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ジョジョの奇妙な東方Project.PAD6

222深紅の協奏曲 ―飛べよ、踊れよ、円舞曲と共に 3―:2014/09/07(日) 08:44:36 ID:hWr8uJPI0




「……じゃあ、こういうのはどうかしら」

 ぴち、とドッピオの王将の前に桂馬が指される。この駒も、先に後続が幽々子を刺すため、ドッピオが捨て駒として使用した物。
 予知に従った今回の盤上は初めの頃こそドッピオが攻勢であったが手が進むごとに彼の包囲を抜けるかのごとく勢いを躱し、気づけば逆転していた。
 目前に置かれた桂馬を取るのはたやすい。だが、それを取れば後続が彼の王将を刺す。かといって退けばそのまま追い詰められ、戦いは終わりを迎えるだろう。

「……くっ」

 頭の中から、響くように痛みが走る。
 画面には、そのまま変わらぬ盤上で手を震わせている自分が写っている。……予知を見るまでもなく、自分の考えでも敗北は見えている。
 所詮は小手先なのだと言わんばかりの、彼女の打ち筋。一寸先の未来も、ぽっかりと開いた穴に進む道しか映していなかった。
 その道しか映しておらず、それに頼れば落ちるは必然。

「二回目だというのに、ずいぶん上手になったわね。苦手だって言っていた割には……まるで、先が見えていたかのような指し方だったわ」

 その言葉に対して、ドッピオは何も言い返せない。実際に見えていた。その通りに進んでいた。
 エピタフによる予知があるから、ある程度は余裕を持っていた。相手より先が見えていれば、その相手を打ち崩す策を持って予知は答えてくれるのだと思っていた。
 だが実際はどうか。がむしゃらに進む自分の周りを囲うかのように策を張り、罠をかけて待つ手筋に嵌っただけ。
 先が見えても対局が見えていない。よく使われる言葉ではあるが、予知を用いた状態でそれにやられるとは考えてもいなかった。
 頭の中から、血管が潰れるような痛みが走る。

「さあ、次へと……どうしました? ずいぶんと顔色が悪そうだけれど……」
「え? あぁ、そんなことはない。次を」

 びりびりと走る痛みを抱えながら、幽々子に倣い再び駒を並べ始める。

「では、よろしくお願いいたします」

 その言葉と共に、ドッピオは歩を動かす。
 まだ予知通りでもいい。でも、どこかに転機がある。そこで予知を裏切るような動きをすればもしかしたら……何か、変わるかもしれない。
 一瞬その考えがよぎり、それを頭を振ってごまかす。
 ボスから借り得た能力を信じきれないという自分の愚かな感情と、そうでもしないと彼女から優勢を奪えず、先を進めないのではないかという閉塞感。
 この二戦の僅かな時間で、ドッピオは精神的に疲弊していた。
 日は落ち始め、地上より高所に位置した冥界は日差しの影響を強く受ける。白から橙に変わり始めた日光は、二人の居室の隅まで照らす。
 外で佇むアンの薄い影が盤の上にまで掛かろうとしていた。


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