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番外編投下用スレ

30ガザーヴァのバレンタインの巻 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:31:25
「おいモンキン、料理教えろ」

聖都エーデルグーテ、教帝オデットに与えられた宿の中庭でポヨリンと一緒に特訓に励むなゆたのところに、
突然ガザーヴァがやってきてそう言った。

「ど、どうしたのガザーヴァ。突然……」

ガザーヴァが顔と顔とをグイグイくっつける勢いで詰め寄ってくる。
さしものなゆたも気圧された。

「ほ、ほら……もうすぐバレンタインデーだろ?
 ホクもさ、ええっと……べっ、別にゼンゼン興味なんてねーケド!
 ヒマだから、ちょっとヒマつぶしで……チョコレート作ってみようかなって……」

「ははあ……なるほどぉ……」

なゆたは瞬時に得心した。
アルフヘイムにもバレンタインデーがある。かつてブレイブ&モンスターズ! のゲーム内で開催された期間限定イベント、
『オデットのママチョコ大作戦!』では、オデットが主役となって周囲の人々にママチョコを配りまくるため、
プレイヤーがチョコレートの原料を大量に取ってくるという趣旨のシナリオが展開されていた。
ガザーヴァもそれに倣い、明神にチョコレートをプレゼントしたいということなのだろう。
それにしても、好いた男のためにチョコを手作りしようとは健気なことだ。
とてもゲームの中の嫌われ者、トリックスターの幻魔将軍が発した言葉とは思えない。
しかし、それは紛れもなくガザーヴァの心からの気持ちであろう。
なゆたはすぐに頷いた。

「もちろん、いいよ。それじゃ明神さんにガザーヴァ手作りの本命チョコを食べてもらおう!
 わたしに任せて、手取り足取り教えてあげるから! それじゃあさっそく一緒に材料を――」

地球では自分と父の分のみならず、隣家の赤城家の食事まで担当していたなゆたである。
当然、チョコレート菓子のレシピもいろいろ知っている。
昔は真一の妹と一緒に並んで厨房に立ち、和気藹々と料理を作っていたものだ。
そんな以前の楽しい記憶を思い出し、ガザーヴァともそうやって料理ができればと乗り気になる。
が、そんななゆたの気持ちとは裏腹にガザーヴァはすぐに首を横に振った。

「は? モンキン、オマエの手助けなんていらねぇよ。
 チョコはボクひとりだけで作る。余計な手出しすんなよな」

「えっ? ひとりで? でも――」

怪訝な表情を浮かべるなゆたに、ガザーヴァはふふんと得意げなドヤ顔を返す。

「オマエは作り方だけ教えてくれりゃいーんだ、後は全部ボクがやる。
 じゃなきゃボクが作ったって言えねーだろ?
 まっ、料理なんてちょろいちょろい! なんせボクは幻魔将軍なんだから!」

「ちょっ……待って、ひとつ訊くけどガザーヴァ、料理の経験は……」

「あるワケねーだろ。オヒメサマだぞ? ボク」

袖なしベストに臍出しトップス、ローライズのホットパンツとスカウトスタイルのガザーヴァであるが、
これでもれっきとした魔王バロールのひとり娘。ニヴルヘイムのプリンセスなのだ。
当然、三魔将として暗躍していたころは大勢の召し使いに傅かれていただろうし、厨房など立ち入ったこともないに違いない。
というかまともな食事をしていたかさえ怪しい。

「えぇ……」

なゆたは言い知れぬ不安を覚えた。
しかし、ガザーヴァは一緒に作ろうというなゆたの申し出を頑なに断り、なゆたが仕方なく書いたレシピを奪い取ると、
さっさと買い出しへ行ってしまった。

「大丈夫かなぁ……」

所在なく立ち尽くしたまま、なゆたは不安げに眉を顰めた。


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