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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 3●
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そう言って、妖狐は狐の耳としっぽを生やした。これにはちょっとびっくり。
「すげぇ! 妖怪みたい!」
「だから、妖怪じゃってば! ってば!」
「二回言うな。まあいいや、こうか?」
むぎゅっと妖狐のしっぽを無遠慮に握る。
「ふにゃ!? ち、違うのじゃ、違うのじゃ! 今から変化するから、それから掴まるのじゃ! ……あ、あと、しっぽは触ってはいかんのじゃ。しっぽは大事なのじゃ」
妖狐はしっぽを振って俺から逃れると、自ら抱きしめるようにしっぽを持って俺に訴えた。
「分かった、聞き流す」
「なんというご主人さまに当たってしまったのじゃー……」
絶望に身を震わせながら、妖狐は身体を縮ませた。すると、俺の目がおかしくなったのか、一気に身体が膨れ上がり、同時に全身から毛が生えた。気がつくと、妖狐は身の丈5mを越す巨大な狐になっていた。
その巨大な狐は俺を軽く咥えると、自分の背中に乗せた。
「すげぇ! 毛深!」
『狐じゃから当たり前なのじゃ! それよりご主人さま、今から一気に駆け上がるので、しっかり毛を掴んでてほしいのじゃ。落ちても知らんのじゃ』
「え」
という暇もあろうか、妖狐は滑るように湖面を走り、そして俺が落ちた穴の真下までくると、そのまま重力を無視して駆け上って行った。
すさまじい風と重力が俺に襲い掛かる。とてもじゃないが目なんて開けてられない。振り落とされまいと、ただ必死で妖狐の毛に掴まるだけだ。
そのうち、穴を抜けた。そのままの勢いで空に飛び出す。下を見たら……うお、人がゴミのようだ。超高え!
しゅるり、と毛が俺の手の中で小さくなっていく。気がつくと、狐は少女の姿になっていた。
「おお……月じゃ。何十……いや、何百年ぶりの月かのぉ。何年経とうとその姿は色褪せず美しいのぉ」
「あのー、それより妖狐さん。絶賛落下中なんですが」
上昇の勢いはすでに消えて久しく、ゆっくりと重力に引かれている真っ最中です。
「……助けて欲しいかの? じゃあ、ワシを解放するのじゃ!」
「知らん。いいから俺を安全に地上に下ろせ。命令です」
「うう、ううう、ううううう……了解なのじゃご主人さまーっ!」
半泣きで魔術的な何かを唱える妖狐。途端、俺たちの落下スピードが目に見えて減速した。
「これで大丈夫なのじゃあ……ぐすぐす。酷い話じゃ。ワシはもう二度と解放されんのかのう」
「大丈夫。俺が寿命で死ぬのが早いか、お前が過労死するのが早いかのチキンレースが今始まったんだ。たかだか70年程度、妖怪ならヘッチャラさ☆」
「もっかい地下で封印された方がマシなのじゃあーっ! うわーんっ!」
半泣きどころか全泣きの妖狐の叫びが闇夜に吸い込まれていった。
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