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それは連鎖する物語Season2 ♯2
1
:
数を持たない奇数頁
:2014/09/05(金) 21:07:09 ID:LUyN3zHI0
つまりリレー小説なのだ
397
:
数を持たない奇数頁
:2015/01/30(金) 22:00:25 ID:DefNsAu.0
爬虫類とかその手の類を纏めてドラゴンって呼んでたって聞いた覚えがある
398
:
数を持たない奇数頁
:2015/01/30(金) 22:28:22 ID:HxW8dgR.0
爬虫類ってトカゲ(蛇)と鰐と亀しかいないらしいね
トカゲ(蛇)と鰐はドラゴンのイメージ強いが、亀型ドラゴンってほぼいないよね
昔の人は亀=爬虫類って発想がなかったのだろうか
399
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/01(日) 16:02:02 ID:K3JHvv3w0
暴走予定と言ったけど、環境がちょいと動きそうだからもしかしたらパスも辞さない状況に陥るかも分からん
多分パスに至る事はないとは思うけど念のため書いとく
400
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/01(日) 20:01:32 ID:.UVI7p3o0
え、マジで!?
さっさと書き上げなきゃやべえ!
401
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/01(日) 20:05:54 ID:.UVI7p3o0
サトリんが死んだのは四、五年前だったか
402
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/01(日) 20:10:19 ID:K3JHvv3w0
一応動くとしたら2月3日以降だな。今のところどう動くか本当に予想がつかんのよね
>>401
聡治が中等部に転がり込む云々で、今が高等部二年だから大体それくらいだな
403
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 10:29:04 ID:vuZYJwwA0
現在12kbほど
いい感じの落しどころ見つけたら投下するわ
404
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:09:23 ID:vuZYJwwA0
一応投下できる程度には書いた
が、話が一ミリも進んでない
405
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:21:11 ID:2H5/4.YY0
wktkしておく
現在進行形で心身ともにくそったれな状況だが、西口が納得した上で投下するなら、まぁどうにかやってみるわ
明日急がしめで、明日以降こちらの状況が動くだろうから筆が進みにくいが頑張ってみる
406
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:22:50 ID:vuZYJwwA0
すまんKの人、俺がこれ以上書いたら確実にグダグダになる
後は任せた
407
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:24:12 ID:vuZYJwwA0
「いぇと、まあこりき、なべ」
唱える。「我が意の下に頭を垂れよ」、と。
呪文と言うにはあまりにも幽か。それ以前に、言語とすら言えぬ。乳飲み子の呻きに等しき『それ』は、口より発せられる「意思」。
言語という体系が成立するよりも、遥かに以前。歴史の霞の彼方に消えた、人がまだ自然と一体であった頃の名残。「原初の令」、言霊。
いかなる魔術的な意味合いも存在せぬそれは、翻せば、いかなる魔術的な干渉をも跳ね返す。人を超越した霊的存在と接触を試みる際に、それはほぼ唯一の矛にして盾となる。
「竜」を屈服させるには、必須とすら言える。
伏神劔の内側に漲る、野獣めいた衝動。いや、それは事実野獣なのだ。吠え叫び、猛り狂い、欲望のみを原動力として動く、「衝動のみで構成された形無き野獣」。それは意思を持つ暴力、人を侵す病。神を志す哀れなる魔、「竜」。
劔は己の内に横たわる、眼前にて威容を誇るモノと同種の存在に語りかける。いや、命じる。「我が意の下に頭を垂れよ」、と。
「竜」は叫ぶ。吠える。人間風情が何様のつもりだと、全力を込めて猛る。全身を押し潰されそうなほどの衝動が、彼の体内を駆け巡った。
だが彼は、それをねじ伏せる。「黙ってひれ伏し、俺に振るわれていろ。竜風情が」。
粗暴にし獰猛。けして折れず、曲がらぬ彼という「意」が作り出した言刃《コトノハ》に、人に寄らねば顕現すら出来ぬ竜などが抗えるはずも無い。彼の筋肉を引き千切らんとしていた衝動が、潮が引くかのように消えうせていく。
「黒鱗、世を犯す能をここへ。撃翼、地を踏み砕く能をここへ。珠瞳、草木薙ぎ払う能をここへ。鎧え、鎧え、鎧え。我が銘は天羽々斬。其を規定するその名の下、総てを疾く用立てよ」
――『悪路王』。
408
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:24:42 ID:vuZYJwwA0
蒼き竜が瞠目した事を、一体どれほどの者が認識できただろう。
彼の巨体から見れば、豆粒と形容して差し支えない、筋肉質な男。その内側から、山をも揺るがしかねない闘気が、殺意が、まるで濁流のように放たれているのに恐怖していると、一体どれほどの者が理解できただろう。
それほどまでに、蒼竜の行動は早かった。
『悪路王』。劔の「竜」を縛るその名をいい終わるか終わらないかの内に、それの爪は既に振り下ろされていた。
その巨体からは想像がつきそうも無いほどの俊敏さ。敵の眼前にいながら、悠長に言霊を紡いでいた劔の迂闊さを抜きにしても、それは驚嘆すべき物であった。
防げぬ、避けれぬ、弾けぬ。普通ならばそうなるはずだった。そう、普通ならば。
だが――
「護ッ!」
圧倒的質量の爪が劔を引裂くかに思えたその刹那、響いたその声は、幾重にも重なっていた。
精確には二十三重。半壊した会堂を抱く伏神邸の中庭を取り囲むように表れ出でた「彼ら」は、それぞれの年代や性別による声音の差はあれど、少しも乱れず、完全に同時に叫んでいた。
言葉は鍵となり、その漆黒の装束に織り込まれた書記魔術を起動する。二十三人が判を押したかのように翳した左手の、その延長線上にいる劔の眼前に、簡易障壁が術者の数だけ重なって展開する。
それは、劔と竜の爪の僅かな隙間のみを断つ局地的な物ではあったが、その部分の強度だけで言えば、夕霧の『晶結界・風花』にも匹敵する程の物であった。
人が放てる術式で、抉れてしまう強度。当然、竜の一撃を完全に防ぐ事などできよう筈も無い。
鋭き爪は、二十三層もの障壁をまるで紙でも引裂くかのように軽々しく砕いていく。一瞬だ。瞬きする時間を稼ぐ程度しか、その障壁には意味が無かった。
たかが一瞬。されど、一瞬。人が瞬き出来るほどの時間。
それだけ稼げれば十二分だ……!
空間を切り裂くかのように直進する閃光。銀色の尾を引くそれは、例えるならば飛翔する氷の鏃。伏神邸の家屋、その屋根にしゃがみ込んでいた夕霧の右手より放たれ、音も無く飛来する。
蒼竜の爪が結界を砕くよりも早くその左前足に突き立ったそれは、それとほぼ同時に、刹那の時すら経ずに四ツの術式を発動する。
一ツ、結界隔離。竜の左腕を包み込む。その内部で駆動する術式の影響を、外部に漏らさぬための措置。融解した氷の鏃が、その内部を水で満たす。
二ツ、呪詛・操作の複合術式「奪熱」。竜の巨大な足に内在する、膨大な熱エネルギーを奪い取り、絶対なる零度にて凍結させる。余波を受け、結界内を満たしていた水も凍る。
三ツ、奪い取った熱を、脆弱なる小結界にて隔離する。抽出された純粋なる熱エネルギーは、泡沫が如き矮小な空間にも、容易に収まった。
急激な温度変化に耐え切れず、蒼竜の爪に亀裂が走る。その時にこそ、彼女の術式が真価を発揮した。
小結界が、熱に耐え切れずに崩壊する。隔離した熱エネルギーが、結界内全体に満ちる。溶岩が如き高熱は、内部を満たす氷を融かし、蒸発させる。――一瞬で。
四ツ、反応促進。錬成魔法の加護を受け、文字通り爆発的な勢いで発生した水蒸気が、結界に尋常でない圧力をかける。その負荷に耐えかね、結界に小さな一穴が穿たれた。
途端、ピュウと言う甲高い音を立て、穿たれ穴から水蒸気が噴き出る。それは宛ら推進器の様に結界を、ひいてはそれに包まれた蒼竜の腕《かいな》を大きく動かし、その機動を無理矢理捻じ曲げる。
逸れた。
爪は劔の体に一条の傷すら付けること叶わず、横合いの地面を抉り取るのみであった。
409
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:25:05 ID:vuZYJwwA0
体勢を崩しそうになり、蒼竜は残る三足を踏んばり、何とかそれを押し留める。必然的に生まれる微かな硬直、隙。それが致命的な物にならなかったのは、単に運が良かったからだろう。
「悪路王」
烈風が吹き荒ぶ。不可視の力場が、劔の全身を覆う。蒼竜は翼を翻し、一息に飛び退った。伏神家の広大な中庭であればこそ、その巨体でも自由に動くことが出来る。
両者の距離、およそ八メートル。もう先ほどの様な奇襲は通用しそうもない程の距離。
伏神劔の「変化」は、既に終了していた。
右腕。指先から肩口までを覆うのは、光沢など存在しない漆黒の竜鱗。どこか鎧めいた堅牢さを匂わせるそれは、彼の左腕が元々、丸太のように太かったせいもあろうが、左袖を突き破り、その全体を外気に晒していた。
「『竜』の力……!」
蒼竜は呻き、歯噛みする。まるで己の誇りを貶められたとでも言うように。
劔は口角を吊り上げ、ニィと笑った。
「相変わらずいい腕だな、夕霧。助かったぞ」
「どうも。信頼してくれるのは嬉しいけど、いい加減敵の前で無防備になる悪癖どうにかならないかしら? ひやひやするのだけれど」
心底ウンザリしたような口調で、夕霧は呟くが、劔はそれをまたも笑うことで受け流す。そうする事を分かっていたようで、夕霧は深々とため息を吐くだけで、そこで会話を終わらせた。
そんな劔の元へ、駆けてくる影がある。半壊した会堂から飛び出てきたそれは、胸元に長大な刀剣を抱いた、小柄な人間のものだった。
それは中庭を取り囲む集団と同様の装いをしており、頭のてっぺんからつま先まで、漆黒の装束で覆われており、性別や詳細な体つきすら特定できない。
だが一四〇にも届かぬ小柄な身長と、歩調から漲る若々しさ。刀の重さに振り回され、足取りが稀にもつれそうになっている所を見るに、幼年であろうことは想像に難くない。
影は劔の元まで行くと跪き、捧げ奉るかのように両手に乗せた刀を、スイ、と劔へと差し出した。
劔の表情から笑みが消える。
彼は何も言わず刀を受け取ると、間を置かず抜刀する。鯉口を切る清廉な音と共に表れ出でた刀身が、鞘からその身を表す先から、黒々と染まっていく。
それは劔の左腕のそれと同じく、光を反射せぬ黒。竜の力の影響を受けている事は、誰の目にも明らかであった。
「祢々、これをソウジに。対話も許可する」
一歩、進み出た劔は振り向きもせずに言う。そして後ろでに鞘を差し出し、落す。
祢々と呼ばれた影はそれを危なげなく掴むと、音もなく遠ざかって行った。
劔はそれを気配でもって確認すると、再び一歩踏み出す。つつ、大きく息を吸い込み、次の瞬間、それを全精力をこめて吐き出した。
「露払衆、任務復唱!」
すると、跪いていた二十三人の黒装束たちが一斉に立ち上がり、右手で作った拳を、心臓の位置に叩きつける。
「非戦闘員の保護、並びに四拾七氏配下の排除であります!」
先ほどと同様、一切乱れぬ完璧な斉唱であった。それを受けて、劔は一歩進みつつ、続ける。
「然り。これは露払衆最後の任務である。今日を堺に、伏神という呪はこの世より消えうせる。汝ら二十四剣、皆押並べて人へと還るのだ。一本たりとも折れること許さぬ! 散れ!」
「応ッ!」
一陣の風と共に、二十三の影と、夕霧はその場より掻き消えていた。
410
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:25:19 ID:vuZYJwwA0
「狗の躾が行き届いているようだな、伏神劔。頭領冥利に尽きるか?」
竜が嘲る。
その言葉に劔は憤るどころか、興味深そうに目を細めた。
「それを知っているという事は、貴様どうやら四拾七氏、ないしそれに近しい者、という事らしいな。一つ聞きたいことが出来たぞ、竜」
「答えると思うか?」
「答えぬのならそれでもいい。だが問わせて貰う。――お前は五年前、もうこちらに来ていたか?」
問いの意味が、理解できなかった。
蒼竜は怪訝そうに顔を歪め、無言だ。
劔は答えろと催促するでもなく、しばらくその表情を眺めていたが、やがて「……そうか」と小さく呟き、安堵にも似た表情を浮かべた。
「どうやらお前は、五年前の儀式とは何のかかわりも無かったようだ。良かったな、竜。貴様は一度殺すだけで済ませてやる」
右手に携えた刀を腰溜めに構え、伏神劔は轟然と言い放った。
蒼竜は、嗤う。笑う。哂う。
「図に乗るなよ、狗め。竜の力の片鱗を振るえるだけで得意顔とは、片腹痛いぞ!」
両翼が広がり、旋風が劔の頬を撫でた。
その風の中に、どこか刃めいた寒々しさを感じつつも、伏神劔は不動だ。その瞳に一片の容赦も、油断も無い。
「伏神家終代当主、伏神劔。一刀、馳走仕る……!」
411
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:25:44 ID:vuZYJwwA0
身内の醜態というものは、時として自分の痴態を拝まれるよりも心にクる。それを俺は今、痛いほど実感している。
朝霞はまだいい。実態がどうあれ、対外的には彼女は身内だ。だからこれはまだ大丈夫だ。何が大丈夫なのかは自分でも分からないが、兎にも角にもまあ大丈夫だ。
しかし今回は事情が違う。クロガネに見られた。同校生というだけで、何の戸籍上の繋がりもない後輩の少女に見られた。
泣き乱しながら孫を押し倒す祖父の姿を。しっかりばっちり淀みなく。
「ぬわああああああんソウジいいいいいいいいいいいん!! 心配したよおおおおおん! 何でこんな所にいるんだ! いや、そんな事より無事で良かったあああああああああああああんんんん!!!!!」
やめて。これ以上気まずい空気を流さないで。クロガネの同情的な視線が一層強くなるの。
……今の状況を説明しようと思う。
まずここは言わずもがなではあるが、山道だ。まだ伏神邸へは戻れていないが、位置関係から見てあと数分もしないうちに戻れるはずであった。
そんな俺を足止めした要素は三つ。
一つ。突如館のほうから響いた轟音と、それに伴う濃密な気配。俺はそれに覚えがあった。
「狡猾」竜ドネルクラル。学園で遭遇したあれと、その時に感じた気配は驚くほどにそっくりだった。
唯一つ違うことを上げるとすれば、あの時よりも濃密に思えたことくらいだろうか。まるでほぼ同じ位置に、一息に二体の竜が沸いたような、そんな気配だった。
背筋を怖気が駆け、思わず駆け出そうとした俺を押し留めるものがあった。
それが二つ目の要素。クロガネから貰った指輪が発光したのだ。
青白く光るそれに度肝を抜かれた俺は思わず足を止め、そちらに視線を向ける。すると、指輪の内部で簡易な書記魔術が起動し、空間に文字を投影し始めた。
「DS301/αSTATUEの転送を開始。指輪所持者は可能な限りその場に留まれ」
それは機界言語の簡潔な文章だった。
DSなんたらとかいう文字列の意味はさっぱり分からなかったが、クロガネが手ずから渡してきた物品だ。危険なものという事もないだろう。
それに、たしか危険があった場合には自立兵装だかいうものを転送するとか言っていた。恐らく今から送られてくるものはそれだろう。
伏神邸の事は心配だ。それこそヒッジョォーに心配だ。が、何せあそこには伏神楯一郎というよく分からない生き物が一匹いる。すぐにどうこうなるという事はないだろう。
そう判断し、俺は指輪の警告どおりにその場に静止した。
すると数秒も経たぬ内に、「それ」は現れた。
甲冑。
ずんぐりとした形状をしてはいるが、「それ」は家にもある人間界の前時代の鎧に酷似していた。
艶めく群青色のボディ。丸みを帯びた太い手足。稼動範囲が狭いように思えるが、なぜか正座した状態で唐突に出現したことを見るに、その類の心配は必要ないようだ。
座っている状態だというのに、その頭はこちらの顔を見下ろせるほど高い位置にあり、兜の奥で妖しく光る二つの赤光に見つめられていると、尋常でない威圧感を覚える。
危険はない。それは分かっているのだが、想像していたよりも巨大なそれに思わず圧倒されてしまい、俺は何を言ったらいいかしばし迷ってしまった。
412
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:26:00 ID:vuZYJwwA0
『ミスター、ご無事でしょうか?』
「……クロガネ、か?」
その巨体からは想像もつかない涼やかな声に、少し驚く。
『部分的に肯定です。この機体は私そのものではありませんし、私が操作しているわけではありません。
ですが、機体を通じた通信も出来ますし、アイカメラが捉えた映像はリアルタイムで私もモニタリングしています』
何を言っているのか、詳細には分からなかったが、文脈から考えるにこのデカブツは、携帯電話と同じような機能をも備えている、という事らしい。
『気付いていらっしゃるとは思いますが、竜が出現しました。事態が収拾するまで、この「アギョー・スタチュー」に護衛を務めさせたいのですが、構いませんね?』
やっぱり、そうなのか。クロガネが断言している以上、あの気配は勘違いの類ではない、という事だろう。
そしてその竜は、恐らくあの無人の集落と、伏神が抱える「闇」と、無関係ではないはずだ。
それを垣間見たものが絶望し、竜へと堕ちたのか。それとも竜が何らかの目的のために、あの状況を作り出したのか。それは分からない。
が、こんな狭い世界で、二つの異常事態が全く関係ない所で進行していた、と考えるほうが不自然極まりない。
間接的にせよ、直接的にせよ、あの竜は伏神が作った物、なのだろう。
ならば、ただ何もせずに護られている訳にはいかない。
「なあ、クロガネ。俺――」
「ソウジィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!!!!!!」
はい死んだ! 今シリアスな空気が死んだよ!
横合いから弾丸のように飛んできた祖父に押し倒され、俺は地面に転がる。その上に覆いかぶさるようにして伏神楯一郎は奇怪な叫び声を上げた。
そして、冒頭の状況に戻る、という訳だ。
うーん、死にたい。機械を通じてすら伝わってくる、クロガネの哀れみの視線が刺さるようだ。
413
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:26:58 ID:vuZYJwwA0
以上
露払衆と劔に関する設定だけ個別に書きたいんだがいいだろうか
414
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 12:40:36 ID:2H5/4.YY0
おっつおっつ。とりあえず現実逃避の不貞寝という名の体力回復したら読んで、そこから調子次第で書き始めようかな
設定はばっちこいとだけ
415
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 13:04:09 ID:vuZYJwwA0
【露払衆】
名の通り、露を払う者達。
伏神家の影の実働部隊であり、闇そのもの。
構成員は皆名を捨て、銘と呼ばれる固有の符牒を与えられる。
例として、長船〇七や祢々切〇六など。
元々露払というのは、伏神の家が興ってから連綿と続く風習である
「真の世継に降りかかる災厄を一手に引き受ける為に産み出される子供」の事を指し
露払衆とはその世話と延命の為に傍につけられる者の事を表していた。
しかし、時代を経るにつれ、穢れ・災厄を背負った子供を寧ろ貴重な戦力として見るようになり
現在の様な形へと変質していった。
劔が頭領と呼ばれる理由もそこにある。
ある代、露払衆の頭領を務めていた当主の兄が突如反旗を翻し、実権を奪取するという事態が起こった。
当時の四拾七氏の人間によって鎮圧されはしたが、その事態を重く見た彼らと前当主により
露払の風習は凍結される次第となった。(代替手段は別に用意された)
しかし、聡治の父である巌斎はかつての伏神を取り戻さんと志し、その凍結を解除。
露払として伏神に仇為す者を悉く切り伏せよ、という思い「のみを」込めて、長男に劔と名づける。
そして聡治に兄として接させ、兄弟愛という物を学ばる事により心に枷をつけようと目論んだ。
結果は功を奏し、劔は露払の人間として文句無い働きをするまでになった。
聡里が死にいたり、聡治が家を出るまでは。
416
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 15:40:44 ID:2H5/4.YY0
K、再起動。心身ともにある程度回復したから書き始めていくわ
やろうと思った事が潰れたか……まぁいいや、切り替えるに限る
それにしても大分状況がごちゃごちゃしてきたなぁ。悉く苦手方面に傾いたから長引きそうだ
417
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 16:19:06 ID:vuZYJwwA0
げっ、マジかヤッチマッタ
418
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 16:41:07 ID:Rcy5p1520
乙ポニぜ
お兄ちゃん私設兵団持っとったんかぁ、いいね影の集団
Kとクロたん次第では俺のやりたい(放題な)展開に持っていけそうだ
419
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 16:53:33 ID:Rcy5p1520
というか確かクロガネって現地入りしてたっけか
戦闘はロボットに任せてクロガネ本人は暗躍させるのがベターかな
420
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 17:54:39 ID:2H5/4.YY0
んー……どうしようかなこれ本当に。今までで一番キツいパスかも分からん
これ露払衆は夕霧(その他周辺関係者も)確保して安全な場所まで離脱したって事でいいのかな。「周囲にまだ生き残りがいるぜヒャッハー!」な感じではなさそうだけど
とりあえず爺ちゃんGo villageにして、下山中にスタチューにPC押し付けつつ祢々回収して、屋敷突入でパスる感じかなぁ。今回は兄さんに触れないでおこう。あと学院の閑話捻じ込みどころじゃないわ
精神面が今くそったれだから、話動かそうとしたらどうしてもバッドになりそうだから、今回は暴れないでおく
421
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 17:57:41 ID:vuZYJwwA0
うん、そんな感じ。>露払衆は夕霧(その他周辺関係者も)確保して安全な場所まで離脱した
お兄ちゃんに気兼ねなく暴れさせようと思って
422
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 18:06:45 ID:2H5/4.YY0
把握。とりあえず今日中に書ける範囲でそぉい! するわ
明日以降暫くPC触れん可能性も浮上してきたしな
423
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 21:08:15 ID:ub9HU38c0
乙
まさかここまで強いとは思ってなかったすげぇwww
一瞬に応酬が詰まってて凄いバトルだこりゃ真似できん
424
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 22:07:40 ID:2H5/4.YY0
ごめん、今日を逃したら暫く身動き出来なさそうだから短いけど区切りがいいからぶん投げる
425
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 22:08:36 ID:2H5/4.YY0
大型犬に盛大に懐かれると、時折、こういう状況に陥るのだろう。
問題があるとすればじゃれ付いて来るのが犬ではなく祖父である事、そして家族間で行われるには過剰なスキンシップを、知人の化身とも表現できる存在に観察されている事であろう。
死んだ魚のような虚ろな眼をした聡治は、暫くの間現実逃避に徹する事に決めた。祖父がじゃれ付いているのは夢の話で、クロガネの機械甲冑《アギョー・スタチュー》に観察されているのも、夢の話なのだ――
そんな訳あるかと、じゃれ付いて来る楯一郎を思わず蹴っ飛ばした聡治は、転倒の衝撃で投げ出してしまったノートパソコンへ視線を向けた。投げ出した際に近くで剥きだしになっていた岩石に叩き付けられたらしく、樹脂製の外装には一条の亀裂が走っており、閉じられていたそれを開けば、液晶画面が見事に割れていた。
重要な情報源が失われた事に対して一瞬、思考が真白に染まる。それでも、僅かに残った理性が、授業で習ったパソコンの構造を思い返していた。
外装も液晶画面も所詮は飾りだ。記憶媒体となる部分が無事であれば、それを他の機材と接続する事で中身を確認出来る。
幸い叩き付けられたのは液晶側であり、記憶媒体などの重要部分が詰っている側は無傷だ。いや、外面的に無傷なだけで、中身は破損しているかもしれない。
それでも僅かに見えた希望に平静さを取り戻した聡治は、破損したノートパソコンを抱え上げると、思わず蹴っ飛ばしてしまった楯一郎の方へと視線を向けた。
流石にただの学生として平穏な日々を生きている聡治の蹴り程度では何ともないらしい。先程よりかは理性的な雰囲気を纏わせている楯一郎は、何事もなかったかのように立っていた。
視線が機械甲冑の方へと向けられている。深く刻まれた皺で全盛期の厳しさが薄れたとは言えど、双眸を細めると威圧感を感じる。その正体を精査するかのような視線に、機械甲冑が身悶えするかのように身動ぎした。
少々クロガネに言いたい事が喉元まで込み上げて来たが、嚥下。今は馬鹿げたやりとりをしている場合では、決してないのだ。
「……爺ちゃん、聞きたい事があるんだ」
意を決して告げれば、楯一郎の視線がじろりと聡治に向けられた。先程までの孫馬鹿っぷりは嘘のように掻き消えている。代わりに存在しているのは静か過ぎる気迫だ。
びくりと、聡治は身体を跳ねさせる。かつて伏神山に無断で立ち入って怒られた際とも違う、今まで見た事のない祖父の雰囲気に、自然と背筋が伸びる。
暫し無言のまま聡治を見ていた楯一郎だったが、大きな溜息と共に、雰囲気が和らぐ。それでも孫馬鹿の雰囲気を感じさせない程には張り詰めた雰囲気を纏っていた。
426
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 22:08:51 ID:2H5/4.YY0
「魔界人集落まで行って、きたんだ。……何だよ、あれ? 朝霞の知り合いが住んでるんじゃないのかよ」
兄である劔が、朝霞に嘘を教えていたという訳ではないだろう。わざわざ嘘を吐く理由もないし、電話も誰かの手助け無しでは扱えないような機械音痴が、ノートパソコンなどを置くはずがない。
そもそも、根本的に現状を理解してなお、何もしないという事は、聡治の知る劔の性格を考えるとありえない。良くも悪くも実直な気質であり、身内となる者が蔑ろ……以前の得体の知れない状況に追い込まれているのに、何もしないはずがないのだ。
聡治が家出して今日に至るまでに、劔が完全に変わってしまっているという例外を除けば、劔が状況を把握していないと考える他にない。
つまり何処かで情報が改竄されており、現在は伏神家に関する雑事から離れた視点にある楯一郎ならば、という聡治の希望は、直後に潰える。
何を言っているのだと、きょとんとした表情を浮かべた楯一郎を見て、聡治は眉を顰めた。
「聡治、何を言っているのだ? 集落はきちんと」
「だったら! ……だったら、ちょっと見てきてくれよ。俺だと分からない事でも、爺ちゃんなら何か分かるかもしれない」
怪訝な表情を浮かべる楯一郎だったが、数秒程聡治の眼を覗き込んで、冗談で言っているのではないと悟ったのか、無言で頷く。
「……聡治は先に帰ってなさい。此処まで来たのだ、道は分かるだろう?」
「分かった。劔兄さんの方も、何か不安だからな」
気をつけろと、短く告げた楯一郎は踵を返すなり、集落の方向へと駆けて行った。その足取りは老人にしては非常に軽快であり、はっきり言って聡治よりも速い。
あっという間に茂みに飲まれて消えた祖父をいつまでも眺め続ける事もなく、聡治は楯一郎とは逆、麓の方向へ身体を向ける。
そして走り始める寸前、ふと、機械甲冑へと視線を向ける。相変わらず正座の体勢だが、これは動けるのだろうかと、首を傾げかける。
『移動可能と質問前に回答しておきます。ミスター・ソウジが全力で逃げようとも、影のように追従しますのでご安心を』
何か嫌だなと感じつつも、動けないからこの場から動くなと言われるよりはましである。
斜面を駆け下りる最中に視線を後ろへやると、正座のまま、本当に影のように追従する機械甲冑に、聡治は思わず苦笑するのだった。
427
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 22:10:20 ID:2H5/4.YY0
2000文字って地味に一発で書き込めないのか……まぁとりあえずそんな感じでクロにパスするよ
とりあえず向こう一週間は無理っぽい。その先は分からんけど、(よほどふざけたペースで回ってこない限りは)次回までには落ち着いてるはず
428
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 22:13:54 ID:vuZYJwwA0
おお、Kの人乙
修羅場を乗り切ってくだされ
429
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/02(月) 23:11:54 ID:ub9HU38c0
乙
うーんどうしよう全く続きが思い浮かばない
430
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/09(月) 18:22:03 ID:CM2/c0rI0
粗製K。一週間無理っぽいとは言ったが本当に一週間無理とは思わなかったぜ
クロすまんな、焦りやら何やらでやらかしちまったようだぜ……
431
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/18(水) 10:15:01 ID:0mb1R6OU0
気付けば二週間以上すぎてたがクロたん無事かえ?
432
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/18(水) 21:57:41 ID:TiE8okaY0
すんませんパスさせてください
タタりんお頼み申す
433
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/18(水) 22:04:11 ID:LjcyhTw.0
お、おう
これクロたん初パスじゃね?
434
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/18(水) 23:52:54 ID:TiE8okaY0
そうだと思う
なんか1回パスしたら癖になりそうで怖かったから今まで踏ん張ってきたけどマジもぅ無理
最近全然ここに関われてないわ
435
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/19(木) 23:15:49 ID:dZUxbUxs0
クロたん……愛してるよ……ンヒュヒュヒュヒュ……グヒュッ……。
436
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/24(火) 19:20:01 ID:oEjaJs420
読み返しててふと思ったが、祢々たんが劔兄ちゃんから受け取った物って、もしかして鞘だけ?
437
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/24(火) 19:24:42 ID:Vm1LiBQ60
せやで
438
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/24(火) 20:30:58 ID:oEjaJs420
了解した
とりあえずソウジくんが祢々たんと遭遇してものすごい外道プレイ始めたから先に西口に謝っとくわ
439
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/24(火) 20:34:16 ID:Vm1LiBQ60
祢々の設定は身長以外一切決めてないから如何様にしていただいても構わないぜ
440
:
タタリ 1/3
:2015/02/26(木) 13:42:55 ID:9qe1ssXs0
本家への道のりを駆け下りるにつれ、ドネルクラルの時と同じ竜の気配がより強く感じられた。
隠密で山林を登っていた時に比べ、道なりに下りるのは流石に早い。数時間もかけた登山距離は、十数分で下山しきろうとしていた。
本家まではもう目と鼻の先だ。本格的に本腰を入れて事態に当たらねば、俺なんて木っ端も同然だ。一度吹き飛んだ右腕を押さえながら、山道から石段に差し掛かり、
「くせ者!」
頭上から、幼い少女の叫び声が聞こえ、漆黒の影──としか形容のしようもない──が稲妻の如き速度で木々を巡り、俺の背後を追従していたアギョー・スタチューへ飛来した。ルカとの戦闘訓練で培った俺の動態視力が、その手に懐刀らしき凶器を捉えた。
しかし、視線が追い付くのと、反応が間に合うのは全くの別問題である。指先一本すら反応する事あたわず、飛来する影の懐刀がアギョー・スタチューのアイカメラを正確に突く。
ギィン、と金属特有の甲高い悲鳴が朝の山林に劈く。事態を把握する暇もなく背後からの怪音に、思わず両手で耳を塞ぐという戦闘態勢にあるまじき反応を示してしまった。
「ソウジ様に近付く貴様は何奴だ」
黒装束の少女(?)らしき人物は俺とアギョー・スタチューの間に着地し、片手を広げて俺を庇う様に仁王立ちする。一瞬だけ、もう片手に持っていた懐刀を流し見て、即座に放棄する。
刀は折れており、影の直撃を受けたアギョー・スタチューは仰け反りつつも自動姿勢制御(ジャイロバランサー)の影響で何事もなかった様に身を起こした。そのアイカメラには傷一つついていない。
少女とアギョー・スタチューの視線が交錯する。ビリリと空気を震わせる程の、張り詰めた殺気が辺りに充満した。
と盛り上がってるところ悪いんだが、ここで一つばかり物申したい。俺はさっさと本家の様子を見に行きたいのだが、寄り道した魔界人集落では謎の集団失踪の痕跡を発見してしまうわ、クロガネの監視用ロボットが現れるわ、じいちゃんには押し倒されるわ、何かニンジャっぽいアトモスフィア漂う少女の攻撃を受けるわ、さっきから足止めばかり喰らいまくってそろそろストレスがマッハで堪忍袋の緒がぶっち切れそうなんだがもーどーすればいいんでしょうかねコレ。
「ってどいつもこいつもいい加減にしろよォ! 緊急事態なのに小イベント挟みまくってたら話すすまんだろうがァ!」
俺を守る様に立ち塞がった少女と、アギョー・スタチューのアイカメラが同時に俺に向き直った。あまりに無関係かつ唐突な絶叫を予期してなかったのだろう、アギョー・スタチューは定かではないが少女の黒装束ごしに見える目がまん丸に見開かれている。
「この状況を分かりやすく喩えるなら『○○分以内にダンジョン脱出だ!』って時間制限イベントで事ある毎にパーティ会話が発生したりエスケープ不能なイベント戦が乱発してるのに時間だけはきっちりカウントされてる様なもんだぞ! しかも状況はさっぱり整理されてないのにあれこれ謎が謎を呼びまくってていい加減フラストレーション溜まりまくるわ! 小イベント起こすならせめて一度に全部済ませろチックショウ! もはや何が何だかもうワケ分かんねぇよ!」
『ミスター。あまりの展開に錯乱されてる事については心中お察ししますが、錯乱しすぎて貴方の言動こそ理解不能です。ほら、木々の隙間から澄み渡る青空を仰ぎ見ながら深呼吸して落ち着きましょう、ヒッヒッフー』
俺の発狂じみた叫びとアギョー・スタチューから響く冷静なボケ倒しが飛び交う中、突如現れた少女はこの事態をどう処理したものか判別つかなかったのだろう、先程の剣呑な態度とは打って変わり急にオロオロしだした。アギョー・スタチューに対する妙な敵意とか、この現状に対応できず全部吹っ飛んだらしい。
彼女が何者かは知らないが、この後に及んで竜以外の存在が現れたという事は、彼女は味方……とまでは言わずとも、少なからず敵ではないだろう。現在の伏神家は全て敵だと仮定するなら、さっきから俺を守ろうとしている素振りも鑑みて兄さんの関係者かも知れない。
441
:
タタリ 2/3
:2015/02/26(木) 13:43:41 ID:9qe1ssXs0
「本家はすぐそこだし、重要なイベントが盛りだくさんで進む前に、ここらでいったん総集編(セーブ)しとくぞ! ここから先はノーリターンポイントっぽいしね!」
「え、あ、うぇ?」
オロオロする少女。思考はほどよくフリーズしかけてる模様。よし、俺とクロガネの華麗な機転で、便利なイベント進行係を獲得できた。いや半分くらいは本音だが、もうこの際、利用できるもんは出涸らしになるまで利用してやろう。俺もワルよのう。
「はい、それじゃまず、君の名前と所属は?」
「う、あ、……露払衆の一振り、の……祢々、です」
ようやく自分でも理解できる言語での話になったと思ったら、いつの間にか尋問されてる現状に脳が追い付いておらず、しどろもどろに答える事しか出来ない少女・祢々。嗚呼おいたわしや。でもそんなん俺にはカンケーないもんね! こちとら帰省途中から今の今までトラブル続きで八つ当たりできるなら何でもいいわ!
「そっか、祢々ちゃんね。……女だよな? 俺らはこれから伏神の家のゴタゴタにクビ突っ込もうと思ってるが、あんたはいったい何しに来たんだ? つーか味方なのか?」
「は、……はっ! 劔様の指示により、ソウジ様を筆頭に、伏神本家に残っていた非戦闘員を安全な場所まで誘導する任を仰せつかっております!」
「やっぱり兄さんの関係者か。しかし、何だね。君の受けた任務を完全に無視する形になって申し訳ないんだが、俺は本家に行こうと思うんだ」
「なりません! 現在、劔様は蜥蜴の様な奇怪な物の怪と交戦しております! ソウジ様は事態が収拾するまで御身の安全を最優先すべきです! その為に私が参りました!」
ここに来てようやく理性を取り戻した祢々ちゃんが、膝を突いて頭(こうべ)を垂れながら、真摯に意見を述べる。うぅん、もうちょっと混乱してくれてた方がこちらとしても話が早くて助かるんだが。
しかしトカゲの化け物ときたか。これでクロガネと祢々ちゃんの双方から、異なる経路で竜の情報が出てきたとなれば、もう疑いの余地はないな。非常に不本意だが、竜の恐ろしさは身を持って理解している。仮に今回出現した竜がドネルクラルと遜色ない暴威であるとするなら、それを屠るには同じく竜でなければ叶わぬだろう。
その予測を力業でなんとかしてしまいしうな理外の埒外の存外な化け物は、さっきすれ違ってしまったところだ。
祢々ちゃんの剣幕に圧倒されてしまい、話の取っ掛かりを見失ってしまった感は否めない。服従のポーズのまま微動だにしない祢々ちゃんをどうしたものか、アギョー・スタチューに視線を送る。無言のまま、チュインチュインとアイカメラが明滅する。俺の判断に任せる、って意味と受け取ろう。
「とりあえず、現在の戦況を整理しよう。まず家の方では兄さんが竜と交戦中、俺とクロガネ──そこの機界の傀儡は俺の仲間だ──で竜退治に参戦しようと思ってて、爺ちゃんは魔界人集落の調査、夕霧さんや朝霞は露払衆とやらに避難誘導されてると。……伏神の老害連中はどうしてる?」
「劔様の手により」
「なるほど。邪魔だてはないって事ね。……魔界人集落の集団失踪と、集落に安置されてたノーパソの謎が残ってる訳で……そうだクロガネ、アギョー・スタチューでこのノーパソを解析できたりしないか?」
『戦闘機能に重点を置いた機体ですので、高度な電脳魔法(ハッキング)は行えませんが、一応の申し訳程度の機能なら備わっております』
「構わない。謎を謎のままにしておくのはどうも性に合わなくてな。一歩でも前進できるきっかけになるならそれに越した事はない」
手荷物になっていたノーパソをアギョー・スタチューに投げ渡す。巨体のずんぐりした指で器用にノーパソをキャッチしたアギョー・スタチューは、腹部のコンソールを開いてノーパソを繋ぎ、そのまま収納した。放電しきっていたし、まずはアギョー・スタチューからある程度電力を供給しなくては起動すらできないだろう。
さて、ここからが本番だ。
442
:
タタリ 3/3
:2015/02/26(木) 13:44:29 ID:9qe1ssXs0
「時に祢々ちゃん。君は俺を安全な場所まで避難させる事が任務なんだよね」
「肯定です」
「聞きたいんだが、安全な場所ってのはどこを指してるんだい?」
「はっ? いえ、それはもちろん上伏の町ですが……」
「そこに敵性戦力はいないと言いきれるかい? 今朝方、俺は諸事情により書記魔法の地雷原を時には無力化し、時には迂回して山林を歩き回っていたんだが、俺とは別の不審人物が地雷を起爆させていた。これは兄さんや君たちにも認識できていない勢力がいるって事にならないかい?」
「そ、そんな事が……ですが、しかし……」
まぁ、地雷に引っかかってた奴はだいたい想像つくんだがね。というか不本意ながら知人だ。言わないけど。
「そこのアギョー・スタチューは恐らく、君よりよほど戦力になるのは、先の不意打ちで理解しただろう? 俺としては今しがた初めて存在を知った露払衆よりよほど頼りになる護衛なんだが、君たち露払衆がアギョー・スタチューより有能である証明はできる?」
「あぅ、あぅう……」
「一連のやり取りを見ていただろう? 魔界人集落に不審な機械があって、それを解析もしてくれるのがコイツだ。戦闘力も君が不意打ちで証明してくれた通り、ちょっとやそっとじゃ傷一つつかない。加えて、麓の町には君たちが認知できていない伏兵がいないとも限らない。状況の変化をいっさい無視して何かあった場合に君は責任を取れるのかな? 切腹一つじゃ済まないんじゃないの?」
「う、う、……ひぐっ」
「ああ、勘違いしないでくれ。君が悪い訳ではないし、責めてる訳でもない。ただ戦況は絶えず変化する。受けた任務を第一に遂行する事が兄さんへの忠誠心という訳ではなく、柔軟に対応して任務を完了する事こそ至上だと思わない?」
「ぐす、ひっく……そ、ソウジ様、の……お、っしゃる、通り、すん、です……」
「何より、俺は兄さんの勝利を確信しているが、万に一つも兄さんが負けてしまえば上伏の地のどこにも安全地帯なんてないんだ。だったら、万が一をなくす為のささやかな手助けをしたいんだが、君はどう思う?」
「そ、そんな事、私には、決め、決められ……ふぇえ……」
「もちろん、君にも立場はあるだろう。だから折衷案だ。君はこのまま俺を護衛してくれ。そして、俺は現在この場で最も安全だと思ってる兄さんの元へ行く。そしてこの機械には兄さんの手助けをしてもらおう。現状を客観的に鑑みて、最も効率の良い行動だと思うけど、どうかな?」
「くすん、ひぐっ、うええええん!」
こちらの理論武装に対抗できるだけの要素を持ち合わせておらず、覆面の内側で号泣し始めた祢々ちゃん。アギョー・スタチューのアイカメラがめちゃくちゃ非難がましい冷たい視線を送ってくるがガンスルーでございます。勝てばよかろうなのだ。
泣きじゃくる少女の手を引き、その背後にアギョー・スタチューを侍らせ、俺はようやくこの場を収められた事で後腐れなく決戦に臨む事ができようと言うものだ。
『……幼い少女を言葉責めで泣かせて悦に浸るとは、なかなかの弩クソ変態ヤロウですね。ミスターの評価を大幅に改めざるを得ません』
緊急事態ゆえ致し方ない。ここは超法規的処置って事で温情を要求する。
443
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/26(木) 13:47:43 ID:9qe1ssXs0
ソウジくんド変態外道プレイにハマるの巻
どあにん任せた
444
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/26(木) 14:34:50 ID:2bCFyFLQ0
タタリン乙
やっぱりソウジくんは変態じゃないか(呆れ)
445
:
数を持たない奇数頁
:2015/02/26(木) 15:06:04 ID:9qe1ssXs0
鞘について完全に失念してた
まぁ祢々ちゃんそれどころじゃなかったしいいか
446
:
どあにん
:2015/02/26(木) 18:02:35 ID:q9XhsW7U0
承った
じっちゃと三馬鹿の話を進める 予定だ
447
:
どあにん
:2015/03/07(土) 20:44:23 ID:sebwPvW60
進捗は思わしく無いが……なんとか間に合わせる
448
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/07(土) 22:35:43 ID:pkSchBqQ0
ツクールで忙しそうだし、実際忙しいだろうから無理ない範疇でね
449
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/07(土) 22:46:49 ID:VfwCi7Jw0
無理そうなら西口にブン投げればいいよ
450
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/08(日) 18:15:58 ID:VUmtoc7Y0
「ドアニン=サンは甘えが酷すぎる!いやーっ」
451
:
どあにん
:2015/03/11(水) 23:22:02 ID:jIzmNyJw0
明日くらいにはできそうデェス
452
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/11(水) 23:52:01 ID:dPJL/oes0
やったぜ。
453
:
どあにん
◆kCddW1pw9Q
:2015/03/12(木) 17:29:42 ID:9irJEW5o0
「面妖な……」
伏神楯一郎の息は切れていない、衣服の乱れすらも無い。
土を盛り固めただけの道路を踏み締め、吹き抜ける風が若干火照った身体を撫でる。
目の前に広がる廃墟は確かに楯一郎が最終決定を下し、楯一郎の命によって集った大工達が建てた家々がこんなにも前時代的で、粗末な物だとは思わなかった。
当然そこに住まう者が誰も居ない、不気味な静けさだけが集落を包み込んでいた、集団で逃げたとは考えにくい。
ならばと一縷の望みに賭け、楯一郎は大きく息を吸って一瞬押し留めた、刹那。
――山が、震えた。
超人的な肺活量から繰り出された呼びかけの声。
発声の衝撃で近場の木は薙ぎ倒され、脆くなった壁は粉々に砕け散った。
これだけの声で呼び掛ければ何かしらの反応が得られると睨み、その目論見は功を成した。
当然、楯一郎が望む結果では無く。
楯一郎の背中に突き刺さる何者かの視線、それも一つ二つでは無い。
両の手を使っても到底数えきれる数では無い、入り交じる好機と殺意の目線が無数に楯一郎の背に突き刺さる。
「……成程、此処の者らは皆、"羽蜥蜴"の腹の中、と言う訳か」
薄暗い中でも視認した、集落中央にあった祭壇ににあるべき物が何も無い。
大凡察しが付いた、道理であの耄碌達が集落の場所だけは一任させて欲しいと懇願してきた訳だが、鬱陶しいし小事なので一任させたのは失敗だった。
愛しき孫はこの光景を見てしまったと言う事か、後で時間を掛けて謝罪せねばなと呟いたその時だった。
藪が震え、何かが楯一郎に向かって飛び出す、赤い瞳をギラつかせ純白の牙をその肌に突き立てんとするもそれはならなかった。
楯一郎は一瞥すらせずに裏拳でそれを払うと触れた箇所は一瞬で血霧となって墜落、足元に転がったそれは青い鱗に覆われており羽の生えた、小型の竜。
兄弟と言うべきか、それを殺されたのを切っ掛けに方八方からそれが一斉に飛び出し、楯一郎に向かってくるがその表情には曇りすら無い。
「羽蜥蜴の仔か、準備運動にはなるだろう……伏神家27代目頭首:伏神楯一郎の命、簡単に取れると思うな仔蜥蜴達よ」
ガラスを硬い物で引っ掻くような鳴き声が増えていく。
まずは此処を切り抜ければなるまい、楯一郎は拳を構えた。
454
:
どあにん
◆kCddW1pw9Q
:2015/03/12(木) 17:30:12 ID:9irJEW5o0
◇
時は少々遡る。
先頭に立つジョエルは山刀で邪魔な枝や藪を切り拓き、その後をリョタとフィルが追いかける。
甘味処でソウジ達と別れ、店仕舞いと明日の開店準備を済ませてから家を出た為、日は沈みかけていた。
麓の店で山刀と光源、買えるだけの食糧等を買い込んで3人は伏神山に眠る秘宝を求めて出発した。
とは言え、何処に秘宝が眠っているかも分からない無計画な行進なので道無き道をジョエルの勘頼りに突き進む。
左手は創造魔法の初歩中の初歩・光源で辺りを照らしながら、ジョエルはポケットに押し込んでいたチョコレートバーを取り出し、封を切って口に運んだ。
「俺の勘だと、そろそろ何かがありそうな気がするんだがな!」
「とか言ってオメーの勘の的中率20%ぐらいじゃねーか!」
ようやく追いついたフィルが汗を拭いながら水を飲み下す。
体力自慢のジョエルやリョタはともかく、フィルは体力が無い為どうしても行進が遅れがちになる。
足手まといにならないようにと、自分に言い聞かせながら岩に腰掛けた次の瞬間だった。
「あ……っ」
岩が崩れ、フィルが斜面を転がり落ちる。
「フィル!?」
リョタが叫び、ジョエルがすぐさま斜面を下るも間に合わない。
7mほどを転がり落ちるも、幸い途中の木々や岩にぶつかる事は無く、軽傷のみで済んだが全身を打ったのですぐさま動く事はできない。
「フィル!大丈夫か!?」
「大丈夫……ですけど、少しこのままで……」
少しずつ自分のペースで息を整えるフィル、遅れてリョタが斜面をゆっくりと降り、フィルに操作魔法:痛覚軽減を掛けてやる。
脳を非常に軽い麻痺状態にさせ、痛みを和らげる魔法であるがこれが功を成した。
さほど時間も掛からずに自力で立ち上がれるまでに回復したフィルが身体に付いた土を払っている途中、不意に前方に何かがあるのを見つけた。
「んっ……あれは……」
「洞窟だ!すげぇなフィル!」
「お宝の匂いがプンプンするぞ!行くぜ!」
455
:
どあにん
◆kCddW1pw9Q
:2015/03/12(木) 17:30:28 ID:9irJEW5o0
◇
フィルに降りかかった災いが転じて福を成した。
未踏の地にて獲物を待ち受けるかのように拓けた洞穴を、3人は躊躇いなく突き進む。
……と言えど、3人が期待したようなシチュエーションなど用意されてなどいない、
様々な殺人的罠、突如崖が崩れてしまい、落ちそうになった仲間を二人がかりで救出する等所詮物語だけのシチュエーション。
奥に突き進むにつれ、明らかに人の手が加わった掘り方へ変わっていくだけにとどまったのだ。
心底つまらなさそうに歩みを進める三人の目の前に、錆びた鉄の門が姿を現したので三人は一瞬だけ顔を見合わせ、一切の躊躇いも無く門を開いた。
待ち構えているのは秘宝を護る守護者か、それとも罠かと期待するもそれすらも無く、だだっ広い広間の中央に灰色の台座が存在するだけの場所だった。
「おいおい、此処まで何のイベントも無いとかつまんねぇぞ!?」
「まー物語のように宝を護るドラゴンとかそういうのが無いだけラッキーじゃね?」
ジョエルをリョタが宥める間、フィルだけは一人中央の台座へと歩み寄って確認する、台座に安置されているのは一冊の分厚い本。
表紙の文字は掠れて読み取れないものの触っただけでも理解出来る、これこそが伏神山に眠る秘宝、賢者の書物なのだと。
「これが……賢者の書……!」
フィルの心臓が高鳴る、一体どのような内容なのか。
ジョエルとリョタも駆け寄って来たので、三人で本を持ってページを開こうとした、その時だった。
部屋が揺れる、それも尋常じゃない揺れ、まるで山全体が揺れているかのような強烈なそれ。
立っていられず転ぶ三人に襲いかかる不幸、それは来た道が崩落してしまい、道を完全に塞がれてしまった事。
「おい、やべぇぞ!帰れなくなっちまった!」
「マジかよ!?クッソォ!こういうタイプの罠かよ!?」
慌てるジョエルとリョタ、フィルは賢者の書物をバッグの中へ仕舞いこんだ。
フィルとて帰れずこのままこの洞窟で朽ち果ててしまう恐怖に駆られたが、だからこそ冷静になるべきと踏んでいた。
呪詛魔法:振動断絶を展開、ジョエルとリョタの口周りの空気から振動を伝える能力を奪う……即ち、声を発しても音が伝わらない状態へと変化させたのだ。
「慌てないで、静かにして……こういう時こそ冷静にならなきゃいけないよ。
確かに僕達は閉じ込められてしまった、けど……耳を澄ませてみなよ、何かが……聞こえないか?」
不気味なほどの静けさが包み込む空間の中に混じる、微かな風の音。
フィルはその微かな風の音が発せられる場所へとゆっくりと近づき、手を触れた時だった。
緑色の紋章が一瞬浮かび上がったかと思った刹那、岩肌と思われた場所に人一人がやっとくぐれる程度の大きさの扉が、姿を現した。
「ほらね、何か微かな魔力を感じると思った……きっとこの扉の先が、外に繋がってると思う」
フィルが扉を開けると同時に呪文を解除、ジョエルとリョタがその後を追って走りだした。
456
:
どあにん
◆kCddW1pw9Q
:2015/03/12(木) 17:31:37 ID:9irJEW5o0
時間掛かった割にはここまで言う体たらく&爺ちゃん無双の前準備
次回かこの物語終了間際に賢者の書の正体判明させてシメたい所
457
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/12(木) 23:05:39 ID:0uykbGaE0
どあにん乙、仔ドラゴンの登場で今お兄ちゃんと戦ってる竜の設定固まったわ
そういやKの人に聞きたいんだけど、現状の展開で困ってる所ってどこ?
出来る限り解消して渡したい
458
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 07:04:23 ID:RxIz7Yzo0
乙ポニ
子ドラゴンときたかー
俺の考えてたのよりだいぶパワーダウンしてるけど、想定の範囲内ではあるなー
459
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 13:09:50 ID:TR2U2xuU0
ぼくのかんがえたぜつぼうてきなシチュエーション
お兄ちゃんとアギョーがどうにか蒼竜を倒したと思ったら、三十体くらい同レベルの蒼竜が空を覆いつくしてた
全蒼竜の意識はノーパソにバックアップされてて(情報思念体が本体)、全部が意識を共有してる
数体がお兄ちゃんやアギョーに襲いかかり、残り全部が上伏町を襲いに行く
的な絶望的な状況にしようと思ってた
460
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 14:08:39 ID:0h7SX3/60
どあにんおっつおっつ
前回のは精神状態がF×CKな事になってたからなぁ
まったく困ってるっていう訳ではないから、西口がやりたいようにやれば良いんだぜ?
461
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 21:29:10 ID:.jMouO/60
今お兄ちゃんどんな服着てたっけ
462
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 21:40:03 ID:0h7SX3/60
まぁ本音を言えば西口でお家騒動編終わらせてくれても構わんのだぜ?
勝手に豪華な剣道着っぽい服装を想像してた
463
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 21:43:02 ID:.jMouO/60
おk、進行速めよう
流石に終わらせるのは無理だが、とりあえず聡里が何で死んだのかとかは全部説明しちゃおう
464
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/13(金) 21:49:25 ID:0h7SX3/60
(ぶっちゃけた話、クロガネの話はダークファンタジーで兄さんの話はラブコメだって話してた頃、兄さんじゃなくて聡治の方に許婚発覚にしようかなーと考えてたりした)
とりあえず、最悪の場合は学校の方の話を書いてお茶を濁そう
465
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/16(月) 22:15:11 ID:xT7uMDAY0
割と色々設定をはっつけたり、前まで考えてた設定をぶん投げることになるかもしれん
まあ今から書き始めるから、出来上がる頃にはどうなってるかは知らんがな!
はい、できる限り速く書きます
466
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/17(火) 00:39:34 ID:lMcBdNtU0
ドネルケバブって何で本盗んだんだっけ
467
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/17(火) 01:09:17 ID:lMcBdNtU0
ちょっと読み返してみて思い出した
多分ダミアンが一番かいてて楽しい、可愛い
468
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/17(火) 01:26:29 ID:7E2VOiLk0
白龍の座に自分をねじ込もうとした
469
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/17(火) 07:35:00 ID:3u8IOnl60
ねじ込もうというか、同じ領域に立つ為じゃなかったっけ?
470
:
どあにん@仕事中
:2015/03/17(火) 19:13:16 ID:2WHYUX4U0
不完全な竜だから禁書の力を使って
神と崇め奉る龍になろうとしたんよ
あとダミアンくんに友達が出来てなにより
471
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/17(火) 22:28:14 ID:lMcBdNtU0
競作と並行して進めるから、いつもより大分かかりそう
パスはせんがね。すまん
472
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/19(木) 20:35:29 ID:I6ozBrCY0
今ようやく7KBちょっと
大体予定の3割弱程度は書いたから、かかっても来週の今くらいには行けるかもしれない(行けるとは言ってない)
473
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/19(木) 23:24:46 ID:I6ozBrCY0
何とか12KB。
そろそろ一区切りつくが、流石にそろそろサトリの死んだ理由とか説明したいからもうちょっと書くぜ
もうちょっと待っててKの人
474
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 12:47:02 ID:wPzqGEho0
ああダメだ、書けん聡里関連の話
前言翻すようで情けないが、6時ごろに途中で投下しますわ
待たせたのにすまん
475
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 12:57:36 ID:jJYoYVwU0
これは6時128分の流れかな?
まぁ年度末+競作で少々ばたばたしてるからゆっくり書いていくわ
476
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 13:07:23 ID:SbDCEDIQ0
ヒャアー待ちきれねえぜ!
477
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:25:29 ID:wPzqGEho0
用事できたんで今から投下するわ
478
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:25:52 ID:wPzqGEho0
右前肢を軸に、周囲一体をなぎ払うが如き尾撃を放つ。
その速度は疾風と称して然るべき程のものであり、伏神劔も回避する事が叶わなかった。
ギャリィ、と硬質な音が響くと共に、竜の蒼穹めいた竜鱗と、尾に対して垂直に立てられた劔の黒刀とが激突し、火花が散った。
一瞬だけ耐えるが、もとより質量に差がありすぎる。地から足が浮いた劔は、尾の勢いに捕らえられて一回転、茶室の壁に叩きつけられた。
「遅いなぁ、狗」
蒼竜は嘲笑う。追撃をかけようともせず、不動である。
必要ない、と思っているのだろう。総身に、傲慢とでも形容すべき自信が漲っていた。
ガラ、と瓦礫を踏み分け、伏神劔が今しがた新たに穿たれた穴から、のっそりと出る。
その所作はどこか大儀そうだが、外傷は見当たらない。ただ眉を顰めて、漆黒の竜鱗に包まれた左腕を開閉していた。
――些か、鈍い。
伏神劔は考える。これは果たして内に巣食う竜の抵抗によるものなのか、それとも蒼竜の能力によるものなのかを。
恐らくは前者なのだろうが、かといって後者の可能性も切り捨てられない。竜の力というものは全く馬鹿馬鹿しく、想像や想定など無意味なのだから。
敵対生物への重圧の負荷。機動の制限。そういった類のものがあると想定して動こう。
即決、即断。
時間経過によって効力を増す呪詛があるのならば、様子見は最小限に留めるべきだ。劔は地面を蹴り飛ばし、吶喊する。
だがそれを予期していたかのような、横薙ぎの爪撃が迎え撃つ。
視界がそれを捉えるよりも早く、頬を撫でる風よりその動きを劔は感じ取る。先ほどと同じように黒刀を立て、防御する。
刀にかかる凄まじい重圧に、しかし今度は逆らわない。あえて地面をけり、蒼竜の腕の進行方向へと跳躍した。
空中に投げ出されるが、損傷は軽微。器用に体勢を整えた劔は、危なげなく着地した。
だが勢いを殺しきれずに少しの間地面をすべり、次手を打つまでに一瞬の間が空いてしまう。
致命的。そう判じたのだろう、蒼竜は既に動いていた。
両翼を広げ、低空飛行。開け放たれた口腔には、剣呑な輝きを湛えた牙が、幾十も生え揃っていた。
その速度は、やはり電撃的。
だが、悪手であった。
蒼竜の息がかかり、その巨大な口の投げかける影に全身がすっぽりと覆われた瞬間、劔は動く。
あらん限りの力を込めて地面を蹴り飛ばし、思い切り横合いに飛んだのだ。
強化された脚力は容易にその体を危険域から逃す。傍らを、巨大な影が通過しようとしていた。
爬虫類めいた構造ゆえに、上顎に視界を遮られた竜には、その姿は視認できない。
閉じた口は虚空を切り、驚愕する間もなく、伏神劔の姿が蒼竜の視界に入る。その時、既に振るわれていた黒刀を防ぐ術を、竜は持ち合わせていなかった。
「ッッガァァァァァァァァ!!」
思わず閉じた瞼ごと、蒼竜の右目の眼球が切り裂かれた。
爪を、尾を滅茶苦茶に振り回し、何とか報復を遂げようとしたが、無意味。飛んでいた事が仇となった。
姿勢を低くした劔にそれらは全て掻い潜られ、苦もなく距離を取られる。
二の太刀を警戒した竜はそれ以上の攻撃を諦め、大きく飛翔した。
蒼穹に翻る一対の翼。空を制された構図となったが、実態は大きく違う。「空に追いやられた者」と「追いやった者」だ。
「人、間、風情がぁ!」
威圧的な咆哮。だが、劔は表情を変えず、ただその姿を眺めているだけだ。
演技をしている、様には見えない。心底から追い詰められた、獣の様な表情をしている。
そもこの重圧があの竜に因る物だったとしたら、こうも早くあそこまで無防備な姿は晒さないだろう。
となるとこの身を戒める重圧は、忌々しくも内なる竜の仕業か。だがそれにも、幾分か慣れてきた。
次はもう少し巧く動けるはずだ。
そう確信を得ると共に、劔の胸中には一つの懸念が浮かび上がっていた。
蒼竜の、能力が分からない。
もとより重圧が能力ではないだろうと思っていたし、不要な仮説を切り捨てられたのは収穫とも言えるかもしれない。
だが、やはり敵の手が見えないという状態は気色が悪い。体の使い方が分かってきた今、様子を見るべきだろうか。
竜に対して半身に構え、黙考。その間も、竜は咆え猛り狂う。
「肉を削ぎ、骨を砕き、臓腑を潰してくれる! ただで死ねると思うなよ、苦痛の渦の中で、千々に砕いて」
「喧しい。さっさと来い」
竜鱗に覆われた左腕を、クイと引く。空気が震え、竜の怒気が膨れ上がっていくのが、手に取るように分かった。
急降下。迫り来る脅威を、伏神劔は極めて冷静に見据えていた。
479
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:26:31 ID:wPzqGEho0
「竜の性質、というものについてお話していませんでしたね、ミスター」
遡る事十数分前。伏神山を駆け下りる道中で、アギョー・スタチュー――クロガネは唐突にそんな事を言い出した。
「いえ、唐突ではありません。そもそも身分を明かした時点で語るべき内容でしたから」
タイミングを逸してしまい、今までお話出来ませんでしたが、とクロガネは続ける。
「性質、っつっても大概の事は聞いてると思うけどな。人にとり憑いて、その存在を喰らって、こっちの世界に出てくる化物、だろ?」
「それが全て、という訳ではありません。例えば、竜がその存在を取り込んでいくプロセスなどは教えていないはずですが」
「いや、そりゃ聞いてないが……。そもそも、それって知る必要あるか?」
「はい。ミスターの身の安全のためにも、そのエゴを満たすためにも」
何だよエゴって。肩越しに振り返り、眉を顰めて聞き返すソウジだが、クロガネは素知らぬ顔でそっぽを向き、アイカメラをチュインと動かすのみであった。
ソウジは大きくため息をつくと、渋々といった口調ではあったが、話してくれと頼んだ。
いいでしょう、と何故か鷹揚に頷くクロガネ。少々ひっかかりはしたが、話の腰を折るほどの事でもないので、ソウジは黙っている。
「まず如何な竜とはいえど、とり憑いた人間の精神を即座に掌握できるわけではありません。というより、強く拒絶されれば排除されかねないほど微かな存在なのです」
クロガネ曰く、人の精神世界というものは砕くことは容易であるが、乗っ取るとなると相当な手間がいるのだという。
しかし精神が壊れては、竜が居つく世界も壊れるという事。それは紛れもない自殺行為であるため、竜は滅多な事ではその愚を犯さない。
だから竜はこっそりと精神世界に留まり、宿主に取り入るのだ。
「取り入る?」
「竜は大きな渇望を抱えた人間にとり憑き、それを埋める為の力を貸与します。力の貸与、これは即ち竜と宿主との結びつきを強めるための行為であり
その囁きに乗り、力を振るう度に竜は深く精神世界に食い込んでいき、その活動域を広めます」
「それは、つまり……」
「はい、人格を貪られていく事を意味します。感情や思考回路に変質が生じ、往々にしてより渇望が強まります」
例えば、ドネルクラルに憑かれた風紀委員、伊庭甲子郎。彼が抱えていたものは、異常なまでの他者への羨望だ。
嫉妬と自己嫌悪、承認欲求と変身願望の入り混じったそれは、ドネルクラルの付け込む絶好の隙だった。
才能、記憶、経験などを含む、あらゆるパーソナルデータの窃盗。伊庭甲子郎が心底欲した物だ。
だがそれには、対象を殺害しなければならない。
葛藤もあっただろう。倫理観がブレーキもかけたろう。
しかし結局、彼は何人もの人間を殺し、その顔を奪い取っていった。
480
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:26:42 ID:wPzqGEho0
「最後にどうなってしまったかは、わざわざ語って聞かせるまでもないでしょう」
「自業自得、っつうにはあんまりにも理不尽すぎるな。望んで手に入れた力じゃねえってのに」
同感です、と黒い甲冑は首肯した。
人間ならば誰しも、「表に出せない望み」などというモノは多かれ少なかれ抱いている。
そしてそういう望みは往々にして、他者に苦痛を強いる物。故に表に出せず、また社会もそれを望んでいる。
そういった望みを持つこと自体を、一体誰が責められよう。そういった自己中心的な考えの一切ない人間のほうこそ、寧ろ気色が悪くさえある。
重要なのは、それを己のうちへ押し込めているかどうかだ。
その為にこそ「モラル」や「良心」というものがあり、そして人は「諦める」事が出来るのだ。
それがあるから、「ヒト」は「人間」たりえる。社会を築き、その一員として生きる資格を持つのだ。
だからこそ竜の力は、条理を犯す力はあってはならない。
それは「人間」を「ヒト」へと、獣へと堕とす力だ。人間が培ってきたモノを、無為へと帰す力だ。
こうまでも「人間の仇敵」という言葉が合致する存在を、伏神ソウジは未だかつて聞いた事がなかった。
「だからこそ、竜は撃滅しなければなりません。出来る事ならば、ミスターにも近寄っては欲しくないのですが……」
「言われなくたって、あんなヤバイ奴らに自分から関わったりなんかしねえよ」
「例えばルカ氏。例えばエクリエル委員長。ご友人があれに襲われるとなれば、たとえ怪物の腹中であろうと飛び込んでいく種類の人間である、と私はミスターを認識していますが」
違うのですか、と聞かれソウジは言葉に詰まった。
反論する材料が無い、というか、似た様な事を既にやってしまっている。
あの時は、こんなに常識はずれな存在が相手だとは思っていなかった、と言い訳することも出来ないではない。
が、仮にもう一度あの日へ戻ることが出来たとして、二人が害されるのを指を咥えて見ていられるかと問われれば、断じて否という他なかった。
「それでも構いません。以前にも言った通り、貴方の自由を侵害するつもりはありませんから。
ですがこれも以前言った通り、私は貴方を守ります。ですから貴方が無茶をすれば無茶をするほど、私の身にも危険が降りかかるという事をお忘れなく」
「……善処するよ」
期待していますよ、とアイカメラをチュインと動かすと、更にもう一つ、と人差し指を立てながらクロガネは付け加えた。
「もしこの先竜と対峙することがあったとしたら、注視するべき点をお教えします」
「注視ったって、あんなのと戦う事になったら細かい事にまで気なんて回らねえぞ」
「いえ、簡単な事です。姿を見れば判別はつきますから」
それ即ち、本性を露にした竜が人に近いか否か。
「宿主の体をただ操るのではなく、完全に我が物とした竜は、竜でも人でもない『第三の存在』として産声を上げます」
「第三の存在?」
「『人竜』。人の姿をした異形です」
この世の異物たる竜が、完全にこちらの世界に適合した時、竜は持てる全能を一切のロス無く振るうことが出来る。
体を相応しき物に作り変え、その巨体を最も体力の消耗が少ない姿、即ち人のそれへと変貌させる習性があるのだ。
「その過程で、竜形態も人間のそれへと近付いていきます。ですから、竜の姿形である程度強さが把握できるのです」
「つまり、爬虫類っぽいほうが弱いのか」
「竜には特殊な力がありますから、一概にそうとは言い切れませんが、認識としてはそうズレてはいません」
ですから、ミスター。
「人の体で、竜翼を纏う存在とは決して相対しないように。独力では、私にも対処しきれない敵ですから」
481
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:26:58 ID:wPzqGEho0
一閃。
空間を抉るかのごとき漆黒の一撃は、容易く蒼竜の巨大な尾を両断してみせた。
バランスを崩し、墜落していく竜。伏神劔は蒼竜のその巨大な背を蹴って空中に躍り、着地する。
その眼前に落ちる巨体。撒き散る粉塵を黒刀の一振りにて払い、走る。
蒼竜は接近に気づき、その右前肢の爪にて迎撃を試みるが、寝そべったような状態での苦し紛れの攻撃だ。あたるわけが無い。
その範囲に入る前に急停止。虚しく空を切る爪がその前を通過するのにタイミングをあわせ、急加速する。
その程度の負荷をかけた程度で筋肉が不調を訴えるほど、伏神劔はヤワな鍛え方はしていない。
蒼竜は焦る。せめて跳ね飛ばそうと右前肢を往復させようとするが、当然間に合わない。
黒刀が翻る。右前肢の付け根に朱線が走ったかと思うと、冗談のようにズレ、ぼとりと音を立てて右前肢が地面に落下した。
それだけでは終わらない。蒼穹に屹立するかのように振り上げた黒刀を、劔はまを置かずに振り下ろした。
人の体でいえばわき腹部分に当たるだろうか。全身の筋肉を引き絞るかのような全力の一撃が、その箇所を轟音と共に抉り取った。
――これ以上は危険か。
斬撃の余波が、地面を抉り取った瞬間には劔はそう判じており、全力で飛び退っていた。
整った体勢であったとはどうにも言いがたい状態だったため、着地が少々不恰好になってしまっていた。が、その判断は正解だった。
竜の体がわずかに浮き、土ぼこりを上げてすぐに沈む。出来損ないの突進、といった動きだった。
事実、それは突進と言えた。蒼竜がまだ損傷していない左半身の二足で、地面を蹴り飛ばしたのだ。
その射程内には、一瞬前まで劔のいた地点も当然含まれていた。だが、無駄だった。
もしも体当たりをせず、再び飛翔する事を優先していたのなら、もしかしたらまだ勝ち目はあったかもしれない。
だが、現実はそうとはいかなかった。
吶喊。斬撃。斬撃、斬撃、斬撃。
右後肢が。表皮が。羽根が。竜鱗が。顎が。裂ける、砕ける、抉れる、断裂する。
嵐の如き連撃。蒼竜にそれに抗する術など既に無い。
――どうした。どうした、どうした、どうした。
ただの動物が相手なら、既に幾度も絶命しているであろう攻撃を何度も繰り返しながら、劔は少し焦る。
どうした、このままでは死ぬぞ。なにをされるがままになっているのだ。
スムーズに、事が運びすぎている。手応えというものが無さすぎる。
、、、、、、、、、
あまりにも弱すぎる。
劔は警戒していた。恐れていたと言ってもいい。竜の持つ埒外の能力を。
だから、様子見のつもりの攻撃を続けていた。
攻撃と攻撃の間に、あえて隙を幾つか挿入してみた。だが、蒼竜は動かない。まるで木偶の坊のように、倒れ伏したままだ。
劔は焦れた末、術中に嵌る覚悟で打って出た。
斬撃。
奔った黒い閃光は、まるで水面でも切り裂くかのように、蒼竜の太い頸に難なく入り込んで行き、苦も無く両断。
――ほら、どうした。死んだぞ。
気構えを整える。全神経を集中して全天を監視する。どのような微細な異変さえも見逃さぬぞ、と。
だが――
斬り飛ばされた劔の後方十数メートルの位置にぐしゃりと落ち、残された巨体は深く深く沈みこみ、停止した。
そこに、生命の波動は感じ取れない。
死んでいた。何の疑い様も無く。
「…………ッ!?」
伏神劔は絶句した。
掛け値なしの圧勝。身体、精神、内奥の竜、複合術式「悪路王」。全てに異常なし。
だからこその、拭いがたい違和感が、そこにはあった。
482
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:27:11 ID:wPzqGEho0
伏神劔は、今までに二度ほど竜と対峙した事があった。
一度目は「露払衆」としての任務中。そして二度目は、五年前。
伏神聡里がこの世を去った日。彼は竜と相対し、そして敗北していた。
あの日、伏神邸で一体何が起こったのか。それは劔も完全には把握していない。
だが二つだけ、理解している事があった。
一つ。五年前、彼の妹が、両親が、大勢の使用人が死亡したあの事件の首謀者が、当時の四拾七氏であるという事。
そして、二つ。自分に、その陰謀を喰い止めるだけの力がなかったという事。
だからこそ、彼は力を欲した。
四拾七氏を駆逐せしめるほどの力を。また同じような事が起きたとき、それを喰い止められるだけの力を。
竜の囁きが聞こえてきた時は、しめたと思った。
忌まわしき伏神の術と、鍛え上げた精神力でその行動の自由を極限まで奪い取り、その能力とあふれ出る魔力を核に、複合術式「「悪路王」を作り上げた。
この力さえあれば、あの日の竜すら打倒できる。劔はそう確信していた。
だが、それは死力を尽くした先にこそある物だとも、彼は思っていた。
自分の力に酔いしれる事が出来なくなる程度には、劔は絶望の味という物を知っている。
悪路王は不調だった。竜の拘束が完全ではなく、動きに支障が出た。だのに、手傷と言える物を負っていない。
運が良かった。実力差がありすぎた。そんな言葉で納得がいくような事態では決してない。
ありえない事だと言って然るべき異常であった。
竜という存在については、少しではあるが劔も知っている。
それと、自分で体験したあの絶望的なまでの力を総合して考えると、こうも手応えのない戦いになどなるわけも無いのだ。
勝利、などと思い上がれるわけもなかった。
故に、彼に油断などなかった。
483
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:27:21 ID:wPzqGEho0
耳朶を打つ微かな風切り音。
それが徐々に近付いてきている事に気付いた時、黒刀を握り締めた右手は既に動いていた。
ギィン、と金属音と共に弾かれたそれが何であるかを考える余裕はない。
日の光を遮り、中空に躍る「何か」。返す刀でそれを斬り捨てんとしたが、しかしそれは叶わなかった。
剣閃に視線が追いつき、劔は驚愕する。
黒刀。竜鱗すら両断するその一斬を阻んだものは、握り固められた拳だった。
「何か」。ヒトの女性に酷似した容貌をしているが、それをしてヒトだと形容できる人間などいるだろうか。
空気を震わせるが如き、威圧感。
翠緑の双眸の奥に、「獣」などという言葉では到底表現しえない獰猛さが光っている。
艶めく黒い髪と、楚々とした細面にそれは驚くほど不釣合いで、まるで趣味の悪いキグルミを着込んでいるかのように思えた。
甚だ不気味。度し難い不自然さ。
無理にヒトを装おうとしているそれは、しかし逆にその異形が「何」であるかを大声で喧伝しているかのようであった。
竜。
今しがたの在り得ないほどの弱敵とは、比較にならない量の濃密な存在感を振りまくそれが、一体他の何であるというのか。
反作用で弾かれた刀を腰溜めに構え直しつつ、劔は大きくしゃがみ込む。
と、その頭部のあった場所を、致命的な威力を伴った「竜」の蹴りが通過した。
――空中でこの威力だと……!
驚愕しつつ、しかしそれを身体制御とは切り離す。動揺や恐れは、この場においては即ち死である。
視線の先で、蹴りの勢いに振り回されたらしい「竜」が、こちらに背を向けていた。
好機。
体を引き絞るように力を込め、居合の要領で黒刀を抜き放つ。
空間をも断つかのような一撃。だがそれは、何者をも断つ事は出来なかった。
ガキィ。
下から救い上げる蹴撃が、力任せに刀を弾く。「竜」は、空中で逆立ちでもしたかのように反転し、逆しまの状態で劔と対面していた。
物理法則を全く無視した動きだ。しかし現実として、劔は刀を無理矢理持ち上げられ、両腕を大きく開き、この上なく無防備な状態である。
口唇が、軋みを上げそうな程ゆったりと持ち上がり、乱杭歯が露になる。
竜が、笑った。
浮かべた笑みを一瞬で消すと、竜は口を閉じる。その唇の肉が、内部から少しだけ盛り上がった。
それが何であるかは、すぐに分かった。
「竜」は口に溜めた空気を推進剤に、先ほど弾いた「鏃」をプっと吐き出す。
それは機械的な直線軌道を描き、過たず伏神劔の胸に、服を突き破ってザクリと突き立った。
だが、それだけだ。
そのチクリとした痛みなど気にも留めず、劔は体勢を整えると間を置かずに踏み込み、黒刀を振りぬいた。
が、「竜」は劔の方へと向けた足で虚空を蹴り飛ばし、後退。刀は空を切るに留まった。
「カカ、元気じゃのう」
空中に「立ち」、劔に背を向ける「竜」は、しわがれた声で言う。束ねた長髪が、ユラリと揺れる。
その声に、劔は覚えがあった。
喚起された様に、彼の脳裏を絶望の記憶が埋め尽くす。彼の全てが失われた、五年前のあの日の記憶が。
「貴様、あの時の……!」
「『あの時』では分からんぞ、伏神劔。儂はあの雪女の様に、貴様と夫婦になった覚えはない」
言いつつ、「竜」はクルリと振り返った。
その顔立ち。逆光に遮られない、精細なディテールを目の当たりにして、伏神劔は稲妻に打たれたかのような錯覚を覚えた。
「もしや、『これ』が死んだときの話か?」
、、、、
己の顔を指差して、「竜」は、「伏神聡里」は嗤う。
と、それに呼応したかのように、周囲の森林から飛び出した何かが、蒼穹にその大翼を広げた。
澄み渡る蒼い竜鱗が、陽光を受けて微かに輝く。
数にして、四十七。蒼竜『達』は、その威圧的な巨体で陽光を遮断し、極大の闇を伏神劔に投げかけた。
484
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/23(月) 15:28:11 ID:wPzqGEho0
以上
姿を変える人竜がサトリと同じ顔をしてる理由は全部他人に投げる
485
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/24(火) 12:26:21 ID:GKohoarw0
西口乙ポニ
過去の竜事件、まさかの聡理真犯人説?
486
:
数を持たない奇数頁
:2015/03/24(火) 21:09:25 ID:TKFLK9fA0
西口おっつおっつ
競作も進めつつ、昨年は回避された年度末に苛まされつつだからだいぶゆっくりになるよ
487
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 16:27:34 ID:YHzIIFG60
ゆっくりすると言ったな。あれは嘘だ
……えー、まぁ要約すると最近人事異動があったのね(公には今月の頭からだけど実質先月から)
それ関係で色々とばたばたしてて駄文書くどころじゃねぇ! って有様だったり、新しく配属された部署の上司から
「今年この資格取ってきてね。余裕があればあとこれかこれのどちらかひとつ。両方でも構わんよ?
あぁ、そういえばあの資格まだ持ってなかったっけ? ならそっちも今年取りに行こうか。この部署だと必要だから」
とかそんな有様だったり、更に明後日には昨年のハラキーリ! サムラーイ!! の後処理で入院するかどうかが決まったりで、何が言いたいかというと
・人事異動に伴う勉強を強いられているんだ!
・体調面に関する通院を強いられているんだ!
という状態だったりするから落ち着くまでorさっさと病院にぶち込まれるまではまともに駄文を書く状況にはならなさそうだからクロにそぉい! させて貰いたいんだぜ
488
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 16:30:26 ID:cZs24AEU0
わお・・・リアルに専念してください
489
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 17:40:43 ID:fVFcWIps0
激動やなあ
言い方悪いが、こんなの遊びみたいなもんだから、気にせず専念してくだされ
490
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数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 17:54:38 ID:L1H7RfRw0
承った
身体は大事にしろよ!
前回パスしたからここが俺の正念場だな
491
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 19:02:56 ID:YHzIIFG60
とりあえず六月末くらいまでで片付くかな?
・入院→上司「入院するなら実際に担当となる迄に入院してくれ」との事。とりあえず今担当予定の奴は一ヶ月もあれば終わるかな?
・資格→初っ端に言われた奴は少々鬼門、どちらか取れと言われた片方は過去問覚えゲーでもう一方は事前知識もあまりないという鬼門だから前者狙う。
職場で必要だと言われた資格は講習を受けて、その講習を寝て過ごさん限りは落ちない程のだから問題なし
そんな感じ。競作に関しては脳内ではキリのいいところまでは行ったけど文章化は厳しいから短くなるかもなぁ
(さっさと病院にぶち込まれれば、前回の事を考えれば大体二週間弱……麻酔云々を考慮すれば一週間程度は自由になるからそこで詰めれるだけ詰める感じ)
492
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数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 19:27:16 ID:cpqpSiB.0
リアルの都合を推してまでやる事でもないしな
給料が出る訳でもないし
都合が悪ければパスしたって構わない
リレー小説とはそういうものだ
493
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 19:51:15 ID:YHzIIFG60
んー……仕事が辛いからー、って訳でもないんだよなぁ
単純に今までは残業とかが殆どない部署(あるとしたら課どころか部も絡んで対応するレベルの大事)だったけど、今の部署は割かし残業あるのよね
業務内容自体は別段……というより薬品の取り扱いでテンション上がる俺としては前の部署よりも楽しいんだよなぁ。多分今の生活リズムに慣れれば普通に残業しつつ資格勉強しつつ駄文書けるようになると思う
494
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 19:58:03 ID:3MajSA4A0
やべぇ有能そう
出来る社員オーラがパねぇ
495
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数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 20:00:49 ID:cpqpSiB.0
どこぞの酸素吸引式二酸化炭素排泄機のクソ社内ニート(の俺)とは大違いな有能オーラ
496
:
数を持たない奇数頁
:2015/04/05(日) 20:01:55 ID:YHzIIFG60
前の部署だととんだ無能だったよ(白目)
まぁ、そんな感じで。多分次回が来る頃にはひとまず業務の勉強に関しては落ち着いてるかな?
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