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SSスレ「マーサー王物語-ベリーズと拳士たち」第二部

849名無し募集中。。。:2017/11/03(金) 13:53:29
存在の記憶も消せるとかチートすぎ

850名無し募集中。。。:2017/11/05(日) 14:48:48
本人のみならそうでも無いんだけど(それでも厄介な技だが)他者の存在まで消せるのは本当に強い

しかもまだ『小さな巨人』と呼ばれていた頃の力を温存しているし…

851 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/05(日) 14:54:46
アユミンの身軽さなら二階から落ちてもリカバリーできるはず。
だが今の彼女は二回も溺れているのだ。 そんな状態でくるくるアクロバットを決めれる者がどこにいるだろうか。
受け身を取れず地面に落下したであろうことは想像に難くない。

「アユミン……!」

同士の戦線離脱を間近で見たサヤシは当然のようにショックを受けていた。
それでもここで呆然として良いわけがない。 気を病む間も無く居合刀を構えてシミハムへと斬りかかる。
リシャコの攻撃を受けた後なので呼吸はひどく困難だが、気合と根性で足を動かしていく。

(消える前に斬る!必勝法はそれしかないじゃろ!)

敵を間合いにさえ入れてしまえばサヤシの斬撃は速い。 食卓の騎士だろうと深くまで刃を入れれば致命傷になるに違いない。
しかし、間合いを重要視する点はシミハムだって同じ。
相手のリーチ以上、かつ、己のリーチ以下の距離を見極めて、そこにサヤシが到達した時点で棍を肩に叩きつける。

「ぐっ……」

この時のコツは打撃音を大袈裟に出すことだ。これでチームダンス部らの注意を引くことが出来る。
それはつまりリシャコがフリーになるということ。
無のオーラは注目を浴びなくなった彼女の存在感を無条件に消失させていく。
シミハムのタッグ戦はこのサイクルの繰り返し。
これを打ち破れない限りはシミハムの作ったセットリストに沿ってダンスし続ける続けるしかないのだ。
だが、ここでその予定調和にアドリブを加えてやろうと考える者が現れる。
その名はカリン。キュート戦士団長マイミに最後まで抗った女だ。
ベリーズ戦士団長シミハムを崩すキッカケもこのカリンが作り出す。

(忘れちゃう……だめ、忘れる前にやるべきことをやるの! 私の"早送りスタート"で!!)

カリンは両手に釵を持って、自身の動きを超加速をせる必殺技「早送りスタート」を発動させた。
とは言ってもシミハムやリシャコにダメージを与えるために加速したわけではない。
攻撃の矛先は自分自身。 それもリシャコに貫かれて傷になっている胸を釵で何十回も斬りつけたのだ。
そんな自殺行為をするものなのだから周りは注目せざるを得なかった。シミハムやリシャコだけでなく、味方のナカサキ、マイマイ、サヤシだって奇異の目でカリンを見ている。

「カリン……いったい何をしてるんじゃ?……」

カリンはサイボーグと呼ばれてはいるが身体は当然生身。 リシャコにやられた時以上に痛々しく血をダラダラと流している。
それでもこの行為には意味があった。 これからの功績を考えれば服ごと開けられた穴なんて些細な代償だと考えているのだ。

(胸元のあいた服を着た私の、サインに気づいて!!)

852 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/05(日) 14:58:01
確かにシミハムは黒子レベルのチートですねw
更に、今後は自分と味方以外も消しちゃうかも……

853名無し募集中。。。:2017/11/05(日) 22:21:53
そ、それは・・・シミハムはいったい何をするだ?

854 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/07(火) 13:11:37
カリンの奇行にリシャコは戸惑った。
自分の胸を滅多刺しにするという行為は、リシャコの攻撃を意識してのことなのは明らかなのだが、
その意図が読めない。何を考えているのかさっぱり分からない。
何を血迷ったらこんな自傷をする考えに至るのだろうか?

(傷でグチャグチャになった胸なら心臓を突き刺さないとでも思った?
 残念だけど、君を溺れさせる一点は今も私の眼に見えているよ。)

自分の技量を、そして自慢の眼を甘く見られたと考えたリシャコは不機嫌になり、眉間にシワを寄せた。
そしてカリンに苦しみの一撃を与えるために三叉槍を構えだした。
だが、ここでリシャコの頭に一つの懸念がよぎる。
カリンはリシャコの攻撃を誘導するためにわざと挑発的な行為をしたのではないかと思ったのだ。

(このまま君を溺れさせるのは簡単だよ……でも、今の君は目立ちすぎている。
 きっと、突き刺した瞬間、消えてた私の存在はみんなに気づかれちゃうんだろうね。
 動けないナカサキはともかくマイマイはほとんど無傷……自分を犠牲にしてマイマイにカウンターを入れてもらうのが狙いか。
 だったらカリンちゃん。君を攻撃しなければ良いよね。)

リシャコは文字通り矛先を変えた。 新たな攻撃対象はマイマイだ。
無のオーラのおかげで絶対に認識されない一撃を、マイマイの胸に突き刺そうとする。
……のだが、その刃は心臓までは到達しなかった。

「そこだ!!!」
「!!?」

マイマイは巨大な斧を振り回し、リシャコのお腹に刃を入れた。
槍と斧のリーチ差や、リシャコの腹の脂肪が常人よりちょっぴり厚めだったこともあって致命傷には至らなかったが、
それでも血液はドクドクと止まらずに流れている。

「どうして?……どうして、私がいることが分かったの?……」

リシャコにはマイマイに反撃を受けた理由が理解できなかった。
シミハムの力が弱まって存在を消せきれなかったのかとも思ったが、そんな事はない。
現にマイマイは槍が胸に突き刺さるその瞬間までリシャコの姿が見えていなかった。
ただ、リシャコの取るであろう戦法だけは頭から消えていなかったのだ。

「凄いねカリンちゃん。おかげでリシャコに一発当てられたよ。」
「お役に立てて……光栄です……」

カリンが残した強烈なサイン。それには「胸を痛めつける敵がこの場に存在する」というメッセージが込められていた。
シミハムを認識しているのだから、正体までは分からなくても「姿を消されている誰か」がいるかもしれないことは皆が念頭においている。
そんな中で胸にちょっとでも痛みを感じれば、誰もが目の前の敵に対して必死で抵抗することだろう。
その結果としてマイマイはリシャコを斬ることが出来たという訳だ。
この流れはベリーズの中でも頭の悪い4人に含まれるリシャコには理解しにくかったようだ。

(どうして!?……どうしてなの?、全然分からない。
 いや、でも大丈夫。 今は私が目立ってるからみんなシミハムに注目していないはず。
 あとはシミハムがなんとかしてくれる!!)

確かにリシャコの思う通り、ナカサキとマイマイ、サヤシにカリンはリシャコの方を向いている。
ところが、ただ1人だけシミハムから目をはなさない者がいた。
それはKASTの1人、サユキ・サルベだ。
カリンのことだからあの奇行には意味があると確信したサユキは、何が起きようともシミハムを凝視し続けていたのだ。
それどころか、これ以上好き勝手に消えたりさせないためにヌンチャクを三節棍にぐるりと巻きつけている。

「……!!」
「へへ……もう逃がさないよ。私はアンタを忘れない。」

855 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/08(水) 13:04:29
マイミがクマイチャンの肉に指を食い込ませた時に存在を無に出来なかったのと同じように、
サユキに三節棍を掴まれてしまえばシミハムは姿を消すことが出来なくなる。
もちろん武器を手放せばフリーになるので無のオーラの力を行使できるのだが、
マーサー王誘拐時にマイミ1人を相手取った時と違って今はキュートが2人も存在している。
この状況で手ぶらになるのは流石に心許ないと考えたのである。
ならばやる事は一つだ。 シミハムではなくサユキに武器を手放して貰えば良い。
シミハムの強みは無のオーラや三節棍だけではない。 舞踏を舞うかの如き体捌きこそが真骨頂。
彼女はこの場にいる誰よりもダンスをうまく踊る自身があった。

「ハッ!……」

サユキが気づいた時にはシミハムは既に背後に回っていた。
存在感を消したわけではない。ただのフットワークで一瞬にしてここまで到達したのである。
棍から手を放さないままなので動きが制限されそうなものだが、それでもこの高速移動を実現しているのだから大したものだ。
そしてもう片方の手を挙げて、サユキの首めがけて一気に振り下ろそうとする。

「危ないっ!!」

突然の大声と共に、シミハムの背中に何者かの頭部が突き刺さった。
ロケットのように飛んできたのは下半身を負傷していたはずのナカサキだ。
だが驚くことはない。ナカサキは人体操作で筋肉を自由に操ることができるため、
腕を最大限に強化すれば自分ごと吹っ飛ばすことくらいは可能なのである。
激痛で声無き絶叫をしたシミハムは、我に返るや否やすぐに体勢を整えようとするが、
そこにマイマイまでやってきたので簡単にはいかなくなる。
姿も消せず、棍も満足に使えない今、どうやってナカサキとマイマイを凌げば良いのだろうか。
なかなか骨が折れる作業だなとウンザリする一方で、シミハムはある種のチャンスだとも考えていた。
それはリシャコがキュート戦士団のマークが完全にハズれたことに関連している。
カリンの奇策のせいで、存在を無にしてからの胸への一撃……という戦法はとれなくなったが、
そんなことをしなくてもリシャコは十分強い。
ここでカリンやサヤシをさっさと片付けてもらえば人数上の不利はほとんど消えるのである。
そう考えてリシャコの方を一瞥したシミハムだったが、ここでまた驚かされることになる。
なんとカリンがリシャコにパンチを仕掛けようとしていたのだ。

「えいっ!」

ご存知の通り、リシャコには超反応のカウンター性能が備わっている。
どんな攻撃だろうとたった0.1秒間で返してしまうのは何度も見せただろう。
今のカリンは「早送りスタート」の影響で拳のスピードが何倍にも速くなっているのだが、
いくら攻撃を速くしたところでリシャコの反応速度には敵わない。
どうあってもカウンターから逃れる事は出来ないのである。
つまりは自殺行為。
だが、シミハムには過去の実績からそれが考え無しの愚か者の行動には思えなかった。
何かある……そう確信している。

856 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/09(木) 13:33:03
マイマイに斧で斬られたとは言え、リシャコのカウンターが鋭いことには変わらない。
攻撃をされた方向に向かって、0.1秒という短さで正確無比な一撃を繰り出している。
これではカリンはいくら必殺技による超スピードを手に入れたとしても槍撃から逃れる事は出来ないだろう。
それはカリンも十分理解していた。苦しみを受け入れる覚悟だって出来ている。
ただし、その槍を胸で受け止める気は全くなかった。

(0.1秒あれば、打点をズラせる!!)

カリンがこの極々僅かな時間にとった行動は、ほんの数センチ身体をズラしただけだ。
その程度の移動は回避にはならない。槍の刃は貰わざるを得ない。
だが、その鋭い一撃を加えられるポイントが滋養強壮効果を高めるツボに変わったらどうなるだろうか?
早送りスタートによる酷使でカリンの身体には大きな負担がかかっているが、その負荷が軽減されるのではないか?
カリンはそれに賭けていた。
これまで何回かマーチャンに(チナミ譲りの)針治療を受けたことがあったので、どこを刺せばどうよくなるのかはカリンも理解しつつあった。
通常であれば細い針を使用するのがベターだが、リシャコのカウンターは心臓へと繋がるルートの一点のみを傷つけるほどに繊細であるため、十分に代用品としてなりえたのだ。
そして、この賭けの結果は上々だった。
心臓の代わりに鎖骨付近のツボを刺激された結果、カリンのパンチのスピードはここにきてグンと伸びていき、
リシャコの胸の、心臓がある位置に対して強烈な拳をお見舞いすることに成功する。

「!!!!!」

正直言うと、肉体的なダメージはたいして与えられていない。
身体の強さもさることながら、リシャコはこの場にいる誰よりも胸の脂肪が厚いため芯まで到達していなかったのだ。
それでも、精神的なダメージは計り知れないほどに甚大だ。
無敵のカウンターにまで昇華させた「暴暴暴暴暴(あばばばば)」を打ち破ったのが若手であること、
心臓を狙うことを得意としていた自分が逆に心臓をやられてしまったこと、
その二つがリシャコの心をひどく傷つけたのである。

「そんな……やだ……負け、負ける……」

冷静に考えればリシャコは全然不利ではない。 効かないパンチを貰ったくらい、いくらでも挽回できる。
だが今のパニック状態にあるリシャコには、正常に思考することすら難しかった。
勇気付けるために声でもかけてあげれば持ち直す可能性もあったが、ベリーズの団長にはそれも出来ない。
シミハムは仲間を激励することも叶わない己の運命をひどく悔やんでいく。

857名無し募集中。。。:2017/11/09(木) 13:40:58
カリン凄い!まさか針治療をこんな風に使ってくるなんて

てかリシャコがパニック状態?これって・・・かなーりっ!やばーいっ!んじゃないか?

858 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/10(金) 13:30:05
直接励ますことは出来ないが、シミハムは別のアプローチでリシャコを落ち着かせる方法なら持ち合わせていた。
ただ、出来ればこの手だけは使いたくないとも思っている。
単純にエネルギーの消耗が激しいと言う理由もあるが、それ以上にこの手段は残酷であるため使うのを躊躇していたのだ。
だが背に腹は変えられない。決意したシミハムは力を行使する。

「あれ……私、なんでボーっとしてたんだろう。」

リシャコはキョトンとした顔をしていた。
さっきまでカリンにやられたショックで動揺していたというのに、まるでそれを忘れてしまったかのような素振りを見せている。
そしてナカサキとマイマイ、サユキらにシミハムが囲まれているのを思い出しては、そちらへと走り出す。
カリンは勿論それを黙って見逃すわけにはいかなかった。

「行かせない!貴方は私が食い止める!」

息苦しく、身体にかかる負荷も限界近いが、カリンは歩みを止めなかった。
また先ほどのようにリシャコのカウンターを無に出来れば勝利の道は必ず開けるはずなのだ。
それにこれは孤独な戦いじゃない。
フリーになったサヤシだって、勇気を持ってリシャコの進行方向に立ちはだかっている。
カリンとサヤシの2人の力を合わせれば強敵リシャコを撃破することだって夢じゃないと信じているのである。

「絶対に食い止める……それを出来るのはウチ1人しかいないんじゃ!!」
(えっ?……)

カリンは胸の奥がゾワッとするのを感じた。
何やらとてつもなく恐ろしい違和感を覚え始めている。
そしてその違和は、マイマイがサヤシのフォローに入ることで恐怖へと変わっていく。

「無理しないで!マイも手伝うよ。2人がかりでリシャコを止めよう。」
「マイマイ様……お願いします!」

孤独じゃないと思っていた。
チームダンス部には心強い仲間がたくさんいると思っていた。
だと言うのに、これではまるで、カリンはこの世に存在していないかのようじゃないか。
自分の存在を証明するためにもカリンは大声で叫びだす。

「ちょっと待って!!みんな、私が見えないの!?」

本気の思いを込めた声なら届くと思っていた。
だが、カリンの方に目を向ける者は1人としていなかった。
聴覚が優れていて、志を同じくするサユキまでもが無視を決め込んでいる。
もちろん彼女らに落ち度は全くない。
カリンはこの空間に存在していない事になっているのだから、気づきようが無いのだ。

「だったら……無理矢理にでも振り向かせてみせる!!」

カリンはリシャコの超反応カウンターを思い出していた。
リシャコはどんな攻撃に対しても瞬間的に反撃するはず。
そんなリシャコの背中に対してカリンは精一杯の力で殴りかかった。
……そして、その全力パンチは何にも防がれることなく通ってしまう。

「そんな……味方だけじゃなくて敵までも……」

考えようによってはカウンターを貰うことなく攻め放題に出来るので非常に有利なのだが、
存在を無にされたカリンの精神的ショックはあまりにも大きく、これ以上仕掛ける気にはどうしてもなれなかった。
さらに追い討ちをかけるように「早送りスタート」の制限時間が切れてしまう。タイムアウトだ。
ここまでみんなの為に精一杯尽くしてきたカリンは、独り孤独に倒れていく。

859名無し募集中。。。:2017/11/10(金) 20:32:39
絶対リシャコ暴走すると思ったのにまさかそんな方法で回避するなんて…そしてカリン無念

860名無し募集中。。。:2017/11/10(金) 20:54:47
ほんといろんな意味で運命って残酷ね…
そしてそれがカリンじゃなければそこまでのダメージを負わずに済んだかもしれないのに…

861名無し募集中。。。:2017/11/10(金) 22:11:57
アプカミ『清水佐紀 Dance Live』で歌わずにひたすら踊っているキャプが静寂の中三節棍振り続けるシミハムと重なる・・・

シミハムが声を失ったのはこれを予言していたのか!?w

862 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/11(土) 13:33:39
シミハムも無尽蔵にモノを消せるわけではない。
対象がより強大だったり、数が多かったりするとそれだけ疲れてしまうのだ。
また、消される相手が協力的かどうかによっても消耗の度合いが変わってくる。
そのため同じ仲間のリシャコよりは、敵対視されているカリンを無にする方がよっぽど骨が折れるのである。
そんなカリンが動けなくなった今、力をこれ以上行使し続ける理由はないだろう。
シミハムは自身の無のオーラを操作し、気を失ったカリンを白日の下に晒しだす。

「えっ!?……か、カリン……」

ボロボロの姿で横たわるカリンが突如現れたものだから、サヤシは驚きを隠せなかった。
ナカサキとマイマイだって「しまった」という顔をしている。
キュートほどの戦士だろうとシミハムのオーラを知覚することは困難なのだろう。
そしてそれはキュートだけでなくベリーズだって同じ。
今回のカリン消失は打ち合わせ無しの完全アドリブだったため、味方であるはずのリシャコも全くと言って良いほど気づくことが出来なかった。
カリンが再登場したことでリシャコのプライドがまた傷つくことになるが、
そのカリンがもう戦えない状態にあることと、ほんの僅かでも落ち着きを取り戻せたことで、リシャコがパニック状態に戻ることはなかった。
むしろ天敵が倒れたことでやる気が増しており、シミハムに対してキラキラした眼でアイコンタクトを送っている。

(さすが団長だね、助かったよ。 またさっきみたいに奇襲をかけたいから私の存在を消してほしいな。)

無茶言わないでよ、とシミハムは思った。
さっきから高頻度でシミハムとリシャコを交互に消している上に、今回は味方ではないカリンまでも消したのだ。
いくらベリーズの団地も言えどももう汗だく。相当疲弊している。
それにカリンを元に戻したということは、カリンの胸元のサインは依然変わらずチームダンス部らの脳裏に焼き付いているということ。
仮に存在の消えたリシャコが胸を一刺ししたところで、先刻のマイマイのように跳ね除けられることだろう。
つまりは、もう交互に存在を消す戦法は限界なのだ。
また、シミハムがその戦法に踏み切れない理由はもう一つあった。
それはさっきからずっとシミハムを見つめ続けているサユキ・サルベの存在だ。
サヤシ、ナカサキ、マイマイが思わずカリンを見てしまったのに対して、サユキは頑なにシミハムをマークし続けている。
仲間の消失に気づけなかった悔しさも勿論有るだろう。唇を強く噛み締めるあまり血を流しているのがその証拠だ。
それでもサユキはチームの勝利のために格上のシミハムから目を離さない。
ただただ凝視され続けること、その行為がシミハムにとってはこの上なく厄介だった。

「……」

シミハムは決意した。
もう自分やリシャコを消すのは辞めよう。 それで体力を使い果たしてしまえば逆にピンチを招きかねない。
だがその代わり、別のモノを無にしてやろうと考えている。
「反抗的な者」よりも「協力的な者」よりも消しやすいモノ、それは「意思を持たぬモノ」だ。
シミハムはそのモノを消失させることで、これまで以上の戦闘力を発揮することが出来る。
奇襲でもなんでもない、ベリーズの団長としての真の強さでチームダンス部を一人残らず殲滅させる自信が彼女にはある。

863 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/11(土) 13:41:27
リシャコ暴走のルートも考えてましたが、ここは冷静でいてもらいたいのでこうなりましたw

カリンじゃなければというのはまさにその通りですね。
マーチャンとかなら多分平気です。

アプカミは毎週チェックしてるので今週のも見てみます。
先週のtiny tinyの清水がフラフープを組み立てるコーナーも多節棍を意識できますよw

864 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/16(木) 12:34:42
次回更新は土曜日ごろになります……
間が空きすぎちゃうので簡単な裏話でも。


当初の想定では第二部のラスボスはリシャコでした。
(というかつい最近までそう思ってました。)
第一部の実質ラスボスのアヤチョのように、どうやってギミックを攻略するかというのを書きたかったんですよね。

ですが、実際にリシャコを登場させてみると(やっぱり違うかも)と思い始めてきました。
格で言えば十分過ぎるんですけど、ラスボスにはもっと相応しいキャラがいるんじゃないかと考えを改めることに……
なのでラストバトルは当初の想定から大きく変更しそうです。

このスレ以内に完結するのはちょっと厳しそうなので、
第二部の2スレ目前半あたりでケリをつけますかね。

865名無し募集中。。。:2017/11/17(金) 12:57:48
リシャコ暴走モードになったら全滅ルートになりそうw

リシャコでないとするとラスボスはいったい誰になるのか…予想と言う願望としてはあの方達なんだけど。。。

866 ◆V9ncA8v9YI:2017/11/21(火) 13:02:40
まだかかりそうです……

867名無し募集中。。。:2017/11/21(火) 18:59:18
ゆっくり待ってます

868 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/01(木) 14:07:27
たいへん長らくお待たせしました。
なんとか仕事も落ち着き、少しずつですが更新できるようになりました。
最後までお付き合い願います。

869 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/01(木) 14:08:08
●場面4 : 武道館西南口「チームオカール vs ミヤビ」

チームダンス部にはマイマイが、
チーム河童にはハルナンと新人剣士4名が、
チーム下克上には番長3名がそれぞれ助っ人として駆けつけてくれたが、
チームオカールにだけはそのような援軍は到着していなかった。
脚部をひどく痛めたオカールと、ハル、オダ、トモの合計4名でミヤビを倒さなくてはならないことに変わりはないのだ。
だが、勝機が全く無いというわけではない。
昨日のマイミとの戦いで一皮も二皮も剥けたのか、ハルもオダもトモもなんとか喰らい付いていていた。

(大事なのは気持ちで負けないこと!ミヤビのオーラは怖いけど、ハル達なら耐えられる!!)

並の戦士ならミヤビの放つ鋭い刃物のような殺気にばっさりと斬り捨てられてしまうことだろう。
だと言うのに、オカールだけでなく他の3人も戦意を喪失させずに立っていることから、若手らが並の戦士の域を脱却したことが分かる。
全ての基本は「断身刀剣(たちみとうけん)」。 敵に負けない自分を強く思い描き続けることで凶悪なオーラにも飲まれず済むのだ。
そしてこれは攻撃にも応用できる。
オダは「冷たい殺気」と「熱のこもった思い」の両方を自身のブロードソードに乗せて、ミヤビへと斬りかかった。
天変地異のようなビジョンを起こすことは流石にできないが、
その殺気と思いは、あのミヤビに「自身が斬られる光景」を錯覚させることに成功する。

「なんだと!?……まさか既にここまで出来るようになっていたなんて……」

現実の斬撃の方はミヤビの脇差によって防がれてしまったが、それでも若手の成長を見せつけて動揺させることには成功した。
この勢いに続こうと、トモがボウから矢を発射しようとする。
狙いは昨日の戦いでも貫いたミヤビの胸だ。
その矢には殺気以外にも、経験から裏付けられた確固たる自身がしっかりと乗っかっていた。

(あの矢を受けるのはまずい……だから、こうさせてもらうよ。)

ミヤビは少し体勢を変え、トモに対して肩を向けた。
胸の真っ平らさを真横から見せつける形になるのだが、
なんとそれが影響して、正確に狙ったはずの矢がミヤビの身体を外してしまう。

「あれっ?……どうして……」
「"消失点"という言葉を知ってるかな? 君の矢は、もう私の胸には届かない。」

平行に引かれた線であっても、近くに寄れば幅が広く見えるし、遠くに行けば行くほど狭く見える。
トモが慎重に狙いをつけているところに、女性とは思えぬほどに平坦な胸を急に見せたのだから、距離感が激しく狂ったのだ。
昨日のvsアイリ&トモの時は、ミヤビは自分の硬い胸でわざと受けて全弾ガードしようと努めていたが、
胸を貫かれてからは回避に力を入れようと考えを改めたらしい。

「おいトモ!ガッカリしてる暇なんかねぇぞ! 攻めの手を一瞬たりとも緩めるな!さもないとミヤビには勝てねぇ!!」

オカールは脚部の激痛にも負けずに根性だけでミヤビの元へと辿り着いた。
そして強力な必殺技をミヤビの唇へと当てていく。

「喰らえ!!"リップスティック"!!!

870 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/02(金) 13:57:43
力強く叫んだ技名とは対照的に、オカールの繰り出した右手には殺気がほとんど込められていなかった。
「リップスティック」という必殺技はとても繊細で、そして「必殺」だというのに相手の命を奪うことを目的としない。
殺すのはただ1つ。相手の冷静さだ。
右手のジャマダハルの刃の切っ先が、正確にミヤビの唇を傷つける。

「!!!」

殺気の無い一撃ゆえにミヤビは反応が遅れ、オカールの思惑通りに斬られてしまった。
唇は人体でもかなり皮の薄い箇所。
ちょっと切っただけで刃は血管へと到達し、大袈裟に血液を噴出させる。
真っ赤な血はまるで塗りすぎた口紅のようにミヤビの唇を真っ赤に染める。
痛みはほとんど無いが、顔から流血し続けることは即ち脳に送り込む血液量が減少するということ。
伝説の戦士なので唇からの出血程度でパニックを起こしたりはしなかったが、
今後は脳に酸素が十分に行き渡らないまま戦い続けなくてはならない。
こんな状況下で冷静さをいつまでも保ち続けることは出来ないだろう。
そんなミヤビに対してオカールは追撃を打ち込んでいく。
左手の刃でミヤビの首を攻撃しようとしているのだ。

「まだ終わりじゃ無いぜ! リップスティック、"派生・パイン"!!!」

ジャマダハルの刃をブッ刺して、カットされたパイナップルのようにグルリと円を描けばミヤビの首に穴が空く。
そうすれば更に出血させて苦しませることが出来るだろう。
だが、同じような手を何回も喰らうようなミヤビではなかった。
顎に取り付けられている刃物を素早く下ろして、オカールの攻撃を弾いていく。

「二刀流はオカールの専売特許じゃない!!この顎の刃と脇差で全て受け切ってやる!!」

オカールのパインを弾くや否や、ミヤビはその場にしゃがみだした。
そして右手に構えた脇差でオカールの右ももを一気に斬りつける。

「猟奇的殺人鋸(キラーソー)、"派生・愕運(がくうん)"!!」
「ちょっ!わっ!」

怨念混じりの凶刃がオカールの負傷した脚へと容赦なく襲いかかった。
これをまともに貰えば二本の脚はたちまち真っ二つになることだろう。
それはまずいと判断したオカールはその場でわざと転ぶことにした。
ガクーンと不恰好に転倒することになったが、脚を失うよりはずっとマシだ。
しかし、窮地はまだ続いていく。

「そんな体勢で避け続けられるかな?……猟奇的殺人鋸(キラーソー)、"派生・堕祖(だそ)"!!!」

この派生技は力強い斬撃を4連続で繰り出すというもの。
地面に向けて叩きつけられる刃を一回避けたとしても、
「堕祖(だそ)」「堕祖(だそ)」「堕祖(だそ)」「堕祖(だそ)」と更に威力を増して次々と放たれていく。
音楽記号の「だんだん強く」を意味する「CRES.(クレッシェンド)」を体現する技なのだ。
4連撃目をまともに貰ったならば、命の保証はされないだろう。

「すげぇ……なんて戦いだ……」

ハルは戦闘中であるのに、食卓の騎士同士の攻防をただ突っ立って見ていた。
恐れをなしたのではない、達人級の真剣勝負に見惚れているのである。
そしてこの戦いには学ぶべきことが多いと、強く認識する。

(学ぶ……とは言っても、教わることは出来ないんだろうな。
 ミヤビは敵だし、オカール様だって優しく教えてくれる感じでもない。
 だったら……盗むか?)

これからすべきことに気づいたハルは、オダとトモを呼び寄せた。
そして素っ頓狂にも聞こえる言葉を口に出す。

「ハル達3人で怪盗チームを結成しよう! 名前はそうだな……怪盗セクシーキャットなんてどうかな。」
「え?」
「は?」

871名無し募集中。。。:2018/03/03(土) 14:45:14
待ってました作者さん!
おかえりなさい!!!

872名無し募集中。。。:2018/03/04(日) 13:42:15
お帰りなさい!首をながーくして待ってました!!再開早々アツいバトル…何気にミヤビにひどいこと言ってるしw
怪盗セクシーキャット…元々構想にあったのでしょうけどうまくルパンレンジャー合わせてきましたねぇw

873 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/04(日) 15:19:24
「盗むのはお宝やハートじゃない、技術(スキル)だよ。」
「あー、はい、分かりました。 食卓の騎士の技を目で盗むってことですね。」

ハルの厨二病にある程度の理解を示しているオダは、隣でキョトンとしているトモに要約することにした。
つまりはミヤビとオカールの戦いをしっかりと観察し、
自分達の成長に繋がるような技術があれば積極的に取り入れよう、という事なのだ。
彼女たちはこれまでの密度濃いツアーのおかげで戦士として戦う基礎がしっかりと身についている。
昨日、マイミと戦った時のような成長力があれば、短時間でさらなる飛躍を見せる事だって不可能では無いのだ。

(えっと、言いたいことは分かったけど「怪盗チーム」とか「セクシーキャット」とかって何?)
(そこは突っ込まないであげて!ハルさんあれで結構真剣だから!)
(はいはい……まぁ、私も"おバカねこバカ"だから、このチーム名は別に嫌じゃないしね。)

しかし大義があるとは言え今は真剣勝負の真っ最中。
そんな時に観察している暇なんか有るのか、と思うかもしれない。
確かに一刻も早くミヤビを撃破せねばならない状況であれば、全力で攻撃に集中する必要があるだろう。
だが、チームオカールの本来の役割は陽動だ。
チームダンス部が裏口から奇襲を仕掛けることを悟らせないように、
そして、勘付いたミヤビが裏口に向かうことを防ぐためにここで足止めすることが何よりも大事。
つまりは戦いが長びく分には全く問題ないのである。
とは言えハル、オダ、トモの3人がただただ突っ立っていて良い訳がない。
地面をゴロゴロ転がるオカールに堕祖(だそ)の4連撃目を振り下ろそうとするミヤビの目に向かって、
オダが反射させた太陽光を送り込む。

「くっ……またこれか……」
「いいねオダ! 後はハルに任せて!!」

目を焼かれて一時的に視力を失ったミヤビは格好の的に見える。
怪盗として技術を盗むことも大事だが、やはり決めれるところはカッコよく決めたいので、
ハルはミヤビの生身の部分、腹と背に竹刀をぶつけようとした。
二ヶ所への同時攻撃を実現する「再殺歌劇」はハルの得意とする必殺技。
これで大ダメージを与える目論見だったが……

「まだ殺気の乗せ方が下手だね……この程度なら、見なくても防げるよ。」
「えっ?……ハルの竹刀を素手で!?……」

攻撃の意思が強過ぎるあまり、ハルの殺気はダダ漏れになっていた。
これでは達人級の敵にはすぐに察知されて、
今回のように目をつぶったミヤビに簡単にキャッチされてしまう。
動揺したハルはミヤビの蹴りが迫っていることにも気づけず、軽く3,4メートルは吹っ飛ばされる。

(い、痛い……やっぱりハルの技は食卓の騎士には通用しないのか?……)

ハルは昨日の戦いでマイミにも「再殺歌劇」が通用しなかったことを気にしていた。
他のメンバーに先駆けて必殺技を習得できたのは良かったのだが、
最近になってそのパワー不足に課題を感じ始めている。
強者の技を盗んで「再殺歌劇」を強化すること、それもハルの急務と言えるだろう。

874 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/04(日) 15:22:00
>>871-872
本当にお待たせしました……
セクシーキャットについては、御察しの通り、元から決めていました。
(本家セクシーキャット2人+ぬんとぅん)
怪盗とこじつけたのはルパンレンジャー決定以降ですねw

875名無し募集中。。。:2018/03/05(月) 16:57:03
うおおおおおおおおお復活かー
楽しみが増えた増えた

876 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/06(火) 14:15:23
ハルの必殺技が防がれたことに対して、オダもトモも心を乱されてしまった。
「殺気が強すぎると察知され易くなる」という現実を前に、どうすれば良いのか分からなくなったのだ。
強めるのが良いのか?弱めるのが良いのか?
こうして生じた悩みは、ただでさえコントロールの不得意な彼女らの殺気を著しく不安定にさせる。
そんな後輩らの異変を感じ取ったのかどうかは定かではないが、
オカールが寝っ転がったままの姿勢で怒鳴り声をあげる。

「細かいコト気にする必要ねぇよ!殺気なんかぶちまけっぱなしで良いんだ!!
 本当に大事なのはよぉ、気づかれても避けられない一撃をブツけることだろっ!!!」

オカールは上半身を起こしては、右手に装着されたジャマダハルで、まだ目の慣れていないミヤビに斬りかかった。

「ミヤビちゃん、今からどこを狙っているか分かるよなぁ!? リップスティック"派生・ぱんつ"!!!」
「ハァ!?」

オカールはあろうことか、ミヤビの股に向かって斬撃を繰り出していた。
これがおふざけではなく大真面目であることは先ほどのハル以上にダダ漏れになっている殺気からもよく分かる。
当然この狙いはミヤビにも120%伝わっているし、女性として、いやそもそも人としてこんな攻撃を受ける事は許されないので、
ミヤビは向かってくるオカールを必死で蹴っとばそうとした。
しかし、その瞬間に殺気の方向性が変わった事に気付く。
狙いはもう股ではない。 胸だ。
昨日トモの矢に貫かれたミヤビの胸に対して、トゲトゲしい気迫が打ち込まれていく。

「さっきの攻撃はフェイク!?」
「もう遅いよ!リップスティック"派生・ぶら"を喰らえ!!」

オカールの捻りが加えられた刃が、ミヤビの脂肪の少ない胸をガリガリと削り取る。
普段は硬い鉄板によってガードされているが、穴の空けられた部分までは守ることが出来ない。
気の遠くなる痛みにミヤビは悶絶してしまう。

「ーーーーーーッッッッ!!」

あんなに強くて隙の無いミヤビにダメージを与えるオカールを見て、ハルは改めて尊敬の念を強めた。
しかし、尊敬は出来るのだが、

(必殺技のネーミングセンスは盗みたく無いなぁ〜〜〜)

オダも、トモも、同感だったという。

877 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/09(金) 02:33:27
●場面3 : 武道館南口 「チーム下克上 vs クマイチャン」

手負いの巨人、クマイチャンが鋭い目つきで番長たちを睨みつけているが、
その恐ろしさも、プレッシャーも、今は半減以下に感じられた。
何故か?それは今この場にアンジュ王国の最高戦力が勢ぞろいしているからだ。
既に前線を退いた表番長アヤチョと裏番長マロや、
番長候補として修業を積んでいる"舎弟"2名を欠いてはいるものの、
先輩番長カナナン、タケ、リナプー、メイと
後輩番長ムロタン、マホ、リカコの合計7人の力を合わせればどんな強敵にだって立ち向かうことが出来る。

「さっきまでは4人だったけどな、今は7人や……戦術の幅もぐっと広がる。」

2階から落とされたせいで脚を負傷したカナナンだったが、
不安そうな顔をまったく見せていないことからも、自身の言葉が嘘ではないことを物語っている。

「カナナン、ここは当然アレでいくよな?」
「せやなタケちゃん、フォーメーション"風林火山"を見せたれや!!」
「おう!」

カナナンの指示と同時に運動番長タケ・ガキダナーが走り出した。
"疾きこと風のごとく"
盗塁王のような脚力でクマイチャンの元に駆け寄っては、
大袈裟に身体を捻ったトルネード投法で豪速球をブン投げる。
これには流石のクマイチャンも回避することが出来ず、腹で受けてしまう。

「う゛っ……」

痛みと屈辱のせいで更にピキピキと怒ったクマイチャンは、自慢の長刀をタケへと振り下ろそうとした。
破壊力満点の斬撃をまともに喰らえば当然即死なわけだが、
そうはならないための指示をカナナンは既に出し終えていた。

「準備は出来てるな?行け!リカコ!」
「\(^o^)/はーーい\(^o^)/」

無数の細かなシャボン玉が大量発生し、クマイチャンの視界を一気に奪っていく。
"徐かなること林のごとく"
理科番長リカコ・シッツレイは、タケが攻撃を仕掛けている裏で石鹸水を黙々とかき混ぜることで、
クマイチャンの反撃をこのタイミングで妨害するためのシャボンを準備していたのだ。
隙間なく敷き詰められたシャボン玉は、入り組んだ木々の枝のように、すべてを隠してしまう。
こんな状況では刀をターゲットに向けて真っすぐ振るうことは叶わず、
何かとてつもなく固いものに阻まる。
3m級の長刀がぶつかっても破壊されないものはそうそう存在しない。
クマイチャンはすぐに、ムロタンの透明盾に防がれたことに気づいた。

「またか!さっきからそればっかり!」
「あれ?飽きちゃいました?それじゃあ魅せ方を変えましょうか。
 防御だけじゃ芸が無いですもんね。熱い私の攻め、魅せてあげます。」

音楽番長ムロタン・クロコ・コロコの透明盾は軽そうに見えて、その実は重量感たっぷり。
"侵掠すること火のごとく"
盾を持つ手に力を入れては、押して押して押しまくる。
このヒいてしまうような押しの強さが尋常ではないことは、
盾と剣の衝突によって、お互いの肌を黒く焦がすような火花がジリジリ、ジリリと散っている事からも分かる。
シャボンのせいでまだ視力がハッキリしないクマイチャンは、
下方向から来る打撃の猛攻に手間取っていた。

「痛っ……でも、こんな攻撃で参る私じゃないからね」
「分かってますよ、だからこっちも総大将に出てもらいます。」
「えっ?」

その時、無数のシャボン玉を全て吹き飛ばす程の圧が、とある人物から発せられた。
"動かざること山のごとく"
その人はアンジュ王国の象徴。雄大にドッシリと構えている。
木彫りの像のように美しいその女性は、ただそこに立っているだけで存在感を示していた。

(あれは、噂に聞いてたアンジュのアヤチョ王?……どうしてここに?……)

もともと目のあまり良くないクマイチャンには、
その人が確かにアヤチョ王に見えていた。
いや、そう見せられていたのだ。

878名無し募集中。。。:2018/03/12(月) 13:19:35
おお!風林火山!!アヤチョをどうするんたろう?と思ったら、なる程。彼女がいたか

879 ◆V9ncA8v9YI:2018/03/13(火) 13:08:55
佇まいや所作を見ればアヤチョ王そのものなのだが、その実は当人ではない。
これは演技。
そして、本物以上に本物に見せてしまう演技力を備える人物なんて、彼女以外には存在しないだろう。

「アヤ知ってるよ。 勝つのはね、番長なんだよ。」

メイ・オールウェイズ・コーダー。
女優となった彼女の発した声は、味方であるはずの番長たちにも錯覚を起こすほどだった。
あんなに強い王がここまで来てくれたという心強さは一同のテンションをより一層高めてくれる。
そして、メイはそれだけで終演しようなどとは思っていなかった。
精神を滝行で鍛えるという面でメイとアヤチョは大きくシンクロしている。
こうして同調することで生じた強い心を持って、メイは更にキャストを増やし始めた。

「"1秒演技"……アヤはね、巨人にもなれるんだよ。」

その瞬間、クマイチャンは自身の身体がズッシリと重くなるのを感じた。
巨大な手で上から押さえつけられるような感覚。
これはまさにクマイチャンが得意とする"重力"のオーラのそれだった。
メイは1秒という短い間だけなら食卓の騎士だって演技することができる。
そしてそこに元から行なっていたアヤチョの圧もプラスされるものだから、
クマイチャンには山のように大きいアヤチョ王に押しつぶされそうになるビジョンが見えていた。

「ぐっ……」

しかしそこはやはり本家食卓の騎士。
オーラでペチャンコに潰される前に意識を強く持って、持ちこたえることが出来た。
だが、1秒のこととは言え今の攻防は相当堪えたようで、
知らず知らずのうちに肩で息をしてしまっていた。
相手の司令塔カナナンに向けられる声からも、相当の疲労が感じられる。

「ゼェ……ゼェ……確かに、君たちは強いね……
 でも、風林火山ってやつももう終わりでしょ?」
「どうしてそう思います?」
「え?だって、風に林に火に山に……全部見せてもらったし」

クマイチャンの言うことはもっともだ。
風のタケ・ガキダナー
林のリカコ・シッツレイ
火のムロタン・クロコ・コロコ
山のメイ・オールウェイズ・コーダー(アヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー)
それぞれの担当分が既に終わっているのである。
それを理由に僅かばかり油断しているクマイチャンを見て、カナナンはほくそ笑む。

「そうですか、そうですか、やっぱり知らなかったんですね。」
「え?」
「"風林火山"には続きがあるんです。 ほんまは、"風林火山陰雷"って言うんですよ。」
「え?」

"知りがたきこと陰のごとく"

全く知覚のできない正体不明の牙が、クマイチャンの横っ腹に深く刺さっていく。

880名無し募集中。。。:2018/03/15(木) 13:37:24
陰雷…知らなかった汗
勉強になるなぁ

881名無し募集中。。。:2018/04/30(月) 09:47:03
こんなの見つけたw『仮面ライダーイクタ』を思い出す。。。

「仮面ライダーハルカゼ」
https://youtu.be/WwFq0ucaXNY

882 ◆V9ncA8v9YI:2018/06/19(火) 08:35:24
久しぶりとなってしまってごめんなさい……ゆっくり出来る範囲で復帰します。
ハロプロの人事が激動すぎて、書き進めないとあっという間に取り残されてしまいますね。


まずはオマケ更新をします。
>>737-740 の続きみたいなものですかね。

マナカ「まさかチーたんがモーニング帝国出身だったなんて……」
マナカ「まぁ、私も果実の国出身だから似たようなものですけどね。」
モモコ・リサ・チサキ・マイ「えっ!?」
モモコ「いやいやいや、初耳なんだけど……」
マナカ「はい。初めて言いましたので。」
モモコ「はぁ……てっきりみんなマーサー王国の生まれだと思ってたわ。」
モモコ「あ!ひょっとしてリサちゃんとマイちゃんも……」
マイ「えっと……」
リサ「私たちの生まれは……」
モモコ「ごめん、やっぱり今は言わなくていいわ。この先何が起きるか分からないからね。」
リサ「そうしましょう。」
マナカ「でもそんなに意外でしたか〜? 果実の国には私みたいな人、結構いますよ〜」
リサ「そう言えば果実の国の女子は半数が”あざとい”気質だと聞いた事があるような……」
モモコ「ユカニャ王も、この前会ったヤナミンもそうだったわね……末恐ろしい国だわホント。」

883名無し募集中。。。:2018/06/19(火) 22:26:58
おお!さっそくまなかんw

ハロプロの流れが早すぎて…ホント残りの二人もどうなるかわからない状態だもんなぁ

気長にお待ちしてます

884 ◆V9ncA8v9YI:2018/06/20(水) 01:30:42
姿もなく、音すらもなく、クマイチャンに接近して牙を剥いたのは帰宅番長リナプー・コワオールドだった。
"知りがたきこと陰のごとく"
派手で騒々しい集団・アンジュ王国の番長らの陰で、しっかりと確実に成果を出すのが彼女の仕事なのである。

「しまった……!」

クマイチャンはひどいしかめっ面をしていた。
傷つけられた腹が痛くて苦しんでいるワケではない。
リナプーの攻撃をみすみす受けた自分自身をマヌケだと恥じているのである。
シミハムのように存在そのものを"無"にするのであれば知覚できなくても仕方ないが、
目の前にいるリナプーはそこまでの域には達していない。
クマイチャンも食卓の騎士ほどの戦士ならば不意打ちに気づくべきだったのだ。
しかし、それも無理のない話だ。
今回、番長たちがとった作戦の名称は「風林火山」。
そこから「山」でお終いというイメージをカナナンに植えつけられていたため、
メイによる「山」の攻撃が完了した時点で集中力を切らさずにはいられなかったのである。
そして、この作戦は「陰」で終わりでもない。
「風林火山陰雷」を〆るのは「雷」に他ならない。

「私どうしても勝ちたいんですよ。」

小さな声がボソッと聞こえたと思いきや、間髪入れずに稲妻でも落ちたかのような爆音が轟き始める。
"動くこと雷霆のごとく"
乙女の逆襲の始まりを告げる雷鳴のように聞こえた音の正体は、マホ・タタンのスナイパーライフルの発砲音だ。
ところが、勝負時だと考えたマホは通常とは大きく異なる方法で攻撃を仕掛けていた。
そう。マホがここで動いたのだ。

(こ、こんなのアリ!?)

クマイチャンが驚くのも当然だ。
マホはなんと18丁の銃を同時に持ち、一斉に銃撃を放っていたのである。
無茶な体勢からの一斉射撃であるため、弾丸は真っすぐ飛ばないのがほとんどではあったが、
標的のクマイチャンの体躯が通常の人間よりずっとずっと大きいせいで、18発18中とは行かなくても数発はヒットさせることが出来た。
狙撃手という役割を考えると、本来であれば一発ずつ丁寧に撃たねばならないはず。
この行為は捉え方によってはズルくも見えるかもしれない。
だが、マホは番長の勝利を心から望んでいたのだ。
だからこそ、最後のこの瞬間ではじめて18連同時という意外性満点の行動をとったのである。
風林火山の次があっただけでもクマイチャンは戸惑ったというのに、
そこに更にこんな仕打ちをされたものだから、やはり相当効いたのだろう。
クマイチャンは立っていられなくなり片膝をついてしまう。

「……!!」

番長一同は今すぐにでも諸手を挙げて喜びたいと思っていた。
しかし、伝説の存在がここで倒れるはずも無い。
ただでさえ殺し屋のように恐ろしい目が、より一層鋭くなったことに気づくのにそう時間はいらなかった。

「気をつけろよ、みんな……どうやら完全に怒らせちゃったみたいだ。」

鉄球を握るタケ・ガキダナーの手は震えていた。
これから迫りくる真の恐怖を、心で理解したのだろう。

885 ◆V9ncA8v9YI:2018/06/21(木) 13:05:52
●場面2 : 武道館西口 「チーム河童 vs カントリーガールズ」
改め、
「チーム河童&ハルナン vs モモコ」

次の攻め手を考えるために、ハルナンは頭の中で状況を整理することにした。
倒すべき相手はモモコただ1人。
ハーチンら新人剣士がカントリーの4人を追っかけ回したおかげでこの状況を作り出す事が出来ている。
その新人剣士がカントリーに完勝する確信は無いが、
ハルナンの見立てでは両者の実力は近いレベルにあるため、一定の時間は稼いでくれるはずだ。
つまりはしばらくの間はモモコを一人ぼっちに出来るということになる。
それに対して味方はアイリ、エリポン、カノン、マーチャン、アーリー、そしてハルナンの6名。
数だけ見れば圧倒的優位に立っている。

(でも……そんなに楽な戦いでも無いのよね。)

ハルナンは今いる西口の戦いに突撃する前に、ある程度の時間、観察をしていた。
なので味方のコンディションはしっかりと把握できている。
まず、アイリは昨日トモ・フェアリークォーツに”眼”の力を分け与えたことによって無理が祟り、ひどく疲弊している。
もはや立つことも辛い状態にあり、アイリを強者たらしめる三大要素である「眼」「雷のオーラ」「棒術」を複数同時に使用することは到底出来やしない。
次に、全身を金属の鎧で纏ったカノン・トイ・レマーネだが、
モモコの暗器の一つである超強力電磁石を大量にぶつけられたため、重さのあまり動けなくなっている。
鎧が頑丈なため、潰されて圧死……ということは無いのだろうが、一歩も動けないままでは戦力になり得ないだろう。
残るエリポン、マーチャン、アーリーの3人はカエルやカラスらに一斉に襲われたことで負傷しているが、まだまだ全然戦える。
なのでこの3人を主軸にして戦うことになるのだろうが……

(はぁ……それにしてもなんて使いにくい3人なの。)

エリポン・ノーリーダー
マーチャン・エコーチーム
アーリー・ザマシラン
ちょっと個性的すぎるな、とハルナンは頭を抱えていた。
それぞれの戦士の実力は疑いようが無いのだが、性格がぶっ飛んでいるメンバーばかりであるために、素直に指示を聞いてくれるのか不安になってくる。
仮に言うことを聞いてくれたとしても、各々で得意分野が異なるので効果的に操ることが難しい。

(アイリ様、あなたはどうしてこの面倒な人達と共に戦おうと思ったんですか?
 そして、この場を引き受けたと言うことは、モモコ様を倒す確信を持っていたという事ですよね。
 ……どうやって?)

出来ることなら直接アイリに聞きたいところだが、今のアイリの体調では喋るのも辛そうだし、それにモモコに聞かれてしまうリスクだってある。
ならば、アイリの意図をハルナンが自力で読み取るしかないのだ。

(超がつく程の難題……でも、やるしかないか。
 だから皆さん、思う存分私に使われてくださいね。)

886 ◆V9ncA8v9YI:2018/06/27(水) 13:06:03
アーリー・ザマシランは苦悩していた。
頭ではハルナンの指示に従うべきだと分かっていても、身体の方が拒否反応を起こしているのだ。
モーニング帝国の選挙戦ではアーリーら果実の国の戦士は天気組についたのだが、その結果は散々だった。
トモとカリンは二人掛かりでカノンと引き分けるのが精一杯であり、
サユキは同格と思っていたリナプーに敗北してしまった。
トモ、サユキ、カリンの3人は強い。KASTの主軸だとアーリーは信じている。
そんな3人が無様に散ることになったのは、KASTが辛酸を舐めることになったのは、
全てはハルナンの側についたことがキッカケではないか。
そう思うとアーリーは身体を動かすことが出来なくなる。

(どうすれば……どうすればええんや……)

こうした迷いは心を弱める。
食卓の騎士と対峙するには「お前には負けない」という強い思いが必要なのだが、
今のアーリーはそれすら出来ず、モモコの放つオーラに負けそうになってしまう。
モモコのオーラは背筋が凍るような冷気そのもの。
血も涙も無いような冷ややかな視線がアーリーの手足を凍り付かせる。
それがイメージだと理解していても、アーリーは本当に冷たさを感じ、その場に縛り付けられてしまう。
このままではまずい。 アーリーどころかハルナンやアイリもそう思った時、
とある人物が大きな声を出して場の空気を変え始める。

「ハルナン!!今からエリが超カッコいい必殺技を繰り出すっちゃん。バシッと決まるように指示出しお願い!!
 そしてアーリーちゃん。今は休んでてええよ。 戦うのは、エリのカッコよさに惚れた後でも平気やけんね。」

叫び出したのは、モーニング帝国剣士団長を務めるエリポン・ノーリーダーだった。
先の選挙戦ではアーリーはエリポンと直接対決を繰り広げていたが、ハルナンと違って嫌なイメージは全く感じていなかった。
エリポンの必死さを間近で見たからこそ、当時は敵同士であっても好感を持てたのだろう。
そんなエリポンが自らすすんで後輩であるハルナンの指示に従おうとしている。
これにはアーリーも心を動かされた。

「あの……エリポンさん、やる気なのは良いんですけど。」
「なに?ハルナン。」
「私、あなたの必殺技を知らないんですが、どう指示しろと。」
「ふふ、エリの得意技は魔法に決まってるっちゃろ。」

そう言うとエリポンは刀をモモコに突きつけ、自身の必殺技名を前面に押し出した。

「”遅々不意不意(ちちぷいぷい)”、魔法にか〜かれ!」
「え?」
「あー!かかっちゃった〜!」
「え?」

887名無し募集中。。。:2018/06/27(水) 18:57:35
えりぽんの魔法ww

封印したんじゃないのか

888名無し募集中。。。:2018/06/27(水) 22:20:17
えりぽんの魔法凄く懐かしいw

ハルナンの作戦をこの3人がどうかき回してくれるのか楽しみ

889名無し募集中。。。:2018/08/18(土) 09:13:08
ハルナンの作戦がなんなのか判明する前にはるなん卒業だなんて…

890名無し募集中。。。:2018/12/08(土) 11:18:29
仮面ライダーれいなの制作はまだですか?wてかマーサー王の続きも・・・鞘師も事務所卒業してしまったのに


1 名無し募集中。。。 2018/12/08(土) 09:27:23.33 0
モーニングダイアリー #69
どんなクリスマスケーキを食べてるかという話題で

横山 仮面ライダーケーキ!w

森戸 ちょっとーw

加賀 ちょっと待ってくれw

横山 ふっはっははははははは

森戸 いやいやいやいや、もうさ、違う

加賀 全然違うw

横山 毎年恒例なんですよー

森戸 それは弟が食べてるということかな?(小声)

横山 私がーあのー真ん中にーあるーフィギュアがほしくて買ってるw

森戸 だって可愛すぎるでしょw

加賀 ヤバイでしょ…

(中略)

森戸 なんかさぁ、弟が欲しいって言ってんならわかるけどさぁw

加賀 ふふふふ

森戸 可愛いねよこやんが頼んでるの?w

横山 はい、ベルトとかも買ってます

森戸 え、かわいいー!

加賀 やばーい!

森戸 弟も別に好き?

横山 はい!弟も別に買ってます!

森戸 別に買ってるの!?

加賀 別に買うの!?あははははは

891 ◆V9ncA8v9YI:2019/01/07(月) 13:59:59
新年あけましておめでとうございます。
長い間書かなくて本当に申し訳御座いません。
今夜の遅い時間あたりから続きを書けそうです。
リハビリみたいな感じで細々とした再開になりそうですが……

こう書くと病気のように見えますが、
飯窪さんの卒コンや(横山も見たという)平成ライダーの映画を楽しんだりしていたので
心配しないでくださいw

>>890
仮面ライダーイクタの続編ですか……
そういえば最新の放送でビヨンドライバーというベルトが登場しましたね。
ビヨンド……BEYOOOOONDS……

892名無し募集中。。。:2019/01/07(月) 17:31:36
お元気そうで良かった。そして再開宣言!首を長くして待ってましたw

てか『BEYOOOOONDSドライバー』だ…と?

♪いっちゃん!いっちゃん!すげージャン!いっちゃん!いっちゃん!すげージャン!♪

何故か電王に変身するいっちゃんの姿が脳裏に浮かぶww

893 ◆V9ncA8v9YI:2019/01/08(火) 04:21:10
(私はスポーツに詳しくないんだけどな……)

どうしたものか、とハルナンは思った。
エリポンの魔法とは即ちスポーツのこと。そのスポーツ特有の絶技を魔法のように見せているだけなのだが、
そのバリエーションが多彩すぎるゆえに、味方のハルナンでさえも全貌を掴めていなかった。
ましてや秘密にしていた必殺技ともなればなおさら何をしてくるのか分からない。
しかし、だからと言って指揮する立場を放棄する訳にも行かなかった。

(エリポンさんはアーリーを勇気づけるためにモモコに立ち向かおうとしている。
 ということは、必殺技の"遅々不意不意(ちちぷいぷい)"とやらは十中八九攻撃型のはず。
 だったら、相手の手の内を知るための駒として利用できるかしら?……)

ハルナンはエリポンの必殺技どうこうよりも、モモコの攻撃手段が気になっていた。
モモコは7つの暗器を使うことで有名であり、その全てを駆使されれば万に1つも勝ち目はなかったかもしれない。
ところが、先ほどモモコはカントリー4人に自身の暗器を一つずつ分け与えたとハッキリ口にしていた。
それによりハーチン、ノナカ、マリア、アカネチンら新人剣士が苦戦を強いられることになるだろうが、
モモコの残りの暗器は単純計算すれば7マイナス4で3になる。
そして、そのうちの2つがさっきから使用している「磁石」と「糸」だとすれば、後は1つだけだ。
その1つさえ判明すれば戦略はぐっと立てやすくなる。
ハルナンはモモコに聞こえないくらいの音量で、近くのエリポンに問いかけた。

「エリポンさん、その必殺技って接近技ですか?」
「うん!相手目掛けて突っ込んじゃうよ〜」
「思った通りです。思う存分やっちゃってください!」
「おう!」

ハルナンは予測していた。
これまでモモコが磁石と糸しか使わなかったのは、距離が離れていたからであると。
エリポンの突進で無理矢理にでも接近すれば、もう1つの暗器を見せてくれると踏んだのだ。

894名無し募集中。。。:2019/01/08(火) 10:20:51
再開ありがとうございます。

ハルナン酷いwでもエリポンなら期待以上の活躍を見せてくれる・・・はず?

895名無し募集中。。。:2019/01/08(火) 19:34:22
つ、ついに再開
燃えて来たぜ

896 ◆V9ncA8v9YI:2019/01/09(水) 02:42:32
「ねぇハルナン、マーチャンの出番まだぁ〜?」
「まだよマーチャン。今はイクタさんが反……いや、活躍するところを見ておきなさい」

ハルナンは"イクタさんが反撃されるのを見ておきなさい"と言いたいところだったが、
すぐに引っ込めて別の言葉を続けた。
ただでさえ自分のことをよく思っていないアーリーの前で、ネガティブな表現は使えないと判断したのだ。
だが、残る1つの暗器をマーチャンにしっかりと覚えてもらいたいというのも本音である。
モモコの攻撃方法は複雑かつ奇怪ゆえに当事者は何をされたのか分からないが、
ある程度距離をとれば知覚できるかもしれない。
エリポンが耐えられる間は、マーチャンには見ることに徹してもらいたい。

「ちょっといつまで引っ張るつもり?早くその魔法とやらを見せてほしいんだけど」

自分を無視して会話し続ける連合軍に対して、モモコがイラっとしたような口調で言い放った。
言われた相手がフクだったなら大慌てになっただろうが、
エリポンは自分のペースを崩すことなく、余裕の表情で返していく。

「ここでクイズ!エリの必殺技"遅々不意不意(ちちぷいぷい)"はどんな魔法でしょ〜か?」
「人をイラつかせる魔法?」
「ブブー!不正解!」
「たぶん合ってると思うけどね……」
「エリの魔法は、"時を操る"。」
「は?……」

エリポンはゆっくりと深呼吸をしたかと思えば、じっとモモコの方を見つめだす。
これにはモモコも唾を飲んだ。
言動のほとんどがハッタリだとは思いつつも、"時を操る"ことがどういうことなのか気になってしまう。
警戒レベルを極限まで高め、どの位置どの方角から攻撃されても磁石と糸をけしかける事が出来るように準備していく。
そうしてこのまま1秒、5秒、10秒、20秒と時が流れ続けた。

「って何もしないんかいっ!」

結局一歩も動こうとしないエリポンに対して、モモコは突っ込まざるを得なかった。
だが、こうしてモモコのペースを崩すことこそがエリポンの狙い。
相手の心が乱れ切った今こそが動き出す時だと確信する。

「GET SET, GO!」

897名無し募集中。。。:2019/01/10(木) 01:12:56
エリポンを捨て駒にするとは…流石にハルナンwでもマーを最大限活かすならこの方法が最適何だろうなぁ
でもエリポンはモモコ相手にするのは相性良さそうだから一矢報いそう

「GET SET, GO!」秋ツアータイトルか…今の変化の激しいハロプロで前作のように時事ネタをストーリーにするのは難しいだろうから、本筋に関係ないところで取り込んでいくって事かな?

898名無し募集中。。。:2019/01/10(木) 02:15:28
生きとったんかワレェ

899 ◆V9ncA8v9YI:2019/01/10(木) 09:50:39
一応三部までの大枠は決めてしまっているので、時事ネタは入れられたら入れるという感じですね。
オマケ更新はその比率が特に多めになるかもです。



オマケ更新「滑舌」

ハルナン「それにしても武道館で戦えるなんて光栄ですよね。」
アイリ「あなたもDUDOKANに思い入れが?」
ハルナン「はい。今すぐにでも拳を挙げて”我が帝国剣士人生に一片の悔いなし!”って叫びたいくらいです。」
ハルナン「それ以外にも言ってみたいセリフが有りますしね……」
アイリ「そう言えばオカールもDUDOKANでどうしても言いたい名台詞が有るとか言ってたっけ。」
ハルナン「ははっ、案外同じセリフのことを言っているかもしれませんね。」

900 ◆V9ncA8v9YI:2019/01/11(金) 08:50:17
「よーいドン」を意味する言葉を呟いたかと思えば、エリポンはモモコ目掛けて駆け出していった。
それはただのダッシュだと言うのに、ハルナンにはフク・アパトゥーマ帝王の”フク・ダッシュ”以上の速度と勢いに感じられる。

「速い!エリポンさんにこんな走行術が?……」

エリポンは運動神経抜群なうえにあの筋力量なので足が速いこと自体は不思議では無いのだが、
周囲の者の意識をここまで置き去りにするレベルでは無かったはずだ。
ハルナンだけでなく、マーチャンやアーリーもエリポンのスタート時の動きを捉えられておらず、
やっと知覚出来た頃には既にトップスピードに到達していたことに驚いている。
まるで本当に時を操ったかのようだ。
そんな中、ターゲットとされているモモコだけはなんだかつまらなさそうな顔をしていた。

(必殺技ってその程度?)

モモコはこの現象の理屈をおおよそ掴んでいた。
要するに、エリポンは動きに緩急をつけていたのだ。
完全なる静止から一気に最高速度まで上げることで体感速度には大きなギャップが生じる。
更には動かない時間を呆れさせるくらいに長くとることで集中力を低下させ、急に動いたエリポンに咄嗟に対応できなくさせる狙いもあった。
こうした工夫を積み重ねた結果、エリポンが神速の如きスピードを得たと誤認させたのだ。

(この子はスポーツを戦闘に取り入れていると聴いてる。
 必殺技のモチーフはさしずめ徒競走っめとこかな?
 確かにはじめはビックリしたけど、それじゃあ私は殺せないよ。)

モモコは糸を手繰り寄せ、その糸の先にある罠を起動させた。
それは見えないくらいに細い糸で構築された網。
エリポンとモモコの間に人間1人を包み込むほどの網を展開していく。

(このまま捕縛してあげる。速く走れば走るほど網にかかるまでの時間が短くなるだけだよ。)

901 ◆V9ncA8v9YI:2019/01/16(水) 02:51:57
モモコの繰り出した糸はキメ細かくあるが、さすがに透明とまではいかない。
そのため、一旦落ち着いて、冷静な目で見れば目視は出来るはずなのだ。
しかし今のエリポンは相当の勢いをつけて走っている。
そんな状況では決して目視など出来やしない。モモコはそう確信していた。
ところが、魔法使いにはそのような常識など通用しなかった。

「分かる!」

エリポンが言葉を発したその瞬間、モモコの仕掛けた網はバッサリと切り捨てられた。
モーニング帝国で最も速い剣、打刀「一瞬」が火を吹いたのである。
彼女の鍛え抜かれた筋肉からなる振りの速さであれば、確かに、自身が罠にかかるより先に斬る事が可能だ。
しかし、そのためには対象となる網が見えていないといけないはず。
この状況でエリポンはどのようにして見ることが出来たというのか?
その答えが分からないモモコはほんの少しだけ心を乱してしまった。
そして、その僅か数秒が命取りとなる。
今もなお走行中のエリポンはすぐそこまで来ているのだ。

(しまった!接近されすぎた!
 もう1回糸を出すか?……いや、同じように対処されるに違いない。
 じゃあ磁石を投げつけて刀を重くする?……それもダメ。多少重くしたくらいじゃ止まらなさそう。
 だったらこれしかないか……)

エリポンの斬撃が今まさに襲い掛かるその時、
モモコは自身の小指を打刀「一瞬」の刀身へと当てにかかった。
刀 vs 指という戦い。十中八九どころか、万に一つも指が勝つことはありえないだろうが、
あろうことか刀を握っていたエリポンの方が転倒してしまう。

「!?」
「はぁ……この場をしのいだのは良いけど、手の内を晒しちゃう形になっちゃったか……」

902名無し募集中。。。:2019/01/31(木) 00:21:59
>>899
鞘師復帰もオマケであるかな?って思ったけど小説の中では現在進行形だったw

>>901
かませ犬かと思ったエリポンが予想以上の健闘wあとはモモコどこまで食らいついていけるか?ってところか…ハルナンの予想を良い意味で裏切って欲しい

903 ◆V9ncA8v9YI:2019/04/15(月) 11:19:03
(最後の暗器を使った!)

エリポンの刃がモモコの小指に負けたというのに、ハルナンは歓喜していた。
モモコの暗器を全て把握出来たことにより、チームでの勝率が上昇したと喜んでいるのだ。

「マーチャン!今の見た!?」
「うん……よく分からないけど、あの小指は危ない。」
「そうよ!小指なのよ!それさえ気をつければ勝ち筋は見えてくるの。」

ハルナンや新人剣士らは、この武道館に到着する前にベリーズに関する情報を共有していた。
その中でも特に有益だったのがアカネチンによる「モモコの暗器情報」だ。
アカネチン・クールトーンはかつてモモコとクマイチャンの決闘をその眼で見ており、
当時どのような暗器を使用していたのかハルナンに伝えていた。
7つ道具のうち4点をカントリーの後輩に託したと言うならば、残りは3点。
そしてその内訳が「磁石」「糸」、そして「小指に取り付けられた透明色の武具」であることが確定した。
それぞれは強力でも、ここまで分かれば戦いようは有る。

「マーチャン!アーリーちゃん!ここからは超接近戦にシフトよ!
 小指にだけ気をつければ一方的に攻め込むことが出来るっ!!」

磁石と糸は中遠距離用。近づけばモモコが出すのは小指のみ。ハルナンはそう踏んだのだ。
だが、それをアイリは良しとしなかった。

「待って……モモコがその程度で攻略出来るとは思えない……
 まだ何か隠しているかもしれないよ?……」
「8つ目の暗器が有ると言いたいんですか?」
「……それは無いと思う。あの子は限られた暗器だけで勝利することを誇りに思っているから。」
「だったら何の問題も無いじゃ無いですか。さぁマーチャン、アーリーちゃん行きましょう!エリポンさんのカタキを討つのよ!」
「……」

904 ◆V9ncA8v9YI:2019/04/17(水) 08:40:54
ハルナンの指示と同時にマーチャンは走り出した。
待機命令にフラストレーションが溜まっていたので、やっとこの時が来たと喜んでいるようだ。
しかしモモコとは距離が少しばかり離れている。

「あのねぇ、そう易々と近づかせるワケないでしょ?」

モモコはエリポンを止めようとした時のように、糸を引っ張ることにより、とある仕掛けを作動させた。
それは目には見えないほど細い糸で組まれた網だ。
マーチャンの進行方向にセットすることで足止めを試みるが、
これはモモコには珍しく悪手だった。

「それ、もう覚えたよ。」

見えない網を知覚することは出来ないが、
同じようなシチュエーションならば先ほど見て覚えている。
学習能力の非常に高いマーチャンなので、すぐに対策をとることが可能だ。

「えいっ!!」

マーチャンは既に木刀に火をつけており、その木刀を前方に強く振ることで火の粉を飛ばしていく。
その火は自身の行動を阻害する網に燃え移り、一瞬にして燃えカスへと変えてしまう。

「ありゃ……糸だと相性最悪か……だったらこれならどう?」

ほんの少しだけ焦った顔を見せたモモコは、すぐに次の行動を取り始めた。
その行為は単純。超強力電磁石をマーチャンに投げるだけだった。
磁石の投球もカノンに散々やってみせたので、覚え済みのマーチャンは楽々回避してみせることだろう。
だが、マーチャンに出来るのはそこまでだ。
間髪入れずにひたすら投げ続けられれば、回避ばかりして前へと進むことが出来ない。
磁石を弾き飛ばそうにも、燃えかけの木刀を当てれば木刀の方が砕けてしまう。
となればマーチャンがモモコの元へ近づくのは不可能になるのだ。
確かに、マーチャン1人だけならそのような展開になっただろう。

「私が守ります!」

バシン!という音とともに磁石は地へと落ちていった。
そう。アーリー・ザマシランのトンファー捌きによってはたき落とされたのだ。
彼女が戦闘のモチベーションを取り戻し、持ち前のパワーが発揮されればこの程度は容易いのである。

「わ〜!アーリーちゃんすごーい!」
「いえいえ!さっきの炎も凄かったですよ〜!」
「じゃあ、2人で突撃しよっか!」
「はい!!」

糸はマーチャンに燃やされてしまう。
磁石はアーリーに落とされてしまう。
ここでモモコは大袈裟に頭を抱えて、分かりやすく困り始めた。

「ど、ど、どうしよう〜!?このままだと本当に接近されちゃうよ〜!」

明らかに人をおちょくっているような動作にもかかわらず、マーチャンとアーリー、そして指揮官のハルナンがおかしく思うことは無かった。
作戦が順調に行っていることに酔ってしまっているのかもしれない。

「予想通り!後は小指にだけ気をつけて!!」

905 ◆V9ncA8v9YI:2019/04/19(金) 09:14:09
マーチャンとアーリーを邪魔するものはもう存在しない。
ゆえに、そこから2人がモモコの元へと近づくのはあっという間だった。
敵の息遣いも感じられるほどの距離。ここはもう木刀とトンファーの間合いだ。
ここまでこれたのはハルナンの作戦が上手くハマったのもあるが、
それ以上にエリポンの行動がアーリーを勇気付けたことが大きいだろう。

(私、食卓の騎士と戦える!!)

テンションが上がり切ったアーリーは、「この先ビシバシ行くぜ」と心で思っていた。
涙は当分封印、言い訳当分封印、後悔は絶対封印、
さ乱れて。

「せやぁーーーー!!」

左右に持ったトンファーでの乱打。
彼女のパワーからなる重い一撃が、上方向から五月雨のように降ってくるので、
低い位置にいるモモコは、単純な攻撃方法ながらも非常に捌きにくいと感じていた。
食卓の騎士は全ての能力値において現役世代を上回っている訳ではないのは、
以前、エリポンがアイリより力強いスイングをしてみせたことからも分かるだろう。
モモコが意外と筋肉質とは言え、単純な力比べならアーリーには敵わない。

(磁石で受け止めることも出来なくはないけど、逆にこっちの腕がイカれちゃいそうだわ……
 となると今は全部避け切るしかないのよね。
 ただ、厄介なのは……)

自分を慕ってくれるフク・アパトゥーマがよくやるようにバックステップでアーリーの五月雨から逃れたモモコは、
その場ですぐにしゃがむことで、右側から迫り来る木刀を避けてみせた。
ステップ先にマーチャンが仕掛けてくることを読んでいたのだ。

「あ!かわされちゃった!……でもそれも覚えたよ。」
(めんどくさっ!!)

このまま回避し続けるのにも限界がある。
出来ればアーリーだけでも潰しておきたい。そうすれば相当楽になるだろう。
そこでモモコは小指を使うことを決意した。
モモコの小指には、アンジュのムロタンが盾に使用しているものと同じ材質の武具が取り付けられており、
透明色であるため、注視しないと存在することすら知覚できない程だった。
アーリーが気持ち良く攻撃を仕掛けてきたところで小指を突き出し、
トンファーに当ててやれば攻撃の軌道をそらすことが出来る。
そうすればアーリーはバランスを崩し、転んでしまうことだろう。
エリポンのようにダッシュで向かってきている訳ではないので大転倒とはいかないだろうが、
復帰前に磁石を二、三ぶつければ苦痛により動きを止められる。

(ネタが割れている今、小指は多用できない……ここで確実に決めよう。)

906 ◆V9ncA8v9YI:2019/04/23(火) 23:04:31
「待てーっ!!」

モモコの思惑通りにアーリーは追撃を仕掛けてきた。
トンファーによる振り下ろしの軌道をモモコは完全に捉えている。
そのため、後は小指をちょんと当ててやれば作戦成功だ。
それだけでトンファーは意図せぬ方向に逸らされ、アーリーは立ってられなくなることだろう。
しかし、モモコの策は失敗に終わった。
狙いに気づいた戦士がこの場に存在したのだ。

「させないっ!!」
「!」

モモコの左肩に強烈な蹴りが入った。
その蹴り技の主は、さっきまで倒れていたはずのエリポン・ノーリーダーだ。
激しい転倒によるダメージを負っていたものの、ギリギリのところで堪えて、アーリーのピンチを救ったのである。
モモコはポーカーフェイスを通すことで、エリポンの登場にも左肩への激痛にも動揺を見せなかったが、
突然のキックをお見舞いされたため、流石に体勢を維持出来ず転んでしまった。

「アーリーちゃん気を付けて!今、小指を使われるところやった!」
「エリポンさん!……はいっ!!」

怪我人とは言え、エリポンが復活したことは連合軍にとって大きなプラスだ。
これでエリポン、マーチャン、アーリーの3人がかりでモモコを追い詰めることが出来る。

「イヒヒヒヒっ!叩き放題だよっ!!」
「くっ……」

地面を滅多叩きにするマーチャンの攻撃を転がりながら回避するモモコだったが、
その動きからは段々と余裕が感じられなくなってきた。
それもそうだ。避けたところでエリポンとアーリーの追撃が迫ってくるのだから息をつく暇も無いのである。
そして、もう1名の追加によりモモコはますます避けられなくなる。

「みんな!私も協力するよ!!」
「「ハルナン!」」

指示を出すだけで持ち場を動こうとしなかったハルナンがここにきて参戦してきた。
身を危険に晒すことになるが、それよりも攻め手が4人になることがより有利になると判断したのだ。
彼女の扱うフランベルジュは波打つ刃を持ち、少しかすっただけで血を流させる。
エリポンの打刀、マーチャンの木刀、アーリーのトンファーらとのコラボにより、モモコが苦戦することは必至だろうとハルナンは考えていた。
しかし、当のモモコはそうは思っていなかったようだ。

(うん、今だ……今こそ好機。)

四方を囲まれたモモコは、自分からマーチャンの元へと飛びかかった。
そして、ROCKにエロティックに抱き寄せられるかの如く、身体をくるりと回転させることでマーチャンの打撃を回避し、
相手の懐へと潜り込んで見せたのである。

「え?え?なに?」
「良かったー。この動きは学習してなかったのね。
 じゃあ、これも知らないよね?」
「!?」

モモコがピッタリくっついてきたかと思えば、次の瞬間、マーチャンは苦悶の表情で膝をついてしまった。
いつの間にやら腹から多量の血が流れ出ている。
誰がやったのか?モモコに決まっている。
どのような攻撃手段をとったのか?モモコのことだから暗器を使ったのだろう。
しかし、磁石と糸と小指だけでどうやってマーチャンにダメージを与えたというのか?

「は?……え?……」

ハルナンは現況の理解に苦しんでいた。
今までの材料だけでは真相に辿り着く事は難しい。
そうして狼狽えているハルナンを見て、エリポンとアーリーにまで動揺が伝播していく。
この場で冷静なのは、モモコただ1人。

「ハルナンって言ったっけ。あなた、大きな読み違いをしてるよ。」
「!?」
「その読み違いのせいで、あなた達はマーチャンという戦力を失うことになったの。」

そう言うとモモコはマーチャンのお腹を目掛けて、力強く磁石をぶん投げた。
至近距離から負傷箇所に石を投げられた経験のなかったマーチャンは、避けられずに直撃を受けて、悶絶してしまう。

「おかげで1番厄介な子を倒せたんだけどねっ!ハルナンありがとぉ〜!」

907名無し募集中。。。:2019/05/01(水) 09:45:04
更新来てた!さすがモモコ…クセモノ揃いのメンバーに対しても一枚も二枚も上手だわw

908名無し募集中。。。:2019/05/01(水) 23:54:49
この展開はまずいと考えたアイリは、足元の石を打ってモモコへと飛ばしていった。
しかし衰弱しきったアイリの攻撃が通用するはずもなく、軽々とキャッチされてしまう。

「邪魔しないでよ〜ここからが良いところなんだからさぁ。」

モモコはハルナンの方を向き、言葉を続けていった。
今から答え合わせが始まるのだ

「ねぇハルナン、あなたは私が嘘をついていたと思ってるでしょ?」
「……」
「でも残念。嘘なんて一言もついていないんだ。
 "7つの暗器を持っている"、これは本当。
 "カントリーの4人に1種類ずつ暗器を渡した"、これも本当。
 全部がぜーんぶ真実なの。」

そうなると矛盾が生じてくる。
7から4を引いたら、モモコの手持ちは3個になるはず。
だが、モモコは確かに「超強力電磁石」「操り糸」「アクリル小指サック」の3点に加えて、
マーチャンにトドメをさしたもう1点の暗器を使用していた。

「数が合わないって思ったでしょ?ううん、ところがどっこい合っているの。
 ハルナンにも分かるように、カントリーの子たちに渡した暗器の内訳を教えてあげるね。
 リサちゃんにはビンタ強化金属を、
 チサキちゃんには風壁発生器を、
 マイちゃんには美脚シークレットブーツを、
 そしてマナカちゃんには……超強力電磁石を貸してあげたのよ。」
「!!」

それを聞いてハルナンはハッとした。
"超強力電磁石"が、モモコの手持ちと、後輩へのプレゼントとで重複していたのだ。
石は単一の道具ではなく複数個存在している。

「計算の得意なハルナンはすぐに私の手持ちが3個だと思ったんでしょうね。
 さんすうのお時間ならそれは大正解。拍手!パチパチ〜!
 でもね、私たちの生きる世界じゃそれは不正解なんだ。
 勝手な決めつけが誤算を生み、その誤算が油断に繋がって、味方のマーチャンを危険に晒したワケ。
 指揮官として失格としか言いようが無いわね。」
「!……」

909名無し募集中。。。:2019/05/03(金) 00:09:00
見つけちゃった!!!!!!
マーサー王もライダーイクタも大好きでした
相変わらずに面白いですワク2しちゃいます><
連休中にどこまで追いつけるか分かりませんがお陰様で充実したGWが送れそうです
作者さんが今もヲタして執筆してくれている事に大感謝♪

&フクちゃんのアパトゥーマは元ネタどこから来てるのでしょうか、、?
超今更な亀レス感想してしまうかもしれませんがお許しくださいスミマセン;><

910名無し募集中。。。:2019/05/03(金) 02:24:05
前スレ最後に書いてあるよ

911名無し募集中。。。:2019/05/03(金) 11:50:12
アドバイスありがとうございます!
探してみたら初見で見つけられず深掘りするとネタバレしそうだったのと
読み進めると他にも元ネタ分からない名前が多数となってきたので
読み切るまでに解きながら踏ん張ってみることにしました;><
スレ汚してしまってゴメンナサイ
はるなん黒い…w

912 ◆V9ncA8v9YI:2019/05/03(金) 17:12:38
ハルナンは気が遠くなるような感覚に陥った。
己の判断が誤った結果、自軍が不利になったことにショックを受けているのだ。
しかしいくらハルナンが名の知れた指揮官とは言え、作戦ミスはこれまで何度もあったはず。
だと言うのに、何故ここにきて言葉を失うほどに自信喪失してしまったのか。
それは、全責任をハルナンになすりつけるべく、モモコが意図的にコントロールしたところにあった。

「分かりやすい例としてマーチャンをあげたけど、他の子への指示もひどいものだったよね?
 エリポンにはとっておきの必殺技を出させといて通用しなかったし、
 アーリーもその場に立ちすくんじゃってるよ。何すれば良いのか分かってないんじゃない?」

全部が全部ハルナンのせいという訳ではないが、
モモコはその100%をハルナンの重荷にしてやろうと仕掛けたのである。
例えそれが事実と食い違っていたとしても、
「モモコが指摘して」「ハルナンが黙り込む」という構図さえ作ってしまえば、周りはそう受け取ってしまう。
こうなればハルナンの指揮官としての信頼度は地に堕ち、この後の戦略の幅は大きく制限されるはず。
モモコはそう考えていたし、本来であればそうなったことだろう。
しかし、エリポンはそれを許さなかった。

「ちょっとちょっと〜誰の必殺技が通用しないですって〜?」
「……なに?」

こんな状況で発言しだすエリポンに、モモコだけでなくハルナンもアーリーもアイリも注目せざるを得なかった。
空気を読まないにも程がある。

「通用しないもなにも、ご自慢の必殺技は失敗に終わったじゃない。豪快に転んでたでしょ。」
「あーそっかー、アレを失敗と思われちゃったのかー」
「何が言いたいの。」
「だって、さっきのは一打目やけん。」

少し離れたところにいたアイリは衝撃を受けた。
"一打目"という言葉を聞いて、エリポンの必殺技が、自身の必殺技「トゥー・カップ・ベクトル」と似た構造だと気づいたのだ。

(え?え?あの子の必殺技ってなんて名前だったっけ?……)

エリポンの必殺技の名前は「”遅々不意不意(ちちぷいぷい)”」。
その名前から速度に緩急をつけて相手の意表をつく技だと思い込まされていたが、
それだけではないのかもしれないと、アイリは考えを改め始める。

(必殺技を出す前に、エリポンは自身の技を「接近技」だとと言っていた。
 それと、「相手目掛けて突っ込む」とも言っていた……
 接近……"アプローチ"ってこと?……)

アイリやエリポンが好むゴルフにはいくつかの打ち方があり、
その中にアプローチと呼ばれるショットがある。
アプローチとはボールをカップに寄せる打ち方であり、まさに接近のための技と言っても良いだろう。
カップのすぐそばにまで接近(アプローチ)するだけでも十分凄いのだが、
エリポンはその程度では必殺技とは認めなかった。

(エリポンの必殺技名は"ちちぷいぷい"、
 ちちぷいぷい……ちちぷいぷい、ちっぷい、チップイン……ええぇ〜?そういうこと〜?)

アイリが必殺技の全貌を理解しかけたところで、
エリポンがモモコ目掛けて打刀をビシッと突き付けた。

「エリの必殺技は絶対決まる。ハルナンの作戦は失敗じゃないってことを証明してあげるっちゃん。」

913 ◆V9ncA8v9YI:2019/05/03(金) 17:19:02
すでに回答もありますが、
第一部のキャラ紹介は前スレ終盤にありますよ〜
ただ、そのキャラ紹介自体もネタバレが詰め込んであるので、
名前の由来だけで良ければ今からここに書いちゃおうと思います。
第二部のキャラも合わせて書いちゃいましょう。

914 ◆V9ncA8v9YI:2019/05/03(金) 18:08:03
名前の由来だけ抽出してまとめました。
第二部初登場のキャラには★マークをつけています。


■モーニング帝国剣士フク・アパトゥーマ :団地妻
エリポン・ノーリーダー :空気読めない+リーダーではない+仮面ノリダー
サヤシ・カレサス :植物を枯れさす
カノン・トイ・レマーネ :トイレのモノマネ
ハルナン・シスター・ドラムホールド :いもうと+太鼓持ちアイドル
アユミン・トルベント・トランワライ :れいなの好きな弁当を先にとったエピソード+すべりキャラ
マーチャン・エコーチーム :ヤッホータイ
ハル・チェ・ドゥー :ハルーチェ+どぅー
オダ・プロジドリ :自撮りのプロ
ハーチン・キャストマスター :素人時代にツイキャスのキャス主
ノナカ・チェルシー・マキコマレル :チェル+巻き込まれる
マリア・ハムス・アルトイネ :ハー娘。+明日も嬉しいこと&楽しいこと、いっぱいあるといいね
アカネチン・クールトーン :クルトンが好き


■アンジュ王国の番長
アヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー:捨て犬+シューティングスター+唐揚げを投げたエピソード
マロ・テスク:そのままマロテスク
カナナン・サイタチープ:埼玉は安いイメージと発言したエピソード
タケ・ガキダナー:親戚マイミのキャラ名+子供っぽい
リナプー・コワオールド:ブログで昭和時代の人の名前に「子」が多いと発言
メイ・オールウェイズ・コーダー:スマイレージはいつもこうだ
★ムロタン・クロコ・コロコ:ワニ好き+むろたんコロコロ
★マホ・タタン:ハロコンでひな壇から立たずに応援したエピソード
★リカコ・シッツレイ:写真集発売インタビューでの「お先に失礼します。」

■果実の国のK(Y)AST
ユカニャ・アザート・コマテンテ:あざとい+困り顔+石川県の方言「〜てんて」
トモ・フェアリークォーツ:フェアリーズのファン+ローズクォーツ
サユキ・サルベ:さるべぇ
カリン・ダンソラブ・シャーミン:男装好き+wonderful worldの時の髪型が社民党党首っぽい
アーリー・ザマシラン:ハーモニーホール座間での公演に遅刻

■カントリーガールズ
★リサ・ロードリソース:道資源を道重と聞き間違えたエピソード
★マナカ・ビッグハッピー:大福
★チサキ・ココロコ・レッドミミー:元CoCoRo学園+元ロコドル+赤耳
★マイ・セロリサラサ・オゼキング:セロリ嫌い+シチューサラサラだね+ひなフェスソロのソロ名オゼキング

■謎の集団 ※全てコードネーム
★ドグラ:ドグラマグラを読破したエピソード
★ロッカー:ジップロッカー
★マジメ:真面目とよく言われる(言われてた)
★クール:クールビューティー
★タイサ:大佐
★リュック:ハロステ四字熟語のコーナーで大きいリュックを背負ってた
★ウララ:舞台Week End Survivorの役名+ブログの裏ウララ+ハルウララ(後付け)
★ガール:おはガール

915名無し募集中。。。:2019/05/03(金) 19:59:40
由来の概要ありがとうございます!
現在アンジュJ=J+ねちんまでしか登場してないので気付けなかった子だけ答え合わせたのですが
おかげで胸のつかえが取れました♪m(_ _)m
(未だ登場してない子は楽しみにとっておくとしますw&先にはこぶしも出てくるようで嬉しい!><)
今の心境…りんc怖すぎ!w

916名無し募集中。。。:2019/05/04(土) 02:29:14
久しぶり名前の由来みると改めてひどいなw(良い意味で)謎の軍団は当時と今とでは本名変わっていそう…てかちゃんと出てくるのか心配苦笑

917名無し募集中。。。:2019/05/04(土) 14:43:18
こぶしは未だ正式に登場している訳ではないんですね…;ジェケニンかな・・・><w

「勝ったよトモ!トモは負けなかったんだ!」鳥肌(りんcらしいサイコっぷりが怖すぎてw)
「食卓の騎士様はなぁ!〜」鳥肌(反旗したマロの信念とその理由が格好良すぎて!)
「!?」x6「だって猿が喋ってるんだもん……」「殺す。」爆笑(夜中だったのに声出して笑っちゃいましたw)
「カナナンが、タケが、メイが必死だから。それだけ。」彼女らしさに感動し思わずに涙(マジw)

できるだけ亀レスは避けるつもりですが台詞が凄すぎたココだけはどうしても感想書きたくて…m(_ _)m
本作中ではりなぷ〜推しになりそうです…w凄いなぁ、、、TT

918 ◆V9ncA8v9YI:2019/05/24(金) 08:42:10
必殺技は非常に強力な攻撃手段ではあるが、当然、一朝一夕で身につくようなものではない。
エリポンの同期の中ではフク・アパトゥーマとサヤシ・カレサスの2名が幼少のころから戦闘訓練を積んできていたが、
その二人でさえ必殺技を習得できたのはつい最近の話だ。
それでは、フクやサヤシより戦士として戦ってきた日が浅いエリポンは必殺技を使えないのか?
いや、決してそんなことはない。
過去に熱中したもの、夢中になったものが有れば、それが今現在のエリポンを作り上げる基礎となっているはず。
自分を自分たらしめるアイデンティティが何物なのか気づくことが出来れば、必殺技へと昇華することが出来るのだ。

(エリにとってはそれが"ゴルフ"!!ゴルフに必死になった経験ならフクにもサヤシにもカノンちゃんにも負けない!)

エリポンはゴルフに誇りを感じているが、"ゴルフが上手い"とはいったいどういう状態を指すのだろうか。
例えば超パワーの力自慢がゴルフを始めたら試合で活躍できるだろうか?
あるいは類稀なる集中力の持ち主がクラブを握ったら優れたプレーを連発できるだろうか?
どちらのケースも、1ホールか2ホールくらいならプロを上回ることも有り得るかもしれない。
しかし18ホール回ってトータルで勝利することはまず無いと言って良いだろう。
プロは試合の流れを上手く組み立てられるという理由もあるが、
それ以上に環境のコンディションを読むことが出来るのが大きい。
芝の状態、天候、気温……これらの要素が全て一致することなんてことは殆どあり得ない。
どれか1つでも条件が異なっていれば、例え同じ打ち方をしたとしてもボールは狙い通りに飛んでくれないのである。
コンディションを正確に把握し、その状況に適したショットを打つことが非常に重要。
そして、そのコンディションの中でも最も重視すべき要素が”風”と言えるだろう。

919 ◆V9ncA8v9YI:2019/05/24(金) 08:43:47
「今ならエリの必殺技は決まる!」

エリポンは両手で握った打刀を振り下ろし、足元の石をゴルフボールみたいに飛ばそうとした。
しかしその行動はモモコに読まれている。
石の1つも当てられたくなかったモモコは、糸を引っ張ることで前方に網を素早く設置した。
細かな糸で織られた網は無色に近く、常人にはまず視認することは出来ない。
この一瞬で網によるガードに気づくことなど到底不可能だろう。
だが、それはエリポンが目だけに頼っていた場合の話だ。
エリポンには長年培ってきた”風を読む”力が備わっている。
いや、ここは”空気を読む”と言い換えるのがより正しいかもしれない。
網が起こした空気の微細な動きを感知し、モモコの防御行動を理解したのである。

(エリは空気が読める!!これくらいヘッチャラやけん!!)

エリポンは腕の筋肉に力を入れて、通常の5割増しのパワーで石を打ち込んだ。
石はエリポンの期待に応えるかのように薄い網をぶち破り、
そのままの勢いでモモコの額へと衝突していく。

「!?」

はじめから大きな力で打とうとすれば、それに連動して殺気も強まるため、怪しんだモモコに回避されていたかもしれない。
エリポンは空気を的確に読み取り、網を破るギリギリの力だけをショットに込めたことで、
モモコの裏をかいて流血させることに成功したのである。
見事なアプローチだったと言えるだろう。

「ハルナン見てた〜?ハルナンの指示通り、必殺技でモモコをギャフンと言わせたけんね。」
「はい!見てました!エリポンさん流石です!!」

この時のハルナンの口から出た賛辞は、嘘偽りの無い本心だった。
作戦ミスをモモコに詰められて落ち込んでいたところにエリポンが必殺技を決めてくれたので、
ハルナンは救世主に救われたかのような思いになったのだ。
それを見て面白く思わないのはモモコだ。

「ちょっとちょっとちょっと!何を勝った気でいるの!?
 石を額にぶつけられただけなんだけど!?まだまだ全然ピンピンしてるんだけど!?」
「え?結構ヤバそうに見えるっちゃん」
「どこが!?」
「ほら、そんなに頭に血が昇ると余計に大怪我に見えるけんね。」
「!!」

頭部の皮膚は血流が良いため、ほんの少し傷ついただけで血が止めどなく流れていく。
血液はやがてモモコの右目に入り込み、視界の半分が奪われることになる。
冷静さが売りのモモコもこうなれば少なからず動揺してしまう。
ましてや、完全なる格下と思っていたエリポンにここまでコケにされたのだから、落ち着こうにも落ち着くことができない。
それを見てアイリは感心する。

(本人も気づいてないと思うけど、あの必殺技の本質は”空気を読む”ことじゃない、”空気を変える”ところにあるんだ!
 彼女の行動が味方を勇気付け、相手を取り乱させる……まるで魔法みたいに……!)

1vs1の勝負ならエリポンは脅威にはなり得ない。
だが、複数人のチーム戦であれば状況は大きく変わってくる。モモコが苦しんでいるのがその証拠だ。
この結果を見てアイリはクスッと笑い出した。
チーム河童の人選が正しかったことを確信したのだ。

(モモコを倒すには正攻法じゃダメ。
 あっと驚くような、環境をぶっ壊すような破天荒さを持ち合わせないとモモコには勝利できない。
 エリポンとマーチャン、そしてアーリーの3人は期待通りの仕事ぶりを見せてくれたんだね。
 ただ一人だけ期待ハズレに終わってしまったけど、勝機はまだ有る!)

アイリの想定はおおよそ的中していた。
しかし、一点だけが事実と異なっている。
一人だけ期待ハズレと言っているが、エリポンはそうとは全く思っていなかったのだ。

「ハルナン。」
「!」

エリポンは小声でハルナンの名を呼ぶと、モモコの死角から小石を刀で打ち飛ばした。
そして、その先にある身動きの取れない鎧にコツンと当てていったのである。

「追い討ちをかけるなら今だよ……ハルナンなら活かせるよね?」
「はい。もちろん。」

920 ◆V9ncA8v9YI:2019/05/24(金) 08:49:25
>>916
フジー・ドンのような本名登場済みのキャラ以外は変わってるものも有りますねw
そして登場までにまた変わっちゃうかも……

>>917
その辺りのセリフは私も好きだったので嬉しいですね。
マロのキャラは当初から決めてましたが、リナプーは書いてるうちにこうなったような……

921名無し募集中。。。:2019/05/24(金) 13:00:51
>>919
『空気を変える』…コンサートだと別の意味で空気変えてるけどw
期待はずれのハルナンがどう挽回するのか楽しみ

>>920
当時と状況が違うからなぁ…例の件ネタにするととんでもない名前になりそうw
前作のメグとか後で意味知ってビックリw

922名無し募集中。。。:2019/05/25(土) 12:26:18
アカネチンのやったーご飯だ-とマリアちゃんの子供口調が可愛くて思わず推し変しそうになったのですが
食卓の騎士相手でも対等に話すりなぷーが面白く何とか踏みとどまれましたw
あのキャラは漫画家さんがよく言うキャラが勝手に動いたってやつだったんですね><
現在きっかの特訓を受けてる最中です大分現行に追いつけるまでもう三歩!

923 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/13(木) 11:12:36
本編を進めたいところでは有りますが、ちょっと方針を変えてオマケ相当の話を書こうと思います。
期間は6/13〜6/19の一週間を考えていて、
時系列で言えば、二部と三部の間の話になります。

二部の後の話なので人間関係が微妙に異なっていることが有りますが、そのうち分かることになると思います。

オマケのタイトルはタイトルは「カントリーのこれから」です。
勝手な路線変更で申し訳御座いませんが1週間だけお付き合いください。

924名無し募集中。。。:2019/06/13(木) 12:26:31
今日から!?楽しみに待ってます!
カントリーかぁ。。。二部のあとってことは前回のおまけにもつながってくるのかな?

ついでにアンジュやこれから発表される果実・帝国の新人や二人の王との別れも読んでみたいなぁ

925 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/13(木) 12:43:09
「果実の国出身のヤナミン・ギーガグ・オトギヒメです。以降お見知ぎおきを。」
「アンジュ王国のフナッキ・カツメイトや!世話になるんでよろしゅう!」

モモコが新たに連れてきたヤナミン・リーガル・オトギヒメとフナッキ・カツメイトの挨拶を、先輩たちはポカンとした顔で聞いていた。
カントリーの新人がどんな人物かと思いきや、あまりに子供すぎて驚いたのだ。
チサキはその感想をうっかり口に出してしまう。

「こ、子供……」
「はぁ〜?あんただって子供やろが!」
「ひぃ!この子怖い!」

フナッキがガラ悪くガンをトばしてきたのでチサキは完全にビビってしまった。
身長は小さいながらもドスのきいた声をしているので、なかなかに迫力があるのである。
そんなチサキを庇うようにマイが立ちはだかる。

「マイちゃん!」
「チぃはこう見えてマイより2歳も年上なんだよ。見えないけど。」
「マイちゃん……あまりフォローになってないよ……」
「それに君たち2人の方が子供なのは事実だよね。胸だってペッタンコじゃん。マイのセクシーさには遠く及ばない。」
「今はペッタンコやけど胸くらいすぐに大きくさせたるわ!」
「ふふ、どうだか。」

顔を合わせるなりギャーギャー言いだした子供たちを見てモモコはため息をついた。
そんなモモコに対して、新人のヤナミンが質問を投げかける。

「あの〜モモち先輩。カントギーは私とフナッキを含めて7人だとお聞きしていたのですが……」
「あぁマナカちゃんがいないのよ。あの子は修行中。そうよねリサちゃん。」
「ええ。今朝から5,6時間は訓練し続けていますね。」
「ごどく時間も!」
「マナカちゃんはとある一戦以降、人が変わっちゃってね。強くなりたい一心でトレーニングに没頭してるの。」
「失礼ですが……その一戦で敗北を?……」
「ううん。勝負には勝ったのよ。ただ自分で自分を許せないとかで……」

モモコが説明を続けている最中にフナッキこ怒鳴り声が聞こえてくる。

「こうなったら力でねじ伏せたるわ!奥歯ガタガタ言わせたる!」
「後悔しても知らないよ。こっちこそ先輩の力を見せてあげるんだから。」

興奮するフナッキとマイを見て慌てて止めようとするリサだったが、
モモコは面白がりながら場を支配した。

「いいじゃない!喧嘩しなさい喧嘩!」
「ちょっと!モモち先輩!」
「せっかくだから先輩と後輩のどっちが強いのかハッキリさせちゃいなさい!
 チサキ&マイのペアと、ヤナミン&フナッキのペアでタッグマッチよ!」
「「え〜!」」
「「やってやる!」」

926名無し募集中。。。:2019/06/13(木) 20:15:50
やなふなキターーーー!!!!!
未だロスが醒めやらず彼女の動画を日々見返してしまってる状況なので
由来一覧に含まれていなかったヤナちゃんが登場した時はまた会えたと本当に嬉しかったです><
ごどく時間ヤバイw

&凸凹な歯車が噛み合うとヤバイ元サブリーダー図も遂にその本領を発揮してきそうで胸熱!
自分の中で話中のエリポンが遂にえりぽんに育った瞬間でした
#えりぽんかっこいい!

927 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/14(金) 12:32:18
「お先にいくよ!」

チサキが体勢を整えるよりも先に、マイがダッシュで飛び出した。
兎が如き俊敏さで狙うは小生意気ガールなフナッキだ。
強烈なパンチを腹にお見舞いして黙らせてやろうと思ったのだ。
事実、フナッキは肉弾戦が得意ではなかったので、マイの攻撃が当たればその通りになっただろう。
しかしヤナミンがそれを許さなかった。

「フナちゃん!危ないわ!」

フナッキよりも更に戦闘向きでは無さそうな風貌のヤナミンが間に入ってきたので、マイは不思議に思う。
しかしモモコが連れてきた以上、どんなに可憐な少女であれ、相手が戦士であることは間違いない。
そう判断したマイは自身の勢いを少しも緩めようとはしなかった。
その鬼気迫る迫力にヤナミンは一瞬たじろぐが、決して恐れたりはしない。
彼女には心強い味方が6匹もついているのだ。

「よし!君に決めた!」

ヤナミンの腰周りには6つのカプセルらしきものが取り付けられている。
そのカプセルを1つ手に取ってはすぐさま開き、
中に収納されていた味方を外に解放していく。
そして、マイの繰り出す渾身のパンチにぶつけていったのだ。

「い……痛い!?」

ヤナミンを狙ったはずの拳が何やら硬くて小さいものに当たったので、マイは激痛を感じることになった。
それもそのはず。
マイのパンチは、小柄な亀の甲羅に衝突していたのである。

「亀!?」

亀を操る姿を見て、マイだけでなくリサやチサキも驚いた。

「亀……つまり、ヤナミンは爬虫類を操る戦士という事!?」

リサの予想は間違ってはいない。だが、それだけではまだ足りない。
先輩たちが自分の能力を見誤ってくれたので、ヤナミンはクスリとする。

「うふふ、亀がいたかはって爬虫類使いとか決めつけちゃってたら、時代にナントカですよ?」

このヤナミンフィーバーっぷりを1番面白く無さそうな顔で見てるのは、同じ新人のフナッキだった。

「別に守ってくれなんて頼んでへんけど。ていうかあの程度の攻撃、全然防げたし。」
「まぁ〜、フナちゃんったら素直じゃないのね。可愛い。」
「ガキ扱いすんなや!!」

イライラが重なるフナッキがストレスを解消する方法は1つしかなかった。
それは自分が活躍する事だ。
フナッキは肩にかけた紐の先にある緑色の箱のフタを開けては、チサキを指差した。

「よう分からんヤナミンと違ってこっちの武器は単純明快やで……
 私は虫を操る戦士なんや!行け”ミンミン”!!
 ミンミキミキミキミキミキミキミキ、ジャーン!」
「え?」

フナッキがそう叫んだ瞬間、箱の中にいた十数匹のセミが一気に飛び出し、チサキの顔面に張り付いていった。
そしてそれだけじゃない。五月蝿い鳴き声に呼ばれた他のセミ達までもがどこかからやってきて、チサキに群がっていく。

「ひーーーーーーー!!」

こんな状況でまともに立っていられる者なんてそうそういるはずもない。
チサキはショックのあまり我を見失ってしまう。
可愛い顔をしておぞましい戦法を取るフナッキを見て、リサ・ロードリソースは戦慄した。

「気持ち悪い虫を女の子に集中させるなんてむごすぎるわ!どうしたらそんな非人道的な戦法を思いつくの!」
「……」

この時のモモコは、リサに対して何か言いたげな顔をしていた。

928 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/14(金) 12:38:29
>>924
はい。このスレのカントリーのオマケとリンクしてますね。
現実の流れが速いので、ヤナフナ登場が三部になると遅すぎるため今回のような形をとりました。
今日や明日に発表される新メンバーは……やはり診断テストで活躍した人が選ばれるのでしょうか。

>>926
正式に二部が終わった時にキャラクター紹介を更新しますね。
その時にはヤナミンとフナッキも入っていると思います。

929名無し募集中。。。:2019/06/14(金) 18:17:11
よこやんも蝉を操るのか

930名無し募集中。。。:2019/06/14(金) 21:00:38
思ったけどフナッキの戦法って季節によって出力が変わっちゃいそうですねw
ヤナミンボールは爬虫類でなかったら名前に由来してるのかな…

931名無し募集中。。。:2019/06/15(土) 07:01:16
>亀がいたかはって爬虫類使いとか決めつけちゃってたら、時代にナントカですよ?

さすが果実の国出身w能力はポ○モンだね

フナッキはミンミンロックか・・・夏以外はどうするんだろ?

おまゆう?>リサ

932 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/17(月) 03:23:05
「うわっ、チぃ大丈夫かな……」

セミに囲まれたチサキを見て焦るマイだったが、その余所見が命取り。
彼女に相対していたヤナミンは、一瞬の隙をついては亀をカプセルに戻し、
そして新たな味方をカプセルから解き放っていく。

「あれは!」

死角ゆえにマイには認識できなかったようだが、外野のリサにはハッキリと見えていた。
ヤナミンは亀の次に蜘蛛を出現させたのである。
虫を操るという点はフナッキと同じ、しかしヤナミンは既に亀も操っている。

「ヤナミンの操る生物は種族にとらわれない?……」
「その通りよリサちゃん。腰につけた6つのカプセルには違った種類の生き物が入っているんだってさ。」

リサ・ロードリソースは両生類を、
マナカ・ビッグハッピーは鳥類を、
チサキ・ココロコ・レッドミミーは魚類を、
マイ・セロリサラサ・オゼキングは哺乳類(自分)を武器としていた。
爬虫類だけは事情があって欠番になっているが、
フナッキ・カツメイトも昆虫類「ミンミン」を操るように、それぞれが違った種別の生物となっている。
そんな中、ヤナミン・リーガル・オトギヒメだけは例外的に、上にあげた6種類を全て使役することが出来るのだ。
"カプセルに収納可能な小動物でないといけない"、"自力で捕獲しなくてはならない"、"愛情を持って育てなくてはならない"、
"一度に6匹までしか連れていくことはできない"、"2匹以上同時に戦わせることは出来ない"……といったマイルールは存在するが、
その制限さえ満たせばヤナミンは種族の垣根を超えてしまう。
ヤナミンはそんなモンスター達を収納可能な己の武器を、カプセル「ポケット」と呼んでいた。

「マイさん、チサキさんの方を見てて良いのですか?」
「ハッ!」

声をかけられたマイは、ヤナミンの方を振り向くなり反射的にパンチを繰り出していた。
さっき邪魔をした亀がいなくなった事に気づいて、もうガードされることは無いと考えたのだ。
だが、ヤナミンはもう既に「蜘蛛の糸」という罠を張り終えている。
訓練された亀の甲羅が普通の亀の甲羅よりも堅かったように、
訓練された蜘蛛の糸は普通の蜘蛛の糸よりも太く、切れにくくなっていた。
足が糸に絡まったマイはその場で転倒し、おでこを地面に強くぶつけてしまう。

「……!!」
「急に攻撃だなんて怖い事しないでください……わたくし、"逆に"お返ししたくなっちゃいますわ。」

ヤナミンの戦闘スタイルを理解したリサはゾッとした。
要するにヤナミンはカウンターを得意としているのだ。
襲い来る攻撃を瞬時に見極め、亀の甲羅や蜘蛛の糸などを用いることにより、
自分は全くの無傷のまま相手にだけダメージを負わせることに成功している。

「そして何より恐ろしいのが、その悪質な戦法がモモち先輩に酷似しているということ!」
「リサちゃん?」

933 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/17(月) 03:30:09

ヤナミンのカプセル「ポケット」は言わば暗器のようなもの。
モモコの暗器7つ道具に対して、ヤナミンのカプセルは6つという違いはあるが、
手の内を隠しつつ、ここぞという時に使用しては、相手に何もさせない様はまさにそっくりだ。
ヤナミンはカントリー加入前からモモコのことを尊敬しており、
記録で読んだ戦闘スタイルを自身のものに取り入れたため、このようになったのである。
しかしそうなると直情的なマイには分が悪いなんてもんではない。
このままムキになったらドツボにハマってしまうのではないかとリサは心配したが、
モモコは最悪の事態には陥らないのではないかと予測していた。

「リサちゃん、"女子三日会わざれば刮目して見よ"っていうでしょ?マイちゃんだってあれで成長しているのよ。」
「あっ……」

マイはゆっくりと起き上がるなり深呼吸をし、ヤナミンの顔をじっと見つめだした。

「……うん。よく分かった。」
「何がですか?」
「今のマイは君には勝てない。悔しいけど相性が悪すぎる。」
「まぁ!……勝負を諦めたのですか?」
「諦める?そんなことしないよ……君を倒すのはマイじゃないってだけ。」

そう言い残すなりマイはチサキの方へと駆けていった。
"自分ではヤナミンを倒せないこと"、"チサキならヤナミンを倒せる可能性があること"、
決してムキにならずに、その2点を冷静に判断したのだ。
正直言って敗北を認めるのは身体が裂けてしまいそうなくらいに悔しいが、
アンジュの番長や、果実の国のKAST達、そしてモーニング帝国のマリアとの戦いを経て、
自分が最強の存在では無いことを自覚してからは、目をそむけたくなるような事実もしっかりと受け止められるようになったのだ。

「チぃ!今助けるからね!!」

マイはチサキに纏わりつくセミを掴んでは投げ、掴んでは投げていった。
高い身体能力からなる手捌きはあっという間にセミを散らしてしまい、チサキを解放することに成功する。
自分がセミに出す指示より早く追っ払うマイを見て、フナッキは焦り始めてきた。

「ひとのセミちゃん達に何すんねん!信じられんわほんま!
 で、でもまぁええわ。そのチサキって人は見るからに弱そうやから脅威にならなさそうやし、助けるだけ無駄ってもんやろ。」
「そうかな?今のチぃ、結構怒ってると思うけどね。」

ムキになりがちだったマイが成長してクールになったように、
チサキは過去の経験から、怒りの感情を露にするようになった。
もう大人しいだけの彼女はもういない。
ちょっと怒りっぽくなったのが玉に瑕だが、闘争心は以前の数倍以上に跳ね上がっている。

「もうっ!!!!!本当にあったまきた!!!!チぃがやるんだよ!!!!」

チサキには魚を操る以外にも、手のひらに集めた水を高圧の水鉄砲にして飛ばす特技がある。
これまで水の代わりに自身の汗や血液を飛ばしたことがあったが、
今回はそれとはまた異なった液体を噴出させようとしていた。
その液体の正体に気づいたフナッキとヤナミンは恐れおののいていく。

「ま、待て、ちょっと待てや、その手の中の液体はまさかセミのおしっ……」
「本当に最悪!!!!!顔ベトベトだしなんか臭いし!!!!全部そっくりお返しするからね!!!!」
「チサキさん落ち着いてください!そんなに怒ぐと可愛いお顔が台無しですよ?」
「うっさい!!!あんた達チぃのこと舐めてるんでしょ!!!!」
「「舐めないぞっ?」」
「絶対舐めてる!!!!!!!!」

怒り狂ったチサキは液体を見境なく噴出させていった。

934 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/17(月) 03:33:48
ヨコヤンもセミを扱いそうではありますが、一応他の武器を持たせていますw

フナッキの武器が季節でどうなるかは……だいぶ先に明らかになるかもしれませんねw

ヤナミンの武器はお察しの通りポケモンです。
ポケモンのモチーフになった小動物ならなんでもアリにしようとしています。

935名無し募集中。。。:2019/06/17(月) 13:18:34
リサちゃん心の言葉が声に出てるw
しかしこうやって見るとカントリーってほんと名言だらけですね
チィちゃん悪霊に憑かれちゃったから今から除霊だ><w

936 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/17(月) 17:43:21
長いことカントリーにスポットが当たってなかったので、ネタが溜まってましたね。
そう言えば誤記が有りました……正しくは以下です。

「「舐めないぞっ?」」

「「舐めてないぞっ?」」

937 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/18(火) 09:07:17
ヤナミンとフナッキはワーキャー言いながらチサキの水?鉄砲から逃げていった。
2人の能力ならばよりスマートに回避できるはずなのだが、
チサキの放出する液体に何が何でも当たりたく無いと思うあまり、大きく取り乱してしまっている。

「もうっ!!当たらないなぁ!」
「チぃ、その攻撃も良いと思うけど、マイはやっぱりお魚を使うチぃが見たいな。」

マイはそう言うと、チサキの前に大きな水槽を置いていった。
この水槽の中では太刀魚が泳いでおり、ハーチン戦以降にチサキが習得した新たな特技を再現できるようになっている。
しかし成功率はあまり高くなく、五分といったところ。

「で、でも……」
「今、あの子達は混乱してるし、走り回って疲れてる。絶対に当たるよ。
 それにもしもセミがチぃを襲ってきたらマイが絶対に守るから。」
「なんやと!?」

聞き捨てならないセリフに怒ったフナッキは、全てのセミをチサキとマイの方へと飛ばしていった。
セミは見た目が怖いだけでなく、騒々しくもあるため、相手の集中力を著しく奪うことだって出来る。
そんなセミが大勢集まったのだから普通なら耳を塞ぎたくなるものだが、
マイに勇気付けられて集中を高めたチサキは、静かに水槽に自身の手を入れていった。
水の中で泳ぐ太刀魚と対話をしているのだ。

「何をワケの分からんことをしてんのや!今まさにセミが来とるっちゅーのに!」
「分かってないなぁ……チぃの刃は凄いんだよ。マイが保証する。」
「刃?……刃物の類をお持ちのようには見えないのですが……」

太刀魚との対話を終えたチサキは静かに前の方を見た。
狙いは親友のマイを苦しめたヤナミンだ。
何やらセミがワラワラと飛んでいて鬱陶しいが関係ない。
そいつらごと斬ってやろうとチサキは決意した。

「邪魔しないで Here We Go!」
「は?」「え?」

チサキがそう言った瞬間、太刀魚が水槽から飛び出していった。
その勢いとスピードは凄まじく一瞬にして直線上にいるセミ達を散らしていく。
そして離れた場所にいるヤナミンの元へとあっという間に到達してしまう。

(まずい!防がないと!)

ヤナミンはいつでもカウンターを出せるように常に身構えている。
チサキが怪しい行動を開始した時点で蜘蛛をカプセルに戻しており、すぐに次の一手を出せるように備えていたのだ。
超スピードで射出されるチサキの”刃”を避けることなんて今更出来ない。ならば受け止めるのみ。
ヤナミンは亀をもう一度出して、真正面からガードすることにした。
しかし、ハーチンと死闘を繰り広げたチサキの思いは甲羅の硬さを超えていた。
“斬撃”自体は亀で防ぐことが出来たが、そらによって生じる衝撃までは消すことが出来ず、
ヤナミンは後方に倒れて尻もちをついてしまう。

「痛いっ!……わたくしが戦闘で怪我をするなんて……」

ヤナミンも、フナッキも、もはや先輩を舐めてなんていなかった。
少しでも気を緩めたら敗北してしまう……そのように考えを改めた。
そんな中、ひとりの女性が戦場に乱入してくる。

「訓練終わり〜お腹すいちゃったわ〜。
 ってアラ?……みんな何やってるの?……」

938名無し募集中。。。:2019/06/18(火) 13:53:25
> ハーチンと死闘を繰り広げたチサキの思い

読んでた当時は氷と水で相手が決まったのかな?程度に思っていたけど、その後帝国でハーチンとチサキが無二の友となることを考えると胸が熱くなる

939 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/18(火) 20:52:24
登場したのは長時間の訓練を終えたマナカ・ビッグハッピーだった。
初お披露目の新人2人が先輩たちとタッグマッチをしていたと聞くと、興味を持ち始めた。

「へぇ〜そうなんだ〜。じゃあ私はチぃたんとマイちゃんに加勢しようかな。」
「「「「「「えっ!?」」」」」」

突然の参戦発言を聞いたモモコは頭を抱え出した。
非常に困ったような顔をしながらも、渋々マナカの要望を承認する。

「う〜〜〜〜〜〜〜ん、まぁ、いいかな?
 あんまりやりすぎるんじゃないよ?」
「うふふ。流石モモち先輩、話が分かりますねぇ。」

ルール上不利になる新人2人よりも、チサキやマイ、そしてリサの方が焦ったような顔をしている事にヤナミンは気づいていた。
何かとんでもない事が起きてしまいそうな気がしてならない。

「ねぇフナッキ……ここは慎重にいった方が……」
「そんな暇あるかい!あのマナカって人が疲れている今がチャンスやろが!」

訓練後で大汗をかいているマナカをターゲットとしたフナッキは、全てのセミを向かわせた。
しかしマナカは少しも心乱される事なく、愛鳥たちに指示を出していく。

「ねぇみんなもお腹空いたよね? ご飯の時間よ〜!」

そこからの光景は惨いものだった。
1000匹以上のカラスが一斉に現れては、フナッキの操るセミ達をバリバリと喰い散らかしてしまったのだ。

「あ……あ……」

セミの命はとても儚い。
“子供やカラスにゃ狙われる”と歌詞にあるように鳥が天敵であることは把握していたが、
こうも一瞬で全滅してしまうことにフナッキはショックを隠せなかった。

「ごちそうさまでした〜。カラスちゃん達もとっても喜んでるよっ!
 あれ?心折れちゃったのかな?じゃあ次はあなたかな……」

指名されたヤナミンは小動物のように小刻みに震えていたが、応戦の意思は失われていなかった。
カプセルから珍妙なピンク色の生物を出しては、鳥たちに見せていく。
この生き物は両生類のウーパールーパー。
小さな虫やら小魚やらを餌とするが、場合によっては鶏肉までも食べてしまう生き物だ。
そして、戦闘用に訓練されたヤナミンのウーパールーパーはその気になれば生きた鳥さえも捕食する事が出来る。
通常より知能の高いマナカのカラス達もそれを感じ取ったようで、怯えて攻めあぐねていた。

「見た目は可愛いのに強かだよねぇ。」
「わたくしに言ってますか?ウーパーちゃんに言ってますか?」
「うーん……どっちかと言えば……”マナカ”かな。」

マナカは鳥に頼らず単身でヤナミンの元へと走っていった。
本人が直々に来るとは思わなかったのでヤナミンは驚いたが、
ウーパーと亀をスイッチする準備だけは怠らなかった。
パンチやキックを繰り出そうものなら亀の甲羅でガードしてやろうと思ったのだ。

(さっきのマイさんのように防ぐ!!)

予想通り、マナカはヤナミンに接近するなりパンチを繰り出してきた。
後はそこに甲羅を当ててやればガード成功のはずだった。
ところが次の瞬間、ヤナミンの視界からマナカが消えてしまう。

(!?)

もちろん本当に消えたわけでは無い。
ダンスを踊るかのようにターンを決めて、一瞬にしてヤナミンの背後へと回り込んだのだ。
そしてその勢いのまま右足を高く上げて、ヤナミンの細い首にカカトを叩きつける。

「!!!…………」
「残念。もうノびちゃったの?久しぶりに楽しい闘いが出来ると思ったのに。」

容赦ない仕打ちを受けて倒れるヤナミンとフナッキを見て、リサとチサキとマイは黙りこくってしまった。
いったいいつからだろうか。
自分たちとマナカの実力に差がついてしまったのは。

940 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/18(火) 20:55:54
>>938
ハーチンvsチサキの構想は14期加入よりずっと前からしていたので、私も驚いていますw
三部ではそういうシーンを多く書きたいなとは思ってますね。

941名無し募集中。。。:2019/06/19(水) 00:04:21
>マイはそう言うと、チサキの前に大きな水槽を置いていった。
突如大きな水槽を取り出せるマイcの暗器が一番凄い気が…w

ヤナcボール、亀>蜘蛛と来た時に
浦島太郎>蜘蛛の糸でやっぱりおとぎ由来なヤナcが助けた動物を召喚できるんだ!
次は鶴か雀か狐が来るぞ〜><と初めて読みが当たったと浮かれてたら単なる偶然でしたw

マナカンと生まれた距離から人間関係入り乱れそうな予感

942名無し募集中。。。:2019/06/19(水) 06:55:20
マーサー王はまるで未来を予見してたかのような出来事が起きるからねぇw

マナカン病で弱体化してると思いきや強くなっている?しかも狂気すら漂わせて・・・ちょっとイヤな予感

943 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/19(水) 09:00:32
先輩と新人の対戦から十数分経っても、リサ・ロードリソースはまだその場に留まっていた。
セミの羽根やらを箒で掃きながら、先ほどの出来事を思い返していたのだ。

(マナカちゃん、流石にやりすぎだよ……)

タッグマッチの流れは途中までは良かったはずだ。
チサキもマイもヤナミンもフナッキも、苦しみながらも充実していた。
だが、マナカが現れて実力を見せつけたところでおかしくなり始めた。
あんな負け方をしたらヤナミンとフナッキは心に傷を負うかもしれない。

(私がもっと強ければ……マナカちゃんを止められたのに……)

日に日に成長していく仲間達に比べて、自分だけは頭打ちであることをリサは自覚していた。
カエルの操り方のバリエーションを増やしてはいるものの、劇的には変わっていない。
また、リサの細腕では、マイやマナカのように肉弾戦に対応することだって出来ない。
どうすれば強くなれるのか……彼女には分からなかった。

「モモち先輩に相談してみるか……」

掃除が終わったリサはゴミ袋をマーサー城の一般兵に預けては、モモコの部屋に向かうことにした。
やはりここはプレイングマネージャーに教えを請うのが1番だと判断したのだ。

「モモち先輩入りますよー……って、んん??……」

扉を少し開けたところでリサは異変に気付き始めた。
どうやらモモコは他の誰かと話しているようだ。
行儀悪くも室内を覗き見したリサは、そのメンツの豪華さに驚愕する。

(フク王、アヤチョ王、ユカニャ王!?どうしてモモち先輩のお部屋に!?)

モーニング帝国のフク・アパトゥーマ、
アンジュ王国のアヤチョ・スティーヌ・シューティンカラー
果実の国のユカニャ・アザート・コマテンテ
マーサー王国の近隣諸国の王がこの場に集まっているのだから驚くなというのが無理な話だ。
ちなみに室内には果実の国のアーリー・ザマシランもいた。
おそらくは、戦うことのできないユカニャ王の護衛のためについてきたのだろう。

(まぁ当然っちゃ当然よね。護衛なしのフク王とアヤチョ王の方がよっぽどおかしいわ。
 非公式な場だから大所帯を引き連れることは出来なかったってこと?……
 秘密裏にいったい何を話しているというの?……)

リサの頭の中にクエスチョンマークが沢山沸き上がったところで、モモコが言葉を発し出す。

「以上がプロジェクト名”ケンニン”の全貌よ。 偶然とは言えあの子達の実力をお見せすることが出来て良かったわ。で、どうかしら?」
「モモち先輩の計画は完璧すぎます〜〜!もう全部受け入れちゃいます〜〜!」
「うん。フクちゃんだけじゃ偏りがあるから国の人とじっくり話しなさい。」
「そんな!モモち先輩への反対意見は全部握り潰しますよ!」
「それがダメだって言うの。後で私からハルナンにも連絡しとくわ。 じゃあユカニャ王はどう?」
「かぁ〜〜〜わいかったですねぇ〜〜〜!可愛い可愛い可愛い。私の癒し。」
「まともな王はいないのかな?」
「コホン、失礼。 ばい菌であるファクトリーを滅菌消毒するための戦力強化に繋がる良い計画だと思いました。
 ただ、果実の国を強化するにはもう一声欲しいかなと……」
「具体的には?」
「マナカちゃん。」
「本気で言ってる?……まぁ該当者ではあるけど……ちょっとだけ準備期間が欲しいかな。」
「どれくらい経てば良いですか?」
「”定年”まで、なんちゃって。」
「はぁ。”永遠”に待ちますよ。」
「冗談冗談。マナカちゃんをどうにかし次第すぐに手配するよ。 で、アヤチョ王はどう。」
「アヤは別にいいですよ。ウチはもともと変な人が多いし、あの子も変な人だし、全然平気。」
「でもアンジュ王国って舎弟制度とかあるんでしょ?舎弟を経ずに番長……って睨まれたりしない?」
「あー、それならもう1人声をかけている子がいるから大丈夫ですよ。 カノンちゃんが言うには将来の裏番長候補っていう子が。」
「へーそうなの。その子と同じタイミングなら批判が集中することがないか。」

944 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/19(水) 09:05:40
チサキは元々魚入りの水槽を持っていて、マイがそれを素早く取りに行ったのだと脳内補完してくださいw

マナカはアカネチンに追い詰められたことが悔しくて性格が変わってしまいました。
当時はアカネチンを舐めきった結果として痛い目を見たので、今ではどんな相手にも容赦しません。

945名無し募集中。。。:2019/06/19(水) 13:07:11
ついにプロジェクト『ケンニン』始動・・・リサとマイがどうなるのか気になる

> マナカちゃんをどうにかし次第
モモコが言うと若干の恐怖を感じるw
北の里へ強制送還かな?

946 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/19(水) 13:07:53
モモコと王達の話はまとまりつつあったが、ここでユカニャ王が一石を投じた。

「該当するメンバーについては問題ないと思いますが、私はカントリーの軸の方を心配しています。」
「ふぅん。と、言うと?」
「リサ・ロードリソースちゃんの事を言ってるんですよ。いくら他が活躍しても軸となる彼女がフラついたら無意味ですよね?
 マナカちゃんの登場に狼狽えているようでしたが、資質に問題は無いのでしょうか?」

話の流れは掴めていないが、自分が槍玉に挙げられている事はリサも理解することができた。

「やっぱり心配?フクちゃんとアヤチョ王と同感?」
「えっと……」「アヤはその子のこと知らないけど弱かったら軸にはなれないと思います。」
「そうね……じゃあ資質の有無を本人に証明してもらっちゃおうか。」

そう言うとモモコは半開きの扉を開けて、覗き見中のリサの姿を露わにした。

「「「「!!」」」」
「あ、いや、これはその……」
「ねぇリサちゃ〜ん。そこのお偉いさん達がね、リサちゃんが弱かったら任せられないって言ってるよ〜?
 そうなったら私の計画が頓挫しちゃうんだ〜」
「あの、モモち先輩?そもそも計画っていったい……」
「詳しいことはまだ知らなくて良いの。今リサちゃんがやるべき事は何?頭良いから分かるよねぇ?」
「私の……強さを示す事です……」
「その通り〜〜!」

死んだ目をして回答するリサに対して、モモコは何やら楽しげだった。

「ところでユカニャ王、どうやったら資質を確かめられると思う?この場の全員を今すぐ皆殺しにすれば分かってくれる?」
「何をメチャクチャ言ってるんですか……そうですね……例えば、ここにいるアーリーと善戦したら認めてあげても良いですけど……」
「あたし?」

壁に寄りかかっていたアーリー・ザマシランはキョトンとした顔をしていた。
いきなり指名されるなんて思っていなかったのだ。

「そう。リサ・ロードリソースと本気で戦ってあげて。」
「え〜」
「え〜じゃないの。何が不満なの。」
「もしもそれで怪我でもしたら、帰りの道中……ユカを護れなくなる。」
「……外ではユカニャ王と呼びなさい。 それに、アーリーは強いから大丈夫よ。」
「でも〜」

なかなかウンと言わないアーリーに対して、ユカニャは声のトーンを少しだけ低くした。

「じゃあこういう事にしましょう。 そこのリサ・ロードリソースは今にも私の命を狙っている。 そうイメージしてみて。」
「命を……」

その瞬間、アーリーの顔が険しくなった。
そしてスタスタとリサ・ロードリソースの元に歩いていき、
いきなり首を鷲掴みにする。

「絶対に許さない。」
「!?……く、苦しい……」

947 ◆V9ncA8v9YI:2019/06/19(水) 18:59:45
リサの首を絞めるアーリーの圧は凄まじかった。
彼女の狙いは窒息ではない。首の骨を折ってしまおうとしているのである。
激痛なうえに酸素まで取り入れることが出来ないため、リサの意識はすぐに朦朧とし、手足がまるで動かなくなった。
あっけなく決着がつくと思われたところで、モーニング帝国の王、フク・アパトゥーマが割って入ってくる。

「ストップストップ!こんなのフェアじゃないよ!」

真剣勝負を邪魔するフク王に一同は驚いたが、次に続く主張は真っ当なものだった。

「リサちゃんの得意な戦法はカエルを操ることなんでしょ?
 ウチの子達もカエルに苦しめられたって言ってたよ。
 と言うことは、リサちゃんの真の力を見たいなら、こんな室内で戦うべきじゃないのでは!?
 モモち先輩、屋外の訓練場で仕切り直した方が良いと思いませんか?」
「フクちゃんの言うとおりね。ユカニャ王はどう思う?」
「そうですね……アーリー、手を放してあげて。」
「ユカ……ユカニャ王がそう言うなら。」

フクのおかげで命拾いしたとリサは思った。
だが、同時に「本当に命拾いしたのか?」という考えも頭をよぎる。
KASTの一員として活躍したきたアーリーは、武道館で出会った時よりももっと強くなっているように見える。
カエルを味方につけたところで、果たしてこの怪物に勝てるのだろうか?

(多分、私が勝てるなんて誰一人思っていない。)

そんな雰囲気をより顕著に出していたのがアヤチョ王だ。
足は屋外訓練場に向かいつつあるものの、どこかよそ見をしながら歩いている。完全に上の空だ。
もはやリサへの興味などとっくに失っているのだろう。
そんな事を考えながら落ち込むリサにモモコが近づき、話しかけてきた。

「リサちゃんあんなに弱かったんだね。私ビックリしちゃった。肉弾戦まるでダメじゃない。アーリーちゃんと同じ土俵に全然上がれてなかったよ。」
「馬鹿にしにきたんですか……そんな事、私が1番よく分かってますよ。」
「それもあるけど、ちょっとしたアドバイスがしたくてね。」
「アドバイス!?な、なんですか!?」
「うふふ、”自分で考えなさい”。」
「え……」
「ちょっとはマシな頭を持ってるんでしょ?それくらい自分で考えなさいよ。馬鹿じゃないんだから。」
「……」

辛辣な発言をするモモコを見て、ユカニャはリサを気の毒に思った。
後輩を理不尽にこんな目に合わせたうえに暴言を吐いて突き放すなんて、いったい何を考えているのだろうかと感じている。
ところが、フクは全く別の感想を抱いていた。

(モモち先輩はやっぱり凄い。勝負の行方、分からなくなったな。)

そうこうしているうちに一同は屋外訓練場に到着した。
モモコはその場にいた3名のマーサー王国兵に声をかけ、訓練場をあけ渡すようにお願いする。

「ちょっとだけ場を借りていい?あと、このことは誰にも言わないでほしいなぁ」
「はい!マオピン誰にも言いません!」
「ふふ、良い子良い子。」

残り2名の兵は、各国の王が揃うこの状況に驚きを隠せていないようだったが、その中でも最も幼い兵は素直に応答してくれたようだ。

「さ、準備は整ったよ。それじゃあ仕切り直しね。」

948名無し募集中。。。:2019/06/19(水) 22:29:58
昨夜に後輩達が脱ぎ散らかした靴をいつも揃えてるとあやちょが言ってましたが
蝉の羽根を片すリサcの姿が重なりますねこういう細かな描写好き><

隠語?のファクトリーの対象につばきも含むかなと巡らせてたらマオピン&さおりんおみず?きた!
人間関係が複雑化してきたうえ登場人物の裾野まで広がって益々楽しみです!


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