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The Demon Village.
1
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 21:46:11 ID:bDiJ5Dlc0
ブーン系秋の短編祭2021参加作品
2
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 21:51:48 ID:bDiJ5Dlc0
招待状を貰った覚えはあるだろうか?結婚式や同窓会。親しき相手と、幸せなひと時を過ごす為のお誘いを込めた便箋だ
デジタル時代の昨今は殆どが電子媒体になっているが、一昔前は郵便でのやり取りが主流だったそうだ
送られたハガキには『御出席』『御欠席』の選択肢があり、そこにペンで丸をして送り返す。オイオイかったりいぞこの方法
そのハガキが結婚式の招待状だったらどう思うのだろうか?友人がようやくゴールインした安堵や、未だに独り身である自身に焦りを覚えたりするのだろう
そのハガキが同窓会の紹介状だったらどう思うのだろうか?旧友との再会を心待ちにしたり、初恋のほろ苦い思い出が蘇ったりするのだろう
では例えば、『全く知らない人から招待状が届いたら?』
差出人は不明。だが宛先はピッタリ一致している、しかし『何の集まりか』も書かれていないハガキが一便届いたら?
きっと最初は誰かの悪戯だろうとタカを括り、燃えるゴミにでも出すのだろう。だが、次の日に全く同じ招待状が届いたら?
神経の図太い野郎なら、『しつけえなクソが』と悪態でも吐いて、招待状は昨日と同じ末路を辿る。そうでなければ、少々不気味に思うだろう
その次の日にも全く同じ招待状が届いたら?
その次も、その次も、その次もその次もその次もその次もその次も
ポストを閉じようと、住居を変えようと、友人の住まいに厄介になっても、実家へ戻っても、海外のホテルでも
返事を貰うまで、執拗に付きまとう『招待状』が届いたら?
これは、そんなはた迷惑な招待状のお話だ。恐いかって?さぁ、どうだろうな。俺は寝起きの相棒の方がよっぽど恐いが
なんてったって、怪異の吹き溜まりであるこの『鬼ヶ村』じゃあ、その程度の話はごまんと集まるからよ
前置きが長くなったな。それじゃあ始めよう。妖、物の怪、魑魅魍魎。『人ならざるモノ共』との、悍ましく楽しい日常を――――
3
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 21:53:50 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――
―
別にウチは刑務所や処刑場を運営してるワケじゃあねぇ。山奥にある廃村を改装した宿泊施設だ。シーズンになればボーイスカウトのサマーキャンプや、スポーツチームの強化合宿場として利用される
来る連中は大体、楽しげな顔してこの『鬼ヶ村』へと足を踏み入れる。都会に住んでる奴からすりゃあ、クソ田舎ってのは特別感があるんだろうな。住めば三日で飽きそうなもんだがよ
だが、『本業の客』であるなら話は別だ。都会だろうと田舎だろうと関係は無いだろうが大抵は
⌒*リ´ - リ「……」
あのように、この世の不幸全部おっ被ったみてーな暗〜い顔をしてやがるんだ
(,,゚-゚)「あーらら、だいぶ参っちゃってるようだね」
助手席に座る生意気な妹分を傍目に、ハンドルを大きく切って車体の頭を振り、逆車線のバス待機場へと寄せる
よほど憔悴しているのか、腐りかけのベンチに腰掛けていた『客』は、このマイクロバスが目的地行きとはまだ気がついていないようだ
(´・_・`)「いらん事言うんじゃねえぞ。しずく」
(,,゚-゚)「心外だな『先生』。まるでボクが口の減らないクソガキみたいな言い方じゃないか。ん?」
(´・_・`)「口の減らないクソガキじゃなきゃ、わざわざ釘なんて刺さねーんだよ」
行儀悪く飛んできた蹴りを強めに叩き払うと、一丁前に「セクハラだよ!!」と憤慨される。野郎には生きづらいご時世だな。躾すらロクに許されねえとは
ドアの開閉ボタンを押したが、『ガガ』と耳障りな音を鳴らしただけで開こうとはしない。こいつも相当な骨董品だ。そろそろ楽にしてやるべきだろうが、先立つモンが無い今、まだまだ頑張ってもらう他ない
(´・_・`)「頼む」
(,,゚-゚)「はいよ」
助手席からヒョイと乗り降り口に移ったしずくは、ドアを強めにガンと蹴飛ばす。慌てて目覚めたかのように、エアを噴き出しながら開いた
その音でようやく迎えの到着に気がついた『客』は、躊躇いがちにベンチから腰を上げた。傍に置いていたボストンバックは今だに鎮座したままだった
4
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 21:56:30 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ´・-・リ 「あの……」
(,,゚-゚)「こんにちわ。『高梨 莉花(たかなし りか)』さんで間違いない?」
平日の昼間に、中学生くらいのガキが出迎えて来りゃ首も傾げるもんだろう。怪訝な表情を浮かべながらも、彼女は首を縦に振った
(,,゚-゚)「鬼ヶ村へようこそ。『ねぐら』に案内するよ。さぁ乗って」
⌒*リ´・-・リ 「は、はい……」
彼女はバスに乗り込むと、俺に控えめな会釈をしてクソ狭い座席の一つに腰掛ける
軽く振り返って様子を確認すると、大体予想通りな有様をしていた。化粧っ気は無く肌は荒れ気味、目の下には深い隈
恐らく食事もロクに取れていないのだろう。頬はコケ気味で生気は無い。年齢は二十代後半と聞いていたが、軽く見積もっても十年分は老けて見えた
(´・_・`)「遠路遥々、お疲れ様でした。『鬼ヶ島トレーニングセンター ねぐら』代表の『小練 詩音(こねり しおん)』と申します。それでこっちが」
(,,゚-゚)「『儀社(よしもり) しずく』だよ。よろしくね」
⌒*リ´・-・リ 「あっ、はい……高梨 莉花です……」
エンジンの音に掻き消えてしまいそうなか細い声だ。視線は俺の顔では無く座席の背に向けられている
元から控え目な性格なのが見てとれる。隣のクソガキに爪の垢煎じて飲ませたかった
(´・_・`)「この先、酷い道が続きます。お気分が悪くなりましたら、遠慮なく仰ってください」
(,,゚-゚)「ゲロ袋あるよ」
(´・_・`)「置いてくぞお前。それでは、発車します」
扉の開閉ボタンを押したが、またもや『ガガ』と文句を言って閉じようとはしなかった
しずくに目配せをして指示すると、クソめんどくさそうに大袈裟な溜息を吐き、もう一度『気合い』を入れに向かったのであった
5
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 21:57:30 ID:bDiJ5Dlc0
改めて紹介する。自宅兼職場である『鬼ヶ島トレーニングセンター ねぐら』は、廃校を改築した宿泊施設だ
流石に耐久性の問題から補強工事は行われているが、二十世紀初頭の木造建築の外装は出来る限り残してあるので
⌒*リ;´・-・リ「あわ……」
パッと見、デカいオバケ屋敷に見える事もある
(´・_・`)「まずはお部屋にご案内します。その後、ご依頼内容をお聞かせください」
⌒*リ;´・-・リ「は、はい……」
だが彼女の警戒心は、建物よりも『俺』に向けられているように見える。やや小柄な身の女性としては、身長195センチ越えの筋肉野郎は相当恐いだろう
ましてや、周りには交番どころか、近くの民家すら空き家となって長いのだ。この反応は当然と言えるが、身体は漢で心は乙女なんで少し傷ついた
(´・_・`)「お荷物、お持ちしましょう」
⌒*リ´・-・リ 「あ、ありがとうございます……」
彼女の荷物を持ち上げると、、バッグの底に貼り付いていたであろう『紙切れ』がヒラリと舞い落ちた
(,,゚-゚)「あらら、なんか落ちたよ」
⌒*リ;´・-・リ そ「ヒッ!!!!????」
拾おうとしたしずくの手は、高梨さんの短い悲鳴に止められる。『何の変哲もない紙切れ』に、異常なまでの恐怖を示している
その様子を見て、しずくは手のひらを向けながらゆっくりと退がる。代わりに俺がしゃがんで、まずは軽く指先で叩いてみた
6
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 21:58:56 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「……」
当然、反応はない。横幅十センチ、縦幅十五センチほどの長方形の紙。今やほとんど見かけなくなった『ハガキ』だ
紙面には、山梨さんの名前と住所。差出人は記載されておらず、切手も貼り付けられていない
拾って裏面を確認してみると、『御出席』『御欠席』の文字が二つ並び、その下には、(何方かに丸をお書きください)と指示がある
ただ、何の会への招待状なのかは書かれていなかった。確かに不気味だが、あれほど恐れるかと言われれば首を傾げてしまう
(,,゚-゚)「何それ」
(´・_・`)「さぁな。俺よか彼女に聞いた方が早い気がするぜ」
(,,゚-゚)「そうだn……危なっ!!」
くらりと崩れ落ちた高梨さんの身体を、しずくが駆け寄って受け止める。たった一枚のハガキに対するリアクションにしては、少々仰々しい
今回の依頼は『これ』が絡んでいると見て間違いなさそうだ。もう一つ増えた『荷物』を抱えると、ハガキをしずくに渡した
(´・_・`)「『お銀』に見せてこい。可能性は薄いが、原因が特定出来たら今日中に対処する」
(,,゚-゚)「はいよ」
事務所へと向かったしずくを見送り、ズレ落ちそうになったバッグの肩紐を軽く跳ね上げて調整する
見た目より結構重たいが何入ってんだこれ。まるで分厚い雑誌でも詰め込んでるような……
(´・_・`)「あっ」
締まり切ってないジッパーの隙間からは、白い紙の角が覗いている。まさかと思うがこの中全部『アレ』じゃねえだろうな
(´・_・`)「こりゃ参るわ……」
どうやら、奴さんはどうしても彼女に『御出席』して欲しいようだ
バッグの中身の処遇をどうするか考えつつ、部屋ではなく『カフェテリア』へと足を運んだ
7
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:00:48 ID:bDiJ5Dlc0
彼女が目を覚ましたのは、それから二時間してからだった
⌒*リ;´・-・リ そ「キャアア!?」
(,;゚-゚)そ「うおお!?」
甲高い悲鳴を上げながら飛び起きた高梨さんに驚いたしずくは、野太い叫び声を上げてオレオを浸していた牛乳をテーブルにぶち撒けた。うおおておま
(´・_・`)「あーあーあーあー……何やってんだお前……」
(,,゚-゚)「だってあいつが」
(´・_・`)「お客さんに指差すなあいつって言うな。お銀、布巾取って」
イ从゚ -゚ノi、「……」
テーブルの向かいで古いタブレット端末を眺めていた長い銀髪に琥珀色の瞳を持つ顔の良い女は、此方を一瞥もせず側に置いていた布巾を片手で投げつけてくる
布巾は俺の手元に届かず、テーブルに広がる牛乳の水たまりにべチャリと落ちた。顔の良さを性格の悪さで台無しにする良い例じゃありませんか?どう思いますか、貴方?
⌒*リ;´・-・リ 「えと……ここは……?」
(´・_・`)「カフェテリアです。どうぞ此方へ。すぐにお茶を用意します」
⌒*リ;´・-・リ 「は、はい……」
ソファーからテーブルへと移った彼女に、紅茶と茶菓子を差し出す。『お銀』はティースプーンで自らのカップを叩いてお代わりを催促したので、中身の残ったティーポットをギャンと置いてやった
イ从゚ -゚ノi、「小さな男ね……」
(´・_・`)「やかましいわ」
(,,゚-゚)「代わりの牛乳持って来て」
(´・_・`)「お前ら少しは自分で動けや」
8
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:02:39 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ「わ、私……どうしたんでしょう……?」
余程ショックだったのだろうか、気を失う直前の記憶は無いようだ。大丈夫かなこのねーちゃん。この先の話に耐えきれるかな
(´・_・`)「到着後に倒られましたので、不躾ながら介抱を行いました。お荷物は既に運び入れましたので、後で改めてお部屋へご案内します」
⌒*リ;´・-・リ「そう、ですか……お手数をかけて申し訳ありません」
(´・_・`)「お気になさらず。どうぞ、召しあがってください」
お茶を勧めると、カップを両手で包み込むように掴み、静かに啜った。それはそうと牛乳臭が凄い
白濁液をたっぷり吸った布を隣接するキッチンの流しに放り込み、冷蔵庫から牛乳パックを取って席へと戻る
(,,゚-゚)「先生は文句言いながらも言う事きいてくれるからチョロいよね」
牛乳パックの底で頭をどついた
(,,#゚-゚)「何すんのさ!!ボク美少女だよ!?」
(´・_・`)「やかましいわ。さて、高梨さん」
⌒*リ;´・-・リ「はっ、はい!!」
なんか怯えられてる気がするんだけどなんでだろうか。俺が誰彼構わず暴力を振るう悪漢に見えるのだろうか。敬語だってちゃんと使ってるのにどぉしてーーーーーーーーーぇーーーーーーーーーーーーーーぇーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!※サカナクション‐アイデンティティ
(´・_・`)「早速ですが、ご依頼内容をお聞かせ願えますか?」
⌒*リ;´・-・リ「っ……あの、本当に……」
(´・_・`)「はい?」
⌒*リ;´・-・リ「本当に、『除霊』をして貰えるのでしょうか……?」
9
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:05:31 ID:bDiJ5Dlc0
『除霊』。いるかいないかも知れない曖昧な存在を『祓う』行為。誰しもが胡散臭いと思うのは当然だ
恐らくここに辿り着くまでに、幾つものエセ霊媒師を頼って来たのだろう。試行を重ねて成果が出ないのなら、疑心も無理はない
イ从゚ -゚ノi、「何、アンタ半信半疑でこんな辺鄙なとこまで来たワケ?」
(,,゚-゚)「実は結構余裕なんじゃない?」
(;´・_・`)「オメーらよぉ……」
俺らにとって失礼に当たる質問をされたからといって、えげつねえカウンターを返して良いわけでは無いのだ。人としての良心とか欠如してんのかお前らは
⌒*リ;´ - リ「う……うううう……」
ほら泣いちゃったじゃん……
(;´・_・`)「……所で、貴方のお荷物の中から『招待状』がごっそり出てきたのはご存じですか?」
⌒*リ;´;Д;リそ「うわぁああああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!!!!!」
イ从゚ -゚ノi、「アンタ何で今それ言ったの?」
(;´・_・`)「いやもう泣いてるんだから今がチャンスかなって」
(,,゚-゚)「先生ってさぁ、自分が一番の人でなしって自覚無いよね」
俺なんか間違えてるのだろうか。どうせ後から泣くことになるんだろうからここで一気に出し切った方が楽では無いのだろうか?
⌒*リ;´;Д;リ「ああああああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!」
わかった俺が間違ってた。成人が大声で泣く姿って結構キツいわ
10
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:06:48 ID:bDiJ5Dlc0
(;´・_・`)「わーったわーった、悪かったよ」
(,,゚-゚)「素が出てるよ」
(´・_・`)「早かれ遅かれだよ」
なんだが気が抜け、取り繕うのも面倒になったので口調を崩す。育ちが悪ぃもんでどうせすぐにボロが出るしな
ウチの女子連中は高梨さんにティッシュを差し出したり、汚いものでも見るような目で俺を睨め付けたりと非難に余念がない。最初に泣かせたのお前らやぞ
(´・_・`)「あの紙束は勝手に処分させて貰った。今回の依頼はアレに付き纏われてるってことで良いか?」
⌒*リ´う-;リ「うう……はいぃ……」
あれだけあからさまに執着されてりゃ、話を聞かずとも大体は察せられる
⌒*リ´う-;リ「も、もう半年になります……最初は誰かの悪戯だと思ってたんですが、毎日届く度に気味が悪くなって……」
⌒*リ´;-;リ「郵便局に問い合わせても郵送履歴は無し。ストーカー被害として警察に相談しても相手にして貰えませんでした」
⌒*リ´;-;リ「更に怖いのが、今みたいに『出先』であろうとも私の下に『招待状』が届くんです……友達の家、実家、県外のホテル。海外にまで……」
(,,゚-゚)「気合入ってんね」
(´・_・`)「ね」
イ从゚ -゚ノi、「それで、お次は相談相手を霊媒師にシフトしたってワケね」
⌒*リ´;-;リ「はい……あの、貴方は?」
イ从゚ -゚ノi、「従業員の『銀』。どうぞよろしく」
自己紹介タスクが一通り終わって一安心だ。良かった良かった。これで『誰やねんこいつ』って突っ込まれることは無い
11
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:08:12 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「あんま効果無かったろ。持って一日二日ってところか」
⌒*リ;´う-・リ「う……はい……三件ほどお願いしましたが、どれも三日程度で……」
(´・_・`)「結構払った?」
⌒*リ´う-;リ「ぢょぎんづがいはだじまじだぁぁぁぁぁああああああああ!!!!!!!!」
(;´・_・`)「あー……ああ、お気の毒に……」
イ从゚ -゚ノi、「一文無しならお引き取り願えないかしら?」
(;´・_・`)「おま」
血も涙も無いんかこいつ
⌒*リ´;Д;リ「借金でぼなんでぼじばずがらだずげでぐだざいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!」
(,,゚-゚)「なんだっけアレ……この前、遊びに行った時さぁ、街中でトラックが大音量で……高収入高収入って……」
(´・_・`)「やめとけありゃ負の遺産だ。高梨さん、アンタ確か『大桜堂』の紹介でウチを知ったんだよな?」
『同業』が、此方の都合も聞かずに一方的に彼女を押し付けてきたのは二週間前の話だ
顔も腕も愛想も良い女だが、如何せんどうしようもない守銭奴で、体よく面倒を避けた上で仲介料も頂くって腹だろう。今度会ったらヴォコヴォコのヴォコにしようと思った
12
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:09:12 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「『アレ』からはその辺の後始末もしとけとのお達しが来てる。連絡先だけ書いといてくれたらそのクソの役にも立たねえザコ霊媒師共に払った金取り戻しとくわ」
⌒*リ´;-;リ「え……過払い金請求もやってくれるんですか……?」
(,,゚-゚)「請求じゃないね」
イ从゚ -゚ノi、「恫喝よ……」
:⌒*リ´;-;リ:「ひえ……」
(´・_・`)「支払い云々については後々話し合うとして……質問に戻ろう。『除霊出来るか?』と訊いたな?」
クソザコ霊媒師でも『一時凌ぎ』にはなったのを鑑みて、彼女は悩みの種を霊的な現象と確信したんだろう
貯金を使い果たし、這う這うの体でこの場に辿り着いた。今も渦巻く俺たちに対する疑念への答えは―――――
(´・_・`)「出来る。ただ、これは霊の仕業じゃない」
自信と実績を乗せて、ハッキリと返すに限る
13
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:10:44 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「先ずは称賛を贈ろう。良く半年間もの間、招待状に返事を書かずに耐え切った」
⌒*リ;´う-・リ 「え……?」
(´・_・`)「この怪異には、二つの目的がある」
一つ、と人差し指を立てた
(´・_・`)「『対象を弱らせる』。招待状を送り続けることで、獲物を疲弊させる」
二つ、と中指を立てる
(´・_・`)「『対象に干渉させる』。出席、欠席関わらずにペンを入れさせる。一つ目はともかく、これを行なっちまったら手遅れだった」
⌒*リ;´・-・リ 「ど……どうなるんですか……?」
イ从゚ -゚ノi、「『連れて行かれる』」
銀は紅茶の中にボチャボチャと角砂糖を入れ、ティースプーンで掻き回しながら答えた。病気になるって言ってるのにこの甘党はホンマ
イ从゚ -゚ノi、「怪異の棲家、『裏』のチャンネルへ」
⌒*リ;´・-・リ 「裏……?」
(´・_・`)「パラレルワールドや異世界みたいなもんだ。俺らは『裏』と呼んでる」
イ从゚ -゚ノi、「狡猾で、獰猛。そして『表』の世界よりも遥かに上回る『技術』を持つ異能の怪物……その餌に、される為にね」
高梨さんはゴクリと唾を飲み込む。普通この手の話したら呆れるか笑われるかおシャブ常用者かと疑われるんだが、実際に被害にあってりゃ説得力も増すのだろう
もしくは、正常な判断力すらまともに機能しないくらい弱っているかだが
14
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:12:07 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「『招待状』はタチの悪いワンクリ詐欺みたいなものでね。意味もよく知らず此方が『了承』すれば、あっという間に向こう側へと連れて行かれるわ」
(´・_・`)「ただ、これはまだ優しい方だ。了承しない限りは向こうは嫌がらせしか出来ない。恐らく、現段階では『その程度』しか出来ない雑魚なんだろう」
⌒*リ;´・-・リ 「優しい方って……」
(´・_・`)「表と裏を繋ぐ『境界線』ってのは、実はめちゃくちゃ多くてな。手紙もそうだし、ディスプレイや電子デバイス。ドアや敷居。鏡や水面。この世に存在するありとあらゆる物事や現象が、出入口となっている」
高梨さんは予想通り雷にでも打たれたかのようにピシャリと固まった。まぁこんな話聞いて良い気分になる奴はいない
(´・_・`)「だからと言って被害者の数も相応に多いかっつったらそうでもない。ドア開けてグシャーなんてレベルの怪異なんてマジ天文学的な確率でしか出会わねえからな」
(,,゚-゚)「交通事故に遭う確率の方が高いよ」
⌒*リ;´・-・リ 「そ、そうなんですね……」
そう、車は恐い。信号が青でも左右を確認してから渡らねばならない。なんなら手ぇ上げろ
(´・_・`)「この怪異の最も恐ろしい点は、『出席』に丸しちまった場合ほぼ確実に境界をこじ開けて連れてっちまうって所だ。良く出来てる仕組みだよ。ザコには変わりねえがな」
⌒*リ;´・-・リ 「ザコ……?」
(,,゚-゚)「気にしないで。この人、大体の怪異はザコ扱いするから」
⌒*リ;´・-・リ 「ええ……?」
ザコはザコじゃん……
(´・_・`)「で、ここからが本題だ。俺たちはこれから、招待状を解析して特性を突き止める。ザコ霊媒師でも三日程度なら届くのを防げたってことは、手紙自体は本体じゃない可能性が高い」
⌒*リ;´・-・リ 「ほ、本体?」
(´・_・`)「送り主がいるってこったよ。で、アンタが寝てる間に簡単に調べたところ幾つかわかったことがある。お銀」
15
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:13:49 ID:bDiJ5Dlc0
お銀は先ほどまで眺めていたタブレットをテーブルに滑らせる。画面には、『招待状』の性質が几帳面に羅列されていた
イ从゚ -゚ノi、「私たちの読み通り、招待状自体は本体じゃ無かった。材質も普通の紙と変わりないし、破いても燃やしても特に反応は無かった」
イ从゚ -゚ノi、「これに組み込まれている仕組みは三つ。一つは、先ほど言った通り『境界』としての機能。『出席』への記入をトリガーに、対象を裏へと引きずり込むわ」
イ从゚ -゚ノi、「ただし、『フィルター』が掛けられている。誰彼構わずってワケじゃなく、アンタみたいに精神的に疲弊した者が限定みたい」
⌒*リ;´・-・リ「え、ど、どうしてでしょうか?誰でも引きずり込めるに越したことはないのでは?」
イ从゚ -゚ノi、「まぁ、『こういうの』もいるからねぇ」
親指で差され『こういうの』呼ばわりされた俺は鍛え上げられた上腕二頭筋をこれでもかと見せつけた
イ从゚ -゚ノi、「言ったでしょう?奴らは狡猾なのよ。同じ餌でも狩りやすい方を狙った方が楽だもの」
(´・_・`)「全部が全部そうってワケじゃねえけどな。アホだったら、今日中どころか一時間かけずに終わってたぞ」
⌒*リ;´・-・リ「ええ……?」
イ从゚ -゚ノi、「で、二つ目。欠席に記入した場合。これは実際に試したわ。で、結果がこちら」
動画ファイルをタップすると、先ほど録画した実験映像が流れる。ボールペンを使い、欠席を丸で囲む。御を二重線で消すとかそういう作法とかは知らん
しばし待つが、特に大きな動きは見られない。高梨さんは固唾を飲んで見守っていたが、『何もない』事に不安になったのか、俺らの顔を交互に覗いた
イ从゚ -゚ノi、「ここ」
変化は、招待状を持ち上げた時に起こった。記入したのは『一枚』。だが、下から新たな『招待状』がヒラリと舞い落ちる
その招待状へ再び『欠席』の意を伝えて持ち上げると、またもや新しい招待状が剥がれ落ちた
イ从゚ -゚ノi、「意にそぐわない返答だと、RPGの強制選択肢のように新しいハガキが増殖する。多少の気が滅入る仕掛けね」
:⌒*リ;´・-・リ:「ひぃぃ……」
(,,゚-゚)「この辺は工夫が足りないよね。欠席をトリガーにすればもっと成功率上がりそうな気がするけど」
(´・_・`)「こいつらアホだから」
:⌒*リ;´・-・リ:「なんでそんな余裕なんですか……?」
16
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:15:01 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「で、最後の……まだあるかも知れないけど、現状判明してる三つ目の仕掛け。これは目には見えないものよ。アンタ、蟻が行列を作る仕組みを知ってて?」
⌒*リ;´・-・リ「え、あ、蟻って、あの?」
イ从゚ -゚ノi、「ええ。あのクソ虫は、獲物を運ぶ仲間を連れてくるために『フェロモン』を分泌して道しるべを作るの。招待状からはそれと似た匂いがした」
もうなんのこっちゃヨイヨイセブンの高梨さんを余所に、我が家の研究員は推測を温泉のように掛け流した。腰痛には効きそうにない
イ从゚ -゚ノi、「最初の一枚が付けた妖力由来のフェロモンを辿って、招待状は送られ続けてくる。アンタが何処に逃げても確実に届き、郵便局に問い合わせても郵送履歴が無かったのは、『境界』を経由して送りつけてきたから」
イ从゚ -゚ノi、「三下霊媒師が祓った気になってたのはこのフェロモンだけ。それも完全にではなく、ある程度『誤魔化した』に過ぎない。だから短期間で嫌がらせが再開された」
(´・_・`)「臭いトイレに匂いのキツイ芳香剤置いたようなもん」
(,,゚-゚)「的確に最悪の例えするじゃん」
⌒*リ;´・-・リ「では……その、フェロモンを取り除けば、助かるんですか?」
イ从゚ -゚ノi、「ハガキが届く頻度は、グッと減るんじゃない?元を断った方が安心だと思うけれど」
⌒*リ;´・-・リ「で、ですが、『裏』にいる……本体を、どうやって祓うんですか?此方から干渉出来る方法が?」
(´・_・`)「待てば良い」
⌒*リ;´・-・リ「はい?」
(´・_・`)「奴の目標は一つしかねえんだ。俺らはそれを待ち構えて、本体が出てきたところをぶっ殺すだけ」
高梨さんは頭痛を抑え込むように額を抑えて、『待ってくれ』とでも言いたげに掌を向ける
⌒*リ;´・-・リ「半年間ずっと招待状だけを送られ続けて来たんですよ?短期間で現れる保証なんてないじゃないですか!!それまでずっと辛抱強く待てって言うんですか!?」
(´・_・`)「うん」
⌒*リ;´・-・リそ「うん!!!!!?????」
バイブス上がって来たなこの人
17
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:16:32 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「まぁ落ち着けって。ここには専門家が揃ってんだ。一年も二年も辛抱しろなんて言わねえよ一週間で片つけたらぁ」
頭に昇った血に気付いたのか、「すみません」と小さく詫びを入れて縮こまる。詳細を問い詰めない辺り、素人としての自覚と恥が湧いて出たのだろう
彼女にとって重要なのは『祓う』事であり、その過程はどうでも良いのだから。此方としても、説得する手間が省けるのでありがたい
(´・_・`)「心配しなさんな。アンタはここで休暇を楽しんでくれりゃあいい。来週には爽快な気分で家に帰れらぁ」
⌒*リ;´・-・リ「休暇……ですか?」
(,,゚-゚)「先生のおもてなし力(ちから)は凄いよ。五十三万」
⌒*リ;´・-・リ「何の単位……?」
お前それ第一形態やから最終的には一億二千万まで跳ね上がるじゃねえかどんなおもてなししろってんだよ俺に
(´・_・`)「さて、問題解決並びに滞在について心構えと注意点を説明しておくか」
⌒*リ´・-・リ「心構え?」
(´・_・`)「ああ。これから『招待状の送り主』を引きずり出すにあたって、嫌がらせのレベルが上がる可能性がある」
⌒*リ;´・-・リ「ええ!?」
一つ嘘を混ぜ込んだ。『可能性』ではなく『確実に』だ。これを伝えてしまうと、滞在中は常に怯えながら過ごさねばならない
前者の時点で相当な緊張を強いられるだろうが、危機感が薄れてしまうのもまた危うい。この言葉が、此方が提示できる最大限の警告だ
(´・_・`)「俺らも常に気を張るが、不測の事態ってのはどうしても起こりうる。ただ、絶対に連中の餌にさせないのは保証する」
⌒*リ;´ - リ「……」
恐いだろう。無理もない。『出来る』とは伝えたが、出会って一日も経っていない奴に信頼を伝えられてもすんなりと飲み込めるはずもない
だからこそ、確固たる『自信』を抱いて貰わねばならない。半年間も怪異の脅威に耐えた『辛抱強さ』は、彼女が持つ最強の武器なのだから
18
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:18:30 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「『決して諦めるな』。どんな責め苦に遭ったとしても、私はお前の餌になどならないという、断固たる決意を持て。それが奴らに対する此方からの『嫌がらせ』だ」
⌒*リ;´ - リ「断固たる決意……」
(,,゚-゚)「ダンコ桜木……」
何でこの子は一々クソ古いネタで茶々をいれるかなぁ
⌒*リ;´・-・リ「や……やってみます……」
(´・_・`)「良し。ではおちんちんの説明におちんちん」
⌒*リ;´・-・リそ「!?」
イ从゚ -゚ノi、そ「!?」
(,;゚-゚)そ「!?」
(;´・_・`)そ「!?」
(,,゚-゚)「いや先生が驚くのは可笑しい」
19
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:19:06 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「……ッスゥーーーーーーーーーーーーーーーー」」
_人人人人人人人人人人人人人_
> (´・_・`)「おちんちん」 <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
ロマンス&バカンス‐YEAH!おちんちん
https://www.youtube.com/watch?v=XuyQefD4YiU&list=RD3N3FhNFHaZA&index=3
マジかよ……
20
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:23:24 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ「あの、小練さん?」
(´・_・`)「……」
試しに『あ』の発声をするつもりで声を出してみる
(´・_・`)「お」
ダメだ。自分の意思とは関係なく『お』から始まる。やられたわこれ
銀の方を向き、左手首を指で叩いて見せる。彼女はタブレットを引き寄せて、時間管理アプリを開いた
イ从゚ -゚ノi、「ええと……恐らくこれね。C分類の『陰茎がクソデカい木彫り人形』。破壊から七時間二十一分経過してるわ」
(;´・_・`)「……」
出たよもう時間差の呪いじゃんこれ……解呪苦手なんだよ……
(,,゚ワ゚)「もしかして呪いで『おちんちん』しか喋れなくなったの!?」
ワクワクすんじゃねえクソガキ
⌒*リ;´・-・リ「ど、どうされたのですか?」
イ从゚ -゚ノi、「ハァ……私たちは基本、全国から送られてきた『曰く付き』の品物の破壊、除霊、解呪で生計を立ててるの。これはその反動」
⌒*リ;´・-・リ「招待状のように『裏』が関わっている物なんですか?」
イ从゚ -゚ノi、「そういうのは滅多にないかしら。表由来の怪異の方が遥かに多いわね。こういう悪ふざけの呪いも含めてね」
イ从゚ -゚ノi、「だから、怪しげな品物には絶対に触らないこと。こういう風になりたくなかったらね」
⌒*リ;´・-・リ「はっ、はい!!」
喉を指で叩いた後、掻っ切る仕草を行い、高梨さんへ向けて五本指を啄むように動かす。手話の意訳は――――
_,
イ从゚ -゚ノi、「ハァー……アレは役に立ちそうに無いから、ここからの説明は私が引き継ぐわ……」メンドクサ……
付き合いの長い相棒のご察しの通りだ。客の前で露骨にめんどくさそうにするな
21
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:24:41 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「おちんちん」
⌒*リ;´・-・リ「あ、はい……お世話になります……」
『夕飯は七時に』と伝えたのだが、当然意味は通じなかった
そらそうだよおちんちんで分かるわけねえもんいやわかってくれよ僕らはいつも以心伝心じゃねーのか二人の距離繋ぐテレパシーはどうした
(,,゚ワ゚)「おまんまんじゃなくて良かったねwwwwwwwwww」
(´・_・`)「……」
お下品な口を利くクソガキの頭に拳骨を入れて黙らせ、一足先に席を立った
(,; q )「」死ゾ!!!!!!!!!!!!!!!!
⌒*リ;´・-・リそ「凄い音しましたけど!?」
イ从゚ -゚ノi、「いつものコントよ。気にしないで」
『冗談じゃねえよ』と返したかったが、相変わらず口から出てくるのは
(´・_・`)「おちんちん」
小学生レベルのお下品な下ネタなのであった
22
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:27:23 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――
―
(´・_・`)「お……うぉ……ぉぉ……」
『呪い』は、妖力、あるいは霊力を用いた生体への『プログラムコード』だ
その仕組みは、人が成長するにつれて得ていく『歩行』や『発言』などの生得システムに呪いという『ウイルス』が侵入し、一定の時間経過で発症する
被害としては幻覚や幻聴、自傷行為。最悪の場合不審死や病死、自殺や他殺にまで多岐に渡る。タチが悪い上に対処出来る人材も限られる厄介な精神攻撃だ
対処法としては、お経や祈りを模した外部からの『パッチ』を当てて相殺させるか、もしくは―――――
(´・_・`)「おぉ……ちん……ち……」
人が元来持つ『生命力』を働かせ、地道に解除していくかだ。え?専門家ならパッと治せって?うるせえ死ね得手不得手くらいあって当たり前だろカスこれ出来るまでクソ師匠に嘲笑われつつ血反吐ぶち撒けながら修行したんだぞクソが
イ从゚ ー゚ノi、「手こずってるようねぇ」
(#´゚_゚`)「おちんちん!!!!!!!」
背後からの声に集中が途切れる。もうちょっとだったのに邪魔しやがってクソが
開けっぱなしだった自室の戸にもたれ掛かり、性悪女は心底愉快だと言いたげに、ニヤニヤと絵になる笑みを浮かべている
一杯飲った後で気分が良いのだろう。下戸の俺からして見ればあんなもん毒でしか無いが
イ从゚ ー゚ノi、「発症から六時間経過。その程度の呪いに手こずっているようじゃ、『お師匠様』も浮かばれないわよねぇ」
(#´・_・`)「おちんちん」
あのカスは暴力しか教えてくれんかったやろが独学やこんなもん
23
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:28:06 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「おちんちん」
それより、高梨さんはどうした?
イ从゚ -゚ノi、「良いお酒をガブ飲みしてグッスリよ。しずくが酷く絡まれてね。今は抱き枕として使われてるわ」
(´・_・`)「おちんちん」
そりゃ勿体ねえもんを見逃したな。クソ、これさえ無けりゃ……
引き続き解呪に取り掛かろうとすると、首筋に細い『氷』のような冷たさが触れる。思わず『ひゃんっ!!』って言いそうになった(乙女だから)。なった所でどうせ口からはおちんちんしか出てこないが
イ从゚ -゚ノi、「《流》(ながし)」
お銀の『指』を通して、声帯周辺を冷水のような感覚が流れ込む。半分『雪女』の血を引く彼女の『妖力』だ
世界最強の肉体を持つ俺だから「やんっ……冷たい……」程度で済むが、常人だと真夏であろうと寒さに凍えるだろう
『妖力』であるが故に、当然『呪い』に対しても効力がある。先ほどまでクソみたいな下ネタを言わせる為だけに体内でもの凄い抵抗をしていたおちんちん野郎の動きも鈍る
すかさず、丹田から『気』を押し上げ、腹から喉、そして口へと異物を吐き出すように流した。すると
(´・_・`)「オロロ」
霞んだ黒く重い気体の塊が猫の毛玉のように飛び出す。それを掌で迎え、羽虫を叩き潰すかのように閉じた
(´・_・`)「ありがとよ。贅沢を言えばもうちょい早く手助けして欲しかったが」
イ从゚ -゚ノi、「私はね、優先順位はキッチリつける方なの」
(´・_・`)「俺の異常より風呂と飯と晩酌が先かよ」
24
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:29:16 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「よっ、と……どう?今回の案件は」
ベッドに腰掛けた銀は、窓を開けて夜風を入れた。初夏の風が、冷えた身体を更に凍えさせる。ちょくちょく嫌がらせすんな
(´・_・`)「寒い」
イ从゚ -゚ノi、「あらそう。私は暑いの」
なんやこいつ
イ从゚ -゚ノi、「で、どうなの?」
両腕で身体を支え、色白で細い脚を組んだ様は忌々しいほど様になっている。同じ屋根の下で住まう『家族』という間柄でなければ、思わず間違いを犯しちまいそうだ
なんて、男にあるまじきゲスで邪な考えを秒で流し、妖力の残り香を揉み消すように首を摩る。凍りついた汗の薄い薄い膜が、ベトつく湿気になって指に絡んだ
(´・_・`)「大桜堂だってその気になりゃ幾らでも駆除出来ただろうぜ。それをせずこっちに回したってことは、よほど根気がいるか、あるいは……」
イ从゚ -゚ノi、「大規模な被害を齎す可能性があるか、ね」
京都に店を構えるアンティークショップ『大桜堂』。その周辺には観光客が訪れる歴史的建造物も数多い
万が一、怪異が暴走した場合だが、当然向こうもプロである以上、被害は最小限に留める実力とプライドは持ち合わせている
ただ、俺ら以外の住人がいないこの『鬼ヶ村』で暴れさせた方が、被害も少なく事後処理も簡単に済む。それを見越して寄越したのだろう
25
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:31:06 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「癪に障るわぁ……」
理に適ってるとは言え、いい様に扱われているようでとにかく気に食わない
そんな俺の繊細な乙女心を知ってか知らずか、銀は口元を握り拳で覆い隠してクスクスと笑った
イ从゚ ー゚ノi、「相変わらず、斜に構えた性格だこと」
(´・_・`)「性分でね」
溜息を吐き、冷えた身体を温める為に風呂に向かおうと椅子から立ち上がった瞬間
窓もとい『境界』から、細く白い物が飛び込んでくるのが目に入った
(;´・_・`)「危ねえ!!」
イ从゚ -゚ノi、「ッ!?」
銀を払い退けるように庇い、射出された異物を左手で受け止める。鍛錬で分厚くなった皮膚が切り裂かれ、痛みと共に血が流れ出た
(#´・_・`)「クソがよ……」
イ从゚ -゚ノi、「な、何なの?」
(#´・_・`)「ああ……果たし状って所かな」
横幅十センチ、縦幅十五センチ、そして厚み0.22ミリ。ガキでも破り捨てれそうな『ハガキ』が、鋭さを生み出すほどの速度で銀の『首筋』を狙っていた
俺の血で汚れた紙面上には、本日いやと言うほど目にしたあの文面。ただし、少し書き換えられていた
(´・_・`)「『邪魔すんな』、だと」
二つ並んだ『御欠席』の文字に、選択の余地を与えない程の拒絶を感じ取れた
26
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:32:09 ID:bDiJ5Dlc0
イ从゚ -゚ノi、「随分と物騒なご挨拶ね……ありがとう」
(´・_・`)「いや、気を抜いてた俺のミスだ。スマン。臆病で回りくどいアホだと思ってたがやはり裏モノだな。厄介だ。高梨さんの部屋は抜かりないか?」
イ从゚ -゚ノi、「ええ。結界はちゃんと作動してる。今はしずくも一緒だし、彼女の心配はないわ」
(´・_・`)「懸念箇所の補強はした方がいいな。やるぞ」
イ从゚ -゚ノi、「ええ」
風呂に入れたのは、二時間後だった
27
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:34:16 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――
―
施設管理人の朝は早い。掃除に洗濯、食事の用意。そして全国の怪異に悩まされる依頼人候補から送られるメールのチェック
日常のおちんtルーティンに高梨さんという依頼人を預かっている今、新たな仕事も増えた。ヤバいおちんちん癖がついてる
(´・_・`)「ふざけんなよ……」
ポストから玄関に溢れ出るほど大量に届けられた『招待状』の破棄だ。ミチミチに詰まってんじゃねえかオイ
年賀状という文化も廃れた昨今で、ここまで紙製の郵便物を届けられる人物も少ないんじゃないだろうか。あの人マジでよく半年も耐えたな
サンプルは昨日、嫌というほど手に入れたので、これ以上はただのゴミだ。ある程度の枚数に分け、ビニール紐で縛っていく。これが一週間程度毎日続くと思うと既に凄くめんどくさい。めっちゃ病む
三つほど塊を作った所で嫌気が差し、もうドラム缶にぶち込んで燃やすと決めた。ケツ拭く紙にもならねえのに手間取らせやがってクソがよ。おちんちん野郎
(,;゚-゚)「おは……よう……」
小規模なキャンプファイアーを行なっていると、グッスリ眠れたとは到底思えない表情でしずくが現れる
昨日と同じ装いを見るに、風呂にも入れず抱き枕にされたまま一夜を明かしたのだろう。かぁいそ
(´・_・`)「おはよう。楽しい夜を過ごせたよう……」
(;´・_・`)「くせえーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!」ドンッ!!!!!!!!
思わず朝飯両手に戻って来たらお腐れ神様が通り過ぎたリンのような叫びが出てしまう程、紙の燃える臭いに混ざって鼻に届く強烈なゲロ臭。明らかに目の前の少女から放たれていた
(,;゚-゚)「最悪の夜……意外にも長い夜だった……抱きつかれながら窒息しないように気道確保したりさぁ……」
(´^_^`)「グフンwwwwwwww」
(,,#゚-゚)「笑うな!!」
無茶言うな。あとSOUL'd OUT混ぜんな。鏡に映る姿に感傷的になるだろ
28
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:35:33 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「わーったわーった。ご苦労だったな。風呂入って来い」
(,#゚-゚)「もぉおおおお!!今日は一日休むから!!絶対起こさないでよね!!」
(´・_・`)「朝飯は?」
(,#゚-゚)「食べるよ!!」
食い意地が張ってんのなら大丈夫そうだ。プリプリと怒りながら風呂場へと向かうしずくを見送り、残りのハガキを火の中へと投げ入れた
昨夜以降、明確に攻撃の意志を持って送り込まれたハガキは今の所届いていない。『いつでも殺れるぞ』という、脅しだったのだろう
(´・_・`)「……」
『鬼ヶ村』。その名の通り、かつて『鬼の住処』だったこの場所では、表裏問わず怪異にとって『心地よい環境』が整っている
それは空気であったり、土壌であったり、水であったり、『餌』であったりと、生きる為に必要な要素が、俺達人間の生活圏とはやや異なっている
開拓されつくされているように見えるこの国も、今だ七割が森で覆われているのは、鬼ヶ村と似た環境が各地に点在し、そこに巣くう怪異という『脅威』、あるいは『守り神』が人の手を阻むからだ
だからこそ、人が生活できる住処として存在するこの場所は、怪異と関わるのに最適な反面、大いなる危険も伴う
『では何故、俺達は危険な場所に居を構えているのか』
答えは単純だ。人の生活圏と比べて、圧倒的に怪異を『殺しやすいから』
今回のように、地味な嫌がらせを続ける『裏』由来の怪異が鬼ヶ村の環境で成長し、希薄な存在を濃厚にさせ、実体を伴って『表』へと姿を現し、そこで初めて
異能を持たない人間が、怪異の脅威に立ち向かう為に培った『技術』を用いた戦闘が可能になる
(´・_・`)「……」
『相棒』を狙った昨夜の脅しに、此方から返す言葉は無い。これから駆除する『害虫』に警戒を抱かせない為でもあり、安い挑発に乗らないという意思表示でもある
ただ、やはり腹に積もるものは無視できない。家族が危険に晒されたのだ。怒りを覚えぬわけがない。ごうごうと唸る火の中に、最後のハガキの一山を放り込み
(´・_・`)「……」
端から黒く燃えていくクソッタレの招待状の送り主が、一日でも早くその姿を曝すことを強く望んだ
29
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:36:52 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´=-=リ「昨晩は大変失礼を致しました……」
日を跨いで猛威を振るうアルコールの毒に苛まれながら、寝ゲロを流して現れた高梨さんは深々と頭を下げた
カフェテリアの時計は八時を回っていた。既に朝食を済ませたしずくは自室のベッドでアホ面晒しながら眠りこけている頃だろう
(´・_・`)「そう気になさらんな。あのクソガキも腹満たして一眠りしたら忘れてるだろうよ。飯は食えるか?」
⌒*リ;´=-=リ「お水だけ頂けますか……」
(´・_・`)「あいよ」
どうして酒飲みは翌日に響くとわかっててがぶ飲みなんてするかね?
(´・_・`)「よく眠れたか?」
⌒*リ;´=-=リ「ええ……いえ……実は、ここ数か月はずっとお酒に頼ってて……」
(´・_・`)「薬は?」
⌒*リ;´=-=リ「あまり効かない体質でして……」
(´・_・`)「併用するよかマシか……お銀からの説明は覚えてるか?」
⌒*リ;´=-=リ「あ、はい……冊子も頂いたんで大丈夫です……お銀さんは?」
(´・_・`)「朝に弱くてね。起きてくるのは大体十時頃だ」
早朝の仕事は大体片付いた為、コーヒーと水を持って向かいの席へ腰を下ろす。お冷を差し出すと、彼女は尻つぼみな礼を言って口に含んだ
一応、見回り時に部屋の前を確認したが、招待状は建物内までは侵入していなかった。結界はちゃんと働いているようだが、数日の内に突破されるだろう
それまで、高梨さんには『英気』を養って貰わねばならない。昔の人は言った。『腹が減っては戦が出来ぬ』。それはただ腹を満たすだけではなく、気力も含まれているのだ
30
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:37:41 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「晩酌は引き続き続けて貰って構わない。なんなら美味い肴も用意しよう。昨日は安いもんで済ませたみたいだしな」
食い散らかしたスナック菓子のゴミが翌朝までそのままにされてるのを見た時は、普段温厚な俺も流石にキレそうになった。食ったら片づけろ
⌒*リ;´・-・リ「あの、昨日もお話されたのですが、私がやる事って本当にアレで良いんですか?」
(´・_・`)「ああ、『食って、寝て、遊ぶ』。小洒落た言い方をすりゃあ『デトックス』だな。疲れとストレスを思う存分発散すんのがアンタの仕事だ」
⌒*リ;´・-・リ「それだけで良いんですか?」
(´・_・`)「それが裏に対する最大限の予防策だからな」
日本人の年間自殺者数並びに行方不明者数は年々減少傾向にあるものの、一定のラインを割る事が出来ないのは、そこに到るプロセスに『裏』が介入しているのが一つの理由として挙げられる
本来ならば自殺という最後の逃避手段を選ぶほどでもないストレスを察知して、高梨さんの『招待状』のように、怪異を用いた嫌がらせを用いて増長。結果として最悪の事態へと発展する
逆に言えば、毎日が充実して生命力に溢れる人物ほど、怪異に遭う確率が低い。銀が説明したように、弱った人物は『狩りやすい獲物』として認識されてしまうのだ
(´・_・`)「ま、それが出来ねえって人も多いよ。ストレスも悩みも、産まれてから死ぬまで付き纏うもんだ。強い弱いも人それぞれだが、何があろうと『生きる』という気持ちだけは忘れちゃなんねえ」
⌒*リ´・-・リ「……」
(´・_・`)「その気持ちを取り戻す為に最も気軽で日常的なのが『休む』って行為だ。痛飲するもよし、たらふく食らうもよし、趣味に没頭するもよし、風にあたってぼんやりと過ごすもよし、適度な運動で汗を流すもよし」
セクハラに該当するワードは避けた
(´・_・`)「とにかく、疲れを癒せば癒すだけ成功率……いやこれは元から百パーだけど、俺らの仕事がやり易くなる。気合入れろとは勿論言わんが……まぁ、その辺を意識してくれたら助かるよ」
⌒*リ´・ー・リ「……フフ、お休みに意識だなんて」
ここに来て、初めて彼女が『笑い』を溢した
⌒*リ´・ー・リ「『頑張って休む』ってのも、なんだが矛盾している気がしますね」
(´・_・`)「余計なこと言っちまったかな?」
⌒*リ´・ー・リ「とんでもありません。気持ちが楽になりました」
(´・_・`)「そりゃあ良かった」
嘘や偽りの無い彼女の言葉を受け、『先行きは明るそうだな』と感じたのであった
31
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:44:28 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――
―
⌒*リ;´・-・リそ「ええ!?お銀さんって人間じゃないんですか!?」
イ从゚ -゚ノi、「ちょっと動かないで」
⌒*リ;´・-・リ「あっ、ごめんなさい……」
昼食も終えた午後一時過ぎ。カフェテリアでは銀が高梨さんの手を取って『爪』に色を入れていた
『ネイルアート』。これも休暇の一環としてのサービスだが、防護妖術も兼ねている
今となってはお洒落や美の増幅として施される『化粧』。古来では魔除けの意味を込めて使われていたそうだ
イ从゚ -゚ノi、「雪女と妖狐のハーフよ……言っても信じる人は少ないけど」
⌒*リ;´・-・リ「ひえー……美の二大巨塔みたいな妖怪じゃないですか……」※ぬ〜べ〜とかその傾向あった
あのツラを前にしたら少なからず『そうかも?』と思う奴はいるだろうが、野郎なら大抵下半身に意識がいってサラッと受け流す。おちんちん野郎共がよ
高梨さんは実際に怪異の被害に遭っている分、受け入れも早い。銀に関しては見た目も普通の人間と変わりないので、恐怖心を煽られることもない
俺は初めて会った時『属性盛り過ぎwwwwwwwwwwwwwwオタクアニメのヒロインかよwwwwwwwww』と笑ったが、返って来たのは濁った色した瞳だけだった
⌒*リ;´・-・リ「じゃあ、小練さんもしずくちゃんも妖怪なんですか?」
イ从゚ -゚ノi、「そうよ。あれはゴリラと人間のハーフで、しずくは猿と人間のハーフ」
⌒*リ;´・-・リ「へ、へぇ……」
(´・_・`)「へぇじゃないが」
適当なこと言うなゴリラと猿に妖怪のよの字もねーだろ
32
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:45:39 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「どっちも人間だよ。残念ながらな」
二人分の冷たい飲み物をテーブルに置き、銀の『仕事』を覗き見る。艶が出るまで磨かれた爪に、ツンとシンナーが香る赤色のマニキュアが塗られていく
『赤』は最もポピュラーな魔除け色で、日本のみならず海外でも頻繁に使用されていた。何故赤なのかは今だ解明されてないが、まぁ多分ノリで決めたんだと思う
(´・_・`)「相変わらず綺麗な仕上がりだな」
イ从゚ -゚ノi、「アンタもやって欲しいのかしら?」
(´・_・`)「後で頼むわ」
イ从゚ -゚ノi、「気持ち悪」
なんやこいつ
⌒*リ´・-・リ「そういえば気になっていたんですけど、表の怪異って裏とはまた別物なんですか?」
(´・_・`)「目の前にいるだろ」
⌒*リ;´・-・リ「ちゃんと教えてくれたっていいじゃないですか……」
昨日と比べて口数も増えていることだし、少しでもクソ招待状の存在を忘れられるなら教えても良いが……
(´・_・`)「つっても、ググったら出てくるのばっかしだし……出自に関してもあまり良くわかってない部分も多いからな……」
⌒*リ´・-・リ「と言うと?」
(´・_・`)「雪女や妖狐が『どういうモノか』ってのは、各地の逸話や伝承のままだが、どういうプロセスでそれが産み出されたかまでは判明してねえんだ」
⌒*リ;´・-・リ「え?そんなの、妖怪さんに訊けばいいのでは?」
イ从゚ -゚ノi、「アンタ、人間がどういう経緯で誕生して、どんな歴史を辿ったかを詳しく解説できる?」
⌒*リ;´・-・リ「……すみません」
長い歴史を積み重ねる中で、記憶や記録が薄れていくのは人も妖怪も変わりない。彼らについて記されている書も多く遺されてはいるが、それの正誤を判断する者もいない
33
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:46:44 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「いくつか説はあるんだ。『人の想像力で生み出された存在』だとか、『進化ツリーの中で異能方面へ舵を切った者』だとか、『表の環境に馴染んだ裏の姿』だとか言われてるが、実証までは到ってない」
(´・_・`)「で、数多くいる妖怪や魑魅魍魎は、主に三つに分類される。一つ目はお銀のように人との共存、共闘を選んだ『友好派』」
イ从゚ -゚ノi、「一緒にしないで」
(´・_・`)「ごめ。二つ目が、人とも裏とも関わらないようにひっそりと暮らす『隠居派』。そして最後に、裏と同じように人、または他の怪異を悪戯に食い散らかす意地の汚いクソッタレのカス畜生共『外敵派』」
⌒*リ;´・-・リそ「外敵派にだけ当たりがキツイ!!」
(´・_・`)「で、『裏』との違いが初っ端から速攻で襲い掛かる存在が多いってとこだ。やけに事故の多い交差点とか、峠の山道とか、立ち入りが禁じられてる海辺とかな」
イ从゚ -゚ノi、「馬鹿やる人間が主な食糧よ……アンタも、動画の再生数目当てで深夜の心霊スポットに足を踏み入れるなんてしないことね……」
⌒*リ;´・-・リ「や、やりませんよ……わざわざ恐いとこに足なんて踏み入れませんし……もしかして、ストレスや疲弊とか関係なく襲って来たりするんですか?」
(´・_・`)「そうだ。ただ、裏と違って『境界』を駆使出来る奴は限られてる。殆どが各自の縄張りに踏み込んだアホを襲うだけの連中だ。そういった意味では、まだ優しい方かもしれねえな」
イ从゚ -゚ノi、「度が過ぎる外敵派を駆除しに行くのも私たちの仕事よ……はい、出来上がり。乾くまで服とか顔に触れないこと」
コンマ一ミリのはみ出しもムラもなく、艶のある赤が塗りこまれた爪を見て高梨さんは『ほう』と感嘆を漏らす
あまり化粧に関心の無い俺でも、プロ顔負けの仕事であると見て取れた。しずくはこういうのマジダメ。もう指先ベッタベタ
⌒*リ*´・-・リ「素敵……ありがとうございます」
イ从゚ -゚ノi、「ん」
道具を手早く片付けながら素っ気ない返事をしたが、礼を言われて悪い気分になる奴はいない。表情もいつもより柔らかく見えた。いつもこうならいいのに
34
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:48:05 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「あれ?俺は?」
_,
イ从゚ -゚ノi、「……」
(´・_・`)「冗談だよマジで嫌そうな顔すんな」
今にも飲み物ぶっかけられそうな目で見られた。そんなにはしゃいだオッサンがキモいかよ……キモいか……テンション上がったオッサンってキツイもんな……
<せんせー
(´・_・`)「んお?」
おl
壁l,~-~)「ちょっと来てー」
だl ⊂ノ
廊下から寝ぼけ眼のしずくが顔を覗かせている。わざわざ呼ぶってことは、『依頼人』には聞かせられない話かもしれない
銀に後を任せ、彼女の元へ向かう。着崩れた寝間着と半開きの瞼が、『まだ寝たりない!!』とアピールしているようでちょっと笑った
(,,~-~)「あの……えっとね……グウ……」
(;´・_・`)「寝んな寝んな立ったまま寝んな。せめて用件を伝えてから寝ろ」
(,,~-~)「リゾット……?」
(;´・_・`)「ネエロじゃなくてな?」
35
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:49:21 ID:bDiJ5Dlc0
(,,~-~)「なんかぁ……ボクの部屋の前に山盛りハガキが届いててぇ……」
(;´・_・`)「ッ!?」
肝が冷えると同時に、昨晩切り裂かれた掌が痛んだ。思わずしずくの肩を掴み、傷や出血が無いか確かめる
(;´・_・`)「怪我無いか!?」
(,#~-~)「フサフサじゃい……」
(;´・_・`)「髪の話なんかしてねえんだよ!!!!!!!!!!!」
落ち着け。怪我してんならもっと大慌てで駆け込んでくる。この暢気なアホ面が無事の証明だろ
今は状況の確認に徹するべきだ。今朝の見回りでは結界は突破されてなかった。どこか見落としたか、それとも短期間で力を強めたか
(;´・_・`)「……わかった。確かめよう」
(,,~-~)「んー」
両手を広げて『運べ』とせがんだので、片手で抱き上げてしずくの部屋へと向かう。お前もう14……大きくなって……やだ、涙が出ちゃう……
子どもの成長に喜んでる場合じゃない。涙はこいつの結婚式まで取っておくべきd結婚!!!!!!!???????耐えらんねえ!!!!!!!!旦那ぶっ殺しちゃうかもしれない!!!!!!!!!!!!!
(;´・_・`)そ「うわっ……」
『いや待てよそいつ誰だ』な将来の旦那予想図は、扉の内へと雪崩れ込んだ招待状の山を見て吹き飛んだ
室内のドアは内開きだ。恐らく開けるまではもたれ掛かるように積み上がっていたのだろう
(,,~-~)「ボクの部屋の結界はねーぇ……ちゃんと作動してたっぽいから……どっかから入り込んだんじゃない……?」
しずくのいう通り、扉という『境界』を通されていた場合、刃物と化した招待状が衣服や肌を切り裂いていただろう。もしもこの量に襲い掛かられれば、ひとたまりもない
解せないのは、『何故こいつの部屋に招待状が届いていた』かだ。その謎は、紙面を確認してすぐに判明した
36
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:51:30 ID:bDiJ5Dlc0
『儀社 しずく 様』
『小練 詩音 様』
『供身 235号 様』
宛先に、それぞれの名が記載されている。裏面には、高梨さんの物と同じように『御出席』『御欠席』の文字が並んでいた
(#´・_・`)「……クソ野郎」
新たな挑発か、それとも俺らにも狙いを定めたのか。そんなことはどうでも良くなるほど
(#´・_・`)「余程殺されたいらしいな……」
かつて銀が、『あの場所』にいた頃の番号を『名』として使用したことに、腸が煮えくり返った
(,,゚-~)「……先生?」
(;´・_・`)「っと……悪い。ていうか起きたんなら降りろや」
(,,゚-゚)「重いの?」
(´・_・`)「は?軽いですけど?お前が後九十九人乗っても大丈夫ですけど?」
(,,゚-゚)「いつからイナバ物置になったの?」
俺の巨腕から猫のようにスルリと抜け出したしずくは、完全に目を覚ましたのか、落ち葉でも扱うかのように招待状を蹴り上げた
37
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:52:30 ID:bDiJ5Dlc0
(,,゚-゚)「この案件、早く終わらせられるかもね」
(´・_・`)「そうだと良……いや、そうだな……」
一週間、早くても五日だと予想していたが、それを上回るペースで成長している。この分だと、明日か明後日には本腰入れて襲ってくるかもしれねえ
戦闘に関してはいつでもかかってこいやヒナ屈辱だが、問題は明日明後日の内に高梨さんが抵抗を行えるほど回復するかだ
プレッシャーになり得る指示は出来る限り避けたい。緊張や重圧はストレスと直結する。自然体のままに休む方が気力が取り戻せるのだ
だからと言って油断をさせ過ぎるのも反って危ない。裏との戦いは、被害者の精神バランスを鑑みて挑まねばならないのだ
(´・_・`)「いつでも対処できるように得物は持ち歩いとけ」
(,,゚-゚)「言われるまでも無いよ」
しずくは腕を振るうと、袖に仕込んでいた装置が作動。バネ仕掛けによって飛び出した『クナイ』が掌に収まった
(,,゚-゚)「最強美少女しずくちゃんをコケにした罪は、きっちり贖って貰うからさ」
(´・_・`)「そうだね」
(,,#゚-゚)「心を込めて同意して!!」
(´・_・`)「そうだね」
(,,#゚-゚)「もういいよ!!!!!!!お昼ご飯なに!!!!!!!??????」
(´・_・`)「タコ焼き」
(,,#゚□゚)「たーこたこたーこたーこたこたーこたーこたこたこやきマントマン!!!!!!!!!!!!」
だから伝わんねえって今の時代にその年代のネタ
招待状が何の目的でしずくを狙ったかは知らんが、疲弊が目的ならお門違いもいいとこだ。そこらの一般人とウチの子を一緒にさせて貰っちゃ困る
空腹を抱えてのしのしと勇み足で廊下を歩くしずくに続き、俺もカフェテリアへと戻っ……ハガキ処分しとくか……めんどくせえ……やっぱ今回早い方がいいわ……
38
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:53:49 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――
―
イ从゚ -゚ノi、「焦ってるわね」
高梨さんとしずくが寝静まった夜更け、昨晩と同じく俺の自室で二人きりの作戦会議を行っていた
(´・_・`)「その心は?」
イ从゚ -゚ノi、「高梨さんの回復も、思ってた以上に早いからよ」
銀が自家製の梅酒が入ったグラスを傾けると、丸く大きな氷がカランと音を鳴らした。今夜の酒はご機嫌とは言えない
確かに、過去の依頼人と比べれば比較的……というより、異例のスピードで元気を取り戻している
第一印象こそ気弱だと感じたが、本来は芯の強い女性のようだ。半年もの間、招待状の猛威に耐え切った精神力にも頷ける
元より、男より女の方が回復が早い。男ならグズグズと引き摺るようなことでも、女性ならスパッと切り換えられるからだ
また、胎内で十月十日子を育み、激痛を伴う出産に耐え切れる『雌』本来の強さも要因とする。でもちゃんと旦那は支えてやらなアカンのやで……それが『雄』の強さや……
イ从゚ -゚ノi、「半年掛けてようやく陥落しそうだった高梨さんが、一日二日で元の木阿弥に戻られたら堪ったもんじゃないとでも考えてるんじゃないかしら?それが、今回の成長スピードに繋がった」
(´・_・`)「ふむ……俺ら宛の招待状も、『ガワ』だけで効力は無かったからな」
試しに俺宛の招待状の御出席に丸を付けて見たが、何も起こらなかった。つまり、昨晩と同じく脅し目的で送られてきたものだ
高梨さんに関わる者を、あのような手段で遠ざけてきたのだろう。事実、彼女はこの半年間で恋人と職を失っているらしい
イ从゚ -゚ノi、「とすると、問題はやっぱり……」
(´・_・`)「本腰入れてきたタイミングだな」
『裏』は獲物を捕らえる時、最大限の『恐怖』を伴って発現する。ホラー映画で言う所の、『ジャンプスケア』に近い行動だ
『ワッ』と脅され、恐怖の感情が露わになると、人の警戒心や抵抗力が一気に霧散してしまう。落ち着きを取り戻すにも、安全安心を確保しなければならない
その瞬間こそ、裏にとって絶好の『狩り時』だ。最悪の場合、俺らの力が及ばない速度で連れ去られてしまうかもしれない
39
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:54:11 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「……難しいな」
イ从゚ -゚ノi、「ええ」
だからこそ、予め奴がどういう手で攻めてくるかの予想を立てなければならない。しかし今回は『ハガキ』が相手だ
これがもっと具体的な『恐怖のイメージ』をもつ像であるなら、もう少しやりやすいのだが……ハガキ……ハガキかぁ……
(´・_・`)「とにかく、『招待状』と『ハガキ』の両面からザッと候補を挙げていくか」
頭を捻るだけでなく、手と口も合わせて動かした方が考えも浮かびやすい。ペンを手に、その二つが持つ性質を書き並べ始めた
長い夜は、まだ始まったばかりであった―――――
40
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:55:07 ID:bDiJ5Dlc0
朝!!!!!!!!!!!小鳥さんチュンチュンチュンチュンピーチクピーチクボボボボボ!!!!!!!!!!
.
41
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:55:45 ID:bDiJ5Dlc0
(;´ _ `)「……」
(,,゚-゚)「おは……ええ……何してたの……?」
カフェテリアに現れたしずくは、俺の顔を見るやいなやドンの引きだった
そらそうだよ寝てねえもんでも仕事は待ってくれないしハガキは今日もえれえ量届いてるしよクソが
銀は三時頃には休ませた。いざって時にあいつがグロッキーだとちょっと困る。俺は休まなくても最強のままなので大丈夫だった
(;´ _ `)「楽しいお喋りと飾り付けだよ……クリスマスが近いからな……」
(,,゚-゚)「半年以上先じゃん……」
(;´ _ `)「毎日がクリスマスだったら良いなって思え」
(,,゚-゚)「ご飯まだ?」
温め直した昨日の残りのビーフシチューとトースト、サラダにオレンジジュースのセットを雑に置いてやる
跳ね溢れたシチューを指で拭ったしずくは、あからさまに不機嫌な表情を見せた
(,,゚-゚)「丁寧に運んでよね……スチュワーデスがファースト・クラスの客に酒とキャビアをサービスするようにさ」
(;´ _ `)「黙れクソガキ……高梨さんは……?」
(,,゚-゚)「お手洗いだよすぐ来るんじゃない?ん、うま」
_人人人人人人人人人人人人人_
> (´^_^`)「せやろがい」 < ゴキゲン!!!!!!!!!!!!
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^
(,,゚-゚)「チョロ」
42
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:57:20 ID:bDiJ5Dlc0
結界も強化し直したので、建物内にいるなら一人でも安全だろう。そう思った矢先――――
(´・_・`)「ん?」
窓から、一瞬だけ『影』が差した。鳥でも横切ったか程度の違和感だったが、影は二つ、三つとその数を増やす
(;´・_・`)「……!!」
鳥なんかじゃない、『ハガキ』だ!!俺が弱っ……てねえけど寝てないタイミングを見計らったか!!
(;´・_・`)「しずく!!銀を叩き起こして俺の得物持って来い!!俺は高梨さんを!!」
(,;゚-゚)「わかった!!」
ガチャンと食器を鳴らしながら立ち上がったしずくは、すぐさま銀の部屋へと走った
室内にチラチラと差しこむ影は、もはや『大群』と読んで差し支えない量となっている。窓にも光を遮るようにペタ、ペタと張り付き始めた
幸いにも、カフェテリアからお手洗いまではそう遠くない。俺も急いで高梨さんの元へ向かおうと、しずくとは別方向の出口から飛び出す
43
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:57:53 ID:bDiJ5Dlc0
(;´・_・`)そ「うおっ!?」
その瞬間、飛び立った鳥の群れに襲われるかのように、正面から一斉にハガキの大群が身体に衝突する
雪の結晶ですら集まれば『雪崩』や『吹雪』と化す。横幅十センチ、縦幅十五センチ、厚さ0.22ミリ、重さ約2〜6グラムの紙も例外ではない
交差した両腕のガードを、遠慮なくズバズバと切り裂いてくる。動力源は勿論『風』なんかではない
例えるなら、無色透明かつ質量のない、ハガキを纏った『粘液』が、廊下という水道を通して押し流してくるようだ
:(;´ _ `):「ぐっ……」
細かな切り傷が身体中に刻まれていく不愉快な痛みに犯されながら、俺は心底安心した。『こっち側に出たのか、俺で良かった』と
:(;´ _ `):「くく……」
『徹夜をして良かった』と、『俺が弱ったと勘違いしてくれて良かった』と、『俺を侮ってくれて良かった』と
44
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:58:29 ID:bDiJ5Dlc0
:(#´ _ `):「ハハハハハハハァ!!!!!!!!!!!!」
『真っ先にこいつと遊べるのが、俺で良かった』と―――――
45
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 22:59:17 ID:bDiJ5Dlc0
『裏』や『怪異』が何故、超常たる異能の力を持ちながら、今日この時まで人間を支配下に置かなかったのか?
それは、人のみならず生きとし生けるモノ全てに、悪しき異能を跳ね除ける『生命力』が備わっているからだ
裏、そして一部の害意を持つ怪異は、俺達『表』の生き物とは『命』の仕組みが異なっている
奴らにとって命とは燃え盛る炎。触れれば火傷を負い、身を包めばそのまま焼け死ぬような、膨大なエネルギーなのだ
だからこそ奴らはその炎を多種多様な方法で弱まらせ、消える寸前になった所を襲って連れ去る
その後は丁度いい塩梅に燻らせながら、俺らが火で暖をとり、調理に使うように、奴らも人を利用するのだ。炎が『死』というエンプティを迎えるまで、生かさず殺さずに
つまり、『生きている』だけで、怪異に対してある程度の免疫は備わっている
では、『それ以上』を求めるには、どのような手段を取れば良いのか?
先人は憂いた。『生命力をただの免疫だけで終わらせてよいものか』と
先人は悔いた。『生命力を武器に奴らを撃破できたなら』と
先人は憤った。『生命力を理の外の連中に食われるままでいいのか』と
そして先人は考えた。『それならば、生命力を自在に操る方法を』と
46
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:00:05 ID:bDiJ5Dlc0
(#´ _ `)「《握》(にぎり)ッ!!」
下腹部、『丹田』から血流に乗せるイメージで生命力を『拳』へと集める。そして、交差した腕を一息に広げると
(#´ _ `)「ッ……フゥー……」
見えない粘液の圧から解き放たれ、飛翔するハガキの群れは力なく廊下へと墜ちる
《握》。生命力を拳や足などの末端に送り込み、身体の内側から『表面』へと出す、対怪異技術の基礎
端的に言ってしまえば、《握》を使えば連中に痛手を与えられる。異能という理不尽に対して、真正面から暴力の報復を行えるのだ
(#´・_・`)「……」
ただし、生命力自体に『破壊力』は無い。怪異に触れたとしても、奴らの表面が焦げるだけだ
攻撃に関しては使用者本人の『膂力』に依存する。聡明な皆様ならもうお分かりだろう。そう、筋肉である。皆さまって誰だ。お前は誰だ俺の中の俺
先ほどのアクションにもさして力は込めていない。『裏』が退いたのも、ダメージからではなく『反射反応』によるものだろう
(#´・_・`)
(´・_・`#) チラリン……
そんな事より前も後ろもゴミまみれなのキレそう
(#´゚_゚`)「誰が片づけると思ってんだクソがァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
大桜堂がこの件を俺らに回した理由が分かった。後片付けが面倒だからだわ
俺はキレつつお手洗いへ走りながら、この件終わったらじっくりと『お話(店を物理的に畳むの意)』しようと固く決意した
47
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:01:18 ID:bDiJ5Dlc0
異常はすぐに目に入った。女子トイレの扉の前では、磁力に引き寄せられるように『招待状』が群れを成している
その中からは高梨さんのくぐもった悲鳴が聞こえ、既に内部にまで侵入している事実を伝えた
(#´・_・`)「高梨さんッ!!」
彼女の名を呼ぶと、『邪魔をするな』とでも言いたげにハガキの刃が発射される。だが、切れ味があろうと紙は紙でしかない
薄皮程度が切れた所で、その下に潜む鋼の肉体までは破壊出来まい。多分今日風呂入る時が一番ダメージあると思う
それでもまぁまぁ血だらけになりながら、ハガキの嵐を抜けて女子トイレの扉を蹴破る。非常事態故致し方なし。下心は無い
「っ……小練さん!!小練さぁん!!!!!」
それは、まるで『繭』だった。洗面台の前で、楕円状に彼女を取り囲む招待状の檻。蚯蚓のように文字が蠢いているのは、締め付けを行いながら包囲網を狭めているからだろう
昨日、銀が施した『魔除け』が効いている証拠だ。今のように不意に襲われたとしても、一定の距離を保って奴らを寄せ付けない効果がある。それを、力業で破ろうとしている
(#´・_・`)「気を保て!!今すぐ助けっ……!?」
繭から放たれた『角柱』を、咄嗟に両手で受け止める。だが、勢いは止まらず、195センチを誇る俺の巨体が浮き上がり
(;´゚_゚`)・'.。゜「ゲハッ!?」
廊下の窓に後頭部と背中を、そして窓枠に腰を打ち付け、後転しながら外へと放り出される
この土壇場に来て奴らは攻撃を『分散』から『集中』へと変化させた。一枚一枚は軽い紙でも、束にすれば厚みと重さ、そして硬さを生み出す。漫画雑誌など良い例だ
奴が『塊』をぶつけてくることは、昨晩の会議で想定済みだったが、実際に喰らうとなると実感する。『オイこれまぁまぁ効くじゃん』と
48
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:01:59 ID:bDiJ5Dlc0
:(;´゚_゚`);「っ……てぇ、な……!!」
身体は植垣へと沈み込む。背中と頸をガラスで切ったのか、焼け付くように熱く痛い
そして尚、攻撃の手を緩めずに次々と圧し掛かってくる『招待状』の束、束、束。骨身が軋み、呼吸もままならない
ハガキに押しつぶされて死ぬなんて冗談じゃねえ。末代まで笑いものにされる。まだ圧の少ない脚に《握》を行い
(#´・_・`)「オラァッ!!!!!!!」
爪先で紙柱の『腹』を蹴りつける。『裏』の粘液が爆ぜる感触が広がり、身体の圧が幾分か和らいだ
ドバドバと降り注ぐハガキの滝を払い除け、紙の水面から顔を出すと―――――
(;メ)_ `)・'.。゜「カッ……!!」
『待ってました』と言わんばかりに、新たな紙柱で顔面を殴りつけられる。紙束の角が、頬の肉を深く抉った
俺のダウンに合わせて、すぐさま再開されるハガキによるプレス。視界はおろか、鼓膜に届くのも紙がこすれ合う『ガサガサ』とした音だけだ
(;メ)_ `)「っ……っ……!!」
助けを求める為の声も出せない、腕も伸ばせない。呼吸も行えず、身体は刻一刻と死へと歩み始める
痛みと苦しみしかない、狭い世界の中。ふと光が差し込んだ。俺の目に飛び込んできたのは、後光携え現れた―――――
49
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:02:41 ID:bDiJ5Dlc0
『御出席』『御欠席』
(何方かに丸をお書きください)
とだけ書かれた、招待状だった
50
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:03:31 ID:bDiJ5Dlc0
地獄に垂れ落ちた蜘蛛の糸、あるいは舞い降りた天使か
救いの手でも差し伸べるかのように、今の状況を作り出した『元凶』が、俺の目の前に現れた
:(;メ)_ `):「……」
魔除けに守られている高梨さんよりも、物理攻撃で虫の息の俺に標準を合わせたのだろう
ましてや、怪異退治で食ってる野郎だ。その価値は、一般人を連れ去るよりも遥かに大きい
右腕の圧が軽くなった。持ち上げると、指先までべっとりと自分の血で濡れているのがわかった
『これで意志を示せ』と指示しているのだろう。自らの『血印』で、御出席に丸を付けろと
:(;メ)_ `):「……」
右腕を、人差し指を、他でもない俺に充てられた招待状へと伸ばす。今なお続く地獄から解放される為に―――――
( メ)_ `)「」
ただし、屈する気は毛頭なかった
51
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:04:48 ID:bDiJ5Dlc0
( メ)_ `)「馬鹿がよ」
作戦通りだ。やはりこいつらには学が無い。『御馳走』が弱れば、すぐさま目移りする頭の悪い獣だ
俺達は常に高梨さんの護衛をしてやれるワケではない。眠りもすれば便所にも行く。四六時中ってのは到底無理だ
( メ)_ `)「獲物が元気になってきて、焦っちゃったか?ええ?」
だからあえて、奴にとって優位な状況を作り出す事にした。俺らが疲労した中で、高梨さんが『一人』というシチュエーションを用意する
彼女の回復速度に焦っていた奴は、この機を逃さんと食いつくだろう。そこに邪魔者が現れる。裏を殺す術を持つ『俺』が
( メ)_ `)「俺らの掌の上で踊るのは楽しかったか?」
当然、抵抗を行うだろう。するとどうだ?奴は拍子抜けした筈だ。「案外大したことは無いではないか」と。当たり前だ。手を抜いて相手しているのだから
この好機を、当然見逃しはしない。拘束したも同然の高梨さんなど、俺を狩った後で良い。優先順位がここで入れ替わる
満を持して登場したのは、ハリボテの神々しさを纏った招待状の『本体』だ。紙切れの分際で勝ち誇った気になっていやがる
『追い込まれたのは一体どっちか?』 それをハッキリと思い知らせてやる
( メ)_ `)「《握》」
眼前まで現れた『核』を、生命力を込めて握りしめる。ハガキの周囲には、硬いゴムのような感触を持つ不可視の障壁が築かれていた
紙の束に比べれば、余りにも薄いバリアだ。指は徐々に、そして確実に、内部へとめり込んでいく。だが、奴もこのまま黙って殺られる気は無いようだ
目先の餌より自身の安全を優先したのか、今度は俺の命を押し潰そうと圧迫を強めていく。我慢比べか、面白い
(#メ)_ `)「おおおおおおおおお……ッ!!」
気を抜けばパンと破裂してしまいそうな、これまで味わった事の無い過重力。それは向こうも同じだろう
指先がハガキの縁に触れた。もう一押しだ。そろそろキメちまわねえと、流石の俺も全治二、三日の軽傷を負わされてしまう
52
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:05:30 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_ `)「く、た……ば」
勢いをつけて、一息に握り潰そうとした瞬間―――――
(;メ)_゚`)そ「うおっ!?」
圧は上からではなく『横』へとベクトルを変え、俺の身体は紙の濁流に押し流される。数秒もしない内に排出され、地面を転がった
(;メ)_゚`)「ブハァーッ!!」
外の明るさや、新鮮な空気。暗闇と圧力の地獄から抜け出せたことに喜びは感じない。むしろ、危機感と悔しさが湧くばかりだ
仕留め損ねた。折角あそこまで追い込んだのに、奴の核を手放しちまった。チキンレースこそ勝利したが、それじゃ意味がない
立て直す間も無く、ハガキの山から紙束の柱が射出される。それも四方向から複数同時に。少しは学んだか。良いだろう、何度でも相手してやる
(#メ)_゚`)「来いやオr「だから先生はさぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
気合の雄叫びの上へ被せるような、俺を非難する叫びが耳に届くと同時に、側面から四本のクナイが紙の柱を穿ち貫く
(,#゚-゚)「ちょっとは退くってことを知らないのかなぁ!!」
小さな『相棒』が間に割って入り、ホルスターから新たなクナイを引き抜いた
(,#゚-゚)「大怪我すんのは勝手だけど、その間誰がご飯作ったり洗濯したりすんのさ!!」
母親のツラを生まれてこの方見た事が無いが、多分こうやって病んでいくんだろうなって思った。ママは大事にしろ
53
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:07:40 ID:bDiJ5Dlc0
(,#゚-゚)「それとお前!!!!!!出てくるんなら朝ご飯食べてからにしてよ!!!!!!裏って本当に空気読めないよね!!!!!」
裏もお前にだけは言われたくないだろうよ
(メ)_・`)「銀は?」
(,,゚-゚)「『手筈通りに』だって」
聞こえてるか聞こえてないかは知らんが、小声で手短に伝達を済ます。起きてくれてほんと良かった
両手にこびりついた自分の血を、揉み手してしっかりと擦り付ける。即席の『滑り止め』でベタついた所で―――――
(メ)_・`)「そんじゃ、プランBに移るか」
しずくの腰に差し込まれている一振りの『小刀』を引き抜いた。刀身は凡そ三十センチ。反りは深く、突くよりも『薙で斬る』を想定された造り
傍目に見ればちょっとヤバめのナイフ。マチェットにも満たない長さのそれに、一つのアクションを送り込めば
(メ)_・`)「《流》」
『生命力』に反応して、おちんちんに血を……
54
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:08:55 ID:bDiJ5Dlc0
(メ)_・`)「」
(,,゚-゚)「?」
(#メ)_゚`)「うおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
(,;゚□゚)そ「どしたの!?」
……送り込むかのように刀身が肥大化し、柄は伸びる。もうやだまだおちんちん癖が抜けない
現れたるは、俺の背丈ほどの長さに成長した『矛』。肉体と拳に次いで信を置ける、俺の『得物』だ
(,;゚-゚)「びっくりしたよもう……莉花さんはあそこ?」
(メ)_・`)「みたいだな」
しずくがクナイで指す先には、ハガキの山の天辺へと送られていく『繭』。俺を押し潰さんと積み上げられ続けていた紙束は、宿泊施設の二階部分にまで到達するほどの高さに成長している
銀が施した魔除けは、早々解かれるものではない。だが、その周りを密封されることで、『光』や『酸素』は遮断される。あの中にいるって事はオリバにパックマンされるようなもんだ。その方がキツいか
高々と掲げやがったのは、俺らをハガキの山へと誘い込むための罠だろう。一度足を踏み入れれば、蟻地獄が如く吸い込まれていくのは目に見えている
かと言ってこのまま指を咥えて見ているわけにもいかない。魔除けの耐久度にも限界があるし、回復した高梨さんが『狩りやすい獲物』に戻ってしまう
55
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:10:12 ID:bDiJ5Dlc0
(メ)_・`)「しずく、ぼ……」
(メ)_・`)「防御たのむ……」
(,,゚-゚)「防御!?」
マジでこの時代にいねえぞこのネタ通じる14歳。矛を肩に、悠々と山へと歩んでいく。再び柱の触手が襲い来るが―――――
(,#゚-゚)「《流》ッ!!」
『投擲の天才』が、生命力を込めたクナイで迎撃する。刃先が紙面へと深く突き刺さると、沸騰した裏の『粘液』がブグリと膨張し、爆発
千切れ跳んだ紙吹雪が舞う中、俺は深く深く息を吸い込んだ。『語り掛け』、『合図』を送るために
(#メ)_・`)「聞けェッ!!高梨さん!!俺の言葉を思い出せッ!!」
点の攻撃は通じないと分かると、お次はハガキの『大波』がブワリと浮き上がり、頭上から襲い来る
(#メ)_・`)「『何があろうと生きるという気持ちを忘れるな』!!アンタはここから逆転できる!!招待状に、怪異に打ち勝てる力を持っている!!」
矛を振りかぶり、波のどてっ腹を斜めに斬り裂く。形を保てなくなったハガキの『死骸』が、落下と同時に辺り一面に散らばった
(#メ)_・`)「連中が人間を怯えさせるのは、俺達が持つ『命』に恐れ慄いているからだ!!アンタを囲っているのは、真正面から喧嘩を売る度胸もない臆病者だ!!」
それならばと、裏は攻撃方法を再び分散へと戻す。バルカン砲が如く射出されるハガキの刃。しずくにはかすり傷すら負わせまいと、身体を張って壁となる
『小さなことからコツコツと』。当たり前で偉大な言葉が、今は悪意を孕んで直接身体に刻み込まれているようだ。それでも、顔をは下げず声を張り上げる
(#メ)_・`)「だってそうだろ!?俺らに対してここまで暴れまわれるくせに、一般人のアンタにはネチネチと半年間も『嫌がらせ』しか出来なかった存在だ!!ビビるこたぁねえんだよ!!」
(,,゚-゚)「そうだそうだ!!」
(#メ)_・`)「裏など、怪異など、恐るるに足りない!!!!!絶望するほどの価値も無い!!!!!『生きてる奴の方が何倍も強い』!!!!!!」
仕掛け所だ。行くぞ!!
56
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:10:40 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_゚`)「溜まった鬱憤をぶつけてやれッ!!高梨 莉花ァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!!」
.
57
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:11:25 ID:bDiJ5Dlc0
「……」
俺の言葉は彼女に届いたか?その答えは、繭の胎動が明らかにしてくれた
ハガキの刃は、目に見えて切れ味を落としていた。さながら、風に吹かれる新聞紙と言った所か。身体に張り付いてうぜえ
「……ン」
彼女が内から声を上げる度に、招待状の包囲網は内から強く殴りつけられたかのように膨張する。その度に、一枚二枚と『花弁』を散らした
《握》や《流》が使えなくとも、誰にだって『生命力』はある。ここまでくっきりと実体化した裏は狂暴、凶悪な反面、受ける影響も強くなる
だからこそ獲物を怖がらせ、怯えさせ、弱らせる。虚勢に虚勢を重ねてようやく表舞台に姿を見せるのだ。『手痛い反撃を受けないように』
「オ……ン!!」
三度目の胎動で、遂に包囲網は決壊を始める。顔を見せた高梨さんは、息も絶え絶えだったが、そこから抜け出そうと必死に藻掻く
招待状はせめて彼女だけは逃がさないと、分蜂のようにハガキを蠢かせ決壊部の修復を図る。最早、俺が手を出すまでも無い
⌒*リ;´ - リ「ッッッ〜〜〜〜〜〜〜……!!」
再び閉ざされようとする『繭』に向かって
58
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:12:38 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ#´ Д リ「お ち ん ち ん ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」
彼女は『生命力』を込mええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!!!!??????????
ロマンス&バカンス‐おちんちんYEAH
https://www.youtube.com/watch?v=3N3FhNFHaZA
(メ)_・`)「ええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜……」
(,,゚-゚)「先生の所為だよ。アレ」
(メ)_・`)「俺ェ……?」
でもまぁ確かに余裕無かったら人間ああなるのかもしれない
なんかちょっと冷静になっちゃったけど傍観してる場合では無い。渾身の生命力を込めた拒絶は絶大な効力を発揮し、ハガキの繭は一斉に解けた
59
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:13:51 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ そ「わわっ!?」
足下の支えが無くなり、彼女の身体はハガキの山頂に沈み込もうとする。繭こそ壊れたが、山はまだ健在と見ていい。このまま飲み込まれてしまったら元の木阿弥だ
まぁ、そうさせない為に、もう一人の『相棒』を待機させていたのだが
∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「掴まりなさいッ!!」
二階の窓から得物の『銀製の棍』を右手に山の上へと飛び出した銀が、もう片方の手を伸ばす。それを反射的に掴んだ高梨さんをハガキの蟻地獄から引き抜くと
∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「足下注意、滑るわよ」
⌒*リ;´・-・リ 「え、ええ!?」
高梨さんの驚愕は、言葉ではなく銀の頭上にヒョコリと生えた『獣耳』に対して向けられていた
『雪女』の異能に『妖狐』の膨大な妖力量を併せ持つ銀の本領が発揮される時に訪れる変化だ
∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「《放》(はなち)!!」
銀の足が山に接触した瞬間、ハガキの群纏わり付く裏の『粘液』は凍りつき、その上に僅かな雪が積もる
高梨さんを片手で抱え、棍の先端で山の表皮を削りながらバランスを取り、即席のゲレンデを滑降する。フゥー!!涼しげぇ!!
60
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:14:35 ID:bDiJ5Dlc0
∧ ∧
イ从゚ -゚ノi、「っとと……」
⌒*リ;´・-・リ そ「おわー!!」
麓まで滑り切った二人は、慣性をステップで殺しながら俺たちの元へと到達する。鮮やかな奪還劇だ。お捻りを投げたい。財布持ってくりゃ良かった
(,,゚-゚)「ボクもそれしたい」
∧ ∧
イ从;゚ -゚ノi、「馬鹿言わないで。どんだけ疲れっ……!!」
⌒*リ;´・-・リそ 「銀sおわー!!」
高梨さんを手放し、ガクリと膝から崩れ落ちそうになった銀の身体を咄嗟に抱き留める。妖力を使った反動が、身体にクッキリと現れていた
首をグルリと締め付ける、赤黒く光る『鎖』の紋様。ともすれば街一つを凍り付かせる程の力を抑え込む、銀を生み出したクソ共による枷だ
(メ)_・`)「お疲れさん。後は俺たちが」
イ从;゚ -゚ノi、「言われるまでも無いわ……ただでさえ寝不足だってのに……あとアンタ鉄臭い……」
(メ)_・`)「俺だって好きでズタズタにされたワケじゃないが????????」
⌒*リ#´・-・リ 「イチャつく暇があるなら私も労って貰っていいですかね!!!!!!?????」
『二仕事』終えた銀を、地面に投げ出され、腰が抜けたまま立てない高梨さんの隣へと座らせる。一体何を見てイチャついてると思ったのだろうか?さっきもなんかおちんちんって言ってたしアホなんだろうか?
(メ)_・`)「さて……」
本体を表舞台に引きずり出し、依頼人の救出も済んだ。残る仕事は単純明快摩訶不思議奇想天外四捨五入出前迅速落書無用―――――
(メ)_・`)「四対一だ。尻尾巻いて逃げるか?」
紙クズの大掃除と洒落込むか
61
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:16:28 ID:bDiJ5Dlc0
俺の言葉に呼応してか。それとも、分が悪いと察知したか。招待状の山は一斉に飛び立ち、上空で『帯』となって身をくねらせる
『頭』はその行き先を、この場で最も身近で大きな『境界』である窓へと定めて、勢いよく飛び込んだ
⌒*リ;´・-・リ「に、逃げられちゃいますよ!!」
イ从;゚ -゚ノi、「それはどうかしら?」
シンバルを思い切り叩き鳴らしたかのような、けたたましい高音が山々へと響き渡る。境界どころか『窓ガラス』すら通り抜けられなかったハガキ軍は、建物に当たってはボトボトと落ちていく
銀に任せたもう一つの仕事、『妖力による境界の封鎖』だ。窓だけに留まらず、建物内のありとあらゆる境界を凍り付かせて蓋をしている。普段の結界よりも強力だが、枷の関係上長時間は持たない
使用するタイミングのシビアさと、持続力の短さがネックだが、一度接触してしまえば対象は暫くの間寒さに襲われ、行動を著しく制限される。鬼ヶ島が誇るとっておきの『罠』だ
(,,゚ワ゚)「だっさ!!バーカバーカ!!ザァコ!!よわよわ裏怪異!!」
(;メ)_・`)「お前それ……やめとけ……」
(,,゚ワ゚)「なんで?」
(;メ)_・`)「なんっ……なんでってお前……いいや……説明するのもなんか……恥ずかしいわ……」
(,,゚ワ゚) ?
境界を無理やりこじ開ける元気も、既に無いだろう。表裏に関わらず、『無限のエネルギー』など存在しない
高梨さんの拘束、魔除けの破壊工作、そして俺達への大がかりな攻撃。相当な消耗をした事だろう。その証拠に、ハガキの物量は目に見えて減っている
銀の罠の効果も合わさって、遠くへ飛んで逃げるのも叶わない。とすると、奴が取れる行動は二つしかない。俺らに白旗を振って降伏するか、あるいは――――
(メ)_・`)「そうこなくっちゃあな……」
死に物狂いで抵抗を行うかだ。これは経験談だが、前者の行動に出た裏はこれまで一つも見た事がない
鎌首をもたげて此方を見据えた紙の大蛇。深い傷から血が流れ出るように、身を構成するハガキはボタボタと剥がれ落ちていく
62
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:18:22 ID:bDiJ5Dlc0
(メ)_・`)「逃げやしねえし、逃がしもしねえよ!!ぶっ殺される覚悟は出来たか!?」
声を持たない奴は、返事の代わりに『鱗』を逆立たせる。手負いの相手が手強いのは、裏も表も同じことだ
(メ)_・`)「華々しく散らせてやるよ!!クソッタレの害虫には勿体ねえほど盛大になァ!!」
(,,゚-゚)「おーよ!!」
しずくと共に、一歩前へ踏み出す。俺は矛を、しずくはクナイをそれぞれ構えた
(メ)_・`)「ここは害成す怪異の『終着点』!!」
(,,゚ワ゚)「地獄行きへの『始発点』!!」
(メ)_・`)「お相手致すは小練 詩音とォ!!」
(,,゚ワ゚)「とっても可愛い儀社しずくちゃん!!」
いつになったら口上を覚えるんだこいつ
(メ)_・`)「恨むなら、迂闊に踏み込んだテメーを恨め!!」
(,,゚ワ゚)「身の程知らずの自分を恥じろ!!」
(メ)_・`)「『命ある者』を敵に回した、その恐ろしさ思い知れ!!」
63
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:19:00 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_・`)(,,>ワ<)「「『鬼ヶ村』へようこそ!!!!!!!!!!!!!!!」」
(#メ)_・`)「かかって来い」
.
64
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:20:47 ID:bDiJ5Dlc0
⌒*リ;´・-・リ「……」
イ从;= -=ノi、「……」
⌒*リ;´・-・リ「練習……してらっしゃいます?」
イ从;= -=ノi、「聞かないで、恥ずかしいから」
なんでや、かっこええやろ
(,#゚-゚)「来るよ先生ッ!!」
刃は決定打に欠け、柱は迎撃されると判断してか、蛇行で迫るハガキの大蛇。あの中に潜む『一枚』を、これからあぶり出さねばならない
(#メ)_・`)「俺が削る!!トドメはお前が刺せ!!」
(,#゚-゚)「印でもあんの!?」
(#メ)_・`)「これも修行だ観察しろ!!!!!」
(,#゚-゚)「不親切だなぁもう!!」
柄を両手に先陣を切り、上半身を大きく捻る。蛇は顎を外し、俺を頭から飲み込まんと大口を広げた
(#メ)_・`)「ッッッッラァッ!!!!!!!!!!!」
脚、腰、そして肩から腕へ。捻りから繰り出される遠心力を矛先に乗せ、奴の左頬にあたる部分をぶっ叩く
刃の接触部から『頭』がごっそりと捥ぎ取れ、鮮血が噴き出すかのように『中身』が上へと飛び散った
(#メ)_・`)「ッ!!」
生物であるならこれで終いだが、大蛇は蜷局を巻いて『蛇腹』で体当たりをかましてくる。腕と柄でガードしたが、その巨大さ故に俺の身体は若干の後退を余儀なくされた
体勢が崩れたこの隙に、ハガキは上空へと舞い上がる。少しの滞空の後、接触面積を広くして頭上から一気に降り注いだ
65
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:22:35 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_・`)「オラよッ!!」
的がデカくなったのは此方にとっても好都合だ。《流》で生命力を滞留させた矛を、『滝』目掛けて放り投げた
回転しながら衝突し、ハガキの群は真っ二つに割れる。幾らか量は減ったが、それでも構わず落ちてくる
結構、接触までの時間を少しは稼げた。本命はこっちじゃない
(#メ)_・`)「俺の全力をぶつけてやるよォ!!!!!!!《握》ッ!!!!!!!!」
両拳を叩き合わせ、腰の位置まで下ろす。前後に脚を開き踏ん張りが効くようにして、足首から膝を柔らかく折り、『発射体勢』を整えた
(#メ)_・`)「く、た、ば……」
『御出席』の文字がハッキリと見える所まで迫った大蛇へと向けて―――――
(#メ)_゚`)「れええええええええええええええええええええええええええッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!」
渾身の両アッパーを放った
66
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:24:48 ID:bDiJ5Dlc0
(#メ)_゚`)「ええええええええええええええええええええええええええええええああああああああああああああああああああああああああッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」
今ならGiven Upの17秒シャウト出せるんじゃないかってくらいの気合と声を乗せて生命力を拳から叩き込む
大蛇は身体のあちこちから『裏』が突沸。爆発と共に焦げたハガキが噴き出し、身は細く痩せ細っていった
(#メ)_゚`)「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
実はもう17秒経ってるんじゃない?????俺って実はチェスターの生まれ変わりだった?????そんなことはどうでもいい。『まだ見つからないのか!?』
奴にとっても大ダメージの双撃だが、俺の負担も相当だ。生命力の使用はまず『体力』を、それが尽きれば『寿命』を削る諸刃の剣
二時間くらいこのままでも百二十歳まで生きる自信はあったが、朝飯を食ってない身には少々堪える。印は付けてあるんだ。あいつなら、しずくなら見つけるのは容易い
(#メ)_゚`)そ「ああああああああああああああああああああッ!?おわーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!???????」
すると、両拳から身体に圧し掛かる負荷が急に軽くなり、勢い余って腕から全身をピンと伸ばした状態でうつ伏せに倒れ込んでしまう
(,#゚ワ゚)「獲ったぁ!!!!!!!!!」
ガッツポーズを取ったしずくが俺の視線に気づくと、興奮気味に空を指さす。只の紙切れと化した招待状が舞い落ちる中に、ハッキリとした存在感を持つ『一枚』
(メ)_・`)「やれやれ……」
縁に僅かな血が染み込んだ本体が、土手っ腹を貫かれてフワリと舞っている。最初に奴と接触した時に、プランBを見越して付けていたのだ
招待状は身に空いた大穴から黒く焼け焦げていき、地面に到達する頃には灰となって消え失せる。後に遺されたのは、裏の支配から解放され、自由気ままに地と空を泳ぐ紙切れだけだった
67
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:26:33 ID:bDiJ5Dlc0
(;メ)_・`)「終わった……」
想定より奮闘され、俺の身体はズタボロボンボンだ。寝返りを打って仰向けになった身体には、もはや破壊力のはの字もないハガキが降り積もる。これはこれでうぜえな……
⌒*リ;´・-・リ 「大丈夫ですか!?」
(;メ)_・`)「見りゃわかるだろ余裕じゃい。絶好調で天丼百杯食えるわ派手にな」
⌒*リ´・-・リ 「とてもそんな風には見えませんけど!?血みどろじゃないですか!!」
抜けた腰が入ったのか、それとも呪縛から逃れて気を取り戻したのか。駆け寄ってきた高梨さんが心配そうに俺を覗き込む
確かに全身切り傷だらけだし、顔もなんか痛い。それに加えて、生命力の使い過ぎで足腰に力が入らない
物理で攻めてくるタイプはこれだから厄介だ。領域展開型や異能射出型ならもうちょい生傷も減るのだが
(;メ)_・`)「あー」
やっぱダメだ。失血と疲労で瞼が降り始めてきた。まぁ後は二人に任せて休んでもいいか……
イ从゚ -゚ノi、「ちょっと」
(;メ)_・`)「っ……痛ぇな……」
頭を小突……今こいつ蹴ったよな?まぁええわ。眠りを妨げた銀が不満げに俺を見下す。性癖は拗れてないんで興奮はしなかった
(;メ)_・`)「何だよ……」
イ从゚ -゚ノi、「私の朝餉、用意してから寝てくれない?」
鬼かよこいつ
(,;゚□゚)「……」
しずくですら絶句してんじゃねえか
68
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:27:41 ID:bDiJ5Dlc0
(;メ)_・`)「昨日のビーフシチュー……保温してあるし……副菜も取り分けてある……」
(;メ)_・`)「あと……パンくらい……自分で焼……」
(;メ)_ `)「け……」死!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「小練さん!?小練さーーーーーーーーーーーーん!!!!!!!」
「あらら、死んじゃった」
「しょうがないわね、全く……」
姦しい声が遠くなり、俺の意識はしばしの休憩に入ったのであった
69
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:28:51 ID:bDiJ5Dlc0
―――――
―――
―
目が覚めたのはとっぷりと日が暮れた頃。施設内のハガキは『とりあえず脇にどかしときましたっス!!ピィーッス!!』程度には片づけられていた
作り置きした覚えのない夕飯の匂いに誘われてカフェテリアへ足を運ぶと、なんと作っていたのは客である高梨さんだった。従業員二人は好き勝手してた
⌒*リ;´^-^リ「お世話になったんですし、これくらいさせてください。だから土下座やめてマジで。こっちが悪い事した気になっちゃうじゃないですか」
と仰ったので、申し訳ないがお言葉に甘えることにした
(,,゚-゚)「仕事放棄してずっと寝てた先生が悪いよね?」
イ从゚ -゚ノi、「そうね。ここまで軟弱とは思ってなかったわ」
こん時はゲロ吐くまで蹴り飛ばそうと思ったが
⌒*リ;´・-・リ「怒らないであげてください。お二人とも、小練さんの介抱で手一杯だったんです」
と、こっそり教えてくれたので、今日の所は勘弁してやることにした。ツンデレ共がよ……
70
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:31:08 ID:bDiJ5Dlc0
さて、招待状の件は解決したが、高梨さんには予定していた期間中はこの場所で滞在して貰う運びとなった
事後処理も残っていたし、何より彼女が感謝を形として返したいと申し出たからだ。俺達はありがたく厚意を受け取る事にした
(;´・_・`)「めんどくせえ……」
仕事は文字通り『山』ほどあった。裏の残骸であるハガキの処理だ
既に印字されてるもんだから売って金にも出来ねえし、こんな山奥まで廃品回収車はやってこない。そもそも大分昔にその文化無くなってたわ
なので、地道に集めて燃やすしかなかった。遠くに飛んで行ったのは知らん。勝手に長い年月欠けて土になれや死ねカス
(,,゚ワ゚)「芋持ってきたよ!!」
(´^_^`)「いいねえ!!」
⌒*リ;´・-・リ「えっ……これで焼いた物食べて大丈夫なんですか……?」
イ从゚ -゚ノi、「食べられる怪異もあるし、大丈夫なんじゃない?くねくねとか」
⌒*リ;´・-・リ「ええ……古い怪談ですよねそれ……美味しいんですか?」
イ从゚ -゚ノi、「味のしないはんぺん」
大桜堂を始めとしたその他支部、そして本部へ宛てる報告書の作成
(´・_・`)「死ねカス、と……送信!!」
イ从゚ -゚ノi、「ガキか」
まぁこれはそんな大変でも無かったな。翌日ものすげえ量の抗議メッセージが届いたが。役立たずの分際で口だけは達者だな死ねカス
おっと、そうそう。クソザコ霊媒師に支払った金を取り戻すのも忘れちゃなんねえ
(#´゚_゚`)「大した仕事も出来ねえ分際で一丁前にカタギから搾り取ってんじゃねえぞダボがァ!!!!!!高梨の嬢から奪った金、とっとと耳揃えて返さんかいゴラァ!!!!!!!」
:⌒*リ;´・-・リ:「ひえ……筋モノか大阪府警……」
イ从゚ -゚ノi、「それ、対極に位置する存在じゃない?」
(,,゚-゚)「どっちでもいけるよあの迫力」
話せばわかってくれる連中ばかりで助かった
71
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:33:02 ID:bDiJ5Dlc0
一週間は、あっという間に過ぎていった。最終日の朝、帰り支度を終えた高梨さんは、留守番二人に別れを告げる
⌒*リ´^-^リ「お世話になりました」
イ从゚ ー゚ノi、「此方こそ。気を付けて帰りなさい」
(,,゚ワ゚)「また遊びに来てね!!」
⌒*リ´^-^リ「勿論。ありがとね、しずくちゃん」
銀とは握手を、しずくとはハイタッチを交わし、荷物を手に颯爽とオンボロバスに乗り込んだ。珍しく機嫌が良く、ドアはすんなりと閉まる
(´・_・`)「そんじゃ、発車しますっと」
⌒*リ´・-・リ「はい」
バックミラーに映る彼女には、一週間前の憔悴など欠片も残っていない。『招待状』が生き残っていたら、きっと歯ぎしりをして悔しがっただろう
半年も掛けて追い込んだ獲物が、たった七日で元気な姿を取り戻したのだから
<またねー!!
⌒*リ´^-^リノシ「ばいばーい!!」
開けた窓から身を乗り出し、二人の姿が見えなくなるまで手を振る彼女。少しばかりスピードを緩め、悪路に入るまでの猶予を作ってやった
72
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:34:06 ID:bDiJ5Dlc0
その後、酷道を抜けて最寄りのバス停へと到着。前日に連絡は入れておいたので、乗り換えのバスは既に待機していた
⌒*リ;´ - リ「……」
唯一の乗客は見事に酔ってた。行きはヨイヨイ帰りは恐いってこれかぁ!!!!!!!
(;´・_・`)「ゲロ袋いる?」
⌒*リ;´ - リ「はい……ウッ」
アレする描写は、彼女の名誉の為省略させていただく。悪しからず。代わりに昔流行ったなんちゃらアート載せたれ
,, -―-、
/ ヽ
/ ̄ ̄/ /i⌒ヽ、| おぇーー!!!!
/ (゜)/ / /
/ ト、.,../ ,ー-、
=彳 \\‘゚。、` ヽ。、o
/ \\゚。、。、o
/ /⌒ ヽ ヽU o
/ │ `ヽU ∴l
│ │ U :l
|:!
U
汚っ。昔の人は何考えてこんなもん作ったんだ?
⌒*リ;´・-・リ「お、お目汚し失礼しました……」
(;´・_・`)「お気にならさんな。気分が優れたのならそれでい……いや置いとけってこっちで処理するから」
73
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:35:59 ID:bDiJ5Dlc0
荷物を肩代わりし、先にバスを降りて手を差し伸べる。やや遠慮気味に握り返した彼女は、これまた珍しく機嫌の良く開いたドアを抜けて道路へ降り立った
⌒*リ´・-・リ「何から何まで、本当にありがとうございました。お金まで取り戻して頂いて……」
(´・_・`)「構わねえよ。こっちも商売でやってっからな」
霊媒師共からはほぼ全額が返って来たと言っており、その内の二割を今回の成功報酬兼滞在費として頂戴した
高梨さんが『八割払います!!』って息巻いたときは銀ですら『多すぎ』とツッコミを入れていた。二割でも多い方なんだがな
⌒*リ´・-・リ「では……」
(´・_・`)「ああ」
反対車線のバス停まで、一分も掛かりはしない。荷物をお返しすると、おじいちゃん運転手がバスの扉を静かに開けた
⌒*リ´・-・リ「……」
(´・_・`)「?」
何故か彼女は乗り込もうとしなかった。まだ酔いが残っているのだろうか。一歩先が踏み出せず、躊躇っている感じがした
⌒*リ;´・-・リ「あの!!」
(´・_・`)そ「あっ、はい」
⌒*リ;´・-・リ「また……また、助けてくれますか!?私が『裏』に襲われて、心も身体も疲弊した時、温かく迎え入れてくれますか!?」
何かと、思えば
(´^_^`)・'.。゜「ブブホゥwwwwwwwwwwwww」
⌒*リ;´・-・リそ「笑った!?」
『元居た場所』に帰るのが、恐いだけかよ
74
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:38:30 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「ああ、いや失礼。不意打ちだったもんで」
運ちゃんは空気読んでドア閉めてくれた。長生きしろおじいちゃん
(´・_・`)「昔のアンタとこれからのアンタは、全くの別モンだよ。裏にせよ怪異にせよ、襲われることなんてほぼねえよ」
⌒*リ;´・-・リ「でも……」
第一印象の気弱さがぶり返してきたか。しょうがねえなこの姉ちゃんは。ちょっとエールでも送るか
(´・_・`)「アンタは招待状の猛威に半年も耐えたに留まらず、『自分の力』で奴らの包囲網を破ったんだ。生命力の持つ生き物なら誰にだって出来ることだが、容易くはない」
(´・_・`)「自信を持つんだな、高梨 莉花さんよ。これから先のクソ長ぇ人生、その場に蹲りたくなるような艱難辛苦に襲われるだろう。それでも、アンタは前を見据えて歩き出せる強さを持ってる」
(´・_・`)「『何があろうと生きるという気持ちを忘れるな』、だ。この気持ちさえ持っていれば、例え再び招待状が届こうが、俺らの手なんか借りずとも自分で乗り越えられるさ。だってよ……」
高梨さんの表情は、まだ不安の色が残っていた。だけど、少し背中を押してやるだけで
⌒*リ´^-^リ「『生きてる奴の方が、何倍も強い』。ですよね」
(´・_・`)「……その通りだ」
案外恐怖という感情は、薄まっていくものだ
75
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:40:40 ID:bDiJ5Dlc0
(´・_・`)「今度は、療養じゃなくてバカンスで来な。何もねえクソ田舎だが、美味いメシと空気だけは腹いっぱい食らわせてやるよ」
⌒*リ´・-・リ「はい!!」
元気よく返事をした彼女と、別れの握手を交わす。運ちゃんは空気読んでドア開けてくれた。気配り上手だな。ええ?
⌒*リ´・-・リ「銀さんとしずくちゃんに、よろしく伝えてください。小練さんも、お身体を大切に」
(´・_・`)「そっちもな。これからの人生に、幸多からんことを」
最後に眩しい笑顔を返すと、彼女を元の世界に送り出すバスへと、力強く一歩を踏み出した。最後部座席に腰を降ろし、振り返って手を振ってくる。俺もまた、小さく手を振り返した
バスは静かにタイヤを回し、ある程度舗装された道路を進み始める。彼女に習い、その姿が見えなくなるまでその場で手を振り続けた
(´・_・`)「……」
裏の魔の手から逃れた者が、再び狙われるという事例は少なくない。その多くが、他人より優しいが故に割を食う『善き人』だからだ
きっと高梨さんも、これから先の人生で何度も躓き、挫け、転ぶのだろう。その度に、奴らの食指に狙われるのだろう
それでも、俺達は彼女が、ひいては『善き人達』が、奴らを跳ね除ける力を持っていると知っている。信じている
(´・_・`)「頑張れよ」
自然と零れ出た、たった五文字のエールは、山風に吹かれて遠くへと消えていった
76
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:41:09 ID:bDiJ5Dlc0
もしも貴方が
77
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:42:43 ID:bDiJ5Dlc0
(#´・_・`)「ハァ!?今回の報酬の半額が仲介料!?ふざけんじゃねえ店を物理的に畳むぞクソアマ!!!!!」
« 厭やわぁ、イライラして。お金の切れ目が縁の切れ目やて言うやないの。ウチのお陰でたんまり稼げたんやから、折半は当然とちゃいますのん? »
霊的で不可解な現象にお困りだったら
(,,゚-゚)「今度は鈴ねぇに言いくるめられずに済むと思う?」
イ从゚ -゚ノi、「出来ないにエビフライ一本賭けるわ」
(,,゚□゚)そ「ズルいよ銀ねぇ!!ボクもそっちがいい!!」
胡散臭い霊媒師に連絡する前に、此方へご相談を
« あらあら、ご家族にも信用のぉて肩身が狭いなぁ。パパさん? »
(#´・_・`)「だぁってろクソ京都人!!おめえら聞こえてんだぞ!!」
生意気で可愛いクソガキと
(,,゚ワ゚)「乙女のお喋りに聞き耳立ててたって……コト!?」
性悪で優しい妖怪と
イ从゚ -゚ノi、「ほんと、紳士気取りの癖にスケベよねぇ」
そしてこの俺が
(#´゚_゚`)「メシ抜きにされてぇのかァ!!!!!!!!!!!!!!!」
誠心誠意、真心込めて『駆除』します
78
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:45:40 ID:bDiJ5Dlc0
御用の方は是非、『鬼ヶ村トレーニングセンター ねぐら』へご連絡を
お相手は、小練 詩音でした。それでは―――――
.
79
:
◆M0yfIGPt92
:2021/10/23(土) 23:46:15 ID:bDiJ5Dlc0
『The Demon Village.』
.
80
:
名無しさん
:2021/10/24(日) 00:13:56 ID:e2x6Yf4s0
otu
81
:
名無しさん
:2021/10/24(日) 11:29:23 ID:ns8tn0YY0
おちんちん!!
82
:
名無しさん
:2021/10/24(日) 21:37:46 ID:nvDbhxEY0
おもろかった 乙
83
:
名無しさん
:2021/10/24(日) 23:07:10 ID:kyVrvfC20
うむうむ、麿はこういうの大好き貴族でおじゃる
84
:
名無しさん
:2021/10/25(月) 20:00:11 ID:4K0S9Ctk0
おつ!
これはいい活劇、やっぱ筋肉は正義だな
85
:
名無しさん
:2021/10/30(土) 19:14:31 ID:HRFodnqU0
乙!
面白かった!!
86
:
名無しさん
:2021/10/30(土) 20:43:58 ID:XxtNIEaM0
乙
まとめサイトで読んだから曲が自動再生されたわ
職場で
87
:
名無しさん
:2021/10/30(土) 21:41:45 ID:qyUF/BDU0
わかる
88
:
名無しさん
:2021/11/06(土) 12:37:30 ID:cnJQyY8M0
少年誌の読み切りだこれ!
89
:
名無しさん
:2021/11/09(火) 19:20:48 ID:3da7n5Sk0
おつ
次の話も読みたくなる作品
90
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:46:47 ID:ZLjr42H60
.
91
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:48:10 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「よっこらせ」
よう、俺だ。もうすぐサマーシーズン到来なんで『ねぐら』も副業が本格的に始まる。そして仗助が露伴とチンチロチンをする。今はその下準備中だ
既に幾つかの団体から宿泊予約が入っている。ありがたいね。副業はアガリを送らなくていいから助かる。なんで命懸けで稼いだ金を上にやらなくちゃならないんだろうか。早いところ物理的に潰したい
(,,゚-゚)「せんせー」
(´・_・`)「なんじゃー」
(,,゚-゚)「明後日にはグリコねぇ来るって」
(´・_・`)「はいよー」
一粒300メートルじゃない。毎年夏になると来てくれる住み込みアルバイトだ。普段は三人しかいないこの場所も、繁忙期には数十人分の食事を用意しなければならない
彼女の作る飯はバカクソ美味いので、メシ目当てのリピーターも多いのだ。何てったって彼女の先祖は小便で味噌汁を作ってたのを旦那に見つかって追い出された妖怪なのだから
妖怪って下ネタで美味いもん寄越して来るやつ結構多い。特に植物系はその傾向ある。オッサンの姿をした柿の妖怪がケツの穴ほじって舐めろとか言ってくるんだぜ?ぶっ殺そうかと思ったね
(,,~□~)=3「今年も汗臭い季節が来ると思うと辟易するよ。一人で十分だってのに」
(´・_・`)「お前それ他所のオッサンに絶対言うなよ?」
(,,゚-゚)「なんで?悦ぶから?」
(´・_・`)「傷つくからじゃい」
オッサンがみんな変態だと思うなよ
(,,゚-゚)「ボク、美少女だよ?」
(´・_・`)「だから何だよ……」
可愛いは正義じゃねえんだよ
92
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:50:01 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「ハァー……いい時間だし、ちょっと休憩にするか」
(,,゚ワ゚)「おやつ!!」
(´・_・`)「はいはい。お銀呼んで来い」
(,,゚□゚)「銀ねぇおやつーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
幾らなんでも聞こえねえだろどんだけセミ鳴いてると思ってんだ皆鳴ミセリかよ
このアホに任せるのは諦めて迎えに行こうとした瞬間、蒸し暑さも消し飛ぶような涼し気な表情をした銀が、廊下からひょっこり顔を覗かせた
イ从゚ -゚ノi、「あら、ちょうど良かったわ」
(´・_・`)「来るじゃん……」
(,,゚ー゚) フフン
腹立つ
イ从゚ -゚ノi、「何?来ちゃ悪かったかしら?」
(´・_・`)「お迎えに上がる手間が省けて大変助かったよ。何か用があったのか?」
イ从゚ -゚ノi、「アンタ、デバイス置きっぱなしだったでしょ。メッセ来てるわよ」
投げ渡されたのは腕輪型の携帯デバイス『i-ring』だ。本業は何かと荒事が多いのと、霊障による電波ジャック等の不具合も多発する為、普段からあまり身につけていない
ホログラムで映し出されたされた通知タブには、幾つかの連絡履歴が表示されている。その内の一つは、最近まで面倒を見ていた客の一人だった
(´・_・`)「高梨さんからの近況報告だな」
(,,゚-゚)「いやらしい自撮り?」
(´・_・`)「近況報告。どれどれ……」
あれから二か月弱経ったが、招待状の類はあの日以来一枚も届いていない。毎晩枕を高くして眠っているらしい
再就職も無事に終わり、今は大手喫茶チェーンの店員として充実した毎日を送っている。街を訪れる機会があるなら、是非立ち寄って欲しいと締めくくられていた
一先ず、彼女は平穏な人生を順調に歩んでいるようで安心した。これなら、『裏』から再び狙われるなんてことも無さそうだ
93
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:51:29 ID:ZLjr42H60
イ从゚ -゚ノi、「活きが良さそうね」
(,,゚-゚)「ピッチピチだね」
(´・_・`)「『元気そう』でいいだろ何で海産物みたいな扱いになってんだ」
言葉選びが雑過ぎる
(´・_・`)「後は……あれ?」
この時期には珍しい、『副業』の客からの連絡が入っていた
イ从゚ -゚ノi、「問題?」
(´・_・`)「いや、三浦さんからだ」
イ从゚ -゚ノi、「あの人から?少し早くないかしら?」
(´・_・`)「そうだな……ちょっと、掛けなおしてくるわ」
(,,゚-゚)「おやつは?」
(´・_・`)「仕事が先」
(,,゚3゚)「なんだよぉ〜。早く済ませてよね」
唇を尖らせたしずくの頭を雑に撫でまわし、少々席を外す。i-ringを腕に嵌め、メニュー画面から受話器のアイコンを押してリダイアルする
少しの間待つと、「はい、三浦です」と落ち着いた低い声色の男性が応答した。こんな所で長い事お嬢さん二人の面倒見ながら生活していると俺以外の男の声が逆に新鮮
(´・_・`)「ご無沙汰しております。小練です。お待たせして申し訳ございません」
«いえ。此方こそ、お忙しい所お手数を取らせてしまって»
(´・_・`)「お気になさらず。今日はどういったご用件でしょうか?」
«その……大変、申し上げにくいのですが……個人的な依頼でして……»
随分と歯切れが悪いな。もしかしたら『本業』の可能性もある
94
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:52:28 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「荒事でしょうか?」
«荒……ああ、すみません。誤解させてしまって申し訳ない。そうですね、率直に申し上げましょう»
最初からそうせんかいハッキリせんオッサンやな
«若者を二名、其方で鍛え上げて欲しいのです»
(´・_・`)「若者」
«データを送ります。ご確認を」
ポップアップされた送付ファイルを開く。だいぶ個性的な顔面をしたガキ二人の、簡単なプロフィールだ
『('A`) 宇都宮 徳雄』
『( ^ω^) 内藤 文彦』
一方は二十代前半のブサイクな男。もう一方は高校生のデブと来たか。ブサイクはパッと見でもそこそこな『やり手』だが、デブは普通のデブだな
ちぐはぐな年代と体形。この二人を結びつける『スポーツ』の類は、一つしか思い浮かばない。依頼主もかつては『そいつ』で天辺を獲った猛者だ
(´・_・`)「『新入り』ですか?」
«いえ、チームとは無関係です。私も『依頼』された立場なのですが、私の指導の下で鍛えるよりもいっそ『地獄』を見せた方が伸びると判断しました»
(´・_・`)「……」
あまり好まない方法だ。獅子は我が子を千尋の谷に落とすと言うが、本当に『舞台』で活躍させたいのであれば、心と身体を潰してしまうような指導、教育などあってはならない
しかし過酷な環境を経て、爆発的に成長する者がいるのもまた事実だ。現に、その『成功例』が、今もこの場所で生き残っているのだから
(´・_・`)「……それは『彼ら』も知っての上でしょうか?」
«勿論です。なんせ、掲げる目標が『ジャパンカップ初出場にして制覇』ですから»
おいこいつら相当なバカじゃねーか。気に入った
95
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:54:34 ID:ZLjr42H60
(´・_・`)「並大抵の地獄じゃ済みませんが、構いませんね?」
«ええ、シゴキにシゴいてやってください»
こいつは久々に腕が鳴る仕事だ。快く受けさせて頂こう
(´・_・`)「わかりました。代表は三浦さんで宜しいですか?」
«いえ、私はただの仲介役ですので……此方です」
追加で送られてきたデータを確認すると、今度は腹の立つ笑顔を浮かべるオッサンの姿
『(´^ω^`) 大潮 本八』
奇遇なことに、高梨さんが就職したというチェーン店の『元締め』だ
«期間は八月から一ケ月を希望しています。急な依頼なので、指導料については言い値で構わないそうです»
(´・_・`)「そりゃ気前が良い」
«詳細につきましては、ご都合の付く日に連絡を差し上げたいと申しておりました。いつ頃が宜しいですか?»
(´・_・`)「それでは……」
打ち合わせの段取りを簡単に済ませ、軽い挨拶を交わして通話を終えた。三浦さんも面白い依頼をしてくれたもんだ
(´・_・`)「ハハ……」
俺が鍛えたガキ共が、『チャリオッツ』最高峰の大会で優勝する。そんな光景を目の当たりにするチャンスを与えてくれたのだから
96
:
◆M0yfIGPt92
:2021/11/14(日) 01:55:03 ID:ZLjr42H60
<せんせー!!まだー!?
(´・_・`)「やれやれ……」
妹分に急かされ、お嬢様方のお茶の用意をしに戻る。窓の外では、相変わらずセミ共がミンミンと喧しかったが
俺の中で膨れ上がる期待感を体言しているようで、いつもより少しばかり耳触りは良かった
今年もまた『熱い夏』が、始まったのだった―――――
.
97
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/11/14(日) 01:56:19 ID:ZLjr42H60
Desperado Chariots × The Demon Village.
2022年 公開予定
98
:
名無しさん
:2021/11/14(日) 02:07:49 ID:3zzIDFCk0
きたわね
99
:
◆L6OaR8HKlk
:2021/11/14(日) 02:19:03 ID:ZLjr42H60
お疲れさまでした。ハロウィンライスちゃんに幾ら使いましたか?僕は十連でクリークと一緒に来てくれました
鬱も猟奇も書けないし音楽モチーフの話が思い浮かばなかったんでやりたいことを優先した結果がご覧の有様だよビックリだわ
元々現行の第二部で登場させようと思ってたキャラクター達で、宿泊施設管理の裏でこういうことやってますよってのを祭の場を借りて紹介出来たのは良かったです
2121年の話なのにしずくのネタが妙に古いのもちゃんと理由があるんでそこまでは頑張って書こうと思います。それから先は知らん。勝手にして
100
:
名無しさん
:2021/11/17(水) 16:44:25 ID:/SoSN3TA0
面白くなってきたじゃねーの
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