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SS練習スレ2

220ちくわヘルシー ◆ii/SWzPx1A:2012/05/26(土) 11:52:32 ID:FjtMkIs2

 手を触れた途端に、金属がこすれたような音が聞こえた。
 
 次の瞬間には、頭の中には膨大な情報が滝のようになだれ込む。
 普通だったらそのまま流されていくような情報も、自分の頭はOSにでもなったみたいに瞬時に処理していった。
 力の何もかもが、分かる。力の使い方、特徴、装甲の限界、最大出力、意識に浮かび上がるパラメーターも、その見方も、何もかも。
 
 機体を縛り付けていたケーブルが、排出される水蒸気と共に一つずつ外れていく。
 鮮明になっていく視界と同時に機体の装甲は、内からにじみ出るように広がる、色鮮やかな青と白に染まった――ハイパーセンサー最適化完了、フェイズ・シフト、展開……完了。
 宇宙に上がったときのあの感覚、体がふっと浮上する――推進機正常動作、確認。
 左腕を突き出せば光が包み、そこに盾が形成されていく――機動防盾……展開。

 各種追加装備――使用可能装備無し。
 全システム――クリア。


『ignited―<イグナイテッド>―起動』

 
 視界に映る起動の文字が消え、装甲が淡く輝きを放つ。
 背部のスラスターからの排気が、軽く周囲のものを揺り動かして音を立てる。
 
 見えるのは狭く、ちっぽけな世界。いつだって理不尽で、容赦無く俺を打ちのめしてきたはずの世界。

 だけど確かに今この世界に、俺と『力』はあった。

 起動動作が終了したのを確認した俺はすぐに、女の子をまた抱き寄せる。
 『力』があるのなら、やるべきことに迷いなんてない。この子を守るんだ。

「しっかりつかまっててくれよ」
「う、うん……」

 驚きで目を見張る女の子に念を押して抱え挙げる。左腕の盾でその子を覆うようにすると、右腕で腰のサイドスカートからダガーを引き抜き、地面から一メートルほど浮き上がってドアの方に向き直った。
 盾の装甲が押し広げられるように開き、スラスターに光がともされていく。

「行くぞっ!」

 体をぐっと前に傾け、背中と足のスラスターを一気にふかす。
 邪魔な障害物をダガーで払いながら、加速をつけて倉庫を一直線に駆け抜けた。
 生身だったら絶対に反応仕切れない速度でも、センサーが感知して体がそれに追従する。
 のたうち回って揺らめく炎も、今は何の脅威でもない。
 その勢いを保ったまま、ダガーを突き立てて倉庫の扉をぶち破り、さらには建物の壁も簡単に貫いていく。一枚、二枚……止まりはしない。

「はああああぁぁーーーーっ!!」

 壁を切り抜けて最後の窓を叩き割ると、ようやく太陽の下にたどり着く。
 頭上に広がる快晴の青空の下には、緑の芝生がきれいな大きな庭が広がっている。円周に囲む建物の先には、急がしそうに日々を過ごす都市。チラチラと映る、割れたガラスの欠片。センサーを通じて見える世界では、何もかもが輝くように見えていた。
 
 太陽ってことは、やっぱりここは地球なのか? いや、そんなことは後回しで良い。とにかく、外に出られれば一安心だ。
 そう思って下に着地しようとしたけれど、空を飛ぶ体は止まらない。いや、止まらないどころか――


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