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Tohazugatali Economic Review

1■とはずがたり:2003/02/24(月) 18:56
経済(学)スレです。個別ネタは各スレッドでしますが一般スレが無いので立てます。
景気やマクロ動向なども。

1585とはずがたり:2015/09/07(月) 15:14:58
>>1574
こいつの本を買ったら都道3・2・8号線に関する小平市住民投票の事が載っていたが,こいつめ,328号線とかと誤認してるしやたら批判的で所沢府中線の重要性を全く理解しとらんヽ(`Д´)ノ

http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1101930771/3526
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1101930771/3533
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1101930771/3549
http://tohazugatali.iza-yoi.net/TOKYO/TAMA/nambokudoro3/tama30.html#koda

1586とはずがたり:2015/09/07(月) 15:37:02
東芝と云うより会計だからこちらへ。

2015年 08月 7日 10:12 JST
焦点:東芝の不正会計、高まる新日本監査法人の責任論
http://jp.reuters.com/article/2015/08/07/analysis-toshiba-idJPKCN0QC02C20150807?sp=true

[東京 7日 ロイター] - 東芝(6502.T)による不正会計の実態が明らかになる中、企業統治や会計監査の専門家からは、同社の会計監査人である新日本監査法人の責任を精査すべきだとの声が高まっている。

総額1500億円を超える利益操作に走った過去の社長3人と経営幹部は引責辞任したものの、それを未然に防ぐべき監査人がなぜ不正に気付かなかったのか、その究明がまだ不十分との議論だ。

不正会計問題の解明を進めてきた東芝第三者委員会(委員長・上田広一元東京高検検事長)は、7月下旬に公表した報告書の中で、同社に対する監査手続きや監査判断に問題があったか否かは調査目的ではないとし、新日本監査法人の対応が適正だったか否かには言及しなかった。

その一方で、報告書は新日本による東芝への統制が「十分に機能していなかった」と数回にわたって指摘、監査の不徹底が不正会計の常態化を許した一因であることを示唆している。

企業統治や会計監査の専門家の間にも、東芝の経営陣だけの責任と受け止める見方は少ない。コンプライアンス問題に詳しく、オリンパス (7733.T)問題で会計監査の実態を検証する監査検証委員会の委員をつとめた郷原信郎弁護士は、東芝の不正会計について監査法人の責任は「ある程度、あると思う」と話す。

東芝問題の広がりを受け、新日本も自ら今回の東芝の監査体制が適正だったかについえて内部調査に着手した。さらに公認会計士協会も状況の把握を進めており、金融庁も調査を始める見通しだ。

<ウエスチングハウス工事費でせめぎあい>

東芝に対する監査のあり方について、焦点のひとつとなりそうなのが、米原子力事業子会社、ウエスチングハウス(WH)関連の工事費用のやりとりだ。第三者委報告によると、この工事費用の見積もりの計上について、東芝と新日本の間でせめぎ合いがあった。

それによると、2014年1月28日、東芝の田中久雄社長(当時)はWH関連の工事で計上する見積もりが想定より増えて396億円になると「大変なことになる」と、WH担当役員に発言。13年度第3四半期の決算末が近づく中で、久保誠CFO(当時)が新日本とその取扱いについて協議を重ねていた。

1587とはずがたり:2015/09/07(月) 15:37:24
>>1586-1587
工事費を高く見積もるべきと主張する新日本に対し、東芝側は低めの想定に固執。両者が主張する数字には1.07億ドル(約100億円)の開きがあった。その溝を埋めるため、同年度末までに工事原価の増額を抑えるとの条件で、「特例として」100億円程度を「未修正の虚偽表示」として処理することを新日本は許容した、と久保氏は第三者委の調査に説明している。しかし、新日本は発言を「明確に否定」したという。

「未修正の虚偽表示」は、会計監査人と会社との間で認識が一致しない数字が発生した際に、一定の範囲(重要性の基準値)内で決算書には織り込まずに処理する方法。一般には公表されないが、会計ルールで認められている。

ただし、「重要性の基準値」として、どの程度の金額が妥当かは監査法人が判断する。東芝が処理した100億円の規模について「やや大きいのではないか」と、複数の会計の専門家らはみる。同期の東芝の税引き前利益は391億円で、未修正の虚偽表示は、その4分の1の規模にあたる。

日比谷パーク法律事務所の久保利英明弁護士は、第三者委の報告書では詳細はわからないと前置きしたうえで、「会計監査人は会社に説得されてしまった可能性が強い」と述べ、監査人が果たすべき役割を全うしていたか、詳細に調べるべきとみている。

<隠ぺいとみられる行動>

第三者委の調査報告書は、東芝が新日本の指摘を受けないようにするために、事実と異なる話を組み立てた資料をみせて説明するなど、「組織的な隠ぺいを図っているとみられる行動をしていた」とも指摘。その一例として、パソコン事業の部品取引の会計監査における、東芝と新日本とのやりとりを挙げている。

一方で、新日本がその期の決算に適正意見を出し了承したことで、監査法人としての責任を果たしているとの見方もある。

日本コーポレート・ガバナンス・ネットワークの理事長でもある牛島信弁護士は、東芝と新日本の間でどのようなやりとりが行われたとしても、「未修正の虚偽表示」の存在などについて「新日本が事態を理解して決算報告を通した。私の立場からおかしいと直ちに言う根拠はない」と述べる。

悪質な損失隠しなどの不正会計事件を起こしたオリンパス問題については、会計監査人の新日本監査法人と、その前任のあずさ監査法人(当時)に、適正な監査体制を行う体制を整えるため、金融庁が業務改善命令を発令した。しかし、東芝問題について、金融庁が最終的に監査法人にどのような処分を行うかは未知数だ。

東芝の広報担当者は、今回の新日本とのやりとりについてロイターに対し、「個別の事案についてコメントは差し控える」と述べ、久保前CFOも東芝を通じ、辞任したためコメントを差し控えるとしている。

(江本恵美、ネイサン・レイン、編集:北松克朗)

1588とはずがたり:2015/09/08(火) 12:07:55
2015年09月07日(月) 週刊現代
ノーベル賞経済学者・クルーグマン「中国崩壊と世界同時不況 私はこう見ている」
チャイナ・ショック! 世界経済の「明日」を読む【第1部】
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/45102

世界第2位の経済大国・中国で、株価が暴落した。その巨大なくしゃみによって、日米欧で同時に株安が進行。「世界不況」への門が、不気味な音を立てて開き始めた。混迷の時代がまた始まるのか。

失速と崩壊はまだこれから

「チャイナ・ショック」以外の何物でもない株の急落だった。昨年末から上昇し始めた上海株式市場の総合指数は、6月、5000ポイントの大台に乗せていたが、8月末、一気に下落。25日には、節目の3000を一時割り込み、ピークから4割超下げた。中国バブルは完全に弾け、崩壊した。

日本でも、8月半ばには2万1000円近くまで値を上げていた日経平均が、8月25日、半年ぶりに、1万8000円を割り込んだ。大損を出す投資家が続出。市場は阿鼻叫喚の地獄と化した。

各国で懸念が増し、「世界同時不況」が現実味を帯びるなか、20人の経済のプロたちに徹底取材。世界と日本の経済の今後を読み解いた(全7部)。

巻頭提言をするのは、'08年にノーベル経済学賞を受賞した、プリンストン大教授のポール・クルーグマン氏だ。安倍晋三総理にも影響を与える同氏に、不透明な世界経済の今後を聞いた。

【独占インタビュー】ポール・クルーグマン

いま、中国はバブル崩壊の真っただ中にあります。それを否定する人は、アメリカの経済界を見渡しても、誰ひとりいません。

情勢は、'90年代の日本のバブル崩壊と近い。しかも中国は、これから、さらなる失速を経験することになる。中国には、この国特有の問題がいくつもあるからです。

中国について話す前に、まずは世界経済全体の現状について俯瞰してみましょう。いま世界で起きているのは、シンプルに言えば、金融緩和で各国が発行した過剰なマネーが、行き場を失っているということです。

世界全体の経済が失速するなか、これまで有力な投資先と目されていた、中国をはじめとする新興国の成長が懸念され、一気に資金が引き上げられつつあります。

こうしたリスクを避けようと、マネーが安全資産に逃げてしまっている。その結果、株安が起きたのです。

不安定な状況の中心にいるのが、中国です。

中国は'08年のリーマンショック後、ただでさえ多かった投資を、政府主導でテコ入れし、無理矢理に増やしました。それまでは投資がGDPの40%強を占め、これでも異常な水準でしたが、そこからさらに50%近くまで持ち上げたのです。

その結果、投資が異様なまでに過熱してしまった。一方で消費はわずか30%ほどに過ぎません。アメリカでは逆に消費の割合が70%を超えている。

こうした投資による旺盛な成長を見込んで、各国のマネーが流れ込んでいたのですが、無理矢理の投資が長続きするはずがありません。成長が鈍化するなかで、それが一気に逆流している。

同時に、国内の投資家は投資を回収できず、不良債権問題が深刻化している。不良債権は今年の6月末で約2899億2000万ドル(約348・6兆円)あるとされ、前年から3割超も増えている。まさにバブル崩壊の様相です。

1589とはずがたり:2015/09/08(火) 12:08:13
>>1588-1589
中国は信用できない

中国の焦りが見えたのが、人民元の切り下げでした。8月11日に基準値を2%、翌日に1・6%切り下げた。

輸出競争力を強化したりすることで、経済を刺激したいという意図の現れです。これが「最初のひと噛み」となって、これからさらに切り下げが行われていくと思う。でも日本は'12年から約50%も円安が進んでいます。それを考えればこの程度の切り下げをしても効果は薄いでしょう。

本来ならば、本当に中国が実現すべきなのは、完全変動相場制への移行です。しかし、その場合、元はドルに対して、いまより大幅安になり、アメリカとの経済摩擦は増します。中国の指導者に、その準備があるとは思えません。

中国経済でさらに問題なのは、その影響の大きさがどれほどかを正確に測れないということ。

まず、中国の共産党が発表する数字が、信じられない。今年、アジア金融フォーラムに参加した際、中国の政府の代表は、「成長率は、7・3%」と言っていましたが、その数字がどうやって出てきたのか説明はなかった。一部では、実態は3~4%だと言われています。

また、中国で不動産投資をする場合の借り入れは、「影の銀行システム」で行われることが多い。

これは、通常の銀行ではなく、投資銀行、証券会社やヘッジファンド、「理財商品」という金融商品を売る運用会社などの総称のことで、この実態は把握されていない。

「影の銀行」の貸出残高は、'13年末の時点で、約48・7兆ドル(587兆円)に達しているとされます。これが、不良債権の影響で、連鎖的に破綻する危機にあると言われる。世界経済に与える影響は計り知れません。

他国に目を転じても、様々な懸念材料がある。

アメリカは、景気は悪くないですが、重大な判断を迫られています。FRB(米連邦準備制度理事会)が、利上げをするか否かの決断です。

ヘタをすれば、「1937年の悪夢」が再来する。

1929年の世界恐慌で株価が暴落し、大打撃を受けたアメリカは、金融緩和政策やニューディール政策で回復を図った。'33年から'36年の間に、GNPが560億ドルから820億ドルにまで回復したところで、'37年、FRBは、インフレを懸念して、利上げをしたのです。しかし、これが間違いでした。景気は冷え込んで'37年の1年間で失業率は20%にも達し、工業生産は32%、GNPは10%も落ち込みました。

今年7月、ジャネット・イエレンFRB議長は、米下院議会で、「利上げを早めにしたほうがいい」と発言し、9月の利上げがささやかれましたが、まだ状況は不安定。'37年の再来を防ぐため、利上げはしないと思います。

私は、働く意欲を持つ人がすべて雇用される「完全雇用」が明白に実現し、間違いなくインフレになったと言えるまでは、利上げは待つべきだと思う。現状、インフレ率はまだかなり低い。

欧州では、8月19日、ESM(欧州安定メカニズム)が、ギリシャへの最大860億ユーロ(約11兆8000億円)の金融支援を承認し、ギリシャはデフォルトを避けることができました。最悪のシナリオは回避できた。

しかし、9月20日にギリシャの選挙がある。そこで、政権が代わるなど、政治的な混乱が起きれば、それが経済に波及していく可能性が高い。まだまだ安心はできません。

グローバル経済が減速しているなかで、日本が絶対に行ってはならないのは、消費税増税です。1度目は完全に失敗でした。2度目の増税をすれば、アベノミクスは完全に墜落してしまう。世界経済が衰退するなか、日本には力強く頑張ってもらわなくてはなりません。

1590とはずがたり:2015/09/12(土) 17:27:57
会計でも中国の覇権が,少なくとも米中の二重覇権が明瞭に。

中国が監査で覇権掌握、日本なすすべなし?
じわり増すビジネスリスク、米国も屈した
http://toyokeizai.net/articles/-/83880
伊藤 歩 :金融ジャーナリスト 2015年09月12日

日本企業に、じわりじわりと中国子会社への懸念が広がっている。買収した独グローエに、もれなく付いてきた中国水栓メーカー・ジョウユウが破綻し、660億円もの損失処理を余儀なくされたLIXIL。純資産225億円の江守グループホールディングスは、中国子会社の破綻で550億円の損失が発生。北陸を代表する超優良企業が瞬く間に倒産に追い込まれた。企業の財務状態が適切に公表されているかどうかを評価する監査に、なすすべはないのだろうか。

同国に子会社を持つ日本の上場会社は多い。「中国経済が減速する中、本社側の経営者が中国子会社の内情に不安を抱くケースが増えている」(中国に進出している日系企業の相談業務を手掛ける鈴木幹太弁護士)という。

実際、「中国子会社で不正が起きていても本社側で把握することは難しい。最近は販売や製造だけでなく、財務の責任者も現地に送り込むケースが増えているが、それでも隣の席に座っている現地採用の営業担当者が何をしているのかが把握できない。取引の相手方が現地スタッフの親族企業であるとか、その親族企業との間で循環取引が行われているといったことは、他のスタッフからの内部告発によって初めて発覚するケースがほとんど」(同)。

日本本社の報酬体系を海外子会社に持ち込むことで、不正を誘発している面もある様だ。「中国では報酬やポストがすぐに得られなければ、基本的にはさっさと他社へ移る。だが、中にはその会社から回収しようとする人も出てくる。加えて一族の繁栄が最優先という価値観があり、かつ親族企業を潤す取引自体が不公正な利益供与に該当する可能性が高く問題だ、という感覚は希薄。ただ、取引実態の発覚を防ぐため、書類は完璧に整えているのが普通」(同)。

監査任せではなく、企業が主導すべき

それでは監査法人なら把握可能なのかと言えばそれも違う。上場会社の監査に従事している公認会計士は、「最近、漠然と中国子会社をよく見てほしいと言ってくる経営者が増えているが、不正を働く従業員は巧妙に書類を整える。社内でもわからないことを、部外者であり強制調査権もない会計士に解明できる余地はほとんどない。不安ならまず本社側が内部調査をし、そこで把握した証拠に基づいて一定の権限を会計士に与え、監査報酬の追加発生も覚悟すべき」と強調する。

本体の監査を担当する公認会計士は、子会社も含めた連結全体の監査の品質に全責任を負っている。ただ実務上、言語や法令理解の問題があるため、海外監査は基本的に現地の会計事務所に委託するのが一般的。「なんとなくイヤな感じがする」というだけで、追加報酬の発生と相手方の抵抗が予想される手続を、現地事務所に依頼することは難しい。だからこそ、本社経営陣による強力なバックアップが必要になる。

海外の監査を依頼する相手が他人であるという点は、世界4大会計事務所(通称Big4=EY、デロイト トウシュ トーマツ、KPMG、PwC)と提携関係にある、日本の4大監査法人(新日本、トーマツ、あずさ、PwCあらた)も例外ではない。Big4に次ぐ規模のBDOやグラントソントンと提携しているBDO三優、太陽ASGも同様だ。

これら日本の監査法人は基本的に、提携先の現地会計事務所に海外子会社の監査を依頼する。江守の場合も、日本本社をKPMG系のあずさが監査していたので、中国子会社はKPMG上海が担当していた。

世間一般にはあまり理解されていないが、Big4のネットワーク間には資本関係も指示命令系統も存在しない。提携先である各国会計事務所は、本部に対価を支払って同じブランドを使用する者同士というだけ。人事交流は行われているが、それ以上でも以下でもない。従って「ちょっとお願い」程度のレベルで「より突っ込んだ監査」を依頼できる間柄ではない。

では、日本の監査法人は現地会計事務所を盲目的に信用し、業務を丸投げできるかといえば、そんなことは許されていない。

1591とはずがたり:2015/09/12(土) 17:28:12

委託先の監査にも責任を負う

グループ会社の監査手続きについては公認会計士協会(JICPA)が監査基準委員会報書告600(以下、報告書600)で定めており、どこの監査法人もこれに従って手続きを行っている。この報告書600は、国際監査・保証基準審議会(IAASB)が策定している監査基準に準拠した、いわば世界標準でもある。

本体の監査人は委託先の選定責任も負っており、報告書600は委託先の能力や独立性、実績などについて、一定のチェックを行うよう求めている。親会社の監査人の求めに応じて監査証拠を出すことはもちろん、子会社の監査業務に直接関与することも認める会計事務所でなければ委託すべきではない、としている。監督官庁である金融庁の公認会計士・監査審査会も、監査法人に対する検査では、報告書600に従った手続がとられているかを見る。

実際の業務では、海外子会社から上がってきた決算書類を見て、親会社の監査人が委託先に、気になる部分や集中的にチェックしてほしいポイントを列挙した監査指示書を出す。納得できる回答が出なかったり、監査証拠の提出を拒まれたりした場合は契約を解除し、別の会計事務所に依頼し直さなければならなくなる。


中国子会社の不正会計を受け、緊急記者会見したLIXILの藤森義明社長(6月撮影:大澤 誠)
もっとも、Big4などには統一マニュアルが存在し、同一ブランドを使用する上で必要な品質チェックも本部から定期的に入る。それでもLIXILや江守のような事態が起きると、本部のチェック機能とはどの程度のものなのか疑いたくなる。LIXILのケースでは、問題の買収子会社ジョウユウはフランクフルト証券取引所に上場していた会社であり、その監査はグラントソントンが担当していた。

さらに近年、報告書600に代表される、世界標準のグループ監査ルールを形骸化させかねない法整備が、中国で着々と進められている。

米国と対峙した中国Big4

実は今年2月、中国の法制度が米国市場のルールに挑み、事実上中国が寄り切り勝ちする事態が起きた。

日本ではあまり話題にならなかったが、そもそもの発端は2010〜11年に、米国の証券市場に上場する中国企業の不正会計が相次いで発覚したことだった。2012年2〜4月にかけ、米国SEC(証券取引委員会)が、調査対象の中国企業の監査を担当していた中国Big4とBDO系の大華、合計5つの会計事務所に対し、正当な権限に基づいて監査資料の提出を求めた。

だが、5事務所はこれを拒絶、その理由が「監査資料の提出が中国の国内法規に抵触する」というものだった。根拠は2009年10月に中国証券監督管理委員会が公布した「国外における証券発行と上場に関連する機密と書類管理業務に関する規定」である。

この規定では、国外で上場している中国企業の監査資料を、上場先の国の監督機関等に提出する場合は、資料が国家機密に該当するかどうか、事前に機密行政管理部門の判断をあおがなければならないとされている。この規定、監査資料がどの程度の範囲のものを指すのかも明確にされておらず、運用も中国政府の腹一つなのだ。

このため、この問題は米中間の外交交渉マターとなったが、交渉は決裂。そのためSECは5事務所に聴聞会への召喚と、質問回答状の提出を命令し、行政審判手続きが始まった。第一次審決が出たのは2014年1月で、5事務所のうち中国Big4に6カ月間の業務停止命令が下る。中国Big4はSEC調査対象外の中国企業の監査も行っているため、米国で上場している数十社の中国企業が、とばっちりで上場廃止の危機に瀕する可能性もあった。

この第一次審決に中国Big4が不服を申し立て、最終的に決着がついたのが今年2月。一つの事務所につき50万ドルを支払った上で、SECからの書類提出要請に応えられるよう、今後4年間で具体的な対策を講じることを約束して和解が成立した。

1592とはずがたり:2015/09/12(土) 17:28:38
>>1590-1592

米国発の報道は、SECが中国に対し、国内法規の一部変更もしくは例外規定の設置を約束させたも同然というトーンだったが、「会計士の受け止め方は逆。SECが求めた監査資料のうち、一部は提出が始まった様だが、業務停止は撤回させた。今後、改善努力の進展が思わしくなければ再び業務停止処分が発動できる和解内容ではある。とはいえ、影響が甚大であるだけに果たして実行可能かどうか。その上、中国企業はSECの権限を脅かすことが証明されたにもかかわらず、昨年9月、米国はアリババの上場を認めた。アリババ上場が米国にもたらす利益を優先したのだろうが、米国は中国に屈したも同然」(海外監査に詳しい公認会計士)。

確かに、和解した相手は中国政府ではなく民間企業でしかない。実際にどの程度改善が可能なのか疑問だ。

さらに強まっていく規制

中国では2011年3月に「国外会計士事務所の中国内地における臨時監査業務実施暫定規定」も制定されている。この規定は中国国外の会計事務所が中国の会社を監査する場合、臨時監査許可証を必要とする、というもの。しかもその有効期限は香港、マカオの会計事務所は5年、台湾は1年だが、それ以外の国はわずか半年。継続的に監査を行うには、半年ごとに更新手続きをとらなければならない。

さらに許可を受けた場合でも、中国国内の会計事務所との共同監査を推奨している。その上で、中国国内の事務所に対しては、国外事務所との共同監査で作成した資料のうち、国外事務所に提供することが不適当だと中国政府が判断したものについて、共同監査の相手方である国外事務所への提供を禁止している。ここでも禁止対象になる監査資料の範囲は中国政府の腹一つ。この規定は、日本企業の中国子会社の監査も適用対象だ。

また、今年7月には「会計事務所が従事する中国内地企業国外上場監査業務暫定規定」が誕生した。この規定では、国外上場の中国企業を監査する海外会計事務所には、先ほどの許可の取得に加え、中国国内の会計事務所との合同監査が義務付けられた。つまり、国外事務所による単独監査を禁止したのである。

この新規定誕生で、既存規定の運用が強化される可能性を懸念し、PwCあらたでは「臨時許可の取得も視野に入れた対応を検討している」という。顧客の中国子会社の監査は、現地PwCのスタッフに委託しているとはいえ、日本の会計士がいっしょに現地工場を回り、質問をすればそれが監査業務だと言われる可能性が否定できないからだ。ちなみに、日本の4大監査法人のうち、問題意識を持ち、「対策の必要性を認識している」と筆者に明確に回答したのはPwCあらただけだった。

金融庁は「コメントできない」

現在、中国では新たに国内会計事務所に対し、対外的な監査書類の提供を原則禁止する「会計事務所監査管理暫定弁法」の制定も予定されている。8月15日にパブリックコメントの募集が終了しており、これから制定作業に入る。最終的にどうなるのかは不明だが、「規制強化の流れが反転する可能性はほぼない」(前出の海外監査に詳しい公認会計士)。

すでに、中国の会計事務所が日本の監査法人と共同で作成した資料を日本の監査法人が入手するには、中国政府の許可が事実上必要になっている。そこへ、中国の会計事務所単独で監査した場合にも網をかけようとしていることになる。中国子会社で突如巨額の損失が発生しても、事実の解明すらできなくなる可能性をもはらむ。


金融庁の態度はなんとも煮え切らず(kpw/PIXTA)
中国の法規制は、国内企業に海外上場のメリットを享受させる一方で、市場参加者が果たすべき義務の履行を回避させる効果を持つ。世界は中国企業の海外上場がもたらす恩恵を無視できない。中国企業にのみ特例を認めれば、世界中の資本市場の秩序は崩壊する。

公認会計士・監査審査会に対策を聞いたが、「外国の法規制のことでもあり、コメント出来る立場にない」という回答だった。だが日本の監査制度に甚大な影響を与えるかもしれない今回の事態。コトは民間組織でしかない会計事務所や企業の次元を超えている。各国当局との連携も含めた対応が必要なはずだ。

1593とはずがたり:2015/09/18(金) 15:37:58
コーポレートガバナンスは何処かなぁ。。

ソニー凋落を招いた「親衛隊」 赤字垂れ流し、責任取らず多額報酬得る
http://www.msn.com/ja-jp/news/other/%E3%82%BD%E3%83%8B%E3%83%BC%E5%87%8B%E8%90%BD%E3%82%92%E6%8B%9B%E3%81%84%E3%81%9F%E3%80%8C%E8%A6%AA%E8%A1%9B%E9%9A%8A%E3%80%8D-%E8%B5%A4%E5%AD%97%E5%9E%82%E3%82%8C%E6%B5%81%E3%81%97%E3%80%81%E8%B2%AC%E4%BB%BB%E5%8F%96%E3%82%89%E3%81%9A%E5%A4%9A%E9%A1%8D%E5%A0%B1%E9%85%AC%E5%BE%97%E3%82%8B/ar-AAe5aCZ#page=2
ビジネスジャーナル 2015/09/08

 東京証券取引所と金融庁が策定したコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)が6月から適用開始となり、日本でも資本活用の効率化や株主への還元策、社外取締役の活用に注目が集まっている。

 そんな「企業統治元年」に冷や水を浴びせたのが東芝だ。利益水増しの不正会計問題では4人の社外取締役が経営のチェック機能を十分に果たせていなかったが、東芝が例外ではない。

 たとえば粉飾決算で信頼を失ったオリンパスには2人の社外取締役がいたが、経営の専門家とはいえない彼らは粉飾決算を見抜けなかった。また、ソニーはハワード・ストリンガー会長兼社長の時代には15人の取締役のうち13人が社外取締役だった。赤字を垂れ流し続けたのに、ストリンガー氏は経営責任を問われることはなかった。

「社外取締役はストリンガー氏を護衛する“親衛隊”となっていた。彼らはソニー凋落の共犯といっていいが、かなり高額な役員報酬を手にしていた。ソニーに限らず、社外取締役は経営陣のお友達でお飾り、役に立っていないというのが、これまでの常識だった」(金融筋)

●株式持ち合いの解消

 三菱UFJフィナンシャル・グループは6月の定時株主総会で承認を得て、委員会設置会社に移行した。取締役会の下に、指名委員会、報酬委員会、監査委員会と任意のリスク委員会を設けた。リスク委員会はグループ全体のリスク管理に関する重要事項を審議する。独立性が高い社外取締役によって、業務執行に対する監督権限を強化する体制を整えた。

 社外取締役は川本裕子・早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、松山遙・日比谷パーク法律事務所パートナー、岡本圀衛・日本生命保険会長、奥田務・J.フロント リテイリング相談役(元社長)、川上博・中部国際空港前社長(元トヨタ自動車専務)、佐藤行弘・三菱電機社友(元副社長)、山手章・公認会計士(元あらた監査法人代表社員)の7人。指名・ガバナンス委員会委員長に奥田氏、報酬委員会委員長に岡本氏、監査委員会委員長に山手氏、リスク委員会委員長に川本氏が就任した。

 FSB(金融安定理事会)は、G-SIFIs(国際金融システム上重要な金融機関)と認定されている世界の大手金融機関に対して、経営の監督機能の強化などガバナンスの向上策を強く求めている。三菱UFJは海外の金融当局の要請に応えた。

 国内大手行で委員会設置会社に移行したのは、2003年に実質国有化されたりそなホールディングスと、暴力団向け融資をきっかけにカバナンス改革に踏み出したみずほフィナンシャルグループに続き、三菱UFJが3例目だ。

1594とはずがたり:2015/09/18(金) 15:38:15
>>1593-1594
 コーポレートガバナンス・コードに基づき、上場企業の持ち合い株式の売却がはじまった。株式の持ち合いは、海外の投資家から日本企業の悪しき慣習と強く批判されてきた。大手銀行グループは持ち合い株式削減の方針を打ち出したが、メガバンク3行の決意表明には、かなり温度差がある。三菱UFJは残高削減が基本方針で、三井住友フィナンシャルグループは原則保有しないとし、みずほは保有しないことを基本方針とした。

 メガバンクで持ち合い株式の解消を最初に打ち出したのは、みずほだ。背中を押したのは2人の社外取締役だった。

「『他の投資に振り向けるより資本効率が高くなければ、持つ意味はない』。元経済財政相で取締役会議長を務める大田弘子が取締役会でこう口火を切った。日立製作所相談役の川村隆も呼応した。『2兆円の株の含み益を今こそ有効に使うべきだ』」(8月4日付日本経済新聞より)

 コーポレートガバナンス・コードのお墨付きを得て、株主主権を担う社外取締役は出番を迎えたようだ。だが、銀行にとって持ち合い株式の解消は、取引企業から「ウチはその程度の評価なのか」といった反発を招く副作用がつきまとう。個別事情をどこまで勘案するか、経営陣と営業現場とのせめぎ合いが激しさを増すことになる。

●バフェット基準
 ジャーナリストの牧野洋氏は、2015年8月3日付現代ビジネス記事の中で、社外取締役に「バフェット基準」を取り入れるよう提唱している。バフェット基準とは、「投資の神様」といわれる米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が掲げるコーポレートガバナンス基準のことだ。

「法的には、取締役会は株主利益を守る立場にある。ここでのポイントは株主との利害の一致であり、そのためには社外取締役は相当数の自社株を保有しなければならない。そうすることによって、株主利益を守ろうとの意欲が湧いてくる」

 みずほ銀行は、企業役員などが自社株を購入するのを支援するサービスを始めた。みずほ銀行が購入のための資金を融資する。購入資金は、みずほ銀が企業と提携し、通常より低い金利で貸し付ける。

 委員会設置会社制度は米国企業をモデルに、業務執行と監督権の分離を明確にした。組織上は米国企業の相似形が出来上がったが、多くの日本企業は社外取締役が意欲をかきたてるような役割を与えてこなかった。多くの企業で導入が進む社外取締役は、果たしてその機能を十分に果たすことができるのか。日本企業全体のコーポレートガバナンス強化に向けた試金石になるといえよう。
(文=編集部)

1595とはずがたり:2015/10/07(水) 14:53:34
たくさん貯金したいなら、この「常識」を知れ
ボーナスが残らない人に共通する特性
山口 京子 :ファイナンシャルプランナー
http://toyokeizai.net/articles/-/72325

「貯金でおカネを殖やす」は無理

まずは、大事なおカネを預ける預貯金の常識です。なんとなく、給与振込口座におカネを入れっぱなしという人は多いでしょう。バブル期なら、定期預金や養老保険におカネを預ければ、どんどん増えました。

当時は、ほぼ元本保証で、年利が7%くらいの商品がたくさんあったのです。どれくらいおカネが増えたのでしょうか。「72」という数字を使ってみましょう。72を金利で割ると、おカネが何年で2倍になるかがわかるのです。

72÷7≒10年

およそ10年で2倍です。バブル期なら、子どもが生まれたときにもらったお祝いを定期預金に入れておけば、小学校5年生のときには2倍になりました。ところが、今の金利は普通預金が0.02%、10年の定期預金が0.1%です。今、10年の定期預金に預けると

72÷0.1=720年!!

2倍になるのに、720年かかります。720年前といえば、時は鎌倉時代。蒙古襲来のころに預けたおカネが、やっと今年、2倍になったのと同じことです。また、「定期預金も普通預金も変わらないから」と、そのまま給与振込口座におカネを入れっぱなしの人もいます。普通預金の金利は0.02%ですから

72÷0.02=3600年!

2倍になるのに、なんと3600年もかかるのです。紀元前1600年、黄河流域で、亀の甲羅に文字を入れて占いをしていたころに、もし貯金を始めたとしたら、いまごろやっと2倍になる計算です。

つまり、今は元本保証で安心な「預貯金」だと、おカネが増えるのにどえらい(とてつもなく長く)時間がかかるということです。ATMの時間外手数料やコンビニの手数料を払ってしまうと、100万円の普通預金の利息が、一瞬で飛んで行くことになるのを覚えておきましょう。

貯金の利息はそのままもらえない

では、100万円貯金すると、利息はどれくらいでしょうか?

100万円×0.02%=200円

たった200円です。

1億円の預貯金があったとしても、1年間の利息は2万円です。新幹線で東京と名古屋を往復したら、足が出ます。ホームで「きしめんを食べるおカネもない」とがっかりするのは、まだ早い。この200円や2万円が、まるまる私たちの口座に入ってくるわけではありません。

ここからさらに、税金が引かれるのです。それも20%も!

消費税が3%上がるだけでドキドキしましたが、その前に、利息から20%も税金引かれていることに多くの人が気づいていません。正確には0.315%の復興税がありますので、国税の15.315%と地方税の5%と合わせて、20.315%です。

100万円を貯金してもらえる利息は、159円です。1億円あっても1万5900円。3億円の宝くじが当たったとしても、利息だけでは暮らせません。この20.315%も引かれる税金のことを、知らない人が多いのです。なんと金融機関にお勤めでも、窓口担当でなければ知らない人もいるぐらいです。

引かれるのは預貯金だけではありません。投資をした運用益からも、引かれます。100万円儲かると、20万3150円。10万円儲かったら、2万円ちょっと!利息に比べると、とても大きいですね。大きな税金が引かれていることを、知っておきましょう。

1596とはずがたり:2015/10/24(土) 21:29:12
>354兆円という内部留保の数字は、企業が設立されてからずっと積み上げてきた数字だ。それと毎年の設備投資額を比較する事に一体どんな意味があるのだろうか。

>利益剰余金、いわゆる内部留保はそのように計算しない。内部留保が減る時は、赤字が発生した時や利益を上回る配当を行った時だ。

>設備投資は内部留保だけから行うわけではなく、必要であれば出資や借金でも行う。内部留保が多いから設備投資を行え、という話は因果関係が何もつながっていない。結局、こういったトンチンカンな話は元をたどると「内部留保=現金」という勘違いに必ずたどり着く。

>現預金残高約168兆円のうち約101兆円は資本金1億円未満の企業に属するものであり、1社あたりで計算すると、数千万円にしかならない。

経済
日本企業は内部留保の1.6倍も設備投資を行っている。
http://agora-web.jp/archives/1658684.html
中嶋 よしふみ

先日16日、安倍総理は政府と経済会の代表が出席した「未来投資に向けた官民対話」という会合で、企業に対して投資を積極的に行うように要望したと報じられた。

甘利経済再生相は「過去最高の原資があるのに、投資しないのは重大な経営判断の誤り」とまで言及したという。内部留保を過剰に貯め込むな、という話のようだ。

これには二つの間違いがある。一つは「内部留保」という名目の現金があると思い込んでいること、もう一つは日本企業はすでに内部留保の1.6倍も設備投資を行っているという間違いのない事実だ。
■内部留保は現金ではない。
内部留保=現金、という勘違いはそろそろ卒業してほしいと思うが、問題は企業が積極的な設備投資を行っているにも関わらず、それを政府が理解していない事だ。
投資要請 背景に企業の内部留保354兆円 NHKニュース 2015/10/16

財務省の統計によりますと、昨年度・平成26年度の国内企業の「経常利益」は、64兆円にのぼり、過去最高の利益をあげています。
また政府が、いわゆる企業の内部留保とみている「利益剰余金(りえきじょうよきん)」の額は354兆円にのぼり、企業が主に国内で行った「設備投資」の額は、40兆8373億円でした。
これを今から10年前の平成17年度と比較しますと、「利益剰余金」は152兆円余り、率にして75%も増えましたが、逆に「設備投資」の額は、9兆9103億円、率にして19%減っています。

この説明だけを見ると、企業がお金を貯め込んでいる、と誤解をしてしまいそうだ。また同じ記事で麻生副総理は企業の内部留保増加を批判し、甘利経済再生相も今こそ大胆な投資を、と呼びかけていると報じられている。

これらの認識は正しいのだろうか。これは考え方の違いとか内部留保=現金という勘違いを差し引いても、明らかに間違った認識だ。企業はすでに内部留保を大幅に上回る額の設備投資を行っている。

■設備投資額は内部留保の1.6倍も行われている。
具体的な数字を見てみたい。記事では平成26年の経常利益が64兆円とあるが、これは特別損益や法人税が考慮される前の数字だ。64兆円に対して40兆円の設備投資は十分に大きい。設備投資の拡大を求める根拠となっている一次資料をみれば、よりおかしな点に気づく(法人企業統計調査結果・平成26年度・財務省 2015年9月公表)。

資料によれば日本企業の税引き後純利益は、平成26年度で約41・3兆円となっている。これは設備投資額とほぼ同じだ。しかもこのうち約16・8兆円を配当に回している。利益の4割が配当として支払われ、差額の内部留保は約24・4兆円となる。つまり、平成26年は内部留保が約24兆円に対して設備投資額は約40兆円と、1.6倍もの額を投じている。

簿記の知識が無い人は、内部留保が24兆で設備投資が40兆なら差し引きで内部留保はマイナスになって減るのでは?と思うかもしれないが、利益剰余金、いわゆる内部留保はそのように計算しない。内部留保が減る時は、赤字が発生した時や利益を上回る配当を行った時だ。

1597とはずがたり:2015/10/24(土) 21:29:27

■内部留保354兆円に対して設備投資40兆円は少ないのか?
安倍総理や麻生副総理、甘利大臣は日本企業全体の内部留保額に対して毎年の設備投資が少ないと文句を言っているようだが、これは正しいのだろうか。そもそも企業の設備投資額に国が口出ししている時点でおかしいが、それを横においても認識が明らかにズレている。

354兆円という内部留保の数字は、企業が設立されてからずっと積み上げてきた数字だ。それと毎年の設備投資額を比較する事に一体どんな意味があるのだろうか。例えば任天堂が何十年も前に花札を売っていた頃から積み上げた利益剰余金、あるいはトヨタ自動車が糸を生産する紡織機械を作っていた頃から積み上げてきた利益剰余金と、今現在の1年間の設備投資額にどんな関連性があるというのか。

これはストックとフローをごちゃまぜにした滅茶苦茶な議論で、少なくとも自分には何か関連性を求める事に意味があるとは全く思えない。

また、設備投資は内部留保だけから行うわけではなく、必要であれば出資や借金でも行う。内部留保が多いから設備投資を行え、という話は因果関係が何もつながっていない。結局、こういったトンチンカンな話は元をたどると「内部留保=現金」という勘違いに必ずたどり着く。

■内部留保は「資金の調達方法」である。
会社にお金が入ってくるルートは売上・借金・出資の3つだけだ。

俗に内部留保と呼ばれる利益剰余金は、売り上げから費用を差し引いた利益の額から計算するので、売上のルートとして考えていいだろう。同時に、会社の利益は株主のものなので、出資としての要素もある。

そして発生した利益は本来全て株主に配当として支払うところを、翌年のビジネスに使ってより利益を増やしてくれた方が良い、と株主が納得すれば全額を配当金に回す必要はない。配当を受け取って再投資する手間を省いているという事だ。

つまり内部留保は資金調達の話であり、現金は調達したお金をどのように保有・活用しているか、という全く種類の異なる話だ。繰り返すが「資金調達の手段」と「調達したお金の保有・使い道」は全く違う。

身近な例に置き換えるなら、消費者金融で借りた100万円を、飲み代に使おうと病気の治療費に使おうと車を買おうと、借金で100万円を調達したという事実には何ら影響しない。これは複式簿記(ふくしきぼき)といって、簿記の教科書の3ページ目くらいに書かれているような初歩的な話であり、商業高校の生徒でも理解している。

■240兆円の現金は株主のものである。
こういった話をすると必ず企業は現金を貯め込んでいるじゃないか、といった批判が来る。その分を賃上げにまわせという人もいる。2015年現在、企業は240兆円にのぼる多額の現金を積み上げていることは間違いないが、これは株主や債権者のものであり、配当や設備投資、あるいは借金の返済に回す事はあっても賃上げにまわす性質のお金ではない。

資金が余っているからといって給料を増やして利益を減らす、あるいは赤字にする経営者がいれば、株主総会でクビにされるだけだろう。内部留保を取り崩して賃金アップを!と声高に主張する人には腹立たしい話だろうが、法律でそうなってますので、としか説明のしようがない。

当然の事ながら将来発生するであろう利益(利益剰余金)については、それだけ儲かっているのならもっと給料を増やすべき、という交渉の余地はいくらでもあるだろうが、過去に積み上げた現金は給料を払った後のものであり、それを原資にさらに給料を払え、という話は全く理屈が通らない。シンプルに給料を上げてくれ、毎年これだけ利益が出ているならもっと払えるはずだ、と要求すべきところを内部留保がウンヌンと余計な話を持ち出すからややこしくなっているという事だ。

設備投資に至っては経営判断に株主でも経営者でもない人間が口をはさむ話ではない。これは法律ウンヌンの話ではなく常識レベルの話だ。多忙を極める中、そんな話に付き合わされた経済界の重鎮の方々には同情するばかりだ。

■企業の保有する現金は、実は少ない。
加えて、総額として240兆円は確かに大きい額だが、先に例にあげた任天堂やトヨタ自動車などの大手企業を別にすれば1社当たりの金額は決して多くは無い。
・混乱しやすい内部留保に関する議論 大和総研グループ 太田珠美 2013年10月29日

1598とはずがたり:2015/10/24(土) 21:29:48
>>1596-1598
そもそも、現預金であったとしても、その中には運転資金に充てるための現預金も含まれている。純粋な余剰資金ではないのである。なお、現預金残高約168兆円のうち約101兆円は資本金1億円未満の企業に属するものであり、1社あたりで計算すると、数千万円にしかならない。内部留保や現預金残高の水準のみを以て、ステークホルダーへの還元云々、という議論することは必ずしも適切ではない。

※上記引用記事は少し前の記事なので、現金の額は現在より少ない。

結局、政府は企業に向かって設備投資にお金をつかえ、賃金を上げろ、と命令する前に、なぜ企業は必要以上に手元の現金を貯め込むのか?と考えるべきだ。企業は営利を追求するために存在している以上、利益になるのであればいくらでも設備投資を増やし雇用も賃金を増やす。

設備投資が増えれば景気が良くなるだろう、だから無理にでもお金を使わせよう、という考えは原因と結果を取り違えており、正しくは景気が良くなれば設備投資が増える、という順番だ。

■なぜ国は企業の活動に口をはさむのか?
先日は携帯料金が高すぎるとして政府の値下げ要請が話題となった。これも大手3社の寡占状態が高額な料金を生み出しているだけの話で、より高い価格で利益を増やすのは企業にとっては当然の戦略だ。

携帯電話各社が公共の電波を利用して必要以上に儲けている事が問題ならば、新規事業者が参入できるようにすればいい。電波の利用は国が管理しており、値下げ要請などしなくともいくらでも間接的なコントロール、つまり新規事業者の参入による競争の促進は十分可能だ。

新たな携帯事業者が生まれればそのインパクトは計り知れない。競争の促進で利用価格は下がり、基地局等の設備投資、大規模な雇用の創出など、現在の大手3社に匹敵する企業が生まれればどれだけ経済効果が大きいかは言うまでもないだろう。

こういった事をせずに既存の企業に価格を下げろと命じ、すでに多額の設備投資を行っている企業に対してさらにお金を出せと余計な口出しをする。戦後の何が足りなくて何をやればいいか分かっていた時代は、国が主導でインフラを整備し、優先順位の高い産業の成長を促す傾斜配分が上手くいった時期もあったが、今は全く状況が違う。経済・産業政策についてズレた話が多すぎると感じているのは自分だけではないだろう。

内部留保・会計関連は以下の記事も参考にされたい。
■女子大生でも分かる、内部留保と現金の違い。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/30345738.html
■大学で簿記3級を教える事は正しい。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/40986750.html
■年収1100万円なのに貯金が出来ませんという男性に、本気でアドバイスをしてみた。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/44746902.html
■262億円の大赤字を叩きだしたマクドナルド・カサノバ社長に、一読を勧めたいマンガについて。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/45414636.html
■1億円の借金で賃貸アパートを建てた老夫婦の苦悩。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/44769829.html

知人からは、政治家の経済オンチは昔からの話で、現金と内部留保の違いもろくに教えられないブレーンしか身近にいない方がよっぽど問題ではないか、という指摘を受けた。確かに、最も深刻な事はこの部分であることは間違いない。そしてさらに絶望的な事はそんな政府・自民党にボロ負けしている野党のだらしなさ、という事になる。

中嶋よしふみ
シェアーズカフェ・店長 ファイナンシャルプランナー
シェアーズカフェ・オンライン 編集長
シェアーズカフェのブログ
ツイッターアカウント @valuefp  フェイスブックはこちら
※更新情報はSNSで告知しています。

1599とはずがたり:2015/10/24(土) 21:39:36
解りやすいなー。
>「預金を1000万円持ってる人がそれを全額頭金にして、銀行から3000万円を借りて、4000万円のマンションを買ったとする。で、友人から事業を始めるので100万円貸して欲しい、と借金を申し込まれたとする。なんて答える?」
>「頭金で全部使っちゃったから貸すのは無理ですよね」
>「それに対して『頭金を1000万円も払ったなら、当然手元に預金が1000万円あるってことでしょ?100万円位貸してくれても良いのに。ケチ!』って言われたら?」
>「……? 意味が分からないですよね。全部頭金に使ったって言ってるのに」
>「まあそうなるよね。内部留保から給料を払え、って話はそれと同じ位ワケの分からない話って事」

女子大生でも分かる、内部留保と現金の違い。
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/30345738.html
2013年08月05日 07:39
中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 シェアーズカフェ株式会社・代表取締役社長 ファイナンシャルプランナー

「城さんのブログ読みましたか? 内部留保から給料は払えないって書いてありましたけど、そうなんですか?」

先日、知人の女子大生からこんなメールが届いた。城さんとは「若者はなぜ3年で辞めるのか?」の著書で有名な城繁幸氏の事だ。

■女子大生が城繁幸氏のブログを読むと……。
彼女は以前も城氏の記事を読んでメールを送ってきた大学生だ。それ以来、城氏の記事を読むようになったようで「筆者が『日本の弱者はとても可哀想だ』と思うワケ」を読んで、何かモヤモヤしたものを感じたようだ。

この記事では「企業は内部留保(ないぶりゅうほ)を取り崩して給料を増やせ」というよくある大企業批判について、いかに間違っているかが説明されている。

日本は失われた10年とか20年と言われる不景気が続いていながら「金余り」の状態だ。一見するとおかしな状況に見えるが、消費にも設備投資にも使われないお金が行き場を失っているという事だ。日銀の資金循環統計によれば、昨年度末の企業の現金・預金残高は225兆円と過去最高を更新したという。使い道の無い膨大な資金が積み上がっており、それを使って給料を増やせ、雇用を増やせという話だ。その際に言われるのが「内部留保を取り崩せ」というものだ。

これは城氏の記事で指摘されている通り、「そもそも、他人がとやかく言えるお金ではない(なぜなら株主のお金だから)」「そもそも、会社の金庫の中に現ナマが貯まっているわけではない(企業の利益は再投資されて設備や在庫になっているから)」という事で議論の余地も無く決着がついている話なのだが、まだ社会人ではない大学生には分かりにくいのだろう。一部の政治家や経済学者まで同じような事を言っているので、正しい意見だと思っている人も少なく無い。

■「内部留保」という言葉は無い。
この話を正確に考えるには、まず内部留保という言葉の定義を知る必要があると思うが、実は内部留保は正確な言葉ではない。トヨタでもグリーでもソフトバンクでもどこでもいいので、上場企業の公表する決算書を確認してみて欲しい。「内部留保」という項目はどこにも載っていない。これは当然の話で、企業会計では内部留保などという言葉は一切使わないからだ。

一般的に内部留保は「過去の利益を溜め込んだもの」という漠然としたイメージで認識されている。だからそれを取り崩せば給料を増やせる、雇用を増やせると思われているわけだが、これは簿記3級レベルの知識でも間違いだとわかる話だ。少し丁寧に説明してみよう。

■頭金と預金。
メールを送ってきた女子大生は簿記の知識が無く、納得いかない様子だ。

「会計士の試験勉強をしてる友達も城さんの言うとおりで法律上は株主のモノだ、って言ってました。でも会社のお金って社員が頑張った結果じゃないんですか?」

法的にはそういうもの、という説明では納得いかないようなので、基礎の基礎から説明する事にした。会計知識の無い人に内部留保の定義を説明してもややこしくなるだけなので、もうちょっと分かりやすく住宅ローンに例えて説明した。

1600とはずがたり:2015/10/24(土) 21:40:31
>>1599-1600
「預金を1000万円持ってる人がそれを全額頭金にして、銀行から3000万円を借りて、4000万円のマンションを買ったとする。で、友人から事業を始めるので100万円貸して欲しい、と借金を申し込まれたとする。なんて答える?」
「頭金で全部使っちゃったから貸すのは無理ですよね」
「それに対して『頭金を1000万円も払ったなら、当然手元に預金が1000万円あるってことでしょ?100万円位貸してくれても良いのに。ケチ!』って言われたら?」
「……? 意味が分からないですよね。全部頭金に使ったって言ってるのに」
「まあそうなるよね。内部留保から給料を払え、って話はそれと同じ位ワケの分からない話って事」

図1は今の話を企業会計で使われるバランスシートの形に直したものだ。右側の住宅ローンと頭金は「お金の調達方法」を、左側の家は「調達したお金をどのような形で持っているか」を、それぞれ現している。家はあるけど預金は無い、という事がこの図でも簡単に分かるだろう。会話に出てきたように、頭金と預金を勘違いする人はいない。

■内部留保とは何か?
97図2は決算書を簡単に表現したものだが、今の話と全く同じ事が企業会計にも言える。企業会計ではお金が入ってくるルートは大きく分けて三つしかない。売上が発生する、借金をする、株を発行する、の3通りだ。それぞれ収益、負債、純資産の項目が対応する。損益計算書とバランスシートのいずれも右側が「お金の調達方法」だ。そして「調達したお金をどのように持っているか(もしくは使ったか)」が左側の資産と費用だ。

過去の利益は右側の純資産の部に記録されている。専門用語で言うと利益剰余金(りえきじょうよきん)や利益準備金(りえきじゅんびきん)となる。これは決算書にも書いてある用語だが、内部留保は一般的にはここを指す。つまり、内部留保は借金や株の発行と並んで、資金の調達方法を意味しているという事だ(元々は売り上げなので、売り上げによる調達といっても間違いではないだろう)。一方、現金・預金は左側の資産の部に記録されている。

利益が株主のものならば本来は配当金で全て株主に支払うのがスジだ。しかし会社が得た利益を再び仕入や設備投資にまわせば、もっと成長して沢山の利益をもたらしてくれるかもしれない。それならば株主が利益を受け取らない方がいい場合もある(急激に成長している企業は配当を出さない事も多い)。だから配当で会社の外に出さずに利益を溜めておく、という事で内部留保と呼ぶ。実質的には既存の株主から株の発行で資金調達をした状態と同じだ(配当をすると税金が掛かるのでダイレクトに再投資した方がトク)。

城氏が内部留保は株主のものなのだから給料には使えない、と指摘したのはこういう仕組みになっているからだ。費用を株の発行(出資)でまかなうのは、今は赤字でも将来の黒字転換が見込めるベンチャー投資など、限られたケースだ。現在は多額の現金が企業に積み上がっているが、負債と相殺した手元現金は実際にはもっと少ない(最終的には株主の資金だから勝手に使ったら経営者が株主代表訴訟で訴えられてアウト、という事になる)。

■政治家や経済学者に簿記・会計の知識はいらないのか?
これまでの説明である程度分かってもらえたと思うが、内部留保は株の発行や借金と同じく資金の調達方法を意味する言葉であって、現金とは全く意味が違う。「内部留保」というお金は無いし、内部留保を取り崩して給料に使うという表現は意味をなさない。最初の例に戻るなら「頭金を友達に貸す」という位ワケの分からない表現だからだ。

以前、政治バラエティ(?)のTVタックルで与野党の政治家が企業の賃金について話をしていた時、皆が内部留保、内部留保と連呼しているのだが、何の話をしているのかさっぱり意味が分からない。よくよく聞いてみると、すべて「現金」と言い換えれば意味が通じる。そう、現金と内部留保を混同しているわけだ。

バランスシートの右と左の違いも分からないような政治家が国を動かしていると思うと怖くなった。これは一部の経済学者も同様だ。簿記3級は小学生でも取得する資格だ。つまりバランスシートの左右の見分けもつかない政治家・経済学者は小学生にも負けるということだ。

1601とはずがたり:2015/10/30(金) 16:14:54
ミクロ経済分析 (経済と経済学の明日 4)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%88%86%E6%9E%90-%E7%B5%8C%E6%B8%88%E3%81%A8%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6%E3%81%AE%E6%98%8E%E6%97%A5-4-%E3%83%8F%E3%83%AB-R-%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3/dp/4326548452

入門ミクロ経済学 [原著第9版] 単行本 ? 2015/8/29
ハル ヴァリアン (著), Hal R. Varian (原著), 佐藤 隆三 (翻訳)
http://www.amazon.co.jp/%E5%85%A5%E9%96%80%E3%83%9F%E3%82%AF%E3%83%AD%E7%B5%8C%E6%B8%88%E5%AD%A6-%E5%8E%9F%E8%91%97%E7%AC%AC9%E7%89%88-%E3%83%8F%E3%83%AB-%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%B3/dp/432695132X/ref=pd_cp_14_1?ie=UTF8&refRID=10ERF6NVJMPEBBQRH4FJ

1602とはずがたり:2015/11/04(水) 08:50:02
複式簿記
http://www.moge.org/okabe/temp/balance.pdf
岡部 洋一
放送大学教授 (東京大学名誉教授)
2015 年 7 月 12 日
起草: 2000 年 4 月 1 日

1603とはずがたり:2015/11/16(月) 14:12:13
『市場発生のダイナミクス 移行期の中国経済』丸川知雄 アジア経済研究所1999を読む。

1章ではテレビ産業が取り上げられている。
中国は計画経済とは云いながら国と省の関係,国営企業(実質的に省有企業)と省の関係などを通じてやりたい放題である事が解る。
中ソ対立の煽りで権限が省に移され,北京が潰滅しても省毎に経済活動を継続しソ連との戦争を継続出来るようにしたのが始まりだそうで,もともと国単位の独占企業が1社だけのソ連型とは全く違う分権的な計画経済だったようである。
また現代の中国にも通じるものがあるが,規制が無視されたり,密輸などで無効化されるなどやりたい放題の中国の自由化はソ連・東欧が失敗したような急進的な画一的なものではなく広汎なものであり,中国政府が意図した漸進主義を民間(というか国営企業)が独力で突き崩すタイプのものだったようである。

基本的に計画・統制が機能しなくなるのは物不足では無くモノ余りの状況であった。ソ連・東欧型の計画経済を「不足経済」と指摘したのはハンガリーの経済学者のコルナイだそうだが,丸川氏はロシア・東欧のサックス等の急進改革を需要抑制による改革と指摘し,中国のは供給刺戟的な政策の結果,市場経済化が突き動かされたと指摘している。ロシア・東欧が困難に陥った時にIMFや世銀が急進改革を十分支援出来なかったというイースタリーの『エコノミスト南の貧困と闘う』内でのコメントよりも進んだ観察であると云えよう。

2章は自動車である。
ソ連から導入した縦割り型(部品などを全部内製する不効率な)の生産システムであったそうな。その再編の過程で集団が形成され,一部資本の論理よりは行政の論理で拡大していたようであった。
東風汽車@武漢に移転や第一汽車@長春は今も中国三大自動車メーカー(残りは上海,Big5だとこれに長安・奇瑞@安徽省を加える)として健在のようである。

3章は繊維産業と対外開放である。
90年代の中国は80年代の韓国や60年代の日本よりも開放的だそうな。
1978年末に対外開放を決定して技術をもった企業の進出を受け容れるようにしたが進出は少なく1986年から軌道修正を行い,輸出拡大に資する場合は自由化した。
同時に人民元のレートを大幅に切り下げ輸出を容易にした。
その結果集積が進んだのが衣料,特に日本向けだそうな。欧米は少なくとも当時は数量制限が残っていたそうな。

4章は流通について。
計画の歪みが強く出るのが此処のようだ。此処に関して中国政府は徐々に計画経済の比率を下げてきている様だ。

5章は市場経済と労働市場について
鞍山鋼鉄の例が載っている。ふくれあがって学校や病院なども抱える20万人企業になっていたそうな。
農村と都市だけでなく都市同士でも労働市場は分断されていて産業構造の転換時に失業者が滞留する一方で人手不足の町もあるなどの不効率が発生してたようだ。都市と農村の分断は今も大きな問題だし,中国が飛躍するに必要な自由化策だと思われるがこの16年で何処迄進んだのかな?

1604とはずがたり:2015/11/16(月) 14:22:56
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1046080617/1603
20万を超えてた鞍山鋼鉄の从業員は2004年には15万人を切ったようだ。


市場経済移行期における中国鉄鋼業の分析:鞍山鋼鉄集団公司を例として --国有企業改革の進展:リストラクチャリングの視点から--
http://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/151284/1/kronso_182_2_220.pdf
韓, 光燦
經濟論叢 (2008), 182(2): 220-238

1985年時点の鞍鋼の年間粗鋼生産量は,約726万トンであったが,それに対して,従業員数が,約22万人という膨大な数になっている。
>当時の中国の固有企業の目的関数6) ii"競争的市場経済環境で企業が一般的にとる新古典派的な利潤極大化よりも,雇用の維持と拡大にあることを示唆しているともいえよう。これは,又,従来の社会主義の計画経済において,よくみられる Kornai[1980](>>1603)のソフト予算制約の一環ともいえよう。

2004年になると, 14万人台に削減され, 1985年の約 6割に当たる。単純に数字的にみても,従業員全体の約 4割が削減されたという非常に大規模なリストラが行われたことを示している。しかし,そのかかった期間を考慮すれば,その削減ベースは,全体的には,比較的緩やかであったともいえよう。

全民従業員の全体
数に占めるレイオフの割合は 1999年の3.64%から2004年には22.23%にまで上り,全民従業員の全体の約 2割以上がレイオフ状態にあることを示している。

レイオフ人員の中でも在宅休息の賃金はかなり高く,現役従業員の約48%に当る。しかしながら,在宅休息の年間賃金(約8700元)は,鞍山地域の消費水準を考えると,基本的な生活ができるレベルである O これは, レイオフ人員の中でも在宅休息は,大きな役割を果たしている可能性を示唆している。その一方 レイオフ人員の賃金コスト負担は重く,鞍鋼の全体賃金額の約10.35%を占めている。これは,又,鞍鋼の人員削減のコストは高く,一種の社会保障的役割を果たしていることを示唆している。

1605とはずがたり:2015/11/19(木) 15:03:35
Research Papers Published by CAO 対日直接投資に関する調査報告書
http://www.invest-japan.go.jp/fdidb/files/h15-2.html
Invest Japan

巻末補論 日本の製造業において全要素生産性上昇率はなぜ低迷しているのか (PDF形式:190KB)
http://www.invest-japan.go.jp/pdf/jp/fdidb/h15-2_6.pdf

1606とはずがたり:2015/11/26(木) 13:21:48
経済理論に於いてはもう50年以上も前に,控えめに云っても25年程前には主役ではなくなっている。

>たとえば3億円の資金を持つ人であれば、債券や株式に投資することによって、年間で1000万〜1800万円程度の収入を得ることが可能だ(一般的な債券の期待リターンは3・5%、株式の期待リターンは6%程度といわれる)。
てことは3000千万で100万〜180万,1000万で30万〜60万は稼げる筈なんだな。3億ぐらい資産欲しいなぁ(;´Д`)

其れは兎も角,儲かるんなら貧乏人だって資産運用すれば良いだけで得られるのにやらないだけの癖に文句を云うな,なんだけど小口にすると手数料が高くて実質リターンが低下するんだな。この辺は不平等かもしれないけど,貧困層向けに投資手数料に補助金入れるとか政策的に無理そうだなぁ。。(;´Д`)

ピケティ理論はやがて成立しなくなる
『21世紀の資本』が明らかにした「資本」の持つ圧倒的なパワーが、相対的に低下する時代がやって来る
http://www.newsweekjapan.jp/stories/culture/2015/11/post-4156.php
2015年11月25日(水)19時02分

 「楽天はすでにオールドエコノミー」と、本誌ウェブコラム「経済ニュースの文脈を読む」でお馴染みの評論家であり、億単位の資産を運用する個人投資家でもある加谷珪一氏は言う。インターネット環境の急激な進展により、新しい資本の時代が動き始めており、そこでは稼ぎ方も働き方も、すべてが変わるのだという。

 楽天は設立が1997年で、株式店頭上場が2000年。わずか3年で上場している。今では1万2000人以上(連結)の従業員を抱え、売上高は6000億円弱(2014年)という日本を代表するネット企業だ。これのどこがオールドエコノミーなのか。

 加谷氏によれば、最近では「設立からわずか数か月で企業を売却し、上場することなく巨額の富を生み出すケースが続出している」という。オフィスなどなく、自宅で始めたビジネスというのも珍しくない。もはや会社の体裁を整え、社会的な信用を得る必要さえないのだ。加谷氏が「新しい資本の時代」と呼ぶゆえんである。

 これまでは、お金持ちになれる人は、起業家か投資家と相場が決まっていた。これからの時代には、新しい「富のルール」を知り、情報を制する者だけがお金持ちになれる、と説く加谷氏。11月27日発売の新刊『これからのお金持ちの教科書』(CCCメディアハウス)では、10年後の未来を前提に、どうすればお金持ちになれるかを分析・解説している。

 ここでは、本書の「第4章 これからの『富のルール』を知る」から一部を抜粋し、3回に分けて掲載する。初回は「ピケティ理論はやがて成立しなくなる」。

『これからのお金持ちの教科書』
 加谷珪一 著
 CCCメディアハウス

◇ ◇ ◇

「資本」の持つパワーを歴史的視点で明らかにしたのが、フランスの経済学者トマ・ピケティ氏である。世界中でベストセラーとなった『21世紀の資本』を読むと、資本が持つパワーの大きさがよく理解できる。

ピケティ理論を実際に検証してみると
『21世紀の資本』がこれほどの話題になったのは、ピケティが膨大な歴史データを駆使して、富を持つ人とそうでない人との格差が拡大しているという事実を明らかにしたからである。

 ピケティ理論のエッセンスとなっているのは、r>gの法則と呼ばれているものである。

 ピケティ氏によると、歴史的にいつの時代も、資産の収益率(r)が所得の伸び(g)を上回っており、これによって富を持つ人とそうでない人の格差が拡大しているという。彼は、今後、世界経済の成長率鈍化により、格差拡大がさらに顕著になると予想している。ピケティ氏が説明する通り、資産を持っている人は、その資産を運用することでさらに富を増やすことができる。

 たとえば3億円の資金を持つ人であれば、債券や株式に投資することによって、年間で1000万〜1800万円程度の収入を得ることが可能だ(一般的な債券の期待リターンは3・5%、株式の期待リターンは6%程度といわれる)。

 これは、世間でいうところの不労所得であり、自身が働いて得た収入とは別のものである。資産の保有者は、お金を減らすことなく、毎年、資産が生み出すお金で資産を増やせる仕組みになっている。これはストックから毎年得られるフローの収入ということになる。

1607とはずがたり:2015/11/26(木) 13:22:09
>>1606-1607
 これに対して、一般的なビジネマンは、基本的に自分が働いて給料をもらうしかお金を稼ぐ方法がない。

 長期的に見れば、労働者が受け取る所得の増加は経済成長率とほぼ比例しており、経済成長率を大きく超えて増えることはない。資産運用から得られる利回りが、所得の増加率を上回っている場合には、資産家とそうでない人の格差が拡大するという理屈が成立することになる。

 働いた対価として得られる給料は、まさにフローの典型である。フローという形で大きな富を得られないのは、いつの時代も同じことのようである。

 ピケティ氏はマクロ経済のデータから資産の収益率を計算しているが、筆者も独自に、過去100年間に日本における株式や債券の利回りや値上がり率などから簡易的に資産の収益率を計算してみた。

 得られた結論はピケティと同じで、いつの時代においても、所得の伸びを資産の収益率が上回っており、唯一の例外はバブル崩壊後の失われた20年だけであった。デフレ下の日本は、幸か不幸かそれほど格差が拡大しなかった時代だったということがわかる(現在、日本で進んでいる格差拡大は、貧困率の上昇に代表されるように、どちらかというと下方向への拡大である)。だが今後、資産価格がさらに上昇すれば、資産を持つ人とそうでない人の格差は一気に広がっていくはずだ。

 資産を持つ人が株式や債券を通じて投資した資金は、金融機関などを通じて、最終的には、事業資金として活用される。先ほど、従来型社会ではビジネスを立ち上げるために多額の資金が必要であると述べた。それは大規模な工場や鉄道といったインフラだけにとどまるものではなく、ラーメン店や焼き肉店のオープン、ECサイトの構築も同じである。

 資本家が提供した資金があってはじめて起業家も事業を立ち上げることができる。そして、厳しい条件をくぐり抜け、成功した起業家だけが、次の世代の資本家として資金を出す側に回ることができる。これが従来型資本主義の冷徹なルールであった。

シェアリングエコノミーで資本が不要に
 ところが新しい資本の時代においては、「お金」の果たす役割が相対的に低下してくる。

 最近の起業家が、新しい事業をスタートするにあたって必要とする初期投資額は、おそらく20年前の数十分の一になっている可能性が高い。ほとんどのビジネスリソースがネットを使って安価に調達できるため、起業家は初期投資額を最小限に抑えることが可能となっているからだ。

 これは大規模なシステムを使ったスケールの大きいビジネスでも同じである。このところ情報システムの世界では、自社内にサーバーを設置せず、アマゾンが提供するクラウドサービスに、システムを丸ごと移管するケースが急増している。

 こうしたクラウドサービスは、システムが必要とする処理能力を、即時に、そして柔軟に設定できる。たとえば、最初は安い金額で従来のサーバー1台分の処理能力を購入し、テスト的にウェブサイトを立ち上げてみる。もし急激にサイトの人気が上昇し、アクセスが殺到する状況になれば、すぐに追加料金を払って、サーバー50台分の能力まで増強するといったことが可能となっているのだ。

 最近は大企業においても、小規模な新しいサービスを無数に立ち上げ、生き残ったものだけを継続させるというやり方が当たり前になっている。こうした時代においては、お金と時間をかけて、自社専用のシステムを作るという行為はコスト的に割が合わないのだ。

 そうなってくると、システムに対する投資はアマゾンのような事業者に集中することになるため、投資効率が圧倒的に高くなる。経済全体において必要される初期投資額は大幅に減ってくるだろう。

 こうした動きは、情報システムのようなバーチャルな世界だけにとどまらない。最近は、あらゆるモノやサービスを共有する、シェアリングエコノミーが急成長している。多額の初期投資が必要であった工場や車両、建物などに至っても、必要に応じて調達することが可能となるだろう。

 ITを使って、世の中に必要なものを、究極的なレベルまでシェアすることになれば、従来、必要と思われていたインフラ投資の過半数が無駄なものになってしまうかもしれない。さらに言えば、多くのビジネスで初期投資が不要ということになれば、これまで資本家が持っていたパワーすら変化する可能性がある。

 資本主義の主役であり、市場の中で圧倒的なパワーを持っていた資本の持つ力が、相対的に低下するのである。これは、資本主義が登場してから、初めての現象となるかもしれない。

1608とはずがたり:2015/11/26(木) 18:59:39
>>1515-1517

「里山資本主義」は可能? バイオマス発電の虚実
田中淳夫 | 森林ジャーナリスト
2013年11月26日 10時45分配信
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakaatsuo/20131126-00030091/

『里山資本主義〜日本経済は「安心の原理」で動く』(執筆・藻谷浩介+NHK広島取材班 角川oneテーマ21)が売れているらしい。

本が売れるのは羨ましいかぎりだが、さて内容はどうだろう。

本書で主張されているのは、マネー資本主義の現代社会にサブシステムをつくろう、という提案である。マネー(金融)を拒否するのではなく、エネルギーや食料の一部を自給(地産地消)することで資金が地域を循環し、貨幣価値でない生活価値が高まる……そこに里山を象徴とする田舎社会の知恵を取り上げる。行き詰まった先進国のバックアップシステムにするという発想だ。

これらの提言に関して、私は概ね賛同する。その上でだが、本書を読んで少し感じた違和感に触れたい。
総論賛成でも各論に、甘い部分が目立つからだ。田舎暮らしを理想的な生活のように持ち上げるところも鼻につくが、ヨーロッパの大規模機械化林業を見本とするような取り上げ方は疑問がある。とくにバイオマスエネルギーは大いに問題ありだ。

たとえは薪ストーブなどを個人のエネルギー自給として紹介するうちはいいのだが、バイオマス発電や木質ペレット燃料に移ると「これは、里山の資本か? 本当にサブシステムか?」と疑問符が噴出する。

ここで紹介されるバイオマス発電とは、木材を燃やして行う発電である。たとえば製材廃材や建築廃材、そして山に捨てられている未利用木材を燃料にするものだ。そして幾度も例に上がるのは、岡山県真庭市で主に集成材を製造している銘建工業。ここのバイオマス(木屑)発電は、私も取材している。集成材の製造では、だいたい原木の5割以上を捨てる。板に加工する過程や、張り合わせる工程の鉋掛けで木屑にしてしまうのだ。そんな木質廃棄物を燃やして行うのがバイオマス発電だ。

問題は、ここで作られる集成材の材料は、ほとんど外材なのである。つまり燃料になる木屑も大半が外材だということだ。

1609とはずがたり:2015/11/26(木) 18:59:55
>>1608-1609
外材を利用してはダメだというのではない。ただ里山(近隣地域)の産物とは言えないし、地産地消でもないということだ。そして集成材が全国(主に都会)で大量に売れるから出る「副産物」である。それを無駄にせずエネルギーに利用することは企業努力としては大切なことだが、里山資本主義の範疇に入るのか?

そもそも発電は、非常に効率の悪いエネルギーの使い方だ。最大でも3割程度しか電力に変換できない。
本書でもバイオマスエネルギー利用の事例として登場するオーストリアを始めとしたヨーロッパ諸国の施設は、発電だけでなく熱利用も進めている。むしろ熱利用が主体と言ってよいだろう。温水を供給して地域暖房を行っているのだ。いわゆる熱電併給(コジェネレーション)だ。おかげでエネルギー効率は8割近くまで達する。つまり熱利用を抜きに、バイオマスエネルギーを持ち上げても意味がない。

しかも、肝心のヨーロッパのバイオマス発電所の経営は、上手くいっていないのだ。
まるで理想的に展開しているかのように紹介されているが、実はドイツやオーストリアのバイオマス発電所が、次々に破綻したり経営不振にあえぐ事実を隠している。政治的に多くの税金を投入して建設された施設だけに、国民の間でも批判が高まっているという。

加えて発電のために燃焼させる木材量は莫大で、エネルギー用の低質材が不足し始めた。そのため低質材市場では、近年は価格が異常に高騰(2005年比で約1,9倍)し、製紙用やパーティクルボートなど建材に使われていた木材が燃料用に回されたり、外国(主に旧東欧諸国)からの輸入が増えている。そうした国では森林法の整備が遅れているため、大面積皆伐が行われたり過伐が進んで森林が荒れ始めている。

もちろん、上手く運営している施設もある。たとえば廃棄物処理を主体とするところ(ゴミ焼却炉による発電)や廃材を利用するなどした施設(製材所などに付属する発電所。日本の銘建工業もその範疇)では成功しているそうだ。しかし、決して経済にも環境にもよいバラ色のエネルギー施策ではなかったのである。

同じことは木質ペレットにも言える。木質ペレットは、木屑を細かな粉にして、再び高温高圧で固めた代物だ。製造には大きなエネルキーが必要だ。木質の持つエネルギーは石油などの半分以下だが、これでは製造エネルギーに大半を消費してしまうことになる。
本書では銘建工業の木質ペレットは韓国にも輸出されていることを誇らしげに記すが、輸送に費やすエネルギーを考えると本末転倒である。そもそも製造した木質ペレットを地元、いや国内でも消費しきれないから輸出するのだろう。逆に日本がカナダなどから木質ペレットを輸入している事実もある。これも里山的発想ではなく、グローバル経営と言うべきではないか。

薪で煮炊きするような生活も、週末に楽しみで行うバーベキュー程度ならいいが、日常的に推奨できるだろうか。それを楽しいと感じるかどうかは人によるだろう。それに近頃は田舎でも、焚火をして煙が上がったら怒鳴り込まれる。

あまり『里山資本主義』をくさすと、自分の本が売れない僻みだと思われるかねないから、これくらいにするが、次は日本で現実に推進されているバイオマス発電の問題点についても考えたいと思う。

1610とはずがたり:2015/11/27(金) 12:54:09
コブダグラス生産函数批判の部分は一寸ずれてる感があるけど,生産技術なのか労使間の交渉なのかは確かに論点で議論ではある。

また国民の生産量を見るには現行指標のGDPが良いけど,国民所得を見るには昔使ってたGNP,これは三面等価の法則よりGNIに等しい,を見た方が良い,更にGNIでは海外からの投資収益などにより労働分配率が下がる筈との指摘は興味深い。

世界的にみないとコブダグラス函数が成立しているかどうかなかなか見えにくいし世界的に見ても色々な要素があって分配率一定は見えにくいかも。

日本で貧富の格差が拡大してきた本当の原因 アトキンソン「21世紀の不平等」から考える
東洋経済オンライン 東洋経済オンライン
櫨 浩一
4日前
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%A7%E8%B2%A7%E5%AF%8C%E3%81%AE%E6%A0%BC%E5%B7%AE%E3%81%8C%E6%8B%A1%E5%A4%A7%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8D%E3%81%9F%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AE%E5%8E%9F%E5%9B%A0-%E3%82%A2%E3%83%88%E3%82%AD%E3%83%B3%E3%82%BD%E3%83%B3%EF%BD%A221%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%81%AE%E4%B8%8D%E5%B9%B3%E7%AD%89%EF%BD%A3%E3%81%8B%E3%82%89%E8%80%83%E3%81%88%E3%82%8B/ar-BBnjUQU#page=1

 『21世紀の資本』で話題になったトマ・ピケティ(1971-)の師でもある不平等問題の大家、アンソニー・アトキンソン(1944-)は、世界的に第二次世界大戦後に不平等が縮小し、その後1980年代以降格差が再び拡大した原因の一つに、労働分配率の動きがあると指摘している。

 1950年代から1970年代にかけて多くの国で労働分配率は上昇したが、その後2000年代にかけては資本の取り分が上昇(労働分配率は低下)した。日本は例外的に2000年代にかけても労働分配率の上昇が続いたと述べている(Anthony B. Atkinson, “Inequality: What Can Be Done?”, Harvard University Press 2015)。

 しかし、日本の労働分配率の動きをると、欧米諸国に遅れて1990年代がピークになっているが、その後は労働分配率が低下傾向に転じているように見える。

 経済が発展していく原動力は、資本の蓄積と人口の増加、そして技術進歩だ。一見、経済が発展してビルや工場の設備などの資本が増えていくと国民所得から資本への分配が増えてしまい賃金が圧迫されそうにみえる。しかし、ニコラス・カルドア(1908-1986)は経済成長について長期的に観察される事実として、国民所得の労働と資本に対する分配率はほぼ一定だということを指摘している。

 教科書で習うコブ・ダグラス型の生産関数では、市場原理が働けば、資本の蓄積が進むと資本収益率が低下して労働分配率は一定に保たれる。技術進歩があれば、労働の取り分も資本の取り分も拡大することが可能になる。

 しかし、現実の経済がこのように都合のよい生産関数の形をしているとは限らないし、不完全競争の世界では企業と労働者が共有する余剰の分配は交渉力次第ということもある。現在の社会は資本家と労働者という二つの階級に分裂しているわけではないが、それでも労働分配率が上昇すれば所得格差は縮小するということは変わらない。

 逆に労働分配率が低下していくと、資産家は大きな財産所得を得るので速いスピードでさらに資産を増やして行くのに対して、元々資産が少なく勤労所得だけが主な収入源となっている人達は資産の蓄積速度が遅くなる。資産格差と所得格差の相互作用で格差は雪だるま式に拡大してしまう恐れがある。

1611とはずがたり:2015/11/27(金) 12:54:33

 日本銀行の資金循環統計では2014年度末の家計部門の金融資産残高は約1700兆円だから、世帯数を約5000万世帯とすると一世帯当たりの金融資産は3000万円以上にもなる。しかし、家計調査での平均貯蓄額は1798万円に過ぎず、資金循環統計から求めた平均貯蓄額とは大きな差がある。(とは註:http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1143711594/1136に寄ると、金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(2人以上世帯)によると金融資産の平均保有額は1209万円で、昨年(1182万円)よりも27万円増加で中央値は400万円でこれは、1年前と変わっておらず,また『貯蓄がない』と答えた世帯は30.9%と、前年と比較して0.5ポイント増加,一方、金融資産を保有している世帯だけで見ると、平均額は前年より66万円増え1819万円となったとのこと。なんか随分違うんだが。。)

 これは資金循環統計には個人企業の金融資産などが含まれているということだけではなく、家計調査の調査対象サンプルに含まれたかった著しい大金持ちが少数だがいるからだ。

 さらに言えば、家計調査による貯蓄保有額の中央値(貯蓄額の順に並べたときにちょうど真ん中の世帯の保有額)は1052万円に過ぎず、分布はかなり偏っている。

 政府債務が拡大していくことが、所得格差に及ぼす影響も懸念される。国債の残高が増えるとそれだけ家計の金融資産も増えることになるが、富裕層ほど多くの金融資産を増加させることになるからだ。

 財政破たんのリスクが高まれば、国債の金利は高くなるはずで、税で吸い上げられた所得が相対的に多くの国債を保有している富裕層により多く利子所得として分配されることになる。累進的な所得税制度がある財政には所得再分配機能があるはずだが、格差を抑制する効果は弱まってしまうのではないか。

 子、孫と子孫が遺産を分割していくので大金持ちの資産は分散して行き、貧しい人達も資産を蓄積して豊かになって、両者ともに平均に回帰すると期待したい。しかし親の成功の結果は普通に考えられているよりも長く子孫に受け継がれているようだ。グレゴリー・クラーク(1957-)が各国の長期に渡る苗字と職業や所得との関係を研究したところでは、社会階層間の移動は意外に遅いという(Gregory Clark, ”The Son Also Rises: Surnames and the History of Social Mobility”、Princeton University Press 2014)。

 例えば社会の流動性が高いと考えられているスウェーデンですら、医者や法曹界などで特定の姓が人口中の比率よりも長期にわたって高い比率を維持しているという。

 相続などを通じて世代を超えて格差が固定化されて、どこかで限界を超え、大きな社会的な混乱を引き起こしてしまうのではないだろうか。

 対外資産の蓄積が進んだことも、労働分配率の低下を引き起こしている原因のひとつと考えられている。

 日本では1980年頃から経常収支の黒字基調が定着した。これが毎年の金融収支の黒字となって海外に保有する資産の増加につながるので、長年、対外純資産残高の増加傾向が続いてきた。

 日本の対外純資産は名目GDP比でみても1967年末には0.7%の債務超過だったが、2014年末には純資産が77.3%にも達する規模に拡大している。こうした対外資産から得られる所得も増加しており、2014年度には海外との間の利子や配当の受払などの海外からの所得は名目GDP比で4.3%の黒字に拡大している。

1612とはずがたり:2015/11/27(金) 12:54:55
>>1610-1612

 かつては経済活動を見る指標としては、GDP(国内総生産)ではなくGNP(国民総生産)が用いられていたが、三面等価の原理からGNPとGNI(国民総所得)は等しい。GDPは国内の経済活動水準を示す指標としては適切だが、消費や投資に使える所得を考える場合には海外からの利子・配当などの所得を含めたGNI(GNP)を見る方が良い。これは、資産家の世帯を考えれば働いて得る所得がほとんどなくても、財産所得が大きければ豊かだということと同じことだ。

 日本社会が豊かになったのかどうかという指標としてはGNIを見るべきなのだから、名目GDP比で8割近くにも達する対外純資産の収益性を高めることには大きな意味がある。

経済政策の方向としてもGDPの動向だけではくGNIの拡大にもっと注意を払うべきだというのは確かで、安倍内閣が2013年に策定した「日本再興戦略」では一人当たりGNIを10年後には150万円以上増やすという目標を示していることは、「所得150万円増加って、どういうこと?」でも述べた通りだ。

 海外への投資取引を考慮していないことも、資本と労働の間の分配率が一定となるという結果が得られる理由である。だから、近年の世界経済のように海外への投資が活発になっている状況では、労働分配率が一定になるとは期待できない。なぜなら、所得が賃金と資本に分配されると考えるのは、所得を得るためには労働と資本の両方が必要だからだ。

 しかし、海外から得られる財産所得は国内の労働を必要としない。例えば海外子会社から得られる配当が、日本にある本社で海外戦略を担っているような部門で働く人達の賃金に反映されることはあるだろうが、国内の工場などで働く人達の賃金にも分配されるとは考え難い。

 今後対外投資を拡大することで海外からの所得が増え、日本全体としては所得の増え方が速くなるはずだ。しかし、対外資産から得た所得が普通の労働者に賃金として分配されるとは考えにくく、国民所得の伸びを賃金の伸びが下回って、国民所得の中で賃金に分配される比率である労働分配率は低下していく可能性が高いだろう。

 大幅な経常収支黒字を続けているドイツや韓国を除けば、先進国の多くはそれほど大きな経常収支黒字を出しているわけではない。とくに米国は経常収支の赤字が続いていて、対外債務が対外資産を上回る純債務国になっているにもかかわらず、第一次所得収支は黒字が続いている。

 日本以外の先進諸国でも経済活動のグローバル化によって拡大した海外からの所得の分配が労働分配率の低下に関わっている可能性があり、高齢化が進んで日本の経常収支が赤字化しても労働分配率の低下が続く恐れもあるだろう。

 第二次世界大戦後の各種の改革で資産の再分配がおこなわれたこと、さらに遡れば明治維新のような大きな社会変化があったことは、日本の資産格差を比較的小さなものにしてきた原因の一つかも知れない。

 格差が小さかったということは、必ずしも日本社会の固有の特徴ではないとすれば、日本でも資産の格差が所得の格差を生み、それがまた資産格差を拡大させるという、格差の拡大再生産が起こる可能性は否定できない。

 全く格差のない社会が理想的でないことは明らかだが、余りに格差が大きく固定的な社会も望ましくない。これまでは格差が小さい国だったということに安心していないで、日本でも許容範囲を超えて格差が拡大しないような方策を十分検討する必要があるのではないだろうか。

1613とはずがたり:2015/11/27(金) 14:59:45
>成長につながる新技術は既に誕生しているが、我々が十分適応できていない。産業革命の際も効果の発現には30年近い月日を要した。汎用技術には補完的イノベーションも必要で、古い技能を持つ労働者が引退する頃に新技術が広く普及する。

>実は肉体労働でも非定型なものは置き換え困難で、たとえばコックや庭師、大工、修理、介護などは機械で対応できない。ただ仕事を失った人が殺到するため高賃金は期待できない

>本書の有力な提言の一つは教育の充実だ。あまりに当たり前で拍子抜けする人も多いだろうが、新技術に教育が追いついていないことが最大の問題で、時間がかかろうとも正攻法で行くべきだ。

問題はこの教育を受ければ将来に亘って平穏な生活を送れるという保証を現代社会が無くしてしまっていると云う事である。詰まりインセンティブに反応する人間に反応させにくく成っているのだ。

>もう一つはベーシックインカムの給付だ

荒唐無稽と思ってた(嫌いな康夫ちゃんもゆうてたし(;´Д`))ベーシックインカムだけど存外良いかもと思うようになってきた。財源確保に外形標準課税拡大したり消費税の益税なんかも無くして零細企業からも税金ちゃんと取り立てる代わりにベーシックインカム有るから最低賃金とかも撤廃して自由競争させるのである。

世界各国の成長率は、なぜ低迷しているのか
成長に繋がる新技術に対応できていない?
http://toyokeizai.net/articles/-/82235?utm_source=msn&utm_medium=http&utm_campaign=link_back
河野 龍太郎 :BNPパリバ証券経済調査本部長 2015年09月05日

給付つき税額控除と教育の充実で対処可能

なぜ各国の成長率が低迷しているのか。仮説の一つは、少子高齢化で労働力が以前のようには増えないからというものだ。日本のみならず欧州や米国、そして新興国でも出生率低下で労働力が鈍化している。

評者はこの立場を取るが、最近気になる仮説は次のようなものだ。成長につながる新技術は既に誕生しているが、我々が十分適応できていない。産業革命の際も効果の発現には30年近い月日を要した。汎用技術には補完的イノベーションも必要で、古い技能を持つ労働者が引退する頃に新技術が広く普及する。

しかし、ここにきて画像認識や完全無人車の走行などコンピュータでは不可能とされていた技術が実現化している。本書はデジタル技術の高度化で社会がついに変曲点を超え、第二次機械時代に突入しつつあると論じる。指数関数的な高性能化や情報のデジタル化が18世紀後半の第一次機械時代より大きなインパクトをもたらすという。

ならば未来はバラ色か。いや必ずしもそうならない。定型的労働の多くは機械に置き換えられ、少なくとも転換期には多くの職が失われるという。10年前に米国のコールセンター業務がインドなどに移転したが、定型的業務だったから移転が容易だった。今度は機械に置き換わる。

実は肉体労働でも非定型なものは置き換え困難で、たとえばコックや庭師、大工、修理、介護などは機械で対応できない。ただ仕事を失った人が殺到するため高賃金は期待できない。近年の格差拡大は高スキルを持つ人に有利な技術革新が続いているためで、普通の能力しか持たない人には苦しい時代が続く。

どう対処すべきか。新技術で底辺の人の生活水準も上がるなら格差拡大は問題ないという意見もあるが、米国でも社会的流動性は低下しており、極端な格差拡大は成長を阻害する。もちろん機械打ち壊し運動で技術進歩を止めるのは本末転倒だ。

本書の有力な提言の一つは教育の充実だ。あまりに当たり前で拍子抜けする人も多いだろうが、新技術に教育が追いついていないことが最大の問題で、時間がかかろうとも正攻法で行くべきだ。ネット授業など自己学習環境を作ることが容易になっているが、他産業に比べ教育分野でのデジタル技術の普及は相当に遅れている。

もう一つはベーシックインカムの給付だ。本来、生産性上昇が続けば実質賃金も上昇するはずだが、スキル偏向型の技術革新が続けばそうはならない可能性がある。支出性向の低い高所得者の所得しか増えなければ、総需要が回復せず悪循環に陥る。具体的には、給付つき税額控除として実施可能だろう。

著者
エリック・ブリニョルフソン(Erik Brynjolfsson)
米マサチューセッツ工科大学スローンスクール経営学教授。著書に『機械との競争』『インタンジブル・アセット』『デジタルエコノミーを制する知恵』など。
アンドリュー・マカフィー(Andrew McAfee)
米マサチューセッツ工科大学スローンスクール・デジタルビジネス研究センター主任研究員。著書に『Enterprise2.0』、共著書に『機械との競争』など。

1614とはずがたり:2015/11/30(月) 10:55:49
http://jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/study/2246/1036413767/1578
>東芝の連結決算に計上されている3400億円規模のWHの「のれん代」の評価は「適正」とあらためて強調。ただ、記者会見した室町正志社長は、今後、減損で株主資本がき損するリスクに言及し、半導体の分社化・IPO(株式公開)を検討していることも明らかにした。
>連結決算を減損しなかったことについて、志賀副社長は「減損テストは適切に評価されている。ルールに従っているので意図的な結果ではない」と述べた

高くついた買収?コスト超過? ─ 減損テストの意味(前編)
http://nichigopress.jp/account/taxacc/49252/

10年の間にはさまざまなことが起こり得ます。わずか数年前は魅力的に思えた取引が、今では魅力的でなくなった例が多くあります。現在、コスト増、コモディティー価格の低下、通貨高、低迷した経済需要など多くの要因により、利益の縮小が予想より長引いています。資本プロジェクト実施の遅れとコスト超過は、ほぼ世界的な現象であり、鉱業・金属企業では急上昇する資本コストのインフレとプロジェクト遂行に伴う課題に直面しています。 プロジェクトのコスト超過や、前年度の買収事業が期待外れの結果になっていることが、経営者の説明責任に対する要求が高まる一因となっています。鉱業・金属企業がこの点を踏まえて、適切な事業価値管理の一貫として、包括的な減損評価を実施して、利害関係者に透明性の高い情報をタイムリーに伝達することが、未だかつてないほど重要になっています。 今月号では、鉱山プロセスに関する減損テストについて見てみましょう。
第8回【IFRS解説】資産の減損(IAS第36号)
http://www.primal-inc.com/column/2009/08/28-000038.php?page=all

減損の兆候の有無の判定 期末毎に、資産が減損している可能性を示す兆候の有無を評価する。
回収可能価額の見積り 減損の兆候があると判定された資産について、回収可能額を測定し、帳簿価額と比較する。(減損テスト)
減損損失の認識及び測定 回収可能額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能額まで減額する。
減損損失の戻入れ 減損損失が存在しない又は回復している可能性を示す兆候があると判定された資産について、回収可能額を測定し、回収可能額が帳簿価額を上回った場合はその範囲で減損を戻し入れる。

1615とはずがたり:2015/12/07(月) 15:11:45

格差が拡大した原因は、「資産」だけではない
東洋経済オンライン 12月5日(土)6時5分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151205-00094894-toyo-soci&pos=4

『21世紀の不平等』の読みどころとは?
ピケティ現象を覚えているだろうか。欧米を中心に富と所得の歴史的な変動を分析し、資産を持つ人と持たない人の格差が広がり続けると結論づけたピケティ『21世紀の資本』は、世界的ベストセラーとなった。そのピケティの師であるアンソニー・アトキンソン氏の著書『21世紀の不平等』が12月11日に刊行される。2人の書を翻訳した訳者のひとりである山形浩生氏は、ピケティ『21世紀の資本』と本書『21世紀の不平等』の読みどころや日本人が本書から得られる示唆などを「訳者はしがき」で解説している。今回、東洋経済オンラインでは「訳者はしがき」をほぼ全文掲載する。

■ 不平等研究の長老アトキンソン

 本書の題名を見れば、格差・不平等の問題を扱って2014年に世界的な大流行となったトマ・ピケティ『21世紀の資本』(邦訳みすず書房)が当然ながら連想されるだろう。

 本書が刊行されたのも、おそらくはこのピケティの大ヒットがあればこそだし、また本書の原型となったのも、ピケティの本に対してアトキンソンが発表した、不平等解消のための提言(本書で提案されているもの)の論文でもある。

 著者アトキンソンについては、ピケティによる序文(『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス』に2015年6月25日に発表された書評を転用したもの)に詳しい。不平等研究においては大長老であり、ピケティの師匠格と言ってもいい存在となる。2015年のノーベル経済学賞はアンガス・ディートンが受賞したが、一部ではアトキンソンも同時受賞するのではないかという下馬評も見られたほどだ。

 ただし経済学者の中ではもちろん知らぬ者のない人物ながら、一般には決して名が売れているわけではない。そもそも格差・不平等研究自体がこれまではかなり地味な分野だったことは、本書の中でも述べられている。英語でも、著書は専門的なものが多く、必ずしも一般向けとは言えない。邦訳は『アトキンソン教授の福祉国家論』(晃洋書房)があるが、上下巻のうち下巻は結局出ないままとなったようだ。ピケティ『21世紀の資本』の功績は、この地味な格差論に注目を集め、アトキンソンがこのような一般向けの本を出せるようにしたという点にもある。

■ ピケティ『21世紀の資本』と本書

 ピケティ『21世紀の資本』の魅力は、ある意味で非常に大胆な単純化だった。格差の原因はr>g(資本収益率>経済成長率)というたった一つの式であらわされる。

 そしてその解決策は、rを引き下げるため、資本にグローバル累進課税してr<gにしよう、というわけ。もちろん、よく読めばもう少し詳しい解説はあるし、そんな単純なものではないこともわかるのだが、600ページ超の本を「よく読む」人はなかなかいない。

 そして、この単純な図式を浮き彫りにするため、他の原因や解決策についてかなり否定的な書き方になっている(ように読める)部分が多々ある。技術進歩や教育といった要因は軽い扱いとなり、対策としても累進課税の強化や再分配の強化といった標準的なものは、「グローバル累進課税よりは劣る」と、つれない扱いを受けている。

 これはピケティに対する批判の一つの原因でもある。特にアメリカでは、技術進歩により不平等拡大が生じた、という見方が強い。それをあまり重視しないピケティの見方は一面的だとの批判があちこちで見られる。また対策についても、「グローバル累進資本課税?  無理!  よってピケティなんかダメ!」という単細胞な反応を招く結果となっている。

 本書は、ある意味でピケティ『21世紀の資本』に見られたそのような単純な図式をたしなめるものでもある。格差・不平等が拡大してきた原因は様々だ。多面的な現象なんだから、それを一つの原因だけに帰して、たった一つの解決策でそれが片付くかのような印象を与えるのは、あまり望ましくない。もっと多面的な見方が必要だ、とアトキンソンは告げる。

■ 不平等への多面的な取り組み

 その多面的な取り組みをいくつか挙げてみよう。累進課税が弱まったことで不平等が強まったのなら、それを復活させようじゃないか。資本所有の差が不平等につながるなら、資本をみんなにあげるような仕組みを考えようじゃないか。ピケティは、公的な資本所有がなくなったというのを問題視していた。

 だったら、ソヴリン・ウェルス・ファンドのような公的資本所有を真面目にやろうじゃないか。格差があるんだから、貧困家庭を特に児童手当を通じて支援するような仕組みを創って底上げしようじゃないか。社会として、不平等を解決しようと思うのであれば、あらゆる面から取り組むべきじゃないか?

1616とはずがたり:2015/12/07(月) 15:12:06

 特に興味深いのは、一般にはどうしようもないと思われている技術進歩の方向にまで、格差を考えた取り組みをしようと提案している点だ。今後、技術発展により人間の労働者がどんどん不要になる、という議論がある。自動運転の導入で、運転手はすべて不要になる。人工知能の発達で、定型事務職は不要になる。ディープラーニングを通じて、これまで人間の知恵を必要としてきた各種の作業も自動化されてしまう、という議論だ。そして世間の多くの議論は、これが当然起こるものとしたうえで、その是非を考えてみたり、人間すべてに与えるベーシック・インカムの必要性を論じてみたりする。

 確かにそうしたセーフティネットは重要だ。でもその前に、とアトキンソンは指摘する。技術は、自然に動くものじゃない。みんなが発展させようと思う方向に(ある程度は)発展する。なぜかといえば、技術発展というのは、ある程度は実際の経験値に応じて起こるものだからだ。だったら、政府調達などを通じて、技術の方向性も左右すべきだ。自動運転だと運転手がクビになるのでまずいと思うのであれば、政府は調達において、運転手がクビにならない、人間の役割を残した技術を優先的に調達すればいい。そうすれば、完全自動の技術に比べ、そうした有人技術のほうが経験値も高まる。よって、技術はそちらの方向に発展する! 

 おそらく、テクノロジストの多く(訳者も片足くらいはここに入る)は、このやり方の有効性を疑問視することだろう。その一方で、インターネットを含め政府の動きが技術の方向性を決めてきた面もある。こうした見すごされがちな視点をていねいに指摘してくれるのが、本書の魅力となる。また、日本では正規雇用/非正規雇用の問題が、不平等拡大の大きな要因として指摘される。それ自体はおそらく正しい。そしてこの対策としては、非正規雇用をなんとか正規雇用に押し込むべきだ、という主張が定番となる。基本的には、なるべく昔の状態に戻せ、というわけだ。

 しかしその一方で、それがどこまで現実的か、というのはある。本来であれば、一般に非正規雇用と呼ばれるものは、労働者の側にも自由度を与えるものであり、一概に否定すべきものではなかったはずだ。もちろん、これはしばしば非正規雇用拡大によるコスト削減の口実に使われる議論ではあるため、警戒は必要だ。それでも、完全に昔通りに戻ることも、おそらくは考えにくい。そしてまた、非正規雇用が劣悪な状態となるのは、各種の社会保障制度が終身雇用を前提としたものとなっていて、非正規雇用を含む多様な働き方を無視しているせいでもある。

 だからアトキンソンは、むしろ多様な働き方が登場しつつあるという現実をふまえて、社会保障制度のほうを変えようと主張する。多様な働き方でも、実際になんらかの形で社会参加して貢献していることを前提に、基本的な生活は保証できるようにしよう。そのために、参加型所得(PI)などの仕組みも本書では提案されている。これまた、非常に興味深い。

 また手法面での提案もある。給付金の受給資格を審査するための資力調査や所得調査をやめて、児童手当などはとにかく児童のいる世帯全員に配り、課税対象にすることで金持ちからはそのまま所得税として回収すれば手間がはぶける、といった具合だ。

 このように、本書の提案は実に多岐にわたるし、そのすべてが理論面だけでなく、ある程度の財源的な担保も持っている。そして、ありがちな批判に対しての反論も用意されている。21世紀の新しい労働環境に向けて社会保障制度を再構築し、福祉国家を立て直すための総合的な提案が本書となる。

1617とはずがたり:2015/12/07(月) 15:12:18
>>1615-1617
■ 日本への示唆のために

 もちろん、この総合性が裏目に出る面はある。何かたった一つ、決定的な提案があるわけではない。あれもこれも、と提案されているために、全体的な印象がぼやけてしまうかもしれない。またこうした提案が、すべてイギリスを具体例として提示されているために、わかりにくい部分もある。読者の全員が既存のイギリスの社会保障制度に詳しいわけではない。その部分をこうしてああして、と言われてもピンとこない部分もあるだろう。これは、提案の具体性を増すためには仕方ないこととはいえ、本書の弱い部分ではある。

 が、細かい政策提案の背景を考えれば、そのすべてはいまの日本(またはそれ以外)にとっても示唆的なものとなる。これまで指摘したように、技術の進歩による不平等にはどう対応すべきか?  非正規労働の増大にはどう対応すべきか?  こうした問題に対する対応方針は、どれも日本にとっても有益だ。

 そこに登場する問題はすべて、日本社会にも大きく作用しているものだからだ。個人的には特に本書で、社会保障制度の強化を、児童手当を中心に行うよう提言している部分は、日本にも重要だろう。日本は少子化が問題だと言いつつ、出産も子育ても支援体制は決してよくない。貧困児童の問題も大きい。子供手当と称してたまに提供されるものは、数万円というスズメの涙ほどの一回限り。本書で提案されているように、それを中心として社会保障給付を組み直すくらいの取り組みがないと、少子化は解決せず、結果として年金問題も生産性の問題も数十年単位で見ればジリ貧にならざるを得ないのではないだろうか。

 もちろん、読者それぞれ重視したい点は違うだろう。でもどんな視点を採るにしても、本書には必ずそれに対応した分析と提言が含まれているはずだ。これが少しでも日本の将来的な社会保障と、不平等の改善につながることを期待したい。

山形 浩生

1618とはずがたり:2015/12/11(金) 11:04:56
怒りを示すことが苦手な俺は随分損してきた気がするが,怒りんぼだった弟も今のところそんなに出世している訳でも無い。昨夜テレビに出たようだが。

感じが悪い人は、なぜ感じが悪いか
プレジデントオンライン 2015年12月9日 09時15分 (2015年12月11日 10時51分 更新)
http://www.excite.co.jp/News/economy_clm/20151209/President_16767.html

■出世する人間は例外なく感じが悪い
「愛されるより、恐れられよ」。この真実は、マキャヴェリの時代から変わることがない。日本でもベストセラーとなった私の著書『「権力」を握る人の法則』では、どうすればあなたも権力を握ることができるのか、なぜ権力を握る人たちが必ずしもいい人とは限らないのかを解析している。
洋の東西を問わず、家庭や学校教育の問題は、「世の中はかくあるべき」、あるいは「人間はこうであるべき」という理想論を掲げるだけで、「実際の世の中の仕組み」「実世界における人間の正体」を教えていないことにある。
会社で出世する人間は例外なく感じが悪い。私は権力を握るための術として、日本のみなさんに3つの行いをご紹介したい。

1つ目は「怒りを示す」ことだ。ただし、1つ付け加えておきたい。「怒りを示す」と「本当に怒る」は違うということだ。本当に怒ってしまうと、戦略的に考え、反応する力がなくなってしまう。あくまで、怒るふりをすることが大切なのだ。大多数の人間は争いごとを避けたがるので、あなたが怒りを示した時点で引き下がるものだ。
もっとも、あなたが周囲の注目を集め、存在を認められる存在ならわざわざ怒る必要はない。あなたの訴えや主張を相手に真剣に考えさせたいときこそ怒りを示すのだ。

2つ目は「相手の話をさえぎる」ことだ。会話の最中に相手の話をさえぎるのは、まったく礼を失した行為であるが、それでも相手に自分の力を感じさせ、力関係を自分に有利に導けるのは間違いない。多くの研究者が会話分析と呼ばれる手法でこの点を実証している。いつさえぎるべきかについては、時と場合によるとしか言いようがないが、1つだけ確かなのは、決して誰にもあなたの話をさえぎらせてはならないということだ。話をさえぎられるということは、あなたに力がない証しだ。
3つ目は「前提条件に疑問をつける」こと。ビジネスの場を例に考えてみよう。多くの企業では、市場原理は当然の前提とされている。こうした前提に異議を唱えれば、力を誇示することができる。当社の競争戦略はこれでいいのか、成功の尺度はこれでいいのか。当社の本当のライバルはどこなのか――。それまで常識とされてきたことを疑ってかかり、大前提の再検討を促す人物は注意を引き、それが妥当であれば一目置かれるようになるのだ。

誰もが暗黙のうちに了解していることとして、権力者は怒り、他人の話をさえぎることが許され、規則を破ることや一般常識から外れることも許されるというものがある。ということは逆もまた真で、あなたが怒りを示し、他人の話をさえぎり、前提条件に疑問をつきつけて自分に都合のよい基準をつくり、社会的規範を破れば周囲はあなたを権力者と見なし、従うようになるということだ。

こういった上昇を目指す者にとって一番注意すべきは世間に出回るリーダーシップ本だ。ジャック・ウェルチにせよ、ルドルフ・ジュリアーニにせよ、「リーダーはかくあるべし」という世間の思い込みに基づき物語をつくり上げ、権力を握るまでの過程における駆け引きや汚い手口には触れていない。そしてジム・コリンズの「ビジョナリー・カンパニー」シリーズもマユツバだ。考えてみてほしい。『ビジョナリー・カンパニー2』の物語はすべて登場人物がCEOまで上り詰めた時点から始まっているではないか。私が知る限り、そういった裏の側面を正直に語ったリーダーというのは、1人も見たことがない。

1619とはずがたり:2015/12/11(金) 11:05:18
>>1618-1619
私はスタンフォード大学において、様々な国々から集まった学生を指導してきた。そして、組織内政治に暗すぎたために職を失った人、失脚した人たちを数多く見てきた。こういった人たちは、先ほども強調したように学校などで人間の本来の正体を教えられておらず、感覚が麻痺しているときにいきなり汚い手を使ってきた相手に驚かされ、対応できないのだ。そんな人たちのために、私は『「権力」を握る人の法則』について、本を書き下ろすことにしたのだ。

さて、こうした話をすると、必ず「そんなのが通用するのは米国だけだ」「西洋のやり方は日本(あるいはアジア)では使えない」といった反応が出てくる。実際に、私が中国で講演したときにも「あなたが言っていることは東洋の儒教社会では通じない」「権威や年功序列を重んじる文明では使えない」という声があった。日本と中国が大きく違うことは私も重々承知しているが、反応は確かに似ている。そこで、日本での実例を考えてみたい。

■本田宗一郎と盛田昭夫の共通点は
日本には「出る杭は打たれる」という言葉があると聞いたが、では本田宗一郎はどうか。生前の本田は、決して礼儀正しく誰にでも優しい人物ではなかった。ホンダを世界的自動車ブランドにすることのみに集中し、それを達成した。ソニーの盛田昭夫も同じだ。『「NO」と言える日本』という極めて刺激的で反米的ともいえる本を出してベストセラーにしながら、一方では時代を先取りして子供を米国に留学させ、自身も非常に目立つタイプだった。この2人を見ただけでも、日本においてさえ目立たない壁の花でいることは決して良策ではないことがよくわかる。
権力を握るうえでもう1つ欠かせないのが「弱いつながり」である。いつも家族や親友とばかり一緒にいると知り合いも重なり、いつも同じことを繰り返すばかりになるので発展がない。だからこそ、自分とは全く違う種類の人間や完全に別のサークルで動く人たちとつながっておくことにより、いざというときに必要な情報や連絡先を手にすることもあるのだ。
こういったつながりを手にしようと思うなら、誰一人として知り合いがいないような集まり、普段は関心がない分野の会合などに顔を出すことだ。日本には仕事の後に同僚と飲みに行く風習があると聞いているが、それを社外の人との飲みに切り替えるだけで大きく変わる。新しい出会いの中にこそ新しい学びやネットワークがあるのだ。
最後に、あなたが得意先で「感じが悪い権力者」と向かい合ったときのことを話しておきたい。相手との関係をつくることは大切だが、決して圧倒されてはならない。そもそも、なぜ相手のほうが力を持っていると思うのか? 先に触れたような振る舞いを相手がするからではないか? それなら、あなたのほうが力があるかのような言動をすればよいのだ。権限があるかのように振る舞っていれば、多くの場合その通りになる。英語でFake it'til you make it(できるまでできるふりをしろ)という諺があるが、間違いなく真実である。ぜひ試してみてほしい。
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Jeffrey Pfeffer(ジェフリー・フェファー)

専門は組織行動学。1979年よりスタンフォード大学で教鞭をとる。ハーバード大学ビジネススクール、ロンドン・ビジネススクールなどでも客員教授や講師を務め、世界中で経営幹部向けのセミナーも行っている。主な著書に『影響力のマネジメント』『「権力」を握る人の法則』などがある。
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タカ大丸=構成

1620とはずがたり:2015/12/11(金) 14:51:47
自己評価が高いけど自己評価に見合うべく努力してる人間もゐるぞ。

頭の悪い人ほど自己評価が高いのはなぜか
職場の摩訶不思議10篇
http://president.jp/articles/-/8654
PRESIDENT 2012年6月4日号
著者
心理学者・立正大学特任講師 内藤誼人 構成=大塚常好

そもそも人の自己評価は、客観評価よりも高くなるものです。「あなたの自動車の運転能力は?」「クラスであなたの人気は何位?」。そんな問いに、多くの人が自分は平均より上だと答えます。

この現象を心理学用語では「平均以上効果」といい、ほとんどの人に共通して見られます。主観と客観の評価のギャップはおよそ20%といわれています。周囲の評価よりも「若干高め」に見積もり、小さな優越感によって自分を下支えしているところがあります。

もちろん、人がプライドや自信を持つことは悪いことではありません。むしろ、持つべきです。問題は、自己評価が高すぎる場合。

自己礼賛は負のスパイラル

わかりやすい話、勉強の成績や仕事のパフォーマンスがいまひとつ(客観評価)なのに、なぜかいつでも「俺ってグレート」状態(自己評価)では、周囲は「何様のつもりだ」と不快に感じるでしょう。

もともと日本人は世界の中でも「平均以下効果」(過小評価)の人が多いのですが、女性よりも男性のほうに「平均以上」が目立ちます。

自己評価と他者評価には20%の誤差がある

なぜ自分を過大評価し、「俺様」状態と化すのか。その心理を読み解くと……まず、パフォーマンスがいまひとつという厳しい現実は動かせないから本人は内心面白くありません。そしてそんな不振が続けば滅入ってしまい、果ては自我崩壊に陥る可能性もある。それを防ぐためには自分が秀でた点を探し出しては、ことさら自画自賛したり虚勢を張ったりして、自尊心を上げ底するしかありません。もしくは、自分を正当化するため、周囲をこき下ろすしかない。

1621とはずがたり:2015/12/11(金) 14:52:01
>>1620-1621
極論してしまえば、頭の悪い人、能力のない人、嫌われる人ほど、平均以上効果のレベルをアップさせるのです(結果的に自己評価と客観評価の乖離が大きくなる)。

残念に思うのは、そうした超過大評価の人々がしばしば努力を怠ってしまうようになること。他人よりも優れているといった勝手な思い込みがあり、慢心がある。だから仕事でも何でも成長が止まってしまい、自己と周囲との評価にさらなるギャップが生じます。そして、それを補おうと再び平均以上効果を駆使しては自己礼賛に走る。負のスパイラルです。

会社にもこうした手合いが少なからずいます。部署でいえば、個人の業績が明確な営業部なら客観評価が何よりものを言いますが、評価基準があやふやな総務など事務系では超過大評価の人が多いかもしれません。

最近勢力を増している彼らの共通点のひとつが、コミュニケーションの総量が不足しているということ。1人っ子や、パソコン・ゲームなどにどっぷり浸かる人が増え、人と接して話す時間が激減しているのです。他人こそ自分の鏡。「自分は人からこう思われているのか」という気づきを得たり、自己評価をより客観評価に近づけたりするためには、生身の人とのやりとりが不可欠です。ある意味、デジタル偏重で1人殻に閉じこもる傾向が、超過大評価人間を量産しているのかもしれません。

一方、こうした超過大評価の人とは対照的に、努力を惜しまない人とはどんな人か。思うに、いわゆる「成功者」の人はこういうタイプと言えるでしょう。彼らは総じて過度な平均以上効果を持つことなく、逆に平均以下効果であることさえもある。常に謙虚で、腰が低い。自分に欠けた部分を冷静に見極め、研鑽を積みます。

エステサロンの常連客に案外、スリムな女性が多いのは、彼女たちが自分の現状を直視したうえで、修正点を洗い出し、さらに磨きをかけようとしているから。こうした飽くなき成長欲求を持つ人はフィットネスジムにも見られます。今回のテーマに即して言うなら、頭のいい人は自己評価が低いということになるでしょう。

とはいえ、例外もあります。ソフトバンク社長の孫正義さんは、20代前半、起業したばかりなのに数名の社員の前で、「将来は会社の規模を売り上げ100億円、500億円にする」と大風呂敷を広げたと言います。きっと、かなり自惚れが強く、過度な平均以上効果の持ち主だと思われます。しかし、彼は口だけではなく、猛勉強したことはつとに有名。努力をともなっていたからこそ、自己評価が異常なほどに高くても、逆にそれをバネに成功したのです。

心理学者・立正大学特任講師 内藤誼人
ビジネスシーンでの心理学の実践的な活用法に定評あり。『権力のつかみ方-人の心を虜にするJFK式「心理操作の魔術」』『なぜ、タモリさんは「人の懐」に入るのが上手いのか?』など著書多数。

1622とはずがたり:2015/12/11(金) 14:54:24
>>1618-1619と対比的で面白い。>>1618-1619の方が説得力あるかもw

なぜ「できる人」より「好かれる人」が出世するのか
なぜ一流のリーダーは『孫子』を愛読するのか?【6】
http://president.jp/articles/-/13856
PRESIDENT Online スペシャル /PRESIDENT BOOKS

『実践版 孫子の兵法』鈴木博毅著(プレジデント社)
最高峰の戦略書として世界に知られる孫子は、現代人にとって多くの名言を残した存在でもあります。「兵は拙速を重んじる」なども有名ですが、「はじめは処女のごとく」で始まる言葉も、私たちの教養的な知識といってよいでしょう。

この言葉は勿論、処女の演技を推奨するものではなく、相手の隙を作り上げる作戦の効果と重要性を指摘したものです。例えばダッシュするウサギのような突撃力を持っていても、相手があなたの攻撃を十二分に警戒し、守りを鉄壁のように固めていれば威力は半減してしまいます。逆に相手が無防備であるほど、あなたの攻撃の威力は倍増するのです。

「要するに、最初は処女のように振る舞って敵の油断を誘うことだ。そこを脱兎のごとき勢いで攻めたてれば、敵はどう頑張っても防ぎきることはできない」(引用『孫子・呉子』守屋洋・守屋淳?プレジデント社より)

この言葉を考える時、ビジネスパーソンへの教訓として「純粋に能力が高いことより、嫌われないことのほうが重要」とよく言われる理由がわかります。何らかの学歴や肩書、能力を鼻にかけて相手に嫌われるような態度を取れば、結果としてこちらの提案や商品、メッセージを相手が受け入れなくなるからです。

別の視点で考えるなら「嫌われないこと」「好かれること」自体、ビジネスで効果を発揮する一つの才能ともいえるでしょう。相手が心を開いてくれるなら、あなたの提案はより心に響きやすくなるのは当然のことです。上司であれば、部下があなたの指示を素直に聞き入れて行動する人間関係を作り上げておくことです。それは時に、優れた指示能力以上に必要な行為といってよいでしょう。

仕事にできる人は周囲の警戒や反発を避ける

優れたカウンセラーは、相談者の話しの中で相手への回答がすぐにわかっても、相手が話しを終えるまで静かに待つものです。理由は相手が心を開き「この人は自分の話しを親身に聞いてくれる人だ」と理解を得ることで、カウンセラーのアドバイスがよりスムーズに相手に浸透することになるからです。

社内でも、具体的な成果以外のところで目立ちすぎるのは考えものです。常に注目を浴びていれば、ライバル視する人たちや妬みがやがて生まれるからです。それが特に自分の上司や肩書で上の人たちも含まれると、問題はやっかいになります。自分を追い越す存在だと思われたら、回してくれるはずのチャンスもあなたに巡ってこなくなるからです。

1623とはずがたり:2015/12/11(金) 14:54:42
>>1622-1623

孫子を活用して仕事のできる人は、自分の武器を無用に振り回して周囲の警戒や反発を招くのではなく、感情の摩擦からくる損を正しく避けることができる人です。お互いを受け入れて、相手の長所を引出し、こちらを有効活用してもらう。足を引っ張らずに協力して勝利を目指すならば、チームの力を何倍にも高めることが可能です。逆に高飛車に出たり相手の感情をむやみに逆なでする人は、本来なかった障害を、自分の前にいくつも持ってきてしまう損な道を歩むことになります。

「打つ手打つ手すべてが勝利に結びつき、万に一つの失敗もない。なぜなら、戦う前から負けている相手を敵として戦うからだ」(引用『孫子・呉子』守屋洋・守屋淳?プレジデント社より)

「勝つ」とは相手を打ち負かすだけでなく、好意的に受け入れてもらうことも意味します。敵意や警戒ではなく、周囲があなたに親近感と好意を抱いていればそれだけで仕事の成功に大きく近づきます。多くの仕事を成し遂げて社会的に高い地位にある人達が、一様に丁寧で腰が低いのは、幾多の経験から成功する要素を持ち合わせて発揮しているからだといえるでしょう。あなたのプランなら必ず受け入れ実行すると周囲が考えているならば、打つ手打つ手は必ず勝利に結びつきます。お客様であれば、あなたの提案する商品なら間違いないと喜んで購入頂ける関係こそ、孫子の兵法が真に目指すところなのです。

常に目に見えない力が勝者を支えている

実は、相手の油断を誘う「はじめは処女のごとく」の言葉と、有名な「兵は拙速を重んじる」は効果としては同じものを求めています。相手にこちらの攻撃への準備・防備をさせないということです。ビジネスにおいて速さというのは、競合他社が準備を整える前に勝つことを意味します。

概算見積りの提出が、常に他社より早ければ「検討されないで負ける」ことはありえず、しかも他社の提案を見る前に受注できる可能性も高まります。早い見積りを評価する顧客は、納期の早さや手間のかからなさを喜ぶ傾向があるからです。

企業変革において、新しいリーダーの取るべき道は2つあります。一つは、どんなことが始まるかと警戒している社員をまず安心させること。もう一つは、大きな方向転換を阻止しようとする古株の社員が抵抗の態勢を固める前に、断固とした方針を示して行動を開始することです。さらにリーダーは、社員が驚いている期間に一定以上の成果を生み出すことができれば最高です。自然と新リーダーに、皆が従う流れが形成されるからです。

孫子の指摘を振り返ると、何か成果を上げるためにとにかく「能力が高い」だけではなく、隠された別の道があることがわかります。テストの点数や資格取得などと違い、人に好かれて嫌われない能力(社交的な人柄や優れた人間性)や、ずば抜けて速い実行力などは測ることや点数化が難しい能力です。しかしそのような能力こそ、実社会での勝者を支えている力なのです。

不思議にスルスルと出世階段を登っていける人、ふわふわした雰囲気で仕事をしているのになぜか顧客に好かれて信頼が厚く、大口の売り上げをいつも獲得している人など。

一見なんの脅威とも思えない能力が、実は自信満々の人間にはできない成功を成し遂げる力となる。孫子の指摘は、勝利への道はいくつも分かれており、正解は一つと思い込む視野の狭さこそが、勝者になれず負け続ける側の隠れた共通項だと示唆しているのです。

1624とはずがたり:2015/12/14(月) 17:06:30
2015年 12月 7日 20:28 JST
アングル:不正見抜けなかった東芝の監査法人、業務停止の可能性も
http://jp.reuters.com/article/analysis-toshiba-shinnihon-idJPKBN0TQ17J20151207?rpc=188&sp=true

[東京 7日 ロイター] - 東芝(6502.T)の不正会計問題で、証券取引等監視委員会が過去最高額の課徴金勧告を出したことで、焦点は東芝の監査を担当してきた新日本監査法人への金融庁の処分に移った。

金融庁と同庁傘下の公認会計士・監査審査会が同法人の調査を進めているが、長年にわたって不正を見抜けなかった責任は重いとして、業務停止命令など厳しい処分が出る可能性もある。

<新日本監査法人への厳しい視線>

証券監視委は7日、東芝に73億7350万円の課徴金を科すよう金融庁に勧告した。開示検査の事案では2008年のIHI(7013.T)への課徴金額約16億円が最高額だったが、東芝への課徴金額は4倍超に膨らんだ。不正会計の間、東芝が虚偽の財務情報に基づいて社債を大量発行していたことが大きな要因だ。

ただ、日本を代表する名門企業の不正会計の責任を追及する声は、東芝の経営陣だけでなく、同社の監査を長年担当してきた新日本監査法人にも向かっている。

「新日本監査法人は何をしていたのか。不正リスク対応基準を作ったのは、何のためだったのか」――。かつて金融庁の企業会計審議会で「不正リスク対応基準」の作成に携わった関係者の1人はこう嘆く。

オリンパス(7733.T)の粉飾決算事件を契機として、2013年に策定された不正リスク対応基準は、企業経営者などの意図的な行為によって生じる財務諸表の重要な虚偽表示のリスクに対して、監査手続きがどうあるべきか定めたものだ。

この基準には、会計監査人は「職業的専門家としての懐疑心」を保持し、リスクをかぎ取った場合には厳しく証拠を収集しなければならないと強調されている。

会計の専門家は、新日本監査法人の担当者が「職業的懐疑心」をもって、東芝の監査にあたっていたのかどうかに着目している。

<業務停止命令も視野>

金融庁と公認会計士・監査審査会は現在、急ピッチで検証作業にあたっている。関係筋によると、金融庁は年内をめどに、新日本監査法人と、同法人で東芝を担当していた業務執行社員への処分を決める方針だ。

金融庁のある幹部は「新日本監査法人の責任は重い」と話す。四大監査法人の一角で、しかもオリンパス事件で業務改善命令を受けたこともある新日本監査法人。

長年にわたって東芝の不正を見抜けなかった事実は重いとして、業務改善命令より重い業務停止命令も視野に入れて調査を進めているもようだ。

ただ、金融庁内には、不正の根源は東芝側にあるとして、監査法人に厳しい処分を出すことの弊害を懸念する声もある。

カネボウの粉飾決算で旧中央青山監査法人に2カ月間の業務停止命令を下した際、顧客企業が監査を受けられずに「監査難民」が大量発生し、資本市場が混乱した苦い経験があるからだ。

業務停止命令による監査難民発生の弊害を防ぐために、今回は業務改善命令と課徴金納付命令が同時に出される可能性もある。金融庁は監査法人への課徴金制度を2008年に導入。これまで適用事例はないが、課徴金納付命令の趣旨は当該監査法人に経済的ダメージを与え、再発防止に導くことにある。

<新日本への処分を信頼回復の一歩に>

「監査法人に対する信頼は、まさに瀬戸際の状況」――。金融庁が10月に立ち上げた会計監査のあり方を議論する非公開の有識者会議。公開された議事要旨では、毎回、出席者から厳しい意見が出されていることが分かる。出席者は監査への信頼が揺らぐ今日の状況を厳しくとらえ、監査法人に対するガバナンス・コードの必要性さえも議論に上っている。

金融庁は、会計監査への不信の高まりを重く受け止め、東芝や新日本監査法人の処分を決める前に同会議を立ち上げた。幹部のひとりは、新日本監査法人に厳しい処分を出すことで、監査の信頼回復への一歩につなげたいとしている。

(和田崇彦 編集:田巻一彦)

1626名無しさん:2015/12/19(土) 16:47:52
http://www.jiji.com/jc/c?g=eco&k=2015121900153&j4
新日本を3カ月業務停止へ=課徴金20億円も-東芝不正で金融庁

 東芝の不正会計問題に関し、金融庁が同社の監査を担当していた新日本監査法人に対し、新規業務の停止や課徴金の支払いを命じる方向で調整に入ったことが19日分かった。一部業務停止の期間は3カ月間を、課徴金額は東芝からの監査報酬2年分に相当する20億円を軸にそれぞれ検討している。

 新日本は国内最大手の監査法人だが、2012年にもオリンパスの粉飾決算事件で業務改善命令を受けている。金融庁は監査業務の不備や企業統治体制を厳しくただす必要があると判断したもようだ。
 週明けに事実認定作業を終え、22日にも一連の行政処分を科す。監査法人への課徴金処分は08年の公認会計士法改正で導入され、適用されれば初めてとなる。(2015/12/19-12:08)

1627とはずがたり:2015/12/21(月) 09:37:10
「世界競争力ランキング」日本6位 韓国は「教育の質低い」、中国は「1位は市場規模だけ」
https://zuuonline.com/archives/85740

 世界経済フォーラムによる「競争力ランキング」が発表され、日本が総合順位で昨年と同じく6位であることが分かった。1位、2位は昨年と同じくスイス、シンガポール。近隣国では韓国が26位、中国は28位と振るわなかった。ランキングは世界経済フォーラムが毎年まとめているもので、「競争力」「市場規模」「R&D(研究開発)への投資」などの項目ごとに順位も出ている。140カ国あるうちの上位国・地域のランキングと、日中韓の寸評を確認してみよう。

ランキングトップ20 1位はやはりスイス
 1位 スイス
 2位 シンガポール
 3位 米国
 4位 ドイツ
 5位 オランダ
 6位 日本
 7位 香港
 8位 フィンランド
 9位 スウェーデン
 10位 英国

 11位 ノルウェー
 12位 デンマーク
 13位 カナダ
 14位 カタール
 15位 台湾
 16位 ニュージーランド
 17位 UAE
 17位 マレーシア
 19位 ベルギー
 20位 ルクセンブルク

日本 6位 「雇用と解雇の柔軟性」と「女性雇用者数」はいまだ低い
 素晴らしいインフラと世界一健全な労働力に加え、平均寿命80歳以上という長寿国、日本。今年の「競争率ランキング」ではレーダーチャート上に示された12つの指標中、半分以上の項目で向上が見られた。消費増税によってそれなりのインフレが起き、国債などの財務状況が悪い中でも、特に「マクロ経済環境(121位)」が伸びているのが分かる。

 「競争力」を発揮することが難しいとされる分野でも成果をあげ、「ユニークな製品と生産工程の導入」「世界最高の地元供給業者からの恩恵」では1位。「技術力溢れるビジネス」「国際流通の統制」では2位を獲得。

 同様に「R&D(研究開発)への投資(2位)」「科学者と技術者の知識の高さ(3位)」「質の高い調査機関(7位)」が、「革命性の高い環境(5位)」に貢献しているという評価を受けている。また「健康と初等教育」では4位に」という結果に。

 開発面では「生産物市場」と「経済市場」が過去7年間緩やかな一定ペースで向上し、今年は11位と19位にランクアップ。「組織」も順調に上昇し13位に落ち着いた。「市場規模(4位)」も安定、「新しいテクノロジーの採用(13位)」には積極的で、「スマートフォンの普及率(5位)」では世界最大国の一つに数えられいる。

 今年初めてトップ10から圏外落ちし、他国に遅れをとる結果となった「人的資本(21位)」の強化が今後の課題となるだろう。「労働市場の柔軟性」は全体的に改善され15位までのぼりつめたが、「雇用と解雇の柔軟性(123位)」と「女性雇用者数(83位)」は未だ評価が低い。

韓国 26位 先進国と比べて「教育の質」が低い
 財産権や法律制度などが改善されたことにより、ほぼ10年ぶりに韓国最大の弱点である「組織」に向上が見られる。先進国の中ではまだまだ遅れをとっているが、昨年の82位から69位に大幅ランクアップ。

 「生産物市場」は33位から26位に、「国内競争」は42位から34位に上昇。「マクロ経済環境」では日本より大きく先を行きトップ5に食い込んでいるほか、「健全なインフラ(13位)」も評価されており、「エンロールメント率」では首位を獲得。

 しかし「革命性の可能性(19位)」は年々落ち込んでおり、「経済市場(87位)」の伸びも失速している。またほかの先進国と比べて「教育の質(35位)」が低く、「労働市場の柔軟性(121位)」にも著しく欠ける。日本同様「女性雇用者数(91位)」が上昇しておらず、「人的資本」の強化が求められている。

中国 28位 唯一首位に輝いたのは「市場規模」のみ
 昨年と変わらず28位をキープした中国。パフォーマンスという点ではここ6年間目立った変化が見られない。生産コストの増加、高齢化社会、そして過去30年間にわたる巨額資本投資の利益減少など、数々の問題に直面している。

 レーダーグラフを見る限り改善すべき点が山積みのように思えるが、特に「信頼性と自信(76位)」を強化しつつ「経済市場の発展(54位)」に力を入れ、「新しいテクノロジーの採用(79位)」に前向きな姿勢で取り組んでいくことが、新たな成長につながるのではないかと予測される。韓国よりも更に「教育の質(初等44位、高等68位)」が低いという点も重要視されるべきである。

 中国が唯一首位に輝いたのは「市場規模」だ。また「マクロ経済環境」も8位と、共に日本より上位にランクインした。(ZUU online 編集部)

1628とはずがたり:2015/12/23(水) 09:33:48
最新!これが「金持ち企業」トップ500社だ
1位はファナック、財務健全な企業とは?
http://toyokeizai.net/articles/-/96373?utm_source=yahoo&utm_medium=http&utm_campaign=link_back&utm_content=related
東洋経済オンライン編集部 2015年12月15日

企業の財務健全性を示す指標がネットキャッシュである。現預金と短期保有の有価証券の合計額から、有利子負債を差し引いた額だ。企業の実質的な手元資金であり、これが多いと財務的な安全性が高いとされ、不況に対する抵抗力が高いともいえる。

東洋経済オンラインは上場企業の直近におけるネットキャッシュを割り出し、トップ500社をランキングにした。各社の財務諸表に記された各項目からネットキャッシュを割り出し、実質的な負債に当たる前受金を除外して計算している。上位10社については昨年同時期からの増減や順位変動なども示した。

今年も1位はファナック。工作機械用NC(数値制御)装置で世界首位のメーカーで、産業用ロボットなどでも強い超優良企業として名高い。2015年3月期の売上高7297億円に対し、直近の現預金保有額は7906億円、短期保有有価証券は1450億円も抱えている。ネットキャッシュは9356億円で有利子負債はゼロだ。本業の儲けに加えて、株価上昇による短期有価証券の値上がりも寄与して、この1年で552億円も増加している。

経営不振が伝えられたソニーも財務は強固

2位は任天堂。言わずと知れたゲーム機ハード、ソフトで総合首位の企業だ。任天堂は家庭用ゲーム機「WiiU」の不振でここ数年は苦戦が伝えられたものの、直近のネットキャッシュは8796億円と、昨年ランキング時点から814億円も増えている。スマホ時代に向けた収益モデルの構築に手こずっているといわれるものの、財務上は極めて健全で2012年3月期や2014年3月期のような数百億円レベルの赤字が数年続いても、財務上はびくともしない。

3位には信越化学工業、4位にはソニー、5位には富士重工業などが続いた。ソニーは一時の経営不振が騒がれ、1.1兆円もの有利子負債を抱えているものの、それをはるかに上回る現預金や短期有価保有証券を持っており、財務的な基盤は強い。

「金持ち企業」トップ200社【2014年版】
1位はファナック、2位に任天堂
http://toyokeizai.net/articles/-/56952?page=2
東洋経済オンライン編集部

最新! 「借金が多い」500社ランキング
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151218-00097251-toyo-bus_all
東洋経済オンライン 12月18日(金)6時0分配信

 米国の連邦準備制度理事会(FRB)が、9年半ぶりの利上げを決めた。2008年秋のリーマンショックを受けて、約7年間にわたって続いてきた事実上のゼロ金利政策は解除される。

 異常な低金利環境において有利だったのはおカネの借り手だ。大胆な投資を打っていくために巨額の資金を借り入れても、返済における利息は相対的に小さく済んだが、今後は見直しを迫られるかもしれない。

■ ソフトバンクは前年比2兆円もマイナスが拡大

 各社の財務諸表に記された各項目からネットキャッシュを割り出し、実質的な負債に当たる前受金を除外して計算している。自動車金融(ローン)事業を持っているため、ネットキャッシュを計算すると見た目のマイナスが大きく膨らみ、実態を正確に示せないトヨタ自動車、ホンダ、日産自動車などの完成車メーカーについては、今回はランキング対象外とした。上位10社については昨年からの増減額なども示した。

 1位は、ソフトバンクグループだ。一時は借金ゼロを目指したが、2013年に米国の携帯会社スプリントを1.8兆円で買収するなど、攻めの姿勢に転じ、積みあがった有利子負債は10.5兆円。現預金が2.2兆円あるもののネットキャッシュで見ると8.3兆円のマイナスだ。そのほか上位には総合商社やインフラ系、不動産、素材メーカーなどいわゆる重厚長大な産業の姿が目立つ。

 ネットキャッシュのマイナスが大きいと財務の安全性が高くないといえるかもしれないが、重厚長大な産業においては、積極的な事業の拡大に大型投資が欠かせないことも見て取れる。逆に「無借金」だったり借り入れの額が少ないからといって、手放しで褒めていいのかというと経営の場合はそれも正解でもない。何事も適度なバランスが求められるということかもしれない。

本ランキングはトップ200社ながら昨年同時期にも2014年版を公開している。1年前と順位が変動しているケースも多いので、併せてご覧いただきたい(2014年版のランキングデータはこちら)

東洋経済オンライン編集部

1629とはずがたり:2015/12/31(木) 01:01:33
エルデシュナンバーみたいなもんかw
俺も持ってる筈。

全ての人や物事は6ステップ以内で繋がっている。「六次の隔たり」に大きく貢献したケヴィン・ベーコン
http://karapaia.livedoor.biz/archives/52208053.html
2015年12月28日

1630とはずがたり:2016/01/04(月) 21:35:42
知らんなぁ。。

ジャック・アタリ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%AA
生誕 1943年11月1日(72歳)

ジャック・アタリ(仏: Jacques Attali、1943年11月1日 - )は、フランスの経済学者、思想家、作家。アルジェリアの首都アルジェ出身のユダヤ系フランス人。
概略
パリ政治学院卒業。経済学国家博士。初代欧州復興開発銀行総裁。フランソワ・ミッテランの側近中の側近で81年から91年まで大統領補佐官。91年から93年まで初代欧州復興開発銀行総裁。指揮者としてオーケストラを指揮したこともある。1998年に発展途上国支援のNGOを創設。
著書『時間の歴史』は引用と示さずに他者の著作そのままを写した部分が指摘され、剽窃問題を起こした。

“欧州の頭脳”ジャック・アタリが世界のリスクと新秩序を大予言!
http://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E2%80%9C%E6%AC%A7%E5%B7%9E%E3%81%AE%E9%A0%AD%E8%84%B3%E2%80%9D%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%81%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%81%A8%E6%96%B0%E7%A7%A9%E5%BA%8F%E3%82%92%E5%A4%A7%E4%BA%88%E8%A8%80%EF%BC%81/ar-AAgjgR4#page=2
ダイヤモンド・オンライン編集部
11 時間前

“欧州の頭脳”ジャック・アタリが世界のリスクと新秩序を大予言!: ジャック・アタリ(Jacques Attali) 経済学者、作家、思想家。1943年生まれ。アルジェリア出身。パリ政治学院卒業。経済学国家博士。仏ミッテラン大統領の側近として1981年〜91年大統領補佐官、91年〜93年初代欧州復興開発銀行総裁を歴任。主な著書に『カニバリスムの秩序──生とは何か/死とは何か』『ヨーロッパ──未来の選択』『21世紀の歴史――未来の人類から見た世界』『まぼろしのインターネット』『金融危機後の世界』など。その知見の深さから「欧州最高の知性」と称される

凋落する米国、難民問題やテロに揺れる欧州、台頭する中国、そして経済再生への試行錯誤を続ける日本――。混迷する世界はどこへ向かうのか。「ヨーロッパ最高の知性」と称される経済学者、ジャック・アタリ氏は、これまでも、ソ連崩壊、金融バブル、新たなテロの脅威、インターネットによる世界変化などを予測し、見事に的中させてきた。アタリ氏が考える足もとの世界のリスク、そして来るべき新たな世界秩序とはどんなものか。去る2015年12月、株式会社ワークスアプリケーションズが開催した日本最大級のビジネスフォーラム「COMPANY Forum 2015」に参加したアタリ氏の基調講演と氏への単独インタビューの内容を基にお伝えする。(構成/ダイヤモンド・オンライン 小尾拓也)

2016年はどうなる?希望とリスクに満ちた世界情勢
 21世紀の世界は希望とリスクに満ちていると、私は考えます。これから数十年先にかけて、世界の姿はどうなっていくのでしょうか。

 まず注目すべきは、人口という視点です。たとえば2050年には、世界の人口は大災害が起こらない限り、現在より25億人増加して95億人になる見通しです。先進国を中心に人の寿命は今より8〜10歳伸びる一方、出生率は低下し、人類は高齢化していきます。人類の3分の2は都市部で生活するようになり、各都市の人口は2倍に膨れ上がる。現在でも世界の人口のうち2億人が、自分が生まれた国とは違う国に住んでいますが、気候変動の影響などで大きな人口移動が起き、10億人は自分が生まれた国と違う国に住んでいることでしょう。

1631とはずがたり:2016/01/04(月) 21:35:55

 次に国という視点です。2050年には人口が増えているところも減っているところもあります。米国は8000万人、フランスは900万人増える一方で、ドイツは1000万人、ロシアでは3000万人ほど人口が減少するでしょう。日本の人口は1億人を切ります。それに対して、アフリカの人口は10億人から25億人へ急増し、アフリカの国々が世界の「希望」となるでしょう。

 こうした状態は、脅威とも言えます。人口の増加で消費されるエネルギーや農産物、食料などの生産を増やさなければならない一方、気候変動の影響などにより、資源はどんどん希少になっていくからです。世界経済は、成長を続けることができるでしょうか。

 そんな中でも、希望はあります。世界人口の増加は、潜在成長率の高さの表れでもあります。新たなテクノロジーの進化によって、エネルギーの消費が節約され、医療も進歩していく。ITやデジタルエコノミー、ナノテク、エネルギー、ニューサイエンスの発達などを通じて、テクノロジーが人口増加の影響をコントロールすることができるようになります。すでにこうした将来有望なテクノロジーの下地は、20〜30年前から培われており、世界中で低金利が続いていることから、テクノロジーへの投資インフラが発達を続けると見られ、今後も世界は人口に見合った成長が十分可能だと思います。

 一方、足元の世界情勢に目を転じると、大きなリスクが見えています。先月フランスで起きたパリ同時多発テロ事件には、世界中の人々が危機感を持ったことでしょう。フランスばかりでなく、ベルギー、ナイジェリア、シリアなど、あちこちの国で暴動や紛争が起きています。

 思えば、現在の世界の状況は、20世紀初頭に酷似していると言えないでしょうか。当時は、欧州にも日本にも富が溢れており、各国で電気、石油、潜水艦、ラジオなどの新しい産業が台頭していました。何より大きかったのが、民主主義や経済のグローバル化です。まさに「世界がつながっている」という雰囲気がありました。

 しかし、米国で発生した恐慌が発端となり、その後の不況の中で、世界には保護主義やニヒリズムが蔓延しました。そうした中で、ヒトラー、ムッソリーニ、スターリンといった悪だくみをする独裁者が台頭し、第二次世界大戦へとつながって行ったのです。

市場の暴走に保護主義、テロ――。20世紀初頭と酷似する世界のリスク
 翻って、21世紀初頭の現代でも、グローバルな市場経済や保護主義の台頭が起きています。現在の世界は技術発展によって、よいことも悪いことも連続して起きる状態にあり、今まさにその岐路が訪れている。戦後の世界ではずっと平和主義・楽観主義が続いてきましたが、ここに来て金融危機やテロが立て続けに起きていることの意味を、考えなくてはいけない。ひょっとしたら、世界には20世紀初頭よりももっと大きな危機が訪れるかもしれません。

 世界情勢を読み解く上でキーワードとなるのが、市場経済と民主主義です。今、世界の多くの国は市場経済へと進んでいますが、市場経済が発達した国では中産階級が生まれ、その後必ず民主化が始まります。市場経済と民主主義は密接につながっているのです。かつてのフランスや日本がそうだったように、中国も同じ道を辿るでしょう。

 しかし、そもそも市場経済と民主主義は違う性質のものであり、また完璧ではありません。市場経済がグローバルで広がって行くものなのに対して、民主主義はローカルなものです。そこにリスクがあります。

 1つ目のリスクは、市場経済が発達するとそれが民主主義の境界線を越えて拡大し、時には行き過ぎた競争が起きて、法による統治ができなくなることです。今世界では、グローバルな資産法も裁判所もないのに、人類史上かつてないほど自由経済が叫ばれ、競争が過熱しています。

 そうした中、懸念されるのは世界が「ソマリア化」することです。ソマリアは20年間も無政府状態が続き、マフィア、犯罪、貧困、麻薬などが蔓延している。国境を越えるグローバル市場主義が国家の手に負えなくなると、世界は無秩序なソマリアのようになってしまうリスクがあります。

 もう1つのリスクは、市場経済と民主主義が発達するときは、個人が自由を欲しがるときでもあるということです。その気持ちがあまりにも過激化すると、人々が「自分のやりたいことをいつでも自由にできる」と思い込むようになり、不平等、不満、ナルシズム、不誠実などが蔓延し、時としてそれらはファンダメンタリズム(原理主義)やテロリズムにつながる脅威となります。

1632とはずがたり:2016/01/04(月) 21:36:34

 本来なら、こうした動きを監視する世界の警察やグローバル政府のような役割も必要になるはずですが、そうしたものは現在ありません。

 先に述べたように、20世紀初頭の世界と今日では、こうした構造の中で、似たような状況が起きています。戦前には、各国に民主主義ではなく全体主義による政権運営を行う政府が現れ、グローバル化の脅威に保護主義で対抗し、無秩序な状態に対処しようとしました。いわば、世界中が短期的な視野に陥り、目先の利益ばかりを追っていたのです。

次の金融危機と戦争は間近?現在は「米帝国衰退」の最終段階か
 市場経済の暴走という側面では、リーマンショック前後の世界も同じです。2008年に発生したリーマンショックは、金融機関がサブプライムのようなジャンクポンドで市場からお金を吸い上げ、そのモニタリングを誰もできなかったために発生しました。その結果、多くの金融機関が破綻して公的資金を注入され、国家の債務を大量に増やしてしまった。

 結果的に、この金融危機は各国の政府に色々な権力を与えてしまったとも言えます。政府が国家財政が逼迫した責任を中央銀行に押し付け、金融緩和を続けさせているせいで、世界の成長率は低下しています。また、ヘッジファンドをはじめ、市場がひたすら利益確保に走り、誰もそれを止めることができない背景にも、金融緩和策が世界に大量のマネーを供給している影響があります。

 こうした状況の中、私は次の金融危機のリスクはすぐそこまで来ていると思います。世界には、GDPの100%を超える債務を持つ国もありますが、これ以上どうやって債務を増やせるというのか。いまに国民は破綻するでしょう。一方で、保護主義による火種も、中東、アフリカ、ウクライナ、そして日中間などに燻っています。それらが戦争につながるリスクも否定はできません。

 私は著書『21世紀の歴史』の中で、世界の秩序は今後5段階を同時に、あるいは順番に辿ることになると分析しました。第一段階はこれまで世界の秩序を司って来た米国のパワーが相対的に衰退する局面、第二段階は力を持つ10〜20ヵ国が共同で世界秩序をつくろうと模索する局面、第三段階は国家の枠を越えて市場の力が世界をリードする局面、第四段階は大きな混乱や戦争などの「超紛争」が起きる局面、そして第五段階は世界の協力と調和による「超民主主義」が登場する局面です。現在の世界の状況は、米国の相対的な衰退が起きている第一段階の終わりの部分にあり、米国の警察力や法治が困難になったことにより、世界に無秩序が拡散している状態だと見ています。

 これから世界がグローバルでバランスを保つために、何ができるのか。それは市場経済に関する色々なルールをつくり、世界的な法の支配を行うことです。我々にとって大切なことは、次世代を生きる子どもたちの幸せにも思いを馳せるということです。自分の子どもだけでなく、他人の子どもの将来も真剣に考えなくてはいけない。利己的ではなく、「利他的」になることこそが求められているのです。

1633とはずがたり:2016/01/04(月) 21:36:49
>>1630-1633
日本人が持つ「利他主義」の精神は新しい世界の秩序をリードする
 それでは最後に、世界の主要国に関して、直近の見通しをお伝えしておきます。前述のように、相対的な衰退が起きている米国において興味深いのが、先日利上げを表明したFOMCがこれからどうするのか、ということです。米国の中央銀行は世界の中央銀行でもあるという立場から、長らく世界経済に大きな影響を与える利上げは行ってきませんでした。しかし、今は「米国の中央銀行」という視点に立ち戻って利上げを行なう状況になっている。世界経済への影響が、とても見えにくい状況にあると思います。

 一方欧州は、難民問題やユーロ危機もあり、EU自体も構造問題を抱えている状況です。その意味でこれからの欧州は、世界が模索している市場経済の統治に関する実験場とも言えます。ただ、欧州ではリーマンショック後の改革により、金融機関のモニタリングの一元化、ESM(欧州安定メカニズム)の発足による潤沢な資金供給体制の確立など、多くの進歩がありました。ギリシャ問題も世界中から不安視されましたが、そもそもギリシャのGDPは欧州全体の1.5%程度に過ぎないため、影響は大きくないと思います。

 新興国については、長期か短期かで見方が変わってきますが、中国は向こう3年ほどの間、想像以上に経済が停滞するのではないかと思います。現在の実質成長率も、おそらく3〜4%程度ではないでしょうか。

 そして日本についてですが、私は日本人が持つ「利他主義」のイデオロギーに注目しており、今後グローバルにおいて大きなリーダーシップになっていくと思います。これは、私が予言した世界秩序の第五段階における「超民主主義」のイデオロギーとまさしく同じもの。日本の学者や政治家がもっとそうしたイデオロギーを発信し、日本の社会が利他主義のプロパガンダになってほしいと願っています。

1634とはずがたり:2016/01/29(金) 22:34:22
えらい楽観的だなぁ(;´Д`)

2016年 01月 6日 18:54 JST
視点:動き出すマネー、景気好循環まであと一歩=伊藤元重氏
http://jp.reuters.com/article/view-motoshige-itoh-idJPKBN0UK09R20160106?sp=true

1635とはずがたり:2016/02/17(水) 19:33:30
事業所得と不動産所得が俺には無いな。。貯蓄比率もそんなに高くないかも。割と消費に対して欲求はないんだけど。

2016年1月20日(水)
「普通の年収」の人こそ、富裕層の本流
http://president.jp/articles/-/17143
プレジデント・マネーNEWS【51】
行政書士、不動産投資顧問 金森重樹=文

富裕層の本流は「60代」。若い時代は貧乏だった

 最近、僕のところには「富裕層になるには質素倹約に励むよりも、収入を上げることを重視して稼いだほうが早いのではないのか」という趣旨の意見が届くようになりました。

 もちろん収入と支出の差が運用の原資になるわけですから、収入を上げるか、支出を下げるか、もしくはその両方かの3パターンしかないわけです。

 では、富裕層になった人は収入を上げるほうを重視して短期間で富裕層になったのでしょうか。答えは、否であります。実際には、圧倒的多数の人は時間をかけて富裕層になっています。

 なぜ、そう言えるのか。表の数字を見てください。

 メリルリンチ・グローバル・ウエルスマネジメントとキャップジェミニによるワールド・ウエルス・レポート2011は、日本人の富裕層人口の年齢別内訳は以下の通りに報告しています。

 (このレポートでは、富裕層とは主な居住用不動産、収集品、消費財、および耐久消費財を除き、100万米ドル以上(現在のレートで約1億2000万円以上)の投資可能資産を所有する資産家として定義されています)
https://www.pt.capgemini.com/resource-file-access/resource/pdf/World_Wealth_Report_2011_-_Japanese_Version.pdf

 つまり、富裕層の93%が46歳以上です。テレビなどでは芸能人と交際するような、高収入のヒルズ族など若き青年実業家などがしばしば取り上げられますが、45歳以下の富裕層は8%しかいません。

 一般的なイメージと違って富裕層の本流は60歳代の人たちなのです。

 話が逸れますが、富裕層と結婚することを狙っている女性の方がいらっしゃったら、このことはよく理解しておく必要があります。たいていの富裕層は、結婚適齢期では貧乏です。

 仮に将来富裕層になる人を探すのであれば、後ほど出てきますがひとつの目安としてその人の年収貯蓄比率を見ていく必要があります。それのほうが、ブランド物に身を包んでいるとか、靴がよく磨かれているとか、財布は長財布を使っているとか、いい時計をしているとか、フェラーリに乗っているとかを指標にするよりよほど資産形成過程を示しているので、正確です。

 お金持ちそうな格好をして、お金持ちそうなライフスタイルを送っている人がお金持ちとは限りません。浪費家と富裕層を混同しないで相手の実力を見極める必要があります。

 え? そんなことはよく分かっているって? でも、どれだけ多くの世の中の有名アイドル・タレント・女優がこれで失敗していることか。芸能通でなくても2人や3人の名前はすらすら出てくるのではないでしょうか。

 大学を卒業する22歳から働き始めたとして、仮に55歳で富裕層になるとすればだいたい35年という歳月をかけて金融資産1億円に到達するということです。それでも、富裕層としては若年の部類に入るでしょう。

 堅実な中高年富裕層が20、30代にしたことは?

 繰り返しになりますが、富裕層の「本流」は、いささかチャラい青年実業家ではなく、ゆっくりと時間をかけて資産を形成してきた堅実な中高年の人々です。

 この事実から言えること。それは、いたずらに即効性を求めても資産形成は上手くいかない、ということでしょう。働いている途中で収入のアップダウンがあったとしても「時間」を味方につけて確実な資産を築き上げていく方法こそが再現性が高い富裕層(金融資産1億円超)になる方法です。

1636とはずがたり:2016/02/17(水) 19:34:07
>>1635-1636
下記は、私が考えた富裕層になるのに「必要なこと」と「必要でないこと」です。

【必要なこと】
(1)必要最低限の生活費以外の全可処分所得を運用にまわすこと
(2)4つの財布(給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得)を持つこと
(3)焦らず時間をかけること

【必要でないこと】
(1)特殊な人脈
(2)芸能、プロスポーツなどの特殊な才能
(3)高収入であること

「必要でないこと」は次回以降に触れることとして、「必要なこと」でとりわけ大事なのは(1)です。そして実行する上でハードルが高いのも(1)です。必要最低限の生活費以外の「全可処分所得」を運用にまわすことの重要性についてはいくら強調しても強調しすぎることがないほどです。へんに見栄をはらず、身の丈に合ったシンプルライフを粛々と送ることが富裕層への道と言えます。

とはいえ、「全可処分所得」を運用にまわすといっても、どれくらいが目安になるのでしょうか。

次に紹介するのは、金融広報中央委員会の「暮らしと金融なんでもデータ」に出ている、勤労者世帯の世帯主年齢別貯蓄残高、貯蓄年収比(2012年)です(https://www.shiruporuto.jp/finance/tokei/stat/stat002.html・表参照)。

年代が上がるにつれて年収に対する貯蓄の比率も上がる傾向にあり、70歳以上の貯蓄年収比が最も高くなっています(360%)。よく言われる「日本人は死ぬときが一番金持ち」という言葉を裏付ける内容になっています。

「普通の年収の人」こそが富裕層の本流

公務員でありながら現在の時価で100億円超の資産を築いた本多静六先生は『私の財産告白』で通常収入の25%、臨時収入の100%の貯蓄を25歳から40歳まで15年間続け、その後、貯蓄を原資にした運用に入ったら利息からの収入が本業を超えた、と書かれています。

年収の25%の貯金を仮に20年つづければ貯蓄年収比率は500%(5倍)になります。仮に年収600万円(一定)の人がその25%(150万円)を20年積み立てると計3000万円となる。一般の方でいけば、60歳を超えたときに360%から500%の間の貯蓄年収比となるくらいの蓄えがあれば合格点ではないでしょうか?(※)

ちなみに、僕は超富裕層(金融資産5億円超)ではありますが、貯蓄年収比率は40代の基準となる137.8%に達していません。35歳まで1億円の借金を負っていたこともひとつの理由ですが、一番大きい理由は税率が65%を超えていて手元にお金がほとんど残らないことです。

これは、収入を上げることが富裕層になる近道ではないことを如実に示しています(次回稿を改めてご説明します)。

さて、最終的に富裕層になるには、前出の「必要なこと」(2)にあるように、「4つの財布(給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得)を持つこと」が理想的ですが、その前段階では地道な貯蓄が絶対的に必要なのです。

『日本のお金持ち研究』(橘木俊詔、森剛志著)は「全国高額納税者名簿」(2006年廃止)をベースに調査した本です。この調査の前提は、高額納税者=富裕層というもので、調査対象者の年収は約1億円以上。しかし、僕はこの調査対象者以外の、コツコツ貯金を続けられる「普通の年収の人」こそが富裕層の本流だと思っています。

金融資産1億円以上の世帯数は、100.7万です(2013年、野村総合研究所調査)。これに対し、同年の年収1億円以上の申告納税者数は1.6万人しかいません(国税庁調べ)。片や「世帯」、片や「人」ですが、仮にこの1.6万人の世帯数が1万世帯だとすると(夫婦共年収1億円以上の人もいるため)、富裕層100.7万世帯の1万世帯つまり99%の世帯は『日本のお金持ち研究』の調査対象から漏れていることになります。

これらの数字が語ることは、富裕層のほとんど全ては年収1億円以下という事実です。

僕がこの連載で訴えていきたいこと、それは「年収をなるべく上がらない方法で富裕層を目指そう」ということです。次回稿で説明する「税との闘い」を考えると、年収を上げて富裕層になるより年収を上げないで富裕層になるほうがずっと確実で再現性のある方法です。

1637とはずがたり:2016/02/17(水) 19:43:12
フードポルノって言葉が有るのに対してお受験ポルノもあるよねって記事を最近読んだ(書き込もうと思ったけど忘れてるかも知れない)けど富裕化ポルノも結構世の中に氾濫してるよね。。

俺の後輩は先物で2億貯めると息巻いているけど,要するにコップの水を貯めると云ってる訳で,巧く逝けば彼の勝ち,すってしまえば仕舞えば彼の負けと云う事になるが,今のところすっては無い様だ。すらないでやっていけばいつか二億ぐらい貯まる瞬間はありそうだ。その後その2億をコップに貯めておけるのかどうか(4億目指してすってしまわないか)は甚だ心許ないんだけど(;´Д`)

2016年1月22日(金)
「コップの水」を飲む人は、富裕層になれない
http://president.jp/articles/-/17182
プレジデント・マネーNEWS【52】
PRESIDENT Online スペシャル
行政書士、不動産投資顧問 金森重樹=文

質素倹約で「種銭」をつくれるか?

前回の記事で、僕は「普通の年収の人こそ、富裕層の本流だ」と書きました(http://president.jp/articles/-/17143)。がっぽり儲けた青年実業家ばかりがメディアに取り上げられるので目立ちますが、富裕層の中にあって、彼らは“傍流”。富裕層の多くは60代で、若い頃は貧乏でした。

なぜ、お金持ちになれたかといえば、質素倹約を貫いて地道に貯金した種銭をもとに運用をおこなって大きく資産を増加させてきたことが最大の理由。その種銭が自らを飛躍させるのです。その意味では質素倹約を貫き通すことが富裕層への最短ルートだと感じています。

僕は60歳までずっと貯金してくださいなどとは言っていません。

種銭ができた段階では、運用の局面に移れます。そうなってくれば給与所得には手を付けずとも生きていける局面がかならずやってきます。

事実、僕は脱サラをして最初に設立した不動産投資顧問会社から貰った給料は設立以来現在までの15年間、1円も引き出してもいませんし、費消していません。4つの財布(事業収入、不動産収入、給与収入、配当収入)のうち、税の業火に焼かれるのは前3つの財布です。そのうち一番経費が認められないのは給与収入です。だから、給与収入は非常用の酸素ボンベぐらいに思って1円も使わない訳です。

富裕層が超富裕層になるのは実はそう難しくないのですが、それは種銭を運用する過程での個人の生活費などが雑費に過ぎない「規模」になっているからです。そうなると資産は爆発的に増えていきます。

しかし、ゼロから富裕層になるためには、この質素倹約によって種銭を貯める時期を通り過ぎることが必要不可欠です。

僕はFPの方のように「年利○%で退職まで運用して」というお話をするつもりはありません。

富裕層になるには富裕層になる運用の仕方があるし、種銭がない場合と種銭がある場合では投資対象も全然違ってきます。ただ、いまそれをこの段階でお話ししても、質素倹約の習慣が身についていないとお金を費消してしまって運用に回りません。

「みっともなく生き」れば、身を持ち崩さない

なぜ、質素倹約に徹して「みっともなく生きる」かの理由の2番目は、種銭をつくること以外に、質素倹約の習慣それ自体に価値があるからです。

これは、お金とのシンクロに役立ちます。

4つの財布がうまく機能しはじめると、あるときから突然収入が激増しはじめますが、その段階にきて質素倹約が身についていないと、身を持ち崩します。

1638とはずがたり:2016/02/17(水) 19:43:23

この稿の後ろではその実例が出てきますが、この習慣そのものに億単位の大金を手に入れてもお金によって生活態度が変わって身を持ち崩さないようにうまくシンクロしていけるかどうかがかかっているからです。

「みっともなく生きる」習慣が身につけば、お金は「キャッシュを生み出す装置」くらいにしか思わなくなります。

「キャッシュを生み出す装置」としてのお金と、費消することができるお金は全く違います。

「キャッシュを生み出す装置」としてのお金に手を付けるからお金が増えていかないわけです。費消していいのは、いちど「キャッシュを生み出す装置」をくぐらせて、そのうえで税という業火を潜り抜けたものだけです。

僕の今の話をわかりやすいたとえ話で説明した場面が映画『マルサの女』に出てきます。この映画では、統括官の「どうやったら、あんたみたいに金がつくれるのか?」という問いに対して山崎努演じる調査対象者はこんな話をします。

「あんた、今、ポタポタ落ちてくる水の下にコップ置いて、水、貯めてるとするわね。あんた、喉が渇いたからってまだ半分しかたまってないのに飲んじゃうだろ? これ最低だね。なみなみいっぱいになるのを待って、それでも飲んじゃダメだよ。いっぱいになって、溢れて、たれてくるやつ……。これを舐めて我慢するの。そうすりゃコップいっぱいの水は……」

まさにこの通りです。

税の業火に焼かれても大丈夫な一番安全な耐火金庫みたいな財布は、配当所得です。

たとえば、1億円分の株式を買うとするとこれがコップの水。そして、わりと高配当の財務内容のよい株式などは3%くらいの配当がつきます。いまは株が暴落している時期だから、配当をもらえる株を探すにはぴったりのショッピングの時期ですが、仮に毎年配当を300万円もらえるとしたらこの配当がコップから溢れてたれてくる水。

300万円の約20%しか税金がかかりませんから、240万円は手元に残ります。これは他の3つの財布とは違ってこれで税金処理は完結なのでこれだけを使って生きていけばいいわけです。

240万円あれば質素倹約の生活を継続すれば十分生活していけるじゃないですか。

この場合の1億円分の株式というのは「キャッシュを生み出す装置」だから、一度買ったら二度と売却しないことです。再現性の高い富裕層になる方法においては、株は売買で儲けるものではなく株価が上がっても下がっても関係なくずっと保有し続けます。

いずれはコップの溢れた水は飲みきれないくらいの勢いになって、滝のように落ちてくるようになります。そのときに消費してもコップの水自体は減りませんので安心して消費できます。

最初に「コップの水」を溜めることだ

「お金はつかってこそ意味がある」という考えの方もおられるでしょう。でも、コップの水が溜まるのを待ってから溢れた分をつかっても遅くないと思いますよ。

先日、男性消防士(43歳)の方が、マンション、駐車場などの不動産投資で家賃7000万円を得ていたとして懲戒処分された事件がありましたが、種銭さえあればこんなことは軽〜く可能です。

僕はお金をつかわないでくださいと言っているのではなく、最初にコップの水を溜めてくださいといっているだけです。

1639とはずがたり:2016/02/17(水) 19:43:40
さて、富裕層になるために、必要なことを整理すると次の通りです。

【必要なこと】

(1)必要最低限の生活費以外の全可処分所得を運用にまわすこと
(2)4つの財布(給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得)を持つこと
(3)あせらず時間をかけること

必要なことの(2)(3)は次回以降に解説しますが、注目してほしいのは(1)です。「必要最低限の生活費以外の全可処分所得を運用にまわす」ことの重要性についてはさきほども述べましたが、改めて声を大にして訴えたい。いくら強調しても強調しすぎることがないほど大切です。


以前、地域の平均収入が低い街に引っ越すなどして戦略的に生活レベルを「ダウングレード」することも富裕層へのプロセスになりうる、ということを書きました。その考えに読者の方から、「自分は質素倹約に励んで運用資金を捻出できるから、引越しは不要」というものがありました。たとえ、周囲の人々が衣食住にお金をかけた生活をしても、それに影響されない。見栄を張ることもない。「“同調圧力”に負けません」ということでした。

同調圧力に負けない? 本当でしょうか。

周りが高水準の生活を享受している中で、自分だけ質素倹約が貫けるのでしょうか?

例えば、子どもが通う保育園のお友達がそれなりのブランドの服を着ていたとします。そのとき、我が家のみ、チープな服や上の子のお下がりを着せて通園させることができるか。「外見」が直接的な原因かどうかはわかないものの、お友達たちから我が子がからかわれても本当に平気か。ヨソはヨソ、ウチはウチを貫けるのか。正直、僕は自信がありません。

「長いものに巻かれない」苦しみががお金を生む

有名な「アッシュの同調実験」の結果を見てもわかるように人はそんなに精神が強くありません。


答えは「い」ですが、周囲の人が全員「う」と答えると、「い」と思っていた人も「う」と答えてしまう傾向がある。
お互いに似たような価値観と行動様式の集団の中にいるとますますお互いが似てきます。集団構成員全員が右だという中で、1人異を唱えて左だと言えると読者の方が本当に思っているとしたら、それは「服従の構造」について甘く見ているとしかいいようがありません。

昨春に栃木県で起きた「小学校ママ友連続自殺」の例をあげるまでもなく、少人数のヒエラルキーの中の権威(この場合はボスママ)に対して異を唱えたことが原因で、例えば子どもに同級生の子供から危害が加えられるなどの最悪の結末を迎えるくらいならば、長いものには巻かれて周りに合わそうというのが人間の本質的な心理です。

「圧力」がこうした陰湿なものでなくても、多数派に対して個人は極めて弱い立場になり、取り込まれてしまうケースが多いのです。

先ほどの読者の方が本当に「同調圧力に負けない」特異な人だとすれば、それだけで富裕層になる機会は自然にやってくるでしょう。「本当に同調圧力に負けない」ならばですが。

富裕層になるために必要なこととして、前出の3つの項目に1つ追加するとすれば、「収支のコントロールをしっかりする」ということです。「富裕層になるには節約するよりも稼いだほうが早い」という意見の人がいますが、実はたくさん稼いでも案外お金は貯まらないのです。

なぜか。

収入が上がると「税の壁」によってものすごい反動を受けます。富裕層はいつも所得を引き下げることを考えています。

1640とはずがたり:2016/02/17(水) 19:44:28

僕はここ数年は平均して毎年6億円の所得があります。昨年はメガソーラー(2210kW)を宮古島で建設したのでグリーン投資減税の30%償却で1.5億円、また年末の微調整で50kWの低圧太陽光2区画の100%即時償却で4000万円の合計1.9億円を所得から引き下げることができましたが、毎年そうそううまくいくものではありません。

その場合、所得税45%、住民税10%、事業税5%、それに消費税(紙と鉛筆しか経費がかからない仕入れのない仕事なので約4%)、固定資産税その他を加えてだいたい収入の65%近くを「お上」に持っていかれます。

6億円のお札があると考えてください。だいたい重さ60㎏です。これが税金の業火でぶわーっと燃やされちゃうわけです。そうするとお札の65%が灰になって、たった21㎏分しか残らない。

6億円稼いでも2.1億円の手取りです。4月20日に確定申告の振り替えされるのを皮切りに、5月には固定資産税の第1期の支払い、6月には消費税第1期と住民税第1期の支払い、続いて7月末には所得税第1期、8月末には住民税第2期と事業税第1期を……。

年俸数億円の野球選手が「転落」する理由

このようにして以後、年度末の3月まで延々と税金の支払いが続いていきます。

僕が1年のうちでお金を残せる可能性があるタイミングは、3月に確定申告を終えたあとです。所得税の最終金額が確定した段階で、1年間毎月銀行に積み立てた所得税第3期分の金額が余るかどうかわかったタイミングだけです。

まあ、自分のお金じゃないですね。「お上のお金の仮の保管場所」です。
>>1637-1640
年間納税スケジュールを作って所得税、住民税、事業税、消費税、固定資産税などの主だった税金の計算を支払い予定に入れていない高年俸のプロスポーツ選手が「お上」の手にかかれば、いとも簡単に破綻するのは当然だと思います。

現代の日本の最高税率「七公三民」。税金はかくも過酷なものです。「お上のお金が仮に置いてある保管場所」だと思って、もらった年俸は確定申告の時以外は手をつけないことです。勘違いして豪遊してしまうと、4月から早速税金の支払いに窮することになりますので。

お金の出入りの管理を怠ってはいけないのです。

ところで、富裕層になるために「必要でないこと」とは何でしょうか。

【必要でないこと】

(1)特殊な人脈
(2)芸能、プロスポーツなどの特殊な才能
(3)高収入であること

(1)の特殊な人脈・コネがビジネスチャンスというものを意味するのであれば、それは不要です。一般的などこにでもある仕事をしながら、「4つの財布」(給与所得、事業所得、不動産所得、配当所得)で資産形成していくことは可能です。

(2)の芸能、プロスポーツなどの特殊な才能もいりません。マイク・タイソン、M.C.ハマー、ニコラス・ケイジ、エルトン・ジョンなど才能に満ち溢れ、莫大な収入を得ていた人たちがその後、経済的に困窮する事態に陥っています(エルトンはそこから再起して莫大な資産を稼いだという意味では別格ですが)。

CNN money (2015.8.15)の記事によれば、NFL(プロアメリカンフットボールリーグ)を引退した選手は引退後12年以内に16%が破産するとのことで、現役時代の収入が多かったからといって、それほど安全というわけではないと結論付けられています。

http://money.cnn.com/2015/04/15/retirement/nfl-player-bankruptcies/

日本でも数億円という年俸のプロ野球選手が球団から解雇され、凋落することは珍しくありません。金銭感覚のマヒした浪費癖だけでなく、先に触れた計画的な税金の支払いをしなかったことも、「転落」の要因かもしれません。「あの人は今」といったテーマの雑誌記事やテレビ番組で紹介される「その後」は目を覆いたくなるほどの悲惨な状況です。

これらの著名人の方々が大変な状況に陥っているのは、まさに質素倹約に徹して「みっともなく生きる」習慣が身についていなかったことに尽きると思います。

せっかく高額の報酬を手にしながら、お金とシンクロすることができないと、残されるのは浪費の悪癖、覚えた悪い遊び、巨額の借金だけになるわけです。

1641とはずがたり:2016/02/17(水) 19:44:52

堕ちた“番長”にも読ませたい「本物の富裕層はマシュマロを2個食べる」
http://www.msn.com/ja-jp/news/techandscience/%E5%A0%95%E3%81%A1%E3%81%9F%E2%80%9C%E7%95%AA%E9%95%B7%E2%80%9D%E3%81%AB%E3%82%82%E8%AA%AD%E3%81%BE%E3%81%9B%E3%81%9F%E3%81%84%E3%80%8C%E6%9C%AC%E7%89%A9%E3%81%AE%E5%AF%8C%E8%A3%95%E5%B1%A4%E3%81%AF%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%82%922%E5%80%8B%E9%A3%9F%E3%81%B9%E3%82%8B%E3%80%8D/ar-BBpAP5l#page=2
プレジデントオンライン
金森 重樹
2 時間前

前回の記事では「『コップの水』を飲む人は、富裕層になれない」(http://president.jp/articles/-/17182)という内容を書きました。

要約すると次のような内容です。

<戦略的に「みっともなく生きる」ことの狙いは、主に2つ。第1に、将来何かに投資するための「種銭」をコツコツつくること。第2に、質素倹約の習慣を完全に定着させること。この習慣とは、例えるならば、コップにたまった水をそのまま飲むのではなく、コップからポタポタ溢れる水を舐めて我慢するという行為。そんな生活を維持すれば、仮に大金を得ても、いたずらに浪費せず身を持ち崩すこともなくなる>

この私の考えに対して、読者の方から、通帳にお金がある程度貯まってくると「あれも買える、これも買いたい」と想像して、お金を使いたいという欲求に抗し切れない、浪費について自分を抑えることができない、という意見をいただきました。

コップの水が一杯になって溢れるのを待たずして、途中でコップの水を飲んじゃうということです。

そんな読者の方に参考になる実験をご紹介します。スタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが50年にわたって行った、のべ600人参加の大規模な実験です(詳しくは『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』を参照ください)。

この実験は、使われた報酬の名前にちなんでマシュマロ実験と呼ばれています。

実験は、スタンフォード大学のビング保育園(心理学部の教育研究機関)で行われたもので、4歳の園児たちにマシュマロ1個を今すぐもらうほうを選ぶか、それとも最長20分待ってマシュマロを2個もらうほうを選ぶかを選択させました。

まず、実験室内でマシュマロを1個テーブルにおきます。マシュマロの脇には卓上ベルがあり、いつ鳴らして研究者を呼び戻し、1個のマシュマロを食べてもいいです。しかし、研究者が戻るまで待って、20分の間、席を離れたりマシュマロを食べ始めたりしていなければ、2個のマシュマロがもらえます。

ご想像のとおり、園児たちは目の前の魅力的でよだれのでそうな誘惑に抗し、むしゃぶりつきたくなる衝動を抑え、もがき苦しみ、悪戦苦闘し、味見を我慢するための創意工夫を凝らします(マシュマロ実験の一例はこちら https://www.youtube.com/watch?v=QX_oy9614HQ)。

4歳児たちのことですから、当然お菓子を食べたいという生理的欲求のほうがそれを我慢しようとする自己抑制や理性を圧倒してしまいます。いわば欲求に屈服するグループ。これに対して、自己抑制によって生理的欲求に打ち勝つグループもいます。前者と後者の割合は、2:1です。

1642とはずがたり:2016/02/17(水) 19:45:04

興味深いのは、その後50年にわたる追跡調査の結果です。

欲求に打ち勝つことができたグループ(全体の3分の1)は、そうでないグループと比べて、何が違ったのか。
・大学進学適正試験(SAT)の点数が良い
・中年になったときの肥満指数が低い
・自尊心が高い
・ストレスにうまく対処する
という結果になりました。マシュマロ実験によって、「自制心」と呼ばれる「将来のより大きな成果のために、自己の衝動や感情をコントロールし、目先の欲求を辛抱する能力」が、人の社会における成功に重要であることが判明したわけです。

自制心のある人が「高学歴・高収入」になる
マシュマロ実験によってその機能が明らかになった自制心は、その後数十年という歳月を経て技術が発達することでfMRI(機能的磁気共鳴画像法)によって、直接視覚化されるようになったそうです。

動物的な生理的欲求、衝動をつかさどる「ホットシステム」は、脳の扁桃体というヒトの進化の初期に発達した場所です。一方、理性によって自制を働かせる「クールシステム」は進化の後に登場した前頭前皮質という場所です。

そして、そういった心の働きは以前であれば外部からはうかがい知れなかったのですが、fMRIによって脳のどの部位が優位に働いているかを直接画像などで見ることで理解できるようになったといいます。つまり、心がビジュアルとして見えるわけです。

ここで、少し視点を変えて自制心の働きを考察してみましょう。

転職エージェント会社などによって、しばしば、どの大学出身者の年収が高いかという「学歴と年収」の関係について調査が行われることがあります。

ここで、私がいつも注意しなければならないと思うのは、いい大学を出る(原因)から年収が高くなる(結果)という「因果関係」はないということです。学歴と年収が完全な原因と結果の関係にあるわけではなく、年収が高い人がいい大学を出ているにすぎないのです。これは、いい大学を出ていない人で年収が高い人がいることからも言えます。

高学歴(A)、高年収(B)、そのほかの何か(C)とすると、考えられる関係としては以下の3つあります。

<1>A(高学歴)がB(高収入)を発生させる
<2>B(高収入)がA(高学歴)を発生させる
または
<3>C(そのほかの何か)がA(高学歴)とB(高収入)を発生させる

この<3>のA(高学歴)とB(高収入)の関係が擬似相関で、AとBに一見関係がありそうな印象を与えることになりますが、実は別のC(そのほかの何か)がAとBともに影響を与えているのです。

では、Cとは何か。これこそが、自制心です。自制心が、高学歴や高収入を発生させるのです。

自制心のある子供は遊びに行きたいという誘惑に抵抗して勉強し、大学入学という長期にわたる目標を効率的に追求して成果を勝ち取ります。そして、同じくこの自制心が社会人になったときに職業人としての長期にわたるキャリア目標を追求するのに威力を発揮して年収を高めることが多い。だから、一見、学歴と年収に相関関係がありそうな印象を与えています。

1643とはずがたり:2016/02/17(水) 19:45:31
>>1641-1643

しかし、これは見せかけの相関にすぎません。

年収を上げるなら、単純に学歴を上げるよりも、「自制心が足りない(=こらえ性のない)自分をトレーニングする」というアプローチが正解なのではないか、と思います(前回お話したとおり、富裕層になるには年収をあげるという戦略は累進課税の観点からは必ずしも正しい戦略とはいえません)。

「番長」はマシュマロにむしゃぶりついた
さて、研究者が部屋から出て行った途端にベルを鳴らしてマシュマロにむしゃぶりつく子供の様子を果たして大人たちは笑うことができるでしょうか。

こうした目の前の多くの欲望こそがコップに水を溜まらなくしてしまっている「犯人」です。これらすべての衝動は小さいながらも着実に資産を蝕みます。

特に最後の離婚については、これまで長年の間夫婦で協力し合って形成してきた資産に対して破滅的な悪影響を与えます。人々はその悪影響度は大きいと気づいているのに、離婚する人は絶えません。

快楽と幸福は違います。

薬物中毒で逮捕されたことが原因でキャリアが台無しになった事例をあげるまでもなく、一時の快楽がその後の人生におけるキャリアや家庭生活、幸福を台無しにする例はこの世の中にはあまりにも多いです。長期にわたって幸福を追求したいのであれば、一時の快楽を抑制する自制心が必要になります。

これは、資産形成においても全く同じです。

今の自分に資産を割り振ることなく報酬を先延ばしにすれば、生涯をトータルした場合に圧倒的に多くの報酬が得られます。しかし、自制が効かない大人は少なくない。こういう人は一度、マシュマロ実験の結果をよく確認するといいでしょう。

「奴隷のように働き、奴隷のように暮らす」
昔、バブルの真っ最中に「大統領のように働き、王様のように遊ぶ」というCMがあって、その享楽的な考え方に驚き、こういう人間にだけはならないようにしようと心に誓ったものです。

その後、バブル崩壊に伴い、王様たちは消えていきました。王様の一晩の飲み代があれば、もう一度人生を再起できたにもかかわらず。

僕は正反対です。「奴隷のように働き、奴隷のように暮らす」。

そういった、勤勉・質素の暮らしを継続してきた結果、平凡な能力しか持ち合わせてなかったけれど、王様のような生活をやろうと思えばやれる地点にまで到達しました。やりませんけど。

富裕層になるということは、衝動的な欲求を動かすホットシステムをいかに抑制して、長期にわたる目標を追求して、理性的に考える実行機能を鍛えるかという、心の問題にかかっているのかもしれません。

資産を形成するという活動にはコツがあります。

それは、自分にはきっとやり遂げられるという信念を持ち、そのためのスキルを学び続けるということ。そうやって自分を富裕層に一歩ずつ近づけていく。そのプロセス自体が自己効力感を伴う楽しい体験になる。それこそが最高のプライスレスな「報酬」になるのだと思います。

1644とはずがたり:2016/02/27(土) 16:37:58
そっか,内生的貨幣供給論のカルドアの正しさを世界中がQEしても少なくとも日欧の景気が良くなってない事をもって示していたんだな。アメリカはなんか通用するみたいだけど。

2009年6月29日 (月)
日銀理論=ニコラス・カルドア、白川総裁?①
http://chicagoyale.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/post-a572.html

京都大学の根井雅弘教授の新著『市場主義のたそがれ』を一気に読了。…

ところで、今回の本にも少し紹介してありますが、ケインジアンとされてる、ケンブリッジ大学教授のニコラス・カルドアについて、少し言及しようかと。結論から言うと、2000年代からの日銀理論を一番適切に説明してる気がするからであります。フリードマンのマネタリズムは、現代版貨幣数量説で、短期では、マネーサプライの増加が雇用量にプラスに影響するが、そのうち実質賃金の低下に気がついた労働者が、高いインフレ率を求めて、行動してしまい、長期フィリップス曲線が垂直になって、インフレしかもたらさない、としたものでした。カルドアはこれを攻撃したわけです、注意点はマネタリストであれケインジアンであれ、そしてケインズ本人でさえ、「中央銀行がマネーサプライを外生的に決定できる」という外生説を採っている、というところである。カルドアは、これとは反対に、貨幣供給は貨幣需要が無いところにはありえない、と反対した。というところである。これは「マネーサプライが貨幣需要(有効需要または所得に依存する)から独立ではなく、需要に対して消極的に調整されるという考え方を「内生説」とよぶ。(同書p69)貨幣ストックMの増加率変化は貨幣所得Yの成長率の変化の原因であり、因果関係はYからMが強く、MからYというのが外生説であるということだ。かくして、カルドアはいう

「真の説明は、ケインズも『一般理論』のなかでは決していわなかったことなのだが、信用貨幣経済においては、貨幣供給の変化は物価ないし所得の変化の結果であって原因ではない、というものである。」

これって、日銀理論がいってきたものと似ているといっても良いでしょう。量的緩和の議論時から、いわゆるリフレ派が「日銀弾幕薄いよ!ゴルァ!」長期国債までもっと買え、マネーサプライ足りねえ、って批判をしてきたわけですが、例えば、当時企画室審議役だった白川総裁の2002年の論文なんかにも現われていて、(「量的緩和採用後」一年間の経験」『金融政策論議の争点』所収)低金利下で「追加的な」金融政策ができない場合、コール市場での低金利がリザーブでの運用増、システム不安によるリザーブ増加、で積み増し需要はたかまったが、「日銀のオペが金融機関のリザーブ最適水準を決定するわけではない」とされ、リザーブの潤沢な供給、ゼロ金利にもかかわらず、マネーサプライやインフレ率は一向に反応しない、と述べられております。だって貨幣需要無いんだもん。ということです。これは2002年で、まだ、不良債権問題が残っていて、金融トランスミッションシステムに瑕疵がある時点であると思いますが、今でも、こういうスタンスは変わらないと思います。そして、貨幣需要が動き出したとき初めて、低金利が需要をサポートし、強力な刺激となるであろう、とされています。こういう立場に、さすがに、「読者にフラストレーションを与えるかもしれない」とされています。現在そこから、CP買い入れなど、当時は否定されていたさらに非伝統的なオペを実行されていますが、理論的には変化は無い、と思います。システミックリスクが少ない今日、このトランスミッション経路を研究するのは、純粋な金融政策にとって意味あることだと思いますね。

参考文献

『マネタリズムーその罪過』ニコラス・カルドア、日本経済評論社、1984

Nicholas Kaldor,Limitations of the ‘General Theory‘1983

『市場主義のたそがれ』根井雅弘、中公新書、2009

『現代の経済学』根井雅弘、講談社学術文庫、1994

1645とはずがたり:2016/02/29(月) 00:36:47
なんと・・・投資によって価値創造出来ずに無駄な資本として溜まっていって結局減耗せざる得なくなっていると云う構図の中で労働者と資本家双方とも不満足な結果になってると云うのか!

>消費税5%では変わらなかったが、8%でエンゲル係数が上昇
>ちなみに1997年4月に実施された消費税の5%への増税時には、エンゲル係数の目立った上昇は見られなかった。当時はまだ家計に余裕があり、贅沢品への支出も多かったはずである。消費増税に対しては、各品目についてまんべんなく消費を減らすことで対応したものと思われる。今回、消費増税でエンゲル係数が急上昇してしまったのは、日本の家計がそろそろ限界にきていることを示しているのかもしれない。

>日本における労働分配率は、一時、持ち直したことがあったものの、基本的に低下傾向が続いている。労働分配率と対になるのは資本分配率なので、それだけを見ると、企業は人件費を削り、その分を投資家に還元していることになる。

>確かにこうした側面は否定できないが、一方で、日本企業の投資家に対する還元水準は著しく低いことでも知られている。

>資本分配率は実は上昇していないのだ。一方で上昇傾向が続いているのが固定資本減耗である。これは企業会計で言えば減価償却に相当するものだが、これは何を意味しているのだろうか。ひとつ考えられるのは、日本における設備投資効率の悪化である。
>ムダな投資を続けていると、やがて減価償却費がコストとして経済に重くのしかかってくる

加谷珪一
経済ニュースの文脈を読む
「エンゲル係数急上昇!」が示す日本経済の意外な弱点
http://www.newsweekjapan.jp/kaya/2016/02/post-8.php
2016年02月02日(火)15時11分

家計所得の減少や円安の進行と合わせて考えると、消費税5%への増税時には上がらなかったエンゲル係数が8%になって急上昇したことには意味がある Hxdyl-iStock.

 このところ家計のエンゲル係数が急上昇していることが話題となっている。エンゲル係数は生活の豊かさを示す指標として知られているが、価値観が多様化した先進国ではあまり意味のない指標とも言われる。ただ、エンゲル係数が急上昇したということは、家計に何らかの変化が起こった結果であることは間違いない。エンゲル係数自体がいくらなのかということよりも、むしろ、変化の背景について考察することに意味があるはずだ。実際にその背景を探ってみると、日本経済の意外な弱点が見えてくる。

「エンゲル係数は先進国では無意味」は本当か
 総務省は1月29日、2015年12月における家計調査の結果を公表した。二人以上の世帯における消費支出は31万8254円で、前年同月比(実質)でマイナス4.4%と大幅な減少となった。このところ、家計の実質消費支出は急激な勢いで減少しており、家計がかなり苦しい状態に陥っている。同時に、家計の消費支出に占める食費の割合を示すエンゲル係数も急上昇している。

 同じ月の食料品支出は8万8327円となっており、エンゲル係数を計算すると27.8%となる。12月は食料品支出が増える傾向にあるのでエンゲル係数が増加することが多いが、2014年12月の数値は25.9%だったので、昨年と比べてもかなり上昇している。2013年までは、エンゲル係数が25%を超える月はほとんどなかったが、2014年に入ってから25%を超える月が増え始め、2015年になるとその傾向がさらに顕著になった。昨年5月以降は、毎月25%を超える状況が続いている。

 食料品には、生活を維持するための最低限度の支出水準というものがあり、嗜好品と比べて極端に節約することができない。生活が苦しくなってくると、家計支出に占める食料品の割合が増加するという一般的な傾向が見られることから、エンゲル係数は生活水準を示す指標としてよく使われている。

 もっとも、先進国においては、消費が多様化しており、必ずしもエンゲル係数の上昇が生活水準の低下を示すとは限らない。エンゲル係数について考える際には、支出全体の状況も含めて多角的に考察する必要があるだろう。

1646とはずがたり:2016/02/29(月) 00:37:05
>>1645-1646
 日本における家計支出の絶対値はここ15年、一貫して減少が続いている。2000年における家計の平均支出は32万円弱だったが、2015年はおそらく29万円を切る可能性が高い。家計の支出が減っているのは、世帯収入が減少しているからである。平均的な世帯年収は過去15年間で15%ほど減少しており、これに伴って支出を切り詰めていると考えられる。

 ただ、アベノミクスが始まる前までは、基本的にデフレだったので、それほど深刻ではなかったのだが、円安が進んだことで状況が大きく変わった。円安によって輸入品を中心に物価が上昇する一方、給料は上がらないため、家計の実質所得が大幅に低下したのである。

消費税5%では変わらなかったが、8%でエンゲル係数が上昇
 エンゲル係数が急上昇した直接的な原因は、消費税の8%への増税と考えられる。消費が弱いと事業者は簡単には値上げできないため、多くの事業者は、これまで内容量の削減など目に見えない形で値上げを続けてきた。しかし、2014年4月の消費増税をきっかけに名目上の値上げに踏み切った事業者が多く、これが食料品価格を一気に押し上げた。消費税が上がっても、収入が増えたわけではないので、消費者は他の品目を切り詰めることになる。その結果として、エンゲル係数が上昇したと考えられる。

 ちなみに1997年4月に実施された消費税の5%への増税時には、エンゲル係数の目立った上昇は見られなかった。当時はまだ家計に余裕があり、贅沢品への支出も多かったはずである。消費増税に対しては、各品目についてまんべんなく消費を減らすことで対応したものと思われる。今回、消費増税でエンゲル係数が急上昇してしまったのは、日本の家計がそろそろ限界にきていることを示しているのかもしれない。

人件費が削減されているが、投資家に回っているわけではない
 家計の所得が減少しており、これによって消費が弱くなっているという現実は、安倍政権もよく認識しており、これが財界に対する3年連続の賃上げ要請につながっている。だが、家計の所得がなぜ減っているのかという根本的な部分についてはあまり議論されていない。

 当たり前のことかもしれないが、家計の所得が減少しているのは、企業が人件費を削減しているからである。マクロ的に見てもその傾向は顕著であり、日本における労働分配率は、一時、持ち直したことがあったものの、基本的に低下傾向が続いている。労働分配率と対になるのは資本分配率なので、それだけを見ると、企業は人件費を削り、その分を投資家に還元していることになる。

 確かにこうした側面は否定できないが、一方で、日本企業の投資家に対する還元水準は著しく低いことでも知られている。安倍政権が、企業に対して賃上げを要請する一方、ROE(株主資本利益率)の向上も強く求めていることからも、それを伺い知ることができる。日本企業は、労働者に対する還元も、投資家に対する還元も少ないのである。

 では、労働分配率の低下で余ったお金はどこに消えてしまったのだろうか。ヒントになりそうなのが、マクロ経済における固定資本減耗である。一般的な労働分配率は、国民所得に対する雇用者報酬の比率が用いられる。だがこれをGDP(国内総生産)全体に対して適用するとまた違った風景が見えてくる。

 労働分配率が低下しているのは同じだが、資本分配率は実は上昇していないのだ。一方で上昇傾向が続いているのが固定資本減耗である。これは企業会計で言えば減価償却に相当するものだが、これは何を意味しているのだろうか。ひとつ考えられるのは、日本における設備投資効率の悪化である。

 いくら設備投資を行っても、それが経済成長につながらなければ意味がない。ムダな投資を続けていると、やがて減価償却費がコストとして経済に重くのしかかってくる。労働者の給料は、減価償却を差し引いた利益の中からしか支払われないからである。

 設備投資は将来の経済成長の源泉となる重要な支出であり、常に時代を見据えてその中身を変革していかなければならない(設備投資はイノベーションの源泉である)。日本人がリスクを取ることを嫌い、旧態依然の投資に安住し、社会全体で投資効率を低下させているのだとすると、小手先の改革では苦境を脱することができないことになる。エンゲル係数の上昇は、単純な賃上げで現状を打破することはできないという厳しい現実を暗に示しているのかもしれない。

1647とはずがたり:2016/03/02(水) 10:24:16
韓国にもゾンビ企業という記事があったし日本も膨大な不効率な企業が存在している。
日中韓の東アジアモデルではゾンビ企業というバッファー(厚生経済学的には歪みであり無駄)が社会を安定させている。
欧米的には批判の一つもしたくなるのであろうが余りやり過ぎると社会が不安定化するぞ。韓国は既に随分やり過ぎて随分生き難い社会になってしまってるようだ。。

中国、今後2─3年間で「ゾンビ企業」の500万─600万人を削減へ
余剰生産能力を抱える業種で500万人もの人員削減するのは約20年ぶり
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/500600.php
2016年3月1日(火)19時10分

3月1日、中国は過剰生産能力と公害対策の一環として、今後2─3年間で「ゾンビ企業」の雇用を500万─600万人削減する。写真の工場は昨年7月湖北省で撮影(2016年 ロイター)
 中国は過剰生産能力と公害対策の一環として、今後2─3年間で「ゾンビ企業」の雇用を500万─600万人削減する。関係筋が明らかにした。

 ある関係筋は、余剰生産能力を抱える業種で500万人を削減するのは約20年ぶりの大規模な人員削減になると指摘した。

 別の関係筋は削減規模は600万人になるとの見方を示した。

 工業情報省のコメントは得られていない。

 中国の尹蔚民・人事社会保障相は29日、過剰生産能力の削減の一環として、石炭・鉄鋼セクターで180万人をレイオフすると明らかにした。

 中国は、セメントや造船など7業界の余剰生産能力を削減する方針だが、最初の関係筋によると、太陽光発電業界はまだ成長の可能性があるため、大規模の雇用削減は免れる可能性が高い。

 中央政府は既に、粗鋼生産や石炭生産を削減する方針を示している。また、向こう2年間の鉄鋼・石炭業界の人員削減に対応するため、1000億元(152億9000万ドル)の中央政府予算を充てている。

 ただ、2人目の関係筋は、こうした中央政府の取り組みは、地方政府の強い反対にあうとの見方を示した。

[北京 1日 ロイター]

1648とはずがたり:2016/03/08(火) 19:49:59
すげえ。
>16年3月期の純利益では、三菱商事を抜いて初めて商社業界トップに立つ見通し

それにしても綜合商社スレないんだよなぁ。。

伊藤忠社長、異例の続投宣言「投手かえたら逆転負けも」
http://www.asahi.com/articles/ASJ1D5DZ1J1DULFA021.html
2016年1月12日20時28分

 「先発が快投をみせたにもかかわらず、定石通りの投手交代で試合は逆転劇に陥った。大きな経営課題だけは自分の代でめどをつけなければならない」。伊藤忠商事の岡藤正広社長(66)は12日、「侍ジャパン」が韓国に逆転負けした昨年11月の野球の国際大会を引き合いにし、社内イントラネットで異例の「続投宣言」をした。2010年4月に社長となり、慣例の任期6年が迫っていた。

 伊藤忠は昨年に約6千億円を投じ、タイの財閥チャロン・ポカパン(CP)グループ、中国の国有企業グループ「中国中信集団(CITIC)」と提携。今年9月には、系列のファミリーマートと、ユニーグループ・ホールディングスの経営統合を控える。伊藤忠の指名委員会が12日あり、これらの課題を社長として指揮すべきだとの声が出たという。

 16年3月期の純利益では、三菱商事を抜いて初めて商社業界トップに立つ見通しで、岡藤氏は「首位を確固たるものにしたい」と社内に訴えた。

1649とはずがたり:2016/03/14(月) 19:04:36
>実は、アベノミクスによってGDPが増えているのは、ひとえに公共支出のためなのである。
実に嘆かわしい。公共事業増やして国の借金増やして日銀に借金背負わせてと破滅一直線じゃあ無いか。

実質賃金低迷でマイナス成長
明白になったアベノミクスの破綻
http://diamond.jp/articles/-/86501
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第50回】 2016年2月18日

GDPマイナス成長の大きな原因は、消費の落ち込みだった
?2015年10〜12月期の実質GDP(国内総生産)はマイナス成長になった。その原因は消費が伸びないことだ。これは暖冬のせいだと言うのだが、もっと基本的な原因がある。それは、実質賃金が伸びないことだ。原油価格が大幅に下落しているのだから、本来は、日本人の所得が大幅に増え、消費も増えなければならない。ここに、アベノミクスの基本的な問題点が露呈している。

マイナス成長の主因は消費の落ち込み
実質消費は中期的に減少している

?GDP速報によれば、2015年10〜12月期の実質GDPは、対前期0.4%減となった。年率換算では1.4%減だった。名目GDP成長率は前期比0.3%減、年率では1.2%減だった(なお、15年暦年のGDPは実質で前年比0.4%増、名目で2.5%増となった)。

?14年度はマイナス成長であり、その後も実質成長率はほぼゼロの近辺である。この結果、実質GDPはほとんど増えていない。15年10〜12月期の年率換算の実質GDPは527.4兆円だが、これは13年の中頃と同じくらいだ。

?15年度の実質成長率が政府経済見通しの計数(1.2%程度)を達成するには、16年1〜3月期で前期比年率8.9%程度の伸びが必要になる。これは、到底不可能なことだ。現実の経済は、政府の想定よりはるかに悪化していることになる。

?マイナス成長の大きな原因は、実質最終消費支出が対前期比0.8%減と、大きく落ち込んだことだ。…事実、1月の国内の新車販売台数は前年同月比4.6%減と、13ヵ月連続で前年実績を下回っている。消費の減少は、一時的なものでなく、中期的な傾向なのだ。

?図表1に示すように、10〜12月期の実質民間最終消費支出は304.5兆円で、消費税増税直後の14年4〜6月期の305.8兆円を下回った。安倍内閣が発足した12年10〜12月の308.5兆円よりも減っている。…

?つまり、国民生活にとってもっとも重要な支出項目である消費支出は、アベノミクスによって減少しているのである。

実質賃金が伸びないから消費が伸びない
安倍内閣の発足後からマイナスが顕著に

?消費が伸びない本当の原因は、物価の上昇に比べて賃金が伸びず、その結果、実質賃金が低下していることである。

?毎月勤労統計調査によって実質賃金の推移を見ると、図表2に示すとおりだ。

?実質賃金指数は、中期的に下落を続けている。2010〜12年まではほぼ一定だったが、それ以降の下落が著しい。(なお、GDP統計における実質雇用者報酬は、15年10〜12月期は前期比0.2%増と2期連続で増加している。ただし、 雇用者報酬には、公務員の給与や社会保険料の雇用主負担も含む。したがって、民間の給与の実態を見るには適切なものとは言えない)。

?安倍内閣は春闘に介入して賃上げを促進したとしている。しかし、実質賃金で見た経済の実態は、このようなものである。

?とりわけ、実質賃金のマイナス成長は、安倍内閣発足後の13年以降に顕著になっていることに注目すべきである。

1650とはずがたり:2016/03/14(月) 19:04:59
>>1649-1650
原油価格下落の恩恵は消費税分を上回る
だがそれは企業利益増でとどまっている

?しかし、先に見た実質賃金下落は、本来はありえないことである。なぜなら、原油価格をはじめとする資源価格が大幅に下落しているからだ。

?この連載ですでに見たように、資源価格の下落は、日本の交易条件を大幅に改善した。

?消費が停滞しているのは消費税の影響だという意見がある。しかし、資源価格の下落は、消費税増税額をはるかに上回る効果を日本経済に与えているのである。それは、消費税を全廃した場合の結果にも近いものだ。だから、本来は、所得が増え、消費が増えるはずだ。

?では、この利益はどこに消えてしまったのだろうか??企業利益が増え、企業の内部留保が増えた段階で止まってしまっていると考えざるをえない。

?このことは、本連載でもすでに述べた)。

?あらためて企業利益の推移を法人企業統計で見ると、図表3に示すとおりである。13年における利益増は円安によるものであったが、14年10〜12月以降の増加は、輸入原材料価格下落の効果であると考えられる。

?円安は企業利益を増加させただけで賃金所得を増加させなかったが、資源価格下落の効果も、賃金所得には及んでいないわけだ。つまり、どちらの場合にも、トリクルダウンなどまったく生じていないのである。
設備投資は増加するも先行き不透明
アベノミクスのGDP増は公共支出増加による

?2015年10〜12月期において、輸出は対前期比0.9%減と、2四半期ぶりのマイナスになった。ただし、資源価格下落によって輸入が減少したため、GDP成長率に対する外需寄与度はプラスになった。

?設備投資は前期比1.4%増と2四半期連続のプラスとなった。ただし、設備投資の先行指標である産業機械受注高は、15年12月に前年同月比21%減である。さらに、円高の進行で企業収益が下振れする懸念もあることから、先行きは不確実だ。

?公共投資は2.7%減となった。ただし、中期的に見ると、図表4に示すように、公共支出(政府消費支出と政府固定資本形成の和)は、継続的に増加している。

?実は、アベノミクスによってGDPが増えているのは、ひとえに公共支出のためなのである。

実体経済とまったく関係がない株価の動き
それも下落で破綻は誰の目にも明らかに

?以上で見たのは2015年10〜12月期のデータであり、これは16年1月に金融市場が大混乱する前のことである。

?今後を見れば、経済を好転させる条件は何も見当たらない半面で、急速な円高が企業利益に与える影響が懸念される。

?これまで、アベノミクスが実体経済を改善しないと指摘されてきていたが、それでも株価が上昇していることが支えとなってきた。しかしその支えもなくなった。

?アベノミクスが破綻していることは、誰の目にも明らかになった。

?なお、GDP速報が発表された2月15日、日経平均株価は1000円を起す上昇を示した。GDPの減少など、まったく関係がない。株価が実体経済の動向と無関係に動いていることが、よくわかる。

「実体経済が悪化すると、緩和政策が取られるとの期待が生じるため、株価が上がる」とも言われる。しかし、この日の株価の動向は、それとも無関係だ。日本の経済政策や金融政策とは関係なく、為替レートが円安に動いたことと、欧米市場で株高が進んだことだけを理由としたものだ。

?まったくのマネーゲームとしか言いようがない。この状況を見ていると、GDP統計を分析することが虚しくなってくる。

1651とはずがたり:2016/03/14(月) 19:18:40
法人税を減税しても企業は内部留保を増やすだけ
野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問] 【第41回】 2015年12月10日
http://diamond.jp/articles/-/82995

?法人企業統計とGDP統計で、7〜9月期の設備投資額が増加を示した。これは日本経済の回復を示しているのだろうか??以下では、そうではないことを論じる。

?売上が伸びないため、設備投資は基本的に更新投資にとどまっており、資本ストックは増加していない。法人税を減税しても、企業の内部留保が増えるだけのことだ。

?ただし、GDPの成長率がプラスになるかマイナスになるかは、消費の伸びによって大きく影響されることに注意が必要だ。仮に設備投資の値が変わらなかったとしても、消費支出の額がほんの少し増加すれば、GDPの成長率はプラスになるのである。中期的な観点から見て、経済成長に重要な意味を持つのは、設備投資というよりは、消費支出である。

?将来に向けても売上が増大すると期待できないので、企業は、設備投資を行なって供給能力を増大させようとは考えていない。

?減価償却と設備投資を比べると、図表4に示すように、企業の設備投資は、ほぼ減価償却の枠内にとどまっている。これは、投資が更新投資の枠内にとどまっていることを示す(減価償却は資本減耗と同じではないが、近似的にはほぼ同じと考えてよい)。

?05年頃の円安期には、生産拠点の国内回帰があり、エレクトロニクス産業を中心として設備投資がかなり伸びた。しかし、これは、その後の赤字の原因になった。だから、設備投資の増加がどんな場合でも望ましいとはいえない。

「企業は内部留保を溜め込むだけで、設備投資に回さない」と言われることの内容を検討しよう。

?利益剰余金の推移は、図表6のとおりだ。

?1990年代までは130兆円程度の水準だったが、2000年代になってから増え始めた。とくに06年からの増加が顕著で、08年度には約280兆円となった。その後、増加の勢いは弱まったが、13年度から再び増加が著しくなり、14年度には354兆円となっている。

?まず、金融機関からの借入金(流動負債と固定負債の合計)は、1990年代前半には増えたが、90年代末から減少を始め、98年の約500兆円から2005年の約300兆円まで減少した。07、08年度には若干増加したが、リーマンショック以降、再び減少している。13年度以降若干増加しているが、わずかだ(図表7)。

?有形固定資産(土地、建設仮勘定、その他の有形固定資産)は、1990年代までは増えたが、90年代末から緩やかに減少している。図表5では2005年頃から増加しているが、図表7では、そうした傾向が見られない。

?流動資産(現金、預金、株式、公社債など)は、03年頃までは緩やかに減少していたが、その後は増加に転じている。

?このように、企業は利益を設備投資には回さず、金融資産への投資や借入の返済に充てている。

?政府は、設備投資を増加させることを目的とし、これを実現するために法人税の減税など行なうとしている。これは、「法人税を減税すれば設備投資が増える」という考えを基本とするものだ。

?しかし、以上で述べたことは、設備投資だけを増やそうとしてもできないことを示している。現状で設備投資をすれば、過剰設備になってしまうのである。

?法人税を減税すれば、企業の税引き後利益が増える。だから、配当が増えるか、利益剰余金が増えるかだ。他の条件が変わらなければ、利益剰余金が増えるだろう。しかし経済的な条件が変わらない限り、それは、金融資産への投資や金融機関からの借入返済を加速するだけのことである。

1652とはずがたり:2016/03/24(木) 07:31:20

三井物産が創業来初の赤字へ、資源下落などで減損2600億円計上へ
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%E4%B8%89%E4%BA%95%E7%89%A9%E7%94%A3%E3%81%8C%E5%89%B5%E6%A5%AD%E6%9D%A5%E5%88%9D%E3%81%AE%E8%B5%A4%E5%AD%97%E3%81%B8%E3%80%81%E8%B3%87%E6%BA%90%E4%B8%8B%E8%90%BD%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%A7%E6%B8%9B%E6%90%8D2600%E5%84%84%E5%86%86%E8%A8%88%E4%B8%8A%E3%81%B8/ar-BBqOAjw
Bloomberg
鈴木偉知郎、Stephen Stapczynski
15 時間前

(ブルームバーグ): 三井物産は23日、2016年3月期の連結 純損益予想(国際会計基準)を700億円の赤字に下方修正すると発表し た。従来予想は1900億円の黒字。資源価格の下落でチリの銅事業など資 源分野を中心に減損損失を約2600億円計上することが響く。赤字転落は 現在の三井物産が創業した1947年以来で初めてとなる。

  市況動向を踏まえてチリの銅事業会社アングロ・アメリカ ン・スールへの投資で900億円、同じくチリで展開するカセロネス銅事 業でも250億円の減損を計上する予定。開発計画が遅れた豪州でのブラ ウズ液化天然ガス(LNG)事業で400億円、豪石炭事業で250億円など のほか、資源以外では海外での一部発電事業における減損300億円も含 めた。

  一方、期末配当は1株当たり32円の従来予想を据え置くとし た。三井物産では同日午後5時から安永竜夫社長と松原圭吾常務執行役 員が都内本社で記者会見する。

  総合商社業界では住友商事がすでに資源価格の下落を主因に 今期1700億円の減損を計上するとして、純利益見通しを期初予想の2300 億円から1000億円へと下方修正している。

1653とはずがたり:2016/03/24(木) 18:16:09
三菱商事、初の赤字…資源価格下落で1千億円超
http://www.yomiuri.co.jp/economy/20160324-OYT1T50076.html?from=ycont_navr_os
2016年03月24日 12時54分

 三菱商事の2016年3月期連結決算(国際会計基準)の税引き後利益が、1000億円超の赤字(前期は4005億円の黒字)となる見通しであることが24日、分かった。


 中国経済の減速などによる資源価格の下落を受け、チリで手がける銅開発事業などで計4000億円規模の損失を計上するためだ。税引き後利益が赤字になるのは1954年に現在の三菱商事が発足して以来、初めてとなる。

 24日午後に業績予想の下方修正を発表する。豪州で参加しているLNG(液化天然ガス)の開発事業についても損失を計上する見通しだ。

 三菱商事は昨年11月、16年3月期の税引き後利益の予想を従来の3600億円から3000億円に下方修正した。その後、資源価格の低迷が長引くとみて、事業や保有資産の精査を進めていた。

 三井物産が23日、16年3月期連結決算(国際会計基準)の税引き後利益が700億円の赤字になるとの見通しを発表するなど、大手商社が資源・エネルギー事業で巨額損失を計上する例が相次いでいる。

1655とはずがたり:2016/03/27(日) 09:40:11
今すぐやめた方がいい、不幸になると科学的に証明されている5つの行動
http://www.msn.com/ja-jp/lifestyle/life/%E4%BB%8A%E3%81%99%E3%81%90%E3%82%84%E3%82%81%E3%81%9F%E6%96%B9%E3%81%8C%E3%81%84%E3%81%84%E3%80%81%E4%B8%8D%E5%B9%B8%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%A8%E7%A7%91%E5%AD%A6%E7%9A%84%E3%81%AB%E8%A8%BC%E6%98%8E%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B5%E3%81%A4%E3%81%AE%E8%A1%8C%E5%8B%95/ar-BBqwXE7#page=2
ライフハッカー[日本版]
2016/03/16

今すぐやめた方がいい、不幸になると科学的に証明されている5つの行動c 株式会社メディアジーン 提供 今すぐやめた方がいい、不幸になると科学的に証明されている5つの行動

Inc.:今よりも幸せになるためには、転職や別れ、長年苦しめられてきた過去のトラウマの解消など、大きな変化が必要なこともあります。この記事で言いたいのは、そのような大きな変化についてではありません。今回は、比較的簡単に変えられるライフスタイルの変化でも、驚くほどすぐに幸せになるという科学的根拠についてです。

生活における一見些細な変化でも桁外れに気分が良くなると、数々の研究で証明されています。些細なことで大きな変化が起こるとわかったら、幸せな気分を壊すと科学的に証明されているものは、今すぐ日々の生活から排除していきましょう。

1. やたらとSNSを見る

Facebookは科学と仲良くありません。SNSのフィードをやみくもにスクロールすると、孤独や妬み、自分の生活や人生に対する不満を感じることが多いと、研究でも裏付けられています。最近の研究でも、SNSをやめるとより幸せを感じることが証明されました。

このような研究のほとんどが、SNSのようなサイトの能動的な利用(実生活で集まるための計画をする、など)と、オンラインで見せるために選りすぐられた他人の生活を受動的に消費することを区別しています。友だちと集まるのは一般的に気分を上げることなので、前者のような使い方はいいですが、後者のような使い方は落ち込むことが多いです。

後者のような使い方は今すぐやめましょう。大好きなSNS無しで生きていくなんて怖くてできないと思う場合は、「Pick the Brain」に載っていた方法を使えば、安心して新しい生活に入っていけます。「SNSをいきなりやめる必要はありません。まずはスマホのSNSのアプリを削除してみましょう。そうすれば、外出先ではSNSから解放されます」。

2. 屋内に1日中いる

人間は、会社の居室に座るように進化していないので、自然の中で幸せを感じるのは何の不思議もありません。緑のあるところを40秒間見るだけでも、生産性は上がります。職場に観葉植物の鉢植えを置くような小さな変化でも、職場全体のパフォーマンスはよくなります。

実際に会社の外に出るともっとパワフルです。研究によると、自然の中で過ごすと、自制心が高まり、気分も上向き、イノベーションや新しいひらめきを促し、当然ながら身体的な健康にも良いです。今週はどれくらい外に出ていましたか?

1656とはずがたり:2016/03/27(日) 09:40:54
>>1655-1656
3. 物質主義的になる

家賃や光熱費の支払いを心配しなければならないのは悲惨です。したがって、基本的な生活費を支払ったあとは、大きな幸せが買えると思うかもしれません。しかし、科学的にはそうではありません。研究によると、基本的な生活に必要なものが満たされると、物質的に過剰に良いものを手に入れようするのは、まっしぐらに不幸に向かう道の1つだと証明されています。

では、もっと良いものが欲しいと思った時は、一体どうすればいいのでしょう?  自分の価値観を意識的に見直す、広告があまり目にはいらないようにする、物質的な物ではなく経験にお金を払うようにするなど、研究によって裏付けられたTIPSはたくさんあります。最新のテレビを買えば1週間は幸せな気分になれるでしょうが、コスタリカのリゾートに旅行に行けば、何年も思い出しては幸せな気分になれます。

4. いつも忙しくする

人間は、何もしないことの重要性を本能的に低く見積もっていると、神経科学的に証明されています。「Scientific American」の最近の記事ではこのように報告されていました。

つまり、常に忙しくしているのは脳に良くない上に、不幸になるということです。(中長期的に見て生産性が下がるのは言うまでもありません)ちょっとひと息つくために机を離れられないほど忙しい人は、自分に優しくしていないのと同じです。罪悪感を感じずに、時々は休憩をしましょう!

5. 創造性を押し殺す

ベストセラー作家のエリザベス・ギルバートは「生き生きとしている人はクリエイティブだ」と言っています。誰にでもクリエイティブなひらめきはあります。ただ、そのようなひらめきを無視していると、悲しくなったり、満足感が得られなかったりします。また、心身共に不健康にもなります。ブログ「Buffer」ではこのように説明しています。

ピカソのように創造力を鍛える必要はありません。ただ、恐怖心を乗り越えて、クリエイティブな趣味に没頭したり、自分の心を自由に羽ばたかせてみましょう。料理でも、編み物でも、ギターを弾くのでも、何でもいいです。自分の創造性を完全に無視するのはやめてください。

1657とはずがたり:2016/04/13(水) 13:57:07

なかなか世界企業として一皮剥けられんなぁ・・(;´Д`)

野村HDが5000人超の大幅な人員削減、欧州株調査など閉鎖へ
欧州の経営資源を削減し、米州にシフトする方針
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/04/post-4895.php
2016年4月13日(水)11時14分

 野村ホールディングス <8604.T>が欧米でコスト削減を行う方針を固めた。欧州が中心で、現在3433人いる陣容のうち約500─600人が削減の対象となる見通し。米州でも、グローバル・マーケッツ部門で一部の人員削減が行なわれる見込み。グループの収益性を改善するのが狙い。複数の関係筋がロイターに述べた。

 コスト削減は、年初来の売買低迷などのマーケット環境を踏まえた措置。関係筋によると、野村は欧州の株式調査(リサーチ)とエクイティ・デリバティブの業務を閉鎖する。一方、欧州株の売買の執行はインスティネットで継続する。

 野村の海外事業はアジアを除き赤字になりやすい傾向にあり、昨年度に海外で500億円の税引き前利益を計上する目標も達成されなかった。12日付の日本経済新聞夕刊は、最大1000人の人員削減になると報じた。

 野村HDは同日夕、欧米で戦略の見直しを行うとのコメントを発表。詳細は27日の決算発表時に開示するとし、具体的な人員削減の規模などは開示しなかった。

 世界的な景気減速や国際的な規制強化を背景とする売買の低迷で、海外の投資銀行もコスト削減の方針を打ち出している。

 クレディスイスは3月、トレーディングなどを行う部門(グローバルマーケッツ)で2000人を削減すると発表。英バークレイズも、数カ国で投資銀行部門の人員削減を行うとともに、日本を含むアジアでの現物株業務から撤退した。

 一方、米州でM&A(企業合併・買収)のアドバイザリー業務や引き受けなどを行う投資銀行業務を強化する戦略は変更しない方針。野村HDは昨年末の経営説明会で、欧州の経営資源を削減し、米州にシフトする方針を示していた。
(江本恵美 トム・ウィルソン)
[東京 12日 ロイター]

1663とはずがたり:2016/04/14(木) 11:14:46

 さて、I案件に戻ります。受政会議に諮っていないという内部統制ルールへの違反があったとしても、内部統制監査として経営監査部がこれを抽出していなければ、あるいは、内実を知ってこれを避けていれば、内部統制監査の結果には何も反映せず、監査人にも不備の存在はわかりません。

 もちろん、これで監査人の責任が軽くなるわけではありません。何度も触れたように、100億円規模の契約は、東芝クラスの会社でも珍しいのです。したがって、監査人は、受注の段階から継続してモニターすべきであり、そうしていれば、受政会議に諮っていないことなどすぐにわかったはずなのです。つまり、そういう実効性ある監査をしていなかったからわからなかったわけで、I案件についても責任は決して軽くはありません。

意図的な損失先送り

 それでは、受注後の推移を見てみましょう(図表1)。

図表1 I案件受注後の推移
http://tohazugatali.we b.fc2.com/biz/funsyoku0202.png

 デザインレビューというのは、単なる外観の調整ではなく、顧客との詳細設計の詰めの協議――いわば仕様確定の協議と思われます。これによって納入する機器の機能、性能も細かく規定されます。2012年4月にファイナルデザインレビューが行われているということは、その時点には、詳細設計も出来上がって、使用する部品や技術なども方針は決まっていたはずです。つまり、この時点では、かなり詳細な見積りが完成していたということですから、直前の3月の想定ロス▲83億円の確度はかなり高いと考えられます。

 工事損失引当金はリスクに備えるための会計処理で、ある決算時点で損失が見込まれていれば計上しなければいけません。原価低減や、値上げ交渉も、その時点で確実なものであれば織り込むこともできますが、不確実であれば、リスクのほうだけ処理をしておく、これが工事損失引当金の考え方です。最高財務責任者(CFO)を務めるくらいの方なら当然知っていることです。したがって、2012年3月の久保CFOの判断は、専門家による意図的な損失先送りということになります。

 問題は、これを監査人がどのように見ていたのかです。100億円規模の工事ですから、きちんとモニタリングをしていなかったとしても、注目していないはずはありません。

 また、製造等の主要部分は米国子会社が担当しています。この会社――TIC社も、従業員1900人、資本金56百万ドルという大企業ですから、監査人がいたはずです。四半期や年度の監査に際して、何もいってきていなかったのでしょうか。前掲のプレスリリースでは、製造の大半はTIC社で行うとされていました。あるいは、日本側の作業だけで赤字が出る見込みだったのでしょうか。

 この辺の状況は、調査報告書全文では不明確なので何ともいえませんが、日米双方の監査人が、徹底した監査を実施しても赤字の見込みがわからなかったということではないように思えます。

 その後の経過を見ると、暗然たる思いに駆られます。受注してから2年、2014年1月には最初の納品が始まるという時期になってきています。そんな時期に、損失見込みが50億円、60億円というレベルを行ったり来たりして改善の見通しもないというのに、社内の人々は、値上げや原価低減で何とかしたいの一点張りです。

内部統制もガバナンスもない世界

 繰り返しますが、東芝は、車両用機器などを得意とする技術者集団なのです。ニューヨーク市やミネアポリス市など、北米での納入実績も豊富です。だからこそ、I案件も受注できたのでしょうが、それが受注から2年もたって、原価の着地見込みが決まらないというのは、どう考えても不自然です。

 東芝のI案件の取扱いを見ていると、現場の責任者も、事業部長も、カンパニー社長(CP)も、コーポレート社長も、さらには、財務部長も、CFOも、監査委員や監査委員長も、当事者全員が、自分の在任中は火を吹かないでくれとばかりに見て見ぬふりをし、後任者への先送りを繰り返してきたようにしかみえません。

 このような経過を見ると、I案件が、会社としてきわめて厄介な存在であったことがわかります。いくら見直しをしても、損失見込みが減らないのです。これに監査人はどのように対処していたのでしょうか。

 何度もいうように、大きな工事案件は、受注から完成・引渡しまで時間がかかります。年度をまたぐことも珍しくないので、監査上は、これを継続して検証するよう、いわばモニタリング体制をとってチェックしていかない限り、内容の把握すら覚束ないのです。

 表の内容からは、SIS社自体も苦慮している様子が垣間見えますが、このような状況では、プロジェクトの管理資料や原価計算資料にも何らかの兆候が含まれている可能性が高かったのではないかと思われます。

1664とはずがたり:2016/04/14(木) 11:14:59
>>1662-1664

 しかし、調査報告書全文には、監査人からI案件についての指摘等はいっさいなかったと書かれています。これは、I案件について、進捗状況をヒアリングするとか、原価見込みを確認するといった、必要な監査手続を実施していなかったからではないかと思われます。

 調査報告書全文には、「会計監査人は、I案件について、監査手続として、2013年度末及び2014年度末に受注損失引当金計上の適切性について、SIS社経理部の経理部員より説明を受けている(※2)。SIS社は、資料に基づきSP(※3)受注アップやCD(※4)施策を説明したが、そのような施策には実現可能性の高くないものが織り込まれていた。しかし、会計監査人は施策の中に実現可能性が高くないものが織り込まれていることに気が付かなかったため、結果として会計監査人による統制が機能しなかった」と書かれています。
(※2)原注では、2013年度上半期末にも受注損失引当金に関する説明を受けている旨記載があります。
(※3)売価。
(※4)原価低減、コストダウン。

 逆に見れば、監査手続としてはこれしか実施していないのです。これではわかるはずがありません。ここで「わかる」と書いたのは、発見できるという意味と、理解できるという意味です。前述のとおり、大型プロジェクトでは受注から完成・引渡しまで、しっかりと追跡していないと内容がわかりません。内容がわからなければ、リスクもわかりません。

 調査報告書全文には、引用部分に続けて、会計監査人には専門的知識等がないから原価低減施策等の実現可能性を精査することには困難が伴うと、監査人をかばうような記述もあります。しかし、原価低減策は、継続してヒアリングしていれば、比較的わかりやすいものです。

 赤字見込みのプロジェクトで原価低減策を実施するのですから、「半年後から始めます」といったのんびりしたプランはあり得ません。したがって、本当に実行している場合、本当に原価低減効果がある場合、原価低減策をヒアリングした半年後に再度ヒアリングすれば、ある程度の結果が見えていなければならないのです。

 四半期決算を前提とすれば、要注意案件として監査人がピックアップしたものは、四半期ごとに進捗状況をヒアリングします。これは工事自体の進捗状況だけでなく、たとえば、顧客との値増し交渉の進捗状況であり、原価低減策の進捗状況であるわけです。四半期ごとにこれから実施する施策を細かくヒアリングし、次の四半期、また次の四半期とフォローしていけば、次第に事実が明らかになってくるものです。継続的なモニタリングというのは、こういうことです。

 I案件について見ると、監査人は、前に引用したような決算期末のヒアリング以外、ほとんどプロジェクトの監査をしていないのではないかと思わざるを得ません。

 東芝のような大手総合電機会社は、企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」が適用になる前から任意で工事進行基準を採用してきました。総合電機というくらいですから、大型プラント、巨大システム、通信その他のネットワーク、発電設備等々、大型、かつ、長期にわたる仕事が昔から多かったからです。

監査人はどのような監査をしていたのか

 当然、東芝を監査してきた監査人は、工事進行基準について十分な知見と経験を有していたと思われます。さらに、平成14(2002)年には、業種別監査委員会報告書第27号「建設業において工事進行基準を適用している場合の監査上の留意事項」が公表され、留意点や、それに対する監査手続等を知る―あるいは再確認する機会もあったはずです。

 しかし、本書で取り上げたいくつかの案件への対処を見ると、東芝の監査人が、工事契約に関して適切な、また、十分な監査を実施していたような気配がほとんど感じられないのです。さまざまな案件の状況を読んでみると、東芝の監査人は、受政会議資料などの本来の監査証拠をほとんどチェックしないで、経理部員からの説明―そしておそらく、経理部員から提供される決算資料のみで監査していたという可能性も否定できません。

 調査報告書全文を読んでいると、そもそも、東芝の監査人は、監査全般においても、気付き事項や、要改善事項、要検討事項といったものについてきちんきちんと経営者や監査委員会に報告していたのかさえも疑問に思えてきます。

 また、未修正事項というものが出てきますが、東芝の監査人は、100億円程度の虚偽表示なら未修正事項で許容できると考えていた節があります。G案件に関する第三者委員会のヒアリングでは、監査人はそうしたことを否定していますが、332百万ドルのロスコンを計上しないとだめだと主張した2日後に、会社が225百万ドルだけ損失処理して決算発表しても、黙認しているのです。この差、107百万ドルは、おおむね100億円に相当します。

1665とはずがたり:2016/04/18(月) 17:25:47

2016/4/18 16:52
丸紅、損失1200億円計上へ 資源価格が下落
http://www.kobe-np.co.jp/news/zenkoku/compact/201604/0009001873.shtml

 丸紅は18日、2016年3月期連結決算で、資源・エネルギー価格が下落した影響などで、事業や資産の評価を引き下げる「減損処理」による損失1200億円を計上する見通しとなったと発表した。

 減損処理に伴い、16年3月期の連結業績予想を下方修正し、純利益見通しを、2月に公表した1800億円から600億円に引き下げた。

 減損損失の内訳は、資源分野が約750億円で、うちチリの銅事業関連が最大で約350億円だった。プラントや穀物事業など非資源分野が約450億円となった。

1668とはずがたり:2016/04/22(金) 09:47:57
昔から俺の持論な訳だだどメガバンクの構図を考えれば丸紅伊藤忠商事・三井住友物産・三菱商事(双日吸収合併)で一番すっきりする訳だが。。
2社になると1+1=2以下に落ちてなってしまうのかねぇ。。

伊藤忠と丸紅ほか 総合商社の部門合従連衡はすでに開始
http://www.news-postseven.com/archives/20160422_404660.html
2016.04.22 07:00

 月刊誌『文藝春秋』(5月号)の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」で報じられた三井物産と住友商事の“合併情報”──。実現するなら旧財閥の壁を越えた業界大再編となる仰天話だが、意外なことに、名前の挙がった両社の中には“あり得ない話ではない”と受け止める社員が少なくなかった。

 コラムが説得力を持ったのは、利益に占める資源ビジネスの割合が9割だった物産と、ジュピターテレコム(JCOM)など非資源分野からの利益が8割に上る住商が、「WIN-WINの組み合わせ」(40代三井物産社員)だからだ。

 仮に両社が合併すれば、長く業界トップを走ってきた三菱商事も、非資源分野の成功で躍進した伊藤忠も凌ぐ巨大総合商社の誕生となる。

 もっともビジネス環境を見渡せば、「総合商社の統合」のハードルは低くなっている。業界関係者が語る。

「商社以外の業界で再編が進んだことの意味は大きい。たとえば、かつて住商は同じ住友グループの住友金属から独占的に商品を卸していた。一方、三井物産は新日本製鐵のほぼ独占的な卸問屋の役割を果たしていた。その時代に商社サイドの合併話が浮上していたら、双方の取引先から“ふざけるな”とクレームが入ったでしょう。

 しかし、住友金属と新日本製鐵は経営統合し、新日鐵住金になった。鉄鋼業界に限らず取引先となる業界の再編が進んだことで、商社統合の抵抗感は薄れてきたといえます」

 三菱商事出身の経済評論家・山崎元氏も今後の商社再編はあり得ると考える。

「大手総合商社が三菱 、物産、住商、伊藤忠、丸紅の5社というのは多すぎる。海外の巨大プロジェクト落札を競う時なども、結局ファイナンスするのはメガ3行とJBIC(国際協力銀行)。商社5社が値段を叩き合うのは無駄でしょう」

 すでに、部門ごとでは合従連衡の動きがある。伊藤忠と丸紅は2001年、鉄鋼製品部門をそれぞれ分社して統合し、「伊藤忠丸紅鉄鋼」が発足。2003年には三菱商事と日商岩井(現・双日)の鉄鋼部門を統合した「メタルワン」が設立されている。

 携帯電話販売国内最大手の「ティーガイア」は2008年、物産の子会社と、三菱・住商の合弁会社の対等合併によって生まれた会社だ。

「同じような部門単位の統合は今後もあるでしょうし、子会社同士の合併から本体に波及することもないとは言えません」(同前)

 厳しい冬を迎えた総合商社の「新時代」の姿は、想像のつかないものになっている。

※週刊ポスト2016年4月29日号

1669とはずがたり:2016/04/22(金) 09:50:11

ワラ>『物産はネッカチーフ』『住商は雑巾』

三井物産と住友商事の合併観測 ハードルは低くない状況か
http://www.news-postseven.com/archives/20160419_404283.html
2016.04.19 07:00

合併観測にハードルは?

 いま、商社マンたちの間で話題なのが、三井物産と住友商事の“合併情報”を報じた、月刊誌『文藝春秋』(5月号)の名物コラム「丸の内コンフィデンシャル」だ。同コラムには、次のようにある。

〈ここにきて業界筋でしきりと飛び交っているのが、三井と住友商事との合併観測だ〉

〈一部では「新会社の社名は『三井住友商事』になるのか、それとも『住友三井物産』か」といった気の早い話まで取り沙汰されている〉

 実現するなら旧財閥の壁を越えた業界大再編となる仰天話だが、意外なことに、名前の挙がった両社の中には“あり得ない話ではない”と受け止める社員が少なくなかった。

 総合商社の合併といえば、リストラの末に経営統合に至った双日(2003年に日商岩井とニチメンが合併)の例がある。それと比べると、三井物産も住友商事も2兆円以上の自己資本があり、多少の赤字ですぐに「合併による救済が必要」という状況になるとは考えにくい。

 ただし、ビジネス環境を見渡せば、「総合商社の統合」のハードルは低くなっている。業界関係者が語る。

「商社以外の業界で再編が進んだことの意味は大きい。たとえば、かつて住商は同じ住友グループの住友金属から独占的に商品を卸していた。一方、三井物産は新日本製鐵のほぼ独占的な卸問屋の役割を果たしていた。その時代に商社サイドの合併話が浮上していたら、双方の取引先から“ふざけるな”とクレームが入ったでしょう。

 しかし、住友金属と新日本製鐵は経営統合し、新日鐵住金になった。鉄鋼業界に限らず取引先となる業界の再編が進んだことで、商社統合の抵抗感は薄れてきたといえます」

 一方で、物産と住商が互いを「社風の違う会社」と見ているのも事実だ。住友商事の40代社員が言う。

「〈人の三井〉というだけあって、物産の社員は個人の裁量がある程度認められていて、社員も自信に溢れている。プライドが高いとも言えますが……。その点うちは〈石橋を叩いて渡らない住友〉です。みんなで考えて、慎重に判断する」

 三井物産中堅社員は、女性社員の扱いの違いで表現する。

「私が入社した頃、女性の事務職の扱いについてよく、『物産はネッカチーフ』『住商は雑巾』といわれていた。物産は女性を蝶よ花よで扱うけど、責任ある仕事は任せない。一方の住商は体育会系色が強くて、お茶みにコピーにと人使いが荒い。雰囲気は全然違います」

 もちろんこうした社風の違いは「いざ合併となれば、気にしている暇はない」(合併経験のある住友グループ企業社員)ので、決定的な障害とはならない。

※週刊ポスト2016年4月29日号

1670とはずがたり:2016/04/24(日) 16:03:59
丸紅:損失1200億円を計上へ 資源価格下落で減損処理
http://mainichi.jp/auth/guide.php?url=%2Farticles%2F20160419%2Fk00%2F00m%2F020%2F038000c
毎日新聞 2016年04月19日 05時12分

丸紅は18日、2016年3月期連結決算で、資源・エネルギー価格が下落した影響などで、事業や資産の評価を引き下げる「減損処理」による損失1200億円を計上する見通しとなったと発表した。

減損処理に伴い、1…

1671とはずがたり:2016/04/28(木) 21:22:17
三菱グループの最高決定機関「金曜会」の知られざる権力構造と裏序列
http://diamond.jp/articles/-/85099
週刊ダイヤモンド編集部 【16/01/30号】 2016年1月25日

1672荷主研究者:2016/05/04(水) 11:23:16

http://diamond.jp/articles/-/88554
住友グループ社長会「白水会」秘密の掟と17社の序列

週刊ダイヤモンド編集部

【16/4/2号】 2016年3月28日

 『週刊ダイヤモンド』4月2日号の第1特集は、「日本をつくった27大財閥の素顔 三井・住友名門烈伝」です。戦国・江戸時代から続いてきた三井、住友グループ。その歴史と伝統は最強"財閥"の三菱グループもかないません。時代を超えて受け継がれてきた「名門力」に迫ると同時に、各地に散らばる「地方財閥」にも焦点を当てました。日本の名門烈伝をお届けします。

Illustration by Mitsuru Tokishiro

 旧三大財閥の社長会の中で、戦後最も早い1951年に発足したのが、住友グループの「白水会」だ。“純血”を重視する白水会には、その結束力を維持するための秘密のおきてがある。

 「血判状」──。白水会に出席するグループ企業の社長が、そう例える書類がある。

 住友精神の順守などが定められたこの書類に押印しなければ、白水会への出席は認められない。まさか本当に指を切り、自らの血で押印するわけではないだろうが、決意の固さを示す誓約書のような存在だ。

 決して外部に明かされることのない血判状をめぐり、白水会を二分するような激論が交わされたのが、2012年に新日本製鐵と経営統合した住友金属工業(いずれも当時)の白水会離脱問題だ。

 三井住友銀行、住友化学と並ぶ“御三家”の一角だった住金は当初、「白水会への出席は継続したい」(友野宏社長=当時、11年9月の記者会見で)との意向を持っていた。

 新会社名に住友の名前を残すため、「新日鐵住友」への社名変更も模索したが、新日鐵側が拒否。新日鐵はどの企業グループにも属さず、三菱系や三井系の企業とも取引がある。当時の売上高で約3倍の開きがある新日鐵との合併を選択した時点で、住金側の意向が通る可能性は低かった。

 住金は結局、血判状に押印することができず、白水会を去った。「住友の結束力の源泉は、この血判状にある。住友精神を守れない会社が残っていいはずがない。はんこを押せないのであれば、出ていってください、ということだ」。当時の出席者は打ち明ける。

 住友大阪セメント(発足1994年)、三井住友銀行、三井住友海上火災保険(同2001年)、三井住友建設(同03年)、三井住友信託銀行(同12年)と、90年代以降、住友系はグループ外企業との統合が相次いだ。

 しかし、こうした企業は今も白水会に残る一方、住金や住友軽金属工業(現・UACJ)のように離脱した企業もある。この違いは、血判状に押印できたか否かにあったというわけだ。

 では、現在の白水会を構成する17社にヒエラルキーは存在するのか。結論から言えば、全社が持ち回りで幹事を務め、全会一致で採決するため、御三家を頂点とする三菱金曜会のようなパワーバランスは生まれにくい。

 しかし、全会一致の場で「誰もが意見を気にしている」(グループ企業幹部)存在がある。それが、住友金属鉱山だ。

 金属鉱山の創業は、住友の業祖、蘇我理右衛門が銅精錬と銅細工を開業した1590年にさかのぼる。その後、別子銅山を操業し、住友興隆の礎を築いた。

 この別子事業から派生した化学、住友重機械工業、住友林業を合わせた“新居浜4社”は、グループ内で一目置かれる重鎮だが、中でも金属鉱山は「長兄」(前出の幹部)扱いの別格なのだ。

 他に大阪の住友伸銅場から派生した住友電気工業のように、ものづくりに基盤を置く鉱工業系の企業群が、白水会の保守本流だ。

 一方、住友は明治時代、別子の利益を元手に銀行や保険などへ事業を拡大した。これら金融系の多くには三井の血が混入しており、比較的オープンで実利を重んじ、住金の残留にも反対しなかったとされる。

 そして戦後生まれの新興グループが、住友商事と住友不動産だ。知名度も高い成長企業だが、重鎮がそろう白水会では「末っ子」(住友商事社員)扱いだ。

 4月には、大日本住友製薬と住友ゴム工業が住友グループ広報委員会から“昇格”し、白水会は19社となる。それぞれ化学と電工の系譜に連なる鉱工業系だ。2社が血判状に押印したのは言うまでもない。

1673荷主研究者:2016/05/04(水) 11:24:03
>>1672-1673 続き

住友本家とグループ企業の濃密な関係

 住友が、三菱、三井と決定的に異なるのが、創業家の存在だ。岩崎家が“断絶”した三菱、11家もある三井に対し、住友は1人の家長を頂く。現在の家長は、元住金社員の17代目・住友吉左衞門芳夫。18代目は電工に勤めている。

 白水会のメンバーは社長就任時、住友精神の原点である「文殊院旨意書」のレプリカなどを家長から受け取る。さらに住友家別邸の有芳園で催される春の祠堂祭、そして都内ホテルで秋に催される御招宴に出席し、家長と定期的に顔を合わせている。社長らの出席率は極めて高く、住友家への忠誠心を示す場となっているようだ。

 また住友家の財産管理や後見に当たるのが、住友家評議委員会だ。そのメンバー構成を見れば、白水会の中核を成す有力企業の長老が名前を連ねていることが分かる。

 住友家とグループ企業は、こうして絶対的な主従関係と住友精神を維持し続けているのだ。

創業一族の凋落と裏腹に財閥企業は変質遂げて業容拡大

 『週刊ダイヤモンド』4月2日号の第1特集は、「日本をつくった27大財閥の素顔 三井・住友名門烈伝」です。

 「盛者必衰の理」と詠んだ『平家物語』。平氏は没落しましたが、三井、住友という日本屈指の企業グループにその句は当てはまらなかったようです。

 戦国・江戸時代の創業から三井が340年、住友に至っては420年を経た平成の現代においてなお、日本経済の枢要を担う企業集団であり続けているからです。

 本誌が独自推計した日本の三大企業グループの経済圏規模では、三菱の後塵を拝してはいます。それでも三井は254兆円、住友は190兆円という世界的にもまれな巨大な企業経済圏を形成しています。

 もちろん銀行の経営危機など多少の浮き沈みはありました。三井、住友のピークは両グループが巨大財閥として勇躍した戦前。1930年末、全国主要会社433社の全資本金のうち、三井財閥と住友財閥だけで全体の2割を占めたとの推計があります。特に三井は「世界の七つの海に三井の船が浮かばぬ日はなし」とまで評されたそうです。

 34年の全国長者番付では、トップ10に両財閥から三井が6人、住友が1人の計7人もランクインするほど、創業一族も栄華を極めていました。

 しかし、戦後の財閥解体で資産を没収された創業一族の財力に往時の勢いはありません。ただ、創業家の凋落とは裏腹に、財閥企業は企業グループへと組織形態を変化させ、高度経済成長の波に乗ってグループの業容を広げてきました。

 今回本誌は、三大企業グループの中で戦後に利益を伸ばした企業のランキングを独自に作成しました。戦前の利益を物価調整した上で、現在の純利益が対戦前利益で何倍になったかを算出しました。

 上位の多くを戦後に伸びた金融系の企業が占めています。中には倍率が1000倍を超す企業もあります。住友の中でも特に歴史が古く、グループの土台を作った住友重機械、住友化学などが低い倍率だったのとは対照的です。かつて三井のドル箱企業だった三井鉱山(現日本コークス)も成長率ゼロ倍に沈んでいます。

 時代の変遷とともにグループの稼ぎ頭となる企業が変化する。それは多様多種な企業をグループ内に抱えていたからこそ可能だったといえるでしょう。

 では三井、住友の両グループは千差万別の事業を持つ企業群をいかにまとめ上げ、継続・発展させてきたのでしょうか。そこには、戦国・江戸時代から続く「名門」としての知恵と経験がありました。本特集でその知られざる内幕に迫ります。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 山口圭介)

1674荷主研究者:2016/05/04(水) 12:37:12

http://www.sankeibiz.jp/business/news/160415/bsc1604150500002-n1.htm
2016.4.15 05:00 Fuji Sankei Business i.
住友商事本社、大手町に移転 18年秋めど

 住友商事が2018年秋をめどに本社を中央区晴海から千代田区大手町に移転することが14日、分かった。移転先は東京・大手町の旧東京国際郵便局や逓信博物館の跡地再開発で建設されるオフィスビルになる。

 このほど、みずほ信託銀行と賃貸契約を結んだ。みずほ信託銀行は、国からテナントの誘致から再開発後の売却までを手掛ける事業を受託している。

 住友商事は01年5月に竹橋(千代田区)から、晴海(中央区)の晴海アイランド トリトンスクエアに本社を移転した。

 19年度に創立100周年の節目を迎えるのを機に利便性の高い大手町に本社を移転し、従来以上に顧客重視を徹底する。同社は05年に保有する土地と建物を、証券化の手法で売却しており、現在はファンドから賃貸している。

1675とはずがたり:2016/05/07(土) 11:59:29
>■日本は「世界第3位の経済大国」では無い。
>27位  日本         36,332ドル
>■日本は貧乏な国になりつつある。
>それは経済がほとんど成長していないのに年金・医療など社会保障費の支出が毎年増え続けているからだ。帳尻を合わせるには誰かがワリを食う以外にやりくりする方法は無い。
>これらのひずみが若者と非正規雇用者に集中している。

なぜスイスのマクドナルドは時給2000円を払えるのか?
http://blog.livedoor.jp/sharescafe/archives/43721475.html
2015年04月22日 06:01
中嶋よしふみ シェアーズカフェ・オンライン編集長 シェアーズカフェ株式会社・代表取締役社長 ファイナンシャルプランナー

先日、ファストフード店の時給を1500円以上にあげるべき、というデモが行われた。

デモの根拠として、「ドコの国は時給が○○円だから日本でも1500円は可能」という意見も散見された。国名は人によって異なるが、アメリカ、オーストラリアなどの国がいくつか挙げられていた。果たしてこの意見は正しいのだろうか。

結論を先に言ってしまえば100%間違いである事は議論の余地もない。物価水準が異なり、なにより豊かさの水準が異なるからだ。ただ、このような指摘はファストフード店の非正規雇用者にとどまらず、なぜ日本人の所得は下がっているのかを考えるきっかけとなりうる。

■ビッグマック指数とは?
購買力平価(こうばいりょくへいか)という考え方がある。簡単に説明すると世界各国の物価水準は摩擦が無く貿易されれば同じ物なら同じ価格になるように為替水準は調整されるはず、という理論だ。

そして世界中で売られているマクドナルドのビックマックを基準に購買力平価を計算したものが「ビックマック指数」だ。ただし、同じ商品であっても国ごとに原価が違うので半分くらいは冗談も含んだ「雑な指標」という事になってしまうが、マクドナルドの賃金を考えるのなら多少は参考になるだろう。

日本で時給1500円が可能という根拠として、以下のような国が挙げられていた。

アメリカ、オーストラリア、ドイツ、スイス、ルクセンブルク、ノルウェー

実際、アメリカのマクドナルドは給料の引き上げにより平均時給が10ドルになったと先日報道された。今の為替水準ならば1200円くらいになる。地域によって最低賃金はもっと高く引き上げられる場所もあるようだ。アメリカ以外でも最低賃金が今の為替水準で1500円以上の国もあり、スイスにいたってはマックの店員は時給で2000円も貰っているという。

■世界各国のビックマック価格
では日本とこれらの国をビックマック指数で比較するとどうなるか。以下の一覧は2015年1月時点で円換算した際の価格だ(1ドル117.77円 56か国)。
1位 スイス      888円 2.4倍
2位 ノルウェー    742円 2.01倍
6位 アメリカ     564円 1.52倍
15位 オーストラリア 509円 1.38倍
18位 ドイツ      501円 1.35倍
38位 日本       370円 
※ルクセンブルクは調査対象外
(世界のビッグマック価格ランキング 世界経済のネタ帳)

いずれの国も日本より随分高い。スイスは世界一物価が高い国として知られるが、日本の2倍以上とかなりの高水準だ。これらの数字を見れば、賃金格差の大きな原因として価格差、つまり物価の差がまずはあげられる。これだけ価格差があれば賃金格差も当然という事だ。

さて、これらの国を見てもう一つの事に気づいた人もいるのではないかと思う。いずれも先進国であり、しかも日本より豊かという点だ。

1676とはずがたり:2016/05/07(土) 11:59:53
>>1675-1676
■日本は「世界第3位の経済大国」では無い。
日本は世界第3位の経済大国で、他国よりこんなに賃金や物価が低いのはおかしいと思う人も居るかもしれない。しかしこれは国としての数字であり、一人当たりで考えると全く違う世界が見える。

日本はGDPで中国に追い抜かれたが、中国を日本より豊かな国だと思う人はあまりいないだろう。人口を考慮すれば一人あたりの所得水準は日本よりかなり低いからだ。ではそれと同じように各国の一人あたりのGDPを日本と比較するとどうなるか(2014年、187か国)。

1位  ルクセンブルク   111,716ドル  3.07倍
2位  ノルウェー      97,013ドル  2.67倍
4位  スイス        87,475ドル  2.41倍
5位  オーストラリア    61,219ドル  1.69倍
10位  アメリカ       54,597ドル  1.50倍
18位  ドイツ        47,590ドル  1.31倍
27位  日本         36,332ドル 
(世界の一人当たりの名目GDP(USドル)ランキング - 世界経済のネタ帳)

北欧やスイスは日本と比較して2倍から3倍と際立って高い。他の欧米諸国も日本より何割も高い数字が並んでいる。

日本より上位には多くの先進国と一部の産油国がランクインしている。しかも28位にイタリア、29位にはスペインと、欧州危機の引き金になると言われるほど経済が悪化していた国(PIGS)が肉薄している。為替水準の変動や今後の景気動向次第で、両国に追い抜かれても全くおかしくない。

■日本は貧乏な国になりつつある。
そしてなにより日本の27位という数字に驚いている人も居るかもしれないが、これが実態という事だ。なんで他の国は時給1500円を実現出来ているのに日本には出来ないのか?と問われるなら、「日本が他の国より貧乏だから」というほかない。

つけくわえれば新興国の成長により相対的な豊かさも低下している。この点について最近は多少落ち着いたものの、長期的なエネルギー・食料品・資源価格の高騰などを見ても分かる。自国が横ばいでも他国が成長すればそれは衰退と同じだ。

日本人の所得は名目で下がり続けているが、これはデフレが原因ではない。国として貧乏になりつつあり、所得が下がって購買力は落ち、結果としてデフレになっていると考える方が正しい。名目所得は過去20年でアメリカは7割、欧州でも4割上がっているが、日本は1割も下がっている(日本総研 政策観測No.33 2012/02/27)。

しかも現在の水準は毎年膨れ上がる莫大な借金と極端な金融緩和で下支え・水増しされている事も考慮すれば、身の丈に合った所得水準・生活水準はもっと低いと考える方が自然だ。

■時給900円で1500円分の仕事をやらされている?
給料を上げろというデモが起きた背景に、仕事と賃金のバランスが崩れてきたことがあげられるだろう。年々増加する非正規雇用者の割合を考えれば、社員が担っていた業務をアルバイトが行う事もすでに珍しい事ではない。

同一労働・同一賃金が実現していない日本で、非正規雇用者の増加とはつまり賃金の低下だ。なぜこんな事が起きるのか。それは経済がほとんど成長していないのに年金・医療など社会保障費の支出が毎年増え続けているからだ。帳尻を合わせるには誰かがワリを食う以外にやりくりする方法は無い。

過去に景気が好調な時でも「景気回復を実感できない」と繰り返し言われてきたが、それもなんらおかしい事ではない。1%や2%程度の成長では現状維持がやっと、というほど日本は高コスト体質になっている。これらのひずみが若者と非正規雇用者に集中している。

仕事がきつくなっているのに賃金が増えなければ実質的な所得の低下ともいえるが、それも株主や経営者が搾取しているせいではなく、国全体が高コストで貧乏になっている事が強く影響している。同じ仕事内容でも発展途上国なら時給で1ドル、日本なら10ドル、北欧なら20ドルという事はあるだろう。この賃金格差は経済格差、豊かさの格差としか言いようがない。

経営者の報酬をゼロにしてもアルバイトの時給は1%も増やせない。「マクドナルドの原価を調べて見た」でも書いた通り、現在のマックは店舗の人件費が1割増えただけで粗利が消える。株主への還元を辞めれば資金の出し手がいなくなる。結局給料を上げる方法は経済を成長させる事、という以外に解決策はない。

1677とはずがたり:2016/05/07(土) 12:32:56
>米国経済は内需中心型となっており、自国民による消費で経済を成り立たせていますから、中国はモノを買うだけの相手にしか過ぎません。多くの米国人にとって、中国の景気失速は自身の生活とは無関係の出来事です。

>今の日本人は基本的に保守的ですから、経済構造の転換を望みません。かつては内需中心型経済に転換しようという動きも見られましたが、最終的に日本が選択したのは、従来型の製造業をそのまま残すという道でした。

アベノミクスが失敗(円安誘導したのに輸出が伸びず生産への投資が伸びず賃金も伸びなかった)のは日本が内需主導に転換してたからであって,そもそも内需主導のアメリカでさえ今回のトランプ・サンダース旋風は内需主導が必ずしも巧く行ってないことの証明であるからこの文章の主張は必ずしも説得力が無いなぁ。。

アメリカがICT産業による知識・技術主導を主軸に据ゑたのに対して日本が周回遅れの中国・東南アジアへの投資による産業振興を主軸に据ゑたのが問題ではないかと思う。勿論日本がICT産業主軸で巧くやって行けたかどうかは判らない。

なぜ日本だけが中国景気失速の影響を受けてしまうのか
https://thepage.jp/detail/20151129-00000006-wordleaf
2015.11.30 07:00

 日本のGDP(国内総生産)が2四半期連続のマイナスとなったことで、景気後退が懸念されるようになってきました。中国景気の影響をモロに受けた格好ですが、米国や欧州はほとんどといってよいほど中国の影響を受けていません。かつて日本経済は「米国がくしゃみをするとカゼを引く」と言われましたが、最近では「中国がカゼを引くと日本もカゼを引く」状況になっているようです。

目立つ日本の景気の悪さ、欧米は内需中心型


中国が生産する工業製品の多くは、米国に向かう(2015年7月資料写真、ロイター/アフロ)
 日本の7〜9月期の実質GDP成長率は年率換算でマイナス0.8%と、2四半期連続のマイナス成長となりました。個人消費はまずまずの水準だったのですが、企業の設備投資が伸び悩み、輸出もあまり増加しませんでした。同じ期間、米国の成長率はプラス2.1%、欧州の成長率はプラス1.2%だったことを考えると日本の景気の悪さが目立ちます。

 日本企業の設備投資に対する消極姿勢は、今に始まったことではありません。しかし、成長率が2四半期連続のマイナスとなった最大の原因は、やはり中国の景気失速にあるとみてよいでしょう。

 中国は規模でこそ世界第2位の経済大国となりましたが、1人あたりのGDPは日本の5分の1であり、経済構造は依然として途上国型です。つまり原材料や部品を輸入し、最終製品の組み立てを行って、それを先進国に輸出するという仕組みです。

 中国が生産する工業製品の多くは、米国に向かいます。つまり米国が世界経済における最終需要地となっているわけです(欧州もそれに準じるとみてよいでしょう)。米国経済は内需中心型となっており、自国民による消費で経済を成り立たせていますから、中国はモノを買うだけの相手にしか過ぎません。多くの米国人にとって、中国の景気失速は自身の生活とは無関係の出来事です。

日本が選択した製造業を残すという道

 ところが日本の場合そうはいかない事情があります。今の日本人は基本的に保守的ですから、経済構造の転換を望みません。かつては内需中心型経済に転換しようという動きも見られましたが、最終的に日本が選択したのは、従来型の製造業をそのまま残すという道でした。

 そうなってくると、工業製品を中国や米国に輸出し、そのための設備投資で内需をカバーするという従来の図式が続くことになります。米国向けの輸出は好調ですが、中国の景気が失速してしまうと、中国国内向けの製品の輸出は伸び悩み、設備投資も萎んでしまいます。

 日本はGDPの6割が個人消費となっており、内需型経済への転換はそれほど難しくないと考えられます。しかし、それを実現するためには、企業のビジネスモデルを抜本的に転換しなければなりません。経済構造が変わらない以上、中国経済に依存する状況は当分の間、続くことになります。

(The Capital Tribune Japan)

1678とはずがたり:2016/05/12(木) 16:10:16
2016年4月28日
経済の死角
ある日、突然捨てられる会社〜ユニクロ、マックの失敗は他人事ではありません
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/48503
あんなに光り輝いていたブランドも、消費者の信頼を失うのは一瞬だった。デフレ下で大成功を収めた企業ほど、現在、苦境に喘いでいる。彼らはどこで何を間違ったのか。ビジネスの潮目が変わった。

…まず要因として挙げられるのは、度重なる商品価格の引き上げだ。…

もちろん、ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長も、このことは百も承知だ。決算発表の場で柳井会長は、「より買いやすい値段にしたい」と発言し、商品の値下げを示唆した。だが、価格を下げれば消費者が戻ってくる、というほど単純な話ではない。

ユニクロの不振には値上げよりも重大な要因がある。それは、ユニクロというブランド自体が消費者から「飽きられた」という事実だ。いったいなぜなのか。

流通業界の専門誌『2020Value Creator』編集長の田口香世氏は、商品から革新性が失われたことを理由に挙げる。

「たとえばユニクロのヒートテックは、これまで女性に『ババシャツ』と呼ばれていた肌着を、おしゃれで機能的な商品に革新しました。素材も東レと一から開発し、それまでにない製品を生み出した。ところが、最近はそういうイノベーションがなくなっています。

ヒートテックもフリースも多くの人はすでに持っています。品質がいいため、頻繁に買い換える必要もありません。」

結局はダイエーと同じ

現在のユニクロが置かれた状況は、末期のダイエーの道をなぞりつつあるのではないか、とも田口氏は指摘する。

「かつてダイエーの中内功さんはメーカーが持っていた価格決定権を奪い、『価格破壊』によって流通革命を起こしました。その結果、多くの庶民が欲しいものを安く買えるようになり、暮らしは豊かになった。

ところが、中内さんは徐々に消費者が見えなくなってしまいました。末期のダイエーは『何でもあるけど、欲しいものはない』と揶揄されるようになり、消費者から見捨てられたのです。

大衆はわがままで、消費者は移り気です。かつてのダイエーのように、イノベーションが止まると消費者は離れ、どんなに巨大な企業であっても衰退が始まる危険性に直面するのです」

30年以上にわたってトップに君臨し続ける柳井会長その人の「カリスマ性」の限界も、ユニクロの失速と無縁ではあるまい。ダイエーで中内功氏に長年仕えた元幹部がこう話す。

「ダイエーでは、中内さんがカリスマとして君臨し、一人で経営判断をする状況が続きました。そのうちに、後継者問題が出てきて社内が混乱し、最後は組織として機能しなくなった。ダイエーやユニクロに限らず、すべての企業は消費者の目線を忘れずに、変化に対応しなければ生き残れない。

言うのは簡単ですが、これが実に難しい。とくにカリスマ経営者がいる場合、目線が消費者とズレてしまうと、修正することが困難なのです。

ダイエーはじわじわと衰退していった印象ですが、今のようにグローバル化が進んだネット社会では、衰退するスピードも早い。勝ち組と賞賛された企業があっという間に立ち行かなくなる事態もありえるでしょう」

1679とはずがたり:2016/05/12(木) 16:10:32
>>1678-1679
消費者をバカにするな

株主からの過度の要求も問題だ。経営者は、株主から目先の利益を追求することを強いられ、それを優先することで、結果として消費者のニーズに応えることがなおざりになっていく。城南信用金庫前理事長(現相談役)の吉原毅氏が嘆く。 … そう言う吉原氏が「飽きられない経営の第一人者」として挙げるのは、トヨタ自動車の豊田章男社長である。

「トヨタも一時期、利益至上主義に走り、大企業病に陥っていましたが、見事に持ち直しました。彼は社内の誰よりも自動車が好きで、就任後、『もっといいクルマづくり』をスローガンに、社内の雰囲気がガラリと変わったと聞きます。従業員もユーザーに喜んでもらえるいい自動車を作りたいと奮起しますから、消費者にも支持され、結果として業績もついてくる。2年連続で過去最高益を更新しています。

松下幸之助さんも『利益を目的とした経営者は視野狭窄になり、判断を誤る』といった趣旨の発言をしています。事業拡大ばかりを考えている経営者は、この言葉の意味をかみしめてほしい」



ユニクロに先んじて消費者に見捨てられ、今も苦境に喘ぐ日本マクドナルドホールディングス(以下、マック)でも、「飽きられる」プロセスは同様だった。

マックは'15年12月期決算で、過去最悪となる349億円の巨額赤字を計上。わずか4年前に132億円の過去最高益を叩き出した「リーディングカンパニー」は、一瞬で消費者の信頼を失った。

百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏が分析する。

「マックは原田泳幸前社長時代に、消費者の信頼を失う行動を取ってきました。かつてのコアなお客さんは、ハッピーセットのオモチャを子供が欲しがる家族連れでした。ところが、ナゲットに使われている鶏肉の賞味期限切れ問題によって、健康面でミソをつけた。子育て世帯が足を向けなくなり、それは今も続いています。そこでマックは値上げによって客単価を上げる戦略を取ります。すると、学生や主婦など、安い価格で長時間過ごす客の足を遠のかせることになったのです」

その結果、どの顧客に向かってどんな商品を提供するのかが不鮮明になり、客離れが進んでいく。

飽きられない経営とは何か

プリモリサーチジャパン代表の鈴木孝之氏は、マックが目先の利益を追うために、品質の保持や人材育成を弱体化させたことも、経営不振の一因だと指摘する。

「マックは直営店を売却し、フランチャイズ店にシフトしていきました。これは短期的な表面上の収益を出すための対策にすぎません。売却すれば利益が出るのは当たり前ですが、売る店舗がなくなれば、収益は悪化する。
それまでは本社の人間が責任をもって人材を育成し、結束力を培っていましたが、フランチャイズ化はある種のリストラですので、マネジメント体制が弱くなっていくのは避けられません」

盛者必衰の理。SNS全盛の現在、ちょっとした違和感がツイッターやフェイスブックなどで一気に拡散し、「共感」の輪を広げていく。その結果、企業への違和感が「飽き」として表面化し、消費者に捨てられる。だからと言って縮み上がっていても、打開策は生まれない。

ビジネスとは何か。その原点に戻ることこそが重要だ。前出の吉原氏は「使い古された言葉かもしれませんが」と前置きをした上で、「感動」をキーワードに挙げた。


「週刊現代」2016年4月30日号より

1680とはずがたり:2016/05/16(月) 19:57:52

伊藤忠社長:最高益達成を直前に「苦渋の決断」-損失1250億円を計上
http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e4%bc%8a%e8%97%a4%e5%bf%a0%e7%a4%be%e9%95%b7%e6%9c%80%e9%ab%98%e7%9b%8a%e9%81%94%e6%88%90%e3%82%92%e7%9b%b4%e5%89%8d%e3%81%ab%e3%80%8c%e8%8b%a6%e6%b8%8b%e3%81%ae%e6%b1%ba%e6%96%ad%e3%80%8d%ef%bc%8d%e6%90%8d%e5%a4%b11250%e5%84%84%e5%86%86%e3%82%92%e8%a8%88%e4%b8%8a/ar-BBsHDFm?ocid=spartandhp#page=2
鈴木偉知郎、Stephen Stapczynski
2016/05/06

(Bloomberg) -- 「苦渋の決断だった」。伊藤忠商事の岡藤正広社長は6日の決算発表会見で、前期(2016年3月期)の純利益(国際会計基準)が期初目標の3300億円を約900億円下回ったことについてこう振り返った。

  同社が発表した前期の純利益は前の期に比べて20%減の2404億円だった。1-3月期に欧州タイヤ事業やオーストラリアの石炭事業、青果物販売のドール事業、繊維事業などで減損損失や事業撤退に関連する損失を計1250億円計上したことが響いた。15年3月期に計上した過去最高益3006億円の更新を見込んだ期初予想から一転、2期ぶりの減益となった。

 岡藤氏は「3月20日過ぎまでは当初の3300億円は秒読みだった」と明かした。ところがその後、三井物産や三菱商事が大規模な減損損失を計上するとして、ともに最終赤字に陥る見通しだと発表。「皆が試合を放棄する中で1人だけ気を吐いて汗をかいてゴールするのがいいのか、いろいろな意見があった」という。

  一方で「伊藤忠は今まで必ず予算を達成してきた」との思いもあった。出した答えは「今期以降を考え、あくまで数字よりは順位。そこで急きょ落とせるものは落とし、われわれは今期に勝負をかける」として懸案事項だった損失計上を前倒しで処理したという。

  非資源、資源の分野を問わずに資産の入れ替えを加速し、低収益事業からの早期撤退を徹底するとともに、もっとも保守的な前提条件でのれんや無形資産の価値を評価して最大損失額を織り込んだ。「総合商社の成長戦略が資源分野から非資源分野に移行することを前提として16年度以降のいかなる経済環境の変化にも耐えうるより盤石な体制を築くために、一段踏み込んだ処理を断行した」と述べた。

5社すべてが計画未達

  前期業績は三菱商事や三井物産が初の赤字決算を見込み、住友商事と丸紅も業績を下方修正した。唯一、期初予想を据え置いていた伊藤忠も会社予想を下回る結果となり、総合商社5社すべてが計画未達となる見通し。

  伊藤忠は減益でも純利益で初の商社トップになる見通しだが、他社が落ち込んでいる中では「値打ちはない」と岡藤社長。「今期は全社員一丸となって最高益更新を目指す」とした。同社は今期(17年3月期)前期比46%増の3500億円の純利益を見込んでいる。

1681とはずがたり:2016/06/01(水) 13:08:17
>正直申し上げて、民主党政権時代の経済政策もひどかったのですが、それでもGDP成長率は2010年〜2012年の3年間平均で1.7%のプラスで推移していました。これに対して、GDPを最重要指標としていた安倍政権下では、2013年〜2015年の3年間平均でわずか0.6%しか成長していません。

「アベノミクスは大失敗」と言える4つの根拠
今すぐ総括を行い経済政策を修正すべきだ
http://toyokeizai.net/articles/-/120362
中原 圭介 :経営コンサルタント、経済アナリスト 2016年05月31日

私たちはそろそろアベノミクスを総括したうえで、その問題点を修正するための経済政策を考えるべき時期に来ていると思われます。私はこれまで3年以上、この連載コラムやブログ、書籍などを通して、「大規模な金融緩和を主軸にした経済政策は間違いなく失敗するだろう」と、できるだけ論理的に申し上げてきたつもりです。その主な理由としては、以下の4点にまとめることができるでしょう。

(1)円安により企業収益が増えたとしても、実質賃金が下がるため国内の消費は冷え込んでしまう。

(2)大企業と中小零細企業、大都市圏と地方といった具合に、格差拡大が重層的に進んでしまう。

(3)米国を除いて世界経済が芳しくない見通しにあるので、円安だけでは輸出は思うように増えない。

(4)労働分配率の見地から判断すると、トリクルダウンなどという現象は起きるはずがない。

金融緩和に依存しすぎた政策の末路

この連載の記事はこちら
まず(1)の「国内消費の冷え込み」についてですが、円安を追い風にして企業収益が拡大したにもかかわらず、安倍政権が期待していたようにGDPがなかなか増えていない原因は、円安により企業収益が増えた分だけ、輸入インフレにより家計の可処分所得が減ってしまっているからです。その結果として、実質賃金の持続的な下落が進んでしまい、GDPの6割超を占める個人消費が大幅に落ち込んでしまっているのです。

正直申し上げて、民主党政権時代の経済政策もひどかったのですが、それでもGDP成長率は2010年〜2012年の3年間平均で1.7%のプラスで推移していました。これに対して、GDPを最重要指標としていた安倍政権下では、2013年〜2015年の3年間平均でわずか0.6%しか成長していません。消費増税の駆け込み消費を除いたら、3年間平均でマイナス成長に陥ってしまうほど悪かったのです。

さらに、実質賃金の推移を振り返ると、民主党政権下の2010年が1.3%増、2011年が0.1%増、2012年が0.9%減となり、3年間の累計では0.5%増となっています。これに対して、安倍政権下の2013年が0.9%減、2014年が2.8%減、2015年が0.9%減となり、3年間の累計では4.6%も減少してしまっているのです。要するに、2012年〜2015年の実質賃金の下落率は、リーマン・ショックの前後の期間を凌駕していたというわけです。

決して誤解しないでいただきたいのは、これらの比較で私が言いたいのは、民主党政権の経済政策が優れていたということではありません。普通に暮らす国民の立場から見ると、金融緩和に依存するインフレ政策はあまりにも筋が悪すぎたということを、強く言いたいのです。経済の本質や歴史について先入観を持たずにしっかりと検証していれば、このような愚かな経済政策を行うはずがなかったといえるでしょう。

次に(2)の「経済的な格差の広がり」についてです。私は地方に仕事に行くたびに、その地方の景況感をいろいろな立場の方々にお伺いしているのですが、すでに2013年後半の段階では、大企業に勤める人々は「円安により景気は少しずつ良くなっている」と前向きな意見が多かったのに対して、中小零細企業に勤める人々は「まったく景気は良くなっていない」とあきらめてしまっていました。

統計には最も弱い層の実態が反映されていない

さまざまなシンクタンクの調査では、上場企業などの大企業では円安が増益要因になる一方で、中小零細企業などの非上場企業では円安が減益要因になってしまうことが明らかになっています。大半の中小零細企業の声としては、とりわけ2014年に進んだ輸入インフレからのコスト増によって、とても賃上げができるような状況にはなかったのです。無理をしてでも賃上げをする企業のなかには、大都市圏の公共事業に社員を奪われてしまうという危機感から収益悪化もやむをえなかったと考えている企業が少なくありません。

1682とはずがたり:2016/06/01(水) 13:08:29

それと併行するように2013年以降、大都市圏と地方の労働者のあいだでは、実質賃金に大きな開きが生じてしまいました。大都市圏の多くでは実質賃金がプラスになったのに対して、地方の大半では実質賃金が大幅に落ち込み、県単位では優に5%超の下落をしているところが珍しくなかったのです。まさに、大企業と中小零細企業、大都市圏と地方といったように、格差拡大が重層的に進んでしまっているというわけです。

なお、実質賃金の調査について留意すべきは、従業員5人未満の事業所は調査の対象となっていないということです。端的にいうと、最も経済的な苦境にある零細企業の実態が、実質賃金の調査には反映されていないのです。実のところ、経済統計には最も経済的に弱い層の調査が反映されていないという問題があります。その意味では、実質賃金にしても平均給与所得にしても、数字が示しているよりも実態は明らかに悪いと考えるのが妥当であると思われます。

続いて(3)の「輸出が増えない理由」についてですが、アベノミクスが始まった当初から、経済学者の多くは円安がもたらす「Jカーブ効果」という理論を支持していました。「Jカーブ効果」とは、円安により輸入価格が上昇し、一時的に貿易赤字が拡大するとしても、円安による輸出価格低下で輸出数量が徐々に増加し、最終的に貿易収支も改善するという理論のことをいいます。

私はこの「Jカーブ効果」の理論に対して、企業経営の現場を無視した机上の空論であるということを訴え続けてきました。厳しい円高の時であっても、日本企業の多くは海外市場でシェアを失わないようにするために、収益の悪化を覚悟してでも海外での値上げを行わないで辛抱してきたからです。ですから、企業の経営者はたとえ大幅な円安になったとしても、円安が進んだ割合に応じて値下げはしないというのは当然の行動だったのです。

実際にも、円安が20%や30%進んだケースでも、価格を5%や10%しか引き下げないという事例が次々と明らかになりました。日本企業が海外での収益力を飛躍的に高めることができたのは、過去の円安の局面とは異なり、海外での販売価格の引き下げを抑えるようになったからだと断言できるでしょう。ただでさえ、世界経済は2005年〜2007年の高成長の時期と比べると、2013年の時点で欧州や新興国を中心に停滞気味であったので、よりいっそう輸出数量が増えない状況をつくりだすこととなったのです。

最後に(4)の「トリクルダウンが起きない理由」についてです。アベノミクスが目指したトリクルダウンの理論では、円安で収益が上がる大企業が賃上げや設備投資に動くことで、中小零細企業や地方にも利益がしたたり落ちてくるはずでした。しかしながら、この理論はあまりにも経済の本質を逸脱したひどいものでした。中小零細企業ではすでに労働分配率が非常に高く、最初から賃金を引き上げるのは困難であったからです。

大企業の製造業がいちばん労働生産性は高く、中小零細企業の非製造業がいちばん低くなるわけですが、大雑把に言って、大企業の製造業は労働生産性が1500万円程度であるのに対して、中小零細企業の非製造業はその3分の1の500万円程度にしかなりません。ところが、中小零細企業全体の労働分配率は優に7割を超え、大企業の5割程度よりもずっと高くなっているのです。中小零細企業のコストの大部分が人件費なのですから、労働生産性が引き上げられない限り、賃金の引き上げも難しいといわざるをえないでしょう。

物価は経済が成長する結果、上がるもの

トリクルダウンの理論を生みだした本家本元の米国であっても、アベノミクスが始まる以前から、富裕層から庶民へと富がしたたり落ちているという事実はまったくなく、トリクルダウンは幻想にすぎないことが明らかになっていました。インフレと株高で潤ってきたのは、富裕層と大企業だけであり、いまでも格差の拡大は止まっていないのです。その結果として、米国の大統領予備選において、泡沫候補といわれたトランプ氏やサンダース氏が旋風を巻き起こしているというわけなのです。

以上で述べてきましたように、いくつもの単純な誤りに最初から気づくことができずに、日本で浅はかな経済実験が行われてしまったのは、ポール・クルーグマン氏の「インフレ期待」なる理論が「原因」と「結果」を完全に取り違えているにもかかわらず、リフレ派の学者たちが安倍首相にその理論を信じ込ませてしまったからです。なぜ「原因」と「結果」がひっくり返ってしまうのかというと、経済学のなかに非科学的な思想あるいは宗教的な思想が入り込んでしまっているからなのではないでしょうか。

1683とはずがたり:2016/06/01(水) 13:09:16

経済の本質からすれば、「物価が上がることによって、景気が良くなったり、生活が豊かになったりする」のではありません。「経済が成長する結果として、物価が上がる」というものでなければならないのです。経済学の世界では、「鶏が先か、卵が先か」の議論が成り立ってしまうことがありますが、実際の経済は決してそのようには動いていかないものです。経済にとって本当に重要なのは、「どちらが先になるのか」ということなのです。

科学の世界では、決して「原因」と「結果」がひっくり返ることはありません。経済学の世界で「物価が上がれば、経済が良くなる」などと主張している学者たちは、私から見ると、科学の世界で「熱は冷たい場所から熱い場所に移っていく」といっているのと同じようなものなのです。キリスト教の権威が支配する中世時代の欧州では、神の権威によって科学の発展が著しく妨げられていましたが、「インフレになると人々が信じれば、実際にインフレになる」というインフレ期待は、まさしく宗教そのものに思えてしまうわけです。

クルーグマン氏は自説の誤りを認めている

私はアベノミクスが始まって以来、その理論的支柱であるクルーグマン氏に対する批判を展開してきましたが、そのクルーグマン氏はすでに自説の誤りを認めるようになっています。昨年の後半には「日銀の金融政策は失敗するかもしれない」と発言を修正したのに加え、今年に入ってからは「金融政策ではほとんど効果が認められない」と自説を否定するような発言にまで踏み込んでいます。詰まるところ、日本における経済実験は失敗したのだと判断しているのです。

クルーグマン氏は自分の誤りを認め、「金融政策ではほとんど効果が認められない」と襟を正しましたが、クルーグマン氏の持論を最大の根拠にしていたリフレ派の学者たちは未だに失敗を認めずに、アベノミクスの軌道修正をできないままでいます。さらには、クルーグマン氏に梯子を外されてしまっているのに、そのことに対してはダンマリを決め込んでいます。

リフレ派の経済学者たちは2014年4月の消費増税がアベノミクスの足かせとなったとして、決して自説を変えようとはせず、責任を回避するのに必死であるようです。しかし現実には、消費税を増税する前にすでに実質賃金が大きく下落していたという事実があります。「消費増税による物価上昇率は2.0%である」という日銀の試算が正しいと仮定したとしても(本当は1.0%台半ばが妥当だと考えられますが)、2013年〜2015年の実質賃金の下落幅4.6%のうち、2.6%が輸入インフレによるもの、2.0%が消費増税によるものだと簡単に因数分解ができてしまうというわけです。

クルーグマン氏は自らの理論の失敗を認め、学者としての矜持を示しました。ところがリフレ派の学者たちは、アベノミクス失敗の要因を消費増税のほかに、世界経済の減速にも求めようとしています。彼らは多くの国民生活をいっそう疲弊させたことについて、どのように思っているのでしょうか。民間レベルでは結果と同時に責任を問われるのが常識なのですが、学者や政治の世界ではこういった無責任体質がまかり通ってしまっているのは、非常に残念なことです。彼らにもクルーグマン氏のように、最後は学者としての矜持を見せてほしいものです。

私は民主党政権の時代から一貫して、「日本は地道に成長戦略を進めていきながら、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落を待つべきである」と主張してきました。「辛抱しながら3年〜5年くらい成長戦略を進めていくうちに、米国の景気回復と世界的なエネルギー価格の下落によって、日本人の実質賃金は上がり、人々の暮らし向きも良くなるだろう」と予想していたからです。ところがアベノミクスによって、日本人の生活は何もしなかったよりもさらに悪くなってしまいました。

1684とはずがたり:2016/06/01(水) 13:09:28
>>1681-1684
参考になるシュレーダー政権の構造改革

今の日本に求められているのは、かつてドイツのシュレーダー政権が行ったような構造改革(=成長戦略)です。2000年代前半のドイツは社会保障が手厚いゆえに失業率が10%台に達し、「欧州の病人」と呼ばれていました。そのドイツが一強と呼ばれるほどの経済強国になれたのは、シュレーダー首相が2002年〜2005年にかけて国民の反対を押し切って構造改革を断行し、ドイツの生産性を引き上げることができたからです。そして今や、メルケル首相はその功績の恩恵を最大限に享受しています。

なぜ日本の歴代政権では、シュレーダー政権のような成長戦略ができないのでしょうか。それは、少なくとも小泉政権以降の歴代政権には成長戦略をやる気がまったくなかったからなのです。成長戦略の成果が目に見えるかたちで現れるには、早くて5年、普通は10年の年月を要するといわれています。政治にとって優先されるのは、成果が出るのがずっと先になる政策ではなくて、目先の選挙で投票してもらえる政策を実行することです。したがって、歴代の政権は成長戦略において総花的な政策を掲げて賛成しているような素振りを見せてきましたが、結局のところ真剣に取り組もうとはしなかったのです。


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