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番外編投下用スレ

31ガザーヴァのバレンタインの巻・2 ◆POYO/UwNZg:2023/02/14(火) 09:35:15
『我、門番……務める……!! ここから先……立ち入り禁止……!!』

「そこをなんとか……!」

『駄目……!! 姉上、誰も入れるなと言った……!! 
 我、門番の役目、果たし……姉上から、チョコレート貰う……!!』

「買収されてるなぁ……」

厨房の入口で錫杖を立て、まるで武蔵坊弁慶か何かのように仁王立ちして進路を塞いでいるマゴットを見上げ、
なゆたはため息をついた。
ガザーヴァに教えたのはガトーショコラのレシピである。
チョコレートのスイーツとしてはそう難しくないものだが、それでも料理未経験のガザーヴァにとっては難敵であろう。
とてもまともに作れるとは思えない。
やはり自分の手助けが必要だと、なゆたはあれこれ手を尽くして厨房へ入ろうとしたのだが、
ガザーヴァの命令を受けたマゴットが頑として退かない。
そうこうしているうちに、

「できた!」

というガザーヴァの声が厨房から聞こえてきた。
まだ、ガザーヴァが厨房へ入って三十分も経っていない。もちろん、ガトーショコラは三十分そこらで作れるものではない。
明らかに失敗している。なゆたははわわ、と焦った。

「マゴット! モンキン入れていいぞ!」

『グフォ……通ってよし……!!』

マゴットが脇に退け、入口が通行可能になると、なゆたはすぐに厨房へ入った。

「もうできたの?」

「あったぼーよ。ボクにかかればチョコレートなんてちょろいちょろい!」

ふふん、とガザーヴァは相変わらず得意げな表情を浮かべている。
キッチンのテーブルには、綺麗に切り分けられたガトーショコラが皿に乗せられて置いてあった。
初心者どころか、プロのパティシエでも不可能なレベルの早さである。

「確かにできてる……」

「まっ、味見してみろよ。マゴットもな」

『グフォォォォォッ!!』

「う……、うん。いただきます……」

マゴットとふたりで席に着き、フォークを持って一口大に切り分け、頬張ってみる。マゴットは皿ごといった。
なゆたは目を見開いた。

「……おいしい……」

『グフォォォォォォォォォォォッ!!』

驚くべきことに、きちんとガトーショコラになっている。
しっとり濃厚なチョコレートの味わいを維持しつつも甘すぎず、仄かにビターな大人のテイストである。
これなら仮に甘いものが苦手な人間であっても美味しく食べられることだろう。

「うはははははっ! そーだろ、そーだろ!
 ボクってば天才だからなー! 料理だってお茶の子さいさい! ってなもんよ!」

ガザーヴァは小ぶりな胸をこれでもかと反らして笑った。
しかし。

「確かに、おいしい。
 でも、これじゃダメだよ。ガザーヴァ」

フォークを静かに置くと、なゆたはそう言ってガザーヴァを見た。

「あぁ? なんでだよ、このチョコレートのどこがダメだってんだ?
 ボクの料理はカンペキなんだよ、ボクにお株を奪われたからってイチャモンつけんなよなモンキン」

「ガザーヴァ。
 ……魔法を使ったでしょ?」

「使った」

ガザーヴァは当たり前のように返した。
父バロールのような無から有を生み出す創世魔法のようなものは使えないが、ガザーヴァも高位の魔法に熟達している。
レシピを見て原材料を組み合わせ、魔法を用いて望みの形に仕上げるなど造作もないのだろう。
なるほど、それなら調理器具もオーブンもいらないし、時間だってかからない。


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