューサマホたんが兵舎の上から顔を覗かせた。

「うおおでけえ――――――――――――――――――!!!!」

エンバースがガビーンって感じのリアクションをしていると、城塞の奥から誰かが歩いてきた。
ピンクゴールドのたてがみのようなロングヘア。絢爛華麗な王族めいた衣装。
女性的でありながらも屈強な戦士の風格を兼ね備えた体格。

『よう!お前らが援軍か!よく来てくれたな!』

アルメリアの国王、鬣(たてがみ)の王と融合したマホたんがそこにいた。

『話はもう聞いてるよな!?このアコライト外郭は今、深刻な問題を抱えている……それは戦力不足だ!』

「この状況で?煌帝龍がアジ・ダハーカと融合でもしてんのか?」

『ガハハ!だったら良かったんだけどな――まあ、見てみりゃ分かるさ。そろそろ正午だ。ヤツが来るぜ』

110embers ◆5WH73DXszU:2025/08/04(月) 06:05:13
その発言をフラグにして、城門の外からにわかに地響きめいた音が聞こえてくる。
聞き覚えのある音だ。煌帝龍が召喚した爬虫類族の軍勢の足音だ。
たてがみ以外のマホたん達が城壁に登っていく。エンバースもそれに倣う。
かくして城門の外には――

『たてがみのユメミマホロ――――――ッ!今日こそ我が伴侶となってもらうアルよ――――――――!』

ズタボロのカンフースーツに身を包んだ、傷だらけの煌帝龍が叫んでいた。

「あ……?誰だ、アイツ……煌帝龍か?」

『煌帝龍?初めて聞く名前だな。君が覚えているって事は見どころのあるプレイヤーなのか?』

「……それ、冗談で言ってるんだよな?あ、マジ……?アイツもぼちぼち出来る方ではあるんだけどな……」

流石にエンバースが煌帝龍を憐れんでいると、たてがみのマホたん――キングマホたんが城壁に登ってきた。
そのまま本編を思い出させるようなアクロバットで煌帝龍の前へと降り立つ。
そして――不敵で獰猛な笑みと共に手招きをした。

瞬間、何十体ものモンスターが一斉にキングマホたんへ飛びかかる。
キングマホたんの姿が見えなくなって――直後、大量の鮮血が爆ぜる。
だがエンバースには見えていた。飛び散る血肉をブラインドに、キングマホたんの懐へ飛び込む影が。

「キエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ――――――――――――――――ッ!!!」

そして煌帝龍が叫ぶ――否、吼える。

「おお……?」

エンバースが思わず目を見張るスピードの徒手空拳。
だがキングマホたんはそれら全てを容易く手刀で捌いてのける。そして――

『ちったあ練り上げてきたなッ!だが――まだまだ脆弱いッ!!』

俊敏、かつ唸るような剛腕による【聖撃(ホーリー・スマイト)】。
その直撃を受けた煌帝龍が血を吐きながら吹っ飛んで地に転がる。
煌帝龍はどうにか立ち上がろうとするが――立ち上がれない。
キングマホたんが城壁上のブレイブ達を振り返る。

『な?見ての通りだ。戦力が足りてねえんだよ』

両腕を広げて、煌帝龍の有り様を見せつけるような仕草。
その直後――エンバースの後ろ襟を何かが後ろから掴んだ。
スキュラと融合したビッグメデューサマホたんだ。
他のメンバーも巨大な手と大蛇状の髪で体を拘束されている。
ジョンの力でも振りほどけない。「イベント」による強制力だ。
そして――全員揃って城郭の外へと放り投げられた。

「うおおおおおおおおおおおおお――――――――――――!?」

エンバースはなんとか煌帝龍の傍に着地。
一体何事かとキングマホたんを見やる。

111embers ◆5WH73DXszU:2025/08/04(月) 06:05:36
『ソイツは何度ブチのめしてもアタシに結婚してくれって挑んできやがる。
 それ自体はまあ、おもしれえからいいんだが――いかんせん弱くてなあ。
 ちょっと飽きてきちまった。アンタらかなりの腕利きだろ?一つ鍛えてやってくれよ』

キングマホたんはそう言うと城壁の向こうへ一足に飛び去ってしまった。

「……鍛えるって、俺達が、コイツを?」

荒野に取り残されたエンバースが呆然と呟く。

「おーい、そりゃ無茶だろ!コイツが俺達の話を大人しく聞く訳ない。
 はあ……まあいいさ。カザハが『幻影』持ってたよな?最悪コイツはふんじばって、
 俺があのムキムキマホたんを倒しちまえば手っ取り早くチャプタークリア出来るだろ……」

エンバースは愚痴りながらもとりあえずインベントリから手当たり次第にハウジングアイテムを放り出している。
その背後で煌帝龍が立ち上がった。

「いや、その前にコイツをいっぺんやっつけとくのが先か?
 マホたんカーニバルは名残惜しいが、チャプタークリアだけならその方が――」

エンバースがそちらへ振り返ると――煌帝龍は黙したまま深々と頭を下げていた。
さしものエンバースも言葉を失って、困ったように頭を掻いた。

「……ていうかお前、なんだよその格好。そもそもなんであのムキムキマホたんを名指しなんだ?
 素手ゴロなんかしないでアジ・ダハーカもアポリオンも使って攻め込めば選び放題だろ?」

煌帝龍は黙ったままだ。
彼の気性からしてこうして頭を下げただけでも相当な決心が必要だった事はエンバースにも分かる。
この上、根掘り葉掘り聞かれて素直に答えられるほど煌帝龍のプライドは安くないのだろう。
勿論、エンバースには「だんまりを決め込むなら頼むを聞く義理はない」と煌帝龍の頼みを突っぱねる事も出来る。
出来るが――

「――それで、どうする?みんな。このままチャプタークリアしても味気ないし……やってみるか?」

エンバースはこういう時、結局甘さを隠せないのだ。

112カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/08/12(火) 03:35:42
>「ほら、カザハと明神さんも使っていいぜ。折角だしどっちが勝つか賭けでもしないか?
 俺は……ジョンに賭けてやりたいけど既に二発もクリティカルヒットを貰ってるし、どうしようかな〜」

カザハ「瀕死からの一発逆転がジョン君のお家芸だから……。前この状況からどうやって勝ったっけ」

カケル「はいこれ」(歌詞ノートを見せる。しかし上位世界の大人の事情により記憶にブロックがかかっている!)

カザハ「こんなん歌うわけないじゃん!?」(その路線の呪歌、使用不可!!)

(なんだかんだでジョンVSイブリースのバトル(※八百長)終了)

>「――で?そっちの話は終わったのか?」

>『――胸元を手で隠しちゃダメ!私達、もう隠し事はなしって決めたでしょ!』
>『た、確かにそうは言ったが……しかしこの格好は、余りにも……!』

カザハ「マリーディアさん、最初は真面目にキレてたのにすっかりギャグ時空に適応しちゃった……!」
カケル「適応しないとやってられなかったんでしょう」

>「……マスターにメイド服でも預けて、次のチャプターに進むか?」

【アコライト外郭】

>「さーて、マホたんは誰と融合してるんだろうな。マホたんが融合ってなんか不穏なワードだけど。
 正直キングヒル、アコライト編からの選出だし候補は多くないんだよな。
 オタク君とか、煌帝龍とか……融合バグって事は登場したモンスターも候補に入るのかな」

>「なんかいっぱ――――危なかった。危うくカザハや明神さんが得意とするガビーンって感じのリアクションを取るとこだった……。

カケル「分かる分かる! ギャグ漫画だったらコマの端でめっちゃ口開けてるやつ――! ほらああいうふうに!」

(カケルの視線の先では、カザハがまさにそのリアクションをしていた!)

>「なるほど、確かにアコライト編じゃマホたんの幻影を量産したし、マホたん自身も二人目がいた。
 そして「マホたんは一人じゃない」事は確定していても「マホたんは三人以上いない」事は未確定……なら、こういう事も――」

カケル「よく見ると他キャラと融合してなさそうなプレーンマホたんもいますね」

プレーンマホたんの一人「あなたと合体したい!」

カザハ「えぇっ!? 合体したい!? じゃあこうかな!?」

(カザハがプレーンマホたんとフュージョンのポーズをとっている!)

カケル「……って何やってるんですか――ッ!!」

(ぽわっと謎の煙が発生し、カザハとマホたんが合成された!)

カザハマホたん「みんな――ッ! ノってる――!?」

カケル「そういえばカザハ、マホたんの曲、カバーしてましたもんね……」

野生のプレーンマホたん「隙あり!」カケル「アッー!」(謎の煙合成)

カケルマホたん「皆さん気を付けてください。
        この面では油断しているとこのようにあらゆるキャラがマホたんと融合してしまうようです……!」

113カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/08/12(火) 03:36:26
>『あ、ようこそいらっしゃい〜アルフヘイムのブレイブさ〜ん。お待ちしていましたよ〜』
>『よう!お前らが援軍か!よく来てくれたな!』

(何事もないかのように話は進む)

>『たてがみのユメミマホロ――――――ッ!今日こそ我が伴侶となってもらうアルよ――――――――!』

(キングマホたんにのされる煌帝龍)

カザハマホたん「あの人、自らカンフーアクションするようなキャラだったっけ……」

>『な?見ての通りだ。戦力が足りてねえんだよ』

カケルマホたん「戦力ってそっちの戦力!?」

>『ソイツは何度ブチのめしてもアタシに結婚してくれって挑んできやがる。
 それ自体はまあ、おもしれえからいいんだが――いかんせん弱くてなあ。
 ちょっと飽きてきちまった。アンタらかなりの腕利きだろ?一つ鍛えてやってくれよ』

カザハマホたん「そんな無茶な!」

(煌帝龍が頭を下げてきた!)

>「……ていうかお前、なんだよその格好。そもそもなんであのムキムキマホたんを名指しなんだ?
 素手ゴロなんかしないでアジ・ダハーカもアポリオンも使って攻め込めば選び放題だろ?」

カケルマホたん「マホたんならなんでもいいわけじゃなくムキムキマホたんじゃないと駄目ってことでしょうか……」

>「――それで、どうする?みんな。このままチャプタークリアしても味気ないし……やってみるか?」

(カザハマホたんとカケルマホたんが煌帝龍を挟んで左右にスタンバイ)

カザハマホたん「マホたんファンならぐーっと☆グッドスマイルはマスターしないと!」

(すぐに振付完璧でぐーっと☆グッドスマイルが歌えるようになった煌帝龍。
 ゲームにありがちな演出で過程が省略されたらしい!)

カザハマホたん「地獄の歌唱訓練合格! 次は明神さんによるレスバ特訓だよ!」

(なんの特訓してるんだっけ!)

114明神 ◆9EasXbvg42:2025/08/17(日) 22:22:08
ミハエルのニーチェ談義にいい加減ついていけなくなり始めた頃、エンバースがやおら口を挟んできた。

>「ちょっと待て。確かニーチェが神を否定したのは栄養学とか医学への重要視の裏返しだって言ってたよな。
 だとすれば――それらの要素も組み込むべきじゃないか?バフの媒体、スキルの演出としてさ!
 分かるか?まだニーチェちゃんの得意料理が決まってないって話をしてるんだぜ?」

「確かに……!!」

ミハエルは蒙を啓かれたのごとく手を打つ。

「おいやめろ馬鹿、追加の燃料投入すんな」

「ニーチェと言えば特にチョコレートを好んだというのが有名だね。
 その辺のコンビニで売ってるような菓子じゃないぞ。発酵させたカカオ豆を磨り潰して湯で練った飲料だ。
 これは本来、滋養強壮薬としてヨーロッパに伝来したと言われている。
 ニーチェもチョコレートの栄養効果に着目したに違いない」

「普通に味が好きだったんじゃねえの……?」

「つまり!ニーチェ(バレンタインVer)実装の伏線――!!
 学者の神経を研ぎ澄ませ、深い瞑想へと没入させる秘薬……それを求めてニーチェと共に冒険するイベントの完成だ。
 シナリオを完遂する頃にはユーザーの購買意欲も天を突いているだろうな!」

小賢しいなコイツ……。
なんかだんだん酒の席のオタクのしょうもない与太話になってる気がするぜ。
そんな感じでグダグダぐだ巻きながらジョンとイブリースのがっぷり四つを眺める。
知らん間にエンバースとミハエルはくつろぎセット用意して呑気に観戦モードだ。

>「ほら、カザハと明神さんも使っていいぜ。折角だしどっちが勝つか賭けでもしないか?
 俺は……ジョンに賭けてやりたいけど既に二発もクリティカルヒットを貰ってるし、どうしようかな〜」

「おやおや?最強ブレイブのハイバラ君ともあろう方が戦況見てベット決めるんですか??
 ギャンブルの楽しみ方ってもんがなっちゃいねえな。
 賭けた方が不利になったら……精一杯応援すんだよ。そういうもんだろ、なあカザハ君!」

>「瀕死からの一発逆転がジョン君のお家芸だから……。前この状況からどうやって勝ったっけ」

言うまでもなく俺はジョンに賭けている。
そして俺達には、応援をバフに変えてくれる勝利の女神がいる!
やっちまってくださいよカザハ先生!無敵のハイパーバフでよぉ!

>「こんなん歌うわけないじゃん!?」

カザハ先生!?お歌はどうした?やくめでしょ!!??
とまぁそんなこんなでイブリースとジョンは旧交を温め終わり、
バックグラウンドで進行していたマリーディアのお悩み相談も終わったっぽい。
知らん間にジョンはバニースーツを脱いで、何故か代わりにライフエイクがバニー姿になっていた。

「……えっジョンのやつそのまま着たの?それって間接……」

耳ざとく聞きつけたマリーディアの興奮ボルテージが一段階上がった。
なんだかとてつもない風評被害を招きそうだったので俺は考えるのをやめた。

 ◆ ◆ ◆

115明神 ◆9EasXbvg42:2025/08/17(日) 22:22:39
所変わってアコライト。
普通にキングヒル通過したけど特になんもなかったわ。
そして経験上、これまでなんもなかったってことはこれからなんか起こるってことで――

>「さーて、マホたんは誰と融合してるんだろうな。マホたんが融合ってなんか不穏なワードだけど。
 正直キングヒル、アコライト編からの選出だし候補は多くないんだよな。
 オタク君とか、煌帝龍とか……融合バグって事は登場したモンスターも候補に入るのかな」

「なんか融合すること前提みてーになってっけどバグってない可能性も普通にあるんだよな。
 そうだよな?これ以上カオスに飲み込まれたら俺はどうすりゃいいんだよ。
 ……いやしかし、仮に帝龍と融合してるとしたら、チャイナコスマホたんか。
 それは"アリ"だ」

などと意味不明な供述をしながら城門をくぐると、そこには。
大量の――いや、超大量のマホたんがいた。
しかもいろんな成分の混じった多岐にわたる種類のマホたんがいた。

>「なんかいっぱ――――危なかった。
 危うくカザハや明神さんが得意とするガビーンって感じのリアクションを取るとこだった……」

「ヘイヘイ日和ってんじゃねえよエンバース!仕方ねえ俺がちょっとだけガビーンって感じになるか。
 それでは皆さん、ご唱和ください。
 ――なんかいっぱいいるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!???」

>「なるほど、確かにアコライト編じゃマホたんの幻影を量産したし、マホたん自身も二人目がいた。
 そして「マホたんは一人じゃない」事は確定していても「マホたんは三人以上いない」事は未確定……なら、こういう事も――」

「クソっ、なんかこのRTA(バグVer)のレギュレーションが分かって来ちまったぞ。
 本編の描写を引用するなら何やったっていいってことじゃねえか!」

原作原理主義者が助走付けてぶん殴ってきそうな状況だ。
まぁこのRTA自体がアニメオリジナルエピソードみてえなもんだし多少はね……。
で、結局エンバースがガビーンって感じになったり、カザハ君がマホたんと融合したりして時間を潰してると、
今回のメインキャラが出てきた。

>『よう!お前らが援軍か!よく来てくれたな!』

鬣の王……本編じゃなんかしょぼくれたお年寄りって感じだったけど、
マホたんと融合したことで若さを手に入れたらしい。

>『話はもう聞いてるよな!?このアコライト外郭は今、深刻な問題を抱えている……それは戦力不足だ!』

キングマホたんは居並んだ俺達ウジ虫にそう呼びかける。
聞くところによれば、アコライトには毎日帝国に帝龍が攻めてきてるらしい。
この辺は原作通り……ってわけでもなかった。

>「ちったあ練り上げてきたなッ!だが――まだまだ脆弱いッ!!」

なぜかカンフー姿でスデゴロを挑む帝龍。それを迎え撃つキングマホたん。
ワンパンでのされた帝龍は吹っ飛んで転がっていった。

>『ソイツは何度ブチのめしてもアタシに結婚してくれって挑んできやがる。
 それ自体はまあ、おもしれえからいいんだが――いかんせん弱くてなあ。
 ちょっと飽きてきちまった。アンタらかなりの腕利きだろ?一つ鍛えてやってくれよ』

「なんなんだこの展開……キングヒルとアコライトのエピソードをどう混ぜたらこれが出力されるんだ」

116明神 ◆9EasXbvg42:2025/08/17(日) 22:23:55
ただ、ちょっとおもしろそうではある。
本編じゃ色々あったが、正直俺は帝龍のことは嫌いになれない。
こいつはニヴルヘイム側の将としてしっかり責務を果たしていた。
その上で、ガチ恋勢としてユメミマホロを手に入れるために力を尽くしていた。

アルフヘイムに肩入れした俺達と、ニヴルヘイムに加担した帝龍。そこに違いはそんなにない。
同じマホたんのファンとして、愛情表現に良いも悪いも言うつもりはない。
アコライトにおける戦争の終わりを一度経験した今、こいつの在り様を尊敬してすらいる。

>「――それで、どうする?みんな。このままチャプタークリアしても味気ないし……やってみるか?」

「俺はやるぜ。そこの色ボケCEOをキングに勝たせりゃ良いってこったろ。
 しかもガチンコ、正々堂々正面きってのスデゴロで。……クソ難易度コンテンツだ。最高だな。
 まぁ実際の格闘指導なんかはジョンアデル氏におまかせするとして」

>「マホたんファンならぐーっと☆グッドスマイルはマスターしないと!」

既にトレーナーを開始したカザハ君とカケル君が、帝龍に振り付けと歌唱を叩き込む。
帝龍はすんなりそれをマスターした。

「ぜってーコソ練してたろこいつ……わかるぜ。"グッスマ"はファンの必修科目だからな」

>「地獄の歌唱訓練合格! 次は明神さんによるレスバ特訓だよ!」

「レスバの練習ったってよぉ……好き好んでしょうもねえ口喧嘩鍛えようとする奴がいたらそれは間違いなくやべえ奴だぜ。
 まぁ一個だけアドバイスするなら、そうだな。相手の痛いとこ突くにはまず痛いとこ知らなきゃならん。
 的はずれなこと言ったってなんも響かねえし、反撃のチャンスをくれてやることになる」

俺がフォーラムにおいて蛇蝎のごとく嫌われていた最大の理由。
それは、元ガチ勢の反転アンチとして信者共の一番突かれたくない部分を熟知してたからだ。

「こんな平原のど真ん中で修行なんか100年やったってレスバは上手くならねえよ。
 敵を知り己を知ればなんとやらってな。これはレスバに限らずスデゴロバトルにも言えることだ。
 ガチでやるなら、まずはアコライトに潜り込もうぜ」

アコライトで無数のマホたん達と生活を共にし、キングの弱点を探る。
その過程でキング以外のマホたん達を味方につけられれば最上だ。
最終的にガチンコで戦うにしたって、応援はほしいもんな。
応援が比類なき力をもたらすってのは俺達のよく知るところだ。

「アコライトに潜入する。アテは……ある。
 俺達がここに着いて、シナリオが動いた。そろそろイベントが発生するはずだぜ」

城門の方からひとつの人影が飛んできた。そいつは当然のごとくマホたんだった。
見た目はプレーンなユメミマホロ。だが表情に覇気はなく、常に半眼で、うっすらと隈すらある。

「来ると思ってたぜ。絶対君主がバリバリ元気なら……こういう奴も、居ると思ってた」

ジト目マホたん(仮)は、芝居がかった仕草で応えた。

「ケヒヒッ、なんのことでございやしょう……あっしはただのケチな戦乙女でさぁ。
 そちらの帝龍のダンナをお迎えに上がりやした。アコライト外郭へお招きいたしやしょう」

――キングヒルで俺達がスキップしたイベントはみっつ。
ひとつは鬣の王との謁見。そしてバロールからの世界の真実の開陳。
最後のひとつは――

「……あの傲慢な王を、打倒していただく為にね」

――クーデターだ。

【三下マホたん出現】

117ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/08/24(日) 00:32:00
>「ん?なに?殴り合う必要?ああ、勿論ないぜ――でも、ないけどあるんだ」

エンバースがかっこいいポーズを取りながら振り返る――
大抵の場合…この雰囲気の時のエンバースの言う事は…禄でもない事だと…直感で分かった。

>「だって――ちゃんと、とことんバトった方がジョンが楽しいだろ?」

「いや…意識のないイブリースと殴り合ってどうしろと…?」

別に戦いは嫌いじゃない。だが…
自分の意志がない変異したイブリースと殴り合うのは…気分が乘らない。

「仕方ない一撃で…」
>『――おい。おい……!落ち着け。俺の話を聞け……!』

と僕が力を籠めようとしたその瞬間イブリースから声が聞こえた。

「お前」
>『俺は正気だ。だがまともな神経でこの状況に混ざるのは危険過ぎる……!
 分かるだろう?ヤツらのおふざけには際限がない……巻き込まれればどうなるか予測不可能だ。
 突然、港湾都市にちなんで際どい水着でビーチフラッグ対決(ポロリは反則負け)が始まったって不思議じゃない……!』

確かに。納得しそうな僕がいた。

>『――堕天使!イブリース!何をやっている!さっさとその筋肉ダルマを片付けろ!』
>「おーい、ジョン。そっちの調子はどうだ?」

外野をチラリとみる。確かに今僕が変に騒げばイブリースの懸念が現実になる可能性がある。

ならば僕の取るべき行動は…

>『バオオオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!』
「ぐ、ぐわ〜〜〜!」

イブリースの演技に付き合う事になった。

>「おやおや?最強ブレイブのハイバラ君ともあろう方が戦況見てベット決めるんですか??
 ギャンブルの楽しみ方ってもんがなっちゃいねえな。
 賭けた方が不利になったら……精一杯応援すんだよ。そういうもんだろ、なあカザハ君!」
>「瀕死からの一発逆転がジョン君のお家芸だから……。前この状況からどうやって勝ったっけ」

省略しているが僕とイブリースは手を抜いているとは言え僕達以外なら余裕で死ぬほどの戦いを繰り広げている。

>『クスクス……おや、まただ。決着の時は近そうだね?』
>「ククク……いやあ、どうかな。なーんかイブリースの攻撃がまだ手ぬるい気がするけどなあ〜」

>『ジガアアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!!!』
「う…うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

僕達は一体何をやってるんだろう…。
そして全身血まみれになった僕とイブリースはみんなが飽きたのを見計らって戦いをやめた。

118ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/08/24(日) 00:32:16
ハア…ハア…なんで僕だけこんなガチ勝負やらされてるんだ?」

>「……マスターにメイド服でも預けて、次のチャプターに進むか?」

「ちょっとまって…さっきまで戦ってて話きいてな…ねぇ!話!僕の話も聞いて〜〜〜!!!」

「俺の出番はこれで終わりか?…本当に良かった…!」

イブリースお前そんなキャラだったか?許さんぞまじで!
ところでさっきまで来てなかった奴がバニー服を着てる気がするんだけど…あれ僕のじゃないよね?


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

というわけでアコライト外郭にやってきたわけなんだが…

「…で結局僕達は何するわけ?」

イブリースに殴られすぎたせいで記憶が飛んだのかもしれない。
とりあえずカザハに説明を受けていながら歩いていると…

>「なんかいっぱ――――危なかった。危うくカザハや明神さんが得意とするガビーンって感じのリアクションを取るとこだった……。
 なるほど、確かにアコライト編じゃマホたんの幻影を量産したし、マホたん自身も二人目がいた。
 そして「マホたんは一人じゃない」事は確定していても「マホたんは三人以上いない」事は未確定……なら、こういう事も――」

>「ヘイヘイ日和ってんじゃねえよエンバース!仕方ねえ俺がちょっとだけガビーンって感じになるか。
 それでは皆さん、ご唱和ください。
 ――なんかいっぱいいるぅぅぅぅぅぅぅぅ!!???」

>「よく見ると他キャラと融合してなさそうなプレーンマホたんもいますね」

「…カザハ…君はなんでそんな平常運転なんだ…?」

さっきまでのメンツとは違ってユメミマホロは知っている仲間なので心の中で相当驚いたのだが…
周りがそれ以上に慌てているために僕は至って冷静にならざるを得なかった。

>『あ、ようこそいらっしゃい〜アルフヘイムのブレイブさ〜ん。お待ちしていましたよ〜』
>「うおおでけえ――――――――――――――――――!!!!」

…冷静じゃない人を見ると冷静になるっていうが本当だったんだな。

巨大マホたんを見ても我の心清流のようなり…なんか違うけどそういう感じだ。

>『話はもう聞いてるよな!?このアコライト外郭は今、深刻な問題を抱えている……それは戦力不足だ!』

「話のまとめ方が手っ取り早くて助かる〜」

いや実は僕も冷静じゃないのかもしれない。

119ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/08/24(日) 00:32:30
>『たてがみのユメミマホロ――――――ッ!今日こそ我が伴侶となってもらうアルよ――――――――!』

そしてそこに聞いた事のある声…なんとか龍帝…違うな…なんだっけか…
記憶にあるはずなのに覚えてない…改ざん…?いや…単に覚えてないだけのような気もする

>「あ……?誰だ、アイツ……煌帝龍か?」

「あぁ!そうそう煌帝龍だよ!」

>「……それ、冗談で言ってるんだよな?あ、マジ……?アイツもぼちぼち出来る方ではあるんだけどな……」

やっぱり忘れてただけだった。仕方ないじゃん名前難しいのがよくないよ

>「キエエェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ――――――――――――――――ッ!!!」
>『ちったあ練り上げてきたなッ!だが――まだまだ脆弱いッ!!』

聖撃(ホーリー・スマイト)

僕もよく知るユメミマホロの技の一つ。しかも…僕が知る聖撃より…技のキレが進化しているッ!

>『な?見ての通りだ。戦力が足りてねえんだよ』

その瞬間パーカーのフード部分を掴まれる

「!?気配すら感じなかった!?」

>「うおおおおおおおおおおおおお――――――――――――!?」

僕達はスキュラマホたんにぶん投げられ地面にキスする。
不意を突かれた上に、僕が力で抵抗できないなんて…!

>『ソイツは何度ブチのめしてもアタシに結婚してくれって挑んできやがる。
 それ自体はまあ、おもしれえからいいんだが――いかんせん弱くてなあ。
 ちょっと飽きてきちまった。アンタらかなりの腕利きだろ?一つ鍛えてやってくれよ』

こっちの様子など何も気にしてなさそうなキングマホたんが話を進める。

マホたんとは思えないオーラに…僕達はただ頷く事しかできない

>「――それで、どうする?みんな。このままチャプタークリアしても味気ないし……やってみるか?」

「拒否権ないだろ…な」

威圧レベル100(暫定)を習得したマホたんに成すすべなく僕達は煌帝龍育成パートに入るのだった

120ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/08/24(日) 00:32:40
>カザハマホたん「地獄の歌唱訓練合格! 次は明神さんによるレスバ特訓だよ!」

「あれ!?なんか既に混ざってる!?」

元々ユメミマホロとの相性がいいのかカザハマホたんが完成していた。
そして歌唱力に表現力とアイドル力が加算されスーパーカザハになっていた。

>「こんな平原のど真ん中で修行なんか100年やったってレスバは上手くならねえよ。
 敵を知り己を知ればなんとやらってな。これはレスバに限らずスデゴロバトルにも言えることだ。
 ガチでやるなら、まずはアコライトに潜り込もうぜ」

>「アコライトに潜入する。アテは……ある。
 俺達がここに着いて、シナリオが動いた。そろそろイベントが発生するはずだぜ」

明神の言う通り気配を感じる。良かった〜即日で効く筋トレとかないからね。
僕に体を鍛える以外に教える事はできないし…だがさっきのマホたんとの闘いを見るに筋は悪くなさそうだ。

>「来ると思ってたぜ。絶対君主がバリバリ元気なら……こういう奴も、居ると思ってた」
>「ケヒヒッ、なんのことでございやしょう……あっしはただのケチな戦乙女でさぁ。
 そちらの帝龍のダンナをお迎えに上がりやした。アコライト外郭へお招きいたしやしょう」

「ふーむ…ユメミマホロのバーゲンセールだな」

手をスリスリと胡麻をする三下マホたんはケヒヒッっと摩訶不思議な笑い声を出しながら僕達を招待する

次のRTAの舞台に

>「……あの傲慢な王を、打倒していただく為にね」

煌帝龍を勝たせるんだっけ?…よく見ると本人はやる気があるみたいだが虚勢でしかない。
表面は取り繕っているし、技術も悪くない…だがその内面には…敗北者の魂を感じる。

その敗北の心は成功体験のなさが原因だろう。
負け続け、無意識の内に勝てないと悟っているのだ…先ほどの攻防を見るに、技術やセンスはある…足りないのは向上心と自尊心だ。

ならば…与えてやればいい…プライドなど命の奪いにはなんの価値もないが、ハッピーエンドには必要な条件のはずだ
それに…時間が無くて成功体験は与えられなくても…褒めて自尊心を取り戻す手伝いはできる。

「煌帝龍だっけ?君は筋がいい…才能を感じる…前の時は卑怯な手ばっか使ってた気がするけどなんてもったいないんだ!
磨けば輝く宝石になれる…!…1時間…いや10分僕に筋肉の動かし方をレクチャーさせてくれないか」

ズンズン
僕の気迫に煌帝龍は下がる事しかできない。

「素質があるのにそんな雑な筋肉の使い方じゃ筋肉が可愛そうだ…」

ズンズン

「キングマホたんは僕達にお前を鍛えてくれといった!才能を感じるからこそ!その才能磨いてくれと頼んだのだ!」

イブリースとの茶番劇のせいで僕の茶番のステータスが大幅に上昇したのかもしれない…何事も経験しておくものだな…と心の中でつぶやく。
恐らく負け犬根性で成長がストップしてるだけで才能はあるのは確かなので、何も全部嘘というわけではないのだが。

ズンズン

「君には才能がある…間違いない!もしかしたらあのアコライトにいる全部のマホたんを惚れさせる事も出来るかもしれない!!」

10分で教えられる事などたかが知れている…いや…何かしらの不意打ちなら教える事はできるだろうが…そんな陳腐な勝ち方じゃ満足してもらえないかもしれない…
となれば正攻法の技術の強化だが…せめて月単位の修行ならともかく、短時間では効果も見込めないだろう…だが、負け犬根性を治すには十分なはずだ。

「さぁ!では行こう帝龍!アコライトに!」


【帝龍を褒めちぎり口八丁で煌帝龍を鼓舞する】

121embers ◆5WH73DXszU:2025/09/02(火) 04:51:07
「『拒否権ないだろ…な』

「んなこたないけど……でも、多分やってみた方がジョンも楽しいぜ」

『俺はやるぜ。そこの色ボケCEOをキングに勝たせりゃ良いってこったろ。
 しかもガチンコ、正々堂々正面きってのスデゴロで。……クソ難易度コンテンツだ。最高だな。
 まぁ実際の格闘指導なんかはジョンアデル氏におまかせするとして』

「ほら見ろよ、明神さんなんか何事にも斜に構えて一言余計な事言わないと気が済まないくせに
 最終的にはノリノリで参加してくるんだぜ。ああいうのでいいんだよ、ああいうので」

『マホたんファンならぐーっと☆グッドスマイルはマスターしないと!』

「そうそう。そういうので……ああ?ちょっと待て。どうしてそうなる。
 確かにこの世界はゲームだがアイドル育成ゲームじゃないんだぞ」

練習が終わった!
煌帝龍のダンス力と歌唱力が上がった!
体力が減った!

「おいざけんなバロール。期間限定のミニゲームで仮組みのシステムを試そうとしてんじゃねえ。
 感触良かったら本実装するつもりか?そんなの……意外と面白そうだな。
 ジョンにカザハに明神さん、マル様。わりと駒も沢山あるし……」

『地獄の歌唱訓練合格! 次は明神さんによるレスバ特訓だよ!』

「……短いアイドル路線だったな。いや、独自要素としてアリなのか?SNSでオタクとレスバするアイドル育成ゲーム」

『レスバの練習ったってよぉ……好き好んでしょうもねえ口喧嘩鍛えようとする奴がいたらそれは間違いなくやべえ奴だぜ。
 まぁ一個だけアドバイスするなら、そうだな。相手の痛いとこ突くにはまず痛いとこ知らなきゃならん。
 的はずれなこと言ったってなんも響かねえし、反撃のチャンスをくれてやることになる』

「けど根も葉もない事をまるでホントみたいに言われるとムカつかないか?
 最近フォーラムに俺を野試合で三回はケチョンケチョンにボコったって言い張るヤツが
 頻出しててクッソムカつくんだよな。なんか知らないか?なあ明神さん」

『こんな平原のど真ん中で修行なんか100年やったってレスバは上手くならねえよ。
 敵を知り己を知ればなんとやらってな。これはレスバに限らずスデゴロバトルにも言えることだ。
 ガチでやるなら、まずはアコライトに潜り込もうぜ』

「潜り込む?簡単に言うけどあそこは一応城塞だぜ?」

『アコライトに潜入する。アテは……ある。
 俺達がここに着いて、シナリオが動いた。そろそろイベントが発生するはずだぜ』

明神が城壁の方を見やる。現れたのは――半目で覇気のないマホたん。

『来ると思ってたぜ。絶対君主がバリバリ元気なら……こういう奴も、居ると思ってた』

『ケヒヒッ、なんのことでございやしょう……あっしはただのケチな戦乙女でさぁ。
 そちらの帝龍のダンナをお迎えに上がりやした。アコライト外郭へお招きいたしやしょう』
『……あの傲慢な王を、打倒していただく為にね』

「なんだなんだ、急にダークソウルが始まったぞ。戦乙女の誘いに乗って敵の懐に飛び込めって?それって……かなり不吉じゃないか?」

エンバース=口ぶりとは裏腹に楽しげな笑み。

122embers ◆5WH73DXszU:2025/09/02(火) 04:51:20
『煌帝龍だっけ?君は筋がいい…才能を感じる…前の時は卑怯な手ばっか使ってた気がするけどなんてもったいないんだ!
 磨けば輝く宝石になれる…!…1時間…いや10分僕に筋肉の動かし方をレクチャーさせてくれないか』
『素質があるのにそんな雑な筋肉の使い方じゃ筋肉が可愛そうだ…』
『キングマホたんは僕達にお前を鍛えてくれといった!才能を感じるからこそ!その才能磨いてくれと頼んだのだ!』

「なんだなんだ、急に……何が始まったんだこれ?茶番か?茶番だな……。
 けど、ジョンがそこまで言うなんて珍しいぜ。試してみろよ、帝龍」

『君には才能がある…間違いない!もしかしたらあのアコライトにいる全部のマホたんを惚れさせる事も出来るかもしれない!!』

暫くジョンと煌帝龍による荒野の汗だくトレーニングをお楽しみ下さい。

『さぁ!では行こう帝龍!アコライトに!』

ジト目マホたんの案内に従って一行はアコライト外郭へ潜入した。
勿論特に変装とかはしていない。主人公はたとえ指名手配されたっていつもの格好を崩さないのだ。

ところでさっきから煌帝龍が全く喋っていないがお使いのモニターは正常である。
元が高慢なエリート気質だったが故に気安く会話に応じる事が出来ず、
さりとて現在進行形で世話になっている相手に平時の――横柄な態度を取る事も出来ない。
そこから導き出されたのが黙々と指示に従うというスタイルなのだ。察してやろう。

「とは言え、レスバの材料集めって何するんだよ。ていうか冷静に考えたらレスバに強くなってどうするんだよ……」

『――ねえ、ぶっちゃけ煌帝龍ってさ、どう思う?』

「お?」

相変わらずのマホたんカーニバルの中、気になる話題が聞こえた。
振り返ってみるとなんだかギャルっぽいマホたんが数人でたむろっている。

『正直ちょっとウザくない?』

「おいおいヤバいぞカメラ止めろ!マホたんのこんなとこ見られたら今度こそサ終ものの炎上――」

『――ホンットにそれ!何回挑んでも律儀に戦ってくれてる時点で脈アリだってフツー分かるじゃんね!?
 手段なんか選んでないでさっさとボコボコにしてあげなきゃレオたんいつまでも生殺しじゃん!』

「……流れ変わったな」

『やー、でもアレはレオたんも悪いよ。脆弱いとか飽きちまったとか言って好き避けしちゃってさ〜。
 ロンちゃんどー見たって戦乙女心とか分かるタイプじゃないし』

『てかそもそもウチら戦乙女なんだから負かしたらそのまま昇天れ帰っちゃえばよくない?
 最終的に負かして欲しいにしてもヴァルハラでやった方が効率的じゃん』

「……また流れ変わったな。帝龍お前ヤバいんじゃないか」

『えー?お臨終ち帰りは流石にちょっと重いよ〜。ヴァイキング時代じゃないんだからさ〜』

「……戦乙女心か。さっぱり分からん……そもそも心っていうか生態じゃないか?」

ぼやくエンバース――ふと視線を感じて振り向く。
ジト目マホたんがじっとり加減を強めた視線でブレイブ一行を見ていた。

『乙女の密談を盗み聞きたあなかなかいい趣味でいらっしゃる……お気が済みやしたらどうぞこちらへ』

更に案内された先は――外郭の隅にある屋外練兵場。
そこにはキングマホたんがいた。ぐーっと☆グッドスマイルを踊っている。
ただし両手に身の丈ほどもある戦斧を握りながら。

辞書のような分厚さの戦斧が踊り子のヴェールさながらに揺らめく。
踊りは緩急を付けながら、しかし次第に加速していく。
ただの舞踊が、次第に武術の型稽古めいた威容を帯びていく。

そして――――不意に強烈な薙ぎ払いを伴って、キングマホたんが振り返った。
斧を突きつけ睨む先には――咄嗟に物陰に身を隠したブレイブ一行。

「そこにいるんだろ。出てきな」

123embers ◆5WH73DXszU:2025/09/02(火) 04:52:06
観念したかのように物陰から歩み出る――ジト目マホたん。
後ろ手でしっしとブレイブ一行を追い払う仕草。

『ケヒヒッ、お気に障りましたならどうかご容赦を。あんまりにも見事な舞だもんだから、つい……』

『なんだ、手前か。別にいいぜ。盗み見くらい気にすんなよ……それより、丁度いいや。そっちの調子はどうだ?』

『……調子、ですかい?一体何の――』

『どうせまた裏でセコセコやってんだろ?頼むぜ、今度は楽しませてくれよ』

『……へ、へへ、一体何の事だか。すいやせんが、あっしはそろそろお暇させて頂きやさあ』





『クキィ〜〜〜〜〜! ご、ご覧になりやしたか!?お聞きになったでしょう!あの憎ったらしい……!
 「そっちの調子はどうだ」「今度は楽しませてくれよ」ですってよ!
 男一人意のままにも出来やしねえ戦乙女がなーにを偉そうに!』

ブレイブ一行と合流するや否や、ジト目マホたんは顔を真っ赤にして地団駄を踏んだ。
そうして明神に縋り付く。

『あ、あっしは、あっしは悔しいんですよ!
 あの王様気取りの唐変木の顔を真っ赤にさせて泣きを見せてやらねえと気が済まねえんです!
 頼んます、頼んますよ旦那方!どうかあの傲慢な王を――ケチョンケチョンに負かしてやって下せえ!』

エンバースが気まずそうに頭を掻く。

「……まあ、とりあえず次のトレーニングに進むか?とは言え……
 俺からお前に教えてやれる事なんてあんまりないんだよな。
 ホラ、俺達って天才だしさ……テクニックなんて今更共有するまでも……」

エンバースは暫く考え込むと――

「……まあ、結局ゲームが上手くなる方法なんて決まってるんだよな」

そう呟いた。

『やっとその結論に辿り着いたのかい?僕はもう待ちくたびれたよ。ホラ、さっさと行こう』

ミハエルがやれやれと伸びをして歩き出す。

『ム……その、ミ……ミハエル……この先は……』

向かう先は――先ほどの練兵場。
思わず煌帝龍も難色を示す。

『君……ヘイローだっけ?いつも正午に勝負を挑んでるんだろ?
 ならレオたんも明日に響くようなハードトレーニングはしない。
 とっくにいなくなってるよ。それくらい分かるだろ?』

有無を言わせぬミハエル――練兵場に到着。
キングマホたんはいない。

『効率よく上達するには座学やコーチングも大事だけどさ。結局のところゲームが上手くなるには――』

エンバースが不意に煌帝龍の背中を蹴飛ばした。
体勢を崩した煌帝龍は何歩か前につんのめって、それから急速に振り返った。
その表情には流石に怒りが見える。

『何を――!』

だが次の瞬間には言葉を失った。
喉元にダインスレイヴが突きつけられていた。

「――ゲームをやり込まないとな。新しく覚えたテクニックは実戦で噛み砕いて自分のモノにしないと意味がないぞ!ってな」

エンバースはそう言って不敵に笑うとダインスレイヴを収める。身を翻す。

「まっ、まずは俺の一勝と。それじゃ、次は誰が相手する?
 ジョン?明神さん?一旦カザハに自信付けさせてもらってもいいぜ?」

124カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/09/05(金) 23:37:45
 そちらの帝龍のダンナをお迎えに上がりやした。アコライト外郭へお招きいたしやしょう」
「……あの傲慢な王を、打倒していただく為にね」

(三下マホたんが現れた!)

カザハマホたん「マホたんも一枚岩じゃないってことか……」
カケルマホたん「だってこの章では私達もマホたんらしいですし……」

>「君には才能がある…間違いない!もしかしたらあのアコライトにいる全部のマホたんを惚れさせる事も出来るかもしれない!!」

カザハマホたん「なんかジョン君のスイッチが入ってる……」

(あっという間に10分経った! 帝龍の格闘技能がレベルアップした! さっきと同じ、ゲーム特有の描写スキップである!)

>「さぁ!では行こう帝龍!アコライトに!」

(帝龍の台詞がないのは、ゲームの容量節約のためとかいう大人の事情ではない。多分。
道中では、マホたんたちが甘酸っぱい、もとい物騒な会話をしていた!)

>『乙女の密談を盗み聞きたあなかなかいい趣味でいらっしゃる……お気が済みやしたらどうぞこちらへ』

(キングマホたんは戦斧をぶん回しながらぐーっと☆グッドスマイルを踊っていた!
ジト目マホたんとキングマホたんがいかにもな会話を繰り広げる)

>『クキィ〜〜〜〜〜! ご、ご覧になりやしたか!?お聞きになったでしょう!あの憎ったらしい……!
 「そっちの調子はどうだ」「今度は楽しませてくれよ」ですってよ!
 男一人意のままにも出来やしねえ戦乙女がなーにを偉そうに!』

(なんやかんやで練兵場で鍛錬することに)

>「まっ、まずは俺の一勝と。それじゃ、次は誰が相手する?
 ジョン?明神さん?一旦カザハに自信付けさせてもらってもいいぜ?」

(帝龍は、「えっ、そんなこというてもこいつBGM専門じゃないの?」という顔をしている!)

「いいからいいから。試しにきてみて」

ttps://dl.dropbox.com/s/45fllxu8mosnne5/Braver%EF%BC%88%E3%82%AB%E3%82%B6%E3%83%8F%EF%BC%89.mp3

(「Braver!!」を歌いながらロマン戦法で応戦するカザハ。絶妙にラブコメ要素を排除した選曲だ!)

(帝龍は「ブレモンってそんなことできるん!?」っていう顔をしている)

125カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/09/05(金) 23:38:44
カザハマホたん「シ〇フォギア戦法、もしくはプ〇ンセッションオーケストラ戦法っていうやつ!(適当)
        本編のマホたんは自分の歌は自分には効かない仕様……つまりこの戦法は取れなかったはず。
        でも、さっき戦斧ぶん回しながら歌ってたところ見るに……
        ここでは細かい設定は気にせず繰り出してくる可能性が高い!
        対抗するには君もこの戦法で応戦するしかない!
        キングマホたんへの思いの丈を歌にするんだ!」

(帝龍は「そんなこと言われてもワイ作曲作詞の技能ないし……」という顔をしている)

カザハマホたん「そういうことなら仕方がない……! ちょっとスマホ貸してね」

(カザハマホたんは帝龍のスマホにAI作曲アプリをダウンロードした! その名も「音響の魔術師」!)

バトルは恋のはじまり!

ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/lcg3t82sipi3broe3055f/.mp3?rlkey=s971t0zxf384oloweuwr5fpi1&st=71hs7das&dl

「また来たの?」って君が笑うたび
胸のHPゴリゴリ削れてく
わざと勝負ふっかけるけど
ほんとはね…好きなんだよバカ!

勝ちたいだけじゃない 本気で負けてもいい
だけど君が誰かと 笑ってると悔しい!

恋はバトルだ! 好きすぎてまた挑む!
「しょうがないな」って受けてくれる君が
ずるいんだよ やさしすぎるんだよ
勝っても負けても また好きが増えてく

「しょうがないな」って受けてくれる君が
ずるいんだよ やさしすぎるんだよ
勝っても負けても また好きが増えてく

恋はバトルだ! 好きすぎてまた挑む!
「しょうがないな」って受けてくれる君が
ずるいんだよ やさしすぎるんだよ
勝っても負けても また好きが増えてく

(曲ができたので早速シ〇フォギア戦法を実践しようとする帝龍)

カザハマホたん「あっ、それは本番にとっておこう!
        いかにも「今即興で考えました!」ってていで歌えば完璧!」

(ベタベタラブコメソングを炸裂されるのを阻止した!)

カザハマホたん「ちなみに基本料金無料だけど有料会員になると曲の調整が出来るようになるみたい」

(作曲アプリの案件だった!)

126明神 ◆9EasXbvg42:2025/09/14(日) 01:09:36
三下マホたんから漂うクーデターの予感……
それはそれとして、帝龍の鍛錬指導を受注したジョンがすげえ圧で迫っていく。

>「煌帝龍だっけ?君は筋がいい…才能を感じる…前の時は卑怯な手ばっか使ってた気がするけどなんてもったいないんだ!
 磨けば輝く宝石になれる…!…1時間…いや10分僕に筋肉の動かし方をレクチャーさせてくれないか」
>「君には才能がある…間違いない!もしかしたらあのアコライトにいる全部のマホたんを惚れさせる事も出来るかもしれない!!」

「唐突にアクセル踏み込んだな……」

>「なんだなんだ、急に……何が始まったんだこれ?茶番か?茶番だな……。
 けど、ジョンがそこまで言うなんて珍しいぜ。試してみろよ、帝龍」

ジョンに半ば押し切られる形で帝龍がトレーニングを開始する。
いつものように詳細な描写はスキップだ。多分画面の端っこに「筋力+10」とかポップアップが出ている。
10分そこらのトレーニングで劇的な効果が出るわけない……っつうのもリアルに考えすぎか。
ここはゲームの世界。そしてRTAの世界だ。なんかやったらやっただけ効果が出る。そういう感じだ。

「これ荒野じゃなくてアコライトの中でやったほうが良かったかもな。
 やっぱ頑張ってるとこアッピールすんのって大事じゃん?」

んでまぁそんなこんなで俺達は三下マホたんの手引でアコライト外郭に舞い戻った。
ここからはスニーキングミッション……ってわけでもなかった。
内部的には俺達もマホたん族の一人みたいに扱われてんのかな。

>「とは言え、レスバの材料集めって何するんだよ。
  ていうか冷静に考えたらレスバに強くなってどうするんだよ……」

「漫画とかアニメとか、命がけのバトルの最中にベラベラおしゃべりしてる作品めっちゃあるじゃん?
 真の敗北とは命を失うことではなく、負けを認めることである――。
 多分肉体的な生命力とは別に論破されると減るHPバーみたいなのがあるんじゃねえかな」

最近のゲームだと結構あるよな、HPとは別枠のゲージ。
赤ゲージとか体幹ゲージとかブレイクゲージとかああいうの。
メンタルがグチャグチャに崩れるとパフォーマンスに多大な影響が出るってのは万人の知るところだ。
レスバには相手のメンタルをブレイクし、致命的な隙を作り出す力がある。俺はそう信じている。

>『――ねえ、ぶっちゃけ煌帝龍ってさ、どう思う?』

敵地のど真ん中をあてどなくフラフラしてると、ふとそんな会話が耳に入った。
うわぁ……聞きたくなかったよォ!マホたんが陰口叩いてるところ!

127明神 ◆9EasXbvg42:2025/09/14(日) 01:10:01
>『――ホンットにそれ!何回挑んでも律儀に戦ってくれてる時点で脈アリだってフツー分かるじゃんね!?
 手段なんか選んでないでさっさとボコボコにしてあげなきゃレオたんいつまでも生殺しじゃん!』
>「……流れ変わったな」

いや違うわ……これはアレか?ヒロインのお友達とかがヤキモキしながら恋の行方を見守ってるムーブか?
おれ恋愛エアプ勢だからその辺の機微わかんねえよ?

>『てかそもそもウチら戦乙女なんだから負かしたらそのまま昇天れ帰っちゃえばよくない?』
>『えー?お臨終ち帰りは流石にちょっと重いよ〜。ヴァイキング時代じゃないんだからさ〜』

「気のせいかな……なんか『つれかえる』とか『おもちかえり』のルビが不穏な漢字に振られてるような」

なるほどな……ゲーム画面だと字幕が付くからこういうルビ芸みたいな表現ができるのか……
勉強になるなぁ……
背筋を通る悪寒にぶるっちょさむさむしつつ、三下マホたんの案内で練兵場へ行く。
キングがなんか戦斧を振るいながらアイドルダンスをキメていた。

「上手いんだけど、上手いんだけどさぁ……蛮族が雨乞いしてるようにしか見えねえ」

キングは俺達の存在に気付いてないらしく、三下マホたんと二三言交わす。
水面下で進行している陰謀はお見通しのようだった。

>『あ、あっしは、あっしは悔しいんですよ!
 あの王様気取りの唐変木の顔を真っ赤にさせて泣きを見せてやらねえと気が済まねえんです!
 頼んます、頼んますよ旦那方!どうかあの傲慢な王を――ケチョンケチョンに負かしてやって下せえ!』

「わかるわ」

俺は同意した。

「今んとこ俺達キングの完全無欠スーパー超人なところしか見てないもんな。
 こういうこと言うのマジでいにしえのキモいオタクみたいで憚られるんだけど……
 一個くらい萌え要素、欲しくない?」

料理が下手クソだったり、可愛いモノが好きだったり、
ギャップ萌えしかり、ヒロインの弱点とか意外性なんかは……萌える。

128明神 ◆9EasXbvg42:2025/09/14(日) 01:10:27
「うぐっ……言ってて自分のあまりの加齢臭に意識が飛びそうだ。萌えって知らん間に死語になってんだよな。
 未だに陽キャのことを『リア充』って呼んでるおっさんみたいだ……。
 令和時代の萌えに相当する言葉って何なんだ?エモい……もちょっと古いんだよな」

「馬鹿な……『MOE』と『HENTAI』は全世界共通語じゃないのか……?」

ミハエルが横で愕然としている。
さもありなん……狭い輪の中でコミュニケーションが完結してると言語感覚のアプデが遅れるんだよな。
俺はツイッターとかインスタとかよくわかんねえままSNS全盛時代に取り残された古のオタクだ。
ニュー速VIPとニコニコ動画がオタク文化の発信源だった頃に今も心を囚われ続けている。
たぶんカザハ君とかもそんな感じだと思う(超暴言)。

閑話休題――これも大概古いがさておき、早速アコライト内で帝龍のトレーニングを再開する運びとなった。
まずはエンバースが魔剣を突きつけてドヤ顔する。

>「まっ、まずは俺の一勝と。それじゃ、次は誰が相手する?
 ジョン?明神さん?一旦カザハに自信付けさせてもらってもいいぜ?」

「あっみんなで稽古つけてく感じ?じゃあまぁ……カザハ君頼んだ」

>「いいからいいから。試しにきてみて」

カザハ君が胸を貸さんばかりにチョイチョイっと帝龍を手招きし、
挿入歌を歌いながら格闘戦を演じ始めた。
こいつ今マホたん化してっからマホたんの曲歌うとすげえハマるな……。

「歌いながら殴る!これはれっきとした戦法だぜ。
 勝ち確BGM流れてっと負ける気しねえだろ。つまり精神的に優位に立てるってことだ」

応じるように帝龍もカザハ君からもらった作曲アプリで自分の戦闘用挿入歌をでっち上げる。

>「ほんとはね…好きなんだよバカ!」

「せ、セリフパート入ってるやつ……!!」

お前初手でそれは大分アクセル踏んだなぁ!?
いやキャラソンとしてはアリなのか……?どうなんだ……??わからん……!!

「ほな次は俺か……とりあえず一発レスバでもかましとくか。
 気になってたんだけど帝龍君さぁ――別にキングでなくても良くない?こんだけいっぱいマホたん居るんだから」

対峙する帝龍の眉が跳ね上がるのを感じた。

「少なくとも俺の知ってる煌帝龍は、ユメミマホロを自分のモノにしたがってた。
 あのキングが誰かのモノになるタマかよ?即刻尻に敷かれんのが目に見えてるぜ」

それに――

「キングは強い。怖い。……萌えない。
 キャラとしての魅力はあるが、まぁヒロインとしてはあんま人気の出ないタイプだよな。
 もっとわかりやすく萌えられるサブヒロインがここには沢山いるだろ。
 袖にされ続けてなおキングに執着する理由があるようには見えねえな」


【レスバ実践指導。キングにこだわる理由ってなんなの?】

129ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/09/21(日) 03:14:37
演劇染みた茶番を終わらせ…そんなわけでアコライトにやってきたのだ

煌帝龍は相変わらず気まずそうにしている…
助けてくれる相手に高圧的な態度を取れないので黙っているのだろう…

僕としては正々堂々としていて欲しい物だが…

>『――ねえ、ぶっちゃけ煌帝龍ってさ、どう思う?』
>「お?」

アコライトを変装もせずに正々堂々歩いていると…マホたん達…いや紛らわしいな…
なんだか現代では中々見かけないタイプのギャルマホたん達が話していた。

煌帝龍は聞こえないフリをしているが耳は思いっきり聞き耳を立てている。
変装もせずに乗り込む度胸はあるのに正々堂々盗み聞きする度胸はないのか…

>『正直ちょっとウザくない?』

煌帝龍の顔がみるみる青ざめていく。
人間ってこんなに表情分かりやすくかわるもんなんだ…。

>「おいおいヤバいぞカメラ止めろ!マホたんのこんなとこ見られたら今度こそサ終ものの炎上――」

「仕方ないんじゃないか…?人の好き嫌いって理屈じゃないしな…」

むしろそれくらいで炎上する現代がおかしいのだ…たぶん。

>『――ホンットにそれ!何回挑んでも律儀に戦ってくれてる時点で脈アリだってフツー分かるじゃんね!?
 手段なんか選んでないでさっさとボコボコにしてあげなきゃレオたんいつまでも生殺しじゃん!』

>「……流れ変わったな」

「な?分かったろ!脈ありだって!なんだ僕はこう見えても結構モテるんだから信じろって〜」

今にも粉々になりそうな煌帝龍の肩ポンポンと叩き元気づける。
自信が漲ったようだだいぶ元気になった。

お前…そんなキャラだっけ…?

>『乙女の密談を盗み聞きたあなかなかいい趣味でいらっしゃる……お気が済みやしたらどうぞこちらへ』

いつまでも話が進まないと思ったのかジト目マホたんがそう告げる。

「ちょうどよく自信が付いただろうしいこうか!」

130ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/09/21(日) 03:14:48
そして着くは屋外練兵場。

「惚れた張れたの話をするにはあまりにも無骨な場所だな…」

ぐーっと☆グッドスマイルを流しながら…

己の巨体にも負けぬ戦斧を握りながらギングマホたんは舞う。
緩急を付けた美しさの中に強かさを兼ね備えたその舞はおちゃらける気マンマンで来た僕達全員を黙らせた。

「美しい…」

舞踏なんて武芸ができない奴らが前座で披露する物くらいの偏見でいた僕は度肝を抜かれた。

「そこにいるんだろ。出てきな」

一通り舞終えるとキングマホたんは低い声で両手で斧を薙ぎ払いながらそう言った。
明らかに届かない距離でありながら全てを圧倒する薙ぎ払いは、隠れていた僕達と煌帝龍を吹き飛ばした。

>『なんだ、手前か。別にいいぜ。盗み見くらい気にすんなよ……それより、丁度いいや。そっちの調子はどうだ?』
>『……調子、ですかい?一体何の――』
>『どうせまた裏でセコセコやってんだろ?頼むぜ、今度は楽しませてくれよ』

「愛されてるじゃないか…煌帝龍」

そうして僕達は屋外練兵場を後にした。

>『クキィ〜〜〜〜〜! ご、ご覧になりやしたか!?お聞きになったでしょう!あの憎ったらしい……!
 「そっちの調子はどうだ」「今度は楽しませてくれよ」ですってよ!
 男一人意のままにも出来やしねえ戦乙女がなーにを偉そうに!』

>「今んとこ俺達キングの完全無欠スーパー超人なところしか見てないもんな。
 こういうこと言うのマジでいにしえのキモいオタクみたいで憚られるんだけど……
 一個くらい萌え要素、欲しくない?」

「萌え……?はともかく…僕は純粋な気持ちを伝えられないあの感じ…とってもかわいいなぁって感じたけど…」

>「馬鹿な……『MOE』と『HENTAI』は全世界共通語じゃないのか……?」

頭を抱える明神と不思議な言葉を呟きながら落ち込むミハエルとヤレヤレ…といった表情のエンバース。

あれ僕何かやっちゃいました?

131ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/09/21(日) 03:14:58
>『効率よく上達するには座学やコーチングも大事だけどさ。結局のところゲームが上手くなるには――』
>『何を――!』
>「――ゲームをやり込まないとな。新しく覚えたテクニックは実戦で噛み砕いて自分のモノにしないと意味がないぞ!ってな」

>「まっ、まずは俺の一勝と。それじゃ、次は誰が相手する?
 ジョン?明神さん?一旦カザハに自信付けさせてもらってもいいぜ?」

「さすがに今のは不意打ち上等すぎると思うけど…」

だが今の僕達にすら気を使っている煌帝龍じゃキングマホたんに勝てないのは目に見えていた。

>「あっみんなで稽古つけてく感じ?じゃあまぁ……カザハ君頼んだ」

         ♪
恋はバトルだ! 好きすぎてまた挑む!
「しょうがないな」って受けてくれる君が
ずるいんだよ やさしすぎるんだよ
勝っても負けても また好きが増えてく
         ♪ 

カザハ(マホたん属性)の歌は圧巻であった。

いつもより可愛さが強調され、さらに強かさを感じる。
普段のカッコカワイイ良さも嫌いではないがこれもまたよし…。

「フフ…」
「きも」

後ろにいるジト目マホたんが僕の顔を見るなりそう言い放つ。

「この世界のアイドルはそんな言葉遣いをしろと教わるのか?
…まぁそれはともかくだ…頼みたい事がある…とある物が欲しいんだが…」

明神に次を頼むと言い残し僕は練兵場を後にした。

132ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/09/21(日) 03:15:20
「おっと…待たせちゃったかな…?」

明神のお得意の精神攻撃を食らったのか煌帝龍の表情が変わっていた。
それがいい変化か悪い変化なのか…判断が付きにくい所だが…まぁそこはエンバースは明神の管轄だ。僕の出る幕じゃない。

「ついさっきもやったばっかりで悪いが…僕にはやっぱりコレしかないからね…構えろ」

持ちだしたのはさっきのキングマホたんが使っていたのと同じ型の僕の身の丈より大きい巨大な斧が二本。
もちろんさっきキングマホたん本人が使ってたような上等な奴じゃない練習用の奴だけど…巨大な魔物と戦うわけじゃないし、重さと大きさが一緒なら関係ない

「僕が…マホたんになる」

「ハァ?」

煌帝龍は心底アホそうな声を上げる。

「『聖撃(ホーリー・スマイト)』」

完全に油断している煌帝龍の胴体に目掛けて一撃を浴びせる。
もちろん僕には光属性どころか魔法その物は使えない…かっこつけているが正真正銘ただのパンチである…が。

「ぐえぇぇぇえっ!」

「僕はユメミマホロの戦い方を見ていた。キングマホたんの筋肉の使い方も…さっきの一振りであらかた理解した。」

モーション完コピした僕の聖撃は光属性がないだけで人間を殺すには十分な威力だ。

「今の僕はマホたんだ…素手て戦うキングマホたんも…武器を使って戦うキングマホたんも再現できる。体格差や性別を考慮して…再現率55%って所かな」

部長が首に掛かっている魔法鞄から器用にポーションを出し並べていく。

「よく聴け煌帝龍…次のキングマホたんとの闘いがラストチャンスだ
僕達はいつまでもお前の面倒を見れないし…次勝てなければお前は一生勝てない。」

思い出すキングマホたんの戦い方。
女性でありながら惚れ惚れするような筋肉…それを無駄にしない戦い方…僕が知る限りで一番…

いや失われている記憶の中に誰かいるかもしれないが、覚えている限りでは一番美しい機能性筋肉を持つ女性だ。
戦ってみたい。あの無駄のない戦う為に生まれたような筋肉と…心行くまで…!

「お前に才能があるのは間違いない…認めよう。
…がその何度も負けてもいいやという敗北者思考がある限り絶対にキングマホたんには勝てない」

きっとキングマホたんなら小細工なしの純粋なバトルが楽しめるだろう…戦いたい。
あぁ…RTA?の為に僕の気持ちを抑えなきゃいけないのは…分かってる…分かってるのに…

「僕の記憶にあるお前は愛した女から餌をもらうだけで満足するような男じゃなかった」

僕はダウンしている煌帝龍の首を掴み持ち上げ…僕は宣言した

「お前が無様に僕に負けたら…キングマホたん…彼女の初めて(の敗北)は僕がもらう」

そのまま僕は煌帝龍を壁に向かって投げ、叩き付ける。
少し時間が空いた後…煌帝龍が立ち上がる。その瞳に宿るのは怒りか…それとも…

「マホたん以外の僕の技術は一切使わない。さぁ…ここで真似事マホたんを演じる僕を戦闘不能にするくらいの甲斐性ぐらいは…見せてもらおうか」

僕は二つの戦斧を構える。それは先ほどのキングマホたんが放った薙ぎ払いの構え。
人間どころかモンスターすら容赦なくあの世にご招待できる渾身の一振りが煌帝龍を襲った。


【煌帝龍を煽り燻る漢心を引き出す】

133embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:41:09
『シ〇フォギア戦法、もしくはプ〇ンセッションオーケストラ戦法っていうやつ!(適当)
 本編のマホたんは自分の歌は自分には効かない仕様……つまりこの戦法は取れなかったはず。
 でも、さっき戦斧ぶん回しながら歌ってたところ見るに……
 ここでは細かい設定は気にせず繰り出してくる可能性が高い!』

「お、懐かし。ロールプレイじゃん」

『そういうことなら仕方がない……! ちょっとスマホ貸してね』

「てか、なんでお前らは片方無言のまま意思疎通取れてんだよ」

帝龍作曲中――――――作曲完了。

「お、出来たのか。初見のくせに結構早くないか?それじゃ早速――」

『あっ、それは本番にとっておこう!
 いかにも「今即興で考えました!」ってていで歌えば完璧!』

「……なるほど。そういう戦術もあるのか」

煌帝龍がカザハと目を合わせる――深々と頭を下げる。
そのままカザハの両手を取って――

『……オマエのしてくれた事、決して忘れないアル』

カザハにしか聞こえないほど小さな声でだが、そう言った。

『ほな次は俺か……とりあえず一発レスバでもかましとくか。
 気になってたんだけど帝龍君さぁ――別にキングでなくても良くない?こんだけいっぱいマホたん居るんだから』

「あーん?なんだかちょっと挑発を優先しすぎて論理武装が甘くないか〜?
 ゲーマーならビルドにはこだわって然るべきだろ。なあ帝龍、言ってやれよ」

『少なくとも俺の知ってる煌帝龍は、ユメミマホロを自分のモノにしたがってた。
 あのキングが誰かのモノになるタマかよ?即刻尻に敷かれんのが目に見えてるぜ』

『キングは強い。怖い。……萌えない。
 キャラとしての魅力はあるが、まぁヒロインとしてはあんま人気の出ないタイプだよな。
 もっとわかりやすく萌えられるサブヒロインがここには沢山いるだろ。
 袖にされ続けてなおキングに執着する理由があるようには見えねえな』

煌帝龍は――なおも沈黙を貫いていた。だが無反応という訳でもない。
拳を握りしめて打ち震えている――いわゆる「効いている」という状態だった。

「……おい帝龍。打ち返してこいよ。これは稽古だぜ。お前がだんまり決め込んでたら……
 明神さんがただの他人の色恋に口出しする失礼なヤツになっちゃうだろ」

エンバースは煌帝龍をそう言って諭す――

「――とは言え、確かにキングマホたんは怖くて萌えないけどな。
 あんなムキムキだといわゆるデカ女フェチにとってもちょっと変化球っぽくなっちゃうだろうし」

――ふりをしてすかさず煽った。
ブチ、と過激な音が聞こえた。恐らくはブレモンのサウンドエフェクトだ。

134embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:41:23
『――黙って聞いていれば、ベラベラとッ!もう我慢ならんアル!』

「だから我慢するなって言ってるんだって」

『やかましい!怖い?萌えない?大きなお世話アル!』

そして――煌帝龍はいきなりキレた。いきなりでもないが、とにかくキレた。

『たてがみのユメミマホロにはキサマらには分からん美しさがあるのだ!
 それに!仮にアレの魅力が理解出来なかったとしてだな――!』

煌帝龍は一息にまくし立てると、深く息を吸い込んで――

『――人の推しを安易に腐すのはゲーマーとしてマナー違反アルよ!!!』

明神に人差し指を突きつけてそう叫んだ。
ゲーマーという立場をボーナスに乗せた圧倒的正論パンチ。
瞬間、凄まじい突風が吹き荒れた。多分レスバ力を視覚的に演出する為のエフェクトだ。
強烈な風圧が明神をカンフー映画よろしく吹っ飛ばして近くの壁に激突させた。

『フー……フー……ええい!へりくだるのはもうやめアル!そこまで言うなら教えてやるアル!
 アレはワタシがこの三巡目に召集された最初の日の事――――』

『おっと…待たせちゃったかな…?』

『ム……いや、わざわざの足労深く感謝するアル。それで、次は何を――』

「オイなんだよ、ちょっと続きが気になるだろーが!
 ちゃんと明神さんみたいに全方位に噛みついていけよ!」

『ついさっきもやったばっかりで悪いが…僕にはやっぱりコレしかないからね…構えろ』

煌帝龍が振り返る――ジョンはバカでかい斧を二振り担いでいた。

『僕が…マホたんになる』
『ハァ?』

「ハァ〜〜〜?出た出た、ジョンって時折前触れもなくトチ狂うからマジでビビる――」

『『聖撃(ホーリー・スマイト)』』
『ぐえぇぇぇえっ!』

「……驚いたな。一瞬、ジョンにキングマホたんが重なって見えたぞ。ビジュアルエフェクトとして最悪過ぎる。
 華奢なキャラにデケーキャラが重なって見えるから映えるんだろうがそういう演出は」

『僕はユメミマホロの戦い方を見ていた。キングマホたんの筋肉の使い方も…さっきの一振りであらかた理解した。』
『今の僕はマホたんだ…素手て戦うキングマホたんも…武器を使って戦うキングマホたんも再現できる。体格差や性別を考慮して…再現率55%って所かな』

ジョンが練兵場の片隅にポーションを並べていく。
煌帝龍は――起き上がらない。

『よく聴け煌帝龍…次のキングマホたんとの闘いがラストチャンスだ
 僕達はいつまでもお前の面倒を見れないし…次勝てなければお前は一生勝てない。』

ジョンが地に伏したままの煌帝龍の首根っこを掴む。

『お前に才能があるのは間違いない…認めよう。
 …がその何度も負けてもいいやという敗北者思考がある限り絶対にキングマホたんには勝てない』
『僕の記憶にあるお前は愛した女から餌をもらうだけで満足するような男じゃなかった』
『お前が無様に僕に負けたら…キングマホたん…彼女の初めて(の敗北)は僕がもらう』

「うお……急に焦るような事言うなよ。この世界にルビがなかったらかなり危なかったぞ」

135embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:42:07
ジョンはそのまま煌帝龍を放り投げた。仕切り直しだ。

『マホたん以外の僕の技術は一切使わない』

立ち上がる煌帝龍。

『さぁ…ここで真似事マホたんを演じる僕を戦闘不能にするくらいの甲斐性ぐらいは…見せてもらおうか』

そこに猛然と迫る横薙ぎの戦斧。
煌帝龍が――風圧に煽られたかのように後ろへよろめく。
体勢が見る間に地面と水平に近づく。そして――重く激しい打撃音。
倒れざま、煌帝龍の足刀がジョンの戦斧を蹴り上げていた。

パリィだ。本来盾や短剣を使って行うパリィを蹴りで代用した。
ゲームのシステムをリアリティにすり合わせる――ブレイブの戦技に適応している。

「なあ、今の見えたか明神さん?あの曲芸もなかなかだったが、その前だ」

最初に聖撃を貰った後、煌帝龍は起き上がらなかった。
起き上がれなかったのではない。あえて起きずに呼吸を整えていたのだ。
たった今、壁に叩きつけるように投げられた時も――受け身が取れていた。
立て続けに攻撃を受けた絵面に反して――煌帝龍に蓄積したダメージは小さい。

「ハイバラ、なんで僕じゃなくてそのオッサンに聞くんだ」

「お前に聞いても見えたって答えるに決まってるからだよ」

曲芸じみたパリィもただの魅せプではなく擬態。
ギリギリまで効いているふりを見せておき、パリィを決めた瞬間に体勢を修正。
ジョンの懐に飛び込み――

『――『聖撃』』

戦斧を蹴り上げられ、隙だらけのジョンの腹部に突き刺さる肘撃。
キングマホたんの姿が重なって見えるほどの再現度。
かつ単なる拳打よりも威力の出る肘打ちへのアレンジの両立。

ジョンの見立ては正しかった。
中国の名家の生まれである煌帝龍が――格闘技の素養に乏しい訳がないのだ。

『ソエアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!』

戦斧を十二分に振るえない超至近距離。裂帛の気合。
煌帝龍の拳足がジョンを打つ。打つ。打つ。打つ打つ打つ。
戦闘は明らかに一方的だった。明らかにジョンが一方的に打たれ続けている。

「へえ……面白い事するじゃないか、帝龍」

いくらジョンが普段と違う戦型を取っているにしても一方的過ぎる。
何かカラクリがある――傍から見れば一目瞭然。
だがジョンにはそれが何かは理解出来ないだろう。少なくとも今は。

『ケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!』

嵐のごとき連撃。耐えかねて隙を見せるジョン。
そこに突き刺さる煌帝龍の貼山靠――全体重を乗せた背中を用いた体当たり。
強烈な打撃音。インパクトの瞬間には肘も打ち込んでいる。
ジョンの巨体がよろめいて――煌帝龍がそれを慌てて支えた。

136embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:42:57
『す、すまんアル!今のは強く打ち――』

実際、煌帝龍の最後の一撃は並大抵のレイドボスでさえ沈め得るほどの威力だった。
そしてまともな神経をしていればいくら筋肉ムキムキとは言え
ジョンがレイド級モンスターよりも頑丈だなどと思える訳がない。

『過ぎ、た……』

だが、ジョンは本当にただちょっとよろめいただけだった。

『……今のでまた少し自信がなくなったアル』

煌帝龍がなんとも言えない表情を浮かべる。

『だが……いい経験が出来たアル。謝謝……確か、ジョンだったアルか。覚えておくアル』

右の拳を左手で包み、深く礼――非戦と敬意を示す為の仕草。
ジョンをまっすぐ見つめる煌帝龍の眼差しは――見違えるほど溌剌とした気力が滾っていた。

「よーし、突貫工事だったがこれでかなりマシになったんじゃないか?
 これで今日の内にこなしておくべきイベントは全て終わったろ。
 ベッドに入って明日まで時間をスキップすると――」

『オイ、待つアル。まだお前との特訓が済んでいないアルよ』

「あーん?なんだよリベンジマッチか?やめとけやめとけ。折角積み上げた自信をまた粉々に――」

瞬間、風切り音。エンバースの戯言を待たず放たれた煌帝龍の足刀。

「うおお!?おま……明日に響いても知らないからな!」

やむなくダインスレイヴを抜くエンバース。
初手の不意打ちで体勢を崩された。だがダインスレイヴの魔力刃には重さがない。
不安定な姿勢からでも十分鋭い斬撃が放てる。
反撃の剣閃――当たらない。不安定な姿勢故の軌道の制限を読まれている。

「げっ……」

煌帝龍が更に前に出る。繰り出される拳足の嵐。
体勢を立て直すどころか少しずつ悪化させられている。
体勢が悪化するから斬撃の軌道が更に制限される――スノーボールだ。
ゲーム序盤に有利を取った相手がそれを活かして更に有利になっていく様を、転がる雪玉に例えた言葉。

『あーあーハイバラ、それはちょっとやらかしたんじゃないか?』

『うっせ、黙って見てろ。この――』

響く金属音。ダインスレイヴの柄を蹴り上げられた。
酷く悪化した姿勢から放つ斬撃は軌道だけでなく起こりも読みやすい。
隙だらけのエンバースの顔面に煌帝龍の足刀が迫り――そして止まった。
それだけではない。煌帝龍の体が――宙に浮いている。

「へ、へへ……決まり手、空気投げ……なんつって」

突き出された左手。ひどくバツの悪そうなエンバースの笑み。
宙空に僅かに煌めく極細の白糸――フラウの触腕だ。
スマホの液晶からパートナーの一部だけを召喚する部分召喚。
基本的には石の節約くらいにしか用法のないテクニックだが――こういう使い方も出来る。

『ひ……卑怯者ー!オマエ……今まで散々イキっておいてそんなやり方があるか!』

《はあ……久々に召喚された出番がこれですか?だからギャグ回なんかに関わりたくないって言ったのに……。
 それはそれとしてサイテーですよハイバラ。羞恥心とかないんですか?》

「うるせえバーカ!これが俺からの教訓だ!いいか、ゲームってのはな……勝たなきゃ続けらんねーんだよ!!」

その後は煌帝龍が再試合を要求したり、やや興の乗ったミハエルがエンバースがちょっと心配するレベルで
煌帝龍をボコったりして夜が更けていった。そして――――――

137embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:43:28
『たてがみのユメミマホロ――――――ッ!今日こそ我が伴侶となってもらうアルよ――――――――!』

翌朝、煌帝龍は城郭の中央広場で高らかと叫んだ。
睨み上げる先は城郭の天守。朝日を後光にキングマホたんが地上を見下ろしていた。

『へ……いいね。ますますいい顔つきになりやがった』

キングマホたんが天守のバルコニーから身を乗り出す。手すりを強く蹴って宙へ。
そして煌帝龍の前方へと着地。全身から滾る闘気――既に臨戦態勢。
ギャラリーマホたん達も続々ぞろぞろと集まってきている。

『オイ、ゲスたん。なんでコイツらがもう城郭内にいるんだ?』

『さあ?あっしにゃ皆目見当も付きませんや』

『なんだ。アタシはてっきり手前の客人かと思ったんだが――なるほど。
 つまりコイツは招かれざる客ってワケだ。なら仕方ねえ。アタシが追っ払ってやんねえとな!』

瞬間、躍動するキングマホたん。
だが煌帝龍は動じない。右手のひらをすっと立てて、彼女を制する。

『ちょっと待ったアル。その前に一つ聞いておきたい事がある』

『ああ?んだよ勘弁しろよ。興が冷めちまう……で、なんだよ。
 まさかアタシがちゃんと約束を守れるか疑ってんのか?』

『違う。ワタシは昨日からここに潜入していたアル。結果としてマホたん達の噂話が幾らか不可抗力的に、
 あくまで不可抗力として耳に入ってきたアル。それによれば――』

煌帝龍はそこで一度言葉を区切り、深く息を吸い込んで、人差し指をキングマホたんに突きつけた。

『実はワタシはかなり脈アリで好き避けされているだけと聞いたが、それはホントアルか――!?』

レスバの風が吹き荒れる。なんだよレスバの風って。

『な――――!?な、なな、何言ってやがる!いや!誰がそんな事言いふらしてやがった!』

キングマホたんが慌てふためいて周囲を見回す。
ギャルマホたん達が数名、カスカスの口笛を吹きながら目を逸らした。

『違うのか?』

『ちが……や、違うってワケじゃ――』

キングマホたんが言葉に窮したその瞬間。煌帝龍が仕掛けた。

「お、上手い」

一足飛びにキングマホたんの懐に飛び込み、強烈な肘打ちを見舞う。
ギャラリーから黄色い悲鳴が上がる。決闘における不意打ちスタートは戦乙女界隈ではかなり際どいシーンらしい。

『テ、メ……』

キングマホたんの表情が怒りと――喜びに歪む。表情筋がビキビキ鳴っててかなり怖い。

『ガァッ!!!』

反撃のショートフック。嵐のごとき剛腕だが煌帝龍は容易に回避。
同時にスマホを操作――決戦用BGM『バトルは恋のはじまり!』が流れ始める。
またギャラリーから黄色い悲鳴が上がる。コイツら箸が転がっても黄色い悲鳴上げるんじゃないか。

138embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:45:19
『な、な……何してやがる!今は戦いの最中だぞ!こんな浮ついたBGM……集中出来ねえだろうが!』

『いいや、集中してもらうアル。このワタシに』

黄色い悲鳴。ノリについて行けないエンバースがかなり居たたまれない感じで耳を抑える。
拳。手刀。肘。足刀。膝。靠撃。連打。連打。豪雨のごとき連打。
煌帝龍の打撃がキングマホたんを打つ。打ち続ける。

ジョンの時と同じだ。煌帝龍は一方的にキングマホたんを滅多打ちにしている。
あの時何をされているか分からなかったジョンも、今回はそのカラクリが理解出来るだろう。

「バトルはダンス……ってか。面白い事するよな」

いつの間にかノリノリのマホたん達が設営した実況解説席に拉致られたエンバースがぼやく。
明神辺りももしかしたら拉致られているかもしれない。

「呼吸を合わせてから、ほんの少し自分に有利なようにズラしているんだ。
 ダンスめいた戦技を扱うマホたんに対してはかなり効果的だ。BGMもリズムの誘導に一役買ってる。
 2ターンくらい前のグッスマの特訓が伏線として活きてくるのもいい」

『ホワチャアアアアアアアアアアアアア――――ッ!!!』

なんて話をしている内に煌帝龍の双掌打がキングマホたんにクリーンヒット。
キングマホたんが大きく仰け反り、後ずさる――そして顔を両手で抑えた。
双掌打で打たれたのは腹部であるにも関わらずだ。

『バカ……ヤロ……手前……味な真似ばっかしやがって……こんなにされたら、アタシ――』

耳まで真っ赤になったキングマホたんが――両手を高らかに掲げた。
応じるようにどこからともなく二振りの戦斧が飛来。それをしかと握り締める。

『――もう、我慢出来ねえぞ!!』

『ヤベエ!恋する戦乙女心が暴走しちまってる!ありゃもう止まらねえですよ!』

エンバースのマイクをひったくってジト目マホたんが叫ぶ。
勝手に拉致されて勝手にマイクを奪われたエンバースはかなりげんなりしている。

『……ちょっと!ちゃんと恋する戦乙女心がなんなのか聞いてくだせえよ!』

「いいよいいよ、どうせ戦乙女の生態として戦士の魂をお持ち帰りしたい欲求が抑え切れないとかそういう感じだろ」

『うわー野暮なお人だねまったく!戦乙女の恋心を言語化しやすかフツー!?サイテーでさあ!やーぼやーぼ!』

「……お前、マホたんのツラしてなかったら普通にぶん殴ってるからな」

そうこうしている間にキングマホたんが煌帝龍に襲いかかる。
明らかに手合わせ以上の殺気を帯びた強撃。
紙一重で躱した煌帝龍の頬から鮮血が舞う。黄色い悲鳴が上がる。

崩拳。袈裟斬り。回避。頂肘。柄当て。三日月蹴り。縦蹴り。アッパーカット。ブレーンチョップ。
乱打戦だ。キングマホたんは避ける気がない。煌帝龍も最早避け切れない。
気力体力の限りを尽くす真っ向勝負――分が悪いのは煌帝龍だ。一撃の重さが違いすぎる。

「オイオイ大丈夫かよ!気持ちだけじゃゲームは勝てないぞ!分かってんだろうな――」

唸る戦斧。裏拳によるパリィ――逸らせはした。だが衝撃をいなし切れない。
逆に煌帝龍の体勢が大きく崩れる。膝を突く。
キングマホたんが一対の戦斧を高く掲げた。黄色い悲鳴が上がる。
そして――稲妻のごとき振り下ろし。



「――――そこだ」

139embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:46:58
瞬間、響く金属音。キングマホたんの戦斧が空高く弾き飛ばされた。
煌帝龍は膝を突いたまま。キングマホたんの一撃をパリィしたのは――
煌帝龍のスマホから一瞬だけ召喚されたアジ・ダハーカの爪先。
プレイスキル・スティール――ゲーマー達の基本技能。

「よしッ!!オイバカ何やってる早く立て!決めろ!決めちまえ!」

煌帝龍が立ち上がる――だが立ち上がりはしたが呼吸が荒い。
顔面を強打された訳でもないのに鼻血が止まらない。
息つく暇もない乱打戦。その直後に一瞬とは言え超レイド級を召喚。
煌帝龍の体力はもう限界に近い。

「バカヤローへばってんじゃないぞ!オイみんなも声出せ!応援の力ってバカにならないんだぞ!」

パリィを受けた事によるスタン状態には制限時間がある。
両腕を弾き上げられた状態で硬直したキングマホたん、その指先が――ぴくりと動く。

「――スタンが切れたぞ!」

鉄槌のごとく振り下ろされる両腕。
煌帝龍がよろめく。倒れ込むような動作――――脱力状態。
直後に風切り音。急速に放たれた後ろ回し蹴りがキングマホたんの両腕をもう一度パリィ。
先のスタンを見過ごしたのは――確実に仕留めるべく呼吸を整える為。
ジョンとのスパーリングの時と同じ組み立て。
だから次に放たれる攻撃も、もう決まっている。

『――『聖撃』』

震脚による踏み込み。沈み込む体勢。
その反作用を乗せて振り上げる頂肘が――キングマホたんの腹部に突き刺さった。
ずど、という重く鈍い打撃音が観客席にまで響く。

そして――キングマホたんが最後の力を振り絞る。もう一度両腕を振り上げる。
だが振り下ろせなかった。そのまま糸が切れた人形のように崩れ落ちる。膝を突く。
煌帝龍が咄嗟に駆け寄ろうとするが――キングマホたんがそれを手振りで制した。

『……たった一晩で、見違えるほどいい戦士になりやがって。アタシの負けだ』

キングマホたんが小さく零す。

『では――!』

『クソ。こんな事ならもっと早く……臨終ち帰っちまえば良かったな……。
 日に日に磨き抜かれていく手前を見ていたら……欲が出たんだ。とうとうこの日が来ちまった……』

『たてがみのユメミマホロ……?何を言っているアル?』

『チャプタークリアだ。手前はアイツらに付いていきな。
 いい仲間じゃねえか……面倒見もいいし、必死こいて手前を応援してくれる』

『何をバカな!約束は――――』

『バカは手前だ!アタシ達はなんだ!?言ってみろ!アタシ達は……ただのバグの産物だ!
 この期間限定のイベントの中にしか存在しないんだ!
 手前みたいな「まとも」な命と結ばれるなんざ……出来る訳がねえだろうが!!』

魂から振り絞るような怒号だった。

『――いいや、出来る!!』

だが煌帝龍の返答にはその怒号さえも霞ませるほどの気迫が宿っていた。

140embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:47:40
『とりあえず見本市して人気出たキャラを擦り倒すなんて商業創作の常アル!
 ワタシはそもそもそんな言い分を認めるつもりはないが――たとえ!
 仮に今はただのバグの産物だったとしても――それなら正しく生まれてくればいい!』

息も絶え絶え。へろへろのふらふらだった煌帝龍がしかと屹立。
キングマホたんに手を差し伸べる。

『この中国一のブレイブ……煌帝龍のパートナーとして!』

決死の叫び。一瞬の静寂。

『……バカ言え。手前にゃアジ・ダハーカがいるだろうが』

『いらん。オマエがパートナーになった暁には育成資金に換えてやるアル』

『……アタシ、結構重いらしいんだけど』

『ふん、確かにオマエのパンチはかなり効いたアル』

『バカヤロウ……じゃあ、じゃあ――』

キングマホたんが両手で頬を抑える。
顔を真っ赤に染めて――目には涙を浮かべて。

『――アタシ、手前のお嫁さんになってもいいのかな』

エンバースは二人から目を逸らした。
何故なら――これより先を直視するのはかなり気まずいからだ。
程なくしてこれまでで一番大きな黄色い悲鳴が上がった。

『うう……良かった……良かったねレオたん……』

「うお、誰だお前……ジト目マホたんか?」

エンバースの隣でジト目マホたんがガン泣きしている。
めちゃくちゃキレイな目で泣いてるせいでクマぐらいしかジト目マホたん要素が残っていない。

「え?アレ?お前確かキングの事……あ?あー……顔を真っ赤にさせて泣きを見せてやらねえとって、そういう事かよ!」

見事な伏線回収だった。

141embers ◆5WH73DXszU:2025/09/30(火) 06:51:00
 
 
 
 
 
『ふふ……くふふふ!言ったのです!言ったななのです!煌帝龍!』

「……オイふざけんなよ。流石に空気読めって」

エンバースが天守を見上げる。声の主は――言うまでもないがローウェルだった。

「で?誰が何を言ったって?」

『煌帝龍!お前は確かに言ったのです!アジ・ダハーカはいらないと!
 そしてお前のパートナーでなくなったのなら――――――!!』

ローウェルが城郭の外を指差す。応じるように地面が割れる。
その裂け目から何かが這い出してくる。

『このローウェルがイベントのギミックとして召喚したって何ら問題はないのです――――!!!』

城郭に影が差すほどの巨体。暗褐色の鱗。巨大な翼。
その姿は紛れもなく魔皇竜アジ・ダハーカ――

『ぐおおおおーん!』

――の着ぐるみを来たマホたん、ドラマホたんがアコライト外郭を見下ろしていた。

「はああー?着ぐるみ褐色50メートル級マホたんだあ!?お前、属性の過積載が過ぎるだろ!」

『……って……た』

「なに?なんだって?そのデカさで声がこっちに聞こえない事ある――」

『――い゛ら゛ん゛っ゛て゛言っ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
 さ゛っ゛き゛も゛助け゛て゛あ゛け゛た゛の゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!』

ギャン泣きだった。衝撃波でエンバースが普通にぶっとばされた。

「うおおおおおお!?この上泣き虫属性もだとお!?」

『も゛う゛い゛い゛!全部め゛ち゛ゃ゛く゛ち゛ゃ゛に゛し゛ち゛ゃ゛う゛も゛ん゛!!謝っ゛て゛も゛遅い゛も゛ん゛!!!』

「更にメンヘラ属性!?……いや!言ってる場合じゃない!」

ドラマホたんが両手を振り上げている。

「ヤバいヤバいヤバい!流石にアレはシャレにならないぞ!」

『――ハイバラ!少しの間でいい!時間を稼ぐアル!』

「ああ!?バカ言え時間を稼ぐのはお前らの役目でしょ!俺にはこのダインスレイヴが――」

『あの巨体!どう見たってイベント戦闘アル!このチャプターのキーキャラクターは
 どう考えてもワタシとたてがみのユメミマホロ…………任せろアル!』

「――――――ええい!クソ!やってやるよ!」

エンバースがダインスレイヴを高く掲げる。

「――じゃ!俺はどっちにしろダインスレイヴをチャージするから!!頼むぞみんな!!!」

142カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/10/08(水) 00:26:57
>『実はワタシはかなり脈アリで好き避けされているだけと聞いたが、それはホントアルか――!?』

「直球で聞いちゃった―――――――!!」

>『な――――!?な、なな、何言ってやがる!いや!誰がそんな事言いふらしてやがった!』

>『違うのか?』

>『ちが……や、違うってワケじゃ――』

動揺するマホたんに帝龍が容赦なく仕掛ける。
『バトルは恋のはじまり!』に合わせて連撃を打ち込む帝龍。

>「バトルはダンス……ってか。面白い事するよな」

「シ〇フォギア戦法のダンス成分のみを抽出して応用している……だと!?」

>「呼吸を合わせてから、ほんの少し自分に有利なようにズラしているんだ。
 ダンスめいた戦技を扱うマホたんに対してはかなり効果的だ。BGMもリズムの誘導に一役買ってる。
 2ターンくらい前のグッスマの特訓が伏線として活きてくるのもいい」

>『ホワチャアアアアアアアアアアアアア――――ッ!!!』

帝龍の双掌打がマホたんにクリーンヒット。が、相手は巨体だけあって、まだ倒れない。

>『バカ……ヤロ……手前……味な真似ばっかしやがって……こんなにされたら、アタシ――』
>『――もう、我慢出来ねえぞ!!』

>『ヤベエ!恋する戦乙女心が暴走しちまってる!ありゃもう止まらねえですよ!』

「恋する戦乙女心って……。普通に殺しそうなんですけど……」

>『……ちょっと!ちゃんと恋する戦乙女心がなんなのか聞いてくだせえよ!』
>「いいよいいよ、どうせ戦乙女の生態として戦士の魂をお持ち帰りしたい欲求が抑え切れないとかそういう感じだろ」
>『うわー野暮なお人だねまったく!戦乙女の恋心を言語化しやすかフツー!?サイテーでさあ!やーぼやーぼ!』

>「……お前、マホたんのツラしてなかったら普通にぶん殴ってるからな」

裏を返せばまほたんのツラしてるからぶん殴られない→マホたんのツラ=最強 ということらしい。
まあ、美少女アイドルをぶんなぐったら上位世界の視聴者から避難轟轟だろうしな……

>『――『聖撃』』

帝龍のカウンターがきまり、ついに決着が付く。

143カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/10/08(水) 00:31:24
>『……たった一晩で、見違えるほどいい戦士になりやがって。アタシの負けだ』
>『では――!』
>『クソ。こんな事ならもっと早く……臨終ち帰っちまえば良かったな……。
 日に日に磨き抜かれていく手前を見ていたら……欲が出たんだ。とうとうこの日が来ちまった……』
>『たてがみのユメミマホロ……?何を言っているアル?』
>『チャプタークリアだ。手前はアイツらに付いていきな。
 いい仲間じゃねえか……面倒見もいいし、必死こいて手前を応援してくれる』
>『何をバカな!約束は――――』
>『バカは手前だ!アタシ達はなんだ!?言ってみろ!アタシ達は……ただのバグの産物だ!
 この期間限定のイベントの中にしか存在しないんだ!
 手前みたいな「まとも」な命と結ばれるなんざ……出来る訳がねえだろうが!!』

「マホたん……」

確かに、たてがみのマホたんはこのタイムアタックイベント用に作られた存在である。
そこで、一つの疑問は浮かんでしまう。では、この帝龍は「まとも」、つまり元の世界にいた彼と同一存在と言えるのだろうか。
帝龍はブレイブなので、自分達と同じように元の世界から連れて来られた存在と考えられるが、
それにしては元とあまりに性格とか違わないだろうか!?
元の世界の帝龍はひたすら嫌な奴だったし、マホたんを好きですらなく、利用しようとしていただけだったはず……。
ではこのイベント用に作られた別人格かというと、元の記憶は持っていそうな感じだし……。
そういえば、自分達も帝龍ほどではないけど若干キャラ変わってない!?
エンバースさんはすっかりギャグ使用になってるし、ジョン君はボケたときのぶっ飛び度が上がってる気がするし、
自分もヘタレよりも突撃バカ寄りに補正されてる気がするし、明神さんだけは変わってないけど!
では記憶の連続性はどうかというと、あるっちゃあるけどところどころ抜けてるし……。
存在の同一性という深遠な哲学的命題が浮上してしまった。
そんなことを考えている間に、場はなんかいい感じにまとまっていた。

>『バカヤロウ……じゃあ、じゃあ――』
>『――アタシ、手前のお嫁さんになってもいいのかな』

「このイベントで起こったいい事は、元の世界にも引き継がれるといいな……」

と、なんかいい感じで終わるのかと思われたが、そうは問屋が卸さなかった。

>『ふふ……くふふふ!言ったのです!言ったななのです!煌帝龍!』

>「……オイふざけんなよ。流石に空気読めって」

「そうだよ! せっかくいい感じでまとまってたのに!」

>『煌帝龍!お前は確かに言ったのです!アジ・ダハーカはいらないと!
 そしてお前のパートナーでなくなったのなら――――――!!』
>『このローウェルがイベントのギミックとして召喚したって何ら問題はないのです――――!!!』

>『ぐおおおおーん!』

「あっ、アジ・ダハーカもマホたんなんだ……」

144カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/10/08(水) 00:32:41
>『――い゛ら゛ん゛っ゛て゛言っ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
 さ゛っ゛き゛も゛助け゛て゛あ゛け゛た゛の゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!』
>『も゛う゛い゛い゛!全部め゛ち゛ゃ゛く゛ち゛ゃ゛に゛し゛ち゛ゃ゛う゛も゛ん゛!!謝っ゛て゛も゛遅い゛も゛ん゛!!!』

「帝龍君が勢いで要らんなんて言うからじゃん……!」

>『――ハイバラ!少しの間でいい!時間を稼ぐアル!』

>「ああ!?バカ言え時間を稼ぐのはお前らの役目でしょ!俺にはこのダインスレイヴが――」
>『あの巨体!どう見たってイベント戦闘アル!このチャプターのキーキャラクターは
 どう考えてもワタシとたてがみのユメミマホロ…………任せろアル!』

>「――――――ええい!クソ!やってやるよ!」
>「――じゃ!俺はどっちにしろダインスレイヴをチャージするから!!頼むぞみんな!!!」

「どっちにしろダインスレイヴなんかーい! 時間稼ぎって言ったって……」

そこでカザハは気付いた。そういえば今は自分達もマホたんだ!

「カケル行くぞ! うおおおおおおおおおおお!!」

カケルに飛び乗り、アジダハーカマホたんに突撃! そして何を思ったかそのまま激突した。
その途端、アジダハーカマホたんが謎の光に包まれ、何かのスキルの発動エフェクトが始まる。
もうみんな忘れてそうだが、今はどさくさに紛れてカケルもマホたん、カケルマホたんである。
つまりこれは――戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)!!
同時に、現在の召喚者のローウェルのリソース消費も爆上がりすることになる。

「なるほどなのです! 本編に倣った勝ち筋なのです!
でも、このローウェルがたかだか接吻一発で体力オーバーすると思うななのです!」

「今こちらには何人のマホたんがいると思う……?」

幸いここには適当にその辺の生き物と融合した適当なマホたんがたくさんいる。
この章が終わったら戻るのだろう程度のノリだろうと思われるので(!?)、
戦乙女の接吻(ヴァルキリー・グレイス)を使う事に何の感慨もない。

「総マホたん、突撃――!!」

無数の雑多なマホたん達がアジダハーカマホたんに突撃する!!
なぜ反撃されずに突撃できたかというと多分、技の発動エフェクト中に畳みかけるという身も蓋も無い逆ロールプレイである。
ヴァルキリー・グレイスはマホたんが一生に一度しか使えない技であるため、発動エフェクトがかなり豪華なのだ!
いかにローウェルといえども、アバターとして世界内に顕現している以上、どこかでリソースの限界が来ると踏んだ完璧な作戦(?)である!

145明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:28:20
俺のブチかましたレスバ攻撃に帝龍が黙りこくる。
お?反撃が来ねえな?試合放棄か??

>「……おい帝龍。打ち返してこいよ。これは稽古だぜ。お前がだんまり決め込んでたら……
 明神さんがただの他人の色恋に口出しする失礼なヤツになっちゃうだろ」

「そうだよ。闘(レスバ)は踊(ダンス)……息を合わせないとな」

>「――とは言え、確かにキングマホたんは怖くて萌えないけどな。
 あんなムキムキだといわゆるデカ女フェチにとってもちょっと変化球っぽくなっちゃうだろうし」

「息の根を止めに行くな」

俺の後方から投げたエンバースの石が直撃して、帝龍はいきなりキレた。

>『たてがみのユメミマホロにはキサマらには分からん美しさがあるのだ!
 それに!仮にアレの魅力が理解出来なかったとしてだな――!』

「えーっ?でもぉ……ゴリウー蛮族萌えはちょっと特殊性癖すぎるっていうかぁ……」

>『――人の推しを安易に腐すのはゲーマーとしてマナー違反アルよ!!!』

そのとき!雷鳴のエフェクトとともに一陣の突風が吹き荒れ、俺の顔面を直撃した。

「ぐああああああっ!!?」

ドゴォ!と背後の壁に激突。不可視のパワーがそのまま俺を壁に縫い止め、あろうことか壁を凹ませる。
論破ダメージ!!俺のようなレスバ属性の人間は論破されると痛烈なダメージを受ける。
た、確かに……他人が好きなものに外野がアレコレ口出しすんのはかなりのアンチマナー行為!
匿名掲示板以外の場所でやったら即刻ブロックものだ!

>『フー……フー……ええい!へりくだるのはもうやめアル!そこまで言うなら教えてやるアル!
 アレはワタシがこの三巡目に召集された最初の日の事――――』

そのまま帝龍は回想シーンに入ると思いきや――

>「おっと…待たせちゃったかな…?」
>『ム……いや、わざわざの足労深く感謝するアル。それで、次は何を――』

まさかの回想キャンセル!そんな勿体ぶるような話かなこれ!?
とまれかくまれ俺のターンはこれで終わりらしい。
ジョンが南国の王様が側女に煽がせてるクソデカ団扇みたいなサイズ感の斧を2つ持って佇んでいた。
ヌルっと凶器持って寄ってくんなよ怖えな……斧がデカすぎてやじろべえみてえなバランスになってんじゃん。

>「僕が…マホたんになる」

「やべえ一言目から何言ってんのかわかんねえ。解読班!」

>「ハァ〜〜〜?出た出た、ジョンって時折前触れもなくトチ狂うからマジでビビる――」

>「『聖撃(ホーリー・スマイト)』」

俺達のツッコミ全部置き去りにしてジョンは唐突に帝龍へ殴りかかった。
ユメミマホロの必殺腹パンを完コピしたストマックブローだ!
なんなんだよコイツこの世界来てから一挙手一投足に前置きがなくて怖えんだけど!

「……斧は?」

いや斧でいきなり帝龍の頭カチ割ってたらそれはそれで問題あるけどさぁ。

146明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:28:52
「まさかこれは……そうか、『斧パンチ』か――!!」

隣でミハエルが得心したように手を叩いた。

「知っているのか、チャンプ!」

「斧は威力に優れる反面トップヘビーなバランス故のモーションに難がある……。
 そこで斧を装備しつつあえて素手で殴ることで、装備の攻撃力補正を受けつつコンパクトな打撃が可能!
 コマンド式RPGの描写省略仕様を逆手に取ったな……!」

「そんなトンファーキックみてえな理論なんだ……」

>「今の僕はマホたんだ…素手て戦うキングマホたんも…武器を使って戦うキングマホたんも再現できる。
  体格差や性別を考慮して…再現率55%って所かな」

「お、懐かし。ロールプレイじゃん」

最早ツッコむのにも疲れてきたので俺はエンバースのセリフを引用して適当に流した。
すっげえ今更なんだけどさ、ブラッドラストってあったじゃん。
ホラーの殺人鬼をロールプレイしてその能力を再現するみたいなやつ。あとイブリースの必殺剣を再現してたりもしたっけ。
ロールプレイ理論をエンバースが言語化するずっと前からこいつ、無自覚にロールプレイ使いこなしてたんだなって。

>「マホたん以外の僕の技術は一切使わない。
 さぁ…ここで真似事マホたんを演じる僕を戦闘不能にするくらいの甲斐性ぐらいは…見せてもらおうか」

帝龍はぶっ飛ばされたまま起きてこない。
ジョンは今度こそ斧を振り上げて容赦ない起き攻めを繰り出す――
コンパクトなモーションで態勢を崩し、生まれた隙に大振りの一撃を叩き込む。
あらゆる対戦ゲームに通底する必勝パターンだ。

だが帝龍もさる者、打ち下ろされた鋼のギロチンに蹴りをぶち当て弾き飛ばす。
今度はジョンが大きく態勢を崩した。蹴りによるパリィ……!

>「なあ、今の見えたか明神さん?あの曲芸もなかなかだったが、その前だ」

「ああ。帝龍の野郎、ダウン直後の無敵を使って起き攻めにカウンターを間に合わせやがった」

ゲームシステムへの理解と適応が早い。
伊達にソシャゲのランカーとかいう冷静に考えるとクソやべえ称号を手にしていない。
マネーイズパワーとは言いつつも、マネーだけじゃパワー不足なのが現代のソシャゲだ。
時間も労力も同様にパワーだ。対人戦じゃそこに戦略とかセンスも関わってくる。
ソシャゲは正気にて大業ならず。金持ちと廃人が同じ土俵で戦っている。
なぁエンバース!ミハエル!君たちにも言っていますよ!!

>「ハイバラ、なんで僕じゃなくてそのオッサンに聞くんだ」
>「お前に聞いても見えたって答えるに決まってるからだよ」

「曲芸パリィの方は見えてねえよ。
 お前らみたくFPS120とかのキショいフレームレートでゲームやってねンだわ」

ミハエルの野郎かたくなに俺のことオッサン扱いしやがるなコイツ。
25ちゃいって10代からしたらやっぱオッサンなのかな……。
もしかしたら記憶が抜け落ちてるだけで普通に俺だけ10年後の35歳くらいの状態で召喚されてる??

んでまぁなんやかんやあってジョンと帝龍はいい感じに組み手を終えた
あとエンバースとミハエルもなんか帝龍と延長戦みたいなのやってた。

147明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:30:37
「まだ特訓パート続くんだ……じゃあ俺心配そうな顔して物陰から見守ってっから。
 男の子ってほんとバカっ……!」

みたいな良い空気をひとしきり吸って、普通に飽きたので残りの時間はYouTubeショートとか見て過ごした。
今の子はようつべじゃなくてティックトックとか見てんだっけ?
ツイッターも若い子はもうやってないらしいじゃん……こわ……文明に2周くらい乗り遅れてるわ。
アメブロとかミクシィとかにうじゃうじゃ居た連中どこ行っちゃったの。

>『たてがみのユメミマホロ――――――ッ!今日こそ我が伴侶となってもらうアルよ――――――――!』

翌日。帝龍With俺達は再びKINGのもとを訪れた。

>『なんだ。アタシはてっきり手前の客人かと思ったんだが――なるほど。
 つまりコイツは招かれざる客ってワケだ。なら仕方ねえ。アタシが追っ払ってやんねえとな!』

「その建前いまだに遵守してんのキングだけっすよ。
 ヒュドラもトカゲも全部マホたんになってんのに誰から何を防衛してんだよ」

まぁ誰から守ってるかっつったらそれは原作通りに帝龍で。
何を守ってるかっつったら――原作通りに、戦乙女の接吻ってやつだろう。
この場合の接吻はバフスキルじゃなくてガチの方だ。

さぁここが正念場だ。気張れよ帝龍。
たとえ付け焼き刃だったとしても、俺達が手ずから鍛えた最高品質の付け焼き刃だ。
研ぎ澄ませたそいつはキングの喉元にだって届く。
特訓の成果を見せてみろ!

>『実はワタシはかなり脈アリで好き避けされているだけと聞いたが、それはホントアルか――!?』

帝龍が声高に叫ぶ。それは俺が薫陶を与えたレスバのテクニック。
潜入によって得た情報を使い、敵の知られたくない弱みを突く――
上手く刺されば、ブレイクだ。

なんか観戦してたらその辺のマホたんに実況解説席に拉致られた。
よっしゃ任せろ実況はわたくしうんちぶりぶり大明神。解説は日本チャンプのハイバラ氏でお送りします。

「あーっと!キングのメンタル総崩れ、金一等の隙をさらしたァ!
 そこへ突き刺さる帝龍の肘打ち!流れ始める勝利BGM!!勢いに乗った連打が止まらない〜〜〜ッ!!!」

>「バトルはダンス……ってか。面白い事するよな」

ハイバラ氏がなんか良い感じの能書きを垂れる。

「ほほう。というと?」

>「呼吸を合わせてから、ほんの少し自分に有利なようにズラしているんだ。
 ダンスめいた戦技を扱うマホたんに対してはかなり効果的だ。BGMもリズムの誘導に一役買ってる。
 2ターンくらい前のグッスマの特訓が伏線として活きてくるのもいい」

「何でも知っとるわァこの人ォ!」

よくわからんけどダンスをリードする的なアレだろ。
俺も負けじとうんちくをひけらかしたかったがなんもでてこねえわ。
体育祭で踊らされたよさこいだかソーラン節だかの記憶が蘇ってんごごごごごご。

「二人の呼吸が重なる!新たな音律を紡ぎ出す!!"武"というよりも"舞"――!舞踏だァーーーッ!!」

148明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:31:54
>「ヤベエ!恋する戦乙女心が暴走しちまってる!ありゃもう止まらねえですよ!」

いつの間にかエンバースを押しのけて三下マホたんがマイクを握る。

>「恋する戦乙女心って……。普通に殺しそうなんですけど……」
>「いいよいいよ、どうせ戦乙女の生態として戦士の魂をお持ち帰りしたい欲求が抑え切れないとかそういう感じだろ」

「わかるわ。俺も塩分脂質やべえって分かってんのにラーメンのスープ完飲やめらんないもん」

もったいないじゃんね……ラーメンってスープが一番金と手間暇かかってんだからさ。
いや違うな。そういう損得だけじゃ測れない根源的な欲求がスープ完飲にはあるはずだ。

「それは普通に食欲でさぁ!戦乙女の恋心と自制の効かない不摂生を一緒にしないでくだせぇ!」

「しかしねえゲスたん氏。いつか身を滅ぼすと分かっていても最後(完飲)まで添い遂げたいと願う……
 その感情はきっと、恋や愛と呼んでも良いのではないかな?」

「次から語尾にデブ付けて喋ってくだせぇ」

「お、戦況が動いたデブよ――」

実況席で戯言たれてるうちに帝龍が部分サモンでアジ公の爪を呼び出し、KINGのSENPUを弾き飛ばす。

「弾け飛ぶ戦斧!巻き起こる旋風!スタンするKING!追撃のCHANCE!
 SAY HO! SAY HO HO HO! チェケラウ!!」

「うわ、なんなんでさぁ急に」

「バトルは恋のはじまり!(2番)だが……」

「やめろ!!僕は唐突にセリフやラップの挟まるアニソンがこの世で最も許せないんだ!」

ミハエルは突然キレた。

「まぁわかるよ。異物感っていうか、急に別のコンテンツ始まったな……って感じするもんな。」

「カラオケでセリフパート始まったときのあの地獄のような空気を思い出すだけで怖気が走る。
 セリフを喋るのか?キャラの口調を真似て?それを聞かされて僕はどんな顔でマラカスを振ればいいんだ」

「人とカラオケ行かねえからその辺の気持ちはわからんけど……」

「………………ハッ」

なに鼻で笑ってんだこの野郎!お前もどうせハイバラ氏としか行かねえだろうがカラオケ!
んでもハイバラ氏がラップ刻むとこちょっと見てみてえな……。

「カラオケと言えばさ、よくアニメのオープニングの前奏中にナレーションが入ったりするじゃん。
 ワンピースの『世はまさに大海賊時代――』みたいなやつ。
 アレってカラオケでもちゃんとセリフパートとして喋ったりすんのかな」

「さっきから何の話してんでさぁアンタら!」

>「バカヤローへばってんじゃないぞ!オイみんなも声出せ!応援の力ってバカにならないんだぞ!」

ハイバラ氏はスポーツ観戦してるおっさんみてえな野次を飛ばしている。
アニソンで応援すんのってなんか甲子園の吹奏楽部みたいで……良いよね。
うだうだくだんねー与太話を垂れ流しているううちに帝龍の肘打ちがキングに突き刺さる。

149明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:32:45
全体重を載せた全力の一撃。この上ないクリーンヒット。
だがキングは下がらない。反撃の拳を振り上げる。
敵の懐ど真ん中で全ての運動エネルギーを使い切った帝龍は、逃げることもままならない。

「これって――」

隣で三下マホたんが息を呑む。

「ああ――」

俺は頷いた。

「キングの勝ちだ」

そして俺の予言通り、キングは拳を振り下ろ――さなかった。
振り下ろせない。握った拳は力を失い、へろへろと落ちていく。
同時に膝を折り、崩れ落ちていくキング。立っているのは帝龍の方だった。

「……ゲスたん氏、ちょっとお願いがあるんだけど」

「あぁ、はいはい……じゃあもっかい行きやすよ。『これって――』」

俺は頷いた。

「ああ――――帝龍の勝ちだ」

極限の攻防の末、帝龍の一撃が"最強"の戦跡をここに刻む。

>『……たった一晩で、見違えるほどいい戦士になりやがって。アタシの負けだ』

んでまぁあとは流れでチャプタークリアっすねって感じなんだけど、
なにやらもう一悶着あるっぽい。

>「バカは手前だ!アタシ達はなんだ!?言ってみろ!アタシ達は……ただのバグの産物だ!
 この期間限定のイベントの中にしか存在しないんだ!
 手前みたいな「まとも」な命と結ばれるなんざ……出来る訳がねえだろうが!!」

>「マホたん……」

カザハ君が複雑そうに経緯を見守っていた。
確かにバグ云々を考え始めるとこの世界にいる俺達全員がバグった存在と言えなくもない。
なんか混ざってる連中は言うに及ばず。帝龍だってこんな肉弾カンフー純愛マンじゃない性悪色ボケCEOだった。
ミハエルは明確にリバティウム編の時間軸から連れてこられた存在で、しかもなぜか本編後の要素が乗っている。

俺達も――まぁなんかギャグ時空に引っ張られていつもよりハメ外してると言えばそれまでだが、
ちょくちょく記憶の整合性がとれてないのは気になる。
ジョンとかあんだけバチバチにやりあったアヤコちゃんのこと丸ごと忘れてるもんな。
かわいそうに……。

>「このイベントで起こったいい事は、元の世界にも引き継がれるといいな……」

「うん……俺もうミハエルとか帝龍と元のノリで付き合える気しねえよ」

益体もないことを考えながらボケーっと成り行きを見ていると、
なんか帝龍が良い感じにいいこと言ってきれいに纏まりそうな感じになった。

150明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:33:30
>『ふふ……くふふふ!言ったのです!言ったななのです!煌帝龍!』

んんー、デジャビュ!
まぁそうよな、リバティウムでもチャプタークリアには条件があった。
――チャプターボスの討伐。そしてそれは、キングではない。

>『このローウェルがイベントのギミックとして召喚したって何ら問題はないのです――――!!!』

アコライト編のボス、アジ・ダカーハ。
……のコスプレをしたクソでっけマホたんが出現した。

>「はああー?着ぐるみ褐色50メートル級マホたんだあ!?お前、属性の過積載が過ぎるだろ!」

「浦島太郎の気分だぜ……俺達が異世界で旅してる間にここまで世間のトレンドが巨女寄りになってたとは」

よくよく考えるとキングもでっけえしさらにでけえマホたんも外郭にいたしな。

「10年前に比べると女の子キャラの胸と太ももがどんどんデカくなっていってるみてえな言説を聞いたことがある。
 ……なるほどな。正統進化の行き着く先は、ああいう感じかぁ」

>『も゛う゛い゛い゛!全部め゛ち゛ゃ゛く゛ち゛ゃ゛に゛し゛ち゛ゃ゛う゛も゛ん゛!!謝っ゛て゛も゛遅い゛も゛ん゛!!!』

クジラの鳴き声みてえに響く声で巨まほたんが叫び散らす。
全部めちゃくちゃ――何の比喩でもないガチの崩壊が迫りくる!

>『あの巨体!どう見たってイベント戦闘アル!このチャプターのキーキャラクターは
 どう考えてもワタシとたてがみのユメミマホロ…………任せろアル!』

「クソっ時間いっぱいまでNPCを防衛するタイプのミッションかよ!荷が重いぜ!!」

>「――じゃ!俺はどっちにしろダインスレイヴをチャージするから!!頼むぞみんな!!!」

「防衛対象のユニットが増えた!!」

>「カケル行くぞ! うおおおおおおおおおおお!!」

言うが早いか、カザハ君はカケル君に跨って突撃していく。
どう見たって自滅必至の特攻だ。べちょっと音がして巨マホたんの鱗だらけの体表に張り付いた。
瞬間、あたりが光に包まれていく!

「そうか!戦乙女の接吻――!ローウェルに過負荷をぶちかますつもりか!!」

>「なるほどなのです! 本編に倣った勝ち筋なのです!
 でも、このローウェルがたかだか接吻一発で体力オーバーすると思うななのです!」
>「今こちらには何人のマホたんがいると思う……?」

カザハ君の号令に従い、アコライト外郭に詰めていた大量のマホたん達が一斉に飛び込んでいく。
魚雷のごとく飛翔し、母乳を争う子猫のように巨マホたんに吸い付いていく。
宙を埋め尽くす数え切れないチューの群れ。まるで……そう、

「『進撃する破壊者(アポリオン・アヴァンツァーレ)』みたいだぁ……」

申し訳程度の原作要素である。

151明神 ◆9EasXbvg42:2025/10/18(土) 17:34:04
「原作再現で勝つ!面白えじゃねえか、そのプランに乗ったぜカザハ君!!」

今俺達はアコライト編の再現としてアジ・ダカーハと戦っている。
そしてこのシナリオにはバグって混ざったもうひとつのストーリーラインがある。
キングヒル編。キングの御膳で繰り広げられたクーデター。

「歪な構図になっちゃいるが、この戦いは――帝龍に対するアジ・ダカーハの、クーデターだ。
 そしてクーデターの決着の付け方なら俺はもう知っている!!
 接吻を終えたマホたんズは俺のもとにあつまれ!!」

スマホを手繰る。必要なスペルは『融合』1枚。
俺はそれをデッキに入れていなかったが、代わりになるスペルを持っていた。
『超融合』――こいつをどうやって手に入れたか記憶がすっぽり抜け落ちてるが、それは今考えることじゃない。

マホたん達に呪歌スキルを合唱させる。
自分自身には効果のないバフだが、無数のマホたんの居るここでなら相互に強化を掛け合える。

「『超融合(ハイパーユナイト)』――プレイ!出てこい、キングを超えたヴァルハラの支配者!!
 ――G.O.Dマホたん!!」

光に包まれた無数のマホたん達が合体し、一つの巨大な影を生み出していく。
アジ・ダカーハに比肩せんばかりに途方もなくでっかい……プレーンマホたんだった。

「これが俺の……マホマホ☆カーニバルコンボだぁぁぁっ!!」

『そぉーんなーぎーごーちーなーいーえーがーおーじゃー』

超巨体ゆえに重低音と化した『ぐーっと☆グッドスマイル』を口ずさみながら、
ゴッドマホたんは拳を振り上げる。

『のぉーんのぉーんでぇーすぅーよぉー』

恒星爆発みてえな光量の閃光をまとった『聖撃』で、アジ・ダカーハマホたんをぶん殴った。


【原作再現(4章)】

152ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/10/25(土) 00:55:01
「起き上がって来ないようならそのまま殺すけど…」

帝龍は起き上がらない。
チッ…このまま本当に終わるようだとこのストーリーが終わらないんだが…心の中でそう愚痴る。

「見込み違いだったか?」

その瞬間帝龍は足刀を繰り出す。なるほど…僕が近寄ってくるまで待ってたワケだ。
舐めるなよ…そんな小細工でどうにかできる程僕は甘くな…

キイイイイン!

帝龍の足刀が僕が振り下ろした戦斧に当たると嫌な音がする。
僕の体がその勢いに煽られ無防備に仰け反る。

>『――『聖撃』』

僕を侮ったな?この崩れた体勢からでも反撃出来るのが僕が化け物といわれる所以なのだ。
そう思っていた…僕が思っているだけで…実際に体がそのように動く事はなかった。

「…!?」

なぜか体が思うように動かない。確かに帝龍の限りなく曲芸に近い一撃は素晴らしかった。
だが僕の体がこんなに不自然に動きを止めるほどの物ではなかった…はずだった。

でも実際の僕の体は…まるで時が止まったかのように硬直していて…まったく動かせなかった。

>『ケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!!!』

一撃が迫る。まずい…このまま無防備にあれを食らえば…死ぬ…!

「…!…フン!」

帝龍の攻撃が僕の体に直撃する寸前にまるで何かに拘束されていた僕の体は自由になった。
その一瞬を利用し、全身の筋肉を使い衝撃に備えた。

もし体の硬直が解ける前に帝龍の一撃が当たっていて…そのまま連撃を浴びていたら僕は死んでいたかもしれない。

>『す、すまんアル!今のは強く打ち――』
>『過ぎ、た……』

やばかった…防御が間に合ったから最小のダメージで済んだが…
しかし…今のは一体…?あれが帝龍の…中国拳法の妙技だったりするのか?

>『だが……いい経験が出来たアル。謝謝……確か、ジョンだったアルか。覚えておくアル』

「僕も済まない…言い過ぎた…」

マホたんの真似をしていたとはいえ…シンプルな肉体の勝負で負けた事に僕は動揺を隠せなかった。
悔しかった。自分の絶対的な自信がある分野で負けた事が…。

「理由を…絶対突き止めてやるぞ…!」

エンバースあたりに答えを求めればすぐにわかるだろう…だが…僕は自分自身で謎を解明する事に決めた。
この肉体を使った戦いの分野では一番でいたかったから

153ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/10/25(土) 00:55:15
>『たてがみのユメミマホロ――――――ッ!今日こそ我が伴侶となってもらうアルよ――――――――!』
>『へ……いいね。ますますいい顔つきになりやがった』

翌朝、僕の後にエンバースとも特訓し、地獄のような帝龍ブートキャンプを終えた帝龍は元気にユメミマホロに挑みに行く。
朝起きた時は死にそうな顔だったのにギンクまほたんを目の前にした途端これだ…愛の力ってすごいな。

>『なんだ。アタシはてっきり手前の客人かと思ったんだが――なるほど。
 つまりコイツは招かれざる客ってワケだ。なら仕方ねえ。アタシが追っ払ってやんねえとな!』

「なるほど〜これがツンデレって奴か〜」

>「その建前いまだに遵守してんのキングだけっすよ。
 ヒュドラもトカゲも全部マホたんになってんのに誰から何を防衛してんだよ」

明神にこれはツンデレとはちょっと違う。と小声で怒られながらも和気あいあいと話しが進んでいく。

「思ったんだけど…これ戦う必要あるのか?」
「空気読んだ方がいいと思う」

偶々通りかかった通行人マホたんに冷たい反応された。悲しい。

そんなこんなで距離感が分からない初々しいカップルな会話を重ねていっていたが…爆弾が帝龍から投下された。

>『実はワタシはかなり脈アリで好き避けされているだけと聞いたが、それはホントアルか――!?』

>「直球で聞いちゃった―――――――!!」

「もうこれバトルどころではないのでは?」

観客も黄色い声援で大盛り上がり。いや、この二人を見て恥ずかし〜みたいな声を出してる場合は黄色い声援というのだろうか?…うんどうでもよくなってきた。

「さぁ…見せてもらおうか帝龍…君の技を…!」

僕は昨日帝龍に負けた理由さえ分かればいい。
帝龍が負けるのか心配じゃないかって?馬鹿な…僕達が一日みっちり教えたんだぞ?負けるわけない。

というわけで僕はよく見える観客席に座り技術を盗む側に回る。

>「あーっと!キングのメンタル総崩れ、金一等の隙をさらしたァ!
 そこへ突き刺さる帝龍の肘打ち!流れ始める勝利BGM!!勢いに乗った連打が止まらない〜〜〜ッ!!!」
>「バトルはダンス……ってか。面白い事するよな」

「いつの間に…?」

気づいたら実況と解説に座っているエンバースと明神を横目に
今回は僕の出番はもうないな…と思いつつ試合を眺める事にしたのだった。

154ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/10/25(土) 00:55:27
『いいや、集中してもらうアル。このワタシに』

>「呼吸を合わせてから、ほんの少し自分に有利なようにズラしているんだ。
 ダンスめいた戦技を扱うマホたんに対してはかなり効果的だ。BGMもリズムの誘導に一役買ってる。
 2ターンくらい前のグッスマの特訓が伏線として活きてくるのもいい」

ここまでは普通の技術だ。若干小手先感を感じないでもないが…
正々堂々と戦えなんていうのは強者の言葉だ…少なくともチャレンジャーの帝龍には適応されないだろう。

「まぁ…何しても惚れた弱みで卑怯だなんだとは言わないだろうが…」

>『バカ……ヤロ……手前……味な真似ばっかしやがって……こんなにされたら、アタシ――』
>『――もう、我慢出来ねえぞ!!』

キングマホたんの叫びと共に戦斧がどこからともなく飛来。
そしてそれをまるでおもちゃのように振り回す。

僕の真似事とは比べ物にならない暴力が帝龍を襲うが、間一髪で帝龍は避け続ける。

「まずいな…あのままじゃ…」

>「オイオイ大丈夫かよ!気持ちだけじゃゲームは勝てないぞ!分かってんだろうな――」

帝龍もよくキングマホたんの猛攻を躱していると褒めてやりたいところだが…
一撃でも当たれば死ぬ攻撃は…例え当たらない事が分かっていても恐ろしい物だ。
イブリースと戦った時僕も…よけきれる自信はあったが…死の恐怖というのは自信やそんなもので克服できるものじゃない。

そしてついに拳は帝龍を捉える。振り下ろされる戦斧…勝負は誰の目にも明らかだった。

>「キングの勝ちだ」

あの状態から交わす手段はない…みんなそう思った…僕も昨日のアレを食らわなかったら同じリアクションをしていた事だろう。

「今だ!決めろ!!」

キイイン!

そうだ、この音だ…何かが成立したような金属音。
帝龍のスマホから現れた爪のような物がキングマホたんを思いっきり弾いた。

そして今まで有利だったはずのキングマホたんは大幅に体勢を崩した。不自然な硬直と共に。

「なるほど…これが昨日の技の正体か…」

エンバースが昨日説明しなかった理由もよくわかった。
肉体の技に自信がある僕にゲームシステムなどといったところで伝わらなかっただろうから。

>「よしッ!!オイバカ何やってる早く立て!決めろ!決めちまえ!」

観客が大騒ぎをしている。
帝龍だってそうしたいのだろう…しかし消耗もまた本物なのだ

帝龍は気合と根性で立ち上がる。欲しい物を手に入れる為に。
だがマホたんの金縛りも解け始めた。

「やれるだろ?」

あと数秒もない闘いの中…先に動いたのは帝龍だった。

>『――『聖撃』』
>『……たった一晩で、見違えるほどいい戦士になりやがって。アタシの負けだ』

そうして…キングマホたんはついに膝をついたのだ

155ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/10/25(土) 00:55:38
>「ああ――――帝龍の勝ちだ」

その明神の声と共に歓声が巻き上がる。

「これは認めざるを得ない素晴らしい闘いだった」

これで帝龍とキングまほたんは無事に結ばれ…僕達は次のチャプターに…

>『何をバカな!約束は――――』

…さすがに甘えすぎたらしい。いくらRTAとはいえそう簡単にはいかないのはRPGの常という事か…

>『バカは手前だ!アタシ達はなんだ!?言ってみろ!アタシ達は……ただのバグの産物だ!
 この期間限定のイベントの中にしか存在しないんだ!
 手前みたいな「まとも」な命と結ばれるなんざ……出来る訳がねえだろうが!!』

>『――いいや、出来る!!』

観客席から詳しい事情を知る為に降りようと思ったが椅子に座り直す。
これ今回はうまく行くんじゃないか?やるな帝龍。お前は男だよ。

バグだなんだと…ローウェルから聞き出せばいい事をウジウジ考えていても仕方ない。
そもそもそれを言い出したらイベントどころか今ここでRTAをしている事自体があり得ない事なのだから…

>『――アタシ、手前のお嫁さんになってもいいのかな』

一件落着だ。こんなに綺麗な終わり方滅多にないぞ…だがこれでいいんだよこれで
…悲しい話なんて現実だけで精一杯だから。

「にゃ〜…」

でも相棒が既にいるのにあんな言い方したらまるで前の相棒は捨てるみたいな言い方だよな…
僕の横にいるマホたん達にモフられている部長を撫でながらそんな事を思う。部長もそう思ったのか…悲しげにないた。

いや待てよ…そう思ってるのが他にもいて…何ならそれを待っていたとしたら…?

>『ふふ……くふふふ!言ったのです!言ったななのです!煌帝龍!』

こんな時ばっかり勘が当たらなくていいんだけど。そう僕は心の中で愚痴った。

>『――い゛ら゛ん゛っ゛て゛言っ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!
 さ゛っ゛き゛も゛助け゛て゛あ゛け゛た゛の゛に゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛!』

そういえばなんだかんだ邪魔してこないなと思っていたローウェルが呼び出した裂け目。
そこから這い出てくるなり大声で泣きだしたのは…えーと…なんだったか…えーと…

そう!アジ・ダハーカ!帝龍の相方のでっかい竜だ!
巨体からくる大きな鳴き声と衝撃波であらゆるものが吹き飛ばされそうだった。

「これはさすがにまずい…止めないと…!」

僕は観客席から泣きわめくマホたんの元に降りていった。

156ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/10/25(土) 00:55:55
>「帝龍君が勢いで要らんなんて言うからじゃん……!」

現場は大混乱だった。ぶっちゃけ僕も混乱している。どうすれば勝ちなのこの戦い

>「――じゃ!俺はどっちにしろダインスレイヴをチャージするから!!頼むぞみんな!!!」

うん…まぁ…とりあえず時間を稼げばいいみたいだ。

「じゃあまずはいつも通り僕が前に…」

>「カケル行くぞ! うおおおおおおおおおおお!!」
>「そうか!戦乙女の接吻――!ローウェルに過負荷をぶちかますつもりか!!」

どうやらあえて強化する事によって過負荷を狙う作戦らしい…ふむ…ぱりいなるゲームシステムがある世界ならば…
確かにシステムに負荷を掛ける事はローウェルに対して特攻になるかもしれない。

>「総マホたん、突撃――!!」

どれだけのリソースをローウェルが持っていたとしても…
ゲームそのものをクラッシュさせてしまえばいくら管理者だろうと調子には乗れまい。

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

傍観を決め込んでいた色んなマホたん達がアジマホたんに突っ込んでいく。

>「歪な構図になっちゃいるが、この戦いは――帝龍に対するアジ・ダカーハの、クーデターだ。
 そしてクーデターの決着の付け方なら俺はもう知っている!!
 接吻を終えたマホたんズは俺のもとにあつまれ!!」

スライムのように集まりそして現れるはGODポヨリン…じゃなくてゴッドマホたん。
明神そのネーミングセンスはパクリなのでは?許可取ってる?

「んん〜…んんんんん〜よし!」

僕はその光景を見てエンバースがいた実況席に乗り込む。

>『のぉーんのぉーんでぇーすぅーよぉー』

「ゴッドぽよ…マホたんパンチが決まった〜〜〜〜!!
いや〜…ローウェル選手…今回は中々悪くない案だったんですけどね〜」

「いや…お前何してるなのです?」

「ローウェル君口調崩れてるけど…それは置いといて…何って…実況だよ」

この勝負はもう決着がついたようなもんだ。僕の出る幕はほとんどない。
ローウェルを直接攻撃できない以上、決着はあのアジマホたんをどうやって倒すかだが…僕に取れる手段はない。

「あ!一つやる事あったな…雄鶏乃啓示!プレイ!」

部長の口から太陽が吐き出される。その効果は…全ての味方のステータスを短時間倍にアップする能力。
もちろん敵にはデバフが適応される…強力だがレイド級には殆ど聞かない上に
対人戦では対策のしようがいくらでもある効果だが…今回は関係ない

「対象はこの場にいる全員…この場にいる全員は味方とみなすことにしよう」

敵かどうか判断するのは僕だ。ならこの場にいる全員を敵と認定する事も、味方と認定する事もできる。
ふふふ…散々カザハでステータスがインフレしてからの2倍は相当に聞くはずだぞ…

「開発が想定してないような数字になるとゲームがクラッシュするって聞いた事あるよ?…今の内降参したら?」

聞こえていないのか、それとも意図して無視しているのかは分からないが、
ローウェルは顔を真っ赤にしながら何かをしているようだった。

「おっと〜〜〜!ここで本命ダインスレイヴの登場だ〜〜〜!!!これは勝負ありましたか解説のミハエルさん!?」

「…なんだこれ」

ミハエルはなんかもう展開についていけずに諦めたようだった。

「貴重な意見ありがとうございま〜〜〜す!では〆の一撃!エンバースさんお願いしま〜〜〜〜す!」

アイドル時代に経験した色んな事が生かされてる…生かされることがあるんだなどんな仕事でも…
展開についていけないミハエルを横目に僕はそう思ったのだった

「気になる展開はCMの後!」

157embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 05:27:57
『防衛対象のユニットが増えた!!』
『どっちにしろダインスレイヴなんかーい! 時間稼ぎって言ったって……』

「そりゃそうだろ!俺が巧みな剣技でアイツをどうにかするとでも思ってたのか!?良いからさっさと前出ろ前!」

『カケル行くぞ! うおおおおおおおおおおお!!』

「うお……なんでそんな聞き分けいいんだよちょっとビビるだろーが」

カザハが突貫。激突。発光。

「テンポがよすぎる……しかもあのエフェクトは……」

『そうか!戦乙女の接吻――!ローウェルに過負荷をぶちかますつもりか!!』
『なるほどなのです! 本編に倣った勝ち筋なのです!
 でも、このローウェルがたかだか接吻一発で体力オーバーすると思うななのです!』

『今こちらには何人のマホたんがいると思う……?』
『総マホたん、突撃――!!』
『『進撃する破壊者(アポリオン・アヴァンツァーレ)』みたいだぁ……』

「……確かに面白い。かなり面白い作戦だ」

『歪な構図になっちゃいるが、この戦いは――帝龍に対するアジ・ダカーハの、クーデターだ。
 そしてクーデターの決着の付け方なら俺はもう知っている!!
 接吻を終えたマホたんズは俺のもとにあつまれ!!』

「けどさ……一つ忘れてないか?」

『『超融合(ハイパーユナイト)』――プレイ!出てこい、キングを超えたヴァルハラの支配者!!
 ――G.O.Dマホたん!!』
『これが俺の……マホマホ☆カーニバルコンボだぁぁぁっ!!』

召喚されしゴッドマホたん。にわかに開幕する怪獣大戦争。

『そぉーんなーぎーごーちーなーいーえーがーおーじゃー』
『のぉーんのぉーんでぇーすぅーよぉー』

『どう゛見だっ゛で泣い゛でる゛だろ゛ー゛が!今わ゛だじの゛ごど煽っ゛た゛でし゛ょ゛!』

マコマホたん(魔皇竜マホたんである為。前回ドラマホたんと表記されていた部分は次回アップデートで修正予定。
またこの修正による成形クリスタルの配布は予定されていません)の泣き面にゴッドマホたんの拳がめり込む。
瞬間、太陽が降ってきたかのような閃光が爆ぜた。

「……クソ、なんにも見えないぞ」

『ゴッドぽよ…マホたんパンチが決まった〜〜〜〜!!
 いや〜…ローウェル選手…今回は中々悪くない案だったんですけどね〜』

「……おい、なんでジョンがそこに座ってる?」

『いや…お前何してるなのです?』
『ローウェル君口調崩れてるけど…それは置いといて…何って…実況だよ』
「あ!一つやる事あったな…雄鶏乃啓示!プレイ!」

「バカヤロー何遊んでる!勝ち確だからって舐めたプレイしてんじゃないぞ!
 多くの場合その勝ち確って「勝ち確のように感じている」だけでフツーにそっから負けれるんだからな!」

158embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 05:28:39
『貴重な意見ありがとうございま〜〜〜す!では〆の一撃!エンバースさんお願いしま〜〜〜〜す!』
『気になる展開はCMの後!』

炸裂じみた閃光の残滓が薄れていく。
天守の縁に立つローウェルの姿が再び見えてくる。
ローウェルは――両手に大量のポーションを保持してそれをストローで吸い上げていた。
装備も聖鎧ハンテーンを始めとしてリジェネ効果の付いた防具でガチガチに固めている。

「……こういう風に!」

『このローウェルを……舐めるななのです〜……』

鼻血はボタボタ垂れているし、天守の縁から今にも落っこちそうなフラつき具合。
だが――耐えている。ヴァルキリー・グレイスによる強烈な過負荷に。
そして負荷に耐える事さえ出来れば――ヴァルキリー・グレイスの多重起動は純粋にマコマホたんへのバフに転じる。

「だから言ったんだ……一つ忘れてないかって」

閃光の余韻が殆ど消え去って――マコマホたんは立っていた。
頭上でヒヨコが飛び回るエフェクトが出ているし、目はぐるぐる模様になっているが――立っている。

『……ぜんっぜん痛くないもん!帝龍と戦った世界大会はもっと痛い攻撃ばっかりだった!』

涙と鼻水と鼻血を着ぐるみの袖で拭う。
牙を剥くような表情でゴッドマホたんを睨む。

『さあ!反撃するのですマコマホたん!例えお前の主がお前を不要と切り捨てたとしても――
 お前には、そこに異議を唱える権利があるのです!
 お前の価値を見誤った者に――目にもの見せてやる権利だって!!』

ローウェルが息も絶え絶えになりながらそれでも叫ぶ。
そして――地上にいるブレイブ達を見下ろした。
苦しげな――だがどこか晴れやかな表情だった。

『そういう決意を秘めたヤツらは強い――お前らが証明した事なのです』

マコマホたんが拳を振りかぶる。ゴッドマホたんをぶん殴る。
エンバースはダインスレイヴをチャージしている。

ゴッドマホたんが殴り返す。マコマホたんが着ぐるみの尻尾でそれをパリィ。
エンバースはダインスレイヴをチャージしている。

今度はゴッドマホたんが目を回す番。そこに尻尾パリィで半回転した体勢を活かしたラリアットが直撃。
そのままポカポカとゴッドマホたんを叩き続ける。
エンバースはダインスレイヴをチャージしている。

『……おいハイバラ?いつまでチャージしてるつもりだい。そろそろゴッドマホたんも危ないぞ』

「………………このイベントバトルさ」

『うん?』

「俺がギリギリまでダインスレイヴをチャージしてぶっ放したら……帝龍抜きであのマホたん倒せないかな」

気まずそうな――しかしその中に高揚を隠し切れていないエンバースの声色。薄笑い。
非正規の攻略ルート探求――ゲーマー共通の悪癖にして本能。

159embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 05:29:54
『……はあ〜〜〜〜〜?君、正気か?あれだけパイモン君にお膳立てして、ご丁寧に自分の技まで盗ませて。
 それをただの思いつきで全部台無しにするつもりかい?やれやれ――』

ミハエルがスマホをタップ。
【オーバードライブ】――呪歌と雄鶏乃啓示にバフされたエンバースを更に強化。
【ヨッド・ハー・バウ・ハー】――ゴッドマホたんによる聖撃、その光属性エネルギーを吸収したダインスレイヴを強化。

『――すごく面白そうじゃないか!やってみなよ!ほら、ダメ押しのバフをくれてやる!』

『おま――オイ待てアル、ハイバラ!ふざけるな!このチャプターはワタシの――』

「バーカ!お前いつから俺のフレンドになったんだよ!俺達は――ライバルだろーが!」

超いい感じのセリフ。

「だからマップ湧きもユニークモンスターなんて早いもの勝ちに決まってるよなあ〜〜〜〜!
 っしゃあ行くぞダインスレイヴ!俺の声に…………応えろ――――――――――――――ッ!!!」

からのクソみたいな決めゼリフ。上段に構えた魔剣を勢いよく振り下ろす。
極限までチャージされたダインスレイヴが稲妻のごとく閃く。
マコマホたんの頭部に直撃――――――瞬間、ぱきんと響く硬質な音。
ダインスレイヴのブレードが半ばから折れて宙に舞い砕け散った。

『だああああああああ!バカなバカなバカなー!』

『何やってる!全然ダメじゃないかハイバラ!もういいダインスレイヴを貸せ!僕が代わりにやってやる!』

『誰が貸すかざけんな!コントローラーじゃないんだぞ!』

『ギャハハハハ!醜い争いアルね〜!ざま〜みろアル!』

高笑いする煌帝龍。それを疎ましげに睨むエンバース/ミハエル――スマホをタップ。
【オーバードライブ】x2が煌帝龍に付与。

「はあ……その様子じゃようやく呼吸が整ったみたいだな。ホラ、行けよ」

『ハイバラ…………オマエエモい感じにしようとしてるけど誤魔化されんアルよ。
 結局オマエのダインスレイヴこれっぽっちも時間稼ぎに寄与してないアル』

「うるせー!さっさと…………ああ?なんだ、その髪のエフェクト。それに服も……」

『エフェクト?何の事――――』

エンバースがスマホで煌帝龍を撮影。画面を見せる。
煌帝龍の髪は腰まで届くほどのロングオールバックに。
更に昇り龍を思わせるようなメッシュが走っている。
ボロボロだった黒のカンフースーツも新品同然になっている。

『……えっ、なにこれ知らんアルけど……怖……』

160embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 05:30:17
『いや、僕には分かったぞ。その現象は――次のガチャで実装される煌帝龍(カンフースーツ)をシナリオ内でちょっと使わせてもらえるヤツだ』

「……ああー」

『あるあるアルね……ま、まあ健康に影響がないなら構わんアル!行くアルよ――たてがみのユメミマホロ!』

煌帝龍が振り返る。キングマホたんは片膝立ちで呼吸を整えながら茶番の終わりを待っていた。

「あー……悪いな。アンタのマスターを下んない話に付き合わせちまって」

『いいよ。主人を待つ時間ってのも乙なもんだ。それより!』

キングマホたんが煌帝龍に詰め寄る。

『アタシと手前はもう…………両思い……なんだろ!なら「たてがみのユメミマホロ〜」なんて他人行儀な事言ってんじゃねえよ!』

『ム……それは……スマンアル。だが……ならばなんと呼べばいいアル?』

『そりゃ、決まってんだろ…………とか』

『なに?よく聞こえなかったアルよ』

『だから!………………レオたんとかあるだろ!!』

「……だってよ。さっさと行けよ、ロンたん」

『やかましいわアル。言われなくとも――――』

煌帝龍が前に出る。レオたんがそこに並び立つ。鏡合わせのように構えを取る。
二人の闘気が一つになって――ハートの形を描き出す。

「…………ああ!?ハートの形を描き出すぅ!?何言ってる!?お前ら、そろそろ話をシリアスパートに戻さないと――」

『――合わせろ!レオたんッ!!』

『応!レオたんッ!!』

愛とは何か――躊躇わない事だ。つまり勇気。
更に愛し合う二人の連携攻撃というロールプレイ。

『天破!』『ラブラブ!!』

二重のプラス補正が二人の闘気を加速度的に増幅させていく。
絶大な闘気の高まりを感知したマコマホたんがそちらを振り返る。
ゴッドマホたんは泣きべそかいて分裂解散した。
そして――

『『鳴山拳――――――――――――――ッ!!!!!!!』』

ハート形の闘気が膨大な閃光と化して迸る。
マコマホたんが歯を食いしばる。唸りをつけた拳を迫りくる闘気に叩きつける。
閃光。轟音。衝撃波。強烈な破壊力が拮抗し――だが、それは一瞬だった。
マコマホたんの拳が弾かれる。体勢が大きく仰け反る。
無防備になった顔面に闘気の波動が直撃――マコマホたんがゆっくりと前に倒れ込む。

「……結局こうなるのかよ!逃げろ逃げろ!倒れてくるぞー!」

そして――マコマホたんがアコライト外郭を押し潰すその直前。
ぽん、と音を立てて倒れ来る巨体が縮んだ。
小さな女の子程度のサイズになったマコマホたんが城郭の中央広場に落下。
駆けつけてみると――マコマホたんは仰向けに倒れたまま呆然としていた。

161embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 05:31:37
『……負けちゃった。わたしはさいきょーじゃなきゃいけなかったのに。
 さいきょーだから、中国で一番強いブレイブのパートナーだったのに』

マコマホたんが立ち上がる。レオたんに歩み寄る――着ぐるみの拳をぽす、と叩きつける。

『でいろんに恥かかせたら、許さないからね』

俯いたままそう言うと、マコマホたんはとぼとぼと自分が最初に出てきた亀裂に向かって歩き出して――

『待てよ』

レオたんがそれを呼び止めた。マコマホたんが足を止める。

『さっきの手前のパリィ、すげえパワーだったぜ。こっちも渾身の一撃だったのによ』

『……それがなに。あれくらい押し切れないんじゃ、世界大会じゃやっていけないけど』

『へへ……勿論次がありゃもっと上手くやってみせるぜ。でもそうじゃなくてよ。分かるだろ――?』

レオたんがマコマホたんの後を追う。
傍に膝をついてその肩に手を置く。

『あのパワーが仲間にいてくれりゃ、帝龍の戦力はもっと盤石だ。そうだろ?』

『でも……わたしいらんって言われたもん』

『ああ、ありゃねえよなあ!でもアレは言葉の綾ってヤツだよ。なあ?許してやってくれよ』

『……そうなの?』

マコマホたんが振り返る。

『ム……まあ……その……すまんかったアル……』

『――なーんか言葉足らずじゃねえか?』

『……これからもワタシを支えて欲しいアル』

マコマホたんが俯く。押し黙って小さく身震いする。そして――煌帝龍に飛びついた。
煌帝龍が咄嗟にそれを受け止めて――全然踏ん張れずに後ろに倒れ込んだ。
瞬間、ずんと重低音が響く。地面に亀裂が走る。

『……じがだな゛い゛な゛あ゛も゛う゛!ゆ゛る゛し゛て゛あ゛げる゛!』

「……おーい、生きてるか帝龍。ダメだ……完全に伸びてら。
 ま、何はともあれめでたしめでたし。チャプタークリアだな。
 それで……みんな、次はどこに行きたい?」

162embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 07:03:05
 
 
 
 
 
アコライト外郭内、防衛用に細く設計された暗い通路に微かな光が舞う。
羽だ。小さな羽が地面に落ちて――ほんの一瞬、強く発光。
光は人の形を取って、城郭の奥へと独り歩き出す――

「――おいおいどこ行くつもりだ?まだエピローグが残ってる。
 謎が二つほど残ったままなんだ。そんなのプレイヤーに優しくない」

暗い通路にエンバースの声が響いた。

「一つ目の謎は――帝龍が何故あんな肉弾カンフー純愛マンになっていたのかって事だ。
 ちょっとキャラが違いすぎるよな。そして二つ目の謎は――」

エンバースが「光」の行く手を阻むように姿を現す。

「オリジナルのユメミマホロはなんで登場しなかったんだよって事だ。
 さて、今更言うまでもないがこの二つの謎は繋がっている。つまり――」

フィンガースナップの音。通路を炎が照らす。

「――オリジナルのユメミマホロは煌帝龍と融合して、その存在の内側に潜伏していたんだ」

そこにはマホたんがいた。プレーンマホたんとそっくりで――だが決定的に違う存在。
一番星のごとき存在感を帯びた、正真正銘のユメミマホロが。

「つれないじゃないか。姿も見せずに物語から退場しようとするなんて。
 どうしてだ?おっと、また新しい謎が出てきた。ああ、説明は結構だ。
 その答えもとっくに分かってる。アドベンチャーパートは得意なんだ」

エンバースが意地悪そうに笑う。

「ユメミマホロは煌帝龍を救おうとしたんだ。金でしか物事の価値を判断出来ない哀れな男を。
 そして救った。感受性を、融合によって分かち合う事で。
 レオ……キングマホたんにアイツが惚れたのもその一環だろ?」

『……そうね。仲間を守る為にアポリオンとに立ち向かう彼女は美しかったわ。
 あの時の胸が締め付けられるような気持ちをあたしは帝龍と共有した。
 あんなに惚れ込んじゃったのは……ちょっと、予想外だったけど』

「おっと、謎解きは俺のロールだぞ。あーあ……ネタバレ食らっちまった。後で本人から聞こうと思ってたのに」

人間の肉体と心は脳に支配されている。
例えば――手先が不器用な人間の指にギプスを装着する。
ギプスはロボットアームのように外部から操作可能で、
それによって本人では到底弾ける筈もないピアノの難曲を演奏させる訓練を施す。

そうしたトレーニングを何度か繰り返すと――ギプスを外した後でもピアノの技巧が本人に定着しているのだ。
しかも単に同じ曲が弾けるだけではなく、指の精密動作性そのものが向上する。
脳が「指を器用に動かす方法」を記憶する事によって。

心――感情も同じだ。適切な投薬や電気刺激――
そこまでしなくとも脳を活性化させる為のトレーニングを経る事で感受性や認知機能の欠落は矯正出来る。

163embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 07:08:11
「さておき……だがユメミマホロは考えた。そのカラクリに煌帝龍が気づいてしまったら。
 一度得た感受性は却ってヤツを傷つける。また心を閉ざしてしまうかもしれない。以前よりも更に強固に」

『……そこまで分かっているなら、道を空けて。その謎を解き明かしても――誰も幸せにはならない。でしょ?』

ユメミマホロの鋭い眼光。

「……はあ。分かってないな」

『何の事?』

「あのな、煌帝龍は……俺やミハエルのライバルだぞ。ヤツは金儲けの「ついで」で俺達と同じステージに立てるんだ」

エンバースは深い溜息を吐いた後――鼻で笑った。

「アイツはとっくに気づいてるさ。他ならぬ本人が一番分かっていた事だ。
 あり得ない事が起きているってな。そこから逆算すれば……何が起きたのかなんてすぐに分かる」

『……そんな』

ユメミマホロが右手を口に当てて言葉を失う。かぶりを振る。

『でも……あたしは彼という人間を自分の価値観に沿うように作り変えようとした。
 その事実は変わらないわ。どんな顔して彼の前に姿を見せられるの?彼が気づいていたなら尚更――』

「アイツは拒む事だって出来た。ユメミマホロと同化している事を利用して俺達と戦うとかな。
 でも、そうはしなかった……お前の救済を受け入れたんだ。それが全てだろ。
 まあ、お前の立場からすると気まずいっちゃ気まずいかもな」

『………………そう、かもね。あたしが気まずいだけ。
 うん、そうね……言葉にされるとよく分かった。
 けど……新しい謎よ。気まずいあたしをわざわざ足止めする理由はあるの?』

「あるさ。お前が勝手に悪い事したなって思い込んで物語から退場するのは後味が悪い。
 誤解を解いてやらないと。そ、れ、に、だな――」

『それに?』

「――今から祝勝会兼仲直り&カップル成立&チャプタークリアおめでとー会をするんだとさ。
 朝から晩までどんちゃん騒ぎだーってな。分かるか?つまりだな――
 アイドルがテーマのチャプターでエンディングムービーなしなんてあり得ないって事さ」

ユメミマホロは少し呆気に取られた表情をして――それから目を細めて笑った。

『それは……大変ね!どこかに歌って踊れるアイドルがいてくれたら助かるのかしら?』

「ああーそれはもう。もしかして心当たりが?」

『ふふ、どうかしら!向こうに着いてからのお楽しみね!おーい、みんな――――――――!』





『……クソが〜なのです〜下がずっとうるさいのです〜。
 無理をしたせいでここから一歩も動けんなのです……。
 クソクソ……楽しそうにしやがって……なのです』

「あん?今、何か聞こえなかったか?……いや、気のせいか」

164embers ◆5WH73DXszU:2025/11/02(日) 07:13:02
>>160

X『応!レオたんッ!!』

◯『応!ロンたんッ!!』

165カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/11/08(土) 00:44:15
>「原作再現で勝つ!面白えじゃねえか、そのプランに乗ったぜカザハ君!!」
>「歪な構図になっちゃいるが、この戦いは――帝龍に対するアジ・ダカーハの、クーデターだ。
 そしてクーデターの決着の付け方なら俺はもう知っている!!
 接吻を終えたマホたんズは俺のもとにあつまれ!!」
>「『超融合(ハイパーユナイト)』――プレイ!出てこい、キングを超えたヴァルハラの支配者!!
 ――G.O.Dマホたん!!」
>「これが俺の……マホマホ☆カーニバルコンボだぁぁぁっ!!」

巨大なプレーンまほたんが出現する! いつもは萌え萌え高音の歌声が、地響きのような重低音に!

>「あ!一つやる事あったな…雄鶏乃啓示!プレイ!」
>「対象はこの場にいる全員…この場にいる全員は味方とみなすことにしよう」
>「開発が想定してないような数字になるとゲームがクラッシュするって聞いた事あるよ?…今の内降参したら?」

ジョン君が更にシステムに負荷をかけることでローウェルに追い打ちをかける。
しかし、ローウェルはギリ耐えていた。

>『このローウェルを……舐めるななのです〜……』
>『さあ!反撃するのですマコマホたん!例えお前の主がお前を不要と切り捨てたとしても――
 お前には、そこに異議を唱える権利があるのです!
 お前の価値を見誤った者に――目にもの見せてやる権利だって!!』
>『そういう決意を秘めたヤツらは強い――お前らが証明した事なのです』

「晴れやかな表情してんじゃねえ!」

ちょっといい事言ってる風だし実際にいい事を言っているのかもしれないが、
主にハンテンのような装備のせいで全く絵になっていない。

>『だああああああああ!バカなバカなバカなー!』
>『何やってる!全然ダメじゃないかハイバラ!もういいダインスレイヴを貸せ!僕が代わりにやってやる!』
>『誰が貸すかざけんな!コントローラーじゃないんだぞ!』
>『ギャハハハハ!醜い争いアルね〜!ざま〜みろアル!』

世界トップランカーのデュエリスト達がわちゃわちゃしている。

「君達いつの間にそんなに仲良くなったの!?」

>『いや、僕には分かったぞ。その現象は――次のガチャで実装される煌帝龍(カンフースーツ)をシナリオ内でちょっと使わせてもらえるヤツだ』
>『あるあるアルね……ま、まあ健康に影響がないなら構わんアル!行くアルよ――たてがみのユメミマホロ!』

ちなみにこの間、キングマホたんは律儀に待ってくれていた。

>『アタシと手前はもう…………両思い……なんだろ!なら「たてがみのユメミマホロ〜」なんて他人行儀な事言ってんじゃねえよ!』
>『ム……それは……スマンアル。だが……ならばなんと呼べばいいアル?』
>『だから!………………レオたんとかあるだろ!!』

>「…………ああ!?ハートの形を描き出すぅ!?何言ってる!?お前ら、そろそろ話をシリアスパートに戻さないと――」
>『――合わせろ!レオたんッ!!』
>『応!レオたんッ!!』

>『天破!』『ラブラブ!!』『『鳴山拳――――――――――――――ッ!!!!!!!』』

「確かにある意味勇気が無いとできないやつ――――!!」

166カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/11/08(土) 00:45:37
>『……負けちゃった。わたしはさいきょーじゃなきゃいけなかったのに。
 さいきょーだから、中国で一番強いブレイブのパートナーだったのに』

去って行こうとするマコまほたんを、レオたんが引き留める。

>『……これからもワタシを支えて欲しいアル』
>『……じがだな゛い゛な゛あ゛も゛う゛!ゆ゛る゛し゛て゛あ゛げる゛!』

>「……おーい、生きてるか帝龍。ダメだ……完全に伸びてら。
 ま、何はともあれめでたしめでたし。チャプタークリアだな。
 それで……みんな、次はどこに行きたい?」

「とりあえず原作準拠で祝勝会してから考えよう」

そうして、なんとなく原作準拠で祝勝会がはじまった。が、何か物足りない。
マホたんと融合していた者達はなんとなく元に戻っており、自分達もどさくさに紛れて元に戻っている。
たくさんいたプレーンマホたん達も姿を消している。

「マホたんがいないアコライト編の祝勝会なんて、祝勝会じゃないやんけ!」

と思っていたところ、ステージの両脇から二人のマホたん達が現れた!
プレーンまほたん? いや違う、オリジナルマホたんだ!

「「おーい、みんな――――――――!」」

見事に動きと声がシンクロしているマホたんズの呼びかけに、ヲタク達が大歓声で応える。

「マホたんが二人いるのは……あっ」

初代マホたんと2代目マホたんか!と言いかけて口を紡ぐ。
おそらく特に深く考えていないであろうヲタク達の夢を壊してはならない。
いつの間にかエンバースさんが戻ってきていた。

「あ、どこ行ってたの?」

エンバースさんから、事態の真相が明かされる。
なんとこのチャプターの帝龍はマホたんと融合していたらしい!

「え、じゃあ融合が解除されたってことは帝龍、元の嫌な奴に戻っちゃったんじゃあ……」

帝龍のほうをちらっと見る。

「イエーーーーイ!!」

「ノリノリだ!!」

元の帝龍は、マホたんすらも単なる利用対象であり、アイドルにノリノリになる感受性は無かったはず。
融合によって感受性が分かち合われたことで、融合を解除した後もそれが残ったという絡繰りらしい!
ちなみにそれでいくと、ヲタク達もマホたん化していたので、アイドル級の歌唱力とダンス力を身に着けたヲタクが大量生産されたことになる!
尚、殆どの者のマホたん化は解除されたが、レオたんとまこマホたんは帝龍の両脇に何故かしれっといた。
ストーリーに深くかかわったので例外的に存在が固定されたのかもしれない。

これで帝龍の極端なキャラ変に関する謎は解けたが、新たな謎が生まれた気がする。
なんでもアリのこの周回だが、この周回に強制参加させられたブレイブ達は上位世界の主催者の気まぐれに振り回される一方のはず。
マホたんは自らの意思で帝龍と融合したと伺えるが、そんな凄い事が出来たのだろう。
マホたんは、マホたん(ブレイブ)がマホたん(モンスター)を直接操作している存在だが、
そういえば本編の時、マホたん(モンスター)をどこかで操っているはずのマホたん(ブレイブ)がどこにいるのか全く見当もつかなかった。
もしや、マホたんのブレイブ自体、バロールさん傘下のブレモン存続派社員の操るキャラクターってことは……。
アルフヘイムではマホたん(ブレイブ)は設定上だけの存在として引っ込めて、実際はマホたん(モンスター)を直接操作していたとか……。
そんな益体も無い思考は、会場の熱気に吹き飛ばされた。

「――ま、いっか! みんなー! スキル『合唱』発動!!」

マホたんと融合していたヲタク達は、合唱技能も身に着けていた!
マホたんとマホたんの歌唱力を身に着けたヲタク達の大合唱が始まり、もちろん自らも参戦する。

167カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/11/08(土) 00:46:16
Re:LIGHT

ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/hvlpkl2dw37vd78u638ka/ReLIGHT.mp3?rlkey=8xze26gu7lbdf24e912j87o8s&st=d2z5fdrr&dl

まだ痛む記憶の隅で
君の声が響く
あの日隠した涙さえ
今は光になる

止まった心 誰が責めるの?
でも、君が手を伸ばした
“同じ空を見たい”って――
それだけで、奇跡だった

Re:LIGHT 願いを重ねよう
もう一度、笑える場所へ
過ちも 傷跡も 抱きしめて
未来を歌に変えてく

煌めくステージに立つなら
この手で照らすよ、君を
――そう、これは終わりじゃない
次の夢へ、光を継ぐ歌

168明神 ◆9EasXbvg42:2025/11/16(日) 22:43:41
>『どう゛見だっ゛で泣い゛でる゛だろ゛ー゛が!今わ゛だじの゛ごど煽っ゛た゛でし゛ょ゛!』

マコマホたんがゴッドマホたんにキレ散らかしながら顔面でパンチを受け止める。
爆破解体されたビルが崩れ落ちるような轟音が響き渡り、眩く光が爆ぜた。

>「ゴッドぽよ…マホたんパンチが決まった〜〜〜〜!!
 いや〜〜〜…ローウェル選手…今回は中々悪くない案だったんですけどね〜〜」
>「……おい、なんでジョンがそこに座ってる?」

「あっテメっ実況は俺の仕事だろーが!」

知らん間にエンバースを押しのけた三下マホたんを押しのけてジョンが実況席に座っていた。
よく人の入れ替わるコンテンツだなぁ……。

>「あ!一つやる事あったな…雄鶏乃啓示!プレイ!」

部長が吐き出した光球が上空へと登り、戦場を照らす。
能力倍加のバフスキル……徹底的なダメ押しだ。勝負は決まったな。

>「対象はこの場にいる全員…この場にいる全員は味方とみなすことにしよう」

「全員ってお前……マコたんも?」

>「開発が想定してないような数字になるとゲームがクラッシュするって聞いた事あるよ?…今の内降参したら?」

「ぐあああ!カクつく!カクつく!!直接サーバーに負荷かけるやつがあるかよ!!」

光に照らされたマコたん(マコまほたんの略)とゴッたん(以下略)からえげつない量のダメージエフェクトが迸る。
同時にこの目に映る光景のFPSが露骨に下がり、瞬間的に世界の全てが静止しては再生を繰り返す。

数値のオーバーフローによる、処理落ち――!
低予算のサーバー使いやがって……もっと高級なグラボを買えぇぇぇぇぇっ!!!

>「バカヤロー何遊んでる!勝ち確だからって舐めたプレイしてんじゃないぞ!
 多くの場合その勝ち確って「勝ち確のように感じている」だけでフツーにそっから負けれるんだからな!」

「ウソだろこいつ……一番はっちゃけてる奴がこんな常識的なツッコミを……!?」

エンバースの自分をクソほど棚に上げたツッコミは現実のものとなった。

>「このローウェルを……舐めるななのです〜……」

大量のポーションとリジェネ効果付きの神代遺物に身を固めて……ローウェルは立ち続けていた。
そしてシンプルにバフされたマコたんも同様。ゴッドの打擲を受けてなお、戦意を失っていなかった。

169明神 ◆9EasXbvg42:2025/11/16(日) 22:44:24
>『さあ!反撃するのですマコマホたん!例えお前の主がお前を不要と切り捨てたとしても――
 お前には、そこに異議を唱える権利があるのです!
 お前の価値を見誤った者に――目にもの見せてやる権利だって!!』
>『そういう決意を秘めたヤツらは強い――お前らが証明した事なのです』

「おいやべえぞあいつ、良い感じのセリフ吐いてやがる!
 逆転勝利の説得力を強化する……ロールプレイだ!!」

さらにやべえことに俺達はローウェルの覚悟を茶化す感じのリアクションしか取れないクズの集まりだ。
勝ち確でイキり始めた奴は負ける!エンタメってのはそういうもんだぜ!!

>「だからマップ湧きもユニークモンスターなんて早いもの勝ちに決まってるよなあ〜〜〜〜!
 っしゃあ行くぞダインスレイヴ!俺の声に…………応えろ――――――――――――――ッ!!!」

帝龍のための時間稼ぎだったはずの目的をうっちゃり、エンバースの圧倒的横殴り宣言!

「だから土壇場でそういうゲスいことする奴も負けるんだって――!」

>『だああああああああ!バカなバカなバカなー!』

キルパクせんと発射されたダインスレイヴの刃はマコたんの防御の前にあっけなく砕け散り、
カンポキプスっと折れた刃がどっかに飛んでって突き刺さった。

「オイオイオイどうすんだよなんかローウェル側のほうが主人公みてえになってんじゃん。
 この戦いを切り抜けるにはもう一度俺達の方に主人公補正を取り戻さねえと――」

ふと見やると、帝龍が知らん間にはち切れんばかりの闘気(オーラ)を身に纏っていた。
しかもなんか髪が伸びて色が付き、胴衣も綺麗になっている。

「あ……アウト……アウトじゃないこれ……?」

>『――合わせろ!レオたんッ!!』
>『応!ロンたんッ!!』

ブレイブ&モンスターズは一応フィクションであり、実在の人物・団体とは一応関係ない。いいね?
唐突にスーパーサイヤ人(3)になった帝龍はキングとともに拳を構える。

170明神 ◆9EasXbvg42:2025/11/16(日) 22:45:43
>『天破!』『ラブラブ!!』
>『『鳴山拳――――――――――――――ッ!!!!!!!』』

「アウトォォォォ〜〜〜〜〜〜ッ!!」

バカでっけえバカみてえなハート型のビームが解き放たれ、マコたんに直撃する。
HPを削りきられたマコたんが倒れ込みながら縮んでいく。
なんかぁ……技名はアレだけどどっちかっていうとプリキュア(初代)の文脈だよなこれ。
マーブルスクリューって言ってくださいよわからないじゃないですか(古のオタク並の感想)。
で、悪い心を浄化(物理)されたマコたんが帝龍の元サヤに戻る。

「すげーなあいつ。両手に花で両方とも暴の者ってことある?」

ダブルヒロインならもっとこうさぁ……役割が被んねえようにするじゃん?
片方がバトルヒロインならもう片方は日常の象徴として戦わないキャラを配置するとかさ。
でもバトル作品だと往々にして戦わないヒロインは空気になっていくんだよな……。

「スポーツ物のマネージャーヒロインにも言えることだね。
 男女別の競技だと試合に話の軸が傾くほどヒロインの活躍の場は失われていってしまう。
 画面がむさ苦しくならないよう『女の子にしか見えない男キャラ』を選手に出したりするわけだが……。
 僕はこうした読者サービスとして生み出されたキャラからしか得られない栄養があると思うよ」

「スポーツ物の男キャラを美少女として消費してんの多分お前だけだよ……」

ミハエルが急にFF外から長文で食いついてきた。
こいつオタクの話になるとすぐシュバってくるな……。
初期のストイックなゲーマーとしてのキャラはどこ行っちゃったの。

>「……おーい、生きてるか帝龍。ダメだ……完全に伸びてら。
 ま、何はともあれめでたしめでたし。チャプタークリアだな。
 それで……みんな、次はどこに行きたい?」

「あー次……次かぁ……」

エンバースの問いに、俺は歯切れ悪く応えた。
このまま原作通りに旅を進めるとすると、俺達はある一つの大きな問題に直面する。
チラっとジョンの方を見る。この話、しなきゃダメかぁ……?

>「とりあえず原作準拠で祝勝会してから考えよう」

実情を理解してかしないでか、カザハ君の提案は助け舟となった。

「賛成。まずは章終わりの宴をやろうぜ。
 原作準拠なら……祝勝会ができるのも、これが最後になるしな」

 ◆ ◆ ◆

171明神 ◆9EasXbvg42:2025/11/16(日) 22:48:31
祝勝会にはスペシャルゲストとしてマホたん(プレーン)が登壇した。
二人も。……二人も!?

「生きていたのか……マホたん1号……」

てっきりバグって混ざって希釈されたもんだと思っていたが、
気づけばあんだけ居た大量のマホたんたちが消えてオタク殿たちに戻っている。
マホたんズになってたのはおそらくマホたん2号の方だろう。

そして……マホたんは『二人』いたッ!
原作のアコライトで自爆したマホたん1号も、アジ・ダカーハ戦自体がアレになったお陰で生き延びたみたいだ。

二巡目であんな別れ方になっちまった以上、マホたん1号の生存に俺も思うところがないでもない。
とはいえ、そういう湿っぽいのはこのRTAには似つかわしくあるまい。
今はただ、再会できたことを喜ぼう。

「マホたんの中の人もこのRTAに巻き込まれてんのかな」

>「――ま、いっか! みんなー! スキル『合唱』発動!!」

ふと浮かんだ考えを押し流すように、カザハ君の号令が飛ぶ。
三巡目RTA、王都&アコライト編のエンディングテーマは――『Re:LIGHT』。
リライト!!?????!?!?!?

「消してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「騒ぐなオッサン!合唱だって言われているだろ!!」

シャウトした瞬間ミハエル氏が俺の口に唐揚げを突っ込み、物理的に黙らされた。
これはマジでオッサン呼ばわりされても仕方ない。ワイトもそう思います。
ヒトカラしかしない人間はシャウトが普通にクソうるせえって自覚がないんだよね。ごめんね。
じゃあ次はレミオロメンの粉雪歌うね……。

「余興の時間だ!今夜は徹底討論!『アイドルの恋愛禁止は是か否か』!!
 ゲストパネリストとして現役アイドルのユメミマホロ氏と元アイドルのジョンアデル氏に来ていただいております」

合唱の列が捌けた後の空間に俺は椅子と机を並べ、帝龍やらマホたんやらジョンやらを座らせていく。

「あたしバーチャルアイドルなんだけど人選合ってるのかな……?」

「まぁ確かにね、肉アイドルに付き物のスキャンダルが存在しないのがVドルの利点でありますからな」

「バーチャルじゃないアイドルのこと肉って言わないで欲しいな……」

「ふん、馬鹿馬鹿しい。バーチャルアイドルであろうと中に肉は入っているだろ。
 中の人が普通にスキャンダル起こして引退したVなんか数え切れないほど居るじゃないか。
 ……なんだなんだ!なぜ全員で僕を親の仇のような目で見る!」

オブザーバーのミハエル氏があっという間にオタク達に簀巻きにされて転がされた。

「……中の人などいないアル」

帝龍が聞いたこともないような低音でボソっと呟き、俺達は付和雷同に頷いた。

172明神 ◆9EasXbvg42:2025/11/16(日) 22:50:15
「というかまさに今回の話がレオたんの恋愛禁止解除の話だったアルが……。
 もしかしてこれワタシを吊し上げるための"帰りの会"アルか?」

「左様」

俺は肯定した。

「左様って……」

帝龍は困惑した。

「アイドルってのはなぁ!"みんなの"アイドルなんだよッ!!
 其の視線はあまねく全てに均等に降り注がなきゃいけないの!!
 誰か一人のモノじゃないからこそ『全員で推す』って一体感が芽生えるのッ!!」

「なんてみっともないオタクなんだ……。所詮は『ワンチャンあるかも』という汚い欲望ありきの推し方だろう。
 スパチャの額でコメント読まれる優先順位を競っておいて何が均等な視線だ。
 だいたい舞台の外の惚れた腫れたなんてものは本来、供給されるコンテンツとは無関係のはずだ。
 推しのプライベートを詮索するなど普通に気色の悪いストーカーの思考――
 おい待て!その熱々の唐揚げをどうするつもりだ!?あつ、あつ、ほふほふはふ……」

簀巻きのミハエルは唐揚げを口に突っ込まれて再び黙った。

「FF外からご意見ありがとうございまーす。まぁ一理あるっちゃある。
 俺もアニメとか好きだけど声優さんがクリスマスに何してようが興味ないもん」

「それは違うぞ!!!」

唐揚げを爆速咀嚼して飲み込んだミハエルが声を上げた。

「声優さんは家族や同性の声優さんと仲良くクリスマスを過ごす様子をSNSにアップすべきだ!!
 予約投稿とかで良いんだ!真実がどうあれ、12月24日にはオタクが安心できる投稿を心がけてほしい!!」

「なんてみっともないオタクなんだ……」

そんなこんなで、アイドル経験者のジョンアデル氏のご意見なんかも頂戴しながら夜がふけていく。
俺達は朝までカスみてえな話題で盛り上がりながら飲み明かした。

 ◆ ◆ ◆

173明神 ◆9EasXbvg42:2025/11/16(日) 22:51:19
で、朝。

「次の目的地か……」

祝勝会のために後回しにしていた議題に、俺達はふたたび直面する。

「移動手段としてヴィゾフニールは欲しいから、レプリケイトアニマに行く必要がある。
 その通過点としてデリンドブルグとアイアントラスもだ。
 今回は魔法機関車の軌条がぶっ壊れてねえから二巡目みてえな馬車旅にはならねえだろうけど」

二巡目は本来エーデルグーテへの海路の始発点であるフェルゼン公国のアズレシアに行くために、
デリンドブルグを経由してアイアントラスから陸路で国境を超える長旅になるはずだった。
その途中でレプリケイトアニマを発見して、飛空船を入手したことでアズレシアには行く必要がなくなった。

あんときはアコライト防衛戦で線路をぶっ壊しちまったから馬車で何日も旅することになったが、
アイアントラスまではアルメリアの魔法機関車鉄道が伸びている。
ここまではサクっと到達できるはずだ。

問題は……原作のデリンドブルグからレプリケイトアニマまでの一連のシナリオは、
ジョンとロイ・フリントの因縁に決着をつけるドシリアスな流れだってことだ。
アイアントラスじゃ大量の死人が出たし、ロイだって救うことは出来なかった。
ドタバタRTAで茶化しながら進むにはあまりにも原作が重い。

「……逆に言えば、ヴィゾフニールが要らねえならレプリケイトアニマにも行く必要はねえってことだ。
 アニマに行かなきゃ、シールドマシンが再稼働して霊仙楔が破壊されるイベントフラグも立たねえだろうしな」

そして移動手段には当てが……ある。
こっちにはなあなあで仲間入りしたミハエルやら帝龍やらのニヴルヘイム勢力が居て、
そいつらはインチキテレポこと『形成位階・門』の開け方を知ってる。
俺達にも習得は不可能じゃないだろう。必要INT値を補う神代遺物も使いたい放題だしな。

「仮に『門』の習得が叶わなかったとして、飛行船の当てはまだ2つある。
 一つは蒼穹都市ハイネスバーグのクエストをこなして入手できる気球。
 もう一つ、機空艇グランドセイバーの入手クエストの開始点は……アズレシアだ」

アズレシア直行ルートを取るならリバティウムから船を使えば良い。
アズレシアはフェルゼン公国の海側の玄関口だ。アルメリアのリバティウムとも交易がある。
原作じゃミドやんが暴れて港がぶっ壊れたせいでクソ長い陸路をとるハメになったが、
マリーディアを穏便に鎮めた三巡目なら海路も問題なく使えるだろう。

「選択肢は2つに一つ。原作通りか、思いっきりハショるかだ。
 俺は正直ハショっちまっても良いと思うぜ。
 ハショった結果またぞろ変な混ざり方するとしても、いい加減慣れてきたしな」

――原作準拠のルートを取るなら、ひとつだけ、念頭においておきたいことがある。
アコライト決戦で死んだはずのマホたん1号が生きてる。
決戦の筋書きをバグり散らかした末に書き換えたからだ。

同じように……ビターエンドに終わっちまったロイとジョンの運命を、
俺達は望むかたちに書き換えられるかもしれない。


【原作準拠(レプリケイトアニマ)とハショりルート(アズレシア)の二択】

174ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/11/23(日) 12:17:22
>「バカヤロー何遊んでる!勝ち確だからって舐めたプレイしてんじゃないぞ!
 多くの場合その勝ち確って「勝ち確のように感じている」だけでフツーにそっから負けれるんだからな!」

エンバースの叫び声が聞こえる。

「エンバース君がそれを言うのか…?」

長々とつっこみたいところではあったが騒動はもう終盤だ。
今の僕に出来る事はこの騒動の終わりを見届けるのみ。

「さぁ〜ローウェル選手どうするのか〜〜〜!!??」

>『このローウェルを……舐めるななのです〜……』

「ちょ…その見た目で流血はまずいって…CEROって判定キビシイんだから…君みたいな子が血なんて流したら18+になっちゃうよ」

そんな僕の心配を他所にローウェルは叫ぶ

>『さあ!反撃するのですマコマホたん!例えお前の主がお前を不要と切り捨てたとしても――
 お前には、そこに異議を唱える権利があるのです!
 お前の価値を見誤った者に――目にもの見せてやる権利だって!!』

「おっと…もしかして僕的に塩を送った?う〜ん…ま!ここまでがんばってチャージしたんだし…
画面の前のみんなも一緒に!!エンバース〜〜〜!がんばれ〜〜〜!」

>「晴れやかな表情してんじゃねえ!」

え…僕に言ってないよね?…まさかカザハがそんな事言うワケ…でも…
どうでもいい勘違いでダメージを受けていた。

その間にもマホたんの殴り合いは続く。…おいおいいつになったらエンバースは出てくるんだ?
帝龍を援護して…力を合わせて一緒に倒してこの話は終わり…そのはずだ…なのにエンバースはミハイルと何かを話したまま動かない。

「エンバースさーん…嫌な予感するんですけどまさかこの土壇場で…オリチャーを発動するなんて事は」

僕が言い切る前に。

>「だからマップ湧きもユニークモンスターなんて早いもの勝ちに決まってるよなあ〜〜〜〜!
 っしゃあ行くぞダインスレイヴ!俺の声に…………応えろ――――――――――――――ッ!!!」

>「だから土壇場でそういうゲスいことする奴も負けるんだって――!」

パキンッ

明神の静止を振り切り放たれた渾身の一撃はそんなあっさりとした安上りそうな効果音と共に砕け散ったのだった。

>『だああああああああ!バカなバカなバカなー!』

僕は天を仰ぐ。
いい天気だ…と一瞬の現実逃避の後マイクを手に持ち…叫んだ

「何を四天王!!!!!!!」

175ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/11/23(日) 12:17:36
>『ハイバラ…………オマエエモい感じにしようとしてるけど誤魔化されんアルよ。
 結局オマエのダインスレイヴこれっぽっちも時間稼ぎに寄与してないアル』

ものすごい長い時間貯めた上に欲望で見切り発車したせいで一瞬で出番が終わってしまったエンバース。
僕が今更いってもどうにもならないが少しでも長く時間稼ぎを…と思い実況席を立とうとしたが…

>「うるせー!さっさと…………ああ?なんだ、その髪のエフェクト。それに服も……」

帝龍の見た目がいつの間にか変わっていた。いつの間に…?
オールバックのロングヘアに…服も身綺麗になっている。

>『……えっ、なにこれ知らんアルけど……怖……』

>「あ……アウト……アウトじゃないこれ……?」

本人はなんのこっちゃっと言った感じだったし周りも…正直僕も困惑している。
でもこのシナリオ自体そんなもんだしな…明神は大丈夫集〇社とか?と狼狽えている…どうしたんだろう

>『――合わせろ!レオたんッ!!』
>『応!ロンたんッ!!』

>『天破!』『ラブラブ!!』

凄い…これが【闘気】…!異なる人間同士のエネルギーが完璧に合わさり…一つの力として完成している…!
本来いがみ合ってた者同士でも…世界が変われば結末は変わる。
なぜか僕は嬉しくなった…嬉しくなった僕は、恥ずかしいなどと微塵も思わずにマイクを握って叫んだ。

「凄い!凄すぎる〜〜〜!!これが…二人の愛の力だーーー!!!」

>『『鳴山拳――――――――――――――ッ!!!!!!!』』

ハート型のビーム?闘気の塊?が二人から発射される鳴山拳と名付けられたソレの衝撃はマコマホたんを貫いた。
最初はなんとか持ちこたえたマコマホたんも…ついに倒れる…倒れる?まずくね?

>「……結局こうなるのかよ!逃げろ逃げろ!倒れてくるぞー!」

しかし叫んで全員が焦ったのもつかの間…会場を潰せるほど大きかったマコマホたんはポンッという音共に小さくなった

「はぁ…今回も無事に解決か…」

なんだか今回必要のなく慌てる事が多かった気がする…もう少し冷静に物事を見れるようにならないとな…
無駄に疲れた僕はそんな心で実況席を立つ。煌帝龍とマホたんの会話に水を差すようなマネはできないからな

>『……じがだな゛い゛な゛あ゛も゛う゛!ゆ゛る゛し゛て゛あ゛げる゛!』

会場にそんな幸せそうな声が響き渡った。

176ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/11/23(日) 12:17:47
>「……おーい、生きてるか帝龍。ダメだ……完全に伸びてら。
 ま、何はともあれめでたしめでたし。チャプタークリアだな。
 それで……みんな、次はどこに行きたい?」

「そんな事言ってもエンバース…君の中ではもう決めてあるんじゃないのか?だってこの後は──」

なぜか僕の口がそこで止まる。ふと口から出そうになっていた言葉を失ったから。
今までとは違う…強烈な違和感が僕を襲ったのだ

「あれ…何してたっけ…おかしいな…僕ももう歳かな…?」

…煌帝龍と戦った記憶もあるし、人命の軽視でみんなと争った事も覚えている。
その先は?どうやって煌帝龍と決着した?僕はその時どんな貢献をした?

確かに僕は最後までみんなと一緒に戦ったはずだ。でも…記憶は残ってない。

>「あー次……次かぁ……」

明神が僕から目線を逸らす。声もどこか気まずそうにしながら。

>「とりあえず原作準拠で祝勝会してから考えよう」

カザハは自然体のような笑みをしているが…少し気遣っているようにも見える。

「…」

きっと勘違いじゃない。何かがあった。
今までも記憶がところどころ抜け落ちてると感じる事があったが…今回だけは全部思い出せない。

間違いなく僕が関係していて…そして…とてもよくない事が起こったのだろう。
それもちょっとやそっと改変するくらいでは笑い飛ばせるような話ではないレベルの事が。

「…よし!…僕もひさびさに料理の腕を振るおうじゃないか!」

僕はこの一瞬で考えた事を全て胸の中にしまい込んだ…
なぜなら思い出せない事で悩んで…空気を悪くする必要性を感じなかったから

不安がないと言えば嘘になるが…

「ニャ〜?」

今の僕には部長がいる…みんながいる。

177ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/11/23(日) 12:18:01
>「「おーい、みんな――――――――!」」

>「生きていたのか……マホたん1号……」

カザハも明神もエンバースでさえもいつのまにか合流したオリジナルマホたんとの再会を喜ぶ。

「ハハハ…よかったよ」

正直に言えば僕は感動が薄かった。覚えていなかったから。
感動的な別れや再会があったはずなのにそれがぽっかりと抜け落ちてた。

恐らく失われた記憶の不幸はここから既に始まっていたのだろう。

>「――ま、いっか! みんなー! スキル『合唱』発動!!」

そんな悩む僕を置いていくように…祝賀会の夜は楽しく…明けていった。



>「次の目的地か……」

そして次の日、僕達は改めて次の目的地を話し合っていた。

>「……逆に言えば、ヴィゾフニールが要らねえならレプリケイトアニマにも行く必要はねえってことだ。
 アニマに行かなきゃ、シールドマシンが再稼働して霊仙楔が破壊されるイベントフラグも立たねえだろうしな」

エンバース・カザハ・明神が次の必要なことについての話し合いをしている。
僕はいつも通り人任せ上等なだんまりを決め込んでるわけだが…

チラッチラッチラッ

定期的に気を使われ見られている…全員から…みんなそれでバレてないと思ってるのか…?

僕は旅の目的地決めは人任せだった。まぁ今回もそうではあるんだが…
エンバースや明神のほうが遥かに効率よく行先を選定できるし、カザハは本能的な正解を引く確率が高い。
つまり僕が考える必要なんてなかった…今回もそうだろう。
だが気を使って本来選ぶべき道を選べない…なんて事になっては困る。

例え記憶があろうとなかろうと…僕の為に効率のいい道を諦めるなんて選択肢を取ってもらっては困る。

「みんな聞いてくれ」

僕は席を立ちみんなの視線を集める。

「みんなが気を使ってる事…僕の記憶がごっそりと抜け落ちてる事…
いくら察しの悪い僕でもわかる。この先の冒険できっとよくない事が起こったんだよね?冗談で流せないほどの…」

前の僕ならいつまでもうじうじと悩んでいただろう。
でも今は違う。記憶を抜き取られていたとしても…僕にはみんながいるから

「それがどうした!」

感情のまま壊れない程度にテーブルを叩く

「僕を舐めるな!僕は前の僕とは違う!…みんながいる!部長がいる!僕に気を使う必要なんてない!
力だけだった…暴力だけが友達だったジョン・アデルは卒業したんだ!」

「何があろうと…僕の心が折れる事はない…だから信じてくれないか」

みんなの目を見る。いつまでもなゆの後ろに…みんなの後ろで憧れてるだけの僕じゃないんだって…証明したい。

「僕に気を使う必要はない」

そもそも杞憂だって可能性もあるわけだしね?こんなに覚悟決めておいて本当は何もありませんでした
みたいなオチの可能性だってある。たまたまみんな違う事考えてただけとか…やべ急に恥ずかしくなってきた。

「あ〜…うん…えと…そんなわけだから次の目的地決めよろしく!!!え?僕?…どうせ記憶ないから分からないし…
今の宣言中二病みたいで昔の自分を思い出してちょっと恥ずかしくなってきちゃって…」

ま、何が起ころうと必ずハッピーエンドになるはずさ!
前の僕ならそんな甘い考え無駄だって思っただろうけど…今ならそう信じられる。

178embers ◆5WH73DXszU:2025/12/12(金) 05:52:49
『次の目的地か……』

「そう、次の目的地だ。どうしたもんかな……」

『……逆に言えば、ヴィゾフニールが要らねえならレプリケイトアニマにも行く必要はねえってことだ。
 アニマに行かなきゃ、シールドマシンが再稼働して霊仙楔が破壊されるイベントフラグも立たねえだろうしな』

「……だといいけど。これまでの流れから察するに結局スキップした要素はトンチキな形で追いついてくるからな」

『選択肢は2つに一つ。原作通りか、思いっきりハショるかだ。
 俺は正直ハショっちまっても良いと思うぜ。
 ハショった結果またぞろ変な混ざり方するとしても、いい加減慣れてきたしな』

「んー……難しいな。正直、今回ばかりは話の流れが分かっていた方が――」

『みんな聞いてくれ』

不意にジョンが重々しく皆に呼びかけた。

『みんなが気を使ってる事…僕の記憶がごっそりと抜け落ちてる事…
 いくら察しの悪い僕でもわかる。この先の冒険できっとよくない事が起こったんだよね?冗談で流せないほどの…』

「あー……どうだったっけ?いや、確かレプリケイトアニマの中にはトイレがなかったんだよ。それで明神さんが大騒ぎして――」

『それがどうした!』

「うおお!急にデカい音と声を出すなよ!ビックリする――」

『僕を舐めるな!僕は前の僕とは違う!…みんながいる!部長がいる!僕に気を使う必要なんてない!
 力だけだった…暴力だけが友達だったジョン・アデルは卒業したんだ!』
『何があろうと…僕の心が折れる事はない…だから信じてくれないか』

「……まあ、そうだな。ジョンを少し見くびっていたのは認めるよ……明神さんが」

『僕に気を使う必要はない』
『あ〜…うん…えと…そんなわけだから次の目的地決めよろしく!!!え?僕?…どうせ記憶ないから分からないし…
 今の宣言中二病みたいで昔の自分を思い出してちょっと恥ずかしくなってきちゃって…』

「なんだよ、急に斜に構えちゃって。いいだろ厨二病。俺なんて必殺技打つ度に技名叫んでるんだぞ」

エンバースはそう言って一息つくと――皆を見渡した。

「オーケイ。なら次の目的地はアズレシアにしよう、明神さん。なにせ……この先の正規ルートは遊びがなさすぎる」

レプリケイトアニマというシチュエーションは「おふざけ」に向かない。
章をスキップして始原の草原、エーデルグーテまで進んでもそれは同じだ。つまり――

「ぶっ飛んだギャグに巻き込んじまった方が、話の結末は変えやすい。
 ……とは言え今回ばかりはどこまでやれるのかマジで未知数だ。
 ロイ・フリントはともかくシェリーは……現時点で既に死んじまってる筈だからな」

ジョンの反応を伺う。ボノがそうだったように、二巡目での出来事を言及する事で記憶を取り戻せないかの確認だ。

「死をなかった事にするなんて冒涜的だ。自然じゃない。
 宿命を受け入れるべきなんだ……みたいな事を言うのは簡単だ。
 まあ……実際ごもっともって感じではあるしな」

眉間に指を添えて俯くエンバース=珍しく言葉を選んでいる。

179embers ◆5WH73DXszU:2025/12/12(金) 05:54:09
「けど俺達は実はゲームの登場人物で、ここは剣と魔法の世界だった。
 だったら話は違ってくる……別ルートの可能性があるならそれを追求してみたっていい筈だ。
 ……今回は俺達に隠し事をしながらって訳でもないしな?」

冗談めかして/隠し事のなかった時期の方が短いくらいの自分は棚に上げて。

「やろう。今度こそなんの後ろめたさもいらない。お前の友達を助けに行こう」

エンバースがスマホからマップを開く。

「アルメリア王国からアズレシアに行くにはアイアントラスを経由する必要がある。
 が、今回はこのルートは使えない。正規ルート入りのフラグが立っちまうかもしれないし、
 そうなればアイアントラスもまた巻き添えになるからだ。となると――」

エンバースは暫し考え込む。

「一旦リバティウムまで戻るか。ミドガルズオルムを素早く倒せたから港が使えるだろ。
 いいな〜こういう小さな変化が後の展開に大きく影響する感じのヤツ、好きなんだよな〜」




そんなこんなで一行はリバティウムを経由してアズレシア近海へ到着した。
船旅はロード画面の右下でデフォルメされた船が揺れている間に終わった。

「……なんだ?」

不意に遠方、港の方から爆発音が聞こえた。
ぼけーっとスマホを弄っていたエンバースがそちらを見やる。
黒煙を纏った何かが船へと放物線を描きながら迫っていた。

「はあ〜?なんだなんだ砲撃か?おかしいだろ、俺達が乗ってるのただの商船だぞ」

エンバースは気怠そうに胸部からダインスレイヴを抜いて――

『ギャ〜〜〜〜!!!』

迫りくる何かが悲鳴を上げている事に気付いた。
距離が近づいてから改めて見れば「迫りくる何か」は砲弾にしてはあまりに大きい。
屋根なしの馬車くらいの大きさがあって、しかも翼が生えていた。
鳥やコウモリのような翼ではない。もっと鋭角的な造形だ。
極めつけに――

『避けて避けて避けてぶつかるっす〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』

何かの中心部には人が生えていた。端的に言ってそれは――

「……飛空艇。にしてはちょっと小さいけど。ふうん?」

ダインスレイヴが三度閃く。
黒煙を帯びた飛行機が瞬く間に空中分解し水没。
操縦席に座っていた少女だけが慣性のままに飛んできて――甲板に突き刺さった。

「どうやら既に『イベント』は始まっているらしいな。
 よう。今度はどんなポンコツを作り上げたんだ? スティルバイト」

甲板に刺さったまま微動だにしなかった少女がたちまち首を引き抜き、エンバースを睨む。
ちなみに「やっべ、スティルバイトって誰だったっけ」と思っているヤツがいるかもしれないが
本編では一回も出てきた事はない。安心してくれ。
描写の参考までにスティルバイトちゃんはドチビでかわいいドワーフの少女だ。鍛冶師っぽい格好をしている。

180embers ◆5WH73DXszU:2025/12/12(金) 05:54:40
『ポンコツじゃないっす!今回は今までで一番長く空を飛んだっす!…………逆方向にだけど。
 それより!なんでブルークリーバーをバラバラにしちゃったんすか!』

「ブル……ああ、あの飛空艇っぽいの……なんでって……そりゃあのままだと船に直撃してたし……」

『あんだけ腕が立つならもっといい感じに助けられた筈っす!
 ちょっとカッコよく決めてやろ〜って気持ちがあったに違いないっす!』

「それは……まあ……」

『ほらね!ほらね!でもダイジョーブっす!工廠から一人で飛び出してきちゃったせいで丁度人手が足りてなかったとこっす!
 次の飛空艇を作るのを手伝ってくれればブルークリーバーを細切れにした事は水に流してあげるっす!』

「ああ……なんとなく分かってきたぞ」

エンバースはどこか虚しげな声でぼやいて、空を見上げる。

「これ……期間限定ミニゲームイベントの導入だ」

NPCのクラフトとか経営を手伝う感じのアレだ。




そんなこんなで一行は今度こそアズレシアに到着した。
アズレシアは港町だ――カジノがない方の。
こう記すとかなり感じが悪いが、実際そうなのだから仕方がない。
とは言えフェルゼン公国における貿易の玄関口だけあって町の規模は極めて大きい。
カジノがない分変にごった返してもいないので箱庭モードの拠点としてはそこそこ人気がある。

「――ま、よく言えば栄えている上に落ち着いてて治安がいい。悪く言えば他所と比べて地味。
 ……な筈だったんだけど。どうしてこんなお祭りみたいな雰囲気になってるんだ?」

露店。走り回る子供。意味もなく定期的に上がる花火。あちこちに施された飛空艇を模した装飾。
もっとも厳密には「飛空艇」は強襲飛空戦闘艇ヴィゾフニールの略称。
装飾のモチーフになっているのは飛行船だ。つまりNPCは空飛ぶ機械を飛空艇と呼んだりはしないって事だ。

『えー?知らないんすか?仕方ないっすね〜〜〜教えてあげるっす』

街の大通りを先行していたスティルバイトはそう言うと――腰のポーチを漁り出した。
そして色とりどりのチョークを誇らしげに取り出す。ノータイムで石畳に落書きを始める。

『いいっすか?今の時期、フェルゼン公国では『颯空祭(そうくうさい)』と呼ばれる祭りが開催されるっす』

「ホントかぁ?そんなイベント聞いた事ないぞ」

『……んもう!ホントは今年が初めてのイベントっすよ。名前もまだ付いてないっす。
 それはさておき颯空祭(仮)は見ての通り飛行船にまつわるお祭りっす!
 その起源となるのは遥か昔、今から一ヶ月前の話っす――――』

青い鎧を着た騎士。ドワーフ。ピカピカの剣の落書き。

『タウゼンプレタでは定期的に群青の騎士に装備を納品してるっす。
 ウチの装備はすごいっすよ〜〜〜装備すればコックさんでもドラゴンを三枚おろしに出来るっす!
 だから管理に万全を期す為、受け渡しの時は騎士さん達に工廠まで来てもらってるっす!』

181embers ◆5WH73DXszU:2025/12/12(金) 05:54:54
飛行船、爆発、驚いて飛び上がる騎士の落書き。

『そんでこれまたタウゼンプレタでは常に新しい機械の研究開発もしてるっす。当然飛行船も。
 で、その時たまたま飛行実験と装備の受け渡しの日時が被ったっす。
 爆発……的な勢いで空に舞い上がる飛行船を見て、流石の群青の騎士さんもビビったみたいっす』

そこらの石畳に余白がなくなる。
スティルバイトは辺りを見渡すと急に走り出して、場所を変えてまた落書きを始めた。

『そこでウチの職人衆が聞いたっす。試し乗りしてみませんか?って。
 騎士さん達は苦笑いしてこう答えたっす。高いところの景色は間に合ってる』

群青の騎士には伝統的な選抜試験がある。
標高8800メートルの霊峰『頂きのハイペリオン』への登頂。
装備は一振りの短剣のみ。後は着の身着のまま。
先の回答は、それにちなんだ社交辞令。

『――聞き捨てならね〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!
 ……って、みんながいきなりキレたっす』

だがそれが逆に工廠のドワーフ達の逆鱗に触れた!

『それじゃ何か?オレらの飛行船じゃハイペリオンの山頂には届かねえってか!?
 そんな訳がねえ!やってみせらあ!……って、特別予算と専門チームを組んで飛行船作りが始まったっす。
 めちゃくちゃ高く飛ばすとなると工廠の敷地じゃ危ないからアズレシアの郊外まで来て仮設工房まで建てたっす』

「……ん?人手不足って話だったよな?特別チームは……ああ、いや、分かったぞ……」

『わたしはチームに入れてもらえなかったっす!こんなの絶対面白いのに!』

不満げに地団駄を踏むスティルバイト。その勢いのまま落書きを再開。
様々な様式のクラフトツールと飛行船の落書き。

『絶対面白いって思ったのはわたしだけじゃないっす!
 最初は世界中のクラフターさんが噂を聞きつけてアズレシアに集まってきたっす!
 その内みんなアズレシアの郊外に仮設工房を建て始めたっす!』

この世界ではクラフターレベルが高ければ工房の建設くらい一日もかからない。
タウゼンプレタ魔装工廠のドワーフともなれば金槌の一打ちで建物を完成させる事すら可能だ。

『で、今度は商人さんが集まってきて露店を出したり資材の卸しを始めたっす!
 後はもうお祭りみたいなもんっす!これが、颯空祭(仮)の成り立ちっす!』

石畳に連綿と描いてきた落書きを広げた両腕で強調するスティルバイト。

「あらすじは大体分かったけど……大通りにこんな堂々と落書きして良かったのか?」

『……?ダメだったらすぐ消せるっすよ?ほら』

スティルバイトがチョークをワンドのように振る。
落書きが一画分巻き戻るように消えた。
高位のクラフターならこれくらいは当然出来る。

「おお……すげえ、Ctrl+Zって感じだ……」

ちなみに落書きはここを訪ねた人がイベントを理解しやすいという理由でそのまま残される事になった。
なんなら露店を出してる商人達が率先して装備保護のスクロールとか使っていた。
現代日本ではあり得ない雑さ、もとい大らかさにエンバースは普通にビビった。

182embers ◆5WH73DXszU:2025/12/12(金) 05:55:43
「しかしまあ、なんだ。二巡目で寄らなかった時、こっちじゃこんなトンチキイベントが起きてたんだな。
 けどなんていうか……RTAっぽくないな。全ての報酬が貰えるようになるまで二週間はかかりますって感じだ」

ふとエンバースがぼやいた。
ちなみにスティルバイトはモブに絵心を褒められてもっと落書き出来る場所がないか尋ねて回っている。

「……今のところ、二巡目の要素も見当たらないな。まずは何が来るんだ?
 印象深かった出来事と言えば……ああ、丁度いいや。ジョン、どこまで覚えてる?
 まずは火攻めから始まって、近代兵器を装備したゴブリン。マル様親衛隊との遭遇。他には何が――」

ふと、にわかに辺りが騒がしくなった。
周囲を見てみると誰もが驚きの表情で遠くの空を見上げている。
その視線を追ってみると――上空をレプリケイトアニマが飛んでいた。

『はあ?………………っぶね〜〜〜二章続けて明神さんみたいなガビーンって感じのリアクションするとこだったぜ。
 ……いや待て待て待て!飛んでってるのはいいがアレどこに落ちるんだ!?』

レプリケイトアニマは極めてゆっくりとアズレシアの上空を通過しつつある。
エンバースが咄嗟にスマホを操作。ホログラムのマップを展開。
レプリケイトアニマの進路にマップを重ね合わせる。その先にあるのは――

「……頂きのハイペリオンだ」

エンバースが頭を抱える。

「クソ、嫌な予感がする。頂きのハイペリオンはフェルゼン公国の聖地だ。
 アレがアルメリア側から飛んできたってだけでも戦争モノの国際問題だ。
 作ったヤツもバロールのアホだしな。まあ、それはバレようがないだろうけど――」

問題はそれだけではない。

「もしハイペリオンにアニマがぶっ刺さって、トンネルを作り損ねた砂山みたいに崩れたら、麓にあるブラウヴァルトはおしまいだ。
 アニマの飛行速度は大した事ないが……高すぎる。プレイヤーの高度限界よりも更に上を飛んでるんじゃないか?」

樹冠都市ブラウヴァルト。フェルゼン公国の首都。
ハイペリオンを信仰対象として崇めている彼の都の民は決して避難などしないだろう。

「こうしている場合じゃない。今すぐ動き出さないと。だが追いついてどうする?
 あの高さじゃ結局ハイペリオンに着弾するまで突入する手段が……ああ、クソ。点と点が繋がったぞ――」

エンバースが荒っぽい動作で海を指差す。

「――素材を集めよう。なんでもいいから手当たり次第。海の魔物からでも、港の商人から買い付けたっていい。
 飛行船だ!スティルバイトの飛行船をクラフトしながらそれを使って移動するんだ!」

そのままダインスレイヴを引き抜くと手近な屋根に飛び乗る。
すぐに群衆の中からスティルバイトを見つけるとフラウの触腕で引き寄せる。
絵面がかなり不味いが気にしている場合ではない。

「スマホで入手した素材を報告し合おう!
 スティルバイト、お前は俺達の報告を聞きながら飛行船のアイディアを練るんだ!
 気合い入れろよみんな!」

エンバースがその場を飛び去りながら叫ぶ。

「このシナリオは紛れもなく、依然変わらず――RTAなんだ!」

183カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/12/29(月) 00:59:09
>『僕に気を使う必要はない』
>『あ〜…うん…えと…そんなわけだから次の目的地決めよろしく!!!え?僕?…どうせ記憶ないから分からないし…
 今の宣言中二病みたいで昔の自分を思い出してちょっと恥ずかしくなってきちゃって…』

ジョン君は、レプリケイトアニマでの一連の出来事を忘れているらしい。
それならそれで、忘れたままの方がいいのかも……
どうやらこの周回は、そのキャラにとって重要なことほど忘れるという傾向があるようだ。

>「オーケイ。なら次の目的地はアズレシアにしよう、明神さん。なにせ……この先の正規ルートは遊びがなさすぎる」
>「ぶっ飛んだギャグに巻き込んじまった方が、話の結末は変えやすい。
 ……とは言え今回ばかりはどこまでやれるのかマジで未知数だ。
 ロイ・フリントはともかくシェリーは……現時点で既に死んじまってる筈だからな」
>「死をなかった事にするなんて冒涜的だ。自然じゃない。
 宿命を受け入れるべきなんだ……みたいな事を言うのは簡単だ。
 まあ……実際ごもっともって感じではあるしな」
>「けど俺達は実はゲームの登場人物で、ここは剣と魔法の世界だった。
 だったら話は違ってくる……別ルートの可能性があるならそれを追求してみたっていい筈だ。
 ……今回は俺達に隠し事をしながらって訳でもないしな?」
>「やろう。今度こそなんの後ろめたさもいらない。お前の友達を助けに行こう」

「それそれ! 大体、散々大暴れして最後かっこよく散るとか反則でしょ!
ギャグ時空に巻き込んであの澄ました顔をガビーンさせてやるわ――ッ! レッツブレイブってやつ!?」



早速アズレシアまで来てみると、早速何かが飛んできた。
エンバースさんが飛行機?をずんばらりと解体すると、ロリっ娘が甲板に突き刺さる。
正確には外見ロリっ娘のドワーフだ。
ところで女性ドワーフはロリっ娘で男性ドワーフはひげもじゃのおっさんという設定の世界がよくあるけど、
今の時代、女性が外見ロリッ娘なら男性も外見ショタっ子であるべきだと思う。知らんけど。

>「どうやら既に『イベント』は始まっているらしいな。
 よう。今度はどんなポンコツを作り上げたんだ? スティルバイト」

「イベントって……鳥人間コンテスト的な?」

>『ポンコツじゃないっす!今回は今までで一番長く空を飛んだっす!…………逆方向にだけど。
 それより!なんでブルークリーバーをバラバラにしちゃったんすか!』

>「ああ……なんとなく分かってきたぞ」

>「これ……期間限定ミニゲームイベントの導入だ」

>『いいっすか?今の時期、フェルゼン公国では『颯空祭(そうくうさい)』と呼ばれる祭りが開催されるっす』

>「ホントかぁ?そんなイベント聞いた事ないぞ」

「仮装して海に飛び込むやつ!?」

「鳥人間コンテストだとウケ狙いで仮装して海に飛び込む部門も一時期あったそうですね。知らんけど

184カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/12/29(月) 01:00:58
>『……んもう!ホントは今年が初めてのイベントっすよ。名前もまだ付いてないっす。
 それはさておき颯空祭(仮)は見ての通り飛行船にまつわるお祭りっす!
 その起源となるのは遥か昔、今から一ヶ月前の話っす――――』

(中略)

>「……今のところ、二巡目の要素も見当たらないな。まずは何が来るんだ?
 印象深かった出来事と言えば……ああ、丁度いいや。ジョン、どこまで覚えてる?
 まずは火攻めから始まって、近代兵器を装備したゴブリン。マル様親衛隊との遭遇。他には何が――」

「何か飛んでる―――――ーッ!!」

とりあえず分かりやすくギャグ漫画っぽい驚愕の表情をしておいた。

>『はあ?………………っぶね〜〜〜二章続けて明神さんみたいなガビーンって感じのリアクションするとこだったぜ。
 ……いや待て待て待て!飛んでってるのはいいがアレどこに落ちるんだ!?』

>「もしハイペリオンにアニマがぶっ刺さって、トンネルを作り損ねた砂山みたいに崩れたら、麓にあるブラウヴァルトはおしまいだ。
 アニマの飛行速度は大した事ないが……高すぎる。プレイヤーの高度限界よりも更に上を飛んでるんじゃないか?」

「そういえば……本来の用途が大規模範囲攻撃魔法だったね、あれ……」

>「こうしている場合じゃない。今すぐ動き出さないと。だが追いついてどうする?
 あの高さじゃ結局ハイペリオンに着弾するまで突入する手段が……ああ、クソ。点と点が繋がったぞ――」

>「――素材を集めよう。なんでもいいから手当たり次第。海の魔物からでも、港の商人から買い付けたっていい。
 飛行船だ!スティルバイトの飛行船をクラフトしながらそれを使って移動するんだ!」
>「スマホで入手した素材を報告し合おう!
 スティルバイト、お前は俺達の報告を聞きながら飛行船のアイディアを練るんだ!
 気合い入れろよみんな!」
>「このシナリオは紛れもなく、依然変わらず――RTAなんだ!」

そう言いながらエンバースさんは飛び去ってしまった。

「そんなこと言ったって……素材集めたところで飛行船なんてそんなすぐ作れるわけじゃ……
あ、ゲームだから一瞬で作れるのか!!」

辺りでは、様々なクラフターチームが思い思いの飛行船を製造中のようだ。

「なんかめっちゃグ〇ンブルーファンタジーとコラボしてそう……。
ってか機空艇グランドセイバー入手するイベント名自体ちょいあれのパロディだよね……」

「呼んだ? 俺達チーム『ぐら〇ぶる☆ファンタジー』!」

益体もないひとりごとを耳ざとく聞きつけて、海パン一丁の漢達のクラフターチームが現れて謎のポーズをキメる。

「君達、空飛ぶ冒険者じゃなくてスキューバダイビングサークルじゃん!
飛行船というより潜水艦作りそうだな!?」

と言ってる間に裸の漢達に「「どっこいしょー!!」」と神輿のように持ち上げられてどこかに連行される。

185カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/12/29(月) 01:02:38
「「えっほ、えっほ!!」」」

「これなんの生贄!?」

「実は、あそこの小島に素材集めに行った仲間が『魔精の歌姫セイレーン』に魅了されて帰ってこれなくなってしまった!
高レベルの呪歌士とお見受けした! どうか仲間を助けて欲しい!」

「そりゃあまあ今のレベルなら準レイド級ぐらいは楽勝だけど……。ってか水面の上走ってるじゃんこの人達!怖っ!
スキューバダイビングサークルなんだからダイビングしようよ!!
でも、セイレーン倒したら結構いい素材手に入るよね……。エンカウントするまでうろうろする手間が省けると思えばまあいっか!」

「いいんかーい!!」

とツッコミながら、カケルはこの状況をナチュラルに受け入れて横を平然と飛んで付いて来ている。
もう完全にギャグ時空に洗脳されている。他人のこと言えないけど。
小島に辿り着いてみると、確かに海パン一丁の漢がセイレーンに魅了されていた。
ただし、セイレーンの上半身の人間部分は筋骨隆々のマッチョである。

「えーと、魔性の歌……姫?」

セイレーン(?)が次々とマッチョポーズを披露し、海パン一丁の漢がそれを目を輝かせながら見ている。

「おおっ、なんという素晴らしい上腕二頭筋!!」

「確かに魅了されてるで間違っては無いけど……歌関係ないじゃん!
これ、明らかに連行する人材間違ったよね!? 呪歌士じゃなくて武闘家連れてくるべきだったんじゃあ……」

こちらに気付いたセイレーン(?)がこんなことを言ってきた。

「そこのお前! 私にボディビル対決で勝てばセイレーンの羽をたくさんやろう!」

「たくさんって……アバウトやな!?」

現実的に考えると鳥の羽むしったところで飛行機はできないが
飛行系モンスターの羽をたくさん集めると何故か飛行船の素材に出来るのがゲームあるあるなのだ。

「ちょっとそっち方面は管轄外なんで……カケル、こういうのに向いてそうな人連れてきて!」

「はいな!」

いや、いざとなったら普通に倒せばいいんだけど、平和的に解決できるならそれに越したことはないし。
記憶違いでなければあろうことか真面目なはずの本編で、いつぞやの三人娘との対決でノリノリで肉体美披露してた人がいた気がする!

186明神 ◆9EasXbvg42:2026/01/12(月) 23:37:59
クソ重たいアニマ編のシナリオをどうするか……
みんなして気まずい沈黙に包まれていると、ピックアップ回担当のジョン氏が立ち上がった。

>「みんなが気を使ってる事…僕の記憶がごっそりと抜け落ちてる事…
 いくら察しの悪い僕でもわかる。この先の冒険できっとよくない事が起こったんだよね?冗談で流せないほどの…」

「覚えてないのか……まぁうん、無理に思い出すことでもねえよ。
 スルーできるならこのままエーデルグーテあたりまで忘れちまおうぜ」

>「それがどうした!」
>「僕を舐めるな!僕は前の僕とは違う!…みんながいる!部長がいる!僕に気を使う必要なんてない!
  力だけだった…暴力だけが友達だったジョン・アデルは卒業したんだ!」

>「……まあ、そうだな。ジョンを少し見くびっていたのは認めるよ……明神さんが」

「後衛にヘイト擦る奴があるかよ」

つーか割と今でも暴力と大親友やってねえかお前……?
みたいな身も蓋もない突っ込みはまぁ、心の中にとどめておく。
あんまこういうときに茶化したくねえしな。

>「何があろうと…僕の心が折れる事はない…だから信じてくれないか」

……しかしアレだな。
ロイとのエピソードは屈折しまくったジョンが立ち直る上でかなり重要な紆余曲折だった。
ピックアップ回以前のジョンは、内面にもっとドロドロした荒みを抱えた人間だったし、
俺達に全幅の信頼を寄せることもなかったはずだ。

俺の目が節穴でないなら、今のジョンは……本編終盤の、本人曰く『卒業した』ジョンだ。
人格が記憶をもとに形成されるものであるなら、ジョンの変節はまだ起こらないはず。

187明神 ◆9EasXbvg42:2026/01/12(月) 23:38:21
>「あ〜…うん…えと…そんなわけだから次の目的地決めよろしく!!!
 え?僕?…どうせ記憶ないから分からないし…
 今の宣言中二病みたいで昔の自分を思い出してちょっと恥ずかしくなってきちゃって…」

――あるいは。幼少期にシェリーと壮絶な別れを経験しなかった、
まっとうな人生を歩むことのできたジョン・アデルの姿が今のこれなのかもしれなかった。

「ま、ま、本人がそう言うなら異論の余地はねえな。
 このまま正規ルートに乗っかってデリンドブルグに――」

>「オーケイ。なら次の目的地はアズレシアにしよう、明神さん」

「エンバース君?きみ話聞いてた……?」

>「なにせ……この先の正規ルートは遊びがなさすぎる」
>「ぶっ飛んだギャグに巻き込んじまった方が、話の結末は変えやすい。
 ……とは言え今回ばかりはどこまでやれるのかマジで未知数だ。
 ロイ・フリントはともかくシェリーは……現時点で既に死んじまってる筈だからな」

「……なるほどな?気合入ってきたぜ。二十年だか前の人死にすら覆そうってんだ。
 ハンパな常識はむしろ足枷になる。気ィ引き締めてバカになんねえとな」

>「死をなかった事にするなんて冒涜的だ。自然じゃない。
 宿命を受け入れるべきなんだ……みたいな事を言うのは簡単だ。
 まあ……実際ごもっともって感じではあるしな」
>「けど俺達は実はゲームの登場人物で、ここは剣と魔法の世界だった。
 だったら話は違ってくる……別ルートの可能性があるならそれを追求してみたっていい筈だ。
 ……今回は俺達に隠し事をしながらって訳でもないしな?」

「別れを受け入れるべきなんてのは、『死人が生き返らない』っつー現実ありきの正論だ。
 ……そんなもん、現実が勝手に言ってるだけだぜ。知ったこっちゃねえよ。
 奇跡のひとつやふたつ、俺たちはこれまで何度だって起こしてきた」

>「やろう。今度こそなんの後ろめたさもいらない。お前の友達を助けに行こう」

 ◆ ◆ ◆

188明神 ◆9EasXbvg42:2026/01/12(月) 23:40:25
そんなこんなで針路はアズレシアへ。
当地へのルートは陸路と海路のふたつあるが、長大な迂回を強いられる陸路は使う必要がない。
リバティウム―アズレシア間の海路が今回は生きているからだ。

で、しばしの船旅をゆらゆら満喫していると、寄港先に近づいたあたりでイベントが発生した。
ムービーシーンが長いのであらすじで済ますぜ!

雑造形の飛空船モドキで突っ込んできたのはタウゼンプレタ魔装工廠の職人見習いスティルバイト。
なんかハイペリオンの頂上まで飛べるような飛空船の試作を頑張ってるらしい。
これは工廠だけじゃなくて大陸全土の職人たちがみんなして取り組んでる研究課題のひとつで、
そこにアズレシアの地元商人とかが一枚二枚と噛んだことで『颯空祭』なるお祭りに発展したそうな。

>「しかしまあ、なんだ。二巡目で寄らなかった時、こっちじゃこんなトンチキイベントが起きてたんだな。
 けどなんていうか……RTAっぽくないな。全ての報酬が貰えるようになるまで二週間はかかりますって感じだ」

「うーん期間限定の専用マップでっちあげてるあたりが実にそれっぽいぜ。
 日数に応じて順次シナリオが解禁されそうな感じがする……」

あとはアレだな。資材集めの進捗がサーバー内の全プレイヤーで共通してて、
全員で集めること前提の膨大な資材を要求されたりとかな。
アレ、いまいち流行ってないゲームとかだとマジで一向に進捗進まなくてお通夜状態になるんだよ。
公式のリツイート数を競うキャンペーンとかでも似たような事象に遭遇する……。

解説を聞きながらぼけっと空を眺めていると、はるか上空になにかでかいものが飛んでるのが見えた。
なんか、すげえ、嫌な予感がしますよ……。

>「はあ?………………っぶね〜〜〜二章続けて明神さんみたいなガビーンって感じのリアクションするとこだったぜ」

「照れんなよエンバース。一回やっちまったなら二回も三回も一緒じゃんね。
 それでは皆さん、ご唱和ください。――レプリケイトアニマじゃねえか!!」

>「……いや待て待て待て!飛んでってるのはいいがアレどこに落ちるんだ!?」
>「……頂きのハイペリオンだ」

「やっっっっぱ混ざりやがったなぁ〜〜〜〜〜っ!
 どうすんだよアレ、山肌に直撃なんてしようもんなら未曾有の大災害が起こるぞ!!」

189明神 ◆9EasXbvg42:2026/01/12(月) 23:41:10
アニマのクソデカ質量ならちょっと掠めただけでも雪崩と土砂崩れは想像に難くない。
それ以上にやべえのはあの山がフェルゼンの宗教上のアンタッチャブルであることと、
開闢以降の公国の全ての歴史を保存するアーカイブの役目も担ってるってことだ。
仮に人的被害を最小に抑えられたとして、公国の政治行政に不可分なほど紐づいてる霊峰を失えば、
下手すりゃブラウヴァルトどころかフェルゼン公国って国そのものが世界から消失する。

レプリケイトアニマを止めなければならない。
だがどうやって――ああなるほど、「そういうこと」か。
ここには頂きのハイペリオンまで飛べる飛行船を作ろうとしてる連中がいるじゃねえか!

>「――素材を集めよう。なんでもいいから手当たり次第。海の魔物からでも、港の商人から買い付けたっていい。
 飛行船だ!スティルバイトの飛行船をクラフトしながらそれを使って移動するんだ!」

そんなこんなで……素材集めRTAが始まった。
みんなサっと解散していったが、俺はここを離れるつもりはない。
いっぺんやってみたかったんだよな。異世界での現代知識無双――!!
エンバースに申し付けられて素材納品の窓口NPCみたくなったスティルバイトに話しかける。

「スティルバイトちゃんさぁ、今から俺が説明する構造をちょっぱやで再現できるかな」

見せてやるぜ……未開の異世界人共に現代人様の義務教育の成果をよォ……!
スティルバイトから借りたチョークを地面に擦り付けていく。

「こう、金属製の筒の内側に磁石を2つ貼り付けてさ、中心に回転するようにした金属棒を入れて、
 棒に銅線をグルグル巻いて雷魔法で電流を流すと……もの凄い勢いで回転し出すんだ!
 これが俺達の世界の産業を支えるモーターの仕組みだ!」

「あーこれ……雷動機っすね。わぁ懐かしいなぁ、小さい頃仕掛けの玩具によく使ったっすよ」

「知ってんのォ……?じゃ、じゃあこれはどうだ!筒とピストンを用意して、
 コルトレットの精製油をさらに蒸留した揮発性の油を中に注いで火を付ける。
 すると爆発が起こってピストンが押し下げられるから、この上下の動きをクランクで回転に変換……」

「発動機っすよね、往復式の」

「エンジンも知ってんのかよ!!じゃあもう僕の教えられることないです!解散!」

なんてことだ……異世界人はちょっとした科学の原理にもめっちゃ驚いてくれるんじゃなかったのか……?
なんで魔法で空飛べる連中が動力機構にこんな詳しいんだよ!!

そこで俺は気づいてしまった。考えることはみんな一緒なんだ。
二巡目当時、アルフヘイムには俺達の他にもブレイブは複数存在していた。
その中にはバロールが召喚しっぱなしで放置してた野良ブレイブも少なからず存在している。
そういう連中が安全を求めてフェルゼンにたどり着いて、そこで現代知識を伝えてもおかしくない。
……それはそれとして、普通に優秀なここの職人どもが普通に考えついた可能性もあるしな。

ていうか今思い出したけどそういやこいつ独力でスーパー回転ピザカッターとか作ってたな。
サブクエで。

190明神 ◆9EasXbvg42:2026/01/12(月) 23:42:03
「雷動機も発動機も魔法式回転機構も一通り試してはいるんす。
 でもダメなんすよね、プロペラ回して得られる推力じゃ空は飛べても速度が足りない。
 ハイペリオンの頂上付近には火を吹く飛竜がたっくさん棲んでるんす。
 あいつらの追跡を振り切るくらいのスピードがないとおやつになるだけっす」

ああ……なんかわかってきたかも。始めに船に突っ込んできたスティルバイトのブルーなんちゃらは、
なんか鋭角な感じの翼を持っていた。アレは空気抵抗を突破して速度を出すための構造なんだな。
俺達も同じ課題を抱えている。はるか上空のレプリケイトアニマに追いついて、
アニマの対空迎撃網をかいくぐって近づくには、飛べるだけじゃなくて圧倒的な速度が必要だ。

「ほなジェットか……俺もよくわかってねえけど火と風の魔法をケツから噴射してさ、
 砲弾みたいに爆発的な力ですっ飛んでいくのはどうよ」

「それが今まさに試してるやつっす。じぇっと……って言うのはわかんないすけど」

スティルバイトは地面を指差す。そこには冒頭の経緯説明で描かれた絵がある。
爆発と、驚いた騎士の落書き。
そして実験結果は……まぁブルーなんちゃらの末路の通りだ。
途中で失速して墜落して、あわや商船と衝突事故になるとこだった。

「今度は速度が出ても航続距離がダメっすね。
 飛行船に積載できるマナシャードの量じゃ飛び上がった時点で空っぽっす。
 あとはまぁ……軽量化した機体強度じゃ普通に爆発に耐えられないっていうのも……」

「目下の課題は動力と強度かぁ。とりあえず動力の方はアテがあるぜ」

これやっちゃっていいのかな……すげえ涜神的な気もするけど……
まぁええか!RTAだぜ!なんでもありだよ!
俺はインベントリから一本の杖を出した。

「な、何すかこの威圧感のあるごっつい杖は……」

「何って……神代遺物・聖杖アレフガルドだが?」

「はぁ!?」

神代遺物の重要性はその辺の寺院の初等教育でも歴史の授業で習う。
一般市民のスティルバイトからすりゃバイト先にいきなり国王が来店したみてえな感覚だろう。

「こいつを飛行船のケツにくくりつけて……噴射しようぜ!」

「はぁ!!???!?!?!?」

ジェット運用に不可欠な軽さと強度を兼ね備えた機体の素材については……
カザハ君とジョンがセイレーンとこに走ってったからなんかしら成果を咥えて戻って来るだろ。


【飛行船の動力源として聖杖アレフガルドを供出】

191ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2026/01/19(月) 00:02:09
沈黙が続く。
実際にはそんなに長い沈黙ではなかったが僕には永遠のようにも感じられた。

「カメラの前で滑ると世界が止まった感覚がするんですよねw」

テレビで共演した芸人が言っていた言葉を思い出す。彼は今元気だろうか。

>「なんだよ、急に斜に構えちゃって。いいだろ厨二病。俺なんて必殺技打つ度に技名叫んでるんだぞ」

>「ま、ま、本人がそう言うなら異論の余地はねえな。
 このまま正規ルートに乗っかってデリンドブルグに――」

>「オーケイ。なら次の目的地はアズレシアにしよう、明神さん。なにせ……この先の正規ルートは遊びがなさすぎる」

エンバースは慌てふためく明神を尻目に僕の顔を覗き込むように近づく。
見定めているのだろうか…?僕の記憶喪失が人為的な物なのか…それとも僕自身が自ら封印したものなのか

>「ぶっ飛んだギャグに巻き込んじまった方が、話の結末は変えやすい。
 ……とは言え今回ばかりはどこまでやれるのかマジで未知数だ。
 □□・□□□□はともかく□□□は…現時点で既に□□□□□□□□□」

言葉が聞き取れない。いや…耳には届いてる…だが理解できない。まるでそこだけゲームがバグったかのようだ…。
不思議そうに混乱する僕の様子を見たエンバースは何かを理解したかのように僕から離れた。

だが僕は聞き返そうとは思わなかった。

>「□□□□□□□□□□□□□□□□□□
 宿命を受け入れるべきなんだ……みたいな事を言うのは簡単だ。
 まあ……実際ごもっともって感じではあるしな」
>「やろう。今度こそなんの後ろめたさもいらない。お前の□□を□□□□□□□□」

「なんだかかっこつけた後でこんな事言うのちょっと恥ずかしいけど…」

僕を人頼れるようになったから。信じれるようになったから…

「うん。みんなの事信じてる。えっと…ハッピーエンド…よろしく!」

>「それそれ! 大体、散々大暴れして最後かっこよく散るとか反則でしょ!
ギャグ時空に巻き込んであの澄ました顔をガビーンさせてやるわ――ッ! レッツブレイブってやつ!?」

今の僕を見たら君は笑うかな…□□□………



クソっ!気にしないとは思ったが頭を誰かに管理されてるみたいでやっぱり不愉快だ…。

192ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2026/01/19(月) 00:02:24
デフォルメされた船が目の前で揺れている…なにこれ?船旅だって聞いてたのに…?

「…これがコストカットとかいう奴か…?」

確かにゲームとかの船が旅立つシーンって2回目とかいらないしなんなら一回目も僕はあんまり気にするタイプじゃない
あくまでも「僕は」なのでそこを勘違いして攻撃してこないように。

「って誰に向かって言ってるんだ僕は…?ってあれ」

気づいたら船の上…そして前方にはまだ距離があるが目的地らしい場所がある場面に切り替わっていた。

ドオオオオオオオン!

>「はあ〜?なんだなんだ砲撃か?おかしいだろ、俺達が乗ってるのただの商船だぞ」

目的地が見えている距離とはいえ無駄に船を壊されるつもりはない。
エンバースもそう思ったようでダインスレイヴを構える。

>『避けて避けて避けてぶつかるっす〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!』

エンバスが軽く溜息を吐くと僕を静止する。

ふむ…どうやら問題はないみたいだ

>「どうやら既に『イベント』は始まっているらしいな。
 よう。今度はどんなポンコツを作り上げたんだ? スティルバイト」

「…誰?」

僕はカザハに視線をやるがカザハは手をふり知らん知らんと首を横に振った。
混乱してる物事を僕が頭で処理している間に話は進んでいくだろう。

>「ああ……なんとなく分かってきたぞ」

ほらね

>「これ……期間限定ミニゲームイベントの導入だ」

「あぁ…ちょっとのミニゲームで石がもらえるあれだな?」

分かりやすいのは助かる。…が

>『それじゃ何か?オレらの飛行船じゃハイペリオンの山頂には届かねえってか!?
 そんな訳がねえ!やってみせらあ!……って、特別予算と専門チームを組んで飛行船作りが始まったっす。
 めちゃくちゃ高く飛ばすとなると工廠の敷地じゃ危ないからアズレシアの郊外まで来て仮設工房まで建てたっす』
>『絶対面白いって思ったのはわたしだけじゃないっす!
 最初は世界中のクラフターさんが噂を聞きつけてアズレシアに集まってきたっす!
 その内みんなアズレシアの郊外に仮設工房を建て始めたっす!』

クラフト系のイベントだ…なんか経営シュミレーションみたいな事するタイプの…

>「あらすじは大体分かったけど……大通りにこんな堂々と落書きして良かったのか?」
>『……?ダメだったらすぐ消せるっすよ?ほら』
>「おお……すげえ、Ctrl+Zって感じだ……」

期間限定でありがちなメインクエストではちゃんとやったけどイベントだから面倒事は端折れるタイプのイベントだ…!

193ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2026/01/19(月) 00:02:39
>「しかしまあ、なんだ。二巡目で寄らなかった時、こっちじゃこんなトンチキイベントが起きてたんだな。
 けどなんていうか……RTAっぽくないな。全ての報酬が貰えるようになるまで二週間はかかりますって感じだ」
>「うーん期間限定の専用マップでっちあげてるあたりが実にそれっぽいぜ。
 日数に応じて順次シナリオが解禁されそうな感じがする……」

「僕が宣伝でCM出てたゲームとかもそんな感じだったな〜【次は12時間後に解放】みたいな」

とはいえそんなのを悠長に待ってる余裕はない。
僕の直感もさっさとこのイベントを終わらした方がいいと告げてくる

とはいえこの手のイベントはエンバースの言う通り日数で解放式かもしくはプレイヤー全員で頑張ってやりましょう系統な事が多い。
事実僕達4人がどれだけ頑張ったところでできる時短は限られてくるだろう。この港にいる全員で協力して完成させるなら話は別だろうが。

いくらトンチキ世界とはいえ物づくりするわけだしな…エンバースもどうしようか頭を抱えているようだ。

>「……今のところ、二巡目の要素も見当たらないな。まずは何が来るんだ?
 印象深かった出来事と言えば……ああ、丁度いいや。ジョン、どこまで覚えてる?
 まずは火攻めから始まって、近代兵器を装備したゴブリン。マル様親衛隊との遭遇。他には何が――」

「うーん…本当に何も…だな。」

何も思い出せない。まるでそこに僕が居合わせてなかったかのように。
大事なところに関してはゲームのバグのような現象で聞き取れない有様だ。

エンバースに詳しく僕の状態を伝えようとした時…エンバースが天を見上げて固まった。

>『はあ?………………っぶね〜〜〜二章続けて明神さんみたいなガビーンって感じのリアクションするとこだったぜ。
 ……いや待て待て待て!飛んでってるのはいいがアレどこに落ちるんだ!?』

「…!?あれはなんだ…でっかい…円柱?」

よく見れば巨大な円柱の底には巨大なトゲが無数についておりまるでドリルのようになっていた。
UFOにしてはあまりにも巨大な縦長で…ドリル…巨大なドリル型建造物というのがしっくりくる見た目であった。

>「照れんなよエンバース。一回やっちまったなら二回も三回も一緒じゃんね。
 それでは皆さん、ご唱和ください。――レプリケイトアニマじゃねえか!!」

明神が叫ぶ。あれはレプリケイトアニマというらしい。だが僕は知らない。
だがなんのために今あの円柱ドリルがこの街にやってきたかの想像はつく…何かを破壊する為だろう。

…例えば今ちょうどイベントの話題に上がった【頂きのハイペリオン】とか

>「そういえば……本来の用途が大規模範囲攻撃魔法だったね、あれ……」

うそ…あの見た目であれ魔法なんだ…。

>「もしハイペリオンにアニマがぶっ刺さって、トンネルを作り損ねた砂山みたいに崩れたら、麓にあるブラウヴァルトはおしまいだ。
 アニマの飛行速度は大した事ないが……高すぎる。プレイヤーの高度限界よりも更に上を飛んでるんじゃないか?」

>「やっっっっぱ混ざりやがったなぁ〜〜〜〜〜っ!
 どうすんだよアレ、山肌に直撃なんてしようもんなら未曾有の大災害が起こるぞ!!」

レプリケイトアニマという奴の大きさを考えれば山そのものを更地にするなんて事は訳ないだろう。

>「――素材を集めよう。なんでもいいから手当たり次第。海の魔物からでも、港の商人から買い付けたっていい。
 飛行船だ!スティルバイトの飛行船をクラフトしながらそれを使って移動するんだ!」

もう僕達に遊んでいられる余裕はなくなった。あれが山に到着する前に僕は山頂にたどり着かなければならない。
だが言い換えれば状況が単純になったともいえる。今なら…あの円柱ドリルを止めるというお題目でこの港を一つにまとめ上げれるだろう。

>「このシナリオは紛れもなく、依然変わらず――RTAなんだ!」

194ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2026/01/19(月) 00:02:51
「どこに行けばいいんだろう…」

とはいえ土地勘もなんもない僕がこの街で出来る事は少なかった。
一緒に探検しようと言っていたカザハな謎の蒼い空に空飛ぶ船で冒険してそうな名前の海パン共に連れて行かれて行ってしまった。

ギャグテイストだったので心配はしていないがおかげで僕は路頭に迷う事になってしまった。
こういう時ってなんか巨大モンスターが出てきて僕が活躍する場面があるんじゃないの?

そんな事思いながら適当にブラブラしていると…

「いい仕事あるんだがやっていかないか?」

「なんだっけ…そうだ…今流行ってると噂の闇バイトか?」

フードを深くかぶり全身黒ずくめのローブを見に纏った人物が話しかけてくる。
人物と表現したのは性別が分からなかったからだ。身長は男性でも女性でもありがち、そしておそらく変声機を使っているのだろう。ニュースでよく聞いたことがある感じの声だ。

「どうせ暇なんだから手伝ってくれてもいいと思うけど」

「声も性別も分からない怪しい奴から言われてはいそうですかって言えると思ってるのか…?」

まさかローウェルからはこんな怪しい案件ですら飛びつく男だとか思われてないよな…?

「怪しくないさ、ちょっと海パンを履きながらドワーフ族の女性陣の前で自転車式発電機を回してもらう仕事をしてもらいたいだけだ
そうすれば貴重な軽くて非常に丈夫な最高品質な木材と金属がもえらえる簡単な仕事さ。」

「十分怪しいからあああああああああああ!十分字面だけで闇バイトだから!!」

怪しい人物から提案された仕事に危険はなさそうだし…何より報酬は魅力的だった。

「ふふ……ゴホン。…それで?やるのか?やらないのか?」

「それは…」

答えは決まってる。こんな怪しい奴から提案された怪しい仕事…やらない一択だ…
仕事をするには誠意を見せてもらわないと…こんな誠意を見せない奴の仕事は断るべきだ!例え僕だけ何も素材を持ち帰えれなかったとしても──!





「きゃ〜〜〜!!やっぱりたまには人間族の筋肉いいですわ〜〜〜!」「滴る汗最高ですわ〜〜〜!!」
「顔がいい筋肉質の男は中々いないですから定期的に来て欲しいですわ〜〜!」「サインくださいですわ〜〜!」


仮面をつけたドワーフ淑女の中心でよくわからない機会に繋がれた発電機を回していた。
発電機と共に僕の体輝き…周りの興奮は最高潮に達した…!

写真集デビューした時の経験が生きた様だ。人生どんなことが役に立つか本当にわからないな…。

ジョンアデルはきちょうなもくざいとこうせき(どちらも用途はよくわからない)を手に入れた!
にんげんとしてのそんげんが1下がった!ぷらいどが1下がった!

195ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2026/01/19(月) 00:03:08
気づけば怪しい人物が姿を消していた…

一体何だったのか…ローウェルが差し向けた僕用のクエストNPCだったのかもしれない。
あれ…?奴は僕達の事妨害しようとしてるんだっけ?じゃぁだれが…?
じゃああの淑女達が雇ったスカウトマンだったのかもしれない…

うん…もうこのことは考えるのはやめよう…。このアイテムをエンバースに納品して今日の事は忘れよう…、

そんな事を考えながら発電機から降りて汗を拭おうとした瞬間
カケルが目の前にいた。

「よう大将!…あ!海パンだ!ちょうどいいじゃん一緒に来て!」

「?」

海パン履いてることがちょうどいい事なんてある?
という疑問が脳裏を過ぎったがカザハが呼んでるという言葉を聞いて僕は深く考えずカケルについていった

テテーン!

連れて行かれた先にはマッチョセイレーンがポージングを披露し、海パンの男が目を輝かせながら見てる。

「なんで?」

つまりそういう事だから頑張ってジョン君!と呼んだ張本人はいつの間にか海パンと共に期待した目でこちらを見ている。

「なんで?」

「おい!そこの連れてこられた奴!」
>「私にボディビル対決で勝てばセイレーンの羽をたくさんやろう!」

マッチョセイレーンでも格が上だと思われるセイレーンが僕に挑戦状をたたきつける。
うん…まぁルールと報酬は分かったよ?

でもさぁ……

「なんで?」

どうすればこんな状況になるんだという僕の脳内疑問符が止まる事はなかった。
でもそれを言うとさっきまでの僕もそうだったな…

フッ結局は気にするだけ無駄か…ならこのPT流で…楽しむしかないか!

「ムッ…この筋肉…できるな…!しかもどこかでアップしてきたと見える…!貴様…名を名乗れ!」

「はぁ…僕はジョンアデル…!地球世界ボディビルディング大会日本代表シード権獲得初戦敗退の…ジョンアデルだ!」

僕の発電機で仕上がった筋肉とセイレーンの筋肉が…ぶつかり合った!

「この…筋肉はッ…この腹筋はぁぁぁぁあ!!」

「腹筋だけかい?…ところで、俺の広背筋も見てくれよ…こいつをどう思う?」
「凄く…大きいです…」

「あんたもいい筋肉してるな。だが…この分だと相当我慢してたみたいだな。筋肉がパンパンだぜ。終わったらいいストレッチ紹介してやるよ」

ムチッ!ムチッ!…ムチイ!

「アッ…!アッ…アッ──────!!!」

セイレーン達を筋肉鍔迫り合い(ポージング)で蹴散らし…僕は勝利収めた。

「ハア…ハア…カザハ…勝った…ぜ」

僕はその場に倒れ込んだ。虚無感で。

何やってるんだろう…僕──



ちなみに負けた理由は慣れない海外で道に迷って会場に贈れたからだ。
外人だからって海外慣れしてるという偏見は…やめよう!


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板