したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

改訂版投下用スレッド

300До свидания:2004/05/29(土) 16:58
 ターーーンッ……!

 崖にたどり着いた女は、諦めて脚を止めることはせず……高々と跳び上がり、垂直の斜面を、蹴りつけた。

 シュッ……

「ちぃ、ッ!」
 真後ろを尾けていた俺を三角飛びで越え、一回転。俺の後頭部にめがけて強烈な蹴りが疾る。
 わずかに身体を捻ってかわす。衝撃波を伴った脚が俺の右耳を掠め、そのまま音もなく地に降り立った。
 速い……!
 想像していた反撃。想像を超えた一撃。僅かにあった、俺の中の余裕が一瞬で消し飛んだ。

 ブオンッ……!
 女は追撃の手を緩めることなく、上段の後ろ回し蹴りを繋げてきた。
 鼻先2センチを黒い影……靴裏が掠める。
「……やるな。だが……!」
 だが、後ろ回し蹴りは威力が大きい代償として、弱点がある。
 一瞬見えた背に、蹴りを……違う!
「クッ!」
 俺はその場に伏せると、横に跳んだ。
 すぐ脇を女の背中からのタックルが通り過ぎていく……やはりか。
 反撃に対する反撃まで心得ている。この女は……強い。しかも、格闘技のそれではなく……実践で、命と命のやりとりの中で培われた、強さ。

 ヒュ! ファ! フォッ!
 まるで雅曲でも奏でるかのように、空気を切り裂く旋律を伴って女の脚が舞い踊る。
 その動きに、一切の曇りはない。
 どこにこんな体力が残っていたというのだ……!
 内心驚愕しつつも、それを表に出すわけにはいかない。
 一撃一撃を、あるいはかわし、あるいは流し、俺は冷静に反撃の機会を窺っていた。……窺うことしかできなかった。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板