レス数が1スレッドの最大レス数(1000件)を超えています。残念ながら投稿することができません。
●事情によりこちらでSSを投下するスレ 2●
-
『ひき逃げ? 酷い。逃げるなんて……』
いろんな事が一瞬のうちに頭を過ぎる。警察に連絡するとか、ナンバーを控えた方が
いいんじゃないかとか。しかし、次の瞬間には、それらの考えも吹っ飛んだ。
「あいててててて……」
私の注意が、別府君に注ぎ込まれる。何よりも、彼の手当てが先ではないかと。場合
によっては救急車を呼ばなくてはならないかも知れない。私は急いで別府君に向き直る
と、腰を屈めて彼を窺いつつ、言った。
『あの…… 大丈夫?』
「あ、いや。大丈夫ですよ。こけただけで、ぶつかってないっすから」
そう言って見上げた彼の目が、私の顔を捉えて止まった。目が僅かに、大きく見開かれる。
「椎水……さん……?」
彼の口が、私の苗字を発する。その驚いた様子に、私は憤慨したように鼻をフン、と
鳴らし、体を起こす。
『そうよ。それがどうかしたの?』
冷静に言い放つと、彼は困ったような表情になって私から顔を逸らし、汚れたズボン
を叩いた。
「いや、その……声掛けてくれるなんて、思わなかったから」
『てっきり、その……車に轢かれたかと思ったからよ。それで無視なんて出来る訳ない
でしょ? 例え誰であっても』
言い訳をしつつも、私は胸が急速に高鳴って行くのを感じていた。緊急事態に麻痺し
ていた感覚が徐々に蘇って来ている。いつもなら耐え切れず、逃げ出してしまうあの感
覚。だけど、今は何故か立ち去る気にはなれなかった。
「まあ、確かに。でも、心配してくれて嬉しいよ。有難う」
顔を上げ、ニッコリと微笑む彼から私は顔を背けた。たかがお礼を言われただけだと
いうのに、顔が酷く火照っている。他の男子の誰にだって、こんな事は無いのに。
『別にお礼を言われる事なんかじゃないわ。私は何もしてないもの』
「いや。その……気持ちだけでもさ」
冷たく突き放して、気持ちをクールダウンしようとしたのに、そんな事を言い返され
て私の体がより一層熱を帯びてしまった。しかし、心の内にむず痒い様な嬉しさが湧き
上がっているのを、私は認めざるを得なかった。
掲示板管理者へ連絡
無料レンタル掲示板