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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

1以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2008/01/17(木) 22:11:54 ID:Fi7UeqgM
プロバイダー規制や本スレの空気などでSSを投下できない人が、
本スレの代わりにこっちでSSを投下するスレ。
ごあー。

800以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/18(木) 23:46:57 ID:???

http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1279.jpg

801以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/18(木) 23:56:08 ID:RCuhVYJA
凄く…GJです…

802以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/19(金) 01:11:16 ID:???

なんなのこれ
なんなのいったい


なんでこんなに







なみだがでるの?orz

803以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 19:08:02 ID:Wnj/a9Zw
一週間遅れのホワイトデーネタ行きます

8041/10:2010/03/20(土) 19:08:24 ID:Wnj/a9Zw
(自炊)バレンタインデーにチョコを渡せなかったのにホワイトデーに男からプレゼントを貰ったツンデレ

 今日はホワイトデー。一ヶ月前に男の人にチョコを渡した娘だけが浮足立つ権利を持つ
日。そして私にはその権利はなかった。
「はい、友ちゃんこれ」
『わ、ありがとう別府君。ちゃんとお返しくれるなんて思わなかった』
「何言ってんだよ。こう見えても俺は義理堅いんだぜ」
『いやー。あんな義理丸出しのチョコにねぇ。中身何?』
「クッキーだよ。つっても、詰め合わせで買った奴を人数分に包み直しただけだけどな。
部活の女子にも返さなくちゃいけないから」
『何気に人気者じゃのう。お主は。え?』
「だーっ!! つっつくんじゃねえよ。欝陶しいな」
 そんなやり取りをこっそりとチラチラ眺めつつ、私は小さくため息をついた。
――あたしもチョコ……あげてたらなあ……
 実は私だって、タカシ宛にチョコを用意してはいたのだ。それも義理なんかじゃない。
ちゃんとしたのを。
――友ちゃんとか他の娘がタカシにあげてるのを見て、タイミングを逃してるうちに、渡
しそびれちゃったのよね……
 今更ながらに、あの日の苦い思い出が蘇る。今もあのチョコは、私の引き出しの奥にし
まい込まれたままだ。
――自業自得っちゃ、そうだけどさ……
 重い気分でいるところを、火に油を注ぐ奴がやって来た。
『見て見てかなみっ!! 別府君からお返し貰っちゃった』
『あっそ。良かったわね』 つまらなさそうに私は答えた。こういう事を一々報告しに来
るのが、実にわざとらしくて、気に入らない。
『羨ましい? 何だったらおすそ分けしてあげよっか?』
『いらない。別に羨ましくもないっつーか、別にあんな奴から貰いたくもないし』
『まったまた。無理しちゃって。勇気出してあげれば良かったーって、今になって悔やん
でんじゃないの?』
『そんな事無いってば。変な妄想しないでよね』

8052/10:2010/03/20(土) 19:08:45 ID:Wnj/a9Zw
 友子の怖い所は、その変な妄想の90%が正解だという事だ。
「お取り込み中悪いけど、ちょっといいか?」
 そこに、唐突にタカシが割って入って来た。私はびっくりして、声のした方を向く。
『キャッ!? ちょっと、びっくりさせないでよ』
 私はワザとらしく睨み付けて文句を言った。正直、今日はタカシに話し掛けて貰いたく
ない。だって、寂しさが倍増するだけじゃない。
「悪い。すぐ済むからさ。はい、これ」
 ちょっと照れた仕草で、タカシは唐突に綺麗にラッピングされた包みを私に差し出した。
『へ……何よ、これ……?』
 私はキョトン、としてそれを見つめた。見た感じ、ホワイトデーのお返しに見える。し
かし、私はあげていないのだから、貰う権利も発生していないのだ。もしかしたら、タカ
シは勘違いをしているのかも知れない。見掛けに寄らず――無論、私から見ればカッコい
いけど――仲の良い女の子が多いタカシは、たくさんとまでは行かなくても、義理チョコ
をそこそこ貰っているから、それで私からも貰ったのだと。
『あのさ、あたしは――』
 咄嗟に言い掛けたのを、タカシは手の平で制する。
「かなみからはさ。その……貰えなかったけど、でも、まあ日頃からお世話になってるし、
ついでってのもあるし、それにさ。まあ、くれなかった子に渡しちゃいけないってもんで
もないだろ。だからさ。ほら」
 一応、勘違いではなかった訳だ。タカシが包みを押し付けるように差し出すので、あた
しは成り行きのままに、それを受け取ってしまった。
『まあ、その……くれるって言うんなら、貰ってあげなくもないけどさ……』
 ちょっと呆然としつつ答えると、タカシはニッコリ笑って頷いた。
「良かった。いらねーって言われたらどうしようかと思ったから。それじゃ、邪魔したな」
 そのまま立ち去るタカシを見送っていると、横から脇を激しく突付かれた。
『んきゃっ!? な、何すんのよ友子!!』
 悪戯好きの友人を睨み付けると、彼女は唇を尖らせて文句を言って来た。
『ずーるーいーっ!! あげてもいないのに貰えるなんてさ。そんな幸運に預かれるのな
んて、かなみだけじゃないの』

8063/10:2010/03/20(土) 19:09:08 ID:Wnj/a9Zw
『ずるいって、別にあたしからくれって言った訳じゃないもん。そんなの、タカシに文句
言いなさいよね』
 すると友子は、ジト目で私をジッと見つめた。
『そんな事言って、ホントは嬉しいくせに。ニヤつきを我慢しようと、頬がひくついてま
すぜお嬢さん』
『えっ? ウソ。そんな事ないもん』
 その言葉に、私は焦って頬を触る。すると友子がニヤニヤしながら指摘して来た。
『その態度から察するに、図星ってトコかね』
 嵌められた事を知り、私の頬がカッと赤くなるのが、温度から感じられた。
『そんな事ないわよ!! 別にあんな奴のなんて、どーだっていいもん』
『じゃ、ちょうだいよ。どうだっていいんなら、いらないんでしょ?』
 差し出された友子の手を、軽くペチンと叩く。
『それはダメ。一応、こっ……好意でくれたんだもん。食べなきゃ、その……失礼じゃない』
『じゃ、せめて中身見せてよ。つか、あたしのより包みおっきくない?』
 さらに詰め寄る友子から、私は半ば必死で包みをガードする。
『ダメ。別に見せるもんでもないでしょ。開けたら仕舞うのもめんどくさいし。家で適当
な時につまむからいいの』
 そんな私を前に、友子は肩を竦めて呆れたように言った。
『はいはい。そんなに独り占めしたいんなら勝手にしなさいな。お家でたっぷりと堪能なさい』
『んな訳無いじゃん。死ねこのバカ』


 放課後、大急ぎで家に帰ると、私は自分の部屋でドキドキしながらタカシから貰ったホ
ワイトデーのプレゼントを開けた。
『うわ……何よこれ。何気に豪華じゃない……』
 中に入っていたのは、有名洋菓子店のプチケーキだった。それが3つ。間違いなく、お
返しで他の子にあげてたクッキーなんかよりもランクは上だ。
『どうしよう…… こんなもの、貰っちゃっていいのかな…… あたしは何もあげてないのに……』
 机の引き出しに入りっ放しの、本命チョコが私の脳裏に思い浮かぶ。今からでも渡せば
と、そう考えて私は首を振った。

8074/10:2010/03/20(土) 19:09:33 ID:Wnj/a9Zw
『ダメよ。あんな賞味期限も切れたチョコなんて……』
 でも、言葉とは裏腹に、心の中にチョコの占める比重はどんどん大きくなっていった。
ついに堪り切らなくなって、私は携帯のボタンをプッシュした。


「何だよ。いきなりすぐ来いとか呼び出し掛けやがって。今、ちょうど盛り上がってたと
ころだったのによ」
 玄関先で私の顔を見るなり文句を言ったタカシを、私はキッと睨み付けた。
『アホくさ。どうせ山田とゲームでもやってたんでしょ? あたしの呼び出しとどっちが
大事なのよ』
「だからこうして来たんだろ。で、一体何の用なんだよ?」
『へっ……?』
 最初の答えに思わずドキッとしてしまって、私はその後の言葉が耳に入って来なかった。
――だからこうして……って事は、あたしの呼び出しの方が大事って事よね? うわうわ
うわ……どうしよ。そんな風に思ってくれてたなんて……
「おい、かなみ」
『は?』
 タカシの声に、盛り上がっていた思いが寸断される。何か水を差されたような気がして
一瞬イラッと来たが、その気持ちもタカシのより苛立ったような声に吹き飛ばされる。
「いや。は?じゃなくてさ。呼び出したからには用があんだろ?」
『えっ……と、う、うん。そうだけどさ。そんなに急かさなくたっていいじゃないのよ』
 思わず自分の世界に入り込んで肝心のタカシを置き去りにした事を気恥ずかしく思いつ
つ、その気持ちを表に出さないように、私は敢えてぶっきらぼうに言った。
「何だよ。ここじゃマズイとかか?」
 タカシが怪訝そうな顔で聞く。私はフルフルと顔を左右に振った。
『べ、別にマズイ訳じゃないけど、心の準備というか……』
「は?」
 タカシは不思議に思うだろうけど、一ヶ月前に渡しそびれたチョコレートを今更になっ
て渡そうだなんて、凄く勇気が要ることなんだと、いざ渡す段になって、私は改めて認識
せざるを得なかった。

8085/10:2010/03/20(土) 19:09:54 ID:Wnj/a9Zw
――うぅ……頑張れ、あたし…… たかがお返しじゃない。勇気出せ。せーのっ!!
 心の中で掛け声を出してから、私はずっと背中に隠していたチョコを、タカシの前に両
手で差し出した。
『はい、これっ!!』
 お願いします、みたいな感じで頭を下げ、体を僅かに前に傾けたまま、私は硬直した。
「これ……何?」
 キョトンとした声でタカシが聞く。私は早口で、頭の中で準備していた言葉を言った。
『きょ、今日その……くれたもののお返しっ!! っていうか、やっぱり何にもあげてな
いのに貰うのって気まずいから。それで、その……バレンタインの時に間違って多く買っ
ちゃって余ってたのがあったから……だから、これ、あげる!!』
 言葉を切ってからの間が、私には何千何万時間にも感じられた。
「えっと、その……」
 困惑したようなタカシの声が、頭上から聞こえて来る。私は体がビクッと震えたが、タ
カシが受け取ってくれるかどうか分かるまでは、顔を上げる勇気も、声を出す勇気も持ち
合わせてはいなかった。
「悪い。ちょっと驚いちゃってさ。その……今になって貰えるとは思わなかったから。こ
れ……ありがたく頂くよ」
 手からチョコの重みが消えるのと同時に、私は顔を上げた。するとタカシが、しげしげ
と包みを眺めているのが視界に入る。
『ちょ、ちょっと。そんなジロジロ見ないでよね。別に毒とか入れてないから』
 気恥ずかしさを冗談で紛らわせようとしたが、タカシはそれに構わずに見つめ続けた。
「なあ。これさ。開けていいか?」
『ダメ!!』
 タカシの問いを、あたしは即座に拒否する。中身見られたら、ガチガチの本命チョコだっ
てバレちゃうじゃない。いや、どっちみちバレるんだけど、ここで見られたらどんな態
度取っていいか分からなくなってしまう。
『家に帰ってから開けてよね。何もこんな所で開ける必要ないでしょ?』
 しかし、タカシはワザとらしく、包装紙を止めているテープを爪で軽く引っ掛けつつ、
言った。
「いいじゃん。ちょっと中見たいだけだからさ。な?」

8096/10:2010/03/20(土) 19:10:20 ID:Wnj/a9Zw
『ダメダメダメ!! ダメッたらダメだってば!!』
 他人が見たら、むしろ怪しまれるくらいに必死になって、あたしは拒否を続ける。
「何でだよー。てか、受け取ったからにはもう俺のもんだろ? だったらどこで開けても
構わなくね?」
『ここはあたしんちなんだから、していいかどうかはあたしが決めんの!! だからダ
メ!! 絶対にここで開けちゃダメ!!』
 しかし、こんだけ必死になったのに、あたしの目の前で包装紙がペラリ、とめくれた。
「やべ。テープに爪かけてたら、剥がれた」
『バカーッ!! 今すぐ直せ!!』
 しかし、あたしの言葉なんて全く無視して、タカシは包装紙を広げていく。
「いいじゃんいいじゃん。ここで開いたのもきっと神様のお告げに違いないって」
『嘘よそんなの。開いたとか言ったけど、どう見たってアンタが自分でやったんじゃない。
てかダメだってば!!』
 実力行使で阻止しようとするも、背中を向けたタカシ相手に私はどうする事も出来なかった。
「よし。これで開いた。どれ、中身は……と……」
 タカシが箱を開けようとするのを見ていられなくなって、私は両手で顔を覆った。その
まましばらく時が流れる。いい加減恥ずかしさよりタカシの反応が気になりだした時に、
タカシがちょっと困惑するような声で言った。
「あのさ、かなみ」
 顔を覆っていた両手の指の隙間からタカシを見て、それからあたしは急いで背中を向けた。
『な、何よ。言っとくけど、文句なんて言わせないからね』
 強気な口調で言ってはいるが、内心ではタカシがあれを見てどう思ったかを考えると、
怖くて仕方が無かった。
――絶対……本命チョコだって思うよね? どうやって言い訳しよう……
 しかし、悩んでいる暇なんて無かった。
「これ、さ。俺が貰って……いいのかな?」
『何でよ。あげるって言ったんだからいいに決まってるでしょ』
 戸惑いがちのタカシの声に、あたしは不満気に答える。もうこうなったら成り行き任せしかない。
「いや、だってさ。これって、結構立派なチョコじゃん。どう見ても義理ってレベルじゃねーし」

8107/10:2010/03/20(土) 19:10:43 ID:Wnj/a9Zw
『そうだけど、余り物は余り物だもん。自分で食べるのもやだし。だからアンタにあげるっ
つってんのよ。それとも、いらない訳?』
「いやいやいや。そんな事は思ってもいねーけどさ。ただ……誰か、あげる奴がいたんだっ
たら、俺なんかが食べるの気が引けるかな……って」
 何気にそういう所を気にするなんて、タカシも意外と繊細だな、とちょっと感心したり
する。同時に、他に好きな人がいると誤解されかかっている事に、私は慌ててそれを否定した。
『べっ……別に本命あげる人なんていないわよ!! 友子が買え買えうるさいから買っちゃっ
ただけで、下手にあげると誤解されるかもしれなくて、処分に困ってたからちょうどいい
なって思ってただけよ。ホントなんだからねっ!!』
 自分でも、何か必死過ぎるくらいムキになっていた。タカシはしばらく黙っていたが、
やがてとんでもない事を口にした。
「あのさ。その……多分違うとは思うんだけど……まさか、俺宛だったとか……そういう
事はないよな?」
 私は驚いてタカシに向き直った。その瞬間、真面目な顔で私を見つめるタカシとの視線
が交錯する。私の心臓がドキリ、とした。もしここで頷いたりしたら――実はそうなんだっ
て言えたら、どうなるんだろうか。しかし、そんな思いをあっさり吹き飛ばし、いつも
の素直じゃない私が、口を尖らせて否定した。
『なっ……何バカな事言ってんのよ。そんな事ある訳ないでしょ。何勝手な妄想してんのよっ!!』
 言い終えると同時にまた、苦い後悔の様な味が口から胸に染み渡るように広がった。タ
カシにキツイ言葉を発した時はいつもの事だが、今日は特に酷い。
「そうだよな…… いや、ゴメン。気ぃ悪くしたならさ。ただ、その……バレンタインデ
ーの時、かなみから貰えなくてちょっと、その……ショックだったからさ。そうだったら
いいなーとか、勝手に考えてたりしてさ。まあ、勘違いだと分かってむしろスッキリしたわ」
『え……?』
 驚いて、私は顔を上げてタカシを見つめた。
――ウソ……タカシが、私からのチョコを待ってたって……そんな事……
 確かめる為に、敢えて私は信じない素振りを見せた。
『ウソばっか。調子のいい事言っちゃって。友子とか他の子から貰ってるじゃない。アン
タには十分過ぎるほどね』

8118/10:2010/03/20(土) 19:11:03 ID:Wnj/a9Zw
 しかし、そんな事を言いながらも、私の心はドキドキして仕方が無かった。本当に、タ
カシは私からのチョコが無くてガッカリしていたんだろうか? 仮に方便であったとして
も、そんな事を言われたら動揺せざるを得ない。私は固唾を飲んで、タカシの次の言葉を待った。
「いや、まあそりゃあね。あいつらから貰えるのも嬉しいよ。義理って言うか、友達同士
としてな。けど……まあ、その、何だかんだでお前との付き合いが一番深いし……だから、
まあその、一番期待もしてたって訳で」
『バッ…… バッカじゃないの。何であたしからのチョコなんて……』
 こんな、口の悪いだけの女からのチョコを一番期待してくれてたなんて信じられない。
一ヶ月前の私に言ってやりたい。タイミングを見失った上、他の子からチョコ貰ってる隆
を見て、嫉妬して怒って家に帰っちゃって、結局チョコを渡せずに泣いてた私に。勇気出せって。
「いや。けどまあ、こうしてくれただけでも、すっごく嬉しいわ。余りもんとか、時期外
れとか関係なくな。ありがとう」
 そう言うタカシの顔は、本当に嬉しそうだった。何かもう、眩しくて私は、そんなタカ
シを見ていられなかった。
――ヤバイ。あたし……どうにかなっちゃいそう……
 タカシがここまで喜んでくれた事が、嬉しくて嬉しくて、今にも感情が溢れ出そうだっ
た。それを無理矢理押し込めたものだから、呼吸が息苦しくて、私はタカシに聞こえない
ように抑えながら、何度も呼吸を繰り返した。ギュッと握り締めた手の平には、ジットリ
と汗が滲んでいる。
「それじゃあ……そろそろ帰るよ。ホントに嬉しかった。それじゃな」
 黙りこくっていたら、タカシが暇を告げるのが聞こえた。私は、ハッと顔を上げる。何
だか分からないけど、とにかくまだ帰って欲しくなかった。タカシに傍にいて欲しかった。
私は慌ててタカシに手を伸ばしつつ、引き止めようと言葉を発した。
『ちょっ――』
「あ、そうそう」
『へっ!?』
 いきなり振り向いたタカシに、私は心臓が止まるほどビックリした。ビックリしすぎて、
悲鳴すら上がらず、小さく変な声を上げて息を呑んだだけだった。
「ん? どしたかなみ?」
『い、いっ……いきなり振り向くな!! このバカ!!』

8129/10:2010/03/20(土) 19:11:24 ID:Wnj/a9Zw
 驚かされた事にカッとなって、つい怒鳴ってしまう。するとタカシは苦笑しつつ、片手
で私を制した。
「悪い悪い。一つ聞き忘れたことがあってさ。その……俺のあげたケーキ、もう食ったか?」
『へ……?』
 唐突な質問に、私はキョトンとした。それから、ちょっと慌てて答える。
『いや、その……まだ、だけど……』
 たどたどしく答えると、タカシは笑顔になって言った。
「そっか。一応、かなみの好きそうなものをチョイスしたつもりだったから、口に合えば
いいなって思ってさ。もし良かったら、明日感想聞かせてくれよ。じゃな」
『待った!!』
 今度こそ帰ろうと振り向きかけたタカシの服の裾を、私はギュッと掴んだ。タカシが驚
いた顔で私を見下ろす。
「どうしたんだよ? まだ、何かあるのか?」
 そう聞かれて、私は困ってしまった。タカシに帰って欲しくない一心で服を掴んでしまっ
たけど、何をしゃべろうかとか、全く考えてなかった。
『えっと……その……あの……』
「は?」
 頭の中がどうしようどうしようと言う考えで満たされて、それがグルングルンと回る。
このままじゃタカシが帰ってしまう。そんなの、私はイヤだ。
『ゴメンッ!!』
 咄嗟に出た言葉が、これだった。
「ゴメンって……何がだよ……?」
 タカシに聞き返され、私はその先の言葉を言うのに戸惑った。いつもの、素直じゃない
私が顔を出す。だけど、言ってしまった以上は突き進むしかないと、私は無理をして、言
葉をひり出す。
『あの……何がってのは、その……あたし、タカシに嘘……吐いたから……』
「嘘ついた……って?」
 鸚鵡返しに聞き返すタカシの顔を力強く見つめて勇気を貰うと、それから俯いて目を閉
じ、半ばやけっぱちな感じで言った。

81310/10:2010/03/20(土) 19:12:24 ID:Wnj/a9Zw
『だから、その……チョコの事!! 余ったなんて言ったけど……ホントは……タカシの
為に買った物だったのっ!!』
 ギュッと体を縮み込ませ、緊張してタカシの言葉を待つが、無言だったので私はそのま
ま言い訳モードに突入した。
『だ、だってその……アンタ、チョコ貰い過ぎなんだもん!! 友子とか部活の子達とか
……だからその……渡すタイミングも無かったし、それに……あたしからのなんて、いら
ないんじゃないかって……だから……なのに、あたしからのチョコ貰えなくて残念だった
なんて……そんな事、思っても無かったから……』
 その瞬間、頭に軽く重みが掛かった。そして、優しく撫でてくれる。私はビックリして
顔を上げた。
『タカシ……』
「謝る事なんてねーよ。むしろ……言ってくれてありがとな。チョコ貰えただけでも十分
だったけど……更にご褒美貰えた感じだわ」
 私は耐え切れず、タカシの体にギュッと強くしがみ付いた。
『ゴメンなさい。タカシ……ゴメン…… 来年はちゃんとバレンタインにチョコ渡すから……』
「楽しみにしてるよ。まあ、来年は……そうだな。貰うのは、かなみからだけにしとくか。うん」
 その言葉に、胸が物凄くキュンと絞られるような感覚に襲われる。
『ホントに? 嘘じゃないの? 約束出来る?』
 顔をあげて、まるでおねだりするように私は聞いた。タカシは真面目な顔で頷く。
「ああ。約束するよ」
『じゃあ、約束の証』
 私はそう言って目を閉じた。唇をキュッと結ぶ。爆発しそうな心臓の鼓動に耐えて待っ
ていると、やがて唇に何か柔らかいものが触れた。一度、二度、軽く触れてから、強く押
し付けられたタカシの唇を、私も夢中になって求めたのだった。


終わり
まとめてみたら10レスとか、思った以上に長かったぜ。
それにしても一週間とか遅筆にも程があるだろjk

814以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 19:14:24 ID:???
>>813
ねーねー胸が締め付けられるように痛いんだけどこれって恋かな?

最高にGJ!

815以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 20:09:28 ID:???
>>813GJ
>>814ああ、それが鯉だよ

816以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 21:00:17 ID:OwZ9zrvA
GJすぎて横で一緒に見てたお嬢が拗ねた

817以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/20(土) 23:31:27 ID:???
>>813

GJ!

818以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 01:16:00 ID:???
>>813
GJ! たまらんです
タカシが風早君並にいい男だなあ

819以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 01:23:59 ID:???
>>813
GJすぎて泣いた

820以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 03:45:08 ID:???
どうみてもデレデレです。本当にありがとうございました。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1281.jpg

821以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 03:47:50 ID:???
>>820
私は良いと思うふ

822以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 05:26:42 ID:wANPUicM
またなんかきてる!
>>210GJ!

本スレでGJ出来ないのがツラいぜorz

823以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 05:27:45 ID:???
>>210っていつだよorz
>>820だゴメンなさい

824以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 08:00:52 ID:FNynWa9s
>>820
萌える……萌えてしまう……
これは…面倒なことに…なっ…た……

825以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 10:18:27 ID:???
>>820
もう我慢できねぇ。お前マジ逮捕するわ。







容疑は俺を萌え死させる、殺人容疑だ!
・・・あふん

826以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 12:13:02 ID:Wnj/a9Zw
>>820
関西後輩とかwwwwwwww俺を殺す気かwwwwwwwつか死んだwwwwwww

827以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 13:12:31 ID:Wnj/a9Zw
>>787-793の続きを書いてみた

というか、最初から妄想の中にはあったんだけどね。

8281/5:2010/03/21(日) 13:13:00 ID:Wnj/a9Zw
・ツンデレのツンが95%になった日

 この間の一件の後、次の日から別府君も私に、必要最低限以外の事では声を掛けなく
なった。もっとも、理由はないけどとにかく苦手だから近寄らないで、なんて言われて
なお、親しげに声を掛けて来る人間なんて、ほとんどいないだろうけど。
――でも、これでいいんだ。もうこれで、お互いに嫌な気持ちになる事はなくなるから。
 あの時、別府君につけた心の傷も、私と接触する事がなければすぐに消えてなくなる
だろう、と私は自分で自分を慰めていた。
 しかし、そんなある日の事だった。
 帰り道、一人で帰る私を、後ろから別府君が自転車で追い越していった。MTBとい
うのだったか、スポーツ系の自転車を颯爽と漕ぐ彼の姿を、私は見かける度に切ない甘
酸っぱさを感じていた。
――こうして、眺めているだけだったら……幸せなんだけどな…… どうして、別府君
の目の前に立つと、あんな風に苦しくなっちゃうんだろう。私は絶対におかしいわよね。
普通の女の子だったら、好きな人とだったら、きっと嬉しくて堪らないと思うんだけど……
それとも、みんな、乗り越えてるのかな?
 もっとも、今更そんな事を考えても手遅れだけど。彼の後ろ姿を見ながら、私はため
息を吐いた。
 その時だった。
 軽快に走っていた彼の自転車がいきなり、左に大きく傾きそのまま、まるで潰れるか
のようにベシャッと地面に叩き付けられた。
『あっ……!!』
 口を押さえ、小さく呟く。ほぼ同時に、黒いセダンが道を猛スピードで横切るのが見えた。
『別府君っ!!』
 我を忘れて叫ぶと、私は慌てて彼の近くまで駆け寄った。自転車は横転し、彼の体が
地面に投げ出されている。
――嘘……? 轢かれた……の……?
 視線の先に、セダンが止まっている。しかし、ドライバーが降りて来るかと思いきや、
そのまま車は勢いよく発進した。

8292/5:2010/03/21(日) 13:13:23 ID:Wnj/a9Zw
『ひき逃げ? 酷い。逃げるなんて……』
 いろんな事が一瞬のうちに頭を過ぎる。警察に連絡するとか、ナンバーを控えた方が
いいんじゃないかとか。しかし、次の瞬間には、それらの考えも吹っ飛んだ。
「あいててててて……」
 私の注意が、別府君に注ぎ込まれる。何よりも、彼の手当てが先ではないかと。場合
によっては救急車を呼ばなくてはならないかも知れない。私は急いで別府君に向き直る
と、腰を屈めて彼を窺いつつ、言った。
『あの…… 大丈夫?』
「あ、いや。大丈夫ですよ。こけただけで、ぶつかってないっすから」
 そう言って見上げた彼の目が、私の顔を捉えて止まった。目が僅かに、大きく見開かれる。
「椎水……さん……?」
 彼の口が、私の苗字を発する。その驚いた様子に、私は憤慨したように鼻をフン、と
鳴らし、体を起こす。
『そうよ。それがどうかしたの?』
 冷静に言い放つと、彼は困ったような表情になって私から顔を逸らし、汚れたズボン
を叩いた。
「いや、その……声掛けてくれるなんて、思わなかったから」
『てっきり、その……車に轢かれたかと思ったからよ。それで無視なんて出来る訳ない
でしょ? 例え誰であっても』
 言い訳をしつつも、私は胸が急速に高鳴って行くのを感じていた。緊急事態に麻痺し
ていた感覚が徐々に蘇って来ている。いつもなら耐え切れず、逃げ出してしまうあの感
覚。だけど、今は何故か立ち去る気にはなれなかった。
「まあ、確かに。でも、心配してくれて嬉しいよ。有難う」
 顔を上げ、ニッコリと微笑む彼から私は顔を背けた。たかがお礼を言われただけだと
いうのに、顔が酷く火照っている。他の男子の誰にだって、こんな事は無いのに。
『別にお礼を言われる事なんかじゃないわ。私は何もしてないもの』
「いや。その……気持ちだけでもさ」
 冷たく突き放して、気持ちをクールダウンしようとしたのに、そんな事を言い返され
て私の体がより一層熱を帯びてしまった。しかし、心の内にむず痒い様な嬉しさが湧き
上がっているのを、私は認めざるを得なかった。

8303/5:2010/03/21(日) 13:13:43 ID:Wnj/a9Zw
 その時、視界の端っこで別府君が体を動かしているのが見えた。立ち上がろうとして
いるのだと気付き、私は彼の方に向き直って聞いた。
『立てる?』
 もしかしたら、転倒した時に足を痛めたりしているかも知れない。車にはぶつかって
いなくても、転び方が悪かったかも知れないし。そして、事故の直後はアドレナリンの
分泌で、立ち上がろうとするまで痛みに気付かなかったりするものなのだ。
「ん……大丈夫だと思うけどな」
 手や足を動かしながら別府君は答えた。それから、地面に手を付いて立ち上がろうと
する。その姿を見た瞬間、私の体が自然に反応した。
『はい』
 自分でも信じられなかった。別府君に対して、手を伸ばす事が出来るなんて。何だか、
心と体が完全に別になった感じがする。
「……え? あ、ああ……サンキュー……」
 一瞬驚いた顔を見せた別府君だったが、すぐに手を伸ばして私の手を握った。大きな
手が、優しくしかししっかりと、私の手を包み込むように握る。その瞬間、私の体に電
流に当てられたような痺れが走った。
「どうかしたか?」
 別府君が僅かな体の震えを、手を通して感じ取ったらしい。私は慌てて首を振る。こ
んなの、気取られたくない。
『何でもないわ。引っ張るわよ』
 グッと力を入れて腕を引くと、彼の体がゆっくりと立ち上がる。すると、私は彼と間
近で向かい合う形になってしまい、動揺した私は慌てて背を向けた。その背中に、彼の
声が掛かる。
「悪いな。色々と」
『いちいち謝らないで。鬱陶しいから』
 即座にキツイ言葉で彼を制する。本当に、これ以上会話を続けたりしたら、どんどん
おかしくなってしまいそうだ。熱でボウッと浮かされそうになったような感覚で、私は
何となく、まだ別府君の手の感触が残ったままの自分の手を見つめた。その時、自分の
手に何かが僅かに付いているのに気が付いた。

8314/5:2010/03/21(日) 13:14:04 ID:Wnj/a9Zw
――血……!?
 自分のじゃない事は分かってる。私は慌てて別府君の方に向き直った。
『別府君。あなた……手、怪我してない?』
 すると別府君は、意外と平気そうな顔で手を顔の前に持って来た。
「ああ、これ? こけた時にちょっと擦り剥いたらしいな。ま、これくらいの傷ならしょっ
ちゅうだし、舐めとけば治るだろ」
『ダメよ。雑菌でも入ったらどうするの? ちょっと動かないで』
 まるで使命感に駆られたかのように、私は急いで自分の鞄から、携帯用の消毒液と絆
創膏を取り出す。
『ホント。こういう所がいい加減なのよね。別府君って』
 強引に別府君の手を取り、傷口を見る。地面に擦った傷が、小指の付け根から手首の
辺りの手の側面に付いていた。これでは絆創膏は使えない。私は消毒液を噴射し終える
と、自分のハンカチをポケットから出して広げ、それを傷口を覆うように当てると、手
に巻いて反対側で結んだ。
『はい。外れないように注意して。それと、家に帰ったら、ちゃんと手当てし直すのよ』
「いや、ホント申し訳ない。何から何まで」
『謝るなら、自分のガサツさを反省しなさい。それと、そのハンカチは返さなくていい
から。出来れば捨てちゃって』
 下手に洗って返されたりして、それを他の女子に見られたら一斉に噂になってしまう。
実は椎水はツンデレでした、なんて事が広まったら目も当てられない。
「……うん。分かったよ」
 私は、別府君の全身を、ざっと眺め回す。他に怪我をしているところは無さそうだ。
足もちゃんと、庇うことなく立っているし。大怪我しなくて本当に良かったと思いなが
ら、小さく頷き私は彼に背を向ける。
『それじゃ、私は帰るから。今度からは気を付けて運転しなさいよ。向こうが悪いって
言ったって、ぶつかったら痛い目見るのは自分なんだからね』
「そうするよ。今日は本当に……有難うな……」
 しかし私は、もう振り返ることなく早足でこの場を立ち去ったのだ。

8325/5:2010/03/21(日) 13:14:25 ID:Wnj/a9Zw
 次の日。まだ昨日の記憶が鮮明なまま、私は教室に入った。すぐに別府君の姿を視界
に捉える。私の忠告どおり家でちゃんと手当てをしたのか、手には包帯が巻き付けてあった。
『おっはよー、かなみ』
『おはよう』
 友達と挨拶を交わしたところで、別府君が気付いたのかこっちを向いた。今は隣同士
ではないが、それでも自分の席に行くのには別府君の傍を通らなければ不自然に大回り
になってしまう。私が近づいて行くのを、別府君は戸惑うような顔で見ていた。
『おはよう』
 その言葉は、自然にスルリと私の口から出た。別府君は驚いた顔をしたが、すぐに笑
顔になって頷いた。
「おはよう。椎水さん」
 私は、そんな彼に見向きもせずに自分の席に向かった。しかし、それを見ていたらし
い前の席の友人が、早速チェックを入れて来た。
『珍しいね。椎水が別府君に挨拶するなんて。どういう心境の変化?』
『別に。苦手な人だからって無視してばかりじゃ、自分がダメな人間になりそうな気分
になったから』
『ふーん。あたしはまた、別府君との仲に何か進展でもあるとか思っちゃった。ほら。
イヤよイヤよも何とやらというし』
『有り得ないわよ。そんなの』
 ドキリとしつつ、私は冷静さを装って鞄から教科書やらノートを机の引き出しに仕舞う。
『今、ちょっと動揺した?』
『してない。しつこいと怒るからね』
『はいはい。全く、椎水は怖いんだからぁ』
 呆れた口調で前を向く友人は放っておいて、私はチラリと肩越しに別府君を見た。昨
日の一件のお陰だろうか。顔を見ても言葉を交わしても、前より混乱はしなくなったよ
うだ。その代わり胸の痛みと言うか、キュッと窄まるような切なさは少し大きくなった
ような気がする。
――これで……少しは、彼との距離も……縮まったのかな……
 そっと胸を押さえて、私はそんな事を考えるのだった。

833以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 13:15:17 ID:Wnj/a9Zw
以上

一応95%を目標に書いたつもりだったが、ちょっと甘くなり過ぎたかなあと反省はしている。

834以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 15:54:33 ID:???
gj!

こういう場合は後々激しいデレになるんですよね!わかります

835以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 16:29:14 ID:???
表向きツンツンなのに内心デレデレとか好みど真ん中過ぎてやばい

836以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 16:59:55 ID:???
>>833

gj!

837以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 17:33:49 ID:???
gj!

838以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 18:55:32 ID:???
>>本スレ545の63
あんたのせいだ!

http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1282.jpg

ふとした拍子にタガがはずれてデレ一辺倒になるのとか大好きです

839以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 19:00:57 ID:???
>>838
俺の日常を盗撮されるなんてな…

840以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 19:25:56 ID:fdrIIMYw
>>838
GJ過ぎるっすよ……





フゥ……

841以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 19:38:08 ID:???
>>833
いっそツン0%まで連載してくれ

8421/6:2010/03/21(日) 22:46:15 ID:BnVpyUqo
【寝過ごした男】

 目覚めるとちなみが隣でぷーぷー寝息を立てていた。
 ははぁ我ながら俺の全自動ロリ鹵獲機能も大したものだなあと一瞬驚嘆したものの、そんなわけはないと頭を振る。
 なんでコイツが隣で寝てんだ。とりあえず、起こして事情を聞こう。
「ちなみ、ちなみ。起きろ」
「……んー?」
「いや、んーではなくて。起きろ」
「……んー。……うー、眠い」
 ちなみはうっすら瞼を開けると、手でこしこしこすった。そして、大きく口を開けてあくびをした。
「……ふわぁぁぁ。……ふう」
「女の子がそんな大口開けるな。ちょっとは隠せ」
「……うるさい」
「それはともかく、現在の状態について事情を聞きたいのだが」
「……むぅ。タカシは眠い私を無理やりに起こし、頭が回ってないのをいいことに騙くらかしてちゅーとかしようと画策しているに違いない」
「寝起きでそういうことをすらすら言える人が頭回ってないとは思えませんが」
「…………」(不満げ)
「睨むな。それより、なんで人の布団でぐっすりすやすや寝ていたのか説明を求める」
「……まあ、端的に言うと、タカシが悪い」
「端折らずに言ってください」
「…………」(不満げ)
「だから、睨むな。いいから普通に言え」
「……起こしに来てやったのに、タカシと来たら平和そうな顔で寝てた」
「はぁ。まあ平和かどうかは知らないが、寝てたわな」
「……で、一所懸命起こしてやったのに、ちっとも起きない。時間は逼迫している。なのに、ちっとも起きない。起こしているうち、なんだか疲れてしまって私も眠たくなってきた」
「嫌な予感がしてきましたが、続けて」
「……丁度目の前には布団が。何か横で歯軋りをしてる物体があるけど、布団には換えられない。……で、ぐっすりすやすやと」
「なるほどそうか。眠くなったと」
 ちなみはこっくりうなずいた。そのどたまにチョップを落とす。
「……痛い」

8432/6:2010/03/21(日) 22:46:38 ID:BnVpyUqo
 ちなみは両手で頭を押さえ、不満げに俺を睨んだ。
「起こしに来てくれたのはありがたい。感謝する。だが、どうして一緒に寝てしまうのか」
「……眠かった」
 極めて簡潔で分かりやすい理由だが、再びチョップを落とす。
「……痛い」
 再度頭を押さえ、ちなみは俺を不満げに睨んだ。
「はぁ……まあやってしまったものは仕方ない。とりあえず学校……学校?」
 恐る恐る時計を見る。一時間目はとうの昔に終わっており、二時間目も半ば過ぎている時間だった。
「はっはっは……いや、ここまで全力で遅刻するのって初めてだなあ」
「タカシのせいで私まで遅刻だ。……まったく、タカシは人を悪の道に引きずりこむのが上手すぎる」
「起こしに来たのにその業務を全うせず、あまつさえ自分も寝てしまった奴は言うことが違うな」
「…………」(不満げ)
「だから、睨むなっての。あー、もうここまでの遅刻だと多少急いだところで変わらんな。ちなみ、お前飯は?」
「……うちで食べてきた」
「そか。じゃ、俺は自分の食ってくるから、お前は適当に待っててくれ」
「……でも、睡眠でカロリーを大量に消費したので、ご飯を食べる必要がある」
「……はぁ。一緒に食うか?」
 コクコクうなずく生物を引き連れ、台所へ。両親は、まあこの時間なら当然だが、既に出かけているようだ。米は……あるな。
「何にすっかな……ちなみ、何がいい?」
 ちなみは食卓に着くと、足をぱたぱたさせながら何にするか思案しているようだった。
「……んと、おにぎり」
「熱いから嫌だ」
「……予めコンロでタカシの手をあぶれば、熱さに抵抗ができるため、おにぎりを握っても熱くない。……名案?」
「愚策。なぜならあらかじめの時点で俺の手が黒焦げになるから」
「…………」(不満げ)
「いちいち睨むでない。まあいいや、おにぎりな。作るからちょっと待っててくれ。あ、何個食う?」
「……ふたつ」
「食ってきたくせに、結構食うな。太るぞ」
「…………」(超不満げ)
「まあ、お前はちっとやせすぎだから多少は肉あるほうがいいけど。んーと、塩しお……」

8443/6:2010/03/21(日) 22:47:05 ID:BnVpyUqo
「……褒めているように見せかけ、絶妙に私の胸がないことを指摘するタカシは悪魔だ」
「どんだけ悪くとってんだよ……あ、あった」
 引き出しの中にあった塩を取り出し、準備完了。炊飯器を開け、手を軽く濡らして塩をつけ、米を手に乗せる。
「あっちぃ!」
「……ふぁいと」
「応援するならもっとやる気を出してやってくれ!」
「……ふぁいとー」
「聞いているだけでどんどんやる気がなくなってくるその技術はすごいな」
 後ろにいるのでどんな顔をしているのか分からないが、何か不満げな雰囲気がこちらにまで漂ってきた。
「怒るな。んーで、具は何がいい?」
「……しゃけ」
「ない」
「……しーちきん」
「ない」
「……この家には何もない」
「失礼なことを言うな。偶然切らしてるだけだ。昆布はあるぞ」
 言いながら、勝手に塩昆布をおにぎりに詰める。
「……それしかない、とも言う」
「うるさい。ほい、できたぞ」
 言ってる間にぽんぽん作り、皿におにぎりを5つ乗せ、食卓に置く。
「ちょっと待ってろ、手洗ってくるから一緒に食おう」
「……それには及ばない予感」
「ん?」
 ちなみは俺の手を取ると、何のためらいもなく口に含んだ。
「人の手を食うな」
「……ぺろぺろ。……んと、水で洗うより、舐め取った方が、地球に優しい?」
「言ってることは素晴らしいが、そういった地球に優しいだのエコだのって台詞は超嫌いです」
「……私の唾液に含まれる毒素を送ってる最中?」
「それだ、それこそがちなみだ!」
「…………」(がじがじがじ)

8454/6:2010/03/21(日) 22:47:36 ID:BnVpyUqo
「何も言わずに歯を立てるでない。痛いです」
「……ふん、だ。……ぺろぺろ。……はい、綺麗になった予感」
「感謝したいが、結果お前の唾液まみれであまり変わらないような」
「……タカシは私の指も舐め、お互いに唾液まみれにしてえと言う」
「言ってねえ」
 ……まあ、その提案は非常に甘美な誘いではあるけど。
「……まあ、タカシが舐めたらタカシ毒が私にまわるので舐めさせないけど」
「こんなところに美人局がいようとは」
 とりあえず席に着き、唾液まみれの指でおにぎりを食べる。我ながらよい塩加減だと思うが、よられでベトベトなのでよく分からない。
「私も。……もくもく、おいしい」
「そいつぁ何よりだ」
「もくもく。もくもくもく。……けぷ。おいしかった」
「お前の咀嚼音変だよな」
「うるさい。……むう、手がべたべただ」
 おにぎりは手掴みで食べるものなので、どうしても手はべたつく。手抜きして海苔も貼ってないので尚更だ。
「……はい」
「はい?」
 手を差し出されたので、疑問で返す。
「……みっしょん。舐めて綺麗にせよ」
 ちなみが変なことを言い出した。
「い、いや、ほら。さっき言ってたじゃん、タカシ毒がまわるので舐めさせないって」
「……幸か不幸か、私の体内にはタカシ毒の血清が生成されている。なので、だいじょぶ」
「つまり、俺が舐められるのはちなみだけなのか」
「…………」
「顔を赤くするなッ!」
「……うう、タカシは私だけしかぺろぺろしたくないと言う」
「う……」
 虚を突かれた。普段のようにつっこめばいいのだろうけど、なぜか何の言葉も出なかった。
「……ひ、否定するターンなのに、何も言わないという攻撃に出るとは。……う、うぬぬ、タカシは日々進化しており、侮れない」
「あ、う、うん、そうだな。はっはっは」

8465/6:2010/03/21(日) 22:48:04 ID:BnVpyUqo
「……うう」
 回答失敗。ちなみは俺を見て、顔を赤くしながらうめくばかり。
「……は、はい」
「え?」
「……み、みっしょん。……舐めて綺麗にせよ」
 再びちなみの手が向けられた。
「……あー、まあ、うん。俺の毒が効かないのはちなみだけだから、しょうがないな?」
「そ、そう。しょがない」
 差し出された指を、そっとくわえる。で、舌でぺろぺろ舐める。
「……う、うー。……タカシは舐め方がえっちだ」
「し、失敬な。お前の方がよっぽどだ」
「……そんなことはない。実験」
 え、と思う間もなく、ちなみは俺の手を取って再び口に含んだ。
「……ぺろぺろ。……ほら、えっちくない」
「む。そんなことはないぞ、大変にえっちいぞ。なぜならオラワクワクしてきたから」
「……タカシは時々戦闘民族になる」
「俺には興奮したら一瞬にして髪を金色に染色する技術はないぞ?」
「……ぺろぺろぺろ」
 俺の話なんてちっとも聞かずに、ちなみはなんだか嬉しそうに俺の指をぺろぺろ舐めている。
「……うう、どうしてこんなことで楽しいのか」
「なんで悔しそうやねん」
「……タカシは時々関西人にもなる」
「ていうかだな、いつまで舐めてんだ。そろそろ学校行くぞ」
「……はむはむ」
 ちなみは残念そうに俺の指を甘噛みした。そして最後にちゅーっと強めに吸うと、ようやっと口から指を離した。そして最後に軽く俺の指に口付けした。
「……ちゅ。綺麗になった予感」
「そいつはありがとうございます」
「……続いて、タカシが私の指を綺麗にするターン」

8476/6:2010/03/21(日) 22:48:31 ID:BnVpyUqo
「……ええと、もう舐めたよ?」
「……私はいっぱいいっぱい舐めてあげたと言うのに、私の指は舐めたくないと言う。……貧乳の指を吸うと俺のアレまで貧しくなると言う」
「超言ってねえ! ていうか色々問題ありすぎの発言だッ!」
「……嫌なら、いい」(寂しげ)
「そうは言ってない! ……ああもう、分かったよ。誠心誠意尽くさせていただきますよっ!」
 半ばヤケクソにちなみの指を口に含み、ぺろぺろれろれろする。ああもう、なんかいけない気分。
「……こーふん?」
「終わりっ! もう終わりっ!」
「ぶー」
 指を引き抜いてタオルで拭いてやると、ちなみは不満げに口をとがらせた。
「……ま、いい。……んじゃ、行こ?」
「あいあい」
 皿をシンクに入れ、家を出る。
「……やれやれ、タカシのせいで手がべたべただ」
「そもそも舐め始めたのはお前からだろうが」
「……うるさい。……そうだ、なすりつけてやれ」
 きゅっ、とちなみの手が俺の手を握る。
「え、ええと」
「な、なすりつけただけ。……そ、その先が偶然タカシの手だっただけ。……ほ、ほんとに」
「ま、まあ、偶然なら仕方ないわな。わっはっは」
「そ、そう。……あ、あと、どーせ遅刻だし、ゆっくり行った方が疲れない予感」
「あ、うん。大変に賛成だ」
 そんなわけで、ちなみと手を繋いだままゆっくりゆっくり通学路を歩くのだった。
 そしてゆっくり歩きすぎたせいで到着したのは昼休みだった。
「……ゆっくりしすぎだ。タカシは本当に頭が悪い」
「途中で公園寄ったりアイス食べ合いっこしたり休憩と称して膝枕させたのは誰だ」
「……ま、まったく。タカシは本当にいぢわるだ」
「鼻を引っ張るな」
 赤い顔で人の鼻を引っ張るちなみだった。

848以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 23:21:26 ID:???
>>847
GJですよ
あっちも見てます

849以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/21(日) 23:35:44 ID:cTPqACE2
>>842
かわいい!!GJです!!

850以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 00:11:16 ID:dF8QdGvA
素晴らしすぎる

851以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 01:41:36 ID:wANPUicM
>>842>>847まとめてGJ

852以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/22(月) 23:55:43 ID:???
規制中だし、スレないし。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1283.jpg

853以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 00:51:13 ID:a1sdyEX6
>>852
どアップ可愛いGJ!!

854以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 01:16:36 ID:???
なんかスゲエ上手くなったよな

855以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 21:29:54 ID:???
デレ。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1284.jpg

856以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:16:35 ID:I5FHF7CY
>>855
かわいすぎる!!GJ!!

857以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 22:19:20 ID:???
やべぇ、こいつはやべぇ

858以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:07:39 ID:H/mFK/1g
>>855
ええい。萌えたら負けだと分かっているのだが、頬が緩むのを抑えられない。

859以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:26:17 ID:cTPqACE2
>>588
こんなカレンダーが欲しい。
つまりGJ。

860以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/23(火) 23:27:50 ID:cTPqACE2
>>859
間違えた。
>>588>>855です。
ゴメンナサイ。

861以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/24(水) 01:46:39 ID:???
gj

862以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/25(木) 17:43:22 ID:???
本スレ落ちちゃった

>>29

863以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 00:25:27 ID:???
タカシうざい。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1288.jpg

864以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 00:29:21 ID:???
なんとほほえましい

865以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 00:47:15 ID:KSYBcCZ6
>>863
ツンデレを弄って怒らすのは好きだぞ

866以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 03:34:17 ID:???
素晴らしい

867以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 17:33:24 ID:oXUrV7.Q
ツンデレが罰ゲームを受けることになって「エロいのはダメよ」って釘をさしたら墓穴を掘ってしまった、そんな感じ
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1289.jpg

868以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/26(金) 19:56:32 ID:???
学ラン可愛い!

869以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 12:49:02 ID:???
色々と混ぜ込みすぎてよくわからなくなったけど保守。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1291.jpg

870以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 12:58:51 ID:k3.F1pLs
混ぜるな危険www

871以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 13:09:17 ID:???
素晴らしい
生きててよかった

872以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 13:51:38 ID:???
>>869
これはよい腋w
GJ!!

873以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/27(土) 17:18:54 ID:B/OX7SZs
>>869
ふぅ……



ロリコンは犯罪です!!(キリッ!!)

8741/4:2010/03/27(土) 19:38:22 ID:B/OX7SZs
・イルカとツンデレ

「どうよ、かなみ。水族館は」
『全く、何だって、もう高校生にもなるのに水族館に来なきゃなんないんだか…… ア
ンタね。暇つぶしにしたって、女の子連れて歩くんだから、もっと良い所を選びなさいよ』
「あれ? 気に食わなかった? おっかしーな。個人的にはなかなかのデートスポット
だと思ったんだが」
『どこがよ。つか、デートじゃない!! 単なる暇つぶしだってば!!』
「はいはい。分かってますよ。にしたって、気分高揚の為にも、デート気分で歩いたっ
ていいじゃねーか」
『アンタにそう思われてるだけでもキモイ。だからヤダ』
「やれやれ。相変わらずキッツイなあ。それはそうと、かなみ。あの案内、見てみ?」
『あれって……何? イルカの……餌やり体験イベント?』
「そうそう。何でもさ。一日二回、11時と3時からあるらしいぜ。ちょうどそろそろ時
間だしさ。ちょっと行ってみないか?」
『アホらし。どうせそんなイベント、人でいっぱいなんじゃないの?』
「大丈夫だろ。春休みとはいえ平日だしさ。まあ、餌あげられなくても、見るだけでも
楽しいんじゃないか?」
『だって、イルカが餌食べるだけでしょ? 何が楽しいのよ』
「え、そうか? キューキュー言いながら餌ねだりに来るのとか、可愛くないか?」
『別に。あたし、そんなにイルカ好きじゃないし』
「女の子なんだから、もっと可愛いものに興味を持ってもいいんじゃないかなあ。かなみは」
『やかましい!! アンタにだけはそういう事言われたくないわ』
「ま、とにかくさ。行くだけ行ってみようぜ。もしかしたら、体験も出来るかもしれないし」
 ガシッ
『ひゃっ!? ちょ、ちょっと!! 何いきなり手を握って……』
「ほら、行くぞかなみ」
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ……てか、手ぇ離せっての。バカアッ!!』

8752/4:2010/03/27(土) 19:38:43 ID:B/OX7SZs
「良かった。間に合って」
『やりたければ、アンタが勝手にやりなさいよ。あたしは知らないからね』
「ほら、かなみ。エサ」
『人の話聞いてんの? このバカ』
「だって、せっかく来たんだし、やらなきゃ損だろ。いや、絶対可愛いって。な?」
『あたし、生き物苦手なんだもん。何考えてんだかさっぱり分かんないし』
「大丈夫だって。何もかなみを取って食うわけじゃないから」
『そういう問題じゃないっつーの』
「ほら。あそこで子供達がエサやってる。俺たちも混じろうぜ」
『あー、もうっ!! 人の話全然聞かないんだからっ!!』


「ほら。エサだぞ」
 パクッ
[キュー、キュー]
「うは。すっげえ嬉しそう。かなみも早くやりなよ」
『だからあたしはいいっての……』
「でも、そこのイルカ。かなみの事ジッと見てるぜ」
『うっ…… な、何でコイツあたしの事見てんのよ。タカシから貰えばいいでしょ』
「分かんねーけど、かなみからエサ貰いたいんじゃね? 差し出せば上手に食うからさ。ほら」
『あー、もう。しょうがないわね。ほ、ほら……』
[キューッ]
 パクッ
『うわっ!? た、食べた』
「そう驚く事でもないだろ。ん? 何か頭差し出してるぞ。触って欲しいんじゃね?」
『な、何でそんな事おねだりしてくんのよ』
「サービスだろ。エサくれた」
『こんなもん、サービスじゃなくて罰ゲームだっての。もう…… きゃっ!? ヌルヌ
ルしてる』
「あははっ!! イルカも喜んでるぞ」

8763/4:2010/03/27(土) 19:39:05 ID:B/OX7SZs
『嘘よ。何でそんなのアンタに分かるのよ』
「だって、凄く飛び跳ねるみたいに潜って行ったし。あ、また一匹来た」
『だから何であたしなのよーっ!!』
「やっぱイルカも美人な娘の方がいいんだろ。ほら、ジッと見つめて待ってるぞ」
『ううう…… ほ、ほら』
 パクッ
[キューキューキュー]
「もう一匹欲しいんじゃね?」
『だーっ!! もう、業突く張りなんだから。タカシそっくりじゃない。はい』
 パクッ
[キューッ!!]
『アンタも撫でて欲しいわけ? ほ、ほら』
 ナデナデ……
[キュー]
「あ、今度は二匹来たぞ」
『またあたしなの? たまにはタカシの方に行きなさいよね』
「人気者だな。かなみは」
『うるさい。イルカに人気出たって嬉しくも何とも無いわよ。ほら』
[キューキュー]
[キューッ]
「ハハハ。ホント嬉しそうだなこいつ等」
『そうなの? 全く、何がそんなに嬉しいんだか、もう……』
「なあ、かなみさ」
『何よ』
「嫌がってた割には、何かめっちゃ楽しそうじゃねお前」
『へっ!? べ、別に楽しんでなんか無いわよ。しょうがないじゃない。イルカがみん
なあたしの方に寄って来るんだから』
「お前さ。イルカにくらい素直になったら?」
『やかましいこのバカッ!! 大体イルカにくらいってどういう事よ? あたしが普段
素直じゃないとでも言いたいわけ?』

8774/4:2010/03/27(土) 19:40:49 ID:B/OX7SZs
「さあな。そりゃ、自分の胸に聞いてみ?」
『フンだ。バーカ』
『(あんだけ嫌がってて、今更楽しいだなんて言える訳ないじゃない。ていうか、ホント
は水族館でタカシとデート出来てるだけで嬉しいとかバレたらイヤだもん。だから、しょ
うがないじゃないのよ……)』


終わり
遅くなったが、545.6スレ>>13のお題からでした

878以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 01:50:16 ID:dF8QdGvA
いいじゃないのGJ!

しかしよく落ちるな

879以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 02:34:07 ID:QRJbseQQ
いいねえ、いいねえ。

水族館いきたくなった

880以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 04:10:01 ID:wANPUicM
GJ

881百合ツンデレ:2010/03/28(日) 12:41:44 ID:???
避難所でメル欄ってのも無いだろうから、リンク貼りで

http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1292.txt


百合が嫌いな人は開いちゃダメだぞ

882以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 20:24:04 ID:???
規制中なんでこっちをほしゅ

883以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 21:21:33 ID:???
>>877
かなみもイルカもかわいいなw

>>881

gj!鬼女ワロタw

884ごぶんのいち:2010/03/28(日) 22:27:36 ID:cTPqACE2
本スレ>>14より

・自分の前では恥ずかしがってあんな態度だけど本当は…と思っていたら、女友達と話しているツンデレが自分の事をボロクソに言っていました


昼休み。
「痛てて……」
額に貼られた絆創膏を手で撫でつつ、俺は呟く。
『どしたの別府ー?その怪我……またかなみ?』
そう言い近づいてくるのは友子。話題に上がった『かなみ』は、俺の幼馴染だ。
長い付き合いではあるが、俺は最近かなみの事が良く分からないでいた。
「ああ、ちょっと手が触れただけで顔真っ赤にして押されてさ。壁に頭ぶつけちまってな」
俺の話を聞き、友子はため息を一つ。
そして右手の人差し指を俺に突き出す。
いつもだ。俺がかなみの話をするとこの仕草をし、そして言う。
『別府?別にかなみはアナタの事を嫌ってはいないから、勘違いしちゃダメよ?』
……やっぱり。
「……そうか?流石に毎日やられるとなぁ」
『照れてるのよ。幼馴染なんだから、分かってあげてよ〜?』
そんなもんだろうか。
「んー……。まぁ、分かった」
友子は『そ。ありがと』と微笑み、教室を出た。
アイツは、友子の言う通り、照れてるだけなのかも知れない。
……可愛い奴。
下校までは、そう思っていた。

885ごぶんのに:2010/03/28(日) 22:29:07 ID:cTPqACE2
昇降口。
靴に履き替え、校門でかなみを待つ事にする。
……帰りにでも、かなみに聞くか。
かなみは俺の事をどう思っているのか。それが俺は分からなかった。
毎日のように殴られ、顔が真っ赤に腫れ上がったことだってある。でも、友子はかなみが俺を好いていると言う。
俺はかなみが好きだ。そうでもなければアイツの相手なんて出来っこない。
だから……聞く。いや、告白……だな。
そんな事を考えつつ、校門に向かうと、声が聞こえる。
アイツだ。かなみの声がする。
視線の先に、かなみがいた。どうやら先に校門で待っていてくれていたらしい。
かなみは友達と話しているらしかった。
『……がうわよ、あんな奴』
かなみは顔をしかめ、
『あんな変態野郎、嫌いよ!!』
……誰の話をしてるのかは知らないが、悪口だというのがすぐに分かった。
『ホントに〜?』
友達はおどけた様子でかなみに問う。
『ええ、嫌いよ。大っ嫌い。あんな奴……ガサツだし、不潔。エロいし、不細工。好きになる要素がどこに』
『かっ、かなみ!?後ろ後ろ!!』
かなみは振り返り、驚きに目を剥いた。

886ごぶんのさん:2010/03/28(日) 22:30:17 ID:cTPqACE2
……遅ぇよ。
分かった。思い知らされた、と言うべきか。
……かなみは、俺の事が嫌い。
何を俺は期待してたのだろう。本当のバカがここに居た。
分かってた事。十二分に理解していたのに。
『あ、あの、タカシ?えと……その』
「いや……良いんだ。」
『え……?』
「薄々気付いてた。無理させて、御免な?本当、最低だな……じゃあ、俺帰るよ」
そう言い、かなみを置いて帰路につく。後ろでかなみが何か言ってた気もするが、構わない。
卑怯だなと思う。
構わない。
もう、何もかもどうでも良かった。

887ごぶんのよん:2010/03/28(日) 22:31:35 ID:cTPqACE2
独り暮らしは良い。傷付いている自分を、身内に悟られなくてすむから。
帰宅してから、俺は何故かかなみの事を考えていた。
……何かかなみ、辛そうな顔をしてたような……。
「……別に、どうでもいいか……」
呟いた、その時――
『タカシィッ……』
ドアを叩く音が聞こえる。
ドア越しに、アイツの声が聞こえる。
「……チャイムはあるって言ったはずだろう」
ドアを開け、かなみを見る。
かなみは、泣いていた。
顔を涙でくしゃくしゃにして。
目を真っ赤に腫らして。
『うぅっ……ごめっ、あ、アタシィッ……』
嗚咽で何を言ってるのかさっぱり分からない。
でもこれだけは分かる。
「……謝りに、来たのか……」
かなみは頷く。少し落ち着いたようだ。
『……好きなの』
「はぁ?」
『好きなの!!アンタが好き!大好き!!優しいし、カッコ良いし、仕草とか、言葉とか、全部……!!』
俺はコイツの言ってる意味が分からなかった。
「じゃあ何であの時……」
『あっ、あの時は……そ、その……は、恥ずかしくて』
友子の言葉を思い出す。
「それが本音か?」
かなみは首肯。

888ごぶんのご:2010/03/28(日) 22:34:26 ID:cTPqACE2
「お前は言ったよな?俺はガサツだぞ」
『好きだもん』
「不潔かもしれないぞ」
『好きなの』
「不細工だもんな?」
『カッコ良いもん』
「変態野郎でも?」
『大好きよ、そんなところも』
……なんか、毒が抜けてしまった。つーかコイツのキャラが違ってちょっと怖い。
『タカシは?』
「俺は好きだった。けど、お前があんなに言うから……」
『何したら許してくれる?』
「……んー」
迷う。と言うか、毒が抜けてしまったので、何かさせるのも嫌な気分だった。
「……俺の彼女になるっての、どうよ?」
ややあって、
『それで、許してくれるなら……なるわよ、彼女に』
返答するかなみは少し嬉しそうだ。
「良いのか?ガサツ、不潔、不細工でエロしかも変態野郎だぞ?」
とびきりの笑顔で、かなみは答えた。
『だって、大好きだもん』

889以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 22:44:59 ID:cfUErE5k
>>888
GJ!!

ツンからデレの落差の激しさがいいなあ

890以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/28(日) 23:51:28 ID:dF8QdGvA
いやもうね
とりあえずツンデレを愛する者でこのシチュが嫌いな奴がいるわけないだろうと
僕はそう言いたい

891以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/29(月) 00:59:04 ID:???
最近、等身が低くなりすぎてたので戻そうとしたら戻せなくなってたでござるの巻。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1294.jpg

892以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/29(月) 02:00:53 ID:TffZOBj2
こう、物憂げな表情ってなにかグッとくる




なにジョジョ?等身が戻らない?
逆に考えるんだ、「一等身でもいいさ」と考えるんだ

893以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/29(月) 03:55:18 ID:BdQKDwcg
一等身はさすがにマズイだろwww

なにはともあれ>>884-888>>891GJ

894以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/29(月) 08:37:15 ID:???
>>892
一頭身ってカービィの世界かwww
ツンデレは無限大だな

とにかくGJGJ

895以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/29(月) 11:45:21 ID:cTPqACE2
>>891
GJ!!
可愛いなぁもう。

896以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/30(火) 00:47:52 ID:???
「メガネを外したら美少女」というのはメガネを活かしきれてないカスである。
ある朝、コンタクトを洗面台にに落としてしまい、仕方なく自宅用のメガネをかけて登校してるところに
ばったり会って「あれ?こいつよく見たら美少女じゃないか?」と思える子が美少女である。
http://tunder.ktkr.net/up/log/tun1298.jpg

一等身は描いてみたらグロだったので割愛。

897以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/30(火) 00:56:04 ID:???
GJ

898以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/30(火) 01:53:04 ID:E46PqDPs
>>896
メガネっ娘萌えなら正論だな
GJ!!

899以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/03/30(火) 02:54:27 ID:???
>>896
全力で同意
ツンデレに眼鏡とかもうパラダイス




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