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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

287 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/03(金) 21:07:19
「ヤバイことになってきた〜!!」

訓練場を覗き見ていた連絡担当サユキは焦りを隠せなかった。
流星ガールクマイチャンの落下音が凄かったので何だろうと向かってみれば
そこではモモコがフクに加担していたのだから、驚くなというのが無理な話。
この特ダネを司令担当に伝えるのが役目なので、サユキは急いで作戦室に戻ろうとする。

「モモコ様はクマイチャン様が食い止めるにしても、番長の対策はどうするんだろう。
 やっぱりそろそろ私も戦うべき?ユカニャ王が推薦してくれないかなー。」

サユキ・サルベは自分の実力に自信を持っていた。
純粋な破壊力なら弓矢使いのトモに劣るが、総合力なら負けていないと信じている。
とは言っても立場上、戦闘命令がない限りは連絡係に徹するしかない。
さっさと戻って、ハルナンにありのままを伝えることが最優先事項なのだから。

「ねー、止めてくれない?」

突如、何者かの声が聞こえるのをサユキは感じた。
しかし辺りを見ても誰の姿も見当たらない。
普通の人間ならば空耳かと思ってスルーするところだろうが
サユキはこの声を無視することは出来なかった。
何もないように見えるが、目を凝らすとそこには確かにいる。
サユキはビシッと指差しながら、声の主の名前を叫んでいく。

「リナプー!そこか!」
「!?」

いきなり名を呼ばれたのでリナプーは驚いてしまった。
リナプーは自らを見えにくくする透明化術を得意とするが
かつて共闘したことのあったサユキにはトリックのタネを知られていたのだ。

「こうやって会話するのは久しぶりだね。リナプー。」
「!?」
「数年前のプログラムみたいにまた協力出来ることを期待していたけれども、」
「!?」
「まさか私たちを裏切るなんてね。敵として出会うなんて思いもしなかったよ。」
「!?」
「でもリナプーは私には勝てない!何故なら私には透明化は通用しないから!」
「!?」
「そして私は長年の修行とジュースのおかげで重力を消せるようになったんだ。」
「!?」
「だからこの勝負は私が……って、いくらなんでも驚きすぎじゃない?」
「だって猿が喋ってるんだもん……」
「殺す。」

サユキは愛用するヌンチャク「シュガースポット」を取り出して、リナプーへと殴りかかった。
猿呼ばわりされた怒りと、これまで戦いを抑制されたことによるイラつきがこめられているため
繰り出される打撃はなかなか強力なものになっていた。
しかしその一撃はリナプーには届かない。
「何か透明なもの」がサユキの脚に噛み付くことで攻撃を妨害したのだ。それも2匹。

「痛ぁっ!?なにこれ、犬!?」

サユキを噛んだのはリナプーの武器であり、愛犬でもある「ププ」と「クラン」だ。
この2匹はリナプーと同様の透明化が施されており、しかも飼い主によく懐いている。
リナプーの頼みであれば相手がクマイチャンだろうと立ち向かう忠犬なのである。

「別に敵対心向けてもいいけどさ、司令に連絡だけは辞めてね。
 タケとか、みんなも、今すっごく必死になってるの。
 だからお猿さん、邪魔するようだったらここで寝てもらうよ。」

リナプー・コワオールドとサユキ・サルベ。
犬猿の戦いが今始まる。


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