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機動戦士ガンダム0.5

1きんけ:2008/10/27(月) 01:05:17
武力平和の続く世界

地球連邦政府は軍部に掌握されつつあった

大衆の意見が届かず、あらぬ方向に動こうとする未来

そんな世界に警鐘を鳴らす者がいた

反連邦軍組織プレイオス

「弾圧と圧政からの解放」を目標に彼らは勝利なき戦いに身を捧げる…


機動戦士ガンダム0.5


人間らしく

28きんけ:2008/12/10(水) 22:24:49

あと数十メートルでビル裏を抜けて、丘へと続く道へと開けるところ。
「っ!?」
右折したハーワンの目に映ったのは、こちらへと歩いてくる特殊部隊の姿だった。
遅れて、右折しようとするジョシュアを強引に直進させて自身も、そのあとに続いた。
隊員がハーワンの姿を確認し、追いかけてきた。
「そこを右に!」
もう一度、右折しようとした時。ハーワンは腰に激痛を感じた。
その痛みに思わず、膝が折れた。転倒する直前、彼は最後の力でジョシュアの背中を思い切り押した。
「ハーワン!?」
彼の様子に気づいた、ジョシュアが止まろうとしたので
「走れ!とにかく走るんだ!」
後ろから足音が近づいてくる。
「約束だ」
叫ぶ。
「お前の力で世界を変えるんだよ!」
僅かの間、ジョシュアは立ち止ったが迷いながらも走って行った。
そうだよ…これで、いいんだよ。
走り去っていく、その背中姿を見送りながら微笑した。

どれくらい走ったのかな…
どこを走っていたのか記憶は定かではない。
ただ、感情に任せて疾走していた。
「僕は…どうすれば」
視界が潤んでいく。
いまの僕に何ができるの?僕に力があるというの?
―――違う、あるわけないじゃないか!
僕には…
「ハーワンの期待に応えることは出来ない…」
ぼろぼろと落ちていく大粒の涙。
結局、僕はこんな無力な人間なんだ。
こうやって惨めに泣いているほうが似合っているんだ…
彼の曇った視界に誰かが近づいてくる。
誰だろう、声も聞こえる。
―――あなたが
男は僕の顔を見ながら
「あなたがジョシュア・ラングリアですね?」
あなたは?
「俺はロイス・ナウサン。同じプレイオスのモビルスーツパイロットです」

合流に奇跡的に成功したロイスとジョシュアは、宇宙港へと急ぐ。
丘を目指していたのが功を奏したのか、港までの道のりは大したものではなかった。
港の入口が見えてきた。
そろそろ突破口を開くためにも、ドラウロに暴れてもらう必要があるな…
「合図を送るから、ちゃんと気づくんだよ、ドラウロ!」
きっと待ち呆けているであろう仲間へと呼び掛けた。

合図見えたぜ。
「まったく…待ち時間が長すぎて、操縦方法忘れるところだったろ」
接眼用モニターを覗きこみ、スナイパーライフルを構えた。
デブリから機体を離すと、その姿を敵機に晒す。
哨戒部隊に異変が見られる。おそらくこちらを、アルダをレーダーに捉えたのだろう。
「囮なのは気に食わないけど、好きにやらせてもらうかな…」
今日は芋虫スナイパーはお休みだ。

29きんけ:2008/12/13(土) 12:52:09
一射、二射、三射とトリガーを引くも、光は宙を散るだけで終わる。
出力を落として連射仕様にしたライフルであるが、得物の大きさゆえに、マキスなどのビームライフルなどと比較しても非常に扱いづらい物となっていた。
ポインタでマキスを追いかけるが、狙いは定まらずに敵機の姿がフェードアウトする。
「慣れない事には段階を踏む必要があるか」
距離を詰めてくるマキスに焦るドラウロ。
接眼用モニターから顔を離すと、他の射撃武器と同様にセミオートに切り替えた。

アルダの出現により、宇宙港は混乱していた。
ハッチを開放しろとひしめく人々。アルダ撃墜のために迎撃準備を進める軍関係者。ロイスが予測していたよりも凄まじい状況だ。
特殊警察の投入が影響しているな。
鎮圧部隊は、あくまでも反連邦組織の主要メンバーを目標にしていたが、あの大人数が走り回っていたのだ、流れ弾などにより負傷した人々は多い。
不謹慎ではあるが、このチャンスを利用しない手はない!
「この船に新型が積まれている!」
走りながら、一隻の輸送船を指差した。
なんてことのない民間企業が使用していそうな宇宙船だった。
「こんな小さな船にモビルスーツが積めるのかい?」
「俺も情報だけ渡されたので、さっぱりですよ」
ロイスがパネルを素早く操作して、船外ハッチを開くと内部へ。
操舵室に飛び込んできたロイスとジョシュアの姿に驚いた船長であったが、すぐさま状況を理解。
「やっと来たか、荷物は後部の格納庫だ!」
「パイロットを連れてきました、船は出せますか!?」
「だめだ。無理に出そうとすれば人を巻き込む」
ガラス越しに港の様子を見た。人がゴミのようだ。
「ならば、新型だけでも起動させます!」
「そうしてくれ、コンテナは開けておく」
操舵室を後にする二人。
格納庫は船の一番後ろである。迷うことなく到着する。
多数の資材とともに、積まれていたコンテナが、開き始める。
十メートル弱のコンテナからは、確かに一機のモビルスーツが搭載されていた。
黒を基調とした機体の背部には、これまでのモビルスーツには見慣れないほど翼状のフライトユニットが折りたたまれていた。
「これが僕のモビルスーツ…」
その姿に惚れぼれしながら声を漏らしたジョシュア。
そうだった、この機神を動かせるのが僕の力だ。
「動かすから、後ろに乗るのかい?」
「ええ。シートに掴まってますよ」
仰向けで寝かされているモビルスーツの上を歩きながら、コクピットへと近づく。
一目では分からないが、細かい部分はエヴンスに似ている。

30きんけ:2008/12/13(土) 13:58:23
コクピットに入ると、ロイスは言葉通りにシートに掴まっていた。
エンジンに火を入れると、ぐおおと唸りを上げて機体が目を覚まし始めた。
「この体勢に疲れたんだよ。何日も寝っぱなしじゃあ体も痛くなるし」
計器をいじりながらジョシュアは言うが、ロイスはもちろん否定。
「そんなことがあるわけないじゃないですか」
「思う気持ちだって大切だよ。ともに命をかける大切な相棒じゃないか」
ふふっと笑うジョシュアに、どう反応していいか分からず困るロイス。
機体を大切に扱うことは心掛けてはいるが、ジョシュアのように生き物に触れるようにしてモビルスーツに乗ったことはない。
あくまでモビルスーツは機械なのだ。機械は生きていない。
「この機体―――ガルーダって名前なんだね」
ディスプレイに羅列されていく機体情報を目で追う。
すごい機体だ。データ上の数値でならマキスに勝っている。
「時間がない。すぐ港から出てください」
「了解」

31きんけ:2008/12/21(日) 15:41:13
コクピット内に鳴り響く電子音に気づいてレーダーを見るイーサン。
クエサーの宇宙港から出てきた機影にはプレイオス所属の認識番号が表示されている。
「コロニー内に内通者でもいたのか!?」
港に停泊していた船にはモビルスーツなど積まれていないとの報告だったが…
認識番号は確かにプレイオスのものだ。どういう仕掛けだ?
まあ、何にせよ敵なら対処するしかない。
「増援は私がやる。二人は引き続き、緑のモビルスーツを」
隊員のマキスを尻目に新型へと機体を加速させた。
ズームで捉えた敵機の姿にイーサンはわずかな違和感を覚えた。
―――!?
意識を呑み込まれてしまいそうな、漆黒の機体。
ジェットユニットのミサイルを放つことはせずに距離を詰めていくと、ビームライフルを使用。
光は宙を切り裂いていくが、敵機は身軽そうにくるりと回避行動をとっていく。
「やはり、機体が小さい」
小型モビルスーツだ。たぶん全長は10メートル前後だろうな。
全長18メートルであるマキスと比べれば、その小ささは一目瞭然。
モビルスーツの小型化には課題が山積みである。機動性、パワー、機体の耐久性、一定数値維持できる出力。
それゆえに高水準のスペックを確保して、18メートルという全長に仕上げたマキスは傑作モビルスーツと言われている。
「小回りが効いただけではマキスには勝てないぞ!」

32きんけ:2008/12/23(火) 08:49:52
「来る!」
「分かってるよ」
ロイスとは対照的に落ち着き払っているジョシュア。
マキスがビームサーベルを抜き放つと接近してくる。こちらも減速することなく敵機に銃口を向けると発射。
無数の銃弾が放たれたので通常のアサルトライフルやマシンガンかと一考したロイスであったが、弾丸の色の緑に気づくと
「ビームマシンガンなのか」
「すごいね。地上では便利に使えそうだ」
コリオリを気にしなくてすむ。
かろうじて射線から離れたマキス。ビームマシンガンという見慣れない武器の存在に臆しながらも、黒の新型「ガルーダ」に食らいつこうとする。
上段にサーベルを構えたマキスの腰部から不意に小さな何かがパージされた。マキスから飛ばされた、それはガルーダの眼前で炸裂。
「クラッカーなの!?」
否。
直後、ガルーダの周りは白煙包まれると、視界が殺された。
「煙幕だったのか!」
「下がるよ」
ぐうんと前方にスラスターを吹かして、煙の世界から抜け出そうとする。
それこそが対処法であり、罠でもあった。
視界が開けた刹那。白を切り裂いて肉迫する赤の光刃。
「デモ鎮圧のための煙幕が、こんなところで役立つとはッ!」
伸びるマキスの右腕。もはやこれまでか。
「この機体には!」
ガルーダの胸部から強い光が発せられた。斬撃を受けたわけではない。
機体を逆上がりのように反転させると瞬後、下半身はぐるりと回転し背部の翼が展開。瞬く間にガルーダは両翼を広げた鳥となっていた。
「可変モビルスーツなのか、黒の新型は!?」
イーサンの攻撃は宙を凪ぐだけで終わり、ガルーダはその場から距離をとっていた。
「ガルーダ。こいつにピッタリな名前だ」
旋回しマキスへと襲いかかる。敵機は武器を持ち換えてビームを連射している。
それを軽々と避けると右腕に固定されたビームマシンガンが斉射。
降り注ぐ光の直撃を受けると、マキスの右脚が弾け飛んだ。
「ちょこまかと!」
すれ違いざま、マキスの背部よりミサイルが発射されたのが見えた。片翼に三発装備され計六発の、それが迫る。
「前世紀の戦闘機を参考にしているなら、この機体の後部に積まれているのは…」
垂直尾翼の下。わずかな収納部のハッチが開くと、内部より無数の機雷が後方に散布。次々と破裂していくと全弾のミサイルを粉砕した。

33きんけ:2008/12/29(月) 08:05:45
機雷散布後。変形を解除して今だとばかりにサーベルを抜刀してマキスを襲った。
迎撃に放った光条は小型のガルーダを捉えられず、宙を走っていく。
その間にも、ガルーダは接近。イーサンが素早く反応してみせるも、ビームサーベルはマキスの胸部を薙いだ。
「くそっ!まったくプレイオスめ!」
毒づいたイーサンであるが、躍起になって反撃に出ようとせずに、後退を選択。
「こちらも下がりましょう。援軍を呼ばれているかもしれませんし」とロイスが言うと、すぐさまドラウロに通信。
「ドラウロ、もう撤退だ」
《やっとかよ。散々待って、暴れ足りないね》
「別の機会に暴れろよ、あんたにはゲームだってあるんだし」
《はいはい。分かったよ》
無線の先の声は少しだけ名残惜しそうにも聞こえた。

腰だめに構えた砲身から弾幕を張っていき敵機の逃げ場を殺す。
腰部から抜いたサーベルを行動範囲を封じられたマキスへと投げた。
「役割が役割なだけに暴れることが出来ないんだよ、ロイス君」
隊長殿がいないということが、こんなにも自分にとって精神衛生上良いとは思いもいなかった。

34きんけ:2009/01/18(日) 21:11:19
母艦から出撃したユワンのモビルスーツ隊が、戦闘宙域へと急いでいた。
《敵機は二機だ、ククルス宙域で確認された狙撃タイプと、新型だ》
「狙撃タイプと新型…」復唱するかのようにメリアが呟いた。


イーサンのマキスが後退していくのを確認すると、それを好機としてドラウロのアルダとジョシュアとロイスのガルーダもクエサー宙域から離れていった。
《後方の連邦艦からモビルスーツ隊が出撃しているが、この位置なら追撃されることも無いだろ》
「毎回、そうやって殿に着いてくれると作戦がやりやすいんだけどなあ」
ドラウロからの返答はなく、ロイスがムッとして回線を閉じると、シートに座るジョシュアの様子を見た。
「母艦に行けばいいんだね?」視線に気付いたジョシュアが聞く。
「えぇ、この先の暗礁宙域まで行けば落ち着くでしょう」
シートにがっちりと掴まっていた手を離すと、首に巻いていたマフラーを解いた。
「ふぅ」と息を吐くと、座席の後ろの狭いスペースに足を折りながら窮屈そうにロイスが座り込んだ。


《ちっ…見事な引き際だプレイオス。これまでテロまがいの反攻作戦を繰り返してきただけある》
離れていく敵機に追撃を仕掛けられそうにもなく、歯噛みするユワン。
「イーサン中尉のマキス来ます」
前方から各所を損傷したマキスがやって来る。
《危ないところでしたね、中尉》
《新型は変形をするぞ。小型で動きも良い》
不意にイーサンが顔を俯かせると
《私はマキスに傷を負わせたばかりではなく、部下を二人も失ってしまった…》
《マキスの名マイスターと名高い中尉が苦戦する相手…ぜひ戦ってみたいものです》
ユワンは落ち込んでいるイーサンのことを気にもせず、そう言った。

35きんけ:2009/01/21(水) 15:54:40
百九十ヶ国以上の加盟国から成る地球連邦軍は、かつての三陣営の冷戦時代の名残で主要な軍事基地を三つに分けた。
中国、重慶。北米、ネヴァダ基地。イタリア南部、トレント基地。
いずれも連邦軍に欠かせない戦力であり、プレイオスには解決しなければいけない障害である。


機動戦士ガンダム0.5

7話 解放と粛清


クエサーの出来事から一週間ほどが経過した。
連邦政府に対して実施された大規模デモは特殊部隊と特殊警察のモビルスーツによって鎮圧されたが、公式にはプレイオスの奇襲による被害と発表。これにより鳴りを潜めていたプレイオスに対する抗議の声が再び上がることとなった。
クエサーの住民の証言は黙殺され、クエサーの騒動の様子を捉えた動画や画像は政府に厳しく検疫されてしまい、一部のアングラを除いては真実を知る者はいなかった。

「そして世論のプレイオスに対する声も後押しして、今回、連邦軍は欧州地区に点在する反連邦組織に対して中規模な一掃作戦を敢行することが決定した」
リンドヴルムのミーティングルームに集まる主要スタッフは皆、シラナミの言葉に耳を傾けていた。
照明を絞って薄暗い室内はモニターの光により暗緑に色づいている。
「しかし、世論の声が後押しというのは後付けの理由だろう。連邦軍は以前より軍事行動の準備を進めていました。クエサーの出来事は予想外でも作戦実施は予定調和であり、それらしい理由を付けるために、利用されましたね」
「天下の連邦政府様だってのに、やることは与党をバッシングする野党よりも汚いな」
「うむ」とシラナミが珍しくドラウロに同調すると
「増長した軍部の暴走は止まることはないだろう。恒久的な平和のための抑止力という素晴らしい理念は、こんなにまで落ちぶれてしまった。この状況を打破するには、彼らの目を覚まさせなければいけない。」
気迫のこもったシラナミの言葉に一様の顔が引き締まった。

ミーティングを終えると、各自がそれぞれの持ち場へと戻っていく。
ロイスもエヴンスの最終チェックのために格納庫へ…と思考していたがミーティングルームを出る直前、シラナミに声をかけられて足を止めた。
「何です?」
「ロイス・ナウサン。君に地球に降下した際のモビルスーツ隊の隊長を努めてもらう」
迷いを見せることもなく、彼は言った。
「俺が?」
「そうだ」

36きんけ:2009/01/23(金) 16:16:21
「モビルスーツ隊の最年長ならあなたを除けばドラウロですよ?」
ぴくりと眉を跳ねて反応するシラナミ。ロイスも彼の雰囲気を察すると、何も言わない。
「…ドラウロ・バーンに部隊をまとめられると思うのか?」
「そんなことは任せてみなくちゃ分からないじゃないですか」
シラナミの鋭い視線が突き刺さる。
「私達がやっているのは生死を分かつ戦いだ。彼に任せられるほど隊員の命は軽くない」
何故、シラナミがこれほどまでにドラウロのことを毛嫌いするのかがロイスには理解し難かった。
マイペースなドラウロのことが許せないのだろうか?
「了解です。やれるか分かりませんが最善を尽くします」
抗議など無意味だと悟ったのか諦めたようにロイスは答えた。
その言葉だけを待っていたシラナミは最後にロイスを一瞥するとミーティングルームを後にした。
まったく…みんな、自分ばかり考えて…。
淡々と廊下を進んでいくシラナミの背中姿に僅かながら顔をしかめていた。


ユワンは連邦軍の新造艦であるボクロスナに乗員していた。もちろん他のメリアを始めとする隊員も一緒だ。
トレント基地の軍事行動を察知したなら、プレイオスは宇宙からの降下作戦を実施すると予想したのだ。
「プレイオスに刺激を受けた反連邦組織は活動を開始している、それにプレイオスの地上部隊もあるはずだ。彼らは必ずこちらの作戦を妨害してくる」
そして、その予想は見事に的中した。
「…それにしてもよく、我が隊がこの作戦に参加できましたね」
まだ使われいない新造艦の内部の清潔に目を見開きながら、メリアが言った。
「軍上層部に私の叔父がいる。叔父の計らいで特別に部隊に編成させてもらったのだ。プレイオスとの戦闘は経験したほうがいいと思ってね」
何でもないように言うとユワンはコップの紅茶をすすった。

37きんけ:2009/01/24(土) 08:42:09


リンドヴルムを先頭に合計八隻の戦艦が、ゆっくりと航行している。艦隊の前方には母なる星である地球が視界いっぱいに広がっていた。
涙すら出そうになる、この美しさを持った地球で人々は時に己の私利私欲のため時に神のため時に大義のために戦いの歴史を繰り返してきた。今回の戦いもその一つに過ぎないというのだろうか…

リンドヴルムのパイロット待機室に次々と集結してくるモビルスーツパイロット達。ロイスとジョシュアは作戦内容の最終確認をしていた。
「トレント基地への降下のために地球へと近づきますが、引力に引かれて、次第にモビルスーツの機動力は落ちていきます」
黒のパイロットスーツ姿のジョシュアがロイスの言葉に静かに頷いている。
「この時や降下準備に入った機体は非常に敵機に狙われやすくて危険です」
「そこで僕のガルーダの出番だね」
「その通りです。ガルーダのモビルアーマー形態なら、どの機体よりも迅速に対応できます。」
「護衛部隊が退いた後は、僕ひとりで降下部隊を守らなきゃいけないのか…」
地上へと降下するモビルスーツは二十数機。ジョシュアが不安なのも無理なかった。そんなジョシュアを見かねて、隣に座っていたドラウロが
「いざとなったら俺が狙撃で加勢してやるよ」
携帯ゲーム機の液晶画面から目を離さずに何気なく呟いた。
その言葉に思わず驚いたロイスだが、しばらくして驚きは笑顔に変わった。


ボクロスナのレーダーがプレイオスの艦隊を捉えてから、艦内は戦闘準備に追われていた。
忙しく動き回る他の乗員とは対称的に、アンドレはコクピット内で静かに出撃の時を待っていた。
プレイオスが宣戦布告せずに連邦艦を奇襲した、言わば前哨戦で完璧なまでに打ち負かされたアンドレ。
そんな彼の心は人知れず怒りと復讐心で燃えていた。
「部下の仇はとらせてもらうぞ…プレイオス」
ぎゅっと拳を作って、決意を露わにした。色白で端正なアンドレの顔の表情はとても険しかった。

38きんけ:2009/01/27(火) 19:16:40
作戦開始時間が迫って、プレイオス艦隊より次々とモビルスーツが出撃していく。
《PGPの四機目が、この作戦に参加するって話しは本当なのか?》
カタパルトハッチの順番待ちの際にドラウロが聞いてきた。
「さあ…降下隊に参加するならリンドヴルムに乗っていると思うけど」
《本当だ》
通信に割り込んでくる、この抑揚のない声はシラナミだ。
《PGPの四機目は地上部隊に編成されている。そのほうが都合が良い》
「何故、俺達にそんな大事なことを伝えなかった?」
《PGPはプレイオスの要だ。安易に情報を流すことはできない》
それを最後にシラナミのセーメイが艦を発った。ロイスがエヴンスをカタパルトハッチへと急がせた。
《信用されてないんだな…》
「真面目なだけだよ、きっと」
規律を重んじて他言しなかったんだとロイスは納得しようとしていた。『仲間を信用できないから話していなかった』などと思いたくなかったからだ。
シラナミは隊員の命は軽くないと言った。俺達も命懸けで戦い、隊長であるシラナミの指示で動いているんだ。
「仲間を軽視なんてしてないよな…」
エヴンスが出撃に備える。眼下には青い青い地球。
「ロイス・ナウサン。エヴンス行きます!」


プレイオスとほぼ同時刻に連邦軍艦隊もモビルスーツの展開を始めていた。
プレイオスの降下作戦阻止に投入された戦力はトーマス級四隻とボクロスナの五隻で、投入されるモビルスーツは合計で三十四機とプレイオスとの戦力均衡は大差ない。
ボクロスナ両舷に構えた二つのカタパルトハッチより立て続けにマキスが放たれていく。無駄のないスムーズな動作は、やはり正規軍だけのことはある。
「正規軍がテロリストまがいに負けてたまるか」
テールブースターを吹かして先駆するアンドレ機。遅れて部下がそれに追従する。


《来た来た》
言うやドラウロはアルダのビームスナイパーライフルの接眼用モニターを覗く。射程の有効範囲の長さを利用しての先制攻撃だ。
撃ち放った閃光が敵陣へと伸びていくと巣穴をつついたかのように敵機が慌てて散開していく。
《命中なしか…まあ、いいや》減速し、狙いを定めるアルダを尻目に直進するモビルスーツ隊。
「引力に捕まる前に…!!」
エヴンスの両腕の刃が蒼く光り輝いている。この刃が敵機のオイルで汚れる作戦が始まった。

39きんけ:2009/01/30(金) 22:58:14
東の空が白み、新しい朝を迎えようとしている。
肌寒く、透き通るような風が寝ぼけ眼なユウの肌を撫でた。山岳にくり抜かれたように秘密裏に建造されたプレイオスのオーストリア支部はイタリア北部のトレント基地襲撃のための最終的な作業に追われていた。
秘密基地の最上部の屋上からは初秋の夜空が頭上に広がっており、格納庫の喧騒とは無縁な場所であった。
「見えた。戦闘の光だ」
仲間の言葉に振り返ったユウ。仲間からアナログ式の双眼鏡を受け取ると、指差す方向を見た。
そこには確かに戦闘により生まれる赤い光が広い夜空の僅かなスペースを色づけていた。
「…」
黙って、戦闘の光をその目に焼き付けようとしているユウ。眠気はすでに冷めていた。


機動戦士ガンダム0.5
8話 宇宙に降る星


モビルアーマー形態で出撃したガルーダが部隊の前に出る。アルダの断続的な射撃に連邦軍は陣形を大きく崩していた。
「この作戦にも大きな意味がある…!」
先駆しているアンドレのマキスへと銃口を向けたが、コクピット内に警告音が響いた。敵にロックオンされたのだ。
ロールして射線から離れると、今度こそトリガーを引いた。
しかし、マキスも見事な回避運動で攻撃を難なく避けた。
「二刀流とスナイパーがいる部隊だ、鳥のようなモビルアーマーが出て来ても驚きはしないぞ!」
その言葉通り、ガルーダの攻撃に対して冷静に処理していくアンドレ。対照的に焦りを隠せないのはジョシュアだ。
「スペック上でならマキスに勝っているのに」
アンドレ機とすれ違い、旋回した直後にビームがガルーダを掠めた。レーダーを見ればガルーダはアンドレ機を含めた三機のマキスに囲まれていた。
「しまった…!」
集団戦闘に慣れていないとはいえ迂闊だった。目の前の敵に固執しすぎたのは完全に落ち度だ。

ユワンのマキスが単機でプレイオスの主力モビルスーツであるセーメイに迫る。ビームライフルを放つも、大袈裟なモーションで避けられると反撃のビームカービンがマキスを狙う。
漂っていた軍艦の残骸の陰に隠れてやり過ごすが、すぐにセーメイはビームサーベルを抜き放ち肉迫。
光刃が残骸の装甲を切り裂く直前、不意に飛び出してきたユワンと交錯した。
「今だ」
ユワンが短く合図すると隠れていた部隊のマキスが身を晒して、ビームサーベルを握り締めてセーメイへと近づく。
切り結んでいるために身動きがとれず狼狽するセーメイ。最期は背後から青い刃を刺されると四散した。

40きんけ:2009/02/18(水) 07:51:26
ビームサーベルを上段に構えた直後、喧しい警告音がアンドレの耳に飛び込んできた。
条件反射で操縦桿を操作すると、その場で制止してみせる。するとマキスの眼前をビームが通過、何も無い宙域が緑の粒子に焼き払われた。
一瞬の判断を誤っていたら…とゾッとしながらもアンドレは改めて後方の狙撃型を脅威に感じていた。
アルダの援護に感謝しながら、マキスの包囲から脱却したジョシュアは距離を空けようとガルーダを加速。
「やらせるかっ!一機でも落とせば」
アンドレが叫ぶとガルーダへ食らいつこうとテールブースターを吹かした。しかし敵機の後ろに付いた直後、彼の機体に激しい衝撃が襲った。
「何!…」
突然、周囲が光ってアンドレの視界を殺した。
「この独特の光は−−−」
「機雷の威力が低くても、これなら!」
マキスの射線をかいくぐって、腰椎部からビームサーベルを抜き放つと一閃。
切断されたマキスの左腕は光の粒と共に地球の方へと流されていった。
「コクピットを斬られる直前に反応した!?」
振り下ろした剣を返すように振り上げるも光は宙を切り裂くだけに終わる。
「くっそ…何なんだこれは!」
なんとかガルーダの斬撃をやり過ごしたアンドレは弾幕を張りながら罵った。

41きんけ:2009/02/27(金) 21:09:05
幾筋のビームが獲物を捕らえることが出来ずに宙間を焼き払うと、青の粒子が地球の蒼を背に散って消える。
チャージが追い付かずに次弾発射の様子がないセーメイのビームカービンを確認すると、すかさずマキスが反撃に転じた。
撃ち放たれたビームをときにはシールドで受け止めながら回避していくが、それにも限界は来る。
激しい衝撃に一瞬、ブラックアウトしたパイロットだが、すぐさま状況を理解。
ビームに貫かれて吹き飛んだ右腕とビームカービンを尻目に、シールドの先端をマキスへと向けるとトリガーを一押し。
シールドが爆散したかのように白煙を上げると、煙の先からは餓えた獣のように荒々しく駆けていくミサイルが三発。
虚を突かれて、マキスは回避運動もままならずに破砕した。
目の前の敵を撃破し安堵したのもつかの間、レーダーに映る敵のモビルスーツ。
二機のマキスが五体満足の状態でセーメイへと接近してくる。敵影に歯噛みするとくるりと後方を向いてブースターを噴射。
戦力差で劣ることの多いプレイオスでは「用心深く行動しろ」と教わる。彼もその教えに則り戦線を離脱しようしていた。
しかし、そこは傑作モビルスーツ「マキス」である。素晴らしい加速で、じりじりとセーメイに迫るとついにビームライフルのレンジ内へと捉えたのだ。
機体をロックオンされたのか警告音が途切れることなくパイロットの耳に飛び込んでくる。無慈悲な電子音にパイロットの表情は焦りから恐怖へと変化していった。
だが、この戦場は孤独ではない。
音も無く静かに飛んできた緑の光輪はマキスの頭部へと吸い込まれるように直撃。ブーメランのような、くの字を形成していた光刃が爆発することも無くマキスのメインカメラを叩き壊していた。
経験したことのない攻撃に思わず動きを止める二機のマキス。一方のセーメイは援軍の正体に歓喜すると、モビルスーツの名を叫んだ。
「エヴンス!」
白と青の機体は、相変わらずの二刀流での登場である。
セーメイとすれ違いざま二門のブースターから光芒がこぼれる、その光こそがエヴンスの機動力の源である。
ビームをばら撒くマキスだが、一発の攻撃も避けると相対距離を計算しタイミング良く刃を薙いだ。
豆腐を切るかのように易々とマキスの装甲を切断すると、右腕を真っ二つにした。

42きんけ:2009/07/12(日) 15:24:37
エヴンスへと追いすがるようにビームを放つマキスであったが、エヴンスの機動力が相手ではどうすることも出来ずに光条は虚しく散っていく。
その間にも旋回をしたエヴンスがマキスへと接近。素早い対応も叶わずにマキスは巨大な刃の餌食となった。
コクピットから二つに切断されたマキスは、爆散することもなくその場に漂うだけの残骸となった。
「大丈夫か?」
《は、はい!援護感謝します》
少々上擦った返事。声から判断するにまだ二十代前半か。
「一人で母艦に帰れるな?」
《武器はサーベルだけですが、やってみせます!》
「馬鹿。艦に帰還しろ」
それでもパイロットは食い下がらない。
《いえ、戦わせてください!》
「黙れよ、ここは命を粗末に扱うような戦場じゃない!本当に世界を変えたいと思うなら生き残れ!」
《す、すみません…》
ロイスの怒号にパイロットが思わず萎縮した。
ロイス自身もバツの悪そうな顔をすると
「いや、怒鳴って悪かった…とにかく帰還するんだ。これは命令だからな」
言うや背部のブースターを噴かすと、その宙域を離れていった。

43きんけ:2010/09/24(金) 22:44:30
ビームカービンで眼前のマキスを焼き払うと、シラナミは低い高度にいるモビルスーツ隊へと視線を移した。既にモビルスーツの背部に搭載した大気圏突入用パラシュートが展開し、降下フェイズに移行している機体があった。
「シラナミより護衛部隊へ、降下が開始された。接近してくる敵機は全て撃墜しろ!」
ここからが本番だ、邪魔などさせるか!

マキスを撃ち抜くと、不意に機体の姿勢が崩れ、アルダのコクピット内に警告音が鳴り響いた。直後にパラシュートが展開され、機体が自動的に大気圏突入モードとなってしまった。
「射角が広く取れないが…一機でも撃墜する」
仰向け状態になり、身体が下へ下へと引っ張られるもドラウロは接眼用スコープを覗いた。

次々とモビルスーツが降下している光景にアンドレは焦りを感じていた。
「意気込んで出撃したんだぞ、これじゃあ格好つかないだろ…」
ブースターを吹かして上昇させようとペダルを踏み込んだが、機体はアンドレの予想以上に重くなっていた。地球の引力は既に彼を捕らえていたのだ。
ガルーダとの戦闘で自機の片腕を失ったが、決して帰還できない理由があった。
「アイツはどこだ!?」
目を凝らしてモニターに映る映像からアイツを探し出す。
ククルス宙域で邂逅し、部下を失い、完膚無きまでに叩きのめされたアイツを!

〈接近してくる敵機は全て撃墜しろ!〉
シラナミの無線に呼応するように護衛部隊が前線を押し上げて、敵部隊にプレッシャーをかけようとしていた。プレイオス・連邦軍共に地球の引力により機動性を落ちている中、高機動戦闘を主眼とするガルーダだけはポテンシャルを発揮させ、見事な働きをしていた。
地球へ降下したら、次は重力下での戦闘になる。ガルーダの単独飛行能力は大きな力になるかもしれない…
ロイスの思案を遮るかのように無線が入った。
〈こちらドラウロ。降下体勢に入った。これより援護射撃の要請に応えるのは難しくなる〉
ステルス能力に特化したアルダの援護射撃は強力だが、推進力はセーメイと同等程度でエヴンスやガルーダほど引力に対して抵抗できない。そのため、この作戦はアルダが降下を開始した後が正念場だとされている。
「降下部隊の殿を任せられたとは言っても、射撃武器のないエヴンスでは…」
瞬後、幾重の光条がエヴンスを掠めた。ロイスが声を発するよりも速く、レーダーが接近する敵影を捉えて警告音が鳴る。
機体を反転させ、すぐさまバーニアを吹かすロイス。前方からは片腕を失ったマキスが、こちらへと迫ってきていた。
「前線を突破してきたのか!?」
マキスの放ったビームを辛うじて避けたエヴンスだったが、敵機のショルダータックルにより体勢を大きく崩した。

「恥を偲んで回り込んだ甲斐があったというものだ!」
銃口が焼け落ちたビームライフルを破棄すると、背部からビームサーベルを抜刀。力の限りに刃を憎きアイツへと振り下ろす。体当たりで怯ませたが二刀流の敵機は素早く反応して、こちらの攻撃を防いだ。
「ここで…ここで落ちろ!」
アンドレはひたすらに叫び続けていた。

44きんけ:2010/10/13(水) 16:44:41
マキスよりも速く、エヴンスがクラスターを吹かして斬撃を回避。返す力で再度ビームサーベルを振るうも攻防兼用防盾がそれを防いだ。
「どうした?防戦一方かよ二刀流!」
接触回線からマキスのパイロットの声が聞こえる。
「これで勝ったつもりかよ…!」左腕の攻防兼用防盾から刃を展開させるとマキスへ一突き。アンドレがギリギリのところで反応し離れるも、刃は腰部を掠めて装甲に傷を負わせた。
「こんな掠り傷!」
「得物が大きすぎる…!」
刃を盾に収納すると、腰部からビームサーベルを抜刀。胸部バルカンを放ちながらマキスに襲いかかった。
バルカンが直撃し装甲が穿つも決して退かないマキスにロイスは嫌な予感がした。互いに激突し切り結ばれた光刃が迸る。
エヴンスのジェットを吹かすも、地球の引力に加えてマキスの重さで押し通す事が出来ない。むしろ、地球へと引っ張られていた。
「このままでは地球に落とされる!?」
「いくらコイツだって、摩擦熱には耐えられまい!!」
さらにブースターの出力を上げて押し込もうとするアンドレだが、水を差すようにコクピット内に警告音が響いた。
緑の弾丸が切り結ぶ二機の傍を駆け抜けた。咄嗟にエヴンスから離れるマキス。
MA形態のガルーダが弾幕を張りながら突撃。ビームマシンガンは周囲のモビルスーツの残骸を撃ち、花を咲かせた。
爆風の勢いに負け、マキスが地球の方へと飛ばされる。
「くっ…このテロリスト共が!」
降下用パラシュートがオートマチックで展開すると、マキスが仰向けとなり降下に突入する。
アンドレのマキスとエヴンスのと間の距離は、さほど離れていなかった。
エヴンスのメインカメラがマキスを捉えた。左腕を失い、各部の装甲が抉られているマキスの姿にロイスは思わず同情した。
エヴンスはビームサーベルを納刀すると、ブースターを目一杯に噴射。引力に苦戦しながらも、その場から離れた。
屈辱的な結末となり、アンドレがやり切れない感情を叫び声として放出した。

45きんけ:2010/10/15(金) 20:05:13
多数のモビルスーツがパラシュートを展開させ、流星の如く地球へと降下していく。
その光景は戦争とは思えないほど、芸術的であった。
ここまでか・・・
降下の様子を感嘆の声すらあげずに眺めたシラナミが口を開いた。
「全部隊の降下を確認した。護衛部隊は母艦へと帰還せよ!」
その命令とほぼ同時にプレイオス艦隊の艦砲射撃が始まった。
敵艦隊へと伸びていくビーム砲が護衛部隊の撤退を助ける。降下作戦は終盤に差し掛かっていた。

プレイオス艦隊からの砲撃が連邦軍艦隊の周辺宙域に降り注いだ。
直撃することはないが、その弾幕にモビルスーツ隊の動きが止まった。
「ちっ、まるで戦果をあげることが出来なかった・・・」
ユワンが眉をひそめる。
クエサーの時といい今回といい、まるでプレイオスの特別攻撃隊と剣を交えることが出来ず、ユワンは歯がゆい思いをしていた。
叔父に無理を言って今作戦に参加したというのに、これでは申し訳が立たない。
「隊長、敵部隊が後退しています」
ユワンのマキスに部下が接触回線を試みた。
「ここらが潮時のようだ。順次、後退しろ」
「了解」
地球を尻目にユワンの部隊が母艦であるボクロスナへと向かう。
同様に他のモビルスーツ部隊も各々の艦に帰還しようとしていた。
どうせなら、降下部隊に編成させてもらえば良かったな・・・
エヴンスやアルダといったプレイオスの特別攻撃隊は当然、降下部隊として今作戦に参加している。
こちらも降下部隊ならば地上でも戦うことになり、撃墜のチャンスは多くなっただろうとユワンは考えた。
しかし、今やそれは過ぎた事。降下部隊は既に大気圏内にいるのだ。
「私はもっと上を目指したい・・・もっと上を」
ユワンは大きな野望を小さく呟いた。

46きんけ:2013/08/01(木) 00:07:18
両陣営の数十ものモビルスーツが降下用パラシュートを展開し、大気圏突入を果たした。パラシュートの表面は摩擦熱で赤く染まり、まるで隕石のように地球へと落ちていく。
降下中は先の戦闘が嘘であるかのように静かであった。摩擦熱から守るためにパラシュートは展開すると機体を包み込むように強制的に仰向けの姿勢へと移る。その状態では射角も広く取れず戦闘には不向きである。そして、プレイオスと連邦軍どちらも同じパラシュートを展開しているため敵味方の識別は不可能であり、レーダーも大気圏突入の際はまともに機能しない。以上のことから同士討ちを恐れ、大気圏突入の際は戦闘を行わないのが不文律となっている。
パラシュートに包まれながらもガタガタと揺れるコクピット内でロイスは静かに目を閉じていた。仰向けのまま下を見ることが許されずに落ちていく感覚にロイスは形容しがたい恐怖を感じ身震いした。
――地獄にでも向かっているのか?
死の予感。この恐怖を感じるのはロイスにとって二度目であった。
黄色い砂塵、包囲網、コクピットから黒煙を吐き機能停止する味方モビルスーツ、二年前の出来事が脳裏にフラッシュバックし思わず瞼を開いた。自分よりも高い高度に複数のパラシュートが確認できた。あのパラシュートに包まれているのが敵なのか、味方なのかロイスには分からない。
大気圏突入からおよそ二時間、パラシュートを着脱し仰向け状態をやめると、モビルスーツのメインカメラの視界は天地逆転し、地上を映しだした。長靴のようなイタリア半島が見える。この長靴の付け根部分、地球連邦軍ヨーロッパ方面軍の最大規模を誇るトレント基地へと彼らは飛び込んだ。

47きんけ:2014/04/26(土) 23:36:18
宇宙より飛来してきたプレイオスのモビルスーツに対してトレント基地より対空砲火とミサイルによる手荒い歓迎が待っていた。戦闘を行いながらの地球降下という極限状況を乗り越えた彼らに休む暇はなく、降下中の姿勢制御と回避行動に追われた。
 高度が下がっていくにつれ既に地上で戦闘が発生していることを確認することが出来た。それこそがプレイオス・オーストリア支部より出撃した地上部隊である。

機動戦士ガンダム0.5
9話 CrossFire

降下中のセーメイが対空砲の直撃を受けると四散。モビルアーマー形態で飛行するガルーダの傍で赤く弾けた。
その爆発の衝撃はガルーダのコクピット内にも伝わり、シートをビリビリと震わせた。
「うっ…!少しでもこちらに注意を引き付ければ…!」
ガルーダが高度を落とすと敵にロックオンされたことを示す警告音がコクピット内に響いた。その警告を後回しに対空砲へとビームマシンガンを斉射。破壊された対空砲と塹壕を横目に右旋回。背後から迫るミサイルを振り切ると機首に内蔵されたバルカンが炸裂し、敵陣地を薙いだ。
 地上へと視線を下ろすジョシュア。彼の目に二機のマキスがこちらに銃口を向けているのが見えた。マキスがビームライフルを放つよりも速くジョシュアが反応すると、ガルーダは空中でモビルスーツ形態へと変形を遂げた。右腕にジョイントされたビームマシンガンがガルーダの真下に位置する二機のマキスへと一射。一機のマキスの撃墜を確認すると、残った一機へと狙いを定めた。
 黒鳥を撃ち落とさんと連射されるビームを弧を描くように回避し距離を詰めると、腰椎部より抜き放ったビームサーベルで一閃。マキスが両断され、ほどなく爆散した。
 ジョシュアが仰ぎ見る。いまだに連邦軍による対空砲火で空は騒がしいままであった。

 火線を掻い潜りエヴンスはトレント基地の中心よりもやや南東にずれた商業地区へと降下した。プレイオスの降下部隊を待ち構えていたマキスがエヴンスを捉え攻撃を開始する。エヴンスは跳躍し、マキスのビームを回避。空中で肩部に装備されたビームスラッガーを敵機目掛けて投擲すると、ブースターを吹かして接近する。ビームスラッガーはマキスのビームライフルを切断させ、地面へと突き刺さる。その間に距離を詰めていたエヴンスが刃をマキスへ一突き。爆散することなくその巨体は倒れこんだ。さらにセーメイに気を取られていた別のマキスを刃で薙いだ。
 マキスが戦闘不能になったのを確認するとロイスは周囲を見渡した。敵の自走砲や戦車は見当たらず僅かな数のマキスがこちらのセーメイに落とされているだけである。
「基地中心には降り損ねたか…」
 降下地点がずれた原因は明白だった。降下直前の片腕を失ったマキスとの戦闘である。
「地上部隊との合流も急ぎたいが、滑走路も抑えたい…着いて来い!」
同じ場所に降り立った数機のセーメイを引き連れるとロイスは基地の中心へと歩を進めた。

48きんけ:2015/02/24(火) 03:15:03
 降下部隊の中でも比較的早い段階で地上に降り立ったドラウロはトレントの北東に位置するモンテカリシオ山の稜線上に陣を取ると、アルダの索敵能力とビームスナイパーライフルの射撃性能を活かして定点射撃を敢行していた。トレント基地は山々に囲まれたアディジェ渓谷にあるため、ドラウロの位置からは基地中心部を見下ろす形となり絶好の狙撃ポイントであった。
ドラウロが息を吐きながら接眼スコープを覗くと、落ち着いて冷静に獲物を撃ち抜いていく。光条は長く細く伸びるとマキスの脇腹へと直撃。装甲は穿たれ核融合炉を貫通したのか瞬く間もなく、その場で火球となった。
 一機、また一機と確実に無力化していくドラウロであったがこの働きは戦況に大きな影響を与えてはいなかった。彼が一つのターゲットを狙っている間にもトレント基地のモビルスーツ部隊がスクランブル。そして連邦宇宙軍の降下部隊が壁を作っていた。
 プレイオスの降下部隊も基地中心部への侵攻を試みるが広範囲に散らばって降下してしまい一箇所に戦力を集中出来ていないこととプレイオス地上部隊の到着が遅れていることもあり、攻略できずにいた。
 防衛線を破れずに倒されていくセーメイの姿に見かねてドラウロが接眼スコープから顔を話さず通信を開いた。
 「こちらドラウロ。ロイスはどこにいった?」
 <こちらロイス。予定降下ポイントよりも南に降りてしまった。もう少し待ってくれ>
 「この状況を打破出来るなら、いくらでも待ちますとも…!」
 とは言ったものの、これ以上トレント基地防衛線を突破出来ずに被害を出し続ければ先に瓦解するのはプレイオスである。座して待つような時間は大して残っていなかった。
 とにかく今は一機でも多く落とす…!
 ドラウロは不吉な考えを中断させると再び狙撃に集中した。

 大気圏突入直前までエヴンスと戦闘を繰り広げていたアンドレのマキスであったが無事に基地の中心へと降下を果たした。しかし、その機体の状態はまさに満身創痍という言葉がピッタリであった。
 「ぐうう!機体の調子せいだっ!」
 逆噴射をかけながら着陸を試みるが減速しきれず機体が滑走路上を滑る。悪態をついてもマキスの勢いは止まらずついに機体は転倒。アンドレはコクピットの中で激しい衝撃に襲われながら200メートルほど滑走路をオーバーランするとようやく静止した。
 モニターの半分以上は死んだマキスのコクピットからアンドレが倒れた機体の隙間を縫うように出てくると、共に地球へと降り立った機体を尻目に彼は全力疾走でその場から離れようとしていた。
 「こっちに来るな!爆発する!」
 アンドレを迎えよう駆け寄ってきた整備兵に対して叫ぶ。マキスの腰部から黒煙が吐出され、今にも爆発を待っているような状態であった。
 アンドレと整備兵は最寄りの格納庫に駆け込む。ほどなくしてマキスの爆発による轟音と衝撃に格納庫の側壁全体が揺れた。
 「よ、よくご無事で」
 「無事?無事だって!?…俺の機体は!」
 「ですが、アナタは無事に生きています」
 「お、俺は!…いや…あぁ、機体は吹っ飛んだが俺は傷ひとつ負ってない。確かに無事だ…」
 整備兵からの言葉にアンドレは徐々にであるが冷静さを取り戻し始めた。張り詰めていた緊張の糸が緩み、頭のなかがスーッとクリアになっていく。

49きんけ:2017/04/24(月) 13:38:03
整備兵の背後、格納庫内を見やる。ハンガーに仰向けで固定されたモビルスーツに気が付くと、アンドレが歩み寄っていく。橙色の巨人。連邦地球方面軍主力モビルスーツ「エレジア」である。
「借りるぞ」
 言うが早いかアンドレがエレジアのコクピットへと飛び込んだ。整備兵の困惑する声が上げたが、コクピットハッチが閉まるとそれも聞こえなくなった。機体に火を入れるとグウウンと低い唸りと共にエンジンが起動。頭部のモノアイが光輝を放ち、コクピット内のモニターが格納庫の天井を映し出している。機体のサブモニターに目をやると、機体の武装を確認した。右腕にアタッチメントされた大型ビームライフルとバックパックに二本のビームサーベルが収納されている。オーソドックスな武器だが、不満はなかった。
「格納庫から出す。下がれ!」
 外部スピーカーから響くアンドレの声に呼応するように格納庫内の整備兵がエレジアから離れた。機体を起こしてハンガーから立ち上がると滑走路へと歩を進める。全長二十三メートルとマキスを凌ぐ巨体であるが、コクピット周りはマキスと大きな違いもなく初めて乗り込んだアンドレでも違和感なく操縦できている。手元のレーダーに目を落とした。北側にプレイオスの部隊が降下したのか、多くの熱源反応が見られる。大気圏に突入した時、最後に二刀流のモビルスーツは俺に止めを刺さずにその場から離れた。地上に降りる直前、機体を包み込んでいたパラシュートがパージされた際に周囲を探してもあの二刀流は見当たらなかった。プレイオスの降下地点からズレている可能性はあるが、ヤツはプレイオスの中心部隊であることは間違いない。二刀流は必ず現れるはずだ。アンドレが操縦桿をぐっと押し込み、ブースターを全開にすると、戦場へと向かった。既に上空からの降下部隊の姿はなく、対空砲火は止んでいた。

 ロイスが本来の降下予定ポイントに到着した時、戦線はギリギリ保たれているような状況であった。ほとんどのセーメイが損傷しており、大破し地面に倒れこんでいる機体も少なくなかった。地上の援軍はまだなのか!混線した通信から味方の悲痛な叫びが聞こえた。宇宙と地上での連戦は機体だけでなくパイロットの精神も追い詰めていた。
「損傷が激しい機体は無理をするな。ここはエヴンスがやる!」
 両腕の攻防兼用防盾を前面に構えながら、マキスへと前進。幾条かのビームを全て受け止めると、そのままの勢いでマキスへと激突した。盾内部に収納されていた刃がスライド。鈍く光ると姿勢を崩したマキスへと一閃。右腕がバターのように切断され、持っておいたビームライフルと共に建物を巻き込みながら落下した。片腕を失ったマキスは仰向けに転倒。体勢を立て直すこともせずコクピットハッチが開くと中からパイロットが這い出てくるのが見えた。パイロットは振り返ることもせずに建物の影に敗走した。
ロイスは敵からの置き土産であるビームライフルを拾い上げると左手に握りしめて一射。一筋のビームがマキスの頭部を貫いた。エヴンスとマキスのマニピュレーター規格が一緒

50きんけ:2017/04/24(月) 13:46:01
なのか問題なく使用出来そうである。エヴンスが前屈みになるとホバー走行で市街地を進んでいく。数機のセーメイもエヴンスに続いた。
≪よう、来てくれたな。頼りにさせてもらうぜ≫
ドラウロからの通信が入る。声色にどこか安堵が混じっているような気もするが、ハッキリとは分からない。ロイスは眼前の戦車をビームライフルで薙ぎながら「分かった」と短く返答した。直後、後方から細くて速い針のようなビームが前方のマキスに着弾。火球へと変わったマキスを尻目にロイスはドラウロの射撃精度に感嘆した。上空、黒い神鳥が制空権を握っていた。ガルーダによる遊撃もドラウロの精密射撃に専念できる要因であった。
 特攻隊三機の活躍もあって前線にも変化が見られた。面では抑え込まれていたプレイオスだが先駆するエヴンスとセーメイ部隊によって一点突破に成功。トレント基地中心部へと強引に入り込もうとする彼らに引っ張られるかのように連邦軍の前線がジリジリと下がっているのだ。河川を逆流する波のようにプレイオスのモビルスーツが細い隊列を成してジリジリと迫る。だが、彼らの前に大きな堤防が立ちふさがった。地球連邦方面軍主力モビルスーツ「エレジア」。マキスやセーメイと比較しても明らかに巨大なその機体はまさに壁となってプレイオスの行く手を阻んでいた。
 ここまで来て、エレジア部隊の登場か…!歯噛みするロイスであるが、すぐさま思考を切り替えるとエヴンスを跳躍。エレジアの大型ビームライフルが何もいない空間を焼いた。

51きんけ:2017/05/20(土) 00:39:13
 ビリビリとコクピット内が揺れる。マキスのビームライフルともセーメイのビームカービンとも比較出来ないほどの威力であることを肌で感じたロイスが顔をしかめた。
「ッ!?」
 着地と同時にアラートが鳴る。一機のエレジアがビームサーベルを構えてエヴンスへと突撃。既のところで斬撃を避けるもモノアイの機体はさらにエヴンスへと迫った。
≪見つけたぞ、二刀流!≫
「またアンタかッ!」
 大気圏突入の際に最後に交戦した男の声。機体こそ違えど戦い方は同じ。我武者羅でありながら明確な殺意をもってロイスを狙っていた。
≪俺の部下はお前に殺された!俺の目の前で…ククルス宙域で!≫
「戦争だぞ!」
≪だからお前は俺の手で殺してやるってんだァ!≫
「ここで、死ねるかッ…!」
 肉薄する敵機を振り払いながら肩部のビームスラッガーを投擲。弧を描いた光輪だったが、ビームサーベルの一振りによって呆気なく破壊された。胸部バルカンをばら撒くも厚い装甲を擁するエレジアには効果が見えなかった。ロイスがアンドレのエレジアの気迫に押されている間にも周囲のセーメイはエレジアの壁を破ることが出来ずに次々と落とされていく。焦りを隠しきれず汗を滲ませるロイス。アンドレの射撃を右腕の盾で防ぐもその威力に盾上部が吹き飛ぶと、破片が光を反射させてキラキラと舞った。
「なっ…!」
 思わず言葉を失うロイスと対照的にアンドレは勝利を目前に咆哮した。これまで辛酸を嘗めさせられてきた悪魔は眼前で体勢を崩して地面に倒れこもうとしている。ブースターを吹かして懐に飛び込もうとするアンドレ。エレジアのビームサーベルが振り下ろされるよりも速く、両腕の盾を前面に構えるとロイスはそれをブロックした。両機の腕部が激しく衝突し、金属が軋み、悲鳴を上げている。
≪ちぃ、しぶとい!≫
 止めを何とか阻止したロイスだが、マウントポジションを取られて不利な状況であることには変わりなかった。
≪さよならだ、二刀流!≫
 アンドレが叫ぶ。エレジアのビームサーベルが振り上げられたが、彼は自らの声と目の前の仇討ちに集中してしまい、コクピット内に響いているアラートに気づくことが出来なかったのだ。不意の衝撃がアンドレを襲い、意識が一瞬ブラックアウトする。吹き飛ばされそうになった身体をシートベルトがガチッと固定し、勢いよくシートに叩き戻された「うぅ…」と呻いたアンドレが頭を上げるとモニターの半分が死に、機体も横に吹き飛ばされていた。
 無数のミサイルが北の空が降り注ぎ、基地施設へと着弾。連邦軍のモビルスーツを巻き込むように爆発し炎の渦へと変えた。ロイスがレーダーに視線を移した。ミサイルから飛来してきた北の方角から多数の友軍反応。間に合ってくれた…。思わず彼は呟いていた。
「プレイオス地上軍…!」


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