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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 3●
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プロバイダー規制や本スレの空気などでSSを投下できない人が、
本スレの代わりにこっちでSSを投下するスレ。
sageるとIDが???になるので恥ずかしい人にはお勧め。
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をつ
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すごくいい
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(自炊)男の進路が気になるツンデレ その3
数日後の放課後。久し振りにボクは、別府君と帰る機会を得ることが出来た。いつも
のように隣に並んで歩き、今日は何を話そうかと考えていると、意外なことに、別府君
の方から話し掛けてきた。
「あのさ。お前――」
『え? 何?』
自分からはあまり話さない別府君がいきなり口を開いたものだから、ボクは驚いて聞
き返してしまった。すると別府君が、真顔でボクを見返して来る。何となく、別府君が
このまま話題を打ち切ってしまいそうな気がして、ボクは慌てて前言を打ち消す。
『いや、いいよ。その……続けて』
「あ、ああ」
別府君は頷くと、何となく言いにくそうな感じで口を開く。
「その……さ。お前、美府理科大にしたんだって? 志望校」
『な……何で知ってるの?』
一瞬、驚いて聞き返す。しかし、ボクがその事について考える間もなく、別府君が答えた。
「いや。千早から聞いたから」
『ああ……』
友香の顔が浮かび、ボクは、諦めに似たため息と共に頷く。こないだはミスドで、三
人で勝手に人の恋をダシにして盛り上がってたっけ。いくら否定してもちっとも聞かないし。
『で、他には何か言ってたの?』
ちょっと不安になって、別府君に尋ねる。余計な事をベラベラとしゃべられたとした
ら、恥ずかしくて別府君の前に顔なんか出せなくなってしまう。
しかし、ボクの不安は当たらなかった。別府君は、首を左右に振って、それを否定した。
「いや。何か、ニヤニヤしながら、どうしてか知りたかったら、お前から直接聞けって
言われただけだ。自分から、言うだけ言っといてな」
ボクは、小さく安堵の吐息を吐く。まあ、それはそれでいかにも友香らしい。相手の
興味をくすぐるだけくすぐって放置する辺りが。
『で、何? 理由とか……知りたいの?』
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別府君の顔色を窺いつつ、聞いてみる。が、別府君はボクの顔をチラリと見ただけで、
頷きも否定もしなかった。ちょっと間を置いてから、口を開く。
「いや。ちょっと興味はあるけどな。別に知りたいって程じゃない。言いたくなければ
別にそれでいいぞ」
相変わらずの淡白さ。こうなって来ると、何だか逆に、こっちの方から突っ込みたく
なってしまう。
『興味……あるの? ボクの進路に?』
自分で言ってから、自分の言葉にドキリとしてしまう。もし、別府君がボクの事に、
少しでも興味を示してくれたのなら、それはそれで進歩なのかも知れない。
ボクの質問に、別府君は僅かに頷く。
「ああ。まあ……委員長は、文系の大学に行くと思ってたからな。ちょっと意外だなっ
て思った。それだけだけどな」
『イメージだけで、人の進路まで勝手に決めつけないでくれない? そういうの、良くないよ』
ちょっとお説教口調で言うと、別府君は困ったように頭を掻いた。
「いや。俺ならそうするってのもあるからな。得意科目があるなら、そっちを選択した
ほうが楽だし。古文や英語が得意なら、俺も文系に進んだと思うぞ」
『進路を決めるって、そういう物なの?』
ちょっと呆れた口調で聞き返す。この間、将来の事が云々かんぬん言っていたけど、
それは嘘だったのだろうかとも思ってしまう。しかし、別府君はあっさりと頷いた。
「ま、俺にとってはな。特にしたいものも分からないのに、より努力の必要な方に行く
なんて、有り得ないし」
『人生にはチャレンジだって必要なの。若い時の苦労は買ってでもしろって言葉、聞い
た事ない?』
しかし、ボクの言葉に、別府君は首を傾げただけだった。
「さあな。いずれにしても、俺には縁が無いな」
あっさりと答えられて、ボクはまた、ため息を吐く。
『だよね。大体、志望校にしてからが、美府理大だもん』
すると、ボクの言葉に別府君が僅かに怪訝そうな顔をした。
「何だ、それ。美府理大で何かマズい事でもあるのか?」
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ボクは、大仰に首を左右に振ってそれに答える。
『別に。ただ、楽してるなーって。別府君なら、もうちょっと上の学校を狙えるのに。
本来なら、滑り止めに選ぶ所じゃないの?』
「何も、無理してレベルの高い大学を狙う必要はないだろ。受験料も無駄になるしな。
俺は、確実性の高い大学を選んでるだけだ。浪人して、もう一年勉強漬けになるのは勘弁だしな」
別府君らしい合理性だとは思う。それに美府理大は、別段低レベルと言う訳でもなく、
施設も揃っているし、何人かは有名な教授もいるらしい。ボクも、志望校に選んだ以上、
さすがにその程度は調べた。とはいえ、引っ込みの付かなくなってしまったボクは、別
府君の言葉に納得するわけには行かなくなっていた。
『だったら、せめて一つは、チャレンジする大学を受けてみてもいいんじゃないの? 今、
ここで勉強しておく事は、絶対無駄じゃないと思うんだけど』
「受験の為だけの勉強が、将来に役立つとは思えないな。それに、上の大学はセンター
必須だろ? 英語や国語が足を引っ張るから、どうせそこで上には行けないさ」
サラリと言ってのける別府君を、ボクは意地でも説得したくなった。意味のないとこ
ろでムキになるのは悪い癖だと自分でも分かってはいるのだけど、どうしてもしないで
はいられなかった。
『苦手なものがあるなら、克服しないと。ボクだって、そうしたいから理系に進むんだ
もの。キミ一人だけ、逃げようとするなんて、ズルイと思う』
「は? いや。よく意味が分からん。俺が、何に逃げてるって?」
『だから、苦手な物からだってば。今の実力じゃダメでも、一年努力すればどうなるか
分からないのに。最初から限界を決め付けるとか、そういうのは、良くないと思う』
ボクは、別府君の進路を遮るように前に立つと、両手を腰に当て、いかり肩で別府君
を睨み付ける。別府君は立ち止まると、困った顔でボクを見つめる。
「じゃあ、何だ。委員長は、俺がどこの大学を受験すれば気が済むんだ? そこを受け
るって言えば気が済むのなら教えてくれ」
その言葉から、ボクは別府君がこの場を適当に流そうとしていると感じて首を振った。
『別に、どこの大学ならなんてのはないよ。けれど、別府君の実力なら、もっと高いレ
ベルの大学が目指せるはずだと思ったから、そう言っただけだもの。具体的な大学名は、
先生にでも相談して決めてよ』
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そう言って、ボクは別府君に背を向けてゆっくりと歩き出す。しかし、心が落ち着い
てくると、今度は何だか複雑な気分になった。別府君に努力して欲しいのは確かだけど、
でも、もし彼が頑張って成績を上げたら、今度はボクの手の届かない学校に行ってしま
うかもしれない。
――それは……イヤだな…… せっかく、別府君と同じコースを選択したのに……
別府君と同じ大学に行きたい。だけど、別府君が頑張る姿も見たい。矛盾しているの
は分かっているけど、どっちもボクの本心だった。
「……あのさ」
ボクの横を、同じようにゆっくりと歩いていた別府君が、声を掛けて来た。
『何?』
冷静を装いつつ、ボクは聞き返す。本当は、別府君に何を言われるのかと、かなりド
キドキしているのだけれど。
「努力しろとか、苦労しろとか言うけどさ。そんなの、どこで分かるんだ?」
『え……?』
ボクは、顔を上げて別府君を見つめた。別府君もこっちに軽く視線を流しているが、
表情はいつもと同じで、何を考えているのかは全く読めなかった。
「いや。委員長にさ。俺が努力したとして、それをどう分かって貰えればいいのかなって思って」
『そんなの、ボクにアピールすることじゃないでしょ? 自分の為の努力じゃない。ボ
クを満足させる為にとか、そんなのおかしいから』
突き放したようにボクは答えた。ボクの為に頑張るって言うなら、それはそれで嬉し
いけど、でも、何となく違うような気がする。大体、ボクが別府君に何かを頼んでいる
訳でもないし。それに、別府君の事だから、どうせボクからうるさい事を言われるのが
うんざりだからとか、そんな理由に決まっているし。
「けれど、委員長からそう言われて努力するなら、少しは認めて貰えないとな。努力し
たからって成績が上がる保障はないし、それでまた、頑張ってないだの努力が足りない
だの、結局楽したんじゃないかとか思われたら、バカバカしいからな」
『う……』
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その言葉に、ボクは思わず考え込んでしまった。もちろん、ボクは別府君が努力すれ
ば、絶対それに気付くと思っている。だって、いつもちゃんと見ているもの。だけど、
別府君からすればそんなの分からないし、確かにボクなら、いかにも言いそうな言葉で
はあったからだ。
「成果も上がらないし誰からも認められないんじゃ、そんなの結局無駄な努力って事に
ならないか? まあ、目標があるなら、それに越した事は無いけど、努力する為に目標
を作るってのもおかしな話だしな。だったら、自分の出来る範囲でやった方が――」
『ま、待ってよ』
言い負かされそうになって、ボクは慌てて言葉を途中で遮った。
『だったら……せめて、ボクが努力したって認めてあげればいいの? もっとも、本当
に別府君が努力したなら、だけど』
すると、何故か別府君は視線を逸らし、鼻に親指を当てて軽く擦る仕草をした。
「まあな。委員長が言ったとおり、それもおかしな話だけど、でもまあ、努力しろって
言った本人に認められれば、まあ仮に結果が出なかったとしても、胸の空く思いはするな」
『だったら、ボクが見てあげればいいんでしょ?』
咄嗟に出た言葉に、ボク自身が驚く。別府君も、ちょっと驚いた顔でボクを見つめた
ものだから、ボクは恥ずかしくなって視線を逸らしてしまった。
「見るって……どう、見るんだ?」
別府君が聞いてくる。そんな事、考えてもいなかったからボクはどうしようかと一瞬
迷った。だけど、すぐに思いつく。ボクと別府君の間なら、これしかないと。
『……毎週木曜か金曜に……図書室で勉強しよう? そうすれば、ボクも別府君がどれ
だけ勉強してるかとか……分かるし。委員会とかで時間が取れなかったら、その……土
曜日に図書館で、とかでもいいから』
弱気になりそうな心をグッと堪えて、ボクは提案する。男の子にこんな約束をするな
んて、ボクにとってはそれだけでも物凄い勇気の必要な事なのだ。今、勢いに流されて
いなければ絶対言えなかっただろう。そして、言い終えた今は、死にたくなるくらい恥
ずかしかった。断られたらどうしようと、泣きたくなる想いで、ボクは返事を待った。
「……ハァ……めんどくせーな」
『……え?』
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ちょっとうんざりした別府君の口調に、ボクは顔を上げた。どうとも判断の付かない
言葉だが、臆病なボクの心は、不安の方に気持ちがぐら付く。しかし、別府君はすぐに
言葉を続けた。
「ま、受験とかってそういうものだしな。いっそ強制的に時間とか決められた方が、自
己管理しなくて楽でいいか。それに、委員長がいれば、英語や古文も教えて貰えるしな」
『ちょっと!! 何、それ? 誰も教えてあげるなんて言ってないじゃない!!』
そう抗議したが、ボクは内心、すごく嬉しかった。別府君がボクの申し出を受け入れ
てくれた事に。そして、これから毎週一回は、彼と一緒に二人だけの時間を過ごせる事に。
「分からない所があれば、調べるなり人に聞くなりするのも努力のうちだろ? だった
ら、得意な奴に聞くのがもっとも手っ取り早いだろ」
正論ぽく押し込まれると、ボクは頷かざるを得なかった。もとより、ボク自身が本当
は、頼りにされるのは嬉しかったから。
『う……それはそうだけど…… でも、最初からボクを頼りにするのはダメ。どうして
も分からなかったら、その時は仕方なく教えてあげるけど、でも、ボクに聞くのは最後
の手段だからね。いい?』
強がってそう言うと、別府君は頷いた。
「分かってる。あんまり頼りにすると、それはそれで、また怒られるからな。それは鬱
陶しいし」
別府君の言葉が、ザクッと胸を刺す。自分でも何となく分かってはいるけど、ボクの
お説教は、やっぱり鬱陶しいのか。しかし、その心を隠して、ボクは強気に言い返す。
『ボクだって、したくてお説教してるわけじゃないの。別府君がだらしなかったりいい
加減だったりするから、ついつい言っちゃうんだから。自分が悪いんだからね。ちゃん
と反省してよ』
「はいはい。分かってるって。反省すればいいんだろ?」
『ほら。またそうやって適当に流す。別府君はそういう所が一番いけないんだからね』
「ちぇっ。全く、どう言えば委員長に許してもらえるんだか」
苦り切った顔の別府君に、ボクは思わず顔を綻ばせそうになってしまう。それをグッ
と堪えると、また厳しい顔つきに戻って言った。
『あと、英語や古文を教えるのはいいけど、その代わり、別府君もボクに数学や物理を
教えてよね。ボクだって、少しでも上の大学に行けるよう、努力するんだから』
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「分かってるよ。イヤだって言っても聞いてくるんだろうし、俺もそれで教えて貰えな
くなったら困るからな。ちゃんと、委員長でも分かるように教えてやるから」
『何それ? まるでボクが理数系はまるでダメみたいな言い方じゃない。失礼しちゃう』
ボクの抗議に困った顔をする別府君に、とうとうボクはおかしくなって笑顔を見せてしまった。
『ま、いいよ。とにかく、楽しないで、ちゃんと努力する所を見せてよね。分かった?』
「分かったよ。ま、出来る範囲で、だけどな」
別府君と別れてから、ボクは浮かれた気分で家への道を歩いていた。しかし、途中で
フッと、その気持ちが不安に変わる。
『努力……かあ…… 偉そうな事、言っちゃったけどな』
動機で言えば、ボクの努力は不純だとも思う。だって本当は、別府君と一年でも長く、
同じクラスでいたいから。そして、出来れば同じ大学に入って、最低四年は一緒に過ご
したいから。
『けど……ボクも、逃げちゃいけないんだよね……』
将来に想いを馳せれば、それでも、あと五年半しかない。もし、一緒の大学に行けな
ければ、一緒にいられるのは一年半だ。その一年半で、週に最低一度、二人きりの時間
を作ることが出来たのは、神様がくれたチャンスなのかも知れない。
『ボクも……努力、しなくちゃね。勉強じゃなくて……ちゃんと、ボクの気持ちを……
別府君に、伝える努力を……』
その結果がどうだろうと、だ。浮かれ気分を引き締め、心臓に拳をグッと強く押し当
てて、ボクは心に誓ったのだった。
おしまい
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乙ぅぅぅぅ
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をつ
続編として
勉強会の様子をば
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電車でニヨニヨしたじゃないか
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>>532
久々だな。GJ!
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線路に上がってたSS素敵でした。
心から、GJ。
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落書き貼って寝る。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1600.jpg
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カウンタも1600いったか。
記念&ツンデレさんと嫉妬は相性いいよね
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友ちゃんは貰っていく
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線路って何ですか?
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>>541
専用アップローダー。
>>538とかが使ってるやつで、スレのテンプレにもある。
http://tunder.ktkr.net/up/
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>>524
ありがとうございます
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素直にお礼も言えないとは
なんというツンデレ
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今気づいた。なんというツンデレw
>>543かわいいよ>>543
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ああああああああ間違えたああ
>>542
ありがとうございます
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こうですか?わかりません。
恥ずかしいから、面と向かっては言えない。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1601.jpg
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おれが超かわいくなってるwww
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>>547
こんな風にお礼言われたら普通に死ねる
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規制解除が原因か避難所が閑散としてる…
まぁ正しい姿ではあるんだが
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つんでれ流甘え奥義『ちなみんホールド』
ちなみんがタカシ・あるいは自分のうちで一緒にいるとき眠くなると無条件で発動
無意識のうちにタカシの背中、あるいは正面によじ登り、両手足を使ってがっちりホールドしたまま熟睡する
(参考画像:http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1612.jpg)
おやすみなさい
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なんだろう、バカバカしいのにすげえエロいwwwwwwwwwwwww
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絵師って前からいる人みんなうまくなってきてない?
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そりゃ描き続けてれば上達もしますよ
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>>551
これはもう完璧にちゅーしてますね本当にごちそうさまですだからちなみんそのバールをしまってくたさいおねが
アッー!!
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【婦警さん】
近頃朝方が寒いので布団のありがたみも増し、結果寝坊。こいつは大変にいけないと思いながら自転車を必死に漕いでたら、交差点で何かとぶつかった。
「いたた……こらーっ! 危ないじゃないの!」
「あーっ! おまえはさっきの転校生!」
「違うっ!」
「確かに。順番と職業と年齢を間違えた」
俺がぶつかった相手は同い年の転校生などではなく、青い制服に身を包んだ婦警さんだった。警察学校を出てすぐなのだろうか、俺とそう変わらない歳のように見える。向こうさんも自転車に乗っていたようで、近くで自転車が転がっていた。
「気をつけろ……機嫌を損ねると腰のマグナムが俺の心臓を撃ち抜くに違いねえ!」
「マグナムなんて物騒なもの持ってないわよ! ていうか、そもそも撃たない! キミねえ、あんまり変なこと言ってたら公務執行妨害で逮捕するわよ?」
「うっうっうっ……」
「泣きながら両手を差し出すなッ!」
「どうしろと言うのだ」
「こっちの台詞よ……はぁ、朝から変なのに捕まっちゃったなあ」
婦警さんは疲れたように肩を落とした。
「警官なのに捕まるとは洒落が利いてる。はっはっは」
「うるさいっ! もーいーから行きなさい。キミ、学生でしょ? いいの? 遅刻しちゃうわよ?」
「婦警さんに誘惑されたと言い張って遅刻から免れるから大丈夫だ」
「ちっとも大丈夫じゃないっ! ていうか、そんなので遅刻は免除しないと思うわよ!」
「どんなエロい誘惑をされたか、先生に詳しく説明するから大丈夫だ。なに、こう見えても趣味で小説を書いてる。そういった描写は得意だ」
「誰もそんな心配はしてないっ! あーもーっ、早く行けっ!」
「警察官に追い払われるとは。なかなかに悲しい出来事だ」
「いーから早く行きなさい。まったくもぉ……あ痛っ!」
失意のどん底に落ちながら自転車に乗ろうとしたら、婦警さんが突然声をあげた。
「どしました?」
「な、なんでもないのよ、なんでも。いいからキミは早く学校行きなさい」
婦警さんは俺の目から逃れるように右足を後ろに回した。だが、その程度で俺からは逃れられない!
「ククク……婦警さんもまだまだ甘いようで。この俺様に隙を見せるとはなぁ……」
「な、何よ。何をする気よ!」
「弱って動けない獲物を前に、何をするかだなんて……答える必要もあるまい?」
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「ま、まさか……や、やだ、ちょっと、冗談でしょ?」
「それは……自分の身体に聞いてみなッ!」
「き……きゃあああああああッ!」
「痛い痛い痛い痛い」
中二病を存分に発揮しながら婦警さんを抱き上げたら、いっぱい叩かれた。
「ヤだヤだヤだヤだ! おかあさーん!」
「痛い痛い。動くな。せめて殴るな」
殴られながらもずしーんずしーんと移動し、近くの公園へ。
「はい、ちょっとここで大人しくしてろよ」
「ううう……う?」
婦警さんをベンチに下ろし、近くの水道へ。ハンケチを水で濡らし、戻ってくる。
「はい、ちょと痛いヨー」
「痛っ!? ……あ」
ニセ中国人を装いながら、怪我した膝にハンカチをちょんちょんとあてる。砂などが取れたら、もう一度ハンカチを濡らし、膝にあてる。
「ん、これでよし。交番に戻ったらちゃんと手当てしろよ。んじゃ、俺は学校行ってくる」
「え……あ、え?」
「ばーいびー」
そのまま颯爽と自転車にまたがって去れたらそれなりに格好もつくのだろうが、生憎と徒歩で公園まで来たので、てってこ走って公園から逃げる。やれやれ、恥ずかしい。
遅刻した言い訳に嘘エロ小噺を担任にしたら余計に怒られ、放課後、一人で教室の掃除をするよう言いつけられてしまった。
「あー……疲れた」
どうにか終わった頃には、既に5時を回っていた。さて、帰るか。
だらだらと自転車を漕いでると、朝に事故った交差点に出くわした。……まさか朝の婦警、いやしないだろうな。
「……あーっ! き、キミ! そこのキミ!」
「ん? ぐあ」
「……そ、そう。こっち振り向いて今まさに電柱にぶつかったキミ」
「……それはつまり俺のことだな」
朝と同じように地面に転がりながら答える。
「あ、あははー……ごめんね? 私が声かけなかったらぶつからなかったよね?」
「全くだ。あいたた……」
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むっくら起き上がり、声の主を確かめる……までもなく、奴だ。朝の婦警だ。
「それで、何用だ? くだらん用件だと殺す」
「おまわりさんだよ!?」
「しまった、図に乗った。……でも、まあ、いいか!」
「よくないっ! ……じゃなかった。え、えっと、えっとね?」
「なんだろうか。やっぱ捕まえるの? 嫌だなあ。まあいいや、はい」
「違うっ! すぐに両手を差し出すなっ! ……え、えっと、これ」
そう言いながら、婦警さんは何やら布っきれを差し出した。なんだろう。なんか見覚えあるな。
「は、ハンカチ。朝、キミが貸してくれたの」
「ああ、そうそう。思い出した。記憶のピースががっちと一致した。ああすっきりした。じゃあ俺はこれで」
「待って待ってまだ話終わってない!」
「なに? 捕まえるの?」
「なんでキミはそう捕まえられたがるかなあ……」
「基本的にビクビクして生きているもので」
「何かの虫みたいだね、キミ」
酷い言われ様だ。
「そ、そうじゃなくてね。あ、あの、え〜っと……ほ、ほら! 警察官を助けたで賞を授与しないといけないの!」
「うわ、超頭悪ぃ」
「警察官に酷い暴言を!?」
「しまった。俺って奴はいつもこうだ。はい、どうぞ」
「だから、すぐに両手を差し出すなっ! ホントに逮捕しちゃうぞ!?」
「昔そんなアニメがありましたね。いや全然知らないので踏み込まれると何もできなくなるので気をつけて」
「う〜……そんなのはどうでもいいのっ! 朝のお礼をしたいの! で、でも、言っとくけど、好意とかじゃないから勘違いしたらダメだよ? ただの警察官としてのお礼なんだからね?」
「知らん。ていうか、礼とかいいです」
「いくないの! あのね、ちゃんといいことしたんだから、お礼を受けるのは当たり前なんだよ?」
「そんな大層なことをした覚えはないんだが……」
「…………」
「ん? どした、ハトが豆鉄砲を食らったような顔、いわゆるハト豆な顔をして」
「そんないわゆるなんてないよっ! じゃなくてね、……ううん、まあいいや!」
「?」
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「いーの! こほん。……え、えっとね。ほ、ほら、私……じゃないや。本官は警察官なので、本官を助けてくれたキミにお礼しないといけないの」
「さっきも言ったけど、礼とかいらないのですが」
「いいの! しないといけないの! キミは黙ってお礼されたらいいの!」
「まあくれるというなら貰うが……一体どんなお礼を?」
「え? え、えーっと……」
……何も考えてなかったな、コイツ。
「ま、待って! すぐ! すぐ考えるから!」
「もういいよ。なんか疲れたし帰る」
「待って待って帰らないで! すぐ思いつくから!」
「いい。帰る」
「待って待って待ってー!」
そのまま回れ右して帰ろうとしたのだが、ありえないことに婦警さんは俺の腕にしがみついて動きを遮った。
「ええい、離せ!」
「お礼するまで離さないー!」
「じゃあもうその乳の感触がお礼ってことにするから離せ」
さっきから腕にほにょんほにょんとそれなりの大きさの乳の感触が踊っていてお兄さん嬉しいです。
「え……え、えっち!」
「ぐがっ」
なんか脳天にすげぇ衝撃。超殴られたっぽい。
「いてて……お、お前なあ、恩人を殴るか?」
「う、うるさい、ばかっ! えっちなこと言うキミが悪いんだからね!」
婦警さんは少し離れた場所から顔を真っ赤にして叫んでいた。
「子供の戯言と流せよ……」
「なんかキミ私より年下とは思えないんだもん! 留年しまくって二十歳超えてたりする?」
「酷い侮辱だ。新聞に投書してやる」
「う、うそ、うそ! 私が幼すぎるだけだよ!」
「知り合って間もないが、よく知ってる」
「冷静に肯定されちゃった……」
なんか打ちひしがれている。
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「まあそう落ち込むな。大丈夫、体つきはそれなりに大人だったぞ!」
「嬉しくないっ!」
ずびしっと親指を立ててウインクしてやったというのに、婦警さんときたら先ほどより顔を赤らめるばかり。
「ううう……と、とにかく! お礼するから、ここに住所と名前と電話番号書いて!」
そう言って、婦警さんは懐から手帳を取り出した。
「個人情報保護の観点から断りたいです」
「う、ううう……」
「泣きそうになるなッ! 分かった、書くよ、書きゃーいいんだろっ!」
半泣きの婦警さんから手帳を奪い取り、手早く書く。ほんとに大人か、この人。
「な、泣いてなんかないからねっ! ちょっと悲しくなっちゃっただけなんだから! 大人がこんなすぐ泣くわけないじゃないの!」
「いばるな。ほい、書いた」
手帳を返すと、婦警さんは顔を輝かせた。
「へへ……。じゃあ、思いついたらお礼するから! 忘れないからね! 覚えててね!」
「知らん。ていうか、いいと言ってるのに」
「私の気が済まないの!」
「超面倒臭え」
「面倒臭いとか言わないの! ……あ、ああーっ! もうこんな時間! 大変、先輩にまた怒られる!」
ふと腕時計を見て、婦警さんは素っ頓狂な声をあげた。
「また、って……お前はいっつも怒られているんだなあ」
「……た、たまにだよ? ホントに」
「こんな信頼できない台詞初めてだ」
「ホントに! ホントなの! そんなへっぽこじゃないの!」
「いーから早く行けへっぽこ婦警。早くしないと先輩とやらに怒られるぞ」
「酷いあだ名つけられた!?」
なにやらぶちぶち言いながら、婦警さんは自転車に乗って去っていった。
「あー……なんか超疲れた。……あ」
そういや、ハンカチ貸したままだ。……まあいいか、なんかまたお礼するとか言ってたし、その時で。
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>>560
GJ
しかしなんだ、お前の世界の大人は先生しかりダメな人ばっかりだなwwwww
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>>560
ディ・モールト!!
お前が神、いわゆるゴッドか。
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>>560
GJ!!
この婦警さんは警察官に向いてないので、早く退職して俺の嫁になった方がいいと思う
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>>560
God job
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【眠くなると甘えて来るツンデレ】
まつりが遊びに来たので遊んでやったら夜になりました。
「さてお嬢さん、ボチボチ夜も更けてきたのでそろそろ帰っては如何かな?」
「う……うな……」
いかん。そろそろどころか、こっくり船を漕いでいる。一刻も早く帰らさなければ……!
「ま、まつり。なんなら俺が家まで送っていくし、それが嫌なら親御さんかメイドさんに連絡して迎えに来てもらっても」
「うるさいのじゃー……なんだかわらわはとっても眠いのじゃー……ふわあああ……」
いかん。船が小船から豪華客船に進化を遂げている。このままでは……!
「むぬー……ん、のー。のーのー」
まつりは薄っすら目を開けると、身体を斜めに傾けつつ、手をくいくいして俺を呼んだ。嫌な予感を感じつつ、もそもそとまつりの元へ向かう。
「んー……かくほ!」
確保された。具体的に言うのであれば、突然抱きしめられた。
「確保らないで」
「んー……との、わらわは眠いのじゃ」
「はぁ、それは見れば一目瞭然家内安全七転八倒ですね」
「むぬ……? うん、まあそんな感じなのじゃ」
何がだ。
「での。眠いと枕が必要なのじゃ。なぜなら寝るから!」
「はぁ。じゃ、貸してやるよ」
「だーめなーのじゃー! 抱き枕が必須なのじゃ!」
まつりはイヤイヤしながら枕を取ろうと立ち上がりかけた俺を揺さぶった。揺さぶられておえええって感じになり、ふらふらになりながら再びぺたりと座り込む。
「そんなわけでの? 特別にお主を抱き枕の大役に命じてやるのじゃ。感謝するのじゃぞ?」
「いいえ、結構です」
「感謝のあまりむせび泣いてもよいのじゃぞ?」
「いいえ、結構です」
「そゆわけでの、わらわは寝るのじゃ。おやすみなのじゃ♪」
「全部断ったのに何一つとして気にせず眠るだと!? この娘、やる……!」
「すぴゃすぴゃ、なのじゃ♪」
「起きてませんか?」
「起きてないのじゃー。わらわは寝てるのじゃ。起こしてはいかんのじゃよ?」
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「返事してませんか」
「してないのじゃ。ふわあああ……ぬー。んじゃ、本当に寝るのじゃ。お休みなのじゃ、ぬし殿♪」
「いや、ちょっと待って。勝手に寝ないで。お休まないで」
「ふにゅふにゅ……」
結局最後まで俺の話なんてちっとも聞かずに、まつりは幸せそうにふにゅふにゅ言いながら眠りに就いた。
「はぁ……なんちうか、なんちうか」
色々思いながらも、携帯でまつりのメイドさんを呼ぶ。
数分後、俺に向かってしきりにお辞儀をするメイドさんに連れられ、まつりは車で帰っていった。何もしてないのに超疲れた。
んで、翌日。
「わらわのせいじゃないぞ!?」
「うわあっ」
登校するなり朝からまつりが超やかましい。
「あーびっくりした。いきなり何の話だ」
「き、昨日の話じゃ、たわけ!」
「あー。物凄い迷惑を受けたが、同時にふにゅふにゅ言ってる可愛い生物を愛でられて大変満足しております」
まつりが真っ赤になった。
「ひ、人を生物とか言うなッ! ……あ、あと、可愛いとか言うでない、おろかもの」
何その後半の可愛らしい抗議。
「と、とにかくの。昨日の出来事は全て忘れるのじゃ。なかったことにするのじゃ」
「ええっ!? まつりが眠くて船漕いでたのも、『かくほ!』とか可愛らしく俺に抱きついてきたのも、もふもふしてきたのも全部忘れろと? そんなのってないよ!」
「全部言わんでいいわい、たわけっ!」
まつりが顔中赤くしながら半泣きで怒った。
「ううう……とにかく、忘れるのじゃ! 命令なのじゃ! わらわの言うことを聞くのじゃ!」
「うーん……じゃあ、今日また遊びに来るなら忘れる」
「ぬ……わ、分かったのじゃ。しかし、しかしじゃ! わらわは学習するのじゃ! 愚かで愚劣で常にわらわに劣情を催しておる貴様のことじゃ、昨日のことのようなことを期待しておるようじゃろうが、二度と先のようなことは起こらぬと思え!」
そのまた翌日。
「わらわのせいじゃないぞ!?」
なんか昨日見た光景がリピートされてる気がします。
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>>566
近頃こんな可愛い老成さんは見たことないぞ
GJ!!
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相変わらずかわいらしい老成さんでなによりです
つまりはGJ!
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【ツンデレ妖狐】
夜、ノドが乾いたので近所のコンビニに向かい、缶コーヒーを買う。
「ん……?」
そのままなんとなく近所をぷらぷらと散歩してたら、ある家屋が目に付いた。いわゆる幽霊屋敷という奴で、俺がガキなら探検ぼくの町といったところだろうが、何やら様子がおかしい。
普段であればその門にでかい南京錠がかけてあるのだが、今日はどういったわけかその物々しい鍵が外されていた。
首を伸ばして中を窺うが、薄ぼんやりとした闇に包まれており、どうにも判然としない。ただ、いつもは閉まっているドアが開いていることだけは分かった。
どこかの悪ガキが季節外れの肝試しでもしているのかもしれない。少し興味はあったが、それ以上にからまれたら超怖いので回れ右しようとくるりと後ろを向いたら、ぴきぴきと何かが割れる音がした。
「お?」
そしてすぐに、視界が真っ暗になった。いや、違う。落ちてる。超落ちてる。俺がまっさかさまに落ちている。
「なんとぉぉぉぉぉ!?」
なんで!? 地盤沈下? 一般的な住宅街にまさかのクレバス発生? いやなんでもいい、絶対死んだよコレ!
思いつく限りの悪態を吐いたが未だ終着点には着かない。ていうか結構落ちてるけど……まさかマントルまで行かないよなげぼがばぐば。
「………………っぷはあっ!」
必死に泳いで水面に顔を出す。どうやら地下水が溜まってできた湖に落ちたようだ。おかげで命拾いした。
「あー……どんだけ不運なんだ、俺。いや、生きてるから幸運なのか。……分からん」
とにかく、ここから脱出しないと。とはいえ、困った。明かりが一切ないので、何も見えない。さっきは必死に泳いだ先が偶然水面だっただけで、運が悪ければ今頃ぼくドザエモンになっていたやも。
まあいい。泳げばその先に地面があるはず。というわけで、すいすい泳いで陸地を探す。……しっかし、真っ暗な湖ってのは超怖いな。何も見えねえ。
「……うん?」
しばらく泳いでると、少し先に何か薄ぼんやりとした明かりが目に付いた。こんな地下に……なんだ?
明かり目掛けてわっせわっせ泳ぐ。しばらく泳ぐと、陸地についた。そのまま明かり目掛けてしばらく歩くと、目的の場所に辿り着いた。古びた祠だ。
「こんな地下に祠……やばい匂いしかしねえ」
しかも、祠自体が光を放つという超常現象が起きている。何コレ。放電現象?
触ったら呪われそうだが、周囲があまりにも真っ暗すぎて生物の本能として明かりを求めずにはいられないので、恐る恐る祠に手を触れる。
途端、光が満ちた。あまりのまぶしさに咄嗟に目をつむる。
『やっとか。どれほど時が流れた』
「お? ……お?」
声が聞こえる。だけど、まだ目がチカチカして目を開けられない。
『聞こえておるな、そこな童。この祠を破壊せい』
「暗闇にやられて幻聴か? ……まずいな、早くどうにかして脱出しないと」
-
『おい、童。ワシの声が聞こえているなら返事せい。おい』
「しっかし、困ったなあ……ちょっと前にあったチリの落盤事故はたしか地下700mくらいだったけど……ここはどのくらい深いんだろうか」
『ワシの話を聞けッ!』
どうにも幻聴がうるさい。それはそうとして、そろそろ目が治ってきた。ゆっくり目を開けると、薄ぼんやりとした女の子が目の前に。
「うわあっ!?」
『わひゃあっ!?』
俺がびっくりしたら、それに呼応して女の子も驚いた。
『な、なんじゃ、なんじゃ!?』
「いや、目を開けたら人がいてびっくりした。終わり」
『そ、そうなのかえ……あー、びっくりしたのじゃ』
女の子はほっと胸をなでおろした。中学生くらいだろうか。白い袴のようなものを纏っている。どうしてこんな地下にこんな子が? ……実際に聞くか。
「ていうか、なんでこんなところに人が?」
『人ではない。妖狐じゃ』
「ようこそようこ?」
『ぬ?』
……いやいや、何を普通にボケているか。そうじゃない。妖狐……妖怪? 狐の?
「ここでまず信じる信じないの選択があるのだろうけど、面白そうなので信じる一択で!」
どうしてだろう、そこはかとなく妖狐が引いてる気がする。見ず知らずの妖怪を引かせる己の会話センスに惚れ惚れする。
『そ、そうかや。それなら話は早いのじゃ。死にたくなければ祠を破壊せい』
「まあまあ、その前に質問させてくれ。妖狐ってのはアレですか、玉藻前に化けた九尾の狐とかっていう有名なアレですか」
『ああ、この島国でそういうのがおったらしいのぉ。ワシは大陸におったので詳しくは知らんが、噂は届いておったぞ』
大陸……中国か。てことは中国産の妖狐か、コイツは。
「その大陸の狐がどうして日本の地下深くにいるんだ? 祠ってことは……封印か何かされてんのか?」
びくん、と妖狐が一瞬はねた。
『な、なんのことかちっとも分からんのじゃ。さっぱりなのじゃ』
「嘘が下手すぎです」
『う、嘘なんかじゃないのじゃ! 封印もされてないのじゃ! それとは全然関係ないのじゃが、祠を破壊するのじゃ!』
「祠を壊すと解放されるんですね」
『ぬなっ!? き……貴様、ワシの心が読めるのかや!?』
「妖狐ってのもピンキリでダメな妖狐もいるんだなあ。初めての妖怪がダメなのかぁ。少し残念だ」
-
『ダメとか言ってはダメなのじゃあーっ!』
「はっはっは。あー愉快だった。さて、んじゃ俺は帰るな」
『帰ってはダメなのじゃ、ダメなのじゃーっ! その前に祠を、祠をーっ!』
妖狐は俺を掴んで引きとめようとした。だが、その手は俺の身体を通り過ぎ、虚空を掴んだ。
「…………。うわあああーっ! おーばーけーっ!!!」
『違わいっ! 幽体だけ外に出してるだけじゃ! 本体は未だ封印されてるのじゃ!』
「ああやっぱ封印されてるのか」
『はうわっ!? ぬ、ぬぅ……この童、神童かや?』
「あー、ちょっといいか? さっきから人を童々といってるが、俺は子供ではないよ?」
『何を言ってのじゃ。1000歳をゆうに越すワシからすれば、人など皆童じゃ』
「うわっ、超ババアだ!」
『ば、ばばあではないのじゃ! 人生の先輩に失礼じゃぞ貴様!』
「ババアだババア、スーパーババア! ビームとか撃てる?」
『撃てんのじゃ! ……びーむってなんじゃの?』
ちょっと小首を傾げて訊ねる超ババア。あら可愛い。
「なんかビーってしてるの」
『全く分からんのじゃ……』
「詳しくはググれ」
『また分からん単語を! 貴様こっちは封印されとるってことを念頭に入れて話すのじゃ!』
「googleで検索しろってことだ」
『説明されたのに分からんのじゃうわーんっ!』
「ああ泣かしてしまったこのロリババアは可愛いなあウヒヒヒヒ」
『全く慰めておらんっ! 尋常ならざるほど怖いのじゃ! 寄るな、痴れ者!』
妖怪に怯えられた。悲しい。
「まあいいや……ともかく、帰るな。んじゃ、元気で」
『だから、待つのじゃってば! ……ああそうじゃ。貴様、どうやって帰るつもりかえ?』
「え?」
『ここは地下深き我が閨。どうやって地上まで戻るつもりかえ?』
妖狐は余裕を取り戻したようで、ゆったりした所作で俺に伝えた。
「どうって……いや、普通にワープして」
-
『わーぷ?』
「ここから地上まで一瞬に移動する技術だ。それを行える道具が今、俺のポケットの中に入ってる」
『え……えええええっ!? えっ、今の技術ってそんなに発達してるのかや!?』
「うん」
当然そんなわけありませんが、話のイニシアチブを渡さないために嘘を吐く。あと、その方が楽しそう。
『ど、どしよ……え、えっと、で、でも、準備に時間がかかったりする……じゃろ?』
「一秒もいりません。あ、秒ってのは、……ってくらいの時間だ」
『すぐではないかや!? あ、あの……わ、わーぷ? する前にの? ちょちょっと、祠を破壊してはくれんかの?』
「破壊するとお前の本体が解放されるんですね」
『さっ! さ、されんのじゃよ? え、えっと、景観が悪いから壊して欲しいだけなのじゃ。ほ、ほんとじゃよ?』
「嘘だったら解放された瞬間に1ピコにまで分解する」
『なんかまた分かんない単位出されたけど分解ってのは分かっちゃってとっても怖いのじゃうわーんっ!』
当然そんな凶悪武器なぞ持っていないが、そんなことは妖狐は知らないので全部信じて泣いちゃってあら可愛い。
「ああまた合法ロリを泣かしてしまった。この合法ロリは可愛いなあウヒヒヒヒ」
『ううう……ちょっとは慰める努力を見せるのじゃ、愚か者ッ! なんだかずっと怖いのじゃ!』
「はいはい、ごめんな」
触われはしないが、見た目は頭がある箇所をなでなでする。
『ぬー……あ、あの、の? 本当は、祠を壊すとワシの本体が解放されるのじゃ。う、嘘じゃったが、いま本当のことを言ったから分解せんの? の?』
「そうだな。本当のこと言ったし、特別に半分解にしとくよ」
『半分されたら充分死んじゃうのじゃ、あほーっ! ぬーっ!』
「あーはいはい。分解しないよ」
『よかったのじゃー。解放されたはいいが即分解では、何のために何年も封印されたか分からんでのぉ』
「あ、そだ。封印っつってるけど、なんで封印なんてされたんだ? 何か悪さでもしたのか?」
『ふふ……よく聞いてくれたのじゃ。時の権力者に憑りつき、悪政の限りをつくしたのじゃ! いやー、楽しかったのー♪ ……ま、まあ、見つかって封印されたが』
「にゃるほど、悪か。やっぱ封印しとこ」
『あああーっ!? ちっ、ちが、違うのじゃ! え、えっと……お、お花畑を荒らした……のじゃ?』
「あら可愛い。それなら封印を解いてあげる……わけねーっ!」
『ひゃうわーっ!?』
一瞬すごい笑顔になった妖狐だったが、ものっそい驚いていた。
「ていうかだな、嘘がお粗末すぎだ。もうちょっと頑張れ。じゃないと分解する」
-
『怖いのじゃ怖いのじゃ怖いのじゃーっ! 人をすぐに分解しようとするでない、たわけっ!』
「人じゃないじゃん、お前」
『妖怪を分解するでないっ!』
「ああ、それならいい」
頭付近をなでなでする。だが、実体がないのでどうにもこうにも。
『ぬう……の、のう。さっきからしてるそれ、なんじゃ?』
「ああ、なでなでだ。頭をなでると女性は喜ぶらしいのだが、生憎と未だ幽体にしかしたことないので効果のほどは未だ分からずだ」
『そ、そうかや。……ま、まあ、封印から解かれたら特別に受けてやってもよいぞよ?』
「何年封印されてるのか知らないけど、埃まみれだろうし嫌だからお断りします」
『貴様は悪魔かや!?』
「人です」
『うぬぬ……ふんっ! じゃあもういいのじゃ! なでなでなどされたくもないわいっ!』
「そうか。まあそれはそれとして、ぼちぼち俺は帰」
『だから、帰ってはいけないのじゃーっ! それではワシはまた何百年と待たねばならぬではないか! もう一人ぼっちは嫌なのじゃあーっ!』
今度こそ本音らしきものが出た。
『こんな真っ暗なところで、ずーっと一人だったのじゃあ……。一人は嫌じゃ、嫌なのじゃあ……』
ぐすぐすとぐずりながら、少女は俺に訴えた。多少なりとも良心が痛む。
「うーん……解放してやりたいけど、でもなあ。さっきの話を聞いた限りじゃ、また悪行を働かない保証もないしなあ」
『しないのじゃ、もうしないのじゃ! 絶対しないのじゃ! 約束するのじゃ!』
「信用してやりたいが、口約束じゃあなあ……うーん、何かいい方法はないものか」
『ぬうう……あっ、そうじゃ! あのの、ワシが貴様の使役獣になるのじゃ!』
さも名案だ、とでも言いたげに妖狐は目を輝かせた。
「何スか、使役獣って」
『ふふーん、そんなのも知らないかや? 貴様はアホアホよのぉ♪ ……あっ、ちっ、違、違うのじゃ! ワシがアホアホなのじゃ! じゃから衣嚢を探ってはいかん!」
ポケットを探って分解装置を探すフリをしたら死ぬほど怯えられた。
『え、えっと、の? 使役獣というのは、人がワシら妖怪を扱えるようにする術じゃ。本来は人が行う術なのじゃが、ワシはすごい妖怪なので貴様にその術を教えてやるのじゃ。感謝するのじゃよ?』
「扱うってコトは……お前の行動を俺の意思で制限できたりするってことか?」
『そうじゃ! なんじゃ、呑み込みが早いではないか。そしたら貴様はワシの悪行を防げるから問題ないし、ワシも解放されてお互い大喜びじゃ! じゃから、いいじゃろ? の、の?』
「ふむ……」
それが本当なら、断る理由もない。あと、女の子を使役するって超楽しそう。
-
「よし、じゃあそれをしてみよう。あ、一応言っておくが嘘だったら分解」
『嘘じゃないのじゃ! すぐに分解しようとしてはいかんのじゃ! 貴様は軽く言っておるがこちらは毎回怖くて泣きそうになるんじゃぞ!?』
「わはははは!」
『わはははじゃないのじゃーっ! もーっ、いいから使役の契約をするのじゃ! この祠に手を置くのじゃ』
「ん、こうか?」
『そう。そしてこう唱えるのじゃ』
少し間を置いて、妖狐は小さな声で呟きだした。
『……一二三四五六七八九十 布留部 由良由良止 布留部』
「え、えっと……ひと ふた み よ いつ む なな や ここの たり ふるべ ゆらゆらと ふるべ」
奇妙な言葉の羅列を紡ぐ。意味は分からないが、何か懐かしいような、心に染み入るような、不思議な言葉だ。
「熱ッ!?」
そんなことをぼんやり考えていると、手に衝撃が走った。見ると、手の甲に何やら紋様が浮かんでいた。
「うわ、中二病だぁ……」
『また分からぬ単語を……これで、ワシは貴様の使役獣じゃ。不本意じゃが、以後よろしくの、ええと……貴様のことをなんと呼べばいいかの?』
「ご主人様一択で」
『…………』
とても不本意そうだが、俺は大満足。
『と、とにかく契約を果たしたので、早く出してほしいのじゃ。とっととこんな暗がりからおさらばしたいのじゃ!』
「あー……まあいいか」
ちょっと怖いが、契約とやらをしたので大丈夫だろう。祠をガンガン蹴って破壊を試みる。
『そうじゃ、その調子じゃ! 頑張るのじゃ、ご……ご主人様!』
「フヒヒィ、フヒヒィ!」
『怖いのじゃあーっ! 明らかに契約相手を間違ったのじゃあーっ!』
なんか言ってるけど、ご主人様ぱぅあーにより祠の支柱の破壊に成功。
『おおっ! ついに……ついに解放される日が来たのじゃ!』
妖狐の幽体が祠に吸い込まれ、そして次の瞬間、盛大に煙と祠の破片を撒き散らし、祠から妖狐が姿を現した。
「ふふ……ふわーっはっはっは! とうとう、とうとう解放されたのじゃあーっ!」
「うるさい」
「ふぎゃっ!」
目の前で嬉しそうに叫んでる迷惑な妖怪の頭を軽く叩く。
-
「ううう……痛いのじゃ、ご主人様」
「我慢しろ。さて、脱出するか」
「そじゃの。ご主人様、“わーぷ”をするのじゃ」
「あ」
そっか。そういやそんなこと言ってたな。
「どしたのじゃ、ご主人様? わーぷせんのかえ?」
「あれ、嘘」
「……え?」
「そんな装置まだ発明されてねえ。あと、分解とかも嘘。そんな殺人兵器持ってねえ」
「な……なんじゃとおーっ!? えっ、じゃあワシは騙されて主従契約しちゃったのかえ?」
「やーいばーかばーか」
「な……なんでそんな嘘つくのじゃーッ! 今すぐワシを解放するのじゃーッ!」
「祠からは解放されたからいいじゃん」
「ちっともよくないのじゃ! あっ、そうじゃ! ……こほん。ワシを解放せぬと食い殺すぞよ!?」
「契約したらお前の行動を制限できるらしいが、そのうえで俺を食い殺すことできるの?」
「できないのじゃうわーんッ!」
「ああまた泣かしてしまった。何度見てもそそるなあウヒヒヒヒ」
「幽体を通してではなく生で見るとより一層気持ち悪いのじゃうわーんっ!」
失敬な。ともあれ、可哀想なので頭をなでてなぐさめる。
「ぐすぐす……ううーっ、もういいのじゃ。騙されてしまったが、こんな真っ暗で何もない所で独りでいるよりマシなのじゃ。……しかし、妖怪を騙すとは妖怪より悪辣よのぉ」
不愉快なので妖狐のほっぺをぐにーっと引っ張る。
「ふにーっ!? ふににーっ!?」
「さて、妖狐さん。お前の力でこっから脱出できない?」
「ふにに……ふがっ。なんでワシのほっぺを引っ張るかや!?」
「引っ張りたいと思ったから。で、どうなんだ?」
「ぬぅ……ま、まあできなくもないぞよ。やってほしいかや? あっ、そうじゃ! やってほしいならワシとの契約を白紙に戻すのじゃ。これは取引なのじゃ!」
「知らん。いいから俺を上まで運べ。命令です」
「了解なのじゃご主人さまーッ!」
なんか半泣きで叫びながら、妖狐は俺を見た。
「ぐすぐす……じゃあ、ワシに掴まっててほしいのじゃ」
-
そう言って、妖狐は狐の耳としっぽを生やした。これにはちょっとびっくり。
「すげぇ! 妖怪みたい!」
「だから、妖怪じゃってば! ってば!」
「二回言うな。まあいいや、こうか?」
むぎゅっと妖狐のしっぽを無遠慮に握る。
「ふにゃ!? ち、違うのじゃ、違うのじゃ! 今から変化するから、それから掴まるのじゃ! ……あ、あと、しっぽは触ってはいかんのじゃ。しっぽは大事なのじゃ」
妖狐はしっぽを振って俺から逃れると、自ら抱きしめるようにしっぽを持って俺に訴えた。
「分かった、聞き流す」
「なんというご主人さまに当たってしまったのじゃー……」
絶望に身を震わせながら、妖狐は身体を縮ませた。すると、俺の目がおかしくなったのか、一気に身体が膨れ上がり、同時に全身から毛が生えた。気がつくと、妖狐は身の丈5mを越す巨大な狐になっていた。
その巨大な狐は俺を軽く咥えると、自分の背中に乗せた。
「すげぇ! 毛深!」
『狐じゃから当たり前なのじゃ! それよりご主人さま、今から一気に駆け上がるので、しっかり毛を掴んでてほしいのじゃ。落ちても知らんのじゃ』
「え」
という暇もあろうか、妖狐は滑るように湖面を走り、そして俺が落ちた穴の真下までくると、そのまま重力を無視して駆け上って行った。
すさまじい風と重力が俺に襲い掛かる。とてもじゃないが目なんて開けてられない。振り落とされまいと、ただ必死で妖狐の毛に掴まるだけだ。
そのうち、穴を抜けた。そのままの勢いで空に飛び出す。下を見たら……うお、人がゴミのようだ。超高え!
しゅるり、と毛が俺の手の中で小さくなっていく。気がつくと、狐は少女の姿になっていた。
「おお……月じゃ。何十……いや、何百年ぶりの月かのぉ。何年経とうとその姿は色褪せず美しいのぉ」
「あのー、それより妖狐さん。絶賛落下中なんですが」
上昇の勢いはすでに消えて久しく、ゆっくりと重力に引かれている真っ最中です。
「……助けて欲しいかの? じゃあ、ワシを解放するのじゃ!」
「知らん。いいから俺を安全に地上に下ろせ。命令です」
「うう、ううう、ううううう……了解なのじゃご主人さまーっ!」
半泣きで魔術的な何かを唱える妖狐。途端、俺たちの落下スピードが目に見えて減速した。
「これで大丈夫なのじゃあ……ぐすぐす。酷い話じゃ。ワシはもう二度と解放されんのかのう」
「大丈夫。俺が寿命で死ぬのが早いか、お前が過労死するのが早いかのチキンレースが今始まったんだ。たかだか70年程度、妖怪ならヘッチャラさ☆」
「もっかい地下で封印された方がマシなのじゃあーっ! うわーんっ!」
半泣きどころか全泣きの妖狐の叫びが闇夜に吸い込まれていった。
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>>576
隅っこもちゃんと見てるぜ☆GJ!!
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>>576
アニメ化決定まだー??
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>>576
GJ!! 面白すぎだろw
ところでgoogleですみっこって入力すると変換候補に…
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アニメ化映画化はまだか!
GJ!
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ババアかわいいwwwww
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>>576
これはいいwwwww
しかしあれだな、>>561も言ってるが
お前さんの世界は年齢を重ねるほどダメな人になる世界かw
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そういや、名前忘れたがJCの子はしっかりものだったな
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>>576
某妖怪漫画好きの匂いがする…GJ。
もっとなでなでもふもふするべき。
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いずみんに手ぇ繋ごうって言ったら
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1691.jpg
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>>585
GJ!!
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さむ…
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1740.jpg
-
>>587
とりあえず、ストーブ(という文字の部分)に頬擦りしたwwwww
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色塗りはめんどくs…時間かかるからとりあえず線画だけ
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1742.jpg
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5回は抜いあれ婦警さんこんなとこでなにしてんですk(ターン
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>>589
冬場にそんな恰好したら寒かろうに…
どれ、僕が暖かめt
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色塗った版
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1743.jpg
なんかスレを半私物化してるな
みんな規制されてないのか…
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>>592
これはエロいな
2chが今混乱してるんで、しばらくこっちで楽しもうぜ
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ふぇぇ…
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1744.jpg
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>>594
なぐさめてあげるからこっちおいd
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>>595まてその子を慰めるのは俺んだ
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慰めるのは俺に任せろ。
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俺が彼女を慰めていますが何か?
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・ツンデレと晴れ着姿
ピンポーン
[あら? タカシ君。明けましておめでとう。今年も宜しくね]
「おめでとうございます。こちらこそ、宜しくお願いします。えーと……勝美さん、いま
すか? 美府神社に初詣に行くんで、もし良かったら一緒にと思って」
[いるわよ。ちょっと待っててね。勝美―っ。タカシ君が初詣に行きましょうだってー]
『でけぇ声出すんじゃねーよ!! お袋のバカ野郎が!!』
[親に向かってバカ野郎はないでしょ。コラ]
ペシッ!!
『あいてっ!! お袋が近所に聞こえるような声で呼ぶからじゃねーかよ』
「よお。勝美。明けましておめでとう」
『正月からタカシの顔とか、全く持っておめでたくねーな』
[コラ。失礼な事言わないの]
「ああ。いいんですよ。もう恒例みたいなもんですから」
[でも、いい加減もう年頃の女の子なのに…… 言葉遣いは相変わらず荒いし、困っちゃうわ]
『うっせーよ。親とはいえ、大きなお世話だっつーに。全く、二言目には女の子女の子っ
て、こういう言葉遣いの女がいたっていいじゃねーか』
「ま、ま。それより勝美。初詣行かないか? 神社でおみくじ引いてさ。甘酒も貰いに行こうぜ」
『アホか。何であたしがお前なんかと初詣行かなきゃなんねーんだよ。さみーしめんどく
せーし、ゴメンだ。ゴメン』
ペシッ!!
[コラ、勝美。せっかくタカシ君が誘ってくれてるのにその断り方はないでしょ。どうせ
グータラしてるだけなんだから行って来なさい]
『イテッ!! そんなもんあたしの自由だろうが。つか、ポンポン叩くんじゃねーよ』
「いや。俺は嫌ならいいけどさ。去年の初詣の時に来年も誘えって言ったのは勝美の方じゃん」
[あら? 意外と勝美も積極的じゃない。じゃあ今のは照れ隠しなのね]
『違うっ!! つか、あたしそんな事言ったか? 覚えねーぞ?』
-
「いやいやいや。中学に入ってから二年間、俺と別々に初詣行ってたら、前の年までずっ
と良かったおみくじが連続で凶引いたじゃん。それで、去年は俺と一緒に言ったら大吉で
さ。俺と一緒だとおみくじ運がいいらしいから、来年も一緒に来いって。まさか忘れてた?」
『あー。そういやそうだった。忘れてたぜチクショウ……』
「ま、勝美がめんどくさいっつーんなら、山田でも誘うけど」
『ちょ、ちょっと待て。おみくじで大吉引く為だ。仕方ねーし、行ってやるよ。ちっと待っ
てろ。コートと財布取って来るから』
[待ちなさい。勝美]
ガシッ!!
『なっ……何だよ、お袋?』
[あなた、お正月にまさかその格好で行く訳じゃないでしょうね?]
『は? 別にこれでもいいだろ。別に部屋着でもないんだし』
[何言ってるの。ちゃんと晴れ着があるでしょう。あれ、着て行きなさい。おばあちゃん
が送ってくれたのが]
『冗談じゃねーよ。あんなめんどくさいもん着れるか』
「何? 勝美、晴れ着持ってるのか?」
[そうなのよ。それなのに、この子ったらどうしても着るの嫌だって]
「そうなんですか。それは是非、僕も見たかったですね。きっと似合うと思うんですけど」
『バカな事言ってんじゃねーよ!! あたしが晴れ着着たって似合うわけねーだろ。そん
なん、なんつーんだ? えーっと……そう、馬の耳にも念仏っつーんだよ』
「それ言うなら、馬子にも衣装じゃね? でも勝美なら絶対そうはならないと思うけどな」
『いーや。なるね。絶対なるから』
〔ちょっと。何玄関先で騒いでんの? あ、タカシさんだ。明けましておめでとうございます〕
『テメ……舞衣!! このヤロ。都合よく出てくんな!!』
「明けましておめでとうございます。舞衣ちゃん。舞衣ちゃんは晴れ着なんだね」
〔はい。せっかくおばあちゃんが送ってくれたし、写真撮って見せてあげようって思って。
どうですか?〕
「いや。良く似合ってるよ。可愛いよね」
〔ありがとうございます!! タカシさんに褒めて貰って嬉しいです〕
『フン。中坊相手にデレデレしてんじゃねーよ。みっともねーなお前は』
-
「いや。だって可愛いものは可愛いし」
〔お姉ちゃん、妬いてるんでしょ? あたしがタカシさんに褒めて貰ったからって〕
『やっ……!?(//////////////) 誰が妬くかこのバカ!! ひっぱたくぞ!!』
〔ヤダ。お姉ちゃん怖ーい。タカシさん。何とかしてよ〕
「え? そこで俺に振られるの超困るんだけど」
[いい加減になさい勝美。ほら、あなたも着替えて]
『だからいいって言ってるだろあたしは!!』
〔そんな事言わないの。お姉ちゃんもタカシさんに褒めて貰いたいでしょ? ほらほら〕
『誰がそんな……褒めて貰いたくねーし。てか、離せコラバカ!!』
[タカシ君。そういうわけだから、勝美の着付けが終わるまで、ちょっと上がって待って
てくれる? 舞衣は、勝美を連れて行ったら、コーヒーでも出してあげて]
〔はーい。ごめんなさいね。こうでもしないとお姉ちゃん。絶対に言う事聞かないんで〕
「いや。僕も勝美さんの晴れ着姿が見れるなら、一時間や二時間くらい待つ事は全然平気ですから」
〔だって。お姉ちゃんの幸せ者〕
『ふざけんなこのバカーッ!!』
[タカシ君、ごめんね。お待たせしちゃって。勝美の準備、出来たわよ]
「あ。本当ですか?」
〔ほらほら。お姉ちゃん。早く〕
『だーっ!! ウゼェよお前は。いちいち引っ張んなくても自分で出るって』
〔じゃじゃーん。お姉ちゃんの登場でーす〕
『変な前置き付けんじゃねーっ!! 全く……』
「……勝美」
『……よぉ。御覧の通りだよ。言ったろ、似合わねーって。だから止めとけって言ったの
によ。ご期待に添えなくて悪かったな』
「……いや」
『え?』
「いや。勝美さ。自分の事分かってねーよ。すごく似合ってるから。ああ。何かこう、純
粋に綺麗だなーって、惚れ惚れと見ちまった」
-
『なっ……ななななな……おまっ、その……何言ってんだよ。お世辞も大概にしろよな。
お前に褒められると背中痒くなって気持ち悪いし』
「いや。褒めてるんじゃなくて、純粋な感想で」
[ほら。良かったじゃない勝美。タカシ君に褒めて貰って]
〔だから言ったのに。お姉ちゃんも似合ってるよって。でも何か、タカシさん。あたしよ
りか褒め方が真剣なんだもん。いいなー〕
『な……アホかお前は!! こんな奴に褒められたって嬉しくも何ともねーだろ。歯の浮
いたような事ばっかでよ。どこが真剣なんだよ』
「いや。一応真面目なつもりなんだけど」
〔むしろお姉ちゃんがおかしいよ。ま、照れてるだけなんだろうけど〕
『誰が照れてるってんだコラ!!』
〔ヤダもう。そんな怒り方しないでよ。せっかくの和風美人が台無しじゃん〕
[ほらほら、勝美。写真撮るからこっち向きなさい]
『何で写真なんか撮らなきゃなんないんだよ。ウザってーな』
[何言ってんのよ。贈ってくれたおばあちゃんに見せてあげなきゃ。ほら、笑って]
『こんな状況で笑える訳ねーだろ!!』
[しょうがないわねー、この子ったら。じゃあ、せめて澄ましてなさい。はい、チーズ]
〔どれどれ? お母さん。見せて〕
[はい。結構綺麗に撮れたわよ]
〔わー、ホントだ。タカシさんもほらほら〕
「へー。こうして見ても、やっぱり綺麗だなー」
『アホかっつーの。目の前に本物がいるんだから、どっち見たって変わりねーのによ』
〔あ、お姉ちゃん。デジカメ画像の自分に嫉妬してる。ほら、タカシさん。もっとお姉ちゃ
んを見てあげて〕
『なっ……!? バカ!! 違うっつーの!! いい加減にしやがれ!!』
〔うわ。お姉ちゃんこわっ!! タカシさん助けてーっ!!〕
[二人ともいい加減にしなさいっ!! タカシ君を困らせるんじゃありませんっ!!]
「ああ、いえ。僕は別に大丈夫ですから」
『ちぇっ。親の前だからって猫被りやがって』
[それじゃ、もう一枚。今度はタカシ君と一緒に撮りましょうね]
-
『いーよ、もう。大体こんな奴と一緒になんて写りたくねーし』
[こんな奴なんて、失礼な事言わないのっ!! ほら。並んで並んで]
「勝美。とりあえず今はおばさんの言うとおりにしようぜ。どのみち話がこじれるだけだし」
『くっ…… し、仕方ねーな。お前とツーショットなんて、これっきりだからな』
「分かってるよ。勝美がそうしたいならな」
『また卑怯な言い草しやがって』
[二人ともこっち向いて。ほら、笑顔見せて。はい、チーズ]
『全く…… くだらねー写真撮りやがって。もう着替えていいか?』
[何言ってるのよ。初詣行くんでしょ? 何のためにタカシ君が待ってたと思ってるのよ]
『やっぱこんな格好で出掛けるとかマジウゼェから。もう脱ぎたいんだけど』
[バカ言ってんじゃないの。ほら、行った行った]
『ウソだろ? マジかよ? 冗談じゃねーぞ』
「大丈夫だって。すっげー似合ってるから。近所の人が見ても、絶対見紛う事間違いなしだからさ」
『そういう問題じゃねーよっ!! ホントにこの格好じゃなきゃダメか?』
[当然でしょ。いい加減観念しなさい]
「だな。ほら、行こうぜ勝美」
『ちょおっ!? 手!! 手ぇ引っ張んなってば!!』
〔いーなぁ。お姉ちゃんてば…… あたしもタカシさんみたいな男の子にエスコートされ
て初詣行きたいなぁ〕
[舞衣も頑張って素敵な彼氏を見つけなさいな。あなたもすぐに見つかるわよ]
〔ぶーっ……〕
『待てよ。待て待て。いい加減待てってば!!』
「ん? ああ、悪い。ちょっとペース速かったな。いつもの勝美のペースで歩いてた。ゴメン」
『そういう意味じゃなくってさ。その……』
「何だよ?」
『いや。やっぱその……おかしーだろ? あたしみたいのがこんなおめかししてさ。知り
合いとか見られたら……』
-
「気にする事ないって。確かにそりゃ、驚くと思うよ。いつもはラフな格好の勝美が、こ
んな綺麗になってたらさ」
『うっせーな。あれはあれでちゃんとオシャレしてんだよっ!! でも、絶対笑われるっ
て。こんなカッコ』
「笑われないし。万が一そんな奴がいたら、俺が怒ってやるから」
『何カッコ付けてんだよ。超似合わねーぞ、そんなの』
「ハハハ。まあな。でも、勝美は堂々としてりゃいいんだよ」
『無理!! そんなの絶対無理だってば!!』
「何で?」
『何でって、その……えっとだな…… あー、もうっ!! 言やあいいんだろ? ぶっちゃ
け恥ずかしいんだよ!! 分かったかちくしょうっ!!』
「別にそんな恥ずかしがる事ないと思うんだけどなあ」
『うっせーな。あたしが恥ずかしいんだから仕方ねーだろ!! だからさ、その……えっ
と……何とかしてくれよ!!』
「いや。でも何とかしてくれって言われてもなあ……」
『分かったよ。いーよ。確かにその通りだよ。だったら、その……せめて、背中……かっ、
借りてもいいか?』
「背中? いいけど、どうすんだ?」
『せっ……せめて、顔を隠す。こうすれば、せめて知り合いにはバレねーだろ』
ピトッ……
「そんなんでいいのか? 背中におでこくっ付けたくらいじゃ、横から見たら勝美だって、
知ってる奴ならすぐ分かっちまうぞ」
『今はいいんだよっ!! あとは、バレそうになったら袖で顔を隠すからよ。袂が長いか
ら、十分だろ』
「まあな。しっかし勝美も変な所で恥ずかしがりやなんだな。ま、そういうとこ可愛いけどさ」
『かっ……可愛いとかゆーな!!(///////////) てか、バカにしてんだろそれ?』
「してないしてない。それにしても俺らって……」
『な、何だよ? あたしらがどうしたんだよ? 変な所で切るなよな』
「いや。これ言ったら、絶対勝美怒りそうだなって」
-
『は? よく分かんねーよ。いいから言え。言い掛けておいて途中で止められるのって気
持ち悪いんだよ』
「んじゃ、まあ…… いや。この体勢ってさ。多分、外から見たら、俺らって仲の良い恋
人同士に見えるんじゃないかなー、なんてさ」
『んなっ!? こここっ……こいっ……びととかっ……訳の分かんねー事言ってんじゃねー
ぞっ!! このクソ馬鹿野郎っ!!』
「あいてててててっ!! 勝美、痛い痛い。痛いから脇の肉掴むなって」
『うっせーっ!! おおお、お前が悪いんだからなっ!! このバカバカバカ!! バカ
野郎がっ!!(////////////////)』
しかし、罵りながらもそのまま初詣から帰るまで、タカシの背中にくっ付いて離れない
勝美さんがいたとか。
終わり
書いてて思ったが、恥ずかしがりやで乙女な勝気さんマジかわいいwwwww
あと、お題出しはここでやるの?
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読む前に貼り付ける
>>594
こうですか?よくわかりません。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1745.jpg
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お前らGJ
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>>606
めっちゃかわいい
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>>605
ありがとうございます
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最近絵師は友子or山田なんじゃないかと思えてきたGJ
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へぇ…カナミは生なのに私は違うんだ…
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1746.jpg
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>>611
GJ!
何気に賑わってていいのう
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>>611
そのネタww
なんか卑わターン
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俺のボクっ娘がこんなに色っぽいわけがない
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1751.jpg
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>>614
今まで子供扱いしていたのに急に大人っぽくなるとドキッとするよね
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>>614
これは色っぽいwwww
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本スレで背中だのなんだの散々言われて、ちなみんが一言もの申すようです
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1763.jpg
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>>617
あれ? ちなみん。何かそのビキニのブラからパッドが見えゴブッ!!
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薄い胸とかって、その相手と良い仲にでもならんと分からんよな
寧ろそれを気にしている仕草だとかに激しく萌える訳でして…
要するに>>617はGJ!ってことです
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>>617
男は胸の大きい小さいは気にしないのに、とても気にしてるツンデレとても可愛いです
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【ツンデレと豆まきをしたら】
今日は節分です。誰がどう言おうとそうなんです。信じれば夢は叶うんです!
そんなわけで節分なのだが、高校生ともなるとそういった行事にも疎くなり、結果俺の家の前で待ち構えていた知り合いの中学生、ふみの襲撃に遭う羽目になる。
「鬼は外。鬼は外」
呪文のように繰り返しながら、ふみは俺の鼻に豆を一粒ずつ詰めた。
「やめてください。すごく迷惑です」
「福は内、福は内」
「文言の問題ではなくて!」
あまりに詰められると取れなくなるので、ふみの頭に手を置いて攻撃を防ぎつつ、空いてる手で鼻をふんってする。ぱひゃーっと豆が飛んでいった。
「道端に捨てるなんて、おにーさん極悪です。後でおにーさんが美味しくいただいてください」
「俺はTVスタッフではないので美味しく食べない」
「やっぱりおにーさんは極悪です」
「いきなり人の鼻に豆を詰める奴は極悪ではないのか?」
「おにーさん、今日は節分です」
都合の悪い話を完全無視し、ふみは話を改めた。
「ああ、そうみたいだな。豆の攻撃力をひしひしと感じたところだ」
「どうせおにーさんのことです、節分にかこつけ中学生の豆をいただきだぜーとか言いながら私の家に押しかけ、私の豆をいただくつもりだったろうから、私から来てあげました」
とても人聞きの悪い台詞を玄関先で吐かれたので、ふみを小脇に抱え、ものすごく急いで家の中に入り、そのままの勢いで自室へゴー。
「はぁはぁ……あのなあ! 世の中には近所づきあいってのがありまして! ていうかさっき隣の爺さんが庭で盆栽いじりしてまして!」
「ここで私の豆を?」
しつこいので、ふみのどたみにチョップの刑。
「むぅ。痛いです、おにーさん」
「当然の罰だ」
「まあ冗談は置いといて、おにーさん。豆をまきたいです」
「どうぞ自宅で行ってください」
「……一人でしてもつまんないです」
「あ……」
そうだった。こいつの両親は帰ってくるのがいつも夜遅いので、いつも一人で過ごしてるんだった。
-
「あ、あのな、ふみ。折角だから俺と一緒に豆まきしよっか?」
「嫌です」
「…………」
人が折角歩み寄ってやったというのに、何この天邪鬼。
「土下座するなら考えてやらないでもないです」
「えい」
とりあえず両手でほっぺを引っ張る。……ええい、引っ張られても無表情とはどういうことだ!
「がっきゅううんこ」
「女の子が言う台詞じゃありません!!!」
最終兵器を持ち出されたため、ほっぺ引っ張りを中止。くそぅ。
「学級文庫の何が問題なんですが、おにーさん?」
「ええい、分かってて言ってやがるな」
「ふふん。おにーさん如きが私に歯向かうなんて10年早いです」
「はぁ……なんか疲れた。ちょっと休む」
「根性なしです、おにーさん」
ベッドに腰掛けると、俺のすぐ隣にふみも座ってきた。
「あの、ふみさんや。少し近くないですかね?」
「至近距離から確実におにーさんを仕留めるためです。致し方ないのです」
「あれ、殺されるの?」
「最近の豆の殺傷能力を侮ってはいけません。おにーさん如き低能力者、豆の一つでダウンです」
「それもう食料の範疇を超えてるよね。ていうか低能力者言うな」
「……しかし、おにーさんが帰ってくるのが遅かったため、待ちぼうけの私は暇つぶしに豆をぽりぽり食べており、結果おにーさんの鼻に詰める分しか確保できませんでした」
「鼻に詰めず撒けばよかったのに。ていうか、別に家の前で待たなくても俺の家に入ってりゃいいのに。いつでも来ていいんだぞ?」
ふみの頭をうにうにとなでる。
「なでないでください。子供じゃないです」
やや不機嫌そうにふみは俺を睨んだ。
「中学生は子供だろ?」
「……分かりました。私はまだ子供なので、次から勝手におにーさんの部屋に入り、子供らしく部屋を探検したいと思います」
ふみをなでていた手が止まる。妙な汗が出てきた。
-
「い、いや、あの、前言撤回というか、その、居間で待つと言うのも手だと思うぞ? 母さんがおやつ出してくれるだろうし」
母さんは専業主婦で、かつ可愛いもの好きなので、ふみを大歓迎している。だからと言って可愛くないからと俺を虐待するのは勘弁してください。
「じゃあ、おやつを食べてからおにーさんの部屋を探検します。子供なので好奇心旺盛なんです」
「……すいません俺が悪かったです。ふみは大人ですので探検しないでください」
俺の負け。首を折ってふみに敗北を伝える。
「最初からそう言えばいいんです。これだからおにーさんは馬鹿なんです」
「はいはい、すいませんでした」
謝りながらふみの頭をなでる。俺の謝罪に気を良くしたのか、ふみはばふーと鼻息を漏らした。
「それにしても、どうしましょうか、節分」
「もう全然豆残ってないのか?」
「ええと……あ、一個だけ残ってました」
ふみがポケットを探ると、一粒だけ転がり出てきた。
「一個かぁ……それじゃ撒いても仕方ないなあ」
「……あ、ないすあいであ。まず、おにーさんにこの豆を渡します。鬼は外」
ぺそっと豆を手渡された。そのついでだか知らないが、握手もされた。
「この握手は?」
「節分により外へ追いやられた鬼たちをおにーさんの手に封じてます」
「今すぐ手を離して! 嘘でも今日という日にやられたらなんか本当に入ってきそう!」
「これで鬼の手が完成です。おにーさんの中二病も満足で、おにーさんにっこり」
「勘弁してください!」
「おにーさんは、そんなに、私と手を繋ぎたくないんですか……?」(うるうる)
「一生繋いでいたいです!」
今日も俺は女性の涙に弱い模様。
「やめてください。迷惑です」
「…………」
「憮然とした顔のおにーさん、素敵です」
とても不愉快です。思った通り嘘泣きだったし。
「はぁ……んで、この豆はどうしたらいいんだ?」
「次に、おにーさんが福は内と言いながら私に豆を渡すんです」
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