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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

316 ◆V9ncA8v9YI:2015/07/09(木) 02:57:07
マイミはさっき以上の高速連打をメイの腹筋にぶつけていく。
100発もらっても200発もらっても終わることのないラッシュパンチはさぞかし苦痛だろう。
実際、メイの表情はヤンキータイプになったにもかかわらず、どんどん曇っていっていた。
だがいくら苦しくても音を上げるわけにはいかない。
その理由は、タケとカナナンがまだここに留まっているからに他ならなかった。
いくらでも逃げられる隙はあったのだが、二人はメイの行動に心動かされたのだ。

「タケちゃん、身体休めながらでええから少し教えたって。」

カナナンは左手に大きなソロバンを掲げながらタケに問いかける。
このソロバンこそがカナナンの武器。その名も「ゴダン」と言う。
見た目の通り、この武器の攻撃力は全くの皆無であるが、
これを弾きながら考え事をする時のカナナンは百人力だとタケは思っていた。

「カナナン本気なんだな……分かった、なんでも聞いてよ。」
「じゃあ早速。マイミ様の攻撃法がパンチだけなのはどないして?
 あんなに立派な金属の脚をつけとるんやから、キックしたらええのに。」
「それはな、マイミ姉ちゃんの蹴りが強すぎて義足の方が持たないんだよ。
 うっかり壊して困ってるのをよく見たことある。」
「耐久性より軽さ重視ってことか?」
「いや、なんか鉄だとモモコ様を相手にする時に困るって言ってた。」
「ふぅん、なるほど……じゃあ次の質問いくで。
 タケちゃんが本気でマイミ様を殺すとしたら、どこを狙う?」
「殺せるわけない。」
「それは感情論?」
「いや本当に。あの肉体はマジで鋼だよ。私の鉄球を100回ぶつけてもピンピンしてると思う。」
「そうか、なら最後の質問や。タケちゃんの野球の師匠は誰やったっけ?」
「知ってるだろ。マイミ姉ちゃんだよ。野球の世界でもバケモノだぜ。」
「なるほど。じゃあタケちゃんと違って野球のルールには詳しいってこと?」
「なんだよ私と違ってって……まぁ、詳しいと思うよ。
 細かいのは把握してないっぽいけど、まったく知らなかったらあんなに上手いわけない。」
「そうかそうか、よし分かった。」
「分かった……って?」
「マイミ様を倒す方法、分かったで。作戦Uや!」

ソロバンの球をパチンと弾くと、カナナンはマイミを指差していく。
そこでは限界を迎えたメイがちょうど膝から崩れ落ちるところだった。
こうなったメイに対して追い打ちをかけることなどマイミは決してしたりしない。
次に鍛えるべきは他のメンバーだと思っているのだ。

「逃げずに待っていたのは立派だな。さすがあの不良の友達だ。
 次はソロバン少女、お前の番か!?」

カナナンにラッシュを仕掛けようと近寄るマイミだったが
その前に、先ほど打ちのめされたばかりのタケが立ちはだかる。
作戦名を聞いただけでタケはカナナンの意図を理解していたのだ。

「マイミ姉ちゃん!私と野球で勝負だ!」
「!?」


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