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番外編投下用スレ

33ガザーヴァのバレンタインの巻・4 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:46:08
「ハッピー・バレンタイーンッ!
 今日はバレンタインデー! ということで、わたしからみんなへチョコを作りました!」

その日の夜。パーティーの皆で揃っての夕食が終わると、なゆたはデザート代わりとばかりに厨房からバスケットを持ってきた。
バスケットには綺麗に水色のリボンでラッピングされた小袋が人数分あり、
その中には一口サイズのチョコブラウニーがいくつか入っている。

「カザハ、いつもありがとね。友チョコってことで、受け取って。カケル君と……むしとりさんも!
 みのりさん、ウィズも……日頃の感謝を込めて!」

まず最初にポヨリンへチョコを食べさせ、それからカザハ、みのり、ウィズリィに小袋を差し出す。

「あらぁ、ええの? おおきになぁ、なゆちゃん。そういえば今日はバレンタインデーやったなぁ。
 うち、なんにも用意してへんわ……こないなことやったら市場でも見とくんやったわぁ」

「バレンタインデー……異性が想いを伝える行事と思っていたけれど、感謝を伝えるという意味合いもあるのね。
 ええ、有難く頂くわ。ありがとう、ナユタ」

『異邦の魔物遣い(ブレイブ)』だけでなく、きちんとパートナーの分も作ってある用意周到ぶりである。
カカシのイシュタルや辞典のブックがチョコレートを食べるかどうかは不明だが。

「ジョンにも。アメリカにはバレンタインデーってあるんだっけ? 甘いもの、嫌いじゃなかったら食べてね」

ジョンにも同じようにブラウニーの入った小袋を手渡す。アルフヘイムのモンスターに地球の常識が通用するのかは分からないが、
犬型の部長には大事を取ってチョコレートは用意しなかった。その代わり、ジャーキーを与えて頭を撫でる。

「エカテリーナとアシュトラーセにもあげるわね。ほら、エンデにも」

「ほ。妾たちの分もあるのか?」

「何か悪いわね、気を遣わせてしまって……」

「ありがとう」

継承者たちの分も勿論ある。なゆたにとっては、みな大切な仲間だ。
エンデはさっそく袋を開けてブラウニーをぱくついている。

「マゴットもどうぞ。ヤマシタってチョコ食べるのかな? それから、フラウさんにも。
 ええと……エンバースには、後で渡します……」

なゆたはエンバースの方を見て淡く頬を染め、もごもご言うと、バレンタインデーおしまい! と宣言して、
皆の夕食の食器を片付け始めた。
明神の分はない。

「わたしから明神さんにあげるチョコはないよ。
 明神さんにはわたしの作る義理チョコなんかより何倍も想いがこもった、
 とっておきのチョコがあるから!」

なゆたは悪戯っぽくウインクすると、バスケットと食器類を持って厨房へ歩いていった。
その代わり。

「……あの。明神……」

ちょん、とガザーヴァが明神の服の裾をつまみ、軽く引っ張る。
ガザーヴァは恥ずかしそうにもじもじしていたが、ややあって覚悟を決めたように口許を引き結ぶと、

「チョコ……作ったの。
 魔法を使わないで、ちゃんと手作りしたんだ。モンキンに作り方教えてもらって……。
 ボク、初めてで……ひょっとしたら美味しくないかも。失敗してるかも……だけど。
 その……頑張って作ったから」

そう言って、そっと金色のリボンで彩られた黒い小箱を差し出す。
中にはガトーショコラが一切れ。何層かになったスポンジの間にアプリコットジャムを挟んだ、
淡い酸味がアクセントになる味わいのチョコレートケーキだ。
その天辺にはチョコレートプレートが立ててあり、ホワイトのチョコペンで『だいすき』と書かれていた。
尖った耳の先端まで真っ赤になりながら、ガザーヴァが上目遣いに明神を見る。

「……食べて……くれる……?」

何の魔法もかかっていない、なんの変哲もないただのガトーショコラ。
けれども、その中にはガザーヴァの想いが、愛情が、たっぷり詰まっている。
攻撃力アップや状態異常耐性の向上など、戦闘で役立つ便利な効果は何ひとつ付いていないけれど――
それはきっと、明神に大きなバフを齎してくれるに違いない。


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