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ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです

82名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:34:09 ID:otC/LjQw0
【―― 1 ――】


 ギコさんは、告げる。



(,,-Д-)「君の名は『玉藻前』――――君の存在を、禁じる」



 瞬間――――世界が、捻れた。

 バキリ、という音。
 それは個人の存在が世界から封じられた音。
 白いキャンバスを染めた色を覆い隠してしまったような、そんな。


:(、 ;川:「あ――あぁぁぁぁぁああっっっ!!!」


 絶叫。
 咆哮。
 絹を引き裂いたようなそれは獣の如く。

83名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:35:09 ID:otC/LjQw0

 いや、違う。
 そもそもこの人は獣だったのだ。

 いくら私でも、その名前くらいは知っている―――。


(#゚;;-゚)「『玉藻前』――日本では能で有名です。絶世の美女でありながら、その実『白面金毛九尾の狐』という妖狐の中でも最強の、」


 そこまで言って、いえ、と訂正し。


(#゚;;-゚)「全世界でも最高レベルと言って相違ない……ほとんど神の位に存在する妖怪なのです」


 玉藻前、九尾の狐。
 有名過ぎてわざわざ説明することさえ愚かしいその妖怪。

 何よりも美しく、そして何よりも強かった化物。

84名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:36:08 ID:otC/LjQw0

 ……思えばヒントは沢山出ていた。
 金色の髪、陶磁のように白い肌、そして絶世の美貌。
 国さえも傾けてしまうほどの“魅力”。

 でも。
 そんな妖怪が、あんなお札一つで……?


(#゚;;-゚)「玉藻前は平安時代、八万の軍勢に討伐された後、石に姿を変えたそうです。その白き石は全国に飛び散り『尾裂狐』という妖怪を生み出したり、人を祟殺したりしたそうなのです」

ミセ;゚ー゚)リ「じゃ――あの、石は」

(#゚;;-゚)「はい。おそらくそのうちの一つ、『殺生石』と呼ばれるモノなのです」


 ここにいる彼女はあくまで分身に過ぎないのです、とでぃちゃんは纏めた。
 だからこそ最強の妖怪はあっさり討伐されてしまったのか。


(、 ;川「ぁ……うぁ……」


 迸っていた閃光が治まった。
 彼女、九尾は冷たいコンクリートに伏したままだ。

85名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:37:04 ID:otC/LjQw0

 空間そのものを金色に染め上げているようなイメージはもう見ることはできない。
 あの光は魔力の逆巻き。
 世界最高峰の力の渦、その一部は最後の一片まで完全に封じられた。

 いや――禁じられたのだ。


(,,-Д-)「……『禁呪』って言う」


 倒れた九尾から背に黒い革手袋を外しながらギコさんは語る。
 目を凝らしてみれば、それにはあのお札と同じような妙な歪みのようなものが見えた。

 砂糖を水に溶かして煮ているような。
 真夏の陽炎。
 そこにある“何か”が揺らめいている感じ。


(,,゚Д゚)「道士が使う術でさ、物事の本質に作用しそれを禁じる呪術。このグローブは魔力を禁じる術式を施してある」


 そう、だから弾くことができた。
 九尾の猛攻、応戦することができていたのは交錯の瞬間ごとに彼女の呪力を封じていた為。
 そしてきっと私に手渡したお守りも同じような効果があった。

86名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:38:08 ID:otC/LjQw0

 火を禁じれば燃えることはなく。
 水を禁じれば沈むことさえもない。

 『禁呪』――ならば。


(,,-Д-)「かつて道士が蛇や鬼を封じていたように相手の存在を禁じてしまえば……ちょっとした金縛りみたいな感じにはなるよね」


 私の元まで戻ってきたギコさんは「どう?」と笑いかける。
 自慢するように、と言えるほど自信はない、しいて言うなら気恥ずかしそうな笑み。
 冷笑よりもよほど彼に似合う笑顔。


(,,^Д^)「これが君の見たがってた『非日常』だよ。そして俺が使える唯二の魔法」

ミセ;゚ー゚)リ「…………すごい」


 本物。
 本当の怪異。
 神秘、不思議不可思議。

87名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:39:16 ID:otC/LjQw0

 私の知っていた、知っていたのに知らないフリをしていた世界の真実。
 解答への足掛かり。



ミセ* ー)リ「(……この人なら)」



 この人なら、私の問題だって―――。


(,,-Д-)「なんて言うか、呪禁道なんてあんまりメジャーじゃない魔術だからアレだけどさ……」


 と。
 ギコさんが頭を掻いたその時だった。

88名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:40:09 ID:otC/LjQw0
【―― 2 ――】



「ははは……」

 
 それは地獄のような。
 あるいは恋獄のような。 

 地平の彼方まで響くような巧笑。



(ー ;川「――はは「ははははっ「はは「ははははははっ!!!」



 立ち上がった。

 先ほどまでコンクリートの上で禁じられていた九尾が、ほとんど死にかけの体でありながらも立ち上がる。
 ふらつきながもその両足で。
 またダラリと両腕を下げ、猫のような――狐のように縦に裂けた瞳を血走らせ。

89名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:41:05 ID:otC/LjQw0

 狂気に満ちた。
 笑みを浮かべる。


(ー ;川「こんなもの……。こんなもので、アタシが封じられるとでも思ったのかしら……?」


 そう、気丈に笑って自身の胸に手を当てる。
 そして枷となっていた札を、途中不可視の結界に阻まれながらも、純粋な力技でも以て制圧し、引き剥がした。

 呟く。


(ー ;川「アタシは、死なない」

(,,-Д-)「…………」

('ー`;川「アタシはまだ、全然喰らっていない。まだ全然、生き足りない……!」


 まるであえて、またしいて自らに言い聞かせるように。
 何度も何度も幾度と無く。

 「アタシは死なないんだ」――と。

90名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:42:10 ID:otC/LjQw0

 生への執着。
 人間よりもよほど人間らしい。
 人間のような貪欲さ。

 それを見てどう思ったのか、竹刀袋を携えた彼女は一歩前に進み出る。


(#゚;;-゚)「何方に唆されたは知りませんが当時の万分の一の妖力、一般人から吸精してやっと現界できる程度の力では、どれほど時間を使おうとも元に戻ることなど不可能なのです」

('、`;川「そんなの……やって見なくちゃ分からないじゃないの!」

(#゚;;-゚)「分かりますよ」


 私には分かるのです、とでぃちゃんは繰り返す。


(#゚;;-゚)「ちゃんとした吸精ができるモノであれば、それこそ一瞬で人を喰らい尽くせたはずです」


 ……そうだ。
 まだ彼女に襲われた三人は、生きている。
 どころか、回復に向かっている。

91名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:43:08 ID:otC/LjQw0

 それが何よりも確かな証拠。
 証左。

 最強の妖怪にまともに祟られて生きていられる人間なんていない――だから。


(#゚;;-゚)「もう既にあなたは人間どころか地縛霊にさえも劣る……取るに足らない存在に堕ちてしまっているのです」


 世界を震撼させる妖狐なんかじゃなく。
 ただの世界の誤差でしかない単なるバグに、と。

 けれど。


(、 ;川「うるさいっ! アタシはなあ、アタシは、アタシは、アタシは……!!」

(#゚;;-゚)「…………」

(、 ;川「アタシは強いし、可愛いし、色んな人から愛されて! 思い通りにならないものなんて何処にもなくて……!!」


 泣きそうな声で叫ぶ彼女の姿はもう揺らいできていた。
 禁呪のせいではない。
 不完全な姿で無理やり力を使ったせいだ。

92名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:44:05 ID:otC/LjQw0

 まともな肉体も持たず、ロクな魔力もない状態で戦って、霊体である彼女が現界し続けていられるはずがないのだ。
 姿が薄れてきたのは死の兆候。

 血のような――死の気配。


(ー ;川「そうだ! アタシだって思い出した、知っているぞ!!」


 唐突に九尾は敵対者である青年を指差す。
 震える指先に殺意を乗せ、叫ぶ。


(ー ;川「お前はもう魔法を使えない! 魔法を失っている! アタシにトドメを刺すことなんでできないんだ!!」


 魔法を失った――魔法使い。


 それがギコさん?
 どういうこと?

 私の疑問など知らぬようで九尾は叫び続ける。

93名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:45:06 ID:otC/LjQw0

(ー ;川「お前もアタシとおんなじだ! 最強だったあの頃のお前と違って、今の『ギコール・ハニャーン』は何も助けられない人間モドキだ!!」

(,,-Д-)「…………うん」


 ギコさん。朝比奈、擬古。
 『魔法を失った魔法使い』と呼ばれた青年は深く首肯し、もう一度「うん」と呟く。


(,,゚Д゚)「確かに俺は……というか厳密には俺じゃないけど、まあ俺は、もうほとんどの魔法を使えない」


 九尾の狐どころか、幽霊すら祓えないんだ。
 私に説明するように彼は言う。
 「使える魔法は二つだけ」と言っていたのは正味その通りで、彼は――“今の彼”はほとんど魔法を使えない。

 ずっと昔に失ってしまったから。
 ……らしい。


(,,-Д-)「だけどさ、」


 と、ギコさんはでぃちゃんを抱き寄せながら続ける。

94名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:46:14 ID:otC/LjQw0

(,,゚Д゚)「なんて言うか、俺は“魔法を使えなくなった”わけじゃなくて“魔法の使い方が分からなくなった”だけだから、」

(;#// -/)「えっ――あ、もしかしてご主人様……?」


 右腕に抱かれたでぃちゃんが顔を真っ赤にしながらぐずるように首を振る。
 身体を悶えさせ、何かを拒否するように。 
 恋人のように抱かれて、それが恥ずかしくて仕方がないという風に。

 ……ん?
 ていうか今なんか「ご主人様」とか凄い危ない言葉が聞こえたような……?


(;#// -/)「無理です駄目なのですご主人様! だってその、あ……うぅ、ミセリさんがいて……!」


 必死に逃れようとする少女の手を、指を絡めるようにして握り――そして。


(,,-Д-)「だから――――こういうのはできる」

(#// -/)「っ……!」

95名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:47:07 ID:otC/LjQw0

 キスした。
 兄妹で。
 恋人同士のように。

 それも軽いやつじゃなく、見ているコッチが恥ずかしくなってしまうような深くて甘い口づけ。
 親愛を示す為ではなく気持ち良くなる為にするキス。


(#// -/)「ふぅ――っ、ん……!」


 ピンと強ばっていた身体の力が抜けた。
 見開かれた目がトロンとしてくる。
 ああ、多分舌入れられちゃって気持ち良くなっちゃってるんだろうなー、と見ていて分かる。

 うわ。
 うわああ……。


(#// -/)「はっ、んぅ……ぅ……」


 堪らなく淫らな表情。
 頬を紅潮させて、撫で撫でされる猫のようにされるがままになっていたでぃちゃんがやっと開放されたのは十秒以上後。
 つつ、と合わさっていた唇同士が糸を引いた。

96名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:48:06 ID:otC/LjQw0

 ぬらぬら光る彼女の唇は、淫靡で。
 普段の様子からは想像もできないしイメージにも全然合わないんだけど、何故かとてもそれっぽくて。

 力が抜けたのか膝から崩れ落ちたでぃちゃんはイッてしまった女の子特有のやらしい顔をしていた。


ミセ*//-/)リ「うわー……」

( * Д)「こういうのは……できる」


 恥ずかしそうに真っ赤になった顔を背けつつ、ギコさんは落ちてしまった竹刀袋を拾い上げて、その中身を取り出す。
 中身は竹刀でも木刀でもない。
 何の変哲もない、テレビなどではよく見るような黒く光る凶器。

 日本刀だった。 


(;#// -/)「ん……うぅ。クラスの人の前で、こんな……」

( *-Д-)「さ、でぃちゃん――行っておいで」


 へたり込んだままのでぃちゃんにその刀を渡す。
 ウジウジ言いながらも受け取った彼女は立ち上がり、それを抜き放った。

97名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:49:05 ID:otC/LjQw0

('、`;川「なによ……それ。そんなのアリ……?」


 鯉口が切られ、白銀の刃が晒される。
 と、同時。
 先ほどの九尾と同じような現象がでぃちゃんにも巻き起こり始める。

 白いキャンバスに絵の具を零したような、世界を侵食するような力の渦。
 彼女を中心に巻き起こる魔力は綺麗なオレンジだった。 

 狐火のような――あるいは、猫の瞳のような。


(# ;;-)「ご主人様……恨みますよ。私は怒ったのです」


 そして現れるのは耳と尾。
 診療所で私が見たのと全く同じ、九尾が出したものとほぼ同じ、彼女から生えた猫の耳と尻尾―――。


(,,-Д-)「うん。後でいくらでも聞くから」

(# ;;-)「そうですか……では、ご命令を」

98名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:50:09 ID:otC/LjQw0

 朧気ながら刃が瞬く。
 その双眸も。
 猫のように縦に裂けた――猫そのものの両目が敵を射抜いた。


(,,゚Д゚)「彼女を終わらせてあげて」


 主人の命に猫の少女は恭しく頷き、そして。




(#゚;;-゚)「分かりました――――では流派なし、朝比奈でぃ。参ります」




 そして、吸精を終えた半妖が。
 人間と猫又のハーフである少女が、死に損ないの狐に飛びかかる―――!

99名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:51:04 ID:otC/LjQw0
【―― 3 ――】


 幕切れは呆気ないものだった。

 猫のようなしなやかさ――いや、猫そのものの俊敏さで踊りかかったでぃちゃんの大上段からの袈裟斬り。
 仄明るく橙に輝く白刃は金色の魔力を断ち切った。

 数多くの人を惑わし、数多の国を滅ぼしてきた悪女。
 その最後。
 それは彼女が殺してきた人間達と変わらず、惨めで悲哀に満ちたもので。


(;、; 川「あ、あぁ……」


 もう叫び声は聞こえない。
 もう叫ぶ気力さえないのだろう。

 手を伸ばしても、その手が消えてしまう。
 立ち上がろうにも、その為の足がない。
 積み上げてきた栄華と絶望は今、光の粒子になって空間に溶けていく。

 静かに、静かに、溶けていく。

100名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:52:04 ID:otC/LjQw0

(;、; 川「死にたくない……死にたくないよぉ……。許して……誰か、助けて……」

(,,-Д-)「きっと君が殺してきた人達も、そんな風に思っていたんだろうね」


 ギコさんは彼女にそれだけを告げて、背を向けた。
 手を貸すことはなく。
 ましてや、助けることはない。 

 縋るように伸ばされた消えかけの右腕を、瞼に映ったその残像を振り払うように背を向け、息を吐いた。
 深い、深い溜息を一つ。

 廃墟の暗闇に食われるように緩やかに薄れていく九尾は――今際の際はただ、すすり泣くのみだった。


(,, Д)「……慣れないよね、こういうのは」


 いつまで経っても慣れないよ――と。
 つい先程自分を殺そうとした相手の最後にも関わらず、彼は酷く哀しそうな顔をしていた。

 慣れない。
 今も。
 敵だからといって容赦なく殺せる鬼には、なれない―――。

101名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:53:07 ID:otC/LjQw0

(#゚;;-゚)「…………ご主人様」

(,,^Д^)「お疲れ様」


 戻ってきたでぃちゃんを抱き、頭を撫でる。
 向ける為に無理に作った笑顔は泣き顔よりも切なくて。

 何故か。


ミセ*;ー;)リ「っ……」


 私まで――泣けてきてしまって。

 その涙は今まさにこの世から消えようとしている誰かの為を想ったものか。
 それとも、必死に似合わない、初対面の人間から見ても偽りと分かる笑みを浮かべた彼を想ったものか。

 どちらか分からないけれど。
 それでも私はずっと。
 意思とは無関係に零れ落ち続ける涙を拭っていた―――。

102名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:54:06 ID:otC/LjQw0
【―― 4 ――】


 翌日、珍しく早く目が覚めてしまった為一番乗りを狙って意気揚々と登校してみると。


ミセ*゚ー゚)リ「……あ。」

(#^;;-^)「おはようございます、ミセリさん。今日はお早いですね、二番乗りなのです」


 教室後方の扉を開けた瞬間にでぃちゃんと目が合った。
 ちょっと気まずい気分で挨拶を返し、彼女の隣、自分の席に腰掛ける。

 始業のチャイムまでは一時間近くあるのに、二番。
 ……ひょっとして彼女はいつもこんな早い時間に来ているのか。
 遅刻常習犯の私には考えられない。

 猫は夜行性なのに、ねえ?
 そんなことは些細な問題かな、"It doesn't make any difference"。


(#^;;-^)「……半分ですから。半分は、人間なのです」

ミセ;゚ー゚)リ「あー……声に出てた?」

103名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:55:06 ID:otC/LjQw0

 はい、と首肯する彼女の笑顔は心なしか柔らかくなったような気がする。
 気のせいだろうか?

 いやそもそも……でぃちゃんって笑う子だったっけ?


 私の疑問など知らないようで、でぃちゃんは黙って微笑んだまま手を動かしている。
 彼女は机に置かれたノートに筆を走らせていた。


ミセ*゚ -゚)リ「……なにそれ」

(#゚;;-゚)「手記のようなものです」

ミセ*-3-)リ「ふぅん」


 特に興味も沸かなかったので早々に視線を前に戻し、そのまま机に突っ伏した。
 多分、昨日あったことを纏めているんだろう。
 編纂や蒐集といったちゃんとした行為はギコさんがやっているだろうし、彼女のそれは「手記」っていうか「日記」なのかな。

 ……ギコさん。
 そう言えば。

104名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:56:06 ID:otC/LjQw0

ミセ*-ー-)リ「そういやさ、でぃちゃん。でぃちゃんが言ってた好きな人って……ギコさんのこと?」


 私の言葉にでぃちゃんは頬を僅かに染め、「はい」と今度は控えめに首肯する。


(* ;;-)「ずっと昔から……好きだった人なのです」

ミセ*^ー^)リ「人前でちゅーするくらいだもんねぇ」


 言わないでくださいよ、と更に赤く、真っ赤になる。
 ……なるほど。
 今時珍しいくらいに清楚で可愛らしい子だ。

 これはキスもしたくなる。


ミセ*゚ー゚)リ「んじゃー二人は付き合っているんだ」

(#゚;;-゚)「え? ええ、まあ……そういう言い方もできなくはないですね」

105名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:57:13 ID:otC/LjQw0

 歯切れの悪い言い方に小首を傾げると、私のクラスメイトは直後に超弩級の爆弾を投下した。



(#゚;;-゚)「少し前に婚姻届を出したので、もう付き合ってはいないのです」



ミセ;゚ー゚)リ「…………は?」

(#゚;;-゚)「あの、彼は戸籍的にやや面倒な境遇なので、婿養子という形になっていて、だから姓は『朝比奈』……」


 いや、そこじゃねぇよ。

 え?
 いやいやいやいや――え、マジすか?

106名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:58:15 ID:otC/LjQw0

ミセ;゚ー゚)リ「えっとぉ……じゃ、でぃちゃんって結婚してるワケ?」

(#゚;;-゚)「戸籍の上ではそうです」

ミセ;゚ー゚)リ「女子高生で、人妻ってこと?」

(;#゚;;-゚)「ま、まあ……そうですね」


 うわ、うわああ。
 前言撤回、なんて淫靡な設定を持ってるんだ、この子!

 キスで吸精できるだけでも十分アレなのに!
 それに加えて結婚だと!
 猫耳尻尾を生やして二人で仲良く暮らしているだとぉ!?


ミセ* ー)リ「うわー……。じゃ、じゃあ『ご主人様』って呼び方も家でのプレイの……」

(#// -/)「ちっ――違うのです!」


 手を振って、必死の訂正を試みる人妻女子高生。

107名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 01:59:10 ID:otC/LjQw0

(* ;;-)「あれは私がご主人様の使い魔であった頃の名残で……」

ミセ;゚д゚)リ「主従関係だったの!?」
 

 なんてえろい!
 いやさ――なんてエロゲ的!!

 何がスタンドだよ、サーヴァントじゃん!!


(#// -/)「も、もう……私の話はいいじゃないですか」


 と、いい加減羞恥心が限界なのか、下を向き小さな声で言う彼女。
 ありえん。
 こんな子がもう結婚してるだなんて……。

 世の中どうなってるんだ。
 私の知らない世界があり過ぎだぞ色々。

108名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:00:09 ID:otC/LjQw0

(#// -/)「ほらほら! ミセリさんの恋の話でも……ほら! 部活の先輩方で好きな人とか……」

ミセ*-ー-)リ「あー、アイツらね」


 馬鹿共の顔を思い出しながら私は言う。


ミセ*゚ー゚)リ「三人ともセックスするだけの友達だからなぁ」

(;#゚;;-゚)「…………だけ?」

ミセ*-ー-)リ「そ。それだけの友達」


 今度はでぃちゃんが絶句する番だったのか、驚き目を見開いて私を見つめてくる。
 動物園でパンダを見る目つきに近い、物珍しそうな瞳。

 ……そしてちょっと怖がっている。


ミセ*-3-)リ「部室が手に入ったら学校でもヤりまくれるなーとでも思って頑張ってたんだろうねぇ、アイツら」

(;#゚;;-゚)「ヤりまくるって……」

109名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:01:10 ID:otC/LjQw0

 別に今時の子なら珍しいことじゃないよ、と私。
 なんだか助けたのを少しだけ後悔してきたのです、と彼女。


 そんなこんなで時間が過ぎていく。

 穏やかな早朝の一時は今までの関係では考えられないほどに親密で、愉快な。
 冗談交じり。
 お互いに気の抜けた、肩の力の抜けたやり取り。

 世間話を交わして笑い合ってる時に私はなんとなく分かってしまった。
 ギコさんが私を巻き込んだ意味。


 ……昨日、診療所の玄関ででぃちゃんは猫耳を生やしていなかったんだ。
 正しくは隠していなかっただけで、それは霊感のない普通の人にはまず見えないレベルでしかなかったのだろう。

 でも、私は見てしまった。
 見えてしまった。
 なんだか分からないままにそれを捉えてしまって。

 私に強い霊感があることに気づいたギコさんは思ったのだろう。
 「この子なら秘密をバラしてしまってもいいかもな」なんて。

110名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:02:08 ID:otC/LjQw0

 孤立気味だったでぃちゃん。
 可愛い奥さんのことを心配して、あの人は秘密を共有できる友達を作ってあげようとしたのだ。 
 思えば車の中では学校での彼女の話がやたらに多かった。


ミセ*-ー-)リ「(なるほどねぇ)」


 童貞っぽい可愛い顔して、中々やり手じゃん。
 ……まあでぃちゃんみたいな子と暮らしている以上童貞はありえないだろうけど。


 ま、兎にも角にも。
 その問題も彼は解決してしまったのだ。 

 本当にあの人、職業としては何なんだろう?


 『魔法を失った魔法使い』。
 というか――何者なんだろう?

111名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:03:09 ID:otC/LjQw0
【―― 5 ――】


 学校終わって、放課後。
 私は例の場所にいた。

 でぃちゃんからギコさんの「良かったら昨日の場所までおいで」との言伝を聞き、やることもなかったのでシャーっと自転車を走らせやってきたのだった。
 宵闇ではおどろおどろしい感じしかしなかった山は、昼間、日の高い時間に見ると単なる小高い丘モドキだった。
 木が生い茂っているので丘には見えないが、山と言うほどに高いわけじゃない、なんと呼ぶか困る類のその場所には既に二人の人がいた。


「だからよー。何度も言ってるが、こういう些細な用事で呼び出すのはさー……」

「ほらほら請負人、仕事なんだからちゃんとやって」


 童顔に人の善さが滲む雰囲気、今日も昨日と同じくジーンズにパーカーの上に白衣を羽織っている。
 今日の笑顔はちゃんと彼に似合っている。
 路肩に停めたヤマハ・ビーノの座席に腰掛けているのはギコさんだ。

 そして、もう一人。
 上質なワインのような深い紅色の髪をした、不良っぽい感じで八重歯が目立つイケメン。

112名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:04:14 ID:otC/LjQw0

( ・∀・)「……お、できた。っつーか、あの子なんじゃねーか?」


 山道の入り口、公道に面した場所で作業をしていたその人が振り返る。
 銀のネックレスを身につけたその人は正面から見ると……うん、なんだか分からないけど悪い感じがした。
 悪い悪さじゃなく、良い悪さだけど。

 意味が分からないって?
 そうだなー、たとえて言うなら教室での席が一番後ろの魔王様みたいな感じ。

 そんなことを思いながら私はペダルに力を込め、一気に原付の隣まで行く。


ミセ*^ー^)リ「こんちわー!」

(,,^Д^)「ギコハハハ、こんにちは。今日も元気一杯だね」


 自転車を停めて降り、敬礼の真似事をしつつギコさんに挨拶。
 少し方向を変え何故か右手に金槌を持っているイケメンさんにも声をかける。

113名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:05:19 ID:otC/LjQw0

ミセ*゚ー゚)リ「こんちわですっ!」

( ・∀・)「こんにちわ。俺は、まー……ボランティアだよ」


 はぐらかすような言葉にギコさんから補足説明が入る。


(,,-Д-)「僕の知り合いでさ、請負人なんだよね。だから手伝ってもらってたの」

( -∀-)「だから請負人とか恥ずかしげもなく……」

ミセ*゚д゚)リ「請負人!!」


 人類最強と同じくの!?


(・∀・ )「なんか好評だし……なんでだよ。このネタ、分かるの?」


 祈るように両手を組んでキラキラとした目で見てくる美少女(私)を見、苦笑するように髪を掻き上げる。

114名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:06:19 ID:otC/LjQw0

 その人はモララーさん、というらしい。
 『請負人』――読んで字の如くそのまま“請け負う”ことを仕事としている何でも屋さんなんだとか。

 カッコイイなぁ。
 彼女とか、いるのかなぁ……。
 いるんだろうな、多分。

 瞳だけが辛うじて青い「うにっ♪」と鳴く美少女みたいなのが。


ミセ*゚ー゚)リ「その請負人さんがどうしてこんなところに?」

( -∀-)「見ての通り、仕事。日曜大工をしに帝都から遥々やって来ました」


 そう言ってマカロニ・ウエスタンのように金槌をクルクル回転させ、最後には腰のホルスターに納めてみせる。
 気取り屋だ、二枚目やり過ぎて三枚目だ。

 こういう系のイケメンってどうして黙っていないのかなぁ?
 "Why don't you do ...?"。
 私のセフレの一人にも黙ってれば美少年の子がいるけど。

 ま、こういう面白い人、好きだけどね。

115名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:07:06 ID:otC/LjQw0

 ウインクしてみせるモララーさんと私が始めかけた電波系トークを「そこまで」とギコさんが遮った。

 見れば、彼の膝の上には白い石が乗っている。
 昨日廃墟にあった、でぃちゃんが『殺生石』と呼んでいたあの石だ。


(,,-Д-)「楽しそうに話してるところ悪いけど、とりあえずこれを納めてからにしてくれないかな?」

( ・∀・)「祠ならもう完成したぞ」


 じゃなくて、とギコさんは言い。


(,,゚Д゚)「石持って座ったはいいけど重くて立てなくなったから、持ち上げてくれると嬉しい」

ミセ;゚ー゚)リ「…………」

( -∀-)「…………はあ、もう」


 あの人の甥なのになんでそう抜けてるんだよ、とブツブツ言いながらもモララーさんはひょいと石を持ち上げる。
 左腕のみで石を抱えて、公道に面するように作られた真新しい社の扉を開き、その中にちょうど道祖神を祀るように鎮座させた。
 神様のように。

116名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:08:07 ID:otC/LjQw0

 木製の扉が閉じられて石は外界から遮断される。
 最後に神社についているような小さな鈴をつけて、完成。


ミセ*゚ー゚)リ「…………社があると、神様っぽいですね」

(,,-Д-)「『社』っていうのは祭儀に使われる鳥居のある建物のことだから、これは『祠』というのが正しいかな」


 小さな祠を覗き込みながら、ギコさんは続ける。


(,,゚Д゚)「昨日の今日であれだけど、彼女を祀ってあげたんだよ」

ミセ*゚ -゚)リ「え、でも……」

(,,^Д^)「ギコハハハ。ああいう系の人外は依り代もちゃんと処理しないと消えないんだよね」


 勝手知ったるという風に語るのは神道系の大学に通っているせいだろうか。
 大学が本業か妖祓い的サムシングが本業か分からないけど。

117名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:09:05 ID:otC/LjQw0

 そのことを訊いてみると、


(,,-Д-)「ん、まあ……狐の神様は俺には馴染み深いものだから」


 と、懐かしむような口調で言う。
 魔法を失っていなかった頃を回想するような感じは、しんみりとしていて。
 それを払うように「それでさ」と話を戻す。


(,,゚Д゚)「『魅力』には鬼が一匹いるって話をしたけど、鬼っていうのは神とほぼ同義なんだよね」

ミセ*゚ー゚)リ「?」

( -∀-)「まー、『吸血鬼』とかの鬼は化物って意味だけどな」


 『鬼』という言葉には大きく分けて二つの意味で使われているらしい。
 一つ目が「化物」として。
 もう一つが「姿の見えない何か」として。

 この場合の『鬼』は後者の方、姿の見えない神様と同じ意味だとギコさんは説明する。

118名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:10:07 ID:otC/LjQw0

(,,-Д-)「で、『荒魂』と『和魂』っていうのが、あってさ。それがちょうど鬼と神の使い分けに似てるんだ」


 荒魂は天変地異を起こす荒々しい側面。
 和魂は人に加護を与える平和的な側面。
 神霊の持つ二つの性質。

 そして多くの場合、人間にとって都合の良い存在のことを『神』と呼び、逆に都合の悪い存在のことを『鬼』と呼んだ。


ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ……この石は、アラタマ?」

( -∀-)「まーな。そういう場合はどうするかって言うとな」


 ポケットから可愛らしいビニールに包まれたクッキーを出し、それを祠の中に置く。


( ・∀・)「……お供え物をするんだ」

(,,-Д-)「社を作って、お祭りをして……『私達と仲良くしてください』ってお願いするの」

ミセ*゚ -゚)リ「そうなんだ」

119名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:11:05 ID:otC/LjQw0

 お願いしただけで仲良くしてくれる人なんてそんなにいないんじゃない? と私が言うと、モララーさんが否定した。
 「そんなことはねーよ」と。
 曰く、


( ・∀・)「神様ってのは強過ぎるから話が通じづらいだけで、話せば分かってくれるんだよ」


 ……らしい。

 強過ぎるから話が通じない。
 強いことは不便なんだ、なんて。 


ミセ*゚ー゚)リ「……でも、九尾は悪い妖怪じゃないんですか? 人を襲う」

(,,-Д-)「そうだね。お世辞にも善良だったとは言えないよ」

ミセ*゚ -゚)リ「だったら……」

(,,゚Д゚)「『あのまま滅ぼしちゃえば良かったのに』って?」


 そこまでは――言わないけれど。

120名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:12:08 ID:otC/LjQw0

 あんな姿を見て、そんな厳しいことは私には言えない。
 たとえそれがどんなに正しいことだとしても。

 それは正しいだけで。
 少しも、善くはないのだから。
 優しくはないのだから。

 "If I wasn't hard, I wouldn't be alive. If I couldn't ever be gentle, I wouldn't deserve to be alive"――ということだ。


(,,-Д-)「確かに彼女は悪い妖怪だったよ。……でも、その罪はもう償われているから」


 追われて、嬲られて、殺されて。
 やっとのことで現界を続けてみれば依り代を壊され。
 死にたくないと縋った思いは断ち切られた。

 何度も。
 幾度と無く。


( -∀-)「罪を償った奴はもう罪人じゃねーんだってさ。だからコイツは祠を作ってやった」

(,,^Д^)「死ぬってことがどういうことか分かってる人は……そうそう、誰かを傷つけたりはしないからさ」

121名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:13:10 ID:otC/LjQw0

 ギコさんは拝む真似をしてみせて、そう言い笑った。

 九尾の今までがどうであれ。
 彼女の罪状がなんであれ。
 あの時「死にたくない」と懇願した気持ちだけは確かな真実だと思うから、と。


ミセ*゚ー゚)リ「……なんだか難しい話ですね」


 私の呟きに「難しいとも」と答えたのはモララーさんだった。


( -∀-)「なんでもできる奴っていうのは、常に『何をしないか』という選択をしなくちゃいけないから」

ミセ*゚ -゚)リ「何をするか、じゃなく?」

( ・∀・)「おうよ。できないものが何もないってことは、『何をしないか』をずっと考えないといけないってことなんだ。それは思いの外、大変だぜ?」


 だから、強いってことは難しい。

 彼女だってあんなに強く生まれたりしなければ。
 些細な生活と本当の愛があるだけで生きていける矮小な存在だったなら、あんなに苦しまずに済んだだろうに。

122名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:14:17 ID:otC/LjQw0

 ……祠の中に納まった彼女はもう喋ることはない。
 そこにあるのはただの石。
 ここらでは見かけない、白くてゴツゴツした岩石に過ぎない。

 でもきっといつか、近いうちに姿を現せるようになるだろうとギコさんは言った。
 だからたまにはお参りしてあげてね、と。

 その時には――そうだな。


ミセ*-ー-)リ「どんな人生を送ってきたのか、人を本気で愛すってことがどういうことなのかでも……訊いてみようかな」


 次の古文の単元は源氏物語だという。
 単元は「葵の上」だ。
 男と、女と、愛と、憎しみと、呪いや妖しや様々なものが混ざり合った色を出す平安時代の作品だ。

 それが始まるまでには私と話せるようになって色々なことを話して欲しいな――なんて。
 私はふと、思ったのだった。

123名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:15:15 ID:otC/LjQw0
【―― 6 ――】※閲覧注意


 どくん、どくんと打つ心音。
 荒い呼吸音。
 ぴちゃぴちゃと鳴る水音。
 また息を吐く音。
 それらは全て私自身が生み出した音なのに、人里離れたこの場所、何も聞こえない夜半においてはどうしようもないほどに遠かった。


(#// -/)「……ふ、はぁ……っ……」


 私の寝室。
 私が普段使っている勉強机。
 そして、椅子。
 
 浅く腰掛けているのは私のご主人様で……今は「恋人」と言って構わない間柄の相手だ。

 彼の前に跪いている私は、愛しい彼の肉茎を舌と手を使って愛撫していた。
 屹立したそれは火傷しそうなほどの熱を持ち、熱量が伝わったかのように私の四肢も否応なく火照っている。


(#// -/)「ふぅ……ん。……ん、……っく」

124名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:16:23 ID:otC/LjQw0

 固い先端に、舌を這わせる。
 ちろちろと鈴口の部分を口付けながら、私の唾液で濡れた肉茎を扱く。

 あの、特徴的な匂いが、する。
 淫靡で淫らな。
 私の本性を――人間の雌としての情欲と人ならざる妖としての衝動を刺激する、いやらしい匂い。


( *-Д-)「……今日はごめんね、でぃちゃん」

(#// -/)「ん……っ!」


 ご主人様が申し訳なさそうに頭を撫でた。
 謝罪として髪を優しく無ぜ、そこに生えた猫の耳、その形をなぞるように指を動かす。
 くすぐったいような、もっとやって欲しいような感覚。

 そんな他愛もない親愛表現にも敏感になった身体は正直に反応し秘部を濡らす。
 いやらしいのは他の誰でもなく……私だ。

 肌蹴た制服、スカートが邪魔だという風に顕現している尻尾が揺れる。

125名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:17:05 ID:otC/LjQw0

(#// -/)「…………別にいいのです」


 それだけ告げて顔を伏せた。
 付き合って何年経ってもこういう姿を見られるのは恥ずかしい。

 恥ずかしくて。
 じくじくして。
 ……気持ち良かった。

 身体中が熱くなって、頭がとろけて、もっと気持ち良く――壊して欲しくなる。


(#// -/)「んっ……ッ! んぅ……」


 左手を下着の中に入れようとした時に視界が少し、動いた。
 視界の端に映る姿見には私と彼が映る。

 だらしなく口の端から涎を垂らしながら恋人の男性器を味わう少女。
 目は虚ろ、快楽に溺れている淫らな姿。
 その頭には人間ではありえぬ猫の耳があり下半身では猫の尻尾が嬉しそうにゆらゆら揺れている。

126名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:18:12 ID:otC/LjQw0

 ブラウスのボタンはほとんど外れていて、豊満とは言えないながらもそれなりの大きさの胸は口から垂れた涎で濡れて。
 スカートの中に入った左手は自らの生殖器を刺激している。
 ……単なる淫魔としての吸精の為ならば自身が快楽を得る必要は何処にもないというのに。


 そうだ。
 私は。
 私はあの時、クラスメイトに見られて興奮し――悦んだのだ。

 責められるはずがない。
 こんな無様な姿を晒している私が。
 雌が。

 そして、私は今も。
 鏡に映ったはしたない自分の姿を見、痺れるような刺激を感じている―――。


(#// -/)「ふぅん……。は、むッ――」

( * Д)「ふぁっ……!?」


 首を伸ばし、露出した亀頭を上から咥え込んだ。
 右手をついて、雁首を唇で刺激するようにしながら出し入れを繰り返す。

127名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:19:06 ID:otC/LjQw0

 ……可愛い声。

 舌の付け根辺りまで押し込んで、出して。
 それを何度も繰り返す。
 息が詰まって、苦しくて、大粒の涙が零れた。


( * Д)「…………苦しいなら、無理にしなくていいよ……?」

(#// -/)「んっ……っぐ、ん……」
 

 ……優しい言葉。

 でも、嫌だ。
 私はもっと苦しく、気持ち良くなりたい。

 自らのはしたない部分を刺激していた左手を出す。
 そうしてから両手で彼の腰を掴んで、角度を調節した後――思い切り、くわえ込んだ。
 一番奥……喉元まで、いくように。

128名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:20:10 ID:otC/LjQw0

( * Д)「う、くっ――だから、それやっちゃ駄目だって…………っ!!」

(#// -/)「ふっ、んっ! ふぐぅぅぅうッ! うぅっ……!」


 静止の言葉も聞かずそのまま首を前後させる。

 喉が膨らむ。
 強烈な異物感と嘔吐感。

 それは、どうしようもないくらい、私の好きな感覚で……。

 腔内を犯される。
 彼を感じる。
 喉も、内蔵も身体の中を直接全部犯される。

 ご主人様のモノに――なる。

129名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:21:05 ID:otC/LjQw0

 ビクリ、と震えた。
 彼の身体が、肉茎が、全部震えた。


( * Д)「うぁ…………!」

(#// -/)「んぐぅっ……!!」


 射精が始まる。

 押しこまれた男性器は私の食道を叩くように精液を吐き出し、胃を犯していく。
 どくり、どくりと。

 熱く粘る精子が。
 私の内側を直接犯して。
 飲み込まれて。

 どくり、どくりどくりと―――。


( *-Д-)「……本当に、もう……」

(#// -/)「…………げほっ、こほっ。んっ……」

130名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:22:04 ID:otC/LjQw0

 射精が終わって、二度三度咳を繰り返しながら精液を飲み込む私をご主人様が撫でた。
 「危ないからしちゃ駄目って言ってるのに」とか、なんとか。
 この人はいつまで経っても私の心配ばかりだ。自分でやっているんだから危ないはずがないだろうに。

 いや危ないかもしれないけど、でも。
 私はこういうのが……好きだから。


( * Д)「今日は大したことなかったし、一回分くらいでいいよね」

(#// -/)「…………」

( *-Д-)「んじゃ、俺はもう行くから……って、」


 衣服を直そうとしたご主人様を掴んで引き止める。

 不思議そうな顔をする彼に向けて。
 私の精一杯の魅力を込めた、おねだりを。


(#// -/)「まだ全然……足りないのです」

131名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:23:13 ID:otC/LjQw0

 こんなところで終わられたんじゃ、欲求不満もいいところだ――だから。



(#// -/)「今晩も…………よろしくお願いします」



 だらしなく、はしたない姿ながら座礼をし懇願する。

 いつも通りな行為の続き。
 疼く心と火照る身体をどうにかしてくださいと、恥も見聞もなく私は乞う。


( *-Д-)「……ああ、もう」


 仕方ないなあ、なんて言いながらもご主人様も乗り気ではあったようで、私を抱え上げてベッドに寝かせた。
 いつの間にか力持ちになったなあと思い、しょっちゅうこんな調子なんだから仕方ないかとも思う。

 続いて上ってきた彼に私は言った。


(#// -/)「……愛しています、ご主人様」

132名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:24:06 ID:otC/LjQw0

 一度私にキスをした後でご主人様は囁いた。


( *-Д-)「ありがとう。俺も……好きだよ」


 明日の家事当番は私だとか。
 明日も学校だとか。
 しかもまだ予習が少し残っているから早めに登校しないと、とか。
 昨日あったこととか。
 今日あったこととか。
 過去の傷とか。
 未来の咎とか。

 この瞬間だけは。
 だから、今だけは。


 かつての彼女がそうであったように、私達も全てを忘れて。
 傷を舐め合うように。
 弱さを補い合うように。

 愛し合うことにしようか―――。

133名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:25:14 ID:otC/LjQw0
【―― 0 ――】


「―――結局ね、名前も弱さも意味合いとしては同じなんだと思うよ」


 窓辺に立つ会長は何処か遠くを見る目でそう言った。
 一体何処を見ているんだろう。

 会長は場所を知らないはずだから、まさかあの祠じゃないだろうし……。


「誰かと繋がる為の何か。それがなければ人間関係は不便なものになっちゃうんだろうね」


 あるいは人外もかも、とまた笑う。
 たった一人の生徒会――『一人生徒会』。


「……そう言えばさ、その神様の『諱(いみな)』や『真名』はどうなったの?」

ミセ*゚ー゚)リ「ふぇ? あぁ、はい……」

134名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:26:15 ID:otC/LjQw0

 それはギコさんからのお願い、神に成ったという証明としての名――和魂としての九尾の狐の名として確かに決めたけれど、会長には話していないはずだ。
 本筋にはあまり関係ないことだし……どちらかと言えば後日談になるから。

 訝しむ私も知らぬ風な会長に、私は少し悩んでその名を言った。


ミセ*゚ー゚)リ「『水橋九重姫』にしました」


 玉藻前の昔の名前である「藻女(みずくめ)」と、関係性が強くなるから危ないと言われたけれど私の苗字から一字。
 私の好きな妖怪から一字取って。
 水の橋と書いて“みはし”と読んで、そこに九つという数と都に関連した「九重」をつけて。

 『水橋九重姫』。
 新しく生まれた神様の名前。


 可愛い名前だね、と会長は言った。
 正直自分でもそう思う。

135名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:27:22 ID:otC/LjQw0

「まあ、神様だからあんまり気安く呼ばないようにね。名前自体に意味はないけど、それでも『諱』だから」

ミセ*゚ー゚)リ「それについては他の名前をつけることにしました」


 彼女の神様としての名は『水橋九重姫』。
 でも、呼ばれる為の名前。

 誰かと繋がる為の呼び名は―――。



ミセ*^ー^)リ「――――私の恩人の名前から、ペニちゃん」






【――――そこまで。第二問、終わり】

136名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:28:44 ID:otC/LjQw0


 「永らへば このうき世こそ 悲しけれ」


【歌意】
生き長らえたならば、このような儚く辛い無情の世は本当にもの悲しい気持ちになることだよ。
(遠回しに「こんな悲しい気持ちになるなら長生きなんてしない方が良い」という意味にも取れる)

【語法文法】
『永らへ』はハ行下二段活用の「ながらふ(永らふ・存ふ)」の未然形か終止形。
ここでは次に接続助詞『ば』が来ているので未然形。この『ば』は未然形か已然形にしか付かない。
未然形接続と已然形接続で意味が変わり、未然形に接続した場合は順接仮定条件「〜たらば、〜ならば」という風に訳す。
『この』は古文では「此の」。現代語では連体詞だが古文では代名詞の「此」に格助詞の「の」が加わったものである。
「このような」「あの」「それ以来(ずっと)」という風に訳せるが、ここでは現代と同じ感じで訳した。
次の『うき世』は掛詞で、「憂き世」と「浮き世」の二重に意味がある。「散ればこそ いとど桜は めでたけれ うき世に何か 久しかるべき」と同じ。
それに続く『こそ』は係り結びを作る係助詞。この場合は強意を表し、已然形で結ぶ。
『悲し』は形容詞シク活用の「かなし」の已然形。本来は終止形になるべき部分だが係り結びの法則により已然形に変化している。
「かなし」はこの場合「悲しく思う」だが「愛し」の場合は「愛おしい」「心が打たれる」ような意味になるので平仮名の場合は判別する必要がある。

【特記】
参考にした歌は「ながらへば またこの頃や しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき」という藤原清輔朝臣の一首。
及び、「月見れば 千々にものこそ 悲しけれ わが身一つの 秋にはあらねど」。
ちなみにこの歌では『永らへば』という風に順接仮定条件を使っているので単純に「今まで生き長らえてきて私は悲しい」ということではない。
「ここまで生きた私は悲しい、そしてあなたも生き続けたならばきっとこの世を悲しく思うことだろう」のような自分以外の誰かを意識した歌である。
幾度となく傷付き、何度となく後悔するでしょう――それでもあなたは生き続けますか?

137名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:30:30 ID:otC/LjQw0

プロットを再検討したところ十三話になり、「これ来年の四月までに終わらねーじゃん!!」と気付く。
そういうわけで一話二話はアニメ的に言えば初回一時間スペシャルです。

まあエロがテーマなのに一話で閲覧注意シーンがなかったので、これで良いかなーと思います。




色々な意味で勉強になる作品を目指しているのでオマケとして後日用語説明を投下します。
賢者タイムの冷静な頭で妖怪のお勉強をしましょう。

138名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:56:01 ID:fEumNbPI0


139名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 02:57:00 ID:fEumNbPI0

続き待ってる。

140名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 18:51:52 ID:SH.OwpcY0
テーマがエロ……だと……

141名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 20:56:17 ID:otC/LjQw0



 第一問&第二問。
 模範解答。





.

142名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 20:57:14 ID:otC/LjQw0

・《尾裂狐(オサキ)》
 関東の一部の山林で俗信が行われている狐の憑き物。
 管狐などと同じく、それに憑かれた人間は発熱、精神異常、大食、奇行などが現れるとされ、また管狐と同じく主を裕福にするとされる。
 ただあくまで使い魔のように“使役する”印象が強い管狐と違い尾裂狐は所有者の意思が関係なく、そもそも人ではなく家に憑く存在と伝わっている。
 家筋に憑いた尾裂狐は滅多に離れることがなく故にオサキ持ち同士で婚姻していたらしい。

 語源には様々な説があるが、最も有名なものでは九尾の狐が殺生石に化けた後、その破片が上野国(群馬県)に飛来し尾裂狐になったという伝承。
 九尾の狐の尾が別れて生まれたものであるから「尾裂き」と呼ばれるようになった、というような話がある。

 ちなみに関東の中で唯一東京には尾裂狐の伝承が伝わっていない。
 それは江戸には関東八州のキツネの親分である王子稲荷神社、「お稲荷様」である『御饌津神(みけつのかみ)』が住む場所があるため。
 尾裂狐他、お稲荷様以外の妖狐は大晦日、王子稲荷の狐火の日(関東全域の狐の妖怪が官位を求めて参殿する行事)以外では東京に入って来れないからだ。
 日本の狐の人外の多様さ及びその階級の多さを象徴する話の一つである。

143名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 20:58:37 ID:otC/LjQw0

・《妖狐》
 狐の妖怪全般を指す語。
 一般的に妖力が高くなればなるほど尾の数が増え、最終形である九本の尻尾を持つ妖狐を『九尾の狐』と呼ぶ。

 ちなみに狐が妖狐になるまでに四百年、妖狐が九尾になるまでに四千年かかるという話もある。
 妖狐は大きく二つ、善行を成す『善狐』と悪行を成す『悪狐』に分けられるとされ、尻尾が多くなるのは主に悪狐。
 善狐は逆に尻尾が少なくなるという言い伝えもある。
 それは神格を上げていくとたとえ狐であっても神に近づくとされていたため、高い神性を持つ妖狐はそもそも狐の姿をしている意味がないかららしい。

 フィクションに出てくる多くの九尾の狐は『天狐』か『空狐』という中国神話の分類ならばかなり位の高い狐の妖怪である。
 『周書』や『太平広記』と言った書物では九尾の狐は瑞獣や神獣と記されている。

 最後の補足として、冗談みたいな話だがそもそも「キツネ」という言葉自体が妖狐が由来になっているという説もある。
 『日本霊異記』にこんな話がある。ある男がある時美女に出会い、結ばれて子を成す。
 だが実は彼女は獣の化けた姿で最終的には女は正体を知られたのでと山に帰ってしまう。
 だが男は狐に向かい「汝、我を忘れたか。子まで成せし仲ではないか、来つ寝」とあくまで自らの女房であると主張する。

 そういった経緯があり、以降その獣のことを「来つ寝」から『キツネ』と呼ぶようになった。
 ……みたいな、本当に冗談のような、あるいはエロゲみたいなハートフルストーリーも残っている。

144名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 20:59:22 ID:otC/LjQw0

・《白面金毛九尾の狐》
 日本三大悪妖怪の一角にして、最強の妖狐とされる九尾の狐。
 金色の体毛と陶磁のように白い肌、九本の尾、そして国を傾けるほどに美しい絶世の美貌を持つ。

 説話、特に後年の能や浄瑠璃などでは中国ので悪女と名高い南天竺の華陽夫人、殷の妲己、周の褒ジと日本の玉藻前を同一とする見方が多い。
 ただし妲己は人を焼き殺して笑い転げる美女で褒ジは笑わない美女なのでキャラが全く違う。
 件の玉藻前は優しい美少女だったと伝わっている。

 フィクションでは主に強力な妖力を持つ最後の敵として登場するが、一部では孤独を恐れて愛を求めた美女という考察も存在している。
 彼女がどの程度の妖力を持っていたかについては平安時代、天皇側の八万の軍勢と互角以上に渡り合ったエピソードが最も分かりやすい。
 最終的には将軍・三浦介義明、千葉介常胤、上総介広常と陰陽師・安部泰成等によって討伐されるが、以降も殺生石に姿を変え人々を苦しめ続けた。

 「玉藻前」はあくまで御伽話の登場人物だが、モチーフとなったのは鳥羽上皇に寵愛された皇后美福門院(藤原得子)とされている。
 名門出身ではない藤原得子が天皇に愛され、保元の乱を引き起こし、遂には武家政権樹立のキッカケを作ったことは当時の人々にとっては衝撃だったのだろう。


・《殺生石》
 玉藻前が殺された後になったという溶岩石。能や浄瑠璃で有名。
 曹洞宗の僧である玄翁和尚によって破壊されるまで瘴気を撒き散らし人を呪い、退治に訪れた者さえ殺し続けた。
 破壊された後は日本各地に散らばったとされている。

 実物は栃木県那須町の那須湯本温泉付近にあり、現在では観光地になっている。
 当然瘴気などは出ておらず、人も動物も呪い殺されない。
 ただ伝承の元となった硫化水素、亜硫酸ガスなどは絶えず噴出しているので深く吸い込むと当然死ぬ。

145名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 21:00:08 ID:otC/LjQw0

・《猫又》
 おそらくは最も日本で有名な妖怪。猫が化けたものである『化け猫』との区別は曖昧。
 文献上に初めて登場したのは鎌倉時代、かの有名な随筆『徒然草』や藤原定家による『明月記』に人を喰らう猫の化物の話が登場する。
 「山に住み人より大きく獣を喰らう」など、それは猫ではなく虎ではないかと思ってしまうような記述も存在している。
 猫又の特性や習性はかなり多岐に渡るので省略するが、人の血肉、精気や精液を食らうという点はどれも共通する。

 猫又と言えば三味線だが、これは「三味線にされた同属を悼む歌を歌っている」らしい。
 ちなみに遊女の格好をしていることが多いのは江戸時代に流行った『化猫遊女』というキャラクターの影響。
 行灯の油を舐めるイメージは当時の猫の餌では油分を補給できなかったので魚油が用いられる行灯の油を舐めていたからだそう。


・《半妖》
 サブカルチャーなどではお馴染み、人間と妖怪のハーフのこと。
 が、そもそも『半妖』という言葉自体が近世に使われ出したものなので古典にはほとんど登場しない。
 『半妖』という言葉を広まったのは高橋留美子の某作品が大きいとされる。

 ただ人間と妖怪のハーフ自体は昔からかなり多く、雪女、妖狐や猫又などがよく産んでいる。
 大抵の場合、強大な力を有している風に描かれる『半妖』だが、おそらくそれは白狐を親に持つ安倍晴明や竜神が親の金太郎の影響であろう。

146名も無きAAのようです:2013/04/19(金) 21:01:08 ID:otC/LjQw0

・《呪禁(じゅごん)》
 呪術の一種。呪文や太刀・杖刀を用いて邪気や獣類を制圧して害を退けるものとされる。
 道教に由来する術、つまり道術の一種でまた陰陽道にも取り入れられている。
 中でも『持禁(じきん)』と呼ばれるものは対象の気を禁じることで怨鬼や鬼神の侵害を防ぎ、身体を固めることで災害を防止していたらしい。

 律令制の時代には典薬寮(宮内における医療部署)に「呪禁博士」及び「呪禁師」という名の職種が設置されていた。 
 が、しかし早い時代にそれらは衰退していき、疫病を防ぐ役目は陰陽術士に引き継がれることになった。

 呪禁をメインに据えた魔術体系を『呪禁道』と呼び、中でも札を用いた術式を『禁呪』と呼ぶ。
 有名な術なので「地獄堂霊界通信」など妖怪や魔法をテーマにした作品でたまに登場する。


・《諱(いみな)》
 人名の一要素、「字(あざな)」とは違う人の本名のこと。
 ほぼ『真名』と同じ意味合いを持つものの、諱は死後にしか使われない。
 漢字圏では実名敬避俗という風習があり、諱で人を呼ぶことによってその人の霊的存在を支配することができるとされていた。
 皇族における避諱や死者への諡(おくりな)といった風習はここにルーツと持つ。

 分かりやすいところで言えば「夏目友人帳」の『友人帳』とは妖怪達の名を奪ったもの=力を封じたもの。
 また「千と千尋の神隠し」では名を取られた主人公が自分が何者であるかを忘れていく描写があるが、これも諱の風習が関係していると言えよう。

147名も無きAAのようです:2013/04/20(土) 10:05:35 ID:3divlm4Q0
興奮しない 
気持ち悪いエロシーンだなぁ

148名も無きAAのようです:2013/04/20(土) 12:55:49 ID:AvBmDijE0
        ∧_∧ ハァハァ シコ   ( ´Д`/"lヽ      /´   ( ,人) シコ  (  ) ゚  ゚|  |    < とか言いつつ、下はこんな事になってまつw      \ \__, |  ⊂llll        \_つ ⊂llll        (  ノ  ノ        | (__人_) \        |   |   \ ヽ

149名も無きAAのようです:2013/04/20(土) 18:28:38 ID:.8j5gbCg0
>>148

AV乙

150名も無きAAのようです:2013/04/20(土) 19:06:25 ID:rmqO2qGA0
マジ乙です
続きまっとる

151名も無きAAのようです:2013/04/21(日) 09:34:56 ID:kGwIQ1V20
ふええ、先生の初めて読んだのにおもしろいよぉ……

152名も無きAAのようです:2013/04/21(日) 17:05:06 ID:DNFeP3IY0
乙乙
でぃちゃん変態だな、続き期待

153名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:40:52 ID:RqAuxQOc0




ミセ*゚ー゚)リ 怪異の由々しき問題集のようです



※この作品には性的な描写が(たまに)出てきます。
※この作品は『天使と悪魔と人間と、』他幾つかの作品と世界観を共有しています。
※この作品は推理小説っぽいですが、単なる娯楽作品です。
※この作品はフィクションです。実在の逸話を下敷きにした記述が存在しますが現実とは一切関係ありません。





.

154名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:42:03 ID:RqAuxQOc0




 第三問。
 線引き問題編。

 「カントールの楽園」





.

155名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:43:05 ID:RqAuxQOc0




 今は斯く さみだるるのみ 藤葛





156名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:44:05 ID:RqAuxQOc0
【―― 0 ――】


「―――ラマヌジャンを知ってるかな? 知らない? ガロアさんは? D・D・パーマーは? 流石にメンデルは知ってるよね?」


 最後に彼女は、唐突にそんなことを言った。

 聞き覚えのない名前が多いが、メンデルを知っているか知っていないかと問われれば勿論知っている。
 グレゴール・ヨハン・メンデルはエンドウマメの勾配実験を元に遺伝の法則を発見した司祭さんだ。


(#゚;;-゚)「……それが今回の件と何か関係があるのですか?」

「直接的な関係はないよ。思い出しただけ」


 そう返して彼女はまた知ったように笑う。
 かつてと同じく凄惨な笑みを浮かべることも多いものの、今はもう、こういうイタズラっぽい笑顔をすることの方が多い。
 少しだけ変わった、けれど普通の少女のように。

 『一人生徒会』と呼ばれる彼女。
 この学校の生徒会長。
 今の彼女は、かつての私が憧れた人がそうであったようにこの学校を守っている。 
 燃え盛る太陽のような輝きと激しさを携えて。

157名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:45:04 ID:RqAuxQOc0

 彼女自身はどう思っているのか、少しだけ気になった。


「社会は正しい、科学は正しい、正義は正しい……。当たり前のように人間はそう主張するケド、それは本当にそうなのかな?」


 その言葉で彼女の言わんとすることが分かった。
 正しいこととそうでないことの境界線。

 彼女は続ける。


「それはきっと逆なんだよ。そしてそのことを錯覚した瞬間から輝かしい『正しさ』は空虚で無様なものに成り果てる」


 そうだ。

 社会は正しいのではなく――正しさを求めているだけ。
 科学は正しいのではなく――正しさを考えているだけ。
 正義は正しいのではなく――正しさを信じているだけ。

 それは、それだけのことなのに。
 どうしてか人間は間違いと勘違いを繰り返す。

158名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:46:04 ID:RqAuxQOc0

 ねえ、と彼女は問い掛ける。


「君は――正しいのかな?」

(# ;;-)「いいえ。私は正しくなんてありません、正しくなんてないのです」

「じゃあ君は、君達は――正しくありたいの?」


 それは……どうだろうか。
 私の一存では答えることができない問いだ。
 けれど。

 私の思いを、しいて言うならば―――。



(#゚;;-゚)「私は正しくないかもしれません。……ですが、正しくなくても良いので、誰かに優しく出来れば、助けてあげられれば良いと思います」



 そっか、と彼女は笑った。
 その笑みはあの凄惨な血塗れの哄笑ではなく慈しむような微笑みだった。

159名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:47:08 ID:RqAuxQOc0
【―― 2 ――】※閲覧注意


 薄暗い部屋の中で自分の鼓動と彼の吐息が頭に響く。

 もっとしっかり抱き着こうと腰を動かすと甘い刺激が感覚を蕩けさせていく。
 馬鹿みたいに勃起して反り返った肉茎が私の一番奥深く、子宮口の部分を擦って快楽を与えてくる。


「あっ……ん、っ……! はぁ……ぁ、きもちい……」


 不定期に、ゆっくりと、小刻みに。
 女の子の一番奥深くて一番大事な部分を弄られて私は小さく喘ぐ。
 耐えようとしても、喘ぎ声を出してしまう。

 気分を盛り上がらせる為の演技とかではなく。
 ただ単純に、気持ち良くて。


「ん、あ……あっ……! ひっ、ん……」


 女子は皆ガンガン突かれるのが好きだと勘違いしている男子がいるけど、実際はそうじゃない。
 少なくとも私はバックで責められる以外にも、こーゆー風に好きな男の子の上に跨って、抱き合って指を絡めて……じっくりと愉しむのも大好きだ。

160名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:48:08 ID:RqAuxQOc0

「あっ……ぁ、っん……。あぁ……っ……」


 イクちょっと前くらいの快感がジワジワとずっと続いて。
 身体の中で、男の子の大事な部分が脈動してて、その音が身体中に響いて。
 触れ合った部分から熱が伝わって交換して。

 そういう様々なことが気持ち良い。
 騎乗位で腰振ってる時も思っちゃうけど、本当にずっとこうしてたいくらいに気持ち良い……!


「はぁぁ……んっ、ぁ……」

「……ミセリ」

「…………何?」


 耳元で彼の声がする。
 それと同時に彼がちょっと動く。

 そんな些細な刺激の全部が気持ち良くて、また声が漏れる。

161名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:49:05 ID:RqAuxQOc0

「そろそろ出したい。あと胸触りたい」

「……んっ。さっき口でヌいてあげたしっ……。その後散々……ぁ、揉んでたじゃん……」

「あれは前戯だろうが」

「あんなに気持ち良さそうにしてた癖に? どろどろのやつ、びゅるびゅる口の中に出しちゃってさ」


 ビクン、と私のお腹の中のモノが膨らんだ気がする。
 彼は女の子が淫語言う様が大好きな変態だ。

 ……私も割と好きだけど。


「それとこれとは違うんだよ――ほらっ!」

「あ、ちょっと――ひっ、いあぁっ! やっ!もうっ! あっ、あっ、あぁぁ……っ!!」


 言葉と同時に彼が腰を突き上げて、それだけで私は反論できなくなる。
 卑猥な水音が響く。
 下から子宮が突き上げられて、膣の気持ち良い部分が剃られて、お腹の中を掻き回されてグチャグチャにされる。

162名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:50:03 ID:RqAuxQOc0

 快楽には相当な耐性のある私も予期せぬ攻撃に身体の力が全部抜けてしまう。
 もう気持ち良ければなんでもいいと、そんなことを言ってしまいそうになる。


「あっ、あっ、もうっ……んっ! 駄目だってぇっ! ひぃ、ん……!」

「ああもう――お前エロ過ぎだし無理!!」


 ……こういう時、男の子はズルい。

 我慢できなくなった彼が私の腰に手を回して持ち上げる。
 身体の重みで肉茎が更に深くまで刺さり、子宮口が押し込まれる。
 痺れるような暴力的な快感。


「あぁぁっ!! あっ、ぐうぅッ……!」


 そのまま彼は私をベッドに横たえる。
 対面座位から、正常位。

 どちらもが一番好きな体位だ。

163名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:51:06 ID:RqAuxQOc0

「ミセリ……。くそ、こういう時のお前はホントに可愛いな……っ!」

「いつも可愛い、でしょ…………やっ! ん、あぁっ!」


 そうして彼は大好きな私のおっぱいを撫で、揉み、舐め、噛み……。
 ゆっくりと愉しみ、それによって私の身体はじんじんと熱を帯びていく。

 味を、匂いを、触感を、私の声を。
 全部を堪能している。
 そうやって刺激が与えられる度に私は彼のモノを締め付けてしまって。
 まるで精液が欲しいとおねだりしているようで……我ながら凄く、いやらしい。

 一通り愉しみ終わった彼が、私の両乳首を指先でコリコリと刺激しつつ、訊いてくる。


「あっ、あっ、あぁっ……! それ好きなのッ、知ってる癖に……っ!ああッ!」

「知ってるからやってんだよ」

「もう……ばかぁ……っ」


 多分今自分滅茶苦茶エロい顔してるだろうなーと思いつつ、快楽に身を委ねる。

164名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:52:09 ID:RqAuxQOc0

「……なあ」

「んっ、なに……?」

「中に出したい。久々だし、出したい」


 出させても何も。
 元々私はそのつもりだったんだけど……わざわざ訊いてくれたのなら何かおねだりでもしてみようかな。
 いや、えっちぃ意味ではなくて。


「んー……んっ、じゃあね……。最近退屈だし、何か面白い話教えてくれたら、いいよ……?」

「面白い話? ……『絶対当たる占い師』の話とか?」


 え? 


ミセ*//-/)リ「『絶対当たる占い師』……?」

165名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:53:04 ID:RqAuxQOc0
【―― 3 ――】


 というわけで、駅前にやって来た。

 我ながら単純だと思うけど、このドキリワクワクマジカルフォースな心を誰が止めることができるだろうか、いやロマンチックが如く誰も止められない。
 反語及び直喩表現。


ミセ*゚ー゚)リ「えっと……どういう人だって言ってたっけ。帽子被った白髭のお爺さんだっけ? 美味しいオムライスの店からちょっと行ったところだよね?」


 このVIP州西部は別に都会ってわけじゃないけど、そこまで田舎というわけでもない。
 学校の周りは教育的影響を考えたのか建物も控えめだが、そこから少し先、この駅前の繁華街まで足を伸ばせば十分賑やかだ。
 VIP州中央(帝都)のような大都会も好きだけど私はこういう「そこそこ」な地方都市も好きだった。
 まあ、ここが私の生まれ育った場所だから、という理由も大きいのだろうけど。

 ……何が言いたいかと言えば、占い師一人探すのは都心部じゃなくても十分大変だってことだ。
 やれやれだぜ、"Give me a break"。

 何かヒントはないものかと雑踏を見つめ立ち尽くす。


ミセ*-3-)リ「考えるよりに先に行動かなぁ。それっぽい白い髭のお爺さんに片っ端から声を掛けていくしかないか」

166名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:54:04 ID:RqAuxQOc0

 無茶苦茶頭の悪い方法だが「大体は繁華街にいる」という噂が正しいなら夕方までには見つかるだろう。
 明日は月曜だけど、午前中の出席日数には余裕があるから多少帰るのが遅くなっても別にいいし。

 そう考えてふらふらと他人だらけの街を歩き出す。


ミセ*゚ー゚)リ「(露天はたまにあるけど、占いは見かけないなぁ。ブームが下火になったのかな?)」


 女子の多くは占いが大好きだ。
 けど、その女子達も最近は社会進出が進み、インテリな理系女子も増えてきたので占いなんて怪しげなものに興味のない子が増えたのかもしれない。

 私はもう、そういった諸々のモノ――迷信や妖怪や魔法が実在すると知っているけれど。
 でもやはり世に溢れるオカルトは大半が作り話や勘違いなんだろう。
 幽霊も正体見たりなんとやら、というやつだ。

 杯中の蛇影、疑心暗鬼、踏んだ蛙は茄子なのだ。
 "One always proclaims the wolf bigger than himself"。


ミセ*^ー^)リ「〜〜♪」


 鼻歌混じりで春は短し歩けよ乙女。

167名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:55:09 ID:RqAuxQOc0

 選曲はSty●ipS。
 歩みを進める。
 服装は最近買ったばかりのキャミソールにお気に入りのローライズ、ポシェットには元カレに貰った名前入りのアクセサリー(割と高い)。

 ガラスに移った自分の姿は読者モデル以上に決まってる。
 今日も私はとても可愛い。

 一歩一歩踏み出す度にポイントカットされたセミショートの髪が揺れる。
 小振りなヒップに、容易く挟め手に乗るサイズの胸、均整の取れたラインが出る服を着ても全然問題のない体型。
 明るい笑顔に軽やかな雰囲気。
 全く、我ながら困ったほどの美少女だぜ。

 そうしてナンパを軽く躱し、通りを右へと曲がる。


ミセ*^ー^)リ「(いや改めて考えると私ってアレだよね最強だよね、美少女だよねぇ。可愛いし胸大きいし頭は良いしセックス上手いし)」


 心の中で自画自賛。
 だが事実だ。
 なのでなんら恥じるべき部分はない!

 あの天使みたいに蠱惑的な会長とかお淑やかなでぃちゃんとかとは違うかもしれないけど、私も可愛い。
 うむ。

168名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:56:12 ID:RqAuxQOc0

 ……あと三十分くらいでさっさと切り上げて服でも見に行こうかな。

 今でも十分可愛いけど私はようやく登り始めたばかりなのだ、この果てしなく遠い女坂を……!
 一流の女子力を更に向上させるべくそう考え始めた、


 ―――まさに、その時だった。



「……オジョウサーン」



 唐突に耳朶を叩いた声に振り返る。
 引き戻された。
 自画自賛が行き過ぎて乖離していた精神が街を行く私の身体に戻ってくる。

 その人は、私の右斜め後ろに座っていた。
 広い歩道の一角、市街並木を囲む煉瓦の上に腰掛けたその人は――茶のソフトフェルトハットを一瞬だけ持ち上げ、掲げた。


( ´W`)「そこの可愛らしいオジョウさん。占いなどに、キョウミはありませんか?」

169名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:57:09 ID:RqAuxQOc0
【―― 4 ――】


 私は一瞬だけ驚きに動きを止める。
 次いで、片足を斜め後ろの内側へと引き、もう片方の足の膝を軽く曲げて可愛らしく頭を下げた。

 その仕草を見ると中折れ帽のお爺さんは含み笑いをする。


( ´W`)「カーテシー。教養のあるオジョウさんだネ」


 年下である私が言うのもおかしいかもしれないが聡明そうな人だった。
 チェックのウェストコートにユニークな英国紳士的な振る舞い。
 脇にはパイプが置いてあり、それ等が某世界的な名探偵の姿を想起させたからかもしれない(尤もホームズが被ってるのは鹿撃ち帽だけど)。

 ……いやどちらかと言えば同じ知識人でもインディ・ジョーンズの方が近いのか。
 その瞳に宿った好奇心という光は。


ミセ*゚ー゚)リ「(……整えられた白い髭が生えてる。ということは、この人が……?)」


 あの『絶対当たる占い師』?

170名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:58:06 ID:RqAuxQOc0

( ´W`)「オジョウさん。占いは、お好きですカ?」

ミセ*^ー^)リ「勿論です」


 少しアクセントに妙なところがある。
 この国の人ではないのだろうか?

 そんなお爺さんは、帽子を脱いで引っくり返すと私の前に差し出した。


( ´W`)「三分、ワンコイン。私の話が面白いとオモったら、占いがアタってると思ったら、三分毎に入れてくれると嬉しいネ」

ミセ*゚−゚)リ「『面白くない』『当たってない』と思ったら入れなくて良いんですか?」


 私の挑発的な言葉にも動じず彼は返答する。


( ´W`)「……では最初の予言」


 そしてお爺さんは宣言した。
 「あなたは必ずこの中に硬貨を入れる」――と。

171名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 15:59:04 ID:RqAuxQOc0

 ……その自信にたじろぐ。
 まさか魔法が?と知っているが故の動揺が心拍数を上昇させる。
 「そんなことあるわけない」と私は切り捨てられない。

 傍らに置かれた鞄の上にあった折りたたみ式の簡素な椅子を私に手渡し、座るように指示する。
 そうして帽子を私との間の地面に起き、その隣に取り出した懐中時計を置く。

 お爺さんは言う。


( ´W`)「さて……お時間は大丈夫ですカ? カクゴはよろしですか? ミセリさん」

ミセ;゚ー゚)リ「はい――って…………え?」


 どうして――私の名前が?


( ´W`)「そうオドロかず。私にもワカルこと、分からないコトがあります。だから占いにキョウリョクして欲しいし……多少外れてもオオメに見て下さいネ?」

ミセ;゚ー゚)リ「は、はい……」

( ´W`)「ははは、キンチョウなさらず。普段のあなたは、周囲を気にし、場に合ったフルマイができる人でしょう?」

172名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:00:05 ID:RqAuxQOc0

 続けて言う。


( ´W`)「あなたにはポジティヴな面がある。それはとてもコノマシイ」

ミセ;*-ー-)リ「まぁ、ちょっと明る過ぎるとも言われますけど……」

( ´W`)「そうかもしれませんネ。あなたの快活さは、多くの人にはないものですから」


 ……そんな感じでお爺さんは次々と私の特徴を当てていく。
 三分間はあっという間だった。

 最後に懐中時計を伺うと、お爺さんは訊く。


( ´W`)「……サテ。三分が経ちました。私のお話は、オカネを出すに値するものでしたカ?」

ミセ*-ー-)リ「予言通りになるのは悔しいけど――うん、十分に面白かった」


 私は財布から硬貨を出し帽子の中へと入れた。
 それは良かった。
 と、お爺さんは柔和な笑みを浮かべた。

173名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:01:04 ID:RqAuxQOc0

 そうしてから次の三分はどうしますか?と訊ねてくる。
 答えは言うまでもない。


ミセ*^ー^)リ「じゃあ、あと何分か占って貰おうかな」

( ´W`)「……ワカリました。では次は、魔法の数式であなたの生まれたツキを当てましょう」


 生まれた月? 誕生月のこと?


( ´W`)「あなたの生まれた月に、4をカケテ下さい」

ミセ*-3-)リ「えっと……かけた」

( ´W`)「そのスウジに9を足した後、25をかけて下さい。最後に生まれた日を足す。ワタシに見えない場所でならデンタクを使っても良いデショウ」


 携帯で計算し、出てきた数字を伝えた。
 結果は言うまでもない――お爺さんは見事、私の誕生日(何月の何日かに至るまで完璧に)を言い当てた。

 そんな風に何分か過ごし、ファーストフード店で一番高いハンバーガーが一つ食べれるくらいのお金を使った後、そろそろお暇することにした。
 立ち去る私が手を振るとお爺さんも帽子を軽く掲げて返す。
 誰に今日のことを話そうかなと考えつつ、私はとても満足して帰路についたのだった。

174名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:02:04 ID:RqAuxQOc0
【―― 5 ――】


 翌日、たまたま朝早く起きれたので、いつもより早い時間帯に登校すると自販機前で我が校の生徒会長に出会った。
 太陽を想起させるような凄惨な美しさは今日も今日とて健在だ。

 聞くと弓道部の朝練だったらしい、ご苦労なことだ。


ミセ*゚ー゚)リ「そう言えば会長、昨日面白いことがあったんですよ」

「んー? 遂に異世界に召喚されたの? それとも異世界から誰か来ちゃった?」

ミセ;*゚ -゚)リ「私はここにいますし何人もの問題児もハンバーガー売ってる魔王さまも銀髪のニャルラトホテプも誰も来てないですよ」


 いや、最後は宇宙から来たんだったっけ。


「じゃあ面白いことって何なのかな?」

ミセ*^ー^)リ「それはですねー……」

175名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:03:04 ID:RqAuxQOc0

 私の話す昨日の出来事を、会長は最初の内は興味深そうに耳を傾けていた。
 しかしそれは「最初だけ」だった。
 話し終わった時には、会長はあの全てを見透かしたような特徴的な笑みを浮かべていた。

 嘲るようなのにこれ以上なく蠱惑的で。
 何処か、愉しむような、慈しむような笑みを。


「…………結論だけ言うとね、ミセリちゃん」


 と、会長は言う。


「ミセリちゃんの出会ったそのお爺さんは占い師じゃないし、超能力者でもない」

ミセ*゚ー゚)リ「え?」

「しいて言うなら――科学者だよ」


 科学者?
 あのお爺さんが?

176名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:04:19 ID:RqAuxQOc0

「ホームズ知ってるなら分かると思うケド、とっても頭の良い人はある種の人達は、他人の外見や仕草から内面を読み取ることができるんだよ」

ミセ;*゚ -゚)リ「そりゃ分かりますけど……心理学とかは科学ですもんね」

「心理学が科学かどうかは一部では議論があるケド、結局ね、今回の場合はそんなに大層なことじゃないよ」

ミセ*゚ー゚)リ「でも『男の子にモテる』とかは見た目で読み取れるかもしれませんけど私の名前なんてどうやったって無理でしょ?」

「できるよ」


 認識と観察は違うんだ、と会長は言って続けた。


「ミセリちゃんって可愛いポシェット持ってたよね?」

ミセ*^ー^)リ「持ってますよぉ。その日もアレでした」

「アレにさ、恋人から貰ったって言ってたアクセサリー付いてた気がするんだけど、それってまだ付いてる?」


 ………………あ。
 そう言えば、そうだ。

177名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:05:11 ID:RqAuxQOc0

 考えてみれば、あの時私は名前入りの装飾品を持っていたのだ。
 それを見れば私の名前なんてすぐに分かる。
 あの時、お爺さんはそれとなく私を観察して目聡く読み取っていたのだろう。


「眼鏡かけてる人って、たまにコンタクトにすると眼鏡取ろうとしちゃうことあるよね? それと同じなの」


 自分にとって当たり前のこと過ぎて、意識しなくなっている。
 心理学的な盲点。


ミセ*゚ー゚)リ「でもそれって『ミセリ』みたいな女の子の名前なら使えますけど、女の子にも男の子にも使える名前だと相手の名前かもしれないですよね?」


 もしくは私に『ミセリ』という女の恋人がいる可能性だって考えられる。


「そうだね。でも今回の場合、一緒に刻まれてた文字で分かるでしょ。覚えてる?」

ミセ*゚ー゚)リ「勿論覚えてますよ私が貰ったものですから」

「名前以外に何が書いてあったっけ?」

178名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:06:05 ID:RqAuxQOc0

ミセ*^ー^)リ「『You're so cute that you made me forget my pickup line.』ですよ!」


 英語を発音する為の口を作って、流暢に言った瞬間に気付いた。

 書かれていた台詞は"You're so cute that you made me forget my pickup line"。
 意味は「お前が可愛過ぎるから用意してた口説き文句飛んじゃったよ」。

 ……丸分かりである(私に送られたものであるということも、私の馬鹿さも)。


ミセ;* -)リ「うぼぁー、馬鹿か私はー……」

「星座象ったアクセサリーとかにも応用できるよ。普通、天秤座のネックレスしてる人は9月か10月生まれだ」

ミセ;*゚ー゚)リ「あっ!でも! でも誕生日当てるのは凄いですよね!?」

「凄いケド、それに至っては『魔法の数式』って言っちゃってるじゃん。自己申告通りに数式だよ」


 初めに「誕生日の『月』の数字に4を掛ける」。
 次に「その数字に9を足し」、更に「25を掛け」て、最後に「誕生日の『日』の数字を足す」。
 これは占いでもなんでもなくただの数学的な法則によるものだと会長は説明する。

179名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:07:04 ID:RqAuxQOc0

「『10月10日』とかだと分かりやすいけど、4掛けて9足して25掛けた段階で生まれた月に225足した数になってるの」


 ……えーっと。

 10(生まれた月)×4=40。
 40+9=49。
 49×25=1225。

 本当だ。
 先に225を引いた後に日を足せば分かりやすい――1000+10=1010、10月10日。


「もっと分かりやすいやつもあるよ。1〜9までで好きな数字を一つ選んでみて」

ミセ*゚ー゚)リ「じゃあ6」

「6を二倍して、10足して2で割った後に元の数を引いてみて。この場合は6で引くの」

ミセ;*゚ー゚)リ「えっと……5?」

「この数式だとどの数を選んでも最後は5になるよね。こういう数式にトランプとかコインとかを組み合わせると、それっぽいよね♪」

ミセ*-3-)リ「へぇ〜」

180名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:08:06 ID:RqAuxQOc0

 数学者っていうのは凄いなぁ。
 この場合だと、その後にやった「結婚すると幸せになれる年齢を当てる数式」っていうのも何か法則があるのだろう。

 そうして会長は言った。


「言葉の選び方にもトリックがあるよね。例えば『周りを気にする』って言葉とか」

ミセ*゚ー゚)リ「『外見を気にして可愛くしてる』ってことじゃないんですか?」

「勿論そういう風に解釈もできるケド、『他人を恐れてオドオドしてる』って意味にも『ルールをちゃんと守り誠実に生きてる』って意味にも取れるよね?」

ミセ*-ー-)リ「あー……そう言えばそうですね」


 観察で読み取ることに加え、上手い具合に話を運ばれてしまっていたのか。


「こういうのを『コールド・リーディング』って言ったりする。占い師だけじゃなく、社長さんとかカウンセラーとかも使う技術だね」

ミセ*-ー-)リ「頭の良い人もいるもんですねぇ」


 トリックを明かされても怒る気にはなれない。
 だって――魔法でこそなかったけれど、お爺さんの話が面白かったというのは紛れもない事実なのだから。

181名も無きAAのようです:2013/05/25(土) 16:09:09 ID:RqAuxQOc0
【―― 6 ――】


 さて。

 私が本物の『占い』と遭遇することになったのは、会長からそんな種明かしがなされた――まさにその日だった。
 世間一般に行われている占いがただのトリックだと分かったその日に本物の魔法に出逢うことになるなんて、ある意味ではとても皮肉だ。 

 皮肉で。
 数奇で。
 滑稽で。

 そう、それが。
 その『占い』に端を発する事件で出逢うことになったものが。
 「魔法でありながら」――同時に「魔法ではないモノ」だったのだから尚更だった。


 この世が一つの記された物語で、筆を持つものを神と呼ぶのなら。
 それは、まるで。
 神様が「世界にはまだまだ神秘が多いのだ」と高らかに笑っているようだった。

 ……なんてね。


.


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