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SS練習スレ2

214ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:45:24 ID:FjtMkIs2

 結論を言うよ。今日この学校は入学式で、今日から俺はこの高校に通うことになっていて、ついでにこの学校には男子があと“一人”しかいないってことなんだ。

 どうしてこんなことになったんだろう? うん、『力』が欲しいとは思った。守る『力』が欲しいとは思った。たまたま、それに近しいものを手に入れることができた。
 でも知らなかったんだ。この世界では……その『力』は「女性にしか動かせない」代物だったなんて。なんで俺がそれを動かせるかも分からなくて。

 あぁ、もう! いい加減頭が混乱してきた。本当にそもそも、俺はどうしてここに来たんだよ……?

 頭を抱えながら、もう何度目かは分からないけど、俺は記憶を掘り起こし始めた。


   ◇


 目の前には紅いモビルスーツと黒い宇宙が広がっていた。
 そのモビルスーツ……ジャスティスがだんだんと遠くのほうに離れていく。右腕のなくなったその機体が、俺をじっと見下ろしていた。
 手を伸ばしても届かなかった。それに……もう伸ばせる手、力はなかった。

――メサイア防衛戦。
 デュランダル議長が唱える、戦争のない平和な世界を創るための計画『デスティニープラン』を成功させるために、俺は最後の任務についていた。
 任務の内容は、戦略兵器『レクイエム』と起動要塞『メサイア』の防衛、それを落とそうとするオーブ軍の遊撃。作戦が成功してオーブを討てば、全てが終る。

『人は自分にできることを精一杯やり、満ち足りて生きるのが幸せだ』
 
 そうやって言った議長はデスティニープランの実行導入を宣言した。遺伝子の解析による人材の再評価、人員の再配置。これで先の見えない不安からも開放される。愚かな戦争なんて二度と起こらないはずだって。
 議長の言うことが、本当に正しいのかは分からない。強制された平和で人が本当に幸せになれるのかって、アスランの言うことも分かるけど、だからって俺も戦わないわけにはいかないんだ。これで戦争がなくなるんだったら、仲間を守れるなら、たとえオーブを討つことになっても俺は戦う。

 そうさ、俺が欲しいのは戦争のない世界だ。もう二度とマユやステラみたいな子供が生まれないための世界だ。それがレイと一緒に、俺の決めた道だった。
 だから俺はアスランと戦っていた。あんたが正しいっていうのなら、俺に勝ってみせろって、そう言って。

 アスランの言う『人の向かうべき明日』。
 俺が欲しかった『戦争のない明日』。

 俺の明日がどんなものになるのか、分かるはずもないまま……俺は戦っていた。


 右腕と右足を切られたデスティニーが、月の重力に引かれて、ゆっくりと後ろに傾いていく。
 機体の制御が利かない。カメラは生きているけど、もう意味なんてなかった。
 コントロール画面に映るデスティニーのシルエットには、各部にロストの文字が点滅している。
 さっき左腕も持ってかれた。武装もほとんど残っていないし、スラスターもやられている。
 コクピットの中で鳴り止まないエマージェンシーが、完全に俺の敗北を告げていた。

 ああ……俺は負けたんだ。
 でも不思議だ。悔しくてたまらないけど、嫌じゃない。素直に負けを認められる。
 いつだって素直な言葉なんて出てこなかったのに、この時初めて俺は、心のままの言葉が口をついて出た。

「アスラン……あんたやっぱ強いや……」

 暗い宇宙の中で、周りは色々な光であふれていた。
 ビームの閃光が走る。ミサイルの爆発が鎖を形作る。それに、モビルスーツが一際大きな輝きを見せては消えていく。
 みんなまだ戦っている。必死に、自分の帰る場所のために。戦争のない、平和な世界のために。それぞれの大切なものを守るために。
 さっきまで俺もその中の一つだったはずなのに。
 デスティニーはもう戦えない。俺の力が足りなかったからだ。


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