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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

1 ◆V9ncA8v9YI:2015/05/02(土) 12:22:52
ずっと前にマーサー王や仮面ライダーイクタを書いてた者です。
マーサー王物語の数年後の世界が書きたくなったのでスレを立てました。

2007年ごろに書いた前作もリンク先に掲載しますが、
前作を知らなくても問題ないように書くつもりです。

SSログ置き場
http://jp.bloguru.com/masaoikuta/238553/top

239名無し募集中。。。:2015/06/18(木) 22:22:14
拾ってきた・・・帝国剣士って感じだね
http://pbs.twimg.com/media/CHxFWrGUsAA4TrL.png

240名無し募集中。。。:2015/06/18(木) 22:27:23
身体が追いつかなくなるのかマロ

241 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/19(金) 20:16:44
>238
そう言えばマリコも似た戦い方をしてましたねw
当時の傷は数年経った今、完治したということにします。

>239
おお、かっこいい。
他のメンバー(敵陣営?)の絵も見てみたいですね。

>240
マロがどうなるかは次と次あたりの更新で書きます!

242 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/19(金) 22:41:48
果実の国にはかつて、ピーチジュースを飲みながら戦う者がいた。
彼女は戦士にしてはとても気が弱く、オドオドしていて、常に戦いを恐れていたが
ジュースをひとたび飲めば勇敢なリーダーへと変貌し、仲間たちを率いて前線に赴いたと言う。
その頼もしさはまるで桃から生まれた戦士が鬼を退治するおとぎ話のよう。
しかしその末路はおとぎ話通りとは言い難く、
無鉄砲に敵陣深くへと入り込みすぎた結果、袋叩きにされてひどく負傷したとのこと。
果実の国の発達した医療技術を持ってしても戦士の傷を癒すことは難しく、一生戦闘の出来ない身体となってしまった。
ピーチジュースは勇気を与えてくれるため一見便利そうに思えるが、
恐怖心を持ち続けることこそが生きるために最も大切なことであることを彼女が教えてくれたのだ。
だというのに今現在、マロ・テスクが同じ過ちを犯そうとしている。
彼女には毛ほどの恐怖心も残っていない。ゆえに破滅はすぐ先に見えている。
記者の宝とも言える右手で殴ろうとしていることからもそれが分かるだろう。

「おりゃあ!!」
「ぐっ……!」

マロは手の甲がグシャグシャになる勢いでアヤチョの右肩を殴った。
薄手の上からそれだけの衝撃をぶつけられたのでアヤチョの肩はもうバキバキだ。
あまりの激痛で七支刀を持ってられなくなり、床に転がしてしまう。
これではもう攻撃のしようがない。逃げようとしても回り込まれる。
もう後がないと考えたその時、アヤチョは無意識に脚を出していた。
彼女の脚はマロと比較してずっと長いので、リーチの面で有利だと直感的に感じたのかもしれない。
とは言えマロはメロンで発達した眼のおかげで蹴りの軌道は簡単に予測できる。
長期に渡る戦いで重くなったはずの脚も、レモンの効能で軽々上がる。
そしてグレープで外したストッパーは、超強力&超高速の踏み付けを実現する。
思いっきり足を踏まれたアヤチョは激痛に耐え切れず悲痛な叫びをあげてしまう。
ところが、ダメージを被ったのはアヤチョだけではなかった。
骨が壊れても良いくらいの勢いで踏み込んだので、マロは足のみでなく膝、腰までも負傷してしまったのだ。
そうなったら痛いだけでは済まない。もう立てなくなる。
マロは気持ちは前に有るというのに、その場に転倒してしまう。

「なんで?……立てない……」

マロはリンゴのおかげでアヤチョを倒すことだけに集中できたのだが、
それに専念するあまり自分のことを省みる発想が全く無くなっていた。
少しでも恐怖心が有れば骨折を恐れたのかもしれないが、その感情はピーチが根こそぎ奪っている。
よってマロはタチアガールことが出来ず、この体勢のままアヤチョの追撃を受けることになる。

「なんだかよく分からないけど流石にもう終わりだよ……アヤの必殺技で決める。」
「まだ終わってない!こっちにだって必殺技があるんだから!!」

アヤチョは激痛の走る右手で手刀を作り、下方のマロへと振り下ろす。
それに対してマロは懐から小型の爆弾を取り出しては、アヤチョへと投げつける。
これが両者の必殺技、「聖戦歌劇」と「爆弾ツブログ」。
どちらも本調子とは言い難いが、今の相手を倒すには十分の威力を備えている。

243 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/20(土) 18:02:34
(え?二人とも何を・・・・・・)

ハルナンは必殺技という響きに馴染みがなかった。
平和な時代を過ごしてきたゆえに、それを目の当たりにする機会に恵まれなかったのだ。
だとすればここでアヤチョとマロの激突を見れたのは幸運かもしれない。
絶対的に相手を仕留める自信があるからこそ「必殺技」と呼んでいる。
そうして繰り出される攻撃が強くないわけがない。
しかもマロの投げた「爆弾ツブログ」は文字通り「必」ず「殺」す爆弾だ。
かつては人を殺すほどの威力は無かったらしいが、数年に及ぶ改良により破壊力が増している。
虫の息のアヤチョを仕留める程度の仕事は問題なく完遂するだろう。
だがマロの爆弾には重大な構造的欠陥があった。
持ち運びに便利だったり、奇をてらいやすいという理由で小型にしているのだが
そのせいで重量がとても軽かったのだ。
つまりマロの爆弾は小型銃同様、風に弱い。
そして、アヤチョの必殺技「聖戦歌劇」は風を巻き起こす。
いや風だけではない、落雷のような衝撃まで発生させることが出来る。
アヤチョの構えは二つあったが、「雷神の構え」を「TRUTH」と定義すれば、「風神の構え」は「REVERSE」となる。
そしてそれらの要素をシャッフル&ミックスしたのが「MARBLE」と位置づけられる「聖戦歌劇」だ。
聖女と乙女の両方の面を持つアヤチョは雷神の如き速度で手刀を振り下ろしては、
途中で手の向きを変えて、掌を大気へと衝突させる。そうすることで風神の如き爆発的な突風を起こすとが出来るのだ。
「聖戦歌劇」は一瞬のうちに爆弾を吹き飛ばし、そのままの勢いでマロの胸に落雷する。
本来はこれを七支刀で行うのが有るべき姿であるのだが、その必要はなかった。
全身をジュースに蝕まれているマロの意識を打ち切るには、ただの掌底だけで十分だったのだ。
限界を迎えたマロは、さっきまで騒々しかったのが嘘のように静かになってしまう。

「・・・・・・気絶した?」

マロの性格からして気絶した振りをしている可能性も十分ありえるが
それについてはユカニャ王がきっぱりと否定してくれる。

「それはありません。ジュースの効果が効いているので、自分の身を守る考えは浮かばないはずです。
 そもそもマロさんはもう戦闘できる身体じゃ・・・・・・」
「そういうもんなんだ・・・・・・わかったよ、じゃあ。」

そう言うとアヤチョはマロにトドメを刺すためにもう一度右腕を上げる。
人体急所の集中している顔面に「聖戦歌劇」をぶつけることで息の根を止めようと考えたのだ。
そんなアヤチョを、見るに見かねたハルナンが必死に制止する。

「やめてアヤチョ!それ以上やったらマロさん死んじゃう!」
「うん、殺すつもりだよ。」
「そんなことする必要ありませんって!」
「なんで?ハルナンを裏切ったんだよ?このまま生かしておくとまた邪魔をするよ?
 ハルナンは王様になるのと、カノンちゃんを生かすのとどっちが大事なの?」
「アヤチョさんが・・・・・・いや、アヤチョが人殺しにならない方が大事です。」
「!!!」
「だからもう止めて。お願い。」

冷徹だったアヤチョの表情が、みるみるうちに柔和なものになってくる。
自分を気遣うハルナンの気持ちが心から嬉しかったのだ。

「分かった。ハルナンがそう言うならもう殺さない。」

244名無し募集中。。。:2015/06/20(土) 20:14:41
何でも言うこと聞くなw

245名無し募集中。。。:2015/06/20(土) 20:31:55
ジャンヌを上手く取り入れてるなぁ〜

これだけ依存してるとハルナンがアヤチョを裏切った時が怖い・・・ハルナンガワルインダカラネ…ザクッザクッ

246 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/21(日) 17:20:48
なんとか死は免れたマロだが、それでも重症には変わりない。
昔から理系女子で医学薬学に心得のあるユカニャ王がマロの状態を確認し、
サユキ・サルベに医務室へ運ばせるよう命令する。

「なるべく揺らさないように運んでね。サユキなら出来るでしょ。
「もちろん。」

時間の勝負なのでサユキは急いで医者のところに向かった。
彼女の走行技術ならマロに負担を与えず走ることが可能だ。
この分ならこれ以上悪化させずに治療に入ることが出来るだろう。
となると、心配なのはアヤチョの身体だ。

「アヤチョもひどい傷……お医者さんに診てもらったほうが……」
「大丈夫だよハルナン。瞑想したら治るよ。」
「え!?」

そう言うとアヤチョは座禅を組んで、目を閉じ始める。
アヤチョのことだから本当に治ってしまいそうな気はするが、流石にそれはない。
ハルナンは無理矢理にでも医者に連れてこうと腕を引っ張る。

「ほらアヤチョ、早く外に……あ!」

ここでハルナンはアヤチョの衣が服としての体をなさぬ程に裂けていることに気づく。
スカート部分の生地はもう無いに等しいし、取っ組み合いの末に胸元もひどく開いている。
このまま廊下に出て男性兵にでも見られたら大問題だ。
真っ先にすべきは衣装をコーデすることだとハルナンは理解する。

「大変!今すぐ代わりの服を持ってくるね。」
「えーこれでいいのに。」
「ダメよ!いろいろと見えちゃってるんだから!」
「でも薄い生地の方が仏像さんっぽくてテンション上がるよ。
 アヤ、テンション低くなったら戦えないし……」
「じゃあアヤチョの好みの服を選んであげる。どういうのが理想なの?」
「理想は全裸かな!絵画に描かれる女神様みたい!」
「ダメーーーー!」

服に無頓着すぎるアヤチョに、とうとうハルナンの堪忍袋の緒が切れてしまったようだ。
年頃の女子が服を着ることの意義を熱弁し、アヤチョを説得する。
さすがのアヤチョも勢いに押されたようで、条件付きで承諾することにした。

「分かった、服を着るよ。でもその代わり、これからはアヤって呼んでほしいな。」
「アヤ……ちゃん、じゃダメ?」
「うん!それでもいいよ!」
「じゃあとびっきり似合う服を持ってくるから、アヤちゃん待っててね!」

ハルナンは早速、モーニング城の一設備であるクローゼットへと向かった。
そこは「ガールズライブ」と呼ばれており、カスタム可能な工作室まで備わっている。
多数の衣装や武具が備わっているため、アヤちゃんにピッタリなコーデも十分可能だろう。

247名無し募集中。。。:2015/06/21(日) 19:39:56
この非常時にマイペース過ぎるわ流石アヤチョw

248名無し募集中。。。:2015/06/21(日) 21:11:17
ハルナンの武器は糊の出る銃かw

249名無し募集中。。。:2015/06/21(日) 21:36:27
グルーガンかw

250名無し募集中。。。:2015/06/21(日) 23:53:43
一刻を争うのにこれからコーデかよw

251 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/22(月) 12:53:50
マロがアヤチョに敗北するとも知らず、アンジュの番長たちはフクに協力する準備を進めていた。
疲れて立ってられないフク、タケ、リナプーを休ませると同時に、カナナンが番長らの特徴について説明する。

「連携をとるには私たち番長のことを教えないといけませんね。
 詳しく説明する暇は無いんで、手短にはなりますが……」
「うん、お願い。」
「はい、まず運動番長タケちゃんについては説明するまでも無いですね。
 鉄球を武器にすることで近距離遠距離どちらも対応可能な、戦闘の要です。」
「うん、頼りにしてる。」

フクに褒められたのでタケは赤面してしまう。
フクを敵対視してはいたが、それは戦闘面でライバルとみなしていたからであって
性格はむしろ好きな方だったのだ。

「次に文化番長メイメイですが、彼女は類稀なる演技力でどんな人物でも演じることが出来ます。」
「演技力……?」

急に戦いとは関係ない特徴を説明されたのでフクはキョトンとしてしまう。
一応カナナンが説明を補足するが、それもよく分からないものだった。

「そのためにはある程度観察する必要がありますが。フクさんのコピーやったらもう十分と思いますよ。
 なぁメイメイ?」
「うん出来るよ!……"なんだか暑くなって来ちゃった……ハァ、鎧脱いじゃおうかな……"」
「私、そういうのじゃないもん……」

フクが不満顔なのも気にせず、カナナンは次のメンバーの説明をする。

「帰宅番長リナプーは国内一のブリーダーでありトリマーなんです。
 愛犬と一緒に戦うのが特徴なんですよ。ちょっと今は見えませんけどね。」
「まぁ素敵!私も犬を飼っているの。」
「戦いが終わったら毛並み整えてあげてもいいよ。」
「本当!?それと私はカニやイモリも飼ってて……」
「それは他あたって欲しいなぁ……」

252 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/22(月) 12:55:18
緊迫した回が続くと反動でノンビリした回を書きたくなっちゃうんですよw
コーデとか、自己紹介とか

253名無し募集中。。。:2015/06/22(月) 21:47:40
>>252
そういうの好きです(はぁと)

254名無し募集中。。。:2015/06/22(月) 23:08:56
そういうのじゃないもんが来たかw

255 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/23(火) 08:46:00
さっきまで敵だったというのに、フクは番長らと仲よさげに話している。
単純に話してて楽しいという理由もあるが
それ以上に、もう孤独じゃないという安心感がそう思わせたのだろう。
この新たな仲間たちとならば、どんな敵にも勝てそうな気がしてくる。

「カナナンさん、あなたはどんな戦士なの?」
「私ですか?私カナナンは勉強番長で……」

カナナンが自己紹介を始めようとしたその時、訓練場の扉が大きな音とともに開かれる。
そこから現れたのはフクと同じQ期の、サヤシ・カレサスだった。
大切な仲間の生存にフクは感激して、舞い上がってしまう。

「サヤシ!良かった、無事だったんだね!」

嬉しさのあまりフクはまたも涙する。どうやらサヤシも泣いているようだ。
もっとも、サヤシのそれは喜びからくるものでは無かったが。

「フクちゃん……助けて。」

いつもと違って弱気そうなサヤシの声にフクはドキリとした。
サヤシがそんなになってしまうほどの強敵とはいったい何者なのだろうか?
だが、今のフクの心持ちは「負ける気しない 今夜の勝負」だ。(日中だけど。)
そしてそれはアンジュの番長たちだって同じ。
ここにはモーニングとアンジュ両国の、そんじょそこらの女じゃない精鋭が6人も揃っているので
苦戦する方が逆に難しいだろう。

「安心してサヤシ、ここにいる全員が味方だよ。」

サヤシを勇気付けようとするフクだったが
次の瞬間、サヤシの感じる恐怖心をみなで共有することになる。

(!?……なにこれ、身体がとても重い!)

フクと番長らの身体は突如、鉛になったかのようにズッシリと重くなる。
こうなったらもう立ち上がることすら困難だ。全員が全員、床に膝をついてしまう。
もちろん人体が鉛になることなど有り得ないのだが
すぐそこまで迫ってきている"奴"が放つプレッシャーが彼女らにそう錯覚させたのだ。

「なんだよこの重圧……カナナン分かるか?」
「こんなん知らんわ……でも一つだけ分かる。
 アヤチョ王の本気を見た時ですらこんなプレッシャーを感じることは無かった。
 ということは、もっと上……」

まるで天空から巨大な手で押さえつけられたような感覚に6人は耐えきれなくなる。
可能であればここから今すぐ逃げ出したいところだが、それは不可能だろう。
この安心感と対をなす恐怖感の正体に、みな薄々と気づいていたのだから。

「サヤシ、あなた、誰に追われていたというの!?」
「クマ、クマ……クマイ……」

サヤシが名前を言うよりも速く、訓練場の扉がぶった切られる。
その扉のサイズは、出入りするにはあまりにも小さすぎたのだろう。
そんなに巨大な人間は世界に一人しか存在しない。
フクはゴクリと唾を飲み、その名前を口にする。

「クマイチャン様?……」

256名無し募集中。。。:2015/06/23(火) 11:23:22
進撃の熊井ちゃんキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

257名無し募集中。。。:2015/06/23(火) 12:09:22
どんだけ巨人だよ!w
食卓の騎士達は前作当時の黄金騎士クラスの化け物になってるのか…

258 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/24(水) 18:10:04
訓練場に降臨したのはマーサー王国の食卓の騎士が一人、クマイチャンだ。
これだけ大きいのだから間違いようがない。
彼女がここにいる理由については全くわからないが、
少なくともクマイチャンのターゲットがサヤシだけでは無いということはすぐに分かることになる。

「ぬあああああ!!」

クマイチャンは一瞬にしてフクのいるところまで到達し、自慢の長刀を地へと振り下ろす。
でかい図体なので動きは鈍いかもと期待したが、そんなことはまるでなかった。
身体の大きさに比例して脚も規格外に長いため、ただの一歩が非常に大きいのだ。
そして斬撃による破壊力も化け物級。
全長3mに及ぶ長刀の総重量は人間が扱う剣の比ではなく、たった一撃で床をぶち抜いてしまう。
フクらが咄嗟に危険察知して回避していなければ、今頃は床と同じようにグシャグシャにされていたのかもしれない。
こんな恐ろしい化け物からは、さっきのサヤシのように逃げ続けるのが大正解なのだが
フクとタケは先の戦いで疲労しているため、それも難しそうだ。
クマイチャンの放つ重圧で身体が鉛同然に重くなったのもここで効いてきている。
では対話でなんとかするべきか?
平和的解決を望むのが得策なのだろうか?
おそらくはそれも無理だ。
何故かは知らないがクマイチャンは殺し屋のような眼で自分たちを睨みつけている。
そんな相手に何を言えば許してもらえるのか、フクには思いつかなかった。
憧れの食卓の騎士にやっと会えたというのに、その食卓の騎士にこれから殺されると思うと涙も出てくる。
フクに出来るのは死を受け入れる覚悟をすることくらいだ。
ところが、アンジュの面々は別の覚悟をしていたようだった。

「リナプーとメイメイは配置に!タケちゃんは身体を休める!」
「!?」

カナナンがクマイチャンに立ちはだかるのを見て、フクとサヤシは驚愕する。
見るからに勝てそうもない敵を相手にして、いったい何を考えているんだろうかと思ったが
カナナン以外の番長もやる気十分なのを見て、更に驚かされる。

「メイメイ、役に入る準備はええか!?」
「当然。私はプリマドンナよ?」
「リナプーは全力で脱力するんやで!」
「まったく無茶苦茶なことを……ま、やるけど。」

もはやアンジュの行動は信じられないどころの話ではない。
周辺国に生きる者であれば誰もが食卓の騎士の噂を耳に入れているはず。
そんな相手には自分たちが束になっても
敵わないことくらい、馬鹿でも分かるのだ。
頭がクラクラしてくるフクに対して、隣で座るタケも声をかける。

「フクちゃん、ラッキーだったね。」
「え!?」

この最恐最悪な状況でラッキーとか言い出すタケを見て、フクの混乱はますます加速する。
窮地に陥るあまりとうとうおかしくなったのかとも思ったが
タケにはそう言うだけの確固たる理由があった。

「マロさんのせいでさ、食卓の騎士の中でもクマイチャン様だけには詳しいんだよ。
 他の化け物と敵対するよりは対策しやすいと思わない?」

259名無し募集中。。。:2015/06/24(水) 23:55:03
役に入る 脱力
どんな策なのかねぇ

260名無し募集中。。。:2015/06/25(木) 00:56:19
トマトを演じれば・・・って無理があるなw

261 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/26(金) 12:58:35
タケの言葉を聞いて、フクはハッとした。
番長らがクマイチャンの話をたくさん聞いてきたことで策を練れるというのならば
食卓の騎士に関する調査をライフワークにしてきた自分ならばより良い案を出すことが可能だと気付いたのだ。
よくよく見てみればカナナンの脚は震えている。タケだってそうだ。怖くないわけがない。
この状況で生き残るためには戦うしかないと理解し、震える身体に鞭を打っているのだろう。
そんな彼女らに安心感を与えるためにも、フクは自らの力を貸すことに決める。

「クマイチャン様は目が悪いよ。それと、攻撃のモーションが大きい。」

フクのアドバイスが聞こえてきたので、カナナンは少し笑みを浮かべる。
それくらいの情報は知っていたし、これからまさにそこを突こうとしていたのだが
フクが協力的な姿勢を見せてくれたことがまず嬉しいのだ。
これで勝率はほんの少しアップする。

「フクさんおおきに。じゃあメイメイ、早速覚えたての技を見せたって!」
「分かったわ……"フク・ダッシュ"!」

メイは太ももにグッと力を溜めて、それを前進するための推進力へとすべて変換する。
爆発的なダッシュの行き先はクマイチャンの長い左脚だ。
身体ごと衝突することで、クマイチャンの体勢を少しグラつかせることに成功する。
食卓の騎士の相手に捨て身で飛び込む度胸は立派だが、それ以前にフクは別のことで驚かされていた。

「あれは私の!どうして!?」

メイのダッシュはフクの得意とする走行術フク・ダッシュそのものだった。
フクとメイの体型の違いからか威力までは真似できていないようだが
構えや発動のタイミング自体はオリジナルにかなり似せている。
まるでフクが乗り移ったかのようだ。

「メイは舞台女優だからね。フクちゃん、あいつに見せすぎちゃったな。」

メイ・オールウェイズコーダーはアンジュ王国の文化番長であり、舞台女優と舞台作家を兼ねている。
彼女の演技に対する執着心は異常であり、役作りのためならばどんなことでもするという気概がある。
そして何千もの役を演じる過程で得た能力が「観察と思考」だ。
演じたいと思う対象を集中的に観察し、そしてそれになりきる自分を繰り返しイメージすることによって
台本など無くとも役にはいりきることが出来るのである。
思い返してみれば一番初めにメイがフクとタケの戦いにチャチャを入れな時は簡単にいなされたが、
マロの合図で戦いを止めた時、メイは覚えたてのフク・ダッシュでフクを転倒させていた。
この短期間にメイが観察と思考を繰り返した証拠だろう。
しかしフクをコピーしたとは言ってもそれでクマイチャンに勝てる訳ではない。
メイの体躯はフクダッシュによる体当たりの衝撃に耐えられるようには出来ておらず、
クマイチャン以上にフラついてしまっている。
そんなメイにクマイチャンが上から手で押さえつけようとしているのだから事態は深刻だ。
だが心配は無用。
カナナンの一声でクマイチャンは転倒するのだから。

「はい、ここで倒れる!」
「!?」

カナナンの言葉を聞くだけで本当に倒れてしまったので、クマイチャンは驚いた。
痛みがある訳ではない。ダメージの蓄積もほとんどない。
ただ、倒されたのだ。
まるで魔法のような攻撃を経験して、この戦いが簡単には済まないことをクマイチャンは理解する。

262名無し募集中。。。:2015/06/27(土) 11:06:16
クマイチャン相手のフクダッシュとかもう立体機動で飛びかかるイメージにしかならないw

263 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/27(土) 12:28:37
クマイチャンが大転倒したおかげで、さっきまで遠かった顔が手の届くところにまで来ている。
今こそ刀で首を跳ね飛ばすチャンスであるとサヤシは頭で理解しているのだが
恐怖のせいかどうしても身体が動かなかった。
逃走中に何度も命を奪われかけたために戦意を喪失してしまったのだろう。
そんなサヤシの頭をカナナンがポンと叩く。

「ええんやで。」
「!」
「ぶっちゃけ私も怖くて一歩も動けへん。でもな、その代わり指示出しだけはキッチリやるつもりや。
 貴方は戦わなくてもいい。ただ、フクさんを護ることだけは気合入れてな。」
「ウチが……護る……」

サヤシを励ましたカナナンはすぐに次の指示に入る。
今が勝負の書き入れ時なので一秒も無駄には出来ないのだ。
4番長の中でアタッカーの役割を担うタケを欠いた現状でも、攻撃のしようはいくらでもある。
勉強番長カナナンは脳をフル回転させて、メイを動かしていく。

「フクさん!5時の方向10歩のところに"ブイナイン"有り!フク・バックステップは出来るか?」
「え?私?」
「フクちゃん、カナナンはメイに言ったんだよ。」
「あ……なるほど、私になりきってるのか。」

メイはカナナンの指示通りに素早くバックステップし、
タケが投げっぱなしにしていた鉄球「ブイナイン」を拾い上げた。
演技の自由度をあげる目的で普段武器を持たないメイだが、これなら敵に決定打を与えることが出来る。
もちろんフクの演技じゃボールは投げられないので、役をタケへと切り替える。

「うおおおおおお!アイラブベースボール!野球以外愛せないぜ!!」

誇張的表現にタケはイラっとしたが、これで勝機が見えてくる。
うまく頭にでもぶつけたらたいへん有利になるだろう。
しかしそれはクマイチャンも十分承知。
デッドボールを喰らうのは御免被るため、まずは上半身を起こそうとする。
ところが、カナナンの指示がそうはさせなかった。

「クマイチャン様は起き上がれない!」
「は!?」

馬鹿げたようなことではあるが、クマイチャンは本当に起き上がることが出来なかった。
頭が何故か重くなってるし、両腕もそれぞれ引っ張られているような感覚がある。
金縛りのようなものなので、フルパワーを出すことでなんとか動けたものの。
その時には既にメイによる速球が投げられていた。
タケのように豪速球とはいかないが、額に命中するには十分なスピードだった。

「あでっ!」

このように見事にペースを掴んでいるカナナンとメイを見て、フクは感心する。
それと同時に、番長に対して一つの疑問を浮かべていた。

(リナプーって人、さっきから見えないけどどこに行ったんだろう?)

264 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/27(土) 12:30:11
実は今、アンジュルムのイベントに来てますw
待ち時間にもっと更新できるかも。

265名無し募集中。。。:2015/06/27(土) 13:39:44
wktk

266名無し募集中。。。:2015/06/27(土) 14:06:35
ビグザムに立ち向かうガンダム想像したw
イベントとは羨ましい…

267 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/27(土) 21:34:33
結局書けず、こんな時間に・・・・・・これから続き書きます。

ただ、イベントのおかげでモチベーションは大幅に上がりました^^
特に3期メンバーとは初握手だったので、はやく第二部に入って登場させたいと思いましたね。

268名無し募集中。。。:2015/06/28(日) 00:55:14
モチベーション上がってこりゃ続きもクマイチャンばりに期待大です

269 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/28(日) 01:56:03
クマイチャンのイライラは相当なものだった。
おでこに受けた鉄球はまだ我慢できるのだが、
たまに身体が言うことを聞かなくなるのが鬱陶しすぎる。
まるで透明人間に転ばされたり、押さえつけられたりしているかのよう。

(まぁそんなワケ……ん?)

透明人間というワードに気づいたクマイチャンは、昔を思い出して背筋を凍らせる。
数年前の大事件で、クマイチャンは「己の姿を極力見えにくくする戦士」と戦ったことがあった。
クマイチャンはフク達から化け物のように思われているが、クマイチャンからしてみたらその戦士こそが本当の化け物。
そして今現在、自身を悩ませている存在が同じ手法を取っていることは十分に有り得る。

(だったら簡単だ。こうすりゃいい。)

クマイチャンはドンと床を叩き、訓練場内を強く揺らす。
そのインパクトは人間の起こしたものとは思えぬほど凄まじく、メイを簡単に転ばせることに成功する。
そしてメイ以外にももう3つ。あちこちから倒れる音が聞こえてきた。

「人間の倒れる音が1つ。あとの2つはなんだろう?小さいな。
 まぁいいや、居ると分かっただけでも十分。」

カナナンの焦りの表情が、クマイチャンの推理が正解であることを裏付けている。
透明人間の正体は4番長の一人、帰宅番長リナプー・コワオールドだったのだ。
彼女は、クマイチャンが化け物と考える戦士の透明化術をマロ・テスクから教わっていた。
もともと影の薄いリナプーにその術はピッタリ。すぐに使いこなすことが出来たという。
しかもダッシュやバックステップで素早く動くメイに対して、リナプーの動きは非常にスロー。
よって、目の悪いクマイチャンには必要以上に見え難かったのだ。
しかしそれもここまで。クマイチャンに同様の足止めは通用しないだろう。
透明人間の存在に気づいた今、クマイチャンはちょっとやそっと邪魔されようと怯みはしない。
メイがまた高速移動で錯乱しようとも、無視して前進する。
クマイチャンの一番の目的はフクを倒すことだったので
鉄球を投げつけられようとも、小さな何かに噛みつかれようとも、動きを止めず接近するのだった。
そしてフクを射程に捉えるなり、自慢の長刀を振るっていく。

「終わりだよ!」
「!!……」

どんなものでもぶち壊す長刀が襲いかかるのを見て、フクはまたも死を覚悟する。
だがそんなことはサヤシが許さなかった。
フクを護る任務を請け負った彼女は、持てる力の全てを居合刀に乗せて長刀へとぶつけたのだ。
破壊力こそクマイチャンに劣るが、それは抜刀の速さ、そして勢いがカバーしてくれる。
ただの一撃防ぐだけで全身がビリビリと痺れるが、なんにせよフクを護ることは出来た。

「サヤシ!」
「良かった……ウチも少しは戦えそう。」

サヤシの行動で状況が好転するのをフク、そしてカナナンは感じた。
ただ戦力が一つ増えただけではない。
メンタルをやられていたサヤシが立ち上がることによって、全体の士気が上がったのだ。
しかもフクとタケの疲労もやや収まってきている。
この状況ならば戦況を次の段階へと進めることが出来るだろう。
それを確実にするために、フクはクマイチャンのもう一つの弱点をカナナンに伝える。

「今のクマイチャン様は、必殺技を使えないはず!」
「そやな、条件が整ってない。てことは決定力に欠ける訳か。」
「そう。サヤシがすべての攻撃を防げば、私たちが負けることは無いよ!!」

270 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/28(日) 16:22:51
アヤチョやマロと同様に、クマイチャンも必殺技を持っていた。
ハルナンは知らなかったようだが、食卓の騎士に詳しいフクや番長らにとっては常識だった。
そしてクマイチャンの必殺技、その名も「ロングライトニングポール」にはとある制約がある事も知っている。
それは、馬に騎乗していない使えないということ。
馬の走行時に空気と肌が衝突することで電気のようなピリリとした感覚を受けるのだが
それによって感性が研ぎ澄まされ、相手を斬るべき道筋が柱のように見えるのがこの技の全貌だ。
つまり足をベタ付けしているクマイチャンには必殺技を放つことが出来ない、というのがフクの見解である。
その通りならば確かにクマイチャンはサヤシのガードを打ち破ることは難しかっただろう。
ただし、それは数年前の話。
今のクマイチャンが昔と比べて成長していないはずがなかった。

「そっか、必殺技を使って良かったんだ。」

クマイチャンのその一言が、フクの肝を冷やした。
普通の相手ならば苦し紛れのハッタリであることを疑ったかもしれないが、
相手は食卓の騎士のクマイチャンだ。嘘をつくメリットがない。
では馬なしでどうやって技を実現するのか?
その答えも、すぐに示してくれた。
「ロングライトニングポール、"派生・シューティングスター"!!」

"派生"。その単語はフクも番長らも聞いたことが無かった。
しかし、ただならぬ異質さは確かに感じられる。
クマイチャンは技の名を言いあげるやいなや、大きくジャンプをして
自身の元々の身長も相まってあっという間に訓練場の天井にまで届いてしまった。
もう十分高くにいるが、クマイチャンは満足しない。
長刀の一振りで天井を木っ端微塵にし、更に上へと上昇する。
それだけでも既に恐ろしいが、これから起こりうることを想像すると吐き気がしてくる。
カナナンの役割は指示出しであるが、こんな指示しか出せなかった。

「みんな……ここから逃げて。」

カナナンに言われるまでもなく一同は蜘蛛の子を散らす勢いで逃走していくが
次のクマイチャンの攻撃の方が速かった。
何故なら彼女は流星ガールだから。

「うおおおおおおお!!」

跳べるところまで跳び切ったクマイチャンは地上へと激しい勢いで落下していく。
その時のクマイチャンがピリリと感じる感覚は、騎乗時のものと同等。
つまり、今のクマイチャンには斬るべき場所を指し示す柱のイメージが見えるのだ。
クマイチャンの狙いは誰か一人ではない。全員だ。
さっきまで立っていた床に、流星の如きインパクトで斬りかかることで
訓練場中の床をグシャグシャにしてしまう。

「うわぁ!!」
「嘘でしょ……こんなことって……」

辺り一面が壊滅した様を見て、フクらは呆然とすることしか出来なかった。
こんな瓦礫だらけの床ではもう走ることは出来ない。
それに、どこに逃げたとしても流星から逃れることなど出来やしないのだ。

「格が……違いすぎる……」

本日何度目かは分からないが、フクはまたも涙を流してしまう。
一度でも伝説の存在であるクマイチャンに勝てると思ったことがそもそもの誤りだったのだ。
格の違いを痛感し、このまま一人一人殺されることしかあり得ないことを誰もが理解する。

271名無し募集中。。。:2015/06/28(日) 21:25:35
クマイチャン強すぎwでも今の世代は当時の食卓の騎士達と比べるとどうも弱腰だな…それだけ平和の時代が長かったって事か

272 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/29(月) 23:25:36
クマイチャンは一つ、また一つ瓦礫を踏みつけながら前へと進む。
長い脚からなる彼女の歩幅なら、フクのところに辿り着くのはあっという間だった。
そしてそれは同時にフクの死が近いことを意味する。
もはやフクも今更抵抗したところで無駄だということは承知しているのだが
ただ一つだけ、結末を変えたかった。

「クマイチャン様、一つだけ良いですか?」
「……なに?」

ここで問答無用で斬るのは簡単だが、それはクマイチャンの騎士道に反する。
殺戮が目的ではないので、辞世の句くらいは読ませてやりたいと考えているのだ。

「えっと、私の命と引き換えにそこにいる皆を見逃して欲しいんです。」
「……!」
「きっとハルナンに言われて遥々ここまでいらっしゃったんですよね?
 ハルナンの目的を叶えるには私の死だけで十分なはずです。
 だからサヤシと、アンジュの番長たちは助けてあげてください。」
「分かった。約束するよ。」
「良かった……」

フクは心から安心する。
未練がないといえば嘘にはなるが、最悪の事態からは抜け出すことが出来た。
もっとずっと長生きしたかったがこれも仕方のないこと。
戦士として生き、戦士として死ぬことが出来るなんて喜ばしいじゃないか。

(願わくば私のヒーローに再開したかったなぁ、生まれ変わったら会えるのかなぁ)

フクが大人しくなったので、クマイチャンは長剣を天高く掲げだす。
このまま一気に振り下ろし、一瞬で命を奪ってやろうと考えているのだ。
痛み無く殺してあげるのがせめてもの情けになるのだろう。
ところがここで事態は急変する。
クマイチャンの剣が突然重くなって、持っていることが出来なくなり、地面へと落としてしまったのだ。

「うわぁっ!!重い!!」

クマイチャンの長刀は元から重かったが、今の重さは通常時の倍はある。
その原因は刀身に十数個もこびりついている謎の石だった。
音も無く、衝撃もなく、いつのまにか剣にくっついていたのである。

「これは、まさか!」

次の瞬間、訓練場の室温が一気に下がったのをフクやサヤシ、そして番長らは感じる。
いくら秋とは言っても、いくら屋根が壊れたと言っても、この凍えるような寒さは異常だ。
それもそのはず。この冷気は錯覚なのだ。
クマイチャンの殺気が一同の身体を鉛のように変えたように、
新たにここに現れた人物は、全てを凍てつかせる程の存在感を放っていたのである。
とても嫌な空気ではあるが、フクは嫌いではなかった。
フクの目からはまた涙がこぼれ落ちてくるのだが
その涙はもう悲しみの涙ではなかった。
待ち望んでいた人物に会えたことによる、喜びの涙なのだ。

「来てくれたんですね……私のヒーロー……!!」
「うちのクマイチャンが迷惑かけちゃって……すぐ反省させるね。」

273 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/29(月) 23:27:10
今の戦士はまだまた弱いですけども
段々と強くなっていく様を描いていきたいですね。

274名無し募集中。。。:2015/06/30(火) 00:51:22
ヒーローあらわる!そしてクマイチャンの冥福を祈ろう…w

275名無し募集中。。。:2015/06/30(火) 11:06:19
そのヒーローは現在違う国の宰相じゃないのか

276 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/30(火) 12:59:21
その戦士はクマイチャンと比べるとあまりにチンチクリンだった。
脚はコンパクトだし、スタイルも良くないし、髪型も変な形のツインテールだし。
だというのに番長らもサヤシも、このチンチクリンからはクマイチャン以上の圧を感じていた。
その存在について僅かながら知っているタケが、隣のサヤシに話しかける。

「あれは、いや、あの方は食卓の騎士のモモコ様だよ、きっと。」
「食卓の騎士!?それにしてはあまり強そうには……」
「それは見た目の話。このオーラを感じてないワケじゃないだろ?」
「うん……全身の血が凍ってしまいそうじゃ……」
「従姉妹の姉ちゃんが言ってた。モモコ様は食卓の騎士で最も恐ろしいって。
 そんな人が助けに来てくれたんだ。フクちゃん助かるよ!」
(従姉妹?タケちゃんの従姉妹もフクちゃんみたいに食卓の騎士の調査をしとるんじゃろか。)

タケの言う通り、新たにこの場に現れたのは食卓の騎士が一人、モモコだ。
食卓の騎士はベリーズ戦士団とキュート戦士団の二つに分かれているのだが、
モモコはかつてベリーズの副団長を務めていたほどの猛者だと言う。
そんなモモコがクマイチャンを見上げながら口を開いていく。

「クマイチャン、あなた大人気ってものをねぇ……」
「モモ!モモは騙されてるよ!」
「はぁ!?」

食い気味にクマイチャンが反論してきたのでモモコは意表を突かれてしまう。

「そのフクって子はモーニング帝国を陥れようと計画してるんだよ!
 だからウチらは最重要同盟国として退治しなきゃならないんだ!そうでしょ?」
「クマイチャン、それ誰から聞いたの?」
「えっ、それは……」
「まさかだけど、団長や副団長の指示もなく勝手に動いてるんじゃないでしょうね……
 私たちのような存在が好き勝手に暴れたら国の一つや二つ簡単に滅んじゃうことを理解しているの?」
「うぅ……」

化け物のようなクマイチャンがモモコ相手に小さくなるのを見て、一同は目を丸くする。
やはり思った通りにモモコは只者では無かったのだ。

「まぁいいわクマイチャン、独断専行については私も人のこと言えないしね。
 で、クマイチャンはどうするの?」
「え?」
「これ以上モーニング帝国で暴れるなら私はクマイチャンを殺すしかないって言ってるの。
 最重要同盟国として、モーニングに害をなす巨人を退治するってこと。」

モモコの発言にクマイチャンは激昂した。
そっちがその気なら、クマイチャンにだって覚悟はあるのだ。

「まだ騙されてることに分からないのか!いくらモモでもウチは斬るよ!?
 もう副団長と団員の関係じゃない。二人は対等なんだ。
 自分だけ死なないとでも思ってるんじゃないの!?」

モモコは溜め息をつきながら、戦闘の準備を開始する。
やはりこうでもしないと事態解決は不可能だと理解したのだ。
そんなモモコに対して、フクが声をかける。

「モモコ様!微力ながら私もお手伝いを……」
「ん、邪魔かな。」
「えっ……」
「ファンレターありがと。嬉しかったよ。でも助太刀はいらない。
 人を庇いながら戦って勝てるほどクマイチャンは弱くないから、あなた達今すぐ出てってくれる?」

277 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/30(火) 13:00:49
モモコとカントリーの関係はゆっくりと明らかにしていきます。

278名無し募集中。。。:2015/06/30(火) 14:08:21
レジェンド対決か

279 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/30(火) 19:42:38
読み返してみたら誤りがあったので訂正します。
サヤシが心の中で「タケちゃん」と呼んでますが、この時点ではまだ親しくないので「このタケって人」に読み替えてください。

もしくは出会って数分で友達認定したということでもいいですw

280名無し募集中。。。:2015/06/30(火) 21:54:02
サヤシが速攻友達?ないないw脳内変換しときます
ってサラッとカントリーも構想に入ってるのか…

281 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/01(水) 21:10:44
フクが食卓の騎士の中で特にモモコを慕っていたことを知るだけに、
サヤシとタケにはモモコの物言いがとても冷たいように思えた。
ところが当のフクは気にするようなそぶりを全く見せておらず
モモコの仰せの通りに、一目散に出口へと向かっていくのだった。

「分かりました、頑張ってください!」
「あ!フクちゃん待って〜」

アッサリと退いたフクにあっけにとられる一同だったが、すぐに後を追いかける。
確かにフクは出来ることならモモコと共に戦いたかっただろう。
それが無理だとしても、憧れの戦士の戦いっぷりを拝見したかったに違いない。
でも、それでモモコが迷惑を被るのは本意ではないのだ。
フクは自分の書いた手紙をモモコが読んでくれるだけで十分に嬉しいと思っている。
ファンとは、そういうものなのかもしれない。

「さて、二人きりになったことだし始めようか。」
「うん。日頃のモモへの恨み、ここで晴らさしてもらうよ。」
「恨み?何かしたっけ。」
「私から大切なものを奪った!!モモに勝って、取り返すんだ!!」
「あぁそういうこと。だって私の方が上手く使えるじゃない。」

まさに二人は一触即発。
待った無しの殺し合いがすぐに始まることを両者とも理解していた。
ところが、此の期に及んでも邪魔者は現れる。
壁に仕込まれていた隠し扉を開けて、モーニング帝国の王であるサユがやってきたのだ。
嫌がるクールトーンを無理やり抱えながら。

「おひさ〜。」
「「サユ!」」

よりによって王が登場したのでモモコもクマイチャンもひどく驚いた。
思えば王国の城内で食卓の騎士が暴れるのは大問題なので、止めに来たのかもしれない。

「どうしたの?喧嘩は辞めろって?」
「とんでもない!続けて続けて。」
「「!?」」
「ベリーズ同士の決闘を止めるなんて勿体無い。じっくり見させてもらうわよ。ねぇクールトーンちゃん。」
「ひぇぇ……は、はい……」

はじめはおかしなことを言うと思ったが、モモコはすぐに意図を理解した。
要するに、サユの眼は未来を見ているのだ。

「そういうことね。別に見学くらい構わないけど、クマイチャンはどう?」
「いいよ!ただ、巻き添えを喰らっても知らないからね!」
「見くびられちゃった。邪魔になるほど衰えてないのにねー。」
(この人たち……怖い……)

282名無し募集中。。。:2015/07/01(水) 23:55:17
大事なものって…なるほどそりゃ納得だけどクマイチャン怒る訳だ

てかクールトーン巻き添えw

283 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/02(木) 12:57:24
「それじゃさっそく……」

クマイチャンはモモコの「謎の石」が十数個くっついた長刀を片手で持ち上げる。
先ほどは不意を打たれたので支えきれなかったが、重くなったことを知っていればなんてことはないのだ。
そしてせっかく持ち上げた刀を勢いよく床へと叩きつけた。
現在の床は瓦礫の山。そこに衝撃が加わったものだから瓦礫の破片は全方位へと飛散する。
攻撃の対象がモモコのみではないことにクールトーンは恐怖した。

「……!!」
「怖がらなくていいよ、これくらい余裕で捌けるから。」

クールトーンを左腕で強く抱きしめたまま、サユは右手のレイピアで全ての破片を叩き落す。
全くの無傷で済んだのでクールトーンは驚いたが、サユは当然と言ったような顔をしていた。
サユはプラチナ剣士時代から(自称)可愛い顔が傷つかぬように回避術を極めていたので
現役を退いた今でもこれくらいのことは容易く出来てしまうのだ。
そうでもなければこんな特等席で戦いを見ようなどとは思わなかっただろう。

「クールトーンちゃん、戦いから目を逸らしちゃダメ。ほらモモコを見て。」
「あっ!?」

サユやクマイチャンと同格であるモモコも当然のように無傷だった訳だが、おかしな点が一つあった。
それはまったく武器を持っていないということ。
破片から身を守る道具が見当たらないと言うのに、全弾防ぎきってしまったのである。

「なんですかあれは!?ひょっとして魔法とけ……」
「何言ってるの、この世に魔法は存在しないのよ?」
「えっ、でもエリポンさん……」
「クールトーンちゃんに課題を与えるわ。今から戦いが終わるまでにモモコの攻撃を一つは見破りなさい。
 それが出来なかったら、クールトーンちゃんはクビよ。」
「ええええ〜!?そんな、難しいです!」
「出来るわ。いつものようにモモコの行動を一つ一つメモするのよ。
 それが出来た時、あなたはただの書記係じゃなくなるはず。
 全ての脅威からは私が守ってあげる。だから、ちゃんとその眼で見なさい。」

284名無し募集中。。。:2015/07/02(木) 23:52:30
モモの攻撃って暗器か…色々恐ろしくバージョンアップしてるんだろうなぁw

285 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/03(金) 08:24:45
今からほんのちょっと前。
まっさきに訓練場から出たフクは、そこで思わぬ人物に遭遇していた。

「あれは……ハルナン?」

遠くてやや見えにくいが、その人物は確かにハルナン・シスター・ドラムホールド。
今回の事件の首謀者だ。
親友アヤチョの服を見繕って、ちょうど指令本部である作戦室に戻るところだったのである。
本来ならばフクはサヤシや番長らと合流するのを待つべきだったのかもしれないが
思わず身体がハルナンを追いかけてしまった。
彼女もマロ・テスク同様に食卓の騎士に熱い思いを寄せる信奉者であったため
クマイチャンを騙したことが許せなかったのだ。
ここで逃せばいつハルナンを討てる分からないため、勝手に身体が動いてしまったという訳なのである。
だが単騎で敵地に乗り込ませるようなことは運命が許さなかった。
フクの次に訓練場から出てきたサヤシはかろうじて走るフクに気づけたので
フクを護るためについていくことが出来たのだ。
しかし他のアンジュの番長らが出てくるのは残念なことに遅かった。
訓練場の床はご存知の通りクマイチャンがグシャグシャにして、非常に歩きにくくなっていたので
脱出時間にタイムラグが生じてしまったのである。
先に出たはずのフクとサヤシが消えていため、タケ達は混乱する。

「え!居ない。」
「ここに留まっててクマイチャン様の餌食になるのはたまらんからな、きっともう何処かに逃げたんやろ。」
「そっか!じゃあ私たちもはやく逃げようぜ!」

せっかく合流したというのに、番長らはもうフクと離れることになってしまった。
特にタケは出来ることならばフクに襲い来る火の粉を直接払ってやりたいと思っていたことだろう。
でも、近くにいなくたってそれは出来る。
城内にまだ多く存在するフクの敵を懲らしめるのが自分たち番長の役目だと理解しているのだ。
だが何かおかしい。
アンジュの4番長はその名の通り4人で構成されているのであるが
この場にはカナナン、タケ、メイの3人しか居なかったのだ。

「リナプーはどうした?」
「おーい、リナプーおるかー?」

返事が返ってこないことから、得意の透明化で消えている訳ではないことは分かった。
それではまだ訓練場に取り残されているのだろうか?
もしそうだとしたら一大事だ。

「どうする?戻る?」
「メイ、お前あそこに戻れるってのか?」
「ごめん無理……プレッシャーで吐いちゃうかも。」
「リナプーは馬鹿じゃないし、きっと一人で上手くやってるんだろ。
 ひょっとしたらフクちゃんのところにいたりしてな。」

286 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/03(金) 08:25:30
モモコの戦闘描写はまだ先になりそうですw

287 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/03(金) 21:07:19
「ヤバイことになってきた〜!!」

訓練場を覗き見ていた連絡担当サユキは焦りを隠せなかった。
流星ガールクマイチャンの落下音が凄かったので何だろうと向かってみれば
そこではモモコがフクに加担していたのだから、驚くなというのが無理な話。
この特ダネを司令担当に伝えるのが役目なので、サユキは急いで作戦室に戻ろうとする。

「モモコ様はクマイチャン様が食い止めるにしても、番長の対策はどうするんだろう。
 やっぱりそろそろ私も戦うべき?ユカニャ王が推薦してくれないかなー。」

サユキ・サルベは自分の実力に自信を持っていた。
純粋な破壊力なら弓矢使いのトモに劣るが、総合力なら負けていないと信じている。
とは言っても立場上、戦闘命令がない限りは連絡係に徹するしかない。
さっさと戻って、ハルナンにありのままを伝えることが最優先事項なのだから。

「ねー、止めてくれない?」

突如、何者かの声が聞こえるのをサユキは感じた。
しかし辺りを見ても誰の姿も見当たらない。
普通の人間ならば空耳かと思ってスルーするところだろうが
サユキはこの声を無視することは出来なかった。
何もないように見えるが、目を凝らすとそこには確かにいる。
サユキはビシッと指差しながら、声の主の名前を叫んでいく。

「リナプー!そこか!」
「!?」

いきなり名を呼ばれたのでリナプーは驚いてしまった。
リナプーは自らを見えにくくする透明化術を得意とするが
かつて共闘したことのあったサユキにはトリックのタネを知られていたのだ。

「こうやって会話するのは久しぶりだね。リナプー。」
「!?」
「数年前のプログラムみたいにまた協力出来ることを期待していたけれども、」
「!?」
「まさか私たちを裏切るなんてね。敵として出会うなんて思いもしなかったよ。」
「!?」
「でもリナプーは私には勝てない!何故なら私には透明化は通用しないから!」
「!?」
「そして私は長年の修行とジュースのおかげで重力を消せるようになったんだ。」
「!?」
「だからこの勝負は私が……って、いくらなんでも驚きすぎじゃない?」
「だって猿が喋ってるんだもん……」
「殺す。」

サユキは愛用するヌンチャク「シュガースポット」を取り出して、リナプーへと殴りかかった。
猿呼ばわりされた怒りと、これまで戦いを抑制されたことによるイラつきがこめられているため
繰り出される打撃はなかなか強力なものになっていた。
しかしその一撃はリナプーには届かない。
「何か透明なもの」がサユキの脚に噛み付くことで攻撃を妨害したのだ。それも2匹。

「痛ぁっ!?なにこれ、犬!?」

サユキを噛んだのはリナプーの武器であり、愛犬でもある「ププ」と「クラン」だ。
この2匹はリナプーと同様の透明化が施されており、しかも飼い主によく懐いている。
リナプーの頼みであれば相手がクマイチャンだろうと立ち向かう忠犬なのである。

「別に敵対心向けてもいいけどさ、司令に連絡だけは辞めてね。
 タケとか、みんなも、今すっごく必死になってるの。
 だからお猿さん、邪魔するようだったらここで寝てもらうよ。」

リナプー・コワオールドとサユキ・サルベ。
犬猿の戦いが今始まる。

288名無し募集中。。。:2015/07/03(金) 23:23:40
ププきたーーーww
犬猿ときましたかww

289名無し募集中。。。:2015/07/04(土) 00:35:56
なるほどそうきたか!w気がつきゃいつめんもいたりして?

290 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/04(土) 18:03:35
クマイチャンの落下音に興味を惹かれたのはサユキだけでは無かった。
捜索隊を引き連れたハル、マーチャン、アーリー達も近くまで来ていたのである。
爆音の件についてハルがアーリーに問いかける。

「なんだったんだろう?あの音。」
「さぁ?流れ星とかですかね。」
「ははは、そんな訳ないじゃん。面白いな。」

近くで一大事が起きているとも知らず、二人は呑気なものだった。
ところがただ一人、マーチャンだけは身体を小刻みに震えさせている。
大自然に囲まれて育ったという経歴を持つため、脅威に敏感なのかもしれない。

「どうしたマーチャン?怖いのか?」
「怖い……けどそれよりも、なんか身体がジンジンする……」
「ひょっとして病気!?」
「違うの!早く誰かと戦いたくてモヤモヤしてるの!」
「だって、サヤシさん居ないんだから仕方ないだろ……
 あのジッチャン達が役立たずだから見つからないんだ。」
「もういい!ドゥーと一緒じゃサヤシすん絶対見つからないよ!
 もうマーが一人で探してくるんだから!バイバイ!」
「お、おい!」

痺れを切らしたマーチャンは通路に向かって走って行ってしまった。
ハルとしては強く引き止めるべきなのだろうが、
サヤシの捜索が最優先なので放ってとくことにした。
そしてそれが結果的に功を奏する。

「ったく、マーチャンは……」
「ハルさん、ハルさん。」
「なに?ちょっと今たいへんなんだけど。」
「あれ、サヤシさんじゃないですか?」
「えええ〜〜!?うわ、フクさんまで!!」

マーチャンとは異なる通路を、サヤシ・カレサス、そしてフク・アパトゥーマが走って通過する。
この二人はまさにハルナンを追いかけている真っ最中だったのだ。
思わぬ収穫を得たので、ハルはニヤリとする。

「やったぞ。フクさんとサヤシさんを倒せば手柄はハルとアーリーちゃんの二人占めだ。」
「え?マーチャンさんは呼ばなくていいんですか? それに手柄は一般兵の人も……」
「マーチャンは単独行動してるからいいんだよ。
 ジッチャン達だってあの二人には手も足も出ないさ。戦力にならない。
 だから、手柄を貰うのはハルとアーリーちゃんの二人だけってこと!」
「はぁ〜〜なるほど。」

291 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/05(日) 12:41:58
「はぁ、私はとっても不幸者。」

周囲が慌しい中、オダ・プロジドリは独りでポツポツと歩いていた。
彼女がハルナンに任された役割は"処刑"。
つまり裏切り者を切り捨てる役目なのだが、その情報が耳に入らないので暇をしているのだ。
アンジュの番長が反旗を翻したので活躍どころはそろそろ来るはずだったが、
その報せよりも早く、思いがけぬ人物が登場する。

「オダちゃん!」
「マーチャンさん?そんなに息を切らしてどうしたんですか……」

ゼェゼェと肩で息するマーチャンを見て、裏切り者速報を届けてくれたのかもとオダは期待した。
だがマーチャンはいつも予想を越えてくれる。
今回もまた、オダの思惑通りには動いてくれないかった。

「もうサヤシすんじゃなくていい、オダちゃん、戦おうよ!」
「はっ!?」

マーチャンの口から飛び出たのは決闘のお誘いだ。
戦闘に飢えるあまり、もはや見境がつかなくなってるのだろう。
また、クマイチャン出現による得体の知れぬ不安感を晴らしたいという意味もあるのかもしれない。
とは言え、オダの立場上そう簡単に果たし状を受け取るわけにはいかない。

「待ってください、仲間同士で戦うのは命令違反ですよ。
 それじゃまるで裏切り者……んん?」

ここでオダ・プロジドリはハッとした。
もしもマーチャンがここで攻撃を仕掛けるのであれば、それは立派な裏切り行為だ。
そしてオダ・プロジドリの仕事は裏切り者を処刑すること。
何の問題も無いではないか。

「……いいですよ。やりましょう。」
「本当!?やったー!だからオダちゃん大好き。」
「私もこの右手の疼きを止めるのに苦労していたとこだったんですよ……」

戦闘に飢えているのはマーチャンだけではなく、オダも同じ。
元よりマーチャンとはどちらが強いか決着をつけたいと考えていたので、好都合だ。

「さぁ、やりましょうマーチャンさん。ルール無しの真剣勝負ですよ。」
「知ってる!!」

バトルが開幕するなり、マーチャンはすぐさまオダに体当たりを仕掛けた。
狙いはオダを背後の扉の向こうに連れていくこと。
自分がどこに運ばれたのか把握したオダは瞬間的に後悔する。
マーチャンは衝動的ではなく、計画的に勝負を仕掛けてきたことに気づいてしまったのだ。

「ここは!まさか……」
「オダちゃん言ったよね。ルールは無いよ。
 ここにあるすべての武器がマーの武器なんだよ。凄いでしょ。」

二人が入った部屋は、ガールズライブのような煌びやかな施設とは対照的だった。
その部屋の名は「モーニングラボ」。
帝国剣士ならびに兵士らが扱う武器や重火器を開発・テストする研究室なのだ。
開発最高責任者としての肩書きを持つマーチャン・エコーチームにとって、ここは庭のようなもの。

「マーチャンさん……少し大人気なくないですか……」
「だってマーチャンまだ子供だもん。」

292名無し募集中。。。:2015/07/05(日) 14:16:41
まーさく対決きた!ってマーチャン開発最高責任者だと!?しかも策士…

293名無し募集中。。。:2015/07/05(日) 16:25:44
マーチャンが肩書き持ちだったとは…

294 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/06(月) 00:39:03
まーちゃんがipadを使いこなしたり、12期にオリジナルCDを作ったりしたらしいので
モーニング帝国の開発役になってもらいましたw

295 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/06(月) 08:42:56
タケ、カナナン、メイの3人はフクを追うために城内を走り回っていた。
先ほどはバテバテだったタケも、もう体力をほぼ回復させている。
もともとフクからそんなに攻撃を受けたというわけではないので
疲労さえ無くなれば元気に戦うことが出来るのだ。

(よし、調子戻ってきたな。これならちゃんと戦えそう。
 天気組団や果実の国にはそこまでヤバそうな奴は居なかった。
 例えカリンが来たとしても問題ない。私はやれる。)

今のタケには迷いはなかった。
旧友フクを「倒す戦い」よりは、「護る戦い」の方が遥かにモチベーションが上がっているのである。
それに今の自分には頭の良いカナナンや、臨機応変に対応可能なメイがついている。
リナプーこそ居ないが、このメンツならばどんな敵でも対応可能と信じていた。
だが、その思いはすぐに断ち切られることになる。
はじめに異変を感じ始めたのはメイだった。

「ねぇ、なんか蒸し暑くない?」
「そやな……なんかジメジメしてるような」

季節はもう秋だというのに梅雨の時期のような湿度の高さだ。
さっきからこれが続いているのならまだ分かるが
急にムワッとしてきたのでおかしく感じるのも無理はない。
そして番長の中では唯一タケだけがこの異常の正体を知っていた。

「嘘……だろ……そんな馬鹿な……」

元気を取り戻しつつあったタケがいきなり腰を抜かしだすので、二人は驚いた。

「どうしたのタケちゃん!?」
「終わりだ。私たちはもうここで終わりなんだ……」
「弱気なこと言うなんてタケちゃんらしくもない!
 クマイチャン様のこと恐れとるんか?それならモモコ様がちゃんと……」
「違う!クマイチャン様よりもっとヤバいんだ!!
 残念だけど、もうフクちゃんを護れない……」

タケがそう言うと同時に、向こうの通路から強烈な暴風雨か襲いかかってくる。
雨粒が身を打つ痛みは非常にリアルなものだったが、これは現実ではない。
クマイチャンが全身を鉛に変えたように、モモコが冷気で体中の血を凍らせたように
この大雨も何者かによるプレッシャーが生んだイメージだったのだ。
まるで向こうから台風そのものが迫り来るような重圧に、カナナンとメイも恐怖する。

「タケちゃん!そこに居るのはひょっとして……」

言い終えるよりも早く、カナナンは何者かに鳩尾を殴られてしまった。
あまりの早業にタケもメイも全く追いつけない。
そして身構える前に、カナナン同様に2人も腹に強打を受けることになる。
まさに神速とも言えるその存在は、タケとメイが崩れ落ちるのを見届けながら口を開く。

「ついさっきハルナンから聞いたぞ、お前らも反乱軍に加担したんだってな!
 足腰立たなくなるまで性根を鍛え直してやるから覚悟しろ!!」

タケの身体の震えは最高潮になる。
過去にこの闘士から何度も何度もボコボコにされた記憶が蘇ってきたのだ。
この人にはもう勝てないと、遺伝子レベルで刷り込まれている。

「特にタケ!お前がついておきながら何をやってるんだ!」
「マイミ……姉ちゃん……」

その名はマイミ。
食卓の騎士に2人存在する騎士団長の1人だ。

296 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/06(月) 08:53:02
各所でのマッチアップは完了しましたので、
これからはそれぞれの戦いをひとつずつ書いていきたいと思います。
全部終わるのはいつ頃になるのだろう、、、

297名無し募集中。。。:2015/07/06(月) 09:19:23
助っ人二人ってもう一人はアヤチョ王かと思ってたらまさかのマイミ団長だったとは…そしていきなり腹筋チェック(腹パン)w

なんか食卓の騎士が敵になったときの絶望感…読んでて胃がキューっとなる

298名無し募集中。。。:2015/07/06(月) 14:33:45
ハルナンに騙されるのがクマイチャンとマイミてのが天然系てのが何ともリアリティーが有るなw

299名無し募集中。。。:2015/07/06(月) 16:15:48
うおー団長きたああああ

300 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/06(月) 17:54:41
術順なゲストがアヤチョ王で、
食卓の騎士の中でも扱いやすい2人がクマイミですね。

第一部にベリーズを出し過ぎてもちょっとアレなので
これ以上、食卓の騎士は登場しないと思います。

ちなみに腹筋チェックは意識してませんでしたw
面白いのでそういうことにします。

301 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/06(月) 18:06:08
位置関係が分かりにくいのでまとめました。
多分間違ってないはず。

・作戦室
 アヤチョ王、ユカニャ王

・作戦室へと続く通路
 ハルナン

・ハルナンへと続く通路
 フク、サヤシ
 ハル、アーリー、ジッチャン達

・どこかの通路
 タケ、カナナン、メイ
 マイミ

・訓練場
 モモコ、サユ王、クールトーン
 クマイチャン

・訓練場そばの通路
 リナプー
 サユキ

・モーニングラボ
 マーチャン、オダ

・医務室
 カノン、マロ
 トモ、カリン

・所在不明
 エリポン
 アユミン

302名無し募集中。。。:2015/07/06(月) 18:16:54
所在不明・・・夢のスベリーズ対決か!?

腹筋チェック狙ってたんじゃなかったのかw

303名無し募集中。。。:2015/07/06(月) 19:05:33
カノンとマロってややこしいなw

304 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/07(火) 08:37:26
ガチャン、ガチャンといった金属音を鳴らしながら闘士は接近してくる。
両手にはナックルダスター、両脚には金属製の義足。
そして鋼よりも硬く鍛えられた肉体美こそがキュート戦士団団長、マイミの武器なのだ。
脂肪を極限まで削ぎ落としたその肉体は他の誰もが追いつけないほどの瞬発力を産む。
一回の戦闘で特大ステーキ1枚分のカロリーを消費するほど燃費が悪いのが玉に瑕だが
それを差し引いてもマイミは強すぎた。
これだけの戦士を雇うことから、ハルナンの万に一つも王座を逃したくないという思いが伺える。

「やばいよタケちゃん……メイたち、ここで死んじゃうの?」
「それはない。私たちは全員生き残るよ。」
「ほんと!?」
「ただ、死んだ方がマシかもしれないけどな……」

タケの言うように、マイミは番長らの命を奪うつもりはさらさらなかった。
常に死を意識して強くなったクマイチャンと違って、彼女は味方と共に生きることで強くなることを信条としている。
苦しいサーキットトレーニングをみんなで乗り越えることを生きがいにもしているため、
出来ることならば番長らにもそれを強いて成長してもらいたいと思って来たのだ。
ただし、それはあまりにもスパルタすぎていた。
同じ食卓の騎士であるキュート戦士団の部下でさえもマイミとの訓練時には嘔吐するほどなので
それよりは明らかに弱い番長たちがどうなるのかは想像に難くない。

「私語を謹め!まだブートキャンプは始まったばっかりだぞ!」

マイミは倒れていたタケの胸倉を掴み、強制的に起き上がらせた。
理由はもちろん苦しんでもらうため。
立派に生きて欲しいという愛情をこめて、タケの腹へとラッシュを決める。

「100発!」

マイミは1秒間に10発という超高速の左ジャブをタケのポニョポニョのお腹に叩きつける。
途中で吹き飛ばされないように胸倉を掴み続けるあたりはさすが名トレーナーだ。
一撃一撃の威力を抑えているためタケの腹が突き破られることは無いのだが
10秒間も地獄の苦しみが続くのを思えば、一撃で殺してもらった方がずっと楽かもしれない。
全てのラッシュが完了した時、タケは胃の中の全てを完全に吐き出してしまう。
マイミの身体にもいくらか嘔吐物が付着してしまったが、彼女はそれを全く気にしない。
むしろ吐くほど頑張ってくれたことを嬉しく感じているのである。
これならば番長らの更生も近い。そう心から信じていた。

「よし!タケは休憩ーっ!!次はどいつだ!?」
「「うわあああああ!!」

305名無し募集中。。。:2015/07/07(火) 09:21:59
怖えええええ!

306名無し募集中。。。:2015/07/07(火) 09:30:16
ブートキャンプってwできっと満面の笑みでしてるんでしょこれ?トラウマになるわ・・・

307 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/07(火) 20:44:59
メイとカナナンは必死で逃げようとしたが、マイミの俊足の前では無意味だった。
手足に金属を装着しているというのに、あっという間に追いついてしまう。
そしてマイミがメイを目掛けて手を伸ばしたことから、次のターゲットも明らかだった。

(私ぃ!?やだやだやだ!!)

メイは頭をフル回転させて、誰に演技すればこの状況を回避できるか必死に考えた。
はじめに浮かんだのはマイミと同じ食卓の騎士のクマイチャンだったが、すぐに却下する。
クマイチャンの強さはあの巨体と長刀があってこそなので、メイが演じても何にもならないのである。
ではモモコはどうかとも思ったが、そもそも演じるのに十分なほど観察していない。
フクになってフクダッシュ……したところで俊足には勝てないだろう。
タケに変身……しても無意味だ。張本人が吐かされたばかりなのだから。
カナナン……頭の良さまでは真似できない。
リナプー……影の薄さはトレース出来ても透明化術は使えない。犬もいないし。
三舎弟の誰か……まだ早い。(メタ的にも)
マロ……むしろ弱くなりそう。あのスタイルで強いのはマロ本人だけだ。
アヤチョ王……行けるかも!?と思ったが、周りにはテンションを上げる美術仏像グッズが存在しない。

(うわあああ!誰を演じてもダメじゃない!)

気づけばメイはマイミに胸倉を掴まれていた。
このままタケのように100連ラッシュを受けるしかないのだろう。
気が重すぎるが受け入れるしか道はない。

(こうなったら仕方ない、覚悟を決めるか。)

メイは決心した。
とは言ってもただ諦めるという訳ではない。
全て受けきる覚悟を決めたのだ。

「ちょーっとだけ待ってもらえませんか!」
「なんだ?長くは待たないぞ。」
「ヘアメイクの時間だけください!」

メイはノーメイクだった。
演技の幅が狭まるのを嫌うため、いつでもフラットでいられるように常日頃からすっぴんで生活しているのである。
しかし、やらねばならない時だけは話は別。
ここぞという時にはマロ・テスクから教わった化粧をして気合を入れるのだ。
そのメイクの名は「ヤンキータイプ」。
スケバン風の塗りに加えて、髪型をオールバックにした今のメイは迫力満点。
まさに番長という肩書きに恥じぬ見た目へと変貌した。

「こっから本気で行かせてもらうんで、世露死苦ぅ!」
「お前、さては不良だな!更生しがいのある奴め!」

308 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/08(水) 07:46:39
今から数年前のとある日。
旧スマイル王国(現アンジュ王国)の裏番長カノン(現マロ)は他の番長らを呼び寄せていた。

「今日はあなた達にメイクを教えてあげる。お年頃の女の子はみんなするものよ。」
「アヤはメイクしたことないよ!」
「アヤチョは黙ってて!向こうでユーカとでも遊んでなさいよ!」
「ユーカちゃんはもういないよ……」
「あっ!……ま、まぁそれは置いといて、今から教えるメイクは特殊なメイクなの。
 かつて食卓の騎士が束になってようやく倒せたくらいの、超超強い剣士が得意としていたのよ。」
「あははは、食卓の騎士より強い人間がいるわけないじゃん!」
「ほんまやで、カノンさんたまにアホやわぁ」
「いたの!!」
「クマイチャン様よりー?」
「んー、クマイチャン様よりちょびっとだけ強かったかな。」
「カノンさん、この前クマイチャン様が世界で一番強いって言ってたのに。」
「うるさい!とにかく教えるわよ!
 まずタケちゃんにはスポーツタイプを教えてあげる。」
「スポーツ!?私にピッタリ!」
「カナナンにはガリ勉タイプかな。」
「なんですかそれー!」
「リナプーは道端タイプね。きっと使いこなせるはず。」
「み、道?……」
「それとメイメイは、消去法でヤンキータイプ!」
「消去法!?女優タイプとか歌手タイプとかないんですか!!」
「無いわ、我慢しなさい。」
「まぁいいですよ、私はプライベートでメイクなんて一生しませんもんね。
 私がする化粧は舞台化粧だけです!!」
「まぁいいから覚えるだけ覚えときなさい。いつか役に立つ日が来るんだから。」

時は戻って現代。
メイがヤンキータイプになったのを見て、タケとカナナンは当時のことを思い出していた。
そして、自分たちの化粧が汗で流れ落ちていたことにも気づきだす。

「あれ、フクちゃんと戦ったときはちゃんとしてたのに……」
「化粧直しせなあかんな。メイが時間を稼いでる今のうちに!」

今のメイは10秒間のラッシュをちょうど受け終えたところだった。
苦しさのあまり血反吐を吐いているし、膝もガクガクと笑っているが
マイミを睨む目だけはキッとしていた。

「自分まだ全然余裕なんスけどぉ!!」
「私の連打を耐えただと?……面白い奴だ!もうニ百発!!」

309名無し募集中。。。:2015/07/08(水) 08:52:29
やっぱりあの人の技だったか…リナプー道端w番長達にピッタリなメイクだわ

310名無し募集中。。。:2015/07/08(水) 12:33:26
なんだろ?

311 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/08(水) 13:00:36
メイの飛躍的な耐久力向上はマロから教わったメイクによるものだが、
体内に取り入れるジュースでもあるまいし、化粧自体に身体能力を強化させる効果は無かった。
では何かと言うと、メイクの真価は自己暗示にあったのだ。
スポーツ風、ガリ勉風、ヤンキー風のメイクを自らの手で行うことによって
自分の中のそういった面を平常時以上に脳が引き出しているのである。
ただ、リナプーの道端タイプに関しては他のメイクとは意味合いが異なってくるため、
これについてはいずれ説明することにする。

「押忍!もっと気合い入れたいんでぇ!これも着けていいっすかぁ!!」
「なんだそれは、ガラスで出来た仮面か?……
 これ以上やる気満々になるなんて素晴らしいじゃないか!着けてみろ!」
「押忍!でもそしたら顔はやばいよ、ボディーにしな!ボディーに!!」
「お、おう、割れたら危ないからな。」

メイは尊敬する70年代〜80年代女優のセリフを真似してみたが、マイミには伝わらないようだった。
それはさておき、メイミが持ち出したのは「キタジマヤヤ」と名付けられたガラスの仮面だ。
普段武器を持たないメイにとって、これが唯一の武器と呼べるかもしれない。
仮面自体には効果は何もないが、これを顔につけることでメイは自分を大女優だと思い込むことが出来る。
そう、メイクと似た効力を持っているのだ。
いつも他人の演技をするときもガラスの仮面を着けているのだが、
今回はそこに更にヤンキータイプが加わっているので、思い込みと思い込みの相乗効果が発生する。
ただでさえメイはアヤチョについていって一緒に滝に打たれるほど根性が有るというのに。
ここまでしたら彼女の忍耐力は留まることを知らない。
ヤンキーを通り越して伝説の総長クラスの演技になるだろう。

「よーし仮面をかぶったな!じゃあ改めて200発!」
「マイミさん、もう100とか200とかまどろっこしいのは辞めにしましゃうや。」
(なんだ?……また雰囲気が変わったな……)
「これは女と女の勝負っすよ。ぶっ倒れるまで思う存分やってくださいよ。
 死ぬ気で持ちこたえてみせますんで、
そこんとこ世露死苦。」

この時マイミに電撃が走る。
はじめは国を脅かす小悪党に見えたが、ここまでの男気、いや女気を魅せてくれるなんて思いもしなかった。
これほどの根性の持ち主は食卓の騎士にも珍しい。
だからこそマイミはその思いに応えることにした。

「よく言ったぞ!ならば無限のラッシュを見せてやる!!
 女と女、どっちが先に音を上げるかの勝負だ!!」

312名無し募集中。。。:2015/07/08(水) 13:53:10
やめてー!メイメイ死んじゃうーw

313名無し募集中。。。:2015/07/08(水) 13:55:21
マイミの背中に鬼の貌が!

314名無し募集中。。。:2015/07/08(水) 14:14:49
マイミこえーよ

315名無し募集中。。。:2015/07/08(水) 14:38:26
マイミの本気が見れる?

316 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/09(木) 02:57:07
マイミはさっき以上の高速連打をメイの腹筋にぶつけていく。
100発もらっても200発もらっても終わることのないラッシュパンチはさぞかし苦痛だろう。
実際、メイの表情はヤンキータイプになったにもかかわらず、どんどん曇っていっていた。
だがいくら苦しくても音を上げるわけにはいかない。
その理由は、タケとカナナンがまだここに留まっているからに他ならなかった。
いくらでも逃げられる隙はあったのだが、二人はメイの行動に心動かされたのだ。

「タケちゃん、身体休めながらでええから少し教えたって。」

カナナンは左手に大きなソロバンを掲げながらタケに問いかける。
このソロバンこそがカナナンの武器。その名も「ゴダン」と言う。
見た目の通り、この武器の攻撃力は全くの皆無であるが、
これを弾きながら考え事をする時のカナナンは百人力だとタケは思っていた。

「カナナン本気なんだな……分かった、なんでも聞いてよ。」
「じゃあ早速。マイミ様の攻撃法がパンチだけなのはどないして?
 あんなに立派な金属の脚をつけとるんやから、キックしたらええのに。」
「それはな、マイミ姉ちゃんの蹴りが強すぎて義足の方が持たないんだよ。
 うっかり壊して困ってるのをよく見たことある。」
「耐久性より軽さ重視ってことか?」
「いや、なんか鉄だとモモコ様を相手にする時に困るって言ってた。」
「ふぅん、なるほど……じゃあ次の質問いくで。
 タケちゃんが本気でマイミ様を殺すとしたら、どこを狙う?」
「殺せるわけない。」
「それは感情論?」
「いや本当に。あの肉体はマジで鋼だよ。私の鉄球を100回ぶつけてもピンピンしてると思う。」
「そうか、なら最後の質問や。タケちゃんの野球の師匠は誰やったっけ?」
「知ってるだろ。マイミ姉ちゃんだよ。野球の世界でもバケモノだぜ。」
「なるほど。じゃあタケちゃんと違って野球のルールには詳しいってこと?」
「なんだよ私と違ってって……まぁ、詳しいと思うよ。
 細かいのは把握してないっぽいけど、まったく知らなかったらあんなに上手いわけない。」
「そうかそうか、よし分かった。」
「分かった……って?」
「マイミ様を倒す方法、分かったで。作戦Uや!」

ソロバンの球をパチンと弾くと、カナナンはマイミを指差していく。
そこでは限界を迎えたメイがちょうど膝から崩れ落ちるところだった。
こうなったメイに対して追い打ちをかけることなどマイミは決してしたりしない。
次に鍛えるべきは他のメンバーだと思っているのだ。

「逃げずに待っていたのは立派だな。さすがあの不良の友達だ。
 次はソロバン少女、お前の番か!?」

カナナンにラッシュを仕掛けようと近寄るマイミだったが
その前に、先ほど打ちのめされたばかりのタケが立ちはだかる。
作戦名を聞いただけでタケはカナナンの意図を理解していたのだ。

「マイミ姉ちゃん!私と野球で勝負だ!」
「!?」

317 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/09(木) 13:26:31
タケが鉄球「ブイナイン」を握って振りかぶれば。そこはもうピッチャーマウンドだ。
マイミもバットが無いなんて野暮なことは言わない。
拳に装着したナックルダスターでホームランを決めてやろうと考えているのだ。
普通の人間なら鉄球をパンチで打つなんて無理な話だが、食卓の騎士であるマイミになら問題なく出来る。
なんなら頭や肩でも軽々と場外まで飛ばすことだって可能だろう。
それも全部承知の上で、タケが第1投を放っていく。

「おりゃぁっ!!」

久々の野球に胸を躍らせたマイミだったが、タケの投球を見てガッカリしてしまった。
その結果はなんと大暴投。球はあさっての方向に飛んで行ってしまったのである。
もしも審判が居ればボールの判定をするはずなので、マイミは深追いをしなかった。
そして、怒りの表情でタケへと詰め寄ってくる。

「なんだその気の抜けた投球は!従姉妹として、そんな風に教えたことは一度もないぞ!!
 あの不良の後だから何かやってくれると思ったが、とんだ期待外れだな。
 お仕置きに無限ラッシュを喰らわせてやる!!」
「気の抜けた?それは当然でしょ。遊びなんだから。」
「な、な、なんだと!真剣勝負に全力で挑まなかったというのか!」
「真剣勝負なんかじゃない。私がやったのはただのキャッチボールだよ。」
「……なに?」

この瞬間、マイミはあることに気づいた。
さっきまでタケの近くにいたはずのカナナンが消えているのだ。
こと戦闘においてマイミが敵を見逃すことはありえないのだが
バッターがピッチャーに集中しないのは失礼にあたるため、
マイミは周囲に対して一時的に注意を払っていなかったのだ。
ではカナナンはどこか?
タケのキャチボールの相手がカナナンだとしたら、その居場所は……

「後ろか!」

マイミが振り向いたその時、カナナンはタケから受け取った鉄球を投げようとしていたところだった。
さっきまで慌ただしかったマイミも、その様を見て少しホッとする。
いかにもか弱そうなカナナンの投球なんて全然怖くないし、
そもそもマイミの身体は鉄球を何発も受けようがビクともしないのだ。
第一、勉強ばかりやってそうなカナナンがボールを真っ直ぐ投げられるかどうかも怪しいものである。
そういったマイミの一つ一つの決めつけが、番長らに有利に働いていく。

(おや?このソロバン少女、投球フォームはなかなかどうして綺麗じゃないか。)

マイミが頭の中で思う通り、カナナンは完璧に近いフォームでボールを投げていた。
そしてそれに見惚れるあまり、自分にボールが迫ってきてもマイミは動けなかった。
近くまで来ても、すぐそこまで来ても
そして、ぶつかる寸前でボールの軌道が真下方向へと変化しても動くことが出来なかった。
気づいた時にはもう遅い。
マイミの身体の中で最も脆い、「義足」が鉄球との衝突で壊されてしまったのである。

「な、なんだと!こんな事が……!」

片足とは言え、脚を破壊されたのだからマイミはその場で転倒してしまう。
全てはカナナンの計画通り。
マイミが野球に真摯に向き合ってくれたからこそ、この成果があるのだ。
マイミは人を見た目で判断したことを恥じながら、カナナンに問いかける。

「待ってくれ、そのフォームはどこで習得したんだ!?」
「尊敬するプロからみっちり教えてもらいました。後は地道な反復練習の賜物です!」
「そうか……どうやら私はお前達を見誤っていたようだな……」

318名無し募集中。。。:2015/07/09(木) 14:52:06
まさかの上原かw

319名無し募集中。。。:2015/07/09(木) 15:32:34
上原フォームくるとはw

320 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/09(木) 21:02:41
カナナンは感激していた。
自分の考えた作戦で、伝説とも言うべき食卓の騎士を倒せたことがとても嬉しいのだ。
しかも相手はキュート戦士団長のマイミ。これはもういくら自慢してもし尽くせない。
だがこれも自分だけの成果ではないことをカナナンはよく分かっていた。
メイが苦しみに耐えながら時間を稼いでくれたこと。
タケがマイミを倒すための情報を教えてくれたこと。
どれ一つ欠けても勝つことは出来なかっただろう。
なので、カナナンは感謝の気持ちを伝えることにした。

「ありがとな、タケちゃん。」
「おう!で、次の作戦は?」
「ん?」
「焦らすなよ、時間はそんなに無いんだぜ。」

ここでカナナンは変だなと感じた。
たった今マイミを倒したばかりだと言うのに、何を言っているのだろうか。

「作戦ってなんのこと?マイミ様ならもう……あっ!」

ここでカナナンは見てはいけないものを見てしまった。
出来ることなら見間違いであって欲しかったがそうにもいかない。
マイミが片足で立ち上がり、ケンケンで接近してくる姿は紛れも無く現実だった。

「さぁお前達!これからラウンド2が始まるぞ!
 次は何をするんだ?フットサルなんか面白いかもな!!」

あまりの光景にカナナンは呆然としてしまった。
だが考えてみれば当たり前のことだった。
伝説の存在があの程度でリタイアする訳が無かったのだ。

「お、おいカナナン、ひょっとして策は無いんじゃ……」
「無いわ!こんなん逃げるしかあらへんやろ
!」

カナナンは白目で気絶するメイを担いでは、ソロバンを靴の裏にセットする。
そして地面を蹴ることで、あたかもローラースケートのように滑りだしたのだ。
そのスピードはソロバンだからと馬鹿にできるようなものではなく
タケの全力疾走に並走する程度は速かった。

「待てお前ら!もっと筋肉と語り合おうじゃないか!」

どうやらカナナン達はすっかりマイミに好かれてしまったようだ。
台風のような殺気を放たれるよりはマシかもしれないが、これはこれで逆に怖い。
しかもケンケンのテンポも段々と早くなっていっているような気もする。

「おいカナナン!このままじゃ追いつかれちゃう!」
「やばいな、とりあえずそこの部屋に逃げ込むんや!」

321名無し募集中。。。:2015/07/09(木) 22:17:24
筋肉と語り合うってwだんだんマイミが松岡修造に見えてきたww

322名無し募集中。。。:2015/07/09(木) 22:57:34
笑顔でケンケンして追いかけてくるのめっちゃ怖いわw

323名無し募集中。。。:2015/07/10(金) 00:12:51
マイミ暑苦しいわw

>なんか鉄だとモモコ様を相手にする時に困る
これはどういうことだろう?
後々わかるのかな

324名無し募集中。。。:2015/07/10(金) 00:18:43
>>323
>>272
鉄の義足でこれやられたらって考えたら…w

325 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/10(金) 12:18:33
確かに修造化してますねw
違いは晴れ男か雨女かってとこくらいでしょうか、、、

鉄製ではないくだりはいつか話すとは思いますが
皆さんのご想像の通りです。

326 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/10(金) 12:46:57
とある部屋に飛び込むや否や、カナナンは扉を施錠する。

「間一髪助かった……さすがにもうこれで安心やろ。
 いくらマイミ様とは言っても、扉を破るほどの破壊力は持ってへんはずや。
 何発も殴られたメイがまだ生きてるのがその証拠。」

そう言いながらカナナンはメイの頭をなでていく。
苦痛のあまり気を失ったメイだったが確かに息をしている。
マイミはスピードこそ脅威ではあるが、攻撃力自体は並だとカナナンは踏んだのだ。
しかし、タケはその意見に反発する。

「あれがマイミ姉ちゃんの本気なわけないだろ……本気の時は、もっと、こう。」

タケが説明しようとしたその時、扉からバリバリバリといった異音が聞こえ始める。
その音の正体がマイミによるものだということはすぐに気づくことが出来た。
だが、二人ともせいぜい怪力でドアノブを壊した程度を想像していたのだが
現実はもっと酷かった。

「ひぇぇ……ド、ドアが……」

なんとマイミは全力で扉を開けようとするあまり、ドアそのものを捻じ曲げてしまったのだ。
しっかりした構造の扉がグニャリと歪み出したのでカナナンとタケは恐怖した。
これがマイミのフルパワーなのである。
補足しておくが、タケやメイを殴るときは決して手を抜いていた訳ではない。
その際は相手の腹筋を鍛えるために力を微調整していたのだ。
流石は世が平和になった時に「いっそ就職をするとなったならインストラクター?」と思っただけはある。

「ど、ど、ど、どないしよタケちゃん!」
「待てカナナン!なんか音が止まってないか?」

タケの言うとおり、バリバリといった扉の捻じ切れる音はいつの間にかしなくなっていた。
おそらくはマイミ自身も扉を壊したことにショックを受けて、どこかに謝りに行ったのだろう。
マーサー王国の扉はマーサー王およびマイミ対策で頑丈に出来ているので、少し気の毒な話ではある。
なんにせよ、怪物から逃走することに成功した二人はホッとした。

「よかった〜ウチら助かったんやな。」
「あぁ、マイミ姉ちゃんさえ居なけりゃもう怖いものは無いぜ!」

一息つく二人だったが、その安息の時間も僅かなものだった。
もともとこの部屋にいた人物に話しかけられることで事態は急変する。

「タケちゃん、カナナン何やってるの? そこで倒れているのはメイメイ?」

声の主は、アンジュ王国の王、アヤチョだった。
同じく部屋にいたユカニャ王とともに目をパチクリさせている。
そう、タケとカナナンが逃げ込んだ部屋は作戦室だったのである。
マロの言葉を思い出したのか、アヤチョは鬼神の表情で二人を睨みつける。

「ハルナンを裏切ったんだってね!許さない!許さない!許さない!」
「「うわああああああああああ!!」

327 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/10(金) 12:52:25
★おまけ

マイミ「参ったなぁ〜扉を壊してしまった。……ん!あそこで一人歩いているのは番長の誰かじゃないか?
 顔はよく覚えてないが背格好が似てるし間違いない!おーい!」
???「え、な、なんですか?」
マイミ「やっと捕まえたぞ!さぁ筋肉との対話だ!」
???「え、え、え、え」
マイミ「もうアンジュの番長は一人も逃がさん!朝までトレーニングだ!」
アユミン「わたし番長じゃないんですけど〜〜!?」

おしまい。

328名無し募集中。。。:2015/07/10(金) 12:57:23
番長…不幸過ぎるw

アユミンも不幸…てかユー○と間違うって!wてか一時期王国で雇ってたはずなのに

329名無し募集中。。。:2015/07/10(金) 13:11:03
アユミンが間違われるのは鉄板ネタ化しつつあるなw

330名無し募集中。。。:2015/07/10(金) 13:20:44
なんか色々とカオスにw

331 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/10(金) 21:29:48
ー モーニングラボ。
そこにはマーチャン・エコーチームの統括する技術開発部制作の最新武器がズラリと並んでいた。
ところが責任者であるマーチャンの武器は意外とローテク。
なんと彼女は木刀を使うのだ。
それを取り出したマーチャンを見て、オダは頭を抱えだす。

「分かってはいましたが本当にやるんですね……ここ、密室なんですけど。」
「うふふっ、だってマーチャンは曇りの剣士だもん。」

そう言うとマーチャンは木刀「カツオブシ」にマッチで火を点け始めた。
木製の剣はとてもよく燃えて、よく煙を焚いてくれる。
これこそがマーチャンが天気組の中で「曇りの剣士」と呼ばれる所以。
彼女は黒雲のごとき火煙で相手をいたぶることを得意としていたのだ。
特に今回のような密室ではマーチャンの攻撃は「熱い」「煙たい」では済まされない。
煙の充満が一定量を越えると、相手に一酸化中毒を引き起こすことも可能だ。
こんな武器が他に存在するだろうか?
だからこそマーチャンは剣士でいながら、切れない剣を好んで使用しているのである。

「あとねー、今日は試してみたい武器がいっぱいあるんだ。
 なんかミチョシゲさんにお願いされてね、マーチャン頑張って作ったんだよ。」

マーチャンは木刀を最も好んで使用する。
だが、使うのが木刀だけとは誰も言っていない。
試作品である「スケート靴」「忍刀」「両手剣と投げナイフのセット」をこの場でテストしようと考えているのだ。

「なんですかそれは……」
「知らない。いつか使うんじゃない?」

332名無し募集中。。。:2015/07/10(金) 23:35:37
マーチャンはレイナの「カツオブシ」を使うのか!アレンジしてあの技の欠点を補ってるだと?

そしてついにあのメンバー達の武器(仮)が…イメージ通りだけどさてどんかカラクリがあるのやら

333 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/12(日) 14:26:23
はい、マーチャンの木刀は前作から受け継いだものになります。
他の武器についてはノーコメントでw

334 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/12(日) 15:54:36
火煙と、多種多様な武器。
それだけがマーチャンの強みではないことをオダ・プロジドリは知っていた。
取り返しのつかなくなる前にマーチャンを倒すために
オダは「レフ」と名づけられた幅広のブロードソードでマーチャンに斬りかかる。

「たぁ!」

研修生時代、トップクラスの成績を収めていただけあってオダの突き出しは見事なものだった。
基本に忠実なのはもちろんのこと、更にワンポイントのアレンジを加えている。
この一工夫によってオダの攻撃は「回避不可能の一撃」へと昇華されるのだ。
オダの狙いはマーチャンの首。
ブロードソードではギロチンのように切断することは難しいが
首を深く傷つけることによって戦意を喪失させることはできるだろう。
オダの「回避不可能の一撃」ならばそれは容易い作業だ。
ところが、マーチャンがそうはさせなかった。

「オダちゃんの攻撃、丸見えだよ。」
「あ!……」

マーチャンはスケート靴の片方を拾い上げると、素早くブロードソードにぶつけていく。
このスケート靴の裏側のエッジ部分は刀剣の刃のように鋭く、
斬撃を防ぐことが出来るようになっているのだ。
アテが外れて青ざめているオダを見ながら、マーチャンが問いかける。

「オダちゃん、オダちゃんの剣を作ったの誰だっけ?」
「マーチャンさんです・・・・・・」
「そう、マーチャン。だからその剣の弱点も全部知ってる。
 ちょっと部屋を暗くしたら、その剣はもうただの剣だよね。」
「・・・・・・」

確かに今のモーニングラボは薄暗かった。
これはマーチャンがオダの特殊技能対策として、あらかじめ照明を絞っていたためである。
現在のこの部屋の明かりはマーチャンの木刀で燃える火のみと言っても差し支えないレベルだ。
この程度の光では、オダ・プロジドリは輝かない。

「それとね、オダちゃんの攻撃、覚えたよ」
「くっ・・・・・・」

オダが危惧していたマーチャンの最大の特徴。
それは異常なまでの学習能力だった。
どんな攻撃だろうと、一回経験すればマーチャンは次からは対応出来てしまう。
そのためオダは真剣による攻撃を覚えさせる前に倒したかったのだが、それが叶わなかった。
毎回異なる攻撃法を繰り出さなければ、マーチャン・エコーチームを倒せない。

335名無し募集中。。。:2015/07/12(日) 18:07:39
チート杉だろw

336名無し募集中。。。:2015/07/12(日) 20:44:36
聖闘士マーチャンだなw一度見た技は通じないとか…さすが天才

337 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/13(月) 02:47:15

(参ったわ、これじゃあ私はただの一流剣士・・・・・・)

得意技を封じられたオダは困り果ててしまった。
こうなってくると持ち前のセンスとテクニックで対応するしか無くなってくる。
だがオダ・プロジドリはここで敗北して、ハルナンとの約束を破るわけにはいかなかった。
"ハルナンが選挙に勝った暁には、すぐにでも帝王を斬らせてくれる"
この約束はオダにとってそれほどに魅力的なのだ。

(だから決してしくじるわけにはいかない。どんな手を使おうとも!)

オダは行儀悪くも棚をガン!と蹴飛ばし、そこに乗っていた武器を床へと落とした。
ここに並ぶ数々の剣はちょっとやそっとの衝撃を受けたくらいで壊れるようには出来ていないのだが
そこはやはり開発者のサガか、マーチャンはそちらに注意を向けずにはいられなかった。

「あ!オダちゃんなにするの!」

スケート靴にかけられた力が弱まったことを確認したオダは、
マーチャンが落下物に目を配っているうちに瞬時に背後へと回り込む。
そしてブロードソードをマーチャンの背中へと思いっきり振り落としたのだ。

(くらえ!)

「武器の乗った棚を蹴られた経験」は無いためにマーチャンは簡単に背後を許してしまったが
「背後に回りこまれて模擬刀を背中に当てられた経験」なら訓練中にあった。
少しでも過去の経験に該当していればマーチャンは記憶を辿って思い出すことが可能だ。
模擬刀と真剣の違いゆえに100%一致とはいかないが、斬撃の矛先を背中から脇腹へとズラすことが出来た。
それでも痛いことには変わりないが。

「痛い!!・・・・・・オダちゃんめ・・・・・・」

背後にいるオダを追っ払うためにマーチャンは左手の木刀をシュッと後ろに振る。
それによって火の粉が飛散し、オダの服の胸部が焼かれていく。
秘密の処刑係という立場上、硬い鎧を堂々と着れなかったのが仇になったのだ。
このまま炎を受け続けるのはまずいと、オダは慌てて後方へと下がる。

(後ろからの攻撃まで避けるなんて!・・・・・・一応当てはしたけど効果は薄いよなぁ。
 しかも、今の攻撃も絶対覚えられちゃってるし・・・・・・)

マーチャンは今回、「背後に回り込まれて真剣で脇腹を斬られた経験」を覚えた。
平和な時代ゆえに真剣で戦う機会の少なかったマーチャンにとって、
オダとの真剣勝負は、己を成長させるにはとても都合が良かったのだ。
しかもマーチャンが覚えるのは決して受動的なものだけではない。能動的なものもどんどん覚えている。
今回の例で言えば「スケート靴を持って攻撃を受け止める経験」などのことだ。
貪欲なマーチャンはもっともっと経験を詰みたいと考えている。

「右手に忍刀、左手に木刀、これでマーはどんな経験が出来るのかな?
 オダちゃん・・・・・・簡単に負けたら許さないよ。」

338 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/13(月) 02:53:28
マーチャン・エコーチームの学習能力はとても強力ですが
主には以下のような弱点があります。

★覚える前に倒されると無意味。
 例)クマイチャンの強力な一撃を受けたら覚える前に死にます。

★攻撃方法が謎すぎると覚えられない。
 例)モモコの攻撃の正体を暴かないと、覚えることが出来ず死にます。

★身体的・物理的に不可能なことは対処できない。
 例)マイミの高速ラッシュを覚えたとしても、身体がついていかないため対処できず死にます。

たぶん他にも弱点あるかも・・・


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