したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |
レス数が900を超えています。1000を超えると投稿できなくなるよ。

SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

261 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/26(金) 12:58:35
タケの言葉を聞いて、フクはハッとした。
番長らがクマイチャンの話をたくさん聞いてきたことで策を練れるというのならば
食卓の騎士に関する調査をライフワークにしてきた自分ならばより良い案を出すことが可能だと気付いたのだ。
よくよく見てみればカナナンの脚は震えている。タケだってそうだ。怖くないわけがない。
この状況で生き残るためには戦うしかないと理解し、震える身体に鞭を打っているのだろう。
そんな彼女らに安心感を与えるためにも、フクは自らの力を貸すことに決める。

「クマイチャン様は目が悪いよ。それと、攻撃のモーションが大きい。」

フクのアドバイスが聞こえてきたので、カナナンは少し笑みを浮かべる。
それくらいの情報は知っていたし、これからまさにそこを突こうとしていたのだが
フクが協力的な姿勢を見せてくれたことがまず嬉しいのだ。
これで勝率はほんの少しアップする。

「フクさんおおきに。じゃあメイメイ、早速覚えたての技を見せたって!」
「分かったわ……"フク・ダッシュ"!」

メイは太ももにグッと力を溜めて、それを前進するための推進力へとすべて変換する。
爆発的なダッシュの行き先はクマイチャンの長い左脚だ。
身体ごと衝突することで、クマイチャンの体勢を少しグラつかせることに成功する。
食卓の騎士の相手に捨て身で飛び込む度胸は立派だが、それ以前にフクは別のことで驚かされていた。

「あれは私の!どうして!?」

メイのダッシュはフクの得意とする走行術フク・ダッシュそのものだった。
フクとメイの体型の違いからか威力までは真似できていないようだが
構えや発動のタイミング自体はオリジナルにかなり似せている。
まるでフクが乗り移ったかのようだ。

「メイは舞台女優だからね。フクちゃん、あいつに見せすぎちゃったな。」

メイ・オールウェイズコーダーはアンジュ王国の文化番長であり、舞台女優と舞台作家を兼ねている。
彼女の演技に対する執着心は異常であり、役作りのためならばどんなことでもするという気概がある。
そして何千もの役を演じる過程で得た能力が「観察と思考」だ。
演じたいと思う対象を集中的に観察し、そしてそれになりきる自分を繰り返しイメージすることによって
台本など無くとも役にはいりきることが出来るのである。
思い返してみれば一番初めにメイがフクとタケの戦いにチャチャを入れな時は簡単にいなされたが、
マロの合図で戦いを止めた時、メイは覚えたてのフク・ダッシュでフクを転倒させていた。
この短期間にメイが観察と思考を繰り返した証拠だろう。
しかしフクをコピーしたとは言ってもそれでクマイチャンに勝てる訳ではない。
メイの体躯はフクダッシュによる体当たりの衝撃に耐えられるようには出来ておらず、
クマイチャン以上にフラついてしまっている。
そんなメイにクマイチャンが上から手で押さえつけようとしているのだから事態は深刻だ。
だが心配は無用。
カナナンの一声でクマイチャンは転倒するのだから。

「はい、ここで倒れる!」
「!?」

カナナンの言葉を聞くだけで本当に倒れてしまったので、クマイチャンは驚いた。
痛みがある訳ではない。ダメージの蓄積もほとんどない。
ただ、倒されたのだ。
まるで魔法のような攻撃を経験して、この戦いが簡単には済まないことをクマイチャンは理解する。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板