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【15周年記念】ジョジョの奇妙な問題集【自由参加企画】
159
:
名無しのスタンド使い
:2024/04/16(火) 21:40:21 ID:1XjJhfls0
★
青い空、紺碧の海、近海の大海原を進航する漁船の船首には、頭部にズタ袋を被せられ、ロープで全身を縛り付けられて拘束された男が何も出来ずに寝転がされていた。
あれから男は漁師たちにキッチリお礼参りをされて、近海の主の人身供養として海に放り込まれようとしていた。船が目的地の海域に到着すると男はズタ袋を外される。目前には自分を陥れたタコ頭の爺さんがいた。
「まったく派手にやってくれたな」
「……お互い様でしょ」
乱闘と私刑の影響でタコ頭の爺さんと男は全身に青アザが出来てひどい怪我をしているが、互いに平気な素振りで痩せ我慢をしながら軽口を叩き合う。
「何はともあれ後はお前さんを海に落とせば近海の主の怒りは鎮まる……恨めばいい」
「何だそれ。神だか何だか知らねーが、テメーのご機嫌を他人に取らせるなよ」
「神に人間の常識は通用せん」
「……素朴な疑問なんだけど、こんな時代遅れの迷信マジで信じてるの?」
「……本当にいるからこの時代まで、こんな因習が続いてる。組合の連中を目に見えない不思議な力でボコボコにしたお前みたいなヤツがいるなら……神に近しい存在も本当にいるとは考えられないか?」
「……………」
男は漁師たちの凶行を迷信に囚われた奇習だと決めつけていたが、タコ頭の爺さんの言う通り……スタンド使いみたいな超能力者がいるなら、もしかしたら神だっているかもしれない。自分自身が現実離れした特殊能力を宿しているが故に、男は漁師たちが語る近海の主と呼ばれる存在を否定しきる事ができなかったが……それならば、一つの可能性にかける事もできる。
「なぁ……俺のこと見逃してくれる?」
命乞いをする男を、タコ頭の爺さんはまるで養豚場のブタでも見るかのように冷たい眼差しを向けるのみ……無言の圧を受け取った男はいよいよ覚悟を決める。
「んじゃ俺がそいつをぶん殴ってきてやる。はやく海に放り投げてくれよ」
妙に潔くなった男の態度を見てタコ頭の爺さんは眉を潜めるが、これ以上喋っていれば情に絆されてしまう……タコ頭の爺さんは無言のまま、ロープで縛った男を抱えると海に放り投げる。男は最後まで目を見開いたまま、ボチャリと音を立てたかと思えばほの暗い海中に沈んでいく。
「近海の主よ!お望み通りの人身御供だ!鎮まりたまえ!このクソッタレめ!!」
汚れ仕事をやりきったタコ頭の爺さんは、苦虫を噛み潰したような顔をしながら物言わぬ大海原に大声で語りかける。
神に近しい存在を罵倒しようとも、しきたりに従い生け贄を差し出せば、海はいつも通り穏やかさを取り戻すが………………それは突然!海中から数十メートルはある巨大なウツボが飛び出てきたかと思えば、空の彼方へと吹き飛んでいったッ!
鳩が豆鉄砲を食らったかのように、タコ頭の爺さんは事態が飲み込めず唖然としている最中、海中から巨大な何かがゆっくりと浮上してくる。
それはロープに縛られたあの男だが、どういう分けかそのまま空中に浮遊している。男はタコ頭の爺さんにも目をくれず、海を見下ろしたまま「獲ったどぉぉぉぉぉぉおおおおおおっ」と雄たけびを上げだす。
男の視界にはどこまでも広がる青い大海原を起点に、巨大な姿で出現した〈ウェアー・ブルー・イズ〉がいたが、火事場の馬鹿力で拡張していた持続力は限界を迎えてしまい、海神の如き巨体は儚く霧散する。
男は再び無防備な状態のまま海中に落ちていくが……それを見捨て去る程、タコ頭の爺さんは近海の主を信奉してはいなかった。
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