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改訂版投下用スレッド

1書き手さんだよもん:2003/03/31(月) 00:33
作品に不都合が見つかり、改定となった場合、改定された作品を投下するためのスレッドです。
改訂版はこちらに投下してください。
ただし、文の訂正は、書いた本人か議論スレ等で了承されたもののみです。
勝手に投下はしないでください。

編集サイトにおける間違い指摘もこちらにお願いします。
管理人様は、こちらをご覧くださいますよう。

264自分の力で:2004/05/05(水) 23:45
「はい……そうですね!!」
 郁美もまた、ペコリと頭を下げると、彼女に許されるだけの精一杯のスピードで、みちる達を追いかけはじめた。

 
「皐月ちゃんは、いいの?」
 夕菜の問いに、皐月は走っていく4人を見つめたあと、首を振った。
「いいです。私は追いかけません。
確かに逃げ手としても、鬼としても一度も活躍できなかったけど……でも、いいです。
私はシェフとして楽しむって、もう決めちゃったから」
 なんだかんだいって楽しいですしね、と皐月は付け足す。
「夕菜さんはいいんですか?」
「うん……あんな若い子には、お姉さんついていけないかな。それに、私も決めちゃったからね。
皐月ちゃんのレストランのウエイトレスとして楽しむって」
 にっこり笑う夕菜に、皐月もまた笑い返す。
「あははっ、そうですか。 サクヤもいいの?」
 サクヤもにっこり笑いかえした。
「あたしもウエイトレスさんです。 お客様をおもてなししないといけないですから。
あ……でも、由宇さん達は?」

 サクヤの問いに、詠美はギロリとサクヤの方をにらんだ。
「追いかけないわよ。そんな体力ないもん。わたし、あんたのせいで寝てないんだからぁっ!」
「あ、あたしのせいで、ですか?」
「ふーんだ。あんたが余計なこというからよ」
「よ、余計なこと……?」

265自分の力で:2004/05/05(水) 23:45
 戸惑うサクヤに、由宇が苦笑した。
「このアホな、アンタのためにかどうかは知らんけど、昨日一晩かけて自分の原稿手直ししとったねん。
『クイーンの本気みせてやるー』とかのたまいながらな。
 サクヤ、良かったらこのアホの本気、読んでやってや」


―――こうして、みちるを追うものは三人となった。
 繭、さいか、郁美。そしてみちる。
 保護者を離れ己の力で頑張ると決めた者達の、勝負が始まる。
【四日目午後 町外れのペンション】
【繭、さいか、郁美、みちるを追う。他の鬼達は追わない】
【登場 みちる】
【登場鬼 【クロウ】【立川郁美】【カルラ】【しのさいか】【大庭詠美】【猪名川由宇】【デリホウライ】
【湯浅皐月】【梶原夕菜】【サクヤ】【椎名繭】【高槻】】

266線が交わる時:2004/05/15(土) 04:55
 背後から伸ばされたタッチの手を、楓はほとんど直感で横に跳び、回避した。
 チ―――という、光岡の軽い舌打ちの音が風を切って聞こえてくる。

 それに構わず、楓は再度跳ぶ。その一瞬後、楓のいたところをムックルが通り過ぎていった。

「ん〜〜!」
 ムックルの上にのるアルルゥが残念そうな声を上げ、無理なタッチに挑み体勢を崩した光岡の方に向かって叫んだ。 
「悟! もっとがんばる!!」
「心得ている! ユズハさん! この光岡の活躍、見守りください!!」
「いえ……あの、見えないのですが……」
 激しい運動を繰り返すムックルに必死でつかまりながら、ボソっとユズハは呟いた。

 対する楓は、光岡達の声を聞き流しながら、少しでも距離を開けようと走る。
「はぁ―――はぁ―――はぁ」
 その息は荒い。普段無表情なその顔も、今は苦しげに歪んでいた。
(やっぱり、体力の差が出てるね……)
 苦々しくそう思う。
光岡達は途中参加。やはり余力という点では彼らに分がある。
 
「ぬぉぉぉっ! ユズハさんに見とれている内に距離が開いているだと!?」
「悟、ムックル、ふぁいと! 絶対逃がしちゃダメ!」 
「あの……アルちゃん……何か目的がすりかわっているのはユズハの気のせい……?」

 そんな漫才をかます余裕があるのだから。
 そんな漫才をかましながら、それでも楓が必死に開けた距離を詰めてくるのだから。

267線が交わる時:2004/05/15(土) 04:56
 だけど―――楓は負けたくなかった。
どうしても負けたくはなかった。
 今残っている5人の逃げ手の中で、最も優勝を意識している者はおそらく楓だろう。
 楓は優勝したかった。
 優勝して、耕一を手に入れたかった。

 ―――いや、本当は分かっているのだ。
こんな鬼ごっこに優勝したところで、耕一を手に入れることなんてできないってことぐらい。
初音と一方的にかわした賭けが、何の効力も持たないってことぐらい。

(でも……私が優勝したら、きっと耕一さん、褒めてくれる。よくやったって、笑って頭を撫でてくれる)
 走りながら、楓は想い人の顔を思い浮かべる。
(―――そうしたら、その時にはきっと私も自然に笑える)
 いつもは引っ込み思案で、耕一となかなか話す機会も持てなくて、自然に耕一と話せる千鶴達に嫉妬してしまう楓だけど。

(でも、私が優勝したら、きっと耕一さんは私に笑ってくれて、私も笑い返せるよね……)

 そう思ったから、楓は必死に走り続け、それにつられるようにして、

「速い……!! 流石にここまで残った逃げ手だな……!」
 楓を追う光岡の目は鋭さを増し、
「勝つ……この強敵を倒せたのならば、この俺もユズハさんや蝉丸にさんに胸を晴れる!! 必ず勝つ!!」
「ん〜〜!! 勝つのはアルルゥ達!」
 このチェイスの熱はさらに増し続けた。

268線が交わる時:2004/05/15(土) 04:57
「アルちゃん……ひょっとしてカミュち〜探すのは忘れちゃった……?
というか、みなさん、無理しないでくださ〜い!!」
 なんとかムックルから振り落とされないよう頑張るユズハの、その叫び声を無視して。


その同時刻。同じ街の外れにて。

「ハクオロさ〜ん! 待ってください、速いですよ〜!」
「ハハハ、だらしないぞエルルゥ。それでは私は捕まえられないぞ?」
「あ、言いましたね! ん、もう! 絶対捕まえちゃいますから!」
「ほう、なら私も頑張って逃げなくてはな!」
 
―――なんて、ハクオロとエルルゥの実にのどかな追いかけっこが続いていた。

(ハハ、こういうのもいいものだな)
 走りながら、ハクオロは思う。
 意識していたわけではないのだが、今思えばハクオロは、美凪達と行動している間ある程度彼女達に対して責任を感じてきた。
 無論、それが重荷だと思ったわけではない。だが、自分のことを一番に考えなかったのも事実だった。

 そして、今ハクオロは美凪達と別れ、陽光の下エルルゥと追いかけっこをしている。
なんのしがらみも危険も無い、ただの追いかけっこ。
槍衾の間を縫うわけでもなく、矢の雨の中を駆け抜けているわけでもない。
ただの、純粋な追いかけっこだ。

―――それが、こんなに愉快だなんて。

今残っている5人の逃げ手の中で、最も優勝にこだわっていない者はおそらくハクオロだろう。
彼が願う幸せは、今、この瞬間にあるのだから。

269線が交わる時:2004/05/15(土) 04:57
「ほら、エルルゥ。 こっちだ! おいていくぞ!」
「ふーんだ! もう、おいていかれませんからね、私!」

 じゃれあうように走るハクオロとエルルゥの姿はまるで父娘のようにも、恋人のようにも見えて、

「……やってらんないわよね」
 と、マナは憮然とした表情でつぶやいた。
 

 このチェイスの参加者はハクオロとエルルゥだけではない。マナと少年もまたハクオロを追っている。
っていうか、
「実は走ってるの、僕なんだけどね」
 エルルゥは足を怪我しているため、少年が彼女を背負って走ってたりする。
 
少年の呆れたような声も、もちろんエルルゥの耳には届かない。
彼女は目の前を行くハクオロしか見てないわけだから。
 そんなエルルゥを横目でにらみながら、少年に併走するマナは口元を引きつらせるよ。 
「なによその幸せそうな顔。ついさっきまでこの世の終わりみたいな顔してたくせに……」
「あはは……まあ、よかったじゃないか。結局仲直りできたいだし」
「ええ、そうね。実にあっさりと仲直りかましてくれたわね……
ほんと、気を使った私が馬鹿みたいじゃない……! なにがメランコリックよ! センチメンタルよ!!」

ちなみに、このチェイス。マナにとってもそれほど苦でない。
ぶっちゃけ、ハクオロも少年も全く本気で走ってないのだ。

270線が交わる時:2004/05/15(土) 04:58
 少年の背中で光り輝くエルルゥの横顔をみながら、マナはため息をついた。
「はぁ……ほんと馬鹿みたい。ハクオロさんを捕まえる気もなくなっちゃった」
「あれ? 鬼ごっこしたいんじゃなかったけ?」
「そんな気も無くなっちゃったわよ……だいたいとてもじゃないけど、割って入るような空気じゃないもん」
「そうか……」
 少年は、マナの方を向いて、ニッコリと笑って、
「マナは……優しいね」
 そんな言葉を、なんの照れもなく真顔で言う。

「な……何言ってんのよ、バカ!!」
 顔を真っ赤にして、マナは怒鳴り、走りながら器用に少年の脛にキック。
「あはは……痛いなぁ」
 少年もまた実に器用に、走りながらマナの脛蹴りを受け止める。

―――と、そこで
「ん……?」
 少年は、少しだけ鋭い目をして、行く先を見た。
「どうしたの……?」
「いや……これは……うん、間違いないかな」
 少年はマナの問いに、少しだけ口元をゆがめて笑った。
「とんだ偶然と言ってもいいと思う。
何人かの走る音が聞こえるね。多分、逃げてる人がいるんだと思う。
―――.このままいくと、多分街中で接触することになるよ」

 
「ん……おと〜さん?」
「アルちゃん?」
 ムックルの上で鼻を引くつかせるアルルゥに、ユズハが声をかけた。

271線が交わる時:2004/05/15(土) 04:59
「おとーさん匂いがする」
「え……?」
「おとーさん、近くにいる。―――このまま行けば会える!!」

 
ヒートアップとマッタリムード。全く対照的なチェイスが今、街中で交わる。

【楓 逃げ続ける 舞台は町外れ】
【光岡、アルルゥ&ユズハ&ムックル&ガチャタラ 楓を追い続ける】
【ハクオロ マナ&少年withエルルゥとチェイス中】
【場所 町外れ】
【時間 四日目午後】
【登場 ハクオロ、柏木楓
【【エルルゥ】、【少年】、【観月マナ】、】【光岡悟】、【アルルゥ】、【ユズハ】】
【登場動物:『ムックル』『ガチャタラ』】

272線が交わる時:2004/05/15(土) 10:28
対照的て。対象的じゃん。

273線が交わる時:2004/05/15(土) 20:12
ちがうよ、対称的だよw

274名無しさんだよもん:2004/05/18(火) 16:04
じゃあ間を取って対症的ということで。

275DreamPower:2004/05/18(火) 21:55
 オーシーツクツク……オーシーツクツク……オーシーツクツク……

「……ツクツクボウシか」

 静寂を取り戻した森の奥。大きな岩に背を預け、虫の音に耳を傾けるDの姿が、そこにあった。
 
 ……原因不明の体調不良により、気付いたら瀕死状態。さらにそこで相手が子供とはいえ追撃戦をぶちかまし、少なからずの術を使ってさらに消耗してしまった彼。
 表示値では変数の都合で未だ1のままではあるが、実質的な体力はすでに真分数の域にまで達している。
 端的に言って、大神ウィツァルネミテアことD、ドぴんちである。
「……生きて帰れるのだろうか……」
 ボソリと、不吉なことも言ってしまう。だいぶ不安になってきた。
 すでに己が身体と付近一帯は深紅の血の海に沈み、深緑の森の中で異種独特の色彩を放っている。
 幸い大神は血の気も多いのか出血多量で死ぬこたなかったが、もはや動けるほどの体力は残っていない。
 暇で暇で仕方がない。岩切も先ほど出発したばかりだし、まさか半時で終わるほど楽な仕事でもないだろう。
「………………」
 話し相手も、やることもない。

 オーシーツクツク……オーシーツクツク……オーシーツクツク……

「………………」
 聞こえる音は、己の息づかい以外は虫の声のみ。……淋しい。そして、ちょっと怖い。
「よもや野犬の類は出ないと思うが……」
 今来られたらだいぶピンチである。正直言って負ける可能性も高い。
 いや、野犬ならずとも肉食系の動物全般が……蟲ですら集団で来られたら危険かもしれん。
「…………いやいやいや。考えすぎだ、我」
 頭の中に浮かんだB級スプラッタなシーンを慌てて打ち消す。
「……何とかならんものか……」
 見上げた空の青さがいやに目に痛かった。

276DreamPower 2:2004/05/18(火) 21:55
 キィン!
「づぁぁっ!?」
 初太刀。最初の交錯。それだけで戦いの趨勢はほぼ決した。
 ゲンジマルの一撃を受け止めた岩切が後ろにブッ飛び、木の幹に背を打ち付ける。
「がっ……ぐっ!!」
 胸が呼吸を許してくれないが、立ち止まるわけにはいかない。すぐさま剣の柄を握り直すと、構えをとる。
「フン、ハッ!」
 しかしゲンジマルはまったく速度を緩めることなく、一気に間合いを詰めるとそのまま岩切に二撃目を打ち込んできた。
「ち、ぃッ!」
 完全に受けに回り、真横に構えた刃で切り下ろしを流すと、体面も糞もないほど無様な姿の横っ飛びで距離をとる。
(早い、早すぎ……いッ!!)
 ハクオロが聞いたら別の意味で涙しそうな台詞を心の中で吐き捨てる、が、完全に戦闘モードに入った生ける伝説はそれすら許してくれず、追撃の手を緩めることはなかった。
 岩切は全力で後方へ下がりながら、ゲンジマルの連続攻撃を受け止めていくことしか、できない。

「……さすがゲンジマル殿」
 未だ岩切から受けた一撃のダメージが抜けきらないトウカ。木陰に座り込んだまま2人の戦いを眺め、そう呟いた。
「……あのおじーちゃん、すごいの? 岩切のおねーちゃん、勝てそう?」
 その胸に抱かれたまいかが、感嘆めいた声を漏らす。
「……あのお方は我らエヴェンクルガ族最強の戦士であり、希代の英雄、生ける伝説、ゲンジマル殿。
 確かにあの者も多少は剣の心得があるようだが……やはりゲンジマル殿相手では、勝ち目はないだろう。
 あそこまで明確な実力の差は、某との場合と違い、奇策の一つや二つで覆せるものでは……ない」
「……おねーちゃん……」
 心配げな幼女の眼差し。だが、それは何の効果も及ぼさない。

「おお……おあああっ!!!!」
 一方的に押されること10秒少々。突然岩切は腹の底から大きく吼えると大きく後ろに跳躍。空中で一回転する間に、自らの手首に刃を滑らせた。
「ムッ!?」
 その異様な行動にさすがに一瞬様子を窺うことを選んだゲンジマル。一方岩切は地に降り立つとすぐさま剣を構え直してゲンジマルへと躍りかかり、今回初めて攻勢に回った。

 キィン!

 しかし難なくその一撃は弾かれた。すかさずゲンジマルの切り返しが疾る。

277DreamPower 3:2004/05/18(火) 21:56

 ブバッ!

 瞬間、岩切がゲンジマルに向かって真っ赤な霧を吹き付けた。いや、これは……

「仙命樹入りの我が血だ! さぁゲンジマル、ほとばしる青春を蘇らせるがいい!」

 ちょっと、というかかなり卑怯な岩切の不意打ち。だが……
「この程度……ハ・アッ!!!」
 ゲンジマルは怯むことなく、刀身を視認できぬほどの速度で空中に回転させた。局所的に巻き起こるつむじ風が血煙を巻き込み、文字通り血の霧は霧散した。
 一瞬後、そこには何事もなかったかのように刀を構えるゲンジマルの姿があるだけであった。
「……回し受け……だと?」
「左様。矢でも鉄砲でも持って来られるがよろしい。何物も某の身を傷つけること、かなわぬ」
 ゲンジマルが虎を殺した経験があるのかは、定かでない。
「くっ……の……お……」
 打つ手全て無くした岩切。
「おのれぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!」
 とうとう彼女すらも冷静さを失い、恐慌に近いものを起こすと大きく咆吼。大上段からゲンジマルに斬りかかった。
「……終わったか」
 トウカが呟く。同時に……

 キィィィィィィィ………………………ン

 非常に澄んだ高い音とともに、Dの剣が岩切の手を離れ、遙か天空に高々と跳ね上がった。
 くるくると回転する刀身が、繰り返し日差しを照り返す。
「…………ッッ!」
 剣を振り抜いた体勢のまま固まる岩切。そして……
「峰打御免!!!!」

 ドスッ!

 鈍い音とともに、刀の峰が、岩切の脇腹を打ち据えた。

278DreamPower 4:2004/05/18(火) 21:56
「ふぁ……」
 とうとう生あくびが出てきた。目尻に涙がたまり、ちょっと眠い。
「そういえば今日は動きっぱなしであったな……」
 朝起きて、歩いて、湖行って、岩切釣って。
 屋台で昼飯食ったが、そのときはとても安らかな精神状態ではなかった。
 そしてその後はランカーズ追激戦。超がつくほど全力疾走。
 目が覚めたら瀕死だし。
 冷静に考えてみれば、今までで一番ドタバタした日かもしれなかった。
「……暇だな」
 いい加減に誰か通りかかったりしないものか……などと思いを馳せた、その時。

「D〜、Where are you〜?」

「!?」
 ガバッ! と起き上がり、辺りを見回す。……すぐに倒れた。
 だが半分頭が土にめり込んでいても、その目は見開いている。
「今のはッ……! 間違いない!」
 腕に力を込め、再度頭を上げる。
「レミィかッ!?」

「D!?」
 レミィもまた、その声を聞いた。
 岩切に指し示された方向に走ること数分。彼女もまた捜し人の名を呼びながら森の中をさ迷っていたところだった。
「Where that!?」
「こっちだ!」
 聞こえた声。その声の方向に向かい、藪を掻き分けつつ全力でひた走る。
「くっ……やっと、助かるか……」
 一方Dも最後の力を振り絞り、四つんばいになりながらもレミィの方向に向かって這っていく。
「D!」
「レミィ!」
 最後に大きく跳躍、Dのいる広場へと飛び込むレミィ。かくして、夫婦(?)感動の再開が……

279DreamPower 5:2004/05/18(火) 21:56


 がすっ。


 膝だ。
 英語で言えばニーだ。
 ニーと言えばジャンピングニーだ。
 ジャンピングニーと言えばジョー・東だ。
 ジョー・東と言えばアンディだ。
 アンディと言えば残影拳だ。
 残影拳と言えば強すぎだ。
 思い起こせば10年前、当時アンディ使い(というか残影拳使い)が溢れる中、私は池袋のゲーセンで根性でジョーを使い続けてていつもボコボコに……


「Jesus Christ!!? D! D!?」 
 結果的に、偶然というか必然というか、頭の位置と膝の位置がジャストして己のジャンピングニーを綺麗にカウンターでDの眉間に決めてしまったレミィ。
 世界が一瞬スローモーションになったかと思うと、ゆっくりとDの体が反転し、大地に倒れた。
 ……急所に強烈すぎる一撃を受け、もはやピクリとも動かない。
「D! D!? Wake up! Please wake up!?」
 慌てて抱き上げ、呼びかけてみる。
「…………」
 反応なし。意識混濁。救助優先レベル3.
 ……少しやばいかもしれない。
「Oh my goddd!!」
 さすがのレミィもちょっとビビる。
 が、慌てている場合ではない。とりあえず己を落ち着かせなければ。
「OK, Cool....Cool....Cool down, Helen....ここは落ち着いて……」
 ゆっくりと記憶を掘り起こし、昔受けたガール・スカウトの救急講習内容を思い出す。
 その手順は……

280DreamPower 6:2004/05/18(火) 21:57
「At 1st!」
 ビシッ! と倒れてるDを指さす。
「Finding patient! D見っけ!」

「And 2nd!」
 肩を揺すり、耳元でもう一度呼びかけてみる。
「Checking consciousness! …Hey, D! Are you Okay? .....Nothing!」

「Next, 3rd!」
 ガッ! と首を押さえ、顎を上げる(この時鼻を閉じとくのがポイントです)
「Open the airways! ....OK! All right!!」

 そして……

「Finally! .......Respiration!!!」

 ……しばしの沈黙。

(ぱぱらぱっぱらっぱー♪)

┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃Dの(男としての)レベルがあがった!
┃あいが4あがった! 
┃じしんが3あがった!
┃やるきが3あがった!
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃せいじゅんどが50さがった!
┃じゅんけつをうしなった!
┃たいりょくがかいふくした!
┃一つ上野男になった……
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛

281DreamPower 7:2004/05/18(火) 21:57

 場違いな明るいSEの後、再び静寂が森を包む。


「………………フゥ。さて、Next....」
 数度、コトを終えたレミィ。続いて鳩尾から指三本分のところを押そうとしたのだが……その手は、止められた。
「…………レミィ」
 Dの手で。
「D? 目が覚め……Wow!?」
 と、そのまま口元の血を拭いつつ立ち上がってレミィを抱きかかえると、
「行くぞ」
 と一言だけ呟き、疾風と化して森から消え去った。


「ぐ……は……っ……」
 場面は戻ってゲンジマルVS岩切の一騎打ち。勝負はついた。
 ゲンジマルの刀の峰が岩切の脇腹に食い込み、その場にガクリと膝をつく。
「おねーーーーちゃんっ!!」
「あっ……!」
 トウカの腕を抜け、まいかが飛び出した。岩切に駆け寄り、必死に呼びかける。
「しっかりしてよぅ!」
「……すまん幼女……どうやら約束は果たせそうに……ない……」
「くうっ……!」
 まいかはギリリと奥歯をかみ締めると、倒れる岩切の前に立ち、遥か頭上にあるゲンジマルの顔を睨みつけた。
「おじーちゃん! つぎはまいかとしょうぶ!」
「……………」
「………は?」
 さすがのゲンジマルもやや、いや、かなり呆れ顔。
 だが無理無茶無謀無鉄砲な幼女はビシッ! とクンフー映画のようなポーズをとると、両手を高く掲げた。

282DreamPower 8:2004/05/18(火) 21:57
「ひっさつひっちゅう! みずのじゅっほぅ!!!」
 パリパリパリ……と小さな紫電が走った。
 パワーアップした術法はゲンジマルに直撃し、
「っとと、これは効きますな」
 彼の肩こりを癒した。
「ふむ、感謝しますぞ。肩が軽くなりました」
「…………ならこれは……どうだっ!!」
 その場に飛び上がって……
「ようじょりゅうせいきーーーーーーっく!!!!!」
 某仮面乗り手の必殺キックのごとく、物理的に不可解な軌跡を描いてゲンジマルに向かう、が……
「とっとと、これはまた元気な童女ですな」
 まったく苦もなく、ゲンジマルに抱きとめられる。
「うきー! はーなーせー!」
「う〜む……」
 ゲンジマルはしばし幼女の顔をしげしげと眺めた後、
「花枝殿、貴殿の娘か?」
「アホ! そいつはDの娘だ! 私はまだ若い上に独身! 花も恥らう乙女だ! ……あい……っ! たた……」
 叫んだ一瞬後、腹を押さえて悶絶する。相当響いたらしい。
「D……?」
 なんとなく覚えのあるような名前を聞き、眉をひそめる。
 この時、何となくゲンジマルの頭に嫌な予感がよぎった。
 そして、その予感は的中した。

「大神流星きぃぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーーーーックゥ!!!!!!!!!!!」

「なんとぉ!!?!」

283DreamPower 9:2004/05/18(火) 21:58
 嫌な予感がよぎった刹那、どこからともなくゲンジマルの側頭部に脚が飛んできた。
 さすがのゲンジマルも反応できず、直撃を受けでド派手に吹っ飛ぶ。
 空中に投げ出された幼女の体は、飛んできた人間が抱きとめた。
「ゲンジマル貴様! 我が娘に何をしている!?」
「お、あ……貴方様は……」
「まいか大丈夫か!? 怪我はないか!? あの男に何かされなかったか!?」
「……でぃー? 治ったの?」
「バッチリだ! お前の方こそ大丈夫だったか!!?」
「あのおじいちゃん……あのおじいちゃん……」
 ちょっと涙目になりながら、やや演技っぽい仕草で、
「まいかのからだを蹂躙(だっこ)した!!!」

 プッツゥゥゥ――――――――――――――――――――――――――――――――ン!!!!

「レミィ、まいかを頼むぞ」
「ウ、ウン……」
 異常に静かなテンションのまま、Dはレミィを地に下ろすと彼女に娘を預ける。
 そして、ゆっっっっっっっっくりとゲンジマルに歩み寄っていった。
「な、あ、貴方様もこの島に……?」
 一応、刀を構えてみたりなんかしてみる。
「ゲンジマル……久しいな……」
「は……はい、お久しぶりにございます……」
「まさかお前が……エヴェンクルガ稀代の英雄が……そういう趣味を持っていたとはな……」
「あ、あいやその、それはですな……おそらくお互いの認識の食い違いというものでは……」
「言い訳とはお前らしくもないなゲンジマル……」
「で、ですから……」
『動くな』
 Dの言葉と同時に、凍りついたようにゲンジマルの身体が動かなくなった。
「ぐっ……な……? こ、これは……」
「貴様の罪……」
「あ、あの、貴方様……まずは落ち着いてくだされ……」
「我が娘を汚した罪……」

284DreamPower 10:2004/05/18(火) 21:58
「で、ですからまずはお互いの誤解を解くのが先決では……」
「ソノ罪……」
「ちょ、ちょっとお待ちを!」

『死スラ生ヌルイ!!!!!』

 ゴゥッ、とDの右拳に光が収束する。

「 大 神 昇 竜 券 !!!!!!!!!!!!」

「だから誤解なのですーーーーーーーーー!!!」
 強烈なアッパーが決まり、ゲンジマルは星になった。
「かつて部下であり同士であり友人だった汝……せめてもの情けだ。迷うことなく常世への道を歩むがいい……」
 その目元がキラリと光ったのは、ただの汗か、それとも強敵(とも)への餞か……

「というわけで岩切、ご苦労だったな」
 意趣返しも終わってひと段落。ねぎらいの言葉をかけるべく、Dは三人の下へと戻っていった。
 岩切もだいぶ回復してきたのか、レミィの肩を借りながらもなんとか立ち上がっている。
「やれやれ……結局いいところはお前に持っていかれてしまったか。
 それにしてもよくもまぁ仙命樹持ちでもないお前がこの短時間に回復したな。何があった」
 Dはフフン、と軽く鼻で笑うと、
「まぁそれは何というか……愛の力だな」
「……言ってて恥ずかしくないか?」
「いや別に」
「そうか……」
 と、ここで岩切が思い出す。
「って! ンなことのんびりと話している場合ではなかった! 急げD! 獲物はあっちだ!」
 ビシッ! と自分が向かおうとしていた方向を指差す。
「ん? ……ああ、そういえばそうであったな。あちらで間違いはないのか?」
「おそらくはな。あの女がこの道に立ちふさがっていた。ならば向こうに奴の仲間がいると考えるのが普通だろう」
 クイッと木の根もとのトウカを指差す。
「某はいつまで放置されていればいいのだろう」

285DreamPower 11:2004/05/18(火) 21:58
「そうか……よし」
 Dはポン、とレミィとまいかの頭に手を乗せると、
「というわけで私はちょっと出かけてくる……二人とも、岩切とここで待っていてくれ」
「OK!」
「わかった!」
「では岩切、頼んだぞ。ちょっと行ってくる……ハッ!」
 ゴッ!
 ……Dが気合を込めると瞬間、またしても彼は疾風となり、道の先へと消えていった。
「さて……間に合うかどうか……」


「待て……はぁ……待て……待て……ッ! 神妙に……お縄につけこの金髪ポニテ!」
「が……お……っ……もう、ダメかも……」
「はぁ、はぁ、はぁ……ま、待ってよ浩平……」
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……ちょっと、辛いかも……」
「ひぃ、ひぃ、ひぃ……まだ、なの……?」
 そしてこちらはやや忘れ去られた感のある観鈴VS浩平・長森・ゆかり・すひーの追激戦。
 予想以上の粘りを見せた観鈴だがすでにその命も風前の灯。やはり体力面では男子にかなわず、もう浩平がすぐ後ろまで追いついてきていた。
「これで……チェックメイトっ! オレの……勝ちだ……ッ!」
 だがこちらも余裕綽々とは言えない。浩平も残った体力を振り絞り、観鈴の背に手を伸ばすが……

『観鈴……』

「えっ!?」
 突然、観鈴の目に空いっぱいに広がる晴子の顔が映った。
『観鈴……あきらめたらそこで試合終了やで……がんばりや……』
 さわやかな笑顔でグッと指を立てる。
(おかあさん……)
「なっ!?」
 その時、奇跡が起きた! なんと観鈴ちんの走るスピードが一段階速くなったのだ!

286DreamPower 12:2004/05/18(火) 21:59
「まだ……体力残してるってのか!? クソォッ!」
 いや、そんなことはない。すでに観鈴ちんは体力の限界貴乃花。余力など一切ない。
 では彼女に最後の力を与えたのは何か?
 それは……
「おかあさん……わたし、がんばるからね……」
 ひとえに、母への愛のなせる業だろう。
「だから、空の上から見守ってて……」
 どうやら詩子のが伝染ってしまったらしい。哀れ、とうとう娘にすら殺された晴子。
 ……と、その時。

「……ぉぉぉぉ……おおおお……おおおお……!!!!」
 後ろから、誰かの気合たっぷりな叫びが聞こえてきた。
「なに……?」
「なんだ……?」
 かなり気だるいが、後ろを振り向く一行。そこにいたのは……
「あははははははは! すばらしい、かつてないほどにみなぎるこの力! もはや何人たりとも我を止めることなどできぬ!
 もはやうりゃうりゃだ! すばらしい! すばらしいぞ今の私は!! まさに無敵! 空蝉など屁でもないわぁぁぁぁぁ!!!!」
 超猛スピードで迫ってくるDの姿だった。
「なんだあのおっさん!?」
 思わず浩平が叫ぶ。
「わ、わからないよっ!」
「けど、すごいスピード……」
「どうすんのさ!? このままじゃ追いつかれちゃうよ!」
「くそっ、トウカの奴、やられちまったのか……」
 再び前を向き、考えること、数瞬。浩平は、結論を下す!
「長森!」
「えっ!?」
「ゆかり!」
「はいっ!?」
「すひー!」
「なにっ!?」

287DreamPower 13:2004/05/18(火) 21:59

「お前たちで止めろ!」

「…………」
 何をおっしゃってやがられるのですか?
「……む、無理だよ浩平! あんなのどうやって止めろっていうの!?」
「わ、私たちには無理ですってば!」
「もう人間レベルを超えてるよ!」
「少しでいい! 数秒! ほんの少しでいいから足止めしろ! もうちょっとでこいつを捕まえる! その時間を稼げ!」
「そんなこと言われても……」
「三人寄れば姦しいっていうだろ! なんとかしてみろ! それっ!」
 と、無理やり三人の中で一番前を走っていた長森を方向転換させる。
「それを言うなら文殊の知恵だよー!」

 とかなんとかやりつつも、浩平は置いてその場に立ち止まり、後ろを振り向く三人娘。
 背後からはスピードが落ちるどころかかえって加速しているようにすら見えるDの姿が迫っている。
 思わず顔を見合わせる。
「……どうしよう」
 かくして、牛乳・アイス・ホットケーキによる絶望的な防衛戦が始まった。


【長森・ゆかり・すひー Dを足止め】
【観鈴ちん 最後の力】
【浩平 もうちょっとで捕まえる】
【岩切・レミィ・まいか お留守番】
【D 愛の力】
【ゲンジマル 星】
【登場 神尾観鈴 【折原浩平】【長森瑞佳】【伏見ゆかり】【スフィー】【岩切花枝】【ディー】【しのまいか】【宮内レミィ】【ゲンジマル】】

288テンプレ:2004/05/19(水) 22:00
葉鍵キャラ100名を超える人間達が、とあるリゾートアイランド建設予定地に招待された。
そこで一つのイベントが行われる。

「葉鍵鬼ごっこ」。

逃げる参加者。追撃する鬼。
だだっ広い島をまるまる一つ占拠しての
壮大な鬼ごっこが幕を上げた。

増えつづける彼らの合間を掻い潜って、
最後まで逃げ切るは一体どこのどちら様?
「――それでは、ゲームスタートです」

関連サイト

葉鍵鬼ごっこ過去ログ編集サイト
http://hakaoni.fc2web.com/
葉鍵鬼ごっこ過去ログ編纂サイトVer.2
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Domino/5154/

葉鍵鬼ごっこ議論・感想板
http://jbbs.shitaraba.com/game/5200/

前スレ
葉鍵鬼ごっこ 第八回(dat落ち)
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1068642663/

ルールなどは>>2-10を参照。

289テンプレ:2004/05/19(水) 22:01
・鶴来屋主催のイベントです。フィールドは鶴来屋リゾートアイランド予定地まるまる使います。
・見事最後まで逃げ切れた方には……まだ未定ですが、素晴らしい賞品を用意する予定です。
・同時に、最も多く捕まえた方にもすてきな賞品があります。鬼になっても諦めずに頑張りましょう。

ルールです。
・単純な鬼ごっこです。鬼に捕まった人は鬼になります。
・鬼になった人は目印のために、こちらが用意したたすきをつけてください。
・鬼ごっこをする範囲はこの島に限ります。島から出てしまうと失格となるので気を付けましょう。
・特殊な力を持っている人に関しては特に力を制限しません。後ほど詳しく述べます。
・他の参加者が容易に立ち入れない場所――たとえば湖の底などにずっと留まっていることも禁止です。

・病弱者(郁美・シュン・ユズハ・栞・さいかetc)は「ナースコール」所持で参加します。何かあったらすぐに連絡してください。
・食料は、民家や自然の中から手に入れるか、四台出ている屋台から購入してください。
・屋台を中心に半径100メートル以内での交戦を禁じます。
・鬼は、捕まえた人一人あたり一万円を換金することができます。
・屋台で武器を手に入れることもできますが、強力すぎる武器は売ってません。悪しからず。
・キャラの追加はこれ以上受け付けません。
・管理人=水瀬秋子、足立さん及び長瀬一族

能力者に関してです。
・一般人に直接危害を加えてしまう能力→不可。失格です。
・不可視の力・仙命樹など、自分だけに効く能力→可(割とグレーゾーン)。節度を守ってご使用ください。
・飛行・潜水→制限あり。これもあんまり使い過ぎると集中砲火される恐れがあります。
・特例として、同程度の自衛能力を有する相手のみ使用可とします。例えば私が梓を全力で襲っても、これはOKとなります。

  | _
  | M ヽ
  |从 リ)〉
  |゚ ヮ゚ノ| < 以上が主なルールです。守らない人は慈悲なく容赦なく万遍なく狩るので気を付けてくださいね♪
  ⊂)} i !
  |_/ヽ|」

290テンプレ:2004/05/19(水) 22:02
感想・意見・議論用にこちらをご利用ください。

葉鍵鬼ごっこ感想・討論スレ4(dat落ち)
http://wow.bbspink.com/test/read.cgi/leaf/1073291066/
葉鍵鬼ごっこ感想・討論スレ3
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1068/10686/1068659677.html
葉鍵鬼ごっこ感想・討論スレ2
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1052/10528/1052876752.html
葉鍵鬼ごっこ感想・討論スレ
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1049/10497/1049719489.html

過去ログ
葉鍵鬼ごっこ 第七回
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1058/10580/1058064126.html
葉鍵鬼ごっこ 第六回
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1053/10536/1053679772.html
葉鍵鬼ごっこ 第五回
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1050/10503/1050336619.html
葉鍵鬼ごっこ 第四回
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1049/10493/1049379351.html
葉鍵鬼ごっこ 第三回
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1048/10488/1048872418.html
葉鍵鬼ごっこ 第二回
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1048/10484/1048426200.html
葉鍵鬼ごっこ
http://wow.bbspink.com/leaf/kako/1047/10478/1047869873.html

291参加者一覧:2004/05/19(水) 22:04
全参加者一覧及び直前の出番のあった話になります。
名前の横の数字は出番のあった直前の話のナンバーです。編集サイトでご確認下さい。
【】でくくられたキャラは現在鬼、中の数字は鬼としての戦績、戦績横の()は戦績中換金済みの数
『』でくくられたキャラはショップ屋担当、取材担当、捜索対象担当
()で括られたキャラ同士は一緒にいます(同作品内、逃げ手同士か鬼同士に限る)

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
fils:
(【ティリア・フレイ】、【サラ・フリート:1】、【エリア・ノース:1】)756

雫:
【長瀬祐介:1】594, 【月島瑠璃子】761 , 【藍原瑞穂:1】743
【新城沙織】744, (【太田香奈子:2】、【月島拓也:1】)758

痕:
柏木楓760、 【柳川祐也】687, 【柏木梓】699、【日吉かおり】655
【ダリエリ:1】762、【柏木耕一:2】743、【柏木千鶴:10】740
【柏木初音】696、【相田響子】658、【小出由美子】700
【阿部貴之】613

TH:
(【岡田メグミ】、【松本リカ】、【吉井ユカリ】、【藤田浩之】、【長岡志保】)707
【来栖川芹香】729 、【来栖川綾香:2】747
(【保科智子】、【坂下好恵】、【神岸あかり】)696、
(【雛山理緒:2】、【しんょうさおり:1】)708、【宮内レミィ】759 、
【マルチ:1】753 、【セリオ:3】758、【神岸ひかり】594,【佐藤雅史】744
【田沢圭子】749 、(【姫川琴音】、【松原葵:2】、【垣本】、【矢島】)743

WA:
【藤井冬弥】729、(【森川由綺:3】、【河島はるか:2】)699

292参加者一覧:2004/05/19(水) 22:05
(【緒方理奈:6】、【緒方英二】)702 (【澤倉美咲】、【七瀬彰】)683
【観月マナ】749、【篠塚弥生】658

こみパ:
(【猪名川由宇】、【大庭詠美】、【立川郁美】)650、【御影すばる】690
(【高瀬瑞希:2】、【九品仏大志】)760、(【牧村南】、【風見鈴香】)721
(【千堂和樹】、【長谷部彩】、【桜井あさひ:2】)707
(【縦王子鶴彦:2】、【横蔵院蔕麿:1】)552 、【立川雄蔵】560
【塚本千紗:2】742、【芳賀玲子】595、【澤田真紀子】758

NW:
【ユンナ】694、(【城戸芳晴】、【コリン】)700

まじアン:
【江藤結花】655、【宮田健太郎:1】700、【牧部なつみ】742
【スフィー】759、【リアン】756、【高倉みどり】721

誰彼:
【岩切花枝】759、【砧夕霧:1、桑島高子】762, 【坂神蝉丸:5(4)】761
【三井寺月代:1】702、【杜若きよみ(白)】707、【杜若きよみ(黒)】743
【石原麗子:1】756、【御堂:7】758、【光岡悟:1】760

ABYSS:
【ビル・オークランド】760

うたわれ:
ハクオロ749、【エルルゥ】749、【カミュ】743、【ベナウィ】761
(【トウカ】、【ゲンジマル:2】)759
(【アルルゥ】、【ユズハ】、【ウルトリィ:1】)760、【ヌワンギ:1】647
【ハウエンクア】721、(【ドリィ:1】、【グラァ】)743、【オボロ:3】758
【クーヤ】753、【サクヤ】701、【ディー:8(6)】755、【ニウェ:1】591
(【カルラ】、【クロウ】、【デリホウライ:3】)650

Routes:
リサ・ヴィクセン761、【醍醐:1】761、【伏見ゆかり】759、【立田七海】699
(【湯浅皐月】、【梶原夕菜】、【エディ】)701、【那須宗一:1】747 、【伊藤:1】613

293参加者一覧:2004/05/19(水) 22:05
同棲:
【山田まさき:1】691、【まなみ:3】744

MOON.:
【名倉友里】687、(【天沢郁未:7(2)】、【名倉由依】)758
(【鹿沼葉子:2】、【A棟巡回員:1】)760、【巳間晴香】707
【少年:1】749、【高槻:1】675、【巳間良祐:1】691

ONE:
【柚木詩子】、(【折原浩平:8(7)】、【長森瑞佳】)759
(【川名みさき:2】、【氷上シュン】)696、【深山雪見:2】742
(【七瀬留美:3】、【清水なつき】、【里村茜】、【上月澪】)761
【椎名繭】675、【住井護】758、【広瀬真希:1】700

Kanon:
(【相沢祐一】、【美坂香里:8(7)】、【川澄舞】、【久瀬:6】、【北川潤:1】)758
(【美坂栞】、【月宮あゆ:4(4)】)753、【水瀬名雪:3】708
(【沢渡真琴:1】、【天野美汐:2】、【倉田佐祐理:2(1)】)761


AIR:
神尾観鈴759、みちる755、【遠野美凪】744、(【柳也】、【裏葉:1】)747
【神尾晴子】751、【しのさいか:1】650、【橘敬介】701、【しのまいか】759
(【霧島佳乃】、【霧島聖】)702、(【神奈:1】、【国崎往人:4】)760
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

294参加者一覧:2004/05/19(水) 22:06
その他のキャラ

屋台:
零号屋台:ショップ屋ねーちゃん(NW)709
壱号屋台:ルミラ、アレイ(NW 出張ショップ屋屋台バージョン支店「デュラル軒」一号車)673
弐号屋台:メイフィア、たま、フランソワーズ(NW 同二号車)691
参号屋台:イビル、エビル(NW 同三号車)753

管理:
長瀬源一郎(雫)、長瀬源三郎、足立(痕)、長瀬源四郎、長瀬源五郎(TH)、フランク長瀬(WA)、
長瀬源之助(まじアン)、長瀬源次郎(Routes)、水瀬秋子(Kanon)

支援:
アレックス・グロリア、篁(Routes)

その他:
ジョン・オークランド(ABYSS)、チキナロ(うたわれ)

295名無しさんだよもん:2004/05/26(水) 01:27
<TR>
<TD width=36>763</TD>
<TD width=221><A href=SS/763.html>せめて最後の援護を</A></TD>
<TD>
<BR>
柏木楓<BR>
【鹿沼葉子】<BR>
【光岡悟】<BR>
【アルルゥ】<BR>
【ユズハ】<BR>
【ウルトリィ】<BR>
【神奈備命】<BR>
【国崎往人】<BR>
【九品仏大志】<BR>
【高瀬瑞希】<BR>
【A棟巡回員】<BR>
【ビル・オークランド】<BR>
『ムックル』<BR>
『ガチャタラ』
</TD>
</TR>

<TR>
<TD width=36>764</TD>
<TD width=221><A href=SS/764.html>自分の力で</A></TD>
<TD>
みちる<BR>
【クロウ】<BR>
【立川郁美】<BR>
【カルラ】<BR>
【しのさいか】<BR>
【大庭詠美】<BR>
【猪名川由宇】<BR>
【デリホウライ】<BR>
【湯浅皐月】<BR>
【梶原夕菜】<BR>
【サクヤ】<BR>
【椎名繭】<BR>
【高槻】
</TD>
</TR>

<TR>
<TD width=36>765</TD>
<TD width=221><A href=SS/765.html>線が交わる時</A></TD>
<TD>
ハクオロ<BR>
柏木楓 <BR>
【エルルゥ】<BR>
【少年】<BR>
【観月マナ】<BR>
【光岡悟】<BR>
【アルルゥ】<BR>
【ユズハ】<BR>
『ムックル』<BR>
『ガチャタラ』
</TD>
</TR>

<TR>
<TD width=36>766</TD>
<TD width=221><A href=SS/766.html>DreamPower</A></TD>
<TD>
神尾観鈴 <BR>
【折原浩平】<BR>
【長森瑞佳】<BR>
【伏見ゆかり】<BR>
【スフィー】<BR>
【岩切花枝】<BR>
【ディー】<BR>
【しのまいか】<BR>
【宮内レミィ】<BR>
【ゲンジマル】
</TD>
</TR>

296ダンスナンバー:2004/05/26(水) 16:28
「ハウエンクア君、キミの服洗濯終わって今は乾燥機にかけてるから。たぶんそろそろ着れるようになると思うよ」
「あ、どうも……」
「ハウエンクアさん、もうちょっと待っててくださいね。お料理、もうすぐできあがりますから」
「あ、すいません……」
「どうしましたかハウエンクアさん? さっきからずいぶんとお静かですけど」
「あ、いえ……」
「ぴこっ?」
「あ、うん。ありがとう」
 迷い兎ハウエンクアが南女史に保護されて数時間。
 高倉みなみ・風見鈴香両名が待つマンションの一部屋に招かれた彼を待ちかまえていたのは、凄まじいまでの接待攻撃だった。
「その……こういうの慣れてなくて……」
「ふふ、緊張する必要なんてないんですよ」
 朝方醍醐を見送って暇をもてあましていたお姉さん方。
 そんな彼女らにとって、ボロボロの風袋でまるで打ち捨てられたペットのようだったハウの姿など、格好の餌食でしかなかったのだ。
「あの……僕、嵌められてないですよね?」
「何がですか?」
 思わず疑問を口にしてしまった。が、曇り一つない南の笑顔で返されてしまう。
 あまりに慣れない扱い。いつものアハハハ笑いもなりを潜め、恐縮しきりのハウエンクアであった。

297ダンスナンバー:2004/05/26(水) 16:28
「ふーん、それは大変だったね……」
「でもロマンチックじゃないですか。好きな人のために自ら身を引くなんて。悲しいけど素敵ですよね」
「ぴこぉ〜……」
「いや、そんな大したものじゃ……」
 みどりの料理を待つ間、暇をもてあます3人+1匹。洗濯場からは乾燥機が回転する音が聞こえてくる。
 雑談代わりに適当な世間話をしているだけのはずだったのが、話の内容はいつの間にかハウエンクアの身の上話に移っていた。
「まぁ……ウチの國もね。聖上は国政ほったらかしで他國の皇との逢瀬を繰り返すわ、大老はその聖上を甘やかしっぱなしだわ、
 同僚はその大老へのコンプレックスの塊で政治のせの字もわかってないわ。……僕も仕事仲間に恵まれてるよ」
 身の上話からさらに人生相談へ。というか愚痴へ。
「苦労してるんだね」
「本当だよね……。おかげで本来僕の役目じゃない外交折衝まで任されてるんだから……人前で話するの苦手だっていうのに……他にマトモな人材ないもんだから……」
「でもすごいじゃないですか。私より若いのにそんな大任をまかされてるなんて。私だってまだまだこみパスタッフの中では見習い同然ですし」
「え? あ、そ、そうですか?」
「そうですよ。きっとハウエンクアさんの皇様もハウエンクアさんを信頼しているからこそ他の皇様とのラブロマンスに熱中できるんですよ」
 などと、本当にそう思ってるのかハウを励ますためなのか。調子のいいことを言ってしまう南さん。
 ただ……
「え? あ、あは、アハハハ……や、やっぱりそうなんですかね?」
「はい! きっとそうですよ! ハウエンクアさんて、やっぱりすごい方だったんですね!」
「あ、アハハハハ……」
 いまいち単純なクンネカムンの右大将には効果があったようだ。
 と、そこで鈴香の一言。
「なにせ、南さんへの第一声が『マーマ』だったんでしょ?」
「ハ……」
 ピシッ、とハウの動きが固まる。

298ダンスナンバー:2004/05/26(水) 16:29
「ふふふ、あれは驚きました。私だってもう若くはないですけど、それでもこんな大きな子は産んだ覚えはありませんから」
「あ、あの、その、それは、ですね……」
 しどろもどろのハウエンクア。
「似てたの? 南さん、ハウ君のお母さんに」
「い、いや、そういうわけ……じゃ、なくて……その、雰囲気が……」
「雰囲気かー。うん、なんとなくわかる気がします。南さん、たしかに暴政本能っていうかそういうのありそうですし」
「まあ、ふふ。それっておばさんくさいってことですか?」
「そ、そんなことはないですよ南さん! 南さんは十分若いですって!」
「ふふ、ありがとうございます。ところで本物のハウエンクアさんのお母様はどうなさってるんですか?」
「……………それは」
 ……一瞬、ハウが南から視線を逸らし、その表情に影が差した。
「あ…………」
 それだけで大方の事情は察知した南。形のよい眉をひそめ、どう二の句を継ごうか悩んだ瞬間――――
「お待たせしましたハウエンクアさん。昼食ができましたよ」
 キッチンから、ベストのタイミングでみどりのお声がかかった。
「あ、それでは少し遅れましたけどお昼にしましょうか」
「そうだね。ハウ君来てドタバタして忘れちゃってたけど、そろそろお腹も空いてきたし」
「ああ……久しぶりのまともなご飯……うっ……思わず涙が……」
「ぴこ。ぴこ」
「ふふふ、遠慮しないでいっぱい食べてくださいね」
 

【ハウ 幸せ】
【お姉さんズ&芋 おもてなし】
【これから昼食 四日目午後 マンションの一室】
【登場 【ハウエンクア】【牧村南】【高倉みどり】【風見鈴香】『ポテト』】

299До свидания:2004/05/29(土) 16:58
 ――――勝負は、ついた。

 女の背中を追い始めてから数時間。感覚的には丸一日以上続いたともいえる、この追撃戦。
 勝ったのは――俺だ。

 どんなに強靭な心を持とうとも、
 どんなに精神か身体を凌駕しようとも、
 如何ともしがたいものはある――――

 最後の最後で、幸運の女神は俺に微笑んだ。

 行き止まり――

 女が飛び込んだ薄暗い山林。俺の中の仙命樹が解き放たれるその場所。
 抜けた先にあったのは、新たな道ではなく――崖。
 垂直に切り立ち、そして水平に広がる巨大な――崖だった。

「俺の、勝ちだ」

 女の背中に向かい、再度言い放つ。
 とうの昔に、ソレは女の目にも飛び込んでいるだろう。
 目の前にそそり立つ絶望。突きつけられた終焉。
 避けようのない、敗北。
 女が、息を、大きく、吐く。
 その背中から立ち昇っていた覇気はたちまち消え失せ、そして――

「……!?」

 ……代わりに吹き出したのは、新たな闘志……これは、『殺気』!?

300До свидания:2004/05/29(土) 16:58
 ターーーンッ……!

 崖にたどり着いた女は、諦めて脚を止めることはせず……高々と跳び上がり、垂直の斜面を、蹴りつけた。

 シュッ……

「ちぃ、ッ!」
 真後ろを尾けていた俺を三角飛びで越え、一回転。俺の後頭部にめがけて強烈な蹴りが疾る。
 わずかに身体を捻ってかわす。衝撃波を伴った脚が俺の右耳を掠め、そのまま音もなく地に降り立った。
 速い……!
 想像していた反撃。想像を超えた一撃。僅かにあった、俺の中の余裕が一瞬で消し飛んだ。

 ブオンッ……!
 女は追撃の手を緩めることなく、上段の後ろ回し蹴りを繋げてきた。
 鼻先2センチを黒い影……靴裏が掠める。
「……やるな。だが……!」
 だが、後ろ回し蹴りは威力が大きい代償として、弱点がある。
 一瞬見えた背に、蹴りを……違う!
「クッ!」
 俺はその場に伏せると、横に跳んだ。
 すぐ脇を女の背中からのタックルが通り過ぎていく……やはりか。
 反撃に対する反撃まで心得ている。この女は……強い。しかも、格闘技のそれではなく……実践で、命と命のやりとりの中で培われた、強さ。

 ヒュ! ファ! フォッ!
 まるで雅曲でも奏でるかのように、空気を切り裂く旋律を伴って女の脚が舞い踊る。
 その動きに、一切の曇りはない。
 どこにこんな体力が残っていたというのだ……!
 内心驚愕しつつも、それを表に出すわけにはいかない。
 一撃一撃を、あるいはかわし、あるいは流し、俺は冷静に反撃の機会を窺っていた。……窺うことしかできなかった。

301До свидания:2004/05/29(土) 16:58
 ヒュッ、フォン!
「……来た!」
 女が連撃の仕上げとして放った回し蹴りをギリギリでかわすと、女の動きが止まった。
 今度は、タックルも来ない。
 そこを狙い、脚払いをかけ……

 パーン……

 ……俺の顎が、浅く、しかし高く、鳴った。
 同時に女の身体が空中に踊る。
 ……踵か。
 背中を見せたのすらどうやら囮だったようだ。
 女は予備動作ゼロの体勢から、高々と後ろ足を蹴り上げ、踵を俺の顎に決めたのだった。
 トン――
 土埃一つ物音一つ立てず着地した女が、体勢不十分の俺を仕留めにかかる。

 懐かしい死の予感が俺の背筋を走る。

 だが、まだだ。
 一か八か。
 必殺の一撃を外せば、まだ逃れる術はある。
 女の、意図は――――

302До свидания:2004/05/29(土) 16:58
『それ』が来ることを、俺は予期できなかった。
 何が幸いしたのか。
 勝利の女神は、相当俺を気に入ってくれたのか。
 最初の言葉を訂正しよう。
 勝負は、俺の負けだった。
 実力ではなかった。
 俺の、負けだった。

 ガシーーーーーーーーンッ!!!

 ギリッ……ギリギリッ……
 女の細くしなやかな右脚が俺の手の中で軋んでいる。
 左右連続からの高速下段膝蹴り。
 狙いは股間か水月か。
 おそらくは数限りない強敵を沈め続けた、必殺の一撃。
 それを受け止めたのは……俺の腕。
「!」
 女が、少し、驚く。
 そして、にやりと、笑う。
 なるほど……

「……せいっ!!!」

 渾身の力を込めて、その脚を放った。
 投げられた女は、跳んだ。いや、飛んだ。
 最初より遙かに高く、そして――――遙かに、美麗に。
 後方伸身……2回。
 美しい。
 臆面なく、掛け値なく、そう思った。
 それは、事実だった。

303До свидания:2004/05/29(土) 16:59
 タンッ……

 埃一つ舞い立てぬ見事な着地。
『戦闘意志なし』の優雅な証拠――腕組み。

 果てなき沈黙と、時の凍結。
 風が凪ぐ。
 女は、その口を開いた。

「……Nice Fight」

 木漏れ日降り注ぐ無色透明の光の中で、女は静かに言った。
 賞賛の言葉がその姿にぴたりと、合っていた。

「……お前こそ」

 そう、これはおそらく……『試験』。

「あなたの勝ちよ。ミスター……」
「……蝉丸だ。坂神、蝉丸」
「ミスターサカガミ。あなたの、勝ち。フフフ……」
 笑った。
 満面の笑みが、その顔に花開く。
「しかし、物騒な試験だな。俺でなければ、どうなっていたことか」
「フフ、ここまで私を追いつめたあなただもの。きっと……いえ、大丈夫と思ったわ」
 悪びれた様子もなく、女は、そう言い切った。
「名前を聞きたい」
「リサ。リサ・ヴィクセン」
「ヴィクセン(雌ギツネ)――」
 似合っている――とは、思ったとしても、口に出すべきことではないだろう。

304До свидания:2004/05/29(土) 16:59
「しかし、なぜあんな試験を?」
「試験は相手を試すためにするものじゃなくて?」
「いや、それはそうだが……」
「ふふ。ごめんなさい。そうね――」
 ヴィクセンは顎に手を当て、しばし逡巡した後……
「あえて言うなら……自分の我侭のため、かしら」
「我侭?」
「そう。どうせ捕まえるなら……彼か、それでなくとも、彼に並ぶ人に捕まえてもらいたかった――そんな、個人的な願いかしら」
 彼――とは誰か。訊くのは――野暮というものか。
「…………それで、俺は、合格……というわけか」
「ええ。文句なしに、ね。私のコンボを破ったのはあなたで二人目。あなたに捕まったのなら、私も文句はないわ」
 ふぅ、と一息つく。
「それでヴィクセン。お前はこれから……どうする?」
「そうね……もう鬼としても活躍できる時間なんて残されてないでしょうし、何よりあなたとの追いかけっこでちょっと疲れたから……
 このあたりでしばらく休むことにするわ。坂神、あなたは?」
「俺は――まだ逃げ手を捜すとしよう。おそらく一番最初に鬼になり、6点どまりというのは少々情けないのでな」
「Wow! Six-points....やるわね、あなた」
「そうも言ってられん。俺の……旧い仲間などは、もっと点を挙げているだろうからな」

305До свидания:2004/05/29(土) 17:00
「じゃあな」
 木の幹に背を預けるヴィクセンを置き、俺はまた道を引き返した。
 ……ある程度距離が離れたところで、ヴィクセンに、言う。
「戦いは……お前の、勝ちだ」
「?」 
「最後の一撃……あれはただの偶然――いや、ここが木陰だったからかわせただけのことだ。
 もう一度あれを見舞われたら、俺もかわせる保証は……ない」
 仙命樹の活性化による感覚神経の鋭敏化……それがなければ、おそらく、アレには……反応することすら難しかっただろう。
 俺が勝てたのは、俺の力によってではない。邪道な手段によって……だ。
 だが、ヴィクセンは再度笑みを浮かべると、
「事実は一つ。あなたは、かわした。それだけよ」
 と言った。
「……そうだな」
 それ以上交わすべき言葉はない。
 俺は無言のまま、その場を後にした。

306До свидания:2004/05/29(土) 17:00
「Foo……」
 木漏れ日を浴びながら、リサは大きく伸びをする。
「NastyBoy……あなたの120%は、あまり当てにはならなかったわ……。私、自信をなくしそう」
 次第次第に、その瞼が重くなっていく。
「逃亡時間、四日間とちょっと。まあ、悪い記録じゃないと……思う、けど……」
 体から力が抜けていき、目の焦点もだんだんと合わなくなってくる。
「……スパスィーバ、坂神……私を捕まえたのが、あなたのような人でよかった……」
 そしてとうとう、その目が閉じられた。
「……イズヴィニーチェ……xxxx……」
 最後に唇がわずかに動き、誰かの名を呼んだ。しかし、それは言葉になっていなかった。

「………………」

 闘いは終わり、地獄の雌ギツネは眠りに落ちた。

「Zzzz…………」

 後に残ったのは、一人の少女、マーシャの小さな寝息だけだった。



【四日目午後 山頂近くの崖の麓】
【マーシャ 鬼化】
【蝉丸 合計6点。鬼としての活動続行】
【登場 リサ・ヴィクセン 【坂神蝉丸】】

307閉会式'07:2007/11/04(日) 17:11:34
「さあ、それでは逃げ手の方々の表彰に戻りましょう。
 続いては第六位、リサ・ヴィクセンさんです」
「Hi!」
 秋子に名を呼ばれ、軽い足取りで壇上にひょいと上がるのは地獄の雌狐、リサ・ヴィクセン。
「入賞おめでとうございます」
「ありがとうございます。ただ、私としてはちょっと不本意な順位ではあるけど、ね」
「大会中、主催側の間でもリサさんは非常に高く評価されていました。
 一般人の身ながら、しかも単独行動でここまで食い込めたのは素晴らしい結果といえるでしょう」
 褒めちぎる秋子さんだが、リサは
「そんなことはありません。私も何人もの人に助けられ、協力してここまで来れたのです。
 けして独りの力ではありません」
 と答えながらかぶりを振った。

「ケッ、よく言うぜあのアマ」
 それを聞いて漏らすのは御堂。コップの中身を一息に飲み干しながら毒づく。
「俺を二度も出し抜いときながら謙遜たぁ、いい度胸だ」
 いっそのこと勝ち誇ってくれれば素直に反感ももてたのだが、ああも優等生な回答をされては反応に困る。
「やるもんだぜ。”この時代”の裏家業の連中もな……」

「……………………」
 一方、”この時代の裏家業”のナンバーワンであるナスティボーイ。
「……なんてーかな……」
 壇上のリサと、少し離れた場所で同じような雰囲気の連中とつるんでいる蝉丸と、
 料理に舌鼓を打っている結花を見比べて…………
「…………はあ」
 少しイヤンな記憶をフラッシュバックし、いくらか鬱になった。

308名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:12:11
「というわけで五位入賞、リサ・ヴィクセンさんでした! それではこちらが賞品です」
 と言いながらさし出すのは熨斗袋。
 受け取りながら、『?』を顔に浮かべるリサ。自分は、賞金は辞退…………
(壇上で何も渡さないというのも格好がつきませんから。粗品です。
 とっておいてください)
 マイクをオフにし、秋子はリサにささやいた。
「……understand」
 ここで受け取らないというのは却って失礼になるだろう。
 苦笑しながら、リサは受け取った。
「Thank you! everyone!」

「続いては第4位! トゥスクル皇、ハクオロ氏です!」
「兄者! さすがだ!」
 「お美事です、聖上」
  「いよっ! 総大将日本一!」
   「おとーさん! おとーさん!」
「ハハ…………」
 拍手と、それに混じった聞き覚えのある歓声に追われて壇上に上がったのはハクオロさん。
 さすがに少し恥ずかしい。
「入賞おめでとうございますハクオロさん。それではこちらが入賞賞金になります」
「ああ、ありがとう」
 秋子から熨斗袋を手渡されるハクオロ。
「ハクオロさんは賞金の使い道などは何かお考えですか?」
「ベナウィがああ言ったのだ、もちろん國庫に…………と言いたいところだが」
「?」
 そこでチラリと目をやる。壇下の見知った面々の顔に。

309名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:12:39
「最近お小遣いを切り詰められてだいぶピンチだったのでな。
 たまには家族サービスということでパッと使わせてもらおう。
 今回の大会でいろいろ迷惑もかけてしまったからな」
 ドッと笑いが起こる会場。お小遣いのやりくりに困る王様というのもなかなか見られるものではない。
「はい、それでは是非ご家族に精一杯のサービスをしてあげてください。
 それでは、大会中の何か思い出などはありますか?」
「そうだな…………」
 秋子に促され、今大会であったことに思いをはせる。
 みちるや美凪と出会ったり、サイフをなくしたり、分身と語り合ったり、ウィツっぽいのと追撃戦したり、
 まなみに不覚をとったり、エルルゥたち追いかけっこしたり…………
「…………ある。いくらでもな」
「では、どれが一番?」
「どれも一番、だ。もともと思い出など、順位を付けられるものではないだろう?」
 ちょっぴりしんみりしてしまう会場。

「ふん、我が空蝉ながらいい格好をするものだ」
「D?」
 それを聞いたD。膝の上にまいか、隣にレミィを置きながらぽつりと呟く。
「どしたん?」
「どうしたもこうしたもないさ。気持ちはよくわかる」
 誰とも目はあわせず、しかし薄く微笑みながら言葉を続ける。
「我とてお前たちとの思い出。どれが一番かと言われればこう答えるだろう。
『どれもが一番だ』と。
 しかしそれをあの場で臆面も無くいってのけるとはいやはやまったく。
 あの男も変わったものだ」
 字面とは対照的に、いくらか爽やかな雰囲気でディーは言った。

(あんまり人のこと言えないと思うけどね…………)
 それを小耳に挟んだのはカミュ。もしくはその中の人。
 こちらは本当に誰にも聞こえないように、ぼそりと呟いた。

310名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:13:09
「それもそうですね」
 一方、会場の沈黙を破ったのは、やはり司会者である秋子さん。
 何か思うところがあるのか、一度二度と首を縦に振る。
「それでは、ハクオロさんでした。皆さんもう一度大きな拍手でお送りください」
 再度の拍手の海。
 今度は恥ずかしい歓声も挟まれなかった。


「さあ、ここからはTOP3の発表です!
 葉鍵鬼ごっこ、第三位! 柏木、楓さんです!」
「楓ーっ!」
「楓おねーちゃーん!」
 秋子の呼び声と、姉妹の歓声と、割れんばかりの拍手。
 促され、俯きながら壇上に上がるのは柏木家三女の柏木楓。
「おめでとうございます楓さん。三位入賞です」
(あ、ありがとうございます…………)
「……?」
 しかしその声は、マイクで拾ってようやく聞こえるか聞こえないか程度のものだった。
「楓さんもリサさんと同じように、長い時間を一人で戦い抜き、見事この成績を収めました。
 特に終盤の大追撃戦は長かった大会の中でも有数の名勝負だったといえるでしょう」
 大人数を前にして恥ずかしがっていると判断した秋子は、自分主導で話を進めていく。
 もっとも、その予想は半分正解で、半分ハズレであったのだが。
「それでは、楓さん、こちらが賞金になります。そして―――――」
 促されるまま熨斗袋を受け取る楓。
 しかし、三位以上はこれだけでは終わらない。つまり……

311名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:13:29
「何かお願い事があれば……一つだけ。私どもで協力できる範囲ならかなえてさしあげますが……
 もしすぐには思い浮かばなければ、後ででも」
「い、いえ」
 と、そこで初めて楓は前を向いた。
 相変わらず緊張のせいか頬は赤いが、瞳は確かにキッと前方を見据えている。
 楓の様子を見て、正式な賞品の受け渡しは後にしようと考えていた秋子だが、楓のその様子を認めると
 微笑みながらマイクを手渡した。
「みみ、みなさんありがとうございます。柏木…………楓です」
 ごくりとつばを飲み込む。その音はいくらかマイクに拾えたほどだった。
(楓ちゃん……)
 そんな従姉妹の様子をみて心配げなのは柏木耕一。もちろん、他の姉妹もだが。
「…………」
 唯一、いくらか不機嫌そうな千鶴は除いて。
「そ、それでは僭越ですが…………わ、私の願いを発表させていただきます」
 緊張のせいか、どもり気味ながらもいつもより饒舌な楓。
「わた、私の願いは…………願いは…………」
「……………………」
 ざわついていた会場も沈黙に包まれる。
 なにせ、初めての本格的な賞品発表なのだ。

 すぅと息を吸い込み、吐いて、吸い込み、吐いて…………
 ふんぎりがつかないのか、そんなことを何度か繰り返す。楓。
 そんな中、ふとステージの足下まで来ていたリサと目があった。
 パチリと、片目をウィンクする。
「…………!」
 それに促されたのか、楓はいよいよ大きく息を吸い込むと…………

『耕一さん私とデートしてください!』

 こちらもまた一息に、一気に言い切った。

312名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:13:43
「いいぃっ!!?」
 次の瞬間、どっと沸く会場。そして三百近い瞳が一気に耕一に向けられる。
「…………!」
 壇上の楓はいたたまれなくなったのか、瞬間湯沸かし器のように顔を紅潮させるとまたしてもうつむいてしまった。
(は、初音っ……!)
(う、うん!)
 一方会場の一角。こちらも別の意味で一触即発の状態であった。
 楓の願い。姉妹だけあって大方の予想はつけていた梓と初音。
 発表の瞬間、千鶴の利き腕と利き足の動きを封じることができる位置に飛び退いたが…………
「……どうしたんですか2人とも。突然に」
 千鶴は不機嫌な顔を隠そうともしなかったが、閉会式の進行表に目を落としたままその場を動こうともしなかった。
「ち、づる、ねえ…………?」
「一応私も主催側の一人ですよ。個人の感情でせっかくのフィナーレを壊すような真似はしません。
 楓の賞品は楓のものです。そして私の気持ちは私のものです。もちろん耕一さんの気持ちも、それらとは全くの別物です」
(…………ふう)
 その言葉を聞いて、安堵のため息をついたのは梓でも初音ちゃんでもあるが、もちろん。
(よかった…………)
 足立さん。苦労人である。


 ざわざわと会場がざわめく。もちろん、その中心にいるのは耕一だ。
「あ、いうえ…………お?」
「Hi! Mr.Koichi!」
「あ、リサ…………さん!」
 そんな耕一にひょいとマイクを投げ渡したのはリサ。そのまま言葉を続ける。
「ladyがあれだけ勇気を振り絞って、この4日間のすべてをそそいで、あなたにproposeしたのよ?
 さあて、あなたはそれにどう答えるのかしら?」
「あ、あう、あ…………」

 この状況で、断れる男がいたら、それは際限なしの大物か大馬鹿である。
 そして、幸いなことに耕一は、そのどちらでもなかった。

313名無しさんだよもん:2007/11/04(日) 17:14:06
「えと、あの、その…………まあ」
 マイク越しのやりとり。当然そのすべては会場に筒抜け。
 すなわち今ここにいる全員が、その証人である。
「あ、ありがとう楓ちゃん…………その」
 突然のご指名。緊張しながらも言葉を探す耕一。
「……………………」
 楓はもはや前を見ていられない。
「…………お、俺なんかでよければ…………その、いいよ」
 タメも雰囲気もクソもないが、耕一は肯定でもって楓の願いに応えた。
「今度の三連休ぐらいに帰省するから…………それでいい、かな?」
(……………………………………………………)
 沈黙し続ける楓だが…………
(…………はい)
 小さい、しかし確かな答え。
 マイクはしっかりと、その言葉を拾った。
「Congratulations pretty girl!! Ms.Kaede, over!!」
 最後の台詞を奪ったのはリサ・ヴィクセン。
 千鶴や秋子が何か言う前に、すべては大きな拍手の中にかき消えた。


「…………なあ初音」
「なあに梓お姉ちゃん」
「なーんかあたしたちって、陰薄いよな」
「しょうがないよ。今の主役は楓お姉ちゃんなんだから」
「ま、な…………」

【閉会式(授賞式) 続行中】
【鶴来屋別館パーティーホール】
【北川、住井、サラ、ティリア、リアン、エリア、ニウェ、源之助以外全員】

 ※ 残りは観鈴、みちる、【浩平】です。


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