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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

1まるく:2014/02/16(日) 22:26:33 ID:fZg91gZ20
前スレが980を超えそうなので先立てしておきます。
SSを投降する際全部投下できるか、次のスレが立っているかどうか確認するだろう?
誰だってそーする 俺だってそーする。

埋めきるまではPAD5ですかね?

153Saiba066:2014/06/01(日) 10:13:11 ID:7x8Q7aEI0
ネタ切れで3レスしか描けませんでした。すんません。
つい最近まで幻想郷に取材言ってきてネタを取り込んできたのに…
…また投稿するのは遅くなると思います、スイマセン

154まるく:2014/06/03(火) 16:23:43 ID:rKYG9luM0
お二人方投稿お疲れ様です。
色々ありますからね。量じゃないですよ!

>ちょこら〜たさん
今なんでもするって言ったよね?
旧作のキャラでも、しっかり存在感が出てるのがいいですね。実機はもうほとんどないから十六夜ネットとかのそれでしか雰囲気掴めませんから。
里香の腐ってもEXボス感が。小兎姫はまあ一応警察というか…という変人ですからね。当時はそれが流行であったからもありますけど、ずいぶんトンデモなキャラが多かったなと、思います。
しかし警察特有の観察眼はしっかりあるようで。割合恐ろしい実力者みたいですからね。データ的にも。
描写されていなかったホルホースとチルノ、大妖精の仲も書かれていてよかったです。それ故に三人は絆が生まれて今二人が必死になっている、というのが改めて見えて。
スタンド使い…治療と修理。予告の方では治療っぽい仗助が出ていましたけど、相方の方がとんと。FF?それともまた別のキャラが出てくるのか。
次回ですね!アマノジャクにとらわれないように。

>Saiba066さん
久しぶりでも、小さく書いていくことが重要ですんで!忘れない程度に投稿すればよいと思いまうよ。。
各所に分かれてどうなるか。ゆっくりネタでも出しながら幻想郷ライフを。

155どくたあ☆ちょこら〜た:2014/06/04(水) 15:52:55 ID:LLik8pu.0
皆さん淫夢知り過ぎィ!

>セレナードさん
旧作はプレイできないのが普通ですからね。私も十六夜ネット頼りです(汗
『ふらわ〜戦車』のスペックに関しては適当ですw 明らかに魔法か何かの動力や原理を組み込んでますし、大丈夫大丈夫ヘーキヘーキ

しかし なにもおきなかった!(パルプンテ)
西洋の『十字を切る』風習を小兎姫なりにエキセントリック解釈した結果がこれだよ!

すいませェん…『治療』と『修理』両方とも仗助のことなんです
あとで訂正しておきます

「慈悲は無い」
アニメ化するらしいので、楽しみにしております!

>塩の杭さん
語尾特殊キャラは台詞を書くのにかなり苦労しますので、楽しんでもらえたなら嬉しいかぎりです!
「戦車兵の操るティーゲルのアハトアハトが敵戦車を撃破するのが好きだ!」
旧作キャラはあまり二次創作では登場しない分、稀少価値的にもワクワク感を増してくれるので好きです

たぶん長ったらしくて理屈っぽい文章が多くて疲れるからだと思いますけど(名推理)

>Saibaさん
ネタはあるけどモチベが湧かないならともかく、ネタが切れているのでしたら無理に書く必要は無いかと思いますよ。義務じゃあないんですからね。
果報は寝て待て、暫く待っていれば良いネタと巡り合えるチャンスがやって来る筈です!

>まるくさん
里香は唯一の人間のEXボスですからね!
旧作や能力詳細の無いキャラは、勝手に『〜程度の能力』を設定しております。実は小兎姫はこの話の中でも既に『程度の能力』を使いまくっているんですね。
小兎姫には非常に強力な重要キャラとして、今後も状況をガンガン掻き回してもらいますw
変人キャラの観察眼の精度は異常

そういえば殆ど描写していなかった…と、言われて初めて気付きました(焦
動機という一番重要な部分を疎かにするのはヤバい…今後は描写するよう意識します
セレナードさんにも申し上げましたが、『修理』も仗助のことです。もう一人のスタンド使いは億泰。
wikiに転載する時に『治療』と『加工』に修正致します。

156名無しさん:2014/06/18(水) 23:08:12 ID:q2xMfwyY0
東方荒木荘面白いです。「サイバー」って読むのでしょうか···?
これからも執筆頑張ってください。応援してます!

157セレナード:2014/06/19(木) 21:29:57 ID:qQ3hNGVE0
みなさん、長らくお待たせしました。
東方魔蓮記最新話、投稿を行います!

158セレナード:2014/06/19(木) 21:31:09 ID:qQ3hNGVE0
ディアボロはスカイダイビングのように、俯(うつぶ)せの体勢を取りながら落下し始めた。
スタープラチナもディアボロと同じ体勢だが、マミゾウを掴んでいる右手を放そうとはしていない。
そしてスタープラチナに掴まれているマミゾウは、ディアボロと反対の方向を向かされた状態でスタープラチナと一緒に落下させられている。
どうやら、このまま落下してマミゾウを地面に叩きつけるつもりのようだ。
抱きかかえるような感じで落ちていてはダメージをあまり与えられないせいか、スタープラチナも右手にマミゾウを掴みながらスカイダイビングの降下時のような感じで落ちている。

「……?」
落下の最中、突然右手から何かを掴む感触が無くなったことに気づいたディアボロは、スタープラチナにマミゾウを掴んでいるはずスタープラチナ自身の右手を確認させる。
……だがそこにマミゾウの姿はなかった。
「お主、儂をちと甘く見過ぎじゃ」
聞き覚えのある声を聞いて上を見上げると、いつの間にかマミゾウが浮遊した状態でディアボロを見下ろしている。
「なッ……!?」
自身もスタープラチナもマミゾウを見ていなかっただけに、ディアボロは驚きを禁じ得なかった。
だが事前にマミゾウの記憶を見ていたことが幸いして、すぐにディアボロは一つの憶測を建てることができた。
「(見ていなかった隙に変化したか!)」
何に変化したのかは見ていなかったためにわからない。
自身を掴んでいたスタープラチナの手をすり抜けたことから、何か細長い物に変化したのかもしれない。
ディアボロが驚いたのを見て、マミゾウは『してやったり』と言わんばかりの表情見せたが今はどうでもいい。
落下しているのが自分とスタンドだけになってしまっている以上、早急に落下に備えなければならない。
さらに、ディアボロはマミゾウが背後から弾幕を撃ってきたのをスタープラチナで視認した。
スタープラチナに背中を守らせると同時に氷柱を自分の真下に高く作り、接地している部分を地面ごと凍らせて固定させる。
そのまま自身をスタープラチナに掴ませながら少しずつ降りていき……。

バランスを崩さないようにして、何とか氷柱に着地することができた。
このまま柱から冷気が離れていくのをホルス神で抑えていれば、解けかけた氷柱で滑るなんて事態は避けられるだろう。
「……やれやれだ。考えが『甘かった』か」
一難を乗り越えたディアボロは、そう呟いた。
第4部の承太郎を再現した今の服装は、コートは袖以外は白。ズボンも白。帽子も巻きと帯、エッジの部分は金色で、それ以外は白。
帽子にはサイドクラウンに錨のようなアクセサリが3つと、四角形の中心に左手の型が隆起したような形のアクセサリが一つ。
ここから次の行動に移るには特に支障はないだろうが、空模様とは全然違う色が大部分を占める服装をしているために目立っている。
……隠れてコソコソ攻撃するつもりは本人にはないので目立つかどうかは関係ないのだが。

そして、彼女にとって有利な状況でありながら、マミゾウは弾幕を撃つのを止めて様子を伺っている。
それはまるで、ディアボロがこの状況をどう乗り越えるのか楽しみにしているように。

スタープラチナのおかげでマミゾウが何もしてこないのを理解しているディアボロは、地上に下りる為に服の後ろ端部分を形成している肉を操って氷柱にしっかりと巻きつけ、自身は転がって落下する。
そうすると、まきついている肉と服が繋がっているために落下せず途中で止まることになる。
そして氷柱に足をかけ、スタープラチナも使ってマミゾウの様子を伺う。
ロープ1本(実際はコートを構成していた肉だが)で降下、そして空中には弾幕を張れる存在……。
まるでどこかの映像作品やゲームに出てきそうなアクションシーンのようである。
スタープラチナに抱えさせて下りてもいいが、そうすると接近されたときにまともな対応手段が持てないし、接近されなくても弾幕への防御手段が一気に乏しくなる。

159東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:33:37 ID:qQ3hNGVE0
おっと、名前を変えるのをしていなかった。
それでは、2行下から再開です。



ディアボロはその状態で地面の方に方向転換すると、氷柱を蹴る。
その衝撃によって彼の体は宙に浮き、もう一度重力に従って落下を開始する。
そして、肉塊の端が氷柱に巻きつけられていたことにより、弾幕を受けたことにより形が崩れつつある学生服型の肉塊は紐解かれるように形を崩していく。
背広から形は崩れていき、それでもなお彼は何度か氷柱を蹴りながら落下を続けていく。
時々弾幕をスタープラチナが防げず、衝撃がディアボロにも伝達するが、それには耐えるしかない。
マミゾウの方も彼に弾幕が届かないことに疑問を抱いたのか、弾幕を撃ったまま右側に移動してきた。
ディアボロもそれをスタープラチナの視界を通して視認し、スタープラチナをマミゾウから直線上の位置に移動させる。
現在、氷柱の半分ほどの大きさを駆け降り、同時に学生服もほとんどなくなりつつある。
解れていく肉を細くすれば学生服が無くなるより先に地上にたどりけるかもしれないが、彼の体重か弾幕で肉が切れる可能性も上がってくる。
だからといってこのままでは、氷柱を降り切るより先に学生服が無くなる。
だが、マミゾウが早々にスタープラチナの手をすり抜けて離れてしまったことによって手が空いたため、いざというときはキャッチさせることもできる。
弾幕が直撃するのは覚悟の上で、だが。
「逃げ続けては儂には勝てんぞ」
「生憎、飛び道具の打合いでは俺に勝ち目がないんでな」
マミゾウの発言を半ばどうでもいいように返しながら降下を続けるが、そろそろ糸の量が限界に近くなってきた。
このまま両袖の形が崩れてしまうと、肉体に纏わせた肉を使うか、ロープとして使えなくなるかのどちらかになる。
そこで、ディアボロがとった行動は……

スタープラチナの防御態勢を解いてディアボロを掴ませ、それと同時に弾幕を防げるように氷の壁を氷柱とつながる様に出現させる。
糸肉が氷壁に押し出されるが、その勢いでちぎれる心配は無用だ。
そして、この氷壁をだした彼の本当の目的は防御ではなく、マミゾウの視界からディアボロを消し去るのが目的だった。
例え大量の弾幕によって想定よりも早く氷の壁が壊されようが構わない。一瞬でも視界から消えれば、それで十分だ。

160東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:35:24 ID:qQ3hNGVE0
……あれ、訂正したはずなのに直っていない。
『学生服』は『コート』に脳内変換していただけるとありがたいです。

スタープラチナを誘導して氷壁の陰に移動したことで、マミゾウの視界からディアボロの姿が消えた直後、時間が止まった。
この間は、時の流れに干渉できるもの以外は例え何をされようとも時が止まっていたことに気づくことはない。
それを利用し、時が止まっている間に自身をスタープラチナに地上まで下ろさせる。
その間に再び時が動き出し、それから間もなく氷の壁にヒビが入り、広がって氷の壁の全体を侵食して砕ける。
あくまでマミゾウの視界に入らなくなる程度の厚さしかないため、耐久性なんてまったく気にしていない。
氷の壁の向こうにディアボロがいないことに気づいたマミゾウは、ディアボロが降下するときに利用していた糸肉がいつの間にかかなり伸びていることに気づき、下の方を見る。
そして、いつの間にか相手が地上にいることに気づき、マミゾウも地上に下りる。
ディアボロの姿は糸肉を使い果たし、コートが無くなっていた状態だったが、それ以外に特に変化は見当たらない。
「……お主、ひょっとして儂らと同じ妖怪ではないのか?」
「違うな。俺は人間だ」
ディアボロの能力の多彩さに、とうとう『人間であるかどうか』すら疑われるようになってしまった。
今まではDISCを変えるところを相手が見ていたためにまだ人間として扱われていた(かもしれない)のだが、この戦いでは一度もDISCを変えていない。
だからこそ、複数の特殊な力を使っている彼を人間として見ることができなかったのだろう。
「そう言われても……」
マミゾウはそう言って氷柱を見る。
ホルス神の能力によってつくられた10mを超えている氷柱は、冷気を風に流されるままに散らしていく。
「あんなものや沢山の氷の槍を作り、コートを操って槍と一緒に飛んできたりロープ代わりにして下りる場面を見せられては到底信じられぬ」
そう言ってディアボロの方を再び向いたマミゾウは、疑惑の目を再びディアボロに向ける。
「それに、氷で弾幕を防いだと思ったら何時の間にかお主は地上にいるときた」
闘いを見ていた狸たちは何の反応もしない。ただマミゾウの話を聞いているだけである。
もしかすると、マミゾウは薄々何か感づいているのだろうか。
「………」
ディアボロはマミゾウの話を聞きながらエアロスミスのレーダーをチェックする。
このタイミングでも、反応の数に変化はない。
「氷を操り、コートを操り、自らの速さを操り、儂や自分を触れずに掴むことができながら、それらの能力に何一つ共通点を見出せぬ」

パチュリーの場合は『精霊魔法の系統』という共通点がある。
萃香の場合は『密と疎を操っている』という共通点がある。

マミゾウの推理は外れている。
彼の能力には、『特殊な道具(DISC)』を使用しているという共通点がある。
だが彼女との戦闘では一度もDISCを取り出しておらず、装備しているDISCの能力には何も共通点を思わせるようなところはなかった。
ただそれだけのことである。

161東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:36:48 ID:qQ3hNGVE0
「まさに多芸。じゃが無芸ではない。己の能力を把握してうまく使いこなしておる」
そう言ってマミゾウは笑みを浮かべると
「そして、もしやとは思うが……儂が見ているその姿さえ本当の姿ではなかったりするのかのう」
ディアボロが姿を変えていることを言い当てて見せた。
「……何故そう思う?」
「あの『糸』じゃ」
マミゾウはディアボロの質問に答え、さらに話を続ける。
「外界の技術を用いても、『服の素材として』使われていながらお主の『体重を支えきれるほどの強度を持つ糸』など聞いたことはない」
「故にあの糸は、何かの能力で作られた糸の役割をしている全く別の何かではないのかと思ってのう」
「何かしらの術で強度を強めたとは考えないのか?」
マミゾウの考えを聞いたディアボロは、彼女に一つ質問をする。
「空を普通に飛べぬお主に、そのような術が使えるとは思えんのう。他の能力を使ってこないところからして、お主の能力はあの4つだけのようじゃな」

博麗の巫女である霊夢は自身の能力によって空を飛ぶが、巫女の力を有している。
普通の魔法使い(或は黒魔術師)と称される魔理沙は魔法によって空を飛び、魔法を使うことができる。
その他にも確認されているほぼ全ての人外の存在も、何かしらの方法で空を飛ぶことぐらい、簡単にできる。

だが彼はあの4つしか能力を使ってこない。他の能力を使った方が楽に乗り越えられるはずの状況でも、使ってくる様子も全くない。
故に、空を普通に飛ぶことがままならない彼が他に何かの術を使えるわけがないとマミゾウは考えたようだ。
「それにお主のコートは、袖の部分の色が異なっておった。ならばあのコートを形作っていた物は、色を変えられると見るのが自然じゃ」
「そのような物をもしもお主が全身に纏うことができたのなら、お主は姿形を変えることができる。というわけぞい」
「………」
ディアボロは何も言わなかった。
何のヒントも教えなかったのに、彼のとった行動から(可能性の一つとして挙げたとはいえ)マミゾウは彼が姿を変えていることを見抜いてしまったのである。
「よく頭が回るものだな。そこまでたどり着かれたら、いくら言い訳をしてもお前は追及をやめないだろう」

ディアボロがそう言った直後、彼を覆っていたイエローテンパランスが膨張し、真っ二つに裂ける。
突然目の前の男の体が破裂ことにマミゾウも周りの狸も驚いた。

「ならばもう、この肉塊の内に身を隠す必要もないな」
内側より本来の姿を見せたディアボロはそう言って、イエローテンパランスとホルス神の能力を解除する。
すると黄色い肉塊も、氷柱に結ばれていた糸の役割をしていた肉も、『そこにあった』という痕跡を残すことなく消えてしまった。
氷柱は急速に冷気を散らし、イエローテンパランスの肉と同じように消えてしまった。

「……まさかお主が正体だったとはのう。儂らのような変化をしていたのなら見抜けたやもしれぬが、何やらよくわからぬ物に覆い隠されて姿や声を変えていたとは、予想もつかぬわい」
どうやらマミゾウ自身もこの化け方は初めて見たらしく、驚いたかのような反応をしている。
……が、どうやら変わった化け方を目撃したことが面白かったのか、その反応に反して口元は笑みを浮かべている。

マミゾウを含む妖獣は、尻尾の大きさがそのまま妖力の大きさを示している。
故に、妖力の大きい妖獣が化けた場合、その『妖力の大きさのせいで』尻尾が隠せないことが多い。
そうするに妖力が大きい者は化けさせる規模が大きくなるために(妖力の大きさを示している箇所だからなのかもしれないが)尻尾が隠せないことがある。
ちなみにマミゾウの尻尾はそこらへんの狸よりは大きく、自身の手足よりは確実に太い。

それと比べると、ディアボロが今回用いた化け方は『肉体を覆って正体を隠し、覆ったものの性質を利用して姿と声を変える』というものだった。
そのような道具はどこの昔話でも語られたことはなく、マジックアイテムでそのようなものを作ろうにも、恐らく声を完全に別人のものにすることはできないだろう。
しかし、自身より小さい者や非生物には化けることはできず、他のものをばけさせることもできない。
そのうえ化けている最中に衝撃を受けると形が崩れたりすることがあるという少々難儀なものである。
が、この能力は攻防一体の性質を持つために戦闘にそのまま転用できるし、隠しきれない箇所はないために挙動不審な行動を取りさえしなければ怪しまれることはほぼない。

162東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:38:40 ID:qQ3hNGVE0
「いずれ気づかせる必要はあったが、大したヒントも与えずに姿を変えていることに気づくとは思わなかったな」
若干呆れ顔でディアボロはそう言う。
周りの狸はちょっと警戒しているらしく、ディアボロからかなり距離を取っている。
「なんじゃ、あの時会ったその場で正体を見せておけばよかったものを」
「それもできたが、お前の実力をこの目で見ておきたくてな」
そう言ってディアボロはイエローテンパランスのDISCを額から出す。
それを見た狸たちは今まで見たこともない光景に驚き、さらに距離を取る。
「……何度見ても額からそれが出たり入ったりする光景は異様じゃのう。更に出入りの痕も見当たらぬから不思議じゃ」
「他の奴らはあまり気にしていないように見えるが、心の中ではそう思われていたりするかも知れないな……」
ディアボロはマミゾウとそう言葉を交わしながらイエローテンパランスのDISCをケースに入れる。
ディアボロからだいぶ距離を取っていた狸たちも、マミゾウとディアボロが親しげに会話しているのを見て少しずつマミゾウの元に戻ってくる。
「ところで、お主の用事はこれで済んだのかい?」
「まだ済んではいない。……むしろこれからが本題だ」
ディアボロの少々柔らか目になっていた表情が再び真剣になる。
「俺はこれからあの聖人の元に偵察に行く」
「ほう……」
ディアボロの発言に、マミゾウが反応する。
まだ『情報が揃っておらず』、『敵になる可能性が高い』存在の元へ、自ら偵察に行くと言い出したのだから。

「だが、一人では難しいだろう。何せ相手は『聖人』だ。どんな力を持つのかわからない」
「……だから、お前の助けを借りたい」
マミゾウはディアボロに呼びかける。
妖力が大きい故に正体の発覚の可能性は他より高いが、『経験』も『知識』も『技術』も、他の狸を超えているのは確実であるからだ。
「儂がぬえに呼ばれたのは、妖怪のピンチだから助けてほしいと言われたからじゃ」
マミゾウはそう言ってディアボロに笑みを見せる。
「故に、お主が聖人達について探るというのなら、手を貸してやらねばならぬ。そうしなければ、儂がここに来た意味がないわい」
彼女がこの幻想郷に来たのは、ぬえに助けを求められたから。
ぬえが助けを求めたのは、『聖人』が復活したから。
そしてぬえの知り合いであるとある人間が、自身に『聖人が本当に妖怪にピンチを齎(もたら)すのかどうか探りたいから助けを借りたい』と自分に頼みに来た。

化かすのは化け狸の得意技。ならば、その力を使ってその人間が聖人の考えを探る手助けをしてあげるのは道理である。
それが聖人たちの思想について知るチャンスにもなるし、懐く思想によっては妖怪のピンチを『杞憂だった』という形で救うことにもなりうるのだから。

163東方魔蓮記第四十五話:2014/06/19(木) 21:39:18 ID:qQ3hNGVE0
「……ありがとう。お前が力を貸してくれるなら、俺も安心できる」
ディアボロはたった一言、感謝の言葉を述べた。
聖人達のもとに一人で潜入するのは、彼にとっても多少の不安はあったのかも知れない。
「……ならば、聖人たちのもとに向かう前に準備をするとしよう。お前は何が必要だ?」
「儂なら、化けさせればすぐに用意できるから大丈夫ぞい」
マミゾウは自分の姿だけでなく、他の物体も変化させることができる。
これが彼女のみにできることなのか、それともある程度の力を得た化け狸なら誰でもできるのかどうかは分からない。
だが、彼女に何か足りないものがあれば葉っぱ一枚拾ってすぐに化けさせればいいだけのことだ。
……が、流石に何らかの術の力を持つ道具に化けさせるのは無理だと思われる。
最も、目撃者はおらず、彼女自身もそれについては何も言っていないため真相は不明である。
「そうか。俺は……」
彼の頭の中にふと頭に浮かんだのは漫画の方の『ジョジョの奇妙な冒険』。
いざという時にあるスタンドを使うことを考えたのだが
「大丈夫だ。DISCの忘れ物はない」
その能力が能力だけに、使うのはやめることにした。
そのスタンドとヘビーウェザーは、今の彼がその二つのスタンドの内の一つ『のみ』をコントロールするためだけに精神力を集中しても、制御しきれるかどうかわからないからだ。
片や発動すれば決して薄まることがない毒ガスのような危険な能力で、もう片方は他のスタンドと違って『無意識』の領域に秘められた憎悪の力故に、本来の持ち主でさえ制御不能だからである。


「そうか、では一休みしてから行くことにするかのう」
「ああ。いくらなんでも戦闘直後の状態のまま聖人のもとに向かうのは危ないだろうからな」
マミゾウの提案にディアボロは同意し、その言葉通りまずは一休みすることにする。
妖力を少しでも回復したいマミゾウ。走り回ったりした故に筋肉を疲弊させたディアボロ。
お互い、念を押して一休みしたほうがいいだろう。


これから彼らは、一休みの後に聖人たちのもとに向かう。
『聖人たちは妖怪の敵になるのか』、この一点を徹底的に探るために。

この一点が、妖怪たちが反逆を仕掛けるか否かを決めるのだから。

164セレナード:2014/06/19(木) 21:42:26 ID:qQ3hNGVE0
投稿完了。多少のミスを発見できなかったのは失敗でしたが、無事に投稿ができて良かったです。

そして最近、1話分を書くのに時間を掛けすぎると段々おかしくなって行っているような気が……。
早めに書くか、おかしくならないように気を付けないと。

165どくたあ☆ちょこら〜た:2014/06/20(金) 09:47:15 ID:/DNVQlgs0
セレナードさん、投稿お疲れ様です。
vsマミゾウ戦はお互い傷を負うことなく無事終了。いよいよvs神霊廟編突入ですね!
何やら意味深な思考ががが…
あの【最弱】スタンドの登場フラグ?
あれは組織の瓦解、信用の失墜には最適な能力ですからね。どういった使い方をするのか…

166まるく:2014/06/23(月) 20:05:12 ID:yjo1Zxdk0
投稿お疲れ様です!

テンパランスは普通に強いスタンドだけど本体&悪役だからで倒されたいい例ですからね。
バンジー肉紐、ストーンフリーを思わせる使い方。

制御できないスタンド、軽い説明と概要から…何でしょう?パープルヘイズかな?と思ったけどあれ速攻で薄まるし。
うーん、やっぱりちょこら〜たさんの言うとおり、2個目の最弱スタンドなんでしょうか。
それにして、無意識の力は恐ろしいですね。よく考えればその二つ似ている性質だな、と。
こいしちゃんいずサバイバー。

マミゾウさんのしっぽはヘタすれば自分の胴より太いから…まあ、強力な妖獣ですしね。
確かに、妖怪とかでは何かを被って姿を変える、というのは少ないのかも。
次の作品も楽しみに待っています。

167中学三年生:2014/06/28(土) 21:32:52 ID:BHG1lvaQ0
話の流れをブッた斬りますが、チョコラーたん、最新話投稿お疲れ様です。旧作キャラか···興味が沸いてきたッ。





様々なネタが詰まった第二部の予告編をもう一度読み返しましたが···素晴らしい!すごいぃい!!何てッ言ッたッてあの聖白蓮が彼の有名な戦争s大好き人間の演説を···!もう爆死ぃうモノですよコイシィァ!

168名無しさん:2014/06/29(日) 11:46:13 ID:3FuTZtGQ0
落ち着けぇええぇ!

169まるく:2014/07/04(金) 00:17:03 ID:IS/fltSA0
うへぇ、月末と思ってたら色々重なって過ぎる…
明日の夜…今日の夜?くらいに投下します。
という自分を追い込んでいくスタイル。きっと終わるって…。

170まるく:2014/07/04(金) 20:15:00 ID:IS/fltSA0
遅くなりました。
自作の投下とさせていただきます。

171深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:17:05 ID:IS/fltSA0
「冥界……ですか」
『そうだ。冥界に赴き、その主である西行寺幽々子とコンタクトを取れ。死後の世界、というと良い物ではないが、あの尼僧の言う通りならば幻想郷ではそれほど境の無い物と認識してもよいだろう』
「……僕が知っている冥府と東洋の宗教で謳われる死後の世界は違いがありますが、そこは幻想郷特有の世界、とでもいうのでしょうか。地の底と一般に言われるところへ、今天を目指して向かっているのですから」
『それについてはこちらも未知の状態だ。お前がその場で感じ取り、理解するのだ』
「了解しました」
『お前の手元にも電話があったようで助かったぞ。危うく、私自らがその地へ赴く必要ができてしまう所だったからな』
「そうですね。命蓮寺でも借り物でしたし、今使っている物も借り物。こちらにトランシーバーの様な、……ちょっと、男性が持つには不自然ですが、器具を所持していますのでそれを渡せればボスにも手間を取らせずに伝達が行えるのですが……」
『文明が中途半端な発達を遂げた世界だ、現状に存在しない物を嘆いてもしょうがあるまい。良くも悪くもここは異世界だ、新たな世界に順応しなければ生きることはできない。これはどこでも同じだろう』
「その通りでした。失言をお許しください」
『構わん。では任せたぞ、私のドッピオよ』
「了解しました。……ボス、最後に一つ、僕の戯言を聞いていただけないでしょうか?」
『…………なんだ?』
「最初に電話した時には今にも死んでしまいそうな、消え去ってしまいそうな……脆い炎の様な印象でした。でも、今のボスからは以前と同じ、威厳と力強さを感じられます。何があったかは聞きません。ただ、安心しました。それだけです」
『…………そうか、そうだな。あの時はあまりに唐突な出来事でさすがの私でも動転していた、とでも考えておけ。あまりの展開には人間隙が生まれる。前の下っ端のカスどもにギリギリまで追い詰められたように、
 我がスタンドでも読み切れぬ運命に気が持たなかった……それを弱さとして、私は受け止めた。ドッピオ、私たちはまだ成長する必要がある。それをここで私は認識したのだ。……以上だ』

 幻想郷の空を、一人の少年が行く。
 ドッピオはボスとの『電話』を行いながら冥界へ、空の彼方まで飛んでいた。

「すまなかったね、長く電話を使ってしまって」
「あ、あー……はい」

 そう言って、ドッピオは大きく咲いた花を妖精の一人に返す。
 受け取った妖精は、何事もなかったかのように花を電話と言って返すドッピオに対して戸惑いを隠せない。
 無理もない。急に一人の少年が雲を操り近づいてきたかと思えば、

『とぅるるるるるるるるるるん、るるるん。……ボスからの電話だ、取らせてもらってもいいかな』

 と、かなりドスを効かせた声と、有無を言わせない恐ろしい表情で話しかけてきたからだ。あまりに怪しく、恐怖を覚えるその行動に、何も言わずに渡してしまうのは精神の幼い妖精では無理も無い行動だった。
 花を手渡された妖精と、その取り巻きの妖精。不気味さからさっさと逃げ出そうとしている姿に、

「あー、電話ついでにすまないけど……冥界? っていうのはこの先でいいんだよね?」

 そう、ドッピオは確認の質問を尋ねる。
 元々指示通りに雲は動くため、ドッピオの知らぬ土地でも幻想郷の中、地名が定められているのなら問題なく向かえるのだが、一人での知らぬ土地、先には案内人もいない。
 そんな状態で向かうのは心もとないため、つい出た質問だった。

「え? うん、お屋敷はこの先ですよ?」
「白玉楼はこの雲越えたら、おっきいおっきい門があるから、それを越えればすぐだよ」
「そう、ありがとう。何にもお礼はないけれど」

 答えも安心を得られる答えであり、問題はなさそうだった。
 あいさつを済ませると、雲もそれを理解したかのように速度を出し、冥界へと向かっていく。


「……変わった人だったねー」
「頭が春です?」

172深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:17:59 ID:IS/fltSA0


 空を進み、高度を増すごとにだんだんと空気が冷え込んでくる。が、山を見下ろすほどの高所になっても酸素が薄くなることによる息苦しさは感じられない。
 良いことではあったが、途中でそのことを想像の外から置いていたことに対して後悔していただけあり、ドッピオは胸をなでおろす。
 生身でここまでの高さ、もはや下を見ても恐怖の感情は浮かんでこない。現実離れした所に存在しているという、どこか感慨深い感情が浮かび上がってくる。
 上を見ても下を見ても死の世界。そんな通路で身を守る物は預かり物のこの雲だけ。こんなもの、幻想と言わずになんというだろうか。

「……!! あれ、か……?」

 その中を進んでいくと、上も下も果ての無い、とてつもなく巨大な門が現れる。
 傍らにはいくつもの柱が浮かび、門自体にも大きな紋章が浮かんでいる。
 どこを基点として建造されているのか、それともこれほど巨大な物が浮かんでいるのか。その先を見せぬように、沿うように建っている壁らが、大地から見えないのはどういうことか――
 様々な疑問が入り組み浮かび上がるも、そのすべてを昇華させる、感動。
 それが、たどり着いての第一印象だった。

「……けれど、どうすればいいんだろう」

 勝手知ったるように、乗っている雲は進んでいくが、ドッピオ自身は先の通りここについては何も知らない。
 一見通れるようには思えない門を、どうするつもりなのか、どうすればいいのか。
 そう考えている間にも、ぐんぐんと門に近づいていく。

「…………、わ」

 少し身を乗り出せば紋様に手の届きそうになる距離まで近づいた時、石を投げ込まれた水面に浮かぶ波紋のように、紋様が揺れ動く。
 その投げ込まれた石のごとく、ドッピオの全てを飲み込む。
 一声上げる前に、身体が入り込むと、そこには最初から何もなかったかのように。荘厳な門だけが建っていた。

「わわあっ?!」

 その出来事に驚き、身を縮めて構えるが、そのころには辺りは一変していた。
 先ほどまでの雲海ではなく、目の前に広がるのは長い長い階段。門と同じく、その上は果ての見えない、洩矢神社の前にも長い階段が積まれていたが、その非ではなかった。
 そして、先ほどまでに感じていた空気の冷え込みとはまた違う、体の芯から身震いを無理やりに引き起こされるようなうすら寒さ。
 ドッピオには馴染みはない、死者を供養するための卒塔婆が階段の脇にいくつも、いくつも、いくつも立っておりその周りをうっすらと不定形の白い気体の様な物が漂っている。
 まるで、ここに踏み入れた彼を仲間に導こうかと値踏みをしているように。

「……っ、ここが、冥界、か」

 妖怪の山とは違う、人間の本質の恐怖を突き動かしているかのような恐怖感が感じられる。
 もし何もなしにここに来たのであれば今すぐにでも逃げ出したいと思えただろう。
 ボスの指令が無ければ。ボスの無事が聞けなかったのならば。ディアボロがここにはいないと知っているから。
 その事実があるからこそ、彼はその先へ踏み出すことができた。

「そのまま階段を上って、でいいんだよな……頼むよ」

 ドッピオの声と共に、雲は再び移動を開始する。ふわりふわり、冥界の奥へ向かって。

173深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:18:59 ID:IS/fltSA0

(止まれ……と言っても聞こえてはいないだろうが)

 階段を上っていると、妙な感覚と共に声が聞こえる。
 直接話しかけられているわけではなく、頭に響くような、感覚が声を感じ取る様な、そんな響き。

(ここより先は冥界の主、西行寺の屋敷。許可の無く侵入することは許されぬ。これは警告だ)

 視線の先、はるか遠くにぼんやりと見える人影。
 幼い少女のようだが、その右手は一言でいえば異様であった。
 柄の無い刃をぐるぐると布で包んで無理矢理に持ち手を作り、さらにその持ち手を右手に縛り付けて固定している。これもまた、無理矢理に。
 そのせいで本来の長さよりかなり短くなってしまっているが、それでも、二度と手放さないように、と過剰に思えるほどに。

「……何者だ?」
(もう一度だけ、だ。ここより先には進ません……聞こえていないだろうが)

 少女の方から一つ一つと階段を下り、その姿を明確にしていく。
 それは、まるで色の無い世界から出てきたような、輪郭の淡い姿。異様な右手の刃だけが色彩を保っていて、それだけが現実感を感じさせ、ちぐはぐな印象を与える。
 その刃を見せつけるかのようにドッピオの方に向けて、斬りおとされるか退がるか、を選ばせてくる。

「……西行寺の屋敷であっていることは確かみたいだけど……いわゆる警備の人間かい、君は。後、聞こえてるよ」
(なに?)

 ドッピオの言葉に一瞬少女は目を丸くする。

(そうか……くくく、ふっはははははは)

 何がおかしいのか、左手で顔を隠すように、声を抑えるようにしているが感情と共にあふれてしまうのを止められないかのように。
 その怪しい雰囲気から、何をしてくるかわからない相手に対してすぐに行動を取れるよう、雲から降りて警戒を強める。
 一仕切に笑い終えると、鋭い切っ先とよく似た、人を切り殺すことに何のためらいもない目をドッピオに向ける。
 幻想郷には合わない、弾幕ごっこで見る様な真剣さではない。ドッピオが生きていた世界でよく見た、頭の冷えた狂気の眼からの真剣さだった。

(まさかスタンド使いがおれの他にいるとはな! ならばその実力みせてもらおう!)

 その頭に響く声と共に、刃を構えて戦いの意を示す。

「ちょっと待て! なんでそうなる!?」
(この先に行きたくば、このおれを倒してから、ということだ!! 強者との戦いこそ我が愉悦、軟弱な女の遊びなど性には合わん!)
「女じゃん!」
(これには事情があるが、今はそんなのどうでもいいだろう! さあどうする、闘るか、退くか!) 

 滾ったような眼差しで少女はドッピオを見据える。そして、闘い以外には認めないという意思を強く伝えている。
 ドッピオは髪をかき上げ、エピタフの予知を映しながら。

「…………こんなことに無駄な時間を費やしたくはないんだけれど」

 そう言いながら、階段を上り間を詰める。
 スタンド使いという以上、何らかの像があるとは思うが今はそれが見えない。何か手の内にあるだろうが、そもそも自分が近距離型なので、いかにして近づけるか、が戦いの胆となる。
 姿も異様だが、最も異質なのはあの刀。それの注視と、予知の確認。

(スタンドとは闘いの才能、精神の根本、本能! そしてそれを自由に操れるものが立ち会えば起こる事柄はただ一つ! お前はこの先には行けん、いつまでたってもな!!)

 少女は宣言をすると、階段から飛び、上段からドッピオに斬りかかる。
 相手は刃物、自分は肉体。拳で刃を受けては無傷では済まないだろう。防御行動は基本的に回避となる。
 そして、最初の行動だけでも敏捷性はかなりのものだ。そのまま潜って逃げ切ることもできない、とみえる。
 そこまで判断し、階段の外、卒塔婆の並ぶ整備のされていない地に逃げるように避ける。
 いかにして虚を突いて近づき一撃を喰らわせられるか。そこが戦いの要。

174深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:19:32 ID:IS/fltSA0

(シャアーーッ!!)
「……くっ!」

 もちろん、少女は事を簡単には進ませない。その驚異の脚力でドッピオを追う。
 攻撃が届きそうになる度、周りの物を気にせずに刃を振るう。攻撃を回避する度、刃に触れた物は斬られ、地に転がり落ちる。
 ぞんざいに取り扱われ、闇雲に振るわれているその刃は、実によく研ぎ澄まされた一品だということを、知らしめるには十分であった。
 その攻撃を、予知で見ながら躱しつつ、反撃の機会を待ち続ける。予知を利用した、基本的な戦い方。
 だが内心で、ドッピオは焦りを感じていた。以前、はたてにも同じように戦ったが結局一撃も与えられなかった。スタンド使い、という利点は元が同じ人間だからこそ。同じ能力だからこそ対等に戦える。
 人間を越えた生物との……文字通り桁の越えた相手には太刀打ちできないのではないか、と。

「くそっ!!」

 だからといって、今の状態で自分に何ができよう。結局この土壇場で改善の案など浮かびはしない。
 リゾットの様に、ゆっくりと攻め立てる相手と違い、この少女は持ち前の体術を生かした、息をつかせぬ接近戦を仕掛けてくる。思考のための時間を作らせてはくれない。

(どうした、その程度か! 攻めねば何も掴むことはできんぞ!!)

 考えを重ねる度、余裕がなくなっていく。少女が斬り込むごとに刃を振るう速度と踏み込みが早く、強くなっていく。
 それはまるで、ドッピオの回避を『憶えられて』いるかのように。

「……ッ! しまっ」

 予知に目を向ける暇もなくなるほど、少女だけ早回しで再生されているかのように段々と早く、強く打ちこまれる。
 もはや下がりながらの回避は不可能となるほどに。

(捕らえたぞ! もはや下がること叶わぬ!)

 ドッピオは足を止めてその剣戟を受けざるを得ない状況となった。
 生身とは違い、スタンドの拳であればまだ刃を受けきれなくはないが、それでも受けるたびに細かな傷がドッピオの手に反映されていく。

(ウッシャアアアアーーーーーーーーッ!!!)

 少女の声とは合わぬ、獣じみた裂帛の気合いが感覚を通してドッピオに伝わる。
 それに合わせたように、凄まじい猛攻が彼を襲う。
 迫る刃を、あるいはその持ち手を幾度も弾く。その度に勢いを増して襲いかかる。弾く。襲いかかる。弾く。

「あっ、……」

 その猛攻に追いきれなくなった一撃を、時間が緩やかになり、その中を通るように肩口から胴まで振り下ろされる。
 それだけでは終わらず、返す刀で少女はドッピオの胸を正確に貫く。

「…………あ、ぇ、あれ」

 大量の血と味わったことの無い痛み。心の臓を貫く痛みとは違う冷たい感覚。
 それらが襲い来る、と思ったが何も起こらない。
 むしろ、身体には確かに通った感覚があったにもかかわらず、一切の怪我をしていなかった。
 へな、とその場にへたり込むドッピオ。それに対し、少女は姿勢を維持したまま。胸に突き刺された刃はそのままドッピオの体の中を通り、座り込んだときに肩口から離れる。刃とドッピオの身体には、一切の汚れはなった。

(……拍子抜けだな。全く持って。おれの障害にも経験にもならん)

 そう言って近場の木に目掛けて2,3と刃を振るう。一振りはそのまま木を切り裂いたが、二振り、三振りと振るった刃の軌道は木の中を通るが、驚くことに少しも切り口が作られていない。
 少女は興が失せたかのように、再び階段の方へと向かう。

「ちょ、ちょっと……」
(修練のための人斬りは主の許可はあるが、本気の殺しはない。それまでの事よ。最もお前の様な雑魚を殺したところで何にもならないが)

 振り返り、そう冷たく言い放つ。全く歯牙に掛けていないその態度。
 もし、その後ろ姿を見せつけたならそのまま後ろから攻撃してみれば一矢報いられるかもしれない。
 一瞬そんな考えがよぎるが、嫌に響く心臓の鼓動とあまりにも情けない自分の現状が足を震えさせて動かせなくさせる。
 予知を、見ることも躊躇われた。今の惨めな自分を映しているにすぎなさそうだから。

175深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 1―:2014/07/04(金) 20:20:13 ID:IS/fltSA0
「あーーー!!! アンったらこんなにめちゃめちゃにしてー!!」

 少女の視線の先に、今度はその少女に色を付けたような瓜二つの、もう一人の少女。
 こちらは見るからに幼そうな印象を与える。色の無い、アンと呼ばれた少女と違って柔らかい、人間味を感じる表情をしている。浮かべる表情が怒りでも、先ほどまでと比べれば。

「いくら何でもやりすぎよ、あとで綺麗にするの手伝ってよね」
(御意)

 妖夢はアンを叱りつける。その命も、アンは素直に返事をする。
 それは、小さくも主従の繋がりに見える。……見た雰囲気では、妖夢を主とは思えないが。

「お、おい……」
「……へ、ど、どなた様?」

 ドッピオが視界に入っていなかったのか、妖夢は驚いたように返事を返す。

(客人だ。西行寺幽々子に用件があるようだ)
「幽々子様に? 何の御用事でしょうか」
「いや、……その、君らは、一体……」

 色々言いたいことはあるが、二人を見比べ、指を指す。
 妖夢は一瞬自分の身体を見てどこか変な所がないかを見渡すが、合点がいったように笑顔を浮かべて答える。

「西行寺家の剣術指導兼庭師、魂魄妖夢です。こちらは私の一番弟子のアン。アヌビス神のアンです。もっとも、神様とは違うみたいですけど」
「違う、そこを聞きたいんじゃない」

 返答に対して、呆れた顔しか出なかった。

176まるく:2014/07/04(金) 20:33:57 ID:IS/fltSA0
以上になります。ね。
命名は幽々子です。

ちょっと言い訳。
アヌビス神は自分を引き上げてくれたこと、自分に体と生活を与えたことに感謝し、妖夢に忠誠を誓っています。
また、幻想郷が求める物と自分の求める物の違いを理解し、それに時間をあまりかけずに順応してます。幻想郷のなせる技ですね。
殺しをあっさり諦めるアヌビス神に違和感を持たれる方もいるかもしれませんが、手段として殺しを使っているだけではないかな、と自分は考えています。
DIOに対しては「強くて敵わないから忠誠を誓った」であり、そこからの目的が「承太郎を殺せ」です。本体の心を乗っ取りやすくするために『殺すことはなんてことはない』というのを教えるためにチャカの時に理由もなく殺したのだと。
妖夢は強くて敵わないから、ではありませんが。アヌビス神を一つの命として対等に見たのは同じ妖怪じみた彼女が初めてなのではないか。そこに云々かんぬん。
500年生きたスタンドですし、やっぱり妖怪だと思います。幻想郷で過ごすのがいいと思います。

177セレナード:2014/07/04(金) 23:19:23 ID:JCym4E0A0
投稿、お疲れ様でした

まるくさんの考えはまあ間違っていないでしょう。
刀にその身を宿したものが恩を返そうとするならば、それは自らを振るわせるものに手を貸すことでしょうから。
私の小説でも少し触れていますが、アヌビス神は幻想郷の者から見れば「刀に宿る精霊」か「自力で動けない刀の付喪神」みたいなものなんでしょうね。

それにしても「頭が春です?」と言われるとは……w
いやまあ、確かに彼のことを知らない者から見ればおかしい行動でしょうけどw

178どくたあ☆ちょこら〜た:2014/07/05(土) 12:11:52 ID:6/2u.OpQ0
すいませェん……感想を書き込もうとしたのですが、『NGワードが含まれます』と弾かれてしまいました(泣
失礼ですが、ハーメルンにて感想をメッセージでお送り致しましたので、御確認戴けると嬉しいです。
お手間をお掛けして申し訳ございません。

179saiba066:2014/07/05(土) 18:25:10 ID:QrkFH0cA0
>>156

あなたのおかげでやる気メーターカンストしましたよ

180まるく:2014/07/06(日) 23:18:55 ID:rFf9RwHo0
感想ありがとうございます!!

>セレナードさん
DIOへの忠誠も、恩義の返しなんですよね。相手が悪かった…
セレナードさんのSSにもそのようにも書いてあったので、少数派ではないなとは思っていました。やったね小傘ちゃん!以下略

ほとんど脅迫ですからね!春らしい乱暴に至らなくてよかったですね(何
頭の悪さは無邪気の印。聞こえてなくてよかったね。

>ちょこら〜たさん
ハーメルンの方にて返信いたしました。
感想ありがとうございまし!

>saiba066さん
やりましたね!

181名無しさん:2014/07/07(月) 07:35:06 ID:c9el4Yhs0
投稿乙です。


俺が前にしたレス誤字パネェ···。

182まるく:2014/07/31(木) 23:18:30 ID:tg1glbNE0
月末にちらりちらり。
深紅の協奏曲、投下させていただきますね。

183深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 2―:2014/07/31(木) 23:19:42 ID:tg1glbNE0

 白玉楼。冥界の中に位置する西行寺家の広い屋敷。
 それ以外には特に何があるというわけではない。ただ、広い広い空間に所狭しと墓標と樹木が立ち並ぶ。
 そんな中にある、一つだからこそ目を引くその屋敷と、それに沿うように並ぶ桜の木。
 時期が過ぎて花は散り、広々と緑の葉が冥界と呼ぶにはあまりにも眩しすぎる太陽の光を覆い隠す。
 明るすぎなければ、暗すぎず。そんな、爽やかな光が白玉楼の門を照らしていた。

「どうぞ」

 ぎ、と小さくきしむ音を立てて門扉が開く。
 妖夢の先導で、一応客人としてドッピオは屋敷に招かれた。
 彼の後ろには、先ほどまで斬り結んだアンが控えている。……そんな気はないようだが、抜き身の刃を持った者に後ろに立たれるのはあまりいい感じではない。
 それを見越しているのかいないのか、無表情のままについていく。

「私の後についてきてください」

 あの後、妖夢は合点がいったかのような態度を取ると、真っ直ぐに屋敷を案内した。
 彼女曰く、『主が懇談会を行う、あなたはきっとそれの来賓だろう』と話してくれた。
 すなわち、自分が来ることを知っていたということ。それについて妖夢に問うても『自分にはよくわからない』と返された。
 その時の困り顔からは、主が聡いのか従者が鈍いのかはわからなかったが、彼女の中での真相はそうであるらしい。
 結局、当の主に聞くしか解答は得られないようだった。

「……、おぉ……」

 通路の角を曲がって、思わずドッピオの口から嘆息が漏れる。
 曲がった先にある、開いた部屋のその先に見える中庭。日本、というものを表す様な美しい景色。
 流れが作られているかのように敷き詰められた玉砂利と、その中に植えられた力強さをも感じさせる美の表現、松。
 もっとこれを間近で見てみたい、という衝動に嫌でも駆られる引力があった。
 見とれて足が遅くなっているのを妖夢は感じ、振り返ると自慢げな表情を浮かべる。

「美しいでしょう? 外も中も、庭師である私が剪定してるんですよ」

 誇らしげに語る少女がもし人間であったのなら軽い気持ちで褒めることができるが、目の前の少女は立派な人外。
 それを語る技術と実行しうる腕が実際に備わっているのだろう。
 芸術家。
 そう、彼女を表してもいいかもしれない。

「素晴らしいね……僕らの国の庭園技術に負けず劣らずだ。君みたいな子がイタリアにいたなら、美術史に名を残せたかもしれない」
「えっへん。ですが、私の腕は幽々子様の物なので、残念ながら別国の為に振るうわけにはいきませんね。幽々子様が仰るなら別ですけど」
「慕っているんだね、主を」
「もちろんです」

 妖夢に素直な感想をぶつけるが、本人はその言葉を主へと飛ばす。
 彼女の忠誠の証が、そこからも感じ取れる。
 少し後ろに目を配るが、アンはそこに思うことはないのか、表情変わらず後ろについてくるだけだった。

184深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 2―:2014/07/31(木) 23:20:40 ID:tg1glbNE0

「ここですね。えーっと、和室の入り方とかって知ってます?」

 見た目他と変わらぬ部屋の前で、妖夢が足を止めて説明する。
 今まで通った、最初以外の全ての部屋は障子が閉まっており中の様子はわからなかった。
 ここも同じように閉まっているが、その薄い紙は中にいる誰かの影を映している。

「いや、初めてだしよくわからないけど……博麗神社と似たようだけど、あそこでは特に何も」
「霊夢……まあいいです。私の真似して入ってくださいね。そんなに気負わなくてもいいですけど」

 中からはぱちり、ぱちりと何か木と木が小さく打たれるような音が聞こえてくる。
 その戸の前で、妖夢は膝を着き、

「幽々子様、客人を連れてまいりました」

 先ほどまでと違い、硬く丁寧な語調で話す。
 中からは、「は〜い」と間延びした声が聞こえる。散った花びらが空を舞うような、ゆるくふわりとした声。
 それを聞くと、す、と障子を開き

「失礼します」

 中にいる者に一礼した後、ドッピオを率いて部屋の中に入る。

「よくいらっしゃいました。長い旅路でお疲れかしら?」

 部屋の中心で将棋盤へ、傍らの本を参考に駒を並べている。
 その途中にあったのだろう。その作業を続けたまま目線だけをこちらに向けてドッピオを労う。
 一見、妖夢のそれとは違い招いた客に対して無礼にも見えるその行為は彼女の持つ雰囲気がすべて打消し、上塗りしている。
 姿勢を崩さず、それでも迎えようとする意志を送り。彼女の持っている生来の気品がドッピオを迎えていた。

「ごめんなさいね。一度目を離すとどこまで置いたかわからなくなっちゃうから……すぐ終わるからそこで待っててね」
「幽々子様、そういうことは来る前までに終わらせておいてくださいよ……」
「そうしようと思ったのだけれども、字が細かくて……歳かしら〜」
「取らないでしょう」

 ぱちり、とまた小さく将棋盤から音が鳴る。
 上からの態度だが、それは従者である妖夢との彼女なりのコミュニケーションなのかもしれない。
 ぱち、と三度小さく音が鳴り、それが終わりの合図となって、主である亡霊―西行寺幽々子―はドッピオに体を向ける。

「『お久しぶり』ね。無事でここまで来られたことを歓迎します」

 三つ指をつけ、深々と頭を下げる。
 慣れたようなその動きは、しかし優雅さを持つ、もてなす心のあらわれであった。

「……何?」
「どういうことです、幽々子様?」

 しかし、裏腹につかれた言葉が頭に残る。
 冗談にしては上手ではない。頭を上げたその顔からは妖夢が知る自分を困らせる様な事を言って楽しむ顔ではない。

「妖夢、歓待の準備をしておいて。私はこの方とお話ししているから」
「……はいー。っ、て、男女二人を一つの間にしてはいけませんよ」
「あら、どうして? この方はお客人よ。主がもてなさないこと、失礼に当たらないとでも?」
「だって、間違いが起こるからって言われてますし」
「間違いって、なあに?」
「えーっと……クイズ?」
「おばか」

 その落差が、ドッピオにも理解できる。
 それほどに、彼女は何かを隠していることを伝えてきた。
 とぼけた返答をしている妖夢を、幽々子は窘めると、

「妖夢が心配だというのなら、アンを外に置いておけばいいじゃない。それでも納得がいかなくて?」

 と別案を上げる。

「うーん、多分それならきっと大丈夫です。アン、ドッピオさんや幽々子様が何か間違えたら教えてあげてね」
(……わかった)
「頼んだわよ! それでは、失礼させていただきます」

185深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 2―:2014/07/31(木) 23:21:12 ID:tg1glbNE0
 納得がいった表情で、二人は退室する。
 部屋の中から見た二人の姿は、濃い影はそのまま離れの方に向かい。薄い影は開いた障子から少し動き腰を下ろす。
 中には、幽々子とドッピオの二人のみ。

「ふふ、ごめんなさい。幾つになってもあの子はああいう子なの。真面目で、未熟で、実直で」
「…………まあ、それは感じ取れます。それより」
「あなた、将棋はできます? 最近頭を動かす機会が少なくて久しぶりに引っ張ってきたのだけれど……」

 そういいながら、盤の上に駒を並べる。この部屋に入った時から盤を中心に座布団が二つ、用意されていた。

「外国ではチェスの方が有名と聞いています。もし将棋を知らずそちらをご存じであればそれほど覚え辛いルールではありませんが」
「いや、さっきのは一体どういう」
「その答えを聞きたければ、まずはこちらの質問にお答えください。……判断材料として。今、あなたは多くの者に」

 その答えを聞く前に、ドッピオの身体が動く。
 幽々子の首元に掴み掛り、そのまま締め上げる様に彼女の身体を引き上げる。
 ドッピオより小さいその身体は容易く持ち上げられる。掴んだその手から布越しに感じる体温は生きている者とは思えぬほどに、冷たかった。

「なら先に答えてやろう、答えはNOだ。オレは今、幻想郷に来て感じた、気づいた謎の全てを知る、その者に出会っている。
 その答えは、ボスのことに繋がる謎だ……オレに知る権利はないが、その情報を吟味し、必要であれば断たなければならない!」

 対してドッピオにはこれまでにないほどの熱が手に宿る。
 本来知りえない、知ってはいけない謎。それに至る者は悉く消されてきた。
 今、常に彼を動かす忠義が、幽々子の首に手をかけようとしている。
 それに対して、怒りに満ちた彼の表情を見ても、それによって着崩れた着物とは違い少しも崩れぬ表情の幽々子。
 別段彼に対して暴挙に怒りを向けるわけでもなく、憐れみを出すわけでもなく。

「ならば、全てを話します。ですが、そのための道具として。過去を並べた盤に向かい合わなくてはなりません。私の言葉の続きを話しましょう。
 あなたは今、多くの者に計られているのです。あなたがどう至るのかを。……もし、今ここで私を殺すことができたのであれば、今のあなたなら再び永劫の鎮魂の中に身を任せるしかない」

 真っ直ぐな瞳で、ドッピオに話しかける。
 それは、彼の中にある『何か』に向かって語りかけているような、そんな話し方。

「……随分ともったいぶるじゃないか、あぁ? ところどころ、分かっているような口を。ここの奴らは皆そう話す、自分勝手に、相手を理解せずにッ!」
「いいえ、それは違います。全ては、理解をしているから。理解とは物事を知ること、相手を知ること。知ることは過程を理解すること。……皆があなたを知っているからこそ、あなたにはそう聞こえる」

 鼻と鼻が触れ合うほどの距離でも、幽々子は冷静にドッピオへ返す。
 如何に自分の気持ちを伝えても、それを諭すように、自らの域へ引き込むかのように受けられる。
 振り上げた感情の腕は、そのまま振り下ろされることなくやや乱暴に幽々子を手放すこととなる。

「きゃ」
「…………いいだろ、そこまで言うのなら。知ってることを洗いざらい話すのなら」
「ありがとう。この西行寺、平時に嘘を吐くことはあっても今ここに偽ることはしないことを約束するわ」

 崩れた着物を整え、聴く姿勢になったことに感謝の意を述べる。
 二人は対面し、それぞれに20の駒が並べられた盤を挟む。
 騒ぎの中、外の薄影は動かずに。流れを知っていたかのように。

186まるく:2014/07/31(木) 23:26:18 ID:tg1glbNE0
以上になります。…うーん、ちょっとスランプ的な。
将棋もチェスも、自分はルールは知ってるけど強くはないです、むずい。
幻想郷の住人はこういうの強そうですよね。参ります。関係ないけど、白黒をつけたがらない紫は囲碁が苦手、っていうのを見たことがあります。面白いなと。

愛=理解! 過程を信じることは結果を理解することに繋がる道です。そういいたいのです。
まだドッピオには、難しいのかもしれません。

187名無しさん:2014/08/01(金) 21:49:20 ID:uLsZ9RfQ0
まるくさん、投稿お疲れ様です。
遂に真相を握る幽々子との邂逅。相手の土俵に上がる前に暴力を翳すのはマフィアの常套手段ですが、やはり簡単には動じてくれませんね。「恫喝は格下相手にしか通用しない」と、某漫画でもCIA諜報員がマフィアの幹部に言い放っていましたし。
『時が流れ 輪廻の果て また出会えたら
過去を並べた 盤の前で 向かい合おうか』
石鹸屋の楽曲ナイト・オブ・マウントからの引用でしょうか?あの曲私も大好きです。こう、派閥に属する事、対立する事の哀しみみたいなものが表現されていて。
幽々子の脅し文句の真意が気になりますね。紫が時間系能力者と手を組んで【一巡】に対処したように、幽々子の能力を利用して【レクイエム】の呪いを制御していたり。
次回は幽々子との将棋対決?【エピタフ】を利用できるかが鍵ですね。
中高と囲碁将棋部部長だったので懐かしい気分です。弱過ぎて他の部員が三、四段とか取っている中一人だけ最後まで段位を取れなかったような名ばかり部長でしたが…

次回どのような展開が待っているのか、楽しみにしております!

188まるく:2014/08/02(土) 17:24:31 ID:0foclNJE0
感想ありがとうございます。

土俵に上がる前の暴力ですが、どちらかというとドッピオがキレているだけとも。必死です。
対して幽々子様は直接真相に関わっていたわけではなく、あくまで紫から聞いた程度。第三者だから彼の必死さも相手にしない余裕がある。狸だとも思います。
某漫画のCIA諜報員…どこの暴力教会なんだ…

ナイト・オブ・マウントは情景が浮かびやすく、音楽としても非常にかっこよくてお気に入りです。石鹸屋!
椛の曲(だと自分は認識しています)ですが、引用として使わせていただいてます。過去を並べた盤とか、ディアボロにとっては苦痛でしかない。

幽々子の脅し文句も、結局幻想郷の真意というか周りがどう思っているのかということ。
幽々子はどこまで行っても町人Aです。

将棋経験者さんもいるもんですね…将棋倒しなら得意ですy
ボードゲームは3手先読んだ程度じゃあ勝てないんだよ…だよぉ…


しかし、読んでいただき期待もしていただいてあれですが、やっぱり一晩おいて見返してみるとすこし文章の雑さがちらほら。
後日、訂正版を投下する予定です。すまぬ…すまぬ…

189セレナード:2014/08/07(木) 00:01:47 ID:dATmtreA0
ふむ……少々時間がかかりましたが、無事に最新話が完成しました。
それでは、投稿を開始します。

190東方魔蓮記第四十六話:2014/08/07(木) 00:02:47 ID:dATmtreA0
「……見事なまでの化けっぷりだ。『そうなる瞬間』さえ見ていなければ、一目見ただけでは化けていると気づけないな」
ディアボロはその姿を見て感想を言った。
「お主の『それ』も、より大きい者にしか化けれぬ代わりに隠しきれぬ箇所がないのは便利じゃのう」
マミゾウも再びイエローテンパランスを纏ったディアボロの姿を見て改めて関心を示す。
「自分にしか使えないのが難点だが、こればかりは仕方がないな」
ディアボロは歩きながらそう返す。

現在二人が向かっているのは、聖人たちがいる場所。
何故そんな場所があることがわかるのかというと……信者を募集しているからである。
どうやら道場を設立したらしい。異変から数日しか経っていないのに立ち回りが早いものである。
これも妖怪たちが警戒している一因なのかどうかはわからないが、気になる情報であるのは確かだ。

「ところで一つ聞きたいが、『神霊廟』ってなんだ?」
ディアボロは記憶のDISCを何度も使用しているおかげで、日本の習慣をそのまま引き継いでいる幻想郷の生活には難なく適応している。
しかし、記憶のDISCを用いても得られない知識というのは当然ある。
故に、青蛾が最初に質問に答えたときに、あんなことを言ったのだ。
「何故『神霊廟』という名前なのかは知らぬが、霊廟(れいびょう)の意味なら知っておる。霊を祭った宮のことじゃ」
その言葉を聞いて、ふと異変当日のことを思い出した。

あの時、たくさんの霊が命蓮寺のあたりに出没していた。
当時はその霊が何故出てきたのかも、無数の霊の正体も分からずにいた。
異変が終わった後も、その件に関しては一切調べていないため、正体は未だ分かっていない。

「(もしかしてあの無数の霊……普通の霊ではなかったということか?)」
こればかりは異変の解決に直接関与した者か、異変を起こした者に聞くしかない。
少なくとも、『見ただけ』の者と、『見てすらいない』者にわかるわけがないのだ。


「さて、まずは居場所の特定だな」
「そうじゃな、位置がわからなければ向かうこともできぬからのう」
残念ながら、場所の名前は分かっていてもどこにあるのかは全然わかっていない。
そのため、その位置を知る手段を探さねばならないのだ。
「……そういえば弟子入りを志願した奴らはどうやって聖人のいる場所に向かったんだ?」
信者を募集しているというのなら、何らかしらのやり方で神霊廟の位置を知らせているはずだ。
ただ募集しているだけでどこに行けばいいのかわからなければ、信者は増えはしない。
「どこにあるのか見つけ出すのも、弟子入りの条件の一つかも知れんのう」
「俺たちは聖人の弟子になりに行くわけじゃないんだ。いざとなれば、誰かの記憶を見てでも見つけ出す」
ディアボロはそう言ったところで、あることを思いつく。
「そういえばお前が従えていた狸達は、何か知っているのか?」
「いや、何も知らぬようじゃ」
「……なら仕方ないか」
狸達は何か知っているかと思ったが、違ったようだ。
そしてディアボロはまた少し考え、今度はある疑問を持った。
「そういえばマミゾウ。化けさせた物は破壊されるとどうなる?」
「破壊されれば、化けさせた物はその姿形を維持できぬ。元に戻るだけじゃ」
マミゾウの発言を聞いたディアボロはまた考える。
「(だとすると、妖怪の山で『本物』を調達する必要があるな……)」
今彼が欲しいのはポラロイドカメラ。
ハーミットパープルによる念写を使って、神霊廟へと行く道を特定しようとしているのだ。
だが、マミゾウに化けさせた物では、念写の拍子にぶち壊してしまう。
すぐにクレイジーダイヤモンドで直す手もあるが、破壊した拍子に一瞬でも元に戻ってしまえば、写真を印刷してくれないだろう。
「マミゾウ。妖怪の山へ向かうぞ」
「何故じゃ?」
突然の目的地変更に、マミゾウは疑問を持つ。
「居場所の特定には、ある物が必要だ。それさえあれば、位置を大体特定できるかもしれない」
「……??」
そう言ってどこかに向かいだしたディアボロと、わけのわからないままついていくマミゾウ。
二人の行先は……妖怪の山。

191東方魔蓮記第四十六話:2014/08/07(木) 00:03:22 ID:dATmtreA0
「それで、おぬしはここで何をするのじゃ?」
「カメラが必要だ。貸してもらうだけでいい」
ここに来る過程で、一度イエローテンパランスを解除して装備しているDISCを変更している。
エアロスミスとスタープラチナを、別のDISCに変えている。
その理由は、これからするべきことのために必要だからだ。
「……とはいえ、カメラを天狗が今ここにいるとは限らないんだがな」
会って言えば貸してくれるかもしれないが、残念ながらこの場所ではディアボロとマミゾウは侵入者扱いを受けるだろう。
その状態で彼の発言を聞いて態々(わざわざ)取りに行ってくれる天狗はいない。
それは即ち、眼前の怪しい者をわざと見逃すのと同義だからである。
そしてディアボロも、それに文句を言うわけにはいかない。
彼も組織の頂点に立った者だ。指示に従わぬ部下を見過ごすわけにはいかないのはよくわかる。
……彼の場合、『自分について探る部下も容赦はしない』が加わるが。

ディアボロがマミゾウと会話していると、突如弾幕が二人に襲い掛かる。
だが、ディアボロはイエローテンパランスを展開して難なく防御する。

イエローテンパランスは、攻防において弱点らしい弱点が見当たらない。
衝撃のエネルギーを分散することで物理的に強く、温度変化にも特殊な反応を引き起こす。
具体的にいうと、熱すれば飛び散ってして広がり、冷やせばスパイク状になると同時に硬化して触れたものを突き刺す。
ザ・ハンドといいこれといい、頭が悪い者は単純な思考を持つ故に単純かつ強いスタンドが発現しやすいのだろうか……?

そして、妖怪が撃つことが多いあの光弾のタイプの弾幕は、主にぶつかった時の衝撃でダメージを与える。
だが前述のとおり、イエローテンパランスにはエネルギーを分散されてダメージをかき消されてしまう。
文字通り、『相性が悪い』のだ。ディアボロ側が攻めるには別の手を講じる必要はあるが。

「警備員のお出迎えか。しかし、俺たちが進まなければこれ以上きつくなることはないはずだ」
警備の天狗が再び放った弾幕を、ディアボロはイエローテンパランスを操って再び難なく防いでのける。
今度は先ほどよりも弾幕が濃く、少しずつ距離を詰めていくことで大量の弾幕が当たるようにするのだが、どれだけ撃って来ようともこのタイプの弾幕では結果は同じである。
「無駄だ。その弾幕ではこれを破壊することはできないぞ」
ディアボロはそう言って、再びイエローテンパランスを引っ込める。
警備の天狗もその発言に納得したらしく、3度目の弾幕発射はなかった。
「俺はある天狗に用があって此処に来た。大人しく下がってくれ」
その名を聞いた警備の天狗は……この場を離れない。
「やはり警備の役割を優先したか」
ディアボロはマミゾウに聞こえるように言って少し考える。
「(面倒事を起こし、要注意人物に位置づけられても困るが……)」
警備が存在する以上、情報共有は行われていてもおかしくない。
もしもこの天狗に『要注意人物』と認識された場合、この情報が共有されて今後この山での行動が困難になるだろう。
「さて、あやつは退く気がなさそうじゃが、どうするかのう?」

この場からは進めない。しかし下がれば、用を済ませられない。
ならば進むしかないのだ。

「(確かにあの様子じゃ話を聞く気も退く気もなさそうだ。文を呼んできてもらうつもりだったが……)」
この山の警備の者は、侵入者が自分たちの手に余るようだと、上司に当たる大天狗に報告を行うために戻るのだ。
「……仕方がない。お前に『取ってきてもらう』ことにしよう」

ディアボロは万が一の天狗の逃走を阻止すべく、イエローテンパランスを発動させると、それを伸ばして天狗の足元に絡ませようとする。
しかし、イエローテンパランスは肉と同化しているためにスタンド使い以外でも見えるスタンドだ。
「!?」
自らに迫りくるイエローテンパランスを見た天狗は、驚きながらもそれをうまく飛んで回避した。
仮にも警備を務めれるほどの実力はあるのだ。迫りくる物体を避けるのは難しくはない。
現在のディアボロの装備で、遠距離戦を問題なくこなせるスタンドはウェザーリポートぐらいである。
そのウェザーリポートも捕縛を行うには向いていないし、一撃を加えるにも威力が強いうえに攻撃が目立ちやすい。
装備している残り1枚のDISCに入った能力……
「(ヘブンズ・ドアーも射程範囲外か。だとすればまずいな……)」

ヘブンズ・ドアーの文字飛ばしも届く範囲の外では意味なしである。
ちなみに、ヘブンズ・ドアーとイエローテンパランスでは、肉の量にもよるが、基本的にはイエローテンパランスの方が射程が長い。

192東方魔蓮記第四十六話:2014/08/07(木) 00:03:52 ID:dATmtreA0

突然、天狗は何か身体の一部が冷たくなってきていることに気づき、左足の太ももあたりを見ると、そこにはいつの間にか氷の輪が出来ていた。
気が逸れている隙をついて、ディアボロがホルス神で太ももを締め付けるような感じで氷輪を作ったのだ。

しかも密着するように構成されているため、溶け出していない今は天狗の力でも動かない。
それだけならばまだ驚くだけで済んだだろう。
だが、その氷輪とつながるように、氷がディアボロのいる方向に出来始めたのならば話は変わる。
ホルス神の能力射程はイエローテンパランスよりも広い。十分氷とイエローテンパランスを繋げることができる範囲だ。

相手の能力が二つ判明し、それへの対策に思考を巡らせていた天狗は、自らの体が引っ張られていることに気づいて状況を把握し直しだす。
見れば、考え事をしている隙に、氷とイエローテンパランスの肉が結ばれていた。
氷は細長くも細部まで凍っており、少々の力を加えたところで些細なヒビすら入らないようにできている。
氷という冷たい物に絡みついたそのスタンドは、本体の精神力によって『冷却による温度変化』を一部分のみ引き起こすことを許される。
それにより、『氷に絡みついた部分のみ』スパイク状となって、解けるのをより困難なことにする。
そして、イエローテンパランスを操って自分のもとに引き寄せる。

流石にもう自分では止められないと判断したのか、天狗も必死になって距離を取り、せめて大天狗に報告しようと逃げようとするが……

「(あやつ……逃げることに必死になって重要なことに気づいておらぬな……)」

マミゾウは理解していた。
今、イエローテンパランスは意図的にピンと張った状態になっている。
こうすることで、相手がこれ以上距離を取られるのを防いでいる。
そしてディアボロと天狗を繋ぐものができてしまっている以上、仮に逃げられたとしてもディアボロが引っ張られてくる。
どうやら必死になっているためか、この天狗はそうなることに気づいていないようだ。

そこに、天狗が逃げようとする方向から突風が吹いてきた。
ディアボロが再びウェザーリポートを使って風を吹かせたのだ。
少々の向かい風ならば天狗は難なく突破できるだろうが、この風の強さは普段吹く風とは違って暴風と言えるほど強かった。
地上でも踏ん張りながら進むしかないほどの風の強さに、空中に浮いている天狗は耐えきれるわけもなく吹き飛ばされる。
『天狗と同じ高さ』にだけ暴風を吹かせたため、この暴風の被害を受けるのはこの天狗のみ。
そうでもしなければ、自分もマミゾウも巻き添えにするただの無差別攻撃になってしまう。

吹き飛ばされ、天狗が体勢をもう一度整える前に、ディアボロはイエローテンパランスを操り、自ら天狗のもとに引き寄せられる。
別に天狗を強引に引き込んだりする必要はない。『距離を詰めれれば』それでいいのだ。
「(後は本にするのみ!)」
ヘブンズ・ドアーを出してせまりくるディアボロを見た天狗は、とっさの判断で左足の太ももにできている氷輪に光弾を撃ち始めた。
先ほどのことで逃げられないと理解したのだろう。
氷輪を破壊して自身から引き離すことで、イエローテンパランスによる接近を防ごうとしているようだ。

だが、それだけで自身の策が失敗するほどこの男は甘くない。
それを見たディアボロは、イエローテンパランスの触手をもう一つ作って今度は天狗の右足首をぐるぐる巻きにして拘束する。
しかしこれでもぎりぎり届いた程度だ。ヘブンズ・ドアーの能力を届かせるには、もう少し距離を詰めておきたい。

193東方魔蓮記第四十六話:2014/08/07(木) 00:04:24 ID:dATmtreA0
天狗は氷輪の破壊を断念し、ディアボロに弾幕を撃ち始める。
仮に先に氷輪を破壊したところで、既に右足首にイエローテンパランスが巻きついてしまっているため、彼を撃ち落すことができないからだ。
だが、残念なことにそれも容易く肉の壁に防がれてしまう。
そしてそのままイエローテンパランスに引き寄せられ、距離を詰めていき、ある程度距離を詰めたところで、肉の壁を動かす。
自身と天狗の間を遮るものは何もなくなり、ヘブンズ・ドアーは手を伸ばしながら天狗に接近していく。

まだ大丈夫。『見えるものだけ』ならばそう言い切れるだろう。
この状況で風を操ってはこない。確かにその判断は正しい。
何故肉壁を自ら取り除いたのか。今はそんなことを考えている場合ではない。
彼は何をするつもりなのか。そんなことは分からない。

攻撃を妨げる壁が取り除かれたのだ。今が最大の攻撃のチャンスである……!

そう思ってしまったのだろう。天狗はディアボロを撃墜すべくより密度の高い弾幕を撃ち始めた。
もしもディアボロが同じ立場だったなら、自身に絡みついているこの肉を、絡みついている箇所ごとスタンドで切り捨て、反撃か距離を取る行動をとっただろう。
ただ、そんなことを実行できる『決意』とそれを実現できる『手段』を持たないことが、この天狗にとっての災難だった。

弾幕を強引に耐え抜き、ヘブンズ・ドアーの手を天狗に触れさせる。
その瞬間、天狗の身体はその能力によって構成を書き換えらたことに驚くが、どうすることもできず、原型を保ったまま本のようになってしまう。
それと同時に二人が空中にいられた要素が無くなったことで、双方が同時に落下し始める。
だが、二人ともその直後に少し弾み、何かが支えているかのように二人とも落下しなくなった。

「ほう……」
マミゾウには何が起きたのか、すぐに理解できた。
ディアボロは本にした天狗も無事に『受け止めれた』ことを確認して、一息ついた。

空気の塊によるクッションが、二人を受け止めていたのだ。
それだけならばストレイキャットでもできるのだが、これ以外にも能力の幅が広いのがこのスタンド、ウェザーリポートの特徴でもある。

ディアボロはそれを操り、地上にゆっくりと下ろしていく。
そして、落下することなく地に足を下せる程度の高さまで空気の塊下ろすと、本になった天狗を回収してマミゾウのもとに近寄る。
「いつ見ても恐ろしい能力じゃのう……」
「……俺もその意見には賛成だ」
こうして第三者に使われているのを見て、改めてヘブンズ・ドアーの恐ろしさを二人は理解するのであった。


天狗の記憶に命令を加え、ヘブンズ・ドアーの能力を解除する。
加えた命令は二つ。
『誰にも怪しまれないように天狗の住処からカメラを取って筆者に渡す。取ってくるカメラはポラロイドカメラを優先とし、この命令は最優先で実行する』

『筆者との戦闘及びこの命令に関する記憶とマミゾウが見ていたことは、筆者とその仲間が自ら去って視界から消えたら忘れる。それまで筆者と仲間に関する情報を口にすることはできず、誰にも伝えることはできない』
天狗はヘブンズ・ドアーによって与えられた命令を、本来の役割を放棄して実行に移す。
飛び去っていく天狗を見届けて、ディアボロは緊張の糸を緩める。
「これで後は戻ってくるのを待つだけだな」
「おぬし、カメラを使って何をするつもりじゃ?」
マミゾウに質問され、ディアボロは無言で彼女の方に振り向く。
「神霊廟への道を見つけ出す」
「……………」
彼は真顔でそんなことをいうものだから、マミゾウは言っている意味がわからず、思わず沈黙してしまった。
その理由を察したのか、彼は一枚のDISC……ハーミットパープルのDISCをケースから取り出す。
「このDISCには念写の能力が封じられている。荒いやり方でしか念写ができないが、こいつを使えばある程度の情報は手に入るはずだ」
「成程、確かにその方法ならば色々とわかりそうじゃ」
ディアボロの説明を受け、マミゾウは理解し、納得した。
「さて、あの天狗が戻ってくるまですることはなくなったな……」
「肩の力を抜くにはいいタイミングじゃ。しばし休むがよいぞ」
「……そうさせてもらうとしよう」
マミゾウの提案を受けて、ディアボロは天狗が戻ってくるまでの間、休憩することにした。

194セレナード:2014/08/07(木) 00:09:31 ID:dATmtreA0
投稿終了です。

ある場所に向かうつもりだったが碌に情報を集めていないから場所がわからない。
今でこそスマートフォンの地図機能などのおかげで可能性は低いですが、幻想郷ではまだそんなことは少なくない……かも?

ジョジョには現在提供されているソーシャルゲームがありますが、どうやら一悶着あったようで。
悪いのは記載を漏らした側が、急いた利用者側か、果たしてどちらなのやら。
恐らくは記載を漏らした側が悪いという形で決着はつくとは思いますが。

195名無しさん:2014/08/10(日) 08:54:21 ID:Uq/ulWAY0
投稿お疲れ様ですー。

確かに神霊廟はどこにあるかが明確にわかってはいませんね。心綺楼の頃には建物や布都ちゃんステージの夢殿大祀廟も出てきてますが。
だからそれ以前に当たるディアボロ達はわからないのもしょうがないでしょう。口授でも神出鬼没で地名は不明のようですし。
しかしまあ、なんでしょう。カメラを手に入れるのは近道なのか遠回りなのかいかんせんわかりづらいですね。確実ではありますけれども。
カメラに変身した狸を媒介にハミパを想像できるのも、ううん、やはりボスか。狸への描写は省いただけなのか、本当に何も思ってないのか…w

テンパランス大活躍。ホルス神やヘブンズドアーは以前にも活躍されているシーンもありましたが最近のテンパランスプッシュ。前から強いと思ってましたよ
これでようやく、と思いましたがまだカメラを手に入れたわけには至らず。
ヘブンズドアーの命令は遂行中は気づかないかもしれないけれど、僅かな空白から自分の異変には気付くことができる。康一くんが露伴の家に来てから気づいたように。
見張り天狗が誰にも怪しまれないようにカメラを取っても、果たして本当にそれを外部が気付けないのか?目ざとい烏天狗たちはそれを看破して追ってくるかもしれない、爆弾を抱えているとも見えます。
続き、期待しています。

196名無しさん:2014/08/10(日) 21:19:31 ID:a4vkXCTU0
セレナードさん、投稿お疲れ様です。
カメラをゲットして【ハーミット・パープル】を使うというディアボロの魂胆は分かりましたが、果たして念写で霊廟への行き方が分かるのでしょうか(汗
原作でもDIOの館の外観は撮影できましたが、結局館への道などは自力で調べていましたし、別空間に存在する霊廟への道順を念写するのは可能かどうか微妙ですね…
でも、よくよく考えれば原作での【ハーミット・パープル】の念写の精度もイマイチはっきりしないんですよね。コールタールを探した時は灰の粒で詳細な地図&位置検索までできていましたし…これができるんならアラビア・ファッツのような敵本体の位置も楽に念写できるんじゃ(ry

『冷やせば固まる』という性質を【ホルス神】で利用するアイデアは素晴らしいですね。命令を書き込んだ下っ端が波乱を連れて戻って来そうな雰囲気…
次回も期待しております。

197セレナード:2014/08/11(月) 22:10:50 ID:WlBAMkhE0
お二方、ご感想をありがとうございます。

>>195さん
単純に視覚の情報も必要となったためにハーミット・パープルが選択されたのです。
ウェザーリポートやエアロスミス等の探知では、『どこにあるのか』は分かっても、『どうなっているのか』は分かりませんからね。
それに、念写を用いて写真に現像することによって『情報の保存』が容易くできるのも理由の一つ……かも?

イエローテンパランスは本来の持ち主があんな性格であることが敗北にも繋がっていますが、そのスタンドの性能は恐るべし。
ディアボロは不都合な事態(殺害を含める)になることを避けるために防御面や変装能力に重点が置かれていますが、それでも十分に強いスタンドになっていることが、その証明となっていますね。

ヘブンズ・ドアーが観賞したのは見張りの天狗のみ。
『周りに干渉できない』ことが原因でどんな事態になってしまうのか……平穏では済みそうにない、かも。

>>196さん
そう。二人は神霊廟が別空間に存在するという事実を全く知りません。
そのため、神霊廟をただ念写しただけでは、『幻想郷のどこかにある』と勘違いしてしまうでしょう。

DIOの館への道を念写で探さなかったのは、ジョースター一行が慎重に行動したから、かもしれませんね。
今後のアニメオリジナルのシーンでそこのところ説明が入るといいんですけど。
……アニメオリジナルでポルナレフの髪いじりが多いのはスタッフの遊び心でしょうかね>?

198セレナード:2014/08/22(金) 23:18:11 ID:BQv8IYvY0
東方魔蓮記最新話、完成しました。
合間が短い?気にしない気にしない。

199セレナード:2014/08/22(金) 23:19:25 ID:BQv8IYvY0
天狗との戦闘をから少し経ち……。
ディアボロはマミゾウの提案に乗り、マミゾウも一緒にリラックスした状態で天狗を待っていた。
見張りがいなくなったせいで静かになっている今は、川辺に近寄りさえしなければ河童からも襲撃されないだろう。


「天狗がカメラを持ってくるまでどのくらいかかるのかい?」
「あまり時間はかからないとは思うが……」
そんな会話をしながら二人は天狗を待つ。
兎に角先ほどの天狗がカメラをもってこなければ、やるべきことが始まらないのだ。

だが、誰にも気づかれにくい今がチャンス。念写の準備をするためにイエローテンパランスによる変装を解除し、3枚のDISCをケースから取り出す。
その3枚をホルス神、ウェザーリポート、スタープラチナと入れ替える。
新しく装備されたDISCの内一枚は、お馴染のジャンピン・ジャック・フラッシュ。
念写の最中に奇襲を受けても、空中を飛べるようにすることで回避できる範囲を広くするつもりだ。
そして彼はすぐに再びイエローテンパランスを全身に纏い、再び変装し、天狗が戻ってくるのを待ちつづける。

それからまた少したって……。
「おや、戻って来たようじゃ」
マミゾウがそう言ったので山の方角を見ると、一体の天狗がこちらに向かって来る。
「……」
ディアボロは無言で向かってくる天狗の姿を見て、その天狗が『命令を書き込んだ天狗と同一の存在』であることを確認する。
天狗は無言でディアボロの側に着地すると、手に持っていたカメラを差し出す。
そのカメラをディアボロは受け取る……と同時にもう一度ヘブンズ・ドアーの能力を発動する。
そしてもう一文、命令を書き込む。
『今から一時間、ディアボロとマミゾウとカメラの存在を認知できなくなる』
この命令を書かれ、ヘブンズ・ドアーの能力を解除された天狗は、まるで何もなかったかのようにその場を去って行った。
ディアボロはそれを見届けた後、早速カメラを確認する、
「(……ポラロイドカメラで、フィルムはちゃんとあるな)」
確認を終えると、彼の両手からイエローテンパランスを離れさせ、スタンドを出す。

彼の両手に出されたのは、紫色の茨。
このスタンドの名前は『ハーミット・パープル』。そしてこのスタンドの本来の持ち主、その者の名は、『ジョセフ・ジョースター』。

青年期は波紋を使う戦士であり、吸血鬼をも餌とする生物である『柱の男』達と戦い勝利を収め、最終的には多くの幸運と偶然を伴いながらも究極の生物と化した柱の男の一人である『カーズ』を地球より放逐することに成功し、運よく生還する。
晩年は不動産王になっており、娘であるホリィ・ジョースターの命を救うべく、一族の宿命の根源である『ディオ・ブランドー』を殺すために承太郎達と共にエジプトへと向かう。
『ディオ・ブランド―』と対の存在である、一族の宿命の始まりの存在である『ジョナサン・ジョースター』の孫であり、ジョースター一族の中で確認できる限り最も長生きした人物でもある。
そしてその機転の利きは、例え彼が年をとっても衰えることはない。

ジョセフの使うスタンドである『ハーミット・パープル』は戦闘向きのスタンドではない。
だが、念写や念聴等の探知能力に優れているのが特徴だ。
カメラを用いた念写は勿論のこと、テレビを使って音声を繋ぐことで念聴を行ったり、地面にぶちまかれた灰を操って地図を作ることができる。
力は強くないが、探索に優れたこのスタンドは、ある意味で頭がよく回るジョセフ・ジョースターらしいスタンドである。

200東方魔蓮記第四十七話:2014/08/22(金) 23:20:32 ID:BQv8IYvY0
おっと、名前変えるの忘れてました。いけないいけない。

そのハーミット・パープルがカメラに巻きつくと、ディアボロは素手でぶち壊してもおかしくない勢いでカメラを叩いた。
周囲に響く物音にマミゾウは少し驚き
「……そうせぬと駄目なのかい?」
軽く引きながらディアボロに質問をした。
「これが一番やり易いからな」
ディアボロは現像された写真を手に取ってそう答えながら先ほど装備したもう一つのスタンドを出す。

スタープラチナやザ・ワールドと同様に人の形をしており、ところどころがハート型をしている。
このスタンドの名前は『クレイジー・ダイヤモンド』。本来の持ち主の名前は『東方仗助』。

杜王町という町に住んでいる高校生で、彼の最大の特徴は所謂『リーゼント』。
しかし、これは彼が不良だからではなく、幼い頃に助けられた人物の髪型がリーゼントであったため、その人物に憧れてその髪型にしているのだ。
故に、彼の髪型を馬鹿にすると、『憧れの人を馬鹿にした』と認識して激怒する。
そのせいで酷い目にあった者は少なくないが、決して彼は『悪人ではない』。少々特殊な血縁だが、彼もまたジョースター家の血筋を引く者なのである。

彼のスタンド、クレイジー・ダイヤモンドは承太郎から『この世のどんなことよりも優しいスタンド』と評価されており、その理由はこのスタンドの能力にある。
近接パワー型であると同時に、そのスタンド能力により、物質、スタンド、生物の怪我などを『なおす』ことができるのだ。
但し、このスタンドでも『無』からなおすことは流石にできない。故に、ザ・ハンドやクリームといった、『削ってこの世から消滅させる』スタンドとは相性が悪い。
そして、これの応用で二つの物質を強引に融合することができる。
東方仗助はこの方法を使って『本と人間の融合』と、『岩と人間の融合』を行っている。
もっとも、融合された者は片や仗助の母や仲間を人質にとり、片や死刑執行をスタンドで乗り越えて脱走し、仗助の祖父を殺した殺人鬼と、犯した罪による『自業自得』と言えるのだが。

ディアボロに勢いよく叩かれた衝撃によるダメージをクレイジー・ダイヤモンドでなおす。
そうしながら、ポラロイドカメラより排出された写真を手に取る。
そして、クレイジー・ダイヤモンドによってカメラが『直された』のを確認すると、もう一度ハーミット・パープルを使って先ほどと同じやり方で念写を行う。
クレイジー・ダイヤモンドによって直されたポラロイドカメラは、再び現像された写真を排出する。
そして再びクレイジー・ダイヤモンドの能力でポラロイドカメラはなおされる。
それをもう一度繰り返し、ポラロイドカメラがなおされたところで、ディアボロとマミゾウは早速3枚の写真を確認する。

1枚目はある人物の全身を正面から写した写真。ヘッドホンのようなものを耳につけ、手には笏(しゃく)を持ち、帯剣している姿が写っている。
「『聖人』の姿を念写してみたが、マミゾウ、どう思う?」
「笏を持っておるから、古代の中国と交流があった時代以降の者だろうがのう……」

笏は6世紀に中国から伝来したと伝えられている。
日本では初めは朝廷の公事を行うときに、備忘のため式次第を笏紙という紙に書いて笏の裏に貼って用いていた。
現代で言うなら、カンニングペーパーを隠すためのものと表現するのが近いかもしれない。
後に重要な儀式や神事に際し、持つ人の威儀を正すために持つようになった。

笏を持っていることから、『聖人』は6世紀以降の人物であることが証明された。
だが、その容姿を知ることはできても神霊廟の位置に関する情報はまだ得られていない。
そこで二人は、二枚目の写真を見てみる。

「神霊廟を正面から念写した」
「中々立派じゃのう」
2枚目の写真は神霊廟を正面から写したもの。
思ったよりも大きい建物に、マミゾウは正直な感想を漏らす。
……だが、此処でディアボロに一つの疑問が浮かぶ。
「(確か、聖人が復活してから数日しかたっていないはずだが、どうやって『数日の間にこれだけ大きな建物を建てた』?それとも元からその場所にあったのか?)」
普通、建物を建てるのには数か月はかかる。
だが、写真に写っている神霊廟は、木造建築の山小屋などとは比べ物にならない大きさだった。
多くの人を24時間休みなしで動員しても、可能な限り手を抜いた欠陥住宅だとしても、たった数日でこれだけの大きさの建物ができるはずがない。
「(……どうなっている?)」
ディアボロは疑問を抱きつつも、3枚目の写真を見始める。

201東方魔蓮記第四十七話:2014/08/22(金) 23:21:02 ID:BQv8IYvY0
「神霊廟を中心に上空から周りの地形がわかる様に写してみたが……これは一体どうなっているんだ?」
さながら衛星写真のように撮影された3枚目の写真。
……しかし、そこには神霊廟と幻想郷を繋げる道が『なかった』。
「どうやら、神霊廟は別の空間に存在ようじゃ」
まるでそこだけ切り離されたかのような空間。それが神霊廟の存在する場所だったのだ。
「(これは予想外の展開だな)」
紫や白蓮の記憶を見て、『魔界』という、この世界とは違う世界の存在と、そこへの入口が存在していることは知っていた。
だが、この聖人も居住可能な異空間に移動ができるとは、ディアボロは微塵も思っていなかった。
そのため、「幻想郷のどこかにあるのだろう」と思っていた彼の予想を裏切る結果となった。

「流石に別の空間にあるとは予想外だな……」
「それだけ、『聖人』はかなりの実力の持ち主ということじゃろう」
「だが、別の空間にあるということはどこかにこちらと向こうを繋げる道があるということだ。だから4枚目でその道への『入口』を見つけ出す」
ディアボロはそう言うと、クレイジー・ダイヤモンドを出して……カメラをなおすのではなく、背後を振り向いた。
「興味があるのか?新聞記者」
「ええ、まだ知られていないネタならば特に」
振り向いた先には、射命丸がいた。
「それに、そのカメラは私の物ですから」
どうやら警備の天狗が持ってきたものは、射命丸のカメラだったらしい。
何故警備の天狗が射命丸のカメラを盗んできたのかというと……恐らく、『ポラロイドカメラを優先とし、』という一文のせいだろう。
新聞大会でもランキング外である彼女ならば、物一つ盗まれたところであまり騒ぎにならないと警備の天狗に思われたのかも知れない。
もしもその通りなら、そう思われた彼女がちょっと不憫である。

「まあ、写真に気を取られていても視線を感じ取れるほどこっちを見ていたからな……」
「分かっているなら、早く私のカメラを返してほしいわ」
射命丸は怒っていた。
新聞記者にとっては大事なカメラを盗まれて、犯人を捜していたら他の天狗が実行犯で、命令は二人の人物。
犯人を目前にして、すぐに攻撃を仕掛けたいところをどうにか抑えているのかもしれない。
「駄目だ。後2回は同じことをやらせろ」
「それってあと2回も私のカメラを本気で叩くんですよね」
射命丸の怒りのボルテージが上がったが、ディアボロもマミゾウもまったく気にしていない。
「ああ、そうしたほうが確実に決まるからな。安心しろ。傷なんてなかったことにして返すから」
ディアボロはそう言ってもう一度ハーミット・パープルを発動して、勢いよくカメラを叩く。
4枚目の写真が排出され、ディアボロはそれを手に取って確かめる。
マミゾウと、ついでに射命丸も近寄って一緒に見てみる。
「……これはなんじゃ?」
「『入口』に該当する場所を写してみようとしたが……本当にこれが入口か?」
「…………」
写真に写っているものについて3人とも考えるが、それ以上に重要なのは……。
「……あと一枚。写し出すのはあの入口と思われるものが『どのあたりにあるか』だ」
ディアボロはそう言いながらクレイジー・ダイヤモンドでカメラをなおす。
そして、先ほどよりもハーミット・パープルに精神を集中させる。
大一番、ここでしくじるわけにはいかない。
精神を集中させたまま、全力でスタンドパワーをカメラに叩き込まれるッ!
カメラは叩かれた衝撃による音を発し、写真を排出する。
排出された写真には、その『入口』がどこにあるのか……それを示す場所が写されていた。
「これが……神霊廟へと続く入口のある場所か」
とは言っても、幻想郷に来てから間もないマミゾウには分からない。
ディアボロも幻想郷に来てから色々な場所へと行ってきたが、それらはあくまで紫の記憶にあった所謂『有名な場所』。
残念だが、無名の場所に関してはちっとも詳しくないのである。
となると、この3人の中で最も入口のある場所に心当たりがあるのは……。
「新聞記者。この写真に写っている場所に何か心当たりは?」
そう言ってディアボロが写真をよく見えるようにして見せると、射命丸はその写真を凝視し、少し考え始めた。
「…………」
射命丸には風の声が聴けるらしい。ついでに風の噂を掴むことも得意だそうだ。
それを知っているディアボロは静かにしており、マミゾウも特に話すことはないので静かにしていた。
……ひょっとすると、カメラが盗み出されたことに感づいた原因は、風から教えられたかも知れない。

202東方魔蓮記第四十七話:2014/08/22(金) 23:21:32 ID:BQv8IYvY0
「成程、そういうことですか……」
射命丸はそう言うと、二人が視界の中心に入る様に視線を向けて
「教えてあげてもいいですが、一つ条件があります」
「なんだ?カメラなら今返すぞ」
ディアボロはそう言いながら、クレイジー・ダイヤモンドでカメラをなおす。
そしてカメラを射命丸に差し出すと、彼女はそのカメラを分捕ってカメラを確かめる。
ディアボロが何回も勢いよく叩いたのは紛れもない事実なのだが、叩くたびに1回1回クレイジー・ダイヤモンドでなおしたために傷や損壊は存在しない。
……寧ろなおされたことで盗まれる前よりもよくなっているかもしれないが、この3人は全員『カメラの内部を見てはいない』ので、そこに関してはわからない。


「カメラを盗ませて勝手に使ったの許してあげますが、私のフィルムを勝手に使った弁償として、取材を手伝ってもらいます」
厳しい表情のまま、射命丸は二人にその条件を提示した。
彼女が提示した条件が緩いのは、恐らくディアボロの念写のおかげで、新たな取材先の場所を知ったからだ。
加えて、そこの情報はまだ他の天狗には手を付けられていない。だとすれば、スクープの数は計り知れない。
他の天狗がそこに手を付ける前に、得られる情報は根こそぎいただくつもりだろう。
……もしもカメラを使う理由が違ったら、彼女は攻撃してきたかもしれない。
「成程、勝手にカメラのフィルムを使ったのだからそれ相応の対価を労働で払ってもらおうというわけか」
ディアボロはそう言っているが、彼はその言動の裏にある予感を感じていた。
「(……こいつ、いざとなったら俺たちを捨て駒にでもするつもりか?)」
真偽は不明。だがやりかねない。
だがこちらも、彼女と共に行動することで情報を集めやすくなるし、いざとなったら彼女を囮にすることができる。
それに加えて、後でそれを責めに来てもヘブンズ・ドアーやホワイトスネイクを使ってその記憶を消去できる。
ディアボロとマミゾウにとっても、この提案を拒否する理由はない。
「……分かった。お前もそれでいいか?」
ディアボロはそう言ってマミゾウの方を見ると、彼女は面白そうだといいたそうな表情をしていた。
「うむ。儂もそれで構わんぞい」
「決定ね。それでは早速行きましょう」
「準備はしなくてもいいのか?」
マミゾウが了承したのを聞き、早速現場に向かおうとする射命丸にディアボロが質問をする。
取材を行うというのなら、受けた者の発言内容を記録するメモぐらいは追加で必要である。
「カメラは貴方達が持っていたし、新聞記者として手帳は常備しています」
文がそう言って懐から取り出して見せたのは、文花帖という名の手帳。
彼女にとってカメラと同じぐらい大事な物であり、この手帳には彼女が撮った写真や、情報を記したメモが保管されている。
「それじゃあ、今度こそ行きましょう」
射命丸はそう言って飛び立つ。
そのスピードは、後ろに二人を連れていくためか、彼女にしては珍しく遅いほうである。
マミゾウも飛び立ってその後についていき、先にジャンピン・ジャック・フラッシュを装備していたことが幸いして、ディアボロも遅れることく二人の後に続いて飛び立つ。

こうして、偶然にも新たに射命丸を加えることになったディアボロとマミゾウは、神霊廟目指して飛んでいく。
情報収集に正当性を持たせられるようになったのはよいが、はたして射命丸が加わったことで事態はどうかき乱されることになりうるのか……。
それは3人の内誰にも分からないのであった。

203セレナード:2014/08/22(金) 23:24:12 ID:BQv8IYvY0
投稿終了です。
もうすぐここに投稿する話も本編だけ数えても50にせまりつつあります。
……でもまあ、実際には1話にまとめたり(一話だけ)消したりしたので、実際は42話程度なのです。

私が投稿を始めたころより、随分と時間が経ったのがわかりますね……。
ですが、途中で失踪しないように頑張っていきます。

204塩の杭:2014/08/23(土) 17:15:37 ID:XWwzE.J.0
投稿お疲れ様です。

読んでいてハーミットパープルの恐ろしさを再確認しました。
遠隔地の情報を数万円のカメラと引き換えに瞬時に得られるわけですし…
ディアボロならすぐ直せますしプライバシーもあったもんじゃあないですね。

この作品も残り半分程の折り返しと知り、終わりがやっぱりあるんだなと感じます。
長い間書き続けられたならば最後までみたいという気持ちも大きいのですが…
・・・次が楽しみだな、と思い続けておりますので頑張ってください!

205ポール:2014/08/23(土) 22:40:08 ID:cFbNjB0I0
投稿お疲れ様です!
ディアボロェ…よく一回目に壊したときにやられなかったな…
東方魔蓮記が途中からwikiのほうへ転載されておられないようで、いつの間にか話が飛んでてびっくりーです。

206セレナード:2014/08/23(土) 23:09:44 ID:0FCspfaY0
ご感想、ありがとうございます。
それでは、お返事を返していきます。

>塩の杭さん
最終回の目処は輝針城ぐらいを予定しています。
とはいえ、まだまだ『ディアボロの冒険』は終わらないです。
応援、ありがとうございます。これからも頑張っていきます!

>ポールさん
多分一回目の後直さずに放り投げたら攻撃されたでしょうねw
それはもう、弾幕ごっこではなく『蹂躙』と言えるほどの数の弾幕の猛攻を受けたかもしれません。

そう言えばしばらく誰も転載していませんでしたね。しなかった私にも問題ありですけど。
そのうち転載の作業をしておくとしましょうか。

207名無しさん:2014/08/23(土) 23:10:06 ID:1lTKt/xg0
セレナードさんの書くディアボロって、なんかこう、「結果さえよければ過程なんぞどうでもよい」というのがありありとでてますよね。
ディアボロだからそれでもいいんでしょうけど、本編より丸く見えるのに地が変わってないというか。
目の前で大事なものを壊されるの、誰でも嫌だろうに…w返すぞ、じゃないってwwそりゃ怒るよ!あやちゃん怒るよ!

208どくたあ☆ちょこら〜た:2014/08/24(日) 20:47:48 ID:HfP8KtL20
セレナードさん、投稿お疲れ様です。
敵に回しかけた射命丸を逆に取り込んだディアボロ、ただしお互いに信頼は無し。
しかし、元々何者も信頼せず利用してきたボスのこと、今回の事態は寧ろ『得意分野』なのでしょうね。射命丸に遅れを取ることはないでしょう。
次回も楽しみにしております!

209セレナード:2014/08/31(日) 22:10:29 ID:H2LI50Qg0
東方魔蓮記最新話、少々早いですが完成しました。

……書けるときは一気に書けるんですが、書けないときはかけないんですよねぇ。
良くある話なのかな?

210東方魔蓮記第四十八話:2014/08/31(日) 22:12:02 ID:H2LI50Qg0
ここが神霊廟か……見事なものじゃ」
今3人は、『入口』を通って神霊廟へと到達したばかりである。
一度写真で見ていたとはいえ、目の前に広がる光景には、ディアボロもマミゾウも射命丸も驚きを隠せなかった。
「新聞記者。どこから見て回る?それとも聖人を先に捜すか?」
ディアボロは射命丸を見ながら彼女に問いかける。
その質問を聞いた射命丸は少し考えて……
「先に聖人を探します。ついてきてください」
そう言って動き始めた。ディアボロとマミゾウもその後についていく。
「(迂闊に動いてひどい目にあわないといいが……)」
ディアボロはそう思っているが、射命丸は取材相手には礼儀正しいことは知っている。
……そう、『取材相手には』である。
白蓮に仕える者がいるように、聖人にも仕える者はいないとは限らない。
その者と射命丸の仲が嫌悪になって、聖人に取材ができなくなるのはディアボロとしても困る話だ。
だから、そのあたりはうまくディアボロとマミゾウでフォローしていかないといけない。

射命丸の後に続き、ディアボロとマミゾウも神霊廟の中に入る。
「初めて入る建物なのじゃ。はぐれてしまわぬよう気を付けなければならぬのう」
「ああ。この年で迷子になるのは勘弁だ」
そんな会話を二人でかわしながら、周囲を見渡す。
「誰も見当たらないが、『呼んでみる』か?」
ディアボロは二人に目配りしながら質問をする。
「勝手にうろついて怪しまれるよりはよいかもしれんのう」
「……そうですね。相手も取材をしに来たと分かれば警戒をしないはずです」
マミゾウと射命丸もその提案に賛成する。
「決まりだな」
ディアボロはそう言ってもう一度あたりを見回す。
「誰かいるか?」
ディアボロはとりあえず、誰かいるかどうか確認するために呼びかけてみる。

………

返事はない。

「どなたかいらっしゃいませんかー?」
射命丸はより大きな声で呼びかける。

………

「……誰か来るぞ」
返事は無かったが、誰かの気配がするのはディアボロには分かった。



「よくぞここにまいられた」
そう言って姿を見せたのは、古風な服をきて、大き目な帽子をかぶった灰色の髪の女性。
「…………」
だが、その直後に彼女は黙ってしまう。
「………?」
射命丸は疑問に思うが、ディアボロはあることに気づいた。
この女性は射命丸を睨んでいる。いや、『睨んでいるだけ』ならまだマシだった。
「(射命丸とこいつは初対面のはずだ。なのになぜ)」
女性が凄まじい量の矢の形をした弾幕を撃ってきて
「(『敵意』を抱いている……ッ!?)」
それに反応してディアボロは動きだした。

211東方魔蓮記第四十八話:2014/08/31(日) 22:12:34 ID:H2LI50Qg0
ディアボロが予想していた事態は、お互いに何もしていないなのに起きてしまった。
ディアボロは咄嗟に射命丸の前に立ち、弾幕を全てその身で受け止めながらも、なんとか踏ん張って耐えきる。
イエローテンパランスがなければ、ダメージをもろに受けていただろう。
「な……!?」
「!?」
女性はディアボロが射命丸を庇ったことに、射命丸はいきなり攻撃されたことに驚きを隠せなかった。
「新聞記者!早くこの場を離れろッ!何故かはわからないが、あいつはお前に敵意を抱いているッ!」
ディアボロはすぐに闘う構えを取りながら射命丸に警告する。
そしてすぐにマミゾウに目配りをし、
「護衛は任せたぞ」
マミゾウに射命丸の護衛を指示する。
「承知したぞい」
マミゾウはディアボロの言うことに従って、移動する射命丸を庇いつつその場を射命丸とともに離脱しようとする。
「させぬぞ!」
女性はそう言ってもう一度射命丸に狙いを定めるが、その時に移動する対象に集中していたのが失敗だった。
女性の視界から外れたのを理解したディアボロはすぐにイエローテンパランスを両手から引っ込めると、ハーミット・パープルを出して女性に絡みつかせる。
「なっ……!?」
絡みついたハーミット・パープルは、すぐに女性を縛り、締め付ける。
手首も足首も縛ったことで、物を投げつけるなんてことも女性にはできなくなった。
前兆の無かったその感触に女性は驚きの声を上げ、そちらに気を取られた隙に射命丸とマミゾウはその場から逃げることができた。
「いきなり何をする!?」
ディアボロはハーミット・パープルを緩めることなく、突然射命丸に攻撃してきたことについて女性に問いかける。
「お主の方こそ、何故妖怪をかばう!?」
女性の方は、先ほどのディアボロの行動が理解できないとばかりに彼に問い詰める。
「護衛をすることになったなら、目的の場所まで送り届けるまでその仕事をするのが常識だ」
ディアボロはそう言って女性を睨む。
「送り届けた後に護衛の対象がどうなろうがもう関係ないが、今はまだ仕事は終わっていないからな」
『元』とはいえギャングらしい考えだが、部下に自分の娘を護衛させておいて送り届けてもらったらすぐに殺そうとしたのはこの人です。
「あいつが目的の場所に辿り着けるまで、俺がお前の相手をしてやる」
ディアボロはそう言って、クレイジー・ダイヤモンドを出す。

弾幕はイエローテンパランスのおかげで全く効かず、何か道具をディアボロにぶつけようにも、精々造形が少し崩れるぐらいだ。
なんせこのスタンド、変装時にスタープラチナにぶんなぐられても中の人は平然としていられるほどの高い防御性能を持っている。

女性は自分が『何かに縛られている』のは目の前の男の仕業だと考え、先ほど射命丸に攻撃を仕掛けたときよりも多い量の弾幕を撃ってくる。
だがディアボロは焦ることなく、ハーミット・パープルの縛りを緩めずに耐え続ける。
「くっ……放さぬか!」
先ほどの大量の弾幕を軽傷で凌ぎきったことで、女性はなんと炎を出してきた。
「!!」
ディアボロにとっては予想外だが、女性からすれば、相手が物理攻撃に耐性を持っていて、かつ自身が拘束されていて動けないときには自身が使える最善の一手だろう。
「放さぬというのなら、これでもくらうがいい!」
女性はそう言って、炎をディアボロに向けて浴びせる。
流石にそれはマズい。イエローテンパランスのない両手は火傷を負うだろうし、イエローテンパランスがはじけ飛んでディアボロの制御から離れ、ハーミット・パープルにくっついてディアボロにダメージを与える事態になるのは避けたかった。
ディアボロはハーミット・パープルを解くと、その炎を回避しながらイエローテンパランスに両手を覆わせる。

212東方魔蓮記第四十八話:2014/08/31(日) 22:13:57 ID:H2LI50Qg0
自らを縛る『不可視の何か』が無くなったことを理解した女性は、すぐに浮遊する。
「(炎を使ってくるとは思わなかったが、こいつが俺に気を取られるようになったのは幸いだな……)」
幸い、イエローテンパランスと炎の相性は良い。
熱による火傷を防ぎ、時にはじけ飛ばして相手に傷を負わせることはできるからだ。
彼女がディアボロを敵として攻撃し続ける限り、かなりの時間は稼げるだろう。
「一つ聞きたいことがある。何故お前は突然新聞記者を攻撃してきた?」
誰の記憶にも乗っていなかったこの女性の情報を得るためには、直接この女性と対話するしかない。
そのため、ディアボロはこの女性との対話を試みる。
「お主の方こそ、何故あの天狗をかばった?お主は後であの天狗に襲われるなどとは思わぬのか?」
女性の方は、説明されても未だにディアボロの行動が理解できないようだ。
「……何を言っている」
ディアボロは皮肉を込めた笑みと鋭いままの眼光で女性をにらむ。
「お前を縛り上げれる実力を有している時点で、俺があの新聞記者に殺されると思っているのか?」
笑みを浮かべたのはほんの僅かの間。
ここからは、真剣に目の前の敵を倒すために行動を開始する。
「なるほど、確かにあれは侮れぬものだったが、どこまでも伸ばせるわけではなかろう?」
女性はそう言って炎をもう一度出してきた。
「お主の行動から、これならば有効と我はみたぞ」
それを見たディアボロは、再び構える。
「さあ、今度こそくらうがいい!」
女性はそう言ってもう一度炎を放ってきた。
それをディアボロは、背中の部分を構築している肉の部分を壁として目の前に構築して対応する。
そして、炎が迫ってこなくなったのを確認すると、肉壁をすぐに自身に戻す。
「ぬう……まさか容易く防がれるとは」
女性は不満そうにディアボロを見る。
「そしてその壁がお主にまとわりついたということは、お主には炎は効かないということか」
「Exactly。その通りだ」
ディアボロはそう言ってクレイジー・ダイヤモンドを出す。
「……だが、こちらが得意なのは接近戦だ。遠距離攻撃を得意とするお前とは少し相性が悪そうだな」
「しかし、お主は我の弾幕や炎では倒せん」
女性はどこからともなく弓と矢を取り出す。
「だが、これならばどうだ!」
自信満々な表情で女性はそう言いながら弓を引き絞る。
「(成程、イエローテンパランスを射抜くつもりか)」
その意図に気づいたディアボロは、先ほどと同様に背面に纏っているイエローテンパランスを再び肉壁として展開する。
そして視界を妨げることに成功すると、今度は手の部分を除いて全て肉壁の構成に回す。
「(早めに切り替えないといけないな……行けるかと思っていたが、予想以上に『負担が大きすぎる』)」
ディアボロはそう思いながら、自分から4枚ものDISCを取り出す。

213東方魔蓮記第四十八話:2014/08/31(日) 22:15:03 ID:H2LI50Qg0
……ところで、気づいた者はいるだろうか。
妖怪の山でカメラを取ってきた天狗に、ディアボロはヘブンズ・ドアーを使った。
だが、その時には彼はそれとは別に4枚のDISCを装備していたのだ。
ハーミット・パープル、クレイジー・ダイヤモンド、イエローテンパランス、ジャンピン・ジャック・フラッシュ、そしてヘブンズ・ドアー。
そう、あの時の彼は、全てを同時に使っていなかったとはいえ、なんと5体のスタンドを制御していたのだ。

スタンドは『精神力の具現体』。故に本来は群生型などの一部のスタンドを除いて一人一体である。
だがディアボロは、DISCを用いることで他人のスタンドを自分のものにしている。
他人のスタンドを制御するのは容易いことではなく、大抵の場合は他人のスタンドは制御できずに暴走させてしまう。
その事態に陥るのを防ぐ方法は一つ。
エンポリオ・アルニーニョがやってみせたように、『強い精神力を持って、暴れ馬をならすようにうまく制御しきること』である。
ディアボロはそうやって、今まで最大で4つのスタンドを制御してきた。

だが、その状態でありながらスタンドをより多く同時に制御しようというのなら、1枚追加した瞬間から彼の精神の負担が大幅に増加するのは避けられない。
それでもなお、一見すると何でもないように振る舞える時点で、彼の精神力は『異常』といってもいいのだ。
そしてその異常なまでの精神力は、今もなお経験や闘いによって成長を続けている。
住む場所が変わったからといって、彼の精神力が成長を止めるわけではないのだ。

イエローテンパランスを除く4つのスタンドのDISCを全て自身から抜き取ったディアボロは、すぐに3枚のDISCをケースから取り出す。
そこに肉壁を越えて矢が飛んできたが、ディアボロはそれをDISCで弾き落とす。

流石に5体ものスタンドの制御はこれ以上続けられないと判断したのだろう。
そして深く息を吐いて取り出した3枚のDISCをまとめて装備する。

弾いた音を聞いて届いたと判断されたらしく、次の矢が再び肉壁を超えて飛んできたが、それはスタープラチナによってキャッチされる。
その後すぐに時間を止めて、イエローテンパランスを再び自分に覆わせる。

現在、ディアボロが装備しているDISCはイエローテンパランス、スタープラチナ、ウェザー・リポート、エアロスミス。
炎と弾幕への耐性を持ち、近接戦も遠距離戦もこなせる組み合わせである。
女性との戦いにおいては、相性は悪くないだろう。

「何と!?」
目の前の肉壁が何の前兆もなく一瞬で消えたことに、女性は驚きを隠せなかった。
だが、今まで自分が体験したこともない現象にも怯むことなく、女性は再び弓を構えて引き絞る。
「…………」
ディアボロは動かず、何も語らない。
ただ、女性の動きを警戒しているだけである。
女性はそれを好機ととらえ、引き絞る力を強めて狙いを定める。

数秒の後、放たれた矢はディアボロ目掛けて一直線に飛んでいく。
だがその矢は、彼の右肩に命中する前にスタープラチナによって受け止められる。
リボルバーから放たれた銃弾を発射直後に指で挟んで受け止められるスタープラチナにとって、矢を受け止めることなど容易いことである。
「どうやら、完全に相性が悪くなったようだな」
ディアボロはそう言いながらスタープラチナに槍投げの要領で2本の矢を投げさせる。
「まだだ!」
女性は矢をたやすく受け止められ、投げ返されながらもそれを回避し、相性の悪さを宣告されながらも戦意は折れることはない。
「我が物部の秘術と道教の融合、その全てを我はまだ出し切ってはおらん!」
「それは俺だって同じだ。今までが俺の出せる全てだと思うな」
女性は今度は大きな皿を出し、ディアボロはエアロスミスを右腕に出し、その腕を女性に向ける。

片や妖怪に敵愾心を持ち、片や妖怪と一緒に生活をしている。
二人がお互いのことを詳しく知ったら、ディアボロは何とも思わないかもしれないが、この女性はどう思うのだろうか。
妖怪を庇う者として、彼を憎むだろうか。それとも、彼を助けようとして奮闘するだろうか。
……その答えは今は分からない。

214セレナード:2014/08/31(日) 22:19:39 ID:H2LI50Qg0
投稿終了です。

布都は妖怪に理由のない敵愾心を抱いているということで、戦闘の切欠がこのようなことに……。
そしてさりげなく今もなおディアボロは成長を続けています。
というか、あんな経験をしておきながら成長していかない理由がありません。

今年の夏は、ここら辺は冷夏に近い状態でした。
おまけに降雨が起きた日数が、月の半分を超えていたために出かけたくても出かけられない状態に……。
夏がこれなら、冬はどうなっちゃうんだろ。

215名無しさん:2014/09/04(木) 00:19:27 ID:k6WF1Zww0
投稿お疲れ様です。
ディアボロの精神は成長し続ける!人間は成長するのだ!してみせるッ!!
1部の単行本を読み続けているからかな?(ぶち壊し

布都ちゃんは対妖怪に関しては勘違いの喧嘩っ早いイメージはありますので、まさしくそんな感じ、という印象です。
おかげで心綺楼の意外と頭脳プレーに違和感をも感じてしまいますが。んー、これは個人の印象ですかね。
しかし、冷静になればディアボロは『送り届けた後は知らない』って言ってるんだから妖怪だけ相手にしたいのなら一旦送ってしまえばいいのに、とも思ってしまいますね。
自分の巣窟へ、屠自古も率いて相手ができるのに。…もっともそれを看破してディアボロが助けに行きそうな気もします。

続き、期待しています。自分も土日にはあげられたら…

216ポール:2014/09/05(金) 01:48:30 ID:uq3NNb/g0
投稿お疲れ様です!
今更ながら何枚もDISCを使えるのってスッゲーチートですよね
そして喧嘩っ早いどころかもはやフライングの勢いでケンカを仕掛ける布都ェ…

217どくたあ☆ちょこら〜た:2014/09/06(土) 18:24:35 ID:PwfeWXuw0
セレナードさん、投稿お疲れ様です。
【イエローテンパランス】、他の自分のスタンドまで喰ってしまうという弱点が存在したとは。しかし本体を喰うことは無いのですから、自身のスタンドも食われる危険は低い気が…
私の中では布都はジョセフタイプの飄々とした策士のイメージですね。抜けている部分も自分の一族を滅亡に引き摺り込む冷酷さも、どちらも彼女の本性。
『大火の改新』のような全方位焼き尽くす攻撃に対しても【ウェザー・リポート】がある限り、危なげなく戦えるでしょうね。
次回の戦闘、楽しみにしております!

218セレナード:2014/09/06(土) 19:07:42 ID:jWhdhivM0
みなさん、ご感想感謝します。
それでは、感想返しと行きましょうか……。

>名無しさん
あれはある意味、幻想郷に慣れたから心綺楼ではあんな感じになっているのでしょうかね?
良心的かつ実力のある者は妖怪でも認めているように受け取れますし。
とはいっても、あの場面は事情が分からぬ者には『天狗が人間二人を連れている』ともとれる風になっていますし。

送り届けるといっても、神霊廟にではなくて『聖人』のところに、なのです。
わかりにくかったのなら、何かしら修正でもしておいた方がいいでしょうかね?

>ポールさん
エンポリオもあの土壇場で2体のスタンドを制御できるようになったと考えると、ディアボロの最大5枚は凄まじい程にチートになりますね。
しかし、5体のスタンドを制御するとなると『常時精神を消耗する』のは避けられません。
『複数体スタンドを出し続けるのが難しくなる』(現に5枚装備時には4体以上スタンドを出せていない)こともありますし、ディアボロとしてもあの状態を維持するのは至難です。

布都のあの喧嘩を仕掛ける早さは……一体、射命丸のどこを見て判断したのやら。

>ちょこら〜たさん
あくまであれはディアボロの憶測……とも断言できないんですよね。
承太郎とラバーソウルの戦闘時、承太郎の手についたイエローテンパランスをラバーソウルは操りませんでした。(ゴンドラに乗り込んだ時には手についているのを見ているのに)
もしもあれが『操ることができない』、すなわちラバーソウルの制御を離れて動いているのだったら、ディアボロが上げた事例が起こりうるだろうと考えたのです。

ちょこら〜たさんには布都はジョセフタイプのイメージですか……。
なるほど、キレるポイントさえ違えば、そのイメージも当てはまりそうです。

『大火の改新』は……使うとなれば、如何にして布都が神霊廟の外にディアボロを誘導できるかがポイントですね。
流石に屋内ではあの技は使うわけにはいかないでしょう。神霊廟の中となればなおさらのことです。

219まるく:2014/09/07(日) 08:42:20 ID:hWr8uJPI0
段々と目標にしている期日からずれている…いいのか、自分。
投稿します、とりあえず!

220深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 3―:2014/09/07(日) 08:43:27 ID:hWr8uJPI0
「……以上が将棋の駒の動きとルールよ。わかった?」
「ああ。何となく、は」

 駒を動かしながら、幽々子からの説明を聞くドッピオ。
 確かにチェスとは似ているが、差異はそれなりにある。
 盤面が広く、その分多い駒。縦横無尽に動き回るチェスとは違い、堅実に立ち回るかの小さな動き。

「そして、取られた駒はこちらの駒として使用できる、か」
「ええ。これがこの遊びの妙味。味方が敵となって現れ場を混沌とさせる……これもお国柄の違いかしら?」
「……キャスリングもない。チェスは攻め入るゲームだけれど、こっちは似たようで既に刃が喉元に届きそうな、違いがあるな」

 手番を使い、結局壁にしかならなそうな一手が多く見えそうなルールでしかないように見えるが。それがドッピオの第一印象。
 飛車や角行といった強力な動きをする駒をもし取っても自分が取られたら対等に戻る。状況にもよるが、二つを持たれてしまえば太刀打ちできないだろう。
 チェスでは取った駒は盤面から取り除かれ、それまでだ。どんどんと消耗していく駒を、どれを使っていくか。そこで頭を悩ませていく。

「……確認だけど」
「はい?」
「具体的にどうすれば、お前は話をする気になる? 将棋で勝て、というのは実質的に喋る気はないという意味でとるけれど」

 声色を低くして幽々子に語りかける。そのはず、彼にはほとんど経験の無いゲーム。チェスも、ルールは知っているが数えるほどしかやっていない。

「そちらから持ちかけてきている以上、お前が未経験、もしくは苦手としているとは思わないぞ。甲子園優勝チームがバットを持ったことの無い茶道部に勝負を持ちかけているようなものだ、と思っているからな」
「あらあら……」

 それに対し、幽々子は困ったような表情を浮かべて笑う。
 その行動も半分苛立っている彼にとっては感情を煽る行動にしかならない。

「どうなんだ? 付き合うだけでいいのか? それとも条件があるのか? 言ってみろ」

 青筋が立つのをこらえながら、改めて問いかける。

「はぐらかしたら殴られかねない雰囲気ね。怖いわ。……さっきも言った通り。あなたが過去と向き合う盤面。それを感じ取れればいいのです」
「……ッ!! だからッ、どういう」
「お付き合いしてくれますか? してくれませんか?」

 どうやら、その点については問答を行う気がない様子。ありありと、見て取れる。
 選択肢を選ぶ以外、例えば選択肢を増やすことやそれについて質問すること。それらは行わないと言っている。

「……相変わらず、分かったようなことばかり……」

 口元に笑みを湛え、何処吹く風と自分の感情を受け流している。押し問答をしても、一点の答えしか返ってこないだろう。
 相手の感情を読み取り逆撫でする技術では勝ち目はない。それを持った相手に対して口で挑むのは至難。
 その行き着く先は、歩を一つ動かすことで始まった。

「それならば、さっさとはじめよう」

 実際にこのゲームがどう動くかはわからない。ただ、最初の一回で終わることはないだろう。彼女の言葉を信じるなら、将棋盤は過去であり、それと向き合うことが重要。
 理解の行き着く先にまで付き合わされると、ドッピオは予測した。この戦いは、幾度も繰り返されることで自分に何らかの意図を認識させるものと。

「どうぞ、よろしくお願いいたします」

 その通りか、別の思惑か。読み取ることはできないものの幽々子は手を進め、ゲームの開始を受ける。

221深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 3―:2014/09/07(日) 08:44:00 ID:hWr8uJPI0




「…………」 
「これで終わり、です」

 盤上に残っている物はほとんどがドッピオに切っ先を向けた駒であり、自分の駒はほとんどが失われているか、動かすことも無意味な状態にあった。
 そこに飛び込むように置かれた歩。元々はドッピオの駒だった歩を盤上に指し、幽々子は彼の敗北を告げる。
 まだ直接王手に至るわけではないが、どう動かしても次か、その次の一手で王手と至るだろう。詰みの状態だった。

「ん〜、やっぱり初めてさんには難しいかしら?」
「言ったろ、やったことないって。それに、あんまりこういう遊びは得意じゃないから」

 少し負け惜しむよう聞こえるように、幽々子に返す。
 一戦目は動きの確認と、彼女の実際の強さを図るためのものと考えていた。
 駒の動きと有効な活用方法。相手が使う戦略からの定石の推理。いわば勝つための手段を。
 そして、幽々子は実際に強いという確認。こちらのレベルに合わせて手加減をして、それを匂わせないようにする程度にはできる技量だということ。

「さあ、次へと参りましょう」

 盤上を片付け、駒を並べ直す。言葉の通り、再戦の合図。

「……そう、しようか」

 ドッピオも盤面に目を下ろし、その戦いに興じる。
 否、目線はそちらに向けていても意識は別方向に向いている。
 駒を持つ手におぼろげにもう一つの陰が現れ、共にドッピオの視界の端に映像が浮かび上がる。
 断片的ながらも、そこに映るのはこれから先の未来。

「あら、……あらぁ」

 ぱちぱちと、手の進むごとに幽々子の手の勢いが陰る。
 先ほどまでの様に慣れぬ手つきで進めていたとは思えぬ、道筋が見えているかのようなドッピオの打ち筋。

「随分呑み込みが早いのね?」
「そうかい?」

 彼女のペースに付き合わず、自分の勢いを重視して手を進めていく。
 いつの間にか、互いの技量が逆転したかのようにも見えた。

222深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 3―:2014/09/07(日) 08:44:36 ID:hWr8uJPI0




「……じゃあ、こういうのはどうかしら」

 ぴち、とドッピオの王将の前に桂馬が指される。この駒も、先に後続が幽々子を刺すため、ドッピオが捨て駒として使用した物。
 予知に従った今回の盤上は初めの頃こそドッピオが攻勢であったが手が進むごとに彼の包囲を抜けるかのごとく勢いを躱し、気づけば逆転していた。
 目前に置かれた桂馬を取るのはたやすい。だが、それを取れば後続が彼の王将を刺す。かといって退けばそのまま追い詰められ、戦いは終わりを迎えるだろう。

「……くっ」

 頭の中から、響くように痛みが走る。
 画面には、そのまま変わらぬ盤上で手を震わせている自分が写っている。……予知を見るまでもなく、自分の考えでも敗北は見えている。
 所詮は小手先なのだと言わんばかりの、彼女の打ち筋。一寸先の未来も、ぽっかりと開いた穴に進む道しか映していなかった。
 その道しか映しておらず、それに頼れば落ちるは必然。

「二回目だというのに、ずいぶん上手になったわね。苦手だって言っていた割には……まるで、先が見えていたかのような指し方だったわ」

 その言葉に対して、ドッピオは何も言い返せない。実際に見えていた。その通りに進んでいた。
 エピタフによる予知があるから、ある程度は余裕を持っていた。相手より先が見えていれば、その相手を打ち崩す策を持って予知は答えてくれるのだと思っていた。
 だが実際はどうか。がむしゃらに進む自分の周りを囲うかのように策を張り、罠をかけて待つ手筋に嵌っただけ。
 先が見えても対局が見えていない。よく使われる言葉ではあるが、予知を用いた状態でそれにやられるとは考えてもいなかった。
 頭の中から、血管が潰れるような痛みが走る。

「さあ、次へと……どうしました? ずいぶんと顔色が悪そうだけれど……」
「え? あぁ、そんなことはない。次を」

 びりびりと走る痛みを抱えながら、幽々子に倣い再び駒を並べ始める。

「では、よろしくお願いいたします」

 その言葉と共に、ドッピオは歩を動かす。
 まだ予知通りでもいい。でも、どこかに転機がある。そこで予知を裏切るような動きをすればもしかしたら……何か、変わるかもしれない。
 一瞬その考えがよぎり、それを頭を振ってごまかす。
 ボスから借り得た能力を信じきれないという自分の愚かな感情と、そうでもしないと彼女から優勢を奪えず、先を進めないのではないかという閉塞感。
 この二戦の僅かな時間で、ドッピオは精神的に疲弊していた。
 日は落ち始め、地上より高所に位置した冥界は日差しの影響を強く受ける。白から橙に変わり始めた日光は、二人の居室の隅まで照らす。
 外で佇むアンの薄い影が盤の上にまで掛かろうとしていた。

223深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 3―:2014/09/07(日) 08:45:22 ID:hWr8uJPI0



「一つ、聞きたいんだが」

 飛車が歩の隙間を通り、奥にある金の少し手前まで動いていく。

「何でしょうか?」

 それに合わせて、銀を飛車の前にと動かす。

「お前はこの盤のことを『過去を並べた盤』と言っていたな。それに向かい合う必要があると」
「そう言えば、そんなことを言ってたような気がします」

 少し思考の間を開けながら、動かした飛車の後ろに幽々子から奪った歩を差しこむ。
 頭痛は、いつの間にか消えていた。

「それに対する答えを考えていた……聞いてくれるか?」

 その言葉を聞き、幽々子はぴたりと動きを止め、彼を見やる。
 幾分か鋭い眼差しを、ここに来てから出したことの無いような、慎重に何かを察知するための気を相手に配りながら。

「……三回、ですか。ではお答ひぇ」

 喋りかける幽々子の舌が、何かに摘ままれる。それには危害を加えるための強さなどは入っておらず、行動を阻止する、けれど傷つけない程度の力。
 見えない『何か』は、盤の傍らから、その手の柔らかさとは別に、ぎらつく強い眼差しで彼女を睨みつけている。
 対する幽々子は、それに驚きの表情はするものの、特別抵抗をすることはなく、その唇には柔らかさを保たせている。

「……あの従者を置いている以上知ってはいるとは思っていたが……見えては、いないのか? それとも敢えて呆けているのか」
「ふぁい」

 どちらともつかぬ、気の抜けた返事が幽々子の唇から洩れる。
 キングクリムゾンは左手で幽々子の舌を掴みながら、右手は触れるか触れないかの距離で彼女の眼球に近づける。
 どれほど自らの意志により押さえ込もうとしても制御しきれぬ防衛の反応。見えても感じても居なければ、実際に触れない限りは気づかない故に反射は何も起きていない。
 もちろん相手は人間ではなく妖怪であるのでそっくり同じように返ってくるとは思えないが、この顔がよくできた作り物ではない限り似たような構造ではあると感じていた。
 舌は、口内を保護するぬめりと生体維持のための空気の流れに沿うような僅かな上下を繰り返している。

「先に調べたい意は今取れた。……お前からの回答をする前に、いくつか質問をさせてもらおう。それについては答えたければ答えるで、いい」

 幽々子の口から手を放し、ディアボロはキングクリムゾンを戻す。姿はドッピオのそれとはまったく変わらないが、その精神は逆転していた。

「見えないっていうのは嫌あね。……では、どうぞ。お答えする気になったらお答えしますわ」
「お前達は。敢えて達を使わせてもらおう。お前達は私の事について知っているな。おそらく、全てを」

 一瞬、沈黙。
 幽々子は王の傍らにある銀で、ディアボロの飛車を取る。

「はい」
「……私の経緯も、私の最期も。全てを知っていて、この世界に導いた……そうだな」

 その銀を、後ろに控えていた歩が刺す。それと共に歩は成り上がり、赤く刻まれた文字を盤面に表わした。

「その上で、ここまで……そうだな、辿り着いた。辿り着いた私にあの時の事をこのボードゲームを用いて振り返らせている」
「……はい」
「チェスと似ていると言っていた。まさしくこれは戦いの縮図。違いは、己の味方が寝返ること。かつて、私がいた組織の様に」

 ディアボロは、盤面から目を離して幽々子を見据える。それは、返事を待つという声なき呼びかけ。

224深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 3―:2014/09/07(日) 08:46:13 ID:hWr8uJPI0

「……厳密に言えば最初は敵などいなかった。味方だと、部下だと。……いいや、私自身もそう取ってはいなかった。まさしく駒だと」

 返事が返ってこないことを感じ、言葉を続ける。
 先ほど成った歩を自分の方に向き直させると、盤面の自分の駒を全て盤外へ放る。残ったものは中央、自分の手前に置かれた王将のみ。

「敵も味方もいなかった。全ては駒だった。だが、その駒は次第に意志を持ちこちらに向かってきた。その意思を、強さを、私は見抜けなかった」

 その言葉に対する返事として、幽々子は先ほど取った飛車を、王たるディアボロの前に置く。距離はあるが、すぐにとれる位置ではない。
 それに合わせ、彼の王将を一歩前に進ませる。
 次の手番である幽々子は、先まで彼女の陣営にあった、元は彼の陣営である成金を大きく動かし、飛車の傍らに置く。

「私は今も自分が行ってきたことが間違っているとは思っていない。奴が間違っているとも思っていない。自分たちの基準で言えば、どちらも正義だ。
 だが、ボードゲームでも僅かな均衡で崩れる様に。思想による争いも、思いもよらないことで均衡が崩れ、勝敗が決まる」

 ディアボロはさらに王将を進ませる。自ら、取れというように。実際に、進ませた先は飛車の目の前にあり。飛車では前進ができず取ることはできないが、傍らの成金が彼を取るだろう。

「お前に答えよう。最初から全て話していた。このゲームは私の過去であり、それに向き合わせるための道具。
 多くの者は……私に姿を見せていない、ユカリの関係者は。私を知っている、理解している。その上で、私の動向を見張り何をするかを探っている。そうだな?」

 そこまで言い切った彼に対して、幽々子は手を合わせてそれに感嘆の意を示す。

「その通りです。あなたがここでどう至るか。過去の罪人は何をもたらすか。……ただの罪人であるならばここまでしなかった。あなたは異質の力を持っている。いえ、あなた達は」
「スタンド能力、か」
「ええ。きっと貴方は聞いているでしょう、かつて宇宙を巻き込んだ事変を。幻想に至らぬ人間がそれほどの力を所有している事……それを紫は危惧している。
 そのテストケースとしてあなたは招待されたのです。この、幻想郷に」

 幽々子は真っ直ぐな瞳が彼を見つめ、幻想郷の大意が彼女の口から伝えられた。

「一つ、スタンド使いであること。
 一つ、いなくなっても問題ない人物であること。
 一つ、その二つの条件を見たし、かつ大きな力を持つこと。
 そこまで満たさなければ、あの事変に匹敵しうるとは思えず。かといってそこまでの条件を満たすものがいるかどうか、これが悩みだった。
 事変をきっかけに外は違う世界線に飛んでしまい、大幅に条件を満たすものが減ってしまった。……さすがにそこまでは、当人しか知りえないのだけれど」

「その中、何時から居たのかはわからない。死を繰り返す男の話。輪廻から放逐され、宇宙の引力から逸脱した存在がこの幻想郷に流れ着いた。
 ……そんな人間を、手を加えて観察対象として、受け入れたの。いつもは何でも受け入れるって言っているけれど、その時はだいぶ悩んだみたいよ、あの子」

「それがあなた。永遠の放浪者として彷徨っていたあなたを取り巻く鎖も同じくスタンドによるもの。それもあなたを招待する理由として大きかった。
 あれほどの騒乱の後でも変わらずあなたを縛りつづけていた。縛っている者があなたと違う世界線に行ってしまったというのに、それでもあなたの魂に纏わされていた鎮魂歌はずっとあなたに寄り添っていた。それが、一番なのかもしれない」

 とうとうと、幽々子は澄み渡る声を辺りに響かせる。
 ディアボロがここに来てから持っていた疑問が、ゆっくりと解消されていく。
 もちろん、聞けば聞くほど新たな疑問も現れていくが、今は静かにその声に集中していた。

「あなたが過去に何をしたか。これから先どうするか。それについては自由にすれば良いでしょう。それに肯定する者は付いていくし、反発する者は立ちふさがる。何も変わりはしません。
 幻想郷は全てを受け入れる。それはとてもとても慈愛に満ちたことです」

225まるく:2014/09/07(日) 09:05:29 ID:hWr8uJPI0
以上になります。今投稿したSSについて解説をしないことは騎士道に恥じる闇討ちに等しい行為…解説させてもらえるかな。

将棋、それほどやったことはないんで結局こんな感じです。一応プロの棋譜を見ながら反映させていましたが…
うんん、あれ漢字ばっかりでよくわからないですね。我ながら酷い。

世界線がどうのこうの、と言っていますが、イメージとして受け取ってください。
一巡→プッチが死亡→プッチが存在していないifの世界(6部ラスト、アイリンなどがいる世界)と7部、8部の世界とで別れている、と捉えています。
平行世界がD4Cによって存在することを作中で説明されたので、それを踏まえて。
今のディアボロや幻想郷がある世界はこの7部8部の世界線。元は今まで通りの6部の世界線。

また、ジョルノやミスタなど、かつて相手にしていた者は6部の世界線で生きている、と考えています。
プッチが存在していれば死んでいたが、存在していなければあの時点で生きていた者達はよく似た別の存在となって残っており(アイリン、アナキン、名前は出てないけどエルメェスにウェザーも)
プッチと大きく関係の無い者達…6部外の者達はあの出来事を享受しながらも生きていると考えているのです。
そのあたりもおいおいSS内で詳しく出していきたいなと。冥界編は次回で終わらせるつもりです。小タイトルは4つにはおさめておきたい。

……先に言っておきます。おそらく来月は投稿できないです。
リアルで忙しいのもありますが、その、スマブラにダクソにモンハンも…最近PSO2もはじめましてね…

226セレナード:2014/09/07(日) 10:49:57 ID:eZt1l7AM0
投稿お疲れ様です。
……やはり私の一話分は他の方に比べれば短いかなぁ。

結局、一巡後の世界と7部以降の世界の違いは今のところ判らないですね。
ひょっとすると、7部以降の世界は色々な要素の残滓によって生み出された世界かもしれないですし。

6部を含めて生き残ったキャラクターがあの後も生きているというのは否定しませんね。
エンポリオが生物が一巡後の世界に行くのを見ている以上、死んでいると考えるのはむしろ不自然ですし。

スマブラか……私も買いますね。
無論、積みゲーを生み出さないように気を付けはしますが。

227まるく:2014/09/07(日) 14:46:07 ID:hWr8uJPI0
時間のかけ方と長さが比例していれば気にすることはない(キリッ
別にそこの点は考える必要ないんじゃないですかね。自分はそう思いますよ。

たぶん世界の違いは荒木は考えてないし、考えていても出さないんじゃないかと思っています。もしあるのなら、7部中で話していいと思いますし、SBR1巻のカバーコメントでなんかそれっぽいことを言っていたような気も。
だから勝手に解釈していますよ。少なくとも、定助の世界に仗助はいないと。SBRで出ていないジョジョは空条家くらいですからね。

エンポリオだけが生きており、他はアイリンみたいに僅かに変わっている…というのもよく聞きますけどね。そこも、特別答えを出していないので勝手な解釈で進めております。
承太郎は死んでしまった以上、同じ承太郎がいるとは思っていませんがジョルノはあの時出ていなかったし死んでないなら変わっていないでほしいんだよなぁ…

228ポール:2014/09/09(火) 20:53:55 ID:zBzr0fXE0
投稿お疲れ様です!
時間と長さが比例されたら私20万字くらい書かなきゃならない…

将棋で自分の過去と向き合わされるとは…はたしてディアボロは黄金の精神で勝利するのか、帝王として戦い続けるのか…気になるところです!

229セレナード:2014/09/09(火) 22:06:37 ID:uJCqJNtI0
……ふう、完成しました。
たまには短いペースで行ってみますか。

230東方魔蓮記第四十九話:2014/09/09(火) 22:07:37 ID:uJCqJNtI0
片や皿を持って構え、片や腕を相手に突き付けて構えている。
第三者からすれば奇怪な状態だが、二人はいたって真剣なのである。

数秒の後、女性が皿を投げつけてくる。
ディアボロはそれをエアロスミスの機銃で粉々に破壊すると、そのまま射命丸とマミゾウが逃げた方向に移動を始める。
「(そろそろあいつらとも距離は取れているはずだ)」
「待て!」
当然女性も追いかけてくる。しかも浮遊しているからあちらは疲弊するのが遅い。
だがそれはあまり気にする必要はない。
気にするべきは……『聖人』が彼女と違って友好的であるかどうかだ。


廊下を走る音が一つ。明らかに歩くより速く進んでいる者が二人。
そして時々響く陶器が砕ける音と、出来てから数日も経っていない新築の建物に時々勝手に開く穴。
神霊廟にゴミを散らかし、傷をつけるという事態を引き起こしながら二人は戦闘を続けている。


スタープラチナで女性を視認し、女性が同時に投げてきた2枚の皿を、ディアボロは振り向きながらエアロスミスで撃墜する。
皿の破片を操って飛ばしてきたなら、スタープラチナがそれを全て掴み取って握力で砕く。
まさに、文字通りの膠着状態である。
「(この狭い中で船を使うわけにはいかん……ならば!)」
女性はそう思って何か仕掛けようとしたのだが……。


何かしようとした瞬間、時が止まった。
女性が相手にしているのは、自分よりもずっとずっと戦闘経験を積んできた者。
相手の動きから『何をしてくるか』はともかく、今までとは違う方法を使ってくるのを読むのは容易いのだ。


ディアボロは2秒ほど女性にエアロスミスの機関銃を撃つと、残りの秒で全力で走って距離を取る。
「(まずいな……見取り図も作ってくべきだった)」
ハーミット・パープルで神霊廟の見取り図を念写しなかったことに後悔するが、止まった時はそんなのはお構いなしに動き出す。
「ぬおっ!?」
女性は肌を掠めた何かに驚いて行動を止めたが、距離を取ろうとしているディアボロを見て追跡を再開する。
エアロスミスのレーダーで何人かの反応は検知できるが、建物の構造を今一理解できていない以上、迂回も仕方ない状態になっている。
ディアボロが現在目指している地点は……お互いにとても近い二つの反応だ。
どれがマミゾウと射命丸なのかはわからないが、あの後に何かない限り二人がはぐれるとは思えない。

231東方魔蓮記第四十九話:2014/09/09(火) 22:09:37 ID:uJCqJNtI0
「(二人と合流するなら、まずはこいつから逃げ切らないとな……)」
ディアボロは女性を振り切るため、エアロスミスを右腕から発進させる。

本来エアロスミスは、先ほどのように腕に出させて機銃を撃つスタンドではない。
戦闘機型であるこのスタンドは、飛行してこそその真価を発揮できる。
ディアボロの腕を離れて飛び立ったことで、先ほどまで使っていた二酸化炭素の探知と機銃だけでなく、爆弾の投下やプロペラを用いて切り刻むことさえできる。
おまけにスタンドなので空気抵抗や重力なんて全く気にする必要はない。

エアロスミスがディアボロの右腕より飛び立つと、彼は一旦動くのを止めて女性の方を振り返る。
すると、彼を追いかけていた女性も、ある程度距離をとったまま止まることになる。
ただ捕まえたかったのならそのまま勢いよく飛びかかればいいのだが、今までの出来事からして、彼が何をしてくるのか推測するのは困難だ。
肉壁で道を塞ぐかもしれない。再び不可視の何かで拘束してくるかもしれない。それとも、まだ見せていない何かを使ってくるかもしれない。
『何をしてくるかわからない』から、急に動きを止めるという些細なことにも警戒しなければならないのだ。

「(炎を放って来たり、どこからともなく皿を取り出してくる時点で、こいつも何かしらの術が使えると見ていい)」
女性が動くのを止めたことを確認すると、ディアボロはエアロスミスを操って女性の近くまで飛ばし、それと同時にウェザー・リポートでスタンドの雷雲を大量に発生させる。
「(ならば……)」
そして、うっかり直撃させないように注意しつつ、女性の目の前の床に爆弾を落とさせる。
爆撃を受けた床は爆発によって砕け、砕けたことによって生じた粉が爆発の衝撃によって勢いよく宙に飛び出す。
「(ちょっとやそっとじゃくたばらないだろう)」
女性がそれに驚いた瞬間に時を止め、ウェザー・リポートで舞い上がった粉に当たらないようにして女性に3発の雷を放つ。
それらはDIOが時間停止中にナイフを投げた結果の時と同様、女性に命中する瞬間に止まる。
「(こいつについても知りたいが、それは後だな)」
ディアボロはそう考えながら、彼女を巻くべく再び動き出す。
その直後時が動き出し、それとほぼ同じタイミングで女性に雷が命中する。
「――――ッ!」
女性は雷撃を受けて声を発することもできないが、どうやらこれでくたばったわけではないようだ。
「(今なら体が痺れて少しは時間が稼げるはずだ)」
ディアボロは女性が感電している隙に走って再び女性との距離を取る。

しかし、やはり物事はうまくいかないものだ。

――ディオ・ブランド―はこう語っている。『人間は策を弄すれば弄するほど、予期せぬ事態で策が崩れさる』と。
故に彼は人間をやめた。人でなくなることで、己の野望を果たそうとしたのだ。
……結局、彼の野望は叶わなかったが。

ディアボロの視界に入っている曲がり角、彼はそこを通るつもりであった。
エアロスミスのレーダーにその付近での反応はなく、問題なく通れる……はずだった。

そこから人がやってこなければ。

232東方魔蓮記第四十九話:2014/09/09(火) 22:10:10 ID:uJCqJNtI0
「!」
ディアボロは人がそこからやってきたことに気づいて、止まる
……なんてことはなく、そのまま進んで飛び越そうとする。
「屠自古(とじこ)!すまんがその男を捕まえてくれ!」
「えっ?」
突然の女性の呼びかけに困惑しながらも、屠自古と呼ばれたその者はディアボロを捕まえようとする。
ディアボロは走って屠自古に接近する間に、ウェザー・リポートを追加で出す。
一方の屠自古はわけがわからないまま、女性の言う通りにディアボロを捕まえようと接近してくる。
「(何故反応がなかったのか考えるのは後だ。まずはこいつをどうにかする!)」
ディアボロは掴み掛ってきた屠自古をスタープラチナを使って往なすと、ウェザー・リポートで風を起こして体勢を崩していた屠自古を女性の方に吹き飛ばす。
吹き飛ばされた屠自古と巻き込まれた女性が起き上がっている間に、ディアボロはスタープラチナも使って二人を観察する。

屠自古と呼ばれた者には、足がなかった。だが、それ以外は人間と異なる部分はない。
「(……成程、『肉体を持たない』のならば、何かしらの干渉を受けない限りの二酸化炭素はでない。だがらエアロスミスのレーダーに反応しなかったのか)」
ディアボロはそれを見て理解した。屠自古と呼ばれた女性は、所謂亡霊の類だと。
肉体がない以上、亡霊が呼吸をしても二酸化炭素の類は出ない。
だから、二酸化炭素を検知するエアロスミスのレーダーに一切反応しなかったのだ。

「(これは少し厄介だな……敵対したら1発機銃をくらわせておくべきか?)」
例えレーダーに反応しないものでも、レーダーに反応させられるようになる方法がある。
エアロスミスの機銃や爆弾で対象を傷つけることだ。
傷つけることに成功すると、『スタンド硝煙』といえるものが傷つけられたものから出続けるようになる。
エアロスミスのレーダーはこれにも反応するため、機銃や爆弾で傷つけることさえできれば亡霊である屠自古でも検知することができるようになるのだ。

「やれやれ、いきなり弾幕を撃ってきたから応戦しながら逃げていたら、今度は向こうから亡霊がやってくるとはな」
ディアボロは逃げるのをやめ、呆れたふりをしながら二人の様子を伺う。
「おい布都(ふと)、あいつは何なんだ?」
屠自古は先ほどまでディアボロとチェイスを繰り広げていた女性……布都に質問をする。
「俺はただの新聞記者の護衛。あの天狗を『聖人』と呼ばれるやつのところに送り届けるのが、俺の仕事だ」
屠自古の質問を、布都の代わりにディアボロが答える。
「だがどういうわけか、そいつは俺のことを『脅されて連れてこられた』と誤解しているようだがな」
そう言って、ディアボロは軽い溜息をつく。
何故布都があんな誤解をしたのか、彼にはさっぱりわからないからだ。
「……まあ、所詮は誤解だ。影響が出る前に解いてしまえばそれで終わる」
ディアボロは二人に背を向けて、エアロスミスのレーダーを見ながら歩き出す。
勿論、スタープラチナに二人を見張らせて。
「(さて、あの二人はどうでる?)」
布都はともかく、屠自古はどう出るのかわからない。
背後から襲ってくるのなら応戦するが、攻撃してこないのなら見逃しても問題ないかもしれない。

233東方魔蓮記第四十九話:2014/09/09(火) 22:11:06 ID:uJCqJNtI0
悔しそうな表情でディアボロの背を見る布都と、彼女を落ち着かせようとする屠自古が見える。
今のところ、二人して攻撃を仕掛けてくる気配は見られない。
「(屠自古が布都を説得し、攻撃を止めさせてくれるなら問題なさそうだ)」
仮に屠自古が布都と同じ考えを持っていたとしても、ディアボロは妖怪ではなく、普通では持ちえない力を持った人間である。
布都が屠自古におかしなことを吹き込まない限り、屠自古が攻撃してくることはないだろう。たぶん。
再びエアロスミスのレーダーを見て、反応をチェックする。
「(さて……どう進めば二人と合流できるだろうか?)」
反応の位置は大して変わっていないが、問題は構造である。
どうすれば合流できるのか、さっぱりわからない。
「(スティッキィ・フィンガーズで壁を通り抜ければ楽だが、今はDISCが装備できないな……)」
ディアボロはそう思いながらも屠自古が通ってきた曲がり角を通るために歩いて行こうとする。

「待ってくれ」
屠自古にそう呼びかけられ、それに反応してディアボロは二人のほうに振り返る。
「?」
「先ほどは布都が迷惑をかけたな」
屠自古は布都の非礼を詫びたの聞いて、ディアボロは敵意を向ける必要はないと判断した。
「大丈夫だ、傷は負っていないから気にする必要はない」
ディアボロはそう言って再び二人に背を向ける。
「ところで……天狗とその連れがどこにいるかわかるか?」
ディアボロはエアロスミスのレーダーを見ながら二人に問いかける。
反応の位置ともう一つの反応の距離からして、マミゾウや射命丸と同じ部屋に居るようにも思えるが……?
「……そういえば、太子様に取材したいという天狗がいたな。敵意は感じなかったし、態度も礼儀正しかったから太子様のもとに案内したが……」
「Hmmm(成程)、その天狗に同行している奴はいたか?」
他の天狗がここに来ている可能性は低いだろうが、念の為に屠自古に聞いてみる。
「ああ、一人引き連れていた」
屠自古の答えによって確信を得たディアボロは、彼女にある提案を持ちかける。
「そいつらと合流したい。案内を頼めるか?」
「分かった。ついてきてくれ」
布都との一件について負い目でも感じたのだろうか、屠自古はディアボロの提案をすぐに受け入れる。
その後ディアボロに接近してきたことからして、どうやら聖人のいる部屋は屠自古が来た道の向こう側にあるようだ。
屠自古がすれ違う際に何もしてこなかったことから、ディアボロもその後についていく。
そしてさらにその後を、少し間をあけて布都がついていく。
……どこか(恐らくディアボロが射命丸を擁護したことについて)「理解できない」といいたそうな表情をしながら。

屠自古に案内されてたどり着いたのは、とある部屋の前。
「この部屋に太子様と天狗たちがいる」
「(こいつらは聖人のことを『太子様』と呼んでいるな)」
ディアボロはそこに気づいたが、だからといって何か関連付けられるものがあるか彼の記憶にあるかどうかというと、『心当たりはない』だろう。
「くれぐれも太子様に失礼のないように」
「大丈夫だ。礼節ぐらいは心得ている」
屠自古の忠告に言葉を返し、ディアボロは聖人と射命丸とマミゾウがいるという部屋に入る。

234東方魔蓮記第四十九話:2014/09/09(火) 22:12:04 ID:uJCqJNtI0

「おや」
「!」
「おお、無事だったか」
部屋に入ると、ディアボロがやってきたことに部屋にいた者は皆気付き、マミゾウが声を掛ける。
「ああ、ちょっと大変な目にあったが大丈夫だ」
ディアボロはそう言ってマミゾウと射命丸に近づきながら、横目で聖人と呼ばれる者の姿を確認する。
その姿はまさに写真通り。だが、写真ではわからないことも実際に接触して分かった。
彼女が醸し出す雰囲気は、どことなく白蓮に近く、けれども彼女とは確実に『何かが異なって』いる。
「どうやら、布都が迷惑をかけたようですね」
「気にすることはない。大して傷も負っていないしな」
『聖人』のお詫びに、気にすることはないとディアボロは言葉を返す。
だがその言葉とは裏腹に、聖人の挙動に対する警戒は怠っていない。

「それでは、取材を始めるとしましょう」
聖人が射命丸にそう呼びかける。
取材を行うことは、聖人も屠自古か射命丸から聞いていたのだろう。
ディアボロがこの部屋にくるまで取材が始まっていなかったのは、聖人の配慮のおかげだろうか。
「はい。よろしくお願いします」
聖人の呼びかけに、射命丸は礼儀正しく答える。
『取材をする相手には常に礼儀正しく』。それも射命丸の一面である。


射命丸の取材を聞く中で、色々な事を知ることができた。
「私は豊聡耳神子。人は私を『聖徳王』と呼びます」
まず分かったのは聖人の名前は豊聡耳神子(とよさとみみの みこ)。
そして布都と屠自古のフルネームは「物部布都(もののべの ふと)」と「蘇我屠自古(そがの とじこ)」ということだ。
「(聖徳王か……あの二人は太子様と呼んでいたな)」
「(…………ん?)」
とここで、ディアボロはあることに気づく。
似たような名前を承太郎などの記憶から思い出したからだ。
「(まさか、あいつらの正体は……)」

蘇我と物部――それは、二つとも飛鳥時代に隆盛を極めた豪族の一族の姓だ。
そして聖徳王(今では聖徳太子の名が一般的だが)といえば、所謂冠位十二階や十七条憲法を定め、遣隋使を派遣し、仏教を厚く信仰して興隆につとめた存在……と語り伝えられている。
虚構説が最近出てきたが、今射命丸達の目の前にいる聖人は、本人の主張通りなら紛れもなく聖徳王その人だ。
つまり三人は、飛鳥時代の……およそ1400年ほど前の者達。


「(蘇我に物部、おまけに聖徳太子ときたか)」
ディアボロは取材内容を一文一句聞き漏らさず聞きながらも、思考を巡らせる。
「(……俺の予想を超えた展開だな)」
ディアボロには聖人と彼女に仕える二人の正体を予想することは流石にできなかった。
しかし、承太郎たちの記憶を得たおかげで物部や蘇我、聖徳太子に関する知識をある程度持てていたことは幸いだ。
もしもそうでなかったら、ディアボロは話についていけなかっただろう。


そして取材の中で、神子自身には妖怪に対して敵対的ではなく、闘う理由もなければ無駄な争いもしないことが本人の口より語られた。
これがある意味、ディアボロとマミゾウにとって最も欲しかった情報である。
「(よし、この話を妖怪に広めていけば、布都はともかく神子の方は妖怪にとって問題ないと理解してもらえるはずだ)」
ディアボロは表情を変えることなく軽く安堵する。
この情報を持ち帰り、広めることさえできれば、妖怪の群れが神子たちと戦うという最悪の事態になるのは避けられそうだ。



その後も色々なことが神子によって語られ、射命丸の取材は何事もなく終了した。
ディアボロにとってまだまだ聞き出したいことはあるが、射命丸の取材に便乗している以上、それは無理な話である。
「……それでは、本日は取材に応じてくださって、ありがとうございました」
射命丸がメモを全てとり、カメラで神子たちの写真を撮り終えると、神子達に取材のお礼を言う。
「どういたしまして」
神子は穏健な感じでそういうと
「布都、屠自古、皆様を入口まで案内してあげなさい」
布都と屠自古に出口まで案内するように指示を出す。
「はい」
「わかりました」
布都と屠自古はその指示を受けると、すぐに射命丸達を入口へと案内すべく動き始めた。
射命丸達もその後に続いて、部屋から出ていく。
「(……貴方には興味がありますが、今回は仕方ありませんね)」
部屋を出ていく射命丸達の背を見ながら、仕方がなさそうな表情で神子は思う。
「(『違う世界』からやってきた人よ、いずれまた会いましょう)」
自分たちとは異なる世界からやってきたことに興味を持ちながらも、彼とは話せないことを残念に思いながらも、いずれ再び会えることを信じて。

235東方魔蓮記第四十九話:2014/09/09(火) 22:13:22 ID:uJCqJNtI0
幻想郷と神霊廟のある空間を繋ぐ『道』の手前。
布都と屠自古に神霊廟の入口まで案内してもらい、その後幻想郷に戻ってきた射命丸達は、そこで軽く会話をしていた。
「布都は案内の時、終始無言で不機嫌そうだったな」
「亡霊の奴は、同じ無言でも申し訳なさそうにしていたがのう」
ディアボロとマミゾウは雑談をしている。と、そこに射命丸が割って入った。
「それでは、取材も終わりましたし、私はこれにて失礼します」
射命丸はそう言って少し歩き、飛び立つ……前に、ディアボロ達の方を振り返る。
「今回は聖人の住処とその位置を特定してくれたから許しますが、今度同じことをやったら許しませんよ」
やっぱりあの件は本人にとっては許しがたかったのだろう。
射命丸は、いつもと違って相手を威圧する感じでそう言った。
「分かった。警告として聞き入れておこのう」
ディアボロがそう答えたのを聞くと、射命丸は無言で山の方に飛び去って行った。
きっと自宅に戻ったら、早速今回の取材で得た情報をもとに記事を作るのだろう。
……その情報を得る為に、二人の協力者がいたことは書かれないかもしれないが。

「さて、命蓮寺に帰るとしよう」
「うむ。もう変化を続ける必要もあるまい」
ディアボロはイエローテンパランスを解除し、マミゾウは変化を解いて元の姿を見せる。
そして命蓮寺の方に向けて、二人とも飛び始めた
「聖人の能力などについて聞き出せなかったのは残念だが、妖怪についてどう考えているか聞きだせただけでもよしとするか」
「そうじゃな。後はこの情報を広めれば、妖怪たちも一安心できそうじゃ」
「……布都については注意は促しておくべきだろうとは思うがな」
あの時、布都は射命丸を攻撃することになんの躊躇いも見せなかった。
ディアボロはそれを警戒すべき事として受け止めていた
「飛鳥時代の人間はまだ妖怪への対抗手段を碌に持っておらんかったからな。あやつの妖怪への敵意は、例えどんな理由であれ妖怪が人を襲う事を許せぬからかもしれぬ」
マミゾウはそう言って、布都が妖怪に敵意を持つ理由を軽く説明した。
流石に長く生きているだけあって、当時の出来事を知っているし、知識も持っている。
「己の快楽の為だけに人を殺す奴に比べれば、生きる為に喰らうなんてまともな方だ」
ディアボロは、生きる為に喰らうよりも酷いことをする者を知ってしまっている。
人が痛みや死の表情を観察したり、死にゆく者が生きることに執着するその表情をビデオで観察して無上の楽しみを見出す……
そんな者のやることからすれば、妖怪が人を襲うことなどまだまともなのだ。
「……そうじゃのう」
マミゾウも、その意見に賛同する。
それは妖怪が人を喰らうことがあることに、比較されながらもある程度の理解をしてもらえたからだろうか……?
流石にこればかりは、それぞれの基準があるだろうから何とも言い難いものである。


その後、ディアボロとマミゾウから命蓮寺の皆に、マミゾウから部下の狸たちに、射命丸から新聞を通じて読者に、取材を通じて得た情報が伝わっていった。
それは時間の経過とともに広まっていき、『聖人』そのものが妖怪に敵対的ではないと分かったおかげで、妖怪界隈の騒ぎは沈静化を迎えていった。

236セレナード:2014/09/09(火) 22:18:54 ID:uJCqJNtI0
東方魔蓮記第四十九話及び神霊廟編、終了です。

今回、あくまで射命丸の取材についていった形なので、布都とは決着がつくまで戦っておらず、神子とはそもそも戦闘になりませんでした。
ですが、いずれ再び出会い、戦う機会があります。
彼女たちとの戦いは、その時に……。


そう言えば今日は9月9日、『チルノの日』だそうです。
『←⑨バカ』として書かれたからこの日になったんでしょう。
チルノのパーフェクト算数教室、曲も歌詞もノリがいいから嫌いではないんですね。
……話し相手にするにはちょうどいいかも。寒さに耐える必要があるけど。

237ポール:2014/09/09(火) 23:33:10 ID:a4v7BsbU0
投稿お疲れ様です!
今日はお月見の日だとばかり思ってましたが…そいつは昨日で今日はチルノの日だったんですね。なんと…。
そしてやはりディアボロ、成長してるんですね。あの「何かわからがくらえッ!」だなんて言ってたディアボロが…しみじみ
今回は平和的解決されましたが、やはりいずれ戦うのですね…
しかし 投稿ペースメチャ速いですねー!スゴイ…。

238セレナード:2014/09/09(火) 23:40:39 ID:uJCqJNtI0
>ポールさん
私の投稿ペースは気まぐれです。
数か月投稿しないこともあれば、大体週に一回で投稿できるときもあります。

色々と経験していくうちに、『何かわからないけど攻撃する』なんてことは無謀だと学習したようです(
いずれ布都や神子と戦う機会はきます。具体的にいうと信仰をかき集める必要がある時期に。
その物語が綴られるときを、気長にお待ちください。

239名無しさん:2014/09/11(木) 09:31:25 ID:m/VSFYKU0
布都もそれはそれの正義なんですよね。ただ、まだ慣れていないだけ。
投稿お疲れ様です!悶着も落ち着いて何より。
ほんと布都ちゃんの戦い方が駄々っ子にしか見えないwこれで船に乗ってしまったらアウトでしたねぇ…

神子さんがディアボロに感付いている?まあ、妖怪とは思えない奇妙な人間ですので気に掛けるのは当然ではあるけれど。
超人然とした雰囲気の神子ですがやっぱり心綺楼だと悪役笑いの似合うマントをつけて、こうなんというか…神霊廟勢のイメージが…w

240ポール:2014/09/12(金) 00:17:35 ID:UjCpeqPI0
3行でさっぱりわからない前回までのあらすじ
プッチ神父、地獄へ行く
罪人を先導して天国を目指す
映姫と対峙する
ってことで、悪役幻想奇譚第十二話のはじまりはじまり

241ポール:2014/09/12(金) 00:19:40 ID:UjCpeqPI0
悪役幻想奇譚 第十二話 『プッチ神父は天国を見るか?』


映姫が話の続きを語ろうとしたとき、リキエルが急ぎ足でやってきた。
「え、映姫待ってくれ!話す前にオレのセリフを言わせてくれ!」
紅茶の入った湯のみをカチャカチャと音をたてて机に置き、息を荒くして続きを語りだした。

「お前が神父の目指すものの邪魔をするというならばッ!オレは熱した鉄のような憎しみとともにお前を始末するだろうッ!!誰もオレの、いやオレたちの精神の成長を止めることはできないッ!!オレは『アポロ11号』なんだ―――ッ!」

「ってなことをオレが言ったんだ!」


リキエルの言葉に再び勇気付けられた罪人たちが叫び突き進む
「そうだ!!俺たちは『犬』じゃねえ!」
叫び
「『天国』へ行くことで!俺たちの人生はようやく始まるんだ!!」
突撃し
「俺たちには神父様がついている!!神のご加護があるんだ!!相手が閻魔であろうが負けるはずがない!!」
援護し
「一人でも天国へ行ければ!その時点で俺たちの勝ちだ!!」
鼓舞し
「オレたちも行くぞッ!!『血管針攻撃』!ってあれッ!?ウギャ――――ッ!」
その他がやられた・・・

オレも行こう、とリキエルが進もうとしたとき、プッチ神父が彼の肩をつかんで止めた。
「お前は今はここに残るのだリキエル」
「え?」
いくぶん不服そうな顔をしたが、プッチに言われたら逆らうわけにもいかず従うことにした。後で自分の力が必要になるのかもしれないが、それでもやはり目に見えた形で神父に貢献したいというのがリキエルの心情だった。

「いやぁ・・・すごいですね。アポロさん「リキエルだ」の言葉に触発されて、みんなどんどん閻魔様に向かっています(その他は置いといて)。ほら、もう見えないくらい遠くにまで行ってますよ」
感心したように美鈴が言っている。

その言葉を聞き、プッチは組んでいた腕を解き、前方に行った罪人達を指差して言った。
「門番、君は一番先頭の罪人が見えるかね?」
「?いえ、もう遠くて見えませんね。それがどうかしたんですか?」
美鈴の答えを聞いた後、今度は腕の角度を少し上にあげて言った
「そうか。ならば…一番先頭の罪人の、さらに『前にいる』映姫の姿は…見えるかね?」
「『見えま』…え?」
「そうか。ならばなぜ?遠くにいるものが見えて、近くにいるものが見えないのだと思う?」
「小さくなっている?でもどうして?」
「スタンド使いではない君には見えないだろうが、わたしには今映姫の肩に『赤ん坊』のような像(ヴィジョン)が見える。あれはかつてわたしと同化した『DIOから生まれたもの』と非常に似ている。もしそれと能力の効果が同じならば・・・・彼らが映姫に近づくことは『決してない』」

――――――――――

当時のことを思い出しながら興奮気味に語っているリキエルをよそに
黙って聞いていた吉良が口を挟んだ
「君はスタンド使いになったのか?」
少し驚いたように目をやる
「えっと・・・それはですね」

――――――――――

242ポール:2014/09/12(金) 00:20:23 ID:UjCpeqPI0
「何故だかは知りませんが、私に『スタンド』が発現したようですね。ここ最近私の周りには多くのスタンド使いがいました。それに加えプッチ神父、貴方と戦うことが原因となって、能力に目覚めたのでしょう。この能力は、天国を守るために生まれた能力。名づけるならば『Stay away from heaven』っ!!」
くわっ!っと目を見開き小さいがプッチのところまではっきりと聞き取れる声で言った。

「ふん。『Stairway to heaven(天国への階段)』で目覚めた能力が『Stay away from heaven(天国から離れろ)』とはな。うまく言ったものだ」
言ってしまえばかなりヤバイ状況にもかかわらず、プッチは不自然なまでに落ち着いていた。似つかわしくないジョークを言えるほどに。

「感心している場合じゃないでしょうプッチさん!近づけないんじゃあ勝てっこないじゃないですか!」
落ち着いているプッチを見てすこしイラついた口調で言った。場に似つかわしくない行動を取っている人物がいればイラつくものだ。

「落ち着けよぉ。神父が何も考えずにボーっとしてるわけないだろう?だいたいなんでもできるスタンドなんてあるわけねーぜ。ぜってー弱点があるはずだぜ。あとオレの名前はアポロじゃあねぇ」
手首のスカイ・ハイをなでながら言った。

「確かにあのスタンドで物体を凍らせたり、炎をだしたりのは無理でしょうけど、拠点を守るという点においては、近づけないんじゃどうしようもありませんよ?」

「能力発動の鍵があるはずだ。小さくなる原因が。『近づく』ということだけが原因ではない。スタンド能力に同じものは存在しない。小さくなっている者どもの共通点はなんだ・・・まさか・・・『敵意』か?『敵意』が発動条件なのか」
先ほどまで冷静だったプッチが焦り気味に言った。

「待ってくださいプッチさん。『敵意』を失くして倒れている人もいますが、大きさは戻っていません。きっとほかの原因があるはずです」
そして今度は焦っていたはずの美鈴が冷静に状況を分析してプッチの間違いを指摘した。
「……」
リキエルは…なぜか黙ったままだった…。

全員が、例外なく小さくなっているこの状況で美鈴は静かに推測をはじめた。

小さくなっているのは…近づいているもの全て?
着ている服や武器も小さくなっていますし…
影響をうけていないものは…止まっている私達3人だけ?
これだけですと…やはり『近づいたもの全てに影響を与える』ことになりますが、同じ能力は存在しないならば、やはりなにかしら異なる点があるはず…
異なる点?…逆に共通しているところはなんでしょうか?
小さくなっている人全員に共通する点は…
ひょっとして

思い至ったことが正解か不正解かわからなかったため、少し困ったように「うーん」とうなり、自信なさげに脚を半歩だけ踏み出した。

小さく…ならない?

身体にまったく異常がないことを確かめると、今度は大きく一歩踏み出す。

「おい何をしている。能力の発動条件もわからないまま近づくのは危険だ」
「いえ、大丈夫です。私には『条件』がわかりました」
美鈴 小さくならない
「なにッ!?」
「プッチさんも来てください。あなたの言葉が真実から出たものならば、小さくならないはずです」
「何だと」
「それともあなたの言葉はうわっ面から出た邪悪にすぎないのですか?」
プッチ前に出る
小さくならない
それを見て美鈴が言う
「…よかった」
「おい、一人で納得するな。条件とはなんだったのだ?」
「推測ですがおそらく『天国へ行きたいと願うこころ』です。プッチさん、あなたは自分のためではなく、他人を天国へ導くために動いている。だから近づけたんです」
「なるほどな。『幸せになりたいと願うものは幸せになれず、幸せにしたいと願うものが幸せになれる』ということか。しかし・・・君は天国へ行きたくないのかね?天国へ行きたいからわたしと共に行動しているのではないのかね?」
「そ、それはその・・・あ、あはは。プッチさんが無理やり連れてきたんじゃないですか」
ホントのことを言うと、あなたのその強い『信念』が目指すものを見てみたいだけなんですがね、『天国』なんてどうでもいいですよ。強い信念はその人を輝かせますから。
はっ!!
「!!ってあれ?いない」
前に行ってる…
「小さくならないとわかったのだ。さっさと映姫を倒しに行くぞ」
…まったくこの人は
「了解です。神父様」
自分勝手なんですから

「お、オレは?」
「あ、アポロさん。あなたも大丈夫ですよ。あなたも『天国に行きたい』のではなく『神父を助けたい』だけなんですから」
「オレはアポロじゃねえッ!リキエルだ!二度と間違えるな!!」
「はい(リキュール?)」

243ポール:2014/09/12(金) 00:21:05 ID:UjCpeqPI0

――――――
のどが渇いたのかリキエルは話を切り紅茶を手に取った。
「ふぅ。うめえな。でだ、そこから何があったかオレが言うと、ややこしいことになるし、正直オレも何があったかはっきりわかってるわけじゃあねえ」
こいつなら知っているだろう。そんなリキエルの視線が映姫に向けられた。

「ではそこから先は私が話しましょう。何があったか私でなければわからないでしょうから。ま、今の話もこれからの話もある意味まったくの無駄なんですけどね」
その視線を受け取った映姫が続きを語りだした。
――――――
どうやらこの能力は『天国へ行きたい』ものにのみ効果を発揮するようですね。あの3人の内誰かが、それに気付くかもしれませんね。
おや?
「どうやら気付いたようですね。しかし・・・気付かずにその場で途方に暮れていれば怪我をせずにすんだというのに」
小さくならないことを確信し、こちらに向かって歩いてくる『3人』に向けて冷たく言い放った。
「プッチ神父、貴方の能力は脅威でした。20m以内に入ってこられれば魂をDiscにされてしまうかもしれない。しかしその脅威も『スタンドはスタンド使いでしか見ることは出来ない』という条件があってのもの。スタンド使いとなって貴方のスタンドが見えるようになった今、貴方のスタンドはそこまでの脅威ではありません」
そういって懐から穢れのない、綺麗な悔悟の棒を取り出した


「わたしは16のころからスタンドを使っていたのだ。ついさっきスタンドを使えるようになった小娘が甘っちょろい口をきくんじゃあないッ!」

迫りくるプッチをよそに、映姫は今出した悔悟の棒を凝視していた。

『異常』
違う!
なにか『異常』なことが起こっている。

悔悟の棒が綺麗?
吉影の血を拭き取らなかったのに…
おかしい

話の進み方が…滅茶苦茶ですね…小学生の夢みたいに…。
ホワイトスネイクの能力は…記憶を取り出すことだけ?
違う!

スタンド能力発動の条件が『天国へ行きたいという意志』?
これも違う!

どこから?

最初から…?

スタンドが発現?

『スタンドが発現』!?

違う!!

ホワイトスネイクのもう一つの能力…


『幻覚』ッ!!

はっと目を覚まし、急いで周りの状況を確認すると、彼女の目に大量のDiscが映った。
「これは…魂そのものをDiscに…」
罪人達はなぜかみなプッチによりDiscにされていた。

映姫は自分が傷を一切負っていないこと、周囲に危険がないことを確認し、最後にあることを確かめた。

「あ、痒かったところに手が届…ってこんなことしている場合じゃありません」
身体が少しとけてほんのちょっぴり柔軟になった映姫であった。


―――――――――

「で、幻覚オチ?無駄に時間とらせるんじゃないわよ」
「そう言うな霊夢。幻覚の中で戦ってた場面なんて全部省略しているじゃあないか。それと、ここからは幻覚ではない実際にあった話だ」

―――――――――

244ポール:2014/09/12(金) 00:21:57 ID:UjCpeqPI0

映姫が微妙に柔らかくなった身体を微妙な方法で有効活用しているとき、プッチたちはというと…

ここは地獄の1丁目

「ところでどうして再起不能にしなかったんですか?」
「いや、再起可能だからいいのだよ」
「?よくわかんねーけどオレは神父の言葉に従うだけだ」
特に焦ることもなく、なにやら話し合いをしていた。

「人類が天国へ行くためには、再びわたしのスタンドを進化させる必要がある。進化させるのに必要な要素は既にいくつかは揃っている。DIO!君から生まれたものはあれからずっとわたしと同化したままのはずだ。だが、何故だか知らないが存在が空っぽになっているような感覚がする。しかし罪人の魂は、すでに集め終えた。したがって必要なのは『勇気』と『場所』の二つだけだ」

必要なものは『勇気』である

わたしはスタンドを一度捨て去る『勇気』を持たなければならない

朽ちていくわたしのスタンドは36の罪人の魂を集めて吸収

そこから『新しいもの』を生み出すであろう

「これだ。この言葉を完全に理解しなければ……」

『勇気』…捨て去る…スタンド……スタンドとは精神…精神は魂…スタンド能力は精神の具現化…待てよ
何か思いついたのかプッチはハッと息をのんだ

「理解したぞDIO『捨て去る勇気』が一体なんなのかを…」

そう言うとプッチはスタンドを発現させ、ホワイトスネイクと目を見てから叫んだ。

「空っぽに感じられた原因はこれだ!生前は魂が2つ、そして魂の器も2つあった!わたしの魂と『DIOから生まれたもの』の魂だ!だが一度死ぬことにより『DIOから生まれたもの』の魂は成仏してしまった!結果、わたしには満たすべき2つの器がありながら、1つ、つまりわたしの魂の器だけを満たし、スタンドを発現させ、『DIOから生まれたもの』の魂を満たしていなかった!だから空っぽだったのだ!!ならば『捨て去る勇気』とはッ!具現化した精神、つまりスタンドを魂の器に入れることだ!!『捨て去る勇気』とは『与える勇気』!すなわち!自分の魂を!自分のスタンドを!DIO!君から『生まれたもの』へと『与える勇気』!そしてそれは!『信頼する勇気』だ!友を信頼し、自分の魂を『与える勇気』!これで再びわたしは進化する!」

プッチはホワイトスネイクを、己の中の空っぽの魂に仕舞い込むようイメージし、ゆっくりと、スタンドを体に戻した。
インクが紙にしみ込むようにホワイトスネイクの姿は消えていった。

直後、プッチの体を光が包んだ

「「おお」」

しかし……


プッチを包み込んでいた光は、成長の兆しを見せることなくやがて消滅した。
「なぜ…?」
おかしい。進化の条件は合っているハズなのだ…。

「魂の形が合わなかったのでは?その…DIOというものから生まれたものの魂しか入らないのでは?」

「だとするとまずいぞ!どこにいるかもわからない赤ん坊の魂を探さねばならない!っく…落ち着け素数を数えるんだ…」

敬愛する神父の狼狽するさまを、目を泳がせ不安げに眺めていたリキエルが、やがて意を決して言葉を発した。
「神父よ?」

「なんだ、リキエル?」

「オレではダメなのか?」

「何のことだ?」

「オレも『DIOから生まれたもの』だ。そしてオレも魂だけの存在。ならばオレの魂を使えば、神父の求める力が手に入るはずだろう?」
「でもそれじゃあアポロさんが消滅するんじゃあ?」

「いいや、美鈴(オレの名前はリキエルだ)。いいか?オレは『DIO』という男についてはほとんど知らねえ。DIOが困った時に命を懸けれるか?ときかれたら『いいや』と答えるだろう。DIOのことではオレの心は動かないからだ」
リキエルの声に力がこもっていく
「だがオレに『精神の成長』を教えてくれた神父…あんたのためなら命を懸けれる。オレは神父の役に立ちたいんだ。神父の成長を助けたい。だから…!」
「わかったリキエル」
リキエルの言葉を聞きプッチが手を伸ばした
「ありがとう神父。…これがありがとうを言うオレの魂だ。受け取ってくれ…」
リキエルの心は、穏やかだった。
リキエルの魂は、生まれたての赤子のように、純粋さに満ちていた。

リキエルの頭があった場所から、1枚のDiscが落ちた。

プッチはそれを拾い、頭に差し込んだ。

リキエルは消えた
プッチは無意識に十字を切っていた
祈りの言葉もなにもなかったが、そこには無言の絆があった
魂の絆がそこにはあった

245ポール:2014/09/12(金) 00:22:43 ID:UjCpeqPI0



「(アポロさんとプッチさん・・・つまり・・・)アパッチさん・・・」
「名前を混ぜるな。プッチでいい。さて…魂は満たされ、わたしのスタンドは再び進化した。C-MOON、重力を逆転させる能力だ。ほら」
「わわ!上に落ちる!」
「ああ、すまない」
美鈴が上に落ちたので、プッチ能力を見せるために出したスタンドを引っ込めた。

「下に落ちる!って当たり前か。で、これからどーするんですか?天国へは上に落下していくんですか?」
「いや、もう一度スタンドを進化させる。そのためには、『場所』に行く必要がある。ここにもあるはずなのだ。『場所』へと行きさえすれば、『天国の時』が訪れる。そうすれば『重力を逆転させる』ことしかできない能力ではなく、『重力と時間を操る能力』が完成するのだ。お前は幻想郷の住人だろう。知らないかね?どこか『重力』に関係する場所を?」
そうプッチは聞くが

「知りませんよ!」

美鈴、即答である。
「『天国』がどこか知りませんけど、幻想郷(ここ)だって楽園ですよ。あんまり変なことやりすぎると、いいかげん霊夢さんに討伐されちゃいますよ?」

ここが楽園?天国(ヘヴン)みたいなものだと…妖怪たちにとっては避難所(ヘイヴン)だろうが、天国ではない。しかし…
「霊夢…博麗神社か…。重力を操る霊夢がいるあの場所こそが、わたしの求める『場所』に近いだろう」
もっとも…

「プッチさん!あれ!」

今はソレを考えている場合ではないか

「ああ。わかっている」

プッチが顔を上げると、やたらときれいなフォームで走ってくる映姫の姿をその目にとらえた


「……」
「……」
ああ、体が柔らかくなったからか。


映姫はプッチたちを確認すると、さっそく弾幕を放ってきたようだった


映姫の姿をとらえた時、プッチは違和感をおぼえていた。
まだリキエルの魂がうまく馴染んでいないせいか、感覚の目が使えなくなっていた。
『緑の赤ん坊』は生まれたばかりで経験や思考が浅かったので比較的短時間に―それでも不調はあったが―魂に馴染み、プッチ本人にも影響は与えなかった。
しかしいくらこころから捧げると言っても生まれたばかりの赤ん坊と20数年生きてきたリキエルの魂とでは魂の深さ、厚みが違う。やはり安定するまではよきにしろ悪しきにしろ相応の影響を与えるのだ。
その影響というのが、今のプッチに『感覚の目』が使えない、という結果になって現れていた。
いまのプッチはスタンド使いでありながら、スタンドを感じることしかできなくなっていた。
もっともこれは周りにスタンド使いのいない今、ちっぽけな影響でしかないのだが、『弾幕』を『感覚の目』でしか認識できないスタンド使いにとって、この状況は楽観視できるものではなかった。

だがそれも『もしわたし一人しかいなかったら』の話だ

くるりとプッチは美鈴のほうへ向き直り、『感覚の目』が使えず、映姫の弾幕を見切るには美鈴の力が必要だと説明し、彼女に頼んだ。

「門番頼まれてくれるな?おまえがわたしの目の代わりになるのだ。弾幕がどこから来るか教えてくれ」
「わかりました。ですがそれだと私が直接戦ったほうが早いんじゃないですか?」
もっともな意見である
しかし
「いや、今はまだ・・・わたしが戦う必要がある」
プッチは美鈴を見つめ、そう言った

あなたが目指しているものは本当に『天国』なんですか…?
なんだか…もっと『先』を目指しているような…
『天国』にたどり着くことが、ちっぽけなことに感じられるくらいに…何かとてつもないことを…

プッチの言葉に謎めいたものを感じた美鈴だが、ここは既に戦場
冬のナマズのようにじっとしているわけにはいかないのだ。ツバメのように素早く動く必要がある。
そーこー考えているうちにさっそく弾幕が飛んできた

弾幕の位置を伝えるべく、声を張り上げる。

のだが…

246ポール:2014/09/12(金) 00:23:53 ID:UjCpeqPI0

「気をつけてください!庚(かのえ)の方角225度0分から来ましたッ!」

「ッ!?庚(かのえ)の!?方角ッ!?」
First attack!
「うぐッ!」

「ああ、何じっとしているんですか!次は丁(ひのと)の方角195度から腰の入ったスゴクいい弾幕がッ!」

「おい丁(ひのと)の方角は!ぐぶえッ!!」Good!

「なんで避けないんですか!次も来ますよ!再起不能になりたくなかったら避けてください!」
「中国式はやめろ!理解できない!」

「ああ!えっと次は、西から東にかけて!」
「どっちが西だッ!?くはッ!」Good!


次から次へとプッチに弾幕が当たっていくのを見て美鈴は焦るどころか逆にフッと笑った

…おもしろい

プッチとしてはたまったものではないが、上から目線でえらそーにしていた人物が(自分のせいとはいえ)滑稽な姿をさらしているのだ。ほんのちょっぴりいたずら心が刺激されても仕方あるまい。

あんまり効いていないようですし、大丈夫でしょう。
「えっと、右から!プッチさんから見て左からきます!」
「ややこしい!ッ!」
避けられずに左目付近に当たった。Good!

「獣(けもの)を英語で!」
「それはビースト!かはッ…東(イースト)か」
今度はお腹に当たり、その衝撃にプッチは思わず膝をついた

「カトリックの聖体はパンにこれを使わない!」
「イースト(菌)!くッ!って今のは東じゃあなかったぞ!」
律儀に答えるが、やはり今度も避けることはできなかった

「大熊座の方角から!」
「む、それはわかる」ディ・モールト!
「えっ?!」
今度は華麗にヒョイと避けた。

「乙(きのと)から西にかけてきました!」
避けられたのが悔しいのか、今度は混ぜて伝える美鈴。
「混ぜるんじゃあない!ぬぐッ!」
そして当然のように弾幕に当たるプッチ。
「素数を数えて落ち着いてください!」

「1」「2,3,5,7,「9」11,13「15」ええい!1は素数ではないッ!9も15も素数ではないッ!」
「また来ました!最小完全数時の方向から!」
「いちいち呼び名をかえるんじゃあないッ!映姫!少し待て!」

業を煮やしたのか戦闘中にも関わらず、弾幕を撃ちつつもう会話ができる距離まで近づいてきた映姫にそう言うとプッチは美鈴のところまで飛んでいった。
「いいかッ!わたしの右からか左からかそれだけでいいッ!東西南北、干支、十干(じっかん)は使うな!謎々をしているヒマもない!Do you understand!」
「わ、わかりました」
あまりの剣幕におされてついうなずいてしまう美鈴。

「よし」
「それから今気付いたんですが・・・」
「なんだッ!?」

「『後ろ』って上ですか?下ですか?」
「は?」
美鈴の言葉を聞き後ろを振り向いたその瞬間

ッ!!

Excellent!!

247ポール:2014/09/12(金) 00:24:30 ID:UjCpeqPI0

「あー・・・ほんのちょっぴり言うのが遅かったですかね・・・」
映姫の弾幕がプッチの顔面に直撃した
「(いたそー)」
そしてその瞬間、プッチの頭がプッチンした

美鈴による度重なる妨害、素数を数えることすら邪魔をされ、プッチの精神状態は崖っぷちに追い込まれていた。

さて話は突然変わるが
一流のスポーツ選手には「スイッチング・ウィンバック」と呼ばれる精神回復法がある!
選手が絶対的なピンチに追い込まれた時それまでの試合経過におけるショックや失敗、恐怖をスイッチをひねるように心のスミに追いやって闘志だけを引き出す方法である。

その時スポーツ選手は心のスイッチを切り替えるためそれぞれの儀式を行なう。
「素数を数える」「深呼吸をする」などである。

ショックが強いほど特別な儀式が必要となるが・・・・・・・・・!

この時『プッチのスイッチはッ!』
グググ
「ちょっ!なにしてるんですか!?」
バルスッ!

目を押すことだったッ!!!!





「ぎにゃ―――――ッ!!!」



ただし美鈴の


「これでいい。なまじ見える者がいたからそいつに頼ってしまったのだ。感覚の目もそろそろ慣れてきた。もうぼんやりと見える。これだけ見えたら十分だ。おまえはそこで冬のナマズのようにおとなしくしているのだ!」

「目がァ!目がァ!!!潰れてはいませんけど後遺症で涙目になりそう!涙目の美鈴って呼ばれそう!」

そんなセリフがはけるなら確実に潰しておけばよかったかな
しかし…
「さあ、第二楽章を始めようか」


次回予告

リキエルの魂を受け継ぎついに進化したメイド・イン・ヘブン!
信じ仰ぐ想いを力に、Give me all your LOVE tonight!
プッチは映姫に勝てるのか!?
次回 悪役幻想奇譚第十三話
『プッチ神父は手を汚さないか?』
お見逃しなく!

248ポール:2014/09/12(金) 00:26:57 ID:UjCpeqPI0
投稿終了です。前に書いてたときはもっと戦闘シーンあったんですが、もうバッサリ切りました。そりゃあもうガオンガオンいきましたよ。

249名無しさん:2014/09/15(月) 21:52:23 ID:ftIA9PDA0


250名無しさん:2014/09/15(月) 22:21:53 ID:rBa8a13c0
投稿お疲れ様です!
SSの勢いを重視するなら、どこを切るのかは大事ですよね。戦闘シーンはまさしくその比重が大きい分、上手く書けない場合の重たさというか、読みづらさは…
バッサリなくなっても、伝えたいことがすんなり入るのもいいと思います。

美鈴のボケセンスがおもしろい!弾幕少女の雰囲気が感じられます。映姫とプッチはそれどころじゃあないっていうのに。

251ポール:2014/09/16(火) 19:30:57 ID:LSId975c0
感想ありがとうございます。
美鈴のところはちょっとジャッキーチェンをイメージして書いてみました。

252どくたあ☆ちょこら〜た:2014/09/16(火) 23:38:03 ID:l8ijslig0
私が原稿という名の沼に沈んでいる間に、ここがこんなにも賑わっていたとは…!
後日改めて感想を述べさせていただきます!


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