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SSスレ「マーサー王物語-サユとベリーズと拳士たち」

255 ◆V9ncA8v9YI:2015/06/23(火) 08:46:00
さっきまで敵だったというのに、フクは番長らと仲よさげに話している。
単純に話してて楽しいという理由もあるが
それ以上に、もう孤独じゃないという安心感がそう思わせたのだろう。
この新たな仲間たちとならば、どんな敵にも勝てそうな気がしてくる。

「カナナンさん、あなたはどんな戦士なの?」
「私ですか?私カナナンは勉強番長で……」

カナナンが自己紹介を始めようとしたその時、訓練場の扉が大きな音とともに開かれる。
そこから現れたのはフクと同じQ期の、サヤシ・カレサスだった。
大切な仲間の生存にフクは感激して、舞い上がってしまう。

「サヤシ!良かった、無事だったんだね!」

嬉しさのあまりフクはまたも涙する。どうやらサヤシも泣いているようだ。
もっとも、サヤシのそれは喜びからくるものでは無かったが。

「フクちゃん……助けて。」

いつもと違って弱気そうなサヤシの声にフクはドキリとした。
サヤシがそんなになってしまうほどの強敵とはいったい何者なのだろうか?
だが、今のフクの心持ちは「負ける気しない 今夜の勝負」だ。(日中だけど。)
そしてそれはアンジュの番長たちだって同じ。
ここにはモーニングとアンジュ両国の、そんじょそこらの女じゃない精鋭が6人も揃っているので
苦戦する方が逆に難しいだろう。

「安心してサヤシ、ここにいる全員が味方だよ。」

サヤシを勇気付けようとするフクだったが
次の瞬間、サヤシの感じる恐怖心をみなで共有することになる。

(!?……なにこれ、身体がとても重い!)

フクと番長らの身体は突如、鉛になったかのようにズッシリと重くなる。
こうなったらもう立ち上がることすら困難だ。全員が全員、床に膝をついてしまう。
もちろん人体が鉛になることなど有り得ないのだが
すぐそこまで迫ってきている"奴"が放つプレッシャーが彼女らにそう錯覚させたのだ。

「なんだよこの重圧……カナナン分かるか?」
「こんなん知らんわ……でも一つだけ分かる。
 アヤチョ王の本気を見た時ですらこんなプレッシャーを感じることは無かった。
 ということは、もっと上……」

まるで天空から巨大な手で押さえつけられたような感覚に6人は耐えきれなくなる。
可能であればここから今すぐ逃げ出したいところだが、それは不可能だろう。
この安心感と対をなす恐怖感の正体に、みな薄々と気づいていたのだから。

「サヤシ、あなた、誰に追われていたというの!?」
「クマ、クマ……クマイ……」

サヤシが名前を言うよりも速く、訓練場の扉がぶった切られる。
その扉のサイズは、出入りするにはあまりにも小さすぎたのだろう。
そんなに巨大な人間は世界に一人しか存在しない。
フクはゴクリと唾を飲み、その名前を口にする。

「クマイチャン様?……」


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