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●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●

8303/5:2010/03/21(日) 13:13:43 ID:Wnj/a9Zw
 その時、視界の端っこで別府君が体を動かしているのが見えた。立ち上がろうとして
いるのだと気付き、私は彼の方に向き直って聞いた。
『立てる?』
 もしかしたら、転倒した時に足を痛めたりしているかも知れない。車にはぶつかって
いなくても、転び方が悪かったかも知れないし。そして、事故の直後はアドレナリンの
分泌で、立ち上がろうとするまで痛みに気付かなかったりするものなのだ。
「ん……大丈夫だと思うけどな」
 手や足を動かしながら別府君は答えた。それから、地面に手を付いて立ち上がろうと
する。その姿を見た瞬間、私の体が自然に反応した。
『はい』
 自分でも信じられなかった。別府君に対して、手を伸ばす事が出来るなんて。何だか、
心と体が完全に別になった感じがする。
「……え? あ、ああ……サンキュー……」
 一瞬驚いた顔を見せた別府君だったが、すぐに手を伸ばして私の手を握った。大きな
手が、優しくしかししっかりと、私の手を包み込むように握る。その瞬間、私の体に電
流に当てられたような痺れが走った。
「どうかしたか?」
 別府君が僅かな体の震えを、手を通して感じ取ったらしい。私は慌てて首を振る。こ
んなの、気取られたくない。
『何でもないわ。引っ張るわよ』
 グッと力を入れて腕を引くと、彼の体がゆっくりと立ち上がる。すると、私は彼と間
近で向かい合う形になってしまい、動揺した私は慌てて背を向けた。その背中に、彼の
声が掛かる。
「悪いな。色々と」
『いちいち謝らないで。鬱陶しいから』
 即座にキツイ言葉で彼を制する。本当に、これ以上会話を続けたりしたら、どんどん
おかしくなってしまいそうだ。熱でボウッと浮かされそうになったような感覚で、私は
何となく、まだ別府君の手の感触が残ったままの自分の手を見つめた。その時、自分の
手に何かが僅かに付いているのに気が付いた。




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