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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

270 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/28(日) 16:22:51
アヤチョやマロと同様に、クマイチャンも必殺技を持っていた。
ハルナンは知らなかったようだが、食卓の騎士に詳しいフクや番長らにとっては常識だった。
そしてクマイチャンの必殺技、その名も「ロングライトニングポール」にはとある制約がある事も知っている。
それは、馬に騎乗していない使えないということ。
馬の走行時に空気と肌が衝突することで電気のようなピリリとした感覚を受けるのだが
それによって感性が研ぎ澄まされ、相手を斬るべき道筋が柱のように見えるのがこの技の全貌だ。
つまり足をベタ付けしているクマイチャンには必殺技を放つことが出来ない、というのがフクの見解である。
その通りならば確かにクマイチャンはサヤシのガードを打ち破ることは難しかっただろう。
ただし、それは数年前の話。
今のクマイチャンが昔と比べて成長していないはずがなかった。

「そっか、必殺技を使って良かったんだ。」

クマイチャンのその一言が、フクの肝を冷やした。
普通の相手ならば苦し紛れのハッタリであることを疑ったかもしれないが、
相手は食卓の騎士のクマイチャンだ。嘘をつくメリットがない。
では馬なしでどうやって技を実現するのか?
その答えも、すぐに示してくれた。
「ロングライトニングポール、"派生・シューティングスター"!!」

"派生"。その単語はフクも番長らも聞いたことが無かった。
しかし、ただならぬ異質さは確かに感じられる。
クマイチャンは技の名を言いあげるやいなや、大きくジャンプをして
自身の元々の身長も相まってあっという間に訓練場の天井にまで届いてしまった。
もう十分高くにいるが、クマイチャンは満足しない。
長刀の一振りで天井を木っ端微塵にし、更に上へと上昇する。
それだけでも既に恐ろしいが、これから起こりうることを想像すると吐き気がしてくる。
カナナンの役割は指示出しであるが、こんな指示しか出せなかった。

「みんな……ここから逃げて。」

カナナンに言われるまでもなく一同は蜘蛛の子を散らす勢いで逃走していくが
次のクマイチャンの攻撃の方が速かった。
何故なら彼女は流星ガールだから。

「うおおおおおおお!!」

跳べるところまで跳び切ったクマイチャンは地上へと激しい勢いで落下していく。
その時のクマイチャンがピリリと感じる感覚は、騎乗時のものと同等。
つまり、今のクマイチャンには斬るべき場所を指し示す柱のイメージが見えるのだ。
クマイチャンの狙いは誰か一人ではない。全員だ。
さっきまで立っていた床に、流星の如きインパクトで斬りかかることで
訓練場中の床をグシャグシャにしてしまう。

「うわぁ!!」
「嘘でしょ……こんなことって……」

辺り一面が壊滅した様を見て、フクらは呆然とすることしか出来なかった。
こんな瓦礫だらけの床ではもう走ることは出来ない。
それに、どこに逃げたとしても流星から逃れることなど出来やしないのだ。

「格が……違いすぎる……」

本日何度目かは分からないが、フクはまたも涙を流してしまう。
一度でも伝説の存在であるクマイチャンに勝てると思ったことがそもそもの誤りだったのだ。
格の違いを痛感し、このまま一人一人殺されることしかあり得ないことを誰もが理解する。


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