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The Demon Village.

1 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 21:46:11 ID:bDiJ5Dlc0
ブーン系秋の短編祭2021参加作品

2 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 21:51:48 ID:bDiJ5Dlc0
招待状を貰った覚えはあるだろうか?結婚式や同窓会。親しき相手と、幸せなひと時を過ごす為のお誘いを込めた便箋だ
デジタル時代の昨今は殆どが電子媒体になっているが、一昔前は郵便でのやり取りが主流だったそうだ
送られたハガキには『御出席』『御欠席』の選択肢があり、そこにペンで丸をして送り返す。オイオイかったりいぞこの方法


そのハガキが結婚式の招待状だったらどう思うのだろうか?友人がようやくゴールインした安堵や、未だに独り身である自身に焦りを覚えたりするのだろう
そのハガキが同窓会の紹介状だったらどう思うのだろうか?旧友との再会を心待ちにしたり、初恋のほろ苦い思い出が蘇ったりするのだろう


では例えば、『全く知らない人から招待状が届いたら?』


差出人は不明。だが宛先はピッタリ一致している、しかし『何の集まりか』も書かれていないハガキが一便届いたら?
きっと最初は誰かの悪戯だろうとタカを括り、燃えるゴミにでも出すのだろう。だが、次の日に全く同じ招待状が届いたら?
神経の図太い野郎なら、『しつけえなクソが』と悪態でも吐いて、招待状は昨日と同じ末路を辿る。そうでなければ、少々不気味に思うだろう


その次の日にも全く同じ招待状が届いたら?


その次も、その次も、その次もその次もその次もその次もその次も
ポストを閉じようと、住居を変えようと、友人の住まいに厄介になっても、実家へ戻っても、海外のホテルでも



返事を貰うまで、執拗に付きまとう『招待状』が届いたら?



これは、そんなはた迷惑な招待状のお話だ。恐いかって?さぁ、どうだろうな。俺は寝起きの相棒の方がよっぽど恐いが
なんてったって、怪異の吹き溜まりであるこの『鬼ヶ村』じゃあ、その程度の話はごまんと集まるからよ
前置きが長くなったな。それじゃあ始めよう。妖、物の怪、魑魅魍魎。『人ならざるモノ共』との、悍ましく楽しい日常を――――

3 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 21:53:50 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――


別にウチは刑務所や処刑場を運営してるワケじゃあねぇ。山奥にある廃村を改装した宿泊施設だ。シーズンになればボーイスカウトのサマーキャンプや、スポーツチームの強化合宿場として利用される
来る連中は大体、楽しげな顔してこの『鬼ヶ村』へと足を踏み入れる。都会に住んでる奴からすりゃあ、クソ田舎ってのは特別感があるんだろうな。住めば三日で飽きそうなもんだがよ
だが、『本業の客』であるなら話は別だ。都会だろうと田舎だろうと関係は無いだろうが大抵は


⌒*リ´ - リ「……」


あのように、この世の不幸全部おっ被ったみてーな暗〜い顔をしてやがるんだ


(,,゚-゚)「あーらら、だいぶ参っちゃってるようだね」


助手席に座る生意気な妹分を傍目に、ハンドルを大きく切って車体の頭を振り、逆車線のバス待機場へと寄せる
よほど憔悴しているのか、腐りかけのベンチに腰掛けていた『客』は、このマイクロバスが目的地行きとはまだ気がついていないようだ


(´・_・`)「いらん事言うんじゃねえぞ。しずく」

(,,゚-゚)「心外だな『先生』。まるでボクが口の減らないクソガキみたいな言い方じゃないか。ん?」

(´・_・`)「口の減らないクソガキじゃなきゃ、わざわざ釘なんて刺さねーんだよ」


行儀悪く飛んできた蹴りを強めに叩き払うと、一丁前に「セクハラだよ!!」と憤慨される。野郎には生きづらいご時世だな。躾すらロクに許されねえとは
ドアの開閉ボタンを押したが、『ガガ』と耳障りな音を鳴らしただけで開こうとはしない。こいつも相当な骨董品だ。そろそろ楽にしてやるべきだろうが、先立つモンが無い今、まだまだ頑張ってもらう他ない


(´・_・`)「頼む」

(,,゚-゚)「はいよ」


助手席からヒョイと乗り降り口に移ったしずくは、ドアを強めにガンと蹴飛ばす。慌てて目覚めたかのように、エアを噴き出しながら開いた
その音でようやく迎えの到着に気がついた『客』は、躊躇いがちにベンチから腰を上げた。傍に置いていたボストンバックは今だに鎮座したままだった

4 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 21:56:30 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ´・-・リ 「あの……」

(,,゚-゚)「こんにちわ。『高梨 莉花(たかなし りか)』さんで間違いない?」


平日の昼間に、中学生くらいのガキが出迎えて来りゃ首も傾げるもんだろう。怪訝な表情を浮かべながらも、彼女は首を縦に振った


(,,゚-゚)「鬼ヶ村へようこそ。『ねぐら』に案内するよ。さぁ乗って」

⌒*リ´・-・リ 「は、はい……」


彼女はバスに乗り込むと、俺に控えめな会釈をしてクソ狭い座席の一つに腰掛ける
軽く振り返って様子を確認すると、大体予想通りな有様をしていた。化粧っ気は無く肌は荒れ気味、目の下には深い隈
恐らく食事もロクに取れていないのだろう。頬はコケ気味で生気は無い。年齢は二十代後半と聞いていたが、軽く見積もっても十年分は老けて見えた


(´・_・`)「遠路遥々、お疲れ様でした。『鬼ヶ島トレーニングセンター ねぐら』代表の『小練 詩音(こねり しおん)』と申します。それでこっちが」

(,,゚-゚)「『儀社(よしもり) しずく』だよ。よろしくね」

⌒*リ´・-・リ 「あっ、はい……高梨 莉花です……」


エンジンの音に掻き消えてしまいそうなか細い声だ。視線は俺の顔では無く座席の背に向けられている
元から控え目な性格なのが見てとれる。隣のクソガキに爪の垢煎じて飲ませたかった


(´・_・`)「この先、酷い道が続きます。お気分が悪くなりましたら、遠慮なく仰ってください」

(,,゚-゚)「ゲロ袋あるよ」

(´・_・`)「置いてくぞお前。それでは、発車します」


扉の開閉ボタンを押したが、またもや『ガガ』と文句を言って閉じようとはしなかった
しずくに目配せをして指示すると、クソめんどくさそうに大袈裟な溜息を吐き、もう一度『気合い』を入れに向かったのであった

5 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 21:57:30 ID:bDiJ5Dlc0
改めて紹介する。自宅兼職場である『鬼ヶ島トレーニングセンター ねぐら』は、廃校を改築した宿泊施設だ
流石に耐久性の問題から補強工事は行われているが、二十世紀初頭の木造建築の外装は出来る限り残してあるので


⌒*リ;´・-・リ「あわ……」


パッと見、デカいオバケ屋敷に見える事もある


(´・_・`)「まずはお部屋にご案内します。その後、ご依頼内容をお聞かせください」

⌒*リ;´・-・リ「は、はい……」


だが彼女の警戒心は、建物よりも『俺』に向けられているように見える。やや小柄な身の女性としては、身長195センチ越えの筋肉野郎は相当恐いだろう
ましてや、周りには交番どころか、近くの民家すら空き家となって長いのだ。この反応は当然と言えるが、身体は漢で心は乙女なんで少し傷ついた


(´・_・`)「お荷物、お持ちしましょう」

⌒*リ´・-・リ 「あ、ありがとうございます……」


彼女の荷物を持ち上げると、、バッグの底に貼り付いていたであろう『紙切れ』がヒラリと舞い落ちた


(,,゚-゚)「あらら、なんか落ちたよ」

⌒*リ;´・-・リ そ「ヒッ!!!!????」


拾おうとしたしずくの手は、高梨さんの短い悲鳴に止められる。『何の変哲もない紙切れ』に、異常なまでの恐怖を示している
その様子を見て、しずくは手のひらを向けながらゆっくりと退がる。代わりに俺がしゃがんで、まずは軽く指先で叩いてみた

6 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 21:58:56 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「……」


当然、反応はない。横幅十センチ、縦幅十五センチほどの長方形の紙。今やほとんど見かけなくなった『ハガキ』だ
紙面には、山梨さんの名前と住所。差出人は記載されておらず、切手も貼り付けられていない
拾って裏面を確認してみると、『御出席』『御欠席』の文字が二つ並び、その下には、(何方かに丸をお書きください)と指示がある
ただ、何の会への招待状なのかは書かれていなかった。確かに不気味だが、あれほど恐れるかと言われれば首を傾げてしまう


(,,゚-゚)「何それ」

(´・_・`)「さぁな。俺よか彼女に聞いた方が早い気がするぜ」

(,,゚-゚)「そうだn……危なっ!!」


くらりと崩れ落ちた高梨さんの身体を、しずくが駆け寄って受け止める。たった一枚のハガキに対するリアクションにしては、少々仰々しい
今回の依頼は『これ』が絡んでいると見て間違いなさそうだ。もう一つ増えた『荷物』を抱えると、ハガキをしずくに渡した


(´・_・`)「『お銀』に見せてこい。可能性は薄いが、原因が特定出来たら今日中に対処する」

(,,゚-゚)「はいよ」


事務所へと向かったしずくを見送り、ズレ落ちそうになったバッグの肩紐を軽く跳ね上げて調整する
見た目より結構重たいが何入ってんだこれ。まるで分厚い雑誌でも詰め込んでるような……


(´・_・`)「あっ」


締まり切ってないジッパーの隙間からは、白い紙の角が覗いている。まさかと思うがこの中全部『アレ』じゃねえだろうな


(´・_・`)「こりゃ参るわ……」


どうやら、奴さんはどうしても彼女に『御出席』して欲しいようだ
バッグの中身の処遇をどうするか考えつつ、部屋ではなく『カフェテリア』へと足を運んだ

7 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:00:48 ID:bDiJ5Dlc0
彼女が目を覚ましたのは、それから二時間してからだった


⌒*リ;´・-・リ そ「キャアア!?」

(,;゚-゚)そ「うおお!?」


甲高い悲鳴を上げながら飛び起きた高梨さんに驚いたしずくは、野太い叫び声を上げてオレオを浸していた牛乳をテーブルにぶち撒けた。うおおておま


(´・_・`)「あーあーあーあー……何やってんだお前……」

(,,゚-゚)「だってあいつが」

(´・_・`)「お客さんに指差すなあいつって言うな。お銀、布巾取って」


イ从゚ -゚ノi、「……」


テーブルの向かいで古いタブレット端末を眺めていた長い銀髪に琥珀色の瞳を持つ顔の良い女は、此方を一瞥もせず側に置いていた布巾を片手で投げつけてくる
布巾は俺の手元に届かず、テーブルに広がる牛乳の水たまりにべチャリと落ちた。顔の良さを性格の悪さで台無しにする良い例じゃありませんか?どう思いますか、貴方?


⌒*リ;´・-・リ 「えと……ここは……?」

(´・_・`)「カフェテリアです。どうぞ此方へ。すぐにお茶を用意します」

⌒*リ;´・-・リ 「は、はい……」


ソファーからテーブルへと移った彼女に、紅茶と茶菓子を差し出す。『お銀』はティースプーンで自らのカップを叩いてお代わりを催促したので、中身の残ったティーポットをギャンと置いてやった


イ从゚ -゚ノi、「小さな男ね……」

(´・_・`)「やかましいわ」

(,,゚-゚)「代わりの牛乳持って来て」

(´・_・`)「お前ら少しは自分で動けや」

8 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:02:39 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ「わ、私……どうしたんでしょう……?」


余程ショックだったのだろうか、気を失う直前の記憶は無いようだ。大丈夫かなこのねーちゃん。この先の話に耐えきれるかな


(´・_・`)「到着後に倒られましたので、不躾ながら介抱を行いました。お荷物は既に運び入れましたので、後で改めてお部屋へご案内します」

⌒*リ;´・-・リ「そう、ですか……お手数をかけて申し訳ありません」

(´・_・`)「お気になさらず。どうぞ、召しあがってください」


お茶を勧めると、カップを両手で包み込むように掴み、静かに啜った。それはそうと牛乳臭が凄い
白濁液をたっぷり吸った布を隣接するキッチンの流しに放り込み、冷蔵庫から牛乳パックを取って席へと戻る


(,,゚-゚)「先生は文句言いながらも言う事きいてくれるからチョロいよね」


牛乳パックの底で頭をどついた


(,,#゚-゚)「何すんのさ!!ボク美少女だよ!?」

(´・_・`)「やかましいわ。さて、高梨さん」

⌒*リ;´・-・リ「はっ、はい!!」


なんか怯えられてる気がするんだけどなんでだろうか。俺が誰彼構わず暴力を振るう悪漢に見えるのだろうか。敬語だってちゃんと使ってるのにどぉしてーーーーーーーーーぇーーーーーーーーーーーーーーぇーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!※サカナクション‐アイデンティティ


(´・_・`)「早速ですが、ご依頼内容をお聞かせ願えますか?」

⌒*リ;´・-・リ「っ……あの、本当に……」

(´・_・`)「はい?」

⌒*リ;´・-・リ「本当に、『除霊』をして貰えるのでしょうか……?」

9 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:05:31 ID:bDiJ5Dlc0
『除霊』。いるかいないかも知れない曖昧な存在を『祓う』行為。誰しもが胡散臭いと思うのは当然だ
恐らくここに辿り着くまでに、幾つものエセ霊媒師を頼って来たのだろう。試行を重ねて成果が出ないのなら、疑心も無理はない


イ从゚ -゚ノi、「何、アンタ半信半疑でこんな辺鄙なとこまで来たワケ?」

(,,゚-゚)「実は結構余裕なんじゃない?」

(;´・_・`)「オメーらよぉ……」


俺らにとって失礼に当たる質問をされたからといって、えげつねえカウンターを返して良いわけでは無いのだ。人としての良心とか欠如してんのかお前らは


⌒*リ;´ - リ「う……うううう……」


ほら泣いちゃったじゃん……


(;´・_・`)「……所で、貴方のお荷物の中から『招待状』がごっそり出てきたのはご存じですか?」


⌒*リ;´;Д;リそ「うわぁああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!」


イ从゚ -゚ノi、「アンタ何で今それ言ったの?」

(;´・_・`)「いやもう泣いてるんだから今がチャンスかなって」

(,,゚-゚)「先生ってさぁ、自分が一番の人でなしって自覚無いよね」


俺なんか間違えてるのだろうか。どうせ後から泣くことになるんだろうからここで一気に出し切った方が楽では無いのだろうか?


⌒*リ;´;Д;リ「ああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」


わかった俺が間違ってた。成人が大声で泣く姿って結構キツいわ

10 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:06:48 ID:bDiJ5Dlc0
(;´・_・`)「わーったわーった、悪かったよ」

(,,゚-゚)「素が出てるよ」

(´・_・`)「早かれ遅かれだよ」


なんだが気が抜け、取り繕うのも面倒になったので口調を崩す。育ちが悪ぃもんでどうせすぐにボロが出るしな
ウチの女子連中は高梨さんにティッシュを差し出したり、汚いものでも見るような目で俺を睨め付けたりと非難に余念がない。最初に泣かせたのお前らやぞ


(´・_・`)「あの紙束は勝手に処分させて貰った。今回の依頼はアレに付き纏われてるってことで良いか?」

⌒*リ´う-;リ「うう……はいぃ……」


あれだけあからさまに執着されてりゃ、話を聞かずとも大体は察せられる


⌒*リ´う-;リ「も、もう半年になります……最初は誰かの悪戯だと思ってたんですが、毎日届く度に気味が悪くなって……」

⌒*リ´;-;リ「郵便局に問い合わせても郵送履歴は無し。ストーカー被害として警察に相談しても相手にして貰えませんでした」

⌒*リ´;-;リ「更に怖いのが、今みたいに『出先』であろうとも私の下に『招待状』が届くんです……友達の家、実家、県外のホテル。海外にまで……」

(,,゚-゚)「気合入ってんね」

(´・_・`)「ね」

イ从゚ -゚ノi、「それで、お次は相談相手を霊媒師にシフトしたってワケね」

⌒*リ´;-;リ「はい……あの、貴方は?」

イ从゚ -゚ノi、「従業員の『銀』。どうぞよろしく」


自己紹介タスクが一通り終わって一安心だ。良かった良かった。これで『誰やねんこいつ』って突っ込まれることは無い

11 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:08:12 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「あんま効果無かったろ。持って一日二日ってところか」

⌒*リ;´う-・リ「う……はい……三件ほどお願いしましたが、どれも三日程度で……」

(´・_・`)「結構払った?」

⌒*リ´う-;リ「ぢょぎんづがいはだじまじだぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」

(;´・_・`)「あー……ああ、お気の毒に……」

イ从゚ -゚ノi、「一文無しならお引き取り願えないかしら?」

(;´・_・`)「おま」


血も涙も無いんかこいつ


⌒*リ´;Д;リ「借金でぼなんでぼじばずがらだずげでぐだざいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」

(,,゚-゚)「なんだっけアレ……この前、遊びに行った時さぁ、街中でトラックが大音量で……高収入高収入って……」

(´・_・`)「やめとけありゃ負の遺産だ。高梨さん、アンタ確か『大桜堂』の紹介でウチを知ったんだよな?」


『同業』が、此方の都合も聞かずに一方的に彼女を押し付けてきたのは二週間前の話だ
顔も腕も愛想も良い女だが、如何せんどうしようもない守銭奴で、体よく面倒を避けた上で仲介料も頂くって腹だろう。今度会ったらヴォコヴォコのヴォコにしようと思った

12 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:09:12 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「『アレ』からはその辺の後始末もしとけとのお達しが来てる。連絡先だけ書いといてくれたらそのクソの役にも立たねえザコ霊媒師共に払った金取り戻しとくわ」

⌒*リ´;-;リ「え……過払い金請求もやってくれるんですか……?」

(,,゚-゚)「請求じゃないね」

イ从゚ -゚ノi、「恫喝よ……」

:⌒*リ´;-;リ:「ひえ……」

(´・_・`)「支払い云々については後々話し合うとして……質問に戻ろう。『除霊出来るか?』と訊いたな?」


クソザコ霊媒師でも『一時凌ぎ』にはなったのを鑑みて、彼女は悩みの種を霊的な現象と確信したんだろう
貯金を使い果たし、這う這うの体でこの場に辿り着いた。今も渦巻く俺たちに対する疑念への答えは―――――


(´・_・`)「出来る。ただ、これは霊の仕業じゃない」


自信と実績を乗せて、ハッキリと返すに限る

13 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:10:44 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「先ずは称賛を贈ろう。良く半年間もの間、招待状に返事を書かずに耐え切った」

⌒*リ;´う-・リ 「え……?」

(´・_・`)「この怪異には、二つの目的がある」


一つ、と人差し指を立てた


(´・_・`)「『対象を弱らせる』。招待状を送り続けることで、獲物を疲弊させる」


二つ、と中指を立てる


(´・_・`)「『対象に干渉させる』。出席、欠席関わらずにペンを入れさせる。一つ目はともかく、これを行なっちまったら手遅れだった」

⌒*リ;´・-・リ 「ど……どうなるんですか……?」

イ从゚ -゚ノi、「『連れて行かれる』」


銀は紅茶の中にボチャボチャと角砂糖を入れ、ティースプーンで掻き回しながら答えた。病気になるって言ってるのにこの甘党はホンマ


イ从゚ -゚ノi、「怪異の棲家、『裏』のチャンネルへ」

⌒*リ;´・-・リ 「裏……?」

(´・_・`)「パラレルワールドや異世界みたいなもんだ。俺らは『裏』と呼んでる」

イ从゚ -゚ノi、「狡猾で、獰猛。そして『表』の世界よりも遥かに上回る『技術』を持つ異能の怪物……その餌に、される為にね」


高梨さんはゴクリと唾を飲み込む。普通この手の話したら呆れるか笑われるかおシャブ常用者かと疑われるんだが、実際に被害にあってりゃ説得力も増すのだろう
もしくは、正常な判断力すらまともに機能しないくらい弱っているかだが

14 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:12:07 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「『招待状』はタチの悪いワンクリ詐欺みたいなものでね。意味もよく知らず此方が『了承』すれば、あっという間に向こう側へと連れて行かれるわ」

(´・_・`)「ただ、これはまだ優しい方だ。了承しない限りは向こうは嫌がらせしか出来ない。恐らく、現段階では『その程度』しか出来ない雑魚なんだろう」

⌒*リ;´・-・リ 「優しい方って……」

(´・_・`)「表と裏を繋ぐ『境界線』ってのは、実はめちゃくちゃ多くてな。手紙もそうだし、ディスプレイや電子デバイス。ドアや敷居。鏡や水面。この世に存在するありとあらゆる物事や現象が、出入口となっている」


高梨さんは予想通り雷にでも打たれたかのようにピシャリと固まった。まぁこんな話聞いて良い気分になる奴はいない


(´・_・`)「だからと言って被害者の数も相応に多いかっつったらそうでもない。ドア開けてグシャーなんてレベルの怪異なんてマジ天文学的な確率でしか出会わねえからな」

(,,゚-゚)「交通事故に遭う確率の方が高いよ」

⌒*リ;´・-・リ 「そ、そうなんですね……」


そう、車は恐い。信号が青でも左右を確認してから渡らねばならない。なんなら手ぇ上げろ


(´・_・`)「この怪異の最も恐ろしい点は、『出席』に丸しちまった場合ほぼ確実に境界をこじ開けて連れてっちまうって所だ。良く出来てる仕組みだよ。ザコには変わりねえがな」

⌒*リ;´・-・リ 「ザコ……?」

(,,゚-゚)「気にしないで。この人、大体の怪異はザコ扱いするから」

⌒*リ;´・-・リ 「ええ……?」


ザコはザコじゃん……


(´・_・`)「で、ここからが本題だ。俺たちはこれから、招待状を解析して特性を突き止める。ザコ霊媒師でも三日程度なら届くのを防げたってことは、手紙自体は本体じゃない可能性が高い」

⌒*リ;´・-・リ 「ほ、本体?」

(´・_・`)「送り主がいるってこったよ。で、アンタが寝てる間に簡単に調べたところ幾つかわかったことがある。お銀」

15 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:13:49 ID:bDiJ5Dlc0
お銀は先ほどまで眺めていたタブレットをテーブルに滑らせる。画面には、『招待状』の性質が几帳面に羅列されていた


イ从゚ -゚ノi、「私たちの読み通り、招待状自体は本体じゃ無かった。材質も普通の紙と変わりないし、破いても燃やしても特に反応は無かった」

イ从゚ -゚ノi、「これに組み込まれている仕組みは三つ。一つは、先ほど言った通り『境界』としての機能。『出席』への記入をトリガーに、対象を裏へと引きずり込むわ」

イ从゚ -゚ノi、「ただし、『フィルター』が掛けられている。誰彼構わずってワケじゃなく、アンタみたいに精神的に疲弊した者が限定みたい」

⌒*リ;´・-・リ「え、ど、どうしてでしょうか?誰でも引きずり込めるに越したことはないのでは?」

イ从゚ -゚ノi、「まぁ、『こういうの』もいるからねぇ」


親指で差され『こういうの』呼ばわりされた俺は鍛え上げられた上腕二頭筋をこれでもかと見せつけた


イ从゚ -゚ノi、「言ったでしょう?奴らは狡猾なのよ。同じ餌でも狩りやすい方を狙った方が楽だもの」

(´・_・`)「全部が全部そうってワケじゃねえけどな。アホだったら、今日中どころか一時間かけずに終わってたぞ」

⌒*リ;´・-・リ「ええ……?」

イ从゚ -゚ノi、「で、二つ目。欠席に記入した場合。これは実際に試したわ。で、結果がこちら」


動画ファイルをタップすると、先ほど録画した実験映像が流れる。ボールペンを使い、欠席を丸で囲む。御を二重線で消すとかそういう作法とかは知らん
しばし待つが、特に大きな動きは見られない。高梨さんは固唾を飲んで見守っていたが、『何もない』事に不安になったのか、俺らの顔を交互に覗いた


イ从゚ -゚ノi、「ここ」


変化は、招待状を持ち上げた時に起こった。記入したのは『一枚』。だが、下から新たな『招待状』がヒラリと舞い落ちる
その招待状へ再び『欠席』の意を伝えて持ち上げると、またもや新しい招待状が剥がれ落ちた


イ从゚ -゚ノi、「意にそぐわない返答だと、RPGの強制選択肢のように新しいハガキが増殖する。多少の気が滅入る仕掛けね」

:⌒*リ;´・-・リ:「ひぃぃ……」

(,,゚-゚)「この辺は工夫が足りないよね。欠席をトリガーにすればもっと成功率上がりそうな気がするけど」

(´・_・`)「こいつらアホだから」

:⌒*リ;´・-・リ:「なんでそんな余裕なんですか……?」

16 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:15:01 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「で、最後の……まだあるかも知れないけど、現状判明してる三つ目の仕掛け。これは目には見えないものよ。アンタ、蟻が行列を作る仕組みを知ってて?」

⌒*リ;´・-・リ「え、あ、蟻って、あの?」

イ从゚ -゚ノi、「ええ。あのクソ虫は、獲物を運ぶ仲間を連れてくるために『フェロモン』を分泌して道しるべを作るの。招待状からはそれと似た匂いがした」


もうなんのこっちゃヨイヨイセブンの高梨さんを余所に、我が家の研究員は推測を温泉のように掛け流した。腰痛には効きそうにない


イ从゚ -゚ノi、「最初の一枚が付けた妖力由来のフェロモンを辿って、招待状は送られ続けてくる。アンタが何処に逃げても確実に届き、郵便局に問い合わせても郵送履歴が無かったのは、『境界』を経由して送りつけてきたから」

イ从゚ -゚ノi、「三下霊媒師が祓った気になってたのはこのフェロモンだけ。それも完全にではなく、ある程度『誤魔化した』に過ぎない。だから短期間で嫌がらせが再開された」

(´・_・`)「臭いトイレに匂いのキツイ芳香剤置いたようなもん」

(,,゚-゚)「的確に最悪の例えするじゃん」

⌒*リ;´・-・リ「では……その、フェロモンを取り除けば、助かるんですか?」

イ从゚ -゚ノi、「ハガキが届く頻度は、グッと減るんじゃない?元を断った方が安心だと思うけれど」

⌒*リ;´・-・リ「で、ですが、『裏』にいる……本体を、どうやって祓うんですか?此方から干渉出来る方法が?」

(´・_・`)「待てば良い」

⌒*リ;´・-・リ「はい?」

(´・_・`)「奴の目標は一つしかねえんだ。俺らはそれを待ち構えて、本体が出てきたところをぶっ殺すだけ」


高梨さんは頭痛を抑え込むように額を抑えて、『待ってくれ』とでも言いたげに掌を向ける


⌒*リ;´・-・リ「半年間ずっと招待状だけを送られ続けて来たんですよ?短期間で現れる保証なんてないじゃないですか!!それまでずっと辛抱強く待てって言うんですか!?」

(´・_・`)「うん」

⌒*リ;´・-・リそ「うん!!!!!?????」


バイブス上がって来たなこの人

17 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:16:32 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「まぁ落ち着けって。ここには専門家が揃ってんだ。一年も二年も辛抱しろなんて言わねえよ一週間で片つけたらぁ」


頭に昇った血に気付いたのか、「すみません」と小さく詫びを入れて縮こまる。詳細を問い詰めない辺り、素人としての自覚と恥が湧いて出たのだろう
彼女にとって重要なのは『祓う』事であり、その過程はどうでも良いのだから。此方としても、説得する手間が省けるのでありがたい


(´・_・`)「心配しなさんな。アンタはここで休暇を楽しんでくれりゃあいい。来週には爽快な気分で家に帰れらぁ」

⌒*リ;´・-・リ「休暇……ですか?」

(,,゚-゚)「先生のおもてなし力(ちから)は凄いよ。五十三万」

⌒*リ;´・-・リ「何の単位……?」


お前それ第一形態やから最終的には一億二千万まで跳ね上がるじゃねえかどんなおもてなししろってんだよ俺に


(´・_・`)「さて、問題解決並びに滞在について心構えと注意点を説明しておくか」

⌒*リ´・-・リ「心構え?」

(´・_・`)「ああ。これから『招待状の送り主』を引きずり出すにあたって、嫌がらせのレベルが上がる可能性がある」

⌒*リ;´・-・リ「ええ!?」


一つ嘘を混ぜ込んだ。『可能性』ではなく『確実に』だ。これを伝えてしまうと、滞在中は常に怯えながら過ごさねばならない
前者の時点で相当な緊張を強いられるだろうが、危機感が薄れてしまうのもまた危うい。この言葉が、此方が提示できる最大限の警告だ


(´・_・`)「俺らも常に気を張るが、不測の事態ってのはどうしても起こりうる。ただ、絶対に連中の餌にさせないのは保証する」

⌒*リ;´ - リ「……」


恐いだろう。無理もない。『出来る』とは伝えたが、出会って一日も経っていない奴に信頼を伝えられてもすんなりと飲み込めるはずもない
だからこそ、確固たる『自信』を抱いて貰わねばならない。半年間も怪異の脅威に耐えた『辛抱強さ』は、彼女が持つ最強の武器なのだから

18 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:18:30 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「『決して諦めるな』。どんな責め苦に遭ったとしても、私はお前の餌になどならないという、断固たる決意を持て。それが奴らに対する此方からの『嫌がらせ』だ」

⌒*リ;´ - リ「断固たる決意……」

(,,゚-゚)「ダンコ桜木……」


何でこの子は一々クソ古いネタで茶々をいれるかなぁ


⌒*リ;´・-・リ「や……やってみます……」

(´・_・`)「良し。ではおちんちんの説明におちんちん」




⌒*リ;´・-・リそ「!?」

イ从゚ -゚ノi、そ「!?」

(,;゚-゚)そ「!?」

(;´・_・`)そ「!?」




(,,゚-゚)「いや先生が驚くのは可笑しい」

19 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:19:06 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「……ッスゥーーーーーーーーーーーーーーーー」」




_人人人人人人人人人人人人人_
> (´・_・`)「おちんちん」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄




ロマンス&バカンス‐YEAH!おちんちん
https://www.youtube.com/watch?v=XuyQefD4YiU&list=RD3N3FhNFHaZA&index=3



マジかよ……

20 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:23:24 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ「あの、小練さん?」

(´・_・`)「……」


試しに『あ』の発声をするつもりで声を出してみる


(´・_・`)「お」


ダメだ。自分の意思とは関係なく『お』から始まる。やられたわこれ
銀の方を向き、左手首を指で叩いて見せる。彼女はタブレットを引き寄せて、時間管理アプリを開いた


イ从゚ -゚ノi、「ええと……恐らくこれね。C分類の『陰茎がクソデカい木彫り人形』。破壊から七時間二十一分経過してるわ」

(;´・_・`)「……」


出たよもう時間差の呪いじゃんこれ……解呪苦手なんだよ……


(,,゚ワ゚)「もしかして呪いで『おちんちん』しか喋れなくなったの!?」


ワクワクすんじゃねえクソガキ


⌒*リ;´・-・リ「ど、どうされたのですか?」

イ从゚ -゚ノi、「ハァ……私たちは基本、全国から送られてきた『曰く付き』の品物の破壊、除霊、解呪で生計を立ててるの。これはその反動」

⌒*リ;´・-・リ「招待状のように『裏』が関わっている物なんですか?」

イ从゚ -゚ノi、「そういうのは滅多にないかしら。表由来の怪異の方が遥かに多いわね。こういう悪ふざけの呪いも含めてね」

イ从゚ -゚ノi、「だから、怪しげな品物には絶対に触らないこと。こういう風になりたくなかったらね」

⌒*リ;´・-・リ「はっ、はい!!」


喉を指で叩いた後、掻っ切る仕草を行い、高梨さんへ向けて五本指を啄むように動かす。手話の意訳は――――

  _,
イ从゚ -゚ノi、「ハァー……アレは役に立ちそうに無いから、ここからの説明は私が引き継ぐわ……」メンドクサ……


付き合いの長い相棒のご察しの通りだ。客の前で露骨にめんどくさそうにするな

21 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:24:41 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「おちんちん」

⌒*リ;´・-・リ「あ、はい……お世話になります……」


『夕飯は七時に』と伝えたのだが、当然意味は通じなかった
そらそうだよおちんちんで分かるわけねえもんいやわかってくれよ僕らはいつも以心伝心じゃねーのか二人の距離繋ぐテレパシーはどうした


(,,゚ワ゚)「おまんまんじゃなくて良かったねwwwwwwwwww」



(´・_・`)「……」



お下品な口を利くクソガキの頭に拳骨を入れて黙らせ、一足先に席を立った


(,; q )「」死ゾ!!!!!!!!!!!!!!!!

⌒*リ;´・-・リそ「凄い音しましたけど!?」

イ从゚ -゚ノi、「いつものコントよ。気にしないで」


『冗談じゃねえよ』と返したかったが、相変わらず口から出てくるのは


(´・_・`)「おちんちん」


小学生レベルのお下品な下ネタなのであった

22 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:27:23 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――



(´・_・`)「お……うぉ……ぉぉ……」


『呪い』は、妖力、あるいは霊力を用いた生体への『プログラムコード』だ
その仕組みは、人が成長するにつれて得ていく『歩行』や『発言』などの生得システムに呪いという『ウイルス』が侵入し、一定の時間経過で発症する
被害としては幻覚や幻聴、自傷行為。最悪の場合不審死や病死、自殺や他殺にまで多岐に渡る。タチが悪い上に対処出来る人材も限られる厄介な精神攻撃だ
対処法としては、お経や祈りを模した外部からの『パッチ』を当てて相殺させるか、もしくは―――――


(´・_・`)「おぉ……ちん……ち……」


人が元来持つ『生命力』を働かせ、地道に解除していくかだ。え?専門家ならパッと治せって?うるせえ死ね得手不得手くらいあって当たり前だろカスこれ出来るまでクソ師匠に嘲笑われつつ血反吐ぶち撒けながら修行したんだぞクソが


イ从゚ ー゚ノi、「手こずってるようねぇ」

(#´゚_゚`)「おちんちん!!!!!!!」


背後からの声に集中が途切れる。もうちょっとだったのに邪魔しやがってクソが
開けっぱなしだった自室の戸にもたれ掛かり、性悪女は心底愉快だと言いたげに、ニヤニヤと絵になる笑みを浮かべている
一杯飲った後で気分が良いのだろう。下戸の俺からして見ればあんなもん毒でしか無いが


イ从゚ ー゚ノi、「発症から六時間経過。その程度の呪いに手こずっているようじゃ、『お師匠様』も浮かばれないわよねぇ」

(#´・_・`)「おちんちん」


あのカスは暴力しか教えてくれんかったやろが独学やこんなもん

23 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:28:06 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「おちんちん」


それより、高梨さんはどうした?


イ从゚ -゚ノi、「良いお酒をガブ飲みしてグッスリよ。しずくが酷く絡まれてね。今は抱き枕として使われてるわ」

(´・_・`)「おちんちん」


そりゃ勿体ねえもんを見逃したな。クソ、これさえ無けりゃ……
引き続き解呪に取り掛かろうとすると、首筋に細い『氷』のような冷たさが触れる。思わず『ひゃんっ!!』って言いそうになった(乙女だから)。なった所でどうせ口からはおちんちんしか出てこないが


イ从゚ -゚ノi、「《流》(ながし)」


お銀の『指』を通して、声帯周辺を冷水のような感覚が流れ込む。半分『雪女』の血を引く彼女の『妖力』だ
世界最強の肉体を持つ俺だから「やんっ……冷たい……」程度で済むが、常人だと真夏であろうと寒さに凍えるだろう
『妖力』であるが故に、当然『呪い』に対しても効力がある。先ほどまでクソみたいな下ネタを言わせる為だけに体内でもの凄い抵抗をしていたおちんちん野郎の動きも鈍る
すかさず、丹田から『気』を押し上げ、腹から喉、そして口へと異物を吐き出すように流した。すると


(´・_・`)「オロロ」


霞んだ黒く重い気体の塊が猫の毛玉のように飛び出す。それを掌で迎え、羽虫を叩き潰すかのように閉じた


(´・_・`)「ありがとよ。贅沢を言えばもうちょい早く手助けして欲しかったが」

イ从゚ -゚ノi、「私はね、優先順位はキッチリつける方なの」

(´・_・`)「俺の異常より風呂と飯と晩酌が先かよ」

24 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:29:16 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「よっ、と……どう?今回の案件は」


ベッドに腰掛けた銀は、窓を開けて夜風を入れた。初夏の風が、冷えた身体を更に凍えさせる。ちょくちょく嫌がらせすんな


(´・_・`)「寒い」

イ从゚ -゚ノi、「あらそう。私は暑いの」


なんやこいつ


イ从゚ -゚ノi、「で、どうなの?」


両腕で身体を支え、色白で細い脚を組んだ様は忌々しいほど様になっている。同じ屋根の下で住まう『家族』という間柄でなければ、思わず間違いを犯しちまいそうだ
なんて、男にあるまじきゲスで邪な考えを秒で流し、妖力の残り香を揉み消すように首を摩る。凍りついた汗の薄い薄い膜が、ベトつく湿気になって指に絡んだ


(´・_・`)「大桜堂だってその気になりゃ幾らでも駆除出来ただろうぜ。それをせずこっちに回したってことは、よほど根気がいるか、あるいは……」

イ从゚ -゚ノi、「大規模な被害を齎す可能性があるか、ね」


京都に店を構えるアンティークショップ『大桜堂』。その周辺には観光客が訪れる歴史的建造物も数多い
万が一、怪異が暴走した場合だが、当然向こうもプロである以上、被害は最小限に留める実力とプライドは持ち合わせている
ただ、俺ら以外の住人がいないこの『鬼ヶ村』で暴れさせた方が、被害も少なく事後処理も簡単に済む。それを見越して寄越したのだろう

25 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:31:06 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「癪に障るわぁ……」


理に適ってるとは言え、いい様に扱われているようでとにかく気に食わない
そんな俺の繊細な乙女心を知ってか知らずか、銀は口元を握り拳で覆い隠してクスクスと笑った


イ从゚ ー゚ノi、「相変わらず、斜に構えた性格だこと」

(´・_・`)「性分でね」


溜息を吐き、冷えた身体を温める為に風呂に向かおうと椅子から立ち上がった瞬間
窓もとい『境界』から、細く白い物が飛び込んでくるのが目に入った


(;´・_・`)「危ねえ!!」

イ从゚ -゚ノi、「ッ!?」


銀を払い退けるように庇い、射出された異物を左手で受け止める。鍛錬で分厚くなった皮膚が切り裂かれ、痛みと共に血が流れ出た


(#´・_・`)「クソがよ……」

イ从゚ -゚ノi、「な、何なの?」

(#´・_・`)「ああ……果たし状って所かな」


横幅十センチ、縦幅十五センチ、そして厚み0.22ミリ。ガキでも破り捨てれそうな『ハガキ』が、鋭さを生み出すほどの速度で銀の『首筋』を狙っていた
俺の血で汚れた紙面上には、本日いやと言うほど目にしたあの文面。ただし、少し書き換えられていた


(´・_・`)「『邪魔すんな』、だと」


二つ並んだ『御欠席』の文字に、選択の余地を与えない程の拒絶を感じ取れた

26 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:32:09 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「随分と物騒なご挨拶ね……ありがとう」

(´・_・`)「いや、気を抜いてた俺のミスだ。スマン。臆病で回りくどいアホだと思ってたがやはり裏モノだな。厄介だ。高梨さんの部屋は抜かりないか?」

イ从゚ -゚ノi、「ええ。結界はちゃんと作動してる。今はしずくも一緒だし、彼女の心配はないわ」

(´・_・`)「懸念箇所の補強はした方がいいな。やるぞ」

イ从゚ -゚ノi、「ええ」


風呂に入れたのは、二時間後だった

27 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:34:16 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――



施設管理人の朝は早い。掃除に洗濯、食事の用意。そして全国の怪異に悩まされる依頼人候補から送られるメールのチェック
日常のおちんtルーティンに高梨さんという依頼人を預かっている今、新たな仕事も増えた。ヤバいおちんちん癖がついてる


(´・_・`)「ふざけんなよ……」


ポストから玄関に溢れ出るほど大量に届けられた『招待状』の破棄だ。ミチミチに詰まってんじゃねえかオイ
年賀状という文化も廃れた昨今で、ここまで紙製の郵便物を届けられる人物も少ないんじゃないだろうか。あの人マジでよく半年も耐えたな
サンプルは昨日、嫌というほど手に入れたので、これ以上はただのゴミだ。ある程度の枚数に分け、ビニール紐で縛っていく。これが一週間程度毎日続くと思うと既に凄くめんどくさい。めっちゃ病む
三つほど塊を作った所で嫌気が差し、もうドラム缶にぶち込んで燃やすと決めた。ケツ拭く紙にもならねえのに手間取らせやがってクソがよ。おちんちん野郎


(,;゚-゚)「おは……よう……」


小規模なキャンプファイアーを行なっていると、グッスリ眠れたとは到底思えない表情でしずくが現れる
昨日と同じ装いを見るに、風呂にも入れず抱き枕にされたまま一夜を明かしたのだろう。かぁいそ


(´・_・`)「おはよう。楽しい夜を過ごせたよう……」


(;´・_・`)「くせえーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」ドンッ!!!!!!!!


思わず朝飯両手に戻って来たらお腐れ神様が通り過ぎたリンのような叫びが出てしまう程、紙の燃える臭いに混ざって鼻に届く強烈なゲロ臭。明らかに目の前の少女から放たれていた


(,;゚-゚)「最悪の夜……意外にも長い夜だった……抱きつかれながら窒息しないように気道確保したりさぁ……」

(´^_^`)「グフンwwwwwwww」

(,,#゚-゚)「笑うな!!」


無茶言うな。あとSOUL'd OUT混ぜんな。鏡に映る姿に感傷的になるだろ

28 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:35:33 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「わーったわーった。ご苦労だったな。風呂入って来い」

(,#゚-゚)「もぉおおおお!!今日は一日休むから!!絶対起こさないでよね!!」

(´・_・`)「朝飯は?」

(,#゚-゚)「食べるよ!!」


食い意地が張ってんのなら大丈夫そうだ。プリプリと怒りながら風呂場へと向かうしずくを見送り、残りのハガキを火の中へと投げ入れた
昨夜以降、明確に攻撃の意志を持って送り込まれたハガキは今の所届いていない。『いつでも殺れるぞ』という、脅しだったのだろう


(´・_・`)「……」


『鬼ヶ村』。その名の通り、かつて『鬼の住処』だったこの場所では、表裏問わず怪異にとって『心地よい環境』が整っている
それは空気であったり、土壌であったり、水であったり、『餌』であったりと、生きる為に必要な要素が、俺達人間の生活圏とはやや異なっている
開拓されつくされているように見えるこの国も、今だ七割が森で覆われているのは、鬼ヶ村と似た環境が各地に点在し、そこに巣くう怪異という『脅威』、あるいは『守り神』が人の手を阻むからだ
だからこそ、人が生活できる住処として存在するこの場所は、怪異と関わるのに最適な反面、大いなる危険も伴う


『では何故、俺達は危険な場所に居を構えているのか』


答えは単純だ。人の生活圏と比べて、圧倒的に怪異を『殺しやすいから』
今回のように、地味な嫌がらせを続ける『裏』由来の怪異が鬼ヶ村の環境で成長し、希薄な存在を濃厚にさせ、実体を伴って『表』へと姿を現し、そこで初めて
異能を持たない人間が、怪異の脅威に立ち向かう為に培った『技術』を用いた戦闘が可能になる


(´・_・`)「……」


『相棒』を狙った昨夜の脅しに、此方から返す言葉は無い。これから駆除する『害虫』に警戒を抱かせない為でもあり、安い挑発に乗らないという意思表示でもある
ただ、やはり腹に積もるものは無視できない。家族が危険に晒されたのだ。怒りを覚えぬわけがない。ごうごうと唸る火の中に、最後のハガキの一山を放り込み


(´・_・`)「……」


端から黒く燃えていくクソッタレの招待状の送り主が、一日でも早くその姿を曝すことを強く望んだ

29 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:36:52 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´=-=リ「昨晩は大変失礼を致しました……」


日を跨いで猛威を振るうアルコールの毒に苛まれながら、寝ゲロを流して現れた高梨さんは深々と頭を下げた
カフェテリアの時計は八時を回っていた。既に朝食を済ませたしずくは自室のベッドでアホ面晒しながら眠りこけている頃だろう


(´・_・`)「そう気になさらんな。あのクソガキも腹満たして一眠りしたら忘れてるだろうよ。飯は食えるか?」

⌒*リ;´=-=リ「お水だけ頂けますか……」

(´・_・`)「あいよ」


どうして酒飲みは翌日に響くとわかっててがぶ飲みなんてするかね?


(´・_・`)「よく眠れたか?」

⌒*リ;´=-=リ「ええ……いえ……実は、ここ数か月はずっとお酒に頼ってて……」

(´・_・`)「薬は?」

⌒*リ;´=-=リ「あまり効かない体質でして……」

(´・_・`)「併用するよかマシか……お銀からの説明は覚えてるか?」

⌒*リ;´=-=リ「あ、はい……冊子も頂いたんで大丈夫です……お銀さんは?」

(´・_・`)「朝に弱くてね。起きてくるのは大体十時頃だ」


早朝の仕事は大体片付いた為、コーヒーと水を持って向かいの席へ腰を下ろす。お冷を差し出すと、彼女は尻つぼみな礼を言って口に含んだ
一応、見回り時に部屋の前を確認したが、招待状は建物内までは侵入していなかった。結界はちゃんと働いているようだが、数日の内に突破されるだろう
それまで、高梨さんには『英気』を養って貰わねばならない。昔の人は言った。『腹が減っては戦が出来ぬ』。それはただ腹を満たすだけではなく、気力も含まれているのだ

30 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:37:41 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「晩酌は引き続き続けて貰って構わない。なんなら美味い肴も用意しよう。昨日は安いもんで済ませたみたいだしな」


食い散らかしたスナック菓子のゴミが翌朝までそのままにされてるのを見た時は、普段温厚な俺も流石にキレそうになった。食ったら片づけろ


⌒*リ;´・-・リ「あの、昨日もお話されたのですが、私がやる事って本当にアレで良いんですか?」

(´・_・`)「ああ、『食って、寝て、遊ぶ』。小洒落た言い方をすりゃあ『デトックス』だな。疲れとストレスを思う存分発散すんのがアンタの仕事だ」

⌒*リ;´・-・リ「それだけで良いんですか?」

(´・_・`)「それが裏に対する最大限の予防策だからな」


日本人の年間自殺者数並びに行方不明者数は年々減少傾向にあるものの、一定のラインを割る事が出来ないのは、そこに到るプロセスに『裏』が介入しているのが一つの理由として挙げられる
本来ならば自殺という最後の逃避手段を選ぶほどでもないストレスを察知して、高梨さんの『招待状』のように、怪異を用いた嫌がらせを用いて増長。結果として最悪の事態へと発展する
逆に言えば、毎日が充実して生命力に溢れる人物ほど、怪異に遭う確率が低い。銀が説明したように、弱った人物は『狩りやすい獲物』として認識されてしまうのだ


(´・_・`)「ま、それが出来ねえって人も多いよ。ストレスも悩みも、産まれてから死ぬまで付き纏うもんだ。強い弱いも人それぞれだが、何があろうと『生きる』という気持ちだけは忘れちゃなんねえ」

⌒*リ´・-・リ「……」

(´・_・`)「その気持ちを取り戻す為に最も気軽で日常的なのが『休む』って行為だ。痛飲するもよし、たらふく食らうもよし、趣味に没頭するもよし、風にあたってぼんやりと過ごすもよし、適度な運動で汗を流すもよし」


セクハラに該当するワードは避けた


(´・_・`)「とにかく、疲れを癒せば癒すだけ成功率……いやこれは元から百パーだけど、俺らの仕事がやり易くなる。気合入れろとは勿論言わんが……まぁ、その辺を意識してくれたら助かるよ」

⌒*リ´・ー・リ「……フフ、お休みに意識だなんて」


ここに来て、初めて彼女が『笑い』を溢した


⌒*リ´・ー・リ「『頑張って休む』ってのも、なんだが矛盾している気がしますね」

(´・_・`)「余計なこと言っちまったかな?」

⌒*リ´・ー・リ「とんでもありません。気持ちが楽になりました」

(´・_・`)「そりゃあ良かった」


嘘や偽りの無い彼女の言葉を受け、『先行きは明るそうだな』と感じたのであった

31 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:44:28 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――



⌒*リ;´・-・リそ「ええ!?お銀さんって人間じゃないんですか!?」

イ从゚ -゚ノi、「ちょっと動かないで」

⌒*リ;´・-・リ「あっ、ごめんなさい……」


昼食も終えた午後一時過ぎ。カフェテリアでは銀が高梨さんの手を取って『爪』に色を入れていた
『ネイルアート』。これも休暇の一環としてのサービスだが、防護妖術も兼ねている
今となってはお洒落や美の増幅として施される『化粧』。古来では魔除けの意味を込めて使われていたそうだ


イ从゚ -゚ノi、「雪女と妖狐のハーフよ……言っても信じる人は少ないけど」

⌒*リ;´・-・リ「ひえー……美の二大巨塔みたいな妖怪じゃないですか……」※ぬ〜べ〜とかその傾向あった


あのツラを前にしたら少なからず『そうかも?』と思う奴はいるだろうが、野郎なら大抵下半身に意識がいってサラッと受け流す。おちんちん野郎共がよ
高梨さんは実際に怪異の被害に遭っている分、受け入れも早い。銀に関しては見た目も普通の人間と変わりないので、恐怖心を煽られることもない
俺は初めて会った時『属性盛り過ぎwwwwwwwwwwwwwwオタクアニメのヒロインかよwwwwwwwww』と笑ったが、返って来たのは濁った色した瞳だけだった


⌒*リ;´・-・リ「じゃあ、小練さんもしずくちゃんも妖怪なんですか?」

イ从゚ -゚ノi、「そうよ。あれはゴリラと人間のハーフで、しずくは猿と人間のハーフ」

⌒*リ;´・-・リ「へ、へぇ……」

(´・_・`)「へぇじゃないが」


適当なこと言うなゴリラと猿に妖怪のよの字もねーだろ

32 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:45:39 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「どっちも人間だよ。残念ながらな」


二人分の冷たい飲み物をテーブルに置き、銀の『仕事』を覗き見る。艶が出るまで磨かれた爪に、ツンとシンナーが香る赤色のマニキュアが塗られていく
『赤』は最もポピュラーな魔除け色で、日本のみならず海外でも頻繁に使用されていた。何故赤なのかは今だ解明されてないが、まぁ多分ノリで決めたんだと思う


(´・_・`)「相変わらず綺麗な仕上がりだな」

イ从゚ -゚ノi、「アンタもやって欲しいのかしら?」

(´・_・`)「後で頼むわ」

イ从゚ -゚ノi、「気持ち悪」


なんやこいつ


⌒*リ´・-・リ「そういえば気になっていたんですけど、表の怪異って裏とはまた別物なんですか?」

(´・_・`)「目の前にいるだろ」

⌒*リ;´・-・リ「ちゃんと教えてくれたっていいじゃないですか……」


昨日と比べて口数も増えていることだし、少しでもクソ招待状の存在を忘れられるなら教えても良いが……


(´・_・`)「つっても、ググったら出てくるのばっかしだし……出自に関してもあまり良くわかってない部分も多いからな……」

⌒*リ´・-・リ「と言うと?」

(´・_・`)「雪女や妖狐が『どういうモノか』ってのは、各地の逸話や伝承のままだが、どういうプロセスでそれが産み出されたかまでは判明してねえんだ」

⌒*リ;´・-・リ「え?そんなの、妖怪さんに訊けばいいのでは?」

イ从゚ -゚ノi、「アンタ、人間がどういう経緯で誕生して、どんな歴史を辿ったかを詳しく解説できる?」

⌒*リ;´・-・リ「……すみません」


長い歴史を積み重ねる中で、記憶や記録が薄れていくのは人も妖怪も変わりない。彼らについて記されている書も多く遺されてはいるが、それの正誤を判断する者もいない

33 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:46:44 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「いくつか説はあるんだ。『人の想像力で生み出された存在』だとか、『進化ツリーの中で異能方面へ舵を切った者』だとか、『表の環境に馴染んだ裏の姿』だとか言われてるが、実証までは到ってない」

(´・_・`)「で、数多くいる妖怪や魑魅魍魎は、主に三つに分類される。一つ目はお銀のように人との共存、共闘を選んだ『友好派』」

イ从゚ -゚ノi、「一緒にしないで」

(´・_・`)「ごめ。二つ目が、人とも裏とも関わらないようにひっそりと暮らす『隠居派』。そして最後に、裏と同じように人、または他の怪異を悪戯に食い散らかす意地の汚いクソッタレのカス畜生共『外敵派』」

⌒*リ;´・-・リそ「外敵派にだけ当たりがキツイ!!」

(´・_・`)「で、『裏』との違いが初っ端から速攻で襲い掛かる存在が多いってとこだ。やけに事故の多い交差点とか、峠の山道とか、立ち入りが禁じられてる海辺とかな」

イ从゚ -゚ノi、「馬鹿やる人間が主な食糧よ……アンタも、動画の再生数目当てで深夜の心霊スポットに足を踏み入れるなんてしないことね……」

⌒*リ;´・-・リ「や、やりませんよ……わざわざ恐いとこに足なんて踏み入れませんし……もしかして、ストレスや疲弊とか関係なく襲って来たりするんですか?」

(´・_・`)「そうだ。ただ、裏と違って『境界』を駆使出来る奴は限られてる。殆どが各自の縄張りに踏み込んだアホを襲うだけの連中だ。そういった意味では、まだ優しい方かもしれねえな」

イ从゚ -゚ノi、「度が過ぎる外敵派を駆除しに行くのも私たちの仕事よ……はい、出来上がり。乾くまで服とか顔に触れないこと」


コンマ一ミリのはみ出しもムラもなく、艶のある赤が塗りこまれた爪を見て高梨さんは『ほう』と感嘆を漏らす
あまり化粧に関心の無い俺でも、プロ顔負けの仕事であると見て取れた。しずくはこういうのマジダメ。もう指先ベッタベタ


⌒*リ*´・-・リ「素敵……ありがとうございます」

イ从゚ -゚ノi、「ん」


道具を手早く片付けながら素っ気ない返事をしたが、礼を言われて悪い気分になる奴はいない。表情もいつもより柔らかく見えた。いつもこうならいいのに

34 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:48:05 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「あれ?俺は?」
  _,
イ从゚ -゚ノi、「……」

(´・_・`)「冗談だよマジで嫌そうな顔すんな」


今にも飲み物ぶっかけられそうな目で見られた。そんなにはしゃいだオッサンがキモいかよ……キモいか……テンション上がったオッサンってキツイもんな……


<せんせー


(´・_・`)「んお?」


おl
壁l,~-~)「ちょっと来てー」
だl ⊂ノ



廊下から寝ぼけ眼のしずくが顔を覗かせている。わざわざ呼ぶってことは、『依頼人』には聞かせられない話かもしれない
銀に後を任せ、彼女の元へ向かう。着崩れた寝間着と半開きの瞼が、『まだ寝たりない!!』とアピールしているようでちょっと笑った


(,,~-~)「あの……えっとね……グウ……」

(;´・_・`)「寝んな寝んな立ったまま寝んな。せめて用件を伝えてから寝ろ」

(,,~-~)「リゾット……?」

(;´・_・`)「ネエロじゃなくてな?」

35 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:49:21 ID:bDiJ5Dlc0
(,,~-~)「なんかぁ……ボクの部屋の前に山盛りハガキが届いててぇ……」

(;´・_・`)「ッ!?」


肝が冷えると同時に、昨晩切り裂かれた掌が痛んだ。思わずしずくの肩を掴み、傷や出血が無いか確かめる


(;´・_・`)「怪我無いか!?」

(,#~-~)「フサフサじゃい……」

(;´・_・`)「髪の話なんかしてねえんだよ!!!!!!!!!!!」


落ち着け。怪我してんならもっと大慌てで駆け込んでくる。この暢気なアホ面が無事の証明だろ
今は状況の確認に徹するべきだ。今朝の見回りでは結界は突破されてなかった。どこか見落としたか、それとも短期間で力を強めたか


(;´・_・`)「……わかった。確かめよう」

(,,~-~)「んー」


両手を広げて『運べ』とせがんだので、片手で抱き上げてしずくの部屋へと向かう。お前もう14……大きくなって……やだ、涙が出ちゃう……
子どもの成長に喜んでる場合じゃない。涙はこいつの結婚式まで取っておくべきd結婚!!!!!!!???????耐えらんねえ!!!!!!!!旦那ぶっ殺しちゃうかもしれない!!!!!!!!!!!!!


(;´・_・`)そ「うわっ……」


『いや待てよそいつ誰だ』な将来の旦那予想図は、扉の内へと雪崩れ込んだ招待状の山を見て吹き飛んだ
室内のドアは内開きだ。恐らく開けるまではもたれ掛かるように積み上がっていたのだろう


(,,~-~)「ボクの部屋の結界はねーぇ……ちゃんと作動してたっぽいから……どっかから入り込んだんじゃない……?」


しずくのいう通り、扉という『境界』を通されていた場合、刃物と化した招待状が衣服や肌を切り裂いていただろう。もしもこの量に襲い掛かられれば、ひとたまりもない
解せないのは、『何故こいつの部屋に招待状が届いていた』かだ。その謎は、紙面を確認してすぐに判明した

36 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:51:30 ID:bDiJ5Dlc0
『儀社 しずく 様』


『小練 詩音 様』


『供身 235号 様』


宛先に、それぞれの名が記載されている。裏面には、高梨さんの物と同じように『御出席』『御欠席』の文字が並んでいた


(#´・_・`)「……クソ野郎」


新たな挑発か、それとも俺らにも狙いを定めたのか。そんなことはどうでも良くなるほど


(#´・_・`)「余程殺されたいらしいな……」


かつて銀が、『あの場所』にいた頃の番号を『名』として使用したことに、腸が煮えくり返った


(,,゚-~)「……先生?」

(;´・_・`)「っと……悪い。ていうか起きたんなら降りろや」

(,,゚-゚)「重いの?」

(´・_・`)「は?軽いですけど?お前が後九十九人乗っても大丈夫ですけど?」

(,,゚-゚)「いつからイナバ物置になったの?」


俺の巨腕から猫のようにスルリと抜け出したしずくは、完全に目を覚ましたのか、落ち葉でも扱うかのように招待状を蹴り上げた

37 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:52:30 ID:bDiJ5Dlc0
(,,゚-゚)「この案件、早く終わらせられるかもね」

(´・_・`)「そうだと良……いや、そうだな……」


一週間、早くても五日だと予想していたが、それを上回るペースで成長している。この分だと、明日か明後日には本腰入れて襲ってくるかもしれねえ
戦闘に関してはいつでもかかってこいやヒナ屈辱だが、問題は明日明後日の内に高梨さんが抵抗を行えるほど回復するかだ
プレッシャーになり得る指示は出来る限り避けたい。緊張や重圧はストレスと直結する。自然体のままに休む方が気力が取り戻せるのだ
だからと言って油断をさせ過ぎるのも反って危ない。裏との戦いは、被害者の精神バランスを鑑みて挑まねばならないのだ


(´・_・`)「いつでも対処できるように得物は持ち歩いとけ」

(,,゚-゚)「言われるまでも無いよ」


しずくは腕を振るうと、袖に仕込んでいた装置が作動。バネ仕掛けによって飛び出した『クナイ』が掌に収まった


(,,゚-゚)「最強美少女しずくちゃんをコケにした罪は、きっちり贖って貰うからさ」

(´・_・`)「そうだね」

(,,#゚-゚)「心を込めて同意して!!」

(´・_・`)「そうだね」

(,,#゚-゚)「もういいよ!!!!!!!お昼ご飯なに!!!!!!!??????」

(´・_・`)「タコ焼き」

(,,#゚□゚)「たーこたこたーこたーこたこたーこたーこたこたこやきマントマン!!!!!!!!!!!!」


だから伝わんねえって今の時代にその年代のネタ
招待状が何の目的でしずくを狙ったかは知らんが、疲弊が目的ならお門違いもいいとこだ。そこらの一般人とウチの子を一緒にさせて貰っちゃ困る
空腹を抱えてのしのしと勇み足で廊下を歩くしずくに続き、俺もカフェテリアへと戻っ……ハガキ処分しとくか……めんどくせえ……やっぱ今回早い方がいいわ……

38 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:53:49 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――



イ从゚ -゚ノi、「焦ってるわね」


高梨さんとしずくが寝静まった夜更け、昨晩と同じく俺の自室で二人きりの作戦会議を行っていた


(´・_・`)「その心は?」

イ从゚ -゚ノi、「高梨さんの回復も、思ってた以上に早いからよ」


銀が自家製の梅酒が入ったグラスを傾けると、丸く大きな氷がカランと音を鳴らした。今夜の酒はご機嫌とは言えない
確かに、過去の依頼人と比べれば比較的……というより、異例のスピードで元気を取り戻している
第一印象こそ気弱だと感じたが、本来は芯の強い女性のようだ。半年もの間、招待状の猛威に耐え切った精神力にも頷ける
元より、男より女の方が回復が早い。男ならグズグズと引き摺るようなことでも、女性ならスパッと切り換えられるからだ
また、胎内で十月十日子を育み、激痛を伴う出産に耐え切れる『雌』本来の強さも要因とする。でもちゃんと旦那は支えてやらなアカンのやで……それが『雄』の強さや……


イ从゚ -゚ノi、「半年掛けてようやく陥落しそうだった高梨さんが、一日二日で元の木阿弥に戻られたら堪ったもんじゃないとでも考えてるんじゃないかしら?それが、今回の成長スピードに繋がった」

(´・_・`)「ふむ……俺ら宛の招待状も、『ガワ』だけで効力は無かったからな」


試しに俺宛の招待状の御出席に丸を付けて見たが、何も起こらなかった。つまり、昨晩と同じく脅し目的で送られてきたものだ
高梨さんに関わる者を、あのような手段で遠ざけてきたのだろう。事実、彼女はこの半年間で恋人と職を失っているらしい


イ从゚ -゚ノi、「とすると、問題はやっぱり……」

(´・_・`)「本腰入れてきたタイミングだな」


『裏』は獲物を捕らえる時、最大限の『恐怖』を伴って発現する。ホラー映画で言う所の、『ジャンプスケア』に近い行動だ
『ワッ』と脅され、恐怖の感情が露わになると、人の警戒心や抵抗力が一気に霧散してしまう。落ち着きを取り戻すにも、安全安心を確保しなければならない
その瞬間こそ、裏にとって絶好の『狩り時』だ。最悪の場合、俺らの力が及ばない速度で連れ去られてしまうかもしれない

39 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:54:11 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「……難しいな」

イ从゚ -゚ノi、「ええ」


だからこそ、予め奴がどういう手で攻めてくるかの予想を立てなければならない。しかし今回は『ハガキ』が相手だ
これがもっと具体的な『恐怖のイメージ』をもつ像であるなら、もう少しやりやすいのだが……ハガキ……ハガキかぁ……


(´・_・`)「とにかく、『招待状』と『ハガキ』の両面からザッと候補を挙げていくか」


頭を捻るだけでなく、手と口も合わせて動かした方が考えも浮かびやすい。ペンを手に、その二つが持つ性質を書き並べ始めた
長い夜は、まだ始まったばかりであった―――――

40 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:55:07 ID:bDiJ5Dlc0





朝!!!!!!!!!!!小鳥さんチュンチュンチュンチュンピーチクピーチクボボボボボ!!!!!!!!!! 




.

41 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:55:45 ID:bDiJ5Dlc0
(;´ _ `)「……」



(,,゚-゚)「おは……ええ……何してたの……?」


カフェテリアに現れたしずくは、俺の顔を見るやいなやドンの引きだった
そらそうだよ寝てねえもんでも仕事は待ってくれないしハガキは今日もえれえ量届いてるしよクソが
銀は三時頃には休ませた。いざって時にあいつがグロッキーだとちょっと困る。俺は休まなくても最強のままなので大丈夫だった


(;´ _ `)「楽しいお喋りと飾り付けだよ……クリスマスが近いからな……」

(,,゚-゚)「半年以上先じゃん……」

(;´ _ `)「毎日がクリスマスだったら良いなって思え」

(,,゚-゚)「ご飯まだ?」


温め直した昨日の残りのビーフシチューとトースト、サラダにオレンジジュースのセットを雑に置いてやる
跳ね溢れたシチューを指で拭ったしずくは、あからさまに不機嫌な表情を見せた


(,,゚-゚)「丁寧に運んでよね……スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするようにさ」

(;´ _ `)「黙れクソガキ……高梨さんは……?」

(,,゚-゚)「お手洗いだよすぐ来るんじゃない?ん、うま」


_人人人人人人人人人人人人人_
> (´^_^`)「せやろがい」 < ゴキゲン!!!!!!!!!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^


(,,゚-゚)「チョロ」

42 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:57:20 ID:bDiJ5Dlc0
結界も強化し直したので、建物内にいるなら一人でも安全だろう。そう思った矢先――――


(´・_・`)「ん?」


窓から、一瞬だけ『影』が差した。鳥でも横切ったか程度の違和感だったが、影は二つ、三つとその数を増やす


(;´・_・`)「……!!」


鳥なんかじゃない、『ハガキ』だ!!俺が弱っ……てねえけど寝てないタイミングを見計らったか!!


(;´・_・`)「しずく!!銀を叩き起こして俺の得物持って来い!!俺は高梨さんを!!」

(,;゚-゚)「わかった!!」


ガチャンと食器を鳴らしながら立ち上がったしずくは、すぐさま銀の部屋へと走った
室内にチラチラと差しこむ影は、もはや『大群』と読んで差し支えない量となっている。窓にも光を遮るようにペタ、ペタと張り付き始めた
幸いにも、カフェテリアからお手洗いまではそう遠くない。俺も急いで高梨さんの元へ向かおうと、しずくとは別方向の出口から飛び出す

43 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:57:53 ID:bDiJ5Dlc0
(;´・_・`)そ「うおっ!?」


その瞬間、飛び立った鳥の群れに襲われるかのように、正面から一斉にハガキの大群が身体に衝突する
雪の結晶ですら集まれば『雪崩』や『吹雪』と化す。横幅十センチ、縦幅十五センチ、厚さ0.22ミリ、重さ約2〜6グラムの紙も例外ではない
交差した両腕のガードを、遠慮なくズバズバと切り裂いてくる。動力源は勿論『風』なんかではない
例えるなら、無色透明かつ質量のない、ハガキを纏った『粘液』が、廊下という水道を通して押し流してくるようだ


:(;´ _ `):「ぐっ……」


細かな切り傷が身体中に刻まれていく不愉快な痛みに犯されながら、俺は心底安心した。『こっち側に出たのか、俺で良かった』と


:(;´ _ `):「くく……」


『徹夜をして良かった』と、『俺が弱ったと勘違いしてくれて良かった』と、『俺を侮ってくれて良かった』と

44 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:58:29 ID:bDiJ5Dlc0






:(#´ _ `):「ハハハハハハハァ!!!!!!!!!!!!」








『真っ先にこいつと遊べるのが、俺で良かった』と―――――

45 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 22:59:17 ID:bDiJ5Dlc0
『裏』や『怪異』が何故、超常たる異能の力を持ちながら、今日この時まで人間を支配下に置かなかったのか?
それは、人のみならず生きとし生けるモノ全てに、悪しき異能を跳ね除ける『生命力』が備わっているからだ
裏、そして一部の害意を持つ怪異は、俺達『表』の生き物とは『命』の仕組みが異なっている
奴らにとって命とは燃え盛る炎。触れれば火傷を負い、身を包めばそのまま焼け死ぬような、膨大なエネルギーなのだ
だからこそ奴らはその炎を多種多様な方法で弱まらせ、消える寸前になった所を襲って連れ去る
その後は丁度いい塩梅に燻らせながら、俺らが火で暖をとり、調理に使うように、奴らも人を利用するのだ。炎が『死』というエンプティを迎えるまで、生かさず殺さずに


つまり、『生きている』だけで、怪異に対してある程度の免疫は備わっている
では、『それ以上』を求めるには、どのような手段を取れば良いのか?


先人は憂いた。『生命力をただの免疫だけで終わらせてよいものか』と
先人は悔いた。『生命力を武器に奴らを撃破できたなら』と
先人は憤った。『生命力を理の外の連中に食われるままでいいのか』と


そして先人は考えた。『それならば、生命力を自在に操る方法を』と

46 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:00:05 ID:bDiJ5Dlc0
(#´ _ `)「《握》(にぎり)ッ!!」


下腹部、『丹田』から血流に乗せるイメージで生命力を『拳』へと集める。そして、交差した腕を一息に広げると


(#´ _ `)「ッ……フゥー……」


見えない粘液の圧から解き放たれ、飛翔するハガキの群れは力なく廊下へと墜ちる
《握》。生命力を拳や足などの末端に送り込み、身体の内側から『表面』へと出す、対怪異技術の基礎


端的に言ってしまえば、《握》を使えば連中に痛手を与えられる。異能という理不尽に対して、真正面から暴力の報復を行えるのだ


(#´・_・`)「……」


ただし、生命力自体に『破壊力』は無い。怪異に触れたとしても、奴らの表面が焦げるだけだ
攻撃に関しては使用者本人の『膂力』に依存する。聡明な皆様ならもうお分かりだろう。そう、筋肉である。皆さまって誰だ。お前は誰だ俺の中の俺
先ほどのアクションにもさして力は込めていない。『裏』が退いたのも、ダメージからではなく『反射反応』によるものだろう


(#´・_・`)


(´・_・`#) チラリン……


そんな事より前も後ろもゴミまみれなのキレそう



(#´゚_゚`)「誰が片づけると思ってんだクソがァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」



大桜堂がこの件を俺らに回した理由が分かった。後片付けが面倒だからだわ
俺はキレつつお手洗いへ走りながら、この件終わったらじっくりと『お話(店を物理的に畳むの意)』しようと固く決意した

47 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:01:18 ID:bDiJ5Dlc0
異常はすぐに目に入った。女子トイレの扉の前では、磁力に引き寄せられるように『招待状』が群れを成している
その中からは高梨さんのくぐもった悲鳴が聞こえ、既に内部にまで侵入している事実を伝えた


(#´・_・`)「高梨さんッ!!」


彼女の名を呼ぶと、『邪魔をするな』とでも言いたげにハガキの刃が発射される。だが、切れ味があろうと紙は紙でしかない
薄皮程度が切れた所で、その下に潜む鋼の肉体までは破壊出来まい。多分今日風呂入る時が一番ダメージあると思う
それでもまぁまぁ血だらけになりながら、ハガキの嵐を抜けて女子トイレの扉を蹴破る。非常事態故致し方なし。下心は無い


「っ……小練さん!!小練さぁん!!!!!」


それは、まるで『繭』だった。洗面台の前で、楕円状に彼女を取り囲む招待状の檻。蚯蚓のように文字が蠢いているのは、締め付けを行いながら包囲網を狭めているからだろう
昨日、銀が施した『魔除け』が効いている証拠だ。今のように不意に襲われたとしても、一定の距離を保って奴らを寄せ付けない効果がある。それを、力業で破ろうとしている


(#´・_・`)「気を保て!!今すぐ助けっ……!?」


繭から放たれた『角柱』を、咄嗟に両手で受け止める。だが、勢いは止まらず、195センチを誇る俺の巨体が浮き上がり


(;´゚_゚`)・'.。゜「ゲハッ!?」


廊下の窓に後頭部と背中を、そして窓枠に腰を打ち付け、後転しながら外へと放り出される
この土壇場に来て奴らは攻撃を『分散』から『集中』へと変化させた。一枚一枚は軽い紙でも、束にすれば厚みと重さ、そして硬さを生み出す。漫画雑誌など良い例だ
奴が『塊』をぶつけてくることは、昨晩の会議で想定済みだったが、実際に喰らうとなると実感する。『オイこれまぁまぁ効くじゃん』と

48 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:01:59 ID:bDiJ5Dlc0
:(;´゚_゚`);「っ……てぇ、な……!!」


身体は植垣へと沈み込む。背中と頸をガラスで切ったのか、焼け付くように熱く痛い
そして尚、攻撃の手を緩めずに次々と圧し掛かってくる『招待状』の束、束、束。骨身が軋み、呼吸もままならない
ハガキに押しつぶされて死ぬなんて冗談じゃねえ。末代まで笑いものにされる。まだ圧の少ない脚に《握》を行い


(#´・_・`)「オラァッ!!!!!!!」


爪先で紙柱の『腹』を蹴りつける。『裏』の粘液が爆ぜる感触が広がり、身体の圧が幾分か和らいだ
ドバドバと降り注ぐハガキの滝を払い除け、紙の水面から顔を出すと―――――


(;メ)_ `)・'.。゜「カッ……!!」


『待ってました』と言わんばかりに、新たな紙柱で顔面を殴りつけられる。紙束の角が、頬の肉を深く抉った
俺のダウンに合わせて、すぐさま再開されるハガキによるプレス。視界はおろか、鼓膜に届くのも紙がこすれ合う『ガサガサ』とした音だけだ



(;メ)_ `)「っ……っ……!!」



助けを求める為の声も出せない、腕も伸ばせない。呼吸も行えず、身体は刻一刻と死へと歩み始める
痛みと苦しみしかない、狭い世界の中。ふと光が差し込んだ。俺の目に飛び込んできたのは、後光携え現れた―――――

49 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:02:41 ID:bDiJ5Dlc0



   『御出席』『御欠席』


  (何方かに丸をお書きください)





  とだけ書かれた、招待状だった

50 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:03:31 ID:bDiJ5Dlc0
地獄に垂れ落ちた蜘蛛の糸、あるいは舞い降りた天使か
救いの手でも差し伸べるかのように、今の状況を作り出した『元凶』が、俺の目の前に現れた


:(;メ)_ `):「……」


魔除けに守られている高梨さんよりも、物理攻撃で虫の息の俺に標準を合わせたのだろう
ましてや、怪異退治で食ってる野郎だ。その価値は、一般人を連れ去るよりも遥かに大きい
右腕の圧が軽くなった。持ち上げると、指先までべっとりと自分の血で濡れているのがわかった
『これで意志を示せ』と指示しているのだろう。自らの『血印』で、御出席に丸を付けろと


:(;メ)_ `):「……」


右腕を、人差し指を、他でもない俺に充てられた招待状へと伸ばす。今なお続く地獄から解放される為に―――――







( メ)_ `)「」







ただし、屈する気は毛頭なかった

51 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:04:48 ID:bDiJ5Dlc0
( メ)_ `)「馬鹿がよ」


作戦通りだ。やはりこいつらには学が無い。『御馳走』が弱れば、すぐさま目移りする頭の悪い獣だ
俺達は常に高梨さんの護衛をしてやれるワケではない。眠りもすれば便所にも行く。四六時中ってのは到底無理だ


( メ)_ `)「獲物が元気になってきて、焦っちゃったか?ええ?」


だからあえて、奴にとって優位な状況を作り出す事にした。俺らが疲労した中で、高梨さんが『一人』というシチュエーションを用意する
彼女の回復速度に焦っていた奴は、この機を逃さんと食いつくだろう。そこに邪魔者が現れる。裏を殺す術を持つ『俺』が


( メ)_ `)「俺らの掌の上で踊るのは楽しかったか?」


当然、抵抗を行うだろう。するとどうだ?奴は拍子抜けした筈だ。「案外大したことは無いではないか」と。当たり前だ。手を抜いて相手しているのだから
この好機を、当然見逃しはしない。拘束したも同然の高梨さんなど、俺を狩った後で良い。優先順位がここで入れ替わる
満を持して登場したのは、ハリボテの神々しさを纏った招待状の『本体』だ。紙切れの分際で勝ち誇った気になっていやがる


『追い込まれたのは一体どっちか?』 それをハッキリと思い知らせてやる


( メ)_ `)「《握》」


眼前まで現れた『核』を、生命力を込めて握りしめる。ハガキの周囲には、硬いゴムのような感触を持つ不可視の障壁が築かれていた
紙の束に比べれば、余りにも薄いバリアだ。指は徐々に、そして確実に、内部へとめり込んでいく。だが、奴もこのまま黙って殺られる気は無いようだ
目先の餌より自身の安全を優先したのか、今度は俺の命を押し潰そうと圧迫を強めていく。我慢比べか、面白い


(#メ)_ `)「おおおおおおおおお……ッ!!」


気を抜けばパンと破裂してしまいそうな、これまで味わった事の無い過重力。それは向こうも同じだろう
指先がハガキの縁に触れた。もう一押しだ。そろそろキメちまわねえと、流石の俺も全治二、三日の軽傷を負わされてしまう

52 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:05:30 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_ `)「く、た……ば」


勢いをつけて、一息に握り潰そうとした瞬間―――――


(;メ)_゚`)そ「うおっ!?」


圧は上からではなく『横』へとベクトルを変え、俺の身体は紙の濁流に押し流される。数秒もしない内に排出され、地面を転がった


(;メ)_゚`)「ブハァーッ!!」


外の明るさや、新鮮な空気。暗闇と圧力の地獄から抜け出せたことに喜びは感じない。むしろ、危機感と悔しさが湧くばかりだ
仕留め損ねた。折角あそこまで追い込んだのに、奴の核を手放しちまった。チキンレースこそ勝利したが、それじゃ意味がない
立て直す間も無く、ハガキの山から紙束の柱が射出される。それも四方向から複数同時に。少しは学んだか。良いだろう、何度でも相手してやる



(#メ)_゚`)「来いやオr「だから先生はさぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」



気合の雄叫びの上へ被せるような、俺を非難する叫びが耳に届くと同時に、側面から四本のクナイが紙の柱を穿ち貫く


(,#゚-゚)「ちょっとは退くってことを知らないのかなぁ!!」


小さな『相棒』が間に割って入り、ホルスターから新たなクナイを引き抜いた


(,#゚-゚)「大怪我すんのは勝手だけど、その間誰がご飯作ったり洗濯したりすんのさ!!」


母親のツラを生まれてこの方見た事が無いが、多分こうやって病んでいくんだろうなって思った。ママは大事にしろ

53 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:07:40 ID:bDiJ5Dlc0
(,#゚-゚)「それとお前!!!!!!出てくるんなら朝ご飯食べてからにしてよ!!!!!!裏って本当に空気読めないよね!!!!!」


裏もお前にだけは言われたくないだろうよ


(メ)_・`)「銀は?」

(,,゚-゚)「『手筈通りに』だって」


聞こえてるか聞こえてないかは知らんが、小声で手短に伝達を済ます。起きてくれてほんと良かった
両手にこびりついた自分の血を、揉み手してしっかりと擦り付ける。即席の『滑り止め』でベタついた所で―――――


(メ)_・`)「そんじゃ、プランBに移るか」


しずくの腰に差し込まれている一振りの『小刀』を引き抜いた。刀身は凡そ三十センチ。反りは深く、突くよりも『薙で斬る』を想定された造り
傍目に見ればちょっとヤバめのナイフ。マチェットにも満たない長さのそれに、一つのアクションを送り込めば


(メ)_・`)「《流》」


『生命力』に反応して、おちんちんに血を……

54 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:08:55 ID:bDiJ5Dlc0




(メ)_・`)「」

(,,゚-゚)「?」

(#メ)_゚`)「うおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(,;゚□゚)そ「どしたの!?」




……送り込むかのように刀身が肥大化し、柄は伸びる。もうやだまだおちんちん癖が抜けない
現れたるは、俺の背丈ほどの長さに成長した『矛』。肉体と拳に次いで信を置ける、俺の『得物』だ


(,;゚-゚)「びっくりしたよもう……莉花さんはあそこ?」

(メ)_・`)「みたいだな」


しずくがクナイで指す先には、ハガキの山の天辺へと送られていく『繭』。俺を押し潰さんと積み上げられ続けていた紙束は、宿泊施設の二階部分にまで到達するほどの高さに成長している
銀が施した魔除けは、早々解かれるものではない。だが、その周りを密封されることで、『光』や『酸素』は遮断される。あの中にいるって事はオリバにパックマンされるようなもんだ。その方がキツいか
高々と掲げやがったのは、俺らをハガキの山へと誘い込むための罠だろう。一度足を踏み入れれば、蟻地獄が如く吸い込まれていくのは目に見えている
かと言ってこのまま指を咥えて見ているわけにもいかない。魔除けの耐久度にも限界があるし、回復した高梨さんが『狩りやすい獲物』に戻ってしまう

55 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:10:12 ID:bDiJ5Dlc0
(メ)_・`)「しずく、ぼ……」


(メ)_・`)「防御たのむ……」


(,,゚-゚)「防御!?」


マジでこの時代にいねえぞこのネタ通じる14歳。矛を肩に、悠々と山へと歩んでいく。再び柱の触手が襲い来るが―――――


(,#゚-゚)「《流》ッ!!」


『投擲の天才』が、生命力を込めたクナイで迎撃する。刃先が紙面へと深く突き刺さると、沸騰した裏の『粘液』がブグリと膨張し、爆発
千切れ跳んだ紙吹雪が舞う中、俺は深く深く息を吸い込んだ。『語り掛け』、『合図』を送るために


(#メ)_・`)「聞けェッ!!高梨さん!!俺の言葉を思い出せッ!!」


点の攻撃は通じないと分かると、お次はハガキの『大波』がブワリと浮き上がり、頭上から襲い来る


(#メ)_・`)「『何があろうと生きるという気持ちを忘れるな』!!アンタはここから逆転できる!!招待状に、怪異に打ち勝てる力を持っている!!」


矛を振りかぶり、波のどてっ腹を斜めに斬り裂く。形を保てなくなったハガキの『死骸』が、落下と同時に辺り一面に散らばった


(#メ)_・`)「連中が人間を怯えさせるのは、俺達が持つ『命』に恐れ慄いているからだ!!アンタを囲っているのは、真正面から喧嘩を売る度胸もない臆病者だ!!」


それならばと、裏は攻撃方法を再び分散へと戻す。バルカン砲が如く射出されるハガキの刃。しずくにはかすり傷すら負わせまいと、身体を張って壁となる
『小さなことからコツコツと』。当たり前で偉大な言葉が、今は悪意を孕んで直接身体に刻み込まれているようだ。それでも、顔をは下げず声を張り上げる


(#メ)_・`)「だってそうだろ!?俺らに対してここまで暴れまわれるくせに、一般人のアンタにはネチネチと半年間も『嫌がらせ』しか出来なかった存在だ!!ビビるこたぁねえんだよ!!」

(,,゚-゚)「そうだそうだ!!」

(#メ)_・`)「裏など、怪異など、恐るるに足りない!!!!!絶望するほどの価値も無い!!!!!『生きてる奴の方が何倍も強い』!!!!!!」


仕掛け所だ。行くぞ!!

56 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:10:40 ID:bDiJ5Dlc0







(#メ)_゚`)「溜まった鬱憤をぶつけてやれッ!!高梨 莉花ァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」






.

57 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:11:25 ID:bDiJ5Dlc0
「……」


俺の言葉は彼女に届いたか?その答えは、繭の胎動が明らかにしてくれた
ハガキの刃は、目に見えて切れ味を落としていた。さながら、風に吹かれる新聞紙と言った所か。身体に張り付いてうぜえ


「……ン」


彼女が内から声を上げる度に、招待状の包囲網は内から強く殴りつけられたかのように膨張する。その度に、一枚二枚と『花弁』を散らした
《握》や《流》が使えなくとも、誰にだって『生命力』はある。ここまでくっきりと実体化した裏は狂暴、凶悪な反面、受ける影響も強くなる
だからこそ獲物を怖がらせ、怯えさせ、弱らせる。虚勢に虚勢を重ねてようやく表舞台に姿を見せるのだ。『手痛い反撃を受けないように』


「オ……ン!!」


三度目の胎動で、遂に包囲網は決壊を始める。顔を見せた高梨さんは、息も絶え絶えだったが、そこから抜け出そうと必死に藻掻く
招待状はせめて彼女だけは逃がさないと、分蜂のようにハガキを蠢かせ決壊部の修復を図る。最早、俺が手を出すまでも無い


⌒*リ;´ - リ「ッッッ〜〜〜〜〜〜〜……!!」


再び閉ざされようとする『繭』に向かって

58 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:12:38 ID:bDiJ5Dlc0





⌒*リ#´ Д リ「お ち ん ち ん ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」





彼女は『生命力』を込mええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!??????????






ロマンス&バカンス‐おちんちんYEAH
https://www.youtube.com/watch?v=3N3FhNFHaZA





(メ)_・`)「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」

(,,゚-゚)「先生の所為だよ。アレ」

(メ)_・`)「俺ェ……?」


でもまぁ確かに余裕無かったら人間ああなるのかもしれない
なんかちょっと冷静になっちゃったけど傍観してる場合では無い。渾身の生命力を込めた拒絶は絶大な効力を発揮し、ハガキの繭は一斉に解けた

59 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:13:51 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ そ「わわっ!?」


足下の支えが無くなり、彼女の身体はハガキの山頂に沈み込もうとする。繭こそ壊れたが、山はまだ健在と見ていい。このまま飲み込まれてしまったら元の木阿弥だ
まぁ、そうさせない為に、もう一人の『相棒』を待機させていたのだが

 ∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「掴まりなさいッ!!」


二階の窓から得物の『銀製の棍』を右手に山の上へと飛び出した銀が、もう片方の手を伸ばす。それを反射的に掴んだ高梨さんをハガキの蟻地獄から引き抜くと

 ∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「足下注意、滑るわよ」

⌒*リ;´・-・リ 「え、ええ!?」


高梨さんの驚愕は、言葉ではなく銀の頭上にヒョコリと生えた『獣耳』に対して向けられていた
『雪女』の異能に『妖狐』の膨大な妖力量を併せ持つ銀の本領が発揮される時に訪れる変化だ

 ∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「《放》(はなち)!!」


銀の足が山に接触した瞬間、ハガキの群纏わり付く裏の『粘液』は凍りつき、その上に僅かな雪が積もる
高梨さんを片手で抱え、棍の先端で山の表皮を削りながらバランスを取り、即席のゲレンデを滑降する。フゥー!!涼しげぇ!!

60 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:14:35 ID:bDiJ5Dlc0
 ∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「っとと……」

⌒*リ;´・-・リ そ「おわー!!」


麓まで滑り切った二人は、慣性をステップで殺しながら俺たちの元へと到達する。鮮やかな奪還劇だ。お捻りを投げたい。財布持ってくりゃ良かった


(,,゚-゚)「ボクもそれしたい」

  ∧ ∧
イ从;゚ -゚ノi、「馬鹿言わないで。どんだけ疲れっ……!!」

⌒*リ;´・-・リそ 「銀sおわー!!」


高梨さんを手放し、ガクリと膝から崩れ落ちそうになった銀の身体を咄嗟に抱き留める。妖力を使った反動が、身体にクッキリと現れていた
首をグルリと締め付ける、赤黒く光る『鎖』の紋様。ともすれば街一つを凍り付かせる程の力を抑え込む、銀を生み出したクソ共による枷だ


(メ)_・`)「お疲れさん。後は俺たちが」

イ从;゚ -゚ノi、「言われるまでも無いわ……ただでさえ寝不足だってのに……あとアンタ鉄臭い……」

(メ)_・`)「俺だって好きでズタズタにされたワケじゃないが????????」

⌒*リ#´・-・リ 「イチャつく暇があるなら私も労って貰っていいですかね!!!!!!?????」


『二仕事』終えた銀を、地面に投げ出され、腰が抜けたまま立てない高梨さんの隣へと座らせる。一体何を見てイチャついてると思ったのだろうか?さっきもなんかおちんちんって言ってたしアホなんだろうか?


(メ)_・`)「さて……」


本体を表舞台に引きずり出し、依頼人の救出も済んだ。残る仕事は単純明快摩訶不思議奇想天外四捨五入出前迅速落書無用―――――


(メ)_・`)「四対一だ。尻尾巻いて逃げるか?」


紙クズの大掃除と洒落込むか

61 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:16:28 ID:bDiJ5Dlc0
俺の言葉に呼応してか。それとも、分が悪いと察知したか。招待状の山は一斉に飛び立ち、上空で『帯』となって身をくねらせる
『頭』はその行き先を、この場で最も身近で大きな『境界』である窓へと定めて、勢いよく飛び込んだ


⌒*リ;´・-・リ「に、逃げられちゃいますよ!!」

イ从;゚ -゚ノi、「それはどうかしら?」


シンバルを思い切り叩き鳴らしたかのような、けたたましい高音が山々へと響き渡る。境界どころか『窓ガラス』すら通り抜けられなかったハガキ軍は、建物に当たってはボトボトと落ちていく
銀に任せたもう一つの仕事、『妖力による境界の封鎖』だ。窓だけに留まらず、建物内のありとあらゆる境界を凍り付かせて蓋をしている。普段の結界よりも強力だが、枷の関係上長時間は持たない
使用するタイミングのシビアさと、持続力の短さがネックだが、一度接触してしまえば対象は暫くの間寒さに襲われ、行動を著しく制限される。鬼ヶ島が誇るとっておきの『罠』だ


(,,゚ワ゚)「だっさ!!バーカバーカ!!ザァコ!!よわよわ裏怪異!!」

(;メ)_・`)「お前それ……やめとけ……」

(,,゚ワ゚)「なんで?」

(;メ)_・`)「なんっ……なんでってお前……いいや……説明するのもなんか……恥ずかしいわ……」

(,,゚ワ゚) ?


境界を無理やりこじ開ける元気も、既に無いだろう。表裏に関わらず、『無限のエネルギー』など存在しない
高梨さんの拘束、魔除けの破壊工作、そして俺達への大がかりな攻撃。相当な消耗をした事だろう。その証拠に、ハガキの物量は目に見えて減っている
銀の罠の効果も合わさって、遠くへ飛んで逃げるのも叶わない。とすると、奴が取れる行動は二つしかない。俺らに白旗を振って降伏するか、あるいは――――


(メ)_・`)「そうこなくっちゃあな……」


死に物狂いで抵抗を行うかだ。これは経験談だが、前者の行動に出た裏はこれまで一つも見た事がない
鎌首をもたげて此方を見据えた紙の大蛇。深い傷から血が流れ出るように、身を構成するハガキはボタボタと剥がれ落ちていく

62 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:18:22 ID:bDiJ5Dlc0
(メ)_・`)「逃げやしねえし、逃がしもしねえよ!!ぶっ殺される覚悟は出来たか!?」


声を持たない奴は、返事の代わりに『鱗』を逆立たせる。手負いの相手が手強いのは、裏も表も同じことだ


(メ)_・`)「華々しく散らせてやるよ!!クソッタレの害虫には勿体ねえほど盛大になァ!!」

(,,゚-゚)「おーよ!!」


しずくと共に、一歩前へ踏み出す。俺は矛を、しずくはクナイをそれぞれ構えた


(メ)_・`)「ここは害成す怪異の『終着点』!!」

(,,゚ワ゚)「地獄行きへの『始発点』!!」

(メ)_・`)「お相手致すは小練 詩音とォ!!」

(,,゚ワ゚)「とっても可愛い儀社しずくちゃん!!」


いつになったら口上を覚えるんだこいつ


(メ)_・`)「恨むなら、迂闊に踏み込んだテメーを恨め!!」

(,,゚ワ゚)「身の程知らずの自分を恥じろ!!」

(メ)_・`)「『命ある者』を敵に回した、その恐ろしさ思い知れ!!」

63 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:19:00 ID:bDiJ5Dlc0





(#メ)_・`)(,,>ワ<)「「『鬼ヶ村』へようこそ!!!!!!!!!!!!!!!」」






(#メ)_・`)「かかって来い」




.

64 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:20:47 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ「……」

イ从;= -=ノi、「……」

⌒*リ;´・-・リ「練習……してらっしゃいます?」

イ从;= -=ノi、「聞かないで、恥ずかしいから」


なんでや、かっこええやろ


(,#゚-゚)「来るよ先生ッ!!」


刃は決定打に欠け、柱は迎撃されると判断してか、蛇行で迫るハガキの大蛇。あの中に潜む『一枚』を、これからあぶり出さねばならない


(#メ)_・`)「俺が削る!!トドメはお前が刺せ!!」

(,#゚-゚)「印でもあんの!?」

(#メ)_・`)「これも修行だ観察しろ!!!!!」

(,#゚-゚)「不親切だなぁもう!!」


柄を両手に先陣を切り、上半身を大きく捻る。蛇は顎を外し、俺を頭から飲み込まんと大口を広げた


(#メ)_・`)「ッッッッラァッ!!!!!!!!!!!」


脚、腰、そして肩から腕へ。捻りから繰り出される遠心力を矛先に乗せ、奴の左頬にあたる部分をぶっ叩く
刃の接触部から『頭』がごっそりと捥ぎ取れ、鮮血が噴き出すかのように『中身』が上へと飛び散った


(#メ)_・`)「ッ!!」


生物であるならこれで終いだが、大蛇は蜷局を巻いて『蛇腹』で体当たりをかましてくる。腕と柄でガードしたが、その巨大さ故に俺の身体は若干の後退を余儀なくされた
体勢が崩れたこの隙に、ハガキは上空へと舞い上がる。少しの滞空の後、接触面積を広くして頭上から一気に降り注いだ

65 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:22:35 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_・`)「オラよッ!!」


的がデカくなったのは此方にとっても好都合だ。《流》で生命力を滞留させた矛を、『滝』目掛けて放り投げた
回転しながら衝突し、ハガキの群は真っ二つに割れる。幾らか量は減ったが、それでも構わず落ちてくる
結構、接触までの時間を少しは稼げた。本命はこっちじゃない


(#メ)_・`)「俺の全力をぶつけてやるよォ!!!!!!!《握》ッ!!!!!!!!」


両拳を叩き合わせ、腰の位置まで下ろす。前後に脚を開き踏ん張りが効くようにして、足首から膝を柔らかく折り、『発射体勢』を整えた


(#メ)_・`)「く、た、ば……」


『御出席』の文字がハッキリと見える所まで迫った大蛇へと向けて―――――




(#メ)_゚`)「れええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」




渾身の両アッパーを放った

66 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:24:48 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_゚`)「ええええええええええええええええええええええええええええええああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」


今ならGiven Upの17秒シャウト出せるんじゃないかってくらいの気合と声を乗せて生命力を拳から叩き込む
大蛇は身体のあちこちから『裏』が突沸。爆発と共に焦げたハガキが噴き出し、身は細く痩せ細っていった


(#メ)_゚`)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」


実はもう17秒経ってるんじゃない?????俺って実はチェスターの生まれ変わりだった?????そんなことはどうでもいい。『まだ見つからないのか!?』
奴にとっても大ダメージの双撃だが、俺の負担も相当だ。生命力の使用はまず『体力』を、それが尽きれば『寿命』を削る諸刃の剣
二時間くらいこのままでも百二十歳まで生きる自信はあったが、朝飯を食ってない身には少々堪える。印は付けてあるんだ。あいつなら、しずくなら見つけるのは容易い


(#メ)_゚`)そ「ああああああああああああああああああああッ!?おわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!???????」


すると、両拳から身体に圧し掛かる負荷が急に軽くなり、勢い余って腕から全身をピンと伸ばした状態でうつ伏せに倒れ込んでしまう


(,#゚ワ゚)「獲ったぁ!!!!!!!!!」


ガッツポーズを取ったしずくが俺の視線に気づくと、興奮気味に空を指さす。只の紙切れと化した招待状が舞い落ちる中に、ハッキリとした存在感を持つ『一枚』


(メ)_・`)「やれやれ……」


縁に僅かな血が染み込んだ本体が、土手っ腹を貫かれてフワリと舞っている。最初に奴と接触した時に、プランBを見越して付けていたのだ
招待状は身に空いた大穴から黒く焼け焦げていき、地面に到達する頃には灰となって消え失せる。後に遺されたのは、裏の支配から解放され、自由気ままに地と空を泳ぐ紙切れだけだった

67 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:26:33 ID:bDiJ5Dlc0
(;メ)_・`)「終わった……」


想定より奮闘され、俺の身体はズタボロボンボンだ。寝返りを打って仰向けになった身体には、もはや破壊力のはの字もないハガキが降り積もる。これはこれでうぜえな……


⌒*リ;´・-・リ 「大丈夫ですか!?」

(;メ)_・`)「見りゃわかるだろ余裕じゃい。絶好調で天丼百杯食えるわ派手にな」

⌒*リ´・-・リ 「とてもそんな風には見えませんけど!?血みどろじゃないですか!!」


抜けた腰が入ったのか、それとも呪縛から逃れて気を取り戻したのか。駆け寄ってきた高梨さんが心配そうに俺を覗き込む
確かに全身切り傷だらけだし、顔もなんか痛い。それに加えて、生命力の使い過ぎで足腰に力が入らない
物理で攻めてくるタイプはこれだから厄介だ。領域展開型や異能射出型ならもうちょい生傷も減るのだが


(;メ)_・`)「あー」


やっぱダメだ。失血と疲労で瞼が降り始めてきた。まぁ後は二人に任せて休んでもいいか……


イ从゚ -゚ノi、「ちょっと」

(;メ)_・`)「っ……痛ぇな……」


頭を小突……今こいつ蹴ったよな?まぁええわ。眠りを妨げた銀が不満げに俺を見下す。性癖は拗れてないんで興奮はしなかった


(;メ)_・`)「何だよ……」

イ从゚ -゚ノi、「私の朝餉、用意してから寝てくれない?」


鬼かよこいつ


(,;゚□゚)「……」


しずくですら絶句してんじゃねえか

68 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:27:41 ID:bDiJ5Dlc0
(;メ)_・`)「昨日のビーフシチュー……保温してあるし……副菜も取り分けてある……」

(;メ)_・`)「あと……パンくらい……自分で焼……」



(;メ)_ `)「け……」死!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「小練さん!?小練さーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!」

「あらら、死んじゃった」

「しょうがないわね、全く……」


姦しい声が遠くなり、俺の意識はしばしの休憩に入ったのであった

69 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:28:51 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――



目が覚めたのはとっぷりと日が暮れた頃。施設内のハガキは『とりあえず脇にどかしときましたっス!!ピィーッス!!』程度には片づけられていた
作り置きした覚えのない夕飯の匂いに誘われてカフェテリアへ足を運ぶと、なんと作っていたのは客である高梨さんだった。従業員二人は好き勝手してた


⌒*リ;´^-^リ「お世話になったんですし、これくらいさせてください。だから土下座やめてマジで。こっちが悪い事した気になっちゃうじゃないですか」


と仰ったので、申し訳ないがお言葉に甘えることにした


(,,゚-゚)「仕事放棄してずっと寝てた先生が悪いよね?」

イ从゚ -゚ノi、「そうね。ここまで軟弱とは思ってなかったわ」


こん時はゲロ吐くまで蹴り飛ばそうと思ったが


⌒*リ;´・-・リ「怒らないであげてください。お二人とも、小練さんの介抱で手一杯だったんです」


と、こっそり教えてくれたので、今日の所は勘弁してやることにした。ツンデレ共がよ……

70 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:31:08 ID:bDiJ5Dlc0
さて、招待状の件は解決したが、高梨さんには予定していた期間中はこの場所で滞在して貰う運びとなった
事後処理も残っていたし、何より彼女が感謝を形として返したいと申し出たからだ。俺達はありがたく厚意を受け取る事にした


(;´・_・`)「めんどくせえ……」


仕事は文字通り『山』ほどあった。裏の残骸であるハガキの処理だ
既に印字されてるもんだから売って金にも出来ねえし、こんな山奥まで廃品回収車はやってこない。そもそも大分昔にその文化無くなってたわ
なので、地道に集めて燃やすしかなかった。遠くに飛んで行ったのは知らん。勝手に長い年月欠けて土になれや死ねカス


(,,゚ワ゚)「芋持ってきたよ!!」

(´^_^`)「いいねえ!!」

⌒*リ;´・-・リ「えっ……これで焼いた物食べて大丈夫なんですか……?」

イ从゚ -゚ノi、「食べられる怪異もあるし、大丈夫なんじゃない?くねくねとか」

⌒*リ;´・-・リ「ええ……古い怪談ですよねそれ……美味しいんですか?」

イ从゚ -゚ノi、「味のしないはんぺん」


大桜堂を始めとしたその他支部、そして本部へ宛てる報告書の作成


(´・_・`)「死ねカス、と……送信!!」

イ从゚ -゚ノi、「ガキか」


まぁこれはそんな大変でも無かったな。翌日ものすげえ量の抗議メッセージが届いたが。役立たずの分際で口だけは達者だな死ねカス
おっと、そうそう。クソザコ霊媒師に支払った金を取り戻すのも忘れちゃなんねえ


(#´゚_゚`)「大した仕事も出来ねえ分際で一丁前にカタギから搾り取ってんじゃねえぞダボがァ!!!!!!高梨の嬢から奪った金、とっとと耳揃えて返さんかいゴラァ!!!!!!!」


:⌒*リ;´・-・リ:「ひえ……筋モノか大阪府警……」

イ从゚ -゚ノi、「それ、対極に位置する存在じゃない?」

(,,゚-゚)「どっちでもいけるよあの迫力」


話せばわかってくれる連中ばかりで助かった

71 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:33:02 ID:bDiJ5Dlc0
一週間は、あっという間に過ぎていった。最終日の朝、帰り支度を終えた高梨さんは、留守番二人に別れを告げる


⌒*リ´^-^リ「お世話になりました」

イ从゚ ー゚ノi、「此方こそ。気を付けて帰りなさい」

(,,゚ワ゚)「また遊びに来てね!!」

⌒*リ´^-^リ「勿論。ありがとね、しずくちゃん」


銀とは握手を、しずくとはハイタッチを交わし、荷物を手に颯爽とオンボロバスに乗り込んだ。珍しく機嫌が良く、ドアはすんなりと閉まる


(´・_・`)「そんじゃ、発車しますっと」

⌒*リ´・-・リ「はい」


バックミラーに映る彼女には、一週間前の憔悴など欠片も残っていない。『招待状』が生き残っていたら、きっと歯ぎしりをして悔しがっただろう
半年も掛けて追い込んだ獲物が、たった七日で元気な姿を取り戻したのだから


<またねー!!


⌒*リ´^-^リノシ「ばいばーい!!」


開けた窓から身を乗り出し、二人の姿が見えなくなるまで手を振る彼女。少しばかりスピードを緩め、悪路に入るまでの猶予を作ってやった

72 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:34:06 ID:bDiJ5Dlc0
その後、酷道を抜けて最寄りのバス停へと到着。前日に連絡は入れておいたので、乗り換えのバスは既に待機していた


⌒*リ;´ - リ「……」


唯一の乗客は見事に酔ってた。行きはヨイヨイ帰りは恐いってこれかぁ!!!!!!!


(;´・_・`)「ゲロ袋いる?」

⌒*リ;´ - リ「はい……ウッ」


アレする描写は、彼女の名誉の為省略させていただく。悪しからず。代わりに昔流行ったなんちゃらアート載せたれ



              ,, -―-、
             /     ヽ
       / ̄ ̄/  /i⌒ヽ、|    おぇーー!!!!
      /  (゜)/   / /
     /     ト、.,../ ,ー-、
    =彳      \\‘゚。、` ヽ。、o
    /          \\゚。、。、o
   /         /⌒ ヽ ヽU  o
   /         │   `ヽU ∴l
  │         │     U :l
                    |:!
                    U


汚っ。昔の人は何考えてこんなもん作ったんだ?


⌒*リ;´・-・リ「お、お目汚し失礼しました……」

(;´・_・`)「お気にならさんな。気分が優れたのならそれでい……いや置いとけってこっちで処理するから」

73 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:35:59 ID:bDiJ5Dlc0
荷物を肩代わりし、先にバスを降りて手を差し伸べる。やや遠慮気味に握り返した彼女は、これまた珍しく機嫌の良く開いたドアを抜けて道路へ降り立った


⌒*リ´・-・リ「何から何まで、本当にありがとうございました。お金まで取り戻して頂いて……」

(´・_・`)「構わねえよ。こっちも商売でやってっからな」


霊媒師共からはほぼ全額が返って来たと言っており、その内の二割を今回の成功報酬兼滞在費として頂戴した
高梨さんが『八割払います!!』って息巻いたときは銀ですら『多すぎ』とツッコミを入れていた。二割でも多い方なんだがな


⌒*リ´・-・リ「では……」

(´・_・`)「ああ」


反対車線のバス停まで、一分も掛かりはしない。荷物をお返しすると、おじいちゃん運転手がバスの扉を静かに開けた


⌒*リ´・-・リ「……」


(´・_・`)「?」


何故か彼女は乗り込もうとしなかった。まだ酔いが残っているのだろうか。一歩先が踏み出せず、躊躇っている感じがした


⌒*リ;´・-・リ「あの!!」

(´・_・`)そ「あっ、はい」

⌒*リ;´・-・リ「また……また、助けてくれますか!?私が『裏』に襲われて、心も身体も疲弊した時、温かく迎え入れてくれますか!?」


何かと、思えば


(´^_^`)・'.。゜「ブブホゥwwwwwwwwwwwww」

⌒*リ;´・-・リそ「笑った!?」


『元居た場所』に帰るのが、恐いだけかよ

74 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:38:30 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「ああ、いや失礼。不意打ちだったもんで」


運ちゃんは空気読んでドア閉めてくれた。長生きしろおじいちゃん


(´・_・`)「昔のアンタとこれからのアンタは、全くの別モンだよ。裏にせよ怪異にせよ、襲われることなんてほぼねえよ」

⌒*リ;´・-・リ「でも……」


第一印象の気弱さがぶり返してきたか。しょうがねえなこの姉ちゃんは。ちょっとエールでも送るか


(´・_・`)「アンタは招待状の猛威に半年も耐えたに留まらず、『自分の力』で奴らの包囲網を破ったんだ。生命力の持つ生き物なら誰にだって出来ることだが、容易くはない」

(´・_・`)「自信を持つんだな、高梨 莉花さんよ。これから先のクソ長ぇ人生、その場に蹲りたくなるような艱難辛苦に襲われるだろう。それでも、アンタは前を見据えて歩き出せる強さを持ってる」

(´・_・`)「『何があろうと生きるという気持ちを忘れるな』、だ。この気持ちさえ持っていれば、例え再び招待状が届こうが、俺らの手なんか借りずとも自分で乗り越えられるさ。だってよ……」


高梨さんの表情は、まだ不安の色が残っていた。だけど、少し背中を押してやるだけで


⌒*リ´^-^リ「『生きてる奴の方が、何倍も強い』。ですよね」

(´・_・`)「……その通りだ」


案外恐怖という感情は、薄まっていくものだ

75 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:40:40 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「今度は、療養じゃなくてバカンスで来な。何もねえクソ田舎だが、美味いメシと空気だけは腹いっぱい食らわせてやるよ」

⌒*リ´・-・リ「はい!!」


元気よく返事をした彼女と、別れの握手を交わす。運ちゃんは空気読んでドア開けてくれた。気配り上手だな。ええ?


⌒*リ´・-・リ「銀さんとしずくちゃんに、よろしく伝えてください。小練さんも、お身体を大切に」

(´・_・`)「そっちもな。これからの人生に、幸多からんことを」


最後に眩しい笑顔を返すと、彼女を元の世界に送り出すバスへと、力強く一歩を踏み出した。最後部座席に腰を降ろし、振り返って手を振ってくる。俺もまた、小さく手を振り返した
バスは静かにタイヤを回し、ある程度舗装された道路を進み始める。彼女に習い、その姿が見えなくなるまでその場で手を振り続けた


(´・_・`)「……」


裏の魔の手から逃れた者が、再び狙われるという事例は少なくない。その多くが、他人より優しいが故に割を食う『善き人』だからだ
きっと高梨さんも、これから先の人生で何度も躓き、挫け、転ぶのだろう。その度に、奴らの食指に狙われるのだろう
それでも、俺達は彼女が、ひいては『善き人達』が、奴らを跳ね除ける力を持っていると知っている。信じている



(´・_・`)「頑張れよ」



自然と零れ出た、たった五文字のエールは、山風に吹かれて遠くへと消えていった

76 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:41:09 ID:bDiJ5Dlc0






もしも貴方が

77 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:42:43 ID:bDiJ5Dlc0
(#´・_・`)「ハァ!?今回の報酬の半額が仲介料!?ふざけんじゃねえ店を物理的に畳むぞクソアマ!!!!!」


« 厭やわぁ、イライラして。お金の切れ目が縁の切れ目やて言うやないの。ウチのお陰でたんまり稼げたんやから、折半は当然とちゃいますのん? »



霊的で不可解な現象にお困りだったら



(,,゚-゚)「今度は鈴ねぇに言いくるめられずに済むと思う?」

イ从゚ -゚ノi、「出来ないにエビフライ一本賭けるわ」

(,,゚□゚)そ「ズルいよ銀ねぇ!!ボクもそっちがいい!!」



胡散臭い霊媒師に連絡する前に、此方へご相談を



« あらあら、ご家族にも信用のぉて肩身が狭いなぁ。パパさん? »


(#´・_・`)「だぁってろクソ京都人!!おめえら聞こえてんだぞ!!」



生意気で可愛いクソガキと


(,,゚ワ゚)「乙女のお喋りに聞き耳立ててたって……コト!?」


性悪で優しい妖怪と


イ从゚ -゚ノi、「ほんと、紳士気取りの癖にスケベよねぇ」


そしてこの俺が


(#´゚_゚`)「メシ抜きにされてぇのかァ!!!!!!!!!!!!!!!」


誠心誠意、真心込めて『駆除』します

78 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:45:40 ID:bDiJ5Dlc0





御用の方は是非、『鬼ヶ村トレーニングセンター ねぐら』へご連絡を


お相手は、小練 詩音でした。それでは―――――




.

79 ◆M0yfIGPt92:2021/10/23(土) 23:46:15 ID:bDiJ5Dlc0






『The Demon Village.』







.

80名無しさん:2021/10/24(日) 00:13:56 ID:e2x6Yf4s0
otu

81名無しさん:2021/10/24(日) 11:29:23 ID:ns8tn0YY0
おちんちん!!

82名無しさん:2021/10/24(日) 21:37:46 ID:nvDbhxEY0
おもろかった 乙

83名無しさん:2021/10/24(日) 23:07:10 ID:kyVrvfC20
うむうむ、麿はこういうの大好き貴族でおじゃる

84名無しさん:2021/10/25(月) 20:00:11 ID:4K0S9Ctk0
おつ!
これはいい活劇、やっぱ筋肉は正義だな

85名無しさん:2021/10/30(土) 19:14:31 ID:HRFodnqU0
乙!
面白かった!!

86名無しさん:2021/10/30(土) 20:43:58 ID:XxtNIEaM0

まとめサイトで読んだから曲が自動再生されたわ
職場で

87名無しさん:2021/10/30(土) 21:41:45 ID:qyUF/BDU0
わかる

88名無しさん:2021/11/06(土) 12:37:30 ID:cnJQyY8M0
少年誌の読み切りだこれ!

89名無しさん:2021/11/09(火) 19:20:48 ID:3da7n5Sk0
おつ
次の話も読みたくなる作品

90 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:46:47 ID:ZLjr42H60





















.

91 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:48:10 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「よっこらせ」


よう、俺だ。もうすぐサマーシーズン到来なんで『ねぐら』も副業が本格的に始まる。そして仗助が露伴とチンチロチンをする。今はその下準備中だ
既に幾つかの団体から宿泊予約が入っている。ありがたいね。副業はアガリを送らなくていいから助かる。なんで命懸けで稼いだ金を上にやらなくちゃならないんだろうか。早いところ物理的に潰したい


(,,゚-゚)「せんせー」

(´・_・`)「なんじゃー」

(,,゚-゚)「明後日にはグリコねぇ来るって」

(´・_・`)「はいよー」


一粒300メートルじゃない。毎年夏になると来てくれる住み込みアルバイトだ。普段は三人しかいないこの場所も、繁忙期には数十人分の食事を用意しなければならない
彼女の作る飯はバカクソ美味いので、メシ目当てのリピーターも多いのだ。何てったって彼女の先祖は小便で味噌汁を作ってたのを旦那に見つかって追い出された妖怪なのだから
妖怪って下ネタで美味いもん寄越して来るやつ結構多い。特に植物系はその傾向ある。オッサンの姿をした柿の妖怪がケツの穴ほじって舐めろとか言ってくるんだぜ?ぶっ殺そうかと思ったね


(,,~□~)=3「今年も汗臭い季節が来ると思うと辟易するよ。一人で十分だってのに」

(´・_・`)「お前それ他所のオッサンに絶対言うなよ?」

(,,゚-゚)「なんで?悦ぶから?」

(´・_・`)「傷つくからじゃい」


オッサンがみんな変態だと思うなよ


(,,゚-゚)「ボク、美少女だよ?」

(´・_・`)「だから何だよ……」


可愛いは正義じゃねえんだよ

92 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:50:01 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「ハァー……いい時間だし、ちょっと休憩にするか」

(,,゚ワ゚)「おやつ!!」

(´・_・`)「はいはい。お銀呼んで来い」

(,,゚□゚)「銀ねぇおやつーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」


幾らなんでも聞こえねえだろどんだけセミ鳴いてると思ってんだ皆鳴ミセリかよ
このアホに任せるのは諦めて迎えに行こうとした瞬間、蒸し暑さも消し飛ぶような涼し気な表情をした銀が、廊下からひょっこり顔を覗かせた


イ从゚ -゚ノi、「あら、ちょうど良かったわ」

(´・_・`)「来るじゃん……」

(,,゚ー゚) フフン


腹立つ


イ从゚ -゚ノi、「何?来ちゃ悪かったかしら?」

(´・_・`)「お迎えに上がる手間が省けて大変助かったよ。何か用があったのか?」

イ从゚ -゚ノi、「アンタ、デバイス置きっぱなしだったでしょ。メッセ来てるわよ」


投げ渡されたのは腕輪型の携帯デバイス『i-ring』だ。本業は何かと荒事が多いのと、霊障による電波ジャック等の不具合も多発する為、普段からあまり身につけていない
ホログラムで映し出されたされた通知タブには、幾つかの連絡履歴が表示されている。その内の一つは、最近まで面倒を見ていた客の一人だった


(´・_・`)「高梨さんからの近況報告だな」

(,,゚-゚)「いやらしい自撮り?」

(´・_・`)「近況報告。どれどれ……」


あれから二か月弱経ったが、招待状の類はあの日以来一枚も届いていない。毎晩枕を高くして眠っているらしい
再就職も無事に終わり、今は大手喫茶チェーンの店員として充実した毎日を送っている。街を訪れる機会があるなら、是非立ち寄って欲しいと締めくくられていた
一先ず、彼女は平穏な人生を順調に歩んでいるようで安心した。これなら、『裏』から再び狙われるなんてことも無さそうだ

93 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:51:29 ID:ZLjr42H60
イ从゚ -゚ノi、「活きが良さそうね」

(,,゚-゚)「ピッチピチだね」

(´・_・`)「『元気そう』でいいだろ何で海産物みたいな扱いになってんだ」


言葉選びが雑過ぎる


(´・_・`)「後は……あれ?」


この時期には珍しい、『副業』の客からの連絡が入っていた


イ从゚ -゚ノi、「問題?」

(´・_・`)「いや、三浦さんからだ」

イ从゚ -゚ノi、「あの人から?少し早くないかしら?」

(´・_・`)「そうだな……ちょっと、掛けなおしてくるわ」

(,,゚-゚)「おやつは?」

(´・_・`)「仕事が先」

(,,゚3゚)「なんだよぉ〜。早く済ませてよね」


唇を尖らせたしずくの頭を雑に撫でまわし、少々席を外す。i-ringを腕に嵌め、メニュー画面から受話器のアイコンを押してリダイアルする
少しの間待つと、「はい、三浦です」と落ち着いた低い声色の男性が応答した。こんな所で長い事お嬢さん二人の面倒見ながら生活していると俺以外の男の声が逆に新鮮


(´・_・`)「ご無沙汰しております。小練です。お待たせして申し訳ございません」

«いえ。此方こそ、お忙しい所お手数を取らせてしまって»

(´・_・`)「お気になさらず。今日はどういったご用件でしょうか?」

«その……大変、申し上げにくいのですが……個人的な依頼でして……»


随分と歯切れが悪いな。もしかしたら『本業』の可能性もある

94 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:52:28 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「荒事でしょうか?」

«荒……ああ、すみません。誤解させてしまって申し訳ない。そうですね、率直に申し上げましょう»


最初からそうせんかいハッキリせんオッサンやな


«若者を二名、其方で鍛え上げて欲しいのです»

(´・_・`)「若者」

«データを送ります。ご確認を」


ポップアップされた送付ファイルを開く。だいぶ個性的な顔面をしたガキ二人の、簡単なプロフィールだ


『('A`) 宇都宮 徳雄』

『( ^ω^) 内藤 文彦』


一方は二十代前半のブサイクな男。もう一方は高校生のデブと来たか。ブサイクはパッと見でもそこそこな『やり手』だが、デブは普通のデブだな
ちぐはぐな年代と体形。この二人を結びつける『スポーツ』の類は、一つしか思い浮かばない。依頼主もかつては『そいつ』で天辺を獲った猛者だ


(´・_・`)「『新入り』ですか?」

«いえ、チームとは無関係です。私も『依頼』された立場なのですが、私の指導の下で鍛えるよりもいっそ『地獄』を見せた方が伸びると判断しました»

(´・_・`)「……」


あまり好まない方法だ。獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言うが、本当に『舞台』で活躍させたいのであれば、心と身体を潰してしまうような指導、教育などあってはならない
しかし過酷な環境を経て、爆発的に成長する者がいるのもまた事実だ。現に、その『成功例』が、今もこの場所で生き残っているのだから


(´・_・`)「……それは『彼ら』も知っての上でしょうか?」

«勿論です。なんせ、掲げる目標が『ジャパンカップ初出場にして制覇』ですから»


おいこいつら相当なバカじゃねーか。気に入った

95 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:54:34 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「並大抵の地獄じゃ済みませんが、構いませんね?」

«ええ、シゴキにシゴいてやってください»


こいつは久々に腕が鳴る仕事だ。快く受けさせて頂こう


(´・_・`)「わかりました。代表は三浦さんで宜しいですか?」

«いえ、私はただの仲介役ですので……此方です」


追加で送られてきたデータを確認すると、今度は腹の立つ笑顔を浮かべるオッサンの姿


『(´^ω^`) 大潮 本八』


奇遇なことに、高梨さんが就職したというチェーン店の『元締め』だ


«期間は八月から一ケ月を希望しています。急な依頼なので、指導料については言い値で構わないそうです»

(´・_・`)「そりゃ気前が良い」

«詳細につきましては、ご都合の付く日に連絡を差し上げたいと申しておりました。いつ頃が宜しいですか?»

(´・_・`)「それでは……」


打ち合わせの段取りを簡単に済ませ、軽い挨拶を交わして通話を終えた。三浦さんも面白い依頼をしてくれたもんだ


(´・_・`)「ハハ……」


俺が鍛えたガキ共が、『チャリオッツ』最高峰の大会で優勝する。そんな光景を目の当たりにするチャンスを与えてくれたのだから

96 ◆M0yfIGPt92:2021/11/14(日) 01:55:03 ID:ZLjr42H60
<せんせー!!まだー!?


(´・_・`)「やれやれ……」


妹分に急かされ、お嬢様方のお茶の用意をしに戻る。窓の外では、相変わらずセミ共がミンミンと喧しかったが
俺の中で膨れ上がる期待感を体言しているようで、いつもより少しばかり耳触りは良かった




今年もまた『熱い夏』が、始まったのだった―――――




.

97 ◆L6OaR8HKlk:2021/11/14(日) 01:56:19 ID:ZLjr42H60






Desperado Chariots × The Demon Village.






2022年 公開予定

98名無しさん:2021/11/14(日) 02:07:49 ID:3zzIDFCk0
きたわね

99 ◆L6OaR8HKlk:2021/11/14(日) 02:19:03 ID:ZLjr42H60
お疲れさまでした。ハロウィンライスちゃんに幾ら使いましたか?僕は十連でクリークと一緒に来てくれました
鬱も猟奇も書けないし音楽モチーフの話が思い浮かばなかったんでやりたいことを優先した結果がご覧の有様だよビックリだわ
元々現行の第二部で登場させようと思ってたキャラクター達で、宿泊施設管理の裏でこういうことやってますよってのを祭の場を借りて紹介出来たのは良かったです
2121年の話なのにしずくのネタが妙に古いのもちゃんと理由があるんでそこまでは頑張って書こうと思います。それから先は知らん。勝手にして

100名無しさん:2021/11/17(水) 16:44:25 ID:/SoSN3TA0
面白くなってきたじゃねーの

101名無しさん:2021/11/17(水) 20:19:22 ID:pMe9y2yA0
無限にワクワクさせやがって

102名無しさん:2021/11/17(水) 22:03:42 ID:XzAZnxZE0
やったぜ楽しみ

103名無しさん:2022/01/28(金) 12:28:18 ID:XdRgOtbI0
今日これ見つけて読んだけどめちゃくちゃ面白いな!

104 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 00:17:37 ID:HcLXXAEI0



https://www.youtube.com/watch?v=H4dGpz6cnHo



.

105 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 09:47:23 ID:HcLXXAEI0
ご覧の映像をご存知だろうか。百年ほど前に流行したクリーピー・パスタ、『バックルーム』だ。え?ナートゥかと思った?頭インドか?
当時若干十七歳だった『Kane Pixel』というクリエイターが制作した動画は、瞬く間にインターネット・ミームとして流行し、有志によって世界観は拡張していった
クソ人間共の夏至祭を描いたホラー映画『ミッドサマー』を手掛けたスタジオによって、Kane氏を監督に据えた映画まで公開された
まぁ流行ってもんは廃り行くもんだ。百年も経過すりゃあ、膨大なインターネットの世界の片隅で忘れ去られているファウンド・フッテージの一つに成り下がっちまうのも頷けるだろうよ


だが俺らの界隈では、この『バックルーム』はある危険地帯と酷似していることで知られていた。その名も、『狭間』という


さて、ここで前回のおさらいと行こうか。『裏』の話をしたのを覚えてるか?疲弊した人間を怪奇現象で更に弱らせ、『命』を喰らう為に自らの世界へ引きずり込む恥知らずのクソ共だ
俺らがいる世界を『表』として、向こうの世界は『裏』。その二つの世界の中間を、『狭間』と呼ぶ。イメージとしてはトンネルが近いだろうか
『裏』が俺らのいる側に現れる際、必ず『境界』を通って現れる。メジャーな出入り口はドアや窓、鑑に水面。ちょっと大きいもんで『階段』も該当するな
俺ら人間が境界を通じて『裏側の世界』に侵入する方法は二つある。一つは、『裏』に連れ去られてしまった時。こうなったら後は向こうで食われて終いだから、侵入とは言い難いかな?
もう一つが、境界から『狭間』を経由し、そこから更に裏への入り口を探る方法だ

106 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 09:59:36 ID:HcLXXAEI0
そもそも、狭間ってのは何か

端的に言い表すなら『表の要素を取り入れた裏の性質を持つ世界』だろうか。最も色濃く影響を受けているのは建造物だ
狭間に侵入した奴を最初に迎え入れるのは、先ほどの映像のように広大に広がる室内だ。但し、映像のように黄色いカーペットや壁紙の無機質な世界が広がってるとは限らない
例えば、キミがショッピングモールから狭間に侵入したとしよう。エレベーターのドアが開いた瞬間に、突き当りが見えないほどの広い広い専門店街がお出迎えだ
利用客も店員も、人っ子一人いない空間。穏やかだが延々とループする店内BGM、一昔前の精度の低いAIが生成したような支離滅裂な言語の店名に、袖口が『二つ以上』ある前衛的な衣服を展示する膨大な数のマネキン

このように、元居た場所と類似する『階層』に飛ばされるというワケだ
ああ、心配すんな。こんなの街中で頻繁に起こって堪るかよ。そりゃ、一部の層は喜ぶかもしれねえが、大体の被害者は発狂間違いなしだ
強いて起こりやすい場所と言えば……いや、やめとこう。好奇心旺盛なバカの面倒なんざ見たくねえからな
あえて一つ挙げるとすれば、皆さんのご想像通り、『ウチ』がそうだ。怪異が発生しやすい環境下では、狭間との繋がりが発生しやすい
『ねぐら』の宿泊部屋に置いてある注意事項に目を通したか?目敏い奴なら、『三階への立ち入り禁止』に首を傾げた事だろう
1シーズンに1、2回、狭間への入り口が『階段』として現れる。殆どがほんの数秒、そして目撃者がいないタイミングで発生する

『入り口』自体に、人間を惑わす異能はない。ただ現れ、時間が経てば消えるだけの『蜃気楼』のようなものだ
ただ人には、高い知能と強い好奇心を持つ『ヒト』という種には、恐怖やスリルを求める欲がある
入り口に異能は無い。『必要が無い』。本来存在し得ない物が『そこにあること』こそ、獲物を誘う最大の『餌』として機能するからだ
誘い込んだ者を、腹の中にある広大な迷宮で彷徨わせる為に


好奇心を刺激するだけの異能なら、そこまで迷惑なもんでも無かったのだが

107 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:01:02 ID:HcLXXAEI0
狭間は常に表と裏の情報を取り込み、アップデートして広がっていく世界だ。それは一重に建造物のみならず、ヒトの習慣や趣向なども取り込んでいく
生きる為ではなく、舌を楽しませる為だけに食べるお菓子
子孫を残す為ではなく、ただ快楽を得たいが為に行うセックス
賃金にならないと知っても、ゲームや読書や映像視聴に費やす膨大な時間
健康リスクを承知の上で嗜む酒やタバコ。体温の保持、引いては生命維持には全く役に立たない装飾品

ヒトは他のどの生命体にも追随を許さぬ程に『無駄』を楽しむことに長けている
ではこの『無駄』を、ヒトの手に余る超常の存在に真似されたらどうなるか。想像に難くない筈だ

食べもしないのに羽虫の手足を千切るかの如く
ペットの命の責任を最期まで全うせず捨て去るかの如く
加工され尽くした果てに、期限が切れたという理由で廃棄される家畜の肉の如く


『楽しい』『美味しい』『可愛い』『面白い』『気持ち良い』


無駄を楽しむ為に、『入り口』は本来必要のない『異能』を用いて、積極的に獲物を攫うのだ


さて、貴方が万が一、この悪意無き害意の標的となり、まんまと『入り口』を潜ってしまったら?
途方も無い広大な迷宮に、着の身着のまま足を踏み入れてしまったら?


そこは霧中よりも濃く、暗闇よりも先が見えないリミナルスペース
奇妙奇天烈、鬼ヶ村の七不思議が一つ、『立ち入り禁止の三階』



これは、狭間と『狭間に関わる人間』が引き起こした、実に傍迷惑な話―――――

108 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:01:27 ID:HcLXXAEI0




『狭間 “In The Backrooms.”』



.

109 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:02:16 ID:HcLXXAEI0
『神隠し』。某アニメ映画でその言葉は爆発的に知れ渡った
不運な災害、事故。悪意ある第三者による犯罪。あるいは神秘、怪異による超常現象。そのいずれかに該当する失踪を指す
表に出ている神隠しの多くは、残念ながら未解決として処理されている。その殆どが、超常の関わらない人為的な失踪や誘拐、拉致事件だ
何故そんな事がわかるのかって?そりゃあお前、神や物の怪が関わってんのなら、『俺ら』の仕事の範疇だからさ


(´・_・`)「っつーワケで頼むわ」

《アンタなぁ……ウチかて暇や無いんやで?》


『人探し』の達人は、渋い声で返答した。平日真っ昼間に他所のヘルプを頼まれて、良い顔する奴なんていないのは承知だが、こっちも同じく無駄な時間を使えないのだ
銀が『狭間』の発生を探知して一分も経たないうちに、速攻で利用客が四人も飲み込まれている。ねぐらから通じる狭間の階層は危険度こそ低いが、一度迷い込んでしまうと、俺みたいな異能無しが捜索するには骨が折れる


《センセがこの時期忙しいのも知っとるけど、ウチの店かて営業時間中なんやで?そんな中で助っ人頼みたいって、なんぼ何でも道理が通らんとちゃいますん?》


口では嫌がっていても、内心ウキウキで算盤を弾いているのが透けて見えている。手痛い出費だが、幾らか小遣いは渡さねばならない

110 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:02:54 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「3」

《8》

(´・_・`)「吹っかけすぎだ。3.1」

《そういうアンタは刻み過ぎや》

(´・_・`)「じゃあ昼飯付きで4」

《6。それとタマ代もそっち持ち》

(´・_・`)「デザートも付けて5」

《次回の委託料も半額。それで手打ちや》

(´・_・`)「他の奴に頼むわ」

《わかったわかった。それで堪忍したる》


オマケ付けて実質10の取引は幾ら何でも割に合わない。元々5が手打ちラインだろう。欲張ると何も手に入らないのは二羽の兎を追っかけた名も知らぬバカが証明している


《たまには気前ええとこ見せて欲しいもんやわぁ》

(´・_・`)「生憎、遠慮を知らねえ奴に開く財布は持ち合わせてねえんでな。カフェオレには此方から話を通しておく。後でな」

《ちゃあんとおべんと持ってきてや》


通話を終え、時間を確認する。13時を半分回ったほど。狭間の出現から十五分が経過している
遭難の救出は早ければ早いほど良いに決まっているが、何事も下準備は必要だ
先方には銀が既に連絡を取っている。差し入れ兼報酬の一部である弁当も、先立ってグリコとしずくに急ピッチで作らせている
こっちは昼メシ食い損ねたってのに、どうして他人のメシの面倒見なきゃいけねえんだろうか?


(´・_・`)「ハァー……」


愚痴と溜息が問題を解決してくれるなら、楽に終わってくれるんだがな

111 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:04:19 ID:HcLXXAEI0
手早く準備を整えた後、件の現場である宿舎の二階階段前へと足を運ぶと、しずく以外の従業員は既に集まっていた
銀は俺の姿を確認すると、通話中のi-ringに到着報告を行い、通話を切る


イ从゚ -゚ノi、「すぐに開けてくれるそうよ」

(´・_・`)「あいよ」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「はぁい、これお弁当」


風呂敷に包まれた、ざっと三十人前の即席弁当。仕込み途中だった夕飯のメニューから幾らか拝借したにせよ、十五分そこらで作り上げるのは中々至難の業だ
夏季限定の住み込みバイトである妖怪『蛤女房』の『浜崎ぐりこ』。性癖を犠牲に抜群の料理の腕を得た変態には、毎年不本意ながら助けられている


ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「食べてる所を動画で撮っといてくださいねぇ」

(´・_・`)「そんな暇ねえよ。しずくどうした?」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「疲れたから昼寝するってぇ」


いつもなら『連れてけ連れてけ』と喧しいあいつにしては珍しく、今回の騒動には関心が薄い
まぁ恐らく、向こうに消えた連中がどうなろうと知ったこっちゃ無いんだろう。行方不明の責任誰が被ると思ってんだ


イ从゚ -゚ノi、「鈴は?」

(´・_・`)「来てくれるってよ。タマ別5だ」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「言い方ぁ〜……」

イ从゚ -゚ノi、「随分手加減してくれたのね」

(´・_・`)「高梨さんの件もあるしな……開いたか」


目を離した隙に、音もなく現れる踊り場と昇り階段。異界の扉なんてもんは仰々しく開いたりなどしない
あたかも、『最初からそこに在った』かのように、しれっと登場するもんだ


(´・_・`)「じゃ、行ってきます」

イ从゚ -゚ノi、「あの子に宜しく」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「行ってらっしゃ〜い」

112 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:07:13 ID:HcLXXAEI0
僅かな軋み音を立てる階段を、ちょうど13段。踊り場を挟んでもう13段
何の変哲も無い計26段を昇り切れば、既にそこは勝手知ったる我が家では無い


(´・_・`)「さて……」


古来より『異世界』への入口は多岐に渡って知られている
兎を追っ掛けて穴に落ち、不思議の国へと迷い込む少女もいれば
助けた亀に連れられて、海深くの竜宮城へと招待される心優しき若者もいる
交通事故がトリガーとなる異世界転生モノなんざ掃いて捨てるほどある
『此方』から『彼方』へと通行する感覚、実感が、物語の主人公達にあったかは知らないが少なくとも


(;´・_・`)「だっりぃ〜……」


先が見えないほど長ぁい廊下に、等間隔で並ぶ引き戸と教室。羽音にも似た蛍光灯の音を前に、辟易する事ぁ無かっただろう
今しがた俺が踏み入れたこの場所こそ、ねぐらの立ち入り禁止区域。『狭間』の第三階層だ
あんまりにもダルすぎて自室でカバの赤ちゃんの歯生えてない口の中ナデナデする動画見たくなってきた


(´・_・`)「えーと……」


狭間は梅田地下街ほど親切じゃ無い。道案内アプリもなけりゃ、アンドロイドコンシェルジュもいない
今や時代遅れも遅れのタッチパネル式フロアマップすら置いちゃくれてねえ
適当に走り回っちまえば、あっという間に迷子一直線だ。そうなりゃ悲惨な最期は免れない。餓死で済めば御の字だ
そうならない為に、先駆者は狭間に『印』をつけている。チェスや将棋の盤面の如く、『A15』といった具合にな


(´・_・`)「ここだな」


印から現在地を割り出してしまえば、第三階層の調査本部までの道順も自ずと掴める
侵入してから三つ目の教室。この場所から十分ほど歩けば到着する筈だ。確か。そうだった筈だ


(´・_・`)「どうにでもなぁれ」


まぁ迷った時はそん時よと引き戸に手をかける

113 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:08:23 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「……」


戸をガラリと開けた瞬間、全身に突き刺さる数多の視線。ここが『普通の学校』であるなら、別に変わった事じゃあない
ご存知の通り『視線』ってのは目から放たれる。『目』で『見る』だけで送り込める。『目』だけあれば完結する行為なのだ


(´・_・`)「わぁ」


壁、床、天井。黒板や椅子や机に至るまで。教室一面に張り巡らされた数多くの、少しヤな言い方をすりゃあ夥しい目の集合体。蓮コラかな?
殺風景さとは程遠い、まるで臓物を派手に撒き散らしたかのような生々しさを感じてしまう。細やかに揺らぐ灰色の瞳と瞬きが、それらが作り物では無いと謳っている


(´・_・`)「……」


大の男ですら腰を抜かすどころかクソ漏らして泡吹いてぶっ倒れるくらいの光景を前に「わぁ」で済ませられたのには勿論ワケがある
教室の中央で、ただ一つだけ人の形をしているモンが、着席して頬杖を着き、不満げな表情で此方を見ている
桜紋様の着物とミドルブーツを合わせた大正ロマンスタイルな和装。髪は後頭部に纏めて飾り玉かんざしで留めてある
学習机からはみ出した脚は、女性にしては高い背丈の証明となった
そして何より彼女の瞳は、室内を覆う目と全く同じ色をしていた


(´・_・`)「残念だが、今日は俺一人だ」


助力を依頼した『同業者』は、つまらなそうに溜息を吐き、左手首の腕時計をトンと指で叩いた



/ ゚、。 /「『時は金なり』。ウチの貴重な時間、随分安く見積られはるんやなぁ。センセ?」



彼女こそ、京都は八坂通に店を構えるアンティークショップ『大桜堂』の若女将。『大桜堂 鈴』である

114 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:09:35 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「イタズラを仕掛ける余裕があるなら、そう高いもんでもなさそうだな。ガッカリしたか?オッサン一人で」

/ ゚、。 /「せっかく人が『格安』で手助けしたるってのに、癒しの一つや二つくらい提供してくれてもバチは当たらんのとちゃいます?」

(´・_・`)「ドッキリに毎度付き合わされるしずくの身にもなれ。悪趣味だぞ」


苦言を呈すと、目の群れは一斉に瞼を閉じ、壁や床と一体化するように消える
なんと言うことでしょう。蓮コラのようだった教室が、元の古臭い木造建築へと生まれ変わったではありませんかって感じ。劇的


/ ゚、。 /「人聞きが悪いなぁ。可愛い子を隅々まで眺めとるだけや」

(´・_・`)「それが悪趣味だっつってんだよ。目目連の名が泣くぞ」

/ ゚、。 /「なぁにをほざいとるんやら。これがウチらの正しい在り方どすえ?」


『壁に耳あり障子に目あり』。誰がどこで何を見聞きしているかわからない。だから発言や行動には気を遣えという古い諺だ
その、『障子に目あり』を体現した妖怪がいる。名を『目目連』という
出自や出典は省くが、障子に無数の目を浮かび上がらせて驚かせるといった、比較的害の無い妖怪だ。せやろか?まぁまぁ怖いんとちゃうやろか?
彼女はその目目連の血を引く半妖であり、今のように自身の『目』を発現し、視界を拡張する異能を持つ
人の知覚は八割を『視覚』が占めているという。彼女が人探しの達人たる所以であった

115 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:11:21 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「で、貴重な時間とやらを無駄にしてまで俺の到着を待ってた理由は?」

/ ゚、。 /「外」


俺が入ってきた戸とは反対方向を顎で差す。磨りガラス窓の向こう側で、明らかに人の姿では無いモノの影がゆっくりと蠢いた
バックルームに『エンティティ』という異形がいるように、狭間にも同じような化け物が存在する。此方では『ワンダー』(Wander)と呼ぶ。意味?インターネットさんに訊け
表世界の怪異と同じように、敵対種、中立種、友好種と分けられるが、その割合は敵対種に大きく傾く。狭間で異形に出会ったならば、ほぼ確定で襲い掛かってくるものと考えた方が良い


(;´・_・`)「アレくらいどうにかせぇよ……」

/ ゚、。 /「誰も彼もセンセみたいに武闘派やないねん。はよどかしてきて」


待ってりゃどっか行きそうなもんだが、その時間すら惜しい
かと言って手前で対処するのは面倒な上に金にならない。そんなとこだろう


(;´・_・`)「ハァー……持ってろ」

/ ゚、。*/「ぐりちゃんのご飯!!」


重箱の包みを手渡すと、花が開くように表情が綻ぶ。現金な奴だ。俺の周りの女こんなんしかいない
さて、時間が惜しいのは此方も同じだ。サッサと『徘徊者』を追い払ってしまおう


(´・_・`)「おーら……」


手近にあった椅子を掴んで振りかぶり


(´・_・`)「よっと」


投げる。薄い窓ガラスを容易く突き破り、廊下の影へと激突する
雑魚なら少し脅せば尻尾巻いて逃げるが―――――


[まぁああああああああああああぁぁぁーーーーーー]


残念。どうやら一度も怖い目に遭ったことがないワンダーのようだ

116 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:12:07 ID:HcLXXAEI0
体高は1.5メートル体高3〜4メートル。形状は上半身を起こしたナメクジのような姿。全身は白で統一され、ボンドのように粘り気のある液体で構成されている
そしてその全身には、美術の時間に使うスケッチ用の石膏像が、苦悶の表情を浮かべて散りばめられていた


(;´・_・`)「うわ『ダビデ』じゃん……」

/ ゚、。 /「ウチには手に余るやろ?」

(;´・_・`)「別にそんなこと無い」

/ ゚、。 /「はよして」


ワンダー『ダビデ』。全身が『ダイラタンシー液』で構成された、ノロマだが危険な異形だ
狭間への遭難者を発見すると、一定のペースで追いかけ続け、困憊状態になった獲物を自身の体内に取り込んで『コレクション』する
全身に浮かび上がる石膏像は、哀れな犠牲者のなれの果てってワケだ。くわばらくわばら


(´・_・`)「あーん……いけっかな……」


ダイラタンシー液はご存知だろうか?子供向けサイエンス番組かなんかでご覧になった方も多いだろう
粒子を含むトロトロした液体に、強い衝撃を加えると一瞬だけ固体化する不思議な物質の事だ
つまりダビデは、液体の柔軟性と固体の硬質を併せ持つ厄介な化け物だ
手を突っ込もうもんなら沼のようにズブズブと引き摺り込まれ、かと言って殴れば拳を痛める始末。鈴がめんどくさがるのも頷ける


[まぁああああああああああああぁぁぁーーーーーー]


ダビデは割れた窓に半液状の身体を乗せ、ゆっくりと教室へと侵入してくる。木造の壁がパキと乾いた音を鳴らし、奴の重みを伝えてきた
通常の対処法は主に三つだ。一つ目は『逃げる』。ただし、第三階層内では距離は離せても完全には撒けない
ダビデは無生物らしき見た目とは裏腹に、嗅覚に頼った探知を行う。特に、狭間の外部から迷い込んだ異臭には『鼻聡く』反応する
相応の準備か、長く狭間で過ごして外部の臭いを消してしまえば盲目も同然だが、ほぼハプニングで迷い込んでしまう素人にはそんな事はわかりはしない
二つ目からは攻撃手段。『燃やす』。説明しなくても理解は出来るだろうが、目の前のサイズレベルとなると、どデカいバーナーが必要になる
三つ目は『砕く』。衝撃に対して効果する特性を利用し、半液状の身体をバラバラにして内部の核を剥き出しにする
これもまた、サイズが大きければ大きいほど、必要な衝撃も増えていく

と、対処法がわかっていても、何の装備も持たない一般人なら、出会った段階でほぼ詰みだ。では、『化け物退治のエキスパート』なら、どういった対応をするか?

117 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:14:01 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「よっ」


ダビデの身体にあえて手を突っ込んで


(´・_・`)「≪流≫(ながし)」


奴らの弱点である『生命力』を注ぎ込む。すると


[まぁああああああああああああぁぁぁーーーーーー………]


内部から沸騰したかのようにボコボコと泡が噴き出し、身悶えた後―――――


[まぁああああああぁぁぁ…………]


気の抜けた断末魔を上げながら、ドロドロに溶けていく。これで、ダビデの処理は完了だ


(;´・_・`)「あー、しんど……」

/ ゚、。 /「相変わらずバケモンやなぁ。ウチの従業員なら今のやり方で二、三日は足腰立たんなるで」

(;´・_・`)「鍛え方が足りねえんじゃねえの?」

 
因みに、この方法でのダビデ処理は『非推奨』とされている。理由は攻撃による対処法②、③と同じく、サイズと比例して生命力の必要量も増えるからだ
生命力の使用は寿命を著しく減らすものではないが、体力は大いに消耗する。疲れたらぶっ倒れるのは生物の常だ
ダイラタンシー液に腕を突っ込んだ状態でぶっ倒れたらどうなるか。想像に難くない。ぶっちゃけ俺以外にこの方法で倒す奴見たことない。そんなザコの皆に言いたいことがある


(;´・_・`)「鍛え方が足りねえんじゃねえの?」


/ ゚、。 /「はよ行くで」

118 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:14:41 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



狭間管理局『カフェオレ』。『表』と『裏』が混ざり合った『狭間』という世界を言い表すには、少々美味しそうな名前だ。お砂糖入れてホットでね。美味しいよね
階層にもよるが、狭間に調査本部を置き、複数人が常駐してフロアマッピングやワンダーの生態調査、遭難者の捜索、保護を行っている
狭間は危険が多いが、利便性もある。特筆すべきは、『表』と狭間を行き来することで生じる『空間の歪み』だ
小難しい話は省くが、俺が鬼ヶ村から、鈴が京都から第三階層へと侵入し、物の数分で合流出来たように、狭間は一種のワームホールとして機能する。ちょっとばかし危険の多いどこでもドアってとこか
カフェオレは狭間の有効活用法を調査し、実践する特殊な研究機関なのだ。となれば当然―――――


( ・`ー・´)「やぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!僕はこの第三階層の王たる調査主任のまさしさ!!!!!!!!!!!」

( ・`ー・´)「平服して僕の素晴らしさを二時間くらい、語彙の限り語り尽くすが良いよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


( ・`ー・´) + キリッ


こういう変なのもいる


(´・_・`)「弁当、差し入れ」

( ・`ー・´)「サンキューマスター小練!!!!!!!!!!!!!!貢物に免じて今のノルマは免除だ!!!!!!!!!!!!!」

/ ゚、。 /「うるさ。お茶淹れて貰える?」

( ・`ー・´)「おっと!!!!!!!!!!!!!!!僕を顎で扱おうなんてとんだお転婆さんだ!!!!!!!!!しかし麗しき鈴嬢の頼み、霊長類の長たる僕には無下に出来ないね!!!!!!!!!!!!!」


( ・`ー・´) + キリッ コポポポポポポ


見ての通り悪い奴じゃない

119 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:16:33 ID:HcLXXAEI0
教室を四つ分、壁を乱暴にぶち抜いて設置された第三階層調査本部では、まさしの部下の面々が、普段以上に目まぐるしく働いている
俺が遭難者の通報を入れて直ぐに捜索は開始されているようだ。彼らの情報に鈴の『目』を加えれば、見つけるのにそう難儀はしないだろう


( ・`ー・´)「では早速ブリーフィングだ!!!!!!!!!!!!!チミ!!!!!!!!!!!ンマァップを頼む!!!!!!!!!!」


職員の一人が運んできたマットタイプの液晶マップをテーブルの上に広げる。鈴は弁当を開けた


( ・`ー・´)「現在地がここだね!!!!!!!!!!!!!そして侵入反応があったのは〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜????????????????????デケデケデケデケデケ……」


調査本部を表す青丸を中心に、比較的安全な地帯を緑の円が囲み、それよりも二回りほど大きく『まぁまぁ危険』を表す黄色の円
そこから一度スワイプすると、『わ゙ぁー危ない』レベルの赤色の円。そこより外は、マッピングされていない漆黒地帯が包み込む。文彦らが踏み入ったのは―――――


( ・`ー・´)「デン!!!!!!!!!!!!!!!!!ここ!!!!!!!!!!!!!!」


黄色の円の縁ギリッギリの所だった。まぁまぁ詰んだ


(;´・_・`)「まぁまぁ終わった……」

( ・`ー・´)「そう悲観するものでは無いよ!!!!!!!!!!!!!!マスター小練!!!!!!!!!!!!第三階層の危険度は比較的低め!!!!!!!!!!!!逃げ足と体力さえあれば一、二時間程度なら生き残れるさ!!!!!!!!!」

(;´・_・`)「終わった………………」

( ・`ー・´)そ「あれ!!!!!!!!!!!!???????????ねぐらは今のシーズン、スポーツマンばっかじゃないのかい!!!!!!!!!!!???????????」

(;´・_・`)「オタクデブ………………………」

( ・`ー・´)「急いだ方がいいね。めっちゃ急いだ方がいい」


マジトーンになるくらいヤバいってことがおわかりいただけただろうか

120 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:17:18 ID:HcLXXAEI0
( ・`ー・´)「では確認から入ろうか!!!!!!!!!!!!!!!今回も装備は自前かい!!!!!!!!!!!???????????提出をお願いするよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

(´・_・`)「ほい」

/ ゚、。 /「フォイ」


俺は捜索用の装備が入ったバッグと、腰のホルスターに差し込んでいた得物を職員へと渡す。鈴は袖から色々出した(飴ちゃんとか)
今回、俺が持ってきた得物は『斧』だ。前回の『矛』のように《流》に反応して伸縮する特殊な代物ではない。拾ったやつだ。血とかついてた気がする
第三階層は学校という特性上、どこまでも『室内』が続いている。長物を扱うには少々窮屈だ
そして鈴が弁当モグモグしながら袖から取り出したのは、『S&W M10』。アンティークショップを営んでるだけあってごっつ古い銃だ。ここは銃社会アメリカじゃなくて日本なんだわ
まさしは斧の柄と拳銃のグリップにリング状の発信機を取り付け、各々へと返した


( ・`ー・´)「外部からの持ち込み品は一つ残らず持ち帰ること!!!!!!!!!!!!!!!!!!タバコのポイ捨てやガムの吐き捨ても認められないよ!!!!!!!!!鈴嬢は必ず薬莢を持ち帰るように!!!!!!!!!狭間探索の基本は『来た時よりも綺麗に』だ!!!!!!!!!!!!」

/ ゚、。 /「フォイ」


鈴は聞いてるのか聞いていないのか、弁当から目を逸らさず生返事で答えた
狭間での持ち物の紛失、特に銃器の類はワンダーに大きな『武器』を与えかねない
狭間は『学習する空間』だ。表から持って来たアイテムなど、連中にとっては教材と代わりない
なので、殺傷力のある武器に関しては、持ち主から一定距離離れるとブザーが鳴る発信機を取り付けるのだ
これは紛失を防ぐのは勿論だが、ワンダーを呼び寄せるリスクを敢えて科す事で、緊張感を高める効果も期待できる
また、万が一紛失した際も、一定の距離ならi-ringのアプリケーションで居場所を特定する事が出来る。俺はこの機能でワイヤレスイヤホンしか探してない


( ・`ー・´)「レンタルは必要かい!!!!!!?????」

(´・_・`)「『ロバ』を二台頼む」

( ・`ー・´)「よしきた!!!!!!!!!!!!!キミ!!!!!!!!!用意してやってくれ!!!!!!!!!!」


『ロバ』。主に災害現場で活躍する四脚輸送機の通称だ
卵型の胴体に、奇蹄目の脚が四本備わっているこのロボットは、表世界では残念ながら実用化されなかった悲しき存在だ
車輪式の自動輸送機との差別化を図り、段差や瓦礫を乗り越える為の脚だが、泥濘との相性と乗り心地が最悪であり、要救護者を運ぶには『思いやり』に欠ける代物だった
しかし捨てる神あれば拾う神ありとも言う。カフェオレは頓挫した『ロバ』のライセンスを格安で買い取り、狭間探索のお供として実用化させた
行きは後ろを付いてくる、運ぶ労力がいらない荷物持ちとして。帰りは要救護者を乗せ、帰巣プログラムに則って自動的に本部へと戻る移動担架として
表舞台で陽の目を浴びなかったポンコツは、便利なお助けロボットとして狭間で活躍しているのだ

121 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:19:56 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「最近変わった事はあるか?」

( ・`ー・´)「二キロ痩せたよ!!!!!!!!!!!!」

(´・_・`)「そうか。よく食って寝ろ。狭間については?」

( ・`ー・´)「最近、階層間の境界がユルユルだね!!!!!!!!別階層のワンダーが紛れ込んで来たりもするよ!!!!!!!!」

(´・_・`)「つまりあんまり……」

( ・`ー・´)「いい状況とは言えないね!!!!!!!!!!!!!生態系が狂う可能性もある!!!!!!!!!!!!」


外来種が在来種を食い荒らす例は、御多分に洩れず狭間でも発生する
性質の異なる階層から境界を通って別の階層へと移ったワンダーが繁殖し、新たな棲家を住みやすい環境へと書き換える事だってある
特に植物、菌糸、虫タイプのワンダーの繁殖、環境への干渉能力は凄まじく、侵入を確認した際には入念に駆除を行わねばならない


( ・`ー・´)「今のところ繁殖能力の低い、もしくは皆無のワンダーしか確認されてないが!!!!!!!!!!!もしヤバそうなヤツがいたら出来るだけ多く殺していってくれ!!!!!!!!!!!!第六階層のワンダーは特に念入りに頼むよ!!!!!!!!!!!!!!!」

(´・_・`)「押忍」


第六階層の環境は『密林』だったか。まさにさっき挙げたワンダーの宝庫とも言える
狭間の階層は現実世界の建築物とは異なり『地続き』では無い為、階層間の移動に遠近の概念はない
『学校』の階段を上がれば、『スーパーマーケット』に行き着く事もあれば、下った先に『火山口』が待ち構えている事もある
現状、第六階層に限らず、数多の階層から厄介なワンダーが流れ着く可能性が高いのだ

122 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:20:19 ID:HcLXXAEI0
( ・`ー・´)「現在、カフェオレ側でも捜索兼駆除隊を巡回させている!!!!!!!!!!!!キミらの手に負えないほど広範囲に拡散している外来ワンダーを見かけたら連絡してくれ!!!!!!!!!!」


そう言って投げ渡されたのはチョーカーとブレスレットだ。チョーカーには黒色の、ブレスレットには八色分の小さなプラスチック球が付いており、中には羽虫が入っている
この虫が、『やまびこ』の一種だと言っても信じては貰えないだろう。これは、電波を用いない通信用小型妖虫だ
チョーカーは『のどびこ』と言い、玉を喉に押し当てながら話すと、鈴虫のように翅を擦り合わせ、独自の波長を放つ
それをブレスレットの『ききびこ』が拾い、骨伝導で鼓膜へと伝える。電気や衛星が不要のエコロジーな通信機だ
のどびこ一匹に対し、ききびこを複数匹持ち歩く理由だが、簡単に言ってしまえば『周波数』や『チャンネル』のようなものだ。それぞれが装備した『のどびこ』の波長ごとに、それを受け取る『ききびこ』を持つ必要がある
メリットは、裏や敵対怪異の電波障害の影響を受けない事。衛星や基地局のない狭間などの異空間での通話手段となる事
デメリットは、波長は『音速』より速く飛ばない為、通話に大幅なラグが発生する事。遠距離での通話時は兄弟虫の『つぐびこ』で中継を行わなければならない
それに加え、雑音が大きい場所では波長が掻き消されてしまう。幸いにも第三階層は基本的に静かな環境の為、問題なく使用が出来る
そして何より、妖虫と言えど生命体の為、飼育を行なう必要がある。長時間連れ回していると、ポックリと死んでいただなんて事例も珍しくは無い。だから投げて渡すんじゃねえ生き物入ってんだぞ


(´・_・`)「テストテスト」


試しに、俺の『のどびこ』で鈴へと通話を試みる


/ ゚、。 /「ん」


感度良好らしく、箸を持つ手でオッケーサインを作った

123 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:21:42 ID:HcLXXAEI0
( ・`ー・´)「聞くまでも無いと思うがルートは……!!!!!!!!!!!????????」

(´・_・`)「最短で」

( ・`ー・´)「ではE-6経由ルートで行こう!!!!!!!!!途中、『ビッグフェイス』と『バンクシー』の巣を通るが問題は!!!!!!!!??????」

(´・_・`)「無い。後片付けだけ頼む」

( ・`ー・´)「おっほほほぉう!!!!!!!!!!いやはや!!!!!!!!やはりマスター小練は頼りになる!!!!!!!!!!!!暫く探索が捗りそうだ!!!!!!!!!!!!」


これを機に階層内の面倒なワンダーを一掃させようって魂胆を隠そうともしない辺り、狭間の管理者たる所以が伺える
カフェオレの職員のほとんどは訓練を受けども常人だ。銀や鈴のように妖怪の血を引いてる者は数えるほどしかいない。ワンダーなんて遭遇したら逃げるのが定石で、退治など相応の人手と覚悟とコストが必須だ
その厄介モノの駆除を外部の人間に、それも怪異退治のプロフェッショナルに、遭難者の捜索を手伝うだけで気軽に任せられるのだ。濡れ手に粟と言う他無いだろう


  「小練さん、お待たせしました」

(´・_・`)「ああ、どうも」


見計らったかのように『ロバ』もちょうど到着した。i-ringの専用アプリと紐付けし、追随するよう設定する
これ以上余計な仕事を増やされる前に出発したいところだが……


(´・_・`)「……」

/ ゚、。 /「んー」


飯食い終わるまでここを動かんという断固たる決意を感じる。ダンコ桜木って感じだった

124 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:24:25 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



/ ゚、。 /「随分と生き急いではるんやなぁ。センセ」

(´・_・`)「あのタイミングで飯食い始める方が可笑しい」


折角のランチタイムだったが、強制的に切り上げさせて出発した
まだ半分ほど残っていた弁当がよほど名残惜しいのだろうか。先程からブツクサと文句が止まらない
ゴキゲンなミュージックとは程遠いが、広大かつ複雑怪奇な空間で聞く分には、気晴らし程度には機能した


/ ゚、。 /「そもそも、本部のお膝元である御三家の副長を、体の良いバイト扱いするのもどうかと思いますえ?何度も言うけど、本来ならウチの方が立場としてはエラいんやからな?」

(´・_・`)「初出の情報を出してくるなよ説明が面倒臭えんだよ」

/ ゚、。 /「誰に向けて?」


立場については別に何も関係ないから今回は割愛する


(´・_・`)「あんまり立場を振りかざすな。友達失くすぞ?」

/ ゚、。 /「立場で靡かへんモンに振り翳したところで暖簾に腕押しや。ホンマ可愛くないオトコやなぁ」

(´・_・`)「別にキティちゃんと張り合う気はねぇからな」



無駄口を叩き合うが、鈴の異能はしっかりと機能している。八方に10メートル間隔で目目連の目を展開し、曲がり角や壁裏の死角までカバー済みだ
現実世界でもそうだが、やはり最も頼りになる知覚は『視る』事だ。特に入り組んだ地形では、奇襲や罠に遭遇する確率も上がる
鈴には銀のように異能による強力な攻撃、防衛能力は持たないが、それを補って余りあるほどの『情報取得能力』に優れているのだ


/ ゚、。 /「そんなんやから銀ちゃんに…………」


なんか気になる言葉を遮り、鈴は手を上げて制止のハンドシグナルを出す
彼女の探索網に何かが引っかかったらしい。この手の場合、よからぬモノが大半を占める

125 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:25:18 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。 /「早速お出ましや。『バンクシー』。1時の方角から3体向かって来とる」

(´・_・`)「タイプは?」

/ ゚、。 /「『ガキの落書き』」

(´・_・`)「あれか……」


バンクシー相手なら持って来た得物の出番は無いだろう
俺らの進行方向から真っ直ぐ向かって来るのを見るに、殺る気満々マンと見た
連中の運の無さと度胸に敬意を払い、キッチリと片付けてやるとしよう


/ ゚、。 /「ん?ちょっと待って」

(´・_・`)「え?」

  / ゚、。;/「速すg」


鈴の言葉通り、言葉を終えるよりも速く、左右の壁と天井を伝って三体の黒い『落書き』が颯爽と現れる
ワンダー『バンクシー』。名前の由来は、百年前に実在したアーティストからだ。ただし、連中の姿はアートと呼ぶには稚拙過ぎた
連中の姿の多くは、幼児が黒いマジックペンで壁にグシャグシャと描き殴ったような落書きだ
勿論、ただの動く絵じゃない。その正体は厚さ0.2㎜の薄型生命体だ


(´・_・`)「っとぉ……」


全身真っ黒に塗りつぶされた人型の落書き。ホラー映画でガキが家族の絵の隣に描く正体不明の『何某』に似ている事から、分類名がそのまま『ガキの落書き』となったそいつらは
本来ならば、その姿と薄さを利用した『伏せ狩り』をするワンダーだ。絵を見よう、絵を消そうと近づいた者を掴み、息絶えるまで壁や床や天井に叩きつけ、溢れた『中身』を啜る凶悪な習性を持つ
獲物を捕らえる際に発揮する瞬発力こそあれど、今のように自ら打って出るような行動は極めて稀だ

126 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:27:24 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「おっと」


上と左右の壁を離れて飛び出した、皮膜のようなバンクシーの触手が、俺の両腕と顔の下半分に巻きつく
その薄さからは考えられない力で、四肢を引き裂き、頭を捥がんと引き込まれるが、所詮力技しか能のない雑魚怪異だ


(´・_・`)「モゴモゴ……モゴゴモゴゴ!!!!!!!!」

/ ゚、。 /「何かカッコええこと言っとるんやろうけど全然聞こえてへんで?」

(´・_・`)「モココ」(電気タイプ)



少しばかり引き摺られたものの、腰を落として踏ん張ればピタリと止まった
奴らも相応に力を入れているのか、腕伝いに壁が軋む音を感じる。それと同時に、奴らの身体が少しずつ剥がれていってる事も


(´・_・`)「モココ」


棲家との別れを惜しむ暇すら与えず、一息に壁から引き剥がし、両手を合わせて一つにまとめる。2対合わせてもたった0.4㎜だ。サガミオリジナルの40倍である。あれ?じゃあ案外厚くね?
あるべき場所から引き剥がされた落書き共は、さながら活きのいい海藻のようにビタンビタンと跳ね回る。二次元が三次元に進出した歴史的瞬間に涙を禁じ得ない


(#´・_・`)「モココ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」


このまま生命力を流し込んでぶっ殺しても良いが、この後も仕事があるので無駄な体力を使ってられない。暴れる二枚のバンクシーを踏みつけて固定し、力任せに引っ張った
悲鳴こそ上げはしないが、破けていく身体からは黒い染料が噴出し、空気に混じって消えていく。半分ほど引きちぎったところで、ダメージに耐えきれず活動を停止させた

127 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:28:20 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「モコ」


残すは天井の一体だが、俺が手を下すまでも無く乾いた銃声が終わらせてしまう


(;´・_・`)そ「ウワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!???????」


弾丸により天井とバンクシーに空いた風穴から黒霧が降り注ぐ
霧散するとは言え、ワンダーの体液を浴びせられて気分良くなる奴なんてごく僅かしかいない
しかし一発撃った程度では決定打に到らず、バンクシーは拘束を解いて逃走を図った


/ ゚、。 /「はい、はい、はいっと」


立て続けに追加の三発。どれも外れることなくバンクシーに命中。黒い霧を噴き出しながら床に落ち、2、3度悶えた後に事切れた


(;´・_・`)「最悪……」

/ ゚、。 /「他に言う事あるんとちゃいます?」

(;´・_・`)「もっと上手く殺れねえの??????」

/ ゚、。 /「ホンマにええ性格してはるなぁ」

128 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:30:34 ID:HcLXXAEI0
俺が殺った二体とは違い、鈴が撃ったバンクシーの死体は銃痕からグズグズと崩れ始めている。『生命力』による消滅反応だ
生命力の基本操作は四つ。手足に集中させる≪握≫、物体に流し込む≪流≫、弾丸のように発射する≪放≫(はなち)、全身に膜を張る≪纏≫(まとい)
遠距離攻撃手段として最もポピュラーなのは、しずくが得意とする≪流≫による物体の投擲。もしくは弓矢による射撃である
刀や槍のように、常に手に持つ武器であるならば、持ち手から常に生命力が供給されるが、手から離れる投擲物はそうもいかない
平均して3〜5秒が、生命力が滞留するタイムリミットと言われている


では、初速に優れた銃こそが、最も≪流≫を強く使う方法なのか?


答えは、『理論的にはイエス』である。飛距離、連射力、貫通力。弾丸に生命力を込めれば、『裏』や異形にとって脅威となる
しかしこの国はご存知の通り銃社会ではなく、肝心の操作術すら難易度が高すぎる
投擲にせよ弓矢にせよ、一撃につき一回の≪流≫を行う。そのどちらも、供給源である『手』を通じて行われる
対し銃は、複数のパーツが組み合わさった道具である。『銃』そのものを投げつけるならともかく、発射するのはチャンバーにある弾丸だ
グリップ越しから正確に弾丸に≪流≫で生命力を送り込むのは、銃の構造、生命力の流動を理解して、正確に行う必要がある
もし付け焼き刃で行おうものなら、一発撃つだけでも相当の生命力を消費してしまう
その高難易度の銃撃を主な攻撃手段として使用するのが、鈴を初めとする『大桜堂』の連中だ


/ ゚、。 /「センセの殺り方よりよっぽどスマートやろ?」

(´・_・`)「俺から言わせればロマンに欠けるな」

/ ゚、。 /「そのセリフ、日本一知名度のあるリボルバー使いのもんやけど」

(´・_・`)「ダーティー・ハリー?」

/ ゚、。 /「日本言うたやろ」

129 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:30:57 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「それより……」


バンクシーの急かされるような襲撃。階層間の境界がユルユルのユルになってる影響だろうか
わざわざ物理でぶっ殺したのは、そのヒントが隠されていないかの確認だ


(´・_・`)「特に飢餓状態ってワケでもなさそうだな……」


薄い身体の中にもしっかり内臓は詰まっている。ぶちまけた腑には『晩飯』の名残が残っていて、キツい酸性の臭いが漂った


/ ゚、。;/「キツ……よぉハラワタ弄れんなぁ……」

(´・_・`)「ん……?」


消化されかけていたのは、緑色の繊維。恐らく植物の類だ
第三階層のワンダーに、草や木の性質を持つ奴は俺が覚えている限りではいない。厄介なことに、第六階層からのお客さまがいらっしゃるようだ


(´・_・`)「『くろいろ』から本部へ。バンクシーの胃から植物性の餌を確認した。第六階層の影響を受けている可能性が極めて高いと思われる」


『のどびこ』を通してまさしへと報告を送る。少しの間を置いて、返答が返ってきた


<承知したよ!!!!!!!!!!第六階層の担当にも報告しとく!!!!!!!!引き続き気をつけたまえよ!!!!!!!!!>


他になんか無いんかい

130 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:34:16 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「さて、どう見る?」

/ ゚、。 /「ふぅん……慣れへん餌による消化不良に苦しんで暴走とか、中毒症状とか」

(´・_・`)「その辺が妥当か……」


もう少し弄って見るべきだが、最優先はガキ共の捜索だ
死体の処理の為に≪流≫を行おうと手を伸ばしたその時―――――


(;´・_・`)そ「ッ!?」


身体の裂け目から這い出てきた5センチほどの蜘蛛のような蟲が、ピョンと右腕へと飛び乗ってきた


(;´・_・`)「やだキショい!!」


思わず払い退けようとしたが、一足遅くガブリ噛みつかれる
咄嗟に右腕に≪握≫を込めると、危険を察知したのか再び跳躍して逃げ出した


(#´・_・`)「このクソ虫が!!」

/ ゚、。;/「センセ!!生け捕り!!」

(#´・_・`)「いや殺す!!!!!!!!!」

/ ゚、。;/「ええからどいて!!」


言うが早いが、手早くリロードを済ませた鈴が銃口を虫へと向けて撃つ
撃ち出された弾丸は寸分違わず毒虫に命中。バラバラに弾け飛ぶかと思いきや、衝突と同時に風船が弾けたような『パン』という破裂音が響き、ひっくり返って動かなくなった


/ ゚、。;/「あー、気色わる……」

(´・_・`)「特注の弾か?」

/ ゚、。 /「開発部のオジ様特製の風船弾。ちょっとだけ生命力を混ぜたのはウチのアドリブ。これで暫く目ぇ覚まさへんやろ」


試しに毒虫を指先で突いて見るが、起き上がる気配はない。生きてるかどうかの判断はしづらいが、原型は保っている
器用に器用を掛けたような離れ技だ。破裂音と風圧で仮死状態にさせ、若干量の生命力を毒として流し込んだのだろう

131 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:34:53 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「サンプルとしては申し分無いな。本部に送ろう」


ロバを一体呼び寄せ、腹部のトランクから小瓶とピンセット、ネズミ型の輸送機を取り出す


/ ゚、。;/「っ、センs」

(´・_・`)「ん?」


別の死体の肚からもう一匹毒虫が飛び出てきたが、跳ばれる前に小瓶を被せて捕獲する
どうやら、バンクシー一体に付き一匹入っていたようだ。ハッピーセットがよ


(´・_・`)「情報の追加乙っと」

/ ゚、。;/「速ぁ……」


囚われの毒虫は元気いっぱい小瓶の中を跳ねる。二度も同じ手を食うかよ


(´・_・`)「あーあ、やだやだ。草も虫も家の周りにクソほどいんのに狭間でも相手しなきゃならねえなんて」

/ ゚、。 /「田舎モンの宿命やな」

(´・_・`)「うるせえ……ん?」

/ ゚、。 /「どしたん?」


気絶した虫を小瓶に入れようとピンセットで摘み上げた時、腹部の模様に違和感を覚えた


(´・_・`)「んー……?」


掌に落として、じっくりと見てみる。模様の正体が分かった瞬間―――――


(;´・_・`)そ「うオおあ!?」

/ ゚、。;/「何々どないしたん!?」


思わず仰け反り、全身に鳥肌が走った

132 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:35:30 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「見えるか?」

/ ゚、。;/「なん……うっわなんてモン見せはるん」


俺より遥かに目の良い鈴だ。より鮮明に見えてしまったのだろう。俺より苦しんでいる奴を見ると心が安らぐ
毒虫の腹部にあったのは、全長1センチほどの『ヒトガタ』だった。それがただのヒトガタの模様であるなら、俺も鈴もここまで驚いちゃいない
イエス・キリストのような磔のポーズで腹部に張り付いたそれは、ハッキリとした『表情』を持ち、『呼吸』を行い、窮屈そうに身じろぎをしている
虫眼鏡が必要になるほど小さな目はハッキリと見開かれており、ギョロギョロと瞳を動かして巨人たる俺らを観察しているように見えた


/ ゚、。;/「ヒトやあらへんよなぁ?」

(;´・_・`)「さぁな。人間をここまで縮小させるよりそれっぽいもんを作った方が早い気がするが」


ここで議論した所で、俺らは狭間の専門家じゃない。サンプルを小瓶に入れて封をし、輸送機にセットして発進させた
帰巣プログラムにより、自動で本部まで戻る優れモノだ。ワンダーに見つからない限りは、だが


(´・_・`)「『くろいろ』から本部。バンクシーの胎内から出てきた虫型ワンダーのサンプルを送った。出来るだけ早く詳細を送ってくれ」

<胎内!!!!!!??????ほう、寄生虫かね!!!!!!!!!!!!他に何かされたりしたかい!!!!!!???????>


ウキウキしてんじゃねえ殺すぞ


(´・_・`)「咬まれたが、今のところ異常はない。≪握≫が効いたのかもしれねえ」

<困るよマスター小練!!!!!!!!!何の為の頑丈な身体なんだい!!!!!!!!!!!????????>

(#´・_・`)「自然と調和するこころ豊かな毎日を目指す為の頑丈な身体だよ」

/ ゚、。 /「花王の回しモンなん?」

<ハッハッハッハッハッハッ!!!!!!!!!!!!!!!!身体に気をつけたまえよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!>


人でなしがよ…………

133 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:37:26 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。 /「なんや、ややこし事になりはったなぁ」

(´・_・`)「失踪とは無関係であって欲しいがね……」


咬まれた部位を診てみるが、特に異変は無い。自然界で最強の毒物なら0.05㎎でお陀仏だが、《握》で無毒化したか
咄嗟に対応できたから良かったものの、生命力を扱えない奴には防ぎようが無い。デカくて鈍い奴より小さくて素早い奴の方が厄介だ。ちいすばって感じ


/ ゚、。 /「そんで、そっちは持っとくん?」

(´・_・`)「なんか使えるかもしれねーしな」


俺が捕まえたもう一匹が入った小瓶は、シリコンと特殊合金で出来た保護ケースに入れて厳重にバッグの中へと収める
持ち運び出来るサイズの小型ワンダーは稀少だ。薄さ1mm程度のガラス瓶も割れないほど非力なのも都合が良い


/ ゚、。 /「確かに……標本にしたらええ値段で売れそうやな」


この子はホンマにもぉ〜……


<『ぎんいろ』より『くろいろ』へ。小練さん、行方不明のガキの物と思われる靴を片っぽ見つけた>


そこへ、調査隊から報せが届く


/ ゚、。 /「早ない?」

(´・_・`)「いいだろ別に。おう、どんな感じだ?」

<脱げてまだ間もない。血の付着も見当たらないし、食われたような形跡もない。最悪の状況じゃないが、発見されたのは危険地帯だ。我々もあまり長居はしたくないな>

(´・_・`)「すぐ合流する。場所は?」

<G-13……どうした?>

134 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:38:29 ID:HcLXXAEI0
『ぎんいろ』の部隊長は一度通話を打ち切る。暫くして、再び『ききびこ』が反応した


<『ぎんいろ』より『くろいろ』。ガキを一人見つけた>

(´・_・`)「どんな様子だ?」


しばし待つが、返答は無い。報告も『ガキを一人見つけた』だけだ。それが『人間』であるとの確証も無い


(´・_・`)「G-13に向かった方が早そうだな。『くろいろ』から本部」

<聞いていたよ!!!!!!!!!!!!!!!!彼らをよろしく頼む!!!!!!!!!!!!この程度の事態で人材を消費するのはもったいないからね!!!!!!!!!!!!>

(´・_・`)「建前って知ってる?」


切り換えていこう。ここじゃ問題が円滑に解決する方が異常だ


/ ゚、。 /「ほな、参りましょか」

(´・_・`)「ああ」


変わらないのは、早ければ早いほど、出る損失は少なくて済むって事だけだ

135 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:40:05 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



バンクシーの襲撃地点からG-13ポイントまでは、直線距離でおよそ400メートルほど
余程の脳筋でなけりゃ、壁ぶち抜いて目的地まで一直線に向かおうだなんて考えねえ。マイクラじゃねんだし
たかが400メートルだが、複雑怪奇に入り組んだ木造校舎を、それも突発的に襲いくるワンダーを回避しながら進まなければならない
第三階層のベテラン探索者でも、慎重に進んで2〜3時間程度は要する


/ ゚、。 /「この先『顔デカ』が通路塞いどる。どないしはる?」


だが、広範囲の探知異能持ちと


(´・_・`)「ぶっ殺す」


その辺のバケモンなら余裕で殺せる俺が強行すれば、移動時間を十五分程度にまで短縮出来る


/ ゚、。 /「毎回思うんやけど」

(´・_・`)「あ?」

/ ゚、。 /「血みどろになる事になんか抵抗とかありまへんの?」

(´・_・`)「仕方ねーだろこれが一番手っ取り早いんだから」


ベチョベチョに浴びた返り血は、道を塞いでいた巨大な顔面のワンダー『ビッグフェイス』のものだ
造形がヒトに近いワンダーは、体液も似ている事が多い。斧で半分にかち割ったのは些かやり過ぎだったかもしれん


(´・_・`)「全く助かるよ。『裏』と違って物理が効く奴ぁ、体力を節約して殺れる」

/ ゚、。 /「傍から見たらどっちの方が疲れるかわからへんけどな」

136 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:41:39 ID:HcLXXAEI0
G区画に到達した所で


/ ゚、。 /「センセ」


鈴は手招きし、近くの教室へと入った


/ ゚、。 /「『ぎんいろ』の様子、やっぱ可笑しいなぁ」

(´・_・`)「ガキはいるか?」

/ ゚、。 /「おる。ガッコでブイブイ言わせてそうなスポーツマンっぽいの。アンタが言ってたんとちゃうなぁ」

(´・_・`)「ああ、全ッ然違うな。ここからなら……」


i-ringを立ち上げ、カフェオレ隊員向けのツール管理アプリを起動する。遠隔操作が可能な範囲内に『ぎんいろ』の隊員番号が四つと、彼らが連れているロバのシリアルナンバーが浮かび上がった
ロバの操作権限を『ぎんいろ』隊員から俺へと強制的に移行させ、内蔵されているカメラを起動する。映像には、『ねぐら』から入り込んだであろう頭の悪そうなクソガキを中心に
四方を見張るかのように取り囲み、銃器を手に直立不動で待機する『ぎんいろ』隊の姿があった


(´・_・`)「……『くろいろ』より『ぎんいろ』。ガキの様子は?」


試しに問い掛けてみる。すると、隊長が反応を返した


<ハッ……ヒィィー……カッ……フゥゥ……>


声帯でもやられたのか、辛うじて聴き取れたのは音の無い言葉だったが


(´・_・`)「ふむ……」


バンクシーと同じく、毒虫に操られているのならば、姿を晒した瞬間に襲われるだろう
『ぎんいろ』の隊員が手にしている銃器は、水平ニ連式のショットガンだ。幾ら俺らが人間離れしていると言っても、散弾を浴びちまえばひとたまりも無い
彼らが正確に狙いを定められるかすらも危ういもんだ。暴発して誰かが死んでしまうだなんて結末も避けたい

137 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:42:54 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「仕方ねえか……」


幸いな事に、彼らは『カフェオレ』の実動部隊だ。長年の調査と数多くの犠牲を経て、不測の事態に備え続けて来た組織の人員だ
生命力の操作術や、鈴のような異能を持たぬ代わりに、最先端の『テクノロジー』を身に纏っている。胡散臭え超能力や妖術なんかより、よっぽど信頼出来る科学を駆使する


(´・_・`)「さてと」


その中の一つに、『遠隔強制拘束機能』がある。これは他者を縛るものではなく、『自ら』を動けなくする機能だ
狭間では、現実離れした風景やゴールの無い広大な迷宮。表の自然界には存在し得ない異形の存在を目の当たりにして、しばしば錯乱状態に陥る探索者は少なく無い
一人のパニックは全員の危機に繋がりかねない。その為、カフェオレ隊員の作業着には電磁石式の拘束具も備わっている
誰かが発狂した場合、他者によるパスワード入力と音声認識で両手足の電磁石が起動し、一時的に行動を制限するのだ


(´・_・`)「春巻き……大好きっと……」

/ ゚、。 /「何なんそのパスワード?」


クソほど手間が掛かるが二段階認証にしないとワンダーが悪さをする
テクノロジーの『誰にでも扱える』という深い懐は、ヒトの鳴き真似をするバケモノですら容認してしまうのが玉に瑕だ


(´・_・`)「『チョコになっちゃえ!!』」

/ ゚、。 /「魔人ブウなん?」


『ぎんいろ』のロバのスピーカーを通じて、各々の拘束具を起動させる
両手足がバチンと合わさり、隊員はボウリングのピンのように廊下を転がった
残こるは頭悪そうなツラを引っ提げてボーッと突っ立ってるクソガキが一人。こいつなら多少暴れられても何の問題も無い


(´・_・`)「よし、行くか」

/ ゚、。 /「文明サマサマどすなぁ」


幸先よく一人目は確保出来そうだ

138 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:44:28 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



/ ゚、。 /「ん、異常無し」

(´・_・`)「え?????????」ズカズカ

/ ゚、。 /「ちょっとは警戒してくれはります?」


G-13に到着。辺りは静かなもんだった。静かだからグイグイ進んだらちょっと怒られちゃった。ヘヘッ
拘束された隊員達、突っ立ったままのガキ。どちらも抵抗する様子は見受けられず、身じろぎ一つもせずにジッとしている
だが動かないからと言ってこのままノコノコと救出しに近いて行けば、『ぎんいろ』隊の二の舞になってしまう


(´・_・`)「保険かけとくか」


バッグから筒状の電動噴霧機を取り出す。中に入ってる液体は安酒だ
酒は古くから穢れを祓う物として重宝されてきたが、その大きな理由として、生命力との相性が良いのが挙げられる
酒の原料の多くは穀物や果実、芋などの『植物』である為、普通の水と比べて生命力を『混ぜ込み易い』のだ
果汁ジュースや植物油、牛乳なども利用可能だが、こと酒に置いては古くから供物として捧げられてきたものだ。その他の液体と比べて『神秘性』という認識のバフが乗る
これを越える液体となると、生命力そのものと言っても過言では無い『血液』が挙げられるが、容易く使えるような代物ではない


(´・_・`)「ほい」


この噴霧機の使い方は、内部の酒に≪流≫をし、手榴弾のように転がして起動させる
その後、筒の両端のちっちゃい穴から酒のミストが勢いよく噴出―――――


(;´・_・`)そ「ぐああ気持ち悪い!!!!!!!!!!!!」

/ ゚、。 /「下戸の癖にそんなん使うから……」


そしてお酒呑めない俺と異形共を苦しめるのだ

139 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:46:37 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「うう……確認してお願い……」

/ ゚、。;/「ホンマ愉快なおっちゃんやなぁ……ちょい待っといて」


なんで大人はこんな気持ち悪くなるもんをわざわざ金払ってまでありがたがって飲むんだろうか。こんなん毒じゃねえか何が百薬の長だふざけんな死ね


「ぐ……なんだ……」

「顔いってぇ……」

「酒くせえ……」

「身体動かねえ……」


俺が苦しんでる一方で、恐らくは毒に支配されていたぎんいろ隊員達は正気に戻りだす。助けてやったのに文句多いな
皮膚や粘膜から酒に混じった生命力が吸収され、中和したのだろう。この感じだと、あまり強い毒でも無さそうだ


/ ゚、。;/「ボク〜……?」

(  v ) 「」


残されたのは未だ何の反応も示さないガキだけだ。一般人に銃口を向けるわけにもいかず、鈴は恐る恐る近いていく
毒虫が胎内に寄生しているのならば、酒が効くまで少々時間が掛かるかもしれない。≪流≫で直接送り込めば、切開手術を行わずとも駆除出来るはずだ
つまりその為には、ガキに『触れる』必要がある


/ ゚、。;/「ええ子やから……動かんといてな……」

「は、はい……!!」

/ ゚、。;/「アンタやないで」


隊員の一人がションボリした。良んだよ今そういう小ボケは

140 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:47:11 ID:HcLXXAEI0
「お嬢さん!!一気に叩き込め!!そいつは」


正気を完全に取り戻した隊長が叫ぶ。同時に、ガキの背後から『緑色の触手』が二本、勢い良く飛び出した


/ ゚、。 /「『見えとるよ』」


『大桜堂に死角無し』。鈴の『視覚』は、ガキの背後にも満遍なく行き届いている
慌てることなく拳銃を構えると、触手に向けて二度発砲。触手はパンと音を立てて千切れ飛ぶ


/ ゚、。#/「≪握≫ッ!!せやぁッ!!」


一息に距離を詰め、≪握≫しめた拳を腹に叩き込む。ガキは口から纏まった空気を吐き出し、グタリと蹲った


/ ゚、。;/「センセ!!早よ来て!!エラいことなっとる!!」

(;´・_・`)「ウウ……何とかして……」

/ ゚、。#/「アンタんとこのお客やろ!!!!!!!!!!!!!」


ぐうの音も出ないくらいの正論だった

141 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:50:28 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)そ「ウワー!!!!!!!!!エラいことになっとる!!!!!!!!」


蹲るガキの背中は、不自然なほどに大きな隆起物が出来上がっている
Tシャツに隠れてその正体まではわからないが、時折モゾモゾと身悶えるように動いていた


(;´・_・`)「こりゃ……」


意を決して服を捲りあげる。そこには、『赤ん坊の形をした』ワンダーが、覆い被さるように背中に癒着していた
肌は鱗模様をした緑色。肩甲骨の間には触手孔があり、先ほど撃ち抜かれた触手……植物の『蔓』が二本、力なくぶら下がっている


(;´・_・`)「あー……ひでえな」


何より一番ヤバいのが、癒着部からガキの皮膚の下に『根っこ』みたいな管が通ってしまってる
管の役割は一目瞭然だ。さながらこのガキは歩く腐葉土と言ったところか
不幸中の幸いは、吸い尽くされる前に見つかったってことか。脈も呼吸もあるし、肌色も悪くはない。だが―――――


(;´・_・`)「こりゃ俺らの手に余るな。銀に任せた方が確実だ」

/ ゚、。 /「せやな……こういうデリケートなんはよぉ触れんわ……」


鈴の≪握≫では消滅まで到らなかったのを鑑みるに、完全な除去には相応の生命力を要する
その上、こうもビッシリ根付いかれてしまうと、≪流≫を行った際、抵抗して宿主を傷つける危険もある
まず『赤ん坊』から寄生能力を取り除き、それじゃら宿主から切り離して処理をするのが望ましい
雪女の能力を持つ銀なら、赤ん坊を根ごと凍らせて、安全に引き剥がせる。多少の痕は残るだろうが、不器用な俺らが処置するより遥かにマシだ


「すまない。拘束を解いてもらえないだろうか?」


(´・_・`)「アッハイ」


そういや転がしたままだった

142 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 10:51:15 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「とりあえず応急処置だけしとくか……しかし一般人のガキ相手にエグい腹パンしやがる……怖……これが大人のやる事か……?」

/ ゚、。 /「ご褒美やろ?」

(´・_・`)「お前がそんなんだからしずくが自尊心たっぷりに育っちまったんだよ……」


『ぎんいろ』隊の拘束を解き、ガキの背中に≪流≫こんだ酒をぶちまける
こうする事で、生命力は酒を介して緩やかに体内へと吸収され、ワンダーに刺激を与えず活動を抑え込める
とは言え、ガキ本人の体力がどれだけ持つかわからん以上、気休め程度にしかならない


(´・_・`)「悪いが、こいつの面倒を頼む。出来るだけ早く『ねぐら』へと送り届けてくれ」

「承った。ルートだけ共有して貰えないか?」

(´・_・`)「今送る」


俺らが障害を排除して通ったルートで戻れば、ぎんいろ隊でも短時間で本部へと帰還できる
i-ringでルート履歴を送信する。受け取った隊長は苦笑いを浮かべた


「オイオイ、ビッグフェイスのスポーンポイントを直進したのか?普通は避けて通るぞ?」

(´・_・`)「したけど?」

/ ゚、。 /「したなぁ」

「ま、まぁ……アンタらほどの実力者がそう言うのなら……」


フェニックスの可能性がある

143 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:03:18 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「そうだ。発見した靴を見せてくれ」

「ああ、これだ」


投げ渡されたのは有名なスポーツブランドのシューズだ。やや湿り気があってうわぁ…………


(;´・_・`)「やだぁ…………他人の靴なんて触りたくないぃ…………」

/ ゚、。 /「今そんな潔癖見せんでええねん」

(;´・_・`)「じゃあお前持てや」

そ / ゚、。;/「こっち投げんといて!!」


脱げてそう間もない。見つかったガキの靴は二つ揃ってるから、発見の直前まで一緒に行動してたのかもしれない


/ ゚、。 /「オタクくんのモン?」

(´・_・`)「いいや、あいつはビーサンだった」

/ ゚、。 /「また走り辛そうな……ん?」


展開した『視界』に何か引っかかったのか、鈴は凝視するかのように眉間に皺を寄せ、瞼を細めた

144 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:03:38 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。 /「隊長はん。この先には行きはりました?」

「次の区画か?いや、我々も緊急で投入されたからな」

/ ゚、。 /「ふーん…………」

(´・_・`)「どうした?」

/ ゚、。 /「どえらいことになってはる」

(´・_・`)「え???????」

/ ゚、。 /「隊長はん。確認したいんやけど、繁殖力の低いワンダーの侵入は確認されとらへんのよね?」

「は?誰がそんなことを?」


神妙な表情で顔を見合わせた俺達を見て、隊長も何があったのかを察したらしい


「もしかして、何も聞いていないのか……?」

145 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:05:18 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



(#´・_・`)「あの野郎……」

/ ゚、。 /「突発的なトラブルの対応にしては、随分と準備がよろしいと思うたんよ。隊を先行させてたとは言え、複雑な第三階層で手掛かりがアッサリ見つかったのも臭うたし」


危険度に応じて区切っているとは言え、第三階層の風景は基本的には変わり映えしない校舎の風景だ
最初に感じた違和感は、空気に混じる湿気。水分、ましてや雨など降りもしないこの空間は、常に乾燥している
だが進めば進む程に、肌に触れる空気はジットリとした質感へと変化している
加えて、強くなっていく植物の香りと、僅かに混じる焦げのような臭いは、他所から持ち込まない限り、この階層では発生しないものだ


/ ゚、。 /「ここまで侵蝕が進んでて、『繁殖能力の無いワンダーしかおらへんかった』は通用せんやろ」

(´・_・`)「ああ……」


進む度に、壁に伝う蔦や葉が増えていく。それらは目に見える速度で生長し、支配圏を広げていっている
板張りの廊下には根が張り新芽が生い茂り始め、室内とは思えない程に歩き辛くなる
天井には色取り取りの花が、咲いて実をつけ枯れて種を落とすサイクルを、目紛しい速度で繰り返している
出来の悪い果実酒を思わせる甘く腐った臭いが、鼻腔にへばりついた


(´・_・`)「こりゃあもう、第六階層と言っても差し支えねえな」

/ ゚、。 /「ヌルい第三階層でヌクヌクしてたボンには手に余りはったんやろなぁ。ほら、あっこ見てみ?」


鈴が指す先には、植物で見え辛くはなっているものの、壁が焼け焦げた跡が残っている
火力で対処しようとした名残りだろう。だが、火炎放射器程度では『根も葉も』焼却しきれなかったらしい
奴はこれらを『申告しなかった』。第三階層の環境変化という、探索者の生還に関わる重大な異常事態をだ


/ ゚、。 /「これは完全にウチらをハメにきとるな」

(´・_・`)「良い根性してやがるぜ……」

146 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:06:24 ID:HcLXXAEI0
つまり奴は、第三階層の管理主任は、ガキをダシにしてワンダーの処理を無償で俺に押し付けようとしたのだ
確証こそ無いが、そう考えると色々と辻褄が合ってくる。先ずは何故、先ほど見つけたガキは既に深刻な寄生状態にあったのか?
恐らくは、銀が探知出来ないほどの極々小さな、『五センチほどの虫がギリギリ通れる程度』の境界を開き、件の毒虫を送り込む
『ねぐら』が繁忙期なのは奴も知っての通りだ。虫のコントロールが出来なくても、標的が多ければ自ずと確率も上がる
寄生に成功すれば、ワンダーが持つ帰巣本能によって自ずと境界は開かれ、寄生主と共に第三階層へと戻る
毒虫の存在を知らなかった俺たちからして見れば、自然発生した境界に足を踏み入れたアホなガキが迷い込んだようにしか見えない

あるいは、ガキ共が『ねぐらに訪れる以前から寄生されていた』可能性も無いことはないが、それなら宝くじの高額当選の方がまだ現実味がある
狭間自体の出現率は極々僅か。階層も第三、あるいは第六に絞れば遭遇確率は更に低くなる
年に数回、第三階層へのゲートが自然発生し、かつ『カフェオレ』側から人為的にゲートを開く事が出来る『ウチ』で寄生されたと考える方が自然なのだ
勿論、これらは仮説の域を出ない。しかし目の前に広がる光景は、俺たちにカフェオレへの猜疑心を植え付けた


(´・_・`)「作為的にせよ偶然にせよ、こりゃ管理責任が問われるな。ロバは置いて行こう」

/ ゚、。 /「ホンマに。どんな言い訳するか今から楽しみやわぁ」


本来ならば、他階層からのワンダーが侵攻してきた場合、初期段階での徹底処理が求められる
第六階層のように繁殖力の高いものなら尚更だ。奴は恐らく、そこを見誤った
『植物程度のワンダーなら、サッと火で焼いてしまえば解決だろう』と。外部への依頼料をケチって内々で処理しようとした結果がこれだ
何が最悪かって、これを放置してしまえば第三階層と繋がりのある『ねぐら』にも波及してしまう事だ。この階層は複雑ではあるが比較的管理しやすく、ワンダーが此方側に悪さをする事も滅多に無い。長距離間移動のワームホールとしても優秀で使い勝手も良い
ここが第六階層化してしまえば、ワンダーの生態変化による危険度の増加や、密林化に伴う利便性の消失など、多くの損失を被ってしまう
ガキが居なくなろうがなるまいが、どのみち解決せねばならない問題なのだ


(´・_・`)「俺らだけでどうにかなる問題かね……」

/ ゚、。 /「そうやなかったらわざわざ手の込んだ真似せんやろ」


一見、クソデカい規模の異常ではあるが、個人でどうにかなる範疇ではあるらしい
テクノロジーが通用しないのならば、オカルトに縋るのは人の性か

147 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:07:42 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「どう見る?」

/ ゚、。 /「最奥に本体がおるのは確定やなぁ。それと……うん、もしかしたら、これ下手に突っついたからこんな規模が大きなったのかもしれん」

(´・_・`)「理由は?」

/ ゚、。 /「壁に焦げ目のある箇所、蔦が太かったり密集してたりしとる。攻撃に対して繁殖で補おうとしとるんやない?」

(´・_・`)「『防御応答』か」


植物のメカニズムの一つとして『防御応答』というものがある
例えば、葉を虫に食われた際、タンパク質の消化を妨げる植物ホルモンを分泌し、食害の拡大を防ぐといったものだ
この防衛応答は、植物にとって害となる要素によって引き起こされるものであり、食害の場合は虫の唾液が該当する
今回の植物タイプのワンダーであるならば、『火』あるいは『高熱』がトリガーとなり、防御応答として繁殖の加速が引き起こされてしまった。単純だが、充分にありえる仮説だろう


(´・_・`)「どれ」

/ ゚、。 /「センセ」

(´・_・`)「検証は必要だろ」


バッグからマッチを取り出し、一本擦って火を点す
それを壁際の蔦へと近づけると―――――


(´・_・`)そ「うおっ」


餌に食い付く蛇を思わせる俊敏さで、手首ごとマッチに絡みつき、キツく締め上げてきた
軽く引いて見たが、荒縄でガチガチに縛り固められたかのように動けない。そのまま、俺の体温も取り込もうと手から腕へと侵略を進めてくる


(´・_・`)「なるほど」

/ ゚、。 /「感心しとらんと」


十中八九そうだと予想していたが、やはり食肉植物らしい。生物である以上、生長にはエネルギーの消費が不可欠だ
弱い電灯の光しかない第三階層で、ここまでの急生長を光合成だけで補えるとは考え辛い。防御応答も、エネルギーの蓄えがあってこそだろう
一番わかりやすいエネルギー補給となると、『食事』以外に無い。資源の乏しい第三階層でも、生息する『ワンダー』も、カフェオレの『隊員』もいる。全くの皆無では無い

148 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:08:34 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「……」


どうりで、本部が忙しくしていたワケだ。アレは恐らく、行方不明者の通報が原因ではない
『ここ最近で職員がゴッソリと減る事態に直面した』からこその、人手不足だったのだ
駆除の為に持ち出した火炎放射器は、植物にとっては害となる物で、同時に餌を示す指針でもあるのだろう
マッチ一本の火ですらこの有様だ。もっと大きい火炎ならばどれほどの勢いで襲いくるか、想像に難くない
この植物がどれだけの時間をかけて消化を行うのかは定かではないが、平均して約60〜70キロある肉の塊だ。さぞかし大きなご馳走に違いない


(´・_・`)「そんじゃ……」


ある程度の分析も済んだ。サッサとぶっ殺して色々と片をつけねばなるまい
腕に≪握≫を施すと、絡みついた蔦は急速に萎びていき、焦茶色に枯れ果てる。生命力に対しては防御応答も起こらないらしい。奴らにとっちゃ即死級濃度の劇物だ
ただ、毒も薄めればハイにキマる薬物となる。欲張らなければ長く楽しめる小うるさいお人形さんが実在するなら、ジャンキー共はそりゃあ大事に扱うだろう


/ ゚、。 /「来るで、センセ」


鈴の監視網に『兵隊』が引っ掛かったらしい。彼女はリボルバー拳銃のシリンダーを開き、非殺傷弾に入れ替える
植物自体に攻めっ気が無いのは不幸中の幸いか。これらは『防御応答』でしか生物を取り込めないらしい
だからこそ『兵隊』を使って狩りをするのだ。より遠く、より上質な餌を得る為に、寄生を行うのだろう


/ ゚、。 /「前に『用務員』、続いて職員二人。ワンダーは任せてもええ?」

(´・_・`)「ああ……」


そして植物はもう一つポカをしている。通路の壁を完全に覆ってしまったことだ
第三階層は廊下と教室で構築された木造の狭間であり、異形たるワンダーにとって窓や壁を力技で破るのはそう難しい事ではない
だがこのH区画は、それらを保護するかのように隙間なく蔦で覆われてしまっている。『不意打ちの場を自ら塞いでしまった』のだ
つまり、俺らは正面だけ警戒していればいい。側面と後方に気を配らないだけでも相当楽に殺れる

149 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:22:32 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「……」


草を踏み締める音が近づき、俺は斧を短手に持つ。第三階層じゃ中ボスクラスのワンダーが相手だ


「おhあようGoザいま芻」


青いツナギに、手にはデッキブラシとブリキのバケツを持ち、寄生されたカフェオレ従業員を二人引き連れて現れたワンダー、『用務員』。第三階層の清掃、補修を行う管理人的存在だ
エンカウントしてもすぐさま危害を加えては来ないが、第三階層内を汚す、もしくは破損を行うと、一転して烈火の如く襲いかかって来る
第三階層の調査本部を設立した当時は、毎日のように『用務員』の襲撃に遭い、酷い損害を出したと聞く


「悪ハようゴ座石MAす」


姿は他の異形共とは違い、ヒト寄りの見た目をしている。二本足で立ち、二つの腕と器用な指で物を掴み、口から言葉を発する
しかしその表情はゴムマスクのように無機質だ。目鼻や耳は揃っているが、粘膜器官は持たない為、文字通り『飾り』でしか機能していない
あらゆる音声をツギハギにした声は聴き取りづらく、会話も成立しない。大人しくしていれば襲われないとは言え、出会ったら逃げた方が良いのは他のワンダーと変わりない


/ ゚、。 /「センセ、忘れモン」

(´・_・`)「あ?ああ……」


鈴が投げ渡してきたのは、一見ただの折り畳み傘。ロバの搭載装備の一つだ
柄のスイッチを押すと、ばね仕掛けが作動して中棒が延長し、傘が開くのは市販の物と同じだが、生地は合成繊維製の防弾仕様となっている
直径90センチと、大柄な俺が扱うには少々小振りだが、開くタイミングを見極めれば散弾程度なら防いでくれるだろう


/ ゚、。 /「肉盾よろしゅう」

(´・_・`)「人使いの荒いこって」

/ ゚、。 /「ほな」

150 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:23:13 ID:HcLXXAEI0
タン、タンと二度の発砲を合図に、寄生体へと討って出る
銃弾は立て続けに職員二人の額に命中し、高い破裂音を鳴らす。毒虫を気絶させたのと同じ風船弾だ


/ ゚、。 /「あらま、頑丈」


仰け反りはしたが、行動不能にまでは到らなかった。ゆっくりと歩みを進める様は、さながらゾンビだ
生命力も≪流≫で込められているのだが、毒虫とは圧倒的な体長の差がある。直接叩き込むのがベストだろう。目の前のバケモンさえいなきゃの話だが


「お肌yo憂531マす」

(#´・_・`)「らぁッ!!」


突き出されたデッキブラシを斧で弾く。柄を通して骨身に衝撃が沁みる
間髪入れずに横振りのバケツが頭に迫る。腰を落として躱すが、目の前に膝蹴りが飛んでくる


(#´・_・`)「シッ!!」


対し、此方は≪握≫を込めた左の肘打ちで迎え撃つ。膝蓋骨を砕く確実な『肘応え』があったが、後方へと大きく押し出されてしまう
植物に覆われた廊下はお世辞にも足場が良いとは言えず、そのまま数歩後ずさってしまった


(#´・_・`)「っと……」

「同ハ洋ご剤マス」

(;´・_・`)そ「ヤベッ!!」


距離の空いたこの機を逃さんと、用務員の腹がモゴリと蠢き、ツナギを突き破って『緑の触手』が放たれる。一本は辛うじて切断したが、もう一本は首に巻き付かれた


/ ゚、。 /「手ぇ貸そか?」

(#´・_・`)「いらねえよこんなザコ相手に!!!!!」


今の間に全弾撃ち切った鈴は、余裕そうな声色でリロードを行う。職員は膝を降り、呆けた面で天井を見上げていたそんなん気にしてる場合じゃない

151 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:25:39 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)そ「ウワーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


グンと首を引かれ、つんのめった所にデッキブラシが首を刈り取らんと迫る。ザコ呼ばわりしたから怒っちゃったのだろうか?煽り耐性ゼロかよ友達出来ねえぞ


(;´・_・`)「クッ、ソが!!」


倒れ込むように前に出る。デッキブラシは頭上で空を切り、壁を蔦ごと粉砕した
先程打ち込んだ肘打ちが効いたのか。用務員の身体は大振りに耐えかね、大きく胸部を晒した


(#´・_・`)「オラッ!!」

「尾ハっ……」


二の矢のバケツが振られるより先んじて、斧をその身に叩き込む


(#´・_・`)「あ?」


そのまま容易く切断出来ると踏んでいたが、用務員の身体とは異なる手答えに眉を顰めた
まるで束ねて絞った頑丈なロープを切り付けたかのように、ブチブチと固い繊維が千切れる感触。斧の刃は用務員の身体に僅か数センチ食い込むに止まった


「o齒楊ゴざいMaす」


それでも、問題なく『詰み』ではあるが

152 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:26:43 ID:HcLXXAEI0
(#´・_・`)「≪流≫」


刃に生命力を纏わせれば、熱したナイフをバターに差し込むかの如く身体へと沈み込み、右脇腹まで一息に断ち切る
断面から溢れ出たのは、臓腑の代わりに詰まった太い蔓の束。それらは熱波を当てられたかのように、急速に萎んでいく


「」


寄生主である用務員も、力無く萎れていく。物の数秒で、ミイラを思わせる有様に成り果てた。拍子抜けするほど呆気ない最期だ


/ ゚、。 /「まだ来るで!!バンクシー2、職員5!!今度は武装しとる!!」

(´・_・`)「めちゃくちゃ来るじゃん」


息つく暇なくWave2に突入だ。呆けた職員二人を軽い≪握≫で小突いて一時的に麻痺させ、後ろへと投げ捨てる
両の壁から丸いフォルムの四……いや『五足歩行』らしき動物の落書きが滑らかに迫ってきた
身体の節々からは『新芽』が生え、最初に対峙した『ガキの落書き』よりも深刻な寄生状態であると見て取れた


(´・_・`)「バンクシー任せた」

/ ゚、。 /「りょ」


職員一人につき、非殺傷弾三発撃ち込まないと無力化出来ないのは、まぁまぁコスパが悪い。みんな忘れてるだろうけど弾代俺持ちなんすわ
斧を鈴に投げ渡し、防弾傘を広げる。百年程前にヒットしたスパイ映画でこういうのがあった


(´・_・`)「っと」


壁から伸びるバンクシーの『前脚』を蹴り千切り、ゆっくりとした足取りで曲がり角からやって来た職員へと肉薄する
先手は取れるが、反応速度は未だ未知数。撃たれる前に五人撃破はちと厳しいか

153 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:29:46 ID:HcLXXAEI0
(#´・_・`)「一つッ!!」


先頭の男性職員の頬を張り飛ばし、射線から切る。続けて二人目をやろうとしたが、水平二連式散弾銃の銃口八つが素早く俺へと向けられる


(;´・_・`)「っべ!!」


安全第一。傘で全身を覆い防御。幸いにも『八発』の散弾を耐えれば消化試合だ


(;´・_・`)そ「グッ……!?」


激しい銃声と共に傘にバチバチとぶつかる散……いや、散弾じゃねえ。威力が弱過ぎる
『バチバチ』音は着弾後も続いた。それは傘からではなく、俺の頭上へと飛んでいった『弾』から発せられたものだ
薄暗い廊下をパッと照らす、白色の火花の群れ。植物の『防御応答』を引き起こした原因であろう、その弾の名前はーーーーー


/ ゚、。;/「ドラゴンブレスッ……!!」


鈴が答えを言うや否や、八方から押し潰すかのように迫る圧倒的質量の植物の束
狙いは勿論、『竜の息吹』を真正面から受けた俺だ。こんな非実用的な銃弾想定出来るかよ


(;´・_・`)「≪まと……ッ!!」


視界が緑一色(リューイーソー)に染まり、すぐさま黒く塗り潰される。身体にのし掛かる重量は、さながら巨木の根だ。防弾傘がバキバキに折れた
おかわりと言わんばかりに銃声が響くが、閃光は分厚い緑の壁に阻まれて一つも届かない。代わりに、身体の重みが更に増した
恐らくは、寄生体として扱われずに養分として食い尽くされた職員も少なからずいるだろう。資源に乏しい第三階層では大層なご馳走だったに違いない

では存分に堪能してもらおうか。根を腐らせる程の『大容量』の栄養を

154 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:30:19 ID:HcLXXAEI0
(#´・_・`)「≪纏≫」


生命力の基本操作術の一つ、≪纏≫(まとい)。全身に生命力の『膜』を張る術だ
瘴気の濃い場所での活動や、取り憑いた悪霊への対応策として使用する他
異能持ちならばそれぞれの特性を活かして『鎧』の顕現や『変身術』として活用する。当然、『裏』にも有効だ

それはさておき、≪纏≫は四つの基本操作術の中で最も省エネルギーでなければならない
頭のてっぺんから足先に到るまで、漏れなく全身を生命力で覆う為だ。放出する面積が大きい分、出力を間違えれば、あっという間に体力を消耗し尽くして卒倒する。つまり≪纏≫が下手であればあるほど


(#´・_・`)「グオオオオオッ!!!!!!」


『放出される生命力』の量は多くなるのだ

155 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:32:46 ID:HcLXXAEI0
出力ブッパの≪纏≫で過度に生命力を吸った植物はあっという間に乾燥し、のし掛かる負荷も軽くなる
瞬間的な火花だけでも厚い層が出来上がっている。俺じゃなけりゃ身動きも取れねえだろう
連中が持ってたのがバーナーじゃなかったのは不幸中の幸いか。尤も、その場合不用意に近づきはしなかったが


(;´・_・`)「ダラァ!!!!!!」


枯れ蔦の檻を突き破り、すぐさま≪纏≫を解く。途端にドッと汗が吹き出し、心拍が上がった。座り込んで休憩したい所だが―――――


(;´・_・`)「ハァー……」


弾ナシの散弾銃が、今度は棍棒となって迫る


(´・_・`)「ほい」


一人目が横振り、若干遅れて二人目の縦振り。管理人の放つ迫力に比べたら、まるでガキが振るうプラバットだ
迫る横振りの銃身を叩き落とし、返す刀の裏拳で顎を弾く。寄生されてようが身体の作りは変わらないようで、呆気なく脳震盪で倒れた
続く二人目の縦振りは掴んで受け止め、軽く捻って引っこ抜く。そのまま銃床を額へと叩き込み沈めた


(´・_・`)「やべ」


後ろに控える残り二人は、薬室を開けて再装填の最中だった。流石に短期間で二回も≪纏≫を使うとこの後の仕事出来なくなってしまう
盾もバッキバキの範馬刃牙で防ぐ術は無い。しかし先人はこんな危機的状況に相応しい言葉を遺している。そう、『攻撃は最大の防御』と


(´・_・`)「ほい」


たった二発の装填に大した時間は掛からない。先に薬室を閉じた左の職員に向けて奪いたての散弾銃を投擲する
縦にクルクルと回転しながら飛んでいった銃は上手いこと『面』を放ち、職員は仰向けに倒れる
もう一人も、もたつきながらも装填を終えようとしている。投げるものはもうこの身以外残っていない

156 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:33:33 ID:HcLXXAEI0
(#´・_・`)「ンンンーーーーーーーー!!!!!!!」


頭を垂れて低く突進。懐に入り込み股下に腕を突っ込んで抱え上げ


(#´・_・`)「オんラッ!!!!!!!!!」


ボディスラムをお見舞いする


(#´・_・`)「ハァー、ハァー……寝てろや!!!!!!!!!!!」


軽めにしたのが不味かったのか、起きあがろうとした職員の頭を≪握≫の拳骨を落として眠らせる
しばし警戒を解かず構えていたが、後続はやってこない。大きく深呼吸をして≪纏≫で荒れた息を整えた


(;´・_・`)「ハァー……フゥー……」

/ ゚、。;/「センセ、これどかしてぇな」


バンクシーを処理した鈴が、通路を塞ぐ枯れた蔓の僅かな隙間から顔を覗かせる
ドラゴンブレスと大層な名を付けられども、所詮は火花。それだけでここまで急生長するとは末恐ろしい


(;´・_・`)「斧貸しただろ」

/ ゚、。;/「か弱い女子に野蛮な真似させる気なん?」

(;´・_・`)「うん」

/ ゚、。;/「うん???????」


頑張れやそれくらい

157 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:34:55 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「かたーい」

/ ゚、。 /「かたーいやあらへんねん」


蔓の壁を引き剥がし、鈴と合流する。新たな襲撃の気配は今のところは無い


(´・_・`)「心臓部はまだ見つかんねえか?」

/ ゚、。 /「そうやなぁ。どこまで行っても緑一色やし……妨害までされるようになってしもた」

(´・_・`)「妨害?」

/ ゚、。 /「見てみ」


鈴が指をさした先、壁に彼女の『目』が現れるが、すぐさま視界を遮るかのように葉が覆い隠してしまう
新たな防御応答として学習したか。考えてみれば俺らは今、一つの巨大なワンダーの体内にいるようなものだ。身体に害を為すウイルスが侵入すれば追い出すのが道理。バケモノだって例外では無い


(´・_・`)「仕方ねえな。テクノロジーに頼るか」


俺らとウイルスとの大きな差は、明確な備えをしているか否か。鈴の『目』が機能しなくなったからと言って、手掛かりを失ったわけではない
カフェオレのアプリにはマッピング機能も備わっており、隊員間での共有も可能だ。先程、ぎんいろ隊にも俺らの進行ルートを渡している
襲い掛かってきたカフェオレ隊員にも漏れなくi-ringは装着されている為、寄生後の行動履歴が残っている筈だ。一先ず、今し方ボディスラムで沈めた隊員の物からチェックしていこう


/ ゚、。 /「どない?」

(´・_・`)「こいつエッチなゲームのキャラを待ち受けにしてやがる」

/ ゚、。 /「今そんなんええねん」


太腿の幅が顔面よりデカい女キャラを尻目に、ルート履歴をホログラムとして映し出す。すると、奇妙な形が浮かび上がった

158 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:37:25 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「こりゃ……」

/ ゚、。 /「木ぃみたいな形やなぁ……」


校舎を模した第三階層の特徴は、無限に広がる『建築物』だ。廊下や曲がり角は直線、直角であり、階段も踊り場のある折り返し式だ
京都の街並みのような碁盤目状の構造がひたすらに続いている。変わり映えする変化があるとすれば、ワンダーのナワバリくらいだろうか
しかし彼らは、第三階層の構造上、不可能な移動ルートを進んでいる


(´・_・`)「ここがスタートとして……垂直に昇ってんのか?」


まず目につくのはペンで丸く塗り潰したかのような最下層。彼はこの空間をグルグルと移動している
その場所を起点に、各階止まりのエレベーターのようにワンフロアずつ登っては徘徊していたようだ
不可解な点は、登り降りの移動に『階段』をつかった形跡がみられない事。今し方エレベーターの喩えを出したが、第三階層にエレベーターは『基本的には』存在しない
別階層への入口として、極低確率で発生したりもするが、乗り込んだ瞬間には第三階層から姿を消す
実際にこのルートを再現するとなると、床と天井をくり抜いて梯子を通すしかないのだ


(´・_・`)「ふむ……」


では彼らはどのように移動し、どこから現れたのだろうか?


(´・_・`)「こいつらが現れる瞬間は見れたか?」

/ ゚、。 /「そこまでは見れてへんなぁ。元々おったんかもしれんし」

(´・_・`)「だがそう遠くから現れたワケでもなさそうだな……」


このまま廊下を進んで階段を見つけたところで、目的地である根っこの位置まで降るには相当な手間と時間を強いられる
裏を返せば、寄生体が使っていた特殊ルートさえ見つけてしまえば最短で向かえると言うことだ。希望が見えてきた


(´・_・`)「秘密の通路を探すっきゃNight」


(´・_<`)ミ☆ Wink……


/ ゚、。;/「ウワッ……見当はついとるん?」

159 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:40:16 ID:HcLXXAEI0
鉄コン製ならとにかく、ここは木造主体の狭間だ。ぶち抜き自体そう難しくはない
教室や廊下の空間にも、有害物質や障害物など、植物の生長の妨げになるようなものはない
つまり、『改築のしようは幾らでもある』のだ。縄張りを広げるだけではなく、侵入者を迎撃する為に兵を送り込む直通路だって、作ろうと思えば作れる


(´・_・`)「少し歩くか」


寄生体が現れた廊下の突き当たりまで歩く。その先はT字に分かれてあり、左右にまた長い廊下が続いている
植物に遮られ、蛍光灯の灯りは弱く、奥に行く程に薄暗闇になっていく
懐中電灯を取り出し照らしてみたが、灯りが届く範囲に突き当たり等は見当たらない


(´・_・`)「左右どちらもそれっぽいもん無し……」

/ ゚、。 /「ほな教室やろか?」

(´・_・`)「だろうな……ちょっと離れてろ」


斧を振るい、壁を抉ってみる。『ザク』という野菜を切ったかのような手応えの後に、蔦の下に隠れているガラス窓の割れる音が届く
軽く≪流≫をして植物を振り払い、教室の中を検める。侵食こそされているが、廊下ほど酷くはない。防御応答の差だろう


/ ゚、。 /「日ぃ暮れるで……」

(´・_・`)「ふむ……」


鈴の言う通り、この方法で教室を一つ一つ確かめては時間がかかり過ぎる
しかしガチガチのセキュリティで固めた金庫ならまだしも、植物とは無駄の無い生命体。構造は単純である筈だ

160 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:42:02 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「えーと……」


第三階層の教室は、奥行7m×間口9mの広さ。廊下に面してる出入り口は、教室の前と後ろに二箇所。その間は4メートル程度。
教室同士の間隔は、1メートル弱程度か。つまり……


(´・_・`)「この辺……?」

/ ゚、。 /「戸?」

(´・_・`)「うん」


教室の戸の場所に当たりをつけて、蔦を引いてみる。ここはハズレ
4メートル歩き、もう一度壁を引く。ハズレ。1メートル歩いて、引く


(´・_・`)「ビンゴ」


やや軋みがあるが、蔦に覆われた引き戸が僅かに開いた


/ ゚、。 /「なるほど。壁一面の蔦は、通路の入口を隠すカモフラージュも兼ねてるんやな」

(´・_・`)「そういうこ……とッ!!」


戸に斧をめり込ませ、柄を捻って蔦ごと引っぺがす


/ ゚、。 /「ワォ」


室内は予想通り、敷居を残して床と天井が綺麗にくり抜かれている。当然、照明の類も取り除かれている為、上も下も吸い込まれるような暗闇だ
空間の中央には巨大な『茎』が聳え立っている。もはや『大樹』と呼ぶべきだろう。そいつが背骨のように、階上から階下まで真っ直ぐ伸びていた
土台はしっかりしていないのか、軋み音を鳴らしながらゆったりと揺れている。まるで呼吸で身しているかのようだ
上階からは編み込まれた太い二本の蔓が、教室の入口に合わせて垂れ下がっている。これがどこから伸びてどこまで続いているのだろうか

161 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:43:16 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「まぁまぁ広いな……」


くり抜かれた範囲は、3×3の正方形で教室九つ分くらいか。狭間の規模からすれば些細なもんだが、実際に立ち会うと相当広く『喰われて』いるようにみえる。面積にすれば600㎡近いぞオイ


/ ゚、。 /「これわざわざ昇り降りせなあきませんの……?」

(´・_・`)「いや、それなら一本でいい。二本で一組になってんなら……」


試しに、蔓を一本掴んでみる。すると、センサー機能付きのエスカレーターのように自動で動き始める
右は上へと昇り、左は下へと降る。シンプルな滑車の原理で動いているようだ


/ ゚、。 /「ハァー、よぉ出来てはるなぁ。動力も寄生体で補っとるんやろか」

(´・_・`)「かもな」


後は蔓を掴んで降りれば良いだけだが、そう単純に済まないのが狭間の厄介な所だ。石橋は叩き過ぎに越したことはない


(´・_・`)「炙り出してみるか……」


防御応答、寄生体の迎撃手段。それに加えて、各階のアクセスまで整えてある点から、このワンダーはシンプルなシステム化が施されていると見ていい
つまりそれを逆手に、刺激に対する反応を観察すれば、どの位置に重要拠点があるかはある程度割り出せる。草如きが人間様に敵うと思うな
試しに壁に奴らのストレスになる程度の≪流≫を行い、反応を見る。すると、階下の暗闇が『もぞり』と蠢いた


(;´・_・`)そ「ウワーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!??????」


すかさず懐中電灯を向け、悲鳴を上げた。誰だって中型犬サイズの『蟻』が、真っ暗闇の足下からドッと涌いて出たらこうなるに決まっている
しかも奴らの背中には、緑色の『赤ん坊』が負ぶさるように寄生している。ガキや職員に取り憑いたものと同じだ。そいつが余計にホラー味を助長させる。ふざけんな。くたばれ

162 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:47:07 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。;/「キッショ……」

(;´・_・`)「キッショ……」


しかし一つわかった事がある。この蟻は『第三階層』の在来種ではなく、『第六階層』からの外来種だ。ワンダーは各階層毎に異なる生態を持ち、昆虫をモチーフにした『蟻型ワンダー』は第三階層の環境とはマッチしない
植物ワンダーは順調に領土を広げている。領地を獲得した後は何をするだろうか?答えは下からウジャウジャと壁を這い登ってきている
『住民』を送り込む。獲得した領土の『防衛力』の獲得の為であり、『生態系の定着』の為でもある。ではその住民はどこから舶来するのか?考えるまでもない。『生まれ故郷』からだ


(´・_・`)「これだけなら降りても大丈夫そうだな……」

/ ゚、。;/「アンタ、簡単に言うけどなぁ……」


知性は図体のデカさに比例するのか、それとも生命力を忌避してか、壁沿いを覆い尽くす蟻の大群は、一定の距離を保って此方を睨め付けている
今はまだ警戒に留まっているが、俺らが一メートルでも下に降りれば、たちまち群がり食い尽くされてしまうかもしれない。嫌な死に方過ぎる。ハムナプトラかよ
これはラグビーで言う所の『スクラム』で、古代ギリシャで言う所の『ファランクス』だ。この先に『見られたくない、知られたくないものがある』と、特大の立て看板で教えてるようなもんだ


(´・_・`)「わざわざ迂回すんのも癪だろ。腹括れ」

/ ゚、。;/「ハァ……気ぃ進まんわぁ……」


バッグから養生テープを取り出し、光源を下に向けた懐中電灯をブーツに巻きつける
多少不格好だが、これから両手が塞がっちまうので致し方ない。サイリウムでも持ってくりゃ良かったが、どのみち回収する手間が発生する


(´・_・`)「気ぃ進まんついでにお願いがあるんだが」

/ ゚、。;/「何……ちょお!?センセ!?」


鈴を正面から抱き上げる。蟻の集団に狙われてる以上、個々で降りるより『纏っている』方が対処しやすい
惜しむべきは鈴の服装が開脚に向かないことだ。片手は彼女の身体を支えておかねばならない

163 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:47:37 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「かなり無茶な降り方するから、援護射撃頼む」

/ ゚、。;/「如何なる理由があろうと、女の子を急に抱き上げたらアカンて親御さんに教わらんかった?」

(´・_・`)「産みの親も育ての親もクソ中のクソでね」

/ ゚、。;/「ええ教育受けはったんやなぁ」

(´・_・`)「やかましい。行くぞ」


短い助走をつけて、教室の中央に向かって跳ぶ。主柱である幹に斧の刃を突き立てる。やや沈んだものの、刃はしっかりと喰い込んだ


/ ゚、。;/「センセ!!来るで!!」


鈴は左腕を俺の首元に回し、右腕は肩越しに真っ直ぐ伸ばしている。無論、ロマンチックな意味合いは含まない
俺の背後からでっけえ蟻が波のように押し寄せてるのだ。ロマンスの神様も裸足で逃げだすに違いない
この状況下で折角の銃の名手を、ただ乗りさせるなんて勿体無いことはしない。鈴が蟻へと発砲すると同時に、斧に≪流≫を施す。二人分の『重し』に引っ張られ、幹はチーズのように裂けていく。この反応は寄生管理人で確認済みだ


/ ゚、。;/「落ちとらへん!?」

(´・_・`)「いいから蟻にだけ集中してろ!!」


立て続けに耳元で弾ける銃声と風切音。自然落下と見紛うほどの速度で降りる。撃ち抜かれた蟻の体液か何かが頬を掠めた。鈴の涎かもしれない。相当嫌
足下は未だ暗く、幹が無限に続いているような錯覚を感じる。無限など無いとカッコいい言葉もあったりするが、最悪なことに狭間に表世界の常套句は通じない。宇宙にだって果てはあるんだぞ
しかしテクノロジーは嘘を吐かない。ルート履歴の全長を合わせても、精々五十メートルあるかないかだった。ビルだと相当高くね?どうすんのこれ?


(´・_・`)そ「ッ、来た!!」


蔓はまだまだ下へ伸びているにも拘らず、懐中電灯の丸い光は、『暗闇に突き当たり眩さを増している』
光学迷彩か擬態か知らんが、そこには光を通さない『物体』があるという証明だ。小賢しい真似しやがって

164 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:49:51 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「速度落とす!!舌噛むなよ!!」

/ ゚、。;/「蟻はっ……!!」


≪流≫の供給を解く。斧に滞留していた生命力も蔓に吸われ、植物の繊維が刃に絡まり始める。落下速度は著しく落ちた
鈴の懸念通り、蟻には『減速』という意識は無い。背中にドシンドシンと二、三匹飛び乗られる。昆虫特有の踏ん張りの効く鉤爪が筋肉へと食い込み、思わず呻きが漏れた


(;´・_・`)「頼む!!」

/ ゚、。;/「ああもう!!≪流≫!!」


鈴から俺の身体を介した≪流≫で対処する。悲鳴こそあがらないが、脚が焼き消えた蟻は簡単に身体から離れていく
俺の≪纏≫ですぐさま焼き殺せば手っ取り早いが、知っての通り燃費がバカ悪い。最悪、握力が尽きて諸共落下死もありうる


(´・_・`)「やべ」


斧の方にも若干流れた。刃は再び鋭利さを取り戻し、蔓を引き裂いていく。着地点までに完全停止は無理そうだ


(#´・_・`)「そらよッ!!」


灯りを隔てる『膜』を右足で踏み抜く。厚いセロファンのような膜は手応えなく破け、羽ばたき音を立てて一斉に崩壊する
正体を確かめる間もなく、待ち構えていたのは俺ら二人を丸々呑み込んでしまえそうな、巨大な『芋虫』の大口だった


(#´・_・`)そ「ウワーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」


咄嗟に幹を蹴って斧を外し、背面跳びの姿勢で空中へと逃げ出す。芋虫も思いっきり仰け反って頭から迫ってきた
斧は弾みで手放す。良い感じに壁に突き刺さるか『室内』に入ってくれるのを願いながら。どうしても手を空ける必要があった

165 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:50:16 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「届……」

/ ゚、。;/「もうちょい左!!」

(;´・_・`)「いたオッケェ!!!!!!!」


上階から垂れ下がる昇降用の蔓を掴む。最初から刺激せずにこれで降りてたら楽だったんだホント誰やいらんことした奴
背筋から力を入れて脚を後方へと蹴り出し、振り子の動きに勢いをつける。壁に激突する寸前で蔓から手を放し―――――


(;´・_・`)そ「ぐっ……!!」

/ ゚、。;/「つっ……!!」


背中から窓ガラスを突き破り、植物の侵食夥しい教室内へと転がり込む
少し遅れて、『芋虫』のデカい顔面が壁を粉砕して突っ込んできた


/ ゚、。;/「もう堪忍してぇな!!」

(;´・_・`)「待て鈴」


芋虫は俺らの足下スレスレまで迫ったが、僅かに届かなかったのか、執拗に追うことはせずに幹へと戻った


/ ゚、。;/「ハァー……」

(;´・_・`)「楽しかったか?」

/ ゚、。#/「この……ドアホ!!」


グリップで胸元を強めに殴られた

166 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:51:37 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「さてさて、なぁーにを隠してやがった〜?」


俺らが降りて来た大穴は、階下から差し込む光で懐中電灯が必要ないほどの明るさを放っている
それに時折、音が聞こえるほど強く風が吹いて来る。第三階層にはあり得ない現象だ


/ ゚、。 /「穴や」

(´・_・`)「え?」


腰が抜けたのか、教室の真ん中でへたり込む鈴が確認もせず答えた
幹の方へと向き直ると、待機状態に戻った芋虫から鈴の『目』が発現している。植物も他ワンダーにまで防御応答は発動しないらしい


/ ゚、。 /「この大木、第六階層から境界を通じて直接生えて来とる。明かりも風も、第六階層からや」

(´・_・`)「つまりー……開きっぱなか?」

/ ゚、。 /「開きっぱなやなぁ」


俄かには信じられず階下を覗き込む。第三階層にはない強い自然光に目が眩んだが、それも慣れて来ると今度は鮮やかな緑が見えた
その緑へ向けて幹は時折うねりを見せながら垂れて……いや逆だ。緑から『伸びている』。時折過ぎる白い靄は『雲』だ


(;´・_・`)「……」


開いた口が塞がらないとはこの事か。このクソッタレ植物は第六階層の地上から雲が発生するほどの高さで境界を開いて侵入してきたのだ。それもタチの悪いことに、『根っこ』は第六階層の地上に在るときた


(;´・_・`)「どないせえ言うねん……」


どう考えても俺ら二人だけじゃこの植物は手に余る。千年杉をカッターで切り倒す方が楽なんじゃねえの?
そもそも当初の目的は狭間に迷い込んだウチの利用者の捜索だ。根っこの方に餌としてストックしてるって踏んでたのに見つけるどころか辿り着きもしねえじゃねえか


/ ゚、。 /「……」


しかし頭を抱える俺を他所に、鈴は落ち着いた様子で思案していた

167 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:54:10 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「なんか引っ掛かるか?」

/ ゚、。 /「割に合わん」

(;´・_・`)「追加料金は無しだぞ」

/ ゚、。 /「そうやのぉて、いや追加料金はキッチリ貰うけど」


なんやこいつ


/ ゚、。 /「センセ、おかしと思わへん?こぉんな大きなモンおっ立ってるのに、捕まえたヒトやワンダーは『餌』やのぉて『駒』として扱っとる」

(;´・_・`)「は?いや、餌を集める為の駒なんじゃねえの?」

/ ゚、。 /「そこや。ウチらはアレの目的を根本から履き違ぉとるかもしれへん」

(;´・_・`)「……」


言われてみれば、寄生体には数知れず遭遇したが、『喰われた形跡』のようなものは今まで見たことがない
食虫植物であるなら、わざわざ『根っこ』を介さずとも『葉』で獲物を誘い込んだり捕らえたりして消化する物が多いのだ。どっかに干からびた死体があっても不思議じゃない


/ ゚、。 /「そもそも、資源の乏しい第三階層を『選んで』侵入して来たとは思われへん」

(´・_・`)「いくら雑草でも、土も水も自然光もねえ場所じゃそう長くはねえだろうしな」

/ ゚、。 /「そう。ってなると、植物は『故意に侵入してきた』んやのぉて、『偶然入り込んでしまった』んやない?」

(´・_・`)「そりゃまぁ……割に合わねえってのは?」

/ ゚、。 /「植物の生長、第三階層の侵略に必要な養分を補う気なんやったら、もっとガンガン食べていくんやないかって。それこそ、駒なんかにせず手当たり次第に」

(´・_・`)「すると……」


改めて大穴を覗き込む。雲すら貫く大樹が行き着いた先は、光も水も無い渇いた迷宮。今は枝葉を伸ばしてはいるが、いずれ生長の頭打ちが来るのは明白だ
恐らく、こいつはどこかの段階で察したのではなかろうか?この階層の環境は、自身とは合わないと


(;´・_・`)「こいつの目的は、侵略とは真逆ってことか?」

/ ゚、。 /「多分やけど」


鈴が頷く。植物が餌ではなく『駒』を求めたのは、俺らの当初の想定とは真逆の、『脱出』の為だったのだ

168 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:55:52 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。 /「火に反応して急生長する防御応答は、第六階層にいた時に習得したか、迷い込んだ当初にカフェオレ隊員から与えられた『脅威』を学習して得たか。どちらにせよ、一度得た『進化』は簡単に『退化』でけへん」

(;´・_・`)「第三階層の侵略に見えた生長速度も、環境変化の為じゃなくただ単に『自分じゃ止められない』だけ、か……そうだとして」


鈴の仮説に異論は無いが、問題は植物自体じゃなくて『ガキ共がどこ行ったか』だ
仮に植物をどうにか出来たとして、結局見つけられなかったらくたびれ損もいいとこだ


/ ゚、。 /「慌てりな。職員の辿ったルートをもういっぺん見せてぇな」

(´・_・`)「ああ……ほれ」


ダウンロードしておいたルートマップをホログラム化して映し出す
相当降ったので、俺らは最下層近くまで移動した筈だ。この付近でウロチョロしてた形跡がある


/ ゚、。 /「見た感じ大樹の中にも入っとる。ここで作業させられとるのかもしれへんなぁ」

(´・_・`)「入れるほど掘ったんならテメーらだけで解決出来るんじゃねえのか?」

/ ゚、。 /「防御応答」

(´・_・`)「ああ……」


ある程度は寄生体の手で掘れるが、それを大樹が『攻撃』と見做して再生しているのか


/ ゚、。 /「ふぅーん……センセ、さっきの炙り出し、もういっぺんやってくれはります?」

(´・_・`)「蟻来るぞ」

/ ゚、。 /「ええから、はよ」


言われた通り、壁の蔦に微弱な≪流≫をする。するとすぐさま崩壊した壁際から蟻がうじゃりと湧き出て俺らを取り囲む
幹に張り付いた芋虫も、再び仰け反って悍ましい顔面を向けてきた。口の中はヤツメウナギのように針状の牙に覆われていて、喰われようもんならあっという間にミンチにされてしまうだろう
だがそれらの寄生体は一気呵成に襲いかかって来ず、一定の距離を保って立ち止まり、待機した


(´・_・`)「わぁー……」

/ ゚、。 /「これでハッキリした。寄生体は大樹に明確なダメージを与えられるモンを探してはったんや」

169 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:57:58 ID:HcLXXAEI0
なるほど、奴らは俺たち二人が『生命力』という破壊手段を持っていることを、これまでの戦闘で『学習』した
襲いかかって来ないのは、駒として扱う為の『寄生』が出来ないからだ。だからと言って言葉やジェスチャーで助けを求めるまで進化が追いついていないので、こうして『察して貰う』他なかったってワケか


(´・_・`)「落ち……降りた時に襲いかかって来たように見えた蟻や芋虫も、実際は『迎えに来た』ってのが正解だったのか

/ ゚、。 /「狭間の『外』にまで進出したのも、第六、第三階層のワンダーやカフェオレ隊員やったら埒が開かへんかったからかもしれへんなぁ。あのアホ、失踪に関しては何も仕込んでない説出てきはったで」


( ・`ー・´)←あのアホ


(;´・_・`)「だからって被害は出てるしなぁ……」

/ ゚、。 /「まぁ後でキッチリ詰めるとして」


/ ゚、。#/「今、落ちたて言いかけたよなぁ……?」

(;´>_<`)そ「ぐえええぇーーーーー!!!!!悪霊退散悪霊退散!!!!!」


ブチギレて般若みたいな顔面になった鈴に襟を絞められ、俺は思わず十字を切った

170 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 11:59:26 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――




植物を中心とした第六階層のワンダーは、昆虫を使役することで更に機能性を増していた。特筆すべきはやはり『蟻』の存在だ
元々、蟻は昆虫の中でも『チームワーク』に長けている。餌の調達から巣作りは勿論、中には男塾名物万人橋のように、身体を使って橋を組み上げる事もある
奴らは現在、大樹の外周から第三階層の壁までスクラムを組み、足場として機能している。鈴は虫の床に踏み込むのを嫌がって教室で待機していた


/ ゚、。 /「どないー?」

(´・_・`)「いたわ。残りのガキ共も全員見つけた」


鈴の予想通り、大樹の内部は『かまくら型』の空洞になっており、そこで黙々と内壁を削る三人のガキと四人のカフェオレ隊員の寄生体を見つけた


(  ω )「」


その中には勿論、文彦の姿もある。他の連中と違うところと言えば、全く手を動かしていない所くらいか。まぁ蟻も何割かサボってるって言うしな。こういう時くらい性格出すなや

171 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 12:01:55 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「はいはいはい出て行ってください」


寄生体は俺らが協力すると理解してからは素直に指示に従ってくれている
恐らく連中にとっちゃ人間も餌には違いないのだろうが、あくまで脱出優先で動くって判断か。合理的で『虫』のいい奴だ
しかし俺らも俺らで人質を取られているような状況だ。腹立たしいがここは何事もなくWin-Winで切り抜けたい


(´・_・`)「しっかしまぁ……」


全員が鈴のいる教師まで出て行ったのを確認した後、アーチ型にくり抜かれた穴から大樹の中へと足を踏み入れる
むせ返るような青臭さだ。床には削り取られてボロボロに崩れ落ちたであろう茎のクズが、牡丹雪のように積もっている
中の広さは、両手を広げた成人男性が二人入るくらいだろうか。天井は2メートル近い身長の俺が結構屈まないと入れないくらい低い


(´・_・`)「どれ……」


懐中電灯で内壁を確認すると、細かな引っ掻き傷は無数にあるものの、大きな抉れなどは見当たらない
丸腰のガキ共はとにかく、カフェオレ隊員は刃物か何かで削っていた。ちっさい傷だけで済むとは思えない
試しに爪で引っ掻いてみる。水分を多く含んだ表皮は容易く削り取れたが、傷口からブクブクと泡が立ち、すぐさま再生した


(´・_・`)「終わらねえわけだよ……」


恐らく途中までは掘り進められてはいたのだろう。だが中心部近くまで到達した段階で植物自体が『攻撃』と判断し、防御応答として再生能力を身につけた
これで鈴の予想は正しいと証明された。お次はこいつをどう『追い出すか』だ

172 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 12:02:33 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「んー……」


大樹から出て、俺らが降りて来た跡を見上げる。≪流≫の影響で、真っ直ぐ縦に切れ込みが入っている。やはり再生の兆しは見られない
生命力を使えば切断は難なく可能だ。しかし『切る』事は出来ても『倒す』事は出来ない
例えば斧を使ったオーソドックスな木こり方式で切断した場合、通常なら倒れる『空間』がある。木が生えてんのは大体外なんで広い
だがこの第三階層は、大樹の四方を教室の壁で囲っている。ある程度は傾いても、壁にもたれ掛かる形で残ってしまう
切り離せるなら朽ちるのを待つのも手だが、倒せない以上、切断面は多少ズレるだけで結局はどこかしらで繋がりが残ってしまい、そこを起点に原状回復されてしまうかもしれない
火は勿論使えないし、唯一の有効手段である生命力で燃やし尽くそうにも、この大きさだ。体力どころか寿命を使い切っても足りはしないだろう


(´・_・`)「うーん……」


一朝一夕で片付くもんじゃねえか。一度持ち帰ってカフェオレ側と協議すんのが良さそうだ


/ ゚、。 /「センセ、ちょっと来てやー」


鈴に呼ばれ、教室へと戻る。短い道中、手の届かない場所にブッ刺さってる斧を見つけた
ダメ元で足下の蟻を軽く叩いて斧を指し、とって来てもらえないか頼んでみる
すると蟻は、仲間数匹を引き連れて斧のある場所へと向かっていった。なんか上手いこと躾したら使えるんとちゃうかこいつら


(´・_・`)「どうし……」

/ ゚、。 /「あの」


(  ω )「」


/ ゚、。 /「この子だけウチに抱きついて離れへんのやけど」

(´・_・`)「あー…………」


(  ω )「」カクカクカクカク


/ ゚、。;/「イヤッ、腰振り始めよった!!」

(;´・_・`)「オイオイオイいくらガキでもシャレになんねえぞ!!」


もう世に放たない方がコイツの為かもしれない

173 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 12:04:28 ID:HcLXXAEI0
<ゴッ

<ブヒィ!?


(´・_・`)「よし」

/ ゚、。;/「お客にしてええゲンコツちゃうで……」


発情豚にお灸を据え、鈴から引き剥がす。だからモテねんだよオメーはよ


(´・_・`)「アレをすぐに除去すんのは無理だ。一旦帰ってカフェオレに支援させる」

/ ゚、。 /「異議なし。せやけど、『この子ら』はどないするん?」


鈴は豚の頸付近に取り憑いた小さな寄生物を指す。連れ去られてそう時間が経ってないからか、エカチャンの小指の爪程度の大きさで、取り除くのもそう手間では無さそうだが
協力関係を結ぶと決めた以上、易々と退治するわけにもいかない。どうにかお互いに無傷で分離させる方法を見つけなければ


(´・_・`)「これもカフェオレの研究員に任すしかねえんじゃ…………」

/ ゚、。;/「ちょ、ちょっ……センセセンセセンセ」

(´・_・`)「あんだようるせえ……」


慌てた様子で肩を叩かれ、顔を上げると


ウワーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!??????「(;´・_・`)そ」


デカい芋虫が口から伸ばした無数の触手でカフェオレ隊員の身体を舐ってた


(;´・_・`)「こんなん百年前の薄い本でも中々ねえって!!!!!!」

/ ゚、。;/「言うとる場合ちゃうで!!はよ助けな!!」

(;´・_・`)「で、でもぉ……」

174 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 12:07:00 ID:HcLXXAEI0
余りにグロい光景に尻込みしていたら、芋虫は触手を放して頭を引っ込めた
『確認してみろ』とでも言いたげな行動に、恐る恐るネチャネチャになった隊員に近付いてみる。すると


(;´・_・`)「寄生が解かれてる……」

/ ゚、。;/「え?ホンマ?」


隊員の身体から、寄生物が綺麗に取り除かれていた


(;´・_・`)「この芋虫は寄生物の管理人ってとこか。いやー、ビックリした」

/ ゚、。;/「めっちゃ話通じるやんここのワンダー」


どうやら、芋虫は大樹と共生関係にあるらしい。しかしどうして人型の寄生物なんて使ってんだろうか
それはさて置き、芋虫は続いて別の隊員へと触手を伸ばす。話が早くて助かるが、少し待って貰おうか


(´・_・`)「ああ待て待て!!そいつらは後でいい!!先にこの豚とガキ共を頼む!!」

/ ゚、。 /「センセ?」

(´・_・`)「豚とガキは無関係者だ。それに人質は置いといた方がいい。『お互い』の為にな」

/ ゚、。 /「お互……ああ」


鈴は納得したのかポンと掌に拳を落とすと


/ ゚、。 /「ホンマ悪いお方やなぁ、センセ」


悪戯っぽくクスクスと笑った

175 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 12:08:56 ID:HcLXXAEI0
これで寄生問題は解決したが、意識の回復には時間が掛かるようだ。ガキ共は先にねぐらの方に戻すとして、残りは『お話』が済むまで置いておこう
道中、置いてきた隊員の寄生体も回収しないといけないし、やる事は山積みだ


/ ゚、。 /「センセ、斧」

(´・_・`)「お、おお。どうも」


先程の指示通り、蟻達は斧を手元まで持って来てくれた。すごい指示通りに動いてくれる。もうロバいらんやん


/ ゚、。 /「帰りはこの子らに着いて来て貰うんか?」

(´・_・`)「そう……だな」

/ ゚、。 /「えらい歯切れが悪いなぁ」

(´・_・`)「なーんか、もっと楽に帰れる方法がある筈なんだよ」

/ ゚、。 /「そんなワガママ言うたかて……あ」

(´・_・`)「あ」


ほぼ同時に、ピンと閃いた


(´・_・`)「そうだよ見落としてた。ガキ共がスポーンしたのはこの付近だ。ってこたぁつまり」

/ ゚、。 /「近くにねぐらと繋がっとる境界がある」


偶然だろうと故意だろうと、一度境界が繋がれば『再接続』も可能だ。事実、ウチにも大桜堂にも第三階層専用の境界を残している
その場所さえわかれば、帰還に必要な時間と労力はグッと短縮される


(´・_・`)「それに、『蟻』か」


蟻はフェロモンを使って仲間に餌のある位置へと誘導する性質がある。なんか以前もこんな説明した気がする
それを辿れば、案内は容易い。バカ共の運搬もやってくれるだろうし、濡れ手に粟とはこの事か

176 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 12:09:58 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「後は……」


隊員のi-ringを拝借し、付近のロバとの通信を試みる


(´・_・`)「あるぞ。やっぱ持ち歩いてたな」

/ ゚、。 /「近いん?」

(´・_・`)「ここから二階降る」

/ ゚、。 /最高やな」


ロバには『死に機能』と呼ばれる緊急プログラムが搭載されている。その名も『anywhere door』。和訳で『どこでもドア』である。しずくはこれをいっつもダミ声で独特のイントネーションで言う
ロバの電力を使って境界をこじ開けるという一見便利な機能だが、残念なことに使用されたケースはほとんど無い。え?原理?聞いてわかるんなら説明してやってもいいけど?
その理由として、狭間の境界のランダム性がある。適当な場所で適当に境界を開いたとしても、それが望み通りの階層、もしくは『表』の世界に通じているとは限らないからだ
安全に使用したければ、カフェオレが管理しているように、行き先が確定している境界を見つけなければならない


(´・_・`)「よし、俺は置いて来たカフェオレ職員の回収に……」


言い終える前に、ドサドサと立て続けに重たげな『荷』が投げ込まれる
繭のように包まれたそれらは、ちょうど『七つ』。ここに来るまでに対峙した寄生体職員と同じ数だ


(´・_・`)「こりゃ……」


斧の刃で慎重に繭を破ると、予想通り気を失ったカフェオレ職員達がミイラのようにパッケージングされていた。ミスターカーメンがいる可能性がある


/ ゚、。;/「うーわ……」

(´・_・`)「外になんかいんのか?」

/ ゚、。;/「デカ蜘蛛」

(´・_・`)「何でも見えちまうのも考えもんだな」


多分名前はアラゴグとかそんなんだろう。ハァー蜘蛛蜘蛛デカい蜘蛛アヨイショ

177名無しさん:2024/11/17(日) 19:25:03 ID:5fqUiFs.0
支援

178 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:36:36 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「よし、速攻でロバ回収してねぐらに戻るぞ」

/ ゚、。 /「了解」


ガキ共の寄生物も無事取り除かれたようで、粘液まみれで寝っ転がっている。ネトネトにする必要ある?
蟻達にガキの運搬と境界への案内を頼むと、これもまた快く引き受けてくれた。話が通じ過ぎて怪しいくらいだ
寄生されたままの職員を多く残しているのが功を奏しているらしい。解放人数より人質の方が多いのだから、この程度は譲歩として受け入れてくれているみたいだ


(´・_・`)「鈴」

/ ゚、。 /「わかっとる」


鈴は自らの目を指して、それを大樹の方角へと向けた。目目連の『目』が届く範囲ギリギリまで監視はするというハンドシグナルだ
協力すると言っても所詮ワンダーはワンダー。ヒトを糧にするバケモノには変わりない。突然の裏切りや仕込みには十分警戒するに越した事はない


/ ゚、。 /「ところでセンセ。あの大樹をどうにかするまで面倒見はるん?」

(´・_・`)「まー、泣きついては来るだろうな」

/ ゚、。 /「大桜堂の方で引き受けよか?」


ロバの元へ向かう道中、鈴から優しさを感じんでもない提案をされた
しかし付き合いの長い俺は身に染みて知っている。こいつがこういう態度を取る時は、決まって頭の中で算盤を弾いているのを


(´・_・`)「金の匂いがしたか?」

/\、¥ /「ええー?ウチは忙しいセンセを想って提案したんやで?言わば愛や、愛」

(´・_・`)「目が円になってんだよきり丸かオメーは」


商売人なんてこんなもんだろう。あわよくばカフェオレ側だけじゃなく俺からも搾り取ろうという魂胆が透けて見える

179 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:39:06 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「どの道、俺の力が必要になるんじゃねーの?オメーんとこの従業員がまとめて二、三日足腰立たなくなっても良いってなら譲るが」

/ ゚、。;/「う……ほ、ほな、7:3で請け負ってもええで?」

(´・_・`)「ホォー?俺を差し置いて7分の働きをしてくれると?」

/ ゚、。;/「ん〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!そんないけずせんといてぇなぁ!!」


大桜堂の連中は確かに器用さには長けるが、御三家の中では『出力』に欠ける
今回のような大規模な除去作戦には、俺のような『大容量』が必要になるのを彼女も重々理解しているのだ。そうでなければ、こんな可愛げある駄々など捏ねない。もっとエグいことする。女はみんな恐い


(´・_・`)「わかったわかった。それで構わねーよ」

/ ゚、。;/「へ?ええの?」


だから、ここでデカい貸しを作っといて損はない


(´・_・`)「大桜堂の若女将は、受けた恩はキッチリ返してくれるって評判だからなぁ?」

/ ゚、。 /「ハァ……そこは気前よぉ譲って甲斐性見せるとこどすえ?センセ」

(´・_・`)「ハハ、俺も一応は経営者でな」

/ ゚、。 /「ハイハイ。ここはセンセに免じて、貸しにしといたるわ」


呆れたような物言いだが、戯れるように肩を当ててくる辺り上機嫌が隠せていない
この憎めなさも、彼女がやり手の商売人としての強力な武器なのだろう。侮れん奴だ


/ ゚、。 /「センセ、ロバ見つけたで!!はよ帰ろ!!」


鈴は無邪気な少女のように、半壊して蔦に覆われてるロバを指して駆け寄る
微笑ましい光景と、ようやくガキ共を連れ戻せる安堵感に頬が緩んだ。その刹那―――――


(;´・_・`)そ「ッ!!」


前方から僅かに臭った殺気が、俺達がまだ『狭間』という危険地帯に身を置いているという現実を思い出させた

180 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:40:14 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「す」


壁が、蔦が、ハの字に広がる二つの刃によって突き破られる。鈴は足を止めたが、回避にまで致らない
名前を叫ぶよりも早く、身体は反応していた。斧を振り上げ、『刃物』へ向かって投擲する
それは円の軌道を描きながら鈴の側を通り抜け、刃の『股』へ衝突して火花と鋭い鋼鉄の悲鳴を上げ、軌道を上方向へと逸らせた


(#´・_・`)「ず退がれ!!蟻共もだ!!」


ガキを運搬する蟻は差し迫った危機に素早く反応し、身を潜めたのに対し
鈴は再び腰を抜かし、ポカンと敵対ワンダーを見上げていた


(#´・_・`)「何してっ……!!」


パックリ裂けた壁の穴から、軽やかに身を翻して姿を現した敵対ワンダーを跳び蹴りで突き離す
そいつは、天井スレスレの大きな体躯を、薄暗い室内でもハッキリとわかるくらい鮮やかな『赤』のワンピースで包み
重油を流したような重く長い黒髪と、それに相反して死人に等しい白い肌をしていた
顔面はしっちゃかめっちゃかに描き散らしたガキの落書きのように乱雑で、ガバァと開いた口の中は、これまたゾッとする赤で塗り潰されている
腕と脚は枯れ枝を思わせる程に細いが、手は引き伸ばしたかのように長く大きく、青白い血管がそこらを這いずり回っている
その手には、ヒトの胴を容易く両断出来るほど大きな『鋏』。開閉を繰り返す度にシャキンシャキンと威嚇の音を鳴らしている


(;´・_・`)「そう易々と終わらせてくれねえか……」


名称、『裁断女』


[ぎゃはっははははははははははひひひははははぁああはははははぁはあひひあはあひひひひひひぃいぃいぃいいいぃい]


俺でも手を焼く第三階層危険地帯のワンダーが、獲物を見つけた悦びで大きく嗤った

181 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:42:54 ID:HcLXXAEI0
(;´・_・`)「鈴」

/ ゚、。;/「ハッ、ハッ……」

(#´・_・`)「鈴!!」

Σ / ゚、。;/「ひゃい!?」


ショック状態から怒鳴り声で無理やり引き戻す。気を失わなかっただけ上等と褒めてやりたいが、彼女は『此方側』の半妖だ。腰を抜かして過呼吸なんて以ての外だ
だが『無理もない』と言い聞かせている自分もいた。彼女の能力は視覚の拡張。『大桜堂に死角無し』と呼ばれるほど、索敵に長けている
現状、植物ワンダーの蔦が広がるこの環境下では、『目』の発現は防御応答によって塞がれる為、鈴の異能は殆ど機能しない
これまで『目』によって敵をいち早く捕捉し、先手を打ち続けてきた彼女にとって、『不意を突かれる』という経験に乏しい
それに加えて、仕事が終わりかけた気の緩みとアンブッシュによるジャンプ・スケア効果も相まって、御三家の副長が聞いて呆れる醜態を晒したというワケだ


(#´・_・`)「退がってろ。お前を傷物にして返しちまったら俺が親父さんに殺されちまう」

/ ゚、。;/「で、でもセンセ……」

(#´・_・`)「切り替えが先だ。それが出来ねえならガキ共見てろ」


有無を言わせぬ口調で諭すと、鈴はズルズルと足を引き摺りながら後ずさった
その様子が滑稽とでも言いたげに、裁断女はケタケタと嗤う。不愉快なブスめ。同じブスでも徳雄とは天地の差だ


(#´・_・`)「面白いか?今のうちに嗤っとけよクソアマ」


バッグを肩から下ろし、肩紐を左腕に巻いて取っ手を握る。お粗末だが、簡易的な盾だ
持ってきた武器は斧以外無く、それも弾かれて裁断女の後ろに控えるロバの近くに転がってる
不幸中の幸いは、壁を破壊した一撃にロバが巻き込まれなかった事だろう。まだ『ツキ』は残ってる


(#´・_・`)「すぐに嗤えなくなるからよ」


元より、運に頼らずともぶっ殺してやるがな

182 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:43:47 ID:HcLXXAEI0
[ぎぃぎぎぎぎぃいいいいいいいいひひひぃひひぃいいいいいいいいい]


嗤い声か鳴き声か区別のつかない音を鳴らし、鋏を両手で広げて迫る。鈴はまだ充分な距離まで逃げられていない


(#´・_・`)「オラッ!!」


盾を持つ左腕を前に、鋏の交叉点目掛けて突っ込む。相当な切れ味はあるだろうが、持って来た荷物の中には金属類や瓶など、容易く切断出来ない物も入ってる。すぐさま真っ二つにはなるまい。こわい
奴にとって俺の行動は予想外だったのか、閉じるモーションが遅れた。そのまま壁際まで押し込んでやろうとするが


[あばばばはっあああああばばばばばばっばぁああああ]


(;´・_・`)そ「ぐぅっ……!!」


すぐさま踏ん張りを効かせ、押し返してくる。バッグの中身はある程度の時間は稼いでくれる物の、迫る両の刃は両肩へと食い込み始めていた
奴が更に悦びそうに、苦悶の表情を浮かべながら、顔をバッグに隠すように移動させる。イキってた獲物の他愛無さがウケたのか、耳障りな嗤い声は更に大きく響く
こんな時、先人の言葉が役に立つ。『死中に活を求め』、『肉を切らせて骨を断ち』、『備えあれば憂いなし』


(#´・_・`)「……」


バッグの隠しポケットから、コンドームで包んだ液体を取り出し、コッソリと口の中に放り込む
それを歯で噛み千切り、中の液体に唾液と生命力を混ぜ―――――


(#´・_・`)「ブゥーッ!!!!!!」


裁断女の顔面へと『吹き掛けた』

183 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:46:36 ID:HcLXXAEI0
[ぎゃああああああああああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!!!!???????]


生命力入りの『酒霧』の効力は抜群のようで、裁断女は顔を抑えてのたうち回った
悪役プロレスラーが古くから使う『毒霧』の手法だ。不意打ちはお前らバケモノだけの専売特許じゃねえんだよ


(#´・_・`)「嗤えねえか!?ああ!?」


鋏の拘束から解かれ、半分千切れた荷物を背後へ捨ててワンピースの襟を掴み上げる
白い肌は火傷によって『黒く』焼け爛れ、赤だか黒だかわかんねえ液体が噴き上がった。そのダメージに拍車を掛けるべく


(#´・_・`)「≪握≫ッ!!」


右拳で顔面を打ち下ろす


(#´・_・`)「くっ、たっ、ばぁぁぁ……」


二度、三度と続け、トドメの四発目を放つが


(#´・_・`)そ「れッ……!?」


渾身の殺意を込めた右拳は、デカい掌で受け止められてしまった
長い指は俺の手首までスッポリと覆い尽くすと、抜き取られないように爪を食い込ませた
≪握≫は継続して発動してるが、灼ける身体などお構い無しに、今度は襟を掴む左の手首まで掴まれてしまう

184 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:47:30 ID:HcLXXAEI0
[あーあーあーあーあーあーあーあーあーあ]

[ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああァァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!!!!!!]


(;´ _ `)「ッ!?」


耳を塞げない状況下での、空気を震わす大絶叫。鼓膜の奥に鋭い痛みが走り、眩暈が起こる
掴まれた両腕がグンと持ち上げられ、身体ごと宙に浮く


(;´ _ `)そ「ガぁッ!?」


背中が天井へと強かに叩きつけられたかと思いきや、休む間もなく地面へと叩き落とされる
右手が解放されたが、今度は真横に大きく振り回されて、腰を硬くて細いもんに打ち付ける
バラバラと砕けたガラスと共に、床に倒れ込む。膝に力を込めて立ちあがろうとしたが、打ったばかりの腰の痛みが阻害する


:(;´ _ `):「が……ぐ……」


[あぁーーーーーーーーはははぎゃはぁーーーーーーーーーー]


悶え苦しむ様子を確かめたかったのか、そこで『ダンス』の手を止め、俺の身体をボロ人形のように持ち上げる
三発殴った影響で顔面の半分が抉れ、鼻腔と思わしき穴から黒い泡が噴き出ているが、意に介さないかのように嗤い声を上げた
これが狭間に棲むワンダー本来の恐ろしさだ。ヒトはオモチャか餌でしかなく、遊び尽くした後に食い散らかされるだけの存在と嘲笑うモノ共だ

185 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:49:21 ID:HcLXXAEI0
(;´ _ `)「この……ふざけやがって……」

[うー、うう、ぶぶぶぶぶぅーーーーーー???????]


だから、奴らには時折思い知らせてやる必要がある


/ ゚、。#/「ウチも相手しぃや!!この阿婆擦れ!!」


ヒトとは最も


(#´・_・`)「図に乗ってんじゃねえぞワンダー風情がァッ!!!!!!!」


殺しに長けた恐るべき存在であると

186 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:51:22 ID:HcLXXAEI0
[ああああああああああはははああああはあああははははぎゃはひぃひひひひ!!!!!!!!]


裁断女が片手を空けたのは、自身の得物で俺を切り裂く為だ。奴の左手は落とした鋏の取手を掴んだ
無傷の鈴を前に、よくもまぁそんな悠長な真似が出来たもんだ。まだ虫の方が賢い


/ ゚、。#/「行きッ!!」


俺の顔の側を『小瓶』が通過し、その後を弾丸が超高速で追いかける


(;´・_・`)そ「おまっ……」


咄嗟に顔を伏せた俺とは対照的に、反応が遅れた裁断女は撃ち抜かれて破裂した酒瓶の破片と中身をマトモに顔面に浴びた


[ごぇえええあああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!]


僅かに生命力が込められていたのが、二度目の『酒焼け』に顔を手で覆う
だがダメージを受けても左腕はガッチリと掴んで話そうとしない。断続的に≪流≫をしているが、今日は使い過ぎて思ったほど出力が出ない


(#´・_・`)「この……クソアマがァッ!!」


ならばこのままインファイトでやる他ない。再びワンピースの襟を掴んで体勢を整え、左脇腹へ膝を入れる
僅かに蹲るが、決定打には遠い。だがヘイトを稼ぐには十分だ。奴の意識を、『得物』から逸らせられる

187 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:55:46 ID:HcLXXAEI0
[ばああああああああああああああああああああ…………]


顔を上げた裁断女から、怒りの呻き声が上がる。顔面は既にしっちゃかめっちゃかで怒ってんのか泣いてんのかわからない


(#´・_・`)「おうコラ来いよクソブスがァ!!!!!」


言葉で噛みついて更に挑発。奴の汚い黒髪が、静電気にでも当てられたかのように逆立った
よほど頭に血が昇っているのか、テメーの側から得物が失くなっているのに気づいていない。俺らには『協力者』がいるのを忘れているようだ


/ ゚、。#/「こんのォ……!!」


鈴の気合いが入った声を合図に、奴の右手首を掴んで力の限りしゃがみ込む


/ ゚、。#/「ど阿呆がァァァァ!!!!!!」


豪快なスイング音が俺の頭上を通過し


[ぎぃッ!!!!!!????]


『蟻』が奪い取った大鋏が、裁断女の喉元に叩き付けられた

188 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 19:58:56 ID:HcLXXAEI0
[ごぉおおおおおおおおおおおごろろごろろろぉぉぉぉ!!!!!!!]


この一撃は相当喰らったらしく、俺の腕を手放してフラフラと後ずさる
ようやく解放されたが、情けないことに足腰が立たず尻もちをついてしまった


(;´・_・`)「ハァッ……!!」

/ ゚、。;/「センセ!!」


蟻の隊列が俺らを庇うように前に出る。裁断女はそれが見えていないかのように首に食い込んだ鋏を苦悶の叫びと共に抜きにかかった


(;´・_・`)「しぶてぇ、ぐぅッ……クソ女が……」

/ ゚、。;/「センセ」


鈴が顔を寄せ、耳打ちする。この間、裁断女は早くも鋏を抜き取った
パックリと開いた首の傷からは、血にも涎にも似たドス黒い粘液がダラリと流れ出ている


/ ゚、。;/「『外の子ら』も反応しおった」

(;´・_・`)「外……?」


そう言えば、鈴は『目』を寄生体職員の待機場所に置いてきている。階下の騒ぎを聞きつけて、彼らも臨戦体勢に入ったらしい


/ ゚、。;/「倒すんやのぉて、追い出すで」


枠がへしゃげた窓から、自然光が差し込んでいる。そうか、この場所は壁一枚隔てて『大穴』に通じている
どのみち、今の疲弊した俺らじゃアレを殺しきれない。だったら別の階層に『追い出す』方が勝算がある


(;´・_・`)「面白えな」

/ ゚、。;/「もうひと気張り、いける?」


返答の代わりに、膝を叩いて立ち上がった。まだまだやる気の俺らを見て、裁断女は喉の傷から掠れた音を漏らす
鈴の一撃で声帯をヤったらしい。これで絶叫は使えまい

189 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:00:55 ID:HcLXXAEI0
[〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッッッッッッ!!!!!!!!!]


/ ゚、。#/「やるで!!」

(#´・_・`)「おおッ!!」



鈴は銃を構えつつ後ろへと下がり、俺は蟻の防衛ラインを飛び越えて裁断女へと向かって駆け出した


[〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!]


怒りに身を任せた大振りの刃が、教室の壁を抉りながら胴へと迫る


(#´・_・`)「フッ!!」


スライディングで躱し、奴の背後にある半壊したロバの側にまで滑り込む


[シィイイイイイイイイイイ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!]


裁断女はすかさず振り返って、鋏で串刺しにしようと振り上げるが


/ ゚、。#/「ほらほら!!」


背中に銃撃を受け、一瞬の硬直をした。この隙に、ロバの近くに転がっていた斧を手に立ち上がり


(#´・_・`)「ボケがァッ!!!!!!!」

[ッッッッッッッッ!!!!!!!]


ガラ空きの脇腹へとフルスイングを叩き込む。高く鋏を掲げたが為に伸び切った身体は、『くの字』に折れて壁へと衝突した
木造の壁はダメージを順調に蓄積させ、隙間から漏れる光量は増していく。もう二、三発デカいのを叩き込めば、こいつを奈落へと突き落とせる筈だ

190 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:02:17 ID:HcLXXAEI0
(#´・_・`)「もういっ……!?」


斧を抜こうとするが、柄肩を握られて外せない。壁にめり込んだ鋏の先が、顔目掛けて勢いよく降りてくる
執着せず手放し、横転して回避する。鋏に貫かれた床板が、ズドンと肝の冷える音を立てた


[ヒィィイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!!!]


その床材ごと鋏を引き抜き、やたらめったらに振り回す。相当追い込んでる証明だ
鋏の不規則な軌道に当たらぬよう落ち着いて距離を取り、タイミングを計る


/ ゚、。#/「そろそろ観念しぃや!!」

[カォ…………!?]


弾丸が喉の傷を更に深く抉り、裁断女は大きく仰け反った


(#´・_・`)「ンダラァ!!!!!!!」


鳩尾に前蹴りを見舞い、半壊した壁へと追いやる。鋏と巨躯の重量で、壁のひび割れが大きく広がった


/ ゚、。#/「センセ!!畳み掛けり!!」

(#´・_・`)「おおよ!!」


ここが奴の土俵際だ。助走をつけて跳躍し、両足を揃え―――――


(#´・_・`)「くたばれッ!!!!!!」


上半身へドロップキックを放った

191 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:04:39 ID:HcLXXAEI0
[コォオオオオオオオオオオオオオオキィィィィイイイイイイイイイイイイイイイ!!!!!!!!!]


裁断女の背中はついに教室の壁を打ち破り、腰から上は第六階層への境界に通じる大穴へと曝け出される
手放した鋏がクルクルと回転しながら落下していき、大樹に突き刺さった
残念なことに下半身は教室に残ったまま、これ以上落ちまいと無様なガニ股で踏ん張っている


(#´・_・`)「チッ、とことん往生際の悪い……」

/ ゚、。 /「センセ、見てみ」


鈴が足下を指すと、待機していた蟻たちが動き出していた
それと同時に、裁断女の上半身に『系』が絡まる。焦った様子で剥ぎ取るが、糸の供給量の方が遥かに多い
蟻達は裁断女の足下へと群がると、壁の破壊と下半身への攻撃へと取り掛かる。糸で真っ白に巻きつけられた裁断女から、僅かに悲鳴らしき音が漏れた


/ ゚、。 /「あの子らも向こう側から削ってくれとったんよ」

(´・_・`)「話通じすぎやろ。ざまぁねえな」


四面楚歌。放って置いても時間の問題だと思うが、こっちも急ぎだ。それに、返してもらわねばならないモンもある
脇腹に突き刺さったままの斧の柄を握り、裁断女の腹に片足を乗せた


(´・_・`)「じゃあなクソアマ。ジャングルを楽しめ」


足で身体を押し込みながら、一息に斧を抜き取る。弾みで裁断女は宙へと投げ出された


[〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!?????]


(´・_・`)「あ」


このまま第六階層にサヨナラバイバイかと思いきや、運が良いことにバタバタと振り回した手が偶然にも鋏の取手を握った
鋏はガクンと大きく傾いたが、大樹から抜けることなく主人の体重を支えた。健気な光景に涙が出てくるよクソッタレ

192 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:05:49 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「鈴。ぶぶ漬けでも振る舞ってやれ」

/ ゚、。 /「はいな」


鈴は装填を済ませ、照準をピタリと裁断女の『手首』へと向けた


/ ゚、。 /「ウチ……ちゃうな。センセの奢りや。遠慮せんとよばれりや」

(´・_・`)「そういや弾代俺持ちだった」


大盤振る舞いの六連射は、一発も外れる事なく裁断女の手首へと着弾。肉と骨を断裂させ、身体から切り離した


[〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!]


紅白色の第三階層のワンダーは、声にならない断末魔と共に、未知なる『緑の地獄』へと堕ちていく
やがて、未練がましくぶら下がっていた醜い手の残骸も、上昇気流に吹かれて鋏を手放し、持ち主の元へと旅立っていった


/ ゚、。 /「フッ」


鈴はカッコよく銃口から立ち昇る硝煙を吹き消すと、袖の下へと納めた
これがさっきまで腰抜かして呆けてた女の姿である。忘れた頃におちょくってやろうと思った

193 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:06:22 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。 /「上がってくるやろか?」

(´・_・`)「片腕でか?Jの壁突破の方が現実味があるな」


鈴は薄汚れた着物の袖で口元を覆い、お上品にクスクスと笑った


/\、\ /「ほな、あのアホからガッポリせしめに行こか♪」

(;´・_・`)「ああ……」


全く逞しい奴だよオメーはよ


/ ゚、。 /「あ、センセほらあれ。デカ蜘蛛」


教えんでええねんああもう今日絶対悪夢見るわ

194 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:10:17 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



結論から言うと、ねぐら利用客の失踪にカフェオレ側は『直接』関与してはいなかった
大樹近くの境界の側には、俺たちが回収したのとは別の、エネルギー切れしたロバが横たわっていたのだ
恐らく、放棄したロバが何らかの弾みで境界を開いてしまい、寄生体……小さい虫かなんかがそこを通ってガキ共を連れてきてしまったのだろう。知らんけど
つまりは、偶然が起こした面倒な事故だったのだ。しかし容疑が晴れたとは言え、原因を作り出したのはカフェオレ側に代わりない。キッチリとツケを払って貰わねばと、ねぐらに帰還した矢先―――――


(;´・_・`)「ああ?ガキを受け取っていない?」

イ从゚ -゚ノi、「ええ」


俺たちが第三階層に潜ってからおよそ三時間。一人目のガキを見つけたのは2時間弱前だ
ガキを任せたぎんいろ隊に共有したルートは、鈴の『目』でマッピングし、俺がワンダーを蹂躙して通った道だ。現状、最も安全かつ最短の帰路を通ったはず


イ从゚ -゚ノi、「それと、一時間ほど前に白髭副局長から、アンタ達二人に出頭の要請があったわ」

(;´・_・`)「マジかよ……」


銀が持ってきた着替えに袖を通しながら、余り良いとは言えない報告を受け取る
とりあえずは、文彦含むガキ三人は綺麗な身体でねぐらへ連れて帰って来れた。だが、先に帰した筈のもう一人は今だに第三階層に残されている
そしてこのタイミングでの出頭要請。別組織が故の厄介ごとが鎌首をもたげて起き上がる気配がした

195 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:11:59 ID:HcLXXAEI0
/ ゚、。;/「最悪や……あのおじんの事やから、全部なぁなぁにして一銭も払わんつもりや……」

/ ゚、。;/「しずくちゃんは!?」

イ从゚ -゚ノi、「仕事。遊ぶのは今度にして」

/ ゚、。;/「なんでやの!?せめてしずくちゃんモチモチせな割に合わへんやないの!!」

(;´・_・`)「オメーくらいだよあいつでアニマルセラピーすんの」

イ从゚ -゚ノi、「相当参ったようね」

(;´・_・`)「話せば長い。サッカー部には?」

イ从゚ -゚ノi、「上手いこと認識阻害の術を掛けておいたわ」


妖狐と雪女の血を引く銀は、幻術にも一家言を持つ。どちたのルーツも人を惑わしてきた妖怪だ。そんなんチートやんズルやでズル
オカルトなトラブルが頻発する鬼ヶ村で合宿場を営んでいけるのには、彼女のフォローに依るものが大きい。ホンマ助かる。いつもサンキュな


(;´・_・`)「ハァ……めんどいなぁ……」

イ从゚ -゚ノi、「で、この子たちはいつまで置いておく気?」


銀が不満気に親指で指す先には、ガキ共を運んだご褒美として与えたジュースを一心不乱に吸うデカい蟻が三匹
一応はワンダーだが、今となっては共に危機を乗り越えた戦友でもある。丁重にもてなしたいところだが、ママが飼っちゃダメだって


(´・_・`)「ちゃんと連れて帰るよ……」

イ从゚ -゚ノi、「それと、カフェオレの副局長だろうと何だろうと、キチッとカタに嵌めてきなさいよ。鈴んとこはともかく、ウチみたいな弱小支部は下手に出るとどこまでもツケ上がられるんだからね」

(´・_・`)「わかってるよ……皆殺しにしてくる……」

/ ゚、。 /「利益が上がってからにしてくれへん?」

196 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:15:31 ID:HcLXXAEI0
さぁ困ったぞ。向こうはガキという人質を握った上で、損害賠償を値切りに値切る気満々ときた
対してこっちも寄生職員というカードこそあるが、カフェオレ側は従業員が減っても『世間体』に傷は付かない。減ったら足せばいいだけだ
一方ねぐらは一般のお客を相手にしている商売。ガキが一人行方不明になっただけでそらぁもうえらいこっちゃだ
それぞれが握る人質の重みが全く違う。クソ、人でなし共め。クソガキでも一般人を盾に取るか普通?


(´・_・`)「なんか都合の良い交渉材料無いかなぁ……」


銀と鈴は二人揃って蟻を指差した。俺は頭を抱えた


(;´・_・`)「どうしろってんだよそれで……」

イ从゚ -゚ノi、「腕の見せ所じゃない?」

/ ゚、。 /「あのおじん、ワンダーフリークやし案外喜ぶんとちゃうん?」

(;´・_・`)「だからっておめえウチの都合で……あ」


ふと思い出し、ズタボロボンボンになったバッグの中身をひっくり返す。お目当ての物は表面に疵こそ付いていたが、内容物は無事だった


イ从゚ -゚ノi、「ちょっと、散らかさないでくれる?」

(´・_・`)「やれるぞ」

イ从゚ -゚ノi、「何がよ?」

(´・_・`)「鈴、どうだ?」

/ ゚、。 /「……ありやな」

(´・_・`)「蟻じゃないが????????」

/ ゚、。 /「うわめんどっ」


目には目、歯には歯。悪い奴らには更に悪いやり方で
手の中に収まる筒の中で、コツンと小さく跳ねる音がした

197 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:55:16 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



「発信機を外すので、武器をお預かりします」


校舎にそぐわない鈍色の甲冑を二体引き連れた職員が、第三階層調査本部の入口で無愛想な出迎えをしてくれた
戻って早々にこれだよ。少しは労いの言葉をかけたところでバチは当たらんだろうに


(´・_・`)「どうぞ。ついでにワッパも掛けとくか?ん?」

/ ゚、。 /「にあーう」

(´・_・`)「似合うって何だオイ」

「……お入りください。副局長がお待ちです」


ドロッドロの斧と銃をすんげー嫌そうに受け取った職員が先導する。声どころか息遣いすら聞こえない甲冑は俺らの後ろに着いた
説明するまでもないが、こいつらはワンダーである。狭間という異空間を研究、管理する組織のNo.2に付き従う近衛騎士だ


(´・_・`)「これはこれは、皆さんお揃いで」


本部内は物々しい雰囲気に包まれていた。研究員達は緊張した面持ちで俺たちを見つめ、さっき救助したぎんいろ隊員達は不服そうに沈黙している


「……」


ぎんいろの隊長と目が合うと、彼は無言で医務室の方へ視線を送った。ガキはちゃんと送り届けてくれたらしい。実働隊だけは誠実で助かる

198 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 20:57:38 ID:HcLXXAEI0
本部奥にあるパーテーションで囲われた会議スペースの長机では、珍しく行儀良く座るまさしと


( ´W`) 「来たね」


甲冑を四体後ろに控えさせた、カフェオレ副局長『白髭』が、差し入れの弁当を食べていた


(´・_・`)「ご無沙汰しております。白髭副局長殿」

( ´W`) 「掛けたまえ」


コードネーム通り、顔の下半分にたっぷり蓄えられた白髭が特徴で、身長が低くなければサンタさんの愛称で親しまれていただろう
しかしその実態は、ワンダーという異形にのめり込んだ変態ジジイだ。彼の私兵でもある第八階層のワンダー『ブリキの兵隊(ティンマン)』を始め、敵対、中立、友好問わず、様々なワンダーのコレクションに生涯を費やしている


( ´W`) 「やってくれたね、キミたち」


大人しく椅子に座った俺たちの背後を、ピッタリとティンマンがマークする
白髭は顎に付いたタレをおしぼりで拭き取り、厳しい口調と眼光を放った。中々の演技力だ。俳優にだってなれるんじゃねえの?


(´・_・`)「身に覚えがありませんなぁ」

( ´W`) 「白々しい。よくもまぁ、こんな大騒動を起こしてしらばっくれていられるものだ」

(´・_・`)「そりゃあこっちの台詞だぜ。なぁ爺さん俺ら見ての通り疲れてんだ。クセー芝居はやめにしようぜ。どうせ周りはお仲間しか聞いてねえんだろ。単刀直入に言ったらどうなんだ?」

199 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:00:58 ID:HcLXXAEI0
白髭は僅かに眉を顰めたが、すぐに顔を綻ばせて背もたれに身体を預けた


( ´W`) 「話が早くて助かるよ」

(´・_・`)「概ね筋書きはこうだろ?『第三階層に侵入した第六階層のワンダー駆除に、俺と鈴を抜擢。しかし初動の処置を誤り、壊滅的な被害と侵入の拡大を招いたが、二人は部隊を置いて逃走。その責任を取らせるために副局長が直々に馳せ参じた』。いいねぇ、脚本家を呼んでくれよ。ラジー賞は総なめだぜ」

( ´W`) 「ほほぉ!!聞いたかね今の!!いやぁ、お見通しとは恐れ入った!!キミのような若いのがいてくれたらウチも安泰なんだがなぁ!!」

(;・`ー・´)「は、はは。全くその通りでございますはい」


元気無っ


/ ゚、。 /「じゃあ何やの?ウチらに責任押し付けてワルモノにしようって魂胆どすか?」

( ´W`) 「まぁまぁ、そうささくれ立つな。大桜堂のお嬢さん。お互い穏便に矛を収めようってだけの話じゃあないか」

(´・_・`)「こっちはテメーらの不手際で一般人が被害に遭ってんだよ。筋通んねえんじゃねえのか?」

( ´W`) 「筋を決めるのは此方だ。キミたちも大人しく出向いたって事は、ちゃんと理解しているのだろう?『はい』と大人しく従う他ないという事は」


ティンマンがジジイの意思を察知してか、一糸乱れぬ動作で腰に差した剣の柄に手を添えた
ワンダー六匹程度でイキり散らかしていやがる。こっちが万全ならもっと用意しただろうが、俺も鈴もくたびれた姿だ。制圧はこれで十分と踏んだのだろう


( ´W`) 「勿論、悪いようにはしない。キミたちには汚名返上の機会を用意しよう。改めて、第六階層の境界閉鎖を依頼してやる。今度こそ、勤めを果たしてくれたまえ」

/ ゚、。 /「要はタダ働きってことやろ。ウチが一番嫌いな言葉や」

( ´W`) 「名誉を取り戻せるのだから、これ以上の報酬はあるまい?飲めない場合は、そうだな……『保護』している少年の身柄は、完全に解決するまで『安全上』ウチで預からねばなるまい。しょうがない。うむ」


すっげえな。人ってここまで傲慢になるんだ。法律と契約書って大事だなぁ
それにしても、ここまで用意周到だと、元から騒動の原因を押し付ける算段だったのかもしれねえ
被害こそ偶然起こった事だが、奴らにとっちゃ体の良い身代わりが、差し入れ背負ってやってきたって所か

200 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:02:17 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「……」


万が一と思って大人しく聞いてやったが、こりゃもう容赦する必要がねえな
ギャンギャンと抗議する鈴も、合図として俺の掌の中に『目』を発現させ、パチリとウインクした。可愛くねえよ顔でやれ顔で


(´・_・`)「お送りしたサンプルは?第六から報告は上がってないんですか?」

/ ゚、。#/「センセ!!受ける気なん?」

(´・_・`)「嫌ならお前だけ帰れよ。どうせ俺は断れる立場じゃねえんだ」

/ ゚、。#/「ッ……」


鈴は拳で強く机を叩き、椅子が倒れるほど勢いよく立ち上がる。ティンマンは一丁前に身構えたが、白髭が片手を挙げて制した


/ ゚、。#/「……付き合ってられんわ。ウチはお暇させてもらいます」

(´・_・`)「あー、ご苦労だったな。構いませんね、白髭副局長?」

( ´W`) 「他でもない小練くんがそう言うなら、目を瞑ってやろうではないか。お嬢さん、くれぐれも早まった真似はするんじゃないぞ」

/ ゚、。#/「誰が一銭の得にもならん事、やりはりますか?ほな、ごめんやす」


鈴はティンマンを押し除けて、パーテーションの奥へと去っていった
目の前のクソジジイなんて目じゃないほどの演技力だ。俳優でも食ってけるんじゃないか?

201 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:03:36 ID:HcLXXAEI0
( ´W`) 「やれやれ、これだから女は……おっと、キミのとこも女所帯だったな。心労を察するよ」

(´・_・`)「……それで?」


今日一ピキリと来たが、今にも噴火しそうな怒りのマグマの中でリラックスして脱力するグルメヤクザの姿を思い出して何とかぶち殺すのを保留した
『仕込み』は済んだ。あとは少々の時間を稼ぐだけだ


( ´W`) 「なんだったかね……ああ、サンプルだね。あれは第六階層の中立ワンダー『ガーデンキーパー』の種子だ」

(´・_・`)「『庭師』……ですか?」

( ´W`) 「左様。虫と植物のハイブリッド種で、他生物に寄生し、成長するにつれて寄生した生物の特徴を取り込み、最終的には十代前後の少女の姿へと成る」


ソシャゲキャラみてーだな


( ´W`) 「驚くべきは進化の幅の広さだ。鳥に寄生したなら翼を授かり、犬に寄生したなら嗅覚に優れ、猫に寄生したならしなやかな肉体を手に入れる。実に唆る……失礼、可憐なワンダーだ」

(´・_・`)「では、ガーデンキーパーと侵入してきた植物は別のワンダーであると」

( ´W`) 「名の通り植物の世話をして共生するワンダーだ。境界が開いた際、植物と一緒に迷い込んだのだろう」

(´・_・`)「ふむ……最初の襲撃の際、毒虫に咬まれました。大事には到りませんでしたが、危険性はありますか?」

(;・`ー・´)「ガガ、ガーデンキーパーが寄生した生物は、彼女たちが成長するまでの間、手足となり、養分の提供をしなければならない!!毒は送るが、致死性のない麻痺毒だ!!種が定着するまで、暴れられるわけにはいかないからね!!」

(´・_・`)「へぇ。俺に効かなかったのは?」

(;・`ー・´)「せいせい生命力!!少量だから無毒化も一瞬だったんだろう!!きき、気になるならこの後ケツケツ検査を」

(´・_・`)「ああ、ケツケツ検査は嫌だな……」


なんだか臭そうな検査はさて置き、俺に種子が植え付けられなかったのは、毒が効かなかった事で苗床として使い辛いってのがあったらしい

202 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:06:33 ID:HcLXXAEI0
( ´W`) 「ハッハ!!まぁそういじめんでやってくれ!!これからも長い付き合いになるのだから!!なぁ!!」


白髭はスッカリ上機嫌で、隣のまさしの背中をバンバンと叩く
トラブルの責任は部外者に押し付け、遥か頭上から良いようにタダでコキ使える。そりゃあ気分が良いに決まっている
だが、安堵するのはまだ早い。『同じ交渉の席』に座っている間は、相手がどんな態度を取ろうが、席を立つまで油断してはならない


( ´W`) 「それでだね、キミには第六階層の境界の閉鎖と並行して、成長したガーデンキーパーの捕獲も頼みたい。そうだな……できれば五種類ほどバリエーションがあると」

(´・_・`)「その事ですが白髭副局長」

( ´W`) 「何だね?もしや、既に手配しておると……?」

(´・_・`)「ええ。ですが私、恥ずかしながら虫は苦手なものでして……」

(; ´W`) そ「何……うっ!?」


右手に走った鋭い痛みに、白髭は顔を歪ませた
サンプルとは別に捕まえておいた『毒虫』が、反射で弾んだ手から飛び降り、テーブルの上をタカタカと駆けた


( ;´W`) 「何だ今のは……まさか、貴様!!」

(´・_・`)「管理が、甘かったようです」


白髭は右手を押さえ、椅子から転げ落ちる。虫さんの毒の効能は、先程まさしが説明した通り。麻痺するだけで死にはしない。残念ながら
だが、麻痺の目的は『種の定着』。上機嫌だったクソジジイの顔は一転して青ざめる

203 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:07:53 ID:HcLXXAEI0
(;・`ー・´)「と、取り押さえろ!!すぐに!!」

(´・_・`)「鈴ー」


名前を呼ぶと同時に、両の裏拳で後ろのティンマンに≪握≫を叩き込む。続けて、デカい銃声が連続して鳴り響き、パーテーションが貫かれた
障害壁越しに撃ち込まれた弾丸は、臨戦体勢に入ったティンマンの兜の『ひさし』をすり抜け、空っぽの空洞の中を縦横無尽に反射した
当然、≪流≫が込められた弾だ。それが全身くまなく駆け巡ったのだ。内臓を掻き回されたのと一緒のようなもんだろう
生命力を喰らったティンマンが六体総じて崩れ落ち、パーテーションがゆっくりと倒れ


(´・_・`)そ「いて」


頭を打った


/ ゚、。;/「っ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」


鈴は『大口径』の衝撃に手をプラつかせる。武器は没収されるのは目に見えていた為、予め『ここの人間』に用意させていたのだ


/ ゚、。;/「か弱い乙女に撃たせるモンとちゃうでこれ……」

「ウチにはこんなものしかなくてな」


(;・`ー・´)「お前ら……!!」


鈴に引き続き、本部へ戻る前に『のどびこ』で連絡を取っていたぎんいろ隊員達が、倒れたパーテーションを踏み越える
そのうち一人の背には、人質にされていたガキが乗っていた


(;・`ー・´)「う、裏切るのか!?」

「裏切ったのは其方でしょう。『我々は』筋を通したまでですよ。お二人と違ってね」

(´・_・`)「かっこいい〜」

「どうも」

204 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:08:35 ID:HcLXXAEI0
ぎんいろの隊長は、胸ポケから折りたたんだ紙を取り出すと、腰を抜かすまさしへと差し出した


「そしてこれが、組織に対する我々の『筋』です。お世話になりました」


見るまでもなく退職届だ。まさしは唖然として一向に受け取ろうとしなかった為、隊長はそれをテーブルの上へと置いた。かっこよすぎてオシッコ漏らすかと思った


(;・`ー・´)「こ、この恩知らず共が!!!!行く宛など無いくせに!!のたれ死にが関の山に決まってる!!」

「再就職先なら既に決まってますよ。優秀な経営者と話がついたのでね」

/ ゚、。 /「いややわぁ、おべっか使うて。ウチもちょうど男手が欲しかったとこやから、渡に舟や」


転んでもタダでは起きないとはよく言ったものだ。本業が本業なので、ハロワに求人を出せるようなものでも無い
人材不足は常について回る。そんな中、どさくさで一気に四人も従業員を確保できたのだ。それも、ある程度異形と戦闘経験のある兵士ならば、即戦力として期待できる
これだけでもお釣りが出るくらいだが、本番はここからだ。キッチリとツケは払ってもらわねばならない


( ;´W`) 「ひっ、ひぃぃ……」

(´・_・`)「あーあー、大変なことになりましたなぁ。白髭危機一髪って感じ」

/ ゚、。 /「今そういういちびりいらんよ」


こけおどしのオモチャの兵隊はブッ壊れ、身内には見捨てられ、その上ワンダーに寄生されかけている
因果応報ってのを目の当たりにしてる気分だ。まぁこうなるように仕向けたの俺なんですけど

205 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:10:20 ID:HcLXXAEI0
(; ´W`) 「ワ、ワンダーを……使役……」

(´・_・`)「協力関係と言ってもらいたいですね。こいつらの目的は第三階層に入り込んだ植物の『剪定』。俺らはそれを手伝う条件で手を組んでるまでです」

(;・`ー・´)「そ……そうだ、寄生!!寄生されてるに違いない!!!!誰か!!!!こいつらを処分してくれ!!!!!早く!!!!」

/ ゚、。 /「よぉ囀りはるなぁ」

(;・`ー・´)そ「ヒィ!!!!!!?????」


鈴はカフェオレ実働部隊員の装備である拳銃をまさしの額へとゴリッゴリに押し当てる
あれはマグナム44っていって世界一強力な拳銃なんだまさしのドタマなんて一発で吹き飛ぶぜ楽にあの世まで逝けるんだ。運が良ければな


「残念ながら、今の彼らに喧嘩を売れる者はいませんよ。ミサイルでも携行してれば話は別ですけどね」

(´・_・`)「だ、そうだ。ミサイル持って来てもらうか?」


まさしはすっかり意気消沈したのか、ガタガタ震えながら両手を上げて退いた


( ;´W`) 「たっ、助けてくれ……」


白髭は縋り付くように腕を伸ばす。ぎんいろ隊が毒でやられた時は、≪流≫の酒を噴霧しただけで回復している。対処さえわかっていれば、自然界の毒よりも弱い
だが今し方、寄生について彼方から話したばかりだ。白髭は『ワンダーに咬まれた』という事態にパニクって肝心な所を見落としている
これでカフェオレのNo.2ってんだから聞いて呆れる。だが組織なんて往々にしてこんなものだろう。上に立てば立つほど、現場の実情は見えないのだから


(´^_^`)「勿論ですよ白髭副局長殿!!喜んで救って差し上げます!!」

( ;´W`) 「ヒ……」


こっちは満面の笑顔で快諾したってのに、クソジジイの顔面は青通り越して白くなっていく。失礼しちゃうんだから


(´・_・`)「ああ〜、ですが今ので生命力を使い果たしてしまったので、穏便な方法は取れませんねえ……けど、急を要する事態だ。なんとかしないと……」


(´^_^`)「せや!!!!!!!!!!!」


職員の誰かが「怖すぎ……」と呟いたのを聴き逃さなかった

206 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:11:51 ID:HcLXXAEI0
( ;´W`) そ「なっ、何をすr……」


ジジイの胸倉を掴んで持ち上げ、まな板に捌く魚を乗せるようにテーブルへと上げる
抵抗らしき痙攣が、余計に魚を思わせてウケる〜。手の空いてるぎんいろ隊員に抑えておくように指示をして


(´・_・`)「おい兄ちゃん!!消毒液と斧!!」

「ひっ、は、はひぃ!!」


遠くで恐々と眺めていた、俺らを案内した職員に『手術道具』を持って来させる


「どどっ、どうぞ」

(´・_・`)「あんがと。さて、しっかり抑えとけよ」

「アンタ怖えって……頼むから当てないでくれよ」


鈴はとにかく、ぎんいろ隊員はドン引きだった


( ;´W`) 「まっ……そ、そうだ、キミの所の、妖怪女史を連れてきてくれ……」

(´・_・`)「なんでお銀に時代錯誤のクソジジイなんかの面倒見せなきゃならねんだよ。身の程を弁えろや。刎ねるの首にしとくか?お?」

( ;´W`) そ「ヒィィ!!」

/ ゚、。 /「あーあー、虎の尾踏みよって……」


消毒用アルコールのボトルを開けて斧の刃を濡らし、残りは全部右手首へとぶっ掛けた
空ボトルを投げ捨て、狙いを定めるように刃を手首へと添え、そして高々と振り上げた


(´^_^`)「右手にバイバイなさってください白髭副局長!!!!」

(; ´W`) 「や、やめろォーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

(´^_^`)「やめぬーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」


白髭の叫び声ごと断ち切るように、刃を振り下ろした

207 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:13:04 ID:HcLXXAEI0
『だんっ』と音を立て、斧はテーブルへと突き刺さる。白髭の手首は


(; ´W`) 「ヒッ、ヒィィ……ヒィ……」


え!!!!!!??????繋がったままじゃん!!!!!!!!斧くんさぁ何やってんのちゃんと歌ってよ!!!!!!!


(´・_・`)「さて、交渉を続けましょうか白髭副局長殿?」


勿論、斧のやる気の問題ではない。元から一回目は外す予定だった。俺が本気で振り下ろしたら床まで砕け散る
それに、口が利ける間に交渉を済まさねばならない。毒の回る速度がどの程度かはわからんが、実動部隊であるぎんいろ隊のメンバーより耐性があるとは思えん


(´・_・`)「我々が提示する条件を飲んで頂けたら、手首が繋がったまま種子を取り除くだけでなく、件の第六階層の境界も閉じて差し上げますよ。ワォ!!破っ格〜!!」

( ;´W`) 「じょ、条件……」

(´・_・`)「一つ目。第六階層の境界閉鎖に必要な資材、資金、人材は全てカフェオレ側で負担し、一銭も此方へ請求しない」

(´・_・`)「二つ目。今回の事件への責任は全てカフェオレ側にあると認める事。並びに、俺らに一切の非は無いと宣言する事」

(´・_・`)「三つ目。今後、ねぐらと大桜堂の第三階層利用を常に認可し、無条件で境界を開く事」

(; ´W`) 「わ、わかった!!認める!!認めるから」

(´・_・`)「四つ目」

( ;´W`) 「勘弁してくれぇ……」

208 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:14:32 ID:HcLXXAEI0
泣き言を漏らす白髭をシカトし、条件の提示を続ける。ここからは鈴のターンだ


/ ゚、。 /「第六階層の境界閉鎖の報酬は、此方の言い値を前払いで支払う事。五つ目。今回の事件に関する賠償金を、小練 詩音並びに大桜堂 鈴に『今すぐ』支払う事。モチ、こっちも言い値や」

( ;´W`) 「せ、殺生な……」

/ ゚、。 /「センセ、おじんは右手の方が安いんやって」


斧をテーブルから抜いた


( ;´W`) 「わわ、わかった!!頼む!!頼むよぉ〜……」

/ ゚、。 /「金額はこんな感じで♪」


予め決めていた額を白髭に突きつける。ジジイの垂れ下がった瞼が目ん玉飛び出そうなくらいかっ開かれた


( ;´W`) 「い、一度持ち帰って、検討させて戴けないだろうか……」

(´・_・`)「ハァ……鈴」

/ ゚、。 /「はぁい、センセ」

(´・_・`)「カケ2しろ」

(; ´W`) そ「何ィーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!??????」

/ ゚、。 /「喜んで♪」


即答すりゃ出費も抑えられたってのに、ケチくさいジジイだ


(´・_・`)「これ以上お勉強代を増やされたくなけりゃ、黙ってウンウン頷くことですな」

/ ゚、。 /「あらぁ、ウチはもっともぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っと、ゴネて貰いたいけどなぁ」


欲深デブもお前には負けるよ

209 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:16:15 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「六つ目、これで最後だ。寄生体……ガーデンキーパーの捕獲、使役は一切行わず、全て第六階層へと還す事。種子の一つでもカフェオレ側で捕獲した場合……」


斧の切先でテーブルをなぞり、刃を白髭の白髭だらけの顎下に添える
奥歯がカチカチと鳴り響き、白髭もモジャモジャ震えた。癪に障る光景だなやっぱぶっ殺すか今


(#´・_・`)「ド厚かましいツラの皮ごと汚い髭ぶち剝いでケツに詰め込んでやろうかァァァアアアアアアアアーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!???????」

/ ゚、。;/「怖っ!?」


白髭は観念したのか、強張った身体ガクリと緩和させたて白目を剥いた
全く、手間を掛けさせてくれる。これならぶっ殺すだけで解決する『裏』やワンダーを相手する方がよっぽど楽だ


(;  W ) 「」


/ ゚、。 /「あ、気ぃ失ぅたで」

(´・_・`)「毒回ったか?」

「いや……単に恐怖で失神したんだろう……」


気づけば、いつの間にかカフェオレ陣営の連中がみんな鬼か悪魔でも見るような目で俺を見ていた。実物はもっとエグいことするのに

210 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:17:38 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「よぉーし!!早速、仕事に取り掛かって貰おうかァ!!解決するまで休めると思うんじゃあねえぞ!!死にものぐるいで働け!!死ね!!!!!!」


カフェオレ職員達は、蜘蛛の子散らすように業務に取り掛かる
まさしはどさくさに紛れて白髭を連れ出し、医務室に向かっていた


(´・_・`)「隊長、悪いんだが解決まで陣頭指揮頼めるか」

「ついさっき退職した所だがな。彼らの最後の面倒を見ても構いませんか?女将」

/ ゚、。 /「よろしゅう頼みます。ああ、お金の回収を最優先に」

「小練さん、この子はどうしますか?」

(´・_・`)「俺が連れて行く。後片付けも残ってるしな」


隊員から人質だったガキを受け取る。背中の『ガーデンキーパー』は、相変わらず眠ったままだ
他のガキに寄生していたコイツらも、綺麗に取り除いて貰えたし、今日の出来事は悪い夢として誤魔化せるだろう。無理だったらしらん


「では、我々はこれで」


隊長始めぎんいろ隊員達は、俺たちに敬礼をして踵を返す。カフェオレでの最後の仕事へと向かう最中、隊長だけが振り返った


「ああ、そうだ。白髭副局長はどうする?」

(´・_・`)「え?ほっとけば?」

「いや……寄生されたのでは無いのか?」

(´・_・`)「されてないよ?」

211 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:18:07 ID:HcLXXAEI0
確かに毒は送り込まれたが、種子も同時に送り込んだとは一言も言ってない
恐らく種子の管理はあの芋虫が行っているのだ。寄生体の行動原理は、麻痺させた宿主をアレの元へ連れて行く事。そこでお仲間を芋虫によって増やして貰う
これは、一度毒でやられたぎんいろ隊に寄生の兆しが見られなかったのと、芋虫の役割を目の当たりにした俺と鈴が下した結論である


(´・_・`)「あのアホ共にわざわざガーデンキーパーの説明させたのは、連中がどこまで生態を把握しているかの確認と、脅威を認識させたかったからだ。ハッタリかます為にな」

「なぁおい待て、彼らはカフェオレの幹部だぞ。より深く知っていた可能性だってあった。その場合どうするつもりだったんだ?」

(´・_・`)「どうせここに『ミサイル』はねぇからな」


肩をすくめてこう答えると、隊長は大きく噴き出した


「これからが楽しみだよ。お二方」


こうして、杜撰な処理と責任転嫁が巻き起こした騒動は、一旦の幕引きを迎えたのであった

212 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:19:21 ID:HcLXXAEI0
―――――
―――



( ^ω^)「なんか気づいたら夜だったんですけど」


ガキ共は全員無事に寄生を解いてもらい、意識も直に回復。カフェオレの医師に健康状態も診て貰ったが、問題なしの太鼓判を戴けた
時間だけは巻き戻りはしないので、辻褄を合わせる必要があったが


(´・_・`)「なんかお前らずっと笑いながら四股踏んでたよ。グランドスコイグランドスコイ言いながら」

( ^ω^)「え……何それ……洒落怖……?」

(´・_・`)「ただの洒落だろ」


めんどかったんで適当に誤魔化した


(;'A`)「お前、宙に浮いてなかったか?」

( ^ω^)「そんなワケないじゃんwwwwwwwwwwwwwww目ん玉も顔面くらい腐ったんじゃねーのかおwwwwwwwwwwwwwww臭っwwwwwwwwwwwwwww顔面から腐敗臭がするおwwwwwwwwwwwwwww」


('A`)


なんか見られてたっぽかったけど


( メ)ω(メ)「年下の可愛いジョークじゃん……」


それも深く追求されることはなかった

213 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:20:42 ID:HcLXXAEI0
植物は、第六階層担当者の立ち合いのもと、翌日には除去作業が開始された


/#^o^\「これには温厚な僕も噴火寸前だよね」


第三階層の惨状を目の当たりにした第六階層主任『富士 暴流啓夫(ふじ ぼるけいお)』も、三角形の独特な髪型の天辺から赤い何某が噴き出そうになっていた。不思議な頭だった。頭大丈夫だろうか


/^o^\「せっかく境界が開きっぱななんだから、さけチーみたく縦に切り裂いて自重で第六へと落ちていくようにしよう」

(´・_・`)「頭かしこーい」


大桜堂の人員も導入し、まぁなんか色々やって伐採は上手いこといった。やっぱ自分で何とかせず専門家に任せた方が万事上手く行くものだ
大樹を中心に拡大していた蔦も、栄養の供給源が絶たれたのに加え、第三階層の自浄作用で徐々に減少していくらしい
で、最後に蔓延っていたガーデンキーパーの寄生体達を第六階層へとお見送りして―――――


(;´・_・`)「終わったぁ……」

/ ゚、。;/「終わった……」


丸二日掛けて、第六階層の境界の閉鎖は完了した。尚この間、二時間も寝てない

214 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:24:08 ID:HcLXXAEI0
疲労に見合った収穫もあった。先ずは言うまでもなく『お金』だ
提示した額はカフェオレ局長が直々に振り込んでくれた。最も、当人から面と向かって謝罪されたわけではない
そもそも、カフェオレ局長自体が正体不明の謎の人物で、No.2『だった』白髭も会った事は無いらしい


/ ゚、。 /「ボロ儲け♪ボロ儲け♪」


大桜堂のお嬢さんは、金さえ貰えれば誰だろうがどうでも良さそうだったが
さて……どうすんのこの降って湧いた大金?恵まれない子ども達に寄付する?


イ从゚ -゚ノi、「絶対やめて」

(,,゚-゚)「なんでそんな勿体無いことすんの?」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「実は前から欲しかったお鍋があってぇ〜」


人の心???????え???????

215 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:24:40 ID:HcLXXAEI0
その他には、ワンダーの副産物と呼ぶべき物も手に入った
伐採の際に回収された『裁断女の鋏』だ。賠償金と共に此方へと譲渡されたのだ
物にもよるが、ワンダーの持つ武器は加工次第で強力な装備品へと生まれ変わる。東京喰種??????何の話??????


/ ゚、。 /「もろてええ?」

(´・_・`)「どーぞ」


普通にいらなかったんでこれも鈴の手へ渡った。俺が持ってても持て余すだけだ。鋏よりグーの方が強い
向こうには鍛治師との繋がりもあるし、金にも換えられるだろう。最悪インテリアとして飾っといてもいい
そしてもう一つ、鋏よりもとんでもないものが残った


(´・_・`)「オメーらなんで帰ってないの??????」


そう、蟻に寄生したガーデンキーパー三匹である。第六階層の境界を閉じた後に見つかったのだ
裁断女と共闘した仲だが、だからと言って面倒見る義理はない。ペットならもっと可愛いのを飼う。サモエドとか


/^o^\「あー、こりゃ完全に懐かれてんね」

/ ゚、。 /「虫やろ。懐くとかあるん?」

/^o^\「ガーデンキーパーは賢いからね」


なんでも、これから成長していけばヒトとほぼ変わらない見た目になるらしく、こっちの世界でも問題なく使役出来るとのことだ
そこで一つ気になったのは、どうして第三階層には成体のガーデンキーパーはいなかったのかだ

216 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:26:36 ID:HcLXXAEI0
/^o^\「まずガーデンキーパーは、環境に適応する為に、そこに生息するワンダーないし生物に寄生するんだ。生態を作り変えるより元からいるモノの特徴を奪った方が楽だし早いからね」

/^o^\「それともう一つ、境界が開いたのがおよそ二千メートル上空だったから、成体したガーデンキーパーは登って来れなかったんじゃないかな。これはヒトの姿を取ってしまったが故の弱点でもあるね」

(´・_・`)「そんで、どうすればいいのこいつら」

/^o^\「飼えばいいよ」


簡単に言ってくれるなこの頭三角マン


/^o^\「このサイズだと大体三ヶ月も経てば成体になってヒトの女の子と変わらない姿になるよ。キチンと教育すれば会話も出来る。宿主が蟻ってのもまた良いね。組織的だし、何より昆虫の中でも群を抜いて筋密度が高い。役に立ってくれると思うよ」

/ ゚、。 /「そんなんどうでもええねん。可愛いかどうかが重要やろ」

(´・_・`)「キミさぁ」

/^o^\「まぁ、ワンダーにしちゃ珍しくガワが悪くなることはないよ。ウチの職員なんか発見したガーデンキーパーを撮影してアルバム作ってるくらいだからね」

/ ゚、。 /「ウチが引き取るわ」

(´・_・`)「オメー見境って知ってる?」

217 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:27:25 ID:HcLXXAEI0
(´・_・`)「なぁオイ話進んでるとこ悪いんだけど第六に帰せねえのか?」

/^o^\「放り出すのは出来るよ。ただ群れには帰れないだろうね」

(´・_・`)「ああ……」


そうか、第六階層の調査班も大樹のある場所を突き止めてはいないのか
つまりコイツらは、不退転の覚悟で群れから離れたってワケか。迷惑過ぎる。人の許可も得ねえで勝手に


(´・_・`)「まぁ……面倒見るってんなら止めはしねえが……」

/ ゚、。 /「ウチがこの子らを立派な看板娘に育て上げるんや……」


虫だぜ?


(´・_・`)「ガーデンキーパーを育てた前例はあんのか?」

/^o^\「これから前例を作って欲しいんだよね。そんでデータとか貰えたらなって」

(´・_・`)「カフェオレ終わってんなマジで」

/ ゚、。 /「ほう!!そういうことなら話は変わりますえ?」


あーロックオンされちゃったよ


/ ゚、。 /「月一の成長記録につき大体これくらい戴こかな」

/;^o^\そ「ぎえー暴利!!ヤクザもビックリ!!インド人もたまげた!!」

/ ゚、。 /「せやけど今なら五年間継続契約でこのお値段!!更に最初の二年間は半額!!これ以上は一銭もまからへんよ!!」

/*^o^\「えっ、安ぅい!!!!!!!!契約しまぁす!!」


(;´・_・`)「……」


そんなこんなで、大桜堂は従業員四名と多額の報酬、賠償金に加え、ワンダー三体を迎え入れた
可笑しくない?今回被害に遭ったの俺らん所なんだけど?なんであいつが一番儲かってんの?

218 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:28:40 ID:HcLXXAEI0
白髭とまさしはと言うと


/^o^\「よく知らないけど、降格させられたのは確かだね」

(´・_・`)「よく知らねえって」

/^o^\「僕らが人事に興味あるように見える?」


自ら進んで殉職率のクソ高い研究職に就く人間の言うことは説得力がダンチだった
それにしても、『降格』で済むとは随分と甘い処分が下されたものだ。それとも、公にはされてないだけで実際は更に重い処罰を受けているのだろうか
どちらにせよ、恐らくもう彼らとは関わることは無いのだろう。野次馬根性にも似た興味も、寝て起きたら忘れ去るに違いない


/^o^\「第三階層の新しい主任には挨拶を?僕のいとこなんだ」

(´・_・`)「ああ……」

/ ゚、。 /「あの……こんなん言うた無いけど……大丈夫なん?あの子」


新しく関わり深くなる第三階層の新たな主についてだが


\(;^o^)/「終わった…………僕はずっと境界管理部で良かったのに………狭間なんかに常駐したくない………神よ………なぜこのような仕打ちを…………」


鬱に立直かかったような奴が抜擢された


/^o^\「どうせ三日もしたら慣れるよ」


人でなし集団がよ……

219 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:29:44 ID:HcLXXAEI0
生活に変化もあった。狭間の利用に制限が無くなったことで、『ねぐら』と『大桜堂』への行き来を面倒な手続き無しで行えるようになったのだ
と言っても、友達の家に遊びに行くような気軽さで使えるものでもない。管理されているとは言え、狭間が危険であることに変わりない。緊急性のある時にしか使わないだろう


/ ゚、。 /「ぐりちゃん、今日のご飯何〜?」

ヽiリ,,゚ヮ゚ノi「キーマカレーで〜す」


そう思っていた俺が馬鹿らしく思えるほど、鈴が頻繁に飯だけ食いに来るようになった
オフシーズンならまだしも、利用客の多い繁忙期に和装で来んなめちゃくちゃ浮いてんだよオメーよ


/ ゚、。 /「硬いこと言わんといてぇな。あるもんは使わな損やで」

(;´・_・`)「全くよぉ……」

/ ゚、。 /「それよりセンセ、見つからんうちに『居住区』の物置、片付けといた方がええんとちゃいます?」

(;´・_・`)「あ?物置?」

/ ゚、。 /「あの子らの『姉妹』、まだ残っとったみたいやなぁ」

(;´・_・`)「姉妹……?」


(;´・_・`)そ「あっ!!」


もう暫く、『あいつら』に振り回される日々は続きそうだ

220 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:33:15 ID:HcLXXAEI0



















.

221 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:34:20 ID:HcLXXAEI0



















第六階層にて

222 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:37:05 ID:HcLXXAEI0
[何も悪いことなどしていないのに]


片腕を捥がれ、行く宛もなく泥の中を這いずるワンダーは、自らに身に降り掛かった災難へ恨言を吐いた
『裁断女』と呼ばれた彼、あるいは彼女は、『表』と狭間を行き来していたワンダーだった
誰にも見られることなく深夜の学校に残っている『悪い子』を連れ去っては、棲家で弄んだ後にゆっくりと食す
そんな慎ましやかで幸せな生活を送っていただけであった


[あの二匹が、あの虫が]


全身を苛む痛みは眠りに就くことを許さず、触れる泥の感触は一片の安らぎも与えなかった
堕ちていく最中、焼きついたヒトの姿が頭から離れない。これまで愉しい事だけ味わっていた裁断女に芽生えた『憎悪』の感情が、行く宛もない彼女の手足を動かしていた


[ ]


満たされた憎悪の中で時折、彼女にとって言語化出来ない感情が湧いては消えていく
その正体は、ヒトの言葉で言うところの『祈り』であった。それは尊きものとして扱われるが、相反して届く確率は低い、呪いよりもアテにならない代物だった




「可哀想になぁ」




届かぬからこそ、祈りは尊い。だがこの瞬間、彼女にとって百発百中の魔法のようなものと化した

223 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:40:21 ID:HcLXXAEI0
彼女の前に立つモノは独りだった。しかし、そのモノの後には無数の足跡が続いていた
泥に刻まれているのは革靴の底であったり、大小様々なヒトの素足であったり、あるいは鳥や獣の足跡であったり
中には、足ではなく『手』の跡であったりと、そのモノが不可視の存在と歩んできた道のりの軌跡が、長い列を成して続いていた


「いい出会いってもんはどこに落ちているかわからない。だから旅は良い」


そのモノは泥など厭わずに地面に膝を付き、裁断女の頬に手を添えた
孤独だった彼女にとって、初めて与えられた『慈悲』の仕草。憎悪で満たされた胸中に、新たな色が混じる


「安心しろ。これからは俺たちが救いとなり、導き手となってやる」

「捨てられたお前の存在を、活かしてやる」


一目見ただけで感じた、異形を率いるカリスマへの『心酔』である


「俺たち『拾う神』が、お前の復讐の一助となってやる」


嚥下の音と共に、裁断女は暖かな光に飲み込まれる。気づけば、『偉大なるモノ』の列へと加わっていた
もはやその身を苛む痛みは無く、偉大なるモノの威光に安らぎを覚え、彼に続く足取りはこれまでに無いほど軽かった
変わりゆく自らの存在の中で、唯一不変のものがあるとするならば



【(´ _ `)】 【/ 、  /】



彼女に憎悪を芽生えさせた、二人への執念だけだった

224 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:42:48 ID:HcLXXAEI0




『狭間 “In The Backrooms.”』



END

225 ◆L6OaR8HKlk:2024/11/17(日) 21:45:14 ID:HcLXXAEI0
裁断女のモデルはこちらです
http://mzkzboon.blog.fc2.com/blog-entry-909.html

いつかぶっ殺してやろうとずっと思ってました
次回はまたブスとデブの合宿に戻ります

226名無しさん:2024/11/17(日) 22:10:17 ID:jNFoN1Nk0
おつおつ

227名無しさん:2024/11/17(日) 22:30:09 ID:4bdryv0A0
おつ

228名無しさん:2024/11/18(月) 06:47:19 ID:9HqF1qUQ0
おつ

229名無しさん:2025/02/02(日) 23:40:10 ID:/RzzjASY0
面白かった!裁断女のリベンジ楽しみにしてる


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