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番外編投下用スレ

1 ◆POYO/UwNZg:2019/03/20(水) 18:54:52
本編の補完、補足、外伝等ブレイブ&モンスターズ!関連SSの投下用スレです。

49カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:45:58
〇月〇日
なんかもういろいろ悩みすぎて、数日間寝込んでしまった。その間に――全てが終わっていた。
ローウェルはブレモンの最高権力者だから、部下が業務上使ってるキャラにログインすることぐらい、簡単に出来てしまう。
訳の分からない奴に体を乗っ取られて怖かっただろうな。
こんなことならせめて、自分の手で終わらせてあげたかった。最期、苦しまなかったかな? 本当にごめん……。

〇月〇日
ついにブレモンがサ終の日を迎えた。カザハがいなくなった後もブレイブ一行の行く末を見ていたけど、物凄い鬱シナリオだったと思う。
我の所属していたパーティーは戦死やいろいろな理由で一人また一人と減っていき、最後は、真一君とシャーロットさんしか残らなかった……。
ローウェルはデータを全部消去しようとしたけど、シャーロットさんがなんとかデータを救出して残した。
それはローウェルから見ればシャーロットさんの反逆行為で、すぐに消されてしまってもおかしくないけど、何を思ったか、今のところ消す気はないらしい。
救出されたデータはかなり前の時点のバックアップがもとになってて……カザハも生き返るっぽい。
シャーロットさんやバロールさんは、ブレモンの復活をまだ諦めてない。
シャーロットさんは一部のキャラに敢えて前の世界の記憶を残したり、いろいろ仕込んでるみたいで、その一貫としてカザハに手紙を持たせてくれるって。
バロールさんは、早速救出された世界の中に入っていろいろやってる。
でも、たとえブレモンがゲームとして復活しなくても、データが消されない限り、世界の中のNPC達は生きていけるんだよね……。
ところでブレイブ&モンスターズはかなりガチゲーマー向けのシビアな部類のゲームだ。
ブレモンよりライトゲーマ―向けのゲームなんていくらでもあるんだから、キミはもっと優しい世界に送り出してあげたかった。
それでも今度は、出来れば幸せに生きてくれることを願う――

手記を読み終えて、頭を抱える。情報量が多すぎて、どこから処理していいか分からない。

「間も無くシャーロットさんは解雇になって……ついでに私達もリストラでクビになっちゃった。
私達のポジション、わざわざ人件費投入しなくても、ほとんどAIで代替可能なんだってさ」

あの時のぼくはローウェルに乗っ取られていたらしい。
まさか、今もその気になれば体を乗っ取れる権限を持ってる……ってこと!?
1巡目の冒険が始まる前の記憶は適当に設定されたもので、カケルとの関係性もどこまで本当だか分からない……。
プログラムに従って無為に過ごしていただけとはいえ、その頃の記憶があまりにもスカスカだとは思ってたんだ……。

「まさかとは思いますが『弟』とはあなたの想像上の存在にすぎないのではないでしょうか」

振り返ってみると、カケルがいた。

(自分で言うな――ッ!!)

自分でそれ言っちゃう!? どういう感情で言ってんだ!!
魂を共有してるから精神世界に入ってくること自体は不思議はないとして、ここに来たということはベチボコにやられて気絶したな!?

「あっ、それ知ってる!『いつやる!? 今でしょ!』の人でしょ!」

「そうそう、林先生!」

何故かアゲハもいて、カケルとボケっぱなしのコントを繰り広げる。
このお方に関してはギャグキャラ枠なので、なんでここにいるのかとか気にしたら負けである。

(違うわ!! 林先生違いやわ!!)

「ふふっ、ちょっとしたユニサスジョークですよ? たとえ最初は想像上の弟設定だったとしても、今はそうじゃない。
私達の関係性のはじまりが作り物でも、別にいいじゃないですか。
前の世界を一緒に冒険して、地球を一緒に生きて、アルフヘイムに呼び戻されてまた一緒に冒険して――それで充分過ぎるじゃないですか。
はじまりの嘘のおかげで今があるんだから、感謝こそすれど恨む理由なんて一つもないですよ」

(でも、ローウェルが今もぼくのIDとパスワード持ってるかも……! ログインにIDとパスワード使うのか知らないけど!)

50カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:54:19
「安心してください、何も状況変わってませんから!
ローウェルはブレモンの最高権力者なんだから、やろうと思えばどのキャラも乗っ取れても何も不思議はないですよ」

それって何も大丈夫じゃない気がするが、言われてみればそうだ。
そもそも最初からそういう戦いを挑んでるのだから、今更悩んでも仕方がない。

「カザハが罪を背負うなら、私も同罪ですよ。でも、ガザーヴァは私達のせいなんて少しも思ってない。
ベチボコにやられて踏みつぶされかけた私をガザーヴァが必死に守ってくれたんですよ?
きっとカザハに自分と同じ思いはさせまいと思ったんですね……。早く起きましょう」

(そうしたいのは山々なんだけど……どうやったら声出るようになるんだろう……)

初代に、目で訴えかける。初代はしれっと衝撃の事実を告げた。

「それ、ステータス異常でも何でもなく声を出したくないから声が出ないだけやで?」

好きでサボってるみたいに言わないで!
もしかして上位世界は「鬱は気合が足りん!」とか言っちゃうような世界なんか!? コンプライアンス大丈夫か!?
と一瞬思ったが、そういえば精霊族は死にたいと思っただけで本当に死ぬ種族なのだ。
その理論でいくと声を出したくなくなれば声が出なくなるのは当然のことである。
厄介なことに体に連動しているのは心であって、頭ではない。
いくら義務感で歌わないといけないと思ったところで駄目なものは駄目なのだ。
心から声を出したいと思えばすぐ治るんだろうけど……。

(ガザーヴァはこのせいでぼくが夢を手放すことなんて望んでない。
逆に逃避の言い訳にするなって怒られちゃうって、分かってるのにな……。
でも、怖いものは怖いんだ……)

「いいこと教えてあげようか。1巡目の記憶の解放に伴って楽器演奏技能(全種)が解放されたはずだよ。
ブレモンの仕様上、呪歌って使用楽器は自由で、※吹奏楽器は除く って規定は特に無いんだよね。
つまり、吹奏楽器を演奏すると何故か歌わなくても呪歌が成立するんだ……! じゃあ頑張って!」



突然、意識を取り戻す。今のは、夢……じゃないな!? 急に一巡目の記憶が鮮明になった気がする……。
そういえばあの頃守護霊的なものがついてたけど、そういうもんだと思って特に疑問に思ってなかったんだよね。

>「よく言った!
 ――『ハイパー・ユナイト』……プレイ!!」

ガザーヴァとマゴットがベル・ガザーヴァになろうとしているところだった。
ベチボコにやられて倒れていたカケルを、スペルカードで回復させて、揺り起こす。

(手伝って!「幻妖の舞」で今度こそ勝たせる……!)

「えっ……。選曲それでいいんですか?」

初代がガザーヴァを想って作った名曲をトラウマソングのまま終わらせてはならない。
初代は、曲のパワーが足りなかった、と言っていた。
あの人がぼくの人格の転写元だとすると、たとえ慰めるためでも、全くの嘘が言えるほど器用なタイプではないんだよな……。
それなら、根本的な選曲ミスとかではないはずだ。もとからバトル用の曲にパワーを足してより強そうにするには……。
そういえば初代、歌わずに呪歌を使う抜け道を教えてくれたな――
バトル曲の吹奏楽アレンジ、それすなわち最強――異論は認めない!
自分はトランペット、カケルにはクラリネットを生成する。

「吹奏楽アレンジ……ってコト!?」

意図を察したカケルは、アゲハさんに声をかける。

51カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:56:44
「なんでもいいから吹く系の楽器みんなに適当に配って! 次は幻妖の舞の吹奏楽アレンジやります!!
あなたはドラムをお願いします!」

エーデルグーテで使う予定も無いのに楽器一通りもらってインベントリにぶっこんであったんだよね……。
この世界のシステム上吹奏楽器の演奏は呪歌と見做される、ということは、合唱スキルも多分適用される……!
それにしても、まさに立ってる者は親でも使えの精神だな!?

「分かった! ボーカル曲コンサートの半ばによく挟まれるインスト曲ってやつだね!?
キーボード貸して!? ベースパート出来るからやるよ!」

ブレモンBGMマニアの人、キミ、さては有能だな!? ベースってコード進行が分かってれば割とどうにかなるからな!
主旋律(自分)・副旋律(カケル)・ドラム(アゲハさん)・ベースパート(ブレモンBGMマニアの人)・和声パート(その他合唱団の方々))
よしいける!!

幻妖の舞 吹奏楽アレンジ――名付けて、幻蠅の戦舞ッ!!

ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/ladrrl20ttuxhlnqfbi5q/.mp3?rlkey=ymj0q67zjxnxrb8hw2yb6spbd&st=c0bhhcyn&dl

演奏が終わったところで、ガザーヴァが最終奥義の発動に入る。

(今度こそ、いけるはず……!)

>「貶め嬲れ、欺き祟れ!
 オド、マナ、エーテル、世の礎の総てを啖い、穿て――」
>「――――――真!! アウトレイジ・インヴェイダ―――――――――――ッ!!!」

槍が相手の騎馬に命中し、大爆発が巻き起こる。

>「……仇は討ったぞ、ガーゴイル」

(本当に、頑張ったね……)

今はまだそんな場合ではないのに、やり遂げたガザーヴァを見つめ、暫ししんみりとしてしまう。
が、オーロールはまだ仕留められてはいなかった。

>「そんな……まさか……」

>「何も驚くには値するまい。
 先刻、汝がガーゴイルにさせたことを余もルドルフにさせたまで。
 ふふ……それにしても、このオーロールを地面に引き摺り下ろすとは。
 見事よ、幻蝿戦姫。さすが超レイド級を名乗るだけのことはある」

仕留め損ねたにしても乗り物はもう無いはずだが、オーロールは乗騎はまだあると不可解な事を言う。

「戦闘続行……のようですね」

戦闘続行を悟っていちはやく気持ちを切り替えたカケルが、スマホを確認する。

「あ……! 進化できるじゃないですか!
しばらくバトル用の曲を続けて歌ってたからコンボが成立してたんですね……!」

よく分からないけど進化する方法のうちの一つが、バトル用の曲を続けて歌うことらしい……!
バトル3に至ってはかなり無理矢理歌ったけど。

(良かった、頑張って歌った甲斐、あったんだ……!)

52カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 22:57:41
頑張ってやったことは大抵駄目で、ノリで突っ切った時の方がうまくいくのがいつものパターンである。
まあ、風属性だからそういうもんなんだけど。やっぱり、努力が報われるのは嬉しい。
カケルからスマホを返してもらって、代わりにスマホ連動ウェアラブル端末をカケルに渡す。
進化ボタンをタップすると、背に妖精の翅を持つアイドルが魔法少女のような服装の美少女に変身する。
尚、これはそういう仕様のモンスターなので美少女になっているだけであり、断じて自ら美少女になりたいとか思ってなっているわけではない。
ついでにカケルもお揃いのコスチュームに変身する。

>「其処が皇帝たる余と諸人の違いよ。
 たかが一騎を統べる程度ならば、誰にでも出来る。
 しかし皇帝は違う――皇帝とは衆生の頂点に君臨し、自らの意志によって民を導く者! 皇軍を指揮し、万里を掌握する者! 
 為らば!」
>「我が版図、我が帝国こそ我が乗騎!
 参れ、『皇帝親衛隊(イェニ・チェリ)』!!」

オーロールが号令をかけると満を持して従者達が前に出て構えを取り、他にも魔法的な力でなんかわらわら出てきた――!

>「……な……んだよ、ソレ……。
 そんなの……反則じゃんか……」

>「で、あるか。
 生憎だが、此れは戦争。泣き言は通用せぬ。
 とはいえ汝の腕前は認めよう、余以外の『星蝕者(イクリプス)』が相手ならば、汝が遅れを取ることはそうあるまい。
 汝の不幸は、此度の対手が余であった……その一点に尽きる。
 幻蝿戦姫ベル=ガザーヴァ、天晴であった。褒めて遣わす。
 では――そろそろ幕としよう」

オーロールの指示を受けた親衛隊がガザーヴァに襲い掛かる。
あまりの展開に未だ状況に追いつき切れていないガザーヴァに、従者の一人の凶刃が迫る。

(死なせてたまるか――――ッ!!)

従者が振り下ろした剣を、傘の杖で受け止める。今の状態なら、従者とは充分立ち回れるはずだ。
従者達はおそらく、単体ではロールプレイを成立させることが出来ない人達。
皇帝様にコバンザメしなければこの戦場に立てない程度のレベル――でなければ、
プレイヤー同士が元からリアル知り合いでもない限り、好き好んで従者なんてしないだろう。
ふざけた格好の奴に攻撃を阻まれた従者が、思わず「何だお前!」みたいなことを言う。
ここは自己紹介ロールプレイで自らを強化するチャンスなんだろうけど……
ぼくは謙遜と不言実行を美徳とする奥ゆかしき大和民族なのだ!(嘘つけ!と総ツッコミが来そうなことは自覚している!)
自己PRとか志望動機とか立石に水のように喋るロールプレイ勢とは対局に位置するのである!

(みんな堂々と言えていいな、凄いな……)

とか思っていると、カケルがよくぞ聞いてくれましたとばかりに語り始めた。

「その人は私とその子の姉――カザハ・シエル・エアリアルフィールド。
このパーティーの最強のバッファーで、星刻の奏手で伝説の語り手。
伝説の語り手って、いるのといないのとでは全然違うんですよ?
かっこ悪いところ伝説に刻まれたくないから、みんな頑張っちゃうし、なりたい自分になろうとしちゃうんですよね……!
だから、みんな実力以上の力を発揮できるんです!」

(代理自己紹介ロールプレイ、してくれてる……!)

ロールプレイによる強化は、必ずしも自分でやらないと起動しないわけではないのだ。
あれ? 音声を味方全員に繋いでる……?
相手だけではなく仲間にも聞かせることでロールプレイを強化する作戦!?
ロールプレイを起動するための戦略的なものだとは分かってはいても、くすぐったいような気持ちになる。
ちょっと大袈裟かも! でも、本当にそうだといいな……。
――言われてみれば、少なくともカケル以外に一人はそう思ってくれてる気がする。
一人でも思ってくれてれば嘘じゃないから、システムが拡大解釈してくれてロールプレイシステム起動するかもしれない!
効果をゲーム的に表現すると「その場にいるだけで仲間全員にバフがかかる」的なやつ!?
お返しにぼくもカケルを紹介しないと。……なんか、そろそろ喋れそうな気がする!

53カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:00:36
「そのユニサスは……ぼくの弟、カケル」

声、出た……! 自己紹介のハードルは激高でも、代理自己紹介ならだいぶんハードルが低い!

「ぼくの相方として設定されて、今では魂を分け合って本当の相方で弟になったんだ。
だから、単体ではそんなに強くないかもしれないけどさ……ぼくと一緒なら最強なんだよ!
というわけで!」

古からの様式美に則り、謎のポーズを決めながら口上をする。

「星に響け優しきメロディ! 風精の歌姫――テンペスト・ディーヴァ!」

意図を察したカケルが調子を合わせる。

「天空に舞え美しきハーモニー! 歌紡ぐ天馬――テンペスト・ウィング! 二人合わせて――」

「「2代目T SOUL SISTARS!!」」

我ながら、「初代はいるんだろうか」って絶対疑問を持たれそうなユニット名だな!?
一見ふざけているようにしか見えないが、ロールプレイによる強化を起動するための大真面目な戦略である。
本当にこんなんで起動するのかは知らんけど、駄目で元々だ。
相手方はロールプレイに縛られているので、口上中に攻撃するなんて身も蓋もないことはできないのだ。

「ガザーヴァ……こんな事言うのは厚かましいけど……ぼくの歌、まだ聞いてくれる?」

ジョン君に接近戦は危ないから駄目だと止められているけど……
ジョン君、ごめん! ぼくは本当は結構悪い子だから言いつけ破っちゃう――! 後でお仕置きされちゃうかな!?

「次の曲目は――響き合う星刻の調べ(アストラルハーモニー)!」

味方全体に継続強回復とハイパーバフをかける、ぼくの一八番。
それをカケルと共に歌いながら、敵に突撃する。まずは取り巻きの従者達からだ。
ロールプレイを極めるとキャラが人格を宿すらしいが……レベル3にも至らない従者はその域まで達してはいまい。

54響き合う星刻の調べ(アストラルハーモニー) ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:02:30
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/sjr6jyumt0lo669uugpk6/.mp3?rlkey=c5zly60tp6u3ga1tvnxf5as76&st=s3qq789j&dl

上パート:カザハ(VY2)
下パート:カケル(MEIKO)

忘れ得ぬ旅の記憶は 今この世界に生きる証
望んで この場に立った 全てを賭けて

さだめは 覆えせると この世の全てに見せつける
今度は きっと大丈夫 ぼくがいるから

逃げ出したくなったら いつも思い出すんだ
「ここにいるよ」 本気の誓い 決して嘘にはしない

一番星を目指して 前だけ見て突き進む
幼き日にポケットに入れた 星の欠片握りしめて

守られてばかりだったぼくにも 果たすべき役目がある
呼び覚ましてもらったこの輝きで 行くべき道を照らすよ

55カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:03:17
この状態のぼく達は、グラフィック的には2体として描かれるがデータ上は一体の、二人一組のモンスターらしい。
つまり連携は完璧だ。
文字通り二陣の風となり、従者達を蹴散らしていく。

((ツインレイ・テンペストスマイト!!))

やってることはぼくの左拳とカケルの右拳を合わせてのシンプルな打撃。
ただし莫大な魔力を纏った拳が音速で繰り出され、インパクトの瞬間、衝撃派が炸裂する。
余波に巻き込まれた者含め従者が4〜5人吹っ飛ぶ。

56スノウ ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:05:27
敵の呪歌士が意識を取り戻した事に対し、教官は複雑な心境なようだ。
出来ればそのまま眠っておいてくれればよかったのに、とのことだ。
私はもはや明確に、敵の歌に惹かれていた。
不完全なものに対するどうしようもない憧憬――これが好きという感情なのだろうか。
でも、「あの子には苦しまずに終わりを迎えさせてあげねばならないのでもう一度眠ってもらう」――それが教官の意向だ。
即興呪歌生成"改"――"魔術師"のタロットカードを持つ私の固有能力。
完璧な演算によって、狙った効果の呪歌を瞬時に組み上げることができる特殊技能だ。
魔術的な演算式のようなエフェクトが背後に浮かび上がり、超強力な眠りの呪歌が一瞬にして組み上がる。
それにしても、"改"って、まるで元祖があるみたいなネーミングだな……?
ともあれ、超レア装備、"汎用シンセサイザーCubase"を手に、歌い出す。

星の子守唄
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/n6ypstbhdikczmjcpbr1d/.mp3?rlkey=zumelw7goq2x5hrwdpwadx1re&st=5oyelbe7&dl

作詞:chatGPT
作曲:SUNO

静かな夜の帳が降りる
星たちはささやき 夢を織り成す

眠れ 眠れ 遠き空へ
心の騒ぎを風に乗せて

星の光よ 柔らかに包み
すべての者を 眠りにつく
月の調べに 導かれながら
星の子守唄 永遠に響け

闇を恐れず目を閉じて
世界は今 優しさに満ちる

眠れ 眠れ 冷たい刃も
静けさの中で力を失う

星の光よ 柔らかに包み
すべての者を 眠りにつく
月の調べに 導かれながら
星の子守唄 永遠に響け

夢の中では争いもなく
星たちはただ 願いを紡ぐ
静かな夜を 守り続けて
星の子守唄よ 世界を眠らせ


深い眠りについたカザハを見て、教官から強烈な想いが伝わってきた。
そっか。あの人は私のお姉ちゃんで、教官の才能を受け継いでるんだ――

57カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:07:52
【カケル】
「さあもう一息、いきますよ!」

間奏が終わり歌が2番に差し掛かろうかというところでカザハに声をかけるも、返事はない。
いつの間にかカザハは、幸せそうに眠っていた――。

「えっ!?」

さっきから、敵の呪歌が響き渡っている。もしかして、そのせい……?
眠っているカザハを抱え、後ろに退避する。
そうこうしているうちに、スノウが目の前に転移してきた。
オーロールと挟撃された形だ。

「あなた、全体にバフをかけるポジションでしょう! なんでこんなところに来てるんですかッ!」

「残念だけどその子はもう起きない――超強力な眠りの呪歌を対象指定でかけさせてもらった。
出来れば閉ざされた世界の中でずっと生きていてほしかったのに……。
ローウェルはそれすらも許してくれなかった……。昔からずっと、偽りの希望を餌に弄ばれてきたんだ……
これ以上苦しんでほしくない……。せめて、幸せな夢の中で終焉を迎えて欲しい……」

スノウが腕を一閃すると、指揮棒のような細剣が手の中に現れる。
そしてゆっくりとカザハに歩み寄ってくる。
私は当然臨戦態勢に入るが――何か様子がおかしい。微妙に違う方向に向いて歩いてる……。そして石に躓いて転んだ。
この動き、なんか見た事あるな……。そうだ、アクションゲームが下手な人が動かすキャラの動きだ!

「もしかして……アクションゲームの操作がおぼつかない人!?」

バンドメンバー達にも突っ込まれている。

「下手とは聞いてたけど本当に下手ですね!?」

「無理しないで交代してもらってください!」

「そうだな――交代しよう」

スノウの姿にエフェクトがかかり、イメージはそのままで性別変更したような青年の姿になる。
それと同時に、身のこなしが先程とは明らかに変わる。
バンドメンバーの一人が、解説してくれた。

「スノウちゃんの教官はアクションゲームが下手糞だからアクションが必要な場面では副教官に操作を変わって貰う……
じゃなくてスノウちゃんは二重人格なんです!」

人格交代――上の世界事情で言うと、プレイヤーが交代した……ってことか!

「ちなみに美少女ゲーに男キャラをぶっこんだら炎上するんじゃないかと心配されてるかもしれませんが、
ボイスチェンジ+男装という設定なので、ギリセーフです!」

別にそんな心配してないけど、勝手に解説してくれた!

「無駄話は終わりだ――まずはお前から葬ってやろう!」

タロットカードのエフェクトが発動し、バンドメンバーの演奏が始まる。
たった今生成したにも拘わらず合奏ができるのは、メンバー達はそういうスキルを習得しているのだろう。
スノウは、歌いながら剣を構えて斬りかかってくる。こいつ、歌いながら突撃してくる系か――!

58破滅の調べ ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:08:38
ttps://dl.dropbox.com/scl/fi/ib0gn9pbviz6567pyz474/.mp3?rlkey=mae4vsos2dubkz6zw36iouuzq&st=wolv2q45&dl

作詞:chatGPT
作曲:SUNO

燃え上がれ、魂の渦
全てを呑み込む闇の風よ
嘆きの声を織り込み
絶望の鐘を鳴らせ

震えよ、怯えよ、滅びを知れ
鋼の鎖は砕け散り
囁く影が血を求める
裁きの刃は逃れられぬ

我が声が天を裂き
血塗られた地に降り注ぐ
その身を裂け、その意を消せ
破滅の歌が響く時

冷たき刃は心を貫き
最後の鼓動を刻むまで
終わらぬ闘争、果てなき憎悪
さあ、共に闇へ堕ちよ


震えよ、怯えよ、滅びを知れ
鋼の鎖は砕け散り
囁く影が血を求める
裁きの刃は逃れられぬ

我が声が天を裂き
血塗られた地に降り注ぐ
その身を裂け、その意を消せ
破滅の歌が響く時

冷たき刃は心を貫き
最後の鼓動を刻むまで
終わらぬ闘争、果てなき憎悪
さあ、共に闇へ堕ちよ

冷たき刃は心を貫き
最後の鼓動を刻むまで
終わらぬ闘争、果てなき憎悪
さあ、共に闇へ堕ちよ

59カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:09:42
分かりやすく攻撃的な呪歌で自らにバフをかけての猛攻――
激しい打ち合いの中で、私はある違和感を抱いた。呪歌のバフが私にもかかってないかい……?
うっかり呪歌を対戦相手にもかけてしまってるのか!? そんなことってある!?
「呪歌は対象指定できません! 聞こえてる人全員に効きます!」ってパターンもシステムによってはあるっちゃあるけど……。
さっきは対象指定してたよなぁ……。
もしかして「すぐに決着がついたらつまらないから」みたいな理由か?
この戦いのショー的側面を意識して立ち回ってる……? でも、何のために?
更に曲の合間に、スノウは自らの弱点を解説する。

「一つネタバレすると、これはオプション機能で楽曲生成システムを接続して運用しているキャラだ。
そしてタロットカードというのは外付けの力の象徴――
つまり――これを破壊すれば生成システムとの接続が断ち切られるってわけだ!」

「どうしてそれを教えるんですか……?」

「さあな」

今分かっている情報をまとめると、このキャラには2人のプレイヤー"教官"と"副教官"がいて、
"教官"の目的は、何故だかは知らないが、カザハを苦しませずに終わらせること。
そして今のこいつを操作しているプレイヤー、バンドメンバーが言うところの"副教官"は、"教官"とはまた違う、何らかの目的がある――
そしてレベル3以上のイクリプスはロールプレイに綻びが出ると即弱体化につながるらしいが……
もはやこいつらは上の世界事情丸出しのgdgdだが、何故かそこまで弱体化する様子はない――
再び歌が始まり、戦いが再開する。
このままいけばタロットカードを破壊することは可能だが――どうする?
相手の言葉に乗る? でも、罠だったら……? ええい、当たって砕けろ!

「――共振破壊(レゾナンスブレイク)!」

私の剣がスノウの腕に固定されたタロットカードを過たず穿ち、カードが砕け散る――

60カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/02(月) 23:25:53
【カザハ】
「もう食べれないよぉ……」

「……ちゃん、おねえちゃん! 漫画みたいな寝言言わないで!」

「……う、うわぁ!?」

目を覚ましてみると、目の前にいるのは白銀の髪の少女――。それ以外の周囲は真っ暗で、何もない。
いや、まだ目を覚ましてないな!? これも夢の中だな!? 眠りが一段階浅い領域になった感じか。
ぼくは何をしてたんだっけ。確かオーロールと愉快な仲間達と戦ってて……途中で寝ちゃったの!?
そうだ、敵の呪歌使いが眠りの歌を歌ったから……ってよく見るとお前じゃん!
自分で寝させといて起こすってどういうことやねん!
それに今おねえちゃんって言った……!? 生き別れの妹よ、そんなところにいたのかい? ……ってそんなわけあるか――ッ!
自称妹のスノウちゃんは、「よし! ハッキング成功!」とか何とか言っている。
確かに顔はさっき歌ってたあの呪歌使いと一緒なんだけど、なんか全然イメージ違うな……。
あのイクリプスは怜悧で感情が希薄な感じだったけど、この子は可愛らしい。

「あなたは、私より前に教官が作ったキャラなんだって! だからお姉ちゃん」

「正確には作ったというより、もともと原型があったものを完成させたみたいだけどね。
なんで君はそんなこと知ってるの?」

「うちの教官、こういうロールプレイシステム搭載のゲームやると体質的に思考がダダ漏れみたいなんだよね〜。
だからキャラに大人の事情が筒抜けだし本人がそのつもり無くてもすぐキャラが人格宿しちゃう」

この状況はつまり……SSSでも性懲りもなくうっかり新たな生命を誕生させちゃった……ってコト!? なんて怪しからん奴!
いや、本人はただゲームやってるだけなんだから何も悪くない。ロールプレイシステムとやらの業が深すぎるんだ……!
挨拶(ロールプレイ)すると(場合によってはしてるつもりなくても)
楽しい仲間(人格を宿したキャラ)がポポポポーンするってもうサイコホラーやんそんなの!

「まさかとは思いますがあなたの教官というのは……」

「美空風羽――かつて一世を風靡した覇権ゲームブレイブ&モンスターズの楽曲を手掛けた天才サウンドクリエイターなんだって!」

「ですよねー!」

「でも、もう完全に落ちぶれてやる気なくしてるんだよね。どう頑張ってもAI生成には勝てないから意味無いんだってさ。
そりゃそうだよ。上位世界の生成AIってそれはもう完璧らしいもの。
でもね、あなたの歌でブレモンの曲を初めて聞いたけど……SSSの曲よりずっと好き。
このままサ終なんて駄目だよ……! だから――勝ってね! 勝って教官に希望を見せてあげて!
教官はもう全てを諦めてて……ローウェルに弄ばれた挙句消されるぐらいならせめてこれ以上苦しませずに自分の手で……って。
だから私はあなたを殺しにかかることになるけど……ごめんね、ゲームキャラはプレイヤーの操作には逆らえないから……」

「君のせいじゃないよ。ゲームキャラが許可した時以外で好き勝手に動いたらゲームとして成立しないもの」

「それと、私が人格を宿してることは教官には教えないであげてね。知ったらきっと気にするから……」

スノウちゃんに手を引かれて覚醒に向かいながら――思う。
彼女や他のイクリプス達は、このベータテストが終わったらどうなってしまうのだろうか――
製品版にキャラの引き継ぎはされるのだろうか? 使い捨てられて消えてしまうのだとしたら……あまりに残酷過ぎる――

61カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/05(木) 21:57:38
>59の最後カードが砕け散るのはやめといてちょっと続き

【カケル】
「ちょっと待った―――――――ッ!!」

スターリースカイガールズの解説役が突然横から飛び込んできて、小盾のようなもので私の剣を弾いた。
涼やかな音が鳴り響く。それは……盾っていうかタンバリンだな!?

「なにするんですか――ッ!!」「何のつもりだ……!」

私とスノウ、双方から突っ込まれる。
今の状況をまとめると、スノウ(中身副教官)が私に何故かタロットカードを破壊するように仕向け、
罠かもしれないとは思いつつも考えても埒があかないので私がそれに乗ろうとしていたのを、
これまた何故か解説役のバンドメンバーが阻止した形だ。

「副教官は教官に立ち直ってほしいんですよね……!?
だったら生成システムで! 昔教官が作ったブレモンの曲を歌うその子と真っ向勝負させないと駄目ですよ!」

「お前も少しでも音楽を齧っているなら分かるだろう? 人が生成システムに勝てるわけないだろう!」

「あー物分かりのいい大人ぶってやだやだ、副教官がそんなだから教官が落ちぶれちゃったんだ――ッ!!」

「貴様……ッ! 私がどんな思いで風羽を見てきたかも知らないくせに……!」

なんかよく分かんないけど仲間割れ始めちゃった……! ん? 今、風羽って言った……?
それに、"昔教官が作ったブレモンの曲"って……!

「私は! リン=タンバ! スターリースカイガールズの副隊長でパーカッション兼ダンサー!
ちなみに私の教官は美空風羽ファンクラブ会長、丹波 鈴音ッ!」

キャラにほぼそのまんま自分の名前付けたんやないか――い! 誰かさんと同じ発想! やっぱり類は友を呼ぶんだな……!
この一団、こんなノリでよく曲がりなりにもこの戦いに参加できてるな……!?
ロールプレイに適応できない勢は淘汰されてるはずでは?
でも、某国民的RPGは、「主人公はプレイヤー自身」がコンセプトのため主人公が喋らない仕様らしいし、
主人公に自分の名前を付けるのも割と一般的だったりするな……。 つまり、これもまたロールプレイの一種!?
そもそもこの世界のシステムが、"そのキャラがロールプレイしているか"を何をもって判定しているのかの全貌は未だ不明だ。
設定の作り込みや整合性が判定項目の一つに入っていることは間違いないだろうが、単純なキャラの濃さも判定基準の一つに入っているとしたら、
素でキャラのぶっとんだ奴がゴリ押しでロールプレイによる強化を起動させることもあり得る。
あるいはこいつらの中身丸出しロールプレイを
「自分が超常の存在に操られていることを知っていてそれを当然のこととして受け入れているキャラのロールプレイ」と解釈することもできなくはない。
と、ロールプレイシステムの詳細も気になるところだが今はそんな場合では無く
スノウ(中身副教官)とリン(中身教官のファンクラブ会長)が立ち回りをおっぱじめてしまった。

「お前なんかユニット追放だ――ッ!」

「コイツは私が止めとく!! あなたは早くその子を起こして!」

リンが、あまりの展開についていけずに呆然としていた私に声をかける。
確かに見た感じは私達を狙うスノウを止めてくれているような構図に見えるが、よく考えると普通に内輪で喧嘩になってるだけのような……。
と内心では思いつつも。

「え、あ、はいっ……!」

勢いに圧され、言われるままに私はカザハを起こそうとするが……。どうやっても起きない。
カザハを起こすのは慣れてるはずなんだけど……。こうなったらRPGでよくあるように死なない程度に攻撃して無理矢理起こす!?
と思ったが、今データ上同一モンスターだから攻撃できんわ!

「無駄だ、私が解除を許可しない限りそいつは起きない」

「諦めないで! 音はきっと聞こえてるから……! 何か刺激的なことを言ったら起きるかも!」

それ本当か!? 私に起こされるのはいつものこと過ぎて新鮮味がないから駄目なのか!?
この世界をロールプレイシステムなるものが支配していることを鑑みると一番起こせる可能性が高そうな人に心当たりはあるが……。
バルディッシュと激しい戦いを繰り広げているジョン君の方をちらりと見る。ちょっと今それどころじゃなさそう……。
でも、ちょっと通信するぐらいならいいですよね……!? というわけで、ジョン君に通信を繋ぐ。

「あの! カザハが寝ちゃって! 一言だけでいいから! 何かパンチの効いた言葉をお願いします!」

なんか一言インタビューみたいになってしまった……!

62カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2024/12/05(木) 22:20:37
発注先「よく考えると「生成AIに勝てるのか」というテーマをやるなら直接ぶつけて真っ向勝負させんと駄目だな!? ということに気付いた。
    ところで『シーンが各自分かれてるスレ内の状況』+『時間がたくさんあるスレ外の状況』のコンボは……
    レスがどこまでも長く成り得て危険!」
カザハ「他の人のリアクション待ちの状況に持ち込んでなんとか止まったな!?
    そしてひたすら本筋に関係ない内輪の騒動を繰り広げてるな……!?」
発注先「直接的には関係ないけど芸術は万人にとっての100点より一部のコアなファンにとっての1000点の方が価値があるってテーマをやれば
    それをゲームにも広げられるやろ? 万人に受けなくても一部のコアなファンが重課金してくれれば存続できる的な……!」
カケル「主題は細部に宿る……ってコト!?」

63embers ◆5WH73DXszU:2025/04/19(土) 00:05:41






【???】


「……ここは、どこだ。いや……この地形、かなり暗いが見覚えがある……赭色の荒野だ」

だが……何故だ。何故俺はここにいる?
記憶が曖昧だ……俺達はローウェルを倒してブレイブ&モンスターズを救った。
その後は……元通りとはいかないが各々の日常に戻った。クリア後の世界ってヤツだ。

なのに……肝心のその日常をどう過ごしていたのかをまるで思い出せない。いや……意識出来ない。
妙な感覚だ。ゲームによくある、入る必要がないから開けないドア、踏み入れない裏路地。
俺の記憶にも、そうした封鎖線が敷かれているような。

『――おはよう、エンバース。もう目は覚めた?』

ふと、警戒の為に取り出していたスマホから声が聞こえた。
瞬間――俺は思い出した。この状況に必要な全ての記憶を。
まるで初めてパリィが有効なエネミーと遭遇した瞬間、そのチュートリアルが画面にポップアップするみたいに。
記憶が急速に頭の中から湧き出てくる経験なんてした事がないから、違和感がすごいが……

……そうだった。俺達は外伝の収録の為にこの仮想の三巡目世界に召喚されたんだ。
二巡目クリア時のステータスと装備、ほぼ全ての記憶を引き継いた状態でRTAをする為に。
クリア直前からその後にかけての記憶が制限されているのは……ネタバレ防止の為らしい。
だが……そもそもどうしてRTAを?

それは……ああ、そうだ。あの後ローウェルは流石にやり過ぎって事で他の二人のチーフと同程度まで権限が制限されたらしい。
SSSの方でもプロデューサーをしていたらしいし、あくまでブレモンに関しては、なんだろうけど。
とにかくヤツは……バロールとシャーロットが「禊が必要なんじゃないですか〜?ん〜?」とか言い出したら、逃れられない立場になったんだ。

だからつまり……全て思い出した。何故RTAをするのか。
それはこれがブレモンリブート記念のボーナスシナリオだからだ。
散々ブレモンを引っ掻き回したローウェルをピエロにして、ユーザーに溜飲を下げてもらう為の盛大な自虐ネタだ。

そうと分かれば……早速第一章を始めようか。
チャプターボスは確か……ベルゼブブだったっけ。いやあ、気の抜けない強敵だな。
俺は早速右手を銃の形に。指先で夜空を指す――照明弾を打ち上げる。
意図は二つ。一つはこの「収録」に参加しているだろうパーティメンバーへの合図。

もう一つは……ああ、見つけた。照明弾が照らしてなお昏い夜空の一角。
黒い巨大な塊が上空を蠢いている。雲じゃない――蝿の群れだ。
ベルゼブブは赭色の荒野の夜、上空にランダムスポーンする。
手っ取り早く見つけ出すなら――こうして夜空を照らしてやればいい。

そして見つけさえすればベルゼブブは所詮序盤のボスモンスターだ。
ダインスレイブを胸部から抜く――手首を軽くしなやかに回す。
青紅の刃が空を縦断。手応えあり。胴体を深く斬り込まれたベルゼブブが墜落していく。

「――おい、今の見たか?すごい攻撃だったなあ……一体誰の仕業なんだろう。
 なあ、あのベルゼブブが墜落する場所に行ってみないか?さっきの攻撃の主に会えるかもしれないぞ!」

浮ついた/白々しい口ぶり=極めて遠回しな集合地点の指定。

64embers ◆5WH73DXszU:2025/04/19(土) 00:06:40
【赭色の荒野:見通しのいい餌場】


「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」

はっきり覚えてるのは……「彼の地」に案内される前くらいまでか。
結局あの後どうやってローウェルを倒してハッピーエンドにこぎ着けたのかも思い出せない。

「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

「クリア後の世界」の事はかなりぼんやりとだけど思い出せる。
いや、ホントか?令和の時代に何がどうなったら熱湯風呂で激辛ラーメンを食べる事になるんだよ。
思い出せるのは重要度の低そうな出来事ばかりだけど……まあ、そこそこ平和にやれてるんだな、俺達。
……だけど一つ、気がかりなのは――

「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」

そう問いかけた瞬間……まただ……俺の脳内が渦を巻くような感覚……。
これ、アレだな……シャーロットの単語をトリガーに記憶が蘇った時と同じだ……。
なるほど、アレはチュートリアル機能の応用だったんだな……。
それで……今度はどんな記憶を思い出して――

「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。
 いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

そしてそれ以上思い出せないって事は……覚えている必要はないって事なんだろう。

「仕方ないな。臨時のリーダーは明神さんに任せるが……
 ……とりあえず当面の目的はベルゼブブを倒すって事でいいよな?
 このシナリオが三巡目……つまり二巡目のRTAだって言うなら、チャプターの進行条件は共通の筈だ」

墜落地点の特定は容易い。蝿の群れだ。
デスフライの防衛網。主を守る為のそれがかえってベルゼブブの居場所を浮き彫りにしている。
……まあ、今の俺達の敵じゃないとは言えブンブン飛び回られるとちょっとうるさい。

「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したローウェルのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」

なんだ、なんだって俺の口からそんなクソ面白そうな外伝のあらすじが飛び出てきた?

「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」

ああ、こういう感じか。よーく分かった。

「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

二巡目の世界編はまだクリア出来てない。
けどローウェルには旧ブレモン騒動で迷惑被ったからこっちのシナリオは早く見たい。
みたいなプレイヤーもいる筈だもんな。

……それはそれとして、デスフライの防衛線が分厚くなってきた。
ダインスレイブで黒い霧の壁みたいなそれを切り開くと……いた。
地に伏して身悶えするベルゼブブと……黒いローブを纏った小さな人影。

『クク……』

ローブの……声からして少女がこちらを振り返る。
目深に被ったフードの奥に獰猛な笑みのような表情が見えた。

『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

……違った。単に表情が引きつってるだけだった。
それにしても……

65embers ◆5WH73DXszU:2025/04/19(土) 00:07:02
「……思っていたより早い再会だな?ええ?ローウェル」

『おま!お前!チャプターボスをボスエリアの外から倒すなんてグリッチ利用なのです!
 バロール!これはれっきとした不正行為なのです!やり直しを要求するのです!』

ローウェルは夜空を指差して叫んだ……しかし何も起こらなかった。

「さて……」

『待て!待つのです!』

「ほう、興味深い提案だ。うーん、しかし、なかなか迷うところだが……ダメだね。待ったなしだ――」

ダインスレイブの抜き打ち――手応えがない。
ローウェルは尻もちをついているが……それだけだ。

『く……くふ……バ、バーカバーカなのです!一度はお前達にしてやられたとは言え、
 このローウェルは依然変わらずこの世界の創造主なのです!
 いかにお前とダインスレイブであってもこのローウェルを傷つける事は能わないのです!』

「……なるほど。大体理解した。つまり魔王城の間を目指せばいいんだな。
 管理者メニューをもう一度起動して、お前をオシオキ出来るようにすればいい訳だ。
 魔王の無敵を剥がして、倒す。意外と王道のシナリオなんだな」

『ぎゃー!?ふ……ふ……ふざっけんなーなのですー!!!
 なんで今のやり取りだけでストーリーラインまで読み取ってやがるのです!』

「そりゃ……俺は世界で一番ブレモンの上手い男だからな」

『ぐ、ぬ、ぬううううう!か、構うものかなのです!ルールが知られたところで……
 チャプタークリアにはボスの撃破が必須!つまりこのベルゼブブを――!!』

ローウェルが身を翻す。ベルゼブブに縋り付く――いや、違う。
何かを体内に埋め込んだ……まあ、アレがなんなのかは大体想像がつく。

『お前達が倒せないレベルにまで強化すればいいのです――――!』

デモンズシード……それを大量に埋め込まれたベルゼブブが変貌していく。
より戦闘に適した体型――つまり人型へ。単に肥大だった身体は筋肉質に引き絞られて。
ベルゼブブ由来の高い魔力を最大限活かす=マジックアイテムの装備枠を増やす為に腕は四本に……。
デスフライが四つの手に集結して巨大な斧を形成……。
体色は鮮血のような真紅だが……いや、待て。なんか……その形態、かなり見覚えがあるっていうか……

「……マゴットの色違いだよな、これ」

『う、うああ……全然ダメそうなのです……え、ええい!もうどうにでもなれなのです!
 とにかく行くのですベルゼブブ・シン!ヤツらを血みどろにしてやるのですー!』

66カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/04/23(水) 05:26:14
>63
カザハ「ここはどこ? 我は誰!?」
カケル「どうやら赭色の荒野みたいですね……都合よく受信した電波によると、
    私達はローウェルにざまぁするボーナスシナリオのために三巡目世界に召喚されたようです」
カザハ「何それ、2巡目の世界、残ってるよね!? クリアーしたら夢オチみたいなノリで帰れるんだよね!?」
カケル「まあ多分。あれ? そもそも私達、2巡目クリアーしましたっけ? した気はするんですけど」
カザハ「どうしよう全然思い出せない! でもボーナスシナリオってことはしたんじゃない!?」

(大混乱のカザハと、よく言えば動じない、悪く言えばどこか他人事のようなカケル。
 背景で照明弾があがる。巨大な蠅が何者かの攻撃を受けたのか墜落した)

カケル「何あの分かりやすい集合の合図! 行ってみましょう!」

>64
(行った先にはエンバース。明神やジョンも集まってきている)

>「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」
>「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

カザハ「我、ジョン君と一緒にテレビに出てるの!?(どうしよう、嬉しい……ッ!) 
……じゃなくてッ! それ、どう考えてもアイドルの仕事じゃないよね!?」

>「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」
>「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。」

カザハ「そ、そんな……!」

(一瞬、最悪の可能性を考えてしまい青ざめる)

>「いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

カザハ「本当!? なら、いいんだけど……!」

>「仕方ないな。臨時のリーダーは明神さんに任せるが……
 ……とりあえず当面の目的はベルゼブブを倒すって事でいいよな?
 このシナリオが三巡目……つまり二巡目のRTAだって言うなら、チャプターの進行条件は共通の筈だ」
>「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したローウェルのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」

カザハ「あの人、結局爺さんなのか幼女なのか最後まで分かんなかった気がする……。ロリジジイって新し過ぎでしょ!」
カケル「まあ……上位世界では本来の年齢や性別という概念自体に大した意味がないのかもしれないですね……」

>「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」

67カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/04/23(水) 05:27:05
カザハ「はぁ!? 何言ってるの!? そ、そりゃあ見たいか見たくないかと言われたら見たいけど!
    ……過程はともかくとしていったん置いといて、アイドルやらされてる明神さん、それはそれでめっちゃ見てみたいんだけど!」

カザハ「あれ? そういえば我とジョン君ってどういう関係だったっけ……。どうしよう思い出せない!
    すごく特別な関係だった気がするのに……。もしや……漫才コンビの相方か……!」

カケル(完全に間違ってるわけじゃないかもしれないけど……! これって、大人の事情で記憶にブロックがかかってるってこと!?
    ラブコメ禁止規制的な!?)

>「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

カザハ「ねぇ、さっきから蠅がうるさくない?」
カケル「壁みたいになってますね……」

>『クク……』
>『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

>65
(暫しのエンバースとローウェルのやりとり)

>『ぐ、ぬ、ぬううううう!か、構うものかなのです!ルールが知られたところで……
 チャプタークリアにはボスの撃破が必須!つまりこのベルゼブブを――!!』
>『お前達が倒せないレベルにまで強化すればいいのです――――!』

>「……マゴットの色違いだよな、これ」

>『う、うああ……全然ダメそうなのです……え、ええい!もうどうにでもなれなのです!
 とにかく行くのですベルゼブブ・シン!ヤツらを血みどろにしてやるのですー!』

カザハ「ところでインベントリにこんなものが入ってたんだけど……。
    虫系モンスターを攻撃するためのアイテムで、蠅・蚊特攻だって!」

(都合よく赤いスプレー缶状のマジックアイテム登場。どう見ても某殺虫剤です)

カケル「都合よくそんなものを持ってるってことは……明らかに"案件"ですよね。
    つまり――ブレイブ&モンスターズは、広告ゲーになっちゃった……ってコト!?」

(そう言いながらも馬形態になり、カザハを乗せる)

カザハ「人生は一度きりー♪ だから一度はやらなくちゃー♪」(※三巡目です)

(確かにルール上即落ちさせないといけない(具体的には基本2ターン以上かけない)らしい。
ヒット&アウェイの容量でアー〇ジェットを噴射!
即落ちまではしなかったものの、敵は大ダメージをくらった様子。あとの二人がどうにかしてルール内でおさめてくれるだろう)

カケル「これって単なるギャグと見せかけて、ゲームの資金調達源という超重要事項に直結するネタですよね……。
    もしかしてブレイブ&モンスターズは開き直って広告ゲーになることで存続の危機を回避した……ってコト!?
    いや、でもローウェル失脚を機に広告ゲーになったわけではなく、そもそももともと広告ゲーだったのか……?」

(ゲーム内世界に登場するあらゆる商品=上位世界に存在する同様の商品の広告説!!)

68明神 ◆9EasXbvg42:2025/04/29(火) 20:47:51
前略。気づいたら俺は、初期スポーンの荒野に居た。
例によってトイレから――ケツ丸出しで。

「……またかよ!またこのパターンかよ!!!」

あっぶねえなぁ!
俺が便意もねえのに個室に引きこもってスマホ弄るタイプの社会人でなければ死んでいた。
スボン下ろしてたのは……なんつうか、便座ってズボンで座りたくなくない?
生ケツの接する場所に着衣で触れて、その着衣で椅子とかベッドとかに座るのに抵抗あるっつうかさ……

ほんでまぁケツをしまってるうちに色々とゴミのような情報が頭に流し込まれてきた。
ここはアルフヘイムだ。俺達はまたぞろブレイブとしてこの世界に喚ばれた。
今回のクエスト目的はローウェルをけちょんけちょんにするためのRTA……オーケー、把握した。

「ジジイの拭き残したケツをみんなで拭おうってか。やんなっちゃうね。なぁ、■■■■■――」

至極自然に隣へと話しかけて、そこに誰もいないことに今気付いた。
何だ?俺は今、【誰に】話しかけようとした――?

――『……みょう、じん……』

何か、めちゃくちゃ大事な情報が丸ごと頭からすっぽ抜けてるのを感じる。
モヤがかかったみたいに不鮮明な記憶の向こうで、誰かが俺を呼ぶ声。
こいつは誰だ。そういえば俺、あの地獄のラスベガスをどうやって生き延びたんだ――?

その時、不意に荒野の夜がまばゆい光に照らされた。
照明弾――あの炎の色は、エンバースか!あいつも三周目に喚ばれてんだな。
いくら記憶を辿っても出てこない答えをうっちゃって、俺は明かりの示す合流地点へと歩き出した。

 ◆ ◆ ◆

荒野を徒歩で横断なんざ死線くぐりまくった今でも重労働に違いないが、
その辺漂ってる低級霊をかき集めて邪悪な筋斗雲みたいなのを作れば移動手段はどうにかなった。
検証その1。二巡目で身につけた魔法とかスキルは練度据え置きで使えるっぽいな。
集合地点には既にエンバースもカザハ君もジョンも集まっていた。

>「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」

「え、エンバース……もしかして記憶がないのか……!?
 俺とデュエルしてガチ泣きするまでベチボコにしてやったろ……!?」

俺にもそんな記憶は特にないが、『ないという記憶もない』ので多分俺はエンバースをベチボコにしている。
このRTAの視聴者諸兄には行間を存分に読んでいただきたい。

>「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

「消せ消せそんな記憶!つーかさぁお前の名前まだ『エンバース』で良いわけ?
 二巡目の決着がいい感じについたあとに本名公開の流れとかあったんじゃないのぉ」

普通に平和になった地球でこいつとおしゃべりしてた記憶があるのに、その時どう呼んでたか覚えてねえ。
いやそれよりも。そんなことよりも。
エンバースがここにいるのなら、その隣に居るべき人間がもう一人いるだろ。

>「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」
>「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

「あー……うん、まぁ、こんなこと言うのもなんだけどさ……。
 わけのわからんエクストラステージに喚ばれた俺達がふつーに貧乏クジ引いてるわけで。
 喚ばれねえならそれにこしたことはねえんだよな……」

69明神 ◆9EasXbvg42:2025/04/29(火) 20:48:37
石油王の姿が見えねえのも、多分そういうことだろう。
あいつらは運営の投網からうまいことすり抜けた。それは間違いなく、良いことだ。

>「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したバロールのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」

「いや意味がわからんわ。なんであのクソ魔王が俺を養子にしたがってんだ――」

ああ、まただ。脳みそにノイズが走る、あの感覚。
思い出すのを拒むように、暗い膜のようなものが海馬の一部を覆ってる。

>「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――
 いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」
>「はぁ!? 何言ってるの!? そ、そりゃあ見たいか見たくないかと言われたら見たいけど!
 ……過程はともかくとしていったん置いといて、アイドルやらされてる明神さん、それはそれでめっちゃ見てみたいんだけど!」

「やめろやめろ悍ましいものを想像すんな!
 ……このままRTAが順調に行ったら、アコライトあたりでワンチャン実現しそうなやつじゃん。
 そんときゃお前も外野じゃねえからなカザハ君!おめーも踊るんだよ俺達といっしょに!」

>「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

「そういう感じかぁ……お前の名前が未だにエンバースなのも、本名はネタバレの範疇ってわけね」

とかなんとか言ってるうちに、エンバースが撃墜したとおぼしきベルゼブブの墜落地点についた。
無数のハエで構成された黒い霧の向こう。
死にかけのベルゼブブと、あとなんかローブを被った小柄な人影。

>『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

なんか普通にローウェルが居た。
二巡目じゃ何ヶ月もかけて追い詰めた真のラスボスが、その辺をうろついていた。
で、そのローウェル氏をインタビューしたエンバースによれば、この場でこいつを処することはできず、
ニヴルヘイムの暗黒魔城ダークマターでもう一度管理権限をいじくる必要があるらしい。

「人足りてねえけど大丈夫なのそれ」

あんときゃ6属性分のパワーを俺達5人でこさえる必要があった。
今回4人じゃん……。まぁその辺は勇気パワーでどうにかせよってことなのかね。
なんなら今度こそアルフヘイムにばら撒かれてる野良ブレイブかき集めても良いしな。

とまれかくまれ、とりあえず目下の目標としては荒野のクエストクリアになるわけだが、
ローウェル御大もRTAだからってワンパンさせるつもりはないらしい。
瀕死のベルゼブブにデモンズシードを大量投与。存在が進化していく――

>「……マゴットの色違いだよな、これ」

「中ボスのマイナーチェンジ版がラスダンの雑魚になってるやつぅ……」

なるほどな?これでひとつの事象が証明された。
ローウェルは新たなモンスターデザインを用意できない。

「ぎゃはは!筆頭デザイナーのバロール氏にもそっぽ向かれてやがる!あっったりまえだよなぁ!?」

いや笑い事じゃねえわ。クソみてえな低予算企画に巻き込みやがって。
この分じゃプログラマーも仕事してねえだろ。グリッチし放題ってわけだ。

70明神 ◆9EasXbvg42:2025/04/29(火) 20:49:07
>『う、うああ……全然ダメそうなのです……え、ええい!もうどうにでもなれなのです!
 とにかく行くのですベルゼブブ・シン!ヤツらを血みどろにしてやるのですー!』

そんなわけで、再生怪人めいたベルゼブブ・シンとの戦端が開かれた。

「おあつらえ向きに2Pカラーを用意してくれてんだ。ミラーマッチと行こうぜ、マゴット!」

スマホを手繰る。サモンの光が迸り、虚空から出現したのは――

『グフォ……?』

手のひらサイズの蛆虫だった。

「あれーーーっ!?マゴット君幼虫に戻っちまってるじゃん。
 これもネタバレ禁則事項ってやつなのか?」

思いっきりデザイン使いまわしの敵出しといてネタバレもクソもねえだろ!
RTA見てから二巡目に手ぇつけたプレイヤーはどういう感情でエーデルクーデ編見りゃ良いんだよ!

>「ところでインベントリにこんなものが入ってたんだけど……。
 虫系モンスターを攻撃するためのアイテムで、蠅・蚊特攻だって!」

「うおっ危ね!スマホに戻っとけマゴット!」

カザハ君が何やら殺虫剤みたいなのを取り出す。
急にスポンサーの存在をほのめかすじゃん……。
アレにもFF無効はちゃんと機能すんのかな。

「……ま、正味問題はねえな。せっかくの三巡目なんだ、二巡目とは違うスタイルでプレイしていくぜ。
 二巡目は死霊術師ビルドだったからな――今回の俺は、正統派魔法使いビルドだ!」

インベントリを起動し、『レア度』でソート……
予想通り、リストの先頭にそれはあった。
二巡目では没収されていた、ユニークアイテムの数々。
俺がゲーム内で獲得してきたウルトラレアの最強装備、神代遺物シリーズだ。

その中からひとつ、『聖杖アレフガルド』を選ぶ。
2メートルくらいの棒に炎のような宝石がはめ込まれた両手杖が出現した。
握った瞬間、神代遺物の凄まじいステータス補正が身体に注ぎ込まれるのを感じる。
特に強烈なのがINT、魔法攻撃力補正だ。今ならメラもメラゾーマに変貌する。

そして神代遺物の最たる特徴は――装備者に専用ユニークスキルを授けること。

「行くぜ必殺のぉぉぉ――『始原の炎(プライマルフレア)』!!」

無数の炎弾が曳光弾のように夜空を埋め尽くす。デスフライの群れを飲み込んでいく。
……そこで俺は、ある失策に気付いた。
カザハ君が景気よく撒きまくってる殺虫剤には、スプレー缶共通のある禁則事項があった。

――火気厳禁。

「やべっ」

荒野が炎に包まれた(2回目)。


【身を持って商品の注意事項を実演するスポンサーサービス】

71ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/08(木) 23:39:22
【赭色の荒野】

僕は…気づいたらその場所にいた。
なんだがうす暗い荒野。

自分でも馬鹿みたいと思うが…それしかわからない。強いていうならちょっと嫌な…オーラを放ってるとか?
どうしてこんなところにいるのか…僕にはわからなかった。

「にゃー…」

僕は…確か進化した部長と一緒にイクリプスを倒して…それで…
仲間達?仲間達は!?

「うっ…」

クソっ。頭はいてえし誰と戦ってたのかどんな状況だったのかさえうまく思い出せない。
そもそもどこで戦ってたっけ?…くそ…ところどころしか思い出せない。

まさか時が戻ったのか?そんな馬鹿な…僕達は確かに勝ったはずだ…たぶん。

「こんな薄気味悪い所にいてもしょうがない…少し歩くか」

そう思った瞬間

>「よう、みんな。久しぶり……なのか?分からん。記憶が弄られてるせいで感覚がバグってる感じがする」

「これはとっても便利なご都合主義だな」

>「いや、待て……何か思い出せそうな……そうだ。明神さんは先週大会でボコボコにした気がする……。
 カザハとジョンは……確かテレビで見たような……熱湯風呂で激辛ラーメンを食べてたっけ……?」

「記憶が欠けててもこれだけはわかるぞ…その記憶は絶対違うとな」

>カザハ「我、ジョン君と一緒にテレビに出てるの!?(どうしよう、嬉しい……ッ!) 
……じゃなくてッ! それ、どう考えてもアイドルの仕事じゃないよね!?」

「落ち着けカザハ…絶対エンバースの嘘だから…たぶん」

たぶんと付けたのは…今自分が覚えてる記憶その物も本当かどうかわからなかったからだ。
それに…僕がカザハにそんな仕事させるわけない…たぶん。

クソっ…なんで語尾みたいにたぶんを付けて回らなきゃいけないんだ?

>「……なゆたは……なんで来ないんだ?誰か見てないか?」

「見てないな…誰も見てないのか?」

>「……この収録になゆたは未参加?……どうしてだ。
 いや……なんとなく覚えてる。少なくとも悪い理由じゃなかった筈だ」

「そうか…それなら安心だな」

72ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/08(木) 23:39:32
>「なあ、二巡目の事、みんなはどこまで覚えてる?あの後どうしても自分の事をお義父さんと呼ばせたくて
 二階梯を総動員したローウェルのアホをどうやって明神さんが諦めさせたか――――ああ?」
>「違う。そうじゃなくて。俺はアイドル時代のジョンの映像を見たカザハが
 もっかいジョン君がアイドルやってるところを見たいけど真っ向から言い出すのは恥ずかしいだの
 半端に日和ったトチ狂い方したせいで巻き添えでアイドルやらされる明神さんの話が――――いや、それもちょっと気になるけどそうじゃなくて」

>カザハ「あれ? そういえば我とジョン君ってどういう関係だったっけ……。どうしよう思い出せない!
    すごく特別な関係だった気がするのに……。もしや……漫才コンビの相方か……!」

「落ち着けカザハ…大丈夫か?僕も記憶がまだハッキリしないが…漫才コンビって事はないんじゃないか…?
あとエンバース…君、言葉も顔も…だいぶ面白いことになってるぞ」

>「――なるほど、ネタバレは厳禁って訳か。分かったから俺の口で遊ぶのはもうやめろ」

面白い顔をさせられたエンバースは両腕を使い無理やり自分の口や顔を止めるとそう言い放つ。
そしておもむろに空間を切り裂くとその中から少女が飛び出してくる

>『ククク……くく……く……く、来るなーなのですー!!!』

>「……思っていたより早い再会だな?ええ?ローウェル」

ローウェル…えっと…確かラスボスだったっけ?あれ…?時間を見つけてカザハと情報共有しておくか…そんな時間があればだが

「それで…この幼女が僕達をこんな状況にした張本人だって?」

エンバースが間髪入れず攻撃を仕掛けるが、幼女には触れられない。

>『く……くふ……バ、バーカバーカなのです!一度はお前達にしてやられたとは言え、
 このローウェルは依然変わらずこの世界の創造主なのです!
 いかにお前とダインスレイブであってもこのローウェルを傷つける事は能わないのです!』

>「……なるほど。大体理解した。つまり魔王城の間を目指せばいいんだな。
 管理者メニューをもう一度起動して、お前をオシオキ出来るようにすればいい訳だ。
 魔王の無敵を剥がして、倒す。意外と王道のシナリオなんだな」

>「人足りてねえけど大丈夫なのそれ」

「それを言い出すと僕はこの場所そのものも知らないし…人選合ってるの…これ?」

用はなゆの旅路を再現するって事だろ?本来僕がいない場所でその魔王討伐RTAに参加していいのかどうか…

>「そりゃ……俺は世界で一番ブレモンの上手い男だからな」

そして幼女を言葉巧みにあざ笑い、泣かすエンバースを見た僕は思った。

あ、深い事考える必要はないなと

>『お前達が倒せないレベルにまで強化すればいいのです――――!』
>「ぎゃはは!筆頭デザイナーのバロール氏にもそっぽ向かれてやがる!あっったりまえだよなぁ!?」

とてもなゆが昔語ってくれたレイドボスには見えない。

>「行くぜ必殺のぉぉぉ――『始原の炎(プライマルフレア)』!!」

その瞬間あたりは爆発し、一面焼け野原になる。なんだ?僕達までギャグ時空に巻き込まれたのか?

「明神!なにふざけてるんだ!…雄鶏源泉(コトカリス・フンスイ)!!」

巨大な噴水が現れ、炎を少しづつ鎮火し、火傷ダメージを癒していく。
完全に鎮火する前に噴水の効果は終わったが…余計な事をしなければ自然鎮火するだろう。

「それで…よくわからないがこの使いまわしモンスターを…倒せばいいんだな?…僕達だけで十分だ!部長!雄鶏乃啓示!プレイ」

「にゃああああああ!!」

進化し、大きくなった部長が薄暗い荒野に輝く勝利の太陽と共に叫ぶ!
そして強くなった力と大きな翼で羽ばたくとその風により鎮火しかけていた炎は舞い上がり!勢いを増した!

「この感じ…なんだか…懐かしい感じがする…」

全身火達磨になりながら…あったはずの記憶を僕は感じていた。

73embers ◆5WH73DXszU:2025/05/16(金) 09:46:03
【赭色の荒野:見通しのいい餌場】


ブレイブ&モンスターズRTA、前回までのあらすじ。
カザハと明神さんがガス爆発を起こしてジョンが火だるまになった。
マジで何をやってるんだお前ら……?
しかもジョン、自分から火の海に飛び込んでいったよな?マジでなんでだ……。

「火だるまになりながらちょっと遠い記憶に浸ってるような表情してるのも意味が分からん……。
 マジでなんでだ?ブレモンってわりと男キャラも多めだしこういうカットにも需要があるのか……?
 いや、だとしてもなんでその需要を率先して満たしに行こうとしてるんだよ……」

……あんまり深く追求するのはよそう。この世界はゲームで、俺はその登場人物。
だから「そういう売り方」に理解があると思われて得する事なんて一つもない。
事あるごとに着衣を焼き払ってポージングするキャラにされて、しかも自分ではその変化に気付けない……なんて事にならない保証はない。

このクソ益体もない思考でさえ文字起こしされてユーザーに認識されている可能性だって……やめよう。
閑話休題だ。折角コラボアイテムがあるんだし、使い方のチュートリアルでもしよう。
また売上が芳しくないからって世界を滅ぼされちゃ堪らないからな。

「……見た目はネタっぽいけど、結構便利そうだな。その虫よけスプレー。
 特定の種族への特攻と高い範囲火力。両方兼ね備えているからレイドボスにもモブ狩りにも使える」

 ユニットカード版も出るのかな。こっちの世界のブレモンにも実装されるならとりあえず一枚確保しときたいけど。

「しかもそのスプレーは俺にとってもお誂え向きだ。いや……俺達にとっても、だな。
 速度に優れたカザハがガスを散布し、小器用な明神さんがそれを起爆。
 ジョンの耐久能力なら仮に巻き添えになっても大したダメージは受けないし――」

ダインスレイブで周囲の炎を吸引。ブレードを形成。
まさしく虫の息だったベルゼブブ・シンを切り捨てる。

「発生した爆炎は俺のダインスレイブのエネルギーとして再利用出来る。
 1ターン目から手軽にダインスレイブを高出力モードに出来ちまうんだ。
 ミズガルズのブレイブPT、特に俺をアタッカーに使いたいなら必須級のアイテムだ。課金圧を感じるな?」

いや、マジで俺との噛み合いがいいなあの虫よけスプレー。
上の世界のwikiじゃお手軽エンバース強化パーツとか書かれるんだろうな。
……結構イヤだな、エンバースと言えばコレの「コレ」が虫よけスプレーなの。

「……さて、これでチャプタークリアな訳だが。お前はいつまでそこで突っ立ってるんだ?」

『ぐぬぬ……ふん、チャプター1をクリアしたくらいで何を偉そうにしているのです』

「お、まだ結構余裕があるんだな。まあ、でないとこっちもイジメ甲斐が――」

「あーあ!あのハイバラがまるでゲームが進んでちょっと難易度の高いボスが出てきたら
 「出し得モーションばっか」とか「敵だけ楽しそう」とか言い出す
 にわかストリーマーみたいな粋がり方して、このローウェルはがっかりなのです』

「うぐっ!や、やめろ!共感性羞恥が……じゃなくて!不特定多数のユーザーを殴るんじゃない!
 ていうか俺の本名出してよかったのかよ!ネタバレとか――」

『あーん?二巡目の世界編からもう何週間経ってると思ってるんです?
 どんなに多忙なユーザーでも一週間あれば週末にメインクエストくらいクリア出来る筈なのです。
 自分で勝手に後回しにしといて公式にネタバレ配慮しろって……アホなのです?いや、間違いなくアホなのです』

おいおいヤバいぞコイツ!攻撃が通らないからって言いたい放題しやがるつもりだ!
正直コイツに構ってるだけ時間の無駄だしさっさと移動を始めてもいいんだが――

74embers ◆5WH73DXszU:2025/05/16(金) 09:47:24
『んん〜?どこに行くつもりなのです?話はまだ終わっていないのです。
 一緒に大して腕も立たないくせに聞きかじりのメタを身に着けただけで
 ネームドになれたかのように振る舞う三下どもの悪口を言うのです』

俺が背を向けて歩き出すとローウェルは嬉々として纏わりついてきた。
しかも俺を目にかけていただけの事はある……

「正直かなり俺好みの話題だが……悪いな。今は時間がないんだ。なにせ――」

ローウェルを振り返って指先で招き寄せる。
それから少し屈んで右手を俺の口元に添える……何か耳打ちする事があるかのように。
ローウェルは素直に俺に近寄ってきた。まあ……どうせ攻撃される筈がないからな。
俺を深く疑る理由がない。そして――――

「――そろそろ列車の時間だ」

最初に到着したのは、けたたましい汽笛の音。
直後、チャプタークリアのフラグに応じて到着した魔法機関車がローウェルを塗り潰した。
勿論ダメージは与えられない。けど……

「どうだ?今のはかなりビビったんじゃないか?」

魔法機関車の横っ腹に話しかけるが返事はない……機関車のテクスチャに埋まったままだ。
……ほどなくして、よろよろとローウェルが這い出てきた。
そのままへたり込んだままだ……ははん、なるほど?

「さてはお前……腰が抜けたな?ははは、いいぞ。
 管理者メニューの起動はどんなに急いでも結構先になる。
 こまめにガス抜きさせてくれないとプレイヤー側としてもモチベが保たないもんな」

未だに立ち上がれないローウェルをこれでもかってくらい見下ろして笑う。
ついでにスマホで何枚か写真を撮りながら列車に乗り込む。

「じゃ、またなローウェル。ゲームはまだ始まったばかりだ……次はもっと楽しませてくれよ」

75embers ◆5WH73DXszU:2025/05/16(金) 09:48:19
【魔法機関車:客室】


『――皆様、初めましテ。ワタシはこの汽車の車掌兼運転士を務めさせて頂く“ボノ”と申しまス。
 ご覧の通り人形の身ではありますが、必ずや皆様を王都までお連れしますので、今後ともよろしくお願い致しまス』

「……ああ、なるほどな。全員が二巡目の記憶を引き継いでる訳じゃないのか。そりゃそうか」

『二巡目?なんの事でしょウ』

「いや、こっちの話だ――でも、あると思うんだよな。記憶を思い出させる方法。
 じゃないとテンポ悪いし。例えば……おはよう、ボノ。もう目は覚めたか?」

『……なんの事でございましょウ。ワタシは人形。睡眠は必要ありませン』

「これじゃないか……なんか、今の恥ずかしいな」

……いや待てよ。そもそも今回のシナリオはRTAだ。
今は俺達が収録しているけど、後でプレイヤー達もこのシナリオを走る事になる。
だったら……どんなギミックにしろ、あんまり手の込んだモノは鬱陶しいだけだ。
難しく考えすぎたか?もっと安直に……

「……なあボノ、思い出せないか?王都が襲われて、侵食に呑まれた時の事だ。
 お前はボロボロになりながらも逃げ延びてきてくれた」

あれがなければ俺達はローウェルに対してもっと大きく遅れを取っていただろう。
王都がどうなっているのか確かめようと、むざむざ死地に飛び込んでさえいたかもしれない。
……ボノが頭を抱える。

『――ああ、ああ!そうでしタ。思い出しましタ。あれほど恐ろしい思いをしたのは製造以来初めてでしタ。
 もう終わった事とは言エ、今でも思い出すだけで身震いが止まりませン』

……ブリキ人形がぶるぶる震えてるの、玩具みたいでなんだかシュールだな。
ともあれ、『そのキャラクターにとって印象深い記憶が呼び水になる』か。
安直だけど、ゲームの根幹になるシステムなんてこれくらいでいいんだよな……。
使用頻度の高いシステムがあんまり複雑だとマジでモチベに響くからな……。

『そして今は快速シナリオの収録中、でしたネ。分かりましタ。
 王都行きは取りやめに致しまス。魔法機関車の運行権は皆様方ニ。どこへ向かいましょウ?』

「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」

俺は溜息を零しながらみんなを振り返る。
お、なんかこの仕草かなり主人公っぽいぞ。

「けど……正直ガチガチにチャート組んでRTAするのって俺達がする必要ないんだよな。
 どうせこのシナリオが解禁されたらプレイヤー達がこぞって壁に向かって
 ローリングしたり移動スキル連打して魔王城直行ルートを見つける筈だし」

それに加えて、

「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

まあ、ある程度ちゃんとやるって建前は大事だけどな。
本気で挑んでるのにアホみたいな結果が出力されるからこそ面白いんだと思うし、多分。

「という訳でそれを踏まえた上で聞くんだが――――みんなどこ行きたい?」

76カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/05/22(木) 00:35:48
>「この感じ…なんだか…懐かしい感じがする…」

カザハ「なるほど、常に体を張った芸を繰り広げていたのか……」
カケル「お笑い芸人じゃないですからね!? 常に体を張ってたのは合ってますけど!」

(何をどこまで覚えているかは人によってかなりばらつきがあるらしい!
カザハ→結構忘れてる カケル→割と覚えてるけど言ったらカザハが奇声を発しながら転げ回りそうなので(?)言わない)

>「……見た目はネタっぽいけど、結構便利そうだな。その虫よけスプレー。
 特定の種族への特攻と高い範囲火力。両方兼ね備えているからレイドボスにもモブ狩りにも使える」
>「しかもそのスプレーは俺にとってもお誂え向きだ。いや……俺達にとっても、だな。
 速度に優れたカザハがガスを散布し、小器用な明神さんがそれを起爆。
 ジョンの耐久能力なら仮に巻き添えになっても大したダメージは受けないし――」
>「発生した爆炎は俺のダインスレイブのエネルギーとして再利用出来る。
 1ターン目から手軽にダインスレイブを高出力モードに出来ちまうんだ。
 ミズガルズのブレイブPT、特に俺をアタッカーに使いたいなら必須級のアイテムだ。課金圧を感じるな?」

(一見一発ネタの案件らしき殺虫剤、まさかの予想外に有能そうだった!)

>「――そろそろ列車の時間だ」

列車(どっこいしょー!)←掛け声はイメージです

(ローウェルが減らず口を叩きまくっていると、到着した列車が容赦なくローウェルを轢いた!!)

カザハ「踏切内で動けない人を見つけたら非常停止ボタン!」
カケル「いやもう轢かれてるしここ踏切じゃないし!」

カケル(今度は踏切の安全啓発的な案件か……!? 2巡目の時はポリコレ枠ぽかったけど今度は案件受注枠か!?)

>「じゃ、またなローウェル。ゲームはまだ始まったばかりだ……次はもっと楽しませてくれよ」

(列車に乗り込む一同。列車内には、記憶を失ったボノがいた)

>「……なあボノ、思い出せないか?王都が襲われて、侵食に呑まれた時の事だ。
 お前はボロボロになりながらも逃げ延びてきてくれた」

>『――ああ、ああ!そうでしタ。思い出しましタ。あれほど恐ろしい思いをしたのは製造以来初めてでしタ。
 もう終わった事とは言エ、今でも思い出すだけで身震いが止まりませン』

(記憶の思い出させ方、意外と普通だった!)

77カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/05/22(木) 00:36:54
>『そして今は快速シナリオの収録中、でしたネ。分かりましタ。
 王都行きは取りやめに致しまス。魔法機関車の運行権は皆様方ニ。どこへ向かいましょウ?』

>「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」

カザハ「マッチョバニーと戯れるため……?」
カケル「自分と無関係な部分の無駄知識は無駄に覚えてるこの人……!」

>「けど……正直ガチガチにチャート組んでRTAするのって俺達がする必要ないんだよな。
 どうせこのシナリオが解禁されたらプレイヤー達がこぞって壁に向かって
 ローリングしたり移動スキル連打して魔王城直行ルートを見つける筈だし
>「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

カケル(「このシナリオを遊ぶプレイヤー」……そう、この世界がゲームならプレイヤーなる上位存在がいるのは当然の理!
    俯瞰してノベルゲームのように楽しむ方式か各キャラにログインする方式かは分かりませんが……。
    カザハ……1巡目の時はサウンドクリエーターの人にログインされてましたけど、
    今度は資金調達班の誰かにログインされてるんじゃないですかね?)

>「という訳でそれを踏まえた上で聞くんだが――――みんなどこ行きたい?」

カザハ「このシナリオが単なるタイムアタックではなく今後のブレモンの資金調達も兼ねていると仮定して考えると……
    ガチRTAは得策ではないのは大前提として、二つ方向性が考えられるんだよね。
    多分どっちのルートでもクリアは出来るように組んであると思うんだ」

(この世界がゲームだということを最大限に考慮したメタな手法で推理し始めた!)

カザハ「まず一つは2巡目に沿ったパロディ。それでいくなら目的地は自ずとガンダラになる。
    もう一つは……敢えて2巡目とは全く違うルートでいく路線。
    本編でいかにも行きそうで結局行かなかったところって、いかにも番外編用のフィールドっぽいじゃん。
    つまりそういうところにいくとシナリオが進む可能性が高い……!」

カケル「例えば……?」

カザハ「ヒノデとか?」

カケル「島国ですよ!? いけないじゃ――ん!!」

(早速盛大に本筋から脱線しようとしている!)

78明神 ◆9EasXbvg42:2025/05/25(日) 19:37:03
スプレーのガスに引火した聖杖の火が、暗い荒野を真昼のように照らす。

>「明神!なにふざけてるんだ!…雄鶏源泉(コトカリス・フンスイ)!!」

見かねたジョンがスプリンクラーみてぇなスペルで水をばら撒き、あわや山火事の発生は食い止められた。
ついでに何故かジョンは燻った火種に部長の羽ばたきで風を送り、燃え上がる火を自分の身体で受け止める。

>「この感じ…なんだか…懐かしい感じがする…」

>「火だるまになりながらちょっと遠い記憶に浸ってるような表情してるのも意味が分からん……。
 マジでなんでだ?ブレモンってわりと男キャラも多めだしこういうカットにも需要があるのか……?
 いや、だとしてもなんでその需要を率先して満たしに行こうとしてるんだよ……」

「クソっこいつ俺のセリフ全部持っていきやがった!今回はお前がツッコミ役ってことなのか!?
 二巡目ん時は廃人特有のゲーマー天然ボケでこの俺をツッコミ過労死寸前まで追い込んだお前が!」

なんだよ今回めっちゃ楽できちゃうってことじゃーん!
しょうがねえなあ!じゃあ欠けたボケを補うために俺がちょっとだけ馬鹿になるわ……
とまぁそんなことを言ってる間に、爆発を魔剣で吸収したエンバースがベルゼブブシンにトドメを刺す。

>「発生した爆炎は俺のダインスレイブのエネルギーとして再利用出来る。
 1ターン目から手軽にダインスレイブを高出力モードに出来ちまうんだ。
 ミズガルズのブレイブPT、特に俺をアタッカーに使いたいなら必須級のアイテムだ。課金圧を感じるな?」

「出・た・よ!廃人お得意の自作自演カウンター!公式企画でこういうの紹介していいのかなぁ……?」

モンハンのRTAで死ぬほど見たわこういうの。自爆ダメージにカウンターとって強化状態に入るやつ。
そのうちこいつ背水だの火事場だの起動するためにHP調整とかやり始めるぞ。

「ジョンの既視感の正体がわかったわ。アヤコちゃんの『炎君』バフだろそれ。
 ……えっ、このさきずっとこいつ燃えたままRTA走ってくの?」

身体が燃えっぱなしのやつが2人もいるパーティってなんだよ。一人でも意味わかんねえのに!

>「あーあ!あのハイバラがまるでゲームが進んでちょっと難易度の高いボスが出てきたら
 「出し得モーションばっか」とか「敵だけ楽しそう」とか言い出す
 にわかストリーマーみたいな粋がり方して、このローウェルはがっかりなのです』

「うるせえぞクソ運営。プレイヤーが超火力出せるコンボ編み出したらすーぐ『想定された運用ではないので……』とか言って
 ナーフしやがって。ゲーム作んのはじめてなのか……??」

ワイキャイ言ってるうちにローウェルは列車に轢かれて死んだ。スイーツ()。
そこそこ溜飲を下して列車に乗り込むと、応対したボノに向かってエンバースが何やら試し始める。
二度目の試行で見事にパスワードロックが解除され、ボノが記憶を取り戻した。
良いのかなこれ……大体のNPCのイベントこれでスキップできない……?
行き先を取り消したボノが問うのは、このRTAにおける俺達の行き先。

>「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」

「えーっとぉ……まぁ目的としては色々あったんだけどぉ……」

>「マッチョバニーと戯れるため……?」

「いちばん本筋と関係ねえとこじゃねえか!」

79明神 ◆9EasXbvg42:2025/05/25(日) 19:38:20
カザハ君には俺達の歴史を刻む者として、合流前のおおまかないきさつを伝えてある。
まぁ確かにね……記憶に残るインパクトとしてはマスターが間違いなくトップだけどさぁ……。

>「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

「何さらっと自分を省いてんだオメー!王都でウキウキエンバーミングしてたの忘れてねえかんな俺は」

エンバースの提案を受けて、カザハ君が想定されるルートを並べていく。

>「まず一つは2巡目に沿ったパロディ。それでいくなら目的地は自ずとガンダラになる。
 もう一つは……敢えて2巡目とは全く違うルートでいく路線。
 本編でいかにも行きそうで結局行かなかったところって、いかにも番外編用のフィールドっぽいじゃん。
 つまりそういうところにいくとシナリオが進む可能性が高い……!」

「んーまぁ確かに……二巡目で行ったとこは二巡目プレイすりゃ良いって説もある。
 この広大なアルフヘイムで、大量に用意されたサブクエを踏まないってのも宣伝的には勿体ねえよな。
 とりあえず二巡目のメインクエを洗い出してみるか。そんで省けそうなとこを考えてみよう」

俺はインベントリから羊皮紙とペンを出して、アルフヘイム編終了までの二巡目の記憶を書き出していく。
これまでの旅路の中で、特に本筋に関わるものを整理する。
なんだかんだ今のパーティで初期も初期から参加してんの俺だけだしな。

▽荒野:チュートリアル、魔法機関車の乗車権入手←イマココ
▽ガンダラ:機関車燃料補充のためのクエスト。マルグリットとの邂逅、ローウェルの指環入手。
▽リバティウム:人魚の泪入手。エカテリーナ、ミハエルとの邂逅。エンバース、カザハ君の加入。
▽キングヒル:バロールとの邂逅、世界の真実(大本営発表)の開陳、クーデター。ジョン加入。
▽アコライト:ユメミマホロ、帝龍との邂逅。超レイド級の初撃破。
▽デリンドブルグ:マルグリットとの再開、親衛隊との邂逅
▽アイアントラス:ロイ・フリントとの邂逅
▽レプリケイトアニマ:アラミガとの邂逅、ヴィゾフニール入手
▽始原の草原:フタミコ、グランダイト、マリスエリス、ロスタラガム、スターズとの邂逅。覇王軍との同盟締結
▽エーデルグーテ:オデット、アシュトラーセ、エンデとの邂逅。『銀の魔術師モード』解禁、プネウマ勢力との同盟

ほんで世界の真実(ガチ)が解禁されて、シナリオはニヴルヘイムに移る……って感じだったはずだ。

「とりあえずガンダラは省けるな。燃料は今んとこ十分ある。マル公もシナリオどおりなら向こうから接触してくる……。
 直近で必要なのは『人魚の泪』だな。現物だけじゃなくて、力を開放するにはマリーディア周りのイベント達成が条件だ」

超レイド級ミズガルズオルムの召喚キーアイテム、『人魚の泪』。
人魚の女王マリーディアが結婚詐欺に引っかかってガチギレした時の怒りと悲しみパワーの結晶体だ。
アルフヘイムに眠るミドやんを従えるには、マリーディアの抱える問題を解決する必要がある。

そして、ミドやんを仲間にできるのなら――管理権限を開くための6属性の一端を担わせることもできる。
ガンダラは……マスターに会いたい気持ちはあるけれども。
まぁそれはRTAでやるこっちゃねえわ。どうせ普段はおれガンダラでBOTと一緒にグダ巻いてるしな。

「このままリバティウムへ行こうぜ。アイテムの取りこぼしが出るようなら鉄道でガンダラにもすぐ戻れるからよ」

80明神 ◆9EasXbvg42:2025/05/25(日) 19:39:59
【リバティウム】

海都リバティウム。アルメリア王国第二の都市であり、経済と交易の中心地。
陸路と海路の交わる結節点として、今日もとんでもない額のルピが動いている。

「あとは……カジノがめっちゃ有名。だからまぁ大体ラスベガスだよこの街は」

リバティウム初見さん(ジョンとか)に向けて俺は雑に解説した。

「ここでやるべきことは人魚の泪入手のためのクエストだな。
 ライフエイクっていうヤクザの元締めの邪悪なおっさんと交渉する。
 確か、デュエラーズなんちゃらトーナメントっていう天下一武道会みてえな大会の優勝賞品だったはずだ」

交渉が済んだらトーナメント開催までしばらく街で自由行動でも良いだろう。
RTAの本筋からは外れるけどガバガバオリチャーの範疇としてご容赦願いたい。
そんなわけで、駅からまっすぐライフエイクの居るカジノ『ぱらだいす☆ろすと』まで来たわけだけど……

「あれ……?なんかカジノのデザイン違わない……?」

自慢じゃないが俺はリバティウムのマップなんか目を瞑ったって歩ける。
『失楽園(パラダイス・ロスト)』は間違いなくここにあったはずだ。
だが眼の前に建っている構造物は、カジノというよりも……酒場。

看板にはアルメリアの文字で『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』と書いてあった。
それは鉱山都市ガンダラの、クエスト起点となるロケーションの名前だ。

「やべぇ……やべえやべえぞこれは!まさか!!」

ドアをぶち破らん勢いで開ける。土地の大きさに合わせてなのか、酒場にしてはえらく広いホールを駆ける。
ビリヤードやらポーカーテーブル、果てはスロットマシンまで存在する、酒場とカジノがごった煮になったエリアを抜けて。
分厚いVIPルームの扉を開いた。そこには――

「あら、随分と元気の良いお客さんねン」

品の良いタキシードを着込んだ、筋骨隆々の大男――頭部にはピンと立ったウサギ耳が生えている。
『雄々しき兎耳の漢女(マッシブバニーガイ)』、ガンダラの酒場のマスターだ。

「ま、混ざってるーーーーっ!?」

――俺達は本来、二巡目のシナリオ再走のために荒野からガンダラへ向かうはずだった。
だがボノの記憶を叩き起こし、省略可能と判断したクエストをスキップしてリバティウムへ直行した。
その結果、クエストフラグがめちゃくちゃになって――ゲームがバグった。

この企画はプロデューサーのローウェルがワンオペでやっている。
デザイナーの不在で敵のデザインが使いまわしになったように……本来バグ修正を行うはずのプログラマーも居ない。
バグったゲームのRTAをやるってことかよ……!?

「ギャンブルの結果に納得できず直談判……ってところかしら。
 でもダメよ。ここの賭けはすべてこのガブリエッラが責任もって公平に管理してるし、誰か一人を特別扱いなんてしない。
 ……ウフフ。せっかくVIPルームまでお越しいただいたんだもの、アタシが手づから接待してあげちゃう」

ガブリエッラ――そういやマスターってそんな名前だっけ――が立ち上がり、パンパンに張ったタキシードを脱ぎ捨てる。
白日の下に現れたのは、当たり前のように……バニースーツだった。

「またのご来店をお待ちしているわ、お客様」

爆発したみたいに膨れ上がった太腿が推進力を生み出して、バニー姿の大男が両手を開いて突進してきた。
シンプルなタックル……軽自動車くらいなら轢き潰せそうだ。

【クエストスキップの影響でバグる。ライフエイクとガンダラのマスターが混ざる】

81ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/31(土) 22:16:42
「もう少し…もう少しで思い出せそうなんだ…!」

僕は火炎に飲まれながらそんな事を考えていた。
マジメに頑張ろうかなとも思ったけどこうなったら好きにやっても。

>カザハ「なるほど、常に体を張った芸を繰り広げていたのか……」
>カケル「お笑い芸人じゃないですからね!? 常に体を張ってたのは合ってますけど!」

>「ジョンの既視感の正体がわかったわ。アヤコちゃんの『炎君』バフだろそれ。
 ……えっ、このさきずっとこいつ燃えたままRTA走ってくの?」

明神がふと思い出したようにある女性の名前を挙げる。
その記憶の奥底からその瞬間記憶が…蘇ってくる事はなかった。

「クッ…なぜだ…僕の何が足りないんだ…!」

そういえばボス戦中だった気もする。
僕は一度記憶を思い出すのを中止してボスの方に振り向くが…。

>「……さて、これでチャプタークリアな訳だが。お前はいつまでそこで突っ立ってるんだ?」

僕が明神の言う【アヤコ】という恐らく女性を思い出そうと必死に唸ってる間にボス戦は終了していた。
いや展開早いな…この週からして普通じゃないからそりゃそうか…

>「あーあ!あのハイバラがまるでゲームが進んでちょっと難易度の高いボスが出てきたら
 「出し得モーションばっか」とか「敵だけ楽しそう」とか言い出す
 にわかストリーマーみたいな粋がり方して、このローウェルはがっかりなのです』
>「うぐっ!や、やめろ!共感性羞恥が……じゃなくて!不特定多数のユーザーを殴るんじゃない!
 ていうか俺の本名出してよかったのかよ!ネタバレとか――」

「喧嘩は同レベルでしか発生しない…と。」

時間があるうちにカザハと情報共有でもしているか…
積もる話も一杯あるしな…時間が許す限りカザハと喋るべきだろう。

決して僕がしゃべりたいだけじゃないぞ…本当だよ?

「カザハ〜〜!!」
ブオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!

僕の声はけたたましい音を発する汽車の音で全てかき消される。

>「――そろそろ列車の時間だ」

「……………」

言いたい事は多くあったが言ってもキリがないので大人しく列車に乗る事にした。

「おっと…体の火は消さないと…」

記憶はないが、どうすればいいかはなんとなくわかっていた。

「沈まれ…!俺の右目…!」

ソンジョソコラノ!チンプナ!チュウニビョウト!イッショニスルナデスワー!!
アッハハハハ!!
チョ!ワラワナイデクダサイヨバルサン!!

そう唱えるとどこからともなく叫び声と笑い声が聞こえた………気がした。
それと同時に火も収まった。

82ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/31(土) 22:16:54
>『そして今は快速シナリオの収録中、でしたネ。分かりましタ。
 王都行きは取りやめに致しまス。魔法機関車の運行権は皆様方ニ。どこへ向かいましょウ?』

>「そう。それなんだよ。俺達がもう一度管理者メニューを開くには幾つかのステップを踏む必要がある。
 移動手段とか、属性魔力要員の確保とかな。
 逆にRTAを目的とするなら無視してもいいチャプターもある。ガンダラとか何の為に寄ったんだこれ?」


「僕はなゆの旅は話でしか知らない…でもせっかく経験できるならしてみたいな…
よく前の週の最後の方は覚えてないけど…それでもまたみんなで集まって旅できるなんて…夢みたいだから…」

僕のしたことを考えれば贖罪の道が待っていたはずだった。
けど今またみんなで…楽しく世界を回っている。

純度100%の楽しい…楽しむためだけの旅。
僕には勿体ない幸運だと思う

>「そもそもこのシナリオを遊ぶプレイヤーも本当の本当はそんなガチRTAなんて求めてないだろうしな。
 明神さん、カザハ、ジョン。このメンツで走るRTAに求められているのは――
 どう考えたってクソバカドタバタガバガバオリチャーRTAだろ」

「そうだろうね。自分で言うのもなんだけど僕なんてどう考えても面白外人枠だし…
…なんならカザハが人気キャラだからついでに選ばれた可能性も…」

自分で言ってて悲しくなってきた。
そんな僕を察したのかカザハがヨシヨシしてくれている。

>「という訳でそれを踏まえた上で聞くんだが――――みんなどこ行きたい?」

正直みんなと一緒ならどこにでもいきたい。

>「このままリバティウムへ行こうぜ。アイテムの取りこぼしが出るようなら鉄道でガンダラにもすぐ戻れるからよ」

明神は旅の過程・なんでその場所に寄ったのか。最終目的はなんだったのかをメモを僕達全員に手渡ししてきた。
意外と几帳面なんだよな明神って…人を馬鹿にするために相手を知る必要があるからだろうか。

83ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/05/31(土) 22:17:06
というわけで海都リバティウムにやってきたのだが

>「ここでやるべきことは人魚の泪入手のためのクエストだな。
 ライフエイクっていうヤクザの元締めの邪悪なおっさんと交渉する。
 確か、デュエラーズなんちゃらトーナメントっていう天下一武道会みてえな大会の優勝賞品だったはずだ」

「ふむふむ」

完全にバスツアーのガイドさんになった明神とその一行は案内されるがまま、酒場の前にやってきた…あれ?カジノだったはずでは?

>「あら、随分と元気の良いお客さんねン」
>「ま、混ざってるーーーーっ!?」

筋骨隆々の大男がうふっとハートマークを飛ばしている。
明神の顔を見る必要もなくわかる。異常事態だと。

>「またのご来店をお待ちしているわ、お客様」

店内で混乱し、叫び声をあげた明神を敵だと認識したのか
外装を投げ捨て、バニスーツ姿となった酒場の店主が明神に突っ込む。あ、突っ込むって変な意味じゃないですよ

ドゴオオオオオオオオン!

「確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!」

明神と大男の間にタックルで割って入ると
ぶつかった衝撃でVIPルームの人や物が勢いよく吹き飛ばされる。
僕達が通ってきた一般の遊び場からは一体なんの騒ぎだと野次馬の声も聞こえだす。

「あら……あなた案外やるのね?」

「僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!」

確かにいきなり押し入って大騒ぎした僕達が悪い。
なので事情を説明し、理解を求めれば穏便に済ませられるはずだ。
交渉事はエンバースと明神に任せよっと!この場所よく知らないしね。

「ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!」

マスターが急にマッスルポーズを取るとマスターの筋肉に滴る汗…ではなくピンク色の魔法のような波動がマスターから放たれる。
他のみんなは何らかの回避手段を使ったり、驚いてモロ食らいしたりした…僕は後者で…そしてその魔法はフローラルな香りがした。

「うぇ!?…ん?なんだこれ…服が…!」

魔法を浴びた僕は気づいたらマスターと同じバニーガールの姿に着替えさせられていた。
元の服は足元に丁寧に畳まれて置いてある。

「ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?」

ズドン!!!

僕は力なく地面に大の字に倒れ込んだ。

「誰か僕を殺してくれ…」

アヤコザイゼンジヲ!チュウニアツカイシタ!バツダバーーーカ!!!!
プリントスクリーンレンダハ,チョットキモイヨ

という記憶にない声が聞こえた気がした。

84embers ◆5WH73DXszU:2025/06/07(土) 22:46:16
『このシナリオが単なるタイムアタックではなく今後のブレモンの資金調達も兼ねていると仮定して考えると……
    ガチRTAは得策ではないのは大前提として、二つ方向性が考えられるんだよね。
    多分どっちのルートでもクリアは出来るように組んであると思うんだ』

「確かに?アドベンチャーゲームってルートやエンディングが多彩な方が楽しいしな」

『まず一つは2巡目に沿ったパロディ。それでいくなら目的地は自ずとガンダラになる。
    もう一つは……敢えて2巡目とは全く違うルートでいく路線。
    本編でいかにも行きそうで結局行かなかったところって、いかにも番外編用のフィールドっぽいじゃん。
    つまりそういうところにいくとシナリオが進む可能性が高い……!』

「いつになく冴えているじゃないか。続けてくれ」

『例えば……?』
『ヒノデとか?』

「……ん゛っ」

実際のところ、エンバースはニ巡目の旅でヒノデを訪れている――なゆたと二人きりで。
別に隠すような事でもない――が、さりとて明け透けに放言するような事でもない。
隠すのはちょっとダサい気がするが正直に話しても絶対居心地の悪い事になる。

『島国ですよ!? いけないじゃ――ん!!』

結局――エンバースはだんまりを決め込んだ。
今の自分が事の真相を知っているプレイヤーからどう見えているかについては――考えない事にした。

『んーまぁ確かに……二巡目で行ったとこは二巡目プレイすりゃ良いって説もある。
 この広大なアルフヘイムで、大量に用意されたサブクエを踏まないってのも宣伝的には勿体ねえよな。
 とりあえず二巡目のメインクエを洗い出してみるか。そんで省けそうなとこを考えてみよう』

『とりあえずガンダラは省けるな。燃料は今んとこ十分ある。マル公もシナリオどおりなら向こうから接触してくる……。
 直近で必要なのは『人魚の泪』だな。現物だけじゃなくて、力を開放するにはマリーディア周りのイベント達成が条件だ』

「カザハ、今回はアレ持ってないのか?攻略本。細かいシナリオの流れとか確認したいんだ。
 ガンダラに行った事を何故か知ってた辺り、ニ巡目のシナリオの記憶はあるにはあるんだろうけど。
 なんで知ってるか分からない記憶って……こう、モヤモヤしててやり難いんだよな」

みんなもうろ覚えな部分があったら読んどけよな、とエンバース。
これで全員が自分がいなかった土地や場面についての記憶を完備していても何もおかしくなくなった。

『このままリバティウムへ行こうぜ。アイテムの取りこぼしが出るようなら鉄道でガンダラにもすぐ戻れるからよ』

「そうしよう。けど、あまり楽しい時間は過ごせそうにないぜ。
 改めてシナリオと設定を確認したけど……攻略までそう大してかからなさそうだ――」




『あれ……?なんかカジノのデザイン違わない……?』

「――よし、前言撤回だ。なんだか雲行きが怪しくなってきた」

『やべぇ……やべえやべえぞこれは!まさか!!』
『あら、随分と元気の良いお客さんねン』
『ま、混ざってるーーーーっ!?』

「なんだ、どうなってる?……バグってるのか?ガンダラをクリアせずにスキップしたから?」

85embers ◆5WH73DXszU:2025/06/07(土) 22:47:44
『ギャンブルの結果に納得できず直談判……ってところかしら。
 でもダメよ。ここの賭けはすべてこのガブリエッラが責任もって公平に管理してるし、誰か一人を特別扱いなんてしない。
 ……ウフフ。せっかくVIPルームまでお越しいただいたんだもの、アタシが手づから接待してあげちゃう』

「――おいちょっと待て。思い出してみてくれ…………いや、ダメだ!
 俺あんまりマスターとイイ感じの思い出がないぞ!それ自体は幸運な事かもしれないけどさ!」

『またのご来店をお待ちしているわ、お客様』

「――来るぞ!」

直後に響く激突音/放射状に爆ぜる衝撃波/蹂躙される内装。
ジョンがマスターのタックルを食い止めていた。

「……これはこれで需要がありそうな絵面……なのか?」

『確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!』
『あら……あなた案外やるのね?』
『僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!』

「さっき攻略本読んどけって言ったろ!?なんだ?カザハに読み聞かせしてもらわなきゃご本も読めないのか!?」

『ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!』

マスター=ラブリーかつマッシブなポーズ/そこから放たれる桃色の魔法。
エンバースはダインスレイブをそれを吸収――

『うぇ!?…ん?なんだこれ…服が…!』

瞬間、ダインスレイブが黒いシックなリボンとレースでデコレーションされた。
見れば魔法の直撃を受けたジョンは全身バニーコーデにされている。

『ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?』
『誰か僕を殺してくれ…』

「なんだこのクソ魔法……こんなん新規実装してる暇あったらバグ取りしろよアホバロール。
 ……いや、逆にバグフィックスを優先してないって事は、バグ利用も前提のRTAをしろって事なのか?」

エンバースが暫し考え込む。
ふと抗議の声めいた共鳴音=ダインスレイブ(バニースキン)が震えている。
どうやらコーディネートが不満らしい。エンバースは再び数秒考え込んで――

「とうっ」

先ほど吸収した桃色魔力を明神に向けて解放した。
フローラルな香りと桃色の煙が一瞬弾けて、バニー姿の明神が爆誕した。

「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

ひとしきり笑った後、エンバースはマスターへと向き直る。

86embers ◆5WH73DXszU:2025/06/07(土) 22:47:57
「はー、おもしろ……さて。さっきは前言撤回って言ったが、やっぱりそれも撤回するよ。
 想定外のバグはあったが、結局のところこのチャプターのクリア条件は極めてシンプルだ」

ダインスレイブが一閃――マスターのバニースーツのみを精密には切り裂く/はだけさせる。
野太い悲鳴/身体を両腕で隠してしゃがみ込む巨漢。
隠し切れない地肌――そして無数の縫い目/複数の魔物の体組織。

「よし、ちゃんとそこにいるんだな。なら話は早い。さあ思い出せ。お前の望みと結末についてだ。
 正直、お前の所業を考えれば、最後に一目会えただけでも過ぎた幸運だったと思うけどさ。
 このバグったシナリオの中でなら、もっといいエンディングに辿り着けるかもしれないぞ」

ニ巡目の記憶を刺激。
マスターの顔グラフィック、その左半分がぼやける――ライフエイクへと変貌する。
ムサラマ・レイルブレードを召喚/ダインスレイブを納刀=魔力を急速チャージ。

「闘技大会を開くのはマリーディアを召喚する魔力を確保する為……。
 だが今の、三巡目の俺なら……それくらいのエネルギーは一人で発揮出来る。さあ、門を開け」

鞘に設置されたインジゲータランプが赤く点灯。
居合の構え=見せつけるように大仰に。

「さもないと――危ないぞ」

ライフエイクが右手を突き出す/境界門が開く。
そこに打ち込まれる電磁抜刀ダインスレイブ。
超高密度の魔力刃が門に組み込まれた召喚術式へと充填。
人魚の女王、マリーディアを現世へと呼び戻した。

「よしよし、これでめでたく感動の再会――」

そして再び現世へと舞い戻ったマリーディアが最初に目にしたのは――



――かつての恋人の顔半分がオカマっぽくなっていて、ついでにおはだけバニースーツを着ている姿だった。
響く絶叫。マリーディアはブチギレた。

「あー…………こういう感じか」

カジノの外からミドガルズオルムの咆哮が聞こえる。そちらも心なしか不機嫌そうだ。

「けど……同じ超レイド級のタイラントをイクリプスの小隊がぼちぼち倒せる事を考えると……
 今の俺達なら普通に倒せるだろ……まあ、俺は炎属性だし今回は後衛に回るけど……」

87カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/06/13(金) 21:53:02
>「そうだろうね。自分で言うのもなんだけど僕なんてどう考えても面白外人枠だし…
…なんならカザハが人気キャラだからついでに選ばれた可能性も…」

カザハ「あれ? むしろ自分、他の人気キャラの引換券さんとか色違いバージョンとか
    逆に「全く似てないやん!」とかネタにされてそうな枠だったような……。
    でも……そんなキャラいないよな……」

(とか言いながらナチュラルにジョン君をよしよしする)

>「とりあえずガンダラは省けるな。燃料は今んとこ十分ある。マル公もシナリオどおりなら向こうから接触してくる……。
 直近で必要なのは『人魚の泪』だな。現物だけじゃなくて、力を開放するにはマリーディア周りのイベント達成が条件だ」

(ガンダラで散々な目に遭った明神さん的にはそりゃ当然省きたいだろう!
何はともあれ、次の目的地は決まった!)

>「あれ……?なんかカジノのデザイン違わない……?」
>「やべぇ……やべえやべえぞこれは!まさか!!」
>「あら、随分と元気の良いお客さんねン」
>「ま、混ざってるーーーーっ!?」

カザハ「なんてこった! マッチョバニーからは逃れられない仕様なのか――ッ!」
カケル「明らかに喜んでますよね!?」

>「ギャンブルの結果に納得できず直談判……ってところかしら。
 でもダメよ。ここの賭けはすべてこのガブリエッラが責任もって公平に管理してるし、誰か一人を特別扱いなんてしない。
 ……ウフフ。せっかくVIPルームまでお越しいただいたんだもの、アタシが手づから接待してあげちゃう」
>「またのご来店をお待ちしているわ、お客様」

(突進してきたマスターと、割って入ったジョン君が激突する!)

>「確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!」
>「僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!」

>「ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!」
>「うぇ!?…ん?なんだこれ…服が…!」
>「ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?」

(マスターの謎スキルが炸裂し、ジョン君はバニー姿になった!)

>「誰か僕を殺してくれ…」

カザハ「だ、大丈夫だよ、それも似合ってるから……!」(←慰めてるつもり)
カケル「余計落ち込みますよ!?」

>「なんだこのクソ魔法……こんなん新規実装してる暇あったらバグ取りしろよアホバロール。
 ……いや、逆にバグフィックスを優先してないって事は、バグ利用も前提のRTAをしろって事なのか?」
>「とうっ」

(エンバースさんの攻撃(!?)により、明神さんもバニー姿になった!)

>「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

88カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/06/13(金) 21:53:53
カザハ「た、確かに……一部の層には大ウケしそう……!」
カケル「あなた、明らかにその大ウケする層のうちの一人ですよね!?」

(他人事のような顔をしているカザハだが、ヘッドギアからウサ耳が生えている!
胴体は無事だったが、頭だけ攻撃を防ぎ損ねて掠ったと思われる!)

カケル(面白いから黙っとこう……)

(真顔に戻ったエンバースさんが話をサクサク進める)

>「はー、おもしろ……さて。さっきは前言撤回って言ったが、やっぱりそれも撤回するよ。
 想定外のバグはあったが、結局のところこのチャプターのクリア条件は極めてシンプルだ」
>「よし、ちゃんとそこにいるんだな。なら話は早い。さあ思い出せ。お前の望みと結末についてだ。
 正直、お前の所業を考えれば、最後に一目会えただけでも過ぎた幸運だったと思うけどさ。
 このバグったシナリオの中でなら、もっといいエンディングに辿り着けるかもしれないぞ」
>「闘技大会を開くのはマリーディアを召喚する魔力を確保する為……。
 だが今の、三巡目の俺なら……それくらいのエネルギーは一人で発揮出来る。さあ、門を開け」
>「さもないと――危ないぞ」
>「よしよし、これでめでたく感動の再会――」

(半分オカマバニーを目撃したマリーディア、ブチギレた!)

>「あー…………こういう感じか」

(ブチギレたミドガルズオルムが召喚された!)

>「けど……同じ超レイド級のタイラントをイクリプスの小隊がぼちぼち倒せる事を考えると……
 今の俺達なら普通に倒せるだろ……まあ、俺は炎属性だし今回は後衛に回るけど……」

(外に出てみると、海に巨大なミドガルズオルムが出現している!
過程はいろいろ酷かったが、ここは二巡目と同じ流れだ! でも何かがおかしい)

カザハ「なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?」

(3Dグラフィック黎明期の、大きめのパーツ繋ぎ合わせたような感じのやつになってる)

カザハ「きっと、ああいうでかいのうねうね動かすの大変だから、予算削られちゃったんだ!
    みのりさんいないしどうやって倒そう。流石にでかすぎてスプレー引火作戦は使えなさそうだし……。
    確かあの時……明神さん達はライフエイクのほうと戦ってたんだよね。
    飛行系キャラじゃないと立ち回り厳しいかもだからとりあえず行ってみるね」

(馬型になったカケルにまたがって、とりあえず突撃する。
 シナリオの雰囲気に合わせてノリも初期の突撃バカ寄りに戻されているらしい!)

カザハ「パーツ繋ぎ合わせたように見える……ということはもしかして……エアリアルウェポン!」

(巨大なハンマーを生成する。それをパーツの一つにむかって振るうと、スコーン!とだるま落としのようにパーツが吹っ飛んだ!)

カザハ「あっ、そういう感じ!?」(調子に乗って次々パーツを吹っ飛ばす)「あれ……?」

(ふと気付くと、吹っ飛んだパーツ(円柱形)が、タイヤのように高速回転しながら一行のほうへ突っ込んでいってる!
タコとかイカって切った足がしばらく動いてるけど、多分そんな感じのやつ!)

カザハ「ぎゃああああああああ!! 避けてええええええええええ!!」

89明神 ◆9EasXbvg42:2025/06/16(月) 00:57:28
マスターの砲弾じみたタックルが俺を狙う。
そこへジョンのカバーが間に合った。筋肉同士の激突する音が臓腑を揺るがす。

>「確かに今のは明神が悪かった!!!だが!!僕じゃなかったら死んでるぞ!」

「むしろなんで生きてんだよお前はよ……」

いや生きてて良かったんだけどさぁ!トラックの玉突き事故みてえな音がしましたよ今!?
こいつもうトラックに轢かれても異世界転生は出来ねえな。異世界来てっけど今。

>「……これはこれで需要がありそうな絵面……なのか?」

隣でエンバースが信じられないくらい雑なコメントを漏らす。
ビビるわお前……全肯定Botかなんかなの?

>「僕達は…ただ…えっと…人魚!人魚のなんとかが…!なんとかするってきいて…!」

ジョンがびっくりするくらい要領を得ない説明をする。
マスターはそれを聞いて合点がいったようだった。なんで……?

>「ふむふむなるほど…事情把握したわ…けど…【誠意】が足りないんじゃないかしら?…んふぅゥウ!!!」

瞬間、マスターから放たれるピンク色のビーム!
回避(軽装ローリング)に成功した俺と違い、ジョンはそれをまともに食らった!

>「ここは『魔銀の兎娘(ミスリルバニー)亭』…それもそのVIPルームよ?
  ならあるがままの…バニー姿で話すべきよ!そうでしょ?」
>「誰か僕を殺してくれ…」

五体を投げ出して倒れ込むジョン。
そしてその均整の取れた肉体美には――ぴっちりしたバニースーツを纏っていた。

「う、うわっ、うわああああ!バニーが伝染ったぁ!?」

やべえ。早くも状況がカオスに飲み込まれてきた!
誰が得するんだよこの光景!視聴者諸兄の困惑が画面越しに伝わってくるようだ。
企画倒れの匂いがプンプンするぜェーッ!

>「だ、大丈夫だよ、それも似合ってるから……!」

クソっ2体目の全肯定Botが出現しやがった!しょうがねえ俺もちょっとだけ肯定するわ……。

「イケメンマッチョバニーには需要が存在するはず!
 ジョン君にはバニーVerとしてこの先の人生を歩んでもらう他あるまい!」

>「なんだこのクソ魔法……こんなん新規実装してる暇あったらバグ取りしろよアホバロール。
 ……いや、逆にバグフィックスを優先してないって事は、バグ利用も前提のRTAをしろって事なのか?」

エンバースが何事か思案げに呟く。その手にはキレイにラッピングされた魔剣があった。
あっこいつ!魔剣に吸わせて難を逃れてやがる。

「発動後の魔法も吸えるんだねそれ……。ジョンのバニーも吸ってやれよ。ディスペルディスペル」

と、ここで俺はついエンバースに話しかけてしまった愚を悟った。
ダインスレイヴが吸った魔法はそのまま手元で滞留を続けている。
どこかにそれを捨てる必要があって……エンバースの視線が俺に向いた。

90明神 ◆9EasXbvg42:2025/06/16(月) 00:58:06
>「とうっ」

「ぐあああああああ!!??」

エンバースがぺいっとほっぽり出した魔法が直撃した。
地球から持ち込んだ背広が爆散し、代わりにラバーめいた光沢のあるバニースーツが身体を包む。
とうっ。じゃねンだわ!お前そんな元気の良いキャラじゃなかっただろ!?

>「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

「酔っ払ってんのかオメーはああああ!!
 ブレモンRTAが15禁のちょっとエッチなゲームになっちまうじゃねえか!」

俺達の露出度上げてどうすんだよ!
本編のクールでニヒルないけ好かねえ陰キャのエンバースはどこ行った!

「おいやべえぞこいつが一番ハメ外してんじゃねえか。
 エンバース(陽キャVer)実装でトリプルピックアップでもする気か!?」

>「た、確かに……一部の層には大ウケしそう……!」

「逆に平常運転でこんだけイキイキしてるカザハ君はなんなんだよ……」

曲がりなりにも生物学上おそらく女キャラであろうこいつがバニー回避してんのおかしいだろ。
若干回避出来てねえけど。うさ耳がちょっといい感じデザインにまとまってるしよぉ。

>「はー、おもしろ……さて。さっきは前言撤回って言ったが、やっぱりそれも撤回するよ。
 想定外のバグはあったが、結局のところこのチャプターのクリア条件は極めてシンプルだ」

で、凄まじく長い余談の果てに話が本筋に戻る。
エンバースがマスターのおべべをひん剥くと(やべーぞ!)、その素肌には色んな魔物が縫い合わされていた。
――『縫合者(スーチャー)』。ライフエイクの魔物としての個体名。
バグった関係でごちゃごちゃ混ざっちゃいるが、奴は確かにマスターの中に存在した。

エンバースの指示のもとライフエイクが門を開く。
そこにダインスレイブの一撃を叩き込み、晴れてマリーディアとのご対面となった。
結婚詐欺師との再会にウキウキでやってきたマリーディア。
そこにいたのはマスターと融合してブラクラみてえになったライフエイクだった。

マリーディアはいきなりキレた。

>「あー…………こういう感じか」

「そりゃそうだろ過ぎる……」

そんなこんなで結局俺達はキレ散らかしたミドやんを鎮めるべくレイドバトルに挑むハメとなった。

>「けど……同じ超レイド級のタイラントをイクリプスの小隊がぼちぼち倒せる事を考えると……
 今の俺達なら普通に倒せるだろ……まあ、俺は炎属性だし今回は後衛に回るけど……」

「こいつ……引っ掻き回すだけ引っ掻き回した挙げ句引っ込みやがって……」

91明神 ◆9EasXbvg42:2025/06/16(月) 00:58:26
>「なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?」

「うわぁ……ローポリミドやんだぁ……カスみてえなスペックのグラボ使ってんじゃねえだろうな」

おしまいだよォ!デザインの使い回しどころかまともに描画も出来てねえじゃねえか!
よくこんな開発体制で企画スタートできたな!?見切り発車にも程があるだろ。

カザハ君がカケル君といっしょにミドガルズオルム(低スペVer)へ突撃する。
生成したハンマーでぶん殴ると、動くヘビのおもちゃみたいにカクカクのパーツが一個吹っ飛んだ。
脱落したパーツはまだ生きていて、ウネウネのたうちながら高速でこっちに飛んできた。

>「ぎゃああああああああ!! 避けてええええええええええ!!」

「うおわあああああ!?」

「ぬぅン☆」

身を竦ませる俺の隣から太い腕が伸びて、小岩のような拳がローポリの断片をぶん殴る。
ミドやんのパーツが明後日の方向へすっ飛んでいった。

「ま、マスター!身体の主導権を取り戻したのか!」

「やぁね。人の顔を見るなり発狂するなんて、あの人魚姫……ちょっと傷ついたわ。ちょっとだけね」

さっきまで『表』に出てたライフエイクは身体の一部に戻り、今はマスターが顔を出している。
こいつらがどういう経緯で縫合者として混ざりあったのかは知らんが、多分そういう背景設定みたいなのは特にないんだろう。
バグで生まれたモンスターだしな……。

「……ていうかマスターすげえ格好だな!?ごめんねウチの子が服刻んじゃって」

エンバースにひん剥かれたマスターは半裸の状態だった。
上半身は完全に露出し、下半身は刻まれたバニースーツを巻き付けるように保持している。
うさ耳の、筋骨隆々の、黒いフンドシ一丁のおっさんがそこに居た。

「でもなんだか懐かしい、この感じ……。アタシはカジノの経営者。夢追う者を奈落へ誘う非道の仕事。
 なのに今、この身体は……あの子の悲しみに寄り添おうとしてる」

いくつもの魂が混ざりあった『縫合者』。主体となってるのはライフエイク、そのはずだ。
だが今、俺の眼の前に居るのは――ガンダラで俺に寄り添ってくれた、あの姿。
客の吐き出した悲しみを受け止め、一杯の酒で洗い流す、マスターの姿だ。

「お酒はね、傷の消毒にも使えるの。心の傷だって、きっとお酒で洗えるはずよ。
 荒ぶり続けるあの子の悲しみが何もかもを壊してしまう前に……アタシが洗ってみせるわ」

やることは決まった。
低スペミドやんのパーツ全部ぶっこ抜いて、本体をもう一度引きずり出す。
ミドガルズオルムをボッコボコにぶん殴って、大人しくさせるんだ。


【キレ散らかしてるマリーディアにマスターの人生相談をぶつける→ミドやんのパーツ全部ぶっこ抜いて本体を露出させよう】

92ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/06/22(日) 03:52:08
>「だ、大丈夫だよ、それも似合ってるから……!」

カザハが倒れ伏した僕にフォローを入れる。
似合ってるかどうかじゃないんだよ…本当に嫌なんだこの恰好…

「どんなに頑張っても脱げないしさぁ!」

僕は魂の叫びをよそに、物語は進んでいく。

>「ぐあああああああ!!??」

>「あは、あはははははは!いいぞ、ピックアップ募集だ!なあ聞こえてるか!
 バニー明神とバニージョンでピックアップ募集しようぜバロール!」

「僕達の性が大安売りだな明神…ハハハ」

半ばあきらめの境地に達していた。

>「よし、ちゃんとそこにいるんだな。なら話は早い。さあ思い出せ。お前の望みと結末についてだ。
 正直、お前の所業を考えれば、最後に一目会えただけでも過ぎた幸運だったと思うけどさ。
 このバグったシナリオの中でなら、もっといいエンディングに辿り着けるかもしれないぞ」

正直説明を受けても尚…ストーリーの進行は僕にはよくわからないが…
そこはエンバースと明神に任せておこう…とにかく僕が今したいのは…

「頼む…誰が殴らせてくれ…!!」

ヒッ

バロールの息をのむ音が聞こえた気がしたが、どうせお前無敵なんだろ…!!

>「よしよし、これでめでたく感動の再会――」
>「あー…………こういう感じか」

僕が服を引きちぎろうとしたその時外から巨大な叫び声が聞こえてくる。
どうやらエンバースが必要な事を必要なだけやったようだ

「どうせ万事何事も解決とは思ってないさ…それで…殴っていいのはどれだ?」

ビキビキデクサ~!

くそムカツク声が聞こえた気がしたが無視をして外に出る。

93ジョン・アデル ◆yUvKBVHXBs:2025/06/22(日) 03:52:22
>「なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?」

なんていうか…図形を組み合わせたような姿の巨大な蛇(?)が海にいた。

>「きっと、ああいうでかいのうねうね動かすの大変だから、予算削られちゃったんだ!
    みのりさんいないしどうやって倒そう。流石にでかすぎてスプレー引火作戦は使えなさそうだし……。
    確かあの時……明神さん達はライフエイクのほうと戦ってたんだよね。
    飛行系キャラじゃないと立ち回り厳しいかもだからとりあえず行ってみるね」

「ちょっと待てカザハ!一人じゃ危ないぞ!」

静止を振り切りカザハが一人でミドガルズオルム?に突撃する。
カザハの攻撃は調子よく図形のようなパーツを剥がすが…。

>「ぎゃああああああああ!! 避けてええええええええええ!!」

悲鳴が聞こえるよりも先に、カザハの攻撃よって飛ばされたパーツがこちらに目掛けて飛び込んでくる。
まずい…このままじゃ街に被害が…そう思ってた時

>「うおわあああああ!?」
>「ぬぅン☆」
>「ま、マスター!身体の主導権を取り戻したのか!」
>「やぁね。人の顔を見るなり発狂するなんて、あの人魚姫……ちょっと傷ついたわ。ちょっとだけね」

フンドシ…いやいやなんか感動的な話してるっぽいし…目の前に危険は迫ってるしで気にしてる余裕はない。

しかしあんな巨大な蛇にどうやって有効打を入れるか…
部長で突進してもいいが大量の欠片が飛び散るのは街に被害が出てしまうので理想的ではない…となれば

「ううーーーむ………あっ!」

これは我ながら名案かもしれない!
僕は部長の背に乗り!欠片の問題をどうするか迷っているカザハに近寄る

「カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!」

僕の声に反応したカザハはハンマーで欠片を僕に向かって飛ばす。

「生物に向かってどんでいく性質は…こちらには好都合!雷刀!プレイ!」

僕は空を飛ぶ部長の背で仁王立ちすると…雷刀をバットのように持ち、そして野球選手のように構えた。

「男の勝負はストレート一直線!!!!」

雷刀の面の部分を力が一番伝わりそうな部分に当て、そして僕の全身全霊の力で降りぬく!

カキイイイイイイイン!

小気味というには凄い巨大な音と衝撃波を発生させながら巨大モンスターの欠片(?)は元の持ち主へと吹っ飛んでいく。

「同じ質量を衝突させればいい…」

僕のフルスイングから弾き返された欠片は元の持ち主の別の部位に命中し、命中した部位ともども粉々に砕け散る。
流石に人間の小指にも満たない小さい欠片では攻撃機能を維持できないのか…海にポトポトと落ちていく。

完璧な作戦だと胸を張ったその刹那

巨大な蛇(?)ミドガルズオルムはその巨大からは想像もできない軽快さで空中に跳ぶ
いくら巨体で俊敏とは言え…攻撃そのものは回避できる…だが…ミドガルズオルムがいる場所は…海だ。

着地すると共に巨大な水しぶきと共に…水(?)が人間に向かって飛んでくる

「この巨体で…まずい!!………ん?これ本当に水か?」

ミドガルズよりもひどく、表面だけのハリボテ…それに海のテクスチャが貼り付けてあり…表面上は津波に見えるがその実は薄っぺらい紙のようだった
ゲームにはコスト削減の為に水の表現は削られがちという裏事情をゲームに詳しくない僕は知る由もなかった…。

「…?ハリボテ?」

水というにはあまりにもお粗末なそれに…僕は手を伸ばす

「なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!」

ハリボテの津波のような絵に触れた瞬間僕にはまるで津波に飲まれたようなダメージを受けた。

94embers ◆5WH73DXszU:2025/07/01(火) 20:48:03
『なんかさ……グラフィックが、雑じゃね!? ニ〇テンドウ64か初代PS初期みたいになってるよ!?』
『うわぁ……ローポリミドやんだぁ……カスみてえなスペックのグラボ使ってんじゃねえだろうな』

「なんだ……?ネタが古いぞ!こんなゲーム開発者かオッサンしか盛り上がれないネタ!正気か!?」

不意に迫るローポリミドやんの輪切り肉。
それを殴り飛ばすガンダラのマスター。

『ま、マスター!身体の主導権を取り戻したのか!』
『やぁね。人の顔を見るなり発狂するなんて、あの人魚姫……ちょっと傷ついたわ。ちょっとだけね』

「無茶言うなよ。アンタ今すごい――」

『……ていうかマスターすげえ格好だな!?ごめんねウチの子が服刻んじゃって』

「――すごいイカした格好してるからな。明神さんはオッサンだから知らないだろうが、
 これは、あー……ええと……そうだ。因幡の白バニーって言って今流行りのスタイルなんだぜ。
 多分そのうちガチャでも実装されるんだろうな……明神さん(逆バニー)とかが」

何故明神なのかと言えば、女性キャラクターでこれをやったら流石にアウトだからだ。

『でもなんだか懐かしい、この感じ……。アタシはカジノの経営者。夢追う者を奈落へ誘う非道の仕事。
 なのに今、この身体は……あの子の悲しみに寄り添おうとしてる』

「なんだ、どうした?……ガンダラ編のクエスト主導役としての機能が働こうとしているのか?」

『お酒はね、傷の消毒にも使えるの。心の傷だって、きっとお酒で洗えるはずよ。
 荒ぶり続けるあの子の悲しみが何もかもを壊してしまう前に……アタシが洗ってみせるわ』

「……いや、今のはちょっと野暮だったな――オーケイ、マスター。力を貸してくれ」

『カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!』

「ああ。力を貸してくれってのは勿論アドベンチャーパートの事だ。バトルの方は――」

『生物に向かってどんでいく性質は…こちらには好都合!雷刀!プレイ!』
『男の勝負はストレート一直線!!!!』

「――もうすぐ終わる」

『なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!』

「……ったく。何遊んでんだよ、ジョン。カザハと連携するならもっと上手いやり方があるだろ?」

エンバースがダインスレイブを掲げる。
戦場に満ちる激流が指向性を得て魔剣へと吸い寄せられていく。
そこにエンバース自身の聖火が混ざる/猛烈な勢いで水蒸気が爆ぜる。

そしてその蒸気の爆風もダインスレイブの支配下にある。
蒸気と熱気を帯びた爆風は渦を巻きながら上空へと拡大していく。
更にジョンの雷刀から稲妻を巻き上げて――ジョン自身をも空高くへと打ち上げる。

95embers ◆5WH73DXszU:2025/07/01(火) 20:49:10
「カザハ、上手い事コントロールしてやれよ。でないとジョンは海の彼方だ」

暴風と稲妻がミドガルズオルムを飲み込んで、その巨体を封じる檻と化した。

「そう。これが一番効率の良いやり方だ。ダルマ落としを最速でクリアするなら――真上から叩けばいい。
 吹っ飛ばされたダルマ?肉片?もハリケーンの中で反射するから街への被害も最小だ。多分これが一番早いと思います」

この場合、ハンマーに相当するのは当然――上空に打ち上げられたジョンになる。
さておき使命を果たしたジョンは遠心力によって竜巻から放り出された。
それから更に暫くすると竜巻が徐々に勢いを失って――風のカーテンが取り払われると、そこにはマリーディアがいた。
煙幕とかで視線が遮られてると具体的にどんな感じに出てきたのかを省略出てきて本当に便利だ。

「よし、出番だマスター」

エンバースがスマホを操作。インベントリからアイテムを召喚。
キンキンに冷えたフロウジェン・ロックを二瓶――マスターに投げ渡す。

「悪いがこっちはRTAの最中でな。湿っぽいムービーはスキップさせてくれ」

空いた右手にダインスレイブを再び装備。

「いや、本当は俺も言葉を尽くしてアドベンチャーパートを堪能したいと思ってるんだぜ。けどなぁ――」

そして振り返る。獲物を前にお預けを食らった猛獣のような――濃密な強敵の気配に。

「『まだこのチャプターのボスを倒せていない』んだ」

霧散した竜巻の残滓を受けて揺らめく金髪――エンバースが牙を剥くように笑う。

「のんびり遊んでる暇はない。さあ、やろうぜ」

その笑みの先に【金獅子】ミハエル・シュバルツァーが。
それとなんか津波に巻き込まれたのか濡れ鼠状態のローウェルがいた。

『へ……へくちっ!なのです〜!こーのバカタレどもー!
 RTAの最中に水遊びなんかしてんじゃねーなのです!』

「へへ、みんな正直に言おうぜ。忘れてただろ、コイツらの事。困るな。
 水属性の超レイド級、ミドガルズオルムは確かに重要なオブジェクトだが――」

エンバースの双眸が紅く燃える。バトルマニアの狂気の色。

「ミハエル・シュバルツァーが鍛え上げた堕天使と……それに何よりイブリースだ。
 アイツは『門』が使える。RTAをするならまず門の使い手を確保しないと話にならない。だろ?」

形成位階・門(イェツィラー・トーア)。
飛空艇なんて比べ物にならない移動手段。ニヴルヘイム産の傑作魔法。

「問題は――」

『――おい、ハイバラ。これ以上僕を待たせるな。苛つかせるな。失望させるな。
 あの日、世界大会に君は来なかった。あれから二年。
 やっと僕の前に姿を見せたかと思えば……そんな無様なナリでよくヘラヘラしていられるな」

エンバースが深く溜息を吐く。

「オイオイオイオイ何してる、バカタレはお前だローウェル。
 なんでソイツの記憶を戻さなかった?今の俺とこの時点のソイツが勝負になるかよ」

『うるせー!んなこた分かってるのです!けど記憶を戻したってお前らが仲良くデュエルして終わるだけに決まってるのです!
 そもそも最近じゃ月一で日本に遊びに行ってるアホタレがどのツラ下げてこのシナリオに敵役で出演しやがったのです!』

96embers ◆5WH73DXszU:2025/07/01(火) 20:52:03
『待て、何を言ってる?記憶を戻す?仲良くデュエル?……月一で日本に?
 何の話をしているんだ。まさか僕の事を言っているのか?
 からかうのはよせ、ローウェル……僕は誰とも馴れ合わない』

「いや、朧げだけど思い出せるぞ。お前さあ、こっち来る時荷物になるからって
 マジでタブレットとパスポートと財布しか持ってこないのやめろってば。部屋着が無限に増えてるんだよ。
 なんでウチのゲーミングハウスにお前専用のクローゼットが設置されようとしてるんだよ。プレミア付けて売れないかなアレ」

『部屋着が……?はっ、まるで僕が他人と生活スペースを共有しているかのような口ぶりだな。あり得ないね』

「こないだは「二度とマックは食べない。モスバーガーならギリギリ我慢してやる」とか言い出すし」

『モス……?ふざけるなよ。マンガやアニメのお嬢様じゃないんだ。あんなジャンクフードを僕が口にするものか』

「ホラもう比喩表現がちょっと日本寄りになってるじゃねーか」

ところでアルフヘイムのブレイブ各位が抱くミハエルへの忌避感は
ワールドマーケットセンターの時よりは希薄になっているものとする。
覚えてないけど多分あの後命を賭して道を切り開いたりされたせいで憎むに憎めない感じになってしまったんだと思う。

そういう感じだ。仕方ないだろ。ゆるーくギャグやってくのが主体のこのシナリオで
過去の因縁とかそういうのはノイズになるし雑に流しておこうぜ。

『ええい!もういい!これ以上君の戯言に付き合うつもりはない――』

ミハエルがタブレットを操作。

『――やってしまえ、イブリース!』

そして召喚されたのは――黒く染まった天使の翼と蝙蝠のような魔族の翼。
荘厳な冠を思わせる漆黒の天使の輪。
イブリースと――堕天使を混ぜ合わせたかのような新種のモンスター。

「なんだ、ソイツ……イブリースなのか?またバグってんのか?
 ……いや、分かったぞ。『超融合(ハイパー・ユナイト)』か。
 このバグ自体がアレをより普遍的なカードとしてゲームに導入する為のテストなんだな」

ちなみに超強そうな感じで出てきた新形態のイブリースだが、その真価をここで発揮する事はない。
結局マスターがクソほど慢心してるこの時点のミハエルなので普通にこの後ボコられる事になる。
ミハエル/イブリースをボコる事にそこまで興味がない場合はエンバースがスキップしたムービーの方をフォーカスしてもいい。

「さておき、これで『門』は確保出来たな。ここからはRTAが加速するぞ。明神さん、次はどこ行く?
 スキップしたチャプターのステージとアクターを融合させられるなら、
 ある程度狙ってこのバグを起こしていくのも面白そうだけど――」

『――この僕を前にして!余裕ぶってるんじゃあないぞッ!いいだろう!
 そのくたびれたオッサンがやられた後でもその態度を保てるか試してみようじゃないか――――ッ!!』

イブリース・メタトロン(仮)がスペック任せの雑な攻撃で明神を襲う――!

97カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/07/07(月) 23:15:24
>「カザハ!引きはがした欠片こっち向かって飛ばせるか!?多少雑でもいい!」

カザハ「うん!やってみる!」

(ミドガルズオルムのパーツを見事に打ち返すジョン君)

>「この巨体で…まずい!!………ん?これ本当に水か?」
>「…?ハリボテ?」
>「なんだよこのハリボテ!やる気ないの…オボボボボボボ!!」

(ジョン君がローポリな水しぶきに飲まれた!
エンバースさんが、ジョン君を空高く打ち上げる)

>「カザハ、上手い事コントロールしてやれよ。でないとジョンは海の彼方だ」
>「そう。これが一番効率の良いやり方だ。ダルマ落としを最速でクリアするなら――真上から叩けばいい。
 吹っ飛ばされたダルマ?肉片?もハリケーンの中で反射するから街への被害も最小だ。多分これが一番早いと思います」

カザハ「えっ!? 上から全部くずすのってダルマ落としって言わなくない!?
   うまいことコントロールって言われたって……」

カケル(手を取り合って一緒にダイブすればいいんじゃないですかね? ……あっ、駄目か……)

(残念、今のジョン君はバニーだ! 全く絵にならない! 大宇宙の法則によりラブコメ演出が阻止された!)

(尚、男キャラばかりバニーになっている理由としては
曲がりなりにも女キャラ?がバニーになると、令和の時代においてはコンプラ的に問題があるからかと思われる。
ちなみに精霊が、性別以前に生物の定義に該当するかという点は議論の余地があるが、
ぱっと見イメージ的に生き物っぽいので「生物の定義を更新しなければならないのではないか」とか生物学会に激震が走っているとかいないとか)

カザハ「そうだ! カケルが背中に乗せて突撃すればいいんじゃない!? 白馬に乗った王子様的な! マリーディアって女王様だし丁度いいじゃん!」

(スチャッとカケルから降りてジョン君を代わりに乗せる)

カケル(えっあっ……)

(ミドガルズオルムのパーツを弾き飛ばしながら垂直落下するジョン君onカケル。それを浮遊しながら観察するカザハ。
ミドガルズオルムが弾き飛ばされると、そこにはドン引きで放心状態のマリーディアがいた!)

98カザハ&カケル ◆92JgSYOZkQ:2025/07/07(月) 23:16:21
カザハ「ステータス異常放心! チャンスだ!」

(カケルは、放心状態のマリーディアを乗せてマスターのもとまで連れて行く)

>「悪いがこっちはRTAの最中でな。湿っぽいムービーはスキップさせてくれ」

(マリーディアは、フロウジェンロックを抱えたマスターに強制連行されていった!
尚、このイベントは本来男性キャラ限定であったが、今はそんな細かい制限は吹っ飛んでいるようだ。
そもそも単に各種デバフが付与されるまで酒に付き合わされて語り明かすだけのイベントなので、女性キャラが対象になったところで何の問題もない)

>「いや、本当は俺も言葉を尽くしてアドベンチャーパートを堪能したいと思ってるんだぜ。けどなぁ――」
>「『まだこのチャプターのボスを倒せていない』んだ」
>「のんびり遊んでる暇はない。さあ、やろうぜ」

(エンバースさんとミハエルとローウェルの三つ巴のコント(?)の後、イブリースと堕天使が混ざったようなモンスターが現れた!)

>『――やってしまえ、イブリース!』

>「なんだ、ソイツ……イブリースなのか?またバグってんのか?
 ……いや、分かったぞ。『超融合(ハイパー・ユナイト)』か。
 このバグ自体がアレをより普遍的なカードとしてゲームに導入する為のテストなんだな」

>「さておき、これで『門』は確保出来たな。ここからはRTAが加速するぞ。明神さん、次はどこ行く?
 スキップしたチャプターのステージとアクターを融合させられるなら、
 ある程度狙ってこのバグを起こしていくのも面白そうだけど――」

>『――この僕を前にして!余裕ぶってるんじゃあないぞッ!いいだろう!
 そのくたびれたオッサンがやられた後でもその態度を保てるか試してみようじゃないか――――ッ!!』

(ミハエルの雑な攻撃を明神さんは難なくいなしたとおもわれる)

カザハ「日本語の豆知識を教えてあげよう。
    本人を前にした時はどれぐらい年上かに関わらずお兄さん、お姉さんと呼んだ方が無用な争いを防げるんだよ。
    それと、スペック任せの雑な攻撃って敵役の専売特許やねん」

カケル「ミハエル君って外国人だから、さっきのオッサンは自動翻訳のような気がする……!」

ミハエル「貴様は何を言っているんだ。
     令和ファンタジーの代表格である葬〇のフリーレンは、せせこましい小細工をかましてくる敵達を
     主人公パーティー側が問答無用の高スペックで押し切るスタイル――!
     日本人のくせにそんなことも知らないのか!?」

カザハ「はい語るに落ちた――ッ! めーっちゃ日本のアニメ語っとるやんけ――!」

ミハエル「いや、今僕は何を……!? 知らないぞ! モンスターを調理しながらダンジョン踏破するアニメなんて知らないぞ!」

カケル「そういえば、以前馬刺しにされる危機感を感じたことがありましたが、時代の最先端だったんですね……」

ミハエル「やかましい! お前美少女の成りしてるけどどうせ元オッサンだろ! ユニサス令嬢転生おじさんだろ!」

(記憶が戻りかけている……!?)


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