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SS練習スレ2

1シンの嫁774人目:2011/01/30(日) 23:08:56 ID:ZxrlcmLE
自分もSSを書いてみたいけど
初めて書くから…
昔書いてたけど長い事書いていないから…
上手く書けるか心配。
そんな人のためのスレです。
他にも投下する前にここに載せて反応を見たい人等、広く募集しております。

SS・感想を書いてくれる人、共に随時募集中。

感想を書く人は気になった点は遠慮なくやんわりと指摘し、気に入った点はしっかり誉めましょう。

※練習スレ利用の注意事項は本スレのテンプレに準じます。
 原作カプを崩すネタを書く場合は、本スレに投下せず、練習スレに注意書きの上で書きましょう。

163 ◆ERINGIN5sE:2012/04/24(火) 23:39:31 ID:ZkebAfdA
以上です。
できればまとめの方に保管をお願いします。

164 ◆ERINGIN5sE:2012/04/24(火) 23:55:55 ID:ZkebAfdA
すいません。作品名を忘れてました。
タイトルはスーパーIS学園Zデスティニーです。

165シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 01:16:02 ID:EBoSqj0E
乙です
スパロボZ版のシンは大人気だけど、いざSSとなると書く人が全然いなかったので期待してます
それにしてもZの世界観は便利だ
なにしろ、どんな人物や兵器が転移してきても時空震動の一言で全部解決するし
第二次以降だと、次元獣という敵として便利な存在もいるし

166シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 02:50:26 ID:42LDNamo
GJです。あなたの作品は某所でも読ましてもらいました。
スパロボZのシンは、まさにリアル男主人公でしたね。
第三次はBGMに覚醒シン・アスカがほしいな。

167シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 21:15:29 ID:L6DVogYo
>>163
某所で読んでいたが「スパロボZのシン」と言う点が全く活かされていなくて
全くもってつまらない文字束以下だった。
ここではそんな風にならないようにして貰いたい

168シンの嫁774人目:2012/04/25(水) 22:06:11 ID:d5LVRJzg
>>167
テンプレ読め

169シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 00:54:01 ID:fkUD3wSw
>>163
新職人さん乙
スパロボZの設定は便利な反面、本格的にやり出すと大作になりすぎる恐れがあるから匙加減が結構難しそう
とりあえずシンの数年前に既に来ていた謎のガンダム達との関わりが本筋になるのかな
スパロボZ参戦済みの連中なのか、それとも未参戦のガンダムなのか、早くも気になる

170ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:31:03 ID:tHctP/vs
想像以上に拙作を読んでくださっていた方が多いようで……うわあ、むずむずするww
皆様、とにかくありがとうございます。

>>151
保管の確認をいたしました。本当にありがとうございます。

>>163
お久しぶりです。氏の作品に影響を受けて、自分は筆を執りました。
再び続きが読めることを、私も非常に楽しみにしています。


さて、これだけでは何なので、小ネタ3の投下をいたします。

171ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:32:41 ID:tHctP/vs

カチャカチャ……

シン「よっし……できた、っと」
一夏「そんじゃ早速、スイッチを入れて試運転を――」

ガチャッ。

箒「二人とも、入るぞ――今日は何をしている? 機体の整備か?」

一夏「よう、箒。ほらほら、こっち来て見てくれよ、コレ」
シン「整備じゃなくて、ちょっとした工作なんだけど」
箒「工作とは、この丸い機械のことか? そっちは白色で、あっちは赤色だが」
一夏「ペットロボットの『ハロ』っつーんだ。雑誌に作り方が書いてあったし、プログラムソフトも付録で付いてたからさ。整備課から材料と工具借りてきて、シンと二人で作ったんだ。ほら、可愛いだろ?」
箒「やけにはしゃいでるな、どうした?」
シン「なんかハロを雑誌で見つけてから、ずっとこの調子なんだ」
一夏「俺にも分かんねーけど、妙に気に入ってなあ。どうしてだろうな? 懐かしい感じがして、部屋とか廊下とか連れまわしたくなるんだよ」
箒「なるほどな……しかしアスカ、お前はなぜ浮かない顔をしている?」
シン「……なぜだか分かんないけど、元上司の顔がチラつくんだ。関係ないはずなのに」
箒「?」
一夏「いいから早くスイッチ入れてやろうぜ? それ!」カチッ!

……コロ、コロコロコロ。

箒「おお、動いたぞ」
白ハロ『ハロ、ハロ。バナージ、元気カ?』
シン「バナージぃ?」
一夏「うがっ、いきなり俺の名前を間違えてやがる……。バナージじゃないぞ、俺の名前は一夏だ。いーちーかー。はい、りぴーと、あふたー、みー」
白ハロ『ハロ、ハロ。一夏、一夏』コロコロコロコロ
一夏「そうそう、その調子だ」
箒「驚いたな、コレはしゃべるのか?」
シン「ちょっとしたAIを積んでるんだ。それなりに会話できるみたいだな」
箒「ほう、そうなのか」
一夏「ハロ、あっちが箒だぞー。んであっちがシンだぞー」
白ハロ『ハロ、箒。ハロ、シン』
箒「……ロボットに名前を呼ばれるとは変な感じがするな。あっちの赤色のはアスカの分か?」
シン「ああ、簡単な性格設定もできるみたいだから、少しいじってたんだ。俺の方が早く作り終わっちゃったし」
一夏「いったいどんな性格にしたんだ?」
シン「うーん、性格は複数作ってみたけど……すっごく適当にやったから、どうなってるかは分かんない。とりあえず工具を返してくるから、二人でちょっと試しててくれよ」
一夏「おう、了解だ」
白ハロ『オ土産ヨロシク頼ムゼ、シン』
シン「ははっ、分かったって」

ガチャッ、パタパタ――

箒「待て、私まで一緒に試すのか?」
一夏「まあまあ良いじゃねーか。面白いだろ?」
白ハロ『箒モ一緒ダ、箒モ一緒ダ』コロコロ。
箒「まったく、仕方がないな。付き合ってやるか」

172ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:34:41 ID:tHctP/vs

一夏「さーて、それじゃあ最初のヤツを試しますか」カチッ!
箒「簡単なAIなのだろう? それほどの違いは――」

赤ハロ『トゥ、ヘアーッ! モウ止メルンダッ! モウ止メルンダッ!』ピョン、ピョン。

一夏「……なんだ、このハイテンションなのは」
箒「しかも言っていることの意味が分からんぞ」
赤ハロ『シン、コノ馬鹿野郎ッ! バカヤロウッ!』
白ハロ『何言ッテンダ、コイツ』
一夏「これは絶対にミスだな、うん」
箒「さっさと次のヤツに行くとしよう」カチッ!
赤ハロ『俺ハ……焦ッタノカナ……』シューン…

箒「まったく、騒がしい性格だった」
一夏「何だったんだかなあ。まあ、設定を変えて、次だ次」カチッ!

赤ハロ『ハーハッハッハッ! モウ誰ニモ止メラレンサッ!』ピョン、ピョン。

箒「一夏、次に行くぞ」
一夏「ガッテンだ」カチッ!
赤ハロ『無駄ダッ! 抗ウカッ……!』シューン…

箒「……コメントをするのも嫌だ。次はマトモなんだろうな?」
一夏「……流石に三度目なんだから大丈夫だろ」カチッ!

赤ハロ『全機抜刀ッ! 突撃ッ!』ピョン、ピョン。

箒「どこへでも行ってしまえっ!」カチッ!
赤ハロ『ダガ覚エテオケ! ソノ一撃ガ穿ツモノハ……』シューン…

箒「もういい、私は部屋に戻る」
一夏「ちょ、待てって、箒。最後まで試してみないと――」
箒「断言するが、マトモなものは絶対にないっ! 私の勘がそう告げているっ!」
白ハロ『箒、落チ着ケ、落チ着ケ』
一夏「まだまだあるんだから、一つくらいは平気なのが……あったら良いな」


赤ハロ『変ワラナイ明日ハ嫌ナンダッ!』

赤ハロ『生キルホウガ、戦イダッ!』

赤ハロ『キーシャーマーッ!』

赤ハロ『狙イハ完璧ヨッ!』

赤ハロ『許シマセンヨ、ギルヲ裏切ルナンテコトッ!』


箒「私は部屋に戻る。気にするなというのが無理だ。私は戻る」
一夏「ま、待ってくれよ、箒。もう残り一つだから、な? な? な?」
箒「離せ、嫌な予感がする」
白ハロ『スイッチ、オン』カチッ!
箒「待て、勝手にスイッチを入れるな――」

173ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:37:13 ID:tHctP/vs

……コロ、コロコロコロ。

赤ハロ『ハロ、ハロ、一夏、箒』

一夏「おおっ! 最後にマトモなのが来たっぽいぞ!?」
箒「……確かに、コレならな」
赤ハロ『トモダチ、トモダチ』
白ハロ『トモダチ、トモダチ』
一夏「うん、こっちのハロとも仲良くやってるし、大丈夫だろ」
箒「しかし、今度はどうして普通なのか――」

赤ハロ『ハロ、守ルカラ。ミンナ守ル、約束スル』

箒「なんだ、作った奴に似ただけか」
一夏「設定をいじると、そうなるのかもな」
箒「ラウラとシャルロットには作らせない方が良さそうだ。あの二人に似たとしたら、何をしでかすか分からん」
一夏「あー、確かに。なんか大暴れしそうだな」
箒「騒動の一つには確実になるだろう。そして私達がとばっちりを食らうのも確実だ」
一夏「ははは……そう言えば、シンのやつ遅いな。もうとっくに戻ってきててもいい頃なんだが」

ガチャ。

シン「ただいま、遅くなってゴメン」
箒「やれやれ、ようやくか」
白ハロ『オカエリ、オカエリ』
赤ハロ『オカエリ、オカエリ』
一夏「シン、お帰り。何かあったのか?」
シン「ん、実はさ。途中でラウラとシャルに会って、ハロの話をしたんだ。それで――」
箒「まさか……アスカ、お前――」

シン「二人もハロを作りたいって言ったから、ちょっと手伝ってきた。性格も変えてみるらしいから、まず俺のがどうなったかを確認しに――」

箒「こんの馬鹿者がああああああぁぁぁぁっ!」ダダダダダダッ!
シン「へ?」
一夏「と、とりあえず二人を止めに行った方が良さそうだな。ハロ、行くぞ」タッタッタ。
シン「え?」
白ハロ『一夏、待ッテクレー』
シン「はい?」

ポツーン。

シン「……ハロ、俺って何か悪いことしたかな?」
赤ハロ『気ニスルナ、俺ハ気ニシナイ』
シン「はあ……」


余談。
結局この後ラウラとシャルがそれぞれハロを完成させるが、二機ともすぐに逃亡。整備課を占領して仲間を増やし、食堂でシンを取り合う全面戦争を始めてしまう。
赤ハロはシンを庇って犠牲になり、さらにこの騒動が原因でハロが学園内で全面禁止に。
一番泣いたのは、ハロを気に入っていた一夏だったそうな。


おまけ、没になったシャルっぽいハロ。

ハロ『ハロ、ハロ。シンハドコ、ドコ?』
箒『……アスカなら、まだ帰ってきていない』
ハロ『シンイナイ……サミシイ、サミシイ……』コロコロコロコロ。
箒「さっきまでの性格より随分と大人しくなったな」
ハロ『シン、約束シテクレタ。ズット一緒ニイテクレルッテ……』コロコロコロコロ。
箒「しかし……シャルロットにそっくりなのは気のせいか?」
ハロ『シン、好キ、大好キ。ズット一緒、ズット一緒。大好キ、大好キ』コロコロコロコロコロコロコロコロ。
箒「……どうしてこうなった」

174ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/04/26(木) 01:43:25 ID:tHctP/vs
以上になります。スレ汚し失礼いたしました。
とりあえず小ネタ、短編は設定流用した妄想文なので、本編と直接絡むようなものではありません。
ノリと雰囲気だけお楽しみいただければ幸いです。

肝心の本編は……申し訳ありません。ただ今一から改訂中です。アレをそのまま載せるのはちょっと……
こちらに投稿する場合、書き直してから投稿させていただきたいと思っております。

では、失礼します。

175シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 01:56:06 ID:JqNHmmUU
シャルハロからヤンデレの気配がする…
ラウラハロも容易に想像できるな

シンに対するツッコミとしてレイハロだけでも置いとく価値はありそう

176シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 02:01:18 ID:fkUD3wSw
シャルハロとラウラハロは恐ろし過ぎるだろw
危うく、人類vsハロの壮絶な全面戦争が勃発するところだったな……

177シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 04:29:31 ID:YjnSgki2
GJです。あれですね!VガンみたいにISの操縦のサポートをしてくれるんですね!

178シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 19:01:42 ID:ztJC78XI
>>176
束ハロ軍団に私生活を蹂躙されるシンと教官な電波がですね

179シンの嫁774人目:2012/04/26(木) 23:25:33 ID:vggLJ00k
何でだろう。氏のラウラからは某yagamiと同じ匂いがする

氏の作品のシャルとラウラなら本スレメンバー入りしても空気入りしない気がする

180シンの嫁774人目:2012/04/27(金) 01:45:55 ID:CbO4ZF9Y
>>173のおまけネタからラウラハロも

ハロ『ハロ、ハロ。セシリア、鈴』コロコロ。
セシリア「……この丸い物体は何でしょうか?」
鈴「おもちゃのロボットじゃない? 誰がこんなモノを持ち込んだのかしら――」
ハロ『オ兄様ハドコダ、オ兄様ハドコダ』コロコロ。
鈴「うん、ラウラ以外考えられないわね」
セシリア「シンさんでしたら、こちらにはいませんわよ?」
ハロ『オ兄様イナイ、胸ガ張リ裂ケル、涙ガ止マラナイ、壊レテシマウ』コロコロコロコロコロコロコロコロ。
鈴「うわ、反応がラウラそっくり」
ハロ『ドコダッ、オ兄様ッ。オ兄様ッ、オ兄様ァ――ッ!』ピョン、ピョン。

コロコロコロコロ……――

セシリア「行ってしまいましたわ」
鈴「? セシリア、向こうからまた何か来るわよ?」

――……コロコロコロコロ。

ハロ『シンハ僕ト一緒。約束、約束、ズット一緒。大好キ、離サナイ、渡サナイ』

コロコロコロコロ……――

鈴「…………」
セシリア「…………」
鈴「私は何も見なかった、見なかったんだから」
セシリア「そうですわね、わたくし達は何も見ませんでした」

181シンの嫁774人目:2012/04/27(金) 12:18:17 ID:h4LWA5oU
>>167
一つだけ言わせてくれの精神で生きてると色々疲れるぞ

182シンの嫁774人目:2012/04/27(金) 12:44:27 ID:PnrtiV82
>>180
二人(二機)とも病んでる…
理性が無く欲望が解放されたら二人共こんな状態になるんだろうな
ところで名無しですけど、ちくわヘルシー氏ですか?

183シンの嫁774人目:2012/04/28(土) 19:49:18 ID:Y0SiPQiY
>>182
コテはつけてませんが、一応そうです。

184ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 02:37:53 ID:4H1vMymE
小ネタ4

ザアアアアアアアアアア――

ラウラ「ちっ、買い物の帰りに夕立とは……運が悪い」
シャル「雨が降るなんて聞いてなかったからね、傘も持ってきてないし……」
ラウラ「傘を買って帰るか?」
シャル「これだけ降ってると、雨が止むか弱まるのを待ってた方が良いんじゃないかな」
ラウラ「それもそうだな。仕方がない、少し雨宿りをするか」
シャル「じゃあ、そこの喫茶店に入ろうよ」

   ◇

シャル「あちゃあ、全然弱まる気配がないや……」
ラウラ「かれこれ一時間だ。いくらか濡れるのを覚悟するしかなさそうだ」
シャル「荷物だけは濡らさないようにしないと。せっかく服もたくさん買ったんだから」
ラウラ「とは言うが、せめてもう一人はいないと厳しいぞ――」

――カラン、カラン。イラッシャイマセー

シン「良かった、二人ともここにいたんだな」
シャル「え、シン!?」
ラウラ「お兄様!? 迎えに来てくれたのか!?」
シン「ああ、傘持って行ってなかっただろ? 中々帰ってこなかったし、多分足止め食らってるはずだって思ってさ」
シャル「でもシン、そんなに濡れて……」
シン「ちょっと走ってきたから濡れたかも。まあ、俺のことは気にしなくていいって」
ラウラ「お兄様……私のためにそんな姿になってまで……」
シン「ほら、みんなも心配してるから。二人とも、早く帰ろう」
シャル「……うん! シン、ありがとう!」
ラウラ「お兄様! 帰ったら部屋に来て私をメチャクチャにして良いぞ!」
シン「帰ったら部屋に行ってメチャクチャに説教だ!」
シャル「はいはいラウラ、冗談が過ぎるとシンが雷を落とすからダメだってば」
ラウラ「むう……私の愛も未だに雨模様か」

   ◇

ザアアアアアアアアアア――

シン「荷物はなるべく俺が持つよ。はい、これが二人の分の傘」
シャル(……まあ迎えに来てくれるぐらいだから当然だけど)
ラウラ(……私達の分の傘は用意しているわけだ)
シャル(……シンと相合傘……)
ラウラ(……お兄様と相合傘……)
シン「? 二人とも、傘を握りしめてどうかした――」
シャル「ていっ!」バキッ!
ラウラ「フンっ!」バキッ!
シン「……はい?」
シャル「ゴメンねシン! 傘が壊れちゃったよ!」
ラウラ「すまないお兄様! 傘が壊れてしまった!」
シャル「だからシンの傘に入れてくれないかなっ!?」
ラウラ「だからお兄様の傘に入れてくれっ!」
シン「……俺にはシャルもラウラも傘を"壊した"ようにしか見えなかったんだけど」
シャル「ちょっと力が入り過ぎちゃって! 本当にゴメンね!」
ラウラ「お兄様、日本の傘は脆いのだな! 私は知らなかったぞ!」
シン「……いくら丈夫な傘でも、真ん中からわざと"へし折られたら"意味ないって」
シャル・ラウラ「「そんなことは! してな……い……?」

シン「あ、ちょうど良く晴れてきたな。良かった良かった」
シャル・ラウラ「「…………」」
シン「シャル、ラウラ。また降り出さないうちに行こう」
シャル「……ねえ、シン。その前に傘を広げてくれないかな?」
シン「え? けど、もう雨も止んだし……」
ラウラ「……お兄様、私からも頼む」
シン「? まあ、いいけど……」バッ!

シャル「僕はこっち!」ギュッ!
ラウラ「私はこっちだ!」ギュッ!
シン「えっ!? 二人とも何を――」
シャル・ラウラ「「 相 合 傘 ! 」」
シン「べ、別に傘に入る必要なんてないだろ!?」
シャル「ダメっ! このまま帰るからねっ!」ギュゥーッ!
ラウラ「帰るまでこの腕は離さんっ!」ギュゥーッ!
シン「でも――」
シャル「 ダ メ っ ! 」ギュゥーーッ!
ラウラ「 離 さ ん っ ! 」ギュゥーーッ!
シン「……分かったから! 分かったから早く帰るぞ! まったく――」ブツブツ…
シャル「……えへへっ」ギュゥ。
ラウラ「……ふふっ」ギュゥ。

185シンの嫁774人目:2012/05/11(金) 03:00:45 ID:Z/dUZQAo
この二人・・・マジ存在感が圧倒的すぎるw

186シンの嫁774人目:2012/05/11(金) 11:32:17 ID:Q0Suuqi2
GJ
甘くて2828してしまうなぁ

187 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 17:22:45 ID:4H1vMymE
 超嘘予告。

 メサイア攻防戦から二年が経っても、世界から争いが消えることはなかった。
「自分たちの力が争いを生むのではないのか」「力はただ力でしかないのか」
 シン・アスカは親友とまでなったキラ・ヤマトと共に、兵器という力に頼ることしかできない現状を悩み、それでも戦い続けていた。
 そんなある日、敵の攻撃からキラをかばったことで愛機『デスティニー』が損傷し、宇宙空間を漂流することになってしまう。
 生存の可能性は絶望的、漆黒の宇宙に意識が消え、孤独な死へと近づいていく。
 しかし運命は死を選ぶことをしなかった。
 機体に迫っていく巨大な円盤。光がデスティニーを包み込み――

 一方、近未来のある星の遺跡に、金魚鉢のようなヘルメットをかぶった集団がいた。
 彼らはロボロボ団。この星に存在するロボット『メダロット』を悪事に使う秘密結社……だった。
 組織が解体され、行き場のなくなった団員達。このままヘルメットを脱ぐしかないのかと、途方に暮れていた。
 その時、ある団員が、『願い事が叶うおまじない』として小銭を遺跡の泉に投げ込んだ。
「神様でも仏様でも宇宙人でもいいから、どうか自分達を助けてくれ」
 団員全員の心が一つになった時、遺跡の上空に円盤が現れ――
「だああああああああああっ!」
「ロボおおおおおおおおおッ!?」
 救世主となる宇宙人が、空から降ってきた。

   ◇

 拾った宇宙人の勘違いで、シンは良く似た別の惑星に降ろされてしまう。
 そこで金魚鉢集団に頼まれたのはなんと、『秘密結社の首領になること』であった!
 行く当てもなく仕方がなしに、新生ロボロボ団――D・ロボロボ団の総司令になってしまうシン。
 気難しいのが見事に揃った、一癖も二癖もあるパートナーメダロット達。
 意外に気がよく、根は良い子でかなーり間抜けな団員達。
 セレクト隊の相手に、旧ロボロボ団との激戦。更には古代メダロ人の秘密にまで迫り!
 そして「メダロットもただの道具・兵器なのか」、悩むシンの出す答えとは――
 今ここに、シン・アスカの新たな戦いが始まる!
 
『メダロット・DESTINY』
 
 執筆予定……今のところなし。

188 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 17:26:55 ID:4H1vMymE
 おまけ、ヒロイン候補メダロット達。

 その① KBT−3Y型『ブラックビートル』
 性格は苛烈で我が非常に強く、おまけに結構短気で口も悪いです。
 しかし一度信頼関係が結ばれれば、お互いに最高のパートナーとなれるでしょう。

 サンプル台詞
「フン、お前に指図されるいわれはない」
「指示を出せ、シン。お前と私で、アイツに勝つぞ」
「パートナー、か……お前はいつか、私を置いていくのにか……?」


 その② KWG−3Y『ブラックスタッグ』
 クールかつかなりの皮肉屋で、中々シンに心を開いてはくれないでしょう。
 ただしパートナーになった際の信頼の深さは随一となるはずです。

 サンプル台詞
「指示はいらないわよ、一人で勝てるもの」
「シン、指示は頼むわよ。信じてるから」
「私とあなたは平行線。いくら隣に立てても……道は決して交わらない」


 その③ SLR−1X『セーラーマルチ』
 温和で候補中一番の常識枠ですが、実は人見知りするところがあります。
 良好な関係になったら様々な面を見せてくれる、純粋で可愛い子です。

 サンプル台詞
「私ががんばります。無理はしないでくださいね」
「勝てますよ、シンさんの指示があるんですから!」
「メダロットだって、恋をするんですよ? 『心』があるんですから……」


 その④ CAT−1X『ペッパーキャット』
 KBT並みの気の強さで、最初のうちはシンに非常に苦労をかけます。
 ただし懐いてさえくれれば、本物の猫と同じぐらいベタベタしてくれるでしょう。

 サンプル台詞
「あんた、余計なこと言って足を引っ張らないでよね」
「シン、早く指示を出しなさいよ! ほらほら、早くしてってば!」
「あたしはメダロットで、アイツはヒト……涙はあたしだって流すのにね」


 その⑤ VAL−0XNF『ノエル』
 大変真面目ですが固い性格をしていて、あまり融通が利きません。
 それでも剣を捧げてもらえれば、シンの絶対の騎士として大活躍してくれます。

 サンプル台詞
「下がっていてください、危険です」
「指示をください。この剣、この盾、この身はシン……あなたのためにある」
「私は騎士として失格だ。忠義は守れても……あなたへの思いを、押し殺せない」


 その⑥ DVL−3X『ブロッソメイル』
 子供らしく無邪気ですが、暴走具合は他と比べ物にならないでしょう。
 しつけが成功すると、非常に健気かつ甲斐甲斐しくシンを助けてくれる良い子になります。

 サンプル台詞
「アハハ、暴れるぞ〜っ! アハハ、アハハハハハハッ!」
「シン、シン! ボク、良い子だから、シンの言うこと聞くよっ!」
「ボク、どうしてヒトじゃないの? ボクがヒトだったら、シンもボクのこと……」

189 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/11(金) 17:39:05 ID:4H1vMymE
以上、トチ狂った頭での妄想でした。

……ええ、どうせ私はメダロットにまでハァハァする変態ですよ。
ゴッドイーターでもアリサよりサリエルタソに萌える変態ですよ。

……笑えよコンチクショウ……

190シンの嫁774人目:2012/05/11(金) 17:50:24 ID:avbS/zjM
いや、その……俺に笑う資格無いし?
(部屋を埋め尽くす神姫やフェアリオンとかアイギスを見ながら

191シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 12:09:15 ID:ObfzDgIM
自分もメダロットしてましたね、今思えばごり押しばかりしてました

192シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 21:56:35 ID:0g4U/MGI
これは是非とも続きを読みたいので是非書くべきそうすべき

サリエルタソprprとか普通ですよ普通
ねーアマテラスタソにヴィーナスタソ

193シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 22:21:22 ID:7P8TD7IM
メダロットは知らないが結構面白そうだし続きplz

とりあえず私にはあなたの事を笑えないね、ベクトルは違えど性癖アレだから
例えば蛇女に巻かれたいとかそういうの

194シンの嫁774人目:2012/05/12(土) 22:52:01 ID:555m2pp2
メダロットは漫画版も名作揃いでした。
ほるま版の神・原作は言わずもがな、藤岡版も意外とテーマは深いんですよね。
嘘予告だそうですが、別に書いてもいいんじゃよ?

ところで……何故にヒロイン候補にナース型とエンジェル型とマーメイド型がいないのでせうか?(^ω^#

195そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/05/13(日) 03:46:51 ID:m/ZbWgiU
※下ネタ注意





ギル「今日も今日とて複座式コクピットシートの実験を行う事にした」
QB「へぇ、今回はどんな体位…配置方法だい?」
ギル「前々回と同じ背面座…膝抱っこ式だ。ただ今回は座席ではなくパイロットスーツの方を改良したよ」
QB「なるほど、だからシンとほむらは一つのパイロットスーツを二人で装着しているんだね」
ギル「日本の二人羽織と言う伝統芸能を参考にした開発させた物だ」
QB「これなら操縦桿に手が重なって操縦の障害になると言う問題点を解決出来るね」
ギル「加えて、更なる密着、いやがおうにもお互いを意識させる。その結果二人の集中力は極限まで高められ、精神コマンドの相乗に繋がると私は推測する」
QB「人類の発想には本当に驚かされるよ。これなら以前の時よりも更に多めのエネルギーを回収できそうだ」
ギル「ただし問題がある」
QB「問題?」
ギル「過度な密着はメインパイロットに…つまりシンに対して大きな負担を与えてしまう」

シン「…ごめん」
ほむら「…最低ッ!」
シン「わざとじゃない…頑張って耐えようとしたんだよ…俺は」
ほむら「言い訳しないでよ…ぬるぬるしてるから気持ち悪いのよ」

ギル「…結果、あの様な状況が発生してしまう」
QB「無我の境地、明鏡止水、クリアマインド…様々な名を持つ、人類の雄が一瞬の間だけ到達すると言う領域。
   一瞬とは言え隙を作る状態だ。改善すべきだ」
ギル「それは無理だ。あれくらいの年頃の男子とはそう言う物だからね」
QB「面倒だね、人類の雄は」
ギル「手厳しいね。あははは」
QB「あははは」

おしまい


ほむら「あなたには言いたい事が山ほどあるけど…」
シン 「うん…あいつらを」

ほむ&シン「始末しよう」

ほんとうにおしまい

196そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/05/13(日) 03:50:38 ID:m/ZbWgiU

まず簿記入門氏および関係各位に多大なご迷惑をおかけした事を陳謝します
ダメな方向にリスペクトしてごめんなさい
それと関係ないけど、貴君らはロボポン(ボンボン版)好きな人間だろ


それにしても、ちくわヘルシー氏を始めとして、本スレにもモン娘の話題出した人がいたりと、趣味で話の合う人が多くて嬉しい限りです
シンに恋をして戸惑うレイキャシール娘の話はよと思いつつ失礼

197 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/13(日) 14:05:54 ID:QGuKP5FQ
良かった、ここには自分と同じ変た……ゲフンゲフン、同好の士がたくさんいるようですね。

>>194
だって戦闘型じゃないとストーリー(予定ないくせに)に組み込めなかったんだもん!
自分だってヒロインに入れたかったですよ! 泣く泣くカットしたんですよ!
>>196
そろそろ氏、非常にGJです。配置方法もまだまだありますよね……ハァハァ

さてぶった切り失礼ですが、超絶嘘予告第二弾。今度は原作が『水月』です。

198 ◆ii/SWzPx1A:2012/05/13(日) 14:09:44 ID:QGuKP5FQ
 気が付くと、俺はベッドの上に寝かされていた。
 清潔感のある白い壁とベッド……病院の中らしい。
 部屋の中には、知らない女の子が一人で立っていて。
 声をかけると、俺に抱きつき泣き出してしまった。
 淡い紫の髪と、真っ白な肌。そしてメイド服と、俺と同じ赤い瞳。

「取り乱してしまって、申し訳ありませんでした……シンさん」

 俺の名前を呼んだ彼女は、涙を拭って微笑んだ。
 でも俺は、彼女のことなんて知らない。

 目が覚めた蒸し暑い昼下がりは、俺には『悪夢』でしかなかった。
 戦いに負けて、結局守れたものは一つもなくて。
 何もかも失った俺に与えられたのは、得体の知れない『過去』。

 みんなはどうして『俺』のことを知ってるんだ?
『俺』じゃない『俺』のことを、みんなが『俺』に押し付けて……
『俺』はここで暮らしていたことなんてない。
『俺』には家族がいた。父さんと母さんと、マユ……オーブで、みんなで暮らしていたんだ。
 あの子のことも知らないし、父親だって言われた、写真の人も知らない。
 記憶障害なんかじゃない。そんな一言で、俺の全てを否定させやしない。
 俺が戦ってきたことも……幻なんかじゃない。
 ナチュラルも、コーディネイターも、ZAFTもプラントもMSも、戦争も、オーブのことも。
 俺の知っていることが、全く存在しない世界。
 なのになんで、世界は『俺』を『シン』だって知っているんだ?

 現実の『悪夢』に加えて、夢の中も『悪夢』だった。
 あの子と同じ、白い肌に赤い瞳。違うのは全てを吸い込むような黒い長髪。
 誰だか知らない男が、その子を弓で射殺す場面が繰り返される。
 毎夜の『悪夢』は、消えることがなかった。
 いったい、俺に何を伝えたいんだろうか。
 ただ、『悪夢』はいつも同じ終わりを迎えていた。
 男が俺のことを見つめて、何事かを呟く。
 でも俺は、その言葉が聞こえない。

 何もかもが不確かで曖昧な、この世界で。
 俺にとっての真実は存在するんだろうか。
 まるで水面に浮かぶ月影のような……『水月』のような、この世界で。

  ◇

 メサイアでの戦いに敗れ、見知らぬ場所で目が覚めたシン。
 そこにいた少女、『琴乃宮雪』に聞かされたのは、自分が交通事故に遭ったということ。
 戦争はどうなったのか。メサイアは落ちたのか。ミネルバはどうなったのか。
 医師に尋ねたシンだったが、全ては記憶障害だとして一蹴されてしまう。
 自分の知る『過去』と、周囲の人間から語られる、知らない『過去』の食い違い。
 縋るものの存在しない明日に戸惑い、苛立ち、恐怖しながらも、シンは前へと歩んでいくこととなる。
 果たしてシンがたどり着く真実とは……。


『水月〜運命〜』

 執筆予定……当然ながらなし。

199シンの嫁774人目:2012/05/13(日) 23:33:35 ID:pLFv4vxQ
>>198
乙です!
水月とは懐かしい作品ですね〜
内容をかなり忘れちゃってるけど、雪さんが好きでしょうがなかった事は覚えてますw

200オリキャラ注意 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:33:52 ID:tuUerXpI
「んー……」
 けたたましく鳴る目覚ましの音に顔をしかめ、寝ぼけ眼のシンは騒音の基を断とうと枕元にある時計に手を伸
ばす。
 しかし寝起きで、しかも顔を背けたままでは距離感などあろう筈もなく。
 二度、三度空振りし、今度こそと伸ばした手は、しかし時計ではなく別の何かを押し潰した。

 ふにょん。

「……ん?」
「んゅ……」

 柔らかでいて、それでいて弾力に溢れた謎の物体。
 耳元では、自分以外の誰かの声が聞こえた。
 この異常な事態は、けれど今日は特別寝起きの悪いシンでは気付く事もなく、五度目に伸ばした手で漸く目覚
まし時計を止めるに至った。

「く……ぁ……」
 欠伸をしつつ、のっそりと上体を起こす。
 何故か掛け布団の具合がいつもと違った気がしたが、ともかく顔を洗って完全に目を覚ましてしまおう。
 ぐしぐしと目元を擦りながら、ベッドから立ち上がる。
 スリッパを突っかけ、流しに向かおうとしたシンは、その段になりようやっと自室の中が普段と違う様相を呈
している事に気が付いた。

「…………」
「…………」

 無言でぶつかり合う視線と視線。
 部屋の中には、見知らぬ女性がいた。

 肩甲骨の辺りまで伸びた、夕焼けを思わせる茜色の髪。
 勝ち気な雰囲気漂う、釣り目がちな赤紫の瞳。
 幼さの残る顔つきからして、コウタと同い年か一つ上くらいだろうか。

 視線を下に向ける。

 胸は、アナグラの女性陣の平均値から比べると些か小ぶり、近似値としてはリッカと同サイズか。
 先端の突起は淡いピンクで、大きさといい見ていると桜ん坊の様に舐め回したい衝動がムクムクと沸き上がっ
て来る。
 水平どころかツンと上を向いた全体の造詣も素晴らしい。
 これがオラクル細胞により齎される美なのだとしたら、世界中の女性は皆、オラクル細胞を取り入れるべきじ
ゃないだろうか。
 思わずそんな馬鹿な考えが浮かぶ程だった

 胸を一先ず横に置き、今度は下へと向けられる視線。

 半ば以上まで引き上げられたショーツにより、かろうじて保たれている神秘の花園。
 直接見られなかったのは残念だが、しかし穿きかけで硬直したそのフォームもまた良しである。
 純白の下地にピンクのフリルがあしらえられた少女趣味全開のショーツは、勝ち気少女という属性を考慮する
と余りにもあざとい気がする。
 しかし、その組み合わせが大きな魅力を持つからこそ多くの者が求め、需要があるからと商業的な理由で安易
なキャラ作り・テンプレートそのままに乱発するが故に『あざとい』と批難されるのだ。
 組み合わせそのものに批難される謂れはない。
 つまりは最高だった。

 目線を少女の顔付近まで戻す。

 なんだかもう、寝ぼけていたとかそんなレベルじゃきかない位に不味い事態になってしまった気がする。
 思考の暴走だけは寝起きだったからで済ませたいが。少なくともアリサに知られる訳にはいかない。色々な意
味で後が恐すぎる。

201オリキャラ注意 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:34:53 ID:tuUerXpI

「い……いやあああああああああああああああああああっ!!!!」
「…………ここ、俺の部屋だよな?」
「ほぇ…………あ、ヒナちゃん。おはよー」
 目の前の少女の悲鳴に掻き消されないギリギリの音量で、しかしシンの背後、ベッドの上にいる何者かの声が
聞こえてきた。

「ちょ、桜花《オウカ》! アンタまで、なんでアタシの部屋に……って言うかどうして裸なのよ!?」
「いや、ここ俺の部屋だし……」
「ん〜? パジャマは暑くて脱いじゃったんだけど……それよりヒナちゃん、どうして私の部屋にいるの?」
「いやだから、ここ俺の部屋だってば」

 前門のほぼ全裸、後門の完全に全裸。
 どちらも見てはならぬ、と必死に両目をつむり。
 いったい全体何が何やら。混沌たる事象を前に、かろうじてシンが取れる抵抗は部屋の所有権を主張するぐら
いのもの。
 いっそもう一度寝直せばいつも通りの世界に戻れるだろうか、と全てを放棄してふて寝を決め込もうとした所
に、更なる混沌がやって来た。

「……人の部屋で何をしてるんですか、貴方達は」
「あ、ユキちゃん。おはよ〜」
「あ、ちょ、雪水《ユキミ》! 早くドア閉めてよ!」
「……恥ずかしがるくらいなら、さっさと着替えたらどうです? という訳で、そこの女性の生着替えをじっく
 りねっぷり愉しもうとしてるド変態で最低助平野郎の馬の骨さん。早いところ出ていってくれます?」
「……俺の部屋、なんだけどなぁ」
 まあ部屋の所有権はともかく、これ以上ボロクソに言われたくはないのでおとなしく出て行こうとしたシンだ
ったが。

「ちょ、こっち来ないでよ馬鹿っ!!」
「バナナっ!?」
 気を効かせたつもりで、目をつむったまま移動したのが災いした。
 赤髪の少女からすれば、シンの行動はいきなり見ず知らずの、しかも自分の裸をじっくりばっちりと見た変質
者が迫って来たようにしか感じられず。
 貞操の危機を感じた防衛本能は即座に不審者への攻撃を選択。
 片手で胸元を隠したまま、少女はシンのこめかみへと綺麗な左フックを叩き込んだ。
 少女の右腕に嵌められた腕輪はゴッドイーターの証。
 その細腕からは想像出来ない剛力を、しかも防御の意識などカケラもない状況でまともに喰らったシンは、見
事な錐揉み回転をしながら吹っ飛ばされる。

「へ、ちょ、きゃあ!?」
「!? こ、のぉ!」
 殴り飛ばされた先には毒舌少女。
 彼女もこの展開は予想していなかったらしく、飛んできたシンを受け止めきれずに勢いそのまま押し倒される。
 緊急事態と言うことで漸く目を開けたシンは、毒舌少女の後頭部を床に吸い込まれる様に落ちていくのが目に
ついた。
 ゴッドイーターの身体ならば、多少頭を打った程度では危険な事になるとは思えないが、それでも怪我をしそ
うになっている人を見捨てられる様な性格はしていない。
 回転の勢いを利用し、毒舌少女と床の間に手を差し入れる。

202オリキャラ注意 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:36:07 ID:tuUerXpI
「いてっ」
「ぁいたっ……って!?」
 派手な音を立てて落下した二人。
 シンの行動により、毒舌少女は怪我を負う事はなかったが……しかし、手を差し入れた結果、まるでシンに腕
枕でもされている様な体勢になってしまっており、年頃の少女らしく毒舌少女の顔に朱が刺す。
 普段なら有り得ない異性との急接近に、毒舌少女は完全に硬直してしまい、跳ね退ける事はおろか、身じろぐ
事すら出来はしなかった。

「……何をしているんだ、お前達は」

 頭上から掛けられた言葉に、シンが目線を開け放たれた扉の向こう、部屋の外側に向ける。
 そこには、また新たな少女が一人立っていた。
 ジョギングでもしてきたのか、薄っすらと汗をかいたその少女は、シン達には呆れた眼差しを向け言い放った。

「まあ別に私は、お前達が不純異性交遊をしていようが、それを否定などしない。だがせめてだ、そういった事
 は自分達の部屋でやってくれ。私の部屋でやるんじゃない」
 少女の言葉を受け、色々な意味で停止していた部屋の中の空気が再び動き出した。

「……ハッ!? いつまでくっついてるんですか、この変態!」
「がはっ」
 まず最初に意識を取り戻した毒舌少女に突き飛ばされ、派手に転がるシン。
「虎姫《トラヒメ》! 勝手な事を言わないでくれますか!? 誰がこんな変質者と!! それをしていたのは
 火夏《ヒナツ》と桜花だけです!」
「はあ!? 出鱈目言わないでよ! アタシも桜花も、部屋に勝手に入られた被害者なんだからね!」
「ヒナちゃん、ユキちゃん、トラちゃん、喧嘩しちゃ駄目だよぉ」

「……だから! ここは!! 俺の部屋だあああああっ!!!」
 一方的に言いたい放題されまくったシンはとうとう我慢の限界を超え吠えたのだが……しかし喧々囂々と言い
争う少女達は、誰一人として聞いていないのだった…………。

203 ◆HciI.hUL72:2012/05/17(木) 23:36:49 ID:tuUerXpI
とうとうやってしまいました。いわゆるウチの娘モノ、完全に名前ありで。これは黒歴史確定である
今回の話は導入的なもので、朝、目が覚めたら平行世界の第一部隊隊長'sが同じ世界来てしまったー、という感じ
ただし女子四人は今回の事件以前からも短期的に世界が繋がっていた事があり、その時に知り合い友人となったという設定です
女子四人の設定は↓で
ttp://u8.getuploader.com/jyonan/download/201/settei.txt

204シンの嫁774人目:2012/05/20(日) 00:07:36 ID:0ycLTn3s
オリキャラは敬遠されがちだけど個人的には嫌いじゃないんだよな
既存キャラの隙間補填してくれるし

なんかムラムラしてきたから俺もモンハンのキリン娘とハントする
奴でも考えてみようかしらん

205シンの嫁774人目:2012/05/20(日) 00:24:07 ID:6dHNtnRc
MMOとかでもNPCだけでは賄いきれないしかといって他作品のキャラでは
立ち回りに難があるケースも少なくないしね

206ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/24(木) 18:16:09 ID:YL1SvqiI

 IS小ネタなり


 屋上をジリジリと照らす太陽に手をかざすと、掌にまで熱がしみ込んでいく。
 暑い。気温三十度を越える真夏日は伊達じゃなかった。
 それでも、本格的な夏を前にした外気の熱がどこか懐かしい。オーブの夏も、こんな風に湿度も高くて暑かった。
 普段は生徒に解放されている屋上だけど、流石に今は俺以外の生徒の姿は見えない。お肌の調子ってのを気にする女子たちは、こんな日に日光浴になんてする気になれないんだろう。
 かくいう俺もすぐに日陰に退避していた。手に持っているアイスが溶けないように。

 百円で買える、ソーダ味のアイスキャンディー。棒は二つ差し込まれていて、真ん中でパキッと割れるようになっているアレだ。マユとは、よく二人で半分こしてた。
 どうしてこんなものを買ったのか。ご大層な理由はなかった。ただ購買でアイスを見つけて、昔のことを思い出したからだ。
 折角のアイスだし、どうせなら外で食べよう。そう思って屋上に上がってきたんだけど、どうやらそれが正解だったみたいだ。
 空調のきいた食堂より、夏の雰囲気にひたれる気がする。それと同時に、オーブにいたあの頃にも。

 マユと外に遊びに行って、アイスを買って。二人で食べて、また笑って。ずっと笑っていた。
 忘れることのできない大切な時間。絶対に忘れない、背負って生きていくって決めた、大切な過去。
 
……ちょっと物思いにふけりすぎたみたいだ。
 早くアイス、食べないと。今は分ける相手もいないけど――

「――見つけた。シン、こんなところで何してるの?」

 アイスに手をかけたその時に、ふと声をかけられた。
 大事な人の声に気付いて顔を上げるとシャルが笑っていた。

「購買でアイスを買ったんだ。屋上で食べようと思ってさ、ここに来た」
「わざわざ暑い場所に来て? 変だよ、それって」
「暑い場所で食べるのが良いんだって――そうだ」

 シャルの綺麗な金髪から、背負った太陽の光が眩しくのぞいている。
 青いアイスを綺麗に割って、目の前のシャルに手渡した。
 大事な人だ。大切な人だ。今の俺が、アイスを分けられる人だ。

「ほら、シャルの分。早くしないと溶けちゃうぞ?」
「え、良いの?」
「これはこういうアイスだから。二人で、半分こだ」
「うん! ありがとう!」

 笑顔のままアイスを受け取ると、シャルは日陰にいた俺の隣に座った。
 空いた片手で俺の手を素早く取って、ニコニコと笑うシャル。
 またいつものコレかって苦笑しながら、俺もアイスを口にほおばった。

「日本の夏って暑いんだね」
「そうだな。これからもっと暑くなるぞ、きっと」
「あははっ、それは大変だなぁ」
「そう言うわりには、ちっとも嫌そうじゃないぞ?」
「うん、僕は嬉しいもん」
「どうしてだ?」
「シンがアイスを半分こしてくれるから」
「何だよ、それ」
「えへへっ。今度はオレンジ味が良いな、僕」
「あ、コラ。ちゃっかり次の要求するなよ」
「良いじゃない。ほら、約束約束!」
「まったく……分かったよ、約束する」
「うん! 約束だよ!」

 なんだかもう決まりきったような流れだった。
 二人で手を繋いで、またシャルとの約束が増えて。
 そうやって二人でいっぱい笑い合う。
 大切な人と一緒に。
 アイスはオーブにいた時と同じように、甘くて冷たくて、美味しかった。

   ◇

……なんだか良く分からないけど、食堂に戻ったらみんなが砂糖を吐いて倒れていた。
『甘い空気が屋上からまで』とか、『アイスの半分こは反則だ』とか、ぶつぶつ呟いてたし……どうしたんだろうな?
 ただ、みんなの視線が今日も濃かった気がする。

207ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/24(木) 18:21:35 ID:YL1SvqiI
なんか久しぶりにシンの一人称でモノを書いた気がします。

それにしても改訂が進まないです。あんまり変えなくて良い一話までしかできてません。
それなのに他の作品ネタばっかり浮かぶんです。すみませぬ、すみませぬ。

208シンの嫁774人目:2012/05/24(木) 18:51:26 ID:CmRcEF26
ラウラ…
三つに分けられるアイスはないものか。王将アイス?
どの程度住んでたか知らないけど、南国のオーブに居たのに何故シンはあんなに色白なんだろう
焼けない肌のシンにみんなが嫉妬しそうだ

改訂版まってますので焦らず自分のペースで書いて下さい

209ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/25(金) 01:40:41 ID:bT9xBzMM
元々の予定だと、アイスの半分こは一夏とやるはずだったんだぜ……
さて、アイスを三等分は無理だったのでこんなネタに。

   ◇

 マユと喧嘩をしたときって、俺はどうやって仲直りしてたんだろう?
 目の前でむくれる大事な『妹』を前にして、ちょっとそんなことを考えてしまう。
 そうだ。父さんや母さんが仲介してくれたときもあったけど、大概は俺が先に謝ったんだっけ。
 そうやって俺が謝ると、マユもすぐに許してくれて、それで二人で仲直り。
 じゃあ、今日も俺から謝った方が良さそうだ。

「ラウラ、俺が悪かったよ。だから許してくれって、な?」
「……フン」

 部屋のベッドに腰掛けながら、ラウラはふいとそっぽを向いてしまう。
 ああ、どうやらこの妹はそう簡単に俺を許してはくれないみたいだ。
 
 ラウラがこれだけ怒っているのは、今日の昼のことが原因だ。
 アイスを買って、シャルと屋上で半分こにして食べた。それをラウラが知って、除け者にされたと怒り心頭なわけ。
 わざとラウラを除け者になんて絶対にしない。ラウラも今は俺の大切な妹だ。そんなことするはずがない。
 そう言って説得することはしたんだけど、まだまだラウラは膨れっ面のままだ。
 怒ってはいるけど、ラウラが座っているのは俺のベッドの上。そこをどいてくれない。
 みんなでも無理だったし、シャルと一緒でも説得不能だった。仕方ないから俺以外の全員に席を外してもらっている。
 最終手段で、一夏には頼みごとをしてあるんだけど……
 と、ここで部屋をノックする音が聞こえた。一夏が帰ってきたらしい。

「シン、頼まれたもん買ってきたぞー」
「ああ、ありがとう。ごめんな一夏、部屋から締め出しまでして」
「俺のことは気にすんなって。兄妹だったら、喧嘩もするもんだろ?」
「ははっ、違いないや」
「じゃあまた後でな。駄賃代わりに饅頭も買わせてもらったし、俺は箒たちと茶でも飲んでるよ」

 そう言ってまた一夏は廊下を歩いていった。安いお礼だけど、少しお茶でも飲んでてくれると助かる。

「ほら、ラウラ」
「フン……」

 頼んだ品物を受け取って、枕を抱えたラウラのところに歩いていく。
 購買で買ってきてもらったそれを袋から取り出して、ラウラの隣に俺も座る。
 一瞬ムッとした顔を俺に向けたけど、俺の手にあったそれを見て、意外そうな表情に変わる。

「お兄様、それは……」
「大人気、購買限定デザートのデコレーションパフェ」

 これが一夏に買ってきてもらった最終手段。二人で分けることが前提の特大サイズで、値段も張る。でもそんなこと今は気にしていられない。

「これを半分こで、仲直りしてくれないか?」
「……っ! お兄様ぁっ!」

 その一言でラウラの顔がぱぁっと笑顔に変わって、俺の胸に抱きついた。
 パフェだけはひっくり返さないように死守しながら、それでもようやく、俺もほっとした。

「……っておいラウラぁ! なんで俺のスプーンを放るんだ!?」
「二つもいらん、一つで十分だ」
「俺にどうやって食えって言うんだよ!?」
「お兄様、"あ〜ん"」
「そんな真似できるかっ!」
「してくれなければ、今日のことは許さん」
「ぐっ……あ〜もう、分かったよ! ほら……」
「フフン、それで良いんだ。さぁ、今度はお兄様が私に"あ〜んして"をする番だぞ」
「はいはい、"あ〜ん"……これじゃいつ食べ終わるんだか」
「ん……私はいつまでもお兄様と、こうしていたいのだがな」

 すっかり機嫌のよくなったラウラが、嬉しそうに笑っている。
 それを見た俺も、なんだか嬉しくてたまらなくて、自然と笑顔になる。
 流石に"あ〜んして"はちょっと恥ずかしいけど。
 また『兄妹』で喧嘩をするのも、仲直りをするのも、ホントに良いものだって思った。

210シンの嫁774人目:2012/05/25(金) 07:34:47 ID:3YpRmJuc
>>208ですが、ラウラの話で続いて嬉しいです
アイスを割けて食べるより一つのパフェを一つのスプーンで食べる方がラブ度が高い気がする
今度はシャルが拗ねそうでまたフォローが大変そう
ラウラもシャルとイチャついてた事より除け者にされたと拗ねるのが可愛い
将来お嫁さんが2人でも心配は無さそうですね

211シンの嫁774人目:2012/05/25(金) 20:43:00 ID:4UL3JHPU
GJです
ほのぼのしつつ甘甘で素晴らしい・・・・・・・次は3人一緒にだな

212ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:41:46 ID:FjtMkIs2
もう書き溜めとか考えてるといつまで経っても投下できないんだぜ。
それに投下しとかないと他のネタに浮気しちゃうんだぜ。
だからちくわはこのスレに骨を埋める覚悟で投稿しちゃうんだぜ。かっとビングだぜ、オレ。
……ってことで、今から某所にて掲載していた拙作『IS<インフィニット・ストラトス> シン・アスカの激闘』を投下させていただきたいと思います。
まず簡単な注意事項が以下になります。どうか目をお通しください。

・IS世界にシン・アスカ投入モノです。
・クロスカプ注意です。しかもヒロイン複数タイプの。(前に付いていたタグは二股)
・オリキャラ・オリ設定によるご都合展開が非常に多いです。

また注意事項が増え次第、順次追加しようと思っています。
それではプロローグ、投下します。

213ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:44:25 ID:FjtMkIs2

 ねえステラ。君が今の俺の姿を見たら、笑うかい? それとも怒るのかな?
 あ、いきなりこんなことを聞いてゴメン。つい……。
 
 大丈夫だよ、君との約束は忘れてないから。君の言ったとおりに、俺は前を見て、明日を生きていこうと思う。それが君との約束だから。
 ううん、君だけじゃない。父さん、母さん、マユにレイに……みんなの分まで明日を生きるって俺は決めたから。
 過去に囚われるなって、アスランは言った。確かに俺は過去に縛られていたかもしれないけど、失った過去を守ることが間違いだなんて、俺には思えない。
 だって君やレイ達と過ごした時間は……少しの間だけだったかもしれないけど、俺にとって大切なものだったから。それを切り捨てることなんて俺はしたくないんだ。
 アスランだってきっと分かってくれると思う。あの人だって大切なものを守りたかったから戦ったんだ。俺も同じだって分かっていたから……あの時の俺を止めてくれたんだと思う。過去に囚われたまま憎しみで戦うことは間違いだって、俺に教えてくれた。

 だからステラ、俺は決めたんだ。俺は過去を放ってはおかない。ちゃんと失った過去を背負って、それから前を……明日に目を向けるんだ。今度こそ、大切なものを守るために。誰かにすがって答えをもらうなんてことはしない。自分で考えた明日を生きる。
 だから安心して、ステラ。振り返りながらかもしれない。時々は足を止めることもあるかもしれない。けど、俺は歩き出すことを決めたんだ。
 大丈夫さ。だって――


――生きている限り、明日はやって来るから。


……うん、ステラ、ゴメン。たった今、大丈夫だって言ったばかりなのに……。
 俺は真っ直ぐ前を見つめることができてない。うつむいたまま、足元から視線を外せずにいる。
 それに、肝心の足も前に動かせていない。ただ立ち尽くしている。全く歩き出せてない。
 往来の邪魔をしかねないんだけど、その、ゴメン。まだ心の準備ができてないから待って。
 落ち着け、落ち着くんだ俺。周りは気にするな、俺は気にしない……よおし、覚悟ができた。顔を上げるよ。

 足元だけを映していた俺の目に、突き刺すように飛び込む日の光。
 眩む目の前に手を広げて光を遮ると、わっと広がったのは雪のように舞い散る桜の花びら。
 和らいだ陽光と満開の桜が織り成す光景は、まるで幻想の世界だった。

 一瞬だけ現実を忘れて見ほれていた俺を、校舎から高らかに鳴り響くチャイムが、現実に引き戻す。はっと辺りを見渡して、またしてもいたたまれない気持ちになった。

 校門の前にたたずむ俺を、好奇の目で見ながら抜き去っていく、制服姿の女子、女子、女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子女子……ざっと三十人以上はいる。これだけの人数がいるのに、あろうことか男子は一人もいない。女子だけだ。

 ある女の子は、何も言わずにこっちを見つめ……別の女の子は、友達らしい子と手を取り合って、キャッキャとはしゃぎながら……さらにまた他の子は、携帯のカメラをこっちに向けている。やめてくれ、フラッシュをたかないでくれ。天気も良いんだからフラッシュはいらないだろ……?
 ああ、きっと動物園のパンダはこんな気分だったんだろうな。マユ、今度動物園に行く時はちゃんとパンダに挨拶しような。「今から写真撮りたいんだけど、良いですか?」って。何も言わずにシャッターを切るのは失礼だ。よく分かった。

 ……ゴメン、話がそれた。ええっと……とにかく、数えていた自分が馬鹿らしくなるぐらいの女の子が俺の周りにいる。敵機としてアーサーに報告したら、多分卒倒するぐらいに。それがいっせいにこっちを見ているんだ。その視線に圧倒されて、情けない話だけど俺は動けないでいる。三十機のウィンダムに取り囲まれたって、こんな気持ちにはならなかったのに。
 逃げられたら良いんだけど、そういう訳にもいかないんだ。

 ちょっと離れて俺を見ていた女の子に視線を移す。俺と同じぐらいの背丈で、まっすぐ腰まで伸びた黒髪がつややか。そして切れ長の目、落ち着いた笑顔が、美人の条件をこれでもかと演出する。俺の視線に気付くとちょっと驚いた顔をして、それからすぐに微笑みかえしてくれた。感じのいい女の子だ。でも肝心なのはその子じゃない。その子が着ている服と、俺が着ている服だ。
 お互いに全身を包んでいる白地の真新しい洋服。襟や袖の黒色に、紅いラインの入った洋服は、その子も俺も全く同じものだった。ペアルックでも偶然でもない。だって、みんな同じ服――つまりは制服を着込んでいるんだから。

214ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:45:24 ID:FjtMkIs2

 結論を言うよ。今日この学校は入学式で、今日から俺はこの高校に通うことになっていて、ついでにこの学校には男子があと“一人”しかいないってことなんだ。

 どうしてこんなことになったんだろう? うん、『力』が欲しいとは思った。守る『力』が欲しいとは思った。たまたま、それに近しいものを手に入れることができた。
 でも知らなかったんだ。この世界では……その『力』は「女性にしか動かせない」代物だったなんて。なんで俺がそれを動かせるかも分からなくて。

 あぁ、もう! いい加減頭が混乱してきた。本当にそもそも、俺はどうしてここに来たんだよ……?

 頭を抱えながら、もう何度目かは分からないけど、俺は記憶を掘り起こし始めた。


   ◇


 目の前には紅いモビルスーツと黒い宇宙が広がっていた。
 そのモビルスーツ……ジャスティスがだんだんと遠くのほうに離れていく。右腕のなくなったその機体が、俺をじっと見下ろしていた。
 手を伸ばしても届かなかった。それに……もう伸ばせる手、力はなかった。

――メサイア防衛戦。
 デュランダル議長が唱える、戦争のない平和な世界を創るための計画『デスティニープラン』を成功させるために、俺は最後の任務についていた。
 任務の内容は、戦略兵器『レクイエム』と起動要塞『メサイア』の防衛、それを落とそうとするオーブ軍の遊撃。作戦が成功してオーブを討てば、全てが終る。

『人は自分にできることを精一杯やり、満ち足りて生きるのが幸せだ』
 
 そうやって言った議長はデスティニープランの実行導入を宣言した。遺伝子の解析による人材の再評価、人員の再配置。これで先の見えない不安からも開放される。愚かな戦争なんて二度と起こらないはずだって。
 議長の言うことが、本当に正しいのかは分からない。強制された平和で人が本当に幸せになれるのかって、アスランの言うことも分かるけど、だからって俺も戦わないわけにはいかないんだ。これで戦争がなくなるんだったら、仲間を守れるなら、たとえオーブを討つことになっても俺は戦う。

 そうさ、俺が欲しいのは戦争のない世界だ。もう二度とマユやステラみたいな子供が生まれないための世界だ。それがレイと一緒に、俺の決めた道だった。
 だから俺はアスランと戦っていた。あんたが正しいっていうのなら、俺に勝ってみせろって、そう言って。

 アスランの言う『人の向かうべき明日』。
 俺が欲しかった『戦争のない明日』。

 俺の明日がどんなものになるのか、分かるはずもないまま……俺は戦っていた。


 右腕と右足を切られたデスティニーが、月の重力に引かれて、ゆっくりと後ろに傾いていく。
 機体の制御が利かない。カメラは生きているけど、もう意味なんてなかった。
 コントロール画面に映るデスティニーのシルエットには、各部にロストの文字が点滅している。
 さっき左腕も持ってかれた。武装もほとんど残っていないし、スラスターもやられている。
 コクピットの中で鳴り止まないエマージェンシーが、完全に俺の敗北を告げていた。

 ああ……俺は負けたんだ。
 でも不思議だ。悔しくてたまらないけど、嫌じゃない。素直に負けを認められる。
 いつだって素直な言葉なんて出てこなかったのに、この時初めて俺は、心のままの言葉が口をついて出た。

「アスラン……あんたやっぱ強いや……」

 暗い宇宙の中で、周りは色々な光であふれていた。
 ビームの閃光が走る。ミサイルの爆発が鎖を形作る。それに、モビルスーツが一際大きな輝きを見せては消えていく。
 みんなまだ戦っている。必死に、自分の帰る場所のために。戦争のない、平和な世界のために。それぞれの大切なものを守るために。
 さっきまで俺もその中の一つだったはずなのに。
 デスティニーはもう戦えない。俺の力が足りなかったからだ。

215ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:47:08 ID:FjtMkIs2

『シン……』

 少しの間だけ俺のほうを見ていたジャスティスが、背を向けて宇宙に消えていった。
 アスランの行く先はきっとレクイエムだ。そのままレクイエムは墜ちるだろう。
 それを止めるのが、俺の任務だったのに。
 駆けていくその光の筋を、俺は見ていることしか出来なかった。

 すみません、議長。
 ごめん、レイ。みんな。
 俺、止められなかったよ。
 俺はまた、守れなかったんだ。

 月面の荒れ果てた大地がだんだん近づいていく。
 落ちていくデスティニーの中で、俺の意識は遠くなっていった。


   ◇

 
――父さん、母さん、マユ、ルナ、レイ、みんな……ステラ……。

 周囲には何もなかった。
 自分以外に何も見えない暗い空間の中で、まるで意識だけが浮いているみたいだ。体にも力が入らないし、それにひどく寒い。
 いったいここはどこなんだろう? レクイエムとメサイアは? 議長は? レイは? ミネルバのみんなはどうなったんだ? 

……もう俺が気にしてても意味は無いかもしれない。
 どうせまた、守れなかったんだから。
 
――結局俺は誰も守ってやれなかった……。

 俺はどうなっても構わない。戦争のない平和な世界のためにって戦ってきて……それでも、何も変えられなかったんだ。全てが、オーブにいたあの時のまま。
 軍に入ってから、俺は強くなったと思った。全て叩き潰して、戦争なんて無くしてしまえるって思った。大切な全てを、今度こそ守ってみせると思った。
 
 なのに、父さんと母さんとマユが死んだときと同じだった。ステラも守れなかった。目の前で死んでいった。
 
 奪っていった奴らが憎かった。議長がくれたデスティニーさえあれば、そいつらを倒せると、平和な世界の邪魔をする奴を、全てなぎ払えると思った。それが戦士としてできる俺の全てだった。力だけが俺の全てだった。
 でも、最後はアスランに負けた。あの人は憎しみで戦うなって言った。それじゃあ心は永久に救われはしないって。そのアスランの『力』に、俺は負けたんだ。

 憎しみで戦っても、何も戻りはしない。
 だったら、俺が今まで戦ってきたのは何だったんだ……? これでやっと終ると思ったのに。戦争が終る。俺の闘いも終る。もう戦わなくていいんだって、それなのに……
 
 誰も守れなくて。何も守れなくて。ずっと守れなくて。

 できるようになったのは、誰かを撃つことだけだったのか? 誰かから奪うことだけだったのか? 怒りと憎しみのまま奪うことが、俺の欲しかった力だったのか?
 だったら俺のしてきたことは……。
 
――無駄だった。何もかも……。

 暗闇の中でどうにかなってしまいそうだった。
 胸の中にあった何かに、急にひびが入っていくような感覚が広がる。ひび割れた何かに入り込んでいく、暗い冷たいもの。
 四方を包む漆黒が体の感覚すべてを奪い去っていく。泣き叫びたいぐらいなのに、もう涙も出ないし、指一本すら動かせない。唯一残っていた意識まで深い闇の中に沈んでいきそうな、その時だった。

「そんなことないよ……!」
「え? 誰?」

 後ろから柔らかい光と一緒に、誰かの声が聞こえた。
 暖かい、優しい光と声だ。その少し幼さの残る声がふわりと俺の耳を、それから全身を抱きしめる。暖かい、光がある。
 振り向いたそこにいたのは――

216ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:48:03 ID:FjtMkIs2
「ステラ……シンに会えて良かった……」

――ステラだった。
 ステラは笑っていた。出会った時と同じ金色の髪は、太陽みたいにきらめいて温かだった。でも、最後に会った時とは違って、嬉しそうに……本当に嬉しそうに笑っていた。
 俺が守りたかった、守りきれなかったはずのステラの笑顔だ。光は優しく俺を包んでいるけど、なんだか眩しくて、はっきりと目を開けていられなかった。ステラの笑顔を見ていたいはずなのに、眩しいんだ。

「だからシンも前を見て。明日を……」

 その声を最後に残すとステラの姿は光の中に溶けていった。暗闇が吹き飛び、光る暖かな世界が広がっていく。さっきまでの刺すような寒さはなくなっていて、辺りは光が満ちて、星のようなものがきらめき輝いている。

「そうだな、ステラ……俺はまだ、生きている……」

 枯れていたはずの涙で目がにじむのが分かった。それを腕でぬぐって、なんとかこらえてみせる。いつもみたいに、ただ考えることなく泣きわめくことはしたくなかった。

 まだだ。まだ終わりじゃない。
 俺が負けたからって、俺の明日がなくなるわけじゃないんだ。
 ここで諦めたら……俺も世界も、変わらないままだ。
 諦めちゃいけない。どんなに困難な道でも、歩き出さなきゃいけない。
 俺は……ここで終りたくはないから。

「ステラ……約束するよ。俺、今度こそ……守ってみせる」

 姿は見えないけれど、きっと聞こえている。
 ステラは俺のそばにいてくれているはずだから。
 今の俺に言える精一杯の言葉を口にすると、俺の意識まで光の中に消えていった。
 
 満ちていく光の中で、ぼんやりとしか覚えていないけど、何かを見た気がする。
 差し伸べられた誰かの手。小さな右手は、俺にはとても懐かしく思える。
 それは、こっちにおいでというように俺に向かっていて……。
 どうしてだかは分からないけど、俺は無意識のうちにその手をつかんだ。
 覚えているのはそこまでだった。


   ◇


 目が覚めたときには、うす暗い部屋に放り出されていた。まず非常電源を起動させようとか、無線が生きているか確認しようと手を伸ばしたけれど、その手に触れるものがなくて、自分が窮屈なコクピットの中にいるんじゃないってことに気付かされる。

「ここは……どこだ?」

 なら、どこかの医務室か? という疑問も、自分が固い床に転がされていることで、違うと分かる。
 医務室がいっぱいになっていても、流石に床に放り出したりはしないだろう。幸いにも、俺はどこも怪我なんてしていなかった。それに、戦闘中らしい慌ただしさも振動もなくて、不思議なほど静かだった。
 まだ少しふらつく頭を抱えて起き上がる。床を踏みしめられるのだから、重力があるみたいだ。……ちょっと待て、重力? 回収された後に地球にでも連れて行かれたのか?
 ヘルメットはどうか、視線を巡らしてみても見つからない。どこかに置いていかれたらしい。パイロットスーツは着たままだ。ますます、よく分からない。拘束もされてないから、敵艦の中ってわけでもなさそうだし……

 辺りを見渡すと、うずたかく積まれたダンボールの山だとか、見慣れない機材が積み重ねられている。照明も点いていなくて、頼りになるのは天窓から入る日の光だけみたいだ。時々隙間風みたいなものが吹いて俺の頬を冷たく叩いていく。
 何かの倉庫? だったら俺は、怪我が無いからって倉庫に投げ出されたんだろうか。そんなことを思うと、腹立たしい気持ちが少し湧いてきてしまう。

「いいや、とにかく――」

 何でも良いから、ここを出なきゃ始まらない。そう思ってみたものの、結構な広さもあるらしいし、隙間なく物が詰め込まれた棚とかのせいで視界が狭い。すぐに出口は見つからないだろうけど、とりあえず立ち上がって、部屋をふらふら歩き始める。

「誰かいないのかー!?」

 声をあげてみても、返事は聞こえなかった。自分の出した声が、倉庫の高い天井から跳ね返ってくるけれど、すぐにまた静寂が戻る。状況もさっぱり理解できないせいで、苛立ちは募るばかり。

217ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:49:37 ID:FjtMkIs2

「いったいどうなってるんだよっ!?」

 思わず声を荒げたその時、奥のほうから、ブンと機械が動き出したような音が聞こえた。今まで気付かなかったけど、その音の方角から光が漏れていた。それを追ってはみるものの、なんだか奥のほうに入り込んでしまっているみたいだ。そうは言っても音が気になったから、かまわずに進む。何も無いよりマシだと、自分に言い聞かせて。
 荷物の迷路を、目的地の光だけを頼りに進んでいく。機材の山の壁と暗がりのせいで、時々つまずきそうになりながらも歩いていくと、パソコンの画面らしい明かりが目に入った。そろそろゴールらしい。大きな棚でできた最後の角を曲がったところの一番奥に、目的のそれはあった。

「なんだ、これ……?」

 打ちひしがれるような格好でたたずむ、灰色の、人型の何か。

 胴体を覆うアーマー、腰のサイドスカート、そして無造作に投げ出されたその腕と足は、まるでモビルスーツを人のサイズにまで小さくしたみたいだった。でも所々には装甲がないし、何より頭部もカメラらしきものもない。こんな歯抜けた形じゃあ、自立して動くなんてできないだろうし……カメラまでないなら、作業用のロボットでもないのか? それともただの作りかけか?
 肩と背中、それから腰に繋がれた仰々しいケーブルは、隣のパソコンに伸びている。画面の中はすさまじい速さで文字が躍っていた。
 覗きこんでみると、わけの分からない用語のオンパレード。PIC整備完了、ハイパーセンサー整備完了、コア・ネットワーク動作確認終了、シールド・エネルギー充填完了……動作確認終了とか出ているんだから、きっと整備はほぼ完璧なんだろう。
 ただ、この灰色の鎧みたいなやつが動き出すなんて思えない。……鎧、か。サイズも人間大だし、新しい作業用スーツなのかもしれない。いや、それにしてはずいぶん物々しいような気がする。
 触ったらまずいよな、とは思ったけれど、どうしてだか気になって仕方がなかったから、それに手を伸ばしてみる。あと数センチでそれに触れそうになった時だった。

 足元が少しぐらつく感覚に、手を止めてしまう。続いて大きな爆音と衝撃が、俺の体を思い切り揺らした。

『火災発生、火災発生! 研究所第一棟の開発室から出火!』
 
 更に緊急事態を知らせる警報が、倉庫の天井近くから鳴り響く。

「火事ぃ!? 嘘だろ、こんな時に!?」

 もしここに弾薬があって引火でもしたら、間違いなく俺は吹き飛ばされる。そんなのはゴメンだ。変な機械に構ってなんていられなかった。すぐに来た道を引き返して、俺は出口を探し始めた。
 戻りの道すがら、何度も爆発音が聞こえ、地面が揺れ動く。音のする距離はそんなに離れていない。煙はまだこっちには来ていないのだけは救いだ。急がないと……。
 意外にも、引き返してみれば出口は近かったけど、その前にぽつんと落ちているものがあった。さっき見つからなかった、俺のヘルメットだ。
 これで煙を吸い込む心配はしなくて済むと、少しだけ安心してヘルメットを拾い上げると、フェイス部分からカツンという音がした。
 手を入れてつかんでみれば、硬い、長方形の感触。取り出してみたそれは、ピンク色の携帯で――マユの形見の、大事な携帯だった。

「何でこれが……って、今はそんなこと考えてる暇はないか!」

 艦に置いてきたはずだったけど……とにかく、これが見つかったなら、なおさら死ぬわけには行かない。携帯を握りしめて、片手でドアノブを回して扉を開く。

 扉の先の廊下には、すっかり黒煙が立ちこめていて、自分の顔がこわばるのが分かった。スーツ越しにも伝わる熱気が、火が刻一刻と近づいていることを俺に知らせている。
 慌てて扉を閉めて、右に向かって駆け出した。建物の構造を知らないせいで、どこから逃げればいいかが判断できないけれど、まず出火元から離れることが先決だ。
 回りこんだ廊下の先の窓を開け、外がどうなっているかを確認する。下には庭が広がっていて、避難したらしい人たちでごった返している。庭を中心にして、左右と向かいに、それぞれ似たような建物がそびえ立っていた。そちらから煙が上がっている様子はないから、今いる建物が火の元なんだろう。

218ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:50:16 ID:FjtMkIs2

「おい君! その下の庇から降りられるか!?」

 窓から身を乗り出していると、こっちに気付いた庭の白衣の人が声をかけてくれた。下の庇? よくよく真下を見ると確かに庇があった。そこから降りればなんとかなるはずだ。

「今はしごも用意したから、急いで!」
「はい、大丈夫です!」

 落とさないように、胸元からスーツの中に携帯をねじ込む。飛び降りようと窓枠に手をかけると、下からまた、周りを震わせるような大声が聞こえてきた。青年って言うには年がいっている。けどそれは切羽詰ったような、悲痛さも感じられる声だ。

「放せ! まだ娘が中にいるんだ! 放せってんだよ!」
「主任、無茶ですってば! 消防の人を待たないと、主任まで!」
「だからって娘を放っておく馬鹿親がいるかよ!? ちくしょう、放せっ!」

 後ろの人に羽交い絞めにされても、必死に建物の中に飛び込もうとする人がいた。娘が中に。その言葉だけで、あの人が何をしようとしているのかが十分に分かった。ほとんど考えるよりも先に、俺は反射的に声を張り上げていた。

「俺が助けに行きます! その子、どこにいるんですか!?」

 俺の声に気付いたその人が、はっと顔を上げる。顔はまだ若々しいけど、無精ひげと、着崩した白衣を懸命に振り回している。でもその表情にあるのは、大事なものを守ろうとする目。必死で俺にすがるような目を向けていた。

「何言ってるの! 君も早く――」
「多分四階だ! 今お前さんがいるところの一つ上だ、頼む!」

 後ろにいた人の制止の声も、それはもう一つの嘆願にかき消された。返事をする時間も惜しく思えて、一つうなずいただけで窓に背を向ける。俺は階段を探して、もう一度煙の中に入り込んでいった。
 直後に、大きな衝撃。まだ爆発は止まらないらしい。急がないと火事で燃えるより先に、建物が崩れるかもしれない。見つけた階段を数段ほど飛ばしながら駆け上がって、廊下に出た。廊下はもう火に包まれていて、三階よりも熱気は一段と増している。

「誰かいるかっ!? いたら返事してくれっ!」

 返事の代わりに聞こえてきたのは、女の子の泣き声。声のする部屋へ炎を避けてひたすら走りこむ。扉を開けると、部屋の奥でその女の子はうずくまって震えていた。机の下に潜りこんで泣きじゃくっているその年のころはまだ十歳ぐらいだろうか。
 あどけない幼さが残る女の子は、長く伸ばした栗色の髪を先でまとめている。マユを思い出させる……いや、まるでマユが少しだけ大きくなったような見た目に、大きく一度、心臓が跳ねた。その子が呟いた「助けて」という言葉に、あの光景が重なった。
 深くえぐられた地面に、脂の混じった何かが焼ける音と臭い。ぐしゃぐしゃに吹き飛ばされた、家族の――

 させるもんか……この子まで死なせてたまるかっ!
 かぶりを振って部屋に入り、机にしゃがみ込んで手を伸ばす。

「もう大丈夫だからっ! こっちに!」

 恐怖からなのか女の子は何も言わないで、必死に俺の体にしがみついてきた。
 むせ返るような熱気の中、煙を吸わせないように注意しながらも、その子を抱えて部屋を後にする。なんとかこの子を見つけたのは良いけど、早く逃げないと間に合わないことは明白だ。

 廊下の炎はさらに高くうねりを上げて踊り、爆発は建物を狂ったように揺らし続ける。この階からじゃ、避難はもうできない。危うく炎に飲み込まれかけていた階段を飛び降りながら、再び三階の廊下に入ろうとがむしゃらに駆けずり回る。

「っ!? しまった、ふさがれたっ!?」

 通路の角を曲がってみれば、どこを通ってきたのか、火は道をもう完全にふさいでいた。背後からも炎が迫っているのに、前も後ろも遮られた形だ。残っている道は、もうさっきの倉庫ぐらいしかなかった。少しでも時間稼ぎになるように中に飛び込んで扉を閉めたけど、追い 詰められたことに変わりはない。焼け出されるのも時間の問題だ。

「くそっ、何とかならないのかよっ!?」

 扉に拳を打ち付けても答えが出るわけも無くて、虚しく音が響くだけだった。扉はすぐに熱気を帯びて、触れていられないほどに温度が上昇していく。

219ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:51:38 ID:FjtMkIs2
「……っ!?」

 女の子のしがみつく力がいっそう強くなった。涙でぐしゃぐしゃになった顔をこっちに向けて、煙でカラカラに渇いたのどから、なんとか声を絞り出している。

「お兄ちゃん……大丈夫? 助かる?」
「大丈夫。俺がちゃんと、君を守るから。お父さんの所に連れて行くから」
「……ほんとに?」
「うん。だから、大丈夫。安心して」

 そう言うと女の子はちょっとだけ安心したのか、小さくうなずくと、もう一度だけ手に力を込めた。
 俺はその顔を真っ直ぐ見ることもできなかった。

 今の俺に何ができる?
 怯えさせて、その後は気休めの言葉をかけるだけか?
 悔しさでこぶしが止むことなく震えてくる。
 
 ちくしょう……!
 ちくしょう!
 ちくしょうっ!
 約束したばかりなんだ!
 明日を生きるって、ステラと約束したばかりなんだ!
 なのに!
 自分も守れないのかよ!?
 この子一人も守れないのかよ!?
 もう俺にはそんな力も残ってないのかよっ!?
 
 掌が白くなるほどに握りしめても、いくら歯を食いしばっても無駄だ。
 俺は、この子を守ることができないのか……?

『力』が、欲しい。
 約束を守る『力』。
 奪う力じゃない。
 守る『力』。大切なものを……今度こそ。

――今度こそ俺は守らなくちゃならないんだ。

 薄暗いはずの倉庫が、急に真っ白になっていく。
 倉庫のもの一切が、壁すらも見えない。
 抱きかかえていたはずの女の子まで見えなくなって、何も聞こえなくなった。
 まるで時間の流れから切り離されたみたいに周囲が静けさに染まっていく。

 白い空間の奥に見えたのは、ケーブルに繋がれていたあの鎧もどき。
 動くわけでもない。何か言うわけでもない。
 ただ、そこにあるだけだ。
 それでもはっきりと分かった。

 俺のことを呼んでいる。

 気付いた瞬間、まるでテレビの画面を切り替えたように世界が元通りになった。
 弾かれたように体は動き出していた。
 道なんて覚えていないのに、足は勝手に奥へと突き進む。
 同じ角を曲がり、たどり着いた場所に座っているそれは、周りのことなんて全く気にかけずに俺の前にあった。

「これ……『IS』だ」

 女の子がぼそりと呟く。『IS』、という名前に聞いた覚えはない。
これが何かなんて知らない。
 でも、たった一つだけ理解できることがある。

 これは、『力』だ。守るための『力』だ。

 抱えていた女の子を一度おろして、安心させるように髪を軽くなでた。

「大丈夫だから、安心して」

 こっちを見上げながらなでられた頭をおさえている女の子に背を向けて、灰色に向き直る。
 そして俺は灰色にゆっくりと手をかざした。

 お前が俺のことを呼んだんだよな? なら頼む。
 俺に『力』をくれ。
『力』が必要なんだ。

 だって俺はまだ……約束も、大切な人も――

「俺はまだ、何も守れてないんだ!」

220ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:52:32 ID:FjtMkIs2

 手を触れた途端に、金属がこすれたような音が聞こえた。
 
 次の瞬間には、頭の中には膨大な情報が滝のようになだれ込む。
 普通だったらそのまま流されていくような情報も、自分の頭はOSにでもなったみたいに瞬時に処理していった。
 力の何もかもが、分かる。力の使い方、特徴、装甲の限界、最大出力、意識に浮かび上がるパラメーターも、その見方も、何もかも。
 
 機体を縛り付けていたケーブルが、排出される水蒸気と共に一つずつ外れていく。
 鮮明になっていく視界と同時に機体の装甲は、内からにじみ出るように広がる、色鮮やかな青と白に染まった――ハイパーセンサー最適化完了、フェイズ・シフト、展開……完了。
 宇宙に上がったときのあの感覚、体がふっと浮上する――推進機正常動作、確認。
 左腕を突き出せば光が包み、そこに盾が形成されていく――機動防盾……展開。

 各種追加装備――使用可能装備無し。
 全システム――クリア。


『ignited―<イグナイテッド>―起動』

 
 視界に映る起動の文字が消え、装甲が淡く輝きを放つ。
 背部のスラスターからの排気が、軽く周囲のものを揺り動かして音を立てる。
 
 見えるのは狭く、ちっぽけな世界。いつだって理不尽で、容赦無く俺を打ちのめしてきたはずの世界。

 だけど確かに今この世界に、俺と『力』はあった。

 起動動作が終了したのを確認した俺はすぐに、女の子をまた抱き寄せる。
 『力』があるのなら、やるべきことに迷いなんてない。この子を守るんだ。

「しっかりつかまっててくれよ」
「う、うん……」

 驚きで目を見張る女の子に念を押して抱え挙げる。左腕の盾でその子を覆うようにすると、右腕で腰のサイドスカートからダガーを引き抜き、地面から一メートルほど浮き上がってドアの方に向き直った。
 盾の装甲が押し広げられるように開き、スラスターに光がともされていく。

「行くぞっ!」

 体をぐっと前に傾け、背中と足のスラスターを一気にふかす。
 邪魔な障害物をダガーで払いながら、加速をつけて倉庫を一直線に駆け抜けた。
 生身だったら絶対に反応仕切れない速度でも、センサーが感知して体がそれに追従する。
 のたうち回って揺らめく炎も、今は何の脅威でもない。
 その勢いを保ったまま、ダガーを突き立てて倉庫の扉をぶち破り、さらには建物の壁も簡単に貫いていく。一枚、二枚……止まりはしない。

「はああああぁぁーーーーっ!!」

 壁を切り抜けて最後の窓を叩き割ると、ようやく太陽の下にたどり着く。
 頭上に広がる快晴の青空の下には、緑の芝生がきれいな大きな庭が広がっている。円周に囲む建物の先には、急がしそうに日々を過ごす都市。チラチラと映る、割れたガラスの欠片。センサーを通じて見える世界では、何もかもが輝くように見えていた。
 
 太陽ってことは、やっぱりここは地球なのか? いや、そんなことは後回しで良い。とにかく、外に出られれば一安心だ。
 そう思って下に着地しようとしたけれど、空を飛ぶ体は止まらない。いや、止まらないどころか――

221ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:53:42 ID:FjtMkIs2

「!? 減速できない!?」

 足や後ろのスラスターをバタバタと動かして見せても、空中制御はろくにできずに、勢いは止まることを知らなかった。
 マズい。このまま勢いじゃあ、向かいの建物に突っ込む。そろそろ腕の中にいるこの子も無事じゃいられない。
 やむを得ずにダガーを放り投げて、両手で女の子を抱きしめる。前傾姿勢だったのを反転させ、足のスラスターを点火。無理やりに急降下して、背中から地面に接触した。
 体を叩きつけた勢いのまま、体が跳ねて、そしてまた地面にぶつかっていく。
 背中を中心にバラバラになりそうなほどの衝撃。放り出されそうな意識は、スーツのおかげだろうか、なんとか繋ぎとめられた。

「止ま……れええええぇぇぇぇーーーー!! 」

 芝生のきれいに植えられた庭を、土を盛り上げて深くえぐっていく。それから庭を通り越して、外周のコンクリートの上で火花を散らしたところで、ようやく動かなくなった。
 プスプスとコンクリートが煙を上げている。庭にいた人たちが大勢、慌ててこっちに走ってくるのが見えた。

「だ、大丈夫? 怪我はない?」

 まずは女の子の安否を確認する。頭とか打ってたりはしないか――

「だ……だいじょう……ぶぅ〜……」

 涙も振り切っていったみたいだ。ぐしゃぐしゃだった顔から涙は消えて、クルクルと可愛らしく目を回していた。あんな無茶に付き合わせたんだから、それも仕方ないか。
 それでも……大丈夫の一言が、俺の心にすっとしみ込んでいった。無事だった。助けることができた。守れたんだ。

「はは、良かった……」

 安心したらガクッと体の力が抜けた。そろそろ限界だったらしく、女の子を抱いていた両手を放り出して仰向けに倒れこむ。身にまとっていた装甲は、一瞬光ったかと思うと、もう消えていた。もう駄目だ、体が微動だにしない。まぶたは重くて目を開けているのがつらい。

「あ、お父さん!」
「マユ、無事か!? 怪我はないな!? 大丈夫なんだなっ!?」
「うん、平気! このお兄ちゃんが助けてくれたの!」
「ああ、そうだな……っておい、お前さん大丈夫か!? おい、タンカだ! 誰か急いでタンカ持ってこいっ!」

 マユ? 名前、マユっていうのか。ならホントに、守れてよかった……。
 その安堵がとどめの一押しだった。他の人が近づいてきてるのに、逆に周りの喧騒は自分の耳からどんどん遠ざかっていく。

 そういえば、俺はどうしてここにいるんだっけ……?
 まあ、今はそんなこといいか……。
 守ることができたから。今はちょっとだけでいいから休ませてほしい。
 頭の中もごちゃごちゃしたままなんだ。だから今は何も考えないで、眠りたい……。

「お兄ちゃん、大丈夫!? お兄ちゃんっ!?」

 ほんのちょっと前まで、モビルスーツに乗って戦っていたのに……。
 次に気付いたら、ステラに会えて……。
 今度は妙なスーツ着て、空を飛んでいて……。
 まるで明日に火が点いて、加速したみたいだ。

 ねえ、ステラ……一つ、いいかな?
 

――明日を生きるって大変だな――

222ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 12:01:32 ID:FjtMkIs2
という感じでプロローグのその一です。
投下の最中にも『もっとこうしとけば良かったかな?』なんて思うこともあり。やはり長文は難しいですね。
次回の投下は三週間〜一ヶ月以内を目安にがんばりたいと思います。
完全新規で書き下ろす話なので、拙作をお読みいただいていた方にも楽しめるかな、と思います。

そして阿呆な質問を繰り返すちくわに親切に接していただいた住人の皆様、これまで応援していただいた読者の方全てに感謝の言葉を述べさせていただきます。
本当にありがとうございます。これからもよろしければ、皆様と末永いお付き合いになれるよう、励んでいきます。

それでは失礼します。

223シンの嫁774人目:2012/05/26(土) 15:04:27 ID:N.3XtOnw
>>222
待っていました!続きも楽しみにしています
シンって守れた者は本当に少ないんですよね。最初に守れなかった妹と似た存在を守れたのは嬉しかったでしょうね

作品投下は確かに一度悩むとここも直した方が良いのかと思ったりして気が引けてしまうかもしれませんね
でも超かっとビングで投下するのも良いと思います。気になったらまとめページで修正できますし


自分は最近保管をしている者ですが、以前の作品も見させて頂いておりその時はタイトルが付いていましたよね?(自分は忘れてしまいましたが…)
今回はプロローグ1がサブタイトルで良いのでしょうか?
保管は1月に一度が本スレ、練習スレ共に作品が貯まったら保管しますので

224シンの嫁774人目:2012/05/27(日) 00:10:58 ID:apwQ2X6U
GJ。とうとう再開か・・・待ってたんだぜ。
けど無理にならないように、のんびりとやって欲しい。

225シンの嫁774人目:2012/05/28(月) 12:18:10 ID:Cir8LLuQ
待ってました!
シンがジャスティス乗るとこまで待ち遠しいな!

226シンの嫁774人目:2012/05/28(月) 15:59:23 ID:igvjK0aw
GJ!楽しく見てます。

227シンの嫁774人目:2012/05/28(月) 21:11:03 ID:8TCG3PP6
GJ!
前の分全話持ってるから、見比べするの楽しみ

228シンの嫁774人目:2012/05/29(火) 23:46:36 ID:mTVn3Pxw
新参ですが、落としてもいいですか?

229シンの嫁774人目:2012/05/29(火) 23:49:40 ID:UsWxHHh.
>>228
練習スレはとにかく書いてみるスレなので、新参である事なく気にするどうぞ

230シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 00:02:10 ID:nIb3ttCM
>>228 待ってるぜ

231シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:05:24 ID:RvedyvTk
>>229>>230
ありがとうございます。じゃ行きます
初投下なので何かやらかすかもしれませんが、お目こぼしを

232シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:06:34 ID:RvedyvTk


「ミネルバよりインパルス! 直ちに帰還してください! これ以上は危険です!」
「分かってるよ! けど――ああもう!」
 叫び、シン・アスカはフォースインパルスガンダムを加速させた。船《ミネルバ》ではなく、摩擦熱で赤く燃えて見える地球へ。そこへ今まさに落ちよう
とするユニウスセブンの破片の上で、今も踏み止まっている一機のMSのもとへ。
「おい! 何やってんだよあんた! もう戻るぞ!」
「これだけでも作動させる! この岩が半分の大きさになれば、被害がかなり少なくなるはずだ!」
 そう答え、アスラン・ザラの乗るザクウォーリアは岩の上に突き立っている巨大な機械――メテオブレイカーのスイッチを入れた。信管が岩に潜り込み、
最後のカウントダウンが始まる。「よし。これで」「もういいな! 行くぞ! ――間に合わない気がするけど!」シンが叫び、インパルスがザクの手を引
いて上昇する。熱と磁場で計器が全てイカれている。もう地球の引力に捕まっているかもしれない。それでも諦める気は無かった。ただスロットルを押し込
み、最大出力でインパルスを翔ばす。
 がくん、とその上昇が止まった。「!?」同時に警報。接敵。「どこだ!」誰にともなく言い、レーダーを確認する。何も映らない。自機を示す中心で光
点が明滅するだけだ。
 ――中心「シン! 下だ!」アスランの声とほぼ同時に、シンは自機の真下を振り向いた。

233シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:07:46 ID:RvedyvTk


 インパルスに手を引かれるザクの下半身に、半壊したジンがしがみついていた。「まだいたのか――クソ! 離れろ!」叫ぶが、シンにはどうにもできな
い。ライフルは先の戦闘で弾切れだ。サーベルも届かない。CIWSも角度的に当たらないだろう。「我らが同胞の墓標! 落として灼かねば、世界は変わ
らぬ!」テロリストの声。
「ほざいてろ! アスラン! そいつを排除できますか!」
「――シン、お前が手を離せ!」
「はァ!?」
「こいつは俺が処理する! 俺やこいつを連れたまま引力圏を離脱するのは無理だ! お前だけでも助かるんだ!」
「――馬鹿言ってんなァァァァ!」
 インパルスは手を離した。直後に宙返りして急降下し、ザクの下半身ごとジンにビーム・サーベルで斬りつけた。片手でザクを持ち上げながら、バランス
を崩したジンを蹴り飛ばす。「独りで死んでろ!」
「――まだ分からぬかああ!」
「何が!」
「我らコーディネイターにとって! パトリック・ザラの取った道こそが、唯一正しきものと!」
「――!?」
「知るかんなもん!」
 息を呑むアスランのザクを両腕で支えながら、シンが即座に言い返す。「勝手な理屈で勝手に戦争起こしたアホの言い分なんか知るか! いいから死んど
けカスが!」

234シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:09:13 ID:RvedyvTk


「ザフトの、為に――!」
 叫びながら、ジンが摩擦熱で爆走し、細切れの炎となって消える。「――アスラン。ここで残念なお知らせです。インパルスの出力じゃもう地球の引力を
振り切れない。終了です」
「……」
「――? アスラン? 聞いてます?」
「…勝手な理屈で勝手な戦争起こしたアホの言い分、か」
「――あ――す、すいません。なんか」
「いや、それはいいんだ。お前の言う通りだよ。――ただ、ああして親父の言葉を今も信じてる、囚われてる人間がいると思うと、どうもな――」
「――」
 シンは一瞬言葉を失った。戦争が終わって、嫌気が差したからプラントを出た。それはいい。自分もその口だ。戦争は国家の醜い部分を嫌というほど人間
に見せつける。自分が今まで住んでいた国を嫌いになる奴がいても仕方無いと思う。でも――この男はそうではないらしい。何もかも嫌になって、全部投げ
棄てて逃げ出したわけではないらしい。でなければあんなテロリストの世迷言を気にしてやるいわれは無い。
 ――でも、だったら。「あんた――」
「? 何か言ったか?」
「あんたみたいな人が、なんでオーブなんかに――」

235シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:10:24 ID:RvedyvTk


「…お前だってオーブの出身だろ」
「出身なだけですよ。あんな国」
「じゃあなんでザフトでMSのパイロットだ?」
「――」
 シンが答えを言おうとした瞬間、がくりとインパルスがバランスを崩した。エネルギー残量10%未満。セーフモード起動。パワー・ギアをOTから2へ
オートシフト。及びロック。「で? 終了だって言うなら、俺とここで心中してくれるのか?」
「絶対《ぜってぇ》嫌。だがちゃんと頼むんならしてやらないでもない」
「ほう? そんなに嫌われてはなさそうだな」
「心中の方じゃねーぞ。こういう時は、俺を助けろバカ野郎、ぐらい言うもんでしょ」
「――俺を助けろバカ野郎」
「…」「…」「…」「…」
「…分かったよ。何とかしてくれ。方法があるんだろ?」
「ザクのシールドを貸してください。インパルスの盾と冷却装置とでフル稼働させて、このまま大気圏に突入します」
「――出来るのか」

236シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:11:49 ID:RvedyvTk


「仕様上はできません。でも他に方法が無い。何もしないよりはマシでしょ?」
「やれやれ。どんな奇抜なアイディアを出してくれるかと思ったら、割とたいしたこと無かった」
「無駄口を叩かない。盾を渡したらインパルスの後方についてください。緊急冷却モードは使えますか?」
「さっきから点きっ放しだ――!?」
 アスランの言葉は途中で途切れた。突然ザクがインパルスから離れ、きりもみしながら吹っ飛んでいく。「アスラン!? アスラン! 何やってんです!
?」
「分からん! コントロールが利かない!」
「くっそ――!」
 シンはけたたましく警告を鳴らし続けるディスプレイを殴りつけ、セーフモードを切ってスロットルを押し込んだ。「バカ! 止せ! お前だけでも生き
残るんだ!」「ここまで来て見殺しに出来るか!」ザクを目がけてインパルスが翔ぶ。しかし、すぐに失速した。ディスプレイが一瞬真っ赤に染まり、次々
に消える。「あ――」パワー・ゼロ。システム・ダウン。消え逝くディスプレイに爆走を始めるザクが映る。コクピットを断末魔の震動と、それまで感じな
かった凶暴な熱が侵食する。死ぬ。意識した。自分も。アスランも。
「――!」
 エネルギーを失ったインパルスが翔ぶ。ザクの機体が少しづつ近づき、伸ばした手が届きそうになる。

《遠く 離れてるほどに 近くに感じてる 寂しさも 強さへと 変換(かわ)ってく 君を想ったなら》

237シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:13:48 ID:RvedyvTk


その間を何者かが横切った。回頭したインパルスの視線の先に、翼を広げた人型の『何か』がいた。

《街も 人も 夢も 変えていく時間に ただ逆らっていた 言葉を重ねても 理解(わか)り合えないこと まだ 知らなかったね》

 敵。本能が知覚し、ザクを背後に庇いながらビーム・サーベルを抜き放つ。

《君だけを抱き締めたくて 無くした夢 君は》

 敵の接近に合わせて踏み込む。警告と熱で視界が真っ赤に染まる。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《「諦メナイデ」と言った》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《遠く 離れてるほどに 近くに感じてる 寂しさも 強さへと 変換(かわ)ってく 君を想ったなら》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《切なく胸を刺す それは夢の欠片》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。

《ありのまま 出逢えてた その奇跡 もう一度信じて》

 真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に。
真っ赤に。真っ赤に。真っ赤に――

238シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:15:04 ID:RvedyvTk


 鳥の囀る声で目を醒ました。「…?」身体を起こす。薄っぺらい布団がシンの身体から落ちる。薄暗い部屋だった。木造に見える。板の隙間から外の光が
零れる。
「起きた?」
「!?」
 反射的に立ち上がり、ホルスターから銃を抜き放つ。扉を開けて入ってきたのは、大きな赤いリボンと紅白の衣装が目を引く少女だった。向けられた銃口
を意にも介さず、けろりと言葉を紡ぐ。「おー。元気元気。やっぱ男の子だね」
「…誰だよ、あんた」
「人に名乗らせる時は何とか。あとは分かるわね? あと、一応私命の恩人だから、それ止めてくれる? 見ての通り、私は丸腰のかよわい美少女だから。
そのくらいは譲歩してもいいでしょ?」
「……」
 一理ある。シンは銃を仕舞い、敬礼した。「ご協力に感謝します。ザフト軍ミネルバ所属、シン・アスカです」
「興味無い」
「お前が言わせたんだろうが!」
「私が知りたいのは、あんたが何処から来たかって事」

239シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:16:03 ID:RvedyvTk


「だから、ザフトって言ったろ」
「ざふとって何」
「プラントの――ちょっと待て。あんたザフト知らないのか?」
「自分の常識を押し付けてくるやつって嫌いなのよね」
「――俺は答えたぞ。あんたは誰だ。ここは何処なんだ」
「ここは博麗神社。私は博麗霊夢。一応此処の責任者よ」
「神社――地球なのか? そう考えるのが一番自然だけど」
「幻想郷、よ」
「地名じゃなくて。地球かプラントのどっちかで答えてくれると助かるんだけど」
「……」
 この「……」に、霊夢はたっぷり150秒近くを費やした。「……地球、寄り?」
「首傾げんなよ」
「まあまあ。細かいことはいいじゃない」
「よくねえ!」
「じゃ、次の質問でーす」
「進行すんな!」
「あんた、どうやってここに来たの?」
「……」
 よし、誘導尋問だ。「落ちてきた」と答えて相手が否定的反応を示さなければ、ここは地球であると考えられる。「落ちてきた」

240シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:17:26 ID:RvedyvTk


「落ちてきた? 何処から?」
「――ずっと、ずっと上。成層圏、で分かるかな」
「おっかしいなあ。私があんたを見つけた時は、どっちかっていうと『生えてきた』って感じだったけど」
「生えてきた!?」
「うん。壁からにょきっと」
「壁からにょきっと!? 俺壁からにょきっと生えてきたの!? ていうかガンダムもか!? ガンダムも一緒にそこの壁から生えたって言うのか!?」
「がんだむって?」
「モビルスーツだよ!」
「もびるすーつ??」
「またそれか――ああもういいよ。要するに俺は一人でそこの壁から生えてきたんだな?」
「うん」
「俺はいつから植物になったんだ……」
 シンは頭を抱え、うずくまる。「だから私も興味出たのよ。ただの行き倒れなら神社の敷地外に放り出して終了だけど、あんな珍妙な生え方されたらもう
気になって気になって」
「…この場合、植物として生まれてきた事を俺は神に感謝するべきなのか」
「感謝するのは勝手だけど、見返りを期待してんなら無駄よ。あいつグータラだから」
「なんでこんなことに……俺にはまだ、やらなきゃいけないことがあるのに……」
 落ちたユニウスセブン。燃え尽きようとしていたアスラン。ミネルバも降りると言っていた。まだ何も終わっていない。始まってすらいない。「…還りた
い?」

241シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:18:58 ID:RvedyvTk


「当たり前だろ」
「ね、ほんとにどうやって此処に来たの? いったい誰の怒りを買って、どんな力を使えば、この結界まみれの幻想郷の、よりにもよってこの博麗神社に、
あんな珍妙な生え方できるの?」
「…こっちが訊きたい」
 それからシンは霊夢に促されるまま、自分が体験したことを話した。ユニウスセブンでの戦闘。大気圏突入。離れ離れになったアスラン。パワーダウンし
たインパルス。そこから先は紅いノイズが入って記憶が曖昧だったが、とりあえず分かっていることだけを話した。「……ふーん」
「成程」
「…何か、分かるのか?」
「……一つだけ、これじゃないかなっていうのはある」
 シンは顔を上げる。霊夢は真顔だった。本気の眼だ。信用できる。「聞かせてくれ」

242シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:20:47 ID:RvedyvTk


「あんたは多分――ファイヤートリッパーなのよ」
「……はい?」
「ファイヤートリッパー。こないだ魔理沙に借りた大昔のSF小説に出てきたんだけどね。その能力が一番近いわ。簡単に言うと、火を見ると瞬間移動や時
間移動が出来る能力ね」
「…火なんて見てないけど」
「だからあんたは、多分その亜種なのよ。火を見ると瞬間移動できるっていうのは、つまり生物が本能的に怖れる火を見ることによって潜在的な生存本能が
刺激されて、人間の脳が普段使っていない領域の力――つまり超能力や念動力を発現させるトリガーになる、っていう理屈なんだけど、あんたも似たような
原因で、ここに跳ばされてきたのかもしれない」
「――原因って?」
「あんたの話によれば、あんたはここに飛ばされる直前明白な命の危機に曝されてた。そして火を見ていないのに力が発動したのなら、例えばそれに近いも
の――大気圏との摩擦熱による爆発的なエネルギーの上昇が、発動のキー、あるいはそのまま時空転移のエネルギーになったのかも知れない」
「……そんな、馬鹿な」
「馬鹿で悪かったわね。悪いけど今私に思いつくのはこれだけよ。気に入らないなら他当たって」
「……仮に、そうだとしたら」

243シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:22:57 ID:RvedyvTk


 話についていけない頭を必死で回転させ、シンはぽつぽつと言葉を紡ぐ。「俺が、元の世界に戻るには」
「爆発的なエネルギーが必要ね。それこそ大爆発とか、ぶっといエネルギービームとか」
「飛んで火にいる何とかをやれってのかよ……だいたいモビルスーツも無いような場所で、そんなエネルギーがどうやって」
「結構簡単かもよ?」
「そうそう結構簡単に――何? 何だって?」
 自分を振り返ったシンに、霊夢はにやりと微笑んだ。「行こう。善は急げよ。ちょうど知り合いにそういうの得意な奴がいるから」
「そういうの得意って――ちょ、ちょっと待ってくれよ。おい」
「大丈夫大丈夫。ちょっといいのを一発もらうだけだから。ぱぱっと喰らってささっと還ればいいじゃない」
「ま、待ってくれって。喰らうって何だ? おい、人の話聞けよ――」
 面倒事はさっさと済ませよう、というように颯爽と歩く霊夢。それに手を引かれて引きずられるように歩くシン。
 ぱぱっと喰らってささっと還る。

 そんな簡単なことが出来ないのだと、二人はこれから思い知ることになる――


 東方飛鳥紀行
 零. 時を駆ける熱血少年《メルトダウン・タイムダイバー》

244シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:25:02 ID:RvedyvTk


 次回予告

 もう勿体つけるのも無駄なので言ってしまうが、二人が向かったのは霧雨魔理沙の家だった。
 ヘイ大将、マスタースパーク一丁と軽めの気持ちで上がりこんで来た霊夢とその他一名に、魔理沙はこれまた軽めの気持ちで必殺魔法の数々をお見舞いす
る。もちろんマスタースパークは焦らす方向で。
 果たしてシンは無事、もとの世界に帰還できるのだろうか。ていうか生き残れるのだろうか。

 次回、東方飛鳥紀行『マスタースパークヤサイマシマシニンニクカラメアブラ』
 恋の魔法は、破滅の序奏。
「テメエ私のマスタースパークに変な呪文くっつけてんじゃねえよ」

245シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 01:26:33 ID:RvedyvTk
以上、ためしに作ってみた東方クロスです。
感想ご指摘お待ちしています。

246シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 07:05:54 ID:0xbiEuAo
>>245
投下乙。
また珍しいとこからの跳躍ですな。
最初火とか言ってたから、妹紅のとこ行くのかと思った。
あとシンはガンダムとは言わないよ。
確かガンダムて言葉好きじゃないって設定あったような

247シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 08:11:53 ID:ToSErK2o
壁から生えるとこ想像したらワラタ。
しかしアスランは死んだのかな

248シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 12:56:24 ID:llsbselQ
>>246
そういやそうだorz
ご指摘ありがとうございます
でもガンダム(という言葉)嫌いは設定ありましたっけ?

249シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 13:06:25 ID:Q6cIVd9c
>>248
SEEDにおけるガンダムはOSを縦読みしただけで意味は無い。デスティニーガンダムではなくデスティニーが正式名称
キラがOS縦読みした以外は何故かカガリとスティングが使ったぐらい
だからシンはガンダムって名称自体しらない可能性もある。好き嫌い以前の問題

250シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 14:32:07 ID:5yr2wbQE
いやガンダムの名称は種死の時代だと、かなり一般的になってる
ガンダムタイプの顔パーツが人気モデルになってて、既存のMSをガンダム顔に改造してくれる専門の業者まで存在するほど

251シンの嫁774人目:2012/05/30(水) 16:45:09 ID:EyCcFwoM
乙。面白い
種死シンちゃんは久しぶりだ

252シンの嫁774人目:2012/05/31(木) 23:02:21 ID:2cuvFfyQ
なんでこんな物(バンシィ)をこのゲームに落とす!?
これでは、ゲーセンが寒くなって人が住めなくなる。
過疎の冬がくるぞ・・・!

253そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/06/10(日) 23:14:00 ID:1eosHnTI

真っ白なスケッチブックの紙の上を、白く小さな指が、使い慣れた鉛筆を走らせていく。
鉛筆の動きに沿って生み出されていく黒鉛の線、何度も何度も走らせて、黒鉛の線で形付け、紡ぎ上げた末に生まれる物。

「まただ…何でだろう」

それは鉛筆を走らせる少女の、黄瀬やよいの呟き。
スケッチブックの上に描き上がった、一人の少年の絵姿に向けた物。

「何でアスカさんばっかり描いちゃうんだろ」

家で、教室で、今自分がいる学校の屋上で。
どこで絵を描こうとも、描き上がるのはいつも同じ、シン・アスカの絵姿。
彼と出会い、交流を持つ以前は、様々なジャンル、幅広い対象をスケッチブックの上に描いていた。
それが変わり始めたのは、彼と出会い、交流を持ってからしばらくの事。
気が付けば、シンの姿ばかりを描くようになっていた。
正面顔、横顔、後姿。
笑顔、困り顔。怒り顔。
描き上がるのは様々な構図、様々な表情のシンの絵姿。
シン以外の題材を決めて描き始めても、描きあがるのは決まってシンの絵姿。
そんな事を何度も何度も繰り返し、一冊、また一冊と、スケッチブックが“シン・アスカ”で埋まっていく。

「はぁ…」

シンと初めて出会った時の、やよいのは“怖そうな人”と言う印象を抱いた。
実際シンは短気な面が存在しているので、臆病なやよいにとっては、その印象はあながち間違いではなかったかもしれない。
やよいの人見知りする性格と相まって、しばらくの間は、シンを避けてしまう事となった。

それが変わったのは、シンの前で泣きだしてしまった時の事だ。
些細な理由で泣き出したやよいに、シンは自分が悪い訳ではないと言うのに、泣き止むまでの間、ずっと優しく慰め続けた。
シンに単純に怖いだけの人物でなく、優しい面があると知って以来、やよいは理由無く避けると言う事はしなくなった。

シンに対する見方が完全に変わったのは、ヒーローやゲームが好きだと言う、子供っぽいと感じる自分の趣味の話をした時だ。
思わず一人熱く語ってしまったやよいに、シンは呆れる事もせず、逆に理解を示してくれた。
やよいはそれがたまらなく嬉しかった。
以来、シンとやよいの間に、良好な関係が築かれる事となった。

この時、シンは自分には妹がいて、やよいと同じ様にゲームが好きだと教えてくれた。
いつか妹に会いたいとのやよいの言葉に、シンは頷きながら、とても悲しい眼差しを浮かべた。
その時の表情は、今もやよいの記憶に深く刻み込まれている。

シンの悲しみを湛えた眼差しを思い出した時、やよいの胸の奥がじんわりと熱くなり、どこか落ち着かない気分となってしまう。

「どうしちゃったのかな…私」

名前も分からない正体不明の感情。
少しばかり苦しいこの感情、だが不思議といやな物ではない。

視線をスケッチブックへ、描かれたシンへと向ける。
スケッチブックの上の彼は笑っていた。
やよいの好きな表情、自分に向けてもらいたい笑顔。

シンの笑顔を想像すると、今度は穏やかな気分となっていく。
スケッチブックを折りたたむと、やよいはおもむろに立ち上がる。

会いに行こう。

そう決意して、やよいはスケッチブックを胸に駆け出して行った。
シンに会うために、シンの笑顔を見るために。

254そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/06/10(日) 23:17:22 ID:1eosHnTI

あざといとはどんな効果だ、いつ発動する(挨拶)
と言う訳で本スレ>>755に出てたやよいちゃんとの話、でもやよいちゃんしかでてないね
とは言えスマプリとのクロスの一番槍は拙者が頂いたでござるよ、ニンニン
シンは彼女達がプリキュアだと知らない方が自然なのかもしれない
で、何故か途中でドSで鬼畜な悪役になって登場してしまうのも自然なのかもしれない

255 ◆V6ys2Gwfcc:2012/06/11(月) 01:58:25 ID:RArs36cU
しん、と静まった和室の中で青木れいかは正座しながら目下の和紙をじっとただ見る。
やがて意を決したように筆ではなくその指でただある名前をつ、となぞる。
指でなぞっただけだから跡が残るわけでもない、だがそのなぞった名前はある男性の名前の物で。

「………シン・アスカ、さん」

ぽつりと零れたその名前に意味もなく気恥かしくなってしまう。
別に悪いことをしているわけでもないのに何故だろうと首を傾げるが答えは出ない。
二度、三度と指でシンの名前をなぞるが、ただそれだけで答えが分かるのなら苦労なんて無い。

「わからない、ですね」

分からないのは別にいい、理解できるまで努力するだけだから。
何が分からないのかが分からない。それが何よりも問題だ。
自分の道に迷った時にはかけがえのない四人の友人達のおかげでおぼろげながらも答えは出せた。
だけど、今自分が感じている想いは。
みんなが頼りにならないなんてこと、思っているわけがない。この答えは自分で見つけたい。
そうしなくてはならない、のではなく、そうしたいのだ。

「………ふぅ」

だけど、分からないものは分からない。いっそのことみんなに相談してしまおうかとも思うけれど、
それでも自分で見つけたいという気持ちは無視できなくて。
結局思考が堂々巡りになってしまう。これではいけないと少し息をつくためにごろんと畳の上で横になる。
はしたないとは思ったけれど自分の家だしいいかと、少し前の自分なら出なかっただろう考えに至る。
こんな考えが出来るようになったのも四人のおかげだと言うことを思うと嬉しくなってくる。
横になったまま、ふとよぎるのはシンの赤い瞳。いつだって自分の知る彼の瞳はまっすぐ前を見ていた。
彼、シン・アスカの第一印象は苛烈で自己の意思を揺るがせない、自分の道を迷わず進んでいる人。そんな印象だった。

だけど、いつからだろう。彼が不意に見せる寂しそうな表情、嬉しいことがあった時に見せる快活な笑顔。
あかねの「なんでやねん!」という言葉の後に見せる少し悔しそうな顔、時にちょっぴり優柔不断。
そんな表情を見るたびに初めてみた時の苛烈さはどんどんと薄れていって。
それでも、自分の道をしっかりと持っているのだろうとは思っていた。
しかしそれもただの自分の思い込みなのだと他ならぬ彼自身の口から直接ではないがはっきりと否定されて。
その時のことをれいかは今でも鮮明に思い出せる、シンの口から出た言葉を。

「私が、羨ましい………ですか」

自分の進む道を決めているれいかが羨ましい。そんなことを言われてしまった。
貴方だって自分の道を決めているのではないかと少し強い口調で言い返したが、シンは軽く笑って首を振るだけで。
自分はただ誰かの後を付いていっただけなのだと、たまたま自分の願いと合致したから誰かの道に相乗りしただけなのだと。
ただ静かに笑いながらそう口にした。彼の笑顔は諦念ではないと思う、悔恨でも無いと。
しかしその笑顔が何なのかはれいかには分からなかった。それも分かりたいし知りたいことだ。
自分が前を向いているのは、後ろばかり見ていたら転んでしまうだけなのだと思い知ったから。
だから―――羨ましい、と。真っ直ぐ前を見て、自分の道を歩いているれいかやみんなが羨ましい。
そんな言葉で、れいかのシンに対する第一印象は完全に崩れ去ってしまった。
後に残ったのは………残ったのは?

「………なんなのでしょう」

それが分からない、分からなくてまた堂々巡り。
シンのことを知りたい、分かりたい、今自分が感じている想いを理解したい。
どうすればどうすればと悩んでも答えは出ない、だったら。

「アスカさんに、会えば分かるのかもしれませんね」

直接聞く勇気なんて無い、第一会ったからと言って必ず分かるなんて考えられるほど楽天的にはなれない。
だけどそれでも会いたいという気持ちは確かなもので。
寝転がっていた状態から立ち上がり、凛と姿勢を正す。

会いに行こう。

そうだ、会おう。分からなくったっていい、会わなければ何も始まらない。
みんなが教えてくれたことだ、人との関わりは必ず何かを残してくれる。
会えばまた何かが違ってくるはずだ、だからみんなでシンに会いに行こう。

256 ◆V6ys2Gwfcc:2012/06/11(月) 02:00:26 ID:RArs36cU
ビューティーさんが美しすぎて生きるのが辛い。
こっちですよ〜の破壊力が凄まじすぎて、もうね。
というわけで二番槍は貰いました、れいかさんマジビューティー。
後、三番槍、四番槍、五番槍も誰か貰っちゃっても、いいのよ?

嘘です誰か貰って下さい他三人もすごく見たいんですお願いしますorz

>>254
やよいちゃんがあざとすぎて生きるのが(ry
でもそろそろさんの描くやよいちゃんは真っ当に可愛いですね、あざとさなんていらなかったんや!
何にしてもGJです!

後、シンの流した涙でプリキュア達がパワーアップなヒロイン的立ち位置もありなんじゃないかと。
それと、ラストはインスパイアさせてもらいました、無断でやってすみません。

257シンの嫁774人目:2012/06/11(月) 05:16:32 ID:mkF0.oy2
>>254
>>256
2人とも初恋に戸惑う初々しさが可愛いらしいですね
お約束としては同時にバッタリ会ってしまいそうで何か怖い

2人まとめてになってしまいましたが本当にGJです!三本槍と続くだけじゃなく、本丸まで是非攻めてほしいです

ちなみにあざといは永続魔法ですが強力なカウンター効果を持っています(主に視聴者に発動)

258シンの嫁774人目:2012/06/11(月) 23:59:02 ID:pVwDuoWU
>>254
>>256
お二人共乙です!
何をしてても相手の事ばかり思い浮かぶ…まさに恋って感じで良いですね!
>>256氏が同じ終わり方をされたので同じ時間軸の違う話を見た気になれて面白かったですw

259そろそろ ◆o8DJ7UhS52:2012/06/12(火) 21:55:47 ID:d7x72UpU
小ネタが好評だった上にインスパイアまで来てる…!
何と言うハッピー、これがプリキュアの魔法!

>>256
最高でした、れいかさんマジビューティー
しかも◆V6ys2Gwfcc氏にインスパイアまでされる、ハッピー過ぎます、ありがとうございます

でもこのやよいちゃんはれいかさんと違って一人で会いに行く辺り、やっぱりあざといのかもしれませんよ

>>257氏と258氏、お二方も本当にありがとうございます
いやぁ…初々しいってのは良いですよね、ういういdaysですね
◆V6ys2Gwfcc氏が書かれたんですから、同じ時間軸に違いありませんね

それにしてもあざといとはおそろしい効果ですね、あざといぞ…

では僕も三番槍以降に続いてくださる方と、本丸に攻め入る方をお待ちしてます

260 ◆V6ys2Gwfcc:2012/06/15(金) 19:26:27 ID:UZf5lDr.
本丸とはいったい……うごごご!!
メインで話題になれば良いということだとは分かってますが、その。
ハーレムでみんなハッピーと言う非常に頭の悪い言葉が頭をよぎr(ry

>>259
そう言って頂きありがとうございます、インスパイアは不安でしたがほっとしました。
そしてそろそろ氏の太鼓判が出たのできっと同じ時間軸です、きっとそうに違いない。
後、やよいちゃんがあざといと言うより、れいかさんが天然ボケなだけな気も。
……ここでういういdaysの名前を聞くとは、きっとあれです、神からの犬上すくね作品全巻買えよというお告げですね。

>>257氏と258氏も本当にありがとうございます。
初々しい恋する女の子っていいよね! そんな言葉を胸にネタを書いていきたいと思います。
そしてあざといはそんなおそろしい効果を持っていただなんて……なんてあざとい。

261シンの嫁774人目:2012/06/15(金) 20:30:02 ID:VM9PfPB6
一番槍、二番槍は相手を攻め落とす為の物です
つまり本丸とは落とされるシンの事
要するにシンとプリキュアの絡みが見たいなって事でした。解り難くて申し訳ありません

262シンの嫁774人目:2012/06/23(土) 01:19:27 ID:VqIgHAtc
 読み専だったけど勝手な多重クロスを思いついたので、2chネタを作ってみました。不味ければ御一報ください。

噂の傭兵について語るスレ

1:ザフトの赤目さん:XX:XX:XX ID:shinn
連合についたストライク乗りの傭兵強すぎ。とても勝てない

2:大西洋の名無しさん:XX:XX:XX ID:copland
傀儡が仕事なのでとりあえず2get

3:オーブの名無しさん:XX:XX:XX ID:yuuna
噂の傭兵って誰だし。そもそも>>1の方が化け物じゃないか。051あげたんだし早く思い出してくれないと…

4:円卓の名無しさん:XX:XX:XX ID:pixy
知ってるか、クソスレは3つに分けられる

題材が微妙なスレ
住人が荒れるスレ
見向きもされないスレ

この三つだ。このスレは……

5:水平線の名無しさん:XX:XX:XX ID:bishop
自分が死ぬ夢を見た。それも何度も……

スレタイと関係ないが、ザフトのガンダムに出会ったら取りあえず逃げろ。ユーラシアの鮫と違って本当に強い

6:繰り返しの名無しさん:XX:XX:XX ID:aisia
あの子元気にしてるかな……。何があってもあたしのこと忘れないって言ってたけど……


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