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【15周年記念】ジョジョの奇妙な問題集【自由参加企画】

1名無しのスタンド使い:2023/11/28(火) 21:18:05 ID:DqvvoycU0
【企画概要】
日常の中で遭遇する奇妙な状況・スタンド使いとの遭遇、様々なシチュエーションが問題として提示され、その問題を好きなオリスタを活躍させて解決していく自由参加型の短編集企画です。
※オリスタ会議室にて552さんが発案した企画を元に、意見を擦り合わせてここまでこぎ着ける事ができました。改めて有り難うございます!


【目的・目標】
オリスタの設定を借りて楽しく遊びつつ、15周年を向かえたオリスタを祝福したいです。企画者の勝手な目標はオリスタ企画で考案された組織を何かしら形で活躍させる事を目指したいと思います。
※ストイックに目標だけを遂行するのではなく、話を思い付いた時に書くような緩い縛りだと思ってくだされば幸いです。

【開催場所】
オリスタSS板

【使用テンプレート】
〜問題用テンプレ〜
【課題名】
【あらすじ】
【クリア条件】
【使用オリスタ】
【補足情報】

〜解答用テンプレ〜
【課題名】
【使用オリスタ】
【解答】

【ルール】
①オリスタSS板にて開催、スレタイは【ジョジョの奇妙な問題集〜】としてスレッドを立てます。

②本企画は冒頭でも触れている通り自由参加型の企画です。興味を持ってくださる方がいれば、問題の作成&投稿・問題の解答話の投稿・活躍させて欲しいオリスタの投稿・その他質問等を受け付けております。気が向いたら気軽に遊びに来てください。

③上記のテンプレートを使用して問題を作成して本スレッド内に投下します。問題のシチュエーションはお任せします。問題にオリスタを使用しない場合、問題用テンプレの【使用オリスタ】の項目は無視してください。
※問題は難しく考えすぎず、シンプルな条件でも大丈夫です。
※問題設定やクリア条件が難しい場合、書き手が選べない可能性もありますので、その辺はご了承お願いします。

④解答となる話は、投稿された問題の中から自由に選択して、活躍させたいオリスタを選び、問題で提示されたクリア条件解を決する短編のお話を書きます。
解答話も上記のテンプレートを使用して作成してください。大喜利みたいな小話でも、もっと短いショートショート、ちょっと長いSSでも大歓迎です。
問題の設定内容からあまりにも逸脱しない限りは拡大解釈も大丈夫だと思います。オリスタの設定を借りて楽しく遊びましょう。
場合によってはクリア条件に満たせなかった話もアリですが、手段の一つとしてたまに活用する程度でお願いします。

⑤活躍させて欲しいオリスタも募集しています。最終的にどのオリスタを選択するかは書き手の人によりますが、どのオリスタを使用していいか迷っている時など、いくつかの候補があれば選びやすいので、気が向いたらご協力宜しくお願いしますm(_ _)m

⑥問題を解答するオリスタが他の人と被るのはOKです。Ifの話として許容しましょう。

⑦使用オリスタ本体の名前を設定するのもOKです。解答文の冒頭に補足して書いてくだされば読みやすいかもしれません。逆に名前を設定しないのも可です。

⑧他のオリスタSSで設定が固められたオリスタキャラを使用するのも良いと思います。ただ、お借りする場合は最大限リスペクトしましょう。取り扱い注意です。

⑨ネタやチートオリスタを使用するのもOKです。せっかくだから活躍できそうな問題があればネタ話として割りきって投稿するのも面白いかもしれません。

⑩その他何かあれば、質問や確認したい事があれば対応しますので気軽にレスしてください。


次に問題と解答のサンプルを投稿します。

117名無しのスタンド使い:2024/02/06(火) 22:57:22 ID:KW40acUc0
【課題名】
>>38
手作りドローン『レイブン』
【使用オリスタ】
No.7430 イーヴィル・エンパイア
【解答】

 青空に浮かぶ巻雲は風に吹かれながら閑雅に舞い、川の水は遥か遠い海を目指して清閑に流れ往く。晩夏に吹き抜ける涼風に後押しされるように、どこにでもある白昼の河川敷を散歩する男は、ラフな白衣姿で耳にワイヤレスイヤホンをつけて、お気に入りの音楽を観賞しながらご機嫌そうに日光浴を満喫していた。

 そこに懐にしまっていたスマートフォンがアラーム音が鳴り響かせながら水を差してくるが、男はその音を待ち望んでいたようでアラームを停止させると、踵を返して帰路につこうとする。

 その双眸は稚気に富んだ純粋な輝きを放ちながら、蒼穹に何かを描こうとする浮雲に、見果てぬ世界を投影させているようだが……蒼天のキャンパスに見馴れない異物が入り込んできた事に気がついてしまった。

「あれはドローン?……いや違う」

 謎の飛行物体は四方のプロペラで揚力を発生させてホバリングするドローンとは形態が異なる。機体の上に取り付けられた大きなプロペラの動力で上空に浮上・前進し、機体の後方にある小さなプロペラの横向きに働く力で方向変換を可能としている一般的なヘリコプターと同じ機構をしといるが、人が乗れるような大きさではない。

 あれは田畑への農薬散布や災害時人が立ち入る事が出来ない場所を観測・物資運搬を目的としている産業用の無人ヘリコプターだ。それが何故こんな河川敷の上空を飛行しているかは分からない。都内の河川敷であれを飛ばすとなれば、河川管理者に許可が必要で色々と面倒な手続きが必要なハズだが……そんな男のロジカルシンキングは一瞬にして瓦解する。

 目を細めてよく観察してみればガムテープやら何やらで色々取り付けており、目視で確認できたのは機体正面部にスマートフォン、下方にはネイルガンのようなものがあった。こんな物に管理者の許可とかどうとか無粋な事を考えるのは最早野暮だろう。男は細めていた目を大きく見開き、好奇心を煌々と輝かせながら笑い始める。

「フハハハハハ、実に馬鹿馬鹿しい……でもそーゆーところが面白いんだ。無骨で粗削りだが趣味は悪くない。さぁ……それでどうしてくれる?」

 男は改造ヘリに向かって両手を振って見せながら自身のスタンド能力を発動した。ラフな白衣姿は瞬く間に、多数のパイプが生え、各所に髑髏などの様々な『危険』を連想させるマークが付いた全身を包み込む防護服に似たヴィジョンによって覆い尽くされてしまう。

 一方、改造ヘリは徐々に高度を下げながら男に迫り、10メートル圏内に入った付近で、機体の下部に取り付けたネイルガンを男に向けて発射しようとするが……男は突如として黒煙に包まれて姿を暗ましてしまう。全身から生えるパイプから物を燃やした時に発生する微粒子の産業廃棄物・煤塵を大量に含む煤煙を一斉に放出してみせたのだ。

 辺り一面が大火事でも発生したかのような黒煙に包まれる中、改造ヘリもネイルガンを射出するが手応えはなく、それどころか煤煙に包まれる男は悶え苦しむような咳き込みすらない。

 ただ黒煙の中で影響を一切受けていないかのように「レイヴン号と言うのか……意外と可愛いヤツだな。でもネイルガンの機構は実に素晴らしいぞ。連射できるように改造して遠隔操作もしっかりできている……おいキミィ、これはもう立派な銃じゃないか、いけないなぁ〜」と、改造ヘリをどこからともなく観察するねっとりした男の声がしてくる。

 人間は得体の知れない狂人と遭遇すれば、大抵の場合は恐怖に感じてその場から立ち去ろうとする反応を示すだろう。改造ヘリは視界不良も相まってその場から急浮上して脱出を図るが、鼬の最後っ屁のように、ありったけの農薬を撒き散らしながら遠方に飛び去ってしまった。

 もっとも辺りに煤煙を撒き散らし、自身を纏衣装着型スタンド〈イーヴィル・エンパイア〉で包み込む男には、嫌がらせにすらならない無意味な抵抗であった。

 男は自身のスタンド能力を解除すると、今まで周囲を覆い尽くしていた煤煙は、文字通り煙のように瞬く間に消えてしまい、跡には手を振りながらレイヴン号を見送る男の姿があるだけてある。

 男は相変わらず純粋な瞳を煌めかせながら、片手でスマートフォンを操作する。地図アプリのような物を開くと、赤く点滅する丸印が画面に写し出された地図表の中でひたすら直進している。黒煙に紛れて取り付けた発信器がしっかり作動している事を確認した男は、静かにくそ笑む。

「そうだな……『隕石の鏃』が人体に及ぼす影響の経過を観察してから会いに行こう」

 その瞳は深淵の宇宙を照らす太陽の如く、興味本位で近づけば、全てを燃やし尽くして、それでも平然として揺らぎもしない。

118名無しのスタンド使い:2024/02/08(木) 08:17:25 ID:OpvHeZPs0
>>47
【課題名】
夜回り初日
【使用オリスタ】
No.8849 ブロークン・ニードルス(本体名:刺宮ちゃん)
【解答】
ズドォン………ズドォン………

人っ子1人居ない深夜の公園にて。
矢鱈にガタイの良い1人の女(?)が身の丈ほどもあるスレッジハンマーを振るい、一心不乱に藁人形を木に打ち付けていた。

「怨めしい……怨めしいッ……!」

その口から漏れる声は男と間違うほどに野太く、そして怨嗟にまみれていた。
…………そんな彼女(?)を木の陰から見つめる男女が1組。

「どど、どうしよう刺宮ちゃん…!?アレ、どう見ても不審者だよねぇ………?」

ナヨナヨと頼りない声を発する男に対し、刺宮と呼ばれた女の方は冷静だった。

「どうするも何も……警察に通報しなきゃ仕方無いでしょう。それが私達の仕事なんですから。」
「ちょちょ、ちょっと待ってよぉ!?今携帯なんか鳴らしたらアイツに気付かれちゃうかもじゃん!?」

スマホを取り出した手にすがり付いて来た男に対し、刺宮は明らさまに不機嫌な表情を浮かべて軽蔑の視線を向けた。
一体何なのだろうか、この男は。
先程まではやけに人様の胸をジロジロ見ながら馴れ馴れしく話し掛けて来た癖に、いざ非常事態になるとコレである。先輩だと言うのに頼りがいも何も無く、それでいてスケベ心は未だ失っていないらしい。

「ちょっ………離して下さいよ、今騒いだらそれこそ気付かれ(パキッ!)……え?」

異音が響くのとほぼ同時に女(?)の動きがピタリと止まる。
足元に目をやると、男の足が1本の小枝を踏み折っていた。どうやらその音が原因で気付かれてしまったらしい。
女(?)はゆっくりと振り返り、濃い青ヒゲが目立つ顔に憤怒の表情を浮かべながら木陰を凝視した。

「見ぃぃぃたぁぁぁなぁぁぁ〜?」
「うッギャアァァァ〜!」

女(?)が声を放つのと、木陰に潜んでいた男が悲鳴を上げ、刺宮を突き飛ばして走り出すのはほぼ同時だった。
後輩を、しかも女性を突き転がして逃走する……そんな人としてあるまじき姿に刺宮も女(?)も一瞬呆然とするものの、その隙をついて男は女(?)の横を走り抜け、どんどんと遠ざかってゆく。

「…………あんの野郎〜〜〜ッ!!!」

男への怒りに震え、思わず口汚くなる刺宮。
しかし、女(?)は刺宮の口調など気にも止めず、スレッジハンマーを構えなおした。

「フゥ〜…………ねぇ、アンタ。今そのハンマーを下ろせば見なかった事にするから、そこを退いてくれない?アタシはこれからあのクソ男に仮を返さなきゃならないからさァ!!」

恐怖も吹き飛ぶほどの怒りを瞳に宿し、女(?)に負けず劣らずな形相で吠える刺宮。
しかし、怒りで我を忘れているのは刺宮だけではない。
秘密の儀式を盗み見られ、呪いを妨害された女(?)が構わずにハンマーを振りかぶり、刺宮の頭へと振り下ろした瞬間──────

ズバンッ!!

スレッジハンマーの付け根が"何かに刺し貫かれたように"吹き飛び、急な重心の変化に思わず女(?)はその場でたたらを踏んだ。

「今のは正当防衛だけど、まだ来るって言うなら……………………アタシも手荒に行くわよ?」
「……………??」

全身に鋭いトゲを生やした筋肉質な女性型スタンドを出しながら、刺宮は相手に警告する。
だが、スタンドが見えていない女(?)には余り意味を為さなかったようだ。
へし折れたハンマーをその場に投げ捨てて身を低くし、今度は両手を広げながら突進を仕掛けた。

「仕方ないわね………『ブロークン・ニードルス』!」
ズドドドドドドッ!!!!

眼前に迫る敵に対して、刺宮のスタンド───ブロークン・ニードルスが高速ラッシュを叩き込む。
スタンドが見えない女(?)がそれを防御する事など出来る筈も無く、繰り出される不可視の乱打に堪らず地面へと倒れ伏した。

119名無しのスタンド使い:2024/02/08(木) 08:30:02 ID:OpvHeZPs0
>>118
「フゥ〜………さてと。あのクソ男は何処まで逃げたのかしらねぇ〜?」

女(?)は最早戦闘不能だ。そう判断した刺宮はスタンドを引っ込め、1人で逃げていった男を追って公園出口へと走り出して
──────背後で立ち上がり、追い縋ってくる女(?)を見逃してしまった。

ガシィッ!!
「なっ…………!」

丸太のような腕が刺宮の喉に回され、女(?)の左手が後頭部を押し、ギリギリと刺宮を締め上げる。
所謂「裸絞め」という技であった。しかも素人の腕前ではなく、完全にロックされている。
格闘技などやった事も無い刺宮のような女子高生など、数分もあれば命すら落としていただろう。

しかし、彼女のスタンドは接近戦でこそ真価を発揮する能力を持っていた。

「『ブロークン・ニードルス』」
ズシャッ……!

刺宮の身体と重なるように発現したスタンドから伸びたトゲが女(?)の上半身に突き刺さった。
刺宮が命を奪わないように加減したとは言え、先程のラッシュで蓄積したダメージに加えて密着状態で受けた攻撃……………。
流石の女(?)も耐えられずに昏倒し、今度こそ動かなくなった。

「ゲホッ……ハァ………ハァ…………やり過ぎた、かしらね………?」

やっとの思いで脅威を退けた刺宮は荒く息を付き、クソ男へのお礼参りに行く前に取り敢えず救急車を呼ぶ事にしたのだった。

─────────公園で死闘が繰り広げられた数日後、とある病院にて。
顔中をボコボコに腫らした1人の男が担架で運ばれ、ベッドに横たえられた。

「畜生……刺宮の奴めぇ………ちょっと胸がデカいからって調子乗りやがって………!
………たった一回見捨てただけでここまで殴る事無いだろうが………折角俺の女にしてやろうと思ってたのによォ…………!」

自分が見捨てた相手にその分の仕返しをされただけにも関わらず、男が自分の非を棚上げして身勝手な文句を垂れ続けていたその時。

「その声………何処かで聞いた覚えがあるなァ〜〜〜〜〜?」
「…………え?」

カーテン越しに仕切られた隣のベッドから、聞き覚えのある野太い声が響いた。

「まさか………」
ギシィッ……!ズン、ズン…………

隣の患者がベッドから降り、ゆっくりと自らの元に近付いている。
その事実に気付いた男の顔が青ざめるのとほぼ同時に、見覚えのある巨大な影がカーテンに映し出される。
数日前とは違って何処にも逃げられない状況下、恐怖の余り声にならない悲鳴を上げる男に構わず、やはり見覚えのある逞しい腕がカーテンをはね除けた。

120名無しのスタンド使い:2024/02/08(木) 21:10:43 ID:y6QttXTI0
>>119
解答の投稿有り難うございます!
刺宮ちゃん・女(?)・先輩みんなキャラが立っていますが、何よりも女(?)の存在感が終始一貫してオチになっているのが、解答の面白さと構成の美しさが両立しているような感じがして素敵です!
背後を取られた絞め技からの返しもブロークン・ニードルスの能力が文字通り刺さっていて良い解答だと思います。
女(?)と先輩が再び遭遇するラストはroundaboutが脳内で勝手に自動再生されました(笑)

121名無しのスタンド使い:2024/02/09(金) 07:56:45 ID:8I346JXQ0
【課題名】
>>21 まだ生きてる寿司
【使用オリスタ】
No.4507 グラビティ・オブ・ラヴ
【解答】
大企業の社長という物は基本的に多忙だ。
他の社員を動かすのみならず、時には自ら他社に赴いて商談を成立させねばならない事もある。
例え「究極生命体を産み出す」という突飛な野望を胸に秘めている男とて、それは例外で無かった。

(不味い。……不味いぞッ!)

ある日の正午。とある商談を終えた小室光之助は、寿司屋の中で苦々しい表情を浮かべていた。
不味いというのは取引の事ではない。表沙汰には到底出来ない内容だが、商談自体は光之助が思う通りに進んだのだ。
それに気を良くして入ったのが一軒の高級寿司屋だったのだが、少し「ハイ!」になっていた光之助は店選びに失敗したらしい。

(何なのだこれは!?ネタは生臭くて固い上にシャリもゴワゴワ、おまけに酢の質が悪くてやけに甘ったるい…………こんな物、寿司とは呼べん!)

二、三貫食べた時点で嫌気がさした光之助。
それでも何処ぞの不良とは異なり、ちゃんと金を払うべく会計に向かおうとしたその時。

ズキィッ!!
「ガハッ……!?……オイ………店主!!今すぐ救急車を呼べッ……!早くッ………!!」

突如として激しい痛みが光之助の腹を襲った。
堪らず腹部を押さえて崩れ落ちながらも迅速に状況を判断し、唯一店内に居る店主へ指示を跳ばしつつ出口へ向かう光之助。しかし今回は相手が悪かった。

「えっ!?………ああああ……どうしよぉ……救急車……でも、食中毒なんかバレたら店が……保健所に来られたら………あっ、あのお客さん!!ちょっと待って下さい!!」

余程気が動転しているのか客の前で隠蔽する気満々の独り言を呟きながら光之助に縋り付き、彼の脱出を阻止しようとする店主。

「この、愚図がァァッ!!!!」バキイッ!!
「うぎゃ!?」

渾身の力を込めて店主の顔面を殴り付け、彼を退かせた光之助。しかし、店主はよろめきながら戸口の前に立ち塞がり、意地でも光之助を出さないとばかりに睨み付けて来る。

「………ええい、クソッ!!」

最早脱出は不可能と悟った光之助は踵を返して店内のトイレへと飛び込み、個室の鍵を掛けると同時に己のスタンドを発現させた。

(嘗て、自らの心臓をスタンドに直接掴ませて止めたスタンド使いが居ると聞いた事がある。もしそれが真実ならば、私とて………!『グラビティ・オブ・ラヴ』!!)

黒鎧に身を包んだ人型スタンドがその場に現れ、片手をトイレに、そしてもう片腕を透過させて光之助の腹部へと差し込み、胃の内容物に触れさせた。

(よし………やった………助かったぞ………!)

激しい腹痛と急速に沸き上がる吐き気で朦朧とする意識の中、光之助は己の試みが成功した事を悟った。

─────────かくして腹痛の原因を綺麗さっぱり吐き出して回復した光之助。
降りかかった危機が去ったのならば、後は元凶を叩くだけである。光之助は乱暴にドアを蹴り開けた。

バァン!
「ヒィ!?」

未だに戸口の前で通せんぼをしていた店主だったが、ドス黒いオーラを纏いながらツカツカ歩み寄って来る光之助を見て悲鳴を上げる。
慌てて逃げようとした店主の胸ぐらをひっ掴み、光之助は言い放った。

「そう言えば会計がまだだったなぁ、店主よ?
………今からあの不味い寿司と先程の仕打ちに対する代金を、キッチリと支払ってやろう……!!
…『グラビティ・オブ・ラヴ』!!」
ズガガガガガガガガガガガガガガガガガッ!!!

漫画にすれば3ページにも及ぶであろう長いラッシュを叩き込まれ、壁にめり込んで動かなくなる店主。
光之助はそんな彼に一瞥も暮れず、保健所と警察に電話をしながらその場を歩き去ったのだった。

122名無しのスタンド使い:2024/02/09(金) 21:17:45 ID:24fbwwwk0
>>121
解答の投稿有り難うございます!
小室社長再登場感謝です!どんな相手にも初手は常識人ムーブをしてくれるのが、壮大な野望とは別に人の良さが垣間見れて、やっぱり何か読んでてニッコリしちゃいますね。
自分の体内に入れてしまった毒物の対処法って考えてみると結構限られてきそうですが、グラビティ・オブ・ラブの応用力が光る解答だったと思います(それはそうと社長お労しや)
企画を通して推しのオリスタを動かしながら、設定を掘り下げたり、肉付けしてくれる事を楽しんで貰えたら企画に携わる者として冥利に尽きます!

123名無しのスタンド使い:2024/02/13(火) 22:18:52 ID:uMJlf2Q20
【課題名】
>>62 急行カレー飯テロ事件
【使用オリスタ】
No.4107 スター・キャスケット(本体名:ナナ・シーノ)
【解答】
ナナは激怒した。
必ず、やたら自分を押し退けて隣に座り込み、非常識にも電車の中でカレーを貪り食って咀嚼音やら妙に気になるスパイシーな匂いやらで人に不快な気分を味あわせた挙げ句に靴まで汚していった邪智暴虐な中年男に仕返しせねばならぬと決意した。
怒りに震えるナナには周りの乗客から向けられる異様な視線がわからぬ。ナナはスタンド使いである。能力を使い、暇な時は空を遊覧飛行して暮らして来た。けれども流行やお洒落なカフェに関しては人一倍に敏感であった。
ナナはそれ故、街中に新しくオープンしたカフェでコーヒーや菓子を食べに珍しく急行列車に乗ったのである。
電車に乗っている内、ナナの隣には中年男が座り込んでいきなりカレーを貪り始めた。ごく普通の少女であるナナも、その非常識さに段々とイライラを募らせていった………が、イライラを貯めながらも車内の様子を怪しく思った。
乗客達の誰も、中年男ではなく「男が貪るカレー」のみを見つめている。何人かは口の端から涎を垂らす始末である。車内に充満するスパイシーな匂いのせいだろうか。
ナナが不安になってきた時、男が漸く食事の手を止めて顔を上げた。そして怯えた表情を浮かべる。
男は皿を持ったまま立ち上がり、丁度良く開いていたドア目掛けて走り出し──────

パシャリ、と。
ナナが気に入っていた靴に、カレーのルーをかけていった。

(…………………あの野郎〜〜〜〜〜〜ッ!!!!)

この仕打ちにナナは激怒した。「おい待て、オッサンゴラァ!!」
ナナは真っ直ぐだが、傍若無人な性格であった。閉まりかけたドア目掛けて走り出し、腕を無理矢理挟んで再びドアをこじ開けた。たちまちナナは中年男へと追い付き、どう

124名無しのスタンド使い:2024/02/13(火) 22:30:03 ID:uMJlf2Q20
>>123 途中送信してしまいすみません。出来れば削除お願いします。
【課題名】
>>62 急行カレー飯テロ事件
【使用オリスタ】
No.4107 スター・キャスケット(本体名:ナナ・シーノ)
【解答】
ナナは激怒した。
必ず、やたら自分を押し退けて隣に座り込み、非常識にも電車の中でカレーを貪り食って咀嚼音やら妙に気になるスパイシーな匂いやらで人に不快な気分を味あわせた挙げ句に靴まで汚していった邪智暴虐な中年男に仕返しせねばならぬと決意した。
怒りに震えるナナには周りの乗客から向けられる異様な視線がわからぬ。ナナはスタンド使いである。能力を使い、暇な時は空を遊覧飛行して暮らして来た。けれども流行やお洒落なカフェに関しては人一倍に敏感であった。
ナナはそれ故、街中に新しくオープンしたカフェでコーヒーや菓子を食べに珍しく急行列車に乗ったのである。
電車に乗っている内、ナナの隣には中年男が座り込んでいきなりカレーを貪り始めた。ごく普通の少女であるナナも、その非常識さに段々とイライラを募らせていった………が、イライラを貯めながらも車内の様子を怪しく思った。
乗客達の誰も、中年男ではなく「男が貪るカレー」のみを見つめている。何人かは口の端から涎を垂らす始末である。車内に充満するスパイシーな匂いのせいだろうか。
ナナが不安になってきた時、男が漸く食事の手を止めて顔を上げた。そして怯えた表情を浮かべる。
男は皿を持ったまま立ち上がり、丁度良く開いていたドア目掛けて走り出し──────

パシャリ、と。
ナナが気に入っていた靴に、カレーのルーをかけていった。

(…………………あの野郎〜〜〜〜〜〜ッ!!!!)

この仕打ちにナナは激怒した。「おい待て、オッサンゴラァ!!」
ナナは真っ直ぐだが、傍若無人な性格であった。閉まりかけたドア目掛けて走り出し、腕を無理矢理挟んで再びドアをこじ開けた。たちまちナナは駅のホームに降り立って走り出し、同時に他の乗客達が一斉にナナ………ではなく、カレーを持った中年男目掛けて突進した。
大勢の乗客達が揉み合ってカレーを奪い合い、たちまち騒ぎは大きくなる。理性を失った乗客達に揉みくちゃにされる中年男に、慌てて駆け寄って来る駅員達…………騒ぎは益々大きくなるばかりであった。

「スゥー……………。うん、私知ーらないっ!逃げよ!」

多少の罪悪感を抱きつつ、ナナは(何もかも中年男が悪い!)と開き直ってスタンドを発現させた。
場に居る全員が騒ぎに気を取られる中、誰にも気付かれる事無く大空へと飛び立つ。
当分ここの鉄道は使わないようにしよう。心の中で、そう決意しながら。

125名無しのスタンド使い:2024/02/13(火) 23:27:07 ID:hgrY.lXs0
>>124
解答の投稿有り難うございます!
>>123の投稿は誤りの投稿だと124で明記されており、解答を読むに当たって支障はないと思います。
どうしても気になる場合は『過去ログ倉庫』の真下にある『掲示板管理者へ連絡』から改めて削除依頼をお願いします(※私自身も削除関係は利用した事がないので当てずっぽうで書いてます)

解答に関してはナナちゃんのキャラクターがしっかり地の文で説明されていてオリスタの人となりが分かりやすく描写されているのが良いですね!
大麻入りカレーの争奪戦とかいう地獄絵図から脱出するにはスター・キャスケットの能力は丁度良いチョイスだと思います。

126名無しのスタンド使い:2024/02/14(水) 17:57:21 ID:9alM9wLA0
【課題名】
>>46 敬老初日
【使用オリスタ】
No.8834 レーパーバーン
【解答】
1人の女子高生をヘルパーに雇った町外れの老人ホームにて。

「あぃ、んじゃ〜詳しい仕事の内容はあのジーサンバーサン達に聞いてね、悪いけど私達これから出掛けなきゃならなくて………」
「ウフフ、分かりました〜。留守の間はママに全部任せて下さいね〜」
(………ママ?)

127名無しのスタンド使い:2024/02/14(水) 18:19:25 ID:9alM9wLA0
>>126 何でこう書き込みボタンが途中で押されてしまうんでしょう……
【課題名】
>>46 敬老初日
【使用オリスタ】
No.8834 レーパーバーン
【解答】
1人の女子高生をヘルパーに雇った町外れの老人ホームにて。
先輩従業員達がアタフタと出掛ける準備をしつつ、新人に大雑把な業務説明をしていた。

「あぃ、んじゃ〜詳しい仕事の内容はあのジーサンバーサン達に聞いてね、悪いけど私達これから出掛けなきゃならなくて………」
「ウフフ、分かりました〜。留守の間はママに全部任せて下さいね〜」
(………ママ?)

一瞬奇妙に思いながらも、急いでいるのかそのまま車に乗り込んで去ってゆく先輩従業員達。後にはバイトの女子高生だけが残された。

「さぁ〜て、可愛い子供達のお世話に行きましょ〜♡」

老人ホームに来たとは思えない台詞を口にしながら入ってきた少女を出迎えたのは、ナイフ状に削られた孫の手や歯ブラシで物々しく武装した老人達であった。

「おう、嬢ちゃんが今日から入ったヘルパーさんかい?」
「はい〜。皆さん、始めまして〜!私の名前は……」
「なあ嬢ちゃん。急で悪いんじゃが、儂らの質問に答えてくれんかのぉ?」

車椅子を器用に操り、少女へと詰め寄る老人達。
口を噤んだ少女に対し、老人達は一つの問いを投げ掛けた。

「オセロで強いのは………先攻じゃよなあ?」「後攻に決まっとるよなぁ?」

中途半端な答えは許さない。
瞳でそう語り、殺気を放ちながら自分を見つめる老人達を、少女は───────

「んもぉ〜。皆さん?メッ、ですよ?」

幼子にするように、優しく嗜めた。

「……………は?」「あの、嬢ちゃん………?」
「皆、喧嘩はダメです!しかもそんな危ない物を手に持って…………ママは貴方達をそんな悪い子に育てた覚えはありませんッ!」
「いや、此方もアンタに育てて貰った覚えは無いぞ?」「儂らの母親はとっくに死んどるんじゃが……」

理解不能な事を宣う少女に対し、思わず突っ込みに走る老人達。しかし、その言葉は少女の逆鱗に触れてしまった。

「ウフッ。ウフフフ。ウフフフフフフ……………♡そんな事はありませんよ〜?私は、貴方達の、『ママ』なんです。イヤイヤ期も程々にしないと、ママ怒っちゃいますよ〜?」

128名無しのスタンド使い:2024/02/14(水) 19:00:43 ID:9alM9wLA0
>>127
一方その頃、用事を終えた先輩従業員達は老人ホームへと車を走らせ、車内で何気ない会話を繰り広げていた。

「そう言えば、今日来た新人ちゃんが配属されたグループって何処だったっけ?」
「あー、それなら確か丈酢多亜(じょうすたあ)爺さんと泥雄(でぃお)爺さんが仕切ってる所に…………ッ!?」

そう言った職員の顔が一瞬で青ざめる。彼の言葉を聞いた他の職員達も、同様に顔を強張らせていた。

──────丈酢多亜(じょうすたあ)爺さんと泥雄(でぃお)爺さんは長きに渡る因縁の間柄であり、血で血を洗う争いを日夜繰り広げている。
この事実は、老人ホームの職員達にとって職場の危険度を跳ね上げる悩みの種であった。
良い歳こいて妙に元気なジジイ2人は入居初日から何かといがみ合い、お菓子はキノコかタケノコか、某歌番組では赤組か白組か、某国民的アイドルグループではアツコかユウコか……と意見が別れる度に無駄なカリスマ性でホーム内のジジババを纏めて派閥を作り上げ、職員に隠れて危険物を作っては振り回し、大規模な戦争を引き起こすのだ。
入ったばかりの、それもバイトのJKである少女が録な説明も無しに立ち向かえる相手ではない。
自分達が仕出かした事の重大さに気付いた彼等はアクセルを全力で踏み込んだ。
老人ホーム内の惨状を脳裏に浮かべ、後悔に苛まれながら。

──────「それじゃあ良い子の皆〜!『ママ』とオセロで遊びましょ〜♡」
「「「「「ハ〜〜〜〜〜イ!!!!」」」」」

息せききって老人ホームへと駆け込んだ先輩従業員達は、確かに地獄絵図を見る事となった。
…………尤も、想像していた物とは全く内容が異なっていたが。

「ねぇねぇ『ママ』〜!泥雄(でぃお)爺さんとばっかり遊んでズルいよ〜!儂ともオセロしてよぉ〜!」
「喧しいッ!『ママ』は丈酢多亜(じょうすたあ)爺さんなんかより儂と遊ぶ方が楽しいんじゃあ〜!」
「んもぉ〜、喧嘩はダメってママは言ったでしょお〜?」

女子高生相手に揃いも揃って幼児の様な甘え方をする老人達の群れと、満面の笑みで彼等を受け入れる女子高生。
何処までも平和で、しかし紛れもなく地獄と呼べる光景を見た先輩従業員達は一様に思った。

((((…………………何だ、コレ………………………………))))

129名無しのスタンド使い:2024/02/14(水) 23:36:47 ID:hSKdnUMc0
>127
解答の投稿有り難うございます!
アドバイスになるかは分かりませんが、私は解答を投稿する時はメモアプリに予め文章を書いて、コピペして投稿しています。
掲示板に直接文章を書いて何かのはずみで誤送信する対策になれば幸いです(見当違いなアドバイスだったらすみませんm(_ _)m)
解答の感想ですがこんなの草の一言に尽きちゃいます。思わず笑ってしまう内容でした!丈酢多亜爺さんと泥雄爺さん彼等はいったい何ものなんだ……
本体と合わせてレパーバーンというスタンド能力のヤバさが垣間見れた解答だと思います!

130名無しのスタンド使い:2024/02/20(火) 22:01:42 ID:BMcHVbv20
解答投稿前に失礼。
何かスルーしちゃってましたが、解答テンプレへの本体名の記載有り難うございます。
ルールを制定した本人が絶対とは書いてないからええやろと流してましたが、あった方が良さそうだと思いましたので早速真似しちゃいます。

それでは次に解答の投稿を開始します。

131名無しのスタンド使い:2024/02/20(火) 22:02:26 ID:BMcHVbv20
【課題名】
>>39
サイクリングに行こう!
【使用オリスタ】
No.8034 メルト・イントゥ・ブルー
【解答】

 春、満開に咲き誇る桜に誘われるように、人々は桜並木の道を悠々と散策していたが……それは晴天の霹靂の如く、赤黒い血液にまみれた何かが道行く人々の目の前を怒涛の勢いで駆け抜けていった。

 あれは一体なんだったんだろう?その瞬間だけ人々は季節の花よりも謎の怪物に目を釘付けにされてしまった。



 ★



「ばーいしく♪ばーいしく♪ばーいしく♪」

 音程が少しズレた調子でもお構い無く、半世紀近く前に発表された古めかしい曲をご機嫌そうに歌う少女は、新品のピカピカな自転車に乗り、春風に吹かれながら桜並木の道を颯爽と疾駆する。

 舞い散る桜の花弁はあっという間に駆け抜けてしまった少女を見送る事しか出来ないが、その一つ一つは彼女だけの春の情景として心の奥底に残されるかもしれない……そのハズだった。

 うらうらしたうつくしい春の1日は、少女が今だかつて経験した事がない未知との遭遇によりぶち壊されてしまう。

 そいつは女性らしい黒いレースのワンピースを着ているが、身長は180cm近くあり、体型はボリューミー。かつて相撲界で活躍したハワイ出身の外国人横綱・曙や武蔵丸程ではないかもしれないが、タレントのマツコ・デラックスやメイプル超合金の安藤なつよりもダイナミックかもしれない……あれは誰だっけ?

 少女の脳髄、霞がかった記憶の奥底から彼はのっそりと現れてくれた…………そうだ。あれはよく見ればご存知(?)バタービーンだ。一昔前に活躍した物珍しい肥満体型の格闘家にちょっと似ているかもしれない。

 肩まで伸びた脂ぎった茶髪、腹部と共に前に出た胸部が服装と合わさり、辛うじて女性の体を成している。そしてどうやら彼女は信じられない事に三児の母親なのか、小学生低学年くらいと思わしき三つ子の男児を引き連れており、そのうちの一人を「高い高〜い」と声かけしながら宙に放り投げてはキャッチしては、また放り投げるを繰り返している。

 あれが……きっとLGBTに配慮した最先端の母親像なのかもしれない。何でこんな桜並木の道端で大道芸紛いの事をしているのかはさっぱり分からないが、関わってはいけない事だけは目に見えてハッキリと分かる。

 目に飛び込んできた情報があまりにも奇妙過ぎて、異世界に迷い込んでしまったような言い知れぬ不安感が少女の心の奥底から込み上げてきた。ここは無限に続く地下通路ではないが、いっそのこと引き返した方が良いのだろうかと少女は思案するが……答えを出す前にバタービーンみたいな女が先手を仕掛けてきた。

「高い高〜い!高い高〜い!高い高〜い!…………そぉい!!!」

「えっ!?」

 バタービーンみたいな女は上空に繰り返し放り投げていた男児を突如抱え込んだかと思えば……それは意外!あの不自由そうな体型から想像もつかない軽やかな挙動!海老反りになるジャーマン・スープレックスの体制に入ったかと思えば、そのまま男児を剛力任せに自転車に乗る少女目掛けて投げ飛ばしてきたのだ!

 男児は自分が投げ飛ばされて他人にぶち当てられる事に何の抵抗感もないのか、真っ直ぐすぎる覚悟でガン極った視線を向けてきて、少女は現状の理解が追いつかず男児と衝突してしまう。

「テンメエエエエエエエエエエ!うちの可愛い可愛い三蔵ちゃんになんて事をしてくれるんだああああああああああい!!!!」

 仰向けの状態から背中を浮かし、反り返ったビッグボディを両手両足で支えきってみせるバタービーンみたいな女は、自分が投げ飛ばした男児と少女が激突する瞬間を目視するや否や、鬼気迫る表情且つ迫真の金切り声を張り上げて難癖をつけようとするが……少女に激突しながらも華麗に受身を取り、即座に起き上がってみせた男児の口から突如悲鳴が沸き上がる。

「う、うわあああああああああああ!?母ちゃん大変だ!この人死んじゃったよ!?!」

「は?…………ってガチか」

 男児の情けない悲鳴にバタービーンみたいな女は、まゆを潜めながら転倒した自転車と少女の元に近づくと、少女は何故か上半身が弾け飛び、アスファルトに下半身を残して大きな血溜まりをつくっていたのだ。

 三つ子の男児たちは、想定していたよりも遥かに虚弱体質だった少女にしこたまビビリ散らし、泣き叫びながらパニック状態に陥るが……プロ(?)の当たり屋にして主犯であるバタービーンみたいな女は、我が子の見苦しい姿を「黙りな馬鹿共が!」と軽く一蹴すると、常人とは到底思えないふてぶてし過ぎる肝っ玉に物を言わせながら作戦を切り替える。

132名無しのスタンド使い:2024/02/20(火) 22:03:23 ID:BMcHVbv20
「あり得ないッ!そして、これで終わりかい?狸か狐か手品師か何か知らないけど……この程度の虚仮威しで私がびびるとでも?何かしたいのかは分からないが、これで終りならお前のチャリは私のもんだからな!!!あばよッ!!!」

 目下に上半身が吹き飛んだ死体があろうとも、バタービーンみたいな女はそれに惑わされる事なく、己の欲望の赴くまま、少女が乗っていた新品の自転車をおもむろに起こしたかと思えば、それに乗ってこの場を後にしようとする厚顔無恥なストロングスタイルを発揮してみせたのだ。

 血の繋がった母親(モンスター)の奇行に三つ子たちはさすがに唖然とするが、そんな我が子に対してバタービーンみたいな女は「お前等の帰りは徒歩な!はい解散!」と、暴君の如き身勝手な指示を出して走り去ってしまった。

 母親に置いてかれてしまった三つ子は理解が追いつかず呆然としていたが……突如カン高い喧しい悲鳴を一斉に上げたかと思えば、蜘蛛の子を散らすようその場から大慌てで逃げ出していた。

 そして、その場に残された少女の下半身も血溜まりと共にいつの間にか消えている。







「ふん、ふふん、ふーん、ふふふ、ふんふーん♪」

 自分の体重で押し潰しそうな自転車に乗りながら、風を切るように疾駆するバタービーンみたいな女は、気持ち良さそうに鼻唄を唄いながら知り合いの外国人が経営する質屋に直行するが……そんな女が乗る自転車の影をなぞるように、赤黒い血液のような液体が追従していた。

 よく見れば自転車のサドルに赤黒い液体が纏わりついており、その後続は金魚のフンのように連なりながら自転車に引きずられていたが、次第に体積は先頭に集約し、バタービーンの女の背後にいつの間にやら赤黒い人型が形成されたかと思えば、彼女の首をぎゅっと握り締めるが……それでも尚、この怪物は怯まない。

「なんだい、ようやくお出ましかい?」

「私の自転車………返してよ」

 一般人にも目視可能な赤黒い液状の人型実体……自分の身体を液体化して変幻自在に動くスタンド能力〈メルト・イントゥ・ブルー〉を発動した少女は、液状の身体を血液に擬態したまま、バタービーンみたいな女が強奪した自転車にしがみつきながら追跡し、ようやく彼女の喉元に手をかける事が出来たが……か細い声でバタービーンみたいな女を強迫するだけでは彼女を止められない。

 それどころかバタービーンみいな女は正体を表してきた未知なる存在に対してすら、見透かしているのか、或いは単純に恐いもの知らずで増長した態度は一向に崩れない。

「怪物が女々しい寝言を言うもんじゃないよ!せっかく手に入れた銭の種を私がタダで返すワケ無いだろう?いいかい、手前の大事ならものならなぁ!返して欲しけりゃ力ずくで奪い取るもんだよ!出来るもんならやってみなッ!!!」

「そうだね……それしか方法はもうないみたいだね」

「あ…………!?」

 背後にいたハズの赤黒い液状の怪物は、突如蒸発したかのように一瞬にして消えてしまう。バタービーンみたいな女もさすがに警戒するが、もう遅かった。少女は再び人型の形態から水の如き不定形に変化すると、自転車の前輪に纏わりつきホイール全体に水膜を形成、路面から浮いた状態『ハイドロプレーニング現象』を意図的に引き起こし、掌握した前輪を渾身の力を込めて揺さぶると、自転車の前輪は制御不能、ブレーキも意味を成さず……バタービーンみたいな女は自転車に乗ったまま、ズガシャーーーーーーン!?と、ド派手な音を立てながら盛大に横転してしまった。

「ひでぶっ!?!」

 受け身を取ることすらままならず、その巨体を無防備なままアスファルトに叩きつけられたバタービーンみたいな女は激痛に悶絶、脳内から溢れだす痛覚のアラームは全神経を駆け抜け、転がり踊るかのように、のたうち回る事しか出来ない。

 その隙に液状化していた少女は自転車を立て直すが〈メルト・イントゥ・ブルー〉を解除せず、赤黒い血液の怪物のまま一目散にこの場から全力疾走する。

 桜並木の道路には当然、彼女たち以外にも一般人や通行人がおり、一目を憚った苦渋の決断だが…………それは後に『桜並木の怪異』『血祭りサイクリスト』『バイシクルトレーサー』なる怪談となり、現代の生きた都市伝説『当たり屋ビッグマム』と双璧を成すようにの語り継がれるのはまた別のお話で……

「ううう、うぐ……新品の、新品の……お父さんに買って貰った私のピッカピカの自転車が……」

 周囲の奇異の目を忌々しく感じつつ、赤黒い血液の怪物のままでいる少女は、人知れず涙を浮かべながら、姿をくらますべく自転車ごと近くの河川に飛び込んだ。

133名無しのスタンド使い:2024/02/20(火) 22:04:07 ID:BMcHVbv20
【課題名】
>>40
グミ初日
【使用オリスタ】
No.5215 バービーボーイズ →本体名『ケン』
【解答】

「こんにちは!新商品『ハイ!&トリッピー↑』食べれば分かる美味しい新感覚グミのサンプルです!良かったら味見してみてください!」

『ケン は みちゆく ひとびと に しんしょうひん の サンプル を わたそうとする▽

 ・・・・・・▽

 しかし だれにも あいてにされない▽』

「ヘイ、バービボーイズ……バイトは始まったばかりだぜ。まだ慌てるような時間じゃあないさ」

 雑踏で溢れかえる都会の駅前、買い物カゴいっぱいに入れた試供品を配るサンプリングのバイトをする男『ケン』は、自分の視界に入る範囲で空中浮遊する黒い長方形……コンピュータゲームのウィンドウに酷似したものに表示された文章とそれを朗読する無機質は電子音声に軽口でツッコミを返す。

 この現象はケンの身に起こった出来事を実況する彼のスタンド〈バービーボーイズ〉の能力である。当然一般人には見えていないし、電子音声も聞こえていない為、彼は突然謎の独り言を呟くヤバイ人のように映るかもしれないが、他人の奇行にわざわざ興味を示す物好きな人間はそうそうおらず、彼もお構い無く自分のスタンドに時よりぼやいているようだ。

 もっとも、そんなことばかりしてサボッていればバイトは終わらないので〈バービーボーイズ〉の実況は無視して、通り過ぎる人々を品定めしながら試供品を真面目に配らなければならない(こっそり捨てたり、ネコババなんてしたら稀にチェックを行う職員にみつかった大目玉をくらうので良い子の皆は気を付けよう!)

 バイトアプリでたまたま近場で簡単・楽に金が稼げそうな案件を見かけたので、足を運んできたが、基本的な動きは街頭によくいるティッシュ配りと変わらない。3時間屋外での立ち仕事は暇でキツく感じる事もあるかもしれないが……ゲーマーであるケンにしてみれば、これも一種のゲームとしてむ向き合うことができた。

 大抵こういうバイトは在庫を捌ききれば早上がり出来るし、どうすれば相手がサンプルを快く受け取ってくれるのか、通行人の邪魔にならないように立ち振る舞えているか、どういう人が受け取ってくれて、どんな人が受け取ってくれないのか……頭であれこれ考えながら自分なりのコツを組み立てていけば、数撃ちゃ当たるだけの暇な流れ作業で終わらない。
 
 例えば……今回のサンプルは無名のメーカーが売り出すケン自身も知らないグミだが、ただのティッシュやチラシよりかは食いつきは悪くないハズだ。

 いかにも強面なヤのつく自由業そうな人や極端に人相が悪い人はまぁ論外、キビキビ動く忙しそうなリーマンや、近づいてはいけないオーラを発する早歩きの歩行者、歩きスマホを止められない依存症患者なんかには空気のようにスルーされてしまうだろう。学生や若者・女性……特に二人以上で行動しているカップルや子連れの親子・友人の集まり何かは狙い目だ。

 複数のうち一人でも興味を示してくれれば、あとは未知なるお菓子を、いかに興味を持ってくれるように言葉を並べていけば、好奇心なりネタなり何かしらの理由で受け取り、あとは連鎖的に配給できるチャンスが到来するハズだ。

 これまでの経験則に基づいた自分なりの攻略法を
実践に移しているうちに……早速ケンの元にお目当てのターゲットがやって来てくれた。5人でワチャワチャ駄弁りながら歩いてくる男子高校生のグループだ。ケンは愛想良く笑顔を浮かべたまま、彼等の歩みを邪魔しない範囲から話しかける。

「こんにちは!新商品『ハイ!&トリッピー↑』美味しいグミのサンプルです!良かったら味見してください!」

「ハイ&トリッピー?」

「何っすかそれ」

「ハイでトリッピーか……どことなくレッドブルみを感じるな」

「エモいじゃん。美味しいの?」

「これ、ただで貰っていいんすか?」

「勿論サンプルなんでいくらでもどうぞ!良かったら皆で新標品を一足先に味見してみてください」

「フーン、それじゃ折角だから貰っとくかな」

「んじゃ俺も」

「ところでこれって何味?」

 ケンの売り文句に興味を示した男子高校生たちはグミのサンプルを次々と受け取ってくれるが……残りの二名のうち一人は何やらスマホを取り出して動画を撮影をしようとしているらしい。この流れは悪くないとケンはニヤリとほくそ笑みながら、学生たちに応対する。

「お兄さん、これ撮影しても大丈夫っすか?」

「俺は別にいいよ」

「やった!これでバズれたら儲けもんだぜ」

「ところで……さっき『いくらでもどうぞ』って言ったよね?本当にいいの?」

「まぁ……いいけど」

「へへっ、男なら二言は無しにしてくださいよ〜、それじゃ全部貰っちゃうぜ!」

134名無しのスタンド使い:2024/02/20(火) 22:05:06 ID:BMcHVbv20
 ケンから言質を取った男子高校生は、ニヤニヤ悪戯そうに笑みを浮かべると、ケンが持つ買い物カゴからグミのサンプルをすべて奪い取り、スマホを構える男子高校生の前に躍り出てゲリラ撮影会おっ始めた。他の仲間たちも呆れつつも笑いながら動画撮影に参加して、駄弁りながらパッケージを開けてグミをバクバク食べはじめ、〈バービーボーイズ〉の実況もいま起ころうとしている事実を告げる。


『ケン は だんしこうこうせいたち に しんしょうひん の サンプル を アピール した▽

 だんしこうこうせいたち は きょうみ を もち  うけとってくれた が・・・・・・▽

 だんしこうこうせいD は スマホ で どうがさつえい を はじめた▽

 だんしこうこうせいE は ケン が もっていた サンプル を すべて かっさらって しまった▽

 なんと だんしこうこうせいたち サンプル を つかって どうがはいしん しようとしている!▽』


(う、うぉぉぉぉぉおおおおお!?ネ申ッ!!神が降臨なされたぞ!これぞ祝福ゥ!!)

 まさか開始早々に動画配信者の目に止まり、サンプルを全て配給出来るとはさすがにケンも思ってはいなかった。突然の僥倖に心底興奮していたが……この場をフラットな観点で実況を続ける〈バービーボーイズ〉は誰よりも先に異変を察知した。

『やった! これで アルバイト を はやあがり できる!▽

 こっそり ようす を みにくる しゃいん が みていない こと を いのろう▽

 ・・・・・・おや!? だんしこうこうせいたち  の ようす が・・・・・・・!▽』

「ん?」

 ……ポケモン?今まで見たことも聞いたこともない〈バービーボーイズ〉の実況に、ケンは眉わ潜めながら改めて男子高校生たちの方に目をやると………いつの間にやら『ギャハハハハ』と馬鹿みたいにハイテンションな笑い声を上げだしたかと想思えば、何をとち狂ったのか急に仲間内で喉元やら顔面に噛みつき始めたのだ。

「え?……いやいやいやいや、ちょっと何これ!?…………バービーボーイズ・ファーストオプション起動!!何よこれ!?」

 明らかに普通ではない異常事態に遭遇したケンは、パニックになりかけるも土壇場で〈バービーボーイズ〉の拡張能力を発動する。

『こんにちは ケン▽

 ざんねん ですが わたしにも かいもくけんとう つきません▽

 ですが かれらは ケン が くばった グミ を たべてから ああなりました▽』

「だ、だよな〜そうだよな〜!?何入ってたんだあのグミはよ〜!畜生!ヤベーよ!やべーよ!?」

『ケン あなたは このきき を のりこえなければならない プレイヤー なのです▽

 どうか おちついてください▽

 あなたに くばられた カード の なかには まだ きりふだ が のこされています▽

 どうか おちついて かんがえてください それが なにより も じゅうよう なのです▽』

 今までケンの身に起こる出来事を実況していた〈バービーボーイズ〉は第二の拡張能力〈ファースト・オプション〉の起動共に、ケンの言葉を認識して、慌てふためく彼を宥めるように話しかけてくれた。その甲斐もありケンも徐々に落ち着きを取り戻すが……周囲はサンプルのグミを食べてしまい、気が触れて食人衝動に駆られた者たちで溢れ返り、ゾンビ映画さながら無差別に街行く人々に襲いかかっていた。

 焦点の合わない眼を恍惚そうにギラギラ輝かせながら、何を考えているのか窺い知れない狂笑を浮かべたかと思えば、互いに容赦なく犬歯を突き立て、皮膚を食い破り、肉を引きちぎっては咀嚼し、体内から溢れ出る血を全身に浴びながら喉を潤し、一人が力尽きて倒れ伏せれば、それに群がり貪り食いを始める。

 血塗れで突然の凶行を目の当たりにしてパニックを起こした人々は当然逃げ惑い、急に道路に飛び出た者は自動車に轢かれ、躓いて転んでしまった者はなす術なく人々に踏み潰され、それにまた食人鬼が群がる……渦巻く混沌は無軌道な勢いを増すばかり。

 十年近く前ぐらいにアメリカのマイアミで薬物中毒者が人の顔面を貪り食う凄惨な事件が起こり、インターネットを中心に話題となっていた事があったが……今回の出来事はそれの比ではない。局所的とは言え町中で食人事件が同時多発的に勃発して集団パニックを引き起こしているのだ。

 そうこうしているうちに近くで共食いする男子高校生のうちあぶれた撮影者が、スマホを投げ捨てて、近くにいたケンに襲いかかろうとするが、〈バービーボーイズ〉に諭されたケンは冷静に己の手の内に残された唯一の切り札を張る。

「バービーボーイズ!サードブレイク!」

『だんしこうこうせいD が おそいかかってきた▽

 たたかいますか?▽』

135名無しのスタンド使い:2024/02/20(火) 22:05:53 ID:BMcHVbv20
『→はい  いいえ』

 ケンのかけ声と共に〈バービーボーイズ〉は実況文を反映させるメインのウィンドとは別に、『はい』か『いいえ』二択の選択肢を選ばせる小さなウィンドが出現、その瞬間……世界は色褪せるように静止する。

 1秒、2秒、3秒、4秒、5秒経過…瞬く間に9秒過ぎ去り、1分が経過しようとしても、食人衝動に駆られた人、逃げ惑う人、道路を走る自動車、空を飛び交う鳥、時計の秒針、時が止まってしまったかのように世界は動けない。この状況を作り出したケン自身も、よだれを撒き散らしながら迫り来る男子学生に相対したまま動けないでいる。しかし、誰もが静止する世界の中で、彼の脳細胞だけが唯一活動していた。

(ま、まにあった〜〜〜!しかし、ここからが本番だぜ。あぁ、どうしたものかなバービーボーイズ……配られたカードで勝負するしかないってのはかねがね同意だがよぉ〜〜リトライ不可のクソゲーを実際にプレイするのはいつだって俺だけだ。こういう時にお前と話し合いたいのによぉ……嗚呼、ソロプレイなんだから愚痴ぐらい好きに言わせてくれよな。お前が気張って足止めしてくれている事はわかっちゃいるさ……スゲーよバービーボーイズ)
 
〈バービーボーイズ〉第三の拡張能力〈サードブレイク〉は時間を止める第二のウィンドの発生させる。ケンが選択を行う時、『→はい  いいえ』などの選択肢ウィンドウが出現するようになり、本体の意識以外の時間が完全に止まり、思考する猶予を与えてくれる。見た目に反して世界規模で影響を及ぼす凄まじいパワーを秘めた能力だが、逆に言うと凄まじい能力に潔く振り切り過ぎており、このようなトラブルに直面した時、本体は知恵と勇気を振り絞り、自力で活路を切り開く他ない。

(クールだ。クールになれケン。いつだってこうやって乗り越えてきただろう俺は!こうなったらもう腹を括るしかねぇ〜〜〜!奴さんの身長は目測170cm、体型は運動不足なのか少し腹が出ており、視力が悪いがコンタクトレンズではなく眼鏡を愛用、色白の肌は体育会系の部活動とは無縁の文化系のように見える。一般的な学生服を着ており、背中には何を詰め込んでいるのか知らないが重たそうな通学用のリュックを背負っているが、俺の方を見るなり顔を突き出しながら単独で突っ走って来ている……ヤベーグミを食べてまともな思考は出来ちゃいない、ただ目の前にいる俺をこのまま押し倒してマウントを取りながら貪り食おうとしている本能で動くモンスターだ。隙を抉じ開けるセクシー・コマンドーは通じないと思った方がいい。しかし、お友達たちはしっぽり互いを食い合ってお楽しみ中……………こいつ一人だけなら何とか切り抜けられるかもしれない。タックルには膝を合わせたくなるところだが、この地獄みたいな状況で悪目立ちしてりゃ他のマンイーターたちに目をつけられちまう!年下のガキにいつまでビビってるんだケン!うぉぉぉぉぉおおおおお!やるしかねぇ!ここはアレをやるしかない!」

 目前の静止画の中から情報を必死にかき集め、出きる範囲で相手を洞察、行動を予測した上で攻略方法を組み立てて、必要であれば他のスタンド使いが見向きもしないアビリティすら利用する。そして与えられた思考する猶予の中でケンは覚悟を決める。

 どれくらい時間が止まっていたかはケンにしか分からないが、猶予の時を存分に活用して行動に移した彼に、油断や隙・迷いや躊躇いは存在せず、命を懸けた選択に全神経を注ぎ、その集中力は極限まで高まっていた。

『だんしこうこうせいD が おそいかかってきた▽

 たたかいますか?▽』

『→いいえ』

 迫り来る男子高校生に対して、またケンも真っ正面から向かい合い正面衝突するかのように駆け出そうとするが、激突する間際、大きく前に踏み込んだ右足を軸足に、身体を翻すように回転、男子高校生の突進をいなすように避けつつ、手に持っていた買い物かごを頭に被せて、そのまま抜き去るように駆け抜ける。

『ケンは にげだした!▽』

(やってやた!やってやたぞ!やっててよかった『アイシールド21 フィールド最強の戦士たち』!!)

 逃走が失敗した時にアナウンスされる決まり文句を〈バービーボーイズ〉が発する事はなかった。ケンは興味本位で少しだけ遊んだキャラゲーの記憶に感謝しながら人混みを駆け抜けて、今なお食人パニックの収拾がつかない現場から脱出してみせた。

「バイト代……何かもう怖いからどーでもいいや!いのちだいじに!そんでもって交番はどこじゃ〜!」

 一先ず目先の危機は乗り越えられたが、これからの事を考えると憂鬱になってくる。そんなケンに〈ファーストオプション〉が起動したままの〈バービーボーイズ〉は静かに語りかける。

『コングラッチュレーションズ▽』

136名無しのスタンド使い:2024/02/26(月) 22:46:56 ID:C/G9WmoM0
個人的に好きなキャラ小室社長3度目の出番です
【課題名】
>>64 人類最後の極楽浄土
【使用オリスタ】
No.4507 グラビティ・オブ・ラヴ
【解答】
小室光之助は悲しんだ。何故なら、道に置かれていたトラバサミのせいでつい先日納車したベンツのタイヤがパンクし、人気の無い山奥に1人取り残されてしまったからだ。
道に生える苔やよく分からない植物に隠れたトラバサミは新品のように鋭く、しっかり手入れがされている事を物語っていた。

「クソ、携帯も繋がらん……この辺りには我が社の通信衛星を打ち上げたばかりだと言うのに……」

彼の言う通信衛星は確かにこの地域の上空を飛行していたが、鬱蒼と繁る木々と地形が電波を遮っている事は光之助の知る所では無かった。
しかし、彼はこの状況に絶望していた訳ではない。
新品同様のトラバサミが置いてあるならば、近くに手入れを行う人が住んでいる可能性が高いという事だ。幸いにも道はまだ続いている、これに添って歩けば人里に辿り着けるだろう。
そう気持ちを切り替えた光之助は購入して1週間も経っていないベンツに別れを告げ、悲しみを胸に歩き始めた。
道の先が、自分の求める場所に繋がっている事を祈りながら。


「ハァ……ゼェ………何だ、この村は?」

暫く歩き続けた光之助が目にしたのは、やけに暗く寂れた村であった。
周囲には金網がバリケードのように張り巡らされ、畑と思われる場所には大麻らしき植物が青々と繁っている。それでいて往来には人っ子1人見えず、仮に『院就(いんしゅう)村』と書かれた看板が無かったならば村だとは分からなかっただろう。
とはいえ他に行く宛も無い光之助、取り敢えずは近くの民家に声を掛けようと金網の隙間を潜り抜けたその時──────

カーン!カーン!カーン!カーン!

突如として鐘の音が鳴り響き、それに呼応するように防護服を纏った大勢の人間達がゾロゾロと光之助の前に現れる。

「あぁ、突然お邪魔して申し訳ありません。実はこの先で私の車が故障してしまい、皆さんの助けを「死ねぇ、ゾンビ!!」………は?」ズドォン!

返事の代わりに飛んできた1発の銃弾が光之助の頬を掠めた。
見回せば彼等は手に手に槍や棍棒を握っており、幾らかの村人は猟銃を此方に向けている。
彼等が喚き散らす戯言から「連中は外界での出来事を詳しくは知らないらしい」と悟った光之助が踵を返して駆け出すのと、武器を握った村人達が光之助へと飛びかかったのはほぼ同時であった。

間一髪で攻撃を避けた光之助だが、状況は依然として悪いままである。
1人の光之助に対して追跡者は多数、しかも何人かは飛び道具を持っているのだ。

「くっ……『グラビティ・オブ・ラヴ』!!」
ドガガガガガガガガガ…………

何故かスタンドに地面を殴らせつつ、全力で走り続けていた光之助だが、幾ら彼とて地の利と人数の両方で自身を大きく上回る相手から逃げ回る事は不可能であった。

「ハァ、ハァ……追い詰めたぞ、糞ゾンビ!!」
「地の利は俺達の方にあるんだよ、馬鹿ゾンビがぁ!」

地面に倒れ込んで荒い息をつく光之助を取り囲み、狂気の表情を浮かべながら勝ち誇る村人達。
しかし、勝利に酔いしれる彼等は吊り上げられた光之助の口角にも、そして自分達目掛けて真っ直ぐに墜ちて来る人工衛星の姿にも気が付く事が出来なかった。


「ふむ………やはりこれ程『巨大』な物体を『遠距離』から引き寄せるにはかなりの時間とエネルギーを要するな。」

可能ではあったがね……と、死屍累々と横たわる村人達と巨大なクレーターの前に立ちながら1人呟く光之助。
命の危険に晒され、おまけにベンツと通信衛星までオシャカになったにも関わらず、彼は上機嫌であった。
何しろこの『院就(いんしゅう)村』こそ光之助がわざわざベンツを運転してまで探していた土地だったのである。

「情報漏洩の心配も無く、使い捨てられる『材料』共も大勢居る………
私の野望……『究極生命体の作成』……その為に必要な実験場として、これ程うってつけの村が存在したとはな………!」

──────彼が高笑いしながら村を去った数日後、とある大企業が『院就(いんしゅう)村』という辺境の村を土地ごと買い上げ、村内に建設された『小室生命研究所』なる施設に全ての村人が「雇用」された事実が世間に公表された。
このニュースは地域活性化に貢献する取り組みとして話題となり、インタビューの場で代表取締役──────小室光之助氏はこう語ったという。

「私は村に直接赴き、住民達との交流を経て『運命』を感じたのです!
彼等は私が持つ壮大な願いの礎となってくれる事でしょう!」

137名無しのスタンド使い:2024/02/27(火) 14:08:35 ID:90vXfTxE0
【課題名】
サルベージ・フォー・リサイクル
【あらすじ】
深夜の遊園地にて、バイトのあなたは1台のクマ型ロボットと1人で向き合っています。
雇用主曰く「出所不明の壊れたロボットを回収したが、部品を再利用するためのメンテナンスをして欲しい」との事。
工具を取る為にあなたがロボットから目を反らした瞬間、突如響き渡る機械の稼働音。
見れば壊れている筈のロボットが立ち上がり、あなたに襲い掛かって来ました。
【クリア条件】
生き残ってバイトを完遂して下さい。
出所不明なのでロボットを破壊してもペナルティはありませんが、ちゃんとパーツを残して分解出来れば高額のボーナスが貰えます。
【使用オリスタ】
なし
【補足情報】
ロボットの全長は2m程度、特別な機能は無いものの金属の塊なので相応に重く頑丈です(某ピザ屋のアニマトロニクスを想像して下さい)。

【課題名】
夜中のステーキは色々と危険
【あらすじ】
あなたは「とある遺跡から発掘された石化した原始人」が保管されている研究施設で警備バイトをこなしていました。
時刻は深夜、お腹が空いたあなたがキッチンでステーキを焼いていると、背後から1つの影が迫ります。
振り向いたあなたの目に飛び込んで来たのは、石化していた筈の原始人がこちらを見つめている姿でした。
【クリア条件】
五体満足で切り抜けて下さい。
ただし、学術的に計り知れない価値を持つ原始人を下手に傷付ける事は社会的な死に繋がります。
【使用オリスタ】
なし
【補足情報】
原始人は「柱の男」ほどでは無いものの、現代の人間では到底敵わない位には強いです。
生半可なスタンドで殴れば一蹴されてしまうでしょうが、知能は野生動物並みなので光や大きな音に弱く、また頑張れば手懐ける事も出来ます。

138名無しのスタンド使い:2024/02/27(火) 22:18:07 ID:e2lZazts0
>>136
解答の投稿有り難うございます!
小室社長シリーズ感謝、今回は社長の野望が進展するお話とまさかの超必殺技がお披露目されて読後に興奮しております。自社の人工衛星を攻撃に転用するという豪快な発想が、大企業の社長とグラビティ・オブ・ラヴの組み合わせでしか出来なさそうな唯一無二感が出てて凄く気に入ってます!


>>137
問題の投稿も有り難うございます!
バイトシリーズ感謝です!バラエティ豊かで助かります。ホラーもコメディーも出来そうな感じで楽しみです!原始人を守る不可視の学術的価値バリアは強い(確信)

139名無しのスタンド使い:2024/03/05(火) 21:24:06 ID:yditE5Mc0
【課題名】
>>41
ピザ配達初日
【使用オリスタ】
No.7849 カレイドスコープ 本体名→『香山』
No.4172 ジョセフ・ナッシング
【解答】


「それじゃ志望動機を教えてくれないかな」

「えーと…………大好きなピザに関われる仕事がしたくてお」

「オーケー!その心意気が気に入った!採用ォ!それじゃ早速制服に着替えてみようか。うちの制服きっと似合うよ〜香山くん!」

「??!!??」

 最近出来たばかりの某ピザ屋の面接にきた少女・香山は、まさかの即時採用に嬉しさ半面、それでいいんだと当惑していた。

 原付バイクの免許を持っていなくて、店の電動自転車に乗って配達のバイトはできるから、そこまで採用のハードルは高くないだろう。履歴書に自分のアピールポイントを書き込んだ甲斐があったのなら嬉しいが……彼女の面接を応対した中年男性の店長は妙に陽気な人だった。

 用心深い人ならその軽薄さを不審がるかもしれないが、面接にやって来た香山も肝が座っていると言うよりも、いつもぼーっとしているようなマイペースな人柄故に、「そういう人もいるよね」程度に軽く思うだけだった。店長は準備しておいたユニフォームを香山に押し付けるように手渡すと、店内の更衣室に案内してくれた。

 一抹の不安を覚えながらも香山は言われるがまま服を着替えて、再びスタッフ専用の控え室に戻ると店長は「あらやだ可愛い!最高に似合ってるよ!うちのユニフォームがグンバツに似合う可愛い女の子が配達してくれる美味しいピザ!お客様は一度に二度お得間違い無しだ!あとはこれを首につくれくれたらパーペキ!さぁつけてみて!」と、香山の事を誉めちぎりながら、リボンをあしらった少し大きめの首輪を押し付けるように手渡し、それを着けるように促してくる。

 おだてられて満更でもなくなってきた香山は、警戒することなくそれを自分の首に装着してしまうが……その瞬間、店長は忙しなく動かし続けた二枚舌を厭らしく舐めずり、辛抱堪らず嘲笑う。

「アッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッアッ!」

「な、何ですか急に?」豹変する店長に香山は当然気味悪そうに驚くが、店長は愉快そうに口角を吊り上げながら、予期せぬ驚愕の事実を打ち明ける。

「君が今つけた首輪には実は爆弾が内蔵されていてねぇ!私のスマホから発信される特別な電波を受信した瞬間、その首輪は君の首ごと爆発四散する仕組みとなっているのだよ!」

「………………はい?」

 店長が何を言っているのかさっぱり理解できない香山は、呆けた表情を浮かべながら首を傾げてみせるが、店長はドッキリ大成功と銘打たれた看板を出す素振りは一向に見せようとはせず、現実離れした奇妙な事実を告げるのみ。

「ピザ屋の配達アルバイトなんて最初からなかったのさ!これから君には銀行強盗をしてもらう!命が惜しければ私の命令に従うしかないのだ!」

「えぇと…………えぇ」

 突拍子が無さすぎる事態に、いつもぼーとしている香山もさすがに困惑の表情を隠せない。そんな時、控え室のドアが突然開くと、ピザ屋の従業員と思わしき男性が現れた。

「何だか賑やかですね、その子新しいバイトの子…………って、香山じゃん」

「あっ春戸先輩!」

 春戸と呼ばれた男は香山と同じ大学に通う1個上の先輩で、サークル活動で知り合い色々とお世話になっている頼もしい人物である。頭の中が年中エイプリルフールみたいなオッサンに銀行強盗をしろと脅迫される最中、彼の登場は香山の心を奮い立たせた。

「先輩、助けてください!このヒト頭おかしいんですよ!私に爆弾つきの首輪をつけさせて銀行強盗しろって――――」

 助けを求める香山だったが、ふと春戸の首もとに目をやるとシンプルなデザインの大きめな首輪がついている事に気がついてしまい、思わず言葉を詰まらせてしまう。

 春戸は「ちょっと冗談きつくないですか?」と訳が分からず頭を搔きながら店長と香山の間に割って入ろうとするが、この場を支配する卑劣漢はそれを許さない。

「今までご苦労、春戸くん!やっぱり悲劇にはヒーローよりもヒロインが適任だと思わないかい?私はズバリそー思う!だから舞台で踊る役目は香山くんにお願いする事にしたよ!」

「は?――――――」

 店長は片手に握りしめていたスマホを操作した瞬間、春戸が身に付けていた首輪が炸裂、乾いた爆発音が周囲に響くと同時に、春戸は血を迸らせながら後方に仰け反るように吹き飛ばされ、力なく床に倒れ落ちてしまった。

 一人取り残された香山は店長の戯れ言が妄言でない事を理解しつつ、取り返しのつかない過ちを侵してしまった事を悟ると、頭の中が真っ白に染まり、立つこともままならず床にへたり込んでしまう。

140名無しのスタンド使い:2024/03/05(火) 21:24:30 ID:yditE5Mc0
 しかし、店長はそんな香山の反応も織り込み済みで、他人を舌先三寸で操り支配する話術の駆け引きで、絶望する少女に追い討ちを仕掛ける。

「可哀想だが春戸くんはまだ生きているよ。彼の首輪に仕掛けた爆薬はメインヒロインの君よりも極僅かな量しか用意してなかったんだ。まぁ……首が吹き飛ばなかっただけで十分重傷だがね。君がこのまま私の台本通りに銀行強盗を強制される悲劇のヒロインをしっかり演じてくれる間は、しっかり延命の処置をしてあげよう。春戸くんの命運は君にかかっているんだ香山くん」

「どうして貴方はこんな事をするんですか?」

 香山は震えた声を振り絞りながら、目前にいる人の皮を被った怪物に問答を仕掛けるが、店長は大袈裟に両手を広げると、劇場に立つ演者のように長広舌をふるう。

「そりゃあ香山くん、他人に銀行強盗を強制させるヤツの目的なんて金しかないだろう?しかも殺人すら辞さない程なりふり構っちゃいられない。君が私に利用されて都合よく操られるように……私もまた大きな流れに飲み込まれて利用される哀れなピエロという訳さ。ピザ屋のオッサンがこんな危ない玩具を準備できると思うかい?リターンに対して馬鹿デカいリスクを背負い込む銀行強盗なんて誰が喜んですると思う?私は全てを犠牲にしても叶えたい願い事があるから、このイカれた計画に賛同している」


 店長はまるで自分も被害者であるかのような口振りだが、その立ち振る舞いに悲壮感といったものは微塵も感じさせない。突然しゃがみ込んだかと思えば床に広がる春戸の血に触れると、指で唇をなぞり口角から頬まで塗りたくり、まるで口が裂けたような笑みを浮かべるメイクを施して、自分がピエロである事を強調すると、虚実の線引きをうやむやにしながら、再び香山の前に向き直ると言葉を紡ぐ。

「君は台本通り舞台で踊るだけでいい。君は私に脅されて利用された哀れな被害者だ。他人を強迫して銀行強盗を強制させた凶悪犯役がいる限り君が罪に問われる事はないだろう。そして、尻拭い役の私が最後にババを引く……これが今回の舞台の筋書きだ」

 被害者という立場を免罪符に何をしてもいいと唆し、責任の所在を示しつつも再三自分も被害者である事をアピールして、あわよくば同情を引いて共感を得ようとする。最悪三問芝居を見透かされても首輪の爆弾という切り札を握っている限り、店長は香山を支配し続ける事実は変わらない。

 勝ち確定の盤面で自己陶酔した言葉を並べながら、香山の背中を押そうとする店長は最後まで異変に気がつけなかった。

「さて、私は春戸くんの応急処置にとりかかろう。君は机の上に置いてある台本を読み込んだ。一時間後には開え………………」

 項垂れる香山に指示を出し、死んでるか生きてるか実はよく分かっていない春戸の安否を確認しようと店長は踵を返すが……今まで床に倒れていた春戸は血溜まりを残し、忽然と姿を消していた。

 一瞬まさか生きていたのかと思案するが、すぐにあり得ないと否定して周囲を見渡すが、控え室には自分と香山しかいない。

 この場を支配していた自分すら把握しきれない異常事態に店長は全身から冷や汗を噴き出すが、香山の手前狼狽する素振りは見せられない。

「香山くん……春戸くんはどこにいるか知らないかい?君は見ていたんじゃあないか?」

 店長は怪奇現象の真相を自分以外の目撃者に訪ねるが、香山は顔を俯かせたまま反応しない。都合の良い奴隷に無視された事が癪に触り、店長は苛立ちを隠さずに彼女に詰め寄ろうとするが……そんな彼の目の前を見なれない蝶々が、色鮮やかな羽を羽ばたかせながら宙を舞っていたのだ。

 蝶々はそのまま浮上するので、それに釣られて天井を見上げると……店長は全身から血の気が失せるような感覚に陥り、「うわああぁぁあぁああぁぁああああああッ!!!」と支配者の体裁を保てず情けない悲鳴をあげてしまう。

 自分の店の天井に見たこともない極彩色の多種多様な蝶々の大群がびっしりと犇めき合うように密集していたのだが、視線を合わせた瞬間、ソイツ等は爆発するかのように四方八方散り散りに飛び交い始めた。赤、青、黄、緑、紫、ピンク、オレンジ、白、黒、茶色……様々な色をした多用な蝶々がピザ屋の狭い控え室の中を縦横無尽に飛翔する様は、まるで色鮮やかな万華鏡の中に閉じ込められたように錯覚してしまうが、無数の羽ばたきが奏でる騒音はそれ以上に生理的な嫌悪感を掻き立ててくる。

「な、なんだこれは!?止めろ!君の仕業か香山くん!?まさか……君はスタンド使いなのか!?」

141名無しのスタンド使い:2024/03/05(火) 21:25:09 ID:yditE5Mc0
 店長は両腕を振り回し、蝶々を叩き落とそうとしながら、この異常事態の核心に迫ろうとする。しかし、こんな状態で無駄口を叩けば口の中に蝶々が入り込んでしまうのは必至、立ったままでは蝶々の群れに激突し続ける為、いつの間にやら自然とその身を床に這いつくばり、無様に体を丸めながら身を守る事しかできない。

 こうなったら一からやり直すしかない……店長は手中にあるスマホを操作して香山に取り付けた首輪の爆弾を作動させようとするが……少女の首が爆ぜる希望の音はいつまで経っても聞こえず、耳障りに羽虫の羽音が鼓膜に延々と纏わりついてくるのみ。

 完璧だったハズの計画が不条理に飲み込まれ、一瞬で瓦解した事を理解した店長は惨めな慟哭を上げる事しか出来なかった。

「なぜだあぁああぁあああ!?なんでだよおぉおおおぉおおぉおおお!?うわああぁああああぁぁああ!!!」

 蝶々の大群が店長の周りに結界を構成するかのように密集しながら飛び交う最中、混乱に乗じていつの間にか控え室から脱出して、部屋の入り口から店長を見下ろすようにたたずむ香山は、真っ黒い虚ろな瞳でじっと見据え、か細い小さな声で「……嘘つき」と呟いた。

 彼女の喉元にあった首輪はいつの間にか消失しており、隣には花を思わせる人型をした彼女のスタンド『カレイドスコープ』が、蝶々の一群を引き連れて彼女たちの周りにはべらかせていた。

『カレイドスコープ』は触れた無生物を、同体積の蝶に変える力を秘めている。蝶は実体化しており、大雑把ながらおよそ本体の意思で操作でき、彼女の首輪も控え室にあったテーブルやイス・デスク・冷蔵庫……様々な物品も一様に姿を変えて操っているようだ。

 大群を構成する無数の群の中から基点となる蝶々を天井に向かわせれば、それに続くように他の群も追従する。蝶々の大群で溢れかえっていた控え室は、いつの間にか空き部家のような伽藍堂と化していたが……天井に蝶々の大群が集結した瞬間、姿を変えていた無数の無機物たちは店長の真上で瞬く間に復元され、羽を失い轟音を響かせながら墜落し……他人を支配して操る事に固執したピエロは、断末魔の叫びも肉と骨が潰れた音さえ誰の耳にも届くことなくかき消された。

 首輪の爆弾を外し、諸悪の根元も始末してしまった香山は……自分の周りで飛び交う唯一復元させなかった色鮮やかな蝶々の一群を見つめ続ける。蝶々が虚空に想い描く万華鏡のような幻想を延々と、儚い魔法が途切れる最後の瞬間まで、それを見続ける事しかできない。



 ★


「…………」

 誰も浮かばれない悲劇の顛末を人知れず見届けている者がいた。彼は全世界の無法、無政府、無秩序化を理念に掲げる大規模な犯罪組織『ディザスター』に所属する構成員である。

 今回は幹部の指令を受けて『ディザスター』に参入しようと画策していた『虚業家』を自称する非スタンド使いの殺し屋の利用価値を見定めるべく監視していたのだが……さほど期待もしていなかった試験の真っ最中、まさか海老で鯛を釣れる事態に遭遇するとは思いもしていなかった。

 透明になれるスタンド能力『ジョセフ・ナッシング』を発動して息を潜めながら、香山と呼ばれた女を観察し続けていた男は迷っていた。あのスタンド能力は使えるが、あの状態で本体は使いものになるのか、あの様子じゃ心が折れているか、壊れているかもしれない。

 兎に角イレギュラーな事態が発生している以上、こちらの報告を待っている幹部に連絡を入れるべきであるが……部屋の入り口を陣取る香山が邪魔だ。透明化を解除すればあんな小娘、近距離パワー型の『ジョセフ・ナッシング』にかかれば一瞬で屠れるかもしれないが……ディザスターの構成員として場数を踏み、数々の修羅場を掻い潜って生還してきた垂れ目のタフガイは、この場から動けずにいた。

 先ほど部屋の中を蝶々の大群が充満していた際、透明化していた男も蝶々との接触は避けられなかった。ここからは憶測だが……もし仮に蝶々に探知能力が備わっているのであれば、透明化している自分の存在も手に取るように分かるハズだ。考えすぎているのかもしれないが……スタンド能力は魂の発露、精神を揺さぶる事態に直面した際、スタンド使いは何かしら成長する事がある。それはシンプルにスタンド能力の破壊力やスピード・射程距離が伸びたり、或いは備わっている特殊能力が拡張したり変質する事も十分あり得る。

 目前の少女は床に座り込みながら、生気を失ったように宙を舞う蝶々の群をぼーっと眺め続けているが……スタンドの方はどうだ?

『カレイドスコープ』は透明化して見えないハズの男と『ジョセフ・ナッシング』をじっと見据えているのだ。まるで脱け殻になった本体の怨嗟が乗り移っているかのように……物言わぬ凄みが空気に重くのしかかる。

142名無しのスタンド使い:2024/03/05(火) 21:26:11 ID:yditE5Mc0
【課題名】
>>43
HIGH SPEED TRAIN
【使用オリスタ】
No.6831 マザーインロー
【解答】


 地下鉄のアナウンスが次の停車駅を知らせてくれるが、電車は一向に減速する事なく、目的地の駅を通過してしまった。

 真昼の異常事態に乗車していた人々は不安そうにどよめく。先頭車両の運転室に近い座席にいたスーツ姿の男性は、心配そうに運転手の様子を窓から確認するが……驚愕の悲鳴を上げると、その場に尻餅をつくように倒れ込み「だ、誰か!車掌さんを呼んできて!?運転者が倒れてるぅぅうぅううう!?!」と緊急事態を乗客たちに知らせる。何事かと他の乗客たちも様子を窺うが……運転席には血塗りになり、ぐったりと倒れている運転手がおり、運転台も滅茶苦茶に破壊されていたのだ。

「大丈夫ですか!?」
 
 たまたま乗り合わせていた看護士と思わしき中年女性が、運転席に侵入して運転手の安否を確認すると、辛うじてまだ息はあるようだが、とてもじゃないが何か起こったのか確認する事は難しい危険な状態である。

 乗客たちは運転手を座席に寝かせて介抱している内に、後方車両から大慌てで若い車掌がやってきた。頭から夥しい量の血液を流し顔面血だらけな運転手を見るなり、一瞬動揺して立ち竦んでしまうが、不安そうな乗客たちの手前、すぐに我に返り運転室に駆け込んだ。

 滅茶苦茶に破壊された運転台の惨状を目の当たりにすると、さすがに車掌も何が起こっているのか理解出来ず「なんだこれは!?酷すぎるぞ!!!」と激しくキレ散らかすが、怒りながらもすぐに運転台を冷静に調べる。

 常用ブレーキは根本から織れており使い物にならず、藁にも縋る気持ちで非常ブレーキのレバーを引くが……無情には電車は止まらない。

 怒りを通り越し、これから起こりうる未曾有の大惨事を想像した若い車掌は、度重なる異常事態でストレスの許容量が超過してしまい嘔気に襲われるが、胃から込み上げてきた内容物を必死に押え込む。顔面蒼白・涙目になりながらも震えた声を絞りだし、辛うじて使用できた無線で運転指令所に現状を報告して指示を仰ごうとしていた。

 若い車掌の後ろ姿を不安そうに見守る乗客たちたちも、次第にこれから起こりうる大惨事を予期し、絶望して泣き出す者、理不尽な現実に悪態をつく者、家族に連絡を取る者、奇跡を祈る者……否応なしに迫りくる今際の際に備え始め、そうしている間にも駅で停車する事はなく、鬱屈した沈鬱な雰囲気が場を支配し始めた。

 そんな時、先頭車両の遠巻きから事の成り行きを静観していた女性は、重い腰をあげると先頭車両に集まる乗客たちの前に現れた。

 愁いを秘めた眼差しと、白く透き通った肌は耽美な雰囲気を漂わせているが……このお通夜ムード全開の状態で彼女はよりにもよって全身真っ黒な喪服を着用しており、彼女を一瞥した高齢の老婆は「死神様……どうか、どうか、堪忍してください」と、呆けたように拝み倒すような素振りをみせて、孫と思わしき少年に窘められていた。

 喪服姿は彼女の趣味であり他意はない。当然死神などでもなく、列記とした人間だが……ただの一般人という分けでもない。彼女の歩みと同時に全身が蜃気楼のように揺らめいたかと思えば、仮面をつけている長身の人型のスタンド『マザーインロー』を出現し……近くにいた若者の胸部に手を伸ばし、そのまま肉体を透過したかと思えば、仮面のようなものを引っ張りだしてみせた。

 仮面は若者の顔を生き写したようた造形をしているが、どこか祈るような希望に縋る表情を浮かべていた。自分の内側から仮面を引っ張り出された若者は特にダメージを受けている様子もなく、気がついてすらいない様子だ。若者の仮面を手に入れた『マザーインロー』は、それを自身のボディに埋め込むと、別の乗客からも同様の手法で仮面を引っ張り出して拝借する。

143名無しのスタンド使い:2024/03/05(火) 21:27:02 ID:yditE5Mc0
 喪服姿の女は同様の行為を繰り返しながら運転室に近づく。途中で重傷の運転手とそれを介抱する看護士の前に立つと、先程と同様に彼等の身体から仮面を抜き取るが、それを自分の手に埋め込むように吸収させると……苦しそうな呻き声を上げながら座席に寝そべる運転手に『マザーインロー』は改めて手をかざしてみせた。

 すると激痛に堪えかねて呼吸を荒げていた運転手は、突然痛みが沈静したかのように落ち着き取り戻す。未だかつて経験した事がない奇跡を目の当たりにした看護士は分けが分からず呆けてしまうが、すぐに落ち着きを取り戻し、運転手に意志疎通を図ろうと声をかける。

 その様子を見た喪服姿の女は再び歩みを再開し、運転室までやって来ると……そこにはうずくまりながら絶望する若い車掌がいた。あれから彼は運転指令所に助けを求め、線路の分岐点で電車を意図的に脱線させて緊急停止させる安全側線に侵入する事を提案されたが……すぐに分岐点に通じる回線の故障によりそれも不可能となり、いよいよ手の施しようがなくなってしまったらしい。

 そんな若い車掌に喪服姿の女は目線を合わせるように屈みながら「車掌さん、どうか諦めないで……もう1度だけブレーキを引いてみてください」と、穏やかな優しい声色で伝える。

 しかし、車掌の心は既に挫けており「お客様、申し訳ありません。何度も引いたんですけどね……全然停まってくれないんですよ。本当に、本当に、こんな事になってしまい面目ありません。どうか最期の時を……せめて大切な人に、貴方の思いを伝えてください」と弱々しい声で呟くだけで、顔を上げる事すら出来ずにいる。

 喪服姿の女性はそんな車掌に、何か言うわけでもなく『マザーインロー』の手を伸ばし、車掌に触れながら能力を発動するが……今回は先程から繰り返していた肉体から仮面を引っ張り出す能力ではないらしい。

『マザーインロー』に直触りされた車掌は、突然目を醒ましたかのように顔を上げるが、そこに絶望に屈服した陰鬱な表情はどこにもなく、力強い目差しで喪服姿の女性を見つめ返し「……何か電車を停める手だてがあるというのですか!?」と、彼女の言葉に一筋の希望を見いだしているようだった。

 喪服姿の女性はそれに応えるかのように「この思いは貴方にこそ相応しい」と呟くと、『マザーインロー』は乗客たちから集めた仮面を一つに収束、それを車掌の顔に被せるように押し当てた。

 ―――刹那、車掌の脳内溢れ出す存在しない記憶……違う。乗客たちの『電車を停めたい』『助かりたい』『皆が無事にいられますように』『車掌さん頑張って』……様々な思いが流れ込むと同時に、仮面は車掌の肉体に埋没し、彼の右手から淡い光が放たれる。しかし、車掌は自分の身に起こった怪奇現象に狼狽する様子はなく、どこまでも落ち着き払いながら立ち上がると、運転台に向かい合い、右手を伸ばして非常ブレーキのレバーに握り締め、今一度引いてみる―――その瞬間、無数の手が車掌の手と重なり合う。

『マザーインロー』の能力は二つある。

 一つ目は絶望した車掌に直接的触る事で、彼を再起させた『思い』の方向を変える能力。そして二つ目は看護士や運転手自身の『思い』を仮面として引っ張り出し、マザーインローに吸収する形で『思い』を癒しのスタンド能力へと昇華させて、重傷に苦しむ運転手に鎮痛を施した……『思い』から擬似的なスタンド能力を開発する能力だ。

 若い車掌の身体と一体化した仮面も、乗客たちから集めた『思い』を一つに纏め……彼に『暴走する電車を停止させる擬似的なスタンド能力』を譲渡したようだ。

 ついさっきまで何度も引いても決して作動しなかった非常ブレーキは、同じものとは思えないくらい呆気なく正常に作動し、金属が掠れ合う喧しい音と共に電車はゆっくりと減速してゆき……次の駅の少し手前ぐらいで完全に停止してくれた。

 ある者は嬉しさのあまり泣き出し、ある者はどいしようもない緊張状態から解放され呆けたように座り込み、ある者は親しい親族や知人と、気持ちをわかち合うように抱き合い……車内からは乗客たちの歓喜と歓声で溢れ返る。

「やった!やったぞ!!本当に停まってくれた!?!ううぅうぃう、うぐ、ううう……う"ぉ"お"お"ぉ"ぉ"お"お"ん!!本"当"に"良"か"った"〜〜〜!!!」

 若い車掌も奇跡を目の当たりにし、苦難の果てに取り戻した日常の有り難さを噛み締めるように、ボロボロと漢泣き(※号泣)していた。

 そんな車掌をそっとしておくように、喪服姿の女性はクールに去る。

144名無しのスタンド使い:2024/03/10(日) 09:43:44 ID:Ryeva2Jg0
【課題名】
>>40 ビンを立てる工場の初日
【使用オリスタ】
No.6056 レイザーズ・エッジ
【解答】
「暇だ………」

某有名企業の系列に属する調味料工場の中。
列を成して流れてくる無数のビンの前で、1人の青年がボソリと呟いた。
著しく勤労意欲に欠けた発言に対し、周囲の従業員達は何の反応も示さない。
ただひたすらにビンの列を見張り、倒れた物に手を伸ばして立て直す………簡単だが単調、そして退屈極まりない作業は彼等の精神を磨り減らし、派遣社員の不真面目な態度を咎める気力さえも奪っていたのだ。

「ファ〜〜〜…………」

マスク越しにも分かる程の大欠伸を漏らす派遣社員の青年。
しかし、そんな彼の退屈はすぐに破られた。

「そんなに眠いってんなら、永遠に眠らせてやらァ!」
「うっわ、え!?何!?」

派遣社員の隣で作業に従事していた中年男が突如怒りを露にビンを掴み、青年の頭目掛けて振り下ろしたのである。
幸いにも咄嗟に身を退いて攻撃を避けた青年の目に写ったのは、中年男のみならず他の社員達すらもビンを握りしめ、自身を見つめている姿であった。

「イヤイヤイヤ、急に何なんすか先輩方!そりゃ洒落にならんでしょうよ!」
「ウルセェ!目障りなてめえをボコせば俺達はその間退屈しねぇで済むんだ!!上手くいきゃ仕事も休めるしなぁ!」

危機感の無い表情で窘める青年に対し、訳の分からない理屈を喚き散らす中年男。
周囲の従業員達も同調するかのように下卑た笑みを浮かべ、ジリジリと青年の元ににじりよる。

「っつー訳で………死ねや、この野郎!」

中年男の咆哮と同時に従業員達が青年へと飛びかかったその時。

「『レイザーズ・エッジ』」
ブオッ!!
空中に無数の拳が表れ、従業員達目掛けて突きが繰り出された。
風を切る音と拳に宿る殺意に従業員達は怯み、思わず足を止めるものの、ただ1人を除いてその身体に傷が付く事は無かった。

バキィ! 「ウグャッ!?」

骨が折れる音と先陣を切った中年男の悲鳴によって我に返る従業員達だったが、今度は別のモノ──────拳を返り血に染め、酷薄な笑みを浮かべる青年への恐怖心によって動きを止めた。

「ア〜ァ……折角俺は真面目に働いてたのに………
趣味も我慢して、人並みに頑張って金を稼ごうとしたのによォ〜〜〜………」

青年は独り言を言いつつ中年男へと近寄り、血塗れのまま呻く彼の頭を掴み………

ガゴォンッ!!ゴパキッ!

手慣れた様子で床へと叩き付け、いとも簡単に首を踏み折った。

「フゥ〜〜………ま〜た失敗しちまったぜ、『禁殺人』。まっ、正当防衛って奴だから仕方ねぇよなァ〜〜〜?」

人を殺したにも関わらず、何て事ないと言いたげな笑みを浮かべる青年の姿に従業員達は己の愚行を後悔し、命乞いを試みようとしたものの──────

「お〜し、久し振りに趣味の時間だ、派手にやってやるぞォ〜〜〜!」

彼等が口を開くより先に「ブッ殺す」と決めていた青年は、その瞬間に行動を始めていた。


「アッレェ?何処にも載ってねぇ!あんなに派手にやったのに!」

調味料工場にて騒動が起こった次の日。
自宅でパソコンの画面を見つめ、すっとんきょうな声を上げる青年の姿があった。

「ハハ〜ン?さては派遣会社の奴等が揉み消しに走ったな?ってかそれは良いとして…………そー言えば給料ってちゃんと振り込まれてたよな?」

家を飛び出して近くのATMへと駆け込んだ青年の嫌な予感は、ものの見事に的中していた。

「チッ………仕方ねぇ、給料取りに行くか!こんな事も有ろうかと、社員共の家を調べといて良かったぜ、全く………」

何て事ないかのように呟き、踵を返して歩きだした青年。
その歩みは、迷いの無いしっかりとした物だった。

145名無しのスタンド使い:2024/03/10(日) 22:45:52 ID:Qy8QROuM0
>>144
解答の投稿有り難うございます!
殺意を可視化させる能力と禁殺人が趣味な殺人鬼という個性抜群なオリスタの活躍が見れて面白かったです!事件後に社員の個人情報を調べる用意周到さも、軽い調子の本体に殺人鬼のサイコみを感じられて良かったです。

146名無しのスタンド使い:2024/03/16(土) 17:52:36 ID:XSEJ3Njs0
【課題名】
>>137 サルベージ・フォー・リサイクル
【使用オリスタ】
No.8578 サンデー・バイオレット
【解答】
「しっかし……幾ら給料が良いとは言えホントに気味が悪いわね……」

静まり返った深夜の遊園地にて、タメ息を吐く女子高生が1人。
彼女の眼前には1台の機械人形………だったと思われる金属の塊が禍々しいオーラを放ちながら鎮座していた。
ガワの大部分が融けて黒ずみ、ワイヤーや歪んだ内骨格は剥き出しで左目もグシャグシャに潰れたおぞましい形相をしたかつての子供達の人気者は、それを分解すべく訪れたアルバイトの勤労意欲をゴリゴリと削っていた。

(そうよ……これを解体すれば[検閲済]万円……[検閲済]万円の収入が私の懐に入るんだから……)

しかし、彼女は雇用主から提示された破格の給与額を思い浮かべる事で恐怖心を誤魔化していた。
カラオケ店でのバイトは結局タダ働きで終わり、『大瓜ここのつぼし動物園』でのバイト募集も無い以上、今はこの仕事で金を稼がねばならない。
その上、雇用主は再利用出来るパーツを発見出来れば別途ボーナスを払うとまで言い放った気前の良い輩である。

「そうよね、仕事はキチンとしなきゃだもの。それに、既に壊れた機械が動くワケ(ギギィ……)無い………」

空元気を出しながらスパナを取ろうとした少女だったが、そんな彼女の言葉を嘲笑うかのように機械音が響いた。
振り向いた少女の視線の先には力無く座り込み、首を此方に向けている機械人形の姿が。
………そう言えば、部屋には誰もいない筈なのに妙な視線を感じる気が………

「…まあ?そんな訳無いと思うけど?ね、念の為………『サンデー・バイオレット』……ッ!?」

不安と疑惑を振り払うべくスタンドを出した少女だったが、彼女の思惑とは裏腹に『サンデー・バイオレット』は自分に向けられた真っ直ぐな視線とその出所をハッキリと感知してしまっていた。

(この機械人形!私を見ているッ!……何だか分からないけど……コイツは『ヤバい』ッ!)

嫌な予感が確信に変わった少女の行動は素早かった。
此方を見つめる機械人形から視線を外す事無く出入口のドアを開け、退室すると同時に鍵を掛ける。

「ふぅ……これで少しは安心(ウィイン!)……出来なかったか。……不味い状況ね」
(ギギッ……ガシャァ……ガシャァ……)

一安心する間も無く耳に入る機械の駆動音、そして規則的かつ金属質な足音。発生源はたった今飛び出した部屋の中である。
ボロボロな身体の何処にそんな力が残っていたのかは検討もつかないが、あの機械人形が立ち上がって動きだした事は明白だった。しかも確実に此方へと近付いている。
幾らオンボロとは言え相手は金属の塊、正面からでは勝てないと判断した少女は手近な椅子やテーブルで出入口をふさいだ………のは良かったのだが、相手のパワーは少女の予想を超えていた。

(バァンッ!)

鈍い殴打音が響くと共に積まれたバリケードの一部が崩れ、数脚の椅子が吹き飛ぶ。
幸いにもその場から走って逃げ出した少女に直撃こそしなかったものの、今の一撃でドアその物に大きな凹みが生じてしまった。
歪んだドアの隙間から突き刺さる視線を背に受けながら少女は思考する。

(あれじゃあ大した時間は稼げなさそうね。とは言え移動は遅い方だし、準備さえ整えれは或いは……)

(ズガァンッ………!ガラガラ………)

即席バリケードが完成してから1分も経過しただろうか。
スクラップを寄せ集めた怪物が如き外見の機械人形がその豪腕でドアとバリケードを呆気なく叩き壊し、我が物顔でバックヤード内を徘徊していた。

(ガシャン………ガシャン………ガシャン。)

モーター音を響かせ、周囲を見回しながら獲物を探していた機械人形が足をピタリと止める。
笑みを浮かべるかのように細められた眼には、戸棚の前で立ち尽くす少女の姿が映っていた。
一直線に少女の元へと歩み寄って豪腕を振り上げた機械人形に対し、少女は『戸棚の中から』声を投げ掛けた。

「──────ソレは鏡よ、お人形さん?」

そして『サンデー・バイオレット』は機械人形からの視線を感知するより早く、拳を機械人形の頭目掛けて叩き込んだのだった。


「…………あんなに力が強いなんて、視線に気付くのが遅れてたら危なかったわね………。」

一体何だったのかしら、と完全に破壊された機械人形の前でぼやく少女。
どうも殴る時に力を籠めすぎてしまったらしく、ボーナスなど到底貰えそうに無かった。

「ま、お給料と命は助かったんだから十分か……」

とは言え、たかだかバイト1つでこんな目に合っていたのでは命が幾つあっても足りやしない。
早く『大瓜ここのつぼし動物園』のバイトが募集されない物だろうか?

………『大瓜ここのつぼし動物園』もそれなりに奇妙な場所である事を知らない少女は、静かにそう思ったのだった。

147名無しのスタンド使い:2024/03/16(土) 18:41:57 ID:XSEJ3Njs0
【課題名】
黄金のドライバー精神
【あらすじ】
『非スタンド使いの』とある議員(=あなた)は歩道の側に車を停めています。
すると突然車内に見知らぬ他人が乗り込み、「前の車を追え」と偉そうな態度で命令してきました。
当然ながら断ったあなたですが、相手は『奇妙な力』を見せ付け「スタンド使いの私に逆らうな、空いている歩道を走っていけ」と脅迫してきました。
歩道には何も知らない罪なき民間人達が歩いています。
【クリア条件】
不審者を車から叩き出し、道行く民間人の命を守って下さい。
【使用オリスタ】
なし
【補足情報】
オリスタキャラは敵として登場させて下さい。
「あなた」は完全な一般人ですが、議員なので不審者を殺しても揉み消せます。
しかし、人々に慕われて議員になったあなたが歩道の民間人を引き殺す事はあってはいけません。

【課題名】
健康志向
【あらすじ】
スタンド使いのあなたは、昼食を取りにうどん屋を訪れます。
注文したうどんを受け取って七味唐辛子をかけようと容器を取った所、突然蓋が外れて1瓶分の七味唐辛子が汁に入ってしまいました。
【クリア条件】
うどんを残さず食べきって下さい。
【使用オリスタ】
なし
【補足情報】
最悪そのまま食べきればOKですが、残すと店を出禁にされます。

148名無しのスタンド使い:2024/03/16(土) 22:20:38 ID:.dVjIcD20
>>146
解答の投稿有り難うございます!
これは嬉しい!if設定ではなく、私が書いたサンデー・バイオレットの物語を地続きに書いてくださり有り難うございます!
一瞬の隙を引き出す鏡を用いたトリックが、サンデー・バイオレットの能力と噛み合っていて良かったと思います。動物園も動物園でそれなりに奇妙な場所なのは間違いないですね。

>>147
問題の投稿も有り難うございます!
非スタンド使いの議員を問題の起点にしているのが、難易度が高そうな問題でワクワクしております!
某議員にもボディーガードみたいな運転手がいたから解釈次第でワンチャン狙えそうな気もします。
勝手に全投下問題一つはつまみ食いするチャレンジをしている身としては、七味唐辛子をバチクソぶちまけたうどんもやぶさかではありません。


丁度良かったので告知も失礼。
次回の解答投下日ですが火曜日の19日ではなく、20日にしようと思いますので宜しくお願いしますm(_ _)m

149名無しのスタンド使い:2024/03/20(水) 22:31:49 ID:nCdyXWns0
【課題名】
>>45
バスを待つもの達
【使用オリスタ】
No.3803 ギャランドゥ
【解答】

  夏休み到来!

 炎天下の7月下旬から始まる長期休暇、1学期の終業式を終えた学生たちは、自由に羽を伸ばしながら夏の暑さもはね除けてしまうだろう。

 満面の笑みを浮かべながらキャリーケースを引いて歩く少女は、太平洋のど真ん中に浮かぶ離島『星野古島』に学舎を構える全寮制のマンモス校『降星学園』に在学する生徒で、地元の地方都市に帰省してきたようだ。

 世界各国から集まる学生たちの為に様々な施設が存在する星野古島と比べると、彼女の地元はいささか閑静過ぎるかもしれないが、家族や旧友の顔を見れるのはここしかない。彼女にはそれだけでも帰省する理由はあるのだ。

 学園や島での奇妙な生活を土産話に携えて、実家に帰る最中……彼女は星野古島でも中々お目にかかれない稀有なトラブルに遭遇してしまった。

 最も彼女自身に落ち度はなく、フェリーから飛行機・電車に乗り継いだ長旅で疲れもあったが、馴染み深い故郷に降り立った瞬間、嬉しくなってついテンションが上がってしまい……真夏の炎天下も何のその「たまには日焼けもいいよね」と細かい事は気にしない精神で、町中をブラリと歩きながら帰宅する事にしたのが誤りだった。

 少女がたまたまバス停の前を通りかかると、時刻表の柱に寄りかかっている男性がいたかと思えば……違和感が襲いかかる。よく見てみれば口を猿轡にされており針金で全身を拘束されながら柱に縛り付けられているのだ。


 ・・・・・・そーゆーご趣味の方かしら?


 こんな真っ昼間の町中のど真ん中で常軌を逸したSMプレイか何かは知らないが……これはやり過ぎだ。真夏の太陽は容赦なく男性に照りつけており、このまま放っておけば命に関わるかもしれない。

 少しズレた発想をした少女だが、即座に男性を助けようと手を伸ばすと……「KAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 後方から獣が威嚇するような奇声が響き渡る。何事かと少女が振り替えると、停留所から少し離れた所にある街路樹……そこに出来た日陰に身を寄せ合う老人たちがいた。彼等は何かの催し物に参加でもするのか、一様に小綺麗な礼服やら着物を身に纏い、黒い日傘を持ち歩いている。

 彼等は余程、日光に当たりたくないのか、日陰から一歩も出ることなく、男性を助け出そうとする少女に対して、怒声を浴びせながら抗議する。

「止めろ!そいつがいなくなれば、ここに来るバスの運転手が停留所に人がいないと勘違いして、そのまま走り去ってしまうかもしれん!」


「・・・・・・バスの事が心配なら貴方たちがここで待ってればよくない?」

「WOOOOOOOOH !それが出来たら勝手にやってるわ!このダボが!」

「GRRRRRR ……あまり調子に乗るんじゃあないぞガキが」

 少女のシンプルな指摘に対し、胡乱な老人たちは異次元の老害ムーブをぶちかまし、話は一向に噛み合わない。

 彼等をよく見れば、顔の皮膚は妙に弛んでいたり、目の焦点があっていなかったり、両目とも白眼を向いている者もおり、そもそも皮膚が部分的に緑色に変色しており、色々と様子がおかしい。体臭も気にしているのか、出鱈目に振りかけたような香水の悪臭が微風と共に流れているが……嗅ぎなれている者が嗅げば、死臭を誤魔化している事を看破出来たかもしれないだろう。

 しかし、彼等と相対した少女にそのような知識は持ち合わせておらず、それどころか無邪気そうな笑みを浮かべながら、少しズレたお人好しな提案をしてしまう。

「うーん、分かった!それじゃこの人の代わりに私がここで立ってるよ!それならこの人を助けてもいいでしょう?」

 少女からの思いもよらない提案に、老人(?)たちも一瞬だけ面を食らった様子を見せるが、すぐに傲慢で醜悪な表情に戻り、互いの顔を見交わしながら生意気で"美味そうな"生娘を陥れる謀略を巡らせる。

「UUUUUUUUM……どうする?」

「立ってるだけなら案山子でも構わんが……まぁ丁度いいんじゃあないかぁ……親方様への手土産が増えるのは良いことだ」

「バスの乗客次第じゃがのう。ワシ等も少しぐらいつまみ食いするなら、数は余分にあって損はないだろう」

「フヒヒ!久し振りじゃのう!若いのは!」

「おい気を付けろ!そんなに舌を伸ばすでない!」

「デヘヘ、スマンスマン」

150名無しのスタンド使い:2024/03/20(水) 22:32:42 ID:nCdyXWns0
「あっ!バスが来たよ〜!」

 老人(?)たちの皮下で何かが脈打ち、興奮するあまり、舌を触手のように伸ばして嘗めずるような異常な仕草をみせてしまうが、そういう時に限って少女は決定的な瞬間を余所見してしまう。

 そうこうしているうちに、彼女たちの元にバスがやってきた。バスの扉が開く――――――このままだと時刻表の柱に縛り付けられた男性の近くにいる少女が……まるで、この場所で何かしたいみたいに、バスの運転手から誤解されてしまい、老人(?)たちも口裏を合わせて彼女を陥れ、隙を見計らいバスジャックを決行して"お楽しみ"を始めるだろう。

 だが、しかし!

 異変は既にずっと前から発生していた!

 バスが停車して入り口を開ける運転手は、あられもない姿をしている少女や時刻表に縛り付けられている男を見てもノーリアクションのまま。そうとはしらず老人(?)たちは一斉に少女の元に詰め寄ろうとするが、うっかり日傘を置き忘れてしまい、無防備に日下を闊歩しようした瞬間――――――

「「「「ANGYAAAAH!!?!」」」」

 老人の姿を騙る吸血鬼の眷属『屍生人』たちは痛ましい不憫な悲鳴を上げたかと思えば、衣類と悪臭を残しながら、瞬く間に塵へと還ってしまった。

 彼等は別に脳味噌まで腐り果てたヌケサクという訳ではない。屍生人には二つ名を手に入れた伝説の連続殺人鬼・強い怨念を秘めた中世の騎士たちのような特記すべき異常性や戦闘力を秘めた個体もいるが、自分達を生み出した吸血鬼のように自力で肉体を再生する事はできず、人間の血肉を食らい欠損や腐食を補おうとする者が殆どだが……食人衝動を隠しながら上手く人間社会に溶け込み、某国の空軍司令官まで上り詰めるような個体もかつては存在していた。

 老人の屍生人たちも日光を巧みに避けながら昼間でもお構い無く活動し、主である吸血鬼の為、新鮮な食事を調達しようとしていたのだが……そんなやり手の屍生人が、自分達の生命線でもある日傘をうっかり忘れるような凡ミスを普通犯すハズがない。

 彼等は少女のスタンド攻撃を既に受けていた。何故なら……少女は帰郷した嬉しさのあまりにテンションが上がってしまい、いつもの癖で全裸になりながら町中を闊歩していた。

 何を言ってるのか、分からないと思うが屍生人たちも何をされたのか分からないまま往生した。日光を浴びた今際の際、彼等は催眠術だとか超スピードだとかそんなものではなく、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったかもしれない。

 でも安心してください。彼女のすっごいワイルドな人型スタンド〈ギャランドゥ〉は、本体のピュアでイノセントな生まれたままの姿を全身全霊でフルガードしていただけなんです。そのついでに屍生人たちも細かい事を気にする事ができなくなってしまったようです。

「・・・・・・・あの人たち服だけ置いてどこに行っちゃったんだろう?……まさな同好の士というヤツ!?まぁ、今はお兄さんは助けなきゃ!」

 こうして少女はボケ倒したまま、屍生人たちの驚異を掻い潜ってしまった。

151名無しのスタンド使い:2024/04/02(火) 21:35:29 ID:Rl7Cia1c0
【課題名】
>>46
 木こり初日
【使用オリスタ】
No.27 ブレーダー・トレード→本体名『市原』
No.233ピーキー・ソルト→本体名『宇佐見』
【解答】


 前略オフクロ様

 実家から叩き出されて数ヵ月が過ぎました。オヤジ様から頂いた手切れ金も底をついてしまい、いよいよ今日からアルバイトを始めます。念願の社会復帰ですが、正直始める前から妙な胸騒ぎがして夜も眠れていません。

 貴女はそんな俺を見たらきっと呆れるでしょう。イケメンなんだから堂々としろ?女の子と遊んで自信をつけろ?……ナチュラル・ボーン・陰キャでちいかわ(なんか小さくてかわかぶりな息子)な俺には、貴女たちが簡単に思える事も物凄く高いハードルに思えてしまうのです。ぶっちゃけ女子も男子もリアルはみんな恐いから、家に引き込もって一日中遊んでいたい!初期の設定が定まっていない世界観でちいかわになれるならガチでなりたい!

 でも……このまま引きこもったままだと家賃も払えず、電気や水道も停められる。背に腹は代えられない状況、夏休みの宿題を最終日近くになって必死に片付けようとするように、ギリギリでいつも生きている俺は……木こりになる事を志しました。

 冗談だと思っているかもしれませんが今回はガチです。いやまぁ正確には材木加工工場のアルバイトなんだけど……それが、どうしてこんなことになっているんだろう?

 せっかくアルバイトの現場まで足をはこんだと言うのに、工場内の作業場には作業服を着たガテン系のオッサンではなく、厳ついスーツを着こなす堅気ではなさそうな人が屯っていた。

 これはヤバいと思い、何も言わずに後退りして逃げ出そうとしたが、たまたま近くにいたパンチパーマのオッサンと目と目が合ってしまった。

「よぉ兄ちゃん、何のようだい?」

 どんな生き方をしていたらあんな血走った糞恐いメンチを切れるのか分からない。ありゃもう不可視のビームを出してるメンチ切りだ。出なきゃ俺は蛇に睨まれた蛙みたく動けなくなるハズがない。今すぐにでも颯爽とこの場から逃げ出しているのに……!そうこうしているうちに後ろから伏兵が現れて、そいつは2メートルは軽く超えたスキンヘッドの巨漢で、俺を後ろからがっつりハグするようよ捕まえると、そのまま抱き抱えられてしまった。

「目撃者は……面倒臭ぇな。よし連れてくぞ」

「うす」

「イ、イヤ!!イヤ!!イヤ!!」

「キメェ声だすな。このまま背骨を折られたいのか?」

「わァ…ぁ……」

 俺はちいかわになる事しか出来ず、むさ苦しい巨漢に抱っこされながら工場の奥に連れていかれた。そこにはパンチパーマとスキンヘッドのお仲間が屯している。俺を雇ってくれたオッサンの工場長は、ロープで縛られており丸鋸が取り付けられた台……テーブルソーの上で転がっており、顔面蒼白になりながら必死に命乞いをしていた。

「堪忍してください!もうこんなことしたくないんです!ここの設備が切断出来るのは木材だけなんでふッ!?」

 まな板の鯉が必死に御託を並べていたが、それを辟易そうに聞いていたオールバックの男は、ついに我慢ならず、工場長の顔面を殴り付けて強引に黙らせると大きなため息を吐き捨てる。

「はぁ……それなりに上手い汁は吸わせてやったつもりだったんだのによぉ〜、ちょっと探りを入れられりゃこのザマか………まぁ、いいや。味噌がついた処理場なんて俺たちも必要ね〜んだわ。お前もきれいさっぱり後腐れなく透明になろう」

「ひいいいぃいいいぃぃぃい!!イヤだ!イヤだ!!死にたくない!死にたくない!死にたくない!もう何でもしますから命だけは助けてください!」

「今さら必死に泣きつけばどうにかなるかとでも思っているのかい?イモ引いた途端に堅気に戻ろうだなんて都合が良すぎるだろう?親父もお前さんに面子を潰されてご立腹なんだよ。落とし前、つけようねぇ」

 何があったのかは知らないが、俺の雇い主は裏社会のマフィア的な人たちの逆鱗に触れてしまったらしい。人目も憚らず命乞いを続ける工場長を嘲笑いながら、オールバックの男は裏社会の俺ルールを演説して悦に浸っている。

 ……どうでもいいけど、何で引きこもりのニートが頑張って社会復帰しようとしている真っ最中なのに、こんな人間ぶっ殺しゾーンに拉致されなければならないのか?現実の非情さに吐き気を催しそうになる中、俺はオールバックの男の前まで連行されると雑に床に落とされた。既に俺は人間扱いされておらず、パンチパーマの男とオールバックの男は俺を無視して勝手に話を進める。

152名無しのスタンド使い:2024/04/02(火) 21:36:47 ID:Rl7Cia1c0
「すみません尾崎の兄貴、こいつに見られてしまいました」

「飛んで火に入る夏の虫ってのはどこにでもいるなぁ……まぁ、丁度いいや」

「エ……オ…オレ、カンケイナイッスヨ」

「関係無いなら証拠見せよっか」

「エ…エ…エ……」

「大丈夫大丈夫、ここの機材はウチで仕入れたヤツだからね。ボタンを押すだけで台の上の死体を勝手にバラしてくれるんだ。さぁ、この馬鹿と関係無いなら証拠見せようねぇ」

 酷薄な笑み浮かべながらオールバックの男は堅気に無茶振りをしてくる。まさか人間ぶっ殺しゾーンで、俺自身が人殺しになる事を強いられるなんて思わなんだ。断れば工場長の身内と見なされ仲良くぶっ殺ろされそうだが……殺人を犯す度胸があるならとっくに引きこもりなんて卒業している。

 前門の虎、後門の狼の板挟み状態だが……こうなったら腹を括ってやれる事をやるしかない。ちいかわだってこういう追い詰められた状況で本領を発揮して様々な危機を回避している。俺は…人殺しににはならない。こうなったら俺は…俺自身が「ちいかわ」になるしかねぇーーーッ
 
 工場内には俺と工場長以外に……オールバックとパンチパーマ・スキンヘッドに角刈りとツーブロックの男たちがいる。5人で丁度良い……鎮圧するだけなら5人が本当に丁度良い!俺をただの無職童貞引きこもりの粗チン野郎だと油断(※そんなこと筋もんのお兄さんは知りません)して解放したことを後悔させてやる!

「ブレーダー・トレード!」

 俺の能力は至ってシンプル、両手にはめている指輪を相手にはめる。ネット友達のスタンド使いみたくカッコいいビジョンは出せないし、物を破壊するパワーはないが……そんなもんがなくたって揉め事は収められる。

 指輪を嵌めた手を対象に向けて、どの部位をはめるか決定した瞬間、指輪は手元から消失……刹那、オールバックの男の両手首は淡い光を放ちながら磁石が引かれ合うかのようにくっつくと、瞬く間に両手を拘束する「指輪」が形成される。続けざまに両足も拘束して手足の動きを封じられたオールバックの男は、何が起こっているか理解できず慌ててしまいバランスを崩して転倒してしまう。これで芋虫の出来上がり!

「兄貴!?」

 兄貴分の身に起こった異常事態に舎弟たちはどよめく。ありがてぇ!ここにスタンド使いが一人でもいりゃ間違いなく俺に反撃を仕掛けてくるだろうが……何も知らない素人は奇妙な事態に遭遇して、判断が一手遅れる。その隙にパンチパーマ、スキンヘッドの両手両足を拘束していく。

「ぬおおおおおおおおおおおお!?!」

 俺の仕業だと察したのか、近くにいたスキンヘッドは雄叫びをあげたかと思えば、巨体を活かして俺に多い被るように倒れてきて……痛ぇ!?そんなの都合良くホイホイ避けれないって馬鹿野郎!?

「よくやった沼田!坂本と豊田!そいつを今すぐ殺せ!そいつはスタンド使いだ!?」

 バ、バレてる!?なんでぇ?……いや、引きこもりでニートの俺ですら運命の巡り合わせでスタンド使いになっているんだ。筋もんの皆様の知り合いにだってスタンド使いがいるかもしれない。俺は必死にスキンヘッドのボディプレスから抜けだそうするが、巨体は岩石のようにびくとも動かない………………沼田あああぁああああぁあッ!

 そうこうしている内に角刈りとツーブロックがにじり寄ってくる……俺は巨体に押し潰されて脱出不可能、舎弟二人は兄貴たちの仇をとろうと近づいてくるが……………それでいい。面子や体裁を気にするあまり、援軍を呼ばなかったのは致命的な判断ミスだ。

 身体の自由は奪われても辛うじて両手は動かせる……ノコノコとスタンド使いの射程圏内に入ってきた間抜けコンビを〈ブレーダー・トレード〉で拘束するのは容易い。

 これで俺は手持ちの指輪を使いきり、能力を発動を発動する事はできなくなった。依然として巨漢のボディプレスから抜け出せず、筋もんさんたちも手足を拘束されて動けないまま全員床に転がってる……何この泥試合?想像してたのと違うよ。お互いに手も足も出せなくなった以上、後は自由に動かせる口で勝負するしかない。

「あ、あの……ホント、俺もこれ以上、何もできないんすよ。皆さんもそーだと思うんすけどね。でも、こーでもしないと俺みたいな無職童貞引き込みりのニート、本職の皆様に舐められてまともに話あ合いが出来ないと思ったから、強行手段を取らせていただきました」―――俺が言葉を紡いでいると、パンチパーマの男が「テメェ!こんなことしやがって、ただで済むと思うなよ!」と凄まじい剣幕で脅しをかけてくる。

153名無しのスタンド使い:2024/04/02(火) 21:38:27 ID:Rl7Cia1c0
 相変わらずチビりそうになるくらい滅茶苦茶恐いが、ここで食い下がっちゃいられない。相手は筋もんの皆様……この面子も糞も関係ないカオスな状況下であろうとも、きっと面子や体裁を重んじてくるんだろうが……交渉相手として考えればまだ分かりやすい部類なのかもしれない。相手はメンヘラや殺人鬼・無敵の人みたいなキチガイバーサーカーではなく、損得勘定ができるビジネスサディストだ。

「はい勿論!ただで済むなんて思っちゃいませんよ!だから手打ちにさせてください!堅気の俺が貴方たちをどーこうしようだなんて調子に乗った事はしません!何か揉め事があったら呼んでください!この通り戦闘力は皆無ですが……相手の動きを封じるのは十八番です!あ、あと……知り合いに皆様と同じような人たちと仕事をしているスタンド使いがいるんですよ。そいつの事も紹介します!もしかしたら『ここ』の代わりになるかもしれません!」

 助かりたいあまり、勢いでネット仲間のスタンド使いの事を売ってしまったが……こんな材木加工工場で材木以外の何かを処理している筋もんの皆様には売って付けの相手だ。友達をヤクザに売ってしまった罪悪感がひしひしと心にのしかかってくるが……ビジネスライクなヤツだから、金の話に通じればきっと許してくれるハズだ!
 
 そんな、なりふり構わない俺をオールバックの兄貴分は……情けなく床に寝そべりながらも、冷ややかな白い眼差しをこちらに向けるながら「兄ちゃん……お前みたいな堅気は中々いないぜ」と呟いた。



 ★



「かくかくしかしがこーゆーことがありまして、このとーりです。助けてください」

『ハァ?』

 あれから数時間後、俺は筋もんの皆様と一緒に黒のセンチュリーに乗りながらネット仲間のスタンド使いの自宅にやって来た。予め電話して事情を説明していた事もあり、スムーズに出迎えてくれたが、玄関先で出迎えてくれた友人「宇佐見」の視線が刺さるように痛い。

 俺と一緒にオールバックの兄貴分とスキンヘッドの巨漢、そして彼等の間に挟まれるように工場長も一緒に二階建ての屋内に入るが……最後列で工場長を監視していたスキンヘッドの男が突如「うわぁああああッ」と裏返った悲鳴をあげる。

 何事かと俺とオールバックの兄貴分が振り返ると、先ほどまで死んだ魚のような目をしながらとぼとぼ歩いていた工場長の上半身が……人の形をした虫の怪物に貪り喰われている。スタンド使いの俺には宇佐見のスタンド能力〈ピーキー・ソルト〉のビジョンが見えているので、何が起こっているのか理解できるが……スタンド使いではない未能力者たちは、立ったまま上半身が消失していく死体の姿を見て、酷く狼狽して醜態を晒す事はなかったが、全身から冷や汗を吹き出しながら絶句していた。

 そんな筋もんたちの様子を冷静に観察する宇佐見は、瞬く間に工場長の死体を〈ピーキー・ソルト〉にペロリと平らげさせると、間を空けずに交渉を畳み掛ける。

「ひとまず……そいつの処理はタダでいい。その代わりそこのクズ野郎の事は許してやってくれ……こいつはヘタレのマザコンの粗チン野郎で、他人を不幸に巻き込んで道連れにしようとも、無自覚な被害者のままでいられる「真の邪悪」だが……まぁ能力は便利だ。都合の良い駒だがら好きなだけ使い潰した方がいい。それはそうと……今後は代金次第で別の死体を処理してやってもいい。俺とアンタたちならお互いにwin-winな関係を築けれると思うがどうだろう?」

 罵詈雑言は甘んじて受け入れよう。ぐうの音もでない正論だ。そもそも、本当にそんな酷いことを思っているなら俺は最初から見棄てられているハズだ。……………そうだよね?いいや、そうだ!宇佐見は同じ引きこもりの若者とは到底思えない、ギラギラした邪悪な立ち振舞いで、ヤクザに臆する様子は一切みせない。オールバックの兄貴分もそんな宇佐見の態度と能力が気に入ったのか「相場はいくらだ?」と尋ねると、懐から名刺を取り出している。

 やはりプロの自宅警備員(?)は格が違うな。よし……たぶん何とかなった!お偉いさんたちでビジネストークをしてるなら場違いな無職は足早に去るべし。俺はこっそりこの場から逃げ出そうとするが、それを察したのか、何故かスキンヘッドの巨漢は俺の手を握りしめると離してくれない………………沼田あああぁああああぁあッ!







 ……前略オフクロ様

 なんやかんやあって最初の社会復帰には失敗しちゃいましたが、別のアルバイトを見つける事が出来ました。

 ですが……思いっきり反社的な裏家業で、見慣れない人たちに囲まれていささか戸惑っています。



『おう、市原!仕事だ!打ち合わせをしたいから事務所に来てくれ!』

「わァ…ぁ……」

154名無しのスタンド使い:2024/04/07(日) 13:17:00 ID:HlisFbGs0
【課題名】
>>25 ATMの彼女
【使用オリスタ】
No.1029 ネバー・ゴーイング・ノーウェア
【解答】
奇妙な事の多い人生を送って来ました。

自分には、非スタンド使いが送る生活というものが見当つかないのです。
自分が物心ついた時にはこの愛しい御方が側に立っていたのですが、それが異常である事に気付いたのは、よほど大きくなってからの事でした。

「スーツ姿のカッコいいお兄さん……?アナタ、何を言っているの?そんな人何処にもいないじゃあない。」

子供の自分はその御方が他者の眼にも見えているだろうと信じ込み、幾度となく逢瀬を重ねていました。
成長するにつれて私に想いを寄せる殿方も多く現れたのですが、私が裏で「幽霊と話す変な子」と呼ばれている事を発見しては勝手に醒めているようでした。
まあ、私には彼が居るのでだからどうという事もありませんでしたが。

しかし、「スタンド使いはスタンド使いにひかれ合う」。
何処ぞのサザエさんに似た……もとい個性的なヘアースタイルの青年が言及した法則により、私と彼は様々なスタンド使い、若しくはそれに準ずる奇妙な輩に遭遇する事となりました。
今目の前で床にうずくまり、現金自動預け払い機─────都会風に呼べばATMに顔をベッタリと密着させている女性などはその良い例と言えるでしょう。

「あの〜……お金を下ろしたいので、其処を退いてはくれませんかね?」

私の言葉に女は鬼のような形相で此方に向き直って「私とATMくんは愛し合っている」「お前達も恋人同士の引き剥がそうとするのか」と金切り声で喚き立て──────その姿は、私に戸惑いとある種の同族意識を与えました。

つまり、分からなかったのです。
時に現金を預け、時に現金を引き出す為に作られた機械に向けられた、この女のイマキュレート(汚れの無い)な愛情が。
しかし目を充血させながらも涙を浮かべ、ひしとATMに抱きつく彼女の姿は、何処かかつての私自身を想い起こさせるものでした。

恐らく、彼女は不安に苛まれているのでしょう。
自分が抱いている愛情と、世間一般でそう呼ばれている感情が全く以て違うらしい。
周囲からの不理解や否定、嘲笑………私もかつてはその事で思い悩み、時に気が狂いそうになった事すらあります。

「私達の愛を邪魔するなら、ここで死ねェェェェェェェェェェェェ!!!!!!」

などと考えている内に何時しか女は怒り狂い、カッターナイフを手に此方へと突進して来ました。
それでも私は、彼女を傷付ける事が出来そうにありませんでした。人が見れば「下らない事考えてないでサッサと逃げるか殴るかしろよ」と思う事でしょう。
しかし、自分にとってそれは自分自身を否定する行為だったのです。
彼女を殴れば、私自身もまた同じだけ傷付くのです。

155名無しのスタンド使い:2024/04/07(日) 13:17:26 ID:HlisFbGs0
>>154
そこで考え出したのは、私の「愛の形」を彼女に見せ付ける事でした。
カッターを振り回す女からして見ればたった1人の、しかし私の視点では愛しい彼との接吻でした。

ガギィンッ……!

愛しい彼……『ネバー・ゴーイング・ノーウェア』と唇を重ねた私の腹に刃が突き立てられ────そのまま音を立ててへし折れました。

「えっ?……えぇっ…………?」

それを見た女の顔に、驚きの表情が浮かび上がりました。

ガギィッ!ガギン!

女が折れたカッターナイフを二度三度と私に突き立て、虚しい音が狭い部屋に響きました。
最後などは根元から刃が砕けてしまい、最早使い物にならなくなったほどです。

世間の目に対していつも恐怖に震いおののき、また人間としての自分の愛情に微塵も自信を持つ事が出来ない。
そんな過去の自分を胸の中に思い起こし、呆然とした彼女の内に隠されたナアヴァスネス(憂鬱)に向けて、私は彼から唇を離してこう言いました。

「分かるかしら?………これが、私の愛なの。」

私ならば彼女の苦しみ、その絶望の理解者となれるだろう。
そして彼女もまた、私の愛の形を肯定してくれるかもしれない。
世間からは理解されぬ愛を貫く者同士、互いに心を交わした隣人と成り得るのではないか──────
そんな事を考えている内に、自然と唇が動いたのです。

しかし、嗚呼、残酷な現実!

「な、何を言ってるの……?意味、わかんないわよ………!」

彼女から向けられた困惑の念は、私の幻想を木っ端微塵に打ち砕きました。
『ATM』と『自分自身のスタンド』………矛先は違えど理解されぬ愛を貫く者同士ならば分かり合える。
それが、私の心に宿った微かな希望でした。
しかしそれも砕け散った今、最早私と彼女が対話を行う事は意味を持ちません。

「『ネバー・ゴーイング・ノーウェア』……さよなら。」
ドガァッ!

愛しい彼の奮った拳が女の頰を捉え、意識を奪い取りました。
そして彼の手を介して伝わるじんじんとした痛みだけが残り、私の心を苛みました。
そうして私はATMから今月の生活費を引き出し、沈んだ気持ちで帰路についたのです。


「………………俺は一体、何を聞かされたんだ?」
「取り調べお疲れ様です、警部。先日拘留された犯人は容疑を認めたんですか?」
「あぁ。でもまあ今回のは正当防衛だし、容疑者が貴重なスタンド使いだってんで特にお咎めは無いそうだ。
二、三日トラ箱に入って貰った後は『アンカー』の方々が詳しい話を聞くんだとさ。もしかしたら勧誘でもするのかもしれん。」
「結構丸く収まりましたねぇ。でも警部、その割に疲れた顔してません?」
「いやぁ、まあ……ちょっとな。………なぁお前さ、愛って何だと思う?」
「………………どーしたんすか、急に?」

156名無しのスタンド使い:2024/04/07(日) 22:59:13 ID:BRE2f7eY0
>>154
解答の投稿有り難うございます!
『ネバー・ゴーイング・ノーウェア』本体の心理描写や背景が一人称視点で丁寧に描写されているのと、奇妙な愛と共感という今まであまり見かけなかったテーマがかけ合わさり、シンプルにふつくしいスマートな解答に仕上がっていると思います!

157名無しのスタンド使い:2024/04/16(火) 21:38:43 ID:1XjJhfls0
【課題名】
>>47
近海漁業初日
【使用オリスタ】
No.No.8853 ウェアー・ブルー・イズ
【解答】
 
 真夏の熱気も潮風と共に吹き抜ける小さな漁港、港内には漁師や釣り人のお裾分けを狙う人懐っこい野良猫たちが住み着いており、余所者だろうとお構い無く歓迎してくれる。

「なぁ〜」

「よ〜しよしよしよしよし、そんなにじゃれついてきても何も出せないぜ。でも、まぁ……よし!ちょっとくらい魚をつまみ食わせてやるから待っててくれよなぁ〜。俄然ヤル気が出てきたぜぇ〜〜〜海の漢!」

 胸元に青いサングラスをかける男は道端で出会った黒猫と一通り戯れ終えると、停めていたロードバイクのサイドスタンドを上げて、目的地に向かって颯爽とペダルを漕ぎ始める。

 彼は真夏の長期休暇を利用して一攫千金に想いを馳せる学生だ。ただお金を稼ぐだけなら近場のアルバイトでも十分事足りるだろうが、季節が夏という事もあり海に惹かれ、蒸し暑いコンクリートジャングルから脱出を図り……隣町で募集していた漁師のアルバイトに目を付けて、チャリでここまでやってきたらしい。

(夜明け前に出港して、日の出前に港に帰れる漁師のアルバイト!リミットブレイクした暗黒の始業時間に目を瞑れば、時給はなんと●●●●円!おったまげぇ〜!何よりもお天道様が拝める頃に仕事を上がれるのが良い!乗るッきゃね〜ぜ!この金色のビッグウェーブ!)

 男の双眸の向こう側では諭吉と一葉が出会い、見つめあって良い雰囲気になったかと思えば、量産化された無数の英世たちが乱入してきて陽気なミュージカルをおっ始めてるかもしれない。そんなギャグ漫画みたいな謎のテンションのまま、この男は金に目が眩んでしまっていた。

 面接場所である漁協組合の事務所を訪ねると、タコ頭にねじり鉢巻を巻いたガタイの良い爺さんが出迎えてくれた。

「あっ!どーも、こんちゃーす!漁師のアルバイトの面接に来たんですけど…」

「おぉ!よぉ来てくれたな兄ちゃん!若いの大歓迎だぜ!チャラそうだが覚悟は出来てるか?」

「ヤル気だけでここまで馳せ参じてきました!漁師のバイトは初めてですが、仕事を覚えてザクザクお金を稼ぎたいんです!」

「……よし、金が欲しけりゃついてこい」

「うっす!」

 そのままタコ頭の爺さんの後についていく事になったが、何故か面接をするような応接室や会議室ではなく、漁で使用する道具を保管する倉庫の中に案内された。そこでタコ頭の爺さんは壁にかけていたゴム長ズボンを手に取る。

「よし、兄ちゃん。これを着たら船に乗るぞ」

「えっ?面接は?」

「こんなところまでヤル気があって来てくれるもの好きはそれだけで即採用だよ。でもヤル気だけがあっても漁師は勤まらねぇ……軽く体を動かして船に乗りながらお前さんの…………アレだアレ、適正を判断してやるよ。分かったならさっさと着てくれ」

 タコ頭の爺さんはどこか歯切れが悪そうに、もっともらしい事を語りながら男にゴム長ズボンを手渡してきた。

 あまりにも早急で事前の説明にない不審な態度、察しの良い人物ならこの時点で違和感に気がついていたかもしれないが……残念ながらこの男は暢気に(一次面接突破ーッ)程度にしか考えちゃいない。

158名無しのスタンド使い:2024/04/16(火) 21:39:18 ID:1XjJhfls0
 何の疑いもなく手渡されたゴム長ズボンに足を通そうとすると……チクリと鋭い何かがひっかかる。

「痛!……ちょっとこれ何かトゲみたいなのついてるんすけど…………って、アレ?な、何かおかしいよコレ?」

 足に軽い痛みを感じた男はさすがに何かがおかしいと気がついてゴム長ズボンを脱ごうとするが、足に上手く力が入らなくなり、その場から動けなくなってしまった。

 異常事態に冷や汗を吹き出す男の様子を見て、タコ頭の爺さんは今までにハキハキした口調とは打って変わり、沈鬱な面持ちでアルバイトのネタばらしを始める。

「凄いだろそれ……カサゴの毒を抽出して特別な方法で配合した秘伝の麻痺毒だ。痛みはさほどないが、お前の右足はもう数時間はまともに動かせなくなった」

 突拍子もない事を言ってるようでいて、実際に男の右足の感覚は消失しており片足で何とか立っているような状態だ。

 状況が飲み込めず混乱している男を余所に、倉庫の外から続々と漁師たちがやってきた。彼等も当然タコ頭の爺さんとはグルらしく、その場で動けずにいる間抜けな男を見るなりガヤを飛ばす。

「さすがぱっつぁん!ベテランの名演技でしたぜ!」

「いやぁ良かった良かった!やっとこさ供物を確保できましたね!」

「これで不漁も収まるだろう。近海の主も鎮まってくれるハズだ」

(………………ワンピース?)

 男は漁師たちの発言から自分に一番馴染み深い言葉に一瞬反応してしまうが、すぐに会話の流れと現状を整理して、自分がこれから近海の主の生け贄にされる事を察する。

 漁師たちの狡猾な罠にハマリ、片足の自由は奪われてしまったが……男にはこの危機的手段を打破する手段を握っている。

「何か勝手に盛り上がってるところで悪いけどさ……ガキだからって、あまり人様を舐めんなよ」

 男は啖呵を切りながら胸元にかけていた青いサングラスをかけると―――その場に居合わせた漁師の一人が、突然蹴り飛ばされたかのように吹き飛ぶ。

 それを皮切りに、漁師たちは何が起こっているのか理解できないまま、見えない何かに強襲を仕掛けられた。

 青いサングラスをかけた男の視界には、霞のようにぼやけた人型スタンド〈ウェアー・ブルー・イズ〉が出現し、漁師を軽快に蹴り飛ばしていた。

 男が瞬きする動作に合わせて〈ウェアー・ブルー・イズ〉は姿を跡形もなく霧散させては、見開かれた男の視点に合わせて再出現を繰り返す。それはまるで神出鬼没な鬼の如く、空中を軽やかに舞いながら漁師たちを次々と薙ぎ倒していく。

「な、なんじゃこりゃ!?」

「お前の仕業か!この野郎!」

 何が起こっているか理解できない漁師たちだが、本能的にこの怪現象の犯人を男だと断定し始める。

 一人の海士が手に持っていた銛を突進しながら突き刺そうとするが、男はその動きに合わせるように〈ウェアー・ブルー・イズ〉を漁師の目前に出現させて殴り飛ばすが……海士も意地を見せて銛を男めがけて打ち出す!

 ゴムの反発力で射出された銛は、男の頭部を掠めて青いサングラスを吹き飛ばしてしまった。

「ゑっ!?」

 非スタンド使いの漁師相手に無双して気持ちよくなっていた男は、予期せぬ緊急事態に思わず声が裏返ってしまい動揺を隠しきれない。

 漁師たちも見えない何から一方的に振るわれ続けた暴力が、忽然と鳴りを潜めた事に気がつくと……床に落ちた青いサングラスを這いつくばりながら拾おうとする無様の男の元に詰めより、怒気を秘めた冷たい眼差しで見下ろす。

 男のスタンド能力〈ウェアー・ブルー・イズ〉は本体の視覚情報を元に、青系統色に見えた物・光景を起点にスタンドを発現させる。良くも悪くも本体が認識する視覚情報に左右され、発現したスタンドの起点から本体が目を離す・瞬きをすると、スタンドは維持出来ず霧散する。

 その特性ゆえに本体は青いサングラスをかけて、視界のどこからでもスタンドを出し入れできるようにしているが……それがなくなれば扱い辛い部類に入る能力だ。

 発現したスタンドのパワー・スピードは青系統色の面積に比例して上昇し、それに反比例するように持続力は低下するため、衣類の一部に紛れ込んだような青色程度だと無力な小人サイズのスタンドしか発現できない。

「ウェアー・ブルー・イズ……」

「覚悟の準備はいいか、兄ちゃん?」

159名無しのスタンド使い:2024/04/16(火) 21:40:21 ID:1XjJhfls0




 青い空、紺碧の海、近海の大海原を進航する漁船の船首には、頭部にズタ袋を被せられ、ロープで全身を縛り付けられて拘束された男が何も出来ずに寝転がされていた。

 あれから男は漁師たちにキッチリお礼参りをされて、近海の主の人身供養として海に放り込まれようとしていた。船が目的地の海域に到着すると男はズタ袋を外される。目前には自分を陥れたタコ頭の爺さんがいた。

「まったく派手にやってくれたな」

「……お互い様でしょ」

 乱闘と私刑の影響でタコ頭の爺さんと男は全身に青アザが出来てひどい怪我をしているが、互いに平気な素振りで痩せ我慢をしながら軽口を叩き合う。

「何はともあれ後はお前さんを海に落とせば近海の主の怒りは鎮まる……恨めばいい」

「何だそれ。神だか何だか知らねーが、テメーのご機嫌を他人に取らせるなよ」

「神に人間の常識は通用せん」

「……素朴な疑問なんだけど、こんな時代遅れの迷信マジで信じてるの?」

「……本当にいるからこの時代まで、こんな因習が続いてる。組合の連中を目に見えない不思議な力でボコボコにしたお前みたいなヤツがいるなら……神に近しい存在も本当にいるとは考えられないか?」

「……………」

 男は漁師たちの凶行を迷信に囚われた奇習だと決めつけていたが、タコ頭の爺さんの言う通り……スタンド使いみたいな超能力者がいるなら、もしかしたら神だっているかもしれない。自分自身が現実離れした特殊能力を宿しているが故に、男は漁師たちが語る近海の主と呼ばれる存在を否定しきる事ができなかったが……それならば、一つの可能性にかける事もできる。

「なぁ……俺のこと見逃してくれる?」

 命乞いをする男を、タコ頭の爺さんはまるで養豚場のブタでも見るかのように冷たい眼差しを向けるのみ……無言の圧を受け取った男はいよいよ覚悟を決める。

「んじゃ俺がそいつをぶん殴ってきてやる。はやく海に放り投げてくれよ」

 妙に潔くなった男の態度を見てタコ頭の爺さんは眉を潜めるが、これ以上喋っていれば情に絆されてしまう……タコ頭の爺さんは無言のまま、ロープで縛った男を抱えると海に放り投げる。男は最後まで目を見開いたまま、ボチャリと音を立てたかと思えばほの暗い海中に沈んでいく。

「近海の主よ!お望み通りの人身御供だ!鎮まりたまえ!このクソッタレめ!!」

 汚れ仕事をやりきったタコ頭の爺さんは、苦虫を噛み潰したような顔をしながら物言わぬ大海原に大声で語りかける。

 神に近しい存在を罵倒しようとも、しきたりに従い生け贄を差し出せば、海はいつも通り穏やかさを取り戻すが………………それは突然!海中から数十メートルはある巨大なウツボが飛び出てきたかと思えば、空の彼方へと吹き飛んでいったッ!

 鳩が豆鉄砲を食らったかのように、タコ頭の爺さんは事態が飲み込めず唖然としている最中、海中から巨大な何かがゆっくりと浮上してくる。

 それはロープに縛られたあの男だが、どういう分けかそのまま空中に浮遊している。男はタコ頭の爺さんにも目をくれず、海を見下ろしたまま「獲ったどぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ」と雄たけびを上げだす。

 男の視界にはどこまでも広がる青い大海原を起点に、巨大な姿で出現した〈ウェアー・ブルー・イズ〉がいたが、火事場の馬鹿力で拡張していた持続力は限界を迎えてしまい、海神の如き巨体は儚く霧散する。

 男は再び無防備な状態のまま海中に落ちていくが……それを見捨て去る程、タコ頭の爺さんは近海の主を信奉してはいなかった。

160名無しのスタンド使い:2024/04/30(火) 21:36:55 ID:T2Lf3QQ20
【課題名】
>>48
リングボックス
【使用オリスタ】
No.8014 ラブ・ジス・モーメント→本体名『しょう子』
【解答】

 蒸し暑い真夏の夕暮れ、街中を行き交う人々に冷たい風がそよ吹けば、茜色に染まった空に暗雲が垂れ込み、天恵とは程遠い土砂降りの大雨が降り注ぐ。にわか雨ならすぐに収まるが……雨足は徐々に激しさを増し、曇天に稲光が閃けば、瞬く間に雷鳴が轟く。

 天気予報も予測しきれなかった嵐のような夕立ち。お天道様の気紛れに振り回される人々は、びしょ濡れになりながら雨宿り出来る所に避難する。


「はぁ〜服がびちょびちょ、急に降るなんて最悪」

 女子高生の『しょう子』もたまたま近くにあった電話ボックスの中に逃げ込み、豪雨が収まるまで雨宿りしようとしていた。肩掛けのエコバックには彼女の嗜好品(推しのグッズ)がたんまりつまっており、傘を持ち歩いていなかった以上、大切なお宝を冷たい雨に晒したくない。

 雨が収まるまで特にやる事もなく、しょう子はスマホで線の細い美男子たちが絡み合うボーイズラブの電子書籍を読み漁り、男同士の友情から発展した尊い純愛、決して現実世界では起こり得ないディープ・ダーク・ファンタジーに感銘を受けていたが……これから彼女は夕立が遥かにマシと思えてしまうぐらい最悪な事態に遭遇してしまう。

「あ^ぁらぁ〜お盛んですわぁ〜デュフフフフ」

 誰もいない密室を良いことに、腐女子は他人に決して晒す事の出来ない下品な表情を浮かべていると……それは突然に、電話ボックスに身長190cmはあるであろう金髪碧眼の筋肉モリモリマッチョマンの外国人が断りもなく勝手に入ってきたのだ。

 絶句、そして恐怖と絶望にしょう子の全身が押し潰されそうになる。外は大雨、逃げ場のない息苦しい密室に謎の大男と二人っきり……何も起こらないハズがない。それはもうコーラを飲んだらゲップが出るくらい確実……と、しょう子はこれから起こりうる最悪の事態を予想して顔を青ざめさせていた。

 しかし、事態は彼女の予想の斜め上を軽々と突き抜ける。大男はしょう子のことなどまるで眼中になく、力強い足取りで電話ボックスに迫り来る身長2メートルは越えている筋肉モリモリマッチョマンの坊主頭の外国人に視線を向けていた。巨漢もそんな大男に用事があるようで、電話ボックスの中に乱入してきた。

 三人用の電話ボックスなど存在しない。2人でも定員オーバーなのに、こんな巨人が入り込んではぎゅうぎゅう詰めである。一番小柄なしょう子は両手で頭を守りながら屈み込み、勇気を振り絞り「ちょっと、な、な、何なんですか!?」と必死に抗議する。

 しかし、大男と巨漢は向かい合ってガンを飛ばし合い、やはりしょう子のことなどまるで興味なさそうだ。彼女はてっきりエロ同人みたく乱暴されると本気で肝を冷やしていたので、一番危惧していた可能性が消失したのは喜ばしい事だが……危機的状況は依然として変わりない。

 こんな狭い密室にわざわざ入り込んできて、このまま穏便に終わるハズがないと……彼女の妄想力がそう告げている。

161名無しのスタンド使い:2024/04/30(火) 21:37:31 ID:T2Lf3QQ20
「ここならサイズの差はハンデにならない。むしろ…不利なのはそちら…」

 先に入ってきた男がそんな事を言い出したかと思えば………………

 ドン!!!!

 圧倒的な超暴力が炸裂する!大男の拳が巨漢の口元を殴り付けたのを皮切りに、続けざまに繰り出したアッパーカットで頭部を天井に打ち付け、ハンマーのように振り回す肘打ちの連打で巨漢の体勢を崩すと、後頭部を両手で押さえつけて……失神KOを狙った怒涛の膝蹴りをお見舞いする。その暴れっぷりは凄まじく、極小のリングボックスは大男の暴力の余波を受けて文字通り震え上がっていた。

「きゃああああああああああああああ!!??」

 この息のつまる至近距離で大暴れされては、例え暴力が自分に向けられていなくても恐怖を感じる。寧ろとばっちりがいつ自分に飛んできてもおかしくない抜き差しならない状況だ。しょう子は必死に身を屈めて身を守る他ない。

 大男の一方的な展開が続くが、巨漢も未だに不沈艦の如く立ち続けている。渾身の力を込めた拳を解き放てば……大男の顔面を真横に掠めて、電話ボックスの強化ガラスを軽々突貫してみせたのだ。

 剛力任せの規格外な一撃に大男は驚愕の表情を浮かべ、勢いづいていた連撃の手が思わず止まる。巨漢はあれだけ激しい暴力を受けたにも関わらず、鼻血を流しているだけで顔色一つ変えずに大男を無機質に凝視する。その眼差しにつられて大男も巨漢を睨み付けて………………互いにガンを飛ばしていると、最強の頂を目指す雄たちは今まで感じたことのない感情に襲われた。



『目と目が逢う瞬間に〜♪』



 脳内に未だかつて聴いた事のない若い女性の歌声が溢れだしかのような錯覚に陥る。謎の現象に理解が追い付かず、あれだけ暴虐の限り躍動していた肉体は壊れたように静止して………………何故か互いに頬を赤らめていた!それはまるで初恋でもした生娘のように!?

 そんな異常事態という名の絶好の隙をしょう子は見逃さず、四つん這いの姿勢で、そろりそろりと大男たちの股下をすり抜けて電話ボックスから脱出してみせた。

 相変わらず雄たちは事態が飲み込めずフリーズしたまま、その様子を外から眺めるしょう子は、雨にも濡れることも忘れて、自分の手の内に宿る不思議な力に戦慄する。

「スゴいね……ラブ・ジス・モーメント」

 巨漢が電話ボックスの強化ガラスを拳骨一発でぶち抜いた一瞬の隙に、しょう子は羽根の部分がハートの形になった、ピンクのダーツの矢……装備型スタンド〈ラブ・ジス・モーメント〉を両者に射し込み、『一目惚れ』を誘発させ、持続させる毒を打ち込んでみせたのだ。

 暴力の応酬を繰り広げていた雄たちは、目の前の雄に一目惚れしてしまった自身の感情を理解できず、どうして良いかわからず初そうに戸惑っているのだ。

 汗臭い筋肉達磨たちの相思相愛未満の尊い関係性……なり初めの瞬間を垣間見たしょう子は、涙ぐみながら「…美しい」と呟く。それはまるでこれ以上の芸術作品は存在し得ないと言いたげに……

 しかし、その続きまでは現実に求めていない。

 しょう子は推しのグッズがつまったエコバックを濡れないように抱えると、しっぽりとお楽しみを始めそうな良い雰囲気の二人に背を向けて、自分だけの深き闇の幻想の元へ帰る(※自宅です)

162名無しのスタンド使い:2024/05/14(火) 21:36:01 ID:rztmwYXo0
【課題名】
 >>49 人体の奇妙な展示会
【使用オリスタ】
 No.2210 ウォー・ペイント
 No.2452 ラヴ・アフェア・イズ・ビリオンダラー(出逢いは億千万)
 No.7271 ディスポーザブル・ヒーローズ
 No.4186 ディフィカルト・アート
 No.2159 NO3

【解答】

 虚空を見つめる瞳はどこまでも暗く虚ろなまま、逞しい筋肉繊維を文字通り剥き出した男性は、ミケランジェロのダビデ像のポーズをとったまま直立している。

 これは精巧に作られた蝋人形ではなく、本物の人間を使用した標本だ。肉体に含まれる水分や脂肪分を合成樹脂に置き換える事で、死体を長期間保存可能にしたプラスティネーションと呼ばれる技術で処理されており、腐敗したり悪臭を放つこともないらしい。

 ダビデ像のポージングをする標本以外にも、今にも駆け出しそうな躍動感溢れる体勢で固定された者、平均台の上でバッグブリッジバク転の真最中で静止する者、身体を縦に真っ二つに両断されて臓器を晒す者、背中を縦に引き裂かれ、背骨の断面図を晒す者……普段決して見ることの出来ない人体の構造や仕組みを観察できる貴重な標本が、薄暗い博物館内の至る所で展示されている。

 この企画は所謂いわく付きの興行で、かつては某国で行方不明になった『アナウンサー』の特徴がいくつも当てはまる『妊婦』の標本が展示されていたり、出所不明な標本の数々が高額で取引されるなど黒い噂が絶えず、各方面から人道・倫理的な観点から問題視されて、長らく開催をされずにいた見世物だったが……どういう訳か『人体の奇妙な展示会』と名を改めてゲリラ的に復活したようだ。

 最も博物館内は、平日という事もあり客の数は疎らでそこまで盛況している訳でもなく、閑古鳥が今にも鳴きだしそうだが……数少ない来場者たちが知るよしもない裏事情を知る者たちは、閑散な事を好機と捉え、ある『もの』を血眼になって探していた。


 ★

 高級ホテルの最上階の一室、豪奢な室内でソファにどっしりと座る成金趣味の中年男性は、白目を向きながらうわ言を呟き続けている。

 そんな彼を見下ろすように佇むアイドル歌手のようなオーラを纏うイケメンがおり、そのすぐ隣には黄金の獅子をイメージさせる人型スタンド〈ラヴ・アフェア・イズ・ビリオンダラー(出逢いは億千万)〉が能力を行使中だ。

 中年男性の頭部に手をかざして何かを掴んではこねくり回すような素振りをしており、その度に男は身体を痙攣させながら個人情報や直近の同行を洗いざらい打ち明け始め……早速イケメンが探し求めていた情報を引き当てた。

 彼等の周りには黒服の男女がパソコンや種類に、眼を釘付けにしながら読み漁っていたが、中年男性の口から語られた情報を耳にするや否や、一斉に手を止めて固唾を飲む。

 当たりを引けたが状況は依然として最悪だ。イケメンは苦虫を噛み潰したような顔をしながら、懐からスマートフォンを取り出すと、スピーカーモードに設定して通話を開始する。

「ボス、プロモーターも黒でした。直接対話を試みましたが、パープルヘイズ・ウィルスはそこの展示物の中に潜んでいるのは間違いないようです…………私もそちらに向かいましょうか?」


 夥しい量の人間標本が展示される博物館内を足早に散策していたスーツ姿の女性は、着信を受けたスマートフォンを取り出すと、スピーカーを耳に当てながら立ち止まる。

「報告ありがとう。貴方は引き続きバックアップをお願いします。私が直接動いている以上……万が一のことが起こった場合、『アンカー』を取り纏められるのは貴方しかいません。進捗があれば情報を取り纏めて、引き続き報告をお願いします」

『了解しました………………ボス、ご武運をお祈りしています』

 最高幹部のイケメンから報告を受け終えた女性…………『アンカー』のボスは現在進行形で直面している問題に立ち向かうため、直々に引き連れてきた組織のメンバーに指示を仰ぐ。

『アンカ―』……それは世界征服という途方もない野望を大前提に掲げる一方で、身の回りの環境を保全していく、地道な草の根活動を鋭意継続し続ける足が地についた組織だ。

 環境保全という大義名分を足掛かりに、世界中からパトロンを引き込み、表舞台で合法的な手段で堂々と活動しており、その覚悟が環を広げ、引かれた者達が集うスタンド使いの一大勢力である。

 そんな組織のトップが自らチームを編成して現場に足を運ぶ事は異例中の異例。表面化こそしていないだけで事態は緊迫している。

163名無しのスタンド使い:2024/05/14(火) 21:36:55 ID:rztmwYXo0
「皆さん、パープルヘイズ・ウィルスを内包した標本はここにあるのは間違いないようです。事前の打ち合わせ通り、事に当たりま――――――」

 ボスが現場に集結してくれた幹部や構成員たちと向き合う最中、事態は一切の容赦なく動き出す。

 閑散とした館内にドサリと何かが倒れるような鈍い音がしたかと思えば、来場者の女性が床に倒れ伏している。

 たまたま近くにいた警備員が異常を察知して、即座に女性の元に駆け寄ろうとするが……女性を介抱する間も、触れる間も無く、警備員は全身がトマトの缶詰めみたくグジュグジュに崩れ、煙を噴き出しながら跡形もなく蒸発してしまった。

 獰猛な殺人ウィルスの正体を知る者は一様に冷や汗をかきやがら身構える。『パープルヘイズ・ウィルス』……元々はイタリア全域を活動領域とするギャング組織『パッショーネ』に所属するスタンド使いの能力由来する殺人ウィルスだ。

 どのような経緯・ルートで入手したかは定かではないが、この博物館内にはそのウィルスを培養して増殖・改良を重ねて細菌兵器化されたものが、標本内部に仕込まれており……その封印は何の前触れもなく解き放たれてしまったらしい。

 オリジナルのウィルスは光に極端に弱く室内ライト程度の光に数十秒程度当てれば完全に死滅するが、改良版の細菌兵器もそうとは限らない。

 蒸発した死体を食らいつくしたウィルスは空気中に飛散し、新たな餌を貪り喰おうとするが……『アンカー』のボスはみすみすパンデミックの発生を赦さず、誰よりも速く先に動き出す。

「ウォー・ペイント」

 ボスの真横に画家のようなマークが刻まれている人型スタンドが並び立つと、神憑り的な速度で床一面に絵画を描く。

 それはボスを含めてこの場にいる『アンカー』のメンバーを描いた肖像画だ。その周囲にはドロドロに熔け崩れる死体のようものが描写されるが、『アンカー』のメンバーは誰一人欠ける事なく不変のまま。

〈ウォー・ペイント〉はスタンドが描いた人間の絵を見たモノの内、描かれた絵となんらかの共通点を持つ人間を絵と同じ状態にしてしまう。

 今回は特定の個人を明確に描き、実際にウィルスの脅威を目視出来た事により能力の精度・パワーは高まり、パープルヘイズ・ウィルスすら無効化するにまで至った。

 しかし、それだけでは根本的な解決までには至らない。ボスを一人だけの力ではパープルヘイズ・ウィルスを抹消することは叶わない。どんなに強力なスタンド使いも一人できる事はたかが知れている。だからこそ彼女たちは……『アンカー』は自分が出来ない事を補うために群れる。

「俺の出番だな」

 ウィルスに耐性を得た『アンカー』構成員の男性は、女性と警備員がいた場所に一切恐れる事なく足を踏み入れる。その付近には人体の輪切りの断面図が展示されており、恐らくあれが感染源だ。

 男は失った両腕の付け根から発現したスタンド能力〈ディスポーザブル・ヒーローズ〉で、最新の対吸血鬼用紫外線照射装置を取り込み、義手に作り替えていた。スタンド能力故にそのトリガーは彼の意思一つで反応し、周囲一帯に目映い光線が降り注ぎ、館内に広がりつつあった細菌兵器は滅菌していく。

 館内に残るその他の来場者は、チョウチンアンコウのように頭から提灯がぶら下がっている人型スタンドと共に並び歩く紳士的な男が、声をかけて誘導し……まとまったところで小一時間程意識を奪い記憶を消失させる閃光弾を解き放つスタンド能力〈ディフィカルト・アート〉を発動して、事件そのものを揉み消してしまう。

「アッハッハッハッハッハ、やはり私たちの出る幕はありませんでしたねぇ」

 何でも笑い飛ばせばいいと思っていそうな飄々とした幹部はボスの隣でいつものように笑っている。山場を越えた安堵の気持ちから、ボスも思わず笑みをこぼしながら一言だけ呟く。

「備えあれば憂いなしよ」

164名無しのスタンド使い:2024/05/28(火) 21:50:18 ID:hqKF9CwI0
【課題名】
 >>60 私人処刑
【使用オリスタ】
No.3859 デ・グエロ(皆殺しの歌)
【解答】

 静かで暗い夜更けの闇、辺鄙な山道には街灯と呼べる物はなく、夜空を見上げても雲が立ち込め、月明かりすら拝むことができないが……法定速度をガン無視ししながら走行する黒いカローラが今宵の静寂をブチ破る。

 田舎でヤンチャしてる農家の倅が、走り屋の真似事でもしているのかもしれないが……車の運転者は碧眼の白人男性で、助手席には若い女性がうつむきながらうたた寝をしているようだ。

 真夜中のドライブデートにしては、男の上っ面は氷像の如く、人肌の温かさを感じさせない無機質な顔つきをしており、やましい下心どころか人心すら持ち合わせていなそうで……女性も同様に人肌の温もりは既に消え失せており、物言わぬ亡骸の首元には絞殺の跡がくっきりと残っていた。

 彼は女性を殺害して、大胆不敵にも助手席に死体を乗せながら山奥までやってきたのだ。勿論は目的は死体の処理、車のトランクには人体を跡形もなく、綺麗サッパリ透明にしてしまう為の器具や用品が揃っており、今回が初犯であるかのような動揺する素振り全くみせない、外道に堕ちた悪鬼である。

 警察の検問に見つかれば、死体を隠す気のない厄ネタ役満のカローラなんて問答無用で1発アウトだろうが、生憎真夜中の辺鄙な山奥に警察の登場は見込めないだろう。

 しかし、見透せぬ闇の中で蠢き続ける者は、底知れぬ深淵に潜む者たちに目をつけられてしまう。

 夜の帳を引き裂くヘッドライトは、路上で立ち尽くす人影を照らし出す。

 男は相変わらず顔色一つ変えはしないが、ブレーキを踏んで急停車する。既に一線を越えてはいるが、自分の足となる車を破損させて人の目に不用意に止まる事は避けたいのだ。

 フロントガラスの向こう側には、顔を白い目出し帽で隠し、手にスタンガンを所持した板前姿の人がいた。体つき的に男性のようだが、鍛えているのか筋肉質で屈強な肉体をしている。

 謎の板前は車が急停車する事は織り込み済みで、不意に駆け出したかと思えば……拳を振り上げ運転席の窓ガラスを殴打した瞬間、強化ガラスはひび割れが走り崩壊する。

 それは力任せの一撃のように見えて違う。板前の拳の中指には翡翠の指輪が嵌められており、強い衝撃を一点に集中させる事で強化ガラスを容易に突破してみせたのだ。ホームセンターで販売している工具を活用すれば同じことは容易にできるかもしれないが……予想だにしない暴力の技術は虚仮威しに丁度いい。

 どんなに人を殺めた外道だろうと、これをやられれると怯んでしまう。それは今現在謎の板前の襲撃を受けた男も例外ではなく、砕け散ったガラスに対処も出来ず、鉄面皮に包み込んだ目を丸くさせながら驚いてしまう他ない。

 勿論、これだけで板前は止まらない。ガラスを突き破った拳の中に握りしめられていたバタフライナイフを手早く解放すると、事故に備えて男の身を守っていたシートベルトを引き裂き、その流れのまま右肩にナイフを突き刺す。後は怯んだ隙にターゲットを車から引きずり下ろして、スタンガンで締める算段だったが……男もただでは終わらない。

 車から脱出するのが手間だったので板前に無理やり引きずり出してもらった。ガラスに全身が引き裂かれたが構わない。その瞬間、男の体は陽炎のように揺らめき……奇妙な形の赤い帽子を被り、全身白一色で目も鼻も口もない人型スタンド〈デ・グエロ〉を出現させると、板前には目視する事が適わないスタンドの拳を振り上げる。

 板前は自分が想い描いた順序通りに事が運んでたようだが……そもそもド素人が近距離パワー型のスタンドに接近戦を挑むのは自殺行為に等しい。不可視の暴力に鳩尾を殴り付けられて吹き飛ばされてしまった。板前の手から離れた男は血だらけになりながらも膝をついて起き上がろうとするが……身体か痺れて上手く動かせないことに気がつく。

 板前も相手が誰だか分からないまま通り魔のように襲撃していた訳ではない。彼は太平の世・江戸時代から続く、法で裁けぬ悪を挫く暗殺組織【仕事人】の系統を受け継いできた【処刑板前】……法を破る人間を拉致しては拷問をかけつつ処刑する、裏社会では名の知れた厄災にして抑止力、仕事人の一派に数えられるプロの殺し屋である。

 彼等はスタンド能力こそ持ち合わせていないかもしれないが、時を越えて研鑽し続けてきた殺人技術は、今こうして人殺しの怪物を追い詰めようとしていた。

 男は右肩に刺さったバタフライナイフを忌々しそうに睨み付けながら引き抜く。血液が迸り、大量出血は免れないが、麻痺性の神経毒が塗られた凶器をそのまま放置しておく訳にもいかない。立ち上がる事もままならず、無様に地を這う他ない。

165名無しのスタンド使い:2024/05/28(火) 21:50:42 ID:hqKF9CwI0
 一方の処刑板前は〈デ・グエロ〉の強烈な一撃を受けたにも関わらず、何事もなかったかのようにムクリと起き上がる。〈デ・グエロ〉のスタンドパワーは破壊力に特化していないことも要因に数えられるが、処刑板前の白衣の内側には衝撃を分散するプロテクターが仕込まれていたのだろう。

 路上に残る血の痕跡は山林に続いており、処刑板前は神経毒に侵される満身創痍のターゲットを足早に追跡する。

 並みのスタンド使いならこの状況は詰みに等しいかもしれないが、処刑板前が狙う男はまさしく怪物……正しい手順で締めなければ、文字通り復活してしまう不死者なのだ。

「逃げるな卑怯者!お前の正体は知っている!12世紀から生き続け、各国に出没した殺人鬼!名を捨て顔を捨て、スタンド能力で生き永らえ続けて何を望む?」

 相手の動揺を誘うように処刑板前は吠えていると、暗がりに包まれた木々の隙間から……「Curios」と、短い返答と共に血だらけの男は逃げも隠れもせず幽鬼のように現れた。しかも、神経毒が効いていないのか立ち上って歩き出している。

 男を発見した瞬間、処刑板前は前掛けの内側に忍ばせていた白鞘の短刀を抜きながら疾駆、男の目元に狙いを定めて真横に凪払う。男は身を引いて避けようとするが……処刑板前の右手は柄縁から柄尻の頭まで横滑り、短刀の切先は予想以上に伸びて男の光を刈り取ってしまう。

 指先の精妙な握力の調節がなせる妙技を受けた男は……痛みに悶え苦しむどころか「クハハハハハハハ!」と発狂したかのように笑い始めるが、すぐに喉笛を引き裂かれ、減らず口を叩くことすら許されず血液を噴出させる。

 夥しい量の返り血を浴びる処刑板前は、そのまま男の身体を蹴り飛ばして間合いを離すと、懐からバタフライナイフを取り出して投擲するが……男の前に出る〈デ・グエロ〉はまるで、それが見えているかのように、拳で弾き飛ばしてみせる。

「Curios……好奇心だよ処刑板前」

〈デ・グエロ〉が見えない処刑板前には、スタンドの後方で控える男の姿が見えたが……ついさっき引き裂いたばかりの両眼と喉笛は、既に再生を終えて完治していた。

 その面はつまらない娼婦の死体とドライブしていた時のような冷やかな様子から一転……目新しいオモチャを買い与えられた幼児の如く頬を赤らめるが、されど無垢とは程遠く……愛するあまり恋人の凡てを知りたがって欲するような……偏狂の凶笑が浮上する。

「君は……私が君の事を飽きる前に、私を殺し尽くしてくれるのか?縮地の脚裁きに、手品のような殺人術、久しく忘れていた神経毒に侵される感触、そして何よりもそそるのが、憤怒の激情を自在に駆る冷徹な殺意……お前は今までどれだけ人を殺してきた?素敵だ!実に素敵だよ!私を殺してくれるなら……代わりにお前の総てを差し出せ!」

 いきなり興奮した調子で捲し立てくるので、ちょっと何言ってるか分からないが……怪物は人の形を保つ為の皮を、膨脹する筋肉で突き破り、無数の手足を生やしながら、夥しい量の眼を開眼をさせて……筆舌し難い文字通りの怪物のような姿に変身してゆく。

 精神を直接揺さぶりかけてくる於曾ましい混沌、全身が粟立ち、死線の縁に立たされるような感覚に襲われる。処刑板前は即座にこの場から後退、全速力で逃走する。

 アレは処刑板前が知らされた〈デ・グエロ〉の能力とは大きくかけ離れている。本来は本体とスタンドが殺害した者の数だけ、本体の命を増やす異能を秘めており、ストックしている命の残機を消費する事で生命力を活性化させるオプションがあるだけのハズだが……

 12世紀からあらゆる他者の命を奪ってきた怪物の生命力の活性化・肉体変化の技術は、いつ頃からかタガが外れてしまい、本来の命の残機として数えられなかった人間以外の生物の特徴を利用するにまで至っていた。

「Hurry! Hurry! Hurry!Hurry!」

 無数の口で呻き声をあげる怪物は、内に秘めた無数の命を煌々と燃やし、百足のように地を這い回り、邪魔や木々を凪払いながら処刑板前の追跡を開始する。

 外道に裁きを下すのが処刑板前の使命だが……さすがにアレは手に余る。最も強襲による捕縛が失敗した時点で、処刑板前は不死身の怪物を相手取る気はない。後方から猛烈な勢いで接近してくる怪物に、置き土産の閃光弾を投げつける。

 野放しには出来ない危険な相手だが……この手合いは正しい順序を踏まなければ殺しきれない。失敗を潔く受け入れて一度身を引かなければ、ジリ貧になりヤツの残機に加わるだけだ。

 怪物は限りなく不死身であるが故に、閃光弾も避けることなく脆に食らってしまうが……それでも怯む様子はなく、処刑板前の臭いを頼りに猛進を続けて――

 闇夜に暴走する〈皆殺しの歌〉は止まらない。

166名無しのスタンド使い:2024/05/28(火) 21:52:56 ID:hqKF9CwI0
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【課題名】
 マーティン・ショウ!!
【あらすじ】
 貴方は杜王町を歩いていると、60年代のアメリカのクイズ番組の司会者風の自動操縦型のスタンド『
スクラップ・スクイーズ・ボックス』に遭遇しました。
『スクラップ・スクイーズ・ボックス』はスタンド使いの貴方を見るなり、うざ絡みをしながら勝手にクイズを出してきます。
 無視を決め込んでも実況兼ストーキングをおっぱじめてきます。クイズに答えようにも意外と難しく、スマホで答を調べようとしたら、それはズルですと必死に俺ルールを発動、巨大なハンマーでスマホを叩き割ってこようとしてきます。
このままクイズに答えられないといずれ貴方も、巨大なハンマーで叩き潰されてしまいます。
【クリア条件】
 どうにしかしてください。
 澄口夕香(使用オリスタ本体)に遭遇して状況を打開できたらなんか芸術的(ボーナスポイント加算)
【使用オリスタ】
No.328 スクラップ・スクイーズ・ボックス
【補足情報】
 ステージは杜王町固定、時間帯は指定しませんが、クイズを出されて日中なら日没まで夜なら日の出までに答えなければ強制的にハンマーで叩き割られてしまいます。
スクラップ・スクイーズ・ボックスに攻撃しようとしても、避けられてしまいます。


【課題名】
 \アリだー!!/
【あらすじ】
 近所に住むクソガキが大べそをかきながら踞っています。たまたま近くにいた貴方は気紛れで声をかけると、クソガキの全身には至るところに小さな銃創や爆創が出来ていました。
 何が起こったのか尋ねると「アリだー!!」と半狂乱気味に叫ぶのみ。そうこうしているうちに雄の蟻が突然羽ばたいてきたかと思えばらクソガキに神風特攻を仕掛けて爆発四散しました。当たりどころかわるくクソガキは意識を失ってしまいます。
 何やら異様な雰囲気を感じて、辺りを恐る恐る見渡すと貴方は既に蟻に囲まれていました。
【クリア条件】
 兵器化している蟻の群を掻い潜り生き残れ!
【使用オリスタ】
No.3444 ブラック・コーヒー
【補足情報】
 ステージは指定しません。
 蟻の群はブラック・コーヒーの能力により兵器化しています。詳細は使用オリスタを参照してください。
 クソガキは蟻の巣に小便をひっかける等の悪戯をして蟻の怒りを買っていると思います。


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