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( ^ω^)ヴィップワースのようです

1以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/06/07(火) 00:59:11 ID:iULO39J.0

タイトル変更しました(過去ログ元:( ^ω^)達は冒険者のようです)
http://jbbs.livedoor.jp/sports/37256/storage/1297974150.html

無駄に壮大っぽくてよく分からない内に消えていきそうな作品だよ!
最新話の投下の目処は立ったけど、0話(2)〜(5)手直しがまだまだ。
すいこー的ななにがしかが終わり次第順次投下しやす

852以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 00:51:43 ID:mWLCpxlQ0

続き楽しみに待ってます

853以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 02:56:18 ID:xwPbV.xE0

「………ぎゃあぁぁぁぁぁぁッッ!!………」


(;^ω^)「!」

ξ;゚⊿゚)ξ「……何、今の声……!」


ブーン達にも、当然ながら耳に届いていた。
ショボンの向かった小屋の、更に奥の方から聞こえた、男のうめき声。

その声の主にも、大方の察しはついていた。

川 ゚ -゚)「今の声は……」

从'ー'从「今の悲鳴……もしかして、さっきの人達じゃないですか?」

爪'ー`)y-「───あぁ、多分な。さっき会った連中のどっちかさ」

今このカタンの森に訪れているのは、ブーンら冒険者5人と、依頼者の少女サン=ワタナベ。
それ以外の人物となると、やはり先ほど出会ったラッツとボアードとしか思えない。

川 ゚ -゚)「猛獣の類にでも、襲われたかな」

ξ゚⊿゚)ξ「そんな………ブーン!」

854以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 02:57:21 ID:xwPbV.xE0

ツンが言葉を掛ける前から、既にブーンは立ち上がっていた。
先ほどの悲鳴の上がった方へと助けに行くつもりなのだろう。

( ^ω^)「分かってるお、フォックス……一緒に来るお!」

爪;'ー`)y-「あー……へいへい、お前さんも物好きだぜ」

川 ゚ -゚)「私はこの場に残るぞ、まだショボンも戻らない」

ξ#゚⊿゚)ξ「(ムカッ)……じゃあ、私も行くわッ!」

どこか冷ややかな視線で彼らを見送るクーの横顔に一瞥し、ツンが走り出そうとした時、
その肩はクーによって掴み止められた。

川 ゚ -゚)「大人しく待っていろ……依頼者の少女がこの場に居るというのに、足並みが乱れ過ぎだ」

ξ#゚⊿゚)ξ「………ッ」

遺恨を残したままのお互いは、またもこの局面で睨み合う。
だが、今ばかりはそんな二人のやり取りに気を揉んでばかりいる訳にもいかぬだろう。

何しろ、人命が懸かっている可能性がある───それほどの悲鳴だったのだ。

855以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 02:58:40 ID:xwPbV.xE0

(;^ω^)「ツン、クーさんの言う事はもっともだお。ブーンとフォックスが帰ってくるまで待ってて欲しいお」

ξ#゚⊿゚)ξ「チッ……分かったわよ」

爪'ー`)y-「ったく、どーしてお前らもそう何にでも首突っ込んじまうかねぇ……」

川 ゚ -゚)「ま、安心しろ。しばらく待っても戻ってこなかったら、私は遠慮無しに彼女を連れて森を出る」

ξ#゚⊿゚)ξ「この………!」

爪'ー`)y-「あぁ、正しい判断だぜ。こちらとしてもな」

先ほども、今もクーが口にしたのは、仲間を冷静に切り捨てるかのような発言。
それに対してツンはまたも食って掛かりそうになったが、フォックスのフォローによって事なきを得た。

最悪の状況は、常に想定しておいて損は無い。
ただそれは時として、"仲間"というものを見捨てる事に対して割り切れるかどうかが枷となるのだが。


ワタナベとクー、そしてツンの女性三人だけを残して、ブーンにつられるようにフォックスも走り出した。

856以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 02:59:12 ID:xwPbV.xE0
───────────────

──────────


─────


声の聞こえた南西へとひた走ると、すぐに少し拓けた視界の場所に出た。
さきほどボアード達が言っていたように、丈夫な樫が群生している場所のようだ。

そしてすぐに目にしたのは─────その一本の木の前にうつ伏せに倒れている、一人の男の姿。

(;^ω^)「………大丈夫かおッ!」

爪;'ー`)「こりゃあ……」

力なく倒れている彼の身を抱き寄せると、やはりそれは青みがかった黒髪の男、ボアード。
もはや意識も完全に失われて、瞳は混濁している。

抱き寄せたその胸元は大きな衝撃に穿たれた痕跡があり、完全に胸を潰されていた。

爪'ー`)「即死だったんだろうぜ────恐らくは、な」

(; ω )「そんな……」

857以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:00:56 ID:xwPbV.xE0

道すがらで出会っただけでも、多少なりとも言葉を交わした同じ冒険者を、放ってなどおけなかった。
だからこそ助けたかったブーンに、フォックスは辛らつな事実だけを冷淡に述べた。

大きく肩を落としていたブーンだが、開ききったボアードの瞳を手で閉じてやると、
彼の亡骸をそっとその場へと横たえてから、ゆっくりと立ち上がった。

(; ω )「もう一人、居たはずだお……」

何故ボアードはこの場で死んでいたのか、そして一体、"誰"にどうやって殺されたのか。
湧き上がる疑問と共に、今この自分達の周りにもその危険が取り巻いているという事実に、戦慄を覚える。

爪'ー`)「……あぁ。今、来たようだぜ」

フォックスが親指を差した方向の茂みを揺らしながら、同じように悲鳴を聞きつけたのか、先ほどまで
一緒に行動していたラッツはようやく姿を現した。

自分達に目が合うよりも先に、相棒の変わり果てた姿を目の当たりにすると、彼は叫んだ。

「!?……ボアード、おいッ!」

858以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:01:32 ID:xwPbV.xE0

口と胸から血を流している彼へ駆け寄ると、ラッツもまたブーン同様の反応を示した。
彼が既に死んでいる事を確認すると、瞳を強く閉じこみながら、ゆっくりと首を左右へと振った。

「あんたら………何があった?」

爪'ー`)「そりゃあこっちが聞きてぇ」

(  ω )「ブーン達が悲鳴を聞きつけてここに着いた時には───もう………」

「そうか……」

だが、共に行動していたはずの彼が何故この場にいなかったのか、という事実。
それに端を発してか押し寄せる疑念が、ラッツに対して鋭い視線を送っていた。

自らを訝しむ視線に気づき、ラッツ口を開く。

「俺は……こいつが木を切り倒してる間に何か採取できる野草はねぇかと、探しに出てたんだ……」

爪'ー`)「少しの間か?」

「あぁ、ものの数分ってとこだろうよ……ほれ見ろ」

そう言ってラッツが指差した先には、木を切り倒そうとしていたのだろう。
先ほどまではボアードが手にしていたと見られる伐採用の斧が、木の中ほどにまで突きたてられたままだった。

859以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:02:22 ID:xwPbV.xE0

( ^ω^)「その最中に……どうしてボアードは……」

その手斧の柄を何気なく引き抜きながら、浮かぶ疑問を口にした。
木を切り倒している間に、しかも斧を突き立てた状態で。

どこから、誰に、どうやって狙われれば───────
丈夫な人間の肋骨を、こうまで粉々に砕く事が出来るのだろうか。

「人ぐらいの力じゃ、こんなこと………」

そうラッツが呟き、またブーンが見上げた先にはただ一本の太い木が聳え立つばかりだ。

爪'ー`)y-「わからねぇ……だが、やっぱりこの森はどこかおかしいぜ」

(;^ω^)「そうだおね、ツン達が心配だお」

先ほどまでは何の変哲も無い平和な光景が、瞬時に謎めいた危険な場所に感じられ、
残してきた面々もまた同じ目には遭ってやいないかという焦燥、頬には冷たい汗が伝う。

(;`ω´)「ラッツ、ボアードを連れて、一緒に森を出るお!」

「………あぁ、すまねぇな」

860以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:02:58 ID:xwPbV.xE0

ぼうっとボアードの顔を眺めていたラッツだったが、緩慢ながらそのブーンに言葉を受け、動き出した。
ボアードの両肩をそれぞれブーンとラッツが抱きかかえるようにして、彼を森から運び出してやるのだ。

(;^ω^)「これは形見だけれど……悪いけど、置いていくお」

ラッツが手にしていた伐採用の斧を、再び同じ木に突き立て、それに背を向ける──────



────────そこから、静寂に包まれていた森は 途端にその色を変えた─────────




───────────────


──────────


─────

861以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:03:46 ID:xwPbV.xE0

ξ゚⊿゚)ξ(大丈夫かな……皆)

誰かの危機となれば、それが見ず知らずの他人でさえも例外ではない彼ら。
ツン自身が彼らと出会った時も、そうだった。

何にでも首を突っ込むとは良く言ったものだが、ツンもまた同じ種類の人間だ。
だからこそ彼らと共にこの場を飛び出して行きたかったのだが、それはこの隣に並び立つクーと、
たった少しの間でも一緒に居たくなかったからという理由も大きい。

川 ゚ -゚)「あと5分だけ待つ……それを過ぎれば、何かがあったということだ」

从;'ー'从「本当に、ブーンさん達を置いて行くんですか?」

ξ;゚⊿゚)ξ「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!あんたは冒険者が長いのか知らないけど……こちとら!」

だが、クーの言う事にもあながち道理が通っていないという訳でもない。

862以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:05:16 ID:xwPbV.xE0

依頼者と共に同行し、ましてや彼女はまだ14、15ぐらいの少女だ。
何か不測の事態が起きたとして、今この場に居る二人でまともに戦力となり得るのは、クーだけ。
適切な判断を行え、行動力においても人並み以上である彼女に反論するツンだが、その要望は聞き入れられない。

ξ゚⊿゚)ξ「あんた……さっきも言ってたけど、こういう事?同じ仲間を、切り捨てる判断って……」

川 ゚ -゚)「先ほど、あの銀髪の男達にも告げたはずだがな。本人達もそれを望み、了承は得ている」

ξ゚⊿゚)ξ「へぇ、随分と非情なのね─────自分が助かりたいからってワケ?」

川 ゚ -゚)「お前のように、個人の感情に振り回されたりはしないさ……私達が守ってやらなければ
     たちどころに妖魔の餌食になるような子供を置いて、あいつらは何をしている?」

ξ;゚⊿゚)ξ「でもさっきの悲鳴は、きっとただ事じゃない!もし助けが必要だったらどうするのよ!」

川 ゚ -゚)「それならば、きっとこの森にはやはり危険が潜んでいるという事だ。
     なおさら、こんな所でまごまごしている訳にはいかんだろう」

ξ#゚⊿゚)ξ「どうして……そんな風に割り切れるの!?同じ依頼の仲間じゃない!」

863以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:07:43 ID:xwPbV.xE0

川 ゚ -゚)「だからこそ───最小限に被害を留めるべきだ。そんなに待っていたかったら、お前はここに居るといい」

从;'ー'从「あ……あの二人とも……その、落ち着いて下さい」

おずおずと二人の間に挟まれおろおろとするのは、ワタナベ。

気丈で大人びているといえど、自分を護衛してくれるパーティーが分離してしまっている現状に、
ツンらをたしなめる彼女の表情にも、さすがに不安さが覗いた。

だがツンとクーの言い分にはどちらにも一理があり、根本的な部分では同じなのだ。

窮地に陥った仲間を思いやる気持ち。
また、より多くの仲間が助かるように苦渋を飲む決断。

それはどちらも仲間の事を想っての行動、考えであり、それほど大きくは違わない。
ツンの感情にまかせたきつい言葉に、さらに態度を硬化させてそれを跳ね除け続けるクー。

864以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:10:19 ID:xwPbV.xE0

そうした二人のやり取りをたしなめ続けてばかりいたワタナベが、突如覚えた違和感に周囲を見渡した。


从;'ー'从「………え?」


ざわ・・・

    ざわ・・・

        ざわ・・・



川 ゚ -゚)「………待て」

ξ゚⊿゚)ξ「何よ?」

鳥の鳴き声一つ聞こえなかった周囲が、途端にざわめきだす。
それは、自然の中にあるならば普通の事だ。

風があれば───木々は揺らぐのだから

865以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 03:18:22 ID:xwPbV.xE0

だが今は頬を撫で付けるような風はほとんど感じない、無風。

だのに──────驚くほど急激にざわめきだした"それ"。
それはまるで木々達が、舞いを踊るかのようだった。

从;'ー'从「ひっ……」

ξ;゚⊿゚)ξ「な、何なのよ……これ!」


              … キチキチキチキチキチ …
… ウケケケケ ……

         … ケタケタケタケタッ …


川;゚ -゚)「………」

次第に、不快な雑音がそこら中から奏でられ、怖気さに肌を泡立たせる。
音ではなく明らかに"声"として耳へと伝わるざわめきは、悪意に満ちていた。

周囲全方位を覆う全ての木々達が、足を地面から抜くような動作で根を抜いて"歩き出す"。
その光景はもはや、ハロウィーンの悪戯かと思い込んでしまいたくなるような悪夢だった。

866以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/09/30(金) 08:26:54 ID:2/OQPfJAo
待っていたぜ

867以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/01(土) 03:33:54 ID:NlWNeIzU0
来たか

868以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/01(土) 06:28:31 ID:iq1bW106O
ワクワク

869以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/01(土) 06:38:35 ID:u8wu3.i.0
仕事とハードセックスの兼ね合いで、今日の深夜から明け方までの間に出来れば投下を…

870以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/01(土) 18:22:24 ID:wMtmpPZc0
どんだけハードセックス強調する気だww

871以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/02(日) 08:14:55 ID:a7D1kpKUo
これはやりすぎて寝たなww

872以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/03(月) 09:14:56 ID:Uilg4SsYO
申し訳ない、腰が立たんのでもう2〜3日必要そう

873以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/04(火) 00:48:02 ID:f2PQReBA0
サキュバスか何かと交わったのかww

874以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/04(火) 13:19:48 ID:WzMOyESIO
おとなしく待ってるから養生しとけよwww

875以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/11(火) 02:00:40 ID:mTvKoJx2O
いくらなんでもハードすぎやしないか?
作者が早く回復しますように

876以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/19(水) 19:07:48 ID:LAVPz0UA0
いつまで待たせやがるコンチクショウ!!
やり過ぎてミイラにでもなってんのか?

877以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/24(月) 02:24:49 ID:BByN9FBEO
この作品はもっと評価されてもいい

878以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/10/28(金) 22:04:35 ID:YhbDJj6I0
・・・・・・まさか

879以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/01(火) 02:02:33 ID:09550NKcO
>>877 
埋もれてるという意味なら 
十分ではないけど評価はされてると思う 
今あるなかの冒険物では一、二を争うという認識は読んだ人はもっていると思う 
まとめられるのが全てではないがそんな話もあったし 
普段荒らしてるやつもこれははまったと言ってた

880以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/01(火) 22:22:15 ID:DWCu0072O
創作板でなくこの板で、しかも基本sage進行するしな
ときどきVIPの総合とかで名前はでるのみるけど

これが冒険物で一番おもしろい、過去現在問わず
まだストーリー的には序盤なんだろうが


だから応答頼むよ作者……

881以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:15:24 ID:fyiiO8eo0
どうしても欲しいAAを自作しようとしても、全く上手くいかず。
どーしてもそれが欲しかったんだけど、諦めたので文章だけにしました。
しばらくそれで挫折してましたね。今はその分しっかりすいこーしながら書いてます。
後は興が乗ったら一晩のウチに書きあがる量なのれすが…待っててくれてる方々、すんませんなぁ。

882以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:44:27 ID:fyiiO8eo0
───────────────

──────────


─────


爪;'ー`)「なんだよこりゃあ……一体、どうなってやがる!?」

(;^ω^)「どうもこうも無いお……木が───”歩き出した”としかッ!」

「や、やべぇ、完全に囲まれちまってる……ひぃッ!」

ボアードの亡骸を運び出してやりたかったが、どうやらこの状況ではそうも行かない。
全方向から一斉に根を足代わりにして、木の化け物達が自分達の元へと向かって来るのだ。

いつの間にか、この場所まで来る時に通った道は2〜3本の木の化け物に塞がれている。
その幹には全て、裂け目のようにして出来た顔が現れて─────それが、笑っていた。


  … チキチキチキチキ …

           … ウケケケケケケケケ …

 … クキュキュキュキュキュ …

883以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:45:37 ID:fyiiO8eo0
ただの"木"が意思を持って、この自分達を嘲り笑っているとでもいうのか。

(; ω )「すまないお、ボアード」

ラッツと同様に、脇へと差し込んでいた腕を抜いて、その身をゆっくりと地面へと下ろした。
亡き彼に一言を告げると、代わりに、背中の鞘へと仕舞われていた長剣の柄を力強く握り込んだ。

(; ω )(君を連れて行けそうには……ないお)

  … ケタケタケタケタ …

 … イギギギィ ギッ …

奇怪な声色は、そこら中から聞こえる。
拓けた場所であったはずだが、その周囲にあったはずの樹木との距離は、既に目に見えて縮んでいる。

人間さながらの厭らしさを含んだ笑みは、自分達に向けられている。
屍鬼や妖魔ともまた違う未知なる敵は、まさか、この森全体とは。

爪;'ー`)「……この正面を真っ直ぐ突っ切れば、ツン達の場所に出るはずだ」

「う、後ろからも来てるぜぇッ!?」

ブーンの背後から迫る木の化け物の存在に気付き、ラッツが狼狽する。
これらが相手では、フォックス達の手持ちの武器では厳しいだろう。

884以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:46:23 ID:fyiiO8eo0

ブーンの背後から迫る木の化け物の存在に気付き、ラッツが狼狽する。
これらが相手では、フォックス達の手持ちの武器では厳しいだろう。

対抗できる手段があるとすれば、厚みのあるブーンの剣だけ。
枝一本叩き斬るだけならば難しい事ではないが、それも、太い樹木に大してはさして効果は望めない。

今では、空が赤くなっているかのようにすら錯覚してしまっている。
それはこの森を覆う周囲全体が、人間に敵意を向ける化け物だらけである事への危機感によるものだ。

全てでは無いにせよ、この森に生える樹木の大半が目の前に居る化け物と同じならば、
そしてその一つ一つが人一人を軽々と圧殺してしまう程の力を持っているとしたら────絶望的状況だ。

(;`ω´)「ふぅ、ふぅ……」

爪;'ー`)「いいか、落ち着いて…まずはツン達を助けるんだ。1、2の3で行くぞ」

… ケタケタケタケタッ …

目の前の、窪んだ眼窩の奥に不気味な眼光を光らせる一本、いや、一体に視線を走らせる。
器用に足元の根を這いずらせ、こちらへと近づいてきている。

こいつの左右を抜ければ、この場を走り抜けられる。

885以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:49:19 ID:fyiiO8eo0
爪;'ー`)「1……2の………」

「ひゃあぁぁぁぁぁッ!!」

(;`ω´)「! ラッツ、待つおッ」

フォックスの号令を待たずして走り出したラッツに、木の化け物の腕が振るわれる。
先ほどボアードを葬り去ったのは、恐らくこの太い幹から振るわれた一撃によるものだ。

「ひぃッ!」

脇を抜けきれず、すれ違いざまにしなるその豪腕が振り下ろされようとしていた。


(; °ω°)「おぉぉッ!」


”ごっ”

木と何かがぶつかりあう、鈍い音だけが周囲へと拡散した。

886以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:52:57 ID:fyiiO8eo0
(; °ω°)「………くッ」

ラッツを狙い済ました"人面樹"の一撃だったが、辛くも即座に前に出たブーンの剣が、それを正面から弾き返していた。
刃の腹で受ける格好になってしまったため、切り落とすまでには至らなかった。

だがそれでも、確実に"痛がって"いる。

「… ギギ、ギィィィィィ …」

無機物と有機物の中間のようなそれが、声を上げて仰け反る。
後ろで尻餅を付くラッツを守りながら、ブーンの目は数瞬だけその様子に奪われた。

目も口も付いているその姿に、昔おとぎ話で聞いた事のある森の妖精、エントやトレントを思い出していた。
だが、これは妖精などといった可愛げのあるものでは無い。

凶暴な表情を覗かせる彼らの姿は、人に仇なす凶悪な妖魔が木に乗り移ったかのようだ。

爪;'ー`)「ったく……お前さんも盗賊なら、窮地こそもっと冷静になりな」

号令を無視して飛び出したラッツを叱責しながら、フォックスが強引に立ち上がらせる。
ここでもたもたしている暇はない、自分達が襲われているように、ツンやショボン達の身も危ないのだ。

(;`ω´)(無事で居てくれお……皆!)

爪;'ー`)「急ぐぜッ!」

大木が怯んだ隙に、ブーン達はその脇を素早く抜ける。
一路ツン達の元へと向かい、駆けた。

887以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:53:26 ID:fyiiO8eo0
───────────────

──────────


─────


(´・ω・`)【 穿ち貫け 魔法の矢 】

 … ウォォォ …     

          … アァァァァァァ …

    … ギギギギギチィ …

数体の木の化け物の身体を、同時に光の矢が刺し貫いた。
それでも、活動を停止させるまでには至らない。

幾重にも折り重なった悲鳴が、生ぬるく感ぜられる風に乗って耳の中へぼう、と響く。
不快な感触に、ショボンは思わず手でその音を拭い去った。

888以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:55:04 ID:fyiiO8eo0
(´・ω・`)(……木は木らしく、ひとつ燃やしてでもやりたい所だが……)

小屋を出て、叫び声の方へと向かおうとした時、いつの間にか森には異変が取り巻いていた。
これまでひっそりと佇んでいた木々に足が生えてそこらを歩き回り、不気味な声は辺り一面に木霊している。

カタンの森の遭難者が激増した原因など、一度この現実を目の前にすれば考えるまでも無い。

(……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!……)

(´・ω・`)(今の声は……!)

遠くに聞こえた悲鳴だが、しっかりとショボンの耳に届いた。
恐らくは残してきた仲間たちの声───助けに行かなければならない。

だが、正義感や仲間意識に従い行動するは易いが、この状況でその判断は命取りだ。

往路は既に木の化け物たちによって塞がれているのだ。
移動速度は人よりもはるかに遅い、だがその動きには共通の目的意識の為か、統率が取れている。

この人面樹達の目的は果たして何か、食うためか、殺すため?────同じ事だ。

889以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:56:20 ID:fyiiO8eo0

だが、化け物とはいえ体面を覆う表皮は木、そのものだった。

ゆえに魔法で火を放ってから安全な場所まで逃げる事が出来ればこの状況を打破できるであろうが、
パーティーから離れてしまった現状では、仲間たちをも炎に飲み込んでしまう可能性が高い。

好奇心のままにパーティーから離れ単独行動を取った己の浅はかさを、責める。
ツン達の叫び声から離れ、逆方向への後退を余儀なくされながら、ショボンは歯噛みした。

(´・ω・`)(もう……追ってはこないのか?)

背後の木の化け物たちの様子に何度か振り返りながら、目の前にはやがて小さな洞穴が飛び込んできた。
どうやら、ある程度の距離を取れば、彼らは各々の持ち場を離れすぎるという事は無いらしい。

だが、再び近場の木々が妖魔化する危険性を鑑みて、目の前の洞穴へと一旦身を隠した。

本来は自然の岩壁だった場所なのだろう。
人の手により岩を切り崩し、森の東西を行き来出来るようにしたのだ。

中はがらんどうとなっているが、片腕で抱えられそうなほどの小さな樽が何個か転がっていた。

890以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:57:31 ID:fyiiO8eo0

その中の一つ、転がった樽から漏れ出していた液体の臭いが洞穴中に充満し、鼻を突く。
その場に腰を下ろして、指でひとさじをすくい上げてみた。

液体の特性に気付くと、ショボンは一人無言で頷く。

(´・ω・`)(これは─────なるほど)

本当に最後の最後、ある手段としてこの上ない道具─────そう思った。
しかし、その前にはまずやるべき事があるのだ。

(´・ω・`)(先ほどの悲鳴、間違いなくツン達だった……)

ブーン達全員が一緒に行動してくれているのならば安心だが、あのような状況ではパニックに陥り、
全員が散り散りに解散して逃げている可能性がある。もしそうならば────最も危険だ。

ツンやクー達の元までは、そう離れた距離ではなかったはずだ。
だが、木々の化け物達が移動する事により、つい先ほどまでの土地勘は全く頼りにならない。

行く手を完全に塞がれて、最後囲まれてしまえば、もはや逃げ場は無い。

(´・ω・`)(一度、このまま洞穴を抜けて東から再び回り込む……それしかないか)

ツン達を救うために、洞穴の反対側へと抜けて、ショボンは再び動き出した。

891以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:58:18 ID:fyiiO8eo0
───────────────


──────────

─────

从;'ー'从「な、何なの……何なのよ……これぇッ」

森に隠されていた脅威、これだったのだ。
顔のある木の化け物達は、笑い声ともつかぬ気色の悪い音色の協奏曲を奏でる。

周囲の木はばきばきと音を鳴らせながら、次々にその異形を顕にしてゆく。
足元に伸びる背後の影では身を捩じらせながら、歓喜に踊っているように思えた。

まるで、彼女達の必死と恐怖を嘲り笑うかのように。

ξ;゚⊿゚)ξ(───ブーン……皆っ!)

ブーン達の消えて行った方向を遠くに眺めて一瞬躊躇したツンの肩を、クーが強引に手繰り寄せる。
この状況でまごまごしていれば、たちまちあの木々に行く手を遮られてしまう。

分断されたこの状況では、やはりクーに言われた通りだ。
ツン一人ではこんな危機から身を守る術を持たぬ、一人の女性だという事を痛感させられる。

892以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 04:59:40 ID:fyiiO8eo0

从;'ー'从「ど、どうすればっ」

ξ;゚⊿゚)ξ「………ッ」

ツンの道衣の袖をつかみ、うろたえる少女。
二人で顔を見合わせる中、彼女の恐怖はやがてツンにまで伝染しかけていた。

だが、この混沌の中にありながらも、しかとまだ強い意思を瞳に宿して道標となったのは、彼女。

川;゚ -゚)「……走るんだ。幸いにして動きは鈍い、脇を抜けて出口を目指す」

クーが二人に目配せを送ると、三人は同時にゆっくりと頷いた。
そして彼女の合図を機に、全員ともがその場からはじき出されるようにして走り出す。

… ギチギチ …

  … ギギ、ウェハ…ウェハハ …

川;゚ -゚)「離れずについてこい!」

一定の距離を保ってとり囲んでいた木達もまた、それに気付いて動き始めた。
器用に根を地面で這わせて伝い歩く光景だが、背後を確認してそれを目にする余裕もない。

893以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:07:02 ID:fyiiO8eo0

ξ;゚⊿゚)ξ「はっ、はぁっ……!」

自分達の置かれた状況をまるで把握できぬままに、悪夢で彩られた森の中を走り続ける。
目的地は森の外────だが、行く先々には顔を持つ木の化け物達が姿を潜めているのだ。

从;>ー<从「!? きゃぁッ」

川 ゚ -゚)「!!」

後方を走るワタナベの横合いから、突然目の前に向かって何かが振るわれた。
恐怖に思わず頭をかばいながらかがむ事で、偶然にもそれをかわす事が出来た。

ξ;゚⊿゚)ξ「ワタナベちゃん!」

だが頭のすぐ上を通過した、木の急襲が刻んだ恐怖は、計り知れなかった。
体つきの華奢な女でなくとも、今のを受ければただでは済まなかっただろう。

運良くそれを避けられたものの、恐怖からかワタナベはしゃがみ込んだまま動けずにいた。

膝が笑っている彼女では立ち上がる事もままならず、さらに悪いことに顔を上げた先では、
そのワタナベを見下ろしていた人面樹と、眼が合ってしまったのだ。

从;'ー'从「あ─────」

894以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:09:03 ID:fyiiO8eo0
眼窩の奥に自分を見下ろす光、そして幹が上下に引き裂かれて現れた、笑みを浮かべる口。
その異形と対峙してしまった少女には、恐怖に抗う術もなかった。

「ギギギ……ウェハ、ウェハ!!」

ぽつりと声を上げて、がちがちと歯が震える。
────────このままではただ喰われるのを待つばかり。

ξ;゚⊿゚)ξ「────早く、起き上がって!」

だが、そこへすぐさま引き返したツンが彼女の手を掴むと、再び立ち上がらせる。
その助けが、今を取り巻く悪夢のような現実へとワタナベを立ち返らせた。

从;'ー'从「ツンさ……ありが──」

ξ;゚⊿゚)ξ「いいから!走るのよッ」

ワタナベの背中を強く押し出して、その走りを促した。
二人へと振り返っていたクーが一瞬だけ安堵の表情を浮かべ、また先頭を走りながら叫ぶ。

川;゚ -゚)「気をつけろ!すぐ傍にまで近寄らないと、本物の木かそうでないか見極められん!」

895以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:14:37 ID:fyiiO8eo0

どうやら、このカタンの森の全ての木々が人面樹たちではない。
恐らくはクーの見立て通りであろう、中には一見して普通の樹木もある。
だが、それらの中には近づいた瞬間に、捕食者としての顔を浮かび上がらせるものもある。

森の出口まではそう遠くない場所にまで来たはずだ、森に入った時に過ぎた湖畔が左手に広がる。
だがここに来て、クーは歯噛みをしながら表情を歪めた。

川;゚ -゚)「ちぃッ!」

从;'ー'从「ど、どうしたんですか?」

道が、二手に枝分かれしているのだ。

片方は恐らく森の出口へと通ずる道。かなり地形が変わっているが、自分達が入ってきた方だ。
そしてもう片方は道を外れた、樹木の茂った森深くへと続くであろう道。

川;゚ -゚)(罠……だろうな)

歩いた記憶の中にある湖沿いの道には、今びっしりとその先を覆い隠す木々がひしめいている。
これまで以上に多くの木に妨げられている事から、恐らく"木々たち"は自分達を外へと逃がしたくないのだ。

遠目からには一見すると普通の樹木だが、踏み入れば瞬く間に全ての木々が化け物へと豹変するだろう。

896以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:18:15 ID:fyiiO8eo0

そして────もう一方は不自然なほどに開け放たれた、山林への道。
その中へ入って人里へと通じる道へと出られるかは、大きな賭けになるだろう。

この地の土地勘も持ち合わせていない上に、森の中では方向感覚を見失いやすい。
加えて、"動く木"にかかって本来あるべきはずの道を塞がれてしまっては、人の感覚など完全に狂わされる。

それでも、人里へと確実に繋がる出口の近くからであれば、森を抜けられる可能性もゼロではない。

ξ;゚⊿゚)ξ「確かにこの道だったと思ったけど……あれって」

川 ゚ -゚)「恐らくな、全てが木の化け物だろう」

从;'ー'从「道が、塞がれて……」

川 ゚ -゚)「あぁ、白々しいまでに堂々と森の出口を塞いでいる……近づけば、すぐさま叩き殺されるかもな」

从;'ー'从「それじゃどうしたら!?」

一介の町娘であるワタナベという少女にとっては、今がきっとこれまでで初めて味わう程の恐怖。
理不尽にもこの"非日常"へと落とし込まれた彼女の精神は、半狂乱で喚く一歩手前にまで追い込んでいた。

その姿は、呼吸を落ち着けながらも淡々と目の前の状況を分析するクーとはまるで対照的なものだ。

川 ゚ -゚)(───ふむ)

897以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:19:12 ID:fyiiO8eo0

ξ;゚⊿゚)ξ(私の聖術が役に立ちそうな相手でも……ない)

攻略の糸口は見つからない。しかし、同時にクーと共にこの場に居られて良かったと思う。
あの場でツンとワタナベの二人きりであれば、混乱のままに化け物たちの餌食となっていただろう。

先ほどまで口げんかしていた時の態度とは打って変わって、今では頼もしくも生還への道を
必死に探りあてようとするクーの瞳が、まだ二人に希望を与えてくれているのだ。

そして、その彼女が指で一つの方向を指し示した。

川 ゚ -゚)「────右だ、山林へと入り、そこから人里に抜ける道を探す」

ξ゚⊿゚)ξ「……本気?さっきの木の怪物がうようよいるわよ?」

川 ゚ -゚)「どの道退路は絶たれている。だからこれは、一つの賭けになるだろう」

从;'ー'从「もし……道が見つからなかったら?」

川 ゚ -゚)「その時は……三人仲良く、この森の養分になるだろうさ」

ξ;-⊿-)ξ「………ふぅ」

898以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:22:29 ID:fyiiO8eo0

クーの言葉に頭を垂れて大きくため息をついたツンだったが、再び顔を上げた時、
その少しばかりあきれたといった表情の中には、僅かな笑みを浮かべる余力も残っていた。

ξ;゚⊿゚)ξ「大したタマだわねあんたも……」

川 ゚ー゚)「ふっ、昔から言うだろう?女は度胸……だとな」

ξ゚⊿゚)ξ「────いいわ。乗ってやろうじゃない、その賭け」

从;'ー'从「ほ、本当にこの中を行くんですか?」

川 ゚ -゚)「あぁ。お前も依頼人なら、覚悟を決めろ」

ξ゚⊿゚)ξ「ワタナベちゃん───あなたも女なら、ここは腹を括るわよ!」

从;'ー'从「そっ……そんな理屈は無茶苦茶ですよぉ!」

ここに来て、初めて芽生えつつあった共通意識は"生還する事"
同じ苦難を共闘を経て乗り越えれば、それまでいがみ合っていた間柄にも何らかの仲間意識は芽生えるものだ。

今この場にいるツン達3人の団結力。
それがこの危機に瀕した今、ようやく高まりつつあった。

899以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:27:08 ID:fyiiO8eo0

川 ゚ -゚)「それじゃあ……行くぞッ!」

再びのクーの合図を機に、三人ともが走り出した。

逃げるため、ワタナベは両手一杯に抱えていた薬草は投げ捨てて、今では各人の鞄の中にあるのみだ。
ツンも、走る際に邪魔となるという事が実体験を通してよく理解できたために、修道服の裾を詰めている。

これは、仲間であるブーン達に置いていかれぬために。
そして、その彼らの足でまといにならぬ為にと、わざわざ自ら裁縫したものだった。

未だ動きにくい衣服ではあるが、その心がけが早速役に立っている。
両手を大きく振って全力で走る事に集中できているのも、この為だ。


  … ギ、ギギギィィ …

 … キチキチ キチキチキチキチキチ …

从;'ー'从「こっちにも!」

「やはり」といった感想しか出てこないが、走り去るうち次々と移ろい行く景色。
その視界の端々には、次々と妖魔化してゆく人面樹達の姿があった。

900以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:28:48 ID:fyiiO8eo0

川;゚ -゚)「だが……数はそれほどでもないぞ!」

クーの言う通り、緑が辺り一面中を包む場所にあって、想像していたよりもはるかに化け物の数は少ない。

人面樹は当然の事ながらいるが、ひっそりと佇む普段の姿の樹木も同じぐらいだ。
森の出口を塞いでいた中には、本来はこちらに群生していた樹木達も数多くあったのだろう。

この現状こそが、クーが勝算を見出して賭けに臨んだ理由でもあった。
ブーン達やショボンもこの異変に気付いているのなら、恐らく彼らも襲われているだろう。

その彼らや自分達を狙った人面樹達が、生い茂った獣道から逆に中央の湖畔沿いへと移動してきていると踏んだのだ。

ξ;゚⊿゚)ξ「これなら、行けるかも!」

小枝や身の丈ほどの葉っぱを手で払いのけながら、山林を奥へと進む。

ざわざわと木の葉を揺らしながら追走してくる気配は、すでに幾つもある。
それでも恐怖を押し殺しながら、ただ見えかけた光明を手繰り寄せるべく、前へ、前へと進む。

从;'ー'从「はぁっ……ふぅっ……!」

ξ;-⊿-)ξ「振り返りたくないわね……」

901以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 05:55:11 ID:zNpDrQAU0
おお久しぶりだね
支援支援

902以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 06:22:01 ID:fyiiO8eo0

段々と足場が悪く、木や葉に邪魔されて道が険しくなってきた。
自分達を追う人面樹達との距離も、次第に狭まりつつある。

思うように身動きが取れない険しい道を、じたばたと身を捩じらせながらどうにか進んでいく。
そのワタナベとツンの焦燥が、限界近くにまで達した時だった。

川;゚ -゚)「────先に、行け」

一度立ち止まったクーが、ツンとワタナベに告げる。
その彼女へ振り返った方には、ぎょろりとした人の目玉のような眼が窪みに収まった人面樹が、すぐ背後にまで迫る。

ξ;゚⊿゚)ξ「クー!?どうする気よっ」

川;゚ -゚)「少しだけ時間を稼ぐ。お前達は気にせず先へ進め!」

「ギチギチギチ」

威嚇するようなその怪音を意に解する事もなく、腰元の小剣をすら、と抜き出した。
そのまま人面樹へと立ちふさがり、力強く言い放った。

从;'ー'从「クーさん!?」

川;゚ -゚)「人里へと降りられる道を探すんだ!私も……すぐに行くさ!」

903以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 06:23:20 ID:fyiiO8eo0

クーがその言葉を最後まで言い終えるよりも早く、人面樹が無造作に伸ばしてきた腕。
それを掻い潜ると同時に、指の役割を果たしているであろう先端から枝分かれした小枝の数本へと剣を振るった。

「… ギアァァァッ …」

川#゚ -゚)「…・…せぇぇぇッ!」

切り落とされた小枝からは、血のように赤黒い樹液が噴き出させた。
その痛みと怒りに任せてか、人面樹が反射的に逆の太い腕を振るうも、すでにその場にクーの姿は無い。

果敢に化け物の懐へと踏み込みながら、胴体である幹へと勢いのままに剣を突きたてた。
その一連の動きは、まるで流水のようにしなやかでそれでいて、無駄の無い洗練された剣技だった。

「… !?ブギイィィィィ …」

从;'ー'从「……クーさん、すごい!」

そうして勇猛な彼女の姿をぼうっと見ていたワタナベの腕が、ツンによって引っつかまれた。
一瞬呆気に取られていた彼女だが、クーの背中に一瞥してから、また走りだす。

ξ;゚⊿゚)ξ「行くわよ、クーが時間を稼いでくれてる間に、アタシ達が突破口を見つけなくちゃ!」

从;'ー'从「は、はいッ!」

904以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 06:24:22 ID:fyiiO8eo0

「… ヴァアァァァァァッ! …」

川;゚ -゚)(チッ……もう限界か)

やはりこの剣だけで、そう簡単に倒せるような相手ではないらしい。

幾度か剣で斬り浴びせた後、怒りを露にする人面樹の後ろに、更に2〜3体の姿が見えた。
クーは小さく舌打ちしてから剣を素早く鞘へと収めると、殿を務めながらすぐにツン達を追う。

すると先頭で、何かに気付いたワタナベが悲痛な面持ちを浮かべ、精一杯の声量を搾り出しているのが映った。

从;ー 从「────だめ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「何かあったの!?」

川 ゚ -゚)「………?」

頭を抱えながら、ワタナベはとうとうその場にしゃがみこんでしまった。
ツンが声を掛けると、おずおずと腕を上げて、その方向を指差した。

木々を掻き分けて、ツンが覗き見た先──────

ξ;゚⊿゚)ξ「────そんな」

905以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 06:25:29 ID:fyiiO8eo0

視界を沢山の樹木や緑葉に遮られて、これまで気付くことが出来なかった。
彼女達の眼前には、切り立った断崖が憎らしいほど高くそびえ立っていたのだという事に。

この道から人里へと出るのは────不可能だという事だ。

川;゚ -゚)「くっ………待て!壁沿いを伝っていけば、まだ……」

事態に気付いたクーだったが、まだ諦めてはいなかった。
別の進路をたどればあるいは可能性も残っているはずだ、と。

生存への諦めに絶望した様子のワタナベの傍で、その彼女を奮い立たせようとするツン。
すぐ後ろには数体の人面樹達が迫っており、もはや一秒たりともまごまごしてなどいられぬ状況だ。

遅れてその場へたどり着いたクーが、二人へ声を掛けようとしたその時だった。

川; - )「なんッ─────」

906以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 06:42:52 ID:fyiiO8eo0

突如としてクーの脛から下の自由は奪われ、そのまま地面へと倒れ伏してしまった。
少しだけ遅れて、その箇所へは鋭い痛みが訪れた。

"がちゃん"

がっしりとかみ合わさったような金属音。
それが聞こえた足元へと、直ぐに視線を向けた。

川;゚ -゚)(な……トラバサミ……だとッ!?)

クーの足首へと錆びかけた歯をめり込ませ、完全に歩行の自由を奪っている。

それは、かつて狩猟などを生業とする者達にこの森で使われていたであろう、鉄のトラバサミ。
本来ならば肉食の獣へと仕掛ける罠であるそれが、運悪くこの場に取り残されてしまっていた。

それがクーの足首へと力強く噛みついたのだ。
目の前には断崖、背後からは化け物が迫ってきているという最悪の状況下で。

川;゚ -゚)「あ……くそッ、くそぉッ!」

大型の肉食獣用の罠なのか。
膝を畳んで引き寄せ、両手で口をこじ開けようと全力を込めるも、僅かに緩むばかりだ。
一刻を争う状況で、致命的なトラップに引っかかってしまったクーの顔が、苦痛や焦燥に歪む。

907以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 11:10:18 ID:OwcN4q3.O
おおおきてた
今から読む!
毎日確認しててよかた

908以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/03(木) 22:53:18 ID:QWrmaCosO
まさかの歩く木
なんかメルヘンだけど物性考えたら確かに怖いな

909以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/04(金) 00:10:41 ID:35fdUKP.O
創作板嘘予告スレの>>92って作者?

910以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/04(金) 08:29:46 ID:Yq/n.YWI0
>>909
なぜわかったしwww息抜き

911以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/06(日) 17:33:10 ID:U6FnUNlM0

──── …ギギィ… ――――

奇怪な影は、地を舐めるクーのすぐ傍にまで伸びて来ていた。
いくら力を込めようとも、女性の柔腕では到底こじ開けられるような物にないらしい。

ξ;゚⊿゚)ξ「クーッ!」

川; - )「あ……あぁ……」

うつ伏せで地面を殴りつけた後、力なく仰向けに寝転がるクー。

泡を食って自由を奪われたクーの元へとたどり着いたツンだが、彼女の足に食い込む罠を見て、血の気が引く。
食い込んだ場所からは衣服に薄ら血が滲んでおり、立ち上がるのさえ困難な状況なのだと、解ってしまった。

川; - )「まさか……こんな所で、とはな」

これまで道を指し示してくれていたクーが、初めて諦めにも似た言葉を口にした。

ξ;゚⊿゚)ξ「大丈夫よ!背負ってあげるから、早くこの場所から───」

川; - )「私がこの足ではもう───無理だ」

ξ;゚⊿゚)ξ「何言ってんの!肩を貸すだけでも、まだ───」

川; - )「……お前達だけでも、逃げろ」

912以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/06(日) 17:34:03 ID:U6FnUNlM0

そのクーを必死に鼓舞するツンの言葉も、届かない。
この一刻一秒を争う事態の中で歩行不能に陥った事実は、既に彼女に絶望を認識させていた。

川; - )「いい、戻れ……どうにか、さっきの場所まで」

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーン達だってまだ無事かも知れないんだから、皆と合流すればなんとか───」

川#゚ -゚)「───うるさいッ!!解れ!」

ξ゚⊿゚)ξ「……ッ」

問答をしている余裕など無いのだ。
この一言で、クーの言わんとしている事をツンは理解しただろう。

『仲間を危険に晒すぐらいならば、時としてそういった切り捨ての判断も必要なのさ』

先ほどツンに告げた言葉、その状況こそが、"今"なのだ。
このまま全滅するくらいならば、一人だけでも逃げ延びる事が出来れば、きっとそれこそが上策だ。

まさか、自分がこんな立場になってみるなどとは思いもしなかったが────

川 - )「………行け、あいつらと」

913以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/06(日) 17:34:46 ID:U6FnUNlM0
自分はこの身動きのままならぬ状況で、生きたままあの人面樹達に食われるのであろうか。
身体全体に微かな震えが来たが、それが大きくなってツンに悟られる前にと自分を見捨てるよう促した。

ξ ⊿ )ξ「――――解ったわ」

川 - )「………」

すっくと静かに立ち上がったツンの姿は、すぐにクーの視界から消えた。

そう、それでいい。

己の生死が懸かった状況だというにも関わらず、あまりにも冷静な指示を下せた自分に、少しばかり驚きだ。

思い返してみれば、自分の人生はいつも誰かに置いてけぼりにされてばかりだった。
たとえそんな事ばかりでも、女だてらに周囲の男に負けないぐらい一人でも強く生きてやろうと思った。

父や母の死───あれからが自分の不運の始まりだったのだろうか。
悲哀に打ちひしがれていた自分に手を差し伸べ、再び生きる力を与えてくれた"彼"も、いつか自分の元を去った。

いつもたった一人。孤独という名の暗い牢獄へと、囲繞されていたのだ。
この不運はもしかすると、自分がこの世に生まれ落ちた時から、既に約束されていたのだろうか。

914以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/06(日) 17:35:13 ID:U6FnUNlM0

──── … ギギッ ギィィッ … ────

化け物の声が、さらに近くに聞こえる。
それと同時に、これまで強い自分を保ってきたクーの心の外殻は、剥がれ落ちようとしていた。

川; - )「……はぁッ、はぁ……」

呼吸は上ずり、次第に周囲の音もぼぅ、と遠くに聞こえる。
これから訪れる死の恐怖を遮断する為に、五感が鈍くなってでもいるのだろうか。

もう目も開けていたくなかったから、思わず顔を塞ごうとした時だった。
ふと─────足元でもぞもぞと違和感を覚え、飛び上がるように身を起こす。


川;゚ -゚)(────なんッ)


「動かないでッ!!」

915以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/06(日) 17:36:21 ID:U6FnUNlM0

川;゚ -゚)「………お前、どうして………」

クーの脚にがっしりと食い込んだトラバサミ。
その口をこじ開けようと、真っ赤な顔で立ち膝しているツンの姿が、そこにはあった。

小鼻を膨らせながら一心に全力を込めているその指先からは、既に手首を伝う程に血が滲んでいた。
修道服の袖を紅に染めながらも、それでもその手を緩めようとはしない。

ξ;゚⊿゚)ξ「私が神に仕える信徒であろうが、今はそんな事はどうでもいいわ……」

川;゚ -゚)「馬鹿者め、早く逃げるんだ!」

困惑するクーの視界に、いよいよ三体ほどの人面樹の姿が見えた。
だが、ツンはそちらには目もくれず、クーの脚にかかるトラップを解こうとしている。

事の次第に気づいた彼女達の前方に座り込むワタナベも、ようやく正気に立ち返り叫んだ。

从;'ー'从「あ……ツンさん! 後ろ、逃げて下さぁいッ!!」

その言葉にも、ツンが動じる様子はなかった。
ただがむしゃらに、自身の指に食い込む鋭利な鉄の痛みに時折顔をしかめながらも、その場を動こうとしない。

ξ;゚⊿゚)ξ「私の目の前で助けられるかも知れない人をよ……」

川;゚ -゚)「もう……いい」

ξ;゚⊿゚)ξ「ふぅッ……この私が、諦められる訳……ないじゃない!」

916以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/08(火) 19:40:22 ID:RnAnUHvsO
待機中

917以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/14(月) 16:26:16 ID:S6PDxH6cO
そろそろ次スレいる時期だな

918以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:17:11 ID:FzNiYzXY0

川; - )「どうしてッ!」

ξ;゚⊿゚)ξ「………今は聖職者だからとか関係ない。そんなの、"アタシがイヤだから"ッ!」

川;゚ -゚)「────!」

有無を言わさぬツンの剣幕に、さしものクーも一瞬たじろいだ。

伊達や酔狂で出来る事ではないのだ、ましてやこんな場面で。
拾えるかも知れない自分の命を、他人の命を救うために投げ出す事など。

ツンの、決して諦めようとしない姿に。
クーはこの時、心を揺さぶられる何かを感じていた。

川;゚ -゚)「その手……」

ξ;-⊿-)ξ「いっ、つつ……」

痛みに一瞬手を離したツンの手のひらを見て、制止しようとするクーの言葉が詰まった。
尖った部分に構わずに指を掛け力を込めていた為か、手のひらはもはや血だらけだ。

それでも再度、閉じた口を両手でがっしと握り締め、諦めるつもりなどないとばかりに、叫ぶ。

919以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:17:45 ID:FzNiYzXY0

ξ;゚⊿゚)ξ「─────ワタナベちゃん!お願い、手を貸して!」

だが、もはやツン達の背後に迫る人面樹に恐れをなしたワタナベは、その場から尻餅をついたまま動けない。
半開きに開いた口はカラカラに乾き、ワタナベはただただ救いを口にする事しか出来ずにいた。

从;'ー'从「あ………あ……神、様……」

──── … ウェハハ、ギチギチ … ────

ξ#゚⊿゚)ξ「ふんぬッ!ふんっ!」

川;゚ -゚)「もう……いいんだ」

ξ# ⊿ )ξ「くっ……!」

川;゚ -゚)「私を見捨てて──────お前達だけでも、逃げてくれ」

ξ; ⊿ )ξ「………聞こえない、わよ」

川;゚ー゚)「”ありがとう”………な」

ξ;⊿ )ξ「そんな言葉……聞きたくない」

920以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:18:23 ID:FzNiYzXY0

    … グフフフフフフ …
            … ギヒヒ …

       … チキチキチキチキ …

静かな木々のざわめきに入り混じって聞こえる、あざ笑う声。
ツンの背後に、もはや悪夢は覆いかぶさろうとしていた。

ξ;⊿ )ξ「……………なんなのよ、もう」

必死に誰かを救おうとする彼女の心にも、とうとう影が落ちようとしている。
諦めようとしている────心が折れ掛けてしまっていた。

ξ;⊿ )ξ「女の子ほっぽり出して、一体どこをほっつき歩いてるんだっつーの……」

しかし脳裏には、あの能天気な面々の顔が一瞬過ぎる。
これが走馬灯というものだとすれば、憎たらしい事この上の無い最期だ。

だから、こんな形での旅の終わりは絶対に認めない。

諦めを認識しそうになった間際、ツンは半ば無意識に、最後の望みを託してその名を口にした。
喉の奥が震えて、そこから血を吐き出しそうになるほどの大声量で。

ξ; ⊿ )ξ「─────ブウゥゥゥゥゥゥゥゥゥーーーンッ!!」

そのツンの叫びにかぶさって、どこかから声が聞こえた気がした。

921以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:18:52 ID:FzNiYzXY0

───( 我が前に立ち塞がる敵 其はその一切を 業火の元に滅せよ)───

ツンの背後に迫った人面樹の一体が、ギリギリと幹をしならせて腕を大きく振りかぶる。
直後、それを彼女の頭部へと叩きつけようと、狙いを済まして振り下ろそうとした、瞬間だった。

…… ギチギ……ブッグゥ ……

突如、人面樹の胴体部分の幹が、中心部分から丸々と赤みを帯びてゆく。

ξ゚⊿゚)ξ「─────!」

川 ゚ -゚)「………これは!」

─────────「【炎の玉】!」

”どむっ”

瞬間、辺りを赤い閃光が照らした。

胴体部分が紅蓮の赤熱を帯びたのが見えたかと思えば、即座にその身が爆散していた。
遅れて吹き荒れる熱風はツンやクーらの衣服をはためかせ、やがて過ぎ去る。

ξ;-⊿-)ξ「きゃっ!」

川; - )「なっ……!」

922以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:19:33 ID:FzNiYzXY0

気がつけば今度は、上空へと吹き飛ばされた燃え盛る粉々の木片。
それらがぼとぼとと周囲へ飛散し、ツンとクーは腕を頭上に交差させて身を庇う中で─────

悠々とこちらへ向けて歩を進めてくる──────それは、見慣れた男の一人だった。

「どうやら、ご指名は僕ではなかったか……悪い事をしたね」

ξ゚⊿゚)ξ「………あ」

(´・ω・`)「遅くなって、すまない」

今ではただの木っ端と化してしまった人面樹の背後から現れたのは、頼れる魔術師。
かざしていた手を下ろすと、悪戯っぽく口元で微笑んだ彼の姿に、ツンは思わずにやけて言葉を返した。

ξ゚ー゚)ξ「えぇ、随分待たせたものね?」

川;゚ -゚)「油断するな、まだ───!」

(´・ω・`)「解ってるさ。だが、後はお手並み拝見といこうか」

ショボンの左右に居た人面樹が、一斉にそちらへ振り返った瞬間だった。
林の中を素早く疾駆する"何か"が、急速にこの場へと近づいて来る。

それは、獣のような咆哮を上げながら。

923以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:19:59 ID:FzNiYzXY0

「─────おぉぉぉぉぉッ!─────」

… グ、ギギ? …

ショボンへと注意が向いていた人面樹の一体は、砲弾のようなその速力にまるで対処できなかった。
目前まで迫るや否や、既に飛び掛りざまに振り下ろされていた一刀は、右腕を軽々と両断する。

… ギィィィィィッ! …

ξ゚⊿゚)ξ「ブーン!」

(# °ω°)「……はあぁぁぁぁぁーッ!!」

次いで、二の太刀はその悲鳴が耳に入るよりも早く繰り出された。
大振りの横薙ぎは、全力を以ってその幹の中心へと叩きつけられる。

ごつ、と重厚な音が地を揺らす程の重さで打ち鳴らされた。

肉厚の刃は目視困難なほどの速力を得ると、幹を繋ぐ大部分の繊維を一瞬にして削いだのだ。
おおよそ4割ほど奥深くまで差し込まれて止まった長剣の刃を強引に引き抜くと、今度は反転しつつ
それを反対側の幹の表皮へと叩きつける。

初撃の逆位置からの、更なる強烈な打ち込み。

… グギャギャッ! ギギッ …

(;`ω´)「お………おぉぉぉッ!」

924以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:20:30 ID:FzNiYzXY0

柄に力を込めるほどに不気味な呻きを漏らすその人面樹に身体ごと刃を寄せて、そのまま剣を振りぬいた。
掛かっていた負荷が弛緩すると同時に、幹の上体部分はふわりと一瞬中空に舞う。

左右から身を削ぎ取られて両断された人面樹が倒れると同時に、もう一体がブーンに襲い掛かろうとしていた。

「あらよっっと!」

だがそこへ、木々でひしめく林の中を縫うように飛来したのは二振りのナイフ。
"すとっ"と音がしたかと思えば、それはほぼ同時に人面樹の眼の奥へ突き立てられる。

爪'ー`)「熱くなり過ぎだぜ、ブーン」

… グオォッ…ギキ …

眼球を潰された事により、その一体は完全に狙うべき標的を見失った。
右往左往としているそこへ、身体ごとぶちかます強力な刺突が、ブーンにより放たれる。

(#`ω´)「ッらぁ!」

大きく開いた空洞となっている口内に差し込まれた長剣の切っ先は、そのまま反対側へまで突き抜けた。
眼前で響き渡る人面樹のくぐもった断末魔は、剣の柄を押し込むブーンの手におぞましい感触を残したが。

それでも、気にも留めずに顔部分に足をかけると、思い切り蹴飛ばしながら剣を引き抜く事で倒木させた。

925以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:20:55 ID:FzNiYzXY0

(;`ω´)「───ふぅ、いっちょ上がりだお、ね」

川 ゚ -゚)「お前たち……!」

「すげぇ……すげぇな!お前さんがた!」

3人から遅れてやってきていたラッツが、ブーン達の一連の戦闘を目の当たりにし、感嘆を漏らした。
たまたまこの森に居合わせた同業者に、これほどの手練たちが混じっていたなどとは思わなかっただろう。

爪'ー`)「ヒーローは遅れて現れる、ってな……さて、この場は退散と行こうぜ」

川 ゚ -゚)「………」

ツン達二人の前に差し伸べられたフォックスの手は宙ぶらりんのままだ。
その時クーの瞳は、フォックスの手を取る事なく、俯きながら、肩は震わすツンへと向いていた。

ξ ⊿ )ξ「─────のよ」

爪'ー`)「ん?」

顔を覗き込もうとしたフォックスの顎に、拳が突き刺さる。

爪; ー )「へぶしッ!」

ξ#゚⊿゚)ξ「来るのが遅いっつってんのよ!このあほんだらぁッ!」

926以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:21:29 ID:FzNiYzXY0

痛快な一撃をもらってよろめいたフォックスが、理不尽なツンの怒りに対して言い返そうとした。
が、唇をわなわなと震わせながら頬に光るものを伝わせている表情に、ぐっと言葉を飲み込む。

爪#'ー`)「このじゃじゃ馬っ!?いきなり何────」

ξ ⊿ )ξ「本当に……怖かったんだから……」

だが、すぐに袖で顔を拭ったツンの様子を見ながら、フォックスは気付く。
クーのトラップを力づくでこじ開けようとした時の傷で、両手を血に染めていた様子に。

爪;'ー`)「おい、大丈夫かよ?クーも脚……」

川 - )「………すまん。私の注意不足で────」

(; °ω°)「ツン……!怪我、してるのかお!?」

ξ;-⊿-)ξ「あいたた!……まぁいいのよ、かすり傷だし」

すぐに血相を変えて傍らにしゃがみ込む二人をよそに、ツンは気丈に振舞った。
クーのせいで自分が怪我をしたなどと思われては、二人が煩いだろうと思っての事だった。

だが、出会った時から無茶をしてばっかりの自分を、毎度カバーしてくれるだけはある。
仲間以外には冷たい人間などでは、なかったようだ。

川 ゚ -゚)「!」

927以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:22:01 ID:FzNiYzXY0

(;`ω´)「ふんぬぅぅぅぅッ」

いつの間にやらクーの足元に掛かった罠を取り外すべく、ブーンが両腕に力を込めていた。
ツンが必死に解除しようとしたそれは、さすがの力馬鹿にかかっては呆気なく閉じていた口を開く。
そのままトラバサミを草むらへと投げ捨て、ブーンはゆっくりと立ち上がる。

川 ゚ -゚)「あ……」

( ^ω^)「ふぅ……クーも、大事がなくて良かったお」

爪'ー`)「とはいえ、結構な深手だろ?もし嫌じゃなければ、肩でもお貸しするぜ」

川 - )「………仲間を危険に遭わせ、その上怪我まで………」

( ^ω^)

爪'ー`)y-

俯きながら、ぽつりと謝罪の言葉を口にしたクーを前に、二人は一度顔を見合わせた。
やがて、その彼女の顔の前に手を差し出したのは、ブーンだ。

( ^ω^)「違うお」

川 ゚ -゚)「……何が、違うんだ」

928以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:22:37 ID:FzNiYzXY0

( ^ω^)「こういう時には、”ありがとう”の一言でいいんだお」

爪'ー`)y-「そういうこった。ツン達がまだ生きてる事に、こっちこそ礼を言わせてもらわなくちゃな」

川;゚ -゚)「あ………」

屈託無く笑みを浮かべながら、自分に向けて差し出された手のひら。
それを取るのが若干気恥ずかしくて、浮かした肘は宙を一瞬漂っていた。

そのクーを後押ししたのは、ツンの一言だった。

ξ゚⊿゚)ξ「どうしたのさ?」

川;゚ -゚)「私は……大きな口を叩きながら───いざお前の仲間の彼らが来るまで、何も出来なかった」

ξ゚⊿゚)ξ「………」

川; - )「お前まで巻き添えにしようとした私に、そんな助けを受ける義理など───」

ξ゚⊿゚)ξ「やれやれ……」

ため息めかしに肩をすくめたツンだったが、彼女もまたクーに手を差し伸べる。
そして、優しげな笑みを浮かべながら彼女に問いかけるのだ。

929以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:23:25 ID:FzNiYzXY0

ξ゚ー゚)ξ「私達、今は────”仲間”じゃない」

川 ゚ -゚)「!」

ξ゚ー゚)ξ「死ぬ目を押し付けられるのは御免だけれど、それでも、それを分かち合えるなら───」

川 ゚ -゚)「………」

ξ゚ー゚)ξ「クーがいなかったら、私とワタナベちゃんなんてとっくに天に召されてましたー……なんてね」

川 ゚ -゚)「─────ありがとう」

言いながら、差し出されたツンの右手をそっと握りながら、クーは立ち上がった。
その背後では、自身の握手を放置されたショックに固まっていたブーンが、フォックスに笑われていた。

(; ω )「ぐ、ぬぅ……」

爪'ー`)y-「はいフラれました〜……残念だったな」

川;゚ -゚)「あ、すまん」

気恥ずかしそうにしながら腕を引っ込め、歯噛みしながらそっぽを向いたブーン。
それを気にかけようとするクーだったが、奥からワタナベを連れて現れたショボンの方へ、全員が振り返った。

930以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:24:18 ID:FzNiYzXY0

(´・ω・`)「取り込み中のところすまないが、彼女も無事だ」

从'ー'从「……ようやく、落ち着きました。皆さん、本当にありがとうございます」

ξ゚ー゚)ξ「ありがと、ショボン。お互い無事で何よりだわ」

「さて」と前置きして、一度周囲を見渡したショボンが咳払いをしてから告げる。

(´・ω・`)「これから、どうしたものかな」

爪'ー`)y-「勿論、脱出するんだろ?」

このカタンの森全体が、妖魔の類と化した人面樹が跋扈する領域。
ボアードが他愛なく葬り去られていたのを見る限り、束になってかかってこられてはひとたまりもない。

だが、そうしない理由について考えた結果、ショボンは所感を述べた。

(´・ω・`)「この森には───野生動物が居ない」

从'ー'从「それ、私も気になってました。鳥の声一つ聞こえないなんて、おかしい……」

( ^ω^)「あいつらに食べられてしまったのかも知れないお」

爪'ー`)y-「あり得なくはねぇ。いつからこの森がこうなっちまったのかは知らねぇけど」

931以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:24:53 ID:FzNiYzXY0

川 ゚ -゚)「────2年前」

ξ゚⊿゚)ξ「?」

从'ー'从「あ………」

ぽつりとクーが漏らした言葉に、ワタナベが思い出したように反応した。
腕組みをしながら話を聞いていたラッツにも、思い当たる事があるようだ。

「────もしかして、あれか」

川 ゚ -゚)「そうだ2年前にこの森で、空から降り注いだ隕石が目撃された」

从'ー'从「確か……大規模な山火事になっちゃったんですよね。その時は実家の薬草屋も大変でした」

川 ゚ -゚)「あぁ、見る影もないほどに焼き尽くされたと噂には聞いている」

(´・ω・`)「それが、2年前だって?」

「馬鹿な」とでも言いたげなショボンが言いたい事には、この顔ぶれの中では勘の鋭いフォックスが気付いた。
ほぼ全焼に近い状態にまで焼け焦げた森が、たった2年そこらで今のような状態にまで復活できるはずがないのだ。

932以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:25:56 ID:FzNiYzXY0

爪'ー`)y-「気持ちの悪ぃ話だぜ───その隕石、化け物の種でも積んでたんじゃねぇか?」

川 ゚ -゚)「疑うべきだったな。この現状を見る限り、この場に居る誰もがその説を信じるだろう」

从'ー'从「木が……化け物になったんですね」

ワタナベが口にしたおとぎ話は、実際にこの森で起こっているのだ。

鳥の歌も、動物の声も聞こえないのは、みんなあの木に喰われてしまったから。
旅人を食らう森は、自分達がやってくるのを口を開けて待っていた。

森全体が化け物────単純にして、寒気がするような事実だ。

川 ゚ -゚)「ここに来る時、森の入り口の前を通ったか?」

爪'ー`)y-「お前も気付いてたか?……あぁ、残念ながら木で埋め尽くされてたぜ」

( ^ω^)「接近しなきゃ通れない……けど、あれ全部を相手にするのは……」

(´・ω・`)「恐らく僕らを閉じ込めて弱らせる───それから喰うのが、奴らの手口だろう」

933以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:26:29 ID:FzNiYzXY0

「おいおい……勘弁してくれよぉ」

黙り込んだ全員の顔を覗き込んで、泣きそうな顔をしたラッツが弱音を漏らす。
皆が考え込む中で、その中には共通の認識を持つものが何人かいるのだが、今ひとつ踏み出せずにいた。

なぜならば、”賭け”の代償は”死”となり得るからだ。
誰でも思いつきそうな案ではあるが、その巨大なリスクが付きまとう故に悩む面々に対し、軽く口に出したのはツン。
浅はかさゆえか、はたまた、それが勇気なのかは分からないが。

ξ゚⊿゚)ξ「……燃やしちゃえば、いいんじゃない?」

(´・ω・`)「………」

(;^ω^)「燃やすって、この森全体を……かお?」

このカタンの森周辺に住み暮らす人々にとっては、命の源泉である森だった。
だが、森に入って帰らぬ者が後を絶たぬ現状、その真相が発覚したこの森を、このままにしておくわけにもいかない。
本来ならば騎士団などに総出で仕事をしてもらうべきだが、外部に出られない以上、自分達でどうにかするしかない。

だが、閉じ込められた現状で森に火を放つという行為は、自分達の首を自分達で絞める事と同義だ。

934以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:27:01 ID:FzNiYzXY0

爪'ー`)y-「……ま、それっきゃねぇかもなぁ。動物がいねぇ、つーことは、ここにゃ食い物もねぇ」

从;'ー'从「それじゃ、早く出なきゃ……!」

(´・ω・`)「あぁ、長期戦になればなるほど疲弊して、脱出の可能性が減る事になる」

川 ゚ -゚)「私も、ここまで来て断崖ぶつかった瞬間に、森を全焼させるしか無いと考えた」

(;^ω^)「でも、もし森に火を放ったら……ブーン達はどうなるお?」

爪'ー`)y-「そうさなぁ……まぁ仲良く、丸焦げだろうさ」

ξ゚⊿゚)ξ「ん〜……ダメ、か」

「じょ、冗談じゃねぇやッ!!」

黙って話しを聞いていたラッツが、素っ頓狂な叫び声を上げて一同の意見を明確に拒絶した。
5人の冒険者達の間では、人面樹にやられるよりも焼死による自殺を選ぶ、といった旨の会話がなされているのだ。

935以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:27:32 ID:FzNiYzXY0

地面にどっかと座り込んで、真正面から反対意見をぶつけるラッツだったが、それをたしなめたのはショボン。

(´・ω・`)「そう、悲観したものではないよ。抜け道は必ずどこかにある」

爪'ー`)y-「ま、問題も無くはねぇがな」

「問題は……ありすぎだぜ」

爪'ー`)y-「まず第一に、ショボン。お前さん一人の魔法で、この森丸焼きに出来るか?」

(´・ω・`)「たとえ"爆炎の法"級の威力を放つにしろ、風向きや場所、延焼に最適な条件が揃わなければ不可能だ」

川 ゚ -゚)「そして問題は、火を放った後に我々はどうするか……だ」

(´・ω・`)「そこだね。何の考えも無しに火を放っては、山を丸焼きにされて逃げ惑う小鹿も同じだ」

( ^ω^)「何か、打つ手は?」

(´・ω・`)「そうだね─────だが詳しい話しをする前に、まずは……場所を変えようか」

936以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:28:10 ID:FzNiYzXY0

────ざわ   

    …… キヒヒ ……

        ざわ────

気付けば、随分と長くこの場に立ち止まり話し込んでしまっていた。
その自分達の周辺に、またも風に乗って流れてくる嫌な声と、不愉快な気配が近づきつつあるのを感じる。

( ^ω^)「また……来ようってのかお?」

ξ゚⊿゚)ξ「立てる?クー」

川 ゚ -゚)「あぁ、それほどの傷ではないようだ」

爪'ー`)「大丈夫かい、肩を貸すぜ?」

そう言って手を貸そうとしたフォックスだったが、遠慮がちに軽く首を振ると、細腕をツンの首へと回した。
一瞬どきっとしながらも、ツンもまたクーの腕を自然体のままに受け入れる。

川 ゚ -゚)「いや……こっちでいい」

937以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:28:46 ID:FzNiYzXY0

从*'ー'从「きゃっ、見せ付けてくれますねぇお二人とも〜」

ξ*゚⊿゚)ξ「ちょっ、そんなんじゃ無いわよ」

(;`ω´)(ふぅむ………)

合流前の別れ際、最後に見た二人の様子は罵声を激しく交し合う険悪なものだったはずだ。
だが、今の二人からはそんな雰囲気が微塵も感じ取れない事に、板ばさみで胃を痛める想いだったブーンは、
どこか符に落ちないものを禁じえなかった。

(´・ω・`)「さて、それじゃあ────」

川 ゚ -゚)「ちょっと、待ってくれないか」

どさ、と足元に置いた布袋をごそごそと漁り、クーが何かを取り出した。
その手に握られていたのは、包帯と薬草だ。

川 ゚ -゚)「手を出せ」

ξ゚⊿゚)ξ「え?」

938以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/15(火) 21:29:17 ID:FzNiYzXY0

川 ゚ -゚)「………少し、痛むぞ」

手のひらを上に向けて差し出させると、クーは手にした薬草をツンの手にすり込み始めた。
手練の動作で両手ともの消毒までも終えると、これまた手馴れた様子で包帯を巻いて行く。
トラップをこじ開けようとして負った負傷部分の治療は、そうして瞬く間に終えられた。

ξ*゚⊿゚)ξ「あっ……ありがと!」

川 ゚ -゚)「お互い様さ」

从*'ー'从(………素敵)

その場に居合わせた少女ワタナベには、二人の真後ろに爛漫と咲き誇る大量の白百合が見えていたようだ。
最も、それは本人の趣味嗜好に伴って都合良く頭の中で形作られた、妄想の類ではあるが。

(;`ω´)(うーん?……うーん)

爪'ー`)「置いてくぜ!ブーン!」

一体この短時間であの険悪だった二者の間に何があったのか。
未だ納得のいかないブーンがいくら頭を悩ませても、女同士の友情というものは理解できなかった。

939以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/16(水) 05:25:03 ID:tr7xWFLc0
乙乙!

940以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/17(木) 01:07:01 ID:mp9tI7I.O
続き来てた、乙でした

941以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/17(木) 01:53:28 ID:t5RjPiKM0
この後クーが正式パーティー加入かな
続きが待ち遠しい

942以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/17(木) 02:07:02 ID:NWt/sz3o0
来てたか!
おつー

943以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/17(木) 22:51:05 ID:RAPwhq5MO
いい趣味してるなワタナベwww
乙!

944以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/21(月) 19:24:52 ID:5RDxlX6s0
まってるにゃん

945以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/11/28(月) 08:40:10 ID:QJzp4LAoO
ギコ、ドクオ、ミルナ、モララー側と絡めたストーリーも読みたいな
期待大です

946以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2011/12/20(火) 07:46:31 ID:5r8oAH02O
まってます

947以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/01/08(日) 23:10:16 ID:QoWsfVgsO
( ^ω^)あけおめお 
( ^ω^)続き待ってるお

948以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/01/12(木) 21:24:08 ID:Uz6xViVY0

───────────────

──────────


─────

先導するショボンに続いて、一向は再び森道を奥へ、奥へとひた走る。

川;゚ -゚)(やはり、私の怪我のせいで遅れを取ってしまっているか…)

クーの足の怪我を庇っているために、どうしても速度は出ない。
それゆえに、行く先では人面樹達とは幾度も戦闘を強いられそうになっていた。
極力それを回避しながらここまでやってきたが、一本道となればそういう訳にもいかないだろう。

「どうする、行く手を塞がれちまったぜッ!?」

爪'ー`)「面倒くさそうな奴だな」

そうして、冒険者たちの眼前には今も一体の人面樹が居た。
今まで対峙した奴に比べ、非常に太い幹を有している、単眼の固体だ。

949以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/01/12(木) 21:24:57 ID:Uz6xViVY0

┃#w(;(●);)w#┃「ギギ…ギィ…」

巨体を有するという事は、力も、頑強さも他より優れているという事に他ならない。
様子を伺っているのか、ブーン達の行く手に立ちふさがり、不気味な静けさをたたえて佇んでいた。

(´・ω・`)「だけど、ここは通らなければならない」

先頭に立つショボンが、手を顔の前にかざして詠唱の準備に入る。
やがてその隣に並び立ったブーンが、一言を発した。

( ^ω^)「倒すお」

長剣を手に、ゆっくりと歩み出たブーンの所作は、目まぐるしく瞳を動かす人面樹に凝視されていた。
ぎぎ、と無機質な声を上げているが、そこから動植物としての生気は一切感じられない。
感情も無く、ただ自分達を捕食するという行動原理に従うだけなのだろう。

感情がない分、妖魔以上に性質の悪い存在かも知れない、と思った。

┃#w(;(●);)w#┃「────ギョォッ!」

(;^ω^)「!」

950以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/01/12(木) 21:25:27 ID:Uz6xViVY0

人面樹に対し、ブーンが考えと共に剣を構えた時だった。
その左手を模る枝が消えた────────否、急激にしなった。

そこから頭が全身に命令を行き渡らせるのは、電撃的に早かった。
咄嗟に剣の腹を気配が向かってくる方向へと合わせ、難を逃れる。

”ごぎんッ”

鋭く、重い打撃音は手骨にまで響く。
それが、しっかりと握り締めていた柄から剣全体へ、大きな衝撃を伝わらせた。
音が聞こえるまでの間、自分が攻撃を受けた事にも気付かぬ程の速度。

(;`ω´)「────くッ!?」

して、その威力も並大抵ではない。
打たれた一瞬、面々の中では一番の体格を誇るブーンの身体が、側方へとふわりと浮いた。
腕部である枝を鞭のようにしならせて叩きつける打撃は、その図体とは一見見合わぬ速度だ。
これで頭や胸を打たれれば、先だって命を落としてしまったボアードの二の舞となるであろう。

(´・ω・`)【我────魔────】

ブーンが一合で顔に冷や汗を浮かべた様子に、ショボンは即座に魔法詠唱の態勢に入っていた。
だが、人面樹の更なる一撃が、続けざまにブーンの頭部へと振り下ろされる。

ξ;゚⊿゚)ξ「ブーンッ!?」

951以下、名無しにかわりましてブーンがお送りします:2012/01/12(木) 21:26:18 ID:Uz6xViVY0

┃#w(;(●);)w#┃「ギュオォォーーーッ!!」

(;`ω´)「……く、うッ!」

再び、目の前で火花が散るかのような破裂音。

それと同時に頭上で構えていた剣が、顔のすぐ傍にまで一息で押し込まれた。
膝ががくりと地に着きそうになるほどの膂力────だが、二撃までをどうにか耐えた。

(´・ω・`)「離れろ!ブーン!」

(;^ω^)「───ッ!」

「魔法の矢」、ショボンの口からそう言霊が紡がれると、彼の手先から放たれた光の帯は収束して、人面樹の身を貫いてゆく。
咄嗟の呼びかけで危険を察知し、素早く横手の茂みへと転がり込んでいなければ、ブーン自身も危ない距離だった。

動きを止めたその様子に、「決まった」と、誰もが思い浮かべた事だろう。
だが、次の瞬間には苦虫を噛み潰すような表情で、皆一様に歯を食いしばっていた。

┃#w(;(●);)w#┃「──────ギギ、ギィィィィィイーッ!!」

止まらない────それどころか、ますます凶暴さを増してしまったようだ。

「お、おい、やべぇ!こっち来るぞ!」

(´・ω・`)「…………もう一撃放つには、際どい」




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