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SS練習スレ2

221ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:53:42 ID:FjtMkIs2

「!? 減速できない!?」

 足や後ろのスラスターをバタバタと動かして見せても、空中制御はろくにできずに、勢いは止まることを知らなかった。
 マズい。このまま勢いじゃあ、向かいの建物に突っ込む。そろそろ腕の中にいるこの子も無事じゃいられない。
 やむを得ずにダガーを放り投げて、両手で女の子を抱きしめる。前傾姿勢だったのを反転させ、足のスラスターを点火。無理やりに急降下して、背中から地面に接触した。
 体を叩きつけた勢いのまま、体が跳ねて、そしてまた地面にぶつかっていく。
 背中を中心にバラバラになりそうなほどの衝撃。放り出されそうな意識は、スーツのおかげだろうか、なんとか繋ぎとめられた。

「止ま……れええええぇぇぇぇーーーー!! 」

 芝生のきれいに植えられた庭を、土を盛り上げて深くえぐっていく。それから庭を通り越して、外周のコンクリートの上で火花を散らしたところで、ようやく動かなくなった。
 プスプスとコンクリートが煙を上げている。庭にいた人たちが大勢、慌ててこっちに走ってくるのが見えた。

「だ、大丈夫? 怪我はない?」

 まずは女の子の安否を確認する。頭とか打ってたりはしないか――

「だ……だいじょう……ぶぅ〜……」

 涙も振り切っていったみたいだ。ぐしゃぐしゃだった顔から涙は消えて、クルクルと可愛らしく目を回していた。あんな無茶に付き合わせたんだから、それも仕方ないか。
 それでも……大丈夫の一言が、俺の心にすっとしみ込んでいった。無事だった。助けることができた。守れたんだ。

「はは、良かった……」

 安心したらガクッと体の力が抜けた。そろそろ限界だったらしく、女の子を抱いていた両手を放り出して仰向けに倒れこむ。身にまとっていた装甲は、一瞬光ったかと思うと、もう消えていた。もう駄目だ、体が微動だにしない。まぶたは重くて目を開けているのがつらい。

「あ、お父さん!」
「マユ、無事か!? 怪我はないな!? 大丈夫なんだなっ!?」
「うん、平気! このお兄ちゃんが助けてくれたの!」
「ああ、そうだな……っておい、お前さん大丈夫か!? おい、タンカだ! 誰か急いでタンカ持ってこいっ!」

 マユ? 名前、マユっていうのか。ならホントに、守れてよかった……。
 その安堵がとどめの一押しだった。他の人が近づいてきてるのに、逆に周りの喧騒は自分の耳からどんどん遠ざかっていく。

 そういえば、俺はどうしてここにいるんだっけ……?
 まあ、今はそんなこといいか……。
 守ることができたから。今はちょっとだけでいいから休ませてほしい。
 頭の中もごちゃごちゃしたままなんだ。だから今は何も考えないで、眠りたい……。

「お兄ちゃん、大丈夫!? お兄ちゃんっ!?」

 ほんのちょっと前まで、モビルスーツに乗って戦っていたのに……。
 次に気付いたら、ステラに会えて……。
 今度は妙なスーツ着て、空を飛んでいて……。
 まるで明日に火が点いて、加速したみたいだ。

 ねえ、ステラ……一つ、いいかな?
 

――明日を生きるって大変だな――


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